○松本善明君 私は、
日本共産党を代表して、一九九九年度
政府予算案に
反対の
討論を行います。(
拍手)
深刻な
不況の
もとで、今
国民は、
景気をよくしてほしい、そのために
消費税の
減税など懐を暖める
施策をと切実に求めております。ところが、本
予算案は逆に、その
国民の大多数に増税を押しつけるものとなっております。
小渕首相は、これで
景気回復になるのかとの当然の疑問に、内閣としてまともな吟味もせず、
答弁も回避をしたままであります。また、
日本債券信用銀行に投入された六百億円を紙くずとしながら、その責任と真相を糾明する証人喚問もやらず、大銀行に巨額の公金を投入しようとしているのであります。しかも、このような
予算案を、史上最も早く衆議院を通過させようとしております。私は、まず最初にこのことを厳しく糾弾するものであります。(
拍手)
まさに、
国民に
消費税増税と医療費など九兆円の
負担増を押しつけて、この大
不況の原因をつくった一昨年の
橋本内閣の失政に匹敵をする、第二の大失政がこの
予算で行われようとしているのであります。
小渕内閣は、もはや自分の
政策を、説得力を持って
国民に語ることができなくなっております。言いかえれば、
我が国の
政治や
経済のかじ取りができなくなってきていることが、だれの目にも明らかになってきているのであります。
深刻な
経済危機の中で、
我が国の将来に明るい光を照らすことを真剣に考えるならば、我が党がこの間の論戦で指摘をしたように、従来の
政治の枠組みや惰性にとらわれない、
思い切った転換を行って、深刻な
消費不況と果てしのない
財政危機という、二重の危機を打開することが急務であります。
以下、
予算案に対する
反対理由を順次述べておきます。
第一は、
政府予算案の目玉である
減税策の正体が、一部の高額所得者と大
企業には大
減税、大多数の
国民には大増税の、紛れもない増税策であることであります。
四・三兆円もの
減税と言いますが、
所得税、住民税で見るならば、一部の高額所得者には九八年に比べて一・三兆円の
減税、一方大多数の中低所得者に対しては一兆円もの増税になるということは、否定のできない事実であります。さらに、扶養家族の多い、
生活の大変な家庭ほど増税になることも明らかになりました。増税に
減税という表紙をつけただけという批評が的中する、紛れもない大増税であります。
しかも、これらの
税負担増は、四兆円の特別
減税にもかかわらず、二年続けて可処分所得と
消費支出を落ち込ませている中低所得者層に打撃を与え、
景気に真っ向から冷水を浴びせるものであります。二・三兆円の法人
減税も、その一・三兆円が全
企業の〇・一五%にすぎない三千六百社に集中する、大
企業優遇の
減税策にほかなりません。
大体、
消費不況が原因で生産が落ち込んでいるときに、この大
企業減税が設備投資に向かう保証は全くありません。猛烈な勢いでリストラを進める大
企業に
減税するということは、税の公平に逆行し、歳入面からも
財政基盤を掘り崩すものであります。こうした大
企業減税は、きっぱりと中止をすべきであります。
さらに、
小渕内閣が、あらゆる世論調査で、
景気対策に最も
効果があるとされ、圧倒的多数の
国民が望む
消費税率の
引き下げに、あくまで背を向けていることは重大であります。
予算委員会で自民党委員までが、
景気に一番効くのは
消費税ですという声を紹介して質問するくらい、この声は圧倒的であります。
小渕内閣は、将来の
税率引き上げの障害になるからという、
理由にもならない言いわけでこれを拒んでおりますが、
政府税制調査会長が
消費税増税に言及し、首相の諮問機関である
経済戦略
会議が
消費税増税不可避とするなど、本音が見え始めております。
消費税増税など、
日本経済を奈落の底に突き落とすことになることは明白であります。その上、
政府予算案では、総則に
消費税の医療、
介護、
年金への
福祉目的化を盛り込み、
企業の
社会保障
負担を免除し、
国民への
負担増をねらっております。断じて許すことはできません。
消費税率を直ちに三%に
引き下げ、基礎
控除など人的
控除を各十万円
引き上げる所得
減税を
実施し、これらを組み合わせた七兆円
規模の庶民
減税を行うことは、
国民すべての階層が昨年より
減税となり、
消費拡大に結びつく起死回生の策となるのであります。
第二の
反対理由は、
財政構造改革路線を引き続き推進する一方で、ゼネコン型の公共投資をなりふり構わずひたすらに拡大する
景気対策のあり方が、国と
地方の
財政赤字を取り返しのつかない破滅への道に導くという点であります。
長期
債務残高は、このままでは、九九年度の
見通しで六百兆円、
国民一人当たり五百万円にもなるという重大事態であります。九〇年代に入って異常な
規模で膨張した公共投資が、国と
地方にこうした未曾有というべき今日の
財政危機をもたらしたことは、隠すことのできない事実であります。九一年から九八年までの八
年間で、長期
債務残高は、二百六十兆円から五百六十兆円へと約三百兆円ふえましたが、同じ期間に行われました公共投資は、約四百兆円であります。
公共投資の六割が借金であり、
財政危機をもたらした真の原因が破天荒な公共投資にあったことは、この数字が明瞭に物語っております。このような異常なゼネコン型公共投資の大幅
削減は、
財政危機打開にとって避けて通ることのできない問題であります。
小渕首相は、
景気回復が
回復軌道に乗れば
財政再建を検討すると繰り返しておりますけれども、昨年十二月、YKKと言われる自民党幹部との会談では、私は今度の
予算編成で大罪を犯したかもしれない、あなた方が
財政再建をやってくれと語ったと報道されております。報道の真偽はともかく、内閣の責任者が、今日の深刻な
財政危機の解決に対して何らの
見通しや展望も持っていないことは、極めて重大なことであります。
実際、
政府の中期
財政試算によっても、今後三・五%の
経済成長が続いたと仮定して、二〇〇三年まで、毎年三十兆円もの
国債発行が不可避とされ、国債残高は実に四百三十兆円以上にも膨れ上がることになります。まさに、後は野となれ山となれというこの無責任さは、厳しく糾弾されなければなりません。
首相は、我が党の追及に対し、公共投資
計画に基づく
地方へのゼネコン型公共投資の押しつけが、
地方財政を危機に追いやった原因であったことを認めました。
地方財政の圧迫が住民
生活に
関連する
予算削減に結びつき、全国的に、
福祉や教育施設などに荒廃した
状況が広がっております。ところが、
政府予算案では、前年度を超える
公共事業を
地方自治体に押しつけ、住民犠牲の自治体リストラを強要しようとしております。余りにも無反省、無責任であり、言語道断と言わなければなりません。
第三は、
小渕内閣が発足以来ひたすら行ってきた大銀行への六十兆円もの
支援策に忠実に、
交付国債の償還費用として二・五兆円を計上するなど、本格的な税金投入の具体化に踏み出したことであります。
この間明らかになったことは、冒頭に触れた
日本債券信用銀行問題だけではありません。
日本長期信用銀行への
公的資金投入疑惑もあわせると、二千三百六十六億円です。これらの真相究明が全く行われないまま、
国会と
国民をごまかし、大銀行にはひたすら莫大な
援助、
支援を注ぎ込む大銀行優先の
小渕内閣の姿勢は、根本から問われなければなりません。
第四に、米の関税化を強行しようとしていることは、
日本農業を崩壊に導きかねない重大問題であります。
国民の食糧の安全保障の観点から、到底容認することはできません。
最後に、ガイドライン問題について述べます。
内政では財界と大
企業優先、一方外交ではアメリカとの関係しか考えない自民党
政治の自主性のなさは、
予算委員会で重要な論戦テーマになったガイドライン論戦でも明らかになりました。ガイドライン
関連法案は、アメリカの先制攻撃にも呼応して参戦する戦争
法案であり、憲法九条を根本的に否定するものであります。
昨年十二月の米軍のイラクに対する先制的な軍事力の行使に、
我が国がいち早く支持を表明した問題は、我が党などの追及によって、国連無視、国際法違反の米軍の武力攻撃にも、
日本政府が協力する姿勢を浮き彫りにいたしました。米軍は違法な軍事力行使を行わないという、現実離れの前提に立ち、米軍の武力行使に協力するということは、国際
社会と
世界の平和に対する極めて重大な挑戦であります。
さらに
政府は、他国の内戦やクーデターも
周辺事態になり得ると
答弁するなど、まさに
周辺事態には何らの限定もないことも明らかになりました。
日本が行う後方地域
支援は、幾ら
政府が、武力行使とは一体にならない
範囲で行うものとごまかそうとも、国際的に見て戦争行為そのものであり、相手からの攻撃対象になることも既に明らかであります。
安保条約の枠内とするなどの修正を施しても、これらの問題は何ら解決をいたしません。
日本共産党は、
国会での徹底
審議と
国民の大運動によって、この戦争
法案を廃案にするために
全力を尽くすものであります。(
拍手)
小渕内閣の
予算案が示すものは、
不況打開にもまた
財政危機打開にも、何らの真剣な検討も
対策もとることのできない、自民党
政治の完全な破綻の姿にほかなりません。
なお、
民主党提案の
組み替え動議は、
賛成できないことを述べておきます。
内政でも、外交でも、既に自民党
政治の行き詰まりは、覆い隠しようのない事態であります。
小渕内閣に、これらの危機を
国民本位の
立場に立って打開する資格も能力もない以上、
国民に信を問い、解散・総選挙を行う以外にはありません。
私は、このことを強く要求して、
反対討論を終わるものであります。(
拍手)