○石井啓一君 公明党の石井啓一でございます。
私は、公明党・
改革クラブを代表いたしまして、ただいま
議題となりました
平成十一
年度公債発行特例法案並びに
税制関連三
法案に関し、
小渕総理大臣並びに
関係大臣に
質問をいたします。
本年一九九九年、
我が国経済は重大な岐路に差しかかっております。デフレスパイラルのらせんを転げ落ちるのか、それとも確かなる
回復軌道へ乗せる足がかりをつくるのか、まさに起死回生をかけたラストチャンスであります。
日本全体を覆うさまざまな不安を打ち払い、目前に迫った二十一
世紀を明るく希望にあふれた
世紀としていくための重要な年であると位置づけ、まずは
景気の
回復に
全力を傾けなければなりません。しかしながら、過去の経験に基づく
景気対策に終始するならば、大きな過ちを犯すことになります。戦後
経済を支えてきた金融、産業、雇用、
社会保障など、さまざまな構造システムが疲弊していることによる構造不況としてとらえ、大変革していかなければ、
我が国は衰亡への坂を転げ落ちかねません。
私は、決して悲観論に立つものではありませんが、重大な岐路にあるという危機認識、緊張感の
もと、速やかな
景気回復に向けて、積極的な財政出動を行うとともに、あわせて
構造改革につながる施策を断行していかなければならないと
考えます。その
意味において、今般の
税制改正は、極めて重大な意義を持つものであるとの認識が必要であります。こうした前提の
もと、順次
質問をいたします。
まず、
景気の認識について伺います。
九九
年度政府予算案は、
規模にして八十一兆八千億円を超える大型
予算となっておりますが、
経済構造改革などの
抜本改革は不十分であり、公共事業についても、省庁別の配分割合に大きな
変化はなく、二十一
世紀の
我が国社会の変革に向けた戦略を欠く
予算と言わざるを得ません。
政府は、九九
年度政府経済見通しにおいて、実質
経済成長率をプラス〇・五%と見込んでおりますが、民間のエコノミスト、シンクタンクでは、
個人消費、設備投資とも、民需の落ち込みは依然として厳しい水準が続き、公共事業を初めとした公的需要も
年度後半にかけて息切れし、民需を
中心とした自律的な
景気回復は難しいとの見方が支配的であります。さらに、金融機関の貸し渋りが早期には解決しそうにない上に、長期金利のさらなる上昇も懸念をされており、現在のままで推移するならば、
経済成長プラス〇・五%達成は困難であると言わざるを得ません。
総理の見解を伺います。
また、
宮澤大蔵大臣は、来
年度予算について、初回からハマの大魔神を投入したようなものと評されました。ハマの大魔神といえば、
最後の切り札であり、これが失敗すればもう後がないわけでありますが、
総理及び
大蔵大臣は、この
予算でプラス成長に転じなければ後がないという覚悟がおありかどうか、プラス成長が達成されない場合のみずからの
政治責任についてどのようにお
考えか、それぞれお答えをいただきたいと存じます。(
拍手)
次に、金融問題について伺います。
我が国経済の大きなおもしとなっている不良債権の抜本的処理の進展が、速やかな民間主導の
景気回復軌道に乗せ得るかどうかの重要なかぎを握っております。
最近、金融界の一部及び
自民党内において、二〇〇一年四月からのペイオフを延期してはどうかという議論があるようですが、これは、結果として不良債権問題を先送りするだけであります。金融早期健全化法などを活用し、金融再生委員会の
基本方針にもあるとおり、本
年度末までに不良債権を一掃する覚悟で臨むべきであります。
総理及び金融担当大臣のペイオフに対する見解を改めて伺います。
また、信用保証協会の融資枠の拡大により、貸し渋りは若干緩和され、その効果が倒産件数の減少などの形で見られておりますが、先般、
予算委員会において明らかになったとおり、一部金融機関による、信用保証協会の保証つきの融資を悪用した旧債振りかえが行われるなど、金融機関の貸し渋り、資金回収の
実態は依然深刻であります。
信用保証協会の特別保証は、一月末までに保証承諾金額で十二兆三千億円に上っておりますが、中小企業の経営を安定軌道に乗せるために、この二十兆円の特別保証枠をさらに拡大する、また、特別保証の返済猶予期間を延長する等、中小企業の資金繰り支援をさらに
拡充すべきと
考えますが、
総理並びに通産大臣の見解を伺います。
さらに、財政と金融の分離について一言申し上げます。
私自身も昨年の三会派覚書に関与いたしました。確かに、一字一句について文言の詳細までは詰められてはおりませんでしたが、財政・金融の完全分離、金融行政の一元化という表現は、金融処理や金融危機管理についての企画立案機能も大蔵省から分離することが、素直な解釈になると思います。
総理の素直な見解をお伺いしたいと思います。
続いて、
法案の中身についてお伺いをいたします。
まず、
所得税、
法人税減税の意義について伺います。
所得税、
法人税減税に関する
法案名を見ると、
経済社会の
変化等に対応して早急に講ずるために
所得税及び
法人税の負担を
軽減するとなっております。これは
最高税率の
引き下げも、
定率減税も、すべて
経済社会の
変化等に対応して早急に講ずるための
特例措置ということであり、同
法案第一条に
規定されている、
我が国経済の
状況等を見きわめつつ抜本的な
見直しを行うまでの間の暫定
措置でしかあり得ません。
政府は、恒久
減税からいつの間にか
恒久的減税にすりかえをいたしましたが、これでは一種の
特別減税であり、恒久的にも当てはまりません。いつまでこの
特例的な
減税を継続し、いつ抜本的な
見直しを行うのか、
総理並びに
大蔵大臣に
お尋ねします。
さらには、
抜本改革の方向性として、直間比率の
見直しや
課税ベース、すなわち各種
控除や引当金、準備金等の
見直しが
課題になると思われますが、これらについての
基本的な見解を
大蔵大臣に伺います。
また、
宮澤大蔵大臣は、
予算委員会において、凍結されている財政再建の再開の時期を、実質で二%程度の成長が軌道に乗った場合と
答弁をされました。財政
構造改革には増税や
歳出見直しが伴うと予想されますが、財政再建の時期と
税制の
抜本改革の時期との
関係についてどのようにお
考えか、
総理並びに
大蔵大臣に
答弁を求めます。
今般の
税制改正案の中で、
所得税と
住民税を含めた
最高税率が六五%から五〇%へと
引き下げられました。
基本的な方向は評価しますが、本来、
最高税率の
引き下げに当たっては、
総合課税化や
納税者番号制度の
導入といった
課題と
セットで行われなければ、金持ち優遇との批判を免れないとともに、後々の
制度導入に大きな支障を来すのではないかと思います。
総合課税化、
納税者番号制度についての
総理並びに
大蔵大臣の認識をお伺いいたします。
所得課税の
減税規模は、
控除の引き上げで若干
規模が膨らみましたが、
住民税と合わせると、昨年、九八年に行った
特別減税とほぼ同じ四兆三千億円であり、
最高税率の
引き下げ等によって高所得者の
減税規模が拡大する一方で、夫婦
子供二人の平均的な世帯では、年収七百九十三万円以下の層は昨年と比べて
税負担が重くなります。給与世帯全体では、六割を超える世帯が昨年と比べ
税負担がふえる結果になります。これでは、今般の
税制改正の重要な意義の
一つである
景気対策にはなり得ません。
我々は、現在の深刻な不況を
考えるのであれば、
基本的な
考え方として、昨年と比べても大半の
国民が
減税の恩恵を受け、消費刺激につながる施策を
実施すべきと
考えます。当面の
景気刺激策として、何らかの形で
税負担がふえる
部分を埋め合わせる
措置を
導入すべきであると強く
主張をいたします。(
拍手)
私どもは、昨
年分の
特別減税よりも
負担増になる所得層に対して、
所得税で本人二万円、
扶養家族各一万円、
住民税で本人一万円、
扶養家族各五千円の戻し税を
導入することを提案しております。
また、今回、十六歳未満の
扶養控除額が引き上げられる案になっておりますが、
扶養控除の増額では、既に
課税最低限以下の所得の世帯では全く受益がありません。また、所得により
減税の受益額が変わってくること等を
考えると、今後の子育て支援のためには、
所得控除で対応するよりも、むしろ支給面で対応すべきと
考えます。
私どもは、十六歳未満の
扶養控除を廃止し、かわって、ゼロ歳から十六歳未満の
子供に、第一子、第二子で月額一万円、第三子以降で月額二万円の児童手当の抜本的な
拡充を提案しております。
以上申し上げたような
税負担増の埋め合わせ
措置がとられなければ、今回の
減税法案には到底賛成できるものではありません。
総理並びに
大蔵大臣の前向きな
答弁を期待いたします。(
拍手)
なお、私どもの強い
主張により
実現した地域振興券につきましては、消費
回復の呼び水としての期待が日増しに高まっております。悲観的論調が多い中で、これほどさわやかな話題を呼び、また
国民の消費マインドを高めたということからしても、その効果ははかり知れません。今後の
状況により、地域振興券をさらに追加的に
実施することを
検討すべきであると
考えますが、
総理の見解をお伺いします。
次に、
住宅税制について伺います。
今般の
税制改正で
住宅ローン減税が大幅に
拡充されていることについては、一定の評価をいたします。しかし、
住宅についていえば、バブル期にマイホームを購入した多くの方が、資産価値が下落する一方で、所得が伸びず、ローン地獄に苦しんでいる
実態を無視するわけにはいきません。私は、既に
住宅ローンを組み、返済に苦しんでおられる方々に対して、買いかえだけではなく、売り切りの場合の譲渡損失についても何らかの
税制上の
措置を講ずべきであると
考えます。
小渕内閣が
生活空間倍増という政策目標を掲げられているのであれば、当然前向きの
検討がなされると
考えますが、
総理並びに
大蔵大臣の
答弁を求めます。
国民生活に密着した
税制改正として、医療費
控除制度の
拡充を求めます。
現在、
所得税の医療費
控除は上限が二百万円でありますが、特に難病患者の医療費負担には極めて重いものがあります。例えば、人工呼吸器を装着して自宅で闘病しておられるALSの患者の方の場合、介護費用を
中心とする医療費は、月当たり五十万円から七十万円、年額では六百万円を超える重い負担となっております。医療費
控除は、昭和五十年に引き上げられて以来、据え置かれており、この間の物価上昇等を
考えるだけでも、十分に引き上げの妥当性はあると
考えます。
総理並びに
大蔵大臣の積極的な
答弁を期待いたします。
税制改正による
減税の財源は、赤字国債であります。今日の深刻な不況を脱するため、
経済再生なくして財政再建なしとの認識に立つならば、当面の
措置としてはやむを得ないと
考えます。しかしながら、三十一兆円に上る大量の国債が明らかになり、長期金利は急上昇し、その結果、
住宅金利の上昇を招く、企業収益を圧迫するなど、
減税効果を相殺しかねない皮肉な
状況があらわれております。
大蔵省が公表した中期財政試算によっても、一定の
経済成長によって税収はふえても、膨大な国債の金利がそれを上回ることから、結果として、
経済成長率が高まっても
公債の新規
発行額は減らないということになっております。これらを見るにつけ、私は、ある
意味において、国債に依存した
景気刺激策そのものに限界があらわれているのであり、本格的な
構造改革が待ったなしに迫られているという認識を強く持つものであります。
最後に
総理の見解をお伺いして、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣小渕恵三君
登壇〕