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1999-08-03 第145回国会 衆議院 法務委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年八月三日(火曜日)     午前九時三十一分開議   出席委員    委員長 杉浦 正健君    理事 橘 康太郎君 理事 八代 英太君    理事 山本 幸三君 理事 山本 有二君    理事 坂上 富男君 理事 日野 市朗君    理事 上田  勇君 理事 達増 拓也君       岩永 峯一君    大石 秀政君       加藤 卓二君    河村 建夫君       小杉  隆君    左藤  恵君       笹川  堯君    菅  義偉君       西田  司君    保岡 興治君       枝野 幸男君    佐々木秀典君       福岡 宗也君    漆原 良夫君       安倍 基雄君    木島日出夫君       保坂 展人君  委員外出席者         参考人         (財団法人国際         研修協力機構参         事)      黒木 忠正君         参考人         (弁護士)   床井  茂君         参考人         (指紋カードを         なくせ一九九〇         年協議会)   朴  容福君         参考人         (株式会社香科         舎代表)    辛  淑玉君         参考人         (関東学院大学         大学院教授)  萩野 芳夫君         参考人         (財団法人入管         協会専務理事) 下野 博司君         参考人         (大阪薫英女子         短期大学講師) 森木 和美君         参考人         (移住労働者と         連帯する全国ネ         ットワーク共同         代表)     渡辺 英俊君         法務委員会専門         員       井上 隆久君 委員の異動 八月三日         辞任         補欠選任   加藤 紘一君     岩永 峯一君   渡辺 喜美君     大石 秀政君 同日         辞任         補欠選任   岩永 峯一君     加藤 紘一君   大石 秀政君     渡辺 喜美君 本日の会議に付した案件  外国人登録法の一部を改正する法律案内閣提出第七九号)(参議院送付)  出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案内閣提出第八〇号)(参議院送付)     午前九時三十一分開議      ————◇—————
  2. 杉浦正健

    杉浦委員長 これより会議を開きます。  内閣提出参議院送付外国人登録法の一部を改正する法律案及び出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。  本日は、両案審査のため、まず午前は、外国人登録法の一部を改正する法律案中心に、参考人として財団法人国際研修協力機構参事黒木忠正君、弁護士床井茂君、指紋カードをなくせ一九九〇年協議会朴容福君、株式会社香科舎代表辛淑玉さん、以上四名の方々に御出席いただいております。  この際、参考人各位委員会代表して一言ごあいさつを申し上げます。  参考人各位には、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、審査参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いをいたします。  次に、議事の順序について申し上げます。  黒木参考人床井参考人朴参考人辛参考人の順に、各十五分程度意見をお述べいただき、その後、委員質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。  なお、念のため申し上げますが、発言の際は委員長の許可を得ることになっております。また、参考人委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと存じます。  それでは、まず黒木参考人にお願いいたします。
  3. 黒木忠正

    黒木参考人 黒木でございます。  外国人登録法改正案につきまして、意見を申し述べさせていただきます。  まず最初に、外国人登録を取り巻く状況でございますけれども外国人登録制度始まりました昭和二十二年から昭和五十六年までの三十四年間に、外国人登録者数は六十万から八十万人ぐらいの数で推移しておりました。それが、国際化が進んだ中で、昭和五十七年から平成元年までの七年間に、この数が八十万から百万というふうにふえております。さらに、平成元年から平成九年までの八年間に、この数は百万から百四十八万というふうにふえております。  また、日本に戦前から居住する朝鮮半島出身の方、台湾出身の方、現在特別永住ということで日本に在留しておられますけれども、この数、戦後ずっと六十万ぐらいの数で推移してきておったわけでありますけれども平成四年には五十九万余りということで、全登録人員の四六%を占めていたわけであります。それが、平成九年の統計を見てみますと、五十四万三千余りということで、全登録人員がふえた、そしてこのような特別永住者が減ったということがありまして、全体に占める比率は約三六・六%というのが現状でございます。  これは、先ほど申しましたように、国際化が進む中で、新しく日本に来る外国人の方がふえているということ、このようなニューカマーの著しい増加ということは、今後我が国で外国人がさらにふえていくであろうという中で、居住関係身分関係を明らかにすることを目的としている外国人登録法というのは、今後も一層重要性を帯びてくるだろうというふうに考えております。  このような中で、このたび外国人登録法改正案が提出されているわけでございますけれども昭和二十七年に指紋制度が導入されまして今日まで来ているわけでありますけれども、この二十七年当時の外国人登録正確性を維持するために指紋制度が導入されて、それなりの効果といいますか、役割を果たしてきたわけでありますけれども、このたび、正確性を維持しつつ、なおかつ指紋制度廃止するという、非常に思い切ったといいますか、画期的な改正が行われるということにつきましては、私は大変これを評価いたしたいというふうに思います。  それから、次に、登録原票管理に関する規定の新設ということが行われておりますけれども、従来、登録原票がいいかげんに扱われていたということではなくて、それなりの慣行とか条理によって管理が行われてきているわけでありますけれども、これをはっきり法律に明示するということは、一方では情報公開の見地から、またプライバシー保護の面からも大変結構なことではないかというふうに思っております。  それから、永住者特別永住者に関する登録事項を削減する件と、確認申請が従来最長五年であったものを、永住者特別永住者に限って七年にするという改正が行われようとしておりますけれども、これも結構なことではないかというふうに思っております。  それから、代理申請範囲拡大措置ということでありますが、外国人登録制度におきましては、登録証明書の交付、受領ということもあります。必ず本人出頭原則になっているものを一部について緩和するということは、規制緩和のこの時代にあって、これも適正なことではないかというふうに考えております。  それから、登録証明書携帯と、この携帯義務違反者に対する罰則についてであります。  国際化の進展に伴いまして、ニューカマーといいますか、日本に新しくやってこられる外国人は今後もさらに増加すると思われます。こういった中で、外国人身分関係居住関係を即時的に把握するという役割を持っている登録証明書携帯制度というものは、これは必要なものであろうというふうに考えております。その必要性というのは、国際化が進むに従って、減るのではなくて、むしろふえていくのではないかというふうに考えております。  そういった中で、特別永住者に限りましては、従来の罰金刑過料に改めるという改正は、先ほど申しましたように、日本におります外国人の中で特別永住者が全体の三六%を占めているということで、そういった方々立場から見たら、これはそれなり措置ではないかというふうに考えております。  それから、今度の改正事項ではない問題について一言、私の希望を述べさせていただきたいと思います。  外国人登録法と申しますのは、制定以来たび重なる改正が行われておりまして、また、外国人登録というのが機関委任事務になっているということもございまして、非常に細かい規定がたくさん入っております。改正が何遍か行われていることのほかに、今申しましたような手続的な面で細かい規定が入っているために、法律がわかりにくくなっているといいますか、日本に来た外国人については外国人登録をしてもらわらなきゃならない、また守ってもらわなきゃならない幾つかの手続規定があるわけでございますけれども、何をすればいいのか、何を守らなきゃならないのかというのが、読んだだけではすっと頭に入らない非常に難しい法律になっていると思うのです。  今後ますますたくさんの外国人日本に来て外国人登録をしていただくわけでありますから、そのような外国人の方にもわかりやすい書き方といいますか、これは今すぐ改正というのは大変難しいわけでありますけれども、将来、全面的な改正見直しが行われる際には、ぜひわかりやすい法律にしていただくようなことをお考えいただきたいというふうに思います。  最初に私から申し上げたいことは以上でございます。
  4. 杉浦正健

    杉浦委員長 ありがとうございました。  次に、床井参考人にお願いいたします。
  5. 床井茂

    床井参考人 床井でございます。  この猛暑の中で、衆議院法務委員会委員長を初めとしまして、委員会先生方在日外国人人権状況を改善するために傾けられている努力に対して、心からまず敬意を表したいと思います。と同時に、本日、審議中の外国人登録法一部改正案について意見を述べる機会を与えていただいたことについて、感謝申し上げたいと思います。  私は、一九六七年、昭和四十二年、弁護士登録をいたしました。以来、約三十二年にわたりまして、在日韓国朝鮮人中心にしました在日外国人人権運動にかかわりを持ってまいりました。こういった問題意識から、外国人登録法は抜本的に改正されなければならないんだというふうに主張し、行動してまいったつもりでございます。在日外国人権利保障の問題、これはその国民人権状況を映す鏡である。その意味で、今国会における本法案の審議は、在日外国人権利擁護という観点からのみならず、さらに我々日本人権利擁護という観点からも極めて重大な問題点を含むものだというふうに考えております。  そこで、本国会に提出されている改正案につきまして、さらに踏み込んで、外国人登録法の抜本的な改正ということを諸先生方でお考えいただければ幸いだということで意見を申し上げたいというふうに考えるわけでございます。もちろん、その抜本的な改正という意味は、在日外国人管理対象としない、あるいはまた外国人登録証明書携帯提示義務廃止する、法違反に対する刑罰制度廃止など多方面にわたりますけれども、簡単にその指摘だけにとどめさせていただきたいと思います。  現在、外国人登録法一部改正案の中では、私が申し上げるまでもございませんけれども、非常に大きな五つの柱を掲げてございます。  この中では、我々が常に運動してまいりました指紋押捺廃止ということについても取り上げられているわけでございます。さらにまた、政府提出の一部改正案を先議した参議院法務委員会では、同改正案で、特別永住者に、登録証の常時携帯義務違反旅券携帯義務違反に対する罰則を、刑事罰から過料行政罰に改めた修正の上で可決されたということでございまして、以上の点、改正案について、私どもが従来から主張しているところでございますので賛成でございます。  ただ残念ながら、登録証提示義務違反については、刑事罰制度改正案は提出されませんでした。本来、提示携帯というものはワンセットであるべきでございまして、常時携帯行政罰になったところで、登録証の不提示が従来どおり刑事罰対象にされている。いつも提示のために登録証を持って歩く不便と苦痛はそのまま続くのであります。したがって、私は、この提示義務違反についても刑事罰から外すよう、改正を強く求めるものであります。  平成四年、外国人登録法の一部改正がなされました。私も参議院法務委員会参考人として出席させていただきました。その際にも申し上げたわけでございますけれども先生方のお手元の資料にありますとおりに、その際、参議院衆議院において、それぞれ法務委員会において附帯決議がなされました。その附帯決議の精神がこの改正案に本当にそのまま盛り込まれているかどうかについては、私は疑問とせざるを得ないのでございます。  指紋押捺制度の全廃については、これはそもそも、指紋押捺制度それ自体が国際的に見ても芳しいものではなかったわけでございます。政府提出資料によりましても、先進国ではアメリカのみということになっております。  実は今、私の家庭で、オーストラリアから来ておる高校交換留学生、十六歳でございますけれども、短期間預かっております。その子が私に言いました。市役所に行きましたときに指紋押捺をさせられた。フィンガープリンティングですね。それが非常に嫌だった。自分が何となく犯罪人扱いにされた気持ちであった。そのことを他の留学生に聞いたところが同じようなことを言っていた。つまり、来日早々の十六歳の少女ですけれども少女にそういう、自分犯罪人なのかもしれないんだなというふうな懸念を与えるということ自体が、本当に国際交流の面から見て好ましいことなのでしょうか。また、市役所担当官の態度も極めて悪かったというふうに聞いております。  そういうことが現実今まで行われてきたということ自体は反省しなければならないと同時に、この指紋制度が、少なくとも今回において廃止されるということ自体については私は大賛成でございます。ただ、問題なのは、参議院法務委員会附帯決議中、第六項「指紋原紙については、これを速やかに廃棄すること。」となっております。これはどうなっているのでしょうか。既に指紋押捺をしている在日外国人は、今さら廃止されても、指紋が残っているという限りにおいては、その苦痛は消えないのだというふうに思います。  それから、一番私どもが問題としておりますところの、登録証携帯提示義務の問題でございます。  日本人は何らかの証明書を持って歩くということはございません。行政当局にとって、すべての者が何らかの証明書を持って歩く、携帯するということは、管理に極めて至便であるということは言うまでもありません。しかし、人権の尊重ということは、ある意味では、行政当局を含めて我々自身が不便を感ずるところにあるのではないのでしょうか。  外国人登録法目的を見ますと、外国人登録法は、公正なという形容詞がありますけれども在日外国人管理するという目的があります。これは、英文で見ますと、外国人エイリアンという表現をしております。エイリアンをコントロールする法律外国人登録法であるということを御認識いただきたい。人権擁護観点からするときに、在日外国人をコントロールするという考え方、これは根本的に改める時期に来ているのではないでしょうか。つまり、外国人を我々の隣人、友人と見て相互に交際を続けていく、そういう観点に立った法律であるべきではないのかというふうに私は思います。  このコントロールの最たるものが、登録証の常時携帯義務であるということになります。大阪高裁の一九八八年四月、これは、自宅を出る際に外国人登録証が見つからずに、授業時間との関係で不携帯のまま外出し、受講後に自宅から一時間の距離で電柱にビラ張りをしていて逮捕されたケースがございます。大阪高裁は、このケースに関しまして、罰則を科するだけの実質的違法性がないということで無罪の判決を言い渡しました。特別永住者以外の在日外国人にとって、刑事罰がある限り、外国人登録証携帯していなければ逮捕されるという危険性は、この改正案が通っても存するのであります。  国際人権規約自由権規約でございますけれども、この関係においても、携帯義務に関しましては、日本政府に対して二度ほど勧告がなされました。  それは、一九九三年の十月、第三回日本政府報告書に対して、次のようなコメントを採択しております。常時携帯というものは人権規約に反すると。さらに、第四回報告書については、日本政府は抜本的な見直しについて検討中であるというふうにされましたけれども、昨年の十一月六日、日本政府報告書に対する最終見解の中で同じように、委員会は、政府報告書の第三回報告書審査最後に示された、外国人登録証明書を常時携帯していない外国人刑罰対象とし、刑事制裁を課している外国人登録法人権規約二十六条に適合していないというコメントを繰り返す。委員会は、このような差別的な法律廃止するよう再度勧告すると、人権規約委員会日本政府に対して二度にわたって勧告を出したわけでございます。  この勧告が今度の改正案に盛り込まれたということについては賛意を表しますけれども在日韓国朝鮮人は今や五世の世代も生まれている。戦後の半世紀の中での生活基盤を築いている。社会の中で少なからぬ貢献をなしている。そういった在日韓国朝鮮人に対して、日本人と異なる差別待遇をするということ、つまり登録証携帯提示義務を求めるということは、いかなる合理性もないと私は考えております。  時間もございませんので進めますけれども、さらに、罪と罰との均衡の問題もございます。外国人登録法違反の問題については、一年以下の懲役または二十万円以下の罰金ということ、つまり登録申請を怠ったということにおいて一年以下の懲役または二十万円以下の罰金を科せられるという意味で、罪と罰とが非常に不均衡ではないかというふうに考えております。  さらにまた、非常に多くの項目外国人登録をさせられるという点。今度は二十項目から二つ減りまして十八になりますけれども、それでも私は多過ぎると思います。  それから最後に、十六歳以上の外国人に対して登録義務を課しているという問題でございます。先ほど申し上げましたように、十六歳の女の子が市役所に行きまして指紋原紙押捺させられたということについて非常にショックを受けたという話を申し上げましたけれども、十六歳といえば高校一年生です、少なくともこれは高校卒業程度、つまり十八歳以上に登録義務というものを変更すべきではないかというふうに考えております。  最後に、我々が考えていることは、世界人権宣言を条約化したところの人権規約日本で効力を発生して二十年になります。内外人平等、一切の差別禁止、法の前の平等の原則をうたった国際人権法、こういった点から照らして、外国人登録法の抜本的な改正を私は求めたいというふうに考えております。  そういう意味で、この衆議院委員会でさらに進んで根本的な見直しをいただきたい、登録法を抜本的に改正していただきたい。これは、二十世紀日本が刻み込んだ加害の歴史を二十一世紀に持ち越すことがあってはならないという意味においても、今国会において抜本的な改正をお願いしたいと切望する次第でございます。  ありがとうございました。(拍手)
  6. 杉浦正健

    杉浦委員長 ありがとうございました。  次に、朴参考人にお願いいたします。
  7. 朴容福

    朴参考人 皆さん、初めまして。朴容福といいます。  まず、このような発言の場を得られたことを皆さんに感謝申し上げます。  私は一九八四年以来、十六年近くになりますが、指紋押捺拒否者として外国人登録の問題に参加して、かかわり続けてまいりました。十六年間、その長い闘いの道のりの中で、私が見てきた在日朝鮮人在日韓国人在日中国人在日外国人、彼らがどのような思いを抱きながら生きているか、どういう体験をこの日本の国の中でしているか、私はそれをつぶさに見てきました。ですから、きょう、この場では、外国人登録法の細かな内容というよりは、彼らがどういう思いでこの国で生きているか、その心情、体験、そして願望の一端というふうなものをできるだけお話ししたいというふうに思います。  私は在日朝鮮人の三世です。国籍韓国になります。私の祖父母が一九一八年二月に日本に参りました。それ以来の在日生活ということになりますので、親子四代で約八十年近く在日を行っているということになります。  そういう私たち在日朝鮮人に対してよく言われる言葉、使われる言葉ですけれども歴史的な背景を持つ在日朝鮮人歴史的な背景を持つ存在、そういう言われ方があります。確かに、祖父母歴史をひもとけば、歴史的な背景というものがある、それは全くそのとおり。ですから、その結果として私たちが生まれたというふうに思えば、私たち歴史的な背景を持つ存在というふうに言えるかもしれません。でも、私自身はどうもその言葉自分の身にどこかそぐわない感じがあるのです。  それは、私がこの国で生まれた三世だという、そこから由来しているものだと思いますが、確かに朝鮮日本歴史的な関係の結果としてこの国の中で生まれてきた、それは事実であったとしても、今や在日五世の時代が始まっている。その五世にとってみれば、あるいは四世、三世にとってみれば、おまえは歴史的な背景を持つ存在だと言われるよりは、実際のところは、生まれてみたら朝鮮人だった、生まれてみたら韓国人だった、生まれてみたら中国人だった、生まれてみたら日本国籍を持たない存在だった、そういうところから人生が始まる、そういうものだったわけです。人間だれだって、自分が好んで朝鮮人として生まれたい、選んで生まれるわけはないのです。生まれてみたらたまたまそうだった、人生始まりというのはそんなものではないですか。  でも、その始まりというのは、私たちにとってみればやはり決定的な意味を持っていました。何しろ、生まれてみたら、日本国籍を持たないということで、日本国民が持っているいろいろな権利、あらゆる基本的な権利、そういうふうなものが全く剥奪されて、ない状態で生まれて、この国で生きなくてはならないというふうに運命づけられてしまったんです。これはすごいことですよ。生まれたときには何もない状態なんですもの。そうやっておまえは、ないままに生まれて、生きて、死ぬ生涯を送れ、そういうふうに決定づけられて存在する六十万人の人間がいるということを少し考えてもらいたい。全く不条理だというふうに思います。  それに加えて、外国人登録法あるいは入管法あるいはさまざまな国籍条項、そういう制度的な排除の枠組みというふうなものがいや応なく襲いかかってきます。社会に一たん出てしまえば、朝鮮人だから、韓国人だから、中国人だからといういろいろな差別とか偏見とかがまた自分の身にかぶさってきます。そういった中で生きていこうと思えば、自分朝鮮人じゃないんだ、自分韓国人なんかじゃない、中国人じゃない、そうやって自分の身を、自分の正体を隠さなければ生きていけない、生きていけなかったです。  それで、私たち時代であれば十四歳、今の時代であれば十六歳になったら突然市役所から呼び出しが来る。ある日はがきが来て、来なさい。これが運命の一瞬ですね。役所に呼び出されて外国人登録を強いられるということになります。  私たち指紋押捺拒否闘いをやっていた一九八四、五年のころというのは、外国人登録法というのは非常に厳しい管理法でした。毎年、二千人も三千人もいつも日常的に逮捕されている。累計すれば五十万人の人間外国人登録法の犠牲になってきた。それも、実に取るに足らない理由でですよ。たまたま持っていなかったとか。  やはり日常的に非常に抑圧でした。耐えがたかったです。だから、私らの気持ちの中で、自分朝鮮人であることを隠して生きたい。あるいは、運悪くたばこ屋の角で、スーパーの角で警官に遭遇して、そこで、おい、こらと呼びとめられて、登録証はというふうに言われたときに、ひょっとしたらそのまま自分は拘束されて送還されてしまうんじゃないか、そういうおそれをいつも持っていました。それは杞憂であったかもしれませんよ。杞憂であったかもしれないけれども自分はこの国で生まれて、ひょっとしたら何かの拍子にこの国から追い出されるかもしれないというふうに思い込んでしまった我らが愚かですか。愚かであったとしても、そういう心情が身についてしまったじゃないですか。  だから、私たちはそういうおびえをいつも、いや、在日で生きているみんなそうであろう、そういうおびえをどこか心の中にいつも抱きながら暮らしています。それは今でもやはり変わりません。ですから、そういうおびえから解放されたい、もっと自由に生きたい、普通に暮らしたい、そういう思いがありましたから、私たち指紋押捺を拒否しました。それは私たちのぎりぎりの抵抗です。  しかし、抵抗であったとしてもそれは法を犯す行為ですから、私たち法違反者でしょう。法違反者でしたから、違反者は制裁が下されなくちゃならぬ、それはそうでしょう。しかし、法務省の皆さんに聞きたいけれども、どうして指紋を拒否した人間に対してあんなにひどい制裁をやらなくちゃならなかったんですか。確かに、悪法といえどもやはり法です、守らなくちゃならぬだろう。でも、私たち法違反者として行ったことというのは一体何であったか。  私たち市役所に行って、市役所の職員が、このようなカウンターがあって、そこの前で指紋を押せと私たちに命令します。そのとき、私たちはぶるぶる震えながら嫌ですと一言言いました。しかし、嫌ですというふうに私たちが言った途端に、役所は私たちを告発しました。警察が身辺を徘回し始める。いろいろなところで監視が始まる。警察が勤め先までやってくる。それでまた、運悪くたまたまそれが新聞のニュースか何かになったら、脅迫状がどっと来るんです。朝鮮人を殺せ、朝鮮人を追い出せ、そんな脅迫状ばかりです。女の子の拒否者に対しては、SMの緊縛写真を入れて、かみそりを入れて送ってきたんですよ。朝鮮人はこの国から出ていけ、そんな脅迫状がどっとやってくる。  警察は拒否者を逮捕しました。法違反者ですから、警察はやはり警察のメンツがあるんでしょう。小部屋の中に拒否者を連れていって、五人がかりで指紋をとるんです。小さい部屋の中で、一人が首を押さえるんです。二人が手を握るんです。一人が机を壁際に押しつけて固定してしまうんです。そこにもう一人やってきて、警察の指紋の何か書類があるんでしょう、それに無理やりやるんですよ。警察は威信をかけてそうやって拒否者の指紋をとりました。それも仕事なんでしょう、きっと。でも、それほどのことをやることなのか。  それに、なおかつ行政罰がありました。指紋押捺拒否は重罪だ、一年以下の懲役だ、二十万円以下の罰金だ。だから再入国は不許可だ、在留も不許可だ。  そういうようなことがすべて、私たちが役所で嫌ですと言った、その一言に対する報復だったんです。十六歳の少年の嫌だに対する報復だったんです。在日を何十年も生きてきた人間の一声に対する、嫌だに対する報復だったんですよ。でも、そのことは一応いいです。いいですよ、覚悟して私たちはやったんだから。でも——済みません。  朝鮮人は声がでかいです。何でかわかりますか。声を大きく言わなきゃ相手に伝わらないですもの。自分が言いたいことが、システムとして完備もされていないから、どうしても大声を出さざるを得ないですよ。ちょっと、私も今声がでかくて皆さん非常に迷惑かもしれませんけれども。声を上げなくちゃ相手に伝わらないから、だから私たちは声がでかいです。もともと、生まれつき声がでかいわけじゃないですよ。実は、情緒的ではあるけれども、もう少し穏やかな民族だったわけです。そういう声のでかい集団というのは、和をたっとぶ社会の中ではすごく厄介な存在だと思います。私自身、同胞を見て、厄介だなと思うことが多々ありますので。  でも、私らが非常にふできな子供であったとしても、このふできな子供というのはどうやって生まれてきたんですか。日本の国の中で日本国籍を持たない集団として日本国家が生み出したものですよ。そこのところを考えてほしいんですね。  私たち在日外国人というふうに言いますけれども在日外国人という言い方は正しくはないです。日本国籍を持たない人間として日本国で誕生して暮らしている、そういう集団が在日朝鮮人ですよ。在日朝鮮人韓国の影、北朝鮮の影として見ないでください。  朝鮮人のつらさというのは、制度的な壁がある、社会的な抑圧がある、なおかつ、韓国とか北朝鮮との間にトラブルがあった場合に、例えば朝鮮学校のチマ・チョゴリの女生徒がチマ・チョゴリを切られるように、真っ先にその報復が及んでくる。そういう三つの苦しみを負わなくちゃならないというのが在日朝鮮人ですよ。一つは制度的な差別、一つは社会的な差別、一つは国家間のトラブルの犠牲のように、これを真っ先に背負って生きなくちゃならぬのが我々在日朝鮮人じゃないですか。  その在日朝鮮人は、この国で日本国籍を持たない存在として生み出されたんでしょう。ふできであったとしても、生み出した親としての責任というものがないですか。我々に対して、嫌いな子供であったとしても、そういう子供を生み出したんでしょう、生み出したんだったら、ちゃんと面倒を見てくださいよ。  私が知る限り、そういうふできな私ら、厄介な私らに対して、では、厄介ではある、ふできではあるけれどもこういうふうな形で彼らとつき合っていこうということで、法務省が、日本国政府が何かの在日朝鮮人政策を行った、積極的につくっていった、我らが自由に生きるための政策をつくってきたというのは一回もないです。我々が声を上げてほんの少し手直しされる、声を上げてほんの少し手直しされる、こんなことの繰り返しですよ。これが政治ですか、こんなものが。  私たちが声を上げて、結果、ほんの少し手直しをするというだけのことだったら、政治は要らないじゃないですか。日本人は賢明な民族なんでしょう。英知を持つ民族なんでしょう。なぜ在日朝鮮人のこの問題一つがいまだに残ってきて、いまだにくすぶり続けて、今後もまたくすぶり続けるんですか。意思を持てば解決できるはずです。  そういう姿勢みたいなものに対して国連の人権委員会は、是正せよというふうに勧告を出しております。でも、きょう傍聴席にいろいろな人がおりますけれども、あえて皆さんを裏切るようなことを私は言いますけれども、国連の人権委員会日本政府に是正せよというふうに勧告した結果、日本政府が何かを変えたって、私は全然うれしくないです、そんなものは。何が国連ですか。何が人権委員会ですか。何がわかりますか。彼らの外圧によって変わったとしても、何一つ私はうれしくはないです。  そんなことよりは、皆さんの意思で、新しい関係をつくるんだ、その意思を持って変えてくださいよ。人権委員会なんかに何か言われて、結果、少し変えるなんて、そういう愚行を犯さないで、あなた方が変えてください。いきなりどんと変わるとは思わないです。でも、ほんの少しでもいい、変えてください。  きょう、十六歳の少年が二人来ています。彼らに、少しはこれから時代は変わっていくんだ、少しはもっと生きやすくなるんだ、そういう希望みたいなものを与えてください。それが私たちの願望なんですよ。  常時携帯が二十万の罰金から十万の過料になる、こんなことをやっていても、また国連の人権委員会から何かきっと言われますよ。こんな愚行はもうやめましょうよ。はっきりと変えるんだという意思を持って、自分たちのビジョンを我々に対して出してください。そこから新しい関係を築いていく、それが私たちの願望です。  ありがとうございました。(拍手)
  8. 杉浦正健

    杉浦委員長 ありがとうございました。  次に、辛参考人にお願いいたします。
  9. 辛淑玉

    辛参考人 初めまして。辛淑玉と申します。  東京生まれ、東京育ち、三代続いた江戸っ子でございます。大分早い時代から日本におりましたので、約百年近くこの国で生息いたしております。  ここに呼んでいただいて、本当にありがとうございます。来た瞬間から、何とおもしろいところだと思いまして、寝ている人はいるわ、ほかの仕事をしている人はいるわ、お話ししているのはいるわ、遅刻するのはいるわ、出たり入ったりするのはいるわ、これはもう学級崩壊そのものだなと思いまして、子供はこういうことを見てまねしているんじゃないかなと思います。めったに来られないところに来させていただきまして、二度と来ないと思いますが、一応私の手元に皆さんの座席表がありますから、態度の悪い人はちゃんと覚えておこうかなと思って、ちょっとここに置かせていただきましょう。  きょうは、入管法とかいろいろな形で呼ばれましたけれども、私は専門的なことはわかりませんので、個人的な話をさせていただきます。  せんだって、東京都の主催する人権の講演会がありました。もちろんそれで私が呼ばれたんですけれども、呼ばれていろいろな告知が出ましたら、そのときにいろいろ東京都の方に抗議の電話がありました。それは、クレームと言った方がいいんでしょうか、もしくはおろせということとかあいつは気に入らないとか。昔、私、自分がテレビに出たときにさんざん抗議が来て、朝鮮人というのは何て嫌われているんだろうと思った瞬間に、私の友人は、違うんだよ、朝鮮人じゃなくておまえが嫌われているんだよと言われましたが、そういうこともあるかもしれません。  そんな形で、抗議が来まして、東京都の担当者の方がとても心配して来てくれたんですね。辛さん、いろいろなことがあるんですがと言われたんですが、しょっちゅうありますから、そんな一回や二回や三回で、そんなことで気にしていたらしようがないので、大丈夫ですよと言いました。当日になりましたら今度は、独立義勇軍とかなんとかという右翼を名乗る人たちからまた、刺客を送り込んだとか爆弾を仕掛けた、いろいろなことが来たものですから、東京都の方が慌ててしまいまして、当日になって警察を呼んだんですね。物すごい数が来たんですよ。  私は最初知らなかったんですね。そうしたら、担当者の方が私のそばに来て、辛さん、警察を呼びましたからもう大丈夫ですと言うんですね。その瞬間、私は思わず自分の持っていたバッグの中にさっと手を入れて、外人登録証を持ってきたかなと思って、こんなので、本当に右翼なんかが来てくれなかったら私が捕まえられてしまうとか思って……。わかっていないんですね。私はいつも外人登録証明書を持っているんですけれども、持っていても、警察が来たと聞いた瞬間にぱっと思わず手を入れて、これでもし私が忘れていたら、捕まるのは右翼じゃなくて私だろう、気のきかないやつだと思いながら、その日は無事に講演会は終了いたしました。  私は警察は好きでした。というか、お巡りさんは好きでした。子供のころからよく交番にはお世話になっておりまして、迷子になって行きますとちゃんとお菓子をくれるんですね。うちは余り食べ物がなかったものですから、交番に行って御飯を食べるというのが日課になっておりまして、毎回同じ交番に行っていますとばれるものですから、あっちこっちの交番に行きました。  そうしたら、一度本当に迷子になってしまいまして、迷子になった瞬間にうちの親が呼ばれるわけですね。ちょっと迷子になるのは恥ずかしいなと思って、親が来た瞬間に、ひとりで大丈夫よ、おトイレに入れるとか言ってトイレに入ったんですね。そのまま肥だめに落ちてしまいまして、それをお巡りさんたちが必死になって拾ってくれるわけですね。井戸でさんざん体を洗われまして、うちの母は、とんでもない餓鬼だと思いながら全くおまえはとか言ったんですが、そのときの肥だめから拾ってくれたお巡りさんたちは、どんなに臭くても手を引いてくれました。  それから、それが癖になってまた交番めぐりをするんですね。私は渋谷区笹塚というところでとれまして、当時は周りに朝鮮人はほとんどいませんでした。もちろん私も日本の名前で生活していましたので、また来たと思っても、お巡りさんが肩にしょってくれて、だっこというのかな、だっこしてくれるんですね。そうして、迷子だといいながら右だ左だと子供が言うと、お巡りさんがそうかそうかと言うんです。  私は父に抱かれたという記億はありません。一緒に遊んだということもなければ父親が抱いてくれたということもなかったので、ですから、私はお巡りさんが抱いてくれたときに、子供が抱かれると目線がすごく高くなって視野が広がって、世界が違ってすごく楽しくて、お巡りさんというのは父親みたいな形で、私にとってはとてもすてきな存在だったんですね。  ところが、学校へ行く前になったときに、私の母が代々木警察というところに呼ばれました。呼ばれた理由は簡単です。外人登録証の切りかえが何日間かおくれたんですね。おくれて、呼び出されました。  その前に、私には三つ下の弟がおりまして、この弟が生まれたときには我が家は貧困の絶頂期でございまして、父はどこか行ってしまったというか、よくわからない。マージャン屋かどこかに行っていたんじゃないかと思うのですが、おりませんで、母は入管の手続、子供が生まれて何日以内に手続しなきゃいけないといったものを忘れたんですね。忘れてしまうんですよ、生活していると。  そうすると呼ばれまして、入管に産後の肥立ちの悪い中を行くわけですね。ずっと立たされて並ばせられて、いす一つ出してくれることがなかった。そして、自分の周りにいるほかの朝鮮人の人たちが一世なんですね。字がわかりません。字がわからない人たちに対して人間扱いしない姿を見て、母はおびえるわけですね。  そして、自分の子供を連れて目の前に座った瞬間に、第一声が赤ん坊を送り返すぞと言われたそうです。母はそのときに、生まれたばかりの赤ん坊をどこに送り返すんだろう、どうやって送り返すんだろうと思ったそうなんですね。とても怖かったそうです。  そんな思いがあったので——当時、私の親の登録の手続というのは誕生日ではなかったんですね。ある一定の決められた日にちに来るということでしたから、なかなか覚えていられないんですね。忘れてしまったら今度は警察から呼び出しを食ったもので、母は真っ青になっているんですね。私は警察に母と一緒に行きました。そうしたら、小さな部屋の中に入れられまして、入り口に一人、母の横に一人、目の前に一人。まあ子供ながらにすごいなと思って見ていました。  幾ら母に質問しても、聞いていることは周囲のこと、近所のこと、ほかの同胞のことです。でも、うちの母の家というのは、旗日になると日の丸を掲げて、そして家の中には日本刀が飾ってあるようなうちで育っているわけですね。何を聞かれたって、朝鮮人との関係なんかわからないのですよ。  黙っていましたら、一人私服のおじさんが来るのですね。警察の服を着ていませんでした。そして、そのおじさんが、私の顔を見てミョッサリと聞くのですよ。ミョッサリ、ミョッサリと何度も聞くのですね。私はわからなくて、しかも手にバナナを持っているのですね。当時、バナナというのは、はしかになっても食べられないほど高価な食べ物でして、リンゴのすったものの次に、桃の缶詰の次くらいに出てくる非常に高価なものでして、そのバナナを右手に抱えながら、ミョッサリと言うのですね。  私は何かびっくりしてしまったら、うちの母親が横で、この子はわかりませんよと言ったのですね。そうしたら、その、警察官だと思うんです、今思えば、彼がこういうふうに聞いたのですよ。お母さんて朝鮮語しゃべれるよねと言うのです。日本語も朝鮮語もしゃべれるよねと言うのですね。母は二世なんですよ。ほとんど、全くというほど朝鮮語はわかりません。ところが、私はばかにされていると思ったのですね。私は胸を張って、お母さんは朝鮮語が上手だとかと言ってしまったのですね。それからすごかったですよ、おまえ、娘が言っているだろうというので。やはりこのやりとりは私の心の中に、とんでもないことをしてしまったと思ったのですね。  代々木警察を出たのは、夜の非常に遅くなった時間帯でした。母は、代々木警察の門を出た瞬間にこのばか娘と言って私の頭をぼこすかに殴りました。私は、きっとこのままいったら親を殺すのだろうなと思いました。  その後、いろいろなことがあったのですが、何回か母は自殺をしようとしました。絶望するのですね、生きていくことに。何やかんや言いながら、結局は自殺をしないできょうまで来るわけですけれども。私は、自分日本人の子供であったときの警察官というのは、本当に天使のように優しい人でした。でも、いざ実際に自分朝鮮人だということがわかったときの警察の態度というのは、やはりすごいなと思いましたね。公権力というのは天使の顔もすれば悪魔の顔もするのだろうということがわかりました。  私は、常時携帯義務がなぜ嫌なのかといったら、これは絶えず持っていなければいけないということを強制されるわけですね。人間の生活の中では、ちょっと忘れたり何とかすることがあります。本来、現実の社会の中ではお目こぼしもあるのかもしれない。だけれども、今私は、例えばオウムに対する警察の態度とか捜査のあり方を見ていますと、明らかに何かあったときは同じことをされるだろうと思うわけです。つまり、かつて私が小学校へ上がる前に体験したその怖さというものが変わらずに今も残っている。今、あらゆるところへ出てくる。  もし日本朝鮮半島の関係が何らかの形で悪くなったときに、何でもやるだろうなという恐怖心があるのです。本当にやるかどうかはわかりません。でも、少なくとも私の中ではその恐怖心がとてもあって、お目こぼしの中で許されているというよりかも、そういった毎日の緊張感からやはり解放されたいなというふうに思っています。  私は、教育委員会の仕事を幾つかさせていただいておりますけれども、学校の先生たちの研修をやったことがあります。そのときに、ある校長先生というか、教頭先生ですか、管理職の方が、辛さん、あなたは自分のことを韓国人だと言いました。私は、韓国人と言ったつもりはありません。私は、朝鮮人という言い方をします、韓国籍を持った朝鮮人という言い方をします。そうすると、あなたは日本で生まれ、日本で育って、立派な日本語をしゃべります、あなたはもう本当に日本人そのものです、どうぞ私の胸に入ってきてくださいと校長先生か何かが手を挙げたわけですね。その瞬間に、私は、私の人権研修というのは全く無力だなと思いまして、何にもわかってないな、こいつと思いながら見ていたのですけれども。  つまり、都合のいいときだけ日本人と一緒なんですよ。戦前戦中は皇国臣民として、天皇の赤子として扱って、戦後は、自分たちが気に入らなかったら外国人全部一山幾らにして公的サービスから外しておいて、今度は日本語がしゃべれるからあなたは日本人だとか、三代目だから日本人だと言ったって、周りの環境とか、参政権があるわけでもないし、それからあえて言うならば教育権があるわけでもないし、でも税金だけはちゃんと納めているという、都合のいいところだけは日本人にして、都合が悪くなるとみんな外国人として排除していく。私は、テレビを見ていて、何か事故があると日本人乗客はと言って報道されるたびに、私が事故に遭ったらうちにいる人にはだれも言ってくれないのだろうなと思うわけです。  この間、コンビニエンスストアに強盗が入ったら何と言ったのかといったら、犯人は外国人風と言うのですね。私とあなたが並んだら、どちらが外国人風に見えますか。明らかにあなたの方が南方系でしょう。それと一緒なんですよ。南方系でしょう。かわいらしくて、くりくりとした感じでしょう。だから、そんなのわかるわけないじゃないとかと思うわけですよ。にもかかわらず、そういうことが平気で行われるわけですね。  私は、日本社会の中で同化政策があったかといったら、個人的にはなかったと思っております。同化をさせようと思ったら積極的に権利を与えるでしょう。ないのですよ。この社会は、無視、放置、排除、追放なんですよ。無視して放置しておいて早く死んでくれというのが、恐らくここの国のあり方だったのじゃないかなと思います。  残りあと本当に少なくなりました。ごめんなさい。  ちょっとこちらをごらんいただきましょう。  せんだってこちらの方からいただいた資料の中で、法務省が出した資料がありました。それの中には四十四カ国の国がありまして、その国では全部、常時携帯義務もしくは携帯提示をしなさいといったことを言っておりますということを言ったのですね。そこの部分だけ見ておりますと、まあそんなものかなと思うかもしれないのですが、じゃ、その国は——大丈夫ですか、大切なお電話かもしれませんから。今からいいところだったのですけれども、聞いてくださいますか。ありがとうございます。  ちょっと調べてみました、全部をきちんと調べられたというわけではないのですが。そうすると、居住国の国籍取得、つまり、外国人であったとしてみても、私の場合で言っていますよ、一世のことではなくて。そのときには、例えば、生まれたらそのまますぐその国の国籍をもらえるとか、これは生地主義といいますが、それから、居住地主義、二世、三世には基本的には国籍が与えられる国、あと、二重国籍を容認している国、それから、そういった証明を自分の国の国民にもちゃんとやっているのか。  外国人登録というのは、日本人は、例えば八代さんが八代さんだということを証明するのは非常に難しいわけですよ。今は国会議員でお顔も、今というか昔から有名でしたからそうでしたけれども、隣にいる人とかが、私は辛淑玉と顔も指紋もわかりますけれども、じゃ、あなたが日本人か、田中何とかかといっても、わからないわけですね。でも、国家と個人の関係が内外人平等であるという国がここの一覧です。  それから、提示義務とかそんなものも書きまして、罰則規定もやりました。  それでは、ちょっとこれを取っていきたいと思いますね。そうすると、例えば言われた四十四カ国の国のうち、まず生地主義をだだっと取っていきましょうね。生まれたところのところを取っていってしまうわけですね。アメリカも生地主義です。  一応、植民地を持っていた国々もちょっとやってみました。アメリカは植民地を持っていましたけれども、とりあえず二世、三世には、生まれた人にはちゃんと国籍を与えております。それから、ノルウェー、オーストリア、これもそうですね。それから、二重国籍も全部取得しております。英国も植民地を持っておりましたけれども、英国もイタリアもちゃんと取れますね。ぽんぽん取れていきますね。  それから、フィンランド、スウェーデンとかアイスランドというのは、これはもうほとんど、二重国籍だけではなくて、居住地主義だけではなくて、外人登録証もないというような国でございますね。  それから、ちょっと上の方に行きましょう。そのようにして取っていくと、居住地主義、ここら辺も全部取りましょうね、それから、フランスとかアイルランドとかベルギー、これも全部取れますね。それから、シンガポールも生地主義でございます。パキスタンもそうですね。そして、マレーシアも取れてしまいますね。これをつくるのは結構きのう大変だったのですよ、本当に。それから、タイも生地主義でございます。それから、中国、韓国というのは自国民もすべてちゃんと同じように登録をされますから、これもなし。そうすると、エジプトもそうですね。これも取れていきますね。  それから、こちら、ハンガリー、ブルガリア、ルーマニア、ギリシャとかとありますけれども、これはほとんど状況がわかっていないということなんですね。  こういうふうに見てみると、植民地を持ってやっている国で唯一残ったのはドイツでございます。でも、ドイツは自国民にも課しています。それから、植民地が独立した段階で、既に国籍選択権があるわけです。それから、あるときには法的なルールにのっとれば、権利の帰化があるわけですね。しかも外国人登録なんかないわけですから、これも取れてしまうわけです。  これは提示義務のみをやっていきますと、あとここら辺の国々の条件を見てみますと、例えば非常事態宣言地域であったりしていきます。  こうやって見ていきますと、ほとんど植民地を持った国々は、元植民地だった、例えば私たちのような子孫に対しては、日本と同じようなことをやっているところはないわけですね。血統主義で、そして何世代にもわたって外国人の扱いをして、自国民には何も課さないで、それでいてそれを通しているという国は、ここの日本だけということになります。  このことがいいのか悪いのか、朝鮮人だから特別な扱いをしてくれとは申し上げません。少なくとも朝鮮人に対してこういう扱いをしている国が、これから来る国に対して、これから来る人たちに対して、きちんとした人権を持った扱いをするのかというと、それはないと思うのです。  私はこの国に生まれて、今四十になりました。苦節四十年です。(発言する者あり)大体男は、すぐに若いと言えば褒めていると思うのですね。あなた今……(発言する者あり)セクハラですよね。後できちんと対応したいと思います。委員の研修は必ずうちの会社にいただきたいと思います。自民党からお願いしたいと思います。  私は、四十年間生きてきて、この社会の中で自分が獲得したものは何なのかといったら、民族名です。辛淑玉という民族名です。それからもう一つは、韓国籍という国籍です。何の力にもならない韓国籍という国籍です。それから差別体験です。この三つを持ったときに、もし大人としてやることがあるとしたら何があるのかといったら、それは内外人の平等じゃないかなと思っています。そのときには、朝鮮人とか韓国人とか中国人とかミャンマーとか何も関係なくして、一人の人間が生きていけるだけのきちんとした権利をこの国で、私が住んでいる社会でつくっていくことが私は大人としての仕事だと思っております。  済みません。長くなりました。それでは終わります。(拍手)
  10. 杉浦正健

    杉浦委員長 ありがとうございました。  以上で参考人意見の開陳は終わりました。     —————————————
  11. 杉浦正健

    杉浦委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。八代英太君。
  12. 八代英太

    ○八代委員 参考人の皆様、きょうは早朝から御苦労さまでございます。  いろいろ大変勉強になりますし、また朴さんのように、みずからの体験をお述べいただきまして、大変だったのだなという思いと同時に、あなたの運動が、まだ実りまではいかないだろうけれども少し芽が出始めていく。そういう段階的に、日本の制度というのは一つのバリアを壊していくのには大変な労力と時間がかかるものだなというのを、我々、日本の中で、日本人として私も今日まで生きてきたのですが、ある日突然まさに車いすという新しい人生になったときに、まさに水の冷たさはさわってみなければわからないというのを肌で感じています。私も大勢の韓国の友達がおりますし、それから中国の友達もいるのですけれども、そういう皆さん方からまた、同じ土俵で話をしていくと、しかもそこに在日における障害を持った人たちの問題、しかもその中における女性の障害を持った人たちの問題、段階的に、大変な差別存在というものも、私たち体験をいたしました。  そういうものというのはなかなか、皆さん方がそうして語っていただくことによって我々が学んでいくものでありましょうし、我々自身もまた体験を通じて、私も政治の中に参加したというのは、まさに完全参加と平等とでも申しますか、万人のための二十一世紀をつくりたい、こういう思いの中にいるわけであります。  ちょうどこの外登法の問題も、昨年の八月でしたか、中村法務大臣のところに私参りました。そのときに、私の選挙区、ここで選挙区の話をしてもしようがないんですけれども、北区の区長さんがおられまして、この人が、全国の三千三百の市町村の指紋押捺を担当する連絡協議会のようなものがあって、その会長さんをしておられる。とにかく、指紋押捺などというものはもう時代にそぐわないし、自治体の負担たるものは大変だというようなことを切々と時の法務大臣に語っていただいて、それから我が党も積極的にこういう問題を取り上げる。そしてまた、民団の人とかそういう人たちの話も伺っていく。いろいろな流れの中で各党の皆さん方も共鳴しながら、こういう一つの法律になっていったわけです。  決して十分ではないと思っています。十分ではないと思っていますが、日本は、すべて障害者問題でも何でもそうですが、階段は一気に五段は上らない、こういうところがある、これがいいか悪いかは別ですが。一段ずつ上っていく、そして、その中に少しでも光を見出すようにしていく。そして万人のための二十一世紀を迎えなければならない。そんなことを叫んでいながら、もうすぐ目の前が二十一世紀ですから、ちょっとおくればせというところもないわけではありません。  そこで、外国人登録法の一部改正という形になったわけですが、冒頭、黒木先生は、画期的な評価という形、それから、人権運動を通じて今日まで来られた床井先生は、まだまだ問題点が山積していると。それから、朴さん、辛さんからは、まさに厳しいお言葉をいただいたということですが、全体の法律をどのように評価しているか、四方にちょっとお伺いできればと思いますが、いかがでしょうか。黒木先生から。     〔委員長退席、橘委員長代理着席〕
  13. 黒木忠正

    黒木参考人 先ほど申し上げましたように、ここ二十年来、指紋押捺制度というのが大変問題になってきておりました。この問題を、部分的には緩和措置がとられてきたわけですけれども、今度の改正で全部廃止するというのは、先ほど申し上げましたが、大変画期的なことでありまして、これを人権侵害であるということでいろいろ運動された方々にとっても、一つのとげが取れたのではないかということで評価をいたしております。  総体的に見ましても、ほかの部分でもそれなりの緩和措置が講ぜられておりまして、ただ、先ほど申し上げましたように、登録制度というのは特別永住者が全体の三六・六%ということでありますので、残りの外国人もほかの外国人の方もいるということをぜひ御認識をいただいて、制度の整備をしていただきたいというふうに思っております。
  14. 床井茂

    床井参考人 先ほども申し上げましたように、この外国人登録法、これは昭和二十二年に外国人登録令、勅令という形で出てまいりました。その当時の九九%以上の外国人在日朝鮮人であった。つまり、この法律の発足そのものが在日朝鮮人取締法として発足したという歴史的な経過があるということをまず御認識いただきたいことが一つでございます。  二番目に、先ほども申し上げましたように、この外国人登録法というものは、基本的に外国人管理する法律である。その目的の中に、第一条の中にうたっております。やはり日本人外国人管理するという考え方、これはどうなんでしょうか。この現代社会の中、国際社会の中において相互に信頼関係を持って交際を続けていくという基本の上に立った法律でなければいけないのではないでしょうか。そういう意味からいきますと、外国人登録法全体の問題としまして、その管理という観念、これを外すべきだろうというふうに考えております。  三番目に、確かに黒木先生もおっしゃられましたけれども、少しずつよくなっている、あるいは八代先生もおっしゃられたように、全体的にすぐに一度に改善することは難しいということもよくわかりますけれども昭和二十二年以来の法律目的が依然として今日まで継続しているということ自体の異常性というものは私は感ぜざるを得ない。  そういう意味からいくと、確かにいろいろな改善、改正もされてきましたけれども、依然としてそういう根本的な、抜本的な問題、この問題をぜひこの委員会の中で御討議いただきたいというふうに考えているのが私でございます。  以上です。
  15. 朴容福

    朴参考人 今の床井先生の発言と趣旨はほぼ一緒なんですが、先ほど八代先生が言われた階段の話にひっかけて言いますと、私らは、長い長い階段を上っているんです。一足飛びに上に駆け上がることはもちろんできない、それはもう十分わかっています。  私たちと一緒に、子供たちがいっぱいいるんですね。十六歳で登録を迎える子供たちがいて、その子供たちが私たちに聞くわけです。この階段を上っていくのは非常につらいけれども、一生懸命頑張って上っていけば頂上があるのか、頂上があったら、そこは広々とした空間が広がって、ああ、上り切ったんだという満足感を得られるのかどうか。そのときに、私たちの方は、頂上が一体どこにあるのか、上り切ったらそこに一体何があるのかということを子供たちに答えることができないんですね。ただ、法律だから、決められているからおれたちは階段を上らなくちゃならないんだと。努力をしながらいろいろ変える闘いをやっても、ほんの少し変わるかもしれないけれども、無数に続く階段の中で、一体どこまで私たちが来ているのか、それがさっぱり見えないというこの苦しさですね。  ですから、法律の細かな内容についていろいろ変えていく、そういう努力は必要でしょうけれども先生方に逆に提示していただきたいのは、どこまで私たちは頑張って上ればこの階段は終わるのか、階段の上に一体何があるのかというそのビジョンを提示してほしいということなんです。それが見えないまま、一世も二世も三世も四世も苦しみながら来たんですね。法務省はそれをずっと提示してこなかったんです。階段を上るのは嫌だと言った人間をただむちでたたくだけだったんですよ。それはもうやめましょう。  私たちの願望をあえて言葉にすれば、私たち特別永住者と言われています。でも、永住者というふうに言われても、実際のところ、資格があるというだけではないですか。それが今後も続いていくということで、そうでなくて、特別永住者というのであれば、あるいは歴史的な背景があるというのであれば、ちゃんとその人間権利性というふうなものを認めて、権利として今後も在日していけるんだ、そこに一定の差異があったとしても、合理的な差異があったとしても、在日がこの日本で生きていく、その永住は資格じゃなく権利なんだ、そういうビジョンを提示してほしいです。それがあれば、まだ頑張って階段は上っていくことができますよ。
  16. 辛淑玉

    辛参考人 嫌がらせがこぶしから平手ぐらいになったかなという感じがしております。と同時に、嫌がらせするやつというのは大体コンプレックスの塊ですから、自分たちの弱さをより弱いところにぶつけるのはちょっとやめていただきたいなというのは感じております。法律的なことはわかりません。  個人的に、八代さんに私が思っていることを一分だけお話しさせてください。  私はあなたが好きです。というのは、子供のときにテレビを見ていて、格好いいと思ったんですね。ほかにいろいろな変なおじさんたちがいっぱい出ていたんですけれども、一番ハンサムで格好よくてすてきだなと思って見ていたんですね。  事故になって、そして車いすになったと聞いたときに、私はそのときにどう思ったのかといったら、あの人は何をして食べていくんだろうと思ったんです。きっとあすから飯が食えないだろうと思ったんですね。かわいそうだなと思って、そうしたら、そのあなたが、健康な男しか生き残ることのできない政治の世界に入って、選挙に出て、そして今こうやって長い間の議員生活をしている。  車いすで入っていった最初のときの記事を覚えています。いろいろな人が抱えていって、何もなかったところにあなたが入っていって、私は、あれを見たときに、格好いいなと思ったんですね。ただ、そのつらさと苦労というのは、私が生きてきたものと比べればはるかに八代さんの方が大変だったと思うんです。でも、八代さんがそこにいることによって多くの人たちが勇気を持ったと同じように、それが見えるものが今の法制度の中にあるとは私は思えないんですね。  それから、そこの席に在日の先輩たちが座っていません。他民族の人たちが座っているわけではないんですね。だから、その姿を見ると、今回の法改正はちょっとよかったかもしれない、だけれども、やはり嫌がらせなんだなという気がしてなりません。
  17. 八代英太

    ○八代委員 どうもお褒めの言葉をいただいて恐縮です。しかし、階段は決して一人で上るだけではなくて、時にはいろいろな人がいて、引きずりおろす者もいるかもしれませんよ、しかし、やはり、一緒に上っていこうという人たちも必ず私たちの周りにはいるわけで、また、一人が始めなければ何も始まらない。そういう意味では、朴さんの長い運動というものはこれからも我々に大きなインパクトを与えて、そしてまた法改正も、階段がこれから、一段一段の階段ではなく、エスカレーターやあるいはエレベーターのようなスピードアップということもこれは当然考えながらやることです。  そういう意味では、お互いに頑張るということはいろいろな意味で大切なことだというふうに思いますし、私たちも、きょう朴さんのお話を聞きながら、さもありなんという、遠い日本差別を根底にした長い歴史の中には大変皆様の苦労というものをしみじみと感じた次第でございます。  最後床井先生に、これから二十一世紀思い切って変えるとしたら、そうした人権の問題は日本人人権の問題にも相通ずるものなんだ、こういう視点に立って、どの辺をどうすれば今後の外登法の次なるステージを迎えることができるか、それを最後床井先生に伺っておきます。     〔橘委員長代理退席、委員長着席〕
  18. 床井茂

    床井参考人 まず、外国人登録法の観念を基本的に第一に変えること。二番目に、外国人登録証携帯提示義務、これを外すこと。三番目に、現在の十六歳からの登録義務を少なくとも十八歳以上に上げていくこと。その三点は、少なくとも現在急を要する。それ以外にもたくさん問題ありますけれども、少なくとも現在急を要する問題解決ではなかろうかというふうに考えております。
  19. 八代英太

    ○八代委員 どうもありがとうございました。
  20. 杉浦正健

    杉浦委員長 次に、福岡宗也君
  21. 福岡宗也

    ○福岡委員 民主党の福岡宗也でございます。  本日は、先生方にはお忙しい中を貴重な意見をいただきまして、非常に参考になりましたし、心から御礼を申し上げたいと存じます。特に、私自身が今まで気がつかなかったいろいろな観点からの御指摘がありまして、目が覚めた思いであります。  実は、私の周りにも、大勢の在日外国人の方たちが子供のころからおみえになりました。そういう人たちと一緒に暮らし、一緒に遊んで生活をしてきたという実態で、その中では、現在は帰化した人もおりますし、それから、そのまま外国人として生活をされている方も多々おります。  そういう人たち意見もいろいろと聞いたわけでありますけれども、なかなかその本質というものがわからない。それでもやはり、先ほど辛さんのお話にもありましたように、自分自身体験し実験をしたことじゃないと、なかなか身につかないところがある、単なる空論になるということがこういった問題にはあるのだなということを感じております。  そこで、私としては、今回の問題で一番問題点は、外国人というものに対して、日本の政府並びに我々国民一人一人がどのような考え方、認識を持つかというところの基本がどうも欠落をして、現象的なあることについての、こういう問題はいいとか悪いとかという批判だけで、小手先で手直しをしてきたところに基本的な問題があるというふうに思ったわけであります。特に、床井先生の御指摘にもありましたように、それが基本だということであります。  先ほど御指摘ありましたように、昭和二十二年に特例法ができまして、それから二十七年に一応現在の外人登録法というものの基本が制定されました。それから、その都度いろいろな抗議もありましたし、国際的な批判もありました。そういうものを受けて、数次にわたってこれは改定をしてきておるわけであります。しかしながら、この改定というのは、先ほども御指摘のあったように、抜本的なものではなかったということだという指摘であります。これはそのとおりだったと思うのですね。  特に、この目的の中に、外国人登録法を実施することによって外国人を公正な管理をするという、この目的の定め方。いいんですよ、外国人登録制度。国や国籍がある以上、外国人登録制度は仕方がない、どこの国でもやっておりますから。だけれども、そういう制度を管理するというのはわかるのですけれども、そういうことをやることによって、目的として管理をするという、この規定の仕方そのものが外国人をいわゆる人権の主体として考えていない。基本的に、管理する対象物、物であるとか財産であるとか場所であるとか港湾管理とか、そういう考え方をここで人に対してとっている。  確かに昭和二十七年、戦後の混乱期であります。だから、その当時、まだそういう点まで十分な論議を重ねずにやったということはいいとしましょう。しかしながら、そういう批判を受けながらも数次の改正をしておるということについて、今日に至るも、その根本的な考え方というものを改めぬ。  法律目的は、その理念とか目的というのが、解釈基準から何かのすべてのものを、体系を把握する一番重要なところなんですね。このところが、このまま据え置かれて今日まで来てしまっておるということであります。これは本当に恥ずべきことであります。だから、これは国際的に出せるような代物じゃないと私は思っております。  そういう意味で、私どもは、常時携帯、それから、切りかえ制度の問題にしても刑罰の問題も、これはもっと抜本的に見直すことも必要でしょうけれども、そういうことの大前提としてまずこれを改めるべきだというふうに考えているわけであります。  そこで、私自身は、この点について、本会議においても小渕総理に、抜本的に改定すべきじゃないか、人間管理するなんということは許されるわけがない、昔の奴隷制度があるわけじゃないのにということで申し上げまして、このように申し上げました。すなわち、「外国人の公正な管理」とあるのをもうやめましょう、そういう考え方を改めて。  そして、住民登録法第一条、これは日本人です。これはどうなっているかといいますと、住民登録を実施して国民の利便を図る、それからまた、行政の合理化を図るということを目的にする。あくまでも住民登録法は、国民管理するためじゃないのですよ。これは手段なんですね。あくまでも目的は、国民がいろいろな福祉やそういうものを享受するときのためにある。それから、行政が合理的に整理をしていく、そういうサービスをしたり執行したり、そのためにあるんだ。国民管理の主体じゃなくて、権利を受ける側の主体なんだということを明確に住民登録法は言っているのです。  だから、これに従って、あくまでも目的を、要するに外国人登録法目的も含めてですけれども、これは結局、外国人権利というものを認めてその利便を図る、さらには行政の合理化ということもあわせて図る、こういう目的改正すべきだ、こう申し上げたのです。  ところが、実際の答弁は、残念ながらこう言うのですね。外国人日本人と違って在留をするためには政府の許可が必要なんだ、したがって当然管理をしていく対象とせざるを得ないから今のところは改正できないという御答弁をいただいた。これは本当に理由にならないのですよ。  なぜかといいますと、本当は世界連邦ができれば一番いいのですけれども、できていません。だとすれば、どこの国も、入国するときに管理をしていて、それからさらには制限をしていて、入国するについてはいろいろな条件をつけるのは、これは当然でありますけれども、だからといって、管理するというような形の言い回しなどはしていないのです。それはなぜかというと、現在は、人権というものは国境を越えた普遍的なものだという考え方が定着しているからです。  したがって、我が国のように、国際的にも名誉ある地位を占めているという立場であるならば、当然この点の改正を基本的にしなければ、細かいところを幾ら直しても、私は国際的な信頼を得るところにならないというふうに考えておりますけれども、この点について一言ずつ、黒木先生の方から順次お答えをいただきたいと思います。
  22. 黒木忠正

    黒木参考人 外国人登録法目的に関して、管理という用語についてお話もございますけれども外国人登録法で言っている管理というのは、いわゆる締めつけてどうこうしようという管理ではないのではないか。居住関係身分関係を明らかにして、むしろ管理というより、公正な管理の公正の方にウエートがあるのではないかなというふうには思うのですが、ただ、外国人登録法の考え方そのものが昭和二十二年以来のものであるということでありますれば、現在の国際化の進んだこの時代に適合するものに全面的な見直しをする一つの時期ではあろうと思います。  ただ、従来の登録制度そのものがありますので、その辺をどうつないでいくのかというのは難しい問題があるだろうとは思いますけれども、やはり総合的に見直す時期には来ているのではないかというふうに思います。
  23. 床井茂

    床井参考人 まさしく先生のおっしゃられるとおりであろうと思います。  先生が住民登録法とおっしゃいましたけれども、これは現在、住民基本台帳法ということになっておりまして、住民基本台帳法を見ますと、おっしゃられたとおりに、記録の適正な管理というふうになっているわけです。つまり、人を管理するのではなくて、記録の管理なんです。  内外人平等の原則が確立した現在において、外国人登録法と、なぜ住民基本台帳法と区別するのでしょうか。私は、内外人平等の原則、つまり人権規約自由権規約二十六条等を見ましても、そういう観点に立つべきだ。特に在日朝鮮人と言われる方々の、現在住んでいる方はほとんどが自分の好みで来た方ではない。つまり、許可を得て日本に来られたのではなくて、ある意味では強制労働、強制連行その他の理由によって、あるいはまた植民地時代、職がなくて日本に来た人々なんです。そういう人たちであるという考えと、日本の許可云々ということ自体私はナンセンスだというふうに思います。  私は、そういう観点から、これから国際交流の中で国際化ということを考えたときに、外国人の処遇がどのようにあるべきかということは、おっしゃるように、基本的に、今、二十一世紀に向けて、我々が生きるためには、また、世界の中で孤立しないためにも必要なことだというふうに考えております。
  24. 朴容福

    朴参考人 こういう場で申し上げるのは非常に失礼なんですけれども黒木先生の先ほどの一言、愕然としました。公正さに力点が置かれた法律ではないですよ、こんなのは。  例えば常時携帯がずっと問題になっていますが、きょう傍聴人の中にいる人の体験を一つ紹介します。  この人は、車を運転していて事故に遭いました。完全な被害者です。ところが、警察がやってきて、彼女のいろいろ身分関係を聞いたのですね、被害者ですから。ところが、朝鮮人だとわかった。そのまま警察に連れていって、彼女は事故に遭ってけがをしているのですよ、にもかかわらず警察に連れていって、なぜ事故に遭ったかということではなくて、おまえは一体何なのかということを夜中まで長時間取り調べを行ったのです。彼女はけがを負っているのにですよ。これは人間の扱いでしょうか。  外登法とはすべからくそういうものですよ。おまえは何者なのか、それを常に何かのささいな機会をつかまえて調査する、それがための法律ではないですか。公正さに力点があるのではなくて管理、そこにやはり力点がある法律です。  こういう場で話をしますと、日本人であるか外国人であるか、そういう話はよく出ますけれども、私は、それは三種類があって、その三種類が共同して日本の国が成り立っていると思います。一つは日本国民でしょう。もう一つは、先ほど私が話の中で言いましたように、日本国が日本国籍を持たない人間として生み出した在日存在。そして、日本国とさまざまな縁があって日本にやってきた在日外国人。この三つが共同して今の日本をつくっていると思うのですね。  そういうふうに、その現実、実態を実際に認めて、そこから新しい枠組みをつくっていくということが必要だと思います。
  25. 辛淑玉

    辛参考人 済みません、私は外国人なもので日本語がよくわかりませんから、管理と言われた瞬間に頭によく浮かばないのですが、管理という言葉があれば、恐らく管理する方とされる側が多分出てくるのだろうと思うのですね。これはやはり二級市民をつくる考え方です。  管理をした結果だれが傷つくのかといったら日本社会ですよ。管理教育の結果、学校は崩壊しましたね。学級崩壊といった形ですごい勢いで学校の組織そのものが崩れていきました。管理から生まれてくるものの結果はもう皆さん見ているわけですね。今は管理をするということは余りはやりません。結婚だって事実婚だっていろいろなことがあるわけですね。  そうすると、管理ではなくて、より多様性を持った社会になることの方が資源のない国日本が生きていく上で最も大きな道なわけですね。いろいろなところで、すごく大きな力を持って管理をしてきたところが今どういう状態になっているのかというのを見れば、その根本が管理であるといった法律が生み出すものというのは、新しいものは生まれないのではないかなという気がしてなりません。
  26. 福岡宗也

    ○福岡委員 それではもう一問だけ、時間が参りましたのでちょっと申し上げたいと思いますけれども、これは、床井先生の方にお願いをしたいのですが、先ほど床井先生の方から御指摘のありました国際人権(自由権)規約の中の内外人平等原則の適用はどうなるのかということでもって、いわゆる日本で行われておる常時携帯、これは二十六条違反だという指摘を一九九一年と八年、二回にわたって厳しく指摘をされている。  しかしながら、それに対しても、先ほど私ちょっと申し上げましたように、政府の見解は、外国人は許可を得て在留するものであるから、その在留許可を得ているかどうかということ、身元を即時に確定する必要があるからこれはやめるわけにいかないんだという理由づけをして言っているようでありますけれども、これは本末転倒というふうに私は考えているわけですね。そんなことをすれば当然日本人にも全部身分証明書を持たせろ、こういう話になるわけでありますから、人権上問題があるわけであります。  そこで問題は、規約の効力、二十六条の規定がありますから、それに違反すると勧告は言っている。これに対して、こちらの方はそんなもの違反しないということを言っているわけですけれども、統一的解釈基準というのは規約人権委員会に権限があって、その解釈並びに運用基準というものについてはそれに従うべき義務があるのではないか、これを守らないということは、我が国は国際的に違反行為を犯しているという指弾を受けても仕方がないのではないかな、僕はこう思っているのですけれども、その点、法的にどのようにお考えになっているのか、最後にお伺いをいたしたいわけであります。よろしくお願いします。
  27. 床井茂

    床井参考人 国際人権規約、これは二十年前に日本は批准いたしました。批准をいたしたということは、これはすなわち憲法九十八条第二項によりまして国内法となっているわけです。したがって、その効力というものは、国内法と同様に日本国内において適用されるべき問題でございます。  それから、人権規約委員会勧告、これ自体は強制力は持っておりません。ただ、五年ごとに、政府は人権状況はどうなのかということの報告書を提出する義務がございます。その報告書の中で、前回指摘されたところの事態がどうなっているか、改善されているのかどうか、改善されていればどういうふうに改善されたかという報告義務がございます。  その意味で、今回指摘された、九八年にも二回目の指摘があった、それに基づいて日本政府は重い腰を上げざるを得なかったのではないか。つまり、国際的に種々議論される中で、これは問題であると規約人権委員会日本政府勧告した重みというものは、確かに強制力はないけれども、国際的な信用力の問題、信頼力の問題その他から含めまして、日本政府はこれに従わざるを得ない、道義的に見ても従わざるを得ないというふうに私は考えております。
  28. 福岡宗也

    ○福岡委員 これでもって終わりますけれども、信義的、道義的にこれを守る責務があるということは間違いないということを御答弁いただきましたので、私もそう思っております。そのことだけ申し上げまして、質問を終わります。  どうもありがとうございました。
  29. 杉浦正健

    杉浦委員長 次に、上田勇君。
  30. 上田勇

    ○上田(勇)委員 公明党・改革クラブの上田でございます。  きょうは、四名の皆さんには参考人として当委員会に御出席をいただきまして、いろいろと貴重な御意見、お話を伺いまして本当にありがとうございます。時間に限りもございますので、早速、今回の法案や、今いただきました御意見につきまして若干御質問をさせていただきたいと思います。  まず黒木先生にお伺いをいたしますけれども、御意見の大要というのは、今回の法改正というのは基本的に賛成であって、正しい方向での改正であるという御認識だというふうに承りました。その中で、今回、指紋押捺制度廃止されたというのは、これも私も前向きにとらえているわけでありますけれども、議論が集中しているのが、いわゆる外国人登録証の常時携帯義務のところに焦点が当たっているというふうに思います。  これまで参議院それから衆議院の議論の中で、特に在日韓国朝鮮方々特別永住者方々においては、いわゆる常時携帯の理由となっている本人確認等も、これは、日本にずっと居住しているし、家族の方もいらっしゃるわけなので日本人と条件的には全く同じだというふうに思うわけでございます。また、ずっと生活されている中で、免許証であるとかその他にも身分確認の方法などがあるというふうにも考えます。  そこで、先ほどのお話の中で、常時携帯義務、やはり必要があるというような御意見だったと思いますけれども、どういうところで必要性があるというふうにお考えか、ぜひお聞かせいただければというふうに思います。
  31. 黒木忠正

    黒木参考人 先ほども申し上げましたように、日本にいる外国人登録している外国人の数、約百五十万近くいるわけであります。そのほかに、在留期間を過ぎて不法に滞在している外国人、法務省の統計ですと二十七、八万の人たちがおります。それから、日本に密入国などをしてそのまま潜在している外国人も、これは数としては把握できないのですけれども何万人かいるだろうということであります。しかも、国際化が進めば進むほど、今後日本に滞在する外国人の数はもっとふえてくるであろうと思います。  そういった方々の中で、適法に在留している人か、違法状態日本に滞在している人かということは、やはりある面においては把握できるようなシステムは必要ではないのかなというふうに考えるわけであります。  現に、中国、ベトナムなどへ参りますと、国内線の飛行機、国際線ではありません、国内線の飛行機に乗るときは必ず旅券を調べられるということ。すなわち、私どもが中国、ベトナムに行けば、外国人としてやはり身分関係その他をその国の官憲によって掌握されるというシステムでもあります。  私、ちょっと認識を新たにしたのですけれども、せんだってハワイに参りました。オアフ島に着いて、ほかの島に行くのに国内線に乗るのですけれども、国内線に乗るときにパスポートチェックといいますか、これは官憲ではなくてどうもエアラインのようなんですけれども、身分証明書提示を求められるということでありまして、私も外国人体験、ハワイに行ったらやはり外国人なんだなという体験をしたわけであります。  その国の制度といいますか、安全とかいろいろな要素からそのようなものが一般的に行われているのではないかというふうに考えますし、また、その必要性も全くないということは言えないのではないかというふうに思います。
  32. 上田勇

    ○上田(勇)委員 次に、床井先生にお伺いをしたいと思います。  床井先生の御意見は、先ほど、特別永住者に関しましては登録証の常時携帯提示を義務づけることに合理性がないということで、廃止すべきであるという御意見だったというふうに思います。それは私もそのように考えるのです。  そこで、お伺いしたいのは、いわゆる特別永住以外の方々日本に居住されている外国人、先ほどの黒木先生のお話でも急速にふえているということでございまして、これは経済社会国際化するに従って当然のことなんだと思うのですけれども、いろいろな形で外国の方が日本にいらっしゃっている。それは合法的な場合もあるし、残念ながら非合法の形で来ておる方もおられる。いずれにしても、ただいま日本の経済の現状の中では、実態としてはもうそういう方々日本の経済の一部になっているわけでございます。  そこで、お伺いしたいのですけれども、当然、長年にわたり、何代にわたり日本に居住されている特別永住者方々と、それ以外の日本に居住されている、一定程度定住されている外国人方々とは、立場またいろいろな法制度の適用も若干違うのではないかというふうに思うのですけれども、その辺について御意見を伺えればと思います。
  33. 床井茂

    床井参考人 まず、特別永住者については、先ほどから申し上げましたように、これは完全に日本に定着しているわけでございますから、つまり我々の隣人でございますから、これについて登録証携帯提示義務を外す、これはもう当然だろう。  次の問題として、特別永住者の下の段階のいわゆる永住者という方、一般永住者という方もいらっしゃいます。その一般永住者の方についても、私は、外してもよろしいのではなかろうか。  その下の次の段階、いろいろ在留資格、在留年月日によって違う方々がいる、いわゆるニューカマーと言われる方々についてどうなのかということになるかと思います。これについては、私は、現段階ではやむを得ないのではないかと基本的には思っております。  と申しますのは、そのニューカマー方々といわゆる特別永住者方々との歴史的な背景が全く違うわけですね。そういうニューカマーと言われる人たちが戦後、あるいは最近と言ってもいいかもしれませんけれども、多くなりつつある。そういう中でいろいろな事件が起きることも承知しております。そういう考え方に立って、ある程度制限を受ける。我々が外国に行っても、例えば常にパスポートを持たせられている、あるいはパスポートを提示しろというふうにさせられる。私は、これはやむを得ないことだろうと思っております。  ただ、その場合において考えなければならないことは、これから日本外国人労働者を受け入れるという方策あるいはその方法等についてのしっかりした施策がどうも私には見えないような気がいたします。そういう中で、つまり、これから日本人が受け入れるべきか受け入れるべきでないのか、短期労働者の問題その他のことについての政治的な論議あるいはまた施策ということを、十分、待遇その他も含めた中でその論議はなされるべきではなかろうかというふうに考えております。
  34. 上田勇

    ○上田(勇)委員 次に、朴さんにお伺いをいたします。  外国人登録法改正のたびに、いわゆる在日韓国人朝鮮人方々人権問題が常に議論になってきているわけであります。いろいろ記録を見てみますと、昭和六十二年にもやはり改正が行われまして、そのときに法務大臣や国家公安委員長から、常時携帯義務それから提示などについて、常識的かつ柔軟な姿勢で運用していく、これ自体が何を意味しているのかよくわからない面もありますけれども、少なくとも人道上、人権に配慮して、過度に厳しい取り扱いはしないということを政府として表明しておりますし、そのときのこの衆議院法務委員会附帯決議でも同様の趣旨で決議をしております。  朴さんは長年ずっと運動に携わってこられて、先ほどからいろいろな経験もお話をしていただいたのですが、こうした最近の当局のこの問題についての実際上の運用について、法務大臣や国家公安委員長国会の場でこういうような発言をしているのですけれども、そういう意味で、実質的な改善があったのか、またありつつあるというふうに御認識なのか、その辺お伺いをできればというふうに思います。
  35. 朴容福

    朴参考人 漸次変わりつつあるとは思います。  ただ、弾力的な運用とかいうふうに言われましても、私自身が先週、府中で、車の違反ではないのですけれども、ちょっと人の敷地内に車が入っていたということで、通報を受けて警察がやってきました。最初に、免許証はと。それで朴容福とわかる。次に、外登証はと。その一言が胸を刺すようにどきっとくるのですね。私、日本語が多少わかりますから、いや、ああですこうですといろいろそこで言えるのですけれども、もしもそれが自分の言いたいことがうまく言葉にならない外国人だった場合、その外登証はの一言がどれぐらいの過酷さでその人の胸に刺さるだろうか。実際に送検件数という格好であらわれるかどうかわかりませんけれども、日常的にはまだ、お巡りさんと遭遇した場合には、免許証は、その次は外登証は、これは今でもやっています、私自身が先週そうでしたから。  そういう意味で、確かに以前に比べれば件数は非常に減っています。その分非常に楽になっているだろうと言われれば、それは否定するものではないのですけれども、しかし、繰り返しになりますけれども、いつになったらこれが終わるのかなというその一点なんですね。どんなに嫌なことでも、いつか終わると思えば、それは耐え忍ぶことができるのだけれども。  少しずつ変わってきた、だからよくなったろう、それはそのとおりです。以前は十回犯していたものを、今一回しか犯さないじゃないか、だからよくなったろう、そのとおりです。しかし、犯す事実が変わらないとしたらば一体それがいつまで、一番つらいのはやはりそこなんです。
  36. 上田勇

    ○上田(勇)委員 朴さんにもう一つお伺いしたいんですけれども、今度のこの法案について参議院審議したときに修正が加えられました。指紋押捺拒否をされて再入国が不許可になった方々で、いわゆる協定永住資格を一たん失われた方々が、今回その資格回復を認めるということであります。そういうふうな修正が加えられているんですが、参議院でも崔善愛さんにも何か参考人としてお話を伺ったというふうに聞いております。  そこで、朴さんは指紋押捺拒否運動にもずっとかかわっておられたし、多分お知り合いの方も多いんだと思いますけれども、今回の参議院での修正の部分についての評価がございましたら、お聞かせいただければというふうに思います。
  37. 朴容福

    朴参考人 今お話がありました崔善愛さん、きょう御本人もいらしています。  崔善愛さんの問題が修正案に盛り込まれた、これは非常にやはり驚きでした。こんなことがあるのかというぐらいの驚きでしたね。その意味で、それを実現された公明党、民主党の努力、我々にとってみれば非常に感謝の念はたえないです。まるでそういうことはこれまで、そういう形で法的に救済されるというふうなもの、それが修正案という形で国会で通るということは一度もなかったですから、それが実現できたということは非常にやはりうれしいことだし、驚きです。  一方、どうして崔善愛さんの永住資格が剥奪されたのか、あるいは、剥奪されるような永住権、簡単になくなってしまうような永住権とは一体何であったのか、崔善愛さんが最も言いたかったのはその点だと思うんですね。崔善愛さんは、そうやって容易に剥奪されるような永住権じゃなくて、本当に安心してこの社会で暮らしていけるように保障する、そういう意味での永住というものをつくってほしいというふうに訴えたはずなんです。そこの議論が実のところは余り十分になされなかったのは非常に不満なところです。
  38. 上田勇

    ○上田(勇)委員 時間が参りまして、済みません、本当に十五分というのはわずかな時間で、本当はもっといろいろとお聞きしたいことがたくさんあったんですが、もう次の質疑者も参っておりますので。特に、辛さんには御質問する機会がなくて申しわけございませんでした。また、いろいろと貴重な御意見を伺わせていただいたことにつきまして御礼を申し上げまして、終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  39. 杉浦正健

    杉浦委員長 次に、達増拓也君。
  40. 達増拓也

    達増委員 自由党の達増拓也と申します。  達増といいますのは、私のふるさと岩手県の北上山地の山中に達曽部という地名がございまして、そこに由来する名前であります。日本のチベットと呼ばれたところでありますけれども、それは精神的中心地という意味だと理解しておりまして、そういうところの達曽部という地名、もとはアイヌ語でタッソウベツという名前だったそうで、遠野物語で有名な遠野はトオヌップというアイヌ語だった。大和朝廷成立以前からある地名に由来する名前でございます。  きょうの参考人質疑、いろいろ法律に絡んだ質問も用意はしてきたんですけれども参考人の方の最初のお話を聞きまして、特に参考人朴さんと辛さんに、在日コリアンの世界戦略といいましょうか、日本を舞台にこれから何をする、世界に向かってこれから何をするというようなことをちょっと伺ってみたいと思います。それに先立ちまして、岩手県人といいますか東北人としてのそういう世界戦略の話を先にさせていただきたいと思います。  岩手県人といいますか、むしろアイデンティティーとしては、岩手というのは薩長藩閥政府に与えられた枠組みですから余り岩手というような実感がわかないで、むしろ奥州とか陸奥とかそういうので千年以上やっていたのでそういうアイデンティティーの方が強いんですけれども、東北人ということにします。  東北人というのは歴史上天皇の軍隊と何回も戦っておりまして、恐らく世界で一番天皇の軍隊と何度も戦った民族なんじゃないのかな。中国や朝鮮半島の戦争や抵抗に比べれば古い時代なので規模は余り大きくなかったかもしれませんが、回数やその持続性においては世界一だと思っております。  田村麻呂の蝦夷征伐から始まるわけでありますけれども、前九年の役、後三年の役とか、まさに天皇の軍隊、にしきの御旗で植民地化を進めるための戦争に来まして、撃退したりあるいは征服されたり、そういう合間、一時的に地方政権、安定と繁栄を享受したこともありましたけれども、中央勢力からの侵略、戦いというのはしょっちゅうございまして、最後の天皇の軍隊との戦いが百三十年前の明治維新、戊辰戦争であります。  あのとき我々は、薩長が主張するようながりがりの中央集権、しかも今までの江戸時代の枠組みを全部取っ払った、強権的な中央集権以外にも、新しい日本をつくるもっと多元的で、よいものは生かしつつ新しい時代に対応した近代化を進められるような、そういう日本もあり得るんじゃないかということで戦争をし、日本全体としてそれはだめだということになったら、今度は目標を独立戦争に切りかえまして、別の日本もあるはずだということで、そういう独立戦争をやったけれども敗北して屈服した。  百三十年前というのは随分昔ではあるんですけれども、私の先祖で達増というのを初めて名字にした人は百三十年前のその戦争のころに生きていた人でありまして、私で五代目。ですから、五世に当たるわけであります。  その間、強制連行ではないんですけれども、かなり首都圏、東京の方に、これは戦後もなんですけれども、中学校を卒業したてで、組織的に連れていかれて働かされる。金の卵ともてはやされてはいたんですけれども、そういうことが組織的に行われましたし、出稼ぎ、これはお父さん、おじいさんの世代でありますけれども、これは今もなんですけれども、公共事業とか土木作業とか東京都内でやっているところ、特に夜なんかやっているところへそばに行って耳を傾けると東北弁でしゃべっていたりして、まだまだ経済的搾取といいますか、そういうことが東北に対しては行われている。  そもそも明治以降、もともとソバとか適地適作でやっていたところを、近代日本の食糧供給基地と位置づけられて無理に米づくりを勧められ、今でこそ品種改良が進んで米どころとして東北は名産地になっているんですけれども、特に戦前は、ちょっと冷害になるとたちまち米がとれなくなってとんでもない飢饉になってしまうわけですね。ソバとかつくっていればまだよかったのに、米を無理につくらされてひどい飢饉になって、生まれた子供を土に埋めるとかいうのから始まって、身売り、娘を売るとか、そういう性的奴隷の供給基地でもあったという東北なわけであります。  ただ、そんなこんなでやってきているわけでありますが、今我々は、日本国憲法のもとで、天皇陛下を象徴としていただいて日本国民としてやっているわけであります。そこには、独立できるものならしたいというような気もないこともないんですけれども、ただ、今いろいろつらつら考えるに、日本国憲法というのは、文言、言葉自体はかなりめちゃくちゃなところとか意味が通じないところが多くて、かなり変えないとうまく使えないとは思うんですけれども、その方向性としてはかなりいい線いっていると思うわけであります。  そういう日本国憲法をきちっとした形に整えながら、この日本という領域の中に権利義務関係のいい秩序をつくっていって、それをベースに、日本法律が及ぶ、外の世界とも円滑に交流したり、ともに協力し合って発展していったり、そういうことができるんじゃないか。そういうことをする中で、日本という国が変な方向に向かいそうになったときに、いや、ほかの日本のあり方があるはずだという提言をするのが近代以降の東北の役割かなということで、日本のデモクラシーがうまくいかないときに原敬が出てきてデモクラシーを日本に方向づけたりとか、そういうことをやっていくのが東北の務めなのかなと。  今、自由党党首、小沢一郎党首は岩手出身でありますけれども、まさに今の日本と違う日本のあり方があるはずだ、本来の日本のあり方はこうなはずだということで大立ち回りを繰り広げているわけですけれども、そういうのが我々の役目なのかなと思っているわけであります、いろいろな歴史的経緯とか地理的条件とかあるんでしょうけれども。  そういう意味で、東北というのはかなり日本のほかのところと違うところがありまして、我が岩手県は今、特に盛岡市、私が住んでいるところなんですけれども、冷めんが定着しております。二十年くらい前までは平壌冷めんと呼ばれていまして、どうも、何か北朝鮮風のめんが太くてうんと辛くして食べるもの、これが激辛ブームのころに一気にブレークして、今ではみちのく冷めんと呼ばれておりまして、そういうこだわりのなさがあるわけであります。  ですから、西日本とか首都圏に住んでいるといろいろ悲惨な思いをすることが多いのかもしれませんけれども、東北の方に来て住んでいただければ、本当に千年の歴史の中で、そういうよそから来た人、外から来た人が定着したり、あるいは、源義経みたいに将軍格で国のトップにしようとかいうふうになったりとか、そういう地域でありますので。  そういう我々の、一種、日本を舞台に世界にどうやっていこうかというのを私は私なりに模索しているんですけれども、そういう中で在日コリアンの皆さんとの連携といいますか、在日コリアンの皆さんには皆さんなりの過去があり目標があるんでしょうけれども、きょうはこの機会にその辺のお話を伺いたいなと思って質問いたします。  では、まず朴さんの方からお話しいただきたい。
  41. 朴容福

    朴参考人 質問のポイントがわからないんですが、一つだけはっきりわかりましたのは、私らの同胞で岩手県出身の朝鮮人がおるんですよ。これはすごい東北出身の粘り強さと頑固さにさらに朝鮮人の民族性が加わっているから、鬼に金棒といいますか、これはやはり確かにすごいから、こういう人間は確かに何事か新しいものを始めるかもしれないな、そういう感じがします。  それで、達増さんのお話を聞きながら、実はこの人は、もうそろそろ、いろいろな歴史はあったとしても、もうその歴史歴史として置いておいて、新しい時代を望むんであれば、日本に帰化をして、日本国民としてこの社会の一角を担う形で生きていった方がいいんではないかというふうに言いたいんじゃなかろうかというふうに私は解釈しましたが、どうなんでしょうか。
  42. 辛淑玉

    辛参考人 こんにちは。  私はそういうふうには解釈しませんでした。達増さんは恐らく、何か新しい方向性とか、そういうものを提示していきたいということをおっしゃったんだと思うんですね。  私は、中央に刃向かった岩手というか東北というのは、三内丸山を初めとして、やはり中央に刃向かった人たちが今物すごい形で復権をしていますね。それは格好いいと思うんですよ。中央に刃向かった人たちがそういうふうになる。それは、中央というのはおかしいんだよね、なかなか変なことばかりがあって。  それで、さっき冷めんの話をしていましたけれども、あれは在日冷めんなんです。北朝鮮余り辛くないので、あれは在日冷めんですから、そういったものが育っていく、こういう岩手というのはとてもすてきなことです。政治家というのは弱者救済ですね。経済というのは弱肉強食です。そうしたら、岩手からぜひ在日の参政権をやっていただけたらうれしいなとふと思いながら聞いておりました。  何かお休みの方がいらっしゃるみたいですから、ちょっと小さな声でお話ししましょうか。  在日コリアンは六十万と言われておりますけれども、まあ六十万人六十万色なんですね。金の力によって、自分たちの生きている世界も違いますし、思想信条も違うし、すべてのものが違うんですよ。私はどう思うのかといったら、私はどういうふうにしたいかなと考えると、一番自分の中で印象に残ったことは、定住ベトナム人の子供、小学生でした。この子たちが今一番問題になっていることは何なのかといったら、家庭の中の問題で、日本人らしい名前をつけてくれなかったといって親とけんかするわけですね。自分日本人ではないということがわかる、やはりその六つや七つや八つの子供が感じるわけです。これは私の親の世代の感覚なんですよ。  つまり、私の親の世代の感覚をいまだに六つや七つや八つの子供たちが思う。この構造は責任があると私は思うんですね。私は今経済的に力もあって、そして、いろいろなところでいろいろことを言っていますから、だからそういうものが見えなくなってきた。だけれども、新しい世代にもそれが受け継がれている。それを壊していくのが私にとっての、もしあなたが言うように世界戦略というのであるならば国際化戦略である。  それからもう一つ、もし北朝鮮との関係がどのような形になったとしても、朝鮮学校の子供たちがいじめられない社会をつくるというふうに考えています。私は、何か騒ぎが起きたときにチマ・チョゴリを着て歩いていただきたいと思います。自分の娘さんでも結構です。御自身でも結構です。パジ・チョゴリを着て歩いてくれたときに、そのときに安心して歩ける国を自分がつくっているのかどうなのかということを考えていただきたいんですね。  いろいろな形で法改正がされました。朝鮮学校の子供たちは国公立大学の受験資格がありません。今なお大検を受けなければだめなんですね。でも、日本というのは国際社会において、その国が、ほかの国がどこのどういう体制であれ、軍国主義であれ共産主義であれ資本主義であれ、もしくはイスラム教であれ何であれ、十二年間経てきたというその期間によって国公立大学の受験資格を与えております。これをそのまま持ってくれば、北朝鮮からの留学生は東大や京大に受験ができて、日本の中の在日朝鮮人の民族学校を出た子供たちは受験できない、こんなことあっていいのか。  私は朝鮮人のためにやっているのではなくて、次の世代のために、あなたと同じように抑圧された者が声を出すことによって中央を変えていけるんだろうと思います。  私は、最近はあなたのところの党首であります小沢さんを見て、いや、あいつなかなかいいんじゃないかと思えるほどよくわからない政治が続いております。ぜひ頑張っていただきたいと思います。
  43. 達増拓也

    達増委員 私も、小沢党首に日本の総理大臣になっていただきたいという思いと同時に、東北が独立したときにそっちの大統領になってほしいという気持ちもありまして、東北が独立する際には、今外国人として住んでいる人たちもみんな国民になってほしいなというふうに思っております。どんどん移民、亡命者、大歓迎であります。  日本の多元性、どうも日本というのは一枚岩ののっぺらしたものだ、そういう中で、日本人でありさえすれば幸せになれる、日本人というものの内実がないままにただ日本人でありさえすればいいということで、結局周りの人がやっているようにやればいいんだということで、そういう教育の中でもいじめとかが起こってくると思うので、日本人あるいは日本に住んでいる人たちのアイデンティティーを突き詰めていけば、やはりまずその根っこの、ルーツになっているところを固めた上で新しい日本を再構成していくしかないと思っておりまして、その意味で、今回の法改正がその一歩になればと思っております。  ありがとうございました。
  44. 杉浦正健

    杉浦委員長 次に、木島日出夫君。
  45. 木島日出夫

    ○木島委員 日本共産党の木島日出夫でございます。  四人の参考人皆さんには、大変貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。特に、今回の外国人登録法の一つの中心指紋押捺制度を全廃するということにあるわけでありまして、私ども賛成なわけでありますが、この問題については参考人皆さんが本当に長い間奮闘、苦闘されてきたことに対して、私は心から感謝と敬意を申し上げたいというふうに思います。  残った最大の問題が何といっても外国人登録証携帯義務の問題だと思いますので、きょう、四人の参考人皆さんにその問題について集中して、短時間でありますが、お聞きをしたいと思います。  最初黒木参考人でありますが、参考人の御意見の中に、国際化の進展に伴い、ニューカマーは今後も増加すると思われる、登録証明書携帯提示制度の必要性が減少するとは考えられないとおっしゃられました。そして、外国人身分関係居住関係を即時的に把握する必要性は一層増大するであろうとおっしゃられたわけですが、外国人身分関係居住関係を即時的に把握しなければならない、参考人は、一体それはどういう理由で即時的に把握しなくちゃいかぬのだ、その根拠をどこら辺に置かれているんでしょうか。
  46. 黒木忠正

    黒木参考人 外国人登録法は、御承知のとおり、出入国管理及び難民認定法とセットになっているわけでありまして、現に、例えば不法就労者と疑わしき外国人がいる、不法滞在者と疑わしき外国人がいる場合に、その人が適法在留者であるのか違法在留者であるかということをその現場においてやはり確認する必要性はあるだろうと思うんです。仮に携帯義務がなくて、ではうちに帰って証明書を持ってきますと言って、うちに帰したら、もし都合の悪い人であればそのまま逃げてしまうということにもなるわけでありますので、そういった意味で、その現場現場において身分関係居住関係を明らかにできるシステムは必要であろう、こういう趣旨でございます。
  47. 木島日出夫

    ○木島委員 今日、我が国国内に不法就労者が何人ぐらいいるのか、それは定かではないかと思いますが、多数いるのかもしれません。しかし、そういう者がいることのゆえに、現に日本にきちっとした資格をもって、また法的手続をもって外国人登録をしている百四十八万人の皆さん方、永住者六十二万人、日本人の配偶者二十七万人、定住者二十万人、その他のいろいろな資格をもって中期的に在留している皆さんの即時的な掌握が必要だという、それはちょっと飛躍しているんじゃないかな。ほんの一部の不法就労者の確認のためにきちっと法的手続を経て外国人登録している皆さんに常時携帯義務を負わすというのは、どうも理屈がもう一つわからないんですが、そこをどう結びつけるんですか。
  48. 黒木忠正

    黒木参考人 例え話というのは適切でない場合があるんですけれども、例えば自動車の運転免許を持っている人が車の運転を許されているということであります。もし無免許の人が運転していくということになりますと、これは事故その他問題が起こるわけでありまして、道交法などにおきましても、資格のある人に証明書を持たせている。免許を持っていない人に証明書を持てというのはできないわけでありますので、そういうのが社会の仕組みではないのかなというふうに思います。
  49. 木島日出夫

    ○木島委員 なるほど。  それでは、その問題について床井先生はどんなお考えでしょうか。そういう理屈づけで、実に法務省もそういう立場で常時携帯義務を負わせているわけなんですが、この問題について、床井先生の御意見をお聞かせください。
  50. 床井茂

    床井参考人 確かに一部の不法就労者の問題はございますけれども、やはり基本的に外国人を犯罪者扱いしている、まずその基本的な視点というものが日本政府の中にあるのではないか、その視点をまず捨て去ることが必要なんだろうと思います。つまり、私たちの友人であり隣人であるという観念が第一だろうと思います。  次に、例えば特別永住者あるいは永住者の方とそうでない方との区別、明らかに区別される方もいらっしゃるでしょうけれども、そうでない方も実はたくさんいらっしゃるわけですね。そうしますと、そういったことによって、特別永住者に対して、おまえは不法在留者じゃないか、登録証はどうなんだという形で被害に遭われる方が非常に多い。特にそれを意識的、目的的に使われる場合もあり得るわけです。  例えば、川崎で起きた事件の場合に、夜間、チマ・チョゴリを着た女子生徒に、これは明らかに朝鮮人だとわかるわけですね、チマ・チョゴリを着ていますから。そのチマ・チョゴリを着ている女子生徒に対しまして登録証を見せろという事件がございました。登録証をたまたま家に置き忘れてきた。これは、うちに帰ればあるはずです。しかも、チマ・チョゴリを着ているということ自体が既に日本に定着している朝鮮人であるということがわかるはずです。にもかかわらず、交番がその女子生徒を拘束して取り調べたという事件がございました。  そういうこと、つまり、どうやって、どのようにしてそういう人たちを見分けるのか、それが登録証なりなんなりでいいのかどうか、そのことによって被害をこうむる方がたくさんいるのではないか。例えば、我々の言葉の中にありますけれども、九十九人の有罪者を見逃すとしても一人の無辜を罰してはならない、これが私は法の基本的な人権尊重の考え方だろうと思います。そういう意味で、そういう人たちがいるから持たせなくちゃいけないんだというのは私は逆だというふうに考えております。
  51. 木島日出夫

    ○木島委員 床井先生の方から、登録証携帯義務を課するのは外国人を犯罪者と見る、そういう考えではないかという大変厳しい、鋭い指摘がございましたが、こういう指摘に対しては黒木参考人はどういうふうにお考えでしょうか、改めて黒木参考人の御意見を。
  52. 黒木忠正

    黒木参考人 外国人登録法ないしは携帯制度外国人を犯罪者扱いしているという床井先生の御意見については、私は同意できません。登録法というのは本来そういうものではないし、先ほどの先生の御質問にもあったんですけれども、その取り締まりについては適正妥当な方法でやる、過度にわたらないようにするという法務大臣、国家公安委員長の御発言もあることからもおわかりのように、とにかく犯罪者をつくろう、犯罪者扱いをしている、そのためにつくられた制度ではないと私は思っております。
  53. 木島日出夫

    ○木島委員 犯罪者をつくろうというための法律ではない、それはそうだと思うんですが、犯罪者を見つけ出すための便宜として外国人登録証携帯義務を負わせている、提示義務を負わせている、確かに見つけやすいんですね、そういう指摘だと思うんですが、私はそう見るんですが、黒木先生、どうですか。犯罪者を見つけやすくするために携帯義務を負わせているんじゃないか、それは結局犯罪者として見ているからじゃないか、そういう指摘だと思うんですが、もう一度黒木先生の方に。
  54. 黒木忠正

    黒木参考人 犯罪者という言葉にこだわってしまうんですけれども出入国管理及び難民認定法上適法在留者でない人の識別のためということでありまして、犯罪者とは、これはもちろん刑事罰もついておりますので結果的には処罰されることはあるかもしれませんけれども、本来の趣旨はそうではないんではないかというふうに思っております。
  55. 木島日出夫

    ○木島委員 これは大問題、根本問題なんですが、見解を異にする問題ですので、これで打ち上げたいと思うんです。  私どもは、今回の参議院の修正は反対であります。特別永住者永住者に区別、差別を新たに設ける問題ということと、特別永住者に対しても過料とはいえ携帯義務を残しているということがあるからであります。先日、私がその問題を質問しましたら、法務省から、刑事罰はなくなったけれども過料が残ったということと、提示義務が残っているからいろいろ手は出しやすい、そういうとんでもない答弁も出てきたので、ますます私は、やはり永住者すべてについて携帯義務を全廃するべきだと考えているわけであります。  特別永住者と一般永住者に新たな区別、差別を設けるのではないかというこの指摘に対して、朴さんと辛さんの御意見を聞かせていただければ幸いであります。
  56. 朴容福

    朴参考人 おっしゃるとおりに、新たな差別、それも悪法の中の不平等を新たに持ち込むものだというふうに思います。  それで、先ほど私も言いましたように、永住資格から権利へという、それが私たちの切実な願望なんだというふうに言いましたが、永住という言葉に実体を持たせてほしいと思うのです。そこに希望が感じられるんだ、永住というこの二文字は、安心して暮らしていける、そういう内実を持った言葉なんだという、それを実現してほしいのですね。そうじゃなくて、その永住が、崔善愛さんの例にありますように、いつどのような形でも簡単に剥奪されてしまう全く軽いものでしかない、そこにやはり問題があると思います。  だから、今回、外登法、常時携帯の中で、永住者特別永住者とその他の永住者の間に区別を設ける、このこと自体問題なんですが、根本の問題は、その永住者という言葉を、ただ言葉だけなんだという、そこにやはり実体を持たせていくんだというその観念が基本にないことじゃないかというふうに私は考えています。
  57. 辛淑玉

    辛参考人 難しいことはよくわかりません。でも、貧しい状態にしておいて、貧乏人同士を闘わせているようなことはよくないと思っています。  私は、政治は一番弱い人の立場で考えるべきだと思います。それは、今、日本社会の中で、不法という言い方は私は余り好きではないのですが、無資格就労の人とかその子供たちとか、やはり怖いのだろうと思うのですね。見たこともないし、会ったこともないし、触れたこともない人たちがこういう法律をつくっている。でも、実際にそこで生きている人たちの方が、はるかに日本社会が怖いと思っていますよ。怖くて、恐ろしくて、ちょっと何かしてしまったらもうそれで人生が終わりだと思っているわけですね。  私は、一番最初に何を考えるのか。それは、朝鮮人がちょっとよくなった、だれが、永住者がちょっとよくなった、そうではなくて、最も根底の基本に戻って、今、日本社会の中で一番弱くて一番迫害されていて、そしてどこにも声を上げられない人の立場から法律はつくるべきだと思っています。
  58. 木島日出夫

    ○木島委員 ありがとうございます。終わります。
  59. 杉浦正健

    杉浦委員長 次に、保坂展人君
  60. 保坂展人

    ○保坂委員 社民党の保坂展人です。  早速伺っていきますが、辛さんにお願いしたいのですが、先ほど、お巡りさん、交番を訪ね歩いてお菓子をもらったり、そして抱かれたときのその感じと、そして、お母さんと一緒に代々木警察署に行かれたときの話を伺いましたけれども、もう少し大きくなって、十六歳、それこそ指紋をとりに行くときの感じとか、あるいは、その辛淑玉さんというお名前を役人が受けとめ切れなかったなど、ちょっと聞いたことが、本で読んだ記憶があるので、そのあたりのことも少しお話しいただけたらと思います。
  61. 辛淑玉

    辛参考人 私は、多分、指紋押捺をしに行ったのは十四歳のときだと思っています。  学校を休まなきゃいけないというのがなかなか厳しいものだなと思いました。公的機関というのはちゃんと九時—五時で終わってしまいますから、その時間内に行くとしたら学校を休まなきゃいけない。そうすると、その瞬間に、自分はみんなと違うんだということを認識しますよね。  また、私は、多分品川に行ったと思うのですけれども、汚いところだったのですよね。汚いところで、汚らしいおじさんたちが何かすごく態度が大きいのですよ、おまえらはねというような、最初から私は何か悪いことをしたのかもしれないと思わせるような形でやるのですね。こんなところに来て、自分だけがこういうふうにする。  私は、指紋押捺をするときに、こういうふうに押してと言ったから、やり方がわからないからおまえがやって見せてくれと言ったらすごく怒られまして、自分がやりたくないのを人に押しつけるなとかと思ったのですね。  指紋押捺の運動は、実は私はほとんどかかわっておりません。気持ちはとてもあったのですけれども、運動としてはかかわったことは全くなかったのですね。  それで、ちょうど会社を立てておりました。そのときに、私のスタッフは国籍日本なんですね。彼らが、いや、うちの社長は日本人じゃないし、外国籍になりますから、うちは治外法権だからというので、来るラーメン屋から始まって、コピーのトナーをかえる人とかいろいろな人たち全部に、あなた日本人か、ちょっと指紋押しなさいと言って、押さないと入れないということをやったのですね。そうしたら、これがまたすごい不評でしたね。こんなにぶうぶう言われて、そんなこと、じゃ、私にやらせるなよと思ったのですが、押してみなければやはりわからないのかもしれません。  十代のときに、警察という職務のある方に恋心を抱かれまして、非常にありがたいなと思ったのですけれども、歩いていて、ちょっと車で乗っていくような距離ではないけれども、暗いところに家がありましたので怖かったので、警察の人がたまたまいたので、ついていってくれるみたいな形で言われたのですね。その後、何も言っていないのに電話がかかってきて、どこで調べたのかよくわかりませんでした。その後に、あの、済みません、こういう電話はもうやめていただけますかと言いましたら、僕は武器を持っているんだとか言われまして、警察官も人間だなと思ったりなんかもしております。  外登法を出したりしたときに、一つ一つ挙げていったらやはり切りがないわけですね。一つ一つは実は大したことではないと思いたいというときもあります。でも、それが蓄積されていくと、やはりすごく疲れちゃうんですね。そんなこんなでやってきました。  私は、警察の対応の中で、一度駐車違反をしたことがありまして、駐車違反をして、そのときに持っていったのですね。そうしたら、すぐ、免許証の次に、じゃ外録出してみたいなことを言われたんですね。警察の中だったのですけれども、じゃ、あなた、警察手帳出してくださいと言った瞬間に、持っていたこういう調書をとるもので頭をぼかんと殴られまして、生意気言うなとか言われて、確かに私の方が犯罪を犯していますから生意気だったのかもしれません。だけれども自分たちは警察手帳を出すべきなんですね。それを私に求めるのであるならば、あなたも警察手帳を出す、これはルールです。でも、私は、彼らは一度として警察手帳を出して何かをしたということはなかったように思います。  警察との関係の話を続けた方がいいですか、それとも……(保坂委員「いや、名前について、辛淑玉さんという」と呼ぶ)名前について。  これは法務省に行ったときの話ですが、私は帰化したいと思いました。というのは、百万回帰化をしたいと思うのですね。それから、帰化した私の周りの朝鮮人たちは威張るんですね、おれは帰化ができる人間だみたいな。結局、自分をそこらにいる朝鮮人とは違うんだよということを誇りたいのかもしれません。  法務省に帰化の手続に行きました。私はうちの顧問弁護士と一緒に行ったのです。そのときに、うちの弁護士から言われたことは、くれぐれもお上に逆らわないようにと言われまして、私もそのつもりで何回も練習しながら行ったのですね。  そうしたら、一番最初に言われたことは、女の人はよく日本人の男と偽装結婚して国籍を手に入れる人がいるとか、そういう話から始まるわけですね。それから、会社を経営していましたので、五年間利益が上がっていないといけないとか、個人的にそういう税金をちゃんと納めていないといけないとかといったことをしこたま言われまして、最後に名前の段階になったのですね。  名前は当用漢字の中にあるものをお使いくださいと言われまして、こういう表みたいなものを見せられて、私は、そうですか、辛もありますし、淑女の淑もありますし、パチンコの玉というものもありますし、この辛淑玉というのがあったので、じゃ、済みません、これでお願いしますと言ったのですね。そうしたら、その担当官の方が、いや、これでは困ると言うのです。でも、当用漢字の中にあるものでしょうと言ったら、いや、これではよき日本人になろうとする意思が感じられないとか言われまして、それで、じゃ何だったら、シンシュクギョクじゃちょっとあれでしたら、カラシヨシタマではどうでしょうかと言ったのですが、そうしたら、何かそれが気に入らなかったみたいで、ぱたぱたと目の前にあった申請書類を全部片づけてしまうのですね。その瞬間に、あなたは帰化する意思が感じられないと言われまして、意思というのは何のことだろうか。  つまり、何を言われても頭を下げて、そして自分人間性も民族心も、民族心というのは、私は在日という少数民族だと認識しておりますので、自分が北朝鮮人でも韓国人でもないという認識を持っております。日本の中の少数民族だという認識を持っていて、その民族性さえ否定されて、法務省から出た瞬間に私の顧問弁護士がたった一言、だから言ったでしょう、お上に逆らうなと。そんなことをずっと続けております。  名前を使っていて不便なことは、経済活動の中の方がもっと多いのです。それは、私なんかがプレゼンテーションに、プレゼンテーションというのはコンペですね、参加しようとして、私の名前で入っていくと、日本の名前にしてくれませんかと言われるのですね。私は、いや、これでやりますというふうに申し上げると、プレゼンから外されたりするわけですね。そうすると、うちの会社の人間たちは、何でそんなことまでしてやらなければいけないのかというふうに言われます。でも、そのときはちょっと私も若かったものですからごり押しをしましたけれども、今だったら吉永小百合とか書いてやろうかなと思うのですけれどもね。やはりそういうのがなかなか自分の中では対応できないのですね。銀行に辛淑玉で行くと、まずもって女ということとそれから朝鮮人だということで、まず窓口は全く相手にしてくれません。  病院に行くと、あ、あちらの方、から始まるわけですね。あ、あんたはこちらの方とか言っているのですけれども、全然意味が通じなかったりして。それで、まず、日本語話せますか。話せますかと言うのですね。今日本語でしゃべっているじゃないかと思うのですけれども日本語話せますかと言われて、それから、保険証が本当に私のものなのかどうなのかといったことの確認があります。その次に、お金が払えますかといったことを聞かれるわけですね。つまり、そういったことの一つ一つというのが、私は二級市民であるということをいつも言われているのだろうなと思います。  最後に、携帯電話の話をさせてください。  私は携帯電話を買おうと思いました。そうしたら先方が、私は免許証も持っていますし、そういう持っているのを出したのですね、そうしたら、済みません、外国人登録登録済み証明書を持ってきてくださいと言われました。携帯電話を隣で高校生が買っているのですよ。私は、おまえに比べたら何百倍も稼いでいると思うわけですね。社会的な信用だって私の方があるに決まっているだろうと思うのですけれども高校生や中学生に比べて、私はきっとそんな社会的認知もないのかもしれません。それで、これではだめですかということで免許証を出しましたら、免許証ではだめですという形で言われます。  そうすると、そのためにわざわざ区役所に行って半日つぶして、つまり、あらゆるものが外国人に対して二重構造なんですね。外国人だからこいつらは逃げるんじゃないか、外国人だからこいつらはお金を払わないんじゃないかといった構造が、それは経済の中でもあるんだろうと思います。それはとりもなおさず、社会の中に、外国人人権を持って生きていない社会がそこにあるからではないでしょうか。
  62. 保坂展人

    ○保坂委員 ありがとうございました。  それでは、続いて朴さんに、ちょっと時間が短くなっていますが。  先ほどずっと、つい最近起きたことも含めてお話をされましたけれども指紋押捺を拒否したことでさまざまな報復的な、逮捕から始まって、再入国申請をまた許可されなかったりとか、さまざまな不利益の扱いがあったわけですね。そういうことが、今原状回復されないままにあるのじゃないかと思うのですけれども、これまでさまざまな体験の中で、この法改正も含めて非常に不十分だという中で、何がそういう停滞を生み出しているとお考えか、そのあたりについてお願いします。
  63. 朴容福

    朴参考人 常時携帯問題で、即時的に身分を把握するという言葉がひとり歩きしておりますけれども、私たち指紋拒否の運動をやっていたころに盛んに言われた言葉というのは、同一人性の確認という言葉なんですね。それは、役所に行っても、あるいは法務省に行っても、あるいは裁判所に行っても、同一人性の確認というこの言葉が金科玉条のごとく語られて、これは一体何なのか、そういう争いでもあったわけです。  それで、指紋の運動の中でこの同一人性の確認という流れを一回整理すると今の御質問にお答えできると思うのですが、こういうことだったのですね。  私らが役所に行って、どうして私らは指紋を押さなくちゃならないのですかと聞くのですね。そうすると、役所の人間は、同一人性の確認のためです、同一人性を確認し、誤りなく本人を特定し、よって公正な管理に資するんだというようなことを言うわけです。つまり、あなたがあなたであることを絶対的に確認しなければならない、それが崩れてしまうと外登法そのものが崩れてしまうんだ、そういう言い分です。そういうふうに言われてみると、私らも、ああそうなのかと。でも、やはり嫌だということで拒否はしたのですが、多くの人間は拒否できなかったのです。それは、同一人性の確認は絶対的なんだというふうに言われてきましたから。  でも、そのときにも、三年ごとあるいは五年ごとに、この指紋とこの指紋を照合して、あなたがあなたであるということを確認しなければならない。もしこれをやめてしまったらどうなるか。外登法そのものが崩れてしまうんだ。ですから照合するこれは絶対的な要件である。もし指紋制度を一回だけにするのだったらば、これは嫌がらせにすぎない、すぎないというのは法務省の役人の関係者が言っていることですね。指紋は一回にしたら機能を果たさないわけですから、何度も何度もとって確認をするんだと。  ところが、それがある日突然一回になってくるのですね。これはどういうわけでしょう。同一人性の確認が一回になってくる。嫌がらせであるはずの一回案が、それも本来日本法律であるはずのこの外登法が、隣の国の韓国の大統領なんかと協議されて、同一人性の確認、その根本が崩れて一回になってしまうというのは、どう考えてもやはりわからないですよ。それで、一回になった。そのときに、指紋制度そのものの根本、その理念というのはもう失われたのですね。失われたというより、自分たち自身で捨て去ってしまったのですよ。  その後、隣の国の大統領とまた協議する中で、またこの法律が変わっていく。永住者はなくなった。ほかの外国人は今後も指紋をとり続けるというふうに存続していく。そうすると、外国人はみんな平等ではないか、平等だから、悪法であれこの法律を課すんだというふうに言っていたのが、ある日突然一回になり、ある日突然あるグループだけもう指紋はいいよというふうになっていく。今度は指紋全廃でしょう。  私らがわからないのは、何となくおぼろげにわかるのは、そのときの状況状況に合わせて自分らの言い分を合わせて言っているなというふうな雰囲気はわかるのですが、そもそも一体何ゆえ指紋制度が必要だったのかという、そのやる側の理念というふうなもの、その根本をこんなに何度も何度も自分たちの方で切り崩していって、どうして外登法そのものがなおかつ成り立つのですか、そこのところなんですね。  だから、今回の常時携帯も一緒ですよ。あるグループは罰金過料になる、あるグループは今後とも残る、そこに一体どういう理屈があるか、そのことが全く我々の方に伝わらないままに、それも別の国とかそういうものと協議する中で変わっていくというこの御都合主義、いや、御都合主義なんてものじゃないですね。御都合主義であっても、それに翻弄される在日思いというふうなものをやはりわかってほしいです。悪法であったら悪法でいいから、ならば悪法を課すなりの理屈というものをやはりちゃんと明示すべきですよ。それを明示しないままにどんどん自分たちの方から根本を変えていく。あきれ果てています。
  64. 保坂展人

    ○保坂委員 もう指紋押捺というものは根拠がなくて、だから撤廃するんだということなら、それによって不愉快な思いやあるいは非常に心を傷つけた在日皆さんにやはり政府としても深くわびるべきだろうし、またそのことを拡大解釈して、いろいろなことを、今に至るまでもその残滓があるというようなことをきちっとこの法務委員会の議論で受けとめながら、また審議していきたいと思います。  ありがとうございました。
  65. 杉浦正健

    杉浦委員長 以上で午前中の参考人に対する質疑は終了いたしました。  各参考人におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十分休憩      ————◇—————     午後一時一分開議
  66. 杉浦正健

    杉浦委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣提出参議院送付外国人登録法の一部を改正する法律案及び出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案の両案を議題とし、午後は、出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案中心に、参考人として関東学院大学大学院教授萩野芳夫君、財団法人入管協会専務理事下野博司君、大阪薫英女子短期大学講師森木和美さん、移住労働者と連帯する全国ネットワーク共同代表渡辺英俊君、以上四名の方々に御出席いただいております。  この際、参考人各位委員会代表して一言ごあいさつを申し上げます。  参考人各位には、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、審査参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いをいたします。  次に、議事の順序について申し上げます。  萩野参考人、下野参考人、森木参考人渡辺参考人の順に、各十五分程度意見をお述べいただき、その後、委員質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。  なお、念のため申し上げますが、発言の際は委員長の許可を得ることになっております。また、参考人委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと存じます。  それでは、まず萩野参考人にお願いいたします。
  67. 萩野芳夫

    ○萩野参考人 萩野でございます。  さきに、申し上げる意見の要旨をお配りしてあると思いますので、それについて簡単に触れながら、さらに敷衍したいと思います。  改正点の第一点、上陸拒否事由に関する規定の整備として、本邦から退去強制された者について、本邦に上陸することができない期間を一年から五年に伸長するものとするという五条第一項九号の改正につきまして、結論としては賛成であります。  その理由は、不法残留などによりまして我が国から一たん退去強制された外国人が、その後再び本邦に入国をして、不法残留などによって再度退去強制されるという事例が増加しているということであります。  確かに、退去強制事由の条項には漠然とした規定も含まれておりまして、問題がないわけではございません。しかし、おおむね、本邦に在留することを肯定することができない外国人の類型を定めているものと言うことができようかと思います。これらの外国人が、退去強制後の短期間、一年というような短期間の間に、その犯した違法行為と完全に無縁な人物になっていると想定することは困難であることは確かであります。  しかし、これは、本邦から退去強制したことについて、やはり行政当局の適正な裁量権の行使があったということが前提となります。いわゆる国際化社会の進展のために、我が国においてもさまざまな外国人がさまざまな形態で在留するようになってきております。日本人と家族関係に入るケースも多いのであります。外国人にとって退去強制というのは極めて重い、刑罰に匹敵する処分に当たることがあります。したがって、ただ違法だというだけで退去強制することは妥当とは言えない場合がある、そういった点を考慮する必要があると考えます。  第二点の、再入国の許可に関する規定の整備といたしまして、再入国の許可の有効期間を一年を超えない範囲内から三年を超えない範囲内に伸長するものとする二十六条三項関係改正、結論といたしまして、私は賛成であります。  国際化社会におきましては、在留外国人の在留期間が長期になりがちであります。そして、国境を越えて動き回るという行為が盛んに行われるようになります。したがって、再入国許可の制度は今日重要な意味を持っております。外国人も本邦以外の国に出かけてまいりまして、かなりな期間滞在する、例えばどこかに留学をするというような事例等々が考えられますが、再び本邦に帰ってくることが重要な生活の一環となっております。  我が国の入管法上は、再入国の可否が専ら法務大臣の裁量にかかっております。この裁量権が、外国人にも基本的には渡航の自由があることの承認の上に、この文章はいささか十分な説明が必要な部分ではありますが、そういう自由の承認の上に適正に行使されることを担保する制度の設置が望ましいと考えます。  第三番目の、罰則の整備であります。  不法入国または不法上陸者が本邦に上陸した後引き続き不法に在留するときは三年以下の懲役もしくは禁錮もしくは三十万円の罰金に処し、またはその懲役もしくは禁錮及び罰金を併科するものとする七十条二項関係改正に、結論的には賛成であります。しかし、これは相当に重い重罰の規定を設けるものでありますので、慎重な検討が必要ではあります。  合法的に上陸または入国しまして在留期間を徒過して残留する行為については罰則存在いたします。ところが、不法に入国もしくは上陸して不法に残留する者に対する刑罰がこれまでは存在しなかったのは確かに片手落ちではありました。しかし、不法入国、不法上陸とは申しますけれども、当該外国人国籍帰属国もしくは前滞在国の事情あるいはその者自身の特別の事情を考慮いたしますと、不法な入国、上陸にも情状酌量すべき余地がある場合が少なくないと考えられます。厳罰が形式に流れないようにする必要があると考えるのであります。  この後、時間が許される限り、敷衍して私の考えているところを申し上げたいと思います。  とりわけて、第三点の、在留そのものが処罰されるということになる点につきましては、場合によりますと、前に、とりわけニクソン大統領の時代に、アメリカにおきまして、何百万人の、いわゆるアムネスティの措置がとられましたが、場合によりますと、そのような措置を考慮、検討する必要が出てくる場合もあり得るかと思います。これは、我が国の制度といたしましては難しいところではありますが。現行制度として考えますと、やはり特在許可の付与を十分に法務大臣において考慮すべきであろうと考えます。  それと、やはりこの不法在留、言うなれば、可罰的な違法性のある不法在留とそれ以外の在留とを区別、判断する、そういう機関ができるのが理想的であろうと考えます。一律に在留すること自体を処罰するということは、今日のいわゆる国際化社会のありようからは妥当なものであると言うことはできません。  したがいまして、具体的な、例えば難民についても、不法に在留するという構成要件該当性はあるわけでありますが、この場合には、難民条約の適用等によりまして別個の取り扱いがなされることになるでありましょうが、しかし、難民の請求をするとかしないとかという問題自体かなりややこしい問題のようであります。  それ以外に、本邦におきまして家族関係、平穏な家庭生活を営むようになったというような人たちの取り扱い、これもやはり十分に考慮しなければならないかと思います。恐らく刑の免除を考えなければならない場合が出てくるのではないかと思います。  不法在留罪の既遂時期につきましては理解できるのでありますけれども、公訴時効がどういうことになるのか、ずっと在留している限り犯罪が継続していくことになるのか。在留を継続していくこと自体が犯罪になるというのは、いかにも国際化社会に逆行する印象があるわけであります。  したがいまして、構成要件該当性が肯定できる場合におきましても、違法性が全くないというような見方もできるケースがあろうかと思います。そのような点について十分配慮が必要ではなかろうかと思います。  今回の改正それなりに理由があったことと思います。しかし、一言私申し上げておきたいことは、制度改革といたしまして、今後我が国におきましても、文字どおりの準司法制度、手続を導入するような方向で立法の御相談をしていっていただければと思うのであります。  この点は、例えば環太平洋のいわば先進国、カナダ、アメリカ、オーストラリア等を見てみますというと、いずれも移民不服審査会といったようなものが設置されておりまして、三者鼎立の制度、つまり、裁判官に当たる審判官、それから検察官に当たる訴追をする人、それから外国人プラス弁護人、弁護人をつける権利が保障されておりますが、私もそれぞれの国でその審査会の見学をさせてもらったことがありますが、文字どおり、司法裁判所における手続と同様な方法で行われておりました。そのような方法を導入する等していただきまして、公正な外国人管理、それを実現していただくような方向、さらに一歩前進して御検討いただければと考えます。  以上です。失礼しました。(拍手)
  68. 杉浦正健

    杉浦委員長 ありがとうございました。  次に、下野参考人にお願いいたします。
  69. 下野博司

    ○下野参考人 御紹介いただきました下野でございます。本日は、このような機会を与えていただきまして、ありがとうございます。  先生方のお手元にA4判二枚のレジュメを差し上げてございますので、基本的にこれに基づいて意見を申し述べさせていただきます。  我が国の出入国管理行政は、憲法の国際協調主義の精神にのっとり、公正に運営されているものと考えます。その基本方針は、我が国と諸外国との経済、文化、スポーツ等の国際的な交流を促進するべく、我が国にとって好ましい外国人はこれをどんどん受け入れるとともに、我が国にとって好ましくない外国人、これは拒否するということであろうと思います。  平成元年出入国管理及び難民認定法が大幅に改正をされまして、在留資格制度が整備拡充されました。これにより、外国人が我が国で稼働できる在留資格が明示されました。この結果、平成元年度には二百四十五万六千人であった外国人の入国者は、平成十年度には四百五十五万七千人に達しておりまして、平成元年に比較いたしますと八五%も増加しております。また、同じく平成元年末に我が国に長期に在留する外国人は九十八万四千人でございましたが、平成十年度末には百五十一万二千人に達しておりまして、これも、平成元年度に比較いたしますと五四%も増加しております。そして、この数は、我が国総人口の一・二%に当たります。このように、我が国の国際化は確実に進展し、国際社会における我が国の地位もますます重要になってきていると考えます。  しかし、その一方で、我が国には、平成十一年一月一日現在で約二十七万人余の不法残留者がいます。この数は、正規の在留者百五十一万と比較いたしましても、これの五分の一に近く、かなり大きな数でございます。そして、これらの人々は、大部分が不法に就労しているわけでございます。我が国と周辺諸国との経済格差、これが非常に大きく、我が国に働く場所があればそこへ来る、そして、そこで不法に就労しても特に厳しい制裁がないということになりますと、これは不法就労を目的とする者を引きつける誘因、プルファクターとして作用すると考えます。  このような観点に立ちまして、今回の改正について申し上げます。  まず、上陸拒否者の上陸拒否期間を一年から五年に伸長するという改正でございますが、昨今、我が国に不法就労している外国人に、繰り返し入国している者、リピーターが非常に増加しているというふうに聞いております。不法就労者にとりまして、我が国の法律が緩やかであれば、これは一つの誘因、プルファクターとして働くということになると思います。現行の一年を五年にするという改正は、この規制が強化されるということで、不法就労に対する一つの抑止力として働くものと考えます。また、諸外国におきましても、多くの国が上陸拒否期間は五年程度になっていると聞いております。  次に、再入国の有効期間を三年に伸長する、そして、場合によってはその期間を本人の在留期間と一致させることができるという改正でございますが、これは、外国人にとりましては極めて適切な改善措置であろうと考えます。特に、経済活動を行っている外国人や永住等の方の子弟で海外に留学している方々、このような人々にとっては朗報であると考えます。  入管協会におきましては、法務省から委託を受けまして、各地の地方入国管理局においてインフォメーションセンターというものを運営しておりますが、そこにおいて、再入国に関する質問等がございます。これは特に、再入国の有効期間が短過ぎるといったことであるとか、再入国期間がうっかりして切れてしまって、急に行かなきゃならなくなったのだけれどもそれに間に合わない、何とかならないかといったことがございました。これが、三年に伸長されるということによって解消されると思います。  最後に、不法入国や不法上陸等によって上陸した者に対する不法在留罪の新設でございます。これは、正規に入国した者が不法残留すれば罰が科せられるのに、不法に入国した者や不法に上陸した者は長期に不法在留していても何の罰もないというのでは、均衡に欠けるのではないかと考えます。また、うまく潜り込んでしまえば、退去強制という行政処分はともかく、何の罰則もないというのでは、これも不法入国のいわゆる誘因の一つになると考えます。  先ほども申しましたが、現在なお二十七万人に及ぶ不法残留者が存在し、これらの人々が不法に就労しているということでございます。また、この不法残留期間も長期化の傾向を見せていると聞いております。そして、こういう人々は、いわゆる日本人のしたがらない、きつい、汚い、危険といった三K労働を中心に従事しているというふうに聞いております。このような職業の二層化というものは、我が国の社会にとりましても好ましいことではないと考えます。この際、この罰則の新設は必要であると考えます。  以上でございます。(拍手)
  70. 杉浦正健

    杉浦委員長 ありがとうございました。  次に、森木参考人にお願いをいたします。
  71. 森木和美

    ○森木参考人 こんにちは。この入管法改定の御審議、どうも御苦労さまです。電話相談が主なのですけれども、ずっとボランティアとして外国人の相談を受けてきた森木和美と申します。ボランティアというか、当事者に近い立場として意見を述べさせていただきます。  私は、今から二十年ほど前に、外国人と結婚をした女性たちで、国際結婚を考える会というのをつくったのです。それは何でつくったかといいますと、当時、二十年前ですから、外国人の配偶者の在留資格というものはなかったわけなんです。それで、私の夫を私が日本に連れてくるときに、許可がおりなかったのですね、日本に住むことができなかったわけなんです。  何度も入管に足を運んで、これはどうしてなんですかというふうに聞きますと、まず、私が女性であるということ、それから、外国人の男性が日本に来られては困る、日本人の男性の就労機会を奪うとかというふうに言われたり、それから、あなたは外国人の男性と結婚したんだから外国へ嫁に行ったんだよというふうに言われまして、随分腹立たしい思いをした記憶があるのですね。  そういうことで、当時、本当に国際結婚というのは数が少なくて、どこに相談を持っていっても、どなたも私が欲しい回答をしてくださる方はいらっしゃらなかったわけです。それで、当事者の女性たちが集まって、国際結婚を考える会というのをつくって、入管の方たちをお招きして勉強会をやって、私たちの事情を御説明申し上げて、そしてやっと、一九八二年だったと思うのですけれども日本人外国人配偶者の在留資格というものができたわけなんです。それから随分長い時間がたちまして、やっと外国人の配偶者に対する在留資格が、日本人の家族として日本に住む権利というようなことで確立してきているのじゃないかと私は思っています。  ところが、日本はそういう段階なんですけれども、外国に目を移してみますと、日本の場合は法律婚だけなんですけれども、外国の場合、例えばオーストラリアの場合なんかでは、事実婚であるとか婚約者のビザであるとか、そういうことも既にありまして、もっと家族という範囲が大きな枠組みでとらえられてきているように思うのです。これからの家族、国境を越えた家族といいますか、家族の形成の自由が国際的に保障される時代を迎えているのだと私は思っています。  ところが、現在御審議中の入管法改定の中身は、こういうような時代の流れに逆行するような内容になっていると思います。外国人と結婚する人が、一九八〇年ではたったの七千人だったのですけれども、一九九七年には二万八千人にもなっています。でもこれは、日本全国でいえば、たったの三%ぐらいしかないのですね。このような法的国際結婚はまだまだ珍しいと言えるかもしれないのですけれども、潜在的な国際結婚、それがかなりの数になるのではないかと思っています。  当事者にしましたら、外国人と結婚するあるいは婚約するということがどういうことなのか、在留資格ということがどんなことなのか、一たん国に帰るとどういうことになるのかということは、あらかじめ知っているということはほとんどないというふうに思うのです。それで私たちの方に相談が来るのですけれども、今回のこの改正案は、このような外国人を含んだ家族の権利といいますか、家族の結合権を直撃して、ひょっとしたら家族が解体するような、結婚が破綻するような、そういう結果を導くおそれさえ私は感じるわけです。  それで、お手元に私のレジュメがあると思いますけれども、今回の入管法改定において提案されている不法在留罪及び被退去強制者に対する上陸拒否期間を一年から五年に延長することによって、外国人を含む家族が今まで以上に不当な扱いを受けることを危惧します。  一九八二年に新設された日本人の配偶者等という在留資格を家族の結合権としてとらえ、これを充実させて、外国人を含むすべての日本国民の家族の安定と幸福を追求していくことが先決であると考えます。  再入国許可の有効期間というものが考えられているのですけれども、これは延長のみにとどまっておりまして、私たちは、いつ廃止されるのか、いつ廃止されるのかと期待しているわけなんです。外国に家族がいるということは、何か急に用事ができてすぐ行かなきゃいけないというときに、再入国許可をとれなければまた戻ってくることができないわけなんですね。ですから、こういう、外国人あるいは家族を拘束するような法律はもう要らないのではないかと思っています。  それから、時間のある限り、私がボランティアとして相談を受けてきたケースケースという言葉はよくないのですけれども、どういうことが起こっているのかをこのレジュメに沿って御説明申し上げたいと思います。  大体、一九九〇年前後は、入管にオーバーステイの人が出頭したときには、もう帰りなさい、一年たったらまた帰ってこられるのだからというふうに入管の方に言われて、ほとんどの人が帰っていたと思うのです。それで、新しい在留特別許可制度、制度でもないのですけれども、こういうものが出てきまして、日本に頑張る人が出てきたわけなんですね。それで、日本にいて在留特別許可を申請しましたならば、これも家族の結合権と言ったらいいのでしょうか、だんだん認められてくるようになって、今は、弁護士さんあるいは私どものような団体がついていけば、ほとんどのケースが在留特別許可で処理されているようにも思うのです。  ところがまた一方で、ここの事例のように、そういう在留特別許可というものがあるというのを全然知らなくて、外国人の夫は帰ってしまったとか、それから、一年で帰ってこれるよと言われたけれども、在留の資格認定証明書を何度も何度も申請して夫を日本に呼び寄せようとしたけれども、そのたびに不許可になってしまう。そして、自分は夫の国にお金のある限り、時間のある限り訪ねていって通い妻をやる、そういうことが起こっているわけです。  これは、私だけがこういう相談を受けたわけではなくて、日本の全国にある支援団体の方たちがこういうことを経験されているわけです。そして、当人たちが頑張らなければ、この許可というものはなかなかおりないというようなことがあるわけです。こういうことが過去のものではないということなんですね。  今、一九九九年の神戸、私は神戸なんですけれども、エジプトの方と結婚されているのですけれども、エジプトに帰りなさいよと言われて帰ってしまった、行政書士の方にも相談したし、いろいろな方にも相談している、お金も使ったという方が私たちのところに来て、現在相談されているわけなんです。  そういった夫婦の問題、それからそのほかに、日本には日系ブラジル人とかペルー人の方たちがたくさんいらっしゃいます。それからベトナム難民の方、そして、そのベトナム難民の方たちと結婚をされた、ベトナムから結婚のためにやってこられた人たち、それから日系の方たち、そういう定住者の在留資格を持っている方たちがいらっしゃいます。その方たちの家族、子供、もう成年になっている人たちがいますけれども、その人たちがちょこちょこ軽犯罪を起こしているわけなんです。  そのために、外国人に対して、軽犯罪が日本では勧告という程度になるのですけれども、起訴をされてしまって、退去強制というような場合にもなりかねないわけなんですね。そういう人たちが本国に帰ってしまったら、今度また日本にいつ帰ってこられるのか。今、一年したら帰ってこられると言っているんだけれども、五年たってしか帰ってこられないということはどういうことなのか、そういう気がしてしようがないのです。  そして、最後の事例としまして、ジャパニーズ・フィリピーノ・チルドレンという、日本とフィリピンの間に、日本人男性が多いのですけれども、フィリピン人女性をほったらかして、そして子供とそのお母さんを退去強制させてしまったという例がたくさんあります。その子供たちの父親探しあるいは父親との結合権、そういう場合に、日本に入ってこれないということは、この子供たち人権というのはどういうことになるのだろうかというふうに思います。  こういうことが何で起こるのかと考えますと、日本は不法入国者が多いとか、オーバーステイの人が多いとかとよく言われますけれども、この多くなる原因をちょっと考えていただきたいんですね。何で多くなるのか。やはり日本はそれだけ閉ざされた国であるし、厳しい国であるわけなんですね。私が経験したように、やっと一九八〇年代になって配偶者資格ができた、そういう国なんですけれども、これからもっと日本が世界的な基準を満たすような、日本もたくさん国際条約、人権国際条約に入っていますけれども、そういう基準を満たすような入管法をつくっていってほしいと思います。  ちょっと時間がないのですけれども、私たちに相談されるのはほんの一部だと思うんですね。その一部の人たちは多分、家族の結合権ということで頑張ると私たちは思うのです。人権という問題で頑張っていくと思うのです。それで大分解決がされてきたと思っています。ところが、全然そういう、私たちと接触がない人たちはどうなっているのでしょうかというふうなことを心配します。  私がお願いしたいことは、今回の改定がもし通ることになるとすれば、家族の結合権というものを権利として入管法の中に明記していただきたいと思っているのです。外国人が犯罪を犯そうが、あるいはオーバーステイになろうが、何をしようがこれは日本人の家族なんだということで、家族としての罰を受け、そしてそれをクリアしていく。そして、日本で家族が安定して幸福を追求していけるように、そういうことが日本国際化になるのじゃないかというふうに思います。  学校で教えていても、国際化って何とよく聞かれるのですけれども、やはりこういう人的な広がりこそ国際化だと思います。このような、今まで頑張ってこられた方たちが獲得された結果をこの入管法の中に組み込んでいっていただいて、そして人権というものが目に見えて私たちにわかるように、そして日本皆さんにわかるように外国人行政をやっていけるような入管法にしていただきたいと思っています。  以上です。(拍手)
  72. 杉浦正健

    杉浦委員長 ありがとうございました。  次に、渡辺参考人にお願いいたします。
  73. 渡辺英俊

    渡辺参考人 渡辺でございます。  きょうの衆議院法務委員会におきまして入管法改定案について意見を申し述べる機会をお与えくださいまして、まことにありがたく存じております。  人権と環境の時代と言われております。そこでは、民間市民団体、いわゆるNGOの働きがますます重要視されるようになってきている世界であります。きょう、人権にかかわる重要な法案の審議に際しまして私どもNGOの意見を聞いてくださるということは、まことに時代にふさわしいことであるというふうに喜んでいる次第であります。  私は、この十二年間、横浜の日雇い労働者の町に事務所を置くカラバオの会という一つの民間ボランティア団体、NGOで、海外から出稼ぎに来る移住労働者権利擁護に取り組んでまいりました。  外国から出稼ぎに来た人たちがストレートに日本社会の最下層と言われる日雇い労働者の町に組み込まれてくる仕組みが既に社会にでき上がっているということ、そして、そこでは日本人の日雇い労働者よりももっと多くの困難や苦しみに遭っているということを見るに見かねて救援の市民グループを結成したわけでありますが、以来十二年余りほとんど休む暇もなく相談活動に追われてまいりました。  しかし、もう一方で、世界のいろいろな地域から異なった文化を持って来ている人々と、いわゆる文化交流というようなきれいごとの世界じゃなくて、毎日飯を食っているという、少し乱暴な言葉で恐縮ですが、そういうレベルで結ばれていくということは、単に助ける助けられるという関係を超えて、もっと深く結ばれ合う機会でもありました。そういう考え方をするのか、そんなうまいものを食べているのか、そういうふうにお互いにびっくりし合う、そういう機会でもありました。  ですから、端的に言って、おもしろかったのです。だから、十二年間ほとんど息切れしないで突っ走ってくることができたのだろう。むしろ私たち自身が活性化されて、そこから元気をもらうことができた。これは日本社会にとって非常に象徴的なことであると私は思います。そういうことができたのだろうと思います。  同じような活動を全国各地で、ほとんど数の把握ができないほどのたくさんの自発的なグループが活動しておりますが、それを結んで移住労働者と連帯する全国ネットワークというものが組織されまして、これまでに九十余りのグループがこれに加盟し、さらに多くのグループと連絡がとれております。  現在、私は、その共同代表の一人として事務局長を兼任しているという事情であります。このような現場での体験と、そして今も全国で展開されている仲間たちの活動を踏まえまして、今回の入管法改定案について思うところを率直に述べさせていただきたいと思います。  一口に、百五十一万人とか、あるいは不法残留二十七万人とかいうふうに言われます。もちろん、それも重要な事実ではありますけれども、それ以上に大切なのは、そこに人間が生きているという事実であると思います。先生方、どうかこのことをぜひ心に刻んでいただきたい。そこに人間が生きているという事実があるということです。  私どもは、海外から日本に働きに来る人たちが急激にふえ始めた一九八〇年代の後半から、この人々が日本で出会う苦しみや権利侵害の相談を受けてきたわけでありますが、何万人というふうな数字の問題としてではなくて、あるいは外国人とか不法残留とか、そういう概念の問題としてではなくて、私たちと同じ血が流れている人間同士として、顔と顔とを合わせてつき合ってまいりました。  そして、救援する側にいる私たち自身がぶつかったのは、この人たちの弱みにつけ込んで、これを食い物にしている日本社会のゆがみということであり、そしてその背景にある法制度の不備と出入国管理政策の問題性ということでありました。  バブルの最盛期のころの真冬の話でありますが、私たちの最寄りの地域で九人のフィリピン人が一どきに入管法違反で集団逮捕されたことがありました。寒さになれない南の地域の人々が拘置所での処遇の厳しさと寒さに参っているところへ私が接見に行きました際に、彼らの一人が私にこういうふうに訴えたのであります。  おれたちがどういう悪いことをしたからこんな目に遭わなくちゃならないのか、横浜ベイブリッジのペンキを塗ったのはだれだと思っているんだ。私はこの言葉に、ごく素朴な、しかし人間の言い分というものがあると思いました。彼は悪いことはしていません。労働基準法が労働者を国籍によって差別してはならないというふうに定めておりますように、国籍の別なく、労働法によって権利を保障された労働に従事してきているということであります。横浜ベイブリッジのペンキを塗ることは犯罪ではありません。これもまた、私ども素朴な人間の感覚の側からの物の見方であるというふうに思います。  そしてもう一つ、ぜひ忘れないでいただきたいのは、彼、彼女たちも、働いて賃金を受けている限りにおいては、所得税その他の税を納めているということです。この人たち日本国民と同じように納税者であるということを決して忘れてはならないと思うのであります。  国家の安全と秩序という大所高所の見方も大切だと思いますけれども、私どものように、日常的な人間の出会いの中で、いわれのない苦しみを受けている人々を見ますと、もっと人間の顔をした政策が欲しいという思いを禁じ得ないのであります。そうでなければ、日本社会の中にあつれきと紛争の種をまき続けることになる、そのことによって、かえって将来の人々の生活の安全と平和を損なう結果になる、このことを私たちは現場から深く憂慮しているのであります。  このような観点から今回の入管法改定案を見ますと、立法目的に見合った効果が期待できないという反面、起こり得る弊害の方が大き過ぎる、そういう改定であるというふうに言わざるを得ないのであります。  まず、再上陸拒否期間の伸長の問題ですが、入管当局が明らかにされた数字で計算してみますと、この条文に該当して再上陸できなくなる人の数は、被退去強制者総数の三%程度、人数にして年間千五百人そこそこであります。千五百人が多いか少ないかという議論はあるかもしれませんけれども、退去強制総数の中で、四万人、五万人という数が出されていますが、その中で当局による摘発数は一割台でしかない。大多数が自主出頭であります。  千五百人をとめられるかもしれない。けれども、年間三万、四万人の自主出頭する人々が、一たん強制退去になったらもう二度と入れないということになったら、もうちょっと頑張ろうかということになって、出るのをやめたらどういうことになるか。この千五百人ぐらいのとめられる数というのはあっという間に消えてしまうでありましょう。逆効果の方が大きいということです。  そしてその反面、この改定は、先ほどから参考人皆さんが指摘されたような人道上、人権上にかかわる重大な弊害を生じます。この点については詳しく述べる時間がありませんので、お手元にお配りしました要旨の中に丁寧に書いてありますので、項目だけ挙げて、割愛させていただきます。  まず第一に、先ほどの森木参考人のお話にもありましたように、日本人日本に在住する外国人との間に家族を形成している人々、その人々が緊急な事情あるいは摘発などによって退去強制の手続で帰国せざるを得なかった場合に、家族が引き裂かれるようになるということであります。  家族の結合というのは明文化された条文によって権利として保障されなければならない。法務大臣の自由裁量で恩恵として人権が守られるというようなことは民主国家にあってはならない、そういうことであると思います。  第二に、賃金未払い、労働災害などの労働法上の権利保障を阻害いたします。賃金未払いのままで強制退去になる、五年間入れない、もう雇う側は賃金踏み倒し得ということになってしまう、こういうことが私たちの身辺では本当にしょっちゅう起こっているわけであります。  それから第三に、このごろ移住外国人の定着性が高まるにつれまして、裁判に訴えなくちゃならないケースというのが非常に多くなってまいりました。その裁判の権利も五年日本に入れなければ保障されることができません。  こういう人道、人権にかかわる重大な弊害が明白である。そして、取り締まりという観点から見てさえ、私どもはそういう観点はとらないのですけれども、そこから見てさえも効果の望めないこの改定をなぜやらなくちゃいけないのか、そのことで私たちは理解に苦しむのであります。  それから、不法在留罪について、私は、これはいろいろな問題がある中で、不法残留とのバランスをとるためにこれがあるという法の理論に関しては、素人として考えてもおかしいというふうに思っているわけであります。つまり、三年も居住しておりますと、ある程度社会関係ができ、家族の形成が行われたりして居住の権利が発生してくる。だから、それとバランスをとるとすれば、今のように不法残留に時効がない、これは時効がないわけでしようがないのですけれども、何らかの措置で、ある程度の期限がたったら不法残留と言われる者の方も刑事罰を免ずるという処置をとる方が人道的にバランスがとれるということではないかと考えるわけであります。  ある家族は、日本にもう十年近く住んでおります。親子がみんなオーバーステイです。子供たちは学校へ行っています。夫婦でよく働いて、日本社会に完全に定着している反面、本国には生活の基盤が全くありません。この家族を強制退去したら、この家族はどうなるんですか、この家族の生存権はどうなるんですか。そのことです。  私は、入管行政にこういう視点を加えていただきたいということを切に願うものであります。そして、こういう日本の現在の、特に法務省の政策の根底に外国人を犯罪と結びつけて考える考え方が強く介在している。これは私の運動の中でさえも、えっ、そんなことあるのと言う人がいるくらいに、外国人は犯罪が多いんだということが一つの日本の常識になってしまっているということについて、その根底には、警察白書の外国人犯罪に関する記述が一つの大きな要因になっているのではないかということ、それをマスコミが広めていくのでそういうことになっていくんじゃないかということであります。  詳しい数字を挙げているいとまはないので、お手元の私のレジュメと、それからお手元の資料をごらんいただきたいと思うのですが、毎年警察白書は、「来日外国人犯罪」という項目を掲げて、その項目のトップに、これは平成九年版、十年版、二つだけを確認してまいりましたけれども、「検挙人員全体に占める来日外国人構成比の高さ」というゴチックの見出しをつけまして、日本の人口の外国人人口構成比は一%である、ところが、検挙数の構成比は一・七%である。つまり、一%の人が一・七%の犯罪を犯している、日本全体としては一・七倍の高さで外国人は犯罪を犯す、こういうわけです。  私は、この割り算には基本的な間違いがあると思っています。つまり、人口構成比一%を出すときに国勢調査の数字を使っています。私ども現場で見ておる者にとっては、国勢調査では外国人の実態はつかめない。外国人の実態を一番よく数字としてとらえていらっしゃるのは入管局であろうと思います。国勢調査の数字を外国人に関して使うのはおかしい。大体百六万人ぐらいの外国人総数、そんなばかなことがあるはずないのです。  私どもの試算で、いわゆる検挙人員に入っている人たちの在留資格をずっと調べていって、それに該当する外国人の数を、これは私どもの手元にある数字ですから相当不正確な部分もあるかもしれませんけれども、大まかにつかんでいくと、大体日本総人口に占める構成比は四%ぐらいになります。四%の人が一・七%の犯罪を犯しているのだとすれば、これは日本人よりもずっと少ないということなんですよ。この辺の事実をもう一回よく見ていただきたいということであります。  多文化・多民族が共生しなければならない時代には、本当に偏見のない目でお互いに見詰め合っていかないと、そこに敵意と恨みを残していく、日本社会に引き裂かれていくということを指摘したいのであります。  最後に、時間が残り少なくなりましたので、私ども人権と取り組んでいるNGOの立場から、政府あるいは国会にぜひお願いしたいこと、第一に、取り締まる側の便宜だけではなくて、さまざまな事情で日本に住んでいる外国人人権の視点から外国人法制を抜本的に見直していただきたいということ。  第二に、既に長く日本で暮らし、日本社会に定着している人たちに対して正規の在留資格を付与していただきたいということ。これはアムネスティという言葉があるかもしれませんけれども、直接には在留特別許可の枠を広げるという形でとりあえず実施できる、そのことをやっていただきたい。  第三に、一九九〇年に国連が採択した移住労働者権利保護条約の批准に向けて検討を始めていただきたい。これは時間がかかると思いますので、今から大急ぎで手をつけないとおくれてしまいます。それをやっていただきたいということであります。  最後一言つけ加えさせていただきたいのは、どうか先生方、法務省と我々NGOの話し合いができるようにひとつ助けていただきたい。現在、政府の省庁の中で私どもとの話し合いに応じていただけないのは法務省でありますが、法務省が一番現場の実態を知ってほしい。どういう人間の現実があるかということを踏まえて外国人行政をしていただきたい。その意味では、ぜひ話し合いの機会を持ちたいと思います。どうぞ、ここにおいでの先生方、そのことの仲介をしてくださいまして、私どもと法務省との話し合いをできるようにしていただきたいということをお願いしたいと思います。  大変お耳ざわりのこともあったと思いますけれども、率直に意見を申し上げさせていただきました。どうもありがとうございます。(拍手)
  74. 杉浦正健

    杉浦委員長 ありがとうございました。  以上で参考人意見の開陳は終わりました。     —————————————
  75. 杉浦正健

    杉浦委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。八代英太君。     〔委員長退席、橘委員長代理着席〕
  76. 八代英太

    ○八代委員 自由民主党の八代英太と申します。よろしくお願いいたします。  きょうは、四人の参考人の皆様、貴重な御意見をお述べいただきまして、ありがとうございます。  実は、私の住んでいるところは北区というところですが、そこには一都九県を包括する入管センターというのがありまして、そこに五百人ぐらいの方々、オーバーステイの方や不法在留というような、こういう方々が、周りにはチケットの販売店なんかもあって、もう日本で十分稼いだ、これから自分の国に帰っていくんだ、こういう人たちがそこでいろいろ手続をして、中には、その中に何日かおられて帰る日を待つ。  そこへ何回か見学に行きますと、子供を抱えた日本の女性と男性とが涙ながらの別れの場面等々にぶち当たったりいたします。もちろん、日本にあこがれて来たというのはわかるけれども、それぞれの国がそれぞれつくっている法律があって、その法律にはいろいろ問題点があるかもしれないけれども、やはりそのルールの中で、なぜこの人はもっとそういうことをわきまえつつ日本で過ごされなかったのかな、そういうことが、何とも悲しい場面に遭遇をいたしました。  日本がこんなに豊かでなければ、恐らく日本に出稼ぎに来ようなどという思いは持つ人は少ないと思いますし、また、日本からこの国が嫌だといってよその国に亡命をしたという話も余り聞いたことありません。日本になら行きたい、それが年々見られているように、船舶を利用したり、いろいろな形での不法入国ということがまた大きな社会問題にもなっておりまして、私の周りの警察署の留置場には、三割から四割ぐらいの方々は、今外国の方がおられる。入管センターそのものが五百人の定員ですから、どうにもならないということもあるでしょう。  そんなことを地域の中で見ていきますと、確かに国際化ということは重要な視点ではあるにいたしましても、やはり国際社会でお互いにそれぞれの国の法律を尊重し合う、その法律がいいか悪いかはそれぞれの国で議論をしていくのは当然なんだけれども、そういう中に、我々も外国へ行ったとき、ビザが要るところの国と要らない国がある。それはその国同士の取り決めでありますから、それはお互いに守っていくルールではないのかなという思いもするわけです。  そこで、皆さんにお伺いしたいんですが、そういうにせパスポートとかいろいろなことを行使して、あるいはそういう組織も一方ではあったりしながら、不法入国者がふえる傾向にあるという現実に対して、今度の法律はある程度厳しく対応していく、こういうことになっているわけですね。その点について皆さんはどんなふうにお感じになっておられるか。萩野先生から伺いたいと思います。
  77. 萩野芳夫

    ○萩野参考人 大変恐縮です。最後のポイントはどういうことですか。
  78. 八代英太

    ○八代委員 つまり、不法入国者に対して厳正に対応しよう、厳正という言葉がいいかどうかはわかりませんが、こういうものがこの法律の中にはございますね。これに対してどう思うか。
  79. 萩野芳夫

    ○萩野参考人 今回の改正につきまして私は賛成意見を申し上げたんですが、その点につきまして、やはり今日、刑罰を科すようなシステムにしなければいけない状況があるのだろうと思います。  ただ、それにもかかわらず、私は先ほども申し上げましたけれども、厳罰だけでは済まないであろうというふうに思っております。
  80. 八代英太

    ○八代委員 わかりました。  では、順番にいかがでしょうか。ちょっと質問が穴があるかもしれませんが、どうぞ。
  81. 下野博司

    ○下野参考人 下野でございます。  ただいまの御意見でございますが、私も先ほどの意見陳述で申し上げましたとおり、改正は必要であると考えます。  要するに、我が国に入国しやすいというプルファクター、日本の規制が緩やかである、そして日本に働く場所があるということが一つの大きな原因であろうと思います。そういうことを今回の改正によりまして多少とも厳しくするという方向の改正でございます。これは一つの抑止力として働くというふうに考えます。  もちろん、先ほどほかの参考人方々が申しておりましたような、いわゆる日本人と結合したような方々、こういう方々については入管行政は従来もいわゆる在留特別許可であるとか上陸特別許可という形で救済していると思いますので、そういう面は十分賄えられていると考えております。  以上でございます。
  82. 八代英太

    ○八代委員 では、あとのお二方には違う視点から。  つまり、オーバーステイなんかをしてしまう、そういう人たちの心理的な悩みみたいなものもいろいろ御相談の対象になるだろうと思うんですね。  先ほど渡辺先生がおっしゃったように、私たちと同じ血が流れている、そういう人たちであればこそ、一緒に国際化の中で共生するという道はお互いに持ちたいものなのだけれども、やはり裏の部分で、また日の当たるところに出ない形でいる人たちの心理状態といいますか、私はそういうものもはかり知れないものもあろうかと思うんです。その辺も含めて、お二方に、オーバーステイをした人たちの御相談の中での心理状況のようなものは、例えば、いつ見つかるんだとか、いや、おれは見つかっても平気なのだ、稼ぐだけ稼いで帰るんだとか、あるいは子供が生まれちゃった、どうしようとか、いろいろな悩み事があるだろうと思いますが、その辺はどうでしょうか。
  83. 森木和美

    ○森木参考人 いろいろな場合がありまして、エンターテイナーで日本に来て、ある男性とめぐり会って、同居をして、そして子供ができてしまうというような場合もありますし、あるいはまた労働、研修などのために日本に来て、そして日本人とめぐり会って交際をするというような場合もありますでしょうし、さまざまなケースがありますけれども、ここで当事者の方たちの相談を受けるときに、罪の意識というのが非常に大きいんです。罪の意識があるんだけれども、でも日本人と家族をつくっている。だから、その罪の意識があるために、入管でいろいろな取り調べを受けて、退去強制命令が出て、これはもう仕方がないから、罪を償うために国に帰る、待っていてくれというような形で、一たん帰るわけですね。  ところが、一年たっても、こっちにいる妻は、あるいは夫は在留資格認定証明書を出して相手を呼ぶのですけれども、その許可が出ないわけですね。それはなぜかといったら、起訴をされて一年以上の懲役を受けている、執行猶予四年とかがあるわけです。そういうことがない場合、自主出頭をして、そしてみずから強制退去になるとかというような場合は、ひょっとしたら一年以内、一年をたったら来れている場合もあります。  だけれども、その罪の意識というものが人権感覚を鈍くしていると思うんです。それで、悪いことをしたということを償うために帰るんだけれども日本に残してきた妻や夫や子供というものとの結合権というのはやはり認められるべきだと思うんです。行ったり来たりということができることが当然の今の世の中じゃないかなというふうに思います。  ですから、犯罪を犯している人たちの意識というのは、大きな犯罪を犯しているという人の場合は全然わかりませんけれども、オーバーステイというものは、これは国のルールが余りにも厳しい。フランスなんかは結婚したらすぐ在留資格が出るわけなんです。アメリカなんかでもそうです、グリーンカード。ところが、日本は本当に厳しい。だからオーバーステイになってしまうという、何か悪循環といいますか……。  ですから、罪の意識というのは確かにありますけれども、オーバーステイということは悪いことだけれども、でも自分は家族のために稼いでいたのだし、そこでまた日本の家族とのめぐり会いもあったのだから、どうか日本に生活させてくれ、そういうような意識だと思います。これでよろしいでしょうか。
  84. 渡辺英俊

    渡辺参考人 少しお答えしやすいように言いかえていただきましたので、お答えしやすいと思います。  一つは、最初の方の御質問とも関連してでありますが、法は法なのだから従わなくちゃというのは、原則として私もそのとおりでありまして、一市民といたしまして法を破ってもよろしいというふうには思っていないわけであります。  ただ、私は日常的に救援活動をしておりますと、労働法上の権利侵害、労働法は先ほど申しましたように国籍による差別を禁止しておりますから、平等に権利が保障されるわけですね。つまり、労働法上保障される。つまり、犯罪を犯しているのではないけれども、日常的に入管法に違反しているというこの状態、これが一つの矛盾として日本社会全体の中に走っているのではないかというふうに思うんです。  私どもは日常的につき合っておりまして、本当に感じとして悪いことは何もしていないわけですから、何でこの人たちが罰せられなければならないかというのは素朴な一市民の感覚として持ちます。  それから、この十二年間、いろいろなことを調べてみましたが、やはり法律に無理がある。入管法という法律は八二年にできていますけれども、その骨格は五一年の最後のポツダム政令でつくられた入管令でしたでしょうか、そこで骨格ができているものでありますから、その時代のものがこの国際化時代にずっとそのまま同じような骨格で今もって続いているというところに問題があって、人の流れがこんなに、年間四百五十五万人という人が日本に入国するような状態の中でもこのことが出てくる。  そういう現実と合わない法律のしわ寄せがどこに行くかというと、もちろん第一には、やむを得ない事情でもって日本に来ざるを得ない外国人当事者に及ぶのと同時に、もう一つは、その窓口の担当官が物すごいヘビーだと思います。こんな無理をしている、時々御同情申し上げるわけですけれども。  つまり、法そのものに無理がありはしないかということです。したがって、また今回も取り締まりという視点からだけ法改定が行われていくということに対して、私どもは疑問を持つわけです。  というのは、九〇年の改定のとき、カラバオの会としては、大変なパニックに陥った人たちを静めるのに、私ども市民団体が二本の電話で三カ月間鳴りっ放しという状態で電話相談を受けなかったら、多分入管の職員の中に過労死者が出ただろうと私たちは内心思っているのですけれども、そういう無理な取り締まり重点だけの改定を重ねてきた。  今回は、そのどちらもほとんど効果がない。一年を五年の伸長の方は、先ほど、千五百人くらい、それよりも逆効果の方が大きくて帳消しになるだろうと申しましたが、不法在留罪を設けても、実際に裁判にかけられて有罪判決を受けるというふうなところまでいく人がどれだけいるのだろうかということです。そうすればいいということじゃないのですけれども、何人これでかけることができるのだろうか。抑止効果とおっしゃいますけれども、入国に対する抑止効果は出るかもしれませんけれども、逆に、先ほど言いましたように、出国に対する抑止効果の方が大きい。出られなくなってしまうだろうという問題があると思っております。  それで、精神的な問題ですが、私は、五年、十年日本におりまして、日本社会生活を営んでいる、先ほど言いましたように税金もちゃんと納めている、そういう人たちが、もう日本社会にしか生きる場所がないのだけれども、あすにも警察なり入管なりに捕まって送り返されるかもしれない、そうすると、本国に帰ったら生活の基盤は全くない、こういう不安な状態にいつまでも置いておくというのは非人道的なことだろうと思います。本人が法律に違反したのだから悪いだろう、そういうことじゃないと思います。  ですから、その辺については、やはり取り締まりを強化するという法律、私ども反対ですけれども、それはやってもほとんど効果ないだろうということは予測しておりますが、それ以上に、やはりもう少し人間の顔をした政策をとっていただきたい、人間というものを見ていただきたいというのが私どもの願いであります。  ありがとうございました。
  85. 八代英太

    ○八代委員 もっとたくさん聞きたいところですが、与えられた時間が過ぎてしまいまして、大変参考になりました。  きょうはどうもありがとうございました。
  86. 橘康太郎

    ○橘委員長代理 坂上富男君。
  87. 坂上富男

    ○坂上委員 坂上富男でございます。  参考人先生方、お忙しいところ、また大変貴重な御意見を、勉強させてもらいながら拝聴しておりました。少し問題点について御意見も賜れればありがたい、こう思っております。  まず、学者であられます萩野先生にお聞きをいたしたいと思います。  私が以下質問することは、先般本会議場におきまして入管法に関して、総理大臣を中心にして質問したことに対する答弁に基づくものでございます。率直に言って、私は、小渕総理大臣の御答弁は到底納得できるものではありません。しかも、事の認識が非常に浅かったのじゃなかろうか、私はこう思っておるわけでございまして、こういう観点から、学者の立場としての先生にお聞きをしたい、こう実は思っております。  と申し上げますのは、私は、我が国の憲法が国際協調主義を高らかにうたい上げて、国際社会において名誉ある地位を占めたいと思うということまで憲法の中に決意をしているのですね。そこで、同じく憲法のところに、日本が締結した条約及び確立された国際法規約は誠実に遵守することを世界に宣言をしている。こういう憲法を私たちは誇りにしておるわけでございます。  しかし、さっきも少しお話がありましたが、本法の二十六条、いわゆる日本から出国をする外国人の皆様方は、事前に法務大臣の許可を得なければ帰ってくるという保証がないのですね。だものだから、外国に所用があって出ていきたいけれども、帰るに帰れないという事態が多く起きる、こういうことを御心配になって出国されない人たちが相当たくさんおるのじゃなかろうか、こう思っておるわけであります。  そこで、先生、国連規約人権委員会が、いわゆる再入国許可制度について、第四回の勧告の中で、これは人権規約に違反する、そして、その制度について、日本政府に、日本で出生した在日韓国朝鮮人の人々のような永住者には、事前の再入国許可は、これを取り除くべきである、こういう勧告をしているのですね。だから、早くこれを直しなさい、こう言っておるわけでございますが、この点、先生はどういうふうにお考えになっておるのでございましょうか。
  88. 萩野芳夫

    ○萩野参考人 実は、私は、再入国の問題につきましては、何年前か記憶いたしません、何十年か前から、そういう再入国の自由を外国人に認めるべきだということを主張してきております。  ただ、そうは申しましても、その時々における国の状況があります。それから、基本的な制度そのものの問題があります。そういったような制約がございますけれども、ただいま御指摘のような日本国憲法の基本的な精神、それから国際人権規約等に表現されている人権の考え方、これはできるだけ早く日本にも導入していただきたい、それを実現するような方向で制度改正が行われるべきだという考えは持っております。
  89. 坂上富男

    ○坂上委員 次に、下野先生にお聞きをいたします。  先生は、結構実務もなさっておるのでございましょうか。  一つは、私は、入管の皆様方が大変労働過重になっているのではなかろうか、反面、職員の皆様方の手が足りないのじゃないか、もっと職員の人をまずふやすということがこの行政の基本的な問題だろうと思うのです。幾ら刑罰を強くしても重くしても、これはちっとも効果がないと私は思っているのです。本当に、国際協調主義をうたう我が日本の憲法においては、まことに単純なことなんですが、職員の人をそれこそ倍増すれば、よほどいろいろのいざこざは解決することの一つになるのだろうと私は思っているわけであります。  だから、その働く皆様方からいつも陳情を受けます。そして、請願を出します。請願は採択になります。しかし、年間にふやすことのできるのは、本当に二けたの数字まで行かないのじゃないかと思うぐらいの増員なんですね。だから、私は、これはどうしてもこの際ふやしていただかなければならぬ大きな問題だと思うのですが、実務上の立場から、まずどのようにお考えになっておられるか。  もう一つですが、このさっきの人権規約委員会は、こう言っているのですね。調査及び救済のため警察及び出入国管理当局による不適正な処遇に対する申し立てを行うことができる独立した当局が存在しないことを大変懸念しておる、心配しておる、委員会はそのような独立した機関が締結国日本により遅滞なく設置されることを勧告すると言っておるのであります。  今の日本には外国人の収容に関し独立した調査権を持つ第三者機関設置が必要だと私は思っておるのでございますが、なかなか日本はこの勧告に従おうといたしません。いろいろ入国にあるいは出国に関連をいたしまして問題があるものですから、やはり第三者機関が救済機関として、異議申し立てについて独立した機関としてしてやることは、この人権委員会からも勧告を受けているわけでございますが、総理大臣は、その必要がない、もう一生懸命やっておりますから、重々あれしていますからと。それは、自分が判断したことをやはり冷静な第三者から判断してもらうということは、私は必要だと思っているわけです。ましてや公正という立場から考え、また国際協調という立場から考えても、そういう救済機関が入管の上に設置されておってしかるべきなんじゃなかろうか、こう思っておるわけでございますが、この二点、先生、実務上から見ていかがですか。     〔橘委員長代理退席、委員長着席〕
  90. 下野博司

    ○下野参考人 まず第一点でございますが、先生の御発言、入管当局にとりましてはまことに心強い力添えになると存じます。  現在、私の記憶では、定員が二千五百ちょっとだろうと思います。例えば正規の業務が現在百何十万件かございますが、これはそれがまだ半分ぐらいのときの定員から余り増員がなされていない、そしてそれに対していろいろな簡易化措置でありますとか省力化を経まして、現在ようやくそういう面をカバーしていると思います。  また、不正規の手続につきましては、これは一応、外国人人権擁護するという観点から、いわゆる三審制度と申しますか、入国警備官の調査それから入国審査官の審査、特別審理官の口頭審理、それに基づいて法務大臣の裁決というふうな手続になっておりまして、極めて慎重な手続になっておりますので、この面のいわゆる省力化というものはかなり困難であろうかと思います。ですから、今二十七万人余の不法残留者がいるわけですけれども、警備の手当ての方が一層なされればこの方の解決にも一助になると考えます。  また第二点でございますが、今申し上げたことと関連いたしますが、アメリカにはいわゆるイミグレーションジャッジという制度がございます。しかし、我が国におきましては、ただいま申し上げましたように極めて厳格な、人権を配慮したいわゆる退去手続をとっているということから、現在まではそれで一応機能しているというふうに思います。  ただ、将来の課題といたしまして、そういう制度を設けることも、これは考慮される一つの新しい制度ではないかと考えます。  以上でございます。
  91. 坂上富男

    ○坂上委員 人権委員会勧告しておるわけでございますし、今まだその必要性は必ずしも緊急でない、こういう見方も総理大臣の答弁だったんでございますが、これはやはり管理する者の立場から見た言葉なんです。管理されるようじゃ困るんですが、本当に外国人方々立場を、人権を重んずるならば、これは必要なんですね。  だものですから、人権委員会が第三者機関の設置を要求している、勧告をしておる。これが二〇〇二年までに日本が回答しなければならぬことの一つにもなっているわけでございますが、これは私自身、本当に大事な問題なんじゃなかろうか、こう思っておるわけでございます。  それから、今度、森木先生でございます。  おっしゃいますとおり、この入管法時代の流れに逆行するんじゃなかろうか、私もそのとおりだと思っています。そのとおりだと思っておりますので、まさにここに書かれておりますところの強制退去後入国を五年間禁止するとか、あるいは不退去罪でしたか、不法在留といいますか、それについての時効をなくするなんというのは、入管というのは規制緩和が、徐々にではありますが、午前中あったんですが、まさに一つ一つ階段を上がっていくように、私は上がっていくというよりもおりていった方がいいんじゃないかと思うんですが、階段をおりていくように緩和されてきたんですね。  これが今回に限り、何でこうやって逆行するような、刑罰をもって臨んだり入国を制限する、しかも、おっしゃるとおり家族が崩壊するじゃないか。こういうのをなぜなんだろうかということを実は考え続けているんでございますが、あるいは、ガイドラインによるところの周辺事態に問題が起きまして難民の皆さんもお出かけになる、いろいろなことを、日本政府はもうだめだというようなことから、まさに逆行するように私はこの法律を考えておられるんじゃなかろうかと非常に気にしておることなんでございます。  そこで、いかがでございましょうか、不法滞留罪、この時効をなくするということですね。数年間家族と一緒で、そして隣近所と仲よくして、法律を犯したとんでもない人だなんてだれも思わない状況がずっと続いてきて、ある日突然逮捕されて引っ張られて、あげくの果ては裁判にかけられて国外追放されるというような事態、まさに家族崩壊の状態になるんじゃなかろうか、私はこう思っておりまして、こんなことをしたってちっとも私は心配していることが改善されるとは思わないんでございますが、先生、どんな感じですか。
  92. 森木和美

    ○森木参考人 おっしゃるとおりです。  今から五十年前に国際人権宣言というのができて、その十六条に、成年の男女は、人種、国籍または宗教によるいかなる制限をも受けることなく、婚姻し、かつ家庭をつくる権利を有するということがあったりとか、家族は、社会の自然かつ基礎的な集団単位であって、社会及び国の保護を受ける権利を有するという非常に基本的な宣言が今から五十年前にされているわけなんですけれども、これを私たちのこの国が覆そうとする試みなんです、今回の入管法改正というのは。  それで、もし犯罪防止とか不法残留防止とかということをお考えになるのであれば、まずそういう家族のこと、日本人外国人配偶者あるいは子供、あるいはその周辺の、これは法律的な婚姻をしていない場合なんかも含まれると思いますけれども、婚外子の問題とか、そういう日本人がつくってきた家族の権利というものをまず入管法の中で確立して、それから今のようなことをお考えになってほしいというふうに思います。
  93. 坂上富男

    ○坂上委員 最後でございます。渡辺参考人にお聞きをいたします。  学者の萩野先生もおっしゃったんでございますが、構成要件に該当したからといって違法阻却を忘れてはならないという御指摘、非常に貴重な学者の意見でございまして、私もそれには賛成です。本来的に、この不法滞在罪を新設すること、これは根本的に反対でございますので、そういう気持ちを持っております。  特に、こういう点はどういうふうにお考えになっておりましょうか。外国人の法制の抜本的な見直しについてでございます。さっきもお話があったんでございますが、この抜本的な見直しはやはり早晩やらなければならないと思っておりますが、もう一度問題点で、項目別でも結構でございますが、お話をいただいて終わりにしたい、こう思います。
  94. 渡辺英俊

    渡辺参考人 大変大きな御質問でありますけれども、また、根本的な大事な点をお尋ねくださいましてありがとうございます。  私は、現在の外国人法制、特に入管法の方がそうだと思いますけれども、ともかく不法ということで人間を見る。私はむしろ、実際につき合っている側から思いますと、この法律そのものが影におびえた法律だというふうに思っております。悪い人たちが来ているんじゃない、まじめに働いて、横浜ベイブリッジのペンキを塗ったりしている、そういう人たちがいるんだという、このことを前提にして、この人たち日本人日本社会の中でどういうふうに仲よく暮らしていくかという観点から、もう一回法律体系全体を見直していく必要があるだろうというふうに思います。  そこへの具体的なステップといたしまして、私は、今二十七万人いるオーバーステイの人たちの中で、日本社会に定着性の高い人たちについては在留資格を認めていくということが、アムネスティというのは相当大がかりなものになるかもしれませんけれども、とりあえずは在留特別許可を少し枠を広げていくというふうなところから、少しずつ変えていくということが一つはあると思います。  先ほど先生、入管の人数を増員したらというお話でしたけれども、お言葉を返すようで恐縮ですが、私は、今の二十七万人を劇的に減らす妙手が二つあると思っております。  一点は、今言いました、日本社会に定着している人たちについては、違法だ違法だといつまでも言わないで、一緒にやろうじゃないかというふうに言って在留資格を付与していく。それで数万人、あるいは全部いなくなるかもしれませんが、随分減るだろう。  それからもう一つは、実際に、実態の側から申しますと、この不景気で仕事がなくなって、帰りたいという人たちがたくさんいるんです。これは事実です。ところが、帰りの旅費がない。ですから、増員するよりは、この人たちの帰りの旅費は一定期間政府が負担するから、帰りたい人は来てごらんなさいと言うと、私どもの感触では相当数の人たちが帰国するんじゃないか。これはドイツがトルコ人の帰国を進めるときにやったことがあるわけでして、そんなにお金を惜しまなくても、入管の職員を一人二人ふやすよりは、そちらの方がずっと安上がりだろう……笑い事でなしに。  ですから、私は、影におびえて、違法性をとがめる必要のない人たちを違法違法と言っていることによって、それで人が必要、お金も必要という形で、随分お金と労力のむだ遣いを日本政府はしているんじゃないか。私ども日ごろからつき合っている側からいいますと、そういう感じがいたします。  最後に、将来的なことですが、私先ほど申しましたように、移住労働者権利条約、ああいうふうな条約をきちんと批准するために国内法体制を整えていくというところから法の一つ一つを整備していくということが言えるんじゃないだろうか。それから、外国人基本法というふうな法律を私どもNGOの仲間が用意しておりますけれども、そういうふうなものをぜひ検討してくださって、あるべき将来的なビジョンといいましょうか、けさの朴さんのお話の中にもありましたように、ビジョンというものをやはり国会そのものが自分たちで見出していっていただきたいという願いを強く持っております。
  95. 坂上富男

    ○坂上委員 どうも、大変ありがとうございました。
  96. 杉浦正健

    杉浦委員長 次に、漆原良夫君。
  97. 漆原良夫

    ○漆原委員 公明党・改革クラブの漆原でございます。  きょうは、四人の先生方、大変貴重な意見を大変にありがとうございました。  今までの話をお聞きして総括しますと、大きく、まず不法残留者をどうするかあるいは不法入国者をどうするかという防止策の視点と、もう一つは、家族の結合権、あるいは、渡辺参考人のおっしゃった、同じ人間なんだという観点からの政策、こういう視点の違いによって参考人の皆様の意見が二つずつに分かれたかな、こんな印象を持っております。  そこで、まず森木参考人渡辺参考人にお尋ねしたいんです。  不法残留者、二十七万人いる。また、不法入国者も、平成九年度では千四百六十三人いた。また平成十年では千五十二名いた。こういう事実と、これに対する防止策について、どのようにお考えになっているのか、まずお尋ねをしたいと思います。
  98. 森木和美

    ○森木参考人 私は為政者ではないので、防止策を具体的にどうすればいいかというのを考えたことはないんですけれども、私の感じからすれば、当然在留資格があってしかるべき人であっても在留資格が付与されないという人が結構いると思うんです。日本人と結婚されている方、あるいは日本人のお子さんを育てていらっしゃる方、そういう方たち、今オーバーステイの方でない、超過滞在になっていらっしゃらない方たちは、入管法の中できちんと在留資格が決められておりますけれども、在留資格を取得するのは非常に難しくて、国際結婚の場合でも、結婚式の写真を持っていらっしゃいとか、両親は賛成しているんですかとか、いろいろな書類を出さなければ配偶者のビザは出ないということがあるんです。そういうことをもう少し緩和していく、在留資格を与えていくということが一つの解決策になると思います。  ですから、今現在超過滞在になっていても、日本人の家族という観点を重要視して在留資格を与えていくということで、かなりの数が合法化されるんじゃないかと思っております。
  99. 渡辺英俊

    渡辺参考人 防止策というお話でありましたが、私は、入管法を厳しくして、そしていわゆる不法の人たちがふえるのを防止するという方策は、一九九〇年の段階で破綻したというふうに思っております。  それは、御存じのように、不法就労助長罪が設けられて、そして連日何千人という、帰国を急ぐ、特にパキスタン、バングラデシュの人たちの群れが入管に殺到した時期、先ほどちょっと私、私どもも幾らか貢献している、そうでなかったら過労死者が出たかもしれない、そういう事態のときに、それまで年々オーバーステイの人が増加傾向でありましたが、八九年から九〇年にかけて、十万人台でちょっと横ばいになった時期がありました。そのときに入管当局は、聞くところによりますと、ほら、抑止策で抑止効果が出た、こういうふうにおっしゃったというふうに伝え聞いております、真偽のほどは確認しておりませんけれども。  それに対して私どもは、冗談じゃないよと。この八九年から九〇年にかけての時期というのは、南米から日系人を二十万人規模で導入した時期だった。二十万人の人間を動かすのに、政府は指一本動かさないで、在留許可を与えただけだ。あとは全部ブローカーに任せたという状態で、二十万人近い、当時十七、八万人と言われておりました、そういう人たちが一挙に入ってきました。私たちは、オーバーステイが横ばいになったのはそのせいだ、だから、向こうから来る人が来尽くしてしまえば、その後、今度は急激にまたオーバーステイの人がふえるだろうというふうに予測しておりました。そのとおりになりました。九一年から、ほとんど一カ月一万人の規模でどんどんふえていきました。つまり、入管法を改定してオーバーステイの人が減るということは望めないことであります。  最近少し減りぎみです。横ばいながら減りぎみです。これはそのとおりでありますが、では何で減りぎみかというと、バブルの崩壊でどんどん首になっていきます。つまり、オーバーステイの人がふえたり減ったりするというのは、入管法が厳しくなったから、あるいは緩んだからということとほとんど関係なくて、いわば一種の市場原理、労働力の市場原理と言ったらいいでしょうか、そういうものによって動いております。だから、経済の原理で動いているものを一片の法律でとめようという考え方が無理だと思っています。  それで、具体的な点で、先ほどオーバーステイを減らす妙手というふうに申しましたが、それはさっき申したとおりですが、不法上陸と言われるものについては、やはり中国からの人が多い。これにはこれの特殊な事情があるだろう。つまり、中国は出国そのもの、パスポートそのものを手に入れることが非常に難しいので、ああいう形で出国せざるを得ない。出国側の事情によるだろうということもありますので、私は、日本側の法律を厳しくしてこれを抑止するということは不可能だろう。  不可能といいますのは、つまり、出入り口をちゃんと、人がこんにちはと言って出入りできる玄関をあけておけば、そちらからきちんと入ってくるだろう。そこが閉まっているから、全然別のところから無理して入らなきゃならないという事情が起こってくるというふうに分析しておりますので、防止策ということについては余り考えておりません。
  100. 漆原良夫

    ○漆原委員 それでは萩野参考人と下野参考人に、今回の法改正は、家族の結合権を侵害するものではないかという反論があるわけなんですが、その点について、結合権なりそういうものを侵害するものではないのかどうか、御意見があったらお尋ねしたいと思います。
  101. 萩野芳夫

    ○萩野参考人 やはり、運営の仕方によりましてはいわゆる家族結合権に対する侵害になり得ると思います。  ただ、それにもかかわらず私は改正賛成いたしましたのは、幾つかの条件を満たした場合にはそういう侵害が起こらなくて済むんではないかという考え方からでした。
  102. 下野博司

    ○下野参考人 ファミリーリユニオンという観点でございますが、入管法におきましては、いわゆる救済措置といたしまして在留特別許可でありますとか上陸特別許可という制度をとっております。そして、従来とも、日本人との結婚あるいは家族を形成した場合、ほとんどの場合が在留特別許可になっていると思います。私自身の経験からも大体そういう扱いがなされてきたと思います。ですから、特に今おっしゃるような家族の再結合に対して反するということはございませんと、そのように考えます。
  103. 漆原良夫

    ○漆原委員 次に移りたいと思います。  再入国の許可制度について、先ほど森木参考人の方から、本来廃止すべきなんだという御意見が述べられました。少なくとも永住者及び特別永住者の方については廃止すべきではないかというたくさんの意見がございます。これについては先ほど萩野参考人はお答えいただいたんですが、今度は下野参考人渡辺参考人意見をお尋ねしたいと思います。できるだけ短くお願いします。
  104. 下野博司

    ○下野参考人 外国人の入国というものが一応国の裁量権に基づいているということから考えますと、現在のままでは、やはり日本人と同様に自由に出入りするというのが一つ問題ではないかと思います。  ただ、法制度を改正してそのようにするということであれば、それはそれでよろしいのではないかと思います。
  105. 渡辺英俊

    渡辺参考人 私は、永住者特別永住者、つまり日本に一生住むことが認められている人については、これは本当に国連の人権委員会勧告が正しい、一刻も早くそれに従うべきだというふうに考えております。  ただ、そのほかの新しい、年限の限られている外国人に関しては、私どもそこまで考えがいきませんで、在留資格さえない人たちの問題をどうするかというところで格闘しておりますので、その辺についてはまだ十分考えておりません。
  106. 漆原良夫

    ○漆原委員 不法滞在罪という新しい犯罪が今回新設されるわけでございますけれども、これについてお尋ねしたいと思います。  渡辺参考人の方から、レジュメの中で、この退去強制の一割が摘発によるものなんだ、大半が自主出頭であるというふうな箇所がありました。この不法滞在罪という新しい罪ができることによって自主出頭に与える影響があるのかないのか。あるいは、今まで犯罪ではなかったんだから、ある意味では、悪く言えば稼いで、帰りたいと思えば入管に行って帰った。しかし、今度は犯罪になるわけですから、出頭するに出頭できない。場合によっては、悪い言葉で言うと地下に潜ってしまうという、こんな危険性もあるのかなというふうに私は心配しておるんですが、この点、渡辺参考人はいかがな感想をお持ちでしょうか。
  107. 渡辺英俊

    渡辺参考人 これは、先ほどの一年から五年に伸長するときと全く同じことが言えると思うんですが、一年たてばまた帰れるという状態であれば、一年頑張ってまた来ようかというふうになれるんですけれども、一方でそれが不可能になる。それからもう一つは、不法入国で私どもに接する場合には、偽造パスポートで入ってくる人の場合が多いわけですけれども、そういう人たちの場合、そう言って出頭したら、今までは強制退去だけだったのが、退去しても今度はもう一回来れない、さらにそれが刑事罰になるということになると、これは辛抱してもう少し頑張ろうかというふうになる。これが当然だというふうに考えておりますから、私は逆効果の方が大きいというふうに考えております。
  108. 漆原良夫

    ○漆原委員 萩野参考人と下野参考人に同じことをお尋ねしたいんですが、逆効果になるという渡辺参考人の御意見なんですが、それについてどう思われるかということと、もう一つ、今までなぜこの犯罪がなかったのか。なかったわけですね。今回新設される。今までなかったことについてはどのような評価をされているのか。この二点をお二人の参考人にお尋ねしたいと思います。
  109. 萩野芳夫

    ○萩野参考人 逆効果になるかどうかの問題につきましては、私には大変難しい問題でございます。きょうお話をお伺いしていて反省をしておるんですが、やはり書斎にこもっておりますといろいろわからなかったことがたくさんあったという反省はしておりますが、今の点、実態の上でどうなるのか、ちょっとお答えできかねます。  あとそれから、犯罪がなかった点につきましては、この点につきましても私適切なお答えできる立場にはございませんが、しかし、新聞等で見ている限り、それから今回の法律案の提案趣旨等を見てみますというと、やはり、最近はそのような犯罪構成要件を設けなければならない社会状況が相当進んできているのであろうというふうに考えました。そこで、これまでなかった犯罪類型を新しくつくることも仕方のないことではないかというふうに考えました。
  110. 下野博司

    ○下野参考人 まず、どう思うかということで、渡辺さんのおっしゃる逆効果ではないかということでございますが、今不法残留している方の多くは、ほとんどが正規に入国して不法残留している人々です。そういう人々に対してと同じ罰則が科せられるわけですから、それが新しく不法入国者であるとか不法上陸者に対して科せられたからといって、それが逆効果に働くとは私は考えません。  また、従来なぜなかったかということでございますが、現在のような不法入国とか不法上陸というものは、人の行き来が非常に大きくなって、日本で働けば金になるといったような情報が非常に簡単に流れる、世界的にグローバルな社会になっているというふうなこと。要するに、日本のプルファクターが向こうの、日本で働きたいという人に容易に伝わるということが一つの原因になってきてこういうことが発生しているんだと思います。だから、従来は、不法入国とか不法上陸というものを罰するだけで間に合ったんではないか、そのように推測いたします。
  111. 漆原良夫

    ○漆原委員 以上で終わります。  どうも、大変ありがとうございました。
  112. 杉浦正健

    杉浦委員長 次に、達増拓也君。
  113. 達増拓也

    達増委員 自由党の達増拓也でございます。  まず萩野参考人と下野参考人に伺いたいと思いますけれども、今回のこの入管法改正の直接のきっかけとなった理由の一つが、近年における集団密航の増大、その深刻化だと理解しております。バブルが崩壊して不景気になって、不法入国、不法就労一般については決して増大はしていないんですが、集団密航、特に外国のマフィア的なそういう団体が関連した集団密航が深刻化している。今回の法改正によってそれを取り締まり、防ぐところに一つの眼目があると思うんですけれども、その点、どのように評価されているでしょうか。順番にお願いしたいと思います。
  114. 萩野芳夫

    ○萩野参考人 実は、私、このところ十年ほど毎年フィリピンに行っております。だんだんと向こうにも知り合いが多くなってまいりましたが、その中にはたくさんの失業者がおります、男性も女性もでありますが。そういう人たちは仕事がありません。日本は、なるほど、バブルがはじけて不景気が続いてきているわけではありますが、私の知るフィリピンの人たちから見ますと、日本はパラダイスであります。何とかして日本に行きたいという希望は、まことに強烈と言っていいほどであります。日本に行くためには何でもしたいという気持ちが大変強くて、私、全くのボランティアで幾つかの大学で日本語を教えたり日本事情を教えたりしてまいりましたけれども、そういう勉強をしておけば日本に行ける可能性が高くなるだろうというので、大変熱心に勉強をしている人たちがたくさんおります。  そういう印象が、経験があるのでありますが、そこへ持ってきて御指摘の集団密航の事件等についての最近の報道を見ておりますというと、やはり、日本以外のアジアの国々の経済的な状況の深刻さ、それを感じますので、そういう人たちが命がけで日本にやってくるというケースが多くなっているんだろうと私なりに理解しております。  そういう人たちの受け入れについても考えなきゃなりませんけれども、今回の場合には、いずれにしろ、そういう密航してくる問題についてどう対処するかでありますから、やはり一定の取り締まりの方向で対処せざるを得ない、そういう判断で法律案が提案されたんであろう、そんなふうに考えております。
  115. 下野博司

    ○下野参考人 ただいま萩野参考人もおっしゃったように、いわゆる日本と周辺諸国との経済格差が極めて大きい、そして、日本に入ることについてそれほどのサンクションがないということがどんどん日本に来る一つの原因になっていると思います。  これを、今回の改正によりまして、少しでも抑止効果を高めるような罰則をつけてやるとか、上陸拒否期間を五年間に延ばすといったことによって、多少でもその抑止効果が高まれば、これは一つの改善点であると考えます。
  116. 達増拓也

    達増委員 二番目に、バブル崩壊、不景気とはいうけれども、劇的にふえてはいないけれども、高どまりと言われている不法就労の傾向について、今萩野参考人からそれにも触れられたお答えがあったと思うんです。これまた萩野参考人、下野参考人に伺いたいと思うんですけれども、そういう我が国における不法就労の最近の動向について、感じるところを述べていただきたいと思います。
  117. 萩野芳夫

    ○萩野参考人 実態につきまして、私お話しする能力ございません。  ただ、研究資料を読みあさっているときに断片的に出てきますこの問題には、やはりかなり深刻なものがあるように考えます。それは、就労の状況の中におけるさまざまな問題があって、あるいは日本の企業家が非常に安い賃金で労働力をほしいままにするというような面もあったり、ブローカーが介在して人身売買的なやり方をやるとか、さまざまなことがあるようでありますが、そういった点につきましても、やはりこれは一定の取り締まり的な方向から対策を講じざるを得ないんだろうと考えております。  ただ、しかし、私の独自の考えといたしましては、在留資格の問題につきましてさらに検討を加えて、先ほどもどなたかの御発言にもございましたが、一定の人たちに門戸を開くことによって、不法に入ってきたり不法に就労をするという状況をなくしていく、あるいは少なくとも減少させていくという方向があるのではないかと考えております。
  118. 下野博司

    ○下野参考人 先ほども申し上げたことでございますが、外国人方々、不法就労をしている方々は、いわゆる三K労働、日本人が好まない、汚い、危ない、そういうところの労働に従事している方が非常に多いと聞いております。そして、それが日本社会に一つの、特に経済構造といいますか、二層化を生じているといったことが非常に社会構造上の、社会問題として問題になると考えます。いわゆる単純労働者を必要とする社会があるということも一つかもしれませんが、単純労働者を入れるかどうかということは、まだ将来的な問題だろうと考えます。  実は、平成五年度ですか、技能実習制度というものを導入いたしまして、いわゆる発展途上国の人材育成ということですか、日本からの技術移転をよりそういう国々に図るということで、研修から技能実習へかわるという制度を導入いたしまして、現在、私の記憶では、九年末で約一万四千人ぐらいの方がそういう技能実習制度に移っておると思います。  こういう制度をますます充実させて、いわゆる発展途上国の方々がそういう形でおいでになるとなおいいのではないかと考えます。
  119. 達増拓也

    達増委員 私は、平成三年から平成五年までシンガポールで二年間働いていたことがありまして、同僚で日本人で働いていた人がメードさんを雇うわけですけれども、フィリピン人のメードさんを雇う。そのフィリピン人はマニラの物すごい立派なところでOLをして働いていた人が、シンガポールでメードをする方が絶対収入があるからといって出てくる。夫や子供を残して来ているそうなんですが、特に子供はどうしているのかと聞いたら、フィリピンのさらに田舎から出稼ぎでマニラにメードとして働きに出た人が面倒を見ているという、まさに中心—周辺的な、そういう構造があるのだなと感じました。  さて、森木参考人渡辺参考人に伺いたいんですが、これは不法入国、不法在留、また不法就労をしているような人たちについてなんでありますけれども、それぞれ家族ができたり、あるいはそれなりの労働をやっていたりするけれども、違法に、不法に滞在している。その人たちが本国との関係をどうとらえているのかということなんであります。  というのも、今の国際社会、一応国家の集まりとして国際社会ができておりまして、それぞれの国家が近代立憲主義的な権利義務の体系をそれぞれ国ごとにきちんとつくって、それをそれぞれの国民が支えて、維持して、それが外からの侵略なり内からの混乱で壊れそうになったときには、国民が体を張ってそれを守るという建前のもとに世界全体の秩序が今のところできていると思うのです。  そういう意味で、本国とのそういう国民としての関係を、不法入国というのは一種不法出国的なところもあると思うのですね。本国とのそういうものを断ち切って日本で働いたり家族をつくったり、それはそれで非常に個人としての幸せというのはあると思うのですが、どこか例えば良心的兵役拒否にも似たところがあると思いまして、一つ一つのケースは非常に美しい美談だと思うのです。  ただ、すべてそれを認めてしまうとおよそ国家というものが成り立たなくなり、憲法秩序というものがそれぞれの国の中でうまくつくれなくなっていき、結局、独裁的な国家ですとか、あるいは国境を越えた暴力団、マフィアとかがはびこる、そういうのが一番好きに動かれる世の中、世界になってしまうのではないかという意味で、本国との関係をどうとらえているのかということを森木参考人渡辺参考人に伺いたいと思います。
  120. 森木和美

    ○森木参考人 私もフィリピンの人たちとよく交流するのですけれども、送金は必ずやっています。それから、例えば子供が産まれたりしたら、自分が働くためにその子供をフィリピンのおばあさんに預けて、そして自分日本に来て働くというような構造ができています。フィリピンの場合は、移住労働者を国が推薦して、ある程度の許可制で外へ出しているのですけれども、当然外国に行って働くというのが常識というか、そういうチャンスを得るということは非常に恵まれていると考えられているように思います。ですから、二国間を行ったり来たりしている人もいるでしょうし、オーバーステイになって、在留特別許可が出たらすぐに飛んで帰るというような光景も見られるわけなんです。  でも、例えばタイの女性たちを見ていますと、私たちはタイ人だと思うのですけれども国籍がない人たちがいるわけですね。タイの山岳民族の人たちはタイの国民として認められていない。自分は何らかの経路で日本に来ているのだけれども、しかも偽造パスポートで、多分人身売買で連れてこられた。それで、日本人とめぐり会って、結婚をしたいのだけれどもできないのですね。自分がどこの出身であるかということが証明できなかったりとか、タイの国がその人の身分証明書を出さないとか、私たちが国というふうに考えているその枠というのは非常に一般的ではなくて、自明化されていないところもあるというふうに思うわけですね。  ですから、本国との関係を見ていますと、出稼ぎに来てただ単にお金を送って、そしてある程度稼いだら帰るという人とはまた違う、日本で家族をつくるというような人たちという、日本の家族、日本のおしゅうとめさんとの関係に悩んでいるとか。ですから、断ち切っていないわけです。本国と日本という二つの家族を行ったり来たりしているというような、そういう関係が見られていると思います。それは一般的に言えると思います。
  121. 渡辺英俊

    渡辺参考人 日本に働きに来ている人たちは、逆に言うと、私どもが近代社会の中で見失ってしまっている家族の結合というようなものが非常に強い人たちですね。何千キロ離れている家族との心のつながりというのは物すごく深いものがあります。  それで私、きょうの話題には日本で家族を形成した人たちの話が中心になってきているわけですが、この法改定がそれを阻害するということで出てきているわけですけれども、実は、出稼ぎという状態自体が、先生もごらんになりましたように、家族と切り離されるということで、決して望ましいことではない。やらずに済ませばその方がいいということが非常に強くて、逆に出稼ぎ状態の中で家族が切れていくという悲劇も私たち目撃しておりますので、できれば出稼ぎに行かなくてもいいような世界、あるいは、もしか行くとすれば家族が一緒に行けるような世界、そういうふうになればいいなという願いを持っております。  ただ、先ほど国家という枠組みをどうするのかというお話でしたが、この辺は少し見解がそれぞれ違ってくるかもしれません。私どもが見ておりますと、先に国境を取り払ったのは資本じゃないんだろうか。つまり、経済のグローバル化、これは資本のグローバル化で、こちらの方は国境なしに吹き荒れている。  そうしますと、一番弱い地域の人たちが吹き飛ばされて、どうしても資本本国の側に富が集積してそちらに来るという現象が起こってくるものですから、やむを得ず国を離れて、家族を離れて出稼ぎに行かざるを得ないということが起こってくるような気がいたします。そういうところでの人道的な行き来というのは、やはり帰りたいときに帰ってまた来れる、そういう自由な行き来のできる状態というのが理想的なんじゃないんだろうかな。それが一つ。  それから、そういう意味では、同じ日本列島の上にいろいろな国籍、いろいろな肌の色、いろいろな言葉を持った人たちがごっちゃになって住むということがもう避けられない時代が目前に来ているという考え方からすると、国家というのをいわゆる単一民族の国家というふうな形で考えていくのか。先ほどから先生の東北独立論というのは大変興味を持って聞かせていただきましたが、ただ、東北が独立したときに私のパスポートでまたオーバーステイになったら困るなというふうに心配もしておりますのですけれども。  ただ、地方がその意味で特色を持っていく、自分の生まれ故郷の自分の母語を大事にしていく。そういう点では、私、津軽弁が大好きで、津軽にも友達がいまして、私は甲州弁なのですけれども、そういう自分言葉を大事にしたいというようなことがありますので、そういう地方の特色も含めて、いろいろな世界の各国の特色が一緒になって、サラダボウルのようなということをよく言われますけれども、そういうふうな国、日本列島の地域社会というものができていったらいいなというふうに私は考えております。
  122. 達増拓也

    達増委員 私が国家と言うときは権利義務の体系としてとらえておりまして、民族とか人種にはほとんどこだわっておりません。そういう権利義務の体系を、それぞれの国がよりよいよりよいと競争していくうちに、だんだんみんなが一つの権利義務体系を採用するようになれば地球が一つになるのかなというふうに思っておりますが、今回の法案がその一歩になることを期待しつつ、質問を終わります。ありがとうございました。
  123. 杉浦正健

    杉浦委員長 次に、木島日出夫君。
  124. 木島日出夫

    ○木島委員 日本共産党の木島日出夫でございます。  四人の参考人皆さん、大変ありがとうございました。今回の入管法改正の中の二つの大きな論点、不法入国者に対する不法在留罪の新設の問題と、退去強制者に対して再入国の不許可の期間を一年から五年に延長するというこの二つの中心的テーマで、賛成される萩野参考人、下野参考人と、反対される森木参考人渡辺参考人意見が分かれているようであります。  最初に、不法入国者に対する不法在留罪の新設の問題についてお伺いします。  私、意見をお伺いして、法形式論と法実質論があるのだと思いました。法形式論というのは、賛成論者の皆さん方の賛成論の中心の一つに、現在、正規入国者の皆さんがオーバーステイした場合に罰則があるではないか、しかし、不法入国者の場合に三年たったら無罪放免、これは不公平ではないか、こういう論です。まことにそれ自体そのとおり。  しかし、この問題、法実質的に見ますと、結局それは形式論であって、実質的には二十七万人おるというこの不法在留をどう見るかという問題、どうも賛成論者の皆さん方は、これは結局、不法就労が中心ではないかと。そうすると、悪法といえども法なり、不法就労はやはりいかぬ、これを抑止、縮小、解消、なくさなければいかぬという立場に立たれているのではないか。そういう観点から、それに影響のある不法入国者を減らす、そういう意味をも込めて、不法入国者に対する不法在留罪の新設に賛成する、そういうふうにお聞きをいたしました。  法形式論は結局は形式論であって、渡辺参考人から、平等にするためには、むしろ現在の不法在留者に対して単純労働を合法化すればほとんど解消できるじゃないかという論もあるわけで、どっちにならすかという問題でありますから、結局、大事なのは実質論じゃないか。日本に二十七万人ともいる不法就労者、これをどう見るかという根本問題にさかのぼるのじゃないかと私はお聞きいたしました。  そこで、萩野参考人と下野参考人にお伺いいたしますが、この根本には、やはり日本政府が厳然としてとり続けてきている、外国人単純労働は認めないという基本的な日本の入国管理政策の是非が問われているのじゃないかというふうに思わざるを得ないんです。  先ほど、萩野参考人は、こういう政策を変えてもいいのではないかという趣旨の御発言もなさいました。私ども日本共産党は、やはりこれは変えるべきだとかねてから主張してきました。一定の人数については、国が、日本の経済がこれだけの単純労働を必要としているんだ、現にそれに就労しているんだと。私も、地方の建設現場なんかで、外国人なしに家が建たないという状況を知っております。ですから、これは解禁して合法化すべきだという論に我々は立っているわけであります。  こういう単純外国人労働解禁、そして国家がきちっと管理するということ、そういう方向に一歩踏み出すべきじゃないかと思っているんですが、改めて、この問題についての御意見を萩野参考人と下野参考人にお聞かせいただきたいと思うんです。
  125. 萩野芳夫

    ○萩野参考人 私は、法改正賛成立場発言をいたしましたので、ただいまの御質問、大変困ります。私は、ただいまおっしゃったとおりに考えております。  実は、来年の三月が締め切りになっておるんですが、私どもでこの問題につきまして報告書を書いて発表するという段取りで、今準備中であります。幾つかの外国にも出かけていって、どういうふうな状況なのかをこの夏の間に勉強してくるつもりであります。  この問題につきましては、そのようにしまして、私は、これからもっと在留資格そのものについて検討を加えた上で、お使いになりましたお言葉ですと適正な管理、それがより適正に行われるような方向で考えていくべきだと考えております。
  126. 下野博司

    ○下野参考人 単純労働者の導入につきましては、従来も何度か議論がなされた結果、現在までそれは認めないということで動いてきたと思います。これは、いわゆる周辺諸国の労働力が非常に大きいということも一つ大きな原因だろうと思います。  今先生おっしゃられたように、一定の管理制度を設けてうまく管理をしながら使えるということになりますと、それはそれでまた一つの考え方だろうと思います。ですから、そういう時代になれば、それはそれでむしろ有効な手段として使える場合もあるのではないかなという気はいたします。  ただ、今の時点では、従来のいわゆる周辺諸国の労働力の大きさ、あるいは最初に申し上げたような、日本人がつきたがらない労働にそういう人々を使うということになりますと、これはやはり日本社会の構造を悪くするといいますか、悪化させる一つの原因にもなろうかと思います。現に西ドイツであるとかフランスあたりでも、西ドイツにおきましてはトルコ人、フランスにおきましてはアルジェリア人ですか、そういう方々に対するべっ視とか差別、特に労働不況になって激化しているように聞いております。  そういうことを考えますと、先生のおっしゃるように、いろいろな施策を踏まえた上で、十分管理できる形で導入ということが大事なことではないかと考えます。
  127. 木島日出夫

    ○木島委員 ありがとうございます。  私が管理という言葉を使ったのは、日本に単純労働のために入国する外国人管理するという意味では決してありません。日本の経済運営の管理であります。  日本にも三十万人の単純労働が現に必要なんだ、そういう単純労働を諸外国の皆さんに担ってもらって、日本の経済運営として、国の政策として必要なんだ、そういう状況であれば、きちっと三十万人の単純労働のための外国人に入国をしていただいて、そして、それを認めた以上は、一〇〇%労働基準法を適用する、労働組合法も適用する、もちろん社会保険にも入ってもらう、医療保険もきちっと適用する、それが必要ではないか。そういうきちっとした合法化のもとに置けば、私は、下野参考人がおっしゃられたような二層化というのが避けられるのじゃないか。  今、なぜ二層化が生まれてきて、本当に三K、低賃金で大変な労働を外国人労働者が担ってしまっているかというと、そういう皆さんが不法就労という法的烙印を押されているからではないんでしょうか。表に出ていったら退去強制にさらされる。表に出せない。表に出せないから、使用者からはどんなに低賃金で労働基準法違反の労働条件を押しつけられても、救済へ持って行き場がない。  だから私は、逆じゃないんだろうか。今のような、オーバーステイ・イコール不法就労、だからこそ低賃金、無権利外国人労働が厳然として日本社会にまかり通っているということが実態じゃないかなと思うんですが、下野参考人、いかがでしょうか。
  128. 下野博司

    ○下野参考人 先生のおっしゃるとおりだと考えます。しかし、だからといって、それをそのまま認める、例えばこれをアムネスティで救済するというふうな形はかえって将来に弊害をもたらすのじゃないかというふうに考えます。  例えばアメリカは、一九八六年ですか、アムネスティを実施した結果、その当時、在留していた人々はそれで救済されたわけですが、アメリカへ行けばまだ救済されるんだということで、またもとのもくあみに戻って、非常にたくさんの不法就労者がいるというふうに聞いております。  そういうことを考えますと、やはり先生のおっしゃるように、厳然たる管理、そういう形を実現できなければ、今のままではちょっと不可能であろうと思います。
  129. 木島日出夫

    ○木島委員 それでは、今の問題提起について森木参考人渡辺参考人の御意見をお聞きしたいんですが、大ざっぱに言いますと、基本的に国家政策としてきちっと外国人の出入国、在留に関して管理政策をとらなければやはり無秩序になるのじゃないか、そういう論に対してどういうお考えでしょうか。
  130. 森木和美

    ○森木参考人 これは本当に難しい問題なんです。  いろいろ私も考えましたが、人間の幸せというのは、やはり自分の住んでいるところ、自分の暮らしてきたところ、そこで収入を得て、そして生活をして、家族を持ってというのが本当に一番幸せなんだろうと思うんです。  ところが、それができない。いろいろな経済的な問題が起こって、できない。離れていった方が自分の生活の向上があるというところになれば、それはひょっとしたら私だって行くと思います。どんな手段を使ってでも行くかもわからないというのが、また日本の過去の、移民の人たちが外国へ行き、そこの土地で自分たちの生活を築いていったというような日本歴史でもあると思います。  そういうふうに歴史が繰り返されていて、自分の生活の向上を願うというのは、これは全く基本的な人間の欲求、願望であると思います。  それに対して国がどうするかというふうなことを考えたときに、フランス式であるとかドイツ式であるとかアメリカ式であるとか、いろいろな方法があると思いますけれども、ある程度やはりコントロールといいますか、管理と言ったらちょっと嫌な言葉なので、私は、日本社会外国人に対して非常に偏見に満ちた社会だと思っておりますので、もし外国人が何のコントロールもなしに日本に来た場合に何が起こるかということを物すごく心配しているんです。何かやはり外国人に対する問題が起こるんではないか、ドイツの場合は、家を焼かれたり、いろいろなことで問題が起こっていますけれども、それ以上のことが何か起こってくるんではないかなというふうに私は危惧するんです。  それで、そういうことにならないためにはどういうふうなことをすればいいのかとなった場合に、今研修制度とかありますけれども、もう少し外国人自分のところで住める方法を一方で考える。ODAとかいろいろな方法がありますけれども、そういう方法で考えて、アジアの人たちがアジアで住めるような方法。そして一方では、日本の技術なんかを習得できるようなシステムをつくって、その技術を持ち帰る。今の研修制度というのは非常に問題がありまして、搾取する何物でもないというところもあるんですけれども、そういうところをもう少し変えていって、アジアに日本の技術を移転する。  そういうことをやりながら、日本に家族ができたり、あるいは日本との関係日本でもっと勉強したいとか日本自分の自己実現をしたいとか、そういうふうな希望を持つ人があらわれれば、そういう人たちこそ受け入れていく、そういうある程度のシステムをつくっていくというようなことが考えられなければならないんじゃないかなというふうに思っています。
  131. 渡辺英俊

    渡辺参考人 当面の問題としては、私は、先生がおっしゃったこと、それ以外にないやり方だろうというふうに考えております。  ただ、私は、この運動を始める前にフィリピンに一年行っておりまして、フィリピンの状況を見てきているんですけれども日本の資本あるいは国際資本がフィリピン経済を本当に食いつぶしているといいましょうか、地元産業が育たないような形で資本が出ていっている。そして、資源が全部持っていかれてしまっているというその状況をつぶさに見まして、こういう状況が変わっていかないと人の流れが変わらないんじゃないかということを強く考えております。  ですから、当面として、日本に必要な人はきちんと合法的に入れて、保障すべきものを保障していくということをまずしなくちゃいけないと思いますけれども、その先で、それぞれの国の人が、自分の地域で、生まれたところ、家族と一緒に暮らせるような状態というのをつくっていくということが必要だろう。  先ほどODAということに触れておられましたけれども、現行のODAはそういう役割余り果たしていないというふうに私どもは考えておりますが、その辺をもう少し根本的に考えて、自分の地元で生活が立つような、お互いにある資源や技術を分け合っていくような国際社会というものを将来的に目指していく、そういうことの中で人の流れが自然にコントロールされて、余り入管の窓口でぎゅうぎゅうとやらなくてもいいような情勢をつくっていくということがもう一つの大事な、長期的な、長いスパンで見た場合の必要なことだろうというふうにも考えております。
  132. 木島日出夫

    ○木島委員 ありがとうございます。  貴重な御意見、大変ありがとうございました。終わります。
  133. 杉浦正健

    杉浦委員長 次に、保坂展人君
  134. 保坂展人

    ○保坂委員 社会民主党の保坂展人です。きょうは、参考人皆さん、御苦労さまです。  特に、民間の立場でいろいろ相談に乗ってこられたお二人の方に、まずは具体的なことをちょっとお聞きしたいと思います。時間が限られていますので、全面的にというわけにはいかないと思いますが。  まず、森木さんの方のレジュメに、これは二つだけちょっとピックアップさせていただきたいと思うんですが、一つは、パキスタン人の方と結婚されたAさんの話が載っています。退去強制になった夫を日本に呼び寄せるために三回申請をして、ようやくその三回目で受理された、その間二年八カ月、パキスタンに何度も訪問して非常に不安定だった、今回の立法が加わったらどうなるだろうかという事例。もう一つは、日本人男性が、退去強制になった妻のフィリピン人とその子供を呼び寄せたいんだけれどもなかなか無理だ、そして妻や子供は絶望的になっている。これは、偽名のパスポートを勧める人がいてそれで入国というようなことも書いてあります。  この二つの事例を、家族の結合権という立場から、今回の入管法改正案と絡めて何が見えてくるのかということをちょっと端的に伺いたいと思います。
  135. 森木和美

    ○森木参考人 これは今現在の法律で起こった事柄ですから、今現在の法律がいかに家族の結合権を阻止しているかということだと思います。どちらの例も退去強制ではありますけれども、家族が日本にいて、熱心に何回も行って、そして呼び寄せの努力をやっている、弁護士さんも入り、団体も協力をしてやっている、ところがそれがなかなかできないということがあります。  フィリピンの場合は日本とは少し違って、日本は書類なんかを求めるとすぐ出るんですけれども、フィリピンの場合は、何かマニラ以外の地域になりましたら書類がなかなかそろわないということがありまして、こちらでは本当に想像を絶するような話で、本当にそろわないということがあるらしいんです。それで、その夫である方も、フィリピンに何回も行かれて日本の領事館にかけ合ってやっても、それでもだめであるというようなことになって、結局偽名のパスポートを買ったというようなことを聞いて、それで私のその方との話は終わっているんです。  こういうことの前提に、日本人の配偶者に対する在留許可というものが権利として認められていないということがあると思います。先ほども申しましたが、普通の日本人外国人と結婚した場合にも非常に難しい。権利としてもらえるわけではなくて、いろいろな書類を提出して初めて許可されるわけであって、現在のこの入管法の家族の結束権といいますか、そういうものがどういうふうにとらえられているのか、私たち当事者の側と、それから国を治める側の方たちの考え方の乖離というものが非常に大きいというふうに思います。
  136. 保坂展人

    ○保坂委員 渡辺さんにお聞きしたいんですが、お配りいただいた事例の八と九、これは、簡単に言うと、八の方は、フィリピン人のKさんが不法残留罪で逮捕、起訴、国選弁護人がついたんだけれどもうまくやってくれない、裁判が混迷しているという話ですね。  それから、九番目の、やはりフィリピンの方のようですが、これは、レストランの給料未払いだということで、入管が間に入ったんだけれどもうまく機能してくれないということで、支援団体が自主的にやっている、こういう話です。  この二つの事例から見えてくる実情と、今回の法改正に絡んで、これは時間がないのでちょっとまとめてお願いします。
  137. 渡辺英俊

    渡辺参考人 事例八は、私の仲間が手がけているケースで、いよいよ裁判になってから偽造パスポートであるということを本人が明らかにした。そのために、一体本人が何者であるのか、それからどこで、いつ、どういうふうに入国したのか、そういうふうなことが全部明らかにできないまま裁判がストップしちゃった。それで、支援団体の者が証言に立ってその辺を明らかにしなきゃならないとか、国から書類を取り寄せなきゃならないとか、そういうふうな状況になってしまったということです。  これは将来、不法在留罪が施行された場合に起こることの予告といいましょうか、一つの典型的なケースだろう。つまり、本人がいつ上陸して何者でということを証明するものを何も持っていないわけですから、どういうふうにして立件して、どういうふうに判決を下すんだろうかということが非常にわからない。それを先取りしているような実例だということを指摘しておきたいと思います。  それから、入管局では、不払い賃金などがあるとちゃんとそれはやっておりますという答弁をいつもなさるんです。けれども、それはそういうケースもあるかもしれませんけれども、私どもの感触として知っているところでは、帰りの飛行機賃がないときには、一回か二回雇い主に電話して、雇い主にお金を持ってこさせるということはやってくれます。けれども、不払い賃金をきちんと入管が全部、そもそも出てくる人に、あなたの不払い賃金はないかということから聞いて、あったらちゃんと申し立てなさいよというような指導というか援助をしているという話は聞いたことがありません。やはり我々支援団体が、入管に入っちゃってから雇い主と交渉するというふうな事例が私どもの周辺では非常に多くて、入管局がどこまでちゃんと未払い賃金なんかについての取り立て、補償ということをやってくださっているのかということについては、私たちは非常に疑いを持っております。
  138. 保坂展人

    ○保坂委員 下野参考人に伺いますが、差し支えない範囲で、入管協会という団体、よく存じ上げていないものですから。  参考人自身は、入管行政などの体験があって、そして現在この職につかれているのか、そのあたり、少し今までの歩みなども語っていただきつつ、先ほどの木島委員からもあったんですが、二層化が好ましくない、その真意がちょっとわからないんです。確かに、社会構造上そういうふうに分化していくのはよくないと一般的に言えるとは思うんですが、それではここをどういうふうにあったらいいとお考えなのかという点につないでお答えいただけたらと思います。
  139. 下野博司

    ○下野参考人 入管協会と申しますのは、法務省の傘下にございます財団法人でございます。ここにおきましては、国際間の人の交流でありますとか調査研究を行う、あるいは知識の普及を図る、あるいは各種情報の交換、法務省入国管理局との連絡等を行うことによって、出入国管理行政の円滑な運営に寄与し、もって国際的な相互理解や国際協力の増進に資するということを目的にしている団体でございます。  具体的には、まず大きなのが、各地方入国管理局で外国人在留総合インフォメーションセンターというものを運営しております。ここにおきましては、外国人方々あるいは日本人も含めまして、いろいろな入管の手続あるいは入管に関する相談等々を無料で受けております。そのほかに、いわゆる……(保坂委員「そのぐらいで結構です」と呼ぶ)ああ、そうですか。  それでは、先ほどの二層化の問題でございますけれども、アメリカにおきましても、あるいはドイツやフランスでもそういう傾向が出ていると思いますけれども、いわゆる三K労働につきまして外国人に就労させているような構造が非常に見えているということでございます。そういうことでございますと、結局、日本人はそういう仕事をしない、外国人はそういうことをするということになりますと、外国人に対する偏見というものが増長されるのではないかと考えます。こういうことはやはり好ましくない結果を生むと考えます。そういう意味から、そういうことはやはり避けるべきであるというふうに考えます。  以上です。
  140. 保坂展人

    ○保坂委員 それでは、萩野参考人にちょっと一言伺います。  この法務委員会で私はたびたび指摘していることなんですが、入管の管理の方の議論はたびたびなされるんですが、難民認定の手続、これを本当にもう少し合理的に、諸外国にも恥じないぐらい制度として整備していくという部分がほとんど議論が行き届いていない、そういう点についてちょっと御意見を伺いたいと思います。
  141. 萩野芳夫

    ○萩野参考人 難民認定の問題につきましては、今お話しになられたように考える私どもの仲間で、おととしぐらいになりますか、ずっと何年か研究会を続けまして、難民認定のあり方はこうでなければいけないんじゃないかというような意見書を出したことがございます。  現在の難民認定のあり方についてはいろいろ問題があろうかと思います。その点は改めていかなければいけないところがいろいろあると思うのでありますが、やはり問題を考えていく場合には、管理の側と人権の側と両面から考えていかなければならないと私は考えております。
  142. 保坂展人

    ○保坂委員 それでは、渡辺参考人に伺います。  移住労働者と連帯する全国ネットワーク、これはカラバオの会という、横浜の寿町でしょうか、こちらの方でずっと十二年活動されて、そういった輪が全国的に広がってきた。  先ほど意見陳述のときにも言っておられましたけれども、例えば、外務省と開発NGOだとか、あるいは環境庁と環境問題のNGOとか、相当程度共同作業をしたり、あるいはセッションをしたり、あるいはイベントをともにやったりということがあります。これだけ情報も持っておられる、具体的な事例も豊富な渡辺さんのところに、例えば法務省の入管局から、一緒に勉強しようとか、あるいは事例を聞かせてくれとか、入管局のシンポジウムでちょっと問題提起してくれぬかというようなお話はあるんでしょうか。あるいは、まだやはり法務省は古い考え方で、ちょっと入管行政から見ると好ましからざるグループ、こういうふうに見られているのかどうか。率直なところをお願いします。
  143. 渡辺英俊

    渡辺参考人 残念ながら、移住労働者の問題は、まだそういうところまでいっていない。例えば、ほかの省庁、労働省、厚生省なんかにもこちらからお百度踏んで、会って話してほしい、こういうつらい実態があるんだということをお話ししてようやく会っていただける。けれども、書類をやりとりして通り一遍のお答えをいただくだけという、それでも私どもは窓口を開いて話を始めておりますけれども、法務省とはそういう対話さえまだ始められていないというのが実情であります。  もちろん、そういう実態について知りたいから話を聞かせてほしいというふうなことがあれば、私どもは本当に欣喜雀躍してすっ飛んでまいります。ただ、私一人ということではもちろんありません。きょうのこれも、本当に仲間たちみんなの情報を集めて私はここに来ておりますので、そういう仲間たちそろって、こんなことがあるんだという本当に切実な実態をお話しして、入管行政のあり方に大いに資することができるだろうというふうに私どもは期待しております。
  144. 保坂展人

    ○保坂委員 それでは、今の同じ点について森木さんに一言だけ、もう時間が余りありませんが、お願いします。
  145. 森木和美

    ○森木参考人 法務省の入管局の方とは、大阪入管の方なんかとは話し合いを持っております。ですが、これも私どもの方から呼びかけてお願いしている状況で、なかなか向こうからということはないということです。  最近は、NGO、ここにも呼んでいただいて、NGOの意見を聞くということが世界的にやはりあるように思いますので、これからもそういう機会があれば非常にうれしいと思います。
  146. 保坂展人

    ○保坂委員 入管局がだめなら人権擁護局が飛んでくるというような時代が来なければならないと思いますけれども、きょうは話題にもならなかった人権擁護局の方もぜひ勉強をして、こういう問題に立場を超えて取り組んでいかなければと思います。  どうもありがとうございました。
  147. 杉浦正健

    杉浦委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  各参考人におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  次回は、明四日水曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時四十分散会