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1999-07-02 第145回国会 衆議院 法務委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年七月二日(金曜日)     午前九時三十分開議   出席委員    委員長 杉浦 正健君    理事 橘 康太郎君 理事 八代 英太君    理事 山本 幸三君 理事 山本 有二君    理事 坂上 富男君 理事 日野 市朗君    理事 上田  勇君 理事 達増 拓也君       大石 秀政君    奥野 誠亮君       加藤 卓二君    河村 建夫君       鯨岡 兵輔君    小坂 憲次君       小杉  隆君    左藤  恵君       菅  義偉君    西田  司君       古屋 圭司君    望月 義夫君       保岡 興治君    渡辺 喜美君       枝野 幸男君    佐々木秀典君       福岡 宗也君    漆原 良夫君       安倍 基雄君    武山百合子君       木島日出夫君    保坂 展人君       園田 博之君  出席国務大臣         法務大臣    陣内 孝雄君  出席政府委員         法務大臣官房長 但木 敬一君         法務大臣官房司         法法制調査部長         兼内閣審議官  房村 精一君         法務省民事局長 細川  清君         厚生省社会・援         護局長     炭谷  茂君         厚生省老人保健         福祉局長    近藤純五郎君         自治省行政局選         挙部長     片木  淳君  委員外出席者         厚生大臣官房障         害保健福祉部長 今田 寛睦君         最高裁判所事務         総局総務局長  浜野  惺君         最高裁判所事務         総局家庭局長  安倍 嘉人君         法務委員会専門         員       井上 隆久君 委員の異動 七月二日         辞任         補欠選任   加藤 紘一君     望月 義夫君   河村 建夫君     古屋 圭司君   笹川  堯君     小坂 憲次君   渡辺 喜美君     大石 秀政君   権藤 恒夫君     武山百合子君 同日         辞任         補欠選任   大石 秀政君     渡辺 喜美君   小坂 憲次君     笹川  堯君   古屋 圭司君     河村 建夫君   望月 義夫君     加藤 紘一君   武山百合子君     権藤 恒夫君 本日の会議に付した案件  民法の一部を改正する法律案内閣提出第八三号)  任意後見契約に関する法律案内閣提出第八四号)  民法の一部を改正する法律施行に伴う関係法律整備等に関する法律案内閣提出第八五号)  後見登記等に関する法律案内閣提出第八六号)     午前九時三十分開議      ————◇—————
  2. 杉浦正健

    杉浦委員長 これより会議を開きます。  この際、お諮りいたします。  本日、最高裁判所浜野総務局長安倍家庭局長から出席説明要求がありますので、これを承認するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 杉浦正健

    杉浦委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。      ————◇—————
  4. 杉浦正健

    杉浦委員長 内閣提出民法の一部を改正する法律案任意後見契約に関する法律案民法の一部を改正する法律施行に伴う関係法律整備等に関する法律案及び後見登記等に関する法律案の各案を一括して議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。日野市朗君。
  5. 日野市朗

    日野委員 まず最初に、法務大臣にお伺いをいたしたい。  ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━  この法務委員会、非常に多くの法案をいまだ抱えております。私は、これから一生懸命その法案に取り組んでいかなければならないと思っている。しかも、本日審議が行われる民法改正案等、これらの法案については、もうこれは国民コンセンサスである。これを一日も早く成立させてもらいたい、これは国民コンセンサスである。一方において、参議院において非常に紛糾をしていること、これも私はよく知っております。そこで取り扱われている法案が、これは国民コンセンサスはいまだに得られていない。こういう状況の中で、きょう私は、半ば挫折感に襲われそうになりながら、しかし、これではいかぬと自分自身を奮い立たせて、今この質疑に臨もうとしているのです。  この民法等法律案、これの次には、経済界が渇望している法律案、つまり、株式交換株式移転、これらを含んだ商法の改正案が一刻も早い成立を求められている。このような状態にあって、法務大臣に伺う。きちんと答えていただきたい。これは通告も何もしなかったけれども政治家であり法務大臣であるからには、当然答えられることだ。(発言する者あり)黙っておれ。法務大臣は、この法律案成立、それからメジロ押しに来ている法案、これらについてどのようにお考えか。これを成立させたいと考えておられるのか、これらは流れてもしようがない、こう考えておられるのか。いかがですか。
  6. 杉浦正健

    杉浦委員長 日野議員、ちょっとお待ちください。  速記をとめてください。     〔速記中止
  7. 杉浦正健

    杉浦委員長 速記を起こしてください。  休憩して、理事会を開催して協議したいと思います。理事会を開きます。     午前九時三十六分休憩      ————◇—————     午前九時五十八分開議
  8. 杉浦正健

    杉浦委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。日野市朗君。
  9. 日野市朗

    日野委員 何か、先ほどの質問で不穏当なところがあったとしたら、これは後で議事録を検討した上で、それを訂正していただく、そこの部分は削除をしていただくということにして、先ほどの質問について、これから法務省として、その責任の衝にある大臣として、現在、本院にかかっている諸法案、本委員会で取り扱っている諸法案、これはいかがお考えですか。これをきちんと成立させたいという熱意をお持ちかどうか、伺います。
  10. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 今国会にお願いしております法律案につきましては、その成立を期して私ども努力しなければならないと思っておりますが、いずれにいたしましても、委員会でお取り計らいいただくわけでございますので、そのように考えておるところでございます。
  11. 日野市朗

    日野委員 委員会にげたを預けられましても、法務省からの提出ということで出されている法案でありますから、それについて、優先順位とかいろいろこれは法務省もお考えになるところはあると思うんですよ。そういうことについて、きちんと検討をされて、すべての法案成立を図るというお考え、おありかどうか、いかがですか。
  12. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 私どもといたしましては、衆参両法務委員会におきまして、私どもの提案しております各種法案、これを御審議、御決議いただきたいというふうな気持ちでいっぱいでございます。
  13. 日野市朗

    日野委員 では、どうも歯切れが悪いなと思いながら、この民法等法案質疑に入らせていただきます。  私は、この法案に賛成の立場であります。ただ、私も法律実務もいささか取り扱ってまいった経歴がございまして、この法律案というのはある意味で非常に野心的な法律案であろうというふうに思っております。  私、この法案が、今までの、特に裁判所、一歩を踏み出したという印象を強く持つのであります。今まで司法といえば、どちらかといえば、これは回顧的な仕事をやってまいりました。特に後見という問題については、これはローマ法以来ずっと民法典の中に存在する一つ制度であります。しかし、いわゆるパンデクテンシステムですか、財産法身分法との、そこのところをきちっと分けてつくられている民法典ということになりますと、どうしてもこの後見という問題については比較的軽く見られていたと言うと問題でありましょうか。  しかしそれが、各国の事例は知りませんが、特に我が国においては余りうまく機能したとはちょっと言いにくいのではないかというふうに考えているわけですね。それは法典のつくり方もありましょうし、それから司法の性格ということもあるのだろうというふうに私は思っておりますが、これから裁判所はさらに一歩を踏み出そうとしている意欲がこの法律案に示されているのかどうかということについての裁判所のお考え方を伺っておきたいと思うのです。  実は、来年の四月からは、御承知のように介護保険制度が実施されることになっていますし、厚生省あたりは、地域福祉権利擁護事業、これもかなり意欲的な事業であろうと思いますが、こういう事業を推進されようとしておられる。こういう中で、特に被後見者と言われる人たち権利を全からしめていくために、裁判所役割というものは非常に広がっていくだろうというふうに私は考えるのですが、裁判所のお考えはどうなのか。  そして特に、これを広げていこうという意欲がおありなのかどうなのか。特に、「後見開始審判ヲ為スコトヲ得」、こう民法には書いてあるわけですね。「コトヲ得」なのですね。しなければならないでもない。その条文の文言はそのまま引き継がれるわけですが、この点について、裁判所のお考えをお聞かせください。
  14. 浜野惺

    浜野最高裁判所長官代理者 お答えいたします。  委員の御指摘は大変大局的な観点から、大きい御質問でございますので、まず大局的な観点からお答えをいたしますと、司法の使命は、公正な手続に基づきまして事件を法的に解決することにより、社会法的ニーズに対応することにあるというふうに存じております。今後、社会構造変化等に伴いまして多様化することが予想されます社会法的ニーズに対応いたしまして、司法におきましても、訴訟手続以外のさまざまな解決の手法というものが重要性を増してくるのではないかということは委員の御指摘のとおりであろうというふうに考えております。  特に家庭裁判所は、その科学性専門性を発揮しまして、まさにただいま申し上げましたような手法を中心として事件を解決すべき役割を担ってきている機関でございまして、今述べましたように、社会構造変化等によりまして高まる国民家庭裁判所に対する期待にこたえ、より適正迅速な事件処理を図るために、その体制あり方につきましてもさらに検討していく必要があろうというふうに考えております。
  15. 日野市朗

    日野委員 今のお答え、私、いささか抽象的かなというふうに実は思っているのです。裁判所あたりの答弁になるとこうなるのかなという点にも理解を示しながら、若干抽象的だなというふうにも考えたわけであります。  ところで、さっきの民法七条の、「審判ヲ為スコトヲ得」、こう書いてあります。そして、これは被後見人にふさわしいな、被保佐人にした方がいいな、それから、被補助人にした方がいいなというようなことは、裁判所に出入りする人を見ておられてお感じになることはあるのだろうと思うのですね。そのとき、もちろん裁判所というのは申し立て権者ではありませんから、しかし、そういう人を見た場合、自分から進んでそれを、例えば今回申立人として新たに追加された検察官であるとか市町村長であるとか、そのほかにも任意後見人とかいろいろございますが、そういった人たちの方にそれをお知らせして、そして、これは申し立てをした方がいいよということを勧めるというような積極性をお持ちなのか。それとも、これは不告不理でござんすと、言ってきたらそのとき審判をしましょうということになるのか。そこいらの家庭裁判所姿勢というものはどのようにあるべきか、いかがでしょう。
  16. 安倍嘉人

    安倍最高裁判所長官代理者 御説明申し上げます。  委員指摘のとおり、今回整備を図ろうとしている成年後見制度、大変重要な制度を予定しているわけでございまして、この制度においては、まさに被後見人となるべき方々後見的な立場での権利擁護といったことを考えいかなければいけないということはおっしゃるとおりだろうと考えておりますし、私どもといたしましても、その点については十分な配慮で進めていきたいと考えている次第でございます。その意味では、家庭裁判所の備えている諸機構を十分生かして、また、しかも地域関係機関との連携を深めまして、その権利保護について必要な手当てを行うべく運用を円滑に進めていきたいと考えているわけでございます。  ただ、しかしながら、今御指摘のありましたような、裁判所が不告不理の原則を踏み越えて、さらに積極的に事件というものをみずからの手で掘り起こしていく姿勢をとるべきかどうかという点でございますけれども、大変難しい問題をはらんだ御指摘かと思うわけでございますけれども、私どもといたしましては、裁判所姿勢といたしましては、その利用を積極的に働きかけることまではいかがなものだろうかと考えているわけでございます。  しかしながら、この制度については、十分な趣旨説明をして、御利用いただくについては、十分こちらの体制を整えた上で、御利用いただきやすいものにしていくということについては、さらに格段の工夫を重ねていきたいと考えている次第でございます。
  17. 日野市朗

    日野委員 好むと好まざるとにかかわらず、この法案成立をいたしますと、こういう審判申し立てというものはふえてくるんだろうと私は思います。それもかなりふえるんだろうなというふうに思うのですね。というのは、現在の禁治産、準禁治産等の中でカバーし切れていない部分が今度は表面化してくるということが随分ありますから、これはかなりふえるだろうと思います。  そうすると、当然組織もいじっていかなくちゃいかぬのじゃないか。それから、予算的にもかなり増額せざるを得ない部分が出てくるのだろうと私は考えておりますが、そういうところに考えが及びますと、裁判所というのは予算のとり方が下手だし、余り組織もいじりたがらないということがございまして、その点が私は非常に不安なんです。この点はいかがでしょうか。
  18. 浜野惺

    浜野最高裁判所長官代理者 現在御審議いただいております成年後見制度についての法案成立した後の具体的な裁判所におきます運用、これがどういうふうになっていくのかということは、今後裁判所内でも工夫して積み重ねていかなければならないところでございますし、また、新しい制度でございますので、この制度に係る事件数の動向というのは現在の時点では予測しがたいところでございますのですが、大局的に申し上げますと、高齢化進展等に伴います法的ニーズが高まるということは予想されるところでございます。  国民にとってより利用しやすい、親しみやすい裁判所という観点を持ちつつ、家庭裁判所が、特色であります科学性後見性を十分に発揮して、的確な事件処理が図れるように、委員指摘家庭裁判所の人的、物的体制あり方につきましてもさらに検討していく必要があろうというふうに考えておる次第でございます。
  19. 日野市朗

    日野委員 ひとつ、裁判所余り弱気にならないで、私に言わせてもらえば、いわば行政の一部ともいうべきものを担っていくわけでありますから、どうぞ遠慮なさらないで、組織の改編、必要ならやっていただく、予算要求も遠慮しないでやっていただく。そうやることが、この法案の本来望んでいるところを実現していく方策であろうかというふうに思いますので、一応、ここからエールを送っておきたいというふうに思います。  それで、後見等請求者範囲が今度はかなり広がりました。任意後見人等請求権者になりましたし、それから市町村長請求権者になっているわけですね。ただ、市町村長の場合は、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律、それから知的障害者福祉法老人福祉法、この三つの法律に限定されているわけですね。これをもっと拡大することは考えられないのか。  それから、「請求をすることができる。」という規定になっておりますね。これが民法典であれば請求スルコトヲ得なんでしょうけれども、これは民法典じゃない法律ですから、「できる。」となっておりますが、これはもっと範囲を広げる、例えば民生委員というような制度なんかありますね。それから人権擁護委員などという制度もある。ここいらからちゃんとした情報を得て、そして市町村長あたりがきちんとしたもっと強い権限を持つということはできないかどうか、いかがお考えでしょう。
  20. 細川清

    細川政府委員 まず、御質問の第一点の申し立て権者拡大についてでございますが、これは御指摘のとおり、従来の民法に比べて、市町村長等を加えることによりまして、拡大しているわけでございます。  他方後見でございましても保佐でも補助でも、一定の場合には、本人の行為能力を制限するということでございますので、言えば不利益的な面もあるわけでございます。したがいまして、そこのところは慎重に考えて、権限が濫用されないようにということも考えなくてはなりません。  そこで、市町村長の場合であれば、これは政治的にも責任を負っておられる方でございますし、しっかりした自治体としての機構がございますので、そういうところならば安心だろうということで、民生委員等方々がそういう事情を知ったらば市町村長に通知するという形で適切な行使を期待いたしたいと思っているわけでございます。  現に、日常の介護サービス等は、市町村長権限があるのですが、現実には民生委員とかヘルパーとかそういう方々がやっていて、それが行政的に伝わるようになっているということで、現時点では市町村長に限るのがよろしいのではないかという判断でございました。  それから、御質問の第二点の、「することができる。」ということの意味でございますが、現在の民法では、相当多数の方を申し立て権者としております。そして、これはいわば権限規定でございますが、その権限規定は、当然のことながら、権限のある人が適切にそれを行使することが期待されているわけでございます。他方、しなければならないと義務的に書きますと、それでは、第一次的に義務者はだれなので、第二次的にはだれかというようなことで、大変複雑な問題が起こってまいります。  そういうこともございまして、民法上は他の場合もすべてそうなんですが、スルコトヲ得、することができるという権限規定で書いておるわけでございます。しかし、その権限は適切に行使することが期待されているというふうにお答え申し上げたいと思います。
  21. 日野市朗

    日野委員 私、非常に心配をしているのは、いわゆる独居老人と言われる方々がかなりいるわけですね。よそとの連絡も十分にとれない、とろうともしないという方も多いのでしょうが、なかなか一般的な社会との接点を持たない。また、そういう人たちが結構お金を持っているということもよくあることでありまして、そういった財産の管理などをしてやらなければならないという人たちもかなり多い。また、民間福祉施設というようなところに入っている方もありまして、民間福祉施設なんというのは、そういった老人方々なんかと非常に多くの接点を持っているわけであります。  こういうことから、私、この法案で、かなり申し立て権者というのは拡大はされたけれども民間福祉施設の長というような人なんかは、情報を提供するにとどまらず、ちゃんと申し立て権者に入れてもよかったのじゃなかろうかなというふうにも思いますし、それから、町内会長やなんかがきちんと市の方に連絡をするということなども必要なのではないかな、そんなふうに思っております。  そういう、特に独居老人なんかで、町内会長なんか、あの人は危ないなというようなことを知っているのなんかは、ちゃんと市の方に通報をするというようなシステムを指導すべきではないかなという考え方を私は持っているのです。今すぐできるかどうかというと、これも今局長おっしゃられたようにいろいろな問題点があります。それはよくわかっていますが、そういうところを何とかカバーしてやらないといけないのではなかろうかというような感じもするのですが、御感想で結構です、ひとつお聞かせください。
  22. 細川清

    細川政府委員 ただいま御指摘のとおり、独居老人等につきましては、その方が成年後見等保護が必要だという情報が適切に自治体市町村長に伝わることが必要だと思っております。  そういうことは、申し立て権者市町村長に限っておりますが、その情報が適切に迅速に伝わることによって、この法案の適切な運用ができるというふうに考えておりますので、今後とも、関係機関とも協議いたしまして、そういう体制になりますように努力してまいりたいと思っております。
  23. 日野市朗

    日野委員 それでは、実務現状、それから、これからの展開がどうなっていくのかということについて少しお伺いをしたいと思います。  現在は、これは禁治産に当たる、それで後見人をつけなくちゃいかぬ、こうなっていても、実際は、禁治産申し立てをする申し立て権者がだれそれを後見人に、こう書いて出させるという方法をとっておられますね。今度は、職権でこれを付することになるわけでありますから、申し立て権者もだれを一体後見人にしたらいいかは実はわからぬ。私は申し立てはするけれども、私は嫌なのよという人だっているわけでありますね。そこいら、現状はどうなっているか。そして将来、どのように実務のやり方というのは進むべきか。お考えいかがでしょう。
  24. 安倍嘉人

    安倍最高裁判所長官代理者 現在の禁治産制度、準禁治産制度のもとにおきます後見人保佐人選任状況をかいつまんで御紹介申し上げますと、法定後見人、これは配偶者でございます、法定後見人となる者が一七%というのが調査状況でございます。そして残り、選定後見人でございますが、裁判所選任する後見人の大半が、約九割を超える数になりますが、これが親族によって後見人になっていただいているというのが実態のようでございます。  今回の新しい制度のもとにおきましては、現行の配偶者法定後見人制度がなくなることがあり、他方でまた法人あるいは複数の後見人があり得る、こういうことになるわけでございますが、そういった形で選択の幅が広がるということになろうかと思います。  そういった中で、個々の事案に応じた対応を考えていくしかないわけでございますけれども一つには、御指摘のように、申し立ての際の候補者推薦がある場合があろうかと思います。その推薦の方の適否を考えていくということがあります。推薦がない場合には、その地域社会における他の福祉関係機関等方々でなっていただける方、いわば社会資源と申してよいかと思うのでございますが、こういった方々の中から、どなたになっていただくのが適当かということを考えていくことになろうかと思います。そういった意味では、法律専門家等一つの類型になろうかと思いますし、さらには福祉関係の団体や個人の方々もそういった候補者になろうかと考えております。  私どもといたしましては、どういう方々がそういう候補者になり得るかということを十分把握できるような体制も組んでいきたいと考えている次第でございます。
  25. 日野市朗

    日野委員 今、後見人候補者後見人になろうとする人たち、なり得る人たちについていろいろとお話がございました。そのとおりであろうというふうに私も思いますし、今までの実務でほとんどがいわゆる家族共同体と言われるものの中から後見人を選んできた。これは保佐人についても同じでしょう。  ですから、後見人に絞った話をしますが、保佐人のことも頭に置きながらひとつお答えをいただきたいと思うのですが、この議論の中で、家族共同体が今まで果たしてきた役割というもの、私はこれは決して軽く見てはいけないと思います。そして、これについてはこれからもやはりしかるべき配慮というものをしていくべきだと思うのですが、人によっては、この家族共同体をもっと大事にして、これの中から後見人を選ぶべきというような論を立てる人もおいでになるようです。  しかし、今の世の中の移り変わりを見ておりますと、もう家族共同体で面倒を見切れないという事例はいっぱいあります。少子化でございまして、核家族化しているものだから、親を田舎に置いて自分は東京で働いて、後見の事務をきちんとこなせないというような家族も多いわけでございますね。これをさらに縛りつけていく、後見人と被後見人、これを家族であるとか親族の共同体の枠に押し込んで縛りつけておくということは、私としてはまことに非建設的であると思っているわけですが、やはり情義を大事にすべきである、情理というものを大事にすべきである、そういう意見もございます。  これについては法務省としてはどんな御意見をお持ちになりましょう。法務大臣としてはいかがですか。
  26. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 新しい成年後見制度のもとでは、家庭裁判所が個々の事案に応じて、最も適任と認められる者を成年後見人等に選任することとなっております。したがいまして、家族が無私の愛情に基づいて後見事務を行うのが適当な場合もあれば、弁護士、司法書士、社会福祉士、ボランティア等の第三者が専門的な知識や経験を活用して後見事務を行うのが適当な場合もあると思われるわけでございます。  そのいずれが適当であるかということにつきましては、本人の意思や家族間の関係後見事務の性質等を総合的に勘案して、個々の事案ごとに家庭裁判所によって適切に判断していただくことになると思っております。
  27. 日野市朗

    日野委員 そのとおりなんですよ、表面的に見ればそのとおりなんです。しかし、こういう制度が動いていくときは、いや、それは家庭裁判所の仕事でございますといっては済まない。やはり社会後見の事務をちゃんと果たしていく、保佐役割をやりやすくしていく、こういう全体的な雰囲気の醸成といいますか、そういうモラルの醸成といいますか、そういったものが必要なので、私が聞きたかったのは、それはどっちの役割だというような話じゃなくて、そういうものの醸成をやっていくというのは法務省役割が非常に大きいだろうと思うので今伺ったのです。そんな考え方から、どうですか、気楽に答えていただいて結構です。
  28. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 自助、共助、公助、こういうものの組み合わせの中で適切にこういう問題は取り扱っていかなきゃいかぬと思いますが、気持ちの上では、今委員がおっしゃるような気持ちを私も、大変同感でございます。
  29. 日野市朗

    日野委員 それでは、後見等の仕事が順調に進むための条件というようなものをひとつ考えてみたいと思います。  一つは、今までこういう仕事はボランタリーなものといったらあれでしょうか、家族共同体の中で支えるという、今大臣のお言葉をかりれば、無私のという言葉を使われましたね。私もこれは非常に適切な言葉かなと思います。ところが、そればかりには寄りかかっていられないというのが現状であろうというふうに思うんですね。それには寄りかからないということになれば、報酬をきちんと支払っていく、その仕事に対してはきちんとした報酬を支払っていくというのが私は大切な観点ではなかろうかというふうに思っているんですね。  そこで、現在の実務、家事審判法九条一項二十号から家事審判規則の八十九条の二項にいろいろ規定がありまして、裁判所がこの問題を処理してこられているわけですが、現在どうなっているのか、これをちょっと聞かせてください。私に言わせてもらえば、裁判所の人の仕事に対する評価というのは残念だが非常に低い。それは予算の都合ございましてと言われるのはよく存じておりますが、非常に低い、こういうふうに私考えております。その実務現状をちょっと御報告いただけますか。
  30. 安倍嘉人

    安倍最高裁判所長官代理者 今御指摘の点については、民法上、相当な報酬を与えることができる、こういう規定になっていることでございますが、現在の運用といたしましては、報酬を付与すべきかどうか、その額をどうするかという点については、まさに個々の事案ごとに考えていくしかないという状況であろうかと思います。  その際に考慮すべき事項といたしましては、後見人と被後見人の間柄、身分関係があるかどうかという点でございますとか、あるいは後見事務の内容、その後見事務の難易でございますとか、あるいは期間がどのくらいかかったかということになろうかと思います。さらには、後見人の有している財産の管理額、被後見人資力などを考慮いたしまして判断されているという状況にあると承知しているところでございます。まさに事案によっての判断となろうかと思います。
  31. 日野市朗

    日野委員 これはケース・バイ・ケースにならざるを得ない一面ございます。しかし私は、ボランティアの努力というのも限界があると思うんですね。やはりしかるべき報酬が払われて初めてこの制度というのは機能していくだろう、このように思っているわけですね。  それで、これからの見通しということになります。現在までの報酬の状況なんというのは、見ておりますと、家族共同体の中でやっていくという場合は、仕事の難易もありましょうし、それから管理する資産の多寡もかかわってくるのでしょうが、家族や何かが後見の仕事をするときは、大体は払っていないというのが実情でございましょう。いかがでございますか。
  32. 安倍嘉人

    安倍最高裁判所長官代理者 後見人がどういう立場にあるかによって、報酬が払われているかどうかという点について、私どもといたしましては統計的に把握しているものはございません。その意味で御了解いただきたいと思うわけでございますけれども、ただ、御指摘のように、身分関係が近い場合には比較的その報酬の額は低くなるとかいう傾向があることは確かだろうと承知しているところでございます。
  33. 日野市朗

    日野委員 この間参考人質疑をやりまして、参考人の方々は、いろいろなボランティアの人たち、例えば弁護士会の中にもこういう仕事を引き受けてもいいよという、司法書士会なんかでも引き受けてもいいという人たちもいる、そのほかにNGOの人たちなんかもいるということを語っていかれました。こういう方々と家裁との間できちんとした連携をとり合っていくということが必要なことだと思うのですね。こういう方々と報酬なんかについての相談、これはある程度の基準を設ける必要があるだろうと思うのですが、そういう相談をなさるおつもりはおありか、そういう方々と相談をして報酬の基準なども決めていかれるおつもりがおありか、いかがでございましょうか。
  34. 安倍嘉人

    安倍最高裁判所長官代理者 御指摘のとおり、後見人となっていただく方々との間で家庭裁判所が十分な打ち合わせを行うことは必要だろうと考えております。とりわけ各種の福祉関係機関等も関心を持っておられるところでございますので、私どもといたしましては、この法律成立した場合には、速やかに関係機関との間で各家裁が協議を持ちまして、後見人体制をどうするかという点についての相談を始めてまいりたいと考えているところでございます。  その中にありまして、どういう形で後見事務を行っていただくかということの検討があろうかと思うわけなのですが、その一環として報酬についての話題も出ることもあろうかと思います。ただ、しかしながら、そこにおいて明確な基準が立てられるかということは、これからの協議の推移を見守っていかなければ何とも言えないところがあろうかと考えている次第でございます。
  35. 日野市朗

    日野委員 その協議はきちんとやってもらいたいし、先ほども私、裁判所の、ほかの人たちに仕事を頼んだときのその仕事に対する評価が低い、まことに失礼だが、こう申し上げた。別に国選弁護人の報酬などを言い立てるつもりは私はないのですけれども、例えば調停委員方々に対する報酬であるとか、そういうのを見ても、これはいささか時代離れしているな、それに参加してくださる方々の熱意というか、ボランタリーといいますか、そういったものにおんぶし過ぎてはいまいかというのが実は率直な私の感想なのです。  このことについて、例えば弁護士さんに後見人をお願いしますということになって、これはかなり弁護士さんとしては犠牲的精神でやらざるを得ないということになるのだろうなと思うのですね。私は、犠牲的な精神でやるということは美しいことかもしれないが、決して長続きはしない、私自身の経験からしてもそう思いますし、いわゆるボランティアという形でいろいろな社会とのかかわりを持っておられる方々の姿を見ていても、これはどのくらい長続きするのかということを思わざるを得ないのですね。ここについて大きな変化を遂げなければならないと私は思うのですが、いかがでしょう。
  36. 安倍嘉人

    安倍最高裁判所長官代理者 大変難しい御指摘かと思うのでございますけれども、確かに、いい後見事務を行っていただくという観点からは、それなりの報酬をお払いしなければいけないという要請が一方にございます。他方では、その報酬の出どころである被後見人財産、資力がどうであるかということも見なければいけないことでございまして、現在も、家裁の運用といたしましては、その後見事務の内容に見合う報酬を考える一方で、その御本人の資力等を見ながら、事案に応じた判断をしているものと思うわけでございまして、今後もその点については的確に事案の内容を見きわめていくような運用考えていきたいと考えている次第でございます。
  37. 日野市朗

    日野委員 前進的な実務の積み重ね、これに期待したいところでございます。決して後ろ向きに物事を考えないということがこのシステムをきちんと生かしていく上では必要なことだというふうに思います。  特に、私、もう一つ心配するのは、親族を選任した場合、どうなるのだろうということなのですね。親族であれば、より密度の濃い後見事務、後でまた話をいたしますが、身上監護もやらなくてはいかぬ場合も出てくるわけでありまして、身上監護の中に介護的な要素が入ってくる、これはもう避けられない、こんなふうに思いますので、特に親族が後見人になった場合はそこのところの密度が濃くなってしまう。そうすると大変だと思う。  一方では、一般的な例で、何だ、あの財産をあそこの嫁がそんなに使うことはないのにとか、あの嫁は報酬をもらっているようだとか、少しくらい離れていたっておばあさんの面倒を見るのは当たり前じゃないかみたいな、こんな話がずっとささやかれるということも、これは十分考えられるところですね。  そういう点から、親族についてもやはり正当な報酬、その正当性についてはいろいろ配慮すべき要素はあるだろうと思いますが、正当な報酬というのは必要だと思います。お考えいかがでしょう。
  38. 安倍嘉人

    安倍最高裁判所長官代理者 確かに従来は、委員指摘のとおり、親族であるがゆえに、いわばボランティア的あるいは無報酬で後見事務を行うべきである、こういう空気があったことも確かだろうと思います。それは親族とその御本人との人間関係のありようによって随分変わってくる点だろうと思うわけでございますけれども、今回、このような形で後見制度整備しようというときには、やはり後見の事務について見合うものを考えていくということについては十分これから考えいかなければいけない点であろうと考えている次第であります。
  39. 日野市朗

    日野委員 それで、身上監護と介護の関係についてちょっと伺って、整理をしておいてもらいたいというふうに思います。  私は、身上監護をやるということは容認すべきであろうというふうに思います。そこで、後見人の行うべき身上監護と介護、ここから先は介護の仕事でございます、ここまでは監護でございますといっても、これはなかなか線の引きにくい問題であろうというふうに思いますね。ここについてもいろいろ議論があるようですが、そこをきちんと整理してしまうという考え方は必要であろうと思いますね。どこまでが監護であって、どこから先は介護だというような線引きといいますか、そういったものについては、法務省は具体的に考え方、基準、そういったものをお持ちでしょうか。あったら明らかにしてもらいたい。
  40. 細川清

    細川政府委員 ただいま御指摘の問題は、大変重要な問題でございまして、法制審議会の審議の中でも相当議論された問題でございます。  従来の民法におきましては、後見人は被後見人の療養看護に努めなければならないと規定しておりましたので、あたかも後見人自身がみずから介護しなければならないように読めないわけではなかったわけです。ただ、そこについては問題がありまして、そういうことがあるためにかえって適切な後見人を得ることができないという問題が指摘されておりました。  したがいまして、今度の法案におきましては、その点を改めまして、身上監護についての事務については本人の身上を配慮しなければならないという規定にしておりまして、介護に関する事務、つまりどういう介護サービスを頼んでどういう契約をするかとか、そういう介護に関する事務については代理権はもちろん後見人にあるわけですが、後見人みずからが介護することはこの法律要求されていないという考え方で整理したわけでございます。
  41. 日野市朗

    日野委員 そうはいっても、現実問題に直面をいたしますと非常に難しい問題が出てくるのだろうと思います。例えば高度医療についてどうするとか、それから延命治療についてどうする、リハビリをどうする、それから臓器移植なんという問題もこのごろありまして、そういう問題をどうする。これはかなり頭の痛い仕事にも直面をすることになっていくのでありましょう。  そこはやはりいろいろ実例の積み重ね、それから、裁判所法務省両方共同して、こういう場合はどんなふうな処置にすべきかというような指針の基準をきちんと決めて、そういう指針をつくっていくこと、これは非常に大事な問題であろうと思いますので、そこらは、各担当、各関係機関の努力を期待いたしたいというふうに思います。非常に困難な問題であります。しかし、そこのところがきちんとできておりませんと、画竜点睛を欠くようなことがあってもいけないというふうに思います。  それで、次に、皆さんどうお考えになっておられるかということでちょっとあれなんですが、今度は法人が後見人等になれるわけでございますね。  では、具体的な例で聞きましょう。  具体的に、医療福祉法人に被後見人が入院をしているというようなケースで、その法人は、身上監護についてはもちろん、いろいろな看護の事務について被後見人を代理できるのかどうか。これは、実際実態を見た場合は、その法人にやらせた方が非常に的確に対処できるという例も多い、スピーディーに対処できるという例も非常に多いと思う。しかし一方では、利益相反という問題は常について回るわけでありまして、ここいらはどう考えておいでになりますか。
  42. 細川清

    細川政府委員 この問題は、そういう法人を家庭裁判所後見人選任していいかどうかということでございますので、最終的には裁判所が判断されるわけですが、法制審議会で審議したときの考え方を整理して申し述べますと、やはりそういう御本人が入院なり入所している施設と御本人との間では、金銭面の支払いをしなければならないという契約があるわけですから、基本的には利害が対立するという関係にあるわけです。したがいまして、後見人が一人だけ選任されている場合には、それは包括的な代理権を持つことになりますので、そういう場合には不適当ではないかというふうに考えられたわけです。  他方後見人が複数選任されて、金銭面に関してはこちらの、施設じゃない人がやる、それ以外の点については、例えば介護サービスを契約するというのは施設が後見人になる、そういう分掌を定めることも可能ですし、また、保佐とか補助関係で非常に限られた範囲で代理権が与えられるような場合には、先生御指摘のとおり、かえって入所している施設の方が適当な場合もあるということになる、このように考えられております。  そういう関係から、その点を適切に判断していただくために、利害関係を考慮した上で裁判所が適切に定めるという形の条文にしているわけでございます。
  43. 日野市朗

    日野委員 もし、私が後見人になった、そしてその被後見人はどこかのそういった施設にいる。こういう例は、特に弁護士だとか司法書士だとかそういう人たち、結構忙しい職務に従事しながらボランティアとしてやっているというときに、しょっちゅう施設に行ってみて、目配りをし気配りをしながらということは実際上はできないんだろうと思うんですね。実際上はできない。だから、その施設でやって、そして後でその報告をくれ、そしてそのときの帳簿関係もよく見せてよ、契約書関係なんかもよく見せてよという形に勢いこれはならざるを得ないのではないかなというふうに思うのですね。  それで、私考えてみるんですが、これは必ずしも全部利益相反のおそれがある、だからこれはだめよということではなくて、しかるべき監督人を配置してきちんとした監督が行われる、それで不正はないというようなことが明らかになればいいのではないかと思われる場合も随分多かろうと思うのでございます。これは利益相反でございます、これは無効でございますということをしゃくし定規にやっていられない場合というのはかなり多いと思うのですね。こういう場合についてはいかがでしょうね。
  44. 細川清

    細川政府委員 御指摘のような問題もありますので、利益相反があるときには一切後見人になれないという条文になっていないわけでして、そこを裁判所がよく検討した上で選任するようにという条文になっているわけでございます。  今御指摘のような場合、まず一つ考えられますのは、弁護士の方が後見人になった場合、特定の事項についてそれをさらに委任するということも考えられますでしょうし、また、濫用のおそれがなければ施設を後見人にして、しっかりした後見監督人も選任するということも考えられると思います。  いずれにしましても、後見人選任されますと、きちっと財産目録をつくりまして定時に報告しなければならないことになっておりますので、そういうことによって、利益相反が観念的には考えられるけれども後見人にしていい場合もないとは言えないというふうに考えております。利益相反だから絶対してはいけない、必ずしもそれが常に正しいわけではないだろうというふうに考えているわけでございます。
  45. 日野市朗

    日野委員 次は、大臣のお考え伺いますが、今のやりとりをお聞きになっておられたと思います。  後見保佐それから補助、こういったシステムは今までとは違ってしまって、私の表現で言わせていただければ、裁判所の枠を大きく超えた一つの方向に今発展しようとしているんだろうというふうに思います。私、このような方向性というものは正しい方向を見ているんだろうというふうに思います。裁判所も今までのようにぬくぬくはしていられないわけでございまして、こういった意味では、時代が大変大きく変わっていると言えるんですが、このような変化、これは法務省としてはこれからもずっと持続をしていかれるというふうに考えてよろしゅうございましょうね。これは、裁判所にこういうことをやらせるのは恐れ多いというか、裁判所には気の毒だということになって縮小したりなんかしないように、前に進めていただきたいと私は思うんです。いかがでございましょう。
  46. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 我が国の家庭裁判所の特色というのを見てみますと、心理学とか社会学、教育学、こういうものに関する専門的な知識を備えたものでございます。その中には、調査官とか、あるいは事件調査や人間関係の調整に重要な役割を果たしていただいているわけでございますので、こういった家庭裁判所の大変すぐれた特色を生かしながら、新しい後見制度がその目的に沿って利用されていくためには、制度の中核を担う立場で、家庭裁判所が今後とも大いに活躍していただきたい、このように期待しておるところでございます。
  47. 日野市朗

    日野委員 時間がそろそろなくなってきましたので、いろいろな議論があるところですが、結論だけ述べていただくような形になるかもしれません。  法人を後見人適格といいますか、それから保佐人補助人、こういう形になってまいります。これは、先ほどから私いろいろ裁判所との間で議論をしてまいりましたが、特に法人なんかになりますと、法人というのはボランティア的な要素というのは非常に少ないわけですね。法人の社会的貢献なんということを言われていますけれども、では、でっかいメーカー会社が、例えばNTTがどこかの後見人になるなんて、そんなことは考えられない。別個の、今社会福祉の仕事をやっている法人というのは一つ考えられるでしょう。それ以外に新たに、シルバービジネスという言葉はありますが、そういった事業、何もシルバーに限らないんですよ、いろいろな障害を持った方々でもいいでしょう、そういう後見事務をビジネスとしてやっていくという法人が出てくるかもしれない。  ややもすれば、我が国のこういう問題に関する考え方というのは保守的だと私は思います。こういうのはボランティア的なところでやるのが本当じゃないのという考え方もこれあります。しかし、私はそうは考えないんだな。やはり、きちんとした仕事をきちんとやって、きちんと報酬をもらう、そしてそれがビジネスとして成り立っていく、こういうこともあっていいんだろうと私は思うんですが、この点についての大臣のお考えいかがでしょうか。
  48. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 今回の改正によりまして、弁護士、司法書士、社会福祉士などの法律あるいは福祉の専門家が成年後見人となる場合がふえてくると思います。各種の法人が成年後見人等となる場合も出てくるだろうと思います。したがいまして、後見事務を事業として行う専門家や法人もあらわれてくると思われますが、要は、本人の保護のために良質で適正な後見事務の遂行が確保されるということであれば、そのような事業の発展というのは、社会のニーズにこたえる上で大変重要だと思っております。
  49. 日野市朗

    日野委員 時間が来たようでありますから、終わります。ありがとうございました。
  50. 杉浦正健

    杉浦委員長 次に、坂上富男君。
  51. 坂上富男

    ○坂上委員 坂上でございます。  前回に引き続きまして、民法改正について質問をさせていただきたいと思います。  少し基本的なこともお聞きをしたいのでございますが、官房長がまだお出かけいただいていないようでございまするから、少し各論的なことから質問をまずさせていただきまして、官房長お見えになりましたら、大臣と官房長にお聞きもさせていただきたい、こう思っておるわけでございます。  そこで、まず一つでございますが、任意後見人が受任した事務に関して、裁判を起こしたり登記の申請をしなければならない場合も想定されると思うのでございますが、任意後見人にそのような権限は認めておるんでしょうか、どうなんでしょうか。
  52. 細川清

    細川政府委員 これは、御本人と任意後見人となる方との間の契約で、そのような事項を委任すればすることはできるわけです。ただ、任意後見人が弁護士さんでない場合には、それはその人はできませんので、弁護士さんに依頼するということの権限を与えればよろしいわけでして、また、任意後見人が弁護士さんである場合には、その方に、あれば訴訟等も依頼するという形の契約をしていただければそのことは可能でございます。
  53. 坂上富男

    ○坂上委員 その次に、任意後見人に対する監督についてでございますが、任意後見人に対する監督は、専ら任意後見監督人が行い、家庭裁判所は、解任を除いて、任意後見監督人を介して間接的に関与するだけだと思われるのであります。一体こういうような監督の仕組みで、間接的な監督で果たして実効性があるんでございましょうか。  それから、少なくとも家庭裁判所が直接に任意後見人から報告を受け、任意後見人に一定の事項を命ずることができるところの道筋というものを用意しておく必要があるのでなかろうかと思いますが、この点に対する法務省の見解はどうなんでございますか。
  54. 細川清

    細川政府委員 御指摘のとおり、任意後見人に対する直接の監督機関は任意後見監督人でございますが、この監督人は、任意後見人の事務を監督して家庭裁判所に定期的に報告することを職務としております。さらに、随時に任意後見人に対して事務の報告を求め、事務を調査する権限を持っております。  したがって、常設の監督機関としてはこれで十分であろうかと思っておりますが、さらに、家庭裁判所は、必要があると認めるときは、任意後見監督人に対して、任意後見人の事務に関する報告を求め、財産状況等の調査を命じ、必要な処分をする権限を持っておるということになっておりますので、実質的には家裁が直接の監督を行うに劣らないような仕組みになっているというふうに考えております。
  55. 坂上富男

    ○坂上委員 その次は、第十条の登記事項証明の請求についてでございますが、登記事項証明の交付というのは、御本人、その親族、成年後見人等から請求、それから公務員の職務上の請求、そういう場合に限られまして、取引の相手方とか利害関係人は請求できないことになるんじゃなかろうかと思うのでございますが、これは非常に二律背反でございまして、確かに、いわゆる被後見人の人権を保護するという意味において登記制度にしたということはわかるんでございますが、一面、取引の相手方というのはこれによって大変利害関係の影響を受けることになるわけでございますので、取引の相手方とかの利害関係人はこれについて請求できないということになりますと、私は不都合なんじゃなかろうかと思いますが、この人権上の調和と取引の安全性についてどういうふうにお考えになっているんでございましょうか。
  56. 細川清

    細川政府委員 この点は、確かに御指摘のとおり、本人の保護と取引の安全をどう調和させるかという問題でございまして、この立案の過程でも経済界方々ともいろいろお話し合いもしたことがございます。  そういうことで、現在の考え方を申し上げますと、まず、成年後見人がその立場で取引をしようという場合には、その権限を証明してもらうために登記事項証明書を出してもらうということになりますが、その場合には、後見人自分で証明書をとってくるということになります。  それから、本人がみずから取引をしようという場合には、相手方が疑問に思えば、あなたが成年後見等を受けているかどうかを確認するということになりまして、もし受けているということであれば、この取引は御本人ができるかどうか証明書を出してくださいと言って、御本人から出してもらうということでよろしいんではないか他方、能力者を装ってうそをついた場合は、これは民法二十条の詐術が適用になります。  そういうようなことを考えますと、これは、事項証明書を請求する人を一定の範囲の人に限るのでやむを得ないのではないかというのが結論でございまして、逆に、取引の相手方がだれでも事項証明書を請求できるといたしますと、結局だれでもそれを見られるということになってしまいますので、それは御本人のプライバシーの保護の上で適当ではない、そのような結論になったわけでございます。
  57. 坂上富男

    ○坂上委員 詐術を用いた場合の法律上の効果についてはまた後から聞きますが、これはなかなか非常にデリカシーな問題なんですね。これは、いわゆる取引の安全の観点からいったらどう対応していいのか私もまだ結論づけることはできないのでございますが、一応問題として指摘だけさせていただきたいと思っておるわけでございます。  あわせまして、今度は手数料のことですが、登記嘱託、申請の手数料並びに登記事項証明書それから閉鎖登記事項等の交付手数料は政令で定めるとされておるわけでございます。  そこで、当事者に現行の戸籍制度における負担よりも大きな負担をかけるべきでないと私は前からそう言っているんですが、一体、具体的に本件の証明書等についてはどのくらいの金額を手数料として想定されておるのか。特に、登記事項証明書は、不動産登記、商業登記では現在一通千円とされておりますが、成年後見登記の登記事項証明は、取引ごとに求められて何通も必要となることが考えられるが、一通千円では相当な負担になる場合も想定されるわけでございます。  特に、私はこれは前も何回も言ったことがあるのでございますが、いわゆる登記制度はコンピューターになる、コンピューターは独立採算制である、したがって、いわゆる手数料の引き上げは独立採算の観点から見てやむを得ないんだ、こういうようなのが法務省の答弁でございます。それはちょっといかないんじゃないかということを、私はしょっちゅう言っておったわけでございます。  と申し上げまするのは、御存じのとおり、私は、登記関係自治体における戸籍と同じでいいんじゃないか。人の戸籍についてはいわゆる戸籍、物の戸籍についてはいわゆる不動産登記。そして、今度は、これにかわるべきものとして、保護対象の皆様方を戸籍からこちらの方に移したわけであります。でありまするから、戸籍にすれば戸籍の方がはるかに安いのでございますが、今度は登記の方に移るということになりましたらこれが二倍になり三倍になるということになりますと、かえって結果的に、登記に移したために手数料が多くかかるということになりますと、果たしてその目的が達せられるんだろうかという点から考えますと、私はどうもここの点の手数料の問題は非常に問題があるのじゃなかろうか。  したがって、私は、前から言っておるとおり、まず登記に関する手数料はいわゆる戸籍並みにするのが原則だと思います。官庁によってこうやって違ったのでは、私はいかぬと思っているわけでございます。それから、今度は戸籍から登記に移ったわけでございまするから、そのことのために値上げになるというようなことになったらこれまたいかぬことでございます。  この点を法務当局は手数料の観点からどう考えておられるのかきちっと答弁をしていただきまして、これは余り金額が大きくなるようではいかぬと思いますので、私は、ぜひとも戸籍並みの手数料にしていただかなければならぬ、こう思っておりますが、この点どういうふうにお考えでございますか。
  58. 細川清

    細川政府委員 手数料の額は、法文にもございますが、登記に要する実費、登記事項証明書の交付に要する実費等を勘案して政令で定めることになっております。これは、法律案成立した後に、財政当局とも協議して具体的な金額を定めるということになるわけでございます。  したがって、今確定的な額をこういう公式な場で申し上げられることにはならないわけですが、御指摘はごもっともでございますので、その御指摘を体しましてできるだけ利用しやすい額にするように努力いたしたいと思っております。
  59. 坂上富男

    ○坂上委員 これはひとつ法務省、手数料を決めるときは国会の方にも御相談をしていただきたい、こう私は思っているわけでございます。これは日常において大変大きな問題があるものでございまするから、政令で決まった、省令で決まったなんて言われますと、もうどうしようもならぬ、こういう状況でございますから、決める前にひとつぜひとも国会の方にお話ぐらいはしていただきたいな、こう思っておりますが、いかがですか。
  60. 細川清

    細川政府委員 政令は内閣の責任で定めるものでございますが、あらかじめこういうことになりそうだということをお知らせすることは当然可能でございます。
  61. 坂上富男

    ○坂上委員 私たちは、十分関係者の意見も取り入れるようにひとつ強く要求をしておきたいと思っておるわけであります。  官房長、突然、御苦労さんでございます。私はまた、官房長ですからいつもいられるんだとばかり思って、今回はだれとだれと法務省出てくださいということを言わなかった。きのう夜決まったものでございますから、打ち合わせも何もできないという状況でございまして、見たらおられませんので、ぜひこれはお聞きをしなければならぬなと思っているわけでございます。これは大臣にもお聞きをいたしますが、ちょっと、さっきの有権解釈の問題を棚に置きまして、基本的な問題として聞きたいと思っておるわけであります。  私も結構、法務委員会はもう十数年、その間ブランクもありますが、させてもらったわけであります。私が仕えたのは稲葉代議士でございました。大変誠実かつ円満な尊敬される大先輩でございました。その先生からいろいろ御指導を受けておりまして、この百何十国会においては法務省はこれとこれとこの法案提出したいと思いますと、こういうような話があらかじめちゃんとあったように聞いております。そして、それはちょっと多過ぎるんじゃないか、この会期を考えてみると、百五十日のうち何日ぐらい延長になったといたしましても、少し法案の数としては多過ぎるんじゃないか、しかも、この法案は重い法案なんだから、相当慎重審議しなければならないというようなことで、では、そういうような御意見も賜りまして、その処理をどうするかというようなこともお考えになってずっと提出をされてきたような気が私はしております。  私は、理事になったり、あるいはことしの一月から委員会に戻らせていただきまして野党の筆頭ということにさせていただいているわけでございます。するしないはそれは法務省の勝手でございますが、一応、大体こういう法案をこの国会に提出したいというような話があったのかなかったのか私はちょっと忘れましたが、とにかく、今回の通常国会においては相当重い法案がびっしりと出されているというのが実情でございます。  子供の質問みたいで恐縮でございますが、現在法案提出されておりますけれども成立しない閣法は何本ぐらいあるかおわかりですか。大変無礼な質問かもしれませんが、官房長、どうですか。
  62. 但木敬一

    ○但木政府委員 それでは、法案を国会に提出した順序に従いまして申し上げたいと思います。  一番古くなっておりますのが組織的な犯罪対策三法でございまして、これは平成十年の三月十三日に提出をしております。これにつきましては、御案内のとおり、現在、参議院の法務委員会審議中でございます。これが三本ございます。  それから、民事訴訟法の一部を改正する法律案、これの提出年月日は平成十年の四月十日でございます。これにつきましては、現在、衆議院法務委員会に付託という状態にあります。  それから、未成立法案ですと、電気通信回線による登記情報の提供に関する法律案、これが本年の三月二日提出でございます。それから、ただいま御審議をいただいております成年後見関連四法がございます。それから、商法等の一部を改正する法律案は本年の三月十日に提出になっております。それから、少年法の一部を改正する法律案、これも三月十日に提出されております。それから、参議院の審議を終えて現在衆議院に回っております法律といたしまして、出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案と外国人登録法の一部を改正する法律案がございます。  以上が内閣提出法案でございます。
  63. 坂上富男

    ○坂上委員 さてそこで、会期延長になってはいますけれども、会期延長になっておって、今お話のありました法案が、いずれも言葉で言えば重い法案とでも申しましょうか重要法案とでも申しましょうか、場合によっては対決法案にもなるような法案もあるわけでございまして、これを一つ一つ審議するというのは、大変慎重にしなければならない問題でもあると思っておるわけでございます。  これだけ重い法案を、御存じのとおり、三月二日に電子登記。それから、今問題になりつつあるんですが、三月十日に商法の持ち株関係。それから少年法、これも激しい議論を呼んでおるところ、これも三月十日。外登法、これも三月十日、これもまた意見のあるところです。入管、これも三月十日。それから、今審議中の民法改正、三月十五日。それから任意後見人契約、三月十五日。それから、これに関連する整備法案、三月十五日。それから後見登記に関するもの、三月十五日。こういうことになっておりまして、これを一つ一つとってみても、実質、法務委員会は週二回ということになるんでございますが、一カ月一つ一つ慎重に審議をしても、やはりそれほど問題の多い法案だろうと私は思っておるわけでございます。  したがいまして、今上がった法案を見てみますると、いわゆる時限立法的なものが上がって、ただ、御存じのとおり、いわゆる盗聴法は強行採決という不幸な事態によって参議院に送られている、こういうような状況でございまして、あと法案が一本も通らないというようなことなんですね。  私は、この点につきまして官房長にもお話を申し上げました。いわゆる盗聴法関連法案、盗聴法については我が党は、私としては賛成はできない。しかし、ほかのものについては何かこれは歯どめができるんじゃなかろうか、修正ができるんじゃなかろうか。修正ができればこちらの方は賛成をしてもいいんでございますがというようなお話もしたのでございますが、なかなかそういうチャンスがありませんでした。そして、これを無理にしますとほかの法案も全部死んじゃうおそれがあるんじゃなかろうか、実は私は、こう二度にわたって官房長にもお話をしたこともあるわけでございます。  今、実はきょう、余り言っちゃいけない状態らしいんですが、やはり参議院の審議とにらめて見ますと、どうもこの百四十五通常国会では、八月十三日まで、一体こういうような法案、しかも衆法もあるわけであります、そういうようなものを上げることは可能かどうかということになりますと、私らは本当に真剣にこの法案は、直すべきは直して、通すべきは通さなければいかぬと思ってはいるわけですよ。だめならだめで廃案にしたい、こう思っておるわけでございますが、これだけの重い法案をばさっと出されて、今言った盗聴法を除いても、これだけの法案審議するのは、私は、やはり精いっぱいなんじゃなかろうか。  ましてや衆法も出ておるわけでございまして、どうも法務省法案提出の仕方というのは、何か、何でもいいから出せば法案成立するような考え方にあるんじゃなかろうか。そんなようなことを思って、うちの日野委員が今別の角度から御質問をしたわけでございます。私は、また別の角度から、こういう法案提出の仕方、なぜこういうふうなことになっているんだろうかというふうにも思っておるわけであります。  端的に申しますと、来週の六日、これは、衆議院が法案審査をやるか参議院で法案審査をやるかということで真っ向からぶつかっておるわけであります。私は、六日の朝まで本当に精力的に、お互いに譲り合って、大臣の奪い合いを、どちらにしてもらうかということを一元的に決めないで、場合によってはいろいろな案によって、折衷案が出るんじゃなかろうかとも思っておるわけでございまして、きょうは昼もやらせてもらいますし、あるいは月曜日もやらせてもらって、できるだけこれは円満な解決を図りたいと私は思っているわけでございます。  ただ問題は、法務省がこういうふうに重い法案をがばっと出されて、果たしてこの国会で、成立を期待されて出しているとは思うのでございますが、これは衆議院、参議院の国会の問題でございますから我々は発言を遠慮したい、こうおっしゃいますが、本当に、提出の仕方についていま少し考慮してしかるべきなんじゃなかろうかと私は思います。  官房長はもう一年前から御就任でございます。大臣は三月からでございますので、三月のこの法案提出が先なのか後なのかわかりませんけれども、どちらかというと、大臣とされましては直接的なかかわりはないんだろうとは思うのでございまして、やはり事務方としては、官房長からきちっとした対応をいただかなければならないと私は実は思っておるわけであります。  でありますから、まず法務省として、法務委員会提出されるところの法案についての御認識は一体どんなふうに今お考えになっているのか、きちっと御答弁いただかなければいかぬと思っています。
  64. 但木敬一

    ○但木政府委員 確かに委員指摘のとおり、この百四十五回国会につきましては、継続案件を含めまして、非常に重要な法案が多数かかっております。  これは根本的には、我が国が大変革期を迎えまして、基本法を所管しております法務省法律で対応せざるを得ないという時代の変わり目にございますことが原因の大きな面だろうというふうに思っております。昨年の通常国会あたりから、法務省提出法案、非常に数が多く、また非常に重い内容になってきております。また次の通常国会で、法案提出件数が、あるいはその重量が減るかと申しますと、やはり大変革期でございまして、法務省の所管している法案提出というのはやはり来年もまた多いだろうと思っております。  いずれの法案につきましても、その緊急性あるいは国民生活全体に対する影響というような点から、早く提出をして、国会において慎重な、また速やかな御審議をいただいて成立を図りたいというような法案ばかりでございます。     〔委員長退席、山本(幸)委員長代理着席〕
  65. 坂上富男

    ○坂上委員 やはり今までの法案審議の能力といいましょうか、時間というものもあるわけです。そしてまた、その法案の重みというのもあるわけです。これをずさんに審査をして国民の前に法律施行をしたら、国民はとんだ迷惑を受けるわけでございます。  でありますから、もう法律なんというのはない方がいいわけでございます。しかし、今のこの複雑な社会においては、規律を保つためにも、また、弱い人たち保護するためにも、法律の必要というのは私は十分わかっているつもりでございますが、ただ忙しくなった、いっぱい法案が必要になったからといって、むやみやたらに出されては、今度はずさんな審議になるおそれが私はあると思うのです。  だものでございまするから、確かに、去年からことしについて、異常なぐらいの重要法案提出であって、私は、果たして一体どれだけ審議が間に合うんだろうかということに非常に恐れをなしておったわけであります。  だから、私は二回にわたりまして官房長に、盗聴法関連のがつぶれるだけでなくして、ほかの法案もつぶれますよ、そうした場合、法案には甲乙はつけがたいですが、いずれも重要法案でございますが、しかし、事と次第によっては、これはやむを得ない、これだけ早く成立させようということはあってしかるべきだろうと私は実は思っているわけであります。  そこで、与党さんにも提案をいたしました。盗聴法をやると同時に、あるいはほかの成立させなければならぬ法案審議も同時に並行させたらどうでしょうか、こういう提案もいたしましたけれども、やはり党は党の立場がありますものですから、私が提案したとおりにはなかなかいかぬ。これもまたやむを得ないことだろうと私は思っているわけであります。  しかし、結論といたしまして、さっきも大変激しい議論になっちゃったんでございますが、法案が渋滞をして、結局この国会で成立しなかったり、あるいは流れたりしたということになりましても、これはまたいかぬことでもあるわけでございます。  したがって、幾ら我々が法案をつくって参議院に送っても、今、参議院は、ほかの法案審議するだけの余裕がないといいましょうか、そんなようなことになっちゃって、ほかの法案が死んじゃうなんということになったら、これもまた大変なわけでございます。さりとて、また審議の慎重さはきちっとしてもらわなきゃならぬわけでございます。  そういたしますと、やはり私は、法務省が閣法を提出するに当たりましては、もっともっとよく考えて、そしてその見通しを立てながら、野党の理事から聞いてみれば大体どれだけの時間要求があるんだろうかということもわかるわけでございますから、めちゃめちゃに出して、もう多数決だあるいは強行採決だということでは、私は非常にいかないと思っております。  そこで、今度、一番の本論なんですが、いわゆる盗聴法でございますが、前の前の国会に提出をされたものがそのまま寝ておったわけでございます。そして、政治情勢がこの四月ごろから変わり始めたものですから、突然この審議をやろうと実は言い出してきたわけであります。だから、法務省は、多分、今回提出された法案は、これはまあ無理していただければ大体できるんじゃなかろうか。まさか盗聴法が審議の対象になるというようなことは、政治情勢の変化があると思わなかったものだから、あるいはそうなったのかなとも私は実は思っているわけであります。  そこで、言葉といたしましては、こういう言葉になるわけであります。参議院の方から、衆議院が幾らつくって送っても渋滞になるなどということになっても、これまた困るわけでございます。  だものでございまするから、法務省は、率直に言って、盗聴法関連についてはまさかこういうふうな事態になることを想像しなかったんじゃないですか。これがばんと割り込んできたものだから、あとは全部押されて渋滞をしたという……(発言する者あり)いやいや、まあまあ黙っていなさいよ、人の質問中なんだから。何を言っているんですか。まあまあ、どうするの、こういうやじを。ちょっと制止しなさい、制止を。
  66. 山本幸三

    山本(幸)委員長代理 御静粛にお願いします。
  67. 坂上富男

    ○坂上委員 そう、よく聞いて。いいですか。  想像しないような事態が、政府にとってはいわゆる好機が来たわけだ。だから、ばっと来られる。これがしわ寄せということになるんじゃないですか。いずれを見てみましても、もう三月以降は提出されていないんです。審議が始まったのは四月なんです。どうも私はそんな感じがしているのでございますが、一体法務省は、これらの問題全体を含めまして、今後もあることでございますが、未成立法案に対する態度と、そして今言った問題点を踏まえまして、どのように今お考えになっておるのか。  あわせて、官房長からも、最終的には大臣の方からも、大臣の御就任は三月でありましたから直接のかかわりはないかもしれませんけれども、私は、やはり全体の見通しが法務省としては無理なんじゃなかろうか、こういう見通しが、ややむちゃと言ったら失礼かもしれませんが、むちゃな提出方法をとられたんじゃなかろうか、こんなふうに思っておりますが、この点どうですか。
  68. 但木敬一

    ○但木政府委員 先ほども申し上げましたとおり、法務省といたしましては、どうしてもこの大変革期にこれだけの法案提出させていただかざるを得ない、また、できれば、慎重かつ速やかな御審議をいただいて、全部の法案を通していただければありがたいというのが基本的な立場でございます。  これを国会あるいは委員会におきましてどのように取り扱っていただけるかという点につきましては、私どもがあれこれ申し上げる立場にはなく、ひたすら皆様にお願いして、その重要性をどこに見出すか、あるいは先に何を審議されるか等々につきましては国会にお任せするしかないわけでありまして、私どもとしては、衆参両院において速やかな、また慎重な御審議をいただいて、成立をさせていただければ本当にありがたい、これだけでございます。
  69. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 私、三月に就任させていただきました。時代の変革期に当たるということで、基本法の整備が大変重要であるということをそれ以来感じておるわけでございます。  そういう中で、ひとつ、我が国の経済社会のこの状況で、法整備が非常に大事だと思いますので、大変重いお仕事をお願いしているわけでございますが、衆参両院におきまして、どうか慎重審議の上、速やかに御可決いただきますよう、心からお願い申し上げる次第でございます。     〔山本(幸)委員長代理退席、委員長着席〕
  70. 坂上富男

    ○坂上委員 これ以上私は蛇足は申し上げませんが、やはり私は、提出のとき、それから予想外の事態が起きてきた、こんなようなことが、今回、どうも参議院では渋滞というような話になるおそれがあるんじゃなかろうかというような話になるんだろうと思うのです。  しかもなお、お互いにいがみ合わなくたって、悪口言わなくたっていいようなことを言わざるを得ないような状態。たとえ与党であろうと野党であろうと、激しく対立はしておっても、人間的には共通なものがあるわけでございますが、それほど激しい議論が、対立、論争が続くという形になっておるわけでございます。これはおのおのの立場からそういうことになるわけでございまして、結局のところ、皆さんが投げた石が、俗に言うと私たちの方でお互いに大きな波紋になって、法務委員会全体としてみれば、余り好ましくないような事態が起きかねないと私は実は思っておるわけであります。  私は、委員長に解任決議などというのは、まさに泣いて馬謖を切る思いでございましたよ。それはおのおのの立場においてそういうことをさせているわけでございますものですから、私は、やはり提出に当たりまして、また問題を処理するに当たっての提案者としての見識というものがあっていいんじゃなかろうかと思いますから、ぜひ、これはこうだからおうだということはなかなか言い切れません。言い切れませんけれども、それは英知を集めた法務省の幹部諸君でございますので、私は、これからの問題としても特に要請をしていきたいと思って急遽来ていただいた次第でございます。  どうぞひとつ、全くがむしゃらに法案さえ上げればいいなどという概念にならないように、本当に国民の基本的人権をどう守るかということ、社会正義をどう実現するかということが私は法務の任務だとばかり思っているわけでございますので、よろしく、強く私は求めておきたいと思っておるわけであります。したがいまして、六日の日についても、法務委員会で一生懸命やろうじゃないかとお互いに今言い合っているところでございまして、どうぞひとつ御理解賜りますよう、官房長、お帰りでいいですよ。ありがとうございました。  さて、有権解釈の方を続けさせていただきます。  最高裁の方、鑑定についてでございますが、後見保佐についてはその開始のためには鑑定を必要とされると思われるが、現行法においても鑑定人の確保は非常に難しい、あるいは鑑定費用が高いという批判もあります。また、鑑定人からすれば安いというようなことになるかもしれませんが、これに対してどういうふうに裁判所考えておられるのか。確かに、私たち弁護料と比べてみますと、鑑定というのは結構高いのですね。しかしまた、鑑定人の先生からすれば安過ぎるぐらいにも思っておるわけでございますが、こういう点について裁判所はどうお考えになっておるのか。  私は、その一例として、国において簡易迅速に、それから安価に鑑定を行う鑑定センターというようなものをつくるような考えでもないのでございましょうか。その辺、どう見たらいいか。このまま、ただ鑑定人を選任する、鑑定人の報酬は幾ら幾ら、そして裁判所から関係者に予納を命ぜられる、これはなかなか容易じゃありません。この辺、裁判所はどうお考えでございますか。
  71. 安倍嘉人

    安倍最高裁判所長官代理者 御説明申し上げます。  鑑定につきましては、鑑定人の確保が難しいとか、あるいは鑑定費用が高い、こういう御指摘があることは承知しているところでございます。今回、成年後見制度に対する法的ニーズが高まると予想されることに加えまして、さらに利用しやすい制度を目指すという今回の法改正の趣旨を踏まえますと、私どもといたしましても、鑑定事務のあり方について検討していく必要があろうと考えている次第でございます。  この観点からは、まず第一には、この分野に関係する医師、あるいは諸機関、諸団体に十分な御理解と協力をいただきたいと考えておるところでございますけれども家庭裁判所といたしましても、適正迅速に鑑定が行われるようにするために、まず鑑定書を簡にして要を得たものにする、こういう運用面での工夫も必要であろうと考えておるところでございまして、現在、このような観点から、豊富な経験、実績を持っている医師等にも意見を伺いながら、円滑に鑑定が行われるための方策について検討を進めている段階にございます。  以上でございます。
  72. 坂上富男

    ○坂上委員 ぜひ現場の問題点も十分把握をいたしまして、鑑定もできるだけスムーズにいくような御努力をみんながしなければならぬとは思っておるのでございますが、特に裁判所、あるいは法務省もかかわるのでございましょうか。きちっとしていただきますこともお願いをしたいと思っております。  私は、この問題は、根本は新制度の利用がふえることが望まれるわけでありますが、しかしまた、そうなりますと、成年後見人や成年後見監督人等、任意後見人、任意後見監督人などが多数必要になると思うわけでございます。これから、成年後見人等の確保、養成は、国が挙げて取り組む必要がある問題ではなかろうかとも思っておりますが、そういうような用意があるのでございましょうか。欧米では、後見は最終的には国の責任であるという考え方があると言われておるわけであります。適切な後見人選任することのできない人のためには国家が最後の後見人になる制度が私は必要なんじゃなかろうか、こう思っておりますが、この点、法務省はどんな考えでございますか。
  73. 細川清

    細川政府委員 まず、後見人後見監督人等の確保、養成についてでございますが、現在、先日の参考人質問でもお話がございましたように、第二東京弁護士会や大阪弁護士会、あるいは東京都、大阪府、神奈川県等の社会福祉協議会等において、任意代理の委任契約を活用した財産管理サービスが行われているところでございます。また、司法書士や社会福祉士の団体におきましても、こういった後見人後見監督人の供給源としての法人の設立の準備を行っていると聞いております。  こういったことに加えまして、各種団体、機関における候補者の研修、名簿の作成、推薦、相談等の体制の充実が図られますように、私どもといたしましても関係機関と十分協議を持ちながらさまざまな努力をしてまいりたいと思っているところでございます。  それからもう一つの問題で、国が後見人になることは適当かどうかということでございますが、成年後見人は、判断能力が不十分な本人にかわって財産を管理したり、身上監護して本人の保護を図るわけですが、他方、これは本人の行為能力の制限という面もございます。したがいまして、私人の生活の要求行政機関が深く介入することになりますので、この辺はもう少し運用状況を見ながら、今後慎重に検討していく必要があるのではないかというふうに考えております。
  74. 坂上富男

    ○坂上委員 さて、その次でございますが、自己決定権の尊重ということについてお聞きをしたいのであります。  成年後見制度改正案においては、高齢者、障害者の自己決定の尊重という理念が貫徹されなければならないと思います。新制度が真に有意義なものとして定着するかどうかの生命線でもあると思うのであります。そこで、本人の自己決定の尊重という理念を担保するために、新制度ではどのような法律上の手当てがなされているのでございましょうか。
  75. 細川清

    細川政府委員 まず、任意後見制度という制度を新たに提案しているわけでございまして、これは、御本人がみずからの意思で自分任意後見人を選ぶということになっております。そして、その契約は、基本的には法定の後見制度に優先するというのが原則でございますので、そこでまず自己決定が非常に尊重されるということになっているわけでございます。  それから、法定後見制度におきましても、自己決定の尊重の理念に従いまして、まず、補助制度におきましては、御本人の申し立て、または御本人の同意が開始の審判の要件でもございますし、代理権や同意権、取り消し権の付与の審判の要件でもございます。それから、保佐につきましても、保佐人に代理権を付与する審判をするには本人の同意が必要だということになっております。  それから、成年後見人等の選任に当たっては、法律の明文に規定しまして、まず、選任については本人の意思を考慮するべきものとされておりますし、成年後見人等は事務の遂行をするに当たっては本人の意思を尊重しなければならないという明文の規定を置いているわけでございます。  さらに、後見におきましても、日用品の購入等につきましては、取り消し権等の対象から除外いたしまして、御本人がみずから決定できるようにいたしているわけでございまして、ほかにまだございますが、大変長くなりますので以上にとどめさせていただきます。
  76. 坂上富男

    ○坂上委員 その次に、後見人権利濫用の場合についてお聞きをしておきます。  現行制度においても問題とされているところでありますが、後見人等の権利濫用による不祥事がまた一面心配されるところでもあるわけであります。これを防止するための方策として後見人等の監督制度の充実が重要な課題だと思われますが、この点について、今回の改正案はどのような対策が講じられているのでございましょうか。
  77. 細川清

    細川政府委員 現在の民法では、監督人を置けるのは後見だけでございますが、ただいま御提案を申し上げております改正案におきましては、保佐、それから新設の補助についても監督人を置けることができるようになっております。  それから、現行法では、監督人の選任は必ず申し立てが必要でございますが、今回の改正案では、家庭裁判所が職権で後見監督人等を選任することができるといたしております。それから、複数または法人の成年後見監督人等の選任も可能であるというふうにしております。  こういったことで、監督体制の充実が図られているというふうに考えております。
  78. 坂上富男

    ○坂上委員 それから、前回もちょっと質問をしたのだし、あるいはまたほかの関係の先生方からも御質問があったようでございますから、利益相反関係については今質問はいたさないということにいたします。  そこで、今度は任意後見契約についてでございますが、契約によって自分の老後を決めておくということを可能とする任意後見制度は、広く国民に利用され普及しなければ、せっかくつくった制度意味が廃れると思うのでございます。この点について、弁護士会や福祉団体との関係は、法務省はどのように立法者としてお考えになっておるのでございますか。
  79. 細川清

    細川政府委員 この任意後見制度は、そもそも日弁連や大多数の福祉団体から強い御要望があってこういう制度をつくったものでございます。したがいまして、その過程でさまざまな協議をしてまいったわけでございます。  今後とも、こういった司法書士会、弁護士会や社会福祉士会というようなところで適切な運用ができますように、私どもも随時意見を交換し、協力してまいりたいと思っております。
  80. 坂上富男

    ○坂上委員 福祉団体というのは相当数あると思うのでございますが、ぜひひとつ、これまた差別があったりすることのないように、そしてまたできるだけ協力を密接にしていただきたいと思っておるわけでございます。  それから、今度、任意後見制度においては、財産管理だけでなくして、本人の身上面の保護後見人の重要な責務だと私は思っておるわけであります。そこで、任意後見法第六条に定める後見人の身上配慮義務、これは特約によっても減免することは許されないものだと思っておるわけでございます。私は、これは強行法規なのじゃなかろうか、こう思っていますが、これはどう解釈したらいいでしょうか。
  81. 細川清

    細川政府委員 これは、任意後見契約法において特に定めた責務でございます。受任者の善良な管理者としての義務に加えて定めたものですから、これは当事者の特約でも軽減することはできないというふうに考えております。
  82. 坂上富男

    ○坂上委員 大変結構でございます。  これは前の質問とあるいはダブるようになるかもしれません。新しい成年後見制度の実施に当たりましては、自己決定の尊重等の理念に基づいて、高齢者、障害者にとって利用しやすい制度運用がなされる新制度の趣旨、内容を福祉関係者、司法関係者に十分周知徹底するとともに、各種の相談体制整備することが重要だと思っておるわけでございます。さっき連絡はきちっとするとおっしゃいましたが、具体的な方策を一、二述べていただくとありがたいと思いますが、いかがでしょうか。
  83. 細川清

    細川政府委員 新しい制度でございますから、政府広報でこれを取り上げてもらいたいと思うのは当然でございますが、そのほかに、私どもとしては、専門家以外の方にもわかりやすいパンフレット等の説明資料、ポスター等を作成しまして、全国の家庭裁判所、都道府県、市区町村、福祉事務所、社会福祉協議会、社会福祉士会、その他の福祉関係団体、それから弁護士会、司法書士会、公証役場、法務局等に配布して、これを国民の皆さん方にさらに配布していただきたいと思いますし、制度の内容に関する解説書等を出版し、あるいは関係団体等に対する説明会を開催して説明して、制度の周知広報を図ってまいりたいと存じます。
  84. 坂上富男

    ○坂上委員 例の、さっき問題が出ましたところの詐術の問題でございます。  民法第二十条におきましては、無能力者が法律行為をするに当たりまして能力者たることを信じさせるために詐術を用いた場合は、その行為を取り消すことができないとされております。  今回の民法二十条の改正では、無能力者という言葉を制限能力者と修正するのみで同条文を存置することとされております。そこで、民法第二十条が適用されるケースの大部分は未成年者と浪費者であり、今回の制度改正では、浪費者を要保護制度の対象外としております。さらに、取り消しの範囲保佐人等の同意が留保された場合に限られておるわけであります。  そういたしますと、現実に民法第二十条が適用されるケースというのは非常に少なくなるんじゃなかろうか、このようなことから、民法二十条は成年の要保護者には適用しないとする考え方があってもしかるべきと考えますが、検討の段階でどのような議論がなされたのか、そのいきさつもお聞きをしたい、こう思っております。
  85. 細川清

    細川政府委員 御指摘民法第二十条は、この成年後見制度による本人の保護と取引の安全の調和を図るために、これはやはり必要であるというのが法制審議会等の議論の大勢でございまして、特にこれは削除するとかそういう御意見はなかった、かえってこれがあるために調和が図れるのだという御意見だったと思っております。
  86. 坂上富男

    ○坂上委員 前の質問とダブりになるかもしれません。  任意後見契約における任意後見人と取引する相手方は、どのような方法で任意後見人の代理権の有無、代理権の範囲等を確認すればいいのでございましょうか。任意後見契約の解除等において代理権が消滅していることを知らずに取引をしたために相手方が損害を受けるというおそれはあるんじゃなかろうかと思いますが、この点、どういう認識でございますか。
  87. 細川清

    細川政府委員 まず、代理人である任意後見人と取引する相手方は、任意後見人または本人に対して代理権を証明する登記事項証明書の提出を求めて代理権の範囲を確認することができます。それから、二番目の御質問の、代理権が消滅した場合ですが、この法律第十一条では、取引の安全の観点から、任意後見人の代理権の消滅は、その登記をしなければ善意の第三者に対抗することはできないものと規定しております。したがいまして、消滅の登記を申請しないままにされておりまして、それを信用した第三者はこれによって取り消されることはないということになりますので、このような制度で取引の安全が図られるというふうに考えております。
  88. 坂上富男

    ○坂上委員 後見登記制度ですが、この間私が質問した中で、後見登記法第二条で指定する登記所は東京法務局の一カ所を考えておられるようでございます。将来はその事件数等を考慮して指定登記所をふやすという可能性もあると言われたように覚えております。  そこで、複数の登記所が指定された場合、後見登記法では登記管轄に関する規定がないのでありますが、このような法律で、実務上あるいは利用上混乱を生ずる可能性はないのでございましょうか。例えば、債権譲渡に関する特例法においても登記管轄の規定がないのと同じように、そもそも管轄の概念はないものと理解したらいいのか、これはどういうふうに解釈したらいいのでしょう。
  89. 細川清

    細川政府委員 これは、管轄の概念がないとお考えいただければいいと思います。  なぜかと申しますと、これはコンピューターで処理しますので、登記簿等はたった一つしかない、コンピューターで管理されている登記ファイルが一カ所にありまして、それをオンラインでアクセスするという形になります。したがいまして、登記所がふえても管轄という問題は生じないということでございます。
  90. 坂上富男

    ○坂上委員 それから、任意後見契約関係でございますが、任意後見契約に関する法律第十条では、家裁が本人の利益のために特に必要としたときは後見開始審判等を行えることになっておりますが、これはどのような場合を想定しているのでございましょうか。また、同条第三項では、後見開始審判を受けたときには任意後見契約が終了するとありますが、自己決定尊重の観点からも任意後見を優先すべきでないかと思いますが、いかがでございましょうか。
  91. 細川清

    細川政府委員 先ほど御説明申し上げましたとおりに、基本的には任意後見が優先するという考え方で立案されておりますが、まず、十条の、本人の利益のために特に必要なときにはという趣旨は、任意後見人に授与した代理権の範囲が狭過ぎて本人の保護を図れない、あるいは、後から本人の間違った行為を取り消しすることが必要だ、そういう同意・取り消し権を与える保護が必要だという場合には任意後見契約では賄えません。そういう必要が生じた場合には、先ほど申しましたように、法定後見ができるということになっておるわけでございます。  それから、任意後見契約がされている場合に、例えば後見審判がなされるということは、従来の任意後見契約では不十分である、本人の保護のためには足りないという場合になされるわけですから、そういう場合には、任意後見契約を残存しておきますとかえって重複、抵触が生じますので、後見なら後見に一本化する、こういう趣旨でございます。
  92. 坂上富男

    ○坂上委員 それから、今度は補助人の同意権付与の対象行為の範囲についてでございます。民法十六条第一項、補助人の同意権付与の対象行為は、保佐人の同意権付与行為を準用することとなっております。同意を得ることを要する行為は第十二条第一項に定める行為の一部に限るとされております。  個別の状況に応じて柔軟に対応するためにも、特に限定する必要はないのではないかと思いますが、この点はいかがなのでございますか。
  93. 細川清

    細川政府委員 この点も立案の過程で相当議論された問題でございますが、理由を申し上げますと、今度の改正案では、判断能力の程度に応じて、後見保佐補助という制度を設けまして、必要な保護の内容、範囲を定めております。  こういった全体の枠組みのもとで、補助における同意権の範囲が、補助より障害の重い保佐における同意権の範囲を超えるということになりますと、制度の均衡がとれない。より障害が重い場合には、補助ではなくて保佐を使っていただく、そういう意味で御指摘のような条文になっているわけでございます。
  94. 坂上富男

    ○坂上委員 時間が参りましたようですから終わらせていただきますが、私は、久々に二時間法案質問をさせていただきまして、よく勉強させていただきました。繰り返しになりますけれども、やはり法案成立に当たって質問できないというのはなかなか寂しいものでございます。  特に、私はこの法案については、いち早く法案成立を強く強く期待をしておるものなのでございまして、幸いにいたしまして、きょう夕方には、この法務委員会法案成立する御協力をいただくことになっておるわけでございまして、もちろん法務省の方といたしましても、これに対しましては一日も早い成立を期待をされているんだろうと思っておるわけであります。  したがいまして、参議院のことを言うことは余計なことになりますが、私は、一日も早く法務委員会、本会議でこれが可決成立して、参議院の方でもまた成立することも期待をいたしたい、こう思っておるわけであります。  そこで、最後に法務大臣、この民法改正、いわゆる成年後見関係、それから手話による公正証書遺言等、本当に百年来の民法改正問題で大変重要なものに私たちは関与させていただいたわけでございまして、非常に意義深いものだと実は私は思っておるわけでございます。私は、これは一にかかりまして運用いかんにかかわると思うのでございますので、国民が喜ばれる法案にしていただきたい、こう思っておりますけれども、そういう点についての大臣の最後の御決意を賜りまして質問を終わりたい、こう思います。
  95. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 御審議いただいておりまして、本当に感謝申し上げます。  この新しい成年後見制度成立した場合には、これが真に利用しやすい制度として運用されるように、法務省といたしましても、一般の利用者にとってもわかりやすいパンフレットその他説明資料等を作成いたしまして、全国の関係機関、団体等に配布するなど、制度の周知や広報に努めていく所存でございます。ありがとうございました。
  96. 坂上富男

    ○坂上委員 どうもありがとうございました。
  97. 杉浦正健

    杉浦委員長 次に、達増拓也君。
  98. 達増拓也

    達増委員 自由党の達増拓也でございます。  最初に、司法制度改革審議会について質問させていただきたいと思います。  司法制度改革審議会の委員が衆議院で承認されました。今国会、法務委員会でも審議をいたしまして、国会として形をつくり、あとはいよいよ総理のもとで、政府の方で審議をしていくということなわけですけれども、今後の取り進め方、また政府としての決意を伺いたいと思います。
  99. 房村精一

    ○房村政府委員 司法制度改革審議会の委員十三名につきまして両議院の御同意をいただいたことに関しまして、政府として、心から御礼を申し上げます。  御同意をいただきましたので、今後、できるだけ早く審議会の第一回会合を開催いたしまして、以後二年間にわたって、国民的見地に立って、二十一世紀の我が国社会において司法が果たすべき役割を明らかにした上で、司法制度の改革と基盤の整備に関し、十二分かつ有益な審議が行われるということを期待しておりますし、また、政府といたしましても、充実した審議がなされるよう、最大限の努力を尽くしていきたいと考えております。
  100. 達増拓也

    達増委員 この司法制度改革審議会の委員について、自由党は最終的には賛成をしたわけでありますけれども、途中、党内でかなり議論がありまして、あのメンバーでは既存の司法の枠組みの中で、司法の中の話だけで終わってしまうのではないかと。広く司法の外の経済社会、さらには国家全体の仕組みのあり方をきちんと考え直す、国全体の仕組みを正すというところからこの司法制度改革に取り組む、総理のもとでやる以上、また、きちんと法律をつくり、その過程であれだけ国会で審議した以上、そういうものでなければならない、そういう気持ちを込めての最終的な賛成でありますので、その意を体して今後進めていただきたいと思います。  さて、民法一部改正法案等に関して質問をいたします。  私も二回目の質問でございまして、前回の質問の際は、既存の制度問題点を中心に質問をいたしましたので、きょうは、日程としては採決も予定されております、新しく導入される制度、改正されて新しくなる点についての最終チェックという観点から質問をさせていただきたいと思います。  まず、前回は取り上げませんでした公正証書遺言等の作成への手話通訳の導入に関してであります。  これは参考人質疑も行われまして、参考人として、実際そういう手話通訳を介してお話をされる方、私もそういう手話通訳を介してのやりとりというものを本格的にやったのは初めてでございましたけれども、手話通訳というものの有効性、また、それが持つ、コミュニケーションの形として、非常に感情豊かで、人間の持っている新しい可能性を引き出すような、そういう非常にすぐれたものだということを実感いたしました。  そういう手話通訳を公正証書遺言等の作成に導入することは極めて至当と思うわけでありますが、一つ確認したいんです。  これは手話に限らず外国語のケースでもそうですが、通訳を介した場合に、もともとメッセージを発したい人の頭の中に自分の言葉としてあったものが、最終的に同じ言葉で再現されるのかどうか、違った言葉として再現される可能性があるのではないかと思うわけであります。  この点、手話通訳についてまだ私も詳しく知らないので、特に気になっているということがあるのかもしれないとも思うわけでありますけれども法案では、閲覧あるいは読み聞かせで最後確認するということで、できれば必ず閲覧するようにした方が、本人の頭の中にある言葉がそのままきちんと再現されているかを確認しやすいと思うのですけれども、その点について伺いたいと思います。
  101. 細川清

    細川政府委員 御指摘のとおり、公証人は、作成した遺言書の内容を「読み聞かせ、又は閲覧させる」ということになっておるわけでございまして、これは、目の不自由な方もおられますから、必ず閲覧が要件といたしますとまた問題が生じますので「又は」ということになっておるわけですが、通常の場合は、見ていただいた上で、さらに読み聞かせているというのが実情でございます。御指摘のような方法が適当であろうというふうに考えております。
  102. 達増拓也

    達増委員 次に、船舶遭難者遺言の場合であります。  法案では、証人二人以上立ち会いのもとで、手話通訳、通訳人を介してそういう遺言が認められるということでありますけれども、この場合は緊急事態でありますから、なかなか人を集めるのが難しい。そういう場合、通訳者も証人の一人として数えることができれば二人で済むということになるのですけれども法案の趣旨としては、これは証人二人プラス通訳者ということなんでしょうか。
  103. 細川清

    細川政府委員 法律の条文といたしましては、御指摘のように、証人と通訳人は別であるという前提でございます。ただ、全員が手話を理解する方であれば、場合によっては、証人と通訳人が兼ねていても、今度の法律に違反していると言えないであろうというふうに考えております。     〔委員長退席、橘委員長代理着席〕
  104. 達増拓也

    達増委員 よくわかりました。  次は、後見制度について質問をいたします。  今までの禁治産制度と大きい違いの一つとして、日用品の購入その他日常生活に関する行為については取り消し権の対象から除外することによって、より柔軟で弾力的な制度にするということであります。これは、特に一般の国民の皆さんにもわかりやすくイメージするために、例えばどういう行為が「其他日常生活ニ関スル行為」として想定されているのか、伺います。
  105. 細川清

    細川政府委員 「日常生活ニ関スル行為」の意味でございます。具体的に申し上げますと、本人が生活を営む上において通常必要な行為を指すものと解されていまして、具体的には、職業、資産、収入、生活の状況等を考えるとは思いますが、典型的な例としましては、日用品、食料品、衣料品の購入のほか、電気・ガス代、水道料の支払い、そしてそれらの経費の支払いに必要な範囲での預金の引き出しというものがこれに該当いたすと考えております。
  106. 達増拓也

    達増委員 次は、保佐制度に関連して質問いたします。  今までは、禁治産者そして準禁治産者という二つの枠組みがある制度だったわけでありまして、この準禁治産者の方には浪費者が入ってきて、浪費者であることを要件として準禁治産者になる。新しい制度では、浪費者であることだけでは保佐制度の中に入ってこないようになっているのでありますけれども、新しい後見保佐補助、そういう三段階とはまた別な角度から、従来、浪費者問題として準禁治産者の制度があったわけですけれども、新しい制度の中で、浪費者についてはどういった手当てがなされるようになるのでしょうか。
  107. 細川清

    細川政府委員 まず、浪費者を保佐の対象者から除外した理由でございますが、これは、精神上の障害により判断能力が不十分であるということであればそれは対象になるわけですが、精神上の障害がない、したがって判断能力も欠けるところがない、なのに浪費をするという人を新しい成年後見制度の対象に入れますと、本人の保護のためという全体のスキーム上、扱いが非常に難しくなるということがございまして、これを削除することにいたしたわけでございます。外国の立法例でもそういうものがございます。  それでは、浪費があって、家族の人が非常に迷惑する、婚姻費用も払ってもらえないというふうに配偶者の方が心配する、あるいは子の扶養義務を履行していないというような場合どうするかということでございますが、これらについては、それぞれ婚姻費用の分担の請求、子の監護費用あるいは扶養料の請求ということで家事審判申し立てまして、必要がある場合には、審判前の保全処分ということで確保できる。さらには、履行勧告、履行命令等によって、家庭裁判所で適切に家族の人たちに損害が及ばないような対応をすることができるということになっておりますので、これを削除したわけでございます。
  108. 達増拓也

    達増委員 次は、補助制度について伺います。  今回、補助制度という枠組みが導入され、かなり成年後見制度が柔軟に弾力的に使いやすくなるということであります。高齢社会が進んでいくわけでありまして、レーガン元大統領もアルツハイマー宣言をして、いわば天下の大統領でもこうした成年後見制度が必要になってくる。天下万民にとってこの補助制度というものは非常に身近な、関心の高いものだと思うわけであります。  ここで、補助人に対して代理権、同意権、取り消し権、これを当事者が特定するものというふうにされているわけでありますけれども、これも国民の皆さんに具体的にイメージしてもらえるように、どういった事柄についてそういう権限が与えられる、特定されるのか、伺いたいと思います。
  109. 細川清

    細川政府委員 改正案の十二条では、保佐の対象者が同意を要する行為が列挙されておるのですが、そういう中の一つ一つが、保佐人の場合、特定の場合に特定の事項が同意権の対象になる、あるいは代理権の対象になるというふうにお考えいただけばいいと思いまして、一番想定されますのは、やはり不動産とか重要な財産がある、それの処分について判断を間違うといけないので、同意権と取り消し権を付与する、そういうことになるだろうと思っております。
  110. 達増拓也

    達増委員 この補助制度の導入によって、かなり幅広く利用しやすい制度になる。また、三段階に分けることによって、弾力的に柔軟に対応できる、そういう新しい成年後見制度。ただ、これは念のための確認なんですけれども、本来、後見あるいは保佐が適当な者が、弾力的柔軟に使えるということで、簡単に補助制度を利用してしまう、そういう一種の弊害が生じるようなことはないのでしょうか。
  111. 細川清

    細川政府委員 補助申し立てがございまして、そこで家庭裁判所補助の要件があるかどうかを判断されるわけですが、その調査の過程で、やはりこれは補助では不十分である、あるいは保佐である、あるいは後見が必要だということになりますれば、改めて申立人に、必要な保佐後見申し立てをしていただきまして、そこで必要な審判をするという扱いになろうかと思います。
  112. 達増拓也

    達増委員 次に、法人による後見の導入についてであります。  法人が後見人になることができることが法文で明らかに規定されるわけでありますけれども、この法人、具体的に想定されるのはどういうものがあるのでしょうか。
  113. 細川清

    細川政府委員 現在、さまざまな団体が法人後見人になる団体の設立を考えておられます。例えば、社会福祉士会が後見センターというものを設けたい、あるいは、司法書士会が司法書士を社員としてそういう法人を設けたいというようなことを考えておられます。そういったさまざまな法律的あるいは福祉の専門家の団体といったものが、考えられる法人であると認識しております。
  114. 達増拓也

    達増委員 次に、身上監護についてであります。  身上配慮義務が明文化されて規定されたわけであります。これは非常に関心が高く、ほかの委員からも質問が出ているところでありますけれども、具体的にどのような義務が想定されているのでしょうか。
  115. 細川清

    細川政府委員 これは、財産的な管理をする場合でも御本人の身上を配慮しないと適切なものにはならないわけでございます。よく言われておりますのは、老人の場合に、住居環境が変わりますといろいろぼけが進行したりするというのは聞いておりますので、そういった財産管理につきましても、そういう身上を配慮しつつ行わなければならないということでございます。
  116. 達増拓也

    達増委員 次は、監督人についてであります。  成年後見制度後見保佐補助という三段階に分け、弾力的で柔軟な対応ができるようにする一方で、監督人の制度をまたきちっと定めて、適正な運用が担保されるように法案はなっているわけであります。この監督人という人も、今後かなりその需要といいますか、大勢求められてくることになると思うのですけれどもいかなる人たちが監督人として想定されているのでしょうか。  また、もう一つ。法人が監督人になることができるとなっているわけでありますけれども、これは一体どういうケース、どういう法人が想定されているのでしょうか。
  117. 細川清

    細川政府委員 まず、後見監督人になる方々ですが、前回の参考人の陳述の中で久保井参考人が言っておられましたけれども、弁護士さんとか司法書士さんとかいった法律の専門家がなることが十分予想されるわけでございます。それから、法人といたしましては、社会福祉協議会とか、福祉関係の公益法人、社会福祉士会とか、そういうところが後見監督人になることも考えておられますので、そういう可能性が大きいものというふうに考えております。
  118. 達増拓也

    達増委員 では最後に、この法改正の大きい目玉と言ってもいいと思うのですが、任意後見について伺いたいと思います。  これは、先ほどレーガン大統領の例も引きましたけれども、今後高齢社会が進展するに伴って、本当にすべての国民にとって、この成年後見制度自分の問題として考えるべき問題だというふうに思うのですね。  そういう中で、自分の意思で、自分でいろいろ決められる間に任意後見契約をしておくということ、これは、先ほど、いろいろな手段でこの新しい制度について国民にも広く紹介、説明していくということだったのですけれども、かなり複雑な制度でもあります。どういう時期にそういう契約をすることが想定されているのか、また、その中で、どういう人を後見人にして、また、時至った場合にだれが請求し、だれが監督人になるのか、そうしたところの全体のイメージ、法文を見ているとかなり複雑ですので、すべての人に開かれた制度にしていくためにも、きょう、この場で具体的なイメージがわくように説明をお願いしたいと思います。
  119. 細川清

    細川政府委員 これは、知的障害者、精神障害者あるいはぼけ老人を抱えておられる家族の方がおられるわけですが、そういった人の意見を伺いますと、やはり将来に不安があるという段階になった時点で専門家にいろいろ相談するということになりまして、その時点で、例えば社会福祉協議会の相談に行っていろいろアドバイスされて、では社会福祉士会でやっている任意後見契約をしよう、そういうような運びになるのではなかろうかと思っておりますが、これは将来の事柄ですから、断定的なことは申せませんが、やはりさまざまな場面で自分の将来に不安を持ったというときに実際に使われるようなことになるのではなかろうかと想像しております。
  120. 達増拓也

    達増委員 以上で私の質問を終わります。
  121. 橘康太郎

    ○橘委員長代理 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十五分休憩      ————◇—————     午後一時十四分開議
  122. 杉浦正健

    杉浦委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。上田勇君。
  123. 上田勇

    ○上田(勇)委員 公明党・改革クラブの上田でございます。  今回審議している法案につきましては、成年後見制度の改正もまた公正証書遺言等の方式の改正も、長年にわたりまして関係者からの要望も出されてきた重要な制度改正でございまして、特に成年後見制度あり方につきましては、法制審におきましても平成七年以来議論を重ねてきたものでございまして、当委員会においてもしばしば話題に上ってきた重要な議題だというふうに承知しております。昨年の四月には、当委員会質疑におきまして、私もこの成年後見制度につきまして、早く確立していただきたいという観点から、状況等につきまして質問させていただいたところでございますが、本日、ようやく当委員会で可決の見通しとなったことは大いに多とするところでございます。  四法案とも私ども賛成の立場でございますが、背景や内容につきまして、何点かにわたりまして御質問をさせていただきたいというふうに考えております。  まず初めに、現行の禁治産、準禁治産制度についてお伺いをいたします。  それらの申し立て件数が近年相当な割合での増加傾向にはありますが、それでも、いただきましたいろいろな資料を見てみましても、禁治産、準禁治産の新受件数というのは年間二千ないし三千件程度にとどまっているわけであります。これは諸外国におきます同様の制度と比較をいたしましてもかなり少ないというふうにも言われております。そこで、初めに、欧米諸国など諸外国の実情がどのようになっているのか、まず法務省の方から御説明をいただければと思います。
  124. 細川清

    細川政府委員 外国の実情でございますが、まず今回の改正案と同様に、一九六八年に禁治産、準禁治産制度後見保佐裁判所保護の三類型の制度に改めましたフランスでございますが、フランスにおきましては、旧法下では、禁治産、準禁治産の宣告の合計で年間四百件から六百件前後でありましたが、改正後の新しい法律施行後、七年後では一万五千件、それから十年後では二万件を超える増加を示しているというふうに承知しております。  また、今回の任意後見制度と同様の継続的代理権制度を導入したイギリスでございますが、一九八五年に新法が施行されまして、施行後七、八年後の統計では約三千三百件の登録があった、その後毎年増加しまして、一九九七年の統計では七千七百件の登録がなされたということになっております。  以上でございます。
  125. 上田勇

    ○上田(勇)委員 今の御報告を見てみますと、日本の制度の利用の状況というのが、欧米諸国の同様の制度に比べましてかなり少ないというふうになっているわけでございますけれども、その理由はどの辺のところにあるとお考えか、その辺をお聞かせいただければと思います。
  126. 細川清

    細川政府委員 これについてはさまざまな理由が指摘されておりますが、やはり一番大きいのは、制度が硬直的でございまして、軽度の障害のある人に対応できるものがなかったということ、それからさまざまなマイナスイメージがつきまとっていた、あるいは戸籍に記載されることによって家族がこれを嫌うというようなこともありまして、こういったいろいろな要因がありまして、禁治産制度の利用を妨げられていたと思われます。  また、判断能力が不十分な方々の面倒は家族が見るものであるという、家族意識が影響しているというふうに指摘される方もあるというふうに承知しております。
  127. 上田勇

    ○上田(勇)委員 今の御説明を伺いまして、そういう意味では、今回の法改正におきましては、軽度の方々制度として新たに補助の類型が追加された、また、戸籍記載につきましても登記で対応するというような改正が行われたということでございますので、その辺は相当改善されたというふうに思います。  それで、そうしたことも踏まえまして、さらに近年、人口の構成がやはりかなり高齢化が進んでいる、また、家族や地域あり方ども変化しているわけでございまして、必ずしも家族だけが面倒を見ていくというような意識ではなくなってきているわけでございます。とりわけ来年の介護保険などというのは、まさしくそういうような意識の上に立った制度ではないかというふうに思いますので、今回そうした制度的な点が改まったこと、また、そういうような人口構成や家族や地域あり方の変化などを考えますと、これからそうした申し立て件数というのは相当程度ふえてくるのではないかというふうに思われます。そうしたことについての見通しというんでしょうか、お考えがあればお伺いしたいと思います。
  128. 細川清

    細川政府委員 冒頭に御指摘がありましたように、現在の禁治産、準禁治産制度については、人口に比べて利用されていない、あるいは高齢者の数に比べては利用されていないということはどなたも指摘されるところでございます。今回さまざまな改善をいたした改正でございますので、相当程度利用が増加するのではなかろうかと思っております。  先ほどのフランスの例を見ましても、同じような改正をして相当増加しておりますので、相当程度増加するであろうとは言えると思いますが、具体的にどのぐらいになるかというのは、今直ちに具体的な数字でちょっと申し上げられないことで、お許しいただきたいと思います。
  129. 上田勇

    ○上田(勇)委員 もちろん、制度発足前にどの程度になるかというのは予測がしがたいというのはよく理解できますけれども、当然のことながら、これは申し立てが増加していけば、それに対応するための家庭裁判所なりの体制整備といったことも必要になってくるというふうに思いますので、一つには、先ほどからいろいろ質問出ておりましたが、制度についての周知徹底を図るとともに、あわせて、制度発足によりまして、そうした今後の予測などについても調査をしていただきまして、今度は逆に、制度は発足したけれどもそれを支える体制が十分でないというような事態にならないように、ぜひ適宜そういった御努力をしていただきたいというふうに思う次第でございます。  次に、非常に根本的な話で一つ伺いをしたいと思うのです。  欧米諸国の事例を、法務省さんや調査室などの方でつくっていただきました資料等で拝見させていただきますと、やはり成年後見に係る制度というのは、各国それぞれの国情によりまして相当異なった制度になっているというのがよくわかります。これは、それぞれの国の文化や価値観、家族のあり方など多種多様であるということを考えれば当然のことなんだというふうに思いますが、その中で一つ、日本は現行では多元的制度になっております。禁治産、準禁治産の二つの類型がある。今回の改正におきましても、後見保佐補助の三類型の多元的な制度になっている。  諸外国を見てみますと、一つには、我が国の民法のモデルとなったと言われているフランスにおいてはやはり多元的な制度が使われております。ただ一方、ドイツにおきます世話法というんですか、あるいは英国におきます継続的代理権法、またアメリカは、州によって法律の構成が異なるようでありますが、大体一元的制度が多いというふうに承知しております。  今回の法案作成に至る過程におきましても、我が国でもドイツやイギリスのような一元的な制度にするべきだという意見も伺ったわけでありますが、そういった意見がある一方で、今回の法改正におきましてもなお多元的制度とした理由と、あわせまして、一元的な制度、それと多元的な制度の特徴やそれぞれの利害得失も含めて、御見解を伺いたいと思います。
  130. 細川清

    細川政府委員 制度の設計を一元的なものにするか多元的なものにするかというのは、この問題の検討を始めた当時、非常に重要なものとして大変議論された問題でございます。  それで最終的に、後見保佐補助の多元の制度とし、かつ任意後見制度を取り入れる制度といたしました理由を申し上げますと得失もおのずからわかると思いますので、その理由をまず御説明申し上げたいと思います。  まず第一点ですが、我が国では、本人の財産をめぐる親族間の紛争を背景とする申し立てがふえているという実情にございます。そこで、重度の精神上の障害を有する方については、本人の保護観点から、一定の範囲の代理権、取り消し権等による保護法律で定めておくことが必要であり、そのような者について、申立人請求に応じて特定の法律行為のみについて代理権を付与するということでは、本人の保護としては不十分ではなかろうかということでございます。  第二点としては、仮にドイツのように一元的制度をとっても、家庭裁判所実務的に運用する場合にはある程度類型化する必要が生じてくるであろう、したがって、多元的制度をとった場合と結果においてはそれほど変わらないのではなかろうかということが二番目の理由でございます。  第三点目は、多元的制度のもとで幾つかの法定の類型と基準が示されている方が、利用者にとっても予測可能で利用しやすく、自己決定が容易になる、また実務的にも運用しやすいということが言えるであろうということであります。  以上が、その理由でございます。  ただ、今度の改正案では任意後見制度も提案したりしているわけですが、これはドイツにはないわけでして、多元的制度をとりましても、任意後見制度を同時に発足させますと、任意後見はドイツの世話法のように相当広い範囲もカバーできるものですから、これは千葉大学の新井先生が言っておられましたけれども、やはりこれで相当程度一元的制度の利点も取り入れているという評価ができるのではないかというふうに考えております。
  131. 上田勇

    ○上田(勇)委員 次に、成年後見制度法案につきまして、前回本委員会での質疑が行われましたし、またその後、参考人の方々からもいろいろな意見を聴取いたしました。それを通じまして私なりに考えますと、今回の成年後見制度に関しまして課題が二つ浮き彫りになってきたのではないかというふうに考えております。  先ほど来の質問でも触れられていることではございますが、一つには、資産のない、資力のない方々の成年後見が極めて難しい、そういう金銭的な問題。もう一つが、家族以外の成年後見人の受け皿というんでしょうか、その対象となるような方々が必ずしも十分ではないという点がこれまでの審議の中で指摘されてきたのではないかと思います。そこで、ちょっとそれぞれ別にお伺いをしたいと思うのです。  最初に、先ほどの質問では、家族の後見人にもそれ相応の報酬が必要というような御見解もございましたけれども、少なくとも家族以外の後見制の場合には、当然後見人等の報酬が必要となってくるわけでございますし、また後見の事務にかかわるさまざまな費用もかかってまいります。これらはすべて現行制度のもとでは被後見人等の負担となるわけでございます。そうなりますと、資産、資力のない被後見人というのはどうもこの制度はなかなか利用しにくいのではないかということも考えられます。  例えば、そうした点につきましては、弁護士会であるとかあるいはさまざまな団体などからも、国の責任として、国などによる公的な負担や助成が必要ではないかというようなお話もございますけれども、まずそれにつきましてのお考え伺いたいと思います。
  132. 細川清

    細川政府委員 私人間の権利義務の関係を定めます民法におきましては、成年後見人の報酬というものは、本人の保護のために行うものですから、その本人が支払うということにならざるを得ないわけでございます。  そこで、その先に、さらに低所得者でもこの制度を利用するためにはどうしたらいいかという問題は、これは社会保障の問題になってくるわけでございます。そこで、この点につきましては、従来厚生省とも十分協議してまいりましたが、現在厚生省で社会福祉基礎構造改革というものを検討しておりまして、この中で、判断能力の不十分な方に対する無料または低額の料金による福祉サービスの利用援助等を行う社会福祉事業の創設と、そのための全国的な体制整備を進めることとされております。この検討の中で、廉価で良質な成年後見の事務の供給体制が検討されるものと期待しているところでございます。
  133. 上田勇

    ○上田(勇)委員 次に、もう一点で、この新しい成年後見制度、せっかく新しい制度が発足をいたしまして、それをぜひ定着させていきたいというふうに考えるわけですが、これは当然のことながら、この後見人等には実態としては配偶者や家族、親族等がまず選任されるということが多いということになろうかと思いますけれども、それらの家族や親族以外でこの制度を担う適切な成年後見人もあわせて確保する必要が出てくるというふうに思っております。  今回は特に、法人につきましても後見人等に選任することができることを法文上明らかにしているところでございまして、当然のことながら、法律の専門家でございます弁護士会や司法書士会等の取り組みも期待されるわけでございますが、やはりこれでも絶対数というのは、弁護士さんや司法書士さんだけということでは不足することでございますし、特に地域的な偏在もあるので、どうしてもさらに、各種社会福祉法人であるとかその他のいわゆるNPO法などの法人も含めた組織的な取り組みが必要になってくるのではないかというふうに思います。  ちょっと包括的な問いかけで申しわけないのですが、こうした事情の中で国や地方公共団体としてどのような対応があるのか、その辺のことについてお考え伺いたいと思います。
  134. 細川清

    細川政府委員 成年後見制度が導入された後の御指摘の受け皿の問題につきましては、従来からある団体が法の施行に向けてさまざまな取り組みをされておられます。久保井参考人も言っておられましたが、弁護士会でも既にそういうサービスをしておられますし、その取り組みを始めておられます。司法書士会でもそういう取り組みを始められております。さらには、社会福祉士会では後見センターあるいは後見監督人センターというものをつくるという構想を持っておりますし、各地の社会福祉協議会、社会福祉法人では現在でもさまざまな財産管理等のサービスをされておりますので、そういうところが受け皿になろうかと思います。  私どもといたしましては、地方自治体とも協力をとりつつ、こういった団体が良質な後見人の供給源となりますように連携をとりながら、あるいは協議をしながら、制度が充実するように努力してまいりたいと思っております。
  135. 上田勇

    ○上田(勇)委員 次に、民法第八百四十三条第四項に、家庭裁判所後見人選任するに当たって考慮する事情が定められております。その規定に基づきますと、被後見人が入所している病院や施設または直接福祉サービスを提供しているような事業者は、被後見人と利害関係があるものとして、原則としては成年後見人選任することは難しいということが言えるのではないかというふうに思います。このことについては、これまでの審議の中でも、いろいろケース・バイ・ケースで判断されることであるけれども、原則的にはそのような考え方ではないかというふうな御見解であったと承知しております。  私も、高齢者や障害者の方々権利を守るという上からは、こうした運用というのがむしろかなり厳格に、的確に行われることが必要ではないかというふうには思っているところであります。ただ、しかし、現実を見てみますと、特に病院や施設等に入られている高齢者や障害者の方は、日常的な生活支援だけではなくて、事実上財産管理まで含めてそういった施設などにゆだねているケースが多いというふうにも聞きます。  例えば、ここに弁護士会、一つは関東弁護士会連合会のアンケート調査、九六年のものでございますが、この調査によりますと、福祉関係者が担当したケースのうち、預金通帳や権利書等を施設またはその職員が保管しているといったケースが四四%だそうでございます。また、東北弁護士会連合会のアンケート調査、これは九七年のものでありますが、多分若干設問が違っていたのでしょうが、九〇%の施設が権利書や預金証書等を預かっていることもあるというような調査が出ております。  成年後見制度整備されて、特に使いやすくなって補助類型などが活用されていきますと、こうした法的根拠のない事実上の財産管理はそういった制度に移行していくというようなことが予想されますし、これは多分高齢者や障害者の方々権利にとってもいいことであるというふうに思います。同時に、法的な根拠がないまま、事実上はやむを得なく施設等で管理を行っているというようなことであると思いますので、そちらの方々にとっても、過度な負担を軽減されるという意味ではいいことなんだというふうに思います。  しかし、いわゆる病院や施設等が事実上そういう財産権まで管理しているということがこれほど大きくなっている中で、法案成立いたしまして法定の後見人保佐人補助人等が選任されますと、実際には、現在の実態を大きく変えることになる。あるいは、現状との移行期においては必ずしもスムーズにいかない部分も出てくるのではないかというふうに思います。  そのあたりにつきまして、今回のこの法案成立施行によりましてどのような影響が出てくるのか、その辺を何か想定されているのであればお伺いをしたいと思います。
  136. 細川清

    細川政府委員 特別養護老人ホーム等に収容されている方の財産の管理をその収容施設を運営している法人が事実上しているという場合に、成年後見人が仮に選任された場合には、その成年後見人は、本人の財産上の権利義務を一切行使することができるわけでございます。  したがいまして、そういう場合には、その権利書等を預けているのが適当ではないということになれば、それは後見人の判断で、後見人がその施設に対して引き渡しを要求して引き継いでもらうということになろうと思うわけでございます。あるいは、補助人保佐人が選ばれた場合でも、その権限次第によってはそういうことになるわけでございます。ですから、よく本人の意思を確かめながら、適切な措置をとってもらうということが必要であろうと思っております。  以上でございます。
  137. 上田勇

    ○上田(勇)委員 ちょっと今の点に関しまして、そういった財産管理、例えば預金通帳であるとか権利書等を施設に預けている、あるいは施設の職員の方に預けているというのは、これは私は、入所されている高齢者や障害者の方々が、必ずしもそれは望んでそういうことになっているんではないんだと思うんですね。ただし、それは身近に家族の人がいなかったり信頼できる親族がいないとか、あるいはそれにかわって職務をしてくれる信頼すべき方々がいないというような現状があるので、結局は、最も身近で世話になっているそういう施設に預けざるを得ないということがあるんじゃないか、それが実態なんではないかというふうに思います。  もちろん、今回のこの成年後見制度の中でも、利害関係の有無というところまで基準として設けているわけであります。施設に入っている高齢者や障害者の方々とその施設というのは、当然のことながら利害関係がある部分があるわけですので、決してそれが望ましい関係ではないというのはよくわかるんですが、事実上はほかにやってくれる人がいないので預かってもらっている。それは、例えば日常的な生活必需品の買い物とかそういうことであればわかるんですが、それが預金通帳であるとか権利書等までそこに預けないと、実際にはほかにかわってくれる人がいないというのが実態なんじゃないかというふうに思うわけであります。  そうした場合に、この法案成立しまして成年後見制度がスタートしたとしましても、では、今までそんなに身近なところに人がいなかったのがすぐに来てもらえるのかというと、なかなかそれは難しいんじゃないのかなというふうに思います。私は、制度的には正しい方向の改正だとは思うんですが、その法律の精神が事実上生かされるんであろうか。その辺の、実態的にはどのようになるのかというようなことについて、私はちょっと疑問があるんですけれども、御見解、いかがでしょうか。
  138. 細川清

    細川政府委員 そういった実態が新しい法律施行後どうなるかということについて、私たちも必ずしも確信を持ったことは申し上げられないんですが、施設だからすべてが問題があるということにはならないわけでございます。  例えば、成年後見人が選ばれた場合であっても、管理権は、要するに法律上の権限後見人にあるんだけれども、従来の状況から見て、事実上施設にやってもらっても差し支えないということであれば、その後見人の判断で、その施設に、ではこれだけはおたくでやってくださいというふうに頼むこともできると思うわけです。それは法律上何ら妨げることはありませんのですから。そういうふうに個別具体的に判断していただければ、一つ一つの問題も解決できるんではなかろうかなというふうに想像しているところでございます。
  139. 上田勇

    ○上田(勇)委員 ぜひ、せっかく制度的にいろいろな要件が課せられて整備されるわけでありますので、事実上もそれが的確に運用されるような形になってほしいなというのを期待するものでございます。ただ、ちょっと今の福祉の現場等を考えますと、とはいってもなかなか難しい問題が多いのかなというのが正直な感想でございます。  それで、もう一つ、話は変わりますが、今度は任意後見制度について若干お伺いしたいと思います。  先ほどの御答弁にもございましたけれども自分の将来のことはやはりできるだけ自分で決める、そういった自己決定を尊重するという意味で、今回のこの任意後見制度、なおかつこれはかなり弾力的な運用のできる制度だというふうに承知しておりますので、この制度が法制化された意義というのは私も大変大きいものだというふうに考えております。  そこで、その中身について実は何点かお伺いしたいんですが、まず第一に、法案の第四条で、家庭裁判所は任意後見監督人を選任することとなっておりますが、この任意後見監督人の必要性、意義は何なのか、あわせまして、この任意後見監督人の責任といったものはどうなってくるのか、その辺を御説明いただければと思います。
  140. 細川清

    細川政府委員 この任意後見契約に関する法律は、民法の委任に関する規定の特則になっているわけでございます。通常の委任でございますと、本人は、受任者が委任した権限を濫用しないように監督することができるわけですが、任意後見のような場合におきましては、その契約の効力が生ずる時点では、御本人の判断能力が不十分な状況になっておるということになります。したがいまして、御本人自身が任意後見人を監督することができないために、任意後見人権限を濫用する危険というものが指摘されておるわけでございます。そこで、本人にかわって任意後見人を監督し、本人の利益を保護する者としての任意後見監督人を選任する必要があるということでございます。  したがいまして、任意後見監督人の職務、ただいま申し上げたとおり、本人の利益を保護する者として、任意後見人を監督するということがその職務になるわけでございます。
  141. 上田勇

    ○上田(勇)委員 それでは最後に、この任意後見制度に関してもう一つ伺いをしたいと思うんです。  この法案の第十条第一項に、「家庭裁判所は、本人の利益のため特に必要があると認めるときに限り、後見開始審判等をすることができる。」ということになっております。この中で、「本人の利益のため特に必要があると認めるとき」というのはどういう場合を想定しているのか、もう少し具体的に御説明をいただければというふうに思います。
  142. 細川清

    細川政府委員 この十条で言っております「本人の利益のため特に必要があると認めるとき」と申しますのは、要するに、任意後見人に与えられた代理権の範囲が狭過ぎて、それでは本人の保護が図れないという場合が一つございます。  もう一つは、任意後見契約というのは代理権を与える契約でございますので、本人の行為能力を制限することはできないわけでございます。そこで、御本人が例えば悪徳商法等にだまされやすいという問題が生じてきたという場合には、任意後見契約ではどうしても対応できない、したがって、取り消し権や同意権を付与する必要があるという場合には、任意後見契約では対応できないので、通常の保佐とか後見になるということでございます。ただ、原則的には、私的な自治、本人の意思を尊重して、任意後見契約が優先するということでございます。
  143. 上田勇

    ○上田(勇)委員 以上で質問は終わらせていただきますが、この成年後見制度、これまで長年にわたりまして各方面からいろいろな関心を集めて議論もされてきたことでございます。法制審におきましても、この成年後見制度の研究会を設けて非常に密度の濃い議論がされたというふうに伺っております。ただ、議論の過程におきましては、いろいろな観点から意見の違いといったものも結構あって、それが大変な議論の結果としてここに集約されてきたものだというふうに承知しているところでございます。  きょう、これで衆議院の当法務委員会におきます審議が議了するわけでございますけれども、要は、こうした制度ができて、これからこうした制度が本当に高齢者また障害をお持ちの方々権利保護のために実効あるものとして役立っていかせるということが重要であるというふうに考えているところでございます。  もちろん、法務省はその基本法を所管しているという立場であって、実際のいろいろな福祉の現場における活動というのは、先ほどもちょっとお話にありましたけれども、厚生省等の所管の部分が多いんだというふうには思いますけれども、この辺につきましては、ぜひ政府全体として、せっかくこれまでの制度を大きく改めまして、新しい制度として発足いたしまして、まさにこれからさらに進みます高齢化社会の中におきましては必要不可欠な制度だというふうに思っておりますので、これがさまざまな課題も乗り越えまして、ぜひ適切、円滑に運用されることを御期待申し上げまして、質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  144. 杉浦正健

    杉浦委員長 次に、木島日出夫君。
  145. 木島日出夫

    ○木島委員 日本共産党の木島日出夫でございます。  前回に続きまして、成年後見制度創設に係る四法案について質問をいたします。  最初は、被後見人の欠格条項問題であります。  今回の成年後見制度創設に関する法改正に伴いまして、これまで禁治産者につけられていたいわゆる欠格条項、禁治産宣告を受けただけで、それ自体当然に排除されてしまう諸資格でありますが、その欠格条項のうち、今回、遺言の証人など四十二件については廃止になります。大変すばらしい改正だと思います。しかし、百十六件については引き続き、依然として欠格条項が存置されます。  そこで、最初に法務省にお伺いしたいのですが、今回の関連法案の諸改正によりまして、欠格条項を削除したのと存置をしたのと、仕分けの基準、何だったのか、それを明らかにしていただきたい。今回、どういう手順でこのような仕分け結果になったのかも、あわせ答弁願いたいと思います。
  146. 細川清

    細川政府委員 欠格条項は、各種法令中の資格にふさわしい能力を担保するために設けられているものでございまして、資格を付与する段階において、その資格にふさわしい能力を有しているかどうかについて審査を行われるべきものであります。  そこで、個別的な能力審査手続整備されている法律については、禁治産宣告等をあえて欠格事由として存置しないこととし、それ以外の、当該法令中で十分な能力審査手続を有しないものなどにつきましては欠格条項として存置する、そういう方針で私どもは所管の各庁と協議して、今回の改正案に至ったわけでございます。  それで、手続ですが、これはほとんどすべての省庁にまたがっておりますので、私どもの担当者が各省に伺いまして、相手方の担当者に対して、この新しい民法のノーマライゼーションの理念等を御説明して、改めて欠格条項を残すかどうか御検討願いたいというふうにお願いいたしまして、各省庁が御検討された結果が現在の整備法の内容となっているわけでございます。
  147. 木島日出夫

    ○木島委員 個別的な資格に係るものは存置しない、それ以外は、十分な能力審査がある部分については残したということですか。  よくわからないのですが、今度、欠格条項をなくした、いい方の改正の中に、公証人法十四条三号による公証人の欠格事由を外しました。大変すばらしいことだと思うのです。禁治産者でも、それ自体で公証人になれないということはやめた。大変いいことです。  ところが、残した方の百十六件の中を見ますと、例えば弁理士、例えば司法書士、例えば薬剤師、例えば弁護士、例えば公認会計士、社会保険労務士、行政書士、不動産鑑定士、不動産鑑定士補、これらは禁治産宣告を受けた禁治産者ということのみをもって、そもそもこういう職業につけない。私は全く意味わからないのですよ。どうしてこういう違いが出てくるのですか。
  148. 細川清

    細川政府委員 先ほど私の言葉は不適切であったかもしれませんが、個別的に能力を審査することができる手続になっているものについてはそれにゆだねる、そうでないところについては欠格条項として残さざるを得ないというのが基本的な考え方でございます。  ただいま御指摘の二十一の士師業でございますが、これにつきましては、資格試験の中では、学識は試されるかもしれませんけれども禁治産になるかどうかという問題については必ずしもその能力を試されていないという問題と、大変多様な多数の件数を一時に処理しなければならないという問題、あるいは個別的な審査手続整備されていないという問題がありまして、そういうところにつきましてはそれぞれの所管省庁で判断されまして、最終的にはそれを欠格条項として存置するという結論になったわけでございます。
  149. 木島日出夫

    ○木島委員 どうもわかりませんね。  私は弁護士ですから言いますが、弁護士なんかになるには、司法試験に受かって修習を終わって、しかも、さらに弁護士会が加入を認めて、それでなれるのでしょう。日本の弁護士法にも、こういう場合は弁護士になれないという個別審査はありますよ。厳しい審査がありますよ。だから、本当に当該禁治産者がふさわしくなければ、十二分に、弁護士としてあなたはふさわしくないよとチェックできる仕組みは弁護士法にはあります。あるのにもかかわらず、何で弁護士法から、禁治産者は欠格だとはなから排除するのでしょうか。  公証人の方は今度外したわけですよね。禁治産者は公証人になってはいかぬか、公証人に選任していいか、非常に個別的な厳しい、厳密なチェックをやるでしょう。それは、公証人、はるかに数少ないし、公証という国家にとって大変大事な役割を果たす公証人ですから。  公証人になれて、何で弁護士になれないのか、全く私わからないのですよ。説得力ある説明してください。
  150. 細川清

    細川政府委員 公証人は法務大臣が任命いたします。その任命の上では、極めて厳格に個別的審査をいたしますので、それで不適当な人は任命されないという担保があるということでございます。  一方、弁護士の場合は、試験を通って修習を終われば、どなたでもそのままなれるということが前提でございます。そして、登録した後に禁治産、準禁治産になった場合でも、当然には連合会等にはわからないという問題がございます。そういうことである上、やはり弁護士さんは非常に権限が大きいものですから、不適当な方がなられますと、依頼者に対する損害が非常に大きいということを考えまして、やはり弁護士と公証人とは違うのであろうという判断にいたしたわけでございます。
  151. 木島日出夫

    ○木島委員 全然わからないです。わからないですが、もうやめます。  これには非常に厳しい批判があったと思うのです。前近代的な、禁治産宣告ゆえをもって、それだけである職業から排除するということはやめにしたらどうか。個別的に、弁護士になっていいかどうかは弁護士法の中にあるのですから、弁護士会がきちっとチェックできるのですから。また、社会保険労務士なら社会保険労務士法の中に、ふさわしくない人はつけないような条項がやはりあるのですから。  それできっちり個別審査して、ふさわしくない人はできないという、それぞれの法律、それぞれの業法の中にきちんとあるわけです。なければつくればいいのですから、禁治産宣告それのみではなから排除してしまうというような前近代的な発想は、本当はこの法改正によって全部取っ払って、観点を変えてもらいたいと私は思ったのですが、残念ながら百十六項目が残りましたので、次の見直しのときにはひとつ再検討していただきたいということを希望いたしまして、次の質問に移ります。  特に問題は、今回欠格条項が残った公職選挙法十一条一項一号の選挙権、被選挙権であります。なぜ、禁治産宣告、あるいは法改正によって被後見人ですが、被後見人は選挙権、被選挙権が受けられないという欠格条項を公職選挙法で残したのでしょうか。残した理由を自治省と法務省に答弁願いたいと思います。
  152. 片木淳

    ○片木政府委員 ただいま御指摘のとおり、公職選挙法第十一条におきまして、選挙権及び被選挙権を有しない者を規定しておるわけでございますが、禁治産者は「心神喪失ノ常況ニ在ル者」であるということから、選挙権及び被選挙権を有しないと現行法でされているところでございます。今回の民法改正案では、禁治産者は成年被後見人と呼称が変わるということでございます。  定義につきましては、「心神喪失ノ常況ニ在ル者」という従来の考え方から、「精神上ノ障害ニ因リ事理ヲ弁識スル能力ヲ欠ク常況ニ在ル者」というふうに改めることとされていると聞いております。しかしながら、その対象者は一致するものであるというふうに承知をいたしておるところでございます。  そのようなことから、従来の禁治産者と同様、成年被後見人につきまして、選挙権及び被選挙権を有しないこととしたところでございます。
  153. 細川清

    細川政府委員 先ほど申し上げましたように、基本的な方針は、個別的な能力審査手続があるものは存置する必要はないけれども、そうでないものは一般的な欠格条項として残さざるを得ないという方針で自治省に御検討いただいた結果、ただいま自治省から御説明いただいたような結論になったわけでございます。
  154. 木島日出夫

    ○木島委員 確かに、自治省の答弁にあるように、禁治産者あるいは今回の法改正によりまして被後見人後見開始の要件を見ますと、「精神上ノ障害ニ因リ事理ヲ弁識スル能力ヲ欠ク常況ニ在ル者」が後見開始審判の要件であります。  しかし、この法体系をずっと精査いたしますと、「精神上ノ障害ニ因リ事理ヲ弁識スル能力ヲ欠ク常況ニ在ル者」でありますが、二十四時間、一カ月、一年、永久に完全にその者が一〇〇%事理弁識能力を欠くということがこの法案の前提になっておりません。そうではなくて、精神の状況は変動する、事理弁識能力が時には生まれてくるということをこの法体系は当然に想定をしているわけでございます。どんなことからそれが言えるかというと、例えば七条に、後見開始審判請求がだれができるか。本人ができるのです。  それから、民法八百四十三条第四項に成年後見人選任に当たっての考慮事項、これは裁判所が考慮するのですが、その裁判所がこの者に成年後見人を選ばなければならぬかどうかの判断をする大事な材料の考慮事項の中の一つに「成年被後見人の意見」というのがあるのですよ。自治省の答弁、また本法によりますと、「事理ヲ弁識スル能力ヲ欠ク常況ニ在ル者」、しかし、そういう常況にあるといえ、「成年被後見人の意見」を聞くという条文があるのですよ。意見が言える状況にあるということ、そういう状況が生まれることもあるということをこの法律は想定しているのですね。  もう一つ言います。  八百四十九条の二、成年後見監督人の選任。成年後見人がどうもいかがわしいことを考えているかもしらぬ、私に成年後見監督人をつけてもらいたいという選任請求裁判所にするわけですが、請求権者の中に成年被後見人本人を入れているのですね。私は精神上の障害によって事理弁識能力を欠くと裁判所によって結論づけられて被後見人にされたけれども、どうも後見人が危なっかしいことを考えているから後見監督人をつけていただきたいという選任請求を本人ができるという条文があるのですね。  ということは何を意味するか。全然意識がなくて物を考える力がなくなったときもあるでしょうけれども、そうじゃないときもあるのだということをこの法体系は前提にしているのですよ。  そうしますと、この法体系の中だって、そういう重要な請求権、あるいは裁判所が意見を聞かなければならない、そういう大事な意見を言う能力がある、そういう人に、参政権の一番大事な選挙権を奪ってしまう。何とも私は理解できないですね。本当に理解できないです。禁治産宣告、あるいは本法改正による成年後見制度創設によって、せめて選挙権を欠格条項から外すなんというのは当たり前じゃないかと私は思ったのですが、残念ながら残ってしまいました。  法務省、どうですか。選挙権に対する欠格条項を外すのは私は当たり前だと思うのです。事理弁識能力がなかったら選挙に行けないだけだからいいじゃないですか。事実上、選挙権が行使できないだけだからいいじゃないですか。事理弁識能力が生まれることをこの法律は想定しているのですから、たまたま選挙のときに意識がはっきりして、だれが公職の候補者として適当か判断能力があるのでしょうから、選挙権を与えたらいいじゃないですか。どうですか。
  155. 細川清

    細川政府委員 選挙権、被選挙権の問題は公職選挙法の問題でございますので、法務省としてお答えすることができない問題で、必要であれば自治省からお答えいただきたいと思いますが、民法考え方を申し上げますと、これは基本的に改正前後に変わっているわけではないわけでして、「心神喪失」、今度は「精神上ノ障害ニ因リ事理ヲ弁識スル能力ヲ欠ク常況」というのは同じ意味合いでございます。  二つの意味合いにおきましても、通常では判断能力を欠く常況であっても、たまたま本心に復する場合があるということを前提にしております。たまたま本心に復した場合に、本人に申し立て権を与えてもよいのではないか。本心に復していない、したがって意思能力がないという場合には、申し立て権が仮に法律に書いていても行使できないだけでございます。  したがいまして、たまたま本心に復しているときにその件の申し立て等から排除するまでの必要はないのではないかということが今回の改正案考え方でございます。
  156. 片木淳

    ○片木政府委員 御指摘ございましたとおり、常況でございます。一〇〇%、二十四時間ずっと事理を弁識する能力を欠く状態にあるというわけではないということは御指摘のとおりかと存じます。  ただ、先ほども申し上げましたように、また、ただいま法務省の方から御答弁ありましたように、民法考え方自体は変わっていないということでございますので、先ほどの答弁になりますけれども、従来の禁治産者と同様、成年被後見人につきましても選挙権及び被選挙権を有しないこととしたところでございます。
  157. 木島日出夫

    ○木島委員 理解できませんね。  禁治産あるいは後見制度というのは、正常な財産上の行為をなす精神能力を欠く場合に、本人並びに取引の相手方の財産上の利益を保護するための制度であります。自分財産を守る、あるいは取引の相手方の利益を守る、そういう財産管理能力をないと見て、行為能力を制限したわけです。そういう制度です。ある面では高度な行為能力がないから、それを剥奪するという制度ですよ。  しかし、それに比べますと、選挙権、あえて被選挙権と言いましょうか、選挙権は市民の財産保護と全く関係ありません、国民の基本的権利、参政権の一つであります。しかも、今自治省もお認めになりましたが、事理弁識能力を欠く常況にある者とはいえ、法務省の答弁にあるように、たまたま心神の状況が回復することもあるし、そのことをこの法体系は想定しているんでしょう。自分財産管理能力も生まれてくることもあるんだということをこの法体系は前提にしている。日本国民に対して、そんな大事な選挙権を剥奪する理由は何にもないじゃないですか。  だから、私さっき言ったんですよ。後見開始審判請求という非常に重い、大変重大な行為をする請求権が本人にある。あるいは、成年後見監督人選任請求という非常に難しい、重い請求権すら本人に与えられている。さらに言えば、成年後見人選任に当たっての考慮事項として裁判所ですらが本人の意見を聞く、そういう条項もこの法律は持っている。これはもう普通の状態にあることを想定しているわけですよね。そんな人に、はなから選挙権を剥奪する理由、私は一〇〇%ないと思うんですよ。  法務大臣、どうでしょうか、せっかくの改正ですよ。今改正で四十二件については欠格条項を廃止したんですから。百十六件残ったんですが、せめてその中の公職選挙法だけは欠格条項を外すべきだと私は思うんです。これは民主主義の基本の問題です。法務大臣、答弁を。
  158. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 先ほど事務当局からも御説明申し上げましたけれども、各省庁と協議を続け、最終的な判断は各省庁にゆだねざるを得なかったということでございますので、このような結果だと思います。
  159. 木島日出夫

    ○木島委員 では、自治省にお聞きします。  先進七カ国、日本を除く先進六カ国の状況、今わかりますか。
  160. 片木淳

    ○片木政府委員 先進七カ国の状況というお尋ねでございますが、ただいま承知いたしておりません。
  161. 木島日出夫

    ○木島委員 私も不正確なんですが、きょう急遽図書館で調べてもらったら、アメリカは、欠格事由として重犯罪と意思無能力者、多くの州のことでありますが、そのようです。みんな公職選挙法の選挙権ですよ。イギリスは、欠格条項、刑を受けている者、精神病院入院中の者、選挙犯罪で刑を受けている者、しかも上院議員、そういう状況になります。  これも不正確な調べですが、ドイツは行為能力の剥奪もしくは制限の宣告を受けた者。ドイツも法が変わりましたけれども禁治産宣告を受けた者は選挙権がないという感じでしょうか。フランスには禁治産者は選挙権がないとあるようです。カナダはそういうのは全くない、選挙権があるということでしょうか。  私、問題なのはイタリアなんですが、よくわからないんですが、これまではどうも精神病による禁治産者及び無能力者は選挙権がないという条文があったらしいんですが、きょう図書館に聞いても、九二年に削除されたということをおっしゃる図書館の調査員もいる。イタリアは九四年に大改正があったので、わかりません。削除してしまったのかもしれません。自治省、それはわかりますか、イタリアの話。イタリアがもし、これまでは禁治産宣告を受けた者は選挙権はないというんだが、九二年か九四年にそういうのはもう古くさいから削除してしまったというのであれば非常に参考になるなと思うので聞くんですが、わかりますか。
  162. 片木淳

    ○片木政府委員 承知いたしておりません。
  163. 木島日出夫

    ○木島委員 全然理屈ないですね、選挙権を剥奪するという理屈は。精神が回復することを認めているんですから、そういう状況が生まれてくるということを認めているわけですから、私は、ぜひこれは英断をもってその欠格条項だけは外すように、自治省、再検討してもらいたいと思うんです。自治省の意を受けて法務省も再検討してもらいたいんですが、どうでしょうか、再検討を約束してもらえませんか。
  164. 片木淳

    ○片木政府委員 先ほど申し上げましたとおり、これらの対象者の方は「事理ヲ弁識スル能力ヲ欠ク常況ニ在ル」ということでございますので、選挙権、被選挙権を有しないこととしておるところでございますので、御理解を賜りたいと存じます。
  165. 木島日出夫

    ○木島委員 全然わかっちゃいないですね。成年後見監督人を選んでくれという請求権すら与えているんですよ、この民法は。そういう判断能力があるということなんですよ、この法律の前提は。そんな重大な判断能力が生まれてくることを想定している人物に対して、選挙権を与えないというのは全然理屈が通らぬ。大変不満でありますが、時間がなくなっていきますから、次の質問に移ります。自治省、お帰りいただいて結構です。  厚生省をお呼びしておりますので、順序を変えまして厚生省にお聞きします。  後見保佐補助制度を創設、そしてまた任意後見制度創設、非常に大事で、ますます高齢化が進展する我が国において大きな役割を果たすことが期待されておりますし、私も期待しております。そのために、この制度が広く利用されるように、資力の少ない者でもこの恩恵に浴する、それが大事だと思うので、それで、財政的な援助、補助制度を充実してほしい。  先ほど午前中にも、例えば裁判所の鑑定費用が高過ぎるという問題も指摘されましたが、そういう問題もあります。また、後見人に対するいろいろな費用負担の問題もございます。それで、財政的な援助、補助制度を充実してほしいという声が、この成年後見成立過程において、例えば東京都の高齢者施策推進室とか主婦連とか日弁連などから出ているわけでございます。こういう声にやはりこたえていくことが非常に大事だと思うので、法務大臣の御見解、それから厚生省の決意といいますか、どんな政策を検討しようとしているのか、お答えいただきたい。
  166. 炭谷茂

    ○炭谷政府委員 まず、成年後見人制度につきましては、本人の利益の保護観点からなされるものでございますので、本人の財産の中から支弁するということが基本になろうかというふうに考えているわけでございます。  しかしながら、先生御指摘のように、低所得者の方々を初め、福祉サービスの利用等、日常生活に密着した援助を必要なときに確実に受けることができるようにするということも、私ども厚生行政を担当する人間にとっても重要な課題であるというふうに認識しているわけでございます。  このため、私どもといたしましては、痴呆性高齢者、知的障害者、精神障害者等判断能力が不十分な方々ができる限り地域で自立した生活を継続して、安心して生活を送っていただくようにするため、無料または低額な料金で福祉サービスの適切な利用などを援助する地域福祉権利擁護事業社会福祉事業として創設することを検討いたしております。この制度化によりまして、例えば障害者の団体などもその中に入ろうかと思いますけれども地域福祉権利擁護事業への幅広い福祉団体の取り組みを期待いたしておりますし、また、全国的な基盤整備観点から、都道府県社会福祉協議会が全国であまねく事業を展開していただこうということで、今年十月から、当該事業の運営について一定の国庫補助を行うことを予定いたしております。     〔委員長退席、橘委員長代理着席〕
  167. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 成年後見制度は、本人の財産管理等を適切に行うために利用されるものでございますので、後見事務に要する費用等の経費につきましては、基本的には本人がその財産の中から支弁すべきものだ、このように考えております。  ただ、委員指摘のように、低所得者でもこの制度を利用することを可能にするため、福祉分野における廉価で良質な後見事務の供給体制について検討する必要がある、このように考えます。この点につきましては、今厚生省からお話がございましたけれども、具体的には、今般、社会福祉基礎構造改革において、判断能力の不十分な者に対する無料または低額な料金による福祉サービスの利用援助等を行う社会福祉事業を創設することとされておられますので、その中で十分な検討が進められることを期待いたしております。
  168. 木島日出夫

    ○木島委員 今回の民法改正で、聴覚障害者の皆さん、言語障害者の皆さんが公正証書遺言をすることができるようになりました。大変すばらしい改正だと思います。これは、本当に長年にわたる関係者の皆さんの努力が報われたと思います。  六月十五日の当委員会において参考人質問をやりまして、そのときに、例えば、大変すばらしい制度なんだが、聴覚障害者、言語障害者の身近に通訳人がいないような場合、特に遺言ですから、法律的な非常に難しいことを通訳してもらわなくちゃいかぬわけで、通訳人が遠方から来ていただくような場合、やはり費用負担の問題があるんだということも指摘をされました。そんなための補助制度が本当に欲しいなと思っているわけでありますが、現状と見通し、どんな状況なのか。これは厚生省、御答弁いただきたい。
  169. 今田寛睦

    ○今田説明員 御指摘のように、聴覚障害者あるいは言語障害者が日常生活を営む上で、手話などのコミュニケーションの手段を確保することは大変重要であると考えております。このために、現在、都道府県それから指定都市等におきまして、障害者の社会参加を促進する事業といたしまして、従来から、手話が必要な障害者に対する手話通訳者あるいは手話奉仕員の派遣事業を行っております。今回、公正証書遺言をされる場合に通訳人の派遣が行われるということになるわけでありますが、この場合におきましても、この制度の対象として取り組まれるものと考えております。  なお、ちなみにこの派遣事業につきましては、平成十年度、都道府県、指定都市一カ所当たり、平均で年間約一千三百万円の予算で運営している、このように承知をいたしております。
  170. 木島日出夫

    ○木島委員 これはちょっと予算が少な過ぎてとても話にならぬと思いますので、ぜひ来年度予算以降、こういうせっかくの民法改正が行われるわけですから、抜本的に手話通訳の皆さんへの財政援助を国としてもやっていただきたい。その結果が、この法律が生きて、多くの言語障害者、聴覚障害者の皆さんが晴れて、安心して公正証書をつくることができるようになるんじゃないかと思いますので、よろしくお願いをいたします。  厚生省さんはお帰りになって結構であります。  時間も大分なくなりましたが、最後に、成年後見人と被成年後見人間の利益相反問題についてお聞きしたいと思うんです。  同僚委員からたび重なる御質問もありましたのではしょりますが、今回の改正で配偶者法定後見人制度が廃止されます。法人を後見人とすることができるようになります。私は、本当に一番心配は、被後見人が悪徳後見人によってその財産を食い物にされはしないかなということであります。そこを歯どめをかけるのが本当に大事だということを前回も質問いたしました。  そこで、改めて利益相反問題についてお聞きしたいと思うんです。  前回質問したことははしょりまして、利益相反する法人は後見人にしてはならぬ、後見人にはなれないということを法律にしっかり書き込むべきだということを東京都を初め日弁連なども要求していたんですが、残念ながらそれは受け入れてもらえませんでした。  しかし、この前の法務省の答弁によりますと、大丈夫なんだ、裁判所は必要があるときは後見監督人を選任できるんだ、職権で後見監督人も選任できるんだ、後見監督人を裁判所選任する手続があるんだから、仮に後見人がふらちなことを考えても抑えることができるんだという御答弁でございました。それで、細川民事局長は、必要があるときというのはどういうときだという私の質問に対していろいろ答弁もしているんですが、それは、最高裁判所が家事審判規則の改正を今やっているようだけれども、そこできちっと、どういう場合が必要か家事審判規則で書いてくれるんじゃないか、そういうふうに受け取られる答弁をしているんです。手続等という面より実体法の解釈という面がございますから、規則には載りにくい問題なのかなという感じがしておりますが、少なくとも最高裁の結論が出ておりませんという答弁なんです。  そこで、最高裁に聞きます。  私は本当に、後見監督人が選任される、必要となるときというこの法律運用の問題で、しっかり立派な家事審判規則を最高裁につくってもらいたいと思っているんですが、どうですか、今の現状
  171. 安倍嘉人

    安倍最高裁判所長官代理者 御説明申し上げます。  ただいま御指摘の点については、後見監督人をいかなる場合に選任するか、まさに実体要件の問題になろうかと思うわけでございます。  その運用に当たりましては、個々の事案を見ながら、その後見人後見事務の適正を図るためにどういう場合必要かをよく見きわめていきたいと思うわけでございますが、この要件を家事審判規則に書くことは、実体法との関係では難しい問題があろうかと考えておる次第でございます。
  172. 木島日出夫

    ○木島委員 では法務省細川民事局長、最高裁はああいう態度ですよ、実体法上の解釈問題だから家事審判規則では書き込めないと。それなら解釈がやはり大事なんで、改めて答弁してください。必要とするときというのはどういう場合を想定しているか全部挙げてください。
  173. 細川清

    細川政府委員 前回申し上げましたが、家事審判規則は手続的な問題ですから、実体要件の解釈については、それは規則を書くのは難しいんではなかろうかというふうに私は申し上げたつもりでございます。  必要のあるときというのは、まさに必要のあるときでございまして、典型的な例を申し上げますと、例えば、被後見人御本人が相当の財産がある、あるいは相当の取引をする、多額の金銭を授受しなければならない、そういうような場合にはこれは権限濫用の誘惑があるわけですから、そういう場合には後見監督人を付さなければならない、それが一つ典型的な例だと考えております。
  174. 木島日出夫

    ○木島委員 それでは、もう時間がありませんからずばりと聞きますが、だれが後見人選任されるかというのはやはり決定的だと思うんですね。  そこで、利害関係の有無については判断材料の一つなんでしょうが、端的に聞きます。  特別養護老人ホームを経営する社会福祉法人があった、そこに入所しているお年寄りが痴呆症になった、そういう人が被後見人になる。その場合に、入所している特別養護老人ホームを経営する社会福祉法人と痴呆性老人になってしまった被後見人、入所者は利害関係があるということでいいでしょうか。そして、そういうような社会福祉法人を後見人選任できるんでしょうかできないんでしょうか、端的に答えてください。
  175. 細川清

    細川政府委員 ただいまの設例でございますと、入所契約を結んでおるわけですから、利害関係があります。  二番目の御質問で、適当かどうかということですが、後見人の場合には包括的な代理権がございますので、そういう利害関係のある人を後見人選任することは基本的には不適当であるというふうに考えております。ただ、後見人を複数任命して、片っ方の人は金銭関係を扱わないということであれば、その扱わない方にだけ任命する、あるいは、補助人でごく一部の代理権があるというならば可能性はないことはないというようなことを考えております。
  176. 木島日出夫

    ○木島委員 時間ですから終わります。実は、私は、任意後見の場合の後見人後見監督人、そして被任意後見人、そしてそれを監督している裁判所、この関係は非常に大事だと思ってたくさん質問要項を準備してきたんですが、やめます。  ただ、先ほど同僚委員からも質問されましたが、この任意後見制度は、裁判所は間接監督なんですよ。後見人を監督できないんです。後見監督人を通じてのみ後見人を監督するという間接監督なんですね。私は、この次の見直しのときは、ぜひともこれは、せめて裁判所後見人を直接監督するということをやらないと、一つだけ欠点を言いますと、後見人後見監督人がぐるになっちゃったとき、後見監督人と後見人が共謀したときには全く歯どめがないんですよ。どうしようもないということになるので、次の見直しのとき、ぜひ間接監督から直接監督へと転換をしていただきたいと希望するんですが、法務大臣の御所見を伺って終わりにしたいと思うんです。     〔橘委員長代理退席、委員長着席〕
  177. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 任意後見契約というのはあくまでも私的自治に基づく任意契約でございます。いわゆる法定後見とは制度の枠組みが異なるわけでございます。したがいまして、国家機関である家庭裁判所が直接的に任意後見人を監督するということは、私的自治の原則との関係で問題があるのではないか考えます。
  178. 木島日出夫

    ○木島委員 終わります。
  179. 杉浦正健

    杉浦委員長 次に、保坂展人君
  180. 保坂展人

    ○保坂委員 社会民主党の保坂展人です。  私が最後の質問者になりましたので、まず、全体を通した極めて素朴なところからお聞きをしていきたいと思います。  これまでの長らくにわたった禁治産制度あるいは準禁治産というものが今回大幅に変わる、そしてまた戸籍などに記載もされなくなるということで、かなり画期的な改正ということで議論をしてきております。  しかし一方で、これまでのイメージ、印象は多くの人々の心の中あるいは印象の中に残っているところでありまして、こういうふうに変わりましたよと言っても、名前が変わっただけじゃないんですか、やはり自分がまさに人間として大きく何かアイデンティティーを失うようでこれは使いたくないとか、あるいは自分の能力を疑われる、あるいは世間から何か排除されたように思えるというようなマイナスイメージを持つ方もいらっしゃるんじゃないかというところで、今回の法改正について、その趣旨、特に使われる人みずから望んでという部分もあるわけですから、法務省の方でどのようにこの立法趣旨をPRしようとしているのか、その計画や手法あるいはその要点を伺いたいと思います。
  181. 細川清

    細川政府委員 今回の改正案は、障害のある方でも社会の中で健常者と一緒に生活していくというノーマライゼーションの考え方に基づいてなされているわけで、したがって、従来のマイナスイメージを払拭するということが非常に大事だというふうなことは御指摘のとおりだと思います。  私どもといたしましても、この新しい制度の趣旨について広く国民に理解していただかねばならないと思っておりまして、そこで、一般の方々にとってわかりやすいパンフレット等の説明資料やポスターを作成しまして、全国の家庭裁判所、都道府県、市区町村、福祉事務所、社会福祉協議会、社会福祉士会、その他福祉関係団体、弁護士会、司法書士会、公証役場、法務局等に配布するとともに、制度の内容に関する詳細なQアンドAや解説書の出版、関係機関、団体等に対する説明会の開催、さらには政府広報等を通じまして制度の周知広報に努めてまいりたいと考えております。
  182. 保坂展人

    ○保坂委員 二点目に、後見人についてのことなんですけれども、例えば後見人が利害関係のないと思われる第三者に、だれだれの後見人をしている、あるいはその内容について伝えてしまう、話をしてしまう等々、被後見人のプライバシー、あるいは資産内容だとか健康状態、いろいろな部分情報をきちっとガードしていただく必要があるかと思います。そういった後見人方々が、どういう研修といいますか、そういう資質を身につけていただく仕組みづくりについては、どのように法務省の方はお考えでしょうか。
  183. 細川清

    細川政府委員 後見等を受けているということを第三者に知られたくない、知らせないようにするというプライバシーの保護は、御指摘のとおり大変重要な問題だと思っております。  もちろん、本人を保護する立場にあります成年後見人は、そのプライバシーを守る義務があるわけでございまして、その義務に違反した場合には、民事的にいえば損害賠償責任があるとか、さらには、甚だしい場合は後見人の地位を解任されるということもあり得るわけでございます。ただ、そうなる前に、今申し上げたようなことは当然の前提でございますが、さまざま後見人として守っていただかなければならないことはどういうことかということにつきまして、制度の趣旨徹底の際に改めて周知徹底いたしたいと思っております。
  184. 保坂展人

    ○保坂委員 後ほど、その研修などについてはまた伺います。  次に遺言についてなんですけれども、今回まさに現場からの声を受けて大きく遺言についても改正をされるということで、大変、遅過ぎたなどとの声もあるわけですけれども、しかし必要なことだと思います。  しかし、例えば公正証書遺言という遺言のスタイルがあるんだということも、国民幅広くだれでも知っているというたぐいのものではなくて、そういう制度をぼんやりとは知っていても具体的に中身などよく知らない、あるいはそういったものに預けるよりは自分財産はきちっと押し入れにでも入れておくんだというような方が多いと思うんですね。そういった方にちゃんと、こういう制度のメリットがあるんですよということをまた幅広く知らせるということについては、何か考えを持っておられるでしょうか。
  185. 細川清

    細川政府委員 公証制度一般あるいは公正証書による遺言等につきましては、従来から、公証週間というようなものを設けまして制度のPRをする、あるいは政府広報でも取り上げたことがございますが、あるいは必ずしも十分ではなかったのかもしれません。  私どもといたしましては、今回の改正を機にいたしまして、わかりやすいポスター、パンフレット等解説書をつくりまして、先ほど申し上げましたいろいろな関係機関、団体等にお送りしまして、さらなる広報を図ってまいりたいと存じております。
  186. 保坂展人

    ○保坂委員 今回の遺言の部分の改正の趣旨、つまり、これまで拒絶をされていた方々、聴覚または言語機能に障害がある人たちに対して、手話、手話通訳をもって、あるいは筆談をもってこれを可となすというこの趣旨はどこにありますか。つまり、何のためにそういうふうに枠を広げなければならないのかという、その理念であり趣旨についてちょっとお答えいただきたいと思います。
  187. 細川清

    細川政府委員 遺言の方式には三種類、一般的なものがあるわけですが、今まで、言語機能に障害がある方は、その一番中心となる公正証書による遺言は利用できなかったわけでございます。  公正証書による遺言は、この前の参考人の先生も言っておられましたように、さまざまな利点があるわけでございまして、やはりそれを利用できるということが大切なことである、その御要望も大変強かったということでございますので、それを利用できるように従来の欠陥を改めたということでございます。
  188. 保坂展人

    ○保坂委員 みずからの意思を持つ方が、この規定があるために、みずからの意思をあらわす手段、例えば手話、あるいはこうやって書いてということができても、これは認められないんだというのは、これはちょっとおかしいのだろうという声が今回の改正の最初の動機のところにあったんじゃないでしょうか。
  189. 細川清

    細川政府委員 まさに、障害者の団体の方々からはそういう御意見が強く出されたわけでございます。
  190. 保坂展人

    ○保坂委員 そうしますと、ここが大事なところだと思うのですけれども、病気並びに障害によって発声、発語が困難、声が出ない、そしてまた、ペンを握るというわけにもいかない、そしてまた、手話も残念ながら知らないか、あるいは手などが十分動かないという方が、みずからの意思を伝達する何らかの補助器具を使って公正証書遺言をするという声もまた今後かなりの場面で出てくるのではないかと想定できるのですが、細かい話は後ほど聞きますが、まず大きくどういうふうにこういった問題、つまり、筆談や手話によらない意思伝達、ほかの補助器具ということについてはどうお考えですか。
  191. 細川清

    細川政府委員 まず、今回の改正案は、通訳人による通訳と書いてあって、手話による通訳とは書いていないものですから、ほかの手段でも通訳と認められるものであれば、それは構わないわけです。それが第一点目です。ですから、手話でない、例えば唇を読むという方法あるいは指点字という方法がありますが、そういうものでももちろんよろしいわけでございます。  それから、それもできないという方が、例えばワープロを使って、私の遺言はこうですということで公証人の前でされたということになりますと、それは、まさにペンを使って字を書いたのと、ワープロは一種の筆記用具ですから、それと同じように考えればいいわけですから、そうしますと、そういう場合でも、今回の改正は公証人の前での自書に当たるというふうに解釈すべきだというふうに考えております。
  192. 保坂展人

    ○保坂委員 かなり答弁が微妙だと思いまして、今細かい事例を用意してきたのですけれども、そういうお答えですと、確認の作業になりますが、私の知人に、やはり手などが余り動きません、そして声もなかなか聞き取れないという方で、頭に鉢巻き状のバンドを巻いて、そして頭にちょっと棒をつけまして、その棒でパソコンのあるいはワープロのキーを的確に打っていくという方がいるのですね。こういう方の場合は、そうすると、無理なく成立というふうに考えられましょうか。
  193. 細川清

    細川政府委員 現在の改正案の趣旨から申しますと、それは当然ということになります。  この前、参考人の質疑のときに、保坂先生が質問されているのを国会テレビで見ておりましたが、あれは、答えられた方は現行法のことを言われたのですね。改正法のことを言われたのではなかったのでそういう御疑問が生じたのではないかと思っております。
  194. 保坂展人

    ○保坂委員 では、余り長くこのことをやる必要はないのかもしれません。  ただ、そうなりますと、ワープロももちろんですけれども、例えば、手は十分に動かないけれども、手の一部を使って何らかの機械的な伝達をして文字を選び出していくような、そういう装置もございます。あるいは、逆に、これを音声で表現するという装置もありますね。要するに、手や体の一部分を動かして、口は動かないんだけれども、その音声で自分の意思を表現するというような、あらゆる、その人の意思であることがその場で確認されれば、これは認められ得るというふうに考えてよろしいですか。
  195. 細川清

    細川政府委員 さまざまな意思の伝達手段があると思いますが、本人の本当の真意が確実に伝わっているという手段であれば、それはそれで差し支えないというふうに考えております。
  196. 保坂展人

    ○保坂委員 そうすると、今、公正証書遺言を中心に答弁していただいたのですが、それ以外の秘密証書遺言であるとか、あるいは、特別方式と言われているところの死亡危急者遺言だとか、船舶遭難者あるいは隔絶地、こういうところの扱いはどうなるでしょうか。
  197. 細川清

    細川政府委員 自筆証書は、まさに自筆で書かなければいけませんので、これはだめなんですけれども、それ以外の方法は、つまり、自筆でやることによって後で本人の筆跡であることが確認できるという意味がありますので、自筆証書は本人がみずから記載することを要求されていますが、それ以外の自筆で書くことを要求されていないものにつきましては、ワープロで打ったものを、中身を秘密証書にするということは可能でございます。ですから、そのほかの場合には可能であるというのがお答えでございます。
  198. 保坂展人

    ○保坂委員 その自筆証書遺言なんですけれども、例えば、手を失った方で、義手というのですか、要するに機械の部分でペンを握って書く、これはどうなんでしょうか。
  199. 細川清

    細川政府委員 これは、結論的に申しますと、先ほど申し上げましたように、筆跡で後で本人の意思に基づいたものかどうか確認できるという要件でございますので、それができるような場合であればよろしいのではないかというふうに考えております。
  200. 保坂展人

    ○保坂委員 そうすると、もし仮に、ペンを握っているのが機械であっても筆跡は出るわけですよね。要するに、動かしている人固有の癖がありますから、筆跡というのは出ると思うのです。さらに、例えばペンを握らせる、要するに手の部分だけ、あるいはペンを握らせておく機械、これを遠隔操作して手のいろいろな強弱で動かす、こういう装置を開発しても固有の筆跡は生まれ得ると思うのですが、それはいかがでしょう。
  201. 細川清

    細川政府委員 常識的に判断しますと、そういうことでもよろしいのではないかというふうに思います。  ただ、これは裁判所の判例等があるわけではございませんので、責任を持って申し上げる確信はありませんが、常識的に考えればよろしいのではないかというふうに考えております。
  202. 保坂展人

    ○保坂委員 ちょっと法務大臣伺いますが、いろいろちょっと細か過ぎるほどお聞きしましたのは、我々は、やはり立法する際に、これだけ痛切な声がずっと聞かれないでいた。大改正なわけですけれども、その際に、ほかの部分の、要するに、十分な意思を伝えるお気持ちがあるのに、手段がないためにこれがなかなか伝えられないでいるという方に対して、やはり十分運用において配慮していただきたいということをお願いしたいのですが、大臣の所感をお願いします。
  203. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 基本的には、国民権利意識の高まりを受けまして、聴覚・言語機能障害といった健常者じゃない方も、健常者と同様に公正証書遺言等を利用することができるようにしようということでございますので、それぞれの問題はあろうかと思いますので、すべてというわけにはいかぬと思いますが、今のような趣旨を大事にしていかなければならないと思っております。
  204. 保坂展人

    ○保坂委員 ありがとうございました。  もちろん、その機械というのは万全ではありませんで、その機械が工作されていて、あたかも本人が伝えているかのように偽装しながらにせの遺言がなされて、その資産が動いたなんということがあってはいけません。そこはだから厳正に判断していただくということが大前提でしょうけれども、意思が存在する際には、それが何らかの形で表現された際には、ぜひこれは尊重していただくようにお願いをしたいと思います。  それでは、厚生省に来ていただいていると思うのですが、これは前回の質問でもお聞きをしたように、この成年後見制度のいわば適用というか、この制度を使って保護されなければならない、あるいは保護を希望される方というのは潜在的には大変な人数がいらっしゃると思うのです。具体的に、介護保険が来年の春から導入をされていきますけれども、介護保険の制度と、特にこの成年後見制度、家族などがいて見ている場合ということではなくて、例えば身寄りのない、全く天涯孤独というか、ひとりで暮らしておられる方も多数今いらっしゃいます。それから、逆に難しいのは、家族の中には暮らしているのだけれども、家庭の中で老人虐待といいますか、そういう中で虐待を受けている。いろいろなケースが考えられるのですけれども、介護保険の制度のスタートとこの成年後見制度をどう切り結んでいくかというところで、まず厚生省のお考えを。
  205. 近藤純五郎

    ○近藤(純)政府委員 介護保険制度運用におきましては、例えば、要介護認定を申請する。それから、要介護認定されますと、例えば施設に入るときには契約をする、こういう形になっておりますので、御本人の意思を確認して、それを尊重しながらやるというのが介護保険制度の建前になっております。  ただ、先生御指摘のような重度の痴呆の高齢者の場合で、なおかつ家族の方もいらっしゃらない、こういう方につきましては、当然この成年後見制度を利用するというのはかなり出てくるのだと思います。ただ、そういう需要がありましても、後見人を選定すること自体が時間がかかりますので、その間につきましては、必要があれば市町村が措置をするという制度が、例外的な制度としては残されております。
  206. 保坂展人

    ○保坂委員 今、厚生省の方でおっしゃった、重度の痴呆になっていたり、家族等がいない場合、そしてまたこの制度運用しなければならないというときに、極めて公正できちっとした、しかも、利益追求ということではなくて、社会活動としてこの後見人を務めていただく方をつくり出していかなければならないだろう。また、そういったお年寄り自身と、あるいはお年寄りとは限らないわけです、そういう被後見人になる方との間を行政やいろいろな手続のシステムをつないでいくというふうな、ケアマネジメントといいますか、そういうものも必要だと思いますね。そういう制度やあるいは後見人の担い手を育てるなど、今準備されていることはありますか。
  207. 炭谷茂

    ○炭谷政府委員 ただいま先生が御指摘されましたような成年後見人制度いかにうまく利用していただくかという、つなぐ制度といたしまして、実は、先ほども御説明させていただきましたけれども地域福祉権利擁護制度というものが一番役に立つのじゃないのかなというふうに思っております。地域福祉権利擁護制度につきましては、これから、今年十月の発足を目指しまして、いろいろ準備を進めております。この担い手としては、現在、都道府県社会福祉協議会などに期待しているわけでございますけれども、この社会福祉協議会が活動することによって、いわば場合によっては、この人は成年後見人制度を利用した方がいいなというケースについては、そこにつなげていくというような機能も考えております。
  208. 保坂展人

    ○保坂委員 それでは、厚生省の方はこれで結構です。  裁判所の方に伺いますけれども、これは繰り返し出ている質問で恐縮といえば恐縮なんですが、しかし、大変多くの方がこの制度を今後希望されるかもしれないということは、この委員会あるいは参考人の質疑の中で明らかになってきたと思うのですね。まず、家庭裁判所の中で、現行の制度ですら相当の労力、人的な、あるいは時間的な労力を割かれていると思うのですが、そういう家庭裁判所現状でどの程度まで持ちこたえられるのかというところを、率直なところを本当に知りたいわけなんですが、まずは現状がどうか。  そして、この成年後見制度は、それこそ今法務省の答弁もあったように、政府広報なども使って、関係機関はもちろんのこと、どんどん宣伝公布していくということであれば、もっともっと希望者がふえると思うのです。裁判所の方で、現状家庭裁判所の中でどの程度の力を割いて当たっているのか、そしてこれがふえていくとしたらどの辺が限度かというようなことを逆にここで明かしていただいて、その後必要な人員や予算考えいかなければならないと思うのですが、いかがでしょうか。
  209. 安倍嘉人

    安倍最高裁判所長官代理者 現在の家庭裁判所実務におきましても、この禁治産宣告事件、準禁治産宣告事件は大変重要な事件だという認識で処理に当たっているところでございます。その判断の段階、さらに後見人選任の段階、さらに監督の段階とあるわけでございます。  ただ、これをどのくらいの事件まで持ちこたえられるか。なかなか難しい御質問でございまして、私どもといたしましては、現在の体制の中でできるだけの準備を整えまして、事件について手当てをできるように考えていきたいと考えている次第でございます。
  210. 保坂展人

    ○保坂委員 いや、ですから、堂々めぐりなんですけれども、限度があるのじゃないでしょうか、現在の体制では。限度はないのですか。どのぐらいまでなら大丈夫、しかしそれを超えたらやはり増員し手厚い陣形を組まなければだめだということはこの審議の中で言っていただきたいのです。
  211. 浜野惺

    浜野最高裁判所長官代理者 平成十年に家庭裁判所に提起されました禁治産申し立て事件それから準禁治産申し立て事件、さらにこれらの取り消し事件でございます、合計約三千六百件余りでございます。家事事件全体が約四十九万件でございますので、先ほどの三千六百件というのは約〇・七%にとどまっております。そういうことで、家事事件の中ではそういう比率でございますので、先ほど家庭局長からも御説明いたしましたように、今のそういう状況では現体制で十分対応できるということを申し上げたわけでございます。  ただ、ただいま御審議いただいております成年後見制度につきましては、今後法案成立いたしました後に、家庭裁判所におきます運用、これも工夫をいろいろ凝らしていく必要があろうかと思いますし、そういう点も加味して、また、現段階では新しい事件でございますので事件数の動向が非常に予測しがたいというところもございますが、高齢化進展等社会構造変化等も十分踏まえまして、家庭裁判所がその特色でございます科学性後見性を十分に発揮して的確な事件処理が図れるように、家庭裁判所の人的体制あり方についても検討してまいりたい、かように考えております。
  212. 保坂展人

    ○保坂委員 大変控え目な御答弁で、大変不思議なんですが、やはり裁判官は忙しいし、事件はラッシュだし、ですから、これが宣伝され広がれば広がるほど、例えばあと五年、十年で、今三千六百ですが、これが二十倍、三十倍、五十倍、百倍になるとしてもおかしくはないわけですね。しかし、それには人的な体制が必要なので、ぜひそういうことも率直に今後は答弁をしていただきたいと思いますが、今のところは大丈夫だけれども、しかし今後はわからないというふうに受けとめました。わからなければ、予算要求して人員増加に努めていただきたいと思います。  最後に、法務省に再び伺いますけれども、これは同僚議員からたびたび指摘があったことなんですが、いわばカルト的な集団あるいは新興宗教などが、例えば福祉施設的なものを、これは社会福祉法人になっているかどうかは別にして、お年寄りを集め、信者の寄附を集め、そしてそこで寝起きをする。そして、その中で、実はねらいどころは、これは財産だ、金であるということは、過去数々の事件、あるいは一種のカリスマ性を持つ人間を中心とした詐欺、実際にそういうことでお年寄りの資産がねらわれてきたということがあります。  今回の制度を、悪用をどう防止するのか、そういった犯罪のえじきに、よもや人権を保護しようという法律が悪用されることがあってはならないと思うんですが、ここをどう防止する工夫をなさってきたのか、また、運用の中でそれを心がけるのかについてお聞きいたします。
  213. 細川清

    細川政府委員 この制度を適切に運営するためには、後見人等に適切な方が選ばれて、本人の保護のためになるということが大事なことでございます。  そこで、今回の改正案では、後見人選任するに当たって、家庭裁判所が考慮すべき事情を列挙しまして、それを十分家庭裁判所が慎重に審査して判断してもらいたいということを明らかにしているわけでございます。  それからもう一つは、従来は後見監督人等は、申し立てがなければ選任できなかったわけですが、今回の改正法案では、家庭裁判所が職権で後見監督人を選べることとしております。そういう体制にいたしましたので、今後、家庭裁判所の適切な運用が得られれば、御指摘のような問題は生じないのではないかというふうに考えております。
  214. 保坂展人

    ○保坂委員 もう一度その点を裁判所伺いますが、例えば大学の先生だとかあるいは著名人、作家ですとか、実際に身の回りでもそういう被害があるんですけれども、そういう方たちが勝手に名前を使われたり、たった一回あった講演会の写真を使われて、あたかもその組織やグループ、その法人の顧問であるかのように装いをつくられて、そして詐欺を仕掛ける、そういう犯罪が後を絶たないわけなんですが、とりわけ後見人が法人として出てきた場合に、裁判所がそこを見抜くという具体的な方策、何かお考えでしょうか。
  215. 安倍嘉人

    安倍最高裁判所長官代理者 法人の適格性につきましては、当該法人の活動状況を把握するに尽きるわけでございますけれども情報収集の方法といたしましては、私どもの方で調査官が出向いて各種の帳簿等を見せていただくということもあろうと思いますし、あるいは、各地域における活動を関係福祉機関から情報としていただくということなども考えられるだろうと思っております。このようなことを踏まえまして、できる限りの情報は集めて、的確な判断をしていきたいと考えている次第でございます。
  216. 保坂展人

    ○保坂委員 とりわけ、この立法の趣旨にかんがみて、まさに人権保護のための法律であるということを、今の質疑でも手ごたえある御答弁をいただいたと思いますので、ぜひその趣旨を今後運用において徹底していただくようにお願いをして、私の質問を終わります。
  217. 杉浦正健

    杉浦委員長 以上で各案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  218. 杉浦正健

    杉浦委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに各案について採決に入ります。  まず、民法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  219. 杉浦正健

    杉浦委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  次に、任意後見契約に関する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  220. 杉浦正健

    杉浦委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  次に、民法の一部を改正する法律施行に伴う関係法律整備等に関する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  221. 杉浦正健

    杉浦委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  次に、後見登記等に関する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  222. 杉浦正健

    杉浦委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  223. 杉浦正健

    杉浦委員長 この際、ただいま議決いたしました民法の一部を改正する法律案に対し、八代英太君外六名から、自由民主党、民主党、公明党・改革クラブ、自由党、日本共産党、社会民主党・市民連合及びさきがけの共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を聴取いたします。八代英太君。
  224. 八代英太

    ○八代委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。     民法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)  一 政府は、新しい成年後見制度の実施に当たっては、自己決定の尊重、ノーマライゼーション等の改正の理念が制度運用に十分反映されるよう、新制度の趣旨・内容について、福祉関係者、司法関係者等の関係者に十分周知徹底されるよう努めること。  二 新設の補助制度に関しては、本人の自己決定を尊重する法の趣旨にかんがみ、補助開始の審判補助人への同意権・代理権の付与及びその範囲について出来る限り本人の意向を尊重し適正な運用を期するように配慮されたい。  三 成年後見人等の選任に当たり、本人との利害関係の有無を考慮事情とする法の趣旨にかんがみ、成年後見人等となる法人及びその代表者と本人との利害関係及び利益相反の有無の確認について適正な運用を期するように配慮されたい。  四 政府は、後見等による事務費の負担、NPO等関係諸団体への支援、後見人等の研修など、後見制度がより有効に機能するように実施体制整備に努めること。  五 政府は、後見登記等の利用者の利便の向上に資するため、登記の申請数等を勘案しつつ、利用者にとって利用しやすい登記所の体制整備に努めること。  六 政府は、新しい成年後見制度について、その運用状況、高齢者・障害者をめぐる社会状況等を勘案し、必要に応じて制度についての見直しを行うこと。  七 政府は、聴覚又は言語機能に障害がある者が公正証書遺言をすることを可能とした本改正の趣旨・内容について、周知徹底を図るとともに、その適正な運用につき公証人等を指導すること。 以上であります。  何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
  225. 杉浦正健

    杉浦委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  八代英太君外六名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  226. 杉浦正健

    杉浦委員長 起立総員。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。  この際、ただいまの附帯決議につきまして、法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。陣内法務大臣
  227. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 ただいま可決されました附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。ありがとうございます。     —————————————
  228. 杉浦正健

    杉浦委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました各法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  229. 杉浦正健

    杉浦委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  230. 杉浦正健

    杉浦委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時八分散会