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1999-06-11 第145回国会 衆議院 法務委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年六月十一日(金曜日)     午前九時三十分開議   出席委員    委員長 杉浦 正健君    理事 橘 康太郎君 理事 八代 英太君    理事 山本 幸三君 理事 山本 有二君    理事 佐々木秀典君 理事 坂上 富男君    理事 日野 市朗君 理事 上田  勇君    理事 達増 拓也君       小野寺五典君    奥野 誠亮君       加藤 卓二君    河村 建夫君       小杉  隆君    左藤  恵君       笹川  堯君    菅  義偉君       西田  司君    保岡 興治君       渡辺 喜美君    石毛えい子君       枝野 幸男君    福岡 宗也君       漆原 良夫君    安倍 基雄君       木島日出夫君    保坂 展人君       鯨岡 兵輔君  出席国務大臣         法務大臣    陣内 孝雄君  出席政府委員         法務政務次官  北岡 秀二君         法務大臣官房司         法法制調査部長         兼内閣審議官  房村 精一君         法務省民事局長 細川  清君         法務省刑事局長 松尾 邦弘君         法務省矯正局長 坂井 一郎君         厚生省健康政策         局長      小林 秀資君         厚生省社会・援         護局長     炭谷  茂君         厚生省老人保健         福祉局長    近藤純五郎君         自治省行政局選         挙部長     片木  淳君  委員外出席者         内閣総理大臣官         房参事官    冨澤 正夫君         文化庁長官官房         審議官     結城 章夫君         最高裁判所事務         総局総務局長  浜野  惺君         最高裁判所事務         総局刑事局長  白木  勇君         最高裁判所事務         総局家庭局長  安倍 嘉人君         法務委員会専門         員       海老原良宗委員の異動 六月十一日         辞任         補欠選任   加藤 紘一君     小野寺五典君   福岡 宗也君     石毛えい子君 同日         辞任         補欠選任   小野寺五典君     加藤 紘一君   石毛えい子君     福岡 宗也君 同日  理事佐々木秀典君同日理事辞任につき、その補欠として日野市朗君が理事に当選した。 六月十一日  商法等の一部を改正する法律案内閣提出第七六号) 五月三十一日  子供視点からの少年法論議に関する請願石毛えい子紹介)(第三五六九号)  同(土井たか子紹介)(第三五七〇号)  同(山本孝史紹介)(第三五七一号)  同(深田肇紹介)(第三五九八号)  同(金田誠一紹介)(第三六六五号)  同(辻元清美紹介)(第三六六六号)  同(日野市朗紹介)(第三六六七号)  同(保坂展人君紹介)(第三六六八号)  同(金田誠一紹介)(第三六九三号)  同(辻元清美紹介)(第三六九四号)  同(原口一博紹介)(第三六九五号)  同(日野市朗紹介)(第三六九六号)  同(保坂展人君紹介)(第三六九七号)  同(横光克彦紹介)(第三七一六号)  治安維持法犠牲者に対する国家賠償のための法制定に関する請願伊藤忠治紹介)(第三五七二号)  同(坂上富男紹介)(第三五七三号)  同(知久馬二三子紹介)(第三五七四号)  同(畠山健治郎紹介)(第三五七五号)  同(池端清一紹介)(第三五九九号)  同(土肥隆一紹介)(第三六〇〇号)  同(葉山峻紹介)(第三六〇一号)  同(畠山健治郎紹介)(第三六〇二号)  同(濱田健一紹介)(第三六〇三号)  同(深田肇紹介)(第三六〇四号)  同(山花貞夫紹介)(第三六〇五号)  同(石井紘基紹介)(第三六六九号)  同(岩田順介紹介)(第三六七〇号)  同(辻元清美紹介)(第三六七一号)  同(保坂展人君紹介)(第三六七二号)  同(赤松広隆紹介)(第三七一七号)  同(山本孝史紹介)(第三七一八号)  婚外子差別を撤廃する民法等改正に関する請願保坂展人君紹介)(第三六六三号)  外国人登録法改正に関する請願保坂展人君紹介)(第三六六四号)  テロ事件再発防止に関する請願村井仁紹介)(第三七一九号) 六月三日  裁判所の人的・物的充実に関する請願石毛えい子紹介)(第三八三六号)  同(漆原良夫紹介)(第三八三七号)  同(枝野幸男紹介)(第三八三八号)  同(熊谷弘紹介)(第三八三九号)  同(佐々木秀典紹介)(第三八四〇号)  同(畠山健治郎紹介)(第三八四一号)  同(細川律夫紹介)(第三八四二号)  同(松沢成文紹介)(第三八四三号)  同(山元勉紹介)(第三八四四号)  同(金田誠一紹介)(第三九七七号)  同(坂上富男紹介)(第三九七八号)  同(原口一博紹介)(第三九七九号)  同(深田肇紹介)(第三九八〇号)  同(松本惟子君紹介)(第三九八一号)  定期借家権制度を創設する借地借家法改正反対に関する請願北村哲男紹介)(第三八四五号)  子供視点からの少年法論議に関する請願池端清一紹介)(第三八四六号)  同(北村哲男紹介)(第三八四七号)  同(横光克彦紹介)(第三八四八号)  同(池端清一紹介)(第三九七四号)  治安維持法犠牲者に対する国家賠償のための法制定に関する請願伊藤茂紹介)(第三八四九号)  同(石毛えい子紹介)(第三八五〇号)  同(小林守紹介)(第三八五一号)  同(島聡紹介)(第三八五二号)  同(小林守紹介)(第三九七五号)  同(松本惟子君紹介)(第三九七六号)  婚外子差別を撤廃する民法等改正に関する請願枝野幸男紹介)(第三八五三号)  法務局更生保護官署及び入国管理官署増員に関する請願坂上富男紹介)(第三九七三号) 同月七日  子供視点からの少年法論議に関する請願古川元久紹介)(第四〇八三号)  同(石井郁子紹介)(第四二二五号)  同(大森猛紹介)(第四二二六号)  同(金子満広紹介)(第四二二七号)  同(木島日出夫紹介)(第四二二八号)  同(穀田恵二紹介)(第四二二九号)  同(佐々木憲昭紹介)(第四二三〇号)  同(佐々木陸海紹介)(第四二三一号)  同(斉藤鉄夫紹介)(第四二三二号)  同(瀬古由起子紹介)(第四二三三号)  同(辻第一君紹介)(第四二三四号)  同(寺前巖紹介)(第四二三五号)  同(中路雅弘紹介)(第四二三六号)  同(春名直章紹介)(第四二三七号)  同(東中光雄紹介)(第四二三八号)  同(平賀高成紹介)(第四二三九号)  同(不破哲三紹介)(第四二四〇号)  同(藤木洋子紹介)(第四二四一号)  同(松本善明紹介)(第四二四二号)  同(矢島恒夫紹介)(第四二四三号)  同(吉井英勝紹介)(第四二四四号)  治安維持法犠牲者に対する国家賠償のための法制定に関する請願古川元久紹介)(第四〇八四号)  同(石井郁子紹介)(第四二四五号)  同(大森猛紹介)(第四二四六号)  同(金子満広紹介)(第四二四七号)  同(木島日出夫紹介)(第四二四八号)  同(児玉健次紹介)(第四二四九号)  同(穀田恵二紹介)(第四二五〇号)  同(佐々木憲昭紹介)(第四二五一号)  同(佐々木陸海紹介)(第四二五二号)  同(志位和夫紹介)(第四二五三号)  同(瀬古由起子紹介)(第四二五四号)  同(辻第一君紹介)(第四二五五号)  同(寺前巖紹介)(第四二五六号)  同(中路雅弘紹介)(第四二五七号)  同(中島武敏紹介)(第四二五八号)  同(中西績介紹介)(第四二五九号)  同(中林よし子紹介)(第四二六〇号)  同(春名直章紹介)(第四二六一号)  同(東中光雄紹介)(第四二六二号)  同(平賀高成紹介)(第四二六三号)  同(不破哲三紹介)(第四二六四号)  同(藤木洋子紹介)(第四二六五号)  同(藤田スミ紹介)(第四二六六号)  同(古堅実吉紹介)(第四二六七号)  同(松本善明紹介)(第四二六八号)  同(矢島恒夫紹介)(第四二六九号)  同(山原健二郎紹介)(第四二七〇号)  同(吉井英勝紹介)(第四二七一号)  裁判所速記官制度を守り、司法充実強化に関する請願枝野幸男紹介)(第四〇八五号)  同(佐々木秀典紹介)(第四〇八六号)  同(枝野幸男紹介)(第四二七二号)  同(佐々木秀典紹介)(第四二七三号)  同(坂上富男紹介)(第四二七四号)  裁判所の人的・物的充実に関する請願園田博之紹介)(第四〇八七号)  同(古川元久紹介)(第四〇八八号)  同(辻元清美紹介)(第四二七五号)  同(中西績介紹介)(第四二七六号)  同(藤村修紹介)(第四二七七号)  法務局更生保護官署及び入国管理官署増員に関する請願石井郁子紹介)(第四〇八九号)  同(大森猛紹介)(第四〇九〇号)  同(金子満広紹介)(第四〇九一号)  同(木島日出夫紹介)(第四〇九二号)  同(児玉健次紹介)(第四〇九三号)  同(穀田恵二紹介)(第四〇九四号)  同(佐々木憲昭紹介)(第四〇九五号)  同(佐々木秀典紹介)(第四〇九六号)  同(佐々木陸海紹介)(第四〇九七号)  同(志位和夫紹介)(第四〇九八号)  同(瀬古由起子紹介)(第四〇九九号)  同(辻第一君紹介)(第四一〇〇号)  同(寺前巖紹介)(第四一〇一号)  同(中路雅弘紹介)(第四一〇二号)  同(中島武敏紹介)(第四一〇三号)  同(中林よし子紹介)(第四一〇四号)  同(春名直章紹介)(第四一〇五号)  同(東中光雄紹介)(第四一〇六号)  同(平賀高成紹介)(第四一〇七号)  同(藤木洋子紹介)(第四一〇八号)  同(藤田スミ紹介)(第四一〇九号)  同(古堅実吉紹介)(第四一一〇号)  同(松本善明紹介)(第四一一一号)  同(矢島恒夫紹介)(第四一一二号)  同(山原健二郎紹介)(第四一一三号)  同(吉井英勝紹介)(第四一一四号)  同(漆原良夫紹介)(第四二七八号)  選択的夫婦別姓導入など民法改正に関する請願坂上富男紹介)(第四二二一号)  同(葉山峻紹介)(第四二二二号)  同(松本龍紹介)(第四二二三号)  組織的犯罪対策法制定反対に関する請願木島日出夫紹介)(第四二二四号) 同月八日  子供視点からの少年法論議に関する請願北村哲男紹介)(第四四〇一号)  同(斉藤鉄夫紹介)(第四四〇二号)  治安維持法犠牲者に対する国家賠償のための法制定に関する請願井上一成紹介)(第四四〇三号)  同(石井郁子紹介)(第四四〇四号)  同(大森猛紹介)(第四四〇五号)  同(金子満広紹介)(第四四〇六号)  同(木島日出夫紹介)(第四四〇七号)  同(佐々木陸海紹介)(第四四〇八号)  同(志位和夫紹介)(第四四〇九号)  同(辻第一君紹介)(第四四一〇号)  同(寺前巖紹介)(第四四一一号)  同(中島武敏紹介)(第四四一二号)  同(春名直章紹介)(第四四一三号)  同(東中光雄紹介)(第四四一四号)  同(平賀高成紹介)(第四四一五号)  同(不破哲三紹介)(第四四一六号)  同(藤木洋子紹介)(第四四一七号)  同(藤田スミ紹介)(第四四一八号)  同(古堅実吉紹介)(第四四一九号)  同(矢島恒夫紹介)(第四四二〇号)  同(山原健二郎紹介)(第四四二一号)  同(吉井英勝紹介)(第四四二二号)  裁判所速記官制度を守り、司法充実強化に関する請願佐々木秀典紹介)(第四四二三号)  裁判所の人的・物的充実に関する請願石井郁子紹介)(第四四二四号)  同(大森猛紹介)(第四四二五号)  同(金子満広紹介)(第四四二六号)  同(木島日出夫紹介)(第四四二七号)  同(北村哲男紹介)(第四四二八号)  同(児玉健次紹介)(第四四二九号)  同(穀田恵二紹介)(第四四三〇号)  同(佐々木憲昭紹介)(第四四三一号)  同(佐々木陸海紹介)(第四四三二号)  同(瀬古由起子紹介)(第四四三三号)  同(辻第一君紹介)(第四四三四号)  同(寺前巖紹介)(第四四三五号)  同(中路雅弘紹介)(第四四三六号)  同(中島武敏紹介)(第四四三七号)  同(中林よし子紹介)(第四四三八号)  同(春名直章紹介)(第四四三九号)  同(東中光雄紹介)(第四四四〇号)  同(平賀高成紹介)(第四四四一号)  同(藤木洋子紹介)(第四四四二号)  同(藤田スミ紹介)(第四四四三号)  同(古堅実吉紹介)(第四四四四号)  同(松本善明紹介)(第四四四五号)  同(矢島恒夫紹介)(第四四四六号)  同(山原健二郎紹介)(第四四四七号)  同(横光克彦紹介)(第四四四八号)  同(吉井英勝紹介)(第四四四九号)  法務局更生保護官署及び入国管理官署増員に関する請願木島日出夫紹介)(第四四五〇号)  選択的夫婦別姓導入など民法改正に関する請願横光克彦紹介)(第四四五一号) 同月九日  組織的犯罪対策法制定反対に関する請願木島日出夫紹介)(第四七〇八号)  子供視点からの少年法論議に関する請願家西悟紹介)(第四七〇九号)  同(家西悟紹介)(第四八八六号)  同(志位和夫紹介)(第四八八七号)  同(中川智子紹介)(第四八八八号)  同(福岡宗也君紹介)(第四八八九号)  治安維持法犠牲者に対する国家賠償のための法制定に関する請願川内博史紹介)(第四七一〇号)  同(北沢清功紹介)(第四七一一号)  同(近藤昭一紹介)(第四八九〇号)  同(中川智子紹介)(第四八九一号)  同(中村鋭一紹介)(第四八九二号)  裁判所速記官制度を守り、司法充実強化に関する請願木島日出夫紹介)(第四七一二号)  婚外子差別を撤廃する民法等改正に関する請願木島日出夫紹介)(第四七一三号)  裁判所の人的・物的充実に関する請願達増拓也紹介)(第四七一四号)  同(土井たか子紹介)(第四八九四号)  同(中川智子紹介)(第四八九五号)  法務局更生保護官署及び入国管理官署増員に関する請願達増拓也紹介)(第四七一五号)  同(福岡宗也君紹介)(第四八九六号)  選択的夫婦別姓導入など民法改正に関する請願川内博史紹介)(第四七一六号)  同(古川元久紹介)(第四七一七号)  同(丸谷佳織紹介)(第四七一八号)  同(北村哲男紹介)(第四八九七号)  同(中川智子紹介)(第四八九八号)  同(前原誠司紹介)(第四八九九号)  定期借家権制度を創設する借地借家法改正反対に関する請願木島日出夫紹介)(第四八八五号)  外国人登録法抜本改正に関する請願福岡宗也君紹介)(第四八九三号) 同月十日  子供視点からの少年法論議に関する請願肥田美代子紹介)(第五一三六号)  同(福岡宗也君紹介)(第五一三七号)  同(肥田美代子紹介)(第五三七二号)  同(福岡宗也君紹介)(第五三七三号)  同(横路孝弘紹介)(第五三七四号)  同(福岡宗也君紹介)(第五五六五号)  同(横路孝弘紹介)(第五五六六号)  同(福岡宗也君紹介)(第五六五六号)  治安維持法犠牲者に対する国家賠償のための法制定に関する請願海江田万里紹介)(第五一三八号)  同(中沢健次紹介)(第五三七五号)  同(羽田孜紹介)(第五三七六号)  同(横路孝弘紹介)(第五三七七号)  同(池田元久紹介)(第五六五七号)  同(肥田美代子紹介)(第五六五八号)  テロ事件再発防止に関する請願羽田孜紹介)(第五一三九号)  法務局更生保護官署及び入国管理官署増員に関する請願枝野幸男紹介)(第五一四〇号)  同(日野市朗紹介)(第五五六八号)  選択的夫婦別姓導入など民法改正に関する請願枝野幸男紹介)(第五一四一号)  同(金田誠一紹介)(第五一四二号)  同(辻元清美紹介)(第五一四三号)  同(木島日出夫紹介)(第五三八〇号)  同(中田宏紹介)(第五六六〇号)  選択的夫婦別姓法制化に関する請願石毛えい子紹介)(第五三七一号)  同(青山二三紹介)(第五六六一号)  裁判所の人的・物的充実に関する請願山本孝史紹介)(第五三七八号)  同(横路孝弘紹介)(第五三七九号)  同(日野市朗紹介)(第五五六七号)  同(肥田美代子紹介)(第五六五九号) 同月十一日  法制審議会の公開に関する請願家西悟紹介)(第五九七一号)  同(土肥隆一紹介)(第五九七二号)  同(深田肇紹介)(第五九七三号)  同(松本龍紹介)(第五九七四号)  同(坂上富男紹介)(第六一二六号)  同(木島日出夫紹介)(第六二七六号)  同(肥田美代子紹介)(第六二七七号)  同(知久馬二三子紹介)(第六三六〇号)  同(石毛えい子紹介)(第六四五六号)  同(上田清司紹介)(第六四五七号)  同(畑英次郎紹介)(第六四五八号)  同(濱田健一紹介)(第六四五九号)  同(日野市朗紹介)(第六四六〇号)  同(保坂展人君紹介)(第六四六一号)  法制審議会委員一般国民採用に関する請願家西悟紹介)(第五九七五号)  同(土肥隆一紹介)(第五九七六号)  同(深田肇紹介)(第五九七七号)  同(松本龍紹介)(第五九七八号)  同(坂上富男紹介)(第六一二七号)  同(石井紘基紹介)(第六二七八号)  同(木島日出夫紹介)(第六二七九号)  同(肥田美代子紹介)(第六二八〇号)  同(知久馬二三子紹介)(第六三六一号)  同(石井一紹介)(第六四六二号)  同(石毛えい子紹介)(第六四六三号)  同(畑英次郎紹介)(第六四六四号)  同(濱田健一紹介)(第六四六五号)  同(日野市朗紹介)(第六四六六号)  同(保坂展人君紹介)(第六四六七号)  子供視点からの少年法論議に関する請願北村哲男紹介)(第五九七九号)  同(長内順一紹介)(第六二八一号)  同(上田勇紹介)(第六三六二号)  同(長内順一紹介)(第六四六八号)  同(北村哲男紹介)(第六四六九号)  裁判所の人的・物的充実に関する請願海江田万里紹介)(第五九八〇号)  同(田中慶秋紹介)(第五九八一号)  同(伊藤茂紹介)(第六一二八号)  同(保坂展人君紹介)(第六一二九号)  同(長内順一紹介)(第六二八四号)  同(上田勇紹介)(第六四七二号)  外国人登録法抜本的改正に関する請願坂上富男紹介)(第六一二四号)  同(坂上富男紹介)(第六三六六号)  定期借家権制度を創設する借地借家法改正反対に関する請願保坂展人君紹介)(第六一二五号)  法務局更生保護官署及び入国管理官署増員に関する請願保坂展人君紹介)(第六一三〇号)  同(上田勇紹介)(第六四七三号)  治安維持法犠牲者に対する国家賠償のための法制定に関する請願大森猛紹介)(第六二八二号)  同(鍵田節哉君紹介)(第六二八三号)  同(大畠章宏紹介)(第六三六三号)  同(五島正規紹介)(第六四七〇号)  選択的夫婦別姓導入など民法改正に関する請願安住淳紹介)(第六三六四号)  同(上田勇紹介)(第六三六五号)  裁判所速記官制度を守り、司法充実強化に関する請願保坂展人君紹介)(第六四七一号) は本委員会に付託された。 六月一日  犯罪捜査のための通信傍受に関する法律制定反対に関する陳情書(第二〇三号)  少年法改正反対に関する陳情書(第二〇四号)  同(第二二六号)  組織的犯罪対策法案の慎重な審議に関する陳情書(第二二四号)  組織的犯罪対策法案立法化反対に関する陳情書(第二二五号) 同月十一日  少年法改正反対に関する陳情書外三件(第二三七号)  公文書提出命令規定に関する民事訴訟法改正に関する陳情書(第二三八号)  成年後見制度の実施に関する陳情書(第二五二号)  起訴前勾留制度改革等国際人権規約委員会最終見解に関する陳情書(第二五三号)  京都拘置所生活心得改正に関する陳情書(第二五四号) は本委員会に参考送付された。 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任  参考人出頭要求に関する件  民法の一部を改正する法律案内閣提出第八三号)  任意後見契約に関する法律案内閣提出第八四号)  民法の一部を改正する法律施行に伴う関係法律整備等に関する法律案内閣提出第八五号)  後見登記等に関する法律案内閣提出第八六号)     午前九時三十分開議      ――――◇―――――
  2. 杉浦正健

    杉浦委員長 これより会議を開きます。  理事辞任についてお諮りいたします。  理事佐々木秀典君から、理事辞任の申し出があります。これを許可するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 杉浦正健

    杉浦委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  次に、理事補欠選任についてお諮りいたします。  ただいまの理事辞任に伴う補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 杉浦正健

    杉浦委員長 御異議なしと認めます。  それでは、理事日野市朗君を指名いたします。      ――――◇―――――
  5. 杉浦正健

    杉浦委員長 内閣提出民法の一部を改正する法律案任意後見契約に関する法律案民法の一部を改正する法律施行に伴う関係法律整備等に関する法律案及び後見登記等に関する法律案の各案を一括して議題といたします。  趣旨の説明を聴取いたします。陣内法務大臣。     ―――――――――――――  民法の一部を改正する法律案  任意後見契約に関する法律案  民法の一部を改正する法律施行に伴う関係法律整備等に関する法律案  後見登記等に関する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  6. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 最初に、民法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。  この法律案は、高齢社会への対応及び障害者福祉充実の観点から、痴呆性高齢者知的障害者精神障害者等判断能力の不十分な者の保護を図るため、禁治産及び準禁治産制度後見及び保佐制度に改め、これに加えて補助制度を創設するとともに、聴覚または言語機能障害がある者が手話通訳等により公正証書遺言をすることができるようにするため、遺言の方式を改める等の目的から、民法の一部を改正しようとするものでありまして、その要点は、次のとおりであります。  まず、禁治産及び準禁治産制度改正等につきましては、第一に、禁治産及び準禁治産制度後見及び保佐制度に改め、本人行為のうち日常生活に関する行為成年後見人等取り消し権対象から除外するとともに、新たに保佐人取り消し権及び代理権を付与することとしております。  第二に、軽度の精神上の障害がある者を対象とする補助制度を新設し、本人の申し立てまたは同意を要件として、当事者が申し立てた特定の法律行為について、補助人に同意権・取り消し権または代理権を付与することができることとしております。  第三に、家庭裁判所が適任者を成年後見人等に選任することができるようにするため、配偶者が当然に後見人等となる旨を定める現行の規定を削除し、成年後見人等に複数の者または法人を選任することができるようにするための所要の規定の整備を行うとともに、その選任に当たり家庭裁判所が考慮すべき事情を明記することとしております。  第四に、成年後見人等は、その事務を行うに当たり、本人の意思を尊重し、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならないこととしております。  第五に、成年後見監督人に加えて、保佐監督人及び補助監督人の制度を新設することとしております。  次に、遺言の方式の改正につきましては、現行の公正証書遺言の方式を改め、聴覚または言語機能障害がある者が手話通訳または筆談により公正証書遺言をすることができるようにするとともに、秘密証書遺言、死亡危急者遺言及び船舶遭難者遺言についても、手話通訳によりこれらの方式の遺言をすることができるようにするため、所要の規定の整備を行うこととしております。  続いて、任意後見契約に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。  この法律案は、高齢社会への対応及び障害者福祉充実の観点から、痴呆性高齢者知的障害者精神障害者等判断能力の不十分な者の保護を図るため、任意後見契約の方式、効力等に関し特別の定めをするとともに、任意後見人に対する監督に関し必要な事項を定めることにより、任意後見制度を創設することを目的とするものでありまして、その要点は、次のとおりであります。  第一に、任意後見契約において、本人は、任意後見人に対し、精神上の障害により判断能力が不十分な状況における自己の生活、療養看護または財産の管理に関する事務について代理権を付与することができ、この契約は、家庭裁判所が任意後見監督人を選任したときからその効力が生ずることとしております。また、任意後見契約は、公証人の作成する公正証書によることを要することとしております。  第二に、任意後見契約が登記されている場合において、精神上の障害により本人判断能力が不十分な状況にあるときは、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族または任意後見契約の受任者の請求により、任意後見監督人を選任し、任意後見契約の効力を生じさせることとしております。  第三に、任意後見人は、その事務を行うに当たり、本人の意思を尊重し、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならないこととしております。  第四に、任意後見監督人は、任意後見人の事務を監督し、その事務に関して家庭裁判所に定期的に報告をするとともに、随時、任意後見人の事務について調査すること等を職務とし、家庭裁判所は、任意後見人に不正な行為その他不適任な事由があるときは、任意後見監督人等からの請求により、任意後見人を解任することができることとしております。  第五に、任意後見契約が登記されている場合には、家庭裁判所は、本人の利益のため特に必要があると認めるときに限り、後見開始の審判等をすることができることとしております。  第六に、任意後見人の代理権の消滅は、登記をしなければ、善意の第三者に対抗することができないこととしております。  次に、民法の一部を改正する法律施行に伴う関係法律整備等に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。  この法律案は、民法の一部を改正する法律施行に伴い、公示催告手続及ビ仲裁手続ニ関スル法律ほか百八十の関係法律について規定の整備等を行おうとするものであります。  最後に、後見登記等に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。  この法律案は、民法禁治産及び準禁治産制度後見保佐及び補助制度に改め、新たに任意後見制度を創設することに伴い、禁治産及び準禁治産の宣告を戸籍に記載する公示方法にかわる新たな登記制度を創設し、その登記手続、登記事項の開示方法等を定めるものであります。  以上が、これらの法律案趣旨であります。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
  7. 杉浦正健

    杉浦委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。     ―――――――――――――
  8. 杉浦正健

    杉浦委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  ただいま議題となっております各案審査のため、来る十五日火曜日午前九時三十分から参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 杉浦正健

    杉浦委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――
  10. 杉浦正健

    杉浦委員長 この際、お諮りいたします。  本日、最高裁判所浜野総務局長、白木刑事局長安倍家庭局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  11. 杉浦正健

    杉浦委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――
  12. 杉浦正健

    杉浦委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石毛えい子君。
  13. 石毛えい子

    ○石毛委員 民主党の石毛えい子でございます。よろしくお願いいたします。  それでは、質問をさせていただきます。  ただいま提案理由説明がされました成年後見制度制度設計に際しましては、法案の内容にありますように、障害当事者と後見人等との関係のほかにも、例えば費用補償のあり方ですとか後見人等の養成確保など、そうした内容を含む総合的な権利擁護法として制定する見解もあり得たのかとも思いますが、今回、民法の一部改正として成案がなされましたのはどのような理由か、その点をまずお尋ねいたします。
  14. 細川清

    細川政府委員 お答え申し上げます。  今回の改正におきまして、御指摘のように民法改正の立法形式となった理由でございますが、第一に、成年後見制度改正に関する規定の内容は、判断能力の不十分な人一般を広く適用対象といたしまして、民法全般の通則的な制度である行為能力制度に変更を加えるというものでございます。したがいまして、その適用範囲は一般的であって、規定の内容も一般諸法規の性質を有するということで、民法の一部である性質を有するということでございます。  第二点でございますが、判断能力の不十分な方としては成年者と未成年者があり得るわけですが、この成年後見と未成年後見民法典の中に一括して規定されておるわけでございまして、今回、その改正は、その中の成年者に関する規定のみを整備するものでございますので、未成年者に関する規定については基本的に現行の規定を維持するということになります。  そうしますと、こういうことを考えますと、法制的な体系、立法技術の双方の観点から、成年者の保護に関する規定のみを民法典から外すのは適当ではないんではないか、そういう判断に至ったわけでございます。  なお、我が国の民法の母法の一部とされておりますフランス法においても、同様な考え方がとられて改正がなされたというふうに聞いております。     〔委員長退席、山本(有)委員長代理着席〕
  15. 石毛えい子

    ○石毛委員 経緯については御説明いただいた点で理解いたしました。  私は、後ほども具体的に質問させていただきますけれども、この制度を利用する際の費用補償の問題ですとか、あるいはこれから後見人等になられる方が拡大していくということでございますので、その養成確保という点ですとか、総合的な制度として機能するように、ぜひそういう観点からもこれからの展開をよろしくお願いいたします。  それでは、具体的な少し細かい質問になりますけれども、この法案の中で、後見保佐補助対象になる障害者の方は、それぞれ、「精神上ノ障害ニ因リ事理ヲ弁識スル能力ヲ欠ク常況ニ在ル者」、それから「能力ガ著シク不十分ナル者」、「能力ガ不十分ナル者」というふうに三つに分類されているわけですけれども、具体的に、それぞれの、痴呆をお持ちの高齢者の方やあるいは精神障害者、知的障害者の方々が、この「常況ニ在ル者」ですとか「不十分ナル者」というような適用をされますときに、実際にどのような手続によって、だれがどのような判断基準に基づいて決めていくのかという、細かいことでございますけれども、そこのところをお示しいただきたいと思います。
  16. 細川清

    細川政府委員 まず、申し立ての手続でございますが、これは、御本人がたまたま申し立てに必要な能力を持っている場合には御本人も申し立てられますが、そのほか、配偶者、四親等内の親族あるいは市町村長等が申し立てをすることができるということになっておりまして、その申し立てがありますと、家庭裁判所におきまして、家庭裁判所の調査官等が調査された上で、さらに裁判官が関係者からいろいろ調査をされたりなどして、最終的に、裁判官である家事審判官が審判という形で決定をするということになるわけでございます。
  17. 石毛えい子

    ○石毛委員 枠組み的な手続といいますか、それについては今お示しいただいたと思いますけれども、具体的にこの制度対象になる障害者の方々は、御自分がどのように判断されるのかということについて非常に関心をお寄せになるところだと思いますので、もう少し具体的な姿が見えますように御説明いただければと思います。
  18. 安倍嘉人

    安倍最高裁判所長官代理者 御説明申し上げます。  このような事件につきましては、一般的な取り扱いといたしまして、まず医学的な観点の判断、これがかなめをなすということでございます。そういった観点から、現在の禁治産、準禁治産制度におきましては、鑑定を使って、そういう医学的な観点から御本人の判断力の状況を調査するという点が一点ございます。  さらに、必要に応じまして、その御本人の現実の生活でございますとか、あるいは行動の状況でございますとか、こういった観点についても、これは主として家裁調査官によるものでございますけれども、調査を重ねまして、これらの事情を総合判断した上で、その要件に達しているかどうかの判断をしていく、こういう仕組みになっておるところでございます。  そして、今回の制度におきましては、御本人の意思を確認する必要があるといった要請もございますので、これについては十分な手当てを考えていきたい、このように考えておる次第でございます。
  19. 石毛えい子

    ○石毛委員 この成年後見制度の策定過程の議論では、医学的判断というところに属することかと思いますけれども、例えばIQをはかるというような、そういう客観的なスケールを中心にするのか、あるいはそれぞれの障害をお持ちの方が具体的にどんな支援を必要とするのかという、そういう状態といいますでしょうか、そうしたところから判断していくかというようなことが議論されたとも伺っておりますけれども、その辺については少し御説明いただくことはよろしいでしょうか。
  20. 細川清

    細川政府委員 その点につきましては、この法案のもとになるものをつくった法制審議会でもいろいろ御議論があったところでございますが、基本的には、法律要件となります法律的な判断をする能力があるかどうかということが基準になるわけでございます。例えば保佐でございますと、重要な財産行為自身をみずからできるのか、あるいは他の人から信用を受けなければできないのかということが判断の基準になるわけでございます。
  21. 石毛えい子

    ○石毛委員 それでは、次の質問でございますけれども、法案を拝見しておりますと、本人の同意ということが、例えば補助制度などでは大変重要な意味を持つものとして位置づけられているわけですけれども、後見保佐制度におきましても、先ほど局長御説明いただきました中にもございましたように、例えば審判開始の請求者のうち、配偶者や親族のほかに本人を位置づけてございます。  ここに本人が位置づけられているということは、私は、後見保佐制度においても本人が能力がある者としてとらえられているというふうに理解しているところでございますけれども、そうであるとすれば、この後見保佐制度で、本人以外からの請求がされた場合に、私は、法案の中に本人の同意を義務づけていただきたかったという、そうした考え方を持っております。これは、例えば先ほど来御説明いただいております手続の中で、本人の意向をきちっと聞き、確かめるという、そういう手だてが具体的に保障されているのかどうか、これからのことでございますけれども、その点についてお尋ねしたいと思います。
  22. 細川清

    細川政府委員 審判の申し立てには意思能力が必要であるということになっております。例えば、後見の申し立ての場合ですと、一般的には御本人は申し立ての能力がないのではないかと思われますけれども、こういう方々でもたまたま一時的に能力を回復されている場合があるわけです。そういう場合にまで本人の申し立てを排除するのは適当ではないという趣旨で、一時的にでも申し立ての能力があるときには申し立てを許容すべきであるという考え方でございます。  他方、これを一般的にすべての場合に同意が必要だということにいたしますと、多くの場合には判断能力がないわけですので、そういう要件にいたしますと、制度自体が機能しなくなる、あるいは御本人保護に欠けるところが出てくるのではないかということで、法律上は同意ということを要件としなかったわけでございます。手続上、御本人の意思を可能な限り可能な範囲で反映されるようにするというのは当然であろうかというふうに思っておりますが、その点は、これから最高裁におかれまして具体的に手続等をさらに検討されるものではないかというふうに思っております。
  23. 石毛えい子

    ○石毛委員 非常に微妙なところなのかなというふうに思います。本当に植物状態がずっと長く続いておられる方で、なかなか本人の御意思を確認するというのはできかねるような状態の方もいらっしゃいますでしょうし、後見保佐に該当する方でも、例えば精神障害の方の場合には、そのお人によっては、状況が非常に厳しい状態のときと、それから回復したときというようなことを考えますと、回復されたときというところに着目しますと、ぜひともやはり御本人の意思確認というのはしていただきたいという考え方が当然出てくるのだと思います。その辺で、意思確認をどういうふうに考えていくかということが重要なことなのかなというふうに私は考えるところでございます。  そこで、少し抽象的な質問になりますけれども、この新しい成年後見制度は、ずっと御説明いただいている過程で、絶えず、障害者の方の自己決定の尊重と保護を両立させる、この観点を法案の中に具体化していく、そうした御説明がございました。その自己決定の尊重という点にかかわりまして、少し質問したいわけです。  自己決定できる能力ということをどういうふうにとらえておられるのであろうか。最近、WHOが精神保健ケアに関する法基本十原則、一九九六年に出されましたものですけれども、その中には、自己決定の過程を援助される権利というのが明記されております。それで、幾つかそのための指針があるわけですけれども、例えばこういう指針が挙げられております。患者が援助を必要とするまさにそのときに、この権利、つまり自己決定できるというこの権利があることを告げる、そういう指針がこのWHOの基本十原則の中の一原則として挙げられております。  援助つき自己決定ということかと思いますけれども、この法案全体の中に貫かれております自己決定についての基本的な位置づけの仕方について御説明をいただければと思います。     〔山本(有)委員長代理退席、委員長着席〕
  24. 細川清

    細川政府委員 ただいま御指摘のWHOの原則は、医療に関する援助の同意ということだと思いますので、財産面に関する成年後見制度とは若干色彩を異にする面もあると思います。  いずれにいたしましても、新しい成年後見制度は、ただいま御指摘のとおり、自己決定の尊重と本人保護の調和の観点から、成年後見人等本人判断能力の不十分なところを補いつつ、本人がみずから御判断できることは自分で行うように支援することによって、必要かつ適切な援助を受けながら自分の意思で決定できるようにすることを目的とする制度でございます。  具体的に申し上げますと、例えば、補助制度においては、手続が本人がよくわからないということであれば、本人のために家族等が申し立てという援助を行うことになりますし、最終的に補助による保護を受けるかどうかは本人の意思と判断によるわけでございます。  また、同意権付与の審判を受けた本人補助人の同意を得ずに自己に不利益な契約をした場合には、補助人はその契約を取り消して被害を回復するという援助をすることになりますが、そもそも同意権の付与の審判を受けるかどうかということも御本人の選択にゆだねられているということでございます。また、同意権付与の審判を受けた場合であっても、御本人は、自己の利益を害さない契約について補助人が同意をしないという場合には、家庭裁判所の許可を得て、みずから当該契約をすることができるということになっております。  また、保佐人におきましても、保佐人の同意権、取り消し権による援助を法律で定めておりますが、保佐人への代理権の付与は本人の選択にゆだねることとしておりますし、また、後見においても、成年後見人の広範な代理権取り消し権ということで、援助を与えつつも日常生活に関する行為については御本人みずからの判断にゆだねるということにしているわけでございます。  このように、ただいま御指摘の援助つきの自己決定という考え方は、自己決定の尊重と本人保護の調和という観点から、新しい成年後見制度の随所に具体的にあらわれているというふうに考えております。
  25. 石毛えい子

    ○石毛委員 ただいま援助つき自己決定ということで御説明いただいたわけですけれども、少し抽象的な話になりますけれども、自己決定できる能力と保護というのは、私は、並行する概念ではないのではないか。例えば、一人の人が、一回目に物事を聞いたときにわからなくても、二回目、三回目と説明を受けていくと理解することができる。だから、自己決定というのは、その過程の中で育つといいましょうか、獲得される。ですから、スタティスティックに自己決定できるかできないかということではなくて、自己決定できるように援助する、そこのところが非常に大事なところなのかというふうに考えております。  そういう意味では、例えば、審判の請求をするときに自己決定できるわけですけれども、そのときに、御本人に、そういうことができますというような、あるいは、補助人の請求をするというのはどういうことなのですという、理解を得るような支援、そこが自己決定という行為が具体化できるかできないかという非常に大きなポイントになるところの一つなのだろうというふうに思うわけです。  突然、人がここにいて、それで、さあ自己決定ですよと言われたって、そうそう簡単に自分で決められることではないというのは当然のことだと思います。障害をお持ちの方、丁寧に説明をされれば理解できるということがとても多いというふうに私は考えておりますので、今御説明いただきましたけれども、私は、そこにきちっと説明をするということが援助つき自己決定の中でも大変大事な要素であるということを申し上げさせていただいて、次の質問につなげたいと思います。  法案では、ただいま局長がお触れになりました中にも含まれておりましたが、特定の法律行為に関する保佐人への代理権の付与ですとか補助開始審判請求が本人以外によってされた場合に本人の同意を得るとか、たしか四つ、もう少しあったかと思いますが、六項目ぐらいですか、もっとありますかしら、本人の同意を法案の中に規定をしております。  そこで、本人の同意につきまして、少し具体的に教えていただきたいと思いますけれども、まず、本人の同意を得るというのは、どのような手続によって行うのかということ。それから、これは後見保佐の場合にも共通することかと思いますけれども、本人の同意を得るということは、必ず本人に面接するのかどうかということです。  それから、よく説明することが必要ではないかと先ほど私は申し上げたのですけれども、一度だけの面接で審判内容を決めてしまうのではなくて、場合によっては二度、三度というような、そうした繰り返しの事情聴取といいますか、必要な場合にはそれをするというようなことを義務づけていくのかどうかというようなこと。  それから、細部にわたる質問でございますけれども、本人の同意といいましても、返事に何か窮するといいますか、なかなか回答ができない場合も多々あるというふうに思います。そこで、そうした場合、本人が拒否しなければ同意とみなすのか。同意を得るということの確認の仕方ということで、今いろいろお伺いいたしましたけれども、細かい質問になりますけれども、そこのところを御説明いただければと思います。
  26. 安倍嘉人

    安倍最高裁判所長官代理者 御説明申し上げます。  本人の同意、そしてさらに、委員御指摘のような、補助の場合に限らない、後見保佐の場合の本人の意思確認ということにつきましては、御指摘のように、今回の法案がまさに自己決定を尊重するという考え方に立っているところを踏まえて、十分慎重に対処をしてまいりたいと考えておる次第でございます。  家庭裁判所の運用の一般的なことを申し上げさせていただきますと、本人の同意を得る方法といたしましては、家事審判官による審問でございますとか、あるいは家裁調査官による面接調査、そして、場合によっては同意書等を活用する場面があるわけでございます。  そして、今回問題になっております成年後見制度の関係でございますけれども、このような事案の特性を考えますると、基本的には、家事審判官による審問、あるいは調査官による面接、こういったものが中心になろうかと思うわけでございますが、事案に応じて、先ほど申し上げたようなことを踏まえて、どのような方法をとるかを考えていくことになろうかと考えている次第でございます。  その同意をとる際の具体的な運用でございますけれども、これは、先ほど来委員御指摘のように、本人が自己決定をできるに至るような援助も必要であると御指摘でございまして、おっしゃるとおりだろうと思っております。具体的な面接の中で、この同意をすることの意味がどこにあるのかということを十分御説明をしながら意思確認をしていくことは当然だろうと考えているわけでございますし、また、その一回だけで御本人の意思が確認できない場合には、必要に応じて再度お目にかかるということも考えていかなければいけないだろう、こう考えているところでございます。  なお、最後に御指摘になりました、真意の確認は、拒否をしない限りは同意ありと見るのかどうかという点でございます。具体的事案ではなかなか微妙な問題はあろうかと思いますけれども、しかし、私どもの考えているところでは、拒否をしないから同意とみなすこととはせずに、やはり、御本人の同意の意思を、前向きな意思表示があることを確認するという方向で考えてまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  27. 石毛えい子

    ○石毛委員 ありがとうございます。  今御答弁いただきました内容は、これは具体的には家事審判規則の中に規定されていくことになるのでしょうか、あるいは、もう少し具体的な方法が何らかの形で明示されるということになりますでしょうか。そこのところをお教えください。
  28. 安倍嘉人

    安倍最高裁判所長官代理者 私ども、まだ家事審判規則については検討の過程にあるわけでございまして、その過程での議論を御紹介することはお許しいただきたいと思いますけれども、基本的には、御本人の陳述を伺うということについては、その枠組みについては、何らかの形で規則の上で明記することをしてはどうだろうか、こんな方向で考えております。  ただ、それを超えた部分につきましては、極めて具体的な場面に応じた対応になるものでございますので、規則という形で明記することがなかなか難しい面があろうかと思いますので、これは、運用の中での積み重ね、その周知徹底の方向で考えていきたい、このように考えておる次第でございます。
  29. 石毛えい子

    ○石毛委員 ありがとうございました。  今までの御答弁を伺っておりまして、私はこういうふうに理解いたしました。後見保佐補助制度、ともに、継続的に植物状態におありになるような方は別としまして、ある時点で判断する力のある方につきましては、本人が知らないところで後見制度が適用になるということはないというふうに基本的に理解してよろしいということでございますね。そういうふうに私は今までの御答弁を伺いましたけれども、それでよろしいでしょうか。
  30. 安倍嘉人

    安倍最高裁判所長官代理者 私どもとしても、委員御指摘のとおりのものとして考えているところでございます。
  31. 石毛えい子

    ○石毛委員 それでは、次の質問に移らせていただきます。  実際の運用に関する具体的な質問を続けさせていただきますけれども、後見人、保佐人補助人の選任ということにかかわりまして、法案では、利益相反がないことというふうに規定されております。この規定をされる際の、実際の運用ということに関しまして、まず、どのような手続ですとか基準に基づいて選任されるのかということ。  それから、ちょっと細かい点になってしまいますが、質問を続けさせていただきます。  現在の禁治産制度や準禁治産制度では、実態としてどのような方が後見人に選任されておられるのか。そして、新しい制度が機能し始めますと、後見人等になる方はどういう方が多くなるというふうに制度の運用を予測されておられるのかということ。  それから、後見人等になられる方にその役割や責任等についてどういうふうに御説明をされるのかということ。それから、その役割や責任が的確に遂行されているのかどうかの確認というのはどのようにされるのかということ。  細かい質問が続きますけれども、後見人は、決まった時点での役割についての説明というようなことだけではなく、その後も定期的な研修の実施というようなことをされるお考えはあるのかどうかということ。さらにはまた、これからこの制度が有効に活用されていきますと、多数の後見人の方が必要になってくると思いますけれども、後見人を養成する公的な機関というようなものを設けていくお考えがおありかどうかというようなこと。  大変具体的になりましたけれども、この辺についてお答えいただければと思います。
  32. 細川清

    細川政府委員 まず、今回の改正案におきましては、家庭裁判所は、本人の心身の状態、生活状況及び財産の状況、成年後見人となる者の職業及び経歴、本人との利害関係、本人の意見、その他の事情を総合的に考慮して、適任者を成年後見人等として選任することとされているわけでございます。  現在、裁判所禁治産、準禁治産制度を運用しているわけですが、現在の法律のもとでは、後見人、保佐人には、まず配偶者がいる場合には配偶者が当然その後見人、保佐人になるということは民法の定めているところでございますし、そうでない場合には、本人の親族が選ばれる場合が圧倒的に多数でございます。  今回の改正案では、配偶者が当然に後見人になるという制度を廃止いたしまして、家庭裁判所が個々の事案で最も適任な方を成年後見人に選任することができることとしているわけでございます。改正後も、現実には配偶者の方が最も適任である場合が多いと思われます。  また、配偶者が適任でない場合には、御本人の親とかお子さんとか、そういった親族の中から選ばれる場合が多いのではないかと思われますが、例えば、本人の財産の管理をめぐって親族間に争いがあるような場合には、中立公平な立場にある第三者が後見等の事務を行う必要がありますので、そういう場合には、法律の専門家である弁護士、司法書士等が後見人に選ばれる場合がありましょうし、また本人の心身の状態、生活状況によっては、社会福祉士や福祉の専門家、あるいは社会福祉協議会、福祉関係の公益法人等が成年後見人に選任されることもあるのではないかというふうに思っております。  次に、利害関係の問題でございますが、これは先ほど申しましたように、後見人と本人との利益が相反する場合には後見人に選ぶには適当ではないということになっているわけですが、例えば、本人が入所している施設を経営する法人は本人に対して入所の費用を請求する立場にあるわけです。したがいまして、当該の法人が入所契約の点に関して後見人になるということについては、これは適当じゃない、そうすべきではないということでございます。  しかし、本人が入所の施設の経営法人であるからという理由だけで、常にすべての事項について成年後見人から排除されるというものではないわけでして、例えば、金銭管理に関係ないこと、無償のヘルパーの派遣契約というようなことになりましたらば、場合によっては、他に適任者がいなければ選ばれる場合もあるであろうということでございます。  それから、後見人の研修でございます。これにつきましては、現在、弁護士会、司法書士会等の法律家の団体あるいは社会福祉協議会等の社会福祉関係の法人におかれまして、成年後見に備えてさまざまな準備をされておられるというふうに聞いております。したがいまして、私どもといたしましては、こういった方々に対するいろいろな資料の送付等、あるいはいろいろな御協議に応じるというようなことで、そういった団体の後見人候補者の養成について協力をしてまいりたいというふうに思っているわけでございます。  あと、具体的な選任の方法につきましては、家庭裁判所の手続でございますので、最高裁からお答えいただきたいと思います。
  33. 安倍嘉人

    安倍最高裁判所長官代理者 家裁の実務の実情という観点から、多少御説明させていただきたいと思います。  お尋ねの、実情は現在どういう人が後見人になっているのかという点でございますけれども、これは詳しい統計が手元にないわけでございますが、平成八年にある調査をした結果を踏まえて見ますと、今法務省から説明があった法定後見人がなっているケースが一七%で、残りの八三%は選定後見人からなっているという実情がございます。そして、その選定後見人にどういう方がなっているかということでございますけれども、親がなっているケースが一五%、子供が二五%、兄弟姉妹が三二%、弁護士さんの場合は三%、あとはその他二五%、大体こういう分布状況にあるというのが実情のようでございます。  具体的な後見人の選任の方法でございますけれども、通常家裁に申し立てがされる場合には、多くのケースは後見人の候補者を挙げてこられるケースがございます。候補者を挙げてくる場合には、その候補者を一つのポイントに考えていくわけでございますが、ただ、事案によっては、利害関係がふくそうしている場合には、他の候補者を他の親族が出してくるというケースもございまして、そのような場合に、候補者間どちらが適任かということを考えていかなきゃいけないという問題がございますし、候補者が挙がってこない場合には、家庭裁判所が身分関係あるいはその他の支援機関等を考えて選任を考えていく、こういうことになろうかと考えております。  具体的な基準は、法律に規定されている基準をまさに個々具体的な事案を見ながら考えていくしかないということでございまして、今明確にこれを基本線にするということを申し上げることは適当じゃないように考えているわけでございます。具体的には、家裁調査官がその候補者たる方にお目にかかるなどして、その候補者の実情でございますとか、被後見人になろうとしている御本人との利害関係でございますとか、御本人の意思でございますとか、そして根本的な点では、御本人の生活状況、財産状況等を調査して適任者を考えていく、こういったことになろうかと考えております。  さらに、後見人になる人に対してどういう説明をするのかという点でございますけれども、これは現在でも行われていることでございますけれども、やはり御本人に対しての後見人の役割の重要性、特に財産管理面の重要性、また財産管理を的確に行っていく上でのポイント、注意事項でございますとか、あるいは何らかの問題が生じた場合に、家裁とどういう連絡をとって対処していくかということについての具体的な御説明をさせていただいておりますし、裁判所によっては説明書をつくりまして、これをお渡ししてその点の御理解を深めるための方法にしているところもあるように承知しているところでございます。今後も、この制度が具体化された場合には、その面については特段の工夫をしていきたい、このように考えているところでございます。  それから、後見事務が適正に行われているかどうかをどう確認するのかということでございますけれども、これは現在の運用でも同じ問題があるわけでございますが、現在の後見事務につきましては、事案によっていろいろな確認の方法があるわけでございます。定期的に後見人から報告をもらう方法、あるいは最初の段階から後見人に対して家裁が相当指導的な立場で関与していく方法等があるわけでございますが、基本的には、財産についての目録とか、その処理状況の帳簿を出してもらう、そして後見状況についての説明を口頭で伺う、こういったことを中心にして実情把握をしているということになろうかと考えております。  また、研修の実施という観点でございますけれども、家庭裁判所の立場から申しますと、個々の事件における後見人の仕事ぶりを家庭裁判所として逐次フォローしていきながら、その中で必要な指導を申し上げる、こういった形で後見事務の適正な運営を担保していきたい、このように考えている次第でございます。  なお、最後に御指摘のございました、多数の後見人を確保する観点からどういうことを考えているかということでございますけれども、委員御指摘のとおり、この制度改正によって、親族のみならず、社会がいわば後見人の給源として期待されている、こういった面があるわけでございまして、その意味では、地域社会の関係諸機関の御協力なしではできないことだろうと思っております。家裁といたしましては、こういった社会に対しての働きかけを行っていきたいと考えている次第でございます。  以上でございます。
  34. 石毛えい子

    ○石毛委員 たくさんの御説明ありがとうございました。  私は、御説明を伺っておりましても、やはり利益相反の確認というのは非常に難しいことなのかなという思いがいたしました。私は、障害者関係の方との出会いの中で、しばしば遺産相続をめぐって御兄弟が障害者の方の相続権を妨げるというようなことをたくさん聞くチャンスがありますし、それから、施設に入所の方の、例えば障害基礎年金というようなものが、行動半径が狭ければ、生活圏域が狭ければ、基礎年金を使うこともできずにたまっていって、その手帳の管理を施設側がしていてというようなことで、具体的に利益相反が起こるというようなことを間々聞くことがあります。  今、局長の御答弁の中で、例えば入所している施設が法人施設の場合に、財産管理についてはなさらないというようなお話がございましたけれども、例えば、財産管理以外で、施設に入所している方が入院されるようなときはどういうふうに判断されるのかしら。もしかしたら、施設にいていただかない方がいろいろな意味でいいかもしれない方に入院を勧めるというようなことも起こり得るのではないか。そういうようなときに、生活面まで含めて施設が法定後見人になっていた場合に、利益相反が起こることもあるだろうというふうに思います。  それから、家庭裁判所の細かい規定を伺っておりましても、実際に後見人になる方の候補者というのは親族を言ってこられることが多いということになりますと、親族が利益相反しないというのはどこまで詰めていけるのだろうか。それから、親族よりも、社会的な後見人、例えば社会福祉士会の方ですとかいろいろな方がいらっしゃると思いますけれども、そういう方の方がいいんじゃないかという判断もあるんだと思いますけれども、具体的にどんなふうに御本人の確認をいただきながら詰めていくかというのは大変困難な作業のように思いますが、もう少しこの点で御説明いただくことは可能でしょうか。
  35. 細川清

    細川政府委員 御指摘のように、利益相反という概念は非常に広い概念でございますし、場合によって適用がいろいろあるわけでございます。例えば、夫婦とか兄弟姉妹という親族関係の方々は、通常は、これは家族間の愛情に基づいて本人のための利益を図ろうということでございますので、利益相反ということは考えられないわけですが、そこに遺産の相続ということが絡んできますと、まさに重大な利益の相反ということになるわけでございます。  それから、施設について御質問でございましたが、施設についても、例えば、御指摘のように、施設から出すために入院契約をするということがあるとすれば、それは重大な利益相反ということになるわけでございます。ですから、これは選任のときに、御本人の状況をよくよく裁判所で勘案されて、利益相反にならないような方を、裁判所の能力と英知を活用して選任していただくことがぜひとも必要であるというふうに思っておりますし、場合によっては、複数の後見人を選任して利益相反にならないように分担するということも考えられるわけでございます。  今回の改正では、そういうことができますように、法人が後見人になられる、あるいは複数の方が後見人になられる、それから、当然に配偶者が後見人になるという法定後見制度を改めて、裁判所が最も適当と認める方を後見人に選任するようにという配慮がされているつもりでございまして、この点については、家庭裁判所による適切な運用ということを私どもとしても期待いたしたいと思っているところでございます。
  36. 石毛えい子

    ○石毛委員 安倍局長さんの方から何か御説明いただけることがございましたら、お願いいたします。
  37. 安倍嘉人

    安倍最高裁判所長官代理者 具体的な事案を前にした場合、なかなか難しい判断を迫られるだろうということは、委員御指摘のとおりだろうと思っております。施設の場合もありますし、より日常的には、親族間の利害の対立という場面が少なからず見られるところでございますので、この点については、関係者、相当広い範囲で調査をすることも必要になってくる場合があろうかと思います。  その中でどういう人を選任していくのか。最善の選択をしていくということになろうかと思いますけれども、その点については、家庭裁判所としても、利益相反の問題が起きないように十分配慮していきたいと考えている次第でございます。
  38. 石毛えい子

    ○石毛委員 利益相反の問題が起きないように後見人を選定する、そのことは、わかりやすい具体的な事柄として当然に御本人、被補助人になられる方、被保佐人になられる方にも説明をされて、そして後見人を決定していくということになるわけでございますね。
  39. 安倍嘉人

    安倍最高裁判所長官代理者 後見人の選任につきましても、できるだけ御本人に意思を確認した上で、その御本人の意思に沿う形を踏まえて、さらに適正な選任をするという観点で運用されていくものと承知しておるところでございます。
  40. 石毛えい子

    ○石毛委員 利益相反になるかならないかという、後見内容にかかわる、そのことが具体的に被補助人等になられる方にきちっと理解されることが大変重要なことなんだというふうに思います。  あなたの補助人はこの方ですよというようなことで、あとは利益相反がないという抽象的な論では、とてもこの制度はきちっとした権利保障にはならないんだと思いますので、あくまでも当事者の、障害をお持ちの方が理解し得る最善の説明をしていただくということが大変重要なポイントになるのではないかと、今伺っていて思いました。  それから、この後見人の選任にかかわりまして、今細川民事局長さんからは施設の法人について触れられましたけれども、これから在宅で暮らす方が大変ふえていくと思います。在宅で暮らす障害者の方につきまして、法人後見というのはどういう場合が考えられますでしょうか。少し御紹介いただければと思います。
  41. 細川清

    細川政府委員 現在、いろいろな団体が事実上の支援活動をされておられるわけですが、そういう中で、例えば財産的な面について弁護士さんに頼むとか、あるいはいろいろな公益法人に頼むということをされておられます。ですから、そういう面につきましては、施設に入っておられない方でも団体にお願いするということはあるんではないかと思っております。  私が今聞いておりますところでは、例えば司法書士会は、そういった財産の管理を支援するために新しく法人を設立して、そういった財産管理についての後見の事務ができるように現在準備しているというように聞いておりますので、そういうことが一つの例として挙げられるんではないかと思います。
  42. 石毛えい子

    ○石毛委員 次の質問でございますけれども、この後見制度は、例えば後見事務に要する費用は本人が負担するということになっております。多くの障害者の方から伺います声では、この制度を活用しようと思っても、費用を負担する能力が乏しい場合には実際には役に立たないというような声もあるわけでございますけれども、国が費用補助をしていくというようなお考えは、これから先具体的にはどのようでございますか。
  43. 細川清

    細川政府委員 費用の点でございますが、まず、審判の申し立てに要する費用でございますが、これにつきましては、資力の要件等の所定の要件を満たしている場合には法律扶助の対象となるわけでございます。  それから次に、後見事務に要する費用とか報酬の問題でございます。よい後見人等を得るためにはそれなりの報酬を払う必要があるということでございましょうし、また、その後見は、基本的には御本人の財産等の利益を守るために行われるものですから、民法の原則としては、本人がその財産の中から支弁すべきものとしているわけでございます。  しかし、他方、社会福祉分野においては、低所得者も含めて、日常生活に必要な援助を行うための利用者の支援の取り組みについて、成年後見制度との連携、補完を視野に入れながら検討が進められていく必要があると考えておりまして、今般厚生省で御検討中の社会福祉基礎構造改革において、判断能力の不十分な方に対する無料または低額の料金による福祉サービスの利用援助等を行う社会福祉事業の創設と、そのための全国的な体制の整備を進めることとされておりますので、その厚生省での検討に大変期待いたしたいと思っているところでございます。
  44. 石毛えい子

    ○石毛委員 ぜひとも、厚生省ともよく協議をされて、心配のない費用の負担ができるようになればと要望いたします。  次の質問でございますけれども、後見事務の規定のうち、しばしば財産管理に関して注目がいくわけでございますけれども、法案の第八百五十八条では、成年被後見人の生活ですとか療養看護に関する規定も含まれております。具体的に、生活ですとか療養看護といいますのはどのような内容を指すのかということをお示しいただきたいと思います。
  45. 細川清

    細川政府委員 新しい八百五十八条では、御指摘のような定めがあるわけでございまして、そこに定めております生活または療養看護と申しますのは、身上監護に関する法律行為を指すわけでして、具体的には、介護契約、施設入所契約、リハビリに関する契約、病院入院契約等を意味するわけでございます。  したがいまして、成年後見人は、介護契約の相手方が給付する介護サービスの質、内容が、本人保護にとって適切なものであるかどうか等を判断して介護契約をするということになるわけでございます。
  46. 石毛えい子

    ○石毛委員 御答弁いただきました内容の中には、契約の後、例えば施設に入所されまして、その後の施設の中での生活状況の点検、評価というような継続した具体的な行為は含まれるのでしょうか。よく、御説明を伺いますと、おむつをかえるような具体的なケアは含まない、入所契約や入院契約、その契約というふうに御説明を伺うのです。そこも質の判断を含めてとても重要ですけれども、入所した施設の中で安心して安全な生活ができているか、入院している医療機関の中で安心できる医療を受領できているかという、そこのところも非常に重要なポイントになると思います。継続するサービスの質の点検というところはいかがでございますでしょうか。
  47. 細川清

    細川政府委員 先ほど御指摘の新しい第八百五十八条では、「成年被後見人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない。」ということになっているわけでございまして、一たん介護契約をすればそれで事足れりというわけではございませんでして、その介護契約が適切に実施されているかどうかということを見守っていくということも、当然、後見人の職務でございます。それが適切でなければ、その契約を解除して、新しい適切な介護契約を結び直すということも、当然、成年後見人の職務の範囲ということになるわけでございます。
  48. 石毛えい子

    ○石毛委員 ありがとうございました。  この法案は往々にして財産管理のところが非常に注目されておりまして、ケアの部分というのはなかなか具体的なイメージがわいてこなかったというようなことがあったと思いますけれども、今の御説明、大変ありがたかったと思います。  最後に、大臣に御所見をお伺いしたいと思います。  私は、きょうずっと質問をさせていただいておりまして、この法律の非常に大切なポイントは、障害を持つ当事者の方がこの制度をよく理解されて活用していかれ、そして安心できる生活を営んでいくことができるようにという、そこがとても大事なポイントだというふうにずっとお伺いしておりました。  そこで、ぜひ御所見をと思いますのは、今世界的にセルフアドボカシーという、権利は自分たちで守っていくというような動き、流れができてきておりまして、障害者の方みずからがNPO活動として権利擁護機関をつくるというようなことが広がってきております。障害当事者の方たちが、相談に乗り合うとか、こういう権利があるとか、このことはこういうふうに考えたらいいとかいうことをお互いに情報交換し合うということは、力を発揮していく上で非常に大事な社会的な要素だというふうに私は思っているところでございます。  この成年後見制度がこれから社会的に機能していく場合に、その一翼として、障害者の方々の民間活動として、権利の相談、あるいは権利を学ぶ、みずから権利を擁護する活動、こうした取り組みが広がっていくことがとても大事じゃないかと私は考えているところでございます。成年後見制度のインフラ整備という意味もあるかと思います。こうしたことに対しまして、大臣は、どのようにお考えになられますでしょうか。
  49. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 ずっと委員のお考え方を伺ってまいりまして、私もまさにそのとおりだと思っております。  今回の成年後見制度についての改正というのは、自己決定の尊重、それから、ノーマライゼーション等の新しい理念と従来の本人保護の理念との調和をどう図るかということでございまして、障害者の方々の意思を十分に尊重した支援の仕組みを制度化していく必要があるということだと思います。したがって、本人の自己決定に基づく主体的、積極的な制度の活用が大変期待されるところだというふうに考えておるわけでございます。  法務省といたしましては、利用者に対する助言、情報提供等を行う相談、広報等の充実、あるいは成年後見人等制度の担い手の確保等につきまして、各種の福祉関係機関・団体、地方自治体、弁護士会、司法書士会等を初めとする関係方面との緊密な連絡、協力を図りながら、障害者による成年後見制度の主体的、積極的利用が促進されるように取り組んでまいりたいと考えております。
  50. 石毛えい子

    ○石毛委員 ぜひとも、障害者の方たち自身の権利擁護にかかわる活動に新しい御支援の仕組みをお考えいただきたいと思います。  質問を終わります。どうもありがとうございました。
  51. 杉浦正健

    杉浦委員長 次に、坂上富男君。
  52. 坂上富男

    坂上委員 坂上でございます。  民法の一部を改正する法律案、私はこれは大賛成でございます。できるならばもっと早く審議すべきであると理事会等で主張してきたのでございますが、きょうようよう審議に入るわけでございます。  この法律は、この国会で成立をさせたいと思っておるのでございますが、会期の十七日までには成立はいたしません。そうだといたしますと、これはまた大変残念なことでもあるわけでございます。ましてや、参議院があるわけでございまして、本当に私たちは渇望して待っておった法案でなかろうかと思っておるわけでございますので、私たちはこの成立を一日も早く実現しなければならないと思っておるわけでございます。  今お話がありましたとおり、この法律案は、高齢社会への対応と障害者福祉充実の観点から、判断能力の不十分な方々の保護の目的を持っておるわけでございます。また、手話通訳等による公正証書遺言、これも新しい創設でございまして、まさに我が日本の民法におきましては画期的なことを今なし遂げようといたしておるんじゃなかろうか、こう思っておるわけであります。  しかしまた、一面、私は、介護保険と成年後見法は車の両輪じゃなかろうか、こう思っておるわけであります。これがまさに、これからの日本の高齢者社会の福祉対応に対しまして大事な役割を演ずるんだろうと私は思います。  今、石毛委員のお話も聞いておりまして、なるほどなと思ったのでございますが、いわゆる介護保険も、保険あって介護なしと言われております。そして、四月前に選挙をしないと与党の方が不利だとか言われております。あるいは、これの実施を延ばそうとか、こういうようなことも言われておるわけであります。確かに、これを充実させるには、なかなか介護保険も容易でないと私は思っておるわけであります。  同じく、この成年後見法もまさにそうなんじゃなかろうか。資力のある人だけは利用できるけれども、資力のない人がどうも利用が遠慮がちになっちゃって、実質的な効果が生まれないんじゃなかろうか。せっかく仏つくって魂入れずというような実態になるんじゃなかろうか。私は、これを勉強しながらそんなようなことを考えておるわけでございまして、そういう観点に立ちながらこの問題は論議されなければならない問題だろうと思っておるわけでございます。  そんな観点からひとつ質問をさせていただきますし、この法案は、我が党にとりましては賛成でございまして、一日も早い成立を期待いたしておるわけであります。しかしまた、新しい条文でございまするから、有権的解釈は的確になされておらなければならぬと思うわけでございますものですから、できるだけ慎重な審議も必要になってくるんだろう、こんなように私たちは思っておるわけでございます。  そこで、まず第一に、本案が後見保佐補助の三類型をとっておりますが、ヨーロッパの立法の動向を見てみますると、ドイツの一九九〇年のいわゆる世話法が現在の到達点でなかろうかと言われておりますが、この世話法は、一つの後見制度という枠組みの中で、本人が必要とする範囲で援助の範囲を決めるという一元的構成をとっておるようでございます。  そこで、本改正案が、今申しましたような一元的構成を採用しなかったのはなぜなんだろうかということ。それから二番目に、将来的に一元的な構成を採用する考えはないんでございましょうか。そして、これに対する見直しについてはどのように立法者側ではお考えになっておるのか、簡単で結構でございますが、御答弁いただきます。
  53. 細川清

    細川政府委員 お尋ねの成年後見制度制度的枠組みでございますが、これには、大別いたしまして、フランスのような多元的制度をとっている上で各類型の内容を弾力化する枠組みと、ただいま坂上先生御指摘のドイツの世話人法のように、法定の類型を設けずに、個別具体的な措置の内容を全面的に裁判所の裁量的判断にゆだねるという一元的仕組みと、二つあるわけでございます。これについては、法制審議会でも相当議論されましたが、最終的には、一元的ではなくて、多元的制度をとりつつ、各人の個別的な状況に即した柔軟かつ弾力的な措置の設定を保障するという一元的制度趣旨も取り入れるということがよろしいのではないかということになったわけです。  理由は三点ほどございまして、まず、先ほど来指摘がございますように、精神上の障害のある方の財産をめぐる親族間の紛争というのがございまして、これがふえているという実情にあります。そこで、重度の精神上の障害を有する方については、やはり本人保護の観点から、一定の範囲の代理権取り消し権等による保護をあらかじめ法律で定めておくことが必要であるということでございまして、そういった方について、申立人の請求に応じて特定の法律行為のみについて代理権を付与するということでは、本人保護としては十分でない場合があるだろうということでございます。  それから、仮に一元的な制度をとりましても、裁判所の実務的な運用面ではある程度の類型化が当然必要になってまいりますので、多元的制度をとった場合と実際の運用においては大差はないんではないかということでございます。  それから、多元的制度のもとで幾つかの法定の類型と基準が示されている方が制度の利用者としても予測可能性があって利用しやすいし、自己決定が容易であり実務的にも運用しやすいんではないか、そういうような観点から、現在の多元的制度にされたわけでございます。  以上のとおりでございまして、本人保護の観点から、本人判断能力の程度に応じて保護措置の内容を法定する多元的制度をとりつつも、弾力的な措置の選択を保障して一元的制度の長所を生かしていくということが妥当であろうということでございます。  次に、制度の見直しについてお尋ねでございますが、今回の改正は、実体法、手続法の全般にわたる抜本的な改正を内容とするものでございまして、新制度の運用が実務として定着し、その状況を客観的に分析し判断できるまでには相当の期間を要するんではないかと思われます。しかしながら、人間がつくる制度でございますから、将来にわたって常に正しいというわけではありませんので、私どもといたしましても、今後、そういった運用の状況を注視していく必要があるというふうに考えているわけでございます。
  54. 坂上富男

    坂上委員 以下の質問は結論だけで結構でございます。  まず、利用者についてでございますが、本改正案は、制度の利用者として、判断能力が十分でない人のみを対象としております。身体に障害を持つ人を対象としておりません。身体的な障害を持つ人も、契約を行うのに支障があり、かつ自分自身で代理人を選任し監督することが困難な場合も考えられるんじゃなかろうかと思いますが、身体障害者にも後見制度の利用の道を開くという考えはございますか。
  55. 細川清

    細川政府委員 御指摘の点は、昨年四月に要綱試案を発表したときに問題点として載せまして、意見照会を行いました。その結果、実は、身体障害者の関係団体の大多数の方が消極の意見であったわけでございます。それから、昭和五十四年の民法改正前は、古い言葉でございますが、準禁治産者の対象として、聾者、唖者、盲者というものが対象となっていたんですが、それを身体障害者の団体の皆様方からの強い要望があって削除したという経緯がございます。こういった理由から、身体障害者のそのことのみを理由として後見制度対象にするのは適当ではないという判断に至ったものでございます。
  56. 坂上富男

    坂上委員 それから、補助についてですが、補助の利用者、対象者は、精神上の障害によりて事理を弁識する能力が不十分な者とされている一方、明文で後見保佐対象者を除外しております。  そこでまず第一でございますが、補助は、本人の意思に基づいて本人が選択する範囲で援助の範囲を決める制度であります。本人の意思を尊重して、柔軟な制度でもあります。また、後見のように全面的な代理権を認めると後見人の権限濫用の温床ともなりますので、補助は大変望ましい制度とも私は考えております。殊さら後見保佐対象者を除外する必要はないと思われるのでございますが、これはなぜ除外をしているんでございましょうか。  それから第二問でございますが、最高裁または法務省でも結構ですが、保佐後見対象者を必ず除外しなければならないとしますと、補助開始の審判の申し立てがなされた場合、高額の費用を払って保佐後見対象者でないという鑑定をしなければならないのではないかという心配がないわけではないと思います。このような厳格な扱いにせず、補助の必要があれば補助を開始するという柔軟な運用が期待をされているんじゃなかろうかと思いますが、この点についてはいかがでございますか。簡単で結構です。
  57. 細川清

    細川政府委員 我が国の現状では、精神上の障害のある方の財産をめぐる親族間の紛争を背景とする禁治産、準禁治産の申し立てが急増している実情にございまして、重度の精神上の障害を有する方については、本人保護の観点から、一定の範囲の代理権取り消し権による保護をあらかじめ法律で定めておくことが必要であるというふうに考えられたわけでございます。そういう方に対して一定の範囲の代理権だけを与える補助ということでは、ちょっと本人保護のために不十分であるということを判断されたわけでございます。  次に、鑑定の問題でございます。これについては後ほど詳細に最高裁から御答弁があると思いますが、要するに、補助の申し立てがあった場合に、その過程で保佐後見でなければこの方たちの保護を図れないという事情がわかってくれば、そういう疑いが出てくれば、そこで鑑定等が必要があればするということになるんではなかろうかと思っております。
  58. 安倍嘉人

    安倍最高裁判所長官代理者 御説明申し上げます。  補助の申し立てがあった場合の扱いでございますけれども、この補助については、本人の申し立てあるいは同意を要件とするということで制度設計されている関係もございまして、また、関係各界の御意見の中には、補助については鑑定を要するものとしない方がよい、こういう御意見もあるところでございます。  現在、私どもといたしましては、この運用についてどうするか検討している段階にございますけれども、補助の件については、後見類型、保佐類型に当たらないという点も含めて、診断で処理することは差し支えないものとする、こういう扱いができないものだろうかという観点で検討を進めている段階にございます。
  59. 坂上富男

    坂上委員 それから、今度は、日常生活に関する行為の範囲についてでございますが、日用品の購入その他の日常生活に関する行為取り消し権対象から除外されております。取り消し権を認めると、かえって取引を拒絶される場合もあるので、本人がみずから取引をすることを可能とするこの規定は、本人の社会参加、自律に資するものとして、これは評価していいのでなかろうかと思っておるわけでございます。  そこで、まず第一の質問は、日用品の購入その他の日常生活に関する行為というのは、必ずしもその概念は明確でありません。具体的にはどのような行為をいうのか、明らかにしてほしいと思います。特に、被補助者、被保佐人のように比較的判断能力が高い人には年金程度は自由処分を認めるのが相当と思われますが、日常生活に関する行為について、そのように自由処分を可能とする解釈はこれで可能なんでございましょうか。
  60. 細川清

    細川政府委員 日常生活に関する行為については、基本的には民法七百六十一条の日常の家事に関する法律行為の解釈が参考になると思いまして、本人が生活を営む上において通常必要な法律行為を指すものと解されます。  具体的には、各人の職業、資産、収入、生活の状況や当該行為の個別的な目的等の事情等のほか、法律行為の種類、性質等の客観的事情も総合して判断することになりますが、典型的な例といたしまして、明文で例示として挙げました日用品、食料品、衣料品等の購入のほか、電気、ガス代、水道料等の支払い、それらの経費の支払いに必要な範囲の預金の引き出し等が挙げられると思います。  御指摘の年金の問題でございますが、自己決定の尊重の観点から、本人の資産の状況に大きな変動が生じない限り、年金等の管理、処分を本人日常生活に関する行為と認めることができる場合があり得るものではないかと考えております。
  61. 坂上富男

    坂上委員 それから、今度は、身上配慮義務でございます。  成年後見等の義務として、本人の心身の状況及び生活状況を配慮する義務でございます。 八百七十六条の十第一項が想定しておるのは、本人の身上、生活の平穏、安定に資するもの、こういうものでございまして、評価していいのでなかろうかと思うのであります。  そこで、まず第一問でございますが、これらの規定によって、成年後見人等は具体的にどのような義務を負うのか、少しお話しをいただきたいと思います。  二番目に、福祉の面からは、要保護者に対する、いわゆる見守りが重要であると言われておりますが、このような見守りがこの義務の中に含まれるのでありましょうか、どうでしょうか。  それから、三番目の一でございますが、医療行為に対する同意がこの義務の中に含まれるかどうか。含まれるとした場合は、本人、いわゆる成年被後見人等に対して不当な医療行為等が行われることを防止するために、この法律の中にどのような手当てがなされておるのか、お話しをいただきたいと思います。  そして三番目でございますが、厚生省にお聞きをいたしますが、将来的に、医療同意法というような、一般的な同意に関する法律整備の考え方は今お持ちになっておるのかどうか、これもお答えをいただきたいと思います。
  62. 細川清

    細川政府委員 御質問の第一点目の、成年後見人等は具体的にどのような義務を負うのかという点でございます。  この義務には、例えば、介護契約の締結等のように身上監護に関する法律行為や、居住用不動産の管理、処分等のような財産管理に関する法律行為を遂行するに当たって、金銭面の得失だけを考慮しないで、本人の健康状態や生活環境等を配慮して、本人保護により資するような事務処理を行う、そういう義務が含まれているわけでございます。  二番目の見守りの点でございますが、これは、本人の状況を随時確認して、状況の変化に応じて介護契約等の内容を見直すということだと思いますが、この成年後見人の権限の対象に、当然介護契約が含まれておりますので、そういった場合には、見守りもこれは身上配慮義務の中に含まれ得るというふうに考えております。  それから、手術に関する同意でございます。これは、財産上等のいわゆる民法上の契約に関するものではございませんので、これは、法定後見人等の身上配慮義務の中には含まれないというふうに考えております。この問題は、医療の一般の問題として、一般的な法理にゆだねられるべきであろうというふうに考えられておるところでございます。  以上でございます。
  63. 小林秀資

    小林(秀)政府委員 今、先生、医療のことについておただしでございますが、医療は、医師など医療従事者が、患者の状況、立場を十分尊重しながら、信頼関係に基づきまして提供されることを基本として、医療従事者が、個々の医療内容等について、医療を受ける者に対して適切な説明を行い、理解を得ながら行われることが重要であるというふうに認識をいたしております。  こうしたことから、平成九年の医療法改正におきまして、医療従事者が「適切な説明を行い、医療を受ける者の理解を得るよう努めなければならない。」という努力義務規定を設けたところでございます。  この被後見人等の治療行為に関しましては、今、先生が御発言されましたように、将来的な問題としてとおっしゃられたのでありますが、そういう考え方もあろうかとは存じますけれども、当面は、社会通念があることと、それから緊急性がある場合には緊急避難等の法理にゆだねられることが相当としているということが一般的に理解をされているところである、このように思っておりまして、こうした医療法の規定の趣旨も踏まえ適切に対応されることでいいのではないか、このように今のところは思っておるところでございます。
  64. 坂上富男

    坂上委員 この段階でちょっと聞いておきますが、補助制度というのは新しい非常にいい制度だと思っていますが、この適用、被補助人になった場合、これは国会議員になるとか、あるいは地方議員になるとか、こういうのは欠格条項になるんでございますか、どうですか。
  65. 細川清

    細川政府委員 これは公職選挙法の問題ですが、現行法上は、禁治産宣告を受けた方は公職選挙法上の被選挙資格がないということになっているのですが、準禁治産者はそれに入っておりません。  したがいまして、補助につきましても当然にそういう欠格条項にならないわけでございまして、さらに申し上げますと、今回の改正補助が新設されましたが、これが欠格条項とされる法律は一つもございません。
  66. 坂上富男

    坂上委員 補助を受けた方々でも国会に出て活動されることはあり得ると思いますし、これが欠格条項になっても私は大変影響が大きいと思いますので、今の答弁を了といたしたいと思っておるところでございます。  それから、さっきも、この問題は非常に重要な問題でございますが、費用の負担についてでございます。  財産の乏しい人も成年後見制度を利用できるようにすべきでありますが、例えば、費用や報酬を賄えぬ人のためにこれらの費用を国庫で負担する考えがなければ、私はこれは充実できないと思っておるわけであります。それから、不動産は持っているけれども現金がないという人のためには、費用の立てかえを国庫でやらなければならないのじゃなかろうか、こう思っておるわけでございます。これは大蔵省とのこれからの大事な問題なのでございますが、これを本当に、私たち、魂のあるものにするには、こういうようなことが全くよく実現できなければならぬと思っているのでございますが、これはひとつ大臣、まず一般的で結構ですから、何か御答弁いただけますか。
  67. 細川清

    細川政府委員 成年後見制度は、御本人の利益を守るために御本人の財産等を管理するということでございますので、民法上は、成年後見人等後見事務に関する費用、報酬というものは御本人が負担、支弁するというふうにならざるを得ないわけでございます。  ただ、手続の費用につきましては、要件がある場合には法律扶助の対象となりますし、また、それ以外のものにつきましては、これは社会福祉との連携が非常に大切でございまして、現在、厚生省におかれまして社会福祉基礎構造改革ということで取り組んでおられます。その中で、低廉で良質なサービスということを御検討されておりますので、それについて、私どもは検討を期待いたしたいということでございます。
  68. 坂上富男

    坂上委員 大臣、今ので御所感ありますか。
  69. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 今御答弁申し上げたとおりでございますが、委員のおっしゃるような問題意識は私も持っております。
  70. 坂上富男

    坂上委員 ぜひ、これは本当に形骸化するおそれがありますので、皆さん方からも、またそれこそ大蔵省とのかかわりも出てくるのだろうと思いますし、我々も努力しなければならぬなということを審議しながら痛感をしているわけでございますので、関係者の一層の努力を期待いたしたい、こう思っておるわけでございます。  それから、申し立て権者と職権による開始でございますが、後見の開始等の審判の申し立て権者として検察官があり、精神保健福祉法等で市町村長に申し立て権を認めている改正案でもありますが、これらのものに民生、児童、病院等が通報しても申し立てをしてくれないことがよくあります。そこで、直接家庭裁判所に通報して、裁判所の職権で開始する制度が必要なのじゃなかろうかと思っておりますが、この点はどうでございますか。
  71. 細川清

    細川政府委員 御指摘のとおり、職権で開始するという制度とはいたしていないわけでございます。  これは、やはり私的自治の尊重の観点から、本人行為能力等に一定の制限を加えることとなる手続を中立的な判断機関である裁判所が職権で開始することには問題がある、あるいは、司法機関としての性質上、積極的な情報の探知がその事務になじまないということでございます。  したがいまして、今回の改正では、老人福祉法、知的障害者福祉法、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律改正して、市町村長に後見開始の審判等の申し立て権を付与することといたしたわけでございます。これは、現に市町村が各種の福祉サービスを行っておりますので、その過程において、身寄りのない痴呆性高齢者知的障害者精神障害者に対する必要性を把握できるのではないかという考えに立ったものでございます。この点については、自治省、厚生省とも十分御議論した上でこういうふうにさせていただきましたので、今後は、運用について適切になされるものと期待しているところでございます。
  72. 坂上富男

    坂上委員 任意後見契約についてでございますが、これは公正証書によらなければならないとされておるわけでございます。しかし、作成の費用が余り高額になりますと利用の妨げにもなるということが心配されておりますが、この点については、私は、特段の配慮をなされてしかるべきだと思っておるのでございますが、こういう点に対する御見解はいかがでございますか。  それからいま一つ、任意後見人の権限でございますが、任意後見人が受任をした事務を行う上で、その事務に関して裁判を起こしたり登記の申請をしなければならない場合も想定されますが、任意後見人にそのような権限が認められているのでしょうか、どうでしょうか。
  73. 細川清

    細川政府委員 まず第一点目の、公正証書の作成の費用でございますが、これは委任契約でございまして、現在の手数料令では一万一千円ということになるわけでございます。いろいろな団体の方々にお聞きしますと、この程度ならば利用可能であろうというふうに伺っております。  それから、裁判の提起の問題でございますが、本人が任意後見人に委託することができる事務の中には訴訟行為や登記の申請も含まれるわけですが、訴訟行為について任意後見人が自分でやるという委託をするには、当然、これは弁護士代理の原則がございますから、任意後見人が弁護士である場合に限られるということになると思います。それから、弁護士でない任意後見人が本人のために裁判を起こす必要が生じた場合には、弁護士に対して訴訟行為を委任することになりますが、その権限を任意後見契約上に与えていく必要があるということになるわけでございます。
  74. 坂上富男

    坂上委員 それから、任意後見人の適性についてでございますが、事件屋のような任意後見人が出てきた場合は大変不適当でございます。任意後見人にこういうような人たちがなることを防止する手だて、どのようなことをお考えになっておるのか。  それから、本人が入所している施設が、入所者に無理に当該施設、例えば法人等がその役職員を任意後見人とする任意後見契約を締結させようとするような事態を防ぐ手だてとしてどのような方法を考えられているのか、この点の認識についてもお聞かせをいただきたいと思っております。  それから、任意後見人に対する監督でございますが、任意後見人に対する監督は専ら任意後見監督人が行って、家庭裁判所は、解任を除いて、任意後見監督人を介して間接的に関与するだけでございます。果たしてそのような監督の仕組みで実効性があるのだろうかということでございます。少なくとも、家庭裁判所が直接に任意後見人から報告を受け、任意後見人に一定の事項を命ずることができるという道筋を用意しておくことも必要なのじゃなかろうかと思っておりますが、いかがでございますか。
  75. 細川清

    細川政府委員 まず第一点の、任意後見人が事件屋のような不適当な者がなることを防ぐ手だてを講ずるべきであるということは、全く御指摘のとおりだと思います。  本人がどの方を任意後見人にするかということは本人の自由意思にゆだねられているわけでございますが、この契約をするには公正証書にしなければなりません。そこでまず、契約の締結段階で、公証人が、本人の意思能力や真意を確認するということで、不当な契約を結ばれることを防止することができるということは言えます。  それから、任意後見契約が効力を発生するためには、裁判所が任意後見監督人を選任することが必要でございます。その段階で、家庭裁判所は、御本人の意思を再度確認し、任意後見人とされた者が本当に問題がないかどうかということを再度審判されるわけでございます。そういった手だてによりまして、不適当な者が任意後見人になることを防止することができると考えております。  それから、次に任意後見監督人の監督の問題でございますが、任意後見監督人は任意後見人の事務を監督し、家庭裁判所に定期的に報告することを職務といたしておりますとともに、随時、任意後見人に対して事務の報告を求め、任意後見人の事務等を調査する権限を有するものでございますので、常設の監督機関としては実効性を期待することができるものと考えております。家庭裁判所は、必要があるときは、任意後見監督人に対して、任意後見人の事務に関する報告を求め、本人の財産状況の調査を命じ、その他監督に係る必要な処分を命ずる権限がございますので、実質的に裁判所の監督権というものが実効性があるものになっているというふうに考えております。
  76. 坂上富男

    坂上委員 では先に進みましょう。  まず後見登記制度についてでございます。  まず登記でございますが、戸籍の記載が現行の禁治産宣告等の利用をちゅうちょされる要因の一つとなったと言われておるわけでございます。そこで、戸籍の記載を廃止して後見登記制度を創設されるということでございまして、これも私は大賛成でございます。  そこで、法務省からいただいた参考例でございますが、これは戸籍の写しでございます。この戸籍に、いわゆる禁治産宣告の裁判確定、妻、後見人に就任、ばあんとこう書いてあります。これはこのとおりですね、今の禁治産制度は、戸籍の記載というのは。  それで、今度は登記でされるということで、登記の証明書のイメージをひとつ出していただきたいということで、書面をいただきました。これによりますと、まず「登記事項証明書(案)」こう書いてあります。後見という例でございます。一、成年被後見人、氏名、出生年月日、住所、それから、(四)本籍、(五)後見開始の審判、裁判所、東京家裁、事件の表示、平成何年何月第何号、審判の確定の年月日、平成十三年何月、二、成年後見人、氏名それから住所、登記番号、こういうような、これもこのようなイメージを受け持っておればいいのでございますか。いただいた書面でございます。  それから、任意後見契約についてもこんなふうにイメージとして出されております。任意後見契約、それで、公正証書をつくった公証役場、その名前、それから委任者、あるいは任意後見人の住所、登記番号。そこで、この中に大事なのは、代理権の範囲についても登記があるわけでございます。どこまで代理権の範囲を委任するかということで、(一)預貯金に関する取引、(二)家賃・地代の領収、(三)遺産分割、(四)介護契約の締結、変更、解除及び費用の支払、以上の各事項に関して生ずる紛争の処理に関する事項、こういうふうな登記なのでございますが、大体こんなイメージが登記事項になるのでございますか。
  77. 細川清

    細川政府委員 登記事項は後見等登記に関する法律で定められておりまして、坂上先生が今御指摘なされた証明書のイメージの案は、その法律で記載すべきものとされている事項を拾い上げたものでございます。ただ、具体的にレイアウトはどうするかというのはもう少し検討を要しますが、中身的には基本的にはこういうことになります。  それから、任意後見契約についても同じでございますが、代理権の範囲は、これは任意後見をしようとする御本人が、任意後見人の受任者との間で契約でするものですから、これはさまざまなものがございまして、これはほんの一例でございます。
  78. 坂上富男

    坂上委員 そこで、要請をしておきますが、聞くところによりますと、後見登記の登記所は法務大臣が指定する法務局とされております。聞くところによりますと、東京では一カ所のみ指定されるとのことでございますが、一体、一カ所のみの指定で利用者に不便をかけないかどうか、それから登記の申請、登記事項証明の交付申請、交付は郵送によることは可能なのか、将来的にオンライン化する考えはないのか、こういう点でございます。  私は新潟ですが、例えば、新潟の場合、新潟登記所、法務局だけになるのでございますか。その辺、各県一つずつみたいな感じで、非常に不便なのではなかろうかと思っていますが、どうですか、これは。
  79. 細川清

    細川政府委員 後見登記は、電子情報処理組織、すなわちコンピューターで運用することとされております。これには当然経費がかかるものですから、全国で一カ所、法務大臣の指定した登記所でその登記は扱うということにいたしたいと思っていますが、後見の登記は、まず、家庭裁判所で審判があった場合は、家庭裁判所から嘱託で登記所に書類が送られてきて登記されるわけでして、また、任意後見契約の場合は、公証人が嘱託をするわけでございます。ですから、御本人がお手を煩わすことなく、当然に登記がされるということになります。あと、住所等が変更になったならば、御本人が届けていただくことになりますが、それは郵送でも結構だということになりますし、また事項証明書等はすべて郵送で御請求くださればお送りすることができるということにするつもりでございます。  したがいまして、現時点では、費用等の関係で全国で一カ所にせざるを得ないのですが、利用者が大変ふえたということになれば、将来的には、御指摘のように、もっと扱える場所をふやすとか、あるいはオンラインで請求することができるかどうかということを検討しなければならないと思っているところでございます。
  80. 坂上富男

    坂上委員 ああ、そうですか。では、全国で一つということね。それでいいのでしょうか。  大体、禁治産者、準禁治産者は年間どれくらいあったのですか。それから、この制度を利用すると、どれくらいを想定なさっているのですか、ちょっと。
  81. 細川清

    細川政府委員 従来の禁治産の利用宣告の数は、年間千数百件だったと思います。  今後どうなるかということなのですが、これは予測の問題で大変難しいのですが、ある研究所の調査の結果によると、痴呆性高齢者というのは百万を超えた数があるということになりますので、今後は次第に利用者がふえる可能性が大きいというふうに思っているわけでございます。
  82. 坂上富男

    坂上委員 この問題、きっとまたほかの先生からも議論があると思いますから、時間の都合で私はもうやめますが、果たして東京一局だけでいいのかどうかということ、大変問題なのではなかろうか、私はこう思っております。裁判所が手続をやるのだ、公証人が手続をやればいいのだから、一般の人はそれほどかかわりがないというようなお話でございますが、果たしてそうだろうかというのをちょっと疑問に感じておりますが、議論する時間が余りありませんので、後見制度はこの程度にいたしまして、今度は遺言の関係についていたしたいと思います。  これは私にとりましては本当にありがたいことでございますし、また関係者の皆様方は本当に喜んでおられるわけでございます。そこで、まずお聞きをいたしたいのは、簡単でいいですが、聴覚障害者の公正証書遺言作成の嘱託を、実質上、民法は拒んでいたわけでございますが、まさに百年でございますが、この放置された理由というのは一体どういう理由によるのでございましょうか。     〔委員長退席、橘委員長代理着席〕
  83. 細川清

    細川政府委員 現行法は、ただいま坂上先生の御指摘のとおりでございまして、これは民法制定当時、母法であるフランス民法と同様に、遺言の意思の真正と正確性の担保から、遺言の方式について、特に厳格な口頭主義を採用したものだと言われております。その当時の手話の未発達の状況や、聴覚・言語機能障害者の方々も自筆証書遺言や秘密証書遺言の方によって遺言することができるということになっておりましたので、そういうことで、全体としてみれば、合理的な理由があったというふうに言えたと思うわけです。しかし、最近では、非常に手話が発達してまいりまして、聴覚・言語機能障害者の方々についても公証人の関与による遺言をされたいという希望が大変多くなっておられまして、中でも、国会で坂上先生を初め石毛先生もいろいろ御指摘がありまして、私どもとしてもそれを真摯に受けとめまして、この改正案を今度の成年後見と一緒に入れさせていただいたというわけでございます。
  84. 坂上富男

    坂上委員 わかりました。  そこで、まず今回の改正によりまして、嘱託、本人それから証人となり得るであろうところの聴覚障害者及び言語障害者は、すべて公正証書遺言作成に嘱託関与なし得ると理解していいのでしょうか。特に、証人でございますが、いわゆる聴覚障害者の方が証人になり得るのかどうか、こういうことでございます。
  85. 細川清

    細川政府委員 御指摘のとおり、遺言をすることもできますし、証人となることもできます。
  86. 坂上富男

    坂上委員 それから、通訳人の具体例をお聞きしたいのでございます。  手話通訳、筆記通訳のほかに、指点字というのでしょうか、それから触読、これも入るのでございましょうか。これはいかがですか。
  87. 細川清

    細川政府委員 手話通訳、筆談のほかに、触読の通訳、それから指点字も含まれます。
  88. 坂上富男

    坂上委員 結構でございます。  それから、障害者が自己に適した通訳の人を自由に選定できるのでございましょうか。それから、外国の法制はこういう点、どうなっておるのでございましょうか。それからもう一つですが、障害者のための通訳と外国語通訳とパラレルに考えてよいのでございましょうか。
  89. 細川清

    細川政府委員 まず第一点でございますが、この通訳の方の資格については、法律上制限を設けておりませんので、障害者が自己に適した通訳人を選ぶことが可能でございます。  外国の法制でございますが、ドイツ、オーストリア、イギリス、アメリカ等におきましては、手話通訳人の資格について、実務による運用にゆだねられており、特に法律上の制限は設けられていないというふうに聞いております。  それから、外国語通訳とパラレルに考えてよいかということでございます。  手話通訳も外国語通訳も一定の技能を有する第三者を介して意思疎通を図る手段であるということで全く同様でございますし、現在は手話通訳におきましても語彙が非常に豊富になっております。指文字を補完的にすることによって、手話による多様かつ正確な表現が可能だというふうに考えられているわけでございます。したがいまして、手話通訳については、外国語通訳同様の正確かつ普及度の高い意思疎通の方法であるというふうに言えると思います。
  90. 坂上富男

    坂上委員 ちょっとまとめて質問いたします。  通訳なしで、公証人がみずからの筆談または手話で障害者と話すことも考えられるのでございましょうか。それから、通訳の要否はだれが決めるのでございましょうか。それから、実際は障害者と公証人のどっちが通訳を決めることになるのでございましょうか。それから、通訳に資格等の制限はないのでございましょうか。以上。
  91. 細川清

    細川政府委員 まず筆談につきましては、公証人みずからが筆談することは何ら差し支えないわけでございます。  それから、通訳の場合には、法律上は、「遺言者は、公証人及び証人の前で、遺言趣旨を通訳人の通訳により申述し、」というふうに規定しておりますので、原則として、公証人みずからが手話通訳をすることは許されないというべきだと思います。特に、証人の方が全然何をやっているかわからないということになりましては意味がないわけでございます。ただし、これは例外的に、遺言者、公証人、証人と、関係者のすべての方が手話通訳等を理解することができる場合には、公証人みずからが手話通訳することも許されるというふうに考えております。  通訳の要否はだれが決めるかという問題でございますが、これは公証人が遺言者のお話を聞いて、その発語能力を確認した上で、公証人が最終的に判断するということになります。  それから、障害者と公証人のうち、どちらが通訳を決めることになるかということになりますが、法律上には制限がないわけで、どちらが通訳人を選んでも構わないわけでございます。実際上は、障害者が自己に適した通訳人を選んで公証人のところに一緒に行くということが多いのではなかろうかというふうに思っております。  通訳人の資格に制限はないのかということですが、これは法律上は制限は設けられておりません。厚生大臣認定の手話通訳士試験に合格した人は千人ほど現在おられます。そのほかに、手話通訳者、手話奉仕員の養成、設置、派遣事業というものを国が行っておりまして、これには通訳士を含めて三千人の手話通訳の能力を有する者が登録されているということでございます。手話通訳士の資格のない方でも能力がある方がございますので、これを排除する必要はないということになりますし、現に民事訴訟法や刑事訴訟法上、法廷での手話通訳についても資格の制限は設けられていないところでございます。
  92. 坂上富男

    坂上委員 通訳人の通訳を障害者が理解したかどうかはだれが判定することになるのでしょうか。
  93. 細川清

    細川政府委員 これは、最終的には公証人がみずから判断するということになります。そのために、必要に応じて、適宜確認の問いを発したり、みずから障害者と筆談をするというような手段をとる必要があると思いますし、また手話通訳を解する方を証人として立ち会わせることが一つの有効な方法であるというふうに考えております。
  94. 坂上富男

    坂上委員 まさにこれは障害のある方の差別が民法の中にあったと言っても私は言い過ぎではないと思うわけであります。これを皆様方の御理解で直して、本当に公正証書遺言を手話によって有効にさせよう、こういう試みでございますので、大変よいことだと私は思っておるわけでございます。  これに関連をいたしまして、いろいろ私が調べてみたところが、障害のある方の差別規定というのは物すごくあるのですね、今の法律の中で。  そこで、まず一例でございますが、公示催告仲裁法の七百九十二条、それから検察審査会法第五条、これも改正をされるそうでございますが、その趣旨についてひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  95. 細川清

    細川政府委員 初めに御質問の、公示催告手続及ビ仲裁手続ニ関スル法律の問題でございますが、御指摘の七百九十二条第三項では、仲裁契約の当事者は、仲裁人が聴覚、視覚等の障害者の場合には忌避することができるという規定があるわけでございます。これは、聴覚・言語機能障害を有する方でも、手話通訳等により、仲裁人としての職務を十分に行えることと考えられますので、したがって、これは削除するのが適当であるという判断に達しまして、削除の御提案をしているところでございます。
  96. 松尾邦弘

    ○松尾政府委員 先生御指摘のように、検察審査会法第五条第三号でございますが、「耳の聞えない者、口のきけない者及び目の見えない者」を検察審査員の欠格事由としてきたところでございます。  しかしながら、障害者対策推進本部が策定しました障害者対策に関する新長期計画などにおきまして、障害を理由とする各種の資格制限が障害者の社会参加を不当に阻む障害要因となっている、そうした障害要因とならないよう、必要な見直しを検討するとされたことなどから、この条項につきましても、検討を行ったところでございます。手話通訳や読み聞かせ等を行うことによりまして、視聴覚・言語機能障害を有する人も審査等を十分に行うことができると考えられましたことから、障害者の権利擁護を目的とする遺言制度等の改正を行う今回の民法改正にあわせまして、この条項をも削除するということにいたしたものでございます。
  97. 坂上富男

    坂上委員 大変結構でございます。  そこで、障害者が検察審査員に選任をされたときはどういうような手当てを今お考えになっておられますか。
  98. 白木勇

    ○白木最高裁判所長官代理者 結論だけ申し上げますと、目の見えない方につきましては、点字文書を作成したり、資料の音読を行うことを考えております。また、耳の聞こえない方につきましては、手話通訳を用いるなどの配慮をすることを予定いたしているところでございます。     〔橘委員長代理退席、委員長着席〕
  99. 坂上富男

    坂上委員 今改善をしていただくということ、大変結構でございますが、いろいろ調べさせていただきましたら、障害者に係る欠格条項とでも申しましょうか、随分あるのですね。人事院から始まりまして建設省まで七十九、対象の省庁が、こういう身障者あるいは精神障害者の皆様に欠格条項としてしておるようでございます。  そこで、まずこれに対する概要、今御指摘をしたものに対して、総理府でございましょうか、こういう点についてどのような考え方でおられるか、これからどう対応されようとしておるのか、お答えをいただきたいと思います。
  100. 冨澤正夫

    ○冨澤説明員 お答えいたします。  先生御指摘のように、資格免許制度等におきまして、障害者であることを理由に免許を与えないといった制限、取り扱いを定めている制度が、平成九年度に私どもが調査いたしましたところでは、七十九の事項が挙げられてございます。  先ほど刑事局長さんからの答弁にもございましたけれども、こういった制度につきましては、障害者対策推進本部で平成五年から十四年までの十年計画として策定をいたしました障害者対策に関する新長期計画におきまして、障害者の社会参加を不当に阻む障害要因とならないよう、見直しについて検討するということにされております。この方針に従いまして、現在、私ども総理府を中心に、政府としての統一的な対処方針を定めて、これに従って見直しを促進しようということで、検討を進めてございます。  現在検討を進めているわけでございますが、今後、厚生省に設置されております中央障害者施策推進協議会の審議を経まして、障害者対策推進本部において対処の方針を定め、制度を所管いたします各関係省庁におきまして早急に見直しを推進していただくという考えでございます。
  101. 坂上富男

    坂上委員 これはぜひ、こういうことはできるだけ速やかに是正できるものは是正、改善をすべきだと私は思っておるわけでございますので、強く総理府に要請をしておきたいと思います。  そこで、いま一つちょっと具体的に申し上げますと、著作権法第二十条第一項、これはどういう条文かと申しますと、同一保護権とでも申すのでございますか、いわゆる著作権については、同一性を保持する権利を有する、そのとき、この意に反してそれらの変更、切除その他改変を受けないものとする、こう書いてあるのですね。  しかしこれは、私は、解釈の仕方によりましては、見ることができない人、聞くことができない人、そういうような障害のある人たちはこういう著作権について知ることができないというような条項になるのじゃなかろうか。そうだとすると、どうも差別問題にもなるのじゃなかろうか。こういうのは、国民の立場から見ますと、こういう障害の皆様方も相当おられますが、これらの人に対する差別になるのじゃなかろうか。もっと著作権法は、こういう観点から――いわゆる著作権を持っておる人の立場からこれをつくってあるのだろうと思うんですね。国民はこれを利用し、それから見たりあるいは知ったりするという権利もあるわけでございますが、それは、正常な人は可能でございますが、少し障害のある皆様方はこれを知ることができないというような状況になるわけでございます。  こういう点、文化庁などはどういうふうにお考えになっておりますのでございましょうか。これはこれからどんなふうにお考えになる方針でございますか。突然の質問でございますが、お答えをいただきたいと思います。
  102. 結城章夫

    ○結城説明員 御指摘の著作権法第二十条第一項でございますけれども、これは、著作者の人格的権利といたしまして同一性保持権を規定しておりますが、この規定は広く一般に適用されるものでございまして、障害者を差別するような表現は含んでおりません。  同一性保持権は、著作者がつくり出した表現を改変などから保護するものでございます。例えば、聴覚障害者のために放送番組や映画に字幕を入れる、いわゆる字幕ビデオをつくる場合を考えてみますと、音声内容の要約や省略が行われるのが通例でございますので、そのやり方によっては、この同一性保持権が働く可能性がございます。  このような字幕ビデオの作成につきましては、著作者の権利の保護との調整などの問題がございまして、文化庁といたしましては、権利を制限して、関係する著作者の了解を一切とらなくてもよいとするような制度改正については慎重に考えてきたところでございますが、一方では、文化庁といたしまして、字幕ビデオ作成にかかわる簡便な許諾システムの確立によりまして円滑な字幕ビデオの提供を増進することが重要であるということで、関係団体などの協力を求めまして、社会福祉法人聴力障害者情報文化センターを窓口といたしまして、劇場用映画などの権利処理ルールの形成を推進してまいったところでございます。これまでも、相当に成果は上がってきたと思っております。  これからでございますけれども、文化庁といたしましては、障害のある方々への配慮と著作権の保護という二つのバランスを図るという視点に立ちまして、今後とも、障害者の著作物の利用に配慮した適切なルールの一層の整備について適宜権利者団体にも働きかけを行いますし、障害者の団体の意見も十分にお聞きするということで適切な対応をとってまいりたいと考えております。
  103. 坂上富男

    坂上委員 ぜひこれを、見る人、知る人の立場から御配慮いただかなければならぬと思っております。  今度は自治省でございますが、公職選挙法の差別問題です。  百五十条第一項に政見放送があります。これは、読んでみますとこう書いてあるのですね。その政見を録音し、または録画し、これをそのまま放送しなければならない、こう書いてあるのです。だから、字幕にすること、手話ですることは、どうもこの条文を見るとできないみたいになっているのですね。これも、本当にたくさんの障害のある皆様方から見ると、どうも差別的な対応になっているのじゃなかろうか、我々もこういう点に余りにも無関心だったのじゃなかろうかと私は思っているわけでございますが、自治省、どんなようなお考えですか。
  104. 片木淳

    ○片木政府委員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘ありましたとおり、公職選挙法第百五十条におきまして、「政見を録音し又は録画し、これをそのまま放送しなければならない。」と規定しておるところでございますが、手話通訳あるいは字幕スーパーを付した政見を放送することはこれに抵触するものではないと解釈をいたしておるところでございます。  実際の取り扱いにおきましても、政見放送の手話通訳につきましては、平成七年の参議院議員の比例代表選挙から導入されております。また、衆議院議員選挙におきましても、小選挙区選挙の政見放送にいわゆる持ち込みビデオ方式が採用されましたことによりまして、手話通訳を付すことができることとなったところでございます。  参議院選挙区選挙など、その他の選挙の政見放送につきましては、手話通訳士の資格を持った方々が地域的に偏在しておりまして確保が難しいということなどから、今直ちに法制化することは困難でございますが、いずれにいたしましても、聴覚障害者の方々の貴重な参政権の行使にかかわる課題でございますので、これらにつきましても今後とも検討を進めてまいりたいというふうに考えております。
  105. 坂上富男

    坂上委員 時間が参りましたので終わりますが、私は前にも申し上げたことがございます。  私の選挙区のいわゆる聴覚障害のある子供たちが、衆議院の見学をしたいという申し出がありました。こういう子供たちでございますから、疎漏のないようにと思いまして、私は院内を全部回ってみました。それでふと気がついたのが、手話通訳はどうなるのだろうということ。院の方に聞いてみたら、先生、自分で連れてくることは結構でございます、しかし院の方ではつけるわけにはまいりませんということでございましたものですから、私は慌てて各党の要人にお願いをいたしまして、ぜひこれは子供たちのために国費でつけるべきじゃないか、金額としても幾らでもないのじゃないか、こういうようなことを申し上げまして、皆様方の御賛同を得て、手話通訳を障害のある子供たちにつけてやったことがございます。まさに私は駆け出し時代のことでございまして、私にとりましては非常に感銘の深い出来事でもあったわけでございます。  それで、私はその後、社会的弱者の立場に立ちながらと思いながらもそのままずっと来ておったのでございますが、今回のいわゆる手話による公正証書遺言でございますが、今から二、三年前でございましたでしょうか、ある地方紙に、四十万の人が公正証書遺言ができないで困っておるというようなことが書いてありまして、私、これを読みまして、がくんといたしたわけでございます。  たまたま法務委員会の籍があったものでございますから、このことを御指摘をいたしましたら、法務省の方も必死になりまして、確かに口述ということが要件だから聴覚障害の方々は公正証書遺言はできませんけれども、死因贈与という公正証書を使えばできるのでございますがと、こうおっしゃっているのですが、これは財産のことだけであって、身分上のことに対する遺言なんかできっこないわけでございます。  そんなようなことで、早くつくるべきだということを御指摘いたしてずっと来たわけでございますが、それで昨年の一月、下稲葉法務大臣が、手話による公正証書遺言民法改正をいたしたいと思いますという発表をされまして、非常にうれしかったことを覚えているわけでございます。そういうような、非常に私にとりましては意義深いこと。  しかし、私らも本当に心身に障害がないものでございまするから、なかなか、それらの人たちと思いながら、まだ見落としがたくさんあることを今回また知ったわけでございまして、ぜひひとつ、法務省を初めといたしまして、人権擁護の立場からも、こういう問題はできるだけ改善、是正をされてしかるべき問題だろう、こう思っておるわけでございます。  今回の民法改正、まさに成年後見制度は先刻申したとおりでありますし、手話による公正証書遺言も、今言ったような差別条項で、百年来これらのことのために利用できなかった皆さんがおられるということに思いをいたしまして、私はこれに大賛成をしておるわけでございますが、法務大臣とされましても、今後本当に実のあるものにするには、私たちの大変な努力をもっともっと必要とすると思うのでございますが、御決意なり御感想なりをお述べいただいて私の質問の最後としたいと思いますが、いかがでございますか。
  106. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 これまでの審議を伺いながら、委員が、手話による公正証書遺言の作成ができるような道を開かれたということに大変感銘を受けております。  法務省といたしましては、今回の改正の理念であるノーマライゼーションの観点から、今後とも基本法のあり方について絶えず意を配してまいりたいと考えております。
  107. 坂上富男

    坂上委員 どうもありがとうございました。終わります。
  108. 杉浦正健

    杉浦委員長 次に、漆原良夫君。
  109. 漆原良夫

    漆原委員 公明党・改革クラブの漆原でございます。  まず、成年後見制度についてお尋ねしたいと思うのですが、判断能力が十分でない人のための制度として、現行法では禁治産、準禁治産制度があるわけでございますが、この制度、なかなか利用度も少ない、問題点も多いということで、十分な機能を果たしていない。今回、新しく成年後見制度法案として審議されているわけでございますが、利用度の少ない原因は何だったのか。現行法の今までの総括と今後の改正への意図、この辺をお聞かせ願いたい、こう思います。
  110. 細川清

    細川政府委員 現行の禁治産、準禁治産制度につきましては、人口に比べて余り利用されていないということは御指摘のとおりでございます。これについては、さまざまな点が指摘されていたわけですが、やはりこれについての負のイメージがあるということが一番大きかったのではないかと思います。  そもそも名前自体が、財産を治めることを禁止する、そういう宣告だということになっておりましたし、それがまた戸籍に載せられるということで御家族の方々にも影響がある。それから、制度が非常に硬直化しておりまして、禁治産と準禁治産しかないものですから、それ以下の軽度な精神上の障害がある方にはそれを保護するための制度がなかったということ。あるいはもっと言えば、本人保護の理念が強過ぎて、ちょっと制限が強過ぎた面もあるのではないかというようなことがいろいろ指摘されておりまして、そういったことにも対処するために、柔軟で弾力的で利用しやすい成年後見制度に改めたいというのが今回の改正の眼目でございます。
  111. 漆原良夫

    漆原委員 現行の禁治産宣告の申し立てをしたり、あるいは準禁治産の申し立てを家裁にした場合には必ず医師の鑑定を受けなければならない、こういう規則になっておるわけでございますが、これに数十万円のお金がかかるわけですね、この鑑定費用として。そしてまた、鑑定結果が出るまで半年ぐらいかかるケースが多いという、私の経験からもそんな感じがいたしております。  そんなことも利用度の少ない理由になっていたのかなというふうに感じておるのですが、もう一方では、被後見人の行為能力、法理上の行為能力を制限することになるわけですから、ある意味ではきちっと厳密な手続も必要だろうな、こう思うのです。まさに、その必要性と、行為能力を制限される側との調整をどうするかというところが非常に難しい問題になってこようかと思うのですが、今までいろいろな審議会だとか、あるいは成年後見問題研究会ですか、こういうところで、この鑑定の件に関してどのような議論がなされてきたのか、お答えいただきたい。  それからもう一つは、最高裁は、この規則のたしか二十四条だと思うのですが、必ず医師の鑑定をしなければならないというこの条文の関連で、今後ここをどのようにしていかれるつもりなのか。その二点をお尋ねしたいと思います。
  112. 細川清

    細川政府委員 鑑定に関する法制審議会の議論の状況について私から御説明申し上げますと、この点については漆原先生御指摘のとおり、費用が非常に高いのではないか、すべての場合に鑑定が本当に必要なのかといった点、あるいは期間がかかるのではないか、あるいは鑑定人の適切な候補者を選ぶのが難しいのではないかとかいろいろ指摘がございまして、その点は、そういった議論を踏まえて、現在最高裁判所におきまして規則の改正をどうするかということを検討中と聞いておりますので、詳細については家庭局長から御答弁いただけると思います。
  113. 安倍嘉人

    安倍最高裁判所長官代理者 御説明申し上げます。  委員御指摘のとおり、この能力の判断につきましては、一方では、利用しやすくするという観点の要請があり、他方では、やはり能力の制限になることでございますから、慎重に判断をしなければいけない、この二つの要請をどう満たしていくのかという大変難しい問題であるわけでございます。  私どもといたしましては、今回の法改正の成立を踏まえた上になるわけでございますが、現在のところ、規則改正の検討を進めている段階にあるわけでございます。  その過程におきましては、一つは補助類型でございますとか任意後見類型、いわば本人の意思を非常に尊重して、本人の自己決定を大事に考えていこう、こういう制度でございますけれども、これについては、鑑定を要することなく、診断において判断することも差し支えない、このようなことを導入してはどうだろうかということを考えている段階にございます。  一方、後見あるいは保佐類型でございますけれども、これは現在、必要的鑑定と定められているわけでございます。これをどうするか、なかなか難しい問題はございますけれども、すべての場合に必ず鑑定によらなければいけないとする必要があるかどうかという点についても十分吟味、検討したいと考えている次第でございます。
  114. 漆原良夫

    漆原委員 ただ、後見だとか保佐の場合は本人の意思と関係なく、特に後見の場合、本人の意思と関係なく申し立てられて、行為能力は全面的に制限されるわけですから、これはやはりきちっとした鑑定が必要だろうなというふうに思うのですが、この辺はどうでしょうか、最高裁。
  115. 安倍嘉人

    安倍最高裁判所長官代理者 御指摘のとおり、後見の場合についてはやはりきちっとした判断が必要だろうと考えているわけでございます。  ただ、例えて申しますと、植物状態にある方についてどのように扱うかという問題などを含めて、すべての場合に鑑定を要するという形を維持するのがいいかどうか、この点は検討したいと考えている次第でございます。
  116. 漆原良夫

    漆原委員 わかりました。  この改正案では、成年後見等に法人を選任することが明文上認められておるわけでございます。現行法では明文はないわけで、多分認められないというふうに解釈されている方が多いのじゃないかと思うのですが、これをこの改正案では法人の後見も認める、条文上明確に、はっきりはしていないのだけれども、認める場合にはいろいろな事情を考慮してやりなさいという、裏から認めたという法律構成になっておるのですが、まず、法人による後見を認めた理由はどこにあるのでしょうか。
  117. 細川清

    細川政府委員 民法は、人という場合に、自然人と法人両方含むのが原則でございますので、特定の場合だけ法人を含むと書くことができないものですから、裏から書いたわけでございます。  それで、法人が後見人になれることを明らかにした理由でございますが、関係の団体の方々からいろいろヒアリングいたしました結果、後見事務のニーズというのは非常にさまざまなものがあって、個々の人の生活の状況、財産状況により非常に異なっている。こういった多様なニーズにこたえるためには、例えば福祉の事務に関して専門的な知識、能力、体制を備えている福祉関係の公益法人とか社会福祉協議会とか、そういったところを成年後見に選任した方がより適切であるというような意見も大変ございまして、要するに、多様なニーズにこたえることができるように法人もこれに加えさせていただいたということでございます。
  118. 漆原良夫

    漆原委員 成年後見人には、ドイツなんかだと世話協会というのがあるのですね。世話協会があって、世話人をそこで出して、その人が世話していく、あるいは世話協会そのものが法人として後見人になる、こういう制度。あるいは、カナダの公的後見人のような制度がある。  こういう成年後見人の供給団体みたいなものを日本でも基盤整備という観点から推進していくべきではないかという意見がいろいろなところであるわけですが、この方向性については、今回はそういうものは採用されていなかったわけですけれども、将来の方向性として、そういう後見人の専門家団体あるいは専門的に供給する団体を我が国としても基盤整備していくべきではないか。こういう考えに対してはどのようなお考えを持っておられますでしょうか。
  119. 細川清

    細川政府委員 後見人となられる方の専門性のある団体というものを援助していくあるいは促進していくということの御指摘でございますが、それは非常にそのとおりだと思っております。  現在、社会福祉協議会とか、あるいは自治体でつくっている福祉関係の公益法人、これは往々にして福祉公社という名前がついておりますが、そういったところ、あるいは弁護士さんそれから司法書士さん、あるいは社会福祉士の皆さん方が団体をつくってそういうことをされておられるところがございまして、そういうところでは、今回の法律が制定されれば正式に後見人になることができるということで、現在さまざまに協議されておられるところでございます。  したがいまして、私どもといたしましても、そういうところに対して極力応援してまいりたいというふうに思っているわけでございます。
  120. 漆原良夫

    漆原委員 現在、そういう専門的な供給団体が日本では存在しないということですけれども、そういう現状において、この法が予定している法人というのは、法人は会社から何からいっぱいあるわけですけれども、こういう法人をイメージしたという法人があるのかないのか、それともどんな法人でもいいというふうにお考えになっているのか。その辺はどうでしょうか。
  121. 細川清

    細川政府委員 まず、財産管理の面につきましては、私が聞いておりますのは、司法書士さんたちが基金を拠出して財団法人をつくって、特に財産管理の面で後見人の候補者を推薦し、あるいは後見監督人になるということを団体自身が検討されているというふうに聞いております。  また、身上監護の面につきましては、やはり社会福祉士あるいは社会福祉士会とか、あるいは社会福祉協議会といったところがそういった後見人の仕事をされる法人の中心になるのではないかというふうに思っておりまして、ニーズに応じてさまざまな職能の団体の方がこれを担当していただくということがよろしいのではないかというふうに思っております。
  122. 漆原良夫

    漆原委員 多分今おっしゃったようなことがイメージされているのじゃないかと思うのですが、そうであるとすれば、法文上この法人を制限するべきではないのかな、一般の株式会社とかそういうものを除いて、福祉法人だとか公益法人に限るというふうな限定をつけるべきではないのかな、こう思っている。また、そういうことも可能なはずなんだけれども、それを限定をつけなかった、法人なら何でもいいというふうにした、この辺の理由は何かあるのでしょうか。
  123. 細川清

    細川政府委員 これはさまざまなニーズがあるわけでございまして、実に多額の財産を持っておられる方ですと、信託会社がそういうことを担当することもあり得るのじゃないかというふうに言われておるのですが、そういうことを考えますと、最終的には裁判所が諸般の事情を判断して決定されるということでございますので、無理に法律で資格を限定するよりも、裁判所の適切な判断に期待すべきではないかということで、特に制限を設ける必要はないというふうにこの改正案ではなっているわけでございます。
  124. 漆原良夫

    漆原委員 裁判所の話が出ましたので、法八百四十三条では、家庭裁判所が法人を成年後見人に選任する際には、法人及び代表者と成年被後見人との利害関係の有無を考慮して決めなさい、そういうふうな条文になって、まさに裏から法人を認めたというところの条文でございます。成年被後見人と法人との、そして代表者との関係性、利害関係を考慮しなさいという条文になっておりますが、どういう場合をこれは予想しているのか、一般的な例でございますが、事例を挙げていただければありがたいと思います。
  125. 細川清

    細川政府委員 法人の場合は、例えば施設に御本人が入所している場合、その入所契約というものの当事者になっておりまして、お金を徴収する立場にございます。そういう方々が本人後見人になりますと利益が相反するということになりますし、また、法人自体じゃなくても、法人の代表者が個人的に利害が対立するということがあると思いますから、そういった場合を、利益相反ということを考えまして、通常の場合にはそういう方を後見人として選ぶことは適切ではないという判断でございます。
  126. 漆原良夫

    漆原委員 老人ホームなり施設に入所している方とホーム、施設は利害相反だ、そういうことをこの条文が言っているんだ、したがって、それは排斥されるんだというふうに考えていいんですか。
  127. 細川清

    細川政府委員 ですから、それは一例でございまして、一般的に、そういう利害の対立がある場合には後見人に選任するのは適当でないということを言っているわけでございまして、ただ、そういう関係のある人でも、そういう金銭面の関係ではなくて、全然別個の関係で身上監護の点であれば、場合によってはそれは選んでも利害が対立しない場合もある。ですから、そこの点を裁判所はよく検討して判断するようにという意味の条文でございます。
  128. 漆原良夫

    漆原委員 もう一度ちょっとはっきりさせたいんですが、まさに金銭面の関係で、財産の管理を後見人がするというふうな場合に限定しまして、その被後見人が入所をしている、入所している施設の法人がその後見人になれるかどうか。なれないというふうに聞いてよろしいんでしょうか。
  129. 細川清

    細川政府委員 その入所契約に関しては、まさに利害が対立するわけですから、後見人を選任することは適当でないということでございます。裁判所が最終的にお決めになりますが、私はそういうふうに思っているわけです。立法もそういうつもりでできております。
  130. 漆原良夫

    漆原委員 私の言っているのは、入所契約そのものではなくて、入所契約に基づいて入所をしている被後見人と、その後、入所させているホーム、施設、法人が後見人になるという場合は、一般的に利害相反と考えていいんじゃないか、その場合も排斥される趣旨の条文じゃないかと読めるかどうかなんですね。そういうふうな指針としてお聞きしていいかどうかということをお尋ねしているんです。
  131. 細川清

    細川政府委員 原則としては御指摘のとおりでございますが、例えば、無料の介護ヘルパーの派遣というサービスがあるわけですが、そういう契約を施設が後見人としてするということになると、必ずしも利害が対立しないということになります。  ですから、ここで言っておりますのは、原則としては問題がありますが、そうじゃない場合も、よくよく法律を詰めて考えてみるとそういう場合もあるということでございます。したがいまして、そういう場合には、例えば後見人を二人選んで職務を分担してもらうとか、そういうこともあり得るわけで、ここの解釈の指針としてこういう条文になっているわけでございます。
  132. 漆原良夫

    漆原委員 昔、私が担当した相続の事件で、相続人から依頼を受けて入所ホームに行ったわけなんですが、既に生前贈与という格好で全部入所施設の方に財産が移転をしておったという、大変つらい思いをした。それも、亡くなる前に契約したやつですから、意思能力があったのかどうかもわからないで全部移転されてしまったという事案になって非常に苦しい思いをしたんです。  そんな施設があるかないか、今後出てくるかどうかわかりませんけれども、入所して面倒を見てもらっている人と入所させている法人、施設というのは、やはり力関係が全然違うわけですから、御老人にとって最後まで面倒を見てもらえるかどうかは大事なことなんですよね。そういう意味では、ある意味では言いなりになりかねないという状況にあるわけです。そういう人が、そういう立場で後見人になっていいのかなという、本当の後見の役割を果たせるのかなという心配が非常に強いんです。  したがって、先ほどから何回もお聞きしているように、そういう場合は利害相反の一般的ケースとして排斥すべきではないのかなということをお尋ねしているんですが、もう一度。
  133. 細川清

    細川政府委員 私の答弁が、やや法律論に傾いたといいますか、条文の解釈論に傾いたことを申し上げたかと思うんですが、一般論としては、漆原先生の御指摘のとおり、そういった影響力がある人がいろいろやりますと本人の利益が害される場合がありますから、一般的には適当でないということになります。  だから、最終的には、裁判所が個別的事案で御判断なされますので、解釈の指針としてはこういうことになっておりますということでございます。繰り返しになりますが、一般的には適当でないということは言えると思います。
  134. 漆原良夫

    漆原委員 その辺はよくわかりました。  それでは次に、後見登記についてお尋ねしたいと思うんです。  後見等の登記や任意後見契約の登記は嘱託または申請によって行う、こうなっておりますが、嘱託の場合は、これは公証人だとか裁判所の書記官が嘱託手続をされるわけですけれども、申請で行う場合というのはどんなケースがあるのか教えていただきたい。
  135. 細川清

    細川政府委員 後見の審判があった場合、あるいは任意後見契約があった場合には、いずれも、裁判所なり公証人から嘱託がありますので、基本的には登記は嘱託で出されるわけです。  登記で出される場合はどういう場合かといいますと、仮に、御本人の住所が変わった、それから後見人の住所が変わった、あるいは御本人が亡くなられたというときには当然にはわかりませんので、御本人なり周りの利害関係の方に申請していただきたいということでございます。
  136. 漆原良夫

    漆原委員 後見登記等に関する事務は指定法務局が登記所として行う、こうなっていますが、この指定法務局は今どこをお考えなのか教えてもらいたい。
  137. 細川清

    細川政府委員 法律上は、大臣の指定する登記所はどこでもよろしいんですが、現時点では東京法務局を考えているところでございます。
  138. 漆原良夫

    漆原委員 全国が対象となった事務について、東京法務局だけを指定法務局として一応考えている、こういうことなんでしょうが、嘱託の場合はともかくとして、自分で申請しなければならないケースがある。先ほどおっしゃったようにあるわけですから、そういう場合に、東京法務局以外のところに住んでいらっしゃる方、北海道にしても新潟にしても富山にしても九州にしても、そういう方は、例えば、申請する場合に、あるいは登記事項証明書あるいは閉鎖登記事項証明書または記録のないことの証明書、こういう交付申請をする場合は、一々東京にまで申請しなくちゃならぬということになるんじゃないですか。
  139. 細川清

    細川政府委員 申請の先はおっしゃるとおりなんですが、これは当然、利用しやすくするために郵送で申請もしていただきまして、登記事項証明書の交付の手続も、それから、いろいろな住所の変更等の手続も郵送でできるようにいたしたいと思っております。  それで、それについては、利用者が利用しやすい用紙に、登記事項証明書の交付請求書の書式とか、交付請求の方法等をわかりやすく説明した一般的なパンフレットを作成して、これを各法務局、地方法務局の窓口に置いておくとか、関係団体に御配布するとか、あるいは法務省のホームページに掲載するとか、そういうことで周知徹底を図りたいというふうに思っております。  もっとも、利用者が大変ふえまして、ほかのところでやっても経費倒れにならない、多額の経費が総体的にかからないということであれば、将来的にはその数をふやすことも当然考えられるわけで、法律上も、法務大臣が指定する登記所、法務局となっておりますから、一つに限ると言っているわけではありませんので、将来的には、運用の状況を見ながらいろいろ考えてまいりたいと思っておるところでございます。
  140. 漆原良夫

    漆原委員 利用する方からすれば、全国に登記所、法務局の出張所があるわけですから、そこで全部コンピューターでやっていただければこれほど楽なことはない、こう思うんですが、今おっしゃったように、多分費用の観点なんだろうな、だから、とりあえず東京一つにして、たくさん需要があれば少しずつふやしていってその利便に供するというふうにお考えなんだなと思うんですが、そういう考えでよろしいですか。
  141. 細川清

    細川政府委員 そのとおりでございます。  実は、昨年国会で成立しました債権譲渡登記についても同じでございまして、現在東京法務局だけでやっているわけですが、将来的にはいろいろ考えていかなきゃならないというふうに思っているところでございます。
  142. 漆原良夫

    漆原委員 この登記制度導入というのは、一つは取引の安全という観点から導入されたわけでございますけれども、他方、もう一方は、成年被後見人等から見ると、秘密の保護の問題があるわけですね。したがって、この登記事項証明書の交付について、一方では取引の安全という観点、一方では秘密の保護という観点、どのような調整を図られているのか、教えてもらいたいと思います。
  143. 細川清

    細川政府委員 この法律では、登記事項証明書の請求できる人を一定の範囲の人に限っているわけです。これはやはり、人の判断能力という極めてプライバシーの高い情報が記録されておりますのでそうせざるを得ないということでそうしたわけでございます。  したがいまして、登記事項証明書の交付請求の際には、その成年被後見人の氏名等のほかに、請求者がどういう立場の人かということをはっきりさせていただいて、その資料をつけていただいて、それで法律上の要件を満たしている人だということを判断してから登記事項証明書を送付するということにいたしているところでございます。
  144. 漆原良夫

    漆原委員 私が一番心配しているのは、これからその成年被後見人と取引をしようという方が、この人は場合によっては行為能力が制限された人ではないのかなという心配で、法務局にその被後見人であろうと思われる人の登記事項証明書の交付を申請する、そしてこの人に行為能力があるかどうか確認をする、こういうことをされたんでは非常に秘密の保護に欠けるのではないか、こう思います。  したがって、そういうふうにならないというふうな法制になっているのか、場合によってはそういうふうになるということになっているのか、その辺はどうでしょうか。
  145. 細川清

    細川政府委員 この法律では、これから取引するという理由で登記事項証明書等を請求することはできないということになっているわけでございます。法律に定めておりますように、自分が成年後見本人であるとか成年後見人であるとか配偶者であるとか、そういう特定の関係を持っておる人だけが請求できるということにしているわけです。  それでは、取引の安全はどうやって確保できるかという問題につきましては、まず、これは法制審議会でもいろいろ御議論いたしまして、銀行協会ともお話ししたんですが、その結果は、やはり落ちつくところは、取引の相手方の人が、通常の取引の過程で何か不審がある、そういう不正があるのではないかという疑問が生じたらまず本人に直接尋ねる、そのことを明らかにしておくということです。それで、お聞きして、御本人が、私は制限を受けていますとか受けていませんとか言うんだったらば、その証明書を御本人が出してくださいということにしたらいいんじゃないかということでございます。  ぎりぎり法律論として詰めてまいりますと、そのときに聞かれてうそを言ったらどうなるかということなんですが、これについては現行法の民法二十条が当たりまして、そういう場合には取り消し権を行使することはできないということになるんで、そういうことを全体で考えれば、取引の安全とプライバシーの保護は調和できるんではないかというのが最終に到達した結論でございます。
  146. 漆原良夫

    漆原委員 そうすると、後見人だとかその配偶者だとかあるいは御本人だとかいう立場の人しか請求できない、これから取引をしようとするいわゆる第三者の人はこの登記事項証明書の交付は一切請求できないというふうに理解してよろしいわけですね。
  147. 細川清

    細川政府委員 御指摘のとおりでございます。
  148. 漆原良夫

    漆原委員 以上で終わります。どうもありがとうございました。
  149. 杉浦正健

    杉浦委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時十五分休憩      ――――◇―――――     午後一時三十四分開議
  150. 杉浦正健

    杉浦委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。八代英太君。
  151. 八代英太

    ○八代委員 自由民主党の八代英太でございます。  いよいよ成年後見制度に関する関連法案の、民法の一部改正という形で審議に入りました。午前中も、石毛さんは女性のまた専門家としての立場から、また、坂上先生、漆原先生はそれぞれ法律家の立場から、この成年後見制度にいろいろな角度から審議していただきました。全国の障害を持った皆さんにとっては待ちに待った法律、こういう思いもございますし、また、日本は急速な高齢化社会を迎えてまいりますと、こういうものがしっかり社会基盤の中に法整備されるということは大変すばらしいことだというふうに思っております。  特に、そういう社会的な要請の高まりを踏まえてということで、私たちも平成八年から自由民主党の中に小委員会を設けまして、成年後見制度に関する小委員会、参議院の阿部正俊君がその小委員長を務めまして何回か議論をしてきたところでございます。  私は、初めて参議院に当選させていただいた昭和五十二年、一九七七年、ノーマライゼーションの理念というものを国会で発表させていただきました。つまり、障害を持った人が何%かいる社会が強く温かい社会である、こういうことでございます。  ともすれば、歩けない人がいるにもかかわらず、歩ける人の社会であり、目の見える人の社会であり、言葉の話せる人の社会であり、それから、いろいろな意味で心に障害を持った人とかというものは、大きな差別ということではなく、偏見の中に古今東西を問わず人間の歴史はあったように思います。  私たちの国には、健康な人しかいません、寝たきりの人はだれもいません、目の見えない人もおりません、精神障害がある人はいませんと。格好よく聞こえますけれども、そういう社会の到来は非常に怖い社会の到来であり、現に、コソボ紛争の根底にも民族浄化などという、指導者のあらわれ方によってはかつてのヒトラーのようなそういう状況も考えますと、やはり民主主義という中において、憲法十四条に保障されておりますように、すべての国民は法のもとに平等である、この基本的な考え方に立って、民法改正等々がこうした形で、成年後見制度という一つのまとまりの中でしっかり法制化されるということは大変すばらしいというふうに思うのです。  そこで、総論として、成年後見制度改正というのは、これは高齢者のみならず知的障害者及び精神障害者等の福祉にも十分重点を置いたものでなければならないと思っておるわけでありますが、今回の改正の理念、趣旨につきまして、もう既にお答えをしておりますけれども、もう一度伺っておきたいと思っております。
  152. 北岡秀二

    ○北岡政府委員 八代委員御指摘の、現行の禁治産制度を初めとした成年後見制度、基本的な枠組みが明治三十一年、今から百一年前に創設をされたということで、ややもするとマイナスイメージを持たれてきておった、さらには、時代の流れの中で十分に合わないのじゃなかろうかというような指摘がございます。  そこで、高齢化社会に対応していろいろな問題が指摘をされております。そのあたりの対応、さらには委員御指摘の、障害者福祉に対する理念も時代の流れとともにかなり変わってまいっております。そのあたりの充実を図っていかなければならないという双方の観点から、痴呆性高齢者のみならず知的障害者精神障害者等の、判断能力の不十分な方々の保護を図るためには、現行の制度改正し、柔軟かつ弾力的で利用しやすい成年後見制度とすべきではなかろうかという社会的な要請に基づいて改正に手をつけたということでございます。  法務省といたしましては、このような要請に応じまして、まず第一に自己決定の尊重、そして、八代先生常日ごろ御指摘をされていらっしゃいますノーマライゼーション等の新しい理念、そしてさらには、従来の本人保護の理念という、この三つの理念の調和を旨といたしまして、それらの利用者の方々にとりまして利用しやすい成年後見制度の立案に努めてまいりました。  本日御議論いただいております民法の一部改正法案等の四法案を国会に提出をさせていただいたというような状況でございます。
  153. 八代英太

    ○八代委員 ありがとうございました。  そこで、世界的に見ますと、人口の大体一割が何らかの障害を持つであろう、こういうことを言われております。また、戦争が起きますと、戦争による多くの障害者が生まれるというようなこと。また、いろいろな疾病が蔓延しますと、そういう意味での障害を持つ。また、新しい時代が目まぐるしくなればなるほど、交通災害とか労務災害とか、いろいろなことの障害を持つ人たちもたくさんいるわけであります。  何よりも、日本におきますと高齢化時代でありますから、男性も平均が七十八歳、九歳、女性は八十三歳。百歳以上の人も、二十年前は三千人ぐらいだったものが、もう一万人を超えた。しかし、元気で高齢化時代を迎えて、ばたっと人生が終わるならいいんですけれども、いろいろな障害を持ちながら人生を終えるということを考えていきますと、特にこの痴呆性の高齢者の問題というものも、この成年後見制度の一つの意義の中では大変重要だというふうに思うんです。  そうした資産を、いろいろな意味でトラブルなんかもあるわけでありますから、しっかりその人の考え方というものが、もちろん、本人の尊重ということも当然でありますが、そこに、周りにおられる人たちが時として妙な形で群がりを見せたり、あるいは精神障害だということで、いろいろな意味で疎外をされたり、知的障害者だということで、本人は何もわからないんだからおれたちが決めるんだという、また家族の問題等々もいろいろ山積をしていたり、これは大変だと思いますね。  しかし、一人一人は、私も含めてそうなんですが、だれ一人、みずから障害になりたいとか寝たきり老人になりたいとか痴呆老人になりたいなんて思う人はだれもいないと思うんです。思いますがゆえに、やはりそういうものを社会がしっかりと法整備をして、この安全なネットをしっかり持っているというのがまたこの法の趣旨でなければならないと思うんですが、さて、いよいよこれから運用していきますと、利用対象ということになるわけでございます。  痴呆性高齢者というのがざっと百万人とも言われておりますし、知的障害者が四十万人ぐらい、これも推測でしょうが、精神障害者は百五十万人ぐらいいるというようなことも言われているんですが、どれくらいの方々がこの成年後見制度を利用する、この人全部じゃないと思いますね。そういう意味での予想は法務省としてしっかり把握しているのか、あるいはどのくらいを見込んでの今日の法の成立への一つの目途としているか、その辺をちょっと伺いたいと思います。
  154. 細川清

    細川政府委員 利用対象者の見込みでございますが、ただいま八代先生御指摘のとおり、痴呆性高齢者の数についてある研究所が行った推計では、平成七年の時点では全国に約百三十万人の方がおられる。それから、厚生省の調査によりますと、知的障害者の数は平成七年の時点で三十万人、それから精神障害者の数は平成八年の時点で二百十七万人というふうに言われております。  したがいまして、成年後見の潜在的対象者と考えられる方は相当多数おられるわけですが、他方、現行の禁治産、準禁治産制度ですと、利用件数は極めてわずかでして、禁治産宣告が一番最近の数字で千四百六十二件、準禁治産宣告は二百六十三件ということにとどまっているわけです。フランスで法律改正した場合には、年間数百件しか利用されていなかったのが、今度の改正と同じような改正をしたんですが、十年後には二万件ぐらいの審判があったということになっております。  したがいまして、こういった制度が利用しやすくなりますと、相当大きな数の方が利用されるようになるんではないかというふうに推定しているところでございます。
  155. 八代英太

    ○八代委員 そういう障害を持った人たちの数と現実には大きなギャップがありますんで、これから法律を的確に運用していくには、いろいろと法務省も大変な努力をしてもらわなければならないということをまず申し上げておきたいと思うんです。  新しい成年後見制度が真に利用しやすい制度になるためには、いろいろな意味で、痴呆性高齢者だけではなく、知的障害者精神障害者の現実的なニーズに十分こたえていく内容でなくてはならないというふうに思っております。  そこで、今回の法案は、高齢者の高額な取引にとどまらず、あるいは知的障害者精神障害者等障害年金等の管理というような日常生活上の金銭管理を支援するために、この法律が支援体制をとるような形ができるのかどうかということです。また、本人のいろいろな身の上のケア及びそれに要する申し立て及び支援に関する経費の援助制度みたいなものを考えているのかとか、これに付随する、いろいろなやり方があるだろうと思いますが、どのような制度を考えているのか、ちょっと伺っておきたいと思います。
  156. 細川清

    細川政府委員 御指摘の、知的障害者精神障害者の方々の日常生活上の財産管理の支援についての問題でございますが、新しく改正点を申し上げますと、まず補助保佐制度において、本人の申し立てまたは同意を要件として、特定の法律行為に限定して、補助人、保佐人代理権を付与することができることといたしております。したがいまして、年金等の管理も当然できることになるわけでございます。また、新たに創設することといたしました任意後見制度におきましても、みずから指名した任意後見人に日常生活上の財産管理をしてもらうということも可能になるわけでございます。  それから、身上面の保護につきましては、新しく条文をつくりまして、後見人、保佐人補助人、任意後見人のいずれにつきましても、その事務を行うに当たっては、本人の意思を尊重し、かつ、本人の心身の状態及び生活の状況に配慮しなきゃならないという明文の規定を置いたわけでございます。  それから、費用の点についてでございますが、審判に要する費用につきましては、これは要件が満たされれば法律扶助の申し立てができるわけでございます。それから、後見に実際に要する費用、それから、後見人に支払うべき報酬でございますが、これは、良質の後見人を確保するためにはそれなりの報酬を与えることが必要なんですが、では、御本人に資力がない場合はどういうふうになるかという問題になります。  その点につきましては、これは社会福祉の分野での大きな問題になるわけで、現在、厚生省におかれまして、社会福祉基礎構造改革において、判断能力の不十分な方に対する無料または低額の料金による福祉サービスの利用援助等を行う社会福祉事業の創設とそのための全国的な体制の整備を進めるということとされておりますので、それの検討の中で手当てがなされるんではないかというふうに期待しているところでございます。
  157. 八代英太

    ○八代委員 まさにこれは、法務省は一つの法律をつくるにいたしましても、運用面ではそのノウハウは恐らく厚生省の方がはるかに持っているだろうと思いますね。  それからまた、今、日本は少子化時代ということになってきますと、身寄りのない痴呆性高齢者とか知的障害者とか精神障害者等も大変ふえていますよね。そういうときに、民法のこの改正案を見ると、家庭裁判所に、補助保佐後見の開始を申し立てるのは、配偶者とかあるいは四親等以内とか親族等とかと、いろいろな決まりがあるんですけれども、本人に身寄りがない、そういう社会環境ということを考えていきますと、申し立ての事務を行うのには、私は、やはり地域の福祉事務所とか、そこがまさに厚生省とのこれからのいろいろなタイアップだろうと思いますが、きょう議論がありました保健所とか、施設に入っていればその施設長さんとか、あるいは民生委員の人とか、あるいは弁護士さんとか、いわば保佐人というのか後見、いろいろな立場で代弁をする人たちは、むしろ地域のいろいろな人たちの声を結集して、法律では区割りのできない、かなり広い範囲のものが必要とされるのじゃないだろうか。  それは、さっきおっしゃったように、痴呆老人が百二十万いるとか、だんだんふえこそすれ、減ることはないわけですから、そういう体制づくりというものも法務省の中では検討されているのでしょうか。その辺はどうでしょうか。
  158. 細川清

    細川政府委員 これは、御指摘のとおりに、法務省だけでできる問題ではございませんので、例えば後見人あるいは保佐人補助人になる人たちが、適切な候補者を探すということが非常に大事なことでございます。そういう中で、いろいろ地域で、自治体で、例えば福祉公社というものをつくっているとか、社会福祉協議会とか社会福祉士の団体の方々等いろいろありますので、そういった現に支援を行っている方々と私どもも協力してまいりながら、この制度が適切に運営されるような努力をしてまいりたいと思っているところでございます。
  159. 八代英太

    ○八代委員 そこで、鑑定とか診断ということになるのですが、個々の痴呆性高齢者知的障害者精神障害者等について、その判断能力やあるいはケアの必要性に応じた適切な支援をしていくためには、各人の判断能力というものの判定が適切に行われなければならないと思います。  そこで、個々の高齢者や障害者の判断能力を的確に判定するために、これは家庭裁判所における鑑定、診断ということになるのですか。家庭裁判所における鑑定、診断というものをもしやるとしたら、どんなふうにやるのか、あるいは鑑定医の確保というようなものもしっかり持っておられるのか、あるいは裁判所が独自に判断基準とかそういうスケールなんかを考えているのか、この辺はどんなふうに考えをお持ちなんでしょうか。
  160. 細川清

    細川政府委員 この成年後見制度を運用するにつきましては、今八代先生御指摘のとおり、御本人判断能力をどのように判断するかということが非常に大切な問題でございます。  これは主として医療面の判断ということになりますので、従来の制度では、禁治産、準禁治産の判断をするためには、裁判所は必ず鑑定に付さなければならないということになっていたわけですが、それが、例えば補助について、鑑定まで必要ないのではないか、あるいは主治医の判断でよろしいのではないかとか、あるいは完全な植物状態にあるということを主治医が判断すれば、鑑定までする必要はないのじゃないかとか、そういった鑑定の実際の仕方について、さまざまな点が指摘されております。  この点につきましては、従来は最高裁判所の規則でそれが定められておりましたので、現在、最高裁判所におきまして、この規則について、鑑定に関する点につきまして、どのようにするかということを検討されているというふうに聞いております。
  161. 八代英太

    ○八代委員 そうすると、補助制度とでもいいますか、そういうものの徹底が必要になっていくでしょうし、それを育てることが大切だと思いますし、そういう意味で、補助制度に対する期待というものも実は大変高まっているわけです。もちろん、自己決定を尊重するのは当然なんですけれども、最小限の支援が可能な制度として、福祉の現場のいろいろな声を聞きますと、やはりこれには補助制度みたいなものが必要だろう。つまり、本人の自己決定に行くまでに足らざるところを補うような、ただそろばん的にぽんぽんと切り刻むというわけにはいかない段階的ないろいろな障害があるだろうと思います。そういう意味での補助制度というものについて、もう少し説明をしていただければと思うのです。
  162. 細川清

    細川政府委員 従来の制度では禁治産と準禁治産の二つの制度しかなかったわけですが、これは相当程度判断能力が減退している方が対象になるわけで、軽度の痴呆性高齢者とか知的障害者精神障害者の方には補助をする制度がなかったわけでございまして、そこのところが従来の制度が非常に硬直的だと言われていたゆえんでございます。  そこで、この改正案では、事理を弁識する能力が不十分な方について、要するに保佐後見対象に至らない人につきまして補助という制度を新たに設けまして、そして、これは軽度の障害の方でございますので、御本人の自己決定を尊重いたしまして、その補助に付す制度を利用するかどうかも本人の御判断にゆだねるということが一つ。それから、どういう補助を与えるか。例えば代理権を与えるのか取り消し権を与えるのか、あるいは双方を与えるのか、それともどういう項目について代理権を与えるのか。そういう点についても御本人の選択ができるようにいたしまして、柔軟に対応できるようにという制度が、今度新設を考えております補助制度でございます。
  163. 八代英太

    ○八代委員 その補助制度も大変大切だ、このように思うのです。そこで、新しい補助保佐後見制度が実効性のある制度として機能するためには、制度の担い手の役割が非常に重要であるというのは当然なんですけれども、他方で、補助人とか保佐人とか成年後見人の権限が拡充されるのに伴って、今度は裏の言い方をしますと、権限の濫用を防止するために、適正なチェックのシステムを確立するということが大変重要になってくると思うのです。  通信傍受法案でも濫用の問題がかなり議論をされましたけれども、まさにこういう法律ができると、その裏側を見ておかなければいけないという思いが大変強くするのです。その辺で、成年後見人の権限濫用の防止策といいますか、そういうようなものはどのような形になっているのか、ちょっと伺いましょう。
  164. 細川清

    細川政府委員 御指摘のように、成年後見人等の権限濫用を防止する策を考えておくのは非常に大事なことでございます。  そこで、改正案では、まず権限を濫用する可能性がある人が選ばれない、選ばれることを防止することが大事だという観点から、成年後見人等となる者と御本人との利害関係の有無というものを十分考慮して、要するに利益の相反のある人については成年後見人等に選ばないということから、そういう考慮すべき事項を定めた規定を置いております。  それから、監督を充実させる点でございますが、従来は後見人についてのみ後見監督人というのがあったのですが、今回の法案では新たに保佐監督人あるいは補助の監督人等も新設し、それから専門的な法人もこれらの監督人になれるようにしているわけでございます。また、家庭裁判所の職権で、こういった問題がある場合には監督人を選任することができるものとしております。  そのほか、改正案では、成年後見人等の解任の請求権を後見監督人あるいは御本人、それから親族等に与える、あるいは、家庭裁判所後見事務等に関する必要な処分の請求権を本人にも付与するということ等の改正をいたしまして、家庭裁判所の監督機能を一層充実させるための改正も加えているところでございます。
  165. 八代英太

    ○八代委員 よくいろいろなところでいろいろな障害を持った親御さんの話を聞きますと、また精神障害を持った家族の人の話を聞きますと、大概最後に言う言葉は、この子よりも先に死ねないという言葉です。この姉よりも先に死ねない、この親よりも先に死ねないという思いが非常に深刻に伝わってくる。私はよく、親が死に、子が死に、そして孫が死ぬ、そういう社会が一番いい社会なんだ、こういうことを言うことがあるのですが、そういう視点から、つまり親亡き後の問題です。  そういう意味では、東京、大阪等で社会福祉協議会における財産保全管理サービスとか、あるいは全国精神障害者家族会連合会が先駆的に試みています「さぽーと」のような、契約によって本人後見のあり方なんかを決める方法をいろいろ考えているのですが、こういう法制化した制度の中で、やはりこういうものとも絡み合いながら重要な役割を果たしていくべきだというふうに私は思っているのですね。  そこで、任意後見制度は、知的障害者精神障害者等の御両親の老後、死後、すなわち親亡き後の本人の生活を支援するためにどのように役立てることができるのか。  そして、やはりもう一つ最後にお伺いしておきたいのは、痴呆性高齢者知的障害者精神障害者の後見人は、万一彼らに事故があったとき、または事故が発生したときに民事上の損害賠償責任が生ずると思うのですけれども、もし責任を課したものだと後見人のなり手がなくなってしまう、こういうおそれもなきにしもあらずなので、免責にして、なお各種の事故被害者を総合して、事故被害者総合救済保険制度みたいなものをつくったらどうかなんというような意見もあるのですが、あわせて最後に御答弁をいただいて、質問を終わりたいと思います。
  166. 細川清

    細川政府委員 御指摘の、親亡き後の御本人の支援のために、任意後見制度がどういうふうに使えるかという点でございますが、まず、子供本人が意思能力がある限り、みずから任意後見契約を締結することはできまして、親の死後に任意後見受任者が任意後見監督人の選任を申し立てて、その任意後見人の保護を受けるということが可能でございます。  それから、子に意思能力がない場合は、子本人が未成年者の間に限って言えば、親権者が子にかわって任意後見契約を締結することも可能でございます。  それから、二つともできないという場合には、今度は、親御さん自身が自分について任意後見契約を締結しておくということは考えられまして、それにあわせて、遺産の管理方法を指定する遺言とか信託とか、第三者に介護を頼んでおくとか契約をするとか、そういうことは考えられるわけでございます。  それから、二番目の御質問の、事故があった場合の問題でございます。  みずから不注意で御本人が事故に遭ったという場合には、そういう場合ですと、後見人等は善良な管理者の注意義務を負っていることになっているのですが、それに違反がなければ後見人等が責任を負うということはないわけでございます。他人を傷つけた場合はどうなるかということは、これは場合によりまして、後見人等が監督義務を怠ったということがありますと、それは損害賠償責任を負う場合があるわけでございます。  最後に御指摘の、事故被害者総合救済保険制度でございます。  これは保険制度でございますし、事柄の性質上、当然には法務省の所管ではないわけですけれども、私どもといたしましてもそういった問題の重要性は理解しているつもりでございますので、今後、議論の動向を見守って、法務省としてできることがあれば協力してまいりたいと考えているところでございます。
  167. 八代英太

    ○八代委員 どうもありがとうございました。
  168. 杉浦正健

    杉浦委員長 次に、達増拓也君。
  169. 達増拓也

    達増委員 自己決定ということは個人の尊厳の核心でありまして、それは自由の本質、デモクラシーの基盤であります。しかし、自己決定ということには能力の問題というものがつきまといます。  一つには、よりよい自己決定、よりよい決定をするため自己の能力を高めていく、そういう自分に対する責任というものをきちんと持った上でなければ自由というものに価値を置くことはできないわけでありまして、自由と責任というものが常に対になるゆえんであります。  また一方では、身体的といいましょうか、あるいは医学的といいましょうか、自己決定をするための能力を著しく低下させたり、さらにはそうした能力を失ってしまう場合もある。そのとき、いかに個人の尊厳を保ち続けるか、これはデモクラシーのあり方が問われる重大局面であります。しかも、それが、高齢社会ということで、例外的な問題としてあらわれてくるのではなく、すべての人について高い潜在的可能性を持つ問題として迫ってきているわけであります。したがいまして、成年後見の問題というのは、決して一部の人の問題ではなくて、すべての人々の問題であるという認識で取り組まなければならないわけであります。  最近、多重人格が一種ブームになっておりまして、最初はドキュメンタリーで紹介され、その後我が国においても、小説やあるいはテレビ、漫画等々、多重人格ものがはやっているわけであります。これは、高齢社会がどんどん超高齢社会というようになってきて、痴呆等の問題で、いつ自分が自分でなくなってしまうかわからない、また自分の周りにいる人が突然その人じゃなくなってしまう、そういう危機感が非常にリアルなものとして社会全体に広がっている、そういう状況に対応してこういう多重人格の物語がブームになっているのかなというような気がいたします。  もともと欧米でブームになったものなんですけれども、これは、レーガン元大統領がアルツハイマー宣言をしたことは記憶に新しいのでありますけれども、そういう高齢社会における自己決定の問題、アイデンティティーの確保の問題、そうしたことが欧米で先駆けて深刻に問題となり、それで多重人格ブームなども欧米で先に問題になったのかなというふうに考えております。  欧米諸国では、成年後見制度についてさまざまな改革が行われてきたわけでありますけれども、今般、ついに我が国におきましても、法制度を整備して社会全体としてこの問題に取り組もうということで、民法改正等によります成年後見制度の改革ということになったわけであります。個人の能力の問題を制度的に補うことで個人の自由をできるだけ確保していく、日本のデモクラシーがまた新たな高度化、高い段階に入っていくのかなということで、非常に期待も高いのでありますけれども、まず最初に質問いたします。  今般の、民法改正等によります成年後見制度の改革の趣旨、特に現行制度の問題点ということを踏まえてどう改善していくのか、これをまず最初に伺いたいと思います。     〔委員長退席、山本(幸)委員長代理着席〕
  170. 細川清

    細川政府委員 現行の禁治産、準禁治産制度につきましては、さまざまな問題点が指摘されております。  まず第一に、禁治産、準禁治産という二つの類型しかなくて、軽度の精神障害により判断能力が不十分な方については対象とされていないということが第一点でございます。  それから、現在の保佐人取り消し権代理権がなくて、御本人がみずからしない限りは取り消し権が行使されない、それから、保佐人本人にかわって行為をすることはできない、これが制度の欠陥であるということが言われております。  それから、後見人、保佐人になる方にも、配偶者がある場合は必ず配偶者がならなければならないとなっているのですが、例えば痴呆性高齢者の場合には、配偶者の方も大変お年寄りだという場合がありまして、法定後見制度だと実際には機能しない場合があるということが指摘されております。複数の後見人も選べないということになっていますし、法人についても疑問があったわけでございます。  それから、禁治産、準禁治産についてはマイナスのイメージがあると言われていまして、例えば準禁治産とか禁治産という言葉自体、財産を治めることを禁止する宣告ということになっていまして、それが戸籍に記載されるということで、利用者の非常に強い心理的抵抗があるということで、そういった点がいろいろ利用しがたい原因として指摘されておりましたので、今回の改正案では、そういう点を改めるということで改正案ができているわけでございます。
  171. 達増拓也

    達増委員 今の指摘された問題点の中で、まず最初に、現行制度が硬直的な二元的制度だという点、指摘がありましたけれども、もう少し具体的に、どのような点で使い勝手が悪く、またどういうふうに改革、改善していくのかを伺いたいと思います。
  172. 細川清

    細川政府委員 まず、現行の禁治産では、禁治産宣告を受けた方は、すべての行為について行為能力がないということにされております。したがいまして、日常生活に必要な物の購入とか、ガス代、電気代の支払い、そういったものまで法律上は後見人がしなければならなくて、本人ができないということになっていたわけですが、それを今回の改正案では改めまして、日常生活に必要な行為については御本人みずからができるようにしたということが一点ございます。  それから二点目は、先ほどもちょっと申し上げましたが、保佐人の権限が同意権に限られておりまして、その同意を与えるか、与えないかだけしか権限がないということでございました。それで、今回の改正案では、まず保佐人について、同意をしていないことがあって、それが本人の不利益になる場合には、保佐人自身がその行為を取り消すことができるということにいたしました。  それからもう一つは、御本人がみずからできない場合には、保佐人代理権を与えることを可能とする、そういう改正も含んでいるわけでございます。  それから三番目については、先ほど申しましたけれども、軽度の障害者に対する補助制度がないということで、非常に多くの方々が利用できない制度になっていたということで、新たに軽度の障害のある人を対象とする補助という制度をつくりまして、補助人は、御本人の選択により、特定の事項について代理権を与えられ、あるいは同意権、取り消し権を与えることができるということになっておりまして、柔軟な対応ができるようにということで改正をしたわけでございます。
  173. 達増拓也

    達増委員 現行の準禁治産者と保佐人制度については利用件数がわずかであり、ここ数年、禁治産者と後見人の制度については数年間で倍増するぐらい伸びがあるにもかかわらず、準禁治産者と保佐人制度についてはそういう伸びもなく、利用件数もわずかということを聞いているのですけれども、そこはやはり今答弁にあったような問題点があったということでしょうか。
  174. 細川清

    細川政府委員 事件の動向それから原因等について、御指摘のとおりだと思います。
  175. 達増拓也

    達増委員 次に、任意後見制度について伺いたいと思います。  これは、今回の改革によりまして新規に創設された制度ということであります。これは、自己決定という観点から、成年後見制度に新たな地平を切り開く制度で、大変いいと思うのですけれども、現行制度でも、代理契約の契約の仕方によっては、類似の効果のあるものも不可能ではなかったわけなのでありますけれども、今般の諸改正により、新たに制度としてきちっと体制整備することによってどのようなメリットが出てくるのかを質問したいと思います。
  176. 細川清

    細川政府委員 ただいま御指摘のとおり、現行法でも、自分が判断能力がなくなった後の代理人を定めておくということはできるわけでございます。日本の民法では、本人判断能力がなくなっても、委任契約で与えられた代理権はなくならないということになっていますから、それは可能なのですが、御本人判断能力がなくなった後にだれがその代理人を監督するかという問題がございました。したがいまして、従来、この現行の制度では任意後見人的なものを利用しにくかったのは、要するに、その制度に対する公的な監督の制度がなかったからでございます。  そこで、今回御提案申し上げております新しい任意後見制度におきましては、御本人が、自己が判断能力がなくなる事態に備えて、あらかじめ任意後見人となるべき者を契約で定めておくわけですが、その効力が発生するのは、家庭裁判所後見監督人を選任し、その公的な監督がなされるという担保ができてから任意後見契約というものが効力を生ずるということにいたしたわけでございます。こういったことによって、本人の自己決定の尊重と本人保護ということ等の調和を図ろうとしたものでございます。
  177. 達増拓也

    達増委員 先ほど現行制度の問題点として答弁あった中に、戸籍という形で公示することによる弊害という点がありました。今回の改正で、登記による公示に変えるということで、これは、利用する側からすれば利用しやすくなるということだと思います。取引の相手方からすれば、戸籍の場合、だれでも確認作業、チェックしやすさという点はあったと思うわけですけれども、それが登記になることによって、後見人の名をかたって勝手に財産処分をする人とか、うがった見方をすれば、いろいろ制度を悪用する人も出てくるおそれがあると思うのですけれども、そうした弊害をどう防いでいくのか、この点はいかがでしょう。
  178. 細川清

    細川政府委員 確かに、成年後見制度は、御本人行為能力を制限する制度で、そして、第三者に代理権を与えるという制度でございますから、権限の濫用というものは特に問題になりますし、また、取引の安全等が問題になるわけでございます。  そこで、成年後見人等であるあるいは保佐人等であるといったことをどうやって確認するかという問題でございますが、まず、取引の場合に、私はだれだれの成年後見人であるというふうに言って取引を申し込んできた場合には、それは成年後見人と称している人にその旨の登記事項証明書を提出するように、権限を証明する文書を提出するようにと要求することによって権限の範囲を確認することができるわけでございます。  次に、それではその証明書はだれが請求できるかという問題でございますが、これは、今回の法案では、本人後見人、そのほかに配偶者、特定の親族という方が請求できることになっていまして、第三者は請求できないということになっております。したがいまして、その証明書を持っている方はそういう権限のある人だということが確認できるわけでございまして、そういう面でも取引の安全が図られるのではないかというふうに考えておるところでございます。
  179. 達増拓也

    達増委員 次に、今回の改正で、後見人は、今までは一人とされていたものを複数にすることができるようになったということで、これは運用上といいますか実態上、利用する側からすれば非常に柔軟にいろいろ工夫ができる余地が出たということでありましょうけれども、他方、本人にかわって財産処分などの意思決定を行う後見人が複数ということでありますから、その中でうまく整理しなければ、だれが最終的に決めるのかとか、そういう混乱が生じるおそれもあると思うのですけれども、後見人が複数になった場合に混乱を防ぐための手だてというのはどのようになっているのでしょう。
  180. 細川清

    細川政府委員 御本人のさまざまなニーズにかんがみますと、場合によっては後見人が複数選任できるようにしておいた方がいいということが、私どものしたヒアリングでの大多数の意見でございました。そこで、複数選任することができるような案にいたしたわけでございますが、問題は、ただいま御指摘のような場合に、権限の重複とか衝突をどう調整するかというものが出てくるわけでございます。  そこで、この改正案では、基本的には各成年後見人が単独で後見事務に関する権限を行使することもできることとしておりますが、裁判所は、矛盾抵触の可能性を防止するために、事案に応じて家庭裁判所の職権で、成年後見人の権限の共同行使とか、あるいは分掌の定めをすることができるわけです。例えば、財産管理については法律家たる弁護士さんが後見人になる、それから、身上監護については社会福祉士の方がなるとか、そういうふうに分掌を定めることによって権限の衝突を防ぐことができるというふうに考えておるところでございます。
  181. 達増拓也

    達増委員 後見人の決定については、配偶者がいる場合は現行制度では原則配偶者というふうに民法にあるわけですけれども、今回、それを配偶者じゃなくてもよいとした。配偶者がいれば配偶者じゃなければならないということの弊害、先ほどの答弁にもあったのですけれども、もう一度、配偶者じゃなくてもよいとした理由について具体的に伺いたいと思います。
  182. 細川清

    細川政府委員 御指摘のとおり、現行民法では、配偶者がある方については必ずその人を後見人なり保佐人にしなければならないということになっているのですが、これは、福祉関係の実務の方々に聞きますと、特に痴呆性高齢者の方の場合には、配偶者の方も大変高齢で、現実に後見人としての役割を期待することができない場合があるということを聞いておりますので、そこの点はやはり法律上に例外を許さないようにしておくのは適当ではないだろうという判断に至ったわけでございます。  もっとも、この法律の義務づけを取りましても、実際の運用上では、多くの場合は配偶者の方が適任であろう。それは、やはり愛情に基づいて御本人の面倒を見るということが最も適切なものが期待できるからということでございまして、したがって、最終的には、法律上で義務づけることはやめるということにいたしたわけでございます。
  183. 達増拓也

    達増委員 今の点、もともとこうした成年後見が問題になるようなケース、伝統的には血のつながりとか家族制度とかいうものが重視されて、そもそも、この後見制度について、民法では親族編の中に入っていて、また戸籍に公示されるといったところも、伝統的には非常に家族の問題として考えられていたからなのかなと思うわけでありますけれども、今や、高齢社会の問題、介護保険の問題などでも議論されているように、もう家族だけでは大変で、もっと社会的な広がりの中でこうした問題に取り組んでいかなければならないということで、配偶者でなくても後見人になれるようにしたところは非常に革新的な部分の一つだと思うのです。  並行して、今回の改正で、さまざまな団体、施設等、そういった法人が後見人になることが、そういった事態が家族の問題というところから、より社会的な広がりの中で解決していくということで取り入れられていると思うわけですけれども、その辺について伺いたいと思います。
  184. 細川清

    細川政府委員 確かに御指摘のとおり、家族だけの問題にとどまらず、地域全体の問題として考えていくということが従来指摘されておるところでございます。  実際に、後見人にだれを選ぶかという場合でも、私どものヒアリングをした結果では、例えば自治体が設立した福祉関係の公益法人、多くの場合は福祉公社とかいう名前がついておりますが、とか、社会福祉協議会というところ、これは社会福祉法人でございます、あるいは、弁護士さん等の法律の専門家が集まってつくられた法人というものがございまして、こういうところが障害者の支援の事務を現実にされておられるのでございます。  そういったところが、この法律ができますと、公式に後見人となることができるということで、社会資源として新たなものが加わるということになるものと考えております。
  185. 達増拓也

    達増委員 そのように、後見人のあり方について、大分柔軟に、かつ社会的広がりの中で手当てしていくような方向での今般の制度改革になっておりまして、それによって、かなり利用が伸びたり、活用が広まったりすることが予想されるわけでありますけれども、それは一方で、後見制度を監督していくことがまた非常に重要になり、かつ、いろいろ複雑また専門的な知識も要求されるようになってくると思うのですけれども、そうした監督体制の整備については、今回、どのように考えているのでしょうか。     〔山本(幸)委員長代理退席、委員長着席〕
  186. 細川清

    細川政府委員 まず、現行の制度では、後見人については後見監督人を選任できるわけですが、そのほかについてはなかったわけです。今回は、保佐人それから補助人についても後見監督人を選任できるようにいたしたわけでございます。それで、この監督をまず期したいということでございます。  第二点目としては、当然、家庭裁判所が公的な監督もしなければならないわけでして、その点については、裁判所後見人に対して、例えば後見事務の状況を家庭裁判所に報告させる、それから、必要な場合には、どういう処分をするべきかということを命ずることができるようにいたしました。  それからまたもう一つ、御本人が現に居住している家屋を後見人が処分しなければならないと考えた場合には、これは御本人に対する影響が大きいものですから、裁判所の許可を得なければならないということにもしておるわけでございます。
  187. 達増拓也

    達増委員 以上で私の質問を終わりたいと思います。  現行制度の不備な点について、今非常に困って、すぐにでも新しい制度を求めている、そういう方々がいらっしゃいますし、他方で、冒頭述べましたように、これは決して一部の人の問題ではなくて、今や全国民、すべての国民の共通の問題ということでありまして、国全体、社会全体として取り組んでいかなければならない、そういう問題でもあるわけであります。一日も早くこの法案を成立させることで、そうした国民全体のニーズにこたえていくことを希望いたしまして、質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  188. 杉浦正健

    杉浦委員長 次に、上田勇君。
  189. 上田勇

    上田(勇)委員 公明・改革の上田でございます。  初めに、公正証書遺言等の改正につきましてまず御質問させていただきたいと思います。  今回の法案によりまして、聴覚あるいは言語機能障害をお持ちの方が、口授にかえまして手話通訳や自書による公正証書遺言が認められることとなったわけでありますが、これはかねてから聴覚障害者の方々からも要望が出されていたことでございますし、本委員会におきましても、我が党を初め多くの委員の方がこの問題を取り上げて質問させていただいている事項でございます。また、これまでのいろいろ議論を伺う中で、手話通訳を認めない、あるいは自書を認めない合理的な理由も既になくなってきたのではないかということを常々感じていたわけでございますが、そういう意味で、今回、かかる改正が提案されたということは評価するものでありますし、むしろ遅きに失したぐらいのことではないかというふうに考えているわけでございます。  そこで、最初に北岡次官に、今回の改正の意義、また趣旨、そしてこれまでなぜそういう口授に限られていたかなども含めて、今回の改正についての御見解をお伺いしたいというふうに思います。
  190. 北岡秀二

    ○北岡政府委員 委員御指摘の、現行の民法上の公正証書遺言は口述主義をとっておったということで、手話通訳または筆談によることができないということで、いろいろな問題が指摘をされておったわけでございます。  聴覚、言語機能障害がある方々には、公正証書遺言をすることができないということで、それにかわりまして、自筆証書遺言あるいは秘密証書遺言という方式もございまして、こちらで大体、本来は処理できるであろうというような考え方があったわけでございます。  しかしながら、最近、このような障害のある方々も、より安全で確実な方式とされております公正証書遺言を利用できるようにすべきであるという社会的な要請が高まりを見せておりまして、法務省といたしましても、このような方々の権利擁護の必要性、そしてまた近年の手話の発達や普及の状況等を総合的に考慮いたしまして、本法案においてこのような方々が手話通訳または筆談により公正証書遺言をする道を開いたものであります。
  191. 上田勇

    上田(勇)委員 今の御答弁にもありましたように、やはり公正証書遺言が最も安全かつ確実である、それを今回、聴覚あるいは言語の機能に不自由な方々も利用できるようになったということについては大変評価するものでございます。  その意味で、今御答弁の中にも、手話の発達といったことも理由として挙げられていましたが、そういった障害をお持ちの方にもできる限りいろいろな、あらゆる面での権利が的確に保障されるように、今後もぜひまた迅速な対応をしていっていただきたいというふうにお願いするものでございます。  それで、次に、成年後見制度の質問の方に移らせていただきますが、初めに、ちょっと内容について、若干細かい点に及ぶ面もありますけれども、質問させていただきます。  今回、現行制度のもとでは禁治産者の後見人にのみ付与されておって保佐人には付与されていない取り消し権代理権を、後見人に限らず、保佐人補助人にも付与することというふうに改正が提案されているわけでございます。これらは、こういう後見制度の実効を高めるという意味では理解できるものではありますが、同時に、被後見人等の権利の制約を伴う重要な事項でございますので、今回このように改正した理由をまずお伺いしたいというふうに思います。
  192. 細川清

    細川政府委員 ただいま御指摘がありましたように、保佐人補助人に同意権と取り消し権を与えること。取り消し権を与える点につきましては、実は、本人保護には適しているという面と、それから本人の能力を制限する面と、二つあるわけでございますので、この点について、実は、昨年四月に公表した民法改正要綱試案では、検討課題として掲げまして、各界の意見を伺ったわけでございます。その意見の照会の結果、日弁連とか多数の福祉関係団体からは、やはり保佐人補助人に取り消し権を与えるべきだという意見が寄せられました。そういう意見が多数を占めたわけでございます。  その理由は、まず、判断能力の不十分な御本人保護の観点からは、保佐人補助人にも取り消し権を付与する制度の方がより実効的になるということで、従来から、民法の教科書にも、取り消し権がないのは立法上の過誤だとまで書いてあるものがあったわけでございまして、そういう理由でございます。  それから、代理権を与えるということにつきましては、代理権取り消し権とでは、やはり私的自治に対する制約という点では本質的に性格は同じだというふうに考えられますので、補助人に代理権を与えるのであれば、取り消し権も与えても法制的には整合性があるものになるだろうということで、この二つの理由で、取り消し権というものを保佐人補助人にも与えることとした案といたしたわけでございます。  もっとも、本人の判断力が比較的ある補助類型の場合には、補助人が取り消し権を持つことを本人が望まない場合には、本人は同意権の付与に同意しないことによりそういう審判がなされることはないということになりまして、補助人には代理権のみを与えるということが可能になるわけでございます。
  193. 上田勇

    上田(勇)委員 次に、現行の八百五十八条一項において禁治産者の後見人の身上監護義務が定められておりますが、今回の改正では、これを廃止いたしまして、新たに、成年後見人、保佐人補助人すべてに身上配慮義務を設けることとしておるわけでございますが、その理由、それから、こうした変更に伴いまして、後見人、保佐人の役割にどのような変化が生じるのか、その辺の趣旨をお尋ねいたします。
  194. 細川清

    細川政府委員 御指摘のとおり、現行の八百五十八条第一項では、後見人に禁治産者の療養看護に努める義務を課しているわけですが、これは、対象が療養看護というものに限定されて、身上監護の多様な面の後見人の注意義務を規定していないということが一つ問題であります。  それから、後見人自身が療養看護に努めなければならないような、要するに、事実行為との境界が不明確であったという指摘もあったわけでございます。成年後見人の行う行為には、身上監護を目的とするものはもとより、財産管理に関するものでありましても本人の身上に関する事項が多うございまして、成年後見人は、本人の身上に配慮してその事務を遂行すべき一般的な責務を果たすことが求められているところでございます。  そこで、身上面の保護の重要性にかんがみ、この新しい規定では、後見事務の遂行に当たっては、本人の心身の状態、生活の状況に配慮すべき義務に関する一般的な規定を創設するとともに、その規定の中で、自己決定の尊重の観点から、本人の意思を尊重すべき義務についてもあわせて規定することとしたものでございます。したがいまして、成年後見人等は、この身上の配慮義務を負うことによりまして、本人の身上面の保護本人の意思に配慮した後見の事務を遂行するということが責務となりまして、これまで以上に重要な役割を負うことになったということが言えると思います。
  195. 上田勇

    上田(勇)委員 次に、今回の改正は、現行の禁治産、準禁治産制度が余り利用されていないという実態を踏まえまして、現行制度を柔軟かつ弾力的なものとするように、現行制度についていろいろと指摘されている問題点などを種々改めて改正したものというふうに承知しております。先ほど既に質疑が行われましたが、こうした改正によりまして、現行の制度に比べて、新たな成年後見制度の件数、これは相当増加するのではないかと想定されているというふうに先ほどお話があったと思います。  ただ、そこで、今度はもう一つ考えなければいけないのは、この法定後見制度等の利用者が相当増加するということになると、高齢者であった場合に、被後見人等でなくて、つまり、本人が十分な判断力を持っているという場合においても、何らかの契約を結ぼうとしたときに、契約の相手方から、むやみに、被後見人になっていない、したがって、その契約が有効であるということを明らかにするように求められるというようなことはないのだろうかということが懸念されるわけであります。  これは、契約の相手方の立場になってみますと、そういうリスクを回避するという意味では、本当に本人との間の契約が有効であるかどうかということを確かめるというのは、そういう意図があるということも考えられると思うのですが、そういうことを通じて必要以上に高齢者等の経済活動とか社会生活を事実上制限するようなことがあってはならないというふうに思います。そのあたりについて、お考えを伺いたいと思います。
  196. 細川清

    細川政府委員 確かに、取引の相手方にとりましては、後で契約が取り消されるということは大変な事態ですから、そこは注意するのは当然でございましょうけれども、通常、従来からの継続的取引関係がある場合には当然そういった事実はわかると思いますし、また、取引の過程で相手方の判断能力に不審な点がなければ、特にお年寄りだということの一事をもって確認を求めるということは普通はならないのではなかろうかと思っております。  取引の過程で相手方の判断能力について疑問を抱けば、本人とか御家族に成年後見等を受けているかどうか口頭で確認するということになろうかと思いまして、受けているということであれば証明書を出してもらって権限のある人に加わっていただく、受けていないということであればそれで取引をして差し支えないのだろうと思います。わざわざ、質問されて、成年後見等を受けているのに受けていないと答えた場合には、民法二十条のいわゆる詐術の規定がありまして、後から取り消すことができないということになりますので、一般的にはこれで対応できるのではないかと思っております。  私どもも、この点については、例えば銀行取引はどうなるかということで、銀行協会の方々ともこの改正をした場合どうなるかというふうにいろいろ御相談いたしまして、例えば保佐人保佐の決定があった、補助の決定があったということで制限がある場合には、あらかじめ取引銀行にその旨届けてもらうとか、それから、銀行が取引する場合には、相手方に成年後見があるかどうかということを契約書に書いておいてもらうということで、そのことによってそういった問題は防げるというふうな判断に達したわけでございます。  したがいまして、こういう制度ができたからといって、一概にお年寄り一般が不利益を受けるということにはならないのではないかなというふうに思っているところでございます。
  197. 上田勇

    上田(勇)委員 今大臣お見えでございますので、次官、御公務があるということでございますので、どうぞ御退席ください。  そういったことが必要以上に制約になるというようなことはないという御見解でございましたけれども、そういうような配慮というのでしょうか、それは法務省だけのことではございません。政府全体として、高齢者あるいは障害をお持ちの方々が、こうした制度が設けられたがゆえに、もちろん今回の成年後見制度においては日常生活、日常の取引等については本人の意思でできることになっているわけでございますけれども、それでもいろいろな、先ほどちょっと銀行取引というような話もございましたが、社会生活や経済的な活動、そういったものに必要以上の制限が加わらないような御配慮をぜひとっていただきたいというふうにお願い申し上げる次第でございます。  このことについてもう一つお尋ねしたいのですが、今、成年後見を受けているのかどうかという質問に対しては、それは口頭でお答えするということでありました。受けている場合には、それは登記を本人が請求することがあるのですが、受けていないことを証明するというようなことを求められた場合には、何か対応のしようというのはあるのでしょうか。
  198. 細川清

    細川政府委員 御提案申し上げております後見登記等に関する法律におきまして、自己が成年後見等を受けていないという証明書を請求すれば発行することといたしているわけでございます。
  199. 上田勇

    上田(勇)委員 次にお尋ねいたしますが、現行の制度のもとで禁治産、準禁治産の宣告を受けている者は、今回の法案が成立しますとそういった制度が廃止になるのですが、現にそういう宣告を受けている者の今後の立場についてはどうなるのか、また後見登記の取り扱いや戸籍の記載についてはどのように取り扱われるのか、経過措置ということになるのかと思いますが、その辺の御説明をいただきたいと思います。
  200. 細川清

    細川政府委員 経過措置の問題でございますが、現在、禁治産、準禁治産の宣告を受けて後見人、保佐人がついている人につきましては、新しい法律施行後は、基本的には新しい制度のもとでの後見保佐を受け、後見人、保佐人となっているというふうにみなされることになるわけでございます。ただ、今回の法律では、浪費者については保佐対象といたさないことにしておりますので、その人については従来の法律がそのまま適用になるという形での経過措置が設けられておるところでございます。  それから、登記と戸籍の関係でございますが、附則に規定がございまして、従来、禁治産、準禁治産の宣告が戸籍に記載された方は、登記所に申請することによって、登記に移しかえることができます。そして、そうした場合には、最終的にはもとの戸籍を再製いたしますので、私どもとしては、その再製の際には、従来の禁治産や準禁治産のところは移記しないでいいという扱いにしたいと思っているのです。そういうことによって、新しい制度に戸籍から登記に乗り移っていくということになるわけでございます。
  201. 上田勇

    上田(勇)委員 ありがとうございました。  そういう意味で、せっかく今回、現行の制度のいろいろな問題点について改めて新しい制度を発足させるわけでございますので、そういった移行についても、円滑、また可能な限りそういったものがすべて行われるように、ぜひこれからもいろいろな形での取り組みをお願いしたいというふうに思うわけでございます。  それで次に、この委員会では、今成年後見制度審議しておりますが、聞くところによりますと、厚生省においては、本年の十月から地域福祉権利擁護事業というものの開始を予定しているということで、同事業においても、市町村の社会福祉協議会が窓口となりまして、生活支援員という方が高齢者の方々やその他障害をお持ちの方々を補助して、金銭管理を初めとしますいろいろな補助業務を行っていくということでございますが、同事業の生活支援員と成年後見人、とりわけ今回設けられている任意後見人というのは、見た感じ、かなり仕事の内容とかは類似している部分もあるように思いますけれども、この生活支援員と成年後見人、とりわけ任意後見人との関係性、そういったものはどのようにお考えなのか、御見解をお伺いしたいと思います。
  202. 細川清

    細川政府委員 御提案申し上げております成年後見制度は、財産管理及び身上監護に関する契約等の法律行為を援助するものでございます。これに対して、現在厚生省で進めております地域福祉権利擁護事業は、利用者ができる限り地域で自立した生活を継続していくために必要なものとして、比較的簡便な仕組みにより、福祉サービスの利用手続の援助や代行、それに付随した日常的な金銭管理等の援助を行うものとされているわけでございます。  地域福祉権利擁護事業は、事業の実施主体が本人と契約を締結することにより援助を開始することとしております。したがいまして、御本人判断能力がなく、契約締結能力がないという場合には、成年後見制度に選任された後見人等あるいは任意後見人がいれば任意後見人等がこれとの医療契約を締結することになるわけでございます。  地域福祉権利擁護事業でいろいろ契約を締結いたした後に、本人判断能力がなくなっている場合とか、あるいは援助の内容を変えたい場合には、これは適宜、成年後見等の制度につなげていく必要があるということになろうかと思います。  こうしたことから、成年後見制度と地域福祉権利擁護事業とが連携を密にして、両者が相互に補完し合う形で機能を果たすことによって、判断能力の不十分な方が地域で安心して生活することができるような仕組みが完備されるのではないかというふうに考えているところでございます。
  203. 上田勇

    上田(勇)委員 あともう一つ、後見人の選任に当たっての考慮すべき事情等について、先ほどちょっと質問で出ましたので省略させていただきますが、最後に、やはりこの成年後見制度、私は、高齢者、障害者の方々の生活、健康、財産上の権利を適正に守っていくという意味で非常に重要な制度であり、積極的な活用が期待されているものであるというふうに考えております。  特に、現在このように少子高齢化社会ということが広く一般にも言われるようになって、これまで以上に成年後見制度についての関心は高まっているというふうには思いますけれども、それでも、いざ自分や近親者がこの制度を利用するというような事態が具体的に想定されるに至らない限りにおいては、やはり残念ながらなかなかそれほど関心を持っていることではないんではないかというふうに思うわけでございます。  先ほどちょっと厚生省の地域福祉権利擁護事業のことについてもお尋ねをいたしましたが、これはやはり、福祉事業において、特に利用者の方々と最も多く接点を持っている部門が、例えば社会福祉協議会であったり福祉事務所であったりというようなことではないかというふうに思うわけであります。  そういう意味で、ぜひ、この成年後見制度、非常に重要な制度でありますので、広く国民に周知をしていただかなければいけないわけであります。法務省としても、厚生省やその他関係行政機関また各種団体等の協力も得ながら、そして、この制度について国民に広く周知させるため、ぜひ広報活動等を積極的に行っていただきたいというふうに思いますけれども、その辺についての方針をお尋ねしたいと思います。
  204. 細川清

    細川政府委員 午前中の質疑で法務大臣からお答え申し上げましたとおり、成年後見制度の適切な運用に当たりましては、ただいま御指摘のありましたような、厚生省、自治体あるいは福祉関係の機関、それぞれのさまざまの団体との協力が不可欠でございます。私どもといたしましても、例えば、わかりやすいパンフレットをつくってそれらを関係機関に御送付申し上げるとか、あるいはこの制度の内容について周知徹底を図る、あるいは法務省のホームページにそれを掲載するとか、そういうさまざまな工夫を凝らしまして制度の周知徹底について努めてまいりたいと思います。
  205. 上田勇

    上田(勇)委員 以上で質問を終わらせていただきます。
  206. 杉浦正健

    杉浦委員長 次に、木島日出夫君。
  207. 木島日出夫

    ○木島委員 日本共産党の木島日出夫でございます。  いよいよ成年後見制度改正に関する関連四法案審議が始まったわけでありますが、私どもも、現行の禁治産、準禁治産制度が非常に硬直的で使いにくい、そういう状況を、欠陥を是正して、痴呆性のお年寄りや精神障害のある方々が、自己決定権が尊重されながら、かつ必要な保護、援助が図られる、そういう法的制度をつくること、大賛成でありまして、ノーマライゼーション推進の立場から積極的に取り組んでいきたいと考えているわけであります。  二つの観点が非常に重要だと考えております。一つは、利用しやすい、そういう方々が安心して利用できる制度であること。もう一つは、後見人や後見監督人等が代理権を濫用して、例えば痴呆性のお年寄りの方々の財産などを不当に侵奪する、それを防ぐ歯どめをしっかりかけるということ。一見相反する要請でありますが、この二つの観点が非常に大事だと思いますので、これからそんな観点から、政府から出されている法案について基本的なところから質問をしてみたいと思います。  最初に、成年後見保佐補助、三類型の制度にしようとしているわけでありますが、午前中も質問がありましたが、民法上の行為能力の制限の制度については、抜本的に使い勝手のいい制度をつくるんであれば、むしろ、ドイツが一九九二年から進めている一元的制度、いわゆる世話制度、これの方がいいんではないか。裁判所が個々の当事者の身体的状況、財産的状況、親族の関係その他その他、一人一人しっかり判断をして、この当事者はこのぐらいの行為能力制限でいいんじゃないか、そして、こういう世話人をつけるのがいいんじゃないかという具体的な判断をするいわゆるドイツ型の一元的制度の方がいいんではないか。  フランスのような三類型、日本の今回の法改正と同じですが、三類型だと型にはまってしまって、自己決定権の尊重という立場から見るとやはりよくないんじゃないか。現行日本の制度禁治産、準禁治産の二類型ですね。三類型にしたことやら、幾つかの前進、是正はあるとは思うんですが、この際思い切って、使い勝手よくするにはドイツ型の一元的制度がいいんじゃないかという意見もたくさんあったと思うんです。  法務省は、この法案をつくるに当たって十分にその辺は検討されたと思うんで、改めて、なぜドイツ型の一元的制度をとらずに多元的制度、三類型制度を提案されようとしているのか、詳しく述べていただきたいと思います。
  208. 細川清

    細川政府委員 ただいま御指摘の一元的制度か多元的制度かという問題につきましては、実は、この検討を法制審議会で始めた当初から基本的な問題として大変議論された問題でございます。最終的には、いわばフランス型の多元的制度をとりながら、各人の個別的な状況に即した、柔軟かつ弾力的な措置の設定を保障する一元的制度のメリットも取り入れるという方向でこの御提案をさせていただいているわけでございます。  基本的に多元的制度をとる主な理由でございますが、まず第一に、我が国では、精神上の障害のある方の財産をめぐる親族間の紛争を背景とする禁治産等の申し立てがふえている実情にあります。そこで、重度の精神上の障害を有する方については、本人保護の観点から、一定の範囲の代理権取り消し権等による保護をあらかじめ法律で定めておくことが必要であると考えられたわけでございます。  これに対して、重度の精神上の障害を有する方について、申立人の請求に応じて特定の法律行為のみについて代理権を付与するということでは御本人保護のためには不十分な場合があるだろうということでございます。判断能力の程度に応じて保護措置の内容を定めることとした上で、判断能力を全く欠く方については一定の範囲の保護の措置を法定し、次に、判断能力の著しく不十分な者については本人の選択にゆだねる部分と法定の範囲を併存させる。さらに、もう少し軽度な方については保護措置を本人の選択にゆだねる。そういう多元的な枠組みをとるのが適当であろうということが第一の理由でございます。  第二の理由としましては、仮に一元的制度をとっても、これを実際に裁判所で運用していく場合にはある程度の類型化の必要が当然実務上生じてきますので、多元的制度をとって弾力的な制度とした場合と適用の結果においてはそんなに差異が生じないではないかということでございます。  それから、多元的制度のもとで幾つかの法定の類型と基準を定めている方が、制度の利用者としても予測可能性があって利用しやすく、自己決定が容易であり、実務的にも運用しやすい、こういった点が考慮されて基本的には多元的な制度がいいということになったわけでございます。  それからもう一つの点は、実は多数の法律で欠格事由として禁治産、準禁治産が定められているわけなんですが、それを一元的制度にした場合、軽い障害の方も入ってくるわけなんで、そういう方についても欠格制度が適用になるようなことになっては、これはかえって困ってしまうという問題もございまして、そういったことをさまざま考えまして、多元的制度が適当なのではないかという判断に達したわけでございます。
  209. 木島日出夫

    ○木島委員 法務省も日弁連の意見書は十分承知していると思うのです。日弁連は今もやはり一元的制度の方がいいという立場をとっているようであります。  四つの理由を今法務省述べられましたが、重度の場合、中度の場合、軽度の場合という三つに分けるわけですね。しかし、障害を持った方々の立場からしますと、そう三つに分類されても、逆に言うと困る。障害の程度についていろいろなレベルはあると思うのですね。そして、財産をどのくらい持っているかについても、人によってまちまち。それから、兄弟がいる人、いない人。親子がいる人、いない人。親族がいる人、いない人。いろいろ本人を取り巻く環境は違う。  そういうことを全般的に判断をいたしますと、私は、どちらがより本人の自己決定権が尊重される制度かといったら、やはり三つの型にはめないで、一人一人の置かれた条件をよく裁判所が見て、その人に一番合った後見制度といいますか、それを適用するという方がいいのではないかと思うのですよ、そのこと自体比較すれば。いろいろほかのことは別ですよ。それはお認めになりませんか。裁判所の能力とかいろいろあるでしょう。それは別の問題ですよ。どうですか。
  210. 細川清

    細川政府委員 立法する場合に、立法の上で尊重しなければいけないさまざまな価値というものがあると思うわけです。  本件の場合には、一つは本人の自己決定の尊重という価値がある。それは、そのことだけ考えれば、あるいは御指摘のように一元的な制度の方がいいのかもしれません。  他方、別の価値もあるわけで、本人の実質的な保護を図るにはどうしたらいいかという価値とか、そういう他の利益が絡むと、また別の考慮もあるということだと思っております。ですから、そういった異なる価値をどのように調整していくかというものが本件で問われているものだと思っております。  なお、日弁連の意見書は私どもももちろん熟読玩味しておりますが、最終的に法制審議会で、日弁連の代表の方もこの改正案のもとになっております答申については御賛成になっているわけでございます。
  211. 木島日出夫

    ○木島委員 私も、多元的制度はだめだと言っているわけじゃないのです。どちらの方がよりいいかという選択の問題だと思うのですね。  それで、また逆の立場からちょっと質問してみたいのですが、日本で今一元的制度がドイツのようにとれなかった理由、それをお聞きしたいのですよ。  今、四番目の理由として挙げたのは欠格制度ですね。いろいろ日本は残っていますね。今度の法改正によっても大分残るわけですね。それがあるからだというのはおっしゃるとおりだと思うのです。  逆に言うと、そこが批判されているのではないでしょうか。全部それは取っ払ってしまう。行為能力の制限の制度と、選挙権初めいろいろな資格を付与できないという、その制度がリンクしているからドイツのような一元的制度がとれなかったのじゃないか、日弁連はそう指摘していますよね。  むしろ、この際、行為能力の制限の規定と選挙権その他の欠格制度は切り離して、障害があるからといって資格を付与しないというのは全面的に廃止する、そういう基本的な姿勢に立てば、その制約は一つ取り除けるのじゃないかと思うのですが、それはどうでしょうか。
  212. 細川清

    細川政府委員 一元的制度か、いろいろ資格制限があるかというのは、必ずしもドイツにおいても結びついているわけではございませんで、ドイツでも一元的制度をとられていますけれども、さまざまな資格制限というのが残っております。これは私どもの出しました関係資料にも、かつて発表しましたものには載っているわけなのですが、ですから一概にそのことだけが問題ではないわけです。  私が先ほど申し上げましたのは、いわば最後の理由として申し上げたわけで、新しく軽度の障害のある方を対象として保護制度を設けるのですが、その方たちについて欠格条項等が適用されるようなことになっては本末転倒になってしまうということで申し上げたわけでございます。  そして、一元的制度か多元的制度かという理由については、やはり現在までに培った実務の積み上げがあるわけですから、円滑に新しい制度に乗り移っていくためには、従来の制度とそんなに違わない制度の方が運用が円滑に行くということも大きな理由であったわけでございます。
  213. 木島日出夫

    ○木島委員 今の答弁で、ドイツでも一元制度はとっているけれども、いろいろな形で資格制限の制度はあると、それはそのとおりなのですよ。しかし、それは、資格制限の制度はそっちの観点からつくっているのであって、民法上の行為能力がこの人たちにはないから即リンクするような形で資格制限をさせないという点では、ドイツの方が一歩前進しているのじゃないかなというふうに思うのですよ。  これは非常に根本問題でありますし、それを論じますと時間がなくなりますから、この辺でやめますけれども、私は一定程度時間が来てから、やはり見直しのときには、一元的制度について改めて再検討する価値があるのじゃないかと思いますので、そのことだけ述べて次の質問に移っていきたいと思います。  法務省の今度のように、三つの類型に区分いたしますと、やはり区分の基準というのは非常に大事になってくると思うのですね。事理弁識する能力を欠く場合と、著しく不十分な場合と、不十分な場合によって、後見か、保佐か、補助かに区分けされる。区分けされると、法律に従って、行為能力が完全に制限されるか、一部制限されるか、そういうふうに違いが出てくるわけですから、その区分の基準というのは非常に大事だと思うのですね。  それで、まずお聞きしたいのですが、今度の民法改正によりますと、請求によって家庭裁判所が審判するという仕組みですね。そうすると、例えば補助の審判を請求したが、家庭裁判所がいろいろ調べてみたら、これは補助じゃなくて保佐が必要ではないかというふうな認定をしたときに、請求と違った類型の審判をすることができるのでしょうか。それは禁じられているのでしょうか。
  214. 細川清

    細川政府委員 現在の実務におきましても、準禁治産宣告の申し立てがあった場合で、これは準禁治産では不十分で禁治産宣告でやるべきだという場合には、改めて禁治産宣告の申し立てをしていただいて禁治産宣告をしているという実務の運用をしておるわけでございまして、改正後もやはり類型が異なっていれば、改めて適合する申し立てに付していただけるようにということで裁判所から勧告するということになろうかとは思います。
  215. 木島日出夫

    ○木島委員 そうすると、職権で裁判所は申し立てと違う類型の審判はできないと聞いていいのですか。
  216. 細川清

    細川政府委員 民法の規定の上では、保佐の要件は、後見の水準に達している者は保佐にはできないという実体的要件ができておりますので、これは裁判所が自分の判断で申し立てと異なる判断をするのは適当ではないわけで、運用としては、本人にも言って、改めてそういう申し立てをしていただくということが適当であるというふうに考えているわけでございます。
  217. 木島日出夫

    ○木島委員 申し立てをする方にはする方の理屈というのがあると思うんですね。私は大変障害が重度だから後見にしてもらいたいとか、あるいは、私の場合は中程度だから保佐の審判をしてもらいたい、あるいは、私はそんな状況じゃないから補助の審判をしてもらいたい。申し立てをする方には申し立てをする方の利益と考えがあって申し立てをするわけですね。  しかし、裁判所は調べてみたらそういう認定じゃなかった。そういうときに、今のお話ですと、勝手にはやれない、そして改めて出し直してもらいたいという答弁でしょう。そうすると、私は補助の審判を求めたのに、裁判所が勝手に出し直せと。おまえはもっと重度だから、後見保佐の方の申し立てをしろということだと思うんですよ。しかし、嫌だ、そんなのは応じたくないという場合には、これはやめてしまうと思うんですね。そういうことですか。
  218. 細川清

    細川政府委員 御本人の申し立てしたものより重いものを認定するのは適当でないということで、結局、軽い方に認定するのはいいだろうというのは、従来からそういう考え方もあるわけなんですが、重い方にやるのはやはり、少なくとも申し立ての趣旨を変更してもらわないといけない。それはやはり、御本人の申し立てを無視して審判をしない。すなわち、これは本人行為能力の制限になるわけですので、申し立ての範囲を、ないのに超えて認定するのは適当ではないということでございます。
  219. 木島日出夫

    ○木島委員 はい、わかりました。  それでは、三類型ですが、重い方からいきますと後見、そして保佐補助ですね。後見の申し立てをしたが、比較的軽いので保佐補助にすることは可能、しかし逆は不可能と。本人の改めての申し出がなければ不可能。これが法務省の公権解釈だ、そう聞いてよろしいですね。
  220. 細川清

    細川政府委員 従来の理論から申しますと、こういう三段階の法律をつくりますとそういう解釈になるであろうというふうに考えております。
  221. 木島日出夫

    ○木島委員 はい、わかりました。  それから、本件制度は請求が前提になっているわけですね、今聞いたとおりであります。しかし、ドイツなどが非常に利用が多いという理由に、職権によってこの制度を発動することができるという仕組みになっているようですね。いろいろな情報あるいは福祉事務所あたりからの情報が裁判所へ来れば、裁判所は職権で調査して一定の発動をする。  今回、法務省が、そういう成年後見制度を利用する場合に、職権を基本的に認めなかった、申し立て、請求を前提にしたその基本的な理念というのはどこにあるんでしょうか。
  222. 細川清

    細川政府委員 この点は現行法と同じでございます。  現行法が職権により開始することをしていない理由は、やはり私的自治の尊重の観点から、本人行為能力等に一定の制限を加えることとなる手続を、第三者で中立な判断機関である裁判所が職権で開始することには問題があるという理由が第一点。  それから、判断機関として、司法機関としての性質上、判断能力の不十分な方に関する積極的な情報の収集探知といったことは裁判所の事務になじまないということで、これは職権でということにはいたさなかったわけでございます。     〔委員長退席、山本(有)委員長代理着席〕
  223. 木島日出夫

    ○木島委員 次の質問に移りたいと思うのですが、どういう人が後見人に選任されるか、決定的に重要だと思うんですね。被後見人等の財産が正しく守られるかどうかが、どんな人たちが後見人に選ばれるかによってある程度決められると思うからです。  それで、民法八百四十三条第四項ですが、利益相反にある個人や法人をそういう後見人から排除するということが非常に必要だろう。この制度をつくるに当たって多くの団体や個人からも、ぜひ、利益相反にある個人や法人は後見人に選任してはならないという排除の明文上の規定が必要だということが意見として言われていたと思うのです。そういう事件も起こっているからだと思うんですね。  ところが、この法案は、そこまでは明文の規定を置かずに、裁判所後見人を選任する選任の理由の中の一つに利害関係の有無を判断材料にするという程度にとどめているんですね。これはぜひ、利益相反にある個人や法人は後見人にしてはならない、そのぐらいのきちっとした規定があってもいいんじゃないかと私は思うのですが、そこまで規定を置かなかった理由は何でしょう。
  224. 細川清

    細川政府委員 明確に利益相反の関係にある人を後見人等に選任することは、これは適当でないことは明らかでございます。  ただ、この条文は、後見保佐補助すべてにわたって他の方でも準用されている規定でございますし、また、利益相反ということは非常に幅広い概念でございます。配偶者であっても、一定の例えば分割相続等に関しては利益相反する場合もあるわけですから、利益が相反する場合はこれを一切後見人にできないということにされてしまうと、これはやや硬直的な制度になってしまう。  そこで、そういったものを重要な考慮要素として考慮していただいて、最終的には家庭裁判所の適切な判断をまちたいというのがこの規定の趣旨でございます。
  225. 木島日出夫

    ○木島委員 そうすると、逆に、後見人選任についての規定、これを保佐人選任や補助人選任の場合に準用するという方がむしろ硬直的であって、後見人というのは大変な権力を持つわけですよ。代理権取り消し権代理権というのは不動産処分できるんですからね。そんなすさまじい権力を持つ後見人を選ぶ場合の条文と、そんな権力がほとんどない補助人を選ぶ条文を同じ条文でやるなんということの方がちょっと配慮が足りないんじゃないかと私思うんですよ。どうですか。
  226. 細川清

    細川政府委員 後見人にいたしましても保佐人にいたしましても補助人にいたしましても、権力というよりは、要するに御本人の利益を図る立場の方です。そういう方については、やはりここに書いていますように、共通な選任の事情というのがあるのではないか、権限の大小にかかわらず、ここに書いてある事情は当然に考慮しなければならない事情ではないかというふうに考えて立案したわけでございます。
  227. 木島日出夫

    ○木島委員 ですから、すべての後見人や保佐人補助人がまじめに忠実に、被後見人や被保佐人、被補助人の利益を図って一生懸命努力するという姿を想定しているんだろうし、私もそうあるべきだと思うんです。  しかし、万が一という場合がありまして、その被後見人が多額の財産を持っていた、しかし痴呆性老人だ、親戚もいない、自分が後見人になった、土地を売れば何億という財産が手に入るなんというのが現実に出てきますと、やはり人間の心というのは変わってしまうわけでありまして、そういう場合にも、後見人になった者がふらちな考えを起こさない、代理権を濫用しないという歯どめがやはり必要だ、その歯どめこそ法律の中に規定しておかなきゃいかぬと思うのですよ。  そんな観点から八百五十九条の三のところを見ますと、居住用不動産の処分についての許可という条文がありますね。「成年後見人は、成年被後見人に代わつて、その居住の用に供する建物又はその敷地について、売却、賃貸、賃貸借の解除又は抵当権の設定その他これらに準ずる処分をするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。」これはある面では当然だと思うのです。  しかし、この条文を見ますと、その居住の用に供する建物またその敷地の売却の場合にのみ裁判所の許可なんですね。そうすると、ある痴呆性老人が非常にたくさんの資産を持っていた、都内の一等地にたくさんの土地を持っていた、居住用じゃない、そういう場合には、裁判所の許可なくして、後見人が代理権で売却もできることになってしまうのじゃないでしょうか。  だから、私はそういうのを歯どめをかけて防がなければいかぬと思うので、裁判所の許可は、その居住の用に供する建物、敷地だけじゃなくて、不動産はすべて、あるいは重要な動産についても、非常に高価な動産なんかについても、売却などをするときには裁判所の許可に係らしめた方がいいのじゃないか、当たり前じゃないかと思うんですが、そうしなかった理由は何でしょうか。
  228. 細川清

    細川政府委員 まず、居住用の不動産の処分について特に裁判所の許可に係らしめました理由でございますが、立案の過程でいろいろな関係の団体からしたヒアリングの結果では、やはり住環境の変化は御本人の心情面に影響が極めて大きいということでございましたので、少なくともこれについては裁判所の許可を得なければならないということにいたしたわけでございます。  その他の、いわば遊休といいますか、現に利用していない財産については、通常の監督の体制によるべきである。すなわち、多額の財産を持っておる場合には後見監督人が選任されるでありましょうし、後見監督人が選任された場合には、後見人は後見監督人の許可を得なければ不動産の処分はできないという制度になっておりますので、これを利用していれば問題は防げるのではないかというふうに考えた次第でございます。
  229. 木島日出夫

    ○木島委員 しかし、後見監督人の選任は必ずやらなきゃならぬわけじゃなくて、裁判所が必要と思うときにやるだけでしょう。だから、連動していないのですよ。被後見人が物すごい資産家であって、遊休不動産をたくさん持っておる、あるいは何億という預貯金を持っておる、そういう場合には必ず後見監督人をつくらなきゃいかぬという、この法律はそういう連動をしていないでしょう。どうですか。
  230. 細川清

    細川政府委員 この法律案で新設することとしております第八百四十九条の二は、「家庭裁判所は、必要があると認めるときは、成年被後見人、その親族若しくは成年後見人の請求によつて、又は職権で、成年後見監督人を選任することができる。」ということになっております。ですから、御指摘のように、多額の財産を持っておられるということでありまして、仮に心配があるとすれば、裁判所は職権で後見監督人を付すことができるわけで、それも一人で足りなければ二人、複数を選任することも可能でございます。そういうことによって不当な権限の行使を防止することができるというふうに考えているわけでございます。
  231. 木島日出夫

    ○木島委員 そうすると、八百四十九条の二の解釈の問題になると思うんですよね。「必要があると認めるとき」というのはどういう場合か。ではちょっと言ってください。
  232. 細川清

    細川政府委員 これは事案に応じてまさに必要があると認めるかどうかということでございますけれども、ただいま御指摘の財産が多額にあるというような場合も、それは誘惑が大きくなる場合でございますから、一つの例に挙げられると思います。
  233. 木島日出夫

    ○木島委員 その辺の具体的な、家事審判規則等をつくる予定はあるのですか。  やはり濫用を防止する、それが一番大事な観点だと私は思うんです、この法律がうまく運用されるかどうか。今事件が各地で起こっているのですよ。特別養護老人ホームに入所したお年寄りの預貯金二千万円がその職員によって横領されてしまったとか、勝手に不動産を売却されてしまったとか。ひとり暮らしの痴呆性のお年寄りなんかは、印鑑全部預けてしまうわけですからね。それをいかに防ぐかというのは、決定的なんですね、この法律が動くかどうかの。  そこに不安がある以上は成年後見制度はうまく動いていかないのだろうと私は思うんです。その不安を完全に取り除く制度的保障があって初めて安心して、では後見の審判を求めようかということになると思うのでね。この「必要があると認めるとき」というのは、八百四十九条の二の解釈に任せたのじゃ、国民の皆さんは安心できないと思うんですよ。どうでしょうか。
  234. 細川清

    細川政府委員 最高裁判所におかれましては、現在、成年後見制度法律が成立した場合に備えて家事審判規則の改正について検討されておられると聞いております。ただいま御指摘になった点は、手続等という面よりも実体法の解釈という面でございますので、規則には載りにくい問題なのかなという感じがしておりますが、少なくとも最終的な結論が出ておりません。当然、きょうの審議の様子は最高裁もテレビ等で見ていると思いますので、御参考にされるのではないかというふうに思っております。
  235. 木島日出夫

    ○木島委員 時間の関係で、任意後見契約についてお聞きしたいと思うんです。これは新しい制度ですので、ちょっと具体的に幾つかお聞きしたい点があるのです。  まず、基本問題として、私はこれは非常にすばらしい制度だと思うんです。高齢者等の自己決定権を十分に生かしつつ、財産の保全等も図りながら老後をしっかり面倒見てやるという、大変大事な、非常にいい制度だと思うんですね。それだけに、この制度を国民の皆さんがよく利用するということは非常に大事だと思うので、そんな観点からお聞きしたいのです。  いい制度だけに、この制度が使われるようにするために一点だけ問題点を指摘しますと、この任意後見契約が今度の法律によって類型化されました。しかし、この法律を読んでも、現行民法上の委任契約は排除されないわけですね。そうすると、この任意後見契約に基づく任意後見制度民法の委任が併存することになってしまうのじゃないかということですね。そこに一番問題点がある。  千葉大学の新井誠先生なんかのジュリストの昨年九月十五日号の論文を読みますと、それだけはやめてもらいたい、民法の委任なんかはやめて、せっかくこのいい制度をつくるんだから、任意後見契約に一元化させるべきではないかという大変辛らつな、厳しい指摘があるのですが、それはどうなんでしょうか。
  236. 細川清

    細川政府委員 確かに、御本人が通常の委任契約をして、かつその上で任意後見契約をするということは理論上は考えられるわけなんですが、私どもが法制審の審議の過程で多くの弁護士さんの方から意見を伺ったところでは、現実にはそういうことは起きないだろうということは言われておりました。  それから、もう一点大事なことは、理論的に自己決定を尊重し、私的自治を尊重しようという制度が任意後見制度でございます。したがいまして、任意後見制度ができたから、もともと民法上、私的自治の原則上許されている普通の委任契約を結ぶことを禁止するとか、法律上当然無効にするということは私的自治の原則からも無理なのではないかというので、そういった結論になったわけでございます。
  237. 木島日出夫

    ○木島委員 答弁はわかるのですが、任意後見契約制度は大変すばらしい制度だと私は思うんですよ。公正証書できちっと契約の内容が公証人によってチェックされる、そしてさらに、この契約が発効する条件として裁判所が任意後見監督人を選任する、そこで最大のチェックが働くわけで、これはうまく回転すれば非常にすばらしい制度になると思うんですよ。  逆に言うと、こういう契約を結ぼうとする人、被後見人じゃない方ですね、任意後見人になるような立場の人から見ると、これは大変な制約ですね。公正証書でやらなくちゃいかぬ、裁判所によって任意後見監督人が選任されて初めて発動するのですから、大変な制約になる。  そうすると、悪いことを考える人にとってはそんな制約は嫌ですから、うまいこと言ってだましだまし痴呆症のお年寄りと契約してしまえ、民法上の私的契約をしてしまって、代理権を取得して、印鑑も印鑑証明も不動産登記権利書なども預かってしまって、ほしいままにするというような状況を考えてくると思うんですよ、ふらちなことを考えている人は。そういう連中は、民法上の委任契約を結んでほしいままにすることがあるのじゃないかと思うんですよね。そういうのを防止する。  せっかくいい制度ができるのですから、任意後見の契約は大体これに一本化するような担保があってもいいんじゃないかと思うんです。千葉大学の新井先生はそこを指摘しているんだと思うんですが、どうなんでしょうか。     〔山本(有)委員長代理退席、委員長着席〕
  238. 細川清

    細川政府委員 千葉大の新井先生がそういう御意見だということは承知しておりますが、法制審議会でもそういう御意見は少数意見だったように記憶しておりますし、それでは、任意後見契約ができたら正常な判断の人でも委任契約ができないということになってしまうわけなので、それは幾ら何でも私的自治の原則から難しいんではないかというのが今回の結論になった理由でございます。
  239. 木島日出夫

    ○木島委員 では、次の質問に移ります。  濫用を防止する最初の歯どめは、公証人によるチェックだと思うんですね。公正証書で任意後見契約を結ばなければいけないということであります。  そこで聞くんですが、公証人はどの程度のチェック機能を持つのかということであります。後見契約の中身ですね。例えば、財産処分権を無制限に後見人に与えてしまうような契約とか、費用の契約があると思うんです、法外な後見費用を、一カ月百万とか五十万とか、乱暴な費用の約定なんか。あるいは、契約の中に、違法とまでは言えないけれども社会的に不当、不相当な条項などがあったときに、公証人はチェックしてそこは排除できるんでしょうか。
  240. 細川清

    細川政府委員 公証人は、基本的な責務は、嘱託人である任意後見制度を利用しようとする人が本当にこの契約の内容を理解してその契約を結んでいるかどうかということをまず確認する必要があるわけでございます。その次に、その内容について、あなたはこういう内容で本当にいいんですかというふうに、内容をよく説明して判断を求めるということも必要になってくるわけでございます。  ただ、当事者が、任意の問題ですから、間違いなく真意の上でこの契約でいいと言えば、それは公正証書を作成しないということはできないわけでございます。
  241. 木島日出夫

    ○木島委員 大体私想定しているのは、財産がたくさんあるけれども身寄りのない高齢者が、例えば特別養護老人ホームとか、いろいろな、信頼する自分の身の回りの世話をしてくれる方がいて、非常に信頼できる人だということで、そういう場合に、後を託してこういう任意後見契約を結んでいくんじゃないかと思うんですね。そうすると、任意後見契約を結ぶ段階では非常に人がよくて間違いない人だと思うわけだけれども、契約が成立してしまった後、心変わりもするわけでありまして、そういうのをやはりチェックする必要があると思うんですよ。  それは、一つは裁判所後見監督人を選任するときにチェックできるんでしょうけれども、その前段階で、公証人が、契約の内容にちょっと社会的に不相当なものがあるときには、ちょっとこれはやめた方がいいんじゃないかということで、やはりチェックしてもいいんじゃないかとは思っているんですが、それはできないということですね。
  242. 細川清

    細川政府委員 行為の問題といたしましては、法律家としての公証人が、これは問題ありますよというふうに当事者に勧告するのは、いわば当然の責務だと思うわけです。ただ、それを十分わかった上で当事者がそういうふうにされるというのをだめだと言うことは理論的にはできないんじゃないですかということを申し上げたわけでございます。
  243. 木島日出夫

    ○木島委員 時間が来ましたから、終わります。まだ質問の機会があろうかと思いますので、引き続き幾つかの問題について質問をしていきたいと思うんです。  最後に、ひとつ大臣の御所見をお伺いしたいんですが、非常にいい方向で法改正がなされると思うんですが、これが正しく運用されるというのは非常に大事だと思いますので、後見人等によって濫用されない、被後見人の財産が間違っても食い物にされるような仕組みになってはいかぬというふうに思うんで、その歯どめがいろいろな形で必要じゃないかというふうに私一般的には思っているんですが、どうでしょうか、御意見だけお聞きして、質問を終わります。
  244. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 今御指摘になっております、そういう悪用されないということは、信頼されるということでありますし、また、この制度が発展していく基盤を築くわけでございますので、十分留意して取り組まなければならないと思います。
  245. 木島日出夫

    ○木島委員 終わります。
  246. 杉浦正健

  247. 保坂展人

    保坂委員 社会民主党の保坂展人です。  まず、今回新設された補助の類型についてお聞きをしたいんですが、本人が申し立てをした場合にどういった手続でこれは判断されていくのか、ちょっと簡単に説明いただきたい。
  248. 細川清

    細川政府委員 御本人みずからが補助を申請された場合ですね。その場合には、要するに、家庭裁判所の調査官がその方に面接し、あるいは、その方の主治医がおられれば主治医の関係の方から意見を聞き、あるいは、社会福祉の関係の人が関係しておられればその方から意見等を聞いて調査した上で、最終的に裁判官が御本人みずから審問する場合もございましょうし、そういう過程を経て、家事審判という形で補助の決定がなされるわけでございます。
  249. 保坂展人

    保坂委員 その場合、続きの質問ですよ、必ずしも裁判官が本人に会うということを必要の条件としているわけではないわけですね。  そのあたりの基準がどういうふうになっているのか。例えば、書面によって本人が何かを出すとか、あるいはさっき診断書という話もありましたけれども、これまでのような精神鑑定という必要は、これはないということなんでしょうか。
  250. 細川清

    細川政府委員 補助制度について、精神鑑定を要するかどうかという問題なんですが、この点につきましては、従来、禁治産、準禁治産については、家事審判規則で精神鑑定を必ずやらなきゃいけなかったんですが、その点について少し問題があるので、例外が考えられるかどうかということで今最高裁判所で検討中でございます。  補助については、鑑定を経ないで、従来の主治医等の診断等から判断できるんではないかという観点から、鑑定を必要としない方向で最高裁判所で規則を制定することを今検討されているということを聞いております。
  251. 保坂展人

    保坂委員 それでは、裁判所にお聞きいたしますが、今の補助の部分で、鑑定を必要としない部分の基準づくりといいますか、どういったルールで判断をされていくのか、今の準備状況をお願いします。
  252. 安倍嘉人

    安倍最高裁判所長官代理者 御説明申し上げます。  補助の類型につきまして、鑑定によるか、あるいは鑑定によらず診断によるかということでございますけれども、私ども、現在の考えているところでは、基本的には診断で賄えるという方向で考えたい、このように考えておる次第でございます。最終的には、規則の中でどう明文化するかという問題になろうかと考えているところでございます。  以上でございます。
  253. 保坂展人

    保坂委員 それでは、先ほど同僚議員からも質問があった点なんですが、今回の新しく法人が後見人になれる、以前は論争があったところで、今回法人が後見人の資格を持つというふうになったわけなんですが、ここの部分、ちょっと重なるかもしれませんけれども、被後見者と利益が相反しない法人という限定がありますけれども、そこはもう少し積極的に、利益が相反しないというよりも、後見人になることによって利益を追求してくるような法人であると適格性を欠くんではないかというふうに私ども思うわけなんですね。  要するに、企業としての利益をこの後見人法人をつくることによって追求しよう、そういう部分を排除する規定がちょっと見受けられないんで、運用においてどう考えられるのか。
  254. 細川清

    細川政府委員 後見人となることができる法人の資格については、確かに御指摘のとおり、法人の資格を制限していないわけです。実際には、社会福祉法人である社会福祉協議会とか、あるいは社会福祉関係の公益法人等が後見人になる場合もあろうかと思いますけれども、例えば株式会社とかそういうものでも必ずしも排除されないということになっております。  最終的には裁判所が諸般の事情を考慮して、最も適切な後見人はだれかということを御判断されるわけでございますので、その点の判断に期待したいということでございます。
  255. 保坂展人

    保坂委員 では、まず一番目に、NPOというのは非営利法人ですよね。ただ、一般の事業法人だと利益を追求するのは当たり前で、利益を追求するために会社をつくっているわけで、そういう意味で、特に社会通念上度を越している云々という話ではなくて、一般の事業者がこの分野に新しいビジネスとして道を開きたいというふうに考えたといたしましょう。  その場合に、例えば金融、保険業界などが地域でお年寄りの方と日々接触しているという状況があります。それで、その家族などから、例えば後見人としての報酬が目的ではなくて、その後の資産運用の部分でビジネス化したいなどの動機で後見人サービス会社などをつくるということは想定し得るのでしょうか。法務省の方から。
  256. 細川清

    細川政府委員 私どもは、株式会社等が法律上は営利法人とされているから不当な利益をむさぼるためにそういうことをするというふうに当然にはつながらないと思っているわけで、株式会社等の法人であっても、本人の利益のために一生懸命仕事をして、その見返りに正当な報酬を得るということで適切な後見人の仕事を果たせる場合もないではないというふうに思っているわけなんです。  そこのところは、やはり今の段階で限定してしまうよりも、今後の実際の運用を見ながら、どういう方が後見人になるのが一番いいのかということを見きわめていく必要があるわけなんで、そこについては最終的には裁判所が慎重に御判断されて、適切な方が選ばれるのだろうというふうに期待しているところでございます。
  257. 保坂展人

    保坂委員 一種の社会事業として株式会社の形態をとっても、後見人というのはなかなか探しづらいということで、事業体として会社を発足させて、きちっと後見人の役割を果たしますということは別に何の問題もないのだろうと思う。  問題は、別のところに目的がある場合。後見人としての資格を取得して、そしてまた、実際のところ金融商品であるとか、いろいろな商品がありますよね。ここのところの財産運用などをしていくということを主たる目的にして、しかし表側から見れば後見人会社というようなものが出てきたときに、やはりいろいろな問題が起こってくるのじゃないかという心配をしているわけですが、いかがでしょうか。
  258. 細川清

    細川政府委員 私、質問を誤解していたと思いまして、申しわけございませんでした。  今の御指摘の場合は、いわば利益が相反する場合で、後見人と称しながらほかの方でもうけよう、こういう話です。そういう場合には、これは後見人としてはふさわしくないということになりまして、当然裁判所は、そのことが明らかであれば、そういう者は後見人に選任しないということになろうかと思います。
  259. 保坂展人

    保坂委員 私が言うまでもなく、豊田商事に始まって、数々の大型詐欺事件というのはお年寄りが犠牲になっているわけで、裁判所の方に伺いますが、彼らはやはり巧妙にカムフラージュをして、社会的な体裁を整えて法人などをつくって、非常に悪質な場合もそれほど悪質じゃない場合もあると思うのですけれども、いずれにしても、利益が相反する、資産の運用の方に目が行ったところで法人を組織するというものを見分けていくシステムというのをどのように裁判所の方は考えておられるのでしょうか。
  260. 安倍嘉人

    安倍最高裁判所長官代理者 その点につきましては、その当該法人についての各種の帳簿等を取り寄せるなりいたしまして、また、活動状況等を調査いたしまして、その法人の活動と当該財産の管理とが利害相反するのかどうかといったことを調査することになろうかと考えております。
  261. 保坂展人

    保坂委員 全般的な話をまず厚生省からお聞きしたいと思うのですが、いわゆる高齢者で痴呆症の症状の方々、あるいは寝たきりになってしまって植物状態になってしまっている方、あるいは知的障害者精神病を患っておられる方など、全員が全員ということはないと思いますけれども、この成年後見制度対象になる範囲の、大体今何人ぐらいの方が日本におられるかというのを、現在の数と、できましたら来年、十年後、二〇一〇年、二〇二〇年ぐらいの区切りで教えていただきたいのです。
  262. 近藤純五郎

    ○近藤(純)政府委員 六十五歳以上の高齢者の中で、どの程度の痴呆状態にあるかという調査があるわけでございますが、これは、平成七年の推定では約百三十万人でございます。それから、知的な障害者が、これも平成七年の調査でございますが、三十万人でございます。それから、精神病が、平成八年の調査で二百十七万人でございます。  それで、痴呆性老人の将来推計でございますが、これは同じ研究者の推定でございますが、二〇〇〇年で約百六十万人でございます。それから、二〇一〇年で二百三十万人、二〇一五年で二百六十万人、二〇二〇年で二百九十万人ということで、これは若干軽い方も入っておりますけれども、こういう推計になっております。
  263. 保坂展人

    保坂委員 数字を聞くだけで、改めて驚くわけですけれども、わずかの間に倍増していくということが大体推定されているわけですね。  法務省の方で伺いたいのですが、今回、新しく補助という類型も設け、そしてまた、今までの戸籍への記載だとか、あるいは名称の部分も変えて、幅広く国民に理解され、また利用される制度にしようという立法の趣旨だと思うのですが、大体、例えばここ五年ないし十年という幅で、どのぐらいの件数を受け入れていくというか、そういう一つのめどというか、見込みみたいなものがあったら教えていただきたいのです。
  264. 細川清

    細川政府委員 先ほど厚生省からお答えになったように、制度対象者としては非常に多数の方がおられるわけでございます。他方、禁治産、準禁治産を合わせて、最近の数字では年間千七百件ぐらいが言い渡しされているにすぎないという状態がございます。  今回、新しく補助制度もでき、制度も改善され、任意後見制度ができるというようなことがございまして、相当利用者がふえるであろうというふうに予想しているわけですが、どのぐらいふえるかというのは、なかなか予測が難しいところでございます。  外国の例で見てみますと、フランスが、ちょうど禁治産、準禁治産後見保佐裁判所保護という三つの制度に改めまして、その前は数百件程度しか利用されていなかったものが、十年後には二万件ぐらい利用されるようになったという報告がございます。ですから、そういう数字を見ましても、制度が改善されることによって、相当程度利用者がふえるであろうというふうには予測しているところでございます。
  265. 保坂展人

    保坂委員 ドイツでは、やはり介護保険が九五年に導入されて急増した。九七年に六十六万人、最近では八十万人近くにまで規模が広がっているそうなんですが、裁判所の方に伺います。  現在、家裁の裁判官、三百五十人と聞きます。例えば、来年から日本も介護保険が導入されるわけで、この制度自体、やはり超高齢化社会の日本の新しい社会システムをどうつくっていくかという一つの大きな部分だと思います。今法務省からその予想の、数は出ないと思うのですけれども、例えば、今あるところの二千件というのがとりあえず十倍になる、二万とか、あるいはもう少しいって十万件とか、これは家庭裁判所の今の体制で大丈夫ですか。
  266. 浜野惺

    ○浜野最高裁判所長官代理者 ちなみに、平成十年度に我が国の家庭裁判所に提起されました禁治産宣告の申し立て事件あるいは準禁治産宣告申し立て事件、それからこれらの取り消し事件というものを合計してみますと約三千六百件余りでございます。  ごく大まかにいいますと、今後、社会の高齢化の進展等に伴いまして、委員御指摘のような法的ニーズが高まることは予想されるところでございますけれども、委員御指摘のドイツにおけるような社会の制度や実情が我が国とは異なりますために、単純に比較する計数的な比較は困難ではないかと考えております。  ところで、今回の御審議いただいております成年後見制度改正でございますが、御審議いただいている結果、成立いたしまして新しい制度となりますと、現実に、この関係での事件数というのはやはり非常に予測が困難でございます。そういうところで、改正の成立を前提とした具体的な運用や事務処理体制のあり方というのは、やはり私どもも今後の課題であろうというふうに考えております。  裁判所といたしましては、今回の成年後見制度改正に伴いまして、裁判所に係属することになります事件数の動向や新しい制度の具体的な運用状況を視野に入れつつ、家庭裁判所がその特色でございます科学性とか後見性を十分発揮して的確な事件処理が図れるように、家庭裁判所の人的体制のあり方につきまして検討してまいりたいと考えております。
  267. 保坂展人

    保坂委員 多分、今の家裁の状態では、今ただでさえ忙しいのに、今回の制度が国民に余り知られることなくほとんど変わらなかったということだったら余り変更ないかもしれませんけれども、本来もっと幅広く使っていただくという趣旨であれば、場合によっては成年後見専門の裁判所であるとか、そういう仕組みもつくるべきではないかと思うのですね。その点はいかがでしょうか。
  268. 浜野惺

    ○浜野最高裁判所長官代理者 今、専門というところを委員御指摘でございますが、例えば東京地裁におきます知的財産関係事件専門部のように、まとまった数の同種事件があります場合には、専門部や集中部を置くという事務処理体制をとっている例があるわけでございますが、今後の家裁における事務処理体制につきましては、事件数の動向、それから成年後見制度の具体的な運用状況を見ながら、先ほども申し上げましたが、その特色であります科学性、後見性を十分に発揮して的確な事件処理を図れるような事件処理体制、そのあり方を検討してまいりたい、かように考えております。
  269. 保坂展人

    保坂委員 どんどん予算要求していただいて、国民にとって喜ばれる制度整備は遠慮なく、我々も一緒にやっていきたいと思います。  ちょっと人権というテーマと、そもそも今回の改正が大きくやはり人権というところで抜本的な改正がなされたというふうに理解をしているのですが、極めてまれな例というふうに思われるかもしれないのですが、受刑者のことを考えてみたいと思うのですね。  例えば、経済事件で有罪判決を受けた服役中の受刑者、間もなく刑が終わる。しかし、記憶の減退、心身の不調など、非常に自信がない。現在並びに刑期終了後の資産、不動産、家屋の管理など、要するに補助人という制度を使って請求をしたいといった場合に、被補助人となることはできるのでしょうか。
  270. 細川清

    細川政府委員 民法の適用の上では、受刑者であるからといって権利等に制限があるということはございませんので、適用関係は全く同じでございます。
  271. 保坂展人

    保坂委員 そうすると、裁判所に伺いますが、では具体的に服役中の受刑者から補助人請求があった場合、この手続はいかように進むのでしょうか。
  272. 安倍嘉人

    安倍最高裁判所長官代理者 受刑者から補助開始の申し立てがあった場合のことでございますけれども、通常、家庭裁判所の調査官が面接をするとか、さらに鑑定あるいは診断を行うということになりますと、調査官なり医師が面会することになるわけでございます。  これにつきましては、家庭裁判所に出頭することができない関係者についての事件の取り扱いと全く同様でございまして、受刑者であるからといって何ら取り扱いを異にするものではないということと考えております。
  273. 保坂展人

    保坂委員 そうすると、今、補助と聞きましたけれども、それ以外の保佐人の請求あるいは後見人の請求についても変わりませんか。
  274. 安倍嘉人

    安倍最高裁判所長官代理者 同様でございます。
  275. 保坂展人

    保坂委員 それでは、今までの、禁治産者、準禁治産者として請求をされた過去の受刑者の例あるいは死刑の確定囚の例などありましたでしょうか。
  276. 坂井一郎

    ○坂井政府委員 これは統計をとっておりませんものですから確たることは申し上げかねるのですけれども、従来そのような例があったということは聞いておりませんし、最近五年間につきまして、少なくとも心神喪失によって禁治産になった例があるかどうかということも念のため調べてはみましたけれども、各施設からの報告では、そういう例はないというふうに聞いております。
  277. 保坂展人

    保坂委員 実は昨日、免田栄さんという、誤判事件で、十八年前でしょうか、三十四年の間死刑確定囚として過ごして、たび重なる再審請求を重ねて最後に無罪が確定したという方が訪ねてこられまして、やはり同じ誤判事件で赤堀政夫さんという方が、国民年金を受給、要するにそういうことも全然獄中で知らなかった、受給資格が今ないということで、いろいろ訴えをされているという話を聞きました。  したがって、これは本委員会でもたしか二月に取り上げさせていただいているのですが、確定死刑囚の方で、多分こういう例は非常に少ないと思われる袴田巌さんという方がいらっしゃって、なかなか自己認識のところで揺らいでいる。お姉さんが面会に行ってあいさつをすると、おれはだれだと言って、袴田巌でしょうと言うと、おれは何とかの神だよ、そういう感じで、別人じゃないかと言って帰ってしまう。そういうような様相を呈している方がいて、大変心を痛めて、これは法務省の方も心配をしていただいていると思うのです。  こういった場合に、新しい制度ができてきたときに、今までの二段階より三段階ということで、補助という部分で選択の幅がふえていくわけなんですけれども、要するに、精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分ではないかというふうに私なんかは思うのですけれども、そういう場合、確定死刑囚の場合などはこの制度は具体的にはどうなるのでしょうか。
  278. 細川清

    細川政府委員 民法の適用におきましては、死刑囚であるから受刑者であるからということによっては差異は生じないわけでございまして、御指摘のこのような方についても、申し立てがあれば、裁判所は成年後見についての審判をされるということでございます。
  279. 保坂展人

    保坂委員 では、ちょっと今触れたので、矯正局長に。  年金の受給などは、確かに確定死刑囚というのはやがて処刑されていく者ということで、特に年金がどうのという発想が多分現場になかったのだろうというふうに思いますけれども、しかし、中には誤判ということがあって、そういうことが起きてくるわけですね。これらについて、何かお聞きになっていることが今の赤堀さんの件についてはございますか。
  280. 坂井一郎

    ○坂井政府委員 確かにそういう例がございまして、死刑囚ということで年金等について果たしていかがかという考慮が当時あったのだと思いますけれども、現在は通達も出しておりますし、それからその後各種の会同等におきまして、受刑者についても年金の制度がこういうふうになっているということを、新入時、つまり新しく入ってきたときとそれから出るときに受刑者に教示するような制度にしております。現に、死刑囚ではございませんけれども、そうでない人で、例えば受刑中に年金の免除願いを出す受刑者というのはかなりの数ございますので、現在では、その当時に比べれば改善されたものというふうに承知しております。
  281. 保坂展人

    保坂委員 費用の問題について、これが幅広く広がるのかどうか大変関連をすると思うので、お聞きいたします。  例えば補助人を請求したときに、鑑定を要さないで診断書などで簡易にやるというお話も今裁判所の方からありましたけれども、大体幾らぐらいの費用を国民は考えたらいいのかというあたり。  それから、現在、精神鑑定は非常に期間がかかるのと、費用が三十万円、四十万円という話も聞きますが、このあたりは変わるのかどうか。鑑定ですから大変だと思うのですよ。変わらないとすれば、そこのところを、経済的な理由によってあきらめてしまわざるを得ない人が多々あろうかと思うのですね。立法の趣旨からいって、こういった部分を公費や何らかの制度で賄うというようなことをお考えになっているのかどうか、お願いします。
  282. 細川清

    細川政府委員 成年後見の申し立ての費用でございますが、この費用の一番大きなものは鑑定の費用でございまして、そのほかは微々たるものだというふうに考えております。いずれにしましても、法律扶助の要件があります場合には法律扶助が可能であるというふうに考えておりますので、これによって対応可能であろうと思います。
  283. 保坂展人

    保坂委員 その微々たるものというのは大体どのぐらいなんですか。大体で結構です。
  284. 細川清

    細川政府委員 申し立てに必要な印紙は六百円だそうです。
  285. 保坂展人

    保坂委員 裁判所の体制について先ほど伺ったのですが、実は厚生省の方で、この新しい制度の発足をにらんで、生活支援員という人々を育成していこうという計画だと聞いております。具体的にどういう準備が進んでいるのか、また裁判所やこの立法の趣旨に照らしてうまくかみ合うようなスタートが期待できるのかどうか、そのあたりを御答弁お願いします。
  286. 炭谷茂

    ○炭谷政府委員 厚生省で用意いたしております地域福祉権利擁護事業と申しますのは、ただいま御審議されております成年後見制度を補う制度として考えているものでございます。この準備状況でございますけれども、今年度予算の中にこれに要する経費を盛り込んでおります。  この事業主体として考えておりますのは都道府県社会福祉協議会でございまして、そこが実施主体になりまして、そこで、今先生の御指摘になりました生活支援員が実際のサービスを実施するということになろうかと思います。  そこで、重要なのはこの生活支援員の資質とか能力でございます。これについて、やはり研修というものが必要だろうということで、現在、弁護士また学識経験者、実務者の方々に集まっていただいて、どのような研修プログラムがよいのだろうかということについて鋭意検討していただいております。具体的な研修プログラムもそろそろでき上がってまいっております。  これに基づきまして、今年秋には、まず全国でこの生活支援員の指導に当たっていただく方の研修会を厚生省並びに関係団体との共催で実施し、さらに、この指導員が各県に戻りまして研修をしていただこうとか、また、必要なハンドブックとかビデオというような制作も現在進めつつございます。
  287. 保坂展人

    保坂委員 最後にしますが、法務大臣に、この新しい制度を本当に定着させていけるかどうかは、既存の今までの仕組みに加えて、役所の側の動き、あるいは今までの団体だけではなくて、いわゆるNPOと言われているような、本当に自主的にこういうひとり暮らしのお年寄りを助けてきたような、そういう人たちが有機的に結合するということが必要だと思うのですが、その点の御所見を伺って、終わります。
  288. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 御指摘のように、関係各方面と密接な連携協力を図ることによって、障害者による成年後見制度の主体的、積極的な利用が促進されるように取り組んでまいりたいと思います。
  289. 保坂展人

    保坂委員 以上で終わります。
  290. 杉浦正健

    杉浦委員長 次回は、来る十五日火曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時八分散会