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森山委員 きょうは、
児童買春、
児童ポルノに係る
行為等の
処罰及び
児童の
保護等に関する
法律案の審議の最終段階を迎えつつあるわけでございまして、そのようなこの
委員会に私も
質問の機会をいただきまして、まことにありがたく、うれしく、また感無量の思いでございます。
ここに至りますまでのいろいろな経過は既に審議の中で出ているかと存じますけれども、ちょっと私の立場から復習をさせていただきますと、一九八九年の
児童の権利条約の採択、そして、特にその第三十四条で、あらゆる形態の性的搾取、
性的虐待から
児童を守ることを約束するということが示されておりまして、その三十四条を具体化する選択議定書を採択しようという動きが起こってまいりまして、
児童の権利条約の十周年、それがちょうどことしでございますが、一九九九年のその十周年を目指しまして、世界的に作業が進められてまいったわけでございます。
そのことを頭に置きまして、欧米諸国では、一九七〇年代以降、
児童買春、
児童ポルノ等を厳しく取り締まる法の改正や、新しい
法律の制定などが次々に行われまして、今では、ほとんどの国でそれなりの
法律、制度が整っているという状況でございます。また、いわゆる
買春ツアーと言われるものを受け入れる国々におきましても、
フィリピンとかタイとかにおきまして、このようなものを規制する
法律が既に整っているわけでございます。
このような買春とか
児童ポルノのような、商業的な性的な搾取を受けている
子供たち、
被害児童というのは、全世界に百万人から百五十万人いると言われておりまして、その地域も各地に広がっているわけでございますが、最大の
被害地はアジアだと言われております。その加害者の方は、
日本、ヨーロッパ諸国、オーストラリアの男性というふうなことが言われておりまして、特に
日本は、タイ、
フィリピンなどの
児童買春のアジア最大の加害国であるというふうに言われておりまして、欧米諸国が
児童ポルノの規制を強めております中で、世界の
児童ポルノの製造、流通基地であるとさえ言われて、非難が集中しているのが現状でございます。
このようなことは、もちろん
日本の私どもも非常に心を痛めていたわけでございまして、特に国際的なNGOでありますECPATという
団体が大変このことを
心配されて、
児童買春の実態を知らせたり、
児童買春のツアーの送り出し国や受け入れ国双方での法改正を促すというような国際的な運動を先導しておられまして、
日本にもそのグループがございまして、いろいろな形で運動を展開してこられました。
このECPATが九六年の八月にスウェーデンで、
児童の商業的性的搾取に
反対する世界
会議というものを開催され、そこに百二十二カ国の政府、二十の国際機関、多数のNGOの
関係者など、約千人が参加されまして、宣言と行動のための
課題を採択されました。その段階では、まだこれという目立った動きをしておりませんでした無策の
日本ということで、大変な批判と早急な対応を求める声が厳しく出されたところでございました。そこに出席されました
日本からの参加者は、顔を上げることもできないほど非常に恥ずかしい思いをしてこられたというお話を後ほど聞きまして、私も大変心を痛めていたわけでございます。
日本の場合は、国際的な条約であります
児童の権利条約、これをたしか五、六年前に批准をいたしたと思います。そして、そのときに、
日本の
法律制度がこの条約を批准するのに適当であるかどうかということも検討されたはずでございましたが、その時点では、批准しても差し支えない状態であるという判断をなさったようでございますが、その後、国際的な情勢が急速に変化してまいりまして、
日本の対応がおくれにおくれてしまったというのが現状でございまして、何とかしなければならないという状況に差し迫られておりました。
日本でも、そのことに多大の関心と憂慮を持ちましたNGO、さらに、そのような
方々と大変深い
関係を持ち、連携しながら活動しておられました各党の女性議員を中心とする
皆さんが、何とかしなければいけないということで、それぞれ独自の活動、研究をしておられたわけでございます。
私の属します自由民主党におきましても、野田聖子代議士などがその一人でございまして、その呼びかけによりまして、党の女性問題特別
委員会という場で
勉強会が何回か開かれましたのが、もう二、三年前になるかと思います。
党の幹部もその話を聞き知られまして、事の重大性を大変憂慮され、何とかしなければいけないという気持ちになっていただきまして、今から思い起こしますと、一昨年の夏でございましたが、当時の山崎政調会長から私が命令をいただきまして、当時の与党三党のプロジェクトチームを始めてほしいという御指示をいただき、記録を見ますと、一昨年の六月十八日に
最初の会を始めたのでございました。これが、政治の公的な舞台で取りかかった
最初の第一歩であったと思うのでございます。
そのプロジェクトチームには、今ここにもおいでになる社民党の
清水澄子
先生、同じく社民党の辻元清美
先生、やはり今ここにいらっしゃる、さきがけの
堂本先生、そして、自民党からは谷垣禎一さん、小野清子さんなどが参加していただき、私がまとめ役ということでお預かりをしたわけでございますが、皆様の御経験を伺い、知識を披瀝していただきまして、また、
法律的な勉強も少しやっておりますうちに、これは大変なことをお預かりした、難しいことだなというふうに思ったのが率直なところでございました。
しかし、
皆さんが大変御熱心に協力をしていただき、大変激しいやりとりもあったのでございますが、三十回に及ぶ
勉強会の結果、ようやく何とかまとまりまして、それが平成十年、昨年の三月三十日でございました。大変苦労をいたしましたけれども、それが
一つの大きな山を越えたときであったかなと思います。
これを各党の御了解を得まして、
関係三党の提案によりまして、五月の二十日に衆議院に提案させていただきました。これがこの
法務委員会でお預かりいただきまして、そして折々、私、
杉浦委員長によろしくお願いしますと申し上げたのを記憶しておりますけれども、お預かり願って間もなく
参議院選挙があり、そしてその後政変があり、また、緊急金融対策などに
国会が忙殺されたということもございまして、そのままに推移してまいったのでございます。
しかし、これはいつまでもそのまま置いておくわけにもいかない、何とかしなければいけないという焦る気持ちもございましたが、片や、政局の方は与党の組み合わせも変わるというようなこともございましたので、思い切ってこれは全党の皆様にお呼びかけをして、そして
皆さんで相談に乗っていただいて、そして、みんなが賛成できるようなものができればそれが一番いいのではないかということに思い至りまして、昨年の末に、たしか十二月の十一日に、第一回の全党による
勉強会をお呼びかけしてやらせていただきました。もう年末も近いところでありましたが、お正月もほとんど休まないぐらい熱心に皆様が御協力いただきまして、結局、七回の
勉強会をさせていただきました。
民主党は、既に、前の私どもの提案した案についての御意見をまとめて別案をおつくりいただいているというような進展もございましたので、
最初のプロジェクトチームの
勉強会よりは、ある程度具体的な
議論にいきなり取りかかるということができたせいもありまして、このたびは七回ほどやらせていただいた結果、去る三月の十二日に、ようやく全党何とか一致できるというラインをまとめることができたわけでございます。
そして、三月三十日でしたか、今度は
参議院の方に提案をさせていただくということにいたしたのでございます。
と申しますのは、私どもは、一刻も早い成立が望ましい、ぜひそうしたいということが何よりも私どもの強い願いでございましたので、いろいろ
国会関係の
方々の御意見を伺いますと、
参議院先議の方が早く成立する
可能性が高いから、その方がよろしいんではないかというアドバイスをいただきましたので、
参議院の
先生方に大変御苦労いただきまして、
参議院の方から先に取りかかっていただいたわけでございます。
そして、
参議院では四月の二十八日に本
会議でこれを通過させていただきまして、今衆議院の方でこのように皆様が御熱心に
議論をしていただいている。この場に私も先ほど来おりまして、御熱心な質疑の様子を拝見し、大変心強く、またうれしく、最終段階を迎えているということについて感無量の思いがするというのは、そのような立場からでございます。
ぜひ、この衆議院の
法務委員会におきましてもできるだけ早い通過、そして、衆議院における成立を一刻も早くあってほしいと願っている一人でございます。
ここまで来ましたこの
法案は、実は、かかわってまいりましたすべての人がみんな一〇〇%満足しているわけではございません。今までの審議の経過をお聞きいただいてもおわかりのように、せっかく
法律をつくるんだから、あれも入れたらいいのに、これも欲しいのにというような
議論が、
勉強会の途中もさんざん出たわけでございます。
しかし、そういって、ある
一つのことについて甲論乙駁、延々とやっておりますと、一番大事な願いの
一つである早く成立させるということができなくなってしまう。とにかく、みんなが今一致できる最小限度必要で可能なものをまとめていこうということで、それを条文化したというのがこの
法案でございます。
そうすることによって、少なくとも、世界的に大変悪名の高い
日本の現状、例えば、これもその
一つですけれども、タイムという世界的に流通しているこの
雑誌、四月十九日号ですが、ここに「ジャパンズシェイム」と書いて、こういうのが載っております。これはタイムですから、世界じゅうの人が見て、ああ、
日本はこういう状況なんだときっと見ているに違いないと思いますと、私どもは本当に身が縮む思いなのですが、こればかりではありません、ほかのところにもいろいろと書かれております。
また、私自身も
外国のメディアの取材を大変たくさん受けました。私は、
日本がただ放置しているわけではない、しっかりやっておりますよということをPRしたいと思いまして、どんな取材にも応じましたので、随分いろいろなところに書かれましたが、それはすなわち、
日本が努力しているということを知らせるだけではなくて、その前に今まで野方図であったということが知らされるというわけでございます。
そのようなことを考えますと、ともかく早くこの
法案を成立させなければいけないというふうに思いましたので、決して一〇〇%満足しているわけではございませんけれども、何とか正していくという方向への第一歩ということで、評価したいというふうに思うのでございます。
そこで、これが最小限度必要で可能なことを条文化したものだというふうに私申しましたが、ですから、それであればあるだけ、これが成立しました暁にはきちんと施行されなければ困るわけでございます。そのために、私は、
一つ二つ気になる点を確認の
意味で、特に政府に御
質問したいと思うのでございます。
ただいま坂上
先生の御
質問にもございましたけれども、私からも念のためお聞きしたいのですが、第十七条の「国際協力の推進」というところでございます。これには「国際的な緊密な連携の確保、国際的な調査研究の推進その他の国際協力の推進に努めるものとする。」というふうにございますが、これを具体的にどのような手順でどのような内容の協力をなさる、あるいは求めるというのか。この立法の目的の大きな
一つは、世界的に悪名の高い、非難の的となっている我が国の国際的名誉の回復ということでございますので、大変重要な点だと思います。
警察及び法務省から伺わせていただきたい。お願いします。