○大森
参議院議員 自社さ案と比べまして、
児童ポルノのところの定義については非常に大きく変わっております。
これはやはり限界事案につきましては、表現の自由をいたずらに規制することがあってはいけない、萎縮
効果等も生じさせてはいけないということと、それから
構成要件そのものの明確性ということから再検討をいたしました。
それで、具体的にどのような経過で自社さ案を変えていったかということですけれども、まず、自社さ案の場合には、二条三項第一号におきまして、
児童ポルノの定義につきまして、「
性交等に係る
児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したもの」、こういうふうに規定しておりました。これは一号です。
それで、この「
性交等」という三文字について、これをどう
解釈するかといいますと、自社さ案二条二項、
児童買春の定義のところで出てまいります「
性交等」、この後に続きます「
性交等」の
意味についての言葉ですが、「
性交若しくは
性交類似行為をし、又は
自己の
性的好奇心を満たす
目的で、性器、肛門若しくは乳首に
接触することをいう。以下同じ。」とありますので、この「
性交等」を受けて
解釈することになります。
そうなりますと、
児童ポルノの定義につきまして、いろいろな
児童の姿態のうち、
性交または
性交類似行為以外の
行為につきましては、画面に描写されている
行為者自身の
性的好奇心を満たす
目的が必要になるという非常に奇妙な形になります。そして、その
目的が立証されなければ「
性交等に係る
児童の姿態」という
構成要件を満たさないことになるのではないか、こういう疑問点が
勉強会で出されました。
ポルノかどうかを
判断するにつきましては、その描写物から客観的に
判断されるべきでありまして、該当性の
判断を
行為者の
目的に係らせるべきではないということからも、もう一度検討を加えようということになりました。
児童ポルノにつきましては、むしろ見る側の性的な感情がどうなるかが問題ですので、その点から
児童ポルノを改めて定義したのが本
法案の二条三項の各号であります。
それからもう一点、先にお答えしようと思ったのですが、自社さ案には「絵」がありましたけれども、「絵」を例示から除いております。これは、先ほどの
枝野委員の御
質問にもお答えしたのですが、コミックとか想像した漫画とか、そういうものも入るのか、こういう問題、
議論がありましたので、そういうあいまいさをなくすということで一たん例示から外しました。その上で、実在する
児童の姿態を描いた絵につきましては「その他の物」に入り得る、こういう
解釈をしております。
それからもとに戻りまして、
児童ポルノの
要件で、自社さ案の第二条三項二号の方では、「
衣服の全部又は一部を脱いだ
児童の姿態であって
性的好奇心をそそるものを視覚により認識することができる方法により描写したもの」と規定してございました。言ってみれば、キーワードというのが、「
性的好奇心をそそる」ということとなっていたわけであります。これにつきましては、本当にこの
文言でよいのかどうか、もっと厳格にする必要があるのではないかということを
議論いたしました。
そして、ここの「
性的好奇心をそそる」という
文言ですけれども、これはいわゆる風営法、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する
法律にも類似の
文言が用いられております。
例えて言いますと、二条六項五号の、これは店舗型の
性風俗特殊営業を規定しましたもので、「店舗を設けて、専ら、
性的好奇心をそそる写真、ビデオテープその他の物品で政令で定めるものを販売し、又は貸し付ける営業」、こういう条文の中で出てまいります。そしてこの営業につきましては、同法二十七条で届け出制になっておりまして、営業届け出の基準と同じ
文言を果たして
刑罰法令の
構成要件に用いてよいのかどうか、また表現の自由との
関係からもより厳格にすべきではないかということ、これらのことを検討いたしまして、「
性的好奇心をそそる」という言葉にかえて、「
性欲を興奮させ又は刺激する」、こういう
要件を用いました。
また、自社さ案の第二条第三項第三号では、「専ら
児童の性器又は肛門を視覚により認識することができる方法により描写したもの(専ら医学その他の学術研究の用に供するものを除く。)」こういう規定もございました。これについて、
児童ポルノというのは、ポルノの語源がポルノグラフィーですから、何らかの形で見る側の性的な感情に
影響を与えるものをとらえるべきではないか、こういう意見もございました。
このような
議論を
勉強会の方で重ねまして、この
法案の第二条第三項各号に当たるもののみを
児童ポルノとしたものでございます。