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1999-05-12 第145回国会 衆議院 法務委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年五月十二日(水曜日)     午前十時開議   出席委員    委員長 杉浦 正健君    理事 八代 英太君 理事 山本 幸三君    理事 山本 有二君 理事 日野 市朗君    理事 上田  勇君 理事 達増 拓也君       小野寺五典君    奥野 誠亮君       加藤 卓二君    小杉  隆君       左藤  恵君    笹川  堯君       菅  義偉君    西田  司君       保岡 興治君   吉田左エ門君       渡辺 喜美君    枝野 幸男君       佐々木秀典君    福岡 宗也君       漆原 良夫君    安倍 基雄君       権藤 恒夫君    木島日出夫君       保坂 展人君    園田 博之君       鯨岡 兵輔君  出席政府委員         警察庁生活安全         局長      小林 奉文君         法務大臣官房長 但木 敬一君         法務省刑事局長 松尾 邦弘君         厚生省児童家庭         局長      横田 吉男君  委員外出席者         参議院議員   円 より子君         参議院議員   大森 礼子君         参議院議員   堂本 暁子君         参議院議員   清水 澄子君         参議院議員   吉川 春子君         参議院議員   清水嘉与子君         参議院議員   平野 貞夫君         法務委員会専門         員       海老原良宗委員の異動 五月十二日         辞任         補欠選任   加藤 紘一君     小野寺五典君   河村 建夫君    吉田左エ門君 同日         辞任         補欠選任   小野寺五典君     加藤 紘一君  吉田左エ門君     河村 建夫君 本日の会議に付した案件  児童買春児童ポルノに係る行為等処罰及び児童保護等に関する法律案参議院提出参法第一四号)     午前十時開議      ————◇—————
  2. 杉浦正健

    杉浦委員長 これより会議を開きます。  参議院提出児童買春児童ポルノに係る行為等処罰及び児童保護等に関する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。枝野幸男君。
  3. 枝野幸男

    枝野委員 民主党の枝野でございます。  まず、本案についての質問に先立ちまして、理事会等でも御議論をさせていただいていることと思いますが、私、法務委員会にこの六年間の議員生活の間ほとんど籍を置いておりますが、一貫して紳士的な場ということで先輩諸兄からも言っていただいておりました法務委員会議事の進行に若干さまざまな混乱が出ているということで、そのことについては私の立場からも遺憾の意を最初に申し上げさせていただいて、しっかりとした対応を今後していただきたいということを最初に申し上げておきたいというふうに思います。  さて、本案について質問に入らせていただきますが、提案者皆様、きょうはお疲れさまでございます。提案者皆様も御承知のとおり、ともに超党派でこの法案づくりにかかわってまいりました者として、ようやく衆議院に来て審議をされるということについては大変よかったなというふうに思っております。私も、去年の国会などでは議員立法提案者として、金融の問題でしたが、参議院などに行かせていただいて答弁させていただいた経験を持つ者としては、参議院での審議そしてきょうの衆議院審議に向けて、提案者になられた皆様方には大変な御苦労があろうということで、そのことについて敬意を表したいと思います。  超党派での勉強会のときもそうでありましたが、児童買春児童ポルノ、特にこれによる被害を受けている子供たちのことを考えますと、しっかりとした法律を一刻も早くつくらなければならないという思いで私も加わらせていただいてまいりました。そのためにも、刑罰法規でございますので、抽象的、あいまいな法律であって、そのことによって不当ではない行為まで処罰されることになっては当然のことながらいけませんし、またそういったあいまいさがあれば、逆に、運用する警察法務当局などの方もあるいは腰が引けたような対応になってしまって、期待をした効果が上がらないということも考えられないわけではございませんので、具体的に、あいまいさがないんだ、刑罰範囲というものが特定をされているんだということについて順次お尋ねをさせていただきたいと思っております。  まず、出発点として、この法律提案理由にかかわりまして一点お尋ねをさせていただきたいと思います。  若干言葉じりをとらえるような話になるんでありますが、参議院議事録を十分に読ませていただきましたところ、今回の立法提案理由として、児童買春児童ポルノというものが「児童性欲対象としてとらえる風潮を助長することになる」ということを御答弁になっておられます。こういった風潮がいい悪いということはもちろん別といたしまして、今回の法律刑罰法規でありますので、内心の心理といいますか、それは対象にはなっていないというふうに理解していいと思います。どういった内心を持っていようとも、それが現実子供たち権利を侵害するというような行動に出たということがこの法律処罰をするということであるというふうに思っております。この点、確認をさせていただいて、改めて本案提案理由を御説明いただければというふうに思います。
  4. 円より子

    ○円参議院議員 枝野先生の御質問にお答えいたします。  今先生がおっしゃったように、内心の自由や、また性風俗などを規制することは本来法案目的ではなく、あくまで具体的な虐待搾取行為を禁止するものと考えておりますが、本当にその御指摘のとおり、この法案は、児童に対する性的搾取及び性的虐待児童権利を著しく侵害することの重大性を考えまして、また、児童買春児童ポルノに係る行為は、児童買春相手方となった児童児童ポルノに描写された児童心身に有害な影響を与えることから、かかる行為を規制、処罰するものでございます。  ただ、児童買春児童ポルノに係る行為を放置することは、児童買春相手方となり、児童ポルノに描写された児童心身に有害な影響を与えることは明白でございます。しかし、それだけでなく、まだそのような対象になっていない児童についても、健全な性的観念を持てなくなるなど、その人格の完全かつ調和のとれた発達が阻害されることにつながるのではないでしょうか。そこから児童一般を守るとともに、児童性欲対象としてとらえることのない健全な社会を維持することもこの法案では目的としております。そこで参議院答弁では、その趣旨を、「児童性欲対象としてとらえる風潮を助長することになるとともに、身体的及び精神的に未熟である児童一般心身の成長に」重大な影響を与えると表現させていただいたものでございます。
  5. 枝野幸男

    枝野委員 今の御答弁趣旨理解をさせていただくんですが、こういう理解でよろしいでしょうか。つまり、刑罰法規部分については、まさに内心の問題ではなくて、実際の侵害の行動処罰するものだ、これは間違いない。ただ、そういったことの結果として、刑罰法規とは違った意味部分のところで、そうした風潮を抑止するという効果もある、それも目的に入っている。ただ、あくまでも刑罰法規行動についてのものである、こういう理解でよろしいですね。
  6. 円より子

    ○円参議院議員 はい、枝野先生の御指摘のとおりでございます。
  7. 枝野幸男

    枝野委員 それでは、具体的な法案の、特に刑罰構成要件について、若干の確認を順次させていただいていきたいというふうに考えております。  まず、二条の二項のところに、児童買春の定義として、「対償を供与し、」あるいは「その供与約束をして、」ということが要件として入っております。この対償の供与に関しましてお伺いをさせていただきたいというふうに思っておるんです。  一般的に対償というものがどれぐらいの範囲をいうものであるのか。もちろん、要するにお金を渡して、いわゆるまさに一般的に言われるような売買春のような形態がこれに当たる。これは間違いないことだというふうに思っておりますし、当然こうしたことは、児童相手にした場合に絶対に許されるものではないということはいいんだろうと思いますが、例えば男女関係の間の中で、たまたま一方が相手に対して食事をごちそうしたりするというようなことは、大人同士関係だったら、当然一般的によくあり得ることである。それは男性女性食事をごちそうすることもあれば、女性男性食事をごちそうすることもあるでしょうし、そういったことはあり得るわけです。それが、例えば十七歳の高校生同士で、マクドナルドかなんかに行って、きょうはおれがごちそうするわなんということはここで言う対償ということには入らないだろうなと思うんですけれども、大体そんな理解でよろしいでしょうか。
  8. 円より子

    ○円参議院議員 児童食事をごちそうして、その後当該児童性交に至った場合、それが買春になるのかどうかというお尋ねのように思いますけれども、まず、児童買春とは、先生ももちろん御承知のとおり、児童等に対償を供与し、または供与約束をして児童性交等をすることとしておりまして、ここに言う対償とは、児童に対して、性交等をすることに対する反対給付としての経済的利益を言っております。  児童買春に当たるかどうかは、性交等をすることに対する反対給付と言えるかという点と、供与されたものが社会通念経済的利益と言えるかという点の二点を満たす必要がございます。  御質問のような例が児童買春に当たるかどうかについては、食事をごちそうされたことによって児童性交等をすることを決定したか否か、また食事が経済的に見てどれぐらいの価値があるかなどを総合的に勘案いたしまして、対償であると認められる場合に限り児童買春に当たると考えておりますので、先生がイメージされているようなものは当たらないのではないかと思います。
  9. 枝野幸男

    枝野委員 なかなかこれは、範囲を区切って答弁いただくのは難しいということは非常によくわかっています。今の日本では考えられないかもしれませんけれども、例えば、マクドナルドハンバーガー程度のものであったとしても、貧しくて食べるものもなくて困っているような児童ハンバーガーを食べさせてあげるからと言ったら、それは対償になることもあり得るかもしれないだろうということもあるでしょうから、一般的に答えるのはなかなか難しいことだろうということはよくわかっています。  きょうは、実際にこの法律ができ上がったら運用をしていただく警察当局法務当局にもおいでいただいております。こちらもまた答弁が大変だろうというのはよくわかっておりますけれども、今のような提案者の意図、そしてこの文言の一般的な意味から考えて、大体今のようなことで運用もされていくという理解をしてよろしいかどうか、お答えいただければ、警察法務、それぞれお願いいたします。
  10. 松尾邦弘

    松尾政府委員 今なされました御答弁で結構だと思います。
  11. 小林奉文

    小林(奉)政府委員 警察といたしましても、ただいまの発議者答弁趣旨に従いまして、適切な運用に努めてまいりたいと考えております。
  12. 枝野幸男

    枝野委員 ほかのところでもうちょっと突っ込まなければいけないかなと思いますが、今のところは今ぐらいでいいかなと思います。  似たようなことを聞いて、提案者の方が大変答えにくいのを繰り返します。難しいのはわかった上で、恐縮ですけれども。  食事と同じような例で、要するに対価性を持たないような普通の男女関係の中でも、たまたまきょうは誕生日だから誕生日プレゼントをした、その後たまたまホテルに行ったとかというようなケースというのは一般論としてはたくさんある。大人同士ではあり得るし、それがいい悪いは別として、十七歳同士でも今の社会では十分あり得る話です。普通の対等におつき合いをしている男女関係で、たまたま片方は十七歳、例えば十七歳同士でもいいでしょう、それで誕生日プレゼントを渡した、その直後にホテルに行きました、では、これは対償ですなんということにはならないだろうなというような議論をしてきましたが、そんな理解でよろしいですね。
  13. 円より子

    ○円参議院議員 十八歳以下の児童同士ではなくて、大人児童プレゼントをした場合の話ですか。(枝野委員「いやいや、まさに誕生日プレゼントだから、一般的な普通におつき合いをしている、たまたまきょうプレゼントを渡し、その直後にホテルに行きましたなんという話は」と呼ぶ)もう既に恋愛関係にあるような同士が、真摯にお互いを思い合っていて、そしてプレゼントをして、その後性交等に至った場合は、私は、一般的には児童買春にはならないと存じます。  ただ、プレゼントを渡されたことによって児童性交等をすることを決定したか否か、また、プレゼントが経済的に見てどれぐらいの価値があるかなどを総合的に勘案して、それが対償であると認められる場合に限り、やはり児童買春に当たるとは思います。
  14. 枝野幸男

    枝野委員 難しいところをうまく答えていただいたというふうに思うので、ありがとうございます。  これについても念のためお尋ねしますが、法務当局警察当局、こういった理解でよろしいですね。
  15. 松尾邦弘

    松尾政府委員 お答えいたします。  先ほどは大変端的にお答えさせていただきましたけれども、多少申し上げますと、既存法律運用しておる立場からいいますと、法案文言というものの解釈が、既存のものと今御議論いただいているものとで同じ文言であれば、同じような解釈というのが自然な発想でございますが、例えば売春防止法の二条で、「「売春」とは、対償を受け、又は受ける約束で、」「性交することをいう。」こういうことを言っています。それで、今までの判例積み重ねでは、売春をすることに対する反対給付というのが一つ条件、それから経済的利益、これが二つ目条件ということでございます。ですから、具体的事案に適用されるかどうかは、それらを総合的に、その二点、主に中心点が二点ですが、それに当たるかどうかの判断ということになろうかと思います。  そういった意味で、今発議者の方の御答弁をお聞きしていますと、法務当局としても、御答弁内容そのものに対しましては、従来のそういう積み重ねからいいましても格別問題はございませんし、また、その御発言の趣旨を我々としても十分に尊重して運用してまいる、慎重に対処してまいるということだろうと思います。
  16. 小林奉文

    小林(奉)政府委員 御質問につきましては、先ほどの二点、性交等をすることに対する反対給付という観点、それからもう一点は社会通念経済的利益と言えるかどうかという、この二点を判断して私どもは適用してまいりたいと思います。  その場合には、社会通念上、やはり常識に従った判断というものが極めて重要だと思っておりますので、そういった線に基づきまして適切な運用をしてまいりたいと思います。
  17. 枝野幸男

    枝野委員 大変結構な御答弁をいただいたというふうに思います。  さて、それでもう一つは、「供与約束」の「約束」に係るところなんですが、この「約束」というのはどの程度のものが要るのか。具体的に、つまり性交等を行ったら幾ら払いますよとかという約束、これがこれに当たるというのはよくわかる話なんですが、よくある話なんだろうと思いますが、例えば、いずれ旅行にでも連れていってあげるよだなんということを言って、それがほかのところを取捨するために、それなら性交渉に応じようかというような話になったような場合、この程度のあいまいな約束というのは、これは「約束」に当たるのかどうかということをちょっとお尋ねしたいと思うのです。
  18. 円より子

    ○円参議院議員 今おっしゃったような、例えばいずれ旅行に連れていこうというようなあいまいな約束につきましては、やはり具体的な事実に応じて、先ほど刑事局長などもおっしゃっていますけれども、また警察もおっしゃっています、それが社会通念経済的利益に係るものと言えるかどうか、そもそもその約束があったものと言えるかどうかといった、やはりそういった観点を踏まえまして個別に判断されるべきものではないでしょうか。
  19. 枝野幸男

    枝野委員 それからもう一つ。「対償を供与し、又はその供与約束をして、」性交等をすることということが要件になっておりますが、こういった対償を供与したり供与約束なしに性交等が行われ、その後になって例えば児童の側がお金ちょうだいというような話があった場合、これはこの法律に該当するのかどうかということをお答えいただけますでしょうか。
  20. 円より子

    ○円参議院議員 今、それが該当するのかどうかということでございますが、児童買春成立要件一つである対償の供与、対償の供与約束といいますのは、性交等がなされる前に存在することが必要でございます。したがいまして、性交等をする前に対償の供与がなく、対償の供与約束もなかった場合には、性交等の後に対償が供与され、またはその約束がされた場合でも、児童買春には当たらないものと考えております。
  21. 枝野幸男

    枝野委員 今の点は、法務省警察、よろしいでしょうか。
  22. 松尾邦弘

    松尾政府委員 既存法律であります売春防止法の二条におきましては、「「売春」とは、対償を受け、又は受ける約束で、」「性交することをいう。」こうなっております。同じような規定があるわけでございますが、その解釈は、今発議者の御答弁になったのと同じでございます。
  23. 小林奉文

    小林(奉)政府委員 行為がなされる前に存することが必要である、このように考えて、運用してまいりたいと思います。
  24. 枝野幸男

    枝野委員 それから、対償の先ほどの二つ要件の経済的なというところに絡むんだと思うんですけれども、東南アジアの児童買春のような例では、むしろお金の問題の方が大きいのかなと思うんです。国内で、大人児童に対して性的虐待をするということのケースとしてむしろ想定しやすいのは、一つは、例えば就職活動なんかのときに、今就職先が特にないですから、性交に応じれば雇ってあげますよとかいうような話があった場合、あるいは、本人に限らず親も失業している。子供ごとうまくそういったことをさせれば親を雇ってやるよとか、あるいは学業成績、例えば学校の先生が高校の生徒に対して、性交等に応じれば優をつけてあげますよとか、そういったことはこの対償となるのかどうか、これをお答えいただけますでしょうか。
  25. 円より子

    ○円参議院議員 お答えいたします。  おっしゃるとおり、さまざまなそういったお金ではない、就職させてやるとか、親が失業して大変だねということを利用する人もいるかもしれません。そうした雇用約束やまたは親の雇用が対償に当たるかどうかは、具体的な事実関係のもとで、これらが性交等をすることに対する反対給付と認められるかという点と、また社会通念上それらが経済的利益と認められるかという判断にかかっていると思われます。学業成績付与それ自体は、経済的利益とは認めがたいものですので、対償には当たらないと考えます。
  26. 枝野幸男

    枝野委員 勉強会などの議論の中でもありましたけれども、明確にして絞るということも片方で大事ですけれども、実際に子供たちを傷つけるようなことについて何とかきちんと入れ込まなきゃならないという視点もまた大事で、そうした意味では、学業成績付与は、この要件では法律上は入らない、だけれども、現実にこういったことが教育の現場などで行われたりすれば、許されることではないというのはお金が対償だった場合以上かもしれないというふうなこともあると思います。  そういった意味では、これからお互いに、こういったところについてはどうやったらとめることができるのかということについて、きちんと検討していかなきゃならないなということを申し上げておきたいというふうに思います。  それでは次に、この児童買春性交等の中には「性交若しくは性交類似行為をし、」という言葉が入っております。この性交類似行為勉強会でもさんざん議論になったわけでありますが、これが法律の中に書いてある場合と、一般的に法律を全く知らない人が性交類似行為と聞いた場合とでは、多分イメージも違うのではないだろうかな。私も、一応弁護士ではありますけれども、売春防止法とか余り知りませんでしたので、性交類似行為と今回の議論の中で初めて聞いて、あれと思いまして、なるほどなとも一方では思ったのですけれども、ちょっとこの解釈について確認をさせていただきたいと思います。  例えば、我々のような普通の服を着ていて普通にキスをしましたというような話とか、あるいは普通に服を着ている状態で抱擁をするとか、アメリカなんかでは道端でもするような抱擁をしましたというふうな話は性交類似行為には入らないというふうに考えておりますが、よろしいでしょうか。
  27. 円より子

    ○円参議院議員 今枝野先生がおっしゃったようなケースは、私も性交類似行為には入らないと思っております。  ただ、性交類似行為とは、御案内のように、実質的に見て性交と同視し得る態様における性的な行為を申しております。何が性交類似行為に該当するかにつきましては、あくまでも具体的事案に即して判断されるべき事柄でありますが、今申しましたように、先生のような行為性交類似行為には当たらないと存じます。
  28. 枝野幸男

    枝野委員 もしかすると次の要件、「自己性的好奇心を満たす目的で、」接触をしというところにも絡むのかもしれませんが、着衣の上から例えば乳首等に触れる。触れてはいないのでしょうね、着衣の上ですから。こういったものというのは性交類似行為などの「性交等」の中に入るのでしょうか、入らないのでしょうか。
  29. 円より子

    ○円参議院議員 衣服も、着ている衣服の種類とか材質とか厚さによって違いますし、またこれはいろいろ勉強会で、下着のような服はどうなのかとか問題になったところでございますけれども、また、触れるとおっしゃいましたけれども、さわる行為態様によっても違ってくるかと思います。また、さわる対象部位等具体的事情もやはり勘案しなければいけませんので、そういった事情を踏まえつつ、具体的事案について個別に判断される事柄であると思います。
  30. 枝野幸男

    枝野委員 それから、これも勉強会などでいろいろと議論のあったところでありますが、自己面前で、児童に他者、第三者と性交等をさせる行為、あるいは自己面前で、自分は接触はしないで児童自慰行為などをさせる行為、こうした行為はこの性交類似行為あるいは性交等の中に含まれるのでありましょうか。
  31. 円より子

    ○円参議院議員 今のお尋ねでいきますと、児童性交等をする者が対償を供与した者と意思を通じているような場合には、対償を供与した者が児童買春の共犯となる場合もあり得ると考えております。しかし、そのような状況でない場合には、児童性交等をしたものとは評価できませんので、児童買春には当たらないものと思います。  児童等に対償を供与して児童自慰をさせる行為につきましては、それが性交類似行為に該当する程度に至っていない限り児童買春に当たらないものと考えております。
  32. 枝野幸男

    枝野委員 ここまでの性交類似行為解釈のところ、法務省警察庁運用主体として、大体よろしいでしょうか。
  33. 松尾邦弘

    松尾政府委員 既存法律でも、児童福祉法の三十四条には「児童淫行をさせる行為」の「淫行」という文言がございますが、これは、解釈としては、性交のみならず性交類似行為も含まれるというのが最高裁の判例で確定しているところでございます。  性交類似行為の概念につきましては、児童心身に与える有害性が認められ、実質的に見て性交と同視し得る程度行為などと今までの判例の累積では定義されているところでございますので、その内容発議者の御答弁内容とほぼ同じだと考えてよろしいかと思います。  また、対償を供与した者と淫行した者とが異なる場合のものでございますが、例えば強姦罪等でありましても、実際に姦淫をした者とそれをさせた者が一体となって強姦をしたとみなされるケースについては、例えば女性の共犯であっても強姦罪の正犯が成立するということも判例で認められているところでございますので、淫行をさせる、あるいはその相手となるということの解釈においても同じように考えられるのではないか。参考までに申し上げます。
  34. 小林奉文

    小林(奉)政府委員 性交類似行為につきましては、実質的に見て性交と同視し得る態様における性的行為をいうということの発議者の御説明がございました。また、これにつきましては、法務省刑事局長から答弁がございましたように、判例、裁判例積み重ねがございますので、そういった判断に従って、私どもは適切に運用してまいりたいと思います。
  35. 枝野幸男

    枝野委員 ありがとうございます。  それから、この点について一点だけ、確認的な話なんですが、趣旨としては問題ないんだろうと思うのですが、ちょっと文字にしましたら趣旨が伝わりにくかったりしている部分がありますので、参議院議事録を見ますと、千葉景子議員からの質問に対して円議員がお答えになっているところで、性交類似行為の具体例、例えばということでこうおっしゃっているのです。「これは異性間の性交とその態様を同じくする状況下における、」途中を省略しますが、「同性愛行為などをいう、」という御答弁をされているのですが、その「性交とその態様を同じくする状況下における、」と「同性愛」というものの間がいろいろたくさん入っているので、多分つながっている御趣旨だというふうに思うのですが、紙だけで見ますとつながっているのかつながっていないのかがちょっとわからないものですから、念のため確認させてください。
  36. 円より子

    ○円参議院議員 おっしゃるとおり、つながっているものなんですが、もう一度、その性交類似行為の定義につきまして参議院質疑答弁いたしましたところを再度説明させていただきますと、性交類似行為とは、実質的に見て性交と同視し得る態様における性的な行為をいいます。例えば、異性間の性交とその態様を同じくする状況下における、あるいは性交を模して行われる手淫、口淫行為、同性愛行為などでございます。  ここで、おっしゃるとおり、「異性間の性交とその態様を同じくする状況下における、あるいは性交を模して行われる」という部分は「同性愛行為」にもかかるものでございます。したがって、同性愛行為につきましても、異性間の性交とその態様を同じくする状況下における、あるいは性交を模して行われるものが性交類似行為に当たるというふうに思っております。  参議院質疑ではあるいはそのことが適切に表現されなかったかもしれませんが、結論としては今御説明したとおりでございまして、枝野先生理解と同じと思っております。
  37. 枝野幸男

    枝野委員 ありがとうございます。  それでは次に、児童ポルノの方の定義のところについてお尋ねをさせていただきたいというふうに思います。  「「児童ポルノ」とは、」ということで、「写真、ビデオテープその他の物」というまず一つの限定がございます。ここのところで、従来の自社さで衆議院に出されておりました案では、「絵」という文言が入っておりましたが、今回「絵」という文言を外しました。そういたしますと、「その他の物」に絵が入るのか入らないかということになるわけですけれども、含まれる絵と含まれない絵があるというふうに理解をしておりますが、どういったものが含まれて、どういったものが含まれないのかということについてお答えいただければと思います。
  38. 大森礼子

    ○大森参議院議員 自社さ案の方では例示のところに「絵」がございましたけれども、今回明記してございません。これは一つに、コミックとかそういうものが入るのか、こういう問題もあったものですから例示から外しております。それで、枝野委員おっしゃるとおりに、絵につきましては、「その他の物」に含まれ、児童ポルノに該当することもあり得ると考えております。  この法案では、児童ポルノとは、児童の一定の「姿態を視覚により認識することができる方法により描写したもの」とされておりますが、ここに言う児童とは、十八歳未満の実在する児童をいうことになります。したがいまして、絵につきましても、実在する児童の姿態、これを描写したものであると認められない限り、児童ポルノには該当しないことになります。こう考えております。
  39. 枝野幸男

    枝野委員 ありがとうございます。  さてそこで、ちょっと悩ましいのは、実在の児童を描いたのだけれども、実際に裸にしてそれを描いたということではなくて、顔だけ実在の子供、例えば芸能人などのような有名人の顔であれば、顔だけは実在の子供の顔を描きました。だけれども、裸の部分についてはこれは全く想像してかきました。こういった実在の児童を想像して描いた絵というのは、これはどちらに入るのでありましょうか。
  40. 大森礼子

    ○大森参議院議員 その場合に、人物、児童という人間は実在しているけれども、その姿態が、架空ですね、これが実在しない場合、想像してかいたものになりますので、実在する児童の姿態とは言えず、児童ポルノには該当しないと考えております。
  41. 枝野幸男

    枝野委員 このあたりのところは表現の自由と絡みますので、やはり明確さが要る。今のようなものを本来は規制の対象にすべきかどうかということはまた別に問題があって、うまく規制できるのだったらすべきというのもあるかもしれませんけれども、この法律解釈として、対応としては今のようなことでやるべきだろうというふうに思います。そうしか解釈できないだろうというふうに私も思います。  今の特に後の方の話など、法務省それから警察庁、同じような理解でよろしいでしょうか。
  42. 松尾邦弘

    松尾政府委員 ただいまの発議者の御答弁趣旨を尊重して運用していくべきものと思っております。
  43. 小林奉文

    小林(奉)政府委員 警察におきましても、ただいまの法務省さんと同じように、発議者の説明の趣旨を体して適切に運用してまいりたいと思います。
  44. 枝野幸男

    枝野委員 それから、これは多分衣服の一部をつけないというようなところにも絡んでくるのかなというふうに思うのですけれども、これも先ほどの対償とか性交類似行為とかと一緒で、具体的な個々案件を明確に全部特定しないと、一件一件違うといえば違う部分はあると思うのですけれども、まさにいわゆる常識の範囲の問題として、いわゆる通常の、普通の、としまえんのプールあたりでみんなが着ているような水着を着ているようなものは、児童ポルノには一般的には当たらないと考えていいのだろうというふうに思うのですが、よろしいでしょうか。
  45. 大森礼子

    ○大森参議院議員 としまえんのプールの水着ですか。(枝野委員「などで着ているような」と呼ぶ)ならないと思います。
  46. 枝野幸男

    枝野委員 ここからあたりが若干悩ましい範囲のところだというふうに思うのですけれども、これまた、もちろんそれが映されているシチュエーションにもよるのだろうと思うのですけれども、いわゆる通常の下着姿、例えばドラマなんかで、着がえのシーンで、背中のところでちょっと下着部分、肩のところが映っているとかということはあり得るのだろうというふうに思いますし、あるいは逆に、非常に低年齢の子供たちの例えばおふろのコマーシャルなどで、下着姿でパンツ一枚になってというような話というのは今でも実際に流れていたりすると思うのですけれども、こういった通常のシチュエーションにおける通常の下着姿というようなケースというのはポルノに当たらないというふうに考えてよろしいのでしょうか。
  47. 大森礼子

    ○大森参議院議員 このような問題にお答えするのは非常に困難なのですが、通常の下着、通常のシチュエーションというのは、多分枝野委員と私の頭の中で描いているものが異なるかもしれません。そういったことで、こういう事案につきましては、具体的な口頭で言われたことについて、その場合はということはなかなか言いにくいものがございます。  こういう判断につきましては、あるものが児童ポルノに当たるか否かについては、あくまで個別具体的な事例に基づきまして、この法案要件に該当するか否か総合的に判断されるべきものでありまして、最終的には裁判所の認定によることになります。したがって、確定的にお答えすることは困難であるということをまず御理解いただきたいと思います。  それから、通常のおふろのシーンといいますと、これは衣服はつけていない子供になると思いますけれども、三号ポルノにつきましては、その要件といたしまして「性欲を興奮させ又は刺激する」、こういうような要件がついております。子供がおふろに入っている姿を見て通常、一般人は性欲を興奮させ、刺激するというところまで至らないと思いますので、そういうところから当たらない場合が多いのではないかというふうにお答えできると思います。
  48. 枝野幸男

    枝野委員 それから、これが、もちろん今のようなお答えになるのをわかった上でお尋ねをしておりますので、例えば実在の子供をモデルにした絵だとか、あるいは芸術、何が芸術かというのは、芸術じゃない作品をつくっていらっしゃる方でも御自分では芸術とおっしゃるわけなので、これも主観的なものが入るのですが、まさに一般的に、美術館などに描かれている、例えばヨーロッパの方の教会なんかの壁画みたいなところを見れば、例えば子供の裸の姿とかいうものの絵があります。あれが実在の子供を描写したものかどうかわかりませんけれども、ああいったような芸術作品のようなものは、やはり今のお話の「性欲を興奮させ」などの解釈のところで問題ないということになるケースも多々あるのではないかなというふうに思うのですが、そういった理解でよろしいでしょうか。
  49. 大森礼子

    ○大森参議院議員 今枝野委員、教会の壁画などの裸の絵とおっしゃったのでしょうか。それはまず、実在する児童かどうかということも問題になってくると思います。  それから、芸術作品ですとか、あるいは芸術作品とかに出てくる場面についてどう判断するかということについても、例えば芸術作品が何か、どうかということも非常に難しいのではないかと思います。したがって、この法律関係につきましては、あくまで当該描写に係る児童の姿態が第二条第三項の第三号の要件を、もちろん二号もあるかもしれませんが、この要件を満たすものであるか否かによって、同号に言う児童ポルノに該当するか否かが判断されることになります。
  50. 枝野幸男

    枝野委員 では、ちょっと逆のところから聞いていきましょう。  この三号のところ、「衣服の全部又は一部を着けない児童」という文言がありまして、これはもしかすると誤解があってはいけないなというふうに私は勉強会の中からもずっと申し上げておったのですが、衣服の「一部を着けない」という日本語を普通に理解しますと、例えば上着を着ていて、上着をぱっと脱いだらタンクトップ姿とかというのも、一部を脱いでいるわけですから、「一部を着けない」ということに日本語としてはなるわけですけれども、こういったケースだったらたくさんあります。これは児童ポルノでないだろうというふうに思うのですが、まさにこの「一部を着けない」ということの意味、つまり、何か着ているものを一枚脱ぎますよということではなくてという趣旨でいいのだろうと思うのですが、よろしゅうございますか。
  51. 大森礼子

    ○大森参議院議員 枝野委員のおっしゃるとおりでよろしいと思います。  要するに、「着けない」というのは、衣服の全部または一部をつけていないという状態をいうものでありまして、行為をいうものではないと考えますので、今の枝野委員の御理解でよろしいと思います。
  52. 枝野幸男

    枝野委員 今の点は大事なところなので、法務省さん、それから警察庁さん、よろしゅうございますね。
  53. 松尾邦弘

    松尾政府委員 これまでも、例えば刑法にはわいせつ物の頒布等を処罰する規定がございます。その場合に、わいせつ物と芸術性との問題とか、さまざまな観点から議論をされてきたところでございまして、今回の児童ポルノにつきましても、今委員お尋ねのような、例えば芸術性とポルノ性との両立はあり得るのかとか、そういうような議論だろうと思いますが、考え方といたしまして、従来、判例等で累積されている、積み重なっている判断というものは、今発議者の御答弁をいただいた内容に沿うものだというふうに私は理解しております。
  54. 枝野幸男

    枝野委員 その前段の方ではなくて、一番最後の、「一部を着けない」が一部を脱いだものという意味ではないというところの方をお答えいただきたいのです。
  55. 松尾邦弘

    松尾政府委員 法案の条文を拝見しますと「着けない」という文言になっておりますので、その解釈としては、今発議者が御答弁された内容というふうに私も考えております。
  56. 小林奉文

    小林(奉)政府委員 第二条第三項第三号に書いてございます文言のとおり、状態というふうに私ども理解しております。これは発議者答弁されたとおりだと思います。そのとおり運用してまいりたいと思います。
  57. 枝野幸男

    枝野委員 これはどういう聞き方をした方がいいのかなと迷いながらお尋ねしますが、この衣服の「一部を着けない」というところについての参議院での大森先生の御答弁の中で、「具体的な例としましては、全裸または半裸の児童に扇情的なポーズをとらせた姿態」というお答えをしておられます。この「全裸または半裸」の「半裸」ということの意味が、これまた人によって受けとめ方が全然違う可能性もあるなということもありますので、念のためにお尋ねしておきたいのです。  私の理解では、この全裸または半裸というのは勉強会の中でも何度か出てまいりまして、そのときに多分警察庁からお配りになられたのかなと思いますけれども、全裸または半裸という言葉を公的なところで使っておりますのは、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等の解釈基準というのが私のところにも配られておりまして、この中に「「衣服を脱いだ人の姿態」とは、全裸又は半裸等社会通念上公衆の面前で人が着用しているべき衣服を脱いだ人の姿態をいう。」ということで、全裸または半裸という言葉が出てくる。まあ大体こんなものだということをその勉強会の中でお聞きをしたというふうな記憶が残っております。  この全裸または半裸というのが出てくるのは、ストリップ劇場等の規制のところについて、全裸または半裸、ストリップはだめですよと。そうすると、ストリップで規制をされているようなものはだめですよということであるならば、「半裸」の意味として理解をしやすいというふうに思っているのですが、こんな理解でよろしいでしょうか。
  58. 大森礼子

    ○大森参議院議員 私が使った言葉だったわけですね。  「半裸」という言葉につきましては、法律及び政令では用いられていないものと承知しておりますが、法務委員会答弁では、「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態」というので具体的な例を挙げる際に、「全裸または半裸」という形で用いたものであります。  それで、この用語につきましては、今枝野先生がおっしゃったように、いわゆる風営法の第二条第六項第三号「衣服を脱いだ人の姿態」という言葉について、警察庁解釈基準で「全裸又は半裸等社会通念上」「人が着用しているべき衣服を脱いだ人の姿態をいう。」とされていることもありまして、これを念頭に置いて答弁したものでございます。
  59. 枝野幸男

    枝野委員 今の風営法との関係、特に警察庁さん、よろしいですね。
  60. 小林奉文

    小林(奉)政府委員 議員指摘解釈基準におきまして、「「衣服を脱いだ人の姿態」とは、」ということで、定義というかその内容を説明した部分がございます。そこでは、「全裸又は半裸等社会通念上公衆の面前で人が着用しているべき衣服を脱いだ人の姿態をいう。」こういうふうなことで書いてございまして、先ほど発議者の説明したとおりである、このように私ども理解しております。
  61. 枝野幸男

    枝野委員 ありがとうございます。そういったことで運用していただければ、変な拡大とか間違った運用ということはないかなというふうに理解をしたいと思います。  それから、先ほどもここで出てきていますが、「性欲を興奮させ又は刺激する」というのが要件になっているわけですけれども、この「性欲を興奮させ又は刺激する」ということについての判断者はだれであるのか、あるいは、だれの性欲を興奮させ刺激するということであるのか、これについてお答えをいただければと思います。
  62. 大森礼子

    ○大森参議院議員 「性欲を興奮させ又は刺激する」、この構成要件につきまして、だれの性欲をという御質問でございますけれども、通常、構成要件に規定してありますことは、一般通常人というものを基準としております。  最終的にそれをだれが判断するのかということになりますと、犯罪構成要件に該当するか否かの最終的な判断は、刑事事件におきましては裁判所がすることになります。
  63. 枝野幸男

    枝野委員 それで、一般人の性欲を刺激するかどうかということになりますと、逆に言えば、ごく一部の人たちしか性的な刺激を受けないというケースについてはここには含まれないという理解でよろしゅうございますね。
  64. 大森礼子

    ○大森参議院議員 今申し上げましたように、構成要件該当性の判断というのは一般人を基準といたしますので、一般通常人より特に性的に過敏に反応する方とかを御想定なさっているのかと思いますが、今申し上げたように一般人を基準にいたしますので、枝野委員がおっしゃったような場合は、児童ポルノには当たらないことになると思います。
  65. 枝野幸男

    枝野委員 それで、先ほど途中でちょっと切りかえてしまったのですけれども、先ほどおふろのコマーシャルみたいな例を申し上げましたが、一般的に言えば、これも、人によって子供も成長程度が違いますし、シチュエーション、映し方によって全部違うとは思いますが、普通には、三歳とか四歳の子供たちが例えば裸で水遊びをしている、それがニュースの映像とかで流れたりすることがありますね、いよいよ暑くなりましたなんというニュース。それから、温泉地で普通に温泉に、おふろに入っている子供、それも少なくとも二歳とか三歳の子供。  これは、何歳からかということをここで議論しようと思うと、これはまさにケース・バイ・ケースなのでそういうことは申しませんが、そういったケースみたいなところは、これは一般人の性欲を刺激するとは普通には言えないということで大体解釈されるだろうなという理解でよろしいでしょうか。
  66. 大森礼子

    ○大森参議院議員 そのように理解していいと思います。  ただ、低年齢、三歳とかとおっしゃったのでしょうか、その裸であれば絶対該当しないかということは必ずしも言えません。性的に未熟な女の子、女児の陰部等を描写したものと認める写真についても刑法上のわいせつ図画に当たるとした判例がございます。  そういったことから、常に否定されるわけではないと考えますけれども、今おっしゃったような事例につきましては、それが通常一般人から見て「性欲を興奮させ又は刺激するもの」と言えるかどうかという、この基準によって判断していただければ妥当な結論が出ると思います。
  67. 枝野幸男

    枝野委員 この部分ではここが最後なのですが、このケースというのは非常に難しいなと思っているので、ここでもちろん議論するあれではないですし、議事録に少しこういったところに問題意識を持ったんだと残しておく趣旨であえてお尋ねするのです。  これは多分、興奮、刺激というのはどの程度要るのかということにかかわるのだと思うのです。例えば、十五、六歳の男の子のアイドルなんかのケースというのを想定したいのですけれども、これは多分、女の子のアイドルで胸を露出したような写真とかというのはこれに当たるんだろうな、一般的な、普通のケースで言えば当たるんだろうなと大体想像がつくと思うのですが、最近はやっているジャニーズJrみたいな十五、六歳の男の子のアイドルがパンツ一枚、胸を、乳首を出して舞台の上で踊ったりしていることに対して、多分あれは、あのファンの女の子たちは、ある意味では性的な一定の刺激を受けているのではないかな。だからこそみんなキャーキャー騒いで集まってくるのであると思うのですが、これが児童ポルノになるのかならないのかというところの判断というのは、まさに刺激とか興奮の程度にもかかわるのかなと思うのですけれども、どんなふうに考えたらいいのか、お答えいただければと思います。
  68. 大森礼子

    ○大森参議院議員 今おっしゃったようなジャニーズJrのようなアイドルの男の子の姿態についてはどうかということですが、これも、同じ答弁になりますが、その姿態が「性欲を興奮させ又は刺激するもの」であるかどうかというこの判断基準によることになります。ある程度セクシーとかそれを売り物にする場合もあるかもしれませんし、それによってファンの子が多少性的興奮といいますか、することは否定できないかもしれません。  実は、児童ポルノの、「性欲を興奮させ又は刺激するもの」、これは、自社さ案では「性的好奇心をそそる」、こういう文言がありましたけれども、実は勉強会枝野委員のそういう御指摘もございまして、あいまいな表現を避けてもっと明確な基準にしようということで、この法案のような表現になったものです。
  69. 枝野幸男

    枝野委員 勉強会でいろいろな議論があったわけですし、今も繰り返し私が申し上げているしお答えにもあるとおり、もちろんケース・バイ・ケースで、ここがこうだからこうとは、全部言えるケースはあり得ないと思うのですが、若干危惧されているところがあるとすれば、今の、少なくとも、日本のいわゆる全国ネットをしているようなテレビとか、あるいは一般の書店でという言い方をしていいのかどうかわからないのですけれども、普通に売られている、普通の流通ルートに乗っているような部分というのは自己規制がある程度されていて、例えば十八歳未満は週刊何とかのグラビアなんかでも少なくとも胸を出したりとかしていなかったりしていますし、テレビなんかはかなり自己規制している。  こういうところでたまたま、温泉場で映っているとか、まさにアイドルの男の子が上半身裸だったとかというようなケースは、つまり、従来普通に行われているケースはこれで処罰対象になるということは、一般的には、普通にはあり得ないという理解で大丈夫だろうなと私自身は理解をして、それだったら、本当にそれ以外のおかしなところは処罰しなければならないということでやるべきだという結論になったわけです。これは、お答えまたややこしいと思いますので、そういう理解であるということでお話をさせていただいたということで、議事録にとどめていただくということでいいかなというふうにとめておこうと思います。  それから、ちょっと細かいところになりますが、七条で、児童ポルノの頒布等というのが処罰対象になっております。頒布、販売、業として貸与または公然陳列。確認になりますが、個人的な複製というものは犯罪として処罰する対象にはなっていないという理解でよろしゅうございますでしょうか。
  70. 大森礼子

    ○大森参議院議員 七条では、児童ポルノを頒布、販売し、業として貸与し、または公然と陳列する目的のある場合を除いて、製造、所持、運搬または輸出入等は処罰されなくなっております。このような目的がない個人的な複製行為については、頒布等の目的での製造には該当しないというふうに考えます。目的によると思います。
  71. 枝野幸男

    枝野委員 最後に、附則との関係お尋ねしたいと思っておるのですけれども、附則の二条のところで、条例との関係、従来いわゆる淫行条例と言われていたものとの関係が書いてあります。端的に申し上げれば、従来の条例におけるいわゆる淫行規定というものはこの法律ができたことによって廃止をされるという理解でよろしいのでありましょうか。
  72. 堂本暁子

    ○堂本参議院議員 お答えいたします。  今までほとんどの都道府県に制定されているいわゆる青少年保護条例、淫行条例とも言ってきましたけれども、これは法律がなかったためにこれらの行為を地方自治体が処罰が必要だと認めた上で処罰してきたものと考えています。  これからは、法律処罰される行為については条例で重ねて処罰することは認められないわけですから、附則の第二条に明らかにしているように、今までの淫行あるいは青少年条例というのは要らなくなってくるわけだと理解しております。  ただ、この法律の制定の趣旨を踏まえて、この法律以外の行為で各地方自治体が判断して必要だと思うようなことがあれば、またそれは別途地方自治体の判断によるものと思います。
  73. 枝野幸男

    枝野委員 今の附則二条の解釈について、法務省さん、こういったことでよろしいでしょうか。
  74. 松尾邦弘

    松尾政府委員 今発議者の御答弁のとおりだろうと思います。
  75. 枝野幸男

    枝野委員 ちょっと法律論的な話なので法務省さんにお伺いするのが一番いいと思うのですが、この附則二条に言う「この法律で規制する行為処罰する旨を定めているものの当該行為に係る部分」というのは、どこまでが入るのかというのがちょっと一般的にはよくわかりにくいところがあるのです。つまり、買春そのものはこれで一緒に重なっていますが、例えばいわゆる淫行ということで処罰をされていた部分というのはこちらでは淫行という言葉を使っていませんね。そういった意味では、重なるのか重ならないのかという解釈はややこしいのだろうと思うのですが、この辺についてどういうふうに解釈したらいいのか教えてください。
  76. 松尾邦弘

    松尾政府委員 具体例で申し上げますと、今回の児童買春法案では対価の支払いあるいは約束というのが要件になっておりますが、今条例の中には無償の場合も含めましてこれをその対象としているものもございます。したがいまして、この法案対象としている対価を伴うものはこれで含まれるということになると思うのですが、無償の場合、これはこの対象外になっておりますので、ただいま発議者の御答弁にもありましたけれども、児童買春以外の行為処罰につきましては、その必要性、合理性等を踏まえまして各地方公共団体で判断していただく範囲の話というふうに我々は理解しております。
  77. 枝野幸男

    枝野委員 最後に、これは御質問というよりも、ここで議論を始めると、最後まで勉強会のところでもめた案件でありますので、こういった考え方も大事にしていただかないとということで申し上げるにとどめて、議事録にとどめておくということにした方がいいかなというふうに思っているのですが、検討条項が附則の中に入っております。  先ほど私がこの質疑の中でも申し上げました、成績を上げるから性交に応じろとかいうケースをどうしたらいいのだろう。実際にこれを法規制しようと思ったら相当難しいというふうに直感的にも思っています。  それから、実は、今答弁をいただいた、無償の場合の淫行行為を各自治体で規制している話というのをどう考えたらいいのか。この手の制度というのは、この法律もそうですけれども、全国一律で国が責任を持って本来やらなければならないものでありますし、何県だったらオーケーで、隣の県境を越えたらだめだとかということのあるケースというのは本来僕は違うと思いますので、そういったところも実はこれから考えていかなければならない。  あるいは、対象年齢のところも考えていかなければならないというようなことで、まさにここに、法律で挙げておりますとおり、検討条項をしっかりつけておきまして、三年目途でしっかりとさらに見直しをしていくことが、つくるのにかかわってきた人間の責任でもあろうかなというふうに思っております。  ただ、実は参議院の御答弁の中で、単純所持の禁止の議論というものがこの中に入っている。もちろん議論することを否定するつもりは全然ありませんけれども、余りこのことだけが強調されますと、単純所持がいい悪いという話ではなくて、実は従来まで少なくとも単純所持については否定をされてこなかった、法律上禁止をされてこなかった。つまり、違法でなかった。違法でなく入手をしてきて所持をしている人間が世の中たくさんいるわけです。  所持していることによって新たな法益侵害が生じていないという中で、これからは新しく持ってはいけないですよ、新しく手に入れてはいけないですよということが、この法律が通ったら施行されるとしても、それから持っていた人たちに、三年間で持っていたものを全部探し出して捨てなさいということを国家として強要できるのかといえば、やはりそこはちょっと違うのではないかというようなことを今回の単純所持の議論の中で私は申し上げたつもりでおります。  そういったことを考えると、三年ということが単純所持についての見直しをするのに果たしてふさわしい期間かどうかということになる。この法律がある程度行き渡っていって、こういったものをつくったり買ったりしちゃいけないんだなということが、この法律で初めてなるわけですから、ポルノについて。それが認知をされた段階であるならば、それはあり得ることは否定をしないつもりでおるのですけれども、それが三年というので余り早急にやった場合には、まさに国家が、持っているだけで新たな法益侵害を生じないことについて、無理やり捨てなさいということを強要することになるというのはちょっと無理があるのじゃないのかなというようなことについての危惧を最後に申し上げまして、重ねて、本当にいろいろ細かいことを聞いて、また答えにくいということは十分わかった上でお尋ねをさせていただきましたので、大変御答弁に御苦労されたということについても、おわびといいますかお礼を申し上げまして、時間が切れましたので終わらせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
  78. 杉浦正健

    杉浦委員長 次に、上田勇君。
  79. 上田勇

    ○上田(勇)委員 公明党・改革クラブの上田勇でございます。  きょうは、参議院先生皆様方には御足労いただきまして、まことに御苦労さまでございます。大変要請の強かったこの法律案が、参議院皆様の共同提案という形で提出されまして、参議院を通過、そして衆議院審議がきょうから開始されたということは大変すばらしいことでございまして、この間の先生方の御努力に対しまして最大限の敬意を表するものでございます。  本法律案は、平成十年五月に衆院に同じ名称の法案が提出されまして、当時の与党、自社さの共同提案という形で提出された法案と、目的趣旨はそれを踏まえたものであるというふうに理解しておりますが、内容におきましては相当修正されている箇所もございます。  きょうは、この点を踏まえまして、限られた時間でありますが、皆様が共同で修正をされたその理由を具体的に何点かにわたってお伺いをしたいというふうに考えているところでございます。  まず最初に、先ほどの枝野委員質問でも触れられた箇所でございますが、法案の第二条第三項、児童ポルノの定義でございますが、これを変更した理由につきまして、特にこれは昨年の五月の日本弁護士連合会の意見書の中にも示されている点、例えば、衆法にありました「絵」を削除した理由、あるいは衆法ではこういう表記になっておりました、「性的好奇心をそそる」といったものが今回の法案では「性欲を興奮させ又は刺激する」という表記に変更になっておりますが、そうした形に定義の部分を変更された理由につきまして、御説明をいただければというふうに思います。     〔委員長退席、山本(幸)委員長代理着席〕
  80. 大森礼子

    ○大森参議院議員 自社さ案と比べまして、児童ポルノのところの定義については非常に大きく変わっております。  これはやはり限界事案につきましては、表現の自由をいたずらに規制することがあってはいけない、萎縮効果等も生じさせてはいけないということと、それから構成要件そのものの明確性ということから再検討をいたしました。  それで、具体的にどのような経過で自社さ案を変えていったかということですけれども、まず、自社さ案の場合には、二条三項第一号におきまして、児童ポルノの定義につきまして、「性交等に係る児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したもの」、こういうふうに規定しておりました。これは一号です。  それで、この「性交等」という三文字について、これをどう解釈するかといいますと、自社さ案二条二項、児童買春の定義のところで出てまいります「性交等」、この後に続きます「性交等」の意味についての言葉ですが、「性交若しくは性交類似行為をし、又は自己性的好奇心を満たす目的で、性器、肛門若しくは乳首に接触することをいう。以下同じ。」とありますので、この「性交等」を受けて解釈することになります。  そうなりますと、児童ポルノの定義につきまして、いろいろな児童の姿態のうち、性交または性交類似行為以外の行為につきましては、画面に描写されている行為者自身の性的好奇心を満たす目的が必要になるという非常に奇妙な形になります。そして、その目的が立証されなければ「性交等に係る児童の姿態」という構成要件を満たさないことになるのではないか、こういう疑問点が勉強会で出されました。  ポルノかどうかを判断するにつきましては、その描写物から客観的に判断されるべきでありまして、該当性の判断行為者の目的に係らせるべきではないということからも、もう一度検討を加えようということになりました。  児童ポルノにつきましては、むしろ見る側の性的な感情がどうなるかが問題ですので、その点から児童ポルノを改めて定義したのが本法案の二条三項の各号であります。  それからもう一点、先にお答えしようと思ったのですが、自社さ案には「絵」がありましたけれども、「絵」を例示から除いております。これは、先ほどの枝野委員の御質問にもお答えしたのですが、コミックとか想像した漫画とか、そういうものも入るのか、こういう問題、議論がありましたので、そういうあいまいさをなくすということで一たん例示から外しました。その上で、実在する児童の姿態を描いた絵につきましては「その他の物」に入り得る、こういう解釈をしております。  それからもとに戻りまして、児童ポルノ要件で、自社さ案の第二条三項二号の方では、「衣服の全部又は一部を脱いだ児童の姿態であって性的好奇心をそそるものを視覚により認識することができる方法により描写したもの」と規定してございました。言ってみれば、キーワードというのが、「性的好奇心をそそる」ということとなっていたわけであります。これにつきましては、本当にこの文言でよいのかどうか、もっと厳格にする必要があるのではないかということを議論いたしました。  そして、ここの「性的好奇心をそそる」という文言ですけれども、これはいわゆる風営法、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律にも類似の文言が用いられております。  例えて言いますと、二条六項五号の、これは店舗型の性風俗特殊営業を規定しましたもので、「店舗を設けて、専ら、性的好奇心をそそる写真、ビデオテープその他の物品で政令で定めるものを販売し、又は貸し付ける営業」、こういう条文の中で出てまいります。そしてこの営業につきましては、同法二十七条で届け出制になっておりまして、営業届け出の基準と同じ文言を果たして刑罰法令の構成要件に用いてよいのかどうか、また表現の自由との関係からもより厳格にすべきではないかということ、これらのことを検討いたしまして、「性的好奇心をそそる」という言葉にかえて、「性欲を興奮させ又は刺激する」、こういう要件を用いました。  また、自社さ案の第二条第三項第三号では、「専ら児童の性器又は肛門を視覚により認識することができる方法により描写したもの(専ら医学その他の学術研究の用に供するものを除く。)」こういう規定もございました。これについて、児童ポルノというのは、ポルノの語源がポルノグラフィーですから、何らかの形で見る側の性的な感情に影響を与えるものをとらえるべきではないか、こういう意見もございました。  このような議論勉強会の方で重ねまして、この法案の第二条第三項各号に当たるもののみを児童ポルノとしたものでございます。
  81. 上田勇

    ○上田(勇)委員 次に、法案の第十三条、記事等の掲載等の禁止の項目でございますが、これも変更がされております。衆法案の中にありました「みだりにその情報を他に提供してはならない。」という事項が削除されておるわけですが、これを変更しました理由、それからあわせまして、この第十三条と少年法第六十一条に定めております少年のプライバシー保護との関係につきましても、あわせて御答弁をいただければというふうに思います。
  82. 清水澄子

    ○清水(澄)参議院議員 ただいまの御質問に対しましてお答えいたします。  まず、この自社さ案の第十三条は、この事件に係る児童については、「その氏名、年齢、職業、住居、容ぼうその他当該児童が当該事件に係る者であることを推知することができるような事項を、新聞紙その他の出版物に掲載し、若しくは放送し、又はみだりにその情報を他に提供してはならない。」ということで、厳格な規定になっておりました。  そこで、この本法案では、それが一部修正をされて、事件に係る児童については、「その氏名、年齢、職業、そして就学する学校の名称」というのが入っております。そして、「住居、容貌(ぼう)等により当該児童が当該事件に係る者であることを推知することができるような記事若しくは写真又は放送番組を、新聞紙その他の出版物に掲載し、又は放送してはならない。」というふうな規定に変わりました。  この法案では、ある児童が事件に係る者であることを推知することができるような記事等を構成する要素をどうするかということで、この児童の氏名等を例示しております。この点が自社さ案との相違点の一つであるわけです。  つまり、この例示した事項を報道いたしましても、それによって特定の児童が事件に係る者であることが推知されない限りそれは許されるものである。例えば、十四歳の児童相手方とした児童買春をした者が逮捕されたというような報道は適法であるということが一点でございます。  そして、二つ目の相違点といたしましては、自社さ案にありました、「又はみだりにその情報を他に提供してはならない。」という部分を削りました。この点につきましては、外部への公表行為のみを問題とすればもうそれで事足りるのではないかとの意見もありまして、そして少年法第六十一条の規定ぶりに合わせたものでございます。さらに、ある児童が事件に係る児童であることを推知させるような事項の例示として、就学する学校の名称を掲載してはいけないということを追加したわけでございます。  二つ目に、少年法六十一条との関係でございますが、少年法第六十一条は、これは家庭裁判所の審判に付された二十歳未満の者及び二十歳未満のときに犯した罪により公訴を提起された者について、その者が事件の本人であることを推知することができるような記事または写真の出版物への掲載を禁ずるものであるという、こういう規定になっております。  これに対しまして、この本法案に規定する児童買春等の犯罪の対象になった児童の氏名等が公表されますと、これが当該児童がだれであったかということが広く知られることになって、さらにこの被害児童に対して二重三重の被害を与える、そういう意味からも、この十三条の記事等の掲載等の禁止の規定は、第四条から、いわゆる子供買春を含めたポルノ、人身売買等第八条までの罪に係る事件に係る児童についての規定でありまして、その目的とするところは、当該児童の名誉とかプライバシーの保護という意味でも、児童権利を守るという点においては、少年法第六十一条の規定の趣旨と同様であるという認識に基づいております。     〔山本(幸)委員長代理退席、委員長着席〕
  83. 上田勇

    ○上田(勇)委員 それでは次に、法案の第七条、児童ポルノ頒布等でありますが、これにおいては、自社さ案第六条と比較をいたしますと、「広告」という項目が抜けておりますが、これを除外された理由につきましてお尋ねいたします。
  84. 大森礼子

    ○大森参議院議員 自社さ案の六条二項から「広告」というものを除外しております。これは勉強会の方でも、ここに言う「広告」というのはいかようなものなのか、映像、写真等を使うものもありますし、文字だけのものもありますし、いかなるものを前項と同様に処罰すべき広告ととらえるか、さまざまな議論がございました。  それで、「児童ポルノの頒布、販売、業としての貸与、又は公然陳列に係る広告」、これについて、意義とか適用範囲についてさまざまな角度から検討した結果、児童ポルノの頒布等に係る広告につきましては、その大半のものについて、児童ポルノの頒布等の罪、これの共犯、これは刑法の総則規定でありますけれども、この共犯として処罰し得ることから、あえてその共犯形態のものを独立した犯罪として構成する必要はないと考え、処罰規定を設けなかったものであります。
  85. 上田勇

    ○上田(勇)委員 何点かにわたりまして質問させていただきましたけれども、当初衆議院の方に提出されました法律案について、若干あいまいであった点、不都合であった点、皆様方大変勉強会等を熱心に重ねられまして、そういった点を改善されたということがよくわかりました。刑罰法規であるだけに、そうした熱心な御討論によって修正が行われたということは大変評価すべきことでありますし、今日に至るまで、提出者の皆さん、また関係皆様方の御努力に対しまして敬意を表するものでございます。  多少時間が余っておりますが、私の方からの質問はこれで終わらせていただきます。
  86. 杉浦正健

    杉浦委員長 次に、木島日出夫君。
  87. 木島日出夫

    ○木島委員 日本共産党の木島日出夫でございます。  発議者の皆さん、本当に御苦労さまでございます。私自身も皆さんと一緒にこの法律作成過程に携わった一人として、日本が世界のポルノの発祥地だなんて言われないように、そしてまた、今の日本の子供たち性的搾取から守るため、本当に立派な法律をきっちりつくるということが大事だと思っております。そんな立場から質問をさせていただきます。  しかし、この法案は、基本的には刑罰法をつくるというわけでありますから、やはり二つの側面からきちっと審議するということが非常に大事だと思います。  第一の側面というのは、何といっても脱法行為を許さない、法律の実効性をきっちり高める、そういう側面からこの法律は大丈夫だろうかという視点と、もう一つは、逆の立場でありますが、捜査当局、取り締まり当局の濫用によって、被害者であるべき子供がセカンドレイプのような、逆に加害者として扱われてしまったり、十八歳未満の子供たち男性の中学生、高校生が逆に加害者として不当な捜査を受けるようなことがあってはならぬ、その歯どめをどうきちっとつくるかという、やはりこれは相反する立場なんです。そういう二つの側面から、児童買春児童ポルノについて質疑が必要だと思いますので、基本的には賛成なんですが、そんな立場から、時間の許す限り幾つか質問をしてみたいと思います。  最初に、児童買春の問題であります。  もう同僚委員からいろいろ聞かれておりますから、重複すること全部はしょりまして、私が一番心配しているのが、この法律が成立した後、十八歳未満の子供たち同士、中学生同士高校生同士男女の性的交際が、果たして性交性交類似行為、わいせつ行為として——当然対償の供与というのが必要なんですが、それはあり得ると思うんですね。お金にしろ、利益供与にしろ、チョコレートにしろ、あると思うんです。そういう子供たち同士のこのような性的行動が果たしてこの法律によって児童買春としての適用を受けないという保証があるのだろうか、その問題であります。  法案の第二条の児童買春の定義、それから第四条の児童買春の基本法文、そこからだとどうもなかなか読み取ることはできないのですが、まず発議者は、その私の質問あるいは心配に対して、どうお答えになるのか。
  88. 円より子

    ○円参議院議員 木島委員の御質問にお答えさせていただきます。  先生のおっしゃるとおり、子供たち性的搾取する、性的虐待するというような行為はあってはならないことですし、また、その子供たちが犯罪者のような形で取り締まられるようなことがないようにすることがこの法律目的でございます。そこで私どもは、児童買春という、買春という言葉はまだ皆さんに余りなじみがないかもしれませんけれども、売春でもなく、売買春でもなく、買う春と書きまして買春というような形で今回の法律をつくらせていただいたところでございます。  先生のおっしゃる子供たち同士の性的交際が適用除外となる保証はあるかという御質問でございますけれども、児童が真摯に交際している場合は、児童性交等をしていても、そのことについて、反対給付を提供しているとは言いがたいことが多いと思います。それで、対償の供与要件に該当しない限り児童買春には当たらないと私どもは思っておりますが、交際の間にプレゼントを渡すとか、そういったことももちろんあるかと思います。それが対償の供与になるかどうか、これはそのプレゼントが経済的に見てどれくらいの価値があるかなども総合的に勘案して、対償であると認められる場合に限り児童買春に当たるのかもしれませんが、多分先生の御質問趣旨の、子供たち同士恋愛関係にあってという場合には児童買春に当たらないと思われます。
  89. 木島日出夫

    ○木島委員 子供たち同士、もう高校生や中学生ですと、当然性的自己決定権はありますし、恋愛感情も生まれてまいります。真摯な男女間の交際というのはあり得ることだし、現にあると思うんです。そういう場合でも利益の供与ということはあり得ると思うんです。  今の御答弁ですと、対償の供与またはその供与約束というその概念から、真摯な子供たち同士の恋愛の結果としての性的行為性交あるいはわいせつ行為、類似行為対象にならないと解釈できるという答弁でありますが、私はまだそこは大いに心配なところであります。  なぜ私はこれを言うかといいますと、実は福岡県青少年保護育成条例事件という有名な事件がありまして、最高裁の昭和六十年十月二十三日の判決があるからであります。  ちょっと御紹介しますが、これは二十六歳の被告人の男性が十六歳の少女とホテルの客室で性交した行為が福岡県青少年保護育成条例で禁じているいわゆる淫行に該当するとした判決であります。何が争われたかというと、中心問題は刑罰法規の不明確性と広範性、非常に不明確だということで幅が広い、これが憲法三十一条の規定などに反するのではないかという上告理由が退けられた判決であります。  そこで最高裁判決は言っているんです。  「淫行」とは、広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきではなく、青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交又は性交類似行為をいうものと解するのが相当である。  最高裁判所の判決の中に、またこういう言葉もあるんですが、「「淫行」を広く青少年に対する性行為一般を指すものと解するときは、」中略しますが、「婚約中の青少年又はこれに準ずる真摯な交際関係にある青少年との間で行われる性行為等社会通念上およそ処罰対象として考え難いものをも含むこととなって、その解釈は広きに失することが明らか」である。  要するに、そういう広い概念で淫行という言葉をとらえたら、それは憲法上問題だということを言った上で、最高裁判決は淫行という概念について二つの面から絞りをかけたんですね。一つは、不当な手段による場合、二つ目には、男性の方でしょうか、性的満足のための対象としてのみ扱う場合という二つの絞りを淫行という解釈に持ち込んで、それによって辛うじて淫行は憲法違反にならないという判断をしたわけであります。大変画期的で有名な判決なんです。  そういう青少年保護条例の淫行解釈から辛うじて合憲にしたんですが、そんな観点からこの法案を振り返って児童買春の定義を見たときに、大丈夫だろうかな。真摯な交際か真摯でない交際かを、対償の供与の概念で区別することはちょっと法的には無理なのじゃないかなというふうに私は思うんですが、いかがでしょうか、率直に。
  90. 大森礼子

    ○大森参議院議員 これは先生、二条、児童買春の定義がこれでは不十分ではないか、青少年に不当な扱いになるのではないか、こういう御質問理解してよろしいでしょうか。  もちろん、今先生がおっしゃった福岡の青少年保護育成条例につきましては、先生がおっしゃったとおり、淫行につきまして、性交または性交類似行為という限定解釈を加えた上で憲法三十一条に反しないとしたものであります。それから、青少年保護育成上、ほかにも青少年の性的自由を侵害するおそれがある、運用には慎重な配慮が必要であるとしているような判例もございます。  こういうことも考えまして、これは売春防止法にもたしか同じような規定があると思いますが、性的自由ということを配慮した規定だと思います。この点につきまして、「適用上の注意」として、我々は第三条で、「この法律の適用に当たっては、国民の権利を不当に侵害しないように留意しなければならない。」ということで、表現の自由の部分のみならず、やはりこういう性的自由というものを慎重に考慮しなくてはいけないということです。  それから、この法案では、「対償を供与し、」としてありますから、要するに対償によりまして、これらの行為反対給付になることと、それによって性交とかがなされることでありますので、通常のおつき合いをしているような場合ですと、いろいろな、先ほど円委員枝野委員質問にお答えになりましたけれども、それは本当に性行為等反対給付と言えるかどうかという、個々の判断になると思います。  それで、通常、ふだんおつき合いがある場合でしたら、その反対給付として抽出できない場合もあると思いますので、具体的な事案に即しましては、そこの構成要件の該当性の判断を的確にしていけば、さほど不当な結論にはならないというふうに考えております。
  91. 木島日出夫

    ○木島委員 実はこの法は親告罪にしていないんですね。被害者の告発を要件にしていないというのが強姦や強制わいせつと決定的に違うところで、私もそれに賛成なんです。それだけに、親告なしに警察が関与できるということですから、心配はきちっと法的に封じ込めておくことがやはり大事だと思うのです。  私は、一番心配なところなので、全国のいろいろな青少年保護育成条例を調べてみましたら、たまたま当衆議院に設置された衆議院の青少年問題に関する特別委員会の調査室がつくった資料の中の東京都青少年健全育成条例を見ましたら、やはりそれは歯どめがかかっているんですね、東京都条例は。  十八歳未満の青少年の淫行について法で規制しているんですが、第十八条の二というところで、「何人も、青少年に対し、金品、職務、役務その他財産上の利益を対償として供与し、又は供与することを約束して性交又は性交類似行為を行つてはならない。」これは本法と同じなんです。しかし、その東京都条例の大変すばらしいと思ったのは、第三十条というところに、「この条例に違反した者が青少年であるときは、この条例の罰則は、当該青少年の違反行為については、これを適用しない。」と除外しているんですね。  ですから、加害者たる男の子が十八歳以下の場合には、この東京都条例の淫行処罰規定は除外するという、これを入れているのですね。神奈川県条例なんか見ましたら、これは入っていません。これは、歯どめをかけたのじゃないかと私は思うのですね。  だから、確かに、十八歳以下の子供たち同士性交または性交類似行為の中にも、私は率直に言ってほとんどが真摯な恋愛感情から発する性交だと思うのですが、中には、それはやはり法で規制しなければいけないような、この法律処罰を求めているような類型の性交または性交類似行為もあるかもしれませんが、できたら、十八歳未満の子供たち同士性交性交類似行為等だけは処罰から外してやった方がいいのではなかろうかなと思います。  私もこの法案づくりに参画した一人として、そういう発言は余りしなかったので申しわけないのですが、東京都条例なんかにはそういう歯どめがかかっているのを考えますと、やはりそういう点を考えてもいいのじゃないかなと今思っているのですが、これは率直な御意見を聞かせてください。どなたか、だれでもいいですから。
  92. 堂本暁子

    ○堂本参議院議員 私も同じようなことを大変危惧しております。  私は、東京都条例、随分勉強したつもりなんですが、今度の法律の中でそこのところきちっと書き込まなかったということを今指摘されて、三年後の見直しのときに検討すべき事項としてぜひ考えるべきではないかというふうに思います。
  93. 大森礼子

    ○大森参議院議員 答弁者の間で意見が違っているじゃないかと言われると困るのですが、実は意見が合わなかったのでこういう規定がなかったということもございます。  それから、今木島先生がおっしゃるのは、十八歳未満の児童の真摯な交際までも侵害したのではないかということですが、これは先ほど申しましたように、この二条の児童買春の定義、これを厳格に解釈していけば、物のやりとりによって性行為をするかどうか、こういう行為が決められること自体を真摯でないことも示しておりまして、ここの対償供与、それからその因果関係があって性交という、この構成要件の中で、真摯な交際というものは除外されるものと考えております。  それからもう一つ、例えば十八歳未満、児童については罰則は科さないというふうな規定を設けるべきではないかということですけれども、実は、この児童を十六歳未満とすべきか十八歳未満とすべきか、こういうこともございました。それから、十八歳未満、例えば十七歳、十八歳に近い年齢もありますが、幅があるわけですね。  そして、児童性的搾取及び性的虐待から児童を守るということにつきましては、やはり児童自身もそういう行為をしないように学ばなくてはいけないと思っておりますし、そういう児童性的虐待とか性的搾取対象としないような健全な社会の建設につきましては、やはり十八歳未満の児童にも、年長の児童となりますけれども、学んでいただかなくてはいけないし、協力していただかねばならないというふうに考えております。  いずれにしましても、一応これでスタートいたしまして、三年後の見直しのときに、運用上不当な結論が出るようであれば、そのときに再検討させていただくことになると思います。
  94. 木島日出夫

    ○木島委員 今、答弁の中から、発議者の皆さん方は一致して、やはり十八歳未満の子供同士の真摯な恋愛感情とその結果としての性交等についてはこの法は罰則を求めていないという意見であるとお聞きいたしまして、私も大賛成であります。そのようにこの法案運用されることを、まず私も期待をしたい。  もう時間が迫っておりますので、次に、逆の立場児童ポルノについてお聞きしたいのです。  逆に、児童ポルノについては、やはりきちっと法律の実効性を高めていくということがある面では大事だという点で、一点だけお聞きしますが、私、この法律が成立すると、必ず法律をくぐり抜けようとする者が出てくると思うのです。その一番の手法として、児童の写真の一部だけを切り取って、他のものとの合成写真をつくり頒布する、合成ポルノ写真だと思うのですね。  さっき、枝野委員からは、顔だけが実在する子供の写真で、下の方は絵という場合が質問されまして、それは当たらないという御答弁をいただきましたが、私は、下が絵じゃなくて、全部写真につくられると思うのです。本当に丸裸の子供の写真がつくられる。わいせつな姿態の写真がつくられる。顔だけが実在する人物で、下の方は別の人物の写真で合成した。今合成技術は非常に進んでいますから、全く区別できない。それはやはり取り締まらなければいかぬと私は思うのですね。  そこで聞くのですが、これは、保護法益との関係がありまして、参議院質疑を聞いてみましても、この児童ポルノ罪の保護法益は、決して刑法百七十五条のわいせつ物頒布罪の保護法益である社会的法益としての性秩序ないし健全な性的風俗ではない。刑法百七十六条の強制わいせつの保護法益である個人の性的自由、要するに個人を守る、これが保護法益だと私は思っているわけなんですが、そういう関連で、この合成ポルノを児童ポルノの定義に入れるのか入れないのか。一括して立法者の御意見をお聞きしたいと思うのです。
  95. 大森礼子

    ○大森参議院議員 きょうの絵のところで、それが実在する児童の姿態であり、写真、ビデオテープに準じるものであるならば「その他の物」に入り得るといたしました。  そのときに、実在する児童の姿態でなくてはいけないわけですから、今先生がおっしゃったような疑似ポルノというのは、例えば首から上が十五歳のAという少女、ここから下が十三歳のBという少女、これを合体したものになると思います。そうしますと、これを全体として一個の人間の姿態と考えてみました場合に、その者は存在しない、実在しない姿態ということになりますので、それがいわゆる疑似ポルノなわけですけれども、この法律の予定する児童ポルノには該当いたしません。  ただ、その場合でも、その姿態というものが非常に卑わいなものであるならば、刑法上のわいせつ物ですか、わいせつ図画、これに入ることもあろうかと思います。  それからまた、こういう疑似ポルノで、例えば、実在する少女の顔を使って、下がいろいろな卑わいな姿態、こういうものが蔓延しますと、やはり実在する頭だけ使われる少女といいますか、これは心身に有害な影響を与えるということもあると思いますので、こういうことについてはこれからの課題であるというふうに考えております。  これは、勉強会の中でも、こういう疑似ポルノをどう扱うかということが問題となったわけですけれども、今回については結論に至りませんでしたので、この法案のような形にさせていただきました。
  96. 木島日出夫

    ○木島委員 時間ですから終わります。また金曜日にいろいろ質問したいと思います。
  97. 杉浦正健

    杉浦委員長 次に、保坂展人君
  98. 保坂展人

    ○保坂委員 社会民主党の保坂展人です。  今回の発議者の皆さんの御苦労に大変敬意を表しながら、この法案審議に当たって、幾つかの点、やはり確かめておきたいということで、質問させていただきます。  まず、児童ポルノということが規定されているわけですけれども、一方で、芸術作品という概念がございます。例えば、不思議の国のアリスの作者であるルイス・キャロルという方がいらっしゃって、写真の技術が始まったばかりの一八六〇年代に、当時では珍しい写真術を駆使して、そのモデルであるアリス・リデルの写真をたくさん撮った。その中には、妖精に扮装させたり、あるいは裸に近い、もしくは裸の写真も撮った。実際、オックスフォードの上司で彼女の親が、これは危険だということで、交際を禁止されるということがあったようです。そのときの写真が、ロンドンのナショナルポートレートギャラリーに現在展示をされて、芸術作品として、いわば長きにわたって評価を得ているということが事実としてあります。  これが、彼の少女愛なりプラトニックなものであるとしても、そういう嗜好によってつくり出された芸術ということが明らかなわけで、こういうものが現在また写真集などによって出てくる、あるいは今後似たような形で出てくるという問題については、この法案ではどういうふうに考えておられるんでしょうか。
  99. 大森礼子

    ○大森参議院議員 児童ポルノに当たるかどうかにつきましては第二条第三項各号に規定しているとおりでございまして、あとはその判断ということになると思います。  それで、そのような御質問の意図はわかるんですが、こんな場合にはどうなるかと言われましても、一概に、私どもそれを個別具体的に判断しないとお答えしにくいというものがございます。  一般的な言い方をしますならば、この法案関係では、それが芸術作品に該当するか否かという観点ではなく、これは一つに、では芸術作品の定義といったら何かという、これを法律か何かで決めることもできませんので、そういう問題もあるわけですが、当該描写に係る児童の姿態がこの法案要件を満たすものであるか否かによって判断されるとしか、ちょっと現時点ではお答えのしようがございません。
  100. 保坂展人

    ○保坂委員 恐らく、長きにわたって芸術作品という評価を受けている写真が我が国において流通した、現にしているわけですけれども、それを児童ポルノというふうにはなかなか解しにくいだろうとは思います。  もう一つ境界例としましては、衣服をつけている幼児の写真であっても、例えばこれも大変有名な写真家でアラーキーと言われる荒木経惟さんが撮られている写真の中で、例えば衣服をつけていてもエロチックに見えるというような写真も現存するわけですが、これは当然該当しないということでよろしいですか。
  101. 大森礼子

    ○大森参議院議員 具体的なものがわかりませんのでまた同じことになるのですが、少なくても三号ポルノ、衣服の全部または一部を脱いだ、これが要件となりまして、その上で性欲を興奮もしくは刺激せしめとありますので、それに該当しないようなものであれば除外されることになりますので、衣服を脱いでいないもので、それがエロチックなポーズであったとしても、そういうことになると思います。
  102. 保坂展人

    ○保坂委員 あと、刑罰というところで端的にお聞きいたしますけれども、十八歳未満の児童と恋愛をして、再三出ていた質問でありますけれども、性的関係を含めた交際をした場合に、性的行為の前であろうが後であろうが、プレゼントや金銭の供与ということがその交際の中であり得るだろうということはここの場でも随分出たと思うんですが、恋愛関係が破綻した後に、これらの金銭や物品の供与児童買春であるというふうに告発されるケースが想定できないだろうか。  例えば、もうちょっと突っ込んで言いますと、ある成人男性、二十代のサラリーマンでもいいですけれども、十六歳の少女と交際をしていて、対価性ということでいえば、非常に無理をして、ボーナスのほとんどをつぎ込んでパソコンを買ってあげたとか、例えばフルコースの、ほとんど給料の大半を尽くしていたというようなこともあるわけですよね、実際には。しかし、その男性が新たな恋人と出会って、少女との関係は終えんに向かった。その少女の方は、非常に裏切られた、許せないというふうに思ったときに、私は買春された、証拠はこれです、金銭及び物品はこういうふうにもらっていますと言われた場合に、この男性の側は反証がなかなかしにくいのかなということも考えるんですが、ちょっとひねった質問で済みませんが、お答えいただきたいと思います。
  103. 円より子

    ○円参議院議員 大変個別具体的なケースだと思いますが、先ほどもお答えしましたように、児童と真摯に交際している場合は、その児童性交等をしていても、またその後になってもそのことについて反対給付を提供しているとは言いがたいことが多いと思いますので、対償の供与要件に該当しない限りは児童買春には当たらないと思います。
  104. 保坂展人

    ○保坂委員 ここは大事なところなんで、いろいろ現場現場の事件によっては、やはり告発者がいて、そして証拠があって、告発された者が、被疑者が否定をしても、証拠があった場合かなり難しいのかと思いますが、刑事局長にもちょっと……。では、その前にどうぞ。
  105. 大森礼子

    ○大森参議院議員 告発されること自体は、その人のやることですのでとめることはできない、災難に遭うということもあるのかなと思います。しかし、証拠があってと先生おっしゃるんですけれども、証拠というのは何かもらったものですか、物的証拠もありますけれども、しかし、これは両者の供述もちゃんととりますので、事情聴取いたしますので、適正な取り調べが行われるならば事実と間違ったようなことが認定されることはないと私は信じております。
  106. 松尾邦弘

    松尾政府委員 今の御答弁のとおりで、格別つけ加えることはないわけでございますが、問題は、真摯な恋愛関係にあるかどうかという事実認定の問題でございます。それは具体的な事案においてはまさに証拠によるということになります。  この法案、いずれ成立いたしましたら、その運用を預かる者として申し上げるならば、やはり具体的な事案に即しまして総合的にそういったものを判断する。そうした際にも、ただいまの発議者の御答弁あるいは法文それからこれまでの国会における御論議全般といいますか、そういったものの趣旨にのっとりまして適切に対応していきたいと考えているところでございます。
  107. 保坂展人

    ○保坂委員 済みません、難しい質問最初にいたしましたけれども、私自身はこの法案に大賛成で、とりわけ東南アジア、例えばタイでありますとかフィリピンなどというところで児童買春ツアーなるものが実際上日本人の男性によって行われていて、またその拠点たるホテルなども、実はNGOの仕事などで行きますと、隣でしている話など聞くにたえないという経験もございます。  世界じゅうに、しかも日本発の、あるいは日本人業者による児童ポルノがはんらんしているこの国際的な責任を、この法案がどのようにその要請にこたえているのかという点についてお願いします。
  108. 円より子

    ○円参議院議員 お答えいたします。  今保坂議員がおっしゃったとおり、今回の法案をつくるきっかけになりましたのは、国内の児童性的搾取性的虐待だけではなくて、本当に東南アジアに対して我が国の成人が性的搾取及び性的虐待を続けていることに各国から大きな非難がありましたことや、また、世界に出回っております児童ポルノの八〇%は日本製であるとも言われております。そういったところからぜひとも国内外の児童性的搾取性的虐待から守らなければいけない、そういったことからこの法案ができました。  それで、この法案は、児童買春及び児童ポルノに係る行為を犯罪とし、日本国民の国外犯も処罰することも入れまして非親告罪としているわけでございます。したがって、外国において児童買春等をした日本国民は、被害者からの告訴がなくても処罰することができることになります。国外犯につきましても、もちろん国際協力が大変重要でございます。例えば、国民の国外犯等に関する捜査共助、逃亡犯罪人の引き渡しの実施及びこれらに関連する情報交換を推進することが考えられまして、今後大いにこういったことをやってまいりたいと思っております。
  109. 保坂展人

    ○保坂委員 次に、セカンドレイプという言葉もありますけれども、性的な被害に遭った女性が、そのことを明らかにすることによってさらに深刻な侮辱を受ける、あるいは取り調べ等においても残念ながらそういった事例もないわけではない、捜査官によって問われることがということがあります。もちろん、この点は十分議論されて提出されていると思うんですけれども、この買春及びポルノの被害に遭った子供が逆に傷つけられる、生涯修復できないような傷を受けるということについて、いろいろ考えられていると思うんです。そこについて伺いたいのです。  特にこの十三条の、記事化することあるいはマスメディアによって流布されることを抑えている部分がありますけれども、神戸の少年事件の写真誌報道等々、やった者が、罰則がないので、努力規定なのでということで、少年法の場合にもそれが事実上出っ放しの状態で、ここに罰則をやはり設けるべきではないかというふうに強く思うんですが、その点も含めてお願いしたいと思います。
  110. 吉川春子

    ○吉川(春)参議院議員 お答えいたします。  十二条についてまず私の方から御答弁いたします。その後また別の人から答弁いたします。  確かに先生がおっしゃられますように、児童買春とかポルノ自体が、非常に児童の心が傷を受ける犯罪でございますが、そしてその尊厳が踏みにじられるわけですが、同時に、さらにその捜査、公判の過程で、今おっしゃったようなセカンドレイプというようなことがないように、これは十分に注意しなければならないということで、第十二条が一項、二項と設けられております。  第一項では、この法律に規定する罪に係る事件の捜査及び公判に職務上関係のある者に対して、「その職務を行うに当たり、児童の人権及び特性に配慮するとともに、その名誉及び尊厳を害しないよう注意しなければならない。」ということを決めております。同時に第二項では、国及び地方公共団体に、これらの者に対して、「児童の人権、特性等に関する理解を深めるための訓練及び啓発を行うよう努める」、この義務を課した規定です。  事件の捜査及び公判に職務上関係ある者、特に警察官などだと思いますけれども、捜査や公判において関係者の名誉や尊厳を害しないように注意を払うということは当然のことですけれども、同時に、児童については特別に、まだ成長過程にあって、精神的に未熟である上に、その人権を自分から守る能力も限界がありますから、特にこれらの点について配慮をすべきだ、このように考えております。  それで、勉強会の場でもいろいろ意見が出たことですけれども、例えば、捜査に当たっては、子供の信頼すべきカウンセラーとか弁護士の同席とか、被害女児の事情聴取は女性捜査員が行うとか、こういうことは今警察でも非常に努力をしておられるということが報告されましたけれども、そういう問題についても一層力を尽くしていく必要があると思います。また、訓練及び啓発を行うということについては、例えば子どもの権利条約について捜査に当たる人たちに徹底するとか、それから、この法案が成立した後にはこの法律趣旨を徹底するとか、第二項において、そういう訓練も行う義務を規定している、このように考えております。
  111. 清水澄子

    ○清水(澄)参議院議員 今二つのことをおっしゃったんですが、一つの、警察等においての取り扱いのところは今説明されました。そして、新聞やいろいろな出版物への記事の問題は、これは今度この法律が施行されれば禁止されるわけですから、ここで改めて罰則をというふうには今考えておりません。もしそれが必要であれば、三年後の見直しまでに検討をしたらいいのではないかと思います。
  112. 保坂展人

    ○保坂委員 私自身は、せっかく禁止するんなら、処罰もないとなかなか難しいのかなという気はいたしておりますので、指摘をして、また考えていきたいと思います。  次に、これは時間的に最後になりますが、十五条、十六条で、先ほどの答弁にもつながるんですが、被害に遭った児童のケアあるいはリハビリ等について規定されています。これは、例えばこの国会、衆参両院の有志の皆さんでチャイルドラインを推進していこうという議員連盟もできていますけれども、子供自身が匿名で被害を訴えるというようなシステム、これは法によってつくるものではありませんが、社会的な基盤形成ということでもありますけれども、このあたりのこと、十五条、十六条関係のケア、リハビリについて、及び子供がみずから被害を訴え出るシステムなどについて、お考えを聞かせていただきたいと思います。
  113. 清水澄子

    ○清水(澄)参議院議員 児童買春児童ポルノ等の問題に取り組むに当たっては、単に処罰だけでは十分ではないと思います。やはりこれはあくまでも子供の人権を保護する、子供の受けた被害をどう回復させていくかということが重要な課題であると思っております。  そこで、今の御質問のところは、子供が買春における性交等相手方となったり、それから児童ポルノにその姿態を描写されるということは、非常に児童心身に有害な影響を与えるものでありまして、当該児童がその受けた影響から身体的及び心理的に回復し、個人の尊厳を保って成長していくことができるような、そういう保護のための各種の措置を講じていかなければならないということがここで規定をされているわけでございます。  そこで、第十五条では、相談、指導、一時保護、施設への入所等を、関係行政機関等が相互に連携を図りつつ適切に講ずると規定しておりますし、第十六条では、専門的な知識に基づく保護を適切に行うことができるように、それらに関係する人々の資質の向上等をここで明記しております。そしてさらに、児童の保護を行う民間の団体との連携協力体制の整備なども、これから必要な体制整備に努めていかなきゃいけないというふうになっておるわけでございます。  それらの具体的なものといたしましては、まだこの問題に取りかかるのが初めてでございますから、児童買春児童ポルノ等の性的搾取性的虐待の実態や、その児童に与える影響、それから被害児童のケア、リハビリの手法なども今後さらに調査研究をしていかなきゃならないと思いますし、相談等につきましても、そのケア、リハビリを専門的に行える体制の構築等、それらについても、既存児童相談所やいろいろなこれまでにある施設または行政機関等を、ちゃんと整合性を持って、その裏の、プログラムの開発とか専門的な人材の育成、その他関係する職員に対する教育訓練というのは非常に急務になっているだろう。  そして同時に、被害児童の保護を、公的機関だけではなくて、NGO等の皆さんたちも努力しているわけですから、そういう人たちと一緒に被害児童の保護のための重要な役割を担っていくような、支援的なそういうものを今後つくっていくべきではないかということを想定しておるわけでございます。  以上です。
  114. 保坂展人

    ○保坂委員 本法案は、子どもの権利条約、児童権利条約批准後大変大事な、しかもストックホルムにおける会議指摘をじかに受けて、本当にスピーディーに、また時間をかけて濃密に検討されてきた関係議員の御努力に改めて敬意を表しつつ、私の質問を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
  115. 杉浦正健

    杉浦委員長 次回は、来る十四日金曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午前十一時五十九分散会