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1999-03-19 第145回国会 衆議院 法務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年三月十九日(金曜日)     午前九時三十分開議   出席委員    委員長 杉浦 正健君    理事 橘 康太郎君 理事 八代 英太君    理事 山本 幸三君 理事 山本 有二君    理事 坂上 富男君 理事 日野 市朗君    理事 上田  勇君 理事 達増 拓也君       奥野 誠亮君    加藤 卓二君       河村 建夫君    小杉  隆君       左藤  恵君    笹川  堯君       菅  義偉君    西田  司君       宮腰 光寛君    保岡 興治君       渡辺 喜美君    枝野 幸男君       佐々木秀典君    福岡 宗也君       漆原 良夫君    木島日出夫君       保坂 展人君  出席国務大臣         法務大臣    陣内 孝雄君  出席政府委員         内閣官房長官 鈴木 宗男君         法務大臣官房長 但木 敬一君         法務大臣官房司         法法制調査部長         兼内閣審議官  房村 精一君         法務省民事局長 細川  清君         法務省刑事局長 松尾 邦弘君         法務省矯正局長 坂井 一郎君         法務省人権擁護         局長      橫山 匡輝君         法務省入国管理         局長      竹中 繁雄君  委員外出席者         警察庁長官官房         審議官     瀬川 勝久君         警察庁長官官房         給与厚生課長  岡  弘文君         警察庁生活安全         局少年課長   舟本  馨君         警察庁警備局公         安第一課長   飯島 久司君          農林水産大臣官         房秘書課長   須賀田菊仁君         農林水産省構造         改善局農政部長 田原 文夫君         最高裁判所事務         総局総務局長  浜野  惺君         最高裁判所事務         総局経理局長  竹崎 博允君         最高裁判所事務         総局家庭局長  安倍 嘉人君         法務委員会専門         員       海老原良宗委員の異動 三月十九日         辞任         補欠選任   加藤 紘一君     宮腰 光寛君 同日         辞任         補欠選任   宮腰 光寛君     加藤 紘一君 三月九日  裁判所職員定員法の一部を改正する法律案内閣提出第三号) 同月十七日  民法の一部を改正する法律案内閣提出第八三号) 二月十九日  組織的犯罪対策法制定反対に関する請願木島日出夫紹介)(第六一九号)  民法改正による選択的夫婦別制度導入に関する請願平田米男紹介)(第六四三号)  法制審議会公開に関する請願家西悟紹介)(第七二〇号)  法制審議会委員一般国民採用に関する請願家西悟紹介)(第七二一号) 同月二十五日  民法改正による選択的夫婦別制度導入に関する請願石井一紹介)(第八八六号)  同(土井たか子紹介)(第九一五号)  組織的犯罪対策法制定反対に関する請願木島日出夫紹介)(第八八七号) 三月五日  組織的犯罪対策法制定反対に関する請願木島日出夫紹介)(第九五五号)  同(児玉健次紹介)(第一〇六九号)  定期借家権制度を創設する借地借家法改正反対に関する請願坂上富男紹介)(第一〇三七号)  同(坂上富男紹介)(第一〇五〇号)  同(木島日出夫紹介)(第一〇七〇号)  法制審議会公開に関する請願坂上富男紹介)(第一〇五一号)  同(土肥隆一紹介)(第一〇五二号)  同(木島日出夫紹介)(第一〇七一号)  同(畑英次郎紹介)(第一〇七二号)  法制審議会委員一般国民採用に関する請願土肥隆一紹介)(第一〇五三号)  同(松本龍紹介)(第一〇五四号)  同(石井紘基紹介)(第一〇七三号)  同(木島日出夫紹介)(第一〇七四号)  同(畑英次郎紹介)(第一〇七五号) 同月十二日  定期借家権制度を創設する借地借家法改正反対に関する請願保坂展人君紹介)(第一一四二号)  法制審議会公開に関する請願保坂展人君紹介)(第一一四三号)  同(藤村修紹介)(第一一六七号)  同(上田清司紹介)(第一二一六号)  同(玄葉光一郎紹介)(第一二一七号)  同(日野市朗紹介)(第一二一八号)  同(肥田美代子紹介)(第一二六〇号)  法制審議会委員一般国民採用に関する請願保坂展人君紹介)(第一一四四号)  同(藤村修紹介)(第一一六八号)  同(横路孝弘紹介)(第一一六九号)  同(上田清司紹介)(第一二一九号)  同(玄葉光一郎紹介)(第一二二〇号)  同(日野市朗紹介)(第一二二一号)  同(肥田美代子紹介)(第一二六一号)  外国人登録法改正に関する請願保坂展人君紹介)(第一一六六号) 同月十八日  子供の視点からの少年法論議に関する請願知久馬二三子紹介)(第一三〇〇号)  同(枝野幸男紹介)(第一三八九号)  同(北村哲男紹介)(第一三九〇号)  同(佐々木秀典紹介)(第一三九一号)  同(石毛えい子紹介)(第一四一四号)  同(佐々木秀典紹介)(第一四一五号)  同(保坂展人君紹介)(第一四一六号)  同(石毛えい子紹介)(第一四五一号)  同(佐々木秀典紹介)(第一四五二号)  同(中川智子紹介)(第一四五三号)  同(保坂展人君紹介)(第一四五四号)  同(山本孝史紹介)(第一四五五号)  治安維持法犠牲者に対する国家賠償のための法制定に関する請願田端正広紹介)(第一三〇一号)  民法改正による選択的夫婦別制度導入に関する請願知久馬二三子紹介)(第一三〇二号)  組織的犯罪対策法制定反対に関する請願木島日出夫紹介)(第一三〇三号)  法制審議会公開に関する請願深田肇紹介)(第一三〇四号)  同(石毛えい子紹介)(第一三八七号)  同(金田誠一紹介)(第一四一二号)  法制審議会委員一般国民採用に関する請願深田肇紹介)(第一三〇五号)  同(金田誠一紹介)(第一四一三号)  裁判所速記官制度維持充実に関する請願枝野幸男紹介)(第一三八五号)  定期借家権制度を創設する借地借家法改正反対に関する請願北村哲男紹介)(第一三八六号)  外国人登録法改正に関する請願枝野幸男紹介)(第一三八八号)  司法制度改革審議会設置法案に関する請願坂上富男紹介)(第一四一〇号)  同(保坂展人君紹介)(第一四一一号) は本委員会に付託された。 二月十六日  除籍簿、除かれた戸籍の附票保存期間の延長に関する陳情書(第七号)  法務局職員増員に関する陳情書外一件(第八号)  福岡地方裁判所福岡高等裁判所裁判官増員に関する陳情書(第五四号) 三月九日  横浜地方裁判所裁判官増員に関する陳情書(第九八号) は本委員会に参考送付された。 本日の会議に付した案件  裁判所職員定員法の一部を改正する法律案内閣提出第三号)  裁判所司法行政法務行政及び検察行政国内治安人権擁護に関する件     午前九時三十分開議      ――――◇―――――
  2. 杉浦正健

    杉浦委員長 これより会議を開きます。  この際、陣内法務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。陣内法務大臣
  3. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 このたび、法務大臣就任いたしました陣内孝雄でございます。  委員長を初め委員皆様方には、日ごろから法務行政の適切な運営につきまして、格別の御支援と御理解を賜っており、厚く御礼を申し上げます。  今、社会経済情勢世界規模で急速に変化しており、個人の価値観や行動も一昔前とは大きく異なってきております。我が国にとっては、明治維新、第二次世界大戦後に続く第三の改革の時期なのであります。法務行政に関しても困難な課題が山積しており、その解決が急がれているところですが、このような時期に法務行政を担当することになり、その責務の重大さを痛感いたしております。  法務行政に関する所信一端を申し述べます。  もとより、法務行政に課せられた使命は、法秩序維持国民権利の保全にあります。法秩序が揺るぎなく維持され、国民一人一人の権利が十分に守られてこそ、国民が豊かで幸せに安心して暮らせるのであります。しかし、このような使命を達成するための具体的なあり方は、時代状況を反映してまた変わっていくことも否定できないところであります。この社会経済構造や諸制度が大きく変化していく改革時代にあって、法務行政に変革する社会ニーズにこたえるための改革が求められることは当然のことと言わなければなりません。私は、法務行政に課せられた使命とそのあり方をこのように認識し、法務行政のすべての分野につき、意欲的に、適宜適切な方策を講じ、新しい時代の要請にこたえてまいりたいと考えております。  皆様方には、従来にも増して御指導と御鞭撻を賜りたく、お願い申し上げます。  以下、当面の重要施策について申し述べます。  まず、司法制度改革についてであります。  二十一世紀我が国社会においては、社会複雑多様化などによるさまざまな変化に伴い、司法役割がより一層重要なものになり、司法制度全般にわたる改革と、その機能の充実強化を図っていくことが、既に強力に進められている行政改革と並んで強く求められているという認識社会的に共通のものとなってきたことについては、私も中村法務大臣考えを同じくするものであります。  政府は、このような認識に立って、二十一世紀我が国社会において司法が果たすべき役割を明らかにし、司法制度改革と基盤の整備に関し必要な基本的施策について調査審議する機関として、内閣司法制度改革審議会を設置するための法律案を今国会に提出したところでありまして、私としても、時代変化に即応し、国民ニーズにこたえられる司法制度を速やかに実現できるよう、この動きに沿って積極的に取り組んでまいりたいと考えております。  次に、社会的状況変化に的確に対応するための民事刑事基本法見直し重要性については、私も特に強調したいところであります。  今国会においては、高齢社会への対応及び障害者福祉充実観点から、判断能力の不十分な高齢者障害者の保護を図るため、禁治産及び準禁治産制度見直して後見、保佐及び補助の制度に改めることを中心とする民法の一部改正法律案並びにその関連法律案や、近時の少年犯罪及び少年審判をめぐる状況を契機として国民の間にも出ている少年審判あり方見直しの声にこたえて、事実認定手続の一層の適正化を図るための少年法等の一部改正法律案等社会的に見ても重要な法律案を提出し、御審議に供するところといたしました。  また、組織的な犯罪に対処するための三法案については、昨年の通常国会に提出いたしましたところ、現在継続審査となっておりますが、組織的な犯罪への適切な対処は、国内的にも国際的にもますます重要かつ緊急の課題となってきております。いずれの法律案につきましても、何とぞ十分な御審議をいただき、速やかな成立に至りますようお願い申し上げる次第であります。  さらに、法務行政分野におきましては、各種犯罪事象に的確に対処して法秩序維持に万全を期すために体制を維持することのほか、出入国管理行政充実強化登記事務コンピューター化促進等により行政サービス向上にも努めることにより、国民生活の安定と向上のため十分な貢献をいたしたいと考えております。  以上、法務行政重要施策につきまして所信一端を申し述べましたが、既に今国会に提出している法案は、いずれも我が国社会の変革のため欠くことができない重要な柱となる制度上の手当てに係るものであります。その内容は、今後、さらに詳しく御説明いたす所存でありますが、御理解を得た上で十分な御審議をいただき、速やかな成立に至りますようこの機会にお願い申し上げます。  この課題の多い時期に当たり、委員長を初め委員皆様の一層の御指導、御鞭撻を賜りまして、法務大臣としての重責を果たしていきたいと思っておりますので、どうかよろしくお願い申し上げます。(拍手)      ――――◇―――――
  4. 杉浦正健

    杉浦委員長 この際、お諮りいたします。  本日、最高裁判所浜野総務局長竹崎経理局長安倍家庭局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 杉浦正健

    杉浦委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。      ――――◇―――――
  6. 杉浦正健

    杉浦委員長 裁判所司法行政法務行政及び検察行政国内治安人権擁護に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。坂上富男君。
  7. 坂上富男

    坂上委員 民主党の坂上富男でございます。  陣内法務大臣、御就任おめでとうございます。しかしまた、御就任の事情が私たち法務に携わる者にとりましては大変深刻な事態によるところの交代でございまして、国民法務行政に寄せる信頼は間違いなく低下をいたしたわけでございますので、これに対するひとつ信頼の回復を、大臣を初めといたしまして関係者誠意努力をいたして、まさに、法務行政に対する国民信頼を確実にするものに努力しなければならないと決意をしておるわけでございます。  しかもまた、新大臣については次のような大変高い評価もあるのであります。  「河川行政のプロとして「水の陣内」とまで称された。官僚出身らしい手堅さだけでなく、郷土の吉野ケ里遺跡を通じて考古学にも造詣が深く、歴史と文化を通じて交流の輪を広げる「田園文化学術都市構想」を唱えるなど独創性も併せ持つ。法務行政とのかかわりはないが、党内では「だれからも信頼されるまじめで円満な性格」と評されている。」大変なお褒めでございます。  私も、十四、五年前でございましたでしょうか、まさに「水の陣内局長時代に初めて建設委員にさせていただきまして、私は初めての国会質問をさせていただきました。御記憶はございましょうか。私たち新潟県の信濃川の水を利根川に持ってくるという、ジャビック計画というのでございますが、民間がそういう計画を流布いたしまして、新潟県は大変深刻な状態になったわけであります。  時たまたま私が建設委員ということで問題を局長さんに御質問をいたしましたところ、局長は、河川局あるいは建設省は全く考えておりません、御心配には全く及びませんという明快な御答弁をいただきまして、私は地元に大変な面目を施したことがあるわけでございまして、そんなような観点からも実は大変な期待を持って私は迎えようといたしておるのでございます。しかしまた、事は事だけに、少しやはり指摘するところは指摘をしながら、今後の法務行政運営にも当たっていただかなければならないと思っておるわけでございます。  そこで、順序がちょっと違うのでございますが、鈴木長官もお見えでございますので、こちらの方から先にさせていただきたいと思うのでございます。  私は、野中広務官房長官出席方を要請いたしたのでございますが、代理といたしまして鈴木官房長官からお出かけをいただいたわけでございまして、私はこれには別に異議はございません。ぜひ私たちが納得のできる御答弁だけを期待いたしたいと思っておるわけでございます。  かく言う私も、余り成績はよくなかったのでございますが、法曹の一員で弁護士でございまして、ぼやぼやしますと五十年近くにもなるという弁護士でございます。そういう者を私たち法曹と呼んでおりますが、たまたま、中村大臣責任追及のことにつきまして、次のような野中官房長官発言がありました。新聞に、二つ持ってまいりましたが、いずれも同一でございます。「司法制度改革を信念で進めようとしていた法相の言動弁護士検事を経験している方々が強力に発言した」「「その背景は何なのか疑義を抱いている」と不満をぶつけた。」こう書いてあるわけであります。  この新聞を見て、私は大変びっくりいたしました。また、仲間の人たちからも、私の支持者からも、先生、おまえさんたち間違ったことをしているのかね、こういうお話をいただきまして、そうでない、もってこれは甚だしい事実誤認だ、とんでもないことだ、こう私は思っているところに、行くところ行くところ、こういうような指摘を受けました。できるならば公開の席上できちっと釈明を求めなければいかぬなと実は思っていたわけでございますが、ようよう本日、この質問機会をいただいたものでございまするから、本来ならば私は官房長官と直接やりたかったのでございますが、またそれ以上のお力のある鈴木長官でございますので、私は、鈴木長官から事の子細をひとつ御報告いただきたいと思っているわけであります。  中村大臣につきましては、去年の臨時国会の際に私が最初に取り上げました。私は、責任追及を強くやるというよりも、これは法曹に対する御理解あるいは法務に対する理解がいささか欠けておられるのでなかろうか、御注意をいただきたいと思いまして、予算委員会で、新聞に書いてある見出し全部、物すごい見出しでございました、指揮権発動とか公私混同とかいろいろのこと、それを全部読み上げまして、御答弁は結構でございますと言って読み上げたわけでございます。そして、私は申し上げました。いわゆる火のないところに煙は立ちません、しかも、法務に携わる者が一点の曇りもあってもなりません、議員も同様でございますということを申し上げたわけであります。御答弁は必要ございませんと言うのを、自民党さんの方から、委員長の方から、御本人が手を挙げられまして御答弁をさせてくださいというわけで、そして、私はそのように命じたことはありませんというだけのことで、あとそれ以外のことは全部お認めになったような形に実はなったわけでございます。  しかし、私は、それはそれで御注意をいただければいいと思ったわけでございますが、御存じのとおり、ことしの一月四日のあの年賀の会におきまして、これまたとんでもないことを言い出されて、この間の私たち法務委員会に、私以下、うちの福岡先生らが、強く厳しくその責任言動の過ちを指摘いたしたわけでございます。そんな経過がありまして、今度は参議院に移りまして、激しく責任追及が行われて、遂に辞職ということに相なったわけであります。  その辞職を受けられまして、野中官房長官新聞紙上でこのような発表があって、この新聞紙上発表が間違いであるというようなことも聞いてはおらぬわけであります。そうだといたしますと、ここに書いてあることは真実かな、大変遺憾なことである。もしそうであるとするならば、これは法曹立場でも法務立場においても徹底的な追及をしなければならぬ問題だ、こう実は思っておるわけでございますが、副長官、そんなような観点から、この問題は一体事実はどうなのか、それから一体どういうお考えなのかを、ひとつ野中長官にかわって御答弁をまずいただきたいと思っているわけでございます。
  8. 鈴木宗男

    鈴木(宗)政府委員 本来ですと野中官房長官が出席してお答えしているところでありますけれども、いろいろ日程が詰まっておりまして、役不足でありますけれども私の方から答弁させていただきます。  三月八日の一部報道、夕刊では、野中官房長官が、中村法務大臣辞任背景に、同大臣法制審議会の廃止や司法制度改革を主導したことに対する法務省法曹界の反発があり、その意思を代弁した国会議員動きがあったとの発言をした、こういうことを、私も今新聞を持ってきておりますけれども、一部書かれております。  この報道野中官房長官発言は、定例記者会見で、記者の方から、法務大臣を批判された方々弁護士検事を経験された方々が多いが、これは中村法務大臣大臣主導司法改革をしようとしたことと、それに反発する法務省サイドとのあつれきがあったという認識からでしょうかとの質問に答えた発言の一部を報道したものであります。  野中官房長官記者質問への回答は、中村法務大臣言動についての問題は、参議院予算委員会審議において、締めくくり総括報告をすることで決着がついたところであるが、その報告を行う前に中村法務大臣言動指摘された方々が唐突にいろいろな発言をされ、衆議院法務委員会審議までがとまるような状況になり、この事態背景は何なのか、一人の政治家として疑義を抱いている、こう申し上げたものであります。  野中官房長官真意は、締めくくり総括報告をするということで参議院予算委員会決着がついて国会審議ルールができたにもかかわらず、衆議院法務委員会開催等についてこのルールに反するような形で審議がとまるような発言が相次いだところであり、そうした国会審議あり方について疑義を申し上げたというのが真意でありまして、この点、ぜひとも御理解をいただきたいし、同時に、私は、この会見の記録を詳細持ってきておりますけれども、この報道野中官房長官発言の一部だけをピンポイントでピックアップして扱っているのでありまして、発言全体を見ますと、整合性のある話であって、特別な疑義を持つようなお話ではないということで御理解をいただきたい、私はこう思います。
  9. 坂上富男

    坂上委員 今御答弁がありましたとおり、法務委員会衆議院では審議できないと提言をしたのは私です。そして、ほかの党の先生方も御賛同をいただきました。  しかし、私は、実は、できるだけ平穏にしたいと思ったものですから、参議院で問題になっておって、それが解決するまでいましばらく待とうじゃないか、こう言ったんでございますが、自民党さん側から釈明があって、衆議院参議院を待つというのもちょっとおかしいじゃないか、こういうことだから、それならばはっきり申しましょうと。  私は、中村法務大臣のこういう言動のもとにおいて、その言動というのは、とにかく司法あるいは法務の権威を失墜させるような発言である、到底許しがたい。よってもって、こういうもとにおいて、裁判官増員するとか司法改革をするなどというのは、まことに甚だもっておこがましい話である。よってもって、これが決着をつくまで、いわゆる辞任をいただくまでこういう審議はできませんということを私は宣言しました。他の野党先生方も御同調をいただきました。そして、衆議院はとまったことは間違いありません。  しかし、私は、ちょっと申し上げますと、これに関するやはり新聞が出ております。また論調が出ております。これはどういうふうなことかといいますと、これは、私は、まさに国民意思を代行した言葉だろうと思います。「「政治主導」を実現するには政治家知識や熱意だけではなく、見識モラルそして周到さが欠かせないことを物語っている。」こう言っておるわけであります。まさに政治主導をはき違えてずうっとやる。  私は、だから、予算委員会というあの席で御指摘を申し上げたんです。御注意いただきたいと。私は補佐しておるつもりで言うたのでございますが、遺憾ながら、まあ野党ごときが何を言うてというふうにお思いになったのかどうかわかりません。総理も官房長官も、あのときぴちっとやっておけば、こんな事態が起きなかったかもしれません。でありまするから、私は本当に残念です。  だものでございまするから、ぜひ皆様方にも御理解いただきたいのでございますが、政治改革政治改革と言って、知識見識モラルも欠いて、何でもそれさえ言えばあらゆることが免責になるなどというような考え方は到底許されることではないのであります。だから、大臣、そういうときでの御就任でございますから、私は大臣に、お祝いと同時に、本当に御苦労さまであるということを実は申し上げなければならぬわけでございます。  そこで、副長官、これだけの誤解のあるようなこの記事に訂正の申し入れが少しも出ていないことは残念です。  それからいま一つ、野中長官たる者が何を疑義があるというのですか。もう司法改革賛成、賛成している方はいっぱいおられるわけであります。まあ私は頭が悪いから、右するか左するか、まだわかりません。しかし、真剣に、司法はどうあるべきか、法務行政はどうあるべきかということを考えておるやさきなんでございます。それを、たまたま、私らの福岡さんだの、うちの参議院の角田君だの、小川君だの、そういう連中はいずれも弁護士だ。それからまた、委員会外で、公明党さんの委員長さんあるいは幹事長さん、これも優秀な検事上がりであり、弁護士さんなんだ。こういう皆様方が、司法の、この法務の情勢を憂えて発言をして、それらの権威を保つためにいかにすべきかということをやったわけでございます。  そんなような観点から、野中官房長官たる者が、疑義を感ずる、背景に何があるんだということは間違いなくおっしゃったわけでございまするから、本当に私はこれは遺憾なことだと実は思っておるわけでございまして、この点は一言、争点としては残りましたので、これは野中官房長官発言でございますから、官房副長官が弁明することはおかしなことでございますから、問題点とだけ指摘をしておきます。  その検事弁護士司法、これは質問の言葉を答弁のごとく引用したのであるから誤解をしないようにというお話ならば、その部分は了承しました。  しかし、疑義がある、その背後は何だかなどということについては、もっと勉強していただきたいし、やはり、こういうことがあるから、私は、参議院調査報告をして、そのあり方について議論があってしかるべきと思って、本日、実は来ておったわけでございますが、遺憾ながら、やめられたんだからまあまあということになったんだそうでございまして、それはそれで仕方のないことでもあるわけでございますが、その点が、一言、私にとっては争点として残っていることを御理解をいただきまして、間違いであるということは、やはり記者会見なり新聞にも、あなた方、間違った報道をしてもらっては困るぐらいの提言をしていただかぬと私はいかぬと思っていますが、いま一言だけ。
  10. 鈴木宗男

    鈴木(宗)政府委員 今の先生の御指摘、当然かと思いますけれども、もう先生野中官房長官の人柄等、よくおわかりかと思いますけれども、非常に万般に配慮された方で、フライングのない、極めてバランスのとれた、私は、本当に官房長官としては歴史に名を残すお方だ、こう信頼をしております。  そこで、一つ先生の御指摘新聞指摘はそのとおりなんですけれども、例えば、新聞記者の方が、いわゆる法務省サイドとのあつれきが何かあったのではないかという質問に対しての官房長官の答えの中で、新聞が引用しているのは、一連の関係の皆さん方が強力に唐突に発言をされ、衆議院法務委員会審議までがこれによってとまるといったようなことにつきましては、私は、非常に、一体この背景が何なのかということについて、一人の政治家として疑義を抱いておる次第でありますという、前段に官房長官はこう言っているんです。  十分、それもまた国会指摘されたような問題を含めまして、適切さを欠いた点もなしとしませんけれども、こういう問題の背景に、私は、一連のそれぞれ指摘をされる方々が、先ほど申し上げたように、参議院審議で一応締めくくり総括報告を申し上げますということで決着がつき、その後の決着であれば、私どももまたこれを甘受することができるわけでありますけれどもという、丁寧に前段答えておって、その答えの部分は新聞記事になっていないんです。  ですから、最後の疑義のところだけを取り上げられているものですから、一部誤解があった、こういうふうに私は思うんでありますけれども、今の先生お話は、私からも直接官房長官にもお伝えしたい、こう思いますので、よろしくお願いします。
  11. 坂上富男

    坂上委員 結構です。  どうぞ、また機会がありましたらお願いをいたしたい、こう思います。どうもお忙しいところ、御退場、結構でございます。  大臣、少し、私も余り所望でない質問でございますが、ずばり重大な問題でもありますので、御質問をさせていただきたいと思っております。  法務大臣は、佐賀県の選出の参議院議員でおられます。そこで、佐賀市長選挙がございまして、農水省出身の課長補佐さんが、まさに県都の中の市長さんとしては最年少という当選を果たされた市長さんがおられます。この方は農水省の課長補佐をなさった方でございますそうで、農水省、よくぞこういう立派な方を育てていただいたということにも私はお礼を申し上げたいとも思っておるわけでございます。  そこで、実は、遺憾ながら、この課長補佐さんが立候補するに当たりまして、農水省部内におきまして、いろいろの問題がどうもあったやに聞いておるわけでございます。私はちゃんと調書を調べて持ってまいっておりますので、どうぞひとつきちっとした答弁をいただかないといかぬと思っております。私は、以下、これだけのことを発言しますと、相当重大だと言ってもいい問題になると思っているんです。しかし、それを言う以上は、私は専門家でございますから、ちゃんと裏づけをとった上での発言であることも御理解をいただきながら、御答弁をいただきたいと思っておるわけでございます。  まず、大臣、この木下課長補佐さんのことについて、ことしの一月十二日に佐賀新聞で、朝刊で「佐賀市長選に新たな動き 木下氏(農水省課長補佐)擁立も」という内容の報道がありました。これがリコピーでございます。どうぞ、こういうあれがあります。しかも、ここにはこう書いてあるわけでございます。「木下氏は「正式な出馬要請はあっていない」としながらも、「話があれば、しっかり聞きたい」」こう言ったと言うんですね。そうしますと、今迷っている、こういう新聞記事がこうやって出てきたわけですね。  そこで、さすがに農水省の役人でございますので、早速木下さんは、今お見えの須賀田秘書課長さんあるいは高木農水事務次官に状況報告をなさったはずでございます、十二日の日に。そして、この日であろうと思いますが、大臣就任前の陣内参議院議員さんが農水省に来られまして、農政部長、秘書課長にお会いになったのか、これは私はまだ、しかしお会いになったことは多分間違いないのでございますが、のところに参りまして、木下君を選挙に出さないように何とかしてくれないかというお話があったというお話でございますが、これについて、まず大臣、どういう事情なのか、行かれたのか行かないのか、私の言うていることが事実無根なのかどうか、御答弁をいただきたいと思います。
  12. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 お答え申し上げます。  一月の十二日だったかと思います。新聞を見まして多分そうだったかなと思っておりますが、地元の方から、木下氏が出馬するということになったようだけれども、そういう電話を聞きましたので、もちろんまだそういうファクスも見ておったわけじゃございませんが、ただ、私は木下氏本人については全く面識も予備知識もありませんでしたので、どんな人だろうかと思って、当時農林省の、きょうお見えになっておりますが、田原さん、この方も佐賀市の出身でございますので、これはよく御存じかなと思って、そのことを、どういう人かを知りたかったためにお伺いして、聞いた事実はございます。
  13. 坂上富男

    坂上委員 大臣、どう答えました、農水省は。お聞きになったことに。
  14. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 将来、農林省の中ではこれは有望な人だ、将来性はたくさん持っているということでございました。
  15. 坂上富男

    坂上委員 国会議員が、課長補佐がどういう人であり、どういう将来性があるかなどということを質問することは、上の皆様方としては、何かあったんじゃないかな、先生がわざわざいらっしゃったんでしょう、こう思うのは当たり前でございます。有能だといろいろ言ったんですが、先生、何かありましたかと聞いたんじゃございませんか。
  16. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 余り思い出さないわけですけれども、とにかくあちこち幅広く活躍した人であるということと、そのときに既にこういう話が起こっていることを、担当の田原さん、地元の先輩でございますので、聞いていたか聞いてなかったか、その辺もはっきりいたしませんけれども……。  いずれにしても、当時の佐賀市の選挙の状況は、自由民主党の県連の幹部をしていた人と、それから、これは私の中学からの同級生でございますけれども、市長の後任候補として立候補を表明し、既に事務所もその時点で設けておりましたので、二人の対決かな。しかも、その相手さんといいますか、現市長の後継者ということで出ておりますので、その中で、第三の候補というのがあり得るのかなという気持ちは持っておりました。佐賀の場合は、なかなか外から戻ってきてうまくいかなかったという例もございますので、半面、そういう有能な人材であればそういうことになっちゃかわいそうだなという気持ちもあったことは事実でございます。
  17. 坂上富男

    坂上委員 大臣、割合に正直に御答弁いただいて、私は好意を持ちながら聞いておりますよ。もう一歩踏み込んでいただければまさに結構なのでございますが、これもなかなか容易なことでもございませんので、せっかく農水から来ていますから少しお聞きします。  これはまず、あなた方、この新聞が入ったものだから、むしろ先生に別途連絡したんじゃないの。そこで、陣内先生とだれとだれが、何時ごろ、どの部屋で、この木下課長補佐のことについてのお話があったんですか。まず、場所と時間、そこから答えてください。
  18. 田原文夫

    ○田原説明員 お答えいたします。  たしか新聞が出ました前後、ちょっと日にちは私も覚えておりませんですけれども、実は私、ことしの一月六日付で農政部長に就任いたしまして、その関係でまず、先生がふらっとお見えになりまして、おめでとうというような話ですとか、それから仕事の話で佐賀県の農業の問題とか、いろいろ話しました。  その際に、木下さんというのは知っているかという趣旨の御質問がございまして、私、同じ県人会というふうなことで、前々から顔、名前は知っております、ただ、仕事の関係等でずっと一緒にやったわけではございませんので詳細は余りよく知りません、ただ、ポスト的には局の総括補佐をやっておりますので、将来は非常に有望ではないかというふうな趣旨のことはお答えしております。  なお、私は、事前に本人からそういった相談等は全く受けておりませんし、またそのことについてどうだこうだという趣旨の話につきまして陣内先生と詳細に話したという事実は全くございません。(坂上委員「どの部屋に、何時と聞いているの」と呼ぶ)たしか、先生とは、例えば私の方が会館に行きましたりお見えになったりということはもう何度もありますけれども、多分私の部屋だったと思います。(坂上委員「あなたの部屋。だれかいたの」と呼ぶ)ほかは全くいなかったと思います。
  19. 須賀田菊仁

    ○須賀田説明員 私の方には、たしか新聞記事が出ました翌日、陣内先生からは電話で事実確認がございました。(坂上委員「どういうことで」と呼ぶ)事実かどうかということでございます。(坂上委員「そうしたら、どういう答弁」と呼ぶ)私は、実は十二日まで木下氏の動向を全く知りませんでしたので、十三日に本人を呼んで意向を聞きました。
  20. 坂上富男

    坂上委員 そうしますと、十二日に議員がお見えになって木下君のことをお聞きになった、あわせて佐賀県農政についてもお聞きになった、そして、そのとき選挙の話はなかったというような言い方でございます。これはいずれ調査をしますから、いいかげんなことを言わぬでください。  翌日、十三日にも電話があった。いいですか、部長。木下君の話は、陣内先生はもう十分聞いて知ったんだ。翌日また秘書課長に、木下君はどういう男なんだと電話をするというのは、あなた、明敏な議員さんなんだ。二度も三度も聞くことないんだよ。内容が何かあったんじゃないの。同じようなことを、役所はこんなことをしているの。先生は同じことなんか聞きませんよ。  ずばり言います。これは、おい農水省、有能な人なんだから選挙に出さぬでくれないか、何とか方法はないか、こういうお話だろうと私は思いますよ。おれのものに、ちゃんと調書に書いてある。だから聞いているんだ。  どうかね、もう一度、お二人。簡単でいいです。
  21. 田原文夫

    ○田原説明員 お答えいたします。  先生とその関係でお話ししたのはそれ一回だけでございまして、その後、きょうまで全くその件につきましてお話をしたこともございませんし、先生の方から私に直接そういった趣旨の、頼みと申しますか、そういったことは全くございません。
  22. 須賀田菊仁

    ○須賀田説明員 誤解のないように申し上げますけれども、木下氏から佐賀市長選出馬の話を聞きましたのは、十三日が初めてでございます。  私どもとしては、行政官として木下氏はかけがえのない人材でございますし、それから、担当が行政改革、特に試験研究機関の独立行政法人化問題の中核的な担い手でございました。それで、唐突な話でございましたので、後がまの用意もなく組織の担い手がいなくなるというのは大変つろうございますので、そういう意味で、慰留は申し上げました。
  23. 坂上富男

    坂上委員 誤解ないようにとは何事だ。質問できませんよ。取り消させなさい、委員長。  どうですか、委員長。誤解ないようにって、質問に対してこんな失礼な答弁があるか。委員長、取り消させなさい。
  24. 杉浦正健

    杉浦委員長 その点は、御本人、秘書課長
  25. 須賀田菊仁

    ○須賀田説明員 申しわけございませんでした。  実は、陣内大臣から何か圧力があったんじゃないかという問いだと思いましたので、それに基づいて私どもが圧力をかけたんではないかというふうに私が質問の趣旨を取り違えましたので、誤解のないようにと申し上げました。大変申しわけございませんでした。取り消させていただきます。
  26. 坂上富男

    坂上委員 さっき言ったでしょう、火のないところに煙は立たないと。私が言わぬうちから、圧力があったんじゃないかとか、全く……。  というのは、こんなのはまだ私の質問の前提なんです。  秘書課長、十二日の日に事務次官と秘書課長から、選挙に出るか出ないか木下君に確認をし、お話をしたでしょう。どの部屋ですか。何時ごろです。しかも十三日にも、二度にわたってやったんじゃないですか。十三日の時間と場所をお話しください。
  27. 須賀田菊仁

    ○須賀田説明員 お答え申し上げます。  定かな記憶はございませんが、たしか、私の部屋に十三日の午後、木下氏は見えられ、夕刻、事務次官室に行かれたのではないかというふうに思っております。  その中で、るる……(坂上委員「何の話をした」と呼ぶ)木下氏の気持ちと、我々の、今出られては行政組織として困るんだけれどもという話と……(坂上委員「木下さんはそれにどう言いました」と呼ぶ)木下氏は、十三日の段階ではまだ最終決断をされていなかったように思いました。さらにいろいろな人と一晩意見交換をしてみたいというようなことを言われたように記憶をしております。
  28. 坂上富男

    坂上委員 まず十二日の日に、木下君から秘書課長と事務次官に、今の選挙情勢と自分の気持ちについてお話があったんでしょう。あったんですよ。間違いですか。そして十三日の日、また事務次官、秘書課長から、選挙に出るかどうかよく考えなさい、こういう話があったんです。間違いないですよ、こんなのは調査すればすぐ、もう出ているんだから、おれのところには。そこで、木下さんは出馬したいとの意思を十三日に次官に表明したんです、十三日に。あなた、聞いているでしょう。  問題はそこからだ。あなたは、秘書課長に直ちに辞表を出すように再三命令をしたというんです。私は出たいです、だめだ、出たいです、直ちに辞表を出せ。どうも君らしいじゃないの。どうですか。
  29. 須賀田菊仁

    ○須賀田説明員 日時は定かではございませんけれども、木下氏から、決意がかたい、佐賀市長選への出馬の決意を固めたというお話を伺いましたので、決意を固めた以上は辞表を提出してほしいということは申し上げました。それは、公務員は政治的中立を旨としておりますので、政治的行為に入りますとまずいと思いまして、できるだけ早く辞表を、決意を固めた以上は辞表を提出するようにと申し上げました。
  30. 坂上富男

    坂上委員 私は出馬したいんですと。それで次官に話をした。そうか、直ちに辞表を出せ。政治的中立とかなんとか言うけれども、そうやったんです、それはまた別の問題として。そこであなたは、これは重大なことです、木下の辞職、一身上の都合による辞職を承認するという辞令を、一月十四日、交付いたしました。やめるとは言わないんです。辞職することを承認するというんです。  承認するなんという文書があるの、役所は。文書課長法務省、だれかおりませんか。辞職することを承認するなんという文書を出すんですか。法務省、どうですか。おれは選挙に出たいと思います。辞職することを承認する。そういうことの文書が出るんですか。だれかお答えください。どうぞ、官房長。
  31. 但木敬一

    ○但木政府委員 役職によりますけれども、辞職を承認するという辞令が出る職もございます。
  32. 坂上富男

    坂上委員 そうした場合、どうするんですか。
  33. 但木敬一

    ○但木政府委員 通常は、本人からの辞表を受けまして、その辞表に対して辞職を承認するという文書を出します。
  34. 坂上富男

    坂上委員 そうでしょう。私はやめさせてくださいと申し出て、初めて承認するという言葉になるんでしょう。そうでしょう、今の御答弁。  いいですか。私は選挙に出たい、やめろと言われてもやめられません、こう言って、あくまでも立候補する意思は何かかたいようだった、辞意は撤回しないような感じだった。だけれども、公的には何にもまだ言っていないんですよ。十四日に直ちに十四日付で辞職を承認する。こういうのは、我々の法律用語で言うと、先行自白というのだよ。こういうようなことを農水省はいつもやっていますか。どうです。  そこで、大変問題は、これを農水省の掲示板に張り出したでしょう。張り出した。どういうことです、これは。本人の辞表提出も待たないで、辞任承認書を交付すると同時に役所に張り出す、こんなことがあっていいのですか。どうですか。
  35. 須賀田菊仁

    ○須賀田説明員 順番に申し上げますと……(坂上委員「張ったかどうかだけ」と呼ぶ)人事異動は通常、壁に張り出します。辞表の提出がありました場合には、我が省は、辞職を承認するという辞令を出すわけでございます。それを、辞意がかたかったものですから用意をしたのは事実でございますけれども、手続は、辞表の提出があり、辞職を承認して壁に張り出すという手続で行いました。
  36. 坂上富男

    坂上委員 課長さん、十四日に辞表は出ましたか、十四日に。
  37. 須賀田菊仁

    ○須賀田説明員 記憶が定かではございませんけれども、十四日付の辞表を、当日か、たしか十四日は金曜日だったと思いますので、私の手元に来たのは当日だったか翌週の月曜日だったか覚えておりませんけれども、十四日付の辞表を受け取りました。
  38. 坂上富男

    坂上委員 辞表が出されたのは一月十八日です。いたたまれなくなったのです。あっちこっちから、おい、木下君、おまえやめるんだってな、何か悪いことしたか。全部やられたのよ。そして、あなたは指示をした。日付は一月十四日付にしなさいというわけだ。これは、まさか一月十八日付の日付の辞表が出たら、十四日に掲示をして、十八日付だったら非常に困るでしょう。さかのぼって出しなさいというわけだ。間違いないでしょう、あなた。きちっとあなた、二日ぐらいのことじゃないのです。十四日から十八日までの間です。十四、十五、十六、十七、十八、五日間だ。今でいう、一週間のうち、我々が働く時間と同じだ。どうですか。
  39. 須賀田菊仁

    ○須賀田説明員 お答え申し上げます。  私が木下氏の出馬の意向がかたいということを聞いたのは十三日か十四日でございます。  一月は十五日から十七日までが連休でございます。たしか木下氏は地元に帰るというようなことを言っておられたように思います。十五、十六、十七に地元で政治活動……(坂上委員注意してください。余計なことばかり言って」と呼ぶ)
  40. 杉浦正健

    杉浦委員長 質問に直接に答えてください。
  41. 坂上富男

    坂上委員 十八日かどうか。
  42. 須賀田菊仁

    ○須賀田説明員 記憶、定かではございませんけれども、私が木下氏の辞表を見たのは十八日だったように思います。ただし、十四日付の辞表だったと思います。
  43. 坂上富男

    坂上委員 委員長に申し上げますが、農水省からこの辞表をひとつ取り寄せてください。それから、掲示を何をしたかということが文書であると思いますから、これもひとつ提出命令を、後から理事会で相談をして、よろしくお願いします。
  44. 杉浦正健

    杉浦委員長 後刻理事懇で御相談させていただきます。
  45. 坂上富男

    坂上委員 これは、聞いておって、えらいことだと私は思いますよ。  刑事局長、こういうのを我々は、共謀による強要罪あるいは威力業務妨害、そういうことを我々は考えていいのじゃないですか。どうですか。義務なきことを……。
  46. 松尾邦弘

    ○松尾政府委員 せっかくのお尋ねでございますが、どうも私からお答えするのは適当でない事案だろうと思います。
  47. 坂上富男

    坂上委員 法律解釈を聞いているんですが、予告をしていないから御答弁を求めないことにいたしますが、これは、場合によっては刑事問題として考えても悪くない話です。検察はこういう事実、今お聞きになってわかるでしょう。  大臣が、どういう意図かわかりません、お話しになってこういう結果になっているのです。大臣、まさか想像なさらぬかったでしょう、こういう事態になっていることを。どうですか。
  48. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 就任あいさつというか、お祝いの言葉を述べに行ったり、あるいは当時、ふるさと田園博物館ですか、何かそういう新しい制度もある、これは吉野ケ里を中心にしてそういう制度が適用できないだろうかというようなこともありまして、そのことを担当部長だから聞きに行って、そのついでに、こういう新聞記事があるということを言った。その一言がこういうぐあいに大変な、農林省に迷惑をかけるようになってしまっているという現実、今初めて知ったわけでございますが、大変、不徳のいたすところだったと思っております。
  49. 坂上富男

    坂上委員 法務大臣、あれですか、辞表も出されないうちに辞職を承認するなんというようなことを掲示をすること、義務なきことを行わせるという法律行為なんですよ。それでも刑事局長は温情をもって答弁しないだけなんだ。これがあなたの言動から出ていると私は思うんです。だけれども、私は責任をとれとは申しませんけれども、法務大臣のお立場でございますから。ましてや、あのときは法務大臣ではございませんが、私は、官僚主導というのは、中村さんが官僚はいかない、こういうようなことからなされたんだろうとは思っているのです。それでも官僚さんの方ではいろいろとまた勉強して、役立つようにとされたと思うのですが、これはとんでもない。  こうやって必要以上に執拗に、自民党さん以外の候補に立つ場合は圧力を加えるなんて。自民党の大幹部の先生が、木下君というのはどういう男だよと御相談に行かれる、そういうような大変なことが今起きている。それだけに、私は農水事務次官にここへ出頭してもらいたいと思ったのでございますが、遺憾ながら出頭しない。これは理事会でもまた相談させてもらいますが、法務にとりましては重大なことなんです。  その結果が幸いしたのかどうかわかりませんけれども、私たちが推薦した木下氏は佐賀市長に当選してくれました。(発言する者あり)めでたい話ではあるのですが、めでたいばかりではないのであります。その前段で大変ひどいことが行われているということを知っていただかなければならないのでございまして、私はこの問題は、私の言葉でございますが、刑事問題で摘発をされる価値のあるものだろう、しなければならない問題だろう。そうでなければ正義が通らないのじゃなかろうか。  皆さん、坂上富男国会議員をやめることを承認するなんていって張り出されたらどうしますか、辞表も出さないうちに。皆さん一人一人、座って、自分のことと思うでしょう。皆さん方の上の幹部にそういうのがおりますか。大変なことです、これは。  大臣、どうぞひとつそのことをよく御認識をくださいまして、これはきょう一回で済みませんよ。きちっと対応をしてもらわぬと、怒っておりますが、こればかりに時間もとれませんので、この程度でこの問題は、指摘をしておきます。  さて、今度はちょっと話が違いますが、警察がお出かけと思いますが、この間私は、茨城中三事件というものを質問させていただきました。先生方に本当は見てもらうといいのでございますが、本当に胸痛む思いだ。これは、大臣大臣だけごらんいただいて、まず、警察の方、この写真は見ていますか。私が今示したこの写真は見ていますか。これを持ってきましたけれども。あなた、見てきょう答弁できるの。どうぞ。
  50. 舟本馨

    舟本説明員 先生、この写真は、御遺族の方の御依頼により鑑定で作成されたところに添付している写真でございましょうか。――これ自体は見てございません。
  51. 坂上富男

    坂上委員 捜査当局ですから、ごらんになってください。どうぞお持ちになって。  私は、新聞情報だけで、これはいかぬなと思って、この間質問させてもらったんです。御遺族から御丁寧な手紙が来ました。今ここに私は持っております。この写真とお手紙をいただきまして、本当に胸つかれる思いでございました。警察は何と言うたかというと、道路に転んでできた傷だろうと。だれが見たって、これは鈍器でもってはたかれなければならない傷だ。我々素人でもわかるんだ。  これはまず、家庭裁判所、今何か加害者の裁判をしておられるそうですが、状況を簡単に話してください。
  52. 安倍嘉人

    安倍最高裁判所長官代理者 御説明申し上げます。  御指摘の事件につきましては、平成十年十月二十九日、水戸家庭裁判所土浦支部に送致されまして、現在同支部に係属して、審判が係属されている状況にございます。  以上でございます。
  53. 坂上富男

    坂上委員 捜査当局から送付された資料のほかに、証拠調べ的なことをなさっておりますか。お答えになるかどうか。どうぞ。
  54. 安倍嘉人

    安倍最高裁判所長官代理者 ただいまの点は、現在進行中の具体的な事件の内容にかかわるものでございますので、私ども最高裁判所といたしましては、お答えを差し控えさせていただきたいと考えております。
  55. 坂上富男

    坂上委員 この問題の争点は二つあると私は思っています。一つは、加害者側が数人であったかどうかということ、それから、加害者側によって、いわゆる凶器を持たれてこういう事件になったかどうかという点が争点だろうと思っておるわけであります。  これは、遺体が自宅にお帰りになったとき、御遺族の方がお撮りになった写真です。もう本当にひどい。そこで、この写真と、それからもう一つは解剖鑑定というのですか、それの鑑定、死体検案書の報告、あるいはお医者さんの報告、そういうものをもとにいたしまして、大変権威があると言われる東京医科歯科大学の法医学教授の支倉逸人さん、この人に鑑定を依頼しました。これは、中心的には、この写真をもとにし、かつ死体検案書等ももとにされましての鑑定書でございます。  そこで、質問事項がこう出ているんです。「顔面部損傷の素手による成傷可能性について」、傷の可能性について、「手背の損傷所見について」「顔面部損傷が右利きの加害者に殴られた可能性について」「可能性のある成傷器」、凶器だろうと思います。それから「五 推定される傷害の状況」「加害者の人数について」「心臓マッサージについて」それから「その他の問題点について」鑑定を依頼しまして、教授は次のような鑑定をなされているのであります。  被害者に手で殴ったことを示すような所見は認められない。あるいは「複数の加害者が参加した可能性が高い。」それから「脈搏のある者に心臓マッサージを行うことは危険である。」その他の問題点、「病院の発行した死体検案書の記載は不確定のものと理解すべきである。」「責任を恐れて負傷者の救助を遅らせることがあったとすれば不当である。」詳細書いてあります。  この鑑定書は、警察は参考資料として受理されて、調査されたんですか。
  56. 舟本馨

    舟本説明員 茨城県警からの報告によりますと、御遺族の委託によりまして作成された鑑定書につきましては、二月の三日に警察に再捜査を求める要望書とともに提出をいただきまして、県警として受理をしております。  その後、この鑑定書また御遺族の要望内容につきまして、当時の捜査状況でありますとかあるいは司法解剖に基づく鑑定結果等と照らし合わせるなどの子細な検討をしているところでございますけれども、これまでに検討し、また確認した中で必要と思われるものとともに、この作成されました鑑定書自体につきましても、現在検察庁に送付するための手続をとっているというふうに承知しております。
  57. 坂上富男

    坂上委員 さっき申したとおり、私は、御遺族の承認も得なくて前回質問したんです。感謝の手紙が来たんです。きょう、私は九時半から時間があればこの問題を取り上げます、傍聴もよろしゅうございますよと言ったのでございますが、御遺族おられますか、手を挙げてください。――御両親です。  捜査当局、再調査の要請をした、捜査当局は余り気乗りはしなかったらしい。今の御答弁をいただきますと、さらに要請を受けてその分について捜査をして、また必要に応じて家庭裁判所の方に提出するというんですか、検察庁を通じてでしょうか、というような御答弁でございます。ぜひこの御両親の気持ち、遺族の気持ちも察して、さりとてまた、加害者の子供は少年法の適用でございますから、これはこれでまたそれなりの対応の仕方が出るだろうと思います。ただ、私はやはり警察の対応の中で問題があったなと実は思っているわけでございまして、最後に一言所感だけ、課長立場で。
  58. 舟本馨

    舟本説明員 茨城県警におきましては、捜査の当初の段階から御遺族のいわば心情に配慮したことに欠けておりまして、そうしたことから、御遺族に対する捜査状況等に関する説明を十分に尽くしていなかったというふうに思っております。その点につきまして、先日、三月の二日でございましたでしょうか、御遺族に対し、そうしたことについて心からおわび申し上げますとともに、捜査状況の説明を行ったところでございまして、現在も御遺族から改めて事情をお聞かせいただくなどの対応をとっているというふうに承知しております。  この事件につきましては、現在裁判所において審判中でございますので、その推移は見守らなければならないと考えておりますけれども、そうした中におきましても、御遺族からの要望内容を踏まえまして警察としてさらに検討を行うとともに、今後とも御遺族に対して十分な説明を行ってまいりたいというふうに考えております。
  59. 坂上富男

    坂上委員 ぜひ、法の適用はひとつ厳正に、かつまた温かく、しかしまた不公正のないように私は要請をしたいと思います。  あるいは、まだこんな程度では御遺族の気持ちはおさまらぬとは思いますけれども、ほかのこともございますので、この程度で私は終わりますので、どうぞ御退場いただいて結構でございます。  さて、法務省人権擁護局、この間の私の質問のときは、人権擁護局は廃止やむなし、しかしそれに対応するところの対策本部をつくって万遺憾ないようにいたします、こういう話でございました。そしてその後、私は解放同盟さんの求めに応じまして同行いたしまして、人権擁護局と交渉いたしました。その席上で総務課長さんは、人権擁護局の廃止は取りやめました、そしてこれは今までどおりに御指摘のように残します、こういう御答弁をいただきました。  大変うれしかったです。大変うれしかったですが、大臣でございましょうか、あるいは局長さんでございましょうか、人権擁護局は本当に今までどおり残して、さらに充実発展させるということなんでございましょうか。どうぞ。
  60. 但木敬一

    ○但木政府委員 前回、委員の御質問に対しまして私の方から、人権擁護行政の充実発展と一局削減、この二つの目的を同時に達するためのシステムを考えているという御答弁を申し上げたと思います。  その後、中央省庁等改革推進本部事務局の方とその件でずっと折衝してまいったのですが、結論的には、一局削減には当たらない、むしろこれは充実発展策であるという御判断をいただきまして、やはり充実発展については、むしろ現在人権擁護局が事務局となっております人権擁護推進審議会の結論を待って考えるべき事柄であろうということで、結論といたしましては、人権擁護局は当面廃止はしない、それで訟務局を現在廃止する方向で検討している、こういうことでございます。
  61. 坂上富男

    坂上委員 ぜひ人権擁護局を残していただいて、そしてもっとこれを充実発展させるように法務当局にお願いをしたいと思っておるわけでございますので、強く要請し、また御努力に私は敬意を表したいと思っております。  さて、人権擁護局、今、人権擁護推進審議会が設置をされて、大体ほぼ終わりそうだそうでございまして、七月には答申が出ると話を聞いているわけでございます。しかし、いろいろどうも審議会の審議の模様を聞いておりますと、同和問題解決に向けた施策の確立について、本当にそのことを位置づけまして審議会の運営をしているかどうか、大変疑問でございます。  そういうふうな中で、私たちは、この審議会に要請をしたことの一つの中に、当時私も与党でございましたが、自民党さん、さきがけさん、社民党さん、この三党で与党人権と差別に関する文書を、いろいろ要請をいたしまして、殊に同和問題についての対策は、啓蒙、教育、そして今度、侵害についてはきちっと救済をやるというようなことについて格段の努力をするためにひとつ審議会においても検討していただきたいと平成八年六月五日、それから同じく八月七日、それから今度は九月二十四日、三回、四回にわたりまして法務省に申し入れをしたわけであります。  そしてまた、こういうことも踏まえまして、人権擁護施策推進法案の提案理由、これをもう忘れているんじゃないかと思うぐらいでございますが、この提案理由の中に、「同和問題につきましては、本年五月に、地域改善対策協議会から同和問題の早期解決に向けた今後の方策の基本的なあり方について意見具申がなされ、その中で、差別意識の解消に向けた教育及び啓発の推進、人権侵害による被害の救済等の対応の充実強化等が求められて」いると。重要な、本当に中心的な提案理由なんです、これは。これが全くないがしろにされているんじゃなかろうかということを実は心配をしておりますが、審議会の担当、どんな感じですか、法務省
  62. 横山匡輝

    ○横山政府委員 お答えいたします。  人権擁護推進審議会の設置根拠となっております人権擁護施策推進法は、ただいま委員が御指摘されましたように、同和問題の早期解決が求められていることを重要な契機として提案されたものであること、また、同和問題は人権問題の中の重要な柱の一つであることにつきましては、事務当局におきましても十分認識して人権擁護推進審議会を運営しているところであります。また、このことにつきましては、人権擁護推進審議会の委員方々にも十分理解していただいているものと承知しております。  それで、審議会では、現在、同和問題を含みますさまざまな人権問題の実情を踏まえつつ、広く人権の擁護に資するという観点から、人権尊重の理念に関する国民相互の理解を深めるための教育及び啓発に関する施策の総合的な推進に関する基本的事項について審議されておりますが、これまで、人権尊重の理念、人権教育・啓発の現状、人権教育・啓発のあり方、人権教育・啓発の推進のための方策など、主要なテーマごとの議論をしてきました際には、同和問題の実情やこれまでの経緯等も十分踏まえながら審議を深めていただいているものと承知しております。  以上でございます。
  63. 坂上富男

    坂上委員 まとめて質問しますが、三月十六日、二十四回の会議で、大体一応終了したとも言われております。次回の審議は五月二十五日だそうでございます。そこで、答申までの今後の作業手順、どうなるのでしょうか。  それから、いま一つ要望です、これは。  男女共同参画審議会でも、答申をまとめるに当たって、中間報告的なものを提出して、広く国民的な議論を呼びかけて、よりよい答申にしようとしているわけでございます。私は、この答申もぜひ中間報告を出していただきまして、今度は後からある程度の修正もできるように、また国民的な議論もしていただきたいなとも思っております。もう最終答申を出されたら抜き差しならなくなると困りますから、その辺は、事務局である法務省の方はどういうふうにお考えになっているか。ぜひとも中間報告するように、私からも強く要求いたしたいと思います。
  64. 横山匡輝

    ○横山政府委員 先ほども御説明いたしましたとおり、人権擁護推進審議会では、現在、人権教育・啓発に関する施策の基本的なあり方について審議がなされておりますが、ただいま委員が御指摘されましたとおり、今月の十六日に開催されました第二十四回の会議におきまして、これまでの審議を踏まえた総括的な討議が行われますとともに、答申に向けての取りまとめの作業を行うための起草委員会が設置されたところであります。  今後の審議の予定につきましては審議会において判断される事項でありますけれども、起草委員会におきましては答申に向けての取りまとめの作業が行われ、それを踏まえまして五月以降の審議会において答申取りまとめのための審議が行われ、本年夏ごろを目途に答申を取りまとめていただけるものと承知しております。  それから、今委員が言われました中間答申の件でございますけれども、答申の前に答申案的なものを出すか否かにつきましては審議会の運営に関する事項でありますので審議会で決定される事柄ではありますけれども、広く国民の意見を聞くという観点から、時期や方法等も含め、答申の前に答申案的なものを出す方向で検討が行われるものと承知しております。  以上でございます。
  65. 坂上富男

    坂上委員 答申案というよりも、やはり中間報告を出してもらって、国民的議論にさらして、もう一度御相談をいただくということが必要だと思いますから、私の立場から法務省、事務局に強く要請をして、審議会にそういう意見のあったことを強く反映させるようにお願いをいたしたいと思っております。  もう時間もなくなってまいりましたが、私の所属しております新潟弁護士会は、先般、礼をしなかった、こういうことで独房に二十カ月も入れておりました新潟刑務所に対しまして、弁護士会としては、拘禁は受刑者の社会復帰を妨げる不当な人権侵害であるという人権侵害認定をいたしまして、警告を発したわけでございます。法務省、この警告についてどう受けとめられておりますか。  これは私も一、二参加をしておるものでございますからちょっと言いづらい点もあるのでございますが、これはやはりちょっとひどいんじゃなかろうか。どういうことかといいますと、刑務所に服役中、朝夕の人員点呼のときに、高圧的な態度をとり、返礼もしない職員に敬意は表しないとして、礼をしなかったんだそうでございまして、これで二十カ月というのもちょっといかがかなと思いますが、御所感を。
  66. 坂井一郎

    ○坂井政府委員 お答え申し上げます。  最初に結論的に申し上げますと、我々といたしましても、この処置、いささか適切を欠いたかなというふうに考えております。  先生御承知のとおり、独居拘禁をするのは、いろいろな場合がございますけれども、他との協調性がなくて、一緒にするといろいろ問題が生ずるという受刑者をするわけでございます。本件の場合は、ある種の信念がございまして礼をしなかったということでございますが、その信念は信念といたしまして、もしそうであるとしても、途中でもう少し本人を説得するなりなんなりして、周りとうまくやるように指導する。仮にそうでなくても、ただ礼のことだけで独居拘禁を続けたというのはいささかどうであったかなと思っておりまして、現在はこういう、礼をしなければ独居拘禁にするというような取り扱いは新潟刑務所もしておりませんし、周りの刑務所もしていないと承知いたしておりますので、御理解を賜りたいと思います。
  67. 坂上富男

    坂上委員 ぜひ人権上の配慮はきちっとしておいていただきたいと思っておるわけでございます。  その次に、私は、この間行われました臓器提供に関する問題について御質問をいたします。  臓器提供施設となっておりますところの大学病院、救急医療機関三百五十二施設を対象に、ある通信社が、新聞社でございますが、全国アンケートをいたしました。その回答が、二百四十施設の回答がありました。  この中で、私たち人権を守るという立場からいいまして、ぜひ人権擁護局からも御検討いただきたいと思っておりますが、こう書いてあります。「過熱報道に批判集中 早急なルール作り求める」とあります。  提供施設からは報道の過熱ぶりへの批判が集中。自らの施設で提供者が現れた場合の混乱への不安が現実となり、早急なルール作りを求める声が上がった。   「病院名公表は最大の誤り」「臓器搬送をリアルタイムで伝える必要があるか疑問」と、提供者と家族のプライバシー保護を求める意見が多数。高知では会見した院長が、救急部と発表内容を確認するため、深夜まで何度も往復する場面があり「日常的な医療を障害しないよう配慮すべきだ」と指摘があった。   再度の脳死判定の前から全く情報が公開されなかったことに「公開されるべき医学データが隠され、守られるべきプライバシーが出てしまったのが問題」 公表していただきたいデータが隠され、守られなければならないプライバシーが出てしまったのが問題、私は的確な指摘だと思いますよ。   今後の具体策として「厚生省や提供施設と報道機関が協議し、情報公開報道の態勢を整備すべきだ」「発表窓口の一本化を」「報道機関は代表質問、代表撮影にするなどの配慮を」と、枠組み作りを要望する声が強かった。  こういうことがありましたので、私は、この間のNHK予算の際に、時間をいただきまして、NHKに強く申し入れをいたしました。会長からも、深く反省をいたしまして対応いたしますので、お許しをいただきたいという御答弁がありました。  法務行政立場といたしまして、人権擁護局は、臓器提供者、いわゆる患者の人権とこの御家族の人権を守らなければなりません。このガイドラインは一体どこにあるのか。これは今後ずっと出てくるわけでございます。これは、人権擁護局としてはやはりきちっといち早く明示すべきだろうと私は思ったわけでございます。  そこで、私は、いずれ機会があったら御答弁をいただけるものだと思うし、きょう言ってあす御答弁いただくのも酷かと思いまして、実はもう十日以上も前から、人権擁護局としては御検討いただきたい、そして、私が質問に立ったら、そのことについてある程度ルールの方針が決まったら御答弁いただきたいということを要請してあるわけでございます。  そんなような意味で、いわゆる臓器提供患者さんが今後も出るわけでございまして、また、出るということはもう想定をされるわけでございまして、この問題はまさに私たちは避けて通れない大事な問題で、特に人権擁護を旨とするところの人権擁護局としては、いわゆる臓器提供者の患者の人権、そしてここの御家族の人権をどの程度のラインでもって、基準でもってすべきだということを明示していただきたい、こう思っておりますが、いかがでしょう。
  68. 横山匡輝

    ○横山政府委員 確かに、今委員指摘のとおり、臓器移植に際しまして、臓器提供者あるいはその御家族のプライバシーの保護、これは大変重要な問題であると私どもも認識しております。  このガイドラインの問題について私どもの考え方を述べさせていただきますと、まず、一般に、報道あり方に関しますガイドラインにつきましては、憲法で保障されております報道の自由の重要性にかんがみまして、まず報道の主体であるマスコミがみずからガイドラインを作成し自己規制をするなど、自主的に取り組むことが望ましいと思っております。  また、委員指摘のような臓器移植報道のガイドラインの問題は、これは、今委員お話の中にありましたけれども、情報開示のあり方とも密接なかかわりを持っておりまして、こういう情報開示のあり方を含めまして、臓器移植という大きな問題にかかわりますので、その中で議論されるべきもの、そのように考えております。
  69. 坂上富男

    坂上委員 この答弁、余り賛成できません。人権擁護局なんだから、これが基本なんですよ、人権擁護局は。報道がやればいいとか厚生省がやればいいとか、それじゃいかぬですよ。これは患者の人権をどう守るかという問題なんだから、それを、報道が押しかけてきているんだから、報道が悪いんだで済む話じゃないんです。やはりぎりぎり、我々はこの人権をこういうふうに守らなければならぬと思う、こういうふうなことを人権擁護局は明確にしなければ、これは、さっきのように人権擁護局廃止みたいな話になってしまうんだ。  ぜひもう一度検討して、できるだけ早く明示すべきだと私は思いますが、大臣、この問題はどんな感じですか。どうですか。
  70. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 先ほど当局から説明いたしましたように、この問題は、憲法で保障されている報道の自由の重要性の問題、また、ガイドラインの問題は、情報公開あり方を含め、臓器移植という大きな問題にかかわりますので、関係当局とよく相談の上取り組む必要がある、このように考えております。
  71. 坂上富男

    坂上委員 これもよく見てください。いいですか。提供者の主治医だった西山救急部長は、家族の気持ちを代弁すると言って、次のとおり述べたというんですね。   脳死移植に関する報道は、一定のルールとプライバシー保護の上に成り立つもので、プライバシー保護と情報公開とは全く別だ。 私はそう思いますよ。  国民全員が脳死移植に賛成なら問題ないが、人それぞれに考え方が違い、脳死に反対する人もいる。まして、今回は提供者に子どももいる。反対する人からの中傷の恐れもあり、子どもに迷惑を掛けることだけは絶対に防がねばならない。提供者も子どもに迷惑を掛けることが分かっていたら提供しようとは思わなかっただろう。   マスコミの猟奇的とも言える行動は理解できない。提供者の家族を特定しようという動きで年齢や性別、住所と次々に暴かれ、ついには職業や周囲の雰囲気に及んだ。これらを報道することに何の意義があるのか。家族は最初の報道に強い怒りを感じている。   二回目の判定時刻をなぜ公表しないのかと聞かれたが、二回目の判定時刻とは死亡時刻を意味し、患者が特定されてしまう。住所などが報道されなければ公表できたが、出せる情報も出せなくなった。これはマスコミの責任だ。ご家族とは臓器摘出後に公表しようと合意していた。ところが外には取材の車が集まってきた。厚生省や日本臓器移植ネットワークの責任も大きい。   最低限のルールも確立されていない中ですべてが未成熟だったことにより、ご家族に多大な迷惑をお掛けしたことをおわびしたい。ご家族は次回の移植では改善されることを願っておられる。 そうでしょう。  人権擁護局はルールをきちっとやはりあれして、患者の人権はこういうふうなんだということを守るように期待をしているんです、人権擁護局に。それを報道だの何だかじゃ困るんでございまして、大臣、その点をよくひとつ対応を今後も検討していただかなければならぬと私は思いますよ。あすにでも、あるいは患者がこういう状態になるかもしらないという事態があるんだから。本当にみんなが、まだだれも自主的なルールができたなんて発表していない。厚生省も発表していない、法務省も何もしていないわけであります。全く投げやりの対応じゃないですか。私は、人権擁護局は任務を、率直に言っていささか怠っていると強く指摘をせざるを得ません。どうぞひとつ御検討を賜りたいと思っております。  最後に、もう時間ありませんが、先生方にもお配りをしてありますが、これは最高裁判所からいただきました再審の統計表でございます。  再審無罪というのは結構ありますね。お話を聞きましたら、この再審無罪というのはそんな大きな事件でなくとも、なくともというのはちょっと言葉が適切ではありませんが、例えば交通事故なんかで身がわりに犯人として出て、その人が処罰を受けた。しばらくたってから、とんでもない、私は間違いでした、私じゃなかった、あの人ですというような再審が結構多いんだそうでございます。  そこで、この中で一つだけ言えることは、再審を開始するに当たっては、どうも裁判所は、これは再審無罪だという確信がなければなかなか再審開始なされないようでございます。どうもそういう傾向があるそうでございます、最高裁からお聞きをしたら。そういうようなことは、私はもっと広くひとつ再審の開始ぐらいはしていただきまして、真剣に、本当に冤罪であったかどうかということを審理をしていただいて、即無罪にならなくとも、どうも確信がとれなかったら再審棄却でもやむを得ないと私は思っているわけでございます。  この中で一番大きな問題の一つは、警察から検察に書類が送られます。これを証拠の標目と言っているんじゃないかと思いますが、この証拠の標目というものは、再審においては重要な作用を及ぼすわけでございます。それで、再審の関係者は、証拠はまだ検察の手元にあるかもしらぬから、警察から検察に送った証拠目録を出してくれ、こう言いますけれども、これは内部資料であるから出せませんというのが答弁のようでございます。しかし、裁判所が勧告をすれば検察はこれに応じて証拠目録を提出になっておるのが、どうも判例といいますか、裁判の大勢のようでございます。  今、情報公開法ができました。それで私は、司法改革の中の一つといたしまして、再審無罪になったからといって司法に対する威信が損なわれることはない、かえって信頼がその中から生まれてくると実は思っておるわけであります。たまたまでございますが、日産サニー事件は再審がなされたけれども、無罪にならないで棄却されたというのはこの間報道されたばかりでございますが、これなんか異例の事態なんだそうでございまして、普通、再審の扉をあけると同時にその後は無罪というのが多いんだそうでございます。  私は検察当局、裁判所にもお願いをしたいんでございますが、警察から検察に送られる証拠目録というのは公文書なんですね。公文書でございますから、これはうちの内部資料だというものではなくして、検察は本当の実体的真実発見のためにはやはりこれは提出すべきだ。裁判所の勧告がなくとも私は提出されてしかるべき問題だと思っておるわけでございますが、この際、司法改革ということが議論されるに当たりまして、これに対する対応もぜひとも御検討をいただきたいなと私は思っておるわけであります。  殊に、情報公開法が今できつつあるわけでございますが、これに関連をいたしまして、国民が情報について確実にこれを知り、そして対応できるというのが情報公開の精神のようでございますから、ましてやこの証拠目録の中に真実が隠されている、そういう資料は、もう我々の手元にないけれども検察の手元の中にはあるから出してくれというのは、これはけだし当然だと思います。内部文書ではありません。  御存じのとおり、例のエイズのときも、会議のメモをしたのもみんな公開をしたわけでございますので、あるものをすべて出せというのではないんでございますが、そういうふうな送検をしたときの証拠目録などというものは、公文書ですから、出してしかるべきなんじゃなかろうか、見せてしかるべきなんじゃなかろうか、私はこんなふうにも思っておりますので、ひとつ御所見をいただいて、今後司法改革審議が始まるに当たりまして、この部分だけ強く私は要求したいんでございますが、検察当局の御所見も少しいただいておきたいと思います。
  72. 松尾邦弘

    ○松尾政府委員 先生質問の証拠目録といいますが、これについての取り扱いは、先生先ほど御発言の中で言及されたとおりになっています。  一つだけ申し上げておきますと、こうした証拠関係書類、あるいはそれをまとめた目録というものでございますが、特に刑事事件の場合は、時に強制力を用いまして広範多岐にいろいろな関係資料を集めます。その中には、争点とは直接関係ないものとか、あるいはこれを公開しますとプライバシー等が侵害されるおそれがある、あるいはそれを公開することによりまして将来の捜査に影響を与えるというようなこと、いろいろな要素が考えられるわけでございます。そうした中で、どういった資料、証拠目録もそうでございますが、これを開示すべきかどうかということについては、個々の事案ごとに検察官が適切に判断しているところと承知しております。
  73. 坂上富男

    坂上委員 時間がもう超過しているようでございますから、ありがとうございましたが、ぜひ、これは大変な問題点なんでございますから、これからの司法改革の中の条文にかかわることでもあるし、あるいは検察行政あるいは裁判行政にもかかわることでありまして、これが私は一番大事なことだろうと実は思っているわけであります。これは金がかからないで司法改革できる、私は一番いい方法だと実は思っているんですが、どうかそんなようなことでひとつ御検討だけはお願いをいたしたい、こう思っておるわけであります。  実は大臣に、私は、前大臣のいろいろの言動について、これはよかったのか悪かったのかということを実は聞きたいと思ったのでございますが、二点だけ、済みませんが、聞かせてください。  検事総長を呼ばられまして、みずからの指揮下にあり、自分の心を体して仕事をせよと、いわゆる検察の独立に抵触するような発言をしておられたわけでございますが、これについては、新大臣、いかがですか。  いま一つ、日本は、自衛もできない、軍隊も持てないような憲法をつくられ、改正できずにもがいている、こういう憲法改正の意向のようなことを表明されました。  いま一つは、和歌山のカレー事件やオウム真理教の事件を通じて、国民の中に弁護士はあんなにひどいものかという感情が芽生えている、こういうようなむちゃな話が出ているわけでございますが、大臣、一つ一つ聞きたかったのでありますが、一括でよろしいですが、御所見を述べていただいて、質問を終わりますが、どうぞ。簡単でいいですから。
  74. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 第一点、これは大変重要な問題でございますので、答弁させていただきたいと思いますが、検察権も行政権の一部をなすものであるところ、また、行政機関は内閣に属し、「内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ」ものとされておりますので、内閣の一員である法務大臣といたしましては、検察権の行使についても、検事総長に対し必要な指揮監督ができなければならない、このように考えております。  しかしながら、検事総長を初めとする検察官は、刑事について捜査、公訴を行い、裁判所に法の正当な適用を請求するなど、その職務は司法権と密接不可分な関係にあります。そして、司法権の独立を確立するためには、常に検察権が不偏不党、厳正公正を旨として行使されるべきであり、そのためには検察権の独立が確保されなければならないと考えており、法務大臣といたしましては、検事総長との関係においてもこの検察権の独立を尊重してまいりたいと考えております。  また、二点目の賀詞交換会での席上のお話に触れてでございますが、憲法の基本的原則である民主主義、平和主義あるいは国際協調主義、基本的人権の擁護、こういう大事な理念は将来にわたって堅持すべきものであると考えております。私は、閣僚の一員として、当然のことながら、憲法九十九条に基づき、日本国憲法を尊重し擁護する所存であります。  最後でございますが、和歌山カレー事件等に関してでございますけれども、私自身の弁護士に対する一般的な認識を申し上げれば、司法の一翼の担い手であり、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とされるものでありますので、国民の期待と信頼に十分こたえる必要があり、またそのように努めておられるものと考えております。
  75. 坂上富男

    坂上委員 終わります。ありがとうございました。
  76. 杉浦正健

    杉浦委員長 上田勇君。
  77. 上田勇

    上田(勇)委員 公明・改革上田でございます。  陣内大臣には、御就任まことにおめでとうございます。大変難しい事態を受けての御就任でございますし、また、当法務委員会法案も数も多く、かつ難しい法案が多いわけでありまして、大変御苦労なことだというふうに存じ上げますが、もちろん私どもといたしましても、こうした法案、必要なものは十分な審議を尽くすというのは当然ではございますが、この委員会運営につきましては、協力すべきところは協力するという立場で臨んでいきたいというふうに思っておりますので、どうかよろしくお願い申し上げる次第でございます。  先ほど、坂上先生の方からの御質問にもございましたが、中村法務大臣辞任の際の野中官房長官の御発言について、報道されていることにつきまして、若干御質問させていただきたいというふうに思います。  発言の内容は、先ほどの質疑の中で出ましたので省略をさせていただきますが、同種の発言が幾つかの新聞にほぼ同じ内容で掲載されていることから、また、先ほど鈴木長官からも御説明があったので、そうした発言が行われたということは間違いのないことでございますし、また、報道によりますと、我が党の神崎代表、冬柴幹事長の言動にかかわるものであるというような感じでの理解をされているものもございますので、この際、質問させていただきたいというふうに思います。  発言の内容あるいは発言の趣旨は先ほど鈴木長官から御説明がありましたが、この報道されている野中官房長官発言について、一般的な理解というか、あるいは報道の解説の中では、この発言というのは、中村法務大臣政治主導司法制度改革を進めようとしていたのに対して、検事弁護士出身の国会議員が、この中には我が党の神崎代表などが念頭にあったというふうに書かれている記事もございます、検事弁護士と連携をとって中村大臣を陥れたかのような趣旨で言われているものがございます。  陣内大臣も、このことについて、こうした背景があったというふうに御認識なのか、その辺、御認識をまず伺いたいというふうに思います。
  78. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 三月八日に野中官房長官が、中村法務大臣辞任背景に、今先生指摘のように、同大臣法制審議会の廃止や司法制度改革を主導したことに対する法務省法曹界の反発があり、その意思を代弁した国会議員動きがあったのではないかといった発言をされたかのような報道がございました。このような報道は、野中官房長官発言の一部を報道したもので、その趣旨を正確に伝えたものではない、このように承知しております。
  79. 上田勇

    上田(勇)委員 ちょっと確認をさせていただきますが、ということは、検事弁護士出身、法曹資格を有する議員法務省の官僚や法曹関係者とはかった上で司法制度改革を阻止しようとしているというような趣旨のような報道もあるんですが、そうした事実はないんだというふうに大臣はお考えであるというふうに、こちらとして考えてよろしいでしょうか。
  80. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 野中官房長官発言についてはただいま御説明したとおりでございますが、私自身のことでどういうふうに考えるかということのようでございますけれども、私といたしましては、詳細を存じ上げておりませんので、先ほど来の鈴木官房長官の説明を聞きながら、官房長官の趣旨が正確に伝わっていなかったのではないか、このように承知したところでございます。
  81. 上田勇

    上田(勇)委員 私は、趣旨が正確に伝わったかどうかということをお聞きしているのではなくて、こうしたことが公の報道に載っている、内閣認識として報道されているということについて、責任ある官房長官がそういう発言をしているということが報道されているわけでありますので、それが事実なのかどうか、事実として、内閣としてそういうふうな認識をお持ちなのかどうか、法務大臣としてどのような認識をお持ちなのかどうかということを伺っているのでありますが、弁護士検事出身の議員がそういう法曹関係者とあたかもはかって司法制度改革を阻止しようとしているというような形で報道されているんですが、そうしたことはあるのか、ないのか、大臣はどのようにお考えなのか、まずそこを伺っているのでございます。     〔委員長退席、橘委員長代理着席〕
  82. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 今お話しのようなことではなくて、国会運営上支障を来すというようなことがありはしないか、こういうような趣旨で官房長官発言されたように私は理解しております。
  83. 上田勇

    上田(勇)委員 先ほど、官房長官発言の趣旨については子細に鈴木長官から御説明あったんですが、そうではなくて、私は、大臣がこの一連の出来事について、報道されているような御認識なのかどうかということでございますが、御認識でないというふうに考えてよろしいんでしょうか。ひとつよろしくお願いいたします。
  84. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 そのような認識はしておりません。
  85. 上田勇

    上田(勇)委員 今も若干言及がありましたけれども、私は、中村大臣辞任に至ります経緯というのは、これは前大臣による不適切な発言とか行動が相次いで指摘をされまして、残念ながらそれに対して納得のいく答えが示されなかったことが端緒になりまして辞任を求められたということが端的に言えばその経緯だというふうに思っております。  それをあたかも、今行政改革のときに大蔵省改革や省庁再編などでよく見られるように、官僚と出身議員や族議員などが組んで行政改革を阻止するような行動と同じような構図でとらえたというのは、やはりこれは問題のすりかえであって、前大臣の適格性、あるいは任命された総理大臣責任の全くすりかえであるというふうに思うわけであります。まして、こうはっきり言われているのかどうかわかりませんが、報道等によるとそういう解説がされております。  公党の党首が法曹関係者の利益を守るために行動をとったかのような誤解を与える発言というのは、到底これは看過できないものでございまして、きょうは直接お話をされた官房長官は御出席でございませんのでこれ以上は申し上げませんけれども、軽率で、ただいま大臣からもあったように、そうした背景といったものは事実でないというふうに陣内大臣は御認識ということでありますので、そういう根拠のない発言ということは厳に慎んでいただきたい。まして、それは我が党の名誉にもかかわることでございますので、厳重に抗議を申し上げまして、一応この問題はこれで終了させていただきたいというふうに思います。  それで、先ほどこれも坂上先生の方から御提起をされた問題の中でございますが、参議院予算委員会で問題となったことで、指揮権発動について、重要な問題の中で、先ほどもお話がよくわからなかった点でございます。  参議院予算委員会の中では、中村大臣は、検察庁法第十四条ただし書きの部分について、直接検事総長を呼んで、あるいは直接話をして指揮することがこのただし書きの部分の趣旨、それに限られるんだというような御趣旨の答弁がございましたが、それに対して事務当局の方からは、大臣の補助職員である法務省の職員を通じて検事総長を指揮することもできるという解釈を述べられまして、これが分かれたというふうに言われているわけでございます。この解釈、二つ異なったものが示されたわけでありますが、陣内大臣はどちらのお立場をとられているのか、そこをひとつ確認をさせていただきたいと思います。
  86. 但木敬一

    ○但木政府委員 その前に、前提問題がございまして、参議院予算委員会で、第一回目は大臣答弁刑事局長答弁が食い違ったように見えるわけでありますが、その後の答弁大臣は、自分としては、指揮権の発動というのは極めて重要なので、自分は検事総長に対して直接指揮権を発動するという形態をとるが、法的には刑事局長その他の法務省職員を代理として指揮権の発動ができるというふうに言えると思うという見解を述べられておりますので、第一回目の答弁とあわせて、結局、最終的には、刑事局長答弁大臣答弁、両者の考えにつきましては食い違いがなかったものと承知しております。
  87. 上田勇

    上田(勇)委員 大臣もそのようなお考えでよろしいんでしょうか。
  88. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 そのとおりでございます。
  89. 上田勇

    上田(勇)委員 この指揮権発動というのは、非常に重要なことでございまして、参議院予算委員会で、今誤解だというふうなことでございましたけれども、大臣認識と事務当局の認識とのずれがあったというような誤解を与えたことは非常にゆゆしきことであると思いますので、このことについては、以後ぜひ御注意をいただきたいというふうに思う次第でございます。  それで、話題が全く変わりますけれども、ひとつ大臣に、国際人権規約、市民的政治的権利に関する国際規約、いわゆる国際人権B規約に関する大臣の御認識について何点か御質問をしたいと思います。  この規約は、七六年に発効、我が国も七八年には署名しているものでございまして、当然それを守る義務があるというふうに理解しております。また、その規約の第二条には規約実施義務が定められております。当然のことながら、我が国も、この規約に認められている権利を尊重し、それを確保することを約束しておりまして、必要な立法措置その他の措置をとることも約束をしているわけでございます。  したがいまして、我が国も各種の施策を実施するに当たってはこの規約を可能な限り尊重しなければならないというふうに私は考えているわけでございますが、法務大臣我が国人権擁護行政の主管大臣でございますので、大臣はこの規約をどのように位置づけられているのか、お考えをまず伺いたいというふうに思います。
  90. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 国連規約人権委員会の最終見解で、我が国政府の各省庁にわたる政策に関しまして、人権の観点から種々の勧告及び懸念を示しております。それぞれ所管する省庁、部局において、最終見解の内容について慎重に検討を行い、規約の趣旨を尊重しつつ、必要に応じて適切に対処されるものと考えております。
  91. 上田勇

    上田(勇)委員 いや、そうじゃなくて、人権行政を行っていく中でこの国際人権規約B規約、これを最大限に尊重していろいろな政策を立てなければいけないというふうに私は思うわけでありますが、その辺、その基本的なお考え方はいかがなのか。もちろん、人権擁護行政については、各省にまたがっていることでございまして、法務大臣だけがお答えできることではないのかもしれませんが、ただ、一元的に人権問題を主管されている法務大臣として、その辺の基本的な御認識、やはりこれは大切なものであるんだというふうに私は考えておるのですけれども、大臣の御見解はいかがでしょうか。
  92. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 先ほども触れましたけれども、この規約については尊重しなければならない、こういうふうに考えております。     〔橘委員長代理退席、委員長着席〕
  93. 上田勇

    上田(勇)委員 先ほど大臣の御答弁にも、昨年十一月のいわゆる人権委員会の最終見解についての御答弁がありましたけれども、これは当然のことながら、今大臣が御答弁いただいたように、国際人権B規約は最大限尊重するということでありますので、その中に定められておりますこの人権委員会による審査、またそれに基づきます最終見解といったものもこれは当然尊重されるべきだというふうに私は考えております。  ところが、この最終見解では、非常に残念なことであるんですが、まず書かれていることというのは、昨年十一月のが第四回の報告になるんですが、第三回報告の検討の後に発せられたその勧告が大部分履行されていないということに遺憾に思うというふうに述べられております。  それで、この人権委員会の最終見解というのは最大限に尊重されなければならないという御認識だったんですが、にもかかわらず、第三回の検討の後に発せられたその勧告が大部分履行されていないことを遺憾に思うというのが第四回に書かれておるんですけれども、その辺について大臣はどのようにお考えでしょうか。
  94. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 この最終見解の中で幾つか大事な項目が指摘されておるわけでございますが、我が国の事情等についての理解が必ずしも十分でない点があるのではないかなという感じもいたしますが、その内容について慎重に検討を行い、規約の趣旨を尊重して、必要に応じて適切に対処してまいりたいと考えております。
  95. 上田勇

    上田(勇)委員 もちろん、それぞれの国がそれぞれの事情があって、必ずしも一遍にこの人権委員会の言うような措置が講じられないというのは当然許されることだというふうに私も思います。  ただ、要は、基本的な姿勢として、これに合わせるように努力をしていくのか、それとも、いや、うちは全く事情が違うので、理解してもらっていないのでそれはもうどうでもいいんだ、我が国政府考えに合うことだけをやればいいんだというようなお考えなのか、その辺をもうちょっと御丁寧に御説明いただければというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。
  96. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 繰り返しになりますけれども、規約の趣旨を尊重しつつ適切に対応してまいりたいということでございますが、我が国社会制度や家族のあり方等々いろいろな各般にわたって重要な問題も含まれておりますので、広く国民の論議を踏まえながらこういうものについての対処が必要である、このように考えております。
  97. 上田勇

    上田(勇)委員 それでは、この中の各論について二、三ちょっとお尋ねをしたいというふうに思うんです。この最終見解の中で、実は、今国会に提出されている法案やあるいは大変な議論になっている事柄についても幾つか述べられておりますので、それについてちょっとお尋ねをいたしますが、この中で、実は、今国会に提出されております外国人登録法について言及がされております。  これは、第三回の報告の検討のときにも同じような問題の指摘があるんですが、今回の提出された法案というのは、いわゆる指紋押捺制度の全廃等一定の前進はあるというふうに私も理解はしておりますけれども、この最終見解の勧告の中にはその他いろいろなことも含まれておりますが、残念ながら、今回提出された法案にはそれが全然反映されていないというのが実態でございます。  この外国人登録法のさらなる改善については、私の方にも、外国人登録制度の改善に関する要望書ということで、政令指定都市の各市長さん方からも連名での要望が来ております。また、大阪府知事初め、府の市長、町村長の方々からも連名で要望が来ている。つまり、地方自治体の方々も、かなり共通してこの問題改善をお願いしているわけでございます。  にもかかわらず、今回提案されて審議に付されるだろう法案はそれに対応できていないということは、これも、何か国連の言うことも余り聞く耳を持たず、地方自治体の言うことも聞く耳を持たず、甚だ遺憾だと思うんです。こうした事情を踏まえますと、今回提出されている法案はぜひ再考をお願いしたいというふうに思います。この外国人登録法の一部改正案、再考をお願いしたい、するべきであるというふうに私は考えますけれども、その辺について、こうした国際的な要請であるとかまた地方自治体からの強い要望なども踏まえた上で、大臣のお考えをぜひお伺いさせていただきたいというふうに思います。
  98. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 今回、国会に提出し御審議をお願いすることとしております外国人登録法の一部を改正する法律案は、先生指摘のように、指紋押捺を全面的に廃止することとしております。この法案に含まれていない事項につきましてはさまざまな意見がございますので、そのことも、今の陳情その他のことも承知しております。したがって、その運用において十分な配慮をし適切に対処したいと考えておりますので、どうか御理解を賜りたいと思います。
  99. 上田勇

    上田(勇)委員 今私の方からは、国連人権委員会の方からの意見、そして地方自治体の、これは別に任意の団体の方々ではなくて、全国の大都市の市長さんの連名で要望が出ているということなのでそういうお話をさせていただいたんですが、今さまざまな意見があるというふうにもおっしゃいました。  私の方からはそういう意味では論拠のある意見を述べさせていただいたので、ぜひ大臣の方から、そのさまざまな意見というのはどういうお立場の方がどういう御意見を持っているのか、それは大臣はどういうふうにお伝えされているのか、ぜひお聞かせをいただきたいというふうに思います。
  100. 竹中繁雄

    ○竹中(繁)政府委員 この外登法の改正につきましては、平成四年の指紋押捺の一部廃止、それを決めた際の衆参両方の法務委員会から附帯決議がございまして、五年を過ぎた後のできるだけ早い機会にこれをさらに検討しろというのをいただいております。それを踏まえまして、私どもは、各界の皆様から順番に会議をやりまして御意見を承っております。それで、外国人の方、日本の方、学者の方、弁護士の方、そういう方々からいろいろな意見を聴取したということでございます。
  101. 上田勇

    上田(勇)委員 今回の法案についてもっと改善すべきだというのは、具体的に、なおかつ明文化された意見が示されているわけですね。それに対してさまざまな意見があると言ったのに、今の言い方というのは非常に抽象的でわかりにくい。もっと具体的に、だれがどういう意見を言っているのかとちゃんと示す義務があるんじゃないでしょうか。
  102. 竹中繁雄

    ○竹中(繁)政府委員 先ほど私申しました勉強会につきましては、皆さんの意見を自由に出していただくということで、外に特にお名前はお出ししないという前提でお聞きしているものですから、名前等を出すのは差し控えさせていただきたいと思います。
  103. 上田勇

    上田(勇)委員 ということは、さまざまな意見とはいっても、どういう意見があったかも言えない。なおかつ、一方では、いろいろなところからのむしろはっきりとした要請としては、今回提出された法案では不十分だということが出されているのですね。それに対して、いや、それに対してはいろいろな意見がありまして、だれが言ったかも、何を言ったかも申し上げられませんというのでは、まさにそれは、国民の声も全く聞かない、地方の声も全く聞かない、国連の意見も全く聞かない、法務省の行政が非常に独善的だというふうに思われますけれども、その点について、大臣、御認識はいかがですか。
  104. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 大変重要な問題でございます。広く各界各層の意見を踏まえながら検討していかなければならない、このように感じております。
  105. 上田勇

    上田(勇)委員 今のは、では、今回の法案は再検討の上再提出していただけるというふうに理解してよろしいのですか。
  106. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 ただいま申し上げましたのは、今後の課題としてということでございますので、今回の法案については十分審議していただき、早急に了承していただくように心からお願い申し上げる次第でございます。
  107. 上田勇

    上田(勇)委員 何か、今の一連の答弁を聞きますと、不十分なんだけれどもとりあえず出したので何とか通してほしいというような言い方にしか聞こえないのですが、そんな法案はちょっと審議に値しないというふうに思いますけれども。  これだけ各界の意見というのは、表に出ている意見もあるわけですね。当然反対の意見もあるのでしょう、それは私は直接は承知しておりませんけれども、さまざまな意見があるというふうに大臣がおっしゃいました。ただし、これは御紹介できないという事務局からのことなので、何かそれではちょっと、国民の代表として国会審議するのに、そういうようなことを言われると、とても審議に値しないというふうにしか申し上げられないのですけれども、その辺はどうなんですか。  もう既に閣議決定の上で法案が出されていることでございますし、これは参議院先議で法案審議されるということなので、法案審議の中でそういうことが出てくる、議論されることだというふうには思いますけれども、今大臣の方からも検討するということでありましたし、まだ法案審議が実際始まっていないものですから、そういうことであれば、ぜひ法案審議が始まる前に検討していただければというふうに思いますけれども、その辺はいかがなんでしょうか。
  108. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 今回の法案につきましては、十分審議、検討した上での法案提出でございます。これにつきましては、ぜひ審議を十分行った上で法案成立に御協力を賜りたい、こういうことでございまして、その他のものについても、この法案に含まれていない事項につきましてはさまざまな御意見があるということから、今後十分それらを踏まえながら対応していかなければならないと思っておりますが、その運用において、当面十分な配慮をし、適切に対処、対応していきたい、このように考えております。
  109. 上田勇

    上田(勇)委員 もう時間が来ましたので、最後にあれですが、国連人権委員会からの最終見解の中に、そのほかにも、例えば出入国管理の問題であるとか、それから民法関連のことなどについてもコメントが出されているのも、これも全然対応できていないのですね。  ということを考えると、冒頭大臣は、この人権委員会の最終見解を最大限尊重するというふうにおっしゃいながら、実際にはそれとは違うことをやっているということなので、これはぜひ、国のいろいろな事情が十分理解されていないというようなお話もございましたけれども、もう少し尊重するように御検討をお願いいたしまして、それぞれの法案審議がされる際に、またこの問題について議論をさせていただきたいというふうに思います。  それから、きょうは犯罪被害者救済支援対策についても御質問の予定で、警察庁にもお見えいただいているのですが、ちょっと時間がなくなりましたので、また別のときにお聞きしたいと思いますので、どうもありがとうございました。  では、以上で終わります。
  110. 杉浦正健

    杉浦委員長 漆原良夫君。
  111. 漆原良夫

    ○漆原委員 公明党・改革クラブの漆原でございます。  中村法務大臣が憲法発言問題などで辞任されたことはまことに残念なことでありますが、新法務大臣に御就任されました陣内法務大臣の御感想を、まずお聞きしたいと思います。
  112. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 急速に変化する社会経済情勢のもと、第三の改革の時期を迎えている、こういう我が国において、法務行政に関しても困難な課題が山積しておりまして、その解決が急がれておると考えております。このような時期に法務行政を担当することとなりまして、その責任の大きさを痛感している次第でございます。  私は、改革時代にあって、法秩序維持国民権利の保全、こういう法務行政に課せられた基本的な使命を十分に果たすために、法務行政のすべての分野につき意欲的に適宜適切に方策をとるように、新しい時代の要請にこたえてまいりたいと考えております。
  113. 漆原良夫

    ○漆原委員 私が当選させてもらってから、陣内法務大臣は実は四代目の法務大臣、こうなりますが、私の大変短い経験からいって、積極的に自分の意見を話される大臣と、あるいは比較的必要最小限度のことしかしゃべらないという法務大臣がおられました。  日本国憲法の施行後、まさに五十年を経過した現在、日本の法制度は、今大臣がおっしゃったように、抜本的に制度を変えよう、そういう大変大きな課題に直面しているわけでございます。このような時期にその事業を遂行する法務大臣は、積極的にみずからの意見を開陳し、国民理解を求めて、そして国民的合意を形成していかなければならない、そんなふうに考えております。  私は、比較的大胆に意見を述べられた中村法務大臣の後に御就任された陣内法務大臣は、できるだけしゃべらない法務大臣になってしまうのではないかという心配をしながら、実は、きょうずっと答弁をお聞きしておりました。どうか、司法改革にかける大臣の情熱を積極的に語りかけていただいて、自身の信念を国民の前に開陳していただく、そんな積極的な情熱を持った大臣であるということを心からまず望んでおきたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  114. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 国民が身近に利用できるような、社会の法的ニーズに的確にこたえるような、こういう司法制度あり方というのがこれから必要であると思います。そういう中で、今委員の御指摘になりましたような努力を精いっぱい努めてまいりたいと思います。
  115. 漆原良夫

    ○漆原委員 総理大臣も、所信表明でこうおっしゃっています。「すべての人々の人権が最大限に尊重される社会の実現に努力するとともに、より国民に身近な司法制度の構築にも取り組んでまいりたいと思います。」人権の擁護と司法制度改革の必要性について、総理は述べられております。また、中村法務大臣所信でも、「改めて国民の視点に立って、何が国民の利益にかなうかを十分念頭に置いて改革していくことが不可欠である」というふうに、司法制度改革の視点というべきものを述べておられました。  今回、新法務大臣所信には、この司法改革にかける視点というべきものが欠落しているように思いますが、中村法務大臣と思いを異にするのかどうか、いかがでございましょうか。
  116. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 二十一世紀我が国社会においては、社会が複雑高度化する、そしてまた国際化が進む、そういう状況のもとで規制緩和が進んでいく、自己責任を求められる、こういう社会であればあるほど、私は、司法行政の果たすべき役割が非常に重要になってきていると思うわけでございます。  そういう中で、安定した法秩序維持するということも大事でございますが、司法行政そのものも時代の要請に応じて変わっていく必要があろうかと思います。そういうことで、この司法行政が、国民の視点に立って、国民が身近に利用できるようにする、こういうことが大事だと思っておりまして、中村大臣のお考えを大変敬重して続けてまいりたいと思っております。
  117. 漆原良夫

    ○漆原委員 中村法務大臣と同じ視点に立った司法改革を進めていくということでお聞きしておきます。  そこで、司法改革につきまして、大臣は、時代変化に即応し、国民ニーズにこたえられる司法改革というふうに所信でお述べでございますが、現在の司法に対してどのような問題点、どのような御認識を持っておられるのか、具体的にお示しいただきたいと思います。
  118. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 ただいまも触れましたけれども、社会を取り巻く環境、これは国の内外からの環境が大変変化してきておる、そういうことでございますので、その中で、国民権利や利益がしっかり守られるようにしていくべきであると思っております。  そこで、これからの二十一世紀へ向けての司法制度あり方がいかにあるべきか、このことが今問われておると思いますので、それへ向けて、政府としては、内閣司法制度改革審議会を設置するための法案をこの通常国会に提出したところでありますので、この中で十分論議をいただいて、将来のあるべき司法制度の基盤の確立あるいは改革の方向、こういうものを示していただきたい、私どもとしましても、この審議が十分に行われるようにサポートしていきたい、このように考えております。
  119. 漆原良夫

    ○漆原委員 抽象的でよくわからないんですが、具体的に大臣はどんなことを、今の司法制度でどの部分が不備で、将来どんなことをやりたいんだ、どんなふうにすべきだ、何点かお持ちだと思いますが、もう少し具体的に述べていただけないでしょうか。
  120. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 今御指摘の点につきましては、司法制度改革審議会審議にまちたいと思いますけれども、私としては、裁判がより迅速化していくようなことが大事だろうと思いますし、そのためには裁判官を初め法曹人口がふえなければならない、また、司法への国民の参加、これは陪審とか参審とかいろいろありますが、そういうようなものもひとつ頭に置きながら、改革へ向かって進んでいくべきではなかろうかと思います。
  121. 漆原良夫

    ○漆原委員 ありがとうございました。  次に、少年法の改正について法務大臣所信で触れておられますので、少しお尋ねしておきます。  少年法の、特に年齢の引き下げ問題につきまして、私は、かつて中村法務大臣に、これは法制審議会に諮問すべきであるというふうな意見を申し上げたことがあります。私の意見に対して、中村法務大臣はこう答えておられました。「私が私に諮問をして、私の部下の職員に、学識経験者の人が入った法制審議会審議するよりか、多くの国民の方の意見をくみ上げようとするなら、」中略しますが、「国民の代表の方が、御専門家の意見を聞いていろいろ審議してくださるのが私はいいんじゃないかという判断をしているわけでありまして、そういう意味で、国民の代表たる国会に御論議をまずお願いしている、」と答弁されて、少年の年齢引き下げ問題については法制審議会に諮問をしない旨の意見を述べておられます。  この問題に対する法務大臣の御見解をお尋ねしたいと思います。
  122. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 いわゆる少年の年齢問題、これは国民の生活に密接に関連する大変重要な問題でありますので、慎重な検討が必要となります。この問題を法制審議会に諮問するかどうかについては、したがって、各方面からの御意見などを踏まえて考えてまいりたいと存じております。
  123. 漆原良夫

    ○漆原委員 法制審議会の少年法部会部会長の松尾さんという方がこうおっしゃっております。年齢問題は慎重に検討すべきだ、法制審の果たしてきた役割は大きい、専門家の意見を集めて原案をつくる必要がある、こんなふうな意見を述べられて、ぜひ法制審で審議をすべきだという意見を述べられておりますが、私も、こういう少年法という基本法にかかわる問題については、やはり広く専門家の意見をまず聞くべきではないのかな。まず政治家が先なんだという理屈もわかるんですが、しかし、専門的な法律問題でございますから、感情に流されたり時流に流されたりしてはならない。広く専門家の意見をまず聞いた上で、国会議員が、国会が判断していくということの方が私はあるべき姿ではないのかなと思います。  慎重に検討されるというふうにおっしゃいましたが、自民党の方から場合によっては議員立法でこの問題が上がってくることも予想されるわけでございますが、その際、法務大臣はどうされますか。
  124. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 これにつきましては、各方面からの御意見なども踏まえて対処すべきであると考えております。国会の方でお取り組みになるということであれば、それは国会のことだと私は承知しております。
  125. 漆原良夫

    ○漆原委員 ぜひこれは、法務大臣としては法制審にかけていただきたいということを強く私は望んでおきたいと思います。  前法務大臣は、そもそもこの法制審議会についてこのように言っておられます。  「私は、広い国民の意見を代表するのは国会だ、」「こういう審議会のあり方ですが、法制審議会に限らず、与野党御論議をして行政改革の方向で進んでおりますが、今度できました省庁再編法案の中で、この手の審議会を廃止するということが決まっているわけです。」「また、こういったものをやることが、何と申しますか、業者だとか専門家等の方が集まって立法作業をしてしまって、行政の隠れみのになって、そして国民に行政なり国会をわかりにくいものとする」と答弁をしておられます。そして、法制審議会廃止の方向性を述べておられますが、このお考えに対する法務大臣のお考えを聞きたいと思います。
  126. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 法制審議会は、法務大臣の諮問に応じて、国民生活に重大な影響を与えることとなる民事法、刑事法その他法務に関する基本的な事項について審議を行うものでございます。先般決定されました中央省庁改革推進本部の中央省庁等改革に係る大綱においては、法制審議会は、基本的な政策の企画立案に関する事項を審議するものとして、存置されることになっております。中央省庁等改革基本法行政改革会議最終報告やこの大綱等を踏まえまして、そのあり方について改善を進めてまいりたいと考えております。
  127. 漆原良夫

    ○漆原委員 法務大臣所信の中で、少年法改正についてこう言っておられます。事実認定手続の一層の適正化を図るために少年法等を一部改正したい、こう述べておられますが、そのための措置として、今回は裁定合議制度導入だとか、あるいは検察官の関与、そして検察官に抗告権を与える、こういう規定を設けておるわけでございます。  しかし、刑事訴訟法で被告人の人権を擁護するために認められております予断排除の原則、また伝聞法則等の厳格な証拠法則が今回の改正では一切採用されておりません。この辺は大臣はどのように考えておられるのでしょうか。
  128. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 少年審判において、的確に非行事実が認定され事実が解明されることは、非行のある少年に適切な保護処分を施す上で大変重要なことであり、そのことによって健全な育成を図るという少年法本来の目的が実現できるというふうに考えております。一方、非行のない少年について、これを誤って処分することがないようにし、かつ、その判断が国民信頼を持って受け入られるようにすることが、裁判制度あり方からも、またその少年の利益のためにも肝要であります。  このようなことから、少年審判における事実認定手続を一層適正化するため、今回、少年法等の一部を改正する法案国会に提出したところでございます。  少年審判においては、家庭裁判所が、関係するすべての証拠を検討、吟味して事実を認定し、少年にとって最も適当な処遇を決定する職権主義的審問構造、これがとられております。これは、真に非行のない少年は速やかに手続から解放し、真に非行のある少年に対しては早期に必要な保護を与えるという少年法の趣旨に適合するものでありますが、裁判官がいわば白紙の状態で当事者による立証を待つという、刑事裁判でのいわゆる予断排除、伝聞証拠排除という方式では審理の長期化が避けられないというふうに考えて、適当ではないと存じております。
  129. 漆原良夫

    ○漆原委員 多分そういう御説明になろうかと思うんですが、私は、その結果、審判される少年の法的地位が改正前よりもかえって不安定になるんじゃないか、かえって不利益になるんじゃないか、こういうふうに考えております。  改正前は、検察官の関与だとか、あるいは事実認定に関する検察官の抗告なんてことはなかったわけでありますけれども、一方でそういうものを認めておきながら、一方で今度は少年の防御権ということが全く考慮されていない。本来ならば、刑事訴訟法においては、検察官の主張、そして弁護人の弁護、そして証拠法則の適用、これによって武器平等といいますか、そういう公平な立場で審理して真実が発見されていく、こういう構造になっておるわけですけれども、少年法に限っては、防御方法として一番重要な証拠法則が一切適用されない。これは非常に片手落ちではないかな、今までよりもかえって少年が不利益になっているんじゃないかなという心配がありますが、この辺はいかがでしょうか。
  130. 松尾邦弘

    ○松尾政府委員 先生今御指摘の点につきましても、法制審議会の少年法部会でいろいろ議論がされたところであります。  今回の少年法の一部改正は、先ほど大臣答弁中でも触れられておりますが、職権主義的審問構造という、いわば少年法の骨格が、国親思想といいますか、少年の健全育成、保護ということを土台にしております少年法の基本構造、これ自体は維持しながら、必要な事実認定の適正化を図るという点での改正でございます。  したがいまして、職権主義的審問構造、つまり一件記録について裁判官がこれを見まして必要な処置を講じる。今回の法改正は、その中で事実認定の適正化を図るために、審判の主宰者である裁判官のいわば補助者としてといいますか、お手伝いといいますか、そういうことで検察官がこれに関与する。そういった場合には当然、少年の方にも付添人がつく。ついていない場合は国選で付添人をつけてその審判を行うということでございまして、そういう構造の中での改正でございます。  今大臣からも申し上げましたように、伝聞証拠の問題等、いろいろ刑事的にはございますが、そうした点の導入については、やはりそういう基本構造そのものに抵触するということもございますと同時に、もう一つ、そういう制度導入するとどうしても審理が長期化する。そうなりますと、迅速に少年の保護を与えるという少年法の建前にもそごすることになるだろうということで、そういう制度はとらなかったということでございます。
  131. 漆原良夫

    ○漆原委員 今おっしゃったように、裁判官のお手伝いをするという、これはお手伝いをするという内容ではないんじゃないかな。検察官に抗告権を認めるということ、これは非常に、ある意味では裁判官の判断がもちろん慎重にならざるを得ないし、裁判官が検察官の存在を非常に意識して裁判せざるを得なくなる。また、抗告されれば当然審理も長引いていく、こういうことになるわけでして、本当に検察官が常駐していて、立ち会っていて、それでお手伝いと言えるのかな、お手伝いの度が過ぎているんじゃないかなという実感を持っております。  先ほど法務大臣は非常にいいことを言われました。被告人にとっても、少年にとっても、誤った裁判、判決をされないように、また、本当の事実を見逃さないようにという、まさに私は、事実認定の手続の適正化という場合には二つの意味が確かにあると思うんですね。  一つは、今法務大臣おっしゃったように、悪いことをした少年を逃がさないというこの側面。きちっと事実を把握して適正な処分をしていく、こういう観点からの事実認定の適正化があると思います。もう一つは、少年の方から見て間違った審判をされない、こういう意味もあると思うんですね。  そうすると、この事実認定の適正化という言葉には、実は相反する二つの意味が込められておるわけでありまして、一方では犯人を逃さないという方向性と、一方では間違って犯人にされないという、二つの相反する理念が含まれておるわけでありまして、今回の少年法の改正を私は見ていきますと、どうも悪いことをした少年を逃がさないという方向に重きが置かれ過ぎていて、少年が事実やっていないことをやったというふうに間違って認定されないための措置が欠けているんじゃないかという印象を強く持つんですが、この点、大臣いかがでございましょうか。
  132. 松尾邦弘

    ○松尾政府委員 今お尋ねの点でございますが、事実認定の適正化というのは確かに両面持っております。一面では、非行を犯した少年に対して事実をきちっと認定した上でそれをよく自覚させて処分を行う。これがまた非行を犯した少年に対する健全育成でも、前提として大変重要なことだと思いますし、他方で、非行に関与していない少年については速やかにそれを認定して解放するという面もございます。やはり事実認定の適正化ということはその両面を持っておりまして、これの整備を図るということが、一概に厳罰化あるいは手続の厳正化といいますか、そういったことは必ずしも意味しないというふうに我々としては理解しております。
  133. 漆原良夫

    ○漆原委員 その問題はまた別な機会に議論したいと思っております。  次に、組織的な犯罪に対処するための三法案ということで、大臣は速やかな成立をということで所信で述べておられますが、特に犯罪捜査のための通信傍受に関する法律案、これは今、俗に盗聴法案なんという悪名をつけられて、大変評判の悪い法律案になっておりますが、憲法二十一条の二項では通信の秘密の不可侵を保障しております。我々は、電話なんかする場合でも、安心して、心を許して何でも自由にしゃべっておるわけでございますけれども、万一これがだれかに聞かれているんじゃないのかなという不安を持った場合には、非常に慎重にならざるを得ない、こう思います。  したがって、通信の秘密の不可侵というのは、思想の自由だとか表現の自由なんかと一緒になって日本の健全な民主主義社会の形成に大きく寄与しているものだ、また、民主主義の発展に欠くことのできない重要な権利だというふうに私は認識しておるんですが、法務大臣の御見解はいかがでしょうか。
  134. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 そのような認識のもとに立って、この通信傍受法案においては、対象犯罪や期間を限定し、かつ犯罪の嫌疑が十分な場合で、他の捜査方法では捜査が著しく困難なときに限って通信傍受を行えることとするなど、傍受の要件を厳格に定めることなどにより、通信の秘密の制約を必要最小限の範囲に限定しているものと考えております。
  135. 漆原良夫

    ○漆原委員 本法案では、通信傍受の対象となる犯罪が広く一般的な犯罪にまで拡張されて、いわゆる通信傍受に関する基本法と言われるほど広くなっております。  この通信の傍受は、今申しましたように、また大臣が申されましたように、通信の秘密、言論、表現の自由と厳しい緊張関係をもたらすものでございますが、仮に捜査の必要上これが認められるとしても、通信の秘密の保障に対する例外として、私は、必要にして最小限度の措置として限定されるべきだと思っております。  また、実際、法制審議会刑事法部会の中でも、捜査上の必要性として通信傍受の必要性が強調されたのは薬物・麻薬事犯だけであったと聞いております。  そんな観点から、この際、大幅にこの法案を修正して、限定的に罪種を限って、例えば麻薬・薬物犯とか、あるいは銃器だとか、そういう犯罪に限って今回例外的な措置として通信傍受を認めるというふうな、大幅な修正をするということを、大臣、お考えになられたらいかがでございましょうか。
  136. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 この通信傍受法案においては、傍受の対象とすることができる犯罪を限定し、組織的な犯罪として行われることが多い、あるいは組織的に行われることが現実に想定されるものを選択したものでございます。  また、数人の共謀によるものと疑うに足りる状況という要件や、「他の方法によっては、犯人を特定し、又は犯行の状況若しくは内容を明らかにすることが著しく困難である」ことという要件を定めていることなどから、およそ組織的な犯罪とは言えないような広範な犯罪について傍受が行われるおそれはないものと考えております。  また、傍受の必要性は犯罪の種類のみによって類型的に決まるものではなくて、本法案においては、「他の方法によっては、犯人を特定し、又は犯行の状況若しくは内容を明らかにすることが著しく困難である」ことを要件としておりまして、個別の事案において必要やむを得ない場合に限定することといたしております。
  137. 漆原良夫

    ○漆原委員 本法案では、もう一つ大事なことは、犯罪発生前の通信傍受が認められております。現在の刑事訴訟法は、捜査というのは犯罪発生後に開始されるというのを大原則にしておりますが、犯罪発生前の通信傍受を認めることは、この現在の刑事訴訟法の大きな原則を崩すことになってしまわないかという問題があります。  また、そういう発生前の通信傍受を認めることは、予防的な通信の傍受を認めることになりまして、行政警察活動と司法警察活動の法的境界があいまいになってしまって、ひいては警察権限の濫用につながるおそれがあるというふうに私は心配しておりますが、この点に関する大臣の御意見を聞きたいと思います。
  138. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 通信傍受法案は、既に犯罪が行われ、それと密接に関連する犯罪行為が近接して行われることについての十分な嫌疑がある場合に、これら一連の犯罪行為を全体として傍受の対象とすることができるものとするものでありまして、起こるかどうかわからない将来の犯罪について捜査を行うものではございません。現行法の捜査の枠組みを超えるものではないと考えております。
  139. 漆原良夫

    ○漆原委員 反論はあえてしないことにして、最後の質問に移ります。  本法案では、厳格な違法収集証拠の排除が適用されておりません。捜査機関による捜査には、捜査機関がそれを意図するとを問わず、必ず、その性格上、暴走の危険性をはらんでおります。そしてまた、国民の中にはそのような捜査機関に対する抜きがたい不信感があることも事実であります。  私は、捜査機関の暴走を防ぎ、国民の基本的な人権に対する侵害を防ぐ最も有効な方法というのは、これはいろいろな法律で要件を課していくというやり方よりも、むしろ違法収集証拠の原則を厳格に適用して、その証拠収集に違法性があったならばどんなに有益な証拠であっても一切証拠としては使えないんだというくらいの厳しい措置をした方が、一番通信傍受に関する暴走を防ぐ方法になると思いますが、大臣はいかがでございましょうか。
  140. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 違法収集証拠排除に関しましては、最高裁の判例により、「証拠物の押収等の手続に、憲法三五条及びこれを受けた刑訴法二一八条一項等の」「精神を没却するような重大な違法があり、これを証拠として許容することが、将来における違法な捜査の抑制の見地からして相当でないと認められる場合においては、その証拠能力は否定されるものと解すべきである。」とされております。  通信の傍受に関しても、当然この一般原則が適用されるべきものと考えております。
  141. 漆原良夫

    ○漆原委員 そういう最高裁の判例があることも存じ上げております。しかし、憲法で保障されている、大臣もおっしゃった、通信の秘密に関する例外として今回通信傍受という新しい制度を設けるという御趣旨であるならば、今回は、通常の判例以外の、積み重ね以外の、新しい法案をつくるわけですから、この通信傍受法案については厳しい違法収集証拠排除を適用すべきだということを申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  142. 杉浦正健

    杉浦委員長 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時十八分休憩      ――――◇―――――     午後一時三十分開議
  143. 杉浦正健

    杉浦委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。木島日出夫君。
  144. 木島日出夫

    ○木島委員 日本共産党の木島日出夫でございます。  陣内法務大臣就任後初めての所信表明であり、質疑でございます。大臣におかれましては、恐らく突然の法務大臣就任、異例の時期の就任であったかと思います。ですから、きょう私は、法務行政の細かい問題について余り立ち入ることはしないで、法務行政の基本的な問題についての大臣認識を伺いたい。しかも、法務大臣という大変大事な責務を担う一政治家としての基本的な認識を伺うという立場質問をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いをしたいと思います。  最初でありますが、今回の就任が、定例の内閣改造ではない特別の、前大臣辞任を受けての就任ということでありました。まず、大臣中村法務大臣の今回の辞任というものをどのように受けとめているのか。一政治家としてでも結構です。事態のてんまつは御存じかと思います。どう受けとめているのか。そして、いろいろな教訓も酌み取っておられるのじゃないかと思いますので、この一連の問題と辞任というものをどう今後の法務大臣としての職責遂行に生かしていくつもりなのか。今回のてんまつについての基本的な大臣の御所見というものをまずお伺いしたいと思うのです。
  145. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 中村大臣は、御自身の言動により国会運営に支障を来していることの責任をとると申されて辞任されたものであります。大変残念でございます。閣僚の進退の一つのあり方を示されたものであると思っております。  私といたしましては、法務行政は、法秩序維持国民権利の保全という、法治国家において最も基本的で重要な事柄を使命としております。この使命を的確に果たすべく、厳正、公平を旨とし、全力を尽くして法務大臣としての職責を果たしたいと考えております。
  146. 木島日出夫

    ○木島委員 大臣認識は、中村大臣言動国会運営に支障を来した、それゆえ辞任したという認識のようでありますが、それではもうちょっと突っ込んで、なぜ国会運営に支障が起きたのか、その辺の突っ込んだ認識大臣はどう見ておられるかお聞きしたいと思うのです。
  147. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 新聞報道等、あるいはまた国会で幾つかの点について論議が行われたことはよく存じております。それぞれの問題について、私としては、国民信頼にこたえるべき政治家としてこれから心にしっかりと刻み込んで努力してまいりたいと思っております。
  148. 木島日出夫

    ○木島委員 既に午前中から同僚委員質問も積み上げられておりますので、細かいことは立ち入ることはいたしませんけれども、大きな問題としては、憲法にかかわる発言が取り上げられた。そしてまた、法務行政内部の問題を見れば、大臣と部下の法務省の幹部職員との関係、検察指揮権の問題や入管の問題等々が取り上げられた。そしてまた、法務行政にかかわる最大の分野である法曹三者の一員である弁護士会、弁護士活動とのかかわりの発言が批判された。大きくこういう点が世論の大きな指弾も受け、また国会の衆参両院の法務委員会の中でも問題にされ、それが結果的には国会運営が潤滑に進まなかった、そういう認識は今大臣は持たれておるとお聞きしてよろしいですね。中身について細かくは入りません。そういう問題があって今日の事態に至った、そういう認識はあるとお聞きしてよろしいですか。
  149. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 個々の問題についての事実は私は存じておりませんけれども、今お話しになりましたようなことを重く受けとめて、私なりに反省してこれから取り組んでいくべきだ、こういうことの認識を持っております。
  150. 木島日出夫

    ○木島委員 決して新大臣が反省することはないと思うので、反省すべきは前大臣であったと思うのです。ただ、そういう一連の事態をしっかり認識をし、踏まえ、そして同じような轍を踏まないように、そういう立場で今後の法務行政をやるべきだし、やっていただきたいと私は考えているわけでありまして、その点だけ申し上げておきたいと思います。  大臣所信を読ませていただきました。先ほどお聞きもいたしました。法務行政の基本的使命をどう心得ておられるのか、今何が法務行政において最重要課題になっているのかという基本的な認識をお伺いしたいと思うのです。  大臣所信で、「法務行政に課せられた使命は、法秩序維持国民権利の保全」にある、二つの点を指摘されました。私が聞いておりまして一番不満に思ったのは、この所信の中に、基本的人権をしっかり擁護するという言葉が入っていないということなんです。国民権利の保全というその言葉の中に、基本的人権の擁護という法務行政の一つの柱、法務大臣の一つの大きな職責が含まれているんだということなのかもしれませんが、一般的に言いますと、国民権利の保全といいますと、財産権等の保全のように言葉としては聞こえるわけでありまして、やはりさらに格調高い基本的人権の擁護、これが法秩序維持と並んで法務行政の二つの根幹であると言ってほしかったなというふうに思うわけであります。  こういうことを私が言うのは、実は三月十八日、昨日ですか、法務省からいただいた文書に、大臣就任されて、直後に新聞記者等と記者会見をやられた、記者から質問を受けたときに、総理から法務大臣がいただいた指示が書かれているんですね。ちょっと読みますと、記者会見法務大臣は「総理から、「法務省法秩序維持・確保することを任務とし、人権問題の要となる役所であり、また参議院では予算審議の大事な局面を迎えている上、重要法案も多い国会であるから、万全を期せ」という指示があった。」こう書かれたものが私の手元に来ておりますので、総理は、人権問題のかなめとなる役所が法務省なんだという認識法務大臣に伝えられたというふうにうかがえたのですね。それなら、このきょうの所信に基本的人権の擁護という言葉を入れてほしかったなと思うのですが、ひとつ御答弁いただきたい。
  151. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 法務大臣就任に当たりまして、総理から、先生指摘の人権問題のかなめとなる役所であり、しっかりと取り組むように、万全を期すように、こういう指示がございました。それを受けて記者会見でも、私の考えもそのとおりだという意味でお伝えしたところでございまして、今回の所信の中に具体的な文言としては挙げておりませんけれども、国民権利の保全という中で、これが最も大事な問題であるというふうに認識しながらああいう表現をとらせていただいたので、御理解を賜りたいと思います。
  152. 木島日出夫

    ○木島委員 私は前回、実は前中村法務大臣所信に対する質疑におきましても、やはり法務省の一つの大きな職務として基本的人権の擁護があるという立場から、日本の人権状況が国際的視野から見てどんな水準にあるのかということを問題提起をいたしまして、それが一番端的に反映される問題として、先ほども同僚委員から指摘がありましたが、国際人権規約というのがある。A規約、B規約がある。自由権に関するB規約は日本も批准しておる。  そこで、毎回日本政府から、この国連人権委員会に日本の人権状況についての報告書が行っている。それに対して、人権委員会では審議が行われて、問題がある部分については勧告という形で意見書が日本政府に寄せられる、そういう仕組みになっているわけであります。その寄せられた勧告、去年寄せられているのが第四回目の政府報告に関する勧告なのですが、幾つかの問題を指摘をいたしまして、やはりこれは勧告をしっかり受けとめて、是正すべきは是正すべきではないかという点で、実は前大臣に幾つか質疑をしたわけでありますが、繰り返しません。  ただ、その中で、まず一つは、昨年勧告を受けた中に、民法改正問題、選択的夫婦別姓の導入の問題、それと相続問題でありますが、非嫡出子の相続差別解消の問題、これがやはりまた指摘されているのですよね。  これは新法務大臣、御存じかと思うのですが、この問題については、法務省としては一定の決着がついている問題だと思うのです。それは、法制審議会が、一昨年ですか、既にしっかりした立派な答申を出しておりまして、選択的夫婦別姓、非嫡出子の相続差別解消、こういう法制審答申が出ているのですよ。今国民の多くは、せっかく国連の勧告もあり、法制審議会も答申をしている、ですから、これを受けて、一日も早く法務省法案をしたためて国会に提出すべきだ、していただきたいという要求が非常に高まっているのですが、それがいまだに出てこない、そういう状況なのです。  そういう状況のもとで、これは法制審答申まで出ておりますから、そういうことも踏まえて、国会サイドでは、これは野党レベルでありますが、超党派的に論議を踏まえて、今国会にも、この民法改正法案が前国会から出され、継続審議となってかかっている、そんな状況なのです。  国会議員としての役割でありますから、野党各党の議員と一緒になって、私もその提案者の一員になっているわけなのですが、本当ならば、法制審まで答申ができているのですから、ぜひ与党も説得してもらって、法務省から閣法として、この二テーマに関する民法改正法案が出てしかるべきではないか。そうすれば、ぎくしゃくしないで与野党間での理事協議を踏まえて、速やかにこの法案成立するのではないかと思うのですが、残念ながら、そういう状況がつくられていないのですね。やはりそういう中には、法務省がどうもサボタージュしているのではないかと思わざるを得ないのですよ。  この問題についての新大臣の御所見と、選択的夫婦別姓という問題、また非嫡出子の相続差別の問題というのは、かなり個人個人の考え方によっても異なる結論になるような、そんなテーマでもございますから、これは法務大臣という立場と一政治家としての心情も交えて御答弁願いたいと思います。
  153. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 御指摘のとおり、法制審議会は、平成八年二月に、選択的夫婦別制度導入や、嫡出でない子と嫡出である子の相続分の同等化を内容とする民法の一部を改正する法律案要綱を答申しております。しかしながら、これらの問題につきましては、世論調査の結果等を見ますと、国民の意見は今のところ大きく分かれているということがうかがわれるわけでございます。  御案内のように、民法基本法でございます。特に御指摘の問題のような、社会や家族のあり方など、国民生活に重大な影響を及ぼす事柄につきましては、大方の国民の御理解を得ることができるような状況で法改正を行うのが相当であると考えますので、この問題につきましては、まず国民各層や関係方面で十分御議論が深まることを期待したいと考えております。
  154. 木島日出夫

    ○木島委員 実は、先ほども指摘がありましたが、法制審議会というものを軽視するという風潮が今出てきているのですね。法制審議会というのは、民事刑事基本法にかかわる改正等について、これまでの歴史や現状をしっかり踏まえた上で、徹底した慎重なる審議をして法務大臣に意見を具申する、そういう性格の審議会であるわけですね。  私は、法制審は、よその官庁のいろいろな審議会と比較して物を論ずるのはいかがかとは思いますけれども、世上言われるような、官僚がやりたいことをやるための隠れみのにする、審議会をつくって、あたかも国民の意見を聞いたかのごときオブラートをかけて、本当は官僚のやりたいことをやる、そういう手段としての審議会と批判は強いわけでありますが、法制審は私はちょっと違うのではないか。法律の学者もたくさん入って、それが基本になっておりますし、法務に基本的にかかわっている法曹三者等でも構成されておりますし、いろいろなそれ以外の、いわゆる国民といいますか、経済界その他の人たちも入っているという委員会なんですね。  今大臣がおっしゃったように、民事刑事基本法改正にかかわる慎重審議をやっている、やってきたという審議会でもあったのではないかというふうに私は思うのです。そういう法制審については、法制審が果たしてきた役割を、これはちょっと邪魔だからといって、どうも国会サイドにおいてそれを経ずに、法制審飛ばしという言葉を使ってもいいと私は思うのです。議員立法なる形で、それ行けどんどんの形で民事刑事基本法を動かすということは、私はやはり賛成しがたいと考えているわけなんです。しかし、この民法改正選択的夫婦別姓と非嫡出子の相続差別の問題については、法制審でじっくりした議論が積み重ねられてきているのですよ。  そして、大臣は今、まだ大方の国民の意見が一致していないんじゃないかとおっしゃるけれども、そうじゃない。それは誤解もあるわけで、夫婦別姓については選択的なんですよ。同姓でいいという人は同姓でいいのですよ。しかし、個人の人権というのはこれからの大事な方向でありますから、別姓の方がいいという夫婦には別姓を与えようじゃないか、そういうことでありますから、そういうことを広く国民の皆さんが知るところとなれば、急速にもっと国民世論は上がるし、現状も、大方はそういうことを望む人には別姓を認めてもいいんじゃないかということで、諸外国の法制度や日本の歴史や現行法制度もじっくりと慎重に審議した上で法制審は答申を出してきているのですよ。ですから、もう機は熟していると思うのです。  率直に言わせてもらえば、これを法務省が出してこない最大の理由は、与党の中に反対派があるからではないかとすら私は思えてならないのですよ。どうですか、法務大臣、出していただけませんか。
  155. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 繰り返しになりますけれども、世論調査の結果等を見ますと国民の意見が大きく分かれているこういう状況で、基本法である民法について今法改正を行うのは相当ではないのではないか、このように考えているところでございます。  国民各層、関係方面で十分御議論が深まることを切に期待しておるところでございます。
  156. 木島日出夫

    ○木島委員 では、法務大臣は、どういう点でこの二つのテーマについて問題があると国民考えているのか、どう認識なんですか。何か差しさわりがある、その差しさわりがどんな点にあると考えておるのですか。
  157. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 平成八年の世論調査の結果を見ますと、これは総数でございますけれども、別姓に賛成しているその割合が三二・五%、別姓に反対している人が三九・八%、通称使用を認める人が二二・五%ということでございます。そういう実態を踏まえて、ただいま国民世論が大きく分かれているというふうに申し上げているわけでございます。恐らく、日本の家族制度なり家庭のきずな、こういうものが今後どうなるのかな、そういう心配をしてのこういう世論のあらわれかと存じております。  なお、嫡出でない子の相続分の改正につきましても、改正賛成というのは二五%、改正反対が三八・七%、態度未定が三〇・八%ございまして、これについてもまだまだ意見が分かれているということを申し上げたところでございます。
  158. 木島日出夫

    ○木島委員 きょうは法務行政全般の基本問題を聞きたいので、このぐらいにしてやめます。後でまたじっくり論議をしたいと思います。  人権問題についてはいろいろありますが、基本的な問題として国連人権委員会からも勧告を受けている問題に、国連人権規約B規約の選択議定書というのがあるのですが、それを日本が批准をしていない、なぜこの選択議定書を日本は批准しないのかということが突きつけられているわけであります。  これは御存じかと思うのですが、選択議定書が批准をされますと、国連人権規約B規約に違反をした、その侵害を受けたという個人が、国内でのいろいろな裁判所での救済も求めます、行政上の救済も求める、その救済手続を尽くしてもB規約違反による侵害が回復できていないと考えた個人が、直接に国連人権委員会に救済を求めて申し立てができる、そういう問題なんですね。  これはもう、なぜ先進国である日本が批准しないのか、諸外国から指摘もされていますし、国連人権委員会から勧告も受けている、私は当然だと思うのです。ぜひ、一日も早く政府のリーダーシップによって選択議定書を批准してもらいたいと思うわけですが、この問題についての法務大臣の基本的な御認識を伺いたいと思います。
  159. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 この議定書の条約国となることにつきましては、法務省所管の関係で申し上げますと、我が国司法制度との関連で、裁判が係属中または確定した具体的事件についても個人からの通報に基づきB規約人権委員会で審理され、同委員会の見解が示されることがあることなどを考えますと、司法権の独立に影響を及ぼすおそれがある、慎重な検討を要する問題がある、このように考えておるからでございます。  また、B規約第二選択議定書の批准問題に関しましては、我が国の死刑制度の存廃、これは刑事司法制度の根幹にかかわる重要な問題でありますので、国民世論に十分配慮しつつ、社会における正義の実現等種々の観点から慎重に検討すべき問題であると考えておりまして、直ちに同議定書を批准し、死刑を廃止することは適当ではないと考えているからでございます。
  160. 木島日出夫

    ○木島委員 死刑制度廃止の問題については確かに慎重な論議、審議が必要だと思うのですが、それは留保することは可能なはずですよ、その部分は。  そうしますと、残るは司法権の独立に影響を及ぼすんじゃないかという指摘だと思うのですね。確かに日本政府が国連人権委員会に上げた第四回報告に、今大臣が述べたようなことが書かれております。  実は、もう一回前の第三回報告で、選択議定書を日本が批准できない理由は、司法権の独立に差し支えるという問題と、もう一つ、濫訴のおそれというのを挙げていたのですよ。しかし、さすがにこれは、濫訴のおそれというのは理屈にならぬというので、第四回の日本政府の国連人権委員会への報告はそれはやめて、司法権独立を侵すおそれがないかという問題だけを指摘しているのは事実です。  第四回の政府報告書を読んでみますと「本議定書は、人権の国際的保障のための制度として注目すべき制度であると認識している。しかし、締結に関し、特に司法権の独立を侵すおそれがないかとの点も含め我が国司法制度との関係等慎重に検討すべき問題があるところ、引き続き関係省庁間で検討を行っているところである。」こういう意見書なんですね。  しかし、私は、司法権独立を侵害するおそれがあるという論点は、二つの点で全く成り立たない暴論だと言わざるを得ないということを今言いたいと思うのです。  一つは、先ほど来言ったように、この選択議定書を批准して日本の国民個人が直接に委員会に訴え出ることができるのは、日本国内手続、裁判手続も含む国内手続を尽くした上でも、なおかつ人権が救済されていないと考えた個人が直接に人権委員会に人権侵害の通報ができるということでありますから、決して日本の司法権の独立と抵触するものではない、さわるものではない。  二つ目は、提訴を受けた国連人権委員会が、人権侵害あり、国連人権規約B規約に違反すると認定をした場合どうなるか。見解を政府に出すのですよ。日本政府に対して、こういう訴えがあったがこれは正すべきではないか、権利被害救済をすべきではないかという意見を政府に出すのですよ。決して司法当局に出すものではない。しかも、その見解意見書は強制力はないのです。当然ですね、国際司法裁判所という性格のものではありませんから。国連人権委員会ですから、強制力はない。  そうすると、この二つの点を考えただけでも、日本の司法権、第一審、第二審、最高裁、第三審、司法権の独立なんかに何にも抵触しないじゃないですか。基本問題として抵触していないじゃないですか。だから、日本政府のこの第四回目の国連人権委員会への報告は、基本的な点で間違っているじゃないかと私は思うのです。これは法務大臣じゃなくてもいいです。どうなのですか。
  161. 但木敬一

    ○但木政府委員 委員指摘のような御意見があることは、もちろん存じ上げております。  ただ、例えば第三審まで行った場合に、それによって我が国制度上尽くすべき手段は終わったとして、その後アピールできるのか。あるいは、再審というものまで含めてアピールできるのか。仮に三審が終わればアピールできるということになると、三審の上に四審という国際的なものをつくるのではないかという危惧。  それからもう一つは、政府に対する勧告が来た場合に、果たして政府司法権に対してどういう立場においてそれを伝えるのか。もし仮に司法権に全く伝えないとすれば、それはいかなる効果があるのか。司法権に伝えずに、政府においてこれを処理するということができるのか。できるとすれば、司法権が既に確定したものについて、いかなる根拠に基づいて政府がその勧告に従う等ができるのか。  種々の点で、やはりまだまだ検討すべき問題点があり、なお慎重に検討を要するものと考えております。
  162. 木島日出夫

    ○木島委員 再審はもう論外ですよ。基本でいいんですよ。三審、上告審まで行って、個人的には、日本の司法制度を使っての救済を求めて、それは決着ついた、司法権で、最高裁まで行って決着ついた。その上で、国際的なこういう組織に救済を求める、それで一定の勧告が出る。それが日本政府に来るわけでしょう。強制力はないでしょう。  今何か、受けた日本政府司法権に伝えるべきか否かを論議していて、それが問題であるかのごとき答弁ですが、関係ないじゃないですか。ルートが違うじゃないですか。司法救済という道をやって、きちっとやり終わった、しかしうまくいかなかった。それで、国際的なルールがあるから、人権委員会の意見をもらおうとして意見が出た。それは、司法権とは別の観点で審査、判断をするのでしょう。証拠採用の方法も違うでしょう。観点も違うでしょう。  ただ、それが日本の裁判所の判決と違った結論になるかもしらぬ。それはそれでいいのじゃないですか。それを理由にして批准しないというのは、私は、これはうがち過ぎかもしらぬけれども、日本の裁判所の判決が国際的な視野から見たらちょっとおくれているというようなことを批判されるのが嫌だから避けているとしか考えようがないのですよ。日本の司法権に何らさわるものじゃないですから、仕組みが。  今、官房長の答弁、全然理屈になっていない。勧告を受けた政府は、これは国際社会からの勧告ですよ、それがそのとおりだと思えば救済すればいいのであって、それは司法権救済とは別の道での救済になるわけでしょう。それでいいじゃないですか。それで救済してやれば、結果どうなるかというと、どうも日本の裁判所考えが古いなというだけの話ですよ。どうですか。批准しない理由にならないのじゃないですか。
  163. 但木敬一

    ○但木政府委員 絶対的にそうだということを申し上げているのではないのですが、日本の三審制で審理が尽くされている、それについて個人的なアピールが国際機関になされて、国際機関がその同じ事案についてさらなる判断をするということ自体の問題が一つあろうと思います。  それからもう一つは、その勧告が出てきたときに、委員は救済するということをおっしゃいましたけれども、救済するとすれば、司法判断を覆して、何か救済手段、例えば、現に服役中の者についてその服役を解くとか損害賠償を認めるとか、そういうことを言っておられるのか。あるいは、それは何もなしで、ただ政府が受け取ればいいんだとおっしゃっているのか。  その辺の問題も実はございまして、現時点における段階では、いまだこの議定書について批准することはできない、こういうわけであります。
  164. 木島日出夫

    ○木島委員 全然わからないですね。第一選択議定書を批准した国は、九六年七月現在の私の資料ですが、八十七カ国あります。アジアでは、モンゴル、フィリピン、韓国、ネパール、スリランカの五カ国が批准してやっているのです。  今日までに個人通報は、一九七七年から九五年七月までの間、各国から六百四十五件が国連人権委員会に寄せられた。そのうち二百八件の見解が採択されて、各国政府に伝えられ、問題解決に非常に有効な機能を果たしている、こういう実績がある。では、こういう国で、これらの国々はみんな司法権独立がある国でしょう、おれたちの国の司法権が侵害されたといって問題になった例がありますか。あったら言ってください。
  165. 但木敬一

    ○但木政府委員 にわかにそのような例があるかどうかはわかりません。各国それぞれの事情もございましょうし、法制度もございまして、我が国の法制度として、現段階の検討段階ではいまだ批准に至らない、こういうことでございます。
  166. 木島日出夫

    ○木島委員 ないのですよ、それは。国連人権委員会から一定の見解が各国政府に伝えられたとき、政府がどういう態度をとるかは政治判断ですよ。それは司法権救済とは全く別の観点でしょう。政治判断をして、ではこうしましょうといったときに、それは決して司法権独立を侵害することにはならない。司法権は司法権で、ルールの上に、証拠に基づいて判断したまでということなのでしょう。それでいいじゃないですか。  どうですか、大臣、もう時間もありませんが、こんなやりとりです。差しさわりないのじゃないですか。
  167. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 今、委員お話は承りました。  しかし、我が国においては三審制度をとっております。また、再審の請求制度など、不服申し立ての制度や種々の救済手続などがございますので、それらとの整合性を慎重に検討する必要があると考えております。
  168. 木島日出夫

    ○木島委員 日本の人権がどんな状況に置かれるか、また、日本の国民一人一人の人権が日本の司法部によってどんな判定を受けているのか、そういう全体を国際的な視野で見る、また、国際的な視野で指摘もされ、批判もされる、それがこの選択議定書を批准するということの深い意味だと思うのです。  私は、人権というのは前進するものだ、国際的な広がりを持っていると。やはり、日本が経済的に先進国であるならば、この人権問題においても、もうほかのアジアのさっき言った諸国が批准してやっているのですから、率先して日本の人権を国際的な視野の中に置くというのは本当に大事じゃないですか。  法務大臣がもし本当に腹の中から、基本的人権というのは大事で、法務行政の二つの柱だとお考えであれば、そういう方向で一歩前進させていただきたい。外務省や裁判所当局ですか、関係各省と協議を速やかに踏まえて、一歩乗り越えるという決断をしていただきたいと思うのですが、もう一言、法務大臣の御意見を、法務省当局にこだわらないでいいですよ。一政治家としての御意見を聞かせていただきたい。
  169. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 御意見は十分承りましたけれども、この問題は、我が国の問題としていろいろ検討すべき課題を抱えておりますので、今後、慎重に検討していきたいと思います。
  170. 木島日出夫

    ○木島委員 時間が来たから終わります。
  171. 杉浦正健

  172. 保坂展人

    保坂委員 社会民主党の保坂展人です。  陣内大臣、御就任おめでとうございます。就任大臣所信一端に入る前に、実はきょうお忙しい中官房副長官にもおいでいただきましたので、短い時間、端的にちょっとお答えいただきたいと思います。  言わずもがなのことを聞きますが、内閣責任として、参議院の例の予算委員会で、三月二日のことでしたけれども、前大臣それから入管局長、我が党の照屋議員、これらの質疑を聞いておられた野中官房長官が、私も理解できないということで、内閣責任調査を約束された。内閣責任というのは、言葉として重いのでしょうか、いかがでしょうか。
  173. 鈴木宗男

    鈴木(宗)政府委員 先生指摘のとおり、三月二日の参議院予算委員会におきまして、野中官房長官は、照屋議員の御質問に対しまして、「先ほど来、照屋議員の御質問法務大臣法務省答弁を通じて、私ども入管問題について御指摘の事項については到底満足すべき御理解をいただくような答弁になっておらないと思いますので、実態を内閣において調査いたしますので、御猶予をいただきたいと存じます。」こう答えております。この答弁は、重要な委員会での答弁でありますから、それなりに重く受けとめております。
  174. 保坂展人

    保坂委員 ところが、三月八日に中村大臣がおやめになった。おやめになった理由は、私の言動をめぐりまして国会運営に重大な支障を来し、政治家として責任を痛感しておるというのがいわば理由でございます。  ここで、野中官房長官が、要するに、入管をめぐるいろいろな、つぶさには言いませんけれども、このことについて、どうなのでしょう、端的に言って、内閣調査は進行中だったのでしょうか、それとも着手する前におやめになってしまったということだったのでしょうか。
  175. 鈴木宗男

    鈴木(宗)政府委員 本件調査結果については、本来野中内閣官房長官参議院予算委員会において御報告するところであろうかと思いますけれども、三月十七日の参議院予算委員会理事懇談会におきまして、上杉官房副長官から、中村法務大臣は既に責任をとって辞任されていることを説明し、こうした事情を踏まえ、参議院予算委員会理事皆様の御理解をいただいたところでありますので、コメントは差し控えさせていただきたい、こう思います。
  176. 保坂展人

    保坂委員 参議院で上杉官房副長官が、最後に、御賢察をお願いしたいと。  私余り賢くないものですから、よく考えてみても、やはり一国の法務行政を預かる大臣がおやめになる、そのプロセス、そして内閣責任という重い言葉をもって調査をされるかどうかという段階でおやめになったわけです。確かに途中でおやめになった。こうして今陣内大臣所信一端を伺うこういう機会に、やはりその調査をされたかどうかぐらいはぜひ明かしていただきたい、衆議院法務委員会にも明かしていただきたいと思いますが、いかがですか。
  177. 鈴木宗男

    鈴木(宗)政府委員 三月の八日に、中村法務大臣は小渕総理に対して、このたびの私の言動をめぐりまして国会運営に重大な支障を来し、政治家としてまことに申しわけなく、その責任を痛感しており、法務大臣辞任させていただきたいと話されまして、辞表を提出されました。  国会の円滑な運営のため辞任されたわけでありまして、政治家としては最大の責任のとり方をされた、こう私は思いますので、その後のことに関しましては御理解をいただきたい、こう思っております。
  178. 保坂展人

    保坂委員 大変お忙しいところを来ていただいたようですから、副長官に対する質疑はこれで終わります。  続けてこの問題で、入管局長に伺いますが、照屋議員が先般お尋ねした際に、上陸許可あるいは在留許可も前大臣が深夜まで携帯電話を握って記録も見ないで決裁している等の指摘をしておりますが、これは事実ですか。
  179. 竹中繁雄

    ○竹中(繁)政府委員 上陸特別許可とそれから在留特別許可とはちょっと種類が違いまして、上陸特別許可のときには、基本的に外国人が既にもう空港に着いてしまっているというような場合でこれをどうするかということなものですから、緊急の事情がございます。したがいまして、全部ごらんになりたいと前大臣がおっしゃったときに、夜中まで電話を使って対応せざるを得なかったのは上陸特別許可の方でございます。  一方において、在留特別許可は、中身は非常に重い内容でございますけれども、時間的にはすぐそういうことをやらなければいかぬということではございませんので、電話で対応するというようなことはございませんでした。
  180. 保坂展人

    保坂委員 それでは、陣内大臣に伺いますが、そういった状況の中でいわば就任をされる、まさに国会運営に重大な支障を来したということは、実は中身があって来したわけでございまして、その中身について前大臣から引き継ぎを受けておるでしょうか。
  181. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 新旧大臣の事務引き継ぎに関しましては、その内容が行政機関内部の事柄でございますので、基本的にはお答えするのはいかがかなと思っております。この問題については特に中身についての引き継ぎは受けておりません。     〔委員長退席、橘委員長代理着席〕
  182. 保坂展人

    保坂委員 大臣、それでは、調査は全く放棄するわけでしょうか。もうしないということですか。イエスかノーかでぜひお答えください。
  183. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 これにつきましては、先ほど来官房副長官の説明もございましたように、官房長官が取り扱うということになっております。
  184. 保坂展人

    保坂委員 これについては、ぜひ委員長にお願いしますけれども、当委員会できちっと、やはりなぜおやめになったのかという事情をきちっとわかるように、当て推量や推測ではなくて、わかるように報告を求めたいと改めてお願いしておきます。委員長、いかがですか。
  185. 橘康太郎

    ○橘委員長代理 本件につきましては、後刻理事会において御協議させていただきたいと思います。
  186. 保坂展人

    保坂委員 それでは、大臣就任直前の時刻、官邸の呼び込みの前に、空のたるそれから日本酒十本というのが、そのときは議員陣内さんのお部屋に、法務省大臣官房秘書課の職員が運び込んだということがございました。  まず、大臣ではなくて、法務省の方に伺います。たるは空だったから軽かったと思うのですけれども、法務省の中ではこんなささいな話に一々目くじら立てて一体何だというような空気があるというふうにも伝え聞いているのですけれども、いかがでしょうか、この点はどういうふうに受けとめているか。
  187. 但木敬一

    ○但木政府委員 この問題につきましてはさまざまな御意見をいただきました。その中には極めて厳しい御批判も含まれておりました。私たちとしては、そうした御批判を真摯に受けとめているということでございます。
  188. 保坂展人

    保坂委員 続けて官房長に伺いますが、私などは、法務省の皆さんでお金を出し合って、ちょっと時間が早過ぎたのですけれども、大臣おめでとうということで出されたのかなと思ったのです。しかし、原田事務次官の個人的な、プライベートな行為であったとその後おっしゃって、説明を受けています。  そうすると、もちろん次官にもプライベートな側面、人間ですから、公務員といえども私人としての面はあわせ持つわけでございまして、しかし、私人としてであれば、なぜ木札に事務次官というふうに書かれていたのか。あるいは、勤務中の職員を差し向けるといいますか運搬させるということは、果たしてプライベートというふうに見えるのだろうかどうか、この点は一体いかがでしょうか。役所の車で運んだのじゃないかと思いますけれども、その点を含めて、プライベートと言うにしては少し、役所ぐるみという言い方はおかしいかもしれない、役所として差し上げたという色彩が濃いというふうに私には思えるのですが、いかがですか。
  189. 但木敬一

    ○但木政府委員 これは事務次官が私費で購入したたる酒をお届けしたというものでございまして、その意味では私的なものでございました。  ただ、それをお届けするに際しまして、秘書課の職員が、新大臣が確定いたしますと事務的に事務所に参るものですから、その折にこれを運んでいったということがございました。  また、御指摘のように、たる酒には入山という木札がつくわけですが、これに法務事務次官という肩書が書いてございました。それによって事務次官の個人的な行為であるということが変わるわけではないと思うのですが、外形的には種々の誤解を招く根拠となっているというふうには考えております。
  190. 保坂展人

    保坂委員 それでは、大臣に伺いますが、本当に就任早々というか、就任しない前のことでありまして、まことに、原田事務次官個人的にであれば、せっかくのお祝いの気持ちがこういう結果になったのは双方に残念なことと思いますけれども、今回のことの教訓、あるいは、もし法務省の中に、世間から見ればどうかというような古い習慣、慣習があった場合に、これはやはり転換しなければならない、特に中村大臣と役所との関係、その緊張感を問われたのが今回の数々の問題の根底にはあったと思います。  したがって、もう一度大臣に伺いますが、こういった慣習は今回からやめにしていくということと、これに似たあるいはこれと同種の慣習は、やはりおかしなものは改めていくというお気持ちはおありでしょうか。
  191. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 原田事務次官が私費をもってお祝いしてくださったという好意に対して、私は大変感謝しております。  この問題を存じ上げたのが実は十日の日だったと思います。私は、八日の日から全く会館に帰っておりません。十日の新聞を見て、写真で知ったわけでございます。好意は好意としてしっかりと受けとめますけれども、このような政治や行政改革が求められているときに、いささかも国民皆様に疑念を持たせる、疑問を持たせるようなことがあってはいかぬと思いましたので、原田事務次官にお断りして返させていただいたわけでございますが、これからは今のような反省に立ってしっかりと対応していきたい、このように思っております。
  192. 保坂展人

    保坂委員 ぜひそうしていただきたいと思います。  しかし、ここで、官邸呼び込みの前に法務省大臣官房秘書課の皆さんが次期大臣になられる陣内議員室を訪れたのは、実は、印鑑あるいは名刺についての打ち合わせだったと聞きます。  私は、御存じかどうかわかりませんが、この法務委員会でたびたび死刑の問題を取り上げてまいりました。昨年などは集中的にこの議論を当委員会で行ったという経緯もございます。中村大臣の数々のいわば発言の中で、死刑の問題については今までの法務省の姿勢を転換するものがございました。例えば、執行の有無を公表するという姿勢、これは継承なさいますか。
  193. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 そのとおり考えております。
  194. 保坂展人

    保坂委員 これは二年越しの懸案になってございますが、中村大臣との質疑で、例えば、死刑が執行される刑場というものがあるわけです、そこで死刑の執行が行われる大変特別な場でありますけれども、死刑の実態というのはよくわからないということから、刑場の視察、あるいは直近の委員会で出た項目では、拘置所への体験入所、つまり死刑確定囚がどんな状況に置かれているかというのを我々議員が、もちろん望むということが前提ですけれども、ある期間同じ処遇を受けてみるということも含めて、前向きに検討されるという答弁を得ているのですが、この二点に対してはいかがでしょうか、新大臣
  195. 但木敬一

    ○但木政府委員 保坂先生から何度かそういう御要望が出されておりまして、法務省といたしましては、法務委員会の御決定で刑場を視察したいということであれば、私たちもそれに協力する用意があることはこれまでも申しているとおりでございます。  もう一つの御要請につきましては、これは種々の点で検討をしなければならない。それが有料であるとか無料であるとか、あるいは中の秩序上どのような行動をとっていただくとか、あるいは服はどうするとか、いろいろな問題がございますので、その問題についてはしばし事務当局に御検討させていただきたいと思っておるところでございます。
  196. 保坂展人

    保坂委員 ぜひ、有料であれば費用は捻出いたしますので、よく御検討をお願いします。  それでは、大臣に大変つらいお伺いをいたしますが、死刑の執行の最終段階は、大臣の机の上にいわば寄せられてくるあらゆる決裁、最終の大臣の決裁を待つその書類に判こを押すかどうか、そういう瞬間が法務大臣には、これはここ何年かはずっとあるわけです。このときに精査して、よく調べて、疑問があるものは差し戻すというおつもりは、大臣、ございますか。
  197. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 報告を聴取しまして、刑の執行停止、再審または非常上告の事由の有無、恩赦を相当とする情状の有無等について、個々の事案に対して十分時間をかけて慎重に検討したいと考えております。
  198. 保坂展人

    保坂委員 大臣、ずばり伺いますけれども、ここ何年かは死刑の執行は全部国会閉会中なんです。法務委員会もよほどのことでなければ開かれない。去年の場合は参議院選挙の公示日ですよ。参議院選挙が始まって各党が、私もそうですけれども、自分の党への支持を訴えている、そういう日に刑の執行が行われました。  国会で、一方で死刑をめぐる議論がある中で、国会閉会中にこういう刑の執行が行われる、こういうことは改めなければいけないのではないかというふうに思いますが、陣内大臣、いかがですか。     〔橘委員長代理退席、委員長着席〕
  199. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 これは国会の開会中とかその他の要件とはかかわりなしに、粛々と事務的に判断しなければならないのではないか、このように考えております。
  200. 保坂展人

    保坂委員 そうではなくて、国会が閉会しているときだけに執行されているのですよ。ですから、死刑をめぐってさまざまな、存置、廃止あるいは代替刑の問題、大改正をしなければいけないのではないか、いろいろな議論があります。しかし、そういう中で、国会閉会中のみに刑の執行が行われる。大変ゆがんだ姿じゃないかというふうに思うのですが、これをぜひ正していただきたい。
  201. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 これまでの状況を見てみますと、特定の時期を選んでその執行をしているということにはなっていないと思います。
  202. 保坂展人

    保坂委員 それでは大臣に伺いますが、もし特定の時期を選ばないで執行した場合には、国会の論議も歓迎するというふうにおっしゃることができますか。閉会中審査なども含めて大いに国民的な議論を組んでいくというお覚悟はございますか。
  203. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 国会がお決めになるということだろうと思います。
  204. 保坂展人

    保坂委員 大変重い判こが、官邸の呼び込み前にそうやってつくられていくということで、大変その判こ一つが、この委員会に座っておられる、ある前大臣も、じっくりこれを精査した上で、やはりこれは押すことができないという例もあったというふうに聞いています。ぜひ慎重に、耳を傾けながら、この死刑の執行をめぐる問題、かなり議論が進んでいますので、きっちりそれを体得されて、その上でぜひ判断をされることを求めたいと思います。  時間がないので次のテーマに移りますけれども、警察の方に来ていただいていると思いますが、昨日、湾岸の東京ビッグサイト、そこに東京おもちゃショーですか、子供たち向けの玩具メーカーのショーがあった。そこで、「大好きおもちゃ やめよう塩ビ」と、これは大変大きな垂れ幕が下がった。しかも、そのおもりは人だったのですね。これは訓練を受けたクライマー、オーストラリア人が二人、ニュージーランド人が一人と聞いていますけれども、これは逮捕されていますね、深川署に。ダイオキシンの問題は本当に国民的な大関心事で、しかも塩ビのおもちゃをやめようという、これは塩ビの中にフタル酸エステル類など可塑剤として使用されて、大変危険な成分が含まれているということで、グリーンピースは国際的なキャンペーンをやっているのですね。ですから、建造物侵入、威力業務妨害ということで検挙ということになっているようですけれども、これは玩具協会も告訴していないわけだし、実害というか、確かに垂れ幕は下がりましたけれども、塩ビに気をつけようというのは国際的な世論でもありますので、これは直ちに釈放していただきたいというふうに思うのですが、警察の方はどういう見解でしょう。
  205. 飯島久司

    ○飯島説明員 お答えいたします。  お尋ねの事件でございますけれども、三月の十八日午前十時三十分ごろ、東京都江東区有明に所在します国際展示場、通称東京ビッグサイトと申しておりますが、そこにおきまして、グリーンピースの構成員を自称いたします外国の方三人が、会議棟八階展望テラスに設置してあります高さ約一・四メートルのステンレス製の防護さくを乗り越えて横断幕を垂らし、その三人の方がロッククライミング用ザイルを使用して、説得に応じず約一時間三十分にわたりぶら下がっていたという事案でございまして、臨場しました警察官により三人を現行犯逮捕したものでございます。今、身柄を速やかに釈放すべきというお話でございますけれども、今後警視庁において適正に捜査していくものと承知しております。
  206. 保坂展人

    保坂委員 指摘しておきますが、同じような状況で、確かに、海外で逮捕された事例というのは一つしかないのですね、いろいろなキャンペーンをやっていまして。アメリカで一例あるようですね。バットマンとロビンに扮したクライマーがやはりおもちゃショーの会場の内の天井に上って横断幕を掲げた、これは逮捕されたようですが、その日の夕方釈放されたということのようです。  ほかはオランダ、オーストラリア等でグリーンピースは同様のキャンペーンをやっていますけれども、国際的なキャンペーンで、日本において特別他の国とかなり異なる対応があったということにならないよう、また、身元がわからないということでしたら、私ども、このグリーンピースNGO、よく知っていますので、国会議員が身元保証人になること、あるいはそれぞれの国の大使館等、いろいろ方法があると思いますので、ぜひそこを踏まえていただきたいということを指摘しておきたいと思います。  最後になりますけれども、盗聴問題について一言、警察の審議官の方においでいただいていますので、聞きたいと思います。  二月二十五日に東京高裁の判決がありまして、これは例の共産党の国際部長であった緒方現参議院議員宅の盗聴事件についての判決ですが、「本件盗聴行為は現職の警察官により、その所属する県警の警察活動の管轄区域外に所在する日本共産党の幹部自宅の電話を継続的に盗聴していたというものであり、しかも、それが合法的捜査活動であると認め得る証拠が全く認められないことに照らすと、警察組織の末端に位置する一部の警察官限りで敢行されたものであるとは考え難い」、こういう判決が出ております。  警察は違法盗聴を行ってきたかどうか、端的に、これは一警官が思いついて、あるいは二、三人でやってみようかというような話ではあり得ないということも判決も含めて認定しているわけですが、警察の見解はいかがですか。
  207. 瀬川勝久

    ○瀬川説明員 お答えいたします。  いわゆる緒方宅事件につきましてでございますが、本件につきましては、事件発生当時、警察におきます内部調査におきまして、県警が組織として本件に関与したことはなく、職務命令を発したこともなかったということでございます。また、警察官個人の関与についても確認できなかったということでございます。  しかし、昭和六十二年当時の東京地方検察庁の捜査において、警察官による盗聴行為があったと認められ、また、ただいま御指摘のございました判決も含めまして、その後の民事訴訟におきましても同様の行為があったことが推認されております。  このことにつきまして、警察としては厳粛にこれを受けとめ、まことに残念なことであると考え、本件の反省を踏まえ、今後とも国民信頼を裏切ることがないよう、厳しくいさめてまいる所存であります。
  208. 保坂展人

    保坂委員 これは盗聴問題、しかも、全然手続に基づかない違法盗聴ですから、大問題なんですよ。  これは、三月二日の参議院の福島瑞穂議員の質疑に対してこういうふうに答えていませんか。警察組織として盗聴していたことはあり得ないし、今後もそうしたことはないものと明言したい、これは撤回されませんか。この今の答弁を聞いていても、さっぱりどういう関係になってこういう見解が出てくるのかわかりません。もう一度きちっと言い直してもらうか、あるいは、これをそのまま改めて述べるのなら述べてください。
  209. 瀬川勝久

    ○瀬川説明員 当時の警察の調査でございますが、県警が組織として本件に関与したことはなく、職務命令も発したことはないということでございます。また、警察官個人の関与については確認できなかったということでございます。
  210. 保坂展人

    保坂委員 委員長にお願いしますけれども、聞いているのは本当に簡単なことで、参議院における、警察組織として盗聴していたことはあり得ないし、今後もそうしたことはないものと明言したい、これは今ここでまたリピートされるのか、もう一回言われるのか、それとも何らかの訂正をされるのか、それだけを聞いているので、端的にお答えいただくようにお願いします。
  211. 杉浦正健

    杉浦委員長 今の御答弁でそういう答弁をされているのじゃないですか。
  212. 保坂展人

    保坂委員 いや、全然していません。
  213. 杉浦正健

    杉浦委員長 それでは、もう一回、瀬川審議官
  214. 瀬川勝久

    ○瀬川説明員 警察といたしましては、組織として、このいわゆる盗聴事件、御指摘の事件に関与したことはなく、職務命令も発したことはないということでございまして、今後ともそのようなことを警察が行うということはないものというふうに確信しておるものでございます。
  215. 保坂展人

    保坂委員 すると、裁判所の判決には明らかに、今私が紹介した判決、これは末端の警察官が、まさに警察の一部の末端の警官がこれをやるということは考えがたい。この判決はどういうふうに受けとめているんですか。(発言する者あり)冤罪なら冤罪と言ってください。やっていないならやっていないと言えばいいのだ。
  216. 瀬川勝久

    ○瀬川説明員 先ほども御答弁申し上げたかと思いますが、民事訴訟等におきまして同様の行為があったということが推認されているということでございまして、このことにつきましては、私どもとして厳粛にこれを受けとめ、大変残念なことであるというふうに考えているところでございます。その反省を踏まえまして、国民信頼を裏切ることがないように厳しくいさめてまいりたいと重ねて申し上げているところでございます。
  217. 保坂展人

    保坂委員 時間が来たので終わりますが、前法務委員会で、笹川委員長時代に同じやりとりをやったんですね。それで、このやりとりはもうほとんど平行線で、どうにもならないということで、翌日の法務委員会でわざわざ訂正答弁に来られたということは去年のことじゃないですか。それがまた一年たつと戻ってしまった、同じことしか言わない、こういうことで果たして、いわゆる政府側の提案でいえば、適正な手続に基づく通信傍受ということがあり得るのかどうか、大変疑問に思います。  私の質疑を終わります。      ――――◇―――――
  218. 杉浦正健

    杉浦委員長 次に、内閣提出裁判所職員定員法の一部を改正する法律案を議題といたします。  趣旨の説明を聴取いたします。陣内法務大臣。     ―――――――――――――  裁判所職員定員法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  219. 陣内孝雄

    陣内国務大臣 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。  この法律案は、下級裁判所における事件の適正迅速な処理を図るため、裁判所の職員の員数を増加しようとするものでありまして、以下その要点を申し上げます。  第一点は、裁判官につき、判事補の員数を三十人増加しようとするものであります。これは、地方裁判所における民事訴訟事件、知的財産権事件、民事執行法に基づく執行事件及び破産事件の適正迅速な処理を図るため、裁判官の員数を増加しようとするものであります。  第二点は、裁判官以外の裁判所の職員の員数を十九人増加しようとするものであります。これは、地方裁判所における民事訴訟事件、知的財産権事件、民事執行法に基づく執行事件及び破産事件の適正迅速な処理を図るため、裁判所書記官等を二百四十八人増員するとともに、他方において、裁判所の事務を簡素化し、効率化すること等に伴い、裁判所事務官等を二百二十九人減員し、以上の増減を通じて、裁判官以外の裁判所の職員の員数を十九人増加しようとするものであります。  以上が、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案の趣旨であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
  220. 杉浦正健

    杉浦委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  本案に対する質疑は後日に譲ることといたします。  次回は、来る二十三日火曜日午前九時理事会、午前九時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後二時四十三分散会