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1999-06-11 第145回国会 衆議院 文教委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年六月十一日(金曜日)     午前九時三十分開議   出席委員    委員長 小川  元君    理事 栗原 裕康君 理事 栗本慎一郎君    理事 小杉  隆君 理事 増田 敏男君    理事 藤村  修君 理事 山元  勉君    理事 富田 茂之君 理事 松浪健四郎君       岩永 峯一君    大野 松茂君       奥山 茂彦君    倉成 正和君       佐田玄一郎君    下村 博文君       高鳥  修君    高橋 一郎君       中山 成彬君    松永  光君       渡辺 博道君    池端 清一君       田中  甲君    中山 義活君       池坊 保子君    西  博義君       西川 知雄君    笹山 登生君       石井 郁子君    山原健二郎君       濱田 健一君    粟屋 敏信君  出席国務大臣         文部大臣    有馬 朗人君  出席政府委員         文部大臣官房長 小野 元之君         文部省初等中等         教育局長    辻村 哲夫君         文部省高等教育         局長      佐々木正峰君         文化庁次長   近藤 信司君         通商産業省生活         産業局長    近藤 隆彦君  委員外出席者         警察庁生活安全         局生活環境課長 原  芳正君         文教委員会専門         員       岡村  豊君 委員の異動 六月十一日  辞任         補欠選任   西  博義君     西川 知雄君 同日  辞任         補欠選任   西川 知雄君     西  博義君 六月十一日  三十人以下学級の早期実現に関する請願池端清一紹介)(第五九九一号)  同(山元勉紹介)(第五九九二号)  同(池端清一紹介)(第六一三四号)  同(山元勉紹介)(第六一三五号)  同(池端清一紹介)(第六三七一号)  同(山元勉紹介)(第六三七二号)  すべての子供たちに行き届いた教育に関する請願保坂展人君紹介)(第六一三三号)  私学学費値上げ抑制教育・研究条件の改善、私学助成増額に関する請願高市早苗紹介)(第六四八〇号) は本委員会に付託された。 本日の会議に付した案件  著作権法の一部を改正する法律案内閣提出第一一四号)(参議院送付)     午前九時三十分開議      ————◇—————
  2. 小川元

    小川委員長 これより会議を開きます。  内閣提出参議院送付著作権法の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。笹山登生君。
  3. 笹山登生

    笹山委員 自由党の笹山でございます。おはようございます。  何分にも十五分という時間でございますので、一問一答を避けまして質問いたしますので、一括してひとつ各部署からお答えいただきたいと思います。  質問予告になかったのですけれども、こういう記事がございました。おとといの六月九日、千葉県警習志野署は、同県迷惑防止条例違反現行犯文部省職員を逮捕したという記事が載っていまして、私も非常にショックを受けているわけでございます。美術館の御担当ということで、何かミロのビーナスに見えちゃったのかわかりませんけれども、文部省というのは全国の子供たちのつぶらなひとみで見られているという自覚を忘れないように、ひとつ今後の御対応大臣の方から後でお伺いしたいと思います。  本論に入りますけれども、今回の著作権問題で、私は、時間も限られておりますので、MP3と著作権の問題についてのみ絞って御質問申し上げたいと思います。  これも、ことしの二月から札幌市内のある少年が、有名アーティストヒット曲MP3というデジタルフォーマットを使いましてインターネットにアップロードしたということで検挙されたということが、朝日新聞の五月二十六日のトップ記事になっていたわけであります。  これにつきまして、検挙に至るまでの、違法サイトとして確定するに至る過程と、それに至るまでもちろん警告等があったわけでございますでしょうけれども、その辺の経緯につきまして警察庁等にお伺いしたいのが一点。  それと、違法サイトなんというのは、これに限らず雨後のタケノコのごとくいっぱいあるわけでございますから、これのみがスケープゴートになって他の違法サイトについての対応というのがないと、これは公平の原則を欠くわけでございますので、この辺の他の違法サイトに対する対応というのがどうかというのが第一点でございます。  第二点は、このMP3というのは別に悪いソフトではありませんで、いわば罪を憎んで人を憎まずという観点からいいますれば、著作権侵害は憎んでもMP3という優秀なデジタルフォーマットは憎めないということだと思うんですよね。  アメリカ等動きを見ましても、当初はMP3憎し、余り優秀なので憎し、しかし、優秀であるがコピー防止装置がない、この辺のことで物議を醸して、当初はアメリカのRIAAも、MP3憎しという対応で例えば撲滅キャンペーンを張ったり、あるいはリオというようなプレーヤーに対しましての販売差しめ命令というのをやったり、いろいろ対決的な状況にあったわけでありますけれども、どうも昨年の暮れごろからその辺の流れがちょっと変わってまいりまして、いや、MP3というものはこれからのデジタル音楽配信にとって有力な武器なんだ、むしろそれと共存共栄するような格好で、著作権保護も兼ねながらの一つ共存共栄を図ろうというような方向転換をどうもしてきているような感じが私はするわけでありますね。そして昨年の暮れに、安全なデジタル音楽計画SDMI、安全な音楽ダウンロード規格を二〇〇〇年三月までに制定するという一つ動きになってきているわけでございます。  一方、それに対応しまして、日本流れというのは若干おくれているような感じがするわけでありますけれども、昨年の十月一日に、JASRACコンテンツプロバイダー各位に対しましての違法サイトの削除についてのお願いの文書を出しました。  その後、いろいろちょっともめておりまして、JASRACとNMRC、ネットワーク音楽著作権連絡協議会との間で、違法じゃない普通に流す音楽著作権料率につきまして、基本料率等につきましての合意がなかなか至らない。しかし、こうして世の中の変化が迫ってきているというようなことから、暫定合意というような格好で、その暫定の期間を当初は一九九九年三月までとしたのでありますけれども、それを約一年延ばすような格好になっているというようなことでありますが、基本的に、ネットワーク上での配信についての諸環境がなかなか整わないというのと基本料率の食い違いがあるというのが、なかなか本格合意にならない一つの原因であるというような状況であります。  こうして著作権法の審議が参議院を通過するかしないかの今月に入りまして、JASRACさんが、新たな一つDAWN二〇〇一という音楽著作権管理デジタル化構想という非常に画期的な構想を発表されまして、これは、内容は、音楽原盤制作時点透かし情報を入れるというふうな、ややアメリカ動きに半分ぐらい追いついたような流れになってきているわけでございます。  ただ、透かし情報というのは、非常に例えは悪いのでありますけれども、野良犬の体の中に目に見えない鑑識票を埋め込んでインターネット上に放した、そうすると野良犬がどこにいるかというのはわかるわけですけれども、しかし、インターネット上のその野良犬繁殖を食いとめることはできないわけですね。ですから、透かし情報を入れるというのは第一段階の話であって、では、その繁殖をどう防ぐかということが第二段階として、いわばCD等の音源からの吸い出し、リップと言うそうでありますけれども、やはりその辺の段階でのコピーガードをしないと根源的な対策にはならない。  アメリカの先ほどのSDMIは、やはり第一段階CD等の中にトリガーを埋めて、そして第二段階でセキュアリッピングという一つの仕掛けを埋め込むという段階でございますが、やはり日本の場合も、第一段階透かし情報でいいのでありますけれども、第二段階も将来を見据えたことをしないと根本的な解決にならないんじゃないかというふうに思うわけでございます。  さはさりながら、あめとむちといいますか、この業界というのは、CD等のいわばオールドタイプメディアに依存しているアーティストなり業界がある一方、ニューメディアに期待している一つの無名のアーティストもあるし、また、企業化して新しいマーケット、雇用を生み出す一つビジネスチャンスをねらっている人もいるわけですよね。それによっていろいろ思惑が違うわけであります。ですから、余りにも旧メディアに対する権限なり業界関係を重んじてその辺の締めつけをやっておりますと、せっかくのビジネスチャンスがなくなる。  また、世界の潮流は、やはりデジタル音楽配信、ノンパッケージ商品流通するという音楽配信方向にどうやら大きく動きつつある。そうしますと、例えばこのDAWN二〇〇一は、二〇〇一年までに環境整備するというのでありますけれども、今のこの日進月歩、秒進分歩デジタル音楽配信時代に、一年、二年かけているうちに、MP3ははびこっちゃうわ、またCS等による音楽配信一つ料金体系は固まらないわであっては、やはり日本発の、日本アーティスト世界に対する音楽発信といいますか、その量といいますか、マーケットというのは著しく減ってしまうことになるというふうに思うわけでございます。  私は、文部省に対しましては、どうかひとつ、これまでは著作権の番人としての文化庁なり文部省でいいのでありますけれども、もうそういう時代は過ぎました。やはり、ソフト、ハード、それから業界、そして機器メーカー、あるいはユーザーですね、ユーザーオールドユーザーから若いユーザー、あらゆる業界なり関係者を含めた一つ懇談会を設置して、そして、ぜひとも、このデジタル音楽配信に乗りおくれることのないような一つの総合的な体制をこの著作権法改正を機会にひとつ図っていただきたいということをお願いしたいわけでございます。  以上、十分経過しましたので、お答えの時間がなくなるといかぬので、これで一応私の質問を終えさせていただきます。よろしくお願いします。
  4. 原芳正

    原説明員 お尋ね事案についてでございますが、本件は、札幌市に居住をいたします十八歳のコンピューター関連会社員が、著作権者許諾を得ずにプロバイダーサービスコンピューター内にMP3を利用しまして音楽著作物を記憶蔵置させ、平成十一年の三月ごろにインターネット利用者送信をしたという著作権法違反事件でございます。  本件につきましては、愛知県警察におきまして、短期間の間にホームページの開設、閉鎖を繰り返す中で多数の最近のヒット曲を多くのインターネット利用者送信をしているという事案を認知いたしまして、さらに、権利者団体であります日本音楽著作権協会に照会をいたしましたところ、権利者許諾を得ていないということが判明をいたしましたので、本件著作権法違反容疑事案として認めまして、本年五月二十四日、関係先の捜索を実施するなどいたしました。現在も所要の捜査を継続しているものでございます。  それから、この種のほかの違法サイトへの対応についてでございますけれども、本件のようなネットワーク上の著作権保護の問題も含めまして、知的所有権侵害事犯防止のためには、防止技術開発や社会への広報啓発活動推進というものがまずもって重要であると考えておりまして、警察といたしましても、取り締まりとともに、関係省庁各種権利者団体の組織であります不正商品対策協議会などと連携をして広報啓発活動推進してきたところでございます。  今後とも、こうした活動関係省庁あるいは権利者団体などとも連携をいたしまして積極的に行いますとともに、他の違法サイトにつきましても、権利者団体などと連携をしながらその実態把握に努めまして、悪質な事案につきましては厳正に取り締まっていきたいというふうに考えているところでございます。  以上でございます。
  5. 近藤信司

    近藤(信)政府委員 お答えをいたします。  先ほど来、先生から大変貴重な御提言をいただいたわけでございます。JASRACも、これまでに音楽配信業者との間で暫定合意を結んだ、これはまた本格的な合意に向けての努力でございますし、また、先般DAWN二〇〇一というような構想を発表したわけでございます。SDMI構想になるべくおくれないように、やはりそういう日進月歩時代でございますから、そういった国際的な状況も踏まえつつ、将来のデジタル音楽送信における重要な取り組みでございますから、私どもも十分にまたJASRAC支援してまいりたい、かように考えておるところでございます。
  6. 小野元之

    小野(元)政府委員 東京国立近代美術館職員の行いました件につきまして、おわびを申し上げます。  大変遺憾なことでございまして、現在事情を調べておるところでございます。国家公務員として信用を失墜せしめる大変残念なことでございまして、事情をよく調べた上で厳正に対処してまいりたいというふうに考えております。申しわけございません。
  7. 有馬朗人

    有馬国務大臣 今の件につきましては、私も厳重に注意をするようにしたいと思っております。  デジタルネットワークのことでございますが、近年のデジタル化ネットワーク化進展に伴いまして、デジタル音楽配信事業などを通じて著作物が広く国民に享受されておりますことは、文化の発展に大きく寄与するものと考えております。しかしながら、一方で、無断著作物配信されるなどの行為によりまして、著作者人たち権利が侵害される可能性も増大してまいっておりまして、権利者権利実効性を確保しつつ、ネットワークを通じた著作物の適正な流通活用が行われることが極めて重要であると考えております。  このため、今回御審議いただいております著作権法改正案では、複製防止等技術的保護手段の回避や権利管理情報の除去、改変に係る規制を行うことによりまして、権利者が安心して著作物ネットワーク上に提供できるような環境整備することといたしております。加えまして、ネットワーク上の利用に関する関係者間の適切なルールづくりも重要でございまして、ルールづくりに対する支援も含めて、ネットワーク化進展等技術進展対応した著作権施策推進に努めてまいる所存でございます。
  8. 近藤隆彦

    近藤(隆)政府委員 先生指摘のとおり、ネットワークを通じましたデジタル配信は、大変新しいビジネス分野としまして注目されておりまして、これからも大変大きく伸びるものというふうに期待をしております。そういう意味で、コンテンツの円滑な流通利用権利保護と両方が両立するような、このような全体的なバランスのとれたビジネス環境整備が大変重要であるというふうに考えております。  通産省といたしましては、こういう観点から、例えば音楽電子配信に向けましたデータベースづくり支援でありますとか、あるいは権利許諾情報の全体的な管理システム支援でありますとか、こういったビジネスとして一層拡大するように、同時に、権利者保護についていろいろな情報が適正に管理できて全体のシステムがうまくいくような、そういった技術開発につきまして支援をしたり、実証実験支援をしたりということをもちまして、全体として音楽コンテンツネットワーク流通の促進のためにできるだけの環境整備ということで支援をしたいというふうに考えております。
  9. 笹山登生

    笹山委員 ありがとうございました。
  10. 小川元

    小川委員長 次に、松浪健四郎君。
  11. 松浪健四郎

    松浪委員 おはようございます。  ことしは、著作権法制定百周年に当たります。百年も前にこの国に知的所有権を認めた法律をつくられた、そのことを大変誇りに思うものでありますけれども、時間が短いので、もう前置きは横に置きますが、各学校では、作家作品教科書に使われます。そしてまた、そこから派生して、教材出版会社がその作品ホームワークであるとかあるいはドリルテスト等に使われておりますけれども、この作家たち作品等がこういった教材に使われる、それは一体著作権としてどのようになっているのか、まずお尋ねをさせていただきたいと思います。
  12. 近藤信司

    近藤(信)政府委員 お答えをいたします。  著作物をコピーして利用することに関しましては、著作権法複製権が認められておるわけでございますが、一定の例外的な場合には著作権者等許諾を得ずに自由に利用ができる、こういう規定があるわけでございまして、学校教育活動に関するものの具体例を申し上げますと、今先生指摘になりましたように教科用図書教科書につきましては、文化庁長官が定める一定補償金を支払うことによりまして、必要と認められる限度において著作物教科書掲載することができる、こういう法律上の文言があるわけでございます。  それから、教員が学校の授業において使用する場合には、必要と認められる限度におきまして著作物を複製することができる、こういった規定もあるわけでございます。ただし、副教材ドリルなどを丸々コピーするといったような形で著作権者利益を不当に害するような場合には、複製権制限をされずに、著作権者許諾が必要になる、あるいは、学校の試験などの問題として使用する場合には、これまた必要と認められる限度でありますが、自由に著作物を複製することができる、こういうのが現在の著作権法上の取り扱いでございます。
  13. 松浪健四郎

    松浪委員 そこで、三月七日付の読売新聞のトップニュースに、国語の副教材への作品無断掲載を理由に、権利者出版社を相手に出版差しとめを求め、訴えを裁判所に提起というような記事がありました。それからずっと見ておりますと、どうもごたごたしているようでありますけれども、そのことは横に置きましても、副教材への著作物掲載について著作権法上どのような問題があるのか、お尋ねしたいと思います。
  14. 近藤信司

    近藤(信)政府委員 お答えをいたします。  先ほども少し申し上げましたが、著作権法では、教科用図書著作物掲載する場合には、文化庁長官が定める一定補償金を支払うことによって、学校教育の目的上必要と認められる限度において認められておるわけでございますが、この規定は、教科書以外の図書教材、例えば教科書に準拠した副教材などには適用されないこととなっておるわけでございます。したがいまして、学校教育で使用されている副教材著作物掲載する行為は、基本的には、著作者複製権の対象となるものでございます。  ただ、引用など、ほかの権利制限規定に該当するということになりますと、引用ということで認められる場合があるわけでございますが、引用に該当しなければ、その利用につきまして著作権者許諾を得る必要がある、こういう取り扱いでございます。
  15. 松浪健四郎

    松浪委員 町で売られているものが多いわけですし、それともう一つ、やはりこれらの出版社は巨額の利益を得ていると言っても過言ではありません。  著作権というものは徹底的に守られなければならないにもかかわらず、現場にいる先生方はその教科書を使ってテストをつくるというようなことになりますと、他の学校の、同じテキスト、教科書を使われている先生たちとの兼ね合いもあって、どうしても共通のテストを使われる。もちろん、先生方も日常の指導で負担が大きいがゆえにこういったものを使われるということになるんでしょうけれども、今までは全くと言っていいほどこれらの出版社あるいは教材会社著作権者に払われてこなかったからこういう法廷闘争になっているというふうに思うわけです。やはり文化国家であるならば、知的所有権というものをきちんと認めていかないことには、せっかくこの法律ができて百年たつというのに解決されていないことがある、大変残念に思うわけであります。  そこで、副教材学校教育の中でも重要な役割を果たしております。副教材をめぐって著作権に関する問題が起こっていることは、今申し上げましたように大変残念に思いますし、できるだけ早く解決していただきたい、こういうふうにお願いもしておきたいのですけれども、副教材の作成に当たっては、著作権保護が十分に図られることが必要であると考えますし、文部省としましてはこれまで、日本図書教材協会などの関係団体に対してどのような指導を行ってきたのか、そしてまた、今後どのように対処をされようとしているのか、このことについてお尋ねしたいと思います。
  16. 辻村哲夫

    辻村政府委員 お尋ねの件でございますけれども、教材著作権問題への対応、これは民間企業でございます個々の教材会社の責任でございまして、法的には、国として直接の関与は許されないというふうなものでございます。  したがいまして、文部省といたしましては、この著作権というものは大変重要なテーマでございますけれども、日本図書教材協会に対しましては、著作権に十分配慮するように加盟会員指導を徹底すべし、あるいは会員に対しまして著作権思想の一層の普及啓発を図るべしといった一般的な指導をこれまで行ってきたというのが実情でございます。  現在、係争中ということもございまして、こうした個別の事例につきましては、基本的には、著作者である権利者利用者の間の問題であることでございますので、今後の司法判断を見守ってまいりたい、そしてその推移を踏まえまして、今後どのように対応するか検討してまいりたいと思っております。  ただ、原著作者への対価を納めるべきであるという考えに立ちまして、現在、日本図書教材協会におきましては、教科書掲載されております個別の著作物教材への利用につきまして、著作者等が構成しております関係団体と明確なルールづくりに向けた取り組みをここ数年進めてきております。こうした流れを踏まえまして、文部省といたしましても適時適切な支援をしてまいりたい、こんなふうに思っております。
  17. 松浪健四郎

    松浪委員 とにかく、百年もたっておって、今まで著作者作品、また著作権者権利というようなものが保護されずに来た。それは、こういった教材会社文部省が変な関係にあるのではないのかというような誤解を招くおそれがあるのと、それと、教材会社側が主張している、教科書に既に使われ、それに著作権料というようなものが既に払われ、そしてその著作権者も理解している、そこから派生するものであるから払わなくていいというような考え方が教科書会社にあったような気が私はするわけですけれども、あくまでも、町で売られているわけですから、これはきちんと著作権者に話をつけて対価を支払うということが当然のことであるというふうに思いますし、文部省におきましては、速やかに解決されるよう、またきちんとした御指導をされるよう心からお願いしておきます。  次に、現在、学校教育におけるインターネット活用等が積極的に進められており、著作権との関係が重要な問題となるものと考えます。そのため、著作権保護重要性について、学校の教職員児童生徒が十分に理解することが重要であるというふうに考えるわけですけれども、文部省の認識はいかがなものか、お尋ねしたいと思います。いずれにいたしましても、子供たちには著作権というようなことについての十分な知識が私はあるとは思いませんので、お尋ねしたいと思います。
  18. 辻村哲夫

    辻村政府委員 著作権につきましての正しい理解を子供たちに培うということも学校教育の課題だと私ども思っております。したがいまして、その指導に当たります教師がまず十分にこの著作権というものについての重要性を認識することが必要なことは当然のことだと思っております。  具体的に、小中高を通しまして、技術・家庭といった教科あるいは公民といった教科におきまして、この著作権についての指導を教師たちはするわけでございます。そしてまた、こうした教科だけでなく、国語の時間にありましても、英語の時間でございましても、先生から先ほど例を挙げて御説明がございますように、さまざまな場面で、教科書をつくるにしても、教材をつくるにしても、ベースには著作権という問題が絡んでいるわけでございまして、あらゆる教育活動の場面でこの著作権重要性、大切さということを徹底していくことは大事だと思います。  したがいまして、個々の先生方一人一人の自己研さんということも大事だと思いますが、研修等におきましては、こうした著作権についての正しい理解といったことも研修の重要なテーマになろうかと思います。そういうことも留意いたしまして、これからの研修の充実には努めてまいりたい、こんなふうに思っております。
  19. 松浪健四郎

    松浪委員 子供たちにそのことを教えることによって、子供たちの創作意欲というもの、創造力というものを高めることができるというふうに思うわけですね。ですから身軽に、簡単に、音楽の問題等いろいろございますけれども、著作権というものを子供たちにきちんと指導しておいていただいて、そして子供たちが、何だ、こんなに物を書けば、そして認められれば、将来にわたって権利を持つのかというような指導が大切である、こういうふうに思います。  時間が参りましたので、私の質問はこれで終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  20. 小川元

    小川委員長 次に、藤村修君。
  21. 藤村修

    ○藤村委員 民主党の藤村修でございます。  このたびの著作権法の一部を改正する法律案につきまして、三十分以内ぐらいでございますので、幾つかの質問をさせていただきます。  今も少し話題になっておりました、子供たちにこの著作権法の大切さをと言う前に、まず大人が、著作権法等を含む知的所有権とは何ぞやというあたりが今非常に難しい現状になっているのではないか、あるいは日本人にとって、百年の歴史があるといいながら、なじみがまだまだ薄い人権の一種ではないかなというふうに考えます。一方で、余りの規制とか制限をしていくことで、それは逆に言うと、今度は文化の発展とか展開にまた支障が起きるという、なかなか、どの辺で線を引いていったらいいのかという問題も非常に難しいようにも私は感じました。  そこで、文化庁を所管する文部大臣としての、いわゆる著作権等を含む知的所有権とは何か、それは例えばその他の基本的人権の一種に近いのか、あるいは、いや、これはむしろ商業的な問題、そういうものが価値を帯びたときにその一部を著作権者に渡す程度のものであるとお考えなのか、人権のうちの一種なのか、どの程度のものなのかについて、これはまず文部大臣に見解をお伺いしたいと存じます。
  22. 有馬朗人

    有馬国務大臣 私は、日本では知的所有権に対する認識が甚だしく弱いと思いますね。この点、先生の御指摘のとおりだと思います。単に書いたものだけが知的所有権ではありませんで、いろいろな考え方、アイデアあるいは情報、こういうすべてのものに関してやはり知的所有権をきちっと、もちろん限界はありますけれども認めていく、そういう風土をつくっていかなければならないと思っています。  いずれにいたしましても、著作権などの知的所有権を適切に保護し、その保護実効性のあるものにするためには、その保護重要性について国民一般の理解を高めていくことが最も重要であると認識いたしております。
  23. 藤村修

    ○藤村委員 そういうお答えになろうかと思いますが、どのぐらい重要な権利なのかということがやはりまだまだどうも一般的にはよく理解されていないという現状があるかと思います。  そういう中で、今回の著作権法の一部改正というのは、世界知的所有権機関、いわゆるWIPOと言われるところの九六年の条約の一つの項目について、今回幾つか日本の国内法整備という一環で行われているものだと理解をしておりますが、この中でも幾つも、やはりなかなか難しく、どっちがいいのかなという部分が一部ありまして、これは通告をしなかったのですが、法律そのものの問題でございますので、ひとつ教えていただきたいのです。  きのうの文部大臣法律案提案理由の中の二ページ目で、第一にというところの最後の方なんですが、今回「技術的保護手段を回避して行う私的使用のための複製については著作権等を及ぼす」こととしている。これは、コンピューターの世界で、私も何年か前に市販のソフトを借りてきまして、これを自分の方へ埋め込もうと相当苦労、苦心して、ある意味ではそれにどういうふうにしていったらいいかという、これはまさに自分のまた知的創造性を高めていくような作業をしながら、結果、できなかったのですが、結果、できたときには、今回はこれは違法になる、こういうことになる条文なんでしょうかどうか。
  24. 近藤信司

    近藤(信)政府委員 お答えをいたします。  今回の法律改正の中で技術的保護手段の回避専用装置の規制をかけておるわけでございますが、そもそも、そういった形で保護をされておるものにつきまして、私的な使用とはいえ、通常であれば私的な使用はこれは自由でございますけれども、あえてコピープロテクションを解除してまで行う行為につきましては、私的な権利の対象外とするということでございます。したがいまして、それにつきましては、著作権者許諾を得て行う必要がある、こういう趣旨でございます。
  25. 藤村修

    ○藤村委員 技術的保護手段を回避する機械をつくって売っていること、これは確かに違法性が高いとは思うのですが、今のようなケースで、本当にやや趣味的にというか、むしろ自分の創造力やらそういうものを発揮して、何とかそれを回避してやることにむしろ目的意識を持ってやる、こういう部分、これはこれなりに創造的な部分でありまして、その成果としてうまく回避できてうまくいったというときに、これをまた販売するとか、もちろんそれは明らかに違法だと思いますが、私的使用のための複製についてもこれは違法にするのかどうか、これはWIPOの関係からやはりこういうことになったのかどうか、教えていただきたいと思います。
  26. 近藤信司

    近藤(信)政府委員 少し補足をさせていただきますが、私的使用のための複製につきましては、そもそも個人や家庭内のような範囲で行われる複製は零細なものでございまして、著作権者等利益を不当に害するものではないと考えられることから、従来から、著作権者等権利制限され、著作権者等許諾なく自由に行えることとされているものでございます。  しかしながら、技術的な保護手段が用いられております著作物等の場合には、そもそも、その技術的保護手段を回避して複製が行われるということを想定されていないわけでございます。したがいまして、技術的保護手段をあえて回避して行う私的使用のための複製は、本来の私的使用のための複製が認められる趣旨をやはり超えているのではなかろうか。こういうことから、技術的保護手段を回避してまで行う私的使用のための複製につきましては、権利制限から除外をし、著作権者等権利が及ぶことと、今回、このように法改正の中で盛り込ませていただいておるわけでございます。(藤村委員「WIPOとの関係は」と呼ぶ)基本的には、WIPOの考え方に沿って対応しているものでございます。
  27. 藤村修

    ○藤村委員 グローバルスタンダードとは言いませんが、ワールドスタンダードのWIPOを今回は国内法で整備して、そういうものに乗っかろうということであるなら容認できる部分でありますが、ちょっとひっかかるような、つまり、みずからの創造性をそこで、それはいけませんよと言ってしまうことにおいて、逆に言えば、文化的あるいは技術的発展とか創造とかいうものを少し阻止しているのではないかな、そんなところも一部感じたので、ちょっとその点だけ質問をさせていただきました。  そこで、先ほど同僚委員からも質問がありました。やはりなかなか日本人には、百年の歴史がある著作権法といえども、特に最近の著作権というのが、本とか出版物ということにとどまらずに、非常に広い範囲にわたってくるときには、なかなかその概念自身のとらえ方も難しい。あるいは学校先生もよくわからないままで、先ほどもちょっと御説明がありましたが、中学校技術・家庭で触れているのですが、二つの教科書の写しをちょっともらいました。例えば一つ教科書では、囲みにしまして、「著作権保護 ここで利用するソフトウェアには、著作権がある。認められている以外の複製を行ってはならない。」このくらいのことが書いてあります。もう一つの本でいいますと、例えば「ソフトウェアについては、作成者の著作権保護するために、絵や音楽などと同じように不正にコピーすることは、かたく禁止されています。」こういうことが技術・家庭で書かれておりますが、公民なども多分この程度のことかなと思います。  基本的人権というふうにとらえていって、なかなかそれは、著作権もそれに近い重要な権限であると、大臣、冒頭におっしゃいましたので、今回、著作権が相当広い範囲でいろいろ関係いたしますので、学校先生にもわかっていただけるもう少し何か追加的説明というか、あるいはこの権利は大事な権利ですよというふうな一つの思想は文部省の方でも少し考えていっていただいたらいいかと思いますが、何か今後これについて、きょう以降、工夫をされるようなことがございましょうか。
  28. 有馬朗人

    有馬国務大臣 率直に申し上げまして、最近、少なくとも本などで発表した著作権については、随分皆さん慎重になられましたね。そういう細かいところで使わせてくれというふうな許可を求めてくる回数が昔に比べまして非常に多くなって、私はよかったと思っております。  しかし、今おっしゃられましたように、さらに国民の意識を高めていく上で、文部省では従来から、著作権を含めた知的所有権について、学校教育で適切に取り上げられるよう指導してきておりますが、一般を対象といたしました著作権セミナーを全国で七カ所を初めといたしまして、学校の教職員や図書館の職員、都道府県職員等を対象にいたしました講習会を毎年実施いたしております。  さらに、青少年期から著作権尊重の意識を醸成するために、著作権についてわかりやすく解説した著作権読本を作成いたしまして、全国の中学三年生に配付しているところでございます。  このほか、特に本年は、明治三十二年、すなわち一八九九年に我が国の著作権法が制定され、施行されて以来百年を迎えることから、著作権法百年を記念いたしましてさまざまな事業を実施する予定でございます。このような事業を通じまして、著作権に対する国民の理解が一層高まるよう努力をさせていただきたいと思っております。
  29. 藤村修

    ○藤村委員 ぜひとも大事な権限であるということの意識を少し高めていっていただければありがたいと思います。  次に、国際的な問題。今回、そもそもの法改正が世界知的所有権機関の条約批准ということから出ておりますので、少し国際的な関係についてお尋ねをしておきたいと存じます。  特にアジア地域では、ちょっと前はドラえもんの海賊版とかいろいろなことが言われまして、日本の中では、一生懸命著作権が大事だ、そして法律をつくり守っていくとしても、一歩外へ出たときには、何かこれはぐずぐずになっている部分が相当多くあるのではないか。  私の関係者からもちょっと聞いたところで、日本の例えば音楽プロダクションの会社が中国とか東南アジアの地域に最近相当乗り出して、その地域に事務所を設けたり会社をつくったりしている。そこにある程度権限を与えてやると、例えば日本の国内で二千五百円のCDは、そっちでつくって今度逆輸入しますと、五百円ぐらいになってしまう。そうすると、今度は本社自体ががたがたになってくるということで、むしろ今控え目になって、もう事務所も引き揚げたとかいうのをきのうもちょっと聞いたケースがございます。  これは、どうも日本国一国だけで一生懸命やることでは済まない、本当にワールドワイドな問題だと思うんですが、特にアジア地域、近隣の地域に対しまして、日本著作権を守るという一つの考え方も当然具現されるわけでありますので、あるいは国際貢献とか国際協力という面でも、今後、この地域、アジア諸国に対する日本としての協力体制がどう考えられているのか、あるいはどう実施されているのか、お伺いしたいと思います。
  30. 近藤信司

    近藤(信)政府委員 お答えをいたします。  外国における海賊版を防止し、我が国の著作物等の適切な保護を確保するために、まず、特に途上国との連携協力を進めて、著作権制度の整備充実を促進していくということが大事なことだろうと考えております。  このため、文化庁におきましては、アジア太平洋地域を中心とした途上国を対象といたしまして、研修事業の実施でありますとか、国際的なセミナーあるいはシンポジウムの開催、専門家の招致などいろいろな協力事業を、毎年予算化いたしまして実施しておるわけでございます。  それから、個別の侵害行為に関しましては、我が国の権利者自身が現地に行きまして、民事、刑事の救済手続を活用して対抗措置をとることが必要でございますが、そういった制度が国々によって違うわけでございますので、このため、文化庁におきましては、平成十年度から、特にアジア諸国を対象といたしまして、権利の執行に関する協力事業、こんな事業をスタートさせたわけでございます。我が国の権利者が民事、刑事の手続をより効果的に活用できるように、各国の制度の内容でありますとか手続の実態等につきまして調査研究を行い、またその必要な手続を取りまとめ、国内の関係者にいろいろと情報提供をする、こんな事業でございます。  いずれにいたしましても、今後とも、途上国の実態やニーズを踏まえながら、こうした連携協力事業の充実に引き続き努めてまいりたい、かように考えておるところでございます。
  31. 藤村修

    ○藤村委員 資料もいただきまして、いろいろなことを協力関係としてやっていらっしゃるなということで、今後、ある程度日本がこの地域においての先進的役割を果たしていく、こういうことだろうと思いますので、それはまた日本の国益のためにも必要かと思いますので、ぜひ力を入れていただきたいなと思います。  次に、ちょっとこれも難しいのですが、視聴覚的実演という言葉がありまして、どんなことかいろいろ調べている範囲では、音楽はレコードで耳から聞くけれども、それを実演する人たちは視聴覚的実演という、そういうふうな言い方になるのかと存じます。  今回のWIPOの九六年の条約批准では実は二つありまして、今回はその片っ方に関連して著作権法の一部改正を今審議しているわけでありますが、もう一つの実演・レコード条約といったものも採択をされたと聞いております。  この条約は、検討当初はレコードなどの音の実演だけでなくて、映画とかビデオなどの視聴覚的実演についても対象とされていた。ただし、レコードの保護に熱心なアメリカ合衆国の相当な影響があって、結果的には音に関する実演のみを対象とするに至って、映画やビデオなどの視聴覚的実演については条約からどうも落ちこぼれているんじゃないか、こういうことを聞いております。日本は、むしろその辺はうまく、これは多分アメリカとヨーロッパとの国際的な利害の衝突もあるのかと思いますが、アジアにおいても日本は先進的役割を果たすならば、今度は欧、米の間に立って日本の役割というのが果たせるのじゃないかなと思います。  私も余りよく知らないのですが、宇多田ヒカルは権利の対象だが松嶋菜々子は権利の対象でない、こういうことでおわかりになる方は大体おわかりになるらしいのですが。つまり、音はいいんですよ、ただ、いわゆる実演者はだめなんですよというのは、これはしかし、見る側から言うと、やはり実演者がいてこそその音が生かされる、あるいは聞く方にいわば価値が生まれると思いますので、この辺、まず文化庁は今どうお考えなのかということと、それから、今後これはどのように検討していくのかということについてお聞きしたいと思います。
  32. 近藤信司

    近藤(信)政府委員 お答えをいたします。  今先生指摘になったように、映画やビデオなどの視聴覚的実演の保護に関する国際的な検討でございますが、平成八年の十二月に採択をされましたWIPO実演・レコード条約、この草案段階におきましてはその検討対象になっていたわけでございますが、アメリカの主張等によりまして、同条約は最終的には音の実演のみを対象にすることになったわけでございます。そのため、視聴覚的実演を対象として同条約の議定書を早急に検討することが決議され、現在その検討がWIPOにおいて鋭意進められている、こういう状況にあるわけでございます。  そういった国際的な検討は一面ございますし、また、映画のビデオグラム化でありますとか衛星放送など二次的な利用が大変進展もし、多様化もしてきているわけでございまして、視聴覚的実演に係る実演家の方々の権利を国内的にも検討する必要がある。これは、実は前々からの課題でございますけれども。そこで、文化庁におきましては、平成九年の十一月に、映像分野の著作権等に係る諸問題に関する懇談会、映像懇と略称しておりますけれども、これを設置いたしまして現在その検討を進めておるわけでございます。  それから、先生からも御指摘がございましたように、WIPOの場におきましても、アメリカとEUとの間ではやはり若干意見の対立がございます。日本は何とか、そのかけ橋と言ったらあれでございますけれども、そういったような観点から積極的にリーダーシップを発揮できるように、これもまた頑張ってまいりたい、かように考えているところでございます。
  33. 藤村修

    ○藤村委員 それは今からの課題でありますので、日本も百年の歴史を持つ著作権法の国ですから、世界に本当に紛争があるなら、ぜひこれは解決役に回ることがむしろ日本の国際貢献という意味でも意味があることだと思いますので、文化庁、ぜひ頑張っていただきたいなと思います。  ところで、今回はもう一つの方のWIPO著作権条約の批准手続に今入って、日本の国内法の整備が今回の法改正かと思います。これは、参議院先議ですから、ここで、衆議院で可決成立ということになれば、すぐにでも日本はWIPOに対して何か言うのか、それとも、よその国もまだたった七カ国かぐらいしかやってないようですから、まだまだ横にらみで様子を見るのか。これは、外務省に関係もしますが、文化庁としては今どういうふうに展開をしていこうと、あるいは何か問題点があるのかどうか、その辺をお尋ねしたいと思います。
  34. 近藤信司

    近藤(信)政府委員 お答えをいたします。  平成八年十二月にジュネーブで開催された外交会議で、先ほど先生がおっしゃいましたように、WIPO著作権条約とWIPO実演・レコード条約が採択をされたわけでございます。今回のこの改正法案、これをお認めいただきますならば、我が国の著作権法はWIPO著作権条約の義務を満たしまして、この条約を締結できることとなっておるわけでございます。  この条約の締結のために国会の承認をお願いいたしますことは、これは外務省の所管でございますけれども、外務省等のいろいろな事情がございまして、今国会中に承認というような手続までは至らなかったようでございますが、できるだけ早くこれが締結をされますように、引き続き、また外務省に対しましては要請をしてまいりたいと考えております。  また、WIPO実演・レコード条約の締結でございますけれども、これは先ほど来議論がございます、実演家に対する人格権の付与の問題等々の国内法の改正を行う必要がございます。ただ、これは、現在、この条約の附属書でございます視聴覚的実演に関する議定書がWIPOで検討中でございますので、文化庁といたしましては、WIPO実演・レコード条約とこの視聴覚的実演に関する議定書をあわせて締結することが適切であろう、こう考えておりまして、先ほども少し申し上げましたけれども、WIPOでの検討の場で私どももいろいろな提案もさせていただいておりますので、この議定書が早期に策定されるべく国際的にも貢献に努めてまいりたい、こういうふうに考えておるところでございます。
  35. 藤村修

    ○藤村委員 次の問題は、頒布権という、これも難しい概念のように思います。  今まで映画の著作物についてのみ頒布権というものを認めていましたが、今回は、この改正案は、それ以外の著作物一般にも譲渡権という形で認めようとしています。頒布権というのは、著作物を一たん譲渡しても権利は消尽、消えませんが、その後のすべての譲渡に対して頒布権はコントロールしていると。  今回は譲渡権というものを設けて、これは第一次譲渡までがコントロール下にあって、その先は権利がなくなるというふうに理解をしているのですが、この頒布権と譲渡権というのは相当大きな差がある権利なのか、あるいは相当似ている権利なのか、権利の強弱の差はどの程度なのか、その辺をまずお聞きしたいと思います。
  36. 近藤信司

    近藤(信)政府委員 お答えをいたします。  今先生から御指摘がございましたように、頒布権と申しますのは映画の著作物に限って認められた権利でございまして、その権利の及ぶ範囲は、映画フィルムでありますとかビデオなどの譲渡と貸与、この両方に及ぶものでございます。  今回予定をいたしております譲渡権は、映画以外のすべての著作物に認めることを考えておりまして、その権利の及ぶ範囲は、出版物でありますとかレコードなど、映画以外の著作物の譲渡に限られているわけでございます。ただし、これらの貸与につきましては、別途、貸与権という権利がまた既にあるわけでございます。  権利の強弱のお尋ねでございますが、どちらも許諾権としては同じではございますが、一たん適法に譲渡された後においても権利行使をすることができるかどうか、こういう点で大きな違いがございます。  先生指摘のように、譲渡権は、第一次譲渡がなされた後は、中古販売などの第二次以降の譲渡につきましては権利が及ばないわけでございますが、頒布権は第二次以降の譲渡につきましても権利が及びますから、中古販売等にも権利が及ぶ、そういう点では頒布権の方が強力な権利である、このように理解をいたしております。
  37. 藤村修

    ○藤村委員 そこで、きょうまでは映画の著作物についてのみ頒布権を認めていた。ただこれは、もう今や映画というのは非常に一つのパートになりました。むしろゲームソフト、これも映画の世界以上にやはりいろいろな広がりがあって、それも映画館に行かなくて、家庭でゲームソフトは楽しめる、こういうものであります。  すると、映画の著作物についてのみ頒布権が認められていたのですが、今回の改正では、例えば今のゲームソフトとかビデオ、これも映画のビデオを家庭で見られるわけですが、これについては映画の著作物としてほぼ同じように解釈をするのかどうか。何か著作権審議会によりますと、この判断を留保したと聞いておりますが、今時点で文部省はどういうふうにお考えなんでしょうか。
  38. 近藤信司

    近藤(信)政府委員 これがなかなか難しいのは、著作権法上、映画そのものにつきましての定義がないわけでございまして、ただ、「この法律にいう「映画の著作物」には、映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され、かつ、物に固定されている著作物を含むものとする。」となかなか難しい規定がございますけれども、歴史的には、映画とはいわゆる劇場用映画を念頭に置いている、こういうふうに考えているわけでございますが、現在では、生放送を除きまして、ビデオ制作をされたテレビ放送番組なども映画の著作物に該当すると考えられておるわけでございます。  また、今御指摘にありましたテレビゲームにつきましても、これまでも幾多の判例があるわけでございます。例えば昭和五十九年の東京地裁の判決、パックマン事件と言っておりますけれども、これ以降、多くの事件で、テレビゲームにつきましては、その映像は映画の著作物に該当する、こういう判決が下されてきたわけでございます。そういう意味では、今回の判決はこれまでの流れとは異なる判断を示したものである、そういう意味では、確かにちょっと異例な判断であるかなと。  著作権審議会におきまして、今回のこの譲渡権の新設と絡みまして、いろいろと映画の著作物あるいはゲームソフト等について議論があったわけでございますが、何分にもいろいろと複雑な問題もございます。また、こういう判例の動向がございますので、基本的にはさらに少し検討を、特に現時点で大きく映画の著作物について変える必要はないのではなかろうかと、しかし、なお今後そういったマルチメディア進展等をにらみながら引き続き検討していこう、こういうのが著作権審議会の考え方であった、こういうふうに理解をいたしております。
  39. 藤村修

    ○藤村委員 今、判例をおっしゃった。つい先日も、これは一審ですが、五月二十七日に、「中古ゲームソフト訴訟」という見出しで、メーカー側は「敗訴に戸惑い隠せず」、小売店側は「メーカー支配に風穴」と、やや流通部門での戦争に近い状態であろうと思います。  今やゲームソフト市場が五千四百億円ぐらいですか、そのうち中古が三割近くで一千四百億円市場ぐらいになっているということで、これは割に日本の特殊的事情もあるのだろうと思いますが、こういうことからも、さっきもおっしゃった、映画の著作物とは何かということが法律上も明確になっていないためにこういう紛争が起きるし、裁判所の判断も時代によってちょっと変わってきているようにも思いますので、これは、国会の問題としては、著作権法で映画の著作物とは何かということを、ここに来てやはり少し整理をしたり明文化したりする必要があると思いますが、今、内閣、政府の方ではどういうふうにお考えでしょうか。
  40. 近藤信司

    近藤(信)政府委員 この問題につきましては、今申し上げましたように、裁判も若干揺れているようでございますし、ゲームソフト流通あるいは販売というものが大変大きなシェアも占めているわけでございます。また、著作権審議会でもこの問題を今後引き続き研究をするという課題になっておりますので、もう少しそういった裁判の動向、実は東京地裁以外にも、大阪地方裁判所でも同様の事案が係争中でございます。それから、今回の五月二十七日の訴訟につきましても、ゲームソフトメーカー側は上級審に控訴をするというような意向でもございますので、私どもといたしましては、もう少しこういった裁判の動向を見ながら、また著作権審議会でも引き続き御議論していただこう、こんなふうに考えているところでございます。
  41. 藤村修

    ○藤村委員 時間でございますので。  裁判の動向を見ながらというのはやや腰が引けていると思いますので、やはり国会は国会で法律をつくるところでありますから、これはこちら側の判断で映画の著作物というのははっきりさせろ、こういうことを一つ言いたかったわけでございますので、以上、また今後とも検討していただきたいと思います。  終わります。ありがとうございました。
  42. 小川元

    小川委員長 次に、西川知雄君。
  43. 西川知雄

    西川(知)委員 西川知雄でございます。  ことしの六月一日に参議院委員会がございまして、そのときにJASRACのことについて松あきらが質問をさせていただいたのですけれども、そのときの課題の一つとして、JASRACがいろいろな使用料の徴収とか分配をやっているわけですが、それに係る一層の情報公開ということについて質問があったと思うのです。このとき近藤政府委員が、  使用料の徴収・分配に係る統計資料の公開につきましては、信託者のプライバシーなどにも触れる重要な問題でもございます。どんな分野のといいましても、その年の、例えば演歌なら演歌、こういう分野でこれだといえばある程度また推測がされるというようなことがあるのかもしれません。   いずれにいたしましても、どの程度まで情報公開するかにつきましては、JASRAC内部において十分検討されることが必要だろうと考えておりますし、文化庁といたしましてもまた必要に応じて適切に指導をしてまいりたいと考えております。 こういうふうに御答弁をなさったのでございます。  そこで、まず基本方針を大臣に確認したいのですが、文化庁として必要に応じて適切に指導をしていきたいということは、一層の情報公開を前向きに考えていく、こういうことだと理解しているのですが、それはまずよろしゅうございますか。
  44. 有馬朗人

    有馬国務大臣 JASRAC、すなわち日本音楽著作権協会は、音楽著作権に関する使用料の徴収・分配業務を行う唯一の団体であると同時に、公益法人であることから、社会的な信頼を高めるためには、事業、運営に関する情報公開を積極的に進める必要があると考えております。  この協会の持っております情報は、我が国の音楽利用実態を知る上でも大変貴重なものが多くあります。プライバシーの問題に対する配慮などにはもちろん注意していかなければならないと考えておりますが、できるだけ広い範囲にわたって、そしてまた簡便な手段によって情報公開が進められるよう、文部省といたしましても同協会を指導してまいりたいと思っております。
  45. 西川知雄

    西川(知)委員 そこで、近藤さんに確認なんですけれども、今、いろいろなシステムで、例えばジャンル別で幾らの使用料がどういうふうに分配されているかというのは、今のところはできないのですけれども、システム技術的に変更して、これはお金がかかる話ですから、幾らぐらい新しい予算が要るか検討しないといけないと思うのですが、そういうシステム上、技術上はまずこれは可能かと。可能だとすれば、どれぐらいかかって、どうやってやっていったらこれが実現するか、そういうことをちょっと検討していただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  46. 近藤信司

    近藤(信)政府委員 お答えをいたします。  先ほど先生から御指摘がございました六月一日の参議院文教・科学委員会での質疑のやりとりでございますが、この内容につきましては、早速JASRACに話を伝えたところでございます。  JASRAC側といたしましては、情報公開の推進は重要な課題であるとして受けとめておりまして、昨年の十一月に新たに委嘱をいたしましたマスコミ出身の常勤理事を中心にいたしまして、広報のあり方も含めた情報公開の問題に積極的に取り組んでいきたい、こういうお考えのようでございます。  実は、JASRACはこれまでも、会報の発行はもとよりでございますけれども、インターネットによる広報でありますとか、あるいは使用料分配の多かった国内及び外国作品のベストテンですとか、国内作品のうち、録音、カラオケ演奏のベストテン、こういった情報を半期ごとに公表したり、あるいはいろいろな社交場などの継続的な利用者に対しましては、JASRACの事業内容を紹介したJASRACだよりなどを送付する、こういった事業も実施をしておるわけでございます。  いずれにいたしましても、こういった事業の充実でありますとか新規事業の実施につきまして、JASRACともよくまた連絡を密にしながら、さらに情報公開の促進に取り組んでいきたい、こういう考え方を持っております。
  47. 西川知雄

    西川(知)委員 それで、さっき申しましたように、ジャンル別にどういうふうな使用料が徴収されているとか分配されている、そういうことをシステムを変えてやることは技術的には可能なんですね。
  48. 近藤信司

    近藤(信)政府委員 お答えをいたします。  技術的という以前に、実はJASRACともいろいろ話を申し上げているわけでございますが、これもまた参議院でも松先生から御指摘がございました、演歌でありますとか例えばニューミュージック、こういうジャンル別の統計、そして、その統計を区分けいたしまして、例えば使用料の分配額をオープンにしていく、こういうことでございますが、どうも作家の気持ちとして、そういうジャンル別に振り分けられるということにまだ若干の抵抗感がある、こういったようなお話もございます。  そういったことで、この問題につきまして、今すぐに可能かどうかという問題点があるわけでございますが、いずれにいたしましても、いろいろな情報をできる限り、できないものはこれまたプライバシーの問題等であるわけでございますけれども、そういったものを、何ができるか、これまたさらに研究をしてまいりたいと思っております。
  49. 西川知雄

    西川(知)委員 今の御回答は、技術的には可能である、ただ、いろいろな人の気持ちの問題である、そういうお話だったと思うのです。  これはぜひ公開をしてほしいといういろいろな要望が、例えば全国商工団体連合会、そういうところからも来ております。こういうところに、さっきおっしゃったJASRACのいろいろな情報とかそういうものが余り自動的に伝わっていない。来れば上げる、こういうようなことらしいのですが、関係団体でそういう要望書を出しているとか、そういうところには自主的にJASRACの方からもそういう情報が行くような、そんなような指導もしていただきたいと思うのですが、この点について最後に確認したいのです。
  50. 近藤信司

    近藤(信)政府委員 お答えをいたします。  今回、特に附則十四条の廃止というようなことになりますと、また大変多くの方々から使用料をいただく、こういったような問題も出てまいります。したがいまして、できるだけ多くの方々にいろいろな情報を提供する、例えばインターネット活用するというようなことは、技術も進歩しているわけでございますから、何ができるか、またよく相談をいたしまして、できるだけ幅広に、前広に情報提供をしていく、こういう方向JASRACとまた相談もしてまいりたいと思っております。     〔委員長退席、栗原(裕)委員長代理着席〕
  51. 西川知雄

    西川(知)委員 私は、質問して回答をいただくと、その回答がちゃんとなっているかというのをまた次の委員会で聞くことにしておりますので、またこういう機会に質問いたしますので、それまでに詰めておいていただければと思います。  ところで、これは質問通告していなかったのでまことに申しわけないのですけれども、要望と、それに対する簡単な回答を文部大臣からいただきたいのです。  さっき藤村委員の方から映画の著作権という話が出ました。実は私、弁護士をやっているときに、いわゆるフィルムファイナンシングといって、映画をつくるときに、いろいろな資金を集めて、著作物をつくって、そしてディストリビューション契約をつくって、それのいろいろな担保とか、また、ほかのセキュリティーを整備して、いろいろな関係でそういう仕事をずっと、何十本というフィルムの制作を金融の面からやっておりまして、例えば「ハワーズ・エンド」とか「クライング・ゲーム」とか、大分前のカンヌの映画祭でグランプリのノミニーに四つなったうちの二つを、それを私、関与したりしてやっていたのです。  ところが、これを著作権というのが、せっかく今度の法律改正等でいろいろな整備をされてきて、整備されるのはいいのですが、日本にそういうような映画なりそういうものがもっともっとつくられて、そしてそれが世界に広まっていかなければ、これはせっかく整備しても余り意味がないと思うのですが、ここで一番問題であったのは、やはりこれは税制との関係がありまして、形式的には、著作権というのは例えばあるAという会社の人に行っている、ところが、実質的な著作権というのは、いろいろなまた別のディストリビューターに行っている、こういうような見解が例えば国税庁の方から個々の案件について出されるということで、そこの国税庁と、そして今度の映画をどんどんファイナンスでつくっていこうというこのバランスが実は全然うまくいっていないために、ほとんど、こういういろいろな国際的なファイナンスを利用して映画をどんどんつくっていこうという機運が実はだんだんしぼんでいっているのですね。  これは質問通告になかったのであれなんですけれども、ぜひこういうことを問題点として認識していただいて、文部省としても、関係当局、大蔵省とか国税庁と詰めて、日本の映画産業の発展のために、そしてそういうせっかく映画の著作物ということがだんだんこういう審議を通じてハイライトされてきましたので、そういう点をぜひ一度話していただきたい、そういうふうにちょっと要望したいのですが、大臣の御意見をお願いします。
  52. 有馬朗人

    有馬国務大臣 私も、映画ファンといたしまして、そういうことは必要だと思いますので、文化庁等と相談いたしまして検討させていただきます。
  53. 西川知雄

    西川(知)委員 実は、著作権と直接関係ないのですが、大臣にぜひお尋ねをしたいと思っていることがありますので、ちょっとそれを聞きたいのです。  私も弁護士をやっていまして、こういう著作権のこともやっていましたけれども、今、これはいろいろなところで言われていると思うのですが、具体的に、例えば大学に入る。いろいろな学部があるものですから、ちょっと限定しまして、法学部に入る。そうすると、この中にも法学部の出身の方がたくさんいらっしゃると思うのですが、昔は、大学というところは、法学部でもそんなに勉強というのは余りやらずに、いろいろな話をする。音楽の話をしたり、哲学の話をしたり、政治の話をしたり、そういうことで頭を柔軟にして、そして勉強も多少して、そして卒業していった、こういうことなんですが、今、どうも資格社会、資格社会、こう言われ過ぎていまして、例えば東大の駒場に入って駅をおりてくると、そこにずっと予備校のパンフを持っている人がいる。もう大学に入ったんだから予備校は関係ないじゃないかと思うと、その予備校というのは司法試験の予備校で、これは一年生、大学に入った次の日から、今度はまた司法試験を受けるための予備校がある。  私が前にいた事務所は、毎年、研修所から三百人ぐらい面接に来まして、採るのは五、六人なんですが、それを聞いてみると、半数以上と言っていいか、八〇%ぐらいが全部その予備校に行っていたというのですね。それで、予備校に行かなかった人はほとんどいない。しかも、それは二年生からやっている。一年生からやっている人もいましたね。  そんなふうにして、そういう人ほど余計試験に通りやすい。そういう人がエリート裁判官になったり検察官になったり役人になったりしていく。そういう人がたくさんこれから出てくるとなると、これはダブルスクーリングの問題じゃなくて、そういうこと自体が極めて何か正常じゃない、危険なことじゃないか、私はこういうふうに感じざるを得ないわけですね。  それは、いろいろな問題があると思うのです、その中には。結局、それは大学の教育のあり方、これが余りよくないからそっちの方に行っているんじゃないかとか、また、司法試験の問題のあり方、それが余りにも難し過ぎるからこういう学校が必要じゃないかとか、いろいろな問題があるのですが、大臣として、こういうような、大臣は理科系でございますからあれですが、いろいろな学部によってはやり方は違うと思うのですが、今の私が申し上げた例を前提といたしまして、そういうことについて望ましいと思われているのか、これはぜひ改善せぬといかぬなというふうに思われているのか、その辺の御認識をお尋ねしたいと思います。
  54. 有馬朗人

    有馬国務大臣 先ほどダブルスクーリングの問題ではないとおっしゃっておられましたけれども、最近大学で、私は問題だと思っているのです、ダブルスクーリングが大変行われている。それから、今おっしゃられた予備校の問題、これは私は大変残念だと思っています。  やはり大学がきちっとした授業をしていくべきである、そして学生諸君もそれに対してきちっと授業を聞き、そしてまた余裕があれば仲間たちと大いに話し合う、あるいはセミナー等々をどんどんやっていく、こういうふうなことが必要であると思っています。  特に、法学部の一部の学生が先生の御指摘のことがあろうかと思うのですが、本当に法曹界にとって必要な、幅広い、社会的な、人間として社会性を十分持って、特に人間に対する深い理解を身につけるということは非常に必要でございまして、そういうところで、単に資格試験に通ればいいというような、そういうことだけを、技術だけを学んでくるということは、大変残念に思っております。  やはり大学教育というのは、自分でしっかり主体的に物を判断する、自分で考える、そして自分で学んでいく、そういう柔軟でかつ総合的に判断できる課題探求能力の育成を重要視していかなければならないと思っております。  また、もちろん、専門的素養のある人材というものが育っていかなきゃいけませんので、そういう専門的素養のある人材として活躍できる基礎的能力を培うということが基本としてあります。そういう意味で、大学に関する改革をずっと進めてきた次第でございます。
  55. 西川知雄

    西川(知)委員 大臣のおっしゃることは、一般論として全くそのとおりだと思うのですが、そういうふうなことは望ましいのですが、それではこれは問題は全然解決しない。  きちっとした授業を受けて、でもすぐにはきちっとならないわけですから、そんなことを言っていれば、自分はちゃんとした就職ができないし、将来はうまくいかない。これは、ほかの人はそんなこと関係なしに予備校とかそういう司法試験のゼミに行くわけですから、私は、もう少し具体的に、こういうふうなことをやったらいいんじゃないかということをちょっと私なりに考えてみておりますので、大臣の御所見をお伺いしたいのです。  私、たまたま、授業というのが余り少ないころに大学におりましたもので、ゼミにたくさん入っておりまして、私は、民法とか刑法とか全部入れまして十三個、大学の法学部のときに入っておりました。そこでよかったことは、やはり少人数でいろいろな判例を、例えば、事例があって、それをディスカッションする。こういう問題はここにはこうあるんだよ、裁判官はこう言っているけれども、これは実は違うんじゃないかとかいって、そういうふうに、正解を求めるのではなくて、要するにインクイジティブに問題点をいろいろなふうにして洗い出していく。これは、いわゆるブレーンストーミングとかいろいろなことですごくよかった、私は、そういうことをふやすことがまず大変必要だと思うのです。  ただ、そういうところに参加されている先生は、そんなことばかりやっていると自分のいわゆる評価が余りされないんじゃないかというふうなことを心配される方もいらっしゃるので、しかし、そういうふうにゼミをたくさんやって、今言ったような、柔軟に頭を使う、そういうふうな学生の訓練をしている先生には評価をしてあげるということがまず必要だと思うのですが、この点について大臣はいかがお考えですか。     〔栗原(裕)委員長代理退席、委員長着席〕
  56. 有馬朗人

    有馬国務大臣 私は常々、大学のなすべきことの最も重要なことは、よい教育を施すことであるというふうに言っております。そしてまた同時に、大学の教育をよりよくするためにきちっとした研究もやっていかなきゃならない。特に研究を重要視するのはさらに大学院のレベルと思います。学部ではやはりまず第一に教育、そして研究ということであると思います。  そこで、セミナーなどをどんどんやって教育の上で活躍してくださる方たちは大いに評価しなければならないと思っています。ですから、単に論文の数であるとか、理科系でいえば特許の数だけではなく、やはり教育にどういうふうに参画し、どういうふうに努力をしてきたか、そしてまた、どういういい成果を上げてきたかということは十分評価すべきであると考えておりますし、大学審議会等々でもそういう方針を出しました。そして今日は、大学に対して、もっと教育をしっかりやってくださいということをお願いしておりますし、各大学がそういう点について相当検討をしていると思います。
  57. 西川知雄

    西川(知)委員 では、今の積極的な御発言で、そういう方向でぜひやっていただきたいと思います。  もう一つ、理科系の分野では割合、大学の先生と民間との交流とかが産学協同ということで言われているんですが、法学部の先生も、例えば大学の先生が司法研修所の教官になったり民間の法務部長になったり、守秘義務の関係でいろいろと問題はあると思いますが、そういうようないろいろな交流をもっとふやしていくということも、実際に、哲学的な論理上の話ばかりしている先生もたまにいるわけですけれども、そういうことをなくすためにやはりこれは必要じゃないか。  あるとき、私が弁護士をやっているときに、電話がアメリカの企業からかかってきまして、労働法のことについて日本の話を聞きたいと言うので、私答えましたら、基本的なことを言ったら怒られまして、おれはそんなことは知っている、実はおれはハーバードの労働法の教授なんだと言って、今一時そういう会社に勤めているわけですね。これがいいかどうかはよくわかりませんが、そういうふうな交流をもっとこういう分野でもフレキシブルにやれる、そういう体制を組むべきだと私は思うのですが、文部省もそういう方向で考えていらっしゃるのかどうかということを御回答願いたいと思います。
  58. 有馬朗人

    有馬国務大臣 一般的に申し上げまして、大学の教官が産業界や地域社会と協力をすることは極めて望ましいと思っております。それは双方にとって非常にいいことだと思うのです。  大学にとっては、社会がどういうことを要求しているかということを身を持って体験する、そういう意味で役に立ちますし、また、大学で教えている、研究していることなどを社会に還元するという意味で、社会とのつながりは大いにやるべきだと思っております。例えば法学部の先生であれば、その法学の知識をいろいろな場所で、講義を大学だけでなく外でする、そしてそれに対する反応を受けてくるというふうなことも必要であろうかと思っています。  特に、国立大学教官の兼業につきましては、これは主に理科系になりますけれども、平成九年四月に、民間企業への研究開発技術指導等の兼業許可を可能とするようにいたしました。その緩和に努めているところでございますが、国立大学教官が民間企業の法務部門で実務を行うということは、余りにも密着し過ぎているというふうな問題がございまして、現在の許可基準では認められておりません。しかし、産業界との協力をより一層やるべきだということ、これは大いに推進をしたいと思っております。  したがいまして、文部省としましては、今後、民間企業等での豊富な経験を有する方を国立大学の教官に採用する、こういうことや、逆に、国立大学の教官が多様な経験をすることが可能となるような方策について検討しているところでございます。
  59. 西川知雄

    西川(知)委員 時間が来ましたので終わりますけれども、先ほどのような、ちょっと正常じゃない状況が生まれる背景にはいろいろなことがあると思います。そのほかに、先生が自分の趣味でいろいろな趣味的な授業をするとか、そういうこともありますし、また、学生からの評価というものが余り取り入れられていないからそういうこともあると思いますが、その辺も勘案して、ぜひ今おっしゃった線で、いい教育環境が生まれて、さっき言ったような、資格のためにだけ大学を利用して卒業資格だけ取る、そんなことのないようにしていただきたいと思います。  私の質問を終わります。
  60. 小川元

    小川委員長 次に、山原健二郎君。
  61. 山原健二郎

    ○山原委員 ちょうど三十年になります。  写真の保護期間につきまして、公表後五十年と規定をされて、それが九六年にやっと死後五十年というふうに延長されました。しかし、まだ不十分な点がございます。  まず、写真の保護の問題ですが、今回の改正で、写真や美術の新宿アルタビジョンなどの新しい展示形態にも上映権として著作権が認められること自体は、著作権者権利の拡大になるもので喜ばしいことだと思います。しかし、置き去りにされていることが多いわけでございまして、それが一九五六年以前に公表された写真著作権の問題です。  アメリカでは、今から百年以上前、一八八四年に肖像写真の保護を認めた判決が出されておりますが、そのとき、ハンドという判事は、どんなに単純な写真であっても、撮影者の人格的影響を受けていないものはない、こう述べております。ことしは、日本著作権法百周年の年でございますけれども、既にアメリカではこのような認識が基礎にあるわけです。  ところが日本では、写真における創造性についての認識が写真著作権保護期間を他と比べて短くした一因と言われております。なぜ写真の著作権が文芸や芸術作品と比べて保護期間が短くなったのか、文化庁としての認識を最初にお伺いをいたします。
  62. 近藤信司

    近藤(信)政府委員 お答えをいたします。  写真の著作物保護期間の問題でございますが、御指摘のとおり、旧法におきましては、ほかの著作物著作者の死後三十年とされていたところ、写真につきましては公表後十年、それが昭和四十二年以降は公表後十三年とされ、昭和四十五年の現行法制定時におきましても、他の著作物著作者の死後五十年とされたところ、公表後五十年、こういうふうになっておったわけでございます。  このように、写真の著作物保護期間をほかの著作物と異なる取り扱いにした理由でございますが、一つには、著作者名の表示を欠く場合が多く、かつ、その著作者を特定することが困難であったことから、著作者の死後起算とすることがなかなか難しかったという事情一つございます。  また、当時、世界各国におきます写真の著作物保護期間は公表時起算とするものが多数であったこと、あるいは条約上も、ベルヌ条約は創作後二十五年、万国条約上は十年の保護期間で足りる、これは、平成八年十二月に採択をされましたWIPO新条約では、写真の著作物につきましても死後五十年になったわけでありますが、こういったいろいろな事情によるものであった、こういうふうに私どもは理解をいたしております。
  63. 山原健二郎

    ○山原委員 ここに、御承知と思いますけれども、日本写真家協会会長の田沼さんの写真集「下町今昔物語」というのがあるわけでございます、これは前からいただいておるのですが。この中に、一九五六年以前に公表された写真が全百三十一ページのうち二七%もあるわけですね。これらについては、本人が存命中なのに現在の著作権法でも保護されていません。マルチメディアの媒体での販売を差し控えるような文化的後退現象もあると聞いているわけでございます。九六年、レコードについては遡及が許されまして、写真については遡及がない、こんな不合理なことはないと、写真家の方々が正直に、率直に申しておったことを覚えております。  六月九日、おとといですね、私の地元の高知新聞を見ますと、これは全国へ配信されたものだと思いますけれども、学芸欄に田沼さんが書いておられるのです。どんなことを書いておるかと思って、きょうこの質問があるものですから、ふと見ましたところ、こういうふうに書いてあるのです。この作品著作権が切れているので使用料は払いません、こう言われたというのですね。おいおい、私はまだ生きているんだよ、ただで使われちゃたまらないよと言いたかったと書いておられます。もう実感として、こういうことですね。  こういう事態について私は前回も質問をしたのですが、一向に改まらない。協会の方でもシンポジウムを行うなど活発な運動をしているようですが、文化庁として、どう審議し、どういう具体的方策をお考えになっておるか、お聞かせいただきたいのです。
  64. 近藤信司

    近藤(信)政府委員 お答えをいたします。  写真の著作物につきましては、旧著作権法におきましてその保護期間が公表後十年であった、こういったために、昭和四十一年以前に著作権保護期間が満了したもの、すなわち、原則として昭和三十一年、一九五六年以前に公表されたものにつきましては現行著作権法保護が受けられないわけでございます。平成八年に著作権保護期間が死後五十年に延長された後も、既に著作権が消滅しているものについては権利が付与されていない、こういう取り扱いでございます。  この問題につきまして、関係団体から、既に著作権が消滅しているものについても遡及して保護するよう大変強い御要望があることは私ども十分に承知をしておるわけでございますが、やはり一度権利が消滅したものにつきまして、これはさまざまな利用関係がその後形成をされておるわけでございますので、再度保護を復活させることといたしますと、既存の利用関係に大変重大な影響を与えるということが考えられるわけでございます。また、平成八年に法改正をしたわけでございますけれども、その改正に先立つ著作権審議会の検討におきましても、保護期間が切れた写真の著作物保護を復活させることにつきましては反対意見が大勢であったわけでございます。  写真の著作物保護のあり方につきましては、いずれにいたしましても、保護期間の問題も含めまして、今後さらに著作権審議会の意見を聞くなど検討してまいりたい、こういうふうに考えておるところでございます。
  65. 山原健二郎

    ○山原委員 今回の改正で、大型ビジョンなどにも写真の上映権が拡大をされました。大型映像年鑑の九七年度版を見ますと、屋外型ビジョンは三十九カ所、競馬場、球場など合わせると百二十カ所以上あります。しかし、屋外で全国に三十九カ所あると言われるビジョンに五六年以前の写真が使われることになれば、一層無権利が広がるという問題がございます。新宿アルタビジョンでは、一日約百万人の視線を集めていると言われるわけですが、こういう状態ですね。  田沼会長がこういうふうに言っています。幸い、良識のある日本出版界では、旧法を機械的に当てはめず、写真も文学、美術並みに扱っている、しかし、電子出版インターネットなどニューメディアユーザーが参入してくると、現在のような良識を期待することは困難になってくるだろう、こう発言をしておられます。  権利者と写真の利用者との契約などは、良識に頼るのではなくて、権利として確立されることが求められているのではないかと思うのでございます。難しいことがあることはわかりますけれども、これはぜひ実現のために努力をしていただきたいと思いますが、文化庁の見解を伺います。
  66. 近藤信司

    近藤(信)政府委員 お答えをいたします。  今回の上映権の拡大、これは、映像表示技術進展に伴いまして、動画のみならず写真でありますとか美術等に示されました著作物等あらゆる情報が上映されるようになっておる、保護水準のバランスを図っていく必要があるであろうということが一つございます。また、WIPO著作権条約におきまして著作物の公衆への伝達権が規定をされている、こういったことを踏まえまして、すべての著作物に上映権を認めることとしておるわけでございます。  この上映権の拡大につきましては、写真家の団体から長い間要望があった事柄でございまして、ディスプレーに関する権利を実質的に認めるものであり、写真の著作物保護に資するものと考えております。  ただ、今回の改正の効果は、先生指摘のように、現在も著作権が消滅をしていない写真の著作物について及ぶものでございまして、既に著作権が消滅をした昭和三十一年以前に公表されたものにつきましては、残念ながら効果は及ばない。いずれにいたしましても、この問題のポイントは、一度著作権保護を受け、保護期間が満了したことにより消滅した著作権を復活させることが法的に可能かどうかという大変難しい問題があるわけでございます。  いずれにいたしましも、著作権審議会に意見を聞くなど、引き続き研究をしてまいりたいと思っております。
  67. 山原健二郎

    ○山原委員 レコードの場合は遡及が行われたわけですから、これはぜひ努力をしていただきますように要望しておきます。  次に、障害者の情報アクセスと著作権法について質問をしますが、一九八八年の著作権法改正の際、当委員会で、障害を持つ人の情報利用について配慮するよう附帯決議が全会一致で決定をされました。  ことしの六月四日に議員会館で、障害者放送協議会の主催で、障害者の情報アクセスと著作権法改正を考えるシンポジウムが開かれております。そして要望書も出ているわけですが、公表された著作物に付加し、同時通訳を含む情報保障が許諾等を経ず円滑に行われるようしてほしいと要望書はなっておりますが、このような要望について文化庁はどのように把握をされておるか伺っておきます。
  68. 近藤信司

    近藤(信)政府委員 お答えをいたします。  障害者の情報へのアクセスに係る問題でございますが、去る六月四日に、障害者放送協議会主催のシンポジウムが都内で開かれまして、聴覚障害者のための字幕の放送、送信に関する問題でありますとか、障害者の情報アクセスと著作権との関係について議論が行われたと承知をいたしております。  文化庁も、担当職員が出席をいたしまして、各団体等の御意見を承ったところでありますし、また、できるだけ近いうちに、文化庁といたしましては、こういった障害者団体の関係者の方々と一度またよく話し合いをする場を設けてみたい、こういうふうに考えているところでございます。
  69. 山原健二郎

    ○山原委員 現在、著作権法第三十七条は、公表された著作物を、目の不自由な人々のための点字複製と録音の権利規定しているだけでございます。だから、新しいメディアができるといろいろと問題が起こっているようでございます。日本脚本家連盟がパソコン通信ホストのニフティ社を相手取って包括契約を迫っているなど、結果的にはニフティ社が著作権使用料を支払ったけれども、ボランティアにいわば負担をかけるようなことになる場合も起こり得るわけでございます。  ところが、新しいメディア、文字多重放送、インターネット、パソコン通信などについての規定著作権法に盛り込まれていないので、パソコン通信のように、許諾や使用料の面で聴覚障害者やその団体が負担を負うことになる場合も想定をされるわけでございます。そうすると、許諾が障害者団体に任され、使用料が転嫁されることになるわけでございます。そうなると、障害者が情報にアクセスする権利が実質上保障されていないことになってしまうのではなかろうか、こう思います。その点、文化庁としてどのようにお考えになっておるかということをお聞きしたいのです。
  70. 近藤信司

    近藤(信)政府委員 お答えをいたします。  聴覚障害者のために放送される番組の映像に字幕を入れるとか、あるいは放送された音声内容をネットワーク送信する字幕RTを行うことにつきましては、その過程で音声内容の要約でありますとか省略が行われ、翻案権のほか、あるいは同一性保持権、こういったものが働く場合があり得るわけでございます。  そこで、いろいろな障害者の関係の方々から、こういった法制度を改正し、これを制限したらどうか、こういうふうな御提案もあるわけでございますが、同一性保持権という著作者人格権を一律に制限し、一切著作者の了解をとらなくてもよい、こういう法律改正というのはなかなか難しい面があるのではなかろうかと思っております。また、国際的なコンセンサス、こういったものもなかなか現状では得られているとは言えない状況にある、こういったようなことからなお検討すべき課題が多々あるのではなかろうか、こんなふうに考えておるわけでございます。  字幕放送に係る著作権等の処理は、現在、大体は適切に行われていると承知をいたしておりますけれども、仮に問題があるのであれば、必要に応じましてまた関係者に協力を求めてまいりたいと思っておりますし、字幕RT、こういった新しい技術と申しましょうか、こういったものを行うに当たりまして、権利処理が簡便にかつ円滑に行われるような仕組みが整備をされていくということは大切なことでございますので、そういった適切なルールづくりにおきまして関係者の協議の促進を図ってまいりたい、このように考えております。
  71. 山原健二郎

    ○山原委員 憲法二十五条に、すべて国民は、健康で文化的な最低限の権利を保障するということがございます。それを持ち出すまでもなく、八八年の附帯決議に私も加わったわけですが、その当事者としても、適切公正に利用することができる方策をさらに具体化すべきだと思います。  大臣にお伺いしますけれども、約三十六万人が聴覚に障害があると認定され、高齢に伴う難聴者は六百万人と推定をされているわけでございます。字幕放送は、緊急を必要とするときライフラインにもなるので、ニュースを含めその普及を促進することは今後の課題でございます。そこに著作権法などの縛りで、目や耳に障害があるというだけで何らかの負担がかかったりしないように、しっかりと検討をすべきだと思うわけでございますが、これは文化庁だけでなくて他の省庁とも関係をしてまいると思いますので、大臣お答えをいただきたいと思います。どうかその点で、広範な著作権を確立していただきますように心からお願い申し上げるわけですが、その意味でお尋ねをしたいと思います。
  72. 有馬朗人

    有馬国務大臣 科学技術が進んでまいりまして、障害者の方々にお役に立つことがあれば積極的に使っていかなきゃならないと思っております。  障害者と著作権との問題に関しましては、障害のある方々への配慮と著作権保護とのバランスを図っていかなければならない、これが重要であると考えております。これまでも、字幕ビデオの作成や視覚障害者用の録音テープの作成に関して、簡便で低廉な許諾システムの形成に努めてきたところでございます。  一方、最近の技術の発展に伴いまして、コンピューターを活用した障害者への新しい情報提供の仕組みが登場してきております。文部省といたしましては、これらの新しい動きを含め、障害のある方々が著作物を適切公正に利用できるように、必要に応じて他省庁の協力を得ながら適切に対処してまいりたいと考えております。
  73. 山原健二郎

    ○山原委員 きょうは、写真の著作権の不備の部分、また残された部分を解決する道をお尋ねしたわけです。それから障害者の問題をお聞きしたわけですが、これからもよろしくお願いを申し上げまして、私の質問を終わります。
  74. 小川元

    小川委員長 次に、濱田健一君。
  75. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 社会民主党の濱田健一でございます。  早速質問に入らせていただきたいと思いますが、今山原先生の方から、障害のある皆さんの情報へのアクセスの問題について後半御質問がございました。私もその点についてひとつ触れさせていただきたいと思うわけでございます。  公共図書館等での図書の点字訳、視覚障害者の皆さん方への点字訳の部分については、法の三十七条一項で、著作権者許諾を必要としないというふうになっております。今、点字によって図書の情報を得るという旧来のやり方から、録音テープによって耳から、その情報を変換して視覚障害者の皆さん方が情報を手に入れるという方向に、その方が手っ取り早いという形が模索をされ、普及しつつございまして、同じ三十七条の二項では許諾が必要だというふうになっております。  これは、幾つかの施設の中ではそれが必要ないということが法の中で運用としてうたわれているようでございますけれども、今許諾を必要とされていない施設の中でも、視覚障害者の皆さん方だけが録音のテープを使うという厳正な枠組みというものが施されていると思いますし、一緒に住んでいる家族がちょっと試しに聞くとかというのはあるとは思うんですが、そういうことをしっかりと限定する中で、公共の図書館でもこういうことができるように法整備できないものか。  いろいろな制約があるというふうに理解をしつつも、公共図書館で図書の録音テープ化を望む声というものがいろいろなところから上がっているようでございますけれども、その現状と御見解について大臣からお答えいただければ幸いでございます。
  76. 有馬朗人

    有馬国務大臣 録音テープにするということは非常にいいことだと思っておりまして、なるべくそういうことのやりやすいようにしたいと思っております。  現在、視覚障害者への貸し出し用に著作者等許諾なく著作物の録音を行うことのできる施設は、政令の規定により、点字図書館や盲学校の図書館等に限定されております。御指摘の公共図書館での録音テープの作成については、録音テープは、点字による複製の場合とは異なり視覚障害者以外にも利用可能であること等から、著作者等許諾なく自由に行えることとする制度改正については慎重に考えてきたところでございます。  しかしながら、この問題については、社団法人日本文芸著作権保護同盟を通じて許諾を得る方法もございます。同同盟では、申請があれば、信託者の了解を得て無償で許諾しているというところであります。  文部省といたしましては、今後とも、障害のある方々の利用に配慮した適切なルールの一層の整備について、適宜、権利者団体に働きかけを行うとともに、障害者の団体の意見も十分に聞きながら適切な対応をとってまいりたいと考えております。
  77. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 適切な対応という大臣の御答弁でございました。  私もいろいろなところからお話をお聞きしまして、著作者側の理解、持っている著作権というものがどんどん侵害されては困るということや、他の目的へ流用されてしまうことをどう防止するのかということ、そして事業として本の中身をカセットでとってそれを販売するというような営利事業への影響がどうなのかというようなことや、国際的にこの方向性がどれだけ広がっていくのかということなど、もう少し検討、乗り越えていかなければならないところも理解をしつつ、障害を持っていらっしゃる皆さん、視覚障害の皆さん方への情報アクセスをより広げていく、それも公共のところで、公的な機関がそのことの利便性を図るという意味では、ぜひ積極的にその道を開いていただきますよう御要望申し上げておきたいというふうに思います。  次に、今回の著作権法改正の基本的なことについて何点かお尋ねをしたいというふうに思います。  今回の改正で、特にレコードを用いた演奏について、旧来の秩序、自由かつ無償で演奏ができるというような中身を、社会的混乱を招かないように経過措置として著作権制限する規定を当分の間存続するという附則第十四条、これが撤廃をされることになりました。  当分の間というのが三十年続いてきたわけでございますが、これはこれまで参議院でも質問があったと思うのですが、三十年を要した理由というのは、基本的なことでございますけれども、それは何かということと、この措置が国際的に問題化する前に制度的な整備を図る必要があるという今日的な意義といいますか、それを今回の改正の趣旨に盛り込まれておられるようでございますけれども、国際的に見ていかなる問題が生起してきているのか、この点について御説明いただきたいと思います。
  78. 近藤信司

    近藤(信)政府委員 お答えをいたします。  附則第十四条は、昭和四十五年の著作権法の全面改正時に、当時広範囲に行われておりましたレコード演奏の実態にかんがみまして、旧法において原則自由であったレコード演奏を即時に演奏権が働くとした場合、社会に与える影響が大きいと考えられたために、当分の間の経過措置として設けられたものでございます。  この附則十四条の廃止につきましては、平成四年三月の著作権審議会第一小委員会報告におきまして廃止の方向が出されたのを初めとし、平成八年にも著作権審議会から同様の提言がなされているにもかかわらず、実はこの平成十一年に至るまで附則十四条廃止の改正法の提出ができなかったわけでございますが、それはやはり廃止に向けての条件整備に時間がかかったからである、こういうふうに認識をいたしております。  幾つか例を申し上げますならば、音楽のBGM利用の実態として、昭和四十五年当時から現在に至るまで、レコード演奏から有線放送の利用への転換が徐々に進んできた、しかし附則十四条の廃止による直接的な影響が減少したと判断されるまでにやはり時間がかかったということが一つあります。  また、JASRACでは昭和六十二年からカラオケ演奏権の管理を始めたわけでございますが、それを契機といたしまして体制の充実等に取り組んできたわけでございますが、カラオケ管理に加えましてこのレコード演奏についての管理が可能となる、そういう体制の整備に時間がかかった、こういったようなことがその理由ではなかったか、こういうふうに考えておるわけでございます。  それから、もう一つお尋ねの国際問題の話でございますが、附則十四条の問題につきましては、平成八年、一九九六年に行われましたWTO、世界貿易機関のTRIPS理事会での各国著作権法レビューの際に、EUから、ベルヌ条約違反ではないか、こういう指摘を公式に受けたわけでございます。  当時文化庁は、著作権審議会で附則十四条を廃止するということで検討している、こういうことで回答し対応してきたわけでございますが、WTOにおきましては、著作権知的所有権につきましても加盟国間の紛争処理のメカニズムが整備をされているところでございまして、附則十四条の問題につきましても、今後外国政府からWTO提訴を申し立てられるというような可能性もあるわけでございますので、今回、本規定を廃止するということで盛り込ませていただいておるわけでございます。  また、この問題につきましては、従来からJASRACに対しまして、外国の演奏権管理団体より、附則十四条を残しておくことは不公平ではないか、そういうクレームも寄せられている、こんなようなことをいろいろ考えまして、今回の法改正をさせていただいているところでございます。
  79. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 参議院の終局場面での附帯決議の中に「附則第十四条の廃止に係る著作物使用料の徴収が適正かつ円滑に実施されるよう、関係者間の調整に努めること。」ということが盛り込まれておりますが、具体的に、使用料の支払いの手続はいかなる方法を今後検討されようとするのか。また、具体的な額の認可については文化庁が関与するということになるのでしょうけれども、適正な使用料とするための関係事業者、ここはJASRACというふうに規定していいと思うのですが、ここへの適正な指導が必要と考えられますが、御見解はいかがかということ。  もう一点は、著作権の仲介業務、これは文化庁長官の許可が必要となっておりますが、音楽著作権については、御案内のとおり、今出ておりますJASRACのみが行っている現状でございます。  しかしながら、最近、仲介業務の許可申請をする新しい会社が出ているというふうに聞いておりますし、インターネットの普及に伴って、著作者本人が権利を管理する動きもいろいろなところで出てきているようでございます。  こうした状況を考えたときに、著作権ニ関スル仲介業務ニ関スル法律の改正についても検討すべき段階に来ているのかなというふうに認識をする者の一人なのでございますが、その必要性と政府の検討状況、これについてもお考えを聞かせていただきたいと思います。
  80. 近藤信司

    近藤(信)政府委員 お答えをいたします。  まず、附則十四条の廃止の関係でございますが、廃止に係ります、今後新たに管理対象となりますものは、JASRACの調べによりますと、CD等を用いてレコード演奏をしている施設は約九万件ございます、また、有線放送を音源として音楽を流している施設が百十二万件、こんなような推定をいたしておるわけでございます。  このうち有線放送を用いるものでありますとかCD等を用いましてBGM用に制作されたテープを用いる場合につきましては、有線放送事業者並びにBGM事業者が利用者分を一括して使用料を支払ういわゆる元栓処理によって使用料を徴収する予定にいたしております。この結果、個別の施設が個々にJASRACと契約する個別処理が六万五千件程度になるのではなかろうかと考えておるわけでございます。  実際の使用料の額でございますが、使用料につきましては、仲介業務法によりまして文化庁の認可にかからしめております。したがいまして、この法律改正後、JASRAC利用者団体が協議の上、文化庁に使用料規程の認可申請が出されることになるわけでございますが、文化庁といたしましては、この法案提出に当たりまして、実際の徴収は平成十四年四月以降に行うこと、金額につきましては、例えば元栓処理につきましては有線放送事業者の営業収入の一%以下、個別処理につきましては一般の店舗で月額五百円以下にする、こういった大まかな認可方針を示しているわけでございます。  いずれにいたしましても、この認可方針を踏まえましてJASRAC利用者団体間で協議が十分にかつ円滑に行われるよう、文化庁としても、十分に配慮もし支援もしてまいりたいと考えております。  第二番目のお話でございますが、著作権の仲介業務につきましては、著作権ニ関スル仲介業務ニ関スル法律、仲介業務法と略しておりますが、これに基づきまして、音楽、小説及び脚本の集中管理業務が規制をされており、その業務実施につきましては許可制を、使用料につきましては認可制を採用しているわけでございます。  この仲介業務法は、昭和十四年に制定されたものでございますが、制定以来、基本的には改正がなされていないわけでございます。昨今のこういういろいろな状況の変化の中で、仲介業務法につきましても、著作権管理団体の要件を緩和し、同一分野の複数団体をもっと積極的に認めるべきではないか、こういうような意見もございます。  また、権利者の選択の幅をもっともっと認めるべきではないか。例えば、現在、JASRACは、作詞・作曲家の音楽に係る著作権の信託を受けるか受けないか、オール・オア・ナッシングでございますけれども、例えば演奏権だけは信託を受けるとか、そういったいろいろな道があるんだろうと思っております。いずれにいたしましても、そういった権利者の選択の幅を認めるべきである、こういった御意見もございます。  そういったもろもろの意見を踏まえまして、現在、著作権審議会において、著作権管理に関する規制の見直しを進めておるところでございます。  文化庁といたしましては、この審議会での検討結果を踏まえまして、仲介業務法の改正を含めまして適切な措置を講じてまいりたい、かように考えておるところでございます。
  81. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 終わります。
  82. 小川元

    小川委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  83. 小川元

    小川委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  内閣提出参議院送付著作権法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  84. 小川元

    小川委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  85. 小川元

    小川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  86. 小川元

    小川委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午前十一時三十五分散会