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1999-04-14 第145回国会 衆議院 文教委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年四月十四日(水曜日)     午前九時二分開議   出席委員    委員長 小川  元君    理事 栗原 裕康君 理事 栗本慎一郎君    理事 小杉  隆君 理事 増田 敏男君    理事 藤村  修君 理事 山元  勉君    理事 富田 茂之君 理事 松浪健四郎君       大野 松茂君    奥山 茂彦君       倉成 正和君    小林 多門君       佐田玄一郎君    下村 博文君       高鳥  修君    高橋 一郎君       中山 成彬君    松永  光君       望月 義夫君    渡辺 博道君       池端 清一君    田中  甲君       中山 義活君    池坊 保子君       西  博義君    笹山 登生君       石井 郁子君    山原健二郎君       濱田 健一君    粟屋 敏信君  出席国務大臣         文部大臣    有馬 朗人君  出席政府委員         文部大臣官房長 小野 元之君         文部省高等教育         局長      佐々木正峰君  委員外出席者         文教委員会専門         員       岡村  豊君 委員の異動 四月十三日  辞任         補欠選任   海江田万里君     中山 義活君 同月十四日        辞任         補欠選任   岩永 峯一君     望月 義夫君 同日  辞任         補欠選任   望月 義夫君     小林 多門君 同日  辞任         補欠選任   小林 多門君     岩永 峯一君 四月一日  学校教育法等の一部を改正する法律案内閣提出第六七号) 三月二十五日  新たな教育支援制度の創設に関する請願西博義紹介)(第一五〇一号)  国立大学病院看護婦増員労働条件改善に関する請願木島日出夫紹介)(第一五三〇号)  同(松本善明紹介)(第一五三一号)  同(吉井英勝紹介)(第一五三二号)  一学級定数を三十人以下にすることに関する請願藤木洋子紹介)(第一五三三号)  学生の公平で公正な就職活動に関する請願大森猛紹介)(第一五三四号)  学寮の充実・発展、文教予算学寮予算抜本的増額に関する請願石井郁子紹介)(第一六一二号)  国立大学学費値下げ大学予算増額私学助成増額に関する請願石井郁子紹介)(第一六一三号)  国立大学学費値上げ反対私学助成金文教予算大幅増額に関する請願石井郁子紹介)(第一六一四号)  国立大学民営化校費削減学部別授業料導入反対等に関する請願石井郁子紹介)(第一六一五号) 四月一日  私立専修学校教育研究条件改善父母負担軽減に関する請願石井郁子紹介)(第一七七七号)  一学級定数を三十人以下にすることに関する請願山原健二郎紹介)(第一七七八号)  豊かな私学教育実現のための私学助成に関する請願城島正光紹介)(第一七七九号) 同月七日  一学級定数を三十人以下にすることに関する請願石井郁子紹介)(第二〇一七号)  同(松本善明紹介)(第二〇一八号)  同(山原健二郎紹介)(第二〇一九号)  同(吉井英勝紹介)(第二〇二〇号)  国立大学学費値上げ反対私学助成金文教予算大幅増額に関する請願石井郁子紹介)(第二〇二一号) 同月十四日  私学助成抜本的拡充と三十人学級実現に関する請願海部俊樹紹介)(第二三六五号) は本委員会に付託された。 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  学校教育法等の一部を改正する法律案内閣提出第六七号)     午前九時二分開議      ————◇—————
  2. 小川元

    小川委員長 これより会議を開きます。  内閣提出学校教育法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  趣旨説明を聴取いたします。有馬文部大臣。     —————————————  学校教育法等の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  3. 有馬朗人

    有馬国務大臣 おはようございます。  このたび、政府から提出いたしました学校教育法等の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  二十一世紀に向けての大きな転換期にある今日、大学が、学問の進展や社会要請に適切に対応しつつ、不断に改革を進めて、教育研究活性化を図り、知的活動分野において社会に貢献していくことは、我が国の未来を築く上で極めて重要な課題となっております。  この法律案は、このような状況を踏まえ、第一に、大学教育研究上の多様な要請にこたえられるよう大学制度弾力化を推進するため、所定単位を優秀な成績で修得した者について三年以上の在学大学卒業を認めることができる制度を設け、また、大学院研究科位置づけを明確にするとともに、柔軟な組織編制を行うことができるようにするものであります。  第二に、大学が一体的、機能的に運営され、責任ある意思決定が行われるよう、あわせて社会に対して開かれた大学となるよう、大学組織運営体制を整備するため、大学における学部長設置国立大学について、運営諮問会議及び評議会設置学部等教授会所掌事務を定め、あわせて国公立大学教員選考における学部長等の役割を定めるものであります。  次に、この法律案概要について申し上げます。  第一に、新たに在学期間特例として、卒業要件として各大学が定める教育課程をすぐれた成績で修めた学生について、三年以上四年未満在学大学卒業を認めることができる制度を設けることといたしております。  第二に、大学には学部長を置くことができるものとし、学部長学部校務をつかさどることといたしております。  第三に、大学院研究科位置づけを明確にするとともに、研究科以外の教育研究上の基本となる組織を置くことを可能とすることといたしております。  第四に、国立大学に新たに運営諮問会議を置くこととし、その委員は、当該大学の職員以外の者で大学に関し広くかつ高い識見を有するもののうちから、学長申し出を受けて文部大臣が任命することとしております。運営諮問会議は、大学教育研究に関する基本的な計画大学自己評価その他大学運営に関する重要事項について、学長諮問に応じて審議し、及び学長に対して助言または勧告を行うこととしております。  第五は、国立大学評議会について、単科大学を除く国立大学には評議会を置くこととし、学長学部長等をもって充てる評議員組織することとしております。評議会は、大学教育研究に関する基本的な計画、学則その他重要な規則の制定改廃大学自己評価等その他大学運営に関する重要事項審議することとしております。また、学長評議会議長として、評議会を主宰することとしております。  第六は、国立大学教授会について所掌事務等を明確化することであります。国立大学学部等組織教授会を置くこととし、教授会は、学部等教育課程編成学生の入学、卒業学位授与、その他学部等教育または研究に関する重要事項審議することとしております。また、教授会議長学部長等とし、議長教授会を主宰することとしております。  第七に、国立大学は、当該大学教育研究上の目的を達成するため、学部その他の組織の一体的な運営により、その機能を総合的に発揮するようにしなければならないこととしております。  第八に、国立大学は、大学教育研究及び組織運営状況について公表しなければならないこととしております。  第九は、国公立大学教員選考等についてであります。  まず、教授会教員選考を行う場合に、学部長等は、当該大学教員人事の方針を踏まえ、その選考に関し、教授会に対して意見を述べることができるものとしております。また、現在、学長教員選考等については、当分の間の暫定的な措置として、学長評議会または教授会が分担して行うこととされておりますが、このたび、評議会教授会に関し規定したことに伴い、所要の規定の整備を行うものであります。  このほか、所要改正を行うこととしております。  以上が、この法律案提案理由及びその内容概要であります。  何とぞ、十分御審議の上、速やかに御賛成くださるようお願いを申し上げます。ありがとうございました。
  4. 小川元

    小川委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     —————————————
  5. 小川元

    小川委員長 これより質疑に入ります。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。栗本慎一郎君。
  6. 栗本慎一郎

    栗本委員 ただいま御提案のありました学校教育法等の一部を改正する法律案につきまして、非常に概要的な改正といいますか、その基本的な方向及び哲学部分、それから運営の具体的な部分について、幾つかわからないところがございますので御質問を申し上げたいと思います。  申しおくれましたが、自由民主党の栗本慎一郎でございます。  これは、学校教育法等の一部を改正する法律案でありますけれども、実質的に、国立大学運営及びあり方にかかわる部分が非常に多く、中心的になっております。といたしますと、今日、政府の進めております行政改革の中で、国立大学をどのようにしていくのか、国立として今後、九十九あるいは百に及ぶ大学をこのまま維持していくのかどうかという点にかかわってまいります。  この点に関しましては、文部省は、改革方向が今打ち出されており、それが定着をした段階で明確になる部分があるから、簡単に言えば、それまで待ってくれというふうに言っていると思います。  とすれば、この改正案は非常に重要な意味を持ちますし、しかるべき重大な、しかも根本的な改革であるというふうに期待されますけれども、はっきり申し上げまして、どういう表現を使ったらいいのでしょうか、手探りであるとか、これだと一体どういうふうに変わるのだろうかとかいうところが、極めて不明確な部分がたくさんあるというふうに考えております。  それに関しまして順次御質問を申し上げますが、まず、細かいことのようでありますけれども、在学期間特例として、三年以上四年未満在学学部卒業することを可能にするという改正方向がございます。  もちろん賛成でございますが、今の御提案趣旨にもありましたように、大臣は、これを、すぐれた成績をおさめた学生について、三年でも卒業を認めることができるようにするよと提案をされました。それは在学期間特例なんだというふうにおっしゃっています。しかし、これがまた哲学ではっきりしない。これは国立大学に限りませんが、私は、大学在学期間があるということの根本についてここで本当はお示しいただくべきだったのじゃないかと思います。  私自身は、例えば二年以上在学し、所定単位を修めた者であれば、すぐれているかどうかにかかわりなく、単位を修得するのは、それは大学の中で、A、B、Cあるいは優、良、可といって、すぐれているかやっとかというふうなのがありますけれども、それは関係がないじゃないですかと、卒業に関しまして。こういったところで、すぐれたとか、三年以上だとか、あるいは特例だとかいうふうなことをおっしゃられるところがよくわからない。それはおかしいのではないですか。  単位がこれ以上あればよくて、それから常識論として、一年ではいけないが二年以上ならいいとか、あるいは三年だというふうなところも明確にしたところで、つまり大学卒業する、学士の称号を授与するというのは、こういうところに基づくのだというふうなところがない。何だか、一年ぐらいは短くしてやってもいいじゃないかというふうなお話のように受け取れるし、事実そうだと思うのですが、その辺に関しまして、なぜここを変えるのか、基本哲学をお聞きしたいと思います。
  7. 有馬朗人

    有馬国務大臣 三年卒業ということはいろいろ問題があろうかと思います。おっしゃるように、単位を全部取ればいいではないかという考えもございます。しかし、単位を三年間で取れるというのは、やはり優秀な人間だと私は判断をいたしますけれども、その辺のことは別といたしまして、三年以上の在学卒業を可能にする措置というのは、決して大学教育を甘くするということではなくて、やはり学生の能力や適性に応じたきちっとした教育を行う、そして、その学習成果を適切に評価するという観点から設けられた、御指摘でございますが、例外的な措置でございます。  このことを踏まえまして、文部省としましては、三年以上の在学大学卒業を認めることができる場合として、文部省令において一定の要件を規定することといたしております。  その要件とはどういうものかと申し上げますと、まず、大学において厳格な成績評価を行うこと、これが一点。二点目としては、履修科目登録単位数上限制を導入しております。その上で、学生につきましては、三番目に、三年以上で卒業に必要な単位数を取得し、かつ成績が優秀であると大学が認めた学生であること。四番目に、本人が希望するということを前提として、予定して考えております。  また、大学における責任ある授業運営や厳格な成績評価が適切に実施されるよう、法律施行通知各種会議等において周知徹底を努めるとともに、授業の目標や成績評価基準等を明確にして、大学として広く社会に公表していくよう促してまいりたいと思っております。  こういうふうにして、各授業で適切な成績評価ができるように、教員意識改革教育内容授業方法改善が重要であると認識しております。そして、大学における組織的な研究、研修、ファカルティーディベロプメントと言われているものの実施に努めてまいりたいと思っています。  なお、既に、大学院に三年修了で進めるようになっております。この辺は、かなり成績が優秀だということがございますが、もう一つ外国大学は九月から始まりますので、四年の初めの方でもう既に、一般的に言って、アメリカのあるいはヨーロッパの、外国大学院に入りたいというふうなときに、あと一年余計に待たないでも行けるようにするということもこの中に入っているということを御了承賜れれば幸いでございます。
  8. 栗本慎一郎

    栗本委員 ありがとうございました。  本来なら、大臣ではなく局長等にお聞きしてもいいような問題でございましたが、大臣は、御承知のとおり、大臣としての御経歴より大学の総長としての御経歴の方が長かったわけでございまして、その点でわざわざお答えいただいて恐縮でございました。この後もしばらくお願い申し上げます。  しかし、今長々とお答えいただきましたが、すぐれたというところの評価がとてもあいまいであった。在学単位を取ればすぐれているのか。すぐれていない人間にも、まあしようがないから単位をやるのか。私は、まあしようがないから単位をやるのだってあっていいと思いますし、その中ですぐれた人間はしかるべき評価をされるというふうにしたいということなので、そういうような一種の概念的なものとしてすぐれたとおっしゃったと受け取らせていただきます。  それで、実は、詰めればとてもお答えもおかしいのです。大学が、カリキュラム上、単位を取れるようにして、履修できるようにしたらば、それを全部取れば可能で、もちろん取らない権利も学生にあるわけですけれども、三年で卒業できるというならば、くどいようですが、すぐれてなくても卒業できるし、そうすべきだと思う。  そしてまた、これがおかしな点は、今御答弁の中にありましたが、一部私立大学も含めて、大学院に進む場合には、三年で卒業してもいいという話がもう既にできてきている。それはおかしいのですね。大学院に行く人間だけをいい意味で差別をするという格好になっています。  だから、今度、大学卒業自身を三年でできるようにするというのは、手探りの、おくればせの、立派な改革とも言えない、本来、継ぎはぎすべきところをしていなかったからするというふうなことなんだというふうに私は受けとめておりますが、そういった中で大学に対して、しかし大学側が、カリキュラム上、三年では卒業できないように、これ以上取ってはいけませんよと言えばできないわけですから、きちんとこれがそのようにできるように御指導を賜りたいと思います。  なぜこんなことを申し上げるかというと、そういうことは本来大学の自治に属することだとは思いますけれども、ちょっと似たような問題として、博士号という問題があります。日本では昔から、末は博士大臣かというような、何か大臣博士がほぼ同じぐらいの権威であるように、そういった俗謡がございますけれども、御承知のとおり、全世界大学においては、博士号というのは研究者の第一歩とは言わないけれども、第二歩、第三歩ぐらいであって、博士号取得は、博士号を持っているからといって、教授あるいは世界学会で発表するというふうな資格にはならないというのが本来の、現在のあり方であります。  だから文部省も、大学院というのは、単位修得して博士号を取るような大学院というのができ上がっているんだということで、しばしば通達を出していられますけれども、つまりそのように、博士号をよく出す、多く出すようにしなさいと。  大臣の御専門サイエンス等では、世界学会との交流が比較的多いので、博士号を持っていなければ話にならない。一般論からいうと、フルプロフェッサー、正教授と名前のつく、称号のつく人間の方がはるかに世界的には格が高くて、それはもう聞くまでもなく、博士号を持っているんですよねという扱いになっているわけですが、サイエンス部門理系部門ではそうなっている。博士号をお持ちでない方は、特別に取れないのか、特別に嫌なのか、どっちかだということになっている。  ところが、文科系の方では、文部省が再三、そういう通達指導をしているにもかかわらず、社会的な認知大学界における認知といいますか、まだ相変わらず博士というのは偉いものだ、教授より偉いんだというのでおかしなことが起きております。私は、それはどんどん取るようにさせるべきだと思っているわけですけれども。  私は法学部教授でありましたが、法学部では特にそういう古臭い考えがあるようでありまして、フルプロフェッサーであっても、例えば東大法学部、多分正教授の半分ぐらいの方しか博士号を持っていないと思います。少ない方が偉ければ、博士の方が偉いということになるわけですね。文部省はそのように、一応取るようにというふうに、つまり、世界的に通用しないからということなんだけれども、大学側は取らない。  少し長くなって恐縮でありましたけれども、まとめます。実際起きておりますことは、私は私立大学法学部教授でありますけれども、博士号を持たないにもかかわらず、博士号を与える審査をするとか博士課程指導をしているということになる。本来ならば、専門学術書と言われるような本を、研究成果を発表できる教授は当然博士であるべきだ、世界はそう思っているけれども、なかなかしない。ですから任せておきますと、この三年卒業もなかなか進まない。だから、踏み込んでそのように指導をしていただきたい。一言お答えを賜りたいと思います。
  9. 有馬朗人

    有馬国務大臣 私も栗本先生に全くの同感でございます。  しかし、随分いろいろ工夫をしてまいりました。例えば平成三年には、学位授与円滑化のため、博士などの学位の種類を廃止するなどの措置を講じたところです。その結果どうなったか。この世の中に余り知られておりませんが、博士(法学)、博士文学)というふうなことをできるようにいたしました。  そういう努力にもかかわらず、御説のとおり、その後の博士学位授与状況を見ますと、自然科学系では相当活発に行われるようになっております。しかしながら、依然として、アメリカヨーロッパ博士号の数と日本大学を出た博士号の数の比較をいたしますと、残念ながら日本理科系でも弱い。文科系に至りますと、十分の一どころか三十分の一以上の少なさですね。そういう意味で、人文社会科学系分野では、近年徐々に改善はされてきておりますが、依然低調であるということは御指摘のとおりでございます。この点、私も非常に心配をして、かつて委員であったころでありますが、大学審議会等々でも常に発言をしている次第でございます。  どうしてそうなるかということを考えてみますと、人文社会系を中心に、課程制大学院及びそれに基づく学位制度考え方がまだ十分理解されていない。先生指摘のように、これはドライバースライセンスであるというふうな考えを私ども理系人間は持っておりますけれども、そういうことがなくて、依然として大博士という考え方があるように思います。結果といたしまして、標準修業年限間に学位を取得できない状況大学院学生学習意欲を損なうという結果にもつながっているという御指摘もありますし、社会がまだ人文社会系博士に対して要求度が低いという問題もあるかと思います。しかし、これは各大学努力することであります。  東大の場合、私がおりましたときのことを思い出してみますと、平成元年、私が東大学長になりましたときにはまだ二人しかおりませんでした。二年、三年のころ、人文系博士が二人しかいなくて、その後もゼロ、ゼロという年が続きましたけれども、四年ごろから、私は、やはり大学院の責任であるから、特に留学生などに対してはきちっと博士を出してほしいというふうなことを要望いたしまして、私が東京大学を去る直前ぐらいから急速にふえてまいりました。平成四年で十五人、平成九年には三十人まで課程博士博士文学)というふうなものが出るようになりました。これは各大学学長及び学部長等努力でやるべきことであると思っております。一例といたしまして、東大の場合に、そういう努力の結果、人文系特に文学部系が非常にふえたということを御報告申し上げておきたいと思います。
  10. 栗本慎一郎

    栗本委員 この問題は長くかかわりませんが、実は、踏み込んで言ってしまえば、大学教授でありながら、教科書じゃなく、専門学術書を書いていない人は、みんなが取るようになると、その人は取れない、だから取らせたくない。大博士なんということを実は信じているわけじゃないんだけれども、そう言っておいて、ほかの人も取らなければ、自分が不勉強だ、研究もしていないのがばれなくて済むということが実態なんです。私はそう思っています。これは、大学内部保守性がそういうことになっている。それで、大博士論なんて考えていないわけですね。  ですから、この三年以上四年未満在学云々の話も、そのように大学自体保守性の中から、ちっとも運営されていかない、実行されないということがあり得ると思いますので、踏み込んで御指導を賜りたい。これは大学自己評価にもつながる。博士号なんか取らせてしまえばいいわけです。専門学術書一つもない人が教授をやっていること自身が本当はおかしいのですから。  今うなずいておられますけれども、教育に熱心であれば教授にしてもいいという道も開いておりますので、それは一言で言い切れないんだけれども、でも、博士号をお持ちでない教授は、そういう意味であってもいいということですね。その大学自身保守性の中でこういったものが実際に運用されない、実行されないということがあり得ると思いますので、ぜひとも踏み込んで御指導を賜りたいと思います。  問題がたくさんありますので、次へ移ります。  この改正の中で、大学研究科、「大学院研究科位置づけを明確にするとともに」、こうおっしゃっておりますが、これはもう既に明確じゃないんですね。大学研究科とも言えるし大学院研究科とも言える。つまり言葉として、大学というのは大学院を含むのか、その辺も極めてあいまいである。  実は、学校教育法では、大学というものの中における基本組織とは何なんだというのが明確には書かれてないわけですね。みんな学部だろうというふうに考えています。学部基本組織だというのは、五十三条に、学部以外の基本組織を云々という条項があるところによると、学部基本組織らしい、こういうことなんですね。  では、研究科は、大学院とは一体何なんだ。今度これは基本組織にされるわけですね。ちょっとお時間が少ないので、短くお答えを賜りたいと思います。
  11. 有馬朗人

    有馬国務大臣 御指摘のとおりでございまして、現在、大学の本質的な基本組織としては学部がございます。今後とも学部大学の中心的な組織としての役割は大きいと思います。  しかし、近年、大学院重点化構想などというものが盛んに行われまして、随分大学院を強化するというふうなところがふえてまいっております。すなわち、近年、大学院設置する大学の中には学部段階から大学院の段階へ比重を移しているところがある。そういうことで、大学院研究科大学の構成要素として相当の実態を有するに至っておりますので、そこで今回、学校教育法上の学部のみを大学基本組織として、教職員の所属、学生の所属、意思決定基本機関とするだけではなく、大学院研究科学部と並ぶ組織として位置づける必要が生じてきておる、こういうふうなことで、今回、大学院研究科を置くというふうにさせていただく次第でございます。  しかしながら、研究科基本組織位置づけられる場合であっても、学部は依然として、学校教育法設置が常例とされて設置されている限りは、基本組織位置づけられるものと考えております。そういう点で、学部を重要視していくことは変わりありません。  それから、大学院大学とは異なり、学部レベルの教育研究を行うことが大学教育研究の遂行に相当の比重を持つ実態があるというふうなことが考えられます。そういうことを考えますと、学部は、研究科と同様に、大学教育研究上の基本となる組織であるということは今後も変わらないと思います。
  12. 栗本慎一郎

    栗本委員 短くと申し上げたのですが、いろいろお答えいただいたのですが、要するに、大学院研究科もあるいは大学院基本組織であるというふうにお認めになったということだと思います。これは賛成でございますが、しかし、改革方向として、土台だけですね。では、どういう基本組織なんだ、学部大学院と両方ある大学、例えば東京大学の中でそれはどういう位置関係にあるんだというのは極めて不明確です。言葉はきついですが、少しいいかげんであります。  例えば東大の例をとりましょうか。東大も京大もそうなんですが、私は、東大法学部大学院は弱いと考えている。これは別の問題で恐縮ですが、少なくとも大学院研究科レベルの東京大学法学部になっているとはちょっと考えられない。九割九分、文部省や大蔵省にエリート官僚を送り出すためとは言いませんけれども、学部教育東大の非常に重要なもののように社会的に思われているし、そういう機能の中で働いている。けれども、教授は全部大学院教授となってしまっている。大学院教授学部もやっている。それはおかしいじゃないですかと。それだけどんどんばかっと進行して、はっと見ると、どこの大学と言いませんけれども、東大じゃない大学の、国立大学先生大学教授で、東大だ、京大だ、あとどこをつけ加えても構いません、希望に応じてどこでもつけ加えますけれども、そこは大学院教授がいる。おかしい。  つまり、大学院教授の方が偉くて、大学院教授の所属にさせられる立派な、立派かどうか知りません、立派かどうかは私、別個のところで本を書いておりますから。立派と思われる大学大学院教授と、そこだけ進行しちゃっているのはおかしいと私は思います。これは、学長でいられたので責任もあると思いますけれども、お答えを要求いたしません、時間もございませんので。  そういうふうに、実態的にはそのように進行して、大学院基本組織学部基本組織であるにもかかわらず、大学院にだけみんながいて、それが学部もやっている。そういうことはほとんどの方は、社会の人は知らないと思います。それはおかしいじゃないかということだけ伝えておきます。だからなっていないですよと。そして、この位置づけを今後もっと明確にしていかないと、これで独立行政法人化を押しとどめる前の改革だというのは、ちょっと余りにもおこがましい。この方向はいいけれども、漠とし過ぎているということを申し上げておきたいと思います。多々問題がありますので次へ移らせていただきます。  国立大学運営諮問会議設置されるということであります。これも賛成でありますけれども、この運営諮問会議というのは、例えば学部教授会とのかかわりにおいては一体何なんだと。学部教授会についてもいろいろ書かれております。どうも概要を把握するに、学部教授会は、学部にかかわることの範囲内でいろいろ検討し、決定をなさいよと。だから、単科大学というのは学部が一個しかないので、それ以外の場合には、大学全体のことに関しては、学長が最高責任者ではあるんだけれども、大学自己評価まで含めて大学運営にかかわる重要事項運営諮問会議で、学長諮問に応じて、だから諮問会議なんですが、学長に対して助言または勧告をするということなんですが、もとへ戻りまして、運営諮問会議学部教授会とのかかわりについてお答えを賜りたい。これは本当は局長でもいいんですけれども、大臣が非常に専門家であったので、どちらでも結構でございます。
  13. 有馬朗人

    有馬国務大臣 私からお返事を申し上げた上で、足りないところを局長よりお返事申し上げたいと思います。  現在、大学というものが、国公私立全部を通じて、社会との接点が非常に強くなってきたと思います。大学社会との関係をさらに密接化するということが大切だと思っております。特に、教育研究活動を一方で自律的に運営していかなきゃならない、そして、特に公財政を投入するというような、これは国公私立を通じてでございますけれども、特に国立に対して公財政の投入の必要性ということを考えますと、社会的に十分御理解を賜ることが必要であると思います。  そういう点で、大学社会からの意見を聴取し、社会的存在としてその責任を明らかにすることが求められていると考えられます。その上で、大学の将来計画自己評価、そのほか大学運営重要事項につきまして、外部有識者の意見を聞くために、組織といたしまして、今御質問運営諮問会議設置しようということでございます。  私自身、筑波大学の参与会に属しておりました。この参与会も学長諮問に応じてさまざまな意見を言ったわけであります。大学関係として私が参画いたしておりましたし、産業界その他から大勢の人が入っていて、筑波大学のさまざまな、将来計画であるとか自己評価であるとか大学運営に関する重要事項というようなことを諮問されまして、いろいろ意見を申し上げた次第であります。  私は、こういうことは少なくとも筑波大学にとって大変役に立っていると考えております。したがいまして、同じような組織が各大学に置かれるということはいいことではないかと考えている次第でございます。
  14. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 運営諮問会議は、外部有識者の意見を聞くための会議でございます。その会議審議状況、あるいは必要に応じた助言、勧告などを踏まえて各大学がどのように対応するかは、それぞれの大学の自主的な判断にゆだねられておるわけでございます。  したがいまして、それを受けた学長が、例えば教授会に、こんなことが提案されましたよ、あるいはこんなことが問題となりましたよというようなことを学部長などを通じてお知らせをするというようなこともございます。それを受けて教授会において教育研究上の諸課題について議論が行われるというようなことなどを通して、大学全体の教育研究が進展することを期待しておるところでございます。
  15. 栗本慎一郎

    栗本委員 大臣の御答弁で、まことに申しわけございませんが、学部教授会とのかかわりについては明確なお答えはなかったと思うんですが。
  16. 有馬朗人

    有馬国務大臣 失礼しました。そこは明確に申し上げるべきでした。  社会において、どういうふうに大学において教育をしてほしいかというようなことは、やはり学部では、例えば工学部の場合にもなかなかわからないことがあります、工学部だけじゃなくてほかの学部でもそうです。法学もそうですね。そういうときに、外部の方の御意見をお聞きすることによって、こういう方に今社会が動いているんだというようなことがはっきりとわかることがあります。  したがいまして、今御指摘の点でありますが、学部教授会としてもそういうふうな意見が聞かれるように、これはもう既にやっております。しかし、大学としての全般的なものを伺うのが今回つくられる機関でございます。ですが、学部はそれぞれかなりもう努力をしております。このことについて御報告いたしたいと思います。
  17. 栗本慎一郎

    栗本委員 お聞きして何の異論もないんですけれども、まとめますと、今のお答えだけを聞いていると、あってもなくてもいいもののようにしか受け取れないと思うんですね。  私は、自由民主党の衆議院議員のうち、三人か四人か、あるいは少なくとも片手以内になりますか、議員になる前、大学に職を置いた者であります、ほかにも何人かおられますが。大多数の方は、そうじゃない方々は、こんなものが何の改革になるんだと。  今の局長の答弁で、意見を聞いたけれども、それを別に、聞いただけだよとしてもいいということなんですよね。意見は聞いてもらいたいですよ。筑波の場合は、有馬大臣だけじゃなく慶応の鳥居塾長等もおられて、特に国立大学が私学のそうした方を参与として聞いたりするのは意味があると思いますが、でも、聞いたけれども別に、聞きましたというものを仰々しく設置することが何の改革になるのかわからない。  だけれども、恐らく、現実には、各大学におきまして、大学の自治もそうですが、学部の自治あるいは教授会の自治という言葉のもとに、あらゆる改革がどこの学部にもかかわります。そうすると、例えばうちについてだけは絶対だめだよ、もう古いこのままでいくんだよと言うと、大学全体の改革ができない。あるいは、ある学部を独立王国にしてしまって、離れ小島のようにしてほかのところは変えるということはできるけれども。  そういったことが多々起きてきたために、そういった学部がすべて頑迷だとかいうことを申し上げるつもりはありませんけれども、もう少しその人たちにも意見を聞いてもらいたいというための恐らく手だてなんだろうなと。そこまで実情に踏み込んで理解がある人じゃない限り、こんなものは改革になるとは思えない。非常に隔靴掻痒であるというふうに思ってくると思うんですが、これは御意見があればちょっとお伺いをいたしますが、なければ次へ。——何かございますか。
  18. 有馬朗人

    有馬国務大臣 私は、大学紛争などを経験し、それから、今日のように急激な社会変革が行われるときに、特に国立大学であれば、国税を払ってくださる国民の方々の御意見をやはりより広く聞く、そして、しかもそれは単に諮問だけではなく、その中で実行の可能性のあるものは実行していくべきであると思います。そういう意味で、この諮問会議というものが設置されますことは、大学にとって非常にいいことだと私は思っております。
  19. 栗本慎一郎

    栗本委員 いいことだと私も思いますが、わざわざこれで改革になりますよと言うほどいいことじゃないというふうに思います。実態と実権と、それから税金もいささかなりとも使うわけでしょうから、もっと明確に、もっと責任のあるものにしていただきたい。  また、こういうものができても、どうせうちの学部だけ反対すればもう進まなくて済むんだよというふうに思っている大学教授も実際かなり多いと思います。そうじゃないんだ、この中でこう決めていくんだというふうにしていただかないと、賛成なんですけれども、これじゃもっと賛成できないなというか、これでもう幾らか税金はふえるんでしょうけれども、むだだなというような、だから、賛成であり反対であり、反対であり賛成であるということを申し上げて、こんなものでいいんですかと。そういう意味では反対ですかねと申し上げて、次へ移りたいと思います。  同じことが実は評議会についても言える。与えられている機能は若干違いますけれども、もっと責任と権限と、予算も本当はつけてやらなきゃいけませんよ。将来的にもっと、この程度のもので改革だというふうに思わないようにぜひお願いをしたい。  それから、指導上は、積極的に国立大学に私学の関係者を入れることを努力させていただくように御指導賜りたいし、また、一応法律上は、東大教授が京大の運営諮問会議に加わることも可能なんですよね。恐らく、どうも実態的にはそんなことは起きそうもないんですが、どんどん相互乗り入れをするように。  また官僚、特に国立大学大臣の御出身の東大は官僚を多数輩出されますから、彼らはユーザーであります。経済学にせよ、ユーザーがちゃんと、経済学をほとんど学ばずに日本の財政を取り仕切っているというケースが非常に多いわけですけれども、まあ、そのころは東大の経済学部は極めて実質的にマルクス経済学中心であったということもあるんでしょう。また、財政学というのは法学部から分離していった、そういういろいろないきさつなんかもあるんでしょうけれども、やはり世界から見るとそれはとても異常なことですよね。東大法学部は法務省の官僚だけを出しているならよくわかるんだけれども、そうじゃないというのがよくわからない。ですから、官僚の方々も入れるよう、つまりもっと広く、もっとというのは、法律上はできるんですけれども、実質広くできるように御指導をお願いしたいと申し上げて、次に移ります。  今申し上げたことの中に教授会とのかかわりがありました。改めてお聞きいたしますけれども、教授会は、附置研究所にも設置されるし、独立研究科にも設置されるし、もちろん学部にあるということなんですが、これは、学生の入学、卒業学位授与、その他学部等教育または研究に関する重要事項審議するということなんですが、その最終決定権といったようなものについて、例えば学生の入学、卒業というのは、この読み方によっては、学部が単独で決定するんだ、できるんだ。例えば東大法学部に入れる場合には、医学部教授が、あれはおかしいじゃないかとか、もう大学へ入ったころから汚職しそうな顔をしているぞというふうなことを言って、だめだと言ってもこれは通すと。当然のように思われているが、私はそうじゃないと思うんですね。  現実に私立大学においては、学部教授会の議は最終的に経るんですけれども、プロセスにおいては、大学全体の入学、アドミッションコミッティーのようなものをつくって、しばしばそこでは学長ないし総長と呼ばれる人が実質仕切っていることが多いんです。そして学部が、一応最後は学部教授会がオーケーするというか議を経るけれども、まあ現実に、実はおわかりだと思いますが、大学の入学というのは点数をどこで切るかという話でありまして、有馬というやつがいるけれども、これは名前が悪い、こんな話は全然しないわけですね。それから、面接もするわけですから、どうも言っていることがよくなかったというふうなことを言っているけれども、それで落とすという例はほとんどありません。だから点数だけだ。  では、点数をどこで切るのかという話を一応やるだけなんですが、要するにアドミッションオフィス、アドミッションコミッティー的なところで実際にやっているところはあります。御承知だと思いますが、世界大学基本的にすべてそうです。そこに、学長がトップにいる場合もあるし、学長から任命された教授がトップにいる場合もあるし、あるいは大学運営専門家として事務の方がそのトップにいる場合もある。私はそれが正常だと思うんですね。  今回のこの改革の中でもその辺がやや不明確なんですが、そういったことができるのかどうか。つまり、学部教授会の自治というものは、日本だけ異常にすごく大きくあるという現状があるんです、尊重されるのはいいことですけれども。その辺を含めまして、お答えをちょっと賜りたいと思います。
  20. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 御指摘ございましたように、学生の入学、卒業、あるいは課程の修了等に関する事項につきましては教授会審議事項となっておるわけでございます。そして、これらの事項のうち、学生の入学、退学、転学等につきましては、学校教育法施行規則によりまして、教授会の議を経て学長が定めるということとなっておるわけでございます。  一方、学生の入学、卒業、あるいは課程の修了に関する方針につきましては評議会審議事項となっておるわけでございます。したがいまして、その学生の入学、卒業、課程の修了等に関する事項につきましては、全学的な方針を踏まえながら各学部が個別具体の審議を行い、最終的には学長が決定をするということとなっておるわけでございます。  したがいまして、評議会が定める全学的な方針のもとで教授会審議が行われ、最終的な決定は学長がするという仕組みの中で適切な運用がなされると考えておるわけでございます。
  21. 栗本慎一郎

    栗本委員 結局よくわからないのでありますけれども、実態を申し上げますと、入学試験の合否は点数だけで行われています。それ以外の、あの学生の顔つきがよくないからということを言い出せば切りはないし、非常に問題があります。卒業は違います。単位がどうこうといっても、あの学生についてはこうだということは教授会で議論するのもいい。入学に関しましては、大学は入学試験のためにだけやるという一部誤解がある程度の社会でありますから、もっとスムーズ、合理的にやれるように御指導を賜りたいと思うんです。  ごくあっさり言いますと、実質、どうせ点数だけでやっているんであれば、あと若干附置的な問題がある程度であれば、もっと早く合否を発表すべきである。私学も国立もであります。しかも、コンピューターでほとんど採点をするんですが、そうすると早くなり過ぎちゃって、私立大学の場合は入試採点手当というのが出たりいたします。私、それを当てにしてカメラを買ったりいたしましたけれども、そんなものは別に給与の中に組み込んでいただけばいい。  これは大学の名前を出すと問題がありますが、私のおりました明治大学の場合は、試験があってから十日間かかるわけですよ。採点は本当は翌日できるんだけれども、そうすると採点手当が出なくなるからっといて三日間やるんです。三日目は仕事はもう何にもないんです。しようがないから、そこで学部のいろいろな、ことし一年間、松浪教授はいい人だったとかよくなかったとかいう話をそこでやる。もうばかばかしい。国立大学の場合もそうです。全教授が採点あるいは入試にかかわらなければいけないというふうなのはおかしいじゃないですかということであります。
  22. 有馬朗人

    有馬国務大臣 そういう御指摘もあることは重々存じ上げておりますが、しかし、随分面接もやるようになりました。例えば、東大の医学部で、私がいたころから面接をやってくれと随分頼みました。その結果、一割は面接でとるようになりました。今は、多分ことしからだと思いますが、全員面接をやります。ですから、単に筆記試験の点数だけでなくやることになっているということをまず御報告申し上げたいと思います。  それからもう一つ、御指摘のアドミッションオフィスなどもどんどんつくって、そこにかなり入学試験に関して専門家が集まって、一生懸命一年間、単に一月、二月、三月だけじゃなくて、一年間にわたって常にこの問題を考えるというふうなものもつくるようになりまして、ことしも二、三の大学がそういう方向に動いております。こういう方向を今考えておりますので、御理解賜れれば幸いでございます。
  23. 栗本慎一郎

    栗本委員 基本は全く賛成でありますが、大変手ぬるい、生ぬるい、遅いというふうに残念ながら申し上げざるを得ない。  入試センターというのについても、反対があるからそうなるんだと思いますが、あたかも大学は入学試験のためにだけ存在しているような一種の権威主義、古い考えがあります。だから、入試センターでやらないで単独でやるべきだと。だけれども、実際、全世界大学を見て、あらゆる大学のあらゆる学部が単独で入学試験をやっている国なんてない。今は入試センターがありますので、私学も含めて利用して、いい面もある。そこに問題があればその問題を直していくということにすればいいんですが、各学部が全部やっているなんというのは日本だけです。  そのために、原子炉を動かしている教授もサーキュレーターを動かしている教授も、全部とめまして行かなきゃいけないとか、その間にひよこを面倒見ている教授のひよこが死んだらどうなるんだという問題が常に発生しています。それを私学もまねするから非常に問題がある。だから、入試というのは切り離すというふうなことをむしろしていただきたいし、これも、教授会の自治というのが何かすごくなくちゃいけない、あれもこれも取り込んでおかなきゃいけないという中に入試というのが出てくるからだと私は思っているんですね。  私のおりました私立大学では、十種類入試がありました、二月、三月。みんな驚くんです。入学試験というのは、高校の卒業生ないし浪人した人の学部入学、昼間の、一部の入学試験だけだと普通思うけれども、法律的には、編入試験も学士入学の試験も、もちろん大学院の試験も全部同じなんですね。十種類全部、教授会でやらなきゃいけない。学部の一部、二部、それから編入の一部、二部、転入、学校内の転入ですね、経済学部から法学部へ来るとか、これも一部、二部があります。大学院もそうです。博士前期課程、修士課程と博士課程あるいは博士後期課程が、これは一部、二部は通常ないわけですけれども、あります。これもさらに細分化しよう、多様なニーズにこたえようというわけですよ。  入試だって、普通の点だけでやらないで、推薦、それから面接を重視されるんだということで、面接重視といって面接で入れたり落としたりするのならやっていただきたいと思うけれども、何か儀礼的にふえているだけじゃないかというふうに思う。大体、面接で思想信条とか、学問にかかわることはしばしば思想信条にかかわったりするので、それも聞いちゃいけないというふうな……。  慶応義塾大学で、あなたは福沢諭吉を尊敬していますかと聞いたらいけないということになっているわけです。いけないわけですね、何か政治的なものにかかわるかもしれない、聞いているうちにはかかわってくるかもしれませんから。だから、面接なんて、顔色を見て、お互い当たりさわりのないことを言わなくちゃいけない。実際、苦痛にしかならないようなものなんですが、どうも実態的にあやふやである、こう思いますので、入試というものについて、そういう一種の権威主義というのをぜひ削っていっていただくように。  ましてや、国立大学で機械にかかわって研究をされている教授なんかは大変だろう。我々は文科系教授でありましたから、いいや、この一カ月は遊んでということで、後で頑張りましたけれども、やはりまじめにやっていてブランクがありました、その一カ月間。やはり学術書研究書を読むのと学生の採点をするのと、コンピューターでやればいいのに、コンピューターでやると手当が減るからという話になるわけですから。  これは別に明治大学の例だけじゃないんですが、全国的に明らかに——入試をしてから三日目ぐらいで発表するのは、現在のところ、大きい大学では帝京大学だけだと考えています。これについても、私は帝京大学の総長と、そのときは私は保守的な立場で、三日目に発表するのはおかしいじゃないか、明治は十日なんだぞ、早めても一週間だぞと言ったらば、それは絶対三日でできると、議論をいたしまして、私が敗れまして、それはそうだということで、今私は帝京大学の客員教授もしておりますけれども。  それは一つの例なんですが、どうも改革方向が隔靴掻痒で、御意見があるかと思いますが、また個人的に伺うことにいたしまして、次に移らせていただきます。つまり、運営の柔軟化とかいうのが足りないんじゃないですかというようなことを申し上げていたところであります。  それから、今回の改正の中には、教育公務員特例法の改正関係のことが入っております。これは、実は社会的には大変重要なことだと思うんですね。また、国立大学という問題にかかわることの重要なものの一つだと思っております。  今回の改正では、教授会に対して学部長等が意見を述べることができるという恐る恐るの改革が入っているのがみそなのかな。つまり、教授の選任について、教授会の自治であるという考え方が当然あって、学部長なり学長なりが、この人どうですか、教授会がだめだと言ったという場合に採れないというようなことがしばしばある。その結果、これは私立大学でも起きることですけれども、ある学部は、政治的には、政治的あるいは社会的にはといいますか、そこには全然多様な意見がなくて、一定の勢力の物の考え方が、しかもそれが学問にかかわっているとなおさら顕著になるんですが、集まっちゃうというふうなことがあって、それにいわば風穴をあけようという意味だと思うんですが、これは賛成です。賛成ですが、もっと柔軟にしていただきたい。したがって、私立大学教授の資格をいろいろ変えて実際に運営しています。  私は今、帝京大学の客員教授だとも申し上げましたが、同時に、東京農業大学教授という名刺も持っております。教授教授なんですが、特任教授という種類のものでありまして、つまり教授会に出なくていい、逆に言うと出られない。学部運営についてこういうふうに変えろという意見を持っていても言えない。あいつはうるさくて言いそうだから外されているわけですが、言えないということになる。それはそれで何種類か教授というものがあるということでいいと思うんですが、国立大学ではまだそういう形に今なっていません。  そのことよりも、実はこの公務員特例法の中で、今問題になっている具体的なことを、例えば一橋大学の中谷巌教授がソニーの社外重役になるということについて、これはだめだと。これは慶応大学教授なら問題はないんですよね。私は、個人的には当然そうしたことは構わないではないかと。  ソニーというのは利益を上げる会社であって、そこに加わることはよくない云々と言うけれども、しかし、そうした企業の社会性というものが認知、認定されているからこそ——まだ反対はありますけれども、もし実態把握が正しければ、民間企業である銀行に税金を投入するということが認知される、反対はありますよ、反対はありますけれども、議論されて、国会の多数によって認知されているわけであります。  しかも、私立大学はよくて国立大学はいけないという話はおかしいのではないか。これについて、そこら辺まで踏み込んでいく気があるのかどうか、御意見をお伺いしたいと思います。
  24. 有馬朗人

    有馬国務大臣 私も、大学教員社会の中に直接入っていって、そこでさまざまな知識をふやし、どういうことを進めたらいいかなどということの参考にすることは、研究の上でも大いに役に立つし、また、大学での教育の上でも大いに役に立つと思っています。  ただ、現在、よく御承知のように、教育公務員特例はありますが国家公務員でありまして、営利企業の役員に就職することは、国家公務員法第百三条の規定によって原則として禁止されている。人事院の承認があった場合のみ例外的に認められることになっておりますが、この中谷さんの問題についても、現在、最終的には人事院において判断されるべきものと考えております。私どもも大いに協議をしているところでございます。  しかし、一方で、本年三月三十日、規制緩和推進三か年計画が閣議決定され、国立大学教官の営利企業の役員兼業については、平成十一年度中を目標に結論を得るべく検討を進めているところでございます。  文部省といたしましては、産学の連携協力は、先ほど申し上げましたように極めて重要なことと認識しておりますし、教育の上でもその経験が大いに役に立つと思っております。今後も人事院を初め関係省庁と十分協議しながら検討を進めてまいりたいと思っています。  ただ、私が非常に悩んでいることは、例えば取締役なんかになったときに、その会社に何らかのことがあったとき、その取締役は果たしてどういう責任を持たなきゃならないか、こういう問題がやはりありますので、そういう点で、例えば研究に従事するというふうな、TLO法で許されるようになりましたが、研究に従事する、手伝いに行く、こういうことは大いに進めるべきと思っていますけれども、どこまでこういう責任のある場所に入ることができるかどうか、この辺に関してはさらに検討を進めているところでございます。
  25. 栗本慎一郎

    栗本委員 これで終わりますが、今の問題に関しては、検討をし、十分厳重な資格審査その他状況審査をしていただきたいのですが、多様な教授あり方国立大学でも許されるように、そういった方向の中で御検討を賜りたいと思います。どうもありがとうございました。
  26. 小川元

    小川委員長 次に、栗原裕康君。
  27. 栗原裕康

    ○栗原(裕)委員 自由民主党の栗原でございます。  学校教育法等の一部を改正する法律案のうち、きょうは特に大学の管理、組織運営システムについて御質問させていただきます。  いきなり私ごとで恐縮でございますが、私は団塊の世代でございまして、大学に行きましたけれどもほとんど勉強をしておりません。それは私個人の怠けということもありますけれども、御案内のように、大学紛争に明け暮れておったのですね。あの当時、大学運営臨時措置法案ですか、大学法案なんかもありまして、学生の中でパネルディスカッションをやろうじゃないかというと、みんな反対なんです。私は、たまたま父が自民党の代議士だったものですから、おまえは賛成に回れということで、よくわからないでやらされた。  今、その法律を読み返してみますと、大学紛争をやめるということだけの話なんですね。それを、学問の自由を奪うとか、あるいは大学の自治を侵すとかいうことでわあわあやったのです。私どもはあのときの反省を原点にずっと考えていかなきゃいかぬ、こう思うのですが、大臣は、当時どういう職場におられて、あの一連の大学紛争をどう感じられたか、今何か感想があればお伺いをしたいと思います。
  28. 有馬朗人

    有馬国務大臣 大学紛争のきっかけになりましたのは東京大学の医学部でございましたけれども、その紛争の初期におきましては、私はたまたまアメリカのプリンストン大学の客員教授として、及びラトガース大学の客員としてアメリカに一年半ほどおりましたので、その発端のころに関しては私はよく知らないのです。ただ、帰ってきましたのがちょうど安田講堂の落城の二、三カ月前でございました。  具体的に名前を申し上げませんけれども、いろいろな人が私の部屋に来ておりました。まず第一は、共闘系の代表、あれは物理のいわば学生みたいなものです。その連中を中心に、民青系の学生諸君も来ておりましたし、ノンポリも私の研究室にいました。そういう意味で、研究テーマをノンポリと三派系と民青系、それぞれ一人ずつを選びまして、その三人に同じ研究をさせるというような方針をとりました。うまくいきました。  ただ、大学紛争のことを非常に心配いたしました。何でこういうことが起こったかということをしみじみ考えたのですが、ちょうどそのときに大学進学率が二〇%に達したわけです。東大だけでも学生数が二倍になっておりました。それに対して我々大学教員たちは、学生にどう教育をしていったらいいかとか、厚生施設が不十分であるとか、教室が不十分であるとか、さまざまな問題があるということを私は非常に痛切に感じた次第でございます。  そういうことで、さまざま教授会で批判的なことを述べた結果であったかと思いますが、加藤一郎総長代行が補佐をやれということで、その当時初めて、東京大学に特別補佐二人、向坊先生と、それから成田の空港のことで大変御尽力になられました隅谷先生が特別補佐でございました。私は若手でもありませんでしたけれども、むしろ古参の助教授として補佐というものをやりまして、二年間、毎日この大学の問題を検討させていただきました。  そこで、今回の大学に関するこの法律において、さまざま同じような問題があるということを思っているのですが、教授会の分担は何であるか、評議会というのは何をすべきであるか、そういうことについて大学紛争時代は非常に不明確であった、そしてまた、学長を、一人で孤軍奮闘している者を何らかの格好で支えていく組織をつくらなきゃならない、こういうふうなことが徐々に問題になり、今日のような法案を提出するということになったかと思っております。
  29. 栗原裕康

    ○栗原(裕)委員 科学者の目で当時の、何か本当に混乱した、もちろん学生の言っておったことにも正しいこともあったと思いますけれども、本当に混乱した中で御苦労なさった様子を聞かせていただきまして、ありがとうございます。  私も実は、安保騒動というのも小学生のころに経験しておりまして、とにかく町へ行くと、学生さんたちがみんな安保反対、安保反対と言って大騒ぎしているのですね。  先ほどの大学紛争もそうでございますが、いわゆる戦後の思想界といいますか言論界といいますか、戦後の言論をリードしてきたいわゆる進歩的文化人という人たちがいるわけですね。この進歩的文化人という人たちは、戦後の言論をリードし、学生とか社会に対する影響も大変大きかったのです。  そういう人たちはどういうことをおっしゃっていたかというと、例えば、ソビエトというのはすばらしい国なんだ、あるいは文化大革命というのは物すごくいい革命なんだ、あるいは全面講和をすべきなんだ、自由主義陣営とだけ講和しちゃいかぬ、全面講和でいくんだ、もしくは非武装中立だ、あるいは安保反対である、あるいは北朝鮮はすばらしい国である、あるいは最近では、PKOに行くと、自分の子供を戦場に連れていっちゃうんだ、今度のガイドラインについては、戦争に巻き込まれるんだということで、常に世の中をミスリードしているのですね。  ミスリードしているのですが、彼らの言論界あるいは世の中に与える影響がどうしてこんなに強いのかなというと、彼らのよって立つ権威というのは、実は大学にあるのですね。何々大学教授あるいは元教授とかそういう肩書きで、平気でミスリードしても、それについて、日本人というのはおもしろいもので、ああ、大学先生がおっしゃっているのならこれは多分間違いないんじゃないか、こう思っちゃうわけですね。  それで、彼らのよって立つ権威は大学であるし、また、大学が彼らのいわゆる安住の地なんですね。ヘーゲルの言葉に「ミネルバのフクロウは夕暮れに飛び立つ」、こういう言葉があるそうでございまして、これはいろいろな意味があるのでしょうけれども、しょせん、学問、特に人文系の学問というのは後知恵なんだ、世の中がどんどん動いていくんだということもありますけれども。戦後のいわゆる進歩的文化人の人たちが言論をミスリードしてきたということは、余りにも日本の場合はひど過ぎる。  なぜこんなことになってしまったのか。恐らく大学という権威によって、そして大学を安住の地として、それを大学が学問の自由とか大学の自治という言葉によって彼らを擁護していた、そういう部分が私はあると思うのですね。そういう部分を今回の法律では、長い間何とかしなきゃいかぬと言いながら全然できなかったんだけれども、初めて運営諮問会議とかあるいは評議会あるいは教授会というものをきちっとして、先ほどの栗本先生の話だとまだまだ生ぬるいということでございますが、大学組織運営システムの改善に資するということになると思います。  先ほどの栗本先生質問ともちょっとダブりますけれども、大臣は、これで大体いいのだ、要するに、全く野放しと言ったらおかしいですけれども、大学の自治あるいは学問の自由ということに隠れて、いわゆる進歩的文化人がずうっとよりどころにしておった今までの大学というものを、組織運営的な面で改革できるというふうにお考えかどうか、御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  30. 有馬朗人

    有馬国務大臣 私は、大学の自治というのが何かということをよく考えるのですけれども、やはり教育内容研究内容というふうなことは、これは各教官、そして教員、そしてまた大学として守っていかなきゃならないことだと思っています。どんなことを研究するか、どういうことを教育していくか、こういうことは、やはり教授会できちっと検討の上決めていくべきことと思っております。  ただいま栗原先生、大変大学を買ってくださってありがとうございました。大学人だから評価されて意見が世の中に大きく伝わるというのは、これはやはり大学だけの問題ではなくて、社会の問題だと私は思っているわけですね。アメリカでも随分大学人がいろいろなことを言っております。しかし、それに対しては社会がぴしっと、その意見をよく聞きよく判断をして、違う意見の人は違う意見でどんどん言っているわけであります。ですから、そういう意味で、大学をずっと買ってくださいまして、大学人間が言うことをいろいろお聞きくださったことはありがたいと思いますけれども、もっとさまざまな論が自由に行われることを私は望んでいるわけであります。  大学というのは、公共的な機関でございます。また、学問は学問、それ自体の論理で行われるべきだと考えておるわけでありまして、大学教育全体を単なる個人のイデオロギーというふうなもので権威づけるということは、本来行われるべきだと思っておりません。  そういう意味で、今回大学組織運営改革を図らせていただくということでございますが、しかし、教育内容とか研究内容というふうなことはやはり各学部がきちっと考え、よりよい教育をしてくださることを望んでいる次第でございます。
  31. 栗原裕康

    ○栗原(裕)委員 もちろん大臣のおっしゃっていることだと思うのですね。ただ、私が申し上げたかったのは、今まで余りにも世の中をミスリードしてきた人たちが、大学という権威に守られ過ぎているということを申し上げたかったのでございます。  もう一つ、進歩的文化人の特徴を申し上げますと、言論に対して責任をとらないのですね。先ほど言いましたように、みんなことごとく間違っておっても、これについて、ああ、あのときは私は間違っていましたというのは一言も言わない、少なくとも聞いた覚えがないですね、私は。  要するに、彼らの特徴というのは、自分がかくあるべしという理想がまずあるのです。例えば、共産主義に対する理想というのはあると思いますよ。そういう理想があって、そうすると現実に、当時ソビエトとか中国が発表した数字といったものをうのみにするわけですね。例えば、大躍進がある、物すごく農作物が出た、これは中国の資料をそのままうのみにして、それをまた自分の論文に書いてほいほいと出す、全然検証しないということですね。  それから、先ほど言いましたように、責任をとるということをしませんで、私どもも今でも覚えておるのですけれども、「都市の論理」という本を書いた羽仁五郎さんという方がいらっしゃった。あれは我々学生時代には何かいわゆる進歩的文化人の元祖みたいな人ですよ、教祖さんみたいな人ですよ。この人が、言論の責任をとることになってくれば言論の自由なんてものは保証できないというようなことを言っているのですね。平気で言い放っているのですよ。さすがにこういう人たちはもう大分少なくなってきたと私は思います。  しかし、国民の不安につけ込んで自説を通そうとする。国民はいろいろな不安がある。例えば、戦争はもちろん嫌ですね。そうすると、戦争に巻き込まれるかもしれない、先ほどのPKOもそうですし、それからガイドラインもそうです。そういう不安につけ込んで自説を通そうとしている、そういう人たちは相変わらず多くいると思うのですね。  例えばこの前、テレビ朝日の「ニュースステーション」で所沢のダイオキシンの話をしましたね。そのときに、やはり環境問題、ダイオキシンというのは国民が物すごく不安になっているのですね。テレビ朝日の報道というのはそういう不安につけ込んで、よく調べもしないでさっと出したのですね。こういう傾向があると思うのです。そういう傾向を私は非常に憂えるわけでございます。  今度の法律の中に、大学での教育研究等の状況の公表、そして自己評価ということが入っております。こういうことは大学での、まあ一部だと思いますけれども、非常に無責任な研究者というものを是正することに資するかどうか、お考えをお聞かせいただきたいと思います。
  32. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 今回の改正法案における情報の公表は、大学審議会答申及び中央省庁等改革基本法を踏まえて、国立大学に対し、教育研究組織運営状況の公表を義務づけるものでございまして、大学の将来計画や自己点検・評価に関する情報、成績評価の方針や基準など、学生の知識、能力の習得水準に関する情報、卒業生の進路に関する情報等の公表を考えておるところでございます。  また、自己点検・評価につきましては、すべての国立大学でこれを実施しておるところでございますが、ややもすれば形式的な評価に陥りがちであるとの指摘もありまして、大学審議会答申を踏まえて、今後、自己点検・評価の実施及び結果の公表を各大学に義務づけるとともに、学外者による検証を各大学努力義務とする方向で検討しておるところでございます。  各国立大学のこのような情報の公表、自己点検・評価の実施及びその結果の公表は、大学教育研究活動の透明性を高めるとともに、大学社会に対する説明責任をより明確なものとし、公共的な機関としての大学社会的責任を果たしていく上で極めて有効であるというふうに考えておるところでございます。  また、これらの措置を通じまして、各教員教育研究者としての責任をこれまで以上に強く自覚をし、教育研究に対する取り組みの向上が図られていくというふうに考えておるところでございます。
  33. 栗原裕康

    ○栗原(裕)委員 大変結構だと思います。先ほども申しましたように、イデオロギーについては、例えば、いわゆる社会主義がいいのか、あるいは、ソビエトが崩壊をした時代でございますから、冷戦が、ベルリンの壁が崩れた時代でございますから、余りもうイデオロギーではないと思うのですね、いわゆる進歩的文化人がミスリードするというのは。  ただ、繰り返しますけれども、環境問題なんかでは、今非常に社会が注目をしておりますし、それから環境について大学でいろいろな研究をし、あるいは環境学部というような形で学生さんを教育していくという機会がふえてくると思うのです。だから私は、まさにこの環境問題というのがこれからの、もし仮に、先ほど私が指摘したような進歩的文化人が相変わらずのことをするのだったならば、その分野に出てくるのではないかという実は心配をしておりますので、あえてこういうことをお聞かせいただいて、大学説明する義務みたいな、説明することをきちっきちっとやっていただいて、少なくとも社会に開かれた大学であってほしいということを思います。  今回の法律で初めて、長い間懸案でありました組織運営システムの改善に踏み込んだわけですが、改めてお聞きしたいのは、なぜこんなにおくれてしまったのかということなんですね。これはもう大学紛争からずうっと常に社会のテーマになっていたはずなんですね。なぜ平成十一年なんだ、そこまで放置されておったのかなということについて、文部省として何か御所見といいますかいいわけといいますか、何かありましたらお聞かせいただきたいと思います。
  34. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 大学組織運営改善につきましては、御指摘いただいております各地の大学紛争に対処するため、昭和四十四年に大学運営に関する臨時措置法を制定いたしました。さらに、昭和四十八年には、学長を補佐する副学長や学外者の意見を反映させるための参与会の設置など新たな組織運営の仕組みを取り入れた筑波大学を創設したところでございますし、また新設医科大学等新しく設置された大学に参与を設置するというふうな措置も講じたわけでございます。さらに副学長設置も進めておるところでございます。  また、平成六年には、教授会運営円滑化のための代議員会の設置を促進する改正を行うなど、これまで種々の取り組みを行ってきたわけでございますが、近時、大学を取り巻く諸情勢の変化に対応して、従来にも増して大学組織的な取り組みをしなければならない課題が多くなっておるわけでございます。  そういった状況を踏まえまして、各大学が自主的に、かつ責任を持って意思決定をし実行する体制を整えることが必要であるという観点から、今回所要の法改正をお願いしておるところでございます。
  35. 栗原裕康

    ○栗原(裕)委員 次の質問でございますが、今回は国立大学の話でございますけれども、これが仮に国会で成立するとしますと、私立大学に対してどういう影響を与えるか。微妙な質問ですからなかなかお答えにくいのかもしれませんけれども、あるいは文部省として何か期待をするのか、期待を込めて答弁なさるのかわかりませんが、私、私立大学組織運営システムの改善にもある程度影響を与えていくということを予想されているのかどうか伺いたいと思います。いかがですか。
  36. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 私立大学組織運営につきましては、基本的には、その学校の設置者たる学校法人がお決めになるわけでございます。その場合に、いわゆる経営的観点からする理事会と教学的観点からする学長教授会等とのそれぞれの将来の教育研究の発展に対する思いあるいは期待があるわけでございます。その両者の調整をうまく図っていくということが大切なわけでございます。  私立大学につきましては、その設置の経緯あるいは運営の実態等がさまざまでございまして、理事会と教授会等との関係というものもさまざまなわけで、これを一律に決定するということはなかなか難しいわけでございます。  ただ、今回、国立大学につきまして、大学一つ組織体として機能するような組織体制の整備というものを図ったわけでございますが、各私立大学におきましても、そのような国立大学の動きというものを参考にしながら、理事者サイドと教学サイドがより協力し合って、適正な組織運営体制というものが整えられ、教育研究の充実に資することを期待しておるところでございます。
  37. 栗原裕康

    ○栗原(裕)委員 私の地元のある私立の大学理事長さんが、教授会が強過ぎちゃってもう何もできなくて困っているというようなことを常々おっしゃっているので、そういう質問をさせていただきました。  最後に、今回の法案の審議を今しているわけでございますが、いろいろな要請書が議員会館に届けられておりまして、大体反対の立場の方が多いんですね。その中に、東京大学学部の教職員組合、大臣は理学部でしたかね、工学部の教職員組合というのがありまして、その中にこう書いてあるんですね。「欧米諸国に比較して日本大学の水準を低下させた要因は、予算欠乏と人員不足および施設・設備の老朽化であり、この責任は大学予算を抑制し続けてきた政府文部省にある。」こう書いてあるんですね。これは、大胆に解釈すると、要するに、予算をどんどん与えて、そして人もふやして、そして施設も設備もよくすれば、日本大学というのは欧米諸国に匹敵するんだ、こういういうことを言いたいんだと思うんですね。  これは、私は、よく誤解があるんですけれども、例えば地元でも、いろいろな教育問題について地元の保護者とお話をいたしますと、とにかく学校をよくしていただきたい、設備をよくしてくれとか、あるいはもっと予算をかけて、先生も、例えば三十人学級の方がいいんだとかいろいろなことを言うんです。  私は、これは少し例えはよくないかもしれませんけれども、作物、農作物なら農作物に例えますと、例えばトマトならトマトをつくる。何が必要か。まず土が必要ですね。それから太陽の光がなきゃだめですね。それから水がなきゃだめです。肥料がなきゃだめだ。そういったもので農作物を、トマトならトマトをつくりますね。ところが、今のこの東京大学学部の教職員組合の論法でいけば、与えられるものは何でも与えようと。肥料もどんどん与える、水もどんどん与える。何か最近の、特に少子化になってからの風潮というのは、やはりそういうことがあると思うんですね。子供たちに対して、なるべく与えられるものはみんな与えていこうと。  しかし肝心の、例えばトマトで言うと、トマトの中には、肥料を余りやり過ぎちゃうと枯れちゃうんですね。あるいは水も余りやり過ぎると枯れちゃうんです。つまり、育とうという心があるんですね。そこをうまく、農民なら農民、農家が見ておって、ぎりぎりのものしか与えないで、しかも、その作物が自分で育っていこうという力を精いっぱい引き出すという、そういう部分があると思うんです。そういうのがいい農家なんですね、きっと。  そういうことを考えますと、学ぶ心、それをこれからはもっともっと育てていかなきゃいけないんじゃないかと。何か今の世の中の風潮は、何となく塾へやる、あるいは学校で言えば、とにかくいい教室で、冷暖房も完備しておって、そういう環境を整えさえすれば子供たちはよく育つんだという何か変な誤解がある。  本来は、若いうちの苦労は買ってでもしろというぐらいのことわざがありますので、本来、子供たちの学ぶ心を育てていくということが私はやはり必要だと思うんですね。そういう意味では、どうも最近の風潮で、繰り返して大変恐縮でございますが、物理的にいい環境さえ整えればいいんだというようなことが多いような気がいたします。  大学についても、特に文科系学部については、とにかく入っちゃえばこっちのものだ、後は単位をそこそこ取って、卒業すればもうその大学の、ある意味では世間のステータスでいい会社に就職できるとか大企業に就職できるとかというようなことが多くなってきますよね。  そういうことも含めて、私は今の大学あり方というものをもうちょっと反省をし、今後の大学教育に、大学改革に生かしていくべきだと思うんでございますが、その学ぶ心というものを一つのキーワードといたしますと、大臣は、今後の大学改革あり方というのはどういう方向に進むべきなのかというその御見解を最後にお伺いをいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。
  38. 有馬朗人

    有馬国務大臣 先ほど、大学紛争時代に私がどういうことを考えていたかという御質問がございましたけれども、実は、大学紛争がかなりめどがついた段階で、一九七一年から長期にわたってアメリカ大学教授として教育に励みました。その際、私が非常に心配したことは、日本教授諸公、私自身も含めてでありましたけれども、教育よりも研究に熱心であるということ。ですから、どうしても教育がやや手ぬるくなるという傾向があるということをアメリカでの教育を通じてしみじみと悟った次第であります。  例えば、自己点検とか自己評価あるいは第三者評価であるとか、あるいは休講は絶対しないとか、もし休講をするとすればかわりの人をちゃんと立てる、ないしはセメスターが終わった後で十分な時間をとって教育をする、こういうふうな熱心さ。それから、チームティーチャーに相当しますが、TA、ティーチング・リサーチ・アシスタントという、これは大学院学生ですが、そういう者を使って実にきめ細かく学生諸君の授業の理解を進めるべく努力をしている。それから、授業の最後には必ず学生諸君による教授教育方針ないしは授業のやり方に対しての調査をするわけです。学生諸君の評価を得るわけです。  こういう点で非常にアメリカが進んでいるということがありますので、すべてアメリカがいいわけではありませんけれども、日本大学もやはり教育の上で、研究の方は私は十分評価するのですが、教育の上では何とか工夫していかなければならないと確信をした次第でございます。  日本が活力のあるすぐれた国になっていくためには、やはり大学が頑張っていい人材を出さなければいけない。そういう意味で、教育研究機能を充実していく必要があると思います。先ほど組合の方の意見を御紹介くださいましたが、その中で私が一つ賛成をいたしますことは、やはり高等教育に対して国がきちっと財政的な基盤を強めていく、そのことによって国公私立全体の大学の財政的な基盤を強めていくことがどうしても必要だと思います。  ただ、それに加えて、先生今トマトを育てることをおっしゃられましたが、私は、教える人、育てる人の意識改革をしていかなければならないと思っています。例えば教育内容であるとか教育のやり方、黒板のどこまで見えるかというふうなことまで立ち入った教育のやり方、それから、先生たち、教育者たちがどういうふうに教育したらいいか、研修したらいいかというようなことで、よくファカルティーディベロプメントと言われておりますが、そういう研修を通じて教育における教員の自覚を高めていく必要があると思っております。  特に初中教育に関しましては、生きる力ということを唱えております。そのことはどういうことかというと、もちろん倫理的な面とかのこともありますが、それ以上にまず、自分で考えて自分で判断をしていく、そういう力を教育しなければならない。大学は特にそれが必要だと思っております。  こういう意味で、大学の自律性を確保していく、組織運営体制の整備や多元的な評価システムを確立していくというふうな改革を通じまして、各大学がさらに一層個性化し多様化して、創造性を備えたすぐれた人材の育成や学術研究の推進に努めてまいりたいと思っています。繰り返しますけれども、財政的にも国公私立全体に対して充実できるよう努力をさせていただきたいと思っております。
  39. 栗原裕康

    ○栗原(裕)委員 終わります。ありがとうございました。
  40. 小川元

    小川委員長 次に、奥山茂彦君。
  41. 奥山茂彦

    ○奥山委員 栗原先生、また栗本先生に続きまして質問をさせていただきたいと思います。  私は、大臣、どちらかというと大学は門外漢でありますので、やや素人っぽい質問が出るかと思いますが、ひとつお許しを願いたいと思います。  この間、我々の仲間で、日本でなぜノーベル賞学者が余り出ないか。しかも、出ても、特にいわゆる理数科とかそういう面におきましては、どちらかというと、日本大学での業績というよりもアメリカとかの大学での業績が評価されてノーベル賞をもらわれた、そういう方があるわけでありますから、そういう面におきましては、一つは語学面がハンディであるとか、あるいは、やはりノーベル賞そのものが西洋社会で生まれた賞であるので、東洋人とかそれ以外の国々にはなかなか出ないのじゃないかとか、そんな話もいろいろあるのです。しかし、一つは、やはり日本教育制度の中にいろいろ問題もあるのじゃなかろうかと思います。  この間ある教育専門家から少しばかり耳にした話をお伝えしますと、小学四年生の理科の時間に、たまたまそのときは冬でありましたから外に氷が張っておりまして、先生がその氷を教室に持って入ってきて、そして子供たちに、みんな、この氷が解けると何になりますか、こういう質問をされた。子供たちは当然、先生、それは氷が解けると水になります、ほとんどの子はそういうふうに答えたのですけれども、一人の子供が、先生、その氷が解けると春になります、こういう答えをしたそうであります。恐らく、受験でありますと、氷が解けると春になりますという答えをしたら、これは論理の飛躍でありますからペケになると思うのですね。ところが、今学校教育というのは、大体氷が解けると水になりますという答えをするような勉強の仕方をしておるのじゃなかろうかと思います。  戦後の教育の中において、日本教育は、非常に普及率が高いわけでありますし、きのうも大臣が科学技術週間でおっしゃっておりましたけれども、日本の算数とか理科、これはまさに世界のトップ水準を行っておるということが言われておるわけであります。ある意味でいうと、これは、日本が戦後のマスプロ教育と言われるような教育をずっと普及してきた、これはこれで一つの成果があったと思います。しかし、これが一面において、ちょっと表現は悪いのですが、人材の製造工場のような形になっておって、それぞれの高校入試とか大学入試で一つの検査が行われて、それが一定の知的到達度ということになりますと、そこで初めて、いわゆるJIS規格というのですか、そういう規格に合った人間社会に送り出されていく、こういうことでなかろうかと思います。私は、これを、JIS規格人間ということをよく言っておるのですけれども。  結局、そういう教育の中におきまして、柔軟な発想とか、それから秘めた能力とか個性というものを比較的出す子供たちというのが、いわゆる今の教育の規格からいうと二流品に落とされるのです。ちょっと変わった子供やなというようなことで処理をされてしまう。ここに戦後の教育一つの欠陥が生まれておるのでなかろうか、こんなことも思うわけであります。  特にこれから必要とされるのがいわゆる想像力、創造性、それからさっきおっしゃっておりました生きる力とか、また一方において道徳的な面を身につけた、そういう総合的な人間をこれから養成していかなければならぬ、そういう時代に入っておるわけであります。そういう中における大学の役割というものが、今改めて問われるわけであります。  そこで、順番に聞いてまいりますと、大学というものが、一つ社会性とか開かれた大学でなければならぬということと、組織も柔軟でなければならないという中におきまして、一つは、学長選考あり方というものが今いろいろ問われるわけであります。大学は、責任体制を確立し、大学社会との新しい関係を構築するためには、大学運営の責任者である学長に、学内においてリーダーシップを十分に発揮でき得る適任者を得ることが重要になってくるわけであります。そのために、適任者は学内だけではなくして広く学外からもオープンに求める姿勢が必要でないかと思います。  そういう中におきまして、先ほどもやや出ておりましたけれども、国立大学では、学外から学長を招聘するということで、ノーベル賞を受賞した江崎玲於奈先生平成四年から六年間にわたって筑波大の学長をお務めになりましたし、それから数学者の広中平祐先生は山口大学学長ということで大変頑張っていただいておるわけであります。このような学外からの学長を求める、そういった姿勢も必要でなかろうかと思いますが、これからの国立大学学長選考あり方について、基本的にはどういう取り組みをされるのか、その辺をまず冒頭お尋ねを申し上げたいと思います。     〔委員長退席、栗本委員長代理着席〕
  42. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 大学を取り巻く状況が今後大きく転換をしていくことが予想される中で、大学一つ組織体として、教育研究の質を高め、期待される役割を果たしていくためには、学長としてリーダーシップを発揮しつつ責任を持って大学運営を行うことができる適任者、これを学内外を問わず広く求めることがますます重要になってくると考えられるわけでございます。  学長選考につきましては、一般的には、教員による投票によって候補者というものが決められるわけでございますが、こういったことを行う場合には、事前に評議会の責任において学内外から数名の候補者に絞った上で教員による投票を行うとか、投票に参加する教員の範囲について、大学運営の最高責任者を選ぶ上で適切なものとするなどの工夫を行うことが必要であり、この点、大学審議会においても提言をされておるところでございます。  文部省といたしましては、各大学において学長選考あり方について、学長の果たす役割がますます重要になっていることを踏まえて改善されるよう、その取り組みが進められることを期待しておるところでございます。
  43. 奥山茂彦

    ○奥山委員 次に、教員選考あり方についてお尋ねをしたいのです。  このように、学長に適任者を得ることは大学運営にとっては極めて重要なことでありますが、他方、教員選考社会的に開かれたオープンなものとして、大学教育研究活性化させる必要があります。  これまで教員人事については、講座の中で身内優先的な閉鎖的な人事が行われてきたというケースも聞いたりします。さらにまた、大学審議会において、平成六年に「教員採用の改善について」の答申が出ました。これらの動きを踏まえて国会で審議を行って、大学教員の任期制に関する法律が制定されたわけであります。これらの中でも、教員人事の透明性、客観性を高めるとともに、他校の出身者や社会人、外国人などを積極的に採用する必要があること、あるいは公募制や任期制の導入により教員の流動性を高めることなどが繰り返し指摘されてきたわけであります。  そこで、公募制とか任期制の導入等、こういったことも含めまして、教員人事の現状について説明をいただきたいと思います。  さらに、今回の法案の中で、学部長が全学の教員人事の方針に基づいて個々の教員選考について意見を述べることができると規定されているわけであります。教員選考は、教授会の議に基づいて学長が行うこととなっているわけでありますが、学部長教授会のメンバーでありますからこれまでも意見を述べてこられたと思いますが、今回特に、教員選考学部長の役割というものを法律上どのように規定をされるのか、さらにまた、この仕組みによって教員人事はどのように改善をされていくのか、あわせてお尋ねをしたいのです。
  44. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 教員採用の件でございますが、御指摘いただきました大学審議会の答申などを踏まえ、公募制や任期制の導入など、教員の流動性を高め、教育研究活性化を図る、そういう観点に立ってこれまでさまざまな改善が図られてきたところでございます。  具体的には、公募制につきましては、平成三年度には五〇%の大学で実施をされておりましたが、平成八年度には六一%の大学でこれが実施をされております。任期制につきましても、平成九年八月に制度が実施されたわけでございますが、現在までに二十九の大学等で導入がなされているところでございます。また、企業等から採用された教員の数、国立大学における外国教員の数なども着実に増加する傾向でございますし、女性教員の割合も増加を見ておるところでございます。今後とも、教員人事の流動性を高めるよう各大学に求めてまいりたいと考えておるところでございます。  次に、今回の教員選考の仕組みの改善の件でございますが、国立大学教員選考教授会の議に基づいて行われておりまして、現在でも、学部長教授会のメンバーとしてその審議に関与をしておるわけでございます。  しかしながら、大学審答申において、選考の手続については、幅広い視点に立って、教育研究の進展や社会要請を踏まえながら検討を行うことが重要である、そういう認識に立って、学部長が、全学的な人事の方針、基準を踏まえて、教員の採用、選考に関して必要に応じて意見を述べることが適当であるというふうな指摘をいたしておるわけでございます。  それを受けて、今回の改正案におきましては、学部長は、大学教員人事の方針を踏まえ、具体の選考に関する意見を教授会に対して述べることができる旨を新たに定めることといたしたものでございます。  例えば、評議会の議に基づいて各大学では教員人事の方針を定めるわけでございますが、その方針においては、従来、教員人事改善方向として、一般的には、例えば他大学卒業生の採用、女性教員社会教員外国教員の採用等の促進、具体の教員選考に当たって教育能力を重視することなどが言われておるわけでございますが、そのような方針を学部長が具体の教員人事に当たり適切に反映することが今回の措置により期待されるところでございます。
  45. 奥山茂彦

    ○奥山委員 今も少しばかり話が出ておったのですけれども、そこで教授会あり方が、これは我々も一私立大学で聞いた話なんですけれども、大学そのものが、さっきの人事の面も含めまして、全学的な問題もほとんど教授会の議を経なければ実際通らないとか、そういうケースがあったり、あるいは幾つかの学部があっても、一部の学部教授会が反対すればすべて通らなくなるというようなケースもあったりするわけであります。  そこで、評議会教授会の役割分担をこの際きちっとしておこうということで、しかも仮に意見が違ったとしても、最終的には学長がその決定をするという形にはなっておるわけであります。その辺は組織的にすっきりしておるわけなんですけれども、実際に教授会が事実上はかなりの実権を握っておる大学が多いんじゃないかというふうに思いますから、その辺について、どういう形で整理をされ、どういう形で今後進められるのか、その辺をお尋ねしたいのです。
  46. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 今回の法案におきましては、国立大学の責任ある組織運営体制を確立するために、学部教授会評議会の役割分担を明確化すること、学長評議会の、学部長教授会議長としてそれぞれ会議を主宰すること、さらには、学部その他の組織の一体的な運営というものが必要であるという訓示的な規定を設けることなどを行いまして、学長が中心となって、大学として、合理的で責任ある意思決定と実行を可能にしようとしておるところでございます。  その中で、学部教授会評議会との役割分担の件でございますが、大学が一体的、機能的に運営されるとともに、教員教育研究に専念できる体制をつくる、そういう観点も踏まえまして、評議会大学運営に関する重要事項審議し、学部教授会学部教育研究に関する重要事項審議するということで、それぞれの審議事項を法律上で具体的に規定をしたところでございます。  各大学においては、学内の役割分担を明確にした上で、連携協力しながら合理的で責任ある意思決定を行う枠組みを整備する、こういう今回の制度改正趣旨に即した組織運営の適正化を図っていただきたいと考えておるわけでございますが、それと同時に、その状況について広く社会に公表をし、学内外の評価を求めることも期待をしておるところでございます。
  47. 奥山茂彦

    ○奥山委員 特にこの問題につきましては、我々のところにもかなり意見が寄せられて、反対の声もかなり強かったわけであります。従来の大学の役割がかなり変わるということにもなるわけでありますから、その辺はきちっとやってもらう必要があるかと思いますので、ひとつ十分な体制でもって臨んでいただきたいと思います。  それから、この問題とは少し離れるわけなんですが、育英奨学制度、これはいろいろなところからも最近言われているわけであります。我々も、十八歳自立社会ということを、我々若手議員の間でも積極的に取り上げて臨んできたわけでありますが、奨学育英制度の拡充ということ、現代の学生たちがいつまでも親のすねかじりをして大学に通ってきておるというケースが非常に多いわけであります。  アメリカ社会なんかは、大学生になると、もう経済的にはやはり自立をさせなければいかぬ、社会的なそういう習慣が非常に強いわけでありますけれども、日本は、最近特に少子化になって、過保護になって、大学の入学式まで親がついてくるというような時代でありますから、どうしても子供の自立というものがおくれるわけであります。  しかも、実際に子供が自立するのが、大学卒業して社会人となるころからか、あるいは大学院に入ったころからようやく自立しかけたなということになるわけでありますが、そういう中において、やはり今のところは、自立せよといっても実際には奨学金が少ないわけでありますから、相当アルバイトをしなければ経済的には自立するということができないわけであります。  そういうことをいろいろ考えてまいりますと、我々も、十八歳自立社会づくりということで今意気込んで取り組んでおるわけでありますが、大臣としてはどのように取り組んでいただけるのか。
  48. 有馬朗人

    有馬国務大臣 御指摘のとおり、十八歳自立ということは極めて大切だと思っております。すなわち、十八歳自立社会の創造ということが必要であると思っておりますが、その上で、学生の自立心、自己責任の意識を涵養し、学生に主体的に学習をするよう促す上で意義の深いことだと考えております。  こういう観点から、奨学資金というのはもっと大きくすべきだという御指摘でありますが、育英奨学事業は、親の教育費負担を低減し、学生が自立して学べるようにするための重要な施策だと考えております。私自身、奨学金とそれから入学金免除とか授業料免除でもって、それ以外にアルバイトをいたしましたけれども、やっと大学卒業することができました。そういう意味でも、何とか日本育英会奨学金を抜本的に拡充を図りたいと考えている次第でございまして、平成十一年度の予算において非常に大幅な増加をさせていただきました。  具体的な内容を申し上げますと、貸与人数を大幅にふやしたというようなこと、事業規模を一千億円増額したとか、貸与月額を選択的に選べるような制度を導入いたしました。それから、貸与に係る学力の基準であるとか家計基準を緩和するなどということで、大変努力をさせていただいた次第でございます。  いずれにしても、特に大学院生なんかが、自立しないで大学院で勉強するというのはおかしな話でございますので、大学院などの奨学金はさらにまた一層充実させていただきたいと思っております。
  49. 奥山茂彦

    ○奥山委員 これは学生の問題でもあるとともに、やはり親の意識の問題がもう相当大きいわけでありますから、このごろは、親離れしないというより親が子離れしない、そういう社会になっておるわけであります。  そういう中においても、あえてやはり子供を何とか経済的には自立させて自分の力で生きていく、そういう生きる力というのを、それもやはり生きる力の一つになるわけでありますし、今の学生が一番欠けているのがそのたくましさということであるわけでありますから、そういう面からも、特に十一年度の予算の中ではかなり盛り込んでいただいたわけでありますけれども、よりまた力を入れて充実をさせて、十八歳自立社会というものをぜひともつくっていただきたい、このように思います。  最後に、さっき文部大臣もおっしゃっておったわけでありますが、公的な財政支出というものが教育に対して、特に高等教育に対しては非常に少ないわけであります。先進諸国の中においても、日本は高等教育に対する公的財政支出が少ないということが言われてきたわけであります。これは改めて大臣に聞くというよりも、我々自身がもっともっとそのつもりになってやらなければならない課題ではありますけれども、しかし、やはり具体的なその体制づくりというのは、これはもう文部省にやってもらわなければならないわけであります。  大臣は科学技術庁長官も務めてもらっておるわけでありまして、現在、科学技術関連研究予算というものももっともっとふやしてくれということを大臣は何回も何回もおっしゃっておられたわけでありますし、我々もまた、高等教育の公的財政支出、もっともっとふやさぬと、実際にはなかなか高等教育というものの体制づくりができない、こういうことも考えます。さっき教職員組合の話もありましたけれども、しかし、それはそれでおいておいたとしても、やはり絶対的な金額が少ないんじゃなかろうか、我々もそういうことを感じておりますので、それに対して、大臣としての一つの意気込みを示していただきたいと思います。
  50. 有馬朗人

    有馬国務大臣 一つ、お答えに先立ちまして、ノーベル賞の問題でございますが、私は、日本人は十分ノーベル賞をもらう研究をしていると思います。ただ、戦前の方がむしろ個人の独創性を強調した時代であった。戦後は、やはり早く日本の疲弊した産業を、国力を強くしなければならないということで、個性をどちらかというとつぶす方向があったことは事実でございます。  しかし、今日のように産業力が増したということは、ちょうどアメリカの一九四〇年代に対応するわけでありまして、一九四〇年代まではアメリカもノーベル賞はほとんどなかった。ですから私は、今後二十年を御期待いただきたいと思っておりますので、どうぞよろしく、決してサボっているわけではございません。  ただしかし、今御指摘のように、高等教育及び学術研究というふうな面で、科学技術もその一端でございますが、国の財政支出あるいは地方自治体の財政支出合わせまして、公財政の支出がやはり少ないと私は認識しているわけでございます。  しかし、それにしても、科学研究費が急激にふえたということは、私は大変ありがたいことだと思っております。この点に関しては、いつも申し上げることでありますけれども、科学技術基本法が委員の方々の御努力により議員立法として実現したということを心から御礼申し上げる次第でございます。それに基づいて科学技術基本計画が立ち、そして科学研究に対する国の支出が非常にふえたということを心から喜んでいる次第でございます。  さて、高等教育でありますけれども、高等教育においても、御指摘のとおり、公的な財政支出が小さ過ぎると私は思っております。  日本の国の高等教育が国際的な力を持つ、そして、この複雑な社会経済の著しい変化に適応しながら、来るべき二十一世紀において期待される役割を十分果たしていくためには、改革をもちろんしていかなければなりません。そういう改革を、今盛んに大学関係者が努力をしていると思います。  しかし、このような改革を持続的に推進し、教育研究の充実を図っていくためには、教育研究費の充実など基盤整備を図っていくことが極めて重要でございます。その際、教育への投資は我が国の今後の発展に大いに関係することでございまして、日本の国力を増し、世界の中で重要な役割を演じていくというふうなことのために、未来投資としてこの教育費をふやしていくということが極めて重要であると思っております。  その中でも、特に高等教育に関する公費負担が世界に比べて少な過ぎるという点に関しましては、先生の御指摘のとおりでございます。ちなみに、GDPで申し上げますと、高等教育費、アメリカは一・一%出しております。フランスが〇・九、ドイツが〇・九に対しまして、残念ながら日本は〇・五%である。ですから私は、このように財政的に厳しい時代でございますけれども、最大限の努力をさせていただきたいと思っております。多少でも教育に関する、高等教育及び初中教育に対する公的な支援を増していければいいと思って、その方向に向かって最大限の努力をさせていただきたいと思っております。
  51. 奥山茂彦

    ○奥山委員 ありがとうございました。     〔栗本委員長代理退席、委員長着席〕
  52. 小川元

    小川委員長 次に、山元勉君。
  53. 山元勉

    ○山元委員 民主党の山元でございます。  私は、質問に入る前に、少しこの法案の意義について考えてみたいと思うんですけれども、今回の法案の中でも、さらにはそのもとになった大学審議会の答申の中にも、大学を取り巻く厳しい状況というのが指摘をされているわけです。  一つは、十八歳人口の激減といいますか、九二年当時は二百万人あったのが、十年後の二〇〇九年には百二十万人になる。そういう状況考えますと、志願者数と入学定員とが数字上は一致をして、まさに大学の全入が実現するということになる数字です。ですから、これからいわゆる大学のサバイバルというのが始まる、そういう状況に今一つはあると思います。  もう一つは、国際的な大学間競争が激しくなってきている。情報化だとか国際化、あるいは学術の進歩というのがどんどん進んでいって、国際的に通用する教育研究水準を日本大学はうんと引き上げなければならない。二十一世紀に我が国の大学世界に伍していく、こういう状況をつくらなければ世界から落後していく、こういうことになるんだろうと思いますね。そういう意味で、大変厳しい。だから大臣も、所信表明のときに、抜本的で大胆な大学改革に全力を挙げて取り組む、こう決意表明をされました。私も、それは避けられないこと、避けるべきではないことだというふうに思います。  しかし、その大学改革というのは、大学教育研究水準の引き上げ、充実ということを基本にして、あるいはそういう方向で論議をされなければいけないんだろう。そういう厳しい状況の中での議論ですから、抜本的なそういうことをしながら、国民の協力も得て、質の向上、充実を図っていくということなんだろうというふうに思います。  そのためには、先ほどの栗原委員の御質問、御意見とは少し私は違うわけで、財政的な確立というのも一つの大きな条件だろうと思うんです。ただでさえ先進諸国に比して、今大臣もお述べになりました〇・五%という数字が示しているように、財政的水準というのは大変低いわけですから、そこのところはしっかりと考えなきゃならぬわけですけれども、現今、残念ながら、行政改革の論議の中でさらに縮減をすべきだという意見もありまして、具体的には、いわゆる独立行政法人の議論の中にこの大学の問題もあるわけです。  私は、少しそれは違うと思います。独立行政法人というのは、私もイギリスに行ったときにいろいろと意見を聞いてきました。一言で言えば失敗をしたと。政府があるいは国が、その法人運営についてしっかりとコントロールするということでやるわけですけれども、そうすると、大学の自主的な運営というのは損なわれる危険性が大変強いわけです。ですから、こういう行政改革なり財政再建という議論の中で、あるいは国家公務員を減らすんだという議論の中で、大学の行政法人化というのは少し危険な論議だというふうに私は思うんです。  そこで、大臣にお尋ねをしたいわけですけれども、文部省は、国立大学のエージェンシー化については賛成できないという立場をとってこられたんだというふうに私は認識をしているんです。そういう立場、私の認識に間違いないのか、あるいは変わっているのか。この法案との絡みもあるわけですが、大学審議会の答申の中に若干この部分についても触れられておりますから、文部省がこの独立行政法人化の問題についてどういうお考えをお持ちか、まずお聞かせをいただきたいと思います。
  54. 有馬朗人

    有馬国務大臣 私個人としての考えは、既にもう三、四年前からこの問題について申し上げてきておりますが、今日、文部省としての立場についての御質問でございますので、個人的な見解は避けさせていただきたいと思っております。  ただ、去る一月二十六日の、中央省庁等改革推進本部において決定されました中央省庁等改革に係る大綱において、「国立大学の独立行政法人化については、大学の自主性を尊重しつつ、大学改革の一環として検討し、平成十五年までに結論を得る。」とされたところでございます。この平成十五年等々をめぐってさまざまな議論があったわけでございますが、こういうふうに現在決定されました。  今回御提出申し上げております法案は、大学審議会答申、中央省庁等改革基本法を踏まえ、大学一つ組織体として、教育研究の質を高め、期待される役割を適切に果たしていくために、責任ある組織運営体制をまず確立する、それから情報公開を推進する、内外に開かれた国立大学実現しようとするものでございます。  さらに今後、引き続いて人事、会計等の柔軟性の向上や適正な評価システムの確立を図っていくことといたしたいと考えております。この人事、会計等の柔軟性ということの中に、例えば独立行政法人であったらどうであるかというようなことの検討も含まれると思いますが、そういう独立行政法人化の前にまずできるだけのことを、現在のやり方の中でやれるだけのことを考えて、そしてそういう行き方を確立していきたいと思っております。  そういう上で、文部省といたしましては、独立行政法人化の問題についてはこういう改革状況を見ながら、教育研究の質的向上を図る観点に立って検討を行うことが適切であると考えている次第でございます。  ただ、一つ、私自身が特殊法人理化学研究所の理事長を四年半やらせていただいたときの経験から申しますと、独立行政法人がそれにすぐに適応するかどうかわかりませんけれども、特殊法人であっても極めて自主的な研究をすることができたわけでありまして、そういう意味では、特殊法人の中の幾つかの研究所は今でも非常に大きな貢献をしていると考えております。そういう点で、さまざまな面から、この点に関しては極めて慎重に検討をさせていただきたいと思っております。
  55. 山元勉

    ○山元委員 私も申し上げましたように、要は、教育研究水準を引き上げる、日本の高等教育の水準を引き上げていくということでの論議をきちっとしないと、今出てきているのは、どうも先ほど申し上げましたようなそういう議論の中で出てきているというおそれがありますから、その点については今大臣、最後、慎重にとおっしゃいました。そこの基本のところがずれていかないように、押し流されないように頑張ってもらいたい、こう思います。  続いて、法案の中身についてお尋ねしたいのですが、私のところにも大学の現場の皆さんから、質問だとか要望だとか意見だとか声明だとか、大変寄せられています。なかなか私もこたえられない部分はあるわけですけれども、そういう人たちの前向きの気持ちというふうに受けとめて、少し具体的にお尋ねをしていきたいと思うのですが、最初に、評議会と協議会についてお尋ねをしたいのです。  役割分担について明確にしようということですが、そのことはわかるのですけれども、従来、文部省令で定められていたものを法律で定めるというふうになってきているわけです。そこで、評議会の構成について、従来、省令で学部から選出された教員教授をもって充てる、こうなっていたのですが、今回は、七条の三の三項のところで選出される教授評議員に加えることができるということで、一号と二号で具体的に挙げてあるわけですけれども、どういうことでこういうふうに法律で定めて、加えることができるとされたのか、その意図、お考え。  もう一つは、学長が指名する評議員というのがあるわけですけれども、心配するのは、学長の意向が強く働き過ぎるのではないかと危惧をいたしますけれども、どうでしょうか。
  56. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 評議会の構成につきましては、学長、部局長、それに各学部、独立研究科、附置研究所のうち、評議会が定めるものごとに選出される教授を加えることができるとしてございます。  これにつきましては、やはり各部局の実態は大学によってさまざまでございます。規模の大小もございます。そういったことから、各学部等から選出される教授につきましては、どういう部局から選ぶのか、またその人数をどうするのかということについては評議会の判断にゆだねたわけでございます。大学によっては、これら構成員のみでは大学運営に関する重要な職を必ずしもすべて網羅することができない場合もある、それを考えまして、以上の二者に加えて、評議会の議に基づいて学長が指名する教員評議員に加えることができることといたしております。これによって、例えば学生の厚生補導を担当する学生部長であるとか、相当規模を有する学内共同教育研究施設の長などが評議員となることが可能となり、より幅広く学内の多様な意見の反映を図ることができるというふうに考えておるわけでございます。  なお、学長は、この場合、評議会の議に基づいて教員を指名し、評議員に加えることができるわけでございまして、学長の意向というものによって左右される、強く働き過ぎるというようなことはないものと考えている次第でございます。
  57. 山元勉

    ○山元委員 書いてあるとおり、「評議会の議に基づいて」とありますから、歯どめはかかっているのだろうとは思うのです。けれども、現場ではやはり、例えば学長といえどもと言ったら失礼な言い方ですけれども、常に公正無私ということにはならないだろう。そういうことが働かない評議会の議というものをきちっと尊重するというのですか、民主的なそういう論議が保障されるような手だてというのは今後とも具体的にとっていただかないと、今申し上げましたように、常に公正無私だということにはならないということを申し上げておきたいと思います。  次に、評議会審議事項についてですけれども、大学基本的な計画とか教員人事の方針とか教育課程編成の方針、大学自己評価というように大変たくさん新たにつけ加えられているわけですね。どういう方向を目指していらっしゃるのか、その趣旨についてお伺いしておきたいのです。
  58. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 御指摘にございましたように、今回の改正案におきましては、評議会審議事項として、現在暫定省令に定められている事項以外に新たな審議事項を加えてございます。  そのうち、教育研究に関する基本的な計画及び教育研究活動等の自己評価につきましては、学長が中心となって大学を一個の有機的な組織体として運営し、教育研究のより一層の充実を図るためには、全学的なレベルで企画し、それを実行し、そしてそれを評価していく、そういうサイクルを確立していくことが必要である、そういう観点に立ちましてそれらを評議会審議事項としたものでございます。  また、教員人事の方針、教育課程編成の方針につきましては、それぞれ具体的な事柄は学部教授会審議をしておるところでございますが、大学一つの有機的な組織体として機能するためには、全学的な観点からの幅広い視野での方針策定が必要である、そういう観点に立ちましてそれらを評議会審議事項としたものでございます。  今後、これらの事項について、学長の発議のもとに、評議会で全学的な観点から十分な審議が行われ、大学がその機能を総合的に発揮し、教育研究の一層の充実が図られることと考えているところでございます。
  59. 山元勉

    ○山元委員 今おっしゃるように、全学的な、有機的な運営考える、私はうなずけます。  第一に、どうしても大学が、それぞれの学部専門的な教育を充実したい、そういう方に目がいって、教養教育等がおろそかになっていくと言っては失礼ですけれども、そうなっていく傾向があるということですから、そういう点で、全学的な、有機的な教育目標なりあるいは運営ということを考えていく、このことはいいことだと思います。  本会議場の質問で私どもの藤村委員から、つまらぬことで教授会が繰り返し繰り返しあってぼやいている先生もある、こういう話がありました。そういう意味でも、一般の教員の皆さんの業務を減らす、そういうことについては評議会が役割を果たしながら有機的な運営ということを考えるべきだというふうには思います。  そこで、評議会と今言いました教授会との関係、その機能や権限の関係についてお尋ねをしたいわけです。  この法案では、教授会について審議事項をより具体的に定めています。そのうち七条の四の四項三号のところで、その他学部教育研究に関する重要事項審議すると書いてあるわけです。一号、二号の教育課程の編成だとか、あるいは入学、卒業ということはわかるんですが、教授会が行うその他学部教育研究に関する重要事項、これはどういう範囲、どういうものを想定していらっしゃるのかお尋ねをしたいのです。
  60. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 教授会審議事項のうち、学部教育研究に関する重要事項につきましては、今回の改正案が、学内の諸機関の機能分担の明確化による意思決定の合理性を高めるという観点から教授会審議事項を具体的に列挙していることを踏まえれば、一号、二号にございます教育課程の編成、学生の入退学、卒業等に準ずる程度の重要な事項として教授会審議することが必要なものと解することが適当であるというふうに考えておるわけでございまして、各大学においては、このような趣旨に即して適切な審議事項を設定することが求められることになろうかと思います。  具体的に御指摘の第三号に該当することが考えられる事項といたしましては、例えば学部内での教育研究活動を対象とする事項として、教育方法や成績評価に関する事項、教育研究目標、計画に関する事項、教育研究活動の自己評価に関する事項などのことが考えられるわけでございますし、また、全学的事項ではあるけれども、特定の学部教育研究の展開にも密接にかかわる学部の学科、講座、学科目の編成に関する事項などもここに含まれると考えられるところでございます。
  61. 山元勉

    ○山元委員 どうもはっきりしないんですね。私の頭もちょっと整理できにくいんですが。  簡単に言えば、評議会というのは大学全体の案件を扱う、教授会というのは各学部の個別の案件について扱う、こういうことになるんだろうと思うんですね。そこのところがはっきりとしにくいわけですが、学校教育法の五十九条に「重要な事項を審議するため、教授会を置かなければならない。」こういうふうに書いてあるわけですね。これは改正されないわけです。学校教育法の五十九条、重要な事項について審議するということ。大学運営に当たって、評議会もあるけれども教授会がその中心的な役割を果たす、今までどおり重要な役割を果たすというふうに端的に言っていいのかどうか。
  62. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 学校教育法五十九条において、教授会重要事項審議するとされておるわけでございますが、ここで重要事項と簡潔な規定ぶりになっておるわけでございますが、その趣旨は、教授会が置かれた組織単位における重要事項ということでございまして、学部教授会の場合には、学部教育研究に関する重要事項審議する、これが教授会の役割であるというふうに考えておるわけでございます。これに対しまして評議会は、大学運営学部を超えた大学全体の運営に関する重要事項審議するわけでございます。  その意味におきまして、学部教育研究に果たす教授会の役割の重要性というものは変わらないわけでございますが、従来、ややもすれば、学部教授会が本来の審議事項を超えて幅広く大学運営にかかわる事項についてまで審議がなされてきたという指摘もあるわけでございます。そういった点なども踏まえて、今回、合理的で責任ある組織運営体制を整備するために、評議会大学運営に関する重要事項審議し、学部教授会学部教育研究に関する重要事項審議する、そういう役割分担を法律上明確にしたわけでございます。
  63. 山元勉

    ○山元委員 変わらない、けれども今までの課せられている審議事項を超えてやっているところもあったからという指摘があると。それぞれによって違うわけです。  先ほど言いました藤村委員の発言でいいますと、駐車場の割り振りまでもやっているという例がこの間具体的に本会議場でありました。そういうことは要らないことで、学部運営についての中心的な役割を果たして、教育研究学部ごとの自主性をしっかりと守るということでの本来的な役割は変わらない、そう考えてよろしいですか。
  64. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 学部教授会学部教育研究に関する重要事項審議するという、学校教育法が本来予定をしておる事柄について審議をするということ、その点においては変わりはないという趣旨でございます。
  65. 山元勉

    ○山元委員 局長の答弁少し、私の頭が悪いのかわかりませんけれども、今までの大学運営の自主性ということについてはきちっと担保されていて、役割分担について明確になっているだけで従来と変わらない、本質的なことについては一切変わらない、こういうふうに理解をさせていただきます。  そこで、評議会もあるいは教授会も、先ほども言いましたように、各大学でそれぞれ慣行といいますか、風があるようです。それが、今局長がおっしゃるように、今までどおりだということだけだったら改革にはならないわけですから、きちっと明確に線が引かれるということになるんだろうと思いますが、大学内の民主主義というか自主的な運営ということについてはそういう慣行であれば生かしていく必要があるというふうに思いますが、今の局長の答弁で、これから具体的にそれぞれの大学指導していかれるんだろうと思いますが、きちっとした原則、基本的な立場というのは明確にしておいていただきたいと思います。  そこで、評議会教授会会議の問題ですけれども、学長学部長議長となって主宰するというふうに書いてあるわけですね、法案では。学長学部長議長となって主宰するという、主宰という意味の強さ、どういうふうに考えていらっしゃるのか、ちょっとその意味について。
  66. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 主宰は、合議制の機関において、議事を整理し、会議を進行させるほか、その会議の運行について必要な一切の措置をとる権限があることをあらわす言葉でございます。したがいまして、具体的には、学長学部長議長となって会議を主宰する場合には、会議の招集、議事の整理、議案の発議を行うことになります。これは、学長学部長評議会教授会運営責任者として必要的に参画するものであり、大学学部一つ組織体として適切な責任ある意思決定を行うためには、学長学部長議長として会議において主導的な役割を果たす必要があるからでございます。
  67. 山元勉

    ○山元委員 そうすると、大きな権限を持っている学長学部長になるだろうと思うのです、今の答弁の意味では。  七条の六で、文部省令でその中身については決めるとなっているわけですね。「議事の手続その他これらの組織に関し必要な事項は、文部省令で定める。」となっているのです。今局長がおっしゃったような中身を省令として定めるのか、省令ではどういうものを想定していらっしゃるのか、少し今考えていらっしゃることをお伺いしたい。
  68. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 文部省令で定める事柄といたしましては、運営諮問会議につきましては、議長委員の任期、それから、委員は非常勤とする旨の規定などを考えております。評議会につきましては、評議員の任期、評議員は非常勤とする旨の規定、定足数及び多数決など議事手続の基本的な事項などを考えております。教授会につきましては、定足数及び多数決など議事手続の基本的事項などを考えておるところでございます。
  69. 山元勉

    ○山元委員 先ほど局長がお答えになった、主宰するという意味と今のとは相当違うわけで、先ほどは、相当踏み込んだ学長の権限があると。今のでいいますと、簡単に決めるというように受け取れるのですが、いずれにしても、これから省令でこの中身について決めていかれるわけですけれども、ぜひこれは現場の先生方の御意見だとか、あるいは実態を踏まえて検討をしていただきたいと思います。  余り微に入り細に入りということにならないという感じがしましたけれども、それぞれの大学が創意工夫しながらいい学風をつくっていくということが、教授会の中だとか学部の中で必要なんだろうと思いますね。ですから、そういう点で、大綱的なものといいますか、それぞれ大学で工夫できるような、そういうものをつくってもらいたい。それは大学先生のそれぞれの士気にもかかわることですし、ぜひそういう現場の実態を踏まえる、あるいは意見を聞いて省令を今後つくっていただきたいというふうにお願いをしておきたいと思います。  その次に、運営諮問会議についてお伺いしたいのですが、大学のいわゆる開放性といいますか、大学運営についてのアカウンタビリティーというのは重要だと思います。  確かに、大学が大衆化をしていくとか、あるいは国全体が、国民全体が高学歴化をしてきて、今までよく言われた象牙の塔の中のことではなくなってきていることは事実です。そういうことを公開性を持たせて、あるいは国民的な理解も得て大学教育を充実していくということが大事なんだろうというふうに思います。そうした意味で、先ほど他の委員質問大臣がお答えになっていましたけれども、教育研究の自主性の確保という点から幾つかの問題点が、懸念はあるけれども、今までの経験からいえば、いいものだ、有効なものだ、こういうふうにおっしゃっていました。  そこで、具体的に少しお聞きをしたいのですが、この委員の任命です。学長申し出によって文部大臣が任命するとなっているのですが、なぜ文部大臣の任命になるのか。その理由と、学長申し出というわけですけれども、学長がせっかく申し出たのに、文部大臣が、失礼な言い方だけれども、運営に支配的介入をするようなことが懸念されないのかどうか、そこのところはどうですか。
  70. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 運営諮問会議委員は国家公務員でございますので、国家公務員法制上、各省各庁の長が任命権を有することとされておりまして、学内の他の職、例えば評議員学部長その他の部局長は、すべて文部大臣が任命していることとの均衡上からも、原則として文部大臣が任命権を持つというふうなこととしたわけでございます。その場合、大学の特性にかんがみて、運営諮問会議委員については、学長申し出を受けて文部大臣が任命をすることとしているところでございます。  その学長申し出があった場合、文部大臣は、基本的にはその学長申し出を尊重し、その申し出があった者について委員として任命を行うことになり、その申し出にかかわらず、文部大臣がこれを拒否したり再検討を求めることは通常考えられないところでございます。  なお、外部有識者の意見を聞く筑波大学に置かれている参与会を組織する参与について、かつてそのような事例はないと承知をいたしております。
  71. 山元勉

    ○山元委員 私も、基本的にはそういう立場を貫かれなければならないだろうというふうに思います。  そこで、この諮問会議大学に対して助言や勧告を行うことができる、こういうふうになっているわけですね。その勧告というのは非常に強い意味が普通は持たされているわけです。  私ら、人事院勧告というのは絶対守る、こうなるわけですけれども、諮問会議大学に勧告した場合、それには従わなければならないという強さというのですか、度合いというのはどうなんですか。もちろん、それは無視していいとは私は言いませんけれども、これについては、大学がたとえ十分な協議をしていても、十分な論議をして決めていることに対しても異なった勧告が出た場合、どういうふうに実際に措置をされるのか。従わなければならないその度合い、強さというのはどういうふうに考えていらっしゃいますか。
  72. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 勧告は、一般的には、ある事柄を申し出て、その申し出に沿う行動をとるように勧め、あるいは促す行為でございますが、そういう意味で、進言を内容とする助言に比べれば、勧告は一定程度強い事実上の効力を有するものと考えられます。ただ、助言はもとより、勧告には、それ自体は事実上の行為でございますので法的拘束力はないわけでございます。したがいまして、これを受けた学長がその内容に従う法的な義務を生ずるものではございません。  ただし、運営諮問会議設置された趣旨、外部有識者の意見を聞く、そしてそれを学校運営に適切に反映させていく、そういう趣旨にかんがみれば、学長としては、これを十分参考にしたりあるいは尊重することが求められるところでございます。
  73. 山元勉

    ○山元委員 法的拘束力はないとおっしゃる。そうだろうと思いますが、大学の皆さんの心配は、一生懸命評議会で論議をした、一つの方針を出した、それについて諮問会議から意見、勧告が出てきた、法的拘束力はないけれども、事実上のそういう効力があって、従わなければならない、変更しなければならない、そういうことになるのではないかと。自分たちが勝手放題したいというのではなしに、良心的に一生懸命論議をして方針を出した、それに対して諮問会議から異なる意見、勧告が出てきた場合ですね。  そこで、大学評議会諮問会議との関係、従うというのは上下の関係がどうもイメージされるわけですけれども、その関係について、端的に言えばどういうことになるんですか。
  74. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 評議会は、学長及び各部局の代表者等が参加をし、大学運営に関する重要事項審議する機関であるのに対しまして、運営諮問会議は、大学運営についての基本的な事項について、学外有識者の立場から大所高所に立った大綱的な方針を審議する機関でございます。  したがいまして、運営諮問会議から助言、勧告をいただいた場合、学長として耳を傾ける点は、これは当然尊重をしていくわけでございますが、学長大学の責任者でございます。そういう意味で、評議会の意見を踏まえつつ、大学としての主体的な意思決定を行っていく立場にあるというふうに考えておるわけでございます。
  75. 山元勉

    ○山元委員 学長が、運営諮問会議での学外の有識者の皆さんの意見を尊重しよう、このことはもちろん大事だと思うんですね。しかし、そう言う余りに、学内で民主的な論議なりあるいは検討がされてきたものについて変更するというようなこと、いわゆる自主性が損なわれるようなことにならないように、不断に大学運営諮問会議との信頼関係というんですか、協議の関係というのはつくられなければいけないだろうと思うんですね。お目付役のような形でいらっしゃるというようなことではいけない。よき大学をつくる、あるいは教育研究水準を引き上げていこうということでお互いによき関係を不断につくっていかなければならぬだろうと思うんですね。  そういう点で、必ずしもそれはお目付役会議ではないよということを文部省はきちっとやはり考えて、正しく運用されるように配慮されなければならない、これは私の希望、望みだということでお聞きをいただきたいと思います。  その次に、情報の公開についてお尋ねをしたいのですが、大学運営を民主的に行うという意味からも情報の公開というのは大変大事だと思いますし、先ほども言いましたように、質の向上のためにも、あるいは財政的な支援を受けるためにも公開をしていく必要があるだろうと思います。今回の法案で、大学の情報の公開については省令で定めるというふうになっているのですが、文部省としてはどこまで公開をすべきだという、公開の範囲というんですか、内容を想定していらっしゃるのか、お尋ねをしたい。  あわせて、私立大学の学校法人の財務の公開、このことについても求められるわけですけれども、一体この法案では、財務の公開の内容についてどうお考えになっていらっしゃるのか、お尋ねをしたい。
  76. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 情報の公表に係る文部省令でございますが、これにつきましては、国立大学教育研究組織運営状況について公表する内容と方法を定めることを考えております。  公表する内容につきましては、大学の将来計画や自己点検・評価に関する情報はもちろんでございますが、大学の入学や社会人に対する特別選抜や公開講座等学習機会に関する情報、成績評価の方針や基準など学生の知識、能力の習得水準に関する情報、卒業生の進路に関する情報、財務状況に関する情報などを考えているところでございます。  公表の方法につきましては、刊行物への掲載、その他広く周知を図ることができる方法によって行うこととし、例えばホームページへの掲載なども含めることを考えているところでございます。  次に、学校法人の財務の公開についてでございますが、学校法人は自主的に健全な経営を行っていくことが期待をされております。そのため、監事等の内部監査機関が置かれ、運営の適正化を図ることとされており、財務情報の公表につきましても、原則として各学校法人の判断にゆだねられる、本来はそういうものであるというふうに考えておるところでございます。  ただ、大学に関するさまざまな情報の公表は公共的機関としての大学社会的責務である、そういう観点に立って、私立大学における財務状況の公表やあるいは大学経営の透明性の確保の重要性について、今後とも、各種会議の場等を通じて学校法人に対して呼びかけるようにしてまいりたいと考えております。
  77. 山元勉

    ○山元委員 今、公開していくことは社会的責務だとおっしゃいました。確かにそうだと思いますし、一つには、今よく産学協同を進めようとか、あるいは学生の方からもアクセスしてもらう、そういうことで、大学の質の向上、水準の向上ということは考えられるわけですから、ぜひ積極的な情報の公開を進めていくように、省令の策定に当たっては、情報公開というのは、当該者は嫌がる、消極的になるものですけれども、ぜひこれは積極的に公開の方向で広げていくということで御努力をいただきたいと思います。  それでは、今も少し申し上げましたけれども、この法律の私学への影響についてどういうふうにお考えになっていらっしゃるのか。例えば、運営諮問会議というのを私学にもつくらなければならないという流れが出てきた場合に、それぞれの私学というのは、建学の精神といいますか、それぞれあるわけですね。ですから、そういうものに影響が出てくる。私学も、これをつくりなさいよということになってくるのかという懸念は一般的にあるわけです。日本大学というのはそういうふうな仕組み、組織になるんだということですね。  そこで、この法案によって私学の皆さんが倣うべきところというのはおかしいですけれども、倣うべきところとそうでない、私学には持ち込むことは無理がある、あるいはすべきでない、そういう仕分けというのは文部省はしていらっしゃるんですか。
  78. 有馬朗人

    有馬国務大臣 最初に結論的に申し上げます。  今回の法律改正が御指摘のように私学に影響を与えるかどうかでございますが、私立大学における教育研究の自主性はほとんど損なわれないと考えております。  もう少し詳しく申します。  本法律案は、昨年十月の大学審議会の答申を踏まえて、二点特に考えているんですが、一は、大学制度弾力化しよう、二番目は、国立大学組織運営体制をきちっとしよう、改革も含めてきちっと整えようということが内容でございます。こういうことをして大学改革を推進したいということでございます。  具体的にはどうかと申しますと、先ほど来御議論賜りましたような、三年以上の在学卒業を可能とする例外措置の創設や、大学院組織編制弾力化といった大学制度弾力化については、これは私立大学にも適用性のあるものでございます。こういうことで、国公私立それぞれの大学がそれぞれ創意工夫をして、多様な研究教育を進めていくことが可能となると考えております。  また、国立大学組織運営体制改革は、設置者である国がその設置する大学に関して行うものでございます。今御指摘私立大学については、その設置者になる学校法人の自主的な判断によって行われるものでございます。そういう意味では、運営諮問会議のようなものというのは私学でそれぞれお考えになられればいいことで、これは強制することはございません。私立大学については、あくまでもその設置者である学校法人の自主的な判断で行っていただいて結構でございます。
  79. 山元勉

    ○山元委員 日本教育の中で、特に今、高等教育の中で大きな役割を果たしている私学、その私学の建学の精神といいますか、それぞれの自主性というのはしっかりと尊重されなければいけないというふうに思いますから、その点については私学の皆さんも心配していらっしゃる。諮問会議だとかそういう、日本大学組織あり方というのが変わっていくということでありますので、そこのところは、今大臣も私学の自主性は損なわれない、こうおっしゃいましたから、それぞれまた私学の皆さんは私学の皆さんで、我が大学のよき学風をつくっていくということになるんだろうというふうに思います。  そこで、関連をしてもう一つだけですが、三年卒業について今大臣もおっしゃいました。三年卒業については私学にも及ぶということですね。現在、そういう大学院へ進学している子は二百三十人ほどいる、そういうこともあって、これからそういう制度をつくっていく。それは、それぞれの前提がありますよ。しっかりとした評価なり授業なりということがきちっとありますから、そういう前提を満たした学生については卒業させるということができるんですけれども、これは私学に対する失礼な言い方かもしれませんけれども、これが安易に運用されていくとやはり混乱をします。  私学の皆さんが、これも失礼な言い方ですけれども、私学経営の目玉のようにして、うちの学生は優秀よ、だからこういうふうに卒業させたよということの、経営上の目玉と言うたらおかしいですけれども、安易にといいますか、少し原則を外れて運用されるとこれは困るというふうに思うんです。そこのところは前提があるんだ、こうおっしゃっていますけれども、そういうものを担保するというんですか、端的に言って、担保はあるわけですか。
  80. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 三年以上の在学卒業を認める措置を各大学がとり得る、そういう場合は、まず大学において責任ある授業運営と厳格な成績評価を行い、かつ学生の履修科目、登録単位数の上限設定等が行われている場合に限ることとしたいと考えておるところでございまして、これらにつきまして、三年卒業というものがどういう場合に認められるかということにつきまして、文部省令で規定することを考えております。  また、その趣旨というものについても十分な徹底を図ってまいりたいと考えており、安易に卒業が認められることのないよう配慮をしてまいりたいと考えております。  また、三年以上の在学卒業を認める場合の各大学の基準につきましては、これを公表することを各大学に促していくなど、文部省としては、各大学における適切な運営について十分な指導をしてまいりたいと考えております。
  81. 山元勉

    ○山元委員 このことは、少し私、失礼に当たるかもしれぬけれども、やはり懸念される問題ですから、きちっと省令をつくられるということですから、きちんとした歯どめがかかるようにぜひお願いをしたいと思います。  最後に一点だけですが、先ほどから申し上げておりますように、大学の予算、財政の問題です。財政が厳しい状況の中で教育のための財源を確保していくということは、非常に大事ですけれども、難しい。  私は、先ほどの栗原先生の御意見とは少し違うわけでして、トマトを育てるのも、やはり最低限の肥料はきちっと与えなきゃいかぬわけです。トマトは私も育てるんですけれども、大変な手間が要るわけです。トマトというのは、横芽が出てきたら毎日のように芽をかいて、ずっと丈夫な一本立ちの木を育てなきゃいかぬわけで、大変手間がかかるわけです。ですから、水と空気と肥料がどっとあったらいいトマトが、おいしいトマトがなるということではなしに、適宜、一番いいときに、例えばトマトがピンポン玉ぐらいになったときに肥料をやるとか、あるいは芽が横から出てきたら全部かいていって一本立ちにしていくとか、さまざまな人手も要るし、金も要るわけです。  ですから、そういう意味でいうと、今の初中も含めて、やはり財政について、日本の場合、しっかりとした努力がまだまだ要るだろうと思うんですね。これは、もちろん私学助成法で二分の一と言っているけれども、今十何%になっているわけですね。ですから、これは法の精神、法の附帯決議からいっても、どんどん減っていくというのはやはりいけない話でして、私学も含めて教育財政というのはきっかりと確立しなきゃいかぬわけですけれども、最後に文部大臣にそこのところを。  少し時間がありますから余分なことを言いますけれども、前の財革法のときに、ある厚生大臣は、むしろ旗を立ててでもとにかくこれだけは、厚生、福祉だけはならぬと言って頑張っていた。私は、そのときの文部大臣に、あなたもむしろ旗を立てて、教育も、定員計画について二年延長というのがあのときにありましたが、それはならぬということを文部大臣に、むしろ旗を立てて、財革法は教員定数だとか教育財政については適用しない、福祉と教育については守るということをやりなさい、やってほしいというふうにお願いしたんですけれども、だめでした。  今の状況から、これからますます厳しい状況になっていくわけですけれども、特にこの法を改正して水準を引き上げていこうというときに、大臣として、法律は決めて、明確にしなさいよ、頑張りなさいよということはあるけれども、トマトの肥料や芽かきの人手というのはきちっと確保できるのかどうか、文部大臣の決意のほどをお伺いして終わりたいと思います。
  82. 有馬朗人

    有馬国務大臣 この十年繰り返して主張していることでございますが、まず第一に、高等教育の法的、財政的な裏づけはきちっとしなきゃならぬ、これは先進国並みにしてほしいということは、大臣になった後も変わらないことでございます。  ただ、大臣になったことによって、今までのように自由に言えなくなったことはございます。この点は御了承賜りたいと思うんですけれども、しかし、その中でできるだけの努力はさせていただきたいと思っています。  それからもう一つ、私は、財政的なことのみを申し上げているようにお聞きになられるかもしれませんが、教育というのは人間がやることでございますので、まず、教員、教官の人々の待遇というふうなことも考えていかなければならないと思っております。  そしてまた、人数という問題がございます。これはしかし、いつまでもどんどんふやしていくということは不可能でございますので、その人々がより働きやすい環境をつくるということがやはり必要であると思っております。  幸いに、先生方の御努力で、先ほども御礼を申し上げましたけれども、科学技術立国ということが大きな一つの方針になりました。本来、もう一つ教育立国ということも必要であろうと私は考えておりまして、こういうことについて、さらにまた先生方にお願いを申し上げることがあろうかと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
  83. 山元勉

    ○山元委員 終わりますが、最後に、大臣、この法案について私どもは基本的に必要なものだというふうに考えています。ただ、運用によっては、大学の自治だとかあるいは自主性というもの、あるいは学問の自由というものが損なわれる懸念もあるわけですね、確かにさっきから申し上げていますように。ですから、そこのところについては、これから文部省としても、先ほど来おっしゃっていただいているような姿勢で、しっかりとした効果が上がっていくよう、法の精神が実現するように御努力いただきたいとお願いを申し上げまして、終わらせていただきます。ありがとうございました。
  84. 小川元

    小川委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二分休憩      ————◇—————     午後一時開議
  85. 小川元

    小川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。藤村修君。
  86. 藤村修

    ○藤村委員 民主党の藤村修でございます。  午前中の質疑に引き続きまして、ただいま議題となっております学校教育法等の一部を改正する法律案につきましてお尋ねをしたいと思います。  午前中に、いろいろな観点からこの法案等に関してはおおむね議論が進んできたところでございますが、まだほとんど触れられていなかった点について、まず最初に御質問をしたいと思います。  教員の人事についてであります。  これは教育公務員特例法の部分改正になるかと思いますが、今回は、学部長が、大学教員人事の方針を踏まえて、教員の採用などに関し意見を述べるとされております。教育公務員特例法でいいますと四条関係で、四条の第五項に「教員の採用及び昇任のための選考は、評議会の議に基づき学長の定める基準により、教授会の議に基づき学長が行う。」これ自体、二、三回読んでみないとちょっとわからないのですが、ここで、評議会は、教員の採用や昇任のための選考についてまず基準を定めるというふうにあります。それからさらに、教員人事の方針というのがまた別のところで出てまいります。  そこで、まず、基準というのは一体どういうものなのか。これは評議会がやはり決めるわけです。それからさらに、評議会教員人事の方針というのを決めるわけですが、この基準というものとこの教員人事の方針というものにはどういう違いがあるのか、あるいはどういう内容が想定されるのか、その辺をまずお答えいただきたいと思います。
  87. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 基準と方針という言葉が出てまいりましたが、教員人事の基準といった場合、これは例えばでありますけれども、例えば学位を持っていることということを基準で書いた場合、個別の教員選考がそれをすべて満たす必要がある、こういう意味で基準という言葉を使っておりますし、方針という場合には、それを踏まえて行われることが必要でございますけれども、必ずしもそれを完全に満たすことまで要求されるものではない、そういう違いがございます。  それを踏まえまして、評議会におきましては、評議会の議に基づいて教員人事の方針というものを定めるわけでございますが、その場合の具体的内容はそれぞれの大学の判断によるわけでございます。例えば、従来から教員人事改善方向として広く言われております事柄といたしましては、他大学卒業者をできる限り採用することとか、女性教員あるいは社会教員外国教員を積極的に採用することとか、ややもすれば研究能力ということを重視しがちでございますので、もっと教育能力を重視するようにといったようなことが具体の教員人事の方針として一般的に考えられるところでございます。
  88. 藤村修

    ○藤村委員 法改正前でありますと、「選考は」ということで、「教授会の議に基き、教員及び学部長以外の部局長については、大学管理機関」が行うと。これは書きかえられたわけですが、今度は、学部長評議会のメンバーでもあるわけですから、その方針を決めるときに当然学部長は加わっていると考えられます。  そこで、さらにこれを法定する必要性についてですが、四条の六項で、「前項の選考について教授会審議する場合において、その教授会が置かれる組織の長は、」これは学部長ですが、「当該大学教員人事の方針を踏まえ、その選考に関し、教授会に対して意見を述べることができる。」とわざわざ書く必要性があったのか。何かわざわざ書いたことで法改正前とどんな違いが実際出るのでしょうか、その辺を教えてください。
  89. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 御指摘のとおり、学部長学部教授会のメンバーでございますから、従来から教員選考に当たって教授会審議に関与しておるわけでございます。その意味で、学部長は、教授会の場において教員選考について意見を述べる機会というものがあったわけでございます。  ただ、今後における大学の役割を考えるときに、大学一つ組織体として十分に教育研究機能を発揮するためにはやはり教員というものが極めて大事なわけでございまして、幅広い視野に立って、教育研究の進展や社会要請を踏まえて教員選考を行うことがますます重要となっておるわけでございます。  にもかかわらず、実態を見ますと、学部長教員選考の過程でどういう役割を果たすのかということが必ずしも明確ではない。事実上の意見表明として学部長が意見を述べるということはあるわけでございますけれども、法的な仕組みの一環として学部長の意見というものがあるわけではないわけでございます。  そこで、今回、大学審議会の答申で指摘をされましたように、やはり全学的な人事の方針というものを踏まえて、必要に応じて学部長が意見を述べることができる、このことを法律上明確にすることによって、学部長教員人事における立場というものを明確にしたいと考えたわけでございます。学部長が、大学教員人事の方針を踏まえ、個別具体の選考に関する意見を教授会に対して述べることができる旨を規定することを通して、学部長により大学教員人事の方針が具体の教員人事に適切に反映されることが期待をされるところでございます。
  90. 藤村修

    ○藤村委員 それでは、確認ですが、今回これを法律に書き込んだということで、きょうまでよりは、学部長の、学部教員の採用及び昇任の権限はより強くなった、こう理解してよろしいでしょうか。
  91. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 学部長として、大学教員人事の方針を踏まえて個別具体の選考に関する意見を教授会に対して述べることができるわけでございますので、その意味においては、学部長の、学部運営の責任者としての立場がいわば明らかになったということは言えようかと思います。
  92. 藤村修

    ○藤村委員 それはすなわち、人事権という大きな権限ではないにしろ、学部運営の責任者であるという意味で、いわゆる人事の問題、教員の採用及び昇任については今までよりはより発言権が高まった、こう理解してよろしいわけですね。これはイエスかノーしかないんですけれども。
  93. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 大学全体の教員人事の方針というものを個別の具体の人事に生かしていく、そこにおける学部長の役割ということを明確化したわけでございます。
  94. 藤村修

    ○藤村委員 答えはイエスかノーかしかないんですが、しかし実態としては、今までは学部長というのがまず法定されていなかったものですからね。学部長はたしか省令で決められていたのですね。だから今回は、法律学部長を設けるというのができてきた。その学部長というのは、学部全体の運営については責任者であるという位置づけを、例えば人事の面ではそういうふうに書き込んだ。すなわち、学部教員の採用及び昇任についての権限というものが高まり、やはり学部長が責任を負う、そういう立場になった、こういうことと理解してよろしいですかね。
  95. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 これまでの学部長の意見は学部教授会のメンバーとしての意見であるのに対して、今回は学部長としての意見でございますので、その意味において、学部長の人事に対する役割がはっきりしたということは言えようと思います。
  96. 有馬朗人

    有馬国務大臣 実際経験をした人間の立場から申しますと、国立の場合ですと、学部長評議員の二人だけが評議会に出席しているわけです。  大学全体の方針、例えば新キャンパスを設けようとか、あるいは新しく生物科学、今様の言葉で言えばバイオサイエンスを伸ばそうとか情報をやろうとか、そういう話が大学のレベル、評議会のレベルで出てくることがあります。そのもう一つ手前で、実際はそこの前に、東大の場合でありますと学部長会議というのが開かれて、そこで相当いろいろ議論をするわけですね。そうすると、評議員すらそこには入っていませんから伝わらない。それから、評議会に一応方針がこうだと出ても、学部長評議員しか出ていない、それでは、その人たちが学部教授会に入っていったときに、単に一メンバーとしてしか入らないと、大学が全体としてバイオをやっていこうではないかとか、そういうことについての発言をする場がないわけです、個人としては言えますけれども。  そういう意味で、ぴしっと学部長なり評議員、この場合は学部長ですが、学部長は、今回どういうところに新しいキャンパスを設ける、そこの人事はこういうふうにした方がいいだろうというような話があったときに、正しく大学の方針を伝える義務があると思うのですが、こういうことが今回のことではっきりしたということでございます。  それからもう一つは、学部は講座制で成り立っております。講座制が少なくとも現在まだ強い組織として残っている。そうすると、講座をどうするかという議論になる場合に、もちろん、その講座の属する大きな学部ですと、教室がまず議論をいたします。その教室としては、同じ分野をずうっと続けていくのか。例えば、定年で教授がやめた後、それをずうっと続けていくのか、それとも違う方向に移っていくのか、改組していくのか、こういう問題に関しては、もちろん、大きな学部ですとそれぞれの学科で議論をしなければならない。  その上で今度は学部として判断をしていくのですけれども、そういうときにも、先ほど申し上げましたように、大学全体としてどういう方向に強化していくかというようなときに、やはり適切に学部長が発言をすべきだと思うわけですね。そういうところで、学部長の役割を今回明確にしたと私は考えている次第でございます。
  97. 藤村修

    ○藤村委員 私は、反対じゃなくて、学部長の役割を明確にする必要がある、一教授で、その教授会の合議で何でも決めねばならないということよりは、学部学部長を置くということを今回法定化したわけですから、その責任というのを明確化するという意味でそういう確認をさせていただいたということでございます。  次に、国立大学にかかわることとして、主体性そして予算という問題に移ります。  国立大学の人事あるいは会計、組織運営等について、きょうまで、これは省令だろうと思いますが、いろいろなかなか細かい縛りがあるというふうなことがずっと言われ続けておりまして、多分、昨年の大学審の答申でもそういうことに目をつけられて、例えば   大学が、教育研究上の要請、あるいは社会的な要請にこたえて、自律的かつ機動的に運営されるためには、大学教育研究組織の柔軟な設計、行財政の弾力性の向上などを進め、大学自らが定めた教育研究目標を自らの主体的な取組によって実現し得る道を拡大することが重要である。 あるいは、例えば人事、会計・財務の点でも   国立大学の人事、会計・財務などについて、大学における教育研究活動をより柔軟で機動的に行うことができるよう、国立学校特別会計における教育研究経費の使途や繰越しの取扱い、大学教員の給与決定や兼職兼業の取扱い等について柔軟性の向上を図る方向で検討することが適当である。 このようにも答申は述べております。  この点について、方向として、今回の法改正というのはそういうふうになっているんでしょうか。どうでしょうか。
  98. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 国立大学の人事、会計等の制度につきまして、柔軟性を増すということが極めて大切なことであるというふうに考えておるわけでございます。  これからの大学は個性化、多様化を進めていくわけで、それに応じて大学みずからがその教育研究目標を設定するわけでございますが、その教育研究目標がより適切に実現できるようにするためには、大学が主体的な判断でそれに積極的に取り組むことが極めて大切でございまして、そのために、人事、会計等の諸制度についてできる限りの弾力化を図っていくことが大事である。  したがいまして、文部省といたしましては、大学審答申等の指摘も踏まえまして、一般的な制度を所管する関係官庁と現在相談を進めておるところでございまして、どのような制度について弾力化していくのか、他の国の行政機関における取り扱いとの整合性はどうなるのか等、さまざまな視点から検討を行っておるところでございます。  したがいまして、今回の法案におきましては、御指摘いただいておりますような人事、会計制度弾力化にかかわる事柄というのは盛り込んでおらないところでございまして、今後、関係省庁等との検討結果を踏まえ、速やかに改善案をまとめ、可能なものから逐次実行に移してまいりたいと考えておるところでございます。
  99. 藤村修

    ○藤村委員 そうすると、今からこれは検討するという課題でありますので、そこで今後、検討に際しましては、まず、基本的に弾力化するという方向であることは大体お伺いしたとおりであります。  大学教育教員が、国立大学の場合は国家公務員でありますが、一般の行政職の国家公務員とやはり相当違うという特殊性からも、旅費とか研究費の予算の使途の弾力化、例えば理科系文科系でもそれは大きく使い方が違うんだろうと思うんですが、やはり国家公務員、あるいはお国の予算を使うという意味では、財政法であるとか国家公務員法であるとか幾つもの法律に縛られているので、そこで、教育公務員の特例というようなことになってくるのだろうと思います。  その特例意味をより有効に使いながら、やはり使途の弾力化とか、さらに、研究というのは年度年度で切ってやれるということはほとんどないと思いますので、いわゆる予算の繰り越しの問題とか、それからさらには、最近、相当柔軟になってきたのかもしれませんが、いわゆる民間資金の導入、受託研究費の取り入れなど、大学が国際競争でちゃんと勝っていけるというか、負けないということを目指してこれらの弾力化をさらに進めていただきたい。これは今後の検討であるということでありますので、要請を申し上げたいと思います。  それで、もう一点、今の弾力化の中で、午前中栗本委員からの提起が最後の短い時間でちょっとございました。いわゆる国立大学教官等の民間企業役員兼業の件ということでありますが、具体的には、今、一橋大学の中谷教授の件が大きくクローズアップされているわけです。  たしか、文部大臣にお答えいただいたように、ことしの三月三十日の閣議決定で、規制緩和推進三か年計画ということで、   国立大学教官等の民間企業役員兼業について、直ちに検討に着手し、平成十一年中に必要な論点の整理・公表を行い、産業界や関係者の意見、並びに関係省庁、学識経験者等の意見を聴取した上、平成十一年度中 つまりことしじゅうということでしょうね、  を目標に結論を得て、必要があれば、速やかにパブリック・コメント手続を開始する。 ということですから、もうそんなに長い議論をしている暇は多分ないのだろうと思います。  そこで、では、この点について考え方を申し上げますと、私は、やはり国家公務員というものは、国の全体の奉仕者という非常に必要な要件があると思いますから、この場合は多分ソニーだったかと思いますが、一民間企業の、それも責任をとる立場、役員というものには、どうも国家公務員である以上はそぐわないのではないかと考えます。ただし、一方では、そういう民間との交流といいますか、これは比較的閉ざされたと言われる大学先生方にも非常に大きな刺激を与える、それは、ひいては学生に対してもよい影響もあるだろう、だから、そのことは否定はいたしません。  私自身委員長も五年間滞在されましたブラジルの大学の例を、最初に行ったときに聞いて驚いたのは、例えば、サンパウロ大学という一流の大学の経営とか経済の分野というのは、実は銀行の頭取が来ているとか、いわゆる企業の経営者が教えに来ている。それも、昼間はなかなか来れないものですから夜の講座に来ている。ですから、夜学の方がレベルがうんと高いということもございましたし、そういう点は、何も一つの国だけじゃなしに、多分、割と普通に行われていることだと思います。  私は、今後の方向としては、きっちりと国家公務員であるということの線引きは必要ではあります。しかし、今、例えば私立大学先生が教えに行くことは許されているわけであります。そういう意味では、民間の研究に共同で従事するようなことなどは、ぜひとも今後少しずつ弾力化をしていっていただきたいということ。  それからもう一つ、今回の中谷先生の場合は、私はこうすればいいと思うのです。  本人も多分、国立大学の教官をおやめになるようなことが新聞には出ておりましたが、やめて民間に行く、そこからまた民間の方を国立大学にお招き入れするという、むしろ民間からすぐれた教員研究者を招聘する場合に、これも今ネックがあるのは、片や国家公務員で、片や民間でそれなりの給料を得た人が国家公務員になっちゃうと、もうがたっと給料も下がってしまう、だからなかなか来にくいんだということでありますので、むしろここのところを、国立大学としては、民間から研究者を招聘するような場合には、年俸制で給与を出せるとか、つまり、それだけの価値のある人をお招きするわけですから、これはまさに教育公務員特例法の中で給与決定の弾力化を図るとか、むしろそちらの窓口を急いで開いていかれた方がいいんじゃないかな、このように思うのですが、もし文部大臣の御意見がございましたら、お伺いいたします。
  100. 小野元之

    ○小野(元)政府委員 御指摘がございました国家公務員が民間企業の役員を兼ねることでございますが、先ほど来御論議が出ておりますように、お話にもございましたように、公務員としての立場、全体の奉仕者の立場がもちろんあるわけでございます。一方で、産学の連携協力といったものは大変重要なことでございまして、国立大学先生方のそういったノウハウなり知恵といったものを民間企業に生かしていくということも大事なことだと私どもは思っておるところでございます。  お話がございましたように、人事院におかれましては、中谷教授の件につきましては、これまでこういった例がないということで大変厳しいことをおっしゃっておるわけでございますけれども、文部省といたしましては、人事院に対して、確かに国家公務員法の建前はそのとおりでございますけれども、そういった中で、一定の条件のもとに、何らかの形で前向きに御検討いただく道はないだろうかということで、今、一生懸命検討をお願いしておるところでございます。  お話がございました、逆に、民間からの方について、国立大学教授等で来られた場合に、この給与決定につきましても、先ほど来お話が出ております人事、会計の弾力化ということを私どもも考えなければいけないと思っておりまして、この点につきましても、給与決定のときに、民間での経歴といったものがもう少しスムーズに公務員として評価できる道はないかということで、この点も人事院にお話をしておるところでございます。  いずれにいたしましても、この問題は、TLO法の関係のものはものとして、新しい制度をつくるべく努力しておるわけでございますけれども、先ほど来お話がございました規制緩和の三カ年計画にも盛り込まれておりますので、私どもとしても、できる限り前向きに、かつ、しかし公務員としての本旨を間違えたことにならない範囲の中で努力をしたいというふうに考えておるところでございます。
  101. 藤村修

    ○藤村委員 そういう方向でぜひ努力をいただきたいと思います。  その際に、さらに御要望を申し上げれば、私は、やはり国家公務員という立場は非常に重要な立場であるので、解禁論が今過熱しているように思うのですが、何でもいいということではなくて、実際にその大学にとっての研究が民間との交流でより活性化される、あるいは、それが学生にとっていい影響がある、まずそういう目標を忘れないことである。  というのは、医学部、薬学部あるいは工学部のケースで、きょうまでも産学協同の中で非常に癒着があったりなんかというのは指摘される点ですから、やはりその一線をきっちり引くということ、それから、それに踏み切るならば、やはり第三者機関の審査などがきっちり機能する、そのためにはルールが必要であるということ、そういうことを原則にして、きょうまでの原則禁止から、原則許可というか、そういう方向に進んでいただければいいな、そのように考えております。  次に、これは実は本会議でもお尋ねをし、あるいは先ほど山元委員からも決意を聞いていただきましたが、国立大学の国の予算措置というのが、これは栗原委員指摘されていた大学紛争というか、多分、昭和四十年代のあのことが今となっては大きなネックであった、あの前後に、二十年間ぐらいはほとんど国立大学予算が伸びなかったということがあって、やはりそのことが、有馬東大総長時代にも研究施設設備の老朽化ということがむしろ非常に進んでしまった。その意味では、今後、そのときのやや不足をカバーするだけでなしに、やはりそれを上回るいわば教育投資、特に大学教育に対する投資というものが必要であると主張をいたしておりました。  その点について、有馬大臣は、「厳しい財政事情のもとではありますが、大学改革実現に向け、引き続き大学関係予算の充実に努めてまいる所存でございます。」これは本会議で短く答えていただいたので、委員会でもさらに力強く答えていただきたいと思っております。
  102. 有馬朗人

    有馬国務大臣 本会議でもお返事申し上げましたように、高等教育をきちっとしていくためには、国公私立を通して、もっと公的な財政的な支援をする必要があると思っております。  教育ということも一つ、それから、学術研究一つ、さらに、その中に含まれます科学技術というもの、こういうふうなもの全般を強く進めていかなければ二十一世紀の日本は成り立たないと思っております。そういう意味でも、今後さらに、大変厳しい財政事情ではございますけれども、国民の方々の御理解を賜って、やはり財政的に充実するように努力をさせていただきたいと思っております。  国立大学だけではなく、まだまだ施設が十分でない、あるいは設備が非常に不十分だというふうなことがございますので、まず最低限必要なものを最初にきちっと整えたいと思っております。こういうことについて努力をさせていただきたいと思っております。
  103. 藤村修

    ○藤村委員 法案関連での具体的な話としては、準備したものは大体終わっているんですが、私は、大学の問題全体としては、もう一つ、代表質問でも、入試の問題ですが、その入り口問題を指摘させていただいたところでございます。  さらに今、不況も相まって、出口の問題、つまり大学生の就職問題、かつて、二、三年前は氷河期とかいっておりましたが、最近は超氷河期、もう氷河期を超えてしまって何期かよくわからないんですが、超氷河期を超えたというふうな見出しで、特にことしの大学、短大生の就職問題が非常に厳しいということを報告されているわけですが、文部省は、今春の大学、短大生の就職状況を全体としてどのようにとらえ、どのように評価されているのかお尋ねをいたします。
  104. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 文部省と労働省の両省で調査をした今春卒業生の平成十一年三月一日時点での就職内定率は、昨年に比べて二・二%減の八八・七%でございます。また、短期大学、これは女子でございますが、短期大学は一・七%減の七九・一%となってございます。  景気低迷による雇用情勢が非常に厳しい中で、今春の卒業生の就職状況は依然として極めて厳しい状況にあるというふうに考えているところでございます。
  105. 藤村修

    ○藤村委員 そこで、それは経済の動向も一つは大きく影響していると思いますが、就職協定廃止問題というのがございますが、これはもう二年になるんでしょうか、就職協定が廃止されての影響というのはあるのかないのか。あるいはそのことで、文部省としてのあるべき就職活動というものをお考えになるときに、どういう影響を受けているのか。プラスマイナスあるのかと思いますが、その辺をちょっと教えてください。
  106. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 新規学卒者の就職、採用につきましては、従来から大学側と企業側が連絡協議を行ってきておるところでございまして、従来、就職協定に基づいた就職、採用が行われておったわけでございますが、平成九年度からは、それにかわりまして、大学側で就職についての申し合わせをする、企業側で採用、選考に関する倫理憲章を作成する、そして双方がそれぞれ尊重していくという方式がとられておるわけでございます。  就職協定が廃止をされた影響についてでございますが、採用情報の公正公平な公開や通年採用の拡大が進み、学生の就職機会が拡大したということが一方で指摘されておるわけでございますが、就職・採用活動が早期化をし、学生が最終学年の当初から授業に出席しないために大学教育に影響が生じているというふうな指摘があるわけでございます。  ただ、この就職協定が廃止されたことが即新規学卒者の就職難につながっているのか、直結しているのかということについては、現在のところ確たる分析はないわけでございますけれども、文部省としては、就職協定廃止の影響によって学生の就職率が低下をしているというふうには一般的には考えられないというふうに考えておるところでございます。  学生の就職・採用活動につきましては、やはり産業界において、大学教育活動を尊重し、可能な限り休日や祝日等に採用活動を実施するとともに、過度に早期の採用活動を行わないよう産業界に強く期待をしておるところでございまして、文部省といたしましても、大学、企業双方に対して、就職・採用活動が過度に早期化することなく、秩序ある形で行われるよう引き続き求めてまいりたいと考えておるところでございます。
  107. 藤村修

    ○藤村委員 企業側のその倫理憲章というものには、確かに建前論としてはいいことがいっぱい書いてあるようであります。ただ、やはり企業の論理というか、経済が悪い、大変厳しい状況の中で、企業もやはり本当にこれは人材を求めていく、その意味では、かつて言われた青田買いというものがまた復活している。  私の周りの学生にとっても、協定があるうちは、やはり四年生の七月一日というその時期が一つのめどであったように思うんですが、今や三年生の後期。ですから、きょうは四月でありますが、今走り回っているのはもう本当に四年生になったばかりの人で、あるいはマスコミ関係は終わっているとか、実態としてはどうもまたかつての青田買いのようなものが起こっている。  これは、企業の側は、そういう厳しい状況の中で、やはりよそよりいい人材をより先に見つけて内定したいという、これはいたし方のない、もう企業の論理に近いのでしょうから、その倫理憲章というものはやや建前的であるということはもうおわかりのとおりでありますので、ここはひとつ、むしろこれは大学の中身の改革であり、そして充実を図ろうという今回の法案でもありますし、この法案を契機に、ぜひとも文部大臣に一度、企業関係に走り回っていただいたり呼びかけをしていただいたりして、大学もこういうふうに変わっていくんですと、ですから、四年生になってちゃんと勉強をさせなければならない、そのことがむしろ実際に役に立つという言い方はどうかと思いますが、本当に将来的に企業の人材としても重要な期間なんですよということはちょっと声高に、この際、企業関係の方にも言ってもらっていただきたいなと思うんです。  かつても、就職問題で高校生の就職が厳しかったり短大生の女子の就職が厳しかったりしたときに、文部大臣には相当駆けめぐっていただいたこともありましたので、有馬文部大臣は、東大学長という立場もかつてお持ちだったわけですから、そういう両方の立場から、ぜひともこの法案を機に、ひとつ企業関係にきっちり言ってもらっていただけないかな、そんな思いがしておりますが、いかがでしょう。
  108. 有馬朗人

    有馬国務大臣 私も大変この点を心配しておりまして、私が東大学長をし、国立大学協会会長をしておりましたころは、企業と大学間の就職協定がございまして、それは私は残してもらいました。しかし、この二、三年それがなくなってしまったわけです。そのことによって異常に早期から就職活動が行われるということは心配をしております。  現に、このことがありますので、昨年十一月、それからその後また引き続きまして、経団連、日経連それからあと幾つか回りまして、中小企業の方たちにもお願いをいたしました。そういうところでも、常に、大学で四年生の講義が、授業がきちっと行われるよう考えてくださいということは強く要請してきている次第でございます。  いろいろ企業の方は企業としてのお考えがあるということはわかりますし、特にマスコミがまた別途早いんですね。ですからマスコミも、自分のところが早いから、企業が早く採ることに対してなかなか反対もできないというところも、きょうもマスコミの人がおられると思うけれども、そういう問題もある。それで大変競争になってしまっておりますので、何とかせめて三年のうちには就職のことを考えないでいいようにしてもらいたいと思っております。  しかし、御指摘のように、大学改革を行い、いろいろ工夫をしているところでございますので、今回さらにまた、先生のおっしゃられるように、企業の方たちにも参りまして詳しく御説明をし、さらにお願いをしてみたいと思っております。
  109. 藤村修

    ○藤村委員 それと、実態がそうであるからということだけではありませんが、やはりこれは、大学先生なりあるいは大学の就職担当の方なり、そして学生が何よりだと思うんですが、内定が決まったらもう大学に行かなくていいみたいな風潮があるんですが、いや、内定を決めて、いよいよ四年生、落ちついて今から勉強する、こういう考え方がむしろ出てきていいわけであります。  このことは、今回、多分これは省令で出てくるんでしょうか、各学年ごとの単位の上限云々ということなどありますよね。つまり、四年生がしっかりと四年間のまとめの成果を出すように勉強できる、これは仕組みの問題が一つあると思うんですね。それから、大学先生の意識の問題、何より学生の意識の問題があると思いますので、こういう観点からも、やはり大学の中で特に改革をしていく必要性の中で、四年生の勉強をどうすべきかというのは少し考え方を整理していただけないか。  私は理科系でございましたけれども、卒論がないというのが今割に普通になってきているようでありますが、やはりこの点は見直す、大学ごとに見直していただかないといけないんですが、やはり四年間の大学卒業するに当たっての卒業論文のようなもの、これは少し考え直してはどうかな、そんな思いがしているんです。つまり、大学教育の中で、こういう就職の状況など出口の問題を考えるときに、どういう改革改善をしていく必要があるか、その方向性をお答えいただきたいと思います。
  110. 有馬朗人

    有馬国務大臣 このところ出口を厳しくという主張がございます。大学審議会を初め私どももそれは正しいと思っております。  そういうところできちっと、仮に就職内定があっても、四年間の大学で習ったことが本当に身についているかどうかを卒業の段階でもっと厳しくはかった上で社会にお出しすべきだと思っております。私は、かなりまじめに、一たん内定はしていたけれども、もう一度三月なり二月に調べてほしい、その後の半年間なり一年間の勉強が十分できていたかということを調べてほしいと企業に言っているくらいでございます。  それからもう一つは、やはり大学側が少し温情主義をやめなければならない。すなわち、本当にしょっちゅうあることは、単位が足りません、しかしながら自分は何々会社に入りました、ですから、ともかく単位が足りないのでおまえの単位をくれ、こういうふうなことが非常にしばしばある。これを各大学が本当にやめたらばいいと思っているんです。そのくらい大学先生たちも少し気を引き締めて、余り温情主義だけでやるということをやめてほしいと思っております。こういうふうなことで、大学が四年であるということが決まっている以上、四年間の授業がきちっと行われるようにしてほしいと私は訴えたいのであります。  今後もこういう方向努力はさせていただきますけれども、何せ社会の方の対応がいろいろありますので、少し、企業も含め社会の方々が、大学教育の重要さということについてきちっと御理解を賜れればと思っております。
  111. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 学部段階における教育機能の充実強化を図るという観点に立って、例えば、授業について、事前学習の指示などを徹底いたしまして現行の単位制度を実質化するということを考えておりまして、責任ある授業運営がまず行われるようにしていくことが基本であるというふうに考えておるわけでございます。  それに伴いまして、授業方法計画とともに、成績評価基準を明示した上で厳格な成績評価を実施する。こういった事柄については、それぞれの大学で各教員意識改革を図り、教育内容、方法の改善に取り組んでいただく。その一環として行っていただくことでございますが、あわせて、学生の履修科目の過剰登録を防ぎ、授業科目を実質的に学習できるようにするために、履修科目登録単位数の上限設定を考えておるところでございます。これにつきましては所要制度改正が必要でございますが、このような制度改正あるいは大学における取り組みを通して教育機能の充実を図るということを考えておるわけでございます。  いずれにいたしましても、大学が責任ある授業運営を進め、卒業生の質を向上させることは、これは大学にとってもちろん責務として大事なことでございますが、同時に産業界にとってもこれは当然望ましいことでございますし、我が国社会の発展にとっても大事なことである、そういう認識を双方が持つことが必要であるというふうに考えておるわけでございまして、文部省としても、四年次における学習が適切に行われるよう経済団体等に対しても引き続き理解を求めてまいりたいと考えておるところでございます。  それからもう一点、卒業論文の件がございましたが、御案内のように、卒業論文を課すかどうかはそれぞれの大学教育上の判断によるものでございます。卒業論文を書くことによって従来の勉強を集約し、また将来へ結びつけていくというふうなことで、卒業論文というのは、果たす役割というのは意味あることとは思うわけでございますが、卒業論文がないからといって大学教育の質がそれで下がるというわけでも必ずしもないというふうにも考えられるわけでございます。  いずれにいたしましても、それぞれの大学において充実した教育が行われ、卒業時における学生の質がきちんとしたものとなるようにしていくことを、それぞれの大学の積極的な取り組みとして求めてまいりたいと考えておるところでございます。
  112. 藤村修

    ○藤村委員 出口の問題で、学士を授与するわけですよね、資格を。そういう意味では何もなくていいのかなというのは、今おっしゃったのは、卒論がないから教育のレベルがどうという、それはそうだと思うんですが、しかし、学士として社会に送り出す、その資格を与える一つの通過点というのか、そういうものを何か大学考えていただくことができないのかな、そんな気はいたしております。それは今後の問題としてまた議論したいと思います。  さて、もう一つ大学の入り口問題であります。  これはもう何度も御答弁いただいておりますように、中教審小委員会大学入試見直しなどの諮問をもう去年されているところでありますから、今から多分一年余りかけてどんどん議論が進んでいくんだろうと思います。  そこで私は、ことしも終わりましたが、ほぼ十年になります大学入試センター試験というもの、おおむね十年経過をして、どういう評価、どういう総括になるのか、その点をまずお聞かせいただきたいと思います。
  113. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 大学入試センター試験は、入学志願者の高等学校段階における基礎的な学習の達成の程度を判定することを目的として実施をされております。各大学がそれぞれの判断に基づき適切に利用することを通じて、しかも、国公立大学はもとより、多くの私立大学がこれを利用することによって、国公私立大学を通じた大学入学者選抜の改善に寄与してきたというふうに考えておるところでございます。  具体的には、各大学が利用方法を自由に決めることができるいわゆるアラカルト方式の採用や、各大学における個別試験との組み合わせにより、大学入学試験の個性化や多様化というものが進展をしたということがまずあろうかと思います。  また、大学入試センター試験の出題内容等が各大学の個別試験の出題にも好ましい影響を及ぼし、いわゆる難問奇問が減少をし、良質な問題が確保されてきているというようなこともあろうかと思います。こういった点などを通じて、大学入試の改善に大きな役割を果たしてきた、そういうふうに認識をしておるところでございます。
  114. 藤村修

    ○藤村委員 十年を経て、問題点は全くありませんか。世間では幾つも問題点が指摘されております。文部省はどういうふうに問題点を認識されておりましょうか。
  115. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 一時に大量の受験生が受けるという事柄の性質上、出題の形式がいわゆる正解を選択するというような方式になるわけでございます。そういった観点から、大学センター試験においては、さまざまな工夫はいたしておりますけれども、例えば、創造性なりを十分に見ることができるのかといったような点からの御意見があるということは承知をいたしております。
  116. 藤村修

    ○藤村委員 ちょうど今からまた十年たちますと、午前中にも話がありましたように、大学入学定員と、そのときに大学に進学する希望者、百二十万人ぐらいになるのでしょうか、それがほぼイコールになる。そうすると、極端な話、試験をしなくてみんな大学に入れる、こういうことになろうと思います。しかしそのときには、もちろん一部のみんなが行きたい大学は相当な難関であろうし、となれば、一方で、たくさんの大学の中の一部はだれも人が来ない、こういうこともあり得るのではないかなと思います。  そこで、センター試験十年を経て、さらに今後十年を考えるときに、まずセンター試験、今、問題点の認識が一つ披露されましたが、例えば医学部を受ける人で生物をとらなくていいような、具体的ないろいろな問題点もありますし、そういう改善を含めて、センター試験の今後の十年、どんな方向に持っていきたいか。あるいは、これは一つ大学入学資格試験にしたらいいんじゃないかという声も非常に多いわけでありますし、今後十年、このセンター試験についてどういう観点から方向転換なり改善をしていくのか。  さらに、その十年先に大学はどうなっているんでしょうか。極端に言えば、つぶれる大学が出てくると文部省考えているのかどうか、その辺をお聞かせいただきたいと思います。
  117. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 今後、高等学校あるいは大学の多様化が進み、これまで以上に多様な能力、適性などを持った学生大学に進学してくるわけでございます。そういった意味において、大学入学試験というものは、それぞれの大学の個性化、多様化というものを踏まえて、ますます多様化してくることが考えられるわけでございます。  そういう中において、大学入試センター試験がどのような役割を果たすのかということについて、なかなか現時点ではっきりとしたことを申し上げにくい状況にございまして、現在、中央教育審議会において、初等中等教育と高等教育との接続の改善について審議をしている中で、当然のことながら、大学入試センター試験のあり方についても検討を行っているところでございまして、それを踏まえて大学入試センター試験の改善というものを考えていきたいというふうに考えておるわけでございます。  なお、大学入試センター試験の使い方というのは各大学の判断に任されておるわけでございます。したがって、センター試験において一定点数以上をとった志願者については、大学として、個別の学力試験は課さないというような使い方もあり得るわけで、こういったような資格試験的な使い方ということも可能なわけでございます。いずれにしましても、センター試験をどのような形で使っていくかについては、各大学の工夫というものに期待をしておるわけでございます。
  118. 藤村修

    ○藤村委員 本会議質問でも申し上げましたように、やはり大学の入り口問題が今一番急ぐ、それは初等中等教育にも非常に大きく影響していることはもうずっと言われ続けてきたことでありますので、昨年の十二月でしたか、中教審に小委員会を設けていただいて、この接続の問題を一年がかりぐらいで考えていくということでありますので、この文教委員会にも高等教育の小委員会もございますので、これは並行して、ぜひとも、この入り口問題をみんなで考えて、本当にいい方向に持っていきたいな、そんなことを表明いたしまして、質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  119. 小川元

    小川委員長 次に、池坊保子君。
  120. 池坊保子

    ○池坊委員 池坊保子でございます。  学校教育法改正並びに国立学校設置法の改正に関して、基本的に私は反対する立場ではございませんが、高等教育の一層の充実を望む立場から、また実効性のある成果を上げていただきたく、少し具体的に伺わせていただきたいと思います。  両法案を細かく拝見いたしましたけれども、著しく具体性とか実効性に乏しいのではないかと私は危惧したわけでございます。  まず、今回の改正案趣旨は、平成十年十月の大学審議会の答申などを踏まえ、大学制度弾力化国立大学組織運営体制改革を一体的に行い、大学改革を推進するものとされております。今回の法改正は、大学審議会答申にありました、二十一世紀の社会あり方大学像を実現するための改革位置づけられております。  他方、二月二十六日には、樋口広太郎座長の経済戦略会議の答申でも、一、大学への競争原理の導入、二、大学教育研究評価に対する第三者機関の設置、三、産学協同の飛躍的強化、四、独立行政法人化を視野に入れた制度改革、この四点が提言されておりました。この経済戦略会議の答申と今回の法改正とが大筋で一致しているのではないかというふうに私は考えております。  言うまでもなく、経済戦略会議の答申は、日本経済の再生への戦略と位置づけ、経済活性化に向けた大学教育改革であることが強調されておりました。  本来、文部省のあるべき姿からまいりますと、大学内容の充実を図り、大学院の高度化を目指し、学問を主体とすべきではないかなというふうに私は考えておりますので、その点を文部大臣にお伺いしたいのです。  今回の法改正の背景には、昨年十月の大学審議会答申と本年二月の経済戦略会議答申の内容とがやはり色濃く反映されているのでございましょうか。その後押しの中でそういう法案ができたかをちょっと伺いたいと存じます。
  121. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 御指摘の経済戦略会議の提言におきましても、大学改革について方向性が示されておるわけでございます。現在進め、また今回の法改正で進めようとしております大学改革と、内容的には改革方向として通ずるものもあろうかと思いますが、文部省として進めております大学改革においては、大学の自主性というものを尊重し、それを踏まえて所要制度改正等を進めているという点に一つ大きな特色があろうかと思っております。  文部省といたしましては、経済界を含め、広く各界の御意見を伺いながら、社会の期待に一層こたえ得る大学実現を目指し、大学改革の推進に全力を挙げて取り組んでまいりたいと考えております。
  122. 有馬朗人

    有馬国務大臣 先ほど、裏側に何かないかという御指摘でございましたが、これはありません。  ただ、大学審議会のメンバーの中には、財界の方も一、二おられますし、それからまた官僚であった方たちも一、二入っておられる、マスコミの方も入っていて、そういう意味で、非常にさまざまな委員がおられました。そういう方々の意見のかなりの部分大学審議会の答申に入っております。ですが、大部分大学の現場の人たちあるいは現場にいた人たちの意見でございまして、そういう意味で、どこかの圧力があってこうなったということでは全くございません。大学審議会としては、みずから十分考えた上で答申を出され、その答申に基づいて今回の法律がつくられたものと私は考えております。
  123. 池坊保子

    ○池坊委員 私は、何かの圧力があってこのような法律ができたというふうには考えてはおりませんけれども、経済再生に足並みをそろえてこの法改正ができたのかなというふうにちょっと考えたまででございます。  それともう一点は、経済戦略会議の答申にありました独立行政法人化などは今回の法改正には盛り込まれておりませんけれども、将来はこうした国立大学のエージェンシー化を検討していらっしゃるのかどうか、その点だけちょっとお伺いしたいと存じます。
  124. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 去る一月二十六日の中央省庁等改革推進本部において決定された中央省庁等改革に係る大綱におきまして、「国立大学の独立行政法人化については、大学の自主性を尊重しつつ、大学改革の一環として検討し、平成十五年までに結論を得る。」とされているところでございます。  文部省といたしましては、独立行政法人化の問題については、現在大学改革を進めておるわけでございますが、大学改革状況を見つつ、教育研究の質的向上を図る観点に立って検討を行うことが適当であると考えておるところでございます。
  125. 池坊保子

    ○池坊委員 今回の法改正のポイントの一つに、すぐれた大学生は三年間での繰り上げ卒業が可能になるということがあると存じます。他方、一昨年来、私も千葉大学に視察に参りましたけれども、千葉大学で実施されているように、高校二年修了の飛び入学も一部で実施されております。こうなりますと、極端な場合、二十で大学卒業する学生も今後は増加してまいりますので、こうした若者が高等教育を受けた社会人として輩出されることになりますと、大学の責任というのはますます重要になってくるとともに、大学あり方そのものも変わってくるのではないかと思っております。  有馬文部大臣は四月一日の衆院本会議で、「三年以上の在学卒業を可能とする制度は、学生の能力、適性に応じた教育を行い、その成果を適切に評価していく観点から設けられた、例外的な措置」であると説明していらっしゃいます。  そこでお尋ねしたいのですが、まず、現在の時点で、このような例外措置が、大学審議会の用語によりますと、二十一世紀の社会のニーズにこたえると書かれておりますけれども、こたえるというのはどういう根拠でそのようにお考えになるのか、そしてまた、二十一世紀の社会がこのような若い人材を求めているとお考えならば、それはどんな分野でどのような人材をつくり出そうとしておられるのか、具体的にお教えいただきたいと存じます。
  126. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 今回の三年在学卒業の仕組みは、御指摘ございましたように、学生の能力、適性に応じた教育を行い、その成果を適切に評価していく観点から設けられるものでございます。したがいまして、この制度大学として導入するのか、あるいはどの分野に適用するのかは、基本的には各大学の判断によるものでございまして、大学の判断でさまざまな分野で適用されるものと考えているところでございます。  社会的なニーズといたしましては、現在、大学学部三年から我が国の大学院修士課程に入学する制度があるわけでございますが、学士の学位を有しないということもあって、外国大学院へは進学できないというふうな状況となっておるわけでございます。今回の制度により早期卒業が可能となれば、我が国の大学院のみならず、外国大学院へ進学する、あるいはより幅広く社会の各方面で活躍できるようになると考えているところでございます。
  127. 池坊保子

    ○池坊委員 それでしたら、千葉大学の飛び入学は三名というごく少ない人間しか入らなかった、そしてことしはどうなるのかわかりませんが、ごくごく一部でしかなかったわけですけれども、そのような極めて少ない人数の特別措置をこれからもお続けになるおつもりなのでしょうか。
  128. 有馬朗人

    有馬国務大臣 既に大学院では三年卒で入れるようになっています。その数は、国公立、私立を入れますと、もうずいぶん多い、二百何十人でございますので、決して三人なんということは今後もないと思います。もっとふえていくと思います。
  129. 池坊保子

    ○池坊委員 では、この場合の特別措置というのは、幅広くというふうに考えてよろしいわけですね。
  130. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 ちょっと補足させていただきます。  現在、学部三年から大学院修士課程に進んでおる者が二百三十名程度でございます。今回の措置は、文部省令において、大学における厳格な成績評価履修科目登録単位数の上限設定の実施等かなり厳しい要件を課すことにいたしておりますので、この措置によって三年以上の在学卒業できる者というのは例外的な方になるであろうと考えているところでございます。     〔委員長退席、栗原(裕)委員長代理着席〕
  131. 池坊保子

    ○池坊委員 では、今まで二百三十名の方が大学三年を修了して大学院に行っていらっしゃいますけれども、これはこういう感じでそのままいくのであって、これを制度化するということではないわけでございますね。幅広くこれを一般的にするということではないということですね。——でしたら、次に進めさせていただきます。  こうした繰り上げ卒業を認めることによって、学生の取得単位教員指導の負担などがふえると当然考えられると思います。例えば、二年目からもう卒業論文に学生はかからなければならないわけですから、そういうことのために、大臣がおっしゃったような、能力、適性に応じた教育というのがこれから必要になってくると存じます。  では、先生はこのままの数でそういうことをなさるおつもりなのでしょうか。その辺の展望がおありなら具体的に聞かせていただきたいと思います。
  132. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 三年以上の在学卒業できる措置につきましては、学生に対して適切な学習指導をする、あるいは学習の相談に応ずるなど、十分な教育的配慮が必要であるというふうに考えております。その意味で、教員の果たす役割というのが重要になってくるというふうに認識をいたしておるわけでございます。  やはりこれからの大学においては、教育というもの、しかも個々の学生に応じて教育をできる限り充実していくということが大学の本来的な役割であるという認識に立って、それぞれの教員意識改革とそれから教育内容授業方法改善に対する努力というものを文部省としては強く期待をしておるところでございます。
  133. 池坊保子

    ○池坊委員 そうすると、予算の点では、今までの大学教授の人数をふやすというようなことはお考えになっていらっしゃらないわけですね。今の枠内で個々の学生の適性に応じた教育をやりたいというふうに考えていらっしゃるわけですね。
  134. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 極めて厳しい財政事情がございます。また、行政改革が進んでいる。そういう状況の中で、この三年在学での卒業という措置のために教員の増員を図るということは考えておらないところでございます。
  135. 有馬朗人

    有馬国務大臣 私自身の経験で申し上げますと、法政大学でございますけれども、三年からもう卒論に入ってまいります。明らかにいいことは、それまで割にのんびり勉強していたのが、三年の卒論に入っていくと学生諸君は非常に熱心になるのですね。したがいまして、私が見ていた限りでも、八人ほど卒論を二年間にわたって指導しておりましたけれども、その中の一人、二人はもう三年の終わるころには相当でき上がっています。だから、こういう意味では、今のままの教員の数でも予算でも、工夫をすれば今の三年卒というようなことの可能性が出てくると思います。
  136. 池坊保子

    ○池坊委員 次に、大学教育の高度化、多様化に伴う法改正内容についてお伺いしたいと思います。  今回の学校教育法改正案のうち、第六十六条の改正案は、大学院を「教育研究上の目的を達成するため有益かつ適切である場合においては、文部大臣の定めるところにより、研究科以外の教育研究上の基本となる組織を置くことができる。」と示されております。この「研究科以外の教育研究上の基本となる組織」というところがちょっと私にはわかりづらいので、文部省による別紙、大学改革の具体的な推進方策を読んでおりましたら、この部分は、大学院組織編制弾力化、プロフェッショナルスクールの設置推進と書いてございました。  このプロフェッショナルスクールについてちょっとお尋ねしたいのです。まず、プロフェッショナルスクールとは一体どういうものを意味するのかを伺いたいと思います。従来の大学院研究科と併設して高度な職業教育を行うのであれば、具体的に何を指しているのかをもお教えいただきたいと思います。
  137. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 ここで考えておりますプロフェッショナルスクールは、アメリカ型のプロフェッショナルスクールを視野に入れつつ、大学レベルでの十分な教養教育専門教育を受け、幅広い資格やバランスのとれた判断力を有した者等を入学させ、大学院レベルでの高度の専門的分析能力や応用能力を展開する人材養成を行うことを考えておるところでございます。  したがいまして、プロフェッショナルスクールとして想定される分野といたしましては、国際社会の直面する新たな課題の解決と、公正な国際的ルールづくり等に積極的に参加し得る人材の育成が求められている、例えば、経営管理、法律実務、ファイナンス、国際開発・協力、公共政策、公衆衛生などの分野でその設置を期待しているところでございます。
  138. 池坊保子

    ○池坊委員 アメリカのMBAみたいなのをちょっと頭に描いたらよろしいわけでございますね。そうすると、国家試験や資格を取るためのプロフェッショナルの育成が目的ということとはちょっと違うのでしょうか。例えば司法試験とか公認会計士とかございますけれども、そういうのとはまた違うわけでございますね。
  139. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 想定しておりますことは、大学レベルの教育を修了した者について、さらに高度な専門的知識や分析技術、応用能力を付与することなど、単なる知識や技術の習得にとどまらない高度の専門能力を有する人材の育成ということを考えているところでございます。
  140. 池坊保子

    ○池坊委員 そうすると、もうちょっと突っ込んで伺いたいのですけれども、どのような教育課程でどんな専門家をどのぐらいの期間で育成なさるおつもりなのか。もしその具体的な展望がおありならばお聞かせ願いたいと思います。
  141. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 大学院段階の教育といたしましては、例えば授業研究指導の柱としてケーススタディー、フィールドワークなどを取り入れることにより、実践性を担保するカリキュラムをまず工夫する必要があるだろうと思います。  また、教える教員でございますが、実務経験のある社会人を相当数教員として加えるなど、教員組織あり方について適切な配慮が必要であるというふうに考えております。  また、修了要件といたしましては、修士論文にかえて、特定課題研究を原則とすることや、課程制大学院趣旨を尊重する観点から、三十単位を超える単位数を課すことなどを考えておりまして、実践性の高い教育というものを行ってまいりたいと考えておるわけでございます。  このような措置を講ずるためには、大学院設置基準の改正が必要でございます。その改正につきましては、できる限り速やかにこれを行い、これからの我が国を担う人材養成に向けて、各大学の積極的な取り組みというものを促してまいりたいと考えております。
  142. 池坊保子

    ○池坊委員 今までですと、大学院で二年いたしますと修士が取れて、三年で博士が取れる、そのシステムはそのまま温存するわけでございますね。そうしたら、プロフェッショナルスクールで修士とか博士は取れないわけですね。それはまた別のものになってくるわけですか。
  143. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 大学院の修士課程にいわゆるプロフェッショナルスクールとしての機能を持たせることを考えておるわけでございます。したがいまして、その課程を修了した者につきましては、修士の学位が取得できるということになります。
  144. 池坊保子

    ○池坊委員 どちらにいたしましても、超エリートをつくる必要は、確かにこれから国際社会の中で日本が科学技術等で頭角をあらわしていくために必要だと思います。  ですけれども、私、千葉大学の飛び入学にこだわるようでございますが、三人入れましても、その三人が本当に優秀になれるかどうかはわからないと思います。ハーバードなんかでも、実に若い方が、天才と言われて入っていらっしゃる方が、では活躍していらっしゃるかというのを随分私も調べましたところ、必ずしもそうじゃないということを見ますときに、一年間ぐらい早く入れることにどれだけの意味があるのかなというのをずっと私は疑問視いたしておりますので、このプロフェッショナルスクールも、また四年から三年で修了さすのも、その辺も考えていただいて、余り特別措置にならない、一般的にこれが普通になるシステムの方がいいのではないかと私は思っておりますが、大臣、もし何かお考えがございましたらお聞きしとうございます。
  145. 有馬朗人

    有馬国務大臣 江崎さんと私とで、ノーベル賞受賞者二十人ぐらいの学歴を調べました。ただ、全部じゃありません。そうしましたら、相当数が大学に早期に入っておりました。半分とは言いません。三分の一は明らかに十四、五歳で入っているのですね。十六歳は当然。だから、日本ほど厳しく十八歳まで待たなければならないというのは、私は反対でございます。そういう意味で、余りに年齢をきちっと制限していくというのはよくないんじゃないかと思っています。やはりその人の能力に従って、退屈させないで、早く行きたい人は早く行く、年をとってから入りたい人は入れたらばいいと思っております。  なお、戦前から戦後の新制大学がつくられるまでは飛び入学があったということを繰り返し申し上げておきます。相当多数の人が小学校五年生から中学校に入れました。私は音楽が乙でありましたので入れませんでした。それから、中学校は五年でありましたけれども、中学校四年から高等学校、旧制高校に行けました。私はそこで頑張って、四年から一学年、五年生を飛んで高等学校に入りました。ですから、戦前の方がそういう自由度があったということを申し上げておきたいと思います。
  146. 池坊保子

    ○池坊委員 飛び入学もそれから四年制を三年制にいたしますのも、ごく普通に当たり前のこととして大学で受け入れられたならば、私もそれに賛成でございます。ただ、私が気にいたしましたのは、例外措置、特別措置と書いてございましたので、何でこれを例外措置にしなければいけないのか、これがごく一般的な、その人間の個性として当たり前に受け入れられるようでなければならないと思います。ですから、そういう意味で私は、飛び入学も弾力的に結構だと思っております。ただ、これが三人ということにこだわらないで、これからもますますその枠を広げて、そういうことが何でもない、その個人の持っている個性にならなければいけないというふうに私は考えております。  次に、国立大学改革についてお尋ねしたいと思います。  今回の国立学校設置法第七条の改正案に、新しく運営諮問会議という、今まで聞きなれませんでした会議設置提案されております。改正案によると、そのメンバーは、「当該国立大学の職員以外の者で大学に関し広くかつ高い識見を有するもののうちから、学長の申出を受けて文部大臣が任命する。」となっており、その役割は、第七条の二の三項に、「大学教育研究上の目的を達成するための基本的な計画に関する重要事項」と「大学教育研究活動等の状況について当該大学が行う評価に関する重要事項」と挙げられております。  この新しい運営諮問会議は具体的にどんな役割を果たすのか、ちょっとわかりませんのでお教えいただきたいと思います。
  147. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 運営諮問会議でございますが、これは、大学社会からの意見を聞き、社会的存在としてその責任を明らかにすることが求められている中にあって、大学運営に関する重要事項について外部有識者の意見を聞くための組織でございます。  具体的には、大学運営についての企画、実行、評価に係る基本的事項について大所高所からの大綱的な方針というものを審議いただく、そして意見をいただく、かような機関としてすべての国立大学設置をするものでございます。
  148. 池坊保子

    ○池坊委員 運営諮問会議は外部の人間、そして評議会は内部の人間ということはわかりますけれども、この両者の見解がもし異なった場合、学長とか大学はどのように判断をされるのでしょうか。
  149. 有馬朗人

    有馬国務大臣 それはやはり、評議会並びに学長、その大学の責任で決定すべきだと思っております。
  150. 池坊保子

    ○池坊委員 この法案を読んでおりますと、運営諮問会議は「重要事項」と書いてございます。評議会の方はこの「重要」が抜けております。これはそれに意味があるのでございましょうか。これは同じ重きというか役割を果たすのでしょうか。ただ単に「重要」が欠けただけと解釈してよろしいのでしょうか。
  151. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 運営諮問会議評議会は、ともに大学運営に関する重要事項審議する機関でございますが、運営諮問会議は、学外有識者の立場から、大所高所に立って大綱的な方針について審議することとなるのに対しまして、評議会は、比較的具体的な内容にわたって審議を行うこととなりますので、両者の観点あるいは範囲、程度の差が存します。  そこで、運営諮問会議審議事項のうち、基本計画に係る第一号及び第二号については、具体的な事項が定められていることから、評議会とは審議の観点、範囲、程度に差があることを明らかにするために、「重要事項」というふうに規定をしたところでございます。
  152. 池坊保子

    ○池坊委員 両方とも、学長に対して助言並びに勧告をすることができるというふうに書いてございますけれども、これは、あくまでも学長を中心として運営諮問会議があり、そして評議会があるのか、この教授会評議会運営諮問会議の三者の関連性というのはどうなるんでしょうか。
  153. 有馬朗人

    有馬国務大臣 お答え申し上げます。  今回の制度改正においては、学内の意思決定システムについては、評議会大学運営に関する重要事項を、それから、学部教授会学部教育研究に関する重要事項をそれぞれ審議することといたしておりまして、役割分担を法律上明確化いたしました。したがいまして、全学的な運営方針の策定については、学長評議会審議を踏まえてみずからの判断と責任で行うものと考えております。  さて、それでは、新たにつくられた運営諮問会議はどういう役割を持つかというと、これは、大学社会からの意見を聴取し、社会的存在としてその責任を明らかにすることが求められている今日、大学運営に関するさまざまな重要事項について外部有識者の意見を聞くための組織考えております。そして、それは各国立大学設置するものであると考えております。
  154. 池坊保子

    ○池坊委員 確かに、運営諮問会議並びに評議会は、役割は法律化されております。ただ、権限はないわけでございますね。つまり、助言、勧告だけで、それ以上の権限は与えられていないと解釈してよろしいわけでございますね。
  155. 有馬朗人

    有馬国務大臣 あえて申し上げますと、大学が置かれている困ったこと、例えば施設が非常に弱いとか設備が非常に悪いとか、こういうことも含めてこういう方々の御意見を聞くことができるわけです。事実、筑波大学においての参与会ではまさにその点が議論になりました。筑波の大学の施設がどうかというようなこともここで議論になった覚えがあります。  それから、もっと博士を出せ。先ほど特に御議論がありました、栗本先生から御指摘のありました、文科系博士をもっと出したらいいのではないかというふうなことが参与会で出ました。それから、産学協同においてどうしたらいいかというふうなことも参与会で議論がありました。  しかしながら、この参与会の結論というのは、当時の江崎学長に対する一つのアドバイスでありまして、それに必ずしも筑波が完全に従うという必要はなかったと思います。しかしながら、極めて有力な意見として筑波大学でそれを使っておられたと思います。  こういうふうなことで、大学が置かれている苦衷、非常に困難なところ、苦しんでいるところがどうかというふうなこともお聞きして、それに対するアドバイスをいただくということ、あるいは我々大学人が気がつかないようなことを指摘していただくこと、そういうことが非常に有効であったと私は思っております。
  156. 池坊保子

    ○池坊委員 今回の法改正学長の権限が強く強化されてまいりましたから、学長にそのように助言や勧告をする人間がいるということは大変に有益であるとは存じますけれども、学長申し出文部大臣が任命するわけですね。そうすると、自分と大体価値観だとか意見が一緒の人間を選ぶ場合が多いのではないかというふうに思うんですが、このメンバーの構成というのは、そこの国立大学学長の一存で決めることができるわけですか。
  157. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 運営諮問会議は学外有識者の意見を聞くための組織でございますので、したがって、運営諮問会議委員としては、例えば、その大学が所在する地域の関係者であるとかあるいは企業の関係者ですとか、あるいは他の大学研究機関の研究者、さらにはその大学の出身者等、さまざまな各界の人を委員として選考していくことが必要であるというふうに考えておるわけでございます。  したがって、学長は、運営諮問会議の果たす機能にふさわしいような人間委員として申し出ることが期待をされておりまして、そのために学内の機関から意見を聞くというようなこともあり得るというふうには考えております。
  158. 池坊保子

    ○池坊委員 私は、権限も余り与えられていないので形骸化しちゃうおそれがあるのではないかというのを心配いたしております。  それからもう一点は、学長にアドバイスするだけでなくて、教授会というのも大体が古い体質であるところが多いので、その古い体質に新しい外部の空気を入れるためにも、運営諮問会議教授会に本来的には助言や勧告をすべきではないか。勧告というのはむしろ教授会にすべきことの方が多いのではないかと私は思っておりますので、学長にだけするというのが、これでは本当に役割を果たすことができるのかなと思って心配いたしております。  もう一点は、大学教育活動等の状況について、評価に対する審議をするということでございますが、自己点検・評価というのを二回以上して公表している大学というのは大体五六・四%というふうに聞いております。まず、今までも自己点検・評価というのを学校がしていないのにこれからもするのだろうかということと、それから外部の人間がその学校の何を点検、評価できるのだろうかということをちょっと心配いたしまして、立派な、会議と名のつくものができた割には、中が余り、何にもされないということ、実際には実効性がないということになるのではないかと心配しております。
  159. 有馬朗人

    有馬国務大臣 たびたび筑波大学の参与会の例を引き合いに出して申しわけありませんけれども、そこには、学長はもちろん、副学長並びに教授会のメンバーの学部長あたりが出席していました。これはその会議のメンバーそのものではありませんけれども、オブザーバーとして参画しております。ですから、学部に対してのいろいろなコメントがありますと、それぞれの学部長あるいは大学院の系長がそれを持って帰って工夫をするということが行われていると思います。  そういう点では、今御指摘のように、学長に対するアドバイスというだけではなく、それを通じて各学部にもさまざまな意見が伝えられる、そういう点で有効だと思っております。
  160. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 学長に対して助言、勧告という形になっておるわけでございますが、これは、その大学の最終的な責任者というのが学長であるわけでございます。学長は、運営諮問会議評議会での審議を踏まえつつも、最終的にはみずからの判断と責任で大学運営を行うわけでございます。したがいまして、運営諮問会議の助言、勧告の対象は学長とすることが適切であるという観点からこのような扱いとなっておるわけでございまして、具体的には、そこに申し出られた意見等が教授会等の議論に反映されるということは必要なことと考えておるわけでございます。  なお、もう一点、運営諮問会議は自己点検・評価についても大所高所から議論をいたすわけでございますが、具体の自己点検・評価の中身、内容というよりも、例えば自己点検・評価をどのようにやるのか、自己点検・評価の仕組みはどうあるべきかといったような大所高所からの審議ということになろうかと思っております。
  161. 池坊保子

    ○池坊委員 学会、医学界、文部省もそうかもしれませんけれども、新しいものにチャレンジしなければいけない分野であるにもかかわらず、古い体質を抱えているととかく言われております。私は、ぜひともこの運営諮問会議も、それから自己点検システムも情報開示を広くしていただきたいと思っておりますが、それについての御意見を伺いたいと思います。
  162. 有馬朗人

    有馬国務大臣 私は、先生の御意見に大賛成でありまして、既に自己点検・評価等は相当の部分が公開されております。それからまた、参与会等々の議論も、当然今後公表されると思っております。
  163. 池坊保子

    ○池坊委員 開かれた国立大学になることを願って、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  164. 栗原裕康

    ○栗原(裕)委員長代理 次に、富田茂之君。
  165. 富田茂之

    ○富田委員 公明党・改革クラブの富田でございます。  私も、今、池坊委員運営諮問会議についていろいろな観点から質問されていましたので、その関連で、まず運営諮問会議についてお尋ねしたいと思います。  先ほど局長の方は、運営諮問会議の中身が余りよくわからないという池坊委員質問に対して、大学審議会の答申に書かれているものをそのまま読まれていたのですね。   大学社会からの意見を聴取し社会的存在としてその責任を明らかにするとの観点から、大学教育研究目標・計画(例えば、将来計画など)、予算、自己評価などの事項について外部有識者の意見を聞くため、大学運営協議会(仮称)を設けることが必要である。 ということで、この大学審議会の答申を受けての今回の運営諮問会議設置だというふうに思うんですが、こういうことを含む法案が出てきて、ちょっと私、今回驚いたのは、大学の関係者から、午前中から各委員先生がおっしゃっていましたけれども、いろいろな方から、意見書なり陳情あるいは要請書という形でいただきました。一枚ペラで反対しますというふうに書いてある単純なものもありましたけれども、その中には、大学の自治に反するんじゃないかとか、いろいろな論証をして、条文をきちんと挙げられて、教育現場で働く者の立場から見たらこういう点が危ないんだということを、かなり詳しく一生懸命論じた文書を大分いただきました。これはそんな簡単に無視できるものではないなというふうに、私自身も全部読ませてもらいまして思いました。その中で、この運営諮問会議については、特に、やはり大学の自治との関係で、外部からの介入を受けるのではないかということを大分関係者の方々は気にされております。  この大学審議会の答申の中でも、先ほどから大臣がおっしゃっています参与会、筑波大学での参与会について、  参与会や参与の仕組みについては、審議事項が具体的でないことや構成員が学外者であるため実際上審議回数が限られていることもあり、その意見が大学運営にどのように寄与しているかが必ずしも明確でなく、その実質化を図る必要があるなどの指摘がある。 これはまた逆の立場からの指摘ですけれども、こういう指摘がある参与会をちょっと発展させたような形で運営諮問会議をつくる。実際つくっても、機能しているのかどうかという疑念が一つある。また、大学関係者から見たら、大学の自治に対する外部からの介入じゃないか、介入の危険性が広がるんじゃないかというふうな懸念もある。  そういう中で、確かに社会的な要請というのもあると思います。特に、国立大学は税金で運営されているわけですから、中でどういうことがされているのかというのをきちんと外に知らせる必要もあると思いますけれども、あえてここの段階で運営諮問会議法律上明記して設置する必要が本当にあるのか。そこの部分について、どのような考えで今回こういう改正に至ったのか、ぜひお聞かせ願いたいと思います。
  166. 有馬朗人

    有馬国務大臣 午前中に申し上げるべきことだったかと思いますが、大学紛争の前後、産学協同に対しては大変な反対でありました。徹底的な反対だった。したがいまして、日本は一九九〇年代まで産学協同というのは非常にやりにくかった。  一九八五年ぐらいに寄附講座を東大が導入しようといたしましたけれども、そのときにも猛烈なる反対があったわけです。産業界からの人事への介入があるのではないかというふうな反対がございました。しかし、これは東大の場合でありますが、評議会等々で慎重に検討して、人事権は全く大学が持つものであるということを決定いたしまして、寄附講座を導入することに賛成をしてもらったわけであります。  大変な反対でありました。今日考えられない。奨学寄附金を、今、研究費の三分の一、校費が、当たり校費と言われているのが三分の一、それから科研費が三分の一、産学協同のもとに、産業界から、ほかのものもありますけれども、そういう奨学寄附金等で来る研究費が三分の一、こういう時代が来るとは私は思わなかった。しかし、この間大学の自治は侵されなかった。全く侵されていない。確信を持って申し上げます。  そういう意味で、私は、より積極的に運営諮問会議のようなもので大学社会に対して果たしている役割を説明し、その役割に対して、社会より、時には御忠言、時には御感想をいただくことは、大学の健全な運営の上で極めて役に立つと思います。  こういう点で、決して自治が侵されるとは私は思いません。また、これが仮に、先ほどの御質問にもありましたけれども、評議会と意見が割れてしまう、そういうときには、やはり学長としては評議会の意見をきちっと聞いて、その判断に従うべきだと私は思っています。もちろん、そういうふうに両者が割れる前に十分話し合う必要がある、そういう場合はあり得ると思います。  しかし、過去からこの二十年間の大学の動きを見ておりまして、当時大反対であったことによって、その当時、自主が侵される、自治が侵されるといったようなことは起こらなかったということを繰り返して申し上げまして、この運営諮問会議が置かれても、大学の自治が侵されるとは私は一切思っていないということを申し上げておきたいと思います。
  167. 富田茂之

    ○富田委員 大臣の経験とお気持ちはよくわかりますが、この法文を見る限りは、心配する方たちがいるのも無理もないなと思うんですね。非常にこれはわかりにくい、漠たる書き方をされているので、何度か法文を読んだのですが、弁護士出身の私が読んでもよくわからないということで、やはり文教関係の法文というのは非常に読みにくくつくられているなというふうな感想を持ったのです。  この運営諮問会議の法文を見ますと、この会議のメンバーがどういう構成に本当になっていくのか、また、どういう手続で会議が進められるのか、そして、勧告した結果がどうなるのか。先ほど、勧告については法的拘束力はないという御答弁でした。では、勧告のしっ放しになるのか、また、勧告に対して学長の方が何らかのリアクションをきちんとしなきゃいけないのかとか、そういうことは文部省令で定めるというような形になってしまっていますので、午前中の局長の答弁では、議長とか、この諮問会議委員の任期とか、非常勤であるというようなことは省令で定める予定ですというようなお話でしたけれども、それだけで本当にいいのかなと。文部省令でこういうのはもう少しきちんとしますよというのを明らかにして、今大臣が言われたように、大学の自治への介入にはならないことを、法律だけではなくて、文部省令の方でもきちんと担保するんだということをぜひこの委員会で答弁されておいた方がいいと思うんですね。  もう一つ、どういうメンバーが選ばれるかという点について、各委員から質問があって、局長の方から何度も答弁ありましたけれども、大学審議会の答申ではこういうふうに書いてありますね。  教育面では卒業生を雇用している企業等の関係者、研究面では当該分野で高い水準にある研究者、連携協力の相手方となる地域の関係者のほか、他大学の教職員、当該大学の教職員OB等で構成することが考えられる。   なお、具体的な人選に当たっては、形式的な委嘱を避け、当該大学教育研究改善に関して、実質的な討議がなされるよう留意することが必要である。 この答申をもう少し何か具体化、マニュアル化するとか、手続的に大学の自治に介入にならない、また、せっかく設けた運営諮問会議が実効性あるものになるような、もう少しきちんとした規定が必要じゃないかと思うんですが、その点どうでしょうか。
  168. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 運営諮問会議審議事項につきましては、法律案におきまして、大学の将来計画あるいは大学自己評価、その他大学運営に関する重要事項というふうに規定をしておるわけでございます。そして、運営諮問会議は、これら事項について審議し、また、学長に対して助言、勧告を行う、こうなっておるわけでございます。  他方、大学運営の責任者として学長が置かれておるわけでございまして、学長は、評議会あるいは教授会の議というものを踏まえて、大学教育研究運営について最終的な決定を行う権限と責任というものがあるわけでございます。  そういう両者の法上の関係からして、運営諮問会議審議大学の自治を侵害するということはもともと予定されておらないわけでございまして、運営諮問会議設置された趣旨というものを踏まえて、学長としては、そこで示された大綱的な方針等に十分留意はしつつも、学長としての最終的な意思決定は自己の責任においてなし得るわけでありますので、大学の自治の観点からの懸念というものはないというふうに考えておるわけでございます。  なお、運営諮問会議委員の件でございますが、運営諮問会議委員としてどのような者を選ぶかということについて、省令で定めるかどうかについては今後検討をいたしたいと考えておりますが、大学の実態に応じて適任者を広く選ぶという観点もまた重要でございますので、それらも勘案しながら今後検討をしてまいりたいと考えておるところでございます。
  169. 富田茂之

    ○富田委員 何かはぐらかされたような答弁で、ちょっと、はいそうですかとは言えないのですが、具体的な省令の中身までこうですとは確定的に言えないのでしょうけれども、私が指摘したような点を大学の中にいらっしゃる方は心配されているわけですから、幾ら大丈夫だ、大丈夫だと言われたって、今までは大丈夫だったけれどもこれからはわからないということで心配されているので、ぜひ、そういう規定を省令の中にできる限り盛り込むように努力をしていただきたいと思います。  運営諮問会議についてもう一つ質問をしたいのですが、諮問会議審議の対象になる事項、先ほど池坊委員からもいろいろ具体的な質問が出ていましたが、これは、一、二、三号と出ているのですけれども、やはり漠としていて、結局、全部何でも入るのかと。  一号で、「大学教育研究上の目的を達成するための基本的な計画に関する重要事項」。重要事項という限定はありますけれども、基本計画から全部大学運営というのは始まっていくわけですから、もとのところを全部審議できるとなると、全部諮問対象になるのかなと。  また、二号では「当該大学が行う評価に関する重要事項」。これからいろいろな、第三者機関による評価とかがどんどん入ってくると思いますが、新しい分野ですので、これについても諮問を受けようということで入れられたと思うのですけれども。  そして三号で、「その他大学運営に関する重要事項」。何でも入れられるような規定ぶりになっていますので、こうなると、本当に開かれた大学にする、あるいは社会の意見をきちんと聞くための諮問会議というのが、もうちょっとほかの目的があるんじゃないかなという先ほどの池坊委員質問につながってくると思うのですね。やはりこの三号の書きぶりが余りにも漠然としている。そういう趣旨ではないんだと。この三号が持つ意味がどういうものなのか、ちょっと教えてもらえればと思うのです。
  170. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 運営諮問会議は、国立大学運営に当たっての基本的な重要事項審議するわけでございますが、その際、大学教育研究というものは、一定の企画があり、そしてそれを実施に移し、そしてそれを評価をするというふうなシステムの中で改善充実が図られているわけでございます。そのようなシステムを全体として運営ととらえ、その中の重要事項について運営諮問会議審議をいただくということにいたしておるわけでございます。  具体的に、「大学教育研究上の目的を達成するための基本的な計画に関する重要事項」といたしましては、例えば、学際的な研究の推進目標であるとか、それから全学の教養教育の実施方針であるとか、教育研究体制の整備計画といったような、いわば全学的な教育研究上の重要課題についてどう対応するのかという大綱的な方針であるとか、あるいは、そういった目標を達成するために必要な予算であるとか、あるいは、例えば施設等の再配置、再配分等もあるわけでございますが、そういった計画についての基本的な方針等がこれに該当するというふうに考えておるところでございます。  また、「大学教育研究活動等の状況について当該大学が行う評価に関する重要事項」でございますが、これにつきましては、現在、すべての国立大学で自己点検・評価を実施をしておるわけでございますが、その評価結果を教育研究活動の改善に結びつける、そのために自己点検・評価を行っておるわけでございますが、そのような仕組みがうまく機能しているかどうかなど、自己点検・評価基本的な仕組みについて審議をしていただくということを考えております。  また、「その他大学運営に関する重要事項」でございますが、これについては、例えば、中長期的な大学の予算の立案の方針であるとか、地域社会や産業界との連携交流、さらには社会貢献の状況等について審議をするといったようなことが考えられようかと思っております。
  171. 富田茂之

    ○富田委員 かなり具体的に述べていただきましたのでこの問題はこれで終わりますが、評議会教授会との関係について何点かお尋ねしたいと思います。  これまでも各委員から質問がありまして、学校教育法の第五十九条では、「大学には、重要な事項を審議するため、教授会を置かなければならない。」という規定がもともとあり、また、この規定を今回全くいじらないでこのまま置いておく。今まで国立大学評議会に関する暫定措置を定める規則で定まっていた評議会を、法律上のものとして明定して設置するというふうに今回改正案がなっているわけですけれども、なぜこういうふうなことを今あえてしてきたのかなと。  これまでのずっと御説明ですと、評議会は全学的な決定をする、教授会というのは学部教授会だ、学部のことについて決めてもらうんだ、そういうふうに考えますと、評議会の方が上位機関だというふうに思えるのですが、今までの大学での慣行、大学の中にいたことはありませんので詳しいことはわかりませんが、やはり教授会が中心になっていたのではないかなというふうに、外から見ていると思うのですね。  私が司法試験の受験時代に勉強しました、京都大学の佐藤幸治先生の「憲法」、青林書院新社の「憲法」ですけれども、多分、文部省の官僚の皆さんも、若手の方はこの本で勉強されたのではないかなと思うのですが、ここには、大学の自治についてこういうふうに書いてあります。   「大学の自治」の内容をなすべきものとして、従来、通説・判例は、(1)教員学長の人事における自治、(2)施設の管理における自治、(3)学生の管理における自治をあげるが、その他にも、(4)研究教育作用を実現する上での自治、(5)予算管理における自治なども指摘される必要があろう。自治の主体は、自治の存在理由からいって、教授その他の研究者組織であるべきであって、より具体的には、教授会がその中心たるべきものと解されている。 その根拠条文としても、学校教育法第五十九条を佐藤先生は挙げられています。  こういうふうに考えますと、大学の自治のバックボーンをもって大学意思決定を一番きちんとするのが教授会ではないのかというふうに、私たち外の人間から見ると思えるのですが、本来、規則でこれまで規定した評議会を法文上かなりバックアップをして、全学的なところは評議会でやるんだ、なぜそうなったのかをちょっと考えていたのですが、そうしましたら、調査室の皆さんから資料をいただきました。  きょう、ちょっと本をお借りしたのですが、「現代の高等教育」という本の一九九九年一月号に、金曜日に自民党さんの推薦で参考人としていらっしゃる予定になっています東京外語大学学長の中嶋先生がこういうことを書かれていたのですね。ちょっと御紹介をさせていただきたいのです。    意思決定機構(教授会)の問題点   多くの国立大学においては、学部自治の伝統のもとで、大学における人事、予算、組織などの重要事項の決定が学部教授会に全面的に委ねられている。そして教授会構成員は、その身分を国家公務員法や教育公務員特例法によって過度に保護されている。   このような条件のもとにあって、教授会は今日、自治に名を借りた一種の「聖域」ないしは「緩衝地帯」になっているケースが多く、きわめて閉鎖的で自己完結的な意思決定機構に堕しているといえよう。こうした状況において教授会は、しばしば非現実的、非社会的、非国際的な論議を繰り返す場になっている。全般的にいえば、ダイナミックな創造性よりも個別的で瑣末な既得権益の擁護に走りがちであり、したがって、大学の発展や社会貢献、そして国際的貢献のための政策形成能力に欠けている。   その一方で教授会は、多くの場合、直接民主主義の風潮になじみ過ぎてきたために、代議制ないしは代表民主主義の機能を十全にはもち得ず、長時間の会議の繰り返し、議論の重複ばかりが顕著であって、時宜にかなった機動的な意思決定ができない。   最終的な意思決定が多数決によるため、その合意はしばしば妥協の産物であったり、ミニマム合意である場合が多く、もっとも必要な意思決定をタイミングよく成し得ない体質を教授会は本来的にもっている。   以上のような教授会自治に基づく意思決定あり方は、もはや時代錯誤的であるばかりか、国際的な大学運営の基準に照らしても問題が多い。学長ないしは学長を中心にした責任集団が、国立大学意思決定により直接的にかかわる体制を早急に構築すべきであろう。 というふうに書かれております。  これを見まして、なるほど、こういう考えで今回のように教授会の権限が若干縮小されたような、その上位機関として評議会がきちんと法文上明定されてきたのかなというふうに思ったのですが、その点、文部省はどのようにお考えですか。  中嶋先生指摘されたように、国立大学における教授会の実態をこのように思われているのか、また、こういう背景があるからこそ今回の改正が必要なんだというふうに考えられているのでしょうか。     〔栗原(裕)委員長代理退席、委員長着席〕
  172. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 今回の改正案におきましては、教育研究に関する大学の自主性を尊重しながら、学内の各機関の役割分担の明確化を図るということを考えておるわけでございます。  その際に、教授会でございますけれども、学校教育法五十九条で教授会設置について定めがあるわけでございますが、これにより教授会審議事項とされている重要事項内容については、従来から、教育研究に関する大学の自主性を尊重する上で必要な事項、例えば教育課程の編成、学生の入学、卒業、その他教育研究に関する重要事項というふうに解されてきたところでございます。今回の改正案におきましては、このような従前からの考え方を踏まえて教授会所掌事務ということを規定いたしたわけでございます。  先ほど申しましたように、あくまで、学内の関係機関が適切な役割分担をし、また連携協力し合って、適切で合理的な意思決定を行うことが今後の大学運営にとって必要不可欠であるという観点からの整理でございます。
  173. 有馬朗人

    有馬国務大臣 まず第一に、私が経験いたしましたことでは、一学部、一研究所が、あることをがえんじない場合がありますね。評議会学長等々といたしましては、例えば移転の問題であるとかあるいは入学試験のやり方であるとか、そういうことに関しまして、東大の場合ですと十学部ありますが、十学部が完全に各教授会が合意しないと動けないという問題があるわけです。こういうときに多数決が使えるならば早く決まってしまう。早く決まることがいいとも言えません。十分審議をする必要があります。したがいまして、一学部でも一研究所でも反対があれば十分議論をしていくことが必要でございますけれども、今までは教授会がかなり強い権限を持っていますので、完全に合意をしなければ大学としての方針が立てられないということが具体的にあったわけであります。  こういうことに関して、やはり今回、評議会というものの意思決定ということが全学的なことについては強くなるということでございます。決して学部の自治を侵そうというものではない。すなわち、教育研究における自治とか入学試験等々の自治とか、そういうことに関しては教授会は今までどおりの権限を持っておりますけれども、他学部、他研究所のことにまで参画して反対をするというようなことは許されなくなると思います。  ただし、それでも、例えば新キャンパスの話でも、直接関係しないまでも、自分たちが教えた学生諸君がそっちへさらに移っていくというようなことに関しては当然議論しなければいけません。こういう点に関しては、他学部のことに関しても、その他の学部の人々が議論をする、教授会として議論するということは許されるべきだと私は思っております。  そういう点で、各学部の持っている教授会というのは学部教育研究に関する重要事項を徹底的に議論する、それから評議会大学運営に関する重要事項を議論するというふうに今回はっきり決めたということでございます。
  174. 富田茂之

    ○富田委員 大臣説明だとよくわかるのですが、局長のように単に役割分担だみたいに言いますと、こういう反論をしたくなるのですよ。  この中嶋先生が、今のに続いて、「意思集約機構(評議会)の問題点」として、   大学の意思集約機構である評議会は、原則として、大学の最高意思決定機関である。しかし、現実には、各学部研究機関の利益代表の集合体である場合が多く、一種の勢力均衡体系のもとで、現状変革よりも現状維持が重視されやすい体質を組織論的にも有している。   こうした体質のもとで評議会はしばしば、先見性、発見性への抑圧機関になりがちである。評議会は、利益代表の集まりであるためか、全学的な視野とヴィジョンに欠けることになりがちであり、学長のリーダーシップと抵触する場合も多い。   以上のような体質を有しがちな評議会が、国立大学の最高意思決定機構であることには大きな問題があり、ここでも学長のリーダーシップがより一層発揮されるべきであろう。 というふうに中嶋先生は言っているのですが、局長、どう思われますか、この意見は。
  175. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 御指摘のように、教授会について、法令の規定が簡潔であるために実際の審議事項が多くなり過ぎたり、本来、執行機関が行うべき大学運営に関する事項やあるいは執行の細目にわたる事項についても、学部教授会審議や了解を得なければならないといったような運用が行われている場合も見受けられるところでございます。  また、評議会について、それぞれの部局を代表する者が参画をするということもございまして、いわばその部局の利益代表という形での御主張が往々にして行われ、全学的な観点からの審議が必ずしも十分になされないというふうな指摘もあるのは事実でございます。  こういった点なども踏まえて、やはり両者の役割分担を明確にしていくことが両機関が適切に機能していく上で必要であるというふうに考えておるところでございます。
  176. 富田茂之

    ○富田委員 中嶋先生指摘しているように、やはり学長のリーダーシップをどうやってとれるようにするか、その制度的な保障を考えられて今回のようにされたのだと思うのですね。そこは私は、だれかきちんとした意思決定をした上で執行の責任を持つ方がいなければ組織運営というのはできないと思いますので、当然そうあるべきだと思うのです。  ただ、そういう規定を置くことによって、これまで本当に大学の自治の担い手であった教授会の皆さんが、自分たちのこれまでやってきたことまで奪われるのではたまらぬ、そういう懸念が相当あってああいういろいろな文書が私たちに送られてくるようになると思いますので、大臣も、自分の経験からそういうことはないんだというふうにおっしゃっていましたので、ぜひ今後の運用もそういうふうになるように、文部省の方もきちんと指導等をしていっていただきたいと思うのです。  ただ、今回、学長のリーダーシップを強化するための制度だと思うのですが、学長選考する評議員というのが出てきましたよね。これまでは、先ほど大臣説明されていましたけれども、各学部から二人評議会に出ていたけれども、今度そこが、学長選考する評議員というのが規定として出てくる。そして評議会が決めた基準に従って学長選考される。そういうふうになっていくと、ある種の一部執行部ができて、その執行部が固定化されて、その中で大学基本的な流れが全部決まっていってしまうのじゃないか、そういう懸念を抱いている文書を大分いただきました。いろいろな方がそういうことを言われていました。そして、今まで慣行として教授会学長選考していたじゃないか、それも事実上ほとんどできなくなるじゃないか、そういうふうな規定ぶりになっているということも皆さん心配されています。その点についてはどういうふうに思われますか。
  177. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 評議員の件でございますが、今回の法案では、従来からの学部長等に加えて独立研究科長を評議会基本的構成員としたわけでございますが、それによりまして、大規模な大学では基本的構成員だけで相当な規模となります。そういったことから、学部その他の部局から選出される教授については、選出される部局の範囲や選出される人数を各大学評議会の判断にゆだねたというのが一つございます。  また、大学の事情に応じ、例えば学生部長や相当規模を擁する学内共同研究施設などの代表者を評議員とするために、評議会の議に基づいて学長が指名する者を評議員に加えることができることといたしたわけでございます。このように、学長が指名する教員評議員とすることについては、評議会の判断を経て学長が決定をするわけでございます。  もう一点、学長選考でございますが、それは、評議会が定めるところによりこれまでも行ってきておりますし、引き続き行われることになると考えてございます。
  178. 富田茂之

    ○富田委員 よくわからなかったのですが、学長が推薦するというか選考する評議員というのを決める際に、評議会の判断が一回入っているから固定化につながらないんだという御答弁ですか、一つは。そういうふうにひとつ理解していいんですか。
  179. 有馬朗人

    有馬国務大臣 そういう御理解でよろしいと思いますし、勝手に学長が自分の好きな人を評議員にするということはまずないと思う。  この特別枠が入った理由というのは、局長もお返事申し上げましたように、学生部長であるとか、例えば留学生委員会委員長であるとか、そういうふうに大学として極めて重要な役割を演じている人々がいます。あるいは、学内共同利用研究所とか研究センターとか、そういうところの意見が今のやり方だと入らないんですね。大学で特別に入れて、オブザーバーなどで入れることはありますけれども、それが、各学部の代表、各研究所の代表という格好で評議員が決まりますが、それ以外に少し自由度を持っていますと、この際に留学生関係の教授を一人評議員に入れよう、こういうふうなことができるという意味で、学長が決められる人をということが今回加わったのでございまして、決して私が好きな人間を五人入れようなんて、そういうものではないということをここではっきり申し上げておきます。
  180. 富田茂之

    ○富田委員 大臣から明確な答弁をいただきましたので、もうその点はそれで結構です。  一つ、ちょっと法文を読んでいてよくわからなかったのですが、議に基づき学長選考するというようなのがよく出てくるんですが、例えば、学部長の採用あるいは教員の採用、昇任については「教授会の議に基づき、学長が」選考する。この「議に基づき、」というのは、例えば、教授会がこういうふうにするべきだということについて、学長の権限、リーダーシップをとれるようにするということになると、それに拘束されないである程度判断できるというようなことが必要になると思うんですが、この法文で言う「議に基づき、」というのは、この会が決めた場合にはもうそれに拘束されるという意味ですか。
  181. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 議に基づきという場合、例えば、学部長の採用、教員の採用、昇任に当たっては、学長教授会の議決に原則として拘束されるという趣旨でございます。
  182. 富田茂之

    ○富田委員 では、それは結構です。あともう時間もありませんので。  今回の法案にはまだ入っておりませんが、十二年度予算に絡めて法案を提出予定だというふうに聞いていますが、第三者評価システム、外に開かれた大学ということを考えますと、やはり第三者機関による評価というのは大事だと思うんですが、審議会報告の中で、予算配分の際の資料にすべきだみたいな表現があったものですから、それについて大分また心配する声がありまして、第三者評価機関による評価が予算配分の際の重要な資料とされて、逆にそれが財政誘導みたいな締めつけに使われるとか、評価を逆利用されるんじゃないかというふうに研究者側が思うんじゃないか、そういうような意見書を大分いただきました。  そういう点について、今まだ全然法案として出てきていませんので、文部省として今後この第三者評価機関というのをどういうシステムとして考えていかれるのか、また、そういう、予算配分の際の資料に使うべきだという審議会答申についてどう受けとめているのか、最後にお聞かせ願えればと思います。
  183. 有馬朗人

    有馬国務大臣 詳しく考えておりますことはまた局長よりお返事申し上げると思いますが、アメリカですと、アクレディテーションをやる機関がございます。かなり多くのアクレディテーション機関があって、そこで州立も私立も含めて教育内容等々について常に調べて、そして適切な助言を与えております。  日本にも大学に関してそういう機関が一つございますけれども、必ずしもそれが十分な意見を各大学に返していないというようなことが今あるわけです。そういう意味で、第三者機関のようなものがあって適切なる助言を大学に対してすることができればいいと思っております。  ですから、先ほど申し上げました、大学基準協会というのが日本にはあるんですけれども、まだまだこれがアメリカのようなアクレディテーションシステムにまで進化していないというか、つくられていないという問題がございます。これをもう少し伸ばしたいというのが第三者評価一つのもくろみでございます。  そしてまた、自分たちだけでこのごろ外部評価をやるようになりました。外部評価というのはやはり、先ほどの人事の話によく似ておりますが、自分の好きな人を呼んで評価してもらおうとなればどうしても多少甘くなるという面もございます。そういう意味で、第三者評価があれば、これは全く、その大学なり研究所が自分たちの意思で推薦したメンバーではございませんので、しっかりした評価が得られるだろうと考えている次第であります。  それから、お金に関してのことでございますけれども、極めて財政状況が厳しいときでございますので、A、Bというふうな両方の要求があったときにどちらをとっていったらいいかとか、こういうことの相談役などということはあり得ると思いますけれども、しかし、それより以上に、現在やっている研究なり教育をさらに伸ばしていく必要があるのではないか、この際に、この大学がやっている努力はもっと伸ばしてやるべきだというふうな意味での財政的なことに関する意見が重要視されると思います。決して、そこで評価をして、これはだめだよというふうなことをあらかじめすべてそこで判断するということではないと思います。そういう点では、余り御心配にならずにいていただきたいと思っております。
  184. 富田茂之

    ○富田委員 どうもありがとうございました。  終わります。
  185. 小川元

    小川委員長 次に、松浪健四郎君。
  186. 松浪健四郎

    ○松浪委員 自由党の松浪健四郎でございます。  学校教育法等の一部を改正する法律案について、朝からずっと審議をお聞かせいただきました。大体みんな質問することは同じだなというふうに感じておりましたけれども、まず最初に、文部大臣から、これからの大学像、二十一世紀の大学像はいかにあるべきかということを大臣のお口からお聞きしたいと思います。
  187. 有馬朗人

    有馬国務大臣 日本大学は、かなりよくやっていたと思います。しかし、どこが足りないかということを考えますと、教員の人たちが、研究にかなり熱心であった、しかし、教えることにはやはりちょっと力を抜いていたというところがございます。  そういう意味で、二十一世紀に国際的に活躍する日本人をこれから育てていく上で、少なくとも学部段階では、やはり各大学がもっと教育に力を入れるべきであるということが第一点でございます。  そしてまた、もう一つ、その際に、自分の後継者を養成するというふうな意識だけではなく、もっと広く、そしてまた自分で判断をしていく。大学で教えることというのはそんなに全部じゃありません。その少ないものを教わったらば、そのことによって、自分で後は努力をして進んでいくことができる、そういう、自分で問題を解決し、問題を探していくような力を大学で教えるべきだと思っています。これが学部に対する私の注文でございます。  したがいまして、非常に簡単なことでありますけれども、先ほども申し上げたように、私は、日本大学で、私もそうでした、残念だと思っていることは、皆さん平気で休講をされることです。ですから、休講は徹底的にしないというくらいのことをしていきたいと思っています。これは私から言うことではありませんけれども、各大学、各教員の人たちが自覚をしていただきたい。そういう意味で、もっと教育に熱心であるべきだと思っています。ファカルティーディベロプメントなんということがよく言われますので、そういうふうに、どういう教え方をしたらば一番学生諸君が伸びていくかということを今後考えていかなければいけない、これが大学に対する私の一つの理想像でございます。  その次に、私が常に思っておりますことは、率直に言って、学部はかなり日本教育はいいと思っています。しかしながら、大学院が弱い。大学院が弱い理由というのは、狭い。大体、日本の企業の方たちに、日本大学院を出た博士をもっと採ってくださいと私はもう口を酸っぱくして申し上げているんだけれども、企業にしてもあるいは官界にいたしましても、日本大学大学院を出た人は何か狭くて、使い物にならぬとおっしゃる方がおられる。そういう意味で、大学院教育日本は劣っていると思っています。これを徹底的によくしなければいけない。  そのためには、財政的な基盤も強くしなければいけない、あるいは支援部隊も強くしなければいけない、こういうさまざまな問題がございます。そういう問題を二十一世紀において克服して、それで、世界の中で大いに活躍をしていることがはっきりと見えるような形の大学をつくりたいと私は思っている次第でございます。
  188. 松浪健四郎

    ○松浪委員 東大学長を経験された大臣ですから、もう少し高邁な大学の理想像をお聞きすることができるのかと期待しておりましたけれども、余りにも現実的でちょっと落胆いたしましたけれども。  今回のこの法改正によって、今大臣が述べられたような学部そして大学院の強化等、理想とされる方向に近づくなというふうな実感はお持ちでしょうか。
  189. 有馬朗人

    有馬国務大臣 大いにあります。  なぜかというと、このごろ変わってまいりました。各大学教員の人たちも、教育をしっかりやろうではないかという気持ちになってきていますね。こういう点で変わってまいりました。  もっと理想をという御意見でございましたので、理想を言えば、本当に日本人が独創性を持って、日本だけではなく世界の中で雄飛をして、そして世界の中でしっかりとした主導権を持てるような、そういう人々がもっと生まれるよう大学を強くしていくべきだと思っております。
  190. 松浪健四郎

    ○松浪委員 全く私も同感であるわけですけれども、国際的に雄飛できる人材の育成、国際化に対応していくということであります。ならば、知識だけではなくて、人間としての幅を持たなければ意味をなさないのではないのかという思いが私はあります。  そこで、特別の例とはいえ、単位さえ取れば三年間で、優秀な成績というふうになっておりますけれども、三年間で卒業させる。従来から、これはたしか平成元年からでしたでしょうか、三年で単位を取れば、卒業証書は出さないけれども大学院に進学させることができるというようなことで、とにかく勉強のやりたい者、学問の好きな者はどんどんどんどん前へ進めていくというような形でやってきたような気がいたします。  私は、修業年限というものが定められてありまして、その修業年限というものにもう少し重みというか、学生学生として、学問だけにとどまらず、四年間にいろいろな経験をしていく、ここに学士としての重みがあったのではないのかというふうに思っておりました。  ところが、高等学校も、限られた分野とはいえ、二年で飛び級で行ける。そこへもってきて、優秀な成績であれば大学も三年で卒業することができる。加えて、大学院も、一年で修士課程を終えることができるし、博士課程も短縮することができる。勉強のできるやつはとにかく急いで社会に出る、あるいは研究者になることができるというふうになっていることに対して、私は、文部省が従来から進めてこられた、詰め込み主義教育ではなくて、もう少しゆとりのある教育をしようじゃないか、伸び伸びとした、ゆとりある心を持った日本人を育てようじゃないかという考え方と、中等教育から高等教育にかけて考え方が変わってきているのではないか、整合性がない、一貫性がない、そういうふうに受けとめているんですが、間違いでしょうか。
  191. 有馬朗人

    有馬国務大臣 両方あると思うんですね。  私は、例えば、特に工学部や農学部であれば、もっと産業界に行って、そして現場を見てこいという方向をとっている人間でございます。インターンシップと言っていますが、もしそれを徹底的にやりますと五年かかるんですね。一年間現場に行ってくるというようなことがある、あるいは外国に行ってくる。単位の互換等々でそれは十分一年間の単位と見ることもできますが、時にはやはり、今おっしゃったように、四年間で教えるべきことが、一年間は外に行っているとすれば、五年かかってしまう。四年間の勉強もちゃんとやり、外のことを見てくれば五年かかると思う。だが、そういう人たちももっといていいと思うんですよ。ただ、一方で、学校で教わることがもう易しくてしようがない、こういう人に何も四年もいてもらう必要はないと思うんです。だから、両方あると思うんですね。  今までは、何と言っても十八歳まで待っていなければいけない、二十二歳にならなければ卒業させない、四年間いなければさせない。これではやはり余りにもしゃくし定規過ぎる。ですから、ゆっくりやりたい人はどうぞごゆっくりおやりください、裏表八年やっていただいて結構でございますから。それから、早い人は早く出てくだされば結構だと思うんですね。  先ほどから申し上げておりますが、私の尊敬している東大の加藤一郎元総長は、多分、中学校は小学校五年から行かれたと思うんです。そして中学は四年で、高等学校は三年で卒業されて、しかも大学は二年半の短縮授業だったと思う。多分、記録的に短い。そういう人がいるわけですよ。それで、決して加藤先生は常識がないとは申し上げないですね。あのくらい常識のある方はおられない。ですから、人によってはもっと早く伸ばしてあげたらいい、私はそういう考えを持っております。  ですから、ゆっくりやる人はゆっくりやっていただくということが重要でございますので、ゆとりの教育ということを盛んに一方では申しております。
  192. 松浪健四郎

    ○松浪委員 わかったようでわからない極めて特異例の話を持ち出されました。  今、一言ちょっと気になりましたことがありました。加藤一郎総長と呼ばれましたが、東大に総長という呼称はあるんですか。
  193. 有馬朗人

    有馬国務大臣 これはいわばローカルダイアレクトですね。かつては総長でした、戦前は。  それはなぜかというと、当時は東京大学法科大学。ですから、法科大学には法科大学長がいたわけです。それから理学部は理科大学長というふうに学長がいました。それが一つの塊をなして東京大学をつくっていた。したがいまして、東京大学学長は総理と言ったこともあります。総長とも言いました。それが今でも残っているわけですね。そういうことで、学内的には総長という言葉を使いましたので、そういう言葉で先ほど申し上げた次第でございます。
  194. 松浪健四郎

    ○松浪委員 午前中、栗本委員質問の中にも、栗本委員有馬総長と呼ばれました。実は、これはない呼称なんですね。今いみじくも大臣が言われたように、戦前の話なんです。それが今も生きているんです。  今度、これだけ立派に法改正をやる。本当に徹底することができるのか。戦前の考えで生きて、大学を動かしている皆さん方が、ましてや文部大臣の座につかれた元学長が、この速記のあるところで戦前の話を持たれるので、大臣、徹底する自信、ございますか。
  195. 有馬朗人

    有馬国務大臣 公的文書ではすべて学長でございます。ただ、卒業式とか内部的なところでは、旧帝国大は七大学ありますが、そこでは総長という言葉を使っていると思いますけれども、公的な文書は全部学長でございます。ですから、そういう意味で、学長というのは全部に使われるようになっておりますので、同じように今回も十分この法律の精神は浸透できると思っております。
  196. 松浪健四郎

    ○松浪委員 ちなみに、大臣、速記録も公的な文書でございますから……(有馬国務大臣「はい、直しましょう」と呼ぶ)私は同意するかどうか、後で検討させていただきますけれども。  やはり教育の場ですから、これはメディアも悪い面がありますけれども、東京大学だ、旧七帝大だからと権威づけて、他の、かつてのいわゆる二期校と違うんだから総長というような呼称があるのか、あるいは書いている記者がそこの卒業生だから余計に権威づけようと思っているのかは知りませんけれども、こういう呼称ははっきりしなければならないというのは、卒業したのか中退したのか、この国ではうるさいわけですね。諸外国ではうるさくないんです。  そこで、栗本委員もよく言われておりましたけれども、学位の、博士の問題でありますけれども、今文部省は一生懸命、留学生もありますから、とにかく文系に対しても博士を出しなさいということをしょっちゅう言っているわけですね。ところが、ほとんどの大学では言うことを聞かないんですね。どこに原因があるんでしょうか。
  197. 有馬朗人

    有馬国務大臣 理系は、博士を取りませんと、外国に就職したりするときに給料が半減しますというようなこと、これも低次元の話で申しわけない。そういう意味で、理系人間博士を非常に、自動車の運転免許証として考えてもらっているわけです。文系の方は、そこまで需要がない。産業界もまだ、博士をぜひとも下さいと言ってくれません。  理系の方は、今のような技術の進んだ時代に、情報にしても、あるいは半導体技術のようなことにしても新素材にしても、あるいはこのごろでありますとバイオテクノロジーなどにおいては、やはり博士ぐらい持っていないと、少なくとも修士を持っていませんと今は世界に対して競争できません。人文社会はまだやはり大変のんびりした社会であると私は思っています。ですから、博士がなくても日本の国の産業界はやっていけます。官界もやっていけるわけです。  しかし、やがて、外交官が博士を持っていなかったら外交機関において隅っこの方に押しやられるという時代が来ると思うんですね。そういう時代が来て初めて、日本人文系社会系博士がふえてくると思っています。今はまだそこまで行っていない。ですから大学側も、博士をそれほど一生懸命早くつくらなきゃならないと思っているわけではないと思います。
  198. 松浪健四郎

    ○松浪委員 大臣は、テクノクラートであると同時に俳句を詠まれる文人である。そういうふうな方は、つまりバランスのとれた形で学究の座につかれている人というのは、私はそんなに多いとは思わないんです。  私は、高校も二年で、そして大学も三年でというようなことになりますと、学問、深遠な真理を探求する場が大学であるということは承知しておりますけれども、同時に、人格形成の場でもある。社会のために役立つ人材を育成していくという視点から見ますと、単位を取る、そして優秀な成績をおさめるということも重要であるけれども、同時に、若者らしく教科外活動にも一生懸命時間をかけてもらいたい、そういう思いがあります。  ところが、優秀な成績単位を取れば三年で卒業できる、ショートカットできるということになると、クラブ活動しているやつは、教科外活動しているやつはばかだと。ばかという言葉は、これはまずいのかな、消してください。とにかく、現代の学生に好ましくないというような風潮が生まれてきやしないかという危惧を持っているんですが、その辺の心配は要りませんか。
  199. 有馬朗人

    有馬国務大臣 ございません。  なぜかというと、私の研究室などで非常に優秀な人、私のところだけじゃなくていろいろな優秀な人物を見ていますと、非常に音楽ができるとか絵がかけるとか、そういう人が非常に多いですね。ですから、ある分野で非常にすぐれた人というのは決して偏った人ばかりでは、それはそういう人もいないわけじゃございませんけれども、決してそうではなくて、余裕を持って、ゆとりを持って勉強してきていると思います。
  200. 松浪健四郎

    ○松浪委員 大臣は天才や秀才しか見たことがないからそういうふうにおっしゃるのかもわかりませんけれども、かつて私も偏差値のそれほど高くない大学で教鞭をとったことがございますから、大臣のおっしゃっていることがなるほどとはちっとも思いませんが、もうこの話はやめます。  それで、私に与えられた時間は余りないので、私はこのように理解しております。  今度は大学の経営と教学をきっちり分けよう、それで、教授会は課長会議にする、そして評議会という部長会議を設け、運営諮問会議という取締役会を設けました、こういうふうに理解しているんですが、間違いでしょうか。
  201. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 今回の改正は、学長のリーダーシップのもとに大学のそれぞれの機関が役割分担をし、また連携協力し合って大学一つ組織体として機能をし、教育研究の質的充実を図っていく、そういう観点に立って所要組織運営システムの改善を図るわけでございます。  その場合に、評議会は全学の運営にかかわる重要事項審議するという形をしておりまして、したがって、学部を超えた、全学にかかわるような、例えば教養教育をどう持っていくかというような方針について審議をするわけでございます。  それに対して教授会は、学部教育研究にかかわる重要事項審議するということとなっておりますので、あくまで学部内の問題について審議をするということとなる。その意味では、両者は課長会議あるいは部長会議という形で、いわば上下の関係に立つということではなかろうというふうに考えておるところでございます。  また、運営諮問会議につきましても、これは外部有識者の意見を反映させるものでございますので、これも大学運営がより適切になされ、社会的存在としての大学をより意義高からしめるための組織としての機関でございますので、それら三者を総合的にうまく組み合わせることによってより適切な意思決定と実行がなされることを期待しておるところでございます。
  202. 松浪健四郎

    ○松浪委員 とにかく大学審議会は、輝く個性の大学大学の個性が輝かなきゃいけない、一つ一つ違った個性的な大学をつくっていかなきゃいけない、非常に結構なことだと思うんですが、大臣、今回の法改正はそれに非常に有用でしょうか。
  203. 有馬朗人

    有馬国務大臣 例えば、学部長をはっきりする、置くということを決めるとか、それから評議会の役割を決め、教授会の役割を決める、こういうことはやはり、まずいわば基礎的なものが今回はっきりいたしました。そこで、その基盤的なものをまずしっかりしておいた上で、個性は十分伸びていくと思っております。ただ、これはあくまでも各大学努力をしてくださることが必要だと思っております。
  204. 松浪健四郎

    ○松浪委員 大学教員の生態学といいますか生きざまを見ておりますと、やはり講師は早く助教授になりたい、助教授は早く教授になりたい、そしてうまいこと泳いで学部長になりたい、そして今度は評議員になりたい。これはごますりの人間がいっぱい出てくるのじゃないのか、真摯に研究に取り組んでいる人間が余り評価されずに、政治的な、また俗世間でうまく泳ぎ切る人間研究者が優遇されるような形にならないかなという心配をしているのですが、大丈夫でしょうかね。
  205. 有馬朗人

    有馬国務大臣 大学教員は、学部長になろうとは思っていません。やはり、ちょっと変わった人間学部長になったり学長になろうと努力をするかもしれません。そうじゃなくて、選挙で決まっていくわけですね。ですから、むしろ逆に、向かないような者を選挙するおそれすらあるわけですね。ですから決して、今おっしゃられましたように、うまく泳いで、そして人気投票というふうなことは大学ではなかなか通用しないということを申し上げておきたいと思います。ただ、そのことによって、選挙に選ばれたことが果たしてその人の学問研究にとっていいことかどうか、これはわかりません。  例えばアメリカのように、理事会が学長を選ぶ、学部長を選ぶ、ディーン、そういうものを選ぶというような制度であれば、確かにそれに向いた人を選ぶということになりますが、日本の選挙では、必ずしもそういう人気取りをしているから学部長に選ばれる、評議員に選ばれるということはございませんので、よろしくお願いいたします。  ただ、確かに教授、助教授の場合にはかなり厳しい論文及び教育に対する評価がございます。相当厳しいものだということを申し上げておきたいと思います。決して泳いでいけば教授になれるというものではございませんので、御理解賜れれば幸いでございます。
  206. 松浪健四郎

    ○松浪委員 運営諮問会議委員、これは若干名ですが、この若干名というのは何人ぐらいを指すか、ちょっと教えていただけますか。
  207. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 運営諮問会議について若干名ということでございますが、この会議の性格は、広く学外者の意見を大学運営に反映させていくというところに意味があるわけでございます。  したがいまして、会議として機能する程度の人数ということになれば、現在の筑波大学の参与会が十名以内となっておるわけでございまして、おおむねこの程度の人数が若干名ということになろうかと考えております。
  208. 松浪健四郎

    ○松浪委員 それで、学長申し出により文部大臣が任命するということになっておりますが、これを文部大臣が拒否するというようなことは起こり得ますかね。
  209. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 一般的には、学長申し出た方を委員として任命することになろうと思っております。
  210. 松浪健四郎

    ○松浪委員 いずれにいたしましても、学長がリーダーシップを発揮して二十一世紀を担う人材を育成するには結構な法改正である、私はこのように思っております。  しかしながら、私立大学でこれが乱用される、どうしても国立大学の影響を私立大学は受けますので、これが乱用されることのないように文部省に目を配っていただきたいということをお願い申し上げまして、私の持ち時間が参りましたので、質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  211. 小川元

    小川委員長 次に、石井郁子君。
  212. 石井郁子

    石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。  提出されました法案は、大学審議会答申の「二十一世紀の大学像と今後の改革方策について」というこのタイトルに示されていますように、二十一世紀に向けての大学改革の一環というふうに言えると思うのです。また、この間、一連の改革が進められてまいりましたけれども、その仕上げ的な意味もあるかなというふうに私は感じているところでございます。  その点でいいますと、この間の大学審答申に基づく大学改革が、例えば性急な教養部改組によって教養軽視に陥っていると各方面から指摘されておりますね。また、いまだに劣悪な教育研究条件、いわゆる大学の貧困という状況にあえいでいるという点から見ても、大学審に基づく改革がうまくいっているということは到底言えない、また、国民の願う方向と逆行しているということを指摘せざるを得ません。  大学が国民に開かれたものになる、あるいは大学社会的な使命、責任を果たしていくというのは重要であるということは言うまでもありません。ただ、その場合に、大学改革というのは、教育研究専門家集団である大学自身がやはり自主的に取り組む、自主的な改革をするということでなければならないというふうに思うのですね。  こういうことから見まして、私は、今回の改革が二十一世紀の日本大学改革の発展に本当につながるのか、つながらないのではないかという危惧を持ちながら質問せざるを得ないということを最初に申し上げたいと思います。  私も、初めに、本法案と大学の独立行政法人化との関係についてお尋ねをいたします。  先ほど来出ていますけれども、政府の中央省庁改革推進本部が、昨年の十二月十七日に、国立大学の独立法人化について、五年以内に結論を得るという先送りをいたしました。もし五年後の二〇〇三年に国立大学が独立行政法人になるということになれば、この法案の審議意味はないということになるのではないかと思うわけですね。わずか五年間の国立大学のために、こういう法案、大学の管理運営の根本を変えていくようなことを、今、法改正をするという必要はどこにあるのかということになるわけでありまして、そうでないと言うのだったら、独立行政法人に移行しないということをここではっきり言明していただかなければなりません。いかがでございましょうか。
  213. 有馬朗人

    有馬国務大臣 まず第一にお答えいたしたいと思いますのは、現在我々が努力をしておりますことは、今の段階においてよりよい大学運営が行われる、そして、よい教育及びよりよい研究が行われるために今努力をしていることでございます。  そういう意味で、今回の法案というのは、大学審議会、この大学審議会というのは、大学の代表が大勢入っているということを御理解賜りたいと思います。ですから、現場からの意見は随分ここで聞き取っているわけでございます。ヒアリングもやりました。そういう意味で、大学審議会の答申、それから中央省庁等改革基本法などを踏まえて、大学一つ組織体として教育研究の質を高める、そして、期待される役割を適切に果たしていくために、責任のある組織運営体制の確立、それと情報公開の推進など、内外に開かれた国立大学実現するものでございます。  さらにまた、今後引き続き、いろいろ御批判がある財務・会計の柔軟性について、柔軟性を向上する、そしてまた透明性の高い第三者評価システムを確立する、こういうふうなことを今後図っていきたいと思っております。  今御指摘の独立行政法人化の問題につきましては、このような改革状況を見つつ、教育研究の質的向上を図る観点に立って慎重に検討を行うということになると思います。また、この法律ができれば、仮にいろいろなことが起こっても、国立である限りにおいてこの法律は有効であると考えております。
  214. 石井郁子

    石井(郁)委員 国立大学の独立行政法人化についての大臣の御見解というか姿勢について、私はもう一点伺っておきたいのですけれども、これは、昨年十一月十二日に開かれた学士会館での国立大学長懇談会の席上でのお話なんですが、このように述べていらっしゃるわけです。現在、再び国立大学の独立行政法人化についてさまざまな議論がなされていることは御承知のとおりであり、国立大学あり方について国民の厳しい目が向けられています。各学長におかれても、今回の国立大学に関する改革と各大学の取り組みいかんによって存続が問われるものであるとの認識を持って改革に取り組んでいただきたいということですよね。  私、これを伺いますと、要するに、今回の改革というのは管理運営の法案ですよね。これは、各大学でこういう改革が進まなければ独立行政法人化にされてしまうというおどしに聞こえるわけですが、そのようにとるのはおかしいのでしょうか。
  215. 有馬朗人

    有馬国務大臣 独立行政法人にするということを前提にしたわけではございません。このところの少子化の進行状況、経済的な面での厳しさ、こういうことを勘案いたしますと、国立大学が一層努力をしてよりよい教育研究をやっていただかなければ、今後厳しい時代が来るであろうということを言っただけであります。  その独立行政法人に関しては、今後どういうふうなものになるか、そういうことを慎重に見守った上で、いずれにしても、よりよい教育が行われるよう努力をしていこうと思っております。
  216. 石井郁子

    石井(郁)委員 今回の法案が、独立行政法人化の地ならしというか条件づくりではないのかという疑義がやはり生じているわけですね。それは、この法律を通して、先ほど来出ていますように、学長のリーダーシップというのが非常に強調されている。その確立のもと、企業の経営方式を取り入れて独立行政法人化に対応する、こういうふうにも読めるわけですよ。  これは、実際、ことしの二月二十六日に出されました経済戦略会議の答申が、「国立大学については、独立行政法人化をはじめ将来の民営化も視野に入れて段階的に制度改革を進める。」一方でそういう流れがあるわけでしょう。そういうことになりますと、この法案を通して独立行政法人に移行するのではないか、そういう一歩がつくられるのではないかというふうに、これもやはり強い危惧を持たざるを得ないわけであります。  ですから私は、大臣は、国立大学の独立行政法人化については反対だということを大臣としてやはりはっきりこの際言明していただかなければならないと思うわけであります。そうしないと、大学人は将来に対する不安をやはり抱えながら対応せざるを得ないというふうに思うのですね。そういう率直な大学人のお気持ちに対して、もう一度はっきりと御答弁いただければと思います。
  217. 有馬朗人

    有馬国務大臣 私個人の意見はさまざまな場所で申し上げたとおりであり、はっきり申し上げておきたいことは、いかようなことがあろうと、現在私学に余りにも高等教育が頼り過ぎていますので、やはり国としてもっと高等教育を面倒見ていくべきだという気持ちは強く持っています。  たびたび申し上げることでありますが、アメリカ日本とは、私学がほぼ七五%あります。しかし、アメリカの七五%の私学の役割と日本の七五%の私学の役割は決定的に違う。アメリカは三〇%の学生しか教えていない。日本は七五%の学生も私学にお願いをしているわけです。こういう点から、先ほど私学化のことをお話しになられましたが、それは私は、今国際的な観点から見て、国がもっと高等教育に力を注ぐべきだという観点から賛成をしておりません。  しかしながら、現在この独立行政法人という問題が出ていることは厳然たる事実でございますので、これはやはり慎重に考えていくということであるかと思います。「国立大学の独立行政法人化については、大学の自主性を尊重しつつ、大学改革の一環として検討し、平成十五年までに結論を得る。」とされていることでありますので、これは既に決定した大綱でございます。したがってこれは、こういう条件のもとで我々は慎重に検討していかなければならないことと思っております。
  218. 石井郁子

    石井(郁)委員 それでは、法案に沿って質問をさせていただきます。  私、まず、評議会の問題について聞きたいわけであります。  今回、評議会が新たに法定されたということですね。暫定規則をやめて法制化をした意味というのはどこにあるのでしょうか。一応お尋ねをしたいと思います。簡潔で結構です。
  219. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 国立大学につきましては、大学審議会の答申や中央省庁等改革基本法の規定により、その運営における権限、責任の明確化を早急に行うことが要請されておるわけでございます。しかしながら、国立大学の全学的な審議機関である評議会については、文部省令により、当分の間の暫定措置として置かれているわけでございますし、他方、学校教育法における教授会は、大綱的な規定となっておるわけでございます。そういったことから、両者の基本的な役割分担が明確さを欠くというふうな御指摘もあるわけでございます。  そこで、今回、設置者として国立大学基本的な組織運営を明確に定めることが必要であるという判断に立って、評議会設置所掌事務等必要な規定を定めることとしたものでございます。
  220. 石井郁子

    石井(郁)委員 それでは、評議会の構成員についてお聞きしたいと思うのですが、私きょうは、大臣もいらっしゃった東大の例で申し上げるのですけれども、現在の評議員は五十六名なんですね。総長、総長というのは、内規では総長となっているのですが、各学部長、各学部教授二名、各附置研究所所長、大学院研究科委員会委員長、先端科学技術センター長から成っているということですが、この法案がもし通れば、この評議会はそのまま認められるのでしょうか。いかがですか。
  221. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 現在、先ほどの暫定省令に基づく評議会が置かれているわけでございます。法案成立後は、この法律に基づく評議会設置ということが必要となりますので、暫定省令下における評議会がそのままこの法律下における評議会となることはないというふうに考えております。
  222. 石井郁子

    石井(郁)委員 そうしますと、今回の法案が制定されましたら、各大学評議会は一応解散、出直しということになるわけですね。
  223. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 暫定省令に基づく評議会については役割を終え、この法律に基づく評議会組織されるということになるわけでございます。
  224. 石井郁子

    石井(郁)委員 それは、一応やり直しということになるのかもしれませんけれども、先ほど私は構成員のことでお聞きしまして、例えば東大の場合は現在評議員がいらっしゃるわけですけれども、例えば大学の判断で、現在の評議員の構成は新たにこの法制のもとでこういうふうになりましたという形での、このまま移行ということもあり得るわけですか、そこをはっきりさせてください。
  225. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 評議会の構成メンバーにつきましても、今回、暫定省令と異なった定めをしておるわけでございます。したがいまして、現在置かれている評議会法律に基づく評議会と同一の構成メンバーで組織をされるというふうなケースというのは、一般的には考えにくいと考えられるわけでございます。  なぜならば、現在は、例えばその評議員のうち、学部から選出される評議員は二名というふうにしておるわけでございますが、今回、学部その他の部局から選出される教授につきましては、選出する部局の範囲、あるいは選出する人数を各大学の判断にゆだねておるわけでございます。そういった点から考えますと、現在の評議会が即この法律に基づく評議会に移行するということは、一般的には考えてないのではないかと考えております。
  226. 石井郁子

    石井(郁)委員 そうなりますと、私は、やはり大変重大な変更だ、改正だというふうに思うんですね。  条文では第七条の三の三項ですけれども、今までは学部から選出の二名があった。今度は、どういう学部からになるかわからないけれども、評議会が決めて、評議員に加えることができるという形での学部の選出があり得るということになっているんですよね。  しかしこれは、今までとはもう全く違った学部からの選出の仕方だし、それから学長指名についても、学長指名を加えることができるというのも、そういうことになりますと、評議員に加えることができるというのは、加えなくてもいいというふうにも読めるわけですが、そう読めないということですね。  この第七条の三の三項というのは、必ずこういう構成メンバーにならなくてはいけないということですか。
  227. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 加えることができるという規定でございますので、加えるかどうかということについては、各大学評議会の判断にゆだねるということでございます。
  228. 石井郁子

    石井(郁)委員 そうすると、評議会の判断で加えなくてもいいということもあり得るわけでしょう。今までの評議会の構成メンバーはそのまま移行しても構わないということもあるんじゃないですか。それはその評議会の判断になるわけでしょう。だから、先ほどの答弁はおかしいですよ。
  229. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 先ほどお答え申し上げたわけでございますが、評議会の構成メンバーは、暫定省令に基づく構成メンバーと、それから今回の法案に基づく構成メンバーとが、大学の判断によって全く一致をするということが恐らくないわけではないだろうと思うわけでございます。  ただ、それは恐らく、一般的に言えば、極めてレアケースであろうと思うわけでございまして、一般的には、やはりこの法律に基づく評議会設置ということをしていただくということになろうと思っております。
  230. 石井郁子

    石井(郁)委員 だから、文部省がこう法律をつくって、やはりこのとおりしていただくとあなた方が言うと、これは大変なことになるわけですよ、この条文の読み方を言っているわけですから。それで、今までの評議会の構成と変わらないことだってあるということでしょう。それをまず確認させていただきます。  要するに、評議会の構成というのは、暫定規則のもとで現在構成されているわけですよ。この法改正で、そのメンバーが何かがらっと変わることがあるのか、変わらないこともあるのでしょうと。あるっておっしゃったわけでしょう。そこだけ確認したいわけですよ。
  231. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 現在の暫定省令における評議会の構成員と、それから今回の法律に基づく評議会の構成員とは違うことが当然あり得るわけでございます。
  232. 石井郁子

    石井(郁)委員 いや、それは大学の判断でしていいと思うんですよ。だから、違うこともあるけれども同じこともあるのでしょうと。そこを言っているわけですよ。それは大学が判断をして決めることでしょう、文部省がこうしなさいと言うことじゃないでしょうと。それだけですよ。はっきりしてください。
  233. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 大学の判断で構成メンバーを同一とするということも当然あり得ると思います。
  234. 石井郁子

    石井(郁)委員 結構です。  では、次に審議事項についてお尋ねします。  これは、評議会は次の事項を審議するということで、十項目の審議内容を法定しています。この点はこれまでの暫定規則にはないものでございますよね。大学教育研究上の目的を達成するための基本的な計画に関する事項、教員の人事の方針に関する事項、教育課程の編成に関する事項ということもあるわけで、この十項目に決めたということは、現実、各大学は、評議会審議事項ということでのいろいろな内規を持っております。それと比べると随分異なるんですよね。  文部省ですから、各大学がどういう内規を持っているかというのはもう全部把握されていらっしゃると思うんですけれども、例えば、これも私、東京大学の例で申し上げたいんですが、東京大学は、こういう立派な「東京大学の現状と課題」という本を出していらっしゃいます。これはまさに有馬文部大臣がいらっしゃったときかと思うんですが、これを見ますと、審議事項というのは二十項目になっています。その中には、大学の式典の挙行とか、大講堂、教室、運動場などの施設使用の基準等々ございます。ほかの各大学も、私そんな全部は見ていませんが、内規ですから、そういう形であるわけですね。  では、今度、法案がこの十項目になりますと、こういう事項は違法というふうになるのでしょうか。それとも各大学の判断で、その他の重要な事項というのが十項目めにありますから、そういうことで引き続き審議していくというふうに解釈をしてよろしいのかどうか、その点お尋ねします。
  235. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 今回の措置というのは、学内の各機関の役割分担を明確化し、それによって大学意思決定の合理性を高めるという観点で審議事項を具体的に列挙しているわけでございます。  したがいまして、評議会審議事項の中には、第十号として、「その他大学運営に関する重要事項」というのを掲げておるわけでございますが、その趣旨は、第一号から第九号までに規定する事項に準ずる程度の重要な事項として評議会審議することが必要なものと解することが適当であると考えておるわけでございまして、各大学においては、その趣旨に即してそれぞれ適切な審議事項を設定することが求められることになろうかと思います。
  236. 石井郁子

    石井(郁)委員 私は、そういう御答弁を聞きますと、大体この十項目めの「その他」のところにいろいろなことが入る、しかも、それも、この九項目めまでに準じたものだということになりますと、本当に各大学は画一化されますよね。それと、では、これまで各大学が持っておられる評議会の内規も全部、この際改廃というか、そういう形でなっていくんですか。
  237. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 今回、法改正を受けて、各大学でどのような事項を評議会審議事項とするのかについて検討がなされるわけでございますが、その状況については公表をされ、学内外の評価を受けるということになろうかと思っておりますが、文部省といたしましては、各大学において、法改正趣旨に即した適切な対応がなされるよう求めてまいりたいと考えております。
  238. 石井郁子

    石井(郁)委員 そこら辺は大変重大な問題があるように思うんですが、次に、さらに最も重大な点は、この評議会意思決定機関なのか、それともそうでないのか、ここが大事な点なんです。現在の評議会はどういう役割を果たしているのか、その点の文部省の認識をお聞かせください。
  239. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 現在の評議会は、全学的な運営に関する重要事項について審議をする機関である、したがって、大学における意思決定機関とは考えておらないところでございます。
  240. 石井郁子

    石井(郁)委員 私は、局長はそういうふうに思っていらっしゃるというふうにしか聞けないので、実際は違うのじゃないですか。実際のことを私はお尋ねしているのですよ。  これも文部大臣はよく御存じのはずでございまして、先ほどの「東京大学の現状と課題」の中では、「東京大学の最高意思決定機関は、多くの国立大学と同様評議会である」と述べられているわけですよ。どうなんですか、これが現状じゃないんですか。評議会大学意思決定をしているという現実なんですよ。まず、そこをはっきりさせてください。  これはもう数十年来のそういう慣行でありまして、国大協もいろいろ出されておりますけれども、最終的な決定権は合議機関だというふうに言っているのじゃないですか、これは「科学技術立国をめざして」という中にあると思うのですが。現状の認識のことをお尋ねしているのです。
  241. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 現在、大学には、大学運営の最終責任者として学長が置かれておるわけでございます。評議会でさまざまな重要事項について審議が行われるわけでございますが、このことが大学としての意思を最終的に決定するということではないわけでございます。あくまで評議会審議機関としての役割というものを果たしているというふうに考えておるところでございます。
  242. 石井郁子

    石井(郁)委員 局長の答弁で、あなたはそう考えたいのかもしれないけれども、現状の各大学がやっていらっしゃることはそうじゃないのじゃないですか。  大臣、いかがでございましょうか。これは大臣のいらっしゃったときじゃないでしょうか。一九九二年ですね。こう書いてあるのですよ。
  243. 有馬朗人

    有馬国務大臣 学長としての一番の最高の相談相手は評議会でありますね。そこで、評議会の意見がどうであったかということは、学長の意見を大きく左右することだと思っています。したがいまして、評議会に相談をし、審議をし、その上で決まったことがあれば、学長としてはそれを重要視するということはありますけれども、最終的にはやはり学長の責任であったと思います。
  244. 石井郁子

    石井(郁)委員 私は、この法案では審議機関という形で、意思決定機関と分けてそこら辺を位置づけているというのが非常に重大な問題だと思うのですね。それは、各大学がやはり評議会を全学の意思決定機関としてお認めになっている。これは、各大学の事実をお書きになっているわけでしょう、ここで。  それは東大だけじゃありません。ある大学でも、評議会というのは審議、決定を行うということも、内規にちゃんと書かれてありますよ。そういう認識のもとに各大学大学運営をしているのじゃないですか。そこを聞いているのですよ。それを否定されるというのは、今の大学の実態を全部否定されることになりますよ、それは。そこは本当に重大な問題だと思いますね。局長はそういう認識なんですね。
  245. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 学内の諸機関の関係というのは、法令によって成り立っておるわけでございます。  学校教育法において、学長は、大学運営について最終責任者として決定をする権限と責任を持っておるわけでございます。他方、評議会は、暫定省令において審議機関としての位置づけがなされておるわけでございますので、学長は、評議会の意見を聞きながら、大学としてのあるべき姿を求めて運営をしていくということであろうかと思っております。
  246. 石井郁子

    石井(郁)委員 私は、別に学長との関係を聞いてはいません。学長学長としてのそれなりの権限や、つかさどるということについての重みを持った役割があるかというふうに思うのですね。  問題は、評議会学長との関係はこれとしてあると思うのですが、現実に大学運営あり方として評議会がどういう位置にあるのか。意思決定する機関という位置づけを現実にしているのじゃないのか。これを否定されるわけですか。この法案はまた別ですよ。私は今、現状のことをお尋ねしているわけです。
  247. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 意思決定機関という言葉でございますけれども、これは、そこで決められたことが最終的な大学の意思として対外的に出ていくということになるわけでございます。そういう観点から見た場合、評議会大学における意思決定機関ということはできないと考えております。
  248. 石井郁子

    石井(郁)委員 この法案の審査の前提にもなるわけですけれども、これまで国大協だとか文部省関係のところで出してきた各文書を見ても、恐らく、評議会教授会のような合議制の決定機関というような書き方とか、あるいはそういう意思決定機関だとか、審議、決定するところとかいう形でいうと、現実にそういう機能をしてきたのじゃないですか。それをあなた方は否定するというのは、私は、これは本当に重大な問題だというふうに思うのですね。  だけれども、そこをお認めになりたくないというか、もう否定される。否定したという事実は私は大変重いと思いますよ。全国の各大学の皆さんがそれをどう受けとめるかは、今後それは考えなければいけないと思うのですけれども。  では、現実にも評議会大学意思決定機関ではない、そうではなかったのだ、これからもそのように考えていきたいのだということなんですね。     〔委員長退席、増田委員長代理着席〕
  249. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 最終的な意思を評議会において決定し、学長がそれに拘束をされて対外的に行動していくという意味で、意思決定機関ではないということを申し上げておるわけでございます。
  250. 石井郁子

    石井(郁)委員 学長評議会はどういう関係になるかとか、学長がどういうふうにそこで判断されるかだとか、それはまた別の問題なんですよ。  やはり大学というところは、そういう教育研究専門家集団として、合議制、合議して事を決めていくという、そこはもう絶対に外せないことなわけでしょう。ただ、そこで、だけれども、どういう議論とどういう合議がなされるか、どういう決定がなされるかというプロセスと、それを学長がどう受けとめてどうされるかというのは、また別の問題じゃないですか。  それから、私は、学長のリーダーシップについても、やはりそういう評議会あるいは教授会の合議があってこそリーダーシップを発揮できるのじゃないですか。それでこそ大学運営がいわば円滑にいくのじゃないですか。それを局長のように、そこのところを何か本当に分けてしまって考えたら、それこそ大学はどんなふうに変質するかということで、私は大変危惧を持たざるを得ないわけです。  それと、では、その学長との関係でいいますと、もう一点重大なことがありまして、これは大学審の答申の方ですが、学長学部長評議会等や学部教授会との関係については、審議機関は学部教育研究あるいは大学運営重要事項について基本方針を審議する。執行機関は、企画立案や調整を行うとともに、重要事項については審議機関の意見を聞きつつ最終的にはみずからの判断と責任で運営を行う。この問題を言われているのだと思うのですね。学長はもうみずからの判断でできるのだ、これをおっしゃっているように思うのですね。  それで、機能分担というのは、結局そういう関係を明確にすることだということのようですが、この重要事項についてはみずからの判断で執行できるということは、学長評議会のいわば合議、審議に縛られないというふうに理解できるわけですが、そのように局長は答弁されているわけですね。確認してよろしいですか。
  251. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 繰り返しになって恐縮でございますが、意思決定機関という場合には、評議会において決定された事柄が学長を拘束し、学長がみずからの判断と責任において行為することができないということになるわけでございます。  学長は、評議会で決められたことを尊重しながら行動するということは必要なことでございますけれども、最終的な行為というものは、みずからの意思と判断と責任に基づいて決定し、行われるべきものであると考えております。
  252. 石井郁子

    石井(郁)委員 私は、一般的には、それはみずからの判断で行うとか、それはいろいろ言うことはあるかもしれませんが、やはり大学という教育研究の機関、教育研究専門とする集団、あるいは教官の皆さんがそれぞれみずからの学問的な良心に基づいて研究をしていらっしゃるという、大学組織としてのあり方というのはやはりあると思うんです。そういうところでは、まさに教授会評議会の協議、合議という、その審議過程と決定のプロセスというのは大変重要だし、そこでの民主主義はやはり大事だというふうに思うんですね。  これは、先ほどから何度も言いますが、「東京大学の現状と課題」の中にもやはりそのように書いてありまして、いたずらに権限を集中して上意下達方式にしたら、大学の活性というのは失われる、おざなりの管理運営しか期待できないというふうに書いていらっしゃるわけですよ。  つまり、幾ら審議しても、学長が何でもできるんだ、その審議と離れて何でもできるんだ、あなたはそう言っているわけでしょう。そういうことになったら、じゃ何のための審議か、何のための評議会かということになるわけでしょう。だから、やはりその評議会なり教授会なりの審議と決定ということを重く見る、それは大学という教育研究の機関だからこそそこを重視しなきゃいけないということをやはり私は外しちゃいけないというふうに思うんですね。だから、この中でも、大学における権限の集中はあくまで各機関のその時々の事情に応じてだ、何についてどの程度の集中をどんな手続で行なうか、そういう問題なんだということで言っているわけですよ。  どうですか、これは有馬文部大臣、大変重大な問題だというふうに思うんですね。ぜひお聞かせください。     〔増田委員長代理退席、委員長着席〕
  253. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 評議会意思決定機関かということでございますのでるる答弁申し上げたわけでございますが、学長が例えば具体の処分を行うに当たって、評議会で決めたことを尊重して行うことが求められる、これは、大学教育研究機関としてその自主性を尊重しながら運営されるべきだということからすれば、これは当然のことであるというふうに考えておるところでございます。その点申し添えておきます。
  254. 石井郁子

    石井(郁)委員 この点ではぜひ大臣からも、重大なことでございますので。
  255. 有馬朗人

    有馬国務大臣 今局長がお答えしたとおりだと思います。  重要な事項を評議会審議する、それは、評議会というのは、各学部から上がってくるボトムアップ型のこともあるわけですね。それで、評議会としてボトムアップ型に出てきた議題を論ずるということも許されていますから、それはひとつ学長として、もちろん学長のところへ上がってきたものを学長として評議会にかけて審議をする、こういうことをやって、いろいろ重要な事項について評議会審議をする以上、そこで決まったことを尊重するということは私は当然だと思います。ただ、最終的な責任というのはやはり大学学長というものが持っているというか、持たざるを得ないと思っています。
  256. 石井郁子

    石井(郁)委員 微妙にやはりちょっと答弁が違うと思うんですが、学長としての最終的な責任とか判断とか、それは当然だと思うんですが、そのことと、学内でそういう評議会教授会が果たす役割、あるいはそこできちっと意思形成と決定も行うということとの違いなんですよ。そこはやはりあいまいにするわけにいかないと思うんですね。何でも学長がすべてを決定するんだということですか、この法案によれば。
  257. 有馬朗人

    有馬国務大臣 評議会の役割の中に幾つか書いてありますが、重要な事項を諮問するという格好になっているわけですね。それを審議するわけですから、諮問して審議をしてもらったことの結論というのは重要視する、尊重するということが当然だと思いますね。ただ、しかし、最終責任というのは、たびたび同じお答えを申し上げますけれども、学長が、そういう審議をした結果などを見て最終判断をするということになると思います。  それは、もう学長評議会の間に判断の違いがあることは望ましくない、あくまでも両者が同じ判断ができるような方向へ持っていく必要があると思っています。
  258. 石井郁子

    石井(郁)委員 教授会について伺いますが、今回学部長が法定されました。教授会の場合も、教授会が最終意思決定機関でなくなる、それで、やはり学部長が最終判断を下すというふうに考えていいんですか。
  259. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 例えば学部教授会につきましては、学部教育研究に関する大学の自主性を尊重するために必要な審議機関でございます。したがいまして、学部教育研究について最終的な責任を負うのは学部長ということになります。
  260. 石井郁子

    石井(郁)委員 どうも微妙にちょっと違いまして、最終的な責任を負うとかという話と、私が伺っているのは、やはり意思決定なんですよ。学部意思決定権というか集約というか、それはどこが持つのかというふうに聞いているわけで、やはり意思決定権は学部長が持つというふうにこの法案ではなるわけですか。
  261. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 さようでございます。
  262. 石井郁子

    石井(郁)委員 私は、もうこれは本当に、これまでの大学の自治として普通理解されてきた教授会自治、評議会の自治ということを大きく変更する、掘り崩すものだというふうに言わざるを得ないわけです。  それでは、教授会の問題なんですが、教授会も、今回三項目に審議する事項が絞られています。それから、先ほど来の議論でも、評議会は全学で教授会学部教授会だ、学部のことを議論したらよろしいみたいな話になっているんですが、そういうわけにいかないと思うんですね。大学学部だって、全学との関係の中で学部があるわけですから、やはり全学的な問題を教授会学部教授会が議論することだってあり得るわけですよ。むしろしなきゃいけない話でしょう。  それを、あえてこういう三項目に、学部教育研究学生のあれこれという形で絞るというのは、本当に教授会審議事項をいわば制限をするということになるわけですね。だから、これまで審議したものが審議できなくなるというふうに考えざるを得ないわけですが、そういう理解でいいのかどうかという問題。  それから、では、この法制化ができた場合、重要な事項という以外に、教授会が判断して審議するということが起こり得る、その場合にはそれは法違反ということになるわけですか。
  263. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 今回、学内の諸機関について、役割分担と連携協力を十全に果たしていくという観点から、それぞれの所掌事務というのを規定をしたわけでございます。  その場合に、教授会審議する事項として、教育課程の編成、学生の入退学、卒業等と並んで、学部教育研究に関する重要事項を掲げておるわけでございますが、これは、教授会審議事項を具体的に列挙していることを踏まえれば、教育課程の編成や学生の入退学、卒業等に準ずる程度の重要な事項として教授会審議することが必要なものと解するのが適当であると考えておりまして、各大学においては、このような趣旨に即して適切に審議事項を設定することが求められるというふうに考えております。
  264. 石井郁子

    石井(郁)委員 一方で学校教育法五十九条に、大学教授会を置かなければならないとあるわけでしょう。だから、学校教育法に基づく教授会でこれまで教授会審議をいろいろしてきた。各大学はずっとそれを慣行としても持っていらっしゃいますよ、それが大学の自治としての理解の上でされているわけですから。ところが、今度は、それを審議すると、この三項目以外だ、設置法違反だということになるというのは、全く矛盾するわけですね。矛盾するでしょう。  それで、私はきょう本当に驚いているんですけれども、こういう重要事項審議ということを限定、法定化するということといい、評議会教授会も含めて、やはりこれはもう今までの大学自治の慣行を本当に掘り崩すものですよ。大学自治を崩壊させるものだと言っていいと私は思うんですね。これは、こういう法案を提出すること自体が大学自治への介入ではないのかと言わざるを得ないわけですが、これはぜひ文部大臣、いかがですか。
  265. 有馬朗人

    有馬国務大臣 教授会で、今、三項目ですか、決まったことがありますけれども、それ以外に、その学部に関係のある他学部の問題、全学的な問題はもちろん取り上げていいことになっていますね。そういう意味では、今までと全く変わらないと思います。教授会でこれはぜひ議論しなきゃならないことであると判断をすれば、それはやっていいことだと思いますね。ただ、もちろん形式論でいえば、学部長がこれは議論するということをどこかで宣言しなきゃいけないと思いますけれども、その諮問に基づいて、他学部、他研究所に関係する話は当然あっていいと思います。  しかしながら、全く自分たちに関係のないことまで議論するということに関しては、そこで必要なことかどうかということについては、必ずしも私は必要でないと考えております。
  266. 石井郁子

    石井(郁)委員 では、その教授会審議している内容は一体だれが判断されるのか。これは関係ないことだ、これは法に合っているとか、こういうことになっていくわけでしょう。重大な問題ですね、本当に。
  267. 有馬朗人

    有馬国務大臣 それは当然、学部長なり、学部長を支える集団がありますから、そういう人々が判断をすることだと思います。
  268. 石井郁子

    石井(郁)委員 もっと議論したいわけですが、もう一点、第七条の六に議事の手続というのがあるんですね。「運営諮問会議評議会及び教授会の議事の手続その他これらの組織に関し必要な事項は、文部省令で定める。」この議事の手続というのは、私は、こういうことも法令で、省令になるわけですが、定めなきゃいけないものなのかどうかというふうに思うんです。つまり、議事の手続まで定める、何かもう微に入り細に入り、こういう手続でやりなさいと言っているように思えるわけでしょう。何か大学人を、こういうことまで指図しなきゃいけないのかと、大学の人だったら私は言うんじゃないかなと思いますよ。  議事の手続というのは大体決まってあるじゃないですか。多数決にするのか全会一致にするのか、事に応じてどう判断するのか、これはもう慣行的にやっていらっしゃるわけでしょう。何でこれが入るんですか。ちょっとそれを明らかにしてください。
  269. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 評議会教授会の議事手続でございますが、大学審議会の答申におきまして、大学が適時適切で責任ある意思決定を行うためには、合意形成に力を尽くした上で、なお事柄に応じて必要な場合には多数決を行い得るようにすることが必要である、そのような提言をいただいておるわけでございます。この提言を受けまして、評議会教授会の議決方法について定めることを考えておるところでございます。
  270. 石井郁子

    石井(郁)委員 では、その省令の内容を教えてください。一体何を定めるのですか。その議決の方法ですけれども、内容まで踏み込んだものになるんですか。
  271. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 議決方法としては、多数決によって決することなどを定めたいと考えております。
  272. 石井郁子

    石井(郁)委員 私は、それもまた大変な驚きなんですよね。そういうことというのは、まさに大学の自主的な運営にゆだねるべきことなんじゃないんですか。評議会の議決を多数決に定める、こういうふうに決めるわけですか。ちょっとこれは、私はもう本当に何か信じられないです。大変なことですよ、これは。全国の大学一律にこういうことが決められるわけですか、みんなの多数決で決めていくわけですか。  これは、あなた方の出された九四年の大学運営円滑化についての大学審答申の審議概要でも、現在、各大学教授会の意思決定方法をどのようにしているかと。全会一致もあれば多数決もあるし、事項に応じて異なるとありますよ。多数決が必ずしも全部じゃありません。事項に応じてやはり異なるんです。問題の性質によって異なるでしょう。こういうことをすべて多数決で決める。この省令は本当に大学の自治にとって重大な内容ですよ。こんなこと、これはもう削除すべきですね。
  273. 有馬朗人

    有馬国務大臣 理想としては、運営において、全学部、全研究所が一致することが望まれていますね。しかしながら、現在、多数決で決められないような大学があるんです。全員の意見の一致を見なければだめだというような慣習があるところがあります。そういう意味で、多数決できちっと決めてもいいということをはっきりしたということであります。
  274. 石井郁子

    石井(郁)委員 いや、そういうことは、こんな法令で決めるような話じゃないですよ。大学がそれぞれお決めになってやるべきことですよ。  もう時間が参りました。  私は、今回、今触れた内容も大変重大だというふうに思いますし、まだ触れなければいけない問題が山積みでございまして、この法案は徹底審議をすべきだということを強く求めまして、きょうのところは終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  275. 小川元

    小川委員長 次に、濱田健一君。
  276. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 時間がわずか三十分ですので、けさから延々と論議をお聞きいたしましたことの押さえを少しさせていただきたいと思います。  組織運営についてでございますけれども、学長のリーダーシップの発揮、そして学部長の職務の明確化、教授会の機能の明確化、これも大変重要だと私も思います。教授会が細かいところまでいろいろなことを抱え過ぎて、逆に本当の意味での学生指導研究がなかなかできない、おろそかになっているというような声も聞こえてくるところでございます。  しかしながら、大学の円滑な運営には、実際に教育研究に携わる教職員の参加や合意が不可欠だというふうに思うところでございまして、今回の法案についても、その役割分担というものを明確化しようという趣旨であると思うんですが、当然、評議会教授会は引き続き大学の意思形成の中核、重要な機関であるということだけは変わらないんだということを押さえさせていただきたいと思うんですが、大臣、いかがでしょうか。
  277. 有馬朗人

    有馬国務大臣 重要な審議機関だということは変わりがありません。  それからまた、御指摘のように、今までの教授会は、私自身の経験から申しまして、非常にたくさんなことを議論するわけです。そういうものはしかるべき決定機関でどんどん審議をし決定をしていけばいいわけですが、すべてを教授会、すべてを評議会で議論し決定していくということはかなり時間のむだがあるという反省もございます。
  278. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 省令で定めるいろいろな中身というのが、今も質問がございましたとおりに、まだ明らかでないという中身もございますけれども、先ほどから論議されております運営諮問会議について、大学運営の民意の反映だとかアカウンタビリティー、これらの向上という意味では趣旨には賛同できるものでございます。  しかし、そのことによって大学教育研究の自主性というものが損なわれるようでは、今回の法改正の逆の方向にこれが進んでいくということになりますので、私はあえて押さえさせていただきますと、大学教育研究の主体性は絶対に侵されないということを大臣に言明していただきたいと思います。
  279. 有馬朗人

    有馬国務大臣 運営諮問会議というのは、いろいろなことをお聞きしたり、あるいは御批判、御忠告いただく機関でございまして、そのことによって大学教育研究の主体性が侵されるとは思いません。大学教育をどうするか、何を研究するかというのは、極論を言えば、あくまでも各個人個人の教員の自由であるし、さらにまた教授会で判断をしていくことだと思っております。そういう点での自治というのは、あくまでも今までどおり遂行されると思います。
  280. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 そういう意味で、大学改革を進めていくということからすると、大学の中のそれぞれの機関の仕事の役割分担、今出されました運営諮問会議が外からさまざまな提言をするということもこの法律の中でうたわれております。  きょう論議に出なかった、私も時々ちょっと出入りしましたのでその間にあったかもしれませんけれども、学校という現場にいる主体は、小学生であろうと中学生であろうと高校生であろうと大学生であろうと、主体は学生ですので、この主体たる学生が、大学改革を進めていく上で、その運営等に参加するということもいよいよ考える時期が来ていると私は思います。きょうは、学生さんもしばらくの時間、傍聴されておられたようでございます。  ただ、今回の改正案にはそのことは盛られていないというところが、大学改革に全体で取り組むという意欲に少し欠けるのではないかというふうに思います。そういう意味では、一朝一夕にはいかないとしても、大学である以上、大学運営への学生の主体的な参加の展望を大臣はどういうふうにお考えでしょうか。
  281. 有馬朗人

    有馬国務大臣 学生諸君の意見をどういうふうに聞くかということはさまざまなやり方があると思います。  東京大学では、私は、学長といたしましては、年に三回、学生中央委員会と話し合いをいたしました。こういうふうな機会を通じて、学生諸君がどういう気持ちを持っているかということを学長が聞くことができます。これは各大学のやり方だと思います。あるいは、学生の課外活動であるとか修学環境の整備をするとか、こういうふうなことに関して、学生の希望や意見をさまざまなやり方で取り入れている現状があることを申し上げておきます。  なお、私自身は、これはまだまだ大学人に受け入れられないのですけれども、学生諸君による講義、授業に対する評価は絶対やってほしいと思っています。これこそ一朝一夕でできませんけれども、今後さらに国大協等々と話し合いながら、学生諸君が授業をどう思っているか、もっとちゃんとやってくれとか難し過ぎたとか、そういうことについての評価をきちっとやってもらうような仕組みは入れたいと思っております。こういうふうな努力を今後さらに続けていきたいと思います。  このことは、既に大学審議会の答申の中にも入っております。授業内容について、授業評価やあるいはアンケート調査などを通じて、各大学における学生諸君の意向がどういうところにあるかを把握するように積極的に取り組むということが既に大学審議会からの答申にも書かれておりますので、こういうことを具体的にどうしていったらいいか、今後さらに考えさせていただきたいと思っております。
  282. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 今大臣が言われた、大学におられるころに年三回学生と懇談会を持った、意見を聞いた、学生大学運営に直接的には参加していないのは事実でございまして、間接的に、有馬先生を通してという形でございました。そのことが学生にとって、先生と懇談を持たれたことが自分たちの大学のいろいろなプラス面になっているんだという実感があったのかどうか、そういう具体的なものについて、有馬大臣がお感じのところがございましたら披瀝していただければ幸いです。
  283. 有馬朗人

    有馬国務大臣 学生諸君の要望すべてが大学として受け入れられたことではありません。しかしながら、環境の整備等々において具体的な提案などがあったことに関してはしっかりと受けとめて、環境を整備するとか、学生諸君の要望を聞き入れてさまざまなことを行ったことは事実でございます。しかし、全部が全部学生諸君の要望どおりということではございませんでした。
  284. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 そういう形で、個人として努力されておられる先生方はたくさんおられます。義務制の中にも、先生の通信簿という形で、学期末に先生が子供たちに渡す部分と、逆に子供たちが渡すというところで、お互いに、その学期、その年の自分たちの教育の実践、学んだ、学ばせた、その結果の交流と次へのステップというのをつくっておられる方もおられます。  やはりこの大学改革という意味では、既に大人である大学生が、大学の中の研究、環境、そういうものにより直接的にといいますか、間接的でなくて直接的に意見が反映できる場というものも、主体性を持った学内での学生の生活という意味では非常に大事になってきている。  まさに世紀が変わるときでございまして、教育は国家百年の大計と言われているゆえんからいうと、次の百年の時代に向けて、大学というものが学生が主体として生きていける場所という意味では、学生参加ということが非常に検討されるべきだというふうに思っております。いかがでしょうか。
  285. 有馬朗人

    有馬国務大臣 ひとつ訂正させていただきます。さっき三回と申し上げたと思いますけれども、二回プラス大学院が一回、それで三回、その回数を忘れてしまいましたけれども、そういう機会で、これは東京大学としては公的なものです。そこで、自治会を通じて学生諸君の意見をさまざま聞いたわけでございまして、現在もその方式は行われているかと考えております。  それから、学生参加ということに関しまして、私は、大学としてやるべきことというのは、やはり教官、教員がしっかり考えてやることが一番大切でございます。それに対して学生諸君がさまざまな批判を持つ、希望を持つということに関しては、今申し上げたようなやり方で聞き入れるということは将来極めて重要なことと考えておりますが、どういうやり方で学生諸君の希望を聞くか、意見を聞くかというふうなことは、各大学で工夫していただいてよろしいことかと考えております。
  286. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 学内の改革がこの改正案の中心的趣旨でございます。学生が入ってくるときに、今の日本教育の中でやはりいびつな状況である大学入試、センター試験を含めていろいろと考えられることを努力しておられることはわかるわけでございますけれども、今回の大学審議会の答申の中では、この問題については触れられていない。現在、中央教育審議会でこの問題について審議中だというふうにお聞きをしているところでございます。その経過というのはどういう状況でございましょうか。
  287. 佐々木正峰

    ○佐々木政府委員 昨年十一月に文部大臣から、中央教育審議会に対し、初等中等教育と高等教育との接続の改善について諮問を行ったところでございます。現在、初等中等教育と高等教育との接続の改善に関する小委員会というのが設けられまして、その小委員会において、有識者からのヒアリングを行いつつ、高等学校及び大学の役割分担の明確化と両者の教育の連携、あるいは高等学校と大学との接続を重視した大学入学者選抜の改善、そのほか関連する施策について検討を行っておるところでございます。  今後も鋭意検討を進めるということでございまして、大学入学者選抜の改善も含めて、諮問後一年程度を目途に答申が取りまとめられる予定というふうに承知をいたしております。
  288. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 先ほど藤村委員質問の中で触れられましたけれども、子供たちが大学に入るには、センター試験を受ける、高等学校を卒業していない子供たちは大検を受けてやる。今大学入試を受ける資格を持つというのは二つですか、センター試験は大学入試そのものですけれども。ですから、このセンター試験を資格試験に、いつでもこれさえ受けていたら、合格していたら、先ほど大臣も、早く社会に出る人がいてもいいし、ゆっくりと年をとってからでもというふうに言われましたけれども、そういう資格試験というような形にしておいて、一度に十八歳でどっと大学に集中しなくてもいい、一回働いて世間の荒波にもまれて、やっぱり自分は大学に入って高等教育を受けたい、そういう仕組みというのも検討されるべきではないかというふうに思っているわけですが、その辺はいかがでございましょう。
  289. 有馬朗人

    有馬国務大臣 御指摘のとおりでございまして、大学入試センター試験をどういうふうに今後していくかということも、ただいま中央教育審議会で検討していると思います。  それから、あえてここで申し上げますけれども、仮に資格試験ということにしたときに、資格試験で通ったときに、その後どうするかということでございますが、やはり各大学での独自の試験というものを、試験とは限りませんが、入試のやり方というのはそれぞれの大学考えられることかと思っています。  なお、よく世の中で、フランスやドイツは、バカロレアなりああいうものに通ってしまえば自由にどこの大学にも行けます、そういうことがあって、皆様そのやり方がいいんじゃないかとおっしゃる方が多いのですけれども、ぜひ御理解賜りたいことは、ドイツとかフランスでは授業料はほとんどないのです。それから入学金がないのです。ですから、その人たちはどこへ行ってもいいわけですよ。その大学で勉強するのが続かなくてやめても、お父さん、お母さんは怒らないわけですよ。  ですけれども、日本みたいに何十万円、何百万円という入学金を払い、そしてまた授業料を払っている、それはやはり大学としての責任があるわけでして、そう簡単に資格試験でどなたでもおいでください、勉強がついてこられなかったらほかの大学へ行きなさい、一年待ってほかの大学へ行きなさい、こういうふうな簡単なことは日本の今の仕組みではできない。ですから、試験と言わなくても、やはり何らかの格好で入り口できちっと、その若者たちが大学で十分授業を受けていく、教育を受けていく力があるかということは、やはりどこかでちゃんと検討しなければいけないわけでございます。こういう点で、御指摘のとおり、大学入試センター試験に関しては今検討を重ねているところでございます。  なお、もう一つ、帰国子女に対しては別なやり方で大学で入学を許可していると思います。
  290. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 次に、学部教育の充実策という意味で、今回の大学審議会の答申では教育研究の質の向上ということを求めております。教養教育を重視するとか、責任ある授業運営評価を行うというふうな指摘がなされているわけでございまして、今度改訂される学習指導要領、これでは高等学校以下、非常にその内容が精選をされていきます。そして多様化することになっております。  一方で、今どんどん、大学の前期課程、教養部が廃止されて、各大学専門教育大学院教育を当然重視していくという方向に動いているところでございまして、今後こういう形でいくと、後期中等教育大学教育とのギャップが大きくなってくるのではないかというふうに思われますので、当然そのことを、ギャップが大きくならないようにということでの中教審の論議が行われているというふうに認識をしています。  そこで、大臣にお伺いしたいのですが、大学学部教育の充実のためには、教養教育の充実そして教育方法の改善、厳格な成績評価の実施というさまざまな課題があると思う。またその中で、どのようにそれを精選しながら、どこに一番焦点を当てるべきかというようなこと、いろいろあると思うのですが、どの点に大きく改革のポイントを置くべきだとお考えでしょうか。
  291. 有馬朗人

    有馬国務大臣 改革のポイントは今おっしゃられた幾つか、いろいろな面があると思います。教養をどうするか、あるいは教育の仕方をどうするか、さまざまな点で改革をしていかなければならないと思うのでありますが、まず、教養ということについて取り上げさせていただきたいと思います。  二十年前と事情が変わってきたということでございます。二十年前までは日本の高等教育は、あるいは十年前は、日本の高等学校での教育、初中教育の中で高等学校の占めていた教育は非常に、ならされたというか、それぞれ充実した教育を広い面でまとめてやってくださっていました。したがって、教養学部あるいは教養部というものが一つ評判を落としてしまった理由というのは、高等学校で十分勉強してきたことをまた大学でやるのですかというふうな批判が非常に強かった。こういうこともありまして大綱化ということに踏み切りました。  しかしながら、今度私が新たに心配し出したことは、今回、教育課程を学校完全週五日制に向けて変えていく、そして精選をすると同時に、初中教育に多様化が大幅に持ち込まれるわけです。そのことによって、かつてのアメリカというか今のアメリカがそうですが、シニアハイスクール、すなわち日本の高等学校に対応するところが非常に多様なために、大学に入ってきて教養からもう一回やらなきゃいけない、質をそろえなきゃいけない、日本で新たにそういう状況が起こる可能性が出てきたわけですね。  いい意味で高等学校の教育が非常に多様化してくるというわけで、中教審に対してお願いをいたしましたのは、高等学校の教育がこういうふうに変わりますよ、そのことを踏まえて大学教育をもう一回考えていただきたい、すなわち役割分担を明確にしてほしいということが一つ諮問なんです。その諮問のお答えがどう出てくるかわかりませんが、やはりその中に、もう一度教養を考え直す、教育の仕方を考え直すということが今一つの問題になっているということを申し上げておきたいと思います。これは大学審議会の方でも教育部会でこの点を御検討になっておられると思います。  それで、教養を今後どうするか、非常に多様化した高等学校の教育を受けて大学に来た学生諸君の教養をどういうふうに教えていくか、一般教育をどうするかということは今一つ大きな問題になっているということを申し上げておきたいと思います。  その次に私が非常に気にしておりますことは、大学教育を、もっと教育の仕方を、私はもうやめましたけれども、教職にある人々はもっと積極的に教育の仕方を考える、特に学生諸君の要望がいろいろある時代に、それに対してどういうふうに教育をしてやれば一番いい教育になるかなどということについて、やはり我々真剣に考えていかなければならないと思っています。  そういう意味で、研究重点主義から、少なくとも学部においては教育重点主義に移っていかなければならない、こういう意識改革が必要であると考えている次第でございます。
  292. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 今大臣がおっしゃったとおりに、高等学校が、全日制の普通科、総合高校、職業高校ですか、いろいろな形で路線がつくられていく。そうすると、大学の入試を経て大学に入るという、高等学校で培った力というものも、ある部分だけは非常に特化して力をつけてくる子供もいるし、しかしほかはなかなか、足りませんよ、そういう子供たちがいっぱい出てくる。ある意味でいうと幅の広いというか、そういう子供たちを大学に迎えるために、今大臣が話をしてくださった教養教育部分等をどうするかということも含めて、先ほど申し上げた入試そのものも、やはり今の形ではない、もう少し幅広いというか、そういう改革というものが、これもまた一朝一夕にはいきませんけれども、高等学校の変化に伴って大学入試の変化というものも論議をされなければならないということを含めて申し上げておきたいというふうに思います。  時間がなくなりました。きょうの各委員のお話の中で触れられなかった問題があります。大学と生涯学習の部分でございます。  大学というところの生涯学習に対する役割、これも少しずつ、当然いろいろな市民講座等々で膨らんできているのも事実でございます。特に国立大学は、どの県にも必ず一つずつ大学があって、すぐれた研究者もいるという状況の中で、やはり大きな知的財産がその県に必ず一つ以上はあるという大きなメリットを抱えていると私は思います。  しかしながら、これは私たちを含めて地域の皆さん方が、例えば私の住んでいる鹿児島の鹿児島大学、私の出身の大学でございますけれども、どの学部にどんないい先生がいる、この先生にこれを聞けば、ちょっと自分たちの悩んでいることに示唆を与えていただけるのではないかということが、一般的な県民にはなかなかわからない。  実は、来年の四月から始まります介護保険制度、都市部はどうかわからないのですけれども、地方に行くと、要介護認定というのを各自治体でやるというのが介護保険の基本なんですけれども、なかなか一つ一つのところではできないので、広域でやろうと。それで、物すごく熱心に取り組んでいる。  私の町は、法律どおりにきちんと一つの町でやりますよというふうに町長さんが言われて、それに今一生懸命邁進されているのだけれども、周りが一つにまとまって、十町も幾らもまとまってやろうとするものだから、不安が起きてきているのです。だから、介護について堪能な先生を、僕らの知っている先生を御紹介して、そこに行って話をしてもらう。自分たちのやっていることは間違っていないのだと勇気を得られて、では来年の四月に向かって頑張ろうという話なんかも出てきている。  たまたま私たちが党を通じて知っているとか日ごろからいろいろお世話になっている先生がいらっしゃるものだからそういう形で御紹介できるというようなことがございまして、生涯教育とはちょっと違うのですけれども、そういう使い方というのが行政を通じてはできるのですが、民間の中ではなかなかというようなところがございます。  きょうの論議でもありましたとおりに、十八歳人口が減少してくる一方で高学歴化社会が進展をし、社会には、大学大学院で知識を新たに得たい、リフレッシュしたい、そういうニーズもいっぱいございます。そういう面では、各県にある国立大学というものは、そういう県民、市民のニーズにこたえていく幅広い学習の機会というものを、外からの要望だけではなくて中からやはりつくり出していくというのも、大学改革大学というものの存在意義を高める大きな意味があるというふうに思っております。  国立大学における生涯学習、これの取り組みが今どのようになっているのか、そしてこれをこれから以降どのように充実されるおつもりがあるのか、大臣の御見解をお聞きしたいと思います。
  293. 有馬朗人

    有馬国務大臣 具体的な面で私のお答えが不完全でありましたら高等教育局長よりお返事申し上げますが、国立大学で、御指摘の生涯学習の需要に対する要望にこたえるよう、現在幾つかの施策を行っております。  まず第一に、夜間学部、夜間大学院設置や昼夜開講制の実施をいたしておりますところもあります。二番目に、科目等履修生を受け入れる。三番目に、社会人特別選抜の実施をする。四番目に、編入学の定員を設定することによりまして、編入学生を随分多く受け入れております。それから公開講座を充実するという努力をいたしております。それから生涯学習推進センターというものを置きまして、生涯学習推進を行おうとしております。こういうふうなことで大いに努力をしております。また、いろいろな大学で違った単位を持ってきたときに、単位が互換できるようにというふうなことも努力をしているわけでございます。  それから、特に最近、技術革新が加速化されておりますから、職業上、新しい知識、技術を習いたいという方が非常に多くなってきております。それから、労働時間が短縮されたことによって余暇時間が非常に増大してきているというふうなことで、社会全体の生涯学習への要求、要望は今までよりもはるかに強くなっていると思います。また、新しい技術を身につけることによって新しい職場に就職できるというようなこともございますので、国立大学といたしましては、こういう点で大いに努力をさせていただきたいと思っております。  なかなかまだ十分ではございませんけれども、国立大学の重要な役割だということを私どもはよく認識しているところでございますので、この方向をさらに促進させていただきたいと思っております。
  294. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 ありがとうございました。  きょうの論議を聞きまして、やはり大学の自治というものの大切さというのは、どの委員からも、そして役所の方からも出されました。そのことと、私が冒頭申し上げた評議会教授会や新しくできます運営諮問会議、これらが役割分担としてきちっと機能するのか、大学の自治というものを侵すような形で動くようなことがあるのかというところで、若干の論議がまだ煮詰まっていないところもあるような気がいたします。これは今後とも機会を得て論議を続けなければならないという感想を申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。     —————————————
  295. 小川元

    小川委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  ただいま議題となっております本案審査のため、来る十六日、参考人として東京外国大学学長中嶋嶺雄君、高知大学学長立川涼君、京都ノートルダム女子大学学長梶田叡一君、一橋大学名誉教授浜林正夫君、以上四名の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  296. 小川元

    小川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  次回は、来る十六日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時九分散会