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1999-06-24 第145回国会 衆議院 農林水産委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年六月二十四日(木曜日)     午前十時一分開議   出席委員    委員長 穂積 良行君    理事 赤城 徳彦君 理事 増田 敏男君    理事 松岡 利勝君 理事 横内 正明君    理事 小平 忠正君 理事 木幡 弘道君    理事 宮地 正介君 理事 一川 保夫君       安倍 晋三君    今村 雅弘君       小野寺五典君    大石 秀政君       金田 英行君    岸本 光造君       熊谷 市雄君    塩谷  立君       鈴木 俊一君    園田 修光君       中山 成彬君    丹羽 雄哉君       萩山 教嚴君    御法川英文君       宮腰 光寛君    宮本 一三君       目片  信君    望月 義夫君       矢上 雅義君    安住  淳君       神田  厚君    鉢呂 吉雄君       堀込 征雄君    上田  勇君       漆原 良夫君    木村 太郎君       井上 喜一君    佐々木洋平君       菅原喜重郎君    中林よし子君       藤田 スミ君    前島 秀行君  出席国務大臣         農林水産大臣  中川 昭一君  出席政府委員         金融監督庁検査         部長      五味 廣文君         金融監督庁監督         部長      乾  文男君         外務省経済局長 大島正太郎君         厚生省生活衛生         局長      小野 昭雄君         農林水産大臣官         房長      高木  賢君         農林水産省経済         局長      竹中 美晴君         農林水産省構造         改善局長    渡辺 好明君         農林水産省農産         園芸局長    樋口 久俊君         農林水産省畜産         局長      本田 浩次君         農林水産省食品         流通局長    福島啓史郎君         農林水産技術会         議事務局長   三輪睿太郎君         食糧庁長官   堤  英隆君  委員外出席者         農林水産委員会         専門員     外山 文雄君 委員の異動 六月二十四日         辞任         補欠選任   金子 一義君     望月 義夫君   木部 佳昭君     大石 秀政君   熊代 昭彦君     目片  信君   御法川英文君     安倍 晋三君 同日         辞任         補欠選任   安倍 晋三君     御法川英文君   大石 秀政君     木部 佳昭君   目片  信君     熊代 昭彦君   望月 義夫君     金子 一義君 六月二十三日  特定農産加工業経営改善臨時措置法の一部を改正する法律案内閣提出第四八号)(参議院送付)  卸売市場法及び食品流通構造改善促進法の一部を改正する法律案内閣提出第七三号)(参議院送付)  農林物資規格化及び品質表示適正化に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第七四号)(参議院送付) 同月十日  新たな農業基本法制定に関する請願羽田孜紹介)(第五二五八号)  新たな畜産酪農政策に関する請願羽田孜紹介)(第五二五九号)  食料農業農村基本法制定に関する請願羽田孜紹介)(第五二六〇号) 同月十一日  農・林・漁業地域産業振興策拡充に関する請願葉山峻紹介)(第六四一一号)  同(藤田スミ紹介)(第六四一二号)  同(古堅実吉紹介)(第六四一三号)  同(松本善明紹介)(第六四一四号)  同(矢島恒夫紹介)(第六四一五号)  同(山原健二郎紹介)(第六四一六号)  同(吉井英勝紹介)(第六四一七号)  同(知久馬二三子紹介)(第六五三六号)  食料自給率の引き上げに関する請願中林よし子紹介)(第六五三五号) は本委員会に付託された。 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  特定農産加工業経営改善臨時措置法の一部を改正する法律案内閣提出第四八号)(参議院送付)  卸売市場法及び食品流通構造改善促進法の一部を改正する法律案内閣提出第七三号)(参議院送付)  農林物資規格化及び品質表示適正化に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第七四号)(参議院送付)     午前十時一分開議      ————◇—————
  2. 穂積良行

    穂積委員長 これより会議を開きます。  内閣提出参議院送付特定農産加工業経営改善臨時措置法の一部を改正する法律案卸売市場法及び食品流通構造改善促進法の一部を改正する法律案及び農林物資規格化及び品質表示適正化に関する法律の一部を改正する法律案の各案を議題といたします。  順次趣旨説明を聴取いたします。農林水産大臣中川昭一君。     —————————————  特定農産加工業経営改善臨時措置法の一部を改正する法律案  卸売市場法及び食品流通構造改善促進法の一部を改正する法律案  農林物資規格化及び品質表示適正化に関する法律の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  3. 中川昭一

    中川国務大臣 おはようございます。  特定農産加工業経営改善臨時措置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び主要な内容を御説明申し上げます。  本法は、農産加工品等輸入に係る事情の著しい変化に対処して、金融及び税制上の支援措置を講ずることにより、特定農産加工業者経営改善を促進するため、平成元年に五年間の臨時措置として制定されたものであります。  その後、平成六年には本法有効期限が五年間延長され、本法活用により、特定農産加工業者経営改善に一定の成果を上げてきたところでありますが、これまでに輸入自由化等が行われてきた結果、製品の輸入が増加しており、国内生産維持確保を図るため引き続き経営改善に取り組んでいく必要があります。  このため、本法有効期間をさらに五年間延長するとともに、所要の規定の整備を行うこととした次第であります。  以上が、この法律案提案理由及びその内容であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。  続きまして、卸売市場法及び食品流通構造改善促進法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び主要な内容を御説明申し上げます。  卸売市場は、国民生活に不可欠な生鮮食料品等流通円滑化を図る上で重要な役割を果たしておりますが、産地大型化大型小売店等要請高まり市場外流通拡大市場関係者経営悪化等状況変化に対処して、その健全な発展活性化を図ることが急務となっております。  このような状況を踏まえ、関係事業者経営体質強化、公正かつ効率的な売買取引確保市場再編円滑化等のための措置を講ずることとし、この法律案を提出した次第であります。  次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。  第一に、卸売市場法改正についてであります。  中央卸売市場における売買取引について、公正かつ効率的でなければならない旨の原則を明示するほか、取引価格等公表措置充実を図るとともに、市場利用者の多様な要請に適切に対応するため、開設者市場及び品目ごと関係者意見を聞いて定める方法によらなければならないこととしております。  また、市場取引委員会の設置、確実な決済の確保流通コストの低減に資する規制緩和等に関する規定を整備することとしております。  このほか、中央卸売市場卸売業者の財務の健全化を図るため、卸売業者に対し必要な改善措置を命ずる際の基準を明確化するとともに、市場再編円滑化のための規定等を整備することとしております。  第二に、食品流通構造改善促進法改正についてであります。  卸売業者及び仲卸業者経営体質強化を図るため、農林漁業金融公庫からの資金貸し付けの対象となる卸売市場機能高度化事業に、その経営規模拡大等を図るための措置を追加することとしております。  以上が、この法律案提案理由及び主要な内容であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。  続きまして、農林物資規格化及び品質表示適正化に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び主要な内容を御説明申し上げます。  近年、食品多様化産地多角化国際化等の進展と、消費者食品に対する関心の高まり対応して、消費者の視点を重視し、消費者が自己の判断で適切に商品を選択することが可能となるよう、食品表示制度充実を図ることが求められております。  また、民間の能力の活用規制緩和及び国際基準との整合性確保の観点から、日本農林規格制定及び格付仕組みを見直すことが求められております。  このような内外の情勢変化対応し、農林物資規格及び表示に関する制度を見直すこととし、本法律案を提出した次第であります。  次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。  第一に、品質表示に関する制度充実強化であります。  一般消費者の選択に資するため、飲食料品についての横断的な表示基準を定め、生鮮食料品については原産地加工食品については原材料等表示基準を定めることとしております。  第二に、有機農産物など、生産方法に特色のある農林物資表示適正化であります。  登録認定機関等認定を受けた生産者生産するもののみに、有機など、その名称の表示が付されることとなるよう措置することとしております。  第三に、日本農林規格及びその格付に関する制度改善であります。  日本農林規格制定に当たっては、国際規格の動向を考慮し、農林物資規格調査会の議決を経なければならないこととするとともに、少なくとも五年ごとに既存の規格を見直すこととしております。また、認定を受けた製造業者等がみずから格付して格付表示を付することができる仕組みを導入するとともに、登録格付機関格付業務等について、営利法人外国法人が行うことができるよう措置することとしております。  以上がこの法律案提案理由及び主要な内容であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。
  4. 穂積良行

    穂積委員長 これにて各案の趣旨説明は終わりました。     —————————————
  5. 穂積良行

    穂積委員長 ただいま議題となっております各案中、特定農産加工業経営改善臨時措置法の一部を改正する法律案について議事を進めます。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鉢呂吉雄君。
  6. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 おはようございます。  きょうは特定農産加工法審議でありますけれども、この法案は、輸入農産物あるいは輸入食料加工品の急増に伴う国内的な対応をする法案でありますから、きょうは、前段、先般政府決定したと言われております次期WTO農業交渉日本政府提案ということについてまず大臣に御質問をさせていただきたい、このように考えております。  国際交渉成功の秘訣は、その交渉の方向、これが明瞭に示されて、さらにその実現に向けた強い意思国民的に全体で固められる、そのことによってその国の交渉に対する対応というものがしっかり定められる、同時に、その交渉過程についてはできるだけ透明性を持って国民にも知らされて、国民全体の総意によってその交渉最終段階決定を図るということが国際交渉の最も肝要なことではないだろうかというふうに言われておりますけれども、大臣として、国際交渉についてのお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  7. 中川昭一

    中川国務大臣 まず、国際交渉といいますならば、一般的に、国家国家との間であるいはマルチの場で、お互いのルールづくりという今回の場合には最終目標があるわけでありますけれども、そのルールづくり形成するに当たって、我が国としてどうしても譲ることのできないこと、あるいはまた、どうしても他国に対して主張をし、それに対して理解を得られること、これが最大の目的であると考えております。  この場合に、今回のWTOにつきましては、日本提案というものがつい先日出たわけでございますけれども、我が国提案というのは、日本農業食料、あるいは国家全体を守る、国民全体を守るということが基本にある、これは言うまでもありませんが、食料という全人類に極めて必要不可欠な物資を、将来的に、安定的にすべての全世界の国民に渡るような主張というものも盛り込んでおるわけであります。  これが表舞台での交渉ということになるわけでありますが、その前段階として、民主主義国会におきまして、直接的なかかわり合いを持つ農業あるいは農村、さらには消費者、つまり国民全体になるわけでありますけれども、国民的な理解、そしてその国民的な理解形成する上で、民主主義における最高機関でありますこの国会の場、本会議委員会、衆参含めて、それぞれが国権の最高機関であるわけでございますので、その場での御意見というものが、議院内閣制においては、政府交渉に当たる上で極めて大きな授権をされておるといいましょうか、国会の御理解あるいは後押しのもとで交渉に臨んでいくということでございますので、来年からの本格的な交渉でございますけれども、今、国民的合意を得つつ、それに向かって順次作業を進めておるわけでございまして、国会そして国民各層皆様方のコンセンサス、あるいは基本的な合意というものを前提にして国際交渉に臨んでいくべきであるというふうに考えております。
  8. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 農水大臣が言われたとおり、国民的な合意を持って、交渉の前段階でそういうものをつくり上げて、あるいは国会論議もしながらという御発言もございました。  大臣も御案内のとおり、昨年末の米の関税化への移行については、必ずしも広く国民論議を徴したということにならなかったのではないかというふうに思わざるを得ませんし、それは昨年末来の論議の中でも、大臣も一部認めていらっしゃるところでありますから、ああいうことにならないように、本当に幅広い、またある程度の期間を置いた国民議論、そしてそれに基づく合意に至る過程というのは大事なんだろうというふうに思っております。  今回のこの日本提案ということについても、もちろん地方説明会というものを、前段のこのペーパーに基づかないものでやったようでありますけれども、大臣も今、消費者も含めて一般国民というふうに答弁されましたけれども、まだまだ国民全体の議論になっておらないのではないか。あるいは、政府決定についても、三者合意については私ども野党立場からるる異議を申し立てた経過もございますけれども、生産者団体協議をすることは我々必要であるというふうに思っております。しかし同時に、もっと幅広い論議、とりわけ国会での論議というものも必要ですし、それから今回、政府内部のこの日本提案の練り上げについても私個人としては疑問に思っております。去年の基本問題調査会においては、国境措置次期農業交渉についてはほとんど触れられておりません。委員皆さんも、これに触れずに行うということを一つ基本方針としてやってきたようであります。  私は、そういう意味で、政府内部においても広く国民意見を聞く、例えば学識経験者、もちろん生産者団体もそうでしょう、消費者皆さん、そういう調査会というのがいいのか、審議会というのがいいのか、やはりきちんとした協議機関の中でこの問題についても論議をしておくことがとりわけ必要だろうというふうに思っております。  そういう意味で、今回の日本提案論議の経緯、あるいは政府決定についても各省にわたることであります。もちろん、後でお話をさせていただきますけれども、G8、ケルン・サミットにおいても、果たして小渕総理がこの農業協定日本提案についてどのぐらいの問題意識を持って当たったのか、甚だ不明確なわけでありますから、内閣全体としてこの日本提案について、きちんとした意思一致をもって当たったかどうか、そういうことも私は必要であるだろうというふうに思います。  したがって、農水省としてのこの合意提案についての論議方法、それから政府内部での内閣としての見解のまとめ方、そしてとりわけ、国会でいまだ、もう一週間以上になるわけでありますけれども、この問題について政府がこの場できちんと日本立場について説明をして、そして集中審議を行うということが予定をされておらないのでありますけれども、その国会論議について、大臣としてどのようなことを考えておるのか、御答弁願いたいと思います。
  9. 中川昭一

    中川国務大臣 まず、今回の次期交渉に向けての我が国提案、これは農業それから林水とセットでお出しをしたわけでございますけれども、これは政府の公式な提案であるという位置づけ考えております。したがいまして、政府全体の考え方であり、各省庁とも事前に協議をしながらやったものでございますから、正式な手続は経ておりませんけれども、政府としての決定であるというふうに御理解をいただきたいと思います。そこに至るまでの過程というものが重要であったし、これからもあるべきだというふうに私も考えております。  この日本提案というのは、四月の末に決定というか取りまとめをいたしました次期WTO交渉における対応基本的考え方というもの、これは実は政府与党間でつくられたものであるわけでございますけれども、これをいわゆるたたき台といいましょうか、骨格といたしまして、その後、全国消費者団体、あるいはまた食料農林漁業環境フォーラム等の御議論、あるいはまた私自身、消費者団体の代表の皆さんと数時間懇談をさせていただきました。そして、農林省を挙げて、担当だけではない、全課長レベル全国に、農政局単位説明に出張をさせました。また、一般的な御理解をいただくために、農林省のホームページでも基本的な考えをお示しをしたところであります。  この基本的考え方を踏まえて、いろいろな御意見国民各層からいただきました。そしてまた、本委員会でも何回かこの御議論があったわけでございます。これらを通じまして、総じて、この基本的な考え方に基づいて頑張れという御意見が多数であったというふうに私は理解をしておりまして、その過程での御議論を大変に参考にさせていただいた上で、より肉づけをした形で、三つの柱、御承知のように、多面的機能あるいは食料安全保障そして輸出入国間のバランスの問題、さらには発展途上国への配慮でありますとか市場アクセスの問題、いろいろございますけれども、この三つの柱を初めとする幾つかの柱立てができたということでございます。  しかし、これも、実際に交渉に臨むまでにはまだまだ時間もございますし、これだけで交渉に臨むことも不十分でございますから、引き続き国会の場を初めといたしまして、各界各層皆さんにより日本立場を御理解いただき、またそれぞれ、特に国会先生方議員外交なんというものも大いに活用していただきながら、国全体で、国内はもとよりでありますけれども、日本と全く考え方の違う国々、あるいはまた日本考え方が比較的似ている国々含めて、諸外国にも日本立場というものを御理解いただくべく、これからもさらに努力をしていかなければならない。  あくまでも議論の中心は当委員会を初めとする国会の場であろうというふうに考えておりますが、最終的に交渉に当たるのは政府であり、政府は、議院内閣制におきましては与党のもとでの政権でございますので、もちろんそう位置づけながら、総合的な合意形成をつくりながら交渉に臨んでいきたいと考えております。
  10. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 大臣もお認めのように、省庁協議、そして政府の正式の提案ということではいいのですけれども、この提案をつくり上げる過程について、大臣外務省、通産省、厚生省も関係あるでしょう、とりわけ小渕総理を含めたこの日本政府としてきちんとしたものに仕上げていく過程をやはり見せていただきたい、このことはお願いを申し上げますし、委員長にもお願いいたしたいのは、これは日本政府の重要な提案でありますから、当委員会できちんと早急に審議をしておくべきであろうというふうに思います。  大臣は、日本政府のこの立場について、多数は認めてくれたというふうに言っておりますけれども、農水省がまとめた地方説明会の御意見でも、次期交渉方針は、農水省だけで決めないで、もっと国民意見をよく聞いてほしいとか、国民合意形成から情報公開してほしいとか、交渉において、できるだけ秘密の交渉をやめ、オープンでやってほしいとか、これは農水省地方説明会のまとめであります。そのほか、私もいろいろ聞いてみますと、説明会は、単に説得会のような形で、地方意見を時間的にも聞く場がほとんどなかった、政府主張は極めて抽象的で、政府のはっきりした考えがわからないので、これで納得してくれと言われても困るといったような意見が方々から出ておるのであります。  そういう意味では、もちろん大臣もおっしゃったように、このことで終わるわけではありませんけれども、一つの対外的なものとしてこれが出されるわけでありますから、国民皆さんの御意見をきちんとさらに踏まえて提案をすべきだろうというふうに注文をつけさせていただいておきます。  そこで、この提案についても、中身についていろいろお聞きしたいこともございます。  まず第一に、政府は、先ほど大臣も言いましたけれども、日本の、いわゆる多面的な機能ですとか食料安全保障ですとかあるいは輸出国輸入国バランス問題等について、これを踏まえて交渉していく、このことは今のWTO農業協定の各条の改正につながるというふうに見ていらっしゃるのか、大臣の率直な御意見をいただきたい、このように思います。     〔委員長退席松岡委員長代理着席
  11. 中川昭一

    中川国務大臣 WTOの二十条で、改革過程の継続というものを進めていかなければならないということでございますから、まさに二〇〇一年以降どうするかということを、来年から交渉が始まり、そして、現実にはもう、表現が適切かどうかわかりませんが、非公式にテーブルの下でいろいろなことを、テーブルの下と言うと、何か、密室ではなくて、非公式にいろいろやり合っているということであり、来月には私は五カ国農相会議国会の御承認がいただければぜひ出席したいと思いますし、また、本来交渉の場ではないAPECで議長が勝手に何か一つ提案WTOに出すというようなおかしな動きもあるようでございますし、また、十一月にはシアトルでのWTO会合ということで、もう既に準備作業といいましょうか本格的な闘いに入りつつあると言ってもいいのだろうと思いますが、あくまでも正式交渉は来年以降であり、その間、今先生からもお話ありましたように、やるべきことはいっぱいあると思いますが、その中で、だんだんより具体的な、つまり個別のことになっていくのであろうと。基本原則はこれで私は御理解をいただいたと実は思っておるわけであります、柱としての位置づけとしては。  では、具体的にどうするのだ、数字あるいはまた黄色だ青だ緑だ、こういうようなこと等を、今国内農業改革もやっておる最中でございますから、それとWTOとの関連というものも、現行国内農業改革との整合性も必要になってくるわけでありますけれども、いずれにいたしましても、我が国としては、冒頭申し上げましたように、我が国として主張すべきは主張していく。そのためには、では現行WTO協定がどういうことになるのかというのは、話し合いというか、合意があって、その後条文の扱いをどうするかということになることだろう。極端に言えば、我が国主張が通って合意されるということが最大の目標であって、これが実であるとするならば、それに伴うのがそれに整合性を持つ条文であるということでございますから、今から条文を変えることが目的だということは申し上げることはできないわけでございます。  とにかく、各国との交渉の中で、我が国主張をいかにWTOの枠内で主張をし、実現をしていくかということが最大のポイントであり、そこから、条文がどうなっていくのかということが、ある意味では事務的な次の作業としておのずから出てくるというふうに私は現時点では考えておりますので、条文の変更をするのしないのということは、ある意味では次の作業、細かいところでは非常にまた激しい対立があるかもしれませんけれども、現時点では、とにかく我が国基本的な主張、そして、それに基づく具体的な交渉が始まっていくということの中で、我が国主張がいかに諸外国理解をされ、合意として取り入れられるかということに今は最大のエネルギーを注入すべきであるというふうに考えております。
  12. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 それでは、今大臣もおっしゃいました協定の二十条、これは改革過程の継続ということでありますけれども、根本的改革をもたらすように助成、保護を実質的かつ漸進的に削減するという長期目標の中で二〇〇〇年から交渉を再開するという条文であります。  これについて、大臣は、大枠では、合意によって実質協定が改正されるという立場を今とったわけでありますけれども、やはり日本のきちんとしたスタンスを大臣として出せるものは出していただきたいということをお願いする中で、この保護なり助成というものを実質的に削減していくということは、先ほど言いました日本のこの立場、いわゆる多面的な機能なり食料安全保障というものを打ち上げていく中で、これは修正もしていかなければならない、条文の修正ということでなくて、この考え方自体を変えていかなければならないという立場に立つかどうか。  例えば、大臣も御案内のとおり、OECDの会合ですとかFAOでは、いわゆるここで言う非貿易的な関心事項あるいは日本で言う多面的な機能というものを非常に重要視するコミュニケがもうどんどん出てきていますね。ただ、国際貿易の場においては、こういう形であくまでも削減をし、自由貿易で広がりを持っていく、農産物であっても国際的な広がりを持ってやっていくんだ、自由化の方向だというふうにWTOは言っておるわけでありまして、ここに触れるような形で根本的な、触れるか触れないかは別でいいんですけれども、抜本的な日本としての立場主張していくかどうか、お聞きをいたしたいと思います。     〔松岡委員長代理退席、委員長着席〕
  13. 中川昭一

    中川国務大臣 協定二十条は、改革をもたらすために助成、保護を実質的かつ漸進的に削減するという長期目標が進行中だ、しかし次のことを考慮に入れて開始をしなさいということでございまして、その中には、削減に関する約束が世界の農業貿易に及ぼす影響、非貿易的関心事項、そして開発途上国に対する特別かつ異なる待遇、そして公正で市場指向型の農業貿易体制。  この次のことの中には、まさに我が国が今回の提案の中で大きな三つの柱として申し上げております多面的な機能、そしてその一部分でありますけれども、世界各国に共通する食料安全保障、そして輸出国輸入国バランスを、是正するといった方がいいんでしょう、今がアンバランスでありますから。そういうようなことはまさに次の事項を考慮に入れてという部分で私どもは担保をされておるというふうに考えておりますので、我が国基本的な姿勢をWTOのルールの枠内でも交渉し得るし、また二〇〇〇年までで次期交渉はまた改めてやり直しましょうというのが二十条以前の基本的なスタンスになっておるわけでございますので、そういう意味で、我が国主張というものを大いに各国に御理解を求めていくということが一番大事な仕事ではないかというふうに考えております。
  14. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 私は、この二十条は実質的に削減をしていくという大枠、これが大前提でありますから、その中で一つの考慮という形で今大臣が言われたようなことはあるというふうに受けとめております。  そこで、中身に入りますけれども、例えば日本提案の本文の中で、農業多面的機能というものについて、政策的な介入を国際規律上どのように位置づけてどの程度まで許容すべきか十分な検討が行われる必要があるということで、極めて抽象的な文言に終始をしております。これはほかの条文でもほとんど同じで、食料安全保障も多面的な機能一つだということでありますからほぼ同じなわけでありますけれども、政府の姿勢は、この問題については問題ありとは言っておりますけれども、それをどういう国際規律にしていくのかとか、どう許容する範囲を決めるのかとかということについて検討をすべき問題である、十分な検討が行われる必要がある、この程度の提案では極めて弱い。  大臣も御案内のとおり、テーブルの下どころか、いすには座っていないかもわからないけれども、立ちながら各国はいろいろ言っているわけでありますから、大臣もきちっと日本の、文章に書くのは日本的なあれで書けないのかもわかりませんけれども、何を言っておるのか、こういう農業多面的機能食料安全保障立場からいって、現状の国境措置の水準を維持していくということを言っているのかどうか、口頭でよろしいんですけれども、大臣考えを聞かせていただきたいと思います。
  15. 中川昭一

    中川国務大臣 今のWTOの中で国境措置というと、昔はいろいろな国境措置があったわけでありますけれども、やはり前回の交渉の中で、例外なき関税化ということですべて関税に置きかえる。その特例中の特例として、例のイスラエル、フィリピン、韓国、日本のミニマムアクセスという制度が例外的に認められたわけでございまして、あとは全部関税化ということでございますから関税化をする、日本も米につきましては関税化をしたわけでございますけれども。  ですから、農業交渉におきましては、やはり国境措置というのはこれはもう関税化である。そして、関税化に当たっての日本のスタンスとしてはやはり日本の国土あるいは安定的な食料供給そして国内的に言えば自給率をふやしていかなければいけないという制約というか方向性があるわけでございますから、そういう意味で、関税のあり方についてほかの国が非公式にいろいろ言っておりますような要求というものは、彼らの要求であるかもしれませんけれども、とてものむわけにはいかない。  一方、関税措置といいながら、輸出国の方には輸出関税等でいろいろなアドバンテージといいましょうか、オブリゲーションではないアドバンテージが現に存在をしておるわけでありますから、輸出国についての関税措置についても我が国としては主張すべきことがいろいろあるんじゃないかという意味で、関税の問題というものは次期交渉において一つの大きな議論であろうということは我々も重々認識をし、ですから、関税の議論に当たっても、先ほど申し上げたような三つの柱を中心とした基本方針でもって我が国の関税について交渉に臨んでいきたいというふうに考えております。
  16. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 いや、関税についての交渉に臨むということはこれはだれでもわかるんですけれども、どう臨むかということについては大臣はどのように考えるんですか。きちっと日本提案として、そんな何%に下げるとかということは交渉の中身ですからいいんですけれども、食料安全保障についてもそれから多面的な機能についても、単に十分な検討が行われる必要があるというだけでは、世界に対しても国内に対しても全然メッセージとしては出てこない、そう思わざるを得ませんね。  例えば、国内の自給率を上げていくんだ、国内生産を増大させるんだとわざわざ何時間もかかって国会であれだけを修正するために衆議院でも努力をさせていただきましたけれども、それを踏まえて世界の交渉に、自給率あるいは国内生産の増大ということは国際貿易と極めて関係があるわけでありますから、国境措置について日本はどういう立場をとるのか、そこは大臣として明確なメッセージをしていただきたい、このように思います。
  17. 中川昭一

    中川国務大臣 具体的に何%だということは、作業もまだしておりませんしお答えできませんが、とにかく市場アクセスの中で国境措置としては関税という問題が一番の大きなポイントになっていくであろう。その場合の考え方については、先ほど申し上げたように我が国基本的な提案の中の三つの柱を初めとする我が国立場主張するための、その主張が通るための担保としての位置づけというふうに考えております。
  18. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 例えば市場アクセスについても、関税が、各国の自然的、経済的な条件の差異を調整する唯一正当な手法だというふうにこの提案は断定しておるんでありますけれども、果たしてそうかどうか。輸出制限というものを日本はここで厳しく批判をしております。同時に、日本の新しい基本法でも輸入制限というものを条文化しておるんです。輸入制限というものをきちっと明文化しました。我々は賛成しました。したがって、そういう輸入国における輸入制限というものもあり得るということについて、絶対的な、唯一正当な手法だというところまでは私は必要ないのではないか。きょうは時間がありませんから、集中審議があることを念頭に、余りこの論議はできませんけれども。  あるいは、例えば次期交渉の視点というところで、市場指向的な政策転換の円滑な実施を促進するための見直しをするんだと。各国は市場指向的な政策転換をしておるから、そこのところは柔軟にという言い方でありますけれども、市場指向的なといきますと、行き着くところは内外価格差を全くゼロにしていって、単に国内的に市場指向的に今日本はやっていますけれども、外国との国際的な関係で市場指向というものをケアンズ・グループなりアメリカはねらっておるわけでありますから、ここも、こういうふうに言い切っていいのかどうか。私は、もっと段階的、漸進的なものであるべきであるという形からいけば、この文言はやはり慎重でなければならないのではないかというふうに思うわけであります。答弁を求めたら長くなりますから、その点についてもまた後日御答弁をいただきたいと思いますけれども。  例えば、農業分野については他の分野と異なる特性を有するから、独立した農業交渉グループを設立して交渉していくんだ、これは事実上はいいんですけれども、日本立場として、そこを言うのが果たしていいのかどうか。包括的な交渉をして一括の合意をしていくということが日本のスタンスであれば、もっとそこは、こういうところについてはぼかした形で臨んでいく。私が言いたいのは、環境分野もやるかやらないかということがあります。農業なり第一次産業というのは環境分野と極めて大きなかかわりがある。林産物のところにはもっと詳しく書いてあります。農業の方には必ずしもそのことについて言及していませんけれども、農業と環境というのは密接な関係がある。そうすれば、環境についての横断的な交渉の中で農業分野も連係づけていくという姿勢をやはり日本政府として打ち出すべきではないだろうかというような考え方をしております。  いずれにしても、今回の政府提案は、なかなかそれは言いにくいところはあるかもわかりません、個別具体的にはいかない点もあろうと思いますけれども、例えば、きょうの新聞が報じておるように、アメリカの下院の農業委員会の公聴会でアメリカの通商代表と農務長官がそれぞれ発言をして、例えば日本の米に当たる、高関税の代償として義務づけられているミニマムアクセス、農務長官は、その枠を拡大する、これを次期交渉に求めていくというふうに明言しておりますね。バシェフスキー代表は、ミニマムアクセスそのものは将来的には撤廃して完全自由化を求める、そういう考えも、二段構えで、農務長官は当面はミニマムアクセス枠を拡大していくんだと、通商代表部は将来的にはミニマムアクセス枠も撤廃していくんだ、そして平均五〇%に上る世界の農業関税の削減を図っていくんだと、どんどん主張をしているわけであります。  ぜひ日本立場として、大臣として、今私が言った一連の問題について、口頭でもいいですけれども、やはり少し発信をしなかったら、日本の新聞でさえ、外国のこの情報をどんどん大きく報道して、日本提案についてはほとんど一般のマスコミの皆さんは報道していませんね、この間の日本政府決定についても。大臣として、臨む基本的な考えをもう少し鮮明にこの場で御答弁願いたいと思います。
  19. 中川昭一

    中川国務大臣 先日、グリックマン長官が、今度のWTOの一番のポイントは農業とサービスだ、特に農業だと言ったという報道がありまして、今回議会証言で、バシェフスキーさん、グリックマンさんがそういうふうに言われた。私は率直に言って、そのぐらいのことは言うだろうな、だから逆に、一喜一憂、跳び上がったりしないで、アメリカはその程度のことは言うだろうなと。また逆に、言わなきゃおかしいわけでありまして、そういう意味で、一々、グリックマンが何言った、バシェフスキーが何言ったということは、私は全く反論をする気にはなりません。我が国として発信すべきことは、この提案の中にもありますように、例えばアメリカの輸出に対するさまざまな優遇措置、そして輸入国に対する輸入義務といったアンバランスを何とかしましょうということであります。  一つだけ公の場で申し上げておきたいのは、バシェフスキーが、農業の関税率が五〇%になっているのは高過ぎると言っておりますが、アメリカの乳製品、砂糖等は二〇〇%も三〇〇%も高率関税をかけているということをお忘れではないでしょうかということをこの場でバシェフスキーさんに、伝わるかどうかわからないけれども申し上げておきたいわけであります。  とにかく我が国としてきちっと、具体的な細かいことは別にして、国民あるいは対外的に発信できるように、この文章自体は各国語に訳してOECDあるいは各国に早急に配付をする予定にしておりますけれども、一般的な国民が一般的な新聞の中であるいはマスコミの中で、アメリカの主張はこうだという一方的な情報だけ入るのも、これも我々の国民的合意という観点からはプラスではございませんので、我が国としても、基本的な考え方ということで、具体的な数字が入るかどうかは別にいたしまして、国民にできるだけわかりやすく、最大限の広報といいましょうか、御理解をいただくための提供をしなければならないということは、今までも、そして今後ますます必要なことだろうと考えております。
  20. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 大臣は、十七日、三者会議で、小渕総理を先頭に政府一丸で頑張る、こう表明されたというふうに報道されておりますけれども、今回のケルン・サミットにおいて、総理がこの日本立場というものをどのようにG8で表明されたのか。G8のコミュニケを見ますと、WTOに対するG8の強力な支持及び開かれた貿易に対するコミットメントを新たにする、すべての国々に対して、保護主義の圧力に抵抗するとともに、市場をより一層開放することを求めるというようなコミュニケを出しておるわけでありますけれども、日本農業交渉における立場、これは一つの分野でありますから。しかし、シラク大統領のあの遺伝子組み換えの食品に対する言及、そしてコミュニケに入った、そういうものを踏まえてどういう小渕総理の表明があったのか、お聞かせ願いたいと思います。
  21. 大島正太郎

    ○大島(正)政府委員 お答え申し上げます。  先生御承知のとおり、十八日から二十日までの間ケルンで行われましたサミットでございます。  サミットの議題は、現在の世界が当面いたします幅広い経済問題、貿易問題、その他いろいろでございましたけれども、そのうちの一つの重要な議題が、これからの世界貿易をどういうふうに持っていこうか、こういうことでございました。  そこで、先生も今御引用になりましたサミットのコミュニケにございますように、基本的には、保護主義に抵抗して貿易の自由化を進めていこう、この観点から、WTO次期交渉を、広範かつ野心的な新ラウンド交渉を立ち上げよう、こういうことで一致があったわけでございます。  これに先立ちます、コミュニケが出る前の議論というところでございますが、議論のときに総理からは、世界経済が困難に直面する中でも各国が保護主義に流れてはならず、新ラウンド交渉を通じ多角的貿易体制の強化を進めてこそ世界経済の持続的成長が可能になるということを発言されまして、さらに総理は、このような観点から、農業、サービスの合意済み課題に加えて、鉱工業品関税や投資ルールの策定を含む包括交渉として、一括受諾方式によって三年程度の短い期間で成果を上げるようにすべきだ、こういう観点から次期ラウンド交渉を積極的に推進すべきだという立場を表明された次第でございます。
  22. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 農業に関する言及はなかったというふうに考えるわけであります。  農水大臣は、七月の十八日ですか、五カ国農相会議等、もっと国際的に大臣の強気な発言をぜひしていただきたいし、強力な交渉関係で、きょうも私ども民主党の部会でも、農水省なり外務省も含めてでありますけれども、WTOに対する対応の陣容についても前回の轍を踏まない形でもっと強力なものを持つべきだと。あるいは、大臣、フレンズクラブとか何かあるそうですけれども、ケアンズ・グループに比べて非常に弱い。それはいろいろ違いはあるかもわかりませんけれども、韓国なりEUなりスイスなり、さまざまな国と多数派工作、政治の世界では多数派工作はつきものでありますから、やはりそういうところの、つくられた五カ国農相会議なんというものでなくて、日本が提唱して、きちっと日本がそういうグループをつくって世界に発信をするというような積極性がどうしても必要でないかな。もちろん、非政府グループも頑張らなければなりません、我々国会も含めて。しかし、政府のどん欲な交渉態度というものもやはり必要でないだろうかなというふうに思っております。答弁を求めればまた長くなりますから、決意も聞きたいところでありますけれども。  いずれにしても、ミニマムアクセス拡大という方向も出てきておるわけでありますから、関税率を下げれば必ずしもアメリカの得になるわけではありません、中国あたりが漁夫の利を得るわけでありますから。アメリカに対しても直接物を言う、はれものにさわるように外から外からということでなくて、懐に飛び込んでアメリカにも対応するというような、そういうものが必要だろうというふうに思います。それはなかなか実務的なレベルではできない面もあろうと思いますから、大臣のリーダーシップといいますか、そういうものをぜひ求めたい、このように思うわけであります。  そこで、きょうの法案の関係に移りますけれども、今回の特定農産加工法については、農林漁業金融公庫の資金が融通をされております。牛肉・オレンジから始まってもう十年近くなるんだと思いますけれども、この農産加工品についての国内の原料農産物の供給割合、国内の使用比率、これを牛肉と豚肉調整品製造業に限って、この融資をしたその業界に限って、原料として国産品というのはどのぐらい使われておるのか、お示しをいただきたいと思います。
  23. 福島啓史郎

    ○福島政府委員 先生御質問のありました件でございますが、農林公庫が平成元年度から平成九年度までの間に融資対象としました牛肉調整品製造業で四〇%、豚肉調整品製造業で四四%となっております。
  24. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 いずれにしても、半分以下の比率であります。これは委員長も御案内のとおり、ほかの特定農産加工業に指定されておるものについても国産品一〇〇%でないという実態です。  この法案趣旨は、今回の趣旨説明は巧妙に避けておりますけれども、目的の第一条に、国内農業の健全な発展に資するということでこの法案が当初できたわけであります。何も、外国から農産物の原料を輸入して、それを使って食品加工に、民間の食品加工業界がこういう税制上の、あるいは公的な資金を受けるということが目的ではありません。例えば第三条で、この特定農産加工業者、いわゆる輸入自由化に伴って影響を受けるというのを特定というふうに表現しておるんですけれども、それらがさまざまな、例えば特定設備の廃棄等経営改善を図るための措置に関する計画をつくった場合に、その計画の承認は、第三条の五項にありますように、地域の農業の健全な発展に資するものであるかどうか、そこが認められた場合に承認をする、それによって資金なり税制上の支援を受けるということになっておるのであります。  そういう意味からいって、この法案趣旨に今の豚肉と牛肉の調整品製造業は反しておるのではないですか。
  25. 福島啓史郎

    ○福島政府委員 御質問の牛肉調整品製造業、また豚肉調整品製造業についてでございますけれども、先生御案内のように、国産の牛肉、豚肉というのは一般に生鮮用へ仕向けられる傾向にあるわけでございまして、加工肉分野では輸入依存度が非常に高いわけでございます。国産原料の比率は、全国平均でございますと、牛肉調整品で一〇%、豚肉調整品で三〇%となっているわけでございます。  これに対しまして、先ほど申し上げましたように、特定農産加工法の対象企業の国産原料の使用比率は、牛肉調整品で四〇%、豚肉調整品で四四%ということでございますので、これよりも高くなっているわけでございまして、この融資対象の特定農産加工業は地域農業とより深く結びついたものとなっているというふうに理解しているところでございます。
  26. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 それは数字からいけばそうでしょうけれども、もっとこの観点をきちんと生かした、この法律趣旨にのっとった運用をしてもらわなければ困るわけでありまして、そうでなければ、この法律自体を改正するということを伴わなければならないと私は思うんですね。  大臣、今私が話しておりますのは、輸入自由化に伴って、食品加工業がこの法律によっていろいろな支援を受ける、しかし、実際には国内食品加工業がまさに空洞化現象を起こしておる。国内の原料農産物を使わずして、外国の原料農産物、砂糖ですとか、もう大臣の御案内のとおりです、ビートですとか、ソルビットなんというものが韓国から輸入されている。でん粉、乳製品、擬装乳製品、もうどんどん擬装乳製品、何か物理的に二〇%塩をまぜたものが日本に入ってきて、国内食料品製造業がそれを使っておる。それを今回の法律が資金等で優遇措置を与えておる。  いろいろな事情でこうなってきておることはわかります。それは一〇%と四〇%の違いがあるからいいのではないかというのが局長主張ですけれども、私は、そこはやはりもう非常にずさんなものになってしまうというふうに主張せざるを得ないわけであります。  そこで、今回の大臣が定めました農政改革大綱で、加工あるいは業務用への国内農産物需要拡大等を図るため、食品産業と国内農業の望ましい連携のあり方、その推進手法等について、法制化等を含め検討を行っていく、こう述べておるんですけれども、今言ったような国内農業との連携という形で法案化の具体的な方向にありますかどうか、お答え願いたいと思います。
  27. 福島啓史郎

    ○福島政府委員 先生御案内のように、現在、国内の農水産物の三分の一強は食品産業に向けられている。他方、食品製造業の原材料の七割弱は国産農水産物であるということで、食品産業は農業と並ぶ、まさに車の両輪として国民への食料供給におきまして重要な役割を果たしているわけでございます。そうしたことから、食料農業農村基本法案におきましても、農業との連携の推進を図るなど食品産業の健全な発展を図るための施策の推進がうたわれているわけでございます。  それで、現在、農業者、食品産業あるいは消費者学識経験者等から成ります研究会を設けまして、一つは、食品産業と農業との間の消費者ニーズ等に関する情報伝達の円滑化、それから、新商品あるいは新技術の開発の推進への支援、また、加えまして販路拡大の推進等、食品産業と国内農業の望ましい連携のあり方、それからその推進手法等につきまして現在検討しているところでございまして、今までヒアリングを行いまして、その後論点整理を行って、八月を目途に取りまとめたいということで、研究しているところでございます。
  28. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 それで、先ほど言いましたように、大臣にもかかわりがある、製品輸入というものが、ほとんど低関税率でどんどん入ってきますね。もう大臣御案内のとおりです。これについてもWTOで、いわゆる今の関税番号といいますか、それを変えて農産物並みの輸入国境措置というものをとる考えがあるかどうか、大臣から決意をお伺いいたしたいと思います。
  29. 中川昭一

    中川国務大臣 WTO農業交渉グループの中で、どういうものについて、例えば米とか乳製品とか基幹的な作物がポイントになるわけでございますけれども、今先生御指摘のように、擬装品あるいは調製品、類似品、これをどういうふうに扱うかということについては、HSの分類表の中での仕分けでまず整理をしていかなければいけないとは思いますけれども、国産農業あるいは国産食品産業に与える影響が、この制度があるからそう大きく影響を与えなかったというふうに私どもは理解をしておりますけれども、現にかなりの外国製品が入ってきておるということについて、WTOでどういうふうにしていったらいいかということについてはこれからの一つの検討事項ではないかというふうに考えております。
  30. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 食糧庁長官は随分余裕ある顔をしておりますけれども、食糧庁長官、この前も、私どもこの委員会で調査をした段階で、輸入米、SBS米はどこに行っているのというふうにお聞きしたら、十二万トンも入ってきているのですけれども、ほとんどが業務用ですね。どこに行っているのですかと聞いたら、コンビニで皆さんがおにぎりや弁当を買っている、あのお米は外国のSBS米ですよと。  大臣、この輸入食料品以外でも、食料品でいいのですけれども、この原料の原産国あるいは原産地表示というものはやはり待ったなしだと思うのですね。今言ったように、米という形で商品で出れば、これは食糧法できちっとなっておりますね。食糧法じゃなくて、何だったか、あれでなっています。しかし、一たび炊き上がって御飯になってしまえば、この原産地は一切表示しなくてもいい。一〇〇%新潟コシヒカリですとかという弁当も売っておりますけれども、中身は定かでないのですね。  牛乳も、大臣の十勝から生乳として関東に送られて、そこの工場でつくられれば製造者はその関東の工場所在地になりまして、商品価値があるから紙パックには北海道の牛乳とかと書いていますけれども、実際の製造を見たら、宇都宮市とか、こう書いてあるのですね。  やはりその食品の主要な原材料については原産地表示をすべきであると強く申し上げたいのですけれども、お答え願いたいと思います。
  31. 福島啓史郎

    ○福島政府委員 加工食品の原材料、要するに原材料の原産地表示の問題でございます。  これにつきましては、学識経験者あるいは農業団体、製造業者、流通業者、消費者等から成ります検討会を開催しまして、品目ごとの製造、流通の実態等を踏まえました原料原産地表示のあり方なり表示可能な品目等について、現在検討を行っているところでございます。  当面、生産者なりあるいは消費者からの要望も強い梅干し、ラッキョウ漬け等の個別品目の原料原産地表示の検討、次いで国産原料使用と表示する場合の国産原料の使用割合といったような横断的な表示ルールを検討していくことといたしているところでございまして、少なくとも梅干し、ラッキョウ漬け等につきましては年内を目途に結論を出していきたいというふうに思っているところでございます。
  32. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 時間がございませんから、最後に緊急雇用、産業競争力強化対策、これについて大臣にお伺いいたしたいと思います。  今まさに新しい基本法をつくって、食料農業農村という視点で新たな発足をするという形になっております。まさに二十一世紀はいろいろなもう斜陽産業だと言われておるものが逆に脚光を浴びるという時代で、私はそういう意味で、農業漁業やあるいは林業を含めて、今は緊急対策でありますけれども、二十一世紀の新たなベンチャー産業というか、そういうものに位置づける必要がある。  その意味では、政府の今回の対策は、横断的にはその中に入っているというふうに政府当局は言っておりますけれども、十五分野なら十五分野に加えて食料産業というような位置づけで、きちんと新たなベンチャー産業のような形の位置づけをすべきである。中川農水大臣はそのくらいの御見識を持てる方だと私は期待をしておるのですね。もっとそういう面での発言を政府内部でしていただいて、今回まだ取りまとめてはいませんでしょうから、ぜひやっていただきたい。  例えば、雇用についても、農業等の就職相談センターを都市部につくるということでありますけれども、これだけでは全体的なものにならない。要するに、農業といったって高度な技術が必要ですから、その高度な技術を習得して、本当に農業者として新たな形でいけるような就農技術センターのようなものをきちんとつくらなければ、なかなか簡単に言っても農業をやれるわけじゃありません。そういうものを位置づけて、これは何も政府がやるということではありませんけれども、民間も含めてそういう就農センター。  あるいは、例えば酪農ヘルパー制度が定着しつつありますけれども、なかなか人件費が大変だ。その酪農ヘルパーというものを新たな後継者、農業に対する担い手として位置づければ、もっと大きな広がりが出てくると私は思いますね。  人件費だからだめだ、大蔵省がだめだ、もうその一点張りでありますけれども、労働省はそういう賃金に対してもこういう緊急事態だということで助成をしておる時代でありますから、農業もそのくらいの、担い手がいないということは、今昭和一けた時代の人がだんだんリタイアして、本当にいない時代になります。  今まさに新たな産業として、雇用を創出できるものとして農業位置づける、その具体的な方策が私は必要だというふうに思いますけれども、少し長くなっても大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  33. 中川昭一

    中川国務大臣 政府の緊急雇用対策並びに産業競争力の対策、これは農林関係も当然入っておるわけでございます。十五分野が、例えば農業とかあるいは鉄鋼業とかという業種別でやっておるものじゃございませんので、福祉関係とかあるいはバイテク関係とか、そういうくくりでやっておりますから、何となく表に出てきていないような印象を与える、私自身も、途中感じました。  産業競争力会議の中で、なぜ日本の一割を占める農業食品関係、そしてバイオ、あるいはまた種の問題等々、国民の健康と生命に直接かかわる部分の研究をプレゼンテーションしないんだということで、ある食品メーカーの方のプレゼンテーションをしていただきました。また、農林省の中でも、それを受けた形で、よりブレークダウンした形の検討会を今やっておるところでございます。  そういう意味で、これからはまさに農業というのは私は先端産業であろうというふうに思っておりますので、産学官一体となった研究、そしてそれを技術化し、製品として国民に供給をしていくということの役割は我が農林水産省の所管の事項においては極めて重い位置づけにあるというふうに考えておりますので、特に食品産業面以降の川下部分については、そういうことで総理も十分御理解をいただいておると思います。  直接の農業生産サイドにつきましては、雇用面あるいは新規就農面、そしてそれに対する支援措置、いろいろ必要だろうというふうに考えておりますが、これにつきましても、新たな時代の基本法における新たなさまざまな農業経営あるいはまた農業支援といったものがこれから出てくるわけでございますので、そういう意味でも、緊急雇用対策あるいは産業競争力といいましょうか、新しい技術を持った新規就農者が、あるいはまた大規模専業的な農業者がそういう方面により積極的に進出できるように支援をしていきたいと考えております。
  34. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 以上で終わります。
  35. 穂積良行

    穂積委員長 次に、宮地正介君。
  36. 宮地正介

    ○宮地委員 きょうは限られた時間でございますので、流通三法の中の特定農産加工業経営改善臨時措置法並びにJAS法を中心に、少し大臣に質問させていただきたいと思います。  特定農産加工業のいわゆる経営改善臨時措置法でございますが、十年間実際にこの法律を運用いたしまして、さらにこの六月三十日で五年間の延長、こういうわけでございますが、この十年間をどのように総括されたのか。それから、今後新しいWTO交渉という中で、また新しい変化が起きる可能性が十分予想されるわけでございますが、その変化に対して今後どのように対処されようとしているのか。まず、この点について確認をしておきたいと思います。
  37. 福島啓史郎

    ○福島政府委員 先生御案内のように、特定農産加工法は、牛肉・かんきつの輸入自由化、あるいはUR農業合意等の農産加工品の輸入事情が変化した、それに対処するために金融、税制上の措置を講じまして、輸入自由化等によって影響を受けます特定農産加工業者経営改善を支援しているものでございます。  具体的には、この特定農産加工法制定されました平成元年から九年度までの実績を見ますと、四百七十件の計画が承認されまして、農林漁業金融公庫等から総額千八百二十八億円の融資が行われております。また、税制上の特例措置も機械、装置の特別償却を中心に利用されているわけでございまして、特定農産加工業者経営改善に一定の成果を上げているわけでございます。このことは具体的に言えば、製品の輸入が増加し、工場数が減少している中で、国内生産額を維持確保しているということなどにあらわれているわけでございます。  こういったUR合意などによります関税率の引き下げ等の国境措置の変更は平成十二年まで段階的に行われるということ、あるいはその影響はタイムラグを伴って平成十二年以降もあらわれてくるということから、今回、引き続き農産加工業者の経営改善に取り組んでいく必要があるわけでございまして、この法律の適用期間を五年間延長することとしたわけでございます。  今先生御指摘のございましたWTO交渉との関連でございますけれども、このWTO交渉との関連におきまして本法をどういうふうに扱っていくかということにつきましては、交渉の結果なり、あるいはその時点での国際環境の変化等予測しがたい面があるわけでございまして、恒久法化等の問題も含めまして、その時点の国際環境の状況なり、あるいは農産加工業の動向等を見て判断してまいりたいというふうに思っているわけでございます。
  38. 宮地正介

    ○宮地委員 局長のそういう事務レベルのお話はもう私の会館の部屋でヒアリングが終わっていますから、もう頭に全部入っています。そういう話を、この委員会の場で私は聞きたいと思っているのではない。どう総括をして、今後の新しい事態にどう対処するのだ、ここを大臣に私は確認しているので、大臣、この点についてしっかり答弁してもらいたい。
  39. 中川昭一

    中川国務大臣 昭和六十三年の牛肉・かんきつ、あるいはウルグアイ・ラウンドで、日本農業生産者だけではなくて、食品製造業者にも多大な影響が発生するということで、何としても金融、税制等の特例措置を設けようということでつくった制度でございます。  国際環境の変化によって、あるいはまた経済状況等によってこういう特例措置はうまくいけばなくなるかもしれないということで、五年ごとの延長ということになったわけでございますけれども、十年たちまして、依然として日本の景気が悪いとか、円高になったり円安になったりいろいろなあれがあったり、それから、輸入も相当程度のウエートを占めておるということでございますから、この法律に基づくいろいろな支援措置というものは私は役割として十分果たしてきたと思いますけれども、まだまだ今後五年間というものを見据えたときには必要な法律ではないかというふうに考えております。  まさにこの五年というのは、WTOあり、新時代に向かっての、いろいろな景気の問題もございまして、そういう意味で引き続きこういう支援措置法律が必要であるというふうに考えております。
  40. 宮地正介

    ○宮地委員 この十年間で融資の総額が約千八百億出ているわけでございますが、たまたま今金利が超低金利であるわけですからそんなに影響は出ていないと思いますが、この原資はやはり財投の資金が原資になっているわけであります。財投というのは金利がやはり乱高下するわけであります。そういう中で、これから五年延長する。今後どういうように経済が変化するかもわからない。この十年間においても相当金利の高いときも私はあったと思う。今は超低金利であるけれども、やはりバブルのころには相当高金利の時代もあった。そういうときにも財投資金というものが使われてきた。  また、今回のこうしたフォローアップというのは特に国内の中小企業を中心に、私は特に、資本金一億円以下の中小企業に対して、どうやって経営改善のフォローアップをするか、ここがやはり重点志向でなくてはならない。そう考えたときに、やはり超低金利時代においては、今は余り問題にならないけれども、経済というのは生き物なのですから、高金利になったときに果たしてこの財投資金一本でいいのか、あるいは一般会計から利子補給の制度、こういうものも検討する、こういうような新たな視点というものも十分持っていなくてはならない、私はそう考えているわけですが、そういうところをどう十年間を総括したんだ、ここを私は言っているわけでございます。  どうか大臣、この五年間の延長をまた一つの節目として、今後やはりこうした自由化が進む中において、国内のこうした食品加工業の中小企業対策についても十分に配慮した、弾力的な資金の運用についても政府として前向きに取り組んでいくのだ、こういう姿勢をぜひ示していただきたい、こう思いますが、いかがでございましょうか。
  41. 中川昭一

    中川国務大臣 確かに金利は乱高下いたしまして、特にこの五年間は、今借りればいいのでしょうけれども、五年前ということになるとかなり金利は高かったわけでございますから、これが、この法律に基づく金融措置だけではなく財投あるいはまた金融一般の一つの、今の時点で表現すればジレンマであろうというふうに考えております。  しかし、長期的に安定的な資金が供給できるというメリットもございますし、一日も早い景気回復がなされていくならば、金利の割高感というものは消えていきますし、また、現時点で借りれば、それだけ金利の高騰による金利負担をしなくて済んだという意味のメリットが出てくるわけでございます。  その辺は我々も非常に注意深く見守ってはおりますけれども、中長期的なタームの資金支援ということになりますと、どうしてもこれは、現実金利と借りたときのフィックス金利との乖離が一つの問題点になるということは、もう先生から御指摘いただくまでもなく、私自身もいつも悩んでいるところでございます。
  42. 宮地正介

    ○宮地委員 そういう点を十分に政府としても配慮した中での今回の五年間延長というものを我々は認めていきたい、こう思います。決して単なる延長ではないんだ、十年間の総括をしっかりして、そして今後の五年間に対してどういうような対応をしていくんだ、ここをしっかり踏まえた上で、ぜひこの延長を十分に生かしていただきたい、このことを強く要請しておきたいと思います。  そこで、JAS法の改正。今回、消費者立場に立ったいわゆるJAS法改正が行われることについては、我々は大変評価をしております。そういう中で、既に農水省におかれてはいろいろ業界からの要請等があったと思います。  例えば、弁当の関係の工業会とかチェーンストアから、生鮮食料品加工食品表示についていろいろと、特に弁当、調製パン、総菜、こうしたものについて大変難しい問題がある、コスト高になる、こういう業界からの要請もあったと思います。  これについて、今どういうように検討されているのか。今回の法改正立場をしっかり貫いていくべきであろう、私はこう考えておりますが、この辺の検討をどうされているのか、この点について報告をいただきたいと思います。
  43. 福島啓史郎

    ○福島政府委員 今回御審議いただいておりますJAS法改正法案におきましては、消費者の判断によりまして適切に商品選択を行えるようにするためのよりどころといたしまして、消費者向けのすべての飲食料品につきまして表示の対象にするということで、生鮮品につきましては原産地、それから加工食品につきましては原材料を表示する等の措置を講ずること、また、国際的な表示ルールでありますコーデックスにおきましても横断的な表示基準が策定されておりますので、そうしたことも参考にしながら、消費者の視点を重視した農政の展開を図る一環としまして、すべての食品につきまして表示基準を定めることとしているところでございます。  具体的には、改正法の施行後具体的な表示基準を定めていくわけでございますが、その際には、消費者立場に立って商品選択上必要な事項が適正に表示されるようにすることを旨といたしまして、消費者なりあるいは業界関係者意見を十分聞きまして定めてまいりたいというふうに考えております。
  44. 宮地正介

    ○宮地委員 そうしますと、具体的に、JAS調査会の中にあるいわゆるワーキンググループ、この検討部会に、消費者の代表は当然でございますが、日本べんとう工業協会の代表とかあるいはチェーンストア協会の代表とか、そうした方々も入れてしっかりと議論をして、理解合意の中でこの問題をクリアしていく、こういうふうに理解していいのか、この点についてしっかりと答弁していただきたいと思います。
  45. 福島啓史郎

    ○福島政府委員 先ほど申し上げましたように、今回のJAS法改正によりまして、弁当、総菜等につきましても、加工食品としまして表示が義務づけられることになるわけでございますが、この原材料なり内容量等の表示につきましては、その商品特性にかんがみまして、具体的にどのような表示が必要なのか、あるいは可能なのか等につきまして、今先生から御指摘ございましたJAS調査会の下にワーキンググループを設けまして、消費者それから業界の関係者も入れまして、十分相談しながら検討してまいりたいというふうに考えているところでございます。
  46. 宮地正介

    ○宮地委員 特に表示の困難な問題について、例えば、幕の内弁当では七項目程度の表示がこのたびのJAS法改正により百十項目を超す表示となると言われている、こういうように業界の方々も非常に心配をされているわけですね。  やはり消費者立場、私は、情報公開の時代でございますから、情報はできるだけ開示をして、消費者皆さんに安全な、安心な食品を食べていただく、これはもう当然だと思うのです。しかし、現実に、こうした日本べんとう工業協会の皆さんなど、あるいは実際にチェーンストアで消費者に売る立場の方々が非常に悩み苦しんでいる。それから、実際に、中小零細企業の皆さんが、非常にコストアップにつながる、こういうことで非常に景気の悪い今日的な経済環境の中で苦悩しているわけですね。  やはり、この苦悩を見て見ないふりをするわけには私はいかぬ。この点については十分理解をし、また、コストアップになるならば何らかのフォローアップができるのかどうか。しかし、国民の健康と生命の保持ということがもう最優先ですから、これを踏まえてどう調整していくか。私は、これが今このJAS調査会ワーキンググループに課せられた重要な課題であろう、こう思っております。  これは大臣、非常に重要な課題でございますので、この点について見解をちょっと確認しておきたいと思います。
  47. 中川昭一

    中川国務大臣 先生が冒頭御指摘のように、法律でも消費者の選択に資するためということが条文の中にはっきり書いてあるわけでありまして、消費者から見れば正確な情報が多ければ多いほどいい、全部を見るかどうかは別にいたしまして、提供としてはそういうことになるのだろうと思います。  つくる方、表示する方から見れば、これは間違っていたら大変なことになりますし、非常に手間がかかるということも一方ではあって、それをコスト転嫁できるのかできないのか、多分できないのではないかなという状況もあるわけでございますから、両方のニーズをどういうふうに生かしていくかということがまさにJAS法を適切に運営していく上での一つのポイントだろうと思います。  したがいまして、専門家あるいは業界団体の皆さん方に御議論をいただいて、JAS調査会のもとで今まさに現実的な、実用的な問題で御議論をいただいておるという状況でございます。
  48. 宮地正介

    ○宮地委員 大臣、余り歯切れがよくないのですが、私が申し上げた視点をしっかり踏まえて、このJAS調査会のワーキンググループにおきましてもぜひ公正、透明な議論をして、そして農水省としての決断をしていただき、また、財政的な面で、予算の面でフォローができるのであれば、これはできるだけのことをぜひ対策として検討してあげていただきたい。  しかし、消費者の健康と生命を守るという立場はしっかり踏まえた中でのJAS法改正と私は理解しておりますから、その点はしっかりベースを踏まえた中で、やはり財政的な面でフォローできることはしっかりやってあげていただきたい、こう思いますので、きょうは、強く問題点を指摘して、要請をしておきたいと思います。  そこで、もう一つ、最近の大変大事な問題として、宮城県信連が経営の危機に今瀕している、こういうことで、特に信連の信用事業の問題が国内でも大変大きくクローズアップをされてきているわけでございます。  まず、いろいろな報道がなされておりますが、宮城県信連の経営危機の実態はどうなっているのか、この点について農水省としてどう把握をしているのか。  それから、言われるようにいわゆる百四十九億という繰越赤字が出た、そういうことで系統が資金援助をする、こういう方向で今全国信連会議も行われる、農林中金もこれに対して前向きに資金助成をする、こういう対策も考えていただいているようでありますが、この辺の対策がどうなっているのか。  私が一番心配しますのは、何といいましても、信連に金を預託している単位農協、また単位農協に貯金をしているいわゆる農業生産者、ここをしっかりとまず保護をする、このベースに立った中でどう対策を打つか。さらに、信連は近い将来農林中金に統合される、こういう方向になっているわけですから、この辺の絡みでどういうふうに経営改善をしていくのか。  まずこの三点について、明快に農水省の見解を確認しておきたいと思います。
  49. 竹中美晴

    ○竹中(美)政府委員 宮城県信連につきましての今回の事態に至った経緯でございますが、同信連におきましては、バブル期におきます有価証券運用の失敗がございまして、そこで多額の欠損を計上いたしました。それで、平成四年度以降、資産の処分とか人員の削減等に加えまして、会員農協からの支援も受けながら懸命に経営再建に取り組んできたところでございます。  しかしながら、最近の景気の低迷の長期化とか、あるいは大口取引先の倒産等を背景にいたしまして、平成十年度決算において多額の償却、引き当てを余儀なくされたということでこのたびの事態に至ったという経緯でございます。  それから、系統内部での具体的な宮城県信連に対する支援内容でございますが、宮城県信連におきましては、早期の経営改善を図るという観点から抜本的な不良債権等の処理策を検討いたしておりますが、この処理のためには、自助努力だけでは限界があるということで、全国支援を全国団体に要請しているところでございます。  全国団体におきましては、系統信用事業全体の信頼性を確保していく必要があるという観点から、宮城県信連の最大限の自助努力ということは前提にいたしながら、全国の各信連なり農林中金が支援していく方針でございまして、先生のお話にもございましたように、具体的な内容につきましては本日の全国信連会長会議協議されるというふうに聞いているところでございます。私どもとしましては、系統組織の取り組みによりまして宮城県信連の健全な経営確保される、そういうふうに考えているところでございます。  それから、先生の方から、貯金者の保護ということを大前提に考えるべきであるというふうな御指摘がございました。私どもとしましても、認識は全く同じでございます。そういう観点から、宮城県信連におきましても抜本的な経営改善策を検討しているところでございまして、自助努力と全国的な支援によりまして経営の健全性が回復されるというふうに考えております。この取り組みによりまして、宮城県信連としての健全な経営が回復されることを通じて貯金者の保護が図られるというふうに理解しているものでございます。
  50. 宮地正介

    ○宮地委員 この宮城県信連の再建策については、平成四年から既に農水省は手がけているわけですね。実際、検査部としてはどういう検査を、今日までこの七年間チェックをしてきたのか、今ここに始まった問題ではないんではないか、もう少し早い段階で対策を講ずることができたんではないか、こう思うわけですが、検査状況はどうであったのか。きょうは官房長が見えていないので、検査部長かだれか来ていればこの点を、時間がありませんが端的に説明してもらいたい。
  51. 竹中美晴

    ○竹中(美)政府委員 お話にございましたように、宮城県信連は、最初は平成三年度の決算におきまして多額の欠損を出したということでございまして、その後、平成四年度以降経営改善に努めてきたということでございます。  私どもとしましても、この間の事情なり経緯は十分把握いたしておりまして、これを踏まえまして、系統の上部組織とも一緒になりまして、経営改善計画の着実な実行でありますとか自己資本比率の向上、有価証券の含み損の早期の処理、あるいは分類貸出金の管理なり回収の適正化を指導してきたところでございます。
  52. 宮地正介

    ○宮地委員 金融監督庁をきょうは呼んでいるので来ていると思います。監督庁長官もこの問題について記者会見で、今後、場合によっては農水省金融監督庁が合同でこの検査をしていく、そうしたニュアンスの記者会見をやっているわけですが、金融監督庁として、この問題をどういうふうにとらえて今後どう対処しようとされているのか、この点について確認しておきたいと思います。
  53. 五味廣文

    ○五味政府委員 信農連の信用事業に関します監督というのは、主管官庁が農水省、共管が金融再生委員会ということになっておりまして、一義的には農水省でこれをなさっておられます。特に検査につきましては、農協が行っております経済事業との関連が非常に深いということもありまして、現在農水省が単独でこの検査をなさっているというのが実情でございます。  今、記者会見というお話がございましたが、恐らくこれは柳沢金融再生委員長の記者会見での御発言だと思います。これに関連いたしまして、金融監督庁の設立時に、金融監督庁設置法の附帯決議で「金融機関の検査・監督については、金融監督庁への一元化を推進すること。」こういう附帯決議をいただいております。  したがいまして、現在、これを踏まえまして、信農連に対する検査について具体的に金融監督庁がどういうふうに対応していくか、特に具体的な検査の実施方法、これにつきまして検討中でございまして、今後適切な対応をしてまいりたいと考えております。
  54. 宮地正介

    ○宮地委員 時間がありませんので最後になるかと思いますが、やはりこうした信連の信用事業というものの監督官庁として、非常に重要な局面に私は来ていると思うのですね。  それは、二〇〇一年の四月からペイオフがどうなるかという重要な問題、いわゆるビッグバンの時期を今迎えているわけでございまして、都市銀行を初め金融業界においても、大きな再編問題あるいは信用事業についてのリストラ、改善、改革が今行われている最中ですね。そういう中で、農協系統の信用事業においても同時進行で改革をしながら、また、そうしたビッグバンに対して対応し得る人的資源、こうしたもののノウハウというものもしっかりと私はこれから養成をしていく必要がある。  そういう中で、一つ宮城県信連の問題が今経営危機として出ましたけれども、これは、ただ宮城県信連の経営危機というとらえ方でなくて、やはりこれからの農協系統の信用事業というものに対して、特にこうした新たなビッグバンという時代背景の中で、どう生き抜いていくか、どう国際的にも対応していくか、この視点が非常に私は大事であろう。  そういう意味合いにおいて、この宮城県信連の問題も、資金的な援助あるいは人的な援助、あるいは思い切った経営陣の刷新、経営改革、こういうものをしっかりとやり抜いて、そして全国に、農協系統の信用事業というものは、これからは自力で金融再編の、ビッグバンの時代に対応し得るような信用事業というものをやっていかぬとこれは大変なことになるぞ、生き残れないぞ、こういうガイドラインをしっかりと農水省が示して対応していくべきであろう、こう考えておりますが、この点について大臣の所感を伺っておきたいと思います。
  55. 中川昭一

    中川国務大臣 まさにビッグバン、グローバル、地銀あるいはまた農協系であっても、アメリカやヨーロッパの動きを間接的に瞬時に影響を受けるというのがまさに今のお金の動きでございます。そういう意味で、農協系全体としては非常に体力といいましょうかきちっとしたものがある。したがって、宮城県信連につきましても、相互援助措置、あるいはまたいろいろな自助努力が基本でございますけれども、農協系全体として他の農協系に影響を及ぼすことなくこの問題を解決することができる、検査の結果も見なければなりませんけれども、現時点ではそういうふうに私どもは考えております。  しかし、先生御指摘のように、ビッグバンあるいはまた全体のセーフティーネットというものを考えましたときに、貯金者保護、あるいはまたほかの金融機関の問題が飛び火をしかねない、これは、こっちがよくても飛び火をするというようなことがまさに我が国金融においてもあり得るわけでございますから、自分たちだけでしっかりしていても、ほかから影響を受けるということにもなりかねませんので、これを契機といたしまして、ほかの金融業態もいろいろと御努力をされておるわけでございますから、我々もいろいろとるべき最大限のものをとって、農協系の金融秩序、あるいはまた農協系に貯金をされておる皆さんに対する安心感というものをさらに確固としたものにしていくことが必要であり、そのためには、ほかの金融業界、あるいはまたほかの金融監督関係の省庁、監督庁を初めとする行政とも密接に連絡をとりながら、より農協系金融機関の信頼性というものを厚くしていかなければならないというふうに考えております。
  56. 宮地正介

    ○宮地委員 新しい農業基本法がいよいよ参議院で成立をいたしますと、我が国の二十一世紀の新しい農政改革がスタートするわけですから、私は、その中における農協系統の信用事業の改革、これも同時進行でいくべきであろう、こう考えておりますので、どうかこの宮城県信連の問題は、災い転じて福となす、このぐらいの決意でぜひ前向きに取り組んで、今後の新しい出発に呼応した信用事業になるように期待をして、質問を終わりたいと思います。
  57. 穂積良行

    穂積委員長 次に、藤田スミ君。
  58. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 私は、特定農産加工業経営改善臨時措置法の一部改正案についてお伺いをいたします。  この法案は、輸入自由化事後対策法案というふうに私たちは呼んでおります。  大臣にぜひ聞いていただきたいんですが、一九八八年の自由化以降対象十二品目の輸入量の推移を見ますと、かんきつ果汁で六・八倍、非かんきつ果汁で十一・七倍、パイナップルの缶詰で二・五倍、トマト加工品が二・八倍、でん粉一・三倍、乳製品一・一倍、牛肉調製品一・六倍、こんにゃく粉二倍、そして豚肉調製品四・二倍というふうに、輸入量が急速に増加していることが歴然としているわけであります。これがまさに輸入自由化、関税化の効果であります。  では、国内生産量はどうかということを同様に比較してみますと、これは、かんきつ果汁が国内生産量で同じ期間に三〇%減、非かんきつ果汁が二〇%減、パイナップルの缶詰が七〇%減、トマト加工品が二〇%減というふうに、多くの品目が生産量を減らしているわけであります。  私は生産者皆さんにもお話を聞きましたが、例えば加工原料用のミカンが、取引価格あるいは農家手取り、どれを見ても八八年当時の三六%に落ち込んでいます。そして今、和歌山の有田で言われているのは、キロ三円から四円にしか売れない、これは農家の皆さんに言わせると、川に捨てられぬから生産工場に持っていくんだというようなことで、大変深刻であります。  私は、ここに輸入自由化の本質がよくあらわれているというふうに思います。事後対策を否定するわけではありませんけれども、事後対策ではとても守り切ることができない。  そこで、私は大臣にお伺いをしたいんです。本来、輸入自由化を回避することこそ、私たちが、日本政府が選択すべき道だったのではありませんか。大臣にお伺いをいたします。
  59. 中川昭一

    中川国務大臣 牛肉・かんきつ、特に牛肉につきましては、昭和三十年代からいろいろな要求がアメリカからあったというふうに聞いております。そのたびに歴代農林大臣が大変御苦労されて交渉をまとめ、守ってきたわけでありますけれども、昭和六十三年に牛肉・かんきつ十二品目がこういうことになったわけであります。  私は、それがなければよかったということはそのとおりだろうと思います。それはあるべき姿でありまして、現実政治におきましては、我が国は多数の国々と友好関係を持ち、自由主義経済という名のもとで日本農業農村を守っていこうということが大前提でありますから、何を言っても御自由だと思いますけれども、しなかった方がよかったんじゃないかという御意見は御意見として、私から一々コメントを申し上げる必要はないと思います。
  60. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 この問題は次期交渉にもかかわってくる問題でありますので、私は大臣に、関連した問題で続けていきたいと思いますが、日本提案の文章を読ませていただきました。  この中で、市場アクセスの中では、「輸出国が輸出制限措置を採り得る現行の貿易ルールを踏まえれば、輸入国において食料安全保障の観点から国境措置を講ずることは、輸入国の正当な権利であると考える。」としているわけでありますけれども、この国境措置にはどのような措置が含まれているのか。輸入数量の制限、輸入規制、あるいは自由化の撤回、こういうものが含まれているのでしょうか、いないのでしょうか。
  61. 中川昭一

    中川国務大臣 今度の提案の中に書かれております文章につきましては、我が国の、基本法の中にも条文がございますけれども、いわゆるセーフガードあるいは特別セーフガードという措置をとることができる、原則は関税であるということでございまして、これが輸出国のとることのできる措置との間で極めてアンバランスであるということがあるわけでございます。  なお、関税化していなければよかったんじゃないかという先ほどの御質問でございますけれども、仮に関税化をしていなかった場合には、とてもこういう交渉議論にはならなかったというふうに私どもは考えております。
  62. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 とおっしゃることは、結局、国境措置といっても関税化の枠内でしかない、そういうことですね。  もう既に日本は、米も含めて農産物について関税化移行を済ませてしまっているわけでありますから、そうすると、要はこの関税率をどう維持していくか、それが国境措置の中身になると言っても言い過ぎではないと思いますが、その点についてはどうなんでしょうか。
  63. 中川昭一

    中川国務大臣 前回の交渉で、輸出国もウエーバーとかいろいろなものがありましたけれども、いろいろなものがなくなって、とにかく包括的な関税化というルールが大原則として、唯一のルールとして、国境措置としてでき上がったと言ってもいいんだろうと思います。しかし、その原則の中に特例措置というものがあって、その一つとして、輸出国の極めて権利義務関係のバランスを欠いた幾つかの措置が残っている。  我が国としては、関税化というものが大原則になり、米もそういうことにしたわけでございますけれども、先ほど申し上げたように、肉にいたしましても米にいたしましても、一般論として、基本法におきまして、国内に影響を及ぼす場合にはセーフガードあるいは特別セーフガード、これはWTO、ガットで認められておるルールでございますから、これを適切に発動するという権利を持っておるわけでございます。  なお、これをやるためには、食料安全保障確保のためには国内農業生産の増大を図ることを基本とするということが大前提であり、そのために国境措置というものが必要である。その場合には、輸入国において安全保障の観点から国境措置を講ずることは輸入国の正当な権利であるということでございます。  輸入国としては、関税というものが大原則であり、そしてまた、異常な輸入の急増に対抗するような、先ほど申し上げたようなSGあるいはSSGといったものもガット上認められておるということでございますから、これらを最大限有効に使うことによって国内生産あるいは消費者の混乱を防止していかなければならないというふうに考えております。
  64. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 セーフガードが認められている、それがルールであって権利であるといいながら、日本はセーフガードの発動はしていません。私がここで聞きたいのは、果たしてこういう日本提案が本当に関税率を維持、とりわけ米のような高関税率を維持するということが実現できるのかどうかという点であります。  発表された提案骨子を見ますと、「現行WTO農業協定の規律の枠組みは基本的に維持しつつ、各国が取り組んでいる市場指向的な政策転換の円滑な実施を促進するよう、」というふうに書いています。これは、現行WTO農業協定を見ましても、前文で、「合意した長期目標が公正で市場指向型の農業貿易体制を確立することである」というふうにしているわけでありまして、この方向で規律の枠組みが確立されているわけでありますから、この枠組みを維持することを諸外国に表明しながら、果たして、高率関税を維持することが実現できる、政府はそういうふうにまじめに考えていらっしゃるのかなというところが大臣に聞きたいところであります。
  65. 中川昭一

    中川国務大臣 国境措置としては基本的に関税というものがありまして、そのほかにもSG、SSGという非常時に対する対抗措置がある。一方、アメリカにはスーパー三〇一のようなどう見てもWTOに反するようなものがあり、アンチダンピングに対する対抗措置の問題というのがこれからのWTO一つ議論になっていくのではないかと言われておるわけであります。  我が国としては、日本食料を守り、そしてその多面的な機能、安全保障というものを生かすために、それを実現するための交渉をしていくわけでございますから、これからさらに改革を進める、イコール関税率だけを下げるんだという議論ではなくて、あえて私どもはWTOという土俵の中で改革すべきものは改革をしていこう、それが先ほどから申し上げております三つの大きな柱を初めとする我が国主張でございます。  これは、我が国主張というのは、今までのWTOの体制の流れを変えていき、我が国だけではない、発展途上国立場、あるいはまたほかの輸入国立場も含めまして、バランスを欠いたものからバランスのとれたものになるように、これから努力をしていくわけでございます。
  66. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 バランスを欠いたものからバランスのとれたものにしていくために、現行WTO農業協定の規律の枠組みを基本的に維持しつつそれを図ろうということになったら、あえて関税率を引き下げるんだということではないというようなことで、一体何が実現するのかなというところが率直な意見であります。  この問題については引き続き質問をしたいと思いますが、ここで委員長にもお願いをしておきたいと思います。  この問題は、先ほどからも出ておりますが、当委員会で集中的に審議をし、本当にその意見をぜひとも反映できるようにお取り計らいをいただきたいと思います。いかがですか。
  67. 穂積良行

    穂積委員長 WTO関連の集中審議については、理事会で協議いたします。
  68. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 次に、この法案の中の新技術資金についてお伺いをいたします。  この新技術資金のほかに特定農産加工資金は、共同化資金、高度化資金あるいは転換資金というふうにあるわけですが、この融資状況を見ていきますと、その八三%が新技術資金であります。ここ三年について見れば、その九割が新技術資金になってきているわけであります。  この新技術資金の中でも、乳製品に対する資金需要が最も多く、この間に三百七十九億円余に及んでいるわけでありますが、この乳製品に対する資金の問題で、一体この資金需要の内訳はどうなっているのか、わかれば、国産品使用の割合、それからどのような新技術開発がその中で進んできたのか、明らかにしていただきたいと思います。
  69. 福島啓史郎

    ○福島政府委員 先生御指摘のように、乳製品製造業への融資でございますけれども、経営改善計画の承認件数は乳製品製造業が一番多いわけでございます。  融資実績でございますが、平成元年から平成九年まで百三十四件四百三億円ということでございまして、全体で千八百二十八億円でございますので二二%でございます。その内訳でございますが、新技術資金が百九件の三百八十億円、共同化資金が十二件の十五億円、転換資金が三件の一億円、施設高度化資金が十件の七億円でございます。  また、経営改善の例としましては、軟質のフレッシュチーズでありますモッツァレラチーズ、我が国では余りなじみがなかったわけでございますが、ピザ用等の需要が最近伸びてきておりますことから、このための生産設備を導入しまして、地元産の原乳の九割の需要者としまして地域酪農の発展に寄与している、そういった例。あるいはまた、コンピューター制御されましたアイスクリームの製造によりまして、省力化による生産効率のアップによりまして、地元産の原乳の安定的な需要先としまして地域酪農に寄与している例などが挙げられるところでございます。
  70. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 ちょっと確認しておきますが、新技術開発資金は三百七十九億円余、四百三億円というのは他の資金も入れての数字じゃございませんか。新技術開発資金は三百七十九億円余、百九件、違いますか。  それで、その中で大企業、中小企業、農協の割合を聞いているわけです。
  71. 福島啓史郎

    ○福島政府委員 先生御指摘のとおりでございまして、乳製品製造業の新技術資金は三百七十九億円でございます。そのうち、大企業が百四億円、中小企業が二百七十一億円、農協等が四億円ということでございます。
  72. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 新技術開発資金は、今おっしゃったように百九件、三百七十九億円余であります。そのうち百四億円が大企業の方に活用されております。割合でいうと三六%に相当いたします。しかし、これは五社九件の対象でありますから、非常に大きなウエートを明治、森永など大企業が占めているということになるわけであります。  そういう点で、私は、この新技術開発資金というのは相当性格も変化してきているんじゃないかと思いますので、特に求めておきたいと思うんですが、改めて言うまでもなく、新技術開発資金が企業の経営強化だけに寄与して地域酪農の維持拡大に反映されなければ、これは文字どおり本末転倒になってしまうわけでありますから、その点については、国が融資の際にきちんと点検をしておく、とりわけ大企業の活用については国が責任を持って点検をしていくべきだというふうに考えますが、この点はどういうふうにお考えでしょうか。
  73. 福島啓史郎

    ○福島政府委員 先ほど先生の御質問にございました乳製品製造業の国産原料の割合でございますが、国産使用比率は九九・五%という非常に高い比率になっております。  また、御質問の、どうやってチェックしているかということでございます。これはこの法律の三条五項二号の、地域の農業の健全な発展に資するものであるということが認定の要件になっているわけでございます。知事が個々の企業の作成しました経営改善計画の承認を行う場合には、そうした観点からチェックをすることとしておりまして、具体的には、原料の使用量あるいは入手先、そういったものを経営改善計画に記載することにしておりまして、知事は計画の審査に当たっているわけでございます。また、その状況につきましても適宜把握をするということでもって、報告等をお願いしているところでございます。
  74. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 私の言っていることに答えていないんです。  例えば、農林金融公庫のアンケートについても、国の方は一々報告を受けていません。知事がチェックすることは知っているんです。だからこれからは、大事なところは国がきちっと責任を持って、地域農業の振興に本当に役立つようになっているかというチェックをやはり行うべきじゃないかということを申し上げているんです。イエスかノーか、それだけ聞いて、質問を終わります。どうぞ、答えてください。
  75. 福島啓史郎

    ○福島政府委員 国におきましても実態を把握しまして、適正な運用に努めてまいりたいというふうに思っております。
  76. 藤田スミ

    藤田(ス)委員 以上で終わります。
  77. 穂積良行

    穂積委員長 次に、前島秀行君。
  78. 前島秀行

    ○前島委員 時間も経過していますので、一、二お伺いをしたいと思います。  大臣に、最初に新農政、新しい農業基本法を今後展開していくに当たって食品産業、農産加工業をどう位置づけていくかという点を基本的にお聞きをしておきたい、こういうふうに思っているわけであります。  御案内のように、食品産業と地域の農業というのは一体的なものであるし、非常に重要であるということはもう言わずと知れている。また、農業を取り巻くこれからの状況等はいろいろあろうと思いますが、やはり自由化という大きな流れは避けて通れないとすると、現在国内生産される農産物の三分の一が食品産業に投入されているというんだけれども、やはりその辺のところを今後どう比重を、ウエートを高くしていくかということが、農業基本法基本的なねらいである自給率を向上させていくとか、あるいは国内生産を増大させていくこととどうしても連動してくる問題だろうな、こういうふうに思います。  そういう面では非常に難しい課題が山積をしていると思います。よく生産、提供サイドからは内外価格差の問題が言われている。そのことが空洞化の最大の要因であるとか、あるいは質、量においてもやはり安定供給という面が生産サイドに求められている等々、いろいろな課題があるわけであります。そういう課題を克服しながら、やはりこれからの新農政の展開を見ると、自給率を上げたりあるいは国内生産を増大していくためには、食品産業の位置づけというのは非常に重要になってくるだろうな、こういうふうに思います。  それなりにやはり相当な決意もまた伴ってくる問題だろう、こういうふうに認識するわけでありますけれども、そういう面で、この二十一世紀、新しい農業基本法の具体的な展開の中で、食品産業の位置づけ、それに対応する生産の側は今後どうやろうとしているのか、その辺の基本的な位置づけをちょっと聞いておきたい、こういうふうに思います。
  79. 中川昭一

    中川国務大臣 日本農業の粗生産というのは十兆とか十一兆とか言っておりますが、末端では百兆円ということでございまして、その間に食品産業というものが何らかの形で絡んでいるものが大変多いんだろうと思います。  そこで、今度の基本法におきましても、国の責務とか地方公共団体の責務、農業者の努力目標、消費者のあり方と同時に、食品産業界についても一条あることは先生も御承知のとおりであろうと思います。  つまり、生産者そしてまた生産側に近い食品産業と、それから末端の、末端といいましょうか川下の、文字どおり国民全体に食を安定供給する上で、やはり食品産業というものが、ある意味では一番端っこ同士の生産者消費者をつなぐ一つの大きな役割も担っているのではないか。そういう意味で、小売も大事でありますけれども、食品産業というものが安定的に我が国発展をしていくということが、やはり生産サイドの発展と同時に我が国の安定的な食料供給の車の両輪であろうというふうに考えております。
  80. 前島秀行

    ○前島委員 食品産業の発展のためには資材を提供する生産の側の対応ということも、非常に課題もあるだろうし、大事だろうな、私はこういうふうに思います。そのことが、これからの新農政の新たな展開によって、また重要な位置づけになってくるだろう、こういうふうに思いますので、ぜひ、食品産業を位置づけると同時に、それに対応する生産の側の改善ということを今後の農政の展開の中で重要に位置づけてほしいなというところを、要望としてお願いをしておきたい、こういうふうに思います。  それから、今度は具体的な食品産業の側ですけれども、今後、日本の経済改革の中で、どういうふうな指導といいましょうか、どういう支援策を基本的に考えているかというところをちょっと聞いておきたいと思うのです。  御案内のように、今、規制緩和等々が盛んに言われている。要するに、経済の構造改革、活性化を求めているわけでありまして、その前提となるのが、通産省、中小企業庁が今度の国会で提出しておりますが、いわゆる中小企業経営革新計画というあれがありますね。  これは今までの中小企業対策の基本的な方針転換ですね。いわゆる企業単位に比重を置く。今までの協同組合、あるいは事業者だけではなくして業界単位で物事に対応してきた中小企業対策を、これからは個別企業を中心にいくぞ、こういう関係の基本的な転換なのでありますね。  やはり食品産業にもこの自己責任原則に基づく新しい経営方針というのは当然影響をしてくる。片や、農業の側としては、まだ依然として共同主義というものが片っ方で展開をされている。これからの食品産業を支援していく、指導していく間の、その辺の基本的な対応のあり方というものを今後どうしていくのかということが一つ。  それから、やはり私は、いろいろな規制緩和だとか構造改善がなされていくわけで、そのことは基本的にいいのでありますけれども、同時に、この食品産業というのは、環境だとか安全性というものが片や非常に重視されているし、また重要だ、こういうふうに思いますね。このことがまたこれからの規制緩和との関係の中で、やはり私は慎重に対応しなくちゃいかぬ重要な点でもあろうかな、こういうふうに思います。  そういう基本的なさまざまな課題の上に、国際化、自由化というものがさらにのしかかってくるのではないだろうかな、こんなふうなことが予測されるわけでありまして、生産サイドもさることながら、この食品産業、農産加工業サイドの方も相当の課題もあるだろうし、いっぱい問題もあるだろうな。その上に、さらに発展させていくためには相当な対応が行政の側も求められるだろうし、業界の努力も求められるだろうな、私はこういうふうに思っています。  そういう面で、食品産業に対する基本的な指導の方向というような問題、先ほど言いました共同主義、共同化の問題と、今の個別企業中心の対応との関係の調整だとか、あるいは環境だとか安全性の追求との兼ね合いの中で、どういう指導をしようとしているのか、どういう対応を求めているのか、その辺のところをちょっと基本的に聞かせていただきたいと思っています。
  81. 福島啓史郎

    ○福島政府委員 先生御指摘ございましたように、食品の安全性の確保というのは重要な課題であるわけでございまして、業規制におきましては規制緩和の方向にあるわけでございますけれども、安全性の確保につきましては、より厳しいといいますか、厳密な方向で対応すべき問題だというふうに考えているわけでございます。  具体的に食品産業に関しましては、安全性の確保に向けて、前年制定されました食品の製造過程の管理の高度化に関する臨時措置法、いわゆるHACCP手法支援法でございますが、これに基づきますHACCP等導入の促進が一つでございます。  また、流通段階におきます生鮮食料品等の取り扱いガイドラインを作成するということ、また、食品の製造過程におきます環境ホルモン等の影響を受けない技術の開発、具体的には内分泌攪乱物質の溶出のおそれのない包装容器の開発であるとか、あるいは食品原材料中あるいは製造過程におきます内分泌攪乱物質の失活なり除去技術の開発等、そういった安全性確保対策の充実強化を図っていく必要があるというのが一つの方向でございます。  それから二番目の方向としましては、やはり川上と川下の連携を強めていく必要があるだろうということでございます。これは食料農業農村基本法の中にもございますように、農業との連携を深めることによって双方プラスになる施策を展開する、そのための推進方策なり支援方策につきまして、現在研究会を設けて検討しているところでございます。それを受けまして必要な施策を展開してまいりたいというふうに思っております。
  82. 前島秀行

    ○前島委員 言うのは簡単ですけれども、相当の努力を要する課題が、生産の側にも業界の側にもいっぱいあるなということですね。  その中の一つとして、私は、技術開発、共同研究という問題も、これをやりさえすれば無限の可能性というのは出てくるんだけれども、個別企業としてそれが対応できるかなという問題なんかもいろいろあろうと思います。  時間が来たから質問を終わりますけれども、この共同研究あるいは技術新開発の問題なんかもやはり政府の責任は非常に大きいだろうなということを思っていますものですから、その辺の十分な対応もぜひお願いして、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  83. 穂積良行

    穂積委員長 これにて特定農産加工業経営改善臨時措置法の一部を改正する法律案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  84. 穂積良行

    穂積委員長 これより本案に対する討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  85. 穂積良行

    穂積委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  86. 穂積良行

    穂積委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  87. 穂積良行

    穂積委員長 次に、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本日、趣旨説明を聴取いたしました内閣提出参議院送付卸売市場法及び食品流通構造改善促進法の一部を改正する法律案及び農林物資規格化及び品質表示適正化に関する法律の一部を改正する法律案の審査のため、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その日時、人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  88. 穂積良行

    穂積委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時十七分散会