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1999-06-02 第145回国会 衆議院 農林水産委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年六月二日(水曜日)     午前十時二分開議   出席委員    委員長 穂積 良行君    理事 赤城 徳彦君 理事 増田 敏男君    理事 松岡 利勝君 理事 横内 正明君    理事 小平 忠正君 理事 木幡 弘道君    理事 宮地 正介君 理事 一川 保夫君       今村 雅弘君    小野寺五典君       金子 一義君    金田 英行君       木部 佳昭君    岸本 光造君       熊谷 市雄君    熊代 昭彦君       塩谷  立君    鈴木 俊一君       園田 修光君    中谷  元君       中山 成彬君    丹羽 雄哉君       萩山 教嚴君    御法川英文君       宮腰 光寛君    宮本 一三君       矢上 雅義君    安住  淳君       神田  厚君    辻  一彦君       鉢呂 吉雄君    堀込 征雄君       上田  勇君    漆原 良夫君       木村 太郎君    白保 台一君       井上 喜一君    佐々木洋平君       菅原喜重郎君    中林よし子君       藤田 スミ君    前島 秀行君  出席国務大臣         内閣総理大臣  小渕 恵三君         農林水産大臣  中川 昭一君  出席政府委員         農林水産政務次         官       松下 忠洋君         農林水産大臣官         房長      高木  賢君         農林水産省経済         局長      竹中 美晴君         農林水産省構造         改善局長    渡辺 好明君         農林水産省農産         園芸局長    樋口 久俊君         農林水産省畜産         局長      本田 浩次君         農林水産省食品         流通局長    福島啓史郎君         食糧庁長官   堤  英隆君         林野庁長官   山本  徹君  委員外出席者         農林水産委員会         専門員     外山 文雄君 委員の異動 六月二日         辞任         補欠選任   木部 佳昭君     中谷  元君   神田  厚君     辻  一彦君   漆原 良夫君     白保 台一君 同日         辞任         補欠選任   中谷  元君     木部 佳昭君   辻  一彦君     神田  厚君   白保 台一君     漆原 良夫君 五月三十一日  米の生産流通等適正化に関する請願逢沢一郎紹介)(第三七〇六号)  新たな畜産酪農政策に関する請願村井仁紹介)(第三八二一号)  食料農業農村基本法の制定に関する請願村井仁紹介)(第三八二二号) は本委員会に付託された。 本日の会議に付した案件  食料農業農村基本法案内閣提出第六八号)     午前十時二分開議      ————◇—————
  2. 穂積良行

    穂積委員長 これより会議を開きます。  内閣提出食料農業農村基本法案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。辻一彦君。
  3. 辻一彦

    ○辻(一)委員 委員会で久しぶりの質問になって大変恐縮ですが、実は私、平成五年の十二月十三日夜、政府苦渋選択に追い込まれたときに、当時の細川連立政権与党であったのですが、社会党におりまして農水部会長をやって、その責任者としていろいろな体験があります。そのことを思い起こして、非常に感慨深い気持ちで若干の質問を行いたいと思います。  当時、村山委員長が、米の市場開放には反対だが、部分自由化はやむを得ないものとして苦渋選択をすると声明したわけですが、そのときの怒りと悔しさというものは今もまざまざと覚えております。そのときに非常に感じたのは、国論が二分しておったということでありまして、こういう問題に取り組むときにはやはり国論一つになっていくことが非常に大事だということを痛感しました。六年後、次期交渉は、農業重要性必要性に対する国民合意の形成と、国際社会の中で食料安全保障輸入国の論理をいま一度再構築をしないといけないんじゃないか、こういう感じを非常に強くしました。  政府は、ガットウルグアイ・ラウンド交渉の中でさまざまな体験を経たわけでありますが、そういうものの反省と、そしてその上に立って来るべきWTO交渉にどう臨むポイントを持っているのか、重点はどの辺にあるのか、ここをひとつお尋ねいたしたいと思います。
  4. 中川昭一

    中川国務大臣 おはようございます。  まず、辻先生には、その苦渋選択の後、三党で与党として一緒に仕事をし、大変御指導いただいたことを、この場をおかりして今改めて思い出させていただいております。  今、前ウルグアイ・ラウンド交渉反省と今後の展望というか、今後の対処についてどう考えるかという御質問でございます。  前交渉につきましては、八六年以来七年間にわたる交渉でございましたが、当時与党、あるいは受諾のときにはたまたま野党でございましたが、一貫して我が党といたしましても、例外なき関税化は認められない、米の関税化は第一義的に認められないということで、党として頑張り、また各党も同じ立場で国会決議までされたわけでございますけれども、国際交渉の中で、率直に申し上げるならば、我が国に対する理解というものが非常に少なかった。米が主食であるということ、あるいは世界一の輸入国であるということに対する他国の理解等々が得られなくて、我が国の米を初めとする主張というものが非常に厳しい状況の中にあった。  それからもう一方では、先生指摘のように、農林系議員とそれ以外の考え方の方との激しい議論、あるいはマスコミでのその報道ぶり等々、まさしく国論が真っ二つという中での国際交渉という、大変厳しい状況であったと思います。  そういう中で、我が国といたしまして、日本農業を守り、そしてまたひいては国民食料確保という観点からもぎりぎりの努力をし、また、ラウンドを成功させなければいけないということも一つの目的であったわけでございますので、最後、ぎりぎりの選択として、ああいうミニマムアクセスという形での米の関税化等農業交渉結果となったわけでございます。私自身、決して満足できる結果ではなかったと考えておりますけれども、しかし、諸般の情勢を考えるならば、まさにぎりぎりの選択であったと言わざるを得ないと考えております。  そして、それから六年を経過した現時点におきまして、来年から始まります次期交渉に向かいまして、もう去年ぐらいからそれを踏まえた論議が当委員会を初めとしていろいろな場で行われておるわけでございますが、とにかく、まず国内的な食料あるいは国土、そしてそれを支える農業農村地帯をいかに守り、発展をさせていくかという国民的なコンセンサスというものを前提にすることが大事ではないかというふうに考えております。  したがって、消費者農業者という関係は、決して対立的なものではなくて、共生的なともに必要な関係であるという大前提に立ちまして、ほかの経済界あるいはあらゆる方々が関係する食料の問題でございますので、そういう我が国主張すべきことをきちっと国民的なバックボーンのもとで国際的に主張をしていく、そして一カ国でも多い御理解をいただきながら、我が国主張を、我が国だけではなくて、国際的な面でも貢献できるような主張実現に向けて頑張っていきたいというふうに思っております。  現在、それについては、これから当委員会を初め御議論いただき、最終的な基本方針というものをつくり上げていく、今は途中経過でございますけれども、現在の時点で骨子的に、骨格的に申し上げますならば、世界一の輸入国としての平時あるいは不測時における国民に対する安定的な食料供給、さらには農業農村の果たす多面的な役割というものを主張していく。それから、輸出国輸入国とのバランスを失した現協定というものを何としても公平なものにしていかなければならない。そして、各国農業がこれからも共存し、世界の人口と食料とのアンバランスの是正のために我が国としても貢献できるような体制にしていかなければならないというふうに考えて、そういう大前提のもとで、これから先生方国会の場を初め各界各層国民的な御議論を得た上で次期交渉に臨んでいきたいと考えております。
  5. 辻一彦

    ○辻(一)委員 三十分という時間で非常に短い感じがしますので、ポイントを一、二お尋ねします。  基本は、食料安全保障に対する考え方農業の多面的な機能に対する認識、第二次関税維持、それから緑のボックスにどれぐらい入れるかというところにおよそあると思いますが、そこで、食料主権という考え方をもっと我が国は強く打ち出していいのじゃないか。  というのは、各国はそれぞれ自衛権というものを持っておるんですが、効率が悪いから、コストが高いからといって防衛というものをよその国に頼るわけにはいかないと同様に、食料国民の生命を維持する最大の重要な問題でありますから、これはできる限り自分の国で自給していく、それは主権の一部であるという食料主権という考え方を私はWTOの中でもっと強く打ち出すべきであると思いますが、これについていかがですか。全体が限られているので、簡潔にお答えいただけば結構です。
  6. 中川昭一

    中川国務大臣 先生のおっしゃっている御趣旨は、私もよく理解のできるところであります。  一国の独立国がその生存を維持していくためには食料が不可欠でありますし、そのためには、いろいろな変動要素をできるだけ少なくするためにも、国内での食料生産を中心とした食料政策というものが各国判断のもとで行われる、そしてそれがマルチの場でいろいろなルールづくり前提になっていくという意味での先生の御趣旨については、私自身もそのとおりだと考えております。
  7. 辻一彦

    ○辻(一)委員 アメリカやケアンズ・グループは、要するに比較生産費論で、安いところで、コストの低いところでできればそれを運べばいいじゃないかという考えですが、一番基本的に農業工業の違う点は、工業は、資本であるとか技術であるとか労働力や必要なものを、生産手段を移動できるわけですが、農業にとっての最大生産手段である国土農地は移動ができない、これが私は一番の違いだと思うんですね。  ちょっと前ですが、昭和六十四、五年か、三、四年でしたか、ガットのリュックという農業部長本部におりましたが、随分論議をしたことがあります。また、アメリカライスランドアメリカ最大で、米をつくって輸出しておりますが、そこでも論議したときに、それほどやかましく輸入をしろ、輸出をしないといかぬと言うんなら、幾らでも輸入してもいいのがあると。何だと言うから、農地だ、農地輸出しろ、幾らでも輸入するから、こう言ったことがありますが、最大生産手段が動かないという中で本当の意味自由貿易というのは成り立たないんじゃないか。そこが工業農業の違いであると思うんです。だから、この点をもっと力説すべきだと思いますが、その点はいかがでしょうか。
  8. 中川昭一

    中川国務大臣 これも先生のおっしゃるとおりだと思います。  やはり、農地という財があって、しかも自然、生き物を相手にしておるわけでありますから、仮に広大な農地があっても、自然条件等でまた条件が変わってくるということでもあります。そういう意味で、今回の次期交渉に向かっても、非貿易的関心事項といいましょうか、単に、さあ幾らで売る、必要不可欠なものですから何とか売ってくださいというようなものではなくて、これはやはり自然相手の必要不可欠なものである以上は、多面的な機能も含めました非貿易的な意味というものが非常に大きなウエートを持ってくるわけでございますので、単なる自由貿易ルールだけで決められるものではない、むしろそれ以外の要素が大きいというふうに私は考えております。
  9. 辻一彦

    ○辻(一)委員 貿易外関心事、今度は農業多面的機能ということになっておりますが、内容的にはほぼ同じことを言っておると思います。アジアモンスーン地域日本のような水田農業をやっている条件、特に我が国の場合には山が多くて雨が多いし、大雨が降れば土砂が流れる、そういう面で水田農業が果たす役割は、国土保全環境保全という観点から決定的な役割を持っておると思うんです。  これは随分我が国主張しておるところであろうと思いますが、このような観点から、もっともっと強くこの農業の持つ多面的な機能というものをWTOの中で評価さす、このことが非常に大事だと思うんですが、これはいかがですか。
  10. 中川昭一

    中川国務大臣 まさにおっしゃるとおりで、多面的機能というのは、私は国際的に通用する共通ルールだと思います。そして、それを個別に申し上げるならば、やはり各国それぞれの事情があるんだろうと思います。  そういう意味で、我が国国土条件、山が非常に高くて細長くてとか、雨が多くてとかという条件、そしてまたアジアモンスーン気候であるというようなのが我が国特殊性であり、それぞれの国にあるわけでございますが、そういうようなことに対しての貢献機能というものを各国それぞれ持っておるわけでありますから、それが一言で言えば共通ルールとして多面的機能重要性というものとして集約されると考えております。
  11. 辻一彦

    ○辻(一)委員 私は、食料主権食料安保という考え方とそれから農業の多面的な機能という役割、このことがWTOの国際的な場でしっかり認識されないと第二次関税維持することは容易でないという感じがします。  時間の点から多くは申し上げませんが、関税問題に少し入りたいんです。  平成四年の十一月ですが、ここの小平さんらも一緒に私たちはガット本部に参って、その帰りにECのマクシャリー農業大臣に会って関税論議をやったことがあります。そのときに彼は、午前中にバナナ関税農相理事会で決めて二〇〇%の関税をかけるようにしたから、これでもうバナナは域内には余り入ってこぬだろう、だから日本関税化に移して高い関税をかければ米を守れるのではないか、こういう論議を向こうの方から展開してきたわけですね。  我々も随分反論しましたが、ポイントは、当時、七〇〇%ぐらいが内外の格差である、こう言われたので、確かに今その関税をかければしばらく入ってこぬでしょう、しかし、貿易立国我が国がそういう関税をいつまでも維持するのはなかなか容易でない、年がら年じゅうそれを批判されて下げざるを得なくなれば、下げただけ米が入ってくる、そのためにアメリカは、アーカンソー大学等では、関税化をし、下げたときに米が輸出できるようにというので、品種改良を中粒種に向けて大々的にやっている、こういう状況を見ると関税化ではなかなか日本の米は守れないということを当時言って、物別れになったことがありますが、関税化日本の米と農業は守れると考えていらっしゃるかどうなのか。
  12. 中川昭一

    中川国務大臣 前回の経緯先生もよく御存じでございますから申し上げませんが、次期交渉に向かいまして、とにかくこの基本法でも、国内生産基本として、自給率をきちっと設定していこうということでございますから、いかに日本農業食料を守っていくか、これは国民全体にかかわる重要な問題であるというのが最大ポイントであります。したがって、関税の問題だけで、しかもそれを内外価格差等だけでやるということは、我が国としては国民に対しての責務を十分果たすことができないというふうに考えております。  そういう意味で、いろいろな国境措置も含めまして、あるいはこれから議論になると思いますが、国家貿易とかいろいろな側面もあるわけでございますが、そういうものも含めましていろいろな主張をしながら、我が国農業生産を守り、国民に対する安定的な供給の義務を果たしていきたいと考えております。
  13. 辻一彦

    ○辻(一)委員 この一月にも、私は、ペルーのリマで開かれたアジア太平洋議員フォーラムに参加をして、その帰りに、アメリカ南部諸州、ミシシッピの下流にありますニューオーリンズというところに寄りまして、現地の全農の皆さんや地方のいろいろな意見をそこで若干聞きました。日本が四月から関税化をとるという状況の中でどういう反応を示しているかということをいろいろと聞いてみたのですが、まだ四月以前のことでありますから具体的ではないのでありますが、中央新聞とかいろいろな動きを見ると、こういうことが考えられる。  まず、日本関税化されるならば、カリフォルニアの米、これは一番日本に合うわけですから、これを日本に送って、そのカリフォルニアの米があいたところは南部の米で補う、そして本格的に関税化が行われ、それを下げさすことができたならば南部諸州は日本向けの米に切りかえていく。既に、アーカンソーあたりのさっき言ったライスランドあたりでは、コシヒカリそれからあきたこまち等は、原種、もとの日本の種を使って十分生産できて生産費が五分の一で上がる、こう言っておるわけですから、そういう可能性が将来考え得ると思うのですね。  だから、アメリカの方は、この間、関税化に移るときにいろいろと異論が出ておったのであります。少し静かになったようでありますが、まずは文句をつけておく、異論があるということを示しておく、しかし、第二次関税の税率を争うよりも、関税化を認めて、その後でいかにして関税を下げさすかということに全力を集中してくるものと私は思います。そこら可能性が非常に強いと思うのですが、これらの中で第二次関税というものが相当な期間これから続け得ると思っているのかどうか、そこらのことをお伺いしたい。
  14. 中川昭一

    中川国務大臣 二次関税議論についても、仮に議論があるにしても、お互いにそれぞれ理屈が当然前提になるのだと思いますが、とにかく、輸出国理屈というのは、WTOの現体制においてもかなりバランスを失した形の体制になっておるわけでございまして、そういうルールを是正するという中で国内農業を守っていく。これは日本だけの主張ではないわけでございますので、そういう中で第二次関税をどういうふうにしていくかということも、我が国農業を守り、国民に対する安定的な食料供給確保するという観点からも、きちっとした主張をしながら我が国主張実現努力をしていきたい、していかなければならないというふうに考えております。
  15. 辻一彦

    ○辻(一)委員 最後に、緑のボックスのことをお尋ねします。  昭和六十二年だからちょっと前ですが、OECDを訪ねてビアット農業局長とかなり論議をしたことがあります。中身は、当時、OECD補助削減対象で物差しをつくって、それで削減をしろという動きが非常に強かった中に、土地改良農村基盤あるいは農業基盤整備削減対象にするという動きがあった、そういうことを私も聞きまして、ビアットさんと一時間ほど論議をしたことがあるのです。湿田が土地改良によっていかに作業ができるようになったか、そういう意味土地改良が必要だということを、泥舟を押す話、大きなげたを履いて腰まで沈むのを防ぎながら舟を押した、そういう体験も若干申し上げたところ、非常に彼は興味を持って聞いておったのですが、いろいろな皆さん努力土地改良基盤整備等削減対象から外されている。これは我が国では非常に大きな金額をかけておるのですから、削減対象になれば大変ですが、これは結構なことだと思うのです。  国土保全環境保全という点、水資源確保という点から、いろいろの日本政策施策がありますが、緑のボックスにいかに最大限入れるかということが大事だと思いますが、これについてどういう対応考えていらっしゃるか、お尋ねしたい。
  16. 中川昭一

    中川国務大臣 我が国の必要な農業施策をやっていくこと、そして国際ルールとの整合性をとること、これが両立することが大前提にあるわけでございますが、とにかく、我が国主張すべきことにはきちっとした根拠がある、したがって、それが認められる、つまり緑の政策として認められるように最大限努力をしていかなければならないと考えております。
  17. 辻一彦

    ○辻(一)委員 時間があればこういう問題で少し詳しくお話を伺いたいのですが、その余裕がないのが残念です。またの機会にしたいと思います。  そこで、冒頭に私も申し上げましたが、ガットウルグアイ・ラウンド反省から、国論の二分は今後のWTO交渉に全く迫力を欠くことになりかねない。そこで、国内食料生産の増大、自給率の向上などで大筋与野党意見一致をするなら政府修正に応ずるべきであると思います。与野党一致の新農業基本法を成立さすということが非常に大事だと思います。内容の詳しいことは後でまたいろいろお話があると思いますので省略しますが、政府は、この修正にも柔軟なる対応をすべきではないかと思いますが、これについて大筋考え方を伺いたい。
  18. 中川昭一

    中川国務大臣 修正内容についてはまだ正確に存じておりませんが、そういう議論理事会の場で出たという話は伺っております。  そもそも、議院内閣制でございますから、国会に提出する場合には与党の了承を得て出させていただき、そしてこれがベストのものだということで御審議をお願いしているわけでございますけれども、最終的には国権の最高機関たる国会の御審議を通じての御判断というものが我々にとっての責務でございますので、そういうものが提案されたならば、そしてそれが決定されたならば、我々としてはそれが拘束されるものというふうに考えております。
  19. 辻一彦

    ○辻(一)委員 さきに我が方の鉢呂議員指摘をしておったと思うのですが、今度、政府WTO交渉方針一つに、食料安保農業の多面的な機能維持のために一定の国内農業生産維持することが必要であり、そのためには生産に結びつく支持も考えなくてはならないということが打ち出されておるのです。  これは私は、我々の考え方は当然でありますが、WTOの中ではデカップリング等経緯から見るとなかなか難しい問題だと思うのです。これらを説得するということは非常に大事だと思うのですが、これについての考えをお尋ねしたい。
  20. 中川昭一

    中川国務大臣 国内生産を守っていくためにさまざまな施策を講じなければいけないということは基本法でも定められているところでございます。その中で何ができるか。できるかというのは、国内的な財政とかいろいろな意味でできるか、それから国際ルール上できるかということも一方では考えながら整合性をとっていく必要があると考えておりますが、そういう中で、我が国としては、現時点整合性のとれる範囲内の施策の中で最大限のものをやっていかなければならない、今後の交渉交渉といたしまして、現時点でやれる範囲内のことを最大限やっていくということが我々の使命であるというふうに考えております。
  21. 辻一彦

    ○辻(一)委員 最後ですが、中山間地に対して一言だけお尋ねしたい。  それは、多くは伺いませんが、いわゆる山村では農協や森林組合や役場、そういうものが一緒になって第三セクターをつくって、耕作放棄地等がどんどん出てくる、そういうものを抱えながらやっている。しかし、赤字がどうしても出てくるのですね。そこで、今回の中山間地対策は、いろいろ対象はあると思うのですが、このような第三セクター支援をする道は考えているのか。  というのは、欧州は山手へ行けば面積が大きくなる、だから一ヘクタールに幾らというお金を出しても効果はありますが、日本山手に行けば逆に面積が小さくなるという中で、日本のやり方があると私は思うのですが、第三セクターに対する支援の道について一つだけお尋ねしておきたい。
  22. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 今御指摘がありましたとおりでございまして、私ども、これまでも特定農山村法の中で、例えば基金を積んで第三セクターに対して出資をする、あるいは活動の支援をする、そういった助成なども行ってきたところでございます。  今回、直接支払いという制度の導入について積極的に取り組んでいるところでございますけれども、第三セクターもやはり中山間地域における公益的機能発揮のための活動を担う一つの大事な要素だろうと思っておりまして、これも直接支払いの対象にしていくというふうな方向で議論が現在進んでおります。
  23. 辻一彦

    ○辻(一)委員 時間の点でこれで終わります。どうもありがとうございました。
  24. 穂積良行

    穂積委員長 次に、小平忠正君。
  25. 小平忠正

    小平委員 二十一世紀を担う大事な我が国食料農業農村基本法、この審議が、五月七日に衆議院本会議趣旨説明が始まって以来三十時間近くに及ぶ審議を経まして、また中央、地方公聴会も開き、国民各層の御意見も聴取しながら今日に至っております。大臣も大変御苦労さまでございました。  昨日の理事懇で、いろいろと政府提案の原案に対し御答弁がありましたが、その中で、審議を通じていろいろと問題点が整理をされてきました。そして論点が集約されてきまして、そういう状況の中で修正をしていこう、そういう土台ができまして協議が調い、昨日、与野党間で一部修正の合意が成ったわけであります。  今ほど大臣、まだはっきりと御承知でないということでございましたが、政府にはこの後、総理の総括を含めまして、はっきりとお手元に行きますので、そこは内々御承知だということをお含みおきいただいて、私から総括の意味質問したいと思います。  特に今回の審議を通じて、さすが十勝の大穀倉地帯出身の農水大臣、政府が用意する原稿を読まずに、肉声でいろいろな角度からの質問にお答えになりました。そのことは私からも敬意を表します。中には意味不明の御答弁もありましたけれども、さすが農業に精通している大臣と、このことは、野党ではありますけれども、まず私からもその真摯な御姿勢に敬意を表しておきたいと思います。御苦労さまでございました。  さて、内容、中身に入っていくのでありますが、私は、今回の基本法審議を通じて、我々もこの審議に入る前から党において基本法の小委員会を設置しまして、そこを中心にいろいろと検討、論議を続けてまいりました。そういう中でこの審議、農水委員会の場を通じて、我が党同僚議員が多々、政府に問題点の指摘をいたしました。そしてそれは当然、野党の務めとして農業を、特に二十一世紀に向かって、生産者はもちろんでありますけれども、消費者国民各層に向かって、本当に効果ある有意義な法律をつくるために政府にその見解を問うてきたのでありますが、残念ながら、全部は我が方の主張はでき得ませんでした。しかし、いろいろと論点の整理の中で大事な要点が修正できましたので、私どもは条件つき賛成、そういう立場で、この法案に修正をしながら賛成をしていきたい、こんなことで総括をしていきたいと思っています。  さて、そういう中で、合意が成った点はそれはまた後でお聞きいたしますけれども、まず最初に、我が党は基本法の前文にこだわってまいりました。  それは言うならば、政府のお答えでは、この法律には一条から五条まで基本理念がしっかりうたわれている、主として最近の傾向では基本法には前文はない、こういう姿勢でお答えがありました。そういう傾向はあったにしても、しかし直近の法案ですか、男女共同参画法案では修正成って前文ができました。しかしそれはそれとして、私どもはまず最初に、各条項に入る前に、農は国の基なり、この精神を高らかにうたい上げて各条項に入っていく、このことが必要である。こういう思いで、小委員会、部会等々の討議を踏まえてそのことを私は質問したのであります。  特に、過般の委員会で私も質問いたした経緯があるのでありますが、農業というもの、特に食べ物というものは、そのとうとさというか、人間は生き物であり、その生命を維持するためにも必要欠くべからざる食べ物を扱うのがこの基本法の根幹であります。そういうところで、重ねて申し上げますが、農は国の基なり、こういうことを訴えてまいりましたが、残念ながらこれは受け入れられませんでした。  そこで、まず最初に大臣、こういうことを踏まえて、今回ここまで来ました審議の中で、新農業基本法を制定し、そしてこれからの農政にかける大臣の決意といいますか、いろいろとるる答弁された経緯を踏まえて、ここでまず冒頭、そのお考えをお聞きしておきたいと思います。
  26. 中川昭一

    中川国務大臣 先生には本当に、きょうスタートする時点でほぼ三十時間近くの議論の中で、大変御示唆に富むいろいろな御指摘をいただいたことに私から敬意を表させていただきたいと思います。  食料農業、あるいは農村地帯施策基本、つまり憲法ともいうべきこの法律を四十年ぶりに根本的に変えていくということでございますから、本当に多方面にわたるいろいろな分野、たった四十三条の条文の中に議論すべき点が非常に多かったであろうと思いますし、現にいろいろな御議論をいただき、そして幾つかに絞られて、最終的に修正の条文ができ上がった、理事会で合意されたというふうに伺っております。  それが御決定いただきましたならば、それも踏まえまして、新しい基本法として、現在置かれておる現状を、厳しいものはそれを打破し、まあまあいいものはさらによくし、そして将来に向かって、生産者はもとよりでありますけれども、消費者国民も安心して食の面については生活ができるような、その基本法としての位置づけというものをこの法律によって新たにスタートさせていきたい。国民的にこの法律の趣旨理解されることによって、国民全体が将来に向かって、文字どおり、先生指摘のように、国民の活動の原点はまず生きることであり、健康なことであり、そのための食料、そしてまた食料農業の果たす多面的な役割がございますので、そういう非常に大きな意味を持った、新しい時代に向かっての一つの原点、例えがいいかどうかわかりませんけれども、ビッグバンの瞬間を今や迎えつつある、これをこの法律の位置づけにしたいというふうに考えております。
  27. 小平忠正

    小平委員 今から四十年前に、いろいろと審議の結果、現行基本法が制定されました。後を歩く我々が今この新しい基本法をつくるに当たり、先達が歩んだ、またつくった現行基本法について思いをめぐらしながら、そしてその当時この大きな作業に参画をした大臣初め、もちろん議員政府当局、それらの皆さんのことを思い起こしながら、今作業をしたわけであります。  ということは、今後、将来にわたってまた同じことが起こり得ると思います。そのときに、我々の後を歩く人たちは、あのとき、いわゆる平成十一年のこのときに、衆議院において、当農水委員会を中心に、審議の結果こういう法律をつくった、そしてこの法律が将来、二十一世紀の中で、それを基本にして、農業の振興のために、そして消費者の命を守るために、国の安全のために、本当にいい法律ができた、こういうふうに評価をしてもらうことが大事であります。ということは、法律がいいだけではだめなのであって、その法律にのっとってしっかり農政を展開して、効果あらしむる仕事をしていくことがこの要諦である、私はこう思います。  したがって、今の大臣の御決意のもとに今後しっかりと取り組んでいく、このことは、当然我々も同じ責任を持っておりますけれども、ぜひその直接の責任者であります大臣初め政府当局に強く要請をしておきたいと思います。  さて、きのうの理事懇談会で、いろいろと論議の結果、論点精査の中で大きくいって三つのことで合意がありました。それは、国内生産基本とするということをもう少し明確に位置づけをしよう、したがって、国内生産の増大を図ることを基本として、そういう字句に修正をして、特に自給率が年々下落の方向の中で、自給率を上げていくことにもつながっていきますし、我が国の大事な食料国内生産の増大を基本とする、そういうことの合意がありました。これは私も評価をしたいと思います。  具体的には、この十五条で、食料の自給目標の中で、その向上を図ることを目指していこうという文言を、図ることを旨とする、そういう修正がございました。このことも、我々の主張政府も到達をし、合意が成ったことを私は評価したいと思います。  そして、あわせて、五年ごとに行われます基本計画の中で、この結果を国会に報告をして、そして世に公表するという、国会報告ということ、私どもはもう一段強めて国会承認ということを考えておったわけでありますけれども、各党との協議の中で、国会報告、こうなりました。  そういうことで、二つあわせてでありますが、まず、自給率の向上を図る、こういうことを明記することは大変意義があり、重要であると思います。これを政府はどう受けて、そして大臣は、特にこの点についてどのように実行していくのか、そこのところをひとつわかりやすく、大臣の肉声でお答えをいただきたいと思います。
  28. 中川昭一

    中川国務大臣 合意された修正案の中に十五条の三項の自給率の目標は「、その向上を図ることを旨とし」という条文が入ったというふうに伺っております。もとより、二条で、国内生産基本とし、この部分も御議論があって、結論が出たと伺っておりますが、それを受けて、その四つの理念をもとに基本計画をつくり、そしてその中での自給率目標について、その向上を図るということは、もともと、国内生産基本ではないという現状を何とか打破したいということは何回もここの場で私自身申し上げたところでありまして、そのためには、自給率を設定するということは、当然下げる目標ではないということは、これはもう御理解いただけるのではないかと思います。  そういう意味で、この向上を旨とするという趣旨は入った形でということを答弁させていただいていたところでございますが、これが新たに、この合意によってより明確な形になって、後ほどの採決で正式に決定をされるということであれば、より明確な形という意味で、それをしっかりと受けとめさせていただきたいというふうに考えております。
  29. 小平忠正

    小平委員 今ほど、大臣のお答えがありましたが、審議の過程の中で、大臣もそのことを御答弁されてきました。私もこの耳で聞いてきました。  このことをしっかり条文に明記して、そしてそれを実行するという、そのことは非常に大きなもとになりますので、ぜひその方向で進めていただきたいと思います。  今同僚の辻先生からも質問があった中で、この自給率の問題を含めて、食料自給の権利、このことが自明の権利である、そういうことの質問もありましたが、実は、我が党の中には、いや、これは権利じゃない、これは義務だ、国は食料自給を、いわゆる自給権という権利どころか、自給する義務があるのだ、もっと強いものだ、そういう意見すら我が党内にあります。  そういう状況の中で、この問題は私は非常に大事であると思いますので、今回の与野党合意の中で自給率の向上を図る、このことは重く受けとめて、今後農政の展開にぜひ御尽力をいただきたいと思います。  さて、もう一点、五年ごとに基本計画を定めるとなっていますが、国会報告、こう義務づけができました。これについて、大臣はこの国会報告ということをどのように受けとめて、そして今後どう進めていかれるのか、そこの大臣の御認識をお伺いしたいと思います。
  30. 中川昭一

    中川国務大臣 十五条の六項で、遅滞なく公表をしなければならないというところを、「国会に報告するとともに、」というふうに修正理事会で合意されたというふうに伺っております。  これが後ほどの採決で御可決いただきましたならば当然そのとおりにするわけでございますが、国会が御承認いただいた法律に基づいて、そしてまた地方団体や農業者消費者皆さん努力責務等々を踏まえて政策を推進していく、その一義的な責任は政府にあるわけでございます。  そういう意味で、公表するということは、もとより、真っ先に国会あるいは国会議員先生方、特に農政関係先生方にイの一番に御報告というかお伝えをする、お届けをするということで、それをもとに委員会、本会議等で御審議をいただくということで十分その実質的な意図は達成できるのではないかというふうに申し上げていたところでございますけれども、こういう条文が追加されましたことによって、より明確な形で国会に対して責任を我々が果たす、そして御審議をしていただく必要があればしていただく、と同時に、また国会の方でもより政策の遂行について大所高所から政府に対してのいろいろな御議論、御指導がいただけるものというふうに考えております。
  31. 小平忠正

    小平委員 これは立法府と行政との関係でもありまして、立法府が報告を受けたならばそれを受けとめて、当然農水委員会の場になると思います、これについて立法府も責任を持ってまた対処をする、そういう方向になっていくと思いますので、政府はこのことの意味をしっかり重く受けとめて、報告ということについてこれから対応をしていただきたい、こう思います。  さて、こういう点、いろいろと論点の整理の中で、これらのことが修正ということで昨日合意になりました。きょう、この後そういうことをお決めになっていくんでしょうけれども、我々はこれ以外にも幾つか修正要求を出したのがございます。  残念ながらそれは実現し得ませんでしたが、この総括の場で私からも特に言及しておきたいことは、三十条というだけでもないんですけれども、農業の経営安定対策、この問題であります。私どももこれについてははっきりと、農業者支援、そういうことを明記して修正要求を出しました。  その意味は、御案内のように、今我が国農業は、自由化と市場原理が導入される中において、特に専業農家、この影響というものははっきりと緩和策を示すべきであり、価格をすべて市場にゆだねていくことは、これは当然無理があります。このことは、我が国だけでなく、アメリカもEUもそこのところをしっかりと踏まえて国内対策を講じております。  私は、特に今我が国農業は、これは釈迦に説法でしょうけれども、大臣もおわかりのように、特に専業地帯というものは兼業の機会がありません。ということは、ほかに働く職場がないわけであります。政府の言う、専ら農業、それをするしかありません。  そういう中で、今申し上げた自由化、市場原理の導入のもとに、価格が急激に低落をするということが起きております。米がその代表でもあります。それで、農家の農業経営に所得減少という形で大きく影響が出ておる。このことはまさしく生産者の経営の破綻にもう既にその現象が出てきておりますし、ひいては、これが地域社会の崩壊にもつながってきている、そういう状況が起きております。  そのことは政府も先刻承知であり、したがって、それがあるから、政府の先般出しました農政改革大綱においても、価格政策見直しに伴う所得確保・経営安定対策の実施という項目のところで「所得確保対策を講じていく。」こうはっきりこの大綱の中で明言いたしております。大臣もこれは御存じですよね、明言いたしております。  それからもう一つは、衆議院行革特で今審議が行われておりますけれども、中央省庁改革基本法を初め関連法案の中で、特に中央省庁等改革基本法の中の第二十三条、農林水産省の編成方針、この中では、幾つか項目がありますが、この第五号のところで、前半は省略しますが、「生産者の所得を補償する政策への転換について検討すること。」このようにもはっきりと所得補償の政策の実施をうたっております。  こういうことを考えると、私は、この基本法には、もう一段踏み込んで経営安定対策、所得補償というものを広く進めることがぜひとも必要だ、こう思っておりますが、残念ながらこのことは今回の合意になりませんでした。  しかし、大臣、このように農政改革大綱でも強くうたっております。こういうことを踏まえて、この問題に対して、なぜ政府はこのことを理解でき得なかったか、また、このことを修正ができなかったか、これについての大臣のお考えをお聞きしておきたいと思います。
  32. 中川昭一

    中川国務大臣 先生指摘のとおり、中央省庁等改革基本法の二十三条五号には、最後のところで、「生産者の所得を補償する政策への転換について検討すること。」という一項目があります。  現在行革特委でいろいろ御議論されておるところでございますが、これにつきましては、いろいろな施策を講じるということがちりばめられていると言いますとちょっと正確じゃないかもしれませんが、まず基本理念の三番目のところで農業維持発展という大原則があるわけでございまして、農業維持発展のためには、やはり農業者がきちっと農業がやれるような対策を講じていかなければならないということで、二十一条、二十二条、そして三十条等でそれぞれの場合に応じた施策を講じるべきであるということがあるわけでございます。  あえて逆説的に申し上げますならば、検討の事項の中には、何でもかんでも所得補償、確保をしなさいということは、なかなかこれは難しいのではないかということで、一定の条件、例えば三十条で言う価格低落時でありますとか、あるいはまた育成すべき農家等々に対する施策でありますとか、そういう状況等に対応して四条の理念を生かした形でさまざまな施策を講じていくということで、はっきりとした条文が明記されていないじゃないかという御指摘は、形式的にはそのとおりでございますけれども、内容的には、あらゆる施策を各条文の中から読み取って、そしてそれをやっていく義務というものが我々にはあるというふうに考えております。
  33. 小平忠正

    小平委員 条文には明記はなかったけれども、そこのところはしっかりそのことも踏まえて今後農政を展開される、そういう御答弁でありますので、ぜひその方向でこの大事な点についても進めていっていただきたいと思います。  時間も来ましたので、最後に私は、今回のこの基本法は、最初の委員会のときも発言しましたが、個別法と違いまして、でき得るならば各党が全会派一致をして、そしてこぞって賛成をして世に送り出したい。そして、それをもとに、この基本法をもとにこれからの農政の展開を進めていきたい、こういう私なりの願いというか希望を申し上げて、それを根底にして、しかし今の政府の原案ではいろいろな面で不備がある、また足らざるところがある。それを修正するように、そこのところを強く要求してきました。私どもの主張する考えすべては通りませんでしたが、これは議会制民主主義のもとで調整、そして妥協があり、この調整ができたことは私も評価をします。  したがって、今回全党一致になるかどうか、そこはまだちょっとわかりません。残念ながら全会派にはなりませんが、まあ大体そういう方向を求めてまいりましたが、私はそういう中で、はっきり言って不備があった政府原案に対し、いろいろと意見を述べてまいりました。長い審議時間の中で、厳しいことも同僚議員から追及しました。これはもうひとえに国のために、国民のために農業をしっかりしていこう、そういう熱情のもとに出た意見であります。  そういう中で、今回この委員会審議経緯を踏まえて、いろいろと出ました意見をしっかり政府も重く受けとめて、そして、これからの大事な我が国農業をしっかり守り育てるために頑張っていっていただきたい。また、我々もそのように頑張る所存でございます。このことを申し上げまして、時間が来ましたので発言を終わります。ありがとうございました。
  34. 穂積良行

    穂積委員長 次に、漆原良夫君。
  35. 漆原良夫

    漆原委員 公明党・改革クラブの漆原でございます。  私は、きょうは各論の方に移ってお話を聞きたいと思いますが、まず、食品の表示の適正化、この問題からお尋ねしたいと思います。  十六条は、食料の安全性の確保を図るとともに、消費者の合理的な選択に資するため、食品の表示の適正化施策を講ずるとしております。この消費者ニーズの多様化、技術開発の進展等によりまして、新製品の開発、生産、流通形態の変化、輸入食品の増加などから、いろいろな情報を表示した食品が今流通しております。この食品の表示は消費者が合理的な商品選択の根拠となっておるものでありまして、表示の適正化を図るということは私は非常に大事なことであろう、こう思っております。  ところで、大臣はアナフィラキシーという言葉を既に御存じのことと思いますが、アレルギーの原因となるアレルゲンが体に入った後に、二時間以内ぐらいで急激に起こる即時型の激しいアレルギー反応がアナフィラキシーと言われております。その症状は、どういうことかといいますと、じんま疹、顔面のむくみ、口やのどのはれ、むくみ、またぜんそくの発作、吐血、嘔吐、下痢、呼吸困難、血圧低下、失神、心停止などでありまして、最悪の場合は死に至ることもあるというふうなことが言われております。そして、そのような症状を引き起こす原因となるアレルゲンというのは、何と卵だとか、大豆だとか、小麦、牛乳、ナッツ類、魚介類、穀類、私どもが通常口にするものなどがその原因となっているようでございます。  先日、私の知り合いの方で、アレルギー患者のお子さんを持つ親御さんがおりましたので、お会いしてまいったわけでございますけれども、毎日、朝、昼、晩と毎食の食品のすべての成分表示を一つずつ点検しながら生活を続けているということでありました。その御苦労は本当にはかり知れないという思いを持ったわけでございますが、それ以上に、表示されていない成分を微量でも含んでいた場合、このアナフィラキシーと言われるアレルギー症状で、呼吸困難を起こして救急車で何回も運ばれ、命に及ぶこともあった、そういう経験を話しておられました。  また、別の人は、今九歳の子供なのですが、五カ月ぐらいのときにパンがゆ、パンと牛乳をまぜて一さじ子供に飲ませたところ、一分もたたないうちに口の周囲がはれて、十五分後には全身が膨れ上がり、目も開かない状況で、三十八度の発熱、嘔吐、下痢の症状、病院で処置をしてもらった。現在九歳で、小学校に通って、ステロイド剤などを携帯して通学中でございますけれども、遠足だとか合宿、行動範囲が広がると、その出ていった先で何かあったとき処置がおくれるのではないかと大変心配をお父さん、お母さんがされている。こんなふうな話をたくさん聞いてまいりました。  このようなアレルギー症状の皆さんにとって、食品の表示はまさに私は命を守る道しるべだというふうに、全くそう実感として感じてまいった次第でございます。そんなわけで、微量の原材料、添加物も含めた全面表示をぜひとも義務づけるべきであるというふうに考えておりますが、所見はいかがでございましょうか。
  36. 福島啓史郎

    ○福島政府委員 先生指摘のように、国民の安全で豊かな暮らしの確保が重要な政策課題となっているわけで、農政におきましても消費者の視点を重視し、食品の消費形態の多様化や、あるいは味、鮮度、健康、安全に関する関心の高まりに対応した政策展開を図ることが、消費者生産者、流通業者から要請されているところでございます。また、今回の基本法案におきましても、先生指摘のように、十六条に「食品の表示の適正化その他必要な施策を講ずるもの」という消費者視点からの施策の方向が示されているわけでございます。  こうした認識のもとに、今国会に提出し御審議をお願いしておりますJAS法の改正法案におきまして、商品に関する事実、価値が正しく消費者に伝えられて、消費者が自己の判断により適切に商品選択を行えるようにするためのよりどころとして、一般消費者向けのすべての飲食料品につきまして適正な表示を行わせるための措置を講ずることとしているわけでございます。具体的には、生鮮食料品につきましては原産地の表示、加工食品につきましては、原則として食品添加物を含め原材料はすべて表示しているところでございます。  また、先生指摘のアレルギー関係でございます。  これにつきましては、コーデックスという国際的な機関でございますこの表示部会でもって議論が進んでおります。そうした議論の動向も踏まえながら、表示の基準を具体的に定める際に、コーデックスの議論の動向も勘案して定めてまいりたいというふうに考えております。
  37. 漆原良夫

    漆原委員 この中野のお子さんの場合は大豆が原因のようなんですね。豆腐をちょっと口やほっぺたにつけただけで瞬時にしてはれ上がっていって、大変けいれんを起こしてしまった、こんな状況のようでございます。したがって、そういう食品の中に大豆が入っているかいないのか、大豆の加工物が入っているのかいないのかによって、本当に注意をして、点検をしながら食事を子供に与えているんだ、ある意味ではスーパーで物を買えない、こういうふうな心配があるようなんですね。  したがって、万一微量でもそういうものが入っていた場合には、先ほど申し上げましたように命にも及ぶ、そういう事態が発生するわけでございますから、どうかその点ひとつ、微量な場合でもきちっと表示をされるようなそういう体制に持っていっていただきたいと心からお願い申し上げておきます。  それから、今既に、遺伝子の組み換え食品を原料とする食品がたくさん市販されております。現在、EUを初めオーストラリア、ニュージーランド等では、遺伝子組み換え食品を原料とする食品等の表示を義務づけておるようでございますが、遺伝子組み換え作物のつくり出す物質が新たなアレルゲンとなる可能性が今大変憂慮されておるわけでございます。そういう意味で、全食品に遺伝子組み換え技術の使用、不使用という表示、これもぜひとも義務づけてもらいたいという強い要望がありますが、いかがでございましょうか。
  38. 福島啓史郎

    ○福島政府委員 先生御案内のように、現在商品化されております遺伝子組み換え食品につきましては、厚生省に設置されております食品衛生調査会でもって、アレルギー誘発性も含めまして安全性評価が行われたもの、これが商品化されているわけでございます。  農林省におきましては、先生言われましたように、消費者への情報提供という観点からどういう表示が適切なのかということを平成九年五月から食品表示問題懇談会で検討をしているところでございます。  世界の動向を見ますと、いわゆる遺伝子組み換え食品につきまして、義務表示とするEU型と、それから任意表示でよいとするアメリカ、カナダ型と二つの考え方があるわけでございまして、そういった、大きく分かれております考え方につきまして、食品表示問題懇談会におきまして検討を進めているわけでございますが、これにつきまして、もう少し科学的あるいは技術的な観点から、表示の信頼性なり実行可能性観点につきまして検討する必要があるということがこの一月の食品表示問題懇談会におきまして出まして、このための小委員会を設置して、現在検討しているところでございます。  また、昨年八月には、遺伝子組み換え食品の表示のあり方につきましてのたたき台を提示しまして、パブリックコメントを求めたところ、一万件を超える多数の御意見をいただきまして、消費者の表示を求める声は強いというふうに受けとめているわけでございます。  今後、この小委員会で、技術的、科学的検討を今月中に行いまして、これを踏まえまして懇談会としてさらに検討をし、遺伝子組み換え食品の表示のあり方につきまして取りまとめを行っていきたいというふうに考えているわけでございます。  農林省としましては、この懇談会の取りまとめを踏まえまして、遺伝子組み換え食品の表示ルールを確立し、適正に実施してまいりたいというふうに考えております。
  39. 漆原良夫

    漆原委員 本当に、表示によって情報提供をするわけでございますけれども、こっちがいいのか、よりこっちがいいのかという比較の問題ではないということを、患者の皆さんにとっては、こっちでもこっちでもいいんだけれどもこっちの方がよさそうだ、そういう観点からの情報提供じゃなくて、こっちの方が命の危険性があるのかないのかという観点から、ぜひとも表示をしてもらいたいという御要望でございますので、どうかその点ひとつ含んでいただいて、早く結論を出していただきたい、これを要望しておきたいと思います。  それから、患者の皆さんから次のような切実な願いを聞いてまいりました。  アレルギーに有効な治療法というのは一般に長期間に及び、治療費も大変高額となっております。お金のために、医療費が高いから治療をやむなく中断し症状をさらに悪化、慢性化させる例も多く、患者増加の一因とも言われております。しかも、これらの多くは所得税の医療費控除の対象として認められておらない。また、医師の指導のもとに行われるこういう費用は、明らかに治療を受けるため直接必要な費用であり、少なくとも所得控除されるべきものと私は考えております。あるいは、これら治療に必要な購入費用を医療費控除の対象として認めてもらいたい、こういう要望がございます。  また、長期に続くアレルギー患者の大きな経済的負担を和らげるためには、アレルギーの検査費用や入院費用それから医薬品費用の本人負担を軽減してもらいたい、こういう要望もあります。  何らかのアレルギー疾患を持った人の数は、日本は今増加の一途をたどっており、また重症化しておるのが現状でございます。特に、生命にもかかわるアナフィラキシーを起こす例が急増しており、食物やさまざまな化学物質が原因となって起こるアレルギーの発生の解明と効果的な治療法の確立が今待たれております。  私は、今回の食品の表示の適正化を機に、農水省、厚生省、大蔵省が一体となってぜひともアレルギー総合対策というものを講じていただいて、政府一体となってこの問題に取り組んでもらいたい。これをぜひとも中川農林大臣にお願いしたいんですが、いかがでございましょうか。
  40. 中川昭一

    中川国務大臣 今、先生、具体的な例をお示しになりながらアレルギーの問題と食の問題について御指摘がありました。  個人的な話で恐縮ですが、私の子供もアレルギーの時期がございましたが、とにかく今、税制あるいは財政面含めて総合的な対策をということでございます。まず原因、なぜ起きるのかということが、私は全く素人でございますけれども、それぞれ今いろいろ具体例を挙げながら御指摘になりましたが、なぜアレルギーが起こるのか、起こる人と起こらない人がいるのかということも含めてきちっとした原因究明を、厚生省なりあるいはまたほかの関係各省庁といわゆる科学的な知見を集積して、省庁横断的に総合的に分析をして、それに対してどういう対策がとれるのかということを、さまざまな措置を含めて、また各省とよく連絡をとりながらやっていきたいというふうに考えております。
  41. 漆原良夫

    漆原委員 ぜひよろしくお願いいたします。  次に、青年農業者の育成それから確保についてお尋ねをしたいと思います。  農業の担い手不足が今や中山間地はもとより平たん地域まで及んでおります。平成九年の新規学卒就農者は二千二百人でございました。また、平成九年のUターン、離職就農者五万四千人でございますが、三十九歳以下の青年は七千五百人、こう言われております。農業者数が一貫して減少しているのに加えて、農業労働力の高齢化、平均六十歳というふうに言われておりますが、急速に進んでおります。  こうした中で、農業に従事する青年をいかに確保し、育成していくのか、我が国農業維持発展にとって大変大きな問題であろうと思っております。農業従事者のうち、青年の占める割合をどのように把握しておられるのか。全農業従事者の数、それから三十九歳以下の青年の数、青年の占める割合、この三つについてお聞きしたいと思います。
  42. 樋口久俊

    ○樋口政府委員 農業就業人口、そのうちいわゆる青年農業者の数についてお尋ねがございましたので、今手元にございます中で、新しい九年の数字をお答え申し上げたいと思いますが、農業就業しておられる方々、男女合計で三百九十三万人ほどでございます。そのうち、三十九歳以下、いわゆる青年農業者と言われる皆さんが四十一万三千人で、比率にいたしますと一〇・五%ということでございます。  なお、先生先ほどお話ございましたが、新規に就農される方々、その同じ年の数字で三十九歳以下が九千七百人で、そのうち新規学卒者二千二百人を引きますと、別のルートといいますか、新規に就農される方が七千五百人、これは先ほどお話があったとおりでございます。
  43. 漆原良夫

    漆原委員 現在農業に従事している青年の中には、将来の農業経営に大きな夢を持って、一生懸命に頑張っている人がたくさんおられるというふうに思います。そのような青年たちが日々の農業経営についてどのような悩みを持って、どのような不安を持っているのか、政府はこういうふうな意欲ある青年たちの声を今日までどういうふうな格好で吸収してこられたのか、お聞かせ願いたいと思います。
  44. 樋口久俊

    ○樋口政府委員 将来の日本農業をしょっていただく農業者皆さんがどういうことをお考えになっているか、私どもとしても大変関心があるところでございますし、またそういう皆さんの声にいろいろな形でおこたえできるということが私たちの使命でもあると思っているわけでございます。  日ごろは、こういう青年農業者皆さんの声を聞きながら、技術あるいは経営などに関しましていろいろな悩みをお持ちでございますから、適切に対処できるようということで、現場では、農業改良普及センターの普及員とかあるいは農業試験場の県の専門技術員、そういう皆さんが相談に応じておられます。また、こういう若い人たちの活動の場といいますか、農村青少年クラブの組織活動というものを通じましても連帯感を養ってもらっているという面がございます。  こういう青年農業者皆さんの声をまとめて、これまで二度ほど調査をしたものがございますので、若干御説明いたします。  平成五年と七年に二回ほど調査をしておりますが、一つは就農の動機というものが、いろいろあるんですが、多かったのが、就農すれば自分たちの創意工夫が生かせるだろうという思いがあったことが一つございます。それから、比較的時間的に自由な行動がとれるのじゃないかということがございました。これが比較的割合が高くて、そういう面の魅力に皆さんが興味を覚えられたのじゃないかと思います。  一方で、悩みとか不安というのも確かにあったわけでございまして、所得、あるいは営農資金がなかなか十分に準備できないといいますか、そういう面での不安があったというのが一つ挙げられております。それから、経営や技術面を十分身につけておられないということでございまして、そういう技術面の指導や、十分情報が自分のところに手に入らないということについて不安がおありになったということでございます。  私どもとしては、このような将来担い手となっていただく皆さんのニーズにどういうふうに対応するか、こういうニーズをくみ上げてきめ細かな支援策を講ずるということが、青年農業者の育成の面から大変大事なことじゃないかと思っております。
  45. 漆原良夫

    漆原委員 先ほど、青年の占める割合、一〇・五%というふうにお聞きしたわけでございますけれども、私自身、まことに、将来先細りという不安を、本当に大丈夫かなという不安をいっぱい持っております。  今までいろいろなことを政府はやってこられたとのことでございますが、青年農業者が減少している、ふえない、この理由についてどのように分析されているのか、また、確保、育成のためにどのように取り組んでこられたのか、今日までの政府施策に対する総括をしていただきたいと思います。
  46. 樋口久俊

    ○樋口政府委員 先ほどもお話し申し上げましたけれども、次代の農業の担い手ということで、効率的、安定的な農業経営を担う人材となってほしい。しかし、先ほどお話をしましたのは、不安といいますか、なかなか踏み切れないようなところがある、あるいは経営上個別のいろいろな問題もあったんだと思います。  そういう面から人数は減ってきておりますが、このところ、ちょうどお話をしましたような数字になりまして、平成四年を底にしまして、新規に就農される方が逆にふえてきているわけでございます。これは、一つは私どもがお話をしましたようないろいろな施策があずかって効果があったかなとは思っておりますけれども、それでも一番大事なことは、青年農業者がいろいろなニーズをお持ちだ、今お話をしましたようなことに対応した施策を展開していくということが大事だと思っております。  その中で、いろいろな隘路といいますか、越えないといけないハードルがあるわけでございます。大きく分けまして三つほどございまして、端的に申し上げますと、一つは技術の問題、それからもう一つは資金の問題、最後に、農業をおやりになる場合はどうしても一定の農地といいますか、生産基盤が必要でございまして、そういう面をどうやって確保していくかということが新たに就農される場合のハードルになるんだと思いまして、その辺の対応を我々としては十分していかないといけないのかなと思っております。
  47. 漆原良夫

    漆原委員 青年を農業に引きつけるためには、何といっても明るい、夢のある農業の将来展望を示すことが絶対に必要だろうというふうに思っています。そういう意味で、今回の新基本法には、青年のためにどのような夢が、どのような将来が展開されているのか、そこをお聞きしたいと思います。
  48. 樋口久俊

    ○樋口政府委員 先ほどお話ししたことと若干ダブる面もございますけれども、技術の面を身につけていただくために、例えば農林省にもございますし、各県にもございますような農業者大学校というようなもの、あるいは普及センター等でいろいろな研修教育を、いわば生涯教育みたいな形で結びつけながら身につけていただくということが一つだと思います。  それから、先ほど先生からもお話がございました、農村における生活を魅力あるものにしていただくというためには、経営の中での位置づけが大変大事なことだと思います。そのためにも、経営の中でよくその地位を確立していただくというために、私どもとしては、家族での経営協定を結んでいただくというような指導でございますとか等々、対応をしながら、青年農業者の方が農業の中で十分魅力を感じながらやっていただける、そういう方向を、この法案の中でも、趣旨に沿いながら対応していくということが必要じゃないかと思っております。
  49. 漆原良夫

    漆原委員 私、余り今、そうですかと言えない、これが夢ですかという感じは受けておらなかったのですが。  この前、私、長野県の田舎の農家の方に行ってきたのですが、四割も減反だというふうに聞いております。減反政策というのが農家の活力をなくして、また後継者の意欲をなくした大きいものがあるんじゃないかな、こう思っておるんですが、しかし、日本の農政からいって、減反はやらざるを得ない、私もそう思っております。しかし、四割も減反を余儀なくされている、これはもう若い人にとってみて、自分の将来はどうなるのかなという不安は必ずあると思うんですね。  したがって、減反政策をとった、それはやむを得ないとしたら、何か別なもので後継者に夢を与えていく、こういうふうな施策はないんでしょうか、あるんでしょうか。お答えいただきたいと思います。
  50. 中川昭一

    中川国務大臣 確かに、自分の持っている水田の四割が米をつくることができないということ、特に青年の皆さんにとっては、これからの長い営農活動の中で非常に不安になりがちだということは、十分理解のできるところであります。  米に関して申し上げますならば、勝手につくっていいよということが最終的には生産者全体にとってプラスにならないということを御理解いただいた上で、自主的にやっていただき、それを行政がバックアップさせていただくという体制になっておりますけれども、ここから先は、国が何をやるべきだということは私自身は余り、むしろ、皆さん方のいろいろな御意見、成功例、失敗例等々をなるべく聞くようにさせていただいております。  例えば、外国なんかの例でいきますと、農村民宿なんかで体験型の農業を都市の人間との交流の中でやらせるとか、あるいはまた、都市の子供たちとそういう自然との触れ合いのことをやるとかいったようなこと、これは先日フランスで見てまいりましたが、実際ビジネスとして十分成り立っている地域というか、随分しっかりとしたガイドブックもでき上がっておるわけでございまして、そういう体制づくりなんというのも一つの方法かな。  それから、もっとベーシックな話としては、他作物でどういうものがこれから国民のニーズにこたえていけるのかということに対する情報のネットワーク、アンテナを高くするということによって、青年という点に焦点を当てた御質問でございますから、青年の意欲と、そしてまた感性とを十分に発揮して頑張ってもらいたい。そして、そのために支援できるものは何であろうかということを、むしろ、我々が押しつけるというよりも、こういうことをしたいんだということに対して行政がバックアップできるようなフレキシブルな体制というものをつくっていくことが、まずとりあえず我々のやるべきことではないのかなというふうに考えております。
  51. 漆原良夫

    漆原委員 若い人が、一生の仕事として職業を選択する、一生の仕事として、農業を選ぼうか、あるいは別のところへ行ってしまおうか、これはもうある意味では一生の重大事でございます。そういう意味では、農業選択したい、親の農業を継ぎたい、こう思ったとしても、安定した所得の確保とそれから将来の所得の拡大、こういう展望をきちっと示しておかなければ、私は、青年農業者確保というのは不可能ではないのかな、こう思います。  この青年たちに、どのような所得の安定と拡大の展望を示していくのか、そしてまた、労働時間とか休日、祭日などの労働条件も、ほかの労働に比べて、他産業従事者に比べて、余り過重なものであってはならない、このような、明るいめり張りのある農業の確立に、政府はどのような施策を講じていかれるのか、お尋ねしたいと思います。     〔委員長退席、赤城委員長代理着席〕
  52. 樋口久俊

    ○樋口政府委員 今お話ございましたように、所得の確保あるいは労働条件の改善、これは大変大事な要件ではないかと私どももおっしゃるとおり考えているわけでございます。  一つは、所得の確保につきましては、消費者や実需者のニーズに即した農業生産を行いながら市場の評価が所得の向上につながるような施策、そういうものを推進するということで、収益性の高い経営確立に向けた環境を整備する必要があるんじゃなかろうか。  一、二事例を挙げさせていただきますと、集出荷施設等の整備や農地利用の集積等を行いながら生産手段の充実をすることによりまして生産性を向上していく、あるいは生産コストを低減するということが一つございます。それから、先ほどもちょっとお話をしましたが、普及活動等を通じまして技術や経営のノウハウを一層向上させてもらう。それから、いろいろな販売ルートで提供するということ、あるいは、流通業者や消費者との連携によりまして経営の多角化や高付加価値化を図っていくということが大事じゃなかろうか、こういう対策を講じていくということでございます。  なお、その際、法律の条文にもございますが、価格の著しい変動が意欲ある青年農業者皆さんの経営に影響を与えるということ、そういうことを緩和するように経営安定対策を講じていくという条文が設けてあるわけでございます。  また、労働条件の改善につきましては、北から南までいろいろな条件が違うところで経営をされるということでございますので、例えば、自然条件の厳しいといいますか、そういうところで作業されるに適した農業機械を開発するとか普及するとか、あるいは、ハウスの施設内で働かれる労働環境の改善のための設備を研究する。  それから、就業条件の改善に関しましては、法人化を図るとか、先ほどもお話ししましたが、家族経営協定を締結していくとか、あるいは、例えば酪農なんかでは、ヘルパー制度等々を活用していただきまして地域内の労働力を十分生かす、そういうことによりまして農作業の労働ピークを軽減するとか、いろいろな施策を講じていくということで、お話のございました所得の確保や労働条件を改善するという対応をしていくということを考えているわけでございます。
  53. 漆原良夫

    漆原委員 今までの価格政策から市場原理を導入したということで、先回も少し御質問申し上げたんですが、市場原理の導入によって今一番不安になっているのが、実は専業の大規模農家なんだという話を申し上げました。  それはなぜかというと、市場原理に移った場合の所得政策というのは具体的にまだ政府の方で示していないということが一番大きな理由だというふうに先回申し上げたんですが、今各項目別に検討中だというふうに聞いておるんです。ぜひとも、早くその検討結果を出していただいて、農家の方を安心させていただきたいということを強く望んでおきたいと思います。  農業資産の相続についてお尋ねしたいんですが、我が国では、相続人は均等相続となっておるわけでございます。長男が親の後を継いで一生懸命田んぼで仕事をしてきた、次男、三男、四男が、東京に出て全く農業に従事していない、だけれども、相続の段階になると全部東京からやってきて平等な相続分の請求をする、これが民法の大原則になっておるわけなんでございますけれども、もしも長男が農業を継続しようと思うんであれば、ほかの相続人のいわゆる相続分というのを現金で買い取らなければならないという大きな負担があるわけですね。そうでなければ、みんなで分配してしまって土地がなくなってしまう、こういう結果、民法はそういうふうになっておるわけでございますけれども、こういうぐあいでいいのかなと。  この農地の細分化の防止、それから農業資産の継承についてお考えがあれば、お尋ねしたいと思います。
  54. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 御指摘のとおり、相続によって農地が分散、零細化するというのは何としても防止をする必要があろうかと思います。そういう観点から、先生も御承知のとおり、生前贈与あるいは相続税に係る納税猶予といった措置がとられておりまして、あらかじめ指名をした相続人に農業経営を移していくという推進策がとられているわけでございます。  先生がおっしゃったように、残念ながらそうはならなくて、何人かの相続人に分割して相続をされるというふうな事態が起こります場合には、やはり農地の分散、零細化ということが生じ得ますので、その点につきましては、相続に必要な資金について、農林漁業金融公庫、具体的には自作農維持資金というのを、これは額でいいますと八百万円、金利一・七%という形で低利の資金を融資いたしております。  それから、私ども、もう一方で、この法律案の中にも書いてありますけれども、法人化を進めることによって、農地を出資して持ち分という形で農業経営に参画をしていただく、経営が円滑に移譲されるというふうな方向をあわせて推進したいと考えております。
  55. 漆原良夫

    漆原委員 地縁、血縁関係による経営承継、これも大切であります。また、農村の外部から新たに入ってくる新規参入者、これを円滑に受け入れていくことも大事だろうと思います。この新規参入者に対する支援策、どのような対策を考えておられるのか、これをお聞きしたい、こう思います。
  56. 樋口久俊

    ○樋口政府委員 新規に就農される場合の隘路、端的に言いまして三つあると先ほどお話をしましたが、例えば技術の習得に関しましては研修教育をやるとか、それから、典型的には就農前の技術習得のための無利子の資金、就農のための準備の資金を貸し付けるというようなことがあったり、それから、三番目に言いました農地確保につきましては、いろいろな情報を提供するということで、新規就農ガイドセンター等々で情報提供するというようなことを進めてきているわけでございまして、そういうことをやることによりまして、都市で育たれた青年あるいは他産業から農業に参入される中高年齢者などを含めて多様なルートから新規の方が幅広く確保されておりますし、その皆さん方のニーズにこたえているわけでございますが、さらにそういう就農相談や研修等の支援策を強化するとか、それからリース農場事業というような事業もございますので、経営継承の円滑化をするとか、それからさらに、学校等での農業教育まで含めて支援をする、そういうことで文部省とも御相談をしておりますし、そういう全体の対策を積極的に進めることによって、一層新規就農者のためのニーズにおこたえするというようなことで対応していきたいと思っております。
  57. 漆原良夫

    漆原委員 農家の嫁不足、これは青年たちにとってまことに深刻な問題だろう、私はこう思っております。最近では東南アジアの女性に募集を呼びかけているというふうなことも聞き及んでおります。  女性に魅力のない農業が、若い青年たちにとって魅力のある農業であるはずはないと思います。この点、農政改革大綱では、「配偶者問題への対応も考慮し、都市住民の農山漁村に対するイメージを改善するため、農林漁業に関する情報の発信・提供、農山漁村の青年と都市の女性の交流促進等農山漁村・都市交流を促進する。」こういうふうな文言があるわけでございますが、この農政改革大綱は嫁不足の原因を農村に対するイメージの問題としてとらえ、その解消のために、情報の発信だとか都市部の女性との交流促進を挙げているわけでございますが、こういうとらえ方というのは、私はまことにこれは表面的であろうというふうに思っております。  これはこのまま聞いたら、意欲ある若い青年たちは怒ってしまうんじゃないかなというふうに思うのですが、この嫁不足の原因というのは、日本農業の将来に魅力がないからだ、私はこういうふうに思っておるのですが、この点、どのように御認識されていらっしゃるでしょうか。     〔赤城委員長代理退席、委員長着席〕
  58. 樋口久俊

    ○樋口政府委員 私ども、昨年、幾つかの調査をいたしてみました。その中の調査の一つで、若い女性の皆さん農業農村を、非常に平たい言葉で言いますと、敬遠をされるというようなことがあるわけでございまして、そのときに、どういう理由でそういう感覚をお持ちなんだろうかということを、理由を挙げていただいたわけでございます。  幾つか御紹介いたしますと、やはり農村ではいろいろな因習や慣習、あるいは近所の目が煩わしいというようなことがあるのではないか。あるいは、今お話ししましたように、農村の伝統的な生活慣習に根差すもののほかに、文化、娯楽、教養施設の不足、それから農作業がなかなかつらいんだろう、そういうイメージで農村に対する感じをお持ちだということが、一応調査の結果、出てきております。
  59. 漆原良夫

    漆原委員 私は、農業に従事している青年たちに、まず夢と希望を与えることなんだというふうに思っております。この青年たちが自分の農業に誇りを持って、将来に大いなる夢と希望を持って一生懸命に農作業に汗を流している、そういう青年に必ず女性は魅力を感じるものだというふうに私は確信しております。  農業に従事している青年たちに夢と希望を与えることこそ、私は最も大事な嫁不足解消だというふうに思っておりますが、この青年たちに自信と誇りと夢と希望を与えるために、政府はどういうふうな政策をとろうとされているのか、ぜひお尋ねしたいと思います。
  60. 中川昭一

    中川国務大臣 ちょっと古いアンケートですけれども、日米の高校生に将来何になりたいかというアンケートを同時にやったのを今思い出しました。アメリカは、一に牧場主、そしてベストファイブぐらいに政治家というのが入っているわけでありますが、日本の場合には学校の先生、弁護士さん、会社経営とか、それはそれでいいのでしょうけれども、残念ながら牧場主、いわゆる農業というのが入ってこない。政治家も、たしかベストテンに入ってこなかったと思うのでありますけれども。やはり小さいころからそういう自然と親しむ機会がない、あるいは食料、あるいは自然に対するとうとさというものの意味理解しないということが一般論としてあるのではないか。  したがいまして、有馬文部大臣ともその辺を、特にこれは非農業地帯の教育というものを今一緒に頑張ってやりましょうということでやっておりますが、先生の御指摘は、農業の方に入ってくる、特に農村地帯の人々、あるいは新規に入ってくる人々に対して、やはり魅力ある産業であり、また、生涯そこに住み続けていたいというふうなインセンティブを持たせるための施策というのは、もちろん経営面のメリットというものもあるでしょうし、生活環境の豊かさ、いわゆる多面的機能一つの部分としての役割の増進というものもあると思います。  そういう意味で、経済的にも将来的にも展望の持てる、そして美しい農村づくりというもの、そしてまた、やはり農村のメリットというのがあるわけでありまして、自然との触れ合いはもとよりでありますけれども、人と人との温かい触れ合いの場、コミュニティーといいましょうか集落といいましょうか、そういうもののメリットというものをさらに増進をし、外から見て、ああ、あそこで仕事をしたいな、住みたいなということで、一に農業政策だけではなくて、やはりこれは地方行政あるいはまた環境行政、教育行政等々を含めて、全国十四万集落、それぞれが少しずつ違いますので画一的に申し上げることはできませんけれども、自治体とよく相談をしながら、特に若い人たちが魅力の持てるような地域づくり、そして農業経営づくりというものの増進のための出発点として、この基本法というものも位置づけていきたいなというふうに考えております。
  61. 漆原良夫

    漆原委員 それでは次に、女性の参画の促進についてお尋ねしたいと思います。  法二十六条は、女性が農業経営及びこれに関連する活動に参画する機会の確保促進について規定しておりますが、確かに、農業就業人口の六割を女性が占めている。男性の八割以上の時間を費やしている。また、家庭にあっては家事、育児、高齢者の介護、これも女性が行っているわけでございます。しかし、農村女性の農村における地位というのは大変低かったと言わざるを得ません。  農村女性の役割を十分に発揮し、農村における女性の役割が十分に評価されるためには種々の条件整備が必要であります。その前提として、本法案に、女性の参画の促進を図る、そういう規定が新たに設置されたことの意義は大変大きいものと私は評価しております。  女性が従来の家とか村社会での労働力の補完といったいわば従たる地位から個としての主体性を獲得するために、どのような活動、どのような意思決定の場に参画すべきと考えておられるのか。また、その実効性の担保としてどのような方法をおとりになるのか。その辺をお尋ねしたいと思います。
  62. 樋口久俊

    ○樋口政府委員 お話ございましたとおり、全体の農業就業人口の中で女性の方が六割を占めておられますし、農業経営の中では大変重要な担い手であると考えておるわけでございます。また、農家の生活の運営や、地域生活における維持活性化にも大変大きな貢献をしていただいていると思っております。  そういうことでございますので、女性が意欲を持って農業に取り組んでいただける、そういう環境づくりが大変重要だというふうに考えているわけでございます。  しかしながら、農業経営におきます女性の皆さんがどういうふうに評価されているか。その役割重要性の割に、現実にはその御苦労に対する評価は必ずしも十分ではないのではないかと考えているわけでございまして、農林水産省としましては、女性の皆さんが、対等なパートナーとしてそういう農業経営等に参画をしていただけるということをねらいとしまして、一つは家族経営協定の締結ということを進めておるわけでございます。その中で、家族員の役割の分担や、例えば休日を設定する等々、就業条件を明確にしていただくということを進めております。  また、もう一つは、農協などの役員になっていただくということで、農山漁村におけるそういう社会参画、意思決定の場へできるだけ出ていただくということを進めようではないかということでございます。  それから、何より、やはり経済的基盤をお持ちになるということがその地位にとって大変重要なことではなかろうかということを考えておりまして、女性の皆さんが農産加工などをおやりになるというようなときに、そういう農林漁業関連の企業活動に取り組まれる際の資金の支援をしようではないかということで、無利子の融資をするというようなことでお手伝いをするということを積極的に進めております。  いずれにしましても、農村は、どうしてもこれまでのいろいろな経緯もありまして、男性優位で家中心といった社会構造は否定できないわけでございまして、そういう中で適正に評価されるということが重要でありますので、今お話をしましたことでございますとか、それから全体の、行動というと適当かどうかあれですが、農山漁村女性の日というようなことで三月十日を定めておりまして、そういう運動をやるとか、普及組織では、夫婦セミナーをやる、そういうことで、女性の皆さんの個としての主体性の確立とか、そういう面にも配慮したような形で地位の向上を図っているということでございます。
  63. 漆原良夫

    漆原委員 農村における女性の地位向上のためには、やはり伝統的な家思想だとかあるいは村意識、これを打破していく必要があろうと思います。政府の粘り強い、しかも強力な意識啓蒙を心からお願い申し上げておきたいと思います。  また、そのための方法として、先ほど申されたような各種委員会への女性の登用、それから都道府県の審議会などにおける女性の登用、そして、新しい若い女性のリーダーを育成していく、こういう具体的な施策をぜひお願いさせていただいて、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  64. 穂積良行

    穂積委員長 午後一時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十五分休憩      ————◇—————     午後一時一分開議
  65. 穂積良行

    穂積委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。中林よし子君。
  66. 中林よし子

    ○中林委員 まず、私は、先般に引き続いて、中山間地農業の振興の問題についてお伺いしたいと思います。  先般、中山間地域等直接支払制度検討会中間とりまとめというのが発表になりました。この概要を私も見たわけでございますけれども、特に農家の人たちにとって一番の関心事は、対象地域がどうなるか、それから対象者がどうなるか。もちろん金額も当然関心の対象になってくるわけですけれども、対象地域の問題で、ここに当然のごとく「対象地域は、特定農山村法等の指定地域のうち、傾斜等により生産条件が不利で、耕作放棄地の発生の懸念の大きい農用地区域内の一団の農地とし、指定は、国が示す基準に基づき市町村長が行う。」となっているわけですね。私は、この一団の農地という問題、前回も非常にわかりにくいということで問いただしたわけでございますけれども、そのときに渡辺構造改善局長は、ここでの御論議は、公益的機能を発揮するという観点からは一定の面的なまとまりが必要であり一団の農地について下限を設定すべきであるという御意見と、戸数の少ない集落もあり下限の設定もできないという意見に分かれておりますと、二つの意見があるという答弁をされていたわけです。  この中間取りまとめでも、国の基準に基づきというふうになっているわけですけれども、それさえも明らかになっておりませんが、この一団の農地という市町村に示すことになっている国の基準、これについてはどのようなお考えをお持ちでしょうか。
  67. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 一団の農地ということでありますけれども、例えば、農地のまとまりの大きさとして、一ヘクタールとかそういうふうなことにするのか、あるいは農地が多少飛んでいてもそれを連担として見るのか、そういうことも含めまして、現在検討会の中で検討中でございます。  EUなどのケースでいえば、三ヘクタールというものが支払い対象の下限になっていることもございますけれども、日本農業というのはそれほど大きい状況ではございませんので、かなり現実に即した団地の指定の仕方、まとまりの大きさというふうなことを念頭に置いてさらに議論を詰めていきたいと思っておりますし、それ以外にも、機能の面からいって面積で公益的機能を果たすものもあれば、例えば生態系との関係その他で、非常に零細小区画の谷地田というものが果たしている機能もあるわけでございますので、そこら辺がまだ十分に絞り切れていないというのが現状でございます。
  68. 中林よし子

    ○中林委員 その、絞り切れていないということが大変問題だと思うのですね。  じゃ、具体的な事例がございます。これは、先般の当委員会での議論でも、大蔵省も実は中山間地域を視察したんだ、この検討のために見たんだという話があったわけです。五月十五日ごろですけれども、島根県の柿木村という、山口県境の小さな村があるわけです、これはまさに山間農業をやっております、ここに大蔵省と農水省が中山間地農業について実態調査に入ったということになっております。  ここに、実は農業法人のファンタジーというのがございます。このファンタジーは、一昨年農林水産大臣賞を受けている、そういう全国でも表彰すべき生産法人になっております。このファンタジーで二十戸の農家が二十ヘクタールの土地を出し合って水田で共同経営をやっております。農水大臣賞を受けるぐらいですから農水省の方は一定の評価をしていたようですが、大蔵省の方が、こんな小規模のところに予算を出す必要はない、むだ遣いだ、こういう話を現地でなさいました。しかも、畦畔などあるわけですけれども、こういうところはどんどん木を植えて山にすればいいんだ、こんな大きな畦畔をとってむだなことをやる必要はないんだと、いろいろな意味合いで言っているわけですよ。行政当局は口を出すなということで、案内した役場の職員は口を挟めなかった。  この柿木村、私も知っておりますけれども、村を挙げて、いかに農業で経営を維持するかということに随分力を入れている村です。しかも、棚田の多いところです。二十ヘクタール共同で経営するなどというところはこの村でもまさに非常に条件のいいところです。  今、一ヘクタールにするのか三ヘクタールかとか、いろいろな数字を局長は御答弁なさいましたけれども、大臣、まあ大蔵と農水省の考えは違うと言われればそうですけれども、一緒になって現地調査もし、そしてこの条件不利地域に対する所得補償をやっていこうとするときに、私はこの大蔵省の方の発言というのは本当に限定して限定して、こういう山間地のとても優良で農林水産大臣賞を受けたところまでむだだと言われるようなことでは、これは条件不利地域に対しての所得補償が円滑にいくのだろうか、こういう懸念を抱かざるを得ないわけです。だから、私は当然、この一団の農地ということではなくして、本当に中山間地で営農を続け、しかも意欲を持って取り組んでいる人たち、それを対象から外すなどということがあってはならないと思うわけですけれども、いかがでしょうか、大臣。
  69. 中川昭一

    中川国務大臣 その地域が農林水産大臣賞を、それは地域としての形態として受けられたのですか。
  70. 中林よし子

    ○中林委員 いや、ファンタジーという農業生産法人です。
  71. 中川昭一

    中川国務大臣 法人として受けられた、その法人が存在するその地域はまさしく、今先生お話でお聞きする限りは、中山間あるいは山間の農業地域であり立派にその法人が経営されておるわけでございまして、そういうところも生産活動あるいは多面的な機能等で重要な地域だということは、農林省あるいは政府全体としての認識として、これからもまさにこの施策の中でやっていくべきところではないかと私は思います。  先日、大蔵省が来て予算措置について答弁をしましたが、新しい政策によって財源措置はどうするのかという質問に対して、大蔵省としてもまあ新政策に対しては重点的かつ効率的にやっていきたいという答弁をこの公式の場でやったことは私も、先生も多分御記憶のことだと思います。大蔵省が現地で視察をしてどう言ったかということについては、今、先生お話しか知りませんので、それについて私はコメントする立場にはございません。
  72. 中林よし子

    ○中林委員 大蔵省、確かに重点的、効率的、この言葉を使うのですよ。重点的、効率的ということは、こういう山間の小規模なところに予算を出すのはむだだという、効率上からいってむだだという考えを示したのですよ。具体的な事例は知らないとおっしゃいますけれども、しかし具体的に、大蔵省の人がこの条件不利地域について、今回の中間取りまとめをする、今後の検討にそれを託すということの基礎調査だと私は思うわけですね。  だから、そういう意味では、こういう山間地の中で努力をしているところを私は絶対に外すべきではないし、大蔵省がそういうことで限定して限定して今回の所得補償にしようとする姿勢は、農水省として毅然としてはねのけていただきたい、このように思うわけですけれども、いかがでしょうか。
  73. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 初めにお断りしておきたいのですが、大蔵省の事務方が現地に行かれましたのは、この際、集落営農というものが本当に機能しているか、集落営農の代表として一度現場を見ておきたいということで行かれたわけでありまして、私どもが中山間地域の調査を依頼したわけではございません。  それから今の、小さいところをどうするかという問題は、この中間取りまとめをよくお読みいただきますとわかるのですけれども、構造政策との整合性について、二つ意見がある。一つは、やはり集落の機能を発揮させ、そしてその地域政策としての立場を強く主張するがゆえに、そういう零細なものを対象から外すというふうなことはすべきではないという御意見と、やはり政策を投ずるのであれば、多少なりとも構造政策とリンクをすべきではないかという御議論があるわけでございます。  現地に行かれた大蔵省の方は、日ごろから構造政策とのリンクを強く御主張になっている方でございますけれども、私どもは、どちらかにバイアスをかけた誘導なり議論をしてはおりません。現地の実情に即し、かつここでの公益的機能農業生産活動を通じてきちんと発揮できるようにするにはどうしたらいいかという立場から議論をしておりますので、その点を意見として言わせていただきます。
  74. 中林よし子

    ○中林委員 今局長が言われたように、私は対象地域を最初問題にしたわけですけれども、対象者という項目の中でそういう二つの意見があるということが、この中間取りまとめでも述べられております。このこと自体私は、本当は重大な問題だと思うわけです。だから、一団の農地ということで、実は多面的機能を発揮している、そういうぽつんと離れたような農地でも、一団の農地という概念を広くとって、この法律が適用される全体の地域の中の農地だということで、私は当然対象にすべきだと思うのです。  それから同時に、今局長が答弁された対象者の問題でも、言われたように二つの側面の意見があると書いているわけですね。構造政策上、一定規模以上の農業者に限定すべきである、こういう意見と、そうではなくて、全体をやはり対象にすべきだという意見と二つあると書いてあるのです。私は、その検討会の発表を待つのではなくして、農水省として、では対象者はどうするのだ、本当に食料自給率を上げ、国土を保全する、そういう観点の中山間地農業者、これは、構造政策であれどうであれ、やはり大切な農業なんだという位置づけで、白紙委任するのじゃなくて一定の方向を出すのが今回の新しい基本法をつくる上で極めて重要だと思うのですけれども、大臣、いかがですか。
  75. 中川昭一

    中川国務大臣 そのために国会で御議論をいただき、そして中間取りまとめの概要、さらにはこの検討会の先生方が、実際に各地を視察されて生の声を聞き、また御判断をしているわけであります。あくまでも中間取りまとめでありますから、両論あるいは三論併記等が並んでおるわけでございまして、これを集約した形での取りまとめをいただき、そして、それを政府として、この直接支払いの方式をどういうふうにしていったらいいかということを、これから概算要求の時期までに最終的に取りまとめる最中でございますから、時期的にも遅くはありませんし、現在その作業を鋭意やっておる、現在進行形でございます。
  76. 中林よし子

    ○中林委員 私は、この審議の途中に中間取りまとめが出ました。だから、これは検討に値して、そして、これをもとに条件不利地域に対する直接支払いがどういう形になっていくのかということが、実は農水省としての一定の基準があって、それに基づいた論議ができると思ったのです。しかし、この中間取りまとめは、最初検討項目というのが出されておるもので、本当に特定されている部分が少ないのですよ。対象地域も対象行為も対象者も、それぞれの項目で引き続き検討、引き続き検討、そのオンパレードがこの中間取りまとめになっております。  では、どうやって透明度を高め、国民の納得を得るかということになると、電子メールなどで意見を求めるのだというようなことも言われるわけですけれども、私は、一番論議しなければならない新農基法のこの委員会で、はっきりした農水省としての考えが示されなければならない。いわばこの検討会にすべて白紙委任をして、七月には、今あっちかこっちかという、右か左かという論法の中で、どっちに行くかわからないというようなことであってはならないと思うわけです。  重ねて大臣に聞きますけれども、本当に白紙委任でこれはやって七月の最終取りまとめをする、それでいいとお考えなんでしょうか。新農基法という以上は、やはり一番、今度の条件不利地域に対する所得補償というのは、私どもも念願していたことですから、それについては少なくともこういうものだということがわかるような論議、これが必要なのではないかと思うわけですけれども、いかがでしょうか。
  77. 中川昭一

    中川国務大臣 今回の基本法の御議論は、もう言うまでもなく、基本問題調査会で一年半以上御議論をいただき、そして答申を政府、総理大臣がいただき、そして大綱、プログラムが決定され、そして法案を国会に提出して、そういう一連の流れの中でやってきたわけでございます。そして、その法案の中で、中山間地域に対する支援一つの方法として直接支払いという今までにないやり方を導入するに当たっては、これはやはり慎重な、そして開かれた議論というものが必要だと思います。  答申、そして大綱、プログラムに基づいて法案をつくり、その上でオープンかつ自由な議論を今やっておる最中で、まさしく今も先生と我々とでやっておるわけであります。初めにイデオロギーありきとか、こうであるべきだというところから演繹的に結論を求めるという方法は、私どもはとるわけにはいきません。
  78. 中林よし子

    ○中林委員 私は、イデオロギーなどで話しているわけでは決してありません。余りにも違い過ぎるわけですよ。下限を設けない、いや一定の限定をすべきだ、両方の意見がございますなどと言って示されても、これは、では検討会に白紙委任をして、農民にとってみれば、うちの農家が所得補償の対象になるのかどうかというのは、今後の農業生産への意欲にとっては非常に大切な問題だからこそ、当然農水省としての基本的な考えが必要なんだ、こういうことを申し上げているわけですが、答弁を求めても同じ答弁の繰り返しになるでしょうから、求めません。  そこで、実は大臣、五月二十日の私の、こういう条件をつけるべきでない、限定すべきでないという質問に対して、条件のつかない中山間地域という考え方はないと思います、こういう答弁をされました。もちろん、中山間地という以上は、条件不利地域という以上は、条件のいいところとの、条件といいましょうか、限定、それはあるのは当たり前のことですよ。だからこそ、条件不利地域に対する直接支払いということになっております。  私は、日本の地形と大変よく似たスイス、オーストリア、この双方の条件不利地域への直接支払い制度、これがどうなっているかというのをもう一度調べてみました。まさに日本とは雲泥の差があるんじゃないかということを改めて感じたわけです。  オーストリアの場合は、国土の七七%が山岳地帯というところで、そこに人口の四二%が居住しているという地域で、それから、全農業の経営の四一%が実は直接支払いを受けているということが言われております。  このオーストリアの山岳農業経営には、ゾーン制による区分はされている。ゾーン制というのは、こういう地域、こういう地域と幾つか分けてあるのだけれども、それは農家ごとに、困難度によって分けられているということなんですね。だから、交通の便でどういう困難があるか、作物をつくるときにどういう困難があるか、困難性が高いところほど直接支払いの金額はたくさんになっているというのが特徴です。だから、もちろん、EUへ加盟して一定の改正などが行われているわけですけれども、それでも農家所得への公的助成の割合は、非山岳農家が一三%に対して山岳農家は三八%と、やはりこれだけ国からの直接支払いを受けているわけです。  それから、スイスですけれども、ここも、もう大臣も御承知だと思いますけれども、すべてが家族農家だ、こういうふうに言われております。経営規模は小さくて、日本と極めてよく似ていると言われておりますけれども、スイスの景観がこれだけ保たれ、そして農地面積が今日まで減っていないというのは、今日までスイスの政府がとってきた、自給率を高め、景観を守るというこの政策にほかならないと私は調べる中で学んだわけです。  ここでもゾーニングで区分はされているけれども、条件が悪い方からIからIIIというふうにして、これも条件が悪いほど直接支払いの額は大きいということになって、今やスイスは、平たん地でも直接支払いを行っているということです。ここは、平たん地で直接支払いで得るのが日本円に換算すると年間大体三百万円ぐらい、山岳地帯の条件の悪いところは五百万円ぐらいになるということですよ。これでスイスの自給率はずっと向上してきたし、景観も守られてきた、こういういきさつがあるわけですから、私は、本当に本気で、中山間地対策条件不利に対しての直接支払いというならば、こういうところから当然学ぶべきだと思います。また大臣に御答弁を聞くと、そらされると思いますので、この点を強く要求して次の質問に移ります。  自給率の問題で質問させていただきますが、私は、この十年間の国会食料自給率問題で審議をされた会議録、すべてを見ました。これで、今さら驚くこともないのですけれども、政府は、判で押したような同じ答弁をこの十年間繰り返してきております。この十年間、政府食料自給率引き上げのためにどんな政策をおとりになってきたのか、簡単に述べてください。
  79. 高木賢

    ○高木政府委員 食料自給率の向上のためには、国内生産されたものが消費者あるいは実需者に選択されまして、その需要が増加するということを通じて生産が増加する、こういう形で実現をされるというふうに考えております。  そのためには、主な柱で申し上げますと、国内農業につきましては、農地水資源確保と整備、経営体の育成確保、それから物別の主な作目の生産、流通対策の実施、農業技術の開発普及、こういった農業施策全般にわたりまして、体質強化あるいは生産対策ということで、品質、コスト面での改善を図りまして、これを需要につなげて、国内農業生産維持増大を図る、こういう観点で取り組んできたわけでございます。  主な柱、簡潔にということでございますので申し上げますと、今申し上げたような農業生産基盤の整備と農地確保という点では、生産性の向上あるいは需要の動向に即した農業生産の再編成、経営規模の拡大等に資する農業農村整備事業などを推進してまいりました。そのほか、農地確保、有効利用対策もやっております。  それから二番目の、農業経営の体質強化ということでは、効率的、安定的な農業経営の育成、それと、これらが生産の相当部分を占めるような農業構造の実現のための経営対策を推進してまいりました。この中には、人の育成である新規就農者対策も含まれております。  それから、主な作目、米の生産過剰、需給アンバランスという事態に対処いたしまして、麦、大豆、飼料作物等の生産振興その他畜産物、果樹等々ございますが、その生産対策、流通対策に取り組んでまいりました。  それから、需給調整あるいは価格安定対策というものも、御案内のように、価格政策対象品目の米、麦、畜産物、大豆、野菜等について推進してまいりました。  それから、日本の風土に合った作物ができるように、また現場でそれが生かされるようにということで、新技術の開発普及ということを進めてまいりました。その中には、労働強度の軽減のための機械の開発とか、新しい品種の開発とかいうことも含まれております。  それから、消費とのつながりの場面でございます食品の加工、流通、消費者対策というものにつきましても、需要拡大対策も含めまして推進してまいったわけでございます。  甚だ簡単でございますが、ポイントの点を申し上げました。
  80. 中林よし子

    ○中林委員 私、本当に自信を持って言われないから、ぼそぼそと言うことになるんじゃないかと伺いました。  九二年には、いわゆる新政策が発表されました。それ以降、農政は新政策に沿って強引に展開されました。九二年当時の食料自給率は四六%でした。そこで、新政策では、食料自給率について、可能な限り国内農業生産維持拡大し、食料自給率の低下傾向に歯どめをかけていくことが基本である、こう規定しているわけです。  九三年二月の当農水委員会で、当時の農水大臣が、新しい食料農業農村政策の方向、これは新政策のことですが、その前提となっておりますこの長期見通しでありますけれども、平成二年の一月に閣議で決定をいたしました、これによりますと、供給熱量ベースで五〇の自給率、これはおっしゃったように二〇〇〇年までということで、これに向けて新政策の方もいろいろと創意と工夫の中で、こうすることによってこの五〇%を達成ができるということでやっておるわけでありますと明確に、新政策の推進をすれば、二〇〇〇年段階での食料自給率は五〇%達成が可能だ、こういうふうに答弁をしておるわけです。  それが、今どうでしょうか。九七年には四一%、さらに九八年は四〇%を割るかもわからない、こう指摘されている状況なんですね。新政策の展開で五〇%の食料自給率の達成が可能、こう言いながら、低下傾向に歯どめをかけていくことを基本としたわけですけれども、にもかかわらず食料自給率が大きく下がった。これはもう重大な問題なんですけれども、なぜこうなったのか御答弁ください。
  81. 中川昭一

    中川国務大臣 自給率が年々下がってきておることは事実でございます。今官房長から答弁しましたように、我々としても、この下がり続けている自給率を何としても向上したいということで、先ほど申し上げたようなさまざまな施策をとり、また一部品種改良等でそういうものに対応できるようなものもできたわけでございますけれども、要は、消費者ニーズというものが、米の一人当たりの消費が毎年毎年減っていることに象徴されるように、たしか、米でいうとカロリーベースの四分の一ぐらいを占めると思いますけれども、これだけでもそれを象徴しているわけでございます。これを言うと、政府はそれに責任転嫁をしているというおしかりを前に受けたことがございますけれども、とにかく、我々としても努力をする。  また、一方では、例えば水産などで申し上げますと、かつては一千三百万トンとっていたものが、今や七百万トンしかとれない時代になってきた。一生懸命つくり育てる漁業というものをやっておりますけれども、国際的な条約の問題、あるいは沿岸国の問題等で、あるいは、水産資源そのものが枯渇しているというような状況のもとで、水産だけでも一時に比べて大幅に少なくなってきておるというような、いろいろな要素が、一言で言えば、マイナス方向に働き続けているということでございます。  それを何とか、さっきスイスの例を挙げられましたけれども、自給率が三六まで下がったものが、今七〇にやっと回復したということで、スイスでも自給率は主要諸国の中ではまだ低いわけであります。日本はさらに低いわけであります。それを、このトレンドを何とか戻していくために、今回の法律を契機として、さまざまな施策をさらに進めていく。  その責任は、政府において目標設定をし、さまざまな施策を講じていくわけでありますが、これには、生産者の皆さんの御努力はもとよりでありますけれども、消費者を初め、さらには国民的な教育、啓蒙の面も含めまして、みんなでその目標に向かって協力をし合っていこうということが、私はある意味では一番大事なことではないかという、その前提に立って、政府が責任を持って自給率向上のために頑張っていく決意でございます。
  82. 中林よし子

    ○中林委員 今の大臣の答弁は、新政策が出たときの大臣の答弁と全く変わっておりません。新たにつけ加わったのは、魚介類の話をされました。これが新たに加わったと思います。農水省から資料をもらって、魚介類の国内生産が減少したからだという理由が一つ加わっておりますけれども、これは、全体のカロリーベースからいえば極めて少ないわけですよ。  米の消費が減った、あるいは、畜産に対しての国民のニーズが変わって増大して、飼料用穀物の輸入が増大したからだ、あるいは、油脂をたくさん食べるようになった、糖分を食べるようになった、全部消費者、そこへ責任転嫁しているじゃないですか。しかも、これは新政策が出た当時と同じで、いわばこの十年間、同じことの繰り返しですよ。そのことはわかっているわけです。  そうであるならば、本基本法案は、言うまでもなく、新政策がその施策の中核になっているわけですよ。新政策以降の食料自給率の低下というのは、本基本法案で食料自給率を引き上げることができるのかどうか、まさにその試金石ともいえるんだと思うんです。米の消費が下落したから食料自給率が低下した、目的達成できなかった、こう言うならば、あなた方は何をやっても引き上がる保証などないじゃないですか。新政策でできなかったことが、この新しい基本法ならばできるという、その保証は一体どこにあるんですか。
  83. 中川昭一

    中川国務大臣 保証と言われると非常に困るのでありますけれども、一々条文まで挙げて申し上げませんけれども、さまざまな施策を講じてやっていく、あるいは、先ほど申し上げたように、生産者、消費者を含めた国民的な、中長期的な面も含めました食料の安定供給というコンセンサスの中で、食べ残し、あるいはまた日本型食生活の普及等々も含めて、いろいろな立場での協力あるいは努力をしていくということが必要だと思います。  日本型食生活というと、もちろん御飯中心になるわけでありますが、例えば、最近はやりの健康に気をつけようということなどで、野菜の需要が非常にふえておる。この野菜の需要がふえておることは金額的にもはっきりわかるわけでありますけれども、これは、実はカロリーベースにはほとんど影響しないわけでございます。  そういう面で、一面的にただカロリーベースだけを、もちろん、カロリーベースで上げていくということが前提でありますけれども、過去の下がっている原因は全部政府施策の責任だということだけで言われても、我々はもう何を申し上げることもできないわけでございます。  先ほども申し上げたように、担保、保証はどこにあるのかということについては、先生も含めて、みんなで自給率を上げるために努力をいたしましょう、そして、その設定、そのための施策、その目標達成に向かっての最終的な結果につきましては、我々が責任を持ってこの問題に取り組んでまいるということを、前から前から申し上げているところであります。
  84. 中林よし子

    ○中林委員 私は、今度の新しい基本法案で、基本計画を策定してそれに向かうということの中に、大体全部が逃げ込まれているなというふうに思ったんですね。  それは、新政策を出したときにも、実は同じような方向が言われているわけですよ。二〇〇〇年までで自給率を五〇%にするというのも、農産物の需要と生産の長期見通しということで閣議決定をしてやるということが言われていて、途中、見直しもされてきたわけですね。それで、二〇〇五年までに今度は四四%から四六%、これが現実可能なものだということで、それが設定された。  それで、今回も大臣の答弁を聞いていると、数値目標を出さないのは、現実可能なものを出さなきゃいけない、それを下から積み上げ方式でやらなきゃいけないなどと言って、もう逃げ込んで逃げ込んでいるわけですよ。それで、私が、国の責任は一体どうなのか、本当にこの法案でその保証はあるのかと聞くと、先生も含めてと私にまで責任を転嫁されるということですよ。私が大臣に聞いているのは、国がどう責任を持つかというところを聞いているわけですね。  それで、消費者消費者とおっしゃいますけれども、先日、全国消費者団体連絡会から、そこの代表の方が、食料農業農村基本法案に対する意見書ということで、こういうペーパーを持ってきていただいて、非常に強い要請をされております。  そこで、「現在の食料農業農村、環境の問題については深刻な認識が必要です。食料を質・量ともに十分に得ることは、基本的人権であり、国は、誰でもが安全な食料を安定的に入手できるようにするために責任を持ち、食品の安全性確保自給率の向上をはかることを、基本法の理念として明示すべきです。」こういう項目があります。それから、「国内農業の力強い発展と自給率の向上は消費者にとっても重要です。そのためにも、農業生産の基盤である、農地確保、多様な担い手の確保生産体系の確立など消費者生産者の合意を得つつ国が責任を持って進めることが必要です。」ということで、国の責任を明確にすべきだと言っているわけですね。  国民皆さん一緒に頑張って自給率をなんということじゃなくて、国はどう責任を持つのか、少なくとも自給率向上のためにはちゃんと責任を持つ、こういうことが今回の基本法では求められているのではありませんか。
  85. 中川昭一

    中川国務大臣 一回目の当委員会議論が五月十三日だったと思いますが、そのときからずうっと、なぜ今出せない、なぜ今出せないと、もう三週間近く言われておりますが、出さないと言っているんじゃないんです、出すんです、目標設定、自給率を。そして、その出すための前提の作業を今やっている最中であって、決して逃げ込んでいるわけでもありません。  それから、責任転嫁をしていると最初からおっしゃっております、これも五月の十三日だったと思いますけれども。我々は責任転嫁はしません。最終責任は政府、そして、政府の中でだれだといえば、農林水産大臣たるこの私であります。それが責任をとるということを申し上げ続けておるにもかかわらず、五月十三日以来、同じ議論をずうっとやられておる。  責任をとります。責任は我々が持って、この基本計画をつくり、自給率を設定していくわけであります。しかし、それは我々だけがどんなに頑張ってもできる仕事ではない。結局、生産者の皆さんが御努力をして生産活動をして、そして、国民皆さんが同じ仲間の国民が一生懸命つくったものをおいしく感謝しながら食べていただくという中で、前向きに前向きにいって初めて自給率が上がっていくのだという、みんなの協力があっての目標設定であり目標達成であるということを、何回目かの答弁になりますけれども、ぜひとも御理解をいただきたいと思います。
  86. 中林よし子

    ○中林委員 大臣、新政策がもう破綻しているわけでしょう。これさえやれば自給率は上がるということを当時の農水大臣は言った。以来、何人大臣がかわったことでしょう。私はこの十年間の会議録を見て、これだけ大臣の顔ぶれがかわっていった、その都度その都度同じ答弁の繰り返し繰り返し。中川大臣は責任を持つとおっしゃったけれども、一体あなたはいつまで大臣が続けられると思っていらっしゃるのですか。本当に、私は、国有林のときでも、五十年先私が責任持つとおっしゃったけれども、全く無責任な答弁だというふうに言わざるを得ません。  では、本当にまじめに考えるならば、地方公聴会、中央公聴会をやりました。その中でさまざまな意見が出ましたけれども、この基本法案が現行WTO協定に合わせた基本法であり、この基本法では日本農業が衰退するとまで指摘をされた。さらに、この基本法は敗北主義であると厳しく指摘された方もあったわけです。私も、そのとおりだ、このように思っております。  私どもはこの法案に対して、後で修正提起をいたしますけれども、あなたも含めて責任があるなどと大臣はおっしゃったけれども、本当に食料自給率国内生産でしっかり維持する、そして、輸入規制をしながら価格補償もしっかりしていく、家族経営を農業の中心にちゃんと据えつける、市場万能に価格をゆだねるのではなくてしっかりと保証していく、こういう転換なしには日本食料自給率を高めることができない、このことを強く主張いたしまして、私の質問を終わります。
  87. 穂積良行

    穂積委員長 次に、前島秀行君。
  88. 前島秀行

    ○前島委員 大臣、長い間基本法議論をしてきました。お疲れだとは思いますが、最後ですのでひとつよろしくお願いをいたします。  私たちの党にとっても、この基本法議論ということ、長年来いろいろな議論をしてきましたし、いよいよ終わりでありますので、我が党が特に注目をしてきた、重視してきた点について確認をしたりあるいは要望をしたり、こういう形にしたいと思います。  社民党としては、まず、この基本法議論の中にあって、一つ、一番重視したのは国内生産の位置づけでありました。したがって、国内生産基本にというところを、維持増大、こういう主張をしてきて、昨日来の各党の協議の中で増大という表現が二条の中に明確になったということについて、私たちは非常によかったなと思うし、同時に、このことを政府の方もしっかり受けとめて、これからの日本農業における、特に、食料の安定供給確保していく、あるいは、今議論になりました自給率の向上のためにも、この国内農業生産の増大を図っていくという点をぜひこれからの農政の大きな柱として推進をしていってほしい、このことをまず一つ要望していきたいと思います。  それから、私たちが重視した次の点は、基本計画の位置づけ、これの取り扱いでございました。  この一連の議論の中で、やはりこの基本計画の存在が非常に重要である、また、過日の公述人の御意見の中でも、この基本計画のあり方についてはさまざまな御意見があったと私は思っています。やはりこの基本計画というのは確かに、一連の他の基本法、それにおける基本計画から見ると、事務局といいましょうか、役所の中での項目かもしれませんけれども、私は、今度の農業基本法の中における基本計画というのは、もっとこの骨格をなす部分ではないだろうかな、新基本法の心臓部分であるだろうし、これからの日本農業の中核、根幹をなす部分がこの五年ごとに出される基本計画だろうな、そして、この基本計画を決めることによって個別法が改正されたり新たな法案ができてくる、こんな関係に今後なっていくのかな、こういうふうな感じが実はしているわけであります。  そういう面で、この基本計画というのはやはり国会議論し、国会で承認されるべき重要なこれからの農業の部分ではないだろうか、農業基本法を本当に中身のある、生きたものにしていくためにも、そういう位置づけが必要ではないかということをやはり思うわけであります。  そういう面で、この総括の最後に当たって、この基本計画に対する位置づけと、基本計画をやはり国会の中で質疑し、議論し、承認すべきもの、そういうふうに位置づけるものであるな、こういうふうに私は今でも思うわけでありますけれども、その点についての大臣の認識を聞かせていただきたいと思います。
  89. 中川昭一

    中川国務大臣 先生指摘のように、この新しい農政、食料政策の憲法ともいうべき基本法というのは我々の施策の憲法としての位置づけがあるわけでございまして、その中で四つの理念があって、その四つの理念をいかに推し進め、そのためにいろいろな施策を講じていくかという、その一番の具体的な根っこになるのが基本計画であるわけであります。  この法案が成立をさせていただいた段階で、既に御審議いただいているものもございますけれども、関連でまた多くの法案の御審議をいただかなければいけない必要性が出てくるわけでございます。そして、五年ごとの見直しというときにはまたいろいろな議論をするわけでございますし、新しい食料農業農村政策審議会での御議論を踏まえて計画を進めていくわけでございます。  法律改正が五年ごとに必要ではないかということに関しては、直接的には、仮に見直しをしたとしても、だから自動的に法律改正に結びつくかどうかというのは、やはり今までの、いろいろな政策の転換に応じて、必要なときには法律改正をやる、あるいはやらなくていいということと同じではないか。つまり、大幅な見直しによって法律改正が必要であれば必要になりますし、また、法律の範囲内での見直しで済むことであれば法律改正までは至らなくても済むということだと思います。  一方、農水委員会を初め国会は常に農政についての御議論をいただき、その日々の御議論の中でまた法律にかかわる問題も出てくるわけでございますので、そういう意味では、スタートが大事でございますし、また、その五年ごとの見直し作業というものも大事であります。そして、その場合には直ちに公表する、そして、修正案によれば、国会での報告を初めというような文言が後ほど提案されるというふうに伺っておりますけれども、いずれにいたしましても、国会での御承認をいただいた法律であるこの基本法に基づいて基本計画をつくる、その基本計画に基づく施策というのは、その国会での御承認に基づいた範囲内での行政の権限内といいましょうか、与えられた範囲内での作業という位置づけとして、御報告、あるいは日々の御審議、そして特に見直し時期の御審議は当然尊重し、また我々にとっても大事なことだと思っておりますけれども、国会の承認なりということについては、権限の範囲内での作業ということで御理解をいただきたいと思います。
  90. 前島秀行

    ○前島委員 私も、必ずしもそういう議決という手続、手続論にこだわるわけではないのでありまして、問題は、この重要な、大事な基本計画が、いろいろな角度で議論される、そしてみんなで合意を得て事を進めていく、こういうことが大事だろうと思いますね。  そういう面で、きょうこの後修正案として提案されるであろう報告ということ、その中身としては、私はみんなで議論するということだと思うのです。いわゆる農業関連の三白書も、従来は必ず本会議でやってきたのでありますね、あの白書でさえ。ここのところほとんどあの白書の議論というのはなくなったわけでありますけれども。やはり私は、毎年出される白書以上に、基本計画は五年ごとに出される重要な柱ですから、承認とか議決ということはともかくとして、出されてくる、つくられてくる基本計画は、白書と同じように、本会議もさることながら、関係委員会等々で議論するということが最低必要ではないだろうかな。  そういう面では、今度の一連の修正とこの議論に当たって、基本計画が出されたら、国会の中で、あるいは農水委員会の中で、関係委員会の中で議論するということは、お互いの確認として、お互いの了解事項といいましょうか、当然のこととして理解をしていいかどうか、その辺のところをひとつ。
  91. 中川昭一

    中川国務大臣 まず、この法案を成立させていただいたならば、基本計画というものをつくる、それで、これは五年ごとに見直しということがある。そしてまた、年次報告というものを国会に提出するという条項もあるわけであります。これらがある意味では義務規定的になってくるわけでございますが、それとは別に、日々、この法律に基づいたといいましょうか、農政全般について、大いに国会でチェックといいましょうか、御指導といいましょうか、御議論を尽くしていただくということは、我々にとって大変貴重な、大事なことだと思っております。
  92. 前島秀行

    ○前島委員 日々云々というのが具体的に何を指すかは別問題として、ともかく、基本計画というのは出されてきたら委員会等々で議論するということは、お互いの確認として受け取っていきたい、こういうふうに思います。  それから次に、基本計画を単なる目標だとかにさせないためにも、常に検証をしたりしていくことが大事ではないか。過日の中央公聴会でも指摘されましたね。このことがまた、現行基本法の総括と言っていいのでしょうか、事実上なきがごとき基本法だったと言われてしまったことを、二度轍を踏まないためにも、この基本計画、五年ごとに出されるものを検証することが大事だという指摘がありましたね。やはりその点は大事だな、こういうふうに私も思うわけであります。  その検証というのが、つくった人間がやるという内輪の検証ではなくして、第三者的なものが客観的に検証する、そしてまたその次の五年間に生かしていくということが、理念といわゆる具体的な政策一致させていくという面で非常に大切だという指摘も、過日の公聴会でありました。そういう面で、基本計画を、国会での議論と同時に、これをどう検証し次に生かしていくかということも、これからの農業基本法をさらに充実させたり、あるいは農業基本法を実態に伴った生きたものにさせていく上でも重要な点ではないだろうか、私はこういうふうに思っています。  したがって、大臣にお聞きしたいのは、こういう検証というものをどう考えているのか、また、もし具体的にこんな方法で検証の仕組みも考えてみたい、こういう点がございましたら、意見をお聞かせいただければ、こういうふうに思います。
  93. 中川昭一

    中川国務大臣 先生指摘のとおり、基本計画は五年ごとに、一応十年程度をめどにして基本理念を実現するための施策基本計画の中に定めるわけでございますけれども、大体五年ぐらいで、世の中いろいろ変化もございますから、見直すということにしておるわけでございます。  その場合に、具体的な方法につきましては、例えば省内に一つの担当の組織をつくりまして、それ専門にフォローをするという体制をとります。そして、各施策ごとに目的、目標に照らして、実施状況あるいは効果、問題点等を明らかにし、そして必要に応じては、学識経験者等の第三者に評価を求めるということで、透明性の高い評価を行って、見直しを適切にやっていく、そして、これを審議会の場でまた御審議をいただく、同時並行的に、また国会での御論議というものも当然重要な位置づけがなされるというふうに考えております。
  94. 前島秀行

    ○前島委員 ぜひこれを客観的に、第三者がいろいろな意味で、いい意味で、それぞれの計画、その検証をして、次に生かしていくということが非常に大事なので、これから具体的になってきたときにまた議論をしていきたい、私はこういうふうに思います。  先ほどの自給率の責任論ではないけれども、大臣がやめるやめないという問題ではなくして、やはりそれぞれ出された施策がちゃんと展開されているかどうか、よければそれをさらに進めるであろうし、あるいはまずければ、これは率直に反省をして正していくというのが、本当の意味の、行政上における、あるいは施策における責任のとり方であろうと私は思いますから、ぜひそういう意味で、この検証ということはちゃんと客観的にやって次に生かしていきたい、その仕組みをぜひ具体的につくり上げていってほしいということを要望しておきたい、こういうふうに思います。  それから次に、所得政策といいましょうか、経営安定対策。  私は北海道に地方公聴会で伺いました。やはり直接の生産者、農民連盟の代表の皆さんあるいは農協中央会の代表の皆さん生産現場の人は異口同音に、北海道では所得政策、経営安定政策が絶対に必要なのだということを非常に強調されていたわけであります。ここの確立なくして、北海道のこれからの農業の展望はないという、非常に強い要望があったと思います。  それで、この所得政策、経営安定をどこでも、何でもかんでも、こういうことは正直言って大変だろう、私たちはこう思いますが、少なくとも米だとか、あるいは麦、大豆、えさ米を含めた飼料作物、畜産、酪農、この辺のところは日本農業の主要作物である、同時に、先ほどの自給率あるいは食料の安定供給という側面からすると、いわゆる消費者国民の側から見れば、主要食料をなす部分である、こういうふうに言えると思います。  そしてまた、この主要食料、主要作物の部分というのは、国際的な動向と非常に連動する性格のものでもある。だからこそ、生産農家にしてみると、所得政策、経営安定対策ということが重要なのだ、こうなってくるだろうと思います。そして、この国際化、WTO農業交渉との流れの中で、価格政策に限界が来た、価格保証対策にも見直しという過程の中から出てきたのがこの所得政策、経営安定対策だ、こういう位置づけだろうと思いますね。このことがまた、次の農業交渉の、日本の大きな方向性をも出している、こういうことになってくると、非常に重要だということをみんな、お互いにわかっているわけですね。北海道でも生産現場の方から、これは具体的に要望があった。  したがって、ここで確認をしたいのは、米はいろいろな角度で今始まっているわけでありますが、大豆だとか麦だとか、飼料作物、畜産、酪農関係のこの主要作物、主要食料と言われる部分については、個別に経営安定対策、所得政策というのは実行する、具体的に今後確立をしていく、こういうふうに受けとめてよろしゅうございますか。
  95. 高木賢

    ○高木政府委員 ただいまお話がありましたように、経営安定対策につきましては、価格政策の見直しに伴いまして、価格変動が農業経営に及ぼす影響を緩和するために講ずる、こういう趣旨で、現在各品目別に生産、流通状況を踏まえながら具体策の検討を進めております。  今お話もありましたように、米につきましては、既に稲作経営安定対策ということで確立されて動いております。  麦につきましては、昨年策定しました新たな麦政策大綱に基づきまして、民間流通への移行を図るとともに、これに伴いましての生産者の経営安定を図るための麦作経営安定資金の導入ということにつきまして、先月末に具体的な考え方を取りまとめたわけでございます。  それから、牛乳、乳製品につきましては、本年三月に新たな酪農・乳業対策大綱をまとめました。これに基づきまして、乳製品、加工原料乳の価格を硬直的、固定的にしている措置を廃止いたしまして、実際の取引価格が市場実勢を反映して形成される制度に移行すると同時に、現行の生産者補給金制度につきましては、加工原料乳の生産者に対する新たな経営安定対策に移行するということにいたしております。  また、大豆につきましても、市場評価が生産者手取りに的確に反映されるように、交付金制度の見直しを検討しております。本年秋の価格決定までに方向づけを行うということにいたしております。
  96. 前島秀行

    ○前島委員 それが再生産につながるということと、それから、それぞれの生産農家にとっては意欲につながるようなものをちゃんと確立してほしいということを、ぜひお願いしておきます。  それと、それに関連して、個別品目の経営安定対策、所得対策だけでいいのか。北海道からも、経営規模、経営体規模でやはりそのことは基本的に考えるべきではないかという意見も強かったわけであります。そういう面で、品目別であると同時に個別経営体的、個別農家単位の所得政策というものを今後検討するかどうかということが一点。  もう一つ、所得政策、経営安定を考えるときに、需給調整という部分が非常に大きなウエートを占める、生産者の側から見てくると。やはり主要食料である今言ったさまざまな点を、品目、作物を考えたときでも、需給調整というのは一体どうなるのだろうかというのが生産農家にしてみれば最大の関心事でありますし、そのことが所得並びに経営安定対策の大きな分かれ道になる。  そうすると、個別的な対策にせよ、経営規模にせよ、需給調整機能というのをそれぞれの品目等々にどうつくっていくのかというところが非常に難しい、具体的にそれでは何かというと、そう簡単に出てくるものではないような気もしますけれども。しかし、需給調整機能というものを確立させていかないと経営安定も所得安定もできない、こういうことになると思っているわけであります。  そういう面で、所得政策並びに経営安定対策を考えるときに、需給調整機能を国の責任で対応していく、その辺のところの方針といいましょうか、決意といいましょうか、あるいは政府役割として自覚されているのか、認識されているのか、その辺のところをちょっと聞かせてほしいと思います。
  97. 高木賢

    ○高木政府委員 二点のお尋ねがございました。  初めの、経営全体をとらえた安定対策についてどうかということでございますが、まずは先ほど申し上げましたように、おのおのの品目別の具体策の検討、あるいは具体化ということをいたしております。その次の段階としては、経営全体の経営安定対策のあり方について検討を進めたいというふうに考えております。  それから、二番目にお尋ねの需給調整でございます。これは、あくまでやはり国境調整措置をきちんととるということが前提でございますが、その上で、なおかつ国内の需給バランスがどうかということであるとすれば、やはり需給調整は生産者のためにも避けて通れないのではないかというふうに思います。  その場合に、だれが主体的役割を果たすのかということでございますが、やはり需給調整によってメリットを受けられる生産者、あるいは生産者団体の方々が主体的に取り組む、それに対して行政は支援をする、こういうタイプの姿になるのではないか。やはりそれが基本ではないかと、今何か言えということであるとすればそういうことだと思います。
  98. 前島秀行

    ○前島委員 それなら別に政府に向かって要望する必要はないのでありまして、価格政策にかわって、国際的な流れの中で所得政策、安定対策を重視していくのだとなってくると、やはり生産者の側から見ると、需給見通しはどうなるんだというのが関心になって、それを生産者側が主体的に調整できるものじゃないわけであります。そこをやはり政府として、行政の責任として、生産者の経営安定、同時にそのことが、食料の安定供給並びに自給率の向上につながる重要な食料であり作物であるということになってくると、そういう品目の需給調整の役割というのは政府が一義的に積極的に担っていくべきものだろう、私はこういうふうに思います。  先ほどの責任論じゃありませんけれども、そこはひとつ、ほかの部分がというふうに、それを政府がお手伝いするような、第三者的な姿勢では、経営安定対策、あるいは所得政策というものは期待できなくなってしまうだろう、私はこういうふうに思います。  余り時間がありませんから、これ以上の議論をしませんけれども、やはりそこは政府の責任、政府が積極的に需給調整機能というものを担っていくのだという姿勢はぜひ必要だろうと思うし、とるべきだろうと。それでなければ、経営安定対策をつくるとか、確立するとか、所得政策に責任を持ちますなんということを言えるものじゃないと私は思いますので、大臣何か。
  99. 中川昭一

    中川国務大臣 三十条の一項を読むと、あくまでもこれは、先ほど市場原理万能なんてお話がありましたが、決して万能ではないのでありますけれども、市場原理というものを導入してやっていく。そうすると、そこで需給にアンバランスが起きると、どっちかがダメージを受ける。特に生産者がダメージを受けるということがあってはならないということで、二項でこういう措置をとりましょう、こういうことになっておるわけであります。  したがいまして、先ほど官房長から答弁をしたことは、あえて言えば、米の需給調整的なものを念頭に置いて、私は指名されたらお答えしようかなと思っていたわけでございますけれども、一項が一応まず前面に出てきておりますけれども、二項でもって、やはり育成すべき農家にダメージを与えて日本農業に影響を与えることがあってはならないというのが基本理念の一つでございますので、そういう意味で、言葉としては、やはりダメージあるいはメリットを受ける当事者が自主的にやるということが一義的ではございます。  それに対して、実質的な意味を伴った政府としてのバックアップ措置をとるということで、それ以上のことは現時点では申し上げられませんけれども、先生のお気持ちは私は十分わかった上でこういう発言をさせていただいておるということでございます。
  100. 前島秀行

    ○前島委員 やはりこれからは所得政策、経営安定対策が大きな柱になることは間違いないわけであります。生産者の側から見れば、安心してそういう産業に従事できる、それから今後も期待を持って、あるいは意欲を持っていくためには、この需給調整部分、需給調整というものがどういう見通しに立つかということが大きな柱であることは間違いないわけでありまして、政府がこれから経営安定対策、所得政策をやるとしたら、この観点だけはぜひ政府の責任として今後配慮した対策を立ててほしいということをお願いしておきたいと思います。  それから次に、直接支払いについて、一、二確認をしたいと思います。  私たちも、この制度が日本で初めて導入されることについて評価をいたしたいと思います。したがって、初めての導入でありますから試行錯誤があるし、また別な意味で、国民の反応というものがどうなってくるのかについて、いろいろな点で配慮していることもわからなくはありません。同時に、この政策を具体的に実行するときに、無制限にといいましょうかばらまきにということもいけない。したがって、一定の基準、一定の制限ということが伴うことは当たり前だろう、こういうふうに思っています。  それで、過日中間取りまとめが出されて、私も資料をいただいて読ませていただきました。そこでの感想は、何かこれはやっちゃいかぬのかなとか、これをやっちゃいろいろなところから批判があるのかなという点を気にし過ぎというような感じを率直に受け取るんです。私は前にも大臣にちょっと伺ったと思いますが、この種の政策というのは、ある一つの信念みたいな、理念みたいなもの、オーバーに言えば哲学みたいなものから出発すべき政策だろうと思いますね。これをやってもうかるとか、これをやって税金を使って利益が上がるという性格のものではないわけでありますから。  そういう観点からこの中間取りまとめを見ると、地域的配慮といいましょうか、地域地域ということを意識し過ぎている、選択の場合に。したがって、五つの法律が適用されているところをまず条件にしてとか、そうじゃなくして、この理念というか思想といいましょうか、こういう政策を導入するということは、何をやるかというところに大きな意味があるんじゃないのか、こういうふうに私は思います。  そうすると、この中間取りまとめの中で言うと、地域的選択という項目、対象地域よりか対象行為というところに私は大きなウエート、意味があるべきだと。そして、ここを中心にしていろいろな事業というものを選択していくのが本来のこの政策の主な意味といいましょうか意義だろうな、こういうふうに思っているわけであります。  それから見るとこの中間取りまとめというのは、何か絞ることに絞ることに中心を置いて、まず地域振興の五つの法律の枠をはめてみてとか、あるいは中山間地だとか傾斜地だとかということに制限のウエートを置き過ぎていやせぬか。私は制限をするなということを言っているのじゃないんですよ。そうじゃなくして、この政策意味というのは、何をやるか。確かに経営的にはいろいろな問題があるけれども、本当にこのことをやることが日本農業にとって地域社会にとって必要なんだ、こういうところから出発するのがこの政策だろうと思いますね。だとすると、この選択の中でいろいろ基準というのを、私は対象行為というところに大きなウエートを置いて地域選択をすべきではないだろうかな、そんな気がします。  そうすると、中間取りまとめでいえば、農業生産活動等々を維持するために具体的に何と何をやるかという項目だとか、あるいは公益的機能を増進するための活動としてといろいろ挙げてある。その角度から見て、それじゃここを適用しよう、ここをひとつこの直接支払いの地域として指定していこう、結果としてそれが中山間地に圧倒的になるだろうし、五法適用地域に結果としてなる部分が非常に多いとは私は思いますけれども、やはりこういう政策の理念というのは、そういうところに柱を置いて地域指定もしていくべきではないだろうか、そんな感じがしてならないわけであります。  時間が来ましたので、構造改善局長の答えたいことはよくわかりますけれども、大臣、やはりこの政策はそういう角度でこれから追求していってほしい、そういう角度でこれからのまとめをぜひしておいてほしい。そのスタンス、その柱というものがぴしっと据われば、具体的な制限項目とかどこにウエートを置いていくかというのは私は必然的に出てくる問題ではないかなと。そこをちゃんと押さえておきさえすれば、国民の合意も得られるだろうしさまざまな皆さん理解も得られるだろう、こういうふうに思いますので、その点の見解を大臣に聞いて、終わりたいと思います。
  101. 中川昭一

    中川国務大臣 中山間地域、直接支払いをどういうふうにスタートさせていくかということは今まさに議論が煮詰まってきつつあると思います。やはり対象者、対象地域、支払い方法、対象行為等々、中間取りまとめも両論併記みたいな形になっておりますが、要は、やはり農業の約四割を占めると言われている地域をこのままほっておくと、耕作放棄の荒れ地になってしまう。これは国土保全上も大変問題がございますし、また農業生産という観点からも、もっと言えば多面的な機能維持するためにも非常に大きなダメージがある。生産条件として非常に不利ではありますけれども、できたものが決して不利なものではないということも一方であるわけでございますから、要はそこに何を最低限の基準として求めるかといえば、やはりそこに定住していただいて生産活動をしていただいて、それと同時に多面的機能維持していただくということが大前提になって、それが基本になっての細かい仕分けをいろいろやって、国民的な合意を得ながら公的な資金を投入できるようにしていこうということでございますから、先生のそのポイントというのがまさにこの議論のスタートラインではないかなと私自身思っております。
  102. 前島秀行

    ○前島委員 ありがとうございました。終わります。
  103. 穂積良行

    穂積委員長 速記をとめてください。     〔速記中止〕
  104. 穂積良行

    穂積委員長 速記を起こしてください。  これより内閣総理大臣に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鉢呂吉雄君。
  105. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 民主党の鉢呂吉雄でございます。  新しい食料農業農村基本法ということで、この農水委員会で三十時間を超える審議を経まして、きょうは締めくくり総括的な質疑ということで小渕総理の御出席をいただいたところでございます。  私も六時間余り、ここで中川農水大臣に御質問をさせていただきましたので、きょうは総括的な、この間の質疑を踏まえた質問をして、総理の御答弁をいただきたいと思います。  昨年、国鉄林野改革法案、総理にも御答弁に立っていただきまして、私からも、総理の出身地であります群馬県の中之条町を視察をしたその経緯、特にあのときは国有林野を調査したのですけれども、中之条町も中山間といいますか農業地帯、林業地帯でありまして、薬草とか山菜とか、そういった地場の産業を盛り立てて農業が振興しているさまを見させていただきました。  まず第一に、きょうは、小渕総理が五月の七日の本会議で、これまでの農政あるいは今の農業の実態、日本の経済社会の大きな変化という表現で、今日の農業あるいは農村をとらえておる答弁をされておるわけでありますけれども、総理の率直な、地元の農業あるいは農村の実態も含めて、今の日本農業に対して総理のお言葉でどういった感想をお持ちか、まずこの点から御質問をさせていただきたいと思います。
  106. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 昭和三十六年に農業基本法が制定されまして、その直後といいますか、三十八年に、私、本院に議席をいただいてまいりました。今日まで、たまたま出身地が中山間農業地域であったということもこれあり、米を中心にした農業から選択的拡大というようなことで、私どもの地元でも、畜産を初め、また果樹その他が大変導入をされまして、農家所得の向上に大きな利益をもたらしてまいりました。  が、しかし、あれからはや時もたちまして、今日、こうして新しい農業基本法、特に農業のみならず、農村食料、こうした課題に取り組まれて、こうして御審議をいただいてきておるわけでありまして、新しい農業農村食料、こういう観点から農業をしっかり見据えて我が国の将来の方向性を定めていくというための御審議を、今お聞きいたしますと、長時間にわたりまして与野党御審議をいただいておりますこと、大変ありがたいと思っておる次第でございます。  いずれにいたしましても、現基本法につきまして、高度経済成長が予想を上回るテンポで進んできたこと、また、急速な国際化の進展等により農産物輸入が予想を超えて増加してまいりましたこと、かつまた、食料消費者の視点が十分でなかったこと、農業農村の有する多面的機能の発揮の考え方が明確でなかったこと等々の問題が生じてまいりまして、そういった意味で、新しい観点に立ちまして、政府といたしましても御答申をいただき、そして法律として両院に御審議をお願いしておることでございます。  新しい時代における農業のあり方につきまして指針を示し、生産者のみならず消費者も含めまして、安定した食料確保することによりまして国の基盤をしっかりと確定することができれば幸いである、こういうことでございますので、よろしくお願いいたしたいと思います。
  107. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 総理の方から、現状、これまでの日本経済が全体としては非常に大きく発展をした、その中で相対的に農業という産業の見劣り、あるいはまた国際化が予想以上に進んだとか、また食生活の変化というようなことに言及をされました。  端的にあらわれております食料自給率は、当時、昭和四十年代の当初は七十数%、現在四一%という、世界の先進国、世界各国でも下位の位置づけになるという、自給率の低下が大変著しい。あるいはまた、総理も御案内のとおり、農村は高齢化、過疎化というものが深刻化をして久しいわけでありますけれども、なおその傾向がとどまらないという状況を呈しておるというふうに言わざるを得ません。  そういった意味では、総理の諮問機関でありました食料農業農村基本問題調査会の昨年秋の答申を経て、昨年十二月八日の段階で、政府がこの基本法に至る農政改革大綱というものをつくりまして、この基本法に先立つ基本的な大綱を示しております。その前文には、今の日本食料農業農村の現状は極めて危機的な状況であるというふうに政府みずから言及をして、戦後農政、今の現行基本法農政の反省の上に立って、国民的な視点で、これから新たな日本食料農業農村を守るための施策を講じていくというふうに政府みずから言及をされたわけであります。  学識経験者によりますと、反省という言葉を施策を講ずる政府が述べるということは禁句に等しいそうでございまして、私どもも、そのような危機的な状況と、そしてこれまでの農政の反省の上に立って次の新たな施策を講ずる必要がある、このように思うわけであります。政府の、内閣の最高責任者として、小渕総理のこの点の危機的状況反省という重みについて御所見をお伺いいたしたいと思います。
  108. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 今御指摘のように、農政改革大綱におきましても、現下の状況につきまして危機的状況にあるという認識をいたしておるわけでございます。  率直に申し上げれば、過ちがありますれば改むるにはばかることなかれということだろうと思いますが、私自身も、先ほど申し上げたように、三十数年、たまたま農村地帯を抱えておりますので、いろいろな農産物の生産を通じまして農業問題について勉強させていただいてまいりました。たまたま私どもの県は米の生産では輸入県でございまして、しかしながら、ずっと農業の中でお米というものが主体的にその中核であったことは誤りないわけでありまして、日本食料といえば米、こういうことになっておったわけでございます。  そうした意味で、いろいろの構造改善にいたしましても、そうしたすべて効率的な米作をいかに進めるかというところに重点があったことは事実でありますが、先ほど申し上げましたように、食料につきましても国民の求めるものが複雑に、また多岐にわたり、いろいろの要求が大きくなりまして、それにいかにこたえていくかということで、これまた代々政府といたしましても最善の努力は講じてきたわけでございます。  加えまして、国際的な関係との問題も大きく我が国農業を取り巻く環境の中に影響が起こってまいりまして、これらに対して適切に対応していかなければならないという観点に立ちまして、今日的時点で大きく方向を定めなければならぬということで、こうして木村先生にお願いしての答申もいただいて、これをもとにして、今これから新しいスタートを切ろう、こういうことでございます。  そういった意味で、過去それなりに日本農業発展のために政府努力いたしてまいりましたし、国会でも同様だったと思いますけれども、大きく世の中が進展する中で、その変化に適応することにおいて必ずしもおくれをとらなかったかという点についても反省すべきことは反省をした上で、今日新しい体制を整えようということだろうと思います。  改めて、そうした意味におきまして、今日これからスタートさせていただく新しい基本法のもとに諸施策が十分講ぜられることによって、安心のできる二十一世紀の食料農業農村体制が整うことがぜひ必要である、こういう認識で対処してまいりたいと思っております。
  109. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 危機的状況反省を踏まえてと、大変率直な御答弁をありがとうございます。  そこで、自給率の低下ということが言われておるわけでありまして、総理、資料を若干私の方で言いますけれども、十年単位で見ますと、昭和四十年代は先ほど言いました七三%の自給率が、急速に約二〇%下がって五四%になりました。昭和五十年代は五四%だったものが、十年間を経た六十年、五二%、二%しか下がっておりません。そして、昭和六十年代から今日まで、五二%から四一%と非常に顕著な傾向を示しておるのであります。  昭和四十年代といいますと、政府がたびたび述べておりますように、日本人の食生活が大きく変化をしたということに相応できると思います。  ところが、昭和五十年代、この十年間で二%。品目別にでも、例えば砂糖は、沖縄と北海道でビートとかサトウキビを生産していますけれども、逆に一五%から三三%、肉類も七七%から八一%、小麦も四%から一四%、牛乳、乳製品も八一%から八五%と、この五十年代をむしろいろいろなものが持ちこたえておる。これはある面では、農政が国内の価格を支持する、高度経済成長もありました、それを横をにらみながら価格を維持する、そういう農政をやってきて、ある面では日本農業が持ちこたえた嫌いがありました。  しかし、昭和六十年代は、今言ったように、まさに今、現時点、私も議員になって九年を過ぎましたけれども、私自身がなってからずうっと着実に一%ずつ下がってきておるのであります。今も下がっておる現状でございます。  中身を見ますと、単にこれは輸入農産物、新しい産品がふえたということではなくて、日本の伝統的な農産物、例えば野菜なんかも九五から八六に自給率は下がっています。夏でも、今の日本の出荷時期に当たるグリーンアスパラなんかがアメリカから輸入されておるという実態です。あるいは魚介類も九六%から七二%、果実も七七%から五三%と、伝統的な日本の食生活上の日本でできる作物が、大変自給率を下げておるという現状です。  これは総理も御案内のとおり、あの農産物十二品目のパネル報告ですとか牛肉・オレンジの自由化ですとか、あるいはガットウルグアイ・ラウンドにおける米を初めとするあらゆる国境措置が取っ払われる。そして今日、ことし米の関税化が始まるというようなことで、まさに、輸入農産物というよりも、国境措置が低くなったことによって国内農業生産の競争力が失われて、いわゆる国内供給力が全く崩壊をして、そのことによって、輸入がそのすき間を埋める。  農水省は、食生活が大きく変化をして、我が国農業生産を補う形で輸入が増加した、このように言っておりますけれども、実際にはそうとも言えない面が、いろいろな要素はありますけれども、全体的に見たときには、やはりそういう農産物の輸入自由化という流れが今日のこのような、最近十年間の自給率の低下をもたらしてきたと言ってもよいと思っております。  このような認識について、総理として同じ認識をとれるかどうか、御答弁をいただければと思います。
  110. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 昭和六十年以降の食料自給率の低下の要因といたしまして、米の消費の減少、畜産物や油脂の消費の増加等の食生活の変化が継続していることに加えまして、小麦、大豆、魚介類等の国内生産の減少が挙げられると認識をいたしておるわけでございます。  鉢呂議員指摘のように、確かに畜産物あるいは魚介類また野菜も減少しておることは数字的には示されておりますけれども、これは、申し上げましたように、いろいろ食生活の変化等におきまして、国民の期待される食生活の中でどうしてもそういうプレッシャーがかかってきておるのではないかというふうに認識をいたしておるわけでございます。それと同時に、日本国際社会の中で生きていく上に、国内における生産確保と同時に、そうした外国からのいろいろなプレッシャーというものも受けながら、いかにこれを調整していくかというところも農政の一つポイントであったというふうに考えております。  直接これは食料ではありませんけれども、私も長い間、蚕糸問題に取り組んでまいりまして、この日本の生糸生産、養蚕のあり方等について、随分外国との関係に苦慮してきたことを思い起こしておるわけでございますが、そういう中で、この輸入国内生産との問題については、最終的にそういう苦心の中で生まれてきた数字であるというふうに認識をいたしております。  基本的には、できる限り国内生産を確実なものにしつついかなければならないかと思いますが、冒頭申し上げましたように、食生活の変化等によりまして、国民の求めるものはそうした輸入をさらに増加させてきたという原因も否定し得ないものでないかと考えております。
  111. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 そういう意味では、農産物における国際貿易、これは極めて重要な課題でありますし、これからのこの新しい基本法に基づく農政も、農産物貿易ルールをどのようなものにしていくかということは極めて重要な課題であると思います。  自給率の向上あるいは国内農業生産の増大という、今、各党の協議も踏まえて、修正の方向でなされようとしておりますけれども、これとて農水大臣も、一定の国境措置のもとでという言及を必ずしながら国内農政について御答弁をいただいておるわけでありますけれども、肝心の国際貿易ルールを決める次期WTO交渉、このことについて、総理としてどのような態度で臨むか。  もう既にアメリカ等は国内支持政策を急激に減少させ、WTO協定期間では二〇%削減というものをもっと七〇%以上削減するということで、輸出補助金も削減しようあるいは関税率も大幅に引き下げようということを既にアメリカの農務長官等は言及しておるわけでありまして、今、総理も、六月のケルン・サミット、あるいはまた十一月にはWTOの閣僚会議が予定をされておりますけれども、これに臨む日本政府としての基本的な考え方について、総理の御所見をいただきたいと思います。
  112. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 来年の年初に開始をされますWTO次期農業交渉に当たりましては、二十一世紀の我が国農業を担う農業者が明るい展望を持って農業に取り組むことのできるような交渉結果を獲得する必要があると考えております。  政府といたしましては、WTO閣僚会議等の各種の国際会議に臨むに当たりましては、このような考え方のもとで、関係省庁一体となって対処いたしてまいりたい、こう考えております。
  113. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 総理、今の御答弁は、農業者が明るい展望の持てる、そういう交渉結果を生み出したいという趣旨の御答弁だったと思います。それは、いろいろなところで決めて今読んだ形になっておりますけれども、もっと、日本政府としてのきちんとしたメッセージというものを、国内にはもちろんでありますけれども、外国に対しても送る必要があるのではないか。  今農水省では、このWTO農業交渉における対応基本的な考え方、中間的なまとめをして、さまざまな国民皆さんに投げかけておるところでありますけれども、言ってみれば、極めてあいまいです。農水大臣に、余り詰めるな、交渉事であるからというような表現ではっきり言われておりますけれども、例えば、この基本法の精神における農業多面的機能食料の安全保障の重要性、あるいは国内農業政策の円滑な実施等が十分配慮される、十分な配慮というような表現です。あるいは、輸出補助金との関係で、輸入国輸出国バランスというようなことで、極めてあいまいな方針であります。  米の関税化を踏まえた意味は、WTO農業交渉においては、日本は同じラインから出発して粘り強い交渉をしていくということでありますから、やはり、国境措置をどのように決めるかというのは極めて重要な点でありますから、もっと日本政府としての明確な姿勢というものを示すことが必要じゃないか。そのことによってしか、国民的な合意も、内閣としてのリーダーシップも、あるいはそれを背景とした国際農業交渉もでき得ないのではないか。そういう意味で、総理の決意をお伺いしたいのであります。
  114. 中川昭一

    中川国務大臣 いずれ総理から御決意はあると思いますが、その作業を今やっておる最中でございます。今、基本的な考え方があいまいではないかと。これはもう骨子の骨子みたいなものでございまして、それを今肉づけをして、当委員会を初め国民各層の皆さん方の御意見をいただいて、政府部内統一をいたしまして、そして総理の最終的な御指示をいただいて次期交渉に臨むわけでございます。  今回は、国民的な合意のもとで、先ほど、どこどこの国のだれだれが日本に対して文句を言ったというようなお話がありましたけれども、我が国は、逆に、輸出国を初めほかの国に対しても我が国の立場を主張し、また、ほかの国に対しても我が国意見を積極的に言って、我が国主張最大限実現し、日本食料、国産の供給基本とした体制をつくっていく、その国論づくりの今最中でございます。いずれ近いうちに、総理御自身の口から、我が国の対処方針ははっきり申し上げることができると思いますが、現在作業中でございまして、きょうの御議論も含めてこれからそれをまとめていきたいという段階でございます。
  115. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 鉢呂委員の御指摘で、先ほどの私の答弁で、ある意味では抽象的、こういうふうにお酌み取りかもしれませんけれども、私も、基本的には、昨年のAPECのときに、これは林産物や魚の問題ではございましたけれども、それなりに我が国の立場を主張させていただいてまいりました。  WTO全体の問題でございますけれども、今中川大臣が御答弁申し上げましたように、現在政府部内で検討いたしております。したがいまして、そうしたことをもとにいたしまして、先ほどの御答弁では、あるいは十分私の意のあることが伝わらなかったかもしれませんけれども、日本農業者の立場というものをきちんと守って、我が国の国益を背景にして十分対処いたしていきたい、こう申し上げさせていただく次第でございます。
  116. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 地方、中央公聴会、三カ所で行ったわけでありますけれども、いずれも、農業者もあるいは消費者団体の皆さんも、現行のこの食料農業農村というものを危機的な状況で見ております。  特に、専業的な農業経営者からは、価格政策というものを市場連動型のものに移行するということで、既に、総理も御案内のとおり、米については、自主流通米ということで、一定の政府の買い入れ等はしますけれども、自主流通米の世界では価格は自由になる。その価格の著しい下落に対しては、経営安定対策という形で、農家と政府が資金を出し合った中から補てんをするという制度を発足させておるわけであります。  若干個別の課題になりますけれども、これはこれまでの政策を全面的に百八十度転換するものでありまして、WTO基本方向にも沿った形であります。しかし、同時に、価格を市場にゆだねるということは、農産物でありますから、価格の暴騰、暴落というものも出てくるわけであります。専業的な農業経営はそれだけで所得を得るという農家でありますから、その価格の変動を緩和するための所得補償政策というものがヨーロッパ等ではきちっと確立をしておるわけでありまして、そのきちんとした価格政策にかわる所得補償政策というものを明確に農政のこれからの方向として位置づけるべきであるという強い声が、専業地域から農家の声として出ておるわけであります。  これからさまざまな、政府管掌作物、これまで政府が価格を支持しておった作物についての見直しが出されるわけでありますけれども、いわゆる生産調整、あるいは、今の米の生産調整と同時に調整保管というような形で、でき上がった生産物について市場で一定の隔離をするとか、あるいは、生産費や所得補償をきちっと行う価格の一定の維持政策というものが必要であるというふうに私どもは強く主張をさせていただいておりまして、総理として、この価格政策と所得補償政策についてお考えがあれば、お示しをいただきたいと思います。
  117. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 今後の農業生産におきまして、需要に即した生産の展開を促していくことが重要でありまして、農産物の価格が需給事情や品質評価を適切に反映して形成されるよう価格政策の見直しを行っていく考えであります。  その際、価格政策の見直しに伴う価格変動が農業経営に及ぼす影響を緩和するための経営安定対策を講ずることといたしておりまして、現在、各品目別に、その生産、流通状況等を踏まえつつ、具体的な検討が進められておるところだと考えております。
  118. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 時間が来ましたので終わりますけれども、いずれにしても、大きな、新しい食料農業農村基本法に踏み出すわけでありますから、政府が一体となってこの日本の危機的な状況対応していくように、また、内閣総理大臣として、WTOのこの農業交渉に指導的な役割を果たしていただくように心からお願い申し上げまして、質問を終わらせていただきます。
  119. 穂積良行

    穂積委員長 次に、宮地正介君。
  120. 宮地正介

    ○宮地委員 きょうは、内閣総理大臣、大変御多忙の中、当農林水産委員会に御出席をいただきまして総括質疑に対応していただき、敬意を表したいと思います。  せっかく内閣総理大臣が見えましたので、この新農業基本法の問題に入る前に、大変重大な問題が起きておりますので、最初に一、二点、総理に確認をさせていただきたいと思います。  昨日、総務庁の労働力調査によりますと、男性の失業率が五%、平均四・八%、こういう大変な、最悪の今の雇用実態が発表されました。まさにこれは、三百四十万人を超える完全失業者が我が国に今いるという発表でございます。これは、国民の生活権が脅かされる大変重大な事態に今我が国は陥っている、国会、内閣、政府が挙げてスピーディーにこの問題に対応していかないと大変な危機的な状態になるんではないかと私は危惧をしているわけでございます。  総理として、この問題の解決のためにどうこれから努力し、対策を打ち出そうとされるのか、お伺いをしたいと思います。
  121. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 雇用対策といいますか雇用問題は、現下、政府最大政治課題であるというふうな認識をいたしており、本問題については、宮地委員指摘のように、政府、民間、また当然国会を挙げていろいろな対策について検討させていただいておるわけでございますので、政府といたしましても、この問題に絞ってこれから大いに検討し、その対策を講じていかなきゃならぬというふうに思っております。  今日、メディアも五%という数字を示しておるわけでございまして、これは、男女平均、合わせますと四・八ということではありますけれども、主要な労働力となっております男子においてそのような数字が出たということを、厳しくこれは見詰めていかなきゃならないと思っております。  そこで、早速、雇用対策につきまして、昨日も雇用対策に絞った閣僚懇談会を開きまして活発に議論をいただいておるところでございますが、六月十一日にこれを取りまとめいたしまして、内閣として総力を挙げて取り組んでいく諸施策につきましても、具体的に問題を絞って逐次対応していかなきゃならない、こういうふうに考えております。  現下、経済の回復ということが大きな課題でありますが、それと関連をいたしまして、企業の競争力の強化ということとなってまいりますと、従前の、俗に言う企業内の失業というようなことは、これはなかなか企業も持ちこたえられない、さすれば、外に出てこれが具体的な数字としてのこの失業率になるということでございまして、この問題については大変憂慮いたしますと同時に、さらに真剣に取り組むべき課題だと心得て、政府を挙げて最善の努力をいたしてまいりたい、このように考えております。
  122. 宮地正介

    ○宮地委員 この問題の大変に重要な問題は、構造的な、質的な変化が起きているということであります。依願退職など自発的な離職を、リストラと言われる解雇とか倒産とかリストラ、これが上回ってきている、質的変化が起きている、そして三百四十二万人という大変な事態である。この根底には、やはり景気の問題があると思います。  総理は、来年の三月まで、今年度、〇・五%の景気を上回る、そういうことで十五カ月予算を組まれました。しかし、いまだにこの景気は低迷をしている。ここに最大の原因があるわけでございますから、さらにこの景気を上乗せするスピーディーな対策が求められていると私は思います。それはまさに、単刀直入に言うならば、新たなる大型補正予算を準備する、そういう段階に来ていることの兆候ではないか、私はこう考えているわけですが、総理はこの点について重大な意識を持って取り組もうとされているのかどうか、この点について確認をしておきたいと思います。
  123. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 景気に対しての、これをいかに対処すべきかということはもう宮地委員指摘のとおりでございまして、さすれば、昨年来二十七兆円に及ぶところの緊急経済対策を講じ、お話にありましたように、予算につきましても、本年一—三月も含めまして十五カ月予算という形でかなり大型の予算を編成し、これを国会でお認めいただいて、現在執行をしておるさなかであります。  したがいまして、その成果につきまして、四—六におきましてどのような数字が出てまいりますか、現在それを見詰めておるところではございまするけれども、切れ目なく経済がこれから伸長することによりまして、ぜひ、その目標でありますところの、この十一年度、〇・五%プラス成長へ向けてあらゆる施策を講じていかなければならないということは当然なことだというふうに考えておるところでございます。が、しかし、現在、どのような状況になるかにつきましてはまだ定かにならない点もございます。  いずれにしても、二年間のマイナス成長を乗り越えて、ぜひ十一年度にはプラス成長になりますようにということで今最善の努力をいたしておるところでございますし、また、おかげさまで予算につきましても、三月の早い時期にこれを通過させていただくことによりまして、確かに公共事業等につきましては、四月一日から直ちに実行のできるような措置を講じておりますので、その進捗率は非常に高まっております。この点について、いわゆる識者の方からいいますと、公共事業を既に早々と執行いたしておりますので、これが息が続くかというような指摘もございまするけれども、ほかの購買力というような問題につきましても、消費の動向も、楽観は許しませんけれども、昨今、若干財布のひもも緩められつつあって、消費についても、先行き、若干望ましい方向に進んでいくのではないかというような状況でございます。  長くなりまして恐縮でございますから、御質問趣旨でございました大型の補正予算をつくるかどうかというような問題については、現時点では、これはお答えすることは大変難しゅうございまして、何としてもこの四—六、そして願わくば、夏その他におきましてもさらに消費が伸びることによりまして、住宅問題、これに対する国民の要望の高さと相呼応して、現下の状況を厳しく見詰めつつ、さらなる努力を講じていかなきゃならないというのが今申し上げられる御答弁のすべてでございます。
  124. 宮地正介

    ○宮地委員 この問題は、また予算委員会等で徹底して審議を行いたいと思いますが、緊急的な危機的な状態に今陥っているという認識をお持ちの上、スピーディーな、タイミングのいい雇用対策をぜひ期待したいと思います。  そこで、本題に入りますが、今回の新農業基本法は、先ほどから総理の御発言がありますように、現行の農業基本法昭和三十六年に制定されて以来、三十八年ぶりの抜本的な新法の審議に入っているわけであります。この新農業基本法、二十一世紀に向けての我が国食料農業農村の再生を目指す重大な、まさに農業の憲法をつくるわけであります。  そういう意味合いにおきまして、我々は、これをさらに一歩魂を入れたい、こういう決意で修正に臨みました。幸い、共産党を除く各党が修正に合意をいたしまして、本日の採決の前に共同修正案が提案をされるわけですが、その一つの大きな柱は、自給率の向上を明記するということであります。そして、もう一つは、今回の新法の中で五年ごとに見直しをされる基本計画、これを、いわゆる国民に公表するだけではなくして、国会に報告を義務づける。まさに国会も報告を受けるということは、責任を持つということであります。そして、今後、国の生産というものは基本的には増大をしていく、右上がりの方向に持っていく。まさにこれは自給率向上と合致をする。こういう三つの修正を今回することになったわけであります。  まず、この修正案について、中川大臣、総理、今後どのように誠実に履行する考えなのか、決意と抱負を確認しておきたいと思います。
  125. 中川昭一

    中川国務大臣 三十数時間を超える御議論の中で絞られたポイントの三点が、今先生から御指摘のありました国内生産の増大を図ることを基本とし、それから十五条で自給率の向上を旨とし、さらには国会報告とともに公表という三点、この修正案が、宮地先生を初め理事委員先生方で当委員会で合意がなされて、後ほど提案されるということでございます。  もともとそういう趣旨であるということで御理解をいただきたいという答弁をさせていただいていたわけでございますけれども、まさに、より明確な形でこの条文が修正されたことに対しましては、可決されましたならば、政府といたしまして、責任を持ってその御趣旨を体して施策の実行にさらに努力をしていきたいというふうに考えております。
  126. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 政府原案に対しまして、今、宮地先生から修正部分についての御紹介を改めてちょうだいいたしました。  内容につきましては、今、中川農水大臣が、これを評価といいますか、十分この院における、当委員会における修正につきましては、段々の過程を承知しておる担当大臣が今御答弁されました。  私といたしましては、各党間の協議によりまして共同修正案が提出される運びとなりましたことは、今の御説明で承知をするところでございます。私といたしましても、このことをしっかりと受けとめまして、共同修正案が採択されるということになりました場合には、これに誠実に対応してまいりたい、こう考えております。
  127. 宮地正介

    ○宮地委員 そこで、きょうは、総理、この中のやはり非常に重大な問題の一つが、食料自給率の向上という問題であります。  これについては、御承知のように、穀物自給率は現状は二八%に落ち込んでおります。カロリーベースも、現在の農業基本法がつくられた昭和三十六年、総理が当選された昭和三十八年ごろは七九%あったわけであります。それが今、四一%まで、ちょうど年々一%ずつ落ちて、三八%落ちたわけです。これはまさに、私は大変な危機的な状況にあると思っております。  ところが、農業生産者は非常な技術革新、合理化を進めて、生産性は上がっている。この中で、なぜこうした自給率が落ち込んだか。最大の問題は、国民の食生活の大きな変化であります。あるいは米離れ、パンあるいは牛肉など肉に、こうした消費生活の変化の問題が大きな要因にあるわけであります。  こうなりますと、いわゆる生産段階で、農水省主導で生産者にいろいろと御苦労いただいております。しかし、この自給率の向上という問題は、生産だけではもう達成できない。生産から消費あるいは流通、加工段階、そして何といっても国民理解と合意という、新しい食生活の変化、そのニーズに、我々国会なり政府なり内閣がどう今後取り組むかということが大変大きな問題です。  私は、中川農林水産大臣、農水省を基軸として内閣が関係閣僚会議などを開いて、経済企画庁なら消費者生活の問題、教育の問題、学校給食の問題なら文部省、食品の安全、品質、こうしたチェックは厚生省、広く関係省庁にまたがって総力を挙げて初めてこの自給率の向上という問題が私は一歩前進をすると考えているわけであります。  そういう意味合いにおきまして、今回、この法律で基本計画をつくり、自給率の目標を立て、さらに実効ある政策を打ち出していきます。私は、そういう中において、総理大臣がリーダーシップをとって、でき得れば、内閣の中に食料問題の閣僚懇談会を設置するなり、あるいは、現在内閣に設置されている危機管理室に、今、軍事とか災害がその中にありますが、食料問題もやはりこの危機管理の対策室に入れるなど、何らかのそうした機構改革なり、何らかの内閣挙げての機能する会議を設置するべきではないか、こう提言するわけでございますが、総理大臣の決意なりお考えを伺いたいと思います。
  128. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 委員が、極めて重要な課題として、政府としても、食料安保という観点に立って、内閣でこうした問題を取り上げて具体的な検討の部署を考慮しろというお考えと承りましたが、極めて重要なことと心得ております。  現在、農水省を中心にいたしまして最善の努力をいたしておるところでございますが、あわせまして、こうした自給率問題、食料の安全保障というような問題につきましては、国政の重要課題の一つとして認識をいたしておりますので、内閣を挙げて取り組んでまいりたいと思っております。  食料自給率の向上について、政府が策定する基本計画の中で、目標数値とともに総合的、計画的に講ずべき施策について定め、政府が責任を持って取り組んでいくことを明らかにしておりますが、改めて、国政の最重要課題と認識しております。  内閣を挙げて取り組んでまいりますが、その内閣においてどのような部署でどうしたらいいかということにつきましては、いま少しく検討させる時間をちょうだいいたしたいと思います。冒頭申し上げましたように、認識は全く私は等しくするものだろうと思いまして、国家安全保障というものはもちろん、先般ガイドラインの法案を通させていただきましたが、そうした意味での軍事的な問題もさることながら、人間の生命を維持するための食料という問題に対する認識につきましては、私は同等の考えをもって対処すべき課題であると認識をいたしております。いずれのところにどのようなことの機関を設けるべきかにつきましては、さらにひとつ検討させていただきたい、こう考えております。
  129. 宮地正介

    ○宮地委員 食料安全保障という観点からの認識においては、私は総理と一致したと考えております。具体的なこれからの対策の中身については、ぜひ前向きに検討していただきたいと思うわけであります。  もう一つ重大な問題は、今法案の中において初めて中山間地域対策としてデカップリング制の導入をするということであります。まさにEU諸国におけるデカップリング制を参考にしながら、我が国において初めて中山間地域の農業者に対していわゆる直接支払いという所得補償政策を導入するわけであります。私は、この制度の導入において、きょう総理に申し上げたいのは財源問題であります。制度の中身の、交付の仕方とか基準づくりは既に農水省内で検討をされております。問題は財源であります。  今この財源問題については、農水省の予算の枠の中でやりくりをしようというのが大方の流れであります。それでは、果たして本来のこの制度を実効あるものにできるかどうか。やはりこの際、新たなる財源措置についても、内閣挙げて食料自給率の向上に向けても頑張るという認識を今示されたわけでありますから、このデカップリング制をさらに実効あるものにするために、財源については一つの枠を決めないで、政府、内閣として、しかるべき必要な財源は平成十一年度予算からきちっとこれはつくり上げていく、積み上げた結果としてつくり上げていく、私はこの決意が必要であろうと思いますが、内閣総理大臣として、この財源問題についてはどういうお考えをお持ちなのか、お伺いをしておきたいと思います。
  130. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 まず、その中山間地帯に対するデカップリングの問題については、冒頭、私、鉢呂議員にお答え申し上げましたが、私自身の住まい、選挙区がそういう地域でございますから、非常に関心を深くしておりまして、また、そういう意味で、スイスを初めとしたそれぞれの地域でのこれの前例となるものもいろいろ勉強させていただいてきております。  そこで、今御指摘のように、予算のあり方について御提案を含めましてのお話がございました。現行予算編成の作業の中で、一義的には農水省の中でこれを処理するんだろうと思いますが、今、委員が具体的にどういう形というものをちょっとお聞きをいたしませんでしたので、お答えが十分でないかと思いますけれども、いずれにしても、極めて重要なことであり、国民理解を得ませんと、単にそこに生活する方々の生活権を保障するということでなくて、日本全体の国土のあり方等も考えますと、それに対しての負担、国民的な税負担、こういう問題にまでさかのぼって考えなきゃならない課題であるというふうに思っております。  結論から申し上げますと、御意見につきまして、いかなる予算的な取り組みをすることが最もこの地域を守り育てていくにふさわしいかという観点に立ちまして、これまた十分検討させていただきたいと思います。
  131. 宮地正介

    ○宮地委員 きょうは時間が参りましたので、この程度で終わりますが、ぜひ、総理大臣、この新法は、二十一世紀に向けての我が国農業の再生、そして我が国農業生産者あるいは消費者国民が希望と夢の持てる、そうした生きた法律にしていかなくてはなりません。政策、そして財源、そして国民理解と合意が最も必要であります。どうか、この法律が施行になりましたら、小渕内閣挙げて早急にこの問題について取り組んでいただきたいことを強く要請して終わりたいと思います。ありがとうございました。
  132. 穂積良行

    穂積委員長 次に、中林よし子君。
  133. 中林よし子

    ○中林委員 日本共産党の中林よし子でございます。  今回の食料農業農村基本法案に対して最も重要な問題は、日本食料自給率が四一%という極めて低いところに低下している、つまり、七千万人分の食料は外国に依存する、この異常な状況からどう抜け出していくかということが問われているというふうに思います。  そのためには、日本農業の再構築、そして食料自給率を回復、向上させる。この異常な事態から抜け出していくということは、国民の生存にかかわる重大な問題だと思います。と同時に、二十一世紀は世界的な食料危機、このように警鐘が鳴らされているもとでの我が国の国際的な責務でもあるというふうに考えます。問題なのは、この法律案が本当に食料自給率向上をできるかどうか、この点だというふうに思うわけです。  総理、本法案で、政府が責任を持つ具体的な自給率の数値目標はいまだに示されておりません。もちろん、条文にも書き込まれておりません。だから、この審議を通じて、目標数値は一切今後の問題だということになっているわけで、すべては基本計画に逃げ込まれております。そして、言われていることは、消費者農業者に指針を示すだけだと。これで本当に自給率が向上できるのか、その保証が本当にあるのか、その点についての総理のお考えをお聞きします。
  134. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 自給率の問題について、数字について現在これが提起されておらないということでありますが、今この問題については検討しておりまして、中川農水大臣のもとで十分検討いたしておりますので、いずれ、基本計画におきましてこれが指し示されるものと考えております。
  135. 中林よし子

    ○中林委員 総理がそう言われるならば、ますます不安になってくるわけですね。  だから、この法案の条文上では、基本計画でそれは決めるということになっていて、本当に小渕内閣挙げて自給率向上に向かうという、そういう総理の御決意といいましょうか、私はそういうものをお伺いしたかったわけでございます。実は、数値目標も非常に大切な目標で、それがなければすべての施策がそこに向かわないというふうに思うわけですけれども、同時に、私は、具体的な政策の中身、これも重要だというふうに考えます。  今度のこの食料農業農村基本法案は、九二年にスタートした新農政、新しい食料農業農村政策の方向、それがまず中核になって今回つくられております。この新政策論議のときにも、当時、自給率が四六%ということで、自給率をもうこれ以上下げない、歯どめをかけるんだということで大問題になりました。実は、この新政策がスタートする少し前の平成二年、一九九〇年ですけれども、一月の閣議決定で、二〇〇〇年には五〇%の自給率にするんだ、そのためにはこの平成四年にスタートした新政策を実施すれば、五〇%目標は達成できるんだ、こういうふうに言い切っているわけです。ところが、それからどんどんまた低下をして、今や四一%にまでなりました。  先ほど、総理に質問する前に実は大臣にも質問してきたわけですけれども、この新政策がスタートしてから以降、食料自給率がなぜこんなにまで低下したのか、新政策を実施すれば五〇%に二〇〇〇年にはなるんだと言い切ったのにと言うと、この新政策論議していた自給率低下の原因、それを同じように繰り返されたにすぎませんでした。そうであるならば、私は、もうこの新政策そのものの政策が今日時点で破綻したと言っても決して過言ではないと思うわけですね。  あなた方が新政策で、自給率を上げる、もう歯どめをかけるんだ、こう言い切っているにもかかわらず、それを中核とするようなこの新しい農業基本法案で本当に自給率が引き上げられる、総理、その担保は一体どこにあるんでしょうか。
  136. 中川昭一

    中川国務大臣 先ほどから新政策お話をずうっと、私のときにも御質問がありましたが、確かに、見通し、今後の食料自給率の見通しというものがありまして、その見通しを、諸般の情勢によって達成できなかったことは事実であります。  しかし、その新政策に基づく見通しというものを、現行農業基本法のもとでの新政策における見通しを、今それを前提にしてこの先どうなんだという議論は、まさに、基本法から、新しい食料農業農村基本法という国民全体が極めてかかわりのある法律を基本法としてつくって、みんなで自給率を設定して、政府の責任のもとでみんなで実現をしていきましょうという全く新しい概念のもとで今回自給率を設定するわけでございますから、現行法時代の新政策というものはこれからの議論前提にはならないということを御理解いただきたいと思います。
  137. 中林よし子

    ○中林委員 総理も同じ認識でしょうか。
  138. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 今中川大臣がお答えを申し上げたとおりでございます。
  139. 中林よし子

    ○中林委員 この新政策スタートに当たって、実は自給率が五〇%を割って四六%までなった、もうこれに歯どめをかけなければならない、したがって規模拡大をして、そして日本農業を集約的に進めていくならば自給率低下に歯どめがかかり、そして二〇〇〇年には自給率五〇%に行くんだ、そのときにも消費者の問題も出てまいりました。米の消費が落ち込んでいる、食べてもらわなきゃいけない、みんなが朝御飯一杯ずつ食べてもらうならばそれで上がるんだみたいな話も当時の論議の中で、政府の答弁の中で出てきております。今も同じことをおっしゃっている。しかも、今回の新しい農業基本法のいわば中核には新農政が据わっているわけですよ。  新農政がこの中核に据わっているということは間違いありませんね。
  140. 中川昭一

    中川国務大臣 現行農業基本法のもとで新農政があり、そして新農政のもとで食料の需給の見通しということで五〇%を目標にというのが正確な説明だと思います。  今回は、新しい基本法のもとで、政府が責任を持って、生産者あるいは消費者国民全体がそれぞれ協力し合って、消費者の方々も、食べ残しや日本型食生活の普及といった問題も含めて、新たなことも含めて、みんなで協力をして国産の農業生産を、あるいは漁業産物もそうでございますけれども、国産物を中心にして自給率を上げていこう、それが国民にとって安全と安心のもとであるという大前提がこの法律にあるわけでございますから、基盤の枠組みというものが新たなものに変わったという前提での御議論でないと、過去の十年前の議論と全く同じだとか達成できないということは、私は意味のない議論だと思います。
  141. 中林よし子

    ○中林委員 反省すべきは反省するともおっしゃいました。自給率の低下の原因、政府は何をしなければならないかといったその方針、これがずうっと一貫して繰り返し出てきて、今度の新しい農業基本法案がその反省の上に立って、私は、食料自給率がこれなら上がるよというものが出てくることを期待しておりましたが、残念ながらそれが見受けられないから言っているんです。  そこで、私は、今度の新農業基本法案の最大の特徴、これは何かと見ましたら、食料供給輸入という言葉が入ったことだ、こういうふうに思うわけです。第二条第二項で輸入義務が盛り込まれて、第十八条で、輸入のために必要な施策を講ずる、農産物輸入に一段と拍車をかけていく、そういう方向づけがなされました。私どもは、こういうことではますます食料自給率低下を招きかねないと思うわけです。  ウルグアイ・ラウンド交渉を前にしたとき、平成三年二月十四日の当委員会で、日本共産党の藤田スミ議員質問に、当時近藤農水大臣でしたけれども、米の自由化というものと自給率というものは大変大きな関係があり、それゆえに自由化はできないという主張を貫いているわけですと、大変強い主張をなさったわけです。  総理、本当に食料自給率を高める、それがこの法案の中に展開されているんだ、そうおっしゃるならば、私は、この輸入義務規定、ここを転換する必要があると考えます。そのためには、この四月一日から実施している米の関税化の撤回、そしてWTO協定の改定、これをすべきだと考えるわけですけれども、国の基本姿勢にかかわる問題ですので、総理の答弁を求めます。
  142. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 今回の関税措置への切りかえに当たりまして、WTO農業協定の規定に従って適切に二次税率を設定しているところでありまして、当該二次税率のもとで、米の輸入が急増し、国産米の需給や自給率に影響が出てくるとは考えておりません。このことからも、米の関税措置への切りかえを中止する考えはございません。
  143. 中林よし子

    ○中林委員 ウルグアイ・ラウンド交渉WTO協定を結んでそこに組み込まれた日本政府の卑屈さというものが、今、私は総理の答弁ではっきりしたと思うんです。  実は、それまでの政府対応というのは、関税化というのは、必ずそれは引き下がっていき、これは自由化につながっていくものだということで、頑としてそれは引き受けない、受け入れないという態度でずっと臨まれておりました。現に、実は一九九六年に農水大臣の私的諮問機関で農業基本法に関する研究会というのが報告を出しているわけですが、「農産物輸入の増加は、自給率を一貫して低下させるとともに、農業生産の増大の実現を制約する等国内農業が発展していく上で大きな影響を与えた。」このように報告しているわけです。政府側の報告なんですね。  そういうもとで、私は、米の関税化の撤回もしない、WTO協定の改正もしない、こういう立場では本当に輸入増加に一層拍車がかかり、自給率低下を招きかねないということを申し上げておきたいと思います。  もう一方、自給率を引き上げるために大切な問題は国内生産の増大だ、このように思います。その点では、私、総理とそんなに意見は違わないと思うんです。農家の人たちが今息子には跡を継がせられないとか、本当に農業の先行きに大変不安だということで展望を失っている人たちの声を私はたくさん聞いております。  農業生産増大の決め手は、価格政策と所得補償、そして家族経営を本当に今の農業の中心に据えるという政策、ここだと思うのですね。  現行の基本法政策目標としては、農業従事者が所得を増大して他産業従事者と均衡する生活を営むこと、こう掲げて、農産物価格については農業所得の確保を明記している。その現行農業基本法と比べても、今度の新農基法案は市場原理を持ち込んだということで、私は決定的な後退につながると思います。だれに聞いても、農業は市場原理にはなじまない、こういうことを言うわけですよ。  本来、農業というのは、生産費をちゃんと償い、他産業並みの労働報酬を保障する農産物価格、これが本当に必要だ、このように思うわけですけれども、総理はどのような御見解でしょうか。
  144. 中川昭一

    中川国務大臣 今度の基本法で市場原理、先ほどは市場原理万能というお言葉をお使いになっておりましたが、市場原理という言葉は三十条の中には出てこないわけでございます。  国は、消費者の需要に即した農業生産を推進するため、農産物の価格が需給事情及び品質評価を適切に反映して形成されるよう、必要な施策を講ずる、その場合に、農業経営に対して影響がある場合には必要な施策を講ずるということでございまして、一般論として、ほかの商品のように市場原理が全く適用されるべき分野でないということは、私も農産物に関してはそう思っております。  適切な国境管理、そしてまた三十条でも今回、消費者生産者、消費者が欲しいものを生産者がつくる、あるいは生産者がつくったものを消費者が、国産のものを感謝して食べたり使ったりする、そういう関係をこの条文では期待しておるわけでございまして、その間に価格変動が起きる可能性がある、その場合には影響を及ぼさないような措置をとるということでございまして、市場原理万能ではないということを御理解いただきたいと思います。
  145. 中林よし子

    ○中林委員 大臣と私はこれまで随分論議をしてきて、きょうは総理と論議したいということで、総理に対して質問を行っているわけです。だから、農水大臣のお考えはもうこれまでもたくさん聞いてまいりました。  そこで私は、農水大臣が、いや、これは市場原理万能じゃないんだよ、ちゃんと価格補償、そういう必要があるならばやるんだよとおっしゃったならば、ぜひそれを強めていただきたいと思うのです。  これは総理にぜひ聞いてほしいのです。例えば北海道の農業は、日本人が食べる食料の、カロリーの二六%を供給している、こういう非常に重要な農業地です。政府の規模拡大にずっと忠実に従って、いわば政府の優等生と言われるような、そういう規模拡大を進めてきました。耕地面積や飼育頭数、それはふえましたけれども、同時に膨大な借金を抱えております。今離農が相次いでいる、こういうふうにも伝えられていて、国境措置だとかあるいは価格支持制度、これを外されたのではもうやっていけないんだという切実な声を出しておられます。本法案で、規模拡大あるいは市場原理の導入、あるいは輸入自由化の道、これは北海道の農家の方々にとっては、今までもイバラの道だったけれども、この道を進んでいけば今度はがけっ縁に行くんだ、まさに農業崩壊に突き進みかねない、こういう非常に悲痛な声を上げておられます。  そのためには、価格補償、所得補償という問題で先ほども予算の話が出ておりましたけれども、少なくとも、それは第一義的には、農林水産省の中での予算のあり方をまず考えてほしいという総理の御答弁もあったわけですが、農林水産予算を見ると、公共事業費が今年度で五一・六%を占めている、所得や価格補償というのはわずか一〇%前後になっているわけですね。  EUなどからも学ばなければならないというお言葉もございました。  例えばイギリスでは、所得、価格補償が全体の予算の七割を占めている。フランスでは六三%を占めている。ドイツでは五一・六%を占めている。私は、この価格や所得補償、これが農林水産予算の過半を占めるべきだということを当然条文の中にも明記すべきだ、このように思うわけですけれども、総理のお考えをお聞かせください。
  146. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 農業予算につきましては、従来、農業関係予算全体につきまして、事業の効果や地域のニーズ等も勘案しつつ、必要な見直しを行い、新たな基本法考えに沿った予算編成をしていくことが重要であると考えております。  このような全体的な見直しの中で、市場原理を重視した価格形成の実現、価格政策の見直しに伴う経営安定対策の実施等に関する政策の推進につきましても所要の予算措置を講じてまいりたい、このように考えております。
  147. 中林よし子

    ○中林委員 質問時間が参りましたので終わりますけれども、本当に今度の法案が、輸出入国のバランスを欠いていると政府が言ってきたWTO農業協定に合わせたもので、それに対する敗北主義だとも、中央公聴会で、ある大学の先生指摘をされました。日本共産党は、本当に食料自給率が引き上がるように、輸入を規制し、国内生産維持するために価格支持制度をしっかりとつくっていく、そのために全力を挙げることを申し上げ、政府もその立場に立っていただくことを要望いたしまして、私の質問を終わります。
  148. 穂積良行

    穂積委員長 次に、前島秀行君。
  149. 前島秀行

    ○前島委員 総理、御苦労さんでございます。  最初に、WTOに向けての政府基本的な考え方、スタンス、決意を聞きたいと思います。  この二〇〇〇年から始まるWTO交渉、既にこの六月には始まり出すだろうと思います。そういう面では、このWTO次期農業交渉の行方が、今議論しているこの基本法の具体的な実施に当たって重要な役割を果たす、WTO交渉次第では、目指す農業基本法の具体的な施策も限界にぶつかる。あるいは逆に、我々の主張である輸入国の立場をとった、そのスタンスに立った新しいルールづくりをすれば、今議論しているこの農業基本法はさらに具体的な政策の幅が決まってくる、こういう重要なものだろうと思います。そういう面では、このWTO次期交渉における政府対応ということは、極端に言うと、二十一世紀の日本農業を方向づける、食料の安定ということもまた決定づける重要な対応だろう、こういうふうに思います。  片や、六年前のウルグアイ・ラウンド等々のことをいろいろな面で思い出しますと、一つは、きょうの午前中の議論にありましたように、国論が割れていたなという点があると思いますね。確かにある。同時にまた、私は、率直に申し上げまして、交渉する政府の中で、十分な意思統一と決意があったのだろうかという点も、我々は今後の参考にせねばいかぬ問題もあったような気がいたします。  そういう面で、私は、政府が一体となって、強い決意でこのWTO農業交渉に臨んでもらいたいというのが第一の要望でありまして、特に今の農業協定というのは明らかに輸出国側に有利であり、輸入国側に不利であるということは間違いない。したがって、これからの農業が、この現行のWTOの枠の中でもって政策選択するという範囲にとどまっていたら、私は、これからの日本農業というのは将来がない、未来がないような気がいたします。  やはり、私たちは、この交渉に向かって基本的に各国農業の現状というものを認め合う、あるいはそれぞれの国の歴史的な経過あるいは自然的条件等というのをお互いに尊重し合う、そして、食料自給率というのは原則的に各国が責任を持つんだ、こういう立場に立った新たな農産物の貿易ルールをつくる、この決意で臨むか臨まないかというところが私は分かれ道のような気がしてならないわけなんです。現行の協定の枠の中で、グリーンボックスは何かというところを中心にしてこれからの農業政策を打ち立てていくのか、そうじゃなくして、食料自給というのをそれぞれが認め合うんだ、それぞれの農業の歴史的、条件的立場を認め合うんだ、そういう中で新しい貿易ルールを確立して、その中で農業を展開していくかどうかというところが具体的な政策選択の大きな分かれ道になる。それがこのWTO交渉における大きな意味であるだろうし、また、そこに我々日本側、我が国がどういうスタンスで臨むのか、その決意、その意思統一を政府としてどうしていくかというところが分かれ道のような気がしてならないわけであります。  私は、このルールが確立されるまでは、例えば、米の関税率なんかはもうこれ以上下げないぞとか、あるいは、こういうルールが確立するまでは、特別セーフガードの適切な発動だとか、片っ方で国家貿易維持していくんだということを、国際社会に向かって、各国に向かって、日本のスタンスとしてメッセージを送る、こういう姿勢が問われているような気がしてならないわけなんです。この姿勢を、政府が、特に総理大臣が率先して腹を固めることが国論の統一になるだろうし、また政府部内の意思統一になっていくんではないだろうかなというふうに思うわけでありまして、そういう面では、私は、総理の決意、総理の腹の固め方、そしてこのWTO交渉に臨む基本的なスタンスのとり方が決定的な意味を持つのではないだろうか、こういうふうに思うわけであります。  WTO交渉に臨む総理の決意をひとつ聞かせてください。
  150. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 来年の年初に開始されますWTO次期農業交渉は、農政改革を推進し、意欲ある担い手を中心とする農業構造を早期に実現すべき重要な時期に行われる交渉であり、この交渉におきまして、二十一世紀の我が国農業を担う農業者が、将来に明るい展望を持って農業に取り組むことができるような交渉結果を獲得する必要があると認識をいたしております。  WTO次期農業交渉におきましては、このような基本的な認識のもと、関係者が一体となって、国民理解を得ながら、揺るぎない交渉方針を築き、農業多面的機能食料安全保障確保を十分図ることができるような内容の合意が得られるよう適切に対応していく考えでありますが、今、前島委員指摘のように、今般、この新農業基本法日本の将来にわたっての一つ基本方針を打ち出させていただいて、農業憲法ともいうべきこれをきちんとしていかなければならぬと思っております。  が、同時に、国際的なこうしたそれぞれの協定その他との絡みが当然起こってくるわけでありまして、かつて米の問題でもそういったガットの問題等を生じてきたわけでございます。  したがいまして、WTOにどのように対応するかということは、極めて、かかって本基本法の将来にわたる方針とも関係することでございますので、現在、この問題につきましては、政府部内でも、かつまた与党の中におきましても、いかにこれに対処、対応するかということで、真剣に今検討させていただいておるところでございます。  今委員のおっしゃられたことは十分理解をするところでございますので、そうした前提、認識に立ちまして、WTO交渉に当たりましての政府考え方につきましても、十分こうした基本法に基づいて、日本農業がいかにあるべきか、また日本食料がどうあるべきかというような問題について、その方向に相たごうことない方向について対処していきたいというふうに考えております。
  151. 前島秀行

    ○前島委員 いわゆる新しい貿易ルールをつくるんだという決意が絶対必要だろうと思います。その決意で内閣を統一して、引っ張っていってほしい、このことだけはぜひお願いをしたいと思います。本当に、六年前のウルグアイ・ラウンド交渉の中でそれだけの決意と統一性が内閣にあったのかなというのは反省すべき材料だと私は率直に思っているところでありますから、ぜひそこのところは、総理、ひとつ新しい貿易ルールをつくるんだという決意で臨んでほしいということをお願いしておきたいと思います。  それから次に、食料の安全保障、不測の事態における危機管理の問題。  ガイドラインを盛んに議論してきたと思います。国を守るということについて私たちは否定するものじゃないし、その守り方にいろいろ意見があったと思いますけれども、同時に、総理、食料の安全保障ということも片っ方で真剣に考えてもらわないと困るわけでありまして、防衛等々の安全保障というのは国を守るという側面でありますけれども、片っ方で食料の安全保障というのは、個々の人間、個人の国民の命に直結する問題でもあるわけであります。ガイドライン議論の中で、さまざまな不測の事態が起こり得るということを前提にして総理はいろいろな防衛論を展開しているわけでありますから、不測の事態が起こり得るという状況は、我々よりか総理の方がより認識は強いんじゃないかな、こういうふうに思っているわけでありまして、今度の基本法でも十九条で一応書いてありますけれども、それなら具体的な政策は何かというと、何ら答弁が返ってこない、こういうのが現状であります。  したがいまして、食料の安全保障、このことも同時に真剣に考えるべきだ、ガイドラインだけでは非常に問題がある、こういうふうに言わざるを得ないわけでありまして、そういう面で、総理の、この食料の安全保障、とりわけ不測の事態における危機管理について、対応の姿勢についてお聞きをしたいと思います。
  152. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 食料安全保障と申しますか、極めて重要な問題であることは言うまでもありませんし、今委員指摘のように、本法の十九条にもこのことを強くうたっておるわけでございます。  そうした意味におきまして、自然の凶作、また輸入の途絶等によりまして国内における食料の需給が逼迫するような不測の事態におきましても、国民が最低限度必要とする食料供給確保されるよう必要な施策を講ずることといたしておるわけでございます。このような事態におきまして、石油を初めとする農業生産資材の確保国内外の輸送手段確保食料の価格及び流通の安定対策等、多方面にわたる対応策が必要でありまして、農林水産省を中心に、関係省庁の十分な連携を図ってまいる考えであります。  重ねて申し上げますように、こうした食料におきまして、国民のまさに生命を維持するために、このことについて、不測の事態にいかに対応するかにつきましては、新しいこの基本法をもとに、従前も検討してきたところではありまするけれども、さらにその認識に立ちまして、具体的な施策考え、実施していかなきゃならないというふうに考えております。
  153. 前島秀行

    ○前島委員 ぜひ、この食料の安全保障というのは大事なことでありますから、十九条に載っているというだけではなくして、具体的な政策がこれから展開されることを期待しておきたいと思います。  最後に総理、私は、この農業基本法を具体的に実践する、具体的に展開をしていく上における政府の責任ということを総理の決意としてお聞きをしたいと思っているわけであります。  御案内のように、日本農業の現状は今さら言う必要もない状況にあることは間違いない。自給率にせよ、あるいは過疎化だとか高齢化だとかあるいは耕作放棄地だとか集落の崩壊だとか、今総理は、おれのところも、こう言われましたけれども、北関東、繭、生糸の生産地、もうほとんど皆無の状態になって、非常に細々という状況にある、こういうふうに思いますね。国内生産における農業生産の比率というのも、ほとんど一・何%、こういう状態に低下をしてしまった。  こういう今日の我が国農業の現状、片や国際化が進展していく、こういう状況が、私は、今日、新農業基本法をつくらせた、同時に、この農業基本法というのが食料農業農村というテーマでもって提起されてきているということだろうと思いますね。やはり、新農業基本法をつくらざるを得ない必然性というものが私はあったのだろう、こういうふうに思います。  その中で、基本的理念として、食料の安定供給だとか、あるいは多面的機能の発揮だとか、農業の持続的な発展だとか、農村の振興という新しい四つの理念を入れたこと、私は評価をしたいと思うわけであります。しかし、この理念が具体的に政策となって出てくる、それが実現する、そうなって初めて意味があるわけでありまして、そこは、私たちは、この三十数時間の議論の中でまだまだ具体的には出てきていないぞと言わざるを得ない。努力をしていることは認めます、努力をしていることは認めますけれども、まだまだ十分にこの具体的な展開あるいは展望というものは開けてきていないのではないだろうかなということを私は指摘せざるを得ない状況にあるだろうと思います。  したがって、この農業基本法に基づく具体的な政策を、施策実現するためには、私は農林省一省だけでやることについては正直言って限界があるだろうと思いますね。食料農業農村政策ということは、単に一農林省だけではなくして、やはり内閣が中心になって、総理が中心になってこれを推進して初めてこの農業基本法に基づく四つの理念を具体化する道だろうな、こういうふうに私は思います。ある意味では、総理の姿勢にかかっていると言っても過言ではないだろうなとも思うわけであります。  したがいまして、ぜひ、この基本法に基づく具体的な農業の展開あるいは施策の展開に当たって、総理の決意を聞かせていただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  154. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 本法案の制定によりまして新たな理念のもとに推進しようとする食料農業農村政策は、食品衛生、食生活、交通、情報通信、教育、文化、福祉、国際協力など多方面にわたる課題と関連するものであります。このため、今後の農政の推進に当たりましては、農林水産省を中心としつつ、関係省庁と十分な連携確保を図ってまいる考えであります。  前島委員おっしゃられましたように、先ほど、この新農業基本法制定の今日的意義というものについて、ある種の必然性がある、こうおっしゃられておりましたが、冒頭申し上げましたように、現行基本法の制定当時の意義もこれあり、それをもとにいたしまして各種の法律が制定され、日本農業食料問題について取り組んでまいりましたが、新たなる視点に立ってこの新農基法が制定をされるということでありますれば、今委員指摘のように、農水省が中心であろうと思いますけれども、各省、政府全体にわたりまして取り組まなければならぬと思っております。  前橋本内閣のときに諮問を申し上げ、私自身がこれをお受けいたしたわけでありますが、まさに今日これを取り上げ、この基本的理念に基づいて、新しいこれからの日本食料農業農村、こういうものをしっかりと築き上げていかなければならない、そういうためのこの基本法理解をいたしております。  ぜひ、御審議を十分賜ったことであろうと思いますので、農水大臣も十分お聞き取りいただいておるところであると思いますが、私自身もそうした御論議を十分承り、これが成立の暁におきましては、その趣旨にのっとって、全力を挙げて、その方向について、これが実現のために努力することを改めてお誓い申し上げたいと思います。  ありがとうございました。
  155. 前島秀行

    ○前島委員 終わります。ありがとうございました。
  156. 穂積良行

    穂積委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  157. 穂積良行

    穂積委員長 この際、本案に対し、松岡利勝君外四名から、自由民主党、民主党、公明党・改革クラブ、自由党及び社会民主党・市民連合の共同提案による修正案、藤田スミ君外一名から、日本共産党提案による修正案がそれぞれ提出されております。  提出者から順次趣旨の説明を求めます。松岡利勝君。     —————————————  食料農業農村基本法案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  158. 松岡利勝

    ○松岡委員 私は、自由民主党、民主党、公明党・改革クラブ、自由党及び社会民主党・市民連合を代表して、食料農業農村基本法案に対する修正案の趣旨を御説明申し上げます。  修正案はお手元に配付したとおりでございます。  案文の朗読は省略し、以下、その内容を申し上げます。  第一点は、国民に対する食料の安定的な供給については、国内農業生産の増大を図ることを基本として行われなければならないものとしたことであります。  第二点は、食料農業農村基本計画に定める食料自給率の目標は、その向上を図ることを旨として定めるものとしたことであります。  第三点は、政府は、食料農業農村基本計画を定めたときは、遅滞なく、これを国会に報告しなければならないものとしたことであります。  以上であります。  何とぞ全委員の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。
  159. 穂積良行

    穂積委員長 次に、中林よし子君。     —————————————  食料農業農村基本法案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  160. 中林よし子

    ○中林委員 私は、日本共産党を代表して、食料農業農村基本法案に対する修正案の提案理由を説明いたします。  食料自給率は今や四一%に低下し、世界でも最低水準です。農家数は、一九六〇年からはほぼ半減し、耕作放棄地は、四国全体の耕地面積に相当する十六万二千ヘクタールと、このままでは、我が国農業が崩壊し、日本食料自給の基盤を失った国になりかねません。国際機関が二十一世紀の世界的な食料危機を警告しているもとで、我が国食料自給率を回復、向上させることは、国際的な責務でもあります。  よって、日本共産党は、政府提出の新農基法案の問題点を是正し、日本農業の再建と食料自給率の向上に向けた農政転換の第一歩とするために、以下のような抜本的な修正が必要不可欠であると考えます。  第一に、食料自給率を抜本的に引き上げなければなりません。農業を国の基幹産業に位置づけ、自給率目標を明記し、国の責任による総合的施策を実施する体制をとります。食料自給率を一刻も早く五〇%へ引き上げ、さらに六割、七割を目指す総合計画を策定します。  第二に、輸入安定化規定を削除し、輸入依存政策の転換を明記します。米の関税化の撤回を初め、WTO協定の改正などに政府が必要な施策を講ずることを明記します。  第三に、日本農業の中心的担い手である家族経営を農業経営の基本に位置づけ、法人化を推進するような規定は削除します。  条件不利地域の農民は、食料生産とあわせて国土の管理人の役割を果たしており、ここでの農業農村維持できるように直接的補償措置を導入し、平地との生産条件の不利を補正し、国土管理の労働を正当に評価する特別の補償措置をとる規定を明記します。  第四に、農業を市場原理に全面的にゆだねる規定は削除します。再生産確保し、農家経営を安定させるために、生産費を償い、他産業並みの労働報酬を保障するための農産物価格制度を再構築する規定を明記します。農業予算の過半以上はゼネコン奉仕の公共事業。その一方で、価格所得対策費は農業予算のわずか一割前後という予算の逆立ちを改める規定を明記します。  第五に、安全で健康な食生活を確立するために、残留農薬などの食品安全基準の緩和を改めます。検疫体制の抜本的強化、健康で安全な食生活に必要な情報の提供と研究の強化、遺伝子組み換え食品の表示や農産物の加工食品を含めた全面的な原産国表示を行う規定を明記します。  委員各位の御賛同をお願いいたしまして、修正案の提案理由の説明を終わります。
  161. 穂積良行

    穂積委員長 以上で両修正案の趣旨の説明は終わりました。     —————————————
  162. 穂積良行

    穂積委員長 これより原案及び両修正案を一括して討論に付します。  討論の申し出がありますので、これを許します。藤田スミ君。
  163. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 私は、日本共産党を代表して、修正案及び本法案に対して反対の立場から討論をいたします。  反対の第一の理由は、本法案が、基本法として、日本農業の制度、仕組みを全面的にWTO体制に組み込むことを目的にしたものであり、日本農業の将来に対して大きな禍根をもたらすものであるということです。  本法案は、その検討の出発点からWTO体制前提とした農基法を目指して策定されてきたものであり、米関税化を本法案の審議前に強行したのも、WTO体制全面移行後の農基法としての既成事実化を図ったものと言えます。  そして、本法案は、第二条では、国民に対する食料の安定供給については、国内農業生産にあわせ、輸入、備蓄とを適切に組み合わせて行わなければならないと輸入依存を明記し、これを受けて第十八条では、国は安定的な輸入確保するため必要な施策を講ずることを義務づけています。この規定は、対米従属性の強い食料輸入構造の中で、食料の安定輸入確保のためという名目でアメリカの対日要求を次々に受け入れていく根拠規定にもなり得る食料主権を大きく制約するもので、強く反対するものであります。  反対の第二の理由は、本法案が食料自給率引き上げを担保する法案になっていないということです。  本法案は、総則において、食料自給率という字句さえ記載されず、ましてや、食料自給率の引き上げが基本理念としても掲げられておりません。本来、食料自給率引き上げを担保する法案であるならば、基本理念に食料自給率の引き上げを明記し、当然目標数値も明記されなければならないものです。そういう法形式をとっていないこと自身に、食料自給率引き上げを担保することを初めから否定している法案であると言えます。  本法案は、第十五条で、食料自給率の目標を政府が定めることにしていますが、食料自給率の目標の性格が、国民が望む自給率目標を設定し、それに向けて政府責務としてあらゆる財政措置や政策手段を尽くして達成するというものではなく、国内農業生産及び食料消費に関する指針としており、すなわち、農業者消費者食料自給率向上のための取り組み課題を設定し、その課題の達成を食料自給率目標達成の条件にしています。これではとても食料自給率引き上げにはなりません。  反対の第三の理由は、本法案が、農産物価格支持制度の解体を打ち出し、農業者に一層の困難をもたらすという点です。  本法案は、第三十条で「農産物の価格が需給事情及び品質評価を適切に反映して形成されるよう、必要な施策を講ずるものとする。」として、農産物価格は市場原理で形成される原則を打ち出しました。このことにより農産物価格支持制度は解体の方向に進み、これまで不十分ながら所得保障を前提に支持価格として形成されてきたこれらの農産物価格は、輸入前提とした市場実勢のもとで大きく下落することになり、農業者農業所得の減少など大きな打撃を受けることになります。  一方、第三十条二項では、市場原理導入による影響緩和措置の導入を進めることを打ち出してはいますが、その対象は育成すべき農業経営と限定化し、このことにより、零細農家切り捨て、規模拡大の構造政策を推進することとなるのは必至であります。  反対の最後の理由は、日本農業の中心的担い手である家族経営を農業基本に位置づけず、新政策基本法の中核に据えている点です。  本法案は、第二十一条で「国は、効率的かつ安定的な農業経営を育成し、これらの農業経営が農業生産の相当部分を担う農業構造を確立するため、」とし、さらに、第二十二条で「農業経営の法人化を推進するために必要な施策を講ずるものとする。」など、これまでの新政策基本法の中核に据えています。このことは、大規模農家育成と九割以上の農家を切り捨てるという新政策の真髄を基本法に位置づけたものです。  他方、家族経営については、基本理念にも明記せず、二十二条で「家族農業経営の活性化を図る」との文言が入っているだけです。これでは、日本農業の中核に家族経営を据え、それを豊かに発展させるという立場では到底ありません。  また、第二十二条の法人化推進規定は、農業経営の株式会社形態の導入、すなわち株式会社による農地所有を具体化するものであり、今後大企業による農地所有が拡大していくことになり、農地の相当量が大企業の支配下に置かれる可能性は否定できません。  なお、提案の修正案は、以上述べた問題点を何ら修正するものではなく、賛成できないことを指摘して、反対討論を終わります。(拍手)
  164. 穂積良行

    穂積委員長 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  165. 穂積良行

    穂積委員長 これより原案及び両修正案について採決いたします。  まず、藤田スミ君外一名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  166. 穂積良行

    穂積委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。  次に、松岡利勝君外四名提出の修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  167. 穂積良行

    穂積委員長 起立多数。よって、本修正案は可決されました。  次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  168. 穂積良行

    穂積委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま修正議決いたしました本案の委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  169. 穂積良行

    穂積委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  170. 穂積良行

    穂積委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時十八分散会