運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1999-05-27 第145回国会 衆議院 農林水産委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年五月二十七日(木曜日)     午前九時三十分開議   出席委員    委員長 穂積 良行君    理事 赤城 徳彦君 理事 増田 敏男君    理事 松岡 利勝君 理事 横内 正明君    理事 小平 忠正君 理事 木幡 弘道君    理事 宮地 正介君 理事 一川 保夫君       今村 雅弘君    大石 秀政君       金子 一義君    金田 英行君       岸本 光造君    熊谷 市雄君       熊代 昭彦君    塩谷  立君       鈴木 俊一君    園田 修光君       中山 成彬君    萩山 教嚴君       御法川英文君    宮腰 光寛君       宮島 大典君    宮本 一三君       矢上 雅義君    安住  淳君       神田  厚君    鉢呂 吉雄君       堀込 征雄君    漆原 良夫君       木村 太郎君    井上 喜一君       佐々木洋平君    菅原喜重郎君       中林よし子君    藤田 スミ君       北沢 清功君    前島 秀行君  出席国務大臣         農林水産大臣  中川 昭一君  出席政府委員         環境庁自然保護         局長      丸山 晴男君         国土庁計画・調         整局長     小林 勇造君         国土庁地方振興         局長      中川 浩明君         農林水産大臣官         房長      高木  賢君         農林水産省経済         局長      竹中 美晴君         農林水産省構造         改善局長    渡辺 好明君         農林水産省農産         園芸局長    樋口 久俊君         農林水産省畜産         局長      本田 浩次君         食糧庁長官   堤  英隆君         林野庁長官   山本  徹君         自治大臣官房総         務審議官    香山 充弘君         自治省財政局長 二橋 正弘君  委員外出席者         内閣総理大臣官         房男女共同参画         室長      名取はにわ君         大蔵大臣官房審         議官      木村 幸俊君         大蔵省主計局次         長       寺澤 辰麿君         農林水産委員会         専門員     外山 文雄君 委員の異動 五月二十七日         辞任         補欠選任   小野寺五典君     宮島 大典君   木部 佳昭君     大石 秀政君   前島 秀行君     北沢 清功君 同日         辞任         補欠選任   大石 秀政君     木部 佳昭君   宮島 大典君     小野寺五典君   北沢 清功君     前島 秀行君 本日の会議に付した案件  食料農業農村基本法案内閣提出第六八号)     午前九時三十分開議      ————◇—————
  2. 穂積良行

    穂積委員長 これより会議を開きます。  内閣提出食料農業農村基本法案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鉢呂吉雄君。
  3. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 おはようございます。  中川農水大臣におかれましては、連日の集中的な御審議に御答弁をいただきまして感謝申し上げます。  きょうは、今週月曜日ときのうの地方中央公聴会の御意見を踏まえて、一つ価格政策経営安定、所得補償の問題、それからWTOに対する対応、あるいはまた、少し論議が少ないのでありますけれども環境保全型の農業といいますか農法のとらえ方、そして、相当議論もされておりますから、大臣として、この委員会議論を踏まえて、どうこの基本法に対する態度を現状でしておるのか、でき得れば、そういった面について一時間半御質問をさせていただきたいと思います。  まず、地方公聴会、私も札幌に参りました。また、きのうは中央公聴会ということで、午前午後八名の方に御意見を賜ったところでありまして、それぞれ、現状農業状況あるいは食料の実態、この危機的な状況というもののとらえ方をしながら、新しい基本法に対する期待といいますか、また同時に、この基本法の持つ、原案というものに対する修正についての論議も多かったというふうに考えております。  そこで、まず最初に、専業的な農業経営における所得補てん、そして価格政策について質問をいたしたいと思っております。  きのうも議論がありましたけれども北海道札幌市での地方公聴会でも、農協系統代表者の方また農民団体皆さんからも一様に、専業的な農業経営に対する現状の厳しい状況について数字を挙げて御報告がございました。とりわけ、この間の、ガットウルグアイ・ラウンド合意後の価格低下あるいは国際的な輸入農産物との競合というものに国内農業生産が非常に圧迫をされておるという事態もありまして、大臣も御案内のとおり、この十年ほどでも、いわゆる政府管掌作物といいますか、政府行政価格として示しておるその価格低下も著しいという状況でございます。  そういう意味では、専業的な農業経営であっても、誇り自信自信といいますか、誇りは持ってこれからも臨んでいきたいということでありますけれども、現実には集落が、農家戸数が相当減るというような状況もございます。  学識経験者の話においても、ガット以降の輸入品との厳しい競争において価格低下が激しく、北海道農業空洞化という現象も見られるということでありましたし、また農協系統の方からも、稲作安定化対策というのは一定役割を果たしておりますけれども価格低下に対する補てんとしては必ずしも十分でない、生産費も償えない状況で、土地改良資金の返済の問題あるいはさまざまなコストが所得減につながるような状態を呈しておる。  また、学識経験者からは、今回の稲作安定化対策のようないわゆる収入保険的な対策というのは、例えば偶然的な農業災害的なものの補償には有効でありますけれども、傾向的に価格低下をするというものについては必ずしも有効でないというような話もございました。  価格市場原理に移行するということであれば、消費者負担は実際問題極めて低下をしておるわけでありますから、その受益については、消費者負担から行政負担という形をとって段階的な移行をすべきでないか、これは私も前の質問でもさせていただいておりますけれども、そのような明確な対応というものが必要でないだろうかというふうに受け取ったところでございます。  そこで、もう一度大臣質問になるわけでありますけれども、法の三十条の経営安定対策条項、これについては中央公聴会でもありました。価格の引き下げまたは市場価格制に移行するということであれば、それに代償するものとして所得補償というものを明確に位置づけるべきである、このように考えておりますけれども大臣の御所見をお願いいたしたいと思います。
  4. 中川昭一

    中川国務大臣 おはようございます。  今、鉢呂先生の御指摘でございますが、あくまでも生産者消費者あっての日本国内農業生産活動、そしてそれが食料国民への安定供給基本になる。それから消費者の方も、生産者あっての我が国国民の暮らしの安全と安心という大前提に立っておるわけでございます。  それを前提としまして、三十条では、消費者需要に即した農業生産を推進するため自給基本になる、そして必要な施策をする。しかし、それでは、いわゆる専業地帯といいましょうか大規模に専業的にやっておる、特に我々の北海道のような地域というのは、価格変動あるいは自然条件等影響を受けやすいということでございますので、二項で、講ずべき措置というものの必要性を規定しておるわけであります。  その中のいろいろな諸施策が、先生が今お話しになりましたような稲作経営安定対策、あるいは麦、大豆、菜種、乳製品、そして今後砂糖、甘味資源等もやっていくわけでございますけれども、これはあくまでも、いろいろな諸施策をやることによって、育成すべき農業経営に対しての影響をできるだけ小さくしていきたいということが目標であるわけでございます。  一方、直接支払いというのは、この基本法の中では、あくまでも、生産条件が不利である、しかし、そこで農業を持続していただくために何らかの施策を講じ、その中の一つ施策として直接支払いというものを位置づけておるわけでございまして、そういう意味で、いわゆる三十条と三十五条というのは、そもそものスタートラインを区別して規定しておるというのが本法案でございます。  農業所得への依存度が高い専業的農業経営変動の大きさが農業経営に及ぼす影響というのは、あくまでも経営安定措置を講ずるということでございまして、その場合には、育成すべき農業経営、つまりやる気があるといいましょうか、日本農業を支える、それこそ自信誇りを持った農家がやっていくための施策というものを総合的に講じていくという中で、品目ごとにいろいろな対策をとっていくというふうに考えておるわけでございます。  なお、直接的な質問はございませんでしたけれども、それとの関連で申し上げますならば、平場等でも直接支払いをすべきではないかというようなことに関しましては、あくまでも生産条件が不利であるという中で農業経営活動をやっていっていただかなければならないということでの、その不利さをカバーする範囲内での直接支払いでございまして、そういう意味で中山間地域等対象とすることが適切であるということで、平場については、もちろんこれからの農業のある意味では中心的な役割を果たしていくわけでございますので、需給動向あるいは自然条件変化等に対して別の施策品目ごとに講じていくという仕分けでこの法案を実行させていっていただきたいというふうに考えております。
  5. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 大臣は今、著しい価格低下に対して経営安定ということで総合的に対策を講ずる、意欲ある、あるいは一定規模の者にということでありますけれども、問題は、言葉として直接支払いということではなくて、価格政策については市場に連動させる、需給動向あるいは需給事情、あるいは品質評価に即して市場価格を決めていくのですと。それを補てんするものとして、経営対策の一環でいいのですけれども、いわゆる所得補償的なものをしていくという考えに立つかどうか。  調査会答申においても、あるいは皆さん農政改革大綱でも明確に、例えば農政改革大綱では、価格の大幅な低落が、意欲ある担い手の経営に大きな影響を及ぼさないよう、価格政策の見直しに応じて、価格低落時の経営への影響を緩和するための所得確保対策を講じていくと。いわゆる市場に連動した価格に対して、それが著しく低下をした場合には、補てんをするための所得確保をしていくのだという位置づけでよろしいかどうか。  これは改革大綱で言っているわけですから、官房長でもよろしいですよ。ちょっと事務的でありますけれども確認をしておるのです。そういう形でよろしいかどうか。
  6. 高木賢

    高木政府委員 農政改革大綱におきましては、今御指摘のありましたように、価格低落時の経営への影響を緩和するための所得確保対策を講じていくということを定めております。
  7. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 例えば、今審議されておりますもとになる昨年の中央省庁等改革基本法農水省所管の二十三条でも、この前もお話ししましたけれども生産者所得補償する政策への転換を、この場合は検討することというふうに書いてあるのです。要するに、生産者所得補償する政策へ、価格政策をそういう所得確保所得補償とか、この場合は国の法律補償というふうに明確に言っておりますけれども生産者所得補償する政策への転換ということで、これは農水省としてもきちんとお認めになるということで再度確認をさせていただきたいと思っております。よろしいですね。
  8. 高木賢

    高木政府委員 御指摘基本法において検討することということがございまして、今は成案として、農林水産省設置法として御提案申し上げております。  その中では、所得補償というダイレクトな文言は出ておりません。ただ、新しい食料農業農村基本法案の三十五条に相当する、中山間地域等に対する公益機能発揮のための特別の対策を講ずることを農林水産省が担当するのだということは明記してございます。
  9. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 そこで、法律の条文に戻るのですけれども大臣が言われるように、前回も、価格の著しい低落に対して大きな意味で総合的にという形で、三十条に経営の安定という表題をつけて、そういう文言にもなっておるわけであります。  調査会答申あるいは改革大綱改革大綱は実は十二月につくられておるわけでありますけれども、そういう形からいけば、我が党が主張しておるように、価格政策転換という意味で、明瞭にすることからいっても、所得補償あるいは所得確保でもいいのですけれども所得確保経営安定というふうな明瞭な法律としてのメッセージにしていただきたいというのが我が党の考えでして、もちろん農水省は、この改革大綱なりいろいろなところで、価格政策にかわる、それを補償する所得政策ということを実質打ち出しておるわけでありますから、これを法律としてもきちんと整備をしておくことが大事でないだろうか。  調査会等では、経営安定というのは、まさに大臣も言われましたけれども所得補償というものを前面に打ち出して、ある程度私どもメッセージがわかるような形の文言になっております。ですから、そういうところをきちんと、宣言法ではありますけれども、抽象的な文言でなくて、もちろん大臣の御答弁がそれを敷衍していると思うのですけれども所得補償なり所得確保というものをできるだけきちんと明記すべきでないかと思うわけでありますが、いかがでしょうか。
  10. 中川昭一

    中川国務大臣 もちろん、先生おっしゃるとおり、所得確保ということが非常に大事なことでありまして、これなくしては育成すべき農家も意欲ある農家も育たないわけでございますから、そういう意味で、所得確保というのは非常に大事であり、そしてまた、これと密接不可分経営安定対策というものも必要なことだろうと思います。  価格変動による影響というのは、当然、暴騰する場合もあれば下がる場合もあるわけでございまして、暴騰する場合には、これはある意味では生産者にとってみればプラスになることもある。それから、暴落すればもちろん生産者は困るわけでございまして、そういう意味で、三十条でいろいろな対策をとっておるわけであります。これはやはりあくまでも、三十条に該当するような農家経営努力というものがまず基本にあって、その上で、国なりいろいろなところがいろいろな施策を講じていって初めて効果が発揮されるものだと考えております。  したがいまして、意欲ある農業者創意工夫を生かして、極端に言えば、経営条件といいましょうか、例えば北海道でしたら、寒冷地であることに対してどういうふうにしていくかとか、品種の問題とかいろいろな努力をされる、それをバックアップしていくということがそれぞれ全国の農業者の方々に期待をさせるわけでございますけれども、やはり創意工夫というものが大前提での経営の展開、そして、それに基づいて我々がいろいろな諸施策をやっていく。農業経営基盤強化促進対策あるいは経営管理対策、あるいはまた生産基盤対策等々いろいろあると思います。  そういう意味で、これからももちろん、経営安定対策所得対策、それぞれにそれぞれの地域の特色もあるでしょうし、また、農業経営者としてのいろいろなお考えもあると思いますけれども、それぞれに生産者基本となった意欲を前提にして、何も我々が責任逃れということじゃなくて、これは一体とならないとその目的は達成できないという意味で、所得政策そして経営安定対策、それぞれを別個のものというよりも、総合的に言えば、一つ基本的な、基本理念の第一番目あるいは第三番目、第四番目にも直接関係する、基本理念に直結する課題でもございますので、我々としては、全力を挙げていろいろな対策をこれからも考えていかなければならないというふうに考えております。
  11. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 もちろん農作物ですから上がるときもありますけれども平成四年の新政策でも、価格市場に連動させた場合に、これは構造的と言ってもいいぐらい、いわゆる専業的な経営に大きな影響を与えるということで、そのタイムラグが生ずるということで、それをいかにしていくかということがあのとき提起をされておりまして、それが欧米でも、補てんをするのが、所得確保所得補償という形で直接的な支払いをするというのが大きな流れですし、日本でも多くの農産物野菜等は違いますけれども、穀物的なものは外国輸入農産物に大きな影響を与えている。  国内だけで需給というものが見られるのであれば、もちろん暴騰することもあるでしょう。しかし、それらはすべて外国輸入農産物等影響を受けるわけでありますから、そことの関係を、経営を持続的に維持していくという観点から、政策として、価格政策から所得政策に移行していくというのはWTOの大きな流れ、精神でもあるわけでありますから、そういう観点で、所得確保対策というのは現下の農政上の最大の課題である、これは大臣も御承知だというふうに思っておりますけれども、そう考えています。そのことは調査会答申でも、あるいはこの農政改革大綱でも明確にそういう方向を打ち出しておるわけであります。  そこで、農政改革大綱農業経営の安定と発展という中で、若干認識が違うのではないかというふうに私は恐れるわけでありますけれども国内農業生産維持増大を図るために価格政策全般を見直すという形で、いわゆる価格市場に連動させた場合には国内農業生産増大するというような書きぶりなわけであります。  これは、私も今言いましたけれども価格市場に連動させる、それまで行政支持価格で支えておったもの、ある面では国境措置から断絶をしていたものを、関税率を下げたり、あるいは行政支持価格を下げるという形で生産を刺激する、生産を拡大するということの方策ではこういう方式をとらないわけでありまして、この辺、農政改革大綱のいわゆる政策としての意味合いというのは少し違っておるのではないかというふうに、これをきちっと見ればそう思わざるを得ません。  表題一として書いてあるのは、国内農業生産維持増大に資する価格形成実現価格形成実現というのは、市場に連動させる、そういう価格形成をつくっていく、実現していくということですから、ここは農水省認識はどういうふうになっておりますか。
  12. 高木賢

    高木政府委員 これまでの価格政策の総括の結果によりますと、価格支持してきた価格政策の運営が、需給事情あるいは実需者なり消費者品質評価、こういうものが必ずしも的確に伝わりにくい、したがって、需給ミスマッチの発生を招いた面があるというふうに考えております。  例えば、具体的に麦などでいいますと、製粉企業が求めている品種のものが必ずしも十分生産されていなかったり、あるいは必ずしも求めていないものがたくさん生産される、その生産されているものも、求められていない結果によってだんだん生産が縮小していく、こういう事態があるわけでございます。  まさに、そういう需要者が求めないものが生産されている、したがって、その生産がだんだん低下傾向になる、ならざるを得なくなる、こういうことでは国内生産維持増大につながらないではないか、こういう認識でございます。  やはり、需要サイドの意向あるいは品質評価というものが生産サイドに的確に伝わりまして、その求めるものが生産されて、外国産のものに振りかわっていく、こういう姿を展望しないといけないのではないかということで、まさに国内農業生産維持増大を図るために、農産物需給事情あるいは品質評価というものが価格に適切に反映されるように価格政策を見直す、そして、結果としても国内生産維持増大につながる、こういう考え方でこの大綱も頭の整理をしておりますし、新しい基本法案もそういう頭で整理しているわけでございます。
  13. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 需給ミスマッチはわかります。そういう形で市場価格というものを制度として導入するということはわかります。品質評価もそうです。しかし、官房長が最後に言った、そのことが結果として生産増大につながるということにはならないわけでありまして、そんなに簡単になるのであれば、そんないいことはないのでありますけれども。  そこが一番の大きな問題点で、国境措置についても、それは一定程度つくっても、だんだん国際農業市場の中に結果としてぶち込まれるわけでありますから、そうなった場合に、それは国内生産増大させるということには一直線で、仮に、たまにあるかもわからないけれども、大半は、市場に連動した場合、日本のように、このように大きな内外価格差といいますか、生産費が非常に大きなものである限りは、農業規模も違う中では、このことは必ずこういう形になるということにはなり得ないところでありまして、むしろそのことが大きな課題として、ヨーロッパ等では所得政策というものが導入されてくるんだと。そこは農水省が、この書きぶりとは違って、そこの認識はきちんとしておいてもらいたいというふうに考えます。  そこで、WTOとの関係で若干議論させていただきますけれども前回WTO協定で、青の政策、緑の政策、黄色の政策ということで位置づけられました。非経済的な要因をもとに行えば、国の助成支持保護というものができるということだろうと考えます。デカップリングなどということで、いわゆる生産を刺激しない、あるいは市場を歪曲させないような側面の政策であれば、あるいは支持助成策であれば、政府の直接的な財政資金を交付すること、そして農民所得補償することを認めていこうということでありまして、大臣専門家でありますから御承知のとおりでございます。  農業協定附属書二等で、緑の政策、いわゆる削減対象外になるものとして、一つは、政府の提供するサービスということで、例えば食料安全保障目的のための備蓄ですとか、国内食料援助、これは日本でいえば学校給食に当たるようでありますけれども、研究、普及、教育、検査、農業基盤農業基盤というのは、農業基盤整備については削減をする対象でない、あるいは市場等整備等の一般的なサービスということで、日本では九六年でこれが二兆八千億政府から財政支出されておる。  一方、緑の政策ということで、これも削減外なんですけれども生産者に対する直接支払いということで、先ほど言ったデカップリング政策に当たるものですが、これは八つほど項目がございまして、日本でやっておるものでいけば、例えば環境政策ということで、環境のための追加的な費用または収入の喪失を補てんするものとして、減反政策あたり環境政策に位置づけて日本政府WTOに出しておるというふうに私どもは聞いております。  あるいは投資援助ということで、農業資金等については六番目に、これも削減外だ、緑の政策ということになっておるわけでありまして、基本的に、農水大臣として、このことを踏襲して農業政策国内政策というものを実行していくのか。ずっとこの農政改革大綱等を見ますと、それに沿って国内のさまざまな施策を講ずるというふうに見えるわけでありますけれども、どのようにお考えか、確認をしておきたいと思います。
  14. 中川昭一

    中川国務大臣 今御審議いただいております基本法は、まさに、これからの中長期的な我が国食料、国土、そして大事な農業生産をいかに維持し、自給率を少しでも上げていくかということがポイントなわけであります。  したがいまして、先ほどの三十条、三十五条ではありませんけれども、いろいろな施策をとっておるわけでございますが、現行WTO協定上、これが緑なのか、青なのか、黄色なのかということについては解釈がなかなか難しい。場合によって黄色の部分もあると言わざるを得ないと思います。これは、何も日本だけではなくて、アメリカでもEUでも、新たな施策の中で黄色と我々が判断するような施策もとっておるわけであります。  したがいまして、この基本法で、基本方針というか、理念法としての法律を完成させていただいた後に、いろいろな施策を講ずるための法整備あるいは予算措置等々を実行していくわけでございますが、一方では、来年といいましょうか、ことしの後半以降、いよいよ次期交渉に向かってスタートしていくわけでございまして、その場合に、基本法施策が、WTOの中で我々のいろいろな主張というものを大いに訴えながら、この目的のために、基本法に沿った形で、WTO上の交渉が、実現といいましょうか認められるように努力をしていくということが非常に大事なことではないかというふうに思っております。
  15. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 今、青の政策という表現をされましたけれども生産制限、生産調整のようなものはやるのですけれども生産要素、例えば面積や収量、収穫量に基づいて所得補償をする場合、面積に基づいて支払ってもこれは青の政策。先ほどの、緑の政策の第一番目は、明確に断ち切って、生産と直接関連しない形、ですから支払い額は、生産形態や量や価格生産要素に関連または基づかない方式でやるという形になって、なかなか日本としてはとりにくいわけであります。  いずれにしても、さまざまな現状国内対策というものはこの方式に基づいて、今でもいわゆる黄色の政策をとれば八六—八八年対比二〇%削減をするという形で求められておるわけでありますから、それに基づいて今やっておるわけでありますから、基本的には、現状はそういう方向でやる、そういうふうに理解をしてよろしいですか。
  16. 竹中美晴

    ○竹中(美)政府委員 我が国は、新しい基本法に基づいて今後各種の施策を講じていくわけでございますが、こうした我が国施策WTOの国際規律の中で的確に位置づけられるよう、次期交渉においても最大限努力をしていく考えでおります。
  17. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 ちょっとよくわからなかったのですけれども。  そこで、法の三十条、経営安定対策、その中には、大臣もおっしゃられました所得確保的なものを講じていくということはやっていくわけでありますけれども、それは前回も聞きました。例えば稲作経営安定対策、これは今のところまだWTOに通告しておりませんから、緑の政策なのか青の政策なのか。農水省としては、それをできるだけ緑の政策にしていくという形になるのでしょうけれども大臣として、これからとるさまざまな作物ごとの経営安定対策、とりわけ所得補償的な対策については、基本的にどういったものを目指していくのか。例えば、緑の政策でいくのか、青の政策、黄色の政策とあるのですけれども。  青の政策も、もうEU等ではとっておりますけれども、次のラウンドではなかなか厳しいだろうということで、これを削減する方向で考えているという状況もあると思いますけれども大臣としてどういう考えでいらっしゃるのか、お考えをお聞きしたいと思います。
  18. 中川昭一

    中川国務大臣 個別のことを、鉢呂先生大変お詳しいわけですから、一つ政策について、これが青なのか、黄色なのか、緑なのかという議論がもちろん大事なのでありますし、できるだけ緑でやっていけば、次の交渉でのやり方というのはいいだろうということはあるわけでありますが、先ほど申し上げたように、日本農業あるいは食料を守っていくためにどうしても必要なものは、仮に黄色であっても、それを、先ほどお話がありましたように、前WTO交渉のときに米を環境面から青の政策でしたかに入れたというような経緯もございます。  ですから、個別についてもちろん努力はいたしますけれども、ポイントは、やはりWTO農業交渉の中でいかに我が国のポジションを守っていくかということが最終目標であり、その具体例としてのいろいろな施策の仕分けというものがあるわけでございますので、率直に申し上げて、現時点では、アメリカのこの政策は黄色じゃないかとかEUは青じゃないかとかいうことを、実は横をいろいろ見ながら、なるたけ日本の立場が有利になるように次期交渉に臨んでいく。  既に何回かお答えしておりますけれども、輸出国、輸入国の問題とか多面的機能とかいろいろな全体の問題も含めて、その中での個別政策としての色づけといったらいいのでしょうか、セーフなのか、あるいは黄色なのかアウトなのかということも両々見ながら、ほかの国の政策を見、また次期交渉全体のことも考えながら、個別政策をこれからWTOに通報するなり各国に説明をしていくということと、同時作業的なといいましょうか、相互作業的なことになっていくのではないか、またそうした方がいいのではないか。  場合によっては、この部分ではEUと一緒に仕事ができますねとか、あるいはスイスやノルウェーと一緒に同じ立場に立てますねというようなこともまた出てくるのではないかと思いますので、各国の情勢も注意深く見守りながら、個別の政策についての色分け、あるいはまたこれからの我が国の主張というものを進めていきたいというふうに考えております。
  19. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 それでは、WTO日本対応ということに移らせていただきます。  きのうの日経新聞に、アメリカのグリックマン農務長官が、世界農業会議、これは世界とは名がついていますけれども、どうもそれほど大がかりな会合でありませんようですが、セントルイスで演説をやっております。  私も、外務省からでしたか、この英文をいただきまして、きのう私の事務所で日本語訳したものを見ておるのですが、日経新聞と若干内容が違うところもあるのです。大要は、農務長官として、十一月のWTOの次期交渉に向けてのアメリカ政府考え方というのを、これは演説でありますけれども、言っております。  かいつまんで言いますと、例えば、ことしシアトルで始まるWTOの次期通商交渉で、我が国は今言ったような障壁に突き当たっておると。今言ったようなということは、さまざまな関税化や非関税障壁によって国内市場への参入を阻止しようとする国がたくさんあるとその前に述べておるのですけれども、そういう障壁に突き当たることでしょう、アメリカの提案は思い切った内容です、我々は、輸出補助金をなくしたいと考えていますということで、輸出補助金はゼロにすべきであると。  これは日本には直接関係はありませんけれども、輸出補助金は不公正貿易慣行を助長し、世界じゅうの商品価格を押し下げてしまうということで、我々は、開かれた透明な貿易システムの道をふさぎ続けるような、国家による通商制限を緩和しなければなりません。農業製品にかけられる関税率は世界平均で五〇%ですがというふうに、ここは五〇%ほど下げるという表現なのかというふうに見て、詳細にではありませんが調べたのです。世界を平均すれば現在の関税率というのは五〇%だというふうに言っておるんですけれども、それをさらに減らさなければなりませんということで、その後、関税率割り当ての上限を高めるとかそういうことも述べております。  また、衛生、植物衛生面での対策上の基準となる科学的判断を重視し、継続的な効果を持たせ、正当でない秘密の研究結果を理由に国家が保護主義に走ることのないようにしなければならないというような演説をして、アメリカ側は大幅な関税率の引き下げというものを明確に今の時点で打ち出しておったり、輸出補助金の撤廃も言っておるわけであります。  その反面、この演説の前段では、アメリカの農家というのは大変厳しい、政府としては最大の支援をするというようなことで、もう既に相当の支援もしているし、あるいは世界に対する食料援助も、アルバニア、コソボ難民あるいは朝鮮民主主義人民共和国の飢餓救済のために四十万トンの食料援助を発表したとか、そういうことも述べておりまして、国内的には、農産物価格の下落に対してアメリカ政府としては最大の支援をするというような言い方になっておるわけであります。  まず第一に、大臣として、アメリカのこの次期交渉をどのようにとらえておるのか、この演説に関する感想でもいいですけれども
  20. 中川昭一

    中川国務大臣 グリックマンが言ったことについて、正確ではございませんけれども、幾つか言っているわけであります。国内的にも厳しくするかわりに国際的にももっともっとやるんだと。一言で言えば、アメリカの農産物が世界の至るところに安く入っていくんだということだと思います。  感想ということで申し上げますならば、やはりアメリカは、去年のAPECでのEVSLの九分野の中の林水の問題以降、非常に我が国に対しても、通産大臣、外務大臣が頑張っていただいたおかげでかなり本音で激しい議論をやり合うようになりました。私自身もグリックマンあるいはバシェフスキー等々と何回かやらせていただきましたけれども、やはりお互いの立場をきちっとやっていくわけですから、アメリカがどういう立場をとろうが、我が国としては我が国としての主張を貫徹するという意気込みで交渉に臨むわけであります。  二〇〇〇年に向かってのいろいろなスケジュールというものが着々と固まりつつあるという状況の中で、やはり今EUとアメリカも各分野で非常に激しい個別局地戦みたいなことをやっておるわけでありますし、日本に対しては局地戦的なことはないわけでありますけれども、全体として、日本の農林水産物に対するアメリカの要求というものは極めて厳しい。  そしてまた、やり方が極めて強引であると言わざるを得ません。その端的な証拠が、いまだに決まっていないWTOの事務局長のあの選挙戦のやり方なんというのは、私はこういう公開の場ではっきり申し上げたいと思いますけれども、アメリカのやり方というのは極めて強引過ぎると思います。  そういう国であり、また背景としては次期大統領選挙のことも当然アメリカ政府としては視野に入っているでありましょうし、そういう中でアメリカの一つ一つの戦略、ポイントについて一々反論するのも、正確なデータがない以上申し上げることは差し控えさせていただきますが、アメリカとしては、これからの例えば五カ国農相会議、APECあるいはWTO閣僚会議、そして来年からの本交渉という中で、ますます非常に強いアメリカの国益を前面に据えた、農業分野だけではない新たなWTO交渉というものが予想されるという感じを私自身は持っております。
  21. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 少し離れますけれども大臣と同じ思いをしておるんです。どうもこの十年間というのはアメリカの経済的な世界戦略というのが世界を席巻しておるというか、あらゆる経済のルールというものをアメリカは覇権をもってとる。これは大臣言われたように、食料なんかも国益に沿って非常に強引なやり方で世界のルールづくりをしておる、私はそう思います。  例えば、日本の金融機関も十年前はもう世界のランクの上の方に全部並んでいました。ところが、BIS基準とか自己資本比率とかなんとかと言っておるうちに今こういう状態になっていますし、もちろんバブルの影響も大きかったのでありますけれども。きのうも冗談話をしていたのですけれども日本が複合で一位になったら基準を変えて、ジャンプの基準を低くして距離の基準を高くするとか、ジャンプで優勝すれば、スキーのサイズを短くしてジャンプを短くするとか、まさにルールの戦争でありまして、その規律上の戦争をアメリカは極めて戦略的に考える。  一方、日本は、アメリカ的になればやっていける、世界第二の経済大国だと言っている間にそのルールの戦争に、負けたと言ってはおかしいんですけれども、そういうような戦略が日本はどうも、やはり国民性かもわかりませんけれども、必ずしも得意としないのではないか。  やはりここは大臣大臣はもう経験も豊かになったわけでありますから、アメリカに言うところは言って、やはり規律、国際貿易としてのルールをつくる次期交渉だと思いますよ。私は、アメリカの経済戦略というのはやはり非常に長期的で野望的なものがあると思いますから、それに対抗し得るものをつくっていかなければならないというふうに思います。その割に——そこら辺、大臣考えを聞きたかったんですけれども、アメリカのそういう経済の世界戦略についてまずどういうふうにお考えですか。
  22. 中川昭一

    中川国務大臣 まず、アメリカに限らず、日本でもどこの国でも、やはり自分の国のことを考えて外交交渉に臨む、これはある意味では当然のことだろうと思います。日本も当然そういう立場でありますし、世界じゅうがみんなそうだろうと思います。  しかし、アメリカの場合にはやはり全体的なパワーというものがいろいろな方面であるわけでありますし、そういう中でアメリカの存在というものは非常に大きいし、先ほども申し上げましたように、いざやるとなったら、これはもうクリントン大統領からグリックマンからバシェフスキーから、日本の大使まで含めてずっとやってくるということの、何というんでしょうか、いい悪いは別にして、その強引さというものははっきり言ってすごいなと言わざるを得ません。  だからこそ政府全体としても外交交渉として全面的に我が国の主張を言い、そして闘い、結果を出していかなければいけないわけでありますが、それには前提がございまして、まず国内的な、国論の統一とよく私は申し上げますが、国内的な一致結束というものが一つは大事である。これは文字どおり、当委員会のいろいろな立場、お考えの方がいらっしゃると思いますけれども、最終的な目的はやはり同じなのではないか。  それから国会の外でも、農林水といった関係団体が一致協力をする。そして、前回の交渉では見られなかった大きなポイントとして、消費者国民全体の共通認識のもとの後押しというものも私は非常に大事だろう。したがって、各関係団体だけではなくて、経済界あるいはNGO的な方々も含めて、オール・ジャパンでこの闘い、闘いというか交渉に向かっていかなければならない。  それからもう一つは、やはり我が国と立場を同じくする国々と共同で臨んでいくということも必要なのではないか。EUについては、多面的機能等での意見の一致が見られておりますし、つい最近韓国に行ったら、韓国は全く同じ考え方だということで、総理以下同じ確認をしたところでもございます。  そのほかにも、EU以外の国々も含めてヨーロッパ等々にもいろいろ我が国と立場を同じくする国々がございますので、そういう多国間の連携も含め、そして、その前提には国内的な総意というものがあって初めて我が国の主張、これは何も我が国のエゴイズムだけの主張ではなくて、国際的な食料の問題、環境と地球、人口との関係等々も我が国は大いに主張をしていかなければならないというふうに考えておりますので、文字どおり、WTOに向かっての多面的な機能が十分発揮できるように、これからもまた当委員会を初め国民各位の皆さんの御指導を得ながら交渉に臨んでいきたいと考えております。
  23. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 国民的な合意、支援、そして日本に共鳴する各国との連帯ということでありますけれども、一番大事なのは、やはり大臣のリーダーシップ、引っ張っていく。何か日本人はわからないということでなくて、大臣をあれしておるわけじゃないですよ、そういうふうに頑張ってほしいと激励をしておるのでありますから、そう顔を悪くしないで聞いてほしいんですけれども、やはり、日本のリーダーシップがないんです。  その証拠を今言いますけれども、まだ中間報告といいながら、皆さん基本的な考え方、次期WTO交渉における対応基本的な考え方が出されております。全く日本的ですよね。まだこれは完成していないとお役人は言うのですけれども。  例えば、一番最初の基本的な理念のところで、1から3まであります。今大臣が言いました多面的な機能や食料の安全保障の重要性、さらには国内農業政策の円滑な実施や農業生産の文化への十分な配慮がなされること。十分な配慮がなされること、これは英語で何と言うのですか。二番目は、輸出国と輸入国の権利義務のバランスを確保すること。三番目は、各国の農業の自然的、歴史的な条件、経緯、この違いに十分配慮をしながら各国の農業が共存できるような国際規律とすること。  何を言っているんだかこれでは、大臣、わかりますか。幹部に聞きましたら、いや、それは交渉に入ってから言うことだからと。こんなもので国民合意を取りつけるといったって、国民は何を言っているかわかりますか。十分な配慮とバランスを確保と、三番目も、十分な配慮で共存できると。  まだ後で言いますけれども、各論にわたれば、なおわかりにくい文言ばかりなんです。適切な関係とかというのは、アメリカのああいうクリントンさんが言うときに不適切なと言うぐらいで、あとはもう少し具体的に言わなかったら何のメッセージも各国にも与えないし、国内的にも与えないと私は思うのですけれども、まず最初にどうですか。
  24. 中川昭一

    中川国務大臣 英語で何と言うんだということに関しては、実は英文ができておりまして、私は連休中に、OECD、WTO、それからフランスの農業大臣に英語の文書をお渡ししました。何と書いてあるかはちょっと今手元にないので申し上げられませんが。それから、韓国にもお渡しをしてまいりました。  ちょっと話がそれるかもしれませんが、韓国の場合には基本法が既に去年スタートいたしまして、そのパンフレットをいただきました。それには、韓国語というんでしょうか、ハングルというんでしょうか、それと中国語、英語、日本語の訳のついた、一冊で四カ国語の基本法の条文をいただきましたので、日本語しかわからない私もすぐ読ませていただいたわけでございます。  これは少なくとも、私は、渡した方々について、ぺらぺらとごらんになったところ、特にOECDや何かは今各国のいろいろな主張の分析をやっている最中だそうでありますけれども、多面的な機能ということについては非常に研究の余地があるとか、韓国なんかは、私が主張したことはもう全部賛成だということを言っておりますし、特に輸出国と輸入国のアンバランスなんということは、輸出国ですら、何を言っているかは理解ができる、それを認めるか認めないかは別だと思いますけれども。  あるいはまた、特にヨーロッパを初めとした各国は、やはり歴史的な問題、文化といったものが食料あるいは農業密接不可分のものだということは、専門家といいましょうか、私の会ったカウンターパートの方々は、皆さん少なくとも、この基本理念の1、2、3については、何を言っているかぐらいについては御理解をいただけたものだと。詳しいことは後で読んで、またいろいろ意見を交換しようということで別れてまいりまして、一ページごとに説明したわけではございませんけれども、かいつまんで概略を説明したところでは、言っていることは少なくともわかる、これが外交辞令なのかどうかは別にいたしまして、そういう返事をいただいたところでございます。
  25. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 それでは、市場アクセスについても適切な国境措置をとっていく、これはどういうことですか。適切な国境措置というのは。
  26. 竹中美晴

    ○竹中(美)政府委員 市場アクセスの問題となりますと、具体的には国境措置ということになるわけですけれども、これはもう御存じのとおり、これまでもさまざまな議論や交渉やらを経て現在の姿になっておる。そういうことで、そうした経緯とかを十分踏まえて、具体的には関税の問題とかアクセス水準の問題とかということになるわけでありますが、そういうものについて、これまでの経緯等を十分踏まえて適切な結果を実現していきたいということでございます。
  27. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 今の経済局長答弁は、私が質問していることに対して答弁になっていないんですよね。それは、その前にそう書いていますよ。私もそれは読まなかったけれどもウルグアイ・ラウンド合意の実施の経験や輸入国の需給事情等を十分踏まえた適切なものというのは、適切なものというのは何ですか、これは。アクセス水準をさらに下げて入りやすいようにするという意味なのか。その辺の答えぐらいあれせぬかったら、それは外国人にはわかったかもわからないけれども、我々にはさっぱりわからないと言ってもいいんじゃないですか。それは、経済局長に聞くのは酷ですかね。
  28. 穂積良行

    穂積委員長 竹中局長、アクセスと関税率について、適切なとはどういうことかということを説明してください。
  29. 竹中美晴

    ○竹中(美)政府委員 例えば関税率の問題でありますけれども、もう御存じのとおり、これまでの交渉とか議論とかを踏まえて現在の姿になっている。輸出国のサイドに立ちますと、関税率は下げろ、最終的には撤廃しろというような議論にもなるわけでありますが、私どもとしては、そういう議論に賛成することはできない。これまでの経緯とか各国の実情とかいうことを十分踏まえて対応する必要があるという趣旨でございます。
  30. 穂積良行

    穂積委員長 鉢呂君、大体おわかりになりましたか。
  31. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 いいえ、わからないです。  大臣、今聞いたのは、市場アクセスというものについて、我が国としてはこれまでの経緯を踏まえて適切な国境措置をとっていくんだと。適切というのはどういうことなんだと言ったら、いやいや、適切なものであるというふうに最初御答弁されたから、アクセスをさらに拡大するのか、輸入を拡大する方向のものを持つのか、あるいは現状より国境措置を高めるのか、そのぐらいのことをきちっと国内的にも言わなかったから、口頭で言う場合は、今言ったように、輸入国だからそれはというような言い方をしても、文章的にこんな表現ではだれに対するメッセージにもならないんじゃないですか。  あるいは、この最終報告ではもっと明瞭にするのですか。こういうものを与党も農業団体も認めるというようなことにはならぬと私は思うのですよね。どうですか。
  32. 中川昭一

    中川国務大臣 これは、もう先生承知のとおり、あくまでも基本考え方でございますから、かなり抽象的であり、英語でどういうふうに表現しているのか後で報告させますが、ここの言わんとしていることは、まさにこれから御議論をいただいて、来月中ぐらいにはもう一段具体的なものを出して、各国ともそろそろいろいろな作業をやっているようであります。我が国としてもやっていくわけでありますが、この三ページの1の「また、」以降の部分については、やはり一つは、輸出国と輸入国とのアンバランス、つまり権利義務関係がイコールフッティングではないという問題を何としても是正をしなければいけない。  それから、それを、ウルグアイ・ラウンド合意の実施の経験とかという部分で強く主張をしていかなければならないわけでありますし、基本法との関係でいけば、やはり国内生産基本とするんだということでありますから、今でもどんどん、六割が外国から入ってきておるという実情の中で、国内生産基本とし自給率を上げていくんだという前提に立つならば、輸出国の方にも、輸出義務をかけることによって何らかのプレッシャーが加わっていかなければいけない。  そしてまた、我が国としては、この大前提に改革過程の継続というものがありますから、いきなり何でもかんでも入り口を閉めちゃうということはできないわけでございますけれども、いわゆる国境措置、セーフガード、特別セーフガード等々の問題を含めてきちっと、内外の仕切りというものはガット上も認められておるわけでございますので、そういうものを十分に主張しながら、そして、輸入国の需給状況を十分踏まえた適切なものとするというこの意味は、要するに、ただ無秩序に輸入国に物が入ってくることによって、生産者はもとより、流通あるいはまた小売、そして消費者そのものに対しても混乱を起こすことは避けなければならない。  さらには、ここで一つ大きなポイントになってくるのが多分表示の問題だろうと私は実は考えておるわけでございまして、この表示の問題については、現在検討中でありますから結論を今申し上げることは私にはできませんけれども、こういう表示の問題が、まさにEUとアメリカの間での大問題に今なっておるわけでございます。  そういう意味で、そんなようないろいろな要素も含めて、我が国にとってプラスになる方向での交渉のカードというものは、今私が先生から御指名を受けて頭の中に浮かんだことだけでも幾つかあるわけでございますから、それをいろいろな御議論の場、そしてまた農林省自身の研究、検討の結果を踏まえて、多様かつ実効性のあるカードを持って交渉に臨んでいきたいというふうに考えております。
  33. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 私は、次期交渉に臨む、まさにこの表示のことを問題にしているのですよ。  例えば、関税水準については、「多面的機能への配慮を十分踏まえて検討を行うことが必要である。」ただ、いろいろなことを踏まえて検討を行うことが必要である、こんな表示の仕方がありますか。これは何ですか。検討を行うということは、WTOに対する考え方を打ち出すときにはもう検討を終わって、どういう考え方をするということをやるということですか。それとも、このまま一つ日本考え方だということで、検討を行うどまりでこの文言になるというふうに私は見ているのですけれども、こういう表示が、まさにわからない表示でわからない。  また、「国内支持」のところを言いますよ。国内支持については、さっき言ったものですよ、国内支持とか助成保護。上にいろいろ書いて、この最後のところに「国内支持については、このような観点への配慮を十分踏まえ、検討を行うことが必要である。」こんなことでは何を言っているかわからないのではないですか。  これはやはり、最終を六月にも出すかというふうに聞いていますから、もっと明瞭に方向を出さなかったら、私は、幾らこれに基づいて口頭で大臣の腹のうちを言ったところでだめだと思います。まず国内の世論を統一する、国内皆さんの支援をもらうということであれば、今はもう神聖な米は関税化したのですから、交渉は同じところからスタートできるというふうに皆さんも言っているのですから、次期交渉に当たって、輸入大国で日本のようなこんな自給率の低いところはないのですから、もっと明瞭に、目に見える方針を出してもらいたいと思うのです。どうでしょうか。
  34. 中川昭一

    中川国務大臣 本当に、さっきのグリックマンの発言ではございませんけれども、世の中はどんどん次期交渉に向かって進んでいることは事実でございます。  そういう中で、こういう考え方が四月の終わりに出たわけでございますけれども、これはあくまでも考え方でございますから、要するに、文字どおり、たたき台というよりは、もっと現実的、具体的ではありますけれども、では具体的にどうするんだ、何条を引っ張ってきてここをどういうふうに解釈するんだとか、そこまでまだ踏み込むほど作業が進んでいないということでございまして、少なくともこの考え方でやる、この場合の検討というのはこういう前提でやる、それに対しての論理的な肉づけをしていくというふうに御理解をいただきたいと思います。
  35. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 細かいことはいいのですよ。だけれども、適切にやるとか配慮を十分踏まえて検討を行うとか、この程度のメッセージでは全然話にならないというふうに思いますから、ぜひ大臣の指導性を発揮していただいて、大きな点で、例えば関税率については現行の関税率を守っていくんだ、その程度のことのメッセージを出さなかったら、何の足しにもならないのではないですか。それを検討課題にして交渉直前まで持っていくとかいう表現になるのであれば、私は、なかなかそれはならないのではないかと。いや、もっと違う表現もあるかもわからないです。ですけれども国内に対してもやはり政府としてのきちっとしたメッセージを送っていただきたい、そういうふうに思います。  そこで、若干いい点もありますので、そこをちょっと確認しておきたいのですけれども、「農業の多面的機能」でこのように言っております。「農業の多面的機能は国内農業生産密接不可分に発現されるものであり、従って多面的機能発現のための国内支持生産と完全に切り離すことはできない。」ここだけは非常に明確に言っています。こういう考えでいくのですね。  今までずっと、このWTO協定は、国内生産市場歪曲的な側面を持つことから、国内生産を刺激しないような形で、いわゆる緑政策のような形でいったのですけれども、ここは、日本農業というのは、この次のもそうなんですけれども、安全保障上、国内生産を高めていかなければならないという形で、そうするためには生産と切り離した国内支持というのはあり得ないということで、こういう形に基づいて、国内支持政策というものをWTO交渉の場で積極的に発言をするというふうに考えてよろしいですね。
  36. 中川昭一

    中川国務大臣 結論的に言えば、まさにそういう趣旨でございます。そして、いろいろな場で、国内生産状況、それから多面的機能の重要性、これは密接不可分のものであるということは、既に私自身も各国に対して言っているところであります。
  37. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 その場合も、そのことは強力なものとして、具体的に交渉に臨んでいただきたいと思いますし、「これと適切な国境措置を組み合わせていく」、この表現はどういうことを意味しているわけですか。また「適切な国境措置」ということなんですけれども
  38. 竹中美晴

    ○竹中(美)政府委員 農業の多面的機能に関連する話でございますが、こういう農業の多面的機能の維持、発揮のためには、先ほどもお話ございましたように、生産と結びついた一定国内支持がどうしても必要である、それと関税等の国境措置、その両面によって多面的機能の発揮が確保される、そういう考え方でございます。
  39. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 そこで、国内法との関係に行きますけれども、当初は、国内法においては、輸入制限ですとか一定のものをとるという条文はなかったわけでありますけれども、協議の最終場面で、現基本法にあるものをそっくりそのまま入れ込んだわけであります。輸入制限をできるというようなことを、現状では本当に狭いものしかできないものをわざわざ入れ込んだわけでありまして、そのことを将来活用できるような方向になれば私はいいと思いますから、ここはそういう点では、ちょっと時代錯誤的でありますけれども、輸入制限ができるような条項を設けたということは是としたいと思っています。  ただ、基本法WTO交渉との関係について、私ども民主党が修正案で求めておるように、やはり国内法に基づいて国際貿易のルールづくりに最大の努力をするものとするというような条文をぜひ入れるべきであるというふうに思いますけれども大臣の御答弁をお願いいたします。
  40. 中川昭一

    中川国務大臣 今回の基本法は、中長期的な食料農業、農村の発展のための基本法でありまして、現行基本法も三十六年以来三十八年、したがって、二年や三年でこの法律を無意味なものにするということは絶対にしたくない、中長期的に耐え得る法律というふうに位置づけて審議をしていただいておるわけであります。  次期交渉に向かうスタンスというのは、基本法の目指す四つの理念を含めたいろいろな施策とある意味では同じ方向を向いたものであり、密接不可分と言ってもいいものだろうというふうに考えております。  ただ、来年から三年程度かけてまとめましょうというその交渉について、その趣旨は基本法と同じであり、発現する内容も基本法基本的に全く同じなわけでございますから、そういう意味で、実態的には同じ作業をやっていく、内外でやっていくということになるわけでございますが、そのことと三年で終わるかどうかは別にしまして、次期交渉に向かっての交渉に対する決意なるもの、決意は、これはもう私だけではなく、内閣総理大臣、そしていろいろな場で同じ行動をとるであろう国会の先生方と全く同じ決意だろうと思いますので、その決意については、私自身も全力を挙げて取り組むということをはっきり明言させていただくわけでございますが、条文の中に盛り込むということになりますと、事柄の性格上ちょっと適当ではないのではないかなと。  お気持ちはよくわかりますし、それが決意のあらわれの一つの表現方法だということも理解できないわけではございませんが、基本法としての位置づけの中に次期条約交渉に向かっての決意を盛り込むというのはちょっと、法形式面からいっても、また法の内容からいっても、内容自体は同じでありますけれども、法としての位置づけからいっても、私としてはちょっといかがなものかなと言わざるを得ないと思います。
  41. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 次期農業交渉ばかりでなくて、いわゆる農産物国境措置を含む貿易ルールについて、これは義務規定というよりも努力規定をぜひ入れることがいいのではないか。次期交渉ということでなくて、いわゆる自給率の設定なり基本計画でも、国境措置等の国際的な貿易ルールというものは極めて大きな影響を与えるということは自明なわけでありますから、単に自給率を設定しても、あるいは基本計画をつくっても、達成できない大きな原因は輸入農産物との関係、それは国際貿易ルールということになるわけでありますから、そこのところについて、現基本法にはあるわけであります、いろいろな意味で。  ですから、私どもは、条文ということであれば、大臣の言うようになじまないということであれば、ぜひ前文にそういったものを入れるということが必要でないか。官房長、笑っておりますけれども、後でまた前文についてはお話ししますけれども、私どもはそのように強く切望するわけであります。  それから、この委員会では少し触れられておらない点について質問をいたします。  第三十二条は、自然循環機能の維持増進ということで、農業の持つ自然循環機能というものを書いてございます。第三条には、農業には自然環境保全の機能がある、条文を要約して言っておりますけれども、そのように述べておるんです。  最近の農業というのは、高度化あるいは効率化、生産性の向上あるいは大型機械の導入ということで、世界各国ともそうでありますけれども、むしろ環境には負荷、マイナスの要素ということでとらえられておるのが一般的であります。  しかし、この基本法の条文、ずっと、そのほかにも後で言いますけれども農業というのは、国土保全は認めます、しかし、環境保全というものは農業が持つ基本的な要件、プラスの要件として必ずしもないというふうな位置づけでこの条文が書かれておらないということは極めて残念だと思いますけれども、いかがでしょうか。
  42. 高木賢

    高木政府委員 本法案の第三条では、御指摘のありましたように、多面的機能の一つとして自然環境の保全を掲げております。これは、これだけでなくて、多面的機能は、農地が存在するだけで発揮されるということではなくて、農業生産活動が行われることによって生ずる機能であるということを明確にしております。  では、自動的に今農業生産活動が寄与するかというと、御指摘のありましたように、化学肥料あるいは農薬の不適切な使用ということがありますれば環境に負荷を与える面もあるということは事実であろうと思います。  したがいまして、今後の農政の方向あるいは農業の向かうべき方向といたしましては、そういう環境に負荷を与えるということではなくて、農業に内在しております自然循環機能、これが適切に維持増進されるということがぜひとも必要である。そして、このことが消費者国民を含めた皆様方の農業に対する支持をかち取るゆえんでもあるということで四条にその方向を明記いたしておりまして、農業の持続的な発展にとって自然循環機能の維持増進が不可欠であるということを明確にしております。  したがいまして、このことは、今、現実実態を否定するというより向かうべき方向を基本理念として明確にしたものでもございますし、それを受けて三十二条は具体的に基本的な政策の方向を規定した、こういう関係になっているわけでございます。
  43. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 今後の向かうべき方向ということでは、私はよろしいと思います。しかし、農業にはそういうもの、環境に与えるマイナスの影響が内在しておるということを十分踏まえてこれからの政策をつくっていただきたい。  そこで、三十二条には、自然循環機能の維持増進を図るため、農薬及び肥料の適正な使用の確保、家畜排せつ物等の有効利用による地力増進その他の必要な施策を講ずる。これもいいかと思いますけれども、同時に、この程度のことではなかなか、一定の増進はします、しかし無肥料、無農薬ということでは大変農業経営上のリスクも伴うということで、最近はもっとこれを発展させて、無農薬、無肥料というような有機農法に、現実に農水省施策もその方向に行っておるわけでありますけれども、この点についての、必ずしも環境保全型の農業に対する条文上、基本法上の記載が見当たらないというふうに思うわけでありますけれども、いかがでしょうか。
  44. 高木賢

    高木政府委員 今御指摘がありましたが、環境保全農業ということだけにとどまらず、いわゆるリサイクルの確保といった面も含めまして、私どもの意図といたしましては、より次元の高い用語として、自然循環機能の維持増進ということで、農業の持つ環境への調和といいますか、保全という考え方も含めて包括的に規定したわけでございます。
  45. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 ちょっと答弁になっていないと思いますけれども、いわゆる環境保全的な農業について積極的な基本法上の条文がないというふうに思いますし、同時に、農政改革大綱を見ましても、このように書いておるのであります。そういった環境機能面に関連した政策のあり方の検討をこれからしていく、それは、諸外国施策動向あるいは今後の国際規律の動向というものをもって今後検討していくと。  具体的にどういうものを検討するための方向をやっていくのかということの記載も一切なし、単に書いたにすぎないようなものでありまして、むしろ世界各国、皆さん御案内のとおり、先ほど言ったような無農薬、無肥料的なものについて、農産物減収的なものについてそれを補てんするという意味で緑の政策も設定をして、それを積極的に活用しておる環境対策、緑の政策環境対策という形でやっておるのでありますから、そこはもっと具体的な施策を講じていただきたい。  法になくても、我々は修正案を出しております。環境保全的な農業というものの一文を入れて、それに対する所得補てん的なものをすべきであると三十条に修正文をつけておるのでありますけれども、実態としてそういう具体的な政策を打ち出していただくようにお願いを申し上げるところでございます。  時間がありませんから、次に移らせていただきます。  同時に、農業というのはさまざまな形で多様な生物と一体として存在をしておる、むしろ農業自体がそういう多様な生物から影響を受けている、植物、動物さまざまありますけれども、そういう実態にあると思います。  時間が五分程度しかありませんが、きょうは環境庁の局長さんに来ていただいておると思いますから、そういった生物多様性の現在の状況、危機的な状況であるというふうに言われております。それと同時に、環境庁として、平成七年でしたか、生物多様性の国家戦略というものを関係閣僚会議で、これは農水大臣も入っておる閣僚会議で決定をしております。その二つについて御答弁願いたいと思います。
  46. 丸山晴男

    ○丸山政府委員 野生生物の我が国における危機的な状況というお尋ねが冒頭にございました。  環境庁では、専門家によります検討会を設置いたしまして、絶滅のおそれのある野生動植物の選定作業を進めてまいっておりますが、それによりますと、哺乳類ではイリオモテヤマネコなど四十七種、鳥類ではシマフクロウ、ノグチゲラなど九十種、汽水・淡水魚類ではミヤコタナゴ、イタセンパラなど七十六種、これらを含めた動物全体では三百七十種が挙げられ、また、植物を合わせますと二千九十六種が絶滅のおそれのある種として掲載をされているところでございます。  また、平成七年十月に、地球環境保全に関する関係閣僚会議におきまして生物多様性国家戦略が決定をされ、生物多様性の保全と持続可能な利用を図るという観点から、関係する我が国施策を体系的にまとめさせていただいておりまして、その第三部、施策の展開、第三章、生物多様性の構成要素の持続可能な利用におきまして、農業における基本的な考え方、環境保全農業の推進、環境に配慮した農業、農村の整備について記述をさせていただいているところでございます。これらによりまして、生物多様性国家戦略の推進に当たっているものでございます。
  47. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 今局長からお話があったとおり、日本の生物というのは、植物においてはほぼ一七%、淡水魚類については二一%、鳥類についても二〇%、最近のトキのようにもう絶滅してしまったものもありますけれども、今言ったパーセントは、絶滅の危機に瀕しているものを含めて環境庁はこのようなデータを出しておるわけでありまして、例えばメダカなんというのは絶滅危惧II類に入って、急速に減っておる。  農業環境に生息をしておるさまざまな生物もいるのでありますけれども、その原因も環境庁が述べておりまして、用水路あるいは小川、小河川の改修、水路の壊廃、水質悪化、泥の流入、用水路の三面コンクリート化、圃場整備、そういったものを原因としてこういう多様な動植物が絶滅の危機に瀕しておるということで、この点でもヨーロッパ等ではさまざまな対策を講じておるのであります。  これに対する農水省の改善策があるのでありましたら、条文に即してお述べ願いたいと思います。
  48. 高木賢

    高木政府委員 ただいま環境庁の方からお話がありましたように、メダカなどの水生生物に関しまして、絶滅のおそれがある種として七十六種というものが挙げられております。これらのうちには、ミヤコタナゴ、メダカなど主に農村部の小川、水路などを生息の場とする魚類も含まれております。  ただ、この減少の原因といたしましては、河川あるいは水路の改修によります生息環境の変化とか、グッピーという外来種、競合する外来種が入ってきて、それがえさを食べてしまうとか、生活排水あるいは農薬などによる水質の悪化ということが報告をされ、取りまとめられております。  農林水産省といたしましては、希少な水生生物の保護のために、保護増殖事業を環境庁などの関係省庁と共同で実施するということ、それから、今国会にも法案を提出させていただいておりますが、環境と調和しながら持続的に発展できるという農業本来の特質が生かせるように、持続的農業の推進あるいは環境との調和に配慮した農業施設の整備、こういうものを進めてまいりたいと考えております。
  49. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 この国家戦略で打ち出されているのは、農水省は、一九九八年からこのような取り組みを一般化、定着をさせる段階だという期日を切って、九三年までは準備期間だ、九八年までは第二段階として各地でこういう取り組みをふやしていくんだ、それで第三段階、もう既に去年から、全体的に、一般的に定着をさせるんだということを出しているんですけれども、まさにそうなっておらないのであります。  今度は構造改善局長にお聞きをいたします。  ちょっと時間がなくなって、後でまた議論をさせていただきますけれども、第二十四条は農業生産の基盤整備に関する条項でありますけれども、ここの条項は、農業生産性向上を促進するため、環境との調和に配慮しつつ、皆さん調査会答申農政改革大綱もここはずっと環境の保全であります。調和と保全の違いをお述べ願いたいと思います。
  50. 渡辺好明

    ○渡辺(好)政府委員 確かに御指摘のとおり、調査会等で保全という言葉が使われておりました。今回の条文では調和という言葉を使っているわけでありますけれども農業生産基盤の整備は、面的な整備を行ったり水利施設を建設するというふうなことが内容になっております。言ってみれば、人為的に作用を加える以上、その事業にかかわる区域あるいは周囲の環境に対して一定の負荷を与える可能性があるわけでございます。  したがいまして、その環境をそのままの状態で保全するように配慮するというふうな表現ぶりですと、これは論理上矛盾をするということがございまして、規定ぶりとして適切ではないということを私どもは十分検討した上で、人為による作用が加えられる際にも、環境と調和をするように配慮するということを規定することが、論理として、また実態として適当であるというふうに考えた次第でございます。
  51. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 これは大変大きな問題でして、大臣調査会答申は、環境保全の土地改良。皆さんのつくった大臣署名入りのあのきらびやかな本も、きちっと環境保全の土地改良整備、その工種、手法ですね。ところが、法律になったら、環境との調和。それは違うんだと明瞭に構造改善局長は言いました。そうであってはならないんです。  環境保全環境調和とは明瞭に、調和というのは、生産性向上と調和させていくという形なんですけれども皆さんが具体的に基づいた中身によっても、環境との調和と環境保全では、やり方に違いをきちっとつくっております、内部的に。これではやはり、答申答申でいいというふうに言ってもいいですよ。だけれども法律をつくる前に皆さんは、大臣名で農政改革大綱をつくって世に出しているのに、そこから後退をして法律をつくるというのは、私はまかりならぬと思います。  きょうは時間がもう終わりましたから、後でまた質問する機会を設けさせていただきますけれども環境保全というのは、他の法律の規制を受けてやるという形をとるわけであります。環境との調和というのは、まさに構造改善局内部で、これであればいいだろうという手法でやるというのが環境との調和ということでありますから、おのずからその中身は違うのでありまして、大臣、やはりこの辺はもう少し内部に、皆さんの公式に出した文書と法律が違わないように、私どもこの点でも、環境の保全というふうに修正をすべきであるというふうに修正を考えておりますので、よろしくお願いいたしたいというふうに考えます。  時間がありませんからこれで終わりますけれども地方中央公聴会の押しなべての意見を踏まえて、ぜひ、この委員会あるいは農水省においても修正すべきところは修正するように最大限の御努力を今後していただきたいと委員長にもお願い申し上げまして、終わります。
  52. 穂積良行

    穂積委員長 正午から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時二分休憩      ————◇—————     午後零時十七分開議
  53. 穂積良行

    穂積委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、一言申し上げますが、各法案いずれも重要でありますけれども、特に重要な法案審議について、定足数の確保については各位御協力を今後お願いいたします。  それでは、質疑を続行いたします。安住淳君。
  54. 安住淳

    ○安住委員 私も、これは委員長に対しても申し上げますが、私も含めて、委員会幾つも入っていまして大変忙しいと思いますが、きょう十二時現在で、私の質疑であるなしにかかわらず、始まる時点で四、五人しかいないというのは、この農業基本法という本当に重要な問題を今やっているときに、果たしてこういう状態でいいのかと私も思いますから、どうぞ理事会の方で、これは質疑の時間帯を含めてもう一度議論をしていただきたいと思います。マスコミがちゃんと見ている、国民が見ているわけですから、姿勢が問われると思いますから、そこは委員長に御要望しておきますので、よろしくお願いします。
  55. 穂積良行

    穂積委員長 承知いたしました。
  56. 安住淳

    ○安住委員 それでは、質問に入らせていただきます。  この基本法の中には大きな柱が三つありますが、これまで、食料それから農業のことに関しては、それぞれ各委員の方からも質問がかなりありましたので、私は、きょうは、約一時間をかけまして、もう一つの柱である農村という定義について何点かお伺いをさせていただきたいと思います。  本日は、お忙しい中、自治省、国土庁にもおいでいただきましたので、どうぞひとつよろしくお願いします。  まず、農林水産省に伺いますが、この法律でうたっている農村というのはどういう定義でございますか。
  57. 高木賢

    高木政府委員 この新しい食料農業農村基本法案で使っております農村の意味でございます。  本法案では、農業的な土地利用が相当の部分を占め、かつ、農業生産と生活が一体として営まれており、居住の密度が低く分散している地域という意味で使っております。
  58. 安住淳

    ○安住委員 それでは、これは自治省に伺いますが、今の定義で言うと、地方自治体のエリアといいますか、所管といいますか、私は、そもそもこの質問をするのはなぜかというと、農村というものを本当に考えたときに、確かに今までは、いろいろな法律で、農業にかかわるから何となく農村と言っていますが、戦後、農村の形態は随分変わってまいりました。都市近郊の農村もあれば、過疎地の中で苦しんでいる中山間の農村もあるわけであります。  しかし、この法案を見ていると、どうも、農村の生活環境整備面まで、この法案では充実、また福祉の向上もうたっておりますが、これは果たしてこの法案に当てはめてやるものであるのか。それとも、農村という定義がもしあるとすれば、あくまでもそれぞれの自治体が、生活の向上や福祉の向上、つまり生活環境の改善等についてはやるべきではないかという観点から実は質問をさせていただきたいと思っております。  そこで、自治省に伺いますが、自治省がとらえている農村というのはどういう考え方、また、そこに住む人たちの生活や福祉の向上というのは、だれが主体となってやるものなのかということを、定義があれば教えていただきたいと思います。
  59. 香山充弘

    ○香山政府委員 お答え申し上げます。  自治省として、公的なものでは、農村の定義をしたというようなものは持っておりませんけれども、先ほど農水省の方から御答弁がありましたように、農業的な土地利用が相当の部分を占めておる、そういうようなところを指すものだろうというように私ども考えております。  それと、地方行政とのかかわり方でございますけれども、生活環境の改善とか居住環境整備とかいったようなことになりますと、これは当然のことながら、地域の総合的な行政主体である地方団体の本来的な業務であるというように私ども考えております。  ただ、このことは、国として、こういった問題にかかわる基本的方向を定めたり、あるいは全国共通の規制をしたり、あるいは大規模な施設に対して補助をするとか、そういった国としての役割を排除するという意味ではもちろんございませんが、いずれにしても、生活環境整備とかいったことは、地方公共団体の最も基本的な事務であるというふうに考えておる次第でございます。
  60. 安住淳

    ○安住委員 そこで伺いますが、法案の第五条の解釈の前に、国土庁の方、きょういらっしゃっていますね。  実は、農水省の試算などでDID、非DIDというのがありますね。つまり、非DIDというのはどういうことかというと、人口集中地区以外の地区。これは一般的な指標として、実は行政機関がいつもこれに応じて国土面積や総人口の居住を出しているわけです。それからいうと、我が国の非DID地域、それをもし農村と定義すれば、これは国土の何%になって、総人口に占める農村に住んでいる人の割合というのは何人でございますか。
  61. 中川浩明

    中川(浩)政府委員 平成七年の国勢調査令に基づきます非DID地域でございますが、人口密度の低い地域ということになろうかと思いますが、面積にして九七%、三十六万平方キロ、人口にして四千四百三十二万人、三五%となっております。
  62. 安住淳

    ○安住委員 それでは、農水省に伺います。  私の持っている数字と今のは全く一緒でございますが、今度の食料農業・農村基本法の第五条、読みませんが、一番最後の二行のところに、「農業生産条件整備及び生活環境整備その他の福祉の向上により、その振興」、「その」というのは農村ですけれども、農村の「振興が図られなければならない。」と書いてあります。  今言っていた非DID地域というのは、ここの五条に言う農村にすべてかかるのですか、大臣
  63. 中川昭一

    中川国務大臣 この法律で言う農村というのは、先ほど官房長が申し上げた意味で使っておりますが、五条で言う農村の振興というのは、この四つの理念のうちの最初の、食料安定供給それから多面的機能、それが最終目標であって、そのために農業の持続的な発展あるいは農村の振興というものがあるわけでございまして、そういう意味で、その施策を講ずる上で必要な地域としての、農業生産地帯としての農村であります。  ちなみに、この法律の中には、都市農業とか都市周辺農業というものの位置づけも別の条文にあるわけでございますが、この五条の農村というのは、そういう食料供給、あるいは国土の多面的機能のために農業が必要であり、そこに住む人々の生活環境がまだまだおくれておるという状況も含めて、その農村地域も守り、発展をさせていかなければいけないという意味での農村地域というふうに理解しております。
  64. 安住淳

    ○安住委員 そうじゃなくて、私の質問は簡単なんですよ。官房長がさっきおっしゃった話はそうだろうと思いますよ。しかし、私が言っているのは、非DID地域、いいですか、国土の九七%、四千万人強が住んでいるその地域は、この定義からいうと入るんですか、これは全部をひっくるめて言っているんですか、そうでないのですか、イエスかノーかで答えてください。
  65. 中川昭一

    中川国務大臣 先ほどの非DID地域、これは国勢調査令に基づく一つの統計ですが、これとは直接関係ありません。
  66. 安住淳

    ○安住委員 それでは、この法案で言う農村というのは何を指しているのですか。このことは大事なんですよ。基本計画でも、農村地域を決めて、そしてなおかつ具体的な施策をやると言っているんだから。  では、この法案で想定している農村のエリア、またその対象とする人というのはどういう人なのかということを聞かせてください。
  67. 中川昭一

    中川国務大臣 ですから、まず、この非DID地域とは直接は関係ない。もちろん、大部分ダブっている部分もあるとは思いますけれども、この法律の第一条の、あるいはまた二条から五条までの基本理念実現するための、それぞれの施策を講ずる上で対象となる地域、これがこの法律上の農村地域であります。
  68. 安住淳

    ○安住委員 施策を講ずるために農村というのを書いているわけだから、その農村というのは、具体的にどういう地域を想定していらっしゃるのかということを僕は聞いているんですよ。資料を見るとないわけですよ。  過去の事例を調べると、いいですか大臣、前も私言ったのですけれども農業法律だけでなくて、国土庁や例えばほかの役所が所管をしている中に、農村という文字の入っている我が国の法令、施行令や組織令、全部入れても十八本なんですよ。その十八本ある中で、今までは、それぞれ農村に住んでいる例えば者、例えば者というのは農業者ということですね、そういうのを対象にしたものですよ。  今度の基本法というのは、多面的機能ということはまあいいでしょう。私は、農村の振興も大いにやるべきだと思う。しかし、ここで言う農村基本法というのは、どうも食料農業とこれは異質なものだというふうな考えを私は持っているのですよ。  そこで、何を根拠にこの生活向上、つまり今の大臣の話からいうと、農業をやっている人の生産の向上やその人たちのための環境整備は、私は当然だと思うのです。これはやらないといけませんね。基本法に入って当たり前。  しかし、五条で言う、私がさっきから言っているように、生活環境整備その他の福祉の向上、今自治省に伺ったら、基本的にはこのインフラ整備はまさに地方自治体の大きな仕事だと言っているんじゃないですか。つまり、農村には農業者しか住んでいないと思ったら大間違いですよね。サラリーマンも何もいっぱいいるんですよ。だから、ここで言う、法律で言う農村というのは何を指しているんですかと聞いているんですよ。明確に答えてください。
  69. 中川昭一

    中川国務大臣 ですから、この法律で農村というものの定義は、いわゆる何条、定義という形ではないことはもう御承知のとおりであります。  先ほどの説明を逆から申し上げますと、五条で言う農村の振興、ここでいろいろ書いてあります。それから、四条で農業の持続的な発展、これもいろいろ書いてあります、読みませんけれども。これを発展させたり、あるいはまた振興することが、本来の食料安定供給に資し、また多面的な機能の発揮に役立つということで、四つの理念として掲げられておるわけでございますから、そういう意味でいえば、法律的に厳密に言葉の定義として農村というものを定義する必要はない。  しかし、あえて申し上げるならば、繰り返しですけれども、先ほど官房長が言った、農業的な土地利用が相当の部分を占め、かつ、農業生産と生活が一体となって営まれ、居住の密度が低く分散している地域という農村の一般的な概念がございますが、それと同時に、多面的な機能、景観だとかあるいはまた国土保全とかいったものもこの農村地域の大きな役割であるということで、五条で農村の維持、そして四条で農業の持続的な発展によって、二条、三条の目的実現していく、こういう解釈でございます。
  70. 安住淳

    ○安住委員 いやいや、そういうことを聞いているのじゃないですよ、大臣。わかっていて外しているのかもしれないですけれども。  いいですか、では、違う観点から聞きますよ。これは自治省も答えてください。  この法律で言う例えば農村というものがあったとすれば、仮に、では農村地帯に住んでいるサラリーマンや商店街の人、そういう人たちのインフラ整備もこの法案の所管ですか、それとも地方自治体がやることですか。これは農林省と自治省、どっちも答えてください。
  71. 高木賢

    高木政府委員 農村という定義に当てはまる限りは、この基本法施策対象にもなる対象地域であります。  それから、地方公共団体につきましても、国との適切な役割分担とともに、相協力して施策を行う、こういうふうに整理をしてございます。地方公共団体の行うべき分野もある、いわばそれぞれの分担関係のもとに農村の振興を図る、こういうふうに理解しております。
  72. 香山充弘

    ○香山政府委員 私の方からお答えするのが適当ではないかとも存じますけれども、お尋ねでございますのでお答えをさせていただきます。  私どもの理解では、この法律は、農業とか農村のサイドから見た国の施策考え方、基本的方向を定めるものであるということから、今のような御説明になっておるのだろうと思っております。  一方で、地域住民の住宅環境整備といったことにつきましては、総合的な地域の行政主体である地方団体の事務ということに当然なるわけでありまして、そういう意味では、国と地方との適切な役割分担、お互いに協調し合って、御指摘のような、農業に従事する以外の人たちの生活環境も含めて、地域全体としての生活環境整備が図られるものであるというふうに考えておる次第でございます。
  73. 安住淳

    ○安住委員 それだったら伺いますが、法案のどこに相協力してと書いてありますか。
  74. 高木賢

    高木政府委員 三十七条に「国及び地方公共団体は、食料農業及び農村に関する施策を講ずるにつき、相協力するとともに、」云々ということでございます。
  75. 安住淳

    ○安住委員 では、例えば八条を聞きましょう。八条は、地方自治体はというふうに主語が地方自治体になっています。そして、国との適切な役割分担を踏まえて、地方自治体の区域の自然的経済的社会的諸条件に応じた云々、責務を有すると。  よくわからないのですけれども、五条と八条というのは、つまり、こういうふうに解釈できるのじゃないですか。協力するというふうなものは、今三十七条を言ったけれども地方地方でやりなさい、この法案に基づくインフラ整備はインフラ整備で国としてやります、そういうふうに分けているんじゃないですか。  なぜそういうことを言うかというと、法律の中で、ほかの国の機関との調和の部分がありますね。十五条の基本計画の中では、国の計画との調和は保たれる、つまり、国の中では調整をする。しかし、八条を読むと、地方地方で勝手にやりなさい、勝手にというのは言葉は悪いですけれども。そういうふうにも解釈されるんじゃないですか。
  76. 中川昭一

    中川国務大臣 八条の地方公共団体の責務というのは、この基本理念目的を達成するための地方自治体の役割というものがあるわけでありますが、その場合には、国との適切な役割分担を踏まえてやっていきましょうということであります。これが、三十七条の方で、国と地方自治体が協力し合ってやっていきましょうということにも担保されておるわけであります。  ちなみに、旧基本法では「国の施策に準じて」ということで、これは、国が決めたものについて、それに基づいて地方がやりなさい。今回は、四つの理念を中心とするいろいろな施策について、国がやらなければいけないことがあります、あるいはまた、消費者農業者、その他食品事業者が努めなければいけないこともあります、そして、地方自治体の責務としてやるべきことがあります、その場合に、国との適切な役割分担、そして、相協力というものが必要なわけであります。  一方、十五条の四項については、基本計画のうち農村に関する部分については、国土の総合的な利用、例えば、これは国土庁とか自治省とか建設省とかいろいろあるでしょう、開発、保全に関する国の計画との調和、例えばこれは全国総合開発計画とかそういうものがあるわけでありますから、この十五条四項の方は、各省庁間、つまり、政府の中の各省庁間で調和のとれたものにしなければならないという意味で、それぞれ重要な役割分担としての位置づけが書かれているわけであります。
  77. 安住淳

    ○安住委員 先ほどからこの話、本当は余り進みたくなかったのは、農村という定義がさほどないにもかかわらず、この基本法の大きな柱に据えた。だから、実は僕は、内容を余り本当はやりたくないのですよ。  いいですか、大臣。だって、十五条の二項の四では、基本計画で食料農業及び農村に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項をつくるのでしょう。これは自治省と国土庁にも伺いますけれども、こういう計画がぼんと出る。それは何を意味しているのか、私は想定はできますけれども、多分、例えば集落排水事業や農道や、そういうことなのかもしれません。そういう仕事のエリアというのが具体的に何なのかというのは、多分想定しているからこういう法案が出てくるのでしょうからね、それはちょっと後で聞きましょう。  私がもし地方自治体の市長であり首長であったときに、これは自治省にも伺いますが、町でいえば、どこの集落の総合発展計画なんというのは地方自治体がやる話であって、下水の整備だの何だのというのは、これは基本法になじまないような気が私はしているのですよ。農業者がより多く住んでいる地域を、ある意味で乱暴に農業基本法の中に入れ込むというのは、私はちょっと無理があると思いますよ。いかがですか。これは三省ともちょっとそれぞれ意見を言ってください。
  78. 中川昭一

    中川国務大臣 これは、要するに、目的に向かっての基本計画をつくる、自給率の目標とかいろいろ例示的に書いてある部分、その他目的達成のために総合的にかつ計画的に推進するということでありまして、全国的なものを中期的なタームでもって計画を決めるということで、例えば、土地改良計画でありますとか港湾計画あるいは空港整備計画、そういうものもあるわけでございます。それは、一々各自治体のどこの飛行場をどうするとか、そういうこともありますけれども、全体の枠を決めて、その中でいろいろと財政的な面も含めてやっていくわけであります。  ここでの基本計画というのはこの法律に基づいてやっていくわけでございまして、例えば、品目ごと自給率をどうするかとか、あるいは、集落排水の目標をどういうふうに置いていくかとかいうことを決めていきますけれども、一々細々と、来年は十四万の集落のうちのどれをやらなければいけないとか、そういうところまでを、いわゆる箇所的な面まで含めて基本計画の中でかちっと決めるというものでないことは、他の基本計画と同じように、これは実際に書けない話でもございますし、そういうことで、決して各市町村のやるべきことをがんじがらめに基本計画で決めていくというものではございません。
  79. 香山充弘

    ○香山政府委員 お答え申し上げます。  農業や農村等に関する施策は、基本的に地域と密接なかかわりを有するものでありますから、その具体的な施策ということになりますと、地方団体が自主的かつ総合的に推進することが基本になるべきものだと思っております。  一方で、農業とか農政とかいったような観点から、例えばこの法案にも書いてありますように、食料自給率の目標であるとか、輸入や備蓄との関係でありますとか、農村の振興に関する施策の方向、そういった国としてとるべき農業行政の基本的な方向を計画に定めるということは、これはまた総合的、計画的に農政を展開する上で意義があることであろうというふうに私ども考えております。  ただ、そういった地域の問題もありますので、国が定める基本計画そのものも、型にはまった施策地方団体に押しつけるといったような内容ではなくて、できるだけ地域の実情に即して、地域が総合的に農村環境整備であるとか、そこに住む住民の方々の福祉の向上といったことを図ることができる、そういうことが可能になるような内容にしていただけるものというように考えております。  そのような形で、国と地方役割分担をし合い、協調し合って地域の向上を図っていく、そういうふうに進められるべきものだというふうに考えております。
  80. 小林勇造

    ○小林(勇)政府委員 この法律におきます基本計画と、私ども所管しております全国総合開発計画でございますが、政府がこの基本計画を策定する際には、特に、全国総合開発計画等、国土の総合的な利用あるいは開発及び保全に関する国の計画と調和を図る旨規定を設けてあるというふうに私ども認識しておりまして、国土庁といたしましても、政府の一員として、本基本計画の作成に当たって、これらの国の計画と調和が図られるよう十分努力していきたいというふうに考えております。
  81. 安住淳

    ○安住委員 わかりました。  それでは、もう一回自治省と国土庁に聞きますけれども、簡単に答えてください。  農村に関する国の施策の中心は、この基本法に基づいて今から農林省がやらせていただくということでいいんですね。自治省、それから国土庁。総合計画も全部、今のお話のベースでいったら、今までの農村という定義に当てはまるところでやるインフラ整備等は、これは農林省がやるということでいいんですね。そういう話になりますよ。
  82. 香山充弘

    ○香山政府委員 私どもの方の理解を申し述べさせていただきますけれども基本法というのは、あくまで農業とか農村のサイドから見た国の施策の方向、そういったものを定めるものでありますから、それを受けた基本計画も、あくまで農業、農村あるいは食料といった面から見た政府の総合的かつ計画的な施策の方向を定めるものだというふうに思っております。  このうち、例えば十五条との関係について申し上げますと、農村に関する部分は国土利用にかかわりを有することになりますので、同じように国が定める国土の総合的な利用、開発等にかかわる計画との調和を保ちつつ策定されるということになるわけでありまして、そのことが法律に書かれてあることも極めて当然のことだと我々は思っているわけであります。  国土利用に関するそういった計画も、また、この法律に出てまいります食料農業・農村基本計画も、これは国として定めるもの、言いかえますと、関係省庁との調整を経た上で定められるものでありますので、そのような策定過程を通じまして、自治省としては、地方団体の立場等も踏まえまして必要な意見を述べてまいるという考え方でございます。
  83. 安住淳

    ○安住委員 それでは、ちょっとこだわるようで申しわけないんだけれども局長さん、生活環境整備その他の福祉の向上を図る施策、これは、農村に関しては地方自治体じゃなくて農林省がやるということでいいんですね。
  84. 香山充弘

    ○香山政府委員 国としてやはりそれぞれ所管をいたしておりますが、例えば、環境ということになりますと環境庁がかかわってまいりますし、それぞれの分野で施策の調整を図りつつ、農村の問題に対しても関与していくということになるわけでありまして、この法律がゆえに、農林省だけが全部農村問題を抱えるということになるとは我々考えておりません。
  85. 小林勇造

    ○小林(勇)政府委員 私どもが所管しております全国総合開発計画におきましては、主として、広域的あるいは基幹的な施設整備等を通じて、国土の総合的な利用だとか開発だとか保全に関する計画としているわけでございまして、この新しい法律での基本計画と十分調和がとれるように、お互いに調整してつくるということが基本かと考えております。
  86. 安住淳

    ○安住委員 大臣に先ほどの答弁関係で伺いますけれども、それでは、ここで言う農村における環境整備、インフラ整備というのは、具体的に例として空港整備計画、土地改良計画等々、さっき答弁で挙げられたですよね。つまり、それではこういうふうに解釈するんですか。農業者に対して生活環境の保全のための施策を講じるということですか。今の大臣のお話を聞くと、そういうことになりますよ。
  87. 中川昭一

    中川国務大臣 国にはいろいろな整備計画がありますねと、そういう中で、空港整備計画とか漁港計画とか、いろいろなものがあるということを申し上げましたけれども、今回の基本計画の中で国が総合的にやるというのは、例えば、全総などが一番かかわり合いがあるのではないかというようなこと、あるいは土地基盤整備計画でありますとか、そういうものもありますねということを申し上げたわけでございます。  何が申し上げたかったかというと、全体の計画というものは、整合性を持って基本計画を国が関係省庁とよく調整しながらやっていきます、また、地方自治体ともいろいろと役割分担をし、協力をしながらやっていきますということであって、個々のところで、極端に言えば、先生のところの何とか町に対してこれをやりなさいということではなくて、こういう計画を全体としてつくりましょう、そのときにやるかやらないかについては先生の御地元の御判断でしょうということを申し上げたかったわけであります。
  88. 安住淳

    ○安住委員 私は、結論は後でずっと言いますけれども、この問題は実は行政改革や地方分権に非常にリンクをする話ですから細かく聞いているのであって、受益者である住民から見たら、どこでもいいから速やかにやってもらいたいと思っていると思いますよ。  そういう中で、私が少なくとも自治省や国土庁にきのうちょっといろいろお話を聞いたときに、少しわかりにくくて、所管がどこかというのがよくわからないところがかなりあったものですから、もう少しこの問題を取り上げて質問をします。  それでは、基本計画を定めることを十五条でうたっているわけですが、この中で言う農村に関する施策を総合的に策定するとなれば、やはり農村という地域を私は指定する必要があると思います。もし指定をしないというんだったらば、定義がないというのであれば、逆に、それでは農村というこの法案に当てはまらない地域はどういうところですか。
  89. 高木賢

    高木政府委員 端的に申し上げれば、都市ということでございます。
  90. 安住淳

    ○安住委員 都市ということは、官房長、例えば、都市近郊の農家の多い地域はどうですか。
  91. 高木賢

    高木政府委員 当然、先ほど申し上げた定義に基づきまして、農村に該当すると思います。
  92. 安住淳

    ○安住委員 そこで、それではこの都市という立場からまたこの問題を少しやらせていただきますが、三十六条の都市と農村の交流という定義があります。  私なりにまず解釈をしますから、意見を言っていただきたいんですが、この法案の条文では、都市と農村の交流というものをうたっているわけですが、二項で、「国は、都市及びその周辺における農業について、消費地に近い特性を生かし、」云々と書いてありますね。「農業生産の振興を図るために必要な施策を講ずる」、非常にこれはすっきりとした文面だと思います。  これはなぜかというと、都市の近くないし都市部において農業をなりわいとしている人に対して、その農業生産の振興を図るための施策を講じる、つまり、これは業に対して、営んでいる人に対してこの施策を講じるというのは、私は極めてすっきりしていると思うのです。  逆に、今私が言った法律案とこの五条の農村の振興をよく比較をして読むと、ここに一つの問題が浮かび上がってくると思うんですよ。つまり、農村の振興ではこういうことになるんじゃないですか。農村地域に住んでいる農業者の方に関しては、その業としている生産基盤の強化や、また、土地の集約を含めた農業としてのインフラ整備はやる、都市と同じようにやりますと。しかし、都市部の人に対しては、逆に言うと、生活環境整備や福祉の向上というのをすとんと外しているわけですよ。農村の農業者に対してはそこを入れている、こういうふうな解釈になるんじゃないでしょうか。
  93. 高木賢

    高木政府委員 順序立てて申し上げたいと存じます。  まず、三十四条で、農村の総合的な振興ということで、先ほど私が申し上げました農村の定義に当てはまる地域につきましては、全体として、いわば三十四条がこの第四節の農村の振興に関する施策の総則的地位になるわけでございます。そこでは、「農業の振興その他農村の総合的な振興に関する施策を計画的に推進する」というのが一項で、具体的に何をやるかということが、「地域の特性に応じた農業生産の基盤の整備」、これはまさに農業者のためになると思いますが、それにとどまらず、「交通、情報通信、衛生、教育、文化等の生活環境整備」ということで、農村は農業者だけで成り立っているわけでもございません。それからまた、農業者とその他の人が整然とどこかで区分されるということでなく、混然一体としてお住まいになっているという面もございますから、各種のインフラの整備に当たって効率的にやるためには、農業者部分と農業者部分以外というふうに分けるわけにもまいりません。総合的に推進する、こういうことでございます。  特にその中で、中山間地域の実態、大変厳しいものがありますから、特に三十五条で、中山間地域に対します振興施策というものをいわば特掲しているわけでございます。  それから、それとの対比で、では、都市部に近いところは何もしないのかということでございまして、それとの関連で、三十六条で都市及びその周辺における農業ということで、これは二項ですけれども、都市に近いところの農業あるいは農村というものにつきましては三十六条で規定している、こういう整理でございます。
  94. 安住淳

    ○安住委員 それはわかっているんです。  では、逆に聞きますけれども、都市ないし都市近郊に住んでいる農業者の生活の向上や生活基盤の整備環境の保全はだれがやるんですか。
  95. 高木賢

    高木政府委員 それは、端的に申し上げて、事柄によって違うと思います。先ほど三十四条の二項の例を申し上げましたが、交通ということであれば、これは道路ということになりますと建設省さんの仕事になると思います。それから、情報通信ということであれば郵政省さん、衛生であれば厚生省、教育は文部省、文化も文部省、こういうことになろうかと思います。もちろん、交通機関という意味では運輸省さんも入ってくるかと思いますし、それから、地域独自の対応ということになれば自治省さんの施策、こういうことになってくるというふうに考えております。
  96. 安住淳

    ○安住委員 自治省にお伺いしますけれども、やはり今のこの日本社会の中で、確かにこれは中央集権だと私は思いますし、それぞれの省庁が所管を持っているのはそれはしようがない、今の世の中ではしようがない。しかしこれは、地方分権をどんどん進めていこうといったときに、もしかすると、都市と農村というのを、さしたる定義もなく、ただ単に大ざっぱにどんと分けて、都市住民にはそういう役所がこう対応します、農村のことに関してはこういうことでやります、それは実は中央集権の思想に非常に根づいた発想なだけで、今の官房長答弁の中からも、地方自治体がそれぞれの地域で絵をかくことに対してサポートしていくという発想がどうも法律に直すと全くなくなってしまっている、私はそんなことを感じるのですけれども、自治省、いかがですか。
  97. 香山充弘

    ○香山政府委員 難しいお尋ねでございますけれども、私なりに先生の御質問をそしゃくしてお答えさせていただきますと、我々の理解では、この基本計画は農村にかかわる部分であり、いずれにしても、国としての基本方針、農政の目から見た総合的かつ計画的に講ずべき施策についてのみ定められておるものだというふうに考えておりまして、国として、農業のかなめ、農政のかなめに当たっておられる農水省がそのような基本方針等に基づいて計画をお定めになるということは、地方団体の自主性と矛盾するものとは我々は考えておりません。  我々が考えておりますのは、地方公共団体というのは、今度は地域の総合行政主体として、農村部、そこには農業をやっている人もそうでない人もあります。また、そこで行われる、営まれる産業は農業以外にも商業もあれば工業もあるわけでありまして、それぞれ所管の省庁がございますけれども、そういった所管の関係省庁と連携をとりながら、地域のレベルで行政を総合的に組み立てて、一体的、整合的に仕事を進めていく、しかも、地域の実情に即して進めていく、そのような形で国と地方役割分担がなされておるわけでありまして、そのような形で、この農業基本法あるいは基本計画も運用されるものというふうに理解をしておる次第でございます。
  98. 安住淳

    ○安住委員 平たく言うと、ちょっとわかりやすく、私は余り回転がよくないかもしれないのでよくわからないのだけれども、では、こういうことですか。  集落排水事業をやる、そのときに、例えば、地方自治体がどこの集落排水事業をやるかということを決めるというときに、主体は地方自治体ですか、農林水産省ですか。具体的な例でやりましょう。
  99. 中川昭一

    中川国務大臣 時々私は、集落排水をぜひやるべきだと地元で言うのですが、順番があって、まず町の中心地、といっても農村部ですけれども、そこからやりたいんだ、あと別のところの集落排水もやりたいから、順番が二番手、三番手だという話をよく聞きますので、やはりやる主体あるいは決定はそれぞれの市町村だろうというふうに考えております。
  100. 安住淳

    ○安住委員 これは構造改善局長にも伺いますけれども、私も実は、それは多分自治体がそれぞれの計画に基づいてやる話だと思うのですね。この基本法で言う整備というのは、つまりメニューを用意しますよということですか。私は、もっと踏み込んでいるような気がしてしようがないんですよ。
  101. 渡辺好明

    ○渡辺(好)政府委員 国全体としてまずどうするかということがございます。  農村地域であれば、生活排水の普及率は二一%ぐらいですから、国全体としておくれているインフラをどうするかということは国が決めなきゃいけません。そして、それについて、地方自治体がおやりになる、もう大部分が市町村ですけれども。それに対する実施をしていく上での支援ですね、補助、こういうものは国がやるということになると思います。分担関係は……(安住委員「主体は地方ということですか」と呼ぶ)地方自治体です。大臣からお答え申し上げましたけれども、現在も多分九九%が市町村営ですね、ごくまれに都道府県営もございますけれども
  102. 安住淳

    ○安住委員 私は、農村と都市という定義ではまっていくと、とてもこの法案がわかりにくくなるのではないかなと思うのです。逆に言うと、都市の、先ほど三十六条の第二項を自分なりに申し上げましたが、極めてすっきりしているのです。なぜかというと、農業をなりわいにした、その業に対してサポートをしていくというふうになっているからです。  ところが、面でとらえた農村ということをここまで柱として打ち出すということは、さしたる定義がないとおっしゃいましたが、やはり定義をもって農村というものをちゃんと位置づけて、それで、どこを対象地域として、そこに予算を配分して何をするのかを明示しないと私はおかしいと思うのですよ。だから細かく聞いているのですよ、大臣。わかっていると思いますけれども。  つまり、では、農村に住んでいる方は全部この基本法の枠の中に入るのか、それは対象になるのか、そういうところから始まるわけですよ。
  103. 中川昭一

    中川国務大臣 基本的には、食料農業・農村基本法ですから、この法律はすべての国民にかかわりのある法律ですが、先生が先ほどから集中的にお聞きになっている農村ということであれば、農業生産活動としての意味、それから多面的機能の発揮のための意味、そういう観点から、農村というものは我が国のすべての農村地域。定義は何かと言われれば、法律上定義はないわけでございますけれども、定義がある。  それから、三十六条の都市と農村とのお話でありますが、先ほどもちょっと答えがありましたけれども、都市及び都市周辺の農業というのは、農業活動あるいはまたそこでの多面的な機能、例えば教育的側面、景観、市民農園、いろいろあると思います。  そういう使命があると同時に、もう一つの大事なポイントであります生活基盤整備の方は、都市及び都市周辺の方は、先ほど構造改善局長が集落排水の例を挙げましたけれども、やはり一般的な農村に比べて都市の農業地域、都市農村という言葉はないのでしょうけれども、都市で農業をやっている人たちは、そういう生活基盤インフラについては特に非常に充実している。だからやらなくていいということじゃございませんけれども、少なくとも農村地域よりも充実をしている。  それからもう一つ、農村部で例えば集落排水事業をやるということは、何も農業者だけが利用するわけじゃなくて、その集落全体が利用できるわけでございますから、何も農村の農業者だけとかいうことではなくて、やはり面的にとらえる意味というものは大いに意義があるというふうに考えております。
  104. 安住淳

    ○安住委員 だからこそ、農業という業をなりわいとしたり、その人が住んでいる地域ということでやっているのでしょうけれども、それを広げていったら大臣、非DIDのことでさしたる根拠はないとおっしゃっているけれども、実際、本当に農村を地域で分けたらそういうふうにしかとれないのじゃないですか。いかがですか。  つまり、そこに全部にこの法案をかけていくとなると、これは実は逆に言えば、しょえないぐらい大きなものをしょってしまうことになるのじゃないですかという心配もしているのですよ。国土の九七%、人口でいうと四千三百万人近い人を対象にして農村の生活環境整備を、国といっても、主は農林省が引き受けますということですか、要するに。
  105. 中川昭一

    中川国務大臣 既に生活基盤整備が終わっている、あるいは現在やっている地域ももちろんあるわけでありますし、また全体として、集落排水とか道路の舗装率が都市部に比べてかなり低いという現実もありますから、それをやっていくわけでありますし、現に、それの計画的なものも農林省の中にもいろいろあるわけであります。また一方、予算面での制約もあるわけであります。したがって、そういうものを今回、基本計画の中でももう一度位置づけをする。  では、今まである計画とどう違うのかといえば、一つには、この基本計画というものは五年程度を一つの目安にして、そして中期的にきちっとやっていって、そして再評価も加えていくというような新しい手法の中でこの基本計画をつくっていくということも、行政手法の一つとして新しいやり方であるという中での、それぞれの農村の生活あるいは生産、インフラ整備という位置づけで御理解をいただきたいと思います。
  106. 安住淳

    ○安住委員 ですから、そういう答弁になるとまたひっかかってくるわけですよ。だって、今、道路などのインフラ整備と言ったでしょう、都市部に比べてこうだって。さっきそれは自治省の局長さんもおっしゃったけれども、それは地方自治体がやる話でしょう、大臣。この法が全部やるんですか。
  107. 中川昭一

    中川国務大臣 基本計画の中で農村のいろいろな整備をやるわけですが、広い意味のインフラといえば学校とか病院も入るのでしょうけれども、何も、そんなものも含めて全部農林省がやるなんということは毛頭考えておりません。例えば道路であれば市町村道がある、農業用の農免農道みたいなものも一部ございますけれども、何も、建設省や運輸省がやっているものを農林省が農村だからといって全部やるなんてことは毛頭考えておりません。  だから、十五条の四項の中で、政府の中でよく調整して、役割分担を決めて総合的に推進をしていきましょうということでございます。
  108. 安住淳

    ○安住委員 荒廃をしている農村地域といいますか、やはりおくれている。私もそういうところに住んでいる人間としては、都市住民に比べれば相当下水処理施設もおくれているわけで、整備はしないといけない、それはわかります。  しかし、地方の時代なんて言われて久しくて、これから地方分権をやるときに、地方とのかかわりでいうと、先ほども言ったように、この法案は前の基本法に比べて相協力してというところまで来ましたということですね、その前は違うのですから。  そういう意味での進歩といいますけれども、きのう佐伯東大名誉教授もお話ししていたのですけれども、多分この審議会のプロセスの中で、この法案ができる過程の中で、実は、国土庁は相当いろいろな意味でここの農村というものの定義や具体的に何をするかというのを、私が聞いている範囲では相当抵抗したと聞いているんですよ。法制局や自治省も農村ということに対して、ここまで、どういう定義をするかというのは政府部内で異論もいろいろあったというふうなことを私は少し聞いていました。それは事実かどうかわかりませんよ。  しかし、でき上がったこれを見たときに、やはりここまで書くのであれば、多分農村というのは、農業をなりわいにした、つまり、農業者からのサイドだけで今は本当にこの多面的機能を維持するのは、農業という業をなりわいとしても、過疎過密の問題を解決したり、農村が抱える特有の問題を解決するというのはなかなか大変だろうなと私は思うんですよ。  それぞれの地域に応じて農村の姿も全然違います。札幌郊外の新興住宅街の中にだあっと、そういう農村地帯もあれば、過疎地を抱えた中山間地もあって、さまざまなわけです。その中で、これからこの法案がもし仮に成立をして十五条の基本計画に踏み込んでいったときに、農村という定義をどういうエリアで、またその施策がどういう地域に当てはまって、どういう人を対象にするかということは、これは基本計画の中で書かなきゃいけませんね。それで、先ほどおっしゃったように、五年ごとにそれをまた見直さなきゃいけません。  であれば、この基本計画を策定するに当たって、私はやはり農村というものの定義、それからこの法案対象となり得るものに関しては、ある意味では都市部とを分けているわけですから、都市の政策については確かにおっしゃるとおりですよ、いろいろな省庁がまたがっていろいろやる。しかし農村、つまり集落排水でいえば、集落排水の対象となる地域がどこなのかということだけを明確にするためにも、これはガイドラインを、ここまでやる以上は設けるべきではないかと私は思います。いかがでございますか。
  109. 高木賢

    高木政府委員 農村に関する基本計画の中で農村施策を規定するとき、どの程度まで書くか、こういうことの問題になると思うのです。  まさに基本計画でありますから、基本的事項につきまして当然触れるわけですけれども、今私どもが検討しておりますレベルでは、中山間地域とか、そういう、条件不利で、特に手厚く施策を講ずる必要がある地域についての特記すべき、今直接支払いの検討もしておりますが、そういうものは、ある程度地域なりを画するということは出てまいるかと思いますけれども、個別の事業それぞれにつきまして、基本計画でそれぞれを明確にするということまでは今考えておりません。  ただ、これは何もそれをしないという意味で言っているのでなくて、集落排水であれば、どういう集落についてこれが対象になるかということは、それぞれの事業の実施の要綱なり要領なりで当然はっきりするわけでありまして、また、させなければいけないと思います。それぞれ個別の施策に応じて、それぞれ目的なり達成すべき目標なりが違ってくるかとも思います。それぞれの事業ごとに整理すべきものと思っております。
  110. 安住淳

    ○安住委員 私は個人的には、食料農業と農村という三つをくくったということに関しては、農村に関してはちょっと異質な感じがしているわけであり、また、多面的に、地方自治体や農村社会というふうなものはまさに国土開発であり、地方の主権にかかわる問題であるので、きょうはそういう質問を時間を割いてさせていただきました。  基本計画の中で、本当に農村というものをどういうふうに位置づけて、どこまでをやるつもりなのかということに関しては、私もまた詳しく質問をさせていただきたいと思いますし、十五条の四項にある「国土の総合的な利用、開発及び保全に関する国の計画との調和」、この調和というものを具体的にどういうところで図っていくのか。簡単に言えばほかの役所との調整ですよね。そこのところは、ちゃんとそのプロセスをやはりはっきりしてもらいたい。経過をきちっと情報公開してもらわないといけませんよ。  これは自治省にも申し上げておきますけれども地方自治体から見たら、逆に言えば、国がそういうことをやっているのを、何か地方自治体が知らない間に自分たちの地域の農村地帯の計画がつくられた、そういう話にはならないわけですからね。そのことだけをぜひ申し上げて、次の問題に進みたいと思います。  自治省と国土庁、これで結構でございます。御苦労さまでございました。  そこで、残された時間がちょっと少なくなりましたが、次に三十八条の問題について、残り五分ちょっとでございますが、質問をさせていただきます。  私は、これまでの審議の中で、農業団体の問題が余り触れられてこなかったのではないかと思います。しかし、三十八条でも触れられておりますように、特に農協、農業委員会農業共済、土地改良区等々、今、農業の中で、農業者で構成する団体の再編整備、ここにも書いてあります。効率的な再編整備というのは、本当に不可避ではないかと思います。しかし、現実にはなかなか進んでいませんね。農協の合併がしかり、農協の金融再編に備えた対応もおくれている。また、土地改良でいえば、土地改良も、これはそろそろ、私の地元なんかでいうと、整備をされてきた地域の土地改良区をどうするかということはいろいろ議論がある。個人的には、これはやはり行政機関の中に位置づけて、今後、例えばその土地改良区を町役場のどこかの課の一つにするぐらいの、行革というか、再編は不可避ではないかなと私は思っています。  そこで、時間がございませんから、この問題はまた別途時間を設けますが、農協、土地改良区、農業委員会、普及所もあるでしょう、なおかつ、そういう地域の中で、農業者を抱えている、こういう団体整備をどう図っていくのか。基本法でここまで書いているということは、具体的にお考えがあると思いますから、お聞かせを願いたいと思います。
  111. 竹中美晴

    ○竹中(美)政府委員 団体の再編整備関係でございますが、まず農協につきましては、ただいま一部お話もございましたが、事業機能の一層の強化と経営の効率化、合理化をこれから図っていくということを目的にいたしまして、単協レベルの広域合併、それから三段階組織の二段階化に取り組んでいるところでございます。  現在、広域合併につきましては、数にして、五百三十程度を目標にして合併を進めておりますが、最近時点では、六割強の実現度合いということになっております。また、組織二段につきましても、各事業ごとに全国連と県連の統合に向けた取り組みが進められておりまして、徐々に実現を見ているというところでございます。  その効果でありますが、そういうことを進めて、組織整備等に取り組んでまいりまして、農協系統全体で見ますと、例えば、人員で見ますと、平成六年度の三十五万二千人が、平成九年度では三十三万二千人に、二万人減少しておる。また、施設等で見ましても、例えば、平成九年度で、単年度で百五十八の支所等の統合がされているというようなことで、なかなか一気にとはまいりませんが、徐々に効果を上げてきておると考えております。  今後とも、組織整備を通じた事業経営の合理化、効率化を図っていきたいと考えております。  それから、農業委員会につきましても体制の見直しを図ることにしておりますし、選挙委員の定数等につきましても改善措置を講じているところでございます。  あと、土地改良区につきましては、構造改善局長からお答え申し上げます。
  112. 渡辺好明

    ○渡辺(好)政府委員 土地改良区、私的な財産の共同管理という側面と地域の資産と、この二つの側面がございます。御指摘がありましたように、非常に零細、小規模で、課題も抱えておりますので、今後はこれまで同様に、中期的展望に立って、活性化構想のもとで、まず統合整備を進めなければいけないと思っておりますが、とりわけ、新しい農政の方向に即しまして、統合整備の一層の促進とともに、施設管理に係る施策の強化、環境的な側面あるいはこれからの更新、管理という問題もございます。  それから同時に、農村地域に根差した公共団体として、地域住民から期待されている役割がございます。これは統計情報部がやったものですけれども、アンケート調査でも高い関心を示されておりますので、こうした観点から、この役割発揮をどうするかということにつきまして、土地改良制度の改正も視野に入れながら、今後、事業運営の基盤の強化を図りたいと考えております。
  113. 安住淳

    ○安住委員 もう時間でございますから、最後に、では大臣の方からお話をいただきます。  団体の効率的な再編整備というのを基本法で書くこと自体、本当はどうかなと私は思っているのですよ。しかし、もうそれくらい追い詰められていると思うのですね。今の話を聞いていると、では、順調にいっているかというと、農協なんか全くいっていないですよね。これはやはり思い切った再編整備計画案を、それぞれの団体に応じてきちっと、これは農林省、蛮勇を振るってやらないといけないのではないですか。私、そう思いますよ。  一つの提案としては、さっき言いましたけれども、例えば終わっている土地改良、その後のメンテナンスも必要だと文書では言っていますけれども、それは、例えばそれぞれの役場の農政課なり何かに、一つの土地改良課ですか、職員が非常に多い地域はこれは難しいかもしれないですけれども、最後はそういうのに統合していくとか、やはり何かやっていかなければ、これは地域の中では必要かもしれないけれども、再編整備は避けられないと私は思っております。  最後に、効率的な再編整備に対する方向性を大臣から伺って、私の質問を終わります。
  114. 中川昭一

    中川国務大臣 新しい食料農業・農村政策を進める上で、この三十八条の規定というものも大事だろうと考えております。  農協なんかは一時は三千近くあったものが、現時点で千七百幾つ、最終的には五百三十ぐらいまで二〇〇〇年までにやろうということであります。一方、これは極めて属地的といいましょうか、土地に根差した長い歴史のある集団でございますから、非常に合併、再編等もうまくいっているところと難航しているところと地域によってもいろいろあるようでございますが、やはりいわゆる農協関係組織の合理化ということも新しい時代に対応できるようにするために必要なことだと思いますので、条文に書いてあるように必要な施策を講じていきたいというふうに考えております。
  115. 安住淳

    ○安住委員 終わります。
  116. 穂積良行

    穂積委員長 午後二時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時二十分休憩      ————◇—————     午後二時七分開議
  117. 穂積良行

    穂積委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。宮地正介君。
  118. 宮地正介

    ○宮地委員 今までいろいろと新農業基本法について議論が活発に行われてまいりましたが、私は、きょう、重要なところにつきまして確認を含めながら大臣に御質問をさせていただきたい、こういうふうに考えております。  まず、この法案の第二条でございますが、この第二条の中にありますところの国内農業生産基本としてという、この中身の問題でございます。文字づらではなくて、中身でございます。この中身は、いわゆる自給率の向上ということと同義語、こうとらえていいのか、まずこの点について確認しておきたいと思います。
  119. 中川昭一

    中川国務大臣 カロリーベースの自給率四一%、低下し続けているという現状は、決して国内生産基本とした国民食料状態ではないというふうに私自身判断をしておりますので、国内生産基本としつつという言葉は、現在の自給率をできるだけ上げていきたいというふうに考えております。そういう意味でございます。
  120. 宮地正介

    ○宮地委員 大臣、これは大変大事な問題であります。大臣自給率の向上、こういう意味合いで国内生産基本として、こうとらえている。ということは、国内生産のまさに維持拡大、こういうふうにも読める、こういう理解でよろしいのですね。
  121. 中川昭一

    中川国務大臣 この法律のもとの案では、この部分が維持向上であって、それが国内生産基本としてという言葉に変わったわけでございますが、維持向上であれば横ばい、あるいはわずか〇・何ポイントでも維持向上という意味で、そういう意味で、より国内生産基本とするということによって、維持向上も含みますけれども、もっと強い意思の表現だというふうに御理解をいただきたいと思います。
  122. 宮地正介

    ○宮地委員 大変に前向きの御答弁だと私は理解をしております。  次に、第十五条の問題でございます。  この十五条の二項の二号に食料自給率の目標、これを今回明文化しているわけでございますが、食料自給率の目標については、昨日の中央公聴会におきましても既に、JA全中の原田会長は明確に五〇%、こういう具体的な数値目標を掲げて意見を陳述されました。原田会長の五〇%というのは、恐らくカロリーベースを言われたと思っております。また、先日の松江の地方公聴会において花本公述人が、穀物の自給率現状二八%を、二十年かけてもいいからこれを五〇%に引き上げるようにぜひ政府努力をしてもらいたい、こういうように、既に生産者代表の方は、自給率の数値目標を明らかにして意見陳述をされているわけであります。  このお二人の公述人のこうした具体的な目標を掲げての意見陳述に対し、それでは、政府としてはどのあたりの数値目標を置いてこの法案を提出されたのか、この点について大臣の忌憚のない、腹蔵のない御意見を伺っておきたいと思います。
  123. 中川昭一

    中川国務大臣 自給率を上げなければならないということは、食料安全保障という観点から、世界じゅうのほかの国々、特に先進諸国と比べても非常に低い、これはやはり我が国の独立国家としての安定的な国民生活を考えたときに異常ではないかということで、自給率を上げていかなければならないというふうに考えているわけでございます。  もちろん、高ければ高いにこしたことはございません。さらにはカロリーベース、それから今穀物ベースのお話がございましたが、先日当委員会大石委員だったと思いますけれども、野菜とかお茶とか花卉、花類はほとんど食べない部分が多いんでしょうけれども、そういうものも、カロリーベースでは低いかもしれないけれども重要ではないかというような御指摘もありましたし、一体自給率をどのぐらいにしていくかという作業というのは、極めて技術的な問題と、それから精神的といったらいいんでしょうか、国民的な理解、特に消費者あるいはまた流通関係あるいは教育現場、家庭等々の理解もなければなりませんし、そしてまた生産者サイドにおいては、消費者のニーズにこたえられるようなものでなければならないといういろいろなファクターがございます。  それから、現時点で結構大きな数字として存在しておりますのが、食べ残しあるいはむだの問題もあると思います。そしてまた、自給率向上にも役立ち、また健康面でも役立つのが、いわゆる日本型食生活の推進ということも重要なポイントだと思います。  しかし一方で、つくったから食べろとか、あるいは自給率を上げるためにこうこうこういうものは食べちゃだめ、こういうものは食べなさいとまさか法律で縛ることもできませんので、そういう国民のそれぞれの立場の皆さん方の御理解と御協力、そして共通認識を持った上で、品目ごとに、一体限られた国土の中でどういうものをどのぐらいつくればどのぐらい上がっていくのか、あるいは消費者皆さんの御理解をいただいて、日本型食生活、そして日本の中でとれるものをできるだけ食べていただくというような御理解、さらには食べ残し等の問題、日本型食生活の問題、いろいろな要素がございますので、高いにこしたことはございませんけれども実現不可能な数字をいきなりぽんと出すということも、これもまた結果的には意味のないことになってしまいます。  そういう意味で、できるだけ高い実現可能な数字を十五条に基づいて設定する予定でございますけれども、その作業は極めて、今申し上げたような技術的あるいは心理的、あるいはいろいろな要素がございますので、団体の代表の方からのお話がございましたが、現時点で具体的に何%ということを申し上げるだけの基礎的な作業はできていないというのが現状でございます。
  124. 宮地正介

    ○宮地委員 私は、政治家中川昭一農林水産大臣質問をしているわけです。  私は、今のお二人の意見陳述というのは、いみじくも大臣食料の安全保障という言葉を使われました。私も、食料の安全保障という立場から考えたら、国内生産基本としてフィフティー・フィフティー、やはり国内で五〇%の自給率を確保する、これは理解ができると思うんです。一般論的に見ても、やはり我が国国民が食べる食物がフィフティー、半分は国内生産、半分は海外からの輸入、いわゆるフィフティー・フィフティーの食料安全保障という立場、あるいは日本の稲作農家、水田農家を中心とした日本農業の実態、実情、こういうものを考えたら私は理解ができると思うのであります。私は、その程度の具体的な数値の積み重ねによって何%、こんなところを今大臣に聞こうとは思っておりません。それはこれから基本計画の中で積み上げ方式によって、それはいろいろと要素があるわけです。  しかし、我々政治家として、国民食料の安全保障を確保しながら、新しい二十一世紀のWTOという新たなるこうした国際化の進む中において、少なくとも我が国がフィフティー・フィフティーの、こうした状況下に政府努力目標としてしっかり掲げ、国民皆さんに理解と御協力をいただく、この姿勢があっても決して、政治家中川昭一農林水産大臣としておかしくない。ここは、お役人に余り気を使っているわけではないと思いますが、政治家として私宮地正介は、フィフティー・フィフティーぐらいは妥当な線であろう、この程度は理解できる、こういう判断をしています。大臣はいかがでしょう。
  125. 中川昭一

    中川国務大臣 政治家であることはもちろん自覚はしております。そして、国内生産基本であるということを条文に基づいて何回も申し上げております。そして、現時点が基本となっていないということですから、現在の四一%なり二八%なりという数字が余りにも低いということも何回か申し上げております。  大体どのぐらい、大ざっぱでもいいから政治家としてということでございますけれども、私からいえば、高ければ高いにこしたことはないということであります。それには、先ほど申し上げたことを繰り返すつもりはございませんけれども、いろいろな要素があるということで、私は農林水産省を預かる政治家でございますけれども、やはりこれは我が国として、こういう数字を一つ政府の目標として計画を策定するわけでございますから、ほかにも今検討中のことがたくさんございますけれども、かなり精緻な、技術的な面を必要とし、そして最終的には、私がそのデータに基づいて正式に役所として判断するときに、まさにその時点で、私が政府としての、あるいは農林水産省としての自給率というものを発表するときに、多分その段階で私の政治判断、政治家としての決断あるいは責任というものが最終的に出てくるんであろう、また出さなければいけないんであろうということでございます。  その作業が、今まさにこの委員会を通じて議論が深まっておるということは重々承知をしておりますが、今はそういう定性的なお話しかできないということは先生に対してもまことに申しわけないとは思いますけれども基本計画設定のときには、最終的に私の政治判断というものが数字の中に入ってくるであろう、また入れなければいけない、また、先生の御指摘も十分体して、最終的な私の判断というものも入ってくるであろうというふうに考えております。
  126. 宮地正介

    ○宮地委員 そこのところが、大臣の立場上、きょうのところは言えない、そういうことは私は理解できます。  しかし、生産者団体の有力なお二人が、数値まで挙げて必死の意見陳述をされたわけですね。それに対して、我々政治家としても、やはりそれにこたえて対応していくぐらいの度量というものは必要であろう。これをさらにきょうは詰めませんが。  そういう中で、例えばこの十五条の三項ですね。この三項が、いわゆる政府の責任転嫁じゃないか、こういう議論も大分この委員会でもされました。農業者消費者に責任を転嫁して、政府は、この自給率の目標は立てたけれども、果たしてどこまで責任を持ってこの目標に向けて努力をするんだ、この三項の解釈はそういう責任転嫁として解釈していいのか、私は大変これは疑問に思っております。この点について、大臣はここをどういうふうに読んでおられるのか、確認をしておきたいと思います。
  127. 中川昭一

    中川国務大臣 改めて申し上げますが、この法律を成立させていただいたならば、直ちにこの基本計画の作業に入っていかなければならないわけでございます。この場合、この基本計画というのは、十五条、「政府は、」で始まるわけでありまして、「政府は、」「定めなければならない。」という、これは政府の義務規定でございます。したがって、責任は政府にある。特に、農林省、農林水産大臣にあるというふうに言わざるを得ないわけでございます。  そして、三項の方で、いろいろな方の協力も必要ですよ、あるいは取り組むべき課題がありますよというふうに申し上げているのは、先ほどから申し上げておりますように、政府が、麦について何%、トータル何%という数字をつくったといたしましても、これはやはり、消費者生産者を含めたいろいろな立場の方々の、ごみ捨てというか食べ残し、ごみの問題も含めて、幾ら数字を掲げても、先ほど申し上げたように、これは罰則規定のある条文ではございませんので、みんなで頑張っていこうということが、国民食料安全保障上極めて大事だという共通認識のもとで、これをやっていかざるを得ないということでございます。  最終責任は政府にあるといたしましても、ぜひ、生産者消費者だけではなく、国民皆さん方のその共通の認識、これぐらいの自給率というものの設定をしたということに対して、個人がどのぐらい食べたから全体がどうなるかという問題ではございませんけれども国民全体がこういう認識のもとで、二条の国内生産基本に、あるいは日本型食生活、あるいは食べ残しをできるだけ少なくしようということがあって初めて実現可能な政府の目標だというふうに理解をしておりますので、国の責務ではありますけれども生産者団体、消費者団体、各団体あるいは自治体の御協力をいただかなければこの責任を果たすことができないという意味でございます。決して責任転嫁のための逃げ道条項ではないということを、ぜひ御理解をいただきたいと思います。
  128. 宮地正介

    ○宮地委員 責任転嫁ではない、これは協力をしてもらうための条項である、こういう大臣の発言であります。  そこで、この十五条の頭に「政府」とありますが、この「政府は、」という政府は決して農林水産省だけではない、これはもう内閣挙げて、こういうふうに私は読みたいのであります。まさに今大臣がお話しになりましたように、いわゆる生産だけのマターではない、消費のマターもある。一番大事なのは、やはり国民の食生活の変化という問題があるわけでございますから、文部省においての教育の問題もある、学校給食の問題もある、あるいは厚生省の食品衛生法との関係もある、消費の問題であれば、経済企画庁国民生活局との関係もある。当然、関係省庁にまたがっているわけですから、この「政府は、」というのは、私はまさに、内閣は、こう読みかえていいぐらいの重要な二文字である、こう理解をしておりますが、大臣もそのような理解と受け取ってよいか、確認しておきたいと思います。
  129. 中川昭一

    中川国務大臣 おっしゃるとおりでございまして、まさに政府基本計画をつくるわけでございますから、内閣挙げて取り組むべき問題だというふうに思います。  現に、この基本計画をつくる場合には、新しい食料農業・農村政策審議会を通さなければならないわけでございますし、その審議会の長は内閣総理大臣が命じるわけでございますし、また、関係各省の長は、大臣は、農林省だけではなくて、審議会はいつでも内閣の大臣に対して、今先生のお話をおかりすれば、経済企画庁長官、どうなっているんだとか、あるいはまた運輸大臣、どうなっているんだとか、自治大臣、どうなっているんだとかいうことを聞くこともできる、それに対して答えなければいけないということになっておりますので、この基本計画自体、まさに内閣一体としての作業だというふうに考えております。
  130. 宮地正介

    ○宮地委員 それなら、次に確認をしておきたいんですが、同じ十五条の六項においては、政府は、「基本計画を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。」こうなって、公表の規定になっているわけであります。  私は、閣議決定をした基本計画を速やかに国会に報告し、公表しなければならないと、国会に対する報告をなぜ入れなかったのか。これもまた、国会を少し軽視しているんではないかという批判も一面にあるわけであります。少なくとも、これだけの基本計画、現在検討されているのは五年の見直しですが、十年ぐらいのスパンの基本計画を立てる、こう言われている。私は、ここに国会報告ということを挿入して、まず閣議決定をしてそれを国会に報告し、国民に公表する、こういうような国会報告をなぜ入れなかったのか、まさにこれは国会軽視ではないか、こういう批判を受けてもやむを得ないと思います。この点について、大臣はどういうお考えをお持ちなのか。
  131. 中川昭一

    中川国務大臣 この法案をつくる、つまり御審議をいただく過程において、当然、当委員会を初め国会での御審議、そして成立をさせていただくということが我々の切なる希望であるわけでございます。  この基本法が成立した時点で基本計画を策定する。そして、この基本計画については、遅滞なくこれを公表しなければならないということでございます。当然、公表でございますから先生方のところにはすぐ情報をお伝えする、情報といいましょうか、この基本計画をお伝えするということにはなりますが、基本計画という計画自身を国会の承認あるいは報告事項にするということにつきましては、この法律に基づいて国が行政として行うものでございますから、最終的には国会に対して政府が責任を持つわけでございますけれども、この基本計画自体は行政の執行の基本計画として政府がやらせていただきたい。他の基本法の例を挙げるのもいかがかと思いますけれども、他の基本法でも国会への報告は必要とされていないということが通例でございます。  しかし、これは、一方では年次報告でもって、毎年やってきたもの、いわゆる農業白書的なものを新しくまたつくるわけでございますが、これを国会に報告を毎年やるという条文もございますし、また、五年に一度の再評価というシステムもございます。変更しなければならない場合には変更するということでございますので、決して国会を軽視するということではなく、いつの時点でも国会で御論議をいただきまして、そしてそれを尊重させていただくということで、基本計画の執行そのものは行政の作業として御理解をいただき、最終的には政府は議会に対して責任を持つということで御理解をいただきたいと思います。
  132. 宮地正介

    ○宮地委員 自給率の目標を設定して、大臣は、内閣を挙げて自給率の目標に向けて努力をされる。その自給率の目標を達成する、あるいは、これからの日本の二十一世紀の食料農業、農村の再生、活性化をする最も重要な具体的な施策とその計画を立てるわけです。それを立てた段階で、閣議で決定する。それを国会に報告するのは私は当然だと思う。  先ほど国会に報告とおっしゃったのは、それは白書ですよ、白書。これは当たり前のことです。この基本計画において、きちっと国会に報告をして、報告を受けた以上、国会も責任を負うのです。  私は、前々から、最初の段階で申し上げたように、この食料農業、農村の再生、改革という問題、あるいは食料自給率の目標の達成努力という問題は、これは、国会と内閣と国民が総力を挙げて、理解とまた御協力をいただきながら車の両輪のごとくやらなくては、本当の意味日本農政の再生、活性化はできませんよということは、最初に私は質問のとき申し上げたとおりです。であるならば、この六項の中に国会報告、当然これは入れてよかったのではなかろうか、こう私は思うわけでございます。  どうか白書と同じような取り扱いはやめてもらいたい。白書は白書として、当然、一年間、農林水産省がどういう政策をつくって努力して、国民がどういう成果を上げたかということ、これをいわゆる決算的に白書として国会に報告するのは当然のことなのです。それとこれはまた別問題。将来に向けての重要な施策を決定するわけですから。  私は、当然、この点については、内閣を挙げてきちっとやる以上、閣議で決定したらまず国会に報告し、国民に公表し、国会も内閣も国民も、全体が日本の新しい農政の夜明けの出発をしていくのだ、このぐらいの決意とまたこれからの方向というものを大臣が明確にすべきであろう、こう思いますが、再度この点について御確認をしておきたいと思います。
  133. 中川昭一

    中川国務大臣 まず、国会軽視では決してないということを重ねて申し上げさせていただきます。  その上で、若干横並び的な話で恐縮でございますが、先ほど申し上げましたように、基本計画というのは、法律に基づいて行政がつくり、そして閣議決定をして公表するということでございますので、ほかの基本計画と同じようなと言うとこれまた宮地先生に怒られそうでありまして、国民生活に極めて重要な、非常に大事な大事な基本計画ではございますけれども、そういう扱いにさせていただきたい。  しかし、これは、ここから先は私の想像で、出過ぎた発言になるかもしれませんけれども、公表と同時に、閣議決定と同時に、多分、当委員会等で十分な御議論もいただき、またそれを参考にしながら施策を推し進めさせていただきたいと思いますので、どうぞ御理解と御指導をよろしくお願いいたします。
  134. 宮地正介

    ○宮地委員 次に、いわゆる三十条は、WTO交渉を控えて、我が国も、いわゆる価格を決定するに当たっては市場原理を導入して、そしてこれからは価格政策をやっていきます、この表明と受け取ってよいのかどうか。  さらに、その場合に、いわゆる価格が暴落したり大変な事態になったときには、それに対しては政府が応分のフォローアップをいたしますよ、経営安定対策としてフォローアップをいたしますよ、これが第二項、こう理解してよいのか。  この点について、大臣の見解を確認しておきたいと思います。
  135. 中川昭一

    中川国務大臣 生産者消費者との、つくったものを売る、買うというものが、お互いの努力と自由意思のもとで成立する。これを市場原理という言葉だとするならば、それを導入していこうというのが三十条でございます。  そして、市場原理ということになりますと、需給動向あるいは自然条件、天候の問題等々、いろいろな条件で変動が予想される。高くなることもあれば、この場合には生産者は喜ぶでしょうし、低くなる方を関係者の皆さんは大変御心配されておるわけでございます。  低くなった場合の農家に対する影響、特に、専業的に大規模に意欲を持ってやろうとしている農家、つまり、条文で言いますと、育成すべき農家に対する影響がより大きいわけでございますので、これに対して品目ごと経営安定対策をとっていこうというのが三十条二項の趣旨でございます。米あるいは麦、麦はこれから御議論いただきますが、加工用の牛乳、それからまた、今後、大豆とかいろいろな主な作物につきまして経営安定対策をとっていきたいということでございます。  したがいまして、先生の御質問にお答えするならば、二点目の方にウエートがあるわけでございますが、これは決してWTOの交渉と無関係ではないわけでございまして、WTO交渉の中で我が国の立場というものをできるだけ有利にしていくためにも、この条項というものは全く無関係ではないとは思います。ただ、直接的には、先生の二番目の方のお考え方に合致している条項だというふうに考えております。
  136. 宮地正介

    ○宮地委員 そこで、大事なことは、大臣、この必要な施策を講じる、経営安定資金、こういうことですが、例えば、酪農においても補給金とか、稲作においても転作奨励金とか、いろいろ補助金的なものが、米についても麦についても酪農についても、そうした一つの既得権として今日まで相当な財源が捻出されてきたわけです。それが、やはり新たな国際化の中で新たなWTO交渉というものが始まってくる。いつまでもそういう国内的な措置をやっておくと、いろいろ国際的に非常に厳しい批判が起こり、環境が非常に悪化してくる。そういう中で、ここ数年の間に、そうした補給金の制度や補助金の制度が経営安定資金という名目の中で大きく変化をしてきている。しかし、中身については、今のところ財源的にもきちっと確保してきている、それが実態であろうと思うんです。  ですから、この必要な施策については、経営安定資金という名前ですが、今までの、酪農とか稲作とか麦とか、農家にフォローアップしてきたそういう補助金や補給金制度というものは経営安定資金に切りかえるけれども、その既得権的財源という問題は、これは当分の間はきちっと確保するんですよ、生産性の向上や近代化や合理化によっていろいろと経営が安定してくれば、徐々にソフトランディングしてまた新たな財源に向けていくんですよ、当面はきちっとした今までの既得権の財源は確保しますよ。こういうものが担保された上でのこの法文と私は読んでいるわけですが、ここは担保されているのかどうか、この点について可能な限りの答弁をしていただきたいと思います。
  137. 中川昭一

    中川国務大臣 経営安定対策、いろいろありますけれども、とにかく今までのやり方と違う、相手との自由なやりとりが原則であって、しかしその場合に、生産者等に影響を及ぼすときにはいわゆる経営安定対策をとるということでございます。今までの既得権はきちっと守るというと、私自身、若干別のことを思い浮かべてしまうわけでございますが、必要な措置は万全を期すという意味であります。  つまり、経営安定のために必要な資金が必要な場合、あるいはまた流通を合理化するために必要な施策なり資金が必要な場合、あるいは技術開発に、そしてまた技術の普及に必要な施策や資金が必要な場合等々、新たなニーズがまたこれによって出てくるわけでございますので、経営安定のための資金がそのまま同じように横滑りでいくということは性格としてはない、やはり、別の名目といいましょうか、別の制度に移行していくわけでございます。  ただ、先生が御指摘の御趣旨というのは、きちっと財源的にも、ただカットするということではなくて、必要な資金そして新たな資金の需要が生まれてきたことに対しては万全を期せという御質問の趣旨であるならば、今の段階でプラスともマイナスとも申し上げることはできませんけれども、これに限らず、今農政の大転換の中で必要な施策については万全の手当てが確保できるように、政策転換とセットでこのことはやっていかなければまさに施策の遂行になりませんので、予算面におきましても万全の対策をとるべく、省を挙げて努力をしていかなければならないと考えております。
  138. 宮地正介

    ○宮地委員 言わんとすることは大変理解できました。  そこで、この経営安定対策というのは、いわゆる三十条だけでなくて、十五条の三号、四号、こういうところでこれからの我が国農業政策についても基本計画なり施策を打ち出していくわけですから、私は、ここのところでも当然、この経営安定対策についての施策などについては十分検討すべきである、決して三十条に縛られる必要はない。大臣北海道などは私も何回か実態調査のために参りましたが、平たん地の稲作農家においても相当なハンディをしょって御苦労をされている農家もあるわけですね。  そういう農家に対して、やはり経営安定対策として今後いろいろと新しい施策を打ち出していかなきゃならぬ。そういう中で、三十条に縛られる必要はない。むしろ、十五条の三号なり四号の中で、五年に一回見直しをするわけですから、弾力的にここにおいても思い切った経営安定対策を打ち出すべきである、私はこう考えているわけでございますが、この点について、基本計画の中でこうした経営安定対策も十分に検討していく用意があるかどうか確認をさせていただきたいと思います。
  139. 中川昭一

    中川国務大臣 基本計画と財源との関係で申し上げますならば、十五条の基本計画の中で、三号、四号、つまり、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策があって、そして、食料農業、農村に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項を計画で定め、それを推進していかなければならないわけでございます。  そのときには当然財源的な問題というものも出てくるわけでございますから、先生指摘のとおり、むしろ十五条の二項三号でもって、例えば経営安定対策議論が三十条で出てくる、あるいはまた、中山間地域に対する議論を今していただいておりますが、直接支払いの財源の問題が三十五条の方に出てくるということで、この三号、四号からいろいろな施策が、枝葉といいましょうか、出ていって、その個別の施策が各条項の中にあって、それに必要な施策、財源が必要になってくる、こういう考え方で組み立てております。
  140. 宮地正介

    ○宮地委員 次に、三十五条の中山間地域等の振興の問題についてお伺いをしたいと思います。  この中山間地域の問題について検討会が中間取りまとめを行いました。この中間取りまとめの中に両論併記が大分出ている。これがこれから、次は六月の二十一日と予定しているようですが、七月中には最終報告を取りまとめる、こういう方向で議論されているようです。まず、この両論併記の取り扱い等についてどういうふうになっているのか、また、どういうところが両論併記として出てきているのか、この点について現状を報告していただきたいと思います。
  141. 渡辺好明

    ○渡辺(好)政府委員 今先生、両論併記という言葉をお使いになりましたけれども、具体的には、まだ詰めが足りなくてもう少し検討を深くするという事項と、それから、考え方が対立しているというところと二つございます。  そして、まだ詰めが足らないという点でいえば、対象とする地域について、振興立法五法地域対象とするということで大体合意が得られたわけですけれども、沖縄、奄美、小笠原といった、いわゆる特殊立法といいましょうか、特定立法といいましょうか、そういう地域について、まだ定住条件なり公益的機能の点でもう少し勉強が必要だということでございます。  それから、対象とする農地につきましては、畑も入れる、それから、育成された牧草地も入れるということでございますけれども、いわゆる採草放牧地の取り扱いについて、もう少し公益的機能、あるいは不利の格差がどうなるかという点を勉強しようではないかということになったわけでございます。  意見が対立しておりますのは、生産調整との関係でございまして、生産調整の政策とリンクすべきだという御意見と、いや、ニュートラルでいくべきだという御意見と、それから、ここはもう一つ、むしろ中山間地域生産調整の配分を小さくすべきだというふうな御議論もありまして、ここは対立をしているように私は感じております。  それから、もう一つ大きな点につきましては、財政負担の問題ということで、ここも、全額国費で見るべきだという御意見と、市町村は応分の負担をすべきだという御意見、さらには、応分の負担を市町村がしたとして、それについての地方財政措置等につきどうするかというふうなところが、大ざっぱに言いまして論点としてまだ詰めるべき事項として残っております。
  142. 宮地正介

    ○宮地委員 いわゆるデカップリング制度の導入の問題、EU型を非常に参考にされているようですが、私は、一つは、いかに国民の理解と合意を得られるような公平、公正な交付ができるかどうか、その交付のやり方、この問題。それから財源の問題、これが私は非常に重要なポイントであろう、こう見ていますが、今農林水産省としては、まずこの交付の仕方なり財源についてはどのような考え方で検討されているのか、現状で結構ですから報告していただきたい。
  143. 渡辺好明

    ○渡辺(好)政府委員 先生の御指摘がありましたとおりでありまして、農政史上初めて導入する制度でありますので、広く国民の合意と理解を得るという観点から、やはり、この検討会でも出ておりましたけれども、客観的かつ明確な基準でまずきちっとするということでございます。  それから、交付の仕方につきましても、これはWTO農業協定の緑の政策にする必要があるということもございますので、この仕組みに沿ってやるという方向で検討しております。  具体的には、農業者に対する交付というのが本筋になりますけれども日本のような農業事情を考えますと、実際には市町村が動かして、そして集落で協定をつくってやっていただきますので、集落での協定づくりに対して市町村が何らかの基準を示せないか、そしてその基準に従って集落で協定をした場合には、その協定に従って集落に対してこの支払いを行ってはどうか、これをもう少し検討すべきである、そういう御議論が出ておりました。農業協定上は農業者に対して交付するというふうに書いてありますので、県とか市町村というわけにはまいりませんが、集落に対して交付をする道をどうするかということで、議論をもう少し重ねたいと思っております。  それから、財源問題につきましては、これは当然のことながら、この検討会の中で単価が定まり、客観的かつ明確な基準によって対象面積が定まりますと財源の総額が出てまいりますので、その上で財源の確保に全力を挙げたいと考えております。
  144. 宮地正介

    ○宮地委員 きょうは、自治省と大蔵省も来ていただいていますので、私は、こうした新しい制度の導入に伴い財源を検討する場合に、当然農林水産省としては、農林水産省の今日までの予算の全体の中から何とか捻出をしようということで努力をされてはいると思います。また、これからも努力をしていく、そうした方向性は持っていると思います。自助努力によって財源を生み出す。  しかし、今回のこの食料農業、農村と、特にこの農村の地域振興、再生にこのデカップリング制度の導入というのが大変重要なポイントになっているわけですから、自治省は、地方交付税を全国の市町村に渡すときの算出のベースとなる根拠の中に、当然中山間地域の、いわゆる農村、林業、こうした地域の振興という問題について、今後このデカップリング制度の導入と見合った形で、新たな要素として地方交付税の中に検討することはできないか、この点についてまず自治省にお伺いしておきたいと思います。  また、きょうは大蔵省にも来ていただいていますが、寺澤主計局次長は既に中山間地域の視察等にも積極的に全国を歩かれた、こういう報告も私はいただいております。そうした体験の中から、大蔵省も、ただ財政的な論理の展開でなくして、この新規制度の導入について前向きに、やはり財源の確保について汗をかく、そういう決意があるかどうか、この点について、自治省、大蔵省から御説明をいただきたいと思います。
  145. 二橋正弘

    ○二橋政府委員 中山間地へのいわゆるデカップリングの問題につきましては、先ほど来委員お触れになっておりますように、昨年の十二月に策定されました農政改革大綱に基づきまして、現在、検討会を設置するなどして具体的な内容について検討がされている、そういう段階であると私ども承知いたしております。その中には、もちろん地方団体の関係者の方々も加わって検討されているというふうに承知いたしております。  自治省といたしましては、今後、この施策の具体化に当たりまして、地方団体の意見を十分に踏まえながら、施策目的や効果、それから何よりも地方団体の果たすべき役割、そういったことについて十分に関係省庁と協議をして対応考えていきたいというふうに考えておりまして、具体的な財政措置を今申し上げる段階ではございません。
  146. 寺澤辰麿

    ○寺澤説明員 お答えいたします。  直接支払いという新たな助成手法を今農林省において検討されているわけでございますが、昨年の九月に食料農業・農村基本問題調査会答申の中でも、こういった新たな助成手法を検討するに当たって、まず、既存のさまざまな農業政策上の助成との関係、また施策の費用対効果等を明確化していく必要があるというのが一つ、また中山間等における直接支払いを行うことについて国民の理解を得ることができる仕組みと運用のあり方について検討していく必要があるというふうに指摘をされております。  私も、そういう中山間の実態を調べるためにこれまで二回出張してまいりましたけれども先生の御質問の中でございましたが、一口に中山間といいましても、態様はさまざまでございまして、そういった極めて多様性のある中山間においてどういう仕組み、運用のあり方ができるかということについては、これからまず農水省においてじっくりと基本的な御検討をいただく必要があると考えております。また、農水省におきましては、この現在審議されております新たな基本法を踏まえまして、今後の目指すべき農政基本理念の明確化と政策の再構築が行われるものと承知しております。  財政当局といたしましては、農業関係予算につきましても、重点的、効率的な配分を図る必要があると考えているところでございます。  いずれにいたしましても、直接支払いにつきましては、予算要求の前提となります制度の内容等について農水省において検討が行われ、その結果が出る、またそれにより要求がなされるということを受けまして検討をしてまいりたいと考えております。
  147. 宮地正介

    ○宮地委員 特に、この中山間地域等の振興ということで、これは眼目は不利補正、不利な条件地域に対する補正、これが眼目であり、やはりWTOの緑の政策との相関関係考えながらと。  この不利補正の問題は、中山間地域のみならず、等ということが入っているわけですから、この等のところにもぜひ注目していただいて、この等のいわゆる不利補正についても十分に全国を総点検して進めていくべきである、私はこう思っておりますが、現段階で農水省としては、この等の不利補正はどういうような考え方で検討されているのか、確認をしておきたいと思います。
  148. 渡辺好明

    ○渡辺(好)政府委員 今、中山間地域等ということで、この新しい制度の適用範囲を大きいネットとして地域振興五法ということで申し上げました。  ただ、そういった線引きだけでは律し得ない部分があるわけでございます。先ほど申し上げました沖縄、奄美、小笠原の扱いもそうですし、例えば非常に条件が悪くて草しか生えない、しかも、草しか生えないその草のコストも非常に高くつくというふうなところもあるではないかという指摘がされております。さらには、厳密に線を引いたときに、その線を引いた右と左といいますか、隣同士で条件が似ているのに交付の対象にならないということがあっていいのだろうかというふうな、大きく言いますと、三つぐらいのジャンルがまだ検討すべき事項として残っておりまして、これを七月までの間に詰めたいと思っております。
  149. 宮地正介

    ○宮地委員 特に、この不利補正の場合、この法文によりますと、いわゆる地理的条件が悪く、こうなっているわけですが、この地理的条件のみなのか、その点についてはどういう考え方なんですか。
  150. 渡辺好明

    ○渡辺(好)政府委員 検討会での検討をするに際しましては、地理的、これは自然的と言ってもいいと思うのですが、自然的、社会的、経済的ということで、例えば、自然的、地理的条件としては、傾斜度もございますし、それ以外に、高齢化率が著しく高いとか耕作放棄率が高い、そういうところの取り扱いをどうするか、それから、それらに準ずる地域の扱いをどうするかというふうなことを念頭に置いて議論を進めております。
  151. 宮地正介

    ○宮地委員 ぜひその点を、これからも基本計画の中でいろいろ施策を打ち出していくと思いますので、十分に国民のニーズにこたえ得るような、そして公正な交付ができるように、特に大蔵省あるいは自治省、こういうところともよく連携をとりながら、本当に我が国のそうした不利的な補正が国民に理解と合意の得られるような方向で、さらに、日本のこれからの農業、農村の再生、活性化に生きた資金が使われるということであれば、思い切った抜本的な財源措置も、また方策もやっていただきたい、こういうふうに思うわけでございます。  そこで、もう一つ大事な問題は、きょうは大蔵省から主税局にも来ていただいておりますので、これから政府税調あるいは来年の税制改正の中でぜひいろいろ検討をしていただきたい。  それは、一つは、農地の相続税の見直しの問題。あるいは、最近、私の埼玉県などでは、林地、ここの相続税の問題で、大変残念ながら、廃棄物が捨てられて、ダイオキシンの大変な公害問題が出ました。全国で有名になりました所沢、三富地区というのは、まさに林の中に産廃業者が中小の炉をつくって、そしてダイオキシン公害をばらまき、御存じのような所沢ホウレンソウ事件が発覚するという大変な社会問題を露呈したわけであります。  それをいろいろと調べてまいりますと、どうもやはり林地の相続税の問題が大変に大きな根っこにある。御存じのように、農地については二十年間の猶予制度、こういうのがあるわけですが、林地についてはそういう制度もない。そのために、どうしても、相続のお金をつくる、そうしたところを手放さなきゃならない、特に最近はバブルが崩壊してなかなか土地の流動化が進まない、そういう中で、やむにやまれず売ってしまった先がとんでもない業者のところに渡ってしまい、それが結果的にダイオキシン公害を醸し出す、こういう社会問題になっているわけでございます。  私は、この林地の相続税の問題についても政府税調を初め大蔵省としても真剣に、十分に検討していただいて、来年の通常国会には税制改正の中に、この相続税問題についてもぜひ法改正案を提出してもらいたい、こういう感じをしているわけです。きょうは主税局長ではなくて審議官と伺っていますが、現状における状況と今後についての大蔵省主税局の決意を確認しておきたいと思います。
  152. 木村幸俊

    木村説明員 お答えいたします。  相続税の問題についてでございますけれども、まず最初に一言申し上げさせていただきたいのは、昭和六十三年の末に抜本改革というのが行われております。さらに、平成四年度、平成六年度と、大体この十年間ぐらい見まして都合三回にわたりまして大幅な減税を行ってきております。したがいまして、その結果といたしまして、相続税の負担そのものが相当程度緩和されてきている、ここをまず申し上げさせていただきたいと思います。  その上で、まず、農地に対する相続税について申し上げますと、農業を営んでいた被相続人から農地を取得した相続人が農地を引き続き農業の用に供していく場合、それに限りまして、相続した農地の価額のうち、農業投資価格、これはもう先生に改めて申し上げるまでもないと思いますが、恒久的に農業の用に供する農地として取引される場合において通常成立すると認められる価格、これを農業投資価格と言っているわけでございますが、それを超える部分に対応する相続税につきましては、その担保の提供を条件といたしまして納税を猶予しております。そして、原則として、その農業相続人が死亡した場合等に、猶予された相続税の納付を免除する、そういった相続税の納税猶予制度が設けられているところでございます。  問題は、今林地についても話がございましたが、今申し上げました農地についての相続税の納税猶予制度でございますが、これはまさに農地の所有と経営の不可分という、そういった農地法上の制約等を考慮いたしまして、農業政策上の観点から設けられた税法上極めて異例の措置でございます。  そういたしますと、このような事情にない、農地と同様の事情にない林地、そういったところについてまで相続税の納税の猶予の特例を拡大して認めるというのは、これは適当ではないのではないかと考えている次第でございます。
  153. 宮地正介

    ○宮地委員 大蔵省の事務方ですから、その程度の答弁しかできないと思います。これは政治的に、実際に実態を見た我々の声というものは、これから国会論議の中で私は検討していきたい、こういうふうに思います。  大臣、きょうは一時間でございましたが、この法案は大変私は重要な法案であると思います。この法案をもとに日本の新しい農政の憲法をつくり、新しい日本農業の再生と出発をしていく大事な法案だと思っております。  我々公明党・改革クラブとしては、現行の農業基本法を一歩前進させるための大変重要な法案である、こういうことで、百点満点にはいかないにしても、一歩前進の評価というとらえ方をしております。  どうか、これに魂を入れて、本当に日本農政の改革と前進につながる法律にしていきたい、こう思っておりますので、ぜひ大臣の理解とまた協力をお願い申し上げ、きょうは終わりたいと思います。ありがとうございました。
  154. 穂積良行

    穂積委員長 次に、藤田スミ君。
  155. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 今週に入りまして、月曜日に地方公聴会、昨日は中央公聴会が開かれました。私は、参考人質疑と違って、公聴会というのは非常にその意味も一層重いわけでありますし、ここで出された発言というものについては、今後この法案審議の中で十分政府考えも聞き、よりよきものとして本当に国民期待にこたえる食料農業・農村基本法というものをつくり上げていかなければいけないというふうに思っております。  ところで、私は、この前大臣農水省のアンケートをお示ししまして、そして、北海道の七割に近い農家が、先行き不透明だ、あるいはまた農産物価格が非常に安いという声を上げているということで大臣の見解を伺いましたけれども、いいところもあるというお答えでございました。  今回私は、地方公聴会札幌に参りましたし、また、昨日は中央公聴会にも北海道の代表が来られ、五人の皆さんから、生産者団体、消費者、そして北大の農学部長である教授の太田原先生からもお話を伺いましたけれども、そういう中で私は改めて大臣にお伺いをしたいわけです。  北海道農業というのは、国境措置とそして価格支持政策のもとで守られてきたと思います。そして、北海道国内で唯一現在の農業基本法が目指す大規模専業化を忠実に実行してきました。大臣のおっしゃるいわゆる育成すべき農業経営を実践し、創意工夫を凝らし、もちろん自信誇りも持って頑張ってこられた。いわば戦後農政の優等生であります。しかし生産者は、耕作面積こそ拡大したが、借金も膨れ上がって大変だ、今、国に誘われて二階に上がったらはしごが外されたような思いがする、こういう意見がございました。  私は、この点について大臣がどう受けとめられるか聞かせていただきたいんです。何ではしごが外されたような思いを持っているのかということを大臣はどういうふうに理解されているか聞かせてください。
  156. 中川昭一

    中川国務大臣 北海道は、御承知のとおりここ百年ぐらいの間に開拓が進み、もちろん先住民がいるわけでありますけれども、大変短い間に、特に戦後の五十数年の間に急速に農地としての開拓が飛躍的にふえたわけであります。  その間、私も小さいころ記憶がありますけれども、大変な大冷害があったりして豆が全滅したとか、あるいは平成五年のあの大凶作のときは、たしか北海道の作況指数は二十幾つだったか、一部、函館の周辺なんかは作況指数四なんという地域もあったわけでありまして、大変厳しい自然条件がある。さらには、国境措置で守られてきたとおっしゃいますけれども、例の十二品目のときには、牛肉あるいはでん粉等で非常に生産者皆さんは心配をされたわけでございます。  そういう中でありますけれども先生指摘のように、規模拡大が非常に進んだ、そして生産性も上がってきた、やはり日本農業を支えるのは北海道だと自負している農家もたくさんいるわけでございます。また、現状が厳しいといって本当に御苦労されておる農家もいらっしゃる。これはどこの地域でもそうでしょうけれども経営のいいところ、悪いところ、極端に言えば、自然相手のお仕事ですから、道一本を挟んで水はけ、風あるいは天候が違ってしまう。特に北海道の場合は広いわけですから、そういう地域であります。  そういう中で、例えば私が政治家になったころの牛乳の北海道生産見通しなんというのは、現実にはそれに対して一割以上も需要が少なくなってしまったとか、あるいは米も、いっぱいつくっても減反が今非常に高いとか、最近では、ふん尿の問題とかいろいろな問題を抱えていることも事実であります。  はしごを外したという御質問に対しては、期待を持たせて裏切ったという意味であるとするならば、これは、政府規模拡大、合理化を積極的に北海道であるがゆえに期待をし、そして政策誘導をしてきたことはもちろん事実でありますけれども、いかんせん、大消費地との間が遠いということの運賃コストの問題、あるいはまた、景気低迷で思ったように、特に牛乳なんというのはなかなか消費が伸びない。特に、夏暑いと牛乳が伸びる、暑くないと減る。何か牛乳がほかの飲料水のような扱いで需要動向が変化しておるという中で、新製品の飲み物が出てくると直接的に影響を受けてしまうというようなこともデータ的に我々は知っているわけでございます。そういうさまざまな要素もあります。一方また、政府需給見通しが必ずしも当たらなかったということも事実でございまして、そういう意味で、いろいろな要素が重なって、うまくいった部分とうまくいかなかった部分と両方あるのではないかと私は総括をしております。
  157. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 やはり、まともに大臣は見ようとしていらっしゃらない。本当に今はしごを外されたような思いがするというのは、これは、食糧法で米に市場原理が導入され、今それがさらに広げられようとしていること、それからまた、今度のこの農基法の中で一層そういう不安定さが拡大されてきたこと、そういうことからくる、まさに新基本法を前にして一層大きなそういうはしごを外された思いに駆られているというところをまともに見ないと、やはり、食料基地と呼ばれるこの北海道農業が本当に安心して取り組めるような内容のものになっていないんだというふうに私は言いたいわけであります。  それで、北海道の代表の皆さん消費者も含めて五人いらっしゃいましたが、全部共通しておっしゃったことは、自給率を向上させること、自給率向上の具体的な数値目標を示すこと、それから、国内農業生産の維持拡大を法案の中に明記するべきだという、この点を指摘されたことであります。私はここでそのことに対する大臣答弁を求めません。先ほどからの答弁を聞いていても、結局、私が最初に質問をしたときとちっとも変わっていないわけでありますから。しかし、それはもう許されないぞというふうに思います。  もう一つは、市場原理にゆだね、影響緩和のための経営安定対策ではもう北海道農業はやっていけなくなるよという発言が非常にございました。  そもそも、基本法の改正というのはWTOの批准にあるわけです。批准したその国の責任というものが今求められているわけであります。EUでは、そこがあるから国の責任で所得補償を行ってきたわけでありまして、私は、政府がそういう立場に立って政策を進めるべきだ、この基本法もそういう立場に立つべきだというふうに思います。  特に、稲作経営安定対策所得補償にならないんだ、価格の下落が続けば農家の手取りがもうずうっと落ち込んでいく、徐々に減っていく、そして生産コストを割り込んでいく、コスト基準を補償しないと農家経営は成り立たない、所得確保が大事というけれども、しかし、その所得確保である稲作経営安定対策というのはそうなっていないという、これもまた非常に厳しい指摘でありました。  同時に、予算の関係では、もう農業の予算構造をEUのように、生産している人たちの所得価格維持対策の方にもっと大きく比重をかけた構造に見直しをするべきだという、この意見もまた私は非常に重いものとして承ったわけであります。  結局、こうした公述人の皆さんの発言ということを通して、本基本法案農業者消費者の要求、意見が反映されていないということになるじゃありませんか。  私は、この二十一世紀の食料農業を決めていく基本法というならば、国民的合意という立場に立っても、率直に、まず、日本食料自給率の中で二六%を賄っているあの北海道の人たちの声というものを重く受けとめ、また同時に、それにつながる全国の皆さんの声というものを受けとめて、そして検討し、見直しを行うべきだというふうに考えますが、大臣の御意見を承っておきたいと思います。
  158. 中川昭一

    中川国務大臣 先生前回に引き続いて北海道農業のことを大変心配していただくのはありがたいことであって、これはもう本当に感謝を申し上げます。  と同時に、新しい基本法は、日本全体の食料あるいは農業、農村の中長期にわたっての方向性を示し、そして目標を設定して実現していこうということでございますから、北海道のことも私自身大変気になるところでございますけれども、例えば、全国の四割を占める中山間地域のことも大事なポイントであろうし、また、北海道以外の育成すべき農家をどうしていったらいいのかというようなこと、そしてまた、消費者というものも今回の法律の中では非常に大きなウエートを占める存在になってくるわけでございますから、そういうこと等々、新たな視点からの食料農業・農村基本法というものを今御審議いただいておるわけであります。  北海道のことは私自身の問題でもございますので気にしておるところでございますけれども、今の立場としては、全国の生産者、農村地域、そして国民食料安定供給というものに最善を尽くすべき法案を御審議いただいているというふうに考えております。
  159. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 北海道のことを心配するのは、まさに皆さん政策を最も忠実に実践してきた北海道だから、その現状がこうだから、そのことが日本の将来を占うから、そしてそれはそのまま国民食料につながっているから申し上げているわけであります。私は、中山間を軽視しているわけじゃありません。  同時に、消費者もまた生産者所得補償ということをきっぱりと求められたということを重ねて申し上げて、次の質問に参ります。  私は、まず二十六条の問題から入りたいと思いますが、女性の問題が基本法に盛り込まれることは、これはもう全く異議のないことであります。それを本当に実効あるものにしていくために、そういう立場から質問をしたいと思います。  まず、大臣確認をしておきたいと思いますが、私は、女性の農業従事者に対する労働報酬は女性の地位向上に欠かせない課題だというふうに考えております。これは常識の問題でありますが、大臣もまた同じ意見だと思います。簡単で結構です、同じかどうかぐらいで結構です。
  160. 中川昭一

    中川国務大臣 先日、私、フランスへ行って、北海道の一・五倍ぐらいの農家、条件不利地域農家を見てきました。そこは畜産と畑作をやっている条件不利地域ですが、御主人一人で全部やって奥さんは全然仕事をしない、農作業をやらない。美容院の仕事をやっているという話を聞いて、大変びっくりいたしました。  しかし、日本農業というのは、もう半分以上が女性の労働力に依存をしているというのが現状であるわけで、何でこんなに違うのかなと実は随分悩んでいるわけでございます。とにかく日本の現実がそうである以上は、日本の女性の労働力というものに頼っている部分が非常に多い。そして、それに見合う待遇なり地位なりが社会あるいは家庭の中で与えられていないという現状も、私は残念なことだろうというふうに認識しています。
  161. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 珍しく意見は一致しているわけですが、総理府にお願いをしておりますが、ことし四月の男女共同参画白書では農村女性の地位についてどういう結果を示されているかということを簡潔にお答えいただきたいと思います。
  162. 名取はにわ

    ○名取説明員 「男女共同参画の現状施策」、いわゆる男女共同参画白書についての御質問でございますが、ここの中におきまして、農業に専従する女性の実際の農業経営へのかかわり方の意識に関する調査というものを出しております。  それによりますと、農業経営の全体を取り仕切っている、特定の部門の経営を取り仕切っている及び夫や親等と一緒に農業経営の全体に参画していると回答した者を合わせた割合が八五・三%となっており、女性は農業経営にかなりの程度参画しているという意識を持っております。  しかしながら、我が国農業、林業及び漁業に就業している女性の従業上の地位の構成を見ますと、自営業者は一八・四%を占めるにすぎず、男性の七四・六%と比較すると低くなっております。また、家族従業者の割合が女性では七〇・九%と最も高くなっており、男性の一一・九%と比較すると大きな差がございます。  白書には無給の家族労働者としておりますが、これはILOの統計によります従業上の地位の区分であります。白書にも記述しておりますとおり、我が国におきましてはこの無給の家族従業者に総務庁の労働力調査の従業上の地位の区分である家族従業者を対応させておりますが、この家族従業者には定期的に報酬を受けている家族従業者も含まれております。
  163. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 大変丁寧過ぎて、簡潔に言えば、この七〇・九%の家族従事者、この人たちは無給、新聞報道ではそういう見出しになっていますが、それでいいんですね。
  164. 名取はにわ

    ○名取説明員 失礼しました。無給の家族従業者というのは、あくまでも国際比較上の、ILOがそのように使っておりますので、無給だけではありません。定期的に報酬を受ける家族従業者も含まれております。
  165. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 そうすると、そういう数字というのはきちんと調査されているんですか。これは新聞の記事と随分違いますから、話がややこしくて仕方ないんですよ。  結局、実態は、この七〇・九%は無給の家族従事者ということで認識されているわけです、報道では。それでいいんでしょう。それは事実の問題ですからね。全体はいいんですよ。
  166. 名取はにわ

    ○名取説明員 違います。
  167. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 よくわからないな。  そうすると、逆に聞きましょう。七〇・九%の中で、この人たちは、そうしたら全部家族従事者として報酬を受けているんですか。何%受けているんですか。
  168. 名取はにわ

    ○名取説明員 有給、無給を含みましての家族従業者ということで、その中で無給の割合がどのくらいかということは、わかりません。
  169. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 だから結局は、この家族従事者の報酬というのは、それは、一部には一定額を受け取っている人たちがいるかもしれない。しかし、少なくとも使用者及び自営業者あるいは雇用者のようにきちんとした報酬は与えられていない。そういうことについてきめ細かく調査もしていないけれども、全部とは言わない、しかし大半はそういう実態になっているということじゃありませんか。
  170. 名取はにわ

    ○名取説明員 先ほど申しましたように、その割合はわかりません。
  171. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 あなた、非常に無責任ですよ。本当に農家の家族従事者の立場に立って、もう少し素直におっしゃってくださいよ。  農業新聞やなんかは、ちゃんとこういう見出しをつけているのです。「日本はまだまだ発展途上国」、それから、「貢献の割に地位低すぎる」、「低い農業女性の地位」、こういうふうに書かれているわけであります。  もうこれ以上質問しませんから、どうぞお帰りください。ありがとうございました。  いずれにしても、大臣、これは実態をもっと細かく調査するべきであります。少なくとも実態は本当に、農業に従事している女性、それはただ働きになっているわけです。私は、七割なんて限定的に、この七〇・九%の人たちが全部そうだとは言いませんけれども、しかし、わからないとおっしゃったように、この人たちはきちんとしたそういう報酬を受けている立場にはないわけであります。しかも、大臣もお認めになったように、農林水産業の従事者に占める女性の割合というのは四五・九%、とりわけ農業分野で見ると六割、それが日本農業を支える大きな力になっている。日本農業を支えているのは女性だというふうに言っても言い過ぎではない状態であります。  ところが、調査もしていないし、それから実態はこういうふうに非常に低い、開発途上国並みだと言われることについて、大臣はどう思われますか。
  172. 中川昭一

    中川国務大臣 女性が半分以上の農業労働をやり、しかも家事、育児等々も女性が中心であろうと思います。したがって、女性が本当に頑張っているなということと、後で質問がおありかもしれませんが、集落社会の中できちっとしたそれに見合う役割というものがあるかどうかということについては、私自身も先生基本的には同じ考えだと思います。  なお、調査をしていないのはけしからぬということでございますが、きちっと調査をしておりますので、簡単に農産園芸局長の方から答弁をさせてください。
  173. 樋口久俊

    ○樋口政府委員 農林水産省が、経営における女性の位置づけを把握するという目的で、これは若干古うございますが、農業に専従しておられる女性の方二千五百人を抽出いたしまして、アンケート調査を平成七年の十二月に実施をしておるのです。  これによりますと、農業に専従される女性の七二・六%は何らかの形で、報酬あるいは給与ということで本人が自由に使えるお金を受け取っておられるということになっております。ただ、このアンケート調査の中を若干分析しますと、毎月決まった額を受け取っておられる方は一六・二%ということでございまして、経営内での位置づけや報酬等の面で正当な評価が行われているかということについては、先ほどお話があったとおりでございます。
  174. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 やはり、裏返したら、八三・五%がそういうふうになっていないということじゃありませんか。しかも、これは専従している二千五百人ですから、とり方の問題なんです。  私はこの間、農家のお母さんたちと懇談をいたしました。私は、この新聞の記事に非常に驚きを持ち、特に日本共産党は四人も女性議員が農水担当をしておりますので、大変責任も感じまして、一体、どうして農業に従事しながらそういう報酬をきちんと受けることができないの、家の中でそういうふうになっていないのということで懇談をいたしました。そして、私は本当にそのとおりだと思ったのは、そこに参加したお母さんたちは、女性の地位の低さというのは日本農業の地位をそのまま示しているんだと。本当に本質をついた発言だなというふうに思ったのです。つまり、女性の経済的な問題、それは農業経営の厳しさの反映だというわけであります。今の農業経営のもとでは生産費すら取れない状態なのに、自分の取り分をよこせということはとても言えない、そういうことであります。  私は、農水省が、女性の経済的な地位向上のために家族経営協定を結んで、家族内の役割分担だとか収益の配分、作業時間や休日などを明確にしようと指導しているということについてはよく知っています。そして、女性の経済的役割を正当に評価しようと努めていらっしゃることも私は評価をしています。しかし、にもかかわらず、このただ働きという問題、それはどこから来ているかということを考えるときに、やはり農家経営の不安定さ、厳しさから来ているというふうに私は受けとめざるを得ないわけであります。しかも、この新しい基本法案によれば、価格政策市場原理を導入し、経営は一層不安定になっていく。下がったときには影響緩和措置だといっても、さっきも言いましたように、しょせん差額の八割程度で、だんだんに収入が落ちていく、そういう心配もある。  だから、今後どれだけ本当に収入が保障されるのかわからないという不安定な状態の中では、せっかく皆さんが家族協定というものを提起して、それを広げようとしても、たとえ結んでも、絵にかいたもちのような話になってしまう、そこがキーポイントじゃないか。  だから、本当に女性の経済的地位を向上していくためにも、農家のお母さんたちがずばり答えたように、女性の地位の低さは、日本農業の地位をそのまま反映、農家経営の厳しさをそのまま反映し、かつ女性にしわ寄せされた姿なんだという認識をしっかり持つことが大事なんじゃないでしょうか。
  175. 中川昭一

    中川国務大臣 私自身が実際に私の地元の農業者の御婦人たちと懇談をしたことがありますが、一番びっくりしたのは、自分のところの農家経営のことを、ひょっとしたら御主人よりも非常によく把握されておる。そのことに私は非常にいい意味の驚きを感じたわけであります。  したがって、そこにもいい経営の人もいれば苦しい経営の人もいましたけれども、そういう意味でも、私は農村社会は、男性と同じように、あるいはひょっとしたらそれ以上に農業分野に限って言えば女性という存在が大きいなというふうに思い、今から十年ほど前に農林省に婦人・生活課という課をつくらせたことがございますけれども、やはり女性の役割の大きさ、そして報酬だけではなくて、一般的に、お母さんあるいはお嫁さん御苦労さまという感謝の気持ちや行動も含めて、広い意味で農村社会における女性の働きのすばらしさに対して、いろいろな面で、報いるといいましょうか、それにふさわしいものをみんなで差し上げていかなければならないのかなというふうに感じております。
  176. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 おっしゃるとおりなんですよ。だからこそ、本当に農産物価格なんかも、市場原理に丸投げしてしまうんじゃなしに、やはり価格所得対策というものを重視して、農家経営を安定させていく、そこのところがしっかりとした農政にならない限り、自分の家の経営がどうなっているかということを実はお母さんたちが一番よく計算して知っているだけに、とても取り分をとれない、そういう思いになって、この問題がなかなか前へ解決していくことにならないということを私は再度申し上げておきたいというふうに思います。  そこで、私は大臣に、これだけはひとつ力をかしてほしいんです。  それは、懇談いたしましたら、税制上も、自家労賃の控除が認められていないんだ、このお母さんたちは一生懸命農業を支えているのに、それが全く扶養家族という扱いにされている。この問題はもう大蔵委員会あたりはずっと議論されていて、政府一つの理屈を持っているということを私はよく知っています。しかし、税制上でも農家経営に寄与していないという扱いというのは、大臣が先ほどからおっしゃったような認識とも合わないわけであります。  私、また北海道かとおっしゃるでしょうが、北海道にジャガイモがとれているときに行きました。広大な農地でお父さんが一生懸命トラクターを動かしていっているその後を、お母ちゃんが一生懸命ジャガイモを拾ったり、何かそういう細々としたことをやっているんです。腰が痛くありませんかと本当に思います。それから、ジャガイモを持って帰って袋に詰めたりなんか、そのほか関係することをいっぱいやって、そして家の台所もし、子育てもし、これは本当に大変だというふうに思ったわけでありますけれども、そういう労働が制度の上でも全く評価されていないというのはあんまりだというふうに思います。  自家労賃の控除を認めるということは、その労働をきちんと認めるということになるわけであります。これはもちろん農水省が決める話じゃない。大臣にここで、やりますとか、やらないとかいうことを求めるわけじゃありませんが、しかし、基本法で女性の農業経営における役割を適正に評価するというなら、せめて税制上の問題について、大臣の責任で関係省庁に問題を提起して、この問題を解決する先頭に立っていただきたい。お約束していただけないでしょうか。
  177. 樋口久俊

    ○樋口政府委員 税制面での扱いについて御質問ございましたが、お尋ねの税制の控除に関しましては、農業のお話でございますが、自営業一般に共通する問題がございまして、そういう扱いで考えられるべきものじゃなかろうかと思っております。  御承知のように、青色申告については専従者控除がございますし、白色申告でも一定の配偶者控除がございますので、そういう中で考えていかないといけないのではないかと思っておるところでございます。
  178. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 だから、わかっているけれども大臣に、そこを一肌脱ぐように、大蔵に対しても、閣議の場でもひとつこれは問題提起をし、そして農家の女性の労働が税制上正当に評価されるように持っていってほしい、そういう働きをしてほしいということを大臣にお願いをしているんです。私は、自営業者のことをみんな知っているんです。
  179. 中川昭一

    中川国務大臣 とにかく農村社会、特に農業経営者、家族経営の中で女性の占める割合が極めて重要であり、また、一番早く起きて一番遅くまで起きているというような統計もどこかで前に見たことがありますけれども、大変御苦労されている農家の御婦人に対して、農林水産省としても、また私個人といたしましても、また政府全体といたしましても、新しい食料農業・農村基本法のスタートを契機として、何が具体的にできるのか、あるいは何をやれば女性の皆さんの労働が少なくなり、あるいは喜んでいただけるのかを総合的に今省内で検討させているところでございます。
  180. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 それでは、その中身、税制上の扱いの問題についても検討の課題に入れていただく、そういうことでよろしゅうございますか。
  181. 中川昭一

    中川国務大臣 その検討は何をするかということは、まだ私が命じた直後でございまして、総合的に検討しろということを命じたわけでございますので、税制上のことについて検討するかどうかも検討したいと思います。
  182. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 ぜひ大臣に命じていただきたい。壁はそんなに薄くはないと思います。その上で、あえて大臣そのものの働き、それを聞いているんです。
  183. 中川昭一

    中川国務大臣 先ほど、先生御自身もお話ありましたように、これは税務当局という相手のあることでもありますし、また実態調査もいろいろありますけれども、広い意味で検討を命じておりますので、その中には、これに限らず、税制一般についてもやはり検討していかなければいけない項目の一つだろうと思っています。
  184. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 大臣、これぐらいはやはりもっとあっさりと、ひとつ一肌脱ぎましょう、そういう政治家としての、男っぷりのいいところを見せてくださいよ。
  185. 中川昭一

    中川国務大臣 この前、中山間の直接支払いのところで、検討会に、先生だったか中林先生でしたか、いい御提案があったので、検討するというふうに言いましたところが、早速取り上げてくれてありがとうと言われました。検討はいたさせます。取り上げることはまた別問題でございますが、検討は広い検討の中でやらせていただきたいというふうにお答えをいたします。
  186. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 私はここで、ありがとうと申し上げていいんですね。家族報酬の問題については、税制上の問題で、せめて、農家経営に寄与しているんだ、自家労賃控除として認めるんだ、そういう方向を切り開くようにぜひ検討課題に加えていただけますように、もう一度重ねて、これは本当に農家の切実な願いでありますので、ぜひ検討課題に加え、大臣も働いていただきたいということを私は念を押しておきたいというふうに思います。そして、私は、大臣の検討するというお言葉を今回は素直に受けとめましょう。  次に、家族経営の問題についてお伺いいたします。  改めて聞きますが、二十二条、「国は、専ら農業を営む者その他経営意欲のある農業者創意工夫を生かした農業経営を展開できるようにすることが重要」というふうに、農業者を非常に限定的に書いてあるわけであります。  私は、実際のところ、農業の実態を無視した話だというふうには思いますが、統計上の専業とか兼業の区分にかかわらず、農業者はみんな、国民食料生産し、しかも、なるべく安全な食料を提供しようというふうに考えているんじゃありませんか。そのためには、自然条件だとか歴史的、社会的条件を生かして大いに創意工夫を生かした農業経営をしなければ、経営そのものも成り立たないわけでありますから、どうしてこんなに農業者を限定するのか。  一体、専ら農業を営む者その他経営意欲のある農業者というのは、どういう農業者を指しているんでしょうか。その基準を示してください。
  187. 渡辺好明

    ○渡辺(好)政府委員 条文の頭のところを引用されましたけれども、まず、専ら農業を営む者とは、農業を職業として、それで生計を立てている農業者のことでございます。したがって、ここは農業者と、者に注目をしております。  今御指摘があった専業、兼業という農家の単位におろしてみますと、専業農家は当然のことながらこの概念の中にも入ります。それから、家族員の中にほかの産業に従事している方がいらっしゃるために兼業農家という分類にたまたまなっておりましても、専ら農業を営む方がいれば、その者が経営する農業経営を支援していくという考え方を示したものでございます。したがって、かなり広い概念であるということでございます。  このように、二十二条の専ら農業を営む者その他経営意欲のある農業者とは、人に着目をした概念でありまして、規模拡大、資本装備の近代化など、経営改善をしていこうという意思を有する者のことでありまして、既に農業経営に生計を大きく依存している者以外にも、これから就農して農業経営で生計を立てていこうとする意思を明確にしている方も含まれます。判断のメルクマールは意思というふうにおとりいただいてよろしいと思います。
  188. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 大変抽象的ですね。そうすると、具体的なそういう基準というものはないわけですね。
  189. 渡辺好明

    ○渡辺(好)政府委員 ここは、基本法でございますので、極めて基本的な考え方を概念として整理をしたものでございます。  したがって、例えばこれを具体的におろしていく過程で、いろいろなやり方が私はあろうかと思います。一番端的に示されておりますのは、認定農業者のようにみずからの改善計画を立てるというのは、これは当然そういうのに含まれますけれども、それにとどまらず、この二十二条に言っております、農業経営で生計を立てていこうとする意思を明確にしている者というところまで範疇に入ります。新規就農も入るということでございます。
  190. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 農家戸数の八三%は兼業であります。専ら営む者という以外は創意工夫を生かした農業経営をしていないということなんでしょうか、そういう施策から外すということなんでしょうか。そして、それはそのまま切り捨てということになっていくんじゃないかというふうに思うんです。  本法案基本理念の中には、家族経営という言葉がなかなか出てきません。私は、昨日も中央公聴会で、家族経営ということについての公述人の意見を随分求めましたけれども、家族経営について、やはりこれは非常に日本農業基本になるものだという的確な御答弁を多くいただきました。  この二十二条で、結局、「経営管理の合理化その他の経営の発展及びその円滑な継承に資する条件を整備し、」ここで家族経営が出てくるわけですが、「家族農業経営の活性化を図るとともに、農業経営の法人化を推進する」、こういうことで、結局家族経営に物すごいぎょうさん何や条件が頭からかぶせられていて、足元の方はすうっと、農業経営の法人化の推進と並列した扱いになっているというふうに思うんです。  改めてお聞きしますが、今の日本では九割が家族経営であります。これを基本にしてこそ本当に日本農業の発展というものがあるんじゃないでしょうか。その点で、日本農業における家族経営役割について、大臣の御見解をお伺いしたいわけです。
  191. 中川昭一

    中川国務大臣 日本農業のほとんどが家族経営であり、これからもその存在というのは、ますますといいましょうか重要であることは言うまでもありません。  しかし、家族経営の中でも、やはり意欲を持って新しいものに取り組んでいく、あるいは規模拡大を目指していくといったような、法文上いろいろな書き方、育成すべき農家とか意欲ある農業者とかいろいろありますけれども、とにかく九九%は家族経営でございますから、それを前提として、その上で、さらによりよい経営、よりよい農業が営めるような農業経営者を育成していくことも非常に大事なことだろうというふうに認識をしております。
  192. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 現行の基本法は、この家族経営について非常にわかりやすいわけです。「国は、家族農業経営を近代化してその健全な発展を図るとともに、できるだけ多くの家族農業経営が自立経営になるように育成するため必要な施策を講ずるものとする。」そして家族経営は、「他産業従事者と均衡する生活を営むことができるような所得を確保することが可能」なものにするために国は「必要な施策を講ずるものとする。」これが本当に実行されたかどうかはちょっと別の話としても、現行農業基本法の家族経営に対する位置づけ、そしてその書き方も非常にわかりやすいわけです。  しかし、先ほどからの御答弁を聞いていましても、結局家族経営は、いろいろ言われながら、選別され、ばらばらにされ、つぶされていく方向しか見えないわけであります。私には見えない。しかも、その上この価格補償制度がなくなっていよいよ家族経営が成り立たなくなるとしたら、その向こうに見えてくるのは日本農業の崩壊じゃありませんか。  大臣、法人化の推進との並列ではなく、日本農業の中心的担い手である家族経営基本にきちっと位置づけて、これを守る、そういう立場でこの家族経営を位置づけるべきであるというふうに考えます。そうでなければ、第三条、第四条、第五条で挙げているような理念も、本当に実現しようということになれば、家族経営役割ということを明確にしなければまさに画竜点睛を欠くというようなことになるわけでありますので、この点、大臣いかがでしょうか。
  193. 中川昭一

    中川国務大臣 先ほども申し上げましたとおり、日本農業経営はもうほとんどが家族経営である、そして家族経営がこれからも日本農業基本にあることは間違いないわけでございます。しかし、その家族経営の中にも、例えば、もう高齢化して後継者がいない農家であるとか、あるいはいろいろな事情で農業をやめざるを得ないとか、あるいはまた新たに入ってきたい人とか、いろいろな形態があるわけでございまして、その中で、やはり育成すべき農家というものはきちっと育成をしていく、今の一・二ヘクタールとかいう平均耕地で果たしていいのだろうかとか、意欲のある人はいろいろなことをやりたいわけでありますから、その意欲のある人に対して後押しをするということも私は大事な農業政策だと思っております。  その発展段階の中で、その地域に住んでおる家族経営から、やがてその地域の仲間たちと一緒になってさらに効率的にいい経営をやりたいということで法人形態を選ぶということも、これも我々は農政として大いに後押しをしていく施策だろうと思っております。  そして、その法人形態の中の一形態として、あくまでも、土地に根づいたといいましょうか、耕作者主義とかいろいろな前提条件を今検討中でございますけれども、その限定的な一形態として、自分たちで株式会社でやっていこうという経営形態にしていきたいという人たちの熱意というものを後押しすることも、我々は、新しい時代の農業経営としてぜひお手伝いをしなければならない施策一つだと考えております。
  194. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 もう終わりの時間が近づいているわけでありますが、私は、大臣のそのお考えが、本当に家族経営を育てる方向になっていない、それが結局家族経営を選別しながらつぶしていって、そしてそのことが日本農業を非常に危うくする方向になるんだということをもう一度重ねて言いたいわけです。  大臣、フランスにいらっしゃったと先ほどおっしゃいました。私もフランスに参りましたけれども、フランスのことについてちょっといろいろ調べておりましたら、フランスは六〇年代に急激な規模拡大政策をとったわけです。日本と全く一緒というやり方ではないわけですが、日本のような農村の過疎化、高齢化などが進行して、そして農業再建のための政策転換をすることになりました。  その転換の方向というのは、もうこういうふうに、規模拡大だ、経営集中していくというようなやり方はやめよう、本当に農業政策の全体で家族経営をもっと大事にし、その維持発展によって農業を守るようにしていこうじゃないか、こういう方向が出されてきたわけであります。  これは、私は、農林環境調査室が作成しましたフランス農政の方向転換という報告書でかなり読み込んでいったわけでありますが、そういう中で、家族経営の不可欠な担い手としての女性の地位の改善、強化ということも重要視されております。そして、女性の地位を、経営上、相続上などあらゆる問題で法律で明記もしています。そして、新しい後継者が生まれていくという展望がそこからまた出たわけであります。フランスは、WTO協定のもとでもその方向性を変えるわけではありません。  したがって、きのうの公聴会でも、さっき言いましたように、家族経営こそが、日本農業経営に最も見合った、大事にしなければならないやり方なんだということが言われておりましたけれども、フランスの例を学ぶにつけても、私は、今度打ち出されたこの法案の方向で本当に日本農業の再建が実現するというふうには考えることができないわけであります。  重ねて、私はもう答弁を求めませんが、家族経営というものについて、本当に、つぶすのじゃなしに、これをしっかり守っていく、私たちがいただいているものは、たとえ小さな農家のものであろうと大きな農家のものであろうと、そこでできたものを私たちは命の支えにして生きています。それだけに、私は、農業農家を、小さい大きい、あるいは、大きくしていく、小さければ意思がない、そういうふうに区別をすること、その政策を改めるべきだということを申し上げて、質問を終わりたいと思います。
  195. 穂積良行

    穂積委員長 次に、北沢清功君。
  196. 北沢清功

    北沢委員 社会民主党の北沢清功でございます。  実は、私ども委員皆さんから御質問がございましたけれども、若干質問で漏れている点について、きょうは私から御質問をいたしたいと思います。  ここに、毎日新聞の記事でございますが、日本消費者と市民団体が農業を守らなければならないという意見広告を出したわけです。その反響が非常にあったということで、国民皆さんの中から、やはり食への募る危機感、食は命であり、自給と安全、それが私たちの願いです、そういう反響が非常にはね返ってきたということであります。  私はそういう意味で、今日の農業というものが改めて見直されていくような国民の空気が出ているのではないか。これは、工業、科学の近代化と同時に、逆な意味で、自然、環境、また食というものの重要さが命の問題としてとらえられているところに大きな変化がある、そう思っております。  私は、今までこの委員会は余り出たことはございませんが、予算委員会で五、六年やっていまして、今まで予算委員会の中で農業問題をやったのは実は私一人でございます。こんなにも、政治の関心が農業というものから離れているのではないかという悲しみを持ったわけでありますが、当委員会へ参りまして、皆さんの御熱心な討議をお聞きし、なおかつ、農業というものは、私は長野県の安曇野というところでございまして、かつて大臣も水のサミットで来ていただいたわけで、純農業地帯の、農業では、美しい自然と同時に、あらゆる面で極めて恵まれた土地でございます。ですから、そういう意味で、もっともっと農業の多面性というものを、せっかくの国民皆さんの関心に訴えていくことが非常に大事ではないか。今、効率効率という、市場原理ということがうたわれておりますけれども、それ以上に、農業というものの持つ環境、自然それから教育、文化、伝統、国土保全等を含めて、やはりこのことを農水省はもっと有効に訴えていく必要があるのではないかという感じを持ちます。  そこで、本論に入ります。  今回、地方公聴会札幌、松江で開かれ、中央公聴会が二十六日、開かれたわけでありますが、やはり食料自給率の向上と国内農業維持増大基本法の中にもっと具体的に明記すべきではないかという意見が非常に多かったように聞いております。これらを含めて、農林水産大臣の、地方公聴会中央公聴会の感想についてお聞かせいただきたいと思っております。
  197. 中川昭一

    中川国務大臣 これだけ重要な、国民全体にかかわりのある法案でございますから、国会だけの審議ではなくて、札幌、松江で地方公聴会をやっていただいたというふうに伺っております。大変有意義な御意見、注文、提言等が出されたと聞いております。私自身拝見させていただいております、コメントは一々は申し上げませんが。  やはり現地に行って、農業関係者だけではなくて、消費者学識経験者の方々等の率直な御意見、しかも、それはやはり、農業そして農村、食料はもとよりでございますけれども、これは国民一人一人にとって極めて重要だという観点からのいろいろな御意見があったというふうに聞いております。  そういう意味で、当委員会での御審議はもとよりでございますけれども、公聴会での御意見も参考にさせていただきながら、この基本法が成立した後のいろいろな施策を行う上で大いに参考にさせていただきたいというふうに考えております。
  198. 北沢清功

    北沢委員 いわゆる自給率も、農業全体の枠といいますか、そのものが増大しないと、やはり農業者としてはそのことの恩恵にあずからないわけでありますから、自給率についてはもっと積極的な姿勢を明確にしていただきたいということを強く要請いたしたいと思います。  それから、今までの国内農産物価格については価格政策をとってきたわけでありますが、先ほどからの御意見を聞いてみても、農業を維持するための所得政策であるとか、または経営の安定対策における国の責任というものを基本法の中にもっと明確にあらわすことの方が大事ではないかということでありますが、この面についての大臣の御所見をお伺いいたしたいと思います。
  199. 高木賢

    高木政府委員 農業者所得なりあるいは経営の安定ということは重要な課題であると存じますけれども、やはり、現下の社会におきましては、農業者自身の経営努力基本とする、それに加えて、国あるいは地方公共団体の施策の効果が相まって所得なり経営の安定が実現される、これが基本的性格だろうと思います。  この新しい基本法案におきましては、農業経営という視点を重視しておりまして、営農の類型並びに地域の特性に応じまして、効率的かつ安定的な農業経営を広範に育成するということを目指しております。そのためには、経営意欲のある農業者創意工夫を凝らした経営を展開できるようにするということが重要でありまして、経営基盤の強化促進対策なり、あるいは経営の発展に関する条件整備を推進するということが二十一条、二十二条に明確にうたわれております。それからさらに、価格政策の見直しに応じまして、農産物価格低落したときの影響緩和のための経営安定対策を講ずるということも三十条で明記しております。  このように、農業者自身の努力基本とはいたしておりますが、関連する経営対策というものを講ずるということを明確にしておりまして、そういう意味合いにおきまして、国が果たすべき責務というものはこの法文におきまして明確になっているというふうに考えております。
  200. 北沢清功

    北沢委員 やはり大事なことは、農業者生産意欲というもの、今非常に打ちひしがれておるわけですが、これをいかに高めるかということが非常に大事なわけでありまして、そういう意味で、やはり所得なり経営安定施策というものをしっかり確立しなければならないと思うわけですね。  私は、そういう分野で特に大事なのは、政府のいうところの麦対策の新たな措置であるとか、それから大豆対策としての交付金制度にかわるものとしてどのような制度を考えておられるのか、または飼料作物の所得経営安定対策としての、私どもが唱えておりますところのえさ米対策を含めて、そういう対応があるのかどうか、それらについて具体策をお伺いいたしたいと思います。
  201. 堤英隆

    ○堤政府委員 私の方から、今御指摘の点の麦作経営安定資金について御説明させていただきます。  これにつきましては、御案内のように、大幅な売買逆ざやになっているという状況の中で、なかなか、生産需要ミスマッチが生じて、需要動向なりそれから品質評価というものが十分生産現場に渡らない、そういう指摘もございましたので、昨年五月に新たな麦政策大綱を策定いたしまして、良品質麦をつくった農家の方々の経営の安定ということを図れるように、民間流通に基本的には持っていこうということで、現在その中身を詰めている段階でございます。  そういう段階で、関係者の合意が得られました産地につきましては、十二年産から民間流通への移行が実現されますように、今御指摘の麦作経営安定資金につきましても鋭意その中身を詰めているところでございます。  その際、この麦作経営安定資金につきましては、現在の政府買い入れ価格と売り渡し価格が大幅な逆ざやになっているというこの実態をきちんととらえた上で、民間流通への円滑な移行が図られますように、今後の担い手となるべき生産性の高い経営体のコストということに着目して、現在最後の詰めを行っているところでございます。
  202. 樋口久俊

    ○樋口政府委員 大豆のことについてもお尋ねがございましたので、私の方から。  大豆につきましては、いろいろな製品があるわけでございますが、豆腐等の食品用につきましては、もちろん品質については国産大豆、大変品質が高いわけでございますが、供給量や価格が不安定であるとか、ロットが小さくて品質が均質でないというような問題が指摘されておりますし、またさらに、輸入物の品質がだんだんよくなってきておりまして、競合が一層強くなってきております。  また、片方、現在交付金制度というのがございますが、農家皆さん所得の安定に寄与はしているものの、実需者ニーズに十分応じた生産者皆さん努力が報われていないんじゃないかということで、生産性や品質向上に向けてインセンティブが働きにくいという問題が指摘されている等々の背景がございまして、昨年十二月に農政改革大綱の中で、一つは食品産業等のニーズに対応した売れる大豆づくりという観点、それから生産者努力が報われる、つまり市場評価が生産者手取りに的確に反映されるようにということで、交付金制度の見直しを図るということにされているところでございます。  これを受けまして、昨年の十二月から専門家によります研究会が開催されておりまして、交付金制度の見直しを含む大豆の今後の振興施策のあり方について、生産、流通、消費、技術開発等と幅広い検討が進められておりまして、夏までには取りまとめられるものと考えております。  今後は、こういう研究会におきます議論などを踏まえまして、本年秋の価格決定の時期までに方向づけを行うということにしたいと考えているところでございます。
  203. 本田浩次

    ○本田政府委員 えさ用の稲に関する件でございます。  飼料生産基盤の拡大を通じて自給飼料生産の推進を図っていくために、私どもは、農政改革大綱、それから先般まとめました新たな酪農・乳業対策大綱に即しまして、飼料作物の作付面積の具体的な地域別の数値目標でありますとか、地域の実情に即した飼料増産のための効果的な推進方策などを定めました飼料増産推進計画を近々取りまとめることにしております。従来からの飼料作物増産対策を総合的に展開してまいりたいと考えておるところでございます。  特に、飼料用稲の問題につきましては、先生御案内のとおり、湿田において作付、栽培が可能であって、通常の稲作と栽培体系が共通しているというメリットがあるわけでございますが、一方で生産コストが非常に高いという問題点もございます。このために、私どもは、品質開発でありますとか栽培方法などの多収量品種の収量安定化のための技術の開発などを推進することがまずもって大事であるというふうに考えております。
  204. 北沢清功

    北沢委員 ひとつ、技術的なものや品種の改良を含めて、相当積極的にやっていかないと、このままでいきますと、麦、大豆、これからの余剰米の問題も含めて、えさ米対策としての問題も非常に後退するのではないか。そうなることは、即、我が国自給率、また農家所得にもつながらぬ、そういうふうに私は考えますから、この辺については相当早急に、積極的に進めていただきたい、そのことが、価格政策もさることながら、所得政策であり経営安定政策である、そういうことを私は強く要請を申し上げたいと思います。  今回の農業基本法の第二十一条で、望ましい農業構造の確立として、専ら農業を営む者などによる農業経営の展開としての認定農業者や大規模農業者への農業施策の集中化を図ろうとしております。前の農業基本法についても、約四十年たった今日、新たに改正するわけですが、当初の昭和三十六年ごろ、私は農業委員をやっておりました。農業者でありますから、選択的拡大という意味で、畜産だとか果樹、園芸等に実は当時取り組んだことがございますが、当時は価格安定策がないために大変な苦労をしたことを覚えております。  それと一緒に、そのときの大きなうたい文句は、いわゆる他産業との所得格差の解消ということですね。これはもう既にそのころからその兆候は始まっているわけでありますから、いわゆる高度成長政策の中では、当初の基本法の趣旨とは全く反対なところへ来ておるわけですね。だから、こんな基本法があるのかと、私は今そういうことを言いたいわけなんです。  今回は、いわゆる食料のグローバル化だとか農家経営の減少等を含めて、相当変わってくるわけですね。また、変化が予想されるわけでありますから、基本法といえども、相当農民皆さんの声を聞きながら改めて適用するようなことが、農業基本法が憲法と言われる中で必要なことではないか、私はそう思って、今までの古い農業基本法は、非常にそういう意味では反省点が多い、そういうことをあえて私はこの席で申し上げたいと思います。  先ほどから問題になっておりますが、規模拡大は、現実には言われているけれども、土地の所有と利用という面では、若干の農業生産組合方式等も含めて変化はございました。しかし、所有の面で大規模農業に発展するということはなかなか進んでおりません。  したがって、日本農業生産の四〇%を占めている今の家族経営の位置づけというものをもっと重要視していかないと、アメリカもこの前のときには大規模農業経営をやって土地が砂漠化したり、先ほどのフランスの例を見ても、家族経営の持つ利点、家族経営の持つ農業の喜びというものを見るときに、今回の中では、日本的な面を含めて、先ほど申し上げたような所得なり経営安定策というものの充実をもっと積極的に図るべきだ、そのことを私は強く要請したいと思いますが、その点についてはいかがでしょうか。
  205. 中川昭一

    中川国務大臣 現時点におきましても、日本農業はほとんどが家族経営、ごく一部、法人経営形態があるわけでございますが、今後とも、家族経営というものが日本農業基本になっていくという前提基本法をつくってあるわけでございます。  アメリカはもちろん規模が大きいわけでありますけれども、アメリカにおいてすら家族経営というものの位置づけがあるわけでございますし、先ほどフランスの話をしましたが、フランスも、日本よりもはるかに規模が大きいわけでありますが家族経営ということで、やはり家族経営のよさというものが農業前提にある。  その前提の上に立って、意欲ある農業者、あるいは育成すべき農業経営形態というものにつきましては、規模拡大なりあるいはまた法人化、そして限定的には、本人たちの希望というものが要件がクリアできるならば株式会社形態への道も開くというのが今回の基本法考え方でございます。
  206. 北沢清功

    北沢委員 私は今、家族経営の問題を取り上げたんですが、続いて、家族経営と最も激しくこれからの農業の中で対峙するのは、やはり株式会社の農地への参入だろうと思うんです。農業経営の展開について、私はまず、農村社会を維持していくためには、家族農業基本とした集落営農などの活性化を図ることを政策の中心に置くべきであって、その支援を行うべきである、そのことについてもお尋ねしたいと思うわけです。  いわゆる農地法における耕作者主義というものは、これはある程度貫いていかないと、古いような考え方かもしれぬが、私は大事だと思います。農業生産法人の法人化の条件を緩和して、株式会社による農業、農地支配が変な形で行われるとするならば、これはやはり大変なことになる。だから、株式会社の農地の所有権については、認めることはいかがか、私はそういうふうに考えますが、その点についてはいかがでしょうか。
  207. 渡辺好明

    ○渡辺(好)政府委員 まず、お話がありました耕作者主義でありますけれども、農地につきましては、適正かつ効率的に耕作する者に対しその権利の取得を認めるという基本考え方がとられております。いわゆる耕作者主義につきましては、農地の農業上の効率的な利用の確保を図る観点から、今後とも重要なものであると認識をいたしております。  次に、株式会社の問題でありますけれども、今お触れになりました耕作者主義の考え方を基本として進めることにしておりまして、まず大原則として、そういう立場に立ちますと、株式会社一般は認めないということにしております。ただ、その一方で、担い手の経営形態の選択肢の拡大を図るということも必要でございますので、農地法に位置づけをされました地域に根差した農業者の共同体である農業生産法人の一形態としての株式会社ということに限りまして認めることとしているところでございます。  今先生がおっしゃいましたように、土地、水の合理的な利用、あるいは周辺の家族経営との調和、そういうことを考えながら、また、株式会社形態の導入に伴う幾つかの懸念を払拭するための措置につきまして、現在、検討会を開催して検討を行っているところでございます。夏ごろまでに結論を得まして、関係法制度の整備をいたしたいと考えております。
  208. 北沢清功

    北沢委員 この点については、いわゆる農業生産方式の中における厳密な意味での農地の所有等を含めて、転用も含めて、規制を相当厳格にする以外に、少なくとも現行の条件を緩めるということは問題があるというふうに私は考えますので、ぜひ、その点については、株式会社の農地参入問題については、ひとつ厳正な態度で進めてもらいたいというふうに思っております。  最後に、これも環境保全型の農業の問題でありますが、私も農業をやっていまして、かつては多収穫にするために肥料をやる、米をたんととるために肥料を大量にやって、一方においては農薬をまく、そういう繰り返しで、反当たり十二俵、十三俵というものをとったわけでございますが、最近では、うまい米、米の環境というものを、過重負荷をさせない、そういう形が一般化しておりますから心配はないけれども、やはり有機農業だとか農業者環境保全というものについてもっと積極的な支援策を考えていくべきではないか。  このことは、私はかつて地方行政委員会の与党の筆頭理事をやっていましたから、政策として実行させたのは、自治省において、林業の農道もさることながら、その問題ばかりではなくて、いわゆる下流における水のよさを守るということで、上流の農地の汚染に対して、やはりこのことに自治体の補助金を出したことがございます、今もやっていますが。  そんなことで、これは自治体ばかりではなくて、やはり農業が本当の意味環境を守るということにおいては、有機農業なり、または環境保全についてもっと支援策を講ずる、またはもっとはっきりしたガイドラインといいますか、そういうものもする必要があると思いますので、改めてこのことについてお尋ねをして、質問を終わりたいと思います。
  209. 樋口久俊

    ○樋口政府委員 お話がございましたように、近年、化学肥料、農薬の使用を控えました環境に優しい農業に対する消費者皆さんの関心が高まっておりますし、こうした消費者ニーズに対応しました農業生産の推進を図るという観点から、これまでも、有機農業を含めましたいわゆる環境保全農業の取り組みにつきまして、例えば、農業改良資金の貸し付けとか堆肥等有機物の供給施設の整備に対する助成等の支援を行ってきたこともございます。  今回は、さらに踏み込みまして、農業が本来有しております自然循環機能の維持増進を図るという観点から、特に土づくり、それから化学肥料、農薬の低減を一体的に取り組まれる農業者に対しまして支援を一層強化するということで、金融、税制上の支援措置を講ずることを内容とします持続性の高い農業生産方式の導入の促進に関する法律案というものを提出いたしておりまして、御審議をお願いするということにいたしております。  また、あわせまして、平成十一年度の予算におきましては、一つは、有機物の供給施設や土壌診断施設等、こういう共同利用施設の整備を強化する、それから、施肥や防除等の技術に関します非常に濃密な普及指導を行う、それから、環境負荷の低減に向けた新たな施肥、防除技術を開発するとか等々を推進するということにしておりますし、今後ともこのような施策の円滑な実施を通じて環境保全農業の一層の推進に努めてまいりたいと考えているところでございます。
  210. 北沢清功

    北沢委員 ぜひ、今言われたことを含めて、ひとつ増進を図っていただいて、ますます農業環境保全を進めてもらいたい。  要は、農業の持つ多面性というものをもっと強調することにおいて、国民的合意を得られ、また農業農業として、施策がやりやすくなっていくのじゃないか、そういうことを改めて最後に申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  211. 穂積良行

    穂積委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時三十六分散会