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1999-05-19 第145回国会 衆議院 農林水産委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年五月十九日(水曜日)     午前十時一分開議   出席委員    委員長 穂積 良行君    理事 赤城 徳彦君 理事 増田 敏男君    理事 松岡 利勝君 理事 横内 正明君    理事 小平 忠正君 理事 木幡 弘道君    理事 宮地 正介君 理事 一川 保夫君       今村 雅弘君    小野寺五典君       大石 秀政君    岡部 英男君       金田 英行君    岸本 光造君       熊谷 市雄君    小島 敏男君       塩谷  立君    鈴木 俊一君       田村 憲久君    中山 成彬君       萩山 教嚴君    御法川英文君       宮腰 光寛君    宮島 大典君       宮本 一三君    矢上 雅義君       安住  淳君    鉢呂 吉雄君       堀込 征雄君    上田  勇君       木村 太郎君    井上 喜一君       佐々木洋平君    菅原喜重郎君       中林よし子君    藤田 スミ君       前島 秀行君  出席国務大臣         農林水産大臣  中川 昭一君  出席政府委員         農林水産大臣官         房長      高木  賢君         農林水産省経済         局長      竹中 美晴君         農林水産省構造         改善局長    渡辺 好明君         農林水産省農産         園芸局長    樋口 久俊君         農林水産省畜産         局長      本田 浩次君         農林水産省食品         流通局長    福島啓史郎君         農林水産技術会         議事務局長   三輪睿太郎君         食糧庁長官   堤  英隆君         林野庁長官   山本  徹君  委員外出席者         農林水産委員会         専門員     外山 文雄君 委員の異動 五月十九日         辞任         補欠選任   小野寺五典君     岡部 英男君   木部 佳昭君     小島 敏男君   園田 修光君     田村 憲久君   宮本 一三君     宮島 大典君 同日         辞任         補欠選任   岡部 英男君     小野寺五典君   小島 敏男君     大石 秀政君   田村 憲久君     園田 修光君   宮島 大典君     宮本 一三君 同日         辞任         補欠選任   大石 秀政君     木部 佳昭君 本日の会議に付した案件  食料農業農村基本法案内閣提出第六八号)     午前十時一分開議      ————◇—————
  2. 穂積良行

    穂積委員長 これより会議を開きます。  内閣提出食料農業農村基本法案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。堀込征雄君。
  3. 堀込征雄

    堀込委員 この提案されています農業基本法の論議に、私は、本会議でも質問させていただきましたが、委員会できょうの皮切りを務めさせていただきます。  まず、総論的な質問をさせていただくわけでありますが、きのうも我が党の鉢呂議員から、この基本法については、現在の農業基本法をやってきた経過はどうであったのか、どういう総括をしているのか、そこのところがやや不明確ではないか。つまり、今までの基本法がうまくやってこられなかったから、今度新しい基本法をつくってなし崩し的に方向転換をするのではないか、そういうふうに見える面があるわけでありまして、今までの法律、今の基本法のどこに弱点があり、あるいはどこに対応できない点があって、それをどういうふうに反省をして、なぜ今度新しい法案をつくらなければいけないか、ここのところをやはりきちんとしておく必要があるのだろうというふうに思うわけであります。  今、農業団体を初め、いろいろな風潮の中では、農業基本法を早く決めることが大事だという意見が一つはありますし、もう一方、何か新しい基本法を決めるとすべて日本農業はうまくいくんだ、日本農業未来は、この今提案されている農業基本法さえ決めれば未来バラ色だみたいな幻想、風潮みたいなものもなしとはしないわけでありまして、私は、決して本当にそういうことにはなっていかないんだろう、今までとはどういうふうに違った農政展開されていくんだろうかということを議論しながら考えていく必要があるんだろうと思います。  一つには、昭和三十六年に制定された現在の農業基本法で、農業と他産業との生産性格差是正所得格差是正、こういう政策目標が掲げられ、農政が進められてきた。その評価はどうだったのか。総括ということを考えると、どうもあっちこっちの、今度提案されている文章を見ても、今までの農基法についてどういう評価をするかというのは余りないのです、大綱に少し触れられていますけれども。  一番詳しく触れているのが農水大臣のもとに懇談会として設置されました農業基本法に関する研究会、これは農基法農政総括を行っているわけでありまして、この法案提案基本になった、こういうふうに言われていますので、その研究会報告を見ますと、今までの農基法農政については、結果として限られた構想の部分実現にとどまった、こういう認識が示されている。その要因として、農業と他産業との生産性格差是正という目標がそもそも非常に困難性があったのではないか。一つには、目覚ましい経済成長のもとで、農業をめぐる状況変化が実は農業基本法が想定したものよりも超えるものがあったんだ。二つ目には、農業基本法には個別の施策のあり方を誘導することが期待されたが、その後の政治、経済社会情勢等の影響を強く受けてその役割を貫徹し得なかった、こういうふうに書いているのです。  つまり、目覚ましい状況変化の中で、昭和三十六年に制定された農業基本法というのはどうもその状況変化対応でき得なかった、こういうふうに総括しておるわけであります。これはきのうも鉢呂議員からちょっと質問があったと思いますが、農水大臣、今までの農基法とここでなぜ変えなければならないかという意味で、今までの農基法、今私が申し上げましたような研究会報告と同じような認識なんでしょうか、ちょっと伺っておきたいと思います。
  4. 中川昭一

    中川国務大臣 結論から申し上げますと、昭和三十六年当時の生産あるいは生活都市農村との格差是正、あるいはまた食料国民への供給といいましょうか増産といいましょうか、そういう生産サイドの、国民的貢献といいましょうか、役割を果たすということが基本的に明示されたのが基本法であったわけでございますが、先生指摘のように、予測せざる部分があった。四十年近くの間に、特に自然相手生き物相手、そしてまた世界との関係等といろいろございますし、またその予測せざる部分一つ消費者動向というものもあったわけでございまして、そういう中で、今先生指摘のように、生産性向上いたしましたけれども、他産業の方がもっと、きのうちょっと申し上げましたように、マルサスとリカードの論争じゃございませんけれども産業生産性農業生産性との間のギャップが広がってしまったということが一つということでございます。  またさらには、いろいろな消費者動向変化というものもあったわけでございますし、ここ十年くらいを振り返ってみましても、平成五年のあの大冷害というような状況というものが国民あるいは生産者サイドに大きな衝撃を与えたと私は理解をしております。また、九三年に合意されましたWTO協定の内容というものも、やはり生産者の皆さんにとって、これはぎりぎりの選択であったわけでありますけれども、大きな国際情勢変化と判断せざるを得ないというふうに考えております。  したがいまして、いろいろな側面生産政策価格流通政策あるいは構造政策、それぞれ成果があった部分、あるいはまた所期目的を達成しないまま現時点に至っている部分等々があるわけでございますが、さらに加えまして新しい農業農村の果たす役割、例えば、引き続きといいましょうか、さらに自給率が低下をし続けたという現状を考えますと、安定的な食料供給責務というものが、生産者サイドだけではなくて国民サイド全体からもそのニーズが高まっておるというような状況、さらにはさまざまな農業農村の果たす役割の達成といった環境面を初めとする地球的な規模でのニーズというものも当時は想定し得なかったわけでございます。  したがいまして、現行基本法では対応し切れない、四十年という時代は、特にこの戦後の日本にとっては、ある意味では本当に、農政面だけではなくて、社会、国全体が劇的に変化をしたわけでございますので、そういう意味でいえば、四十年前の基本法をそのまま当てはめていいのかということは、これは所管外ではありますけれども、ほかの部分でもそういう議論が起こっても仕方がないぐらいに社会情勢変化をしておるわけでございます。  そういう意味で、食料農業農村に対する現時点での新たな考え方、そしてそれが中長期的に耐え得る、つまり、国民は安心して暮らし、特に食料中心として多面的機能を享受できる、さらには生産者の方は、中長期的な目標あるいは夢を持って、自信を持って農業中心とする農村での活動に専念できるというような体制にすべく、基本法を制定する。  しかも、現行基本法は、他の農政上の法律との整合性というものが直接的にリンクしていないという実態面もございましたので、今回は、基本法中心に据えて、関係法令もそれと整合性のとれたものを制定したり、あるいはまた改正したり、さらには基本計画に基づきまして我々のやるべき中長期的な行政的な責務を果たしていく。そしてまた、それを評価するというような新手法も導入して、先ほど申し上げた国民あるいは特に農業者、そして農村に住む方々にとっての中長期的な目標あるいは課題の解決、夢の実現に資するようにこの基本法位置づけたいというふうに考えております。
  5. 堀込征雄

    堀込委員 そういう基本法総括が今大臣からなされたように、状況の劇的な変化が確かにありまして、よくわかるわけであります。しかし、もう一つやはりそういう状況変化、相当私どもが想定し得ないような劇的な変化があったわけでありますが、そういうものも先取りをしてきちんとやってくる、行政なり私ども国会も含めてそういう対応ができなかったという反省もやはり必要なのではないかという感想を実は持つわけであります。したがって、ここで基本法を変えて、新しい日本農政をきちんとやっていきましょう、こういうことにつながっていくのだろうと思います。  今度は実は、今大臣から説明がありましたように、さまざまな変化要因があった、状況があった。変化した現状に合わせて、実はこの新しい農業基本法機能を果たすように提案をされている。今度の法律は、農業基本法という言葉に加えて、実は食料農村という言葉をつけた、こういうことであります。ところが、私は思うに、現行農業基本法でも、実はこの食料農村という言葉はなかったのですけれども、実際には食料政策農村政策というのはやられてきたのだろう。農水省内にもこれは担当部署があったわけでありまして、今までうまくやってこれなかったから、何か法律文字農業という文字だけではなくて、農村という字と食料という字を入れればこれからうまくいくということには簡単に結びつく話ではないと思うのですね。  そういう意味で、新しい二つ食料農村というカテゴリーをここへ入れたわけであります。今までの特に食料分野にかかわる、あるいは農村分野にかかわる政策が、こういう部分はうまくいかなかったから今度新しい三つの文字を並べたわけですから、新しい展開はこういうふうにしていくのだ、こういう点があったら教えていただきたいと思います。
  6. 中川昭一

    中川国務大臣 本法律には四つの理念を明記しておるわけでありまして、御承知のように、国民に対する食料安定供給、あるいは多面的な機能、そしてそれを実現するための農業の持続的な発展、あるいは農村振興、これらは生産サイドといいましょうか、生産面だけではなくて、まず一つには、この法律全体が、農業者農村だけの法律ではなくて、国民全体が将来にわたって安定的な食料供給が確保されるべきであるということがこの法案の大前提にある。したがいまして、十九条でございましたか、不測の事態に対応する対応の仕方も、関係省庁との連携まで踏まえて、食料供給、安定的な確保ということを明示しておるわけでございます。  そういう側面を前提としながら、さらに、先ほど申し上げましたように、昭和三十年代には想定し得なかった環境面、あるいはまた地球的な面も含めましたいわゆる国土の保全、そしてまた食料に対する国際貢献といった部分、そしてまたその多面的な機能の中には景観の維持でありますとか、さらにはこれは私自身の思い入れが若干強いわけでございますけれども、自然あるいは生き物、さらには農産物に親しめるチャンスの少ない、特に都市に住んでおる子供たちが今後国民として健全に成長していく上で、自然との触れ合い。お米がどういうふうにできるのか。  これは私自身が体験してびっくりしたことでありますけれどもサケというのは切り身がサケだと思って、一匹のサケというものを見たことがないという子供たちを、私自身北海道でございますので、実際東京でそういう体験をしたことがありますが、そういう自然、あるいは農産物、水産物、林産物との触れ合いといった教育的な側面。これは特に文部大臣が非常に御熱心でございまして、連携を深めておるところでございます。  いずれにいたしましても、食料安定供給が大事である。そしてまた、全国民的な意味で、食料安定供給だけではなくて、今申し上げたことを初めとするさまざまな多面的な機能が必要である。そしてまた、国際貢献等ニーズがこの法律の中で明示されておるということで、繰り返しになりますが、国民的な理解のもとで新しい食料政策農業政策農村政策を一体として進めていきたいというふうに考えて、この法律を御提出させていただいておるところでございます。
  7. 堀込征雄

    堀込委員 少し中身に入って質問させていただきます。  この法案キーワードは、食料国民生活にとって欠くことのできない基礎的物資である。農村は、公益的で多面的な機能を発揮しており、国民全体にとって大切なものだ。したがって、今度の改正案は、食料農業農村も、国民にとって、あるいは国家にとって大事なものなんだ、だから国民全体の課題である、こういう組み立てになっておると思うのであります。  そのほかにも競争原理だとか国際化だとか、いろいろなことに対応しなければならぬというキーワードがあると思うのですが、現行法では、農業分野での生産性向上実現することによってその目的を達成する。いわば産業政策として農業位置づける、こういう立場があると思うのですが、やはり今の大臣答弁からいっても、それとは違った立場から今度の法律位置づけられる。それはよくわかるのでありますが、実は、専業農家自立経営農家にとっては、そういうメッセージはわかるのだけれども、一体おれたちはどうなるのだよという感じを受けないわけでもないと思うのですよね。  そこで、この二十一条では、これらの農業経営農業生産相当部分を担う農業構造確立、こういうふうに望ましい農業構造確立位置づけておるのですが、やはりこの法律が期待しているのは、この部分農家食料生産の大部分を担ってもらう、競争社会でも勝ち抜ける体制、体質をつくってほしい、法律はこういうことを期待していると私は思うのです。  ここでも私はちょっとこだわるのですが、今までの政策は一体どうだったのかということを反省する必要があるのではないか。あるいは、そのことを、問題点を摘出しながらこれからどうやるかということを考えていかなければならぬのじゃないか。私は、今までの農政も、価格政策構造政策というのは適宜組み合わされてやられてきた、こう思うのですが、まず、従来の構造政策と言われるものについての総括反省といいますか、ちょっと振り返ってみる必要があるのじゃないか。  基本問題調査会答申では、従来の構造政策を加速する、この必要性を強調しているわけであります。しかし、自立経営農家育成だとか協業の助長にしろ、全くうまくできてこなかったのじゃないかと私は実は思っておりまして、片や農業生産基盤の整備や近代化施設の導入ということにつきましては、実は膨大な政府資金がつぎ込まれて成果を上げてきた、こういうふうに思うのですね。  しかし、逆にそのことが何か労働節約型の技術を普及させて、農家世帯員の余裕を生み出して、就業機会増大を生み出した。つまり、農家労働力を逆に農外就業の場に押し出すというような効果、皮肉な成果を上げてきたというような結果をもたらした面もあるのではないか、こう思うのです。  つまり、構造政策というのは、一面で兼業化を懸命に進めてきた役割を果たしてきたのではないかというふうにも実は思えるわけでありまして、これをさらに加速するということになりますと、私はやはり問題なのだろうと。そこはそうではなくて、きちんとした望ましい農業構造確立というのは、ちょっと今までとは違いますよということをきちんと位置づけておかなきゃいけないんだろう、こう思うのです。  これは新政策でも、例えば稲作では、個別経営体十五万で組織経営体が二万程度ですか、そして稲作生産、これらの形態に八割程度を期待する、こういう目標を掲げておるわけでありまして、私は、そういう意味では、一つは、基本法農政でやってきた構造政策反省点というのはどういうふうに考えているのか、新政策で進めてきた政策をこの基本法基本的に継承して進めていく、こういう考え方でよいか、確認のために伺っておきたいと思います。
  8. 中川昭一

    中川国務大臣 構造政策を進めていかなければならない、あるいはまた、合理化といいましょうか、機械化とかいろいろやった結果、先生指摘のように、米作で特に申し上げれば、非常に労働時間が少なくて単収が上がっていくということで、一方もう一つは、工業化産業高度化に伴って、農地だけではありませんが、土地の値段が非常に上がってきたということがございまして、農地の資産としての位置づけというものが非常に大きくなってしまった。  つまり、これは流動化阻害要因に結果的になってしまったということで、この四十年の間に、技術面等々のいろいろな構造政策を初めとする諸施策が、先生指摘のように、労働時間を初めとする要因によって、土地は手放さない、そして他産業で仕事ができやすくなったというような状況を生んだことは、数字的に見ても事実だろうと思います。  これは決して所期基本法の目指すところではなかったわけでございますけれども、広い意味でいえば、農家所得向上という面では役立った面もあると思いますが、事構造政策という観点から見ますと、そういう予期せざる現実を生んでしまったということでございまして、これも、今回の基本法で少しやり方を変えなければいけないという一つでございます。  今後の基本法策定に当たりましては、具体的には構造改善局長の方から答弁いたさせますが、これから、いろいろな人材の育成あるいは農地流動化促進あるいはまた農業形態多様化等々、新しい手法をさらに導入したり推し進めたりしながら、新しい時代に合った形の構造政策転換をしていかなければならないと思っております。構造改善局長答弁をお許しいただきたいと思います。
  9. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 ただいま先生から、新政策における農業構造についての理念と今回の基本法案との相違、もしくはこれが同じものであるかという御質問があったわけでございます。  新政策では、御承知のとおり、年間の労働時間あるいは生涯所得において、地域の他産業従事者と遜色のない、そういったものを目標にいたしまして、こういう望ましい農業構造実現するんだということが書かれております。そして、そのことはその後、農業経営基盤強化促進法の中におきまして、第一条の目的あるいは第五条の基本方針の中で、こういう農業構造を今後とも進めるんだということを、いわば先行した形でしっかりと明定をしているわけでございます。  私ども、今回、基本法案策定に当たりまして、この新政策基本的には同じ考え方のもとに、基本法の第二十一条に効率的、安定的な農業経営位置づけまして、今後とも望ましい経営の概念として政策中心に据えていくこととしたものでございます。
  10. 堀込征雄

    堀込委員 二十一条、二十二条で、望ましい農業構造確立、専ら農業を営む者等による農業経営展開、そして今の答弁で、ずっとそういう体制をつくり上げていくと。  そうなりますと、私は、問題は一つありまして、実は、兼業農家生産には期待しないのかと。この法律は、その辺は、改めて農村という言葉を入れましたけれども兼業農家というのはどういうふうに位置づけられていくのだろうか。自家飯米をつくって、自家野菜をつくってやってもらえばいいのでしょうか。  私は、現在の農村集落を見まして、農村地域集団としての維持、やはり大半が兼業農家に支えられている。あるいは、定年後、年金をもらいながら小規模のちょっとした農業をやっている人も、ある意味では兼業とも言えるわけでありまして、こういう人々によって実は多くの農村集落の運営が維持されているわけであります。  農協の経営なんかもこういう人たちがやったり、いろいろなことをやって、事実上、大事な存在になっていると私は思うのですが、この基本法を見ますと、その辺はどういうふうに位置づけて、今後の農政の中でそういうものに対応していくという発想はあるのでしょうか。
  11. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 大臣からも私からも、効率的、安定的な経営体相当部分を占める農業構造実現するんだということを申し上げましたけれども日本の今の自給率等を考えますと、やはり農業生産総体として足らざるものを中心増大をさせなければいけませんし、それから経営体自身は効率的でかつ安定的なものにしていかなければいけないということで、この経営体政策もございます。  しかし、地域農業というのは、今先生から御指摘ございましたように、集落機能によって維持されているわけでございますので、この集落機能維持する、そういう点は非常に大事な点だろうと思っております。  この基本法の第二十八条におきましては、農業生産組織活動促進という形で、集落基礎とした農業者組織その他の農業生産活動を共同して行う云々という形で、地域集落中心とした農業生産を全体として振興するようにということを明確に位置づけをしているわけでございます。  確かに、稲作でいえば大宗、そのほかのものを含めまして、相当部分は効率的、安定的な経営体によって担われますけれども、全体としての農業生産は、地域振興ということも含めまして、兼業農家その他集落機能を生かした形で振興されていくべきものと考えております。
  12. 堀込征雄

    堀込委員 そこで、新しい基本法を決めることはいいのですが、これは財政の裏打ちがないと実際には進まないわけでありまして、農林予算あるいは農業予算関係について少しお伺いをしてまいります。  実は、農林水産予算は相対的にも絶対的にも減少が続いているわけであります。一九八二年が実はピークで、国の予算だけですが、一般会計に占める割合が七・四%、それ以来年々減少して、九八年度の予算では三兆二千七百億ぐらい、総予算に占める割合が三・七%にまで落ち込んできてしまった。  一方で、農業予算もそうなんですが、日本財政支出の特徴というのは公共投資が極めて多い。公共投資国民経済に占める割合というのは、大体欧米各国では二、三%なんですが、日本は大体六、七%というふうに非常に高いわけでありまして、口の悪い人に言わせると公共投資国家だ、こういうふうに言われる方もおるのです。そのことが日本産業構造を実はいびつなものにしてきて、その体質を改めなければならぬということが今しきりに言われておるわけであります。  一方、私は、現行農基法経済成長の過程を見ますと、いわば右肩上がりの経済である。高度成長の配分を農業など低生産部門へ配分することによって、ある種社会構造の維持が図られてきた、こういう特徴があったのではないかと思うのですね。これは右肩上がりを前提としていますから、なかなかそういう状況を続けることは困難だろう、立ち行かなくなっているのだろう。  私は、この基本法農政展開していく場合に、そういう意味公共投資への風当たりの厳しさがある。もう一つは、今までのように、高度成長の配分を低生産性の部門、例えば農業などに配分するということはなかなか難しい経済構造になりつつあるのではないか。  こういう困難な状況の中で、この基本法を進めるに当たってどういう財政予算対策を講じていくか、ちょっと見解を伺っておきたいと思います。
  13. 中川昭一

    中川国務大臣 確かに、農林関係予算はピーク時に比べまして減少しておりますが、この理由といたしましては、一つは、予算全体に言えることでありますけれども社会保障関係予算が大きく伸び、その結果他の部門が比較的下がったということ。それから、食管会計が昭和六十二年以降順ざやに転じたということで、ピーク時の昭和五十六年には約一兆円あった食料関係予算が、平成十一年当初では二千六百八十億円程度になったということ、この二つの理由が農林関係予算の減少の主な原因だろうと思います。  財政全体が厳しいという状況にもございますけれども、新しい基本法に基づく農林関係予算につきましては、食料安定供給あるいは多面的な機能という国民全体に非常に大きな意味を持つ政策を推進していくために、農林関係予算も、従来のものの必要な見直しを行いながら、政策推進に向けて所要の予算の確保に努めてまいりたいと考えております。
  14. 堀込征雄

    堀込委員 さてそこで、今度は農業予算の中身の問題であります。  農業予算の推移をずっと見てみますと、実は、七〇年代は価格所得対策関係予算が大体半分を占めていた。これが、現在は一〇%そこそこになってしまった。逆に、当時二〇%そこそこだった農業農村整備費が五〇%に近い。こういうふうに非常に変化をしてきているのですね。つまり、農業予算の公共事業化というような事態が生まれているんだ、こういう批判があるわけであります。  例えば、地方農林水産業費というようなものを拾ってみますと、普通建設事業費が七割を超えている。今や農政は土木建設事業に傾斜をしている。第二建設省みたいじゃないかという批判が実はあるわけですね、率直に言って。  補助事業も地方農林水産業費の五〇%を超えている。これは異常な事態になっているのではないか。地方の農林水産業費も補助事業を中心とした普通建設事業を行う、こういう構造になっている。  つまり、国から県、市町村まで、農政とは公共事業の執行であり、農政に携わる国家、地方公務員というのは農家とのつき合いより土木建設業者とのつき合いが深いのじゃないか、極端なことを言う人はこういうことまで言うわけですよ。  したがって、いかにもそういう異常と見えるような状況一つにはあるわけでありまして、かなりうがった批判の部分があることを私も承知しているのです。しかし基本的には、新しい基本法の中ではこの構造はやはり変えていく必要があるのではないか、こう思うのですが、この構造は維持されていくのでしょうか、あるいは少し改められていくのでしょうか。その辺はいかがですか。
  15. 中川昭一

    中川国務大臣 農業関係予算の推移を簡単に申し上げますと、昭和三十五年から五年ごとに九八年までとってありますけれども、公共事業の占めるウエートというのは、四割、三割、二割、また三割、四割と、そして今は五割を超しておるという実情でございまして、確かに占めている割合も半分以上ということでございます。これは、先ほど申し上げたように、食料関係費の予算が少なくなったということで相対的にウエートが高くなったのだろうというふうに思います。  また一方、価格所得関係費につきましても、一時期は六割近くまで行った時期もあるわけでございまして、その時々に必要な最重点について予算配分をしていくということが本来のあるべき姿だと思いますが、何といいましても、基盤整備というものは、これは土木関係者の皆さんのためにあるのではなくて、生産者生活あるいは経済活動向上のためにあるわけでございます。  そういう意味で、現時点におきましても、例えば汚水処理率は、大都市が約九六%に対して町村が二一%、舗装率につきましても、大都市が八七%に対して六五%ということで、まだまだ生活環境の整備がおくれておる。集落排水もその一つでございます。また、基礎的な生産条件であります圃場整備につきましても、緊急にやっていかなければいけないことがあるわけでございます。  そういう意味で、農林関係予算全体につきましては、公共事業のほかにも価格あるいは所得安定対策、あるいは生産物の生産、加工、流通の合理化等の諸施策についても十分な配慮をしていかなければならないというふうに考えております。今後とも、特に新しい基本政策の推進ということでございますので、新たな多面的な機能等、食料安定供給の確保等の大きな柱を中心にいたしまして、従来の事業の効率、効果あるいは地域ニーズも踏まえながら、新しいスタートを切るに当たりまして必要な見直しを行っていかなければならないというふうに考えております。
  16. 堀込征雄

    堀込委員 私は、この基本法農政を進めるに当たって、それは財源なり予算に裏打ちされなければならない。しかし、今までの手法ではなかなか立ち行かないのではないか、そこのところをどういうふうにこれから打開していきますかということを申し上げて、今答弁があったわけなんです。  もう一つ問題は、地方財政の問題があるわけでありまして、いわゆる借金の比率ですね、起債制限比率という言葉を使うのだそうですが、一五%を超えると黄色信号だ、これは自治省に言わせると、全国の自治体のうち八割近くがそうなっちゃっている、非常に地方財政は厳しくなっているんだ、難しい事態に来ているんだ。そういう事態が一つある。  しかし、公共事業について言えば、今まで財政再建のもとでいろいろ制約はありましたけれども、補助金や負担金を引き下げる場合には、これは削減分は地方債を発行する、その償還の際には地方交付税で面倒を見ますよ、基準財政需要繰り入れという措置をとることによってやってきた。つまり、この地方交付税、公共事業の投資的経費に対して、地方債と地方交付税でうまくやることができたわけであります。  ところが、今都道府県や市町村の財政状態は、実はその地方債への償還金がふえちゃっていて、財政運営に大きな支障を来しているという実情にあるのではないか。したがって、この事業を進めたいなということで幾ら国が思っても、市町村が飛びついてこない、あるいはもう御免だという事態すら予測しなければならないような事態になっているのであります。今までの財政方式では立ち行かないような事態に地方がなっている。  そうすると、今までの仕組みを変えた食料政策とか農村整備だとか、いろいろなことを知恵を出して考えなきゃいかぬでしょうが、この辺は、考え方はありますか。
  17. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 農業農村のインフラ整備がまだまだ必要な状況と、地方財政が非常に苦しいという状況についての御指摘なんですけれども、事業のやり方そのものについても、今私どもは相当工夫をしております。もちろん、申請事業であり、地元の合意を得た事業でありますし、ガイドラインなども出して地方の負担というのを示しておりますけれども、むしろその事業の中身において相当コストダウンをするとか、できるだけ地元の要望する工種だけを取り上げるとか、そういった工夫もございますので、農業農村整備事業全体の運営をどうするかということについて、今検討もしておりますので、もちろん実際に申請がありましたときには、例えば私どもが自治省とよくよく相談をして、一般公共債等の手当てをしていくというふうな裏側の措置についてはやっておりますけれども、根本に立ち戻って、そういったコストの削減とか必要なものについてのみ事業を実施するとか、そういうこともあわせて考えていきたいと思っております。
  18. 堀込征雄

    堀込委員 新しい基本法を決めるわけでありまして、その財政なり予算の裏打ちを、今までの仕組みとは違って、どう図っていくかということについても適切な対処をいただきたいと思うわけであります。  次に、食料安定供給という問題があるわけでありまして、将来にわたって良質な食料が合理的な価格供給されなければならない、国内の農業生産基本として、これと輸入及び備蓄とを適切に組み合わせて行う、こういうことが基本理念に書かれているわけであります。法律の文面としてわかるわけなんですが、現実問題、これはどういうことなのかな。やはり食料には豊作、凶作があるんだろう。過剰も不足もいつも起こる。それであっても、緊急時に、あるいは不測の事態に食料が足りないなんという事態は絶対に起こしてはならないよ、そのときには適切に対応するよ、これがこの法律の趣旨なんでしょうが、実際は、今先進国のほとんどは食料生産が過剰の状態が普通になっているわけであります。  後で、生産調整への対応についても伺うわけでありますが、食料安定供給というのは、それはそれで、緊急時には、あるいは不測の事態のときには安定した輸入先の確保だとか備蓄だとか、そのために必要な農地を確保していくとか、いろいろ言われておるんですが、これは言葉としてはいいんですけれども、実際は備蓄だって相当な財政の裏打ちが必要なんだし、必要な農地を確保するといっても、これは具体的にどうやるのかという点について、もう少し農業者に明らかにしておいた方がいいのではないか。  それからもう一点は、不足のときはまだいいんですが、ある品目が過剰のときでも、この法案としては、政府の義務や考え方としては、やはりそこのところは民間流通の話ですよ、市場原理の話ですよということで想定をしていない、こういうふうに理解してよろしいでしょうか。この二つについて、ちょっと。
  19. 高木賢

    ○高木政府委員 第一点の不測の事態への対応ということでございますが、これはいわばいろいろなケースがあるわけですが、大きく幾つかのステージに分けて考えております。  まず、一般的な日ごろからの対応状況でございますけれども、これは国内外の食料需給の状況を適時適切に把握するというための情報の収集分析体制をつくっておくということが必要だと思います。  それから、今お話のありましたように農地だとか担い手を確保して、国内における平時からの食料供給力を良好な状態で維持、確保するということがポイントになると思います。  それから次に、一時的あるいは短期的な供給不足とか、あるいは国内需給が逼迫する可能性がある事態、例えば凶作あるいは海外からの輸送の障害、こういったものがある場合があるわけですが、当面備蓄の取り崩しということで対応すると思います。  それから、より厳しい事態になりますと、そういったことでは済まなくなりまして、今お話のありました農地のさらなる有効利用、それは一つには熱量効率の高い穀類、芋類などの増産、あるいはほかの作物からの転換、こういうことが農地の有効利用として必要になると思います。また、現在は農地ではないけれども農地に準ずる土地といいますか農地になり得る土地、公園とか河川敷とか、そういったものの活用策ということも考えておかなければならない事態が参ってくるかと思います。  さらに進みますと、食糧法なり、あるいは国民生活二法といったものに基づきます価格なり、あるいは物自体の流通の統制である配給、こういったようなことも必要になろうかと思います。  いずれにしても、最後のところできちんと対応できるように、農地の確保あるいは農地に準ずる土地がどの程度賦存しているのかということをきちんと把握をしていきたいと思います。  それから、二点目のお尋ねの過剰ということにつきましては、これは食料安定供給ということで特に条項を起こしてはおりませんが、過剰の事態が生じますと、農業者自体の経営に大変な悪影響を及ぼすということもございまして、やはり必要な生産調整はしていくという考え方をとっているわけでございます。  また一方、海外にはいろいろな事情で食料不足の国もございます。そういった国に対しては、仮にゆとりがありますならば、援助という形での活用ということも考えられるということで、援助につきましてはこの法案におきまして二十条で明記をしているところでございます。
  20. 堀込征雄

    堀込委員 そこで、やや理念的な質問になるわけであります。  多面的機能ということが強調されているわけであります。これはどういう思想で、どういう手法対応するかということでありますが、関連して、中山間地域への直接支払いとか構造改善事業の見直しによって、これは大綱やプログラムにあるわけですから、具体的な質問は後で触れますけれども、要するに国土の保全から景観の維持まで、いろいろな役割農業というものは果たしているんだよ、これは経済ベースの話ではないから適切に評価しろ、こう言っているわけでありますが、私は、私ども人類というのは発生以来自然を征服して自分の都合のよいようにこの地球をつくりかえながらやってきた動物なんだ、農業もまた例外ではないと思うんですね。焼き畑や開墾で畑作を始めた、そこへは今まで共生していた動植物は絶対に入れない、こういう世界を世界じゅうにつくり出してきたわけでありまして、私ども人間はそういう意味では、発生以来、畑を開墾して定住し農業生産を始めて以来、この地球の支配者としてやはり自然環境を破壊し続けてきた動物なのではないか、こう思うわけですね。  今、世紀が変わろうとしているわけです。うちの菅代表なんかもよく言うんですけれども、最初の千年間というのは自然に従って人間が生きてきた時代だったんだろう、残る一〇〇〇年から二〇〇〇年までの間は人間が自然を征服してきた時代なんだろう、これからやはり自然と共生をどういうふうにしていくかという時代になる、その世紀の変わり目だろう、こうよく言うのでありますが、要するに、自然との共生という概念が重要なキーワードになるわけであります。  それは決して、工業とか商業の世界が自然破壊で、農業だけは自然保護の産業だから一生懸命やればいいんだよという思い上がった発想では、私はそういうことが国民理解を得ていくことは不可能だろうと思う。私どももっと謙虚に、多面的機能を発揮するんだけれども農業というのは何か自然を保護する産業だという人間の思い上がり、こういうことじゃなくて、本当にこれからは、農業の質も変えて、自然との共生のために農業の姿も変えながら多面的機能を発揮していくんだよ、こういう発想が私はどうしても必要だと思うんですが、この辺の見解はいかがでしょうか。
  21. 中川昭一

    中川国務大臣 おっしゃるとおりに、いわゆる略奪型の食料確保をしていた地域あるいは時代が過去にはあったわけでありますし、ともすれば人間が生活していく上で、資源は有限なんだからとれるだけとるという時代が、我が国においても一時期食料その他の資源確保のためにそういう時代があったわけでございますが、まさに今、日本だけではなくて世界的なレベルの中で、食料あるいは林産物、水産物、あるいはいわゆる化石エネルギー等々のあらゆる地球からとれるものは有限であるという大前提、コンセンサスができつつあるのではないか。FAOが主催しました世界食料サミットにおきましてもそのような議論がなされたというふうに記憶をしております。  さらに、そういう有限な資源を循環して持続的に生産し、そして国民供給をしていくという役割が高まり、さらには、特に国民サイドから求められております景観の維持あるいは文化の伝承、これは地域にとっても非常に大事なことだろうと思います。先ほど申し上げたような教育的な側面もあると思います。そして人類共通の責務としての自然環境の保全あるいはまた水資源等々、砂漠化の問題あるいは木がどんどん切られていくというような問題、あるいは水産の方で資源をきちっと管理しなければならないというような体制が進んでいくというような状態等々を総合的に勘案しまして、これはもう農業だけではなくて水産でも林産でも持続的な維持発展というものが必要であるという共通認識に立ってこれからの施策が講じられなければならないと考えております。  具体的に申し上げますならば、担い手の確保、優良農地の確保と有効利用、生産基盤の整備等における望ましい農業構造確立農業に内在する自然循環機能維持増進による環境に負荷を与えない農法の促進、計画的な土地利用と生産基盤整備が一体となった総合的な農村整備の推進、これは林野と密接不可分でありますし、また、林野、農村と海とも密接不可分のものというふうに私は認識をしております。そして、中山間地域等のいわゆる条件不利地域における多面的な機能の確保、維持発展を図るための施策等を推進してまいらなければならないというふうに考えております。
  22. 堀込征雄

    堀込委員 多面的機能発揮のために、実は中山間地域、条件不利地域平成十二年度から直接支払いを取り入れるんだということが大綱に書かれておるわけであります。これは新聞報道でいろいろ見るんですが、農水省も、一月二十九日からですか検討会を開いておるようでございますが、概要はどんな進行状況ですか、説明してください。
  23. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 御案内と思いますけれども、一月二十九日に検討会を発足させまして、これまで五回検討を進めてきております。近々、中間的な取りまとめという形で、幅広い御議論のそのままだろうと思いますけれども、取りまとめをとりあえず行った上で、さらに深い検討に入りたいと思っております。  その中で、やはり対象地域をどうとるか、それから対象農業者をどういう方々とするか、それから実際に行う直接支払いの対象とする行為をどうするか、単価をどうするか、さらにはどのような期間そうした直接支払いを続けるのか、そして地方公共団体と国との役割分担をどうするか、こういったことにつきましてかなり幅広い御議論が行われておりますけれども、共通してコンセンサスになっておりますのは、やはりこの種の直接支払い、これまでの農政にないことでございますので、明確な客観的な基準においてこれを行うべきであるということが共通のことになっております。  まだまだ検討半ばでございますけれども、夏までの間には結論を得まして、極力十二年度実施に向けて努力をいたしたいと考えております。
  24. 堀込征雄

    堀込委員 そういう具体的ないろいろな問題が議論されているんですが、実はこの農業基本法の議論が始まる前から、農業団体初め非常に期待が高いといいますか、ある意味では過大な期待といいますか、この基本法が通れば直接支払いが行われて、中山間地の方へはどんとお金が来るんだよみたいな期待感が実はあるんですね、率直に言って。だから、こういう発想に基づいてこういうふうにやるんですよということをある意味ではきちんとしておかないと、後で大変なことになるんじゃないかという感じを受けるわけです。  だから、予算総額というのは一体どの程度のことを考えているのか。農業改善事業を削って充当するなんという報道もごく一部にありましたけれども予算措置、個々に配分する方じゃなくて全体的な予算措置はどういうふうに考えているか。  それからもう一つ、地方公共団体に一部負担してもらうという発想があるんですが、いかがでしょうか。
  25. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 先生の御指摘の中でちょっと私も触れておきたいと思うんですけれども、中山間地域の抱える課題というのは、この直接支払いという手法だけをもって解決をする特効薬ではございません。所得機会をふやすという意味産業振興する、それから定住ができるように生活環境を整える、そして公益的機能が果たせるようにその分野での対策を強化するというこの三本柱がうまくいって初めて可能でございますので、私どもはこの直接支払いの検討とあわせまして、中山間地域の総合的な振興対策というこれまでの施策をばらしてもう一度再構築する、そういうふうなことを十二年度概算要求に向けてやっていきたいと思っております。  そして、今、予算の総額についてのお話がございましたけれども、これは検討会でも議論が相当分かれておりまして、地域をどういうふうにとるかによってその面積、それから単価をどこに据えるのか。検討会の中でも、条件不利の格差を全部払えという意見と、いや、それではこれからの努力に負うところが削られるので、七掛けとかそこら辺まででいいんじゃないかというふうな御意見も出ております。  いずれにいたしましても、この点は、単価が定まり、面積が定まりますと総額が出てまいりますので、その時点で全力を挙げて必要な予算を確保いたしたいと思っております。  それから、地方公共団体の負担につきましては、これも意見が分かれております。公益的機能に着目するという点を重視して、全額国庫でやるべきであるという御意見、それから、第一義的には地元の地域の方々が受益をするのであるし、これは、農政改革大綱の中でも共同してやる、役割分担をするということになっておりますので、やはり一定の負担を地方公共団体もやるべきだという御意見、そして、地方公共団体に役割分担を求めるとしても、その裏側を地代措置等で見ていくべきだという、三つぐらい大きく意見が分かれておりまして、これの集約にもう少し時間がかかろうかと思っております。
  26. 堀込征雄

    堀込委員 全体的に非常に過大な期待が膨らんでいまして心配をしているわけで、適切な対応をお願いしたいと思います。  後で構造改善事業に触れますので、この法案のWTOとの関係を伺っておきたいと思います。  この法案は、一方で、次期WTO交渉をにらんで、我が国の交渉戦略上どうしても必要だ、こういうふうに言われているわけであります。そこで、さきに米の関税化をやって、今度は基本法を変えて対応しよう、こういうわけで、私どもはわかるんですが、なかなか国民からわかりにくい面がある。なぜかというと、今までの価格政策中心政策はだめなので、この法律に基づく政策なら国際社会に通用しますよ、こういう論法なわけです。食料安定供給とかあるいは多面的機能の発揮とかいうけれども、余り強調すると、それは結局WTO交渉の条件づくりのためなのかということに実はなってしまうんですね。  私は、そういう意味では、国際社会の中で日本が孤立して生きていけるはずがないわけでありますから、きちんと国民理解を求めることは必要だとは思うんです。決してWTOの交渉を有利に運ぶためにこの基本法があるんじゃなくて、あくまで二十一世紀の農業食料農村政策というものの基本を決めていくものなんだ、それが結果として国際社会の方向とも一致するんだ。こういうふうに説明をしないと、何か、WTOの交渉が迫っているから、これを通さないと大変だよみたいな議論、あるいは期待があると、やはり国民の間に変な誤解を生むのではないかということを心配するわけでありまして、この点を一つ伺っておきたい。  それから、あわせて、協定上の緑の政策に組みかえていくために、具体的に政策の組みかえというのはあるんだろうと思うんですけれども、そう具体的な話はまだ詰まっていないんだろうと思いますが、大筋の考え方を伺っておきたいと思います。
  27. 中川昭一

    中川国務大臣 この基本法とWTOとの関係についてでございますけれども先生おっしゃるとおり、WTO交渉を有利にするために何が何でもこの方向でいこうということではございませんが、とにかく、将来にわたって日本の安定的な食料の確保、国内の生産基本としつつ、適切な備蓄あるいは輸入を組み合わすというわけでございますから、先生指摘のように、現実問題、我が国だけで何でもかんでもできるものではないわけでございます。  したがいまして、そういう基本法でございますから、我が国としては、基本理念、特にそのうちのWTOとの関連でいえば、食料の国内生産基本とした安定的な確保、それから多面的機能等の主張というものを、これは国内的にも今後の農政食料基本になるわけでございます。そして、WTOでもこれを強く訴えていかなければならないというふうに考えておるわけでございます。  どっちが優先かといえば、もちろん基本法が我が国の食料農業農村関係の憲法的な位置づけになるわけでございますから、これがあるわけでございますが、一方では、国際協定としてのWTOの次期交渉があり、これが非常に厳しい、激しい交渉になることが予想されるわけでございます。  そういう意味で、WTOにおいて何を主張すべきか、あるいはまた、交渉する上で黄色あるいはWTO上各国の理解を得られないようなものをわざわざ新しく導入するということもできるだけ避けたいというふうに考えておりまして、先ほど先生おっしゃられたように、黄色の施策はできるだけ緑の方に移行し、また、現行での緑あるいは青、黄色といった分類のことも念頭に置きながら、地球的なことも考え、そして、何よりも、我が国のこれからの農政というものを基本的に位置づけ、そしてそれを各国に主張し理解を求めていくということを考えております。  そのためには、国内において、農業関係者だけではなく、消費者団体、経済団体を初め、あらゆる立場の方々の御理解をいただき、国民的合意のもとでこの基本法、そして次期交渉に臨んでいきたいと考えております。
  28. 堀込征雄

    堀込委員 次に、この法案の地方公共団体の責務ということについて伺っておきたいと思うわけであります。  今度の法案では、国の責務、地方公共団体の責務農業者の努力、こういうふうに書かれているわけでありますが、現行法では「地方公共団体は、国の施策に準じて施策を講ずるように努めなければならない。」こういうふうに規定されておるわけであります。時あたかも地方分権推進法が国会で審議中でありますが、この基本法で言う地方公共団体の責務という条文は、今までの基本法とは違うんでしょうか。地方公共団体の役割というのはこういうふうに変わるんですよということを期待してこれは書いているんでしょうか。ここを実はお聞きしたいわけであります。  もちろん、言うまでもありませんけれども、我が国の従来の政治というのは、全国画一であり、中央統制型であった。その体制というのは戦時に確立をされて、国家総動員体制で、食料統制を初め農政の根幹をなしてきたんだ、こういうことは明らかなわけであります。今その体制が桎梏となって日本経済の発展を妨げている。したがって、根本的な行政改革や地方分権を実行しなければならないというふうに言われて、今地方分権推進法や中央省庁の再編法案が国会で審議されている。こういう事情があると思うんです。  提案されている法案では、例えば農業の持続的な発展に関する施策、二十一条一項ですか、それから農村振興に関する施策、三十四条一項ですか、これは全部「国は、」ということになっていまして、特に基盤整備事業等を初め、これは国の仕事です、これは国がやりますよ、地方に手放すものではありませんよというふうに読めるわけですが、今までの法律と、この地方公共団体の責務という表現は、どういうことを期待し、どういうことを変えようとしているのか、説明をいただきたいと思います。
  29. 高木賢

    ○高木政府委員 現在の基本法の規定ぶりでございますが、地方公共団体の施策については、国の施策に準じて施策を講ずるよう努める、こういうふうにされていまして、まさに国に右へ倣え、準じてやれ、こういうことを規定しているわけでございます。  しかし、それでは今の時代、これからの時代におきます国と地方公共団体の関係のあり方としては従属的でよろしくないということでございまして、新しい考え方に基づきまして、本法案の八条では、地方公共団体は、国との適切な役割分担を踏まえ、地方の自然的、経済的、社会的条件に応じた施策策定、実施する責務を有するというふうに規定しております。また、三十七条では、国と地方公共団体は、食料農業農村施策を講ずるにつき、相協力するということが規定されておりまして、まさに国と地方公共団体とが対等な立場基本理念にのっとった施策を実施していく、こういうことになろうかと思います。  したがいまして、今お話がありましたように、この基本法では、国が講ずるべき施策ということで基本的に書いてございます。しかし、先ほど言いましたように、地方公共団体も、当然そこまで介入的に規定はしておりませんが、地方公共団体自身といたしましては、当然、住民生活の安定あるいは地域農業生産振興ということは、地方公共団体自体の責務としてあるということでございますから、それぞれの実情を踏まえて、国と地方公共団体が、それこそ相協力して、それぞれの施策を推進するということになろうかと思います。  先ほども申し上げましたけれども基本法においては、国の責務あるいは国の施策ということで具体的な方向をそれぞれ明記しておりまして、地方公共団体の分は地方公共団体のお考えで、国との関係でどう協力していくかということを、それぞれの施策別に構築をしていく、こういうことになろうかと思います。  ただ、一般論で申し上げますと、やはり食料安定供給とか、国家の存続の基盤を確保する上で必要なもの、あるいは全国的な規模や視点で行われる農地の確保とか農災制度とか、こういったもの、あるいは大規模な投資を必要としてリスクが大きいということで、民間や地域に任せていたのではうまくいかないというものは、国が主として担うべき事務であるかなと思っております。また、食品産業とか、あるいは地域の人材の育成確保とか経営体育成とか、農村振興とか、こういうものは国と地方公共団体が相協力して進めるべき分野かなというふうに考えております。
  30. 堀込征雄

    堀込委員 それでは、農業者等の自主的努力ということについて質問をいたします。  十一条関連でございます。国及び地方公共団体は、食料農業農村に関する施策を講ずるに当たっては、農業者等がする自主的な努力を支援する、こうなっているわけであります。つまり、今までは保護と規制で手とり足とりやってきましたよ、これからはそんな時代ではありません、農業者が自主的にやるのですよ、国や地方公共団体はそれを支援するだけですよ、こういうふうに言っているというふうに私は理解をするのですね。だから、農業者農業団体生産調整なんかもみずからの取り組み、こうなってきたと思うのです。  だけれども、よく考えると、例えば米余りなんという話も、決して農家農業団体だけの責任ではなくて、米の増産を奨励して、開田を進めて、圃場整備を進めて、かねや太鼓を鳴らしてやってきたのはやはり農水省ではなかったのか。そういうこともあるわけでありまして、あからさまに市場経済だから責任ですよという話にもなっていかないとは私は思うのです。  この条文について、あるいは条文の発想について伺うわけでありますから、責任の話とかなんとかという話はなしにして、農業生産については、あくまでこれは自主努力であって、自分でやりなさいよ、市場経済の中で自分でやりなさいよ。需給調整も農業者農業団体でやりなさいよ、行政としてはそういうところへ手は出しませんから、ちゃんとしっかりやってくださいよ、この十一条はそういうふうに読んでいいですか。
  31. 高木賢

    ○高木政府委員 実は、今御指摘のありました十一条に見合う条文は現在の基本法の五条にもあるわけでございます。そこは「農業従事者又は農業に関する団体がする自主的な努力を助長することを旨とする」ということでございます。  今回は、それに食品産業の事業者ということが、時代の流れを反映いたしまして加わっておりますけれども基本的には、いわゆる国営企業の従業員ということではなくて、やはり農業者は自営業者でありますから、そういった人の創意工夫、経営の努力というものを前提として、それに対して、そうはいっても、自力でやれない部分も多いわけでありますから、国なり地方公共団体が応分の支援をする、こういう考え方でおります。したがいまして、これは従来と特に変わったということではないというふうに理解をいたしております。  それから、具体的な生産調整についてのお尋ねでございますが、やはり需給調整の結果、価格が一定レベルに維持されるということになりますと、その受益は農業者あるいはその構成する団体に及ぶわけでございますから、やはり農業者農業団体に大いに汗をかいていただかなければならないということは、おっしゃるとおりであろうと思います。  しかし、それだけでいかない部分がある。何せ三百万人近い生産者でありますから、そういった生産調整を円滑に進める上では、行政の支援が不可欠であるというふうに認識をいたしております。具体的な生産調整を進めるに当たっても、そういう農業者あるいは農業者団体の主体的努力と行政の支援というものを組み合わせた形で、両者一体となって取り組んでいるというのが実情であります。
  32. 堀込征雄

    堀込委員 ぜひそういうことでやってほしいと思うのですね。特に基本問題調査会では、生産調整が、農家に強制感を伴うものではなくて農業者の選択で行うものだ、農業者農業団体がみずからの問題として取り組むべき問題だ、こう言っているわけでありますから、余りこの発想でいきますと行政の支援がない。霞が関ではそれはそれで済むかもしれませんけれども、知事や市町村長、あるいは市町村の農政担当職員になりますとそうはいかないわけでありまして、現場で議論し、説得をして、時には罵声を浴びせられながら苦労をしているわけでありますから、今官房長答弁のあったような方向で、行政の支援をできるだけ組み合わせながら取り組みを進めてもらいたい、こう思います。  次に、行政組織の整備ということについて伺いたいと思います。国の責務に関連をして伺っておきたいと思うわけであります。  現在、省庁再編に関する法案が、きのうから国会審議が始まったわけであります。ところが、基本問題調査会の答申では、個別の政策について、国と地方の役割分担を明確にするとありますが、この法案では三十七条でしたか、相協力するとなっております。つまり、これは役割分担をできない、これからも相協力してやっていくんだよ、こうなっているのです。  これは後でもちょっと触れるのですが、これからの農業基本法で新しい政策を実行していく場合に、これとこれは地方にお願いしていこう、国はもう手を引こうという政策なり事業は、これは答申にもありますように、役割分担を明確にするという意味で、さっきもちょっと触れたのですが、これは何かあるのですか、ないのですか。例えばの話で結構ですが。
  33. 高木賢

    ○高木政府委員 具体的に地方公共団体にどう権限移譲するかということにつきましては、全体的に申し上げますと、地方分権推進計画ということで取りまとめたものに従って、これは着実に実行していくというのが当面する課題であるというふうに思います。  それから、具体的にさらに今後どう進めるかということですけれども、先ほどもお尋ねがございました中山間地域等に対する直接支払いの検討などに当たりましても、まさに地方公共団体と相協力して具体的にどう進めるかということにつきましては、そういう個別具体的な課題ごとに、地方公共団体との協力のあり方を十分整理して対応したいというふうに考えております。
  34. 堀込征雄

    堀込委員 ちょっと意地の悪い質問になるかもしれませんが、行政組織の整備、行政運営の効率化、透明性の向上、こうあるわけですね。やはりこう書く以上は、どこかに組織のむだがあって整備が必要であり、非効率で効率化が必要と思われる仕組みがあると思うのですが、どんなところといいますか、どういうふうに認識していますか。こう書かれる以上は、そういう認識があるのだろうと思うのですが、いかがでしょうか。
  35. 高木賢

    ○高木政府委員 具体的にどこがと言われるとなかなかお答えしにくいのですが、やはり一つ一つ総点検をして、あらゆる機会にスリム化を図らなければいけない、そうはいっても必要なことはできる体制にしなければいけない、この二律背反の中で取り組むということでございます。具体的には、二〇〇一年の例の省庁再編に当たりまして、まさにスリム化の観点も入れまして一局削減をする、しかし、新しい基本法農政展開できるようにということで再編成をすることを考えております。  具体的には、食料政策を担当する総合食料局、生産を担当する、これは生産の横割りといいますか横断的に対応する生産局、それから、これからは特に経営なり担い手という問題が大事でございますので経営局という形で経営専門の局をつくる、さらには、新しい任務としての農村振興を担当する農村振興局ということで、数は一つ減りますけれども、そういった目的の達成というところに力点を置いて、それに合った形での効率的な行政組織をつくるということが、まさに当面今考えているところでございます。
  36. 堀込征雄

    堀込委員 関連して大臣に一点伺っておきたいのですが、省庁再編の問題で、農水省は官房と四局、それから食糧、林野、水産の三庁ですか、こういうことになるわけであります。一方で、新聞報道で恐縮なのですが、官房長官が、林野庁の分離、環境省への移管賛成だという趣旨の発言をされたと報道された経過がありますが、これは事実でしょうか。また、大臣としてはどのようにお考えですか。伺っておきたいと思います。
  37. 中川昭一

    中川国務大臣 先週の金曜日の官房長官記者会見でそういう発言をされたということを、発言メモで私自身承知をしております。官房長官から直接そういう話は、私初め林野庁にはございません。  その長官の御発言というのは、官房長官、つまり政府の構成員としては、今回国会に提出したこの法案を何としても御審議の上成立をさせていただきたい、ただし個人的にはということで、そのような趣旨の御発言があったというふうに聞いております。  我々といたしましては、省庁再編のいろいろな側面からの大変長い間の議論の上での結論として、政府・与党で決めた法案を今閣法として出させていただいておるわけでございまして、そういう意味で、私としては、この法案がベストであり、御審議をいただきたいというふうに思っておりますし、官房長官の個人的な発言について、私からコメントをすることは差し控えさせていただきたいというふうに考えております。
  38. 堀込征雄

    堀込委員 次に、きのうから繰り返し各委員から議論をされております食料自給率の数値目標の表現の問題であります。  第十五条の基本計画で、自給率目標を義務づけておるわけであります。この委員会が始まって以来、ここに一番議論が集中している、こういうふうに思うのであります。  繰り返しになるかもしれませんが、これは、本文に表現すると何かぐあいの悪いことがあるのでしょうか。基本計画ではなくて、この法律ではだめだという理由は、議論している者にとっても国民にとってもわかりやすくあった方がいいのではないか、こういうふうに思うわけであります。  私は、この自給率を明記することによって政府の責任が明確になるのでしょうし、また、書くことによっていろいろな施策が集中することによって、供給面でも需要面でもいろいろな施策展開されやすくなるのではないか。さらには、消費者、国民ということを強調していますが、そのことによって日本食料事情が全国民理解をされ、農業とか食料問題に関心が高まってくるのではないか、そういう利点があるのだろう。だから、やはりこれは明確にした方がいいのではないかと思うのです。  きのうからの議論の繰り返しになると思いますが、もう少し、十五条は食料自給率向上をうたっているんだ、数値というのは基本計画でいいんだよというきのうからの答弁だと思いますが、本文に書けないわかりやすい理由がありましたら、お聞かせをいただきたいと思います。
  39. 高木賢

    ○高木政府委員 自給率目標基本計画で定めるということをこの法案では明記いたしております。目標でありますから、当然、下を向いた目標というのはあり得ないわけでありまして、上を向いた目標ということは明白であるということで、目標ということで整理をしているわけでございます。  それからもう一つ基本法というものの性格でありますが、これは、施策基本理念とか施策基本的な方向、方針というものを法律で概括的に規定するものであります。したがいまして、個別具体的な数値がいかに重要な意味を持つといたしましても、方向を書く基本法というものの性格からして、数値まで書くというのは法制的にはなじまない、こういうのが法制当局ともどもの整理ということであります。  したがいまして、ほかの法律でもすべて見てみますと、ほかの基本法におきましても、そういったいろいろな基本計画で数字を出している他の基本法の例はありますけれども基本法自体に数値を書いているという事例は一つもないわけでございます。  そういうことで、基本方向を定める基本法の性格ということから、数値を書いていないということでございます。
  40. 堀込征雄

    堀込委員 要するに、法律のでき上がりぐあいといいますか、基本法であるから理念法であり、法制局とも詰めたけれども具体的な数値を書くのはまずい、したがって十五条で食料自給率目標と書いたということですね。その目標とは、下を向く目標はない、上を向く目標だ、こういうふうに今答弁があったわけであります。  私は、法制上の問題はともかくとしまして、もう少し強い意思をこの十五条で表現すべきではないか、こういうことできのう以来各委員の論議もあったわけでありまして、ここのところは、自給率自体がこの国は大変な事態になっているわけでありますから、せっかく基本法を決める以上、私ども国民責務として、あるいは取り組むべき課題として、強い意思を表現できるような形に改めるべきだ、こういうふうに申し上げておきたいと思います。  これはまた、あす以降、きのうもそうですが、この委員会一つの大きな目玉になると思いますから、そういう要望だけして、きょうは次の問題に移らせてもらいます。  食品産業の問題であります。  実は、この法律で初めて食品産業のあり方ということについて位置づけがされたわけでありますが、今後の農政基本考え方に深くかかわる問題だ、私はこう思っているわけです。  食品産業というと何か大企業だとか大手企業を想像するわけでありますが、実際は圧倒的に中小零細で、しかも地方都市に存立基盤を置いている。それは、製造業であろうと、外食産業であろうと、流通業であろうと変わりがないと思うのです。  食品産業というと、すぐ何か原料、製品とも安価な海外農産物を輸入するというイメージがあるのですが、実態はそうではないのじゃないか。大部分の食品産業というのは、地域の原料を買い付けて、結構地域農業と結びついて現状でもやっている、こういう状況があると思うので、これをどう支援していくかが課題であるわけであります。  私は、ここでも地方分権とか地方の特性をどう生かしていくかということが極めて重要なキーワードだと思うのです。  そういう意味では、全国画一農政ではなくて、地域の多様性、多様な農業をどういうふうに追求するか、つまり、そういう画一性ではなくて多様性ということをキーワードにしながら、この基本法農政、特に食品産業に絡んでそういう農政を進めるべきだろう、私はそう思うわけであります。  地域の多様性や食品産業の多様性、いろいろな業種がありますから、農業の多様性、こういうものがマッチして食品産業が育っていく、それと結びついた地域産業が育っていく、こういうふうに私は思いますが、この食品産業位置づけた問題意識、今私が申し上げた問題意識と違うのでしょうか、大体合っていますか。
  41. 福島啓史郎

    ○福島政府委員 今先生指摘ございましたように、食品産業と国内の農業といいますのは非常に密接な関連を持っておるわけでございます。  今、国内農水産物の三分の一強は食品産業に仕向けられている。逆に、食品製造業の原材料の三分の二は国産農水産物であるということで、まさに食品産業農業といいますのは、国民に対する食料供給という点におきまして車の両輪という位置づけではないかというふうに考えておるわけでございます。  また、先生から御指摘ございましたように、食品産業は、地域産業としまして、あるいは雇用の面で、あるいは所得の機会を提供する面で大きなウエートを占めておりますし、また中小企業性が非常に高いわけでございます。例えば、事業所数であれば九九%、それから従業者数であれば八四%、出荷額でいえば八〇%が中小企業だということで、そういう特色もあるわけでございます。  したがいまして、一つは、農林水産省といたしまして、この食料農業農村基本法案にもありますように、食品産業農業がさまざまな形で連携していく、双方がプラスになる形での連携を進めていくことが必要だというふうに考えておりまして、現在、そのための食品産業農業との連携に関します研究会を設けておりまして、検討を行っているところでございます。  事例的に言えば、例えば福島県の郡山の豆腐業者の方々が組合をつくりまして、それと地元のJAが組みまして、地域の特産品であります青大豆を使った豆腐をつくって、それを地域で売っているというような例もございます。また、長野県の小川村では、地元のJAと食品販売業者が、おやきという伝統的な食品でございますが、それをつくっていろいろな販売業者に売っておるというようなこと、そういったいろいろな例も地域におきましてありますので、そういう例も参考にしながら、多様な連携を進めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  42. 堀込征雄

    堀込委員 私は、食品産業を育てるというのは非常に重要なことだと思っているのです。ある意味で、日本食料自給率、いろいろ議論があるのですが、そこに関連する、自給率を引き上げる話になると思うのですね。  言うまでもありませんが、日本農業は今、後継者がいない、そして農業産業としては衰退していく。なぜかというと、もう明らかなので、他産業との競争に勝てないからである。  農業はもうからない。農業では生活できない。したがって、それではいけないから、他産業や外国の安い農産物に対抗するためには大規模化しよう、競争できる選ばれた少数農家を、これは認定農家だとか中核農家として、その人たち中心に競争力をつけていこう、こういう政策がとられてきたのです。  しかし、この提案されている新しい基本法では、消費者にも目を向けようということになった。  私は、今や農業者も消費者であって、輸入食品を一生懸命消費している存在だと思うのです。つまり、消費者も生産者も地方都市農村で混住して生活している。やはりここの段階で生産と消費のシステムを考えるべきではないか。  今までは、大産地をつくって、農産物を中央に集荷をして、それをまた地方に配送する。ここでも経済構造自体が全国画一システムなんですね。農産物の流通もそうだったと思うのです。やはりこのシステムを変えていくべきだ、そのことに一生懸命取り組むべきだ、こう思うのです。  これは山下惣一さんなんかが言っているのですけれども、例えば、市町村ごとに品目ごとに自給率の一覧表をつくったらどうかということを言っています。今の時代、大型産地でも単一作物の大量出荷だけではやっていけなくなっている。だから、多様な品目を入れたり、多品目な少量生産地域消費や地場食品産業に回したりしながら実は産地がもっているということになっているわけであります。  私は、これは農水省の試算なんかもあって、食料自給率向上には、小麦七十万トンつくれば〇・五%向上するとか、大豆二十万トンとか、飼料作物を二十万トンふやせば〇・八%向上するとか、いろいろな試算があるのですけれども、そういうことよりも、やはりそういう地場の消費者と生産者の結びつき、小規模の生産と流通の結びつきということを一生懸命考え、それを支援していくというふうにした方が日本食料自給率というのは上がるだろう、こういうふうに確信しているわけでありますが、見解はございますか。
  43. 福島啓史郎

    ○福島政府委員 今先生指摘ございましたように、食料品、特に生鮮食料品の流通を考えた場合に、二つのルートがあるというふうに思っております。  一つは、大都市向けのいわば太いルートでございます。かつ、距離をできるだけ短くしたルート、これをいわば合理的にネットワークをつくっていくということ、これが一つでございます。もう一つは、今先生おっしゃいましたように、地場の多様な農産物を地場でもってできるだけ付加価値をつけて、地元でもって販売していく、あるいは消費していただく、そういうルートでございます。そうした二つのルートがうまく組み合わさって生産され、供給され、消費されることが重要ではないかというふうに思っているわけでございます。  特に、従来は高度成長という時代背景のもとに、どちらかといえば前者に重点を置いた施策が行われたわけでございますけれども、これからは後者に重点を置いて、特に農業者所得の確保という面、あるいは国内農産物の需要確保という面から見まして、それらに寄与します地場の生産と食品産業とを結んだ、先ほど申しました連携の強化等もその一つでございます。そういうものを施策として取り上げていきたい。そのための研究会も現在やっているわけでございまして、制度化を含めまして、施策にのせていきたいというふうに考えております。
  44. 堀込征雄

    堀込委員 きょうは、法律を読んでいろいろわからない点があるものですから、総花的な質問になって恐縮であります。  次に、農業生産法人の見直しの問題であります。  これは大綱でも触れているわけでありますが、農業生産法人については、農地法上の許可時における厳正な審査が必要だ、許可後十年間は毎年経営状況農業委員会報告することを義務づけている。後ほど農業委員会のあり方も質問したいと思うんですけれども農業委員会で厳正な監視や経営状況のチェックは果たしてできるだろうか。きのう漆原議員も質問しておりましたけれども農業生産法人が実は大規模化したり多様化したりする、会計帳簿なんかも非常に複雑になるんじゃないか、場合によれば倒産や廃業の法人も出てくるんだろうし、土地の差し押さえなんという事態も出てくるのだろうと想定される。  そういう意味で、農業委員会農業生産法人への監視、チェック体制、これは十分なのかどうか、どういう心配があるのか、これをひとつお聞きしたい。  それから、農地法と、これはいろいろ今も議論されていますが、農業生産法人の要件見直しの作業を進めていく、こうなっていますが、これはどんなスケジュールで進むか、あわせて聞かせてください。
  45. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 前段のチェック能力の問題でありますけれども、御指摘ありましたように、農業生産法人の農地取得の許可を行う場合、十カ年間にわたって経営状況報告を求めるということになっているわけでございます。私たち、この経営状況報告の項目なり中身につきましても、これから先、今おっしゃったように多様化、複雑化するわけでございますので、内容をもう少し詳細に、事業の中身にまでわたれるような改定をしたいと思っておりますし、現に農業生産法人台帳というのは整備をされておりますので、これらについても一定の改善が加えられないかなというふうに思っております。  また、これは農業委員の個人の資質の問題でもございますので、全国法人等とタイアップをいたしまして、能力アップのための研修といったようなことも、現在もやっておりますし、これから先、それを充実するようなことを考えていきたいと思っております。  それから同時に、これは農業委員会のみがチェックやサポートをするわけじゃないわけでございまして、地域農業関係者、JAもありますし、市町村その他もございます。そういったところが全体として、この新しい農業生産法人制度が円滑に運営されるようなサポート体制も考えたいと思っております。  現在、生産法人の検討会におきまして、株式会社形態の導入に伴う懸念の払拭措置と、それからもう一つ、新しい時代でございますので、経営の多角化、技術経営ノウハウの充実、すぐれた人材の確保等、こういうことを目指しまして、農業生産法人制度につきましては、事業要件、構成員要件、そして業務執行役員要件の見直しを行っております。  夏までには、先ほど申し上げました懸念払拭のための実効ある措置とあわせまして、結論を得て、できれば次の通常国会に関連法案の改正をお願いしたいと考えております。
  46. 堀込征雄

    堀込委員 それでは次に、第三十八条、団体の再編整備ということについて伺ってまいります。  まず、農協組織でありますが、御存じのように戦前の農業会を引き継ぐ形で戦後の農協法ということで、農協が設立をされ今日に至っている。今、農協、JA関係は大型合併の推進、二段階化の推進だとか必死に取り組んでいるわけであります。そういう意味では、私はある意味では戦後の全国画一型といいますか中央統制型といいますか、そういう事業が行われてきたのだろうと思うんです。  そういう意味で、これはいろいろな問題を抱えているんでしょうけれども、一方で、県や市町村に行政の主体がだんだん移っていく、あるいは生産物にしても全国画一流通の時代から地場消費や小さな産地などを重視しなければならない時代になっている。そうすると、県や市町村に対応する、あるいは地場の消費や経済対応する対策が必要なのではないか、こういう気もするわけであります。  しかし一方で、いろいろな合併とか二段階化とか努力しているわけで、それはそれでわかるわけでありますが、ただ、そういう組織対策だけで問題は解決していくのだろうか、新しい時代対応した、この基本法に見合った体制整備というのも必要なのではないかという感想を持つわけですが、指導監督する立場にある農水省の見解はいかがでしょうか。
  47. 竹中美晴

    ○竹中(美)政府委員 農協系統でございますが、今後、事業機能を一層強化する、あるいは経営合理化、効率化を図っていくという観点から、組織の二段階化あるいは広域合併を進めているところでございます。  現在、広域合併につきましては五百三十の目標に対しまして六割程度実現状況になってきております。また、組織二段につきましては、経済事業では、既に昨年の十月に三つの経済連が全農との合併を実現しまして、今後、二〇〇〇年度を目標に三十の経済連が全農と統合する方針を決定しております。信用事業では、十程度の信連が農林中金との間で統合に向けて個別協議に入っている。それから、共済事業では、来年四月に四十七の共済連が一斉に全共連と統合する、そういう方向で現在取り組まれておるという状況でございます。  御指摘がございましたように、組織整備だけでいいのかということでございますが、こういったこれまでの取り組みによりまして、一例を挙げますと、農協系統全体で、平成六年度末の三十五万二千人の人員が平成九年度末では三十三万二千人と二万人の減少になっておりますし、また農協系統の各種の施設につきましても、平成九事業年度中に百五十八の支所等が統合されている、こういう一定の成果を上げてきているところでございます。  農協系統が、今後、新基本法のもとで、その役割を十分果たしていきますためには、組織整備を通じた事業、経営合理化なり効率化の促進が今後ますます重要であるというふうに考えておりますので、私どもとしましても農協系統としての適切な取り組みを促していきたいというふうに考えております。
  48. 堀込征雄

    堀込委員 次に、農業委員会制度であります。  今選挙委員、選任委員、合わせて全国で農業委員さんが六万一千人ぐらいいるんです。大体有権者百人に一人ぐらい。これに県の農業会議だとか全国段階の農業会議所があるわけであります。これは少し多いのじゃないかという議論が一つあります。それからもう一つは、これは教育委員も任命制なので、選挙制度をそろそろ変えたらどうだ、こういう意見もあるんですが、簡潔で結構ですが、農水省の見解を聞かせてください。
  49. 竹中美晴

    ○竹中(美)政府委員 農業委員会系統組織についてでございますが、昨年の十二月の農政改革大綱を踏まえまして、優良農地の確保と有効利用、担い手の確保育成地域の実態に即した構造政策を推進する上でその役割が十分に果たされるよう、系統組織全体としての体制の見直しを行うことにいたしております。  御指摘ございました委員の選出方法でございますが、この新たな農政の枠組みの中で、農業委員会の担うべき役割とも関連する話でございまして、関係各方面、いろいろ御意見をいただいております。それを踏まえまして、今後検討を深めていきたいと考えております。  また、選挙委員の定数でございますが、平成九年七月に地方分権推進委員会の勧告がございました。これを受けまして、一つには農業委員会を設置しなくてもよい市町村の数をふやす方向での設置基準の見直しとか、あるいは委員数の相当程度の削減を可能とするような選挙委員の定数設定の弾力化といったような措置を昨年五月にとったところでございまして、これに基づきまして、農家戸数の減少等を踏まえた組織体制の適正化を指導しているところでございます。
  50. 堀込征雄

    堀込委員 あと団体の関係で、農災制度そして土地改良区についての考え方も伺っておきたいと思います。  農業共済団体でありますが、たしかこの前の法律のときにこの委員会局長から私が答弁をいただいたんですが、アメリカ型の収入保険制度を導入して将来の体制を考えたらどうかと言ったら、技術的になかなか難しいことがありますという答弁をいただいておるんです。しかし、農済制度の将来を考えると、やはり何か知恵を考えていかなきゃ、組織を持つという話じゃなくて農済制度、農業者の方の加入とかいろいろな問題が解決されていかないんだろうという気がするわけでありまして、民間の損保の知恵なんかもかりたりして少しこの改革の方向について議論をしてもらいたいという気持ちを持っているんですが、これについて、つまり農政改革プログラムの中での農済制度の充実強化についてということについてどういう考え方を持っているか。  ちょっと関連しましてもう一点一緒に質問しておきますが、土地改良区についても長期計画進行中でありますけれども、そもそもこの土地改良事業というのは、事業の発議者が農業者であった。受益者とも負担を伴う事業だから、一般公共事業とは区別されてきた。しかし、もうそういうことはなかなかできない現状になってきたので、農村整備事業なんかは当初から一般公共になっているわけですね。そういう変化に対して、この土地改良事業というのは非常に、七千余りですか、土地改良区があって、零細小規模のものが多いんですけれども、どういうふうに再編整備していくのかという点について、ちょっと時間がなくなりましたので、恐縮ですが、できるだけ簡潔に答弁してください。     〔委員長退席、赤城委員長代理着席〕
  51. 竹中美晴

    ○竹中(美)政府委員 初めに農災制度、収入保険の関係でございますが、これにつきましては、現在の農災制度は当然のことながら災害の発生ということを前提にした制度であるわけでありますが、これと災害の発生とは関係なしに、収入の減少分を補てんするという収入保険でございます。  現在進められております農政全体の見直しの状況を踏まえながらその必要性を検討していきたいと考えております。  検討を要する点、いろいろございまして、先般も御説明させていただきましたが、地域的な危険分散の図り方とかあるいは保険料率の設定の仕方、また農家の収入の把握の仕方、いろいろ難しい問題点がございますので、今後、農政改革大綱なり農政改革プログラムに即しまして検討を深めていきたいと考えております。  なお、損保の例を参考にしてというお話もあったわけでございますが、農業につきましての収入保険を考えます場合に、農業の場合は自然災害の影響を受けやすい、価格の変動も大きいというようなことで、一般の損害保険の手法がどの程度参考になるか、ややなじみにくい面もあるのではないかと考えておりますが、なお勉強をさせていただきたいと考えております。
  52. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 土地改良区が直面している困難な問題は先生から御指摘のあったとおりでございます。私どもは、中長期的な展望に立った活性化構想というのを今立てまして、合併等の統合整備を積極的に行っているところでございます。かなりのテンポで進んでおりまして、ちなみに平成九年度ですと、百二十一の地区において三十八に合併される、あるいは百三十七地区が解散をするというふうな実績もございます。  ただ一方で、土地改良施設というのは、用水路に見られますように農業財産から今や地域の資産という面もあるわけでございまして、農村の中の非農業者からアンケートをとりますと、土地改良施設に対する非常に大きな期待、自分たちも参加をしてみたいというふうな御要望も強いわけでございますので、新しい農政の方向に即しまして、この統合整備を促進するだけではなくて、公的な側面を持ちます施設管理について、国その他からの支援策を強化する、さらには地域の住民からの期待にこたえてどういうふうな運営をしていくかという点を検討したいと考えております。
  53. 堀込征雄

    堀込委員 最後に、これは地方分権推進計画と中央省庁改革関連法案との関連で質問させていただきます。  つまり、ここで私ども農基法を決めるわけでありますが、この農基法を覆うさらに大きな流れというのは、実は地方分権推進とかいろいろな法律や推進計画ができてそこに出てくる。  第二次の地方分権推進計画、これはやることになっているんですが、これを見ると、直轄事業についても期限を切って、あるいは農業農村整備事業、治山事業についても書かれております。それから補助事業についても統合補助金を創設する、地方公共団体に裁量的に施行させる、箇所づけはしない、これは十二年度から実行だ、こういうふうになっております。あるいは非公共事業についても書かれているわけですが、これは間違いなくこのとおり実行していくんだ、こういうことでよろしいですか。
  54. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 分権計画に盛り込まれました事項につきましてはこれをきちんと実行する考えでございまして、そのために、現在、どういった具体的手続をとるかについて中で検討しているところでございます。
  55. 堀込征雄

    堀込委員 補助事業、統合補助金ができて、箇所づけしないとなると大変な改革なんだろうと思います。  そこで、中央省庁改革関連法案というのがきのうから審議が始まって、それに基づいてといいますか表裏一体の形で方針が決められております。この方針を見ますと、公共事業について、地方の出先機関に権限、財源を移し、霞が関は企画立案機能に徹する、こういう方向が打ち出されておるんですね。これは意味がよくわからないんです。  国から国の出先機関へ権限と財源を移譲して果たしてできるのか。構造改善局から地方農政局へ公共事業の権限、財源を移しても余り地方分権には関係ないと思います。もしそうやるとすると、本庁の大部分を地方農政局へ移さないとできない、こういうことになるんでしょうが、これはどういうことなんですか。地方農政局に予算枠を配分して、枠内で地方農政局が裁量的に公共事業をやる、こういうことになるんでしょうか。いかがでしょうか。     〔赤城委員長代理退席、委員長着席〕
  56. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 二つ側面があろうかと思います。  一つは、公共事業に関する農林水産大臣の権限の地方農政局長への委任の内容あるいは対象となる事業の範囲を訓令という形できちんと意図表明といいますか明らかにしていくということが内容になります。  もう一つは、委任を受けた地方農政局長がみずからの判断で、結局現場に一番近いわけでございますので、みずからの判断で事業の決定と執行ができるように、農政局ごとに所要の予算額を一括して配分するという方向で、現在、新府新省編成に向けまして検討を進めているところでございます。一括して配分をするというところにポイントがございます。
  57. 堀込征雄

    堀込委員 時間が来たから終わりますが、基本法は、法文だけではなくて、そういう中央省庁改革関連とか地方分権とか大きな法律がかかっていますので、やはりそういう中でいかにこの基本法の精神を生かしていくかということが大事なんだろうというふうに思います。  後でまた同僚議員の質問がございますので、いろいろな問題点答弁いただきましたことに感謝して、質問を終わります。ありがとうございました。
  58. 穂積良行

    穂積委員長 次に、藤田スミ君。
  59. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 最初に大臣に、大変簡単な問題ですが、質問をいたします。  私、今日まで随分、全国の生産地を回っていろいろな農家の方と話をしてきました。そして、共通して本当に訴えられるのは、今はもう何をつくっていいのかわからない、農業は割に合わないんだ、あるいはまた、規模をせっかく拡大してもやっていけないんだというようなことであります。  農家は、農業生産に取り組むことによって安定した所得が保障されて、そうであればこそ、もっとつくろう、もっと農地をふやしていこうと生産振興を図ることができるわけであります。また後継者の方も、農業に取り組むことによって、農産物の収入で勤労者並みの所得を得られることを親の生活状況から理解して初めて積極的に農業に参入してくる、こういうことになるわけであります。  この根本的な問題について、大臣はどういうふうに認識をされていらっしゃるかお聞かせください。
  60. 中川昭一

    中川国務大臣 戦後の荒廃の中から、食料を何としても確保しなければならないということで新しい農政がスタートをし、そして昭和三十六年に農業基本法が制定されたわけでありますが、今日に至るまで農政を、あえて四十年というよりも五十数年間を振り返ってみますと、非常に大きな変化があったであろうというふうに思っております。  その中には、基本法総括の中でも申し上げましたが、生産所得格差是正という面でいいますならば、所得向上も見られた。しかし、都市部との格差が埋まるには至らなかった。あるいは生活面におきましても、生活基盤整備は向上したけれども、依然として現状まだまだ未整備の点が多いというようなこと。また、さらには、世帯一人当たりの所得都市部を上回るまでになってきたというようなプラスの面もあるわけでございます。  一方では、予測しがたかった事態、あるいは自然、生き物、あるいは国際環境、あるいは特に消費者の嗜好の問題等々もございまして、全部が全部農家の皆さんが今いい経営にあるとは決して申しませんけれども、今の先生の御質問のように、すべての農家がすべて将来展望がなく、非常に厳しい状況にあるということも間違いであるというふうに私は思っております。
  61. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 全部と、別にそういう言い方はしていませんよ。  質問を続けます。食料自給率を引き上げてきた国々の事例を前回も紹介してまいりました。もうこれは歴史の事実でありますが、EUの共通農業政策がヨーロッパ諸国の自給率を引き上げる原動力になった。そして、その共通農業政策は、生産刺激的な価格政策、輸入課徴金による輸入規制、そして輸出補助金による農産物輸出、この三本柱によって自給率を引き上げてきました。  現在、EUなどが生産刺激的価格政策転換し、デカップリングを初めCAP改革を進めたり、WTO協定で国内助成措置に対する規制措置が盛り込まれたのも、十分な食料自給体制確立されたばかりか、生産過剰になって、そしてそれが輸出補助金で積極的に輸出され、アメリカとの農産物貿易をめぐる争いになったからであります。  ところが、世界最低とも言っていいくらいの四一%の食料自給率で、これからいよいよ食料自給率を引き上げていかなければならないと重要な課題を掲げる日本が、食料自給率を達成し、過剰生産対策に取り組んでいるそれらの国々と同じ方向で価格政策をとるとしたら、それは文字どおり、風邪を引いて高い熱を出している人を氷ぶろにつけるような、あるいは点滴が必要な衰弱した患者から点滴を外して病院の外にほうり出してしまうような、それこそ歴史的な愚策としか言いようがないわけであります。大臣はいかがですか。
  62. 中川昭一

    中川国務大臣 たしか一九八〇年代にヨーロッパが輸出補助金あるいはいろいろな所得政策をとって、その結果、乳製品あるいは肉そしてワイン等が大量に在庫を抱えた、それでアメリカとの間の輸出戦争があったということは私も記憶をしております。  一方、現WTO協定の中では、いわゆる生産刺激的な政策というものについては、これはだんだん少なくしていかなければならないということでありますし、いわゆるAMSの削減等もこれは生産刺激的であるということで漸次減らしていかなければならないというような意味。一方では、生産に直接プラスの影響を与えないような条件不利についての直接支払い、これはあくまでも全部が全部不利部分をカバーするべきものではないわけでございますけれども、とにかく我が国としては、現時点においても、環境面に与える影響あるいはまた生産条件の不利性の問題等々を含めて、WTOとのことも念頭に置きつつではありますけれども、我が国固有の農政基本方針として、基本理念の第一番目、第二番目を中心とする四つの基本理念を推進していくということでございます。  一時期のEUがとったような政策は、現時点では国際的なルールの中でも決してとり得ないものであり、今後の交渉の中でも我が国が主張すべきものを主張しながら、国内の生産と国内の安定的な食料生産を守っていきたいというふうに考えております。
  63. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 それではお伺いいたしますが、食料農業農村基本法案では、その三十条で、国は、消費者の需要に即した農業生産を推進するため、農産物価格が需給事情及び品質評価を適切に反映して形成されるよう必要な措置を講ずるものとするということで、価格政策に市場原理導入を推進するということを宣言しているんじゃありませんか。その点は間違いありませんか。
  64. 中川昭一

    中川国務大臣 毎回この委員会で申し上げておりますように、私は、農業農村というのは国民理解と需要あっての農業農村であり、また、日本国民の健康や暮らしも日本の国内の農業農村あっての国民生活だという意味で、共生の関係になければならない。だからこそ、国民的な合意というものがあらゆる局面で必要であろうということを何回も申し上げているところであります。そういう前提に立って、自給率の問題にいたしましても、消費者の理解というもの、つまり、消費者が受け入れられるものであれば、当然そこには、付加価値も含めて生産者にとってもメリットがあるという前提をとって私はお話をさせていただいておるわけであります。  そういう前提で申し上げますが、三十条においては、おっしゃったとおり、国は、消費者の需要に即した生産を推進するため、農産物価格が需給事情及び品質評価を適切に反映して形成されるよう、必要な施策を講ずるものとする。これは、消費者の需要に合った農産物供給するということは、最終的には国内生産者にとってもいいものが売れていくという意味にも、裏から見れば理解ができるというふうに私は考えております。  なお、二条において、農産物価格の著しい変動が育成すべき農業経営に及ぼす影響を緩和するために必要な施策を講ずるものとするということがあることも御存じのことだろうと思います。
  65. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 その必要な施策とはどういう施策を指しているわけですか。
  66. 高木賢

    ○高木政府委員 まさに需給事情が反映される、あるいは品質がいいものができればそれが高く評価される、そういう評価のシステムなり市場のシステム、こういうことでございます。
  67. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 消費者は単純に安ければいいなんて思っていませんよ。私は消費地におりますから、このことだけははっきり申し上げておきたいと思います。  総理府の調査でも、外国産よりも高くても食料は国内でつくる方がいいのだ。生産コストを下げながらできる限りと設問でそうなっていますから、正式に読めば、外国産よりも高くても、食料生産コストを下げながら、できるだけ国内でつくる方がいい。少なくとも、米など基本食品については本当に国内でつくる方がいいのだと答えている人も含めますと、平成五年は八〇・四%でしたが、平成八年は八三・四%までふえているわけです。その議論はちょっと横へ置いても、生産者にとって市場原理がどうしてメリットになるのですか。  簡単に需給事情及び品質評価の適切な反映とおっしゃいますけれども、要するに、需給事情の適切な反映というのは、ちょっとでも過剰になっていけば買いたたかれるということであって、品質評価というのは、品質というのは極めて見る側の判断ですから、しかも農産物ですから、日照りとかそういうことによって随分、少し色目が悪いとかいいとか、いろいろ出てまいりますけれども、そういう品質に言いがかりをつけて買いたたく。だから、その本質は、大資本の流通支配に農産物価格の形成をゆだねるということなのです。  大事なことは、そこでは生産費が全く無関係の存在に置かれるということであります。そうではないですか。そして、必要な施策というのは、そういうことで進めていくとしたら、これは大変なことですよ。どうですか。
  68. 中川昭一

    中川国務大臣 買いたたくとか大資本が無理やり何かをするというような議論に行くということはまことに心外でございまして、例えば適正な価格のものが適正な品質の裏づけのもとで、これで売りたい、これで買いたいということが成り立つことがまさに市場経済の原則であるわけであります。  そして、その大宗を占めているのが、まさに今国会で御審議をいただいた卸売法の改善等の制度の充実であるわけでございますから、そういう意味で、先生が冒頭おっしゃられたとおり、国民的なニーズ、買う方の側から見ても、安全で顔の見える、そして品質のいいものであれば、多少高くても買いたいという比率が先生のデータでも年々さらにふえておる。  さらに、将来に対する食料の不安、人口が何年後には八十億になる、百億になる。しかし、食料の世界的な供給がそれに見合うだけの数字になっていないというようなことは、国民の大半の方が御存じであるわけでありますから、そういう中で安定的な安全な食料ということになれば、まさに国内生産基本であるということの認識がさらに国民の間で強まってきておるわけでございますから、どうも先生の御質問されている意味が、適切な値段と生産と消費との需給関係というものがまさにきちっとした形で決まっていくようにしていくことが、消費者、そして生産者にとってプラスになるのだ。そして、そのために万が一どちらかにいろいろな、例えば食料不足の場合あるいは生産が非常に不振な場合には、政府がこの法律に基づいてさまざまな対策を講じていくということでございます。
  69. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 もう少し具体的に言いましょう。大臣の地元の北海道です。農水省によってことし三月に発表された北海道農業現状農家の意向という調査があります。この調査は、ことしの一月に行われまして、農産物販売金額が五百万円以上の農家二千四百戸を対象に行われました。千六百五十六戸から回答がありました。  農業経営上の課題として、先行きが不透明だと答えた農家が六九%、一番高い。次いで、農畜産物価格が安い、これが六六%です。部門別で見ますと、稲作農家、つまり市場原理の導入で米価が下落して大変苦難している稲作農家は、およそ八割が先行き不透明だというふうに答えているわけであります。これらの農家は、全国的に見れば、もう文字どおり先進的な農家でありますけれども、その七割が農畜産物価格をもっと引き上げて経営の見通しが立つような農政を強く要望しているわけであります。そう読み取れませんか。  こういう状況のときに、政府は、価格政策に市場原理を導入して、価格の下落による経営打撃を前提とした農政を進めていこうとしているわけです。農業後継者もいなければ、高齢化している現在の農業者、大規模農家も含めて、今あなた方が進めようとしている価格政策がどれだけの打撃を与えていくことになるのか。その点はわかっていらっしゃるのですか。このような施策食料自給率引き上げどころか、逆にマイナスに作用するということがわかっていらっしゃるのでしょうか。
  70. 中川昭一

    中川国務大臣 北海道は私の地元でございますから、余り自慢話はしたくありませんが、非常に大規模で専業的で、そしてまた、非常にコスト意識というものが高い地域だと思います。一方、つくっているものが米、麦あるいは乳製品あるいはでん粉等、いわゆる政府管掌作物が中心でございます。政府管掌作物というのは、それぞれその制度が過去において必要だったわけでございますけれども、ある意味では、政府管掌であるがゆえに、いいものをつくったときのメリットというものに対して、自由なマーケットよりも、それに対する見返りというか、対価が少ないということを私自身感じておるところでございます。  したがいまして、いいものをつくれば高い値段で消費者が評価をしてくれるという体制につくっていくべく、米をああいう体制にし、そして乳製品あるいは酪農メーカーに対する新たな改善、あるいはことしじゅうにやります麦の制度の見直し、そしてこれからやってまいります大豆等の、いわゆる市場原理を利用した形で、しかも万が一のときには何らかのバックアップ措置というものもセットにした、新しい市場原理を基本とした作物の流通あるいは価格体系に変えていく。これはやはり需要者にとってもメリットがあるでしょうけれども生産者はもちろん高ければ高いにこしたことはないわけでございますから、そういう意味で、いいものをつくれば高く売れるのだということが、まさにこのメリットであるわけでございます。  繰り返しますが、もちろんデメリットもあるわけでありますから、それに対しては、政府あるいは団体等でいろいろな対策を講じていくということがセットになっての今度の改革であり、まさにこの方向が新しい基本法の今の三十条の条文と合致をしているというふうに御理解をいただきたいと思います。
  71. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 北海道にいらっしゃって、そういうふうに考えられるのかと思ったら、全く情けなくなってしまいますよ。麦に市場原理が導入されるということに対して生産者の皆さんがどれだけ深刻な受けとめをしているか、そういうことさえわからないのですか。  ここに、EUのルグラ農業局長が、WTOの協定の改定に向けて検討されている共通農業政策改革の後も、現在の制度をすべて存続させるということを明らかにし、農水省のインターネット「海外農業情報」というので伝えられたわけですが、こう言っているのです。ルグラ農業局長は、万が一に備えて、最低限の価格支持制度は維持していく、それをなくしてしまうのは愚かなことだと、二十一世紀も価格保証を続けるということを宣言しているわけであります。  そこで質問を続けますが、大臣は今、市場原理を基本とすれば、生産者の方も価格が上がればメリットがあるのだ、しかも、デメリットの方は、万が一のときはそれをバックしていく、そういう対策をとるのだということをおっしゃったわけでありますが、それは、三十条の第二項に、農産物価格の変動が育成すべき農業経営に及ぼす影響を緩和する、そのために必要な措置をとるということで書かれているわけでありますが、その育成すべき農業経営というのはどんな経営なのですか。  また、二十一条の方には、効率的かつ安定的な農業経営という言葉が出てまいりますが、この育成すべき農業経営と効率的かつ安定的な農業経営とは同じことなのか、違うならどこが違うのか、それぞれ明らかにしてください。
  72. 中川昭一

    中川国務大臣 まず、育成すべき農業経営というのは三十条に書かれてあるわけでございますけれども、一般的には、経営規模が大きくて、それから、資本装備の近代化等を通じた経営改善の意欲を持ち、効率的かつ安定的な農業経営に発展する可能性の高い農業経営をとらえた考え方であります。  その上で、効率的かつ安定的な農業経営とは、主たる従事者の年間労働時間が他産業並みの水準で、従事者の一人当たりの生涯所得が他産業従事者と遜色のない、現に経営をしている農業者のことをいいます。  なお、先ほどの先生のお話で北海道の例を挙げられましたので、一言だけ申し上げさせていただきます。  確かに、北海道にもいろいろな経営があり、いろいろなお気持ちをお持ちの方がいらっしゃいますが、少なくとも、全部とは言いませんけれども、北海道の農業者は自信と誇りを持って、一生懸命農業に取り組んでいるということだけは御理解をいただきたいと思います。
  73. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 一々反論しませんが、北海道の農業者が誇りを持ってやっていることは私も十分知っております。農業者というのは、大きい農家であれ小さい農家であれ、それぞれに誇りを持っております。そして、いわんや北海道というような、ああいう荒涼としたところを先祖が、先祖といったって、二世代、三世代程度の前の人たちが一生懸命あれだけのすばらしい農地を切り開いていったということの誇りは、それだけにその農業を守りたいという思いになるじゃありませんか。だから、この価格支持政策の問題について聞いているわけであります。  結局、育成すべき農業経営というのは、効率的かつ安定的な農業経営に発展する可能性のある農家を指すんだ、こういうことでありますから、そうなると、今は、稲作経営は手を挙げた者が減反に協力をしていれば、それは、稲作経営対策の対象者として、負担金を出せば経営対策に入ってくるわけであります。しかし、今の効率的かつ安定的な農業経営に発展する可能性がある農業経営を指すんだということになると、この稲作経営の方も随分、育成すべき農業経営の概念が変化をしていく、対象は変化をしていくということになってきますね。
  74. 堤英隆

    ○堤政府委員 現在の稲作経営安定対策は、今御指摘ありましたように、生産調整の実施とリンクをいたしております。したがいまして、生産調整の実効確保という位置づけもされております。  したがいまして、小規模な方におきましても、生産調整に従事された方でこの稲作経営安定対策にも加入するという意味では、稲作経営安定対策の効果を受けられるということは御指摘のとおりでございます。そういうものとして位置づけております。  他方で、この稲作経営安定対策につきましては、もともと何かということでありますれば、自主流通米価格が下がってどういう農家が影響を受けるかということをあえて申し上げれば、比較的小規模の農家の方よりは大規模に稲作をやっておられる方々の稲作依存度が高いわけでございますから、そういう農家の方々の影響が大きいということから見れば、これからこの問題をいろいろ考えて見直しをするとすれば、そういった稲作に依存している大規模農家経営の安定ということにも配慮した見直しをすべきではないか、そういう意味で私どもとしてはこの問題をとらえております。
  75. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 私の聞いているのは、そういう流れの中では育成すべき農業経営の概念は変化してくるということでしょう。
  76. 堤英隆

    ○堤政府委員 今お答えしたと思っておりますが、この概念としては、今の稲作経営安定対策はそういう両面を持ったものとして対応しておりますので、そういうものとして今後当面運用したいと思っております。これはことし初めての対策でございまして、これから実施に移してまいりますが、そういう実績の積み重ねの中で、また農家の方々のアンケートもとっておりますので、そういうアンケート、農家の方々の御意向等も聞きながら、見直しをしていく際に、稲作経営安定対策、それから稲作に依存している農家の方の経営の安定ということにも配慮していくべきだということを申し上げているわけでございます。
  77. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 結局、見直しをしていく、そして稲作経営対策の対象にならない農家がこれから生まれてくる、こういうことではありませんか。そして、そういう経営安定対策を大豆にも小麦にもサトウキビにも、ずっと今まで政府が価格保証してきたところの制度の中にも導入してくる、そういうことでしょう。
  78. 堤英隆

    ○堤政府委員 前段の点は、稲作経営安定対策と生産調整との仕組みをどういうふうに今後していくかということにかかわると思います。したがいまして、生産調整の今後のあり方、それから稲作経営安定対策を実施していく上で、たくさんの農家の方々の御意見を伺っておりますので、そういうことの御要望を踏まえて対応していくべきと思っております。  それから、麦につきましては、稲作経営安定対策と若干異なっておりまして、現在大幅な逆ざやの状況にございますので、すべて政府の方に来ております。そのことによりまして、生産者の方々の品質向上に向けての努力が十分報われない、こういう側面がございます。  したがいまして、農家の方々が知恵を出し創意工夫をしていただければそれに見合ったメリットが受けられるという形で、より品質向上等に向けての努力を促すことが求められているわけでございまして、そういうことを考えながら麦の管理改善、麦の対策を検討いたしております。  その際に、今申し上げましたように大幅な逆ざやの状況になっておりますので、この逆ざやをやはり麦作経営安定資金といったような形の中である程度受けとめていかなければ農家の方々が安心して営農にいそしめない、そういうことを念頭に置いて現在検討を深めているところでございます。
  79. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 要するに、品質ということを基準にして、政府の価格支持政策はやめていって、稲とは直接見合ったものではないけれども、そういう形というのですか、そういうもので当たっていくのだ、こういうことでしょう。  そうなると、いよいよ大事なことは、もう一回念を押しますが、育成すべき農業経営の概念というのは変わり得るのか、それとも固定的なものなのか。現在と同じなのか、将来変わるのか、そこだけはっきりしておいてください。
  80. 堤英隆

    ○堤政府委員 育成すべき農業経営のお答えの前に、麦につきましては、今政府買い入れにかわるものという御指摘がございましたけれども、そういうことではございませんで、政府買い入れの道を残しながら、農家の選択肢として、いい品質の麦をつくられた方につきましては民間流通という道を開きまして、それによります新たな所得の確保ということの道を開きたいということでございますので、その点は御理解をいただきたいと思います。  それから、麦あるいは米のいろいろな経営安定対策を講ずる上におきましての育成すべき農業経営というのは、固定的なものではないというふうに思っております。やはり生産構造も時代とともに変わりましょうし、それから生産、構造、いろいろな意味農業農村の現場も変わってくるわけでございますので、そういう意味で、未来永劫一定の固定したものというふうにとらえる必要はないと思います。  しかし、生産構造の変化というものがそう急激に出るわけではございませんので、当面私どもとしては、今の現状を踏まえながら、育成すべき農業経営としてはどういうものであるべきかということを検討していきたい、こういうことで申し上げたところでございます。
  81. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 よくわかりました。非常にはっきりしたと思うのです。  結局、三十条二項の持っている意味は、すべての農家を対象にするという規定ではなくて、そこに選別をもたらしてくるという規定なのです。そして、育成すべき農業経営の基準が、今すぐに変えるというわけではないけれども、将来固定されたものではないということは、将来変動する中で、たとえ現時点で一定の広い概念で措置されてきたとしても、将来的には影響緩和措置の対象外に置かれる農家が広く出てくる。そして、そのことは大変深刻な問題だ。だから、ここに規定されていることは深刻な問題だというふうに私は思います。食料自給率を上げるどころではない。農業者経営意欲を低下させ、農業生産を減少させ、自給率の下落につながっていく方向なのだということを指摘いたしまして、次の質問に入ります。  消費者にとって問題なのは、農産物価格を市場原理に任せてほしいということではない。先ほども申しました。安くて良質な農産物を安定的に供給してほしいということであります。日本農産物が極めて良質であることは、日本農業生産技術が世界一であって、生産者が極めて熟練していることから当然なことであります。問題は、農業資材価格の引き下げと農産物の流通コストの削減であります。これを着実に実施していけば農産物の消費者価格は確実に下がっていくわけであります。  この点についての大臣の御認識をまず明らかにしてください。
  82. 中川昭一

    中川国務大臣 まず、農業生産活動にかかわる生産費は、例えば稲作では肥料、農薬、農業機械等で約三割がコストに占められておりまして、経営への影響が大きいということで資材費の低減対策は重要な問題だと思っております。  製造、流通業の関係団体あるいは都道府県がそれぞれ平成八年度に農業生産資材費低減のための行動計画を策定し、関係者と連携しながら新しい知恵を出し合って、例えば安価な肥料の普及、あるいはシンプルな農業機械の廉価な供給等の推進に努めているところであります。また、そのほかにも生産資材関係、いろいろと関係者御努力されているということで、我々もこれをバックアップしていきたいというふうに考えております。  また、流通コストの低減は、今先生指摘のように、消費者に安価な生産物を供給するとともに、やはりその分付加価値という面からも生産者にとっても私はプラスになるというふうに考えておりますので、安全性と品質を保ちながら消費者に供給するということは重要な役割であろうというふうに思っております。  このため、先ほども申し上げましたように、卸売市場等物流拠点の整備、あるいはまた食品取引の電子化等のいろいろな効率化、高度化に向かって我々も努力をしていきたい。ただし、これも生産者あるいは流通関係、そして小売に至る一連の皆さんの連携した御努力というものも重要であろうというふうに考えております。
  83. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 農業資材価格の引き下げ問題からお伺いしますが、この問題は私どもが一貫して要求してきた問題です。しかし、実際に進展がないとしか言いようがないわけであります。大臣は今農業生産者団体が行動計画を打ち出して政府はそれをバックアップする、こういうことでありますけれども、私は政府の取り組みをここで聞いているわけです。  せっかく調べてきましたのでどういうことになっているかということを少し聞いてほしいのですが、統計的に見て、動力田植え機というのは九三年百二万に対して九七年は百七万、三十五馬力の乗用型トラクターは九三年が三百四十一万、九七年は三百六十万、自動もみすり機は九三年が四十一万、九七年は四十六万というように、ずっと上がっていっているのです。  肥料では、農家の肥料購入価格を見ますと、硫安が九三年六百七十五円、九七年六百八十六円、過燐酸石灰が九三年九百十六円、九七年九百五十八円、炭酸カルシウムが九三年四百八十三円、九七年五百四十二円、ほとんどみんな上がってきているのです。一々農薬にまで触れませんけれども、横ばいないしは値上がり。  だから、そういうような状態の中で生産コストが上がっていくばかり、それで農産物価格が引き下げられたら、これはもう農業経営にとって確実に影響を与えていくということになると思いますが、大臣はいかがですか。
  84. 中川昭一

    中川国務大臣 今の数字だけを見れば、それはコストの上乗せ要因だろうというふうに思いますが、細かいことを挙げれば切りがありませんけれども、上がるものもあれば下がるものもある。例えば、農業用トラクターの車検なんかはまさに、これを撤廃することによってコストとしても非常に下がってきたわけでありますし、いろいろな税制上の特例等もとっておるわけでございますから、先生は今高くなったものだけをお挙げになりましたけれども、コスト的に下がっている部分もあるわけでございます。
  85. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 私は今農業用資材のことについて聞いているのですが。  本法案の中でも三十三条で、国は、農業経営における農業資材費の低減に資するためという規定があります。私は、これは悪いと言っていないのですよ。この法律にこういう言葉が盛り込まれたことは、これはいいことです。しかし、これで農業資材価格が引き下がると思ったらそれはちょっと違うので、今までと違う政府の対策を示してほしいと思うのです。この規定で今までと違うという保証はどこにあるのか、それを聞かせてください。
  86. 樋口久俊

    ○樋口政府委員 先ほど大臣からお答えを申し上げました行動計画、実はこれは若干経緯がございまして、一つは、政府が音頭取りをいたしました流れの中で行われていることでございます。八年に行動計画ができまして、関係者、団体それから都道府県まで、具体的な対応を決めたという点が一つ特徴でございます。  ただ、具体的な対応が九年から始まっておりまして、事例を二つほど御紹介しますと、一つは全農さんが、なるべく安い肥料を調達するということで、ヨルダンから開発、輸入を進めておられまして、逐次その輸入量は拡大をしてきております。それから、機械の方でも基本的な性能に着目をしました非常に廉価な、先ほどシンプル機械という言葉が使われたわけでございますが、このような機械が逐次いろいろな型式で広がってきております。  これがかなりきちっとした動きになってまいりましたのが九年から逐次、それが十年、またことし始まってきておりますので、私ども中心になってといいますか、進めてまいりました具体的な成果がこういう形でそれぞれ、例えば農薬でございますとか等々へ広がってくるものと考えております。
  87. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 私は、政府が音頭をとって生産者団体に行動計画をつくらせてということで終わるのじゃなしに、やはりメーカーに本当に指導をしていかなければならないというふうに考えるわけであります。  時間の関係がありますので、流通コストの方に移していきたいと思います。  農産物の消費者価格の八割が流通コストにかかっているのです。ここに抜本的なメスを入れることこそが消費者価格の引き下げにつながっていくわけであります。  これは少し話がそれますが、私はこの際ちょっとあれしておきたいと思うのですが、大臣、苫前農協というのを御存じですか。大臣のおひざ元でしょう。首を振ってくれたらいい、いきなり言うたから。
  88. 中川昭一

    中川国務大臣 いわゆる選挙区でありませんけれども、近いです。
  89. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 北海道ですからね。その苫前というところの農協から、北海道にたまたま旅行した家族がカボチャを買ってきました。余りおいしいのでどこかなと思ったら、苫前農協が売っていたカボチャでしたので、それからずっと私はその季節になりますと注文をして取り寄せておりますが、何とカボチャの値段が六個で二千円、運賃が千八百円です。  流通コストは運賃だけじゃありません。そのほかに、農協の手数料もあれば、段ボール代もあれば、流通段階でかかっていく費用、そういうものもたくさんあるわけです。要するに、こういうようなところの流通コストを引き下げるということは非常に大事な問題でありますが、一体、そのために従来と違うどのような体制をつくられるのか、そこを明らかにしてください。
  90. 福島啓史郎

    ○福島政府委員 先ほど大臣から御答弁がありましたように、消費者に良質な農産物を合理的な価格供給していく、そのためには、流通段階におきますコストの削減を図っていくことが重要な課題となるわけでございます。  ちなみに、食料品の流通段階別の価格形成を追跡した調査がございます。これは、ある時点でございますので、そのときの値段にもよるわけでございます。  例えばトマトを例にとりますと、小売店頭価格を一〇〇としますと、生産者価格の取り分が六三%、したがいまして、中間が一五%、また小売が二二%のマージンになっているという、それはそのときでございますので、価格によって違ってまいります。また、リンゴを例にとりますと、同じように小売店の店頭価格を一〇〇としますと、生産者価格が五四%、中間経費が二二%、小売マージンが二四%というような調査がございます。  そういうことでございまして、必ずしも生産者価格が非常に低いというわけでもないわけでございます。それはその時々の価格によっても違ってくるわけでございます。  しかしながら、こうした流通コストの削減のために、先ほど大臣から御答弁がありましたように卸売市場等の物流施設の整備、あるいは物流の効率化または取引の電子化等によります流通の各段階での連携、また小売業者なり卸売業者の事業の共同化、組織化の推進等を図っているところでございます。
  91. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 こちらが物を言うと、じきに都合のいい数字を引っ張り出してこられるから困るのですが、これは私がやみくもに数字を、八割の流通コストと言っているわけじゃなしに、ちゃんと皆さんの出している資料から引っ張り出して聞いているわけです。  いずれにしても、私は、流通コストを引き下げるキーワードというのは、先ほどもありましたが、やはりコストをできるだけかけない簡素な流通、その点では、地場の流通、これが大事だというふうに思うのです。可能な限り地場のものを食べる。  そういう立場からいえば、都市農業の活性化ということも非常に大事だと思いますが、せっかくの機会でありますので、三十六条二項にもそういうことが書かれておりますけれども都市農業ということについて、単なる市民農園とかそういうことじゃなしに、政府のこれから必要な施策というのはどういうものなのか、明らかにしておいてください。
  92. 福島啓史郎

    ○福島政府委員 最近、保冷技術高度化なりあるいは高速道路網の発達によりまして、また他方、小売店側では、量販店が進出する、そういうことによりまして広域流通化が進展しているわけでございます。  一方、今先生おっしゃいましたように、より鮮度の高いもの、あるいは有機農産物等、あるいは生産者の顔の見える商品、そういったものを求める消費者の意向も強いわけでございまして、朝市あるいは産直販売等の取り組みも広がっているわけでございます。  そういうことで、こうした流通経路の多元化といいますのは、多様化する消費者ニーズに的確にこたえていくことにもなるわけでございますし、また、農業者サイドから見れば、所得確保あるいは国内農産物の需要確保に寄与するわけでございます。また、農村の活性化、都市農業を含めまして、農業の発展、さらには、国民農業農村への理解、関心を深めることにもなるわけでございます。  そういうことで、こうした多様化する消費者ニーズにこたえながら、市場流通とそれから朝市なりあるいは産直、そういった取り組みが相互に補完し合いまして、国民への食料安定供給が図られるよう、また農業者所得確保が図られるよう、さらに国内農産物の需要確保が図られるように、施策に努めてまいりたいというふうに思っております。
  93. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 朝市、産直ももちろん大事です。そして、それは大いに支援をしていただきたいわけでありますし、それから、地方の卸売市場、これも大事にしなければいけない。私は、きょうは、もうどうせいずれ卸売市場法がこの委員会でかかってきますので、そのときにしますけれども、政府の方向は、地方卸売市場というものが非常に軽視されて、財政状況を開設者に報告させて、それが悪ければ改善命令をかけて、つまり、淘汰し、リストラをかけていくという方向でありますので、こういうことではなしに、やはりもっと地場の農業農産物がそこで生かされ、それがたとえ小規模な市場であってもそれを大事にして、そしてそこの人たちはそれを食べていくということをベースにしながら、大いにやはり、消費者の中で広がっている産直だとか、あるいは生産者のお母ちゃんがやっている朝市だとか、そういうものはもっと支援をしていくということが非常に大事だということを申し上げておきたいと思うわけであります。  時間が大変半端になってしまいまして、実はちょっと途方に暮れているわけでありますが、入り口のところだけ聞いておいて、その中身は次の質問の方へ譲っていきたいと思いますが、家族経営の問題なんですね。  本来、農業基本法と称するのであれば、家族経営法案の中にきちんと位置づけをするべきでありますけれども、しかし、法案の二十一条は、そういう効率的かつ安定的な農業経営育成し云々ということで、農業経営の規模拡大その他農業基盤整備の強化の促進に必要な施策を講ずるもの、こうなっていて、ここで言っている効率的、安定的な農業経営というのは、今回初めて聞いたわけじゃなしに、もう既に九二年の六月の新政策のときでも明記されていて、そこでは、十年後には安定的な経営体として、稲作では十ヘクタールから二十ヘクタールの単一経営が五万戸だとか、五ヘクタールから十ヘクタールの複合経営を十万戸にするとか、そういうことを書かれているのですが、国が効率的、安定的な農業経営育成するということは、つまり、新政策をそのまま法文化した、そういうふうなものではありませんか。
  94. 高木賢

    ○高木政府委員 効率的かつ安定的な農業経営といいますのは、まさに新政策に淵源はありますが、現実には既に農業経営基盤強化促進法という法律の形になっておりまして、その第五条で、効率的かつ安定的な農業経営ということが規定されております。そして、その農業経営基盤強化促進法に基づきまして、都道府県が基本方針を立て、市町村が基本構想を立て、その構想に合致した農業経営を営もうとする人につきまして認定をし、その育成を図っていく、そのゴールとして目指すべきものが効率的かつ安定的な農業経営ということでございます。
  95. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 要するに、規模拡大一辺倒の政策をさらに加速していこうという方向であります。しかし、大規模稲作農家ほど米価の暴落や減反で最も大きな打撃を受けている。稲作農家は大変深刻になっている。この路線は、ほかの、畜産でいえば、外国の輸入飼料に依存した規模拡大が家畜のし尿処理問題だとか環境問題を引き起こしておりますし、野菜の大規模生産団地の事業が連作障害や農薬への過度な依存を招いたものだということで、これは反省が必要だというのが今日の国民の合意であります。その点についていかがお考えですか。
  96. 高木賢

    ○高木政府委員 既に効率的、安定的な農業経営という概念を提示した段階におきまして、効率一本やりでないということは明白になっていると思います。言葉の上では効率的かつ安定的ということで、具体的には、効率性だけでない、労働時間につきまして、他産業並みの労働時間ということでのゆとりといいますか、安定性というものも含めているわけでございます。  実際に認定農業者制度の運用におきましても、規模の拡大だけでなくて、労働条件といいますか、就業条件の改善をする場合にも認定対象になるというふうに制度的にも担保されているところでございます。
  97. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 それは弁解なんですよ。結局、効率一辺倒というふうな状態になっているのです。私は、もうきょうは議論をする時間が残念ながらありませんから、次に譲りますけれども、しかし、私はここに、これは衆議院の調査局のまとめた学識経験者の意見が載せられております。非常に端的な指摘だと思いますので、最後にこれを読み上げて、次の議論の方に譲っていきます。  これは駒沢大学の石井先生が発言していらっしゃるわけですが、「実はヨーロッパの構造政策というのは決して単純な規模拡大論ではなかった。フランスで言えば上の方も押さえて、農業をもって自立経営をできるだけ多く維持育成するというのが核心でした。そういう点を欠落して、規模拡大・農地流動化ばかりを強調し、それがうまくいかない。それで今度は家族経営の意義を軽視して、多様な担い手の育成だといって、いろんな経営類型を持ち出してくる。これについても私は疑問を感じています。」ということで、その前段に、構造政策の問題でありますけれども、規模拡大とか、農地流動化だとか、多様な担い手の育成だとか、認定農業者等の担い手の特定だとか、そういう問題が出ておりますが、自分はそのことに疑問を感じているということを発言していらっしゃいます。私もまた、そのとおりだというふうに考えます。  議論はこの次に移しまして、これで終わりますが、最後に、この点について大臣の御意見を聞いて終わりたいと思います。
  98. 中川昭一

    中川国務大臣 日本農業経営体の九九%以上が、法人形態みたいなものもありますけれども、実質家族経営形態がほとんど九九%であります。  その中には、育成すべき農家とか、いろいろな分類もあるわけでございますが、とにかく、農村地域としてのいろいろな機能あるいは文化的、歴史的な側面というものを考えたときには、先ほどの、三十条だったかな、家族経営もきちっと位置づけをする。ちょっと正確な条文、今、置いてきましたのであれですが、家族経営位置づけというものも基本法上に明記されておるわけでございますし、また、実態上も、農村社会において家族経営が数的にいっても基本であり、多分先生は、育成すべきとか、法人形態と違う意味での家族経営体だという御質問であったとしましても、そういう家族経営位置づけというものは、依然として大きな意味を持つ存在だと考えております。
  99. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 もうこれで終わりますが、家族経営こそ、持続可能な農業を進めていくためにも、今非常に大事な存在になっています。だから、私は、この農業基本法で示されているように家族経営そのものが選別されていくという方向については、それはとても容認することはできないということを申し上げて、質問を終わります。どうもありがとうございました。
  100. 穂積良行

    穂積委員長 午後四時から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時休憩      ————◇—————     午後四時開議
  101. 穂積良行

    穂積委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。上田勇君。
  102. 上田勇

    ○上田(勇)委員 公明党・改革クラブの上田でございます。  きょうは、食料農業農村基本法案につきまして、何点かにわたりまして質問させていただきます。  まず初めに、今回の食料農業農村基本法案、新農業基本法とも言われているわけでございます。基本法を変えるということでありますので、農業政策基本的な方向を大きく変えていこうという一つの大きな極めて重要な法案であるわけであります。  まず最初に、今の農業基本法昭和三十六年に制定されたものでありますが、この政策目標というのは、大きくいって、農業生産の選択的拡大、それから農産物価格安定、農業所得の確保、そして三つ目として農業構造の改善、これらが柱となっているわけであります。  それぞれの項目について、これまで、昭和三十六年以来いろいろと社会情勢が変遷したことは承知しておりますが、このいわゆる農業基本法が目指した目標、それはどの程度達成されたというふうにお考えなのか。基本法に基づきますこれまでの農政についての農水省としての評価を、まず大臣にお伺いしたいというふうに思います。
  103. 中川昭一

    中川国務大臣 昭和三十年代の前半から、当時こういう言葉があったかどうかわかりませんが、今後の農政についての大きな議論があったのではないかという中で、今先生指摘のように、農業農村向上という観点から、都市農村との生産面あるいは所得面、生活水準面での格差を何としても是正しなければならないということで、いわゆる基本法、最近ではいろいろ基本法がございますけれども、その中でも比較的早い時期に農業基本法というものが昭和三十六年にできたわけでございます。  格差是正のために、経営規模の拡大等による生産性向上、あるいは自立経営の広範な育成、それから需要が拡大する作物への生産移転等を目指しました。具体的な政策といたしましては、生産政策価格流通政策、そして構造政策の三本柱で方向づけたものでございます。  評価でありますけれども生産政策につきましては、基盤の整備あるいは技術高度化による生産性向上、それから需要が拡大する作物の生産増大、いわゆる選択的拡大による総生産増大を図ること。そしてその結果として、米、麦中心生産から畜産物、果実、野菜等広がりのある生産が行われるようになったと考えております。  また、価格・流通面につきましては、価格所得の過度の変動の防止、消費者の負担可能な範囲内での価格水準の安定等の機能が期待されていましたが、実際には、所得確保に強い配慮が行われた結果、農家経営の安定に効果はあったものの、消費者ニーズ農業者に的確に伝わらずに、農業者経営感覚の醸成を妨げて、国産農産物の需要の減退を招いたという点が考えられます。  また、構造政策につきましては、規模拡大を通じた自立経営育成を目指しておりましたが、施設利用型については一定の規模拡大が図られましたが、土地利用型農業については、当時の一般的な経済情勢、いわゆる高度経済成長の中で農地価格が上昇して、資産的保有の傾向が強まって、北海道を除いては経営規模の拡大がおくれ、自立農家育成に結果的に効果が上げられなかったということでございます。  その結果といたしまして、生産性は相当向上いたしましたが、他産業がもっと生産性向上したということで、格差是正には至らなかった。また、生活水準につきましては、所得面で世帯別で勤労者世帯を上回るようになったものの、生活基盤整備、道路、下水道等につきましては、都市との格差が依然として大きいという現状でございます。  さらには、当時予想できなかった著しい変化といいましょうか経済成長国際化の進展で、自給率の大幅な低下、それから農業への新規就業が他産業の方に行ってしまいまして、農業人口の減少と高齢化、過疎化の進行といった問題が生じたということでございます。  当時として目指すべき方向、一部分は達成したと言える部分もございますけれども、予想外のいろいろなファクターも加わりまして、さらには当時想定し得なかった環境面あるいはまた国土保全の問題、景観の問題等新たな問題といいましょうか、農政上の大きな課題として、当時予想し得なかったいろいろな問題も発生するようになりまして、今基本法の中ではそういうものも新たに検討し、位置づけをしていかなければならないというふうに考えております。
  104. 上田勇

    ○上田(勇)委員 全体からすれば、農業基本法で目指した方向の政策目標というのは必ずしも十分に達成されてこなかったという評価だというふうに思います。  その中で、特に構造政策については、いろいろな施策をとってきたものの、やはり我が国の農家経営規模というのは、拡大傾向はずっと続いてきてはいるものの、依然として極めて小規模にとどまっておりまして、その生産性について、当初目標としてきたものは到底達成できていないというのが現実ではないかというふうに思います。  ただ、いろいろな原因につきまして今大臣の方から御答弁をいただきましたけれども一つは、農林水産省として推進してきた農業政策、それと国の経済社会全般にわたる政策が必ずしも方向として一致していなかった面があったのではないか。農政としては、基盤整備を行ったり、各種の構造政策を行って農家労働生産性向上に努めたものの、結局はその余った労働力というのは他産業に行ってしまって、その結果が、本来であれば規模の拡大を目指したのでしょうけれども、実はそれは兼業化という形で経営規模は零細なまま残ってしまった。これはやはり農政だけではなくて、国の全般の経済産業政策の結果であるというふうに考えるわけであります。  そこで、今回この基本法を新しく制定して新しい農政政策目標を立てていくわけでありますが、この際にもやはり単に農政、農林水産省の行政だけではなくて、国としての経済政策社会政策、そうしたものの調和、一致が必要だというふうに考えますが、そういう環境というのが今できているのでしょうか。その辺の大臣の御見解をお伺いしたいというふうに思います。
  105. 中川昭一

    中川国務大臣 先生指摘のように、規模拡大といったいわゆる構造政策的な面で見ましても、例えば昭和三十五年と比較いたしまして、全体としては伸びておりますけれども、北海道が三・六倍、都府県では一・二倍ということで、全体としてはそう大きな伸びではない。  その原因が、今答弁申し上げ、また先生からも御指摘がありましたように、生産性向上、つまり単収が上がる、そしてまた、技術等の向上によりまして労働時間、従事する時間が非常に少なくなるということで、同じ田んぼや畑を持っていても少ない労働時間で収量が上がるということと、一方では、土地の価値が上がるということで流動性が非常に低くならざるを得なかった。他産業で、いわゆる兼業でほかの仕事をしながらも、農業の方でも粗収入が上がっていく、あるいはまた所得が上がっていくという状況で、規模拡大等、あるいは土地流動化等に貢献することができなかったということが結果的に言えるというふうに思います。  そういう中で、新しい基本法におきましては、先生指摘のように、経済全体の中での農業、あるいは広い意味での食品産業という位置づけからの御質問でございますが、GDPでも約五十兆円と、約一割を占める重要な産業の一部門でございますし、また、日本が御承知のとおりの世界一の食料純輸入国であるということから、経済政策、特に貿易政策、さらには消費者に一番身近な場所にあるということで個人消費等のかかわり合いも非常に敏感といいましょうか、影響が大きいというような状況があるわけであります。  そういう中で、小渕内閣のもとでの農業位置づけでございますけれども、明治そして第二次世界大戦に続く我が国経済社会の第三の改革という位置づけの中で、総理の五つのかけ橋という政策が施政方針演説で発表されております。  世界へのかけ橋として、国際社会における我が国の責任の遂行、繁栄へのかけ橋として、経済構造改革の実現による経済繁栄の実現、安心へのかけ橋、少子高齢化への対応、安全へのかけ橋、環境問題への対応未来へのかけ橋ということで、科学技術と生涯の生活に安心を実感できる社会基盤の整備という五つのかけ橋があるわけでございます。  本法案は、こうした改革が求められております現在の経済社会情勢のあり方を踏まえまして、世界の食料の安定に資するための国際協力の推進、効率的、安定的な担い手が生産部門の相当部分を担う農業構造確立を通じた我が国農業の体質強化、三番目としまして、高齢農業者活動促進農業の自然循環機能維持増大、そして農業農村の果たす多面的役割の発揮、農業や食品の加工、流通に関する技術の開発といったことを基本法の柱と位置づけまして、現在における大きな改革に十分調和した形で、将来にわたってその目的が達成できるようにこの法律位置づけ、そして施策を推進してまいりたいと考えております。
  106. 上田勇

    ○上田(勇)委員 私が申し上げたかったのは、今回のこの新農業基本法、我が国の農業の目指すべき方向としては基本的には正しいのではないかというふうに思いますが、ただ、それを実現していくためには、単に農政だけではなくて、経済政策社会政策、そういったものが同じ方向に、一つの方向に向かっている中で位置づけていかなければ、結局は国全体の政策からすれば相矛盾した局面も出てきて、実際には、この基本法で目指したものが実現できなくなってしまうおそれがあるのではないかということであります。  農業基本法のときにも結局はそういった面が出て、昭和三十六年以来、冒頭大臣もおっしゃったように、必ずしもその目指してきた方向と現状が一致、達成できなかったという事態になってしまっているということでありますので、そこは、単に一つの省庁ごとのそういうような考え方ではなくて、国全体として、経済政策社会政策、そういったものの調和を一層図っていっていただかなければならないというふうに御要望を申し上げる次第でございます。  それで、今回、そういう意味では農業農政基本となりますこの基本法が改正になるわけでありますが、冒頭申し上げましたように、名称が食料農業農村基本法だ。名は体をあらわすというふうにいいますが、この基本法案の名称がこれからの政府の施策展開の方向を最も端的にあらわしているのではないかというふうに思います。  名称に食料農村という新しい言葉を入れましたが、この意味はどういうものなのか、また、これは今後の政府の各種の施策実現していくに当たっての視点、そういったものを大きく変えるものではないかというふうにも思われますけれども、その辺についてのお考えをお聞かせいただきたいというふうに思います。
  107. 高木賢

    ○高木政府委員 御指摘のありました名称の問題でございます。  これは、現実実態として、今までも大臣からしばしば触れていただきましたが、食料について、食料自給率の大幅な低下という事態が生じている、また、中山間地域等を初めとして、農村社会において高齢化、過疎化が進行している、こういう大変厳しい実態にあります。その一方で、国民の皆様方からは、良質な食料の安定的な供給に対する期待、要請が高まっている。また、農業農村の持つ多面的機能の発揮に対する期待も高まっております。  こういう農業をめぐる事情の変化、あるいは国民からの要請ということを考えますと、まさに今のお話にありました、体の方として、やはり食料安定供給の確保ということをぜひとも農業なりの役割として明示しなければならない、また、国土保全なり景観の保全、あるいは文化の伝承といった多面的機能についても、これも国民の期待するものとして明確にしなければならない、こういう事情にあると思います。  そして、現にこの新しい基本法案では、そういった国民の期待する二つ役割を明記するとともに、それを支える我が国農業の持続的発展と農村振興ということを政策基本理念として位置づけたわけでございます。  こういうまさに大きな枠組み、柱といたしまして、食料ということと、それから、その安定供給を支えるグラウンドとしての農業だけでなくて、農村振興ということが明示されますと、まさに体をあらわすものとしては、農業基本法というだけでは狭きに失するということでありまして、食料政策というものが新たな基本法の中にメーンの柱として盛り込まれている以上、名称としても、食料というものを入れる必要がある。  また、農村振興ということが、時あたかも農林水産省の新たな設置法でも農村振興が任務ということで明記されましたけれども、これも、農業を支える土台としての農村位置づけを明確にする必要があるということで新しい基本法にも明記したわけでございますが、そういう趣旨を名称にもはっきりさせる必要があるということで、農業ということが当然中核ではありますけれども、それのみで包摂し切れない、食料という範疇と農村という範疇を体をあらわすものとして名称にも盛り込んだということでございます。  特に、これから国民合意のもとで農政を推進していくという考え方に立ちますと、国民の求める食料安定供給なり、農村振興ということを加えた幅広い農業振興ということが必要になってきているのではないかということで、題名を、食料農業農村基本法ということにいたしたわけでございます。
  108. 上田勇

    ○上田(勇)委員 今の御答弁にもありましたが、この法案の中では、農業の持つ多面的機能がかなり強調されております。こうした農業生産活動や、そのために利用されるさまざまな農業用の施設などの多面的機能、公益的な機能の重要性については、今は広く認められているところであると考えますけれども、他方、農業生産活動による自然環境への負荷というのも、これもまた重大な課題となっているというふうに思います。  我が国ではともかくといたしまして、こうした農業の環境への影響というのは、アメリカやヨーロッパなどではむしろ環境政策という中で非常に重要な位置づけとなっているわけであります。また、我が国におきましても、必要以上の肥料や農薬の投入、また、畜産から出ます排せつ物による水や土壌の汚染、そういった課題にも取り組まなければならないというふうに思っております。  そういう意味で、これからの農政を考えるときに、肥料や農薬の使用を極力抑えた、環境への影響の少ない、よく持続可能な農業というようにも表現されますが、そういった展開というのが、今後の農政の柱として位置づけられるべきではないかというふうに考えております。また、近年、食品の安全性とか環境問題に対する消費者の関心も高まっておりまして、消費者のニーズにもまたこたえられることが低投入型の農業なんではないかというふうに思うわけであります。  法案の中では、多面的機能というのが基本理念の中で強調されておりますけれども、実際の施策の方を見てみますと、確かに第三十二条の関係で書かれてはおりますが、農政の柱というような位置づけではないというふうに思います。もう少しこうした持続可能な農業、低投入型の農業についての取り組みが必要かと思いますけれども、その辺のお考えをお伺いしたいというふうに思います。
  109. 樋口久俊

    ○樋口政府委員 お話がございましたように、農業が将来にわたりその多面的機能を発揮していけるようにするためには、継続的に農業が営まれるということが大変大切なことでございます。そのためには、農業生産のあり方を、環境と調和しつつ持続的に発展できるという農業本来の特質が十分生かせるような形にすることが重要であると考えております。  しかしながら、お話もございましたが、近年、生産現場を見ますと、土づくりの減退や、化学肥料や農薬への過度の依存というようなことがございまして、例えば水質汚濁などがあったりして、環境への負荷が心配されるような状況になってきているということもございます。  このような状況に対処するために、また、お話ございました消費者ニーズも、化学肥料や農薬の使用を控えた農業に対する関心が高まってきている等々の状況に対処するということで、堆肥などの活用によります農地生産力の維持増進のために、まず土づくりを十分に行うこととあわせて、化学肥料や農薬の使用の低減を行うということで持続的な農業を推進することが重要という考え方に立ちまして、今国会に、若干長い名前の法律案で恐縮ですが、持続性の高い農業生産方式の導入の促進に関する法律案というものを提出いたしまして、御審議をお願いしているところでございます。  またあわせまして、十一年度予算におきましては、堆肥などの有機物の供給の施設とか、それから過剰にやり過ぎないというようなことをいわば担保するための土壌診断のための施設でございますとか、そういう予算をお願いしたり、あるいは施肥とか防除の技術につきまして、濃密な普及指導を現場で行うというような予算、あるいは新たな施肥、防除技術を開発するための試験研究を実施するための予算等々を措置してございます。  このような施策を円滑に実施しながら、環境に優しいといいますか、配慮をした農業の一層の推進に努めてまいりたいと思っておるところでございます。
  110. 上田勇

    ○上田(勇)委員 今御答弁にありましたように、農業の持つ多面的機能、これは広く認められているところなんですが、それは、農業サイド、農村の方からも、この多面的機能を守っていくんだ、そういう積極的な取り組みが必要だというふうに思うわけであります。でなければ、今、多面的機能とはいっても、なかなか農村に行っても、水路には魚はいない、田畑に出ても鳥や虫もいないというようなところもありまして、それが本当に十分に多面的機能を果たしているんだろうかということになりますと、私は大いに疑問を持つところであります。  そういう意味で、これまでもいろいろ有機農法等特別な形態での農業の推進というのは図られてきているところでありますが、そういう形だけではなくて、農業全体を環境に優しい持続可能な形で進めていく、ぜひそういう方向に持っていっていただきたいというふうに考えるわけでございます。  話はまた変わって恐縮でございますが、次に、ちょっと価格政策のことについてお伺いをしたいというふうに思うんです。  まず最初に、価格の問題を話すときに、我が国の食料品、農産物価格というのは、他の主要先進国と比べますと、やはり相当割高だというふうに言われております。農水省の調べでも、東京での食料品の価格というのは、主要先進国の大都市、ニューヨークやロンドン、パリといったところに比べると、やはり相当割高であるという資料が出ております。  こうしたいわゆる内外価格差の問題でありますが、私は、何も農産物あるいは食料品の価格というのが、国内の他の物品に比べて割高だと言っているのではないんです。また、それを強調して、さらに農産物のコストダウン、農業のコストダウンを図れということを要求するものでは必ずしもありませんが、消費者にとって、内外価格差という問題が大変な不満になっているのも事実であります。  そこで、まず初めに、いわゆる内外価格差の問題の実情及びその原因について、農水省としてどういうような御認識をお持ちなのか、お伺いしたいというふうに思います。
  111. 高木賢

    ○高木政府委員 内外価格差現状考え方についてのお尋ねでございます。  我が国農業につきましては、国土が狭いという基本的条件、経営が比較的零細であるということ、さらには使用しております生産資材が割高であるということから、諸外国と比べて生産コストが高くならざるを得ない面があるというふうにまず思っております。  それから、消費者が新鮮で良質なものを志向する、あるいは地価とかエネルギーとか人件費、こういったものが比較的高いわけでありまして、流通、加工コストも高くなっているということで、我が国の農産物並びに食料品の多くは、外国産と比べますとかなりの内外価格差が存在しているというのが実態でございます。  一方、我が国の食品産業という点から見ますと、内外価格差があることによって、食料の製品あるいは半製品の輸入がふえる、あるいはその結果として食品製造業のいわゆる空洞化という問題をもたらすということ、そしてそういうことが進みますと、国産の農産物の行き先がなくなって需要減少を招く、こういう事態が発生し、また発生するおそれがあるというふうな状態だと思います。したがいまして、内外価格差の縮小というのは極めて重要な問題であると思います。  この縮小を図るために、農業生産の面では、新しい革新的な技術の開発、普及、あるいは農業構造の改善なり農業経営合理化といった生産性向上対策を講ずる必要があるというふうに思います。  それから、流通、加工面におきましては、食品流通業の効率化対策、これは市場を初めとする流通の効率化、あるいは製造、加工を行っております食品産業経営体質の強化対策、これも別途、加工事業に対する助成措置の継続の法案もお願いをいたしておりますけれども、こういったことが必要であると思います。  また、生産資材の供給面では、諸規制の見直しによりまして関連業界の自由競争を促進するということによる資材費の低減対策、こういった原料から製造、加工過程、流通過程、万般にわたる取り組みが必要であるというふうに考えております。
  112. 上田勇

    ○上田(勇)委員 今のお話で、内外価格差は縮小していかなければならないということだったと思うのですが、同時に、今内外価格差が発生している原因についての御認識では、そういった原因を見てみますと、なかなかそう簡単に縮小できるというようなものではないということも今感じました。  そこで、縮小するように努力していくということなんですけれども、これは国際価格に近いものを目指していくという方向なのか、それとも、やはり国内のさまざまな事情から見て、相当程度の割高感、内外価格差の存在というのはやむを得ないというふうにお考えなのか、その辺、少し御説明をいただければというふうに思います。
  113. 中川昭一

    中川国務大臣 具体的なことにつきましては、官房長から補足があれば答弁させますが、まず一つは、日本が非常にある意味では自然条件に恵まれているという部分と恵まれていないという部分と両方あるわけで、これは我が国だけの特徴ではございませんけれども、例えば、国土が狭いとか急峻であるとか、また雨が多いというプラスとマイナスと両方あるとか、いろいろあるわけでございます。しかも、狭い面積に一億二千六百万がいる、そして生活水準が非常に高いという条件があるわけであります。  やはり農業の規模というものが、一戸当たりにしましても非常に規模が小さい、そしてまた農地価格が非常に高い、それから、生産に係るコスト、例えば、電気料金がアメリカの三・三倍とか、ガソリン価格が二・六倍とか、いわゆる生産の根っこになる部分のコストが既に高いという状況の中で、できたものが最終消費者に渡るまでの運搬コストを初めとするいろいろなコストがさらに乗っかってくるということで、どうしてもこれは海外に比べて高くなりがちだと思います。  また、食料品の内外価格差なんかを見ましても、世界の主要都市、ニューヨーク、ロンドン、パリ、ハンブルク、ジュネーブの表が手元にありますけれども日本よりも高いものもあれば安いものもある、これはいわゆる消費物資としての価格表だと思いますけれども、そういう意味で、相対的に高いということではあると思います。  しかし、生産面あるいはまた流通面等々の努力によって、各農産物についてもいろいろな努力によって、農産物の値段に対して生産者を初めとする関係者が随分と努力をしてきた。また、消費者も、安全、安心、あるいは将来に対するいろいろな見通しからいって、国産に期待をし、多少高くてもいい国内品を買いたいというニーズがあることも先ほど午前中の委員会でありましたけれども、やはり消費者から見れば安いにこしたことはないわけでございます。  そういう意味で、いいものを買うということが、やはり生命に直接関係のある農産物食料品の場合にはまず第一にあって、したがって国内での生産というものが基本というか中心にあるという前提の上で、やはり生産者の方もいいものを適切な価格供給する、そして、消費者の方もそういうものを優先的にといいましょうか、消費者ニーズとしてマッチしたものを買っていくというところに、まさに中長期的な日本食料生産、そして消費の共生関係というものが今後ますます必要になっていくわけであります。  高ければいいというものでもありませんし、また、安くするための努力を超えて無理やり安くしろということも、これもまたなかなか生産サイドとしては厳しいものがあるわけでございますから、その辺をお互いに理解し合って、共生関係の前進に努めていくということもこの基本法一つの大きな精神的な部分意味があるものというふうに理解をしております。
  114. 上田勇

    ○上田(勇)委員 今おっしゃったとおり、価格というのは低ければ低い方がいいわけであります。ただ、もう一方で、国内農業振興食料自給率向上という面からいえば、コストの削減というのがいろいろと難しい問題があってそう簡単にはできないという中で、これはやはり両立していくというのは非常に難しい問題だというのはよくわかります。  ただ、私がこの問題をお聞きしたのは、今回の法案の第三十条、価格政策のことについて書かれているのですが、これを見てみますと、今後の農政基本的な方向として、価格支持政策価格維持していくというような政策は削減の方向で、農産物価格は原則として市場原理に任せて、価格政策価格の安定を中心にやっていくんだ、一方、その分農業者に対して、減った所得というのは別途、農業経営の安定は別途手当てしていくというふうにも読めるのですけれども基本的には将来的にそういうような方向でお考えなんでしょうか。その辺の基本的な考え方を伺いたいというふうに思います。
  115. 高木賢

    ○高木政府委員 今後の農業生産におきましては、三十条の一項の前段にございますように、消費者の需要動向が生産サイドに的確に伝わっていく、そのことによって需要に即した生産展開を促していくということが必要だと思います。  そのために、価格政策につきましては、三十条一項におきまして、需要に即した農業生産維持拡大を図るということから、農産物価格が需給事情や品質評価を適切に反映して形成されるというようにすることが必要だということであります。これはもちろん国境調整措置があるということが大前提でございますけれども、そういう前提のもとでの価格政策の見直しということをいたしたいと思います。  その際に、農産物価格はちょっとした需給変動でかなり変動が生じやすいという実態がございますので、価格が低落したときに、育成すべき経営に打撃が生じてはいけない、つぶれてはいけないということで、経営安定措置を講ずるということによりまして安定的に営農を継続できるようにしていくということがあわせて三十条二項にうたわれているわけでございます。  そういう意味で、価格について、需給事情と品質評価を反映した形での形成ということと、価格変動に対しての経営安定措置を講ずるということが表裏の関係で整理をされているということでございます。
  116. 上田勇

    ○上田(勇)委員 基本的には、価格は引き下げていくということでしょうか、そういう方向での政策展開していくというふうに受けとめられたんですが。  そうしますと、それは、国内の生産による自給という問題とこれまた難しい兼ね合いが出てくるんではないかというふうに思います。価格が下がればそれだけ生産意欲というのは低下するのは当然でございますけれども、一方、今回の基本法の重要な柱は食料自給率向上という点にも置かれているわけであります。一見して相反するこの政策目標実現するために、その分よほど生産対策が必要なんだというふうに思いますが、それについてはどういうお考えで臨まれるおつもりなんでしょうか。
  117. 高木賢

    ○高木政府委員 食料供給に関しましては、基本理念の二条の三項でもうたっておるわけでございますが、やはり国民高度化多様化する需要に即して行われなければならないということが大原則であろうと思います。需給ですから、その時々で多少の変動が起こるのは避けられないと存じますけれども基本的にはやはり需要に合ったものを生産供給する、そしてそれが国民に受け入れられ、消費者に受け入れられてその生産増大をしていく、こういう姿が描かれるべきであるというふうに考えております。  それで、そういう基本的な考え方のもとに、それでは国民の需要に受け入れられるものは何かということになりますと、品質の面で足らざるものがあるとすれば、その品質の向上のための新品種の開発なり普及の努力、あるいは、生産量がある程度まとまる、あるいは安定的に供給されるということが原料農産物供給として大事なことでございますので、そういったまとまった生産が可能な生産体制をつくる、それからコストの面におきましても、需要者が相応の購入をするにふさわしい合理的な価格、こういったことを兼ね備えるように、技術開発なり基盤整備なり、あるいは担い手の強化対策なり、こういったものを総合的に講じまして、要すれば、体質を強化して、国民の求めるもの、食品産業の求めるものがつくられるようにするという体制をつくっていくというのが生産対策の基本的な考え方でございます。
  118. 上田勇

    ○上田(勇)委員 ちょっと今のお話はその辺にいたしまして、次に、法案の第二十九条に技術の開発及び普及に関する国の役割について定められております。新しい技術の研究開発、普及は、我が国の農業生産性向上や競争力の向上を目指していく上でこれはもう不可欠の要素であるというふうに認識しております。  そこで、先端的な技術、研究開発といいますと、最近遺伝子組み換え食品の問題が大変な注目を集めております。穀物であるとか大豆などの油糧種子、またジャガイモなどでかなりこの遺伝子組み換え技術の普及が進んでおり、さまざまな有利な形質の農産物が開発されているというふうに伺っております。  そこで、この遺伝子組み換え農作物の我が国におきます生産、流通はどのような実態になっているのか、その辺をお伺いしたいというふうに思います。
  119. 福島啓史郎

    ○福島政府委員 外国から大量に輸入する農産物のうち、遺伝子組み換えのものが存在する農産物といたしましては、アメリカからの大豆、トウモロコシ、カナダからの菜種があるわけでございます。こうした遺伝子組み換え農産物は従来のものと区分して流通していないわけでございますので、これらの輸出国におきましても遺伝子組み換え農産物の栽培面積等の統計はないわけでございます。  しかし、アメリカあるいはカナダでの遺伝子組み換えの種子の販売状況等から平成十年の遺伝子組み換え作物の栽培面積を推定しますと、アメリカの大豆作付面積につきましては約三割弱、トウモロコシの作付面積につきましては二割強から三割強、カナダの菜種作付面積につきましては四割弱が遺伝子組み換え作物に置きかわっているというふうに推定されているわけでございます。  したがいまして、我が国がこれらの国から輸入しております大豆、それからトウモロコシ、菜種につきましても、同様な割合で遺伝子組み換え作物となっているというふうに見込まれております。
  120. 上田勇

    ○上田(勇)委員 相当な量の輸入農作物が遺伝子組み換えであるということが今のお話にありましたけれども、こうした遺伝子組み換えの農作物が農業生産にとっては有利であるということは、これはもう間違いないんだというふうに思いますが、やはり懸念されるのはその安全性の問題であるというふうに思います。  今、通常のものとは全く変わりがないということでありましたけれども、どうもこれは諸外国におきましてはかなり関心を呼んでいることであります。昨日ですか、新聞でも、ヨーロッパなどではこの問題について大変な議論になっているという報道が載っておりました。  例えば、ヨーロッパでの科学者二十人が、遺伝子組み換えジャガイモを与えたラットの臓器、免疫力に異常が認められたというような研究を、ことしの二月だそうですが、発表しているというようなことで、それに関して各国でさまざまな報道がなされているというようなことを報じております。そうしたことを受けて、例えば英国政府などでは、すべての飲食・総菜店に組み換え食品使用の表示を義務づける方針を打ち出した。違反すると最高五千ポンド、約百万円の罰金が科せられると。大変大きな問題になっているというわけであります。  このように、どちらかというと先進的な地域においてもそうした大変な関心を呼んでいるわけでありますけれども、国内に流通しているこうした農作物、あるいはそれを利用した食品の安全性についてどのように考えられているのか。  また、ここで英国政府の例が出ましたけれども、これはやはり我が国においても消費者に的確な情報を提供して選択してもらうという必要があるんじゃないかというふうに思うわけであります。そうした遺伝子組み換え農作物、またそれを使用した食品について、わかりやすい表示、こうしたものも導入すべきだというふうに思いますが、その辺についてのお考えを伺いたいというふうに思います。
  121. 福島啓史郎

    ○福島政府委員 先生の御質問の遺伝子組み換え食品の表示のあり方につきましては、御案内のように、平成九年の五月から食品表示問題懇談会におきまして検討されてきているところでございます。また、昨年八月には、遺伝子組み換え食品の表示のあり方につきましてたたき台を提示いたしましてパブリックコメントを求めたところ、一万件を超える多数の御意見をいただいたわけでございまして、これらを通じまして、消費者の表示を求める声は強いものというふうに受けとめております。  この一月に開催されました食品表示問題懇談会におきまして、表示に関しまして、信頼性あるいは実行可能性の観点から、科学的あるいは技術的な検討を行う必要があるという意見が強く出たわけでございます。そのために、小委員会を設置いたしましてそうした検討を行うということが決定されたわけでございます。現在、この小委員会におきまして技術的、科学的検討を進めております。本年六月ごろまでこの小委員会において検討を行い、本委員会であります懇談会にその結果を報告する、それを受けまして懇談会としてさらに検討いたしまして、遺伝子組み換え食品の表示のあり方につきまして取りまとめを行っていただきたいというふうに考えておるわけでございます。  先生先ほど言われましたように、この遺伝子組み換え食品の表示問題につきましては二つ考え方があるわけでございます。一つは、EUのように義務表示とする考え方と、あるいはアメリカ、カナダのように、いわばメリット表示の一つとして任意表示を認めるという二つ考え方があるわけでございまして、これらにつきましても、この技術委員会報告を受けましてこの懇談会におきまして検討をしていただきたいというふうに思っておるわけでございます。  いずれにしましても、農林水産省としましては、この懇談会の取りまとめを踏まえまして、遺伝子組み換え食品の表示ルールを確立いたしまして、適正に実施してまいりたいというふうに考えております。
  122. 上田勇

    ○上田(勇)委員 今回の基本法案の中でも、そうした食品の表示の適正化というのを進めていこうというのが十六条に定められておるわけでありまして、これは消費者が正しい知識を持って選択できるというやり方がやはり一番正しいやり方だというふうに思いますので、ぜひその方向で進めていただきたいというふうに考えるわけでございます。  もう一つ農業に関する先端技術として大変話題を呼んだのが、畜産の分野ではクローンの技術ではなかったかというふうに思います。九六年ですか、英国にクローンの羊が誕生して、これは大変大きな話題になりました。我が国でも、国や県の試験研究機関、民間の研究機関などでも次々と今度はクローンの牛の誕生が報道されてまいりました。  このクローン牛、遺伝子組み換え農作物と同様にいろいろと関心を集めているわけでありますけれども、今研究を進めているその研究の目的、また今後どういうような方針で研究を進められていくのか、その辺の基本的なお考えを伺いたいというふうに思います。
  123. 三輪睿太郎

    ○三輪政府委員 クローン家畜の研究の目的、これは一つ、優良な種畜、すなわち品質の高い肉牛や乳量が多い乳牛、こういったものの効率的な増殖を可能にするというところを目的としております。すなわち、家畜の生産性の飛躍的向上を通じまして畜産業振興に資するということがあります。  それから、お話がありましたクローンにつきましてですが、こういう目的で研究をする場合、クローンの中には二つございまして、初め手がけられましたのは一卵性の双子、三つ子をつくるというような子供の代で品質をそろえるということで、一卵性の多子生産技術であります、いわゆる受精卵クローンと言っております。これは平成二年に成功しまして、その後ほぼ技術的には確立した域に達しておりますが、さらに確実に出産に至らせるための卵子の培養条件の改善等で完成度を詰めていくという方針でおります。  それから、九六年にイギリスで成功して、これは世界的に科学的にも倫理的にも大変な話題になった体細胞クローンの方でございますが、これはクローンとしては受精卵と違いまして今生きている個体の複製ということが可能になりますので、受精卵のクローンよりもはるかに産業的な応用範囲が広く、また、新しい産業の創造等につながるという大変な期待が寄せられる分野でございます。  しかし、この研究につきましては、日本で確かに牛につきまして体細胞のクローンの出産に成功しておりますが、まだ科学的に未解明な点がたくさんありまして、これからも基礎的な研究を進めていくことが必要だと考えております。現在、畜産試験場を中心に、都道府県の研究機関とも連携をしながら引き続き十分な研究をしていきたいというふうに思っております。
  124. 上田勇

    ○上田(勇)委員 四月ごろいろいろ各紙で報道された中に、これは受精卵型のクローンの牛だと思いますが、実はこのクローンの肉や牛乳が一般に流通していたという報道がなされました。それは事実だというふうに農水省の方も認めておるわけでございます。  農水省の見解としては、報道されているところでは、一般の牛の肉や牛乳と変わらない、全く安全であるという立場であるというふうに伺っておりますけれども、やはり食べる方、消費者の心理からすると大変不安を覚えるのも事実でございます。  何か新聞報道を見ていましたら、安全性をアピールするために中川大臣も試食されているような写真も新聞に載っておりますけれども、逆に言うと、そういうことをしなければやはり消費者というのは不安を覚えるということなんだというふうに思うわけであります。  そういう意味で、このクローンの家畜、クローン牛の肉あるいはその牛乳の安全性について、どういうふうなお考えをお持ちなのか。それと、先ほどと同じ話でありますが、少なくとも消費者にはそういった不安があるものを、それは根拠のない不安かもしれませんが、不安を覚えているといったことについては、やはり正しく認識して選択できるような表示が必要なんではないかというふうに思うわけでありますけれども、その辺についての御見解をお伺いしたいというふうに思います。
  125. 本田浩次

    ○本田政府委員 ただいま三輪事務局長からも御答弁いたしましたけれども、御指摘の流通していたというのは平成二年に実現いたしました受精卵クローンでございまして、ことしの三月末までに六十六頭分流通していたということが調査の結果明らかになっております。  この受精卵技術につきましては、先ほど三輪局長からもお話がありましたように、能力や品質のすぐれた一卵性の双子、三つ子を人工的につくる技術でありまして、遺伝子操作などは一切行っていないで、一般の牛と全く変わらないものだと考えております。  また、これらの受精卵クローン牛肉につきましては、一般の牛肉と同様に屠畜の段階で生体に異常がないか、それから、内臓、肉などに異常がないかなど、食品衛生上の病理学的、理化学的な検査が行われておりまして、通常の牛の屠畜検査結果と全く差は認められていないと私ども厚生省からお聞きしております。安全性については、特に問題がないと考えているところでございます。  ただ、表示のあり方につきましては、これは先生指摘のとおり消費者の皆様方の関心も大変高いわけでございまして、消費者の理解が得られるようにあらゆる機会を通じまして情報の公開に努めております。  先ほどお話のございました大臣に御試食いただいたのも、大臣も何か御説明があるかもしれませんけれども、別に安全だということを見せるために試食していただいたわけではございませんで、実は、農政クラブの記者さん方が一度食べてみたいという御要望もございましたので、そういう機会を設けさせていただいたということでございます。  いずれにいたしましても、具体的な情報提供のあり方につきましては、そういった消費者の皆様方でありますとか流通関係の方、マスコミ関係の方々に積極的に情報提供を行うなり御意見などもいただきながら、現在検討しているところでございます。
  126. 中川昭一

    中川国務大臣 先ほど先生から御指摘ありましたが、実は、先ほど事務局長からお話ありましたように、大変おいしいというか、高級な和牛の、双子か三つ子かわかりませんけれども、それが出回っているということをマスコミを通じて私も承知いたしまして、私自身もそう知識がなかったものですから早速聞いたところが、同じクローン牛と言われているものでも受精卵牛については、これは全く双子、三つ子の世界でありますから問題ないということが確認をされておる、体細胞クローン牛につきましてはまだまだ確認する分野が残っておるということでありますが、今回のものは受精卵牛であったということで、今畜産局長からも答弁ありましたように、大変おいしくいただいたわけであります。  これはもともと安全だということでありますが、安全だということと、それから表示あるいは消費者に対する情報提供の問題とは、これはまた別の次元の話だろうと思います。JAS法の改正あるいは新しい基本法の十六条にもありますような消費者に対する情報提供という観点から、表示のあり方について、今、省内で検討しておる最中でございます。
  127. 上田勇

    ○上田(勇)委員 別に、大臣を毒味役に使ったという趣旨で質問したわけではないのですが、やはり新しい技術というのは、これは農業生産向上していく上で必要不可欠なことでありまして、どんどん進めていかなければいけない。ただ、これまでになかったものというのは、どうしても消費者の心理からすれば心配だし、安全だと言われてもやはり懸念が残るというのは、これは食べ物は体の中に取り入れるものでありますので、当然のことではないかというふうに思います。  そういう意味で、新しい技術の開発で、それに基づきます農産物、畜産物、これがこれからどんどん出回っていくことになると思うのですが、安全性の確保にぜひ万全を期していただきたいということとともに、やはりこれからは、いろいろと有機農産物などでも、多少値段が高くてもあえてそちらを買うという方がおられる、そうした消費者のお気持ちを正しく反映していただくためには、新しいもの、当然それは科学的に見れば安全性に万全を期しているのかもしれませんが、やはり正しい知識のもとに選択できるというような方法が必要ではないか。今回のこの基本法の中でもそういった精神が定められているというふうに思いますので、ぜひそういう方向で取り組んでいただきたい、このことを御要望いたしまして、時間でありますので、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  128. 穂積良行

    穂積委員長 次に、前島秀行君。
  129. 前島秀行

    ○前島委員 きょうは、我が党が長い間主張していました直接支払い、デカップリングのことを中心に、これからの検討状況、それから、どんなふうなことを基本的に考えているのか、その点を中心にしてお聞きをしたい、こういうふうに思っています。  まず、大臣、この種の政策、いわゆるデカップリング、直接支払いという概念、こういう政策を取り入れるには、やはり基本的な認識といいましょうか、理念みたいなものをお互いにしっかり固めておくということが大事ではないだろうかな、こういうふうに思います。そして、今度の新農業基本法の中で、このデカップリング、直接支払い方式というのを導入しようという方向で検討され、またそれが基本法の中にうたわれてきたことについては、私たちは大歓迎ですし、評価をしたいと思っています。ただ、その中身と、幅だとかさらにいろいろな面で検討を要するし、充実をしていただきたい。これから検討委員会を初めとして具体化する段階で、いろいろ内容の充実等々もお願いをしたい、こういう気持ちを持っています。  それで、基本問題調査会の報告の中で、かなり具体的にこの直接支払いという言葉が出てきて、具体化されてきている。ただ、中山間地域対策という意味では非常に限定されているなと思いつつも、具体的に直接支払いという言葉が出てきたことについては非常に評価ができる一面だなと思います。しかし今度は、基本法ということもあろうけれども、この基本法の中にくると、その辺のところが非常に後退したというか、弱まった。直接的な言葉としては出てきていない、中山間地域対策として、支援という形の中で出てきているわけでありますが、若干腰が引けたのかなという気持ちもしなくはないわけであります。  そういう面で、私たちは、こういう政策を導入するに当たっては、基本的な理念みたいなもの、いわば大げさに言えば哲学みたいなものをちゃんと確立していかないと、具体化に当たって揺らいでしまうんじゃないかな、こういうふうに思います。単に中山間地対策だけではなくして、これからの日本農業に当たって、あるいは国際化の中で、あるいは市場原理というものとの兼ね合いの中で、やはり経済的には成り立たなくても、日本の国土の保全だとか環境の維持だとかという側面から、必要なものはやろうではないか、そのためには公的支援もやろうではないか、こういう基本的な理念みたいなものをぴしっと固めていきませんと、具体的なところになっていろいろ議論が出てきてしまうのではないだろうかな、こういうふうに思います。  したがって、国際化の中で、あるいは市場原理等々が問われる中で、やはりその流れに日本対応しなくちゃならぬ。しかし、日本の持っている国土の条件だとかあるいは農業の持っている側面から見ると、こういう政策もぴしっとやらなければいかぬなということを、表現は悪いかもしれませんけれども、腰を据えて理解をしていく、固めていく、こういうものがないと、具体化でもって問題があるのじゃないかな、こういうふうに思います。  そういう意味で、ぜひ大臣に、この直接支払い、デカップリングを導入するに当たっての基本的な認識みたいなもの、理念みたいなものはどう受けとめているのか、その辺のところをまず聞かせていただきたい、こういうふうに思います。
  130. 中川昭一

    中川国務大臣 今回の新しい基本法では四つの理念があるわけでございまして、繰り返しはいたしませんけれども、いずれも国民全体、そして農村あるいはそこに従事する方々にとって非常に密接なかかわりのある大事な理念だと考えております。  そういう中で、我が国の国土条件というものが、非常に山が多いという条件、農地の四割をいわゆる中山間地帯が占めておるというような実情の中で、やはり山を守る、あるいは中山間地域を守る、そして農業農村を守っていくということは、単に食料の国内生産基本とした安定供給のみならず、いわゆる多面的な機能維持発展するためにも必要不可欠だというふうに理解をしております。  そこで、先生指摘のように、ではこの基本法の中にいわゆる直接支払いという文言があるかといえば、言葉としてはないわけでございますが、三十五条の二項の中山間地域等で、適切な農業生産活動が継続的に行われるように農業生産条件に関する不利を補正するための支援を行うこと等により、多面的機能の確保を特に図るための施策を講ずる、この施策の中で、直接支払いというものを導入していこうというふうに考えておるわけであります。  中山間地域等の条件不利地域というのは、生産条件、定住条件、いろいろな意味で不利があるわけでございますけれども、だからといって、そこでできる農産物は決して悪いものではない、いいものができる地域もたくさんあるわけでございます。また、そこから農業生産活動等を放棄して平地の方に引っ越していくということになりますと、これはその地域のみならず、下流地域に対しても大きな影響を与える。国土保全といった観点からも、非常に大きな公益的な機能の低下が懸念をされるわけでございます。  したがいまして、生産条件の不利を補正するための支援措置といたしまして、中山間地域等への直接支払いという、我が国としては初めての手法位置づけたということであります。  ただし、これに関しましてはいろいろな観点からの検討が必要でございますので、現在検討会において御議論をしていただき、また、この委員会を初め、国会の場でいろいろ御議論をいただきまして、平成十二年度概算要求時までに、これはその地域の御理解だけではなくて、国土保全等の多面的機能食料安定供給という観点から国民全体の御理解をいただくことも必要だということで、現在鋭意検討をし、また先生からの御指導も賜りたいというふうに考えております。
  131. 前島秀行

    ○前島委員 どうしてもこの前提条件が中山間地対策というところに限定されてしまっている。この直接支払い、デカップリングという制度の導入というものは、単に中山間地の対策だけではなくして、農業維持したり、あるいは、いろいろな農業の改善、品質の向上等々を図っていくという意味で、積極的に支援というものを位置づけていくべきではないだろうか。さまざまな条件の中で、日本農業、あるいは社会的な要請にこたえていくという面で、中山間地対策というだけで、この概念といいましょうか、この政策を導入すべきではない、そこのところを非常に感ずるわけであります。  後で、フランスのCTE、新しい農業基本法における契約を原則としたデカップリング的な、直接支払い的な方式の具体的な例を出して聞いてみたいと思っていますけれども、私たちは、そういうふうにもう少し幅のある、日本のこれからの農業に重要な施策の方針として位置づけていくべき政策ではないだろうか、こういうふうに思っているところです。  それで、今検討されている状況について具体的にお聞きしたいんですが、一つは、対象地域というのはどういうふうに考えているのか、そして、その政策手法、手段というのはどんなふうに考えているのか。議論の途中だといえばそれまでのものでありますけれども、かなりの具体性を持って私たちも説明を聞いたりしていますので、対象地域政策実現のための手法、手段についてちょっと説明をお願いします。
  132. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 中山間地域等に対する直接支払いにつきましては、農政改革大綱におきまして、その基本的枠組みが示されているところでございます。まず対象地域につきましては、特定農山村法などの指定地域のうち、傾斜等によって生産条件が不利な地域、そこで対象者といたしましては、協定に基づいて農業生産活動等を行う農業者等とするということでございます。  今議論になっておりますのは、いわゆる地域振興立法を申し上げましたけれども、例えば離島の持つ公益的機能というのはどういうことなんだろうかというふうな議論、あるいは傾斜のほかにどういった条件が考えられようか、さらには協定というのは、基本的には集落協定が基本になると思いますけれども、そのほかにどんなものが考えられるか、そして農業者等として、農業者以外に例えば第三セクターに対する支払いをどうするかというふうなことが議論の対象になっておりまして、これまで五回議論を重ねてきたところでございます。  また、政策手法といたしましては、中山間地域等と平地地域等の間の生産条件の格差の範囲内で単価を設定し、農業者に対し交付をするというところが基本的枠組みでございます。
  133. 前島秀行

    ○前島委員 地域指定というのは、条件として、農業生産の条件不利地域という前提、それから耕作放棄地の発生の懸念が大きい地域、ここが条件として耕作放棄地となる可能性の大きい地域というふうに適用範囲は限定されると見ていいんですか。  もしそうだとすると、そういう耕作放棄地の発生を防止するというふうに限定させてしまったのはどういうことなのか、その辺のところを聞かせてください。
  134. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 先ほど申し上げましたように、基準としては、やはり基本形は条件不利地域、中山間地域等ということでございますので、傾斜等になると思います。  今、耕作放棄地の問題が出ましたけれども、中山間地域における公益的機能の発揮というのは、その地域において適切な農業生産活動が行われることによって公益的機能維持、発揮をされているわけでございますので、その維持、発揮の前提として、傾斜地等が多い地域においては生産条件が不利だから現象として耕作放棄が生じたり、高齢化が生じたり、あるいは担い手がいないというふうな現象が起こってくるわけでございます。  ですから、私どもは、今検討の一番のメーンになっておりますのは、やはり傾斜その他の条件、社会的、経済的といいましょうか、そういうふうなものを一番のメーンに据えております。そして、耕作放棄の発生の度合い、高齢化等は、どちらかというとそれを補完するような条件ということで検討会では議論が進んでおるように見受けられます。
  135. 前島秀行

    ○前島委員 耕作放棄地になる可能性があるという、そこだけになぜ限定しちゃうのか。  例えば、中山間地対策としても、もちろん耕作放棄となる可能性のある地域については対策が必要だということは認めますけれども、条件不利地域で営農活動をする、あるいは現在も営農活動をしているけれども、さまざまな条件から考えてそれをさらに持続させたり発展させたりしていく、それが同時に中山間地域対策になるし、条件不利地域における営農活動を発展させていく。そういうことが、デカップリングというか直接支払いという基本的な概念の中で追求されなければいかぬ課題だろうと思いますね。  耕作放棄地となる可能性のある地域だけに限定する必要はない。もっとやはりそこにおける営農活動を、今は耕作放棄地にならぬけれども、しかし、さまざまな条件の中では条件不利だから活動がとまるかもしらぬ、それを継続させていく、そのことがまたさまざまな農業多面的機能維持する上で絶対的に必要なんだ。耕作放棄地となるということが条件だとなると、非常に限定されてしまう、そんなふうな気がします。  そういう面で、なぜ耕作放棄地になる可能性という限定をする必要があるのか。非常に狭まっているし、私たちは、中山間地対策だけでこういうものを限定すべきではない、たとえ中山間地域対策としても耕作放棄地というところに限定をする必要もないだろうし、中山間地対策としたら、もっと別な角度からの基準といいましょうか、対応地域というものも出てきてしかるべきだと思いますね。  その辺のところ、どうしても限定し過ぎているような気がしてならぬわけなんですけれども、なぜそういうふうに限定したのか、その認識を聞かせてください。
  136. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 ちょっと私の先ほどの説明が不十分で申しわけありません。  耕作放棄地の発生の度合いが現状を見ると非常に高い、したがって、これ以上耕作放棄が増加をすれば、そこにおける生産活動が低下をして公益的機能が果たされなくなる、したがって、そういうことが生じないように、現にそういった条件が非常に厳しい地域において行われている営農活動、あるいは水路その他施設の管理保全活動、そういうものを支援していこうというわけでございます。  耕作放棄地が出ているとか、あるいは耕作放棄地が出る蓋然性が高い地域という指定をするというふうな観点ではなくて、これ以上耕作放棄を増加させない、その点で、傾斜度が高いとか非常に条件が不利なところについては一定の条件をつくって直接支払いをしていこうということでございまして、あくまでも、これ以上耕作放棄が増加をし公益的機能が低下することを懸念した上での政策でございます。
  137. 前島秀行

    ○前島委員 そうすると、営農活動を今後も継続させていくとか、あるいは農業多面的機能維持、発揮させるために、そういう目的といいましょうか、そういうために、直接支払いの対象の地域という側面からも考えられる、こういう認識でよろしいんですか。
  138. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 検討会の方向はそういう方向に向いております。もちろんまだ結論が出たわけではございませんけれども、現に集落協定等を結んで、そこにおける営農を継続しようじゃないか、それから施設その他を管理して公益的機能の低下を防止しようではないか、そういう取り決めをしていただいた上で営農なり保全活動を継続していただく、そこに対して直接支払いをすべきではないかというふうに議論はいっております。
  139. 前島秀行

    ○前島委員 わかりました。  そこで、検討会の議論あるいは基本法の議論、これからの農業を具体化していく基本計画策定していく議論を考えたときに、この直接支払いという政策が導入されてきた背景というもの、単に耕作放棄地になる可能性があるとか、あるいは単に地域の営農の維持をするという側面だけではなくして、やはり市場原理、市場重視、片っ方でそういう状況になってきた。  そして、今まで日本農業のやってきた価格政策中心という政策に、やはりWTO等々の条約、国際化の中での限界みたいなものがあって、所得政策というものを考えていく側面もまたこれからの農業を考えていくときに重要である、そういうふうな背景というものもあって、この概念といいましょうか、この政策というものが導入されてきた。そのことがまた基本問題調査会等々の中でも議論されて、今日こういうふうに進んできたと思うんです。  外的なと言ってはちょっと言葉が悪いんでありますけれども、そういうさまざまな背景というものがこの政策導入の中にはあるだろうな、そういうふうに私は思っているんでありますけれども、その辺の認識を聞かせてください。
  140. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 今先生の御指摘がございましたようなことと全く一致をいたしておりまして、私は、二つあろうかと思います。一つは、国民の意識の変化ということだろうと思います。それからもう一つは、国際規律との整合、もしくは国際規律をうまく活用するということだろうと思います。  国民の意識の変化というのは、総理府の世論調査などを見ていただいても明らかなとおり、多面的機能に対する中山間地域等の果たす役割について大変高い評価をしているんです。六割以上の国民がこの機能認識をし、支持をしているというところでございます。  それから、国際規律との整合性、あるいはこの規律活用という点では、WTO農業協定の中で緑の政策に、条件不利地域への直接支払いが貿易削減対象外のグリーンボックスに位置づけられているということでございますので、これをうまく活用することによってこの公益的機能が発揮できるのではないか。  中山間地域の実情を見ますと、非常に公益的機能の低下が懸念をされるわけでございますので、この緑の政策をうまく活用しながら、国民世論の支持を生かしていきたいということでございます。
  141. 前島秀行

    ○前島委員 そういう背景ということになりますと、私は、この政策というのはもっとずっと広がってくるだろう、こういうふうに思っているんですよ。  だから、最初に私が言ったように、単に中山間地だけではなくして、あるいは耕作放棄地になる可能性がある地域だけではなくして、やはりこういう政策が、こういう概念が取り入れられるようになってきたのは、さまざまな背景というものがあってなってきたんだろう。だとするなら、この背景というものを積極的に受けとめる、そして、WTOに始まる国際的な流れの中でやっていくということが、グリーンボックスなんでありますから、非常に可能性もあるし、意義のあることだ。同時に、そのことはまた、国民の意識の変化の中で、農業に対するさまざまな認識も変わるだろうし、これからの日本農業展開していく上で、この政策選択としては非常に広がっていくだろうな、こういうふうに思いますね。  だから、私が最初に大臣に聞いたように、この政策をやるに一定の理念みたいなもの、ある意味で哲学的なものをお互いに確認し合ってやっていけば、非常に国民の期待にもこたえられるだろうし、国際的な流れの中でもこたえていけるだろうし、また、これからの日本農業展開させていく上で、国民的にさまざまな理解も得られていくんではないだろうかな、そんなふうに基本的に思うわけですね。  そういう前提で、そういう認識で、そういう基本的な理念で、具体的にそれならどういうところに適用できるだろうなということになると、私は、非常に幅が広がってくるだろう、こう思いますね。そういう面で、私たちは、例えばこういうところにも適用できないかということを思っているわけです。  例えば、一つとしては、自治体だとか農協とか第三セクター、これはもう第三セクターは認めているようでありますけれども、そういう団体、そういう組織がやっている農林地の維持管理のための事業、単なる耕作放棄地とかなんとかという形ではなくして。あるいは、グリーンツーリズム的な事業。この政策の概念の導入の背景ということを考えると、十分考えられる諸事業ではないだろうか。あるいは、有機農業だとか無農薬農業などの環境保全型農業に適用しても何ら問題がないんではないだろうか。  先ほど言いましたように、耕作放棄地との関係だけではなくして、条件不利地域に積極的に営農展開をしていく、特に地場産業との、地域経済との結びつきという側面から、そういう条件不利地域の営農の推進、あるいは品質向上といいましょうか、経営向上させていくという側面も当然あっていいのではないか。あるいは、文化面を含めて、棚田等々の保全なんかも、こういうところに概念として入るのではないだろうかな、こんなふうに私は思うんです。  いわゆる中山間地対策という側面だけではなくして、こういう政策概念が、国際的にも、また日本の中でも適用された、今国民の意識の変化を背景としてとらえているというならば、私が言ったような政策は、十分国民的な理解も得て、同時にまた、これからの二十一世紀の日本農業農村を考えたときに、積極的に展開していくべき施策ではないだろうか。そこを、腰を据えてと言っては言葉が悪いんですけれども国民に積極的に説明をしていく、理解を求めていくというなら、私は、合意も得られるのではないだろうかな、こういうふうに思います。  大臣でもいいし官房長でもいいですけれども、そういうところから見て、私が提案したような具体的な施策の適用というのは、広げても一向に構わないんではないだろうか。特に有機農業だとか無農薬農業には、積極的にこの概念というのを適用してもおかしくない。それから、グリーンツーリズムなんというのも、これからの農村政策としては、都市農村を結ぶ上では重要な政策一つにもなり得るだろうと私は思っています。そんなところを、ひとつどうでしょうか、大臣
  142. 中川昭一

    中川国務大臣 全く新しい手法を導入するわけでございますから、当委員会を初め検討会等々いろいろな場でいろいろな御意見を伺いながら、概算要求ということでございますから、法律の成立をさせていただき、また、その後もそう時間的な余裕はないわけでございますけれども、今いろいろ先生から御指摘いただきましたが、今回の直接支払いというのは、あくまでも中山間地域等のいわゆる条件不利地域生産条件を補正するための支援措置ということでございまして、あくまでも条件不利地域における農業生産活動維持というものが前提にあるというのがこの法案の趣旨であるわけでございます。  それから、どんどん広げていいんじゃないかという気持ちは、私自身も正直言ってわかるわけでございますけれども、ここまで細かい話をしていいのかわかりませんが、厳しい財政状況の中で、広げれば広げるほど薄まるといったような観点も一方ではございます。  実は、後ほど先生から、フランスの今提案しておるやり方についてのお話があるということで楽しみにしておりますが、実は私も五月の連休を利用してフランスの条件不利地域農地に行ってまいりまして、農業者と一時間半ほど話をしてまいりました。いろいろな支払い方式があるわけでございます。作物にかかわる支払い、そしてまた条件不利にかかわる支払いがありますけれども、いずれにしても、条件不利というところで農業をやることはなかなか大変なんだというような話を直接聞いてまいったところでございます。  やはり国民理解を得る、そして新しい手法をうまく導入するためには、よほど慎重な議論の中から直接支払いというものをうまく導入させていかなければなりませんし、また、先ほども申し上げましたように、国民的な理解というものを前提にしながら直接支払いをいかにうまくスタートさせていくかということでございますので、我々としては、現時点においてはそういう考え方でこの問題に取り組んでいきたい。しかし、あくまでも、委員会あるいは検討会での御議論をお願いしておるところでございますので、そういう御意見も十分お聞きをしなければならないというふうに考えております。
  143. 前島秀行

    ○前島委員 狭い意味でこの政策というものをとらえないで、ぜひもっと積極的な意味でこの政策をとらえてほしい、そうすることによって、また新しい政策展開できるだろう、こういうふうに思います。そのことは、絶対私は国民的な理解は得られる、こういうふうに思っているところです。  それで、ちょっと細かな点ですが、今考えている基準、傾斜地とか高齢化だとか耕作放棄率だとかというところがまさに基準になっていくのか。それから、その対象者としてどういうところを考えているのか。要するに、あくまでも個人なのか、第三セクターまで含めるのか。あるいは生産組織生産団体という団体ですね、協定という言葉があるようでありますけれども。  そういうところをもう少し、最終的な結論は出ていないと思いますけれども、今考えられている具体的な基準、もし議論されているとしたら、その辺のところをちょっと聞かせてください。
  144. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 地域の問題につきましては先ほど申し上げました。  それから、生産条件の不利性を示す基準として議論が出ておりますのは、第一点目には、傾斜度等の自然条件でございます。この場合に、傾斜だけではなくて、谷地田のように区画が不整形で小区画から成る水田などは対象にしないのかどうかという議論が出ております。  高齢化率、耕作放棄率も補足的な基準として入れたらどうか、さらには自然条件が非常に厳しい草地、そういったところをやはり対象にしたらどうだろうかというふうな御議論が相当ございます。  それから、交付の考え方につきましては、先ほど集落協定を基本とするというふうなお話を申し上げました。やはり全体としてまとまりを持って公益的機能を発揮させるべく交付をするわけでございますので、集落全体で我が集落をどうすべきかということを考えていただくというのが一番基本だろうと思います。それができないようなところでは、大きな農業者等が全体を引き受けるというふうな形で個別の協定もあり得るのではないだろうかというふうなことが言われております。  そうなってまいりますと、先生が先ほど御指摘ありました第三セクター、しかもその第三セクターが行う生産活動だけではなくて、各種の農業用の施設の管理というふうなものも対象に含めたらどうか、こういう議論が賛否こもごも出ておりまして、もうちょっと時間がかかると思いますけれども、論点としてはおおむねそういったことが議論になっているところでございます。
  145. 前島秀行

    ○前島委員 支払い方式、ここは私は、これからのこの政策を進めていく上で一つの柱といいましょうか、論点になるのかなと思っています。私たち、この政策をやっていく上では、やはり国民理解を得るためにも、あるいは個々の農業者農家のばらまきにならないためにも、地域政策との兼ね合い、農村の発展、農村集落あるいは定住化等々という地域政策との兼ね合いを考えると、やはり自治体との連携ということがこの政策を遂行していく上には非常に大切ではないだろうかな、こう思っています。  したがって、私たちは、この政策をもう少し面的に展開するというところに力点といいましょうか視点を置いていくとすると、やはりこの支払い方式というのは、個々の農業者、個々の農家よりか自治体を通じて支払っていく、そして地域政策だとかあるいは農村の定住化だとかというところに結びつけていくことが、国民理解も得られるだろうし、また目的の上からもいい方法ではないだろうかな、こういうふうにも思っているわけです。  これは、今まで皆さんが前提としてくる条件の中でも、こういうことをやることによって積極的に広がりといいましょうか、地域性といいましょうか、国民理解という上でも、支払い方法としては考えるべき一つの方法ではないだろうかなと思っています。  その辺のところの論議の状況について聞かせてください。
  146. 渡辺好明

    渡辺(好)政府委員 先ほど直接支払い導入のバックグラウンドとして、国民理解ということと国際的規律の活用ということを申し上げました。今、WTO農業協定の緑の政策、これへの該当を前提として議論を進めております。また、これに適合するということが国民理解を得るということになります。この協定では、生産条件の不利な地域生産者に対する直接支払い、ダイレクト・ペイメント・ツー・プロデューサーズとなっておりますので、これからいきますと地方自治体に交付をするというのは大変難しいのではないかなというのが私どもの考えでもございますし、検討会での議論でもございます。  ただ、検討会の中では、これは極力まとめて使った方が効果的であるという御議論が出ておりまして、一定の場合には、市町村よりもさらに小さい自治的集団である集落について交付の対象とすることは考えられないかという議論が出ているところでございます。
  147. 前島秀行

    ○前島委員 これから具体化する段階にあって、その辺のところを、やはり地域政策といいましょうか、自治体との、地域農村政策との兼ね合い、あるいは農村地域における定住化促進という側面から、この政策を連動させていくということも非常に大切な視点ではないだろうかなと思いますので、ぜひそういう面で検討していただきたいと思うのです。  この直接支払いで、最後に大臣、フランス農業基本法が新たにできて、その政策の大きな柱としてCTE政策言葉としては経営に関する国土契約というのですか、そういうのが、いわばデカップリングといいましょうか直接支払い方式として今具体的に進められている。これは農林省の経済局の情報誌の中で紹介されているわけですね。私はこの政策を、これから具体化する上にぜひ参考にしてもらいたいし、またこれが今後の方向性を示唆しているのではないだろうかな、こういうふうに思っています。  大臣、御存じだろうと思いますが、いわゆる社会経済的分野と国土管理環境保全分野というふうに大きく二つに分野が分かれていて、農業経営体が、その立地する地域生産の種類にかかわりなく、生産物の品質向上や雇用の維持創出などのためにこの政策を取り入れようということですね、社会経済的分野。  もう一つの分野というのは国土管理環境保全分野で、地域管理あるいは景観、環境の保全、こういう立場から国土管理環境保全分野として直接支払い方式的、デカップリング的方式を取り入れようではないか、こうなっているわけですね。立地する地域生産の種類にかかわりなく、こういうこと。  条件が、今御説明いただいた基礎的条件とは全然違う。そして、幅の問題でも、生産物の品質向上や雇用の維持創出というところまでいっているわけですね。したがって、構造としては、具体的に、県が、地域がそういう二つの分野の項目をそれぞれ挙げて提案をして、その具体的な項目を受けて経営体が国と契約を結んで支援を得る、こういう構造のようでありますね。  そして、コートドール県の場合なんかは、この資料に基づくと、具体的に計画案を、対象地域の案を作成していく過程では、農業団体だとか学識経験者だとか、行政の代表、地元議員の代表だとか自然保護団体だとか、あるいは釣りの愛好会だとか狩猟の同好会、そういう二百人ぐらいの人たち二つの分野に分かれていろいろな議論をし検討して、国と具体的な契約を結ぶ項目を提案しているんですね、地元の県として。  例えば、社会経済的分野の中には農業雇用の促進のための項目なんかが入っているわけですね。それから、農産物の品質向上だとか農業生産の多角化だとか有機農業だとかマスタード契約栽培。先ほど言った、単に傾斜地だとか耕作放棄地を維持するというだけじゃなくして、そういう品質向上の分野、あるいは雇用というところまで積極的に項目としてあって、それを実現するために農業者が、農業団体が具体的な提案をして国と契約を結ぶ、その契約を結べば国がそれの支援をする、こういうことなんですね。  国土管理環境保全の方は、水質改善だとかブドウ生産における水質改善なんという項目もあったり、ブドウ園の土壌流失を防止する、こういう項目なんかがあるわけですね。  やはり、先ほどから私が聞いてきたように、我が国の今議論されている直接支払い方式とはちょっと質的に違う、別な政策でこの種のことはやっているよといえばそうかなとも思うわけでありますけれども。具体的に県が計画案をつくって、それを実行できそうな農業団体がそれぞれ社会経済分野と国土管理分野、一項目ずつ二つの項目を持って、それが提案して、県を通じて国が認めると、そこで国との間で契約を結ぶんですね。そして実行する。実行するに当たって国が支援する、こういう政策のようです。非常に具体性もあるし、同時に確実といいましょうか実効性もある。そうすると、やはり国民的支援も得られる。  こういう意味で、これからのあり方として非常に参考になる。何か形は若干似ているような気がしますね。日本の場合、契約じゃなくして協定というようなところがあったり、県との関係というようなものが若干入ったりしている。形は似ているけれども、中身はちょっと違うんじゃないか。特に、直接農業者農業組織農業団体と国が契約を結ぶというところは私は非常に説得力があるような気がいたしますね。これがフランスで今具体的に実行に移ろうとしているデカップリング、直接支払いの方法の一つのパターンだ、私はこういうふうに思っているし、大いに参考にすべきものだと思います。これとは別に、EU全体のまだ政策があるんですね。かぶさっているわけであります。  そういう面で非常に先進的なというか、我々日本にとっても、条件としてはフランスなんかよく似ている側面も片っ方であるわけでありますから非常に参考になるし、ぜひこの辺のところを日本の中に適用されて、ストレートに適用されるというべきものでもないだろうし、日本的な条件を踏まえて、構想としては非常に参考になる構想ではないだろうかな、私はこう思っているところです。  大臣、どうでしょうか。恐らく大臣も資料として、これは農林省の内部の雑誌で紹介された資料でありますから。そのことの意味はあるだろうな、私はこういうふうに思っているので、この方式の適用ということも当然あり得るだろうし、そういったものを考えているだろうな、こうも思っているわけでありますので、大臣、ひとつその辺のところの感想といいましょうか、御意見を伺わせてください。
  148. 中川昭一

    中川国務大臣 今フランスで、下院を通って上院で審議が大詰めを迎えていると聞いておりますこのCTE、内容については今先生から詳しくお話がありました。各県ごとの契約類型を作成して、そして農業者と国とが、今言った社会経済分野あるいは国土環境分野について契約を結ぶということが主な内容だろうというふうに思います。  先ほど申し上げたように、フランスの農業者と話したときに、フランスはEUの中で農業大国といいましょうか、農業国でありながら、一方では、スペインとかポルトガルとかギリシャとかいった、より農業のウエートが高いといいましょうか、フランスほど進んでいない農業地帯から安い農産物が入って非常に困っているという話を実は聞いてきたわけでございます。そういう中で、農業を守っていくためにより付加価値をつけていろいろな政策を今やっているんだという話。  それから、ニュース等でも大きく報道されておりましたが、フランスは例のEUの会議の中で、拠出するよりも受益を受ける金額の大きい方の国でございまして、そのやり方についてドイツ等と大分激しいやりとりがあって、新しい農業政策についていろいろな妥協の案が出た、そういう中でこのCTEというものが実験的に今やられようとしておるようでございます。  フランスも、先生指摘のとおり、共通農業政策、EUの中でこの政策の下にあるわけでございますから、いろいろな契約といっても、例えばEUの環境直接支払い、あるいは条件不利地域に対する直接支払い、あるいは価格引き下げに伴う直接支払い等々のいわゆるEUの共通農業政策のフレームワークの中で実施されようとしておるものではないかなというふうに考えております。  契約というものの概念がどういうものであるか、契約が未達成あるいは契約が実現できなかった場合にはどうなるのかとか、違約した場合にはどうなるのかとかいったこともこれから勉強していかなければならないなというふうに思っておりますが、何しろ直接支払いそのものが我が国にとって初めてでございますので、各国の過去のあるいは現在の、そしてまさに今現在進行形で審議されておりますフランスのCTEにつきましても注意深く見守って、参考になる部分については大いに注目をしてまいりたいというふうに考えております。
  149. 前島秀行

    ○前島委員 我が党は、直接支払い、デカップリング政策の導入というのは長年主張してきたことなので、その政策が取り入れられていくということについて非常に敬意を表するし、ぜひ中身あるものに、具体的に充実させていただきたいということを改めて要望しておきたいと思います。  時間のある範囲の中で一、二、所得政策経営安定化対策についてちょっと伺っておきたいと思います。  時間がありませんものですから、一つは、所得政策というものが、日本農業を、あるいは農業者を育てていく、あるいは意欲ある生産農家を育てていくという意味で、非常にこれから重要な柱になるだろうなというふうに思います。  そこで、今政府もいろいろと農家所得政策経営安定対策を検討されているし、具体的に進められていると思うのですが、一つは、この所得政策経営安定対策の対象とする農家をどういうふうにとらえているのか。何か一連の新農政の中で、認定農家というものが大きなウエートを占めてきて、そういうところに集中する、そういうことはまたあり得ないとも思っていますし、多様な担い手を今後つくっていく、そういう意味では、この所得政策経営安定対策を単に認定農家だけではなくして、個別の農家、もちろん、さまざまな農業生産法人など、あるいは、概念として集落的な意味でとらえていくというふうなこともまた必要ではないだろうかな、こう思っているところであります。  その意味で、この所得政策経営安定対策の対象として考えているところはどういうところなのか、どういうところに柱を置いているのか、見解を示してください。
  150. 高木賢

    ○高木政府委員 今提案しております新しい基本法案の三十条におきましては、価格の著しい変動に対応いたしましての経営安定対策の必要性というものを第二項でうたっているわけでございます。そこのところでは、育成すべき農業経営ということをその対象として書いてございます。これは、現実実態、作目ごとに経営の事情は全く異なるわけでございますので、作目に関係なく画一的に定められるというものではなくて、作目ごとの価格政策の見直し、あるいはそれに伴う経営安定措置というものをどうするかという検討の中で決められるべきものであると思います。  それから、経営の支援という政策といたしましては、三十条に限らず、二十二条を初めとして、関連の規定がございます。これは、農業経営の発展、これは農業者自身経営努力を基本とするものでありますが、これに対して政策的支援をするということであります。これにつきましては、営農の類型なり地域の特性に応じてこれを講ずる、こういうことでございます。  したがいまして、画一的に認定農業者ということで限定するというか、特定するということではなく、認定農業者というのがそのメーンの対象になるとは思いますけれども農業生産法人なり集落で法人化するというようなことで行っている形態もございます。  それから、新たに農業についてこれから経営として発展していこう、こういう意欲のある農業者もおられますから、そういった方々のこれからの経営展開ということについては支援をしていきたいというふうに考えております。
  151. 前島秀行

    ○前島委員 最後に、収入保険制度、米の安定対策あるいは共補償等々でいろいろ議論になってきているし、この収入保険制度の検討、これからの一つ所得補償といいましょうか、経営安定対策として共済制度とうまくかみ合わせた一つの方向性なのかな、こういうふうに思われるわけであります。  したがって、この収入保険制度について、どういうふうに今後位置づけようとしているのか、そしてまた、これからの具体的な対策でどう進めようとしているのか、その辺のところを聞かせていただけますか。
  152. 竹中美晴

    ○竹中(美)政府委員 収入保険制度についてのお尋ねでございますが、現在の農業災害補償制度について見ますと、当然のことながら、これは農業災害の発生ということを前提にしておるわけでございまして、そういう災害の発生と関係なしに収入の減少分を補てんするという収入保険制度の導入につきましては、現在進めております農政全体の見直し、特に品目別の価格政策の見直しの状況も踏まえながら、今後その必要性を検討していくことになろうかと考えております。  検討を要する点はいろいろございますが、例えば、保険設計上なり、あるいは事業の実施上なりの問題だけを考えてみましても、例えば需給事情による価格低落ということを想定いたしました場合に、そういう価格低落は通常全国的に起こるものでございますので、地域的な危険分散ということがなかなか難しいのではないかというような問題、あるいはまた、需給事情による価格低落といいますものは、自然災害とか、あるいは事故とは違いまして、社会的なり経済要因によるものでございます。  したがいまして、通常の保険の場合のように、経験則に基づく保険料率の設定ということがなかなか難しいのではないかというような問題、さらには、まず農家全体としての収入を的確に把握する必要がございますが、これが現実にはなかなか難しい問題を含んでいる、こういった問題がございまして、今後農政全体の見直しの中で十分検討を深めていく必要があるというふうに考えております。
  153. 前島秀行

    ○前島委員 やはり個別品目だけの、経営安定だとか所得政策ではどうしてもこれからは限界が来ると思います。やはり経営体というか、農家全体の中でこの政策というものをぜひ位置づけていってほしい、こういうふうに思います。そういう角度で検討すると、この保険制度というのは、一つ考え方としてはやはり重要なものではないだろうかな、こういうふうに思っていますので、ぜひ所得政策経営安定対策の一つの検討課題としてこの点もさらに議論を進めていってほしい、こういうことを要望して終わりたいと思います。ありがとうございました。
  154. 穂積良行

    穂積委員長 次回は、明二十日木曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時五十九分散会