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1999-04-23 第145回国会 衆議院 日米防衛協力のための指針に関する特別委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年四月二十三日(金曜日)     午前九時一分開議   出席委員    委員長 山崎  拓君    理事 赤城 徳彦君 理事 大野 功統君    理事 玉沢徳一郎君 理事 中谷  元君    理事 中山 利生君 理事 畑 英次郎君    理事 前原 誠司君 理事 遠藤 乙彦君    理事 西村 眞悟君       安倍 晋三君    浅野 勝人君       石川 要三君    岩永 峯一君       大石 秀政君    大島 理森君       大野 松茂君    小島 敏男君       桜田 義孝君    砂田 圭佑君       田中 和徳君    田村 憲久君       西川 公也君    平林 鴻三君       福田 康夫君    細田 博之君       松本  純君    御法川英文君       宮腰 光寛君    八代 英太君       吉川 貴盛君    米田 建三君       渡辺 具能君    伊藤 英成君       上原 康助君    岡田 克也君       桑原  豊君    玄葉光一郎君       土肥 隆一君    横路 孝弘君       赤松 正雄君    佐藤 茂樹君       白保 台一君    山中あき子君       東  祥三君    井上 喜一君       達増 拓也君    木島日出夫君       佐々木陸海君    東中 光雄君       伊藤  茂君   知久馬二三子君       辻元 清美君  出席国務大臣         外務大臣    高村 正彦君         運輸大臣    川崎 二郎君         自治大臣    野田  毅君         国務大臣         (内閣官房長官         )       野中 広務君         国務大臣         (総務庁長官) 太田 誠一君         国務大臣         (防衛庁長官) 野呂田芳成君  出席政府委員         内閣官房内閣安         全保障危機管         理室長         兼内閣総理大臣         官房安全保障・         危機管理室長  伊藤 康成君         内閣法制局長官 大森 政輔君         内閣法制局第一         部長      秋山  收君         内閣法制局第二         部長      宮崎 礼壹君         防衛庁長官官房         長       守屋 武昌君         防衛庁防衛局長 佐藤  謙君         防衛庁運用局長 柳澤 協二君         防衛施設庁長官 大森 敬治君         防衛施設庁施設         部長      宝槻 吉昭君         外務省総合外交         政策局長    加藤 良三君         外務省アジア局         長       阿南 惟茂君         外務省北米局長 竹内 行夫君         外務省条約局長 東郷 和彦君         運輸省港湾局長 川嶋 康宏君         運輸省航空局長 岩村  敬君         海上保安庁長官 楠木 行雄君         自治大臣官房総         務審議官    香山 充弘君         自治省財政局長 二橋 正弘君  委員外出席者         外務大臣官房領         事移住部長   内藤 昌平君         衆議院調査局日         米防衛協力のた         めの指針に関す         る特別調査室長 田中 達郎君 委員の異動 四月二十三日            辞任         補欠選任   相沢 英之君     松本  純君   河井 克行君     大野 松茂君   阪上 善秀君     渡辺 具能君   萩山 教嚴君     御法川英文君   宮島 大典君     岩永 峯一君   若松 謙維君     白保 台一君   辻元 清美君    知久馬二三子君 同日                 辞任         補欠選任   岩永 峯一君     宮島 大典君   大野 松茂君     吉川 貴盛君   松本  純君     相沢 英之君   御法川英文君     萩山 教嚴君   渡辺 具能君     阪上 善秀君   白保 台一君     若松 謙維君  知久馬二三子君     辻元 清美君 同日                 辞任         補欠選任   吉川 貴盛君     砂田 圭佑君 同日                 辞任         補欠選任   砂田 圭佑君     田中 和徳君 同日                 辞任         補欠選任   田中 和徳君     河井 克行君 四月二十三日  新ガイドラインに基づく周辺事態法などの制定反対に関する請願児玉健次紹介)(第二七八四号)  同(佐々木陸海紹介)(第二七八五号)  同(志位和夫紹介)(第二七八六号)  同(辻第一君紹介)(第二七八七号)  同(中林よし子紹介)(第二七八八号)  同(古堅実吉紹介)(第二七八九号)  同(松本善明紹介)(第二七九〇号)  同(金子満広紹介)(第二九一五号)  同(木島日出夫紹介)(第二九一六号)  同(児玉健次紹介)(第二九一七号)  同(穀田恵二紹介)(第二九一八号)  同(佐々木陸海紹介)(第二九一九号)  同(志位和夫紹介)(第二九二〇号)  同(中林よし子紹介)(第二九二一号)  同(東中光雄紹介)(第二九二二号)  同(藤田スミ紹介)(第二九二三号)  同(松本善明紹介)(第二九二四号)  同(矢島恒夫紹介)(第二九二五号)  同(吉井英勝紹介)(第二九二六号)  新ガイドライン有事法制化反対に関する請願伊藤茂紹介)(第二八〇〇号)  新ガイドライン関連法案立法化反対に関する請願伊藤茂紹介)(第二八〇一号) は本委員会に付託された。 本日の会議に付した案件  日本国自衛隊アメリカ合衆国軍隊との間における後方支援物品又は役務相互提供に関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定締結について承認を求めるの件(第百四十二回国会条約第二〇号)  周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律案内閣提出、第百四十二回国会閣法第一〇九号)  自衛隊法の一部を改正する法律案内閣提出、第百四十二回国会閣法第一一〇号)     午前九時一分開議      ————◇—————
  2. 山崎拓

    山崎委員長 これより会議を開きます。  第百四十二回国会内閣提出日本国自衛隊アメリカ合衆国軍隊との間における後方支援物品又は役務相互提供に関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定締結について承認を求めるの件、周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律案及び自衛隊法の一部を改正する法律案の各案件を一括して議題とします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。玉沢徳一郎君。
  3. 玉沢徳一郎

    玉沢委員 自由民主党の玉沢徳一郎であります。  私は、本日まで一カ月以上、八十時間を超えるこの委員会審議の中で、最後一般質疑の日を迎えたわけでありますが、私にとりましては最初で最後質問を行うこととなりました。本日まで、各党の各委員の大変高邁なる御高説を拝聴させていただきまして、いろいろと得るところがあったと思います。本日は、私は、こうした御高説を承った上で、自分なりに感じた点について所感を交えて議論をさせていただき、両大臣の御所見を賜れば幸いであると思います。  まず、テーマ二つに絞りたいと存じます。一つは、新ガイドライン導入、特に周辺事態が含まれておるわけでありますけれども、この導入によりまして、日米安保体制は果たして変質したのかどうか、あるいは劇的な大きな政策転換があったのかどうかという点を論じたいと存じます。二つ目は、不審船に対してとった我が国初めての海上警備行動評価について論じてみたいと存じます。  まず第一の点から述べてみたいと思いますが、日米安保条約が一九六〇年に改定されてから今日まで、三十九年経過をいたしたわけでありますが、この間、我が国が平和と安全を保つことができましたのは、ひとえに日米安保体制自衛隊の諸君の努力によって確保されたことは、今や日本国民大多数の認めるところであると考えるのであります。  物言わぬ農民という言葉がありますが、東西対決冷戦時代、物言わぬ自衛官が、陸海空において、大変な緊張感に耐えながら、黙々と任務を果たしてきたことを我々は高く評価をしなければならぬと思います。その努力に対し、私は、ここに謹んで感謝の意を表したいと存じます。  一九六〇年の改定当時の情勢を顧みてみますと、米ソ対決のはざまの中で、大陸を取り囲むように位置しておる日本列島の地理的な位置は、極めて重要な戦略拠点であったと考えます。海洋国アメリカの側につけば、大陸国を封鎖する立場になりますし、大陸国の側につきますと、海洋国に立ち向かう太平洋への海上力最前線基地となったと思われるわけであります。  こうした戦略的地理から考えてみますと、米ソ対決に巻き込まれないようにする、こういう観点から、非武装中立という選択の道もあったということは当時も主張されたわけでありますけれども、もし、そういうような選択をしたということになった場合におきましても、日本米ソの間の中で極めて重要な戦略的な拠点をなしておるという観点から、私は、早晩、日本米ソの争奪の的になる、こういうことから、いずれは日本は戦火をみずから招く、こういうことになったということを今考えておるのであります。  幸いにしまして、賢明な日本国民は、自由と民主主義とを奉じます、同じ価値観を持っております自由主義国米国同盟を組むことを選択いたしまして、自由主義諸国の一員といたしまして、ソ連共産主義武力による世界統一に対峙するという道を選びました。  こうして日本は、第一義的には、ソ連脅威を受けることになりまして、ソ連脅威日米がいかに対処していくかということが最大のテーマとなり、日米安保条約目的は、日本極東の平和と安全に寄与する、こういうことが目的であったわけであります。  したがいまして、日本極東の平和に寄与する、こういう条約目的でありますけれども、ソ連世界戦略を展開するという上におきまして、あくまでも我が国に対する着上陸その他を考えておったことは当然であると思うわけであります。そのソ連に対していかに日米が対処するか、こういうことが旧ガイドライン中心をなしておった、私はそう考えるわけでございまして、この点に関しまして、外務大臣防衛庁長官、御見解がありましたならば御所見を承りたいと思います。
  4. 高村正彦

    高村国務大臣 いつもながら高邁な御高説をお聞かせいただきまして、ありがとうございました。  戦後、我が国は一貫して、日本国憲法のもと、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国にならないとの基本理念に従い、日米安保条約に基づく日米安保体制を堅持し、節度ある防衛力の整備に努めるとともに、我が国を取り巻く国際環境の安定を確保するための外交努力を行うことを安全保障政策基本としてまいりました。その中でも、日米安保条約に基づく米国抑止力は、玉沢議員指摘のとおり、引き続き日本安全保障のよりどころでごさいます。  日米安保体制は、過去四十年近くの間、我が国及び極東に平和をもたらしただけでなく、アジア太平洋地域における安定と発展のための基本的な枠組みとしても有効に機能してきており、冷戦終結後の現在においても、その意義と重要性を有していると考えます。  我が国としては、このような日米安保体制のより効果的な運用を確保することが極めて重要と考えており、新たな日米防衛協力のための指針を策定するとともに、その実効性確保のため、周辺事態安全確保法案を現在国会にお諮りしているところでございます。  我が国としては、今後とも、日米安保条約を堅持し、その効果的な運用信頼性の一層の向上のため、引き続き努力していく考えであります。  冷戦構造下における日米安保体制と、それから、冷戦構造が崩壊して、そしてなおかつ不透明、不確実、いろいろ問題がある現在において、基本日米安保体制、同じでございますが、そこにおのずからいろいろな差異は出てくるということはそのとおりだ、こういうふうに思っております。
  5. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 御質問の冒頭で、自衛隊に対するいたわりと御激励を賜りまして、本当に心から感銘している次第でございます。  その他のことにつきましては、外務大臣がおっしゃったとおりで、つけ加えることはございません。
  6. 玉沢徳一郎

    玉沢委員 日米安保条約は、とかく、片務条約である、こういうことが指摘をされております。確かに軍事的には、日本攻撃されましたときは、米国日本を守るために行動いたします。米国攻撃されたときは、日本米国を守る義務は記されておりません。しかし私は、軍事的には片務条約であるけれども、我が国のそれを補う義務というものが明確に示されておると思うのであります。  それは、第六条によって、日本及び極東の平和と安全に寄与するためには、米軍に対して施設と区域を提供する、またホスト・ネーション・サポートのように、後方支援も行うことができる、こうした形ででき上がっていると思うんです。  ですから、軍事的には、昔から、専守防衛日本は盾の役割をする、有事があった場合においては、日本は独自で、まず侵攻してきた侵略軍に対して戦う、と同時に盾の役割を行う、そして相手攻撃するというのは、これは米軍がその攻撃してくる点を攻撃する、つまり盾とやりの役割を果たしている、そういうように言われてまいったわけでありますけれども、この二つが非常によくかみ合って抑止力を構成してまいりまして、この冷戦時代を耐え抜いて、そして、あえて言えば勝ち抜いてきた、こういうように評価をするものであります。私は、今回のガイドラインにおきましても、これは明確にきちっとあらわれておる、こういうふうに思うわけでございます。  今、日本は、テポドン等発射によりまして、弾道ミサイル脅威にどう対処するかということで、いろいろな研究等も行われようといたしておるわけでありますけれども、ガイドラインの本文には、弾道ミサイル日本に対する攻撃に対して、これも明確に書かれております。「自衛隊及び米軍は、弾道ミサイル攻撃に対応するために密接に協力し調整する。米軍は、日本に対し必要な情報提供するとともに、必要に応じ、打撃力を有する部隊使用を考慮する。」と書いてあります。テポドン発射の場合におきましても、事前に情報提供していただいた。約束どおりやっておる、私はそう考えるわけであります。  しかして、やはり弾道ミサイル日本を襲うような場合におきましては、それに対処する、こういう観点から、日米で十分調整し協議をしてこなければならぬ、こう考えるわけでありますが、防衛庁長官におかれましては、これは具体的でなくてもよろしいのでありますが、余り具体的に話をするといろいろ問題があるかもしれませんけれども、決意だけ申し述べていただければ、このように思います。
  7. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 ガイドラインでは、今委員から申されたとおり、特定の国や地域を念頭に置いたものではありませんが、冷戦後の国際環境変化等を踏まえまして、ミサイル攻撃に対して自衛隊及び米軍は密接に協力し調整する、あるいは「米軍は、日本に対し必要な情報提供するとともに、必要に応じ、打撃力を有する部隊使用を考慮する。」とされているわけでございます。  防衛庁としましては、状況緊迫時の情報収集活動の強化、それから弾道ミサイル発射時の関連情報の公表、それから落下、被害状況の確認や、状況に応じ防衛出動等により適切に対処することとしておりますが、御指摘米国との協議も大変重要なことと考えており、日米間の各種政策協議指針のもとでの計画検討作業の着実な進捗を通じ、日米安保体制信頼性向上を図ってまいりたい、こういうふうに考えております。
  8. 玉沢徳一郎

    玉沢委員 我が国弾道ミサイル攻撃をされた場合には直ちに対応する、こういう方向で今後御検討を賜りたい、このように思います。  そこで、旧ガイドラインにおきましては、冷戦時代に対処するという形でその運用方針が決定されておったわけでありますが、冷戦時代終結をいたしたわけでありますから、新しい時代に対処する、こういうガイドラインが必要とされてきておったわけであります。  私も防衛庁長官をしたわけでありますけれども、私が防衛庁長官をやったころから見直しの機運が生まれまして、日本でもその協議会において協議がなされて、ポスト冷戦に対してどう対処するか、アメリカも同じようにそういう努力がなされてまいりまして、それで一九九六年の四月十七日、日米安全保障共同宣言が発せられたわけであります。ここでポスト冷戦に対しまして両国共同認識が示されまして、そこで今日のガイドラインに向けての作業が開始された、こう考えるわけであります。  そのときの宣言を、抜粋でありますが、読み上げてみたいと思うわけであります。  「日米安全保障共同宣言 二十一世紀に向けての同盟」というこの中におきまして、地域情勢認識についてはこう言っております。冷戦終結以来、世界的な規模武力紛争が生起する可能性は遠のいておる、アジア太平洋地域には依然として不安定性及び不確実性が存在しておる、朝鮮半島における緊張は続いておる、核兵器を含む軍事力が依然大量に集中している、未解決の領土問題、潜在的な地域紛争大量破壊兵器及びその運搬手段の拡散はすべて地域不安定化をもたらす要因である、こう書いてあります。  つまり、世界大規模武力紛争というものは遠のいたけれども、地域中心とする武力紛争というものは依然として残っておる、アジア太平洋地域において。したがって、それを未然に防止するなり、あるいは抑止する、こういう観点から日米共同して対処していく、こういうのが今回のガイドラインのもとになった、こう私は考えるわけでありまして、この委員会においても相当議論をされてまいりました周辺事態、これもそういう認識のもとに生まれておると私は思います。  したがって、日米両首脳はこう言っております。「日本周辺地域において発生しうる事態日本の平和と安全に重要な影響を与える場合における日米間の協力に関する研究をはじめ、日米間の政策調整を促進する必要性につき意見が一致した。」こういうことであります。  つまり、旧ガイドラインにおきましては、冷戦構造において世界的な規模武力紛争というものを想定しまして、日本及び極東の平和と安全をどう守るか。新しいガイドラインは、アジア太平洋地域における地域武力紛争、こういうものに対していかに対処していくか。そういうことからこの周辺事態の考え方が生まれ、そして後方地域支援船舶検査後方救難捜索活動の三つの事案が必要とされてきた、こういう観点から受けとめることができると思うわけでございます。  したがいまして、当委員会におきましていろいろと議論がありました後方地域支援でありますけれども、後方地域支援において安全な地域が確保できるかどうかということについて、戦争といいますのは要するに前線後方もない、みんな一体としたものだという議論がなされました。しかし私は、これは余りにも実態に即さない議論であると思うんです。  私は、世界的な武力紛争という場合におきましては、例えば、今でこそ言えるわけでありますけれども、ソ連ですね。ソ連軍事能力というものを考えてみれば……(発言する者あり)いや、当時はソ連なんだよ。ソ連軍事能力が非常にありましたから、もし世界的な武力紛争が展開をされたということになってまいりますと、私は、太平洋日本海東シナ海も、全域戦争状態になったと。ここはいずれも後方前線もない。相手がそれだけの軍事能力を持っているわけですから、船足の長い原子力潜水艦が世界じゅう何周でもできる能力を持っておってやっておる、戦略爆撃機も持っておる、衛星も持っておる、情報が全部手に入る、こういうことであれば後方前線もない。  しかしながら、同じ紛争であっても、地域紛争の場合は相手能力が限られておる。ソ連と同じような軍事能力は持っていないんです、その他の国々は、あえて言いませんけれども。そうした場合においては、戦域が限定される。たとえミサイルを持っておったとしましても、情報がない限り攻撃拠点を指定することはできないわけですから、私は、そういうことを考えた場合は、ソ連以外の国々において地域武力紛争が起きた場合におきましては、例えば日本海全域戦域になる、東シナ海全域戦域になる、太平洋全域戦域になるということはない、こういうふうに考えるわけでありまして、したがって、安全なところは明確にすることができますし、後方地域支援の概念は成り立つ、こういうように考えておるわけであります。  そういう観点からいいますならば、日米安保条約体制といいますのは、武力紛争が世界的な規模紛争時代から地域武力紛争に変わった、したがって新しいガイドラインは新しい事態に対処するために生まれたものである、しかし日米安保条約基本は何にも変わっていない、条約基本は何も変わっていない。両国軍事行動を起こす場合におきましては、いずれの国の憲法のもとに従って行うということを明確にいたしておるわけであります。したがって、私は、この新ガイドライン導入によりましても、政策の大転換とか変質したとかということはない、こういうように断言をし、評価するものであります。  この点について、両大臣の御見解を賜れれば、こう思います。御所見でいいです。
  9. 高村正彦

    高村国務大臣 先ほども申し上げたように、委員がおっしゃるように、安保条約基本というのは変わっていない。そういう中で、種々の国際情勢変化の中、特に冷戦構造が崩壊した、それにもかかわらず依然として不透明、不安定、いろいろ地域紛争はあり得る、現実にある。そういう状況の中でどう対応していくかということでありますが、特に、旧ガイドライン日本有事ということに焦点を絞って書かれていたわけで、今度の場合、特に日本の平和と安全ということを大きな一つ焦点として、そしてそういう中から今の法案審議をお願いしているところでございますので、よろしく御理解のほどをお願いしたい。  委員の御指摘、おおむね賛成でございます。
  10. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 委員の御指摘はそのとおりであると私も考えます。  特に、防衛庁の関係としまして、先ほどお話がありましたが、周辺事態というのは我が国周辺地域において武力紛争が発生している場合における事態ということで、これからは全面戦争ではなくて局地的なものになるから、日本海東シナ海等の公海において我が国支援活動を行う後方地域は確保できるものと思われるがどうかという意味の御質問があったと思いますが、私たちも、自衛隊が収集した情報外務省から得た情報米軍から得た情報等を詳細に分析することによりまして、長官が合理的に判断することは可能であると考えております。  また、具体的な事態が生起していない状況において具体的な地域について論ずることは適当ではないと考えますけれども、一般論として申し上げますと、周辺事態に際しては、防衛庁長官によりこのような合理的判断が行われるので、後方地域の要件を満たす地域が全くないということは、御指摘のとおり、現実の問題としては想定されないものと考えております。
  11. 玉沢徳一郎

    玉沢委員 当委員会における審議も、本日一般質疑を終わりまして、次は締め総、採決、こういう段階になったと私は考えております。  かつての、一九六〇年の安保の当時におきましては、国論が二分するような状況でございました、賛成、反対ですね。ところが、それと違いまして、今日は、与党は自由民主党でありますけれども、第一野党、第二野党、第三はないわけでありますけれども、五五年体制のような状況ではない。みんな日米安保体制に賛成しておる。  私は、そういうことから考えますならば、今修正協議がなされておるわけでありますけれども、ここで私が申し上げたいと思いますのは、それぞれの党の主張もあるかと思いますけれども、ここは、党の利益を優先するよりは国家の利益を優先する、こういう大きな観点から、やはり修正協議を相まとめまして速やかなる成立を図るべきである、このように考えるわけでございまして、委員長の御指導のもとに、今後我々は成立に向けて頑張る、こういう決意を表明いたしたい、このように思います。  委員長の御見解も賜りたいと思います。
  12. 山崎拓

    山崎委員長 立派な御所見でございます。(発言する者あり)
  13. 玉沢徳一郎

    玉沢委員 今調整していますから。  次に、不審船に対する日本が初めて行いました海上警備行動でありますけれども、当委員会におきましては、海上警備行動が発令されたことは評価するけれども、不審船を取り逃がしたということは極めて遺憾である、あるいは不名誉なことであって誇りが極めて傷つけられたとか、あるいはこれは銃撃をして撃沈すべきであったというような意見もあったやに聞いております。これに対して、防衛庁長官は、これは国内法の制約があって、相手に危害を加えてまで拿捕とかあるいは撃沈はできない、こういうふうに言われました。  私は、不審船が明確なる犯罪行為とか不法行為とか、こういうことを行ったという証拠がない限りは、やはりこれは、国内法ばかりじゃなく国際法からいっても、撃沈とかそういうことはできない、そういうふうに考えるのであります。(発言する者あり)韓国は、要するにそういう事案があったと聞いておるわけでありますが、これは拿捕を目的としてやったんですね。しかしながら、相手が応戦をしてきた、日本の領海の方に逃げ込もうとした、こういうことをもって撃沈の決意を固めた、こういうふうに私は考えております。ですから、全く日本と同じであるということをここで申し上げておきたいと思うんですね。  多くの委員が遺憾であるとか誇りが傷つけられたとかという、余り高い評価をしてないんでありますけれども、私は、まずもって、海上警備行動が発令されたことによりまして、不法な行為をしたかもしれない不審船に対し、我が国が断固とした国家意思を示すことができた、こういうことは高く評価していきたいと思うんであります。  これも、物言わぬ自衛官の名誉のために私は実際に行ってこれを検証したい、こう思いまして、先般、当委員会で地方公聴会が福井でありました際、その近くにあります、そこから出動いたしました舞鶴の地方総監部に行ってまいりました。そこでは、追跡した船のうち、イージス艦の「みょうこう」しかおりませんでしたが、関係者の皆さんから意見を聞いて、非常に立派によくやった、こういう評価をしました。  それはどういうことかと申しますと、まず、三月二十三日の十三時六分から海上自衛艦が追跡をしまして、翌日の三月二十四日の午前三時二十分あるいは六時まで追跡しているんですね。防空識別圏まで追跡しておる。実に十四時間から十七時間もやっているんですね。そして、海上警備行動が発令をされた後に、二十四日の午前一時十九分から三十四分の間に第二大和丸と称するものに「みょうこう」が十三回、「はるな」は第一大西丸に十二回の警告射撃をしておる。  これは、委員長防衛庁長官をしましたからおわかりと思いますけれども、我々は、普通考えて、射撃といいますのは目に見えるところで射撃することしか考えてないんです。ところが、このときの状況というのは何であるか。午前一時といいますのは、暗夜で全く物が見えない。しかも荒天である。荒天であるということは、相当の暴風雨のようなしけである。そういうときに、三十五ノットの高速で走っておる船、これが百トンの小型の船である、これに射撃をするというのがどんなに大変か。しかも、的に当てるのは簡単ですよ、簡単らしいんです。的を外して警告射撃をやるというのが、これは大変なことなんです。  聞きますと、やはり遠方から、五百ヤード、三百ヤード、百ヤード、前後左右に撃っておるようでありますけれども、委員長もゴルフをやると思いますけれども、五百ヤードというのはロングホールですよ。三百ヤードというのはミドルホール、百ヤードというのはショートホールですね。五十ヤードといったら、これはちょっと打てばすぐやるような。これは、転覆をさせないで警告射撃をやるということは相手に対してどういう威圧感を与えるか。もし不法行為した場合は直ちに撃沈しますよと、しかも瞬時にですよ。相手にそういう意思を伝えたということは大変なことだ。しかも、防衛庁長官の命令に従いまして立派に沈着冷静に任務を全うしておる。これは、ふだんからの大変な精強たる自衛隊としての訓練をしておる、この成果があらわれたと思うんです。  ですから、日本は撃沈をしない国だから悠々と鼻うたを歌って逃げたような話をここでやっていましたが、私はこの実態を見ますと、何かが上がるという言葉があるんでありますけれども、総毛立つという言葉もありますが、命からがら行ったと思うんです。そういうことをやったということを認めて、私は長官の前に舞鶴に行ってまいりましたが、こうしたところを私は高く評価するんですよ。やはり今後もしっかりやっていただきたい、こういうことを申し上げたいと思います。  そこで、不審船に対しましては、私は、撃沈とか危害を加える——危害を加えるといったってそう簡単にはいきませんから、やはりこれは拿捕すべきだ、絶対に拿捕すべきだ、こう思うんですね。ということは、拿捕することによって不法行為を行った人間の国籍を明確にし、目的を明らかにする、それによって明確なる証拠を握るわけですから、その証拠を相手の国に突きつけて外交交渉をやる、これぐらいの迫力でなきゃ私はいかぬと思いますよ。  したがって、この点について外務大臣、御見解がありましたらお願いします。つまり、拿捕して証拠をちゃんと握った上で外交交渉する、こういうことが私は大事だと思うのですね。どうですか。
  14. 高村正彦

    高村国務大臣 海上自衛隊の皆さんに本当によくやっていただいた、こういうふうに思っております。  委員が御指摘になるように、拿捕しなかったより拿捕した方がよかった、それは明らかでありますし、そういう中で外交交渉も、拿捕しなくとも、私たちはこれが北朝鮮の工作船であるという判断をしているわけでありますから、日本としてはきっちり抗議をしているところでございます。  拿捕できなかったためかどうか知りませんが、北朝鮮側は、全く関係ないものである、ガイドライン法案を通すためのでっち上げだなどというところまで言っているというのは——ただ、国際社会みんなが日本の言うことを信じ、北朝鮮の言うことを信じていないということは、日本にとって大変幸いなことである、こういうふうに思っております。
  15. 玉沢徳一郎

    玉沢委員 幾ら外務省が北朝鮮に抗議をしたって、そんな事実はないと言えば、それで終わりなんですね。ですから、私は、やはり十分なる準備をしまして、北朝鮮と指定しなくても、証拠を握った上でやるべきだ、そうでない限りは、いつまでも相手側に否定されれば、それで終わりなんですから。そういうことを私は強調したいと思います。  したがって、海上保安庁さんも大変よく頑張ったと思います。残念ながら燃料が不足しておった、こういうことで海上自衛隊にかわったわけでありますけれども、私は、海上保安庁の皆さんも大変よくやっていると思うのです。  昨年、外国の漁船が日本の領海に入って不法行為をした場合、これを確認しているだけで千五百二十隻であるというふうに聞いております。その千五百二十隻のうち、非常に悪質なものだと思いますけれども、八十四隻が立入検査を受けていまして、二十三隻が検挙されている、こういう状況ですね。  立入検査もやっておるわけでありますから、今回の事案におきまして、現場には三十ノットの船もあったというのでありますが、初期の段階において、要するに、相手が逃げる場合、強行接舷をしまして、それで拿捕する、こういうことも現場では検討されたということでございますけれども、なぜそれがなされなかったか。あるいは、今後なされないとすれば、どういうような形で対処しようとしているのか。こういう点についてお聞きしたい、こういうふうに思います。
  16. 楠木行雄

    ○楠木政府委員 お答えいたします。  先生御指摘のように、私どもも立入検査をすべく考えておったわけでございますが、逃走する船舶を停船させる手法といたしましては、御指摘のような、巡視船艇による強行接舷というのも確かにございます。私ども、対馬の違法漁船などを取り締まる場合にもそのようなことをしております。そのほかにも、海水による放水とかあるいは警告弾の発射、挟み打ちの捕捉等があるわけでございます。  今回のことに至る前に、そういった停船手法のどれをとるかということであったわけでございますが、相手船の速力とかあるいは武器の装備の状況、気象、海象の状況、こういった点でございますか、何よりも巡視船艇の数などを考える必要があったということでございます。  それで、今回の場合は、そういったことをやっておりますうちに、相手がにわかに速力を増したということであったわけでございますが、また相手船からの武器によります反撃も想定されるということもございましたので、巡視船艇の勢力がそろうのを待って強行接舷による停船手法をとらずに、威嚇射撃による停船手法をとったところでございます。  今回、こういった点の反省点を踏まえて、内閣の方で、七つの項目、そして海上保安庁の能力の整備といったことも検討しておりますので、その中でいろいろ検討してまいりたいと考えております。
  17. 玉沢徳一郎

    玉沢委員 最後でございますけれども、昨年の十二月十七日の深夜に、韓国の南海岸、釜山の近くの麗水市沖約二キロメートルのところにおきまして、韓国領内に上陸しようと試みておる北朝鮮の半没潜水艇が発見をされた、先ほどの話でありますけれども。これが発見をされて逃走をした。そして武装抵抗をして応戦してきた。同時に、最終的に韓国海軍がこれを撃沈するというふうに決意したと思われますのは、我が国の対馬の南西八十キロのところに来まして、どうやら日本の領海の中に逃げ込んで逃走をはかろうとした形跡があったから撃沈したのではないか、こういうふうに言われているわけです。  それで、抗戦をしながら日本の領海に入ってくる、こういう事例が今後も出てくる可能性があるんですね。この場合に、海上保安庁の船も近くにおったようですね、調査しながら。それからまた、海上自衛隊も監視行動をとっておったようでありますけれども、やはり武装して抗戦しながら我が国の領海に入ってくるということになった場合は、我が国は当然これは退去を命じなければなりませんが、それに応じない場合は、断固としてこれは、無害化するために海上自衛隊が出てこれを撃退しなければいかぬ、こう思います。  したがいまして、今後こういう事案があると思いますから、まず危機管理に対しては、防衛庁長官、しっかりとこれに対処する、同時に、海上自衛隊と海上保安庁が相連携して、そして日本の領域の警備をしっかりとやっていく、こういうことが一番今大事だと考えられますので、関係当局におきましてしっかりとした対応をされますように要望をいたしたいと思います。  御意見がありましたら、防衛庁長官、お願いします。
  18. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 大変大事な御指摘をいただきましたが、私どもは、一般論としてまず申し上げますと、自衛隊は、平素から警戒監視や訓練等を実施し、不審船を発見した場合の連絡など、海上保安庁との連絡をさらに緊密にしてまいりたい、こう思っているところであります。  また、場合によっては、自衛隊法に規定された防衛出動や海上警備行動が下令された場合には、事態に応じ、法令により付与された立入検査や武力の行使の権限などを適切に使って対処したい。  いずれにしましても、防衛庁内に重要事態対応会議というのをつくりまして、今委員から御指摘ありましたようなことにつきまして鋭意検討をし、対処を考えているということを申し上げたいと思います。
  19. 玉沢徳一郎

    玉沢委員 終わります。ありがとうございました。
  20. 山崎拓

    山崎委員長 これにて玉沢君の質疑は終了いたしました。  次に、米田建三君。
  21. 米田建三

    ○米田委員 前回、三月三十一日に質問をさせていただきましたが、その際に議論をさせていただきました周辺事態安全確保法案のうちの三活動のうち、後方地域支援のみに武器使用の規定がない件につきまして、長官を初め皆さんから御答弁をいただいた点、何点かちょっと得心できない部分がございますので、まずはその改めての確認からさせていただきたいと思うわけであります。  前回の防衛庁長官の御答弁は、要するに、後方地域捜索救助活動または船舶検査活動については、不測の事態が発生することは否定できないので武器使用規定を設けたが、後方地域支援については、そのような事態が想定できないので武器使用規定は設けなかった、こうお答えになっているわけであります。つまり、前二者の活動については、不測の事態が発生することが否定できないとはっきりお認めになっている。そして後方地域支援については、それは想定できないとおっしゃっているわけであります。  そして、その理由として長官は、後方地域支援は、後方地域、これはもう言うまでもありませんが、すなわち、我が国領域、並びに現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる我が国周辺の公海及びその上空の範囲、これでありますが、そこで活動が行われるからであるというふうに述べられました。  しかし、ちょっとこの辺がおかしいわけでありまして、つまり、後方地域捜索救助活動も同じ後方地域で行われる活動ではありませんか。これについては武器使用が認められ、後方地域支援については、後方地域で行われることを理由に認められていない、これは全く論理矛盾であります。  それからまた、船舶検査活動につきましては、法文上、後方地域に限定されておりませんが、実施区域は実際上は後方地域でありますね。だとすれば、この三活動とも同じ後方地域で活動が行われる。しかるに、後方地域支援のみに、まさに後方地域であるということを理由にされて、長官は、武器使用規定は認められないんだとおっしゃった。ちょっとその辺が理解できないわけでありますが、御説明をお願いしたいと思います。
  22. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 後方地域において行われるということのほかに、例えば後方地域捜索救助につきましては、救助の職務を行うに際し、救助される対象者から反撃を加えられる、危害を加えられるおそれがある、これは当然出てくるところだと思います。  それから、船舶検査活動については、検査対象船舶に乗船してその職務を行う際に、船長の統制に服しない船員等から、この活動の実施を命ぜられた部隊等の自衛官に反撃をするおそれがある、こういうことがあるから、後方地域でこれらの活動をやる場合であっても、十一条によって自己保身の必要最小限度の武器使用を認めた、こう申し上げているところであります。  それに対して、後方支援は、後方地域においてやるということのほかに、この後方支援後方地域米軍に届けるわけでありまして、米軍から危害を加えられるということは予想されない、だからこれを書き分けたというふうに申し上げているところであります。
  23. 米田建三

    ○米田委員 長官、私はむしろ、船舶検査活動や後方地域捜索救助活動の方が、後方地域支援よりかひょっとして、より安全ではないかなというふうに考えているわけなんです、これは私の私見でありますが。  つまり、一貫して御説明の後方地域の性格上、これは基本的には日米による制海権並びに制空権が成立している地域ですね。基本的にそういうことだと思うんですよ。だといたしますと、むしろそれ以上に、我が国国内での輸送業務等も含めた後方地域支援の方が、前回も指摘させていただきましたとおり、反日、反米のゲリラ的な武装勢力による危険性も含めた危険がやはりある。船舶検査活動や捜索救助活動よりも安全であると断言はできないと私は考えるわけでございます。  先般の質問の際に、国内において対米支援の物資を輸送している自衛隊が、今申し上げたようなゲリラ的な武装勢力に襲撃されるケースにつきまして、長官は、国内においては警察により治安が維持されていると考えるので、それで対処するという御答弁をなさいました。しかし現実に、プロの訓練された戦闘集団による奇襲に、そういう建前論で果たして対応できるのかな。あの素人集団のはずのオウムですら、あれだけの大事件を引き起こせるわけであります。そういう危惧がやはりあるわけであります。常に警察が警護して後方地域支援が行われるわけでもないと思うわけでございます。  さらに長官は、さきの質問での御答弁で、仮にプロの戦闘集団が襲撃するような場合においては、自衛隊法九十五条の要件を満たす場合に武器の使用を認められるとお答えになりました。つまりは、そのような状態では、九十五条の恐らく車両防護で対応、そういうことであろうかと思います。  では、そういう事態があった場合に九十五条で対応できるとお答えになったわけでありますから、後方地域支援の際に武器の携行を認めるわけですね。自衛隊は、通常、武器の携行は大変限定されておりますが、もし仮にそのような事態が起きた場合には九十五条で対応できる、そういうふうにお答えになりました、武器の使用を認められると。ならば、武器の携行は、後方地域支援についてはお認めになるわけですか。
  24. 柳澤協二

    ○柳澤政府委員 今先生の言われております自衛隊法九十五条の武器等防護でありますが、これは法律上は、武器等防護のために一定の武器の使用が認められております。そして、実際にどういう形で行うかということにつきましては、これは武器等の警護の任務を付与された自衛官に与えられた権限でありますから、その必要な場合に武器等の警護の任務をつける判断は、それはいたします。その場合には、九十五条で警護の任務を持つわけでありますから、それに必要な武器の携行をするということでございます。
  25. 米田建三

    ○米田委員 つまり、船舶検査活動やあるいは後方地域捜索救助活動において、十一条による武器使用の規定は後方地域支援にはないけれども、九十五条の適用があり得るので、そのケース・バイ・ケースの判断によって武器の携行をさせる、こういうことですね。再確認です。
  26. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 現実に武器を持たせるか否かは、個々具体的な状況に応じて判断されるべきものであると申し上げたところでありますが、状況によっては持たせることができるということであります。
  27. 米田建三

    ○米田委員 そこで、この九十五条についてもう一つお尋ねをしておきたいわけでありますが、実は、自衛隊法九十五条というものは、御承知のとおり、防護の対象が限定されております。自衛隊の「武器、弾薬、火薬、船舶、航空機、車両、有線電気通信設備、無線設備若しくは液体燃料」と明快に法文で限定されているわけであります。しかし、後方地域支援の業務は、補給、輸送、修理、整備、医療、通信、空港、港湾業務及び基地業務と極めて多岐にわたっているわけでありまして、九十五条ですべて対処できるとは思えないわけであります。  しかも、「自衛隊の」という、自衛隊のものに限定もされているわけでございまして、私は、今の後方地域支援においてもケース・バイ・ケースで武器の携行はさせるというお答えは、大変前向きのお答えであるというふうに評価をいたしますが、九十五条の限界というものがある。これは今、後方地域支援について議論をさせていただいておりますが、やはり恒常的な課題であります。  前回の御答弁で、九十五条の改正について勉強していくというふうに述べられましたが、その点、再度長官のお考えを確認させていただきたいと思います。
  28. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 九十五条の規定の趣旨は、今委員が挙げられたようなものの警護に当たる自衛官の武器の使用を認めたものでございますが、御指摘のとおり、部隊施設自体については同条の防護対象とはされておらないところであります。このような自衛隊法九十五条の趣旨にかんがみまして、現段階において、同条を改正することによって部隊及び施設の警護を行い得るようにすることを考えているわけではございませんが、今後の検討すべき課題だと思っております。
  29. 米田建三

    ○米田委員 その点に加えまして、前回指摘をさせていただきましたように、後方地域支援活動中の、自衛隊のみならず周辺の民間人も巻き込まれる形で襲撃の対象となるケースが否定できないわけであります。これはもう、もとより九十五条では対応はできません。警察が常にその場にいるわけでもありません。  前回の御答弁で、後方地域支援でもし武力行使に巻き込まれるようなことになれば、行為を中断したり休止をしたり実施区域の変更をやると答弁を長官はされましたが、国内でテロ行為に遭った場合にどこへ引っ越すんですか。長官我が国からよそのところへ行くわけにいかないと思うんですね。  治安出動、防衛出動に至らない奇襲テロ等、このグレーゾーンにおける自衛隊並びに民間人防護のための武器使用の枠組みでありますけれども、これをやはり、今回の周辺事態安全確保法における十一条、すなわち自己及び自己とともに職務に従事する者を防護するため、あるいは隊法九十五条、武器等防護のため、これらのいわゆる制約、限界を超えた枠組みを今後勉強していかないと、検討していかないと、やはり対処できない事態というのはいろいろ出てくるのではないか、こんなふうに考えますが、御見解を伺いたいと思います。
  30. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 政府として、民間業者に協力を依頼する場合には、その安全性について慎重に判断し、およそ不測の事態が起こり得ない、そのような危険性がないと考えられる状況において国から協力を依頼することとなります。協力を依頼する際には、安全確保のための配慮事項を提供するとともに、事態変化等について新しい情報提供を継続して行うなど、安全について万全を期していきたい、こう考えております。  一般論として申し上げますと、自衛隊の武器等について自衛隊法九十五条の警護の任務が付与されておる場合において不測の事態が発生したときは、これが同条の要件を満たす限りにおいては、同条の規定に基づき武器を使用することが可能であります。  また、今委員から御指摘があったように、自衛隊が受けた襲撃に巻き込まれた近隣の民間車両については、一般には、自衛隊が武器等防護のための武器使用をすることにより、その結果として防御されることになると考えられます。委員の御指摘については、引き続き勉強してみたいと思います。
  31. 米田建三

    ○米田委員 ありがとうございました。  次に、これは外務大臣に伺いたいわけでありますが、我が国は、周辺事態にかかわるこの法に規定された諸活動を行うに際しまして、国際法上の紛争当事国、交戦国ではありませんね。
  32. 高村正彦

    高村国務大臣 武力行使もいたしませんし、武力行使と一体化するようなことも行わないわけでありますから、交戦国ではございません。
  33. 米田建三

    ○米田委員 であるとするならば、少し私は悩ましい問題が起きてくると思うわけであります。  捜索救助活動で収容した相手国、紛争当事国ではないということでありますから敵国とは言いませんが、相手国の兵士の取り扱いでありますが、紛争当事国あるいは交戦国でないから、相手国の兵士は、これまた国際法で処遇がきっちり規定されたところの捕虜として扱うことは我が国はできない、これが大前提だろうと思うんですね。捕虜ではない、我が国の捕虜ではない。  であるならば、その相手国の兵士をどう扱うのか。何らかの形で、捕虜ではない何かの理由づけをしながら我が国の国内に収容するのか、あるいは米軍に引き渡すのか。米軍に引き渡すということになるならば、直ちに中立性というものはなくなる、こういうことになるわけであります。またあるいは、おめおめと赤十字でも通じて本国に直ちにお返し申し上げるのか。このマニュアルがはっきりしておりませんと、各現場が混乱するのではないかと思うわけでありますが、この点についての措置マニュアルというものは決まっておるのかどうか、御説明を願いたいと思います。
  34. 高村正彦

    高村国務大臣 我が国が捜索救助活動を行い遭難者等を救助した場合、これらの者をいかに取り扱うべきかについては、その時々の状況を踏まえ、慎重に判断することが必要となるため、具体的状況を離れて仮定的に申し上げることは困難でございます。  しかしながら、いずれにしても、軍隊の構成員で、海上にあり、かつ傷病者または難船者であるものは、すべての場合において尊重し、かつ保護しなければならないことは、人道的観点から国際法上確立された原則でございます。したがって、周辺事態において我が国が捜索救助を行う場合にも、軍隊の構成員である傷病者及び難船者を尊重し、保護することは当然であるわけでございます。  マニュアルは決まっているかどうかということでございますが、必ずしも外務省の所管ではないと思いますが、私はマニュアルが決まっているというふうには承知をしておりません。
  35. 米田建三

    ○米田委員 次に、北朝鮮の工作船事件に関連しまして、何点かお尋ねをしたいと思います。  海警行動が我が国初めての発動ということで発令をされたわけでありますが、その際に、その命令に部隊行動の基準を示す措置標準が添付をされたというふうに報じられております。この内容、特に禁止事項、これは一体何であったのか、防衛庁長官の御答弁をひとつお願いしたいと思うのです。
  36. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 後で政府委員の方から細かく説明させますが、防衛庁長官が命令した措置標準で船体銃撃や人に危害を加えることを禁止したというふうに一部で言われているということを伺いますが、人に危害を与えずに航行不能化のため船体に射撃を行うことについては、防衛庁長官が命令の中で示した部隊のとるべき措置の標準の中でも禁止していたわけではないということを明言しておきたいと思います。  しかしながら、先般の事案では、不審船の船体が百トンと非常に小さいことから、今我々が持っております火砲等で攻撃をした場合に、中にいる人に危害を与えずに航行を不能にすることは困難であったと判断したため、砲撃を行わなかったわけであります。  この種の事案に際して、私としましても、今後の対応について万全を期するため、人に危害を与えずに停船させる方法など、今回の教訓について具体的に検討するよう指示し、今、重要事態対応会議等を開催するなどして、鋭意検討を進めているところであります。
  37. 米田建三

    ○米田委員 今の御説明はわかりましたけれども、これは既に、我が国は北朝鮮の工作船と断定をしているわけであります。しかも、北朝鮮と我が国との関係は、今どういう状況にあるのか。日本国民の拉致を重ねてきたわけであります。国家が国民の身体、生命を守れなくなったら、もうそれは中央政府の資格がないと言われても仕方がないわけでありまして、私は、すべてに優先してこの侵された主権を回復することが政治の使命であるというふうに考えている一人でありますが、停船命令を無視し、威嚇射撃も無視して逃走をいたしました。  どうなんでしょうか、警職法準用の枠を超える措置というものをこれから検討していかなければ、実際の抑止力にもならないんじゃないでしょうか。  つまり、なぜかというならば、これは単なる我が家の庭に泥棒が入り込んだという話ではないわけでありまして、国家主権の侵害である、その辺のちまたで起きているちょっとした刑事事件じゃない、国家の主権が侵されたわけでありますから、警職法の準用の考え方を超えた対応の措置というものを私は考えるべきときに来ているのではないかというふうに思いますが、長官、いかがでございましょう。
  38. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 委員の御質問には私も共感するところが多いのでありますが、今の法律体系をにわかに変えろといっても、これはなかなか難しいことは御理解いただきたいと思います。  今、私どもとしては、人に危害を加えないでどうしたら拿捕できるかという点に絞って大変真剣な検討を行っておるところでありまして、まずはこれで対処をしてまいりたい、こういうふうに思っているところであります。
  39. 米田建三

    ○米田委員 共感を覚えていただいているということで、ありがたく思います。  そして、今の法体系ではすぐにはできない、それも私も承知をしております。しかし私は、これは釈迦に説法になろうかと思いますが、一つ申し上げておきたいのは、法や法の解釈によって達成すべき目的が達成できないならば、それは目的達成のための努力が間違っているのではなく、法や法解釈の方こそ間違っているんだという、この当たり前のことを我々政治家は自覚して、しっかりこれからやっていかないと、我が国の将来はないというふうに私は考えております。  次に、やはり工作船事件に関連をしてでございますが、海警行動の発令自体が遅かったという批判も一部にはあるわけであります。  これが遅かったのかどうか、これは流れもいろいろございましょうから、その真偽は別にいたしまして、私はちょっと気になりますのが、この海警行動は、自衛隊法八十二条で、内閣総理大臣承認を得て長官が命ずることになっております。しかし、持ち回り閣議が開かれたと聞きました。今お見えいただいておりますが、後に太田総務庁長官が、このような緊急事態に閣議は不要と主張をされたというふうに報じられております。  もしその報道のとおりであるとしたならば、私も全く同感でありまして、このような緊急事態に閣議が必要である、こういうことになりますと、防衛出動や治安出動を含め、緊急事態に対処するための政府としての意思決定の時間的な問題、あり方が大変思いやられるわけであります。  やはり緊急事態に際しまして、閣議に先行して、例えば、まず総理が決断できるというふうなシステム等も含めた総理権限の見直し、ひいては内閣法の改正というものが私は必要ではないかというふうに考えているわけでありますが、太田長官に御見解と、また省庁改革の責任あるお立場にあられるその立場からのお考えを伺いたいというふうに思います。
  40. 太田誠一

    ○太田国務大臣 今、米田委員から御指摘がございましたけれども、今回の中央省庁等改革の一つの柱になっておりますのは、内閣総理大臣のリーダーシップの強化ということでございます。  しかしながら、私どもは、昨年の六月に成立をいたしました行政改革の基本法の考え方の枠の中でやるというのが基本的な今の立場でございますので、その内閣総理大臣のリーダーシップの強化ということと、今委員も御指摘をされました、私も関心を持っておりますこのテーマまで拡大してもいいのかどうかというところが相当議論がございました。  そこで、もうそれこそ来週の閣議決定を予定しております法案でございますので、幾ら何でも、ここで議論をさらに深めていくことは間に合うということが難しいだろうということで、それでは、現行法の範囲の中でどれだけのことが言えるであろうかということで、つい先日でございますが、四月の十六日の閣僚懇談会におきまして、現行法の範囲の中で読めることはこういうことではないかということで、問題提起をいたしました。  すなわち、緊急事態への対応など、閣議による適時適切な行政権の行使が困難であると想定される場合に関し、あらかじめ閣議においてその特定された事態の類型に応じ具体的な処理方針を定め、内閣総理大臣及び関係閣僚限りで処理することができるものと考えるということを申し上げたところでございます。  すなわち、一般的に閣議の手続を飛ばすということは今の内閣法の考えではできない。したがって、閣議は飛ばさないのだけれども、事前に、こういうことがあるだろうということについて閣僚の了解をとっておいて、その特定された事態については、もうそれは関係閣僚限りでできるようにしてはどうか、そして事後的に報告をもらえばいいんだ、そのような便法が今は一番最善だろうというふうに考えております。
  41. 米田建三

    ○米田委員 ありがとうございました。  最後に、外務大臣に伺いますが、KEDOの問題であります。  総理が二十九日に訪米される前に、日本とKEDOの資金供与協定への署名を政府は目指しておる、こういうふうに聞いているわけであります。しかしながら、私は、これについては国民の間に広く、これだけの仕打ちを受けながらすんなり金を出すとは何事かという素朴な不満がたくさんあるというふうに認識をしているわけでありまして、対話と抑止が両方必要であるということは、これはもう大いに認めます。私は、そのとおりである、どちらか一つが欠けてはいけないというふうに思うわけであります。しかしながら、私はやはり、まさに抑止の部分で不安がある、こういうことでこの当委員会でもいろいろな議論があるわけでありますし、今やそれは国民の常識になっているのではないかと思うわけであります。  したがって、私は、この署名をもしするならば、一つは、政府として明確に安全保障体制の迅速な整備をきちんとやるということを国民にはっきりと明言をすること。そしてもう一点は、やはり今、この朝鮮半島の問題につきましては、南北朝鮮とアメリカ、中国の四者協議という形になっておりますが、日本及びロシアも含めたところの六者協議という構想が前からありますけれども、これは実現しておらない。このことを強く我が国は求めるべきであるというふうに考えるわけであります。蚊帳の外に置かれて金だけ取られるとは何事だという声もたくさんあることは事実でありますので、外務大臣の御見解を伺いたいと思います。
  42. 高村正彦

    高村国務大臣 KEDOは、北朝鮮の核兵器開発を阻むための最も現実的かつ効果的な枠組みであるわけでございます。KEDOを崩壊させることによって、北朝鮮に対し、核兵器開発再開に向かう口実を与えてはならないわけでありまして、我が国としても、KEDOを維持し、北朝鮮の核開発を封じていくことが我が国自身の安全保障上極めて重要であると考えているわけでございます。  この観点から、我が国はKEDOを引き続き支援していく必要がある、こういうふうに思います。  他方で、KEDOを維持する上で、北朝鮮が秘密核施設疑惑やミサイル問題等の国際的な懸念を解消する行動をとることが重要でありますから、我が国としては、米韓両国と緊密に連携しつつ、このような国際的な懸念に対処していく方針でございます。  それで、いわゆる六者協議でありますが、政府としても、従来から、北東アジア域内諸国間の信頼醸成を促進する観点からいろいろな努力を行っているわけでございますが、その安全保障の枠組みとして、昨年秋以来、日本米国、中国、ロシア、韓国、北朝鮮が参画した形での話し合いの場を将来的に設定していくことが、この地域全体の平和と安定のために有益であるとの小渕総理の提案に基づいて、米国を初めとする関係国首脳等に対して働きかけを行っているところでございます。  米国は、当面は四者会合に集中したいとしているわけでありますが、我が方の構想についても将来のいずれかの時点で有益になり得るとの考えである、こういうふうに承知しております。  ただ、このような話し合いの場は、現在行われている四者会合の枠組みに取ってかわるものではないと認識しております。我が国としては、朝鮮半島における永続的な平和の枠組みを構築するための四者会合の進展自体には引き続き期待をしていきたい、こう思っております。  この四者会合というのは、いわゆる朝鮮戦争の当事者による会合でありますから、これ自体をすぐ六者に変えろと言っても無理があるんだろう、こういうふうな感じはいたします。それで、我が国が提案しているような六者による話し合いの場の実現は、他の関係国等の意向もありなかなか難しいところもありますが、政府としては、今後とも、この実現に向け不断の努力を傾注し、地域の安定に寄与していきたいと考えています。  私の知る限り、ロシアは全面的に賛成であります。それから金大中大統領も賛成だとはっきり言っていただいております。米国は、当面はちょっと難しいけれども将来有益だね、こういう感じでありますし、中国の立場は必ずしも余り積極的ではないように承知しておりますし、北朝鮮はとてもとても賛成と言えるような状況ではない、こういう状況だと思いますが、これから引き続いて努力をしてまいりたい、こういうふうに思っております。
  43. 米田建三

    ○米田委員 ありがとうございました。質問を終わります。
  44. 山崎拓

    山崎委員長 これにて米田君の質疑は終了いたしました。  次に、玄葉光一郎君。
  45. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 民主党の玄葉光一郎です。  まず、周辺事態の認定についてお伺いをいたしたいと思います。  防衛庁長官が、周辺事態の認定について日米による認識の違いが生ずることがあるかないかといった問いに対して、米国周辺事態が発生したと日本協力要請をする、それに対して日本政府がノーと言うことは実態上ないとそうおっしゃっているわけでありますが、周辺事態の認定については、まさに日本政府が主体的に日本の平和と安全に重要な影響を与えるかどうかで判断をするわけであります。主体的にということは、違いが生ずるということにもつながるのではないかというふうに思いますけれども、そう言い切るゆえんをお聞かせいただきたいと思います。
  46. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 ある事態周辺事態に該当するか否か、また、周辺事態に際していかなる措置を実施するかにつきましては、日米両国政府がその事態規模、態様等を総合的に勘案し、かつ、おのおのの国益確保の見地からその時点での状況を総合的に見た上で主体的に判断することとなり、我が国が主体的な判断ができなくなり米国の判断に追随するということではない、私はそう考えております。     〔委員長退席、中山(利)委員長代理着席〕
  47. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 防衛庁長官長官が以前御答弁された、認識の違いが生ずることがあるかないかということに対して、米国周辺事態だというふうに認定して日本協力要請をする、そのときに日本政府はノーだと言うことはないとはっきりおっしゃったわけですよね、これまで。それは変えるつもりはありませんか。
  48. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 大臣が御説明しておりますのは、周辺事態認識につきまして日米両国間で緊密な意見交換等を行うので、実質的に異なることは想定されないとこう申し上げているわけで、何も、米側が周辺事態だと考えているからそれに日本がノーと言わないんだ、こういうことを説明しているわけではございません。これは、これまでもそういった御答弁の内容だと理解しております。  あくまでもそれは日米両国それぞれの立場で判断をするというのがまず基本でございまして、そういう中で、日米間で情勢についての認識の交換等をするわけですから、それは、最終的に周辺事態というものの判断についてそごを来すことはないということになろうかと思います。
  49. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 イメージするために、例えばインドネシアで内乱が起きました。政府が発表した六類型の中の一つに、内乱が国際的に拡大をする場合には周辺事態と認定をしていくんだということがありましたけれども、例えば国際的に拡大しているかどうか微妙なときは当然あるわけであります。そんな微妙なときに、アメリカ日本周辺事態と認定して協力要請をしてくる、後方支援活動をしてくださいと協力要請をしてくる。しかし、日本政府からしたときに、いや、どうもまだ我々の言う周辺事態には当たらないぞ、したがって、我々は在日米軍基地は貸しましょう、例えばそのときに事前協議があって直接戦闘作戦行動をするときは、それはそれで基地は貸しましょう、しかし後方支援は行いませんよと言うことは、私は実態上もあり得るんだろうというふうに思うんですけれども、防衛庁長官、いかがですか。これは大事なことだと思うんです。
  50. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 具体的な委員の設例は別として、御質問の、日本がノーと言うことが我が国としてはその事態周辺事態でないと認識しているということをアメリカに言うことを意味するというのであれば、御指摘のように、日米間の密接な協議の結果、我が国認識に米側が同意し、当該事態周辺事態でないという共通の認識に達するということは当然あり得ると考えます。
  51. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 そういうことです。  つまり、我々が周辺事態でないというふうに認識をするときに、やはり米国を説得するという作業は必要なんだと思います。万が一なかなか納得しにくくて、そのことが、例えば日米安保体制に与える影響なんかも含めて、その上でトータルで見て我々はあくまで日本の国益からすると周辺事態に当たらないという場合というのは、やはりあるんだと思うんですね。ですから、そこは大事なところなので申し上げておきたいし、我々民主党としても大切にしている点でございます。  特に、最近米国への追従イメージというのが残念ながらあるということで、私は、今まで防衛庁長官の答弁を聞いていて、何で実態上ないとはっきり言い切っちゃうんだろうなと。それは、私は想像したときに、ああ、それで抑止効果が薄れるというふうにでも考えておられるのか、それとも同盟関係の信頼関係が失われるとでも考えているのかというふうに想像しましたけれども、でも、そのことを考えても、私は、実態上あるとはっきり言っても、あり得るんだということをはっきり言っても抑止効果はなくならないと思います。真の同盟というのは、やはりそういうことに対してきちっと日本の立場を主張できるということだと思います。  ということで、最終的に確認したいんですが、実態上もあるというふうにそこはおっしゃっていただきたいと思うんですが、いかがですか、あり得るんだと。
  52. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 先ほど答弁しましたとおり、あり得ると思います。
  53. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 それでは、次に参ります。  この主体的な判断に関連して私見を申し上げたいと思いますけれども、四月十三日、民主党の岡田委員日米安保六条以外での米軍の基地使用について触れておられました。実は、一週間前の四月七日の参考人質疑でも、私自身がそのことに触れております。つまり、日米安保六条以外での基地使用、この使用という言葉はまた難しいと思うんですが、この基地使用について日米安保は排除していないんだと思います。それは私も認めます。それはそれでいいと私自身は思っております。  ただし、そのことについて日本政府が全くノータッチでいいのかどうかということになると、私は今後考えていくべきテーマだなというふうに考えておりますけれども、外務大臣、いかがお考えになられますか。
  54. 高村正彦

    高村国務大臣 日米安全保障条約第六条の実施に関する岸・ハーター交換公文で言う事前協議の問題でありますが、この事前協議の三つの主題のうち「日本国から行なわれる戦闘作戦行動のための基地としての日本国内の施設及び区域の使用」に言う「戦闘作戦行動」とは、直接戦闘に従事することを目的とした軍事行動を指すものであります。したがって、我が国施設・区域から発進する際の任務、態様が、かかる行動のための施設・区域の使用に該当する場合には、米国我が国と事前協議を行う義務を有します。このような「戦闘作戦行動」とは直接戦闘に従事することを目的とした軍事行動を指すものでありますが、米軍運用上の都合により、米軍艦船、部隊我が国から他の地域に移動させることは事前協議の対象となりません。  他方で、政府が従来より答弁申し上げているとおり、事前協議の対象となる出動に該当する場合があれば、米側の条約上の義務として当然事前協議が行われることとなり、また、その場合には我が国として適切に対処することとなります。  このような事前協議制度については、日米両国政府が日米安保条約締結以来長年にわたり確認してきているものであり、政府としては、御指摘のような何らかの取り決めを結ぶことを含めて事前協議制度を見直すことは考えておりません。  事前協議制度自身については委員も認めておられた上で、その上で米軍に対して何らかの話し合いはすべき、こうおっしゃるわけですが、まさに米軍運用上のことについて、余り差し出がましいことを言うのは問題である、こういうふうに考えておりますし、事前協議ということできちっと整理されておりますので、例えば米軍が何らかの事情によって中東に行くときに、私たちは、その中東に行く、行った上での任務が余り好きでないからそれをやってはいかぬとか、そういうことまで口を出すというのは、それは事前協議制度で決まっていることをはるかに超えるものであって、私はそういうことは余り言うべきことではないと思います。  ただ、それぞれ独立国として外交関係でいろいろな意見は言い合っておりますから、そういう広い意味での意見を言うということはありますが、日本が基地として施設・区域を提供していることにより、そのことによって、そこから移動するような場合に何らかの口を出す権利が発生するんだというような観点に基づいて話し合いをしろということであれば、それはそうではなくて、そういう点については事前協議制度ということで整理をされているんだろう、こういうふうに考えております。
  55. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 中東まで出ていくことをだめだと言っているわけではないということがまず一つあります。ただ、移動とか部隊のローテーションで説明し切れないものも実態上はあるのではないかというふうに思います。  ちなみに、例えば、アメリカが一九八六年、リビアを空爆しました。そのときにアメリカは、作戦機の出撃とか領空通過への同意を得るために、国連大使をイギリスとドイツとイタリアとフランスとスペインに派遣して、同意を得るよう努力をしたという経緯があります。  我々も、いわばこの基地使用というのは、つまり領域の使用を外国軍隊に認めるか否かとかあるいは基地使用を認めるか否かというのは、やはり極めて高度に主権にかかわる問題ですから、私は、これからも全くノータッチでいいかということを考えると、果たしていかがかなというような思いもあるわけであります。  ちなみに、調べてみたら、アメリカとスペインの防衛協定では、いわば防衛協定の中に定められた条約区域というのがあって、私は六条の事前協議の話をしているわけじゃありませんから、条約区域以外の目的使用するときはスペイン政府に同意を得てください、そういう取り決めがあるようであります。あるいはアメリカとオーストラリアのある基地についてもそういう取り決めがあるようでありまして、私は別にこれに倣ってというつもりは全くありませんけれども、ただ、参考にしながら、確かに、日米安保の条約目的の枠内か枠外かと問われれば、枠外の活動なんですね、これは。枠外の活動ですから別に我々ノータッチです、それはちょっといかがなものかなというふうに思っているわけでありますが、いかがですか。
  56. 高村正彦

    高村国務大臣 我が国施設・区域を基地として使用して戦闘作戦行動に飛び立って、そして、しかも安保条約と関係のない遠くに行くというようなことは、これは想定していないわけでありまして、事前協議はなくたって、そんなことはもともとできないわけで、だから、安保条約の枠外だからすべていいなどと言っていることではないんです。まさに戦闘作戦行動として我が国の基地を利用して安保条約の枠外のところに行って攻撃をするようなことは、それはもともと事前協議なんてあろうがなかろうがそんなものはできない話であります。  ですが、日米安全保障条約六条は、米軍我が国及び極東の平和と安全の維持のために我が国施設・区域を使用することを認めているわけでありますが、我が国施設・区域を使用する米軍は、その抑止力をもって我が国及び極東の平和と安全の維持に寄与していることは明かであり、このような実態がある以上、その米軍の個々の艦船、部隊極東以外の地域に赴き、またはかかる地域から帰投するといった行動をとったとしても、日米安全保障条約上問題はないわけであります。  仮に、我が国施設・区域を使用する米軍極東とは関係のない地域に赴くことが認められないということになれば、我が国施設・区域を使用する米軍は、いわゆる極東との関係のない地域では行動できないことになります。しかしながら、これは必要に応じ必要な場所に移動するという軍隊の有する機動性という属性からして不合理でありまして、日米安保条約はかかる不合理なことは想定していないわけであります。  それから、リビアを攻撃したときのいろいろな例、私正確に知らないわけでありますが、そういう御指摘があったから私なりに調べてみたいと思いますが、日本から行く場合と違って、あの辺からだと直接戦闘作戦行動等やる場合だってあるので、そこはどうなのかなということも含めて、ちょっと調べてみたいと思います。
  57. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 例えが適当かどうかわかりませんが、今浮かぶものとして申し上げれば、部屋をあるいは家を貸していて、貸していてといったって、その人が部屋を借りていることによってその地区全体が安全だ、安全が保たれているということなので、無料で貸していて、もっと言えば、生活費の一部を負担してあげている。その人が遠出をするというときに、要は一声きちっとかけてくださいね、場合によってはそれはどうかなと言う場合もありますよ、そういうイメージで私は申し上げているわけでありまして、私は、どうしてこんなことを言うかというと、日米安保を健全に発展させたいからむしろそういうことを言っています。  つまり、例えば今回、東京都知事選で石原さんが勝利をおさめました。いろいろな勝因があったと思います。やはり私は、そのうちの一つは、国民のいろいろな面に対するフラストレーションというのがあるんだと思いますが、同時に、日本人の実は底流に、どこか、残念ながら反米感情というか嫌米感情というか、どこかにあるかもしれないなと思っています。フォーリーさんが、何かアメリカに帰られたときの講演でそんなことをおっしゃっているというふうにも聞いたことがあります。  つまり、こういう対米追随のイメージというのが日米安保の健全な発展に極めてマイナスに作用するのではないかという心配があるものですから、あえて申し上げている。私は、今後の検討材料にしていくべきではないだろうか、そのように考えております。これは詰める問題ではありませんので、結構でございます。  次に、今政党間で修正協議が行われているわけでありますけれども、国会承認の問題でお尋ねをしたいと思います。  政府に一応聞いておきたいと思うのは、今、国会承認に関連して、その対象を周辺事態の認定を対象とするか、基本計画を対象とするか、あるいは自衛隊の出動を対象とするかということが言われているわけでありますけれども、周辺事態の認定と基本計画と自衛隊の出動のこの三者の関係というのは、どういう関係だと政府としては考えておられるのか、その点についてお伺いをしたいと思います。     〔中山(利)委員長代理退席、委員長着席〕
  58. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 周辺事態が発生していると判断され、この法律に基づき対応措置を実施する必要があると認められる場合には、政府は基本計画の案を策定し、閣議決定を行うこととなるわけでありますが、これは、周辺事態我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態であることから、政府として具体的な対応措置を実施する必要があるため、これらの政府としての判断は一つの閣議決定の中で同時に行われるべきものである、こういうふうに考えます。また、周辺事態安全確保法案に規定される三つの活動につきましては、基本計画が策定されなければ実施されることはないわけであります。  このような点から考えますと、周辺事態の認定、基本計画及びこの法案に規定される自衛隊の新たな三つの活動は、密接な関連を有しているわけであります。  他方、自衛隊自衛隊法の現行法令に基づき実施することができる活動があります。例えば機雷の除去とか在外邦人の輸送などの一定の場合については、周辺事態に際して実施される場合でも、必ずしも基本計画を策定されなければ実施できないものではなく、自衛隊の活動すべてが周辺事態の認定や基本計画を前提としているものではございません。  また、自衛隊の活動と他の基本計画を切り離すのは意味があるかという御指摘もありますが、基本計画を国会承認すべきとの御意見と関連したものと理解いたしますが、政府としては、周辺事態安全確保法案の修正について、目下のところ検討しているわけではないことは累次御説明しているとおりであり、この質問にお答えすることは政府としては困難であると思います。  いずれにしましても、政府としては、この法案に規定する自衛隊の新たな三つの活動の性格や他の法律との均衡を勘案すれば、基本計画や自衛隊の三つの活動について必ずしも国会承認が必要であるとは考えていないというのが私どもの在来からの説明でございます。
  59. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 まさに政党間での議論でありますから、ただ、政府としてどのような考えかというのをお聞きしたかった。それについては、政府としての考えとしてはわかりました。  次に、これも国会承認事項になった場合のことをお聞きして申しわけございませんが、もう既にそのような時期になってまいりましたので、申し上げたいと思います。  自衛隊の出動について、あるいは基本計画について、あるいは周辺事態の認定について、国会承認の対象となった、そのときに、対象が何であれ、その是非について国会審議をするということになると、情報がどのぐらい国会提供されるかということが問題になるわけであります。これは防衛機密との関連で、微妙なバランスと緊張の上で成り立つものだというふうに思いますけれども、政府としては、この国会への情報提供というものをどのようにお考えになっていくおつもりか、今の時点でもうお聞きしておかなければならないというふうに思います。よろしくお願いします。
  60. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 この法案におきましては、周辺事態の対応措置は、一般に、内閣の判断と責任のもとで、政府が一体となって実施する必要があると考えられておりますため、周辺事態に際しての特定の措置をとる際には、基本計画を閣議決定することとされており、したがって、この基本計画は公表されることとなります。  また他方、実施要領におきましては、この法案に基づく自衛隊の活動について、活動の具体的な実施区域の指定あるいは活動の具体的内容、期間、その他実施態様等について定めることを想定しているところであります。この実施要領の内容は、当該活動を実施する部隊等の安全にかかわるものでありますから、これを公表することは適当ではないと考えますけれども、部隊等の安全等に差し支えない範囲で、概要等を公表することについては検討してまいりたいと思います。  なお、実施要領の内容に係る国会議員等への情報提供及び秘密会等における情報提供の可否等という問題もありますけれども、こういった問題については、国会における御審議も踏まえつつ検討してまいりたいと思っております。
  61. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 やはり国会側としては、防衛機密だとはいえ、国会承認事項になった場合は、国益を損しない限りにおいてはできる限りの情報、つまり背景だとか経緯、今後の予測し得る見通し等々を提供してもらわなければ審議できないということになると思います。私は、個人的には、場合によってはクローズドの秘密会なども考える必要があるのではないかというふうにも考えております。  これは国会側の対応だというふうに思いますので、政府側からはもう結構でございます。  次に、官房長官においでをいただいておりますので、対北朝鮮外交のことでお伺いをしたいと思うのです。  政府の基本方針は対話と抑止だというふうに、外務大臣からあるいは小渕総理から何度も聞かされているところであります。その基本的な原則は、それはそれでいい。具体的にどうするかというところが問題なんだと思います。  抑止については、今取り組んでいるのは、ガイドラインとTMD、あるいは日米韓の防衛交流、対話というようなことなんだろう。あるいは、今後取り組むべきこととして恐らく検討しているのは、領域警備であるとか、国内有事の場合の法整備などが考えられるのかなというふうに考えて、推測をいたします。では一方、対話についてはどうなのかということになると、拉致疑惑だとかミサイル発射だとか工作船の問題にかんがみて、北の建設的な対応があれば公式に対話に応じましょう、あるいは正常化交渉に応じましょうということなのかなというふうに、政府の対応を私自身は認識をしているわけであります。  そのような中で、村山訪朝団が超党派で計画をされているわけであります。まず、この訪朝団について政府としてはどのように考えておられるのか、お伺いをしたいと思います。
  62. 野中広務

    ○野中国務大臣 昨年の八月に、委員御承知のように、北朝鮮によりますテポドン発射以来、我が国政府は日朝国交正常化交渉の再開を当面見合わせる等の措置をとってきたところでございます。その結果、日朝関係は意思疎通が必ずしも十分でない状態にあるわけでございまして、今委員から御指摘いただきましたように、日朝間の基本認識は、我が国は、委員の御認識を賜りましたような対話と抑止を前提としながら、決してこのような状態が続いていくことは好ましいことではないというように考えておるところでございます。  そういう中で、仮に村山元総理が訪朝をされるということになりますれば、日朝間の重要な対話の契機になり得るものと政府としても期待をいたしておるところでございます。  訪朝のタイミング等につきまして、政府として御説明申し上げる立場にはございませんけれども、村山元総理が中心となって慎重に検討をされていただくものと考えておる次第でございます。
  63. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 政党外交とはいえ、超党派です。そして、事は対北朝鮮でありますから、政府は全くあずかり知らぬというわけにはいかないというふうに思います。  ちなみに、橋本総理は、私が聞いていたところでは、あくまで推測ですが、ですからお伺いをするのですけれども、対北朝鮮外交というのは政府に一本化していたのかなというふうに私自身は認識をしていましたけれども、これはそういう意味では方針を変えていくということでもあるのでしょうか。外務大臣でも結構です、これは通告していなくて申しわけないのですが。
  64. 高村正彦

    高村国務大臣 国家間の外交交渉そのものは政府がやるということは、それは一貫しているわけでありますが、そういう中で、幅広く多くの人が交流する、特に村山総理のような方が行っていただけるということは、今、現実の問題として政府間自身のパイプもきちっとした形ではないわけでありますから、そういう環境醸成のためにも大変ありがたいことだと私は思っております。  ただ、外交交渉そのものは政府間でやるということは、これはもう一貫したことでございます。
  65. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 事は対北朝鮮ですから、私が申し上げたかったのは、結局、ルートが複数ある方がいい場合と一本化されていた方がいい場合と、私はケース・バイ・ケースであると思いますよ、そのタイミング、タイミングで。私は、そこは変えてきたのかなというふうに考えたわけであります。  ところで、今、基本的な考えはわかったのですが、十分な御答弁じゃないと思うのです。つまりどういうことかというと、政府としてはこの村山訪朝団には具体的な成果を何か期待されておられるのか。もっと言えば、何か政府としてお土産を準備するというようなことをされるつもりがあるのかどうか。その点についてお伺いをしたいと思います。
  66. 野中広務

    ○野中国務大臣 先ほど申し上げましたように、村山元総理が訪朝をされることによりまして、政府間の交渉が土俵に乗るようなきっかけができるとするならば、大きな成果が得られると思って期待をしておるところでございまして、あらかじめ、訪朝をされるのに何かを、おっしゃったような土産を持っていかすとか、そういう筋合いのお話ではないと認識をしております。
  67. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 私も持っていくべきじゃないと、率直に思います。韓国は太陽政策をとっている、包括的アプローチだと。アメリカはペリー元国防長官が調整に入っていると。これは、全くの私は推測で申し上げるわけでありますが、恐らく、より大きなむちを用意して警告をしながら、しかしより大きなあめで一歩前に出るという、しかも一括解決でいくということかなと私自身は推測をしていて、そんな中で、足並みをそろえるためにも、政府としては割合肯定的な評価をされるのかなというふうに考えています。同時に、とにかく確実に日本の意思を伝えたいということなのだろうなというふうに理解をしております。  ただ、幾つかの懸念が、どうしても私、個人的にはぬぐい切れません。したがって、その懸念は民主党の担当の方にも申し上げているところではありますけれども、政府にも申し上げたいと思います。  一つは、今申し上げたことに関連するのですが、私は、かつての金丸訪朝団というのは失敗だったというふうに思っています。つまり、必要以上なことを言ってしまったというふうに思っています。つまり、三十六年の植民地支配のみならず、第二次世界大戦以後、全体の不正常な関係についてまで言及して、償うと約束をしてしまったということが一つあると思っています。  それと、先ほど官房長官指摘をされたように、タイミングというのがあると思うのです。つまり、官房長官はずっと北朝鮮に長くかかわってこられたということも聞いておりますが、人事がいつ行われて、本当に今行くことがいいのかどうか、対日政策の担当者が決まっているのかどうかということなんかもあって、どうしても懸念がぬぐい切れないわけでございます。  ここは、私の方も伝えますが、政府としてはそういう懸念を持っておられるかどうかについて、もう一言だけお伺いできればと思います。
  68. 野中広務

    ○野中国務大臣 先方の国内情勢について十分承知をしておる立場にございませんけれども、委員十分御承知のとおり、今日に至るも、異常な体制の中で、我が国は非常に近くて遠い関係になっておるわけでございます。  そういう意味におきまして、昨年の八月以来の経過を考えますときに、まことにこのままで果たしていいのかということを考え、また先般の不審船等の事故を考えますときに、我々は、こういう重要な時期でありますだけに、村山元総理が行っていただきまして、そして率直に双方の懸案事項を話し合っていただき、そしてそれがきっかけとなって政府間が交渉できる土俵づくりができ、その道が開けるとするならば、非常に大きな成果を得ることができるのではないか、こういうように認識をし、期待をしておるわけでございまして、なかなか、その時期が適切かどうかというのは我々が即断できる立場にはないわけでございます。  しかし、一方において、米朝間の交渉も行われており、KEDOの問題につきましての時期もまた迫ってきておる状況でもございますし、また、先方もそういう意味において村山訪朝団を受け入れられるような環境があるようにも伺っておるわけでございますので、ぜひこういう時期に、この村山訪朝団が、先ほど申し上げましたように、政府間交渉にいけるようなきっかけを前提なしにつくっていただけることができるとするならば、非常に政府にとってもいいことではなかろうか、両国間にとってもいいことではなかろうかと存じておる次第であります。
  69. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 官房長官、ありがとうございました。  邦人救出の問題について二、三質問させていただきたいと思います。  今回の百条の八の改正に伴って、細川内閣のときの実施方針を変える必要が出てくると思いますけれども、このことについて、新たに作成するつもりがあるかどうか、またどのようなものとするつもりなのか、まずお伺いをしたいと思います。
  70. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 御指摘の閣議決定は、現行の自衛隊法百条の八についての国会等における議論を踏まえまして、在外邦人等の輸送についての基本的な方針を明確化するために、当該輸送のための自衛隊航空機の運用に関連した事項につき規定するとともに、武器の使用についても、派遣先国内において、在外邦人等の生命、身体、当該輸送に係る航空機等を防護するために、武器を携行し、使用することはない旨を規定したところは、委員が御指摘のとおりであります。  他方、同条の改正案においては、輸送手段に新たに船舶等が追加されました。また、当該輸送の職務に従事する自衛隊員またはその保護のもとに入った在外邦人等の生命を防護するための必要最小限度の武器使用が可能となりました。  自衛隊法九十五条に基づく武器等防護のための武器使用の前提である警護任務を付与することとしているため、これらの点を踏まえまして、今委員から御指摘があった閣議決定について修正を行う必要がある、こういうふうに考えております。
  71. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 極端なケースと思われるかもしれないんですけれども、外国人の同乗規定がありますよね。基本的に、余裕があるときは外国人を同乗させることができる。  例えば、日本人が一人もいなくて外国人を同乗させることができるのかということになると、この法律では当然できないということになるのかなというふうに思いますけれども、実際あり得るなと思われるケースは、日本人の輸送が完了して、残っているのは外国人だけだ、しかし、船舶とか政府専用機、C130とか、余裕がある、それに当該国の要請があったというような場合というのは、私はあり得ない話じゃないなというふうに思っていて、そういうことなんかにも対応できるように、実施方針のときは何らかの形でそういうものをつけ加えたらどうかと個人的には思うわけでありますが、いかがでしょう。
  72. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 この自衛隊法百条の八の一項における「外務大臣から当該緊急事態に際して生命又は身体の保護を要する外国人として同乗させることを依頼された者を同乗させることができる。」との規定は、在外邦人等の輸送を行う自衛隊航空機、船舶に余った席がある場合には一定の要件を満たした外国人を輸送することができるという趣旨でございまして、専ら外国人のみを輸送することを目的として自衛隊航空機、船舶を派遣することは、法律の趣旨からいってできないものと考えます。  しかしながら、例えば自衛隊機による一連の輸送活動において、現地における状況変化によりたまたま御指摘のような状況が生じたとしても、直ちに当該輸送を行い得ないということにはならない、こういうふうに考えているところであります。
  73. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 私は、この邦人救出の問題は、きのうも議論があったようでありますが、最終的には救出はできなくて輸送だけだということでございます。そうなると、邦人救出が成功するためのポイントは安全な場所までへの集結とかということになってくるんだろうと思いますが、将来的には、何らかの法理論的な研究があって、例えば第三国あるいは米国協力が得られないときでも、何とか対応できるというようなものにしていかなくてはいけないんだろうなというふうに私は思っているところでございます。  次に、最後になると思いますが、機雷掃海のことなんでありますが、機雷掃海については、私は、議論はある程度進んだなと思っています。  また、全然違った観点で一点、外務省にお聞きをしたいと思うんですけれども、機雷というのは、国際法上は、どのような場合に、どのようなところに敷設することができるんでしょうか、その点についてお伺いをしたいと思います。
  74. 東郷和彦

    ○東郷政府委員 お答え申し上げます。  機雷の敷設に関しましては、これを一般的に禁止する国際法上の規則が成立しているとは現在は言いがたいということでございますが、一九〇七年の自動触発海底水雷ノ敷設ニ関スル条約という条約がございまして、ここで、一定の条件を満たさない機雷の敷設を禁止した上で、繋維自動触発水雷を敷設する際は、平和的航海の安全のため、可能な限りの予防手段をとらなければならない等の規定が置かれております。ただ、この条約は、ちょっと古い数字でございますが、一九七三年現在で、締約国数三十六カ国というところでございます。  現在のところ、新たに機雷規制の国際的枠組みの見直しに向けた国際的機運というのが非常に盛り上がっているというところではございませんが、我が国としては、この問題に対して非常に関心を持ってフォローしているというところでございます。  それからもう一点、この条約に関して申し上げますと、この条約の対象となっております機雷というのは、当時の技術を反映しまして、触発機雷というようなことでございまして、現在広く使われておりますところの感応式の機雷というものは対象になっていないということでございます。
  75. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 どれだけ実効性が上がるかという問題はあるんですけれども、しかし、海洋国日本でありますから、できるだけ国際法で縛っていく努力というのは絶えずやっていった方がいいんだろう。今さまざまな、感応機雷だとか、私もよくわかりませんが、海底のカプセルに魚雷を内蔵するような、そういう魚雷なんかも出てきている、新しい魚雷がどんどん出てきているということでありますから、そういった魚雷、そういった機雷なんかにも対応できるように、とにかく条約を改正していくなり新しい条約を結んでいくなりということを、日本として提案していったらどうかなというふうにも思うわけでありますが、もう一回お答えいただけますか。
  76. 東郷和彦

    ○東郷政府委員 航海の安全、これは海運国家日本にとって重大関心事でございます。委員指摘の考えを、今後の軍縮政策推進のため、重要な参考とさせていただきたいと考えます。
  77. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 あと二分半ぐらい時間がありますから、これは申し上げておきましたので、後方地域支援の武器使用について、一言だけ触れておきたい。  先ほど自民党の方からも出たわけでありますけれども、例えば、邦人救出なんかには安全確保規定があるわけであります。しかし、今回、武器の使用の規定が加えられた。では、なぜかといえば、恐らく、不測の事態に備えるということなんだろうというふうに思います。  そういう論理で考えたらば、やはり後方地域支援についても、不測の事態に備えて武器使用の規定を置くべきなんだろう。やはりテロとかゲリラとかは、幾ら米軍への支援であり、米軍のところに運ぶんだといっても、あり得ない話ではないのだろう。  ちなみに、一昨日、森本公述人、さらに現場の声としての松島公述人が、このことについてこう言っていました。森本先生は、人間の歴史を振り返ると、一番安全な地域と思っていて、結局は敵に攻撃を受けることがしばしばあったと。あるいは、現場の声として松島さんは、常に不測の事態に備える態勢だけはとらせていただきたいと、せつない声に聞こえたわけでありますが、防衛庁長官、いかがでありましょう。
  78. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 先ほど来の御質問と重複して、同じことを申し上げるわけでありますが、後方地域において活動を行う場合であっても、救助活動に当たる場合に、救助に当たる職員が、救助しようという者から反撃を受ける場合があり得る。それからまた、船舶検査活動では、船長の命に、統制に服さない船員等が、この活動の実施を命ぜられた部隊等の自衛官に危害を与えるおそれがある。こういうことを予定して、私どもは、後方地域捜索活動や船舶検査活動については武器の使用を認めることにしたわけでございますが、もう一方の後方地域支援活動につきましては、後方地域であると同時にまた、相手後方地域支援を与える米兵であるということでありますから、今申し上げた二つの活動とはおのずから違うじゃないか、こういう趣旨で使い分けをしてやったわけであります。  現在、政党間においていろいろな議論が行われることは承知しておりますけれども、政府としては、現時点では今申し上げたような見解で対処したい、こういうことでございます。
  79. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 我々は、武器使用の規定を置くべきだということでございます。  以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。
  80. 山崎拓

    山崎委員長 これにて玄葉君の質疑は終了いたしました。  次に、横路孝弘君。
  81. 横路孝弘

    ○横路委員 周辺事態についてお尋ねをしたいと思います。私も、安保委員会、そして予算委員会、この委員会と、周辺事態というのが一体どこのどういう事態なのかということをお尋ねしてまいりましたが、一向にはっきりしてまいりません。  そこで、まず外務大臣にお尋ねしたいと思います。日本の周辺、極東地域あるいは極東の周辺を含めて、日本の安全にとって、現在、日本にとって心配な点、朝鮮半島の問題はみんなが共通の認識をしていると思いますが、朝鮮半島以外で紛争になりそうな点で心配をされている点はどんな点でございますか。
  82. 高村正彦

    高村国務大臣 今この法案審議している中で、心配なところはここだと言うことは、まさに周辺事態とはここなんではないかというような誤解を与えますし、そして、特に日米安保条約に従って、あるいは国連憲章に従っている米軍相手になるというのは、まさにそこは不法な侵略を行っている国という話になって、どこかの国が不法な侵略を行いそうだ、こういうようなことを言うということは、外務大臣としてとても言えることではないということを、ぜひ御理解をいただきたい。そういうことを言った方が論議がわかりやすくなるということは、それは私もよく理解するのですが、私としてそういうことが言えないということは、ぜひ委員に御理解をいただきたいと思います。
  83. 横路孝弘

    ○横路委員 いや、今周辺事態がどこかということを聞いているわけではなくて、日本の政府として、やはり日本の平和と安全ということを考えた場合に、例えばこういう紛争になりそうな要素があるから外交的にこういう努力をしなければいけないとか、やはり周辺地域で解決しなければいけないような課題というのはあるわけでしょう。  そこで、安全保障にとってやはり考慮しなければいけない、周辺事態のことはしばらく忘れてもらって、外務大臣として、こういう点に少し力を入れて外交をしていかなければいけない、将来これは紛争になるかもしれない、そういう可能性があるというようなことで、今力を入れているのはどういう点でございますか。朝鮮半島は、もうみんな共通の認識があるからよろしいですが、それ以外で。いや、何も心配ないというなら、それでまた結構でございますけれども。
  84. 高村正彦

    高村国務大臣 委員周辺事態のことを聞いているのではないということは私もわかった上で、今、周辺事態安全確保法案というものを審議をお願いしている中で、私が、こういうところが心配ですよと言うことが、そうでなくとも誤解を与えるということでなかなか難しいということを申し上げたわけでございますので、ぜひ御理解をいただきたい、こういうふうに思います。
  85. 横路孝弘

    ○横路委員 本来、常に何が問題なのかということを考えて、アジアにおける平和的な枠組みをどうしていくのかというのが外交の最大の課題でございます。別に今の御答弁で理解したわけではありません、本当は明快に示して議論するということの方がいいのではないかというように思います。  そこで、周辺事態でございますが、どんな事態か、四つのケースを今まで示されてきたわけですね。私は、この四つの示されたケースのうち、ある国あるいは地域の政治混乱によって大量の難民が発生したというケースはよくわからないし、こういうケースを周辺事態として認定するのは問題があるのではないかという主張をしてきたわけでございます。  これに対して外務大臣は、典型的な例はやはり二つのケースだ、武力紛争と、武力紛争のおそれというケースなんだ、あと二つ示したのは、いろいろと御議論もあるので示しただけであって、具体的に想定しているわけではないという答弁を、先日、四月十五日にされました。  ところで、四月の二十日の日に、防衛庁長官は山中委員質問に答えて、二つのケースを追加されたわけでございます。  そこで、従来から、この議論の場として、周辺事態の認定の基準とか手続という点について、統一した見解を示せという議論もあったわけでございますが、この二つのケースを追加されて六つのケースになったわけでございますが、これは、いわば周辺事態についての認定の基準としてのケースということでよろしいのでしょうか。防衛庁長官にお答えをいただきたいと思います。
  86. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 四月二十日のこの委員会におきまして、山中委員に対する私の答弁は、周辺事態の概念については国会の御審議でもさらに具体的なわかりやすい内容を求める御意見も多く、私どもとしてもこうした御意見を真摯に受けとめまして、政府部内において検討を行っている旨及びその内容を紹介したものであります。  その際、私が答弁した内容については、私の答弁でも申し述べておりますとおり、あくまでも政府部内における検討の途上にあるものを私がつい踏み込んであえて紹介申し上げたものでありまして、周辺事態に対する政府見解としてまとまったものではない。これについての詳細なお答えは、この際、できれば差し控えさせていただきたいと思っているところでございます。
  87. 横路孝弘

    ○横路委員 いやいや、そんなおかしなことないですよ、そんなおかしなこと。ちゃんと御答弁されて、類型化の話だけれども、ざっとしたところがまとまってきましたので申し上げさせていただきたいと思いますと言って答弁されたじゃないですか。  何が問題なんですか。
  88. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 今申し上げたような前提で、重ねての御質問でありますから、私が申し上げた点は二点ございまして、一つは、我が国の周辺の地域における武力紛争そのものは一応停止したが、まだ秩序の維持、回復等が達成されておらず、引き続き我が国の平和と安全に重要な影響を与える場合、こういうふうに申し上げました。  この趣旨は、紛争後の秩序の維持、回復が求められている場合においては、紛争そのものが終結していたとしても、秩序の維持、回復が十分に図られず、再度の紛争が生起する可能性や、政治体制の混乱等から大量の避難民が発生する可能性も否定できない。したがって、我が国としては種々の対応措置を実施することが必要である。すなわち、我が国の平和と安全に重要な影響を与えるということも想定されるところである。このため、紛争後の秩序の維持、回復が求められている場合は周辺事態に当たり得る場合があると考えている意味で申し上げたわけであります。  また、もう一つの、ある国において内乱、内戦等の事態が発生し、それが純然たる国内問題にとどまらず国際的に拡大している場合であって、我が国の平和と安全に重要な影響を与える場合ということも申したわけでありますが、ある国において内乱や内戦等の事態が発生し、それが純然たる国内問題にとどまらず国際的に拡大している場合であって、我が国の平和と安全に重要な影響を与える場合には、周辺事態に該当し得るものと考えているところであります。  これは、ある国において内乱や内戦等の事態が発生し、それが国際的に拡大しているような場合には、当該国の混乱を原因として当該地域安全保障環境が悪化し、これが武力紛争や大量避難民の発生などに結びつく可能性があると考えることによるものであります。  これは、したがって、政府の統一見解というのではなくて、私の考え方として述べさせていただいたというふうに現段階では御理解していただきたいと思います。
  89. 横路孝弘

    ○横路委員 今の点はもう一度議論しますが、その前に、では防衛庁長官見解として防衛庁にお尋ねしますが、このケースの、ある国の内乱、内戦などが国際的に拡大している場合というのと、前のケース、ある国、地域における政治体制の混乱によって大量の避難民が発生している場合というのは違うのですか。どのように違うのでしょうか。
  90. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 周辺事態として考えられるような場合は、いろいろな要素が絡み合っていることが多いかと思います。そういう中で、一つの類型化として防衛庁長官から先ほど紹介があったところでございます。  したがいまして、先ほど申し上げましたいろいろな事例につきまして、中には現象面として共通のものがあったりそういうものはあろうかと思いますけれども、周辺事態というものの理解に資するという意味で類型を分けて御説明をしている、こういうことでございます。
  91. 横路孝弘

    ○横路委員 ですから、政治体制の混乱とどこが違うのですかと言っているのです。ちょっと違いを説明してください。
  92. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 例えば、政治体制の混乱というのもいろいろな形のものがあり得ると思います。そういう中で、一つは、政治体制の混乱で大量の避難民が発生するようなものを一つの類型として考え得るのではないか、あるいはある国における内乱、内戦という形もあり得るのではないか、いろいろな形があり得ると思うのです。それをこういう形に類型化して御説明をさせていただいた、こういうことでございます。
  93. 横路孝弘

    ○横路委員 これは政治体制の混乱というお答えなんですね、社会体制の混乱じゃなくて。そうすると、内乱、内戦までいっていないけれども政治体制が混乱するというのはどういうことなのか、いろいろなケースがあるだろうと言うのですが、ちょっとそのいろいろなケースを言ってみてください。
  94. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 従来の類型の四つの中で言っておった、ある国における政治体制の混乱等により、この場合はまさに政治体制とだけ言っておったわけでありますから、もう少しわかりいいように説明せいという御要求があったものですから、私どもとしては、内乱、内戦等の事態が具体的に発生している場合というのが解釈としてはあっていいのじゃないか、こういうふうに類型に足してみたらどうかという程度の発言を申し上げたわけであって、先ほどから申し上げているように、これが政府として固まったものでもないし、私個人の意見として、山中委員から聞かれたことに対して答弁をしたということでありまして、こういう問題は今後だんだんと固まっていく問題であるということをひとつきょうは御理解いただきたいと思います。
  95. 横路孝弘

    ○横路委員 もう一つ、この内乱、内戦というのは、防衛庁としてはどのようにとらえているのですか。
  96. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 確かに、国際法上、内乱あるいは内戦というものについての統一的な考え方はないと思いますけれども、先ほど先生がおっしゃった政治体制の混乱との関係でいえば、政治体制の混乱の中でも、例えば、実力の行使を伴ったようなそういう混乱状態に至らない、そういった統治の乱れという段階もございましょうし、六つ目として挙げてございますように、それが実力の行使を伴うようなそういう混乱状態もあるだろうということで、類型を分けさせていただいたということでございます。
  97. 横路孝弘

    ○横路委員 では、その内乱、内戦というのは国際法上はどんな扱いになるのですか。内乱と内戦は違うのですか、一緒なんですか。(高村国務大臣委員長」と呼ぶ)防衛庁防衛庁。これは防衛庁長官が自分の意見として述べられたということですから、外務大臣、何もそこで出てくる必要はないんです。防衛庁、お答えください。
  98. 高村正彦

    高村国務大臣 内乱、内戦というのは、政府側が積極的に出したというよりも、かつて外務委員会で野党委員質問されて、内乱、内戦のような場合も周辺事態になり得るのかという質問を受けたときに、私が、内乱、内戦というのは国際法的な定義はないわけだけれども、それでも、日本の平和と安全に重要な影響を与える場合にはその理念的に排除されません、こういうことを答えた経緯があるわけであります。  そういう中で、我々はブレーンストーミング的に、ではどういう場合があるかなといって、今まで国会等で出てきたものも並べて六つ、こういうことを事務的にやっていた。実は私には紙が来ていなかったのですが、防衛庁の方では防衛庁長官に行っておられて、そして、そういう段階で防衛庁長官がお話しになったという経緯だと思います。それで、事実、防衛庁長官御自身も答弁の最後に、これはまだ固まったものではありませんと、こういうことはきっちりおっしゃっていたことを私は記憶しているわけでございます。
  99. 横路孝弘

    ○横路委員 内乱、内戦というのは、国際法的にはこれは一般的に国内問題だと言われているわけです。そして、内戦に対する外部からの干渉というのは、その国の主権や独立を侵すものとしてむしろ国際法上違法とみなされるというのが一般的な解釈ですよ。違いますか。
  100. 高村正彦

    高村国務大臣 この点についても従来答弁をしているわけでございますが、純然たる国内的な問題にとどまっている場合には、これは日本の平和と安全に重要な影響があるわけがないわけでありますから、それが国際的問題に発展したような場合に、そしてさらに日本の平和と安全に重要な影響を与える、幾つものそういった条件を得て、初めて周辺事態ということになるということを申し上げているところでございます。
  101. 横路孝弘

    ○横路委員 いや、それが波及するといって波及するのはどういう場合かといいますと、いわば反乱をした側といいますか、正統政府に対して抵抗した側を交戦団体として外国政府が認めれば、その場合には、何といいますか、戦争状態になるわけですね。ですから原則は、内乱、内戦があってもそれは一つの合法政府があれば、それに対して対抗する勢力が反乱を起こし内戦状態になったという場合には、一応その限度では国内問題なわけです。むしろ反乱した側を応援すれば、それは国際法上は違法だということが一般的な解釈ですよ。  しかし、その反乱した側を外国政府が交戦団体として認めれば、それはそこからの状況というのは、国内問題から、防衛庁長官が言ったある国の内乱、内戦などが国際的に拡大している場合、国際的に拡大している場合というのはどこかの外国がそれを認めた場合ですね、認めた場合に国際的に拡大するのですね、こういう構造だと思いますけれども、いかがですか。
  102. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 まさにここにございますような内乱等が国外に何ら影響を与えないような状況でございますれば、それは当然のことながら我が国の平和と安全に重要な影響を与えるということにはならないわけでございます。それが国外に何らかの影響を与えるような状況になり、それが我が国の平和と安全に重要な影響を与える場合があり得るだろう、そういうケースをここに分類をしたわけでございます。
  103. 横路孝弘

    ○横路委員 現実的な波及じゃなくて、法的な関係を私は聞いているわけなんです、法的な関係を。違いますか、私の言っていることと。
  104. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 私どもは、まさに日本の平和と安全に重要な影響を与える場合ということの、何といいましょうか、類型と申しましょうか、それを御説明するという観点からこういう事態を御説明しているわけでございまして、それからいえば、こういう内乱等の事態が国外に影響を与えないような状況であるかどうか、また、それがさらに日本の平和と安全に重要な影響があるかどうか、こういう点で私どもはここで分類をさせていただいている、こういうことでございます。
  105. 横路孝弘

    ○横路委員 例えば、台湾が独立をして中国政府がそれに対して武力行使をした、そこで武力紛争が発生したというのは、これは国際法的に言うとどうなんですか。そういう場合は内戦ということになるんだと思いますが、いかがですか。
  106. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 これは累次申し上げているところでありますが、中国と台湾の関係に関する我が国基本的な立場は、日中共同声明において表明されているとおりであります。すなわち、中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認した上で、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であるとの中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重するというものであります。台湾をめぐる問題は、中国政府が中国人同士の問題として平和的解決を目指していると承知しており、我が国としても、関係当事者間の話し合いにより平和的に解決されることを強く希望しているものであります。
  107. 横路孝弘

    ○横路委員 私はそんなことを聞いているわけじゃなくて、台湾が独立をして中国政府がそれに対して武力行使をした、中国は台湾が独立すれば武力行使をすると言っているわけですが、そういう事態になったときに、それは国際法の上ではどのように判断するんですか。それを内戦と言うんじゃないですか。そういう事態になった場合には、それは内戦なのかどうなのか、それだけお答えください。
  108. 東郷和彦

    ○東郷政府委員 お答え申し上げます。  国際法の視点からの御質問でございますが、政府の一員としまして、この台湾の問題に関しましてお答えできること、お答えすべきことというのは、ただいま防衛庁長官から申し上げたとおりでございます。
  109. 横路孝弘

    ○横路委員 いやいや、そうじゃなくて、国際法的にそういう事態を何と言うかと言っているのですよ。これは内戦と言うのか、いや、内戦とは言わないのか、それだけ答えてくれればいい、別に。
  110. 東郷和彦

    ○東郷政府委員 政府といたしまして、特定の事態に対して法的な判断を加えるということができる問題とできない問題があるというふうに、私考えます。  ただいまの問題に関しましては、これまでの非常に長い、複雑な、困難な問題の中で、日本国政府といたしまして、日中共同声明の立場を堅持する、そして、その中国と台湾の問題は平和的な解決を期待するということを累次申し上げているわけで、それに加えまして、この問題に関して国際法的な評価を申し上げることは適切ではないと考える次第でございます。
  111. 横路孝弘

    ○横路委員 それなら、なぜこんな、わざわざ内乱だとか内戦と、しかも国際的に拡大するなんというケースを挙げたのですか。周辺事態としてどうして挙げたのですか。先日外務大臣が答弁したように、問題は、その四つのケースのうちの国家間の武力紛争あるいは武力紛争のおそれという事態が大体典型的なケースであって、大体それ以外は余り具体的には想定できないんだというお話があって、私はそれで納得しておったのですよ。  しかし、このケースが出てきて、何で今この時期になって、内乱、内戦ですよ、わざわざ、内乱、内戦。どう考えたって台湾しか思い浮かばないじゃないですか、内乱、内戦なんということになると。それをわざわざ防衛庁長官が挙げたということはどういうことなんですか。
  112. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 いや、私どもは別に中国、台湾だけを意図して、考えてこういうことを言ったわけじゃないのでありまして、いろいろなケースがあると思うんです。  しかも、内乱、内戦が問題なんじゃなくて、肝心なことは、この法律の審議に当たって、我が国の平和と安全に重要な影響があるかどうかということが問題であって、何も内戦や内乱の議論をしている必要はないと思うんですが……。
  113. 横路孝弘

    ○横路委員 では、どうしてそんな類型を挙げるんですか、類例を。
  114. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 いろいろな類型を挙げて、それが我が国の平和と安全に影響があるから挙げてみたというだけの話であります。
  115. 横路孝弘

    ○横路委員 委員長、この周辺事態の認定というのは大変重要な一番の核なんですね。周辺事態というのはどういう事態なのかということが説明を聞いてわからないから繰り返し議論になっているわけですよ。そうじゃありませんか。それについて何ですか、今の答弁は。  本当にしっかりした統一的な認定の基準、どれを認定とするのかというのをやはり決めてもらわないと、御答弁されて、しかもそれが防衛庁長官だけの見解なんだというと、これは一体、いつになって出てくるんですか、しっかりした見解が。
  116. 山崎拓

    山崎委員長 委員長としてお答えいたします。  本件につきましては、理事協議事項となっておりまして、その後、理事会の協議を重ねてまいりまして、政府において統一見解を示すべきものといたしております。  国会答弁を整理いたしました協議をいたしてきましたんですが、正規の政府統一見解は追って示されるという取り扱いをけさの理事会で決めたばかりでございます。
  117. 横路孝弘

    ○横路委員 そうすると、その統一見解というのは、認定すべき周辺事態というのはどういう事態なのか、認定する場合の基準と手続も入るんですか、統一見解の中には。たしか要求されていたのは、認定の基準とその認定の手続ということも一緒に要求されていたと思いますけれども。
  118. 山崎拓

    山崎委員長 手続について、理事会において協議いたしておりません。  周辺事態とは何ぞやという定義につきまして、今日までの審議を通じまして、六つの類型が合計で示されたという今までの委員会審議の経過でございまして、それをさらにきちっと整理いたしまして正規の統一見解として政府において示すべきものということを取り決めたわけでございます。
  119. 横路孝弘

    ○横路委員 いずれにしても、この審議期間中に明快に示されることを望みたいというように思いますが、よろしゅうございますか。
  120. 山崎拓

    山崎委員長 周辺事態の定義につきまして、政府の統一見解理事会において確認いたしまして、委員会において、締めくくり総括でお示しをしたいと考えております。
  121. 横路孝弘

    ○横路委員 本来大事なところですから、早くやはり示してもらって、審議する時間を十分与えていただかなければ困ります。そのことを申し上げておきたいと思います。  それから、もう一つつけ加えた紛争後の秩序の維持、回復ということで、これは紛争そのものは終わっているけれども、その後、心配があるからという話ですけれども、紛争そのものが終結していれば、後は国連、国際協力の話になるんじゃないんですか。そこからまた改めて周辺事態というのはなぜしなければいけないんですか。これはPKOや何かの話になる可能性もありますし、これはもう国連協力の話じゃないかというように思いますが、違いますか。
  122. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 今先生言われましたように、紛争が終了しておりましても、それが完全に落ちついていないということで、再度発生する可能性もある、あるいは政治体制の安定までに時間がかかるということで、それが我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態ということでございますが、それに対する対応といたしましては、それはいろいろなケースがあろうかと思います。  例えば、このガイドラインにおきましても周辺事態におきます協力例といたしまして、例えば「救援活動及び避難民への対応のための措置」というところにそういうものがございますが、こういった被災地に対する対応ということでございますれば、まさにそういったPKO活動みたいなものもそういった被災地に対する活動ということではあり得るのだろうと思います。それはそのときの状況に応じまして対応があろうか、こういうふうに思っております。
  123. 横路孝弘

    ○横路委員 ですから、今お話がありましたように、いろいろなケースがあるということですが、我が国としては国連ということを大事にしていこうということで、従来のPKO活動も国連を中心にやってきているわけですね。何でも日米でということではないわけであります。  したがって、このケースの場合は、やはり国連中心に対応する、国連の中の参加国として日本協力するという話であって、これをまた何かわざわざ周辺事態として認定するというのは、全然これもまたイメージがわいてきません。何か紛争があって、終結をしたということで、改めて終結した時点で周辺事態と認定して、日本がこれは何をやるんですか。
  124. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 あるいは、私の言葉足らずで若干誤解があると申しわけございませんので補足させていただきますと、そういう事態のときに、例えばそういった紛争が終了した地域に対する対応ということでございますれば、我が国としての対応はPKO法とかそういった枠組みがございましょうし、また状況によりましてはそういった紛争が再度再発しないように等々を考えますと、その地域の安定のために米軍部隊の展開ということもそれはあり得るわけでございまして、そういったものに対し、日本側がそれに対する一定の支援をこの枠組みによってするということもあり得るわけでございます。  いずれにしましても、そういう状況に応じ、現行またこの周辺事態安全確保法等の枠組みでもって適切な対応をしていくということになろうかと思います。
  125. 横路孝弘

    ○横路委員 今まで何度か質問して、後で議事録を読んでみると、どうもお答えいただいていない点がありまして、それをちょっと確認をしたいと思うんですが、このケースのうちの、三番目と勝手に言わせてもらいますが、政治混乱による大量の難民のケースなんですけれども、こういう場合の米軍の行動というのは一体どういう行動なんだろうか。  外務大臣は、日本の平和と安全に影響を及ぼす事態ということであれば、それを阻止する意味での行動はいろいろあるというお話がありました。先ほどの答弁ですと、政治的な混乱というのは内乱とか内戦までまだいく前の何かいろいろな混乱だと、よくわかりませんが、そういうお話で、難民が出ているというならば、私は前から言っておりますのは、難民を救助するということを日本も国際的な協力の中で対応すればいいのであって、一体このときに、では、その政治的な混乱に対して何か米軍が行動して難民が出てくることをとめる、それをとめるためには根本的な原因を解消するということなのかという質問をしたわけでございますが、そういうケースもあり得るという外務大臣の御答弁でございました。  一体、政治的な混乱に介入してとめるというと、今よく言われている人道的介入という範疇の話に入るんでしょうか。米軍の行動というのは、一体その政治混乱に対してどういう対応をする、どういう軍事的行動なのかという点と、それから、このケースの場合に、周辺有事というのは我が国に対するやはり軍事的な観点というのが必要だというお話でございましたが、政治的な混乱と軍事的観点というのは依然としてよくわからない。この二つの点についてお答えいただきたいと思います。
  126. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 政治的な、政治体制の混乱等に基づくケースの場合でございますけれども、それに対する関与のあり方というのは、もちろん国際法等の原則に従った対応しかあり得ないわけでございますから、またそのときの状況によって対応があり得ると思います。  それで、例えば、そういう場合でございましても、そういう事態がさらに拡大しないように米軍として態勢を強化するとか、そういったものが拡大をしないように警戒監視を強化するとか、あるいは非戦闘員の退避活動を行わざるを得ないような状況になっているとか、いろいろなケースがあろうかと思います。そういうものに対しまして、周辺事態ということで、我が国としてもそれなりの対応をする必要が出てこようか、こういうふうに思っているわけでございます。
  127. 横路孝弘

    ○横路委員 この質問に対して、先日条約局長は、政治的な混乱で難民が発生すれば、国際的な緊張を惹起する、何らかの不測の事態が考えられるというようなことを御答弁されたわけですが、これは一国の中の内部混乱の相当早い段階、つまり内乱や内戦にもいかないまだはるか前の段階で、米軍が行動し自衛隊協力するということになりますね。違いますか。具体的に何かが起きている、そこで軍事的な問題、紛争が起きているということではないわけですから、政治的な混乱によって難民が発生しているという事態米軍が行動する。  難民救出のために行動するというのなら、それはわかりますよ、それは難民対応すればいいわけですから。そうじゃなくて、周辺事態という認定をするケースとして挙げられるということが、どうも具体的な状況として思い浮かばないのです。今の御答弁を聞いてもどうもよくはっきりしない。
  128. 東郷和彦

    ○東郷政府委員 お答え申し上げます。  生起する事態を完全に詳細に描写するのは、私も大変難しいと思いますが、ただいま同僚の政府委員から申し上げましたように、米軍の当初の行動というのは、情報収集それから警戒監視等の武力行使に至らざる種々の活動を通じて、その事態がさらに拡大するのを抑止する、これが非常に重要な要因を占めていると思います。  しかしながら、周辺事態という事態は、既に我が国の平和と安全に重要な影響があるという認定のもとで行動するということでございまして、そういう状況の中で、事態がさらに拡大するのを防ぐために武力に至らざる種々の活動をとるというのがこの基本的な考え方かと思います。
  129. 横路孝弘

    ○横路委員 そうすると、軍事的観点が必要だという要件というのは、欠落してしまうのじゃないのですか。我が国に向けられた軍事的な観点が必要であるというようなとき。
  130. 東郷和彦

    ○東郷政府委員 先ほど委員から御指摘になりました例との関係で申し上げれば、国際的な緊張が拡大する、そういう状況のもとで、今申し上げましたような武力行使に至らざる種々の活動を米軍がする、それを我が国が支援する、こういうことでございまして、事態の全体的な緊張関係の中に、安全保障、軍事的要因というのは、やはり一つ入っているのだろうというふうに考えるわけでございます。
  131. 横路孝弘

    ○横路委員 ますます、日本の安全を守る、日本の平和と安全を確保するということより少し距離感のある、米軍として近くの国の、米軍が関心を持っている国の内部の紛争やその周辺の紛争に介入、関与するという役割なのかなという思いがいたしますが。  周辺事態が予想される場合に、日米両国政府がとるものというのは、かなりの対応をできるようにガイドラインではなっています。情報交換、政策協議を強化して、共同調整所の活用を含めて、調整メカニズムの運用を開始するわけですね。そして、既に合意によって選択された準備段階に従って、整合性のとれた対応を確保するために必要な準備を行って、情勢変化に応じては情報収集、警戒態勢を強化して、さらに即応態勢を強化するということですから、これは基本計画決定前にとり得る行動だと思うのですけれども、いかがですか。  そして、この即応態勢の強化というのは、具体的に、例えば日本海なら日本海にさまざまな自衛隊の船が行動している、展開をしているという状況まで即応態勢というのは入るのでしょうか。
  132. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 周辺事態に至るような、あるいはそういう認定に至るような状況が生じてまいりますれば、それに対しましていろいろな情報を集め、あるいは警戒監視を行うということがまず基本になります。それで、またそういう過程で米側ともいろいろと意見交換をするということになろうかと思います。そういう中で、我が方としては、その段階に応じて、警戒監視の態勢、そういった対応態勢を高めていく、こういうようなことが基本だろうと思います。  そういう段階を経て、周辺事態としての認定をする段階に至りますれば、基本計画というのを閣議決定して、それに従って、自衛隊でございますれば、基本計画に従って自衛隊の対応を行っていくということになろうかと思います。
  133. 横路孝弘

    ○横路委員 ですから、基本計画をつくらなければできない行動と、つくらなくてもできる行動があって、つくらなくてもできる行動というのは機雷の掃海とか——機雷の掃海は基本計画に入れる予定でしたか……。また日米運用協力というところで述べられているような警戒監視活動ということは、もう既に即応態勢としてとられるわけでしょう。
  134. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 情報収集活動、警戒監視活動というのは、これは普段から常続的にやっている仕事でございます。したがいまして、こういったもののレベルを高めていくとかいうことは、当然あり得るだろうと思います。  そういったものも、情報収集、情報源の一つといたしまして、また周辺事態であるかどうかというものの判断、あるいはそれに対する対応措置についての資としていく、こういうことになろうかと思います。
  135. 横路孝弘

    ○横路委員 ですから、これは周辺事態として認定するという作業はないわけですね。周辺事態法によれば、基本計画をつくることが周辺事態への対応ということで、そこで実質的には認定されたことになりますよということなのかもしれませんが、この前の段階で、既に自衛隊というのは行動も現実にかなりしているわけですね、基本計画の前に。  ですから、よく、事態が急で国会にかける暇がないと言いますけれども、周辺事態が予想される段階からずっと行動を積み重ねてあるわけですし、しかも、現に、旧ガイドラインと新ガイドライン両方をずっと読み合わせれば、既に共同作戦計画と相互協力計画というものは整合性を図ることになっていて、非常に一体性の強いものですね。法律的には違うかもしれませんが、軍事行動的な面からいえばかなりこれは共通のものになっていて、既にその点では、日米運用協力についてということで、調整し協力するということになっているわけでありまして、私は、事前に国会承認を求める、そういう余裕というのは、平素からの流れをずっと見ていますと、しかも準備の状況を見ていますと、それはもう十分できる、時間の余裕がないなんということはほとんど考えられないのじゃないかというように思いますけれども、いかがですか。
  136. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 私どもが、基本計画につきまして、国会報告といたしました理由は、迅速性のほかに、この三つの活動が国民の権利義務に直接関係ない、あるいは武力行使を伴わない、そういう点からお願いしている、そういうこの三つの活動の性格に基づくというのが一つであります。もう一つは、類似の法律を見た場合に、例えば海上警備行動とかあるいは治安出動のような場合は、現実に強制力を伴っておりますが承認を求めることになっていない、そういう他の法律との均衡論からいっても国会報告でよろしいのじゃないかということで提案申し上げている次第であります。だから、迅速性だけを問題としてやったわけではございません。  ただし、この問題については、今、各党間あるいは国会で大変論議されているところでありますから、私どもとしては、十分国会の論議を踏まえまして誠実に対処してまいりたい、こう思っておる次第です。
  137. 横路孝弘

    ○横路委員 時間になりましたので、最後に一点だけお伺いしたいと思います。  米軍兵士の捜索救難活動なんですけれども、これは例えばアメリカの場合、空母中心攻撃をする場合に、例えば航空機が着艦に失敗するとかあるいは離陸に失敗するというようなケースを想定して、やはり支援艦といいますかそれを救助する態勢というのはとっているわけですね。米軍兵士の捜索救難というのは戦闘行動の結果生ずるわけでございますから、その場合、日本との協力関係というのはどういうような協力連携関係になるんですか。どこかで日本の方は待機をしておって、米軍の連絡があれば飛んでいくような形になるんでしょうか。その辺のところはどういう連携になっているのか、お答えいただきたいと思います。
  138. 柳澤協二

    ○柳澤政府委員 後方地域捜索救助活動は、先生言われているように、戦闘行為による遭難者の救助という類型でありますので、従来の災害派遣と若干異なる点もございましてこの法律で改めて類型として規定させていただいているんですけれども、そういう意味では、戦闘参加者の救助ということでありますから、もちろんその救助の範囲、救助を行う実施区域は後方地域なんでありますけれども、ある程度事前のすり合わせ等によって予想した上でその準備をとるということも排除されていないというふうに考えております。
  139. 横路孝弘

    ○横路委員 つまり、やはり待機するんですね、戦闘行動が行われている場合には。
  140. 柳澤協二

    ○柳澤政府委員 具体的にどういう形で準備するかというのは、いろいろこれから詰めなければいけない点が多いだろうと思っておりますが、いずれにしても、後方地域の要件の範囲内で、場合により必要があればそういう形のいろいろな準備をとるということになると思っております。
  141. 横路孝弘

    ○横路委員 私、旧ガイドラインそして新ガイドラインを見て、実に巧みにできているというように思います。ただ、心配なのは何かといいますと、日本の主体的な判断というのは一体どこで行われるのかという、その要素がないぐらいぴっちりとでき上がっているということなんですね。ですから、周辺事態に非常にこだわってまいりましたのは、周辺事態であるかどうかというところは、まさに日本にとって一番大事な判断のところでありまして、ここをアメリカは、いわば、最近は余り使っていないかもしれませんが、警察官的にあちこちの紛争の中で、自分が秩序を維持するんだ、そういう態度、ビヘービアというのは最近ますます強くなってきているように私は思って心配をしておりますけれども、そうした中で、日本自衛隊が主体性と自主性を失って米軍の傭兵化してしまう危険性があるのではないかということを、非常によくできているだけに、見て心配をしております。  そのことを申し上げまして、時間になりましたので、私の質問を終わります。
  142. 山崎拓

    山崎委員長 これにて横路君の質疑は終了いたしました。  午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時四分休憩      ————◇—————     午後一時一分開議
  143. 山崎拓

    山崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。上原康助君。
  144. 上原康助

    ○上原委員 もう既に何度か質問をさせていただきましたが、まだなかなか理解しがたい点もありますので、改めてお尋ねをさせていただきたいと思います。  そこで、最初に、けさほどから同僚委員の方からお尋ねがあったんですが、周辺事態の定義あるいは類型についてから私もまずお尋ねをさせていただきたいと存じます。  質問者と委員長のやりとりで、今理事会で、統一見解というか政府見解を、各党の調整も含めてかもしれませんが、お出しになる努力をしておられるということですが、少しく、政府の見解といいますか、防衛庁外務省の意見の違いなどもあるような気がしてなりません。  そこで、私は別に事を荒立てていこうという立場からお尋ねをするつもりはありませんが、ぜひ誠意を持ってお答えいただきたいと存じます。  既に、申し上げるまでもありませんが、一つは、日本周辺地域武力紛争が発生している場合。また、同地域武力紛争の発生が差し迫っている場合、おそれのある場合。三点目に、ある国の政治体制の混乱などで大量の避難民が発生し、日本に大量流入する可能性が高まっている場合。四番目に、ある国が国連安保理決議に基づく経済制裁の対象となるような行動をとっている場合。この四項目を周辺事態事態の様相として、態様として挙げておられたわけですが、これに二つ加わったわけですね。  日本周辺地域武力紛争は停止したが、秩序の維持、回復が達成されていない場合。六点目の、ある国で内乱、内戦が発生し、国内問題にとどまらず国際的に拡大している場合。この五、六は前提がついておって、まだ政府部内の調整は十分ついていないが、こういうことが想定されるということを防衛庁長官が一昨日でしたか加えたわけです。  けさほどのやりとりでは、防衛庁長官の御意見はわかったんですが、五、六に対する外務大臣見解は一体どうなのか、端的にお答えいただきたいと思います。
  145. 高村正彦

    高村国務大臣 こういう場合は周辺事態になり得るということであれば、そのとおりだと思っています。
  146. 上原康助

    ○上原委員 ちょっとそっけない御答弁ですが、そうしますと、この五、六についてはまだ政府部内で調整はついていないと。いつつくのですか。
  147. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 現在、外務省防衛庁その他と鋭意調整中でございまして、できるだけ早く煮詰める段取りで進めておるところでございます。
  148. 上原康助

    ○上原委員 外務省高官がこの五、六に対して懸念を表明したという一部報道がなされているわけですね。このことについては、どういう意味でそういう外務省見解というのか、あるいはこれに対する懸念を表明しているのか説明してください。きちっと答弁してください。
  149. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 第五番目と第六番目でございますか、それに関しまして外務省のだれかが懸念を表明したというような報道は私も存じませんけれども、この作業はまさに鋭意やっているところでございまして、別に、外務省防衛庁との間で意見の相違があるとか、外務省の中である特定の問題意識を持って、これは問題だ、五番目と六番目については問題だというようなことで意見が対立しているとか、そういうことはございません。  重ねて申し上げますけれども、そのような報道については全く承知いたしません。
  150. 上原康助

    ○上原委員 それじゃ、もう既にこれは大きく報道されて、周辺事態の類型について、あるいは態様については六点あるんだ、そのことを前提というか、それに基づいて政府の統一見解というか、あるいは定義というものをこれからまとめるということに我々は理解をしておったわけですが、けさほどからの質疑応答あるいは今の政府御答弁からすると、若干、政府の立場というものがこの六点ということには絞られてきていないのじゃないのかという懸念を私は持ちます。  この六点は、周辺事態の定義を決める場合には入るんですか、入らないんですか。あるいは、五、六はまだ防衛庁長官見解であって、政府の見解としては採用しがたい、あるいはされない、そういうこともあるんですか、ないんですか。
  151. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 先ほど委員長から、委員会理事会でもそういう議論がなされていて、近く見解をまとめて発表するというお話がありましたが、私どもはそれに合わせまして、私が申し上げた点も含めながら、今検討しているところでございます。
  152. 上原康助

    ○上原委員 見解は、政府はどこでまとめるんですか。どこが主体になってまとめるんですか、政府の見解まとめは。
  153. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 これは外務省防衛庁中心になってまとめるわけですが、窓口は外務省にお願いしているという状況であります。
  154. 上原康助

    ○上原委員 本来ですと、これだけ周辺事態の定義をめぐって、私たちは既に民主党としての修正してもらいたいという提起もしているわけで、我が国に、日本武力攻撃のおそれがある場合、有事に至る可能性のある場合ということをもっと明確にすることが、国民の多くの理解を得られる前提だと思うのですよね。  それを最終段階に来て、政府部内で見解が異なるようなことになると、重要な条項だけに、一層問題がまとまりにくいのではないかという懸念と疑問を持ちますので、その点はひとつしっかり、ここで指摘をされたことあるいは各党が取り上げていること等について、なかなかこれは、もっと厳しくやれという意見と、あるいはあいまいにした方がいいのだという御意見等もあるので、どういうふうに最大公約数として取りまとめるかは難しい課題ではあるかもしれませんが、少なくとも、防衛庁長官が提示したものを外務省が異議を挟んで、異議というか、それが没にされるとかあるいはおかしくなるということは、これは政府の見解の不統一になりますので、そういうことのないように注文をつけておきたいと存じます。  そこで、私がなぜこのことを冒頭指摘したかといいますと、どうも朝鮮半島有事ということが非常に強調されてきているわけで、特定の地域や国を指定したものではない、それは外交上当然なのですが、大体今どういう地域でそういう事態が発生するかということは、おおよそ常識的に判断しますよね、国民も政治家もみんな。そういう意味で、特にこの五、六を入れたということは、台湾海峡、台湾地域ということも相当政府の頭にはあるのではないかという感じがしてならないわけですよね。  その意味で、まだこの委員会では取り上げられておりませんが、恐らく法案が参議院に送付された段階において、私は参議院では議論になるのではないかと思って、できれば遠慮もしたかったのですが、この法案アメリカの台湾関係法とのかかわり、あるいは台湾海峡、台湾地域というものは本当に、このガイドライン関連法案日米間で詰める過程または法案策定の段階において、政府は念頭に置いていなかったのかどうか、いないのかどうか。その点、お答えいただける範囲でいいですから、ぜひお聞かせを願いたいと存じます。
  155. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 この新たな指針は、冷戦終結後の国際情勢を踏まえまして、日米安保体制のもとで、より効果的かつ信頼性のある日米防衛協力を行うことを目的としたものであることは、たびたび申し上げているとおりでございますが、その指針及びそのもとでの取り組みを行うに際しまして、さまざまな国際情勢を考慮することは当然でございます。  他方、新たな指針の策定及びその実効性確保のための法整備は、これも何度も申し上げてきておりますが、特定の地域における事態議論して行ったものではなく、また、御指摘のような米国の台湾関係法と申しますか台湾問題と申しますか、そういうものについて具体的に検討を行ったということはございません。  台湾問題に関します我が国基本的立場、これは繰り返しませんが、従来から申し上げているとおり、日中共同声明において表明されているところでございまして、当事者間の話し合いによって平和的に解決されることを強く希望しているというところでございます。
  156. 上原康助

    ○上原委員 もちろん私も、日中共同声明、日中国交回復等々の平和条約締結を前提にして、そうでなければいかないということは当然であります。  具体的にお尋ねする前に、では、一九七九年四月に米大統領が署名をしておる、西太平洋における平和、安全及び安定を維持することに寄与し、米国国民と台湾の人々との間の通商、文化及びその他の関係の継続を認める事により米国の外交政策を推進すること等を目的とする法律、いわゆるアメリカ国内法と言われている台湾関係法、これについての政府の御認識は、どういう受けとめ方をしておりますか。
  157. 高村正彦

    高村国務大臣 米中間では、一九七九年一月一日の共同コミュニケによって外交関係が樹立されたわけでございますが、その上で、米国は、米中関係正常化後の台湾との関係を規定する国内法として、同年四月に台湾関係法を制定したわけでございます。  この法の目的は、西太平洋における平和、安全及び安定を維持することに寄与すること、及び米国国民と台湾の人々との間の通商、文化及びその他の関係の継続を認めることにより米国の外交政策を推進すること等にあると承知をしております。一方で、台湾関係法署名の際の米大統領声明等にもあるとおり、米国は、中華人民共和国政府が中国唯一の合法政府であると認識した上で、台湾との非政府間の関係を維持していくという基本的立場に立っていると承知をしております。  こうした台湾との関係につきましては、一九七二年の日中共同声明で示された我が国基本的な認識基本的に同様のものである、こういうふうに考えております。
  158. 上原康助

    ○上原委員 もちろん対外的には、今外務大臣がお答えになったことが、アメリカも言っておりますし、またこの法の中にも規定されております。  だが、これからちょっとお尋ねしますが、そのほかにもいろいろ問題、問題というよりも関心を持つべき点があることは御案内のとおりだと思うのです。  確かに、米中両国政府間には三つの共同コミュニケがある。一九七二年二月二十八日のいわゆる上海コミュニケ。それから、今おっしゃった米中国交正常化のための七九年一月一日共同コミュニケ。これは、発表は七八年の十二月十六日ですね。さらに八二年八月十七日の共同コミュニケがある。これは、確かに、中国は一つという立場を承認して、中華人民共和国を中国を代表する唯一の政府と認める、台湾が中国の一部であるということを是認しております。そこは当然でしょう、これは国交回復したわけですから、正常化したわけですから。  だが、問題は、アメリカは、国内法として台湾関係法という法律を新たに制定をして、事実上というか、実態的には台湾との軍事同盟、あるいは台湾に対する武器供与を含めて、ずっと継続をしてきているわけですよ。ここが問題になることがしばしばあるわけですよ。  そこで、お尋ねしたいことは、今外務大臣はそういうことを述べましたが、この台湾関係法の中で、二条の(b)項「米国の外交政策は下記のとおりである。」その一「中国大陸の人民及び西太平洋の他の全ての人々に対すると同様、米国国民及び台湾の人々との」、さすがに国民とは書いてない。「台湾の人々との間の広範、緊密かつ友好的な通商・文化及びその他の関係を維持し促進する。」とある。  二項としては「同地域における平和及び安定は米国の政治、安全保障及び経済上の利益であり、また国際的関心事項であることを宣言する。」  四項、これはやはり関心を持たれるところなのですが、「台湾の将来を、不買(boycotts)あるいは通商停止(embargoes)を含む非平和的手段により決定しようとするいかなる試みも、西太平洋地域の平和及び安全に対する脅威であると見なし、右は米国にとって重大な関心事であると考える。」  五項で「台湾に防禦的性格の武器を供給する。」「米国は、台湾の人々の安全、あるいは社会または経済体制を危機にさらすいかなる武力行使または他の形による強制にも抵抗する米国能力を維持する。」こうなっているわけですよね。  ですから、もし台湾に対して——これは中国の内政問題ですから、中国が統一をしていく、あるいは武力行使は回避するものではない、こういうことを内外に宣言しているわけですから、万一、何か中国の内政問題として台湾有事が起きた場合に、米国は、この台湾関係法において台湾の維持、安全を守るということで、何らかのコミットをすることは想定できると私は思うのですよね。これはできると思う。そのときに、日本政府は一体どういう立場をとられるのか。  だから、中国は、このガイドライン関連法案に大変関心を持ち、時には強い意思表示をしておられるのじゃないかと私は思うのですが、ここのことはぼかして、全然議論されていないのですよ、実際問題として。今、外務大臣外務省の立場での都合のいい条文を引用しましたが、私は関心のあることを具体的に条文を挙げて指摘をいたしましたが、そのときは日本政府はどうなさるのですか。
  159. 阿南惟茂

    ○阿南政府委員 先ほど先生のお話の中で、米国は台湾に対して武器供与そして軍事同盟を実質的には継続しているというお話がございましたが、当然のことながら、軍事同盟が継続しているわけではございません。  また、中国が台湾に武力攻撃を仮にかけた場合、アメリカは何らかのコミットをしていて、行動に移すのではないかということをおっしゃいましたが、中国が武力行使をするというのは、御案内のように、外国勢力が台湾に介入する場合と台湾独立という場合ということを中国側もはっきり言っております。  アメリカ政府は台湾独立は支持しないということをはっきり言っているわけでございますから、そういう状況で、アメリカ側がまず中国側の武力行使を想定しないというのが前提になっていると思いますし、この台湾関係法の条文自体、直ちにそういう防衛義務があるというわけでないことは先生御案内のとおりで、そういう場合には、大統領は議会と憲法上の手続に従い、かかる危険に対応して米国がとる適切な行動を決定するという規定がある、そういうことでございます。
  160. 上原康助

    ○上原委員 そういう条文も条項もありますよ。アメリカ武力介入したら、事は一大事ですよ。アメリカだってやっちゃいかぬです。しかし、こういう国内法があって、万一のことを想定してあなた方はこういう周辺事態法をつくろうというわけでしょう。具体的に尋ねる分には、そういうことは起こらないよ、万々一のこともあるから必要なんだとおっしゃる。これでは議論がかみ合わないんじゃないですか。  これは、あなたが今言うような御答弁で推移すればいいわけですよね。そうでなければいかない。事は、沖縄県の与那国と台湾とは百キロ内外ですよ。しかも、運輸大臣にも後で聞きますが、ADIZの問題もあるんですよ、FIRの問題も。  そこで、ではもう少し具体的なお尋ねをしますが、これは防衛庁外務省かわかりませんが、ことしの二月二十五日に、台湾海峡の安全保障情勢に関する国防総省の報告書が米議会に提出されておりますね。いわゆる「中台軍事バランス分析」という副タイトルがついているように思います。このことについては御存じか。また、御存じだったら、恐らく入手しておられると思うのですが、その概略について御説明ください。
  161. 高村正彦

    高村国務大臣 本年二月、米国防総省は、台湾海峡の安全保障情勢と題する報告書を議会に提出したと承知をしております。  本報告書は、米国防総省による独自の分析であり、我が国政府としてその細部にわたる内容につき評価することは適当でないと考えますが、中国と台湾の軍事力の量及び質をかんがみれば、現状では双方の力はおおむね均衡がとれている状況にあるとの分析は、我が国としても認識を共有しているわけでございます。  また、現在中国は、軍事力の量から質への転換を通じ軍事力の近代化を進めております。この報告書でも指摘されているように、こうした近代化の進展や台湾の軍事力の整備が今後の中台の軍事バランスに影響を及ぼし得るものとは考えております。  いずれにしても、中国と台湾の軍事バランスについては、アジア太平洋地域安全保障に影響を及ぼし得るものであることから、中国及び台湾の軍事力の今後の動向については我が国としても注視してまいります。
  162. 上原康助

    ○上原委員 中台軍事バランスの分析について、今外務大臣から国防総省の報告についてはお答えがあったわけですが、防衛庁はどういうふうにこの分析を評価するなり、あるいは何かコメントはありますか。
  163. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 今先生からお尋ねのことは将来のバランスの問題でありましたが、現状においてはどうかということは、いかがでしょうか、申し上げた方が……(上原委員「どうぞ、両方やってください。簡単に」と呼ぶ)  性能と量を比較しますと、陸上兵力においては中国が量的に圧倒しているものの、台湾本島への着上陸侵攻能力は限定的であると考えます。また、海空軍力につきましては、量的には中国が圧倒的優位であるものの、質的には台湾が優位にあると判断されます。ミサイル攻撃については、中国が台湾を射程におさめる短距離弾道ミサイルを保有する一方、台湾はそれを阻止できる有効な防空システムを保持していない等の評価が可能であると考えております。  今外務大臣からお答えのあった報告書に対する評価でありますが、防衛庁としては、将来の軍事バランスについては、今後の中国と台湾の対話の状況軍事力の整備動向に大きく依存するものであり、現時点で将来を予測してお答えすることが困難であるというふうに考えており、御理解いただきたいと思います。
  164. 上原康助

    ○上原委員 私もそんなに勉強したわけではありませんが、両大臣お答えにはなりませんでしたが、アメリカの中台軍事バランスの内容というのは、今は均衡が維持されているけれども二〇〇五年以降になると中国のレベルがかなり上回る可能性があるということが私はポイントだと見ているわけですよね。  もちろん、我が国防衛庁もそうなんだが、アメリカのペンタゴンだって、予算をたくさんとるためにオーバーエスティメートするのが普通の軍事分析なんだよ、大体は。そこを政治がどうコントロールするのかが私はシビリアンコントロールの一つのまた役割でもあると思う。それはある程度差し引き勘定で考えなければならない点はあると思うのですが、今も指摘がありましたように、航空戦略ミサイルとか、あるいは日米のBMD、TMD構想等々に対する中国側の、真剣にそれを受けとめ、ちょっと懸念を持っておられる。そういうこともあって、やはり中国としては、相当、台湾の将来の平和統一のためには一定の軍事力のレベルアップをしなければいかないという中国側の言い分も私はあると思うんですね。  そういうアメリカの中台軍事分析ということも背景にあって、アメリカとしては、一方においては朝鮮半島をにらみながら一方においては台湾地域、台湾海峡ということも想定をして、今度の周辺事態確保法というものをぜひ日本協力を得てやりたいという、私はそれは全くないとは言えないと思うんです、アメリカ側には。  といいますのは、同時にもう一点指摘をして見解をお伺いいたしますが、ことしの四月の十二日に米国の上下両院で台湾関係法というものを再確認する決議をやっているんですね、全会一致で。これはおわかりですか。
  165. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 ことしになりましてから特にアメリカの議会の中で中国問題について議論がいろいろ行われておりまして、その中でそういうことがあったということと承知しております。
  166. 上原康助

    ○上原委員 これは、クリントン大統領が昨年訪中をなさって、三つのノー政策を出した。私はそれを評価する一人なんですが、しかし、米国内あるいは米議会では必ずしもそれはオーソライズまでされなかった経緯もあり、議会においては相当不満も買っておって、そういう国内事情もあってこの台湾関係法というものを再確認しようという決議文が出されて、決議されているわけですよね。  これには余計強い調子でいろいろ問題点を指摘してあるわけですよ。私はこれはインターネットでちょっと入手してみたんですが、「ボイコットや通商停止等を含む平和的手段以外の方法で台湾の将来を決定するというあらゆる試みは西太平洋地域の平和と安全に対する脅威であり、米国はこれらを由々しき問題と認識する。」こういう一項もあるわけですね。そのほかにもございます。  そこで、米国米国のこういう対中方針、戦略を含めて持っておるわけで、それまでとやかくは申し上げませんが、問題は、ほかにもいろいろ指摘したいこともありますが、こういう状況の背景があるということを考えてみますと、中国が、やはり台湾はこのガイドライン関連法案の対象外にしてもらいたいという主張もわからぬわけじゃないですよね、これは。本当に政府が、それは地理的に範囲を特定するものではないとおっしゃりながらも、台湾については別だと言い切れば一番いいわけかもしらぬが、そう言えないとすると、少なくとも台湾に有事が起きたと、万一、万々一でもいい。起きないということが望ましい、だれだってそう思う。こういう米国と中国との関係、あるいは台湾と米国との関係から見て、万々一ある場合は米国はこういう姿勢でやりますよということを対外に鮮明にしている以上は、その事態に対して日本政府はこの法律に基づいて後方地域支援なりいろいろの軍事行動協力してやるのかどうかが問題だと思うんですよね。この点についてはお答えできますか。ぜひはっきりさせていただきたいね。  きのうまでの、きょうのもそうなんだが、日本の立場はこの法律上は中立ということはあり得ないとしばしばおっしゃっている、アメリカとの関係においては。だが、台湾で有事が起きた場合には、中立化という表現が悪ければ、軍事的介入、関与ができない、やらないということが日本政府の基本姿勢でないといかぬと思いますよ、私は。いかがですか。
  167. 高村正彦

    高村国務大臣 周辺事態が起きたような場合に日本が中立的立場をとることはあり得ない、こういうことは小渕総理以下政府が申し上げてきたところでございますが、その周辺事態というのは、我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態でありまして、地理的に特定できない、でありますから、台湾のみならず、どこであっても、その地域が入るか入らないかということはあらかじめ申し上げることはできない、こういうことを申し上げているわけでございます。  その上でさらに申し上げれば、日本は、日中共同声明の基本的立場を堅持した上で、そして、中国人同士で台湾の問題は平和的に解決されることを期待しておりますし、中国もそういうことを希望していると承知しておりますし、そういう環境はますます整いつつある、こういうふうに思っております。
  168. 上原康助

    ○上原委員 すっきりした御返事にはなりませんが、台湾海峡、台湾地域有事が発生したという場合は、我が国有事に発展する可能性も十分あり得るわけですよ。特に沖縄、南西諸島というのは大変な関心がありますよ、このことについて。邦人救出とか、中国との協議の上でそういう面の関与はしても、米軍後方支援ということで立ち入ることは少なくとも控えるということでないと、私は中国の理解は得られないと思いますよ。その点、強く指摘をし、ぜひ外交手段で中国とも十分お話し合いをする、もちろんアメリカとも、台湾関係法に基づいて事を構えるということはやらないように、しっかり提示をしてもらいたい、こう思います。  そこで運輸大臣、せっかくおいでいただきましたので、もう一つ懸念されることがあるのですね、これは簡単に触れておきますが。  沖縄返還当初から、防空識別圏とFIRの点は、飛行情報区ですね、両方問題になってきたわけですが、これは御承知のように、FIR、飛行情報区は東経百二十四度、ここは西表島が入っているわけですね、一部が。防空識別圏は、御承知のように東経百二十三度、与那国町の真上に線引きされている。これは平時の場合、今は民間航空とかあるいは防衛上、軍事上も問題ないかもしれませんが、もし周辺事態が起きて私が今指摘をしたようなことが起きた場合には、僕は問題が出てくると思うのですね、民間空港にあっても、あるいは軍事面においても、防空識別圏ですから。  このことは今後是正するお気持ちがあるのか、あるいは是正するとするならば、恐らく中国と外交交渉をしなければいかない課題だと私は思うのですが、この二点についてどういう御見解なのか、お聞かせを願いたいと思います。
  169. 川崎二郎

    ○川崎国務大臣 防空識別圏につきましては、防衛庁の方から御答弁をいただきたいと思っております。  御指摘のとおり、昭和四十七年、一九七二年沖縄復帰でございます。一方で、一九七二年八月十一日、台湾政府は国連ICAOの代表権を喪失したわけでございます。しかしながら、そのときに、管制業務は継続する旨の一方的なノータムを発出した。そういう歴史的な事実の中で、現在FIR自体は、この与那国島周辺は台湾の管制空域ということになっております。  したがいまして、民間空港の安全を確保するため、与那国空港に離着陸する航空機については、国際民間航空条約の規定に基づき、その飛行計画を台湾当局に通報しているところでございます。  台湾の管制当局との円滑な連携、今もしもの場合というお話をいただきましたけれども、そうした場合でもやはり台湾の管制当局ときちっとした連絡をとりながらやっていかなければならない、民間航空機の安全確保のために努力をしてまいりたい、このように考えております。
  170. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 防衛庁としては、我が国周辺を飛行する航空機の識別を容易にし、もって領空侵犯に対する措置を有効に実施するという観点から防空識別圏を定めているところでありますけれども、先生のおっしゃる与那国島の西側領域は防空識別圏の外側にあります。  他方、防空識別圏は、これにより領空ないし領土の限界、範囲を定めるという性格のものではなく、防衛庁としては、与那国島上空の領空において、防空識別圏外の空域も含め、自衛隊法第八十四条に基づき対領空侵犯措置を実施しているところであります。この点は、御指摘周辺事態に際しても変わることはないと考えております。
  171. 上原康助

    ○上原委員 必ずしも今御答弁のようなことで事がうまく対処できるかどうか、疑問を持たざるを得ません。  今度の不審船の侵入事件についても、防空識別圏を一つの基準にして皆さんいろいろやったわけでしょう。そうすると、明らかに我が国の領土内を識別圏に線引きされているわけですから、有事に当たっては、必ずこれはどちらかが問題にしようと思えば問題にできますよ。そういうこともひとつ御検討いただいて、支障のないように、運輸省、外務省防衛庁、考えていただきたいと思います。これは要望しておきます。またいずれ取り上げます。  次の質問に移ります、時間の都合がありますので。  法制局長官、せっかくおいでいただきましたので、このガイドライン法案あるいは防衛問題をいろいろ議論して、一番争点というか、見解の分かれ目になっていることは、いろいろありますけれども、根本問題というのは、簡単に言いますと、やはり集団的自衛権というものを日本が行使できるのかどうかということだと思うんですね、武器使用の問題を含めて。  そこで、学のない者が余り法制局長官議論するのは僣越なんですが、これまでもお尋ねしましたが、政府の憲法解釈は変えない、こういう御見解ですから、余りたくさん説明は要りませんからね、長官。要するに、国民もわかりやすい、私のようなレベルでもわかるように、集団的自衛権の行使というのは日本は現行憲法上は無理だ、できない、こういうことなんですねということをあなたに聞きたいわけです、きょうは。これだけ、イエスかノーか、はっきりお答えください。
  172. 大森政輔

    大森(政)政府委員 集団的自衛権の行使と憲法との関係についてのお尋ねでございますが、武力の行使等を禁止している憲法第九条のもとにおきましても許容されている自衛権の行使と申しますのは、我が国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきものである、したがいまして、他国に加えられた武力攻撃を実力をもって阻止することをその内容とする集団的自衛権の行使は、これを超えるものとして憲法上許されない、これは従前から一貫して表明しているところでございます。  以上でございます。
  173. 上原康助

    ○上原委員 ですから、余りこれは詰めませんけれども、国際法規とかあるいは国際慣習に基づいて武器使用もできるんじゃないか、あるいは国連憲章の範囲でやればいいんじゃないかという、いろいろ意見があるわけですが、これは何遍も引用してまいりましたように、五十六年の五月二十九日の質問主意書に対する答弁書とか、その他関連する政府統一見解というのは山ほどあると言っても言い過ぎでないんですよね。  それと、もう一点だけお尋ねしますが、一般的に、憲法第九条第一項の武力行使とは、我が国の物的、人的組織体による国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為をいう、だから、我が国が物的、人的組織体として国際的な武力紛争を解決するための一環として武力を行使することは憲法上できない、これはPKO法案のときにさんざん議論をしたところなんですね。そういう理解でいいですね、先ほどの御答弁。
  174. 大森政輔

    大森(政)政府委員 ただいまのお尋ね、ちょっと私十分に理解したかどうか自信がないわけでございますが、要するに、憲法第九条は「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」このように規定しているわけでございます。したがいまして、先ほど委員武力行使の定義を指摘されたわけでございますが、そのようなものに当たる武器の使用というものは、もちろんこれは禁止されている武力の行使として日本国憲法が禁止しているわけでございます。  ただ、いわゆる生命、身体を防護するための武器の使用と申しますのは、これはいわば自然権的権利というべきものだと思われまして、それは、そのような目的による最小限度の武器の使用と申しますのは、決して憲法が禁止している武力の行使には当たらないということは、これはPKO法の審議でたびたび申し上げたところではございます。
  175. 上原康助

    ○上原委員 そこを私も前提として申し上げているんです。武器の使用がすべて武力の行使とは私も解していない。自衛隊法九十五条のこともあるし、いろいろあります。だが、物的、人的組織体による国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為はできない、これは、やはり憲法九条がある間は、その解釈を逸脱してはならないという立場で私は申し上げているわけで、ですから、それを解釈でやれとか国際法でやっていいんじゃないかということには、我々はくみできない。  幸い、この法案一つのいろいろ歯どめはありますが、自民党内の良識派の方々と言ったら失礼かもしれませんが、大方は、この解釈は一応変えないというお立場でやろうということですから、ぜひその点は、委員長を含めて、しっかりと我々の主張もわかっていただきたいということを要望しておきます。  法制局長官、もういいです。  次に、いろいろありますが、自治大臣せっかくおいでいただきましたので、ちょっと、せんだっての私の質問とも関連をして、いろいろ政府の協力マニュアルもおつくりになるということで、これは理事会に出された検討中の案のようですが、「国以外の者の協力周辺事態安全確保法案第九条)の内容について」ということで、いろいろ、従来よりはかなりわかるような気がいたします。  そこで、これはざっと見たのでまだそんなに勉強はしてありませんが、例えば「一、地方公共団体の長に対して求める協力項目例(第九条第一項)」のところの云々かんぬんで、その中段に「港湾施設使用しようとする場合に、」これは運輸大臣もおった方がよかったかな。「港湾法に基づく条例による施設使用許可について協力を求めること等が想定される。」この港湾法とはどんなものか、ちょっと失礼なんだが、こういうことは全体的に明記してもらえるかということ。あるいは「航空法に基づく条例」云々というのもあります。これは、より明確にした方がいいんじゃないかということが要望であり、質問であります。  さらに自治大臣には、今の点もお答えいただければいいわけですが、この中で「地方公共団体に対して依頼する項目の例」として「人員及び物資の輸送に関する地方公共団体の協力」というのがあります。そして、いろいろあって、この費用負担の問題なんですが、法案の九条の中にも、この間もちょっとお尋ねをいたしましたが、三項に「その協力により損失を受けた場合には、その損失に関し、必要な財政上の措置を講ずるものとする。」  損失については政府が補償するということは、自治大臣もほかの大臣もたしかほかでお答えになっておったと思うんですが、これだけの、ここに述べておられる、地方公共団体の長に求めることとか国以外の者に対して依頼する協力項目とか、相当の領域にまたがるわけですが、私は単なる損失補償だけではいかぬと思うんですよ。要するに、行政コストは一体どう考えておられるのか。  今、米軍所在市町村が一番財政的に困っているというか負担になっているのは、行政コストなんですよ。有事の場合にこれだけのことを国が協力を求めて、単なる損失があるからそれに対しては何か補償しよう、負担しようということだけではいかない。当然、行政コストということも考えておられると思うんですが、そのあたりについてひとつ御見解を聞いておきたいと存じます。
  176. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 大きく分けて、二つの御質問があったかと思います。  お聞き及びいたしましたところでは、けさ、御指摘の「国以外の者の協力周辺事態安全確保法案第九条)の内容について」という三枚つづりのペーパーが、これは理事会でしょうかで示されたという報告を受けました。まだ内容において私もすべて逐一、つまびらかにしているわけではございませんが、基本的には、既に御提出をいたしております十項目に分けた内容を、もう少し詳しくブレークダウンして説明をしたものであると承知をいたしております。  今御指摘の、空港あるいは港湾等に関係するそれぞれの法律に基づく具体的な事例についてもう少し詳しく説明せよ、こういうことでございますが、基本的には、この部分はむしろ、運輸大臣がいらっしゃいませんので、内閣の安全保障危機管理室の方からきちんと答弁を申し上げた方がより正確であろうかというふうに思いますので、そちらに譲りたいと思います。  もう一点は、いわゆる自治体の財政負担の問題についての御質問がありました。  これは、周辺事態において、国からの協力の求めや国からの依頼に基づいて地方団体がみずからの権限を行使したりあるいは依頼に応じてサービスの提供を行う場合の経費をどう算定をして、どう手当てをするか、こういうことだと思います。  このうちで、対価が支払われるべきものについては、当然、国などから正当な対価が支払われるものと考えるわけでございます。例えば、給水を行うような場合、これは所定の水道料金をいただくということになるでありましょうし、あるいは施設借り上げの場合は施設使用料、あるいは許認可事務に関して手数料が支払われる場合にはそういった手数料、これは当然のことながら正規の対価が支払われるであろう、これはそう考えております。  そこで、このような対価をもってカバーされないような特別な負担が生じた場合についてはどうするか、こういうことですが、これは協力との間に相当因果関係があって、その協力によって損失を受けたと言えるようなケースには、御指摘の本法案の第九条の第三項に定めるところによって、国による財政措置の対象になるものであるというふうに考えておるわけです。  したがって、協力に応ずること自体が地方公共団体に実質的な財政負担をもたらすということとは一般的には考えにくいものではありますけれども、いずれにしても、地方団体の協力の種類や内容、こういったものは具体的な事態において明らかになるものでありまして、基本計画策定を通じて、地方公共団体の経費等に自治省としても十分に留意して、国が負担すべきものはきちんと国が負担をするということなどによりまして、地方団体の財政運営に影響が及ばぬように対処してまいりたいと考えております。
  177. 伊藤康成

    伊藤(康)政府委員 前段の部分についてでございますが、先生の御指摘が、例えば港湾法なり航空法なり、それぞれその条文なりをきちんと示せということでございますならば、それは、たびたび申し上げておりますように、法案成立後に地方公共団体等にお示ししたいと思っておりますいわゆるマニュアルというようなものをつくる際には、できるだけ丁寧にいたしたいというふうに思っております。  今回のこの資料は、理事会の方に御提出させていただいたものでございまして、先生方にはそこまでは煩雑かということで、このようなものにした次第でございます。
  178. 上原康助

    ○上原委員 自治大臣、私は行政コストと言いましたが、やはりこの種の業務というのは、単なる予算とかそういう面でエスティメートできない複雑なものが絡んでくるわけですよ。ですから、私は、そういうことにも十分配慮をしないと、非常に拒否的態度が強い地域もあるしまた自治体もあります。そういう面で、行政コストのことについても十分政府としてはお考えになっていただきたい。  また、これは検討中という案ですので、この間の十項目よりはより精査されてきている感じはいたしますが、全体的なマニュアルというのは、できれば要綱とかあれについては、この法案成立過程において提示をしてもらいたい。それは御検討できますか。
  179. 伊藤康成

    伊藤(康)政府委員 ちょっと先生が要綱と言われるそのイメージが私にも必ずしもはっきりしないわけでございますが、再々申し上げておりますように、これまでの我々の内部の検討はもちろんでございますが、国会の御議論等も踏まえまして、できるだけわかりやすいものを作成したいと思ってはおりますが、そういう次第でございますので、現段階でこういったものというところまでなかなかつかみ切れていないというのが現状でございます。
  180. 上原康助

    ○上原委員 いずれにしましても、政府としてマニュアルはぜひきちっとおつくりになって、地方自治関係団体また国民にお示しになるように強く求めておきます。  次に移ります。これもまだ議論されていない点で、ちょっと懸念されますので。  新ガイドラインの別表の中に「米軍の活動に対する日本の支援」ということで、「後方地域支援」の中の「その他」のところで、協力項目の例として「米軍施設・区域従業員の一時増員」というのがあるんですね。周辺事態法あるいはこのガイドラインの適用がされた場合に、こういう米軍施設・区域の新たな提供というのが問題になっている。さらに、従業員を一時増員して役務提供するということになっている。これはどういうことを考えておられるのか。また、民間団体の協力も得るということで、運輸、港湾、そういう協力を求めているわけですから、米軍基地で働いている人々の協力というのも当然想定していると思うのですね、恐らく。  一九六五年、ベトナム戦争のころ、沖縄で大問題になったことがある。タグボートの乗組員を、水先案内をベトナム戦争地域に派遣をするということで大問題になって、あのころは、それはいかぬということで阻止いたしました。そういう前例もありますので、一体、政府がここで言っていることは何を想定し、またどういうかかわりを考えておられるのか、御見解を聞いておきたいと存じます。
  181. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 先生のお尋ねは、ガイドラインの別表の「米軍の活動に対する日本の支援」、その「後方地域支援」「その他」の項の「米軍施設・区域従業員の一時増員」のところをおっしゃっているんだと思いますけれども、これにつきましては、今回の周辺事態安全確保法で特にこれについての新たな権限といいましょうか、新たなことを別に予定しているわけではございませんで、この周辺事態という状況に対応して基地のいろいろな業務がふえる可能性があろうというときに、その従業員の一時的な増員も必要になるかもしれないということでそこに記載されているわけでございます。  したがいまして、そういう場合に、これは現行の地位協定に基づきまして、例えば地位協定の十二条第四項というようなものでもって対応することがあり得るということでございます。  なお、この周辺事態安全確保法との関係で申しますれば、それは新たな権限付与、新たな法律的な権限を付与するものでございませんので、現行法で対応し得るものということでございます。 もし、これを基本計画にのせるということになってまいりますと、これは、関係行政機関の後方地域支援というような位置づけになろうかと思います。
  182. 上原康助

    ○上原委員 きょうはこの程度にとめておきますが、働いている皆さんに不安を与えるような利用、活用の仕方ということは、私は避けるべきだと思うし、また十分関心を持ちながらやっていきたいと思いますので、特に防衛庁長官外務省を含めて、地位協定運用等々、労務基本法、そういうものも、十分働く皆さんの気持ちというものを体して運用をやっていただきたいということを強く要望しておきます。  そこで、官房長官おいでいただきましたので。  マスコミ等の指摘を見ると、ガイドライン関連法案審議をされているが、沖縄の基地問題についてはちっとも議論がないと、私はその都度取り上げてきているつもりなんですが、強い御批判なり指摘もあります。十分肝にとめながらやってきているつもりですが、またやっていきたいと思うのですね。  そこで、問題は、これは外務大臣にも、前々から政府に私は要求もし、お願いもしてきているわけですが、一体このガイドライン関連法案ができることによって、米軍基地の重圧を受けている沖縄県なり基地周辺住民の不安や負担というものが軽減されるのかされないのか。されないんですね、残念ながら。  万一そういう事態になった場合に、新たな犠牲と負担は強いられるけれども、基地の重圧からの回避というのか脱却というのか、そういうことは一向に見えない。この点については、政府はどういう御認識を持っていらっしゃるんですか。本当にこういう法案が、日米の防衛協力がもっと緊密になって同盟関係がうまくいくと、基地の重圧からは、沖縄県とか神奈川とか横須賀とか、そういう面は軽くなるんですかね。重くなっていくんじゃないですか。そこいらのことについては全くないんですよね、残念ながら。そのことについてはどういうふうに思っておられるのか、また解決策はどうお考えなのか、まずその点から、御見解があれば聞かせてください。
  183. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 ガイドラインにつきましては日米安保条約の効果的な運用ということで、新たな状況に対応するということで努力をしているところでございますけれども、もちろん政府といたしまして、沖縄の方々が負っておられる負担ということにつき、一刻も忘れたことはないわけでございます。  上原先生からも、たびたびこの委員会でも指摘をされてきておりますし、政府としても、沖縄の基地の問題につきましては、これは常々申し上げているところでございますけれども、SACOの最終報告書の着実な実施を図るということで、これは努力を一層強め、続けていきたい、それが基本的な考えであると考えます。
  184. 上原康助

    ○上原委員 これはまさに政治の問題なんで、失礼ですが、政府委員がお答えになる課題、件ではないと私思うんですね。  そこで、官房長官、お忙しいところ御出席いただいてありがとうございます。そこで、近々総理が訪米もなさるということですが、私はやはり日米共同宣言、これは橋本・クリントン会談で合意された九六年四月十七日の共同宣言ですが、ここで言う東アジアの十万人体制の前方展開軍事要員の構成というものをどう再検討するかというのが今後の日米間の基本だと思うんですよね。  何回もこのことを言ったが、今はそういう事態じゃない、情勢じゃないということで、本当に、はしにも棒にもかからぬと言ったら失礼ですが、そういうことで、しかもこの五項の(a)には、両国政府は、両国の緊密な防衛協力日米同盟関係の中心的要素であることを認識した上で、国際情勢において起こり得る変化に対応して、米軍の兵力構成を含む軍事情勢について引き続き緊密に協議をする、こううたっているわけですね。  せめてこの点は、日米間で緊密に協議をして、このガイドライン法案が今成立する方向にあるでしょう、力関係からしても。せめて、沖縄の負担とか、米軍基地の方に対して重圧感を持っている人々の気持ちを、平和的に物事は解決していくというプラス思考というものも考えながら、こういうことは積極的に、新たな2プラス2を開催するとか日米首脳会談でやるとかやらないと、僕は、稲嶺知事初め沖縄県民の気持ちというのは、決して政府のおっしゃるようにSACO合意だけをやっていけばいいということではないと思いますので、この点、これは要望を含めてなんですが、官房長官の御見解があれば聞かせてください。
  185. 野中広務

    ○野中国務大臣 今御指摘の、我が国の橋本前総理との日米首脳会談におきます合意事項に基づきます問題につきましては、私ども、我が国の安全はもちろんのこと、周辺国の安全のためにそれぞれ日々心を砕き、また通貨問題を初めとする経済的不安にも我が国が積極的に対応できるように、日米間の協議に努めておるところでございます。  また、今回小渕総理が訪米いたしました際にも、今当面しておるそれぞれ諸課題につきまして忌憚のない意見を交換いたしますとともに、SACO合意以降の今日に至る経過につきましても、十分、沖縄の負担軽減のために何ができるかを中心にいたしながら、小渕総理もクリントン大統領との話し合いを行われることと存じておるところでございまして、沖縄が当面しておる諸課題につきまして、政府といたしましては、誠心誠意これに対応をしてまいりたいと存じておるところでございます。
  186. 上原康助

    ○上原委員 官房長官の真情あふるる訓話はよくお聞かせいただいておりますので、私が具体的に聞いているのは、十万人体制の再検討というものを日米間でそろそろやるべき時期に来ているのじゃないのか。これだけ皆さんが言うように、軍事同盟体制というのか、日米同盟関係というのが一層緊密になるためにこれをやるというわけだから。  今度のガイドラインを含め、この周辺事態法で、アメリカは僕は大きなプラスになると思うよ。私に言わせれば、一体日本側は、国益として何を得ているんですか。せめて、十万人体制ぐらいは再検討するという将来展望を持たないではいかないと思うのですが、そのお気持ちがあるかどうか、お答えください。
  187. 高村正彦

    高村国務大臣 東アジア戦略報告で、十万人体制を維持するというのがここで出たわけでありますが、前回のときから、この地域全体の安定性というのは、あるいは戦略環境といいますか、残念ながら改善されていないわけで、その十万人体制というのは、我々としてもそういうことだろうな、評価しなければいけない、こう思っているわけであります。  ただ、戦略環境が変化したときは、我々は、米国と緊密な連絡をとりつつ、それについてきっちり考えていかなければいけない問題だという意識は持ち続けているわけであります。  この周辺事態安全確保法ができたことが、直ちに戦略環境がよくなって、十万人体制が要らなくなるというふうには私は思えないわけでありますが、いずれにしても、ではこれによって日本は何を得るのかといえば、それは日本の平和と安全というものがより一層確固としたものになってくる、こういうふうに考えております。
  188. 上原康助

    ○上原委員 それは外務大臣、政府のお考えとしては理解というか、わかるわけですが、これだけ国民に協力を求める、負担も多くなる、にもかかわらず基地の整理縮小とかアジアの米軍のプレゼンスということには一向変更がないということになると、これはやはり見解は相当異なる、違うと思うんですね。じゃ、いつになるとそういう事態が来るのか、来ないんじゃないですか、ますます軍事面だけ協力させられて。そこが大きく違う点ですので、ぜひ十万人体制について再検討を求めます。  そこで、最後に、これも沖縄開発庁長官あるいは官房長官がいいと思うんですが、最近の米高官の発言ですね。はっきり言いましょう。これは新聞にでかでか出ているわけですから、朝日やほかの新聞にも。キャンベル次官補代理は、普天間飛行場の代替地、いわゆる海上へリポートについては米国政府は現時点ではもう最良の選択肢とは考えていないと明言しておられるんですね。  このことについて、日本側は、この米側高官、実務の責任者の発言としては重く見るべきだと私は思うんですが、いかように受けとめておられるのか。政府は、海上施設というのはもう最良の選択肢とは考えていないという米側の見解と同一というか、同じ立場でこれから沖縄側のこの検討等も見ながら対応していかれようとするのか。日本政府としての御見解をお聞かせ願いたいと思います。
  189. 野中広務

    ○野中国務大臣 キャンベル米国防次官補代理の海上ヘリポートについての発言は私どもも承知をしておるところでございますけれども、委員御承知のように、普天間飛行場の返還に必要な代替施設等につきましては、米軍運用所要を満たしまして沖縄県民の方々の負担も極力軽減するという立場に立ちまして、最良の選択肢として海上ヘリポート案を地元に提示した経過は委員も十分御承知のとおりでございます。しかし、終始一貫、政府は、一方において地元の頭越しに進めることはないということを従来から繰り返し申し上げてきておるところでございます。  したがいまして、先般、稲嶺新知事が就任をされまして、軍民共用とする陸上空港案を含む複数の案を検討する旨を申しておられまして、この問題の解決に向けた新たな県庁内組織の設置をされるなど、前向きに取り組んでおられることも政府としては歓迎をしておるところでございます。  今後、知事のお考えを十分拝聴し、そして政府としても、本問題にお手伝いするところは十分お手伝いをいたしまして、いずれにいたしましても普天間飛行場が返還されるための代替施設としてはヘリポートが必要でございますので、真剣にその実現のために取り組んでまいりたいと考えておる次第であります。
  190. 上原康助

    ○上原委員 もう時間が来ましたから終わりますが、私も、今官房長官の御答弁のように、稲嶺知事が今検討なさっておられるので、その推移を当面は見守る必要があると思います。しかし、御指摘しましたように、米国の事務というか実務担当の責任者が、海上施設というのは最良の選択肢でないと天下に言い切った以上は、政府としてもそのことは受けとめて、いろいろ政府としての考え方というものもある程度沖縄県に示しながら、頭越しにしていかないというのは当然なんですが、国防というか、安全保障の責任者は国なんですから、沖縄だけにげたを預けてとは言いませんけれども、そこいらも含めて、十万人体制を含む基地の実質的な整理縮小ということが一日も早く前進するように強く要望申し上げて、質問を終わりたいと思います。
  191. 山崎拓

    山崎委員長 これにて上原康助君の質疑は終了いたしました。  次に、佐藤茂樹君。
  192. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 公明党の佐藤茂樹でございます。  当委員会ガイドライン関連法案をめぐる審議もいよいよ大詰めに来たわけでございます。私ども公明党といたしましては、一貫して、国家の平和と、そして国民の生命財産を守るためにこの法案をいかにするのか、そういう立場に立って精力的に議論をしてまいりましたし、修正を要求すべきところはきちっと要求し、原案で評価すべきところはきちっと評価するという、どちらかというと、かたくなではなくて、柔軟な対応をしてきたのではないのかな、そのように思っている次第でございます。その上で、きょうは一時間四十分という長丁場でございますが、この衆議院の審議を終わる前に、やはりあいまいな部分について明確にしておかなければいけないであろう、そういう観点から、何点か政府の見解をお聞きしておきたいと思います。  それで、まず最初に、これは修正協議でも非常に話題になっているという話もありますし、また、午前中来いろいろ御議論がありましたけれども、周辺事態の認定あるいは定義ということにつきまして、少し時間をいただいて政府の見解をお聞きしたいわけでございます。  私どもは、もう既に御承知のとおり、周辺事態概念を明確化するために、認定基準について、包括的に類型化したそういうものをきちっと統一見解として出していただきたい、そういうことを主張してまいりました。午前中いろいろ議論になりましたが、それに対して政府も御努力いただいている部分は評価いたしますが、その内容あるいは出し方等についてはちょっと、いろいろ防衛庁長官も何か責められて困っておられるようでございますが、しかし、なぜそういう主張を我々がしたのかということをまず最初にはっきりと申し上げておきたいと思うのです。  一つは、周辺事態が発生したか否かの判断に関する規定というのがもともとこの法案に示されていないということが一点ございました。  そしてまた、周辺事態であるかどうかの認定について、認定そのものの手続というものについても規定がなかったということが二点目。  そして、政府が一貫して周辺事態の定義について言われていること、例えば、これはある答弁ですが読み上げますと、周辺事態とは我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態であり、ある事態周辺事態に該当するか否かは、あくまでもその事態規模、態様等を総合的に勘案して判断する、したがってその生起する地域をあらかじめ地理的に特定することはできない、このあらかじめ地理的に特定することはできないという意味で周辺事態は地理的概念ではない。大体こういう内容の答弁を、少し言葉はかえても一貫してされてきた。  しかし、この答弁では、従来からいろいろ言われているけれども、やはりまだまだ国民に、あるいは国会議員の中にも、わかりにくい、そういう議論がある。そういう観点から、何をもって周辺事態と認定するのかという具体的な認定基準を設けるべきではないのかという観点から、我々要求をしてきたわけでございますが、私どもは、そうした方が、政府が例えば周辺事態と具体的に認定したときに、その周辺事態の認定に対して国民の理解も得やすいし、またわかりやすいのではないのかということが一点。  またもう一つは、今修正協議で問題になっておりますが、仮定の話としてですが、国会承認になった場合にも、そうすると、国会承認ですから、周辺事態として認定したいと政府が提案したときに、国会議論になったときに、やはり何らかの判断基準、メルクマールというものがなければ、これはそれぞれ各党とか各議員によって、これは周辺事態だ、これは周辺事態ではないというような、そういう百家争鳴した議論になる。だから、ある程度の、こういうパターンに合致するからこれは周辺事態でしょうという一つの判断基準をこの法案ができるときに明確にしておくことが必要であろう。そういう観点から我々は、認定基準を明確にすべきである、そういうことで主張してきたわけです。  そういうことで、政府、今努力をいただいているわけですが、我々のそういう理由も含めて、もう一度、認定基準を明確にすることにつきまして政府の見解を伺いたいと思います。
  193. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 また繰り返しになって恐縮でございますが、周辺事態とは、我が国周辺地域における我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態であります。この事態周辺事態に該当するか否かは、その事態規模、態様等を総合的に勘案して判断することとなるということを累次申し上げてきました。委員指摘のとおりであります。  これは、軍事的観点を初めとするさまざまな観点から見て我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態を意味し、我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態か否かについては、その事態規模、態様等を総合的に勘案して判断すべきものであるため、その認定基準、判断要件に相当するようなものをあらかじめ概括的、包括的に示すことは困難であるということを御理解いただきたいということを申し上げてまいりました。  そこで、一つの手がかりとして何か類型を示すことができないかということがこの議会でも大変議論になったところであります。先ほどお話がありましたが、出し方が余りよくなかったために申しわけないことをしましたけれども。午前中、委員長のお話で、理事会においてもこの類型に関する統一見解をつくれということでありますから、この委員会側のその要請に合わせまして、私どもも、しっかりした類型というものを再検討いたしましてお示しするようなことを考えていきたい、こういうふうに考えている次第であります。
  194. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 そうすると、委員長から午前中に、締めくくり総括のときにというようなお話がございましたけれども、防衛庁長官でも外務大臣でも結構なんですが、そのときには具体的に、防衛庁だけの判断ではなくて外務省ともきちっと調整したものを統一見解として出される、そういうように伺っておいてよろしいでしょうか。
  195. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 国会側の御要請でございますから、そのように処置したいと思います。  今度は外務省としっかり相談をして、確としたものを出したいと思います。
  196. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 私は、この周辺事態の認定、またどういうものをイメージしているのかというのは、一つのやはり法案の一番始まりのポイントになると思いますので、ぜひ委員長の方にお願いしたいのは、理事会の方で取り計らいをよろしくお願いいたしたいと思います。
  197. 山崎拓

    山崎委員長 さよういたします。
  198. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 それで、あと、周辺事態の定義ということについて、我々とはまた違った角度から、検討すべき二つの主張をされているというように、修正協議等の報道を見ておりますとお伺いしておるわけでございますが、その二つにつきまして、当事者ではない政府に聞くのが筋なのかどうなのかというのは、またこれは一つ疑問があるところでございますが、ただ、政府としてどういうようにそういう政策論をとらえておられるのかということをちょっと確認しておきたいと思うわけでございます。  一つの主張としては、周辺事態の定義について、周辺事態を、そのまま放置すれば我が国の平和と安全が侵されるおそれのある事態ととらえて、いわゆる準有事に限定するべきである、その際の対米支援というのは武力行使には至らない自衛権の発動、そう解釈する主張というのがあるというように報道で聞いておるわけでございます。すなわち、周辺事態日本の自衛権の問題としてとらえ直すべきである、そういう主張だと思うんですが、私は、果たして周辺事態というのは自衛権の問題なのだろうかということを疑問に感じるわけですね。  例えば、一例を挙げますと、自衛権発動の三要件というのが、これはずっと一貫して議論の土台としてあるわけですが、その自衛権が発動されるのは、改めて言うまでもなく、一つ日本への急迫不正の侵害がある、二つ目はほかに適当な手段がない、三番目は必要最小限度の実力行使にとどめる、そういう三要件に当たるときだけであるというのが今までの政府の自衛権に対する考え方だったと思うのです。  そういう視点からすると、日本への急迫不正の侵害がないにもかかわらず今回は米軍協力できる余地がある、そこの部分については協力しようということですから、周辺事態への対応というのは、こういう観点からすると、自衛権の発動ではないのではないのか。すなわち、本来の日本防衛とは別枠の話であって、日本の自衛権の問題としてはとらえ切れないのではないのかな、そのように私は理解をしているわけでございますが、まず、政府としてこの問題をどういうようにとらえておられるのか、お答えいただきたいと思います。
  199. 高村正彦

    高村国務大臣 周辺事態とは、我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態でありますが、我が国に対する武力攻撃に至らないものであり、我が国が個別的自衛権を行使するということはないわけであります。  また、周辺事態安全確保法案に基づき、我が国が実施する諸活動は、いずれもそれ自体武力の行使に該当せず、米軍武力行使と一体化の問題が生ずることも想定されません。したがって、この法案のもとでの我が国の活動は、憲法上認められない集団的自衛権の行使に当たるものではありません。  本法案は、これまで我が国において十分法整備がなされていなかったためにできなかったことをできるようにするという意味では、新しいものではありますが、我が国自身の平和と安全を確保することを目的として、日米安保条約目的の枠内において、その信頼性抑止力をさらに向上させるために主体的に作成したものであり、政府が一九六〇年以来一貫して行ってきた日米安保体制の効果的な運用のための努力の延長線上にあるものであります。  また、周辺事態における具体的な対米協力は、あくまでも日米安保条約目的の枠内において行われるものであります。法案第三条第一項第一号においても、周辺事態において、我が国からの協力の対象となる米軍は、日米安保条約目的の達成に寄与する活動を行っている米軍であることが明記されているわけであります。  委員は自衛権発動の三要素ということを出しましたが、そういうことを出すまでもなく、自衛権というのは侵略に対して実力で阻止する行為だ、こういう定義である以上、全くそういうことをやらないわけでありますから自衛権ではない。  ただ、その自衛権の範疇というのをより広くとらえて、これはいわゆる国連の集団安全保障の方なのか、それとも日本の国を守るためのものなのかというふうにとらえれば、後者の方に入るということは言えるかもしれません。言えるかもしれませんが、いわゆる我々が自衛権として定義しているところのものではありません。
  200. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 今の外務大臣の御答弁で明快であると思うのですが、念のためもうちょっとお聞きしますと、先ほど来言っていますように、日本が直接攻撃されていなくても、その紛争の対処のために行動している米軍に対して自主的に対米支援をする、今回後方地域支援という名前がついていますけれども、そこの分野というのは、今までの政府の解釈を変えるものではないのだというのが一つ。  その上で、日本は、従来の個別的自衛権という範疇にも入らない、集団的自衛権という範疇にも入らないけれども、憲法の枠内で、武力の行使に至らない範囲でできる余地、協力、そういうものがあるのだ、政府としてそういう認識がある。そこに対米協力ということで一歩踏み出すのだ、そういう認識であるというふうに理解してよろしいですか。
  201. 高村正彦

    高村国務大臣 基本的にそういうことでございます。
  202. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 それでは、政府の今までの解釈を変えないでそういうところに一歩踏み出すということで、これ以上は、このことはお聞きいたしません。  もう一つ周辺事態の定義に対する主張として、他方、周辺事態の定義を、我が国周辺地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態で、我が国に対する武力攻撃に発展するおそれのある事態、そういう言葉で言われているように、一言で言うと、周辺事態をさらに限定的にとらえよう、そういう主張もされているところがあるわけでございますが、政府として、周辺事態を限定的にとらえるというとらえ方をどういうように考えておられるのか、所見を伺いたいと思います。
  203. 高村正彦

    高村国務大臣 御指摘の、我が国に対する武力攻撃に発展するおそれのある事態がいかなる事態を指しているのか必ずしも定かではない、だから、委員は今限定的にとらえると言いましたが、どれだけ限定的にとらえているのか、ちょっと私にはわかりかねるわけでありますが、いずれにしましても、周辺事態の定義につきましては、法案第一条において「我が国周辺地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」と定めており、これを御指摘のような定義に変更することは、政府としては全く考えていない、こういうことでございます。  周辺事態というのは、我が国に対する武力攻撃に発展するおそれのある事態、これは明確に直接的に発展するおそれのある事態というだけではなくて、放置すれば事態が悪化して安全保障環境が非常に悪くなる、直接的につながるのではなくても、まさに武力攻撃に発展するような蓋然性が全体としてふえるというようなことも当然含まれるというふうに思っておりますから、余り限定的に解釈されるおそれのある文言を追加しないでいただいた方がいいんだろう、私はこういうふうに思っております。
  204. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 今外務大臣に御答弁をわざわざいただいたんですが、私どももやはり同様の立場をとっているということだけ、この件については言い添えておきたいと思います。  そこで、仮定の話として、今こういう表現がありました、我が国に対する武力攻撃に発展するおそれのある事態に対して、現行の自衛隊法で果たして対処できるか否かという、そこの部分について若干防衛庁見解を伺いたいんです。  特に、私この件で全部もう一回自衛隊法を見直したわけではないんですが、例えば自衛隊法の第七十七条では防衛出動待機命令というのがございまして、読み上げますと、「長官は、事態が緊迫し、前条第一項の規定による防衛出動命令が発せられることが予測される場合において、これに対処するため必要があると認めるときは、内閣総理大臣承認を得て、自衛隊の全部又は一部に対し出動待機命令を発することができる。」要するに、予測される場合においてはそういうことをしてもいいんだ、そういう七十七条の規定があるわけでございます。これで、例えば我が国に対する武力攻撃に発展するおそれのある事態に対しては何らかの自衛隊としての行動ができるのではないのか、そういうようにも読み取れるわけですが、その辺、防衛庁見解を伺いたいと思います。
  205. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 今委員からお話がありましたとおり、隊法の七十七条におきましては、防衛庁長官は、事態が緊迫し、防衛出動命令が発せられることが予測される場合には、これに対処するため必要があると認めるときは、内閣総理大臣承認を得て、自衛隊の全部または一部に対し出動待機命令を発することができることとされております。  この防衛出動待機命令は、自衛隊員に対し職務の場所につく義務を課することにより、防衛出動を円滑かつ効果的に実施することを目的とするものであり、これによって自衛隊が何らかの活動を実施するものではなく、周辺事態への対応措置を代替できる性格のものではないと考えます。  なお、周辺事態の推移によっては日本に対する武力攻撃が差し迫ったものとなるような場合もあり得ることから、状況によっては、かかる事態に対応するため防衛出動待機命令を発する可能性もございますけれども、周辺事態と防衛出動待機命令を発出する事態は異なる性格を持つものであり、周辺事態への対応措置として防衛出動待機命令が発せられるものではないと考えます。
  206. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 そうしたら、長官、再度確認なんですが、六類型全部は出しませんが、一点だけ、我が国に対する武力攻撃に発展するおそれのある事態、そういうおそれが出てきたときというのは、待機命令とはまた全然質が異なるんだということであれば、現行の自衛隊法ではそれに対処するということは今のところ不可能なんだ、そういうとらえ方でよろしいですか。
  207. 柳澤協二

    ○柳澤政府委員 大臣からも申し上げておりますように、自衛隊法の防衛出動あるいは防衛出動待機命令というのは、あくまでも我が国に対する武力攻撃の存在をベースに物事を考えようとしておりまして、したがって、周辺事態であるかどうか、あるいは周辺事態がどのような形で推移するかというのとは、おのずと別の考え方であります。  そして、例えば先生今使われました、おそれという言葉もございますが、自衛隊法七十六条の防衛出動の要件としての武力攻撃のおそれというのは、実際の武力攻撃があった場合に極めて近いほどの相当緊迫した状況を想定してまさに防衛出動が発令されるわけでありますから、そういう状況を考えておりますので、先ほど大臣のお話のように、状況によっては、推移によっては周辺事態から武力攻撃が差し迫った情勢になるということはもちろんあり得るとは思いますけれども、おのずとその判断は別のものだということであろうと思います。
  208. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 今運用局長が言われましたけれども、七十六条で言う「外部からの武力攻撃のおそれのある場合」というのは、周辺事態から波及してきて日本に対する武力攻撃に発展するおそれがある場合もそこに含まれるという考え方なのか、全く別次元として考えるという考え方なのか、そこだけもう一度確認をしておきたいと思います。
  209. 柳澤協二

    ○柳澤政府委員 周辺事態の定義としていろいろ御議論されておりますところの我が国武力攻撃のおそれというのは、それはまさに周辺事態状況によって我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態の、その与え方の問題と申しましょうか、そういう評価の問題であると思いますが、七十六条の要件としての武力攻撃のおそれというのは、武力攻撃が始まった場合は武力攻撃があったということでございますが、それに極めて近いような状況ということで考えております。したがいまして、七十六条の要件の方は、国際情勢全体の推移といいますよりは、現実我が国に対する武力攻撃が企図されつつあるような、そういう状況を考えているというふうに理解しています。
  210. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 現実にはとらえ方というのは極めて難しいと思うんですが、それはこれ以上言うても明らかにされないと思うのでやめます。  次に、船舶検査活動につきまして何点かお聞きをしたいと思うんです。それで、ここの部分は、ちょっと最初に両大臣見解を伺いたいんです。  ここの部分については、もう御存じのとおり、我々野党、我々は第二党ですが、第一党の民主党さんも含めて、野党の第一党、第二党が政府原案のままでいい、そのままでいいと言っているのに、逆に与党が、修正の内容、そういう言葉がいろいろ報道で飛び交いしておりますが、修正の内容を主張しているという、全く理解できないねじれ現象になっておるわけでございます。  与党は与党でいろいろ議論はあるかと思うんですが、まさか、政府としても原案を修正した方がいい、そういうように考えておられないと思うんですが、まず、担当の外務大臣、いかがでございましょうか。
  211. 高村正彦

    高村国務大臣 我々は、ベストだと思って原案を提案したわけでございます。ですから、政府として修正をして出し直すとか、そういうようなことは全く考えていません。  ただ、国会に提案している以上、国会が修正すると言ったとき、我々は抵抗するすべはないわけでありますから、それは立法府がお決めになることだと思いますが、私たちは、私たちの考えを今までも誠心誠意御説明してきたつもりでございます。
  212. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 念のために、防衛庁長官、所管は違うかと思いますが、この項目について、ちょっと見解だけ伺っておきたいと思います。
  213. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 全く同じでありまして、私どもは、この法案が一番いい案だと思って御審議願っているわけであります。  外務大臣が申されたとおり、立法権は国会にあるわけでありますから、国会審議の結果を踏まえまして、私どもは誠実に対応したいと思います。
  214. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 そこで、もう何度もこの委員会で、私もこの件については前々回ぐらいにやらせてもらったんですが、もう一度確認の意味で、なるべく今まで出ていない論議の上でやりたいんですが、念のために、基本的なことをもう一回きちんと確認をしておきたいんです。  我々は、国際法上のきちんとした根拠である国連安保理決議に基づいてやるべきであるという主張をしておるわけです。  前回、四月一日に私が質問したときに、東郷条約局長が次のように答弁されました。「そのような船舶検査というものが国連決議がなければできないかといいますと、ただいま申し上げましたこの旗国主義の大原則にかなう限り、一定の船舶検査、これは平時の臨検とは異なった意味での船舶検査というものも可能な行動である、旗国主義の原則に合致する限り可能であるというふうに考えます。」それはもうそのとおりであるんですが、ただ、旗国主義に基づいて、例えば、複数の国がやったことにどれだけの意味が出てくるのかというところで、念のために確認をしておきたいんですが、旗国主義では、例えば条約であるとか国際約束なんかに基づいてやったとしても、そういう多国間の取り決めに基づいてやっている国籍の船を対象としてしか臨検できないのではないか。  例えば、仮定の話で恐縮なんですが、アメリカと韓国と日本が、旗国主義に基づいて多国間の取り決めで船舶検査を行います。しかし、具体的に言うと、その周辺の諸国である北朝鮮であるとかロシアであるとか中国の船が、その国の国旗を掲げて公海上をざあっと航海している、そのときには、例えばその三国いずれに対しても船舶検査はできない、そのように私どもは理解しているんですが、その辺についてどうか。特にその旗国の同意があればできるでしょうけれども、その三国とも同意をしなかった場合には船舶検査はできない、そういうように我々は認識しているんですが、確認の意味でお尋ねをしておきたいと思います。     〔委員長退席、中山(利)委員長代理着席〕
  215. 高村正彦

    高村国務大臣 今委員が御指摘になったとおりでございます。
  216. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 そういうことでございますから、どうもイメージとして、仮定の話に仮定をつけてあれですが、何かアメリカと韓国と日本船舶検査をすれば相当意味があるような意味合いに出ておりますけれども、例えば北朝鮮であるとかロシアであるとか中国が堂々と旗を掲げて船で行かれたらなすすべがない、そういうものであるということは、ここで確認ができたと思います。  それで、次に伺いたいのは、国連安保理決議に基づいた船舶検査というのは国連の集団的安全保障措置の一環である、そういう国際法上の性格づけ、位置づけがあるわけでございますが、そうすると、逆に、旗国主義の大原則に基づく船舶検査というのは、行為は、例えば検査、臨検というような同じような行為があったとしても、具体的に、そういう集団安全保障措置の一環というものとは全く違うものになるであろう、そのように認識しているのですが、国際法上、そういう多国間の取り決めに基づいて行う船舶検査というのはどういう扱いになるのか、お尋ねをしたいと思います。
  217. 高村正彦

    高村国務大臣 委員が御指摘の多国間取り決めに基づく船舶検査を実施する場合の国際法上の評価につきましては、その取り決めの内容により判断されるものでありまして、一概に述べることは困難でございます。  しかしながら、この点について、あえて一般論を述べれば、当該取り決めの内容から、取り決めの締約国が、互いに自国を旗国とする船舶に対する船舶検査の実施に対して同意していると判断される、または異議を唱えないことがあらかじめ明らかになっているような場合には、旗国主義のもと、旗国の同意に基づき行われる行為、活動であり、そのような船舶検査を実施することは、取り決め締約国との間で国際法上問題はありません。  国際法上、どのような性格かと言われてもなかなか難しいわけでありますが、今申し上げたようなことで、国際法上問題がありません、こういうことであります。
  218. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 それで、こんな細かいことは質問通告していなかったのですが、念のためにちょっと事実関係だけ確認をしておきたいのです。  この前の質問でも明らかになったのは、私の方から申し上げたのですが、今まで四回、船舶検査があったけれども、すべて国連決議に基づいたものであるということをこっちから申し述べた。そのとおりですという外務省の答弁があったのですが、漏れていたらいけないので確認したいのですが、逆にそういう国連安保理の決議に基づかない、複数の国が多国間取り決めで旗国主義に基づいて船舶検査活動を行ったというケース、歴史上あったのか、なかったのか。もし今お答えできるなら、お答えいただきたいと思います。
  219. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 なかなか明確に事実関係が把握できないために結論を出せないというようなケースが絶無ではないと思いますけれども、これまで私どもが承知している限りにおいて、複数の国が複数の国の間の合意によって、それぞれの国の船舶に、かかる検査を行ったという例を承知しておりません。
  220. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 ですから、今どこかで議論されていることというのは、全く未知の領域に具体的に踏み込もう、そういう議論をされているということがはっきりしたわけでございます。  その上で、さらに事実の確認を一点しておきたいのですが、船舶検査活動というのはもともと原則があって、安保理がそれを要請する決議を採決するまでは開始されない、そういう原則があるのですね。私の調べた限り、今まで四件のうち、三件については、具体的に南ローデシアとセルビア・モンテネグロとハイチのこの三つのケースについては、全参加国が要請決議後に船舶を停船させ、検査するなどの措置を開始した。  ところが、有名なイラクのケースでは、まずアメリカのみが一時先行して実施したけれども、この決議に先行して実施したけれども、国連内で支持が得られずに中断して、要請決議を受けてもう一度再開した。そういう史実があったというように私は認識しているんですけれども、そのとおりかどうか、外務省、伺っておきたいと思います。
  221. 高村正彦

    高村国務大臣 九〇年の八月十六日、米国政府は国連安保理議長に対して書簡を発出し、米国は、クウェート政府の要請を受けて、安保理決議六六一に違反して、イラクないしクウェートとの間の貿易に従事しようとしている船舶を阻止する活動を行っているが、こうした活動は、国連憲章第五十一条に認められている固有の権利としての個別または集団的自衛権の行使としてなされているものであり、また、この固有の権利の行使は安保理決議六六一によっても肯定されている旨の説明を行ったと承知しています。  また、同書簡において、米国は、軍事力は、安保理決議六六一の制裁に違反した船舶を阻止するのに、必要かつ均衡のとれた方法のみで行使されるとも説明しております。  なお、その後、八月二十五日に安保理決議六六五が採択され、決議六六一の履行の確保のために船舶検査を行うことが加盟国に要請されました。  途中で支持を受けられずにやめたということは、私はちょっとよく知らないんですが、もしかしたら政府委員が知っているかもしれませんから。答えさせましょうか。(佐藤(茂)委員「はい、もしあれば」と呼ぶ)
  222. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 今、大臣の答弁にございましたように、委員が御指摘になられた米国措置については、実は事実関係を詳細に承知できない状況にあったわけでございますので、結局、我が方としても、国際法上の評価というものは下し得ないということであったと思います。  ただ、いずれにいたしましても、決議の六六一、経済制裁決議が通ったのは九〇年の八月六日でございまして、そして、米国政府が書簡を発出したのは八月十六日で、それから旬日を経ない八月の二十五日には安保理決議の六六五というのが成立しているというところから、その間の流れは割合速かったということが言えると思いまして、米国の行動に対する支持、不支持ということが安保理の議論の中の中核的なポイントになるという以前に六六五という決議が成立したということであったろうと思っております。  ちなみに、先ほどの点でございますが、一点だけ、ローデシアのケースでございます。  これは、四つの先例を委員がお挙げになりまして、ほかの三件と比べますと、南ローデシアのケースは、イギリス一国に対して、国連が、要すれば、武力の行使によって、南ローデシア向けの石油を運搬していると信ずるに足る船舶の特定港への到着を阻止することを要請したという内容でございますので、少しほかの三つとはタイプが違っているということは申し上げられるかと思います。
  223. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 それで、もう一度、船舶検査の位置づけですけれども、これは冷戦下からずっと検討はされてきたと思うんですが、特に、冷戦後の国際情勢に備えるために、国連の知恵として、一つのこういう具体的な方策というのが生まれてきたのかなという気がしているんです。  というのは、確認ですが、安保理決議に基づく船舶検査活動というこの行為自体は、国連憲章の中には、当初のあの時点では直接的な規定はなかった方法ではないのか、そういうように認識しているんですが、確認で、押さえておきたいと思います。よろしくお願いします。
  224. 高村正彦

    高村国務大臣 おっしゃるように、明文の規定はございません。  国連安保理決議に基づく船舶検査は、国連憲章第四十一条に基づくいわゆる経済制裁が実施されている場合において、その実効性を確保するため、国連安保理決議を根拠に行われる集団安全保障措置の一環としてとられるものと言えるわけでございます。
  225. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 それで、施行される前に性格づけだけはっきりしておきたいんですが、四十一条の経済制裁を実効性あらしめるためのものであるということが、今、一つ確認されました。  それと、もう一つは、その船舶検査というのは、国連憲章第四十二条のもとの、そこでもう条文の中にありますが、国連軍による封鎖等の武力行使とはみなせない、そういうように認識もしておりますし、さらには集団的自衛権とも全く違うものであるという認識でいいのかどうかだけ、端的にお答えいただきたいと思います。
  226. 高村正彦

    高村国務大臣 委員の御指摘のとおりでございます。
  227. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 それで、これはちょっと飛躍するのですが、NATO、EU各国ですが、国連決議に基づかない、ユーゴに対して禁輸措置を実効性あらしめるための海上封鎖なんかをしようという議論が今されているというようにお聞きしておるわけですが、国連決議に基づく船舶検査活動とそういう多国間の取り決めに基づく海上封鎖による禁輸措置、形態としてはよく似た形態になるかと思うのですけれども、そのあたりの違いはいかがなものか、確認だけしておきたいと思います。
  228. 高村正彦

    高村国務大臣 周辺事態安全確保法案で規定されている船舶検査活動とは、国連安保理決議に基づく経済制裁の実効性を確保するための船舶の検査であり、国連憲章第四十一条に基づくいわゆる経済制裁が実施されている場合において、その実効性を確保するために、安保理決議に基づき、制裁対象国に出入りする商船の積み荷等の検査、確認を行い、要すれば、進路変更を求める等の措置をとるものでございます。  現在、ユーゴに対して禁輸措置を実施することがNATO、EU等で議論されていると承知しておりますが、同措置の具体的な内容についていまだ詳細が固まっていない模様であり、周辺事態安全確保法で規定される船舶検査活動と比較することがそもそもできないということを御理解いただきたいと思います。
  229. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 そうすると、ユーゴの話はわからないのですが、仮定の話として、我が国が、国連決議に基づかずに、例えばある国の補給路の遮断をねらうような、そういう海上封鎖による禁輸措置に参加し得るのかどうか、このあたりについて確認しておきたいと思います。
  230. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 今言及されました海上封鎖という具体的な活動内容が必ずしも定かでございません。そういう活動への我が国の参加について確定的に申し上げることは困難でございますけれども、仮に、海上封鎖ということで、実力によって一切の海上交通を遮断するというような活動をもし念頭に置いていらっしゃるのであるとすれば、そのような活動は、国連憲章の四十一条に基づいて行われる経済制裁の実効性を確保するための周辺事態安全確保法案による船舶検査活動とは全然異なる活動だということだと思います。
  231. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 異なる活動なのでできない、そういう理解をしておきたい、そのように思うわけでございます。  そこで、もう一つ、国連安保理決議に基づく船舶検査活動と多国間取り決めに基づく船舶検査活動の違いで確認をしておきたいわけですが、そのときの、警告射撃ができるか否かという、国際法上認められるかどうかという問題を確認しておきたいわけですが、四月一日の私の質問に対して、今答弁された加藤総合政策局長は「仮に船舶検査が警告射撃などを伴うといたしましても、これらの活動がこのような安保理決議に基づくものである場合には、その決議の履行のため合理的に必要と認められる範囲で実施される限りにおいて、国際法上禁じられた武力の行使に当たることはない」、そういうようにお答えになったわけですね。これは、安保理決議に基づく場合には国際法上の武力の行使には至らないんだと。  逆に、安保理決議に基づかない、今言われているような多国間取り決めに基づいて船舶検査活動を行い、その際警告射撃などを行った場合は、国際法上禁じられた武力の行使に当たるのか否か、このことについて確認をさせていただきたいと思います。
  232. 高村正彦

    高村国務大臣 多国間取り決めによる場合は、その多国間の取り決めの内容によっていろいろあるわけで、一概に申し上げることは困難であります。  あえて一般論を述べますと、取り決めの内容から、取り決めの締約国が互いに、自国を旗国とする船舶に対する船舶検査の実施について同意していると判断される、または異議を唱えないことがあらかじめ明らかになっているような場合には、そのような船舶検査を実施することは国際法上問題ありません。  いずれにせよ、そのような活動の一環として警告射撃が行われることについて締約国があらかじめ同意しているのであれば、一般には、これが国際法上禁じられた武力の行使には当たらないものと考えます。
  233. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 今の議論は大前提として、今回の法案では警告射撃を実効性確保観点からいっても行わない、そういうことを触れられているという大前提なんですけれども、今の外務大臣のお答えをもう一回確認します。  例えば、ABCという多国間取り決めでそれぞれ旗国主義に基づいてきちっと取り決めました。そうすると、Aという国の艦船がBの例えば商船を船舶検査しようとしたが、なかなかとまらないので警告射撃を行う、このことは取り決め上きちっと書かれていれば認められるという、今の確認の意味で、具体論としてちょっと確認をしておきたいと思います。
  234. 高村正彦

    高村国務大臣 取り決めの内容としてあらかじめそういうことが明らかになっていればできるということでございます。
  235. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 それで、もう一つ、安保理決議に基づく船舶検査活動と多国間取り決めに基づく船舶検査活動の違いの点で気になることをもう一点だけ確認しておきたいんですが、安保理決議に基づく船舶検査活動というのは、船舶検査として海上で実施する措置基本的事項であるとか、また対象とする船舶、または禁制品を何にするのかということがすべて安保理決議できちっと明確に指定されるわけですね。ですから、安保理決議に基づいて、今度、この前も御答弁ありましたが、国連憲章二十五条で受忍義務がありますので、少なくとも国連加盟国すべてには周知される、そういうことがあり得るわけですね。  ですから、そういう行為を行っていることに対して国連加盟国は少なくともそれぞれ知っているわけですから、周辺諸国からの信頼も得られる行為である、そういうことがあるかと思うんですが、多国間取り決めの場合、例えばABC三カ国でやった場合に、どの船を対象にするのかとか、禁制品をどのものにするのかとか、さらには、どういうことを基本的事項として行為として行うのかというようなことは、ABC三カ国の中では取り決めですから決まるけれども、そうしたら、それがその周辺の諸国に果たして周知されていくのかどうか、そのあたりについてどういうような形で明確に定められていくのか、一応、外務省として見解を持っておられたらお聞きをしたいと思うんです。
  236. 高村正彦

    高村国務大臣 ABC三カ国の取り決めでそういうことがされる場合には、ABC以外の国の船舶検査はできないわけでありますから、必ずしもそういう国に対して徹底される必要はないのではないかと思います。
  237. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 もう一つ船舶検査のことで、今回警告射撃とともに、禁じられているというか、中で触れられていないものとして、これは特にアメリカとかイギリスがしている実績があるわけですが、テークダウンですね。警告射撃によっても停船を拒否し続ける、そういう非協力的な商船に対して、軍艦三、四隻でその船を包囲して、兵士がヘリコプターでロープを使用して船上におりていって、一時的にその商船をコントロールする、そういう方法だと思うんですが、テークダウンという方法を日本は行わないのかどうか、また、行わない理由は何かということを確認させていただきたいと思います。
  238. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 法案の第七条第三項では、検査対象船舶の船長等が停止の求めをしたのに応じない場合には、求めに応ずるよう説得を行うこととしており、その際には、説得に必要な限度において、接近、追尾、伴走及び進路前方における待機といった措置をとることとしております。  我が国としましては、これまでの諸外国における活動の実績、実績と申しますのは、これまでの諸外国における活動実績を見ても、警告射撃が行われたケースは極めてまれであります。そういう諸外国による活動実績等にかんがみ、周辺事態安全確保法に規定されている範囲内で実質的に有効に機能する船舶検査活動が行い得ると考えたことから、委員指摘のような措置を本法案に盛り込まなかったわけであります。  しかし、この方法は先般の不審船の事案にも活用できることでありますから、せっかくの委員の御指摘でございますので、私どもも、この法案に取り入れるかどうかの問題じゃなくて、別途この問題については勉強したい、こう思っております。
  239. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 これは警告射撃なんかという武器を使うものと違いますので、このテークダウンという方法は武力の行使には至らない、そういう認識をされているというふうに認識してよろしいですか、ちょっと確認で聞きたいんですが。
  240. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 そう思っております。
  241. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 それで、もう一つ法案の中で、第七条二項で、船舶検査活動を行う場合の実施区域は、外国による船舶検査活動に相当する活動と混交することがないよう、かかる活動が実施される区域と明確に区別して指定しなければならない、そういうようにされている。  明確に区別して実施されなければならない、指定しなければならないその理由は何なのかということをお聞きしたいと思います。
  242. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 活動海域につきましては、一国のみが活動する場合と複数の国が活動する場合があると考えられますが、我が国は、一つの活動海域に我が国のみで対応し得る能力を有しているわけであります。また、国連安保理決議に基づき各国が実施する船舶検査とは、各国の主体的な判断により各国おのおのの態様で行われる活動でありまして、我が国船舶検査活動を実施するに際し、態様の異なる他国と活動を共同して実施することは効率性の観点から適当でない、また、一定海域に複数の指揮系統があることによりかえって混乱を招くおそれがある、こういうふうに考えたことから、他国の活動海域とは区別した海域を設定して実施することとしたものであります。  なお、本法案の三条三項の後段では、船舶検査活動を行う自衛隊は、当該活動に相当する活動を行う米軍に対して後方地域支援を実施できる旨規定しており、米国と区域を区分して実施するから日米協力が行えないというふうには考えておりません。
  243. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 後半の部分は、質問する予定だったのを先にお答えになったので、もうお聞きをいたしません。  それでは、船舶検査活動の問題についてはこのあたりにしまして、次に、機雷の除去につきまして何点か確認をさせていただきたいと思います。  既に当委員会でも、三月の十八日以来、機雷の除去については何回か質疑がありまして、御答弁がありました。それは、今までの政府のきちっとした見解を述べられておりまして、どういうことかというと、一点目には、我が国に対する武力攻撃の一環として機雷が敷設されていると認められる場合は、我が国領海はもとより、公海においても、自衛隊法七十六条による防衛出動により機雷の除去は可能である。二点目に、他方、この機雷が武力攻撃の一環として敷設されているものではないと認められる場合には、当該機雷は海上における危険な妨害物になっていると考えられることから、我が国領海はもとより、公海であっても、我が国船舶の航行の安全確保のために必要な場合には、一種の警察活動として、自衛隊法九十九条により機雷の除去は可能である、そういう見解です。  つまり、特に防衛出動以外のケースで、二番目の場合には、武力攻撃の一環として敷設されているものでないと認められるケースにおいて、かつそれが我が国の船舶の航行の安全の確保のために障害物となっているケースは九十九条で除去することが可能である、これが従来の政府解釈なんです。  そこで、具体的にまずお聞きしたいんですが、目の前に機雷が探知されて、目の前かどうかは別にして、それぞれ掃海艇なんかも含めて機雷があるということが探知されて、その機雷が武力攻撃の一環として敷設されたものではないと認められる場合、あるいはその前の用語で言うと、公海上に遺棄されたと認められる機雷の場合というように、武力攻撃の一環として敷設されたものでないとか、あるいは遺棄されているものであるというその判断基準ですね、これは具体的にどういうことを考えておられるのか、お答えいただきたいと思います。
  244. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 武力攻撃の一環として敷設されたか否か、あるいは遺棄された機雷か否かを含め、機雷の判別につきましては、当該機雷の敷設海域あるいは戦闘全般の状況や周囲の国際情勢といった各種の要素を総合的に勘案すべきものと考えております。  いずれにしましても、具体的な事態に応じて慎重に判断していくべきものであると考えております。
  245. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 いや、その各種の要素、今言われた敷設海域とか戦闘状況とか、そこを勘案して、どこが判断のポイントになるのかということを具体的にお聞きをしたいわけです。
  246. 柳澤協二

    ○柳澤政府委員 やはり、どこに敷設されているかとか、それがどんなタイプの機雷であるかとか、その敷設の場所、あるいはその機雷のタイプといったようなもの、さらにその時々の国際情勢といったことから判断することになるだろうと思いますけれども、例えば、機雷というのはある意味でそのまま置いておく兵器でございますから、非常に管理が困難になるケースもあって、それが明らかに当初の目的を離れて浮遊しているようなケースとかいうものはまた個別に判断できると思います。  その時々によりいろいろな状況はあろうと思いますけれども、基本的には大臣が申し上げたようなことを個別のケースに当てはめて判断していくことになるだろうと思います。
  247. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 機雷は、午前中もありましたけれども、きょうはお聞きしませんが、多分防衛庁に聞いても海上自衛隊がどういう装備を持っているのかということを明らかにされないぐらいに、各国とも実は秘密裏になっている部分があるんですね、装備として。時々刻々いろいろ技術的にも進歩している、そういうものに対してどういう対応をしていくのかということが極めて大切だと思うんです。  そこで、具体的な基準を示されたケースが、私は、例の湾岸戦争の後にペルシャ湾に掃海艇が派遣されたときに、明確にされていたケースというのは一つぐらいじゃないのかな。あと政府答弁では余りそういうことについて、先ほどの敷設海域であるとか戦闘状況とか、そういう抽象的なことを言われたけれども、こういうケースなので掃海をいたしますというようなことを言われたのはあのときぐらいではないのかなというように思うわけですね。  平成三年の四月二十四日に、ペルシャ湾における機雷の除去及びその処理を行わせるために海上自衛隊の掃海艇等をペルシャ湾に派遣することを決定されて、四月二十六日に日本を出発した、そういう事例があるのですけれども、そのケースについて、翌日の参議院内閣委員会で、きょうお座りになっておられます大森内閣法制局長官が、当時内閣法制局第一部長として、このケースはこういうことだからきちっと派遣をしたのです、そういうことを述べられておりまして、それは、次のように言われておりました。  今回のケースについて、先ほど申し上げました基準に照らしてなぜ可能であるかどうかということにつきましては、まず第一点は、安保理決議六八七号に基づく恒久的停戦が成立した。第二点は、ペルシャ湾には湾岸危機の間にイラクにより多数の機雷が敷設され、これらがその海域における我が国のタンカーを含む船舶の航行の重大な障害となっている。イラクはみずから機雷を除去せず、他の国が除去することを当然の前提として機雷の敷設状況についてのデータを当時の多国籍軍側に既に提供している。このようなことから、既に海上に遺棄されたと認められる機雷であろうということでございまして、我が国船舶の航行の安全を確保するため必要であるとして、同条に基づく派遣が可能であるという判断に達したということでございます。 と述べられているように、そのときに言われたのは、一つは恒久的停戦が成立していた、二つ目は、イラクはみずから機雷を除去せず、ほかの国が除去することを当然の前提として機雷の敷設状況についてのデータを当時の多国籍軍側に既に提供している、こういう二点から、機雷が敷設されていてもそれは海上に遺棄されたと認められる機雷であろうという判断に至って派遣したんだ、そういう答弁でございました。  ですから、そういう具体的に遺棄された機雷かどうかという基準を明確にこのときには示されたというように受け取っておるわけですが、やはり今後もこのような明快な根拠に基づいて、遺棄されたと認められるそういう機雷、また武力攻撃の一環としてではないと認められるそういう機雷と認定して除去されていくのかどうか、そういうように理解していいのか、具体的にお聞きをしたいと思います。
  248. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 今委員が申された三年四月二十五日の参議院内閣委員会の法制局部長の答弁は、あの説明は、恐らく昭和六十二年の九月二十九日付の政府答弁書の内容を敷衍したものであると考えられますけれども、この答弁書においては、「一般に機雷の除去が武力の行使に当たるか否かは、それがいかなる具体的な状況の下で、またいかなる態様で行われるか等により判断されるものであり、一概に言うことは困難である。」また、「自衛隊法第九十九条に基づく海上自衛隊の機雷等の除去の権限は、公海にも及び得るが、具体的にどの範囲にまで及ぶかについては、その時々の状況等を勘案して判断されるべきであり、一概には言えない。」というようなことが述べられております。  機雷の判別につきましては、ただいまも申したところでありますが、当該機雷の敷設海域とか戦闘全般の状況とか、あるいは周囲の国際状況といった各種の要素が総合的に勘案されるわけでありますが、その場合の判断要素は、まさにそのときそのときの状況等により異なるものであります。したがって、今後ともペルシャ湾への掃海艇の派遣に際して示されたような基準を示し得るかどうかを一概に申し上げることは困難である、こういうふうに考えております。
  249. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 冒頭、防衛庁長官が答弁で言われたのは、昭和六十二年の九月二十九日、当時の黒柳明参議院議員の質問主意書に対する政府の答弁。そのときにはまだ抽象的だったのが、この平成三年四月二十五日では、ペルシャ湾のケースとして具体的に表明されたんですね。私は、こういうことは非常に大事なんではないのかな、そういう認識質問を申し上げたんですが、そこで、この平成三年から今日まで、我が国領海及び公海上で海上自衛隊が行った機雷の除去というのは何件あって、大体どういうケースだったのか、御説明をいただきたいと思います。
  250. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 平成三年度から十年度末までについて申し上げますと、海上自衛隊が領海、公海で行った機雷除去の個数は三十六個であります。  どのようなケースで除去しているかについて申し上げますと、港湾工事や漁労中などに発見された機雷について、地方公共団体の要請を受けて、海上自衛隊の水中処分隊が、その都度、機雷の処理や除去を行った次第です。
  251. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 今まで、平成十年に至るまでは地方公共団体の要請によるものであった、そういうことでございます。  それで、次にお尋ねをしたいのは、きのうもそういう議論がありましたけれども、今回、周辺事態において、周辺事態のこの議論の前に、もう既に一九九四年の北朝鮮の核疑惑の際にもいろいろ言われたんですけれども、やはりガイドラインで米側が最も期待している協力一つがこの機雷掃海ではないのか、そういうことが言われておるわけですね。それは、米軍が配備している掃海艇というのはこの地域において二隻であるにもかかわらず、日本自衛隊というのは三十二隻保有している、そういうことからしても非常に要望が出てくる可能性が高い。  そこで、端的に、言葉を間違いなくお聞きしますので、お答えいただきたいんですが、日本の船舶の航行の安全の確保とは関係なく、米軍が、アメリカの船舶の航行の安全確保のために、武力攻撃の一環として敷設されているものではないと認められる機雷の除去を我が国に要請してきた場合、例えば、具体的に、敵前上陸を行う米軍の掃海作戦であるとか、アメリカ空母部隊の防衛のための日米共同の掃海作戦のために機雷の除去について日本協力するのかどうか、伺いたい。  この対象は、武力攻撃の一環として敷設されているものではないと認められる機雷の除去なんですが、米国の船舶の航行の安全確保のために行えるのかどうかということをお聞きしたいと思います。
  252. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 周辺事態におきます自衛隊法九十九条に基づく機雷の除去は、我が国船舶の航行の安全確保を目的として、武力攻撃の一環として敷設されているものではないと認められ、また海上における危険な妨害物となっていると考えられる機雷を除去するものであります。また、要請を前提として行う活動ではないことから、このような目的を離れて米軍からの要請に基づいて機雷の除去を実施するということは考えていないところであります。
  253. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 日本防衛庁基本的解釈というか、そういう見解から離れたものが米軍から要請が来たとしても行わない、そういう答弁だというように承りました。  それで、その上で確認をしておきたいんですが、この自衛隊法の九十九条の機雷の除去の規定でございますが、その事態は、平時、有事有事というのは戦闘行為が行われているという意味での有事を想定したいんですが、それか、今回の、前、この委員会でもありましたが、平時を青として有事を赤とすれば、黄色という表現で例示されたこの周辺事態、こういう三つ、平時、有事周辺事態という事態をこの九十九条というのは特定しているのか、それとも特定していないのか、そのことを確認の意味でお聞きしたいと思います。
  254. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 自衛隊法第九十九条に基づく機雷の除去は、我が国船舶の航行の安全確保を目的として、武力攻撃の一環として敷設されているものではないと認められ、海上における危険な妨害物となっていると考えられる機雷を除去するものであります。  自衛隊法九十九条に基づく機雷の除去は、このような要件を満たす限りにおいて、平時、有事周辺事態の区別なしに実施可能と考えているところであります。
  255. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 それに関連して、法制局長官、予定より遅くなりまして、ちょっと一問だけお聞きをしたいのですが、これは先ほど来引用しています平成三年四月二十五日の参議院内閣委員会で、当時大森法制局第一部長がこの問題に関して答弁された中で、「遺棄された機雷になったかどうかということの判断の一つのメルクマールとして戦時か平時かということが大きな要素になるということでございます。」という、全体はその前に長く答弁されているのですが、その一番要点の部分としてそういう答弁をされているのですが、これは具体的にどういうことを意味されようとしたのか、御説明をいただきたいと思います。
  256. 大森政輔

    大森(政)政府委員 ただいま委員が御指摘になりました答弁におきましては、確かにそのような言葉で御答弁申し上げておることはそのとおりでございます。  この答弁の趣旨でございますが、これは、いわゆる湾岸戦争の終了後に、我が国がペルシャ湾において機雷の除去をしようとするに際しまして、当該機雷が遺棄された機雷であるかどうか、当時は遺棄された機雷かどうかという用語で議論していたわけでございますが、これはあくまで武力行使の一環として敷設されたものではないものの代表的な例示という趣旨で御理解いただきたいと思いますが、安保理決議六百八十七号により恒久的停戦が既に成立していたということが判断の大きな要素であったことにつきまして、判断の一つのメルクマールとして戦時か平時かということが大きな要素になると御説明いたしたものでございます。  したがいまして、一般論として、平時でなければ憲法上いかなる機雷も除去することができないという趣旨のことを述べたものではございません。そのような意味でございます。
  257. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 それはどうなのかな。  それともう一つ、このときに今度は防衛庁で答弁されている部分がありまして、同じような答弁をされているのですね。これは当時の畠山防衛局長です。そのときに、「遺棄されたと認められる機雷ということでございまして武力の行使には当たらない、こういう形になっているわけでございますから、いわばその意味におきましては我が国はもちろんのこと、相手国におきます掃海をする対象地域においても戦争に巻き込まれるおそれがないという意味において平時というふうな理解をすることもできるかと思います。」というように、やはり機雷の除去というのは平時なんだというのがこの当時の答弁ではなかったのかな、そういうように、まともにこの答弁だけを見ると理解をするわけですが、確認の意味で御答弁いただきたいと思います。
  258. 柳澤協二

    ○柳澤政府委員 ペルシャ湾派遣時のいろいろな御議論は承知しております。これは、先ほど法制局長官も申し上げましたように、武力攻撃の一環でない機雷の代表例として遺棄された機雷であるということ、当時はそういう判断をしたわけでございます。  一方で、自衛隊法九十九条につきましては、要は、海上における危険な妨害物となっている、もとより武力攻撃の一環でないケースでありますが、そういうものを除去できるという規定でありまして、その要件を満たす限りにおいて、平時、有事にかかわりなくこの業務は実施可能であると思っておりますが、ただ、もう一つの問題といいましょうか、もう一つ先ほど来御議論になっております、ではそれが武力攻撃の一環である機雷かどうかという判断の要素として、その区域がまさに戦闘区域であるかどうかといったことは、やはり大きな要素の一つになってこざるを得ないのかなというふうには考えております。
  259. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 そうすると、極論ですけれども、仮定のケースとしてちょっとお聞きをしたいのですが、周辺事態において米軍が戦闘行動に入っている事態で、その地域で、しかしながら、遺棄されたと見られる機雷の除去については、日本の船舶の航行の安全確保のために除去するということは可能なのかどうなのか、確認をしておきたいと思います。
  260. 柳澤協二

    ○柳澤政府委員 九十九条はまさに我が国船舶の航行の安全の目的のために行う業務でありますから、今先生言われたような、米軍にせよ何にせよ、まさに戦闘が行われているような区域で、仮に論理的にそういうケースが成り立つにいたしましても、我が国の民間船舶がそういう戦闘区域を当面航行するということは考えられないわけでございますから、その意味で、そういう状況のもとで九十九条の業務を実施するということはやはり考えられないのではないかなと思います。
  261. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 論理的にという話がありましたが、要するに、日本の船舶の航行の安全の確保を理由にしてそういうことは絶対に行わないという、逆に言ったらそういう答弁だというように受けとめておきます。  それで、今のに関連するのですが、そういう遺棄された機雷の除去のできる地域、海域でございますが、ここで今回言われているような後方地域に限っていないのかどうなのか、戦闘行動が行われている海域であっても公海上まで進出して行うことがあり得るということかということが一点と、もう一つは、一緒に聞いておきたいのですが、他国の領海内においても他国の同意が得られれば除去を行うということは可能なのかどうなのか。そのときには、何かほかの要素が必要なのかどうなのか。そのあたりについて確認をしておきたいと思います。
  262. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 九十九条に基づく機雷の除去につきましては、武力攻撃の一環として敷設されているのではない機雷を我が国船舶の航行の安全のために実施するものでありまして、後方地域においてのみ行うとの制約があるわけではないと考えております。  他方、後方地域とは認められない地域においては我が国船舶が航行する可能性は低いと考えられることから、同条による機雷除去をあえてそのような地域で実施する必要性は薄いと考えております。  また、他国の領海内の機雷につきましては、沿岸国の同意があれば公海上における機雷の除去と法的には同じ評価を受けると考えておりますが、当該国の同意を得てこれを除去し得る場合があり得るけれども、同意を得る以外にも、当該機雷が武力攻撃の一環として敷設されているものではないと認められること、そして、当該機雷の除去が我が国の船舶の航行の安全確保のために行われるものであるということが必要であると思います。
  263. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 機雷に関しての質問を終わりましたので、法制局長官、どうぞ退室していただいて結構でございます。  あと、今修正協議がいろいろされている報道があるわけですけれども、最終的に修正協議も法律的にきちっとしたものに整えなければいけない。多分協議の担当者の皆さんは検討されているかと思うのですけれども、そこで、具体的に、国会承認になるのかどうかということも確かではないのですが、ただしかし、国会承認を入れている今の自衛隊法の先人の知恵というものはおかりし、また確認をしておかなければいけないだろう、そういうように思うわけですね。  そういう観点から何点かお聞きしたいんですけれども、特に国会承認についていろいろなことが言われていますが、原則事前、緊急事後、そういうように修正した場合に、実際の運用で緊急と解釈すれば事実上ほとんどの活動が事後の承認ということで対応できる、そういうことになるのではないかという懸念がいろいろ言われているわけですね。  そこで、具体的にそういうことが定められている防衛出動の規定と治安出動の規定について確認をしていきたいんです。  まず、防衛出動、自衛隊法七十六条ですけれども、ただし書きで、「ただし、特に緊急の必要がある場合には、国会承認を得ないで出動を命ずることができる。」そうなっているんですが、この条文における特に緊急の必要がある場合というのはどういう場合なのか、どういう場合を想定しているのか、御説明いただきたいと思います。
  264. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 特に緊急の必要がある場合とは、我が国に対する武力攻撃が既になされ、あるいは目前に迫っているなど、直ちに自衛隊に防衛出動を命じなければ、我が国を防衛する上で重大な支障が生ずることが客観的に明白な場合であります。かつ、このために国会承認を得るいとまがない場合と解されております。
  265. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 続いて、その二項で、「国会承認を得ないで出動を命じた場合には、内閣総理大臣は、直ちに、これにつき国会承認を求めなければならない。」そういうように規定をされているわけでございますが、この直ちにとはどれぐらいの時間、月日、そういうものの範囲を想定されているのか、確認しておきたいと思います。
  266. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 一般に法令用語としての直ちにとは、遅滞なく等と同様、時間的遅延を許さない趣旨の用語でありますけれども、遅滞なくという場合においては、正当なまたは合理的な理由による遅延は許容されるものと解されているのに対し、直ちにという場合においては、一切の遅延が許されないものと解されております。  したがって、防衛出動下令後、時間的遅滞なく国会承認を求めるための手続を開始するものと考えられますが、具体的な月日とか期間を申し上げることは困難であります。
  267. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 一切の遅延が許されないものという意味での直ちにという表現である、そういう答弁でございました。  そこで、もう一つ比較したいのが命令による治安出動、七十八条ですが、同じように二項で、「内閣総理大臣は、前項の規定による出動を命じた場合には、出動を命じた日から二十日以内に国会に付議して、その承認を求めなければならない。」となっているんですね。ところが、ここの国会の中身が、具体的に後を読んでおりますと、七十六条と微妙なところで違うわけです。七十六条の国会承認というのは、「衆議院が解散されているときは、日本国憲法第五十四条に規定する緊急集会による参議院の承認。」である。七十八条の治安出動の国会承認というのは、「国会が閉会中の場合又は衆議院が解散されている場合には、その後最初に召集される国会において、すみやかに、その承認を求めなければならない。」そうなっているわけですね。  もう一度、その憲法五十四条の緊急集会はどうなっているのかというと、五十四条の二項で、「衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。但し、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。」三項として、「前項但書の緊急集会において採られた措置は、臨時のものであつて、次の国会開会の後十日以内に、衆議院の同意がない場合には、その効力を失ふ。」そういう憲法五十四条に基づく緊急集会による参議院の承認というのが七十六条の防衛出動に対して、七十八条の国会承認というのは、先ほど申し上げましたように、「その後最初に召集される国会において、すみやかに、その承認を求めなければならない。」という微妙な違いがあるわけです。この違いはなぜつくられたのか、お答えいただきたいと思います。
  268. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 この七十六条は、内閣総理大臣が防衛出動を命ずるに当たり、原則として事前に国会承認を得ることを要件としているわけでありますが、衆議院が解散されているときは参議院の緊急集会、今委員が引かれたように憲法第五十四条でありますが、それによる参議院の承認を得ることとしております。  一方、自衛隊法の七十八条は、内閣総理大臣が治安出動を命じた場合には国会の事後承認を得なければならないことを規定しているわけでありますが、参議院の緊急集会による参議院の承認については規定されていないところは、委員が御指摘のとおりであります。  このような相違が設けられたのは、防衛出動と治安出動では、武力の行使の有無、緊急性や国民の権利義務の制約の程度において差があること等にかんがみ、治安出動については、衆議院が解散されているときに参議院の緊急集会を召集し、その承認を得ることを要件とするまでの必要はないとされたことによるものと理解しております。
  269. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 これは今度修正協議の方でどうするかという問題が、一つこの辺を参考にして議論をしていかなければいけないな、そういうふうに思うわけでございまして、形だけをたどれば、例えば、原則として事前に国会承認にするということであれば七十六条のパターンになりますし、また、そういう事後承認ということであれば治安出動だけれども、中身が実力行使を伴うかどうかというそこの辺の判断をどうするかという問題もあるので、微妙なところもありますので、ここではそれ以上は言いません。  もう一つは、七十八条の命令による治安出動は、防衛出動のような事後承認の場合の直ちにではなくて、二十日以内とされたのは何ゆえなのか、そのことを政府の方に確認しておきたいと思います。
  270. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 警察法におきましては、緊急事態の布告に関して、「緊急事態の布告を発した場合には、これを発した日から二十日以内に国会に付議して、その承認を求めなければならない。」こういうふうに警察法第七十四条で規定されております。  治安出動におきましても、その場合に準じた考え方をしまして、「出動を命じた日から二十日以内に国会に付議して、その承認を求めなければならない。」こととしたことと考えられます。
  271. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 それで、今回の法案のことで、政府原案について一応確認しておきます。残るかどうかはわかりませんが。  ここで、第十条の国会への報告のことで、今までの議論を踏まえて。「遅滞なく、国会に報告しなければならない。」遅滞なくというのは先ほど防衛庁長官の御説明がございました。あとは、国会がこの場合、閉会中、要するに衆議院が解散されている場合どうされるのか、そのことだけ、どういうように解釈されておられるのか、政府の見解を一応聞いておきたいと思います。
  272. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 遅滞なくという説明は省略させていただきまして、国会が閉会中やあるいは衆議院が解散している場合についても、報告を文書にいたしまして、速やかに衆参両院議長にお届けするなどにより、迅速に対応させていただきたいと考えておるところであります。
  273. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 要するに、治安出動のように次の国会が召集されるとかということでない、そういうことであるということは原案の内容として理解をいたしました。  国会の関与の関係はこれで終わりまして、続いて、在外邦人の救出について一点だけ確認をさせていただきたいのですが、これは朝方来もあったのですけれども、新ガイドラインの中で非戦闘員退避活動について述べられている部分としては、 日本国民又は米国国民である非戦闘員を第三国から安全な地域に退避させる必要が生じる場合には、日米両国政府は、自国の国民の退避及び現地当局との関係について各々責任を有する。日米両国政府は、各々が適切であると判断する場合には、各々の有する能力相互補完的に使用しつつ、輸送手段の確保、輸送及び施設使用に係るものを含め、これらの非戦闘員の退避に関して、計画に際して調整し、また、実施に際して協力する。 と内容はなっているんです。  これは新ガイドラインができ上がる前の九七年六月の段階の中間取りまとめでは、この最後の部分が「所要及び能力に関する情報を交換する。」、そういう表現になっていたんですが、それからガイドラインができ上がったときには、今読み上げましたように「計画に際して調整し、また、実施に際して協力する。」、そういうふうに変わっている部分なんですね。ところが、四月十五日の質疑一つ明らかになったのは、私の質問に対しまして外務省の方から、在留邦人の救出、ここの非戦闘員を退避させるための活動には改正ACSAは適用しない、すなわち物品及び役務相互提供というような協力は行わないんだということを四月の十五日に一つ答弁をされました。  それでは、実施に際して協力するというのはどのような協力をするのかということを具体的に御説明いただきたいと思います。     〔中山(利)委員長代理退席、委員長着席〕
  274. 内藤昌平

    ○内藤説明員 いろいろな場面があると思います。ですから、包括的に、網羅的に御説明することは困難でございますけれども、それぞれがお互いにできることをもって協力し合う。その目的は、それぞれの国の国民の安全を図るためである。場合によっては退避という行動もあるでしょう。その場合には、安全を図りつつ危険な地域から安全な地域への輸送。あらゆる局面でそれぞれお互いが相互に補完的に協力し合うということでございます。
  275. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 今のは極めて抽象的だったんですが、ちょっと仮定の話で、ある国を出して誤解されるかもわかりませんが、例えば新ガイドライン、一年半前に発表されているわけでございますが、この新ガイドライン決定以降、韓国における例えば在留邦人の救出についてアメリカと具体的に詰められたことがあるのかどうなのか、そのあたりについて確認をさせていただきたいと思います。
  276. 高村正彦

    高村国務大臣 一般論として申し上げれば、我が国は、米国等友好国と、緊急事態における自国民保護と退避について必要に応じて話し合ってきております。だから、韓国にいる邦人のことについても必要に応じて話し合ってきている、こういうことでございます。  従来から、外国における緊急事態の際に、在外邦人の退避について米国協力はそれなりに得られてきている、こういうことでございます。
  277. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 そこで、先日各紙とも、またテレビにも映っておったんですが、朝鮮半島ばかり出して申しわけないのですけれども、三月二十六日だったと思うんですが、在韓米軍が福岡空港で、こういう非戦闘員退避活動の訓練を実施して危機対策を整えている、そういう報道になっておったわけです。そういう在韓米軍の家族であるとか非戦闘員、そういうものの訓練が目立つ中で、果たして、例えば今韓国の例を出すと、韓国におられる在留邦人というものに対してどれだけの訓練がなされているのかということをちょっと確認しておきたいんです。  聞くところによると、今まで電話連絡網でテストが行われた程度で、そういう非戦闘員退避活動の訓練というのは一度も実施されていない、そういうように聞いているんですが、訓練の実績があるのかどうかということ。それと、別に韓国に限らず、これだけいろいろ地域紛争がふえてきますと、それぞれの国の実情に応じてですけれども、それに合った退避活動のための訓練というものは、やはり政府が何らかの形で主導してやっていくべきではないのか、そういうように私は思うんですが、そのあたりについて政府の見解を伺いたいと思います。
  278. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 非戦闘員の退避活動でございますけれども、これはいろいろな段階があろうかと思います。非戦闘員が居住しているところから安全なところにまずは退避をして、そこに集結をして、それからまた適当な、使用できるような空港だとか港湾だとか、そういうところから、またより安全なところ、日本に退避するような、そういったいろいろな段階があろうかと思います。基本的に、非戦闘員がおられるそういう地域での集結の問題とか退避の問題とか、これは現地の大使館がいろいろ心を砕いて研究しておられると思います。  我々といたしましては、自衛隊法の百条の八という任務を持っておりますので、そういう中でいろいろな研究検討をしている、こういうことでございます。
  279. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 在留邦人のことは本当はもっと聞きたいんですが、時間が来ましたので、最後に、ずっと積み残しになっている一点だけ、確認でお聞きをしておきたいんですが、それは朝鮮国連軍のことなんですね。  三月の二十六日に最後質問いたしまして、次に質問しようと思っておりましたら、民主党の玄葉委員が、私にかわって、一番肝心のおいしいところを質問されまして、なかなか残っていないんですが、そのときにお聞きしたのでもちょっとあやふやな点がある。  何で朝鮮国連軍が大事かといいますと、もう釈迦に説法でございますが、在韓米軍の司令官というのは三つのキャップを持っているというように言われています。在韓米軍司令官とともに米韓連合軍の総司令官、朝鮮国連軍の総司令官という三つのキャップを持っているんですが、今回の政府答弁でも明らかになったように、日米安保条約目的達成に寄与する活動を行っている米軍に対する協力として後方地域支援を行うことは可能であるというように、ずっと一貫して言われている。朝鮮半島で周辺事態と認定されるような事態が起こったときに、忘れかけていたような朝鮮国連軍として行動することが米軍として十分あり得る。米軍といえども、いろいろあるかと思いますが、やはり国連の旗のもとで動くということをまず第一に優先するだろう。  そのときに、やはり一応確認しておかなければならないのは、日本政府の朝鮮国連軍の行動に対しての見解というものを、やはりきちっと確認しておかなければいけないだろう。本当は昔の国会答弁を一つ一つ読もうと思ったのですが、もう時間もないのでお聞きしたいのは、今から約三十年前の国会での質疑と政府答弁、これは具体的に言うと、昭和四十四年二月二十七日の内閣委員会での鈴切委員質問に対する愛知外務大臣、重光国連局長、当時ですが。また、そのもととなる昭和四十三年四月十六日の外務委員会での伊藤委員質問に対する三木外務大臣の答弁。さらには、昭和四十五年四月二十七日の内閣委員会での加藤委員質疑に対する井川条約局長、愛知外務大臣の答弁がそれぞれ明確に残っているんです。  それを読みますと、私自身として解釈するには、今は、休戦協定が成立して有効に機能している間は、朝鮮国連軍が武力行使を含む何らかの活動をとるという場合は新たな決議が必要になる、しかし、休戦協定が無視されたり違反されたりするような侵略行為が行われた場合、国連は新しい事態に何らかの決定、決議、勧告を行うものと考えているけれども、それまでの間は朝鮮国連軍が侵略に対する反撃というものができるんだというのがこの三つの答弁を読んだ私の理解なんです。朝鮮戦争の際に採択された三つの安保理決議と休戦協定の関係、それとそれに伴う三つの決議の有効性、また休戦協定違反に対する反撃と武力行使を行うに当たっての新たな安保理決議の必要性の関係について、この三十年ほど前の国会答弁と整合性を持たせた形で、政府の統一した見解というものを最後に示していただきたいなと思うんですが、よろしくお願いします。
  280. 高村正彦

    高村国務大臣 仮に朝鮮半島において何らかの事態が発生した場合には、当然国連において、発生した事態状況を踏まえて議論が行われるもの、こう思っております。  いずれにいたしましても、その際国連がいかなる対応をとり得るかについては、問題となる事態と関連の決議、休戦協定との関係等を慎重に判断する必要があり、一概に述べることはできません。  したがって、現段階で仮定に基づいていろいろお答えすることはできないわけでありますが、純粋に理論上の問題としては、国連安保理決議八十二、八十三及び八十四は現在も有効でありますので、かかる決議に基づいて行動することが正当化されるような場合が完全に排除されるものではない、こういうふうに思っております。  安保理決議の効力について、これは四十年も前にされたものでありますから、いろいろ疑問もあるとは思われますけれども、第一義的には安保理自体が解釈すべき問題でありますが、一般論として申し上げれば、休戦協定締結されたものの、その後、安保理決議八十二、八十三及び八十四を修正するような新たな安保理決議は採択されていないわけであります。また、南北間の緊張という点で朝鮮半島を取り巻く状況には根本的な変化はなく、これら安保理決議に基づき創設された朝鮮国連軍は、現在も一方の当事者として朝鮮半島に駐留しているわけでございます。  こういったことにかんがみても、この三つの決議の法的効力がもはや有効でないと解される理由はない。ですから、これが生かされるということは理論的には排除できない、こういうことでございます。
  281. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 時間が参りましたので、終わります。ありがとうございました。
  282. 山崎拓

    山崎委員長 これにて佐藤君の質疑は終了いたしました。  次に、東祥三君。
  283. 東祥三

    ○東(祥)委員 昨日に引き続きまして、若干未消化の部分がありますので、本日も登壇させていただきまして、外務大臣並びに防衛庁長官の胸をかりたい、このように思います。  外務大臣とは日ごろいろいろ話しているせいか、言いたいことは十分わかるつもりなんですけれども、やはり外務大臣は老練な政治家でありますので、当然多くの方々が耳を傾けている。そういう意味で、私みたいな若造が白黒はっきりさせようとすると、どうしてもそれに対して、二人の場合ですとばちっと言ってくれるんですが、公の場だとなかなかすっきりした形で出てこない。そのお立場もよくわかります。  きのうの議論を早速続けたいと思うんですが、それをやるとまたあっという間に四十分間が過ぎてしまいますので、きのうの続きは後の方に回させていただきたいと思います。  本日は、具体的な問題として、ここの委員会においてもいろいろな方々が議論されておりますけれども、船舶検査問題についてまず議論を始めたい、このように思います。  そもそも、私たち自由党は、一年前にこの法案を、まだ審議される前でございますが、見たときに、本当に驚きを持って見させていただきました。この周辺事態確保法案というのは、その中心的な考え方は、きのうも申し上げているとおり、あくまでも日米安保体制日米安保条約信頼性向上を図っていく目的を有しているにもかかわらず、なぜ法体系、論理が異なる国連が出てくるのかということにまず驚かされたわけでございます。  国連の平和活動に関する我が国の関与のあり方については、今後新たなる法体系をつくっていかなければならない。例えば国連の平和活動にロジスティックスの問題、あるいはまた通信、輸送、医療、そういったものもちゃんと入れながら、そこに船舶検査活動というのを入れれば一つの法体系になるんではないのか。それが、この周辺事態確保法案の中にぽこっと出てきている。極めて奇異な感じを持ったわけでございます。  そもそも、法体系が異なるという視点でもって、一番初め、私たちはこの問題の所在を言わせていただいたわけでございます。そして、その上で、この法案それ自体の中に国連決議が入っているわけですから、ここでの、委員会での議論を聞いていたとしても、やはり国連決議の言及は除くのが順当なんだろう、削除するのが順当なんだろう、そういう確信をいよいよ強めている次第でございます。  そこで、今申し上げましたとおり、船舶検査活動に関しては国連決議の言及を除くべしというのが私たち自由党の主張でございます。この本日の論戦でその意味するところを明らかにしたい、このように思う次第でございます。  三点ございます。まず第一に、国連決議への言及を除いたとしても、いろいろ議論されているとおり、旗国主義との関係から、無差別な他国船舶への船舶検査は、いずれにせよ国連決議なくしてなし得ないと思っています。このことを確認させていただきたいと思います。
  284. 高村正彦

    高村国務大臣 昨日に引き続いて、東議員と非常に友好的な質疑ができることを大変うれしく思っているわけでございます。  委員指摘のように、あくまで周辺事態安全確保法案というのは、国内でこういうことができますよという権限を与える法案であります。国内授権法でありますから、国内で権限が与えられても国際法に抵触するようなことはできないことは当然でありますから、仮に条文の中に国連決議云々という言葉がなくとも、それは旗国主義という点をクリアする何らかのことがなければ一般国際法上できないということは、それは当然のことでございます。
  285. 東祥三

    ○東(祥)委員 国連決議の言及がなくても、旗国主義との関係で、無差別な他国船舶への船舶検査は、いずれにせよ国連決議がなくてはなし得ないということを確認していただきました。  第二番目に、問題は何かというと、国連決議に基づくか基づかないかということをいろいろ議論されているわけでございますが、私が提示させていただいている、また、さきのこの場でいろいろ申し上げさせていただいているのは、国連決議が出るのか、出ない場合があるでしょう、その可能性が極めて高いのでありませんかということを何度も何度も主張させていただいているわけでございます。  我が国の周りを見渡したとしても、いわゆる国連安保理のP5の国が二つございます。そのうちの一つでもビートーを発動すれば、国連決議は出ないわけでございます。その場合、そのP5の一つの国が拒否権を行使すれば、我が国は、周辺事態安全確保法により、つまり米国とのこの防衛協力、その中核の考え方が実行されない状況に陥ってしまうんではないのか。この委員会で、このガイドライン以来の営々としてずっと議論してきております日米安保協力の是非を、一つのP5の拒否権行使によって水泡に帰していってしまうんではないのか。  また、別の言い方をすれば、まさに国連決議が出ないという可能性が極めて高いわけですから、そもそもこの周辺事態確保法案にこの案文が載っていること自体が死文化されていることを意味しているんではないのかと私は思うわけでございます。  別の言葉で言えば、周辺事態における自衛隊船舶検査出動の可否にもう既に拒否権が与えられる可能性が極めて強いのではないのか、そんなことが許されてよろしいのでしょうか、こういうことを申し上げているわけでございます。これが第二点です。  外務大臣、いかがお考えですか。
  286. 高村正彦

    高村国務大臣 仮にどこかの国が拒否権を行使して安保理決議ができなければ、この周辺事態安全確保法案に基づく船舶検査はできなくなる、このことは委員がおっしゃるとおりでございます。今後、そういう可能性がどのくらい強いのかということと、それから、それ自体のことで、どれくらいやるメリットがあるのかというのは一つの政治判断の問題かな、こう思っています。
  287. 東祥三

    ○東(祥)委員 国連決議に基づかない船舶検査はその実効性において疑義があるということは、すべての人が承知しているわけでございます。そういった国連決議のない状況下での船舶検査は、そうであったとしても、少なくとも我が国船舶に対して行い、あるいはまた共同して、自主的に経済制裁した国との合意に基づいて、当該国の船舶に対して行うことも可能である、このように考えるわけでございます。あくまでも、これは国連決議に基づいて経済制裁をグローバルな形で、旗国主義に基づいて無差別に行う、そういうことと比べるならば、はるかに限定されたものであるとだれもが知っているわけです。  しかし、この場合、制裁破りをする自国船舶や、国際的な約束に基づいて相互に船舶を報告することができるという大きなメリットがあるはずだと思います。そういう意味において、やれないよりちゃんとやれるようにしておいた方が、その実効性においては疑義がありますが、はるかに大きなメリットがあるのではないのか、このように私は思っているわけでございます。  外務大臣、いかがでしょうか。
  288. 高村正彦

    高村国務大臣 国連の決議がなくとも、幾つかの国の申し合わせによって、そしてその国の間だけで、お互い旗国主義上の権利を放棄して、お互いが船舶検査をやるということが可能であるということは委員指摘のとおりでございます。そして、そのメリットがどのくらいかということは、これはやはりそれぞれの方の判断が相当食い違ってくるかもしれませんが、委員の見方も一つの見方であろうかとは思います。
  289. 東祥三

    ○東(祥)委員 船舶検査問題については以上で終わります。  さて、きのうの続きをしたいのですけれども、その前に、さらに近視眼的な視点から、きのうも冒頭申し上げました。究極、安全保障議論あるいはまた安全保障政策というのは、有事に及んで、国民が何を守るために何を犠牲にするかということをあらかじめ民主主義的手続によって合意しておくことと私は信念の問題として考えております。骨の太い議論をしなくてはいけない。そして、それによって国民のコンセンサスを得ることが私たち政治家の責務であろう、このように思います。  今回の周辺事態確保法案が、それ自体が有事をあらわしているのではない、それ自体が有事を意味していることではないということも全部わかった上で、あえてこのことを申し上げている次第でございます。その上で、政府が国民に対して何を守るために何を犠牲にすることを求められているのかということを、率直かつ具体的に聞いておかなければならない。また政府の方も、また担当者の方々も、その問題について率直に国民に赤裸々に情報提供しておく必要があるのだろう、このように私は思うわけでございます。  私はその意味で、日米同盟信頼性向上のために、我が国の安全のために不可欠というのであるならば、その代償として国民はどのような脅威を受けることになるのかということをきちんと説明しておかなければならないのだろう、このように思うわけでございます。そうでなければ、結局国民をだますことになります。それでは真の安全保障に対する国民的コンセンサスは絶対に生まれてこない、このように確信するからでございます。  そこで、近視眼的な視点でございますが、防衛庁長官にお伺いしたいと思います。  もう北朝鮮というものがここでも何度も何度も名前が出てきておりますので、北朝鮮にとってみれば大変不都合なことなのかわかりませんが、あえて国名を出させていただいて論じさせていただきますが、北朝鮮が朝鮮有事に際して不当にも我が国攻撃を拡大するとすれば、そのとき我が国が備えていなければならない軍事的脅威とは一体何なのか。私は、基本的にミサイルと特殊部隊後方攪乱工作だと思いますが、この点について、防衛庁長官、どのように思われていますでしょうか。
  290. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 我が国としても、この北朝鮮の軍事的脅威であるミサイル攻撃と特殊部隊の存在については、大変大きな問題としてその動向を注視していく必要があると考えております。  特に、昨年八月に北朝鮮によるミサイル発射事案が発生し、また本年三月には北朝鮮の工作船の侵入事案が発生したわけでありますが、このような事態は、我が国の平和と安全にかかわる非常に重大な問題であると考えております。  防衛庁としては、今委員から御指摘があった武装ゲリラ、特殊工作員の侵入事案など、自衛隊の出動等が必要とされる重要事態が発生する場合における防衛庁自衛隊の対応のあり方については真剣に検討を行ってきているところであり、今後、かかる検討をさらに深めまして、防衛庁自衛隊の対応に万全を期したい、こういうふうに考えております。
  291. 東祥三

    ○東(祥)委員 防衛庁長官、言いづらいかもわかりませんけれども、北朝鮮による我が国に対する軍事的脅威、どのように思われておりますか。具体的に言えば、今申し上げましたとおり、ミサイルと特殊部隊による後方攪乱工作ではないのか、このように漠然と私は思っているのですが、この点についていかがですか。
  292. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 二つの点についてお尋ねでございますから、まず北朝鮮のミサイル攻撃能力につきまして、私どもの認識は、既に一九八〇年代半ば以降、スカッドBやスカッドCを生産、配備をするとともに、引き続き、ノドンやテポドン一号、二号などの開発を行っており、ミサイルの長射程化を着実に進めているところであります。  特に、北朝鮮は、既に三十基の発射機から成るスカッドミサイル部隊を配備しているものと見られておりますし、スカッドCの射程は五ないし六百キロと比較的短いと考えられますが、我が国西部の一部が場合によっては射程に入る可能性があります。  ノドンミサイルについては、種々の情報を総合しますと、既にその開発を完了して配備を行っている可能性が非常に高いものと判断するに至っております。この点につきましては、先般、韓国に参りました際に、韓国の千容宅国防部長官とも同じ認識を持ちましたし、また、先般、コーエン米国長官と会談した際も同じ認識をしたわけであります。このミサイルは、千三百キロに達すると見られ、我が国のほぼ全域がその射程距離に入る可能性があります。  さらに、テポドンミサイルについては、まだ開発が進められているところでありますが、射程は千五百キロ以上、さらにテポドン二号につきましては、三千五百キロから六千キロと言われる長射程のテポドンも開発中であると見られております。したがって、ミサイルによる危機というのは大変高いものと思います。  また、委員が挙げられた特殊工作員も、十万人程度に及ぶという情報もありまして、この点についても注目していかなければいけない、こう思っているところであります。
  293. 東祥三

    ○東(祥)委員 さらに防衛庁長官、具体的にお聞きさせていただきますが、攻撃されるのは純粋な軍事目標と思われますか。それとも、敦賀の原発やあるいはまた工業地帯のコンビナートのような経済中枢だと思われますか。それとも、東京・霞が関及び六本木の政治的中枢だと思われますか。いかがですか。
  294. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 北朝鮮のミサイル攻撃目標を含め、同国におけるミサイル運用構想につきましては、同国がミサイルの開発配備状況自体を公表しないなど極めて閉鎖的な体制をとっていることもあり、確たることを申し上げることは困難でありますが、あくまで一般論として申し上げますと、長距離の弾道ミサイル攻撃目標としては、その運用構想によって、御指摘のような軍事目標、経済中枢あるいは政治中枢のいずれについても攻撃の目標になり得るものと考えております。
  295. 東祥三

    ○東(祥)委員 以上伺った上で、防衛庁長官我が国は現在、北朝鮮のミサイル攻撃に対して何らの有効な防御手段を持たないことを国民の前に率直にお認めいただきたいと思います。また、唯一我が国に残された作戦である敵ミサイル基地攻撃も、山岳の多い朝鮮半島に隠された移動式のノドンミサイルの場合にはほとんど効果が期待できないと言われておりますが、そのことも率直に認めるべきと考えますが、防衛庁長官、いかがでしょうか。
  296. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 弾道ミサイルによる攻撃でありますが、例えばノドンやテポドン一号のような長射程の弾道ミサイルについては、そもそもこれに効果的に対処するシステムを現時点で配備している国があるとは承知しておらず、自衛隊が保有している能力向上型のペトリオット等によってもこれを探知、迎撃することは困難であろうと考えます。  いずれにしましても、大量破壊兵器弾道ミサイルの拡散状況等をかんがみますと、弾道ミサイル防衛は我が国防衛政策上の重要課題であると考えております。昨年十二月二十五日の安全保障会議の了承を得て、政府としては、平成十一年度から弾道ミサイル防衛に係る日米共同技術研究に着手することを決定したところであり、引き続き必要な検討を行っているところであります。
  297. 東祥三

    ○東(祥)委員 防衛庁長官、ありがとうございます。さらに引き続いて防衛庁長官に、特殊部隊についてお伺いさせていただきたいと思います。  その規模、工作員の数等については、先ほど十万人程度、このような御報告がありましたが、能力はどの程度に見積もっておられますか。
  298. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 先ほども申しましたとおり、北朝鮮がゲリラ戦等を行う特殊部隊を多数保有していることは防衛庁も承知しているところであります。  その実態については、特殊部隊としての性格上極めて秘匿性が高いこともありまして、確たることを申し上げられませんが、その勢力は、先ほど申したとおり、約十万人余りに達するとの指摘もあり、世界でも有数の規模と機能を持っているものと考えられます。  平成十年度の防衛白書でもそういうことを指摘しておりますし、韓国の九八年版の国防白書にも、約十万人余りに達する特殊戦部隊は、有事に前・後方地域に同時に多発的に浸透して、兵たん線遮断や飛行場等の主要施設を打撃することで韓国の継戦能力を破壊し、南韓地域を同時に戦場化することを図っている、こういうふうな指摘も行っております。
  299. 東祥三

    ○東(祥)委員 防衛庁長官、私は、特殊工作員による在日米軍基地あるいはまた自衛隊基地、交通幹線、主要橋梁及びトンネルの破壊工作は無論のことでございますが、オウム真理教事件の際の国松警察庁長官狙撃事件のような要人テロの可能性も十分にあると思いますが、この点についてどのようにお考えでしょうか。
  300. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 先ほどから申し上げているところでありますが、北朝鮮特殊部隊のテロの対象についてのお尋ねでありますが、北朝鮮における部隊運用構想に係る問題であり、なかなか秘匿性が高くて、お答えすることは困難な状況であります。  あくまで一般論として申し上げますと、特殊部隊状況に応じて各種の破壊活動のテロ活動を行うことは想定されるところでありまして、その場合、委員が今御指摘なさったような軍事目標、交通幹線、主要橋梁及びトンネル、要人等がその対象になり得ることは否定できないものと考えております。
  301. 東祥三

    ○東(祥)委員 それでは、今のお話の中に尽くされているのかわかりませんけれども、我が国自衛隊は、こういった特殊工作員の後方攪乱や破壊工作に対してどのように対処するのでしょうか。具体的な中身が明らかでない限り対処方針も出てこないのかもわかりませんけれども、一般論として申し上げれば、本来、内乱時の暴徒鎮圧、これを想定して起草されました自衛隊法上の治安出動を発動するのでしょうか。正規の兵士よりもさらに屈強で武装した北朝鮮特殊兵を相手にして、警職法で縛られた治安出動の規定が本当に十分と考えておられるのでしょうか。いかがですか。
  302. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 我が国に対する武力攻撃に至らない事態においては、警察機関が第一義的に対処するわけでありますが、一般の警察力をもって対処できない場合は、自衛隊が治安出動により対処し、事態の鎮圧に当たることは考えられます。  それから、ある事態我が国に対する武力攻撃あるいはそのおそれのある場合に該当する場合には、防衛出動が下令されまして、自衛隊は、我が国を防衛するため、必要な武力を行使することとなるわけであります。  治安出動で対応できるかと言われると、治安出動をした自衛隊自衛官は、警察官職務執行法の準用により、警察官と同様の武器使用権限を付与されるほか、警護または鎮圧のための武器の使用が認められているわけであります。防衛庁としては、こうした枠組みのもと、適切に対応してまいる所存でありますが、いずれにしても、このような事態に際して、より適切な対応を期するため、自衛隊の対応のあり方について今後とも緊張感を持って対策を講じてまいりたいと思っております。
  303. 東祥三

    ○東(祥)委員 防衛庁長官、大変言いづらい言葉でございますが、どうもお話を聞いている限りにおいて、万全な防備体制にはまだなっていない、乱暴な言い方をすれば、我が国としては特殊工作兵の破壊工作にほとんどまだ無防備状況にあるんではないのか、そのことをまた率直に国民に言っておく必要があるんではないのか、このように思うんですが、防衛庁長官、いかがでしょうか。
  304. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 我が国が破壊工作にほとんど無防備だとは考えておらないところでありますが、いずれにしろ、国の安全と繁栄を維持し国民の生命財産を守ることは政府の最も重要な責務であり、御指摘のとおり、我が国危機管体制を一層堅固なものとし遺漏なきを期することは重要と認識しております。  こうした観点から、政府としては、橋本内閣以来、我が国における危機が発生した場合やそのおそれがある場合において我が国としてとるべき種々の対応について、必要な対応策をあらかじめ十分検討研究することを目的として緊急事態対応策の検討を目下重ねているところであります。  防衛庁としましても、このような事態に対してのより適切な対応を期するため、自衛隊の対応のあり方や関係各省庁との連携についてさらなる検討を行って、万全を期するつもりでございます。
  305. 東祥三

    ○東(祥)委員 そこで、昨日の議論の続きをさせていただきたいと思うんです。  今るる防衛庁長官から、北朝鮮の軍事的脅威、そしてまたその具体的に想定される内容についてお伺いさせていただきました。我が国は、このようにミサイル攻撃やあるいはまた特殊部隊による破壊工作の危険はあったとしても、朝鮮有事、この場合は間違いなく周辺事態として認定されると思いますが、我が国が、武力を行使しない限りで、可能な限りの力を振り絞って米軍を決められた範囲内において支援するのであるということを改めて明確に御答弁願いたいと思うんですが、外務大臣、いかがでしょうか。
  306. 高村正彦

    高村国務大臣 日米安保条約信頼性向上させることが必要である、そういう観点に立ってこの法案を御審議いただいているわけでありますから、周辺事態におきましては、憲法の範囲内、そしてこの法案を成立させていただければ、その法律の範囲内で日本政府としてできること、それはもちろん米国が国連憲章に従って、そして日米安保条約目的に寄与する、そういうために活動している米軍に対して日本政府としてできるだけの支援をしていく、これは当然のことだと思っております。
  307. 東祥三

    ○東(祥)委員 外務大臣、もう外務大臣にとってみれば釈迦に説法でございますが、多くの国民にとってみれば、一九五〇年代、五二年の旧安保条約、そして一九六〇年の新安保条約、そこに盛られていること、そこに規定されていることは、あくまでも日本米軍の活動に対して、極東の平和と安全のために、また日本の安全のために戦ってくれるアメリカ軍に対して基地を提供するという義務が規定されております。しかし、今回の周辺事態確保法案を通じて多くの国民の皆さん方が、なぜ公海上に出てまで米軍を支援するのか、ここが我々政治家が最も丁寧に国民の皆さん方に説明しなければならないポイントなんだろうというふうに思っているわけでございます。  そういう意味で、今までは、日本は本当に利己主義的な、また一国平和主義的なそういう状況の中で安全保障の論議を費やしてきたんではないのか、そのように私は印象論として持っているわけでございます。したがって、この法案議論しているときにおきましても、米軍への支援をすれば巻き込まれていってしまうんではないのか、あるいはまた武力行使一体化論という、国民には何を言っているかさっぱりわからない、そういう文言がこの委員会において、また別の委員会においても乱舞しているわけでございます。  私がきのう申し上げたかったこと、そしてきょう申し上げたいことは、武力紛争と一体化しない、それは別の言葉で言えば、日本は、日本が直接攻撃されない限り決して武力行使はしませんよ、刀はあるんだけれどもそのさやから刀を抜きませんよ、しかし不法な侵略国があらわれてきたときに、その侵略国に対し米軍が活動する以上、その事態日本の平和と安全を本当の意味で危ない状況に陥れるようなそういう状況になったとき、日本米軍に対して積極的に協力していく。それは、紛争に巻き込まれないようにするのは当たり前でございますが、米軍に基地を提供している、そしてまた、それから四十年たった今日、瞠目すべき便宜供与を与える状況になってきている。  巻き込まれないから、安全だから、危険でないから、そういった考え方、それに対して真っ向から説明していかなければいけないんじゃないのか。そうでなければ、この周辺事態確保法案で言われている意味が全く理解できないのではないのか。この一点だけ私は申し上げるために、きのうから激しい声で、また大先輩に対して胸をかりているわけでございますが、この点についていかがですか。
  308. 高村正彦

    高村国務大臣 過去五十年間近く国際情勢は大きく変化し、冷戦終結に伴い大規模戦争可能性は大幅に低下したわけであります。しかしながら、我が国を取り巻く国際情勢には依然として不安定、不確実な要因が存在をしているわけであります。  日米安保体制は、我が国及び極東に平和と繁栄をもたらすだけでなく、アジア太平洋地域における安定と発展のための基本的な枠組みとしても有効に機能しているところ、日米安保体制冷戦終結後の現在においてもその意義と重要性を有していると考えております。  我が国としては、このような日米安保体制のより効果的な運用を確保することが重要と考えており、新たな日米防衛協力のための指針の策定やその実効性確保のため、周辺事態安全確保法案を策定する等の措置をとっているところでございます。  このような我が国の取り組みは、過去五十年間の国際情勢変化をも踏まえて、我が国憲法の枠内において、日米安保体制のもと米国同盟国として当然の役割を果たし得るようにするためのものでございます。我が国としては、今後とも、日米安保条約を堅持し、その効果的な運用のために一層努力していく考えでございます。  巻き込まれ論でございますが、私はここでもう何度も答弁していることでございますが、一定の行為をすれば、日本米国に基地を提供していること自体、それは巻き込まれるという危険がゼロではないわけでございます。あるいは、後方地域支援といえども、私たちはできるだけ危険がないように配慮はしますけれども、それにもかかわらず、何にもしないよりもそういうことをしたことによって危険があることも、それは明らかなことであります。  ただ、そういう危険よりも、日米安保条約信頼性を高めるその抑止力の効果の方がはるかに大きいという政治的判断をしたということを、私はここでもう、十遍はまだ言っていないかもしれませんが、その近くの回数は言っていると思っております。そういうことです。
  309. 東祥三

    ○東(祥)委員 僕の言葉で申し上げれば、多分、今や我が国は、武力攻撃に至らない範囲で積極的に米軍を支援することが武力紛争の勃発そのものを防ぐことに役立つというふうに、大きく発想を転換しつつあるのではないのか。今おっしゃられたとおり、抑止の理論、抑止の本当の意味、そこに軸足を移そうとしているのではないのか、このように思っているわけでございます。  そこで、もう時間がなくなってしまったのですけれども、私どもはともすると、私が何かしゃべると、一生懸命軍隊を外に出していくというような、そういう誤解を与えることが多々あるのですけれども、全くそうではなくて、私たち自由党は、高村外務大臣防衛庁長官も御存じのとおり、ある意味でこれは我田引水になるかわかりませんが、唯一、安全保障に関しての基本原則というのをつくりました。国連の平和活動に対しての協力というのは、国際社会において冒険主義的な国があらわれる、国際社会が一致団結してその国を制裁しなければならない、そのときに日本も一緒に参加できるはずだと。それは現行の憲法解釈と違います。私たちの新たな判断を加えて、それをつくり上げております。  この問題はまた別に論じさせていただきますが、他方、自衛の問題、また日本及び近隣の問題、とりわけ自衛権の問題に対しては、極めて極小した形でもって、制限した形でもって考えております。いろいろな国々に回る、自衛のためには何をやってもいいだろう、そういう考え方は、私たちは極めて制限的な考え方を持っているわけです。自衛のために何をやってもいいだろう、こういうことになれば、軍拡論争が巻き起こってきます。  そういう意味においては自制をしているわけでございますが、その意味で、改めて周辺事態確保法案というものの本質的な定義を考えたときに、やはり私たちが、ベトナム戦争には我々は参加しない、その一つの歯どめをどうしてもつくっておく必要がある、そういうことであるならば、まさに、ある事態が周辺において起こった場合、その事態を放置しておけば、それがいずれ日本の平和と安全を脅かすことになる、そういう一項を明確に入れておく必要があるのではないのか。このようなことを、その意味で私たちは主張させていただいているわけでございます。それを入れることによって、なぜ私たちが米軍に対して、四十年たった今日、新たなる便宜供与の大幅な拡大をすることに賛成していくのかということを国民に明確に指し示すことができるのではないのか、このように思っている次第でございます。  きょうも時間切れになりましたが、また機会があれば、全力で高村外務大臣防衛庁長官議論をしていきたい、このように思います。ありがとうございました。
  310. 山崎拓

    山崎委員長 これにて東祥三君の質疑は終了いたしました。  次に、木島日出夫君。
  311. 木島日出夫

    ○木島委員 日本共産党の木島日出夫でございます。  私は、新ガイドライン関連三法案憲法九条適合性について、二つテーマ質問をしたいと思います。一つ後方地域支援論、二つは武器の使用論であります。  最初に、後方地域支援問題でありますが、政府のこれまでの説明は、次のようなものであります。周辺事態法によって日本が行うのは米軍への後方地域支援であり、現に戦闘が行われておらず、かつ活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる地域でなされるものであるから、米軍の戦闘行動とは一体化されず、したがって憲法九条一項で禁ずる国権の発動たる戦争武力による威嚇、武力の行使に当たらない、集団的自衛権の行使には当たらない、こういうものであります。  しかし、政府のこの説明が、軍事常識からも国際法上からも、また憲法解釈上からも全く通用しないごまかしの論理であるということが、私はこの国会審議の中でも明らかにされたのではないかと思います。それは、一昨日行われたここでの中央公聴会においても、与党推薦の公述人からも語られたのではないでしょうか。  自由党推薦の元自衛隊陸将松島悠佐公述人は、次のように述べました。  我が国周辺地域において、我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態が発生し、それを鎮静化するために米軍が作戦をし、我が国がそれを支援しているという構図の中で、果たして定義されたような地域が存在するのだろうか、また、それを正しく指定できるのだろうかという疑問があります、これまでも時々議論になっておりますように、軍事行動をとっている米軍を支援することは、それが後方地域であっても、武器弾薬以外の輸送、補給であっても、米軍に対する作戦支援には変わりありません、米軍と交戦中の相手国から見れば、日本米軍共同作戦を行っている敵対国であります、これは国際的に見ても軍事的な常識であります、自衛隊の元陸将の方がこうここで公述されたわけであります。  防衛庁長官あるいは法制局長官、どうでしょうか。あなた方の論理は破綻してしまっているんじゃないんでしょうか。
  312. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 私どもは、常々申し上げてきましたとおり、ガイドラインに基づいて実施することを想定している活動は、それ自体武力の行使には該当しない、また戦闘地域と一体とならない後方地域で活動するんだ、後方地域支援行動というのはそういうものであります。  また、国連憲章及び日米安保条約に従って行動する米軍に対して行う我が国協力は、国際法の基本原則にも合致し、国際法上も許容されるものでありまして、他国の我が国への武力の行使を国際法上正当化させるものではない、こういうふうに累次申し上げているところであります。
  313. 大森政輔

    大森(政)政府委員 正しいことを言うには言葉は全く同じになるかもしれませんが、要するに、もう一度私から申し上げますと、憲法九条が禁止しているのは武力の行使ということでございます。この武力の行使とはどういうことかと申し上げますと、これは、常々指摘されますように、人的、物的組織体による国際的武力紛争の一環としての戦闘行動、このように定義されているわけでございます。  そこで、今回、この周辺事態法における後方地域支援として予定している行為というものを見ますと、これは、日米安保条約目的の達成に寄与する活動を行っている米軍に対する補給、輸送、修理及び整備、医療、通信等の支援措置でございます。したがいまして、その行為自体が先ほど申し上げましたような意味における戦闘行為自体に当たるということは、これは委員も肯定されるものではない、結論は同じであろうと思います。  そこで、問題は、そういう行為は、それ自体武力の行使という行為に当たらなくとも、米軍武力の行使と一体化するという評価を受けることを通じて、やはり我が国武力の行使をしているということになるんではないか、残されたものはそういう局面での議論であろうと思います。  そこで、その点につきましては、予定している行為はいずれも後方地域において行われる、後方地域と申しますのは、先ほど委員もるる引用されましたような「現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる我が国周辺の公海及びその上空の範囲」において行う、しかも、そういう後方地域の要件が満たされないおそれが生じた場合には、実施区域の指定の変更あるいは活動の中止または一時休止についても法案がそれを予定している。したがいまして、後方地域においてのみ後方地域支援が実施されることが制度として担保されている、こういうことでございますから、このような後方地域支援の性格、内容にかんがみますと、この法案に基づいて実施することを想定している後方地域支援は、いかなる意味においても米軍武力の行使の一体化の問題を生ずることはあり得ないということでございまして、論理が破綻しているとか、そのような非難には当たらないんではなかろうかと思うわけでございます。
  314. 木島日出夫

    ○木島委員 憲法が禁じているのは、決して狭い意味の武力の行使だけではありません。国権の発動たる戦争武力による威嚇、武力の行使、全体的に禁じているわけであります。そして、あなた方政府は、それ自体が武力行使、戦闘行動でなくても、武力行使、戦闘行動を行っている米軍と一体化されると評価されたらそれはいかぬのだと、それは憲法に触れるんだという立場から、ガラス細工のような大変な線引きをやられてきたんじゃないんでしょうか。そういう線引きが軍事上も成り立たぬ、憲法解釈上も成り立たぬ、また国際法上も成り立たぬということを与党推薦の公述人もここで述べた。だから、破綻しているじゃないかと私は言ったんです。  もう一つ挙げましょう。自民党推薦の公述人、佐久間一元統幕会議議長であります。こう述べているんです。  それから、後方地域の限定が非常に難しい、私も最初からそのように思っております、現代の戦闘様相においては、前線後方という分け方は非常に難しくなっておりますし、しかも、それは時とともに流動的になるということはよく承知しております、あなた方の論理はもう成り立たぬ、現場で最高責任の地位にあった佐久間さんもこうおっしゃったじゃないですか。  佐久間公述人は、こうも言いました。ただ一方、現在の法案は、政府として、従来の政府の見解あるいは政策というものの継続性というものを確保するという意味から、ある意味では非常に難しい規定になっていると思います、こうまで述べております。  どういうことを言わんとしたんでしょうか。一体化論は、前方、後方を分けるのは軍事上ナンセンス、しかし現在の法案は、従来の政府の見解政策の継続性、憲法に触れることはできないという立場、そういう一体性、継続性を確保するという意味から非常に難しい規定になっていると。要するに、現実には、実態上はできないことを法律上、文章上、表現上何とか分けたい、憲法違反のそしりを免れたいというんで難しい規定になっているということをここまで指摘されたんじゃないんでしょうか。どうですか、違う言葉で。
  315. 大森政輔

    大森(政)政府委員 先ほど御引用の公述人の意見陳述、これは私、直接聞いていたわけではございませんので、今紹介を受けた、そういうことを言われたんだろうと思いますが、認定が難しいと。これは確かに難しい認定であろうと思います。したがって、非常に難しい認定だから慎重にやらなければならないということは、これは御指摘のとおりでございます。  ただ、前方、後方の区別は成り立たない、この前方とか後方とかいう言葉でひとり歩きしてもらったら困るわけでございまして、この後方地域、ちゃんとその定義の内容をごらんいただかなければなりません。これは、すなわち「我が国領域並びに現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる我が国周辺の公海及びその上空の範囲」そういう概念でございますから、それに当たるかどうかという認定は、そういう概念がそもそも成り立たないとかいう問題ではないんではなかろうかと思うわけでございます。
  316. 木島日出夫

    ○木島委員 だから、法律にはそう書いてありますよ。しかし、佐久間元統幕議長が指摘したのは、そんな法律上の言葉の分け方というのは現実には成り立たないということを指摘したんですよ、実態が成り立たぬということを。松島さんもそれを指摘したんじゃないですか。  元自民党衆議院議員、田中内閣の防衛政務次官を務められた箕輪登さん、最近衆参の現職議員に手紙を送られた方でありますが、こう言っております。「今回の論議で、政府は「後方支援だから心配ない」といっています。しかし、弓矢や小銃程度の時代ではなく、大陸間弾道弾もある時代の近代戦争では、前線後方の区別はなく、距離も問題にはなりません。公海上の輸送船も攻撃目標となり、しかもそれが国際的には合法となるのです。」こちらの方がまともな見方だと思います。  私は、後方支援後方地域での兵たん活動だから米軍の戦闘行動とは一体性はない、だから合憲だなどとは言えないことは、既に法制局長官が条文を引用しましたが、周辺事態法案の構造からも明らかだと思います。  法案第三条一項四号の後方地域の定義は、次のようなものであります。「我が国領域並びに現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる我が国周辺の公海及びその上空の範囲」こう定義しておきながら、一方、法案第五条五項、四項では、「当該輸送を実施している場所の近傍において、戦闘行為が行われるに至った場合又は付近の状況等に照らして戦闘行為が行われることが予測される場合」これを想定し、こうした場合は活動を一時中止し、防衛庁長官の活動中断命令を待てという法律構造になっているわけであります。  これはまさに、近代戦においては前線後方もないんだ、米軍の戦闘行動と我が国自衛隊等の行う兵たん活動が不可分一体であるからこうした事態を想定しなければならないということを、法律そのものが認めているということを意味するんじゃないんでしょうか。  法制局長官は、戦闘行動が行われることが予測される場合は活動の一時中止と活動中断命令、そういう仕組みをつくったからいいんだと言うんですが、逆ですよ。そういう規定を入れなければならぬような状況にあるんだと、それはやはり前線後方もないということをあらわしているんじゃないんでしょうか。どうでしょうか。
  317. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 この「後方地域 我が国領域並びに現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる我が国周辺の公海及びその上空の範囲」ということでございますけれども、この要件を満たしているかどうかというのは、これは累次御説明もしておりますけれども、その戦闘の全般的状況、それから装備品の能力、それから米軍及び相手国の軍隊の展開状況というものを踏まえまして、合理的に判断ができると考えております。  また、先生ちょっとお触れになりましたように、確かにこういう状況は時間の推移により変化することはもちろんあり得るわけでございます。したがいまして、それだからこそ、その状況変化に対応いたしまして適切な対応をするということで法文上対応をしているということでございます。
  318. 木島日出夫

    ○木島委員 そもそもこの法案で、輸送活動が行われている近傍で戦闘行為が行われる、そういうことを予測しなければならない、予測した条文を入れなきゃならぬ、一体それはなぜなんでしょうか。それは情勢変化だという答弁もありました。それは、結局、この法案で言う後方地域支援活動なるものが、その実質はアメリカの戦闘行動への兵たん活動であり、それはアメリカ戦争への明白な参戦行動だからだ、不可分一体だからだ、一体となって戦争をやっているから攻撃されるおそれがある、だから攻撃されるようなおそれが認知されたら活動をやめなくちゃいかぬ。だから、もうこれは前方も後方もないんだということを自白した、そういう条文じゃないですか、どうですか。答えられますか。
  319. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 万一のことを考えて実施区域の変更や行為の中断、休止をやるという話でありまして、別に、最近のようにミサイルや何かが発達してきますと、後方地域じゃなくたって、日本の本土だって撃ち込まれる可能性さえ否定できないわけですから、我々が、戦闘地域になる可能性があるからそんなことを書いたなんていうことでは全くないということだけは申し上げておきたいと思います。
  320. 木島日出夫

    ○木島委員 そういうのは論理のすりかえというんですよ。外務大臣のも論理のすりかえなんですよ。基地を貸しているだけで攻められるなんていうのは論理のすりかえなんで、そんなことを問題にしているんじゃないんでしょう。  一つだけ確認しておきますが、三条一項四号の後方地域の定義で、「戦闘行為が行われることがないと認められる我が国周辺の公海及びその上空の範囲」という、この「認められる」、認めるのは防衛庁長官である、これは閣議ですね、政府ですね。それから、概念矛盾といって私が指摘した法第五条五項、四項の「付近の状況等に照らして戦闘行為が行われることが予測される場合」という、この予測するのはだれですか、現場の部隊の長ですね。これはもう法解釈の問題です。そうでしょう。
  321. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 後方地域というのは、先ほどから出ているとおり、我が国領域並びに現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる我が国周辺の公海及びその上空の範囲のことであり、後方地域支援は、当該後方地域に指定される区域において実施される。この活動を実施する区域は防衛庁長官が指定することとなりますが、その指定に当たっては、閣議決定により基本計画に定められるおのおのの活動を実施する区域の範囲及び当該区域の指定に関する事項に従うこととなるわけであります。  この場合、防衛庁長官は、自衛隊がさまざまな情報源や常套的な警戒監視活動によって収集した情報や、あるいは外務省が収集した情報米軍から提供された情報等の各種の情報を分析し、それらを総合的に判断した上で、閣議決定により基本計画に定められた事項を考慮しつつ、我が国後方地域支援を実施する区域を指定し、内閣総理大臣承認を受けることとなるわけでありますが、この間は、当然のこととして日米間の緊密な協議が持たれることとなるわけであります。
  322. 木島日出夫

    ○木島委員 後半のことを答えてください。付近の状況を予測するのはだれか、その結論だけでいいですよ、もう時間のむだですから。
  323. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 今御説明しましたような仕組みで基本的に担保されるわけでございますが、現場においても、この第五項に示されるような状況があった場合には、それに適切に対応できるように現場で判断をする……(木島委員「だれが予測するのかという質問です」と呼ぶ)現場の長が判断をするということでございます。
  324. 木島日出夫

    ○木島委員 そこだけ答えてくれればいいんですよ。  そうなんですよね、この仕組みは。そして、その現場の長が、付近の状況等に照らして、戦闘行為が行われることが予測されるかどうか判断しなければいけないわけですよ。それで防衛庁長官の指示を待たなければいかぬ。  ところが、肝心かなめのその現場はどうか。その問題で佐久間元統合幕僚会議議長がさきの公述で述べているんですよ。  それが現場の部隊でどう影響するかというのは、例えば、今回の法案においては、活動の中断という規定がございます、現場の指揮官も、そういった状況変化した場合は活動を中断するということが規定されておりますが、現場で任務行動を行いながらそれを判断するというのは非常に難しいんだろうと私は思います、判断できやしないということを述べているんですよ。  私は、この問題の本質というのは、午前中、自民党の玉沢理事質問を聞いておりましたら、現代の戦争、想定される紛争は、全面戦争はない、局地戦争だ、だから戦域は局地的になるから、後方という安全地帯はあるんだという質問でしたね。それに対して、防衛庁長官外務大臣も、そのとおりだとおっしゃいました。だから後方地域、安全地帯があるんだ。  これはどういうことを意味するかというと、要するに、後方か前方かを決めるのは何かといったら、米軍と戦っている相手方の軍事能力、戦闘能力の大きさで決まるということを意味するんですね、この意味は。戦っている相手が軍事的に大きければ、どんどん攻撃される範囲が広がってくるから後方地域が小さくなるということを言っているだけにすぎない。逆に言うと、これは、ですから現場の自衛隊の最高幹部をやった人ですら判定が難しいと言うわけです。  それはそうなんですよ。相手の出方次第によってどうにでもなってしまう。ということは、これは結局、日本が担当する後方地域支援なるもの、基本は兵たんです。政府の説明によっても、兵たん活動だが、兵たん活動のうち、後ろの方でやるもの、安全地帯でやるものというのが政府の説明なんですよ。ですから、それはもう相手次第なんだということを意味しているわけでありまして、本質的には、日本の行う兵たん活動は前線米軍と一体不可分ということを逆に物語っていると私は指摘せざるを得ない。  わずかの時間で政府の答弁を聞きましたが、この答弁、全部ひっくるめても憲法九条違反、米軍武力行使と一体化は免れない、憲法違反と言わざるを得ないということを指摘しておきたいと思います。  そして、次の武器の使用の問題に移らせていただきます。  周辺事態法案、自衛隊法改正法案は、自衛隊の国外での武器の使用を飛躍的に拡大しようとしております。使用される武器の量的、質的拡大、地理的制約を取り払っての公海上あるいは外国の領土、領海内での武器の使用、それから軍事活動と密接不可分な武器の使用などなど、これまでPKO活動において認められてきた武器の使用と全く質的に違うレベルの武器の使用が、この周辺事態法案あるいは自衛隊法改正法案による捜索救助活動、船舶検査活動、在外邦人輸送活動において認められようとしていると言わざるを得ないと私は思います。  政府は、これまで、武器の使用憲法九条で禁ずる武力の行使とは区別されるという立場に立ち、海外での自衛隊による武器の使用をPKO活動を突破口として認めてまいりました。午前中に問題になりましたが、九一年九月二十七日の武器の使用武力の行使の関係についての政府統一見解がそれであります。もう中身は持っていますし、読んでもらう必要はありません。  一点だけ、政府は、この九一年九月二十七日の憲法解釈は維持し続けるつもりでありますか。それだけ答えてください。変えるつもりですか。
  325. 大森政輔

    大森(政)政府委員 現在、変えなければならない理由はないと考えております。  ただ、多分次のことを言われようとしておる……(木島委員「それはいいです、あとはまた聞くから」と呼ぶ)
  326. 木島日出夫

    ○木島委員 この政府統一見解、変える必要はないとおっしゃられました。憲法九条一項の武力の行使とは、我が国の物的、人的組織体による国際的な武力紛争の一環としての戦闘行為、これが定義であります。そして、法案第二十四条の武器の使用とは、火器、火薬類、刀剣類その他、直接他人を殺傷し、または武力闘争の手段として物を破壊することを目的とする機械、器具、装置をそのものの本来の用法に従って用いることをいうと解される、これが武器の使用の解釈であります。  さきの政府統一見解はPKO法案審議に当たっての見解でありますから、そこで法案第二十四条の武器の使用とはという定義をしているわけでありますが、これはPKO法案第二十四条のことでありますが、今度ここで審議されている周辺事態法案第十一条の武器の使用自衛隊法の一部を改正する法律案自衛隊法百条の八の武器の使用、この解釈も、政府統一見解のPKO法二十四条で規定する武器の使用の解釈と全く同一だとお聞きしていいですか。イエスかノーかですから。
  327. 大森政輔

    大森(政)政府委員 同じであると考えております。
  328. 木島日出夫

    ○木島委員 周辺事態法第十一条、改正される自衛隊法百条の八、これは捜索救助活動、船舶検査活動、在外邦人輸送活動に際しての自衛官による武器の使用を認める法案であります。PKO法二十四条と質的に全く異なる点が、私は法文の上で三つあると思います。相違ないかどうか確認をしたい。  第一点は、使用される武器について、PKO法と違って小型武器という制限を外してしまったこと。第二点は、武器使用を、「職務を行うに際し、」という文言を今回入れることによって、個々の自衛隊員の判断ではなく、上官の命令で行うことを法文上も明確にしたこと。PKO法にはこれはありません。ですから、いろいろ論議がありまして、PKOの当初の論議では個々の隊員の判断だということになったわけであります、上官が束ねるとかいろいろな論議がありましたけれどもね。三つ目は、自衛隊法九十五条の武器の防護のための武器の使用を認めること。PKO法は、これは適用除外といたしました。  その三点がPKO法と全く質的に違う点だと思いますが、防衛庁、イエスかノーかで答えてください。
  329. 柳澤協二

    ○柳澤政府委員 まず第一点の、武器の種類でありますけれども、今回の法律の十一条にございますような武器の使用については、使う場面を考えてみますと、例えば船舶検査であれば、まさに乗船して職務を行うに当たり、ですから、実質的には小型の武器であることは当然であります。  それからもう一つの、九十五条でございますか、九十五条の適用をPKO法の場合に相手国の領域内で除外することにいたしましたのは、まさにそのPKOの活動というのが非常にいまだ不安定な状況の中で、かつ、九十五条は非常に限定的な武器使用といいましても、相手国の領域内でそれをすることがその状況にとって必ずしもプラスではないということ、あるいは、個々の装備がたとえ破壊されたとしてもPKO活動全体には支障がないだろう、こんな判断で除いたわけでありますが、今回のいわゆる邦人輸送等については、まさに、港湾とか空港で邦人を輸送のために保護下に入れて輸送してくるという非常に限定的な場面でありますので、あえてこれを外す必要がないだろう。  それから三点目の、先生の言われたのとちょっと順序が逆になりましたが、上官の命令の問題でありますけれども、PKOの法律の中で「当該現場に上官が在るときは、その命令によらなければならない。」という規定をつけ加えさせていただいたのは、まさに武器の使用についての適正を図るということ。  それで、なぜ今回の法案と違うかといいますと、今回の場合は具体的な職務がもう決まっておりますので、それをチームとして行う場合には、当然その場に上官がいるということを前提にしております。しかし、PKOの場合は、必ずしもその職務だけではなくて、一つの例としては、例えば全く休憩している時間等にもこういうケースがあるということで、特に、個々の職務と関連づけてというよりは、現場に上官があるとき、こういう形でPKO法は書かせていただいたということで、形式的に書きぶりは若干違っておりますけれども、本質的なところは、私ども、そう変わったものだとは思っておりません。
  330. 木島日出夫

    ○木島委員 理由なんか聞いていないんですよ。まともに答えてもらいたいんです。  今度の法案で、さっき三種類の活動を言いましたね。それで、いずれも武器使用の際に「職務を行うに際し、」という言葉がついているんですが、これの意味がよくわからないんですよ。要するに、これは上官の指示によるものだということを指し示した言葉なんですか。何で今回この言葉をぶち込んだんですか。
  331. 柳澤協二

    ○柳澤政府委員 「職務を行うに際し、」ということで十一条などに書いておりますのは、まさに法律にありますように、乗船してその職務を行うとか、あるいはまさに救助の職務を行う、その現場の場面に限定してといいましょうか、それ以外の移動の部分は、私どもの考え方では、船なりに乗艦している間は基本的には九十五条で保護されるであろう、そういう前提のもとに、船を離れて、ある種、ある意味で裸で具体的な職務に当たるケースに限定して十一条をつくった、こういうことであります。
  332. 木島日出夫

    ○木島委員 そんなごまかしの答弁はだめですよ。それだったら、PKOだって「職務を行うに際し、」という言葉を入れればいいじゃないですか。  ここに「防衛法研究」の第二十二号、一九九八年があります。この事務局はたしか防衛庁の中に置かれているんじゃないんでしょうか。その最初の論文に、西修さん、駒澤大学教授、防衛法学会理事長の論文があります。今私が指摘した、PKO法と今度の武器使用の違い三点を彼も挙げているんです。  そこで彼は、はっきりこういうことを書いてあるんですよ。「周辺事態措置法案では、「職務を行うに際し」と規定することにより、当初から、上官の命令を原則とした。」はっきり書いてあるじゃないですか。これを否定できますか。それだけ。
  333. 柳澤協二

    ○柳澤政府委員 まさに自衛隊部隊として活動をいたしますので、一定の任務を与えられた場合において、部隊として上官の命のもとに行動するというのは当然であります。  ただ、申し上げた十一条にそういう書きぶりをしたというのは、上官の命令によって武器の使用というよりは、まさにそういう職務の場面に限って武器の使用を認めるという趣旨であります。
  334. 木島日出夫

    ○木島委員 やっと認めました。  周辺事態法十一条、自衛隊法百条の八で規定する「自己又は自己と共に当該職務に従事する者の生命又は身体の防護のためやむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合」の武器の使用は、保護法益は、個人の生命、身体の防護だと読み取れます。それから、今回、全部適用がされるということが法律上も明らかになった自衛隊法九十五条の武器の防護のための武器の使用、これは保護法益は武器そのものである、装備そのものであるということも文言上はっきりしています。  そこで聞きたいのですが、それ以外の第三番目の保護法益として、PKO法のとき大問題になりました部隊の職務遂行、それが保護法益になるのか。職務遂行をやろうとすることに対して相手方からそれを妨害するための威嚇とか攻撃とか、そういう職務遂行を妨害する相手に対しては、武器の使用は今回は認めるのでしょうか。PKO法で排除しました。国連はそれを認めているのですが、日本のPKO法は殊さらに排除したのです、憲法問題があるから。さてそこで、今回どうなんでしょうか、この三類型の場合。入るか入らないかだけ述べてください。
  335. 柳澤協二

    ○柳澤政府委員 今の法案の十一条、それから改正いたします自衛隊法の百条の八につきましても、例えば百条の八で申し上げれば、何度も御答弁申し上げてありますが、まさに安全が確認されている状態でこれを行うことを前提にしております。後方地域捜索救難等についても、まさに後方地域で実施することを予定しておりまして、十一条あるいは百条の八の武器使用というのは、あくまでもそういう中での万一の身体、生命の防護という趣旨でございまして、それに限定されているものと考えております。
  336. 木島日出夫

    ○木島委員 そうすると、周辺事態法十一条なり自衛隊法百条の八で、日本自衛隊が武器、装備を持って、これは外国の領海でもやることはできるのですよ、捜索救助活動というのは。それから在外邦人の輸送というのは、外国の陸地まで行くことができるのですよ。そこから人を連れてくるわけですからね。そういう形態であります。当然、船舶検査活動は公海でやることが想定される。安全が確認されているところだといいますが、そうじゃないからこそ、自衛隊法九十五条なり周辺事態法十一条、自衛隊法百条の八の改正で武器が使えるように持ってきたわけでしょう。だから、危険なところなんですよ。危険なことが想定されるのですよ。  今の答弁ですと、部隊の業務自体が妨害されようとしているのを排除するためには武器が使えないと認めました。そうすると、これはPKO法と同じ構造だと聞いていいですね。
  337. 柳澤協二

    ○柳澤政府委員 もともと、今回の十一条あるいは百条の八についても、いわゆる安全をつくり出すという前提で行うものではございません。そういう意味で申し上げるならば、PKO法の考え方と共通したものだと思っております。
  338. 木島日出夫

    ○木島委員 そうすると、こういう在外邦人輸送活動に従事している自衛隊部隊、あるいは、先日も私も質問しましたが、米軍の遭難兵員の捜索救助活動にまさに従事している自衛隊部隊、こういう部隊に対して、相手軍、相手からそういう活動を阻止しようとして威嚇攻撃がなされたときにはどうするのですか、黙って下がってくるということになるのですか。
  339. 柳澤協二

    ○柳澤政府委員 ですから、冒頭からいろいろ御議論で答弁申し上げていますように、そういう戦闘行為が行われることのないと認められる地域でありますし、そのおそれがある場合は、活動を一時中断するなり休止するという措置をとることが前提になっているわけであります。
  340. 木島日出夫

    ○木島委員 私、三つ挙げました。活動阻止のために相手から攻撃をされる場合、威嚇をされる場合、それから生命、身体を脅かそうとして相手から攻撃される場合、それから自衛隊の武器、装備が攻撃される場合、三つの点を挙げました。  これは、なかなか実際は区別できないと思うんですね。実際はできないと思うんですよ。想定してもそうなんですよ。米兵の捜索救助活動をやって、軍艦、護衛艦がいて、ヘリコプターが飛んで、まさに米兵を捜索救助しようとしているときに相手がそれを阻止せんとして攻撃してくるということは、これは自衛隊の装備を攻撃してくるのか個々の隊員の命をねらってくるのか、そういう活動は許さぬ、捕虜をとられちゃ大変だというので活動妨害のためにやってくるのか、全く私は区別難しいと思うんですね。そういう難しい、区別ができないときはどうするんですか。攻撃に対して反撃できるんですか。
  341. 柳澤協二

    ○柳澤政府委員 先生が言われたようなケースといいましょうか、要するに、航空機として活動しているケースあるいは護衛艦として行動しているようなケースに対して、万一不測のそのような事態がありますれば、直接には、私どもは、九十五条が適用されるようなケースであって、それに応じた対応をとるのかなというふうには思っております。  それから、先ほどちょっとPKO法のお話の中で、自衛隊員のケースについては二十四条三項で武器の使用を認められておりますが、自衛隊員については小型武器という要件にはなっておりません。しかし、申し上げているように、使用する武器としては、機関銃程度ということであります。
  342. 木島日出夫

    ○木島委員 そんなことはわかっています。しかし、基本的には小型武器であって、そうじゃない場合は国連事務総長が認める限度があるんですよ、PKO法は。それを承知の上で質問しているわけであります。  結局、そうすると、どういうことになるかというと、捜索救助活動、船舶検査活動あるいは在外邦人輸送の活動、さらには、私指摘しませんでしたけれども、輸送活動にも、これは修正論議になっておりますけれども、自衛隊法九十五条の武器の防護のための武器使用はかぶっているんですね。認められることになるんですが、そういう活動というのは、基本的に、PKOと違って、使用される武器、装備に限度ないんです。護衛艦も出せるんですね。それから、護衛艦、輸送艦、航空機、ヘリコプターなど、大型装備で活動することが想定される活動ばかりです。しかも、活動の場面は停戦後のPKOと違う。これが決定的に重大な問題。まさに戦闘行為が行われる時期の活動であります。  安全地帯だと言うけれども、安全地帯じゃないからこそ、こういう武器の使用の規定を入れてくるわけですよ。しかし、戦闘行為がまさに行われている時期の活動、しかも活動の場所は基本的には公海、あるいは捜索救助の一部は外国の領海、また邦人の輸送の場合は外国の領土もある。まさに敵からの攻撃を受ける可能性は、PKOの場合と同じ海外での活動でありますが、もう質的に違う。  そういう場面で武器の使用を認めれば、仮に正当防衛とか個人の命を守るとかいう目的じゃなくたって、武器、装備を守るためという理屈で、その理屈だけでもやれるわけですから、自衛隊法九十五条の発動として武器の使用を認めれば、それはまさに戦闘じゃないんでしょうか。それをまさに戦闘行動というんで、憲法の禁ずる武力行使そのものにエスカレートしていく、もう間違いないんじゃないんでしょうか。答えられますか。
  343. 大森政輔

    大森(政)政府委員 前回、委員の御質問に対して答弁したかったわけでございますが、時間がなくて答弁できずに終わったのを非常に残念に思っておりました。  御指摘の点につきましては、周辺事態確保法案十一条の武器使用憲法九条との関係についてまず申し上げますと、自衛官がその職務を行うに際し、自己または自己とともにその職務に従事する者の生命、身体の防護のためやむを得ない必要があると認める相当な理由がある場合には、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で武器を使用できる、このように非常に要件を絞っているわけでございます。  したがいまして、この武器の使用と申しますのは、自己または自己とともにその職務に従事する者の生命、身体を防護するためのものでございますから、当初に確認をいたしました統一見解に言う、いわば自己保存のための自然権的権利というべきものに当たり、そのため必要な最小限度の武器使用は、憲法九条で禁止された武力の行使、すなわち、人的、物的組織体による国際的武力紛争の一環としての戦闘行為には当たらないということは明白でございます。  次に、自衛隊法九十五条に基づく武器の使用でございますが、我が国を防衛するための重要な物的手段である自衛隊の武器等の破壊や奪取から当該武器等を守るため、武器等の警護に当たる自衛官に、極めて限定的かつ受動的な条件のもとで認められる最小限度のものでございます。したがいまして、先ほど述べました武力の行使の概念には当たらないということは、これまた明白ではなかろうかというのが私どもの考え方でございます。
  344. 木島日出夫

    ○木島委員 最小限度の武器使用だなんとおっしゃいましたけれども、今度の場合は全然そんな概念じゃない。護衛艦、輸送艦、航空機が出せる。しかも戦争をまさにやっている地域に近づける。当然、敵がいる。敵から攻撃される。そうしたら、武器防護、装備防護のために、軍艦を守らなきゃいかぬから反撃しなきゃいかぬでしょう。比例の原則があると私、前回言いましたね。これはまさに戦闘行動そのものじゃないですか。そういうエスカレートするのに歯どめがかからないということを私は指摘をしたわけでございます。  本日、理事会に、自衛隊法第九十五条に規定する武器の使用について、政府から一定の見解が示されたようでございます。しかし、私これを見ても、エスカレートする歯どめは、どうやってとまるのか理解できない。  これまでの政府側の答弁の中では、内訓というのがあるんだ、内訓があるから歯どめになっているんだという答弁なのですが、その内訓は秘扱いで出されていない。まさにこれが、武器の使用がエスカレートして武力行使になる、憲法違反になるのじゃないかと私、指摘しました。まともな答弁なかったと思うのです。それがマル秘の内訓によって歯どめになっているというなら、その内訓を私は当委員会に出してほしいと思うのです。  ぜひ、委員長、要求します。取り計らっていただきたい。
  345. 山崎拓

    山崎委員長 理事会において協議いたします。
  346. 木島日出夫

    ○木島委員 二つの点について、私は憲法九条の適合性について指摘をいたしました。わずかな時間でしたが、日本の行う兵たん活動、また自衛隊の海外での武器の使用、いずれも憲法で禁ずる戦争行為であり武力の行使であることが明らかになったのじゃないか。疑いはますます深まっております。これは、一部修正で違憲性が消えるものでは全くないと私は思います。  私の質問に対してもまだ審議が尽くされた感じではありません。徹底して憲法問題についても審議を尽くしていただきたい。そして審議を尽くした上、私は、この法案憲法違反で廃案しかないということを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。
  347. 山崎拓

    山崎委員長 これにて木島君の質疑は終了いたしました。  次に、伊藤茂君。
  348. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 前置き抜きで、まず運輸大臣にお伺いをいたします。  先般の当委員会審議の中で、この周辺法案の九条に関係をいたしまして、港湾法十三条の二それから港湾法四十七条という話題がございました。御答弁ございましたが、速記録を読んでみまして、港湾法十三条の二というのは私企業への不関与という項目になっておりまして、これをもって四十七条、運輸大臣措置するとかいう項目とつながるということは違うし、また九条、協力を求めることができるというふうな表現のこととちょっと趣旨が違うんではないだろうか。  今、自治体の皆さんは、この問題にどう対応するのかという懸念が非常に多いわけでございまして、やはり何よりも理解なりあるいはお互いの合意というものが基礎になって物事が進むことが大事だと思いますので、そこを正確に運輸大臣にお答えいただきたいと思います。     〔委員長退席、中谷委員長代理着席〕
  349. 川崎二郎

    ○川崎国務大臣 港湾管理者は、当該港湾の施設能力に照らし、適切でないとき等、港湾の適正な管理運営に支障を来す場合には港湾施設使用を拒否することができる、これは再三申し上げているところでございます。  しかし一方で、港湾管理者は港湾法に基づき港湾を適正に管理運営することが求められており、港湾法第十三条第二項においては、港湾管理者は施設の利用等に関し不平等の取り扱いはしてはならない、こう記されております。  したがって、適切な理由がある場合は断ってもそれは結構でございます。しかしながら、ただ単にだめだからということで不平等な取り扱いをした場合は、四十七条の適用になり、当該行為の停止、変更命令を行うことができる、こういうふうに考えております。
  350. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 その答弁では不満でございまして、九条は、求めることができる、というのは求めなければならないという義務規定ではございません。それは防衛庁長官を初め関係大臣から再三説明のあった内容ということになります。ですから、いきなり四十七条、大臣の権限までいくという論理というのは、地方自治と中央政府の関係からしてもおかしいのではないだろうか。  そのほか、例えば港則法その他、港湾管理者の負うべき公正な責任などなど、あるいは安全な運航のための責任などございます。それらを含めまして判断をする。あくまでも何か強制的にやるような印象を与えない措置ということが必要ではないかと思いますが、再度御答弁ください。
  351. 川崎二郎

    ○川崎国務大臣 これもたびたび御答弁申し上げておりますけれども、周辺事態法において、法第九条第一項に基づく協力要請を港湾管理者が拒否した場合、これを強制する手段は設けられていない、これは申し上げているところであります。  しかし、その一方で、港湾法第十三条第二項において、不平等の取り扱いをしてはならないという現行法がございますから、この規定に照らし合わせて、適切な拒否の理由があればともかく、適切な拒否の理由がない場合には私どもが法第四十七条を動かす場合はあります、こう申し上げているわけです。
  352. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 余り川崎さんと論争を延々としたくはないんですが、不平等、平等な扱い、さまざまな現象が現実に起きているわけですよ。例えば、先般、北海道小樽のインディペンデンスの入港というのがございました。いつも寄港している船が、どけてください、あっちの方に行ってくださいというふうな、ロシア船ですか、現象が起きている。  ですから、何か形式的にそういう論理を当てはめるというんではない、やはり自治体、港湾管理者を含めた理解と協力というものがベースにあって、初めて九条というものは成り立つんだというふうなことではないでしょうかということを重ねて申し上げたいと思います。  もう一つ運輸大臣に伺いたいんですが、民間空港の問題でございます。  私から言うまでもないんですが、日本のメーンになる、ハブ空港の役割を持つべき空港というのはみんな一本滑走路でございまして、あなたの国は、成田にも行ってみたし関空にも行ってみたが、滑走路が一本しかないけれども壊れたときどうするんだとほかの国の運輸大臣に言われたり、それみたいなことで、やはりもっと整備をしなくちゃならぬ、さまざまの努力をなさっているわけでありますが。そういう中で、国際便も含めまして非常に混雑したラッシュの状況ですから、どうするんだ、いや、間もなくしますからということをやっているのが現状ですね。  そういう中で、特にやはり成田の問題というのを私も非常に心配をしているわけでありまして、川崎大臣もそうですが、私が担当しておりましたときにも、隅谷先生などにお願いいたしまして、円卓会議、この問題の打開を図りたいという努力をして、今日に至りなおかつ今非常に難しいときになっている。川崎運輸大臣も非常に御苦労なさっていると思いますが、こういうものをどう打開するのかということをしませんと、例えば首都圏第三空港にせよ、今後の航空全体にせよ、非常に難しいことになるという大事なときだなというふうに思っております。  そういう中で、たまたまこの問題が重なってまいりまして、何か成田も含め云々ということが出ますと、また目の前非常に難しいことになるということを私は深く懸念をしているわけでございます。有事が起こらない努力がまず第一であることは言うまでもございませんけれども、やはりそういう全体の視野を含めて、大臣、お考えになるだろうと思いますが、どうでしょうか。
  353. 川崎二郎

    ○川崎国務大臣 民間飛行場の米軍の利用につきましては、昨年が七百回程度であったかと思います。一昨年が千回程度。その中で、成田は一回も使われていないことは事実でございます。今までの歴史経過としては、二回ほど緊急時に使っておるというのが現状でございます。  米軍機は、地位協定五条に基づき、我が国の民間空港の一時的使用が可能である、しかしながら、もう伊藤先生御存じのとおり、優先使用権は認められていない。したがって、民間航空機で混雑しているときにそこを優先的に使用できるかということになると、これは難しいというふうに私どもは第一に考えております。  第二番目には、空港建設の中で地元の方々とのいろいろなやりとりがございます。これはやはり尊重していかなきゃならぬだろう。また、国会答弁も重ねた答弁がございます。そういう意味で、慎重に対応すべきものと私どもは考えております。基本計画を組む段階において、私どもの基本的な考え方というものを入れながら、しかし緊急性というものはあるかもしれません。一〇〇%否定するものではありませんけれども、基本的には慎重に対応してまいりたい、こう思っております。
  354. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 運輸大臣に対する質問はこれで終わりまして、自治大臣に次にお伺いをさせていただきたいというふうに思います。  まず、先般の議論の中で、九条の執行に関連いたしまして、地方自治法二百四十六条の二とか、二百四十五条とか、関連のお話がございました。私が伺って、印象として、やはり何か、当委員会の当初お話のあった、強制というものではありませんというものとは違った印象でちょっと私は受け取ったのです。今申しましたように、法律は「協力を求めることができる。」協力しなければならないではないということでございますから、この辺の取り扱いというのは慎重を期していただいて、そして、二百四十五条にあるような助言、勧告、情報、総理大臣とかというようなことにならないような措置というのがとられるのが当然であろうというふうに思いますが、正確にもう一度お伺いしたい。
  355. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 正確に申し上げたいと思います。  この法案の第九条第一項に基づいて協力を求められた地方公共団体の長は、その持っている権限の適切な行使ということを期待されておるわけでございますが、一方で、正当な理由があればこれを拒否することができるということも重ねて申し上げてきたところです。逆に言えば、正当な理由がない限り、地方公共団体は求めに応じていただけるというふうに私たちは考えておるわけです。  そこで、あえて今法律論として正確に申し上げようということであれば、地方公共団体の長の対応が個別の法令の規定に違反するような場合、例えばそういう場合は地方自治法の第二百四十五条に基づく所轄の大臣の助言または勧告の対象になり得る、こういうことでございますし、さらに、先ほど運輸大臣とのやりとりであったと思いますが、個別法に基づく措置、例えば港湾法の第十三条で不平等取り扱いが禁止されておるわけですが、これに反するような場合は、同法第四十七条の行為の停止または変更命令の措置ができる旨の規定があるわけでありまして、この規定による措置がとられるということもあり得るというふうに考えております。  さらに、場合によっては、この個別法令の違反に関して、当該事務を担任いたします主務大臣の請求によって、内閣総理大臣が地方自治法第二百四十六条の二に基づく是正措置要求を行うということも法律上はあり得るということであります。法律論として言えばそういう体系にあるということであります。  しかし、このことは、もちろん国として、地方公共団体に対してこれらの規定を発動するということを想定しているというものではありませんで、国としては、地方公共団体の実情も十分踏まえた上で協力の要請を行うということでありまして、また地方団体の方も、正当な理由がない限り求めに応じていただけるのではないかというふうに考えております。
  356. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 自治大臣がまた港湾法のことまでお触れになりましたから、港湾法を読んでいる回数は自治大臣と同じぐらい私も読んでいるつもりなんですが、これは私企業への関与でございまして、さまざまな民間の企業に対して港湾管理者がえこひいきをするような不平等があってはならぬよというのが大体あの法律の趣旨でございまして、今議論しているようなことは想定をしないで法律はつくられているということになっているわけでありますから、余りそのことで言うのはいかがかなということを私は思います。  同時に、今法律論の立場からということで自治大臣はお答えになりました。自由党を代表してただ一人入閣されている政治家の、長いおつき合いの自治大臣でございますから、野田さんでございますから、私はこう思っているんですね。法律論の解釈でどうするかということだけでこの問題は片づくものではありません。それから、関係の市民の皆さんの御理解全体を得られるというものではないと思います、法律論の理屈だけでは。  当然なんですが、私はやはり、政治論と申しましょうかあるいは政策判断と申しましょうか、というレベルと、さまざまの取り仕切りのレベルと両面があるんだと思うんです。私は、前者のレベルでいうならば、やはり政府がどうやって有事を起こさない努力をするのかということが目に映るようなことがまず前面にあるということが必要なのではないか。私は何もスローガンを並べるような、昔の時代のような言い方をするつもりはありません。これからの時代に合った、リアリズムであると同時に、新しいリアリズムをどうつくっていくのかということが、私どもの政治の課題でもあろうというふうに思っております。  したがいまして、この前の御答弁も、あえて法律論としてお答えするとすればという前段がございました。先ほどもそういう、法律論とすればということのお答えがございました。自由党を代表してただ一人入閣をされているという政治家の立場から見て、そういう政治的なお考えと、それからこの問題の執行についてのあるべき態度というものが、自治体の皆さんにも非常に高い関心とまた懸念と存在しているということでないかと思いますが、いかがでしょう。     〔中谷委員長代理退席、委員長着席〕
  357. 野田毅

    ○野田(毅)国務大臣 まさに伊藤先生御指摘のとおり、法律論ということで先ほどお答えを申し上げたわけです。  実際問題、こういう周辺事態が現に発生をしたということになれば、極めて緊急な対応を必要とするわけでもございます。特に、日本の平和と安全に重要な影響を与えるという事態でありますし、そういう意味で、全国民が非常にこの問題について真剣な思いを持っている、その中で緊急な対応をする。それで、事態の中身によって、どういう内容になっているかによって、それぞれ自治体の協力の内容もあるいは異なってこようか。  そういう中で、実際に基本計画を策定されるに当たって、当然のことながらその事態に対応した基本計画なりそういったことがつくられるわけで、当然その際に、全く地元の自治体と何らの相談もなしに、いきなり計画にのっけて強権的に押しつけるということは、とてもとても、そうはならぬだろう。当然のことながら、緊密な連絡をとりながら、そういう中で実際そういうものは作成されていくだろうし、また、自治省としても、そういったそれぞれの自治体、地元の実情も十分踏まえた上でそういった計画がつくられるように、我々も努力をしていかなければならない。  そういう意味で、余り国対自治体なり住民というものが、対立的な関係だけで云々ということじゃなくて、やはりそこは相互に相談をし、協力をしていく、そういう中で円滑な実施が行われるということが一番大事なことでありますから、現実論としては、先生御指摘のように、そのために必要な事前のいろいろな情報の伝達なり——情報不足による不安を不必要に増幅するようなことだけは極力避けなければならない、これは当然のことだと思います。  そういう意味で、できるだけの、今までも内容の説明等々を関係省庁で行ってはきておりますが、今後、さらに我々は十分に内容を御説明する努力もしていかなきゃなりませんし、特に具体的なそういう計画策定に当たって、なお一層そのことに我々も留意した対応をしていきたいというふうに思います。
  358. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 野田大臣のお気持ちは伺いました。余り詳しく時間をとって申し上げることはできませんが、野田さんの政策論、政治としてのお考えは、今一端を伺ったところであります。  私は大分違うわけでありまして、例えば朝鮮半島その他にいたしましても、五年前のあの危機のときに、カーターさんが金日成さんと会談をして、局面を打開しました。これは、フルシチョフ首相当時のキューバ問題に匹敵するような大きな出来事だったと思います。さまざま、その辺の記録なども興味深く私は伺っております。それが、今我々に求められている。相手のあることですからなんですが、また、やはりそういうリーダーが今日本に必要だというのが大事なことではないだろうかというのが、気持ちでございます。  限られた時間でございますから、自治大臣への質問は以上で終わりまして、次に防衛庁長官に伺いたいんですが、前から私ども、土井党首の冒頭の質問のときから、十二条の政令の問題を取り上げまして、御努力いただきまして、先ほど朝の理事会でそれに対する見解のペーパーを、伺ったところでございます。  十二条の政令につきましては、実は私どもは非常に懸念しましたのは、十二条の文章を見ますといろいろ書いてあるが、ごく実務的な表現とは違った、何か懸念を感ずる。政令というレベルでやはり何か非常に問題が起きるようなことはないだろうかという実は心配を、懸念をしたわけでございます。  先ほどいただいたペーパーでは、そうではない趣旨のことが書いてはございました。ただ、残念ながら、法案が通った後政令全体はつくられるということでございまして、それらの中身についての骨格、外殻、構造は大体どうなるのかというところまでは、いただいた文章ではわかりません。せっかくいただきましたが、その辺の趣旨のところを、もう最終局面ですから、大臣に確認をしておきたいと思います。
  359. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 十二条に基づく政令につきましては、その内容は当然この法案の実施のために必要な手続等の範囲内のものとなり、新たに国民の権利を制限し、または国民に義務を課するような規定を設けることは考えておりません。  この政令の策定に当たっては、皆さんともよく相談しながら、今申し上げたような趣旨が担保されるようにしたいと思っております。
  360. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 残りわずかな時間でございますから、外務大臣にお伺いをいたします。  特に、当委員会で、周辺の認定とか定義とかを中心にさまざまな議論がございました。私の方は、ちょっといつまでたってもさっぱりわからぬという気持ちでございます。外務大臣は精力的に御答弁なさっておりますが、何かお経を聞くような気がしているところでございます。そしてまた、私の認識からいたしますと、何か、六〇年のときに岸総理大臣が繰り返し真剣に表現された極東の範囲とか、それからいろいろなものがゴムバンドのように広がって、まさに切れようとしているといったような状況ではないだろうかという懸念を、私どもはこの間の湾岸その他を含めた状況を見ながら思うわけであります。  時間がありませんから、その中の気持ちを込めた一点だけ伺います。  それは事前協議の問題でありまして、六〇年安保のときに、我が党も、古い先輩の皆さんが大変ないい論争、歴史に残る論争をなさいました。岸総理も藤山外務大臣なども非常に真剣な立派な答弁があったというふうに、振り返ってみて、また最近読み直しながら、そう思います。  そういう中の一つの問題でありますが、事前協議の問題について、こういうことがございます。赤城防衛庁長官、私も晩年おつき合いをさせていただいた非常に立派な方ですし、その後継者の野呂田さんも立派な活動をなさっているというふうに、このところ毎日会って実は感じているところでございますけれども、こういう答弁をいたしております。  「日本からの戦闘作戦行動」、「日本の基地を利用して出る場合に、それが戦闘行動として出るかどうかということが判定されるわけであります。でありますから、直接戦闘をしていないところへ行く場合であっても、日本の基地を離れるときに、戦闘の目的をもって離れるということでありますならば、これは戦闘作戦行動のために出た、こういうことであります。それからまた、作戦の中のどういうことで出るかということにつきましては、日本の基地を使用する際に、これは判定してきめるべきであろうと思います。」要するに、そういうことは事前協議の対象外ではなく内なんだという趣旨のことを、その後の文章もありますが、ちょっと早口で言って外務大臣、済みませんが、あったわけであります。  要するに、今のように、日本の基地から出ていく、あれは移動であります、五分か十分したら戦闘地に行きなさいと命令が来まして、したがいまして、それは直接出動ではありませんから事前協議の対象になりませんというレベルとは違った議論を、実は六〇年のときにはやっている。  私は、すべて六〇年のときと変わるべきではないとは思いません。ポスト冷戦時代ですから、さまざまやはり新しいチャレンジかトライがあってしかるべきだと思います。しかし、変わるべきでない、また、もっとやはり限定すべきではないだろうかという気がするわけでございまして、私は、六〇年の議論を振り返りますと、もう亡くなられました赤城さんのことを引用させていただきましたが、そういう思いがいたします。  重ねて申しますと、先般、公述人、参考人、さまざま御意見を伺いました。そのときに、参考人招致の中の、うちの党でない御推薦の方だと思いますが、事前協議の発議権について、やはり日米双方に発議権がある、それについてイエス、ノーを検討するというのが当然のことだ、世界の常識ではないかという趣旨の御発言をなさった外交問題専門家の方がいらっしゃいました。  その二点につきまして、外務大臣、どうお考えでしょう。
  361. 高村正彦

    高村国務大臣 戦闘作戦行動というのは、一貫してここで述べておりますように、例えば空軍が爆撃する場合であれば直接爆撃するために行くとか、そういう場合であるということを繰り返し述べているとおりでございます。  私は、政府はこういうことで基本的に一貫している、こういうふうに思っております。ただ、今の赤城先生の答弁というのは、私今初めて聞きましたので、それとの整合性については直ちに述べるところはありませんが、全体として基本的に一貫しているというふうに承知をしております。赤城答弁については、またきっちり調べた上でお答えさせていただきたい、こう思います。  それから、事前協議の発議権を両方が持つべきだというのは、これはどうなんでしょう。仮に、日本が集団自衛権を行使できて、日本の軍隊がアメリカの国内にあって、アメリカの基地を使用していて、アメリカから発進してどこかを爆撃に行くというような場合だったら、私は、それをアメリカが認めてくださいねというふうに日本側が発議権を持つのは、それは当然だと思いますけれども、今アメリカ側が日本の基地を、例えば戦闘作戦行動に使用する場合に、アメリカが発議して、日本がイエスと言わない限りできないんだ、そういう歯どめのためにあることでありますから、発議権というよりも発議義務なんですね。これを言って、日本からイエスをもらわない限りやれませんよということになっているんですから、私はそれが、日本が発議権を持つべきだという意味がちょっと理解できません。
  362. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 理解できませんということの方が私は理解できませんのでございまして、外務大臣、新聞を見てお気に召しているかどうか、そういうことは別にして、いろいろなことが、私どもも、これは大変だなと思うことがあるわけであります。  この間も、短い時間の中で若干まくし立てまして恐縮でございましたが、はるか随分前のことではございましたけれども、水爆をおっことした航空母艦の話などを申し上げました。最近になって、九〇年代に入って、ようやく全資料がわかったというふうなことがございまして、読んでみたら、これはおかしいよということがございます。  特に、やはり沖縄を中心とした基地からの事実上の直接出動、湾岸への部隊、海兵隊移動などがございます。あるいは、私ども、詳細は調べておりませんが、湾岸のときに、三沢の基地からF16が直接飛んでいったというようなこともニュースで聞くわけであります。  私は、双務的であるべきだということを申し上げましたが、今の起こっている状況から見たら、現実に、客観的にそういう事実を詳細に全部整理をしてみて、これは主権の問題ですから、またそういうものがあって初めてフランクに、アメリカもフランクリースピーキングの国ですから、お互いにフランクに言い合って、初めて、より信頼が高まるということだろうと思います。  そういうことを全部やはり調べて、全部オープンにするかは別にして、そういうことについて、やはり非常に懸念を持っている国民も多いし、私もいろいろ懸念を感ずるので、そういうことをチェックして、そういう現実に基づいて日米のさまざまな協議をするという、やはり主権国らしい態度をとるべきではないかという思いを深くしているわけでございまして、先ほどの答弁では、私ども、ちょっと理解できない。
  363. 高村正彦

    高村国務大臣 安保条約六条における事前協議というものの性格からいって、私は、日本が発議権を持つということはあり得ないのだということを申し上げたわけで、もろもろの日米間に存在する事態について、ふだんからいろいろ日本からも意見を言い、あるいはアメリカからも意見を言う。そういうようなことで、いろいろ話し合うということは、それは私は当然なことだろうと。  安保条約六条の事前協議というものの性格から、日本が発議権というのは、そういうものではないだろうということを申し上げているので、両方がしょっちゅういろいろな問題について意見を言い、要求をする、そういうことは当然あってしかるべきことだ、こういうふうに思っています。
  364. 伊藤茂

    伊藤(茂)委員 共同作戦の共同協議とかいうことなどがよく報道されておりますが、そういうことだけではなくて、外務大臣が言われたような、事実に基づいてこれはどうなんですかというようなことを、やはりぜひ積極的に取り組まれるように要望をしたいというふうに思います。  残念ながら、短い時間しか持っていないものですから、質疑時間が終了の通知が参りました。  これ以上もう申しませんが、何か、先ほどの、残念なんですが、山崎委員長中心とする理事会の協議では、もう一般質疑も終わり、来週には締めくくりとかいうふうなことになっております。  私は思うんですが、まだまだ議論しなければならないということを強く私も主張いたしております。同時に、質問も短い時間で、十分な議論ができませんでしたが、非常に思うのは、やはり大きな議論、マスコミでも、重箱の底ではなくて、大きな議論をしなさいという評論が時々ございます。  やはり、先ほどカーターの例を申し上げましたけれども、カーターの例を申し上げましたのは、いろいろな意味で、やはり大きな、このポスト冷戦時代、しかも、地域紛争はさまざま起こる。そういう複雑状態のもとで、冷戦時代とは違った新たなリアリズム、新たなやはり戦略というのが求められている。そういう議論こそ、やはり国際的にも見ていただけるように、国民の皆様に見ていただけるように議論すべきでないだろうかという思いを深くしているところでございまして、そういう意味でも、なおかつ審議が必要であると委員長の前で申し上げまして、質問を終わります。
  365. 山崎拓

    山崎委員長 これにて伊藤茂君の質疑は終了いたしました。  次回は、来る二十六日月曜日正午理事会、午後一時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時六分散会