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1999-04-07 第145回国会 衆議院 日米防衛協力のための指針に関する特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年四月七日(水曜日)     午前九時二分開議   出席委員    委員長 山崎  拓君    理事 赤城 徳彦君 理事 大野 功統君    理事 玉沢徳一郎君 理事 中谷  元君    理事 中山 利生君 理事 畑 英次郎君    理事 前原 誠司君 理事 遠藤 乙彦君    理事 西村 眞悟君       安倍 晋三君    浅野 勝人君       井奥 貞雄君    大石 秀政君       河井 克行君    瓦   力君       小坂 憲次君    小島 敏男君       河本 三郎君    阪上 善秀君       桜田 義孝君    鈴木 俊一君       田村 憲久君    橘 康太郎君       西川 公也君    萩山 教嚴君       平林 鴻三君    福田 康夫君       細田 博之君    宮腰 光寛君       八代 英太君    山本 公一君       米田 建三君    上原 康助君       岡田 克也君    桑原  豊君       玄葉光一郎君    横路 孝弘君       赤松 正雄君    市川 雄一君       佐藤 茂樹君    東  祥三君       井上 喜一君    達増 拓也君       木島日出夫君    佐々木陸海君       東中 光雄君    伊藤  茂君       辻元 清美君    保坂 展人君  委員外出席者         参考人         (株式会社東芝         顧問)     西元 徹也君         参考人         (日本労働組合         総連合会事務局         長)      笹森  清君         参考人         (元駐タイ大使         )       岡崎 久彦君         参考人         (静岡大学助教         授)      小沢 隆一君         参考人         (株式会社岡本         アソシエイツ代         表取締役)   岡本 行夫君         参考人         (軍事アナリス         ト)      小川 和久君         参考人         (静岡県立大学         国際関係学部教         授)      伊豆見 元君         参考人         (日本乗員組合         連絡会議議長) 川本 和弘君         衆議院調査局日         米防衛協力のた         めの指針に関す         る特別調査室長 田中 達郎君 委員の異動 四月七日               辞任         補欠選任   安倍 晋三君     橘 康太郎君   相沢 英之君     河本 三郎君   石川 要三君     鈴木 俊一君   大島 理森君     小坂 憲次君   宮島 大典君     井奥 貞雄君   伊藤  茂君     保坂 展人君 同日                 辞任         補欠選任   井奥 貞雄君     山本 公一君   小坂 憲次君     大島 理森君   河本 三郎君     相沢 英之君   鈴木 俊一君     石川 要三君   橘 康太郎君     安倍 晋三君   辻元 清美君     伊藤  茂君 同日                 辞任         補欠選任   山本 公一君     宮島 大典君   保坂 展人君     辻元 清美君 四月七日  新ガイドライン関連法制定反対に関する請願伊藤茂紹介)(第一八九〇号)  新ガイドライン関連法案立法化反対に関する請願辻元清美紹介)(第一九五九号)  同(北沢清功紹介)(第二一八〇号)  同(土井たか子紹介)(第二一八一号)  同(畠山健治郎紹介)(第二一八二号)  同(濱田健一紹介)(第二一八三号)  同(村山富市紹介)(第二一八四号)  日米防衛協力のための新たな指針関連法案の廃案に関する請願辻元清美紹介)(第一九六〇号)  新ガイドラインに基づく周辺事態法などの制定反対に関する請願石井郁子紹介)(第二一五四号)  同(大森猛紹介)(第二一五五号)  同(金子満広紹介)(第二一五六号)  同(木島日出夫紹介)(第二一五七号)  同(児玉健次紹介)(第二一五八号)  同(穀田恵二紹介)(第二一五九号)  同(佐々木憲昭紹介)(第二一六〇号)  同(佐々木陸海紹介)(第二一六一号)  同(志位和夫紹介)(第二一六二号)  同(瀬古由起子紹介)(第二一六三号)  同(辻第一君紹介)(第二一六四号)  同(寺前巖紹介)(第二一六五号)  同(中路雅弘紹介)(第二一六六号)  同(中島武敏紹介)(第二一六七号)  同(中林よし子紹介)(第二一六八号)  同(春名直章紹介)(第二一六九号)  同(東中光雄紹介)(第二一七〇号)  同(平賀高成紹介)(第二一七一号)  同(不破哲三紹介)(第二一七二号)  同(藤木洋子紹介)(第二一七三号)  同(藤田スミ紹介)(第二一七四号)  同(古堅実吉紹介)(第二一七五号)  同(松本善明紹介)(第二一七六号)  同(矢島恒夫紹介)(第二一七七号)  同(山原健二郎紹介)(第二一七八号)  同(吉井英勝紹介)(第二一七九号) は本委員会に付託された。 本日の会議に付した案件  委員派遣承認申請に関する件  日本国自衛隊アメリカ合衆国軍隊との間における後方支援物品又は役務相互提供に関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定締結について承認を求めるの件(第百四十二回国会条約第二〇号)  周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律案内閣提出、第百四十二回国会閣法第一〇九号)  自衛隊法の一部を改正する法律案内閣提出、第百四十二回国会閣法第一一〇号)     午前九時二分開議      ————◇—————
  2. 山崎拓

    山崎委員長 これより会議を開きます。  第百四十二回国会内閣提出日本国自衛隊アメリカ合衆国軍隊との間における後方支援物品又は役務相互提供に関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定締結について承認を求めるの件、周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律案及び自衛隊法の一部を改正する法律案の各案件を一括して議題といたします。  本日は、各案件審査のため、参考人方々から御意見を聴取いたします。  本日午前御出席参考人は、株式会社東芝顧問西元徹也君、日本労働組合連合会事務局長笹森清君、元駐タイ大使岡崎久彦君静岡大学助教授小沢隆一君、以上四名の方々であります。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  次に、議事の順序について申し上げます。  西元参考人笹森参考人岡崎参考人小沢参考人の順に、お一人十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対しお答えをいただきたいと存じます。  なお、念のため申し上げますが、御発言の際は委員長の許可を得ることになっております。  それでは、西元参考人にお願いいたします。
  3. 西元徹也

    西元参考人 おはようございます。  本日は、私のような未熟者を、二十一世紀にわたる我が国安全保障上極めて重要な意義を持っております本特別委員会に御招致賜り、かつ意見を申し述べる機会を与えていただきましたこと、まことに光栄に存じております。私は、三年前まで自衛隊部隊運用日米防衛協力の現場に携わっておりましたので、実行機関立場に立って意見を申し述べることをお許し賜りたいと存じます。  まず最初に、日米防衛協力のための指針、いわゆるガイドラインの策定の背景となるものについて、私見を述べさせていただきたいと思います。  ことしは、一九八九年にベルリンの壁が実質的に崩壊してからちょうど十年目に当たります。  一九九七年、すなわち二年前の十二月二十日付イギリスエコノミスト誌は、一九八九年に冷戦が終結したとき半世紀に及ぶ確実性時代は去った、冷戦という凍りつくような清冽さは濃霧に覆われた先行き不透明な平和に道を譲った、四十年間ずっと動かずにいた世界ベルリン壁崩壊から八年間動き続けている、このように述べておりますが、この認識は、基本的に今日も変わっていないと承知いたしております。  もう少し敷衍いたしますと、冷戦終結後、国交正常化や新たな国交の樹立、あるいは、各国の相互交流あるいは相互依存関係の深まり、また、全世界的には国連、我がアジア太平洋地域にはASEANリージョナルフォーラムといったような地域の安定を目指す多国間の協調的な機構の発展、充実といったような好ましい傾向が見られる反面におきまして、民族、宗教、領土、資源などをめぐる地域紛争発生の危険、あるいは、最近特に指摘されております大量破壊兵器とその運搬手段でありますミサイルの拡散の危険、また、テロ、麻薬、海賊行為隠密不法行動あるいはコントロールできない難民の発生流入といったような危険など、さまざまな危険や脅威が存在し、情勢は依然として不透明、不確実でございます。  このような安全保障環境の中で、我が国に直接的にあるいは間接的にどのような危険が及ぶ可能性があるかということを考察いたしてみますと、我が国に対するハイインテンシティーからローインテンシティーの全スペクトラムにわたる各種の直接的な武力攻撃、あるいは、場合によっては周辺事態から我が国に波及するテロ隠密不法侵入、あるいは不法行為各種破壊活動避難民流入、あるいはゲリラ、コマンドー攻撃、場合によっては弾道ミサイル攻撃あるいはその恫喝といったようなことが考えられ、また、我が国の海上、航空交通路に対する妨害重要資源へのアクセスへの妨害、あるいは海外に居留する我が国民の生命財産への危険といったようなさまざまな危険が想定をされます。  このような情勢の中におきまして、地球の陸地面積のわずか〇・二五%という狭い国土の中に一億二千八百万の人口を抱える資源小国たる我が国が、今までと同様に貿易立国を選択し、将来にわたって安定と繁栄維持していくとすれば、自国の平和と安全の確保、絶え間ない技術革新、あるいは自由貿易体制維持といったような基本的な要件に加え、資源への安定的なアクセス海外市場の安定的な確保、あるいは貿易のための各種経路の安定的な確保といったようなことは我が国の平和と安全と繁栄にとって極めて重要なものであり、この地域、ひいては世界のそれは我が国のそれに直接直結している、こう申しても差し支えないと思います。  以上のような情勢と条件の中におきまして、アジア太平洋地域におけるASEAN地域フォーラムあるいは全世界的な国連、いずれも、現状及び見通し得る将来において、政治、外交的な話し合いで解決できない安全保障問題の解決には依然として一定の限界があることは確かでございまして、これに我が国安全保障のすべてをゆだねるというわけにはなかなかまいらないのではないかと考えております。  したがって、私たちは、私が今さら申し上げるまでもなく、オープンな自由民主主義自由貿易体制維持し、経済的な相互依存関係が最も深く、しかも、自由、平等、人権といったようなさまざまな価値観を共有するアメリカとの日米安全保障体制を選択したわけでありまして、日米安全保障体制意義役割アジア太平洋地域の平和と安定の維持へ貢献するといったような観点からも、その機能の充実強化を図ることが極めて重要と考えております。  次に、ガイドラインの基本的な考え方について若干申し述べさせていただきます。  ガイドライン具体的内容は、第一に、平素から行う協力、第二に、日本に対する武力攻撃に際しての対処行動など、第三に、周辺事態における協力ということから成ることは、諸先生方もう先刻御承知のとおりでございまして、これについて細部を申し述べるのは差し控えさせていただきたいと思いますが、そのガイドラインがどのような基本的な考え方を持っているかということについての私見を申し述べさせていただきたいと思います。  私は、ガイドラインの基本的な考え方は、第一に、環境整備すなわち平和建設危機予防、第二に、危機の抑止、危機拡大防止あるいは危機の回避といったようなこと、そして第三に、我が国に対する武力攻撃を抑止すること、そして、万々が一我が国武力攻撃を受けるような事態には早期にこれを排除し収拾をすること、このようなことにあると考えております。  すなわち、ガイドラインは、一九九五年十一月二十八日の閣議決定によります防衛大綱の基本的な考え方にのっとり、冷戦終結後の新たな時代対応して、二十一世紀にわたり我が国の平和と安定と繁栄確保するとともに、この地域、ひいては世界の平和と安定の維持に貢献するために、平常時における平和建設危機予防、あるいは、事態発生が予想される場合における事態発生未然防止、これを重視する、いわば危機管理型の安全保障防衛政策を具体化したものであり、特定の国や地域を対象として、それへの対応を考えたものでもなく、ましてや、我が国アメリカと結託して、我が国政治的、軍事的な進出を意図しているというようなものでは絶対にあり得ないというぐあいに考えております。  最後に、以上申し述べました意義を有しておりますガイドライン実効性確保するための措置と、それについての若干の要望を申し述べさせていただきたいと思います。  この際、大変僣越でございますが、これらの整備について、特に次のような諸点に御留意を願えれば大変ありがたいと存じます。  その一つ目は、我が国安全保障政策目標安全保障政策遂行枠組み安全保障政策目標達成度合い、さらに日米の緊密な共同行動実施可能性といったことを総合的に検討していただきたいということであります。  失礼でございますが、要するに、単に手段だけではなくして、政策遂行枠組みを考慮した手段とその結果、安全保障目標達成度合いや、日米安全保障体制信頼性の向上といったようなことをどう調和するかという観点に立った御論議をぜひお願いしたいと考えております。  二つ目は、危機特性に応ずるタイムリーな措置を可能とする枠組みへの配慮でございます。  申し上げるまでもなく、危機事態における情勢は、一般に情勢の急変や停滞の繰り返しでございまして、変転きわまりなく、タイムリーな措置をとることを可能とする枠組みの構築は極めて重要であって、そのための配慮をぜひお願いしたいと考えております。  三つ目は、国、政府地方自治体総合力をもって対応し得る体制確立ということでございます。  冒頭に申し述べました、冷戦終結後の複雑多様な各種の危険や脅威に適時適切に対応するためには、地方自治体を含む国、政府総合力をもって対応することが不可欠でございまして、そのことによって事態早期に収拾することを可能とし、結果として我が国への影響を最小限に食いとめることになるのではないかと考えます。  四つ目は、自衛隊、警察、海上保安庁あるいはその他の実行機関立場に立った措置への配慮を願いたいということでございます。  言うまでもなく、国や政府政策実行機関の第一線の要員の行動によって初めて達成されるわけでございまして、これらの隊員政策遂行枠組みを遵守しつつ、しかもその人たちの安全を確保する、この二つのことをどう調和するかという配慮は非常に大切なのではないかと考えております。  五つ目は、実行機関にとっての準備重要性への理解をお願いしたいということでございます。  実行機関政府の命令に基づき遅滞なく万全の行動実施するためには、その諸活動における先行性並行性あるいは完全性といったようなことが重要でございまして、事前における十分な準備実施は不可欠でございます。  第二は、ただいま要望を申し述べました国内法制などの整備に続いて次のような措置をお願いしたいということであります。  一つ目は、計画体系確立各種実行計画の作成という問題でございます。  この点に関しまして、災害対策基本法に基づく国全体としての自然あるいは人為災害への対応はその一つのモデルではないかと考えます。すなわち、中央防災会議防災基本計画を受けて、関係行政機関防災業務計画を、地方自治体などは地域防災計画を作成し、さらに、その下部の国の出先機関自衛隊部隊あるいは市町村は地域特性に応じたそれぞれの計画を作成します。そして、それらの計画は、すべてのレベルにおいて相互にすり合わせが行われ、事態発生した場合の迅速的確な対応を可能とするばかりでなく、そのための訓練の実施の準拠ともなっております。  周辺事態につきましては、一九九七年九月二十九日の閣議決定によりまして、このような体制確立するということが決定されていると承知いたしておりますので、そのことを強く期待いたしたいと存じます。  ただ、我が国有事という最も厳しい事態にこのような体制が全く欠落しているということも諸先生方ぜひ御認識いただきたいと存じております。  二つ目は、各種行動における行動基準、いわゆるROEの制定でございます。  我が国特性から、諸先生方の現在の審議の焦点になっております各種行動につきましては、政策遂行枠組みの遵守ということと部隊隊員の安全の確保ということをどう調和するかといった、いわゆる行動基準制定をし、政治の責任において実行機関に示し、実行機関が迷うことなく的確な行動ができるような配慮をぜひお願いしたいと考えております。これは必ずしも国会のお仕事ではないかもしれませんが、先生方にもぜひ御理解を賜りたいと思います。  お手元の資料にあります三つ目四つ目は、ガイドラインの中に書いてあることでございますので、時間の都合上省略させていただきます。  最後に、もう一点申し上げておきたいと思いますが、先生方の議論では、周辺事態我が国へ波及するというおそれがあるということの御論議がなされている。我が国に波及するとすれば、その事態によっては明らかに我が国有事となります。したがって、我が国有事においてどのように対応するのかということを、国民の皆様の御理解を粘り強く得ながら、将来ぜひ御検討をいただきたい、このように切に願う次第でございます。  終わりに、我が国安全保障をただいま申し述べました新しい現実と二十一世紀の課題に対応できるようにするためには、この法案成立は非常に重要な意義を持っていると思います。ぜひとも早期成立をお願いしたいと思います。  以上をもって私の意見陳述を終わらせていただきます。失礼なことがあったかと存じますが、どうかお許しをいただきたいと思います。  ありがとうございました。(拍手)
  4. 山崎拓

    山崎委員長 ありがとうございました。  次に、笹森参考人にお願いいたします。
  5. 笹森清

    笹森参考人 おはようございます。連合笹森でございます。  今回、お呼びをいただきまして大変光栄に存じておりますが、連合立場から申し上げますと、組織の中では、労働四団体が統一をされてからちょうど十年目になります、十年たちますが、この外交防衛ガイドラインの問題については、国民世論と同じように、連合としては完全に意見が一致をしているというような状況にはなっておりません。なっておらないということが余計に、国民の声をどういうふうにまとめるかという立場でやらなければいけない連合役割もあるのかなというふうに考えまして、ややお招きを受けたときに逡巡はいたしましたけれども、そういうような立場での意見を申し述べさせていただければ、こういう思いの中で本日出席をさせていただきました。  そういう意味では、連合は八百万の構成人員がおりますが、国民の一部を代表する立場、そういう意味合いを今申し上げたように込めまして、上程をされているガイドライン関連法案に関する意見を申し述べたいというふうに思っています。  まず、民主主義ルールに沿ったこの国会という場で、不明点疑念点に対して明らかにした上で、政治的な対応を図ってほしいということが要請の一つ目部分です。  それから二つ目は、労働組合という立場から、国民レベル組合員という言葉を私どもは使いますが、市民生活をしている国民でありますので、そういった生活の不安や生命危機に至る事項、すなわち、この法案の中で取り扱われておりますいわゆる第九条の民間協力施設提供についての主張、ここの部分を私どもとしては重要視した意見を申し上げたいというふうに思っております。  陳述の仕方といたしましては、ガイドラインに対する考え方について触れさせていただきまして、その上で、本法案にかかわる明らかにしていただきたい事項内容についての意見という手順を踏ませていただきたいというふうに思います。  まず一番目が、日米の新ガイドラインに対する連合立場での見解であります。  この新ガイドラインにつきましては、九五年の一月に、自民党、社会党、さきがけの連立政権時代における村山政権下において、村山総理クリントン大統領による会談での日米安全保障体制堅持重要性の再認識、こういう観点から会談が行われまして、それを受けまして九六年の四月に、橋本内閣における橋本クリントン会談日米首脳会談での日米安保共同宣言を経て、九七年の九月に日米双方における最終確認を経て合意したものだ、こういうふうに今認識をしております。  したがって、この経過から見ますと、国民の審判を受けずに成立をした二政権下において合意に達したこの新しいガイドラインについては、日米双方の国家的な合意だというふうに重く受けとめはいたしますけれども国民側の今までの長い経過から申し上げますと、ガイドラインについて、重くは受けとめるけれども、明らかにさせていただかなければならない内容というのがかなり多くある。このことについて、国会の中でルールにのっとった対応をしていただいた上で、締結をするなら国民疑念が解消される方向になるようにということをまず第一番目に申し上げたいと思います。  その上で、旧ガイドライン日米共同作戦計画基軸に置いた日本有事対応であったというふうに私ども理解をしておりますが、この新しいガイドラインについては、日米相互協力計画基軸に置いた周辺有事対応になっている。それにもかかわらず、本来日本有事対応であったはずの日米安全保障条約の再定義を行ったけれども条約改定を行わずに日米双方合意をしたというところに、最大の問題点があるのではないかというふうに考えております。  したがって、日米安全保障条約は本来二国間同盟であったものを、この新しいガイドラインの設定によりまして、本来の日米安全保障条約改定せずに地域全体の安全保障を担保するものに変質をさせてしまったのではないかというふうに思っております。  連合は、私どもみずからが十年をかけてつくりました連合の「国の基本政策」の中では、現行の安全保障条約維持していくということについては確認をしておりますが、今申し上げたような条約改定を行わないで安全保障条約を変質させたということについては問題視せざるを得ないのではないかというふうに思っております。  それから、周辺事態法にかかわる問題についても、日本周辺地域後方地域という用語に関係をして、この新ガイドラインの時点から明確化されていない。このことが不明確なまま合意をされるとするならば、我が国の将来に対する不安と疑問を生じざるを得ないということも申し上げておきたいと思います。  さらに、この日米ガイドラインにつきましては、米軍活動における日本の支援として民間協力及び自治体の施設提供がうたわれておりますけれども日本有事対応から周辺有事対応に拡大をされた新ガイドラインにおいて、協力提供の必要性が生じるのかどうか、このことについては疑問があります。  そういったような観点の中から、各項目について、私ども考え方を幾つか申し上げたいと思います。  まず、この法案は、昨年四月の百四十二回通常国会において、橋本内閣により政府提案がされて、審議未了のまま小渕内閣の方に引き継がれ、今回政府提案として審議をされている性格を持つものでありますけれども、内閣における連立の枠組みが変わったというにもかかわらず、原案のまま審議をすることに矛盾がないのかどうか、このことをまず指摘をした上で、個別課題について申し上げます。  まず、周辺事態安全確保法案につきましては、民主主義ルールにのっとりまして、当然の権利として国民の意思により周辺事態に必要となる措置の基本計画を停止、修正できる機能を持つべきであるということがまず第一点です。  この考え方に基づきまして、その具体的な機能としては、法案に定められた基本計画において、その措置の実行に当たっては国会承認とし、その方法については、緊急を要する場合の事後承認を除いてすべて事前承認にすべきだというふうに思っております。  私どもがマスコミ報道等で仄聞をしている中では、自衛隊の出動の是非のみを国会承認の対象とすることで調整を進めているように聞こえておりますけれども、現行の自衛隊法での日本への直接攻撃に対する自衛隊の出動は理解ができるにいたしましても、周辺事態という範囲での自衛隊出動のみが国会承認となることは、出動時点や出動範囲の面からも不明確でありまして、不安と疑問を生じざるを得ません。政府は、基本計画まで触れると膨大な作業量と時間がかかる、こういうふうに言っているようでありますが、緊急を要する場合を除きましてという断り書きをしているにもかかわらず、なぜ時間的余裕もある周辺事態にこれまでかたくなに対応についてできないというふうにこだわるのか理解ができないところでありまして、自衛隊の出動のみというのは、ただ単に有事体制周辺事態を同一視した考え方ではないかというふうに受けとめております。  また、事前承認後の対応につきましては、経過事後の歯どめ見直し措置として、十五日、三十日、六十日条項といったような承認後の経過見直し措置を入れまして、対応措置早期解決に努力をすべきではないかというふうに思っております。  それから、周辺事態の定義につきまして、これは明確になっておらないというのが受けとめ方でありまして、ぜひこの国会の場を通じて明らかにしていただきたい。その場合におきましては、あくまでも防衛的性格を持つべきものであって、法案が現行の日米安全保障条約に根拠を置くべきことを明確に記すべきであるというふうに考えます。  さらに、周辺事態の範囲につきましては国会審議の決定にゆだねていきたいというふうに思っておりまして、労働組合立場からその線引きについて言及をするというようなつもりは全くありませんが、今申し上げたような定義及び国際地政学の観点から、おのずとその範囲は限定をされてくるのではないかというふうに考えております。  そういった意味で、周辺事態発生におきまして、法案にかかわる重要個別課題が生じた場合においても、国会承認によって歯どめを講じる措置をとるべきだ、そのことも明記をするべきである。  さらに、武器の使用及び武力行使、後方支援活動における武器の使用、船舶検査、機雷除去等、この法案の争点になっている事項についても、国会審議の過程の中で明確にしていただきたい。そのことが国民の不安と疑念を取り除くことになるのではないかというふうに思っております。  さらに加えまして、この法案措置のうち、冒頭申し上げた民間協力施設提供部分の問題についてでありますけれども周辺事態という特性から、自衛隊の守備範囲のみで可能か精査の上で、可能であれば新ガイドラインでは立法上の義務づけを行わないということを明記してあることを根拠にして、削除をすべきではないかというふうに思います。審議の上、仮に削除不可であるというふうになった場合には、国会において、民主主義ルールにのっとって、具体的当該協力内容を明らかにして点検精査をしていただきたいということを申し上げておきたいと思います。  また、この件にかかわりまして具体的措置が生じた場合におきましては、国会承認により担保すべき最重要事項とすべきで、そのことの取り扱いもぜひ御理解がいただければというふうに思っておりますが、この点につきましては労働組合立場から強く主張をしていきたい点でありまして、私どもの加盟組織の中には今までに何回かこの危険な作業にかかわらざるを得なかったという立場に置かれた組織があります。中には被弾を受けたケースもありまして、有事体制でもない周辺事態においてもここまで一般的な国民生命を危険にさらしていいものかどうか、この国会の中でぜひ慎重に審議をしていただきたいというふうに思っております。  それから、この法案成立を前提にいたしまして、市民運動としての、港湾施設を持つ各自治体に対しまして外国艦船に非核証明書提示の義務づけを行ういわゆる神戸方式、これは函館、高知というふうにいろいろありますが、私どもは、神戸方式の条例請願が行われている実態について、運動を地域に居住する生活者の不安を解消する観点から理解をしていきたいというのが連合の基本的な態度であります。したがって、この民主主義ルールにのっとり行われておる運動が、政治的な意図で妨害をされるようなことがあってはならないのではないかというふうに考えていることも申し上げておきたいと思います。  あわせまして、この法案に関連をいたしまして、民間協力施設提供において、昨年、沖縄県道百四号線越えの米軍実弾演習本土移転による、矢臼別、北富士、王城寺原での演習に伴いまして、輸送ルートの変更、民間航空機による輸送、兵員、兵器輸送の国道使用、地元病院の緊急医療支援要請等が行われた事実があります。このような既成事実についても国会の中でぜひ明らかにしていくべきであります。  加えて、日本の国内において七割の米軍基地を抱える沖縄を初めとする演習地におけるアメリカ海兵隊員による不祥事等、看過されている現実を直視して、改めて、一方的に我が国国民に負担を押しつける日米地位協定についても、国会の中で審議をし、性格づけやその対応について明確にしていただきたいというふうに思っております。  これに加えまして、最近の新聞報道、これは三月二十二日付の朝日新聞になりますが、この中で明らかにされていたのは、この法案では基本原則だけにとどめて、法案以外、例えて言うならば日米地位協定第二条四項(b)の件、自衛隊法、港湾法、航空法、特別措置法の一部等々に民間協力施設提供等が容易にできるように法律化されていることに、新たなる疑念を持たざるを得ないというふうに思っております。  この中身が、特に防衛施設庁関連の特別措置法の土地収用におきまして、新規の使用、収用を入れ込ませているというふうに受けとめられる内容になっておるわけでありまして、法律の拡大解釈以外の何物でもないのではないかというふうに私どもは考えております。  この内容につきましては、地方分権法の一部を占めている内容でありますが、地方分権法とは何の関係もないというふうに考えられておりますので、ガイドライン法案に明記をされないものがほかの法律で適用されるということになりますと、国家に対する不安と恐れが増大するのみで、得策ではないというふうに思っております。したがって、今国会においてこの点についてもぜひ明らかにされるように御要請をしたいと思います。  連合としての立場の中では、冒頭申し上げたように、まとまっていない中での、そのことが逆に国民の声になるのではないかという思いの中で出席をさせていただきまして、意見を申し上げさせていただきました。どうかよろしくお願いしたいと思います。(拍手)
  6. 山崎拓

    山崎委員長 ありがとうございました。  次に、岡崎参考人にお願いいたします。
  7. 岡崎久彦

    岡崎参考人 ガイドラインの問題は、新聞などで拝見しておりますと、かなり議論が詰まっておるようでございまして、問題点も絞られているようでございまして、私は、むしろ、本日は、日本の外交、安保政策に関する基本的な問題からお話し申し上げたいと思っていたんでございますけれども、時間も限られておりますので、先に結論の方から申し上げます。結論と申しましても、今、具体的に問題になっている点についての考え方でございます。  結論から先に申し上げますと、今回のガイドラインというのは、これは、従来の日米安保協力体制、これに不備な点がいろいろあった、たまたま、冷戦時代、有事というものが一切なかったものでございますから、問題点は出てこなかった、しかし、それをそのままで放置しておくわけにもいかないということでもって、日米同盟を強化して日米同盟の信頼関係を高める、そういう目的で始めたわけでございます。  ですから、すべての問題は、その目的に沿っているかどうかというクライテリアで考えるべきだと思います。もし、そうでなければ、こんな新しいものをつくる必要は全然ないのでございまして、もし、これをつくった結果、それがいささかでも日米の同盟の信頼関係に悪影響を与えるなら初めからつくらない方がいいわけでございまして、つくる以上は、これが一体どういうプラスがあるか、あるいは、つくった結果、少しでもマイナスがあるようならその部分は削除する、そういう態度で臨むべきだと存じております。  それで、一つは、最近問題になっております周辺事態の定義でございます。  これは、確かに、私も経緯を拝見いたしましたが、あいまいな点がございます。安保条約の適用地域というのは極東なんでございますけれども、今度の周辺事態法では、日本周辺であって、日本の安全に重要な影響を及ばすような事態、そういうふうに書いてございます。これは、実はガイドラインの交渉を始めたときからそういうのが入ってしまったんですね。初めから極東にしておけば何の問題もなかったんでございますけれども、それが入ってしまった。その経緯はいろいろあるんでございますけれども、これはやはり双方の思惑があったんだろうと思います。思惑と申しますよりも、当初の思惑は、これを恐らくもう少し広げたいという気持ちがあったんだろうと思います。  これは、例えばペルシャ湾とかそういうあらゆる事態において、日本のやはり安全に重大な影響を及ぼす可能性がある、そういうところまでやはり考えて、少しはゆとりのあるというつもりで入れたんでございましょうけれども、今度、それを厳しく解釈いたしますと、日本の安全に重大な影響がある事態と、そうすると、そういう重大な影響がないと考えたら、もう適用しなくていいことになっていく。これは逆に狭くなるんですね。  そういう議論もまた出てきてしまう。これは今回の協定の本旨に反します。もし、そういうことをしてこれが日米の信頼関係に影響を与えるようなら、これは初めからつくらない方がましです。ましというよりも、つくる必要は全然ございません。もともとこれをつくる意味はございませんですから。  ただ、それを超す部分はどうするかということでございますけれども、今まで合意したものを超すわけでございますから、これは日本が考えて決めていいわけです。これは日本の世論を考えてもよろしゅうございます。この部分については私は幾ら議論があってもいいと思いますし、結論として超さない方がいいということになれば、それを超した部分は、これはまた全然別の問題でございますから将来の問題にする。それはそれでいいと思います。ただ、それを少しでも狭めるような議論、これはあくまでも避けるべきだと私は思っております。それが一つの結論でございます。  それから、もう一つ国会承認でございますけれども、これは全部程度の問題でございまして、それから、今までも現に防衛出動は国会承認が要るわけでございますから、これは物の考え方の問題でございますけれども、やはり一般原則は、日米同盟の信頼関係をなるべく損なわないようにする、安保条約の機動性を損なわないようにする。まして、今まで自由にできたこと、自由でございませんけれども、することが許されたこと、それまで縛るというようなことになりますと、これは日米信頼関係に傷をつけます。その点だけは細心の注意が必要である。その二点が私の結論でございます。  あとはもうごく一般論で申し上げます。  日米同盟、日米同盟と申し上げまして、どうして同盟がそんなに大事なのかという御疑問も出ると思うのでございますけれども、それは、伝統的な外交、防衛政策において同盟というものは一番大事なものでございます。  これは孫子の言う、上兵ははかりごとを討ち、次は交わりを討つ、それから三は兵を討つ、四番目は城を攻める。要するに、最初は戦略、国家戦略ですね、自由と民主主義とかそういう国家戦略。第二が同盟関係なんです。第三が敵が攻めてきたらそこで戦争をするという話で、第四はこっちから行って城を攻めるという話、これは最低である。これは孫子の兵法でございます。日本の場合は、国家戦略は一も二も大体同じでございます。これは日米同盟でございます。  どうして伝統的に同盟がいかに大事かと申しますと、安全というものは戦争を想定して考えるものでございまして、戦争をした場合、敵の兵力を半分撃滅する、これはもう大勝利、これは勝利でございます。これはもう大変なことで、ほとんど不可能でございますけれども、例えば敵が同盟している場合、同盟を切れば敵の力は半分になります。これは一兵も使わずにして敵の戦力を半分にします。我が方としては、半分兵力をつぶされたらこれでもうほとんど全滅というわけでございますけれども、同盟を切られたら全滅に等しくなります。ということで、同盟というのは国の存立、死活に関する問題なんですね。  ですから、日本の過去を思い返しても、日本が平和で安全で、しかも自由、デモクラシーが発達したのは、日英同盟の二十年間と日米同盟の五十年間です。これが切れて糸が切れたたこのようになりますと、どこへ行くかわからない。日米同盟を維持するということが、日本の国家と国民の平和と安全、自由、これ全部の保障でございます。ですから、これをいささかも緩めるようなことをしてはならない。  また、これに対していろいろな反論がございますので、少しずついたしますと、同盟同盟というと自立とか自主外交に反するのではないか、あるいはそういうことを言っていると平和主義に反するのではないか、そういうことがございます。  ただ、すべての政策の当てはめる基準というものは国家と国民の安全と繁栄でございます。そこに今自由と独立を入れてもいいのでございますけれども、安全の中に自由と独立は入りますから、安全と繁栄でございます。それ以外の基準を持ち込むと非常に混乱するのでございますね。例えば、同盟じゃ自立していないと。それでは、自立という基準を持ってきて国民の安全と繁栄を少しでも損なっていいのか。いや、そんなことはないんだ。それはやはり、どうしても国民の安全と繁栄は大事だ、そういうことになってくる。国民の安全と繁栄を守るというだけで大変な仕事でございます、これはもう政府の全力の仕事でございます。その中に自立という考えを入れることは大変難しいのでございます。  平和主義も同じでございまして、アメリカの言うとおりになっていたら平和主義が傷つくという話がございますけれども冷戦中、それでは平和主義を守るために日本の防衛力を少し減らして、北海道だけはしようがない、本州を守ればいい、その程度持てばいいのですかと。そうしたら、そんなことない、とんでもない、北海道も守らなきゃならない。北海道をソ連から守るとなりますと、大変な軍備が要るのです。これはどうしても必要なんです。やはり国民の平和と安全ということを最大の基準にして、それ以外の考慮はなるべく入れない方がいい。  ただ、もちろん、そういうことを言いますと、いや、そんなこと言っていないので、それはわかるけれども、余りアメリカべったりだからもう少し自立を、そういう話になる。これはまた何でもない話でございまして、日本の平和にも安全にも繁栄にも何にも関係のない部分というのは外交にあるのです。その小さな部分でちょっとアメリカに盾突いて、おれは自立したと言えばいいわけでございます。  ただ、そんなことはこういう神聖な国会でお話しするほどのことではございません。そのくらいの知恵はございますけれども、あくまでも日本国民の安全と繁栄が中心でございます。  そこからまいりますと、これはやはり、結局、将来は集団的自衛権の行使になります。それを使わないで済めばいいのでございますけれども、使わないと同盟が崩れるという可能性が十分ございます。このことはやはり考えなきゃいけない。  例えば、朝鮮半島でもし有事が起こって、また、アメリカ軍と韓国軍が釜山に追い詰められていつ全滅するかわからない、アメリカが助けてくれということを言う、もう本当にSOSを出す。そのときに、日本が三百機のF15を一機も飛ばさない。これはアメリカの議会が許さないです。これは日米同盟の根幹が崩れます。そういう可能性は十分あるんです。  これは別に日本だけじゃございませんでして、例えば、冷戦時代、イギリスは、ソ連軍が入ってきてドイツ人が何万人死のうと、イギリス人の兵隊を一人も殺す気はないです。ドイツ人は幾ら死んでも構わないんです。ところが、イギリスが戦争をしなければイギリスとアメリカとの同盟関係が崩れるんです。イギリスとアメリカの同盟関係が崩れたら、イギリスは滅びるんです、イギリスという国はもう生きていけなくなる。そのためには、同盟を守るためには、核全面戦争さえもするんです。それほど、やはり国民の安全を守るためには同盟というものは必要なものでございます。  それを守るためには、これは別に集団的自衛権の行使などというものはふだんから大きな声で言う必要はないのでございまして、万が一同盟が崩れる、同盟が崩れて日本が存立できなくなる、そういうおそれが出てきたときは、これはもう使わざるを得ない、そう考えるべきところでございます。  そうすると、ガイドラインとの整合性でございますけれども、実際問題としましては、これは平和時でございます。平和時にいろいろな計画をするときに、アメリカが、いや、それは集団的自衛権を行使してもらえれば一番いいけれども、とてもそこまでいかないだろう、だけれども、できることとできないことぐらいははっきりしてくれ、それによって日米同盟の信頼関係はつながるんだ、そういうことでございます。  日米同盟の信頼関係、これは、はっきり申しまして、いろいろな形でつながっておるのでございますけれども一つの非常に重大な柱は、日米政府機関の信頼関係というのは非常に強いんです。これは、日本自衛隊の能力を非常に向こうは高く買っておりまして、現に、アメリカで親日家というのは、日本を守ってくれるのは大体ペンタゴン系統です。これが中心でございます。その両者が非常に苦労してつくりましたガイドラインでございますので、これを作成当時の精神どおりにきちんとつくる、これで平和時における日米の信頼関係はつなげます。  ですから、今回これを通すということは非常に重要なことでございます。ただ、それで安心してはいけないので、本当に有事になった場合は、これはやはり日本の存立に関する問題が出てまいります。これは、必ず出るとは申しません、出る可能性があるということでございます。その場合は、やはり集団的自衛権まで考えなければいけない、それが私の結論でございます。(拍手)
  8. 山崎拓

    山崎委員長 ありがとうございました。  次に、小沢参考人にお願いいたします。
  9. 小沢隆一

    小沢参考人 静岡大学人文学部で憲法学を専攻しております小沢です。  本委員会に付託されている二法案と一協定案について、憲法学の観点から意見を述べさせていただきたいと思いますが、これらには、平和主義を初めとする憲法の諸原理に照らして、看過しがたい問題点が含まれていると思われます。  まず最初に、周辺事態措置法案についてです。この法案については、四点意見を述べさせていただきます。  まず第一点、周辺事態についてです。  まず前置きとして、周辺事態の概念が地理的なものでなく事態の性質に応じるものであるという説明は、その際限のない拡大の懸念を禁じ得ません。ただし、ここでは、安保条約六条が定める「極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため」の合衆国軍隊の武力紛争への関与、これが同時に周辺事態となる場合を想定いたします。この想定は十分成り立ち得ると思います。なぜなら、去る三月三十一日と四月一日の本委員会での審議では、合衆国軍隊が日本周辺で武力紛争に関与している場合が周辺事態に該当する可能性政府答弁によって確認されているからです。  日本に対する武力攻撃がなされてはいない、このような場合を日本の平和と安全に重要な影響を与える事態と認定するのには、極東のある国あるいはそのある国とともに対処している合衆国と日本が集団的自衛の関係にあるとの前提が必要と思われます。しかし、このことは、集団的自衛権の行使は憲法に違反するとした従来からの政府見解と矛盾をいたします。また、いわゆる六条事態では日本は合衆国に対して基地を提供するのみであるという現行安保条約枠組みからも逸脱することになります。  法案政府の従来からの憲法解釈と矛盾し、現行安保条約から逸脱するということは、そのことだけをもってしても法案の撤回の理由になると思われます。  第二に、後方地域支援についてです。  この概念をめぐっては、政府により、合衆国軍隊の武力行使と一体にならない、また、憲法が禁ずる武力の行使には当たらないとの説明がなされていますが、この説明は、憲法学の立場からすると理解に苦しみます。  まず、国際的な武力紛争にあっては、戦闘行為も補給、輸送等の兵たん活動もひとしく軍事目標、すなわち攻撃対象となるというのが国際法のルールです。法案の言う後方地域支援活動というのは、あえてこれを正確に表現し直せば、後方地域における兵たん活動です。このことは、実は今回の改定ACSA案が何より物語っております。  日米ACSAはもともと、一九九六年に、自衛隊と合衆国軍隊の共同訓練、PKO活動、人道的な国際救援活動、これらに必要な後方支援、ロジスティックサポート、すなわち兵たん支援、これのために締結され、今回の改定案でそれが、周辺事態での後方地域支援、リアエリアサポートなどにも適用されようとしています。  九六年段階のロジスティックサポートは紛争相手国を想定しない活動に対するものであったのに対し、今回の案では、武力紛争のリアエリアでのロジスティックサポートを含むということになるわけですから、合衆国軍隊の紛争相手国から軍事目標とされる危険性があります。  なお、兵たん活動の国際法的な合法性は、武力行使の合法性と関連をしております。政府は、周辺事態での合衆国の対処は合衆国自身が主体的に判断するとしていますから、後方地域支援の合法性の判断が挙げて合衆国にゆだねられているという問題もあろうかと思います。  また、憲法第九条が国家に対して禁止しているのは、戦闘行為という狭い意味での武力行使だけではありません。憲法は、前文で「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすること」を求め、そして、それを踏まえて九条では「戦争と、武力による威嚇又は武力の行使」をトータルに禁じています。憲法第九条に「武力の行使」の文言が入っているのは、正規の戦争ではない事実上の武力行使も含めてこれを禁じ、戦争放棄の趣旨を徹底するという趣旨から出たものであって、禁止の対象を戦闘行為に限定するという趣旨ではありません。  九条は、戦争や武力行使を任務とする人的、物的組織体の活動を全体として禁じているものです。それゆえ、後方地域支援が狭い意味での武力の行使ではないということは、その合憲性の根拠にはなり得ないと思われます。  三番目に、国会への事後報告の問題です。  法案は、基本計画の決定と変更の場合における国会の関与を事後報告で済ませていますが、仮にも我が国の平和と安全に重要な影響を与えるとされる事態への対処手続としては、余りにも国民主権、議会制民主主義の原則を軽視するものと言わざるを得ません。何をもって周辺事態とするかの認定手続あるいは基準が定められていないことも、あわせて問題であります。  この点に関連しては、政府は三つほど理由を挙げていまして、武力の行使を含むものでないこと、国民の権利義務に直接関係するものではないこと、迅速な対応の必要性を挙げています。しかし、それぞれ、武力の行使は先ほど申し述べたように狭く解し過ぎてはなりませんし、また、今回の法案国民生活と権利に重大な影響を与えることになります。また、現行の自衛隊法の七十六条と比較してさえも立憲的統制が後退しているなどという問題をここでは指摘しておきたいと思います。  四番目に、武器の使用についてであります。  法案で想定されている武器の使用は、武力の行使と区別をされております。しかし、ここで使用される武器の種類については特段の限定がなく、また、使用に際して上官の命令によることは当然とされ、そして自衛隊法九十五条の定める武器等の防護のための武器使用の適用も当然とされております。これらのことから、武力の行使との境界が著しくあいまいになっていることは否定できません。  また、政府答弁によれば、後方地域支援活動の際に武力攻撃を受けた場合に、自衛権行使の三要件に該当すれば反撃も可能であるとされております。後方地域支援活動そのものには武器の使用が前提とされておりませんけれども、しかし、このような対応もあるとされております。これは、私の見るところによれば、集団的自衛権でしか説明のつかない後方地域支援活動を行いつつ、そして、もしその際に攻撃されれば、個別的自衛権、すなわち先ほどの三要件にかかわります個別的自衛権で反撃を正当化する、こういう論法でありまして、論の立て方が正しくないと考えております。  いずれにせよ、この法案は、もし実際に実施に移されるならば、その武力行使の可能性法案の文面を超えてはるかに大きいものであるということを指摘しておきたいと思います。  次に、もう一つ法案であります自衛隊法の改正案についてであります。  この案においては、外国における緊急事態に際しての自衛隊による輸送に新たに船舶等の使用と武器の使用が認められようとしております。しかし、国際慣習法やあるいはジュネーブ条約、シカゴ条約などの国際条約によって民間旅客船や旅客機については武力紛争時に保護がされますが、しかし、軍用機などにはその保護の適用がありません。軍用機による民間人の輸送は、非常な危険が伴うわけです。しかも、武器の携行とその使用は危険をさらに増幅させると思われます。  また、武力を背景にしなければ経済活動あるいはその他の民間交流を進めることのできない国だという印象を国際社会に与えることは、日本に対する信頼を損ね、そしてまた海外の在外邦人の安全をかえって害することになりかねないと思います。本案は、国家と民間の双方のレベルでの外国との平和的な関係を突き崩すものとなる危険性を私は持っていると思います。  総じて、現在付託されている法案協定案は、二十一世紀に向けて日本が全世界の諸国民とともに平和的な国際社会を築く上で、礎となるよりもつまずきの石となり、戦後、曲がりなりにも戦争目的の海外派兵をしないことによって築き上げてきた日本への信頼を大きく損なうものであると言わざるを得ません。  慎重な審議の上、これらをひとまず廃案とし、二十一世紀の平和保障のあり方を、日本国憲法の原点に立ち戻り、国民の英知を結集して構築することを国民代表府たる貴院に求めます。そしてまた、何よりも、二十一世紀を生きる日本世界の若者たちの未来のための選択を誤ることのないよう求めて、私の参考人としての意見陳述を終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。(拍手)
  10. 山崎拓

    山崎委員長 ありがとうございました。  以上で参考人からの御意見の開陳は終わりました。     —————————————
  11. 山崎拓

    山崎委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大石秀政君。
  12. 大石秀政

    ○大石委員 参考人の皆様、本日は御苦労さまでございます。年度初めの本当にお忙しい時期に、お疲れさまでございます。  私は、実は一九六三年生まれでございまして、安保改定も知らない世代でございます。当委員会は割合若い議員の方が多くて、実体験がないというのは、その世代も含めていろいろ複雑な思いがあります。さきの大戦を経験された方とそうでない方というのもあると思うのですけれども日本でもこれから戦後生まれの総理というようなものも近々誕生するのではないかという流れになってきたときに、戦争とかそういうものの実体験がないということがこれからどういう影響をするのかということをまず考えておきたいと思います。  今、NATOの攻撃がユーゴの方でされているわけですけれどもクリントン大統領も恐らく戦後生まれだと思いますし、恐らくあの方はベトナムにも行っていらっしゃらないと思います。そういう実体験のない方が、今、陸戦といいますか、そういうものを御判断されようとしている。その心中のいろいろな複雑さというものも、私は、私たちの世代というのは一般国民の中では割合もういい年なのですけれども、そういった国民方々あるいは有権者の方々が大分今日本の中にもふえているということも認識しつつ、この審議も進めなければいけないと思っているわけでございます。  西元参考人にはいろいろと御意見をいただきまして、ありがとうございます。おおむね私も同感でございます。  この問題について今一番私が申し上げたいこと、そして認識しなければいけないと思っていることは、今度のこの法案あるいは新ガイドラインというものが、いろいろな、有事も含めまして、そういったものに対する抑止ということについて働くという、そういう確信というものを持つように国民の皆様方にも十分な説明がなされなければならないし、政治家としてもそういうものを体して審議をしていかなければならないと思っているわけでございます。  先ほど、基本的考え方の中に危機の抑止ということを述べられたわけですけれども、もう少し具体的に、どういうことで危機の抑止になるかということをお話しいただければありがたいのです。よろしくお願いいたします。
  13. 西元徹也

    西元参考人 具体的な場面を想定して申し上げるのはなかなか難しい点があるわけでございますが、危機の抑止のためにはいろいろな手段があると思います。  もちろん、第一義的には、政治外交的な話し合いによってこの問題を解決するということが第一番目だろうと思います。次いで行われます措置は、恐らく、それでもどうしても相手が納得をしないというような場合には、経済的措置がとられるのではないかと思われます。その経済的な措置は、私が申し上げるまでもないと思いますけれども、国内における資産の凍結だとか、あるいは最終的には禁輸といったようなところまで発展をするものだと思います。  そして、そのような措置を講じても、なおかつまだ危機の鎮静化ができないということになりますと、当然、これは国連承認を得て行われるかそうでないかはそのときの情勢によると思われますけれどもアメリカを中心とする各国の共同した軍隊の展開というようなことによって危機を抑止する、そのようなさまざまな抑止の体制があるのではないかと思います。  それでは、この周辺事態関連法案がそのこととどういう関係があるのかということにつきましては、すなわち、我が国が、先ほど岡崎先生おっしゃいました、我が国の安全と繁栄維持するためにこの地域の平和と安定の維持は絶対の要件だということになりますと、そのために努力をするという体制を、この法案によってしっかりその意思を示すこと、そのようなことが、国際的な相互協力我が国協力するということを通じてそのような力が働くのではないか、このように考えております。
  14. 大石秀政

    ○大石委員 どうもありがとうございます。  そこで、もう少し、今の具体的なというお話もございましたが、どうしても国会の審議ですとそういうふうになってしまうのですけれども、心理的に他国に脅威というものは与えないと思いますけれども、簡単な言葉で言うと、攻めにくいというか、そういった状況をつくることが、ある程度、心理的な危機といいますか、有事の予防になるかとも思うんですが、その辺はいかがでしょうか。
  15. 西元徹也

    西元参考人 確かに、抑止という問題は相互の心理作用でございます。したがって、ある措置をとって事態が鎮静化した、仮にこういうことになった場合におきましても、それを証明するということは非常に困難を伴います。  例えば、かつて、ボスニア・ヘルツェゴビナの紛争の場合に、ボスニアにありますセルビア勢力の拠点を一つ一つつぶしていきながら、最終的にはセルビア側を納得させ、選挙に持ち込み、平和維持軍が展開して今日の情勢をつくり上げたといったようなこと。これは、果たして一つ一つつぶされた結果そうなったのかということを証明することは非常に難しいと思われます。  また、一九九三年から九四年にかけての朝鮮半島をめぐる危機の場合においても、やはり米軍はそれなりの軍事抑止策をとったと思われます。例えば、韓国に対してペトリオットを配備するとか、攻撃ヘリコプター・アパッチを配備するとか、これはもちろん装備の入れかえということで措置したと理解しておりますが、その他、空母機動部隊の展開といったようなこと、最終的にはカーター元大統領の訪朝によってこの問題は解決いたしましたけれども。  そのような背後にある心理的な影響力、これがどの程度きいたのかということは非常に証明が難しいことでありまして、ましてや当事国は、そのために自分はある意図を断念したというようなことは絶対に言わないわけでございまして、この辺が、武力によって排除されたということと抑止策によって鎮静化したということとの非常に大きな差になるのではないか、このように思います。
  16. 大石秀政

    ○大石委員 どうもありがとうございました。  ちょっと、先ほど西元参考人が言われた中で、周辺事態がほかのところに波及するといいますか、そういう話もございました。  私、この法案関係でちょっと思っていたんですけれども、具体的な名前はあれだということなので、例えば、A国がB国に武力侵攻をしたといたします、日本周辺というところで。極東にいる米軍なりが展開をした場合、すぐにその事態が済めばあれなんですけれども、長期化をするとか、あるいは戦闘をしなくても対峙する、そういう可能性もあるわけです。  そうしますと、一時的に、展開する前というのは、兵力がどこに行くかわからないので、かなり広い範囲で威嚇といいますか、心理的威嚇というものを含めてあれなんですけれども、一カ所にそういうことが起こったということで展開をいたした場合、後から多少兵力といいますかそういうものを、補給というとおかしいですけれども、そうしないと、別のところで、ある面、武力といいますかいろいろな事態発生するという可能性。兵力の均衡というとおかしいですけれども、そういうことのバランスの中で、ちょうど地震が起こるときみたいに、プレートが、地下でせめぎ合って保たれているのが、一つのところが動いたことによって一つのところが別に発生するということももしかしたら考えられるのではないかと思うんですが、そのあたりはいかがでしょうか。
  17. 西元徹也

    西元参考人 確かに、先生のおっしゃるとおりに、軍事バランスの均衡という観点からいけば、そのような事態が全くないということは言えないと思います。  しかしながら、少なくともそのような措置をとる場合においては、アメリカの場合は全世界的な態勢ということをよく考慮した上で必要な措置をとるもの、このように考えております。したがって、あるところへ対応したからといって直ちに他の場所が火を噴くというようなことには私はなり得ないのではないか、このように考えます。
  18. 大石秀政

    ○大石委員 今のことをもう少し詰めたいと思うんですけれども、二カ所のそういった事態に本当に対応できるのかというのはかなり重要な問題かと思います。片方で半島の方で何か緊張状態が起こって、片方で海峡の方でいろいろ即応しなければならないことが起こった場合、本当にそういう大きな二つのものに対して同時に対応できるようなものが米軍も含めてあるのかというのは非常に重要だと思うんですけれども、その辺はいかがでしょうか。
  19. 西元徹也

    西元参考人 アメリカの国防報告の見直し、これによります基本的な考え方は、アメリカ二つの主要な地域紛争に同時に対応し得る能力を保持するということを目標にその戦力整備あるいは戦略行動をとっている、このように理解をしております。  私は、現状において、全く完全同時に二つの紛争を戦って、同時にこれを完全に収拾するといったような能力までいっているかどうかということは確信を持っているわけではございませんけれども、少なくともその二つのメジャー・リージョナル・ウオーというものに対応する能力を目指して戦力を整備していることだけは事実だと思います。
  20. 大石秀政

    ○大石委員 実際には、今ユーゴの方で展開をしているものの、直接的ではないですけれども影響というものが、玉突き状態というとあれですけれども、艦船等も含めて出たりなんかしておりまして、なかなか完全というわけにはいかないと思うんですけれども、片一方だけをちゃんと収拾したからといって、もう片方をほったらかしか手が回らないというような事態になりますと、これは極めて、より重要な事態になりますので、そういう点も含めて、私は、そういうこともあり得るんだということを十分兵力の上でも理解した上でこういうことは進めなければいけないと思っているわけでございます。  次に、災対法をというお話が先ほど御提案の方で西元参考人の方からございました。  私は静岡県ですので、東海大地震の予測なども含めて、随分子供のころからいろいろな訓練等も学校の方でしてきたわけですけれども、そういったところは、今回この法案一つの論点になっております国と自治体との関係といいますか、そういうものにもかなり関係が深いと思います。  わかりやすくというと失礼かもしれませんが、まことに不幸なことですけれども、阪神大震災というものが起こりました。あれも私は有事の一つだと思いますけれども、そういったときに、国がどうの地方自治がどうのと言っている場合ではないというのはあれかもしれませんけれども、そういったときには、自然な気持ちといいますか、自然な状態的に国と地方が協力をするのは、当然という言葉が当たるかどうかわかりませんけれども、非常に自然であるというふうに私も考えているわけでございます。今回の法案における国と自治体というものの関係については、いろいろと取りざたされているところもあるんですけれども、私は、意外にそういう説明が国民の皆様に理解を得られやすいし、ある面わかりやすいかなという感じもするんですけれども、その辺はいかがでしょうか。
  21. 西元徹也

    西元参考人 私も先生と基本的に同じ考え方でございます。  かつて阪神・淡路大震災のときに、神戸は、御承知のように海岸線に対して奥行きが非常に狭く、東西に非常に長い地域でございます。しかも道路はそれぞれ非常に限られて、その道路が破壊されているというような状況でございました。ここに災害救助活動の根拠地として一番大きな役割を果たしたのが自衛艦、船でございます。  御承知のように、海からアクセスして、それぞれ東西の非常に長い間に展開をして、これが地上で活躍する陸上自衛隊の非常に大きな後方支援と申しますか、あるいは安心感のよりどころになりました。結局、その自衛艦をそこに停泊させていただくということは、その地域の非常時だったということが非常に大きな役割を果たしていたと思うのですね。したがって、我が国の平和と安全と繁栄にとって本当に重要な事態であるとすれば、各地方自治体は任意によって御協力をいただけるものと私は確信をいたしております。そのために、ぜひとも政治が、そのような意味があるんだということを国民の皆様に訴え、地方自治体協力を求めていただきたい、このように考えております。
  22. 大石秀政

    ○大石委員 どうもありがとうございます。私も同感でございます。どうしても選挙期間中というのはいろいろと複雑な問題もございますので、議論を高める上では大変いいと思いますけれども、国と地方公共団体の今回の法案の中での関係というのはそんなものかな、それが自然なのかなというふうに私は思っているわけでございます。  次に、国会承認の問題につきまして、同じく西元参考人岡崎参考人にお聞きをしたいと思っております。  いろいろとこの問題も国会の中では複雑な様相を呈しておりますが、実際問題として、西元参考人のお話の中には国会承認という言葉は出てこなかったんですけれども、いろいろ国会の中でも議論の中で出ているんですけれども、どのような思いをお持ちなのか、少しお聞かせいただきたいんですけれども
  23. 西元徹也

    西元参考人 私は、本日は、法案の個々の具体的な内容に言及することは避けさせていただきましたけれども、間接的にそのようなことについては申し上げたつもりでございます。  その第一点は、危機事態というのは、本当にある日情勢が急激に変化したり、またある時期はずっとその情勢がとまっていて、またそれが突如変わってくるということの結局は繰り返しでありまして、タイムリーな措置をとるということがどうしても必要になると私は考えております。また、自衛隊、警察、海上保安庁といったような実行機関立場に立ちますと、その人たちは基本計画に従って恐らくその行動計画を立て、所要の見積もりをして行動に移っていく。そうでなければ絶対に正しい、適時にして適切な行動というのはとれないのではないかと私は思います。  そうしますと、そのような観点からも適時性ということは非常に重要になるものと思われます。とりわけそのことが影響いたしますのは、私は基本計画だと思います。基本計画ということは、少なくとも、私が実行機関立場に立ちますと、国会の報告事項にとどめておいていただくか、万々が一の場合も事後承認ということにとどめていただきたいなと思います。  もちろん、国会承認ということが全く意味がないわけではないと思います。というのは、行動する部隊隊員行動の士気に及ぼす影響、それはもう十分に国会承認を得られた場合の方があり得るわけでございまして、したがって、何を国会承認とし、何を報告とするかということは、政治の賢明な御判断によってぜひとも御検討いただきたい、このように思います。
  24. 岡崎久彦

    岡崎参考人 西元元議長の意見とほとんど同じでございます。私の考え方も、つけ加えることはございません。  例えば、一つだけ例を申しますと、先般の北朝鮮の不審船のケースなんですね。あれは、閣議決定も私はちょっと不要の手続だったと思いますけれども、あの前に国会承認ということは、これはあり得ないことなんですね。ですから、ああいう緊急事態に際しては、国会の事前承認というのは大変難しいと私は思います。
  25. 大石秀政

    ○大石委員 ありがとうございました。  岡崎参考人にもう少し、アメリカとの関係ということでお伺いをしたいと思います。  私も、アメリカという国が万能であるとは考えませんが、では、ほかにパートナーとしてこれ以上の国があるかというと、そうではない。それからいっても、今の日米関係というのは非常に自然なのかなと思います。  今の国会承認の話もありますけれども、その中でいわゆる事前協議というものがありまして、それが、日米信頼性といいますか、そういった中でいろいろと議論があるわけですけれども、そういうことについて何か御意見があればお聞かせいただきたいんですが。
  26. 岡崎久彦

    岡崎参考人 事前協議というものは、米軍が米軍の基地から直接行動する場合、あるいは装備とか編成に重大な変更がある場合、その場合は事前協議が必要だということになっております。  ただ、その場合にすべての問題について白紙でイエスかノーか言うかというと、そうではございませんで、事前のいろいろな経緯がございまして、安保条約ができたときの経緯から申しまして、朝鮮半島有事、これはもうほとんど自動的と申しますとやはり語弊がございますけれども、極めて迅速に対処しないとこれは危ない、そういうところでございます。  それで、沖縄のときは、これは当時はアメリカの占領地でございますから事前協議も何も要らない、自由に出撃できたのでございますけれども、それを返さなければいけないということなりまして、沖縄返還のときに佐藤・ニクソン合意というのがございます。それは、韓国の安全は日本の安全にとって緊要である、それから、台湾の安全は日本の安全にとって重大な要素であるということを言っております。ということは、その二つ地域について事前協議を受けたときは、そうした日本の約束を十分に考えて行動する、前向きに行動する、そういうことでございます。
  27. 大石秀政

    ○大石委員 どうもありがとうございました。  時間を整えるという意味で以上で終わりたいと思いますが、私が一九六〇年代初頭の安保の国内のいろいろな騒乱と言うとあれですけれども、結構大学のキャンパスなんかも近々の韓国の大学のような感じになっておりまして、今ちょうど年度初めなんで、入学式、今の大学は穏やかにやっておりまして、何もあのように騒げということは言うつもりもございませんし、言う権利もございません。  しかしながら、これからの若い人たちにも、一番むしろ関係する話でございますので、冷静かつ幅広いこの法案に関する関心を多く持っていただいて、より多くの皆様方の御理解を得た上でこの法案成立することが国にとって一番よいことであると私は思いますので、そういった意味でも、できるだけ幅広い方々の御協力を得てこの法案成立することを心から祈念をいたしまして、私の質疑を終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。
  28. 山崎拓

    山崎委員長 これにて大石君の質疑は終了いたしました。  次に、桑原豊君。
  29. 桑原豊

    ○桑原委員 民主党の桑原でございます。  参考人の四人の皆さん方には、それぞれの立場から大変貴重な御意見をいただきまして、本当にありがとうございました。  本来、安保、防衛、そういった国の基本にかかわる大きな重要な問題でございますから、国の議論がしっかりと一致をして、一つの方向でやっていくというのが最も望ましいわけですけれども日本の場合には、最後の目指すところの平和というものは皆同じなわけですけれども、この間のたどってきた歴史でございますとか世界情勢の中で、やはり国内の議論がいろいろ分かれている、そのことを率直に反映もされたそれぞれの御意見でもあったかな、こういうふうに受けとめさせていただきました。  日本の場合には、敗戦というものがあって、その後憲法が誕生した。再び戦争の惨禍に見舞われないように、そういったことを反省をしてああいった憲法が誕生した。しかし、一方ではいろいろな事態もあり得るというようなことの中で、その事態対応するためにというようなことで日米安保というものも誕生した。その二つを基本に置きながら戦後の日本の平和と安全というものが追求されてきたわけですけれども、残念ながら、国民の中の思いとして、この二つの歯車といいますか軸といいますか、そういったものが必ずしも世界のいろいろな動きの中でかみ合ってこないというところがいまだに尾を引いておるのかな、私はこういうふうに思います。そして、冷戦というものが終わって、新しい事態対応しようとしているわけですけれども、そのことの中で、なおかつこの問題が十分整理をし切れないままに今日に至っているような気もいたしております。  このガイドラインの問題というものをきっかけにして、そうしたことがきちっと整理をされて、日本の新しい平和と安全の道筋というものが敷かれていくために、私は、相当しっかりした、突っ込んだ国民的な議論というものがこの機会に必要なのではないかな、こういうふうに思う立場でございます。  そこで、最初に笹森参考人にお伺いをしたいと思います。  このガイドラインの議論が、残念ながら、国民的な理解と支持のもとで、大変重要な問題であるにもかかわらず十分行われていないのではないか。そういうふうなことの中で、国民の中には、第九条という形で、自治体への協力であるとかあるいは国民協力依頼するとかという形でひょいと出てきたときに、それが一体どういうものを意味していくのかというようなさまざまな議論や憶測、具体的な例も例示をされていますけれども周辺事態のそういった想定などとも絡んで、一体どこまでどうなのかというような、非常な不安と危惧があるということも事実かというふうに思います。特に、参考人が御指摘になられたように、かつての湾岸戦争のときなどに、いわゆる大変な仕事内容を通じて危険な目に遭ったとか被弾をしたとか、聞くところによると死者も出たというようなことでもございます。  そういう意味では、この周辺事態になったときに、国民の基本的な人権であるとかそういったものがどういう状況になるのかということに非常に大きな関心を寄せているのが現実であろうというふうに思います。  私は、さきの総括質疑の際にこの問題に少し絞って、例えば民間への協力ということで、企業や団体がそれを応諾して協力に応ずるというようなことになったときに、そこに働く労働者も、企業が応じたわけですからそれに従わざるを得ないというのが、法律関係の中ではそうなっていくわけですけれども、やはり生命の危険、そういったものを考えて、どうしてもそのことを納得できないというふうにその労働者が一つの拒否をするというようなことになったときに、恐らく、それぞれの法律関係で処理をされますから、大変な処断も受けるだろうし、不利益もこうむるということになろうかとも思うわけですけれども、そうなると、具体的に国民に対する協力というのはかなり強制的なものを含んでくるのではないか。そんなときに、一体、国民のそういう思いを、そういう拒否の行動を支持していくようなことはどうなのかというふうな質問をしたわけですけれども、これは当然のことながら、その法律関係にそれぞれ従って行われることです、こういうようなことで、もしどうしてもということであれば、自分の存在をかけてやっていく、それぞれ自分自身で頑張るしかないのだ、こういうようなお話でございました。  私は、そのことについて連合というお立場で、労働組合に課せられるまたいろいろな使命も出てくると思うのですけれども、そういうことなども含めて、どのようにお考えかということをまずお聞きをしたいと思います。
  30. 笹森清

    笹森参考人 桑原先生のお尋ねにお答えをしたいと思います。  私は六〇年安保世代でありまして、生まれは戦中派になるのですが、実体験は全くありません。ただ、今回のガイドライン問題が出ましたときに、連合の中央執行委員会の中で、先ほど意見陳述をさせていただいた内容についての取りまとめを行いました。六〇年代、七〇年代の安保問題をめぐる大変な労働組合側のいろいろな経過から思いますと、隔世の感があるなというのが実感として持ったわけですが、それでも、先ほど申し上げたような状況についてもっと明確にしろ、こういうことが意見としてはたくさん出されておったわけです。  その中で、先ほども意見の中でも申し上げましたけれども、今桑原先生の方から御指摘のありました民間協力と自治体協力の問題、これについては当該の組合の方からも強硬な意見が出されたことは事実です。先生が委員会の中で御質問されている内容についても、私どもも見させていただきました。聞いている内容については全く同感の気持ちで伺っておったのです。  特に最後部分の、労働組合がどう対応するのかというところについては、これは、今行われようとしている米軍と民間の契約が成立をする、その場合に民間協力提供しようじゃないか、こういう内容になっていると思うのです。  その場合に、では、そういう取り決めになっているにもかかわらず、なぜ政府が今回の中で民間協力とか自治体協力について触れなければいけないのかということが非常におかしいなというのがまずありますね。それからもう一つは、結果的に政府が関知しないという扱いになった場合に、そういう条文があるならばこのガイドラインの中からはそのことを抜いてもいいじゃないかというのが我々が削除を求めた基本的な考え方になっているわけです。  そのことをやった場合でもどうしても協力をせざるを得ないというような米軍と提供する側の企業なり自治体との関係が出た場合に、自治体も我々の組合員がおりますし、民間企業もほとんどが連合組合員というのが、今まで協力提供した企業の実態、組織の実態からいうとそういうことになっておりますので、ここの部分については最終的には労働者の拒否権明示、こういったものを労働協約の中に、我々としては提案をし、そのことをかち取っていかなきゃいけないだろう。  そうでありませんと、企業が契約をする、そのことに対して働く側がどういう対応をしていいのかというのを、一方的に押しつけられた場合に何の抵抗もなくそういうところに連れ出されていくことになってしまうわけで、したがって、全体的には、拒否権明示の労働協約を締結をするということに我々は全力を傾けたい。その上で、そのことが具体的な問題として起こった場合には、議決機関に組織上の執行としてかけて、その上で、提供するということについての安全保障がどうなるのか、我々の個人的な安全保障がどうなるのかというものについて明確にさせた上で、参加をするかしないかということの組織判断をしていくという手続をとりたいというふうに思っています。  したがって、就業規則にかかわる部分労働協約に関して、労働者の拒否権明示を求める事項を明確に記させたい、そのことに連合としては取り組みの力を入れたいというふうに思っています。
  31. 桑原豊

    ○桑原委員 憲法の九条もいろいろとやかく大変な議論になる条文なんですけれども、この周辺事態法案の九条もいろいろな意味で、笹森参考人が言われた、本当にこれが必要なのか、そしてこれをつくったときにどんな効果が及んで、国民の権利義務に影響を及ぼさないという大前提があるわけですけれども、それをどこでどう保障していくのかという点では、受ける国民の側も、それを求めようとする国の側、政府の側でも突っ込んだ議論をする必要が私はまだまだかなりあるのではないか、こういうふうに思いますので、その点についてなお一層の参考人の側のいろいろな意味での御努力、御協力をお願い申し上げたいと思います。  そこで、次に西元参考人にちょっとお伺いをいたします。  参考人は、一昨年の五月の安全保障委員会での参考人質疑の中で、アメリカといろいろないわゆる同盟関係にある国がございますけれども、NATOにいたしましてもあるいは米韓の同盟にいたしましても、実際のいろいろな事態対応するときには一元的な指揮というもののもとでそれぞれの対処行動が行われる、これが最も望ましいんだというふうにおっしゃっておられたかと思います。しかし、日米の同盟関係協力関係は、調整によるところの二元指揮である、この二元指揮をやはり補強する必要がある、そういう言い方ではございませんでしたけれども、二元指揮というのは一元指揮に比べるとそういう意味では対処にやはりかなり問題もある、そういうことを補うにはやはり明確な政治の指示、いわゆるどのような分野において日米の防衛協力を行うのかという政治のガイダンスというものが必要なんだと。  恐らくそれがガイドラインということにつながっていくんだろうと思うんですけれども、私がお聞きしたいのは、そのことによって、一元指揮と、このガイドラインによる調整といいますか相互協力といいますか、そういったものとほぼ同じような効果をあらわすことになるのか。あるいは、そういう対処の仕方をするにしてもいろいろとまだまだ問題があるんだ、一元指揮に比べれば非常に問題があるんだというような認識でおられるのか。一元指揮に一歩近づいたというふうな認識でおられるのか。そこら辺、いわゆる具体的な事態に対する対処の指揮の問題としてどのようにとらえておられるのかということをまずお聞きしたいと思います。
  32. 西元徹也

    西元参考人 お答え申し上げます。  ただいまの、一元指揮、二元指揮、この新ガイドラインはその本質的な問題で変わったかということにつきましては、結論的には、何ら変わってないと理解をいたしております。  と申しますのは、周辺事態における日米間の関係というのは被支援、支援の関係でございまして、戦闘作戦指揮とは全く異なる分野の問題だと思います。  したがいまして、我が国有事、すなわち、ガイドラインの具体的な第二項に書いております日本に対する武力攻撃に対する対処行動等、ここの分野では今のような調整によるいわば二元指揮ということがとられるわけでございますけれども、その二元指揮は、一元指揮に比べて適時性という問題については多少劣るところがあるといたしましても、関係者としては最大限の努力をしながら、その政治の指示の範囲内において得られる効果を追求する、こういうことになるんだろうと思います。  繰り返して申し上げるようですが、この問題について本質的な差異は全くないと認識いたしております。
  33. 桑原豊

    ○桑原委員 ちょっと私の理解のあれなんですけれども、本質的な差異がないというのは、一元指揮と二元指揮といいますか、その調整のシステムで対処するやり方との間に本質的な差異はない、そういうことでよろしいのでしょうか。
  34. 西元徹也

    西元参考人 基本的にそのとおりでございます。  したがって、ガイドラインの中には、包括的メカニズムという現存するさまざまな組織と、それから調整メカニズムという新たな国家全体的な組織をつくるということを規定いたしておりますので、それが、危機に際して国家の総合力を発揮して、アメリカと協調ができるというような形にでき上がっていくことを期待いたしております。
  35. 桑原豊

    ○桑原委員 それから、同じときの参考人のお話をまた引用させていただきながら御質問させていただきたいと思うんです。  これは、西元参考人、それから笹森参考人、そして岡崎参考人のお三方にちょっとお聞きをしたいと思うんですけれども、その委員会の中で、冷戦時代には、周辺事態対応するガイドラインのようなものを例えばその時代にもしつくるといたしますと、相手国に武力攻撃の口実を与えたり、あるいはそれを誘発するような危険性が非常に生ずる、そんな議論が多かったとあって、そうしたことを行うことには大変慎重であったけれども、先ほど西元参考人、紛争を未然に防ぐ、危機管理の問題ですね、それから拡大を防止していくとか、そのようなことでお触れになられましたけれども、そういった事態の拡大をどのように防止をしていくのか、あるいは未然に紛争を終結させていくとか、そういった危機管理型の情勢対応に現在は移ってきておる、そういう意味で極めてガイドラインというようなものが必要だというような趣旨を恐らくおっしゃられたというふうに思っておるわけですけれども、確かに、そういうふうな必要性というのは一面あるという議論があると思います。  ただ、一方では、周辺諸国、日本の周辺の例えば中国であるとか、北朝鮮はそういう意味ではちょっと別個に考えてもいいのかもしれませんけれども、北朝鮮の対応ども含めて、あるいはロシアの対応ども含めて、ガイドラインに対していろいろな意味での不安というものも少し存在する。あるいは、北朝鮮のミサイル対応などとの関連で、日米が共同開発をやろう、研究しようというふうに取り組もうとしているTMD、戦域ミサイル防衛、そういったものの問題に対しては、中国やロシアやあるいは北朝鮮なども含めて、かなり厳しい対応がございますし、それから、現在NATOがユーゴを爆撃しておりますね。この空爆などについても、アメリカを中心にした世界秩序の形成には反対をする。これはやはりアメリカ世界的な主導権を確保しようとする方策なんだというようなことで、これに中国やロシアや、あるいはインドなども含めてでしょうか、一定の厳しい反発もある。  こういうことで、やはり日米防衛協力のあり方次第では、アジア太平洋に新たな冷戦を生み出してしまうような、そんな可能性もあるわけですね。これは私は、そこら辺のバランスをどうとって、そういうものではないんだということをちゃんとしたことの中でわかってもらうような努力というのが当然必要だと思うのです。そういう不安を、懸念を払拭するような目に見える努力というものが当然必要だというふうに思うのですけれども、残念ながら、政府がいろいろ国々に働きかけてお話をしてもまだまだそれが払拭をされていない、そんな現実がございます。  これについて、今後こういった懸念を払拭するために何を一体なすべきなのかということについて、三人の参考人の皆さんに少し御意見をお伺いしたい、こういうふうに思います。
  36. 西元徹也

    西元参考人 私は、本日意見陳述の際に申し上げましたけれども、その基準となりますのは、あくまでも我が国の平和と安全と繁栄維持ということ、そのことが、このアジア太平洋地域はもとより全世界の平和と安定に直結をしている、こういう認識から、とにかくその平和と安定を維持するために日本が必要な貢献をするんだ、こういうことなんだと思います。  そして、しかもそのことは、繰り返し申し上げるようですが、第一になすべきことは、この平常時における平和建設とか危機予防、これには、時間がございませんので申し上げませんが、さまざまな諸活動があるわけであります。そのことをこのガイドラインは同じく可能にしているわけでございまして、そのための努力を十分に尽くして、そのようなことがないようにこの情勢を持っていく、そのためのものでもあるということをしっかりと説明するということがもちろん大切でございます。  それから、その平常時における平和建設危機予防といったことと、平常時からの抑止、これはもう完全に相反する問題でございますので、あなたの国はその対象になっていますよとか、あなたの国はなりませんよということを申し上げられるような筋合いのものでもございませんし、また、そのようなことを意図してつくられたものでもないと思います。  したがって、私は、このガイドラインの基本的な考え方というものを粘り強く繰り返して関係諸国に説得をする努力を払っていただきたい、このように思っております。もちろん、民間人たる私も、かつてのおつき合いのあった方々にそのことを繰り返し繰り返し申し上げております。
  37. 笹森清

    笹森参考人 連合は、外交、防衛のあり方について基本的な考え方のまとめをしております。これは、あくまでも平和に徹するという日本、そして、国民の安全を保障するという役割、その上で、近隣諸国に脅威を与えないという日本立場、この三つを堅持しながら、今まで日米安全保障条約が果たしてきた役割を一応評価しております。  その上で、日米関係を重視しながら近隣諸国に脅威を与えない、そういう立場をとり続けていくとするならば、今の世界の軍縮の傾向ですとか、冷戦構造が解けたとか、こういう今の状況の中から見ますと、軍事的側面から経済、社会、文化的な側面に、日米安保条約というものを変質させていくべきじゃないか、そちらの方にウエートをかけていくべきじゃないかということを、まず基本的に思っております。  それから、今、国民の側からの立場で見ますと、六〇年、七〇年の時代とは大変隔世の感がするというふうに先ほど申し上げましたけれども国会の中で論議をされている内容をマスコミ報道を通じて聞くわけですね。そうすると、この二十年間、三十年間の論議がいつまでたっても言葉の解釈をめぐってのやりとりにすぎないわけで、現実に日本有事の場合、周辺事態対応はどうするのかということは、もう解釈上の問題ではないはずなんです。仮に解釈をするとすれば、もう少し国民にわかるような、いわゆる言葉の逃げではない、明確な解釈をどういうふうに出すかということを、今、国会の中では求められているんではないかというふうに思っております。  そういう意味では、冒頭の陳述で申し上げました内容は、ここの国会が、国民に対してガイドラインなり日米安全保障条約について、日本はこういう対応をするんだというのをもう明確に言わなければいけない時期だ、その上で、国民判断がそれでオーケーとするのかノーとするのかということにつながっていくんじゃないかというふうに思っています。  基本的には、冒頭申し上げた三つの原則、平和と、国民の安全と、近隣諸国へ脅威を与えないということを原則にした、防衛に徹する日本対応についての最終的な見解を取りまとめていただければというふうに思っております。
  38. 岡崎久彦

    岡崎参考人 一般論だけ申し上げても実態がわかりにくいと思いますので、具体的に申し上げます。  日本の防衛力強化、あるいは日米同盟を強化すると周辺の国が不安に感じる、この議論はよく聞くのでございますけれども、これは実はかなり人為的な議論なんです。私はこの委員会で、七八年から八一年まで三年間、三百回近い答弁をいたしましたけれども、そのときの三年間でそういう問題は一切出ておりません。それから、あらゆる新聞にもそういうことは一切ございません。それから、アジア諸国の新聞にもございません。つまり、戦争が終わって三十年して、その問題は一応解決した問題だったわけです。これはもう事実でございますから、どこを探してもそういう問題は出てまいりません。  その後、この問題が出てまいりましたのは、例の八一年の教科書問題以来でございます。あれ以来、これも事実でございますけれども、特に日本のマスコミでございますけれども、アジア諸国に行って、日本の防衛が少しでもふえると軍国主義の復活は怖くないかと聞いて歩く、そうすると、そう聞かれれば怖いと言う、それが日本の新聞に出る、そういう形でもって、一種の国際的な世論と申しますか、向こうはいつもそういうコメントをする体制になっているものですからできたわけですね。  そのうちに、韓国は、これは国内世論になりました、みずからの世論になりました。中国は、これは中国の戦略にとって非常に有用でございますので、それを使うようになりました。東南アジアの方は、まさにおっしゃった、これはどうやって説得するんだという話でございますけれども一つ一つの説得が全部成功しまして、今反対している国は全くございません。ガイドラインに心配を表明している国もございません。ありますのはシンガポールだけでございますね。シンガポールが九二年以来大体中国と同じような発言をするようになっております。特に華僑系があるものでございますから。  ですから、残りましたのは韓国と中国と北朝鮮、それからシンガポールだけでございましたけれども、韓国は、昨年の金大中政権になってから、政府はもう反対いたしておりません。新聞には若干残っております。そうなりますと、あと説得を要するのは、中国と、中国と同じことを言っているシンガポールだけでございますね。ですから、一般にアジア諸国の懸念というようなことをおっしゃるのは、これは往々にして誤解のもとでございまして、中国をどうするんだ、そういう話でございますね。  これは、中国に対して説得するのは難しいのでございます。台湾海峡の問題もございまして、中国は難しいのでございますけれども、説得するのは、これはもう大所高所から説得するよりしようがないので、結局、日米同盟というものがしっかりしている、これはもう圧倒的な力を持っておりますので、これさえしっかりしていればアジアの平和、安定は守れるのでございます。これが崩れるとアジアの平和というのはごちゃごちゃになるのでございます。  結局、アジアの平和というのは日米同盟がどのくらいしっかりしているかの関数でございますので、これをしっかりするための努力である、これによってアジアの平和が守れるんだ、それ以外の説得の方法はないと存じます。
  39. 桑原豊

    ○桑原委員 ちょうど時間となりました。大変貴重な御意見、ありがとうございました。
  40. 山崎拓

    山崎委員長 これにて桑原君の質疑は終了いたしました。  次に、遠藤乙彦君。
  41. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 公明党・改革を代表しまして、質問させていただきます。  四人の参考人先生方には、大変御多忙の中、貴重な御意見を賜りまして、まことにありがとうございます。時間も限られておりますので、端的に御質問させていただきます。簡潔にお答えをいただければと思っております。  冷戦後の日本安全保障、それからアジア太平洋の平和を考えるときに、大きなテーマは具体的に二つあると私は思っております。一つは北鮮の問題、もう一つは米中関係の将来がどうなるか、この二つに現実には絞られると思いまして、この具体的な問題に即してやはりこのガイドラインの問題等も審議をしていく必要があるかと思っております。  そこで、当面の大きな問題は北鮮の問題でございまして、特に、核開発、ミサイル開発、そういった高度な軍事技術が移転をしつつあって、そういった国でも現実に開発しているということが最大の問題であります。日本の安全から考えても、どうやってこの北朝鮮の核開発、ミサイル開発を抑制していくのが有効なのかということ、さらに、これは恐らくなかなか難しいと思いますが、将来、北朝鮮が兵器を完成し、配備した際に、どうやって有効に抑止をしていくか、そのための最も効果的な戦略はいかんということを四人の先生方にお聞きしたいのです。  恐らく安全保障の専門家じゃない方もいらっしゃいますが、私見で結構でございますので、率直なところを簡潔にお答えいただければと思います。
  42. 西元徹也

    西元参考人 北朝鮮のただいま御指摘のような危険に対しましては、まず第一に、国際社会が一致結束して対応するということが最も重要なポイントではないかと思います。北朝鮮としては、各国の思惑あるいはパーセプションギャップをついて行動してくるというのが北朝鮮の行動の常でありますので、その辺が第一に必要な点だと思います。  第二に必要な点は、我が国みずから北朝鮮の脅威対応し得るような体制というものをしっかりと形づくっておくということだと思いますが、そのために最も重要なことの一つが、言うまでもなく、日米安保体制の機能の充実強化ということに尽きると思います。それと同時に、我が国として、法制の整備を含めて、どのような体制を築いていくのかということだと思いますが、とりあえず、今のような段階の中では、国連、それからASEAN地域フォーラム、朝鮮半島の安定をめぐる四者会談、さらにはKEDOといったような機能をフルに活用して、北朝鮮を外交的に説得していくという努力が当面は最も大事だろう、このように考えます。
  43. 笹森清

    笹森参考人 私だけがどうも専門家じゃないようでありまして、この問題については大変お答えしづらいのですが、一般的にということですから。  朝鮮半島の安定が日本にとって極めて重要、このことは全国民みんな一致をしていると思います。その中で、軍事的な解決に頼るのか、外交的な解決に頼るのか。私は、やはり日本の外交力をもう少し強化して、その上で朝鮮半島の安定にどのくらい寄与できるかということにもっと力を入れるべきだ。  その中では、政府としての外交、それから行政としての外交、さらには民間としての外交と三つあると思うのですが、民間外交の方は今のところ極めて偏った点しかできておりませんので、全体的なものとして国民がそういうものに目を向けて、三者がそれぞれの力の中で外交面の強化をしながら、武力に頼らないという、朝鮮半島の安定に向けて努力をすべきではないかというふうに考えております。
  44. 岡崎久彦

    岡崎参考人 私は、北朝鮮政策の基本は、アメリカと韓国との協調が大事だと思っております。  と申しますのは、一たん戦争が起こった場合のステーク、つまり損害、これが、韓国がこうむる損害、それから在韓米軍がこうむる損害、これに比べまして日本の損害というのは非常に少ないのであります。ミサイルが飛んできた場合に、確かに損害はあるのでございますけれども、それは韓国、アメリカと全く比べ物にならない。そうなりますと、やはりステークの大きい国の発言を尊重するのが本当でございます。  外交的なあれでございますけれども、一時は日本が韓国、アメリカよりも先にということがあったのでございますけれども、最近、これがいろいろな事情で逆転いたしまして、特にミサイル問題と拉致事件ですね。ミサイルは、今まで日本には脅威ではなかったのですけれども、せいぜい大阪までと言っていたのですけれども、どうも日本全土をカバーするようになってきて、これがかなりの脅威になってきたということで、むしろ日本の方がややおくれた感じになりまして、これは私は健全なことだと思います。これは、米韓が決定してから後からついていくというのは、日本の外交として正しい方向だと思います。  やはり日本に心配なのは核とミサイルでございますけれども、核はアメリカが交渉しまして米朝合意ができましたので、これは一応しばらく凍結できると思います。ミサイルはこれからでございます。これからペリーの報告が出まして、その結果がどうなるか、ちょっとわかりませんけれども日本が希望しておりますのは、ミサイルについては、アメリカ、韓国、日本が足並みをそろえてかなり強硬な姿勢をとらなきゃいけない。これはアメリカもどうもわかってくれているようでございます。ただ、これは結果が出るまでよくわかりません。
  45. 小沢隆一

    小沢参考人 何よりも、この問題は日本国憲法の原点に立った対応が必要かと思われます。日本国憲法の前文は、恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を全世界の諸国民とともに持っていこう、こういう立場でありますので、まさにそういう観点から、軍事的な対処ではなく外交的な対処をしていくとか、あるいは条件反射的な対応は厳に慎むということが肝要かと思います。その点で言えば、TMD構想などへの参加というのは私は問題が多い対応ではないかというふうに考えております。  以上でございます。
  46. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 では、第一問に関連をしまして、若干専門的な話になってまいりますが、これは西元参考人岡崎参考人にお伺いします。  核につきましては、NPT等があって、国際的な一応レジームがあって、これは比較的交渉はしやすいと思うのですが、ミサイルの方はほとんどないというのが現状でございまして、どうやってこれをつくるかということが大きなテーマだと思いますので、この点、どうやって日本として取り組むべきなのかという点が第一点です。  それからもう一つは、TMDですね。ミサイルの抑止に対するTMDの問題、日本としてこれをどう位置づけていくのかという二点につきまして、御両者から聞きたいと思います。
  47. 西元徹也

    西元参考人 まず、ミサイルの規制に取り組みます日本の態度ということでございますが、ミサイルの規制には、MTCRという、ミサイル関連技術輸出規制というものがございます。残念ながら、この規制はいわば紳士協定でありまして、実効性ということに非常に大きな問題があることは御承知のとおりでございます。  現在、世界の軍縮関係条約の中で最も有効な機能を発揮するのは、私は化学兵器禁止条約だと思います。これにはチャレンジ査察というようなことまで含まれておりますので、ミサイルの移転を防止するということを、単なる紳士協定にとどまらず、化学兵器禁止条約までは非常に難しいと思いますが、少なくとも核拡散防止条約とかそのようなレベルにまで高めていく努力を国連の場で続けていくということがやはり必要だろう、このように思います。  それから、第二点のTMDに関する問題でございますが、私は、これは二つの側面があると考えております。  現在、ミサイルが拡散する一番大きな軍事的な理由と申しますのは、これに対抗する有効な手段がないからでございます。したがって、このミサイル対応し得る有効な手段をもし我々が持つということになれば、このミサイルの拡散をとめることに大きく貢献するものと私は確信いたしております。  それからもう一点、このミサイル関連技術は非常に高度の技術を要します。したがって、このことは、一方において他の防衛システムの充実発展に寄与するもの、このように考えております。  以上でございます。
  48. 岡崎久彦

    岡崎参考人 ミサイルの規制につきましては、先生御存じのとおり、北朝鮮には全く義務がないのでございます、今までいかなる約束もしておりませんので。これを強制させることは大変難しいのでございます。  ただ、昨年九月のアメリカ議会の決議でもって、この話し合いに進展がなければ重油供給のお金は出さない、そういう決議になっておりまして、それが六月に切れるわけでございますね。アメリカ政府としては、それを使って今交渉をしているわけでございます。  日本は何をするかということでございますけれども日本は、ミサイルの問題と拉致事件は非常に強い態度で頑張っていいと思います。と申しますのは、日本と北朝鮮の国交回復というのは、これは北朝鮮にとってプラスばかりでございます。大使を交換して、やがてどうせ日本から、どういう形か知りませんけれども、お金が入る、それが期待できるわけでございますから。北朝鮮としては得な話ばかりでございますから、日本がかなり厳しい条件を出しても、交渉して立派に成立し得るわけでございます。ですから、ミサイルの問題は頑張っていいだろうと思います。また、それを反映して、今の日米韓協議は私はいい方向に進むのじゃないかと思っております。結果はまだ不明でございます。  それからTMDは、これはやはりした方がいいと思います。これは、アメリカが一番心配しているのは、結局、アメリカ本土じゃなしに、前進基地及びその国、それを守るところまで手が回り切らない、だからそういう国がやってくれということでございます。  実効性は、これは私は、例のレーガンのスターウオーズの論戦ですね、あれは全部つき合ったわけでございますけれども、これは賛成反対、全くあのときと同じ議論でございます。  賛成の議論だけを申しますと、それは一〇〇%安全ということはないのです。ないのでございますけれども、TMDができますと、撃つ方は戦略が立たなくなるんですね。どのミサイルがどの目標を破壊できるのか、どれが途中でやられるのか、非常にわからなくなってくるんですね。そうしますと計算が、ちょっと我々が想像している以上に複雑になりまして使用が大変難しくなる、そういう抑止効果があるようでございます。
  49. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 では、あと一点だけお伺いします。これは西元参考人にお伺いしますが、武器使用の件でございます。  私たちの問題意識は、武器使用が武力行使に発展しないような歯どめが必要であるという点と、それから、自衛隊員が任務に当たって、やはりその安全を守るためにも、任務上合理的に必要なものは当然必要だろうと思っている。バランスをどうとるかということが一番関心事項でございますが、そういった視点からこの周辺事態法案を見たときにどんな感じを持たれますか。また、どういった要望を現場サイドから出されますでしょうか。
  50. 西元徹也

    西元参考人 私は法律の専門家でございませんので、この問題の細部を法理的にお答えすることは非常に困難でございますが、部隊運用立場から意見を申し述べさせていただきたいと思います。  今回の法案で認められております武器使用は、隊法九十五条とそれから本法の第十一条だと理解をいたしておりますが、もし仮に本法十一条の規定がなければ、公海上における捜索救助活動であるとか、あるいは船舶検査活動といったようなものが非常に困難になると認識をいたしております。  本法十一条は、例えば公海上に行って、そこで遭難している者を救助するためにヘリコプターが飛んでいったとします。そこから今度は飛びおりるか、スリングといって、ロープを伝わっておりるか、もしくはそのための準備をする。このような外に出て丸裸の状態になったときに本法十一条が使える、このように理解をしておりますので、隊法九十五条と十一条のセットは、部隊隊員がこの任務を遂行するための必要最小限の条件ではないか、このように理解をいたしております。しかも、それは非常に抑制的なものでございますので、武力行使に発展するということはない、このように理解いたしております。
  51. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 ありがとうございました。  以上で私の質問を終わります。
  52. 山崎拓

    山崎委員長 これにて遠藤君の質疑は終了いたしました。  次に、達増拓也君。
  53. 達増拓也

    達増委員 自由党の達増拓也でございます。  私は、岡崎参考人に質問をさせていただきます。  岡崎参考人、最近、日韓の有識者、実務家等で地域紛争のシミュレーションをやったということが総合雑誌に載っておりまして、そういうシミュレーションは、武力紛争の本質というものを理解するのに非常に有意義な作業だと思います。  武力紛争と申しますか、有事と言ってもいいんですけれども、そうしたものの本質として、常にエスカレーションの危険性がある、事態の悪化の危険性があるということがあると思います。それが、にらみ合いのような状態から小競り合い、また小競り合いから全面戦争に発展する、そういう危険性が常にある一方で、そういう拡大の危険性があるがゆえに、全面戦争を回避するために早い段階での紛争処理、平和的な解決を模索するところにも当事者が真剣になる。いわば平時の中に有事がはらまれており、また有事の中に平時への契機がある、そういう状態を手綱さばきのようにやっていくのが国家の指導者に期待されるところであり、武力紛争や有事というものがそういう本質を持っているということを国民理解しなければならないんだと思うんです。  新ガイドラインの本文の方にもこういうことが書いてあります。「なお、日米両国政府は、周辺事態の推移によっては」、これは「IV 日本に対する武力攻撃に際しての対処行動等」、「1 日本に対する武力攻撃が差し迫っている場合」の末尾のところでありますけれども、「周辺事態の推移によっては日本に対する武力攻撃が差し迫ったものとなるような場合もあり得ることを念頭に置きつつ、日本の防衛のための準備周辺事態への対応又はそのための準備との間の密接な相互関係に留意する。」ということで、ガイドライン本文には、周辺事態ということと、あとは日本に対する武力攻撃、これが差し迫った場合、そしてなされた場合というのが非常に密接に関連していると書いてあるんですけれども、今回出されている法案は、周辺事態というものを、極めて独立した、ほかの武力攻撃がなされる場合と非常に峻別していて、どうもそこには現行憲法の、憲法の理念というよりは憲法の文言を尊重しなければならないがために、周辺事態における対応措置というものは、武力による威嚇または武力行使にならないようにということを挿入し、実際には、周辺事態における対応措置には、武力行使が差し迫った事態にすぐ切りかわり、それはすなわち、いつ攻撃されるかわからないという準有事と言ってもいい事態、それが周辺事態の中に本質的にあり得るにもかかわらず、いわば丸腰の自衛官を死地に追いやるようなそういう危険、それは個々の自衛隊隊員の人道上の問題に加え、そうした有事の本質、武力紛争の本質というものに対する理解が足りないような法案になっているという心配をしているんですけれども、この点、いかがでしょうか。
  54. 岡崎久彦

    岡崎参考人 御質問の内容は極めて明快でございまして、これはまさに、問題を実際的に考えますと、問題の本質でございます。  今までの一般的な考え方からすれば、日本自身に本当に危険が迫ってくる、そういう場合はもう五条事態である、これは個別的自衛権の発動であるということでもって処理する、だからできるんだ、そういうことになっております。  今回のガイドラインをつくるときも、これは初めは六条事態、要するに、アメリカが極東で活動するとき、その支援だけではないんだということを初めから前提にしております。ですから、五条及び六条の事態両方に対する、アメリカ活動に対する後方支援であるということは初めから決めておりまして、アメリカに対する支援については、その点、問題はございません。  ただ、今度は日本自身の問題でございますね。これは御指摘のとおりでございまして、この法律には一つの仮定がございまして、アメリカ行動するときに一体日本はどこまで助けてくれるんだと、本当は全部助けてほしいんです。ですけれども日本はいろいろなことを言ってなかなか助けてくれない。だから、できることとできないことだけははっきりさせてくれ、そういうのがもとの理由でございますから、動機でございますから、日本が戦争に全く巻き込まれていない状況においてどうやって援助するかということに集中して書いてありますね。巻き込まれた状況は全部疎外して書いてあるわけでございます。  ただ、おっしゃるとおり、戦争というものはエスカレーションもありますし、またエスカレーションがあるからこそ抑止力にもなっている。そうすると、抑止力を発揮するためにはエスカレーションのことまで想定しなければ本当は抑止力にならないんですね。だから、それは想定しないということで書いておりまして、御指摘のとおり非常に甘いところがあるわけでございます。  ただ、それは一種のアメリカのあきらめでございまして、日本なんというのはせいぜいそのくらいのことしかできないんだろうけれども、しかし、できることぐらいははっきりしていないと計画が立たないじゃないか、だからそれだけはっきりしてくれという極めて狭い限度のものでございます。また、それだけに、これだけ狭い限度のもので、これはアメリカの新聞なんかではどこも扱っておりません、余りに小さな問題でございますから。そんな小さな問題をするのに二年間もかかったり、それからいろいろな制約をつけようとしたり、それをいたしますと、やはり日米信頼関係というのは揺らぐんです。こんな小さな問題についてそれほどのことをつけるということで信頼関係が揺らぐということがございます。  おっしゃるとおり、大事な点は全部避けている、小さなことでございます。
  55. 達増拓也

    達増委員 内容はともかく、この手の法律は、ガイドライン本体そのものはもう橋本総理のときにできているわけでありますから、二年前の秋の臨時国会ででも成立していておかしくない法案だと思います。本当は、日本に対する武力行使がなされた場合やそれが差し迫った場合の法案というものがきちっとつくられていれば、そこに至らないところの問題が自動的に決まってくるような話なのかとも思います。  では、そうした周辺事態とさらにその上の段階を峻別して四の五の四の五のやるような議論というものは、そもそも集団的自衛権の考え方を取り入れれば、米国が武力攻撃されている事態というのはイコール日本に対する武力攻撃がなされているとき、それが集団的自衛権の定義でありまして、そういう考え方に立てば、日本としては極めて早い段階から、日本に対する武力攻撃がなされた場合として必要な行動をとることができる、そういうことになると思います。  これも岡崎参考人に質問いたしますけれども、そういう有事というもの、武力紛争というものの本質や日米同盟の本質を考え、かつ現実の、目の前にある、極東といいますか東アジアといいますか、日本を取り巻く地域のパワーバランス、これを考えたときに、やはり集団的自衛権というのはあるんだ、それはいざというときには日本は行使するんだということをはっきりさせることにより、地域の安定にも極めて資することになるのではないか。先ほど参考人がおっしゃられたように、日本の戦力が半分になる、つまり日米がデカップリング、同盟が機能しないような不全状態に追い込まれることは決してない、日米の戦力は半分にはならないんだというのをはっきりさせることで、この地域に極めて長期的な安定がもたらされるんではないかと考えますけれども、その点いかがでしょうか。
  56. 岡崎久彦

    岡崎参考人 それは御高説のとおりでございます。  集団的自衛権は本来は日本は持っているんでございまして、それを行使できないと言っているのが、これはちょっとどう考えてもおかしいのでございます。  それで……(発言する者あり)何ですか。
  57. 山崎拓

    山崎委員長 いやいや、どうぞ。
  58. 岡崎久彦

    岡崎参考人 いや、アメリカはそれでいいんだ、アメリカはそれでいいと言っているとおっしゃいましたけれども、それはアメリカ政府としては口が腐っても言えないのです。それを言ったら日本に対する内政干渉になります。ただ内心でそれを思っていることと、アメリカ政府とは違うのでございます。  それから、アメリカ政府なるものが政策を決定しないのです、アメリカという国は。これは李登輝がコーネル大学を訪問したときの例でございますけれども、行政府はビザを出さない、結局議会がビザを出すんだ。そうしますと、つまり、日本が集団的自衛権を行使しない、これは政府は口が腐っても言えない、これはもうお決めになるとおりだと。といった場合、今度は議会が本当に怒って、それでは日米同盟を破棄する、これが日本の存立に関するわけです。これが一番なんです。  これは、例えば朝鮮半島有事で日本が守らないと、ミサイルが飛んでくるとか、要するに日本国民に危険が及ぶとか、そういう問題よりももっと大きいのは、有事に対して日本がちゃんと対処しませんと、アメリカ政府はいいのでございますけれども、議会と国民が本当に怒ってしまって日米同盟の基礎が揺らぐ、これが日本の存立に関するわけです。それを避けるためにも集団的自衛権というものが行使できるということにしなければいけない、そう思います。
  59. 達増拓也

    達増委員 ありがとうございました。  最近の北朝鮮のいろいろな外交上、あるいはそれ以外の作戦行動等を見ておりましても、日米の間を引き離すような、日米分離を図っているようなところがありますし、また日米がばらばらであった方がいいと思うような国やその他勢力が、そういう方向に持っていこうというところもある中で、やはり日米関係日米同盟というものをきちっと維持し、信頼性を高めていかなければならないというふうに思います。それが地域の安定に資することであり、かつ世界全体の平和にも資する、ひっきょう憲法の理念にも資する、そういう構成になっているのだと思います。  では次に、西元参考人にも伺います。西元参考人国内法制及び米国との取り決めの早期整備に関する若干の要望の中で、やはり実行機関、要員の安全確保の問題を強く指摘されておりました。また、その次に、準備重要性と。周辺事態対応措置をやる場合の安全確保の問題、また準備というのは周辺事態対応措置自体の準備のほかに、周辺事態対応措置をやっている間に、それが武力行使が差し迫った事態になるとか、武力攻撃が差し迫った事態になる、そのための準備も並行してとかいうニュアンスかなと受けとめたのですが、いわゆる周辺事態における武器使用、そのための武装の程度の問題と関連して、その点いかがでしょうか。
  60. 西元徹也

    西元参考人 お答えをする前に、簡単にPKOのときの状況を申し上げたいと思います。我が国がPKOに初めて出たその以前に、ほぼ出ることが決まっておりましたが、基本計画を私どもがいただいてから、例えば車両を白く塗ったり、いろいろな措置をとるというようなことは、もうほとんど時間的な余裕がなかったというのが状況でございます。したがって、多分私どもは、あくまでも基本計画に従って、所要の行動計画をつくり所要の準備に入っていくんだと思います。したがって、そのような意味から基本計画がタイムリーに実行機関に示されることが非常に大切だということだと思います。  もう一つは、ただいま先生おっしゃいました、部隊隊員の安全を守るための措置ということでありますが、今回の措置は武器使用の権限、先ほども申し上げました隊法第九十五条とこの法案の第十一条によるわけでございまして、それ以外のことについては後方地域においてということをかぶせてある。したがって、防衛庁長官が諸情勢をごらんになりながら柔軟にその後方地域を設定されることによって部隊の安全というものは保たれることになりましょうし、また、そのために政治が責任を持って、ここまでやってよし、ここから先はだめだということをしっかりと与えていただくことによって部隊隊員の安全は守れるもの、このように考えております。  したがって、その行動自体に限界があるということは私も決して否定はいたしません。その限界は限界として、それだけの権限とそれだけの措置ということで、部隊が仮にそうしても容認すべき点なのではないか、このように思います。
  61. 達増拓也

    達増委員 ありがとうございました。  私の質問はこれで終わりますが、せっかく委員会として呼んで、来ていただいた岡崎参考人の答弁中に、場外の私語によって若干発言が阻害された、やりにくくなった状況が今あったと見ましたので、その点については、委員会として反省といいますか、きちっと対応すべきであるということをつけ加えて、終わらせていただきます。ありがとうございました。
  62. 山崎拓

    山崎委員長 これにて達増君の質疑は終了いたしました。  次に、木島日出夫君。
  63. 木島日出夫

    ○木島委員 日本共産党の木島日出夫でございます。  時間の関係で、端的にお伺いしたいと思うのです。小沢参考人にお伺いいたします。  先ほどの公述で、参考人最後に、二十一世紀日本が諸国民との平和的な交流をやっていくことが重要なんだ、武力を背景にしなければ諸外国との経済交流や民間交流ができない国になってはならぬ、そういう趣旨のことをおっしゃられました。私もまことに同感であります。  この新ガイドライン関連法案は、何といっても、アメリカの行う戦争に我が国協力、加担する法律だと考えておりますので、廃案にすべきだと我が党は考えております。  そこで、早速ですが、基本計画国会承認問題についてお伺いをいたします。  小沢参考人が昨年九月号の法律時報の論文、「周辺事態措置法の論理と構造」という論文の中でこの問題に触れております。こう言っております。「「措置法」は、周辺事態の認定手続を何ら定めていない。軍事力の発動の要件、発動の決定権者は、立憲主義に基づく主権国家としては当然に法定しておかなければならない事柄である。」  私も当然だと思うんです。我が党は、国会承認もなしに軍事力が行使されるなんということは、民主国家としては論外だと考えておりますが、この問題で国会承認条項が挿入されて修正がされたからといって、この法案全体の違憲立法としての基本的性格は何ら変わるものじゃない、廃案しかないという立場ではあるわけでありますが、この問題で公述人はそう述べられております。  先ほどの論文で、「だが「措置法」にはそれがない。」なぜないのかということで詳しく参考人は述べられておりまして、るる述べた最後のところで、「「事後承認」も含めたその修正案に国会のチェック機能の発揮を求めることには限界があるし、後述のような多くの問題点をはらむ法案についての議論をそこだけに絞り込むことの危険性を自覚するべきである」ということまで述べられているわけでありますが、本法案に根本的な問題として、そのような、措置法には発動の要件についての認定手続が定めていないと。なぜかというのを敷衍していただきたいと思うのです。
  64. 小沢隆一

    小沢参考人 私が考えまするに、今回の法案は、ガイドラインにかかわって、その実施に関する法案であります。  そのこととの関係で、もともとガイドラインでどのようなことが書かれていたかということを念頭に置きますと、ガイドラインではあらかじめ、周辺事態への対処をする前に念入りに日本と合衆国との間で調整を行っていく、そういう事柄を前提にした上での周辺事態対処だ、そういう組み立てになっているわけですね。  恐らく、現在の法案のところで事後の報告で済ませているということは、今のことと大きくかかわっているのではないかと思います。事前に調整をし、そして、いわゆるDEFCONと言われる、どういう場合にどういう対処をするかというところまで詰めた上での実際の対処行動にいささかでも差しさわりがあってはいけないという構造で今回の法案は組み立てられているのではないかということを、私はむしろそういうふうな読み方、見方ができるのではないかと思います。  そして、そのことはまさに、日本とは違いまして正規の軍隊を持っている通常の立憲諸国が議会のチェックのもとに軍事行動を行う、アメリカもまさにその一つの国でありますけれども、そういう国々と比較してさえも、今回の法案は立憲的な統制を後景に追いやった形になっている、その問題点を先ほども指摘させていただいたわけであります。
  65. 木島日出夫

    ○木島委員 では、二つ目でありますが、後方地域支援の問題であります。  先ほど参考人は、アメリカの武力行使との一体性の問題について、政府のこれまでの説明は憲法学から見て全く成り立たない問題だとおっしゃられました。先ほど私が引用した先生の論文でも、海上武力紛争で戦闘地域と他の地域を画するものは何か、そんなものは画せるものじゃない、後方地域とはいえ、支援すれば国際法的には攻撃目標となることは避けられないと述べられております。  その辺の国際法的な状況、それをもうちょっと詳しく述べていただきたい。
  66. 小沢隆一

    小沢参考人 私は必ずしも国際法の専門家ではございませんが、ただ、私の知る限りにおいてお答えをさせていただきます。  もともとは国際法では戦時国際法というものがありまして、そして、戦争がまだ違法でなかった段階で、戦争のルール、戦争の仕方を定めたものがあります。この戦時国際法が、国連憲章によって武力紛争も含めて違法になった段階でなお通用するのかどうか、そのことについては、国際法の中で議論があるようであります。  しかし、仮にその辺が不明確であったとしても、現実に軍隊を持っている国々は、その軍隊を動かす際に何もマニュアルがなければだめだということで、この間さまざまに、戦時国際法のルールが今日的にどのように通用するかどうかを検討する作業をしております。  その作業の一つが、イタリアのサンレモの国際法の研究所で行われているサンレモ・マニュアルでありまして、こういったサンレモ・マニュアルなどの策定作業なんかを見る限りにおいては、武力紛争の際には、後方であったとしても、いわゆる兵たん活動、武力行動に効果的に貢献する活動、こういうものはすべて軍事目標、すなわち攻撃対象となるという検討結果が出ているわけです。  やはり、そういうものの成果を踏まえないで、この問題について、後方地域支援だから安全であり、しかも武力の行使ではないのだという議論をすることはできないのではないかというふうに私は考えております。
  67. 木島日出夫

    ○木島委員 そこをもうちょっと詳しく聞きたいんですが、サンレモ・マニュアルというのは、一応国際法の研究者の集団による研究成果ですね。その前提となっているジュネーブ四条約とか追加の二つの議定書、その中の原則からいって、先生のおっしゃるようなことが、論立てが成り立つのかどうか、その辺、もうちょっと詳しく述べていただけませんか。
  68. 小沢隆一

    小沢参考人 お話しするのを少しはしょってしまいましたが、まさにサンレモ・マニュアルというのは、ジュネーブ四条約ですとか議定書というものをどう読むかということを検討した研究でありますので、まさにその点はその中に含まれております。
  69. 木島日出夫

    ○木島委員 ありがとうございます。  時間の関係で次に進みますが、周辺事態における行政機関と民間、地方自治体協力の問題についてお伺いしたいと思います。  先ほど私が指摘した先生の論文の中に、こういう文章があります。「限りなく透明に近い……動員システム ——白紙委任の大系」というところでありますが、今回の措置法は、ある意味では、かの国家総動員法よりもすさまじい動員立法であるということを記述して、ずっと述べた最後のところで、措置法には、政令、基本計画実施要領という白紙委任のシステムが埋め込まれている、こう主張されております。その辺、時間は結構でありますから、その先生の考えを詳しく述べていただきたいと思います。
  70. 小沢隆一

    小沢参考人 国家総動員法よりもすさまじい動員計画であるというふうに申しましたのは、実は国家総動員法には法律の文言として「総動員物資」というものを具体的に明示しております。武器弾薬のほか、被服、食糧、飲料及び飼料、飼料というのは馬や牛の飼料です、医薬品等々。それと、「総動員業務」という規定もありまして、その中には、総動員物資の生産、修理や、運輸、通信、金融等々、こういうぐあいに規定してあります。もちろん、その文言自体は極めて雑駁としておりますから、何でも総動員できる、こういう法の体裁になっていますけれども、しかし辛うじて、そういうものが動員の対象になる、業務や物品がなるということは書かれております。  ところが、今回のこの周辺事態措置法案を読んでみますと、確かに自衛隊がどのような諸活動を行うのかについては別表で具体的に記載がされております。ところが、他の国家の行政機関や、あるいは自治体や民間が、それに加えてどのような活動をするのか、あるいは協力をするのか、そのことについては一切明示がなされておりません。このことを、私は、今回の法案はまさに国家総動員法よりも白紙委任の性格が強い法律であるというふうに考えているわけであります。  かの明治憲法のもとでも、この国家総動員法を制定するときには、憲法違反、違憲論が院内で出ました。まさにそれは白紙委任ではないか、そういうことであったわけでして、それとの比較でもこの法案問題点は明らかではないかというふうに思います。  もう少し述べさせていただきますと、実は国家公務員は、これは関係行政機関のこの周辺事態の対処に伴うさまざまな動員といいますか、協力に伴いましてさまざまな業務をやるわけですが、その業務を何ら明示していない。自治体や民間、これは強制ではないというふうにされておりますが、私は実質上の強制が出てくると思いますけれども、強制ではないという自治体や民間の場合と違いまして、国家行政機関の場合はまさに強制的にこの諸活動を行うことになります。そのことが一切この法文に出ていないということは、法治主義の観点から見て非常に問題ではないかというふうに考えております。  以上でございます。
  71. 木島日出夫

    ○木島委員 ありがとうございます。  笹森参考人に一点だけお伺いしたいと思います。  先ほど公述の中で、連合の中でも必ずしも意見がまとまっているわけではないとおっしゃられましたが、連合傘下の労働組合を含む交通運輸関係労組十八単産単組、二十七万七千人でありますが、先日こういうアピールを出しました。周辺事態法案は、交通運輸関係に働く労働者の知らないうちに戦争への協力者としてしまう危険性がある、そして、廃案を目指す一点で立場の違いを超えて連帯して行動することを呼びかけておられます。その具体的な取り組みの内容を簡潔に述べていただいて、連合としてこういう呼びかけにどうこたえていくつもりなのか、御決意などを陳述していただきたい。
  72. 笹森清

    笹森参考人 先ほど申し上げたように、連合としては、全体的なまとまりがまだできていなくて、冒頭陳述で申し上げた内容の限界ぎりぎりのところが今公式コメントができる内容です。  それで、今の御指摘の部分は、連合全体としての運動の取り組みにはまだなっておりません。中執の中では、関係する今の交通組織の方から、全体的な取り組みにならないかという要請はありました。個別の産業別組織に今働きかけをそれぞれがしているところで、全体運動としてどうするかというのはこれからの判断をしたいと思っています。  ただ、問題は、先ほど申し上げたように、廃案という全体的なものにするのか、この中で、民間の協力部分について、ああいう解釈と条文の設定があるわけですから、そこのところが明確になるのであれば削除してもいいではないか、当然民間協力というのはそういうものではないかというふうに我々自身としては思っている部分が、きょうのここでお話しできる限界だ、こういうふうに申し上げておきます。
  73. 木島日出夫

    ○木島委員 ありがとうございます。  時間の関係で、お二人の参考人には質問することができませんでした。お許しいただいて、終わらせていただきます。
  74. 山崎拓

    山崎委員長 これにて木島君の質疑は終了いたしました。  次に、保坂展人君
  75. 保坂展人

    保坂委員 社会民主党の保坂展人です。  きょうは、貴重なお話を参考人からありがとうございました。  まず、西元参考人に伺いたいのですが、先ほどの委員との質疑の中で、九四年の朝鮮半島危機のお話をなさいました。  米軍の作戦行動準備等もあり、一方でカーターの訪朝というようなこともあって、その九四年の朝鮮半島危機が、今回審議しておりますガイドラインの土台になっていったかどうか、その点について伺います。
  76. 西元徹也

    西元参考人 当時におきます私ども考え方としましては、これは冷戦終結後の明らかな一つの特徴を示している情勢だ、このように認識をいたしました。  ということは、我が国安全保障上やはり非常に重要な影響を及ぼすおそれがある、したがって、その推移については十分見きわめていかなければならないということで、私ども実行機関といたしましては、少なくとも私の責任において、私が与えられております部隊運用の見地から、さまざまな検討を実施したことは事実でございます。  その具体的な内容については差し控えさせていただきたいと思いますが、そのときの検討の結果がガイドラインに結びついているのかどうかということにつきましては、ある面ではイエスであり、ある面ではノーだ、こういうことだと思います。
  77. 保坂展人

    保坂委員 その、ある面ではイエス、ある面ではノーというところをもう少し伺いたいのですが、二月二十三日の朝日新聞、去年読売新聞にもこの記事、朝鮮有事を想定して、九四年当時、西元参考人が実行部隊の責任者であられたときだと思いますけれども、八空港六港湾の使用要求が出た。九四年の四月であります。そして、九五年の十二月までに、千五十九項目ですか、かなり細かい要望が米軍側から出された。これについて、実態はどうだったのか、お話しいただきたいと思います。
  78. 西元徹也

    西元参考人 御承知のとおりに、防衛庁、自衛隊と在日米軍あるいは太平洋軍との間では、頻繁に、我が国安全保障のためのさまざまな情報交換だとか研究というものを、それぞれお許しを得て実施をしております。  新聞にそのようなことが報道されましたけれども一つはっきりと申し上げられることは、これは何ら米軍の正式な要請ではないというところでございます。  私は、先ほどの意見陳述でもちょっと触れましたけれども実行機関の指揮、幕僚活動にとって最も重要な三つの要件ということを私どもは言われて、昔からいろいろな業務をやってまいりました。それは、先行性並行性完全性ということでございます。そのような意味から、相互に、お互いに平素から情報交換をし合い、相手の考え方を聞き、さまざまな行き来があることは事実でございます。場合によってはそれらをホッチキスしたものがそのような結果になって、あたかも正式要請のように受けとめられていってしまった、こういうことではないか、このように思います。
  79. 保坂展人

    保坂委員 それでは次に、岡崎参考人に伺いますが、先ほどのやはり質疑の中で、いわゆる朝鮮半島有事ということが起きた場合に、直接的には韓国であり、また米軍であり、そして一番影響が少ない、損失が少ないのは日本であるというお話があったんですが、これを具体的に考えてみますと、朝鮮半島有事ということがもし起きた場合に、後方地域支援の拠点として日本が、在日米軍基地のみならず、民間の港湾、空港その他もろもろ、いわば後方の一大拠点として日本が機能する。例えば日本から米軍機が、戦闘機であるとか爆撃機であるとか、直接相手国に発進していく、あるいは空母が出ていく、あるいはトマホークを積んだ艦船が出ていく、こういうことになると、やはり相手国からは参戦国というふうに認識されるのはやむを得ないのではないか。  その場合に、日本の国土というのは極めて、戦後五十五年の中で平和憲法をもとに、相手国からの攻撃に備えるという体制整備されていないわけで、例えば高速道路がある、新幹線がある、原子力発電所があるということで、日本の損害が極めて少ないというふうに言えるのかどうか。この点について例えばテロであるとかさまざまなことはあり得るわけで、その辺の認識について伺いたいと思います。
  80. 岡崎久彦

    岡崎参考人 日本後方支援をいたしますと、それは、先ほどもお話がありましたけれども、伝統的な国際法からいえばこれは中立義務違反と言えるんでございます。といって、これは戦争が適法だった時代の国際法でございまして、これが自動的に適用されるわけでもないので、北朝鮮が自動的に日本を攻撃する権利が生ずるというものでもないんでございます。ただ、その間はこれは法律のない状況でございますから、北朝鮮から攻撃があり得る、北朝鮮の判断によって攻撃があり得る、その可能性は私は先生がおっしゃるとおりだと思います。その結果、確かに我々、その場合は損害を受けると思います、電車がとまったり電気がとまったり。  ただ、これは昔からある議論でございまして、ソ連の脅威のころに、日本なんというのは発電所をつぶされたら電気がとまってしまう、するともうみんな生きていけない、それぐらいなら降伏しろ、そういう話なんですね。これはちょっと余り飛躍している話でございまして、発電所がつぶされたからといって手を上げて、今度はソ連の共産主義の下に入る。これはとても常識では言えない話でございますけれども、そういう議論さえあったわけでございます。  現在、その軽重を考えますと、何が重くて何が軽いか、そういう若干の被害はあり得ます、想定問題としてはあり得ます。ただ、それによって日本という国が滅びることはございません。日本という国が破滅するとすれば、朝鮮で有事が起こった場合に日本対応が甚だしく悪くて、アメリカの世論から見て、日本という国はこれは同盟国じゃないということになって日米同盟切ってもいい、また、アメリカの議会というのは何かする場合はよく附帯決議をつけまして、最恵国待遇をやめるとかそういうことをいたしますので、そうなりますと、今度は日本は本当に生きていけなくなります。あるいは、同盟を切られますと全く宙に浮いて、戦前のように自分で自分を守らなきゃならない、重武装して守らなきゃならない、そうなるとまたどうなるかわからない。そういう形でもって日本の存立がかかっているわけです。  ですから、具体的な被害よりも、日米信頼関係を失うかどうかの方が日本にとって重大な被害だというふうに認識しております。
  81. 保坂展人

    保坂委員 ちょっと時間の関係で先を急ぎます。  小沢参考人に伺いたいんですが、今日のユーゴの空爆、NATO軍、アメリカを中心にして行われているわけですけれども、人道上、人権擁護という目的を立てつつ、しかし現実には四十万人を超える難民が次々と出てくる。そしてまた空爆の対象も逐次広がっている。そしてまた三人のアメリカ兵が捕虜になるというようなことで、地上軍派遣というようなことも取りざたされている。  こうなると、やはり戦争という手段をもって目的を完遂するというのは大変難しいということはもう実証されているわけで、このユーゴ情勢日本安全保障とも関連があるわけですけれども、今の周辺事態法と言われている法の骨格が、重要なことは政令で定めるというふうになっていたりとか、いわば白紙委任というかそういう性格を持っていると思うんですが、その点について、実際の、はっきりした憲法上の原則というものを持っていないとどういうふうに展開するかわからない事態対応できないんではないかというあたりの視点から、ちょっと簡潔にお願いしたいと思います。
  82. 小沢隆一

    小沢参考人 簡潔にということのようですので、まさに憲法との関係で述べさせていただきますと、まさに憲法の基本的な立場は、やはり集団的自衛権、憲法学の多数説は個別的自衛権を武力によって行使する場合も含めてですが、これを否定している、そういう考えです。  ですから、そういう観点からしてみて、今回のユーゴの事態でも、やはり集団的自衛権の、すなわち軍事同盟条約の産物としてのNATOが国際的な正当性を担保せぬままにああいう形で爆撃を行う、それがゆえに、ユーゴ側にも一半の正当性の根拠といいますか、そういうものが与えられて、状況が長引いていってしまう、そういう状況があると思うんですね。  ですから、やはり、集団的自衛の同盟条約がいわば国際社会からすれば私的な形で行う、そういう紛争の解決のための紛争といいますか、そういうものは、現実にはかえって火に油を注ぐだけなのではないかという印象を強く持っております。その点でいえば、憲法の原点に立ち返る必要があるのではないかというふうに考えます。
  83. 保坂展人

    保坂委員 それでは笹森参考人にお尋ねしますが、確かに民間に対する協力部分の削除ということをおっしゃいました。やはりこの問題で大きいのは、自治体の問題、極めて大きいと思います。先ほどのお話の中でも、いわゆる神戸方式あるいは橋本知事の、非核証明書を要求すると。港湾法が、自治体がきちっと港湾を管理していくんだ、国ではなくて自治体だという戦後の港湾法の精神があるわけで、現在、地方分権の時代と言われながら、周辺事態法から有事法制へと、有事法制で、いわば分権の骨格をかなり根こそぎ、根元のところから破壊してしまうようなことになるのではないかという心配を我々持っているわけですが、そのあたりの問題意識は連合としていかがお持ちでしょうか。
  84. 笹森清

    笹森参考人 問題意識は大いにあります。大いにあるから最初にそういうお話を申し上げて、我々の限界としては、条例でやるのか、今、市と県が三カ所でやられている部分についてどうなのかという部分については、理解を示すという範囲が今の段階ではぎりぎりだった。  これから先、国家の防衛政策に対して地方自治体がどういう関与をするのか、ここの部分については組織的な論議が非常に割れると思います。ここのところを整理した上で、最終的に国民的な見地からの対応を出さなきゃいけないんですが、ぎりぎり今の段階でどうなのかなというと、外務省に対する外交上の問題としてという高知県の考え方が比較的連合がとりやすい対応なのかなというふうに感じております。
  85. 保坂展人

    保坂委員 それでは、もう一度岡崎参考人にお尋ねいたしますが、やはり先ほどの質疑の中で、沖縄返還当時に、韓国と台湾、いずれかの地域でいわば危機が生じた際には迅速に日米間の協調というお話をおっしゃったと思うんですが、その後、田中内閣における日中国交回復があり、いわば中国は一つという見解で平和友好条約締結されている。アメリカは、一方で、台湾で何かあったときには出る、国内法でこうなっているわけで、そこの整理はどういうふうに行って、考えられているんでしょうか。
  86. 岡崎久彦

    岡崎参考人 これは両国間の約束でございますので、それは変更しておりません。それが結論でございます。  ただ、国会の答弁の仕方としては、たしか、韓国の安全は日本の安全にとって緊要であるを、朝鮮半島の安全はと直したと思います。それは国会答弁です。これは日本政府の一方的な答弁でございまして、これは別にアメリカを拘束するわけではございません。日米間の義務を変えるわけでもございません。  また、それだけの変更、これはそのときの政治的雰囲気を反映して、何か変えた方がいいだろうということで変えたんでございますけれども、ただ、その内容を実質に考えますと、何も変わっておりません。ということは、結論として、国際的義務としては変わっておりません。
  87. 保坂展人

    保坂委員 時間が参りましたので、終わります。どうもありがとうございました。
  88. 山崎拓

    山崎委員長 これにて保坂君の質疑は終了いたしました。  これにて午前中の参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、参考人各位に一言お礼を申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただき、また貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。  午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二分休憩      ————◇—————     午後一時一分開議
  89. 山崎拓

    山崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  午前に引き続き、各案件審査のため、参考人方々から御意見を聴取いたします。  午後御出席参考人は、株式会社岡本アソシエイツ代表取締役岡本行夫君、軍事アナリスト小川和久君、静岡県立大学国際関係学部教授伊豆見元君、日本乗員組合連絡会議議長川本和弘君、以上の四名の方々であります。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  次に、議事の順序について申し上げます。  岡本参考人、小川参考人、伊豆見参考人、川本参考人の順に、お一人十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対しお答えをいただきたいと存じます。  なお、念のため申し上げますが、御発言の際は委員長の許可を得ることになっております。  それでは、岡本参考人にお願いいたします。
  90. 岡本行夫

    岡本参考人 私は、本ガイドライン関連法案成立に、全体として賛成でございます。  私は、この際、日本の防衛については区分けして考えていく必要があると存じます。  基本論でございますけれども、まず、国を守る必要があるのか、ないのか。守る必要がないから非武装中立論だという考えの方ももちろんいらっしゃると思いますが、国を守ることが必要であるという立場に立つ限りは、選択肢は二つしかないと存じます。それは、独力で守るか、それともほかの国と同盟して守るか、その二つだけであります。理論的には、第三番目の選択肢として集団安全保障といったような考え方もあり得ましょうが、現在の国際情勢、特にアジアでは、そのような選択肢が存在することは許されていないと存じます。  そういたしますと、その二つのオプションの中では、選択肢の中では、結局、どこかの国と同盟してやって日本の国を守るより仕方がない。では、同盟の相手はどこか。ロシアか中国か。私は、国民合意は得られないと思います。結局は、日本と同じような価値観を共有する、自由と民主主義ということを基本にするアメリカとの同盟関係しかないと存じます。そういうことで日米安保ということが今選択されて、国民的にも幅広い支持が得られていると存じます。  その日米安保というのは、二つの柱、つまり日本の防衛とそれから極東の平和と安全、その二つが表裏一体の関係にございます。  日本への危機ということは、現実的な蓋然性という観点からいえば、日本への直接攻撃よりは、日本周辺における紛争が日本にまで影響を及ぼすことによって引き起こされる可能性が高いと存じます。つまり、周囲の危機に効果的に対応できる体制をつくることが抑止力であります。日本の安全を確保するための抑止力でございます。  その場合に重要なことは、抑止とは結局、周辺の諸国が日米安保体制信頼性ということをどのように見るか、つまり、日本自身以上に周りの国々がこの安保体制をどのように認識するかという問題だと思います。そのためには二つのことが重要と存じます。  第一番目は、このようなガイドラインも含めました緊密な日米協力と共同作業によって、安保条約という、一片の紙にすぎません、この上でアメリカが負っているコミットメントというのは、日本に対する約束というものは、単なる条約上の問題だけではなくて、実際にアメリカは、日米安保条約に従って日本の安全と平和のために参加するんだな、みずから対応するんだなということを常に周辺の諸国が思っていることが重要であります。  第二番目に、機能面からいきますと、不幸にしてその抑止ということが破れた場合には、日米協力して効果的に対応できる体制になっていることが必要でございます。そのこと自身がまた抑止力になるわけでございます。  私は、今上程されておりますガイドライン関連法案というものは、今申し上げたようなことを目的とするものであり、日本立場からすれば、結局日本防衛のための諸措置であります。国民の間にこれが対米協力法案であるというような認識が一部に持たれているのは残念でございまして、これは私は政府のPR不足のゆえではないかと思います。  以上申し上げた上で、現在の法案についての若干のコメントを申し上げたいと思います。  これは、私は全体として賛成だと思いますが、まだ幾つかの点で不備な点もあると存じます。今国会ではなくて、今後の日本の長期的な検討課題としていただきたいと存ずる次第でございます。  まず第一に、このガイドライン関連法案についてでございますが、実際に発動する際には、必要な国内法の改正というものを行っていない部分もあると思います。  例えば、自衛隊の艦船が急遽このガイドラインに基づいて活動しなければいけない、港から出ていくときには、海上交通三法に従いまして、向こうからヨットが来れば動力船はこれを避けなければいけませんし、右舷から漁船が近づいてくれば、これまたこちらが待って通してやらなければいけない。およそ緊急行動には似つかわしくない状況が現出するわけでございますが、何となく国民の間に今の議論というのが切迫感を持って受けとめられていないという部分があるのは、本当に日本を守るために必要なことはすべてやるというところまで議論が及んでいないせいもあるのではないかと存じます。  その関連からいけば、海上保安庁の役割が今回どこにも明記されてきていないのも、個人的には不可解なことだと思っております。海上保安庁も、平時の安全保障にとっては重要な国家の一部門であると存じます。  それから、細かいことを言えば、例えば、依然として防衛医官が領域を越えて派遣されることも認められておりません。湾岸戦争のときに、日本が結局世界の二流国、二流市民という扱いを受けてしまった。その批判自体は大変に不当であります。しかし、なぜそのようなことになってしまったのか。結局、フィリピンや韓国が百名を超えるお医者さんや看護婦さんを次々に湾岸に派遣しているのに、我が国からはゼロ名でありました。民間のお医者さんをかねや太鼓でお願いしましたけれども政府自身が、防衛医官自身が行けないところへどうやって民間のお医者さんを追い立てていけることができるのか。それは当然の帰結であったと思います。  そういたしますと、日本は、人命は地球よりもとうとし、こう言っていたその議論が、逆手にとられるわけでございますね。地球よりも重い人命を危険にかけてでも国際法秩序の維持と回復のために湾岸にお医者さんや技術者や看護婦さんを送った国の方が、たとえ一人であっても地球よりは重いだけの価値を持ちますから、日本が出した百三十億ドルよりは当然に大きいということになります。そこで、地球よりも重い人命を危険にさらしてでもそのような国際協力活動に参加した国が一流国、それ以外の国はどんなにお金を積んでも二流国という、大変そのこと自体は不当な仕分けでありますけれども、そのような感じで受けとめられてしまったことは事実でございます。  それから、私は、この国連の安保理決議ということについても若干の異論を持っております。  国連安保理決議というのは、恐らく世界じゅうで東アジア地域において最も成立しにくいものだと存じます。ロシア、中国、米国、安保理の常任理事国の拒否権が錯綜するこの地域での紛争、危機に際しては、安保理決議というものは最も成立しにくい。  その場合には、私の胸には常に湾岸戦争のときの思い出が去来するのでありますけれども、この地域が大変に危険になってきた、朝鮮半島で紛争が起こった、韓国が危なくなってしまった、多数の難民が出始めたというようなときに、多国籍型のパトロール行動が行われる。そのときには、私どもはついアメリカということだけを考えてしまいますけれどもアメリカ世界各国に参加を呼びかけますでしょう。恐らくイギリスは参加するんだろうと思うんですね。オーストラリアも参加するでしょう。カナダからも軍艦が来ると思います。恐らくロシアからも軍艦が来て参加する。そのときに、我が自衛艦だけは領域の外へ出ない。そういう状況のまま、しかも、そこに参加するカナダやオーストラリアの国々は、これは第一義的な裨益国は日本ではないか、我々は日本のために行くのに、日本は全然出てこようとしない、参加しようとしないというようなことにもなりますでしょう。  したがいまして、私は、今回の法案の方向性は大変に正しいものと存じます。しかし、まだまだこの先、国として議論を尽くしていただかないといけない部分があるような気がいたします。  それから、若干内容そのものということを離れるかもしれませんが、私どもの、防衛政策安全保障政策ということについて日ごろ感じていることを二、三点申し上げます。  一つは、私どもが何でも紛争は平和的解決、平和的解決と言うことの論理の陥穽、落とし穴でございます。我が国だけが軍事的な関与は一切しないということの結果、その嫌な部分というのをすべて外国にしわ寄せすることになっている。そこは私ども、やはり今まで余りにも自分たちのことしか考えてこなかった気がいたします。  九四年には、イエメン内戦で、日本人が九十六人あの地に孤立いたしました。そのときに助けてくれたのは、日本政府が頼み込んだからでありますけれども、ドイツの軍用機であり、イタリアの軍用機ですね。そして、フランスの軍艦でございました。我々は自分たちの艦船だけは派遣しないよ、だけれども、その分をほかの国は自分たちの兵隊さんの命を危険にさらしてでも日本人を助けてくれよ、こういう結果になっているわけでございます。  したがいまして、今回、自衛隊法の一部が改正されて、艦船と搭載ヘリコプターの使用が邦人救出に認められることになったことは、私はようやくこれでノーマルな、正常な姿になってきたんだと思っております。  それから、地方自治体国民へのPR不足ということをさっき申し上げましたけれども、これも私は、政府とそして国会の議論をもっと国民に見える形でやっていただきたい。  例えば、各県の長が、自治体の長が港湾の管理者としている。そこが今までも、軍艦は嫌だ、人道的な理由であっても米軍の艦船の入港は拒否するといったようなことが何度かございました。  あるいは、非核証明書を出せ。非核証明書を出すということは、アメリカは絶対にいたしません。なぜかといいますと、これは、核を積んでいるかどうかを知られたくないから、そんな理由では全くございませんで、核の所在ということを一切明らかにしないことによって、ほかの、相手国はアメリカの艦船すべてに核が積んであるかもしれないというような対応をとらなければいけなくなるという、純粋に彼らの戦略上のものでありまして、したがいまして、病院船についてでも核の積載の有無というのはアメリカは明らかにいたしません。それを承知で証明書を出せということになれば、アメリカの艦船は入港いたしません。  どこの自治体でも軍艦の姿を見るのは嫌だと思うんでございますね。あんなものがとてもいいと思うような人たちというのは、私はそんなに多くないと思いますが、ただ、すべての人たちがそれをやり始めれば、結局はアメリカの艦船というのは入港できなくなって、ちょうど同じように、ニュージーランドのロンギ首相がそれを持ち出したためにANZUS条約が崩壊したように、日米安保条約というのは実際には崩壊していくわけであります。だから、自分だけはいいだろうということでみんなが、横須賀も佐世保もいわば我慢しておるわけでございます、それを自分のところだけは非核証明書を出せと言うことは、非常に大きな影響を国の安全保障自体に及ぼしていくというようなことも、私は、今回いろいろ議論を通じて国民が知ってくれたらと、お知らせいただければと思うことであります。  最後に私は、これだけの立派な法案を議論していただいても、依然として日本に対する直接の攻撃に対する議論というのがほとんどなされていない。北朝鮮方面から国籍不審機が飛んできて、我が領空を侵犯いたしまして日本の上空まで来ても、都市の上空まで来ても、これに対して航空自衛隊というのは対応行動をとることができません。せいぜい翼を振るって警告信号を送るか、信号弾を出すか。  そして、これは仮定の話でありますけれども、国家の安全保障というのは仮定の話でも私は十分だと思うんですね、万が一にも漏れがあってはならない。その仮定の話で、その国籍不審機が敵性機であって、そして日本の都市の上空に爆弾を投下する。爆弾を投下して初めて、スクランブルで飛び立った自衛隊機は侵入機を撃墜することができる。  同じような法理はこの間の国籍不審船の侵入事件のときにも見られたわけでございますけれども、私は、やはり国の安全ということを考えるときに、日本の周辺の危機対応する効果的な体制をつくるということはそれ自体が抑止力を構成するということは先ほど申し上げたわけでございますけれども、まるでドーナツのように真ん中の部分対応能力と体制を欠いているということは、大変国として危険であり、ゆゆしき事態であると考えております。  これも長期的な課題でございますけれども、何とぞ本院でいつかそのような議論が起こることを願っております。  ありがとうございました。(拍手)
  91. 山崎拓

    山崎委員長 ありがとうございました。  次に、小川参考人にお願いいたします。
  92. 小川和久

    ○小川参考人 御紹介いただきました小川でございます。この場で私の考え方について述べる機会を与えてくださいましたことに感謝申し上げます。  私は、最初に申し上げますと、日米安保体制を堅持するという立場でございます。ただ、同時に申し上げなきゃいけないのは、日米安保体制を、日本の国益のために、そして日本世界の平和を確立するために役割を果たすべく、その方向に維持していく、運営していく、運用していくということを前提に、今のお話をしたわけでございます。  そういう中で、私が専門としております外交、安全保障あるいは危機管理といったようなものは、一たびそこで危機と規定されているものが出来をいたしますと、国が滅びるかどうかという事態に立ち至る。ですから、その外交、安全保障危機管理に関する答案あるいは処方せんと呼ばれるものは、やはり、世界のどこに行っても通用するものでなければ、すべて不合格であるということを前提に考えなければいけない。ですから、やはり、その辺を意識しない議論というものがまかり通るとなりますと、かえって国益を損ねかねないという問題も、同時に議論しなければならないだろうと思います。  そこから考えますと、私自身は、日米安保体制を選んだということは、日本の国益を追求する上で一つの有力な選択肢であり、今岡本参考人がおっしゃったとおり、二つの選択肢のうちの一つである。それを戦後日本国民の過半が受け入れてきたということを前提に考えますと、非同盟中立といったようなもう一つの選択肢よりも、かなり現実性のあるものだと思います。  だから、これをより日本の国益のために生かすべく、どのように我々はかかわっていくべきかということが、恐らく、このガイドラインあるいは関連法案に関する審議で一番求められる部分ではないかと思うわけであります。しかしながら、そこで考えますと、やはり、思想と呼ばなければいけない部分というものが、残念ながら欠落をしているのではないか、宿題になっておるのではないかということを申し上げざるを得ないわけでございます。  とにかく、日本世界の平和を確立するためにどのような役割を果たしていこうとしているのか、どのようにしてそれをなそうとしているのか、そして、日米安保体制をどのようにしてそこに向けて機能させようとしているのかということが全く不明確でございます。そういうことになりますと、やはり、一つの独立国家として世界の信頼をかち取る上では、かえって疑いを持たれかねないという問題を生起するのではないか。その辺を大変懸念するわけでございます。  私は、話を早く進めようということで、お手元に一枚のレジュメを配りました。これをもとに駆け足でお話をいたしまして、あとは質疑の中で、足りません部分は補っていきたいと思います。  タイトルに「防衛指針論議日本政治」ということをあえて掲げましたのは、やはり、大変失礼ながら、政治が不在である、あるいは不在に近い、その辺のことを指摘せずにはいられないからでございます。Aのところで、「「日本の国益」が欠落した日米安保ガイドライン論議」と、あえて決めつけるような言い方をいたしました。大変失礼かと思いますが、その辺のことを真剣に議論していただきたいと思うがゆえでございます。  現在、「米軍への便宜供与」というふうに書いておりますけれども、とにかく、日本の国益のためにアメリカをどのように機能させていくのか、それをどうサポートするのかということで議論が行われている。これは、それなりに一つの筋道を通した議論であろうかと思います。もちろん技術的な問題点というのは、後で必要があればお話しいたしますが、かなり点数が低いものもいっぱいございます。ただ、それはみんなで議論していけばいい。  しかし、もう一つアメリカを支援するということをここで議論しても、やはり、日本アメリカの国益はおのずから違うところがたくさんございます。アメリカが右に行こうと言っても、日本は左に行かなきゃいけない場合もある。それは、国家意思の表明という作業でございます。  国家意思の表明はだれがするのか。官僚がするのか。とんでもない。そんなことでやっているから、官僚主導国家になってしまうんです。それは政治がやらなきゃいけない。国民の代表たる国会の仕事でございます。とにかく、国家意思の表明を明確にする中で、イエスはイエス、ノーはノーということが明らかになり、アメリカからもあるいは周辺諸国からも、日本に対する信頼と期待と評価が生まれてくるといったような問題であろうかと思います。  ところが、現在の議論は、ややもいたしますと、事務レベルが主体として進めている対米便宜供与の技術的な部分のみが先行し、あたかも、場合によっては、それがガイドラインの議論のすべてであるかのように受けとめられている。これは大変不幸なことでございます。ですから、事務レベルの議論を進めると同時に、国家意思の表明を明確にし、日本の国益を追求するための政治レベルの議論があって、初めて車の両輪、あるいは航空機でいいますところの片肺飛行にならないような形が実現するのではないかと思うわけでございます。  これにつきましては、このレジュメにもありますように、最初のガイドライン、七八年のガイドラインでございますけれども、これの中で、前文の中に、既に事務レベルは、自分たちの手に負えないテーマとして、研究・協議の対象としないという三点を挙げております。これは、実は政治レベルで議論くださいといったような問いかけでもあるわけでございます。  それは何か。ここにありますように、事前協議に関する諸問題、それから日本の憲法上の制約に関する諸問題、それから非核三原則でございます。これを、我々はきちんと宿題として議論してきたのだろうか。そして、現在のガイドラインに関する議論に、この話を整合性を持って付与するような形で話を進めているのだろうか。その辺が極めて厳しく問われるのではないかと思います。  とにかく、この辺のことを明確にする中で、米国が何事も日本に相談するような状況が生まれてまいります。そして、日本の利益に関連いたします周辺事態の拡大解釈に歯どめをかけることも可能になります。そういう中で、日本人が最も恐れる、いわゆる戦争に巻き込まれる事態を防止することもできるようになる。そのあたりの問題をぜひ御議論いただきたい。  私は、このレジュメに沿ってお話をいたしますと、Bのところの「「政治レベル」で米国と協議すべき事項」としては、七八年ガイドラインの前文がうたいました研究・協議の対象とはしないとした三点について、日本なりの見解を打ち出し、それをたたき台として、米国との協議を進めていくことが重要ではないかと思います。  例えば、事前協議を明確にしていく、これは政党によっては活性化といったような言葉を使っておりますが、このことによって、必要とあらば独立国家としての拒否力を、同盟国アメリカに対しても発揮することができるようになるわけでございます。これを明確にする中で、日本が、アメリカにとっての都合のいい存在であるだけでなく、やはりれっきとした独立国であり、周辺諸国の期待にこたえて平和を実現するような国である、そういった評価が初めて生まれてまいります。これは、日本の外交を進める上で、極めて有効なあり方ではないかと思います。  ですから、そういう中では、日本の平和主義に照らして、同意できる場合は米軍を支援するけれども、不同意の場合は共同行動を拒否する、また施設や基地の提供も認めない、そういう方向を明らかにすることが重要でしょう。そこまでいって、初めて周辺諸国が、米軍の軍事行動を阻止する役割日本に期待する道を開くわけでございます。  昨年の六月二十四日でございますが、朝鮮労働党のあるエリートと立ち話をすることがありましたけれども、彼の本音の部分と私の認識とは非常に似ておる。どういうことか。日朝間の懸案事項であろうとも、日本と協議する必要は実はない。それは何か。苦労して日本との間で約束をしても、アメリカにその約束をほごにするような方向を示唆された場合、日本アメリカの言うとおり動くではないか。そんな国と約束ができるか。そうであるなら、日朝間の懸案であろうとも、アメリカと直接に話をした方がいいだろう。  これは北朝鮮の本音でありますが、やはりそういう客観的な認識は我々が持ち、その辺の部分を克服していく中で、初めて北朝鮮側からも、日朝国交正常化に向けての積極的な姿勢を引き出すことができるのではないかと思うわけでございます。とにかく、こういった問題は、我が国の安全を高めるのみならず、経済立国の基盤を確固たるものにする極めて重要な要件でございます。  この辺の部分は、もう先生方、既に勉強なさったと思いますが、一昨年の春に新潮社から文庫本で翻訳、出版されました、ベーカー元アメリカ国務長官の回顧録「シャトル外交」という本を参考にすれば明らかでございます。  とにかく、ベーカー国務長官が在任した四年弱の間、世界は激動いたしました。その中で、アメリカの国益をかけて、ベーカーは世界の首脳とトップ外交をやっていく。湾岸危機、湾岸戦争においても、資金の提供と兵力の供給というものを求めます。ただ、日本以外の同盟国は、すべてノーから始まるわけでございます。そのノーと言う相手を説き伏せて、兵力の供給、それから資金の提供を実現していく。それがドラマになっていればこそ、この回顧録は大変おもしろい。  私は、ベーカーの補佐官に、なぜ日本がこの回顧録に出てこないのかと聞きましたら、いや、それはドラマにならないからですよ、アメリカが考えているような外交というのをやっていないからだと、はっきりしたお答えが返ってきたわけでございます。その辺のことは、我々が肝に銘ずべきことであろうかと思います。  それから、憲法解釈の問題に関連いたしましては、日本国憲法をなし崩し的に侵犯することは、これは日本の国益を損ねる問題につながります。ですから、憲法というものは、正々堂々、国民が正面から改正の議論を進めるべき性格のものでございます。ですから、憲法侵犯への歯どめとして、そのような意味を込めまして、集団的自衛権、これは日本モデルというもので結構でございますけれども、そういった可能性を追求するということは、一つ有効なあり方ではないかと思います。  とにかく、日本の選択肢としては、日米同盟を健全に維持することと同時に周辺諸国との信頼関係確立すること、その二つの問題を同時にクリアすることが求められているわけでございます。  しかし、周辺諸国は、日本アメリカに対する一定の拒否力を備えることを期待する一方、日本の軍事的自立に対しては大変な警戒感を持っているわけでございます。それに対して、日本としては、とにかく集団的自衛権の行使について日本独自のあり方を示すことが一つの有効なあり方ではないか。そこにおいては、日本国憲法と日米安保条約、そして国連憲章の三者の整合性において、読み込み、また日本モデルを示すことが可能ではないかと私は思うわけでございます。  どういうことかといいますと、日本国憲法は、国連への加盟を否定しておりません。当然ながら、国連憲章のどの条文をも否定していない。その一方、日米安保条約の第一条には、これは国連憲章のもとの条約であるという意味合いのことが書かれております。それに対置される国連憲章の第百三条には、そういった条約に対して国連憲章が優越するということが書かれている。  この三者を読み込みますならば、国連憲章の五十一条にある、国際の平和のために国連の安保理事会が機能するまでといったようなことに対して、日本の集団的自衛権の行使というものを一つのモデルとして提示することはできるのではないか。安保理が機能した時点というのを、一つのテーマが提案をされ、それに対してどこかの常任理事国が拒否権を発動した時点といったような定義もすることができるわけでございます。そこまでは集団的自衛権を行使しながら、安保理が機能したという時点に達したならば、直ちに軍事的行動をとめる、対米協力もこれは撤回をしていくといったような方向というのが、一つの独立国家のあり方として考えられるのではないかと思います。  いま一つ日本の選択肢の一つでございます非核政策あるいは核政策の明確化でございますが、はっきり言いまして、日本の非核三原則というのはうそっぱちでございます。言葉は悪いんですが。アメリカの方が正直でございます。つまり、本格的な持ち込みであるイントロダクションはしない、しかし、航空機、艦船に積み込む形での一時寄港、これはトランジットと呼んでおりますが、これはやると言っている。だから、そこまで日本は認めるという格好はあり得るわけでございます。  とにかく、日本には核兵器の本格的な持ち込みは今はないかもしれない。しかし、在日米軍基地に張りめぐらされた通信のシステム、あるいはコンピューターのネットワークなしにアメリカの核戦略は機能しないわけでございます。その意味でいいますと、私どもは、核の傘に守られているなんてばかな話ではなくて、核の傘を差している当事者でございます。  ですから、その立場に立ちますと、やはり核保有国から核攻撃を受けるリスクをもアメリカと分担をしてきた、そういったことまで自覚をする必要がある。これは、一昨年六月の、エリツィン大統領によるロシアの核ミサイルの照準外しの宣言で明らかであろうかと思います。こういったことを考える中で、初めて、とにかく後方地域支援などというまやかしの官僚用語が空理空論であるということは明らかになると思います。  とにかく、日本は、アメリカ世界のリーダーでいるために唯一ほかにはない戦略的根拠地を提供しております。日本に置かれた戦力は、とにかく米軍の地球の半分における行動を支えている。ですから、核保有国が日本を核攻撃するという選択を持つということは明らかでございます。そういったことを明確にしながら、我々は日米安保を日本の国益に機能させるべく議論をしていかなければいけない。  その中で、最後に一点申し上げなければいけないのは、レジュメのAの二でございますが、日米同盟の対称性、非対称性に関する議論が極めて不明確である。とにかく日本ほどアメリカと対称的な同盟国はない。これはアメリカ側に証言をさせた速記録も私はございます。こちらが知らなければ向こうはうそをついてくる、そして唯一アメリカ世界のリーダーであるための戦略的根拠地を提供している、そのことを明確に認識しながら、アメリカと良好かつ健全また堅固な同盟関係を堅持していくことが求められている。それが、独立国家としての日本世界の平和に資する前提条件になるのではないかなと思います。  昨今議論になっております国会の関与などの問題につきましては、ここに書いてあることをもとに、また質疑の中でお答えをさせていただきたいと思います。  御清聴ありがとうございました。(拍手)
  93. 山崎拓

    山崎委員長 ありがとうございました。  次に、伊豆見参考人にお願いいたします。
  94. 伊豆見元

    ○伊豆見参考人 伊豆見でございます。  私は、朝鮮半島を中心といたします北東アジアの国際関係を研究いたしておる者でございますので、主として朝鮮半島との絡みで私が考えておりますことを何点か紹介といいますか、申し上げさせていただきたいと思います。  私は、個人的にはまず日米安保体制というものを堅持することに大賛成の人間でありますし、日米同盟というのをより円滑に動かしていくべきだという立場に立っております。さらに、このガイドラインの関連法案につきましては、これができるだけ速やかに整備されて、ガイドラインというものが周辺諸国に対してきちっと示せるということが何よりも重要だと考えている人間でありまして、したがって、こちらでの御審議もできるだけ早く進めていただき、できるだけ早くこの関連法案成立するということを期待いたしている者でございます。  何点か申し上げたいと思いますが、ガイドラインというものが朝鮮半島にとってどういう意味合いを持つかといいますと、私は、やはり抑止という観点が非常に大事であろうかというふうに思っております。  これは基本的には北朝鮮に対してということでありますが、北朝鮮側から見ますと、万が一朝鮮半島の有事、この有事には自分たちが起こすということもあるでしょうし、あるいは逆に攻められるということもあるかもしれませんが、その朝鮮半島の有事ということを想定する場合の米軍のかかわりというものに対する関心が非常に深うございまして、当然のことながら、アメリカは在韓米軍を置いておりますので、その在韓米軍は関与してくるといいますか、参戦の相手になるという想定はできるということは当然でございますが、果たして在日米軍というものがどういう役割をその際果たすのか。これは基本的には日米間の協力というものがどれだけ円滑に機能するかということにかかってくるものでありまして、その点についての北朝鮮の関心は極めて高いと私は常々感じております。  実は、私は、比較的北朝鮮の方とも意見を交わす機会を持っておりますし、あるいは北朝鮮の公式な立場あるいはメディアというものをかなり細かく常々フォローしてきている人間でありますが、明らかに北朝鮮の見方というのは、ここ数年、具体的には日米安保共同宣言が出ました後、変化してきていると言ってよろしいかと思います。  実は、その日米安保共同宣言というものが発せられる前までは、かなり北朝鮮は甘く考えていたという言葉が妥当かどうかわかりませんが、実は在日米軍というものはほとんどカウントしないでいいというふうに考えていた節があります。それは実際、朝鮮半島の有事というものが生じた際に在日米軍がそこにどのような形でかかわるかというときの日本の姿勢が極めてあいまいであって、ひょっとすると日本はそれに対して反対をするかもしれないし、あるいは日本の中での議論というものが結局は迅速な米軍の対応というものをもたらさないかもしれない、こういう、ある意味で期待といいますか、そういうものが随分あったんであろうかと思います。  したがって、特に日本の防衛整備なり、あるいは日米安全保障関係なりというものについては、北朝鮮はもちろん、常々その日本の姿勢というものを非難するようなことを申しておりますが、実はそれほど真剣味がなかったと言ってよろしいかと思います。これが九六年以降は明らかに変わってきておりまして、どうも、本気で日米間の協力というものが実現する、日本日本安全保障、防衛というものについての考え方が変わってきているということを意識し始めているようでありまして、私は、これが何よりも重要な北朝鮮に対する抑止力であろうかというふうに思います。  その効果は確実に上がってきておりますし、今回ガイドラインの関連法案というものをきちっと整備していただきますと、さらにその抑止的な効果というものは増すであろうという期待が十分にできるかと思います。  私、最近、前のアメリカの国防長官でありますが、ウィリアム・ペリーという方が、現在は北朝鮮政策の調整官をやっておりますけれども、「プリベンティブ・ディフェンス(予防防衛)」という本を、アッシュ・カーターという、彼と仲のいい方と一緒に本を出されました。  この予防防衛という概念というのは、私は大変結構だと思っておりまして、防衛努力をきちっとするということが基本的には重要な抑止力を構成し、紛争あるいは軍事的衝突に至らない、実際には防衛というものに実は当たらないで済むようなものをつくる、そういう意味での予防防衛という概念は、私は大変結構であろうかと。大変賛成でありまして、結局、このガイドラインというものがきちっと整備されることは、予防防衛といいますか、プリベンティブ・ディフェンスという点で非常に効果をもたらすであろう、このように考えております。そういう点で、私はガイドラインに大変賛成なんであります。  二番目に、ちょっとここからずれますが、先ほど岡本参考人もおっしゃっていらっしゃいました。私、大変同感でございました。やはり、日本に対する直接的脅威に対してどうするかということの議論もよりしていただき、それがより整備されることが望ましい、これはもう確かであろうかと思います。  とりわけ、北朝鮮という国を想定いたしますと、朝鮮半島の有事ということもあるわけでありますが、同時に、それは我が国に対する直接的な攻撃というものの可能性というものをやはり持っている。考えてみますと、そういう国は、あるいはそういうことを我々に非常に皮膚感覚で感じさせる国はほかにないのではないか。あるいは、戦後我々は初めてそういうものを皮膚感覚で今感じているのかもしれない。直接的な攻撃というものを受ける可能性があると。これは、私は高いと決して思っておるわけじゃないんですけれども、しかし、決して否定できない。だとするならば、それに対する対応整備というものが大変必要となるという点では、ぜひ、そういうところまで今度は深めて、また御議論をつなげていただくということが重要であろうかと思います。  一つ、具体的には、先ほど岡本参考人がおっしゃられました、そういう船舶、飛行機というものも非常に重要でありますが、さらにもう一つは、ひょっとすると、北朝鮮が日本に対してミサイル攻撃をかけてきたらどうするのかという話であります。  当然、これは我が国の基本的姿勢は、その場合、ほかに有効な防衛的な手段を持たない場合には相手のミサイル基地をたたく、これはもう一九五六年以来の政府統一見解でございますし、今までそれに対して重大なチャレンジがなかったわけでありますが、依然としてそれを保っているということだと思います。  ただ問題は、じゃ、実際そういう事態になったとき、日本はきちっと相手のミサイル基地を攻撃できるのかどうかという、その能力の問題に随分疑問が出ているということが私は問題であろうかと思います。果たして今、航空自衛隊で相手の基地を爆撃できるのかどうか、それだけの爆弾を持っているのか、あるいはそこまで燃料が足りてちゃんと行って帰ってこれるのかというような話が随分出ます。  これは、私は大変よろしくないと思っておりまして、やるかやらないかというのは関係ないのでありまして、攻撃を受けた場合の反撃があり得る、それが政府のきちっとした見解であり国民が支持できるものであるならば、その能力をきちっと示しておくことはもちろん必要であります。  だとしますと、重要なことは、空中給油の問題もありますし、あるいは爆弾、あるいはミサイルというものをどう導入するかということもありましょう。今までは、日本は攻撃的な能力は持たないと言っていたわけでありますが、ミサイル攻撃を受けてそれに対する反撃ということはまことに防衛的な行為でありまして、その防衛的な行為を実現するためにも、当然のことながら、攻撃能力が必要とされるというのは当たり前だと私は思いますので、まずはそういう御議論をいただくということが大事であろうか。実際、これは賛否両論がたくさん出ると思いますが、御議論いただくこと自体がまたもう一つ抑止力であります。こういう議論が日本でなされている、日本国会でなされているということが周辺諸国に示せることが私は大変重要であろうかというふうに思います。  その周辺諸国ということを考えてみますと、もちろん北朝鮮のみならずでありますが、いろいろ懸念がある。日本の防衛努力に対しても懸念がある、あるいは今の日米防衛協力の進め方にも懸念がある、あるいはガイドラインについても懸念がある、そのことが言われておりますが、ただ、私は、ガイドライン、これの関係関連法案整備というものがきちっと進むということは、むしろそういう懸念を解消する方につながるであろうと思います。  やはり外から見ておりますと、あいまいなのが一番困る部分がありまして、これも当たり前でありますが、日本は独力で防衛すると言っているわけではなくて、同盟を選択して、アメリカとともに、もちろん日本の防衛であり極東の安全と平和でありということを求めているとするならば、それを具体的にどうやろうとしているのかということを示すことは、実は一方で反発があるようですが、明確に示せるということが周辺諸国の懸念を相当静めることにもつながると私は思います。  周辺諸国の方々との議論を通じて私が常々感じておりますことは、むしろ、ガイドライン関連法案というものをきちっと整備することは、結局は懸念の解消の方に、ちょっと長いスパンで見ますと必ずそちらの方向に効果が上がるであろうということでございます。  最後に一点申し上げたいと思いますのは、先ほど、ペリー前国防長官の用語で予防防衛という言葉を申し上げました。私は大変結構だと思っております。ただ、予防防衛ということだけだと恐らくこれは足らないんでありまして、もうちょっとこちらの方が有名といいますか、もう少し定着した概念でありますが、予防外交というのがあります。プリベンティブ・ディプロマシーというのがあるわけであります。やはり紛争を起こさないようにするために、その予防をするための外交努力というものでありますが、まさに、この予防外交と予防防衛というものが一緒になって行われたとき、より効果が上がるというのは当然であろうかと思いますので、今我が国の進められておりますガイドライン、そして関連法案整備というものは予防防衛に大変資するものであろうかと私は思いますが、同時に、それを進めるんであれば、なおさら予防外交の面も同時に進めるということが重要であろうかと思います。  これは具体的には、例えば北朝鮮ということを考えますと、やはり対話努力というのがもちろん必要である。現在政府は、対話と抑止ということを政策の基本に据えておられます、私は大変賛成でございますが。これは、どちらかが先行するようなものであっては効果は薄い、その対話と抑止というものが同時に進むことが一番効果が上がることであろうかと私は思いますので、北朝鮮との場合には、きちっと防衛的な努力をして備えることが重要であると同時に、北朝鮮との対話というものを求めていくということが重要であろう。そういう点では、北朝鮮側の非常に建設的な姿勢の変化があったときに対話をやる、あるいは交渉をやるというのも一つ考え方でありますが、むしろ、そういう建設的な北朝鮮の変化を引き出すための対話、交渉というのも一つ考え方でありまして、それが予防外交に結びつくという点もあろうかというふうに考えております。  御清聴をいただきまして、どうもありがとうございました。(拍手)
  95. 山崎拓

    山崎委員長 ありがとうございました。  次に、川本参考人にお願いいたします。
  96. 川本和弘

    ○川本参考人 まず、本日、この場を私に与えてくださいましたこと、大変感謝いたしております。  私は、一番最初の紹介で簡単に触れていただきましたとおり、日本乗員組合連絡会議で議長を務めさせていただいております。私たちの団体は、私のこの後の意見理解を得るためにごく簡単に説明させていただきますが、日本の民間航空で働く機長、副操縦士、航空機関士五千二百名、日本の民間航空のパイロットのほぼ九割以上を組織する団体でございます。  私の前に、お三人の参考人の方が非常に高度な、政治的な問題について大所高所から意見を述べられていたようでございますが、私はそういうのは専門外でございまして、私の所属する団体の中の討論の経緯について、ぜひ皆様、国会の諸先生方に御理解いただきたい。なお、逆に、極めて諸先生方にとっても身近な問題ではないかと考えております。  現在、このガイドラインの問題について、政治の最も大きな議題になっているわけでございますが、私ども民間航空に働く者にとっては極めて関心の高い事項であるし、また、このガイドラインと民間航空の関係について極めて強い危惧を持っているということで、時間の許す限り、三点ほど私の意見を述べさせていただきたいと思っております。  まず第一点目でございますが、私たち、常日ごろ、ごく普通の感覚で、どこの国へでも民間の旅客機に乗って出張なり観光なりに行っているわけですが、国家という枠組みの中でそれが余りにも日常的に行われているのでどなたも不思議には思わないんですが、これは極めて重要な枠組みの中で行われているというふうに考えていただきたいと思っております。その枠組みというのは、国連の範囲の中の国際民間航空機構、その機構を維持する国際民間航空条約、一般的にはシカゴ条約と言われておりますが、その国際民間航空条約並びにICAOという民間航空機構が機能しているから、そういう利便性を日常的に我々は利用してその利益を享受している。このガイドラインが発動されるような事態に立ち至った場合には、その枠組みに対して極めて私どもは心配をしております。  この条約、シカゴ条約の前文には、お手元に三部ほど資料がございますが、全部読む時間はございませんが、まず、国際民間航空の将来の発達は、各国の友好と理解を創造し、以下云々と。それで、国際民間航空の乱用は、一般的安全に対する脅威となることがあるので、また、摩擦を避け、協力を促進することが望ましい、そういう目的のために各国政府はこの条約締結するんだというふうに書かれております。これがいわゆるシカゴ条約の精神であると私たちは考えておりますし、全体を通じて流れている考え方と。  その第三条には、民間航空機とは何なのか、国の航空機とは何なのか。国の航空機とは、これは当然でございますが、軍、警察、税関等の飛行機。したがって、この国際民間航空条約の権利なり責任なり保護なりを受けられるのは民間航空機に限るんだということが、この条約の中ではっきりとうたわれております。したがって、国の航空機というのは、この国際的な民間航空のシステムの中では保護を受けられないということになります。  第四条は、各締約国は、この条約と両立しない目的のため民間航空を使用しないことに同意する、そういうふうにもうたっております。なお、日本国の航空法では、第一条、その目的の中で、民間航空条約の精神にのっとってこの法律を制定するというふうになっているわけでございます。  したがいまして、ガイドラインが発動されるような事態に万が一立ち至った場合には、それらの前提がすべて崩れてしまい、私たち直接その場に働く者にとっては、極めて大きな危惧を抱かざるを得ないというふうに考えております。  それから、第二点目でございますが、周辺事態法の中で、いわゆる日本が行う米軍に対する支援について規定がございます。先生方も当然御存じの第三条関連、それから第九条関連でございますが、私たち民間航空の場に働く者もこれとは無縁ではないというよりも、極めて密接に関連している。第九条第二項では、「国以外の者に対し、必要な協力を依頼することができる。」というふうにされております。この委員会の中のやりとり等を私たちは新聞やテレビ、雑誌等を通じて非常に注意深く見守っておりますが、これはあくまでも依頼であって強制ではないんだというふうに一般にはとらえられているようでございますが、果たして現実はそのような言葉どおりに動くのかという危惧が非常に強いわけでございます。  いわゆる、国から企業に対して依頼という形で要請が行く。企業は、許認可権が非常に多い航空の中では、国に対してそれをお断りするというのはかなり至難のわざではないかなというふうに考えております。具体的には、ある航空会社の団体交渉の中では社長が、それはこたえるんだ、国の要請にはこたえるというふうに明言をされております。  そういうような中で、従業員にとって、会社からの業務命令に逆らうことは極めて難しい。それは私たち生活をかけて拒否をするのか、やむを得ず参加するのかという二者択一を迫られる場合が極めて具体的にあらわれてくるのではないかという危惧を私どもは持っております。  なおかつ、その協力の中身については、法律の中では、自衛隊の行う協力については別表で表示されているようでございますが、民間の協力については明文がないといいますか……。  それで、私たちとして考えられる民間の航空関係協力というのは幾つかあるのですが、代表的なものを挙げさせていただければ、まず米軍による空港の使用、それから、その空港での人員や物資の積みおろし、保管及びその場所の提供、それから、私たち民間航空機による人員なり物資の輸送、これは九七年、日本のある航空会社はアメリカの海兵隊の人間を沖縄から横田に実際に運んでおります。これについては、私ども民間航空の中では非常に大きな問題になって、団体交渉等を通じて会社に中止を依頼し、帰りの便については会社が中止したという経緯もございます。それから、航空機の整備、燃料等の補給、傷病者の輸送等々たくさんあります。それから付随的に、これらを円滑に遂行するために、航空管制や空域の優先的な使用も当然発生してくるのではないかと考えております。  こういう事態に立ち至った場合に、果たして民間航空にとってどういう影響があるのだろうか。  今の日本の経済活動の中で、民間航空抜きには考えられない、人の流れの大動脈の一つを私たちは担っているという自負がございます。そういうような影響の中では、民間航空の流れが極めて制限を受ける、場合によっては異常接近なり空中衝突なりの危険性が非常に多くなるのではないかと考えております。現在でも、私どもは、日本の何カ所かでは軍用機と民間機の異常接近が日常茶飯事的に発生しておりまして、それらについて、昨年は運輸省なり米軍にお話をさせていただいた経緯もございます。  また、日本国内にとどまらず、日本からヨーロッパ、朝鮮半島、中国、アジアは、日本海周辺空域を飛行しなければ飛べないわけでございますが、万が一その周辺の空域なり海域が紛争事態になった場合には、民間航空の安全は根底から覆ってしまうのではないかと考えております。一機の飛行機に乗り込んでいる乗客、乗員は、これは下世話な言葉で言えば一蓮託生でございます。どんな高官でもまたはそうじゃない人でも、運命共同体というふうに私どもは考えております。したがって、私たち民間航空に働く機長の責務は、まず第一に最優先させるのが、御搭乗していただいている乗客の皆様の生命の安全を確保することが私たちの第一義の任務だと考えております。  なお、それに付随して発生する問題として、万が一紛争が発生した場合に、私たちにとって最も脅威となるのがテロでございます。これは具体例が何件もございます。一つ一つ説明するにはもう余り時間がございませんが、このテロを防ぐのは、相手の意思がかたければほとんど不可能と言っていいと思います。なぜかと申しますと、日本の民間航空機、これはアフリカの一部を除いて毎日世界各国を飛び回っております。日本の中で幾らセキュリティーを厳重にしても防ぐことはできません。これは、私どもは断言をする自信がございます。  具体例といたしまして、一九八七年、北朝鮮が大韓航空機に爆薬を仕掛けて、アンダマン海上空で、乗客二百名程度だったですか、ちょっと今数字は覚えておりませんが、お亡くなりになっておりますが、これはソウル・オリンピックを妨害するための工作であったというふうに事故調査報告では述べられております。  あともう一件。その翌年でございますが、一九八八年、イギリスのスコットランド上空でパンナム機が爆破されております。パンナムは当時経済的に困難であったんですが、この事件を契機に、一挙に会社の消滅という道に走ってしまったというふうにも言われておりますが、当初、この事件は、その飛行機に米国の高官が乗っていらしたんですが、それをねらったのではないかというふうに言われていたんですが、後々の事故調査によりまして明らかになったのは、米軍のトリポリ爆撃に対するリビアの報復テロであったというふうに言われております。このときの犯人は、十年たっても引き渡しを受けませんでしたが、つい二日か三日前、オランダに引き渡されたということでございますが、万が一リビアの国家テロだということならば、引き渡された犯人がいてもこの事件の真相が解明されるようなことはないのではないかと私は危惧いたしております。  最後でございますが、そういう紛争当事国にならなくても、イラン・イラク戦争のときに、ホルムズ海峡で米軍の誤射によってイランの航空機が撃墜されてしまいました。そのときに十六名の乗組員を含む二百九十名の乗客の方は全員お亡くなりになったというような苦い苦い教訓、悲劇がたくさんございます。  私どもは、そういう観点から、大所高所の論理ではないかもしれませんが、民間航空に働く現場の人間といたしまして、ガイドライン法案については大変危惧をいたしております。  先生方のお手元に、三部つづりの資料がございますが、一番最後に「ガイドラインに対する航空労働者の見解」という私どものアピールがございますが、ぜひ後ほど御一読いただきたいと考えております。  大変ありがとうございました。(拍手)
  97. 山崎拓

    山崎委員長 ありがとうございました。  以上で参考人からの御意見の開陳は終わりました。     —————————————
  98. 山崎拓

    山崎委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田村憲久君。
  99. 田村憲久

    ○田村委員 自由民主党の田村憲久でございます。  きょうは、参考人の皆様方におかれましては、大変お忙しいところを、有意義なお話をお聞かせいただきましてありがとうございました。まずもって心より御礼を申し上げたいと思います。  さて、我が国を取り巻くいろいろな環境というものは、冷戦崩壊後、非常に厳しくなりつつあるんであろうな、そんなふうに認識をさせていただいておるわけでありますが、特に、昨今では、北朝鮮からの不審船籍の問題もついこの間ございました。その前にはテポドンが日本の上空を飛んでいくというような事件もあったわけでありまして、このガイドラインに対する国民的な理解というものはある程度高まってきておるのじゃないのかな、そんなふうに思うわけであります。  考えてみますと、旧ガイドラインの中において、もちろん、極東における平和と安全の部分に関しても言及はされておるわけでありますが、お話にもありましたとおり、どちらかといいますと、主に日本の有事に関しての議論が中心になっておる。それから、今回の新ガイドラインに関しましては、周辺事態というものに大変重きを置いてきておるわけであります。  旧ガイドラインから今回の新ガイドラインがつくられ、そして今この関連法案というものの整備をこの国会でしておるわけでありますが、この関連法案整備されてきますと、以前とどういうふうな形で、米軍と日本自衛隊との関与といいますか、変わってくるのか。もっと具体的に言えば、どういうふうに日本の平和と安全が保たれるのか。なかなかここら辺というものは、国民にとってはわかったようでわからない部分だと思うのですね。この違いというものをぜひともお聞かせをいただきたい。  岡本参考人、それから小川参考人からお願いいたしたいと思います。
  100. 岡本行夫

    岡本参考人 冷戦後、我が国周辺及び北東アジア情勢というものが一層不安定になっているという御認識は、私はそのとおりだろうと思います。  旧ガイドラインのもとでは、なるほど、自衛隊と米軍の間の役割分担というものは、概念的には整理されておりましたが、それを実施する規定がなかった。それが今度は、後方地域における支援ですとか、捜索救援活動とか、あるいは船舶の検査といったことを自衛隊が具体的に行い得る根拠法規ができる。また、米国との間のいわゆるACSA協定のもとで、周辺事態対応する物品役務相互融通が可能になるということで、実際の運用がこれでできるようになったことかと存じます。  なお、これは政府の方が御答弁することだと思いますが、私の理解を申し上げました。
  101. 小川和久

    ○小川参考人 御質問ありがとうございます。  私は、新ガイドラインで、例えば四十項目の対米支援ということが詰められていく中で、確かにアメリカ立場で見ますと、日本自衛隊をあるいは日本の国家というものを機能させるということにおいては、かなりメリットが生まれたという評価をしてくるだろうと思っております。  ただ、私が先ほど御指摘申し上げましたように、国家意思の表明をするための政治レベルの議論、これは事前協議の明確化を初めとするものでありますが、それをはっきりしない中では、アメリカの従属国になるという色彩がつきまとうわけでございます。これはアメリカから見て、ういやつというだけでは困るわけでございますね。だから、その部分を明らかにしない限り、日本の外交力に陰りが出てくる問題になるだろう。  だから、新ガイドラインの議論が現在のままである限り、差し引きマイナスになる可能性というものは我々が覚悟をして、それをどう克服するかという議論を同時に始めなければいけないのではないかと思います。  どうも御質問ありがとうございました。
  102. 田村憲久

    ○田村委員 今お話しいただいたわけでありますけれども、一方ではこれが、今小川参考人の方からはマイナスになる部分もあるという話があったわけでありますが、とりあえず周辺事態というものに対して我が国がどう関与していくのか。そういう意味からしますと、できないといいますか、できたのでしょうけれども、法的ないろいろな根拠の中でなかなか大手を振ってできなかった部分が整理がついてくる、そういう意味では重要な意味がある今回の関連法案なのかな、そんなふうにも思うわけであります。  ただ一方で、周辺事態というもの、これは我々が委員会中いろいろな議論の中でもしょっちゅう出てくるわけでありますが、この周辺事態というものの、地理的範囲というものはさておいて、事態というものが一体何なのか。これが拡大解釈をされていきますと、それこそよく言われますとおり、日本が米軍に引っ張られて、何ら関係のないとは言いませんけれども、平和と安全に余り影響がない部分でも参戦、参戦といいますか、軍事的にある意味では関与していくような、そういう影響が出てくるのではないのかな。これはまさに、ある意味では日本国憲法に反するのではないのか、こういう議論があるわけなんです。  この周辺事態というものの定義、一体何なんですかというのは何遍もこの国会の中でも議論されているのですが、与党の私が聞いておりましても、ある程度わかるのですが漠然としておりまして、多分それは、そのときそのときの事態、規模にもよりますし、その様態にもよるのでありましょうけれども、そのときに米軍と事前に調整をしていく中で決定していくということになるのだろうと思うのです。問題なのは、日本の平和と安全に重大な影響が及ぼされる事態と言うのですが、この日本の平和と安全に重大な影響というのは、何がどこまでいけば重大な影響なのか、どこまでは重大じゃなくて普通の影響なのか、そこの区切りというのが非常にわかりづらい。国民の皆様方が一番不安なのはそこだと思うのですよ。  そこの部分を、これは政府に聞いてもなかなかちゃんとした答えが出てこないと思いますし、出すこと自体がまた、これは軍事的な部分でマイナスになるという部分もあるのだろうと思うのですが、岡本参考人と小川参考人に、私見で結構でございますので、どういう事態が大体こういう事態に当てはまるのだろうなというのをお聞かせいただきたいのです。
  103. 岡本行夫

    岡本参考人 私は私人でございますから私見しか持ち合わせておりませんが、確かに国会での議論を拝聴しておりまして、若干わかりづらいところがございます。  私は、例えば日本近海で日本タンカーが組織的、計画的な攻撃を受けたような場合には、当然これはまずはこのガイドライン関連法案の対象になるものでございましょうし、一般に国民の不安感を惹起するような事態というのは、おのずからそのときに判断ができると思うのでございます。  ただ、私は政府の言うことで理解もできますのは、一般にこういうことは、事前にここからここまでだということを明らかにすると、かえってそのことによって抑止力が損なわれる。地理的な範囲についてもそのように考えます。ですから、若干不明瞭な部分があるのはいたし方ないかもしれません。  しかし、少なくとも、具体的にはこれこれこういう場合はそうだという例示をきちっと国民にもわかるように提示することが重要じゃないかと私は考えております。
  104. 小川和久

    ○小川参考人 周辺事態なる言葉は、これは大変優秀な官僚の悪知恵の産物であると私は思っております。これを考えた人については私は高く評価をしております。ただ、周辺事態なる言葉を使わなければいけなかった日本国のあり方というものは、やはり同時に議論されるべきであろう。  これは、例えば戦後処理というものについて、別に謝罪外交を繰り返す必要はないわけでありますが、やはり三百十万の戦争犠牲者の霊が浮かばれる形で、周辺諸国の信頼を確立すべく我々は処理を進めなきゃいけない。それが一定の水準にまで到達していれば、例えば、最近中国側が私に対して明らかにしたのは、ドイツの戦後処理と同じレベルであるかどうかをこれからは問うていくということを言っています。  そういったことになっておりますと、自衛隊行動を通じて世界の平和を実現するために日本行動するということになりますと、周辺といったようなことを断る必要があっただろうかという問題が出てくるわけでございます。ですから、これはやはり日本側の問題としては、日本国の思想が問われる問題であろう。  アメリカ側からしますと、先ほど御説明申し上げましたように、日本列島という戦略的根拠地は、アメリカ海軍第七艦隊と第三海兵遠征軍の任務区域とぴったり重なるわけでございます。これはハワイから喜望峰まで、地球の半分でございます。この地球の半分を視野に入れながら日米安保を機能させていくというのがアメリカ立場でございます。このアメリカ立場からしますと、日本立場が極東の範囲といったようなことでとどまるのではなく、より広く日米共同の行動ができるようにしていきたい、それは当然のことではあります。  そういったアメリカ側の気持ちと、日米安保のアメリカから見た現実と一歩近づいたというのが、九六年四月の日米安保共同宣言であっただろう。その中で、やはり日本国民が、日本の周りで北朝鮮がきな臭い動きを見せたり台湾海峡の問題というものも話題になる中で、一定の理解を示すだろうということで周辺事態という言葉は出てきたのだと思うのです。  ただ、我々はやはり、そういった根本にある問題というものを視野に入れながら、同時に、日本の国益にかかわる事態に対してどう我々が対処できるかという議論をしなきゃいけない。  北朝鮮の問題については、例えば、先ほど伊豆見参考人のお話にもありましたように、北朝鮮がミサイルを撃ってくる可能性可能性の問題として一%でもあれば、専門家である我々は備えます。ただ、大きいか小さいかというと、そう大きいものではない。ただ、そういう中で、北朝鮮を中心に世界が回っているような議論はやめろと。序二段と言ったら大変語弊がありますが、相撲でいうと序二段のレベルにある北朝鮮に対して、横綱、大関の相撲をとることを問われている日本がヒステリックになって走り回る必要はない。  そういったこともきちんと押さえて朝鮮半島の有事に対処する、また、台湾海峡の安定にどれぐらい外交力を発揮するか、それがガイドラインの議論の中に含まれてくることが求められているのじゃないかと思います。  どうもありがとうございました。
  105. 田村憲久

    ○田村委員 周辺事態という認定は非常に難しいのでありましょうけれども、今お話をお聞かせいただいて、整理まではいかないのですが、大体私が考えさせていただいていることと同じ御認識をお持ちいただいたのかなと思います。  この周辺事態というもの自体、私が思いますには、日本国憲法第九条がもしなければ日本が個別に自国の国益のために行うべき行動、それを米軍にやってもらう、その後方支援等々をやる、こういうことなのかな。でありますから、決して、米軍の国家戦略といいますか、そういうものに引っ張られて日本がすべてにおいて関与していくというべきものじゃないだろうな。あくまでも自国の平和と安全ということは国益でありますから、もし日本に九条がなければやっておることであるというものに関しての事態であるのだろうな、そんなふうに認識をさせていただいております。  さて、話は変わりますけれども、実は、後方地域支援が、この中において武器使用を認めていないといいますか、もちろん個別的自衛権がございますから、攻撃されれば、これに対して攻撃をし返すことはいいのであろうといいますか、当然の権利であろうということになるわけでありますが、そのほかに関しましても、それぞれの、例えば後方地域における捜索救助活動でありますとか、またいろいろな部分、邦人なんかの国外からの退去、輸送、こういうものに関してもそうであるのでありましょうけれども、武器の使用は、こういうものは認められておるわけでありますが、これに関しても最低限の武器使用であるということがここの国会においても議論をされておりまして、これで事足りるのか。  特に、後方地域支援に関しましては、もし標的にされれば、当然そこはもう安全な地域じゃございませんから、そこから移動をして待機するなりして、また別の行動に向かっての準備をするというような話であるわけでありますが、やめるわけじゃないのですよね、やめるわけじゃない。その地域から一応離脱して待機をするというような話でありますから、そういうことを考えると、軍事上からいきまして、相手の補給をたたけというのは当然でありますから、帰ってしまうものならば、武力的な威嚇行為なりをして帰らせたら、もうそれで事足りるわけでありますが、どこかで待機していたら、また来るわけですよね。これはもうたたいてしまえ、そういう可能性が出てくるんじゃないのかな。  そのとき、基本的な、自然的な権利といいますか、やられたらやり返すという権利はあるのであろうと言うのですけれども、あくまでも今回の法案を見る中においては、明確な武器の使用というものが認められているわけでもありませんし、これではちょっと危ないんじゃないのかなというような気がして仕方がないのです。  お二人ばかりで申しわけないのですが、この点に関してどのようにお考えになっておられるのか、世界のいろいろな今までの事例から見て、今の日本のこの法律で十分に安全が保たれるのかどうか、御見解を聞かせていただきたいのです。
  106. 岡本行夫

    岡本参考人 お尋ねの点につきましては、基本的に、今度の海上保安庁の対応ぶりがそうでありましたけれども、警察官職務執行法を準用して限られた要件のもとでのみ武器を使用する。みずからがやられたときだけ応射してよろしいということになっておりまして、僚船が、同僚の船でございますね、攻撃を受けたときなどにはそれは準用されない。私は、やはり合目的的に解釈していくべき話だと思います。  ただ、もちろん、武器使用ということについては国民の警戒感も非常に強いところでございますから、私は、今回武器使用ということに非常に精緻な議論を積み重ねていって、もう少しここまでというふうに拡大するよりは、何はともあれこのガイドラインの基本的な考え方というものを国民に強調することが必要だと思います。  私は、実は、武器使用以上に、武力行使の一体化ということについての法制局の非常にかたい見解というものが、今回のガイドラインにつきましても、それを実効的にうまく運用できないような事態に立ち至らせるのではないかという方の危惧を持っております。
  107. 小川和久

    ○小川参考人 御質問ありがとうございます。  後方地域支援ということについても、これは悪知恵的な用語ではないかと私は解釈しております。  というのは、先ほど来お話を申し上げましたように、日本列島そのものがアメリカのリーダーシップを左右する戦略的根拠地である限り、アメリカと敵対している核兵器保有国が日本に核ミサイルの照準を合わせるというのは当たり前でございます。  過去にそうであったということは、おととし六月のデンバー・サミットにおいてエリツィン大統領が明らかにし、照準を外してくれた。中国の核ミサイルはまだ日本に向けられていると考えるのが常識でございますし、ことしになりまして中国の軍のトップと話したときにも、いつ照準を外すんだいと聞きましたら、いつねらっていると言いましたかととぼけておりましたが、そういう話でございます。ですから、前方も後方もないというのはこれまでの国会で議論をいただいたとおりでございます。  ただ、そういう中で、例えば、PKO活動の中のPKF、国連平和維持軍に自衛隊を出す場合においても、やはり部隊編成の常識ということを頭に置いておきますと、PKFという軍事組織を使った警察活動においては現行憲法の中でも自衛隊は出せるだろうというのが私の立場でございます。  ただ、同じ国連の平和活動といっても、例えば平和執行部隊あるいは多国籍軍あるいは国連軍といったような形になりますと、軍事組織の編成上、完全に武力行使といった格好になりますし、例えば湾岸において多国籍軍を編成しておる、あるいは国連軍を編成しておるという事態を考えた場合、日本はそこに自衛隊の医官やそれから衛生部隊を中心として後方支援をするということでかかわっても、その部隊が敵からねらわれるという場合はある。そこに攻撃を受けた場合、反撃を担うのはアメリカでありイギリスであり、あるいはフランスであったりイタリアであったりするわけでございます。当然ながら、敵から見れば一つ部隊編成の中での後方支援部隊であり、そこに日本がいるというだけなのですね。  だから、日本としては、そこにおいて問われるのは、国家としてのそういう事態に当たっての覚悟の問題とそれから現状認識の問題であろうかと思います。  例えば、米軍を日米安保において反撃能力として位置づけるのかどうか。これは、朝鮮半島有事においては、別にそこまで議論するまでもなくはっきり反撃能力としてあるわけでございます。  というのは、朝鮮戦争において、国連決議が行われ、国連憲章第七章の手続を全部踏まえたわけではないけれども国連軍が十六カ国によって編成され、現在八カ国で維持されておる。国連軍司令部は韓国にあり、後方司令部は神奈川県のキャンプ座間にある。そういう中で、日本国と八カ国の間では国連軍地位協定が結ばれているわけでありますね。  だから、国連決議に基づいて国連軍の主力をなす米軍が北朝鮮に対して反撃をする事態が生じる、これは例えば一発でも日本や韓国にミサイルを撃ち込んだ場合でございます。その場合においては、例えば横須賀を母港とするアメリカ海軍の艦船のうち、トマホーク巡航ミサイルを標準装備した八隻が、標準装備されたトマホーク巡航ミサイル三百発を現在でも発射できる体制にある。これはもう反撃できる格好になっておるわけでございます。  では、台湾海峡の有事の場合はどうか。その辺が全然詰められていない。そこにおいて米軍の戦力を反撃能力として我々は位置づける議論ができるのか、また覚悟があるのかということが問われているだろうと思います。  どうもありがとうございました。
  108. 田村憲久

    ○田村委員 ありがとうございました。  先ほど小川参考人の方からお話があったと思うのですが、どちらかといいますと集団的自衛権というものを限定的に認めるべきではないか、実はそれの方がこれから日本が将来米軍と作戦行動等をしていく中で変に米軍に引っ張られることもないのではないのかな、そういうような御意見であったと思うのです。  確かに、おっしゃられますとおり、周辺事態というものが事実発生したといたしまして、米軍が武力行使に入る、突入する、日本後方地域支援をやる。ところが、本当にもう間近に日本の有事に近いような、重大も重大で重大過ぎるぐらいの平和と安全に影響を及ぼすような場合には、米軍の兵士がそこで命を落としていくのに、日本はなるべくその戦火に入らないような形で、周辺でただ単に後方地域支援だけをやる、それだけをやるということになりますから、米軍の方から、またアメリカ国民の方から大変なる非難というものが出てくると思うのですね。  当然のごとく、その後、これはもう後方地域支援だけじゃ日本はだめですよ、もう少し実体的な部分にまで入ってきてくださいよ、もちろんそれは国外にまで日本が直接攻撃に出るかどうかは別にいたしましての話でありますけれども、もう少し兵たんといいますか、各国がやっておる兵たんにもっともっと近づいた部分までやってくださいよという議論になってくるかもわからない。  そういうことを考えますと、集団的自衛権というものを限定的に認めた方がいいんじゃないのかなというような、私も同意見なんです。どうか、そこら辺のところをもう少し詳しく、それじゃどこら辺までは集団的自衛権の中で日本が関与できるか、ここから以上はだめですよという部分があればお聞かせいただきたいと思うのです。
  109. 岡本行夫

    岡本参考人 日米安保体制というのは、御案内のとおり、日本の持ちます個別自衛権とアメリカの持ちます集団自衛権の組み合わせによって成り立っております。私は、これは効果的に運営すれば今のままでも十分機能し得るものだと思っておりまして、直ちに日本が集団自衛権の領域にまで踏み込まなければならないとは考えておりません。  ただ、個別的自衛権の範囲を余りにも狭く解釈してきている。例えば一九八〇年代には、日本が攻撃を受ける、仮にソ連といたしましょう、そしてアメリカの艦船が日本の救援に向かってきた、その船が途中でソ連の軍艦から攻撃を受けた、近くに自衛隊の船がいた。自衛隊は、その攻撃を受けている、日本を守りに来ているアメリカ軍の艦船を守るためにソ連軍に発砲していいかといえば、それはできない、集団自衛権に抵触するというのが法制局の見解でございましたが、このようなことでは同盟関係は成り立たない。そこは自然の解釈の進展によりまして、日本を守りに来る米軍を守ることは個別自衛権の範囲ではないかという常識的な議論に収れんしていったわけでございます。  ただ、またその後、例えば湾岸戦争が起こりました。そのときには、日本政府の船舶に武器弾薬を積み込む、そして湾岸に輸送すること自体が、武力行使の一体化を形成するから集団自衛権に抵触すると、これまた法制局から非常に強い異議が出ました。これも私は、おかしなというか、武力行使の一体化というのは、前線で兵士が発砲している、そのすぐ後ろに立って、ほい来た、ほい来たと弾を渡せば、それは確かに武力行使の一体化でございましょうけれども、その延長をずっとこの日本の領域にまで広げてくるのかというところで、私は大いに疑問がございました。  ただ、その点も今回はクリアされているようでございまして、日本政府の船舶が武器弾薬を運ぶところまではいい。一歩一歩、個別自衛権の範囲内で、どこまでが集団自衛権に踏み込まないで、まだきちっと、自然な解釈のもとに合目的的にそれを運用していけるかという余地は残っていると私は思っております。
  110. 小川和久

    ○小川参考人 私は、集団的自衛権の日本モデルのようなものを示しながら、もちろんたたき台でございますが、やはり国際的な非難をかわすだけではなくて、日本としての責務をはっきり明らかにしていくことが重要だろうということでさっきお話をいたしました。  なぜそういうことに考えが至ったのかといいますと、日米安保の現状というものが、例えば後方地域支援などというたわ言から見て、余りにもレベルが違い過ぎるという問題があるからなのです。  例えば、湾岸危機、湾岸戦争の七カ月間、日本と中東を往復した軍艦以外のアメリカの艦船は、私のコンピューターに入っているものだけで延べで百十三隻でございます。この大部分は燃料と弾薬を積んでおった。五十七万人近い米軍の兵力の使った燃料と弾薬の八割以上は日本から持っていっているのですね。だから、日本列島というのはアメリカ本土と同じ位置づけなんです。だから、テポドンの後も、アメリカ側がはっきり北朝鮮に言ったのは、アメリカ本土に対する攻撃と同様にみなす、その場合は核で反撃をするということを言っているぐらいでございます。  例えば、そこに置かれている燃料や弾薬の能力でも、これはちゃんと公表されているのに我が政府は持っていなかったから、これは職務怠慢のそしりを免れないわけでございますけれども、燃料は、米軍が使う燃料貯蔵施設の中で二番目の規模のものと三番目の規模のものが日本にあるんですよ。鶴見が二番目で五百七十万バレル、長崎県の佐世保が三番目で五百三十万バレル、あと八戸に七万バレルあって、一千百七万バレル。世界で最大最強の第七艦隊という部隊を十回満タンにして六カ月戦闘行動をさせられる。だから持っていくんです。当時のフィリピンのスビックなんというのは、長崎県の佐世保の半分以下の二百四十万バレルの能力しかなかった。それを我々は調べてなかったから、これは国民を挙げて反省しなければいけない問題だというわけであります。  それから、弾薬。考えてください、皆さんは江畑謙介さんのピンポイントの解説を、ああといって口をあけて見たでしょう、テレビで。でも、あれは、やはり我々の能力によって支えられた部分なんですね。例えば、弾薬の貯蔵能力で一番象徴的なのは、広島県内にあるアメリカ陸軍の三カ所の弾薬庫ですが、トータルの弾薬貯蔵能力十一万九千トン。皆さん方は御記憶にあるでしょう、先月この国会において、今陸海空の自衛隊が持っている弾薬、トータルで幾らかというデータが出たでしょう、政府から。十一万五千トンだったでしょう。それを上回る貯蔵能力が陸軍のものだけであるんですよ。これは、後方地域とかいうたわ言がいかに空論かということを我々に突きつけている。  だから、やはり集団的自衛権についても、我々は真剣に議論をして、一つのモデルを提示する中で、やはり国連憲章五十一条に基づき、例えば国連安保理が国際の平和の維持のために機能した段階というものを明確に定義しながら、そこまではやるということが極めて問われるのではないかと思います。  ありがとうございました。
  111. 田村憲久

    ○田村委員 ありがとうございます。  最後に、地方公共団体の協力に関して少しばかり御質問をしたいのですけれども、今回、法案の中におきましては、協力義務といいますか、罰則規定がない。協力してもらわなきゃ困るというような、そういう発想であると思うのですが、あくまでも強制権はない。  実際問題、空港、港湾の使用、また公立の病院等々、米軍の傷病兵が来た場合にどう対応するのか、これは、実はその時々の状況によって変わってくるだろうと思います。そこの首長さんが理解のある人かない人か、それによっても違うでありましょうし、国会での承認というものはない、ないといいますか、今ないということで一応法案は来ているわけでありますが、そういう場合には余計に、僕は、かえって地方の首長さんに断る口実を与えてしまうんじゃないのか、実はそんな危惧さえ持っているんです。  でありますから、事後承認でもいいですから、こんなことを言うと自民党に怒られてしまうかもわからないですけれども、事後承認でもいいですから、そういうものをした場合には、強制的に、地方公共団体はこれはもう義務として協力をしなきゃいけないというふうにした方がよっぽど有効性があるんじゃないのかな、これは私の私見なんですけれども、そう思っておるのですが、その点、最後にお聞かせいただきたいと思います。お二人、お願いいたします。
  112. 岡本行夫

    岡本参考人 法律の中に「協力を求めることができる。」と書かれている限りは、これが国会承認ということになっても、精神的には相当な圧力になるかもしれませんけれども、それが直ちに強制力を持ち得ないことは明らかだと存じます。  ただ、これまでは、私の経験では、政府としては地方自治体に、あくまでもお願いベースで、何とかお願いしますと言ってこなければいけなかったわけで、どうしてそんなことをあなたたちから言われなければいけないんだというような反応も出た。それが今度は、法律の中に「協力を求めることができる。」と明記されれば、政府地方自治体に対して発言する、依頼する法的な根拠ができるということで、私は、そのこと自体でも一歩の大きな前進だろうと思います。あとは国民全体の防衛意識の高まりということの問題だろうと思います。
  113. 小川和久

    ○小川参考人 私は、レジュメのCのところにもちょっと項目だけ書いてありますが、自治体や民間の協力については、事後告発権というものを明らかにすべきだと思います。その中で、やはり一定の協力義務というものを明確にし、ただ、間違った形でそれが機能した場合には、事の後ででありますけれども、厳しいペナルティーが科せられるということが条件になってまいると思います。  いま一つ条件として我々が押さえなければいけないのは、政府の説明責任でございます。  例えば、高知の橋本大二郎知事が寄港艦船の核搭載の有無について問題提起をした。あれは明らかに神戸方式とは違うんですね。私は理にかなったやり方の一つだろうと思っています。ただ、政府としては、困ったものだなというところがあると思うんですね。  ただ、橋本さんは、私が橋本知事の立場だったら同じことをやると思うんですが、県民の不安がある、それに対して知事として、政府に答えてくださいよと言ったわけですから、神戸方式のように外国の艦船に対してダイレクトに問うといった、外交権に触れるような格好は避けているんですよ。それに対しては、政府はそれなりの説明をする責任がある。  そういう中で初めて、有事における民間や自治体の協力についても一定の義務条項を設けることができるだろうし、それをまた保障するものとして事後告発権というものを明示するということが、考え方としてはあり得るんじゃないかと思います。  どうもありがとうございました。
  114. 山崎拓

    山崎委員長 これにて田村君の質疑は終了いたしました。  次に、玄葉光一郎君。
  115. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 民主党の玄葉光一郎と申します。  本日は、まことにありがとうございました。さらに今後の審議に参考にさせていただくために質問をさせていただきたいと思います。  お二人の参考人の方から出ましたように、日本の防衛というものを考えたときに、大きく分ければ確かに選択肢は二つだろうと思いますし、私は、いつも自分の中では、自主防衛と非同盟中立と日米同盟と他の国との同盟、バイの同盟とマルチの同盟をどうするかというふうにいつも心の中で問うているわけでありますけれども、今の、残念ながらアジアに脅威が残っているという状況においては、同時に、マルチの同盟が育っていないという状況においては、日米安保というものを大切に育てていかざるを得ないということだと思います。  そこで、小川参考人が、日米安保の将来というものを考えたときに、あるいは現在ということでもそうかもしれませんけれども、事前協議の確立という話をされたわけであります。  まずは岡本参考人に実はお伺いしたいと思うのですけれども、今、小川参考人がおっしゃった、事前協議の確立ということをある意味で強く主張する大前提というのは、後でおっしゃった日米同盟の対称性、私の表現で言えば、負担のバランス、負担の均衡、あるいは負担の公正とでも言うんでしょうか、そういうものが全体としては保たれているというのが前提なのかなというふうに思っています。  この間、東アジア戦略報告を読んでいましたらば、世界じゅうの同盟国の中で日本の支援は、ジェネラスという表現だったと思いますけれども、寛大な、気前のよい支援だというふうに書いてありました。恐らく小川参考人の御意見というのは、このレジュメを見ても、つまり、思いやり予算とか在日米軍基地の戦略的な地政学的な位置を考えれば、軍事的片務性をいわば補って余りあるという御議論だと思いますけれども、この点について岡本参考人はどのようにお考えになられるか、まずお伺いをしたいと思います。
  116. 岡本行夫

    岡本参考人 前段の事前協議につきましては、どのような定義でお使いになっているのか、ちょっとまだ承知いたしませんが、いわゆる安保問題に関する事前協議というのは、御承知のとおり、岸・ハーター交換公文に三項目について事前協議という言葉が法律用語として明記されておりまして、それに関する限りはあのシステムのもとで忠実に履行していくということだろうと思います。  ただ、先生がおっしゃられようとしているのはそれよりも広い意味での政策協議ということだと存じますが、それは私は、今の日米間に十分な意思疎通というものがなされているかどうか時々疑問に思うこともございます。これは、米国が行う行動政治的なものであれ経済的なものであれ、特に日本の利害に深くかかわってくるアジア政策についてはもう少し緊密な日米間の意思疎通が必要だなと私も思っております。  安保体制の双務性につきましては、先生の御指摘されるとおりであります。個別自衛権とアメリカの集団的自衛権の組み合わせによって、アメリカ日本を守るけれども日本アメリカを守らないというそのところだけを見れば片務性のようにも見られますけれども、安保条約第六条のもとで、米軍に対して極東の平和と安全のために施設・区域を提供している、そしてそれに付随するいろいろな役務、サービス、財政支援をしているということはアメリカに対する大きな日本側からの逆に貢献でございまして、その程度において私は双務的である、バランスがとれていると理解しております。
  117. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 事前協議の話の中には、今申し上げた中では広い意味での政策協議は入っていなかったんですが、でも、岡本参考人がおっしゃったように、広い意味での政策協議も残念ながら不足しているという認識は全く一緒でございます。  さて、その事前協議ですけれども、まさに今お話に出たように、普通事前協議というと、六条の交換公文の話で、三項目あるわけであります。特に問題になるのが直接戦闘作戦行動というところで、今まさにお話があったように、これまで一度も事前協議がなかったのはまさに事例がなかったからだ、政府はそう言うわけであります。つまり、直接の戦闘作戦行動ではないんだから、実際に直接の戦闘作戦行動があったらばそれは当然相談があるんです、そうおっしゃるわけでありますけれども、小川参考人は、こういう政府考え方というか表明についてはどのようにお答えになられますか。
  118. 小川和久

    ○小川参考人 私自身、結論を先に申し上げますと、日米安保条約に伴う事前協議制については、これこそ日本から問題提起をして、随時できるように双務性を持たせることを要求すべきだと思っております。  事前協議につきましては、はっきり申しまして、湾岸危機、湾岸戦争においても外務省の中で大激論になったことを私知っております。アメリカは事前協議を破ったと、これは岡本さんの後の北米一課長の時代でございますが、大変激論が闘わされたことを私知っております。ただ、やはり政府としてそれを表明することは避けたという問題なんですね。  アメリカのほかの同盟国とアメリカ関係において、事前協議あるいはそれにたぐいするものがどのような格好で処理されてきたかということで申し上げますと、例えば、アメリカと最も密接な関係にあるイギリスとの関係がございます。  例えば、中東戦争のさなか、スエズ運河の上空からの偵察に当たり、アメリカは、イギリスの基地に展開しているSR71戦略偵察機、これはマッハ三で飛ぶものでございますが、これの出動をしたいということをイギリス政府に申し入れた。イギリスは、米英同盟の重要性もさることながら、アラブ諸国との関係を悪化させかねないということでこれを拒否したわけでございます。これは労働党政権だったということもありますが、明らかに国防省が拒否という姿勢を示している。これによってアメリカは、アメリカ本土から多数の空中給油機を空中に展開する中でスエズ運河の偵察を行った。  しかるに、日本の場合はどうかというと、このSR71は三機体制で沖縄の嘉手納基地にずっと展開してきたわけですね、今は本国に撤収しましたが。  これはまず、沖縄が日本に返還される以前の段階では事前協議の対象にはならないんですが、どのように運用されたかということを言いますと、毎日、北ベトナム、ハノイ上空を偵察いたしました、直接出ていって。そして、途中に空中給油機を五機展開しながら、タイのウタパオ基地で一回着陸をして帰ってくるということを繰り返しておる。  それから、これは沖縄返還後でありますが、私がたまたま対馬の一番北にある航空自衛隊の海栗島のレーダーサイトで基地司令と飯を食っているときに、警報が鳴ったんですね。何だということになりましたら、これは昭和五十六年の八月の末でありますが、北朝鮮上空を嘉手納から出撃をしたSR71が、これはしょっちゅう飛んでいたんですが、横切った。それに対して北朝鮮がSA2型という対空ミサイルを二発発射した。もちろんその上を飛んでいったので当たらなかったんですが、それはもう私がはっきり覚えている事例でございます。  また、イラン・イラク戦争の最中、これは沖縄返還後でありますが、これもかなり時を選びながらではありますが、ホルムズ海峡の偵察のために嘉手納基地からSR71を出撃させている。  これはどこに出ているかといったら、SR71を開発した人間の実録の中に出ているわけでございます。これはちゃんと市販されている本に出ているんです。  そういったことに対して国会で議員さんが質問をいたしますと、政府の答弁としては、偵察機だから出撃には当たらない、愚か者という話でございますね。作戦用航空機の中に偵察機や戦術偵察機を入れるでしょう。ましてやSR71は戦略偵察機ですよ。訓練のために離陸して、途中から任務を与えられるなんというのはあり得ないんです。むちゃくちゃ燃料を食うわけですよ。大変危険な行為なんです。だから、初めから出撃なんです。それに対してすら明確な意思表示をできない日本政府については、いささか私は失望を覚えております。  ありがとうございました。
  119. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 こういう話を六条の交換公文でしていくと、直接戦闘作戦行動の定義の話になって大体袋小路に入っちゃうというのが率直なところだと思っているんです。  私が最近自分の検討材料だなと思っているのは、新たな取り決めを結んだらどうかと思っているんです。つまり、今ある六条の交換公文の世界の直接戦闘作戦行動は、これはこれで置いておいて、そのかわり、ペルシャ湾に出ていく、これはこれで安保条約は排除していません、確かに。日米安保条約上、排除はしていません。ただ、日米安保条約上の目的の枠内か枠外かと言われれば、目的の枠外ですね。ですから、条約目的外の基地の使用についてきちっと相談をしてねという取り決めを今後結ぶということを検討していくことも一つの方法ではないか。結構日米関係はきついと思いますけれども、私自身は今そういうことを一生懸命研究をし始めているということでございます。  次に、北朝鮮の問題、特に対北朝鮮外交の問題についてお三方にお尋ねをしたいと思っています。  伊豆見参考人がまさに御専門でいらっしゃるわけでありますけれども最後に、政府の今の北朝鮮外交について、抑止と対話、抑止はガイドラインとTMDということだと思いますけれども、その対話の部分について、基本的に賛成だ、その上で、さらに一歩を進めるべきだというようなニュアンスの発言がございました。その点についてより具体的にお触れいただければありがたいし、今話題になっている超党派の、村山訪朝団なんと言われている訪朝団、これもまだ中身が定かじゃありませんからそれについて聞かれても答えようがないかもしれませんけれども、そのことについてどのようにお考えになられるか。これは後で岡本参考人にも小川参考人にも実はお尋ねしたいと思っております。よろしくお願いします。
  120. 伊豆見元

    ○伊豆見参考人 ありがとうございます。  私は、政府の対話努力につきましては、先ほど申し上げましたように、基本的には賛成でございますけれども、ただ、今政府がおっしゃっていらっしゃいますのは、北朝鮮の建設的な対応というのがあったときに、正常化交渉あるいは対話というものを公式に考えるというお話でありました。  ところがこれは、現実の問題として私が大変難しいと思っておりますのは、我々が見て評価できるような建設的対応が北朝鮮から出てくるかどうか、それはなかなか期待薄ではなかろうかと思っております。そうなりますと、彼らの対応が積極的、肯定的になるまでは一切我々は話ができない、あるいは交渉ができないということになりますと、その点のマイナス面があろうかというふうに私は考えております。したがいまして、対話を求めるのであれば、対話自体も無条件で構わないのではなかろうかと私は思っておりますし、交渉というものも無条件に再開して構わない。  ただ、その交渉というものの中身でありますが、正常化交渉という言葉をどうせ使うことになろうかと思いますが、そうしますと、どうしても正常化に向かうわけでありますから関係は進展でありますし、改善でありますし、我が国と北朝鮮の関係がより友好的、よりよい関係になっていくものを目指す、当然ではございますが。ただ、果たしてまだそんなことが言える段階であろうかということに、私は大変強い疑問を持っております。  そういう議論が始められる前に、今の余りにも悪化した状況というものを少し何とかしなきゃいけないわけでありますし、あるいは我々が直接的な脅威感というものを持っていることをより明確に、正確に北朝鮮に伝える。そして、そういう行為をやめてもらうことが、我々にとって、日本にとって必要のみならず、北朝鮮にとっても得なことであるということをちゃんと知ってもらうということも重要であろうかと思いますので、ともかく私は、特に友好、親善というものを求める前に、もう対話なりあるいは交渉というものが必要ではなかろうかということを考えておりまして、そういう点で、もう少し積極的にやっていただければということを思います。  それと、二番目の御指摘のいわゆる村山訪朝団ということにつきましては、私は基本的に賛成でございます。こういう形で対話のチャンネルが幾つもできることは重要であろうかというふうに思います。  ただ一点、今、では議員の先生方で超党派で代表団を組んでいただいて北朝鮮に行っていただいて、果たしてどういう成果が上がるんであろうか、こういうことがどうしても疑問として出てくると思うのでありますが、私は、特に成果を求める必要はないと思っております。とりあえずは、北朝鮮に対して我が国が考えていること、我が国の主張をきちっと正確に伝える、できるだけ北朝鮮のトップである金正日総書記にまで伝わるようにしていただくということだけで十分であって、具体的に何らかの北朝鮮の変化というものが引き出せないということであっても差し支えない。ですから、訪朝団をお出しいただくのであれば、成果を特に求めない訪朝団というのが望ましいのではなかろうかと考えております。  それは、別の観点からいいますと、成果を特に求めないということは、特にお土産も準備していく必要は私はないというふうに考えております。  以上でございます。
  121. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 それじゃ、岡本参考人、そして、皆さんにお聞きして大変恐縮ですが、小川参考人にもお願いいたします。
  122. 岡本行夫

    岡本参考人 北朝鮮との国交正常化交渉を行っていたときに日本政府が拉致問題を取り出して、これから北朝鮮代表団が一切日本との対話というものを政府レベルでは拒否してしまっているというのが現状でございますから、政府としては、特にその原因となっておりますのが、日本国民の非常に大きな関心を持っております日本国民の生命の保護ということであるだけに、なかなか打つ手は難しいんだろうと思います。その意味では、私は、政府は与えられた状況の中ではよくやっていると思います。  にもかかわらず、北朝鮮とのパイプを維持すること、そして、対話とまでいかなくても日本政府の考えを北朝鮮に有効に伝えることは、ぜひとも必要だと思います。  あとは、伊豆見参考人の御意見に全く賛成でございますので、つけ加えることはいたしません。
  123. 小川和久

    ○小川参考人 北朝鮮政策につきましては、私自身は、北朝鮮という国は、日本という国が外交、安全保障の面を中心に世界に通用する立ち居振る舞いをできているかどうかを忠実に映し出してくれているありがたい鏡だと思って眺めております。  つまり、日本が例えばアメリカから一目も二目も置かれるようなアメリカの同盟国になっている、アメリカが何でも相談するような同盟国になっていれば、北朝鮮は、日本が拉致問題と言った瞬間に、その下手人は既に旧体制のもとで逮捕をし、既に処刑をしております、拉致をされた皆様方については、手厚くおわびを申し上げながら帰還していただきますといったような態度に百八十度変わってくるような問題なんですね。  ところが、例えば現在の日米関係を見ますと、北朝鮮から見た日本というのは、先ほど申し上げましたように、対話する相手ではない、外交交渉をするような相手ではない、アメリカと話した方が早いといったような位置づけに見られている。これは、客観的に見るとそうだと思います。  ということになりますと、やはり抑止と対話ということについても、日本は韓国、アメリカと協調体制をとりながらやっている。これは大変高度な外交でございますし、もっと進めるべきでありますが、おのずと日本だけが限界を持ち、ブレーキになってしまう可能性すらある。だから、とにかく日米安保を中心としながら、世界の信頼をかち取るだけの外交、安全保障政策をさまざまな面から進める。そのことによって、北朝鮮が日本に対する積極的な姿勢を示す格好をつくることが大事ではないかと思っております。  とにかく、今回の不審船の問題、後ほど御質問があるかもしれませんが、これについても、なぜ海上自衛隊は撃沈しないのかといったような議論も一部ではございました。ただ、国民全体としては、よく抑制された行動をとった、その点についての理解があったということは、私は若干ほっとしているんです。  なぜかといいますと、北朝鮮という国に対して軍事的メッセージを明確にしてこの国が暴走しないようにしていくこと以上に重要なのは、日本世界の先頭を走る先進国として、相撲でいいますと横綱、大関の相撲をとれるかどうかということ、それを世界から採点されているということなんですね。そちらの方が、個別北朝鮮に対する日本の外交問題よりもなお日本の国益に与える影響は大きい。だから、そういったことを視野に入れながら、対北朝鮮外交についてももう一回再編成する必要に迫られているのではないかと思います。  ありがとうございます。
  124. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 北朝鮮問題の三人の方の御意見、非常に参考になりました。  もう一つ、中国をどう見るかということもガイドラインの審議には非常に大きな影響を及ぼすと思っております。  私は、先般、五百旗頭先生のある小論を読んで、自分の見方が賛成というか、同じ見方だったので少し紹介をさせていただくと、二十年、三十年の発展によって日本を圧倒し、米国に並び立つほどの総合国力、これは括弧して経済力と軍事力の双方を築くことが長期的な国家戦略として妥当性があるんだ、中国が圧倒的な勢力を東アジアで持つに至れば、武力行使せずとも台湾はおりるであろう。したがって、つまりじっとしているというのが中国だという見方をされておられました。  私は賛成でありますが、これは岡本参考人と小川参考人に、中国をどう見て、その中国の将来と日本がどう向き合っていくかという問題についてどのようにお考えになっておられるか、お聞かせをいただきたい。最後の質問になろうかと思います。よろしくお願いします。
  125. 岡本行夫

    岡本参考人 中国はもちろん日本にとって最も大切な隣国でありますが、その日中関係の行方というのは決して容易でないと思います。単に、時日が経過すれば戦争の記憶が薄れて、若い世代と日本の若い世代の間での友好協力関係が生まれてくるといった生易しいものではないと存じます。  日本が、振り返ってみれば七二年にもう少しきちっとこの歴史問題というものに対する認識を示しておればよかったと思うんでございますが、御迷惑をおかけした、残念ながら、それがさらに中国語に翻訳されたときには、通行人に水をかけてしまって、やあ、済まぬという程度の、そういうニュアンスの言葉に訳されてしまったというような経緯から、日本に対して歴史認識というのをきちっと思い知らせるという教育が一層進行してしまった。当時は、たしか私の記憶では、日本軍に殺された中国人の数を中国側は八百万人ぐらいと言っておりましたけれども、今は、江沢民主席は三千数百万人の国民日本軍に殺されたということを言い、国民もそれを信じております。  さらに、もう一つ問題を難しくしておりますのは、中国では共産主義というものはもう国民を統合するイデオロギーとしての力は失いつつありまして、そのかわりに民族主義ということを強く打ち出してきておる。その民族主義というのは、中国における限りは、定義上、抗日、反日でございます。  それから、中国の民主化運動も、政府に弾圧されないためにも、まず最初に日本を非難する、その日本に対してきちっと対応しない政府を批判する、そういうプロセスをたどります。したがいまして、いろいろな動向を見ておりまして、中国の日本に対する反感というものは一層募るのではないか。  ただ、これを放置しておいていいものではございません。私は、やはり一世代ぐらいの間をかけて、つまり二十年ぐらいの間をかけて、本当にこの勢いというものをもとへ戻す、この流れというものを食いとめるための意識的な努力がまず必要だと思います。そして初めて二十年後、三十年後に今の日中関係の悪化がとまっていくかというようなことだと思います。  その間に政府に特にお願いしたいのは、今中国では、例えば「鬼がやってくる」といったような大変残酷な反日キャンペーン映画なども制作中であります。私は、そういうことにこそ日本の持てるありとあらゆる政策手段を用いて、とにかくそれは双方のためによくないからといって、中国政府に何とか影響力を行使させて思いとどまらせるということがその過程でも必要であると存じております。
  126. 小川和久

    ○小川参考人 実は、中国という存在は、日本の安全と繁栄にとって、これはもう米国と並ぶ重要なテーマでございます。  その中国に対して我々はどのようにかかわっていくかということでいいますと、非常に結論的に申し上げますと、友好国としての姿勢を崩すことなくかかわっていくことが大前提になるだろうと思うのですね。  ガイドライン周辺事態の周辺の概念に台湾海峡を含めるかどうかという問題も、これは日本が戦後処理できているかどうかという問題はさっき申し上げましたが、それと同時に、中国側とトラック2で、つまり軍のシンクタンクのトップと本音で話し合ったときの向こう側の反応などを申し上げますと、私は聞いたのですね。周辺という概念を使わなきゃいけないという日本の事情もあって、いろいろこれは日本側で検討しなきゃいけないけれども、もう一つある、日本を敵対国として扱うような議論をやめろと言ったのです。  日本は友好国である。敵対国なのか。友好国であり、一つの中国を認めている国である。その日本が、台湾問題の解決についても、話し合いによる解決を前提として、努力を惜しまないと言っている。ただ、残念ながら、与那国島を代表例として、海上において国境線を接している。不幸にして台湾の問題が火を噴いた場合、日本に火の粉が降りかかってくるという事態は考えなきゃいけない。それは日本の国防の問題であり、主権の問題である。そこにおいて日米安保を発動する場合もあるということを言っている。しかし、友好国である日本が話し合いによる解決で努力を惜しまないと言っているのだから、君たち、それはわかってくれるかと言ったら、前提条件を明らかにすべきだということを向こうは言いましたね。日本はそこまで言ってきただろうかという話、何となく友好国だと思われているだろうということなんですが、繰り返し言わなきゃいけない。  ただ、そういう中で明らかになったのは、向こうの価値観と我々の価値観が若干まだ話し合う余地があるということなんですよ。それは何かというと、例えば、日本立場に中国が立って、周辺といった場合、沖縄を領有するといったらあなた方は怒るでしょうと向こうは言ったのですね。ところが、日本は台湾を領有するなんて考えはこれっぽっちも持っていない、国防上の問題、主権の問題として、そのエリアというイメージなんですね。その辺においては完全に価値観が食い違っている。これは本当にトラック2から積み上げて議論はしなきゃいけないだろうと思います。  ただ、そういった議論が必要だということを中国側が認識をし、トラック2をもっとちゃんとやっていこうということを言ってくれているというのは大変明るい展望ではないかと思う。  ただ、そういう中で、日本参考にすべきなのは、やはりアメリカが中国に対して行っている建設的関与でございます。これは中国から見れば反発すべき部分はいっぱいありますし、現に反発もしておりますが、それでもなお中国が必要とする援助をアメリカは惜しみなく与えている。だから、俗な例えで言いますと、中国はアメリカなしには生きていけない体にされている人間のような状態であります。  そういう中で、中国の経済的発展のためにも必要なのは国内の制度の近代化であり、それが進めば一定の民主化が進むであろう。これは中国内の価値基準であっても、一定の民主化が進んで経済力を身につけた中国は民主主義国家とみなせるだろう。そういう民主主義の国である中国がむやみやたらと軍事力を振り回すだろうか、いや、そうではないだろうという、例えばイエール大学のブルース・ラセット教授の理論のような考え方アメリカは持って、中国と建設的関与という格好で向き合っている。  やはり日本なりに、中国の国益も視野に入れながら、日本の国益を実現すべくきちんとしたかかわりをやっていくことが、これから大いに問われるだろう。その前提は、友好国であるということをやはり崩すことなくやっていくことではないかと思います。  どうも御質問ありがとうございました。
  127. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 終わりますけれども最後の問題は非常に難しいと思いました。つまり、ラセットの民主主義国同士は戦わないという議論がある一方で、現実にそれが果たして通用するのかどうかということは、同時に私はいつも心の中にありますので、非常に難しい問題ですが、これからもいろいろと参考意見をお聞かせいただければと思います。  どうもありがとうございました。
  128. 山崎拓

    山崎委員長 これにて玄葉君の質疑は終了いたしました。  次に、赤松正雄君。
  129. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 公明党の赤松正雄でございます。きょうは、四人の参考人の皆さん、貴重な御意見をありがとうございました。私の方からは、まず最初、伊豆見参考人に幾つかお伺いをいたします。  先ほど、いわゆる予防防衛並びに予防外交、両方が相まって進むことが大事だという非常に示唆に富んだお話を聞かせていただきました。  このところ、いわば日米ガイドライン関連法が今審議されているという状況の直前というか、そういう状況の中でテポドンが発射され、そして、さきの北朝鮮のものと見られる不審船があった。こういうことに対する対応、さまざまな反応が日本の中にあるわけですけれども、こういうことに対して伊豆見参考人は、ある新聞の中で、北にこういうことをさせてしまう周囲や我が国の方にも問題があるのだというふうなことを言われて、日本も真剣に考えていくべきだ、こういう発言をされておりますけれども日本のいわばそういう対応についてどのように考えられるか、まず聞かせていただきたいと思います。
  130. 伊豆見元

    ○伊豆見参考人 ありがとうございます。  周辺あるいは日本にも責任がということをしばしば私が申し上げておりますのは、北朝鮮というものについて、北朝鮮という国がどういう国であって、どういうことをやろうかとしていることについて、比較的余り真剣に考えたことがないのだろう、考えてこなかった部分があるのではなかろうかと思うわけであります。  一方で、彼らが非常に苦しい状況にあり、体制をどうやって維持するかということにきゅうきゅうとしている、これは事実であります。しかし、だからといって非常に守りに入っているというわけではなくて、その守るためにも攻勢に出なきゃいけない部分がありますし、その中には軍事的な行為というものも当然入ってくる。そういうことが常に相まって行われてくる国家なんだ、そういう認識一つ持つべきであります。  その前提からしますと、北朝鮮が国際社会とのつき合いにおいて、まず、非常に我々の目から見ますと受け入れられないような挑発的な行為とか、あるいは非常に明白に人をおどかすような、威嚇するようなそういう行為というものはやはり慎んでもらわなきゃいけないわけでありますし、その前提の上で、国際社会のいろいろな規範といいますか、そういうものに従って我々とともに生きていくというような方向に来てもらわなきゃいけない。  そうすると、北朝鮮というものが、しばしば国際法上のルールを守りませんし、規範も守りませんし、あるいは大変挑発的な、軍事的な行為にも出る、あるいはそういうことをにおわせるということを、そういうことであっては困るのだというメッセージが、私は比較的伝わってこなかったのであろうというふうに考えるわけでありまして、もし日本にもまだ足らない部分があったとするならば、私はその点が足らなかったと思うわけであります。ですから、防衛的な対応を整えるということは、一つは北朝鮮に対する明確なメッセージである、これは重要なことであります。  もう一つは、北朝鮮というものが国際社会に対して非難、批判というものを非常に物すごく強い言葉をもってするわけでありますし、我が国に対する非難、攻撃というのも、これは労働新聞などをずっと見ておりますと、少し気分が悪くなるほどひどい言葉がさんざん出てくるわけであります。  ところが、これを我々は無視する傾向があります。またとんでもないことを言っている、だけれども、あれも、うんと悪い言葉を使うと、またばか言ってらあというようなことでもって受け取る向きがありますが、それが私は非常にまずいところであろうと。そういう北朝鮮が言う言葉、しかも政府で、外務省のスポークスマンであったりあるいは国防担当の方のスポークスマンであったり、その要所要所の非常に重要なポストの、衝の人たちが言う言葉が非常に強い言葉で日本を非難、攻撃して、しかもそれには根拠がないような話がたくさんあるわけであります。  そういうものに対して一つ一つ答えておくといいますか、それは違うのである、そういうことを言っているあなたたちの態度はおかしい、あるいは、そういうあなたたちとつき合うということは非常に難しいというような、そういうメッセージをちゃんと突きつけておくことが実は必要だったんじゃなかろうか。  今まで、余りその辺を無視していますと、簡単に、軽くテポドンを、ノドンを撃ってみようかという気にもなるかもしれませんし、あるいは不審船、工作船についても、そういうものが非常に我が国の安全を脅かすものであって我々は受け入れられないという明確なメッセージが、これまできちっと北朝鮮に伝わっていたかどうかという点で私は疑問を持っておりまして、それで、まだ我が国の方にもやるべきことがあるということを申し上げた次第であります。
  131. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 北朝鮮のさまざまなメッセージ、それを日本が無視する。これは一〇〇%一緒かどうかは別にして、中国との経験から、中国共産党の反応というものが過去にあって、恐らくそういうものに日本が影響されている部分があるのかなという、私見というか考え方を持つんです。  それは別にしまして、先ほど伊豆見先生がおっしゃったことの、いわゆる予防外交、予防防衛、そのまず予防外交の方ですけれども、いろいろなところで参考人がおっしゃっている話の中で、友好関係確立していくということと、それから国家関係をきちっとしていくことは峻別されるべきだ、違う問題なんだという話をされていますが、その行き着く先の一つの提案として、例えば北朝鮮を国家承認するという話をされていますけれども、その辺の背景についてもう少し詳しく。
  132. 伊豆見元

    ○伊豆見参考人 ありがとうございます。  私は、日本政府が北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国を主権国家として明示的に国家承認をしていただくことは大変望ましいと考えております。これは、国家承認は、外交関係を持って正常化することとは別個の意味でございます。単に、北朝鮮が主権国家として存在しておることを日本国政府として認定するということであります。もちろん、既に一九九一年に北朝鮮は国連に加盟をいたしておりまして、その際我が国は賛成をいたしておりますから、黙示的には既に北朝鮮を国家として我が国承認をいたしておりますが、しかし明示的にはしておりませんで、私は、明示的にすることの意味があると思います。  一つは、これはシンボリックな話だけではないかということになるかもしれませんが、明示的に国家であるぞということを認めることは、やはり北朝鮮の体制、国家というものを一応話し相手としてきちっと認めているというメッセージになります。それと二番目に、私はそれよりもより重要だと思いますのは、北朝鮮を我が国はきちっと主権国家として認めております、認めます、認めるからには、あなたたちはきちっとした主権国家として、国際社会の一員としてふさわしい行動をとっていただきたいということをより強く私は言えるのではないかと思うわけであります。  もちろん、今も我が国はそういう主張を北朝鮮に対して言っておりますし、国際社会にふさわしい責任ある一員になってほしいと常々言ってはおりますが、それであるならば、まず国際社会の一員という、主権国家であると、既に国連のメンバーでもありますし、明確に認めた上で、その上で責任をより果たすように北朝鮮に求めるというのが、ひとついかがであろうかと思いまして申し上げている次第であります。
  133. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 次に、いわゆる予防防衛の方なんですけれども、先ほどのお話の中にも、今回の日米ガイドライン関連法というものが抑止力になるんだというお話がありましたけれども、北朝鮮の側から見れば、日本の抑止力というのが、日本の側から見ての抑止力が彼らにとっては脅威になる、そういう側面がもちろんあろうかと思うのです。  そういう点で、要するに、我々が今議論している周辺事態安全確保法案というものの持ついわば抑止力の位置というものが、ややもすれば、今の北朝鮮にとってみれば一つの形を変えた新たなる脅威というか、新たなる脅威と言ったらおかしな言い方ですけれども、四方を大国に囲まれているという彼らの側の論理に立てば、日米がそういう軍事同盟的な関係をさらに一層確実なものにするということが彼らの過剰な反応を生み出している、そういう側面もあろうかと思うんです。  その点についての考え方と、それから、私の考え方日米安保条約をより堅持するという観点に立って、日米関係をより成熟なものにしていくというスタンスなんですけれども、そういうスタンスに立ってもなお、この法案については幾つかのやはり直さねばならない点があろうかと思うんですが、その辺について伊豆見参考人整備を急ぐべきだとおっしゃっていますけれども、仮に直すべき点があるとしたら、どういう点というふうに考えられるか。
  134. 伊豆見元

    ○伊豆見参考人 ありがとうございます。  第一番目の赤松先生の御指摘の点につきましては、確かにそういう側面があることを完全に否定することはできない、すなわち、ガイドライン整備等が北朝鮮を一方で刺激する部分があるということを私は否定するものではありませんが、しかし、バランスをとってみるならば、むしろやはり抑止的な効果の方がはるかに大きいであろうと思います。  それは、先ほど最初にお話をさせていただくときに申し上げましたけれども、北朝鮮の目から見ますと、九六年以前の日米防衛協力というのは、非常に、どう言うのでしょう、無視できるとまではちょっと言い過ぎであろうかと思いますが、相当楽観視していいという存在であったかと思いますので、これが実効のある日米防衛協力というものが九六年以降表に出てきたことによって、北朝鮮は今それに対する対応を考えているところであるとするならば、それはやはり私は、北朝鮮がみずからの行動を抑制する方に効果があるというふうに考えております。  それと、二番目の点につきましては、私は、冒頭にも申し上げましたが、ガイドラインと関連法案ガイドラインというものは、実はアジア諸国あるいは周辺諸国の懸念を鎮静化するという意味合いも逆にあろうかと思うわけであります。それは、日本が何をする、日米協力がどういうものであるということが明確になることによってむしろ安心できる部分が周辺諸国には生じる部分がありますので、そうなりますと、特にその場合に重要なのは、やはり日本の議院内閣制という性格からしましても、国会のかかわり方というのがやはり非常に大事であろうかと思います。  私は、個人的には国会承認ということが行われることは賛成でございます。ただし、有事というものを想定した場合には、何といっても迅速に反応しなければ、対応しなければ、これは間に合わないわけでありますので、迅速に対応するという前提から考えますと、国会承認というもの、これが事後承認になるという部分を多く持つことは当然であろうかと思いますが、国会の関与というものが、それで承認事項があるということが明確に見えることは、周辺の目から見たときに、やはりガイドラインの有効性といいますか、堅実性、確実性みたいなもので、安定的なものであるというより高い評価を得られるものではないかというふうに考えております。  以上でございます。
  135. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 伊豆見参考人最後に、北朝鮮とのいわば緊張関係を回避するために、人道上の支援もあるけれども安全保障上の取引というものが必要だというふうな発言をされておりますけれども、具体的な安全と支援の取引の実例といいますか、そういう参考例というか、どういうことを考えておられるのかということについてお聞かせ願いたいと思います。
  136. 伊豆見元

    ○伊豆見参考人 安全保障ということを前提にした一つの取引の事例は、実は私は、一九九四年の米朝間で成立をいたしました核合意であったかと思います。これは、基本的に北朝鮮の現有の核関連施設というものを凍結し、最終的には解体に導くために、その代価としてこちらが別個の原子炉を供与し、また原子炉ができるまでの間の重油を供給してエネルギーの補てんを図る、これは一方的な援助でも何でもなく、取引であったわけであります。  同じようなことをこれからまた考えなければいけないとすると、それは核兵器開発についてまだ依然として疑問が持たれておりますし、何よりも問題になっておりますのは、弾道ミサイル能力というものが非常にあるのみならず、その開発能力が非常に高いということがこのごろ我々にとって突きつけられた新たな課題である。  すなわち、その大量破壊兵器の面で、核、ミサイル、それに化学・生物兵器を含めてよろしいかと思いますが、その点においては北朝鮮の能力というのは高いものがありまして、さらにそれを開発の方にどんどん進んでいっておかしくない状況にあろうかと思います。そうしますと、これをとめるためにはやはり何らかの取引をしなきゃいけない、何らかの代価を払わない限りにおいて、彼らがそれをやめることは私は一切あり得ないと思うわけであります。  その観点からしますと、今考えられる一つの点は、食糧支援というのが私はあり得ると思っておりますのは、実は北朝鮮は、今、二〇〇二年を一つの目標年にいたしまして、経済のある程度の復興、とりわけ食糧問題、最低国民が食べていけるだけの食糧を二〇〇二年までの間に形をつけたいということで努力をし始めました。食糧問題については、私は、現在の金正日体制はかなりプラグマティックといいますか、実際的、現実的になってきたと思うわけであります。  そうしますと、彼らにとって、体制維持する上でも、二〇〇二年という目標の年があって、そこまでに食糧問題を何とかそこそこの方に持っていかなきゃいけないという大変強い要請があるわけですので、そういうことで、食糧を支援するかわりに、彼らの持っている、我々に与えるその軍事的な脅威というものを減らしてもらう。  それは、具体的には、核兵器開発についての歯どめがありましょうし、あるいは弾道ミサイルの開発、とりわけ今後の開発ということについてどうとめるか。あるいは、ノドンはもう我々にとっては一番怖いわけでありますが、その配備等についてどういうことを言っていくか。少なくとも、食糧というものを使って、彼らの軍事的な今後のやり方にブレーキをかけてやるということの取引は可能ではなかろうかというふうに考えております。  ありがとうございました。
  137. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 小川参考人にもお聞きしたかったのですけれども、一言だけ、一点だけ簡単にお願いしたいのです。  周辺事態安全確保法案成立しなくても朝鮮半島に大きな混乱はないという発言をなさっておりますけれども、その点に関して手短に。
  138. 小川和久

    ○小川参考人 私、大変乱暴な言い方をいたしましたので、誤解を招かないように、御質問いただいて大変ありがたいと思っております。  と申しますのは、実は、ガイドライン関連法案というのは、当然ながら、アメリカを支援しながら日本の国益のために生かしていくという精神でやらなきゃいけない。だから、朝鮮半島においても、それは必要でないという言い方はいたしません。ただ、少なくとも朝鮮半島の有事においては、これは先ほどちょっと触れました国連軍の存在というものが一貫してあり、それから、国連憲章と日米安保条約関係というものがある。  その中で、日本の議論がまだそこまでいっていない部分はありますが、日米安保条約の五条事態と六条事態が同時に、日本有事の問題にかかわる中で朝鮮半島有事というものを迎える事態というのは想定されるわけでございます。だが、そこにおいては、やはり我々は、朝鮮半島有事のためにガイドラインをやっていくといったような、政治的なばねにしていくような議論というのは極力避けるべきであろう。ストレートに台湾海峡の問題を議題にした方がまだ正直だという感じがいたします。  これに関連して申し上げますと、北朝鮮に対しして日米安保が抑止効果を持っているかどうかという問題でございますけれども、これもやはり国連憲章と日米安保条約関係で、北朝鮮は、例えば、日本にテポドンやノドンといったミサイルを一発でも撃てば、国連軍である米軍の行動を阻止できる安保理の常任理事国は存在しなくなる。しかし、みずから軍事行動を起こさない限りは、逆に、国連軍の帽子をかぶっている米軍は動けないわけですから、国連に守られているという立場を北朝鮮は認識すべきであろう。その辺をお互いに現実認識、共通認識として持ちながら朝鮮半島の安定の議論をしていこう、そういう立場で北朝鮮とも私は若干かかわってまいりました。  ですから、ガイドライン関連法案、これは審議を進めるというのは大事なことでありますが、朝鮮半島有事ということでは、そんなものはとっくに我が防衛庁においても頭の中にあるわけでございます。なかったらこれは職務怠慢でございますので、これがすべてであるかのような議論は若干整理する必要があるだろうと思います。  御質問ありがとうございました。
  139. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 終わります。
  140. 山崎拓

    山崎委員長 これにて赤松君の質疑は終了いたしました。  次に、西村眞悟君。
  141. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 自由党の西村です。よろしくお願いいたします。  十五分でございますので、要点を絞って御質問させていただきます。  冒頭、岡本参考人は、我が国会に、日本を守るためにはすべてやるという議論がないんだ、だから国民の関心が意外に薄いというふうにおっしゃいました。私、そのとおりだと思います。  つまり、戦争と平和という抽象的な議論でありましたら、すべての人が平和がいいに決まっておるわけです。しかし、国民、国家のセキュリティーという問題で考えておりましたら、平和の中の国民が死傷することを許すことはできない。したがって、セキュリティーの問題として本件問題を議論するという姿勢がまだまだ欠けておったなと私も思います。  さて、このような議論の欠落はなぜ起こったのか。例えば、本法案においては、有事とは言わずに事態という言葉を使う。兵たんとは言わずに後方支援という言葉を使う。武力行使という言葉を使わずに武器使用という言葉を使う。これは実態と即応しておりません。なぜこのような状態が起こるのかといえば、周辺事態における有事というものが、我が国が本来固有に持つ自衛権発動の領域で起こっており、かつ、それは講学上、集団的自衛権と言われるものである。しかし、その集団的自衛権はあるけれども行使しないという憲法解釈に縛られてこの法案の作成を行ったがゆえに、字句が実態に即応していないと同時に、議論が我が国自身の自衛権行使の問題であるという次元にはまだ至らないんだろう、このように思うわけですね。  したがって、この際、自由な立場であられる参考人先生方に、もうぼつぼつ、集団的自衛権はあるんだ、それだけだ、あれば必要なときに行使できるんだ、このように我が国の国防政策国民のセキュリティーを守るという国家の責務の前提たる政策を転換しなければならないと思いますが、岡本参考人、小川参考人の御意見をお伺いしたいと存じます。
  142. 岡本行夫

    岡本参考人 集団自衛権というのは、御案内のとおり、極めて密接な関係を持ちます第三国が攻撃を受けた場合に日本もその戦闘に関与するということであります。アメリカが仮にどこかの国から攻撃を受けた場合に、日本がそれに関与すべきか。私は、まだそこまで国民の議論が熟していないような気がいたしますし、一足飛びにそこまで行くことによって、かえって国民の間に防衛論議を逡巡するような雰囲気が出てきてしまうんではないかという危惧も持っております。  先ほど来申し上げておりますように、私は、個別自衛権の範囲というものを余りにも狭く解釈してきたがために不自由に陥っているところの是正がまず先決かと思います。つまり、どこの国が攻撃を受けている場合に、個別自衛権であれ集団自衛権であれ、自衛権というものを発動するかといえば、私は、それはやはり日本に対する攻撃の場合のみに限るんだろうと思います。そして、日本の利益、国益が害されているとき。  したがいまして、今度のような周辺事態においても、これが日本の危険に直結するような場合には、私は、今までのような非常に制約的な個別自衛権だけでは、我が国の領域外でのいざというときの対応行動に明確な指針とはならないと存じます。  ぜひとも幾つかの個別的なケースを具体的に御検討いただいて、ここからここまでは、これは日本のためなんだから個別自衛権の範囲内で読むべきではないかということを御議論いただければと思います。
  143. 小川和久

    ○小川参考人 御質問ありがとうございました。  集団的自衛権というテーマは、日本なりのモデルをまず示して、それをたたき台としながら国際的に活動をしていくべきであろうというお話はこれまでもさせていただきましたけれども、やはり日本の場合、官僚主導的な議論に終始してきたツケというものをもう一回清算しなきゃいけない時期ではないかと思います。というのは、集団的自衛権というのは日本にもあるんだ、しかし使わないんだといったような議論でやってきている。でも、国際的に問われているのは、やるかやらないかでございます。あるかないかじゃないんです。あるんです、どこの国も。  だから、日本の議論のおかしなところを整理しなければいけないというのは、本来あるべき安全保障の形というものはどういうものであるかということをまず目標にして、そこに向けて法律や制度を整備していくという歩みをしなきゃいけないということなのですね。だから、平和主義を実現する、あるいは、平和憲法の理念を実現しながら世界の信頼をかち取る、それでいいわけであります。しかし、そこへ向けて行こうとすれば、例えば憲法にしても、理念と骨格しかない憲法、きちんと憲法の精神を生かすべく、改正という手続を踏みながら肉づけしないと、これはうそを言っていることになってしまう。そういう本来あるべき議論の姿を目標とするような議論をまず国会から起こしていただきたい、そういう考えを持っております。  どうも御質問ありがとうございました。
  144. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 今のことを角度を変えてお聞きしたいと思います。  我々の国会での法案審議で一番欠けておるのは、国際化といいながら、我々は、国際法がいかにこの領域に関与するのかについての議論が一番欠けております。  自衛隊も、出動いたしましたら、国際法で覊束される、適用されるのは国際法である。しかし、国際法と国内法がそごしておるときにいずれを優先すべきかというのは、憲法九十八条二項にございます、国際法は尊重すべきである。そのようにした国際法が、国内法化して、いかなる秩序のもとにあるのかといえば、法律より優位するのでございます。この観点からいいますならば、サンフランシスコ条約国連憲章、日米安保条約、すべて、個別的であれ集団的であれ、両国はそれを有すると記載されておる国際条約我が国は署名し批准しておるのでございますから、我が国憲法解釈は、この国内法化した国際法の理念に即応する解釈でなければならない。しかし、従来からの我が国憲法解釈は、この憲法九十八条二項違反ではないか、このように思うわけですね。  さて具体的に、本問題は、部隊の武器使用等々を、例えばけん銃一丁持っているような警察官と同等の規定をしておりますけれども、例えば百年前の、東郷大佐がユニオンジャックを掲げる高陞号を撃沈したときに、伊藤博文は腰を抜かすわけですが、国際法上、彼の行為は正当であるとイギリスで称賛を受けるという事態に遭遇しました。伝統的に、我が国は、国際法上正当な行為をした者が国内で首を切られるという事態部隊は遭遇し続けておるわけです。  さて、お聞きしたいのは、我が国は、このガイドライン関係法で、いろいろな武器使用等々の要件がある、ありますけれども、国際法に従って武器使用、これは部隊としてですから武力行使ですね、武器使用は個人の行為のことを国際法上は言います。国際法上は部隊としての行動はすべて武力行使です。武力行使を任務遂行のために国際法にのっとってした自衛艦の艦長は、国内法の違反のゆえをもって国内で裁かれるということになるのか否か、そうなってはならぬと思われるのか否か。これも、お二人、岡本参考人と小川参考人に御意見をお伺いしたいと存じます。
  145. 岡本行夫

    岡本参考人 私は、先ほど来の西村先生のお話というのは、やはり日本としての国益というものをどのように追求するかという大きな観点から考えるべきだと思っております。  先ほどの自衛権のお話にいたしましても、より具体的に申し上げれば、例えば日本の領海外、すぐ外、玄界灘のあたりで、先ほど申し上げたように、朝鮮半島が不安定化したことに伴ってニュージーランドやオーストラリア、カナダの艦船が来る。そして、そばに強大な自衛艦隊が、護衛艦隊がいるにもかかわらずその船が敵側の砲撃を受けて、そしてそれを日本の自衛艦隊が座視している、何の行動もとれないというのは、私は、集団自衛権をもってしなくても、それに対して護衛艦隊というのは当然応射をすべきだと思いますが、それは集団自衛権まで議論を広げなくても、個別自衛権の範囲内でできるのではないか。  先ほど八〇年代の法制局との間の議論を御披露いたしましたけれども、あのときも、日本を守るために駆けつけた米国の艦船を日本自衛隊が守ることは集団的自衛権に抵触しないというのは、安保条約を結んでいるから憲法上で問題のある集団自衛権に抵触しないということではございません。ほかの国であっても同じような考え方を私はすべきだと思うのですね。  それから、今の個人の武器使用というのは、これはおっしゃるとおりでありまして、およそ国家たるもの、その構成員たる政府の職員あるいは自衛隊の職員が行うことが一々刑法、あるいは司法の段階で、そういった有事に裁かれるというのはおかしな話でありまして、これはあくまでも国家の行為であります。全体として、私は合目的的に考えればおのずから結論は出てくるのだろうと考えております。
  146. 小川和久

    ○小川参考人 私は、冒頭に、先ほど申し上げましたように、安全保障、外交、危機管理といったものは、とにかく世界に出ていって通用するものでなければすべて不合格だということを申し上げました。それを意識して国際法と国内法の整合性を議論していくということがまず先進国として問われる問題だと思います。  しかしながら、今回の北朝鮮の工作船の事案では、とにかく海上警備行動が初めて発令をされる、その中で、海上自衛隊の護衛艦それから哨戒機は、これは警告の意味で射撃を行い、爆撃を行ったわけでございますが、あれが例えば命令によって撃沈をするような形をとった場合、それが現状でありますと、恐らく、おかに上がった途端に艦長は国内法の適用によってそれこそ罪人として扱われるだろう。これは今、岡本参考人がおっしゃいましたように、国家としての行為に対してどのように国内法を整理していくのか、それが世界に通用するレベルのものであり、国際法や国際通念にやはりかなうものであるのか、その辺がやはり議論として欠落しているような感じがいたします。  この工作船の問題について申し上げますと、やはり国際通念ということで私は一つの問題提起をしているのでございますが、やはり、かなりの国が国境警備隊と軍隊を両方持っているのはなぜかということなんですね。沿岸警備隊を持っている国は比較的少ないのですが。これは、陸上であると海上であるとを問わず、国境というものは紛争が発生しやすい場所であるということなんです。それで一々軍隊が出ていっていたら国がもたない、戦争になってしまいます。国境警備隊が多少手荒なことをしてでも事を処理する、そして、国境警備隊の事案であるからとにかく戦争しないようにしようという話し合いに持っていく、そのための緩衝装置であり安全装置、そういう人間の知恵として国境警備隊あるいは沿岸警備隊というものが存在している。  そういったことを念頭に置いて我が海上保安庁を我々は整備してきたのだろうか。その延長線上に、極めて的確なタイミングで、これは乱発をすることなく、国家の威信を示すために海上警備行動というものを発令できるような体制がとられてきたのだろうか。その辺をやはり今回の工作船の問題においても深く考えさせられているわけでございます。  とにかく、国際的に通用するかどうか、その辺のところから、国際法や国際通念と国内法の関係をぜひ御議論いただきたいと思います。  どうも御質問ありがとうございました。
  147. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 ありがとうございました。  時間が来ましたので、これで終了いたします。どうもありがとうございました。
  148. 山崎拓

    山崎委員長 これにて西村君の質疑は終了いたしました。  次に、佐々木陸海君。
  149. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 最初に川本参考人にお聞きをしたいと思います。  この法案が通ったりいたしますと、民間航空が、周辺事態に際して、武器弾薬の輸送や兵員の輸送等々にかなり大規模に動員される可能性があると思います。そしてまた、民間空港がそういう軍の用に供せられるようなことも起こり得ると考えるのですが、先ほど資料としてお配りいただきました、航空法や国際民間航空条約に照らしてそういう事態がどういう意味を持つのか、そしてまたそれが国民にとってどういう影響を持つのかということを、先ほどもお話しいただいたのですが、もうちょっと、本人の主観を交えてでも結構ですので、詳しくお話しを願いたいと思います。
  150. 川本和弘

    ○川本参考人 まず、国際民間航空条約との関係で申しますと、先ほども簡単にお話しさせていただきましたが、国際民間航空条約、これは名前のとおり民間航空機にのみ適用される条約でございます。したがいまして、例えば民間航空機が政府機関との契約によって業務を行う場合に、果たしてそれが民間航空機と認定されるのか国の航空機と認定されるのかという問題がございます。国の航空機はこの条約では適用外でございますから、いわゆる民間航空条約の保護を受けられないということになります。一部の議論として、国と契約しても国の航空機ではないという意見もあるのは承知いたしておりますが、相手がそういう論理に立つかどうかというのは別の問題ではないかと考えております。  なおかつ、民間航空条約の中で、いろいろな規定がございますが、日本理事会のメンバーでございます。これは第五十条にございますが、それぞれ世界の主要な国の中から選ぶようでございます。詳しくは今御説明する時間がございませんが、日本は、航空にとって最も重要な国の中から選ばれて、いわゆる理事国と申しますか、なっております。したがいまして、民間航空条約の精神並びに規則の実施については最大限遵守する義務が当然あるだろうというふうに考えております。  なお、先ほどサンフランシスコ条約について、西村先生でございますか、お触れになりましたが、民間航空条約に参加するに当たり、日本は大変な努力を行っております。これは一九四四年にシカゴで航空会議が行われましたのでシカゴ条約と呼ばれておりますが、日本がサンフランシスコ平和条約を結びまして、その中の、ちょっと今条文を覚えておりませんが、十三条だったと思いますが、民間航空条約に参加するまでその規則に従いなさい、それで条約締結後六カ月以内に申請をしろ、それでその申請を受理するかどうかは、これはいわゆる枢軸国側としての扱いを受けますので、国連総会それからICAOの絶対多数、それぞれたしか三分の二、五分の四だったと思いますが、そういう厳しい審査を受けて条約に加盟しているという歴史的事実も踏まえて、極めて誠実に履行義務があると考えております。  第二点目の、国民生活につきましては、これは具体的な問題といたしまして先日の朝日新聞でも非常に大きく報道されておりましたとおり、運輸省が悩んでいるというような報道がございました。例えば、国の管理する飛行場については国の命令で米軍が使用できるのでしょうが、第三セクターといいますか成田なり関西空港なりは、それぞれ極めて大きな制約をはめて開港いたしておりますが、しかし、今まで言ったことと違う事態になりかねない、運輸大臣の命令で使用ができるというふうに省内での意見統一がなされたというような新聞報道が、朝日新聞の報道でございますが、ありました。  そういうような問題だとか、それから、日本の地図を頭に浮かべていただければいいと思うのですが、東京から北にはいわゆる縦、ところが、紛争が発生するのは海の上でございますから右左に飛ぶわけですね。それで、東京から西の方になりますと、民間航空機は原則的に右左に飛ぶわけですが、海があるのは、紛争地帯があるのは大体上の方かな、北側でございます。ですから民間航空の流れと極めてふくそうする形で、私たちの航行の安全にとっても極めて重大な脅威があるし、それから空港の使用なり、優先管制なりなんなりで、経済活動においても極めて重大な影響があるというふうに考えております。  以上でございます。
  151. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 先ほど配っていただきました資料の最後に、「民間航空機による米軍兵士の輸送など軍事目的への協力は絶対に認められない」という、これは九七年の七月の乗員組合連絡会議の声明ですか見解が付せられておりますが、乗員組合連絡会議も参加した陸海空、港湾、交通、運輸関係労働組合が最近アピールを発表しているんではないかと思いますが、よろしければその内容などをちょっと御紹介いただきたいと思います。
  152. 川本和弘

    ○川本参考人 アピールそのものは、大変長くなりますので、A4の紙二枚でございますのでこれを読み上げるには相当な時間が要るので、要旨だけを説明させていただきます。  今御指摘のありましたアピールについては、本年三月十九日、陸上、海上、航空の交通、運輸関係並びに港湾関係労働組合の共同アピールでございまして、「「ガイドライン」関連法案の廃案を求めます。」というアピールです。中には、いわゆる自動的に戦争に巻き込まれる問題、それから、先ほどもございましたが、後方地域支援の問題、これが果たして安全なのかどうか、それから日本国の憲法なり国際法に違反しているのではないか、それから経済活動等、国民生活にはかり知れない影響を与える、五番目といたしまして、自治体や民間への協力の依頼というのは、条文ではそうなっておりましても、私たち、いわゆる企業内で働く人間にとっては、これは実質強制に近いのではないか等々についての意見のアピールという形でまとめております。  以上でございます。
  153. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 ありがとうございました。  冒頭の御発言ですと、航空機の、川本参考人が議長を務めていらっしゃるところが大体五千二百人、労働者の大部分を代表していらっしゃるということでしたが、このアピールは何人くらいの労働者を代表していらっしゃるんでしょうか。  最後に一言だけそれをお聞きしたいと思います。
  154. 川本和弘

    ○川本参考人 大変申しわけございませんが、実数については持っておりません。私どもが少なくとも五千二百名、私どもはパイロットの団体でございます、私も現役の機長でございますが、それを含みまして、管制官、それから整備、地上のいろいろな航空関係の方等々を含めまして二万三千人を擁する航空安全会議というのがございますが、それを含んで、あと海員組合等々、実態については相当な数に上ると思いますが、まことに申しわけございませんが、準備不足で、数字については持ち合わせておりません。  以上でございます。
  155. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 ありがとうございました。  最後に、時間がまだ少しありますので、小川参考人にお伺いしたいと思います。  周辺事態ということがどうも概念もはっきりしない、そしてその認定過程も今度の法案ではなかなかはっきりしない。小川参考人は先ほど悪知恵だというふうにコメントをされましたが、日本周辺の地域における日本の平和と安全に重要な影響を与える事態というふうに言われているんですが、では、小川参考人は、実際にはどういう事態にどう対応するものというふうにお考えなのか、簡潔にお聞かせください。
  156. 小川和久

    ○小川参考人 具体的に申し上げますと、これは朝鮮半島の事態と台湾海峡の事態であろう。そこで戦火が起きた場合、日本に対する、難民の問題も出てくるでしょうし、さまざまな軍事組織のかかわり方も出てくるでしょう。それに対して、日本の安全を保つためにいかに米軍を使うかといったようなことが日本側としては大事だと思います。  ただそこで、周辺事態なるものが悪知恵だと申し上げたのは、先ほども御説明いたしましたが、日本の戦後処理の問題についてアジア諸国のコンセンサスが得られていないという問題がやはり影を落としている、それは我々深刻に受けとめなきゃいけないだろう。周辺などという言葉を使う必要があるのか。恐らく、共産党が日本の政権をとられたら、陸海空軍を持たれて、世界の平和のために展開をされるんじゃないかと私は思っておりますので、その前提で申し上げますと、やはり周辺という言葉が使われたということ自体が問題だろうということでございます。  ただ、そういう中で、例えば台湾海峡の問題につきましては戦略的あいまい性ということがかなり言われます。これはアメリカの研究者、私の仲間たちは使っておって、日本はそれを受け売りで言っておる。  確かに戦略的にあいまいにしておくということは意味はあるんです。ただ、それはアメリカにとって極めて大きな意味を持つものであって、日本がそのとおりやって国益に資するものであるかどうかは疑問でございます。  ですから、日本としてはアメリカとの同盟関係を大変重視しつつも、戦略的なあいまい性などという言葉を受け売りで言うことなく、台湾海峡が問題ですよ、朝鮮半島が問題ですよということを言ってもいいのではないかなと思ったりしております。  どうも御質問ありがとうございました。
  157. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 日本共産党が政権をとってからのことに御言及がありましたが、それはちょっと事実とは違っておりますが、それはきょうそこで論争するつもりはございませんので、そのことだけ指摘をしておきたいと思います。  先ほど後方地域支援についても悪知恵という言葉をお使いになりました。これは、実際にはロジスティックサポートを戦闘している米軍に対してやるものを、後方地域でやるから、これがロジスティックではなくなってリアエリアサポートになってしまうんだという。私どもも、これはトリックだと。実際にはそういうトリックを使って戦闘と一線を画しているとか憲法の問題をクリアできるんだということで、我々は悪知恵であり浅知恵であるというふうに考えているんですが、小川参考人はその点はどういうふうにお考えでしょうか。
  158. 小川和久

    ○小川参考人 悪知恵という言い方をとったのは、これは官僚機構の中でみずから悪知恵を出さなきゃしようがないだろうなといったような会話が行われているということを前提にそういう表現をとりました。だから、浅知恵という形でそれを非難しようとは思いません。仮に官僚機構にそのような悪知恵を出すことを期待したのだとすれば、我々が、この国会という国民の代表である機関が、それをきちんと議論するような格好で持っていっているかどうかが大変問われる問題であろう。とにかく後方地域といったような言葉というのは軍事的には成り立たない。  例えば民間の病院にけがをした米軍の兵士を収容する、それは相手国から見れば戦力の再生以外の何物でもない。またそこでけがが治ったやつは戦場に戻るわけでございます。それは敵対行為そのものですから。やはりその辺は明確にした上できちんとして、私はガイドライン関連法案成立させるべきだという立場でございます。  どうもありがとうございました。
  159. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 もう一つ小川参考人にお聞きしたいんですが、日米軍事同盟が非常に双務的なものだ、対称性のあるものだというふうに先ほどおっしゃいましたが、そういう条約のもとで、しかし北朝鮮からも日本と対話しても当てにならないんじゃないかというふうに見られるような、日本の対米従属性というんですか、これは一体どこから生まれているというふうにお考えでしょうか。
  160. 小川和久

    ○小川参考人 これは残念ながら、従属性を認めるかどうかという議論については日本国内でも議論が分かれている。これはもともとそうなんです。  ただ、客観的な認識として、例えばアメリカの同盟国、これはいろいろな数え方がありますが、例えば四十カ国あるとする、その中で最もアメリカにとって軍事的な役割を果たしている国がどこなのか。それは、例えば湾岸戦争においてアメリカの要請によって自衛隊を出すことができるかどうか、それは憲法の制約がある、それはできない。しかし、アメリカの戦略的根拠地を提供し、基地対策費を含めますと一年間で六千四百億円もの税金を使って在日米軍経費を注入し、また戦略的根拠地を年間四兆九千億円余りの防衛費によって守っている、こんな国というのはないわけでございます。そういった客観的な認識を持ちながら、アメリカにその認識を認めさせる、あるいは、アメリカに認めさせる必要はなくて、こういったものを示せばアメリカはそれを前提に議論するんですね。  そういったことをきちっと可能にするための例えば議会、国会の調査能力はどうだったのか、政党や議員の調査能力はどうだったのか、あるいはシンクタンクの能力はどうなのか、アカデミズムの能力はどうなのか、ジャーナリズムの能力はどうなのか。民主主義を機能させる要素がすべてこの部分においては非常に低く維持されてきた結果にほかならないだろうと思うんです。  とにかく、私ども議員さんと一緒にアメリカに行きまして、アメリカの専門家や何かと話をする。すると、必ず日本の足元を見て日米安保は双務的じゃないという話を始めるやつがいるわけでございます。私はそこにおいて、では双務的な同盟国はどこにあるんだと聞くんですね。そうすると、大体黙っちゃいますよ。とにかく、総合的にそれを評価いたしますと、日本ほど対等に近い、双務的な役割を果たしている同盟国はないという評価はできます。  確かに、アメリカと同じ戦列で戦うかどうか、第一線で戦うかどうかの問題は欠落しておりますが、そんな、日本国憲法を改正しようなんて圧力はアメリカはかけないわけですから、やはりそこのところは客観的に押さえながら、アメリカとの共通認識を持ち、北朝鮮にもそれを常に伝えて暴走するなよという歯どめにしなきゃいけない。それは、やはり我々の民主主義のメカニズムが形式に流れてきた面があったツケではないかなと私は思っております。  どうもありがとうございます。
  161. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 終わります。
  162. 山崎拓

    山崎委員長 これにて佐々木君の質疑は終了いたしました。  次に、保坂展人君
  163. 保坂展人

    保坂委員 社会民主党の保坂展人です。  川本参考人に伺いたいと思います。  本日は、パイロットさんの組合の、まさに旅客機を運航している現場からの声として大変貴重な声を聞かせていただいたのですが、なおかつ川本参考人は海上自衛隊に勤務された経験もある。そういうことから、いわば自衛隊あるいは防衛という側面の体験と、もう一つは、旅客機で乗客、乗員の生命を預かる、そういう体験から、このガイドライン論議の中で、既に資料としてお配りいただいているものの中で、一昨年の六月に全日空の飛行機が海兵隊員を嘉手納基地から横田基地まで運んだ、そのときに武器弾薬は一体どうなっていたんだろうか、そしてまた、そういったことが結果として直前にわかるあるいは事後にわかるという場合に機長としてどういうことをお感じになるのか、そのあたり率直にお話しいただきたいと思います。
  164. 川本和弘

    ○川本参考人 まず、民間航空機によります武器弾薬の輸送については、これは当然のことながら原則的に禁止されております。ただし、一部例外規定がございまして、こういう場合には運んでいいですよという規則を各社持っております。基本的には、これは国際法にのっとって決まっているわけでございますが、その規則に外れるものについては当然機長として搭載を許可しないということになります。これらについては、手続上、危険品搭載手続というのが各社に決められておりまして、それに従って搭載するということでございます。  一昨年の実例につきましては、これはまだ事実関係が余りはっきりしておりませんが、運んだ会社はビジネスとして運んだということで、当初、武器弾薬はないという認識もあったようでございますが、実際には搭載があったということで、この詳細についてはいまだ不明確な部分があると承知しております。  以上です。
  165. 保坂展人

    保坂委員 続けてお願いしたいのですけれども。  九四年の朝鮮半島の緊張が高まった折に、アメリカから八空港六港湾の使用要求があったということで既に幅広く知られておりますけれども、その中に例えば関空だとかあるいは成田だとか、そういった空港も含まれている。そうなると、いわゆるガイドライン関連の論議が具体的に想定しているところの民間における協力要請、その中に明確に空港が入ってくる。その空港の例えば航空管制の問題、これを優先的にというより、航空管制を米軍がコントロールするというようなことになったり、あるいは人員や物資の輸送拠点、あるいは軍事要塞化する、軍事基地として民間空港がさま変わりするというようなことがあったときに、それを後方支援活動だと言いつつ、果たして日本の旅客機は安全に運航できるのかどうか、現場で操縦桿を握る立場でお答えいただきたいと思います。
  166. 川本和弘

    ○川本参考人 ちょっと気管支を患っておりまして大変お見苦しいのを見せて申しわけございませんが、安全性についての御質問ということでございますが、私どもは現在でも、軍民の共用空港については反対という立場は、これは明確に持っております。  日本の中に今何カ所か、代表的には沖縄県の那覇なりそれから小松、千歳等、軍民共用空港については反対。これはもう理由は明らかでございまして、旅客機なりそれからいわゆる軍用機の中でも戦闘機なりは、運用方法それから速度それからもちろん使用目的等が全く違うものでございまして、比喩で言うと、いいか悪いかちょっとわかりませんが、私たちがよく言うのは、公道、いわゆる普通の一般道路をスポーツカーが全速力でぶっ飛んだときにどういう事態になりますかというようなことを申し上げますが、そういう観点も含めて、現時点でも反対させていただいている。  そういう中で、いわゆる周辺事態法が発動されるような事態になった場合には、当然そういう場合には、いわゆるこの法案の中では管制の優先なり空港の優先使用なり物資、弾薬等の貯蔵なりが民間機のそばで実際に行われるということで、安全性を極めて憂慮する事態になるであろうという推測を持っております。  それから、委員長、先ほどの佐々木委員の御質問の中でアピールの何名かという御質問がございましたが、私今資料の中で見つけまして、二十七万七千名という数字でございましたので、申しわけございませんがつけ加えさせていただきます。  以上でございます。
  167. 保坂展人

    保坂委員 続けて、川本参考人にお願いをしたいのですが、繰り返し意見陳述の中で、国際民間航空条約、シカゴ条約、そして日本の航空法について触れられていますけれども、端的に、ビジネスとして米海兵隊あるいは附属する武器弾薬を民間機が運んだ場合に、それは民間機というふうに言えるんでしょうか。
  168. 川本和弘

    ○川本参考人 先ほども似たような御質問があったかと思うんですが、私ども立場としてそれは、いわゆる民間航空条約の中で、国の航空機というのは、軍、警察及び税関の航空機という定義がございますが、今御質問がありましたような形態の場合には、相手から国の航空機とみなされる危険が極めて高い、そういうふうに見られるであろうというふうに考えております。
  169. 保坂展人

    保坂委員 続けて、川本参考人のお話の中でテロの問題に触れられていましたけれども、もう一つ、イラン航空の飛行機が、エアバス300ですけれども、これはちょうど十一年前の七月に、離陸直後にアメリカのイージス艦によってミサイル攻撃で撃ち落とされた、撃墜されたという、これは最終的にはかなり多額の慰謝料を払って決着したそうでありますけれども。  実は、そういう空の安全ということの中で、限定的な地域、イランとイラクの戦争の中でかなり民間の艦船も被弾をしたようですけれども、典型的には撃墜ということがあるわけですけれども、こういった空の安全にかかわる事態の中で、戦闘行為が起きてきたときに、一方で、平和と安全を前提にしながら飛んでいる民間機がこういったことに巻き込まれるということ、あるいは、後方支援とはいっても、日本アメリカと共同で歩調をとったときに、日の丸をつけている日本の旅客機がテロあるいはその他の攻撃の対象に意図的になるという、イランの場合は間違って撃たれたわけですけれども、そのあたりについて伺いたいと思います。
  170. 川本和弘

    ○川本参考人 まず、イラン航空機の例でございますが、これは非常に覚えやすい数字でございまして、一九八八年の七月三日、いわゆるフォース・オブ・ジュライの一日前でございますね、独立記念日の。当時、イラン・イラク戦争が相当長年にわたって戦われておりまして、いわゆるホルムズ海峡近辺の商船が相当数被害を受けておりました。それの護衛のために米国が艦隊を出動させているわけですが、いわゆる民間機撃墜事件発生の伏線として、一年前に、イラクのミラージュ攻撃機がアメリカの駆逐艦スタークというのを間違って攻撃してしまったというか、間違って発射したのが当たってしまって、三十七名の米国の海軍軍人が死亡しております。  したがって、そこでのいわゆる交戦規定が改定になりまして、新しい交戦規定があったわけですが、そういう伏線がある中で、一九八八年の七月三日、イランの空港から飛び上がった民間旅客機、イランのA300ですが、これが先ほど申しました軍民共用空港の飛行場でございまして、当然アメリカの軍艦は常にウオッチしておるわけですが、どういう手順か知りませんが、それがF14トムキャットと認定されてしまいました。運が悪いことには、その飛行機はほとんど真っすぐ巡洋艦ビンセンスというものに向けて飛行を続けてきたわけですが、これもまたどういう間違いか、上昇中の飛行機を、コンバット・インフォメーション・センター、CICでございますね、ここで高速降下で本艦に向かっていると判断して、艦長は発射してしまった。ミサイル二基の発射を命じて撃墜してしまって、二百九十名の人命が失われた。  事後の調査で、米海軍は、敵味方識別の手順の誤りは認めましたが全体的にはやむを得なかったという態度でしたが、同僚の艦長から即反論がありまして、処置が間違っていたということで、結果的にアメリカは、六千万ドルを超える慰謝料を残された遺族の方に払ったということでございます。  第二点目でございますが、そういう紛争事態発生した場合のテロ脅威というのは、これは冒頭でも述べさせていただきましたとおり、日本という国に限ってだけ言っても、全世界に散らばっている航空機一つ一つのセキュリティーの問題を完璧にやることは極めて難しい。  先ほど二例ほど御紹介させていただきましたが、この二例とも共通しているのは、爆弾を積むのに、直接は積んでいないんですね。事前に、ねらう前にどこかの飛行場で、いわゆる警備の厳しい空港で荷物を積み込みまして、一たん積み込んで、セキュリティーが、要するに安全ですよということになってしまえば、経由地ではそのまま積みかえられるという今の手順になっております。  したがって、そのまま爆弾を積んでしまったということで、万が一日本の民間旅客機がそういうふうなターゲットになった場合には、これはほとんど防ぐことは不可能ではないか。ですから、私たちとしましては、ぜひそういう事態に立ち至らないように、政治の場で御努力をお願いしたいというふうに思います。  以上でございます。
  171. 保坂展人

    保坂委員 それでは小川参考人に、時間がないんですが、一言お願いいたしたいと思います。  今、川本参考人から、パイロットという現場の声、幾つか私ども受けとめたわけですけれども、今回の法案審議の中で、例えば自治体に協力を求める、民間に協力を求める、あと、詳しくはどうかというのは全然わからないわけですね。そういう白紙委任というか、成立してからよろしくやりますという方法では、国民理解あるいは本来の趣旨もねじ曲がったものになるんではないかという御指摘があったと思うんですが、その点について一言お願いしたいと思います。
  172. 小川和久

    ○小川参考人 御質問、ありがとうございます。  私は、ガイドライン関連法案、これは審議をどんどん急いでやっていくべきであろうという立場でお話をしてまいりましたし、今の御質問も受けとめたわけでございますが、同時に、御指摘のような点というのは、やはり国民に対して問いかけなければいけない問題でございます。それが、やはり国民の無知をいいことにと言ったら言い過ぎかもしれませんが、そのまま素通りされているというのは、非常に残念でございます。  ただ、例えば民間空港の使用ということも、周辺事態ということになった場合、民間航空路は何%ぐらいまで削減をされるのか。これは、通常、平時のように飛んでいるわけじゃないんですよ。その中での安全性の問題はどうなるのか。その辺の議論はやはりなきゃいけない。ところが、これにさわると完全に危険だということになりかねないから、さわらずに来ているという部分も実は政府の側に感じられるわけでございます。  あるいは、ICAO条約に関して、民間航空に関する条約で、例えばロシアのアエロフロートが軍事使用される場合はどういう扱いになっているのか。あるいは、アメリカの海兵隊が戦地に人員を先に派遣するために、チャーター便で、CRAFという制度を持っている。これは大変迅速に展開できるわけです。湾岸危機のときにも大変有効に働いた。このCRAFの場合は、ICAO条約はどのように適用されるのか。あるいは、民間機と本当にみなすのか、みなさないのか。恐らく敵対している側はみなさないでしょう。ただ、みなされないということを前提に、恐らくロシアのアエロフロートにしても、あるいはアメリカ海兵隊のCRAFでチャーターされた民間旅客機にしても、護衛戦闘機や何かは全部ついていくと思うんですね。あるいは、飛ぶ航路については、危険なところについては、その下の海面にイージス艦などを配備する場合もある。そういったことが恐らくあり得るであろうという議論が全然ないわけですよ。  だから、とにかく危険な印象を国民に与えたら法律が通らないだろうといったようなところがどうも感じられてならない。とにかく周辺事態がやはり適用されるような事態にあっては、民間空港の大部分があるいは閉鎖かもしれない。民間航空路なんてほとんど機能していないかもしれない。その中でどれぐらい危険なのか、危険でないのか。そういった議論までしていただきたいなという感じがしております。  どうも御質問、ありがとうございました。
  173. 保坂展人

    保坂委員 時間の関係で、岡本参考人、伊豆見参考人に質問できずに申しわけありませんでした。  これで終わります。
  174. 山崎拓

    山崎委員長 これにて保坂君の質疑は終了いたしました。  これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、参考人各位に一言お礼を申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただき、また貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。      ————◇—————
  175. 山崎拓

    山崎委員長 この際、委員派遣承認申請に関する件についてお諮りいたします。  各案件につきまして、審査参考に資するため、来る十四日水曜日、委員を派遣いたしたいと存じます。  つきましては、議長に対し、委員派遣承認申請をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  176. 山崎拓

    山崎委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  なお、派遣委員の人選、派遣地等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  177. 山崎拓

    山崎委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  次回は、来る十三日火曜日午前八時三十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時十三分散会