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1999-04-01 第145回国会 衆議院 日米防衛協力のための指針に関する特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年四月一日(木曜日)     午前九時開議   出席委員    委員長 山崎  拓君    理事 赤城 徳彦君 理事 大野 功統君    理事 玉沢徳一郎君 理事 中谷  元君    理事 中山 利生君 理事 畑 英次郎君    理事 前原 誠司君 理事 遠藤 乙彦君    理事 西村 眞悟君       安倍 晋三君    相沢 英之君       浅野 勝人君    石川 要三君       今村 雅弘君    大石 秀政君       大島 理森君    大村 秀章君       河井 克行君    瓦   力君       小島 敏男君    阪上 善秀君       桜田 義孝君    田村 憲久君       竹本 直一君    西川 公也君       萩山 教嚴君    桧田  仁君       福田 康夫君    細田 博之君       宮腰 光寛君    宮島 大典君       八代 英太君    米田 建三君       渡辺 博道君    伊藤 英成君       上原 康助君    岡田 克也君       桑原  豊君    玄葉光一郎君       土肥 隆一君    横路 孝弘君       市川 雄一君    佐藤 茂樹君       冨沢 篤紘君    山中あき子君       東  祥三君    井上 喜一君       達増 拓也君    木島日出夫君       佐々木陸海君    東中 光雄君       伊藤  茂君    濱田 健一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  小渕 恵三君         法務大臣    陣内 孝雄君         外務大臣    高村 正彦君         大蔵大臣    宮澤 喜一君         文部大臣         国務大臣         (科学技術庁長         官)      有馬 朗人君         厚生大臣    宮下 創平君         農林水産大臣  中川 昭一君         通商産業大臣  与謝野 馨君         運輸大臣         国務大臣         (北海道開発庁         長官)     川崎 二郎君         郵政大臣    野田 聖子君         労働大臣    甘利  明君         建設大臣         国務大臣         (国土庁長官) 関谷 勝嗣君         自治大臣         国務大臣         (国家公安委員         会委員長)   野田  毅君         国務大臣         (内閣官房長官         )         (沖縄開発庁長         官)      野中 広務君         国務大臣         (総務庁長官) 太田 誠一君         国務大臣         (防衛庁長官) 野呂田芳成君         国務大臣         (経済企画庁長         官)      堺屋 太一君         国務大臣         (環境庁長官) 真鍋 賢二君         国務大臣         (金融再生委員         会委員長)   柳沢 伯夫君  出席政府委員         内閣官房内閣安         全保障危機管         理室長         兼内閣総理大臣         官房安全保障・         危機管理室長  伊藤 康成君         内閣法制局長官 大森 政輔君         内閣法制局第一         部長      秋山  收君         内閣法制局第二         部長      宮崎 礼壹君         警察庁警備局長 金重 凱之君         防衛庁長官官房         長       守屋 武昌君         防衛庁防衛局長 佐藤  謙君         防衛庁運用局長 柳澤 協二君         防衛施設庁長官 大森 敬治君         防衛施設庁施設         部長      宝槻 吉昭君         法務省入国管理         局長      竹中 繁雄君         公安調査庁長官 木藤 繁夫君         外務省総合外交         政策局長    加藤 良三君         外務省アジア局         長       阿南 惟茂君         外務省北米局長 竹内 行夫君         外務省経済局長 大島正太郎君         外務省条約局長 東郷 和彦君         厚生省健康政策         局長      小林 秀資君         運輸省運輸政策         局長      羽生 次郎君         運輸省航空局長 岩村  敬君         海上保安庁長官 楠木 行雄君         労働大臣官房長 野寺 康幸君         自治大臣官房総         務審議官    香山 充弘君  委員外出席者         衆議院調査局日         米防衛協力のた         めの指針に関す         る特別調査室長 田中 達郎君 委員の異動 四月一日               辞任         補欠選任   河井 克行君     桧田  仁君   平林 鴻三君     渡辺 博道君   宮島 大典君     竹本 直一君   赤松 正雄君     冨沢 篤紘君   辻元 清美君     濱田 健一君 同日                 辞任         補欠選任   竹本 直一君     宮島 大典君   桧田  仁君     大村 秀章君   渡辺 博道君     平林 鴻三君   冨沢 篤紘君     赤松 正雄君   濱田 健一君     辻元 清美君 同日                 辞任         補欠選任   大村 秀章君     今村 雅弘君 同日                 辞任         補欠選任   今村 雅弘君     河井 克行君 四月一日  新ガイドライン関連法案慎重審議に関する請願保坂展人君紹介)(第一七〇七号)  同(保坂展人君紹介)(第一七二六号)  新ガイドラインに基づく周辺事態法などの制定反対に関する請願石井郁子紹介)(第一八一八号)  同(大森猛紹介)(第一八一九号)  同(金子満広紹介)(第一八二〇号)  同(木島日出夫紹介)(第一八二一号)  同(児玉健次紹介)(第一八二二号)  同(穀田恵二紹介)(第一八二三号)  同(佐々木憲昭紹介)(第一八二四号)  同(佐々木陸海紹介)(第一八二五号)  同(志位和夫紹介)(第一八二六号)  同(瀬古由起子紹介)(第一八二七号)  同(辻第一君紹介)(第一八二八号)  同(寺前巖紹介)(第一八二九号)  同(中路雅弘紹介)(第一八三〇号)  同(中島武敏紹介)(第一八三一号)  同(中林よし子紹介)(第一八三二号)  同(春名直章紹介)(第一八三三号)  同(東中光雄紹介)(第一八三四号)  同(平賀高成紹介)(第一八三五号)  同(不破哲三紹介)(第一八三六号)  同(藤木洋子紹介)(第一八三七号)  同(藤田スミ紹介)(第一八三八号)  同(古堅実吉紹介)(第一八三九号)  同(松本善明紹介)(第一八四〇号)  同(矢島恒夫紹介)(第一八四一号)  同(山原健二郎紹介)(第一八四二号)  同(吉井英勝紹介)(第一八四三号) は本委員会に付託された。 本日の会議に付した案件  日本国自衛隊アメリカ合衆国軍隊との間における後方支援物品又は役務相互提供に関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定締結について承認を求めるの件(第百四十二回国会条約第二〇号)  周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律案内閣提出、第百四十二回国会閣法第一〇九号)  自衛隊法の一部を改正する法律案内閣提出、第百四十二回国会閣法第一一〇号)     午前九時開議      ————◇—————
  2. 山崎拓

    山崎委員長 これより会議を開きます。  第百四十二回国会内閣提出日本国自衛隊アメリカ合衆国軍隊との間における後方支援物品又は役務相互提供に関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定締結について承認を求めるの件、周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律案及び自衛隊法の一部を改正する法律案の各案件を一括して議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。前原誠司君。
  3. 前原誠司

    前原委員 民主党の前原でございます。この委員会、二回目でございまして、きょうはテレビは映っておりません。できる限りきょうは、専門的な部分、技術的な部分も含めて、私の納得できるような議論を進めさせていただきたいと思います。  この内容について入る前に、やはりどうしても伺っておきたいことがございますので、まずそのことについてお話伺いたいと思います。  北朝鮮の情勢並びにこの間の不審船の問題について、お話伺いたいと思います。  先般、政府は、あの二隻の不審船北朝鮮工作船と断定をされました。その根拠についてもお教えいただきたいと思いますし、また、その目的は何だったのか、何と推定できるのか、今の段階でわかる範囲で結構ですので、その断定した根拠とそれから目的についてお答えをいただきたいと思います。
  4. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 今回の不審船につきましては、いずれも三月二十五日の早朝までに北朝鮮北部の港湾に到達したと判断されることのほか、種々の情報を総合した結果、北朝鮮当局工作船であると判断するに至った次第でございます。  この船の構造とかあるいは乗員の状況とか搭載されている機材の状況など、非常に不明な点が多いこともあり、この船がどういう目的で何をするために来たのか、詳細については知り得る状況にはまだ至っておりません。しかしながら、一般的に推測しますれば、例えば各種の情報収集活動工作員潜入ないし工作員回収などの活動目的を有していた可能性が考えられるところであります。
  5. 前原誠司

    前原委員 今御答弁の中で、工作員という言葉が出ました。また、工作員潜入あるいは工作員回収ということがございました。  それでは、その工作員というのは、推定できる限り何をしようとして入っているのか。その点についてもちょっと明らかにしていただかないと、ただ単に工作員潜入回収だけではちょっと納得しがたいものがありますので、再度御答弁をいただきたいと思います。
  6. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 その点につきまして、確かなことを申し上げるまでに把握しておりません。
  7. 前原誠司

    前原委員 一部の新聞で、この二隻の不審船陽動作戦であった、そして北朝鮮工作員が数十名潜入したのではないか、こういう話がありました。これについての政府確認、真偽のほどはいかがなのか、その点についてお答えをいただけますか。
  8. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 一部の報道があって、直後に私どもは、警察当局海上保安庁当局、それから大変大事な米軍情報もつぶさにとりましたけれども、もちろん我が方は濃密な警戒監視等をやっておるわけですけれども、いずれにもそういう事実が確認されなかったというのが真相であろうかと思います。
  9. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 国家公安委員長としてお答え申し上げますが、今防衛庁長官から御答弁ありましたとおり、複数人が上陸したという報道、この報道があったことは承知しておりますが、警察としては、現在のところそういう情報には接してはおりません。  それから、先ほど御指摘のございました、工作員がじゃ日本でどういうことをやっておるのかという御質問ですが、我が国においては、戦後約五十件北朝鮮関係諜報事件が検挙されてきたわけでございます。現在においても、相当数北朝鮮工作員活動しているものと推定されております。これら五十件の事例からどういう活動をしておるのかという点について申し上げますと、対韓国工作の拠点としての活動が行われたり、あるいは我が国に対するさまざまな情報収集活動在日米軍に関する情報収集、さらには拉致などを目的とする活動が行われてきたと見ておるわけでありまして、現在でもそれらの活動を行っているのではないかと見ております。
  10. 前原誠司

    前原委員 今国家公安委員長お答えになりました件でさらに御質問したいわけでありますが、今までも幾人かの日本人北朝鮮拉致をされたということは政府も公式にお認めをなさっているところでありますけれども、今まで確認をされている数、そしてまた拉致をすることによって何を意図しているのか、その点について、政府として御見解をお伺いしたいと思います。
  11. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 警察におきましては、これまでの一連の捜査の結果を総合的かつ入念に検討をいたしました結果、北朝鮮による拉致の疑いのある事件というのは現在までのところ七件十名、また拉致が未遂であったと思われるものは一件二名であると判断しているというふうに承知をいたしております。  これらの拉致目的については必ずしも明らかではありませんが、さまざまなもろもろの情報を総合いたしますと、北朝鮮工作員日本潜入して日本人のごとく振る舞えるようにするための教育を行わせたり、北朝鮮工作員日本潜入して、拉致した者に成り済まして活動できるようにすることなどがその主要な目的と見られるわけであります。  いずれにせよ、これらの事案については、事態重大性ということにかんがみて、今後とも政府一体となって真相究明のために全力を尽くさなければならないというふうに考えております。
  12. 前原誠司

    前原委員 不審船が来たということは、これはもう全国民認識をしたことでございまして、また、拉致をされて北朝鮮に連れていかれて帰ってこられない人がいるということも、これは全国民理解をしていることであります。この間の不審船によってその疑惑がますます深まりましたし、また国民の間での不信感不安感というものが私は極めて高まってきていると思います。したがいまして、今、関係当局では努力をいただいているということでございましたけれども、ここからは要望にさせていただきますけれども、できる限りこういう国会の場で、どういう捜査を行っていて、またどういう目的等把握ができているのかについて、逐次またいろいろと御報告をいただければということをこの際は要望をさせていただきたいと思います。  さて、またそれに絡んでの話になりますけれども、これは防衛庁長官あるいは運輸大臣にお伺いをしたいと思いますけれども、今回の不審船の問題で日本領域警備の問題がクローズアップをされております。私の理解が正しければ、今までの領域、つまり海上警備については、一義的には海上保安庁が行ってこられたというふうに思います。海上保安庁海上自衛隊と匹敵するぐらいの排水量を持っているわけでありますので、その点での能力というのはそれほど劣っていないというか、海外から言わせると、第二の海軍と言われるぐらいのものであるということは認識をされているわけでございますが、しかし、四方八方を海に囲まれたこの日本の地理的な特性というものを考えた場合、やはり船でのパトロールというものはおのずと限界があるんだろうというふうに私は思っています。つまり、海を海上保安庁の船がパトロールをする中で不審船を見つけて、そして船舶検査なんかをして捕まえる、こういうことは私はなかなか難しい話じゃないかと思っています。  今回の事件一つ契機として、私は、やはり海上自衛隊海上保安庁というものが、あるいは航空自衛隊も含めてかもしれませんが、協力して、一体となって常日ごろ警戒監視活動というものをしっかり行う必要があるのではないかと思います。  それで、一つだけちょっと総理にまずお伺いをしたいと思うのでありますが、この間、私は安保安保委員協議会というところで防衛庁長官には同じ質問をいたしました。つまり、自衛隊の日常の警戒監視活動法的根拠が、防衛庁設置法の第六条十一号の「所掌事務遂行に必要な調査及び研究を行うこと。」これが法律的な根拠になっているわけであります。どう考えても、「所掌事務遂行に必要な調査及び研究」ということが警戒監視とぴったりイコールになるとはなかなか読み取れない。つまり、これを援用して今までやってきたということにほかならないんだろうと思います。  したがいまして、この際と言ったらなにかもしれませんが、やはり自衛隊法にきっちりとした自衛隊の常日ごろ領域警備活動というもの、あるいは警戒監視活動というものを明記して、そして後は政府部内の海上保安庁自衛隊、あるいは関係省庁との連携のもとでしっかりとした活動を行うというのが私は筋だと思いますけれども、その点について総理の御答弁をいただきたいと思います。
  13. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 防衛庁設置法第六条第十一号は、防衛庁の有する権限として、所掌事務遂行に必要な調査及び研究に関することを規定いたしております。自衛隊警戒監視活動はその一環として実施されているところであり、このことはこれまで国会で説明がなされてきたところであると承知をいたしております。  他方、御指摘の点につきましては、議員の御主張のような考え方のあることは承知をいたしており、去る三月二十四日の衆議院安全保障委員協議会において、議員のお尋ねに対し、防衛庁長官より、少し検討してみたいとの答弁があったと承知をいたしております。この点につきまして、私としても、防衛庁検討を待つべきものと考えております。前原委員、今回のいわゆる不審船政府としては工作船とこれを認めて抗議を行っておるところでございますが、こうした契機にいろいろな問題をレビューして検討すべきだということは、これは至極当然なことだろうと思っております。  段々の経緯の中で、日本のコーストガードについては、戦後早々には、これは自衛隊というものが存在しなかった時代から問題はあるわけでございまして、したがって、朝鮮戦争時におきましては、海上保安庁が機雷の除去に活動したというような歴史的経過もあります。そういった点で、専らにこの地域については海上保安庁責任を持っていくということであったのだろうと思います。  今回、海上警備行動ということで、自衛隊が公海上でこの追跡をされたわけでございますが、要は、日本の国内の安全をいかに確保するか、そのためには、日本列島周辺はすべて海に囲まれておるというような特殊な状況でもございますので、こういった点については、今後よく海上保安庁そして自衛隊ともどもに、これは役割というものは分担していかなきゃならぬとは思いますけれども、十分な協力ということがなければならない。いたずらにそれぞれ所掌が分かれておって、責任が分担しておるからということで、これが高じてきますと、その協調、連絡というような点にかりそめにも不備があるというようなことがあっては大変いかがかという気もいたしておりますので、御指摘の点については、今冒頭私が答弁したとおりでございますが、よく防衛庁長官等と相談をさせていただきたいと思っております。
  14. 前原誠司

    前原委員 今総理から御答弁がございましたけれども、それを受けてという形になるかもしれませんが、防衛庁長官あるいは運輸大臣にお伺いしたいのです。  まず、私の考えを端的に申し上げますと、さっき申し上げたように、船のパトロールというものには、海に囲まれた広大な日本の国土というものを考えたときには限界があるんだろうというふうに思います。したがって、P3CあるいはE2Cなどの非常にすぐれた哨戒あるいは警戒監視能力のある航空機、空からしっかりと不審船あるいはいろいろなものをあらかじめ察知をしておく、その中で、船との連絡を緊密にとって、そして、あらかじめ情報のあったところに集中的にパトロールをする。こういう空と海の連携というものが今後の警戒活動においては非常に必要になるんだろうというふうに私は思いますが、これについて、あるいは先ほどの総理の御答弁を踏まえて、防衛庁長官運輸大臣、御両者から御答弁をいただきたいと思います。
  15. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 平時の海上における不法行為につきましては、今委員からお話があったとおり、第一義的には海上保安庁の任務であります。自衛隊は、海上保安庁で対処することが不可能もしくは著しく困難と認められる事態が発生した場合には、治安出動海上警備行動により対処することとされているわけであります。  自衛隊としましては、平素から、警戒監視等の実施に際し不審船を発見した場合の連絡など、海上保安庁と緊密に連携して、その不審船対処協力しているところでありますが、これからもその協力を一層緊密にしたいと考えております。  いずれにしましても、防衛庁としては、このような事態に際してのより適切な対応を期するため、今般の不審船事案の経験や、今委員から御指摘をいただいたようなことを踏まえつつ、自衛隊対応のあり方や関係省庁間の連絡について、今後ともさらなる検討を行い、万全を期してまいりたいと思います。
  16. 川崎二郎

    川崎国務大臣 今回の事案は、自衛隊から情報連絡があり私どもが動いたケースでございます。  実は、一昨日も不審船情報がございました。これは、漁船からまず警察に入って、そして私どもに入り、同時に防衛庁連絡をさせていただいたところでございます。  そういった意味では、情報収集、あらゆる能力、すべての能力を駆使して、まず得る、それをどうお互いが伝達していくかということが一番大事だろうと思っております。  また一方で、今、空のお話がございました。海上保安庁としても今回十二機動員をさせていただいておりますけれども、空の能力海上保安庁自身も高めていく、これも大事だろうと思っております。  いずれにせよ、連携をまず第一にしながら、同時に、私ども船艇や空の能力を高めるべく努力をしてまいりたい、このように思っております。  おとといの不審船の話で、そういう情報がありました、結果としては、正規の漁船でありましたという結果で終わりました、しかしながら、そういう情報自衛隊にお伝えしたということを申し上げておるわけであります。
  17. 前原誠司

    前原委員 事が起きてからそれに対して備えるというのは批判があるかもしれません。しかし、事が起きて何もしないのはもっと批判をされるべきであろうというふうに思いますし、やはりこれを一つ契機として、日本の足らざる危機管理体制というものをしっかりと遺漏なきものにしていただきたい。これは与野党関係なくやっていかなければいけない問題だと思いますので、その点について御質問をいたしました。  ガイドラインの問題のポイントに入るもう一つの前提として、北朝鮮の問題でお伺いをしておきたいことがあります。これは、今の北朝鮮状況について一体どれだけ政府把握をされているのか、こういうことでございます。  私は、先般、ファン・ジャンヨプという非常に高官の方が中国、フィリピン経由韓国に亡命をされましたけれども、あの方の著書を読みました。「金正日への宣戦布告」という題名の本でございまして、ずっと金日成あるいは金正日の二人のそばにいたと言われている人の発言だけあって、なかなか生々しい、そしてまた非常に興味深く読ませていただきました。あれを読む限りにおいては、金正日というのが、金日成が存命のころから力をつけて、今は権限の掌握というものをきっちり行っているんではないか、こういう話でございました。  それと同時に、この本の中に書かれておりましたのは、飢餓の状況がすさまじいひどさである、こういうことでありました。北朝鮮の人口が約二千万人と言われておりますけれども、そのうちの一割程度が、餓死あるいはその他もろもろの病気などで亡くなられたんではないかというふうな話が載っておりました。  国交がない国でありますので、どれだけ把握をされているのか、なかなか難しい状況かもしれませんが、今の金正日の権力掌握状況あるいは飢餓、そういうものについてどの程度政府が今現状として把握をされているのか、その点についてお伺いをしたいと思います。
  18. 高村正彦

    ○高村国務大臣 北朝鮮情勢につきましては、依然として不透明な点が多いわけでありまして、確たることは申し上げられませんけれども、昨年夏の最高人民会議議員選挙の後、統治機構が再構築され、政府の陣容などが一新されたわけであります。一新されたわけでありますが、金正日総書記が国政全般を掌握している状況は変わっていない、こういうふうに見ております。  北朝鮮における飢餓の状況や餓死者数について、これもまた種々の情報がありまして確たることは不明でありますが、一応、昨年十一月に発表された、国際食糧農業機関、FAO及び世界食糧計画、WFPによる北朝鮮の食糧事情に関する特別報告によれば、一九九八年には北朝鮮の穀物生産量は約三百四十八万トンと見込まれ、一九九九年には約百三十五万トンの穀物輸入が必要である、こういうふうにされているわけであります。  以上であります。
  19. 前原誠司

    前原委員 今、政府として把握をされているお話伺いました。  今回、米朝協議というものがある程度相調った。そしてまた、韓国は太陽政策というものを推進して、この間小渕総理も訪韓をされましたけれども日本としては金大中大統領のその姿勢を支持する、こういう発言をされてこられたという話も伺っております。  北朝鮮に対して日本としてどういうアプローチをしていくのかということは、これは私は、なかなか口で言うほど簡単な話ではない、大変難しい問題だと思っております。  そこで、一つの切り口として、援助の可能性について私は伺ってみたいと思うのでありますが、これは私の意見ではありません。そのファン・ジャンヨプさんという方の本の中に、金正日体制の強化につながるものであってはいけないけれども、しかし、人道的な観点から、うまい形で一般の国民にできる限り広く援助をしてもらえるような希望をしている、こういうくだりがございました。赤十字を通じてやるのかどうかという手続的な、手法的な問題はありますけれども、いろいろな、不審工作船の問題、あるいは去年の八月のミサイル、向こうは衛星と言っておりますけれども、それの発射の問題等々で、あるいは拉致問題がまだまだやみの中であるという中で、強硬な意見も国内にあるとは十分私も承知をしておりますけれども、その支援の可能性について、現時点で政府としてどのように考えておられるのか、その点についてお伺いをしたいと思います。
  20. 高村正彦

    ○高村国務大臣 北朝鮮に対する食糧支援については、我が国は、過去において緊急及び人道の観点からこれを行ったことがあるわけであります。  ただ、御存じのように、昨年八月の北朝鮮によるミサイル発射を踏まえ、当面見合わせることとして現在に至っているわけであります。  我が国としては、北朝鮮に対しては対話と抑止ということでやっているわけでありますが、北朝鮮が建設的対応を見せれば、それにはこたえていく、非建設的対応であれば、まだそれについては毅然として対応していかなければいけないであろう、こういうことでありますが、先般、米朝の核疑惑施設に関する協議が一応調ったということで、少し建設的な対応が見られるかなと思うときに今度の工作船があった。人道上の援助とはいえ、やはり国民理解も必要でありますし、そういったことをもろもろ考えながら、北朝鮮対応を見ながら総合的に判断してまいりたい、こういうふうに思っております。
  21. 前原誠司

    前原委員 私自身も、これについては、国民理解等々の観点から、ではすぐさま、不審船も来た、あるいはミサイル発射もあった、しかし人道的なところから食糧援助だというのはなかなか難しいのかもしれません。しかし、これからちょっと、いよいよ本格的に今この場で、ガイドラインに関して、具体的な周辺事態を想定しながら、この北朝鮮の問題を含めて質問をしていきたいと思いますけれども、対話と抑止ということをおっしゃいましたけれども、どういう形でやるかという問題も含めて、私は、今回の米朝合意が調った、あるいは韓国自身が太陽政策というものを行っている、これが成功するかどうかわからない、しかし、今まで日米韓で一体となって北朝鮮対策をやってきたという観点からすると、そういうものも日本としては検討してもいいのではないかという思いがあります。つまり、切り離して、人道的な見地ということで国民に説得して。  もう一度その点について、大臣、お答えをいただけますでしょうか。
  22. 高村正彦

    ○高村国務大臣 人道的援助というのは、先ほどもお答えしたように、かつてもやったわけでありまして、普通の状況であれば、特別、義務がなくても日本は積極的にこういうことをやる国であるわけであります。  ただ、そういう状況の中で、まさに昨年の八月、ミサイルが全く無警告で我が国の、日本列島の上を飛び越えていった、こういう状況の中で差しとめているという経緯があるわけでありますので、日本とすれば対話と抑止、そして建設的な対応があればそれに対して日本は積極的にこたえていきますよ、しかし、非建設的な対応であれば、それに対しては厳しくせざるを得ませんよということを、その基本的姿勢は崩さないで、やはり北朝鮮に建設的な対応をしてもらえるように期待をし、そういうことを呼びかけていく、その結果、人道的援助が早くできるようになればいいな、こういうふうに思っているということでございます。
  23. 前原誠司

    前原委員 防衛庁長官にお伺いをしたいと思います。  先般、ある新聞で、ノドンの実戦配備が完了した、そして移動式のものである、こういう話がありました。それについて、防衛庁としては確認をされているのかどうなのか。もし確認をされているのであれば、どの地域、地名もその新聞には載っておりましたけれども地名、そしてどういう手段、移動式なのかどうなのか、そしてまた基数について、今防衛庁把握をしているところで御答弁をいただきたいと思います。
  24. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 北朝鮮のノドン・ミサイルにつきましては、北朝鮮が既にその開発を完了しており、その配備を行った可能性が高いと判断しております。どの地点に何基かということは、今申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。  なお、この点につきましては、先日、日韓防衛首脳会談で、韓国の千容宅国防部長官も同じ認識であった。また、ついせんだって、コーエン米国防長官と会談した際にも同じ認識でございました。  配備場所とか配備数など配備状況の詳細につきましては今申し上げたところでありますけれども、このミサイルは発射台つき車両に搭載されて移動して運用されるとされていることもあり、一般に、正確に把握することが大変難しい。だから、確たることを申し上げられる状況ではございません。  また、テポドン一号ミサイルについて申し上げますと、その開発が非常に急速に進んでいる。さらに長射程のテポドン二号ミサイルの開発も進んでいるということは、これも韓国の国防長官、アメリカの国防長官、同じ認識でございました。  昨年十一月に発表された米国のいわゆる東アジア戦略報告によりますと、北朝鮮は大量破壊兵器の潜在的な運搬システムとして、ノドンの開発を完了し、テポドン一号及び同二号の開発中であると述べられておりますし、また、本年二月に発表された九九年版の米国国防報告にも、米国本土までを射程内に入れた大陸間弾道弾ミサイル、ICBMを従来の予想よりも早く開発するかもしらぬ、こういうふうに記載されております。また、射程距離につきましては、ノドンの射程は千三百キロ程度でありまして、我が国のほぼ全域がこのミサイルでも射程距離に入る、テポドン一号は千五百キロ以上、テポドン二号は三千五百キロから六千キロ、こう見られております。  いずれにしましても、北朝鮮のミサイルの開発、配備動向につきましては、私どもとしても引き続き細心の注意を払ってまいりたいと思っております。
  25. 前原誠司

    前原委員 ノドンについては、実戦配備は完了した。そして、その地名、基数については発言を差し控えたい、それについては当然、そういうお考えでありましたら結構でございます。  しかし、先ほどからお話をしてきましたのは、これからの質問一つの前振りでございまして、つまり、北朝鮮の権力の内部というものが極めて軍事中心になって、経済ががたがたであって餓死者が相当出ているにもかかわらず軍事中心で来て、特に今御答弁のあったミサイルというものを中心に据えてきている。今回の米朝の問題というものも、ミサイル、そしてまた地下核疑惑施設、こういうものに特化をされてきたわけであります。  こういういろいろな情報の中で、国民がこのガイドラインの法案審議を見たときに、周辺事態というものが本当に周辺事態でとどまるのかどうなのかという不安があるわけです。  例えば、一九五〇年、朝鮮戦争がありました。あのころの装備体系、あるいは武器の形態、そしてまた北と南の持つ武器の保有能力、全く違うわけですね。例えば、第二次朝鮮戦争が仮に勃発をしたということになったときに、もし日本がそれを周辺事態と認定をして、そして日本がアメリカに対して後方支援をするということになると、それは周辺事態でとどまらない可能性というものが私は非常に高いんじゃないかというふうに思っています。  具体的にどういうことかといえば、さっき防衛庁長官から御答弁がありましたけれども、射程距離がノドンについては一千三百キロメートル程度、日本のほぼ全域をカバーしているということであります。御承知のように、韓国には在韓米軍がある。在韓米軍が、もし朝鮮半島で有事になったときにはいわゆる韓国を助けるような役割を示す、そして、その後方支援あるいは前線に向かって飛び立つ基地というのが日本にあるわけですね。そうすれば、周辺事態イコール米軍基地を中心とした日本有事に発展をする可能性は極めて高いんじゃないかというふうに私は思うわけです。  これは、日米安保を結ぶときに、要は、安保を結んだらソ連に攻撃されるんじゃないか、だから日米安保は結ぶべきでないということがありました。今回、ミサイル等の発展あるいは日米韓の置かれている今の状況を考えると、朝鮮半島有事すなわち日本が攻撃対象になる、その危険を冒してでも後方地域支援をやるんだ、そういう政府からのきっちりとした説明がなければ、私は、このガイドライン法案の魂が入らないというか、本質、核心部分に触れないというふうに思うのでありますけれども、その点、総理、お認めになりますか。
  26. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 朝鮮有事即我が国の平和と安全を脅かす事態ということを想定することは、これはやはり仮定の問題になりますので、こうした問題を前提としてお話しするということはなかなか困難ではないかと思っております。  ただ、一般論として申し上げれば、日本有事について、我が国の施政のもとにある領域における日米いずれか一方に対する武力攻撃が発生した場合には、日米両国は、日米安保条約第五条に基づき適切に共同して対処し、極力早期にこれを排除することになるという、我が国の有事の場合におきましては厳然たる態度をもって日米ともにこの状態を起こさしめない、また、起きたというような仮定の場合には、これについては厳然として対処し排除していくという決意を持って対処するということに尽きると思っております。
  27. 前原誠司

    前原委員 これは総理、仮定の問題じゃないんですよ、全然。要は、一番本質的な部分なんです。  つまり、例えば朝鮮半島でそういう事態が起きた。そして、北朝鮮日本に対して、例えば事前協議、後で質問いたしますけれども、事前協議でノーと言うのかイエスと言うのかというものに注目をしている、そしてこのガイドラインの法案に基づいて米軍協力するのかというものを注目している。そして、我々には日本に届くミサイルがあるんだ、そういうことを実際に投げかけられる可能性というのは十分あるわけですよ。その中で我々は、今総理が官僚の答弁をそのまま棒読みされましたけれども、日米安保という前提のもとでやる決意が本当にあるのかどうか。ミサイルが飛んでくるかもしれないんですよ、射程に入っているわけですから。  そういう危険を賭してまで、しっかりと事前協議に対しては対処する、あるいは我々は後方地域支援をやる法案をつくるんだ、毅然とした態度で臨むんだ、この間も質問しましたように、それぐらい日米安保というのは必要なんだと、そこまで説明してもらわないと、私は、とてもじゃないけれども日本人国民の皆さん全般の恐怖心というのは取れないと思います。もう一度答弁し直してください。
  28. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 日米安保条約というものは、言うまでもなく日米同盟関係の中核でございまして、この条約に基づく日米安保体制のもとで我が国に対して武力攻撃が行われた場合には、米国は我が国とともに我が国の防衛の義務を負い、我が国は米国に対して、我が国及び極東の平和と安全の維持に寄与するために我が国の施設・区域の使用を認めていることを初め、日米両国は広範かつ緊密な協力の関係にあります。  そして、我が国が過去四十年にわたり平和と安全を確保しその上に今日の繁栄を築いてきたこと自体、このような同盟関係の選択が正しかったことを証明しておるわけでございますし、その同盟関係をさらに緊密にし、いかなる事態においても日米共同で対処いたしていくという強い決意を支持し、信頼し合っていくということが大切だと思っております。  日本の平和と安全に重要な影響を与える周辺事態におきましては、米軍は、事態の拡大を抑止しあるいは防止し、または事態の収拾を図るための活動を行い、もって我が国の平和と安全に寄与することとなります。このような米軍に対して我が国がいかなる協力もしないというようなことは考えられず、我が国が後方地域支援を行うことは、我が国自体の安全のためであり、同盟国として当然であります。したがって、重ねて申し上げますが、我が国としては、いかなる事態におきましても十分対処し得るように、日米共同してこれに対処するという強い決意を持ってこの日本の安全を守っていくということである、こういうことと思います。
  29. 前原誠司

    前原委員 本質的な部分なので、ちょっとさらに突っ込んでお話をしますけれども、要は、今、日米安保の必要性を強調されました。特に、今までの日米安保というものはうまくいってきたということをおっしゃいました。この間、宮澤元総理からもお話をされましたように、経済的なメリットというものも相当あるんだ、軍事的、外交的なメリットというのは相当あるんだ、それは私も十分承知をしています。  承知をしている上で質問をするんですけれども、しかしながら、実際に日本の中に米軍の基地がある、そして、朝鮮半島で何かの事態が起これば、米軍は当然、それに対しての支援を行う、あるいは日本の基地から直接それに対して戦闘行動なり後方支援を行う活動を行う。そしてまた、それに対して日本は、事前協議でイエスかノーかという選択肢がまず一つあるわけですね。それと、今回の周辺事態確保法案というものが成案を得たならば、米軍に対しての後方支援をやるというわけです。  そのときに必ず、これは逆の立場なら、事前協議で基地使用をイエスと言うのか、あるいは後方地域支援あるいは米軍に対しての協力というものを本当にやるのか、もしやるのであれば、そういう手段を持っているわけですから、例えば北朝鮮日本に対しての攻撃も辞さないといったときに、本当に今の御答弁を全く棒読みできるんですか、本当にその覚悟は日本のリーダーとして総理は持っておられるんですかということを僕は聞いているんです。  答弁書を読まないで、ちょっと御本人のお言葉で答えてください。
  30. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 朝鮮有事ということを仮定して、それにどのように対処するかということについて、具体的な対応方針を私はこの場で申し上げることは困難でございます。したがって、抽象的とおっしゃられるかもしらぬけれども、日米安保を基調にいたしまして今日日本の安全を確保してきたという体制、これをさらに強化し安定度を増すということにおいて、いかなる事態においても対処するという決意を申し述べたところでございます。
  31. 前原誠司

    前原委員 全然納得できないのであります。  フィクションなんですよ。どういうことかというと、今総理のおっしゃったことはフィクションなんですよ。つまり、仮定のもとで話はできないというのは全くフィクションなんです。  つまり、今回のガイドラインの問題も、なぜやろうかという話になったかということは、もちろん昭和五十三年の旧ガイドラインもありました。あれをもう一度やるということになれば、きのう我が党の中で話をしたわけでありますけれども、筋としたら、まず日本有事の防衛協力から話をするべきだろう。では、なぜ三本柱のうち、日本有事の防衛協力じゃなくて周辺事態から初めにやったかというと、それは一九九四年の六月の北朝鮮のいわゆる緊張というものがあった中で、米軍から、日本としてはもしこういう事態になったらどれだけ協力ができるんだということになって、そういう防衛協力関係の話が全然できていなかった、その中でこのガイドラインがもう一度俎上に上がって、そして議論を始めたということなんですよ。  ですから、総理がおっしゃった、そういう仮定のもとでお話はできませんということではなくて、一番国民が知りたい現実の問題として、いわゆる日米関係が今までうまくいっていたというのはわかる、わかるけれども、今後の日米関係を続けていったときに、今の軍事技術の発展によって日本そのものが攻撃対象になる可能性が高い、あるいはこのガイドラインを整備することによって高くなるということを踏まえた上でも、それでも今後も日米安保が必要なんだ、なぜ必要なのかということを総理自身がおっしゃっていただかないと、我々は納得できないということを申し上げているわけです。  だから、そういうことをしっかりと踏まえて、我々が攻撃をされることはある、あるいは、この日米安保条約、軍事同盟というのはもろ刃の剣なんだ、つまりプラスもあればマイナスもある、そういうことを明確にした上でこの法案をぜひ通してくださいということを言われないと、説得力ありませんよ。仮定の話だということをおっしゃったら、全然私は納得できない。もしそういう仮定の話だと突っぱねるんだったら、私、これ以上質問できない。
  32. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 国際情勢というものは時々刻々変化していきます。したがいまして、日本にとっての安全を確保するために、どのような状況であるかということは十分把握をして対処いたしていかなければならぬことは当然であります。  しかし、現在の時点において、いずれの国がいずれのような企図を持っておるかということについて、私はこの立場で申し上げることはできかねるわけでありますが、そもそも、そうしたいかなる状況におきましても、日米が協調してこうした事態を引き起こさない、また、万が一にそうした事態が起きましても、日米安保条約の効果によりまして極めてきちんと対処するという姿勢を明らかにする、こういう意味におきましても、周辺事態というものは、その事態というものはなかなか想定できかねることではありますけれども、このことが日本の安全にとって極めて重要であるという場合には、適切に米軍に対しましても協力をしていくことが、ひいては、結論的に言うと、我が国の安全を確保するゆえんだ、こういうことで、対処することを確実にしようというのが今回のガイドライン法でございますので、ぜひこの点については御理解をいただきたいと思います。
  33. 前原誠司

    前原委員 一言でお答えいただいていいです。軍事同盟というのはもろ刃の剣だとお認めになりますか。——いや、総理に聞いているんです。
  34. 高村正彦

    ○高村国務大臣 もろ刃の剣という意味がどういう意味かわかりませんが、もろ刃の剣というのは、剣の両方に刃があって、左側も右側も同じぐらいよく切れる。相手を傷つける可能性と自分を傷つける可能性が同じぐらいあるというのがもろ刃の剣だとすれば、もろ刃の剣ではありません。  剣でありますから、片刃の剣であっても場合によっては自分を傷つけるかもしれないけれども、そういう可能性がゼロとは言わないけれども、この安保条約の信頼性を高める、そういう効果の方がはるかに大きいと思っていますから、効果が両方同じぐらいであるもろ刃の剣だとはとても思えません。
  35. 前原誠司

    前原委員 僕は切れ味の話をしているんじゃないんです、もろ刃の剣の、両方の剣の。もろ刃の剣というのは両方ともに刃がついていますねという話をしているわけです。  ですから、今高村外務大臣がおっしゃったように、私も日米安保はこれからも必要だと思っています。それは、この間の質問でいろいろな方々からも御答弁をいただきましたし、私も所信を申し上げました。  したがって、日米安保は必要だという一つの刃はあるけれども、それによって、しかも日本にいわゆる基地があることによって、しかも軍事技術が発達したことによって、日本も攻撃対象になるんですよ。それも踏まえた上でなおかつ日米安保が必要なんだという説得力あるお答えをいただかないと、国民は納得できないし、また、このガイドラインの法案についても踏ん切りがつかないということを申し上げているんです。  もろ刃の剣だと認められますか。総理に聞いているんです、総理に。高村外務大臣の話は聞いたんです、今。総理に聞いているんです。
  36. 高村正彦

    ○高村国務大臣 ですから、これは安保条約の論議がされるときにもう何十年にもわたって論議されてきた議論で、日本に基地を置けばこれで戦争に巻き込まれるんだ、こういう議論はもう最初のときからずっとあったわけであります。それに対して、こういうことをすることによって抑止力があって、その方がずっと大きいですよという政治判断のもとに、今の我が国政府はずっと安保条約の有用性を説いてきたわけです。そして、歴史が我が方が正しかったことを証明して、そして国民のほとんどが安保条約を支持してくれるようになった、そういうことです。  まさに今、それと同じような議論がこの周辺事態安全確保法案で、後方地域支援等をめぐって繰り返されている、そういうような感じを私は持っているということでございます。
  37. 前原誠司

    前原委員 総理に伺っているんです。総理お答えください。  昔からあった議論だというのは私もよく承知しています。日米安保条約を、新安保条約を結ぶときの議事録も相当読ませていただきました。それを回避するための一つの手段として、当時の岸総理が一生懸命おっしゃったのは、事前協議の話だった。要は、我々にはイエスも言う権利もあればノーと言う権利もあるんだ、そのことをきっちり留保されていたんです。  それで、そういう議論があったのは私も知っていますし、そして結果的に日米安保条約というものの中で日本が共産化することがなかった、あるいはソ連から攻められることがなかった、それは高村外務大臣のおっしゃるとおりです。歴史が証明されたというのは、今までの時点では証明されている。しかし、これからどうなんだ。  この間お尋ねしたように、日米安保の再定義というのは、いわゆる冷戦前の世界と冷戦後の世界では、日本を取り巻く状況は変わりましたね、変わったし、日米安保そのものの役割も変わりましたねという中で来ているわけです。ですから、冷戦時代の日米安保の役割については、今高村外務大臣がおっしゃったとおり、そのとおりでよくわかる。今後は違いますよ。しかも、近くにそういう、今るる私が質問してきたような国がある中で、そういう危険性がある中で、周辺事態が即日本有事につながる可能性がある。  しかし、再定義で確認したように、これからも日米安保をしっかりと保っていくんだということは、いわゆる同盟関係はもろ刃の剣であるけれども、しかし我々はそれに依拠して、しかもそれを強化してしっかりやっていくんだという決意を総理が示されなきゃいけない。そのためには、もろ刃の剣かどうかということを認められるかどうかという御答弁がなかったら、私は次の質問に行けない。総理お答えいただきたい。
  38. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 もろ刃の剣ということをお聞きしておりますと、具体的には、日米安保があればまたそれに対して危険も存在するであろう、こういうことをおっしゃっているようにお聞きをいたしましたけれども、今の時点におきましては、我が国を守るために、再度申し上げておりますように、きちんとした、我が国自身がみずからを守るということとあわせて、日米安保によっての有効性によりまして、そのことがこの地域の安全のためにも大きな役割を果たしてきた歴史的な大きな存在も考えれば、このことの実効性をさらに強化してまいりますれば必ずその本旨を達せられるものだという強い確信のもとに、今回、さらなる日米同盟を信頼性高いものにするためにこのガイドライン法案を提出いたしておるわけでございます。  かりそめにも、それに挑戦をしようということがあり、その挑戦をもって片方の刃が存在をすると言われれば、これは歴史的に言われれば、そういう点でそうした安全に対して破壊をされるということがあるという意味で考えれば、それはもろ刃のやいば的なものを、相手がその刃を立たせるということは、これは歴史的にあったといえばあるかもしれませんが、具体的な問題として、そのことを今日、委員の御指摘は、朝鮮半島をめぐり、かつその中でかなり有力なミサイルを保持し、そのミサイルが飛来するのではないかということも含めて具体的にお尋ねがありましたので、そのことをもって今私がその具体例に対して、片やもろ刃のやいばの一方がある、こういうことを申し上げるということは、今私の立場では言えないわけでございます。  私どもとしては、いかなる事態に対処しても、それに十分対抗し得るだけの実力と決意を持ち得るということが必要ではないか、こういうことを申し上げておるわけでございます。
  39. 前原誠司

    前原委員 片方の危険があっても、しかし、日米安保という刃を研いでしっかりすることが片方の刃の抑止にもつながる、したがってこの防衛協力は必要なんだ、そういうことでよろしいんですか。もう一度御答弁いただきたい。
  40. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 一般的に、歴史的にこういう自国の民族を守り、自国の国家の国体を守っていくためには、みずからが努力をして、それを達成しようという歴史的な各国の自衛権の行使によって行ってまいりましても、それに挑戦をされたという事態が歴史的にあったという事実を申し上げておるわけでございます。
  41. 前原誠司

    前原委員 新安保条約締結のときに、第六条に基づく交換公文として、岸・ハーター交換公文、いわゆる事前協議の仕組みがあります。三つのポイントを定めて、それについては事前協議をしなくてはならない、こういうことを日米両国間で確認したものが岸・ハーター交換公文である。岸・ハーター交換公文がまとめられたのが一九六〇年の一月の十九日であります。  そこで、大阪大学の法学部に坂元一哉さんという教授がおられます。これはプライベートな話になりますけれども、私のゼミの先輩でございますけれども、この方が、日米安保条約の事前協議制の成立をめぐる疑問という論文を書かれております。そこを引用しながらいろいろと御質問をさせていただきたいと思うわけであります。  今までの政府の御答弁だと、事前協議制というものは、その三つに関してはイエスを言うこともあればノーを言うこともある、こういうことでありました。しかし、さっき申し上げたこの岸・ハーター交換公文、一九六〇年一月十九日以降に出されている、アメリカのNSC、ナショナル・セキュリティー・カウンシル、国家安全保障会議、これのペーパーがあります。六〇〇八の一というもので、これは一九六〇年の六月の十一日に発行されたもの、いわゆる対日政策について書かれたもの、US・ポリシー・トゥワード・ジャパン、NSCで出された文書であります。  この中でどういうことが書かれているのかといえば、いわば朝鮮国連軍に対して出動する米軍についてはいわゆる除外である、そういう規定がなされているということなんですね。ちょっと私もNSCのペーパーを国会図書館から取り寄せてもらいました。これだけのちょっと分厚い文書なんですけれども、私が今から引用するところというのは、こういうふうに点線で塗りつぶされているんですよ。要は非公開。  つまり、アメリカの公式文書というのは、法律によって、年限がたてば公開されるということになっていますけれども、それでも、公開された後も、要は、ある部分というのは、塗りつぶしてあるところがいっぱいある、非公開のところがいっぱいあるわけです。つまり、これは、ある程度の年限がたったけれども、外交文書としては非常に機密性が高いということでこう塗りつぶしてあるわけです。  塗りつぶしてあるところはどう書かれているのかということが極めて興味深いわけでありまして、NSC六〇〇八の一の十五パラグラフ、「[安保]条約の取り決めにおいて合衆国は中距離、長距離ミサイルを含む核兵器の導入にあたっては事前協議を行い、」ここからが問題です。「また在朝鮮の国連軍への攻撃に即応するものを除いて、日本防衛に直接関連しない戦闘作戦行動を[日本の]基地から起こすときには事前協議を行うことを約束している。」こういうふうに書かれているわけですね。これは塗りつぶしてあるところです。  塗りつぶしてあるところで……(発言する者あり)そういう御質問があると思いますけれども、実は、米国国立公文書館というところで塗りつぶしてあるところの公開が一九九六年になされたということで、この方は、坂元教授というのは、それを米国まで行って調べてこられて、塗りつぶしてあるところはどういうことが書かれているかということをこの論文に書かれているわけです。つまり、これを読むと、「事前協議を行うことを約束している。」しかし「在朝鮮の国連軍への攻撃に即応するものを除いて、」と。  こういう例外規定を置いているということは、これは日本政府としてお認めになるんですか、どうなんですか。
  42. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 お答えします。  前原先生御指摘の文書にそのような記述があるという報道等は承知いたしておりますけれども、何分これは米国の政府内部文書であると承知しておりますので、基本的に、政府としてその内容についてコメントする立場にはございません。  ただ、いずれにしましても、日本国から行われます戦闘作戦行動のための基地としての日本国内の施設・区域の使用ということに関しましては、まさしく先生御指摘されましたように、いわゆる岸・ハーター交換公文に基づきまして、事前に我が国政府と協議し、その同意を求めることが米側に義務づけられている、条約上の義務になっておるということでございますので、政府としては、米側がこの義務を履行することに疑いを有しているものでは全くございません。
  43. 前原誠司

    前原委員 今の私の質問に、直接それはお答えになっていないことになります。  つまり、今は日本の従来の政府の考え方を御答弁されただけであって、ひょっとすると日米安保条約というのは非対称性なんじゃないか、そういう意味で。つまり、日本が思っていること、よく核の持ち込みについての疑惑の話もありました、きょうはその点については私は言及をしませんけれども日本で考えていることとアメリカが理解していることが実は違うんじゃないか、そごが生じているんじゃないかということの大きな例の一つじゃないかなというふうに私は思っています。  私個人の意見はと言われれば、こういう合意を日米でやったのだったら、それは堂々と、そういう合意をしたので、これについては例外事項にするという方がまだ私はむしろ正直なんだろうと思います、そう約束をしているのだったら。  総理、この内容についての記述を御存じだったかどうなのか、また、それに対しての御見解をお伺いしたい。
  44. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 この問題については、かつても国会で取り上げられたことはございますけれども、その際にも政府の方から申し上げておりますけれども、あくまでもこれは米側政府の内部の文書であるということでございまして、我が国政府としまして、これに対してコメントするというようなことは差し控えるべきであろうということで一貫しているわけでございます。
  45. 前原誠司

    前原委員 これは大変困ったことであります。  つまり、日本としてはそうだ、しかしアメリカとしては——NSCというのは、大統領に直轄した部署であります。これはよく、NSCのペーパーというのは、私も昔、大学の講義なんかで引用して、勉強した覚えがありますけれども、非常に権威のあるペーパー。それが、岸・ハーター交換公文の後に発表したものが、いわゆる「在朝鮮の国連軍への攻撃に即応するものを除いて、」ということが書いてあるということは、日本認識とアメリカの認識は違う、それで本当に厳格な日米安保の運用ができるのか、こういう問題にもなります。  これは、総理責任あるお立場で、その点を確認して、また政府から誠意ある統一見解なりを出していただかないと、この場で私はなかなかこれをさらに質問するということはできません。それについてお答えをいただきたいと思います。
  46. 高村正彦

    ○高村国務大臣 事前協議に関して密約みたいなものをしたことは一切ございません。日本国から行われる戦闘作戦行動のための基地としての日本国内の施設及び区域の使用に際しては、日米安保条約第六条の実施に関する岸・ハーター交換公文に基づき、事前に我が国政府と協議し、その同意を求めることは米側に義務づけられており、政府としては、米側がこの義務を履行することに何ら疑いを有しておりません。これらの点につきましては、政府が累次答弁しているとおりでございます。  また、米側も、従来より、日米安保条約のもとでの事前協議に係る事項については、日本政府の意思に反して行動する意図のないことを確認してきているわけでございます。
  47. 前原誠司

    前原委員 しかし、実際、文書でこうして存在しているわけですね。私は、国益という観点からこの問題を議論するときには、相当慎重にやらなきゃいけないなというふうに思っています。  この問題について、新たに確認をアメリカとの間でされるのかどうなのか、あるいは、アメリカの意思というものをしっかり確認された上で政府として統一見解を出していただくか、そうでないと私は納得できません。
  48. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 先ほど外務大臣から答弁もございましたけれども、日米間の国際約束といたしまして、事前協議の対象となるということは、岸・ハーター交換公文において極めて明確なわけでございます。したがいまして、我々といたしましては、これを特段改めて確認するという必要はないというのが従来から申し上げているところでございます。
  49. 前原誠司

    前原委員 これは、岸・ハーター交換公文の後に出されているアメリカのNSCのペーパーなんですよ。それに、「在朝鮮の国連軍への攻撃に即応するものを除いて、」ということがしっかり書かれているわけです。それなのに、岸・ハーター交換公文でしっかり確認されたことだから新たに確認する必要がないと言われても、私は納得できない。
  50. 山崎拓

    山崎委員長 前原誠司君に申し上げます。  委員長としまして、今の質疑を聞いておりましたのですが、政府答弁はまことに適切な答弁であるというふうに感じます。  しかし、前原誠司君の御提案について、審議を進める上において、きょう昼、理事会をやりますので、またその際に取り扱いについて協議をいたしたいと思います。  どうぞ先に進めていただきたいと思います。
  51. 前原誠司

    前原委員 委員長、適切であるという御見解をおっしゃいましたが、本当にそう思われますか。
  52. 山崎拓

    山崎委員長 私と論議するわけにいきませんが、私はそのように感じましたので発言をいたしました。
  53. 前原誠司

    前原委員 私は、この問題というのは、詰めていけばパンドラの箱をあける話になる可能性もある話だと思いますし、先ほど国益の観点から照らし合わせたということを申し上げました。しかし、いずれ、アメリカというのはこういう外交文書でも順次公開していくんですね。ということは、さらに明らかになるペーパーがどんどん出ていったときに、日本政府答弁していったことがどんどん覆されていく可能性があったときに、このガイドラインの議論もしかりでありますけれども、日米安保に対する信頼性というものを考えたときに、私はその方が非常に懸念を感じます。  もう一度、私はお願いを申し上げますけれども、もう一度日米の間でそれについて確認をしていただくのか、あるいは、確認をした上で政府として統一見解を出していただくのか、そのどちらかじゃないと私は納得できません。
  54. 高村正彦

    ○高村国務大臣 政府の中で立場がいろいろ変わっていたときに政府の統一見解を出さないといかぬということはあるかもしれませんが、日本政府を代表して、私が申し上げていることにだれも異議を唱えているわけでありませんし、私が言っていることが日本政府の見解でございます。  秘密の交換公文みたいなものがあったら、私も腰抜かしてこれを調べなきゃならないかもしれませんけれども、米国の内部文書でどうあるかというようなことを、ちょっと私わかりませんが、このところずっと2プラス2とかいろいろなところで日米の話し合いというのはあるわけで、こんなものがあるねなんということを米側から言われたこともありませんし、表に出ていることでこのとおりですねということはいつも確認し合っていることでありますから、そんなに御心配されることはない、こういうことを私は申し上げているわけでございます。
  55. 前原誠司

    前原委員 私は、このNSCの文書だけじゃなくて、沖縄の返還のときに、当時の佐藤総理がナショナル・プレス・クラブで講演をされた内容についても、後で国会で否定をされていますけれども、やはりこれについては国民全般として疑義を持たざるを得ない部分があると思うのですね。  佐藤総理が、昭和四十四年十一月二十一日、演説をされているときに、沖縄返還の前でありますけれども、   特に韓国に対する武力攻撃が発生するようなことがあれば、これは、わが国の安全に重大な影響を及ぼすものであります。従つて、万一韓国に対し武力攻撃が発生し、これに対処するため米軍日本国内の施設、区域を戦闘作戦行動の発進基地として使用しなければならないような事態が生じた場合には、日本政府としては、このような認識に立つて、事前協議に対し前向きに、かつすみやかに態度を決定する方針であります。 こういうことを述べておられるわけであります。  NSCの文書しかり、そしてまた佐藤総理の演説しかり。それを考えるときに、この事前協議に対しての信頼性というものが極めて私自身は持てないわけであります。  先ほど委員長理事会でお取り上げをいただくということでありまして、一たんこの場はこれで引き下がりますが、納得を全くしていないので、これについてはしっかり、私も理事でございますので理事会の場で引き続き御議論し、またこの委員会で再度明確に政府対応を求めていきたいというふうに思います。  それでは次に、集団的自衛権の問題について御質問をさせていただきたいと思います。  まず、これは我が党の横路議員もこの間質問されたことでございますけれども、改めて、いろいろちょっと技術的なことについて、いろいろな記事等に載っていることが事実かどうかということを確認する意味でもお話をさせていただきたいと思います。  まず、海上自衛隊が行う対潜水艦戦の問題でありますけれども、この海自が行う対潜水艦戦の情報が寄せられるのがASWOCという対潜水艦戦作戦センターでありますけれども、ここには、アメリカの第七艦隊、旗艦がブルーリッジでありますけれども、間でリンク16と呼ばれる戦術データ通信網があるのではないかというふうなことが言われております。名前はどうでもいいです。リンク16かどうかは別にして、こういう海自の行うASWと第七艦隊の間で戦術データ通信網があるというのは事実なのかどうなのか、その点についてまず御答弁をいただきたいと思います。
  56. 柳澤協二

    ○柳澤政府委員 海上自衛隊はいろいろな形で、各種情報をデータ通信で伝達、交換するシステムを持っております。  先生もおっしゃいましたが、その具体的な名称のものがどこに置かれているということは、ちょっとこれは御勘弁いただきたいと思うのですが、ただ、先生の言われるデータ通信網があるのかどうかという意味が、例えば米海軍とASWOCなりで全く共通の端末を持ち、それが常時開かれている状態でつながっているかという御趣旨でありますれば、やはりそれは、仮に共通の機材を持っておりましても、海上自衛隊海上自衛隊、米海軍は米海軍のルールといいましょうか規約で動いておりますので、平常時からずっとつながっているということは事実としてございません。
  57. 前原誠司

    前原委員 それはそうだと思うのですね。  ただ、そういうデータ通信網があると。訓練のときには、リムパックのときにはつないでいるんでしょう。その点、イエスかノーか、遠いところで申しわけありませんが、ちょっと。
  58. 柳澤協二

    ○柳澤政府委員 おっしゃるように、極めて限定的な期間の限定的な目的のために規約を決めて連接することはございます。
  59. 前原誠司

    前原委員 海上自衛隊が行う対潜水艦戦ということでありますけれども、これは、訓練も含めて、訓練というのはもちろん実戦を想定してやっておられると思うのでありますけれども、アメリカと地域とか任務を分担して行っているのですか。その点についてお伺いしたいと思います。
  60. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 防衛出動時、海上自衛隊が対潜水艦戦を行う場合に、同盟国であります米国と密接な連携をとりつつ行動するということは当然のことであります。  しかし、こういう場合であっても、日米間で公海上の海域を分担し、自衛隊の担当海域内で我が国の船舶のみならず例えば同盟国のすべての艦隊をも防衛するような、いわゆる海域分担と言っておりますが、こういうことをやると集団的自衛権の行使に当たり、憲法上許されないことだと考えておりまして、さようなことはやっておりません。  なお、海上自衛隊では、常日ごろから我が国周辺海域において艦艇や航空機により常続的に警戒監視活動を行っておりますが、かかる活動において、米国と地域、任務分担を行っているということはございません。
  61. 前原誠司

    前原委員 第七艦隊と海上自衛隊というのはかなり密接な関係にある。ある方に言わせると、海上自衛隊の装備そのものが第七艦隊の任務の一つをある程度受け持つ形で、受け持つという言い方をすれば語弊があるかもしれませんが、第七艦隊の弱い部分というものを海上自衛隊がある意味で補完をする中で、一体となって任務を果たす、こういう形になっているということでありますし、私は、それ自体、異議を挟むものではありません。  しかしながら、事周辺事態と認定をされたときには、その状況というものはかなり異なってくるんではないかというふうに私は思うわけです。  具体的な話をしますと、例えば横須賀から第七艦隊が出ていって、そしてある海域、周辺事態と認定された海域の近くに行く。それについて、今までは、例えばリムパックあるいは日ごろ警戒監視活動なんかでは、日本のP3Cが飛ぶ、そしてまた、潜水艦が潜る、そして敵の潜水艦がどこにあるのかどうなのかということを、訓練あるいは日ごろ警戒監視活動なんかでも一緒にやっているわけです。  そのときに、周辺事態と認定をされた段階で、さっき常にオープンにされているわけではないと運用局長はおっしゃいましたけれども、しかし訓練を何のためにやるのかといえば、そういう事態を想定して第七艦隊と海上自衛隊のASWの役割分担というものが決められているという観点からすると、逆に周辺事態、アメリカにとってはそれを有事という認定をするのかもしれませんが、そういう事態になって、海上自衛隊がその活動にある意味で協力をしないということは実態論からしてあり得ないんだろうというふうに私は思います。  そこで問題になるのは、常に集団的自衛権の問題、この点がもやもやしているのがこの法案の一番のネック、取っかかりだと私は思っております。つまり、周辺事態と認定をされた、そして第七艦隊が出ている、そのときに、海上の、洋上の哨戒活動だったらP3Cや潜水艦、あるいは上空でしたらE2CやAWACS、これが出ていったときに、どういう情報なら集団的自衛権に当たらない、どういう情報なら当たるのかという明確な政府の見解というものをお示しいただかないと、なかなかこの議論ができないなというふうに思うので、その仕分けをぜひしていただきたいというふうに思います。
  62. 柳澤協二

    ○柳澤政府委員 今の先生の御指摘にずばりのお答えになるかどうかあれでございますが、周辺事態における日米の運用面の協力というのは、海上自衛隊はあくまでも我が国防衛という観点で我が国周辺の警戒監視等は行いますし、情報収集を行います。  ただ、一つ理解いただきたいと思いますのは、まさに先生言われたように、日本有事のケースとやはり周辺事態のケースというのは、日米の協力のあり方というのは、オペレーション上大分違うと思っております。  というのは、リムパック等で行っておりますのは、あくまでも日本有事の際の、日米の部隊が共同して共通の脅威に対処するというか、そういうための演練はやっておるんですけれども、一方で、周辺事態ということになりますと、日本自衛隊が行いますのは日本周辺の警戒監視でありますとか、あるいはこの法案にあります後方地域支援、そういったことでありますので、全く同じような形の連携要領ということにはならないだろうというふうに思っております。
  63. 前原誠司

    前原委員 ですから、質問は、どういう情報ならオーケーで、集団的自衛権に当たるというのはどういう情報か。私も今まで法制局長官やあるいは秋山さんが防衛局長のときからの答弁をいろいろ読ませていただいておりますが、つまり情報についての政府の統一した仕分けというものが必要じゃないですか。それについて明確に示してくださいということを質問しているわけです。
  64. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 情報交換でございますけれども、要するに、自衛隊がその任務を遂行するために行う情報収集活動により得られた情報を、一般的な情報交換の一環として米軍提供することは憲法上問題はない。  ただ、具体的にどういう情報を交換するかというのは、まさにその時点において国益を踏まえて判断をするということだと思います。
  65. 前原誠司

    前原委員 今の御答弁だと今までの答弁よりもまだ不親切なぐらいでありまして、明確に全然ならないわけであります。  つまり、例えば、P3Cや日本の海自の潜水艦などが敵の潜水艦を探し当てて、その情報米軍に伝える、そして米軍がそれを攻撃対象にすることは、まず、いいのか、だめなのか、具体的にいきましょう。
  66. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 まさに自衛隊がその任務遂行のために情報収集し、それを一般的な情報交換ということで提供をする。今の例であっても、一般的な情報交換として提供するということは、それは憲法上問題はないと思います。  ただ、そのときに、そういうことを情報として交換するかどうかというのは、そのときに国益を踏まえて判断をする、こういうことになろうかと思います。
  67. 前原誠司

    前原委員 これは委員長要望させていただきたいと思いますが、具体的に、やはりどういう情報が集団的自衛権に当たるのか当たらないのか、日本として与えられる範囲、あるいは与えられない内容、こういったものをある程度類型化をして、そしてこの委員会に示していただくということが私は必要だと思いますので、その要求を委員長にさせていただきたいと思います。
  68. 山崎拓

    山崎委員長 その要求を政府に行うかどうかにつきまして、理事会で協議いたします。
  69. 前原誠司

    前原委員 時間が参りまして、またこの委員会があると思いますので、私自身さらにまた御質問をさせていただきたいと思いますけれども、きょう私が一番指摘をしておきたかったのは、私も日米安保はこれからも必要だと思っておりますけれども、日米安保というものを強化するということはマイナスの面もある。つまり、総理はお立場から特定の国について差し控えるということをおっしゃいましたけれども、ある国からやはり攻撃を逆に受けやすくする、これは昔からあった議論でありますし、これからも私はある議論だと思います。  そういう意味で、同盟関係というのはもろ刃の剣である。つまり、我々自身、この防衛協力を進めること自身が新たな危機を及ぼす可能性もあるけれども、しかしそれ以上に、もし日米安保がなければ、そういうものに対する抑止にもならないし、また実際そういうことが起きたときの対処というものは、今の日本自衛隊のみでは全くできない。だから、日米安保というものをしっかりやっていく中で我々はこのガイドラインをやるんだ、そういう決意を私は総理にお示しをしていただきたかったわけです。  その点については、私の気持ちは酌んでいただいたと思いますけれども、ぜひそういう部分を隠さずに、恐れずにおっしゃらないと、なかなか私この議論というものは成熟をしていかないというふうに思いますので、そういう部分も含めてしっかり御答弁をされますことを要望しまして、本日の私の質問を終わります。
  70. 山崎拓

    山崎委員長 これにて前原君の質疑は終了いたしました。  次に、安倍晋三君。
  71. 安倍晋三

    ○安倍(晋)委員 今般のガイドライン関連法案の審議は、三十九年前に日米安全保障条約が改定されて以来の本格的な安全保障の論議ではないか、こういうふうに思うわけであります。もっとも、PKO法案の論議はあったわけでありますが、まさに我が国の安全に直接かかわるかもしれないという議論においては三十九年ぶりの議論だろう、こういうふうに思うわけであります。  国会をめぐる情勢、国会の周りの状況は、三十九年前は、まさに十重二十重にデモ隊が取り囲んで、当時の内閣は内閣を総辞職するということをもってしかこの条約を通すことはできなかったという情勢であったわけでありますが、現在国会の周りは極めて静かであります。国民も本当にこの法案の審議を冷静に受けとめているというのが現実ではないか。ですから、この三十九年の間に国民の意識は大きく変わってきたんだろう、こういうふうに思うわけであります。  しかし、この委員会での審議を聞いておりますと、この四十年近い安全保障論議をやはりそのまま引きずっている部分が随分あるな、このように率直に感じたわけであります。本来安全保障の議論というのは、いかに有効に我が国国民の生命と財産を守ることができるかということを議論するべきであります。国民の税金から出費をしている自衛隊が機能的に活動するためにはどうしたらいいか、果たしてその税金がちゃんと使われているのかどうかということを私は議論するべきであろう、こういうふうに思うわけであります。  しかし、残念ながらこの四十年間の議論というのは、我が国を守るべき安全保障についてその手足をどうやって縛ろうかという議論に終始をしていたのではないか、このように思うわけであります。政策論争ではなくて、憲法論あるいは法律論にのみ集中をしてきたという、私は、残念ながらこの四十年間の歴史はそうであった、このように思うわけであります。しかし、今この論議が始まって国民の意識が大分変わってきた中にあって、やはりこの委員会の論議はまさに建設的なものにしていかなければいけないんだろう、こんなように思うわけであります。  先般も、このガイドライン法案について、自治体への協力を行うことについて、まるで国民が大変な被害をこうむるのではないかという角度からの質問があったわけであります。しかし、そのときに私が感じましたことは、周辺事態というのは、我が国の安全自体が脅かされる状況であります。  例えば、朝鮮半島で有事が起こった際に、朝鮮半島にいる邦人を救出するために頑張って、しかし傷ついてしまった米兵を収容するための病院を日本の国内に探してくれ、そういう話であります。また、邦人を輸送するための米軍の飛行機が、日本米軍の基地では足りなくなって民間の飛行場を使わなければいけない、そういうときの協力であるわけであります。  そういう状況であるにもかかわらず、日本の安全に大きな影響があるかもしれないにもかかわらず、今までと同じような通常の生活をして、ビジネスをして、海外旅行もしよう、自分の既得権には指一本触れさせないぞという、もしそういう精神構造がこの戦後の五十四年間につくられてきてしまったとすれば私は大変残念なことであると思いますし、私はむしろ本当に恥ずかしい、このように思うわけであります。そのことをまず申し上げまして質疑に入りたい、こういうふうに思うわけであります。  このガイドライン法案に関連しまして、中国が大変厳しい反応を示しているわけであります。よく新聞等でアジアの諸国という話が出ているわけでありますが、私は、中国のみであろう、北朝鮮は論外でありますが、中国のみではないか、こんなように思うわけであります。まず、中国の対応について総理がどういう御感想を持っておられるか、お伺いをしたいと思います。
  72. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 周辺事態安全確保法につきまして、これまで累次の機会を通じまして各国首脳レベル等にお話をいたしてまいりましたが、中国に対しましても、首脳レベル、大臣レベル及び事務当局から、中国に対し、繰り返し本意を説明してきておるところでございます。  昨年の秋の江沢民国家主席の訪日の際にも、江沢民主席から、指針が特定の国に向けられたものでないとの日本政府の指導者のこれまでの説明を守ってほしい旨の御発言がございました。これに対し、私から次の趣旨を十分説明いたしました。  日米安保体制は全く防御的なものであり、特定の国の脅威、国を想定したものではない。指針に言う周辺事態は、その生起する地域をあらかじめ地理的に特定できず、そのような意味で地理的な概念ではないのであって、事態の性質に着目した概念である。台湾に関する我が国の基本的な立場は日中共同声明で表明したとおりであり、日中国交正常化も日中平和友好条約の締結も日米安保条約にかかわりなく達成されており、この立場に変わりのないこと。  このような説明によりまして中国側の一定の理解は得たと考えておりますが、今後とも我が国として、必要に応じてこのような考え方につき十分説明していく考えでございます。
  73. 安倍晋三

    ○安倍(晋)委員 周辺事態については、地域を特定しない、そういうあいまいさは当然戦略的なあいまいさであって、これは当然であろう、こういうふうに私は思うわけであります。そのあいまいさというのは、特定することによって外交関係が極めて険悪になることを避ける、しかし、これは入るかもしれないということによって十分に抑止力的な効果を示すんだろう、こういうふうに思います。ですから私は、このあいまいさというのは、どちらかというと入る可能性の方が多いんじゃないかという雰囲気があることによって初めて成立する議論であろう、こんなように思うわけであります。  新聞によりますと、山崎委員長が訪中をされたときに、遅浩田国防相が、台湾を含めないとどうして言えないのか、そうすればこの問題はすぐ解決する、こういうふうにおっしゃったらしいわけでありますが、私から言わせれば、中国が台湾に対する武力侵攻というのをあきらめればすべては解決する、なぜそれが言えないのかということを私はむしろ申し上げたい、こんなように思うわけであります。  昨年、江沢民主席が来日をされた際に、いろいろな要求があったということであります。そのときに中国側から日本にもいわゆるスリーノーズを共同文書の中に盛り込めという強い要請があった。いわゆるスリーノーズというのは、台湾の独立に対してノー、二つの中国にノー、そして国際組織への台湾の加盟に対してノーということであります。私はむしろ、この地域の安全保障のためには、台湾にしっかりと国際組織に入ってもらう、そして中台の話し合う場が、バイだけではなくてマルチの中でも確保されるということが大切なのではないかなと思うわけであります。  このスリーノーズに対してノーとおっしゃった総理の勇気に私は大変敬服をいたしておるわけでありますが、その経緯を御紹介いただければと思うわけであります。
  74. 高村正彦

    ○高村国務大臣 昨年十一月の江沢民中国国家主席の訪日に際しましては、日中両国間で一致して、平和と発展のための友好協力パートナーシップをうたった日中共同宣言を発出したことは、御存じのとおりでございます。  本宣言の作成の過程におきましては、双方でいろいろの協議を行ってまいりましたが、中国側から、台湾をめぐる問題に関していわゆる三つのノーを宣言に盛り込むべきであるといった要望はそもそもありませんでした。
  75. 安倍晋三

    ○安倍(晋)委員 何となくそういう答弁になるなということは予感があったわけでありますが、場合によっては、外務大臣をやめられた後にでも論文を書いていただければと、このように思うわけであります。  また、このガイドライン法案に関しては、中国の反応ばかり紙面に躍っているわけでありますが、ほかのアジアの諸国の反応はどうであるかということを教えていただきたいと思います。
  76. 高村正彦

    ○高村国務大臣 例えば韓国につきましては、本年一月に、野呂田防衛庁長官から千容宅国防部長官に対して、指針関連法案等の整備状況について説明をされたわけでありますが、今後とも相互に防衛政策の透明性の確保に努めてまいりたい旨野呂田長官が発言されて、千容宅国防部長官からは、日本の立場を理解し、防衛政策の透明性を相互に確保することに同意する旨言及があったと承知しております。  また、シンガポールを初めとするASEAN諸国及び豪州からも、一般的に肯定的な評価を得ているものと承知をしております。  政府としては、今後とも、本件に関心を有する諸国に対し、必要に応じ説明を行っていく考えでございます。
  77. 安倍晋三

    ○安倍(晋)委員 それでは、次の質問に移りたいと思います。  先般、三月二十九日の産経新聞に北朝鮮工作船問題についての記事がございました。この記事によりますと、二隻の工作船は実は陽動作戦であって、そのすきに太平洋側から工作員が数十人日本に侵入をしたのではないか、これは破壊活動目的の特殊部隊であろう、こういう記事が出ていたわけでありますが、この事案について、公安調査庁の現在までに至る状況把握度について知らせていただきたいと思います。
  78. 木藤繁夫

    ○木藤政府委員 御指摘報道につきましては、現在までのところ、それが事実であるか否かを判断し得る情報には接しておりません。しかし、公安調査庁は日ごろから北朝鮮工作船につきまして重大な関心を持って調査しておるところでありまして、今回の事案に関しましても、工作船目的など諸般の事情を解明すべく、全国に指示を発して調査を行っておるところでございます。
  79. 安倍晋三

    ○安倍(晋)委員 また、そういう工作員を受け入れる場合には、当然国内にもそれを受け入れる側、組織がなければなかなかうまく機能しないわけでありますが、この記事の中にも支援組織が受け入れ準備を進めていたということが書いてあります。  この支援組織の中には朝鮮総連も当然入ってくるんだろうと思いますが、いま一度確認をしておきたいと思うわけでありますが、朝鮮総連に対しては、公安としては、いわゆる調査の監視対象にしているかどうかということをお伺いしたいと思います。
  80. 木藤繁夫

    ○木藤政府委員 朝鮮総連はかつて暴力主義的破壊活動を行った団体を前身とする団体でございまして、今後の治安情勢いかんによりましては、将来暴力主義的破壊活動を行う危険性のあることを否定し得ないことから、従来調査を行ってきたところでございまして、現在もその動向について鋭意調査を行っておるところでございます。
  81. 安倍晋三

    ○安倍(晋)委員 今の御答弁を踏まえて、次の質問に移りたいと思うわけであります。  先般、同僚の米田建三議員からも質問が出たことでありますが、後方地域支援の武器使用の規定でありますが、このガイドライン法案第十一条の中で武器の使用について定めてありますが、後方地域支援については武器の使用の基準が定めていないということになるわけであります。  そうなりますと、これは九十五条の武器等の防護でいくか、あるいは正当防衛または緊急避難でいくかしか武器が使えないということにもなってくるわけでありますが、昨日の質疑の中で、長官が、もしそういうときにはその区域を変えるという趣旨の御答弁をされたわけでありますが、私が申し上げたいのは、国内での輸送等々の作業においてそういう破壊活動が行われる可能性もあるんだろう、こういうふうに思うわけであります。ですから、この地域については、地域を変えるというわけにはいかないということであります。  そのときに、武器の使用の規定がないまま、先ほど言ったような三条件でしか武器が使えないということで果たして対応できるのかどうかということであります。特に、兵員等の輸送であれば、その輸送をしているトラック等は防護するという理屈をつけることができるかもしれませんが、しかし、私は、それだけでは弱いのではないか、この点について長官の御答弁をいただきたいと思います。
  82. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 委員承知のとおり、周辺事態に際しても、国内においては警察機関により治安が維持されていると考えられますから、御指摘のようなことは基本的に想定されないところであります。  しかし、万が一、御指摘のように不測の事態が生じた場合には、国内で活動中の自衛隊の部隊等の長は、危険を回避することに努めますけれども、危険を回避する努力を払っても回避し得ないような差し迫った状況のもとでは、自衛隊法九十五条の要件を満たす場合に、最後の手段として、自衛隊の車両等を防護するために武器を使用することは肯定されるものであります。  また、不測の事態が起きて、警察機関で対処することが不可能である、あるいは著しく困難と認められる場合には、治安出動や防衛出動によりまして毅然として対処する、こういうことになると思います。
  83. 安倍晋三

    ○安倍(晋)委員 私としては、これはせっかく捜索救援活動あるいはまた船舶検査においてはしっかりと武器の使用の規定があるわけでありますから、この後方地域支援についても、これは宿題として将来ぜひとも考えていただきたい、こういうふうに思うわけであります。  また、北朝鮮でありますが、対話と抑止政策というのは当然堅持をしていかなければいけないことであります。しかしながら、この対話、なぜ対話をしないんだという、野党側の御質問にありました。しかし、もちろん、対話というのがなかなかそう簡単なことではないというのは政府側の答弁にもあるとおりであります。  私の個人的な考え方といたしましては、個人レベルあるいは民間レベルでのパイプというのはどんどん太くしていくということも、ある意味では大切であろう。そのパイプはつくっておく、そして、お互いに情報交換、あるいは言いたいことはちゃんと言っていくということが私は必要であろうと思います。  ただ、私は、政府の公式的な窓口については、これは場合によっては毅然とした態度を堅持しなければならないんだろう、こういうふうに思うわけであります。こちらの主張をしないで対話をしようということであれば、これは極めて簡単なことであります。我が国には、いわゆる拉致事件、七件、十人の人たちが、十三歳の少女である横田めぐみさんを初め十人の人たちが拉致をされてしまった。これは、疑惑ではなくて、警察庁が断定をしているわけであります。ですから、そういう意味においてもしっかりとした対応をとってもらいたいな、こういうふうに思うわけであります。  先ほどの朝鮮総連との関係にもなるわけでありますが、この拉致問題について、例えば辛光洙事件というのがかつて大阪で発生したわけであります。原敕晁さんというコックをさらってしまって、そして辛光洙というスパイが入ってきて、それと入れかわってこの原敕晁氏は北朝鮮拉致をされた。そして、辛光洙が原敕晁のパスポートを取って、韓国に行って破壊活動に従事をしていて逮捕されてしまった。逮捕された後、裁判で有罪で今服役をしているわけでありますが、その裁判の記録の中にも、兵庫県の総連系の商工団体の理事長が店長をしていた店にこの原敕晁氏が勤めている、この理事長と会長がぐるになってこの人をさらって、そして辛光洙を入れたということが裁判記録の中にあるわけであります。さすがに理事長も会長も役職はやめられましたが、今は堂々と中華料理店もやっているし、残念ながら我が国の司法は指一本触れることができていない、裁判記録にあるにもかかわらずですね。そういう現状もあるということであります。  ですから、国内での後方地域支援活動にも、そういう問題もあって常に危険も伴ってくるということを考えておかなければいけないんだろうと思います。  ついででございますが、この辛光洙事件につきましては、皮肉なことでございますが、盧泰愚大統領が来日をされたときに有志の議員韓国人政治犯の釈放に関する要望というのを出したわけでありまして、二十九人の政治犯、この人たちはイノセントであるから返してもらいたいという要求を出されたんですね。この二十九人の中に何と辛光洙が入っているんですね。我が国の原敕晁さんを誘拐した、入れかわった辛光洙自体が、その段階ではまだ裁判は始まっていませんでした、捕まった段階だったんですが、それも入っていたということであります。この釈放しろと言った有志の議員の中には、土井たか子さんとか菅直人さんも署名をされているというわけでありますが、こういう状況の中に我が国があるんだということも理解をしておいた方がいい、私はこういうふうに思うわけであります。  続きまして、今後の法整備等々について申し上げたいと思うわけであります。  この北朝鮮工作船の侵入に当たりまして、私は、総理もそして防衛庁長官も極めてスピーディーな、そして果断な決断をされたんだろう、こういうふうに思うわけでありますが、しかし、結果としては二隻とも逃げてしまったという結果が残ったわけであります。このことについて安保委員会で私が質問したわけであります。  その質問というのは、現在の法制ではベストを尽くし、そしてまた、かなりの装備が十分に整っているにもかかわらず逃げられたということは、法整備等にも限界があるんではないかということを申し上げたわけでありますが、大臣の御答弁が、現行法の枠の中では、どのように領海を侵犯されても、相手がこちらの停止等に耳をかさない限り、本日行われた状態が限界の現実の姿ではないかと思う、このような御答弁があるわけであります。  でありますから、私は、幾ら自衛隊に頑張れ、海保に頑張れと言っても限界がある、そしてまた、幾ら予算をつぎ込んでもやはり限界がある。これは私は、領域警備の任務をしっかりと自衛隊に与える、そしてまた、武器使用についてもある程度の枠を設けるということが必要ではないか、このように思うわけでありますが、総理の御見解をいただきたいと思います。
  84. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 今般の事犯につきましては、海上保安庁並びに自衛隊と相協力して、我が国の領海を侵した二つの工作船について、その真実をただすべく努力をいたしましたが、現行法の中での措置として対応いたしましたが、結果的にこれが所期の目的を達せずして逃走を許したということは、まことに残念であります。よって、我々としては、こうした事犯が二度と起こらないために確固たる対応をしていかなければなりませんが、そういった観点から今回のことを十分レビューして、問題の所在がどこにあったかということを十分確かめながら対応しなきゃならぬかと思っております。  現行法の中に問題がありや否やということで安倍委員から御指摘がございましたが、どのような点に問題があるかということにつきましては、運輸省、そしてまた防衛庁とも十分相談をしながら、どういう対応をとることが最も結果的によい方向性を打ち出せるかということについては、そのレビューを十分認識をして対処いたしていくべきだと思いますが、かりそめにも領海、領空侵犯をされたその意図、目的が那辺にあったかということも、これは拿捕し、あるいはまた、その船あるいは飛行機の目的というものをはっきりさせない限りにおいてはこの内容を十分確たるものとできかねることでございますので、そういった点を改めてよく政府全体として考慮いたして、何をなすべきかということについては、慎重ではありますけれども国民的な今回の事案に対しての世論というものを十分受けとめながら対応させていただきたい、こう考えております。
  85. 安倍晋三

    ○安倍(晋)委員 今、検討するべきである、そういう雰囲気の御答弁をいただいたわけであります。かつてはそういう話をされるだけで大変な問題になったわけでありますが、そういう冷静な議論ができるということは、この数年で大きく進歩したというあかしにもなるのではないか、こんなように思うわけであります。今回の事案を、これからも反省をしていかなければいけない点も多々あるわけでありますから、検討していかなければいけない。  ということで、翻ってこの法案を見渡してみますと、その中で船舶検査があるわけでありますが、この船舶検査においては、「信号弾及び照明弾の使用その他の適当な手段(実弾の使用を除く。)」ということが書いてありますから、いわゆる警告射撃は行えないということになるわけであります。  ですから、私が心配をいたしますのは、これは警告射撃も行わないで、果たして船舶がとまるのかなということであります。私はこの疑問をかつて役所側に投げかけたわけでありますが、そのときの役所側の私に対する対応というのは、それは安倍さん、大丈夫ですよと。これは自衛艦がやるんですよ、自衛艦が行けばこれはとまりますよということを言われたわけであります。今回は、自衛艦が行って五インチ砲をばんばかばんばか撃っても、全くとまらなかったということであります。前の委員会で西村眞悟議員が、当たらない威嚇射撃は花火だというふうに言ったわけでありますが、私は、信号弾と照明弾では線香花火にしかならないのではないかという危惧を持っておるわけでありますが、実効性が確保できるのでありましょうか。
  86. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 委員承知のとおり、この法案における船舶検査活動は、国連安保理の決議に基づき、商業目的で運航される船舶を対象として、経済制裁が十分に機能しているかどうか、基本的に公海上確認することにしているわけであります。その実効性を確保するために、その状況に応じ必要と考えられる一定の措置をとるものでありますが、これは、今般の我が国の領海から逃亡を図った不審船に対して、治安維持の観点から対応措置をとるといった事態とはおのずからその性格を異にするものである、私はこういうふうに考えます。  このような前提の上で、この法案に基づく船舶検査活動の実効性について申し上げますと、我が国としては、仮に検査対象船舶の船長等が停止の命令に応じない場合には、七条三項に規定されているとおり、この求めに応ずるように説得を行う、あるいは説得に必要な限度において接近や追尾や伴走や進路前方における待機といった措置をとる。  我が国としては、これまでいろいろな事案が諸外国にありました。そういう活動実績をかんがみますと、周辺事態安全確保法案に規定されている範囲内で実質的に有効に機能する船舶検査活動を行い得ると実は考えております。それは、警告射撃の実例もほとんどないと言って等しいし、ほとんど説得に従って停船をしているという実績から、私どもは何とかこれでいきたいと思いますので、御理解いただきたいと思います。
  87. 安倍晋三

    ○安倍(晋)委員 もちろん、基本的には、対象がこういういわゆる工作船ではなくて、割とイノセントな船が、積み荷がそういうものであるとは知らずに持っていく、一応その荷物を調べるという趣旨なんでしょうけれども、その中には本当に取り締まらなければいけないものも入ってくるのが当然でありますから、それはやむを得ないのかなという、そんな感じもあったわけであります。しかし、その点もやはり宿題事項として考えておいていただきたい。  確かに、ほとんど警告射撃を実際に行ったことがなかったのも事実でありますが、それにもし応じなければこれは大変なことになる、軍艦が出ていくわけでありますから、とまる、抑止力があったんだろうと思います。そしてまた、少数でありましたけれども、警告射撃を行わなければいけない事案もあったわけであります。そして、例えば北朝鮮は、そういうことを行う世界の中でも極めて少数の国でありまして、それを対象にしているんだということを忘れてはならないんだろう、私はこういうふうに思うわけであります。  また、次の質問に移りたいと思うわけでありますが、後方地域支援の輸送業務であります。  公海上で輸送、兵員とか弾薬武器の輸送も後方地域支援、公海上で行うということになるわけでありまして、そしてまた、これは基本計画の後細かい地域を画定する場合に何度何分というところまで決定をするということでありますが、これは後方地域なので基本的には大きな危険はないんだということであろうと思います。それは確かに今までの答弁のとおりであろう、こういうふうに思うわけでありますが、それであっても、自衛隊が行く意味というのは、やはり危険があるかもしれないから行くのであるということだと私は思います。  ですから、そういう意味では、余りにも、絶対大丈夫だ、危険も何にもないよ、かすり傷も負わないよというような御答弁では私は、かえってこれは誤解を招くのではないか、こういうふうに思うわけであります。  例えば、後方地域支援となるような公海に、例えば北朝鮮でそういう問題が起こったときに、そこで支援をする日本の船は全部沈めるということをピョンヤン放送でやって、労働新聞で書かれたら、それだけでもうやめるんでしょうか。そのことをお伺いしたいと思います。
  88. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 今御指摘の問題に関する判断は、個々具体的な事態に応じて行われなければいけないと思います。  したがって、一般論として申し上げることは大変困難でありますけれども、あえて申し上げるとすれば、仮に御指摘のような宣言が行われたとしても、当該実施区域が後方地域としての要件を満たしていると合理的に判断される場合には、自衛隊が当該地域において後方支援を実施することは可能であると私どもは考えております。
  89. 安倍晋三

    ○安倍(晋)委員 今の御答弁を聞いて、ある程度は私も一安心をしたところであります。ですから、当然その地域に対してはおどかしが行われるかもしれないということは覚悟しておいた方がいいんだろう、私はこういうふうに思うわけであります。  続きまして、後方地域の捜索救助活動でありますが、これについては、その国の了解が得られればその領海にも入っていくということでありますが、これは当然、そのオペレーションのときに急にぷかぷかとそちら側に行っちゃったからお願いするということではなくて、あらかじめ了承を得ておくんでしょうか。その点をはっきりさせておきたいと思います。
  90. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 後方地域捜索救助活動は、基本的には後方地域に指定された実施区域において実施されるわけでございますが、例えば、公海上において遭難した者が、潮流などの影響により、救助する時点では外国の領海内におった、こういう場合には遭難者の救助を実施することが必要な場合であると考えますので、この法案の六条四項において、当該外国の同意を得て救助を行う旨規定したところであります。  これらの救助については当該外国の同意が必要でありますけれども、後方地域捜索活動は人道的な側面を有するものでありますから、御指摘のとおり、通常速やかに同意が得られるものと考えております。  また、当該外国の同意については、外交ルートを通じて得ることとなりますが、この場合には、迅速に同意が得られるよう、必要に応じ事前に所要の調整を行う必要があると思います。
  91. 安倍晋三

    ○安倍(晋)委員 また、昨日の我が党の側からの議論の中で、当然、北朝鮮の領海に入った場合は、もし北朝鮮事案ということになれば、了解が得られないということでありますから、きのうの御答弁では、例えば米兵がそこでもしおぼれていたとしても、それは残念ながらそのまま、その中には入れない、見ていなければいけないという事態になるんだということだろうと思うわけでありますが、私が大変心配しておりますのは、果たしてそれで米側が納得するのかな、そういう気もいたすわけであります。  先般、文芸春秋に、評論家の田村玲子氏が在日米軍の海兵隊の若い兵の諸君にインタビューした記事が出ていたわけでありますが、極東有事の際、日本人のためにあなたは血を流せますかという質問をしているんですね。それにどう答えたかというと、ダニエル・ファーガソンという二十一歳の兵隊は、日米安全保障条約のある限り、日本人が行かなくても日本を守る義務がありますから、私は当然行く、このように答えているわけであります。  これが信頼関係であるということでありますが、私は、これにそんなに乗っかっていて本当にいいのかなという気がするわけであります。北朝鮮側の領海、日本の領海との間に落ちる飛行機というのは、もしかしたら邦人を乗せているかもしれない、そういう飛行機でもあるわけであります。それを、これはもう向こう側の領海であったからやめるということを、私は、本当は答弁で言い切ってしまってよかったのかなという感想も持ったわけであります。  もう時間がなくなりましたから最後でございますが、自衛権の問題、この安全保障論議をするときに、自衛権の論議がずっと議論をされているわけであります。今の政府の、これは法制局の長官答弁でありますが、個別的自衛権はあり、また行使もできるけれども、集団的自衛権については、持っているけれども行使はできない、そういう法制局長官の答弁であったわけであります。  しかし、集団的自衛権というのは、国連の活動をしていく上でも、また、日米安全保障条約の前文にも両国にこの権利があるということが書いてあるわけでありまして、権利はあるけれども行使はできないという、私から言わせれば極めて珍妙な新発明、法制局の発明した見解にしていることによって、いろいろと現場では、本当に現実的にこれが行われるのかどうかという不安を持っている人も多いんではないかと思うわけであります。  最後に、この日米安全保障条約が締結をされたときの、これは参議院の予算委員会でありますが、佐多忠隆という社会党の議員が、集団的自衛権は憲法は禁じている、日米安全保障条約の前文にその権利があるというのは、これは憲法違反ではないかという質問があります。  それに対して当時の岸総理大臣が、国連憲章に言っている、独立国が個別的または集団的自衛権を有するという国際関係において、日本が自由独立国家としてこれを国際法上持っていると考えていいと思う、しかし、日本の憲法を見ると、自衛隊が海外まで出かけていってその国を防衛するということは禁止をしている、外国まで出かけていってその国を守るという典型的な例は禁止をしているが、しかし集団的自衛権というのはそういうものだけではない、学説が一致をしているとは思わない、そこにはあいまいな点が残っているということを答弁しているわけであります。当時は、法制局長官ではなくて、総理大臣みずからがこの重要な問題について見解を、自分の責任をとるという覚悟で述べているわけであります。  この答弁に対して、同じ山口県、長州の外務大臣でありまして、後継者と言われております、我が長州の八人目の総理大臣と言われております高村外務大臣に、この岸答弁に対してどのような感想を持たれたかを一言お伺いいたしまして、私の質問を終えたいと思います。
  92. 高村正彦

    ○高村国務大臣 一般的に、長州におきましては委員が八人目だ、こう言われていると承知しております。  御指摘の岸総理答弁は、日本国憲法上、我が国が外国に出て他国を防衛することは憲法が禁止しているところであり、そのような意味で、日本は集団的自衛権は行使できない、他方、それ以外の意味での集団的自衛権の行使があり得るのか否かについては、学説が一致しているとは思わないとの趣旨を述べたものと理解をしております。  国際法上の集団的自衛権という概念が、常に実力の行使以外のものを一切含まないかどうかの点については、集団的自衛権が初めて国連憲章に明記されて以来、学説上議論があったことは事実であります。御指摘答弁のうち、学説云々の部分は、こうした状況を説明したものと考えます。  ただ一方で、集団的自衛権の概念は、その成立の経緯から見て、実力の行使を中核とした概念であることは疑いないわけでありまして、また、我が国の憲法上禁止されている集団的自衛権の行使が我が国による実力の行使を意味することは、政府が一貫して説明してきたところでございます。  岸総理みずからそういうことを言っておられるわけでございますが、現時点での我が国政府の考え方とすれば、学説はいろいろある、それは岸先生が答弁されたとおりでございますけれども、やはり実力をもって阻止するということが、個別的であれ集団的であれ、自衛権の中核的概念である、こういうふうに考えております。
  93. 安倍晋三

    ○安倍(晋)委員 終わります。ありがとうございました。
  94. 山崎拓

    山崎委員長 これにて安倍君の質疑は終了いたしました。  次に、阪上善秀君。
  95. 阪上善秀

    ○阪上委員 新ガイドラインの関連法案の質疑に先立ち、先週発生いたしました北朝鮮工作船の侵入事件について、周辺事態の際、我が国にどういったことが起こり得るかを示したものとして注目しなければならないという観点から、質問をいたしてまいりたいと思います。  日本海における北朝鮮工作船問題についてであります。  昭和六十年四月に、宮崎県で日本漁船に偽装した不審船の領海侵犯事件が起きており、その際にも、我が国周辺海域における海上警備のあり方についてさまざまな問題が提起されたのであります。その際にも、このような不審船が警備の手薄な沿岸に接近してスパイ工作に従事することは十分想定されたことであります。このような海上における不正な活動に対して、治安、警備面での我が国危機管理体制はどうあるべきか、考えさせられた点が多いのであります。  今回の侵入事件については、海上自衛隊海上保安庁は、その持てる力を発揮し、特に海上自衛隊は、初の海上警備行動に当たっての迅速な対応は高く評価できるところであります。しかし、結果は、事実上逃走を見逃す形となり、国民の間にも不満や疑問があるのも事実であります。  一連の海上自衛隊海上保安庁対応を振り返り、問題点をただしつつ、今後の我が国領域の安全確保のための体制整備について考えてまいりたいと思うのであります。  まず、侵入事件の経緯と海上自衛隊、海保の行動についてであります。  海上自衛隊のP3Cは、不審船を発見後、護衛艦「はるな」を確認に向かわせましたが、海上保安庁へは通報しなかったとされておるのであります。海上自衛隊同士の連絡と並行して海上保安庁にも連絡すれば、海上保安庁の行動開始を迅速にできたと思います。一方、海上保安庁においては、第二大和丸名が偽名であることが判明した後、海上自衛隊への伝達に長時間、約二時間半もかけておるのであります。連絡体制は円滑だったとは言いがたいのであります。  報道では、防衛庁と運輸省は、不審船舶の領域侵犯事件等に対する共同対処マニュアルを作成するとのことでありますが、そこでは、情報伝達体制の円滑化、二、海上保安庁による警備から海上警備行動へ移行する基準の策定、三、武器使用規定の改定から成るとされておりますが、マニュアルの完成時期の見通しと、一の情報伝達体制の円滑化の部分について、具体策をお伺いいたします。
  96. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 まず私から全般についての政府の考え方を申し上げ、今御指摘ありました諸点につきましては、それぞれ担当大臣から御答弁を願いたいと思っております。  今般の能登半島沖の不審船事案につきまして、海上保安庁による威嚇射撃を含む対応海上における警備行動を発令し、海上自衛隊による追尾等を行ったところでありますが、残念ながら不審船の停船や立入検査に至らなかったところであります。しかしながら、このような措置は、我が国としての安全の確保に対する意思を明示するものとして極めて重要と考えております。  この種の事案はいつ再発するかもしれず、これに対して今後とも政府が一丸となって対応することが重要であり、今回の教訓を謙虚に整理しつつ、今後の我が国の安全の確保及び危機管理に万全を期してまいりたいと思っております。  いずれにいたしましても、今般の事犯というものをきちんと整理し、そして、こうした事案、二度と起こってはならないことでありますけれども、万が一のことに対処するに当たりまして、国民の安心を得られるように政府としては対処していくことが重要でございますので、今回の対応を踏まえまして、法整備の問題も、必要あれば検討いたしていくべき課題だというふうに認識をいたしております。
  97. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 防衛庁としては、余り確度の低い段階で海上保安庁等に通報することは、かえって混乱を招くと考えられます。平素から、むやみやたらに船舶の状況等を海上保安庁に通報しているわけでもなく、今回もある程度の確度を得た上で海上保安庁に通報したものであります。  念のために申し上げますと、一昨日も不審漁船が二そういるという情報がある方から入ったわけですが、これも単なる日本漁船であった。その前の日は、不審船がいるということで調べてみるとゴムボートであったという状況で、こういうものを余り確認しない段階でやたらに海上保安庁に御連絡することは、私どもはかえって混乱を起こすと思います。  今回のような不審船事案に際しては、やはり関係省庁の密接な連携を図ることが大変大事だということを痛感させられた次第でございます。防衛庁としては、この経験を生かし、初動段階でのより迅速、緊密な情報交換など、海上保安庁等との連携強化のために検討を深めていきたいと考えているところであります。また、連携の強化のために、必要あるとすればマニュアルの検討を行うこともあり得ると考えております。
  98. 川崎二郎

    川崎国務大臣 情報収集と伝達の時期の問題でございます。  確かに、反省をすれば、もう少しお互いに早い伝達を心がけるべきではなかったか、こういう反省もあります。そういった意味で、今後とも連携を密にしてまいりたい。  先ほど、一昨日の不審船情報、そして結局は漁船だったというお話がございましたけれども、私も、こういう事態のときでありますので、今回は自衛隊にすぐ連絡をさせていただいた。できるだけ連携をしてまいりたいと思っております。  ただ、御確認賜りたいと思いますが、第二大和丸が偽名であることが判明したのは十二時半、防衛庁連絡しましたのが十三時三十八分、一時間の間があったことは事実でございます。  それから、今私どもが指示しておりますのは、今回の事案でうまくいったこと、うまくいかなかったこと、すべて洗い直せということで指示をいたしております。それをもとにしながら、自衛隊との話し合い、防衛庁また内閣との話し合いというものが進んでまいると思いますし、基本的には、やはり一カ月ぐらいをめどにしたいなと考えております。
  99. 阪上善秀

    ○阪上委員 野呂田防衛庁長官は、護衛艦に搭載している五インチ砲より軽微なもので、かじに損傷を与えるが人命にかかわらないようなやり方ができないか戦術面で検討したいと述べておられます。  不審船を停船させるための装備の導入の検討を考え、護衛艦に機関銃等の小火器を搭載する案などが出ているようでございますが、野中官房長官は、二十六日の記者会見で、可能な限りの自衛を基本とする我が国の体制は長い間培ってきた問題であり、大戦の大きな犠牲の上に立った憲法に立脚する、その個々の事象によってその基本を揺るがしてはならないと述べておられるのであります。  武器使用について慎重さは必要でございますが、威嚇射撃のみでは目的を達成しないことは、今回の事件で如実にあらわしたのであります。政府の方針はどの方向なのか、お伺いをいたします。
  100. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 自衛隊法八十二条で海上警備行動を起こした場合に、警職法七条が適用になりますが、これは、法律上の解釈として、武器は使っていいということになっているのですが、人に危害を与えることは、正当防衛や緊急避難に当たる場合でなければだめだということになっているものですから、実はあの不審船を、この間韓国が半潜水艦を我が国の領海近くで撃沈したようなことができるとすればこれは簡単にできるわけでございますけれども、今の警職法七条の範囲を厳格に守る限りは、この間の対応しかなかった。特に、爆弾を落としたり五インチ砲を使えば、相手の乗員に危害を与えることは明白でありますから、使えなかった。  そこで、私どもは、現行法の法体系の中で何ができるかということを検討しなければいけない。こういう前提に立ちまして、この間から重要事態対応会議を引き続き開きまして、今そういった、相手の人命等に危害を与えない限度内において何ができるかという具体的な方法を検討している。その中の一つとして、例えば網を使うとかもりを打ち込むとか、いろいろな方法があるだろうということが検討議題になっていることも確かでございます。
  101. 阪上善秀

    ○阪上委員 昨日の報道によりますと、海上保安庁は、対テロ訓練を積んだ特殊警備隊を不審船に突入させる計画を立てていたという記事が載っておりますが、その事実関係と特殊警備隊の組織の概要についてお伺いをいたします。
  102. 川崎二郎

    川崎国務大臣 二十三日、関係閣僚会議が行われ、第一義的に海上保安庁が全力を尽くせ、こういう御指示をいただいて、私は海上保安庁長官に、海上保安庁の持てる能力、最大限全力を尽くしてやるようにという指示を与えました。その中に、場合によっては威嚇射撃もあるだろう、こういう指示をいたしたわけであります。  海上保安庁の持てる能力として、過去の反省の中で特殊警備隊を持っておることは事実でございます。ただ、この内容については、まさに相手のあることでございますので、御勘弁を賜りたいと思います。
  103. 阪上善秀

    ○阪上委員 平成十年十二月に、対馬の南西八十キロ、北朝鮮の潜水艇が韓国軍に撃沈された事件がありました。この際、潜水艇が我が国領海へ逃げ込んでくる可能性もあったわけでございますが、昨日の川崎運輸大臣答弁では、海上保安庁では潜水艇に対処できないので海上自衛隊の出番ということになると思うが、この場合の根拠法は何であるのか。  報道によれば、政府は既に平成八年十月に、韓国への潜水艦侵入事件を受けて、外国潜水艦への対処を海上警備行動により行うことを明確にする方針を固めたはずでございますが、手続等は確定しておるのかどうか、お伺いをいたします。
  104. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 不審船に対する自衛隊対応につき、一般論として申し上げますと、海上保安庁だけでは対処できない場合または対処が著しく困難な場合、そういう場合に海上警備行動が発令されるというのは先般のとおりであります。  また、不審船侵入事案我が国に対する武力攻撃に該当する場合またはそのおそれがある場合には、自衛隊自衛隊法七十六条によって防衛出動により対応するということになります。防衛出動が下令された場合、「自衛隊は、わが国を防衛するため、必要な武力行使をすることができる。」これは八十八条であります。それから、自衛権を発動する場合に必要最小限度の実力行使にとどまるべきことは、これは一貫して申し上げているとおりでございます。
  105. 阪上善秀

    ○阪上委員 諸外国、特にアメリカ、ロシア、中国、韓国で同様の侵入事件があった場合、予想される各国の対処についてお伺いをいたします。
  106. 高村正彦

    ○高村国務大臣 外国政府による対応について日本政府として予想することは必ずしも適切でないわけでありますが、例示された各国の関連制度等について、当方で把握していることだけ簡単に述べさせていただきたいと思います。  米国においては、法律で、沿岸警備隊は、沿岸及び周辺海域における違法行為の防止のため、不審船舶に対する臨検、拿捕等を行うことができ、応諾を強制するために必要なあらゆる強制力を使用することができると規定しているほか、威嚇射撃の後、停船に応じない船舶に射撃を行うことができると規定をしております。  ロシアにおいては、法律により、国境警備隊は、船舶が自己の旗を掲げず、尋問の信号に答えない場合、その船舶を停船させて臨検を行い、必要に応じその船舶を拿捕することができます。また、国境警備隊は武器を使用することができます。なお、過去の対応ぶり、説明ぶりを見ても、警告信号を発信し、停船命令を発した後、問題となる船舶が停止しない場合には警告射撃を行い、それにもかかわらず停止しない場合には直接当該船舶に対して銃撃を行うこともあると承知をしております。  中国については、その制度等について必ずしも明らかでなく、その対応について予断を持ってお答えすることはできません。  韓国におきましては、一般に武器の使用は、犯人の逮捕、逃走の防止、自己または犯人の生命身体に対する防護、公務執行に対する抗拒の抑制のため必要な場合に、合理的に判断し、武器を使用することができますが、警察官職務執行法の規定に基づき武器を使用する場合、正当防衛、緊急避難及びスパイ作戦において武装スパイが警察官の投降命令を受けてもこれに応じない場合等を除き、人に危害を加えてはならないと承知しております。  先日、潜水艇を沈めてしまった、あの件については、あれは海上警備行動ではなくて対スパイ作戦である、こういうふうに承知をしております。
  107. 阪上善秀

    ○阪上委員 特に我が国周辺では極めて厳格な対処をとる国が多いと思うのでありますが、我が国が諸外国と同様の手段をとり得ない理由はどこにあるのか、お伺いをいたします。
  108. 楠木行雄

    ○楠木政府委員 海上保安庁が責務を負っておるわけでございます。海上における治安、公共の秩序維持に当たることを任務としている警察機関としての海上保安庁がやっている、こういうことでございます。
  109. 阪上善秀

    ○阪上委員 さて、次に、北朝鮮との関係についてお伺いをいたします。  不審船の逃走先について、報道では、政府北朝鮮北部の清津港に到達したことを確認したとされますが、その根拠についてお伺いをいたします。
  110. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 それは、私どもの得た情報、アメリカから得た情報等を総合的に勘案してそういうふうに断定したわけであります。
  111. 阪上善秀

    ○阪上委員 清津港は軍民共用の港湾で対日工作船の出撃拠点とされておりますが、こうした事実関係を政府では承知されておるのか。また、侵入の目的は偵察、工作等、何らかの軍事的なものであったと思いますが、いかがでしょうか。
  112. 高村正彦

    ○高村国務大臣 政府として、必ずしも、清津港に入ったということを言っていないと承知しておりますが、一般論として、清津港が御指摘のような軍事的性格を帯びる港であると言われていることは承知をしております。  今回の船舶については実存する船が他の海域に存在していたり、漁船原簿から抹消されていることが確認されているほか、漁具も積んでおらず、不審なアンテナ等が装備されている等の外見や、極めて高速の能力を有し、たび重なる停船命令にも応ぜず、速度や方向を変えつつ逃亡を図る等の状況からすれば、総合的に見て一般の漁船ではなく、何らかの目的を持って我が国の領海に侵入してきた北朝鮮当局工作船であると考えております。  どういう工作の目的があったかということは定かではございません。
  113. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 ちょっと訂正しておきたいと思いますが、委員の御質問が清津というふうに限定して聞いたとすれば、私も清津とは言えません。清津と一体になったあたりの軍港というふうに訂正させていただきます。
  114. 阪上善秀

    ○阪上委員 確認しておっても言えないという立場もよく理解できますが、もう少し、防衛庁長官外務大臣答弁に差がありますので、追及しようと思いましたが、訂正になりました。  次に、我が国からの照会に対して、北朝鮮は、無関係を主張し、我が国からの引き渡し要求書簡の開封すら拒み、あまつさえ我が国による策謀とまで開き直っておるのであります。  政府は昨日、野中官房長官が記者会見で、不審船北朝鮮工作船であると断定したとされました。その理由について、さまざまな情報を総合的に勘案した結果とされておりますが、政府は、北朝鮮の関与を具体的に証明し得る証拠、情報を有しておるのかどうか、お伺いをいたします。
  115. 高村正彦

    ○高村国務大臣 私がお答えするのが的確かどうかわかりませんが、そういうふうに断定した以上、証拠があるわけであります。  ただ、これはインテリジェンス情報でありますから、こういう証拠がある、こういう証拠があると言うと、次からはそういう証拠がとれなくなる可能性もあったり、いろいろありますので、具体的には申し上げられないことはお許しいただきたいんですが、断定した以上、証拠は有しているということでございます。
  116. 阪上善秀

    ○阪上委員 政府は昨日、北朝鮮に対して、抗議の意思を、北京大使館、ニューヨーク国連代表部を通じて伝達をされました。しかし、これまでの北朝鮮の反応を見る限り、抗議に対して誠意ある対応がなされたとは到底考えられません。予想どおり、北朝鮮政府は、電話で全く関係ないと回答をしてきたのであります。  政府は、重ねて抗議申し入れを検討しているようでありますが、かつて昭和五十八年、旧ソ連による大韓航空機撃墜事件の際、日本は、航空自衛隊が傍受したソ連空軍の無線交信内容のテープを国連で公開して、旧ソ連の主張を一蹴した事例もあるわけであります。  今回も証拠、情報を有しているなら、これを広く国際社会に公開をして北朝鮮の主張に反駁するなど、毅然とした対応が必要なのではないかと思いますが、見解をお伺いいたします。
  117. 高村正彦

    ○高村国務大臣 インテリジェンス情報の場合に、それを明らかにする利益と、明らかにすることの不利益とを比較考量して決めることになりますが、今度の場合は、北朝鮮が否定しても、ほとんどすべての国際社会も北朝鮮工作船だと思っておりますし、日本国民でも、それに疑いを持っている人はほんのわずかしか、変わった方が少しはいるかもしれませんが、ほとんどの方もそう思っておられますし、私は、日本政府の立場を信じていただける、こういうふうに思っております。
  118. 阪上善秀

    ○阪上委員 政府の抗議の内容は、沿岸国の秩序に影響のある行為であり、国際法違反である、許すことはできないとされておるのであります。許すことができない以上、北朝鮮から釈明なり謝罪なりがなされない場合、それなりの対応が必要と思いますが、具体的な考えはあるのか、また、政府は制裁措置に慎重とされておりますが、その理由についてお伺いをいたします。
  119. 高村正彦

    ○高村国務大臣 現時点で日本政府がこういう抗議をすること自体が北朝鮮に対してまさに国際的に非常に厳しい、まあ個人の社会でいうと社会的制裁といいますか、そういうこともあるわけでありますし、昨年の八月のテポドン発射以来、ミサイル発射以来、日本は一定の措置をとってきている。そして一方で、米朝の核疑惑施設について一定の合意に達するなど建設的な側面も見られている中でこの大変非建設的な側面が出てきた、こういう状況の中で、一方で抑止をきっちりしながら一方で対話の窓口もあけていく、そういう基本的方針を維持しながら一つ一つの行動に対応していきたい、こういうことでありまして、現時点で特定のこのことについて特別の措置をとることは考えていない、こういうことでございます。
  120. 阪上善秀

    ○阪上委員 いずれにしましても、このまま北朝鮮に一方的に主張されては、我が国情報はあいまいなもので、日本政府としても信頼し切れないものではないかと、我が国はかかる事件を引き起こされても実害がなければ波風を立てないのだと、国際社会から見くびられてしまうのではないかと思いますが、見解をお伺いいたします。
  121. 高村正彦

    ○高村国務大臣 一つだけ例を挙げさせていただきますと、先日、ベルリンのASEMの会合に行った際に、韓国の外交通商部長官お話をしたときに、こちらからその話題を持ち出す前に韓国の外交通商部長官がおっしゃったことは、今度の断固たる措置、しかも抑制された措置に心から敬意を表する、高く評価する、こういうことを言っておられたわけで、国際社会からなめられたり見くびられたりすることは今の状況で決してない、こういうふうに思っております。
  122. 阪上善秀

    ○阪上委員 これはちょっと通告はいたしておりませんが、村山訪朝団が間もなく出発されると聞いております。その訪朝団に総理の期待されるところ、そしてまた託されるところをお聞きいたしたいと思います。
  123. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 抑止と対話は基本的な考え方でございまして、対話ということを考えますと、残念ながら日朝間に国交が存在いたしておりません。やはりこのことは、この地域の安定のためにも、日本として正式な国交を回復せしめていかなければならないと考えております。  そういった意味で、あらゆる方々がいろいろなパイプを通じてその道筋をつけていただくということは大変ありがたいことだと思いますし、特に村山先生には、日本国総理大臣の御経験もあるということでございますので、私は、そうしたことに対して北朝鮮といたしましてもそれなりの対応があられることが、少なくとも我が国に対する一つのメッセージとして大変大切なことではないかというふうに考えておりますので、それこそ最高責任者同士のお話し合いというようなことが可能であれば、新しい大きな展開ができるのではないか、こう考えておるところでございます。
  124. 阪上善秀

    ○阪上委員 通告なしで失礼いたしました。北朝鮮のミサイルと一緒で、いつ飛んでくるかわからない、気をつけてください。  今後の課題についてお伺いをいたします。  政府として、今回の事件をどのように受け、教訓、反省点はどうか、お伺いをいたします。
  125. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 今回のような新事案に際しては、海上保安庁を含めた関係省庁の密接な連携が大変大事だということが第一だと思います。  一昨日、また重要事態対応会議を私ども開きまして、現地で指揮に当たった指揮官を呼びまして、詳細に報告を受けたところであります。その結果、これらの事案に対する防衛庁自衛隊対応などについて、詳細な検討を行ったところであります。今後の対応について万全を期すため、人に危害を与えずに停船させる方法についての具体的な方策をつくって出すことを指示したところであります。  教訓とすべき点はいろいろありますが、運用、訓練及び装備面や海上保安庁との連携のあり方といった種々の分野に及ぶと考えており、今後早急に検討を行って、我が国の安全の確保、危機管理に万全を期してまいりたい、こういうふうに考えております。
  126. 阪上善秀

    ○阪上委員 侵入船対策や尖閣諸島等離島警備といった任務は、基本的に海上保安庁の領分であると思います。そういう意味で、今回の事件も、第一義的には海保の対処で処理できることが最善であったのであります。  海保の装備は旧式化が目立ち、最大速度二十ノット台の船が多いとされておるのであります。早急に装備を近代化する必要性について、政府の見解をお伺いいたします。
  127. 川崎二郎

    川崎国務大臣 海上事案に対しまして、まず警察機関たる海上保安庁対応する、当然のことであります。そういった中、新日韓漁業協定、また最近の密航者、麻薬、こうした事案がふえてきております。そういった中、いろいろな形で、例えば補正予算という形で御配慮いただいておることは事実でありますけれども、過去十年間の経過の中で予算面で十分であったかということになれば、御指摘いただいた面もあると思っております。そういった意味で、また私どももできるだけの要求、また理解を求めてまいりたい、このように思っております。
  128. 阪上善秀

    ○阪上委員 今回の海上保安庁がとった行動の根拠は、漁業法違反の疑いによる立入検査と、船名詐称という状況証拠に基づき実施されたもので、刑法犯の範囲内での行動で対処が限定されているのであります。仮に海保の巡視船が近代化されても、海保が基本的に警察組織である以上、相手船の出方によっては、海保の能力を超え、警察的な対処でなく、限定的な軍事的対処が必要となる局面も予想されると思いますが、政府の見解をお伺いいたします。
  129. 川崎二郎

    川崎国務大臣 今回の事案は、まさにそのとおりでございます。私どもでまず第一義的に最大限の努力を行う、しかしながら、我々の能力を超えたときは私ども情報を伝達し、そして内閣の判断を求めていく、今回、自衛隊海上警備活動出動となった、こういうことでありますので、今後も連携を密にしてまいりたいと考えております。
  130. 阪上善秀

    ○阪上委員 周辺事態安全確保法等についてお伺いをいたします。  今回の事件は、それ自体は周辺事態に該当するとは思われないものの、実際に周辺事態が発生すれば、後方地域支援等を実施する我が国に対して、偵察や破壊工作といった任務を帯びた不審船の侵入がなされることが予測されるのであります。また、大量避難民の流入などもあり、海上警備行動の再発令といった事態もあると思います。  我が国の領海警備能力は、海上自衛隊海上保安庁とも現体制のままで周辺事態の発生時に十分な対処ができるのかどうか、政府の見込みについてお伺いをいたします。
  131. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 周辺事態に際しましては、我が国周辺の海域におきましてより緊迫した状況になるとも考えられますので、先生おっしゃいますように、警戒監視活動の強化であるとか、あるいは海上警備行動等の発令に備えて十分な体制をとりつつ、周辺事態への対応を行っていくということが必要であろうと思います。  私どもといたしましては、現有の能力等をいろいろ工夫いたしまして対処していくつもりでございますけれども、先般の不審船事案の教訓も踏まえまして、さらに海上における治安の維持あるいは安全の確保につきまして努めてまいりたい、かように考えているところでございます。
  132. 阪上善秀

    ○阪上委員 我が国周辺情勢を視野に入れた場合、周辺事態安全確保法案の早期成立が焦眉の急であると思うのであります。  かつて、昭和五十一年九月、ソ連のミグ25戦闘機が函館に強行着陸して乗員が亡命した事件がございました。津軽海峡にソ連船が、内水である大湊湾に数隻滞留いたしました。海上自衛隊は護衛艦を派遣いたしましたが、自衛隊法には平時における領海警備行動規定がないため何もできず、ただ眺めていただけで何も警告できなかったのであります。  今後、周辺事態において海上保安庁能力を超える状況に際して、海上自衛隊による軍事的な対応を可能とするための領域警備任務の新設、また、単なる威嚇射撃にとどまらない適切な武器使用規定の整備など、法的な体制整備の必要性があると思います。  昨日の本委員会で野中官房長官はこうしたことに慎重な答弁をされましたが、政府の見解をお伺いいたします。
  133. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 いろいろ御指摘の点につきましては、今後検討を要する事項の一つであると私は考えております。  ただ、当面は現行法の体系の中でそういうものに対処していくことが必要だと思いますので、そういう面で怠りのないように対処してまいりたい、こう思っております。
  134. 阪上善秀

    ○阪上委員 陽動作戦説について最後にお伺いをいたします。  三月二十九日の産経新聞によれば、今回の工作船の任務は陽動作戦で、我が国の警備・防衛当局が工作船を注視している間に数十人の工作員部隊が太平洋側から我が国に侵入し、青森、茨城など少なくとも六県に潜伏しているとのことでありますが、このような事実は確認できておるのか、お伺いをいたします。
  135. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 そういう報道承知しておりますが、私ども警察海上保安庁、特に私どもの常習的な監視行動、それから米軍等につぶさに照会しましたが、そのような事実はないという結果になった次第でございます。  私の想像では、何か特定の意図を持った人がああいうことをやったのかなというぐらいの判断しかございません。
  136. 金重凱之

    ○金重政府委員 私ども警察の方につきましても、現在のところ、そのような情報には接していないところであります。  警察としまして、集団密航事件が多発しているというような最近の情勢がありますので、全国の関係県において累次沿岸警備の強化を実施してきておるところでございまして、そうした中で、三月に入りましてからも、六日の日に福井県、十七日に福岡県、同じく十七日ですが兵庫県、十八日に長崎県、二十四日に広島県、二十五日に福島県、二十六日に兵庫県という集団密航事件、合計で七件二百三人を検挙しておるというような状況がございます。  したがいまして、陽動作戦ではないかというような見方がございますけれども、少なくともこうした警察活動の実態から見ますと、日本海側での事案が太平洋側における警戒活動に対する陽動作戦であるというような可能性は低いのではないかというふうに思っております。
  137. 阪上善秀

    ○阪上委員 以上、終わります。
  138. 山崎拓

    山崎委員長 これにて阪上君の質疑は終了いたしました。  次に、東祥三君。
  139. 東祥三

    ○東(祥)委員 総理外務大臣、野呂田防衛庁長官、前回に引き続きまして、周辺事態安全確保法案について改めて質問させていただきます。  本日は、時間の許される限り、船舶検査活動、二つ目が武器の使用、そして三つ目は国会承認の問題について質問させていただきたいと思います。  まず、船舶検査に関してでございますが、私の疑問は、なぜ国連決議が必要なのかという点であります。まだどうしても納得がいかないわけでございます。この点について、三つの角度から質問させていただきたいと思います。  まず第一に、理念的に納得いかないのじゃないのか。国連安保理決議を前提とするのであれば、当然、経済制裁を実効あらしめる措置を正面から容認すべきでありますが、容認されていない。御案内のとおり、安保理は、国連憲章第三十九条に従って、極東において平和と安定が破壊されたから、あるいはまた平和と安定に対する脅威を認定するからこそ経済制裁の発動があると私は理解いたします。それは極東の平和と安定のためであって、ひいては極東の平和と安定と不可分の関係にある我が国の平和と安全のためであるはずじゃないのか、このように素直に思います。  まず、政府は、周辺事態における関連国連決議、これは我が国の安全と無関係と考えているのかどうなのか。まず、この点について確認したいと思います。
  140. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 国連が仮に今委員が御指摘になられましたような措置をとります場合に、その安保理決議なりなんなりが日本の平和と安全に結果として影響を持つ、かかわりがあるということは、それはあり得るだろうと思います。
  141. 東祥三

    ○東(祥)委員 そもそも、国連の決議、安保理における決議が出るということは、地理的にもこれは限定されていないわけです、グローバルな状況下において平和と安全が破壊される、そのとき国際社会が総体としてどのようにこの破壊する国に対して制裁を施していくのか。そういう意味においては、今加藤局長が言われるとおり、事前にどこどこの国に何らかの影響があるからどうかということではなくて、結果として、その国連の安保理決議の対象地域に当然平和と安全において重大な影響を与えるようになるのだろう。このように理解してよろしいですね。
  142. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 日本が、みずからの平和と安全を守るために、日米安全保障条約という御存じのとおりの構成を持った条約を米国との間に結んでいるということがございますが、それとは別に、国連が、日本の平和と安全に影響のある事態において、国連としての判断、決定を行うということは当然あり得ると思います。
  143. 東祥三

    ○東(祥)委員 国連による船舶検査活動が行われる前提というのは、国連安保理の経済制裁決議とその実施のための決議を踏まえた上で、国連加盟国の艦船と乗組員が、家族のもとを離れ、はるばる太平洋やインド洋を渡って陸続と日本海に集結し、体を張って船舶検査を実施しているときに、なぜ自衛隊だけが任意の職務質問と進行変更のお願いだけしかできないのか。これは私の理念的における疑問点でございます。  そのような我が国対応というのは、基本的に常に一貫して戦後流れている考え方でございますが、一人だけ安全であればよいという孤立主義そのものじゃないのか。不法に対して社会の構成員全員が立ち向かうという集団安全保障体制の理念に背く、そういう考え方なのではないのか。結局、こういうありようを続けている限り、国際社会の良識ある国々の信頼を失う結果となるのではないのか。  この点について、政府はどのようにお考えでしょうか。
  144. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 委員の御意見を貴重な御意見として我々は受けとめさせていただきたいと思います。  しかし、委員の御発言にもございましたように、今、周辺事態安全確保法で考えております船舶検査は、経済制裁に実効性を持たせるための措置でございます。経済制裁は、本来、日本について申しますと、外為法等による貿易なんかの規制とか、そのような規制を担保するための取り締まり活動ということによって実施されるものであると思います。そのためのその具体的手段として輸出入の制限といったこともあり得るわけでございます。そういうものの総体として周辺事態においても経済制裁の実効性を高めることを考える、その流れのもとにおいて船舶検査活動について考えました場合に、これは必ずしもすべての事態対応できるような、そういう法整備を現段階で考えるわけにはいかない、そういう現実にはない。  現に、委員は御指摘になられたと思いますけれども、これまでも、イラクとかハイチとかユーゴスラビア関連の船舶検査活動において、日本はそのような国連安保理決議のもとにおける活動を行う法的根拠を持っていなかったわけでございますし、現在も持っていないわけでございます。それを、今回の周辺事態における安全確保法の中の船舶検査に係る規定をもって前進し、日本周辺事態において日本の平和と安全に資するとの観点から、これを行い得るようにしているということで実効性を付加しよう、こういう次第でございます。
  145. 東祥三

    ○東(祥)委員 局長が言われているのは二つ問題点がありまして、まず一つは、自主的な経済措置日本が発動しようとするときに、まだ安保理の決議がなければ、これは基本的に、船舶検査活動というのは何も準備をすることができなくなるという問題だというふうに私は理解します。  もっと具体的に言えば、例えば、地域を特定して言うのはこういう場においてはばからなくちゃいけないのかわかりませんが、いわゆる朝鮮有事の問題についてかまびすしく議論されておりますが、わかりやすい例でいくならば、朝鮮有事に対して、実際何が起こるのかという観点から考えても、国連決議に関する言及を法案の第三条一項三号に置く必要はないのではないのかと私は思っているわけです。  つまり、そもそも、朝鮮有事において、新たな経済制裁決議が出されるという可能性は高いのか低いのか、どっちを考えているのかということです。少なくとも今の段階においては経済制裁決議は必ず出てくる、そういう前提でもって考えるとするならば、この法案第三条一項三号に書かれているのはそれなりに意味があるかもしれません。しかし、北朝鮮と友好関係にあるP5の国が拒否権を発動すれば、国連安保理の経済制裁決議というのは出てこないわけですから。  そうすると、国連決議を必須の前提としてしまえば、法案の第三条一項三号の船舶検査に関する条項自体が初めから死文化して無意味になる危険があるのではないのか、このように思うわけです。  今加藤局長が言われたことは、では日本として、国連決議が出る前に自主的に一定の経済制裁を科すことが可能なのかどうなのか。つまり、必要と考えているのかどうなのか。この問題なわけです。つまり、仮に国連安保理が機能しない事態に陥ったとしても、我が国としては、まさに我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態であれば、友好国と協調して、先ほど局長が言われたとおり、外為法による送金停止等の法的手段を駆使して、自主的に一定の経済制裁を科すことが必要と私は考えます。  朝鮮有事に際して、このような友好国との自主的な経済制裁発動の可能性は真剣に検討しておく必要があると思いますが、まずこの点について政府はどのように考えられているのか。
  146. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 経済制裁の点についてでございますけれども、これは船舶検査と違いまして、経済制裁そのものは国連の安保理決議の存在そのものを必ずしも前提にしないということであろうと思います。すなわち、貿易関係の停止等、先ほど私が申し述べましたような一連の経済制裁上の措置があるわけでございますけれども日本が例えば外為法によってとり得る措置があるわけで、先般の改正によりこれが強化されておりまして、国連安保理決議がない場合にも制裁を行うということができるようになっているというようなことはあるわけでございます。
  147. 東祥三

    ○東(祥)委員 局長、別の言葉で言えば、自主的な経済制裁発動の可能性というのは考えているということですね。そういうふうに理解してよろしいですか。
  148. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 特定の事態を想定してプランニングをしているということではございませんけれども、いろいろな状況を総合的に設定してそのような体制を整えている、法律の次元においてもそういう整備が行われているということを申し上げたつもりです。
  149. 東祥三

    ○東(祥)委員 経済制裁をただ発動しただけでは船舶検査活動というのはできなくなるわけですね。ただ、今のお話がありましたとおり、基本的に、外為法等で送金の停止だとかそういうことをやろうと。  では、次の段階で、この自主的な経済制裁を発動するような事態となれば、少なくとも我が国として、我が国の船舶、あるいはまた我が国に同調して経済制裁を行う友好国の船舶に関して、船舶検査を行うことが期待されると思います。そうすると、このような事態に対して対応できるように、船舶検査から国連決議の要件を外しておくべきなのではないのかというふうに私は考えるわけです。  そのような必要性があるけれども、まだ国連決議が出ていない。したがって、日本の友邦国との間の地域的な取り決め、そういうものをやって、実効性は、その国連決議が出るまでの間、そんなに高いものではないかもしれません。少なくとも、その具体的な活動を行うものになります。しかし、国連決議の要件を付与しておけば、そのような活動さえできなくなってしまうのではないのか、このように私は申し上げているのですが、この点についてどうですか、外務大臣
  150. 高村正彦

    ○高村国務大臣 今委員がおっしゃったことは、そのとおりなんです。そのとおりなんですが、現実の問題としてどのくらいそこに、国連決議という要件を外したことによって、実際問題としてどのくらい船舶検査をして、それが有効に働く場合があるかという観点から、必ずしもそういうレアケースのために、この法案の中に船舶検査ができる国際法上の根拠を書くことを外すということがいいのかどうかという観点もあって、私たちは有益であると考えてしたわけであります。  ただ、これを、こういう要件を書き入れたことによって、委員が想定したようなときにできませんねということは、それはそのとおりです。
  151. 東祥三

    ○東(祥)委員 つまり、当然、朝鮮半島で何らかの問題がある。それで、かつて九四年のときもいろいろと僕は議論をされたと思いますけれども、送金停止、こういう考え方が出てきた。外為法に基づく送金をどのように停止したらいいのか。  しかしまた、日本から船舶も行っているわけでしょう、具体的に申し上げれば。それに対してのちゃんとした船舶検査日本がやろうと思えば十分できることです。また、友邦国と協調してその問題を取り扱うこともできるはずです。逆に、この周辺事態安全確保法第三条一項三号を入れることによって、そのような必要性が出てきた場合できなくなるという全くおかしなことになってしまうのではないのかということを明確にここで提示しておきたいと思います。  そして、さきの質問において外務大臣からお話がありましたとおり、そもそも公海上では旗国主義が貫かれていて、たとえ政府の主張する任意の職務質問だけの船舶検査であったとしても、旗国の同意なくしては実行できないはずであります。 国連安保理決議があって初めて、国籍を問わない無差別な船舶検査が基本的に可能になる。だから、国連決議の必要性をわざわざ法律で規定する必要がないということを私は指摘しておきたい、このように思っているわけです。皆様方と逆なのかもわかりませんけれども。  つまり、どういうことかといえば、周辺事態安全確保法第三条一項三号から国連決議に関する言及を落としたとしても、我が国自衛隊は国連決議をもって初めて国籍に関して無差別な船舶検査を実施できるということをまず御確認していただきたいと思います。  国連決議をもって初めて国籍に関して、つまり旗国主義を貫いていて、どの国籍であろうが国連決議があるならばその船舶検査を行うことができるようになる。
  152. 高村正彦

    ○高村国務大臣 委員質問を正確にとらえたかどうかちょっとわかりませんが、恐らく委員がおっしゃったのは、この法案の文言の中に国連決議という言葉がなくとも、国連決議がなかったら旗国主義の関係で一般国際法上できないじゃないか、こういうことをおっしゃったんだとすれば、それはそのとおりであります。  ただ、法律の中で一般国際法上なくてもできない言葉を念のために入れるということは、それはよくあることで、それが有意義だと考えられることは普通あることであります。
  153. 東祥三

    ○東(祥)委員 まさに外務大臣がおっしゃられるとおりで、まさにそうであれば、国連決議をもって初めて国籍を問わない無差別な船舶検査が国際法上合法に実施できるのであって、我が国が国際法を遵守すべきことは憲法第九十八条二項に既に規定されているのですから、改めて周辺事態安全確保法案において国連決議の要件に言及する必要はないのではないか、このように私は申し上げているわけです。  なぜ、そのような、まさに足かせをするような形で国連決議を持ってくるのですか。国連決議がない限り、旗国主義に基づいていますから、公海上を行くすべての船舶を検査することはできませんよ。しかし、国連決議が出るまでの間、少なくとも日本及び日本と友邦国がとれる措置さえ、この案文を載せているがゆえにできなくなってしまうではありませんか、こういうふうに申し上げている。  したがって、この周辺事態確保法案から国連決議に関する言及を取っても、実践上も、あるいはまた法律上も何ら問題はないのではないのか。いかがですか。
  154. 高村正彦

    ○高村国務大臣 この法案の中に国連決議ということを要件に掲げなくとも、国連決議がない場合に一般に無差別にできない、それは国際法上そうだということは、委員のおっしゃるとおりです。だから書かなくてもいいと言えるかどうかという話ではあるのです。  だから書かなくてもいいかというと、例えば日米安保条約の中にも、国連憲章を遵守しろとかそういうこと、なくたっていいじゃないかといえば、なくたって当然の話なのですよ、日本国憲法からいってもアメリカ憲法からいっても。なくたっていいけれども、やはり、そういうところに確認しておくということの一つの意味はある。絶対なくちゃいけないかどうかということは別にして、意味はある。  そういうことを確認しておく利益と、委員がおっしゃる、それがあるがゆえにこういう場合できなくなっちゃいますねという不利益と、どっちが大きいかという政治判断の問題なんだろうと思います。そういう政治判断の問題の上において、少なくとも政府としては、あった方がいいかなと現時点でも考えている、こういうことでございます。
  155. 東祥三

    ○東(祥)委員 外務大臣総理、この問題というのは、官僚の方が考えているのですよ。基本的に今こういう議論をしているから、多分、総理、そういうことがあるのかなというふうにお気づきになり始めているのじゃないでしょうか。  国連決議があることによって、政治的にやろうとすべきこともできなくなるのですよ、これで。そしてまた船舶検査活動を、もちろん広範に、まさに地域全体として国連の決議をかぶせておけば、何ら問題なくできる。じゃ、それがないからそのことができるのかといったら、できませんよ、それ以前の問題までできなくなりますよということを申し上げているのです。  だけれども、その部分は、いろいろと国連の決議をつければ、多くの国民理解されることができるだろうだとか、あるいはまた周辺諸国、周辺事態じゃありませんよ、周辺諸国から、アジアの諸国から変な目で見られないだろうかだとか、こういう極めてエモーショナルな、情緒的な判断がずうっとまかり通ってきているのですよ。船舶検査活動をやるには、国連憲章四十一条ですから、したがって、それを発動させなければ、今までずうっと議論してきているとおり、できないのですよ。  しかし、限られた形で、地域協定なり友邦国との間にちゃんと協定を結んで、自分の船舶あるいはまた友邦国の船舶が当該の国に行こうとするときに、ともにそれをちゃんと検査しましょうと。できる、できないは別ですよ。しかし、それができなくなるのですよ、これを入れておくことによって。おかしいと思いませんか、総理、率直に。
  156. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 船舶検査について、今回のガイドライン法によりましては、国連決議という背景がありました方がギャランティーが極めて強い、こういうことでございまして、経済制裁について、これが存在するということになると、かえってできかねるということを今委員御主張されておられて、かえって手足を縛るのではないか、こうおっしゃっておられるのだろうと思いますが、今回のガイドライン法に伴いましての船舶検査につきましては、やはり国連のこうした決議というものをしっかりと背景としてやられる方が、国際社会の中でもこれは当然確度の高い、信頼を得られて、そして十分な責務が果たせるということで、今回こうした提案にさせていただいているということだと思います。
  157. 東祥三

    ○東(祥)委員 総理総理のことを僕は攻め込みたいだとか、そういうふうに思っているんじゃないのです。  当たり前なのですよ。国連決議が出ない限り、幅広い、実効性のある、経済制裁を実効性あらしめる活動というのはできないのですよ。できないのですけれども、じゃ、国連決議が出るまでの間、何にもしなくていいんですかということを僕は話しているのですよ。しなくちゃいけないことすらできなくなりますよということを申し上げているのです。考え方です。これを御理解いただけますか。僕は、国連決議がなくて何もやれと言っているのではないのです。国連決議をここに入れることによって、できることすらできなくなると言っているのです。  総理外務大臣防衛庁長官は、周辺事態というのは何ですか、日本の安全保障日本の平和と安全に極めて重要な影響を与える事態だといつも言っているではないですか。国民の生命と財産がかかわってくる問題ですよ。それに対して国連決議が出るまでの間何もしていない、できるのだけれども法律がないからできない、おかしいのではありませんか。国連決議を外しておいてあげて、そして、ちゃんと国連決議が出たときにそれに遵守した形でもって十分できるではありませんか、そういうことを言っているわけです。  いかがですか。考え方です。政府案がどうのこうのではなくて、考え方としてどうですか。
  158. 高村正彦

    ○高村国務大臣 委員がおっしゃっているのは一つの考え方だと思います。一つの考え方だと思いますが、今は何もできない中から、少なくとも国連決議があった場合にできますよ、こういう法案を出しているわけであります。  そして、国連決議があった場合ということをわざわざ書かなくたって、これは国内授権法であるから、国際法の枠でできるではないかと言われれば、それもそのとおりです。それもそのとおりですが、エモーショナルということを委員はおっしゃいましたが、やはりエモーショナルなことというのは必ずしも軽いことではないわけでありまして、国際社会がどう感じるか、国民がどう感じるか、そういったことも考えなければいけない要素であります。  でありますから、さっきも言いましたように、安保条約の中に国連憲章を守れと書かなくたって守らなきゃいけないに決まっているわけですけれども、そういうことは書くというのが普通の法律の建前でありますから、これは国内授権法であっても念のために書いておいた方がいいかなと。  それを書いたことによってできなくなることがどの程度想定されるのかということが、本当にそれによって全然この規定が意味がなくなってしまうようなことであればそれを外して、大いに委員がおっしゃるような場合が想定されてそれで初めてこの規定の実効性がある、こういうことであれば別ですが、必ずしもそうでもないのではないかなというのが今の政府の考え方でございます。
  159. 東祥三

    ○東(祥)委員 先ほど局長も言われました。まだ安保理決議が出ていない、機能していない状況下において、友好国と協調して外為法による送金停止等の法的手段を駆使しようとする、いわゆる自主的な一定の経済制裁を科すことが当然必要と思われる事態において、それを実効性あらしめるためには、少なくとも日本として、日本の船あるいはまた日本と友好関係にある国の船、これをちゃんと検査できるようにしておいた方がよろしいのではないですかということを申し上げているのです。  国連決議を付与させることによって、その部分の法的な根拠というのはなくなりますよ。いかがですか、この点について。
  160. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 委員の御意見は論理的に一貫した貴重な御意見であるというふうに思います。  他方、先ほども申し上げましたように、船舶検査というのは、ちょっとまあ砕けた言い方で申し上げますと、先に船舶検査ありきというよりは、経済制裁というものがあるということだと思うのです。その経済制裁については、日本は実効性を持って先ほど申し上げましたような外為法などによる貿易等の規制、その規制を担保するための取り締まり活動といった措置を発動できるわけでございます。  そういう全体としての経済制裁の措置の総合体の中にあって、船舶検査についてどのような法律の立て方をするかというのが問題でございまして、その点につきましては、私たちは、今回の法律にございますように、国連安保理決議の存在を前提にしたということが、素直に実効性を担保するという観点から有益ではないかというふうに考えた次第でございます。
  161. 東祥三

    ○東(祥)委員 僕は有益でないと言っているのではないのですが、まさに局長がおっしゃられるとおり、例えば外為法による送金停止等、これを具体的に実効あらしめる一つの手段として、日本から出ている船あるいはまた日本と友好関係にある国から出ている船、こういうものを検査することが、逆に、この国連決議をこの法案に入れることによってできなくなるのではないですか、こういうふうに僕は申し上げているのです。日本の国に関しては、それはできるでしょう。友邦国の船に対してはどうですか。局長、答えてくださいよ。できないのですよ、これを入れているがために。  それじゃ、そういう措置を、日本の政治家が、日本の最高の位にいらっしゃる方々が、こういうものはもうやらない、そういうことをお考えになっているのですかということを僕は言っているのです。  先ほど外務大臣が、エモーショナルという言葉は別に悪いだとかそういう意味で僕は使っていません。情緒的に判断しちゃいけませんよ、事は国民の生命と財産にかかわってくる問題です、ありとあらゆる角度から可能性を追求しておかなくちゃいけないんじゃありませんか、この視点から申し上げているのです。いかがですか。
  162. 高村正彦

    ○高村国務大臣 先ほどから申し上げているように、委員が御指摘のような場合には、国連決議がない場合でありますから、この法律からいえばできない、そのことは事実でございます。
  163. 東祥三

    ○東(祥)委員 そのことだけ確かめておきたいと思います。  次に、武器の使用についてお伺いいたします。  いつも私は、この場であるいは予算委員会で、官僚の皆さん方に対して罵倒を浴びせ続けておりますけれども、言葉が足りないもので、また言葉を知らないもので大変恐縮に思っておりますが、この武器の使用についても糾弾したいというふうに思っております。  私は、国連の平和活動への協力の場面で、戦場の現実を知らない官僚が、みずから責任を負わずに済むように、現場の将兵に過酷な条件を押しつけてきたということを改めてここで糾弾しておきたいというふうに思うわけです。政府という厚い被膜のもとで、常に匿名で、決して国民に対して責任をとらない官僚が、すべての方々を言っているわけじゃありません、憲法論議を惹起することを恐れる余り、現場に責任を押しつけ続けてきているのだと思います。  例えば、彼らは、憲法論議を避けるために、自衛隊のかわりに文民警察官をカンボジアに派遣し、結果として優秀な警官を殺しているわけです、官僚にすべての責任を負わせようとは思いませんけれども。これは、政治家ですよ。  また、改正前の平和協力法では、官僚が憲法論議でみずからが責任をとることを恐れる余り、カンボジアに派遣した個々の自衛隊員、すなわち国の命令を遂行することだけを教え込まれている自衛官に、彼ら個々人の責任で武器を使用させるという奇怪な仕組みをつくり上げてしまいました。これは、最高の政治責任を、末端の、前線で頑張っている自衛官になすりつけるものではないのか、このように私は思います。これこそ、平和主義のもとにシビリアンコントロールの精神を、扼殺するという激しい言葉がありますが、戦後最大の愚行の一つだと思います。改正したんだと思いますが、これから言われる点が、まさに同じような愚行を繰り返そうとしているわけです。  つまり、例えば現在の周辺事態安全確保法における武器使用の規定は、遂行すべき任務に照らして余りに抑制的であると私は考えております。自衛隊は、私どもは軍隊であるというふうに言っている、政府自衛隊だと言っているのですが、自衛隊は、船舶検査において、こそ泥のような密輸船舶のみを対象として取り締まるわけではありません。今回の北朝鮮国軍の偽装船舶があらわれたときにも対応せねばなりません。  この関連で具体的にお伺いさせていただきたいと思うのですが、政府はこれまで、任意の職務質問船舶検査が実効あるものであると主張してまいりました。今回の不審船の取り逃がし事件に明らかなように、基本的にお願いベースの取り締まりには全く実効性がないことが明らかとなっているのじゃないですか。政府国民に目隠しをすべきではないのではないのか、このように私は思います。  北朝鮮の体制問題については私は問いませんけれども、密輸にかかわる人間が、純粋な民間商社の人間であるはずがありません。正規の北朝鮮軍や偵察局の特殊工作員がかかわると考えるのが常識でしょう。このように、相手が偽装した軍や特殊部隊に所属する船であれば、周辺事態安全確保法案の船舶検査の仕組みは全く無力であることを率直に私は認めるべきだと思いますが、この点について、防衛庁長官、いかがですか。
  164. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 私は、全く無力だとは考えておりません。周辺事態安全確保法の十一条は、後方地域捜索救助活動また船舶検査活動のうち一定の場合には、その職務を行う際に武器の使用が許されるわけで、自己または自己とともに当該職務に従事する者の生命または身体を防護するための必要最小限度の武器使用を行い得るよう措置したところであります。  また、本法案に基づく自衛隊活動は、外部からの影響を受ける蓋然性を極力排除した状況のもとで行われるものでありますけれども、任務中において不測の事態が発生した場合、これが自衛隊法九十五条の武器等の防護のための武器使用の条項の要件を満たす場合においては、武器を使用することはできるわけであります。  政府としては、こうした枠組みのもとで、憲法第九条との関係で問題を生ずることなく、実質的に有効に機能する活動を行い得るものと考えており、ぜひ御理解を賜りたいと思います。
  165. 東祥三

    ○東(祥)委員 防衛庁長官、現在の周辺事態安全確保法案と自衛隊法をあわせて読めば、今おっしゃったとおり、自衛官は、周辺事態において、自衛隊法第九十五条の武器防護の権限と、周辺事態安全確保法案第十一条の規定によって武器使用の権限が与えられていると考えます。問題は、これで十分なのかということを私はお尋ねしているわけです。  例えば、船舶検査に乗り込む際には、数人の自衛官が体一つで相手方船舶に乗ることになります。その際には、護衛艦などの防護を目的とする武器防護のための武器使用はできませんね。周辺事態安全確保法案第十一条の規定だけが、武器使用の権限根拠となっているわけです。しかし、この規定では、そもそも自己保存のためにしか、自衛のためにしか武器使用が許されない。しかも、相手を殺傷してよい場合は、正当防衛と緊急避難に限られるとされています。これでは、敵の銃口に身をさらして、敵が発砲して初めて反撃できるというものと何ら変わりがないんじゃないですか。  つまり、屈強の特殊工作員を乗せた北朝鮮不審船に乗り込むような場合には、乗り込むことになる海上自衛官は全員死ねということになるんじゃありませんか。このような現場の兵士の直面する危険を政府はどのように認識されているんですか。それを私はついているのですよ。いかがですか。
  166. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 船舶検査の場合に、国連の決議があろうとなかろうと、これは同意が必要であるということは変わりないと思うんです。だから、国連の決議があってもやはり同意を要件としていくわけであります。あるいは、なし得る場合とすれば、旗国の同意があるとか、あるいは二国間以上または地域的な取り決めがある場合等が想定されるわけです。  ですから、同意しないで検査をすることができない場合は、今のような、テロがいたり海賊がいたりというような場合でしょうから、そういう場合には船舶検査が事実上不能となりますから、委員の御心配はよくわかりますけれども、私どもはこの程度の規定しか今の憲法解釈の中ではできなかった、こういうことであります。
  167. 東祥三

    ○東(祥)委員 まさに先ほど申し上げましたとおり、この周辺事態安全確保法案の船舶検査の仕組みというのは無力ではないのかということを、今の長官の言葉によって、まさに裏打ちされているじゃありませんか。  同意原則を求めている国というのは日本しかないと思いますよ。乗るに際して、どういう乗り方をするか。私たちは権限があるんだからどたどた乗るのか、乗らせていただきますよと。当たり前ですよ。それを、原則として入れているというのは日本だけですよ。  じゃ、相手から見るならば、当然、日本は同意原則なんだから、私たちは全く潔白な船に乗っているとするならば、どうぞ日本の自衛官の皆さん、調べてくださいということになりますよ。不審なものを持っているとする、これは見られちゃやばいといったときに、同意原則があるんだから、自衛官が来ても、乗れません、嫌ですと。これでは、何の船舶検査活動もできなくなるということでしょう。全くばかげた法律案じゃないですか、これは。国連決議があって、まさに経済制裁措置を実効あらしめるものにならないじゃないですか。  多くの方々が言うのは、商船に対して軍艦で行っているから必ずとまってくれるよ、とまってくれて、同意原則があるんだからちゃんと入れてくれるよと。逃げちゃったらどうするんですか。威嚇射撃もしないと言っているわけです。  今回領海で起こったことは、皆さん御存じじゃないですか。国民全員が知っていますよ。本当に捕まえる、そういう覚悟をしているのかどうか。  捕まえるに当たっては、当然、自分自身の身の安全を考えなくちゃいけませんよ。自衛官の皆さん方に、ちゃんとした任務を遂行するための装備と権限を与えていますかということを、私は総理外務大臣、野呂田防衛庁長官に提示させていただきまして、僕の質問を終わります。  以上です。
  168. 山崎拓

    山崎委員長 これにて東君の質疑は終了いたしました。  この際、暫時休憩いたします。     午後零時三十二分休憩      ————◇—————     午後一時四十三分開議
  169. 山崎拓

    山崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。上原康助君。
  170. 上原康助

    ○上原委員 私も、せんだっても質問をさせていただきましたが、改めて、問題点を指摘しながらお尋ねをさせていただきたいと存じます。  実は、きょう四月一日は、五十四年前に沖縄本島に米軍が上陸をした日なんですね。そういう意味では、その後の沖縄の苦難の歴史を振り返ってみて、大変重たい気持ちでこの質問席に今立たざるを得ない心境であります。  なぜ今また、こういう国民の間に大変多様な意見のある法案の議論をしなければいかないかという、歴史の皮肉というか繰り返しというのかを、いささか私なりに思っているところです。  そこで、まず防衛庁と外務省にお尋ねしますが、最近の防衛庁が所持しておるところの防衛秘密がどのくらいあるのか、お答えを願いたいと存じます。あわせて、外務省はどういう機密、秘密事項等を持っているのか。私は中身を聞こうとは思いませんが、概略をお示し願いたいと存じます。
  171. 守屋武昌

    ○守屋政府委員 お答えいたします。  防衛庁で取り扱う秘密には、日米相互防衛援助協定に基づき米国から供与された装備品等に関する事項を内容とする防衛秘密と、これ以外の防衛庁の業務に関する秘密である、いわゆる庁秘の二種類がございます。それぞれ、機密、極秘または秘の三つに区分されております。  防衛秘密につきましては、平成九年十二月末現在で、機密はありませんが、極秘が約五百八十件、約三千九百五十部、秘が七千九百六十件、約十四万六千四百五十部、合計約八千五百四十件、十五万四百部となっております。  庁秘については、同じく平成九年十二月末現在で、機密が約二千二百十件、部数にいたしまして四万八千七百九十部、極秘が約一万五百十件、部数にいたしまして六万四千八十部、秘が十一万二千八百件、部数にしまして百七十二万九千二百部ということで、合計、庁秘につきましては十二万五千五百二十件、部数にいたしまして約百八十四万二千部、こうなっております。
  172. 東郷和彦

    ○東郷政府委員 突然のお尋ねでございますが、外務省が所掌しております秘密事項という御質問と心得ましたが、一般的に申し上げまして、諸外国との交渉にかかわる記録等、それから情報源との関係を踏まえました上での諸情報等が秘密事項というふうに指定されております。
  173. 上原康助

    ○上原委員 防衛庁ガイドライン関係あるいは日米関係と我が国独自のそういった機密、極秘、秘等があると思います。それを分類して、今件数はおっしゃったんですが、分類した上で資料として出しますね。
  174. 守屋武昌

    ○守屋政府委員 今私が答弁いたしましたのは、件数と部数につきまして、それぞれ平成九年十二月末現在での保有数を答弁させていただきました。
  175. 上原康助

    ○上原委員 ですから、それを資料として、ガイドラインに関係するものがあるならガイドラインに分類した件数でいいですから、お出しできますねということを聞いているんです。
  176. 守屋武昌

    ○守屋政府委員 ガイドラインに関連するものとして特定して、防衛秘密を切り分けてお出しすることは、事柄の性質上できないと考えております。
  177. 上原康助

    ○上原委員 外務省は、あんなお粗末な答弁では納得できませんよ、それは。もう少し丁寧に答えてください。件数もわからぬの。
  178. 東郷和彦

    ○東郷政府委員 突然のお尋ねでございますので、申しわけありませんが、件数等、今私承知しておりません。失礼いたしました。
  179. 上原康助

    ○上原委員 では、それは後ほどの質問と関連しますので、また、委員長にも、別の資料の要求もいたしますが、出さないというなら、ひとつ今の件を含めて、理事会でも御相談を願いたいと思います。よろしゅうございますか。
  180. 山崎拓

    山崎委員長 資料要求の取り扱いについては、理事会協議事項といたします。
  181. 上原康助

    ○上原委員 そこで、なぜそのことを冒頭にお尋ねしたかといいますと、もちろん防衛問題、外交問題ですから秘密事項があることは、これは私も一定の理解をいたします。しかし、いろいろな議論を展開をしようとしても、国会議員もよくわからない、どういうことが日米間でやりとりされているのか。ある意味では、政府部内でどういう協議や調整がなされているかも定かでない。  この周辺事態確保法案との関係においては、単なる防衛庁、外務省だけで済ませることじゃないんですね。自治省、運輸省、厚生省、郵政省、大蔵も関連するでしょう。法務も関連するでしょう。後ほどそれぞれの方々に聞きますが、余りにも機密事項、秘密事項として情報開示をしないところに、今日の安全保障政策全般について、なかなか国民合意、各党合意も容易でない事態をつくってきたのじゃないのか。そのことを冒頭指摘をしておきたいと存じます。  そこで、けさほどもいろいろお尋ねがあって、もう恐らく、事前協議の話とか極東の範囲とか極東条項等について聞いても、これまでの外務大臣や関係政府委員答弁より前進はないかと思うんですが、私はもう一遍確かめておきたいんです、総論的に。  この間のお尋ねでも聞いてみたわけですが、旧ガイドラインと新しいガイドラインを比較検討してみて思うことは、皆さんは基本的枠組みは変えないんだということを盛んに強調しておられるんですね。私がきょうもう一遍確かめておきたいことは、旧ガイドラインの方では、いわゆる事前協議を主題としないということが明記されておったんですね。前提条件として、事前協議に関する諸問題、日本の憲法上の制約云々、あるいは非核三原則等々を協議の対象としないということになっておった。だが、今回は、この事前協議の諸問題というものを新ガイドラインでは落としているんですね。私は、これはせんだってからの外務大臣の説明とか政府委員の説明では納得しがたい面があると思うんです。  この事前協議に関する諸問題を、旧ガイドラインでは協議の対象としないということが、今度は協議の対象にするということなのか、その必要性は認められなくなったということなのか、その点をもう一遍明確にしてください。  それと、日米間では、この事前協議に関する諸問題を対象にしないということについて、どういう議論がなされて、こういう新ガイドラインで言う前提条件になったのか。これは、これからも私はいろいろ問題が出てくると思いますので、もう一度明確にしておいていただきたいと思うのです。
  182. 高村正彦

    ○高村国務大臣 新たな日米防衛協力のための指針では、「基本的な前提及び考え方」の一つとして、日米安保条約及びその関連取り決めに基づく権利及び義務を変更しないということが明らかにされているわけであります。ここに言うその関連取り決めには、事前協議に関する岸・ハーター交換公文が含まれるため、新指針においては、事前協議について岸・ハーター交換公文に基づく権利義務関係を変更しない旨特記しませんでしたが、まさに変更しない、こういうことでございます。  事前協議の運用にかかわる事項については、日米両国政府が日米安保条約締結以来長年にわたり確認してきたものであり、これに従い、今後とも対応していく考えでございます。
  183. 上原康助

    ○上原委員 これは、日米間では何かそういうことについてのやりとりはあったのですか。これは政府委員でも結構ですよ。
  184. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 ガイドラインの作成に関します日米間の協議におきましては、結論としては、まさに今大臣から申し上げました基本的な前提として書かれてあるとおりでございます。  実際の日米間の話し合いにおきましても、まさしくその事前協議の問題については、これはガイドラインとの関係で取り上げるとか協議をするというような主題とはしない、しないといいますか、そういう主題にならなかったというのが経緯でございます。
  185. 上原康助

    ○上原委員 恐らくそういう内容というか、その程度と言ったら失礼ですが、お答えしかしないと私も思っているのです。  しかし、私なんかがいろいろ、この新ガイドライン、旧ガイドラインあるいは共同宣言等をよく読みこなしてみて感ずることは、恐らく、この事前協議を対象にしなくなったということは、新ガイドラインで打ち出した、相互協力計画の作成とか、日米共通の準備段階を選択し得るよう、共通の基準の確立とか、日米間の調整メカニズム等を日ごろから積み上げていく、平時からというか平素からというか、これらのことを具体的に構築をしていって、日米安保条約の実施に関する事前協議というものを——岸・ハーター交換公文といったって、もうこれは議論してもいろいろすれ違いになりますからそれ以上言いませんが、それを信じている国民はいませんよ、正直申し上げて。日米安保ができてから今日までいろいろなことがあったにもかかわらず、一度もアメリカ側から協議を提起したことがない。何が義務ですか、アメリカの。そういう不信感があるから、安保問題についての国民のコンセンサスが得られない、我々もこういう質問をしなければいけないということを知っていただきたい。  私は、そこに大きなねらいが隠されているんじゃないかという気がしてならないのですが、この新ガイドラインでいろいろ取り決めようとすることを——事前協議というのは、御承知のように2プラス2とかあるいは政治判断が必要になってきますね、これは。そうでしょう、外務大臣。事務方で、政府委員が決められるようなことじゃないのでしょう。どうなんですか、これは。その点をまず聞かせてください。
  186. 高村正彦

    ○高村国務大臣 米側から事前協議の申し出があった場合には、日本側がその諾否を決定するに当たっては、原則として閣議を開いて行います。どうしても閣議を開くような時間がないような場合には、総理外務大臣防衛庁長官等で決める場合もあり得る。これは、従前からそういう答弁を繰り返してきたところでございます。
  187. 上原康助

    ○上原委員 そうであるならば、やはり旧ガイドラインで明記されておったことが新ガイドラインでそれだけが落とされているということに疑問を持つというのは、当たり前のように、常識のように私は思えてならないわけです。後で聞きますが、この間も調整メカニズム、包括的メカニズムについてもお尋ねしましたが、そういうものでやるんだから、もう事前協議なんかどうせアメリカ側は提起しないんだからということでこの問題を落とされたのじゃないかというのが私の疑問点であるということを申し上げておきます。  それと、けさ前原先生の御質問に対して、総理外務大臣、いろいろお答えありました。それは私も随分聞かされてまいりましたが、事前協議問題というのは、ライシャワー元大使の御発言とかあるいはラロック提督、アメリカの海軍少将ですけれども、ラロック証言、いわゆる一時寄港とかトランジットというのは、有事の場合の核持ち込みというのはもう日米間で約束されているんだということを、何回もアメリカ側からそういうメッセージや情報が流れてきたんですよ。さらに、私も佐藤総理ともこの席でいろいろやりとりをいたしました。あるいは「他策ナカリシヲ信ゼムト欲ス」という若泉京都産業大学教授の分厚い御本なんかもあるんですよ。  そういうことを見ると、やはり事前協議というものが形骸化し、一向に国民の期待というか、それを解明してもらいたいという疑問に答えてこなかった。このことは、総理を初め、やはり私は政権党である内閣としてお考えになっていただかないと、むなしさを感じます、こういう問題をきちっと国会でできないということは。  総理、橋本前総理は、やはり事前協議については、相当経過している、安保の運用についてもあるいは国際情勢にも変化がある、日米関係の力関係も変わってきている。まあ、そうはおっしゃっていない、力関係まで変わってきているとは。私はそういう認識。そういう意味で、事前協議については、やはり今日的次元に立ってもう一度日米間で検討する時期に来ているのじゃないのかという示唆をした御答弁があるんですよ。橋本前総理はそういうお立場でこの問題に対処しようとしておられると私は理解をしております。  小渕総理もそれだけの決断を持って、今私がいろいろ指摘をしたことについて日米間で、この事前協議問題を解明するとか、あるいはもう少し透明度を高めていくということにならないと、周辺事態法にしても安保のこれからの運用にしても、安全保障問題全体について私は大変懸念をする一人なんですが、総理のお考えを聞かせてください。
  188. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 御指摘の橋本前総理答弁、すなわち平成九年四月でありますが、日米両国が同盟国として従来以上に緊密に協議していくことが重要であり、また、日米同盟関係について多くの国民の支持、理解を得ていかなければならないことを述べたものだと考えております。  このような考え方のもとで、政府としては、日米安全保障体制の信頼性の増進に向け、日米防衛協力のための指針の策定作業を米側との間で進めてきたわけでございまして、この結果、平成九年九月に取りまとめられた指針においては、その基本的な前提及び考え方として、日米安保条約及びその関連取り決めに基づいて、権利及び義務並びに日米同盟関係の基本的な枠組みは変更されないこととされたわけでございます。  このように指針にも示されておりますとおり、日米安保条約第六条の実施に関する岸・ハーター交換公文に基づく事前協議を含め、安保条約の法的枠組み及びその運用の見直しを行うことは考えておらないわけでございます。  上原委員、この事前協議につきましての長い経過の中で、見直しをすべきではないかという御意見かと存じましたけれども政府といたしましては、この事前協議というものが、六〇年の安保条約改定におきまして導入をされて以降、こうした形で運用されてまいりまして、その結果として、最終的には日米の同盟関係がますます強固なものになり、かつ、そのことによって我が国の安全が確保されておるということでございまして、さらにこれを、信頼性を高めるための今度のガイドラインでございますので、長くなりましたが、今日政府としては、これを改め、交渉するような立場にはございません。
  189. 上原康助

    ○上原委員 答弁してもらったら、ますます後退したら困る。  それでは逆にお尋ねしますが、事前協議したいという提案権は日本側にあるの、ないの。
  190. 高村正彦

    ○高村国務大臣 事前協議というのは、委員がよく御承知のとおり、三つの主題について、米側が、こういうことをやりたい、例えば我が国の基地を使って戦闘作戦行動をやりたいというときに、事前協議を提起して、我が国がイエスと言わない限りできないという性質のものでありますから、我が国の方にそういう提起をする権限があることは必要ないわけであります。  アメリカがそういうことを提起して、日本がイエスと言わない限りアメリカはやってはいけない、そういう前提に立ったものが事前協議という制度でありますから、我が国の方にはそういう権限はないわけでありますが、安保条約四条に、もろもろのことを協議する随時協議という規定があるわけでございます。
  191. 上原康助

    ○上原委員 提案権があるかどうかも過去において相当議論されてきたんですよ、それは。日本側はできない。まさにこれは聞いている国民が御判断するでしょうね。これだけ問題が、疑問がある、いろいろアメリカ側からも、やはりおかしい、おかしいというよりか、表に出せなかったことも退役なさってから発言しておる。それは国民も聞いていらっしゃいますよ。マスコミだって聞いておられる。その疑問に答えるのが政治なんでしょう。  幾ら外交は政府の専管事項といったって、こういう答弁では、アメリカが持ち出してこなければ我が方は疑問があっても提起もできない、逆に言うと、自由勝手に日本の基地は使用しなさいということになるんじゃないですか。そこに非常に問題があり、依然として皆さんの思考というのは冷戦思考下の延長線にしかない。改めてください、そういうのは。  だから私は、本当にこの問題は、ただすれ違いで終わらせてはいかないと思うのです。委員長、あなたは防衛庁長官もして大物なんだから、これは政治で片づける以外ないよ、政府がこんな答弁なら。ひとつ理事会で検討してみてください、事前協議問題。いいですか。
  192. 山崎拓

    山崎委員長 事前協議問題の内容について、あるいはあり方につきまして、ちょっと理事会の協議事項とはならないと存じます。
  193. 上原康助

    ○上原委員 そこは、そうおっしゃればそうかもしれませんが、将来の総理大臣になる方はそういうお考えじゃいかないということも申し上げておきましょう。  次に、極東条項、極東の範囲についてももう一度確かめておきます。  これも恐らく、私の見解と政府外務大臣防衛庁長官答弁はまた異なるでしょう。一点、きのうもおっしゃっていましたが、政府の統一見解、極東の範囲、一九六〇年二月二十六日のこの統一見解、今も有権解釈でありますね。それだけ、はいかノーか答えてください。
  194. 高村正彦

    ○高村国務大臣 イエスであります。
  195. 上原康助

    ○上原委員 そうしますと、最近の日米の外交文書あるいは外務省のいろいろな文書とか共同宣言等々を見ても、極東という表現はほとんど出てこないですね。みんなアジア太平洋地域というふうになっている。ある意味では、グローバル・アンド・リージョナルというような、世界規模というか地球規模というか、地域と両方の安全保障ということに変化してきている。これは、私もそれなりに、国際社会の変化等によっていろいろ弾力的に物事が運用されていくということは理解をいたします。  しかし、この周辺事態法で言うところの米軍の在日駐留目的とどう整合性がとれているのか。けさもありましたが、アメリカの解釈と、アメリカが目指している戦略、世界戦略あるいは政治戦略なり軍事戦略と日本の考えているものとは、私は必ずしもすべて一致するとは思わないんですよね。安保条約の目的の範囲なのか安保条約の範囲内なのか、安保条約の目的達成に寄与する米軍活動日本政府としては容認しているのか、その点をはっきりさせてください。
  196. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 もう言うまでもございませんが、安保条約の第六条で、在日米軍米軍は、日本国の安全並びに極東における国際の平和と安全に寄与するために、我が国の施設・区域を使用することが認められているわけでございます。  その目的で申します極東の範囲ということにつきましては、先ほど来大臣からもお答え申しましたとおり、昭和三十五年の政府統一見解に述べられているとおりでございまして、安保条約の対象地域が極東からアジア太平洋地域に拡大したとか変化したというようなことではございません。  したがいまして、安保条約の目的の達成のために活動する米軍というのは、安保条約の目的たる日本並びに極東の平和と安全の維持のために活動している米軍、こういうふうな考えでございます。
  197. 上原康助

    ○上原委員 そこは一応理解できます。そうしますと、この周辺事態法とはどうかかわってきますか。周辺事態法で言う米軍我が国を使用してというか活用しての行動範囲というのは、極東の範囲ということで理解していいですね。
  198. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 今先生、米軍の行動範囲とおっしゃられましたけれども、その行動範囲、活動範囲に関しましては、昭和三十五年の統一見解におきましても触れられているところでございまして、その行動範囲というのは、その攻撃または脅威の性質いかんにかかわるのであって、必ずしも前記の区域、すなわち極東でございますけれども、その区域に局限されるわけではないということでございます。
  199. 上原康助

    ○上原委員 必ずしも前記の区域に局限されるわけではない。では、どこまでなの、局限されることはないと。
  200. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 局限されるわけではないといいますと、それではどこまでかということにつきましては、これは先生も御承知の、いわゆる極東の周辺ということについて従来国会でもいろいろ議論があり、政府側からも御説明申し上げてきたところでございますけれども、まさに極東に対します攻撃でありますとか脅威の性質等によりましてそれは決まってくるものであって、地理的に極東の周辺というものをあらかじめ画定しておくことはできない、しかし、おのずとそれは限界があろうということでございます。
  201. 上原康助

    ○上原委員 この間も私が、沖縄から第三海兵師団の一軍が中東それからアフリカまでにらんで行動したことについて、それは米軍の行動は認められるんだというような答弁でまた逃げた、逃げたというかごまかした、失礼だが。  一つ一つ詰めようとしたら、区域に局限されるわけではないとか言うのだが、ちょっと、私が下手な説明をするよりは、地図を。これはある社のものを僕が借用して大きくしたのですが、これならわかりやすいと思うのですよ。極東の、まさにこの三十五年二月の統一見解というものは、この点線の範囲なんだ。枠内なんですよ。フィリピン以北、日本周辺。これらに台湾はぴっちりはまっている。だから中国がクレームをつけるのもわかる。それはまた別の問題。  これよりどう拡大されるのですか、今の場合、米軍のあれは。どうなっているのか。日米安保条約で、我が国米軍を駐留させて、基地を提供して、我が国の安全と極東の平和と安全のために寄与する行動というものは、本来この範囲のはずなんです。これを今は、アジア太平洋とか、しかも共同宣言では、この間も申し上げましたように、まさに地球的規模と書いてある。だから、その点、はっきりさせてくださいよ。これからどういう、アジア太平洋という概念でいくのか。皆さんは基本的枠組みは変えていないとおっしゃりながら、基本的枠組みはだれが見たって変わっているんじゃないですか。
  202. 高村正彦

    ○高村国務大臣 安保条約の目的は、まさにその五条、六条に言われているところからわかりますように、日本我が国と、そして極東の平和と安全、こういうことでございます。それは全く変わっておりません。  それから、その極東に米軍活動が局限されるものではない、こう政府委員が、北米局長が言いましたが、これは何も政府が新しく言ったことではなくて、昭和三十五年の統一見解にそのことが書かれているわけであります。  ですから、日米安保条約の目的である我が国と極東の平和と安全、その極東ということに関しては、今も全く変わっていない、こういうことでございます。
  203. 上原康助

    ○上原委員 それほどさように、政府安保政策というか、在日米軍基地の米国の使用権というものが無制限に拡大されてきたと私は言わざるを得ない。歯どめはないんじゃないですか。国民はそのことを問題にしているのですよ、基地周辺住民も。地位協定にないことだってどんどん、地位協定二十四条も、特別協定をつくるとかやっている。これでは、日本は独立国家なのか、主体的判断で外交をやっているのか、基地運営をやっているのかということに、我々も野党時代から指摘をしたし、今だって疑問を持っている。そこはもう少しきちっとやってもらわぬと困るということを強く指摘しておきたいと思います。  私は、図示をすれば明確になるように、大変これは問題があると思いますよ。何でも法律や条約というものを、すべてしゃくし定規のように、番匠がねのように解釈、運用しなさいとまでは私も言いませんけれども、余りにもひど過ぎる、今の状況は。その点、指摘しておきます。  次に、新たな基地提供の問題についてお尋ねをしますが、この新ガイドラインによりますと、「米軍活動に対する日本の支援」というところで「施設の使用」というところがありますね。それと、周辺事態確保法の別表でしたかな、これはガイドラインの別表か、その中にもいろいろ基地の提供があります。  これも意外ですよね、よく調べてみますと。「日米安全保障条約及びその関連取極に基づき、日本は、必要に応じ、新たな施設・区域の提供を適時かつ適切に行うとともに、米軍による自衛隊施設及び民間空港・港湾の一時的使用を確保する。」こういうふうになっておるわけですね。  それで、この新たな施設・区域の提供を適時適切に行う場合に、どういう手順で、どこで決めてやるのか、まずその点からお答えください。
  204. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 日本によります米国への施設・区域の提供について、今回特別に新たな合意を米国としたとかするとかいうことはございませんで、それは従来どおりの、地位協定の規定に基づいて、もしそういうことがあれば、提供するとすればその手続というものは従来どおりの手続であるということでございます。
  205. 上原康助

    ○上原委員 ですから、地位協定に決められたようなことで提供しないとできないというのは、私もわかりますよ。地位協定の何条。二条、三条、あるいは二十五条、二十五条は合同委員会ですから、もちろん合同委員会のことは後で聞きます。これもでたらめ過ぎる。  周辺事態法第九条で事態への協力を求めるということと、この——ここに書いてあるのよ、あなた。新たな施設・区域の提供をやるんですよ。しかも、自衛隊施設ならまだわかる、私もこれは。自衛隊施設なら、これは有事に近い、日本有事に発展するかもしらない危険性がある、その場合に自衛隊の基地というものを米軍も共同使用するというところまでは、我々の頭でも理解できる。民間空港、港湾の一時的使用まで含むんですよ、これは。それはどこで協議して、どういうふうな手順でやるんですか。日米地位協定でやりますなんていったって、当たり前の話じゃないか。
  206. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 先生のお尋ねは、周辺事態に際しまして、地位協定の例えば二条四項(b)に基づきまして港湾とか空港の提供をするというようなことがあるかどうか、その場合の手続はどうかというお尋ねかと思います。  そういたしますと、周辺事態に際しまして我が国がいかなる措置をとるか、その施設・区域をそもそも提供するようなことがあるかどうかということにつきましても、あくまでもそのときの事態の規模とか態様とかを総合的に勘案して検討することになりますので、あらかじめ申し上げることは困難なわけでございます。  ただ、この二条四項(b)との関係でつけ加えさせていただきますと、現在でも、自衛隊以外の施設で地位協定の第二条四項(b)に基づいていわゆる共同使用が行われている施設というのは、実は三件あるだけでございます。この中で公共の用に供されている施設というのは、板付の飛行場一件でございます。こういう実態にかんがみますれば、今後、公共用の港湾や空港が一部にせよ共同使用されるというのが大幅にふえることがあるだろうかということについては、そういうことはなかなか考えがたいのではないかという感じがいたします。  それから、現実の問題といたしまして、これまで米側より我が方に対しまして、将来の周辺事態を想定いたしまして、個別の港湾や空港について施設・区域としての提供を地位協定上の手続に基づいて要請越したというようなことはございません。したがいまして、政府といたしましても、現時点においてそのような具体的な検討を行っているということも全くございません。
  207. 上原康助

    ○上原委員 新たな、大幅な提供は予測できないという、そこは、これまでの政府の、防衛庁が米側とやりとりしてきたこととは随分違うような感がいたします。  そこで、では、この地位協定二4(b)。私の理解は、この地位協定問題、米軍基地問題を議論した過程での理解というものは、もともと米軍基地として使用されておった、それが返還になって自衛隊基地になったとか、あるいは民間空港、港湾になったとか、そういう施設を一時的に米軍が共同使用するということが本来の二4(b)ということじゃなかったかと思うんですよね。だが、今度のこの周辺事態法では、二4(b)を適用して新たに民間の空港や港湾も提供させる、あるいは使用させる、そういう意図、そういう方針に変わっているんじゃないですか。その点、明確にしてください。
  208. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 まず結論から申しますと、そのような意図を持っているということではございません。  その上で、あくまで一般論として申し上げますと、日米地位協定の第二条四項(b)に基づきます、例えば民間の港湾とか空港の共同使用の場合を含めまして、およそその施設・区域を米軍提供することの可否、要否というような問題につきましては、これも繰り返し申し上げておりますが、日米安保条約の目的の達成、我が国の財政負担の問題とか社会経済的な影響、地域社会との関係といったようなものを総合的に勘案して判断されることになるわけでございます。  それで、さらにお尋ねの、仮に、周辺事態に際しまして、二4(b)を用いまして民間の港湾や空港の利用といいますか、提供を図るのではないかというお尋ねでございましたけれども、港湾とか空港の利用ということになりますと、現状におきましても、地位協定の第五条に基づきます港湾、空港への出入りということが多く行われているわけでございます。  そういう状況は今後とも恐らく変わりはないのだろうと考えられますが、その上で、仮に施設・区域の提供というものが必要となりますれば、それは、二4(b)であろうが一般的な提供であろうが、実際的な問題といたしましては関係の地方公共団体との調整というのが当然必要となってくるわけでございますし、関連の法令に従いまして、慎重かつ適切な対処ということを政府としては図らねばならないことは、これはもう申すまでもないことと存じます。
  209. 上原康助

    ○上原委員 そこで、民間の空港、港湾も、必要によれば五条あるいは二4(b)で活用できることだと思うんですが、そういう事態を想定してというか、また港湾あるいは空港等の一時使用等のことで運輸省なり、また情報通信ということもこのガイドラインの中では非常に大きなウエートを占めます、郵政省なり、防衛庁や外務省との協議なり調整とか、何かそういうことはなされておるのかどうか、その点、運輸大臣郵政大臣お答えをいただきたいと存じます。
  210. 川崎二郎

    川崎国務大臣 まず、二4(b)について上原委員いろいろお尋ねがございましたので、運輸省としての立場を申し上げておきたいと思います。  周辺事態に際しての第二条第四項(b)の適用については、理論的にはその可能性を否定するものではありません。しかしながら、実際には基本的に第五条で行うと考えておりますし、五条の場合に比べて、日米合同委員会を通じた手続が必要となること、自治体や民間事業者に対する調整もより慎重となること等から、迅速な協力という観点においても適用はまれであろうというように考えております。  なお、空港、港湾の個々の事案については、まだ防衛庁等とかと話し合いは持たれておりません。
  211. 野田聖子

    野田(聖)国務大臣 ちょっと質問の御通告がなかったので詳細は申し上げられませんけれども、地位協定に基づく周波数の割り当てが考えられると思います。
  212. 上原康助

    ○上原委員 これは後でまた聞きますから。一応全大臣おいでですから、だれに質問するかよくわかりませんよ。  そこで、運輸大臣、かつて極東有事の、旧ガイドラインのころ、運輸省が、たしかこれは平成八年の四月ごろかと思うんですが、空港の使用ということと港湾の使用について、地位協定との関連においていろいろ御検討をした経緯があるかと思うんです。空港の使用。港湾の使用。物資の輸送等、これが三番目ですね。四番目、海上の警備等。  この運輸省文書というものは、文書というか運輸省の見解というのは、今度の新しいこの周辺事態法の場合も、私はやはりこういう方針で政府部内で調整をしていくべきだと考えるんですが、その点、お考えがあればお答え願いたいと存じます。
  213. 羽生次郎

    ○羽生政府委員 お答えいたします。  確かに、平成八年の時点において運輸省から当時の自由民主党に提出した、当時の検討というのがございます。今の時点において、この見解を運輸省として変えることはないと思っております。
  214. 上原康助

    ○上原委員 変えることはないわけですね。これは自民党に提起したものなのか。何で僕の手元にあるんだろう。  そこで、これは、いろいろ中身は時間の都合がありますから申し上げられません。悪いことは書いてないが、しかし、協力はすると書いてある。当然でしょうね、政府の一省ですから。  今度は防衛庁にお尋ねします。  これは私は非常に重要視しているんですが、一体、今度の法案策定の過程で、九四年、九六年、今九九年ですから大分経過しているかと思うんですが、どういうことが日米間で協議されてきたのか、もう少しつまびらかにしていただかないといかないんですよね。さっき私が冒頭防衛庁の秘密事項を聞いたのもそういうことと関連するわけなんだが、余りにも防衛秘密、防衛庁秘ということで資料を出さな過ぎる。  時間の都合がありますから、朝鮮半島有事のことを想定していろいろ軍事的にシミュレーションするのは必要かと思うんですが、米国と韓国の間には、米韓合同作戦計画、一説には五〇二七号とも呼ばれているようであります。恐らく私は、これは推測ですが、防衛庁、外務省などは、この五〇二七号作戦計画などを参考に今回の日米の対応措置というものを講じようとしているのではないかと思うんですが、その点、防衛庁長官の御見解を聞かせてください。
  215. 柳澤協二

    ○柳澤政府委員 私どもは、旧ガイドラインのもとで日米の共同作戦計画の研究を行ってまいりましたけれども、先生がお触れになりました米韓の間でどのような作戦計画なりを持っているかということについては、全く情報を持っておりません。
  216. 上原康助

    ○上原委員 全く情報を持っていない。何といいますか、情報収集するといってAWACSを買ったりE2Cをたくさん使ったり、これからもいろいろやると言うんだが、全然、そのくらいも米側から情報は入らないの、本当に。それは、まあ、持っていないと言えば、持っていない。  それでは、具体的に、今度は防衛庁長官お答えください。  これまでも各党の代表の方々がいろいろお尋ねをしてまいりましたが、米側が防衛庁に提示をしたという千五十九項目の支援要求、在日陸海空軍、第七艦隊、第三海兵機動展開部隊等の七組織が九五年の十二月にまとめたものだという報道がしばしばなされております。これは、新聞名を挙げて恐縮なんですが、読売新聞が九七年の五月二十四日付で大きく報道をしております。最近は、朝日の二月二十三日付で報道されております。そのほか、私の記憶で、東京新聞あるいは毎日、産経等々も同様の報道が相当大きくなされてきておると思います。そして、防衛庁作成の米軍支援検討項目という、マスコミ報道等によると、十三分野三十六項目が具体的に例示をされております。私は、この報道というか内容というものは非常に信憑性が高い、こう受けとめております。  したがって、この間から防衛庁長官は、いろいろやりとりはやったけれどもそういうのはないよと、失礼な言い方をしますと、全くはしにも棒にもかからぬ御返答しかないんだが、これは、この法案を本当に詰めていく、あるいは国民の不安なり基地周辺住民の理解協力を得る努力をする上においては、絶対出してもらわないかない重要な内容だと思うんですよ。  まず、今私が指摘をしたこと等を含めて、改めて防衛庁長官の御見解をお聞かせください。
  217. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 今先生から御指摘があったような報道があるということは、私たちも承知しております。また、先般共産党の資料として配られましたが、これは共産党がまとめた資料でありまして、どれを原典にしてまとめたものかは私たちは定かじゃありません。  累次申し上げておりますとおり、日米間においては、日米安保体制のもと、平素からいろいろなレベルでの情報交換や協議が行われていることは事実であります。周辺事態等に際しての日米協力につきましては、日米防衛協力のための指針の見直し作業の中で、さらにそれが頻繁に繰り返されたことも事実であります。  その経過につきましては、平成八年の九月に見直しの進捗状況として報告をしております。それから、平成九年の六月の見直しに関する中間取りまとめという形で、対外的にも公表しております。そして、御議論をいただいたところであります。また、その検討成果は、平成九年の九月に新たな日米防衛協力のための指針ということで最終的に取りまとめられ、同年十二月に国会に報告を行ったところであります。  日米間の種々の意見交換や検討作業の中で、緊急事態に際しての米軍に対する我が国の支援についてもさまざまな形で議論が行われたことは、先ほど申したとおりでありますが、このような意見交換や検討作業の具体的な内容については、対外的に今明らかにすることは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、今委員が申されたとおり、千五十九の項目についてまとまった形で私どもが受け取って、これについて討議をしたという事実はないということを改めて申し上げさせていただきます。
  218. 上原康助

    ○上原委員 野呂田長官の人柄は私も尊敬をしている一人なんですが、その御答弁にはちょっと納得しかねますね、納得しかねる。これは、共産党さんがどういう資料をまとめようが、どの党がどう言おうが、私は私の立場でいろいろ調査もして発言をしているわけですから、これだけの内容のものがマスコミで報道されて、国民はこういうのを見ているわけですよ、実際の問題としては。もっとここにたくさん持ってきたんだが、もうどこへ行ったかわからぬけれども。  ですから、例えばこれは、「十一民間空港、米軍提供」「協力指針で防衛庁 十三分野の支援検討」「民間との連携課題に」といって分けてある。「在日米軍の主な支援要求項目」「防衛庁米軍支援検討項目」、これは読売新聞、九七年の五月、古い。  だが、最近は、連日のようにこういう大々的な報道がなされていますよ。自治大臣、「揺れる自治体」。皆さんだってこれはごらんになるでしょう。総理は見ないですか、新聞。真っ先にごらんになるんじゃない。  「航空条約の保護対象外」「米軍支援 民間機の武器・弾薬輸送」「揺れる自治体」「「有事」じわり現実味」「空港 成田 福岡 長崎 那覇 新千歳 関西 宮崎 鹿児島」「米軍要求の主な内容」「これは”実戦マニュアル”」、ここまで書く新聞も出ております。中央紙もことごとくそうなんですよ、皆さん、これは。だから、地方紙は余計に今こういう報道がなされているわけです、特に基地所在市町村においては。  ですから、これだけの具体的なものが、私は千五十九項目を全部出せとは言いません。だが、少なくともこの周辺事態確保法をおつくりになる場合に、しかも、日本側から、どういうものが必要か、皆さんは出してもらいたいというふうに在日米軍に提起をしたと書いてあるんです。やったんでしょう、本当は。  野呂田さん、あなた、正直にお答えくださいよ。それを、これだけ報道されても、なかなか言いにくいことかもしれませんが、全くありませんでしたで我々に審議しなさいというのが無理じゃないですか。どうしてそこまで隠さねばいかない問題があるの、これに。それは、今の御答弁では納得しかねる。
  219. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 せっかくのお尋ねでございますけれども、私は、それは何か相当昔に、表現は悪いんですが、作業部隊の第一線にいるころの人たちがあるいはそういう議論をしたのかもしれませんが、全くそういう痕跡は今は防衛庁の中には残っておりません。  第一、今委員指摘されたように、成田とか何とかの港とかということが日米の協議で決まったということであれば、これは、もう一番大事な、所管する運輸省に協議して決めているわけでありますが、予算委員会でもこの委員会でも、運輸大臣は再三再四、さようなことは防衛庁から協議を受けていないということをお答えしているわけであります。それはそのとおりでありまして、私どもも決めていないし、そういうことをまた全然議論していないわけですから、運輸省が知っているわけはないということを私も答弁してきたところであります。  重ねての委員のお尋ねでありまして、私も、そういうことがあればできる限りのことを御答弁させていただきますけれども、この件については、そういう事実はないということを改めて御答弁申し上げて、ぜひ御理解を賜りたい、こう思っております。
  220. 上原康助

    ○上原委員 これは、古いものだからといって、古いものではないと思うんです、私は。むしろ、それをベースにしてずっと積み上げてきたはずなんです、皆さん。これは、今の御答弁では、せっかくですが、私も、そういうことで、ああ、そうですかと言うわけにはいきません。  それと、もう一点聞いてからあれしますが、この新しいガイドラインができた、日米間で合意された、九七年ですか、その以後、このガイドライン関係とかあるいは在日米軍基地をめぐって、日米合同委員会ではどういう協議がなされてきたのか、何回ぐらい持たれてどういうような話し合いがなされたのか、お答えいただきたい。
  221. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 合同委員会は、大体定期的に、二週間とか三週間とかに一回開催いたしております。それは、地位協定の運用を中心といたしまして、いろいろな問題について協議をいたしておりますが、このガイドラインの実施とかいった問題については、合同委員会では特別話し合ってはおりません。
  222. 上原康助

    ○上原委員 ですから、ガイドラインは特別にやっていない、そうかもしらない。これはむしろ、この間もお尋ねしましたように、協議会があるわけだから、検討委員会等があるわけだから、そこでやっているかもしらない。  しかし、私が言うのは、さっきの事前協議の問題もそうなんですが、これは総理や閣僚も全部聞いていただきたいんだが、日米合同委員会で協議される事項というものが、この五十年近い、行政協定以降、安保条約の改定云々、沖縄返還、いろいろ今日まで、もう恐らく富士山ぐらいの山があるのじゃないですかね、失礼な言い方すると。だが、一切これは未公開なんですよね、公表しない。こんな国ってあるかいなと思うほど、本当に。  したがって、私は、まず政府の見解、もう一遍答弁を願いたいのですが、地位協定二十五条、いわゆる合同委員会での協議事項。九七年九月の新ガイドラインが見直し終了以降、今ガイドラインについてはないというから、それはなければないでいい。それから、SACO合意は九六年かな。この両方のことについて、あるいはその他に類似する在日米軍基地の運用とか、いろいろ日米間で協議をしてきたであろうその件数と、どういうものを協議したのか。概要について、僕は全部議事録を出せと言いたいけれども、そこまでは無理でしょう。あなた方、出せと言っても出さないでしょう。協議した項目なり概要なりを、ぜひ資料として提示をしていただきたい、国会に。  そうせぬと、一体、外交とかそういうものは皆さんの専管事項といったって、けさもどなたかおっしゃっておったんだが、そこまで閣僚や政治家が関与していないと思うのですよ。みんな官僚がやるがままだと思う、そういうことについて。追認をしているだけだと思う。そこに問題がある、私に言わせれば。  今のことについて、提示できるかどうか。
  223. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 合同委員会の合意の公表の問題につきましては、SACOの最終報告書におきましても、「日米合同委員会合意を一層公表することを追求する。」ということが書かれているわけでございます。  それから、現実に合同委員会を開催いたしますと、外務省でございますか、施設庁でございますか、記事資料ということで対外的にその概要と申しますか、議題等について発表しているところでございます。したがいまして、それをお示しするということは可能でございます。
  224. 上原康助

    ○上原委員 そんな、透明性を高めるということを書いてあるのは私もわかるから言っているわけで、どういう事項を協議したのかを、会議録を出せと言っていないのです。  委員長、これはこれまでも、もうおわかりと思うのですが、しばしば議論をされてきたけれども、結局、アメリカ側の合意が取りつけられないとか、あるいは何とかかんとか理由をつけて、一切公表しておりません。  しかし、先ほどの千五十九目全部を出せとは言いませんが、ガイドライン関連法案をめぐってこれは各党言っているわけだから、何も過去のことを言わぬでいいですよ、現在防衛庁がやっていることでいいですから、そういうことについてはせめて概要ぐらいの項目を出してもらわぬと、これだけ国民に不安を与えておって、立派な審議できませんよ、それは。  どうぞ委員長の御判断で、合同委員会検討してきた概要と、この千五十九目と言われていることについて、この周辺事態法との関連において、どういう日米協議がなされて、アメリカからはどういう要求が大まかに出されてきたのか、それに対して日本政府はどう答えたのか、外務省や防衛庁は。そういう内容について、ぜひ資料として提示をしていただきたい。
  225. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 先ほど申しましたけれども、合同委員会につきましては、そのたびごとに合同委員会の合意というものを防衛施設庁の方から公表しております。したがいまして、それを取りまとめるということは、防衛施設庁の方で可能だろうと私は思います。
  226. 上原康助

    ○上原委員 私が委員長にお願いしているのは、これだけ重要な問題だと私は認識している、また民主党としても、これはやはりうやむやにはいかない課題だと理解してやっておられると思う、理事の先生方も。ぜひ、理事会で協議をしていただいて、会議を持った回数と、何をやったのか、これを全部整理をして、合同委員会の方と、防衛庁にはこの千何項目に該当するものを、できる範囲でもいいですよ、これは、出させてください。
  227. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 ただいま御指摘の千五十九目、こう言われるものでございますけれども、これは、今回のガイドライン関連法案に基づく作業とは別のものでございます。  今回のガイドライン関連法案に基づきまして、今後、いろいろな検討が必要かもしれませんけれども、それにつきましては、まだ一切こういった具体的な検討は行われていないところでございます。  また、防衛庁長官からも御答弁申し上げましたように、これまでもいろいろな情報交換、意見交換の場はございましたけれども、米側から正式なものとしてこういう支援要求、また、それに対しまして日本側として正式の検討としてこうだ、こういうことはやっておりませんので、その内容につきましてお示しするということはぜひ避けさせていただきたい、かように思います。
  228. 上原康助

    ○上原委員 私は、それは納得できませんね。これは根も葉もない話じゃないはずなんです。  それは、防衛局長、今そんなことをおっしゃるけれども、それは必ず皆さん持っているよ、それは。持っている。僕はいろいろなことを言いませんけれども。出してくださいよ、概略だけぐらい。委員長、それは理事会で協議してくださいよ、合同委員会のことと、このことについて。
  229. 山崎拓

    山崎委員長 上原康助君の申し出に関しましては、理事会において協議いたしますが、日米合同委員会の内容について、既に公表された概要につきまして、周辺事態法と関連するものについては提出が可能だと現在でも判断できると存じます。他の案件につきましては、協議いたします。
  230. 上原康助

    ○上原委員 ぜひそれは、政府には政府の事情があるでしょう。ますますこれは、そんなに出したくなければ余計見たくなるんだよ、人間というのは。それは、あなた方、いずれは公にされるものなんだよ、そういうのは。そんな秘密にしていて、法案を早く通せとか言ったって無理です、それは。ぜひひとつ委員長の御配慮を、改めて要望しておきます。  次に、これは総理から端的にお答えいただく、国会承認について重ねて聞いておきます。  もう私のようなというか無役が余り突っ込んだことは申し上げませんが、これまでの総理答弁なりいろいろ聞いていますと、周辺事態への対応が、武力の行使を含むものでないとか、国民の権利義務に直接関係するものではない、あるいは、迅速な決定を行う必要があることを勘案すれば基本計画も国会への報告でいいという、そういう御答弁のように私は受けとめているんですが、それはそれなりに一理はあるんだが、ただ、国民の権利義務を拘束するものでないということはいささか疑問があります。それは、先ほど指摘をしたようなさまざまな制約を受ける。実際は、自治大臣もこの間から苦しい答弁をなさっている。  それで、私がもう一つ懸念するのは、一番政府がこの基本計画の国会承認をしたくない理由は、アメリカ側の意向を受けてじゃないのかという感じがしてならないのですね。これは与党の有力な方々も、迅速な処置が必要なんだから、対処が必要だから、またアメリカと再協議もしなければ、座っている委員長まではそうおっしゃってなかったと思うんだが、再協議をしなければいかないから云々かんぬんを新聞で拝見したことがある。  例えば、前額賀防衛庁長官とコーエン国防長官の会談におけるコーエン長官ガイドライン関連法案に対する言及とか、あるいは三月四日の、お名前を出して恐縮なんですが、在日米大使の御発言とか、そのほかたくさんあるんですね。  だから、日本国会が何でこの法案をつくるのにアメリカの高官に一々いちゃもんをつけられて、国会承認をやるな、するな云々を言われなきゃいかぬ筋があるかと私は言うんだ。冗談じゃないよ、内政干渉も甚だしい。  改めて、やはりこれは、これだけ重要な問題がある以上、国会承認はぜひ必要だと思うのですが、今、米高官のことについての総理の御所見というのか、あるいは反論でもあればずばり言ってもらいたいし、国会承認についてお聞かせください。
  231. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 これは、今上原委員も御指摘のように、政府で提案いたしておりますこの法案について、中、国会承認につきましては、周辺事態への対応が武力の行使を含むものでないこと、国民の権利義務に直接関係するものでないこと、迅速な決定を行う必要性があること等を総合的に勘案いたしまして、この周辺事態への政府としての対応は防衛出動あるいはまたPKF本体業務の実施と異なるものでございまして、政府といたしましては、基本計画について必ずしも国会承認を得なければならないものでなく、国会に遅滞なく報告し、議論の対象としていただくことが妥当であると考えております。  委員、米国側からのいろいろの強い要請、こうおっしゃられますけれども安保条約を効果的に運用するということのために双方がお互い理解し合って対応するということでございますし、我が国我が国としての立場におきましても、先ほど申し上げましたような数点にわたりまして総合的に判断をいたしまして、ぜひこれは国会に報告をして御議論をいただくということで対応をさせていただきたいということで申し上げておるわけでございます。  ただ、これもしばしば申し上げておりますように、今般こうして特別委員会を設置していろいろ御議論をちょうだいいたしておりますし、今国会は、予算委員会を初めといたしまして、このガイドライン法案をめぐりましてはそれぞれ真剣な御議論が展開をされておられますので、今なおその過程ではございますが、十分な御審議をいただいて、その御議論を踏まえた上で政府としては誠実に対応していきたい、こう申し上げておるところでございます。
  232. 上原康助

    ○上原委員 これは各党いろいろお考えがあるようですから、よもやアメリカ側のそういう意向があるからますます報告だという考えに立つとするならば、余計問題だということを指摘しておきます。  ちょっと時間が少なくなりましたので、自治大臣に一言お尋ねしておきますが、これは、先ほど申し上げましたように、地方公共団体は大変心配しているわけですね、空港、港湾の整備とか。しかも、御承知のように、軍特措法というものが新たに改正となりました。きのうもちょっとお述べになっておられたんですが、もう拒否すればすべて政府直轄で今後基地の収用使用ができるようになった、簡単に言いますと。  今度のこの関連法案とのかかわりで、港湾の使用とか、あるいはその他いろいろ自治体に協力を求める、依頼するということについて、新たに改正される軍特措法をさらに追っかけてというか、拒否された場合はそれを適用するというようなお考えはないですね、それと関連しますか。
  233. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 昨日も申し上げたんですが、常識論として、この緊急事態、今回のいわゆる周辺事態というのは、まさに緊急性あるいは重要性、あるいは他に代替手段がない、さまざまな角度の中で基本計画がつくられていくわけであります。  その過程の中で、当然のことながら、そういう具体的な港湾とかいうことについて言うならば、事前にいろいろな相談なりなんなりということは事実上当然あるはずだろう。そういった過程の中で、改めて、今度は特措法に基づいて、そこから自治体の協力がある場合、ない場合、あるいは仮に地権者の協力が得られる場合、得られない場合、それを地元の収用委員会にまでかけて、そして、その種の、国が代執行までやってやるような、そんなことをやっているだけの時間的余裕が実際問題あるだろうかということを思えば、常識的にそういったことはまず考えられないことではないか、そのように私は認識をいたしております。
  234. 上原康助

    ○上原委員 実態というか、それだけ非常に神経過敏になっている地方があるということをぜひ御認識いただいて、政府全体としてお考えになっていただきたいと思います。  もう時間が少なくなりましたので、皆さんいろいろガイドライン関連法案に非常に、関連する運輸関係の労働団体が挙げて反対をしているということですね、十八単産、二十七万七千人。全日本海員組合を先頭に、航空安全推進連絡会議という、非常に問題点を指摘して、臨場感を含めて、実際に現場で運輸行政や港湾行政、いろいろな航空管制行政等にかかわる方々が心配をしている、不安を持っているという点も、ぜひ御認識をいただきたいと存じます。問題点だけ申し上げておきます。  最後に、もちろん、この関連法案も関係しますので、沖縄の基地問題について官房長官に端的にお答えいただきたいんですが、読谷飛行場のパラシュート降下訓練の伊江島補助飛行場への移転が地元合意ができたようであります。楚辺通信所、通称象のおりと言われているのがキャンプ・ハンセン、これは金武町ですね。そして三番目に、キャンプ桑江とキャンプ瑞慶覧内の米軍住宅地区の統合ということについても、北谷、北中城村がそれぞれ合意を図るように努力しております。  いずれも、反対意見も強い中での、大変、町村長は苦渋の選択の中からこういう決断をいたしております。それに対しては、やはり基地の整理、統合、縮小、今私が指摘をした基地周辺住民に不安を与えないという、今度の関連法案でも、周辺事態法案でも、その政府の誠意ある態度が私は必要だと思うんですが、この件に対する御見解をお聞かせください。
  235. 野中広務

    ○野中国務大臣 お答えいたします。  今委員指摘のように、SACOの最終報告の実施に向けまして、関係される地元の皆様方の大変な御苦労、御理解をいただくことができました。特に、昨年暮れ、稲嶺新知事が就任をされまして以来、大変な御努力が重ねられまして、地元関係市町村初め沖縄県民の皆さん方の大きな変革が、那覇軍港を初めそれぞれ、今御指摘になりました楚辺の通信所あるいはまた金武町を初めとする結果に結んできたと思って、私ども、この間、それぞれ受け入れの決定をいただいた関係市町村議会初め県民の皆さん方に厚くお礼を申し上げ、政府といたしましては、改めて、金武町長を初めとする町村長の苦渋の決断、これを支持されました議会初め関係の皆さんの今日の経過を厳粛に受けとめて、受け入れに当たりましては、地域振興に対する国の支援等の要望がなされておることを承知いたしております。  今後、この要望の具体的な内容につきましては、それぞれ個別にお伺いをし、また沖縄県初め関係省庁とも十分調整をいたしまして、誠意を持って対応してまいりたいと存じております。
  236. 上原康助

    ○上原委員 終わりますが、委員長に最後に、確かに資料の要求は、質問者の要領の得ない面もいろいろあったかもしれませんが、先ほどの千五十九目というのは国民は全部知っているわけだから、それをただなかったというだけで済ませるようなことではないと思いますので、私は、この件はぜひ理事会でしっかり協議をして、合同委員会のあれは、私はただこれまで発表したものだけ言っているわけじゃないですからね、何を協議し、何をやったのかを整理して資料としてお出しいただきたい。議事録そのものを出せと言っていないわけですから、可能なものを私はお願いしているわけですから、その点は改めて御配慮を要望しておきたいと思うんですが、委員長、どうですか。
  237. 山崎拓

    山崎委員長 資料要求の取り扱いにつきましては、理事会において協議いたしたいと存じます。
  238. 上原康助

    ○上原委員 ありがとうございました。  終わります。
  239. 山崎拓

    山崎委員長 これにて上原君の質疑は終了いたしました。  次に、佐藤茂樹君。
  240. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 公明党の佐藤茂樹でございます。二十六日に引き続きまして、公明党・改革クラブを代表して質問をさせていただきたいと思います。  総理初め閣僚の皆さん全員そろっての総括という質疑はどうもきょうが最終日になりそうだというようにお聞きしておりますので、今まで出ました御議論を踏まえながら、私どもの主張も交えて、もう一度政府の考え方を確認してまいりたいと思っております。  最初に、武器の使用につきまして何点かお尋ねをしたいと思います。  今回、自衛隊法の百条の八を改正されまして、在外邦人の輸送の際の武器の使用について具体的に規定を設けられたわけでございますが、平成五年の十一月五日の閣議決定「在外邦人等の輸送のための自衛隊の航空機の使用について」という表題で百条の八に基づく実施方針が示されているんですが、その中の六項に、武器の使用に関する項目が閣議決定されております。どういう内容かといいますと、   在外邦人等の輸送のため使用される航空機の安全が確保されない場合には、当該輸送を実施しないことから、戦闘機による護衛を行うことはなく、また、派遣先国内において、在外邦人等の生命、身体、当該輸送に係る航空機等を防護するために、武器を携行し、使用することはない。   他方、在外邦人等の輸送のために使用される自衛隊の航空機内における不測の事態に備えて自衛隊法第九十六条に基づき警務官等が携行する武器は、拳銃に限るものとする。 要するに、今回、法改正されようとしている内容というのは、明確にこの時点での閣議決定に反しまして、武器の使用を認めているものである。そういうところが今回一つの問題点であろう。  しかしながら、法案をよく見ますと、ここで言われておりますように、航空機の安全が確保されているので武器の使用が必要ないんだ、そういう理由になっているんですが、今回の改正案についても、輸送の安全確保が一つの派遣する要件であるという点については全く一致しているにもかかわらず、なぜこの武器の使用の部分だけ大きく変えられたのか、そのことについて、まず政府の考えを伺いたいと思います。     〔委員長退席、中山(利)委員長代理着席〕
  241. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 御指摘の閣議決定は、現行の自衛隊法百条の八についての国会における審議等においていろいろの議論が行われたことを踏まえ、在外邦人等の輸送についての基本的な方針を明確にするために行われたものであります。武器使用についても「派遣先国内において、在外邦人等の生命、身体、当該輸送に係る航空機等を防護するために、武器を携行し、使用することはない。」という旨を規定したとおりであります。委員指摘のとおりであります。  また、他方、同条の改正案においては、当該輸送の職務に従事する自衛隊員またはその保護のもとへ入った在外邦人等の生命等を防護するための必要最小限の武器使用が可能とされることから、本改正案の施行に際しては、御指摘の閣議決定について所要の修正を行う必要があると考えております。
  242. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 閣議決定修正されるという趣旨のお話は聞きましたが、要するに、要件は変わらないんですね。第一項の部分で、先ほど読みましたけれども、「当該輸送の安全について外務大臣と協議し、これが確保されていると認めるときは、」という、そのときには在外邦人の輸送について自衛隊が派遣されますよと。平成五年のときには、同じ要件のもとで武器の使用は認めていませんでした。ところが、六年たって、もう昨年提出されていますけれども、数年たって、今度は武器の使用を認めましょうと。どこが変わったんですか。要するに、数年前は認識が甘かったということなんですか。その辺についての、要するに変えた理由を答弁いただきたいと思います。
  243. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 現行の自衛隊法百条の八の追加後、政府部内における緊急事態対応策の検討において、邦人輸送を行う場合の安全性の確保のあり方について特に検討を深める必要があるとされたわけであります。  また、一昨年七月のカンボジア事案において、自国民の輸送のため軍用機を派遣した諸外国のほとんどが、派遣先国に安全確保の第一義的な責任があることを前提としながらも、暴徒や強盗等による危険を念頭に、武器を携行していたという事実があります。このケースは、輸送の安全が確保されている中でも、これに直接影響しない程度の危険に対応するため、武器を携行し使用する必要が生じ得ることを私ども認識したわけであります。  このような事情で、政府部内での検討、それから諸外国の対応状況を踏まえまして、輸送の安全が確保されている場合であっても、緊急事態であるがゆえに生じ得る不測の事態に対して、隊員またはその保護のもとに入った在外邦人等の生命等を防護するための必要最小限度の武器の使用が必要であるとの結論に至ったものでありまして、このような観点から、私どもは、御指摘の閣議決定について所要の修正を行う必要がある、こういうふうに考えた次第であります。
  244. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 続いて、武器の使用で、九十五条関係でお尋ねをしたいのです。  既に、この特別委員会が始まる前に、二年ぐらいこのガイドライン並びに周辺事態法案については議論してきたわけですが、昨年の五月七日の安全保障委員会でPKO法の改正に絡んでこの件を質問したときの議事録に基づいて、若干質問させていただきたいのです。  私が、「PKOの協力法では、二十四条の六項で、自衛隊法九十五条「武器等の防護のための武器の使用」というのはPKO業務に従事する自衛官には適用しないと明確に書かれているんですけれども、今回のガイドライン関連の周辺事態安全確保法案並びに自衛隊法改正案ともにそのような条項がないということは、逆に言えば、この三つの活動の際に、この自衛隊法九十五条の「武器等の防護のための武器の使用」というものも十分適用があるんだ、そういうように受けとめていていいのでしょうか。」という質問に対して、当時の久間防衛庁長官は、「そのように理解していただいて結構でございます。」という答弁を約一年前にされているのです。  まず最初に、確認ですが、今回の周辺事態安全確保法案に明記されている自衛隊が行う三つの活動については、九十五条が適用されるというように考えてよろしいのでしょうか。
  245. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 平成十年の五月七日の衆議院安全保障委員会におきまして、議員からの御質問に対し、当時の久間防衛庁長官が、周辺事態安全確保法案に基づく自衛隊活動に際しては自衛隊法九十五条の適用がある旨答弁したのは、御指摘のとおりであります。  後方地域支援とか後方地域捜索救助活動は、現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないというふうに認められる地域で実施されるものであること、また、船舶検査活動についても、商業目的の船舶を対象とするとともに、乗船して検査を行う場合には検査対象船舶の同意を得て行うこととしていること等から、周辺事態安全確保法案に基づく活動は、攻撃を受ける蓋然性を極力排除した条件下で行われるものであります。  しかしながら、本法案に基づく活動を行う自衛隊船舶等も自衛隊法九十五条の警護対象物件である以上、任務中において不測の事態が発生した場合、これが同条の要件を満たす限りにおいて、同条の規定に基づき武器を使用することができるということは、委員指摘のとおりであります。
  246. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 そこで、九十五条で三つの活動、特に後方地域支援のことできのう来もそういう質問があるのですけれども、九十五条で武器等の防護をすること、そのための武器の使用は三つの活動について認めておきながら、今回の法案の十一条では二つの活動についてしか武器の使用を認めていないというのは、やはりこれはバランスを欠くことであろう、私はそう思うのですね。  先ほど防衛庁長官答弁でも、極力そういう攻撃を受けないような地域またはそういう事態を考えるんだけれども、しかし、不測の事態を想定しているがゆえに中断条項であるとかまた地域を変更するというようなことも法案の中に既に盛り込んであるわけですし、さらに、これは戦争の歴史からいっても、後方支援という武器を初め物品を輸送している部分が、具体的に阻止であるとか妨害であるとか、さらには奪取であるとか、そして略奪、そういう形でねらわれてしまう、それがある国であるか海賊であるか、そういうものは別といたしまして、そういう可能性が十分あるし、そういうことが全くないのだということを想定すること自体私は非現実的である、そういうふうに思うわけです。  ですから、船舶検査活動と後方地域捜索救助活動の二つに認めておきながら、後方地域支援について武器の使用の規定がないというのは、やはりこれはおかしいのではないのかな。やはりきちっと後方地域支援についてもこの第十一条に追加して、要するに自己保存のための基本的、自然的権利である自分自身または自分と一緒に従事している人の命を守るための武器の使用というのは当然認めるべきであろう、そのように思うのですが、防衛庁長官の見解を伺いたいと思います。
  247. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 今委員が挙げられた後方地域捜索救助活動船舶検査活動につきましては、この活動の実施を命ぜられた自衛官の生命等に対する危険が生ずるという不測の事態が発生することが否定できないものですから、武器の使用を十一条により認めたということでございます。  しかし、私どもが考えておる後方地域支援は後方支援と違いまして、あくまでも後方地域支援でございますので、ここでは、戦闘行為が行われておらず、また行われることがないと認められる地域というふうに定めているわけでありまして、その後方地域に存する米軍に対して米軍の艦艇への人員や物品の輸送や補給等を実施するものでありますから、この場合、当該職務に従事する自衛官の生命等に対する危険が生ずることは想定されていないということで武器使用について規定しなかったものでございます。
  248. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 今、後方地域であるからという話ですが、それなら後方地域捜索救助活動はどうなるのですか。同じように後方地域での活動であることは間違いないわけです。ところが、それについては武器の使用をしっかりと認めているわけですから、今の御答弁の論理というのはやはりおかしいわけで、後方地域捜索救助活動でも認めるのであれば、当然後方地域支援でも武器の使用というのはきちっと規定するべきであると思いますが、いかがですか。
  249. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 後方地域捜索救助活動では、救助されるのは人道上の立場から戦争当事国である場合もありますので、いつ反撃されるかわからないという事態等が予測されますので、そういうことを考えているわけであります。
  250. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 そうすると、後方地域支援活動というのは、後方地域捜索救助活動より、それに比べても全く安全である、そういう御判断だということですか、防衛庁の判断は。全く不測の事態、先ほども申しましたけれども、もう繰り返して申しませんが、そういう妨害であるとかまた奪取であるとか、さらに略奪に遭う可能性というのは全く考えてないんだ、そういう想定で答弁されているのですか。
  251. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 後方地域において米軍物品や何かを渡すだけの行為でありますから、そういう危険は想定していないということであります。
  252. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 これは、ここで机上の、口だけのやりとりをしておっても本当は仕方がないなという感じがするのですが、私は、ここの部分は、これ以上防衛庁長官も今立場上譲られないでしょうから、修正論議の中で、現実に想定した、そういう機能するような修正はやっていくべきだろう、バランスをとったそういう修正論議をすべきだろうというように訴えて、次に移りたいと思います。  それで、先ほど三つの活動については確認をいたしましたが、今回の周辺事態の論議でもいろいろ出ましたが、現行法で行われる機雷の除去であるとかさらには在外邦人の輸送という行動について、これは九十五条の適用というものを考えておられますか。
  253. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 自衛隊法の九十五条は武器等を防護するための武器の使用に係る一般的規定であるわけでありますが、御質問のようなケースにおいて、不測の事態として武器等を破壊、奪取しようとする行為が生じた場合には九十五条の適用があります。
  254. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 今御答弁あったように、そうすると九十五条というのは、ちょっと確認ですが、別に周辺事態において適用されるだけではなくて、周辺事態でない場合にも、例えば、今の機雷の除去であるとか在外邦人の救出というのは適用されるんだ、そういう御答弁だというように認識してよろしいでしょうか。ちょっと確認ですが。
  255. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 そのとおりでございます。
  256. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 そこで、今回論じられるものとして、その九十五条の武器等の防護のための武器の使用というのと、そして自己保存のための自然権的権利に基づく武器の使用というこの二種類があるわけですが、具体的に在外邦人の輸送については、今回百条の八、三項が追加されて、自然権的権利に基づく武器の使用というのは認められておるんですが、機雷の除去の任務を行う自衛隊員というのは、隊法のどこを見ても武器の使用ということについては規定されていないのですね。ほかの防衛出動であるとか治安出動であるとか、今話題になっております海上警備行動であるとか、こういうものはそれぞれ別の条を立てて武器の使用というものを設けているんですが、機雷の除去については、自己保存のための自然権的権利に基づく武器の使用であるとか、さらには、その職務遂行上の武器の使用である警察官職務執行法第七条に準ずるような武器の使用というものは認められているのかどうか、御答弁をいただきたいと思います。
  257. 柳澤協二

    ○柳澤政府委員 自衛隊法九十九条に基づくいわゆる機雷等の除去でございますが、まず、その機雷等の除去の任務に当たっております掃海艇等の乗員につきましても、必要があれば、その武器等の防護の任務を付することによって九十五条が適用になることは当然であります。  それから、先生の問題提起が、仮に、例えば私どもは掃海艇で機雷の処分をします際に、掃海艇が持っております機関砲等を使ってこれを処理する場合もございます。これは、むしろ九十九条の業務の一環として、そういう形の、まさに業務の内容そのものとしての、まあこれを武器の使用というかどうかはあれでございますが、そういう使い方は当然できるというふうに思っております。
  258. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 それで、九十五条のことについて、昨年の五月七日にさらに続けて質問して御答弁いただいたんですけれども、やはり九十五条というのは、基本的に警察比例の原則で武器が使用される、だから相手が重火器で攻撃してきた場合にはこちらも、極端なことを言うと重火器でも対応できる、そういうことで、きょう議事録を読むのはもうやめますが、基本的に、こちら側の姿勢として、幾ら攻撃に対する対処だとはいっても、やはりエスカレートしないように、反撃するにしても、武器の使用の基準とかルールをきちっと決めておくべきではないのか、そういう質問をさせていただいたわけですね。  それはどういうことかというと、武器が使用できる場合であるとか、また用いる武器が不明確なままでは、逆に現場の指揮官であるとかそういうところに負担がいくし、また法の拡大解釈も行われるのではないかという不安もやはり出てくるわけで、やはり武器使用の基準の明確化ということをきちっとやるべきである、私は今もそう思っているんですが、そのときに、当時の太田運用局長が、既にそういうものはあるんです、そういうふうに言われた。そのときに例を出されたのが、現在の遠洋航海の部隊が、艦船が外国に行く場合も含めて、自衛隊の武器等の防護のためにどういう形で、どういう考え方で、どういう基準でやれるかということにつきましては、内部の規定を設けまして、それによって、実際の万が一のときにはそれにのっとってやっている、そういう答弁をされたわけです。  そこで、そのとき、時間がなかったので聞けなかったのですけれども、この自衛隊の武器の使用についての基準、考え方、ルールというものが内部の規定として既にきちっとある、そう認識していいのかどうか、お答え願いたいと思います。
  259. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 平成十年の五月七日の衆議院安全保障委員会において委員お答えしたとおり、防衛庁においては、自衛隊法九十五条について、武器等の防護に関する内訓というものがありまして、これもまた上原先生におしかりを受けるかもしれませんが、これは秘扱いになっているのでございますが、武器使用の手続等を定め、その適正な運用を図っているところであります。  いずれにしましても、自衛隊法九十五条に規定する武器の使用は、我が国の防衛力を構成する重要な物的手段が破壊、奪取されることを防ぐために、武器等の警護を現に担当している自衛官に認められた武器等の防御のための受動的なものであります。かつまた、正当防衛、緊急避難等の要件を満たす場合でなければ、先ほど委員がおっしゃったとおり、人に危害を与えてはならないという極めて限定的なものであります。  したがって、私どもは、同条に基づく武器の使用は、武器等を防御するための必要最小限の行為であり、これによって事態がさらに悪化し、あるいはエスカレートするというような性質のものではなく、この線を守ってまいりたい、こう思っております。
  260. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 私は、今おっしゃった武器等の防護に関する内訓ですか、その存在を明らかにされたわけでございますが、私はここが一つのポイントだと思うのですね。武力の行使に至らない武器の使用にきちっととどめる、そういう歯どめを自衛隊としてかけているのだ、そういうことなのですが、私は、さらに国民の皆さんに安心していただくために、自衛隊はやはりどういう事態になってもエスカレートしないのだ、こういう内訓があるのだ、そういう、全部明らかにすると作戦上のことが明らかになるのでまずいとは思うのですが、その内容の概略、ポイントというのは大体どういう考え方なのかということをこの場で御説明いただきたいと思います。     〔中山(利)委員長代理退席、委員長着席〕
  261. 柳澤協二

    ○柳澤政府委員 まさに今先生も述べられましたように、こういうものを詳細に明らかにしますと、我々が、武器等の防護のまさに手順が明らかになって、大変ぐあいが悪い部分がございます。  ただ、一般的に申し上げますと、大臣からも申し上げたように、その九十五条の性格というのが非常に本来限定的であり受動的である、そういう性格の武器使用規定であるということを実際に担保するということで、例えば警護の任務を付与する自衛官の数というのを必要最小限にすることとか、あるいは、基本的にはこういう任務を行う者は小火器でやるわけでありますが、極力そういう範囲で対応するといったようなことを長官の名前で定めているものでございます。
  262. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 今の段階ではそれ以上の突っ込んだ答弁は多分押してもいただけないと思うので、また改めて別の機会に細かいことはお聞きしたいと思います。  続いて、前回、二十六日に質問させていただいたときに、我が党の独自の今回の法案に対する見解として、国会に対する事後報告というのが必要なのではないかということを御質問したときに、防衛庁長官から簡単な御答弁をいただいたわけでございますが、もう一度改めてそこの部分を丁寧にちょっとお聞きをしたいのです。  今回の法案で、ざっとずっと読んでみても、どこからどこを読んでみても、周辺事態が終了したときの手続、またどういう形でこの周辺事態が終了したのかということをきちっと決めるのか、また公表するのか、そういうことが明らかになっていないのですが、このことについてもう一度、重なるかもわかりませんが政府側の考えをお尋ねしたいと思います。
  263. 伊藤康成

    伊藤(康)政府委員 現在のところ、政府といたしましては、周辺事態への対応措置を終了する際には、安全保障会議及び閣議を経てその旨を明らかにしたいと思っております。これは政府として明らかにいたしたいということでございます。  また、では国会はいかがかということでございますが、先般も防衛庁長官から御答弁申し上げたと思いますけれども国会につきましては、いつでもこれは御報告をするのは当然でございまして、これは、対応措置の実施中であれ、あるいはまた終了した後であれ、お求めがあるならば当然御報告をするということだと存じます。
  264. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 その安全保障会議、閣議にかけられる内容というのは、具体的に全体としてどういう活動をされたかとか、さらには、予定していたものであるけれども具体的にその中でやらなかったもの、また予定しなかったけれどもやったもの。さらには、特に防衛庁長官の今までの答弁ですと、後方地域支援については、事前にその地域について明らかにしない。ところが、やはり既に周辺事態をきちっと終了させた後についてはそれも公表してもいいんだろう。そういうもの、もろもろ。さらには運輸大臣が午前中の答弁で、今回の不審船の問題で言われていましたけれども、うまくいったこと、うまくいかなかったこと。要するに、効果があったのかどうなのか、そういうとった措置の有効性、そういう問題も含めてきちっと閣議や安全保障会議に報告される、そういう認識を持ってよろしいでしょうか。
  265. 伊藤康成

    伊藤(康)政府委員 周辺事態への対応措置を実施する際には、基本計画を安全保障会議、閣議で決定するわけでございます。したがいまして、終了の時点でも、いわば基本計画の変更に準じた格好というものを私ども考えておる次第でございます。  ただ、具体的な詳細まで現段階で詰めておるわけではございませんので、細かいところを今申し上げることは差し控えたいと存じます。
  266. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 それで、私は、もしできれば総理に御答弁いただきたいのですが、今回のこの法案を見ておりますと、平成四年のあのPKO法につくりが非常によく似ているわけですね。つくりの問題だけじゃないのですけれども事態は全然違いますけれども。  要するに、最初に目的があって、定義があって、そして基本方針というのがあって、こっちでは基本計画と言うています、PKO法では実施計画と言うていました。ところが、中身で、国会の関与の部分がよく似ているけれども違うわけです。どこが違うのかというと、PKO法案では、第七条で三つのことをきちっと国会に報告しますよと言っているのです。  それは何かというと、一つは、実施計画の決定または変更があったとき、これは今回一緒です。二番目に、実施計画に定める国際平和協力業務が終了したとき、これはきちっと国会に報告しなさいということになっているのです、法律上。三つ目が、実施計画に定める国際平和協力業務を行う期間に係る変更があったとき、これも変更の一部に入るかと思うのですけれども。  PKO法案では、きちっと国会に対して業務が終了したときに報告しなさい、そういうことがきちっと盛り込まれているにもかかわらず、わかってかわからないのか知りませんが、今回のこの第十条では完全にそこが抜け落ちている。  そのPKO法案のときに、国会の審議の中で、これはPKO特別委員会、平成三年九月三十日の「政府のシビリアン・コントロールについての考え方」ということが具体的に残されているわけですね。  これを若干読ませていただきますと、「PKOへの協力については、」ちょっと中略しますが「自衛隊の部隊等が海外において行動することでもあり、国会に十分ご理解をいただくとともに、国会のご意向を実施面に反映させていく必要があると考え、この法律案の第七条において、次の各場合について、それぞれ国会へ遅滞なく報告しなければならないこととした。」そこで、さっき言いました三つのときには報告しなさいと。  「国会においては、この報告について、シビリアン・コントロールの観点からも十分に議論されることになると考えているが、その際政府としては、審議で表明された意見を踏まえて実施に当たることは当然であり、また、審議の結果は、いずれ実施計画を変更する場合には、変更の端緒にもなりうるものであり、政府としては承認にも匹敵するような重みのあるものとして受け止める考えである。」というように、このときに審議の過程で、シビリアンコントロールについての考え方ということが、PKOということですが、そのことについてきちっと定義されていて、国会に終了したときにも報告します、この三つの条件すべてについて国会に報告することによって、シビリアンコントロールをきちっときかし、また、それに基づいた国会の審議というものは尊重するのだ、もう八年前ですけれども、こういう形できちっと政府の見解が述べられている。  今回、周辺事態だということで、PKOというものとはまた違いますけれども、やはり我々は、国会の報告というものを一項目きちっと入れて義務づけるべきではないのか、そのように考えるのですが、総理の御所見を伺いたいと思います。
  267. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 委員も今御指摘されましたように、八年前、PKOが海外に責務を負って出かけられるというときの、初めての自衛隊の海外での活動ということにつきまして、いろいろな角度からの御指摘もございました。対外的な信頼を得るためもこれあり、そういった意味で、国会がいろいろな角度から御議論いただいた上で、今のような結論になったのだろうと思います。  したがいまして、今回のことと、シビリアンコントロールという意味では全く軌を一にしていることでございますけれども、その対応その他につきまして、必ずしも同じような対応をとるべきかどうかということを種々検討した結果、今回は、このような結論として、政府としては提案させていただいておるということでございます。  しかし、今委員指摘のように、いろいろな角度から検討し、その実態その他に触れましてのいろいろな御議論のあることはお聞きをいたしておりまして、承知をいたしておりますので、こうした点も含めまして、さらに御意見等を承らせていただきたいと思っております。
  268. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 ぜひ、総理も全く否定をされませんでしたので、今後の修正協議に期待をしたいなというように思います。  続いて、もう一つ手続の部分で、前回抜け落ちた部分で、安全保障会議の位置づけというものがどうなっているのかということをお聞きしたいわけです。  これについても、平成九年の十一月二十日、ガイドラインが成立した二カ月後ぐらいの安全保障委員会で、今は事務次官をされています当時内閣安全保障室長であった江間さんに質問をしたことがあるのです。安全保障会議周辺事態の認定のときに必要になってくるのではないのかという趣旨の質問をしたときに、江間当時室長から、  国防に関する重要事項あるいは重大緊急事態への対処に関する重要事項に該当すると判断されて、安保会議に諮られることになろうというふうには思います。   ただ、これは、いずれにせよその時点で総理が必要と認めるということで判断をされる事項であるというふうに考えております。 という答弁はいただいているのですが、今回、この周辺事態安全確保法案の端々、どこを読んでも、安全保障会議というものが全然位置づけられていない、出てこないわけですね。  具体的に、防衛庁の説明資料の中には、この前も示しましたけれども、図表の中には、安全保障会議というのが大きな位置づけとして出てくる。この安全保障会議を法的にどういうように位置づけ、役割を持たせようとされているのか。政府の御見解を伺いたいと思います。
  269. 伊藤康成

    伊藤(康)政府委員 ただいまの御指摘のように、平成九年十一月二十日の御答弁があるわけでございますが、今回、法案を提出するに当たりまして私どもとして考えておりますのは、安全保障会議設置法の第二条第一項五号にあります国防に関する重要事項であるという認識のもとに、総理から御諮問をいただき、安全保障会議の御審議をいただくということにいたしたいと思っております。もちろん、最終的には総理がお決めになることでございますが、基本的な考え方はそのようなことでございます。  なお、安全保障会議設置法上は、実はこれは第二条でどのような事項について会議に諮問しなければならないかということが決めてあるわけでございますが、そこに列挙されております中で、自衛隊の行動に係るものにつきましては、「防衛出動の可否」だけでございます。それ以外のものは、ただいま申し上げました五号で、「その他内閣総理大臣が必要と認める国防に関する重要事項」、この項目によりまして時々の御判断によって諮問をしているということでございます。  今回の周辺事態に関する対応措置に関しましては、基本的にはそのような取り扱いをさせていただきたいということでございます。
  270. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 五号に該当させるのだということは、どういう形できちっと決めるのですか。閣議決定ですか。何か国会答弁だけで終わるということですか。その辺をちょっと明らかにしていただきたいと思います。
  271. 伊藤康成

    伊藤(康)政府委員 これももちろん総理がお決めになることではございますけれども、今私どもの考えといたしましては、法律が成立いたしました後に安全保障会議においてそのような取り扱いをすることを御決定いただければというふうに考えております。
  272. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 それで、このときに、「ただ、これは、いずれにせよその時点で総理が必要と認めるということで判断をされる事項であるというふうに考えております。」というふうに当時の江間室長は答弁をされているのですが、具体的に、総理周辺事態と認定する、またその可能性が出てきた場合に、手続として必ず安全保障会議に諮らなければならないのか、それとも、そのときの総理の意思で、必要でない、そういう場合には安全保障会議に諮らずに周辺事態の認定とか基本計画の策定というものが行われていくのか、そのことだけちょっと確認をしておきたいと思います。
  273. 伊藤康成

    伊藤(康)政府委員 先ほど御答弁申し上げましたが、この法律が成立いたしました段階、後でございますけれども、安全保障会議の決定ということで、今後基本的にこの周辺事態に対する対応措置というものは二条五号に該当するものとして必ず安全保障会議の議を経るようにという御決定をいただければというふうに考えている次第でございます。
  274. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 必ずかけるということでございます。  それで、続きまして、船舶検査活動につきましても朝方以来いろいろ御議論があるわけでございますが、私どもは、今回のこの周辺事態法案の三条三号に定義されている船舶検査活動というのはもう国連安保理決議が当然必須の条件である、そういう観点から以下何点かお尋ねをしたいと思うのですが、時間も大分迫ってまいりましたので簡単にお聞きしたいのです。  これは、今回の言葉では国連安保理決議に基づく船舶検査活動というように言われておりますけれども、国際法では禁輸執行とも言われているわけですね。この国連安保理決議に基づく経済制裁の一種である禁輸執行また船舶検査活動というのが、今まで私の知る限り、一九六六年に南ローデシアに対して初めて実施され、一九九〇年にイラク、九二年にセルビア・モンテネグロ、九三年にハイチに対してというように、過去四回船舶検査活動と称するものが行われたと思うのです。いずれもその措置がとられたときには手続として安保理の一連の決議が必要とされていたと私は認識しているのですけれども、まず外務省に御答弁をいただきたいと思います。
  275. 高村正彦

    ○高村国務大臣 今委員が御指摘になったとおりでございます。
  276. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 それで、基本的なことで恐縮なのですが、船舶検査活動の国連憲章上の位置づけ、また、手続はどうなっているのかということについて御答弁をいただきたいと思います。
  277. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 国連憲章上の位置づけは、憲章第四十一条に基づく経済制裁の実効性を確保するために、国連安保理決議に基づき行われる集団安全保障措置の一環ということであろうと思います。  そして、これまでの船舶検査を要請する国連安保理決議におきましては、船舶検査の具体的な実施手順というものについての記述は特にございませんで、各国がその各国の判断に基づいて、経済制裁の実効性を確保するために必要と考えられる措置をとっているということだと思います。
  278. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 それで具体的に、今はしょられましたけれども、私の認識している限り、国連憲章第七章三十九条で、まず、平和と安全に対する脅威であるとかまた破壊ということが決定をされまして、続いて、今局長答弁されましたように、四十一条で、違法国に対する禁輸等の経済制裁を決定する、これが二番目の決議ですね。  基本的に、もう一回決議をする。それはどういうことかというと、国連加盟国に対して禁輸の執行を要請する、そういう要請決議が必要となって、この要請決議が、旗国主義でない、そういう船舶検査活動ができる権限根拠となるというように考えているのですが、そういう認識でいいのかどうか、ちょっと念のためにお聞かせください。
  279. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 おっしゃるとおり、経済制裁の決議と、それに実効性を持たせるための船舶検査に関する決議というものがございまして、それが国連憲章の第二十五条の受忍義務と結びつくということであろうと思います。
  280. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 そこで、具体的に行われる場合においては、具体的に条項がはっきりしないのですけれども、第七章あるいは第八章のそういう地域的取り決めとか機関に基づいてもでき得る可能性も一応残してはいるのですが、しかし、それも全部安保理決議という前提があっての今までの措置であるということだと私は認識しております。  そこでお聞きしたいのは、今まで、そうでない場合、要するに安保理決議がない場合において、多国間の取り決めで行うケース、船舶検査活動というここで言われている行為を行うケースというのは国際法上全く想定されていないのではないのか、そういうふうに私は認識しているのですが、今までそういうものも想定されていたり行われた事実があったのかなかったのか、御答弁をいただきたいと思います。
  281. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 船舶検査そのものにつきましては、国連憲章上、特段の規定がございません。したがいまして、委員がおっしゃられましたように、国連憲章は安保理決議抜きに、例えば多国間の取り決めで船舶検査活動を実施することを想定していないと理解してよいかということについては、国連憲章自体はそのことについて何も語っていないと思います。  ただ、これまで、御指摘になられましたように、実際に発動されたケースは、いずれにせよ国連安保理の決議を前提として船舶検査活動が行われているということだと思います。
  282. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 今まで行われたのはそのパターンであるということと、想定されていないけれども、そうしたら国際法上の枠組みとして許されているのかどうかということが次に一つ問題になってくると思うのですね。  私は、外国船舶に対する措置というのは広く見て三つあるというように認識しているわけです。一つは、今回の国連安保理決議に基づく船舶検査活動と称するものですね。  二つ目は、海洋における、言葉が正しいのかどうかわかりませんが、いわゆる警察行動、警察活動、これは海洋法条約を根拠とした行為でございまして、その許容内で各国の警察機関、日本の場合でしたら、領海内であれば例えば海上保安庁なんかが対応するかと思うのですけれども、そういうものが警察権を行使し得る、そういうものが一つある。  もう一つは、武力紛争時、戦時ですね、これに適用される交戦法、海戦法と称するものですが、海戦法を根拠とした拿捕等の措置。ただ、これは日本の場合は交戦権が、我が国の場合は憲法第九条二項で否認されておりますから、あくまで自衛権の行使として認められる限度内のものであれば行える、そういう限定がありますけれども、そういう武力紛争時のもの、この三つの種類に限られているという認識です。  いずれにしても、類似した行為、臨検とか検査というような行為はそれぞれに含まれているけれども、もともとの根拠であるとか目的であるとかさらには実施水域、実施者、対象船舶、現場の実施手順であるとか措置の内容、全くそれぞれ三つとも異なる、そういう枠組みであるというように私は認識しているのですが、政府の御認識をお聞かせ願いたいと思います。
  283. 東郷和彦

    ○東郷政府委員 お答え申し上げます。  基本的に委員がおっしゃられたとおりかと思います。公海における国際法秩序の原則は旗国主義、ある船の旗国がその船に対する管轄権を有するということでございます。それに対する例外といたしまして、一つ委員のおっしゃられました平時における臨検、これは海洋法条約百十条等に規定されているものでございます。それからもう一つ、戦時といいますか、武力紛争が発生した場合の一定のルールというものもございます。  他方、このような臨検とは異なりまして、今回議論をしておりますところの船舶検査という別の秩序がございます。これは、その大部分のものは、国連憲章に基づく経済制裁及びそれの実効性を確保するための安保理の決議が行われた場合に行われるということでございます。  しかしながら、そのような船舶検査というものが国連決議がなければできないかといいますと、ただいま申し上げましたこの旗国主義の大原則にかなう限り、一定の船舶検査、これは平時の臨検とは異なった意味での船舶検査というものも可能な行動である、旗国主義の原則に合致する限り可能であるというふうに考えます。
  284. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 大体、今御答弁いただいたのは私の認識と大きく違っていないと思うのですが、だから、午前中いろいろ議論ありましたけれども周辺事態法案で言う船舶検査活動とまた違った枠組みのそういう臨検というものを考えるのであれば、これから別のところで議論したらいいかと思うのですが、今回の周辺事態法案で論議されている船舶検査活動というのは、当然国連安保理決議の前提が必要であるというように私ども認識しているわけでございます。その上で、ただし、問題は、今回のこの実施手順が日本のような独特のものでいいのかどうかということが一つの議論になってくるであろう。  そこで、若干何点かお聞きをしたいわけですが、国連安保理決議に基づく船舶検査活動は、諸外国の実施手順では、停船を拒否し続ける商船に対して、必要な場合にのみ、船首前方海面に向けた警告射撃を実施するということが一応許されて、まあやっているわけですね。現に、過去において十一回今までも行われた、そういうことが事実として残っております。  私は、この警告射撃というのは、国際法上、信号の一つであって武力の行使ではないのではないのか、そのように認識しているのですが、これは外務大臣防衛庁長官、御答弁いただけますか。
  285. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 先ほども申し上げましたとおり、船舶検査を要請する国連安保理決議において具体的な実施手順についての記述はないわけで、各国が各国の判断に基づいて必要と考えられる措置を行ってきているわけでございますが、仮に船舶検査が警告射撃などを伴うといたしましても、これらの活動がこのような安保理決議に基づくものである場合には、その決議の履行のため合理的に必要と認められる範囲で実施される限りにおいて、国際法上禁じられた武力の行使に当たることはないということでございます。
  286. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 今回の法案で言うこの日本自衛隊の行う船舶検査活動の実施手順では、警告射撃は行うことができるのですか、できないのですか。ちょっと端的に御答弁をいただきたいと思います。
  287. 加藤良三

    ○加藤(良)政府委員 過去における船舶検査の実効性等総合的に勘案いたしまして、この法案においては警告射撃を行うことを想定しておりません。
  288. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 なぜ想定していないのかという理由が、過去におけるものを総合的に勘案してということなんですが、そこで、憲法判断をちょっと法制局長官、せっかくお越しいただいているのでお尋ねをしたいのですが、安保理決議に基づく船舶検査活動においてこの警告射撃を我が国が行うとすれば、憲法九条で禁ずる武力の行使あるいは武力による威嚇に当たるのかどうか、どう判断されているのか、御答弁をいただきたいと思います。
  289. 大森政輔

    大森(政)政府委員 お尋ねの意味における限定した警告射撃、これは、ひいてはその後に続く——警告射撃が効果を生じなければスクリュー等船体への射撃とかあるいは体当たりとか、その辺のところにどうつながっていくのかということはちょっとわかりませんけれども、純粋な意味における警告射撃も、現行法では、ただいま答弁がございましたように想定していない。これは言葉をかえれば、法律が規定していないわけでございますからできないというふうに理解して法案をつくっているわけでございますけれども。したがいまして、やらないと。  したがって、やらないことについて仮定の問題として憲法上の評価をするのはいかがかと思いますけれども、この法案の検討過程においては、初めは一定の前提を置かずに白紙で議論を始めたわけですね。そういう段階では、やはり憲法九条が禁止する武力による威嚇または武力の行使との関係について、憲法に明確に抵触しないという結論に達しない段階で法案にはそれは盛り込まないということになったものですから、それ以上詰めた議論をしなかった。しかし、今どう思っているのかということになりますと、さらに慎重な検討を要する問題であるというふうにお答えするのが率直なる意見ということになろうかと思います。
  290. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 これは、後で聞こうと思った戦闘行為直前の航空機と同じような判断をされておると思うんですが。  これは例えば、法制局長官、そういう答弁で今はいいんですけれども、これから国会の論議を経て修正論議の中でそういうことがテーマになってきたときには、当然何らかのやはりきちっとした見解、結論というものを出さざるを得ない、そういう問題だと思うんですね。だから、きょうはそういう答弁でいいかと思うんですけれども、やはりきちっとある程度の方向性というのは示すべきであるというふうに思うんですが、もう一度御見解を。
  291. 大森政輔

    大森(政)政府委員 ただいま申し上げましたような検討状況でございますから、仮定の問題として確定的に意見を申せと言われても、もう少し検討をさせていただきたいというふうに言わざるを得ないわけでございます。  なぜそういうことを言うかということだけ若干の説明をしておきますと、要するに、武力の行使というのは、我が国の物的、人的組織体による国際的な武力紛争の一環としての戦闘行動であると解されております。また、武力による威嚇というのは、現実には武力の行使をしないが、自国の主張、要求を入れなければ武力を行使するとの意思なり態度を示すことによって相手国を威嚇することだ、こういうことでございまして、検査等の実施を確保するための警告射撃等を伴う場合には、制裁対象国とそれから船舶の旗国等との関係で、今述べたような意味における武力の行使または武力による威嚇ということに当たるかどうかということになりますと、これはすぐに、明確に結論を直ちに申し述べられるという問題、それほど単純な問題ではないんだということを申し上げているわけでございます。
  292. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 これはまた改めて、もうちょっと煮詰まるように努力してください。そのときにきちっとやりたいと思います。  もう一問は、最後に、九条で規定されている地方自治体及び民間の協力につきまして、再度防衛庁長官答弁だけいただきたいと思うんです。私は、当委員会の始まる前に、二月だったと思うんですが、予算委員会の集中審議であるとか安全保障委員会で質疑させていただきまして、主にこの九条の部分、地方公共団体、民間への協力がどういう形で明確にされるのかということを割としつこく突っ込んでお聞きしたいきさつがあるんです。  民間への協力については、きょう運輸大臣見えられていますけれども、たしか予算委員会のときに、大要次のように言われました。よっぽど緊急性がない場合、民間業者と十分話し合った上で基本計画に盛り込んでいく、その話し合いのときにきちっとしたマニュアルみたいなものをつくって確認し合うという形で努めてまいる、そういう答弁をされたので、私はきょうはお尋ねをしないんですが、防衛庁長官、私が、二月九日のときに、九条の協力項目の明確化ということについて御質問をいたしました。  それは、別表という形なんかをとってきちっと規定したり明記したりしていった方が、結果として、地方自治体であるとか一般国民にとっても安心していただけるし、この法律に対しての理解を生むのではないのか、だからそうした方がいいんではないのかという質問に対して、防衛庁長官は、「今考えられるものとしてこの十項目」、二月三日に提示されていますけれども、「十項目のものを示してあるわけでございますが、先生御指摘のとおり、これをもう少し客観的にしっかりしたものにし直せということも確かにそれはいい御意見だと思いますから、これから国会の審議を得ながら、私どもとしてもそういうものを検討していきたい、こう思っております。」そう答弁されて、翌日の新聞は、マスコミが走って、地方自治体、民間の協力項目を法案に明記を検討というような見出しで各紙とも載せたんですね。  ところが、十二日、三日後の記者会見で防衛庁長官は三つのことを言われて、二月三日の文書だけでは徹底しないのは事実だということを一点言われた。もう一つは、自治体に協力を要請するマニュアルづくりも含めてもう少しわかりやすい方法で自治体側に周知徹底させる方法を検討したい。三点目に言われたのが、別表をつける意図は法案修正につながるのでない、そういうことを言われたと思うのです。  ただ、このままで終わらすわけにはいかないので、私は、周辺事態になってみないとどうなるのかわからぬというままにほっておくのではなくて、やはり政府として今考えておられる、自治体側に協力を要請するまた依頼する項目の明確化であるとか、またそのときの自治体が拒否できる根拠であるとか範囲さらには手続であるとか考え方、これをどういう形で周知徹底されていくのか、そのあたりについて今の防衛庁長官の御答弁をいただきたいと思います。
  293. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 一部報道がされたように、この法律に書くという気は全く考えておりません。  ただ、運輸大臣も説明されたように、運輸省部門についてマニュアルが可能であるということであれば、そういうものも拡大して考えてみる必要もあると思います。あるいは、法律ができ上がって施行する際に施行通達みたいなものができないかというようなことも検討してみたい、こう思っております。
  294. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 ぜひ御努力をお願いしたいことを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。
  295. 山崎拓

    山崎委員長 これにて佐藤君の質疑は終了いたしました。  次に、冨沢篤紘君。
  296. 冨沢篤紘

    冨沢委員 公明党・改革クラブの冨沢篤紘でございます。  連日長時間大変御苦労さまでございます。お疲れでしょうが、いましばらくおつき合いのほどをお願いをいたします。  能登半島沖に二隻の不審船があらわれて、先月二十四日、安保懇談会が開催をされました。野呂田防衛庁長官のお考えは伺ったところでありますが、本日は総理ほか関係大臣も御出席をいただいておりますので、どうぞ御答弁のほどをお願い申し上げます。  政府は、二隻の不審船北朝鮮工作船であると断定をしました。そして抗議をした。しかし、北朝鮮は案の定、無関係であると言い張っております。  私たち国民がいま一つわからない点がある。それは、北朝鮮工作船目的。何のために日本海、能登半島沖にいたのか、あそこで発見をされたのか、この点の御説明をお願いします。
  297. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 工作船と断定をしたというのは、これは後ほど防衛庁長官からお答えをいただきたいと存じますが、北朝鮮であるということの断定もそっちの方でお答えを願いたいと思っておりますが、ただ、少なくとも北朝鮮工作員が今日まで約五十件、この事件がございました。  それぞれの今日までの証言等々を考えますと、いわば日本人拉致にかかわることであったり、あるいは対韓国工作であったり、その種の事柄をやっておったということは今までの経緯から明らかであるということは申し上げておきたいと思います。
  298. 冨沢篤紘

    冨沢委員 目的、はっきりわからない。
  299. 山崎拓

    山崎委員長 今の答弁じゃわからないというんですか。
  300. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 実際問題、どういう目的を持って今回北朝鮮工作船日本の能登沖にいたか、どういう活動をしていたかということは、推測はできるものの、断定をすることは避けたいと思います。
  301. 冨沢篤紘

    冨沢委員 推測で結構ですからお示しください。
  302. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 推測を申し上げるということは必ずしも日本の国益に沿うものとは思いません。
  303. 冨沢篤紘

    冨沢委員 もう一つ伺いします。  海上保安庁自衛隊挙げて、工作船二隻を捕まえようとして追跡劇を展開いたしました。追跡の目的、追っかけた目的、これは何なんでしょうか。
  304. 川崎二郎

    川崎国務大臣 日本漁船を偽った不審船であるということで立入検査を求めた、停船を求めた。それにもかかわらず、忌避されて、逃走を続けた。したがって、捕捉をして実態を調べる、これが目的でございます。
  305. 冨沢篤紘

    冨沢委員 海上保安庁海上自衛隊、総力を挙げての追跡劇。工作船に接近をし、追尾し、警告をし、P3C対潜哨戒機は、進路前方、威嚇爆撃までした。しかし、停船をせずに、検査もできずに逃げられた、これが結果であります。大山鳴動してネズミ一匹とれず。二隻の北の工作船は悠々と逃げてしまった。事は我が国への領海侵犯問題でありまして、小渕総理の顔に泥を塗られたのと同じことだ。  当然、追跡劇の目的は、二隻を拿捕して、日本の港に曳航して、その船がどこの国の船なのか、どんな仕事をしていたのか、そして、国際法違反の行為をする国家に日本として抗議をする。主権国家として当然の仕事であります。しかし、この仕事ができずに取り逃がしてしまった。責任があると思いますが、総理、どうお考えですか。
  306. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 最初にお断りしておきますけれども、この間、韓国日本領域の付近で北朝鮮の半潜水艦を撃沈したようなことは、もしそういうことが許されるならば、私どもは数分でできたと思うんです。  ただ私どもは、海上保安庁から内閣への要請を受けて出動したわけでありますが、自衛隊法の八十二条で発令されて行くわけですから、警職法の七条で、警職法の適用があってやるわけですけれども、武器の使用はできたとしても、中にいる人に危害を与えるのは正当防衛か緊急避難でなければいけないという縛りがあるわけですから、武器を使えば中にいる人に危害を与えるおそれがあるということで、これは、もしそういうことをやったら、それ以上に国会で大変な責任を問われることになるということもまた御理解いただけることだと思うのであります。  私どもは、法律上、今の法体系で許される範囲内で、自衛隊は、もし間違えば自分の命がなくなるという緊急の事態に行って汗を流したわけですから、それで精いっぱいやったわけですから、しかも、少なくとも防空識別圏まで追跡してこれを外に、遠く追いやった。これは恐らく、北朝鮮のこの不審船は悠々と立ち去ったんじゃなくて、まことに周章ろうばいして逃げたわけでありまして、その慌てぶりは、途中でエンジンがとまるような事態まで起こったわけですから、そういうことも考えていただいて、謝罪しなさいというのはちょっと私たちとしては納得できない言葉だと思っております。
  307. 冨沢篤紘

    冨沢委員 この追跡劇の最終責任者はどなたになるんですか。
  308. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 総理大臣の命を受けて命令を発動した私の責任であります。
  309. 冨沢篤紘

    冨沢委員 運輸大臣には責任はございませんか。
  310. 川崎二郎

    川崎国務大臣 我々の能力を超えたということで判断を求めたわけでありますけれども自衛隊が停船をさせることができたということになれば、当然、今度は海上保安庁として、その場へ行って逮捕するという仕事はまた海上保安庁の仕事になってまいるだろう、こう思っております。
  311. 冨沢篤紘

    冨沢委員 領海を侵犯された、この事の重大性をもっと強く私は認識してほしいですよ。逃がしてしまったんだから、当然つかまえなければいけない話だ。私は、国民におわびの表明、逃がしてしまいました、まことに申しわけございません。私たちはそのために税金を払っているんです。年間五兆円もの国防費を払っているんです。国防費が有効に使われていない。私は、国民におわびの表明があってしかるべきと考えますが、いかがですか。
  312. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 私は、先ほども申し上げましたが、第一線の自衛官は命をかけて精いっぱい頑張ってくれたということだけは申し上げておきたいと思います。  そこで私は、現行法体系で許される中で何をすることができるか、こういうことで今重要事態会議を開きまして、二度とこういうことにならないような戦略、戦術について日夜詰めているところでございますので、どうかひとつそういうことで御納得いただきたいと思います。
  313. 冨沢篤紘

    冨沢委員 野中官房長官に出席を要請しておるんですが。
  314. 山崎拓

    山崎委員長 定例記者会見があります。
  315. 冨沢篤紘

    冨沢委員 そうですか。  野中官房長官が、新聞情報なんですが、二十九日の政府・与党協議会で、沿岸警備の実態が北朝鮮側にさらけ出されてはいけないと指摘をされました。これは防衛庁長官運輸大臣が、テレビや記者会見で沿岸警備の手のうちを詳細に説明をし過ぎている。長官の発言ですと、こちらの体制をさらけ出すなんて国益を損なう行為だと不快感を示されたそうでございます。この真意を私は野中官房長官にお伺いをしたいんでありますが、これはこの御発言のとおりとして。  読売新聞の記者は、これを関係者への警告の意味を込めたものと、こんな観測を出されておりました。とすると、警告をされた川崎運輸大臣、野呂田防衛庁長官、御感想をお聞かせください。
  316. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 今回の不祥事案につきまして、私としても、国の安全保障の根幹に係る重要な問題であるので、事案の概要についてできる限り国民の皆様に対し御説明申し上げたところであります。  何せ自衛隊発足以来、四十五年ぶりでのことでありますから、専ら、物を言わないということはむしろ国民に対して申しわけの立たないことである、こういうことで、我が国の安全や防衛に関して支障が起こらない限度において私は発表したつもりであります。  その際、我が国情報収集、警備の体制、能力の詳細が他国に知られ、その結果、我が国の安全保障に重大な影響を与えることにならないように配慮して対応してきたつもりでありますし、これからもそういう対応をしたいと思っております。
  317. 川崎二郎

    川崎国務大臣 官房長官の御真意は聞いておりませんけれども、私どもの推測として、基本的にまず、国民の皆様方に今日の実態をどう正しくお伝えをするかが我々の仕事だと思っております。  一方で、捕捉機能等を、相手のあることでありますから、どこまで国民にお伝えをし、いや、我々がそこのところは秘密にさせていただいて相手に捕捉機能を察知されない、このバランスの問題であろうというように考えております。
  318. 冨沢篤紘

    冨沢委員 国民への説明はもちろん大事であります。しかし、本来の任務の、領海侵犯した北朝鮮工作船を拿捕して曳航して調査をする、これが何よりも第一の仕事でありますので、どうぞひとつ一層の御努力をお願いいたします。  今回の北朝鮮工作船追跡劇を点検いたしますと、私は、領域警備が現在の体制、法体系では十分機能していない、このことが明白になりました。あしたまた北朝鮮の船が来ない保証はないわけでありまして、安保懇談会でも申し上げましたが、初動態勢、省庁間で必ずしも十分でない。さらに、無線の傍受体制も、防衛庁も保安庁もおやりになっていないという答弁が返ってきた。警告射撃をやっても相手は停船しない。日本の警告射撃はおどかしだけで、言うことを聞かないと撃つぞ、この二の矢が撃てない警告射撃がいかに無力であるかというのが証明をされました。  私は、一刻も早く、こういうことが万全に対応できる、責任を果たさなければいけない、こう考えるものでございますが、しかしながら、その後、総理も官房長官も、この法体系の整備について、世論の動向を見てとか、あるいは官房長官は、法整備が先にあるわけではない、こんな発言をされながら、具体的な対策を先送りする方針を示唆しておりますが、これは責任回避になりませんか。
  319. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 今回、自衛隊をして、海上の警備活動について、このような判断のもとに対応いたしたわけですが、冨沢委員指摘のように、これは二隻とも逃亡を余儀なくされたわけでございまして、それに対してどのような対応をするかということは、今回の事案そのものすべてを当初から十分フォローアップし、レビューし、問題の所在について那辺にあったかということを今政府部内でも十分検討いたしております。  そのことと同時に、世論の動向等について、それをどのように受けとめていくかということも重要なことでございますので、今そうした御意見もいろいろと掌握をしながら、最終的に必要とあらば、それを法改正も含めて検討していくということでございまして、まさにその一端として、国民を代表しておられる国会議員として、今先生の御指摘一つの参考の意見としてお聞きをさせていただいておる、こういうことでございます。
  320. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 今、委員質問に、初動態勢もなってないし、通信傍受も全くだめだったというお話でありますが、何を根拠にそう言われるのかわかりませんが、初動態勢は海上保安庁ときっちり緊密な連携をとってやったつもりであります。  通信傍受につきまして、傍受の中身について申し上げることは、防衛政策上これは許されないことでありますが、最終的に北朝鮮のある港へ入ったというようなことは私どもが傍受したものであります。
  321. 冨沢篤紘

    冨沢委員 安保懇談会の議事録をぜひお読みをいただきたいと存じます。そのとき、防衛庁の御答弁は明確に出ておりますので、ぜひお読みになってください。  せっかく官房長官に御出席をいただきましたので、過日の新聞報道の内容について真意をお聞かせいただきたい。  二十九日の政府・与党協議会で、官房長官が、沿岸警備の実態が北朝鮮側にさらけ出されてはいけない、こういう指摘をされて、こちらの体制をしゃべり過ぎてさらけ出すなんというのは国益を損なう行為だ、こういう御発言をされたと伝えられておりますが、この意味はいかがなものでございますか。
  322. 野中広務

    ○野中国務大臣 必ずしも新聞記事が私が申し上げたことを正確に伝えておらないと思うわけでございます。  今般の不審船事案につきましては、私自身といたしましても、総理のもとにおきまして、国の安全保障の骨幹にかかわる問題でございますので、危機管理室はもちろんのこと、内閣官房を挙げ、かつ運輸省及び防衛庁と外務省と連携を密にしながら、この問題に対処をしてまいったところでございます。  そういう中におきまして、事案の概要につきましてはできる限り国民の皆さんに対して御説明を申し上げることを基本といたしながらも、他方、その結果として、我が国情報収集、警備の体制、能力の詳細が他国に知られることになれば、これ自体、国の安全保障に重大な影響を与えかねないわけでございますので、御指摘の発言は、この点にも留意する必要があるということを私は申し上げた次第でございます。
  323. 冨沢篤紘

    冨沢委員 ありがとうございました。  本論の日米ガイドラインについて質問いたします。周辺事態法案、十二条から成る小さい法案でありますが、しかしながら、我が国の安全確保のために自衛隊が当然やるべき任務がある、ここに道を開く法案であるという立場から質問をいたします。  第一条、周辺事態の定義がありまして、何遍も繰り返されておりますが、日本の周辺の地域における我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態政府は一貫して、地理的概念ではなく事態の性質に着目した概念と説明をされております。しかし、これを聞いても、国民はわかりにくい。首をひねっております。  外務大臣にお伺いしますが、日米共同の防衛範囲をぼかしている、はっきりさせない。国民の一番知りたい点を、あえて明確にされないわけでございます。それはそれなりのわけがあると私は思うのですが、また、ぼかしておく、はっきりさせない効果もあると私は考えますが、その辺、お聞かせ願えませんか。
  324. 高村正彦

    ○高村国務大臣 周辺事態とは我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態であり、ある事態周辺事態に該当するか否かは、あくまでもその事態の規模、態様を総合的に勘案して判断します、したがってその生起する地域をあらかじめ地理的に特定することはできませんということを、あいまいでなく明確に申し上げているわけでございます。  そもそも、安全保障にかかわる条約、法律では、その実効性、柔軟性を確保する観点もあって、目的、対象等について、通常の用語法以上に厳密で詳細な規定が置かれないものが普通である、一般である、そういうふうに承知をしております。
  325. 冨沢篤紘

    冨沢委員 今回の法案が成立いたしますと、我が国の領土だけでなく、米国の後方支援自衛隊が受け持つ、こういう任務が出てくるわけでございますが、防衛範囲をはっきりさせない、これは、私は戦争を抑止する一つの考え方だと思います。しかし、戦争を抑止する、この効果がある反面、マイナスもある。その一番大きい点は、中国外交と考えるものであります。  御承知のように、中国は台湾問題を抱えている。古くは金門、馬祖、そして新しくは中国軍の台湾を越えたミサイル発射。そして、台湾問題の都度、米軍は同盟国の台湾支援の軍事行動をとる。そして、私の住んでいる神奈川県の横須賀基地からは航空母艦が出動する。今後も米国の台湾関与は続くのでありましょう。  さて、今日までの御説明で、周辺事態には台湾海峡も含まれております。これは日本政府の基本方針であります。しかしながら、この点に中国は明らかに不快感を示していることもまた事実であります。  これから申し述べることは私の私見でありますが、あえて私見を申し上げて、総理の御見解と、中国に造詣の深い野田自治大臣の御見解もあわせて承りたいと存じます。  間もなく二十一世紀になるわけですが、私は、二十一世紀の日本の外交のかなめは中国にある。太平洋戦争、敗戦で終わってから五十年間、日本はアメリカを頼りに経済を発展させて、そして国の安全を図ってきました。日米安保体制、安定した日米関係が今日の日本の繁栄の礎になってきた。また、途中で、ソ連、社会主義国家の挑戦も続いてきましたが、長い冷戦を通じて民主主義、市場経済制度の優位性も確認され、実証をされたのであります。  さて、二十一世紀を間近にして、日本は今新しいこの国の形を創造しようとしている。この国の形、外交関係について言えば、台頭する中国を無視して組み立てることは不可能であるはずであります。すぐ隣の国ですし、これはもう隣近所は仲よくしなけりゃいかぬ。人口も世界一多い国家であります。したがって、商売の可能性は極めて大きい。香港返還を見ましても、統治体制も結構幅がある、しっかりしてきました。何よりも、日本には漢字という同根文明の国でありまして、二十一世紀を望めば、中国とは政治的にはもっともっと仲よくする、経済的にも恐らく関係は深まっていくでありましょう。これからは、基軸の日米関係に加えて、日米と同じ重さの日中関係をつくっていく、これが私の日本外交の基本スタンスであります。  そのためには、周辺事態に台湾海峡を含めない。周辺事態に台湾海峡を含めないという、将来展望に立った明確な日本外交方針を表明する必要がある、こう考えるものでございますが、総理、いかがでございますか。
  326. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 政府といたしましては、我が国の外交の基軸であります日米関係を一層強固にすべきものと考えておりますが、同時に、中国との関係は、我が国にとり最も重要な二国間関係の一つであると考えております。昨年の江沢民国家主席の訪日に際し、日中両国は、平和と発展のための友好協力のパートナーシップの構築を宣言いたしました。これを踏まえまして、今後日中間の信頼関係を一層強化していくとともに、国際社会の平和と発展のための対話と協力をさらに進めていきたいと考えております。  一方、周辺事態の性質にかんがみまして、いろいろと台湾海峡云々というお話がございましたが、ある特定の地域における事態について、これをあらかじめ周辺事態に当たるか否かという点について述べることは、これはしばしば申し上げておりますように不可能でありまして、これは繰り返して申し述べてきたところでございまして、日米安保や台湾についての我が国の立場については、これまでも中国側にさまざまな形で説明してきており、今後とも必要に応じ説明を行ってまいり、理解を得られるものと確信をいたしております。
  327. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 基本的には、今総理が御答弁されたとおりであります。  私も重ねて申し上げますが、そもそもこれは地理的な意味ということに重点があるのではなくて、むしろ事態という概念に最大の意味があるんだということを考えております。  それからいま一つは、少なくとも中国は、台湾も中国の一部である、中国から見れば自分たちの内政問題である、こういうことを主張しておられ、そして、基本的に平和の中で、国内の問題としてみずからの努力の中で解決されるということを我々は期待をいたしておりますし、少なくともそのことが基本原則だということは中国もおっしゃっているようでありますから、結果において懸念するような事態は発生することにはならないのであろうというふうに思っております。
  328. 冨沢篤紘

    冨沢委員 ありがとうございました。  戦争も外交の延長線上にあるわけでありますので、外交の基本方針は国民にわかりやすくあること、これが必要であります。  一九六〇年の日米安保条約の適用範囲、これは御承知のとおりの広さ、極東という範囲でございますが、一九七二年、日本と中国が国交を回復し、日中共同声明が発表されました。その六年後、一九七八年に日中平和友好条約。いずれにも、台湾は中国の不可分の一部という、これを両国政府がお互いに尊重するという宣言がある。私は、これを読む限り、日本政府は台湾を中国の内政問題として認めている、であれば周辺事態の適用外に置くのがごく自然な解釈、こういうふうに受けとめておるのですが、いかがですか。
  329. 高村正彦

    ○高村国務大臣 日中共同声明、日中平和友好条約、いずれも私たちはそれを大切に考えておりますし、その立場に立って考えているわけでありますが、周辺事態というものはあらかじめ特定できないわけでありますから、台湾であろうとどこであろうと、そこに入っているとか入っていないとか、どの地域でも言えない、理念上そうなんだ、こういうことを繰り返し申し上げているわけでございます。
  330. 冨沢篤紘

    冨沢委員 第二条、周辺事態対応する対応措置を実施されるとありますが、対応措置が武力の威嚇、行使に当たるものであってはならない、現行憲法では当然のことでしょう。そこで私は、日米安保体制下での日本の自主判断が、周辺事態に対してできるかどうか、大変懸念をしているところであります。  御承知のように、陸海空自衛隊情報力とか装備、即応態勢、それぞれ金をかけて努力をされていることは承知をしております。しかし、アメリカが余りに大きい。世界最強の軍事力と情報力を持った、圧倒的に優位にある米軍自衛隊の位置づけというのは、太平洋に広がる米軍戦略の一部を受け持っているにすぎない、これが実態でありまして、こういう構図の中で、周辺事態を、だれが、どんな基準で判断するのか。国家主権にかかわる問題でありますが、戦争になりそうだということになれば、当然日米間で情報交換をし合って、お互いに協力して、調整メカニズムを綿密に、前広に開始するのでありましょう。そして、情勢変化への即応態勢をつくり上げていく。しかし、結局は、アメリカの固有の判断で周辺事態が決定をされて、日本はこれに従わざるを得なくなるのではないか、こんな懸念を私は持っておりますが、総理、いかがでございますか。
  331. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 周辺事態は、我が国に対する武力攻撃ではないですが、我が国周辺の地域における我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態であるということは、累次申し上げていることであります。ある事態がこれに該当するか否かは、その事態の規模や態様等を総合的に勘案して判断するということも、毎度申し上げているところであります。  そのある事態周辺事態に該当するか否か、周辺事態に対していかなる措置を実施するかにつきましては、日米両国政府がおのおの国益確保の観点から、その時点の状況を総合的に見た上で主体的に判断する、こういうことになっております。その際、日米両国間においては、随時密接に行われる情報交換、政策協議が一層緊密に行われ、そのような事態について共通の認識に達するための努力が払われるわけであります。  そして、この法案では、内閣総理大臣は、周辺事態に対して特定の対応措置を実施する必要があると認められるときは、当該措置を実施することや対応措置に関する基本計画の案につき閣議の決定を求めるということになっております。政府においては、これに先立ちまして、基本計画の案を策定し、安全保障会議における審議を行う、こういうことで、周辺事態のこのプロセスが認定されていくわけであります。
  332. 冨沢篤紘

    冨沢委員 一つ確認をお願いします。  それぞれ主体的に判断をする、こういうことなんですが、米国が、周辺事態が発生した、日本協力要請をする、これに対して日本政府がノーと言うことも当然考えられると思いますが、そういう想定はできますか。
  333. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 そういうことは、観念的には考えられますけれども、私たちは絶えず緊密な連絡調整をやっているわけですから、実態上はないと思います。
  334. 冨沢篤紘

    冨沢委員 ありがとうございました。時間なので終了いたします。
  335. 山崎拓

    山崎委員長 これにて冨沢君の質疑は終了いたしました。  次に、佐々木陸海君。
  336. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 ただいまの議論にも少しありましたが、私は、まず周辺事態の認定についてお聞きをしたいと思います。  総理にお聞きするのですが、日本周辺で発生している武力紛争などの事態周辺事態だと認定するのは、まず第一義的には首相の責任で主体的、自主的に決定するということでよろしいでしょうか。
  337. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 ある事態周辺事態に当たるかどうか、これは日米両国政府がおのおの主体的に判断いたします。他方、日米両国政府間におきましては、安全保障協議委員会等、種々のレベルにおきまして密接な情報交換、政策協議が随時行われておりまして、周辺事態と考えるような事態が発生している場合には、これらが一層緊密に行われ、このような事態について共通の認識に到達するため努力が払われることになります。  周辺事態安全確保法案におきましては、ある事態周辺事態であると判断され、法案に基づき特定の対応措置を実施する必要があると認められる場合には、基本計画案を策定し、閣議の決定を求め、遅滞なく国会に報告することになります。閣議の決定を求めるという立場は、私の立場でございます。
  338. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 その事態周辺事態だというのは、何を基準に判定されるのか、首相の口からお答えください。
  339. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 今御答弁したことに尽きると思いますけれども周辺事態は、我が国の周辺の地域における我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態であり、ある事態がこれに該当するか否かについては、あくまでも事態の規模、態様等を総合的に勘案して判断することとなります。
  340. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 重要な影響を与える場合とか、事態を、規模等々を総合的に勘案してというのは、極めてあいまいな基準だと言わざるを得ないと思うんです。だから、勘ぐっていえば、アメリカの要求に自由に応じられるようにわざとあいまいにしたと言いたくもなるわけでありまして、もう少し具体的な基準を示せないのかという問題があるわけです。  例えば、そのままその事態が推移したら日本に対する武力攻撃に発展する可能性がある場合というような言いかえをするのは、不正確なんですか。
  341. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 一般的に言われることは、このまま放置すれば我が国に武力行使が及ぶ、あるいは我が国日本有事が起こる、こういうようなことが一つの考え方だと思います。  私どもは、この判断基準としていつも例に挙げて申し上げているのは、軍事的な観点を初めとする種々の観点から見て、我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態を意味している。このような事態として典型的に考えられるものとして、我が国の周辺の地域において我が国の平和と安全に重要な影響を与えるような武力紛争が発生している場合。または、このような武力紛争の発生が差し迫っている場合。また、例えばある国、地域において、政治体制の混乱等により当該国、地域において大量の避難民が発生し、我が国に大量に流入する蓋然性が高まっている状況。あるいは、ある国が国連安保理決議に基づく経済制裁の対象となるような国際の平和と安全に対する脅威となる行動をとっている状況であって、これらが我が国の平和と安全に重要な影響を与えることもこれに当たり得る。こういうふうなことを累次申し上げているところであります。
  342. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 要するに、そのまま推移すれば日本への武力攻撃が発生するというような事態周辺事態になり得る、しかしもう少し広いものもあるということで確認をしておきたいと思います。  それで、今、防衛庁長官が言われた四つのケースの問題なんですが、第一に挙がっているケースが、一番ある意味では典型的ではないかと私は思うんです。つまり、我が国周辺の地域において武力紛争が発生している場合であって、その上、我が国の平和と安全に重要な影響を与える場合というのを挙げていらっしゃるわけですが、そういう周辺事態への米軍のかかわりについて、きのう東中委員質問をした中で、米軍のかかわり方に二つのケースがあるということが私は明らかになったと思うんです。  一つは、その武力紛争が発生して、それがやがては日本の平和と安全に重要な影響を与えるようになる場合というんですから、その武力紛争が日本の平和と安全に重要な影響を与えるような方向に発展しないような方向で米軍が何らかの形の行動をする、そういうかかわり方。これは、この場合の武力行使というのがどういう武力行使になるのかということはよくわかりませんけれども、しかし、そういうかかわり方が一つのケースとしてある。もう一つは、米軍自身がその当該武力紛争の当事者になっている場合があるということを、きのう答弁されました。当事者として武力行使をしている場合がある。この二つのケースがある。  つまり、政府が第一の典型として挙げているケースの中で、武力紛争が日本の周辺地域において発生している場合であって、それが日本の平和と安全に重要な影響を与える場合というんですが、その武力紛争の当事者に米軍がなっている場合もあるということがきのうの答弁で明らかになったのです。それは間違いありませんね。
  343. 東郷和彦

    ○東郷政府委員 理論的に整理すれば、間違いないと思います。
  344. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 理論的に整理しなくても、きのうはっきりそういうふうに東郷条約局長答弁をされているわけです。  ですから、米軍自身が日本周辺地域における武力紛争の当事者になっている場合というのは、その際のアメリカの武力行使の性格がどのようなものであるにせよ、我が国周辺の地域におけるそのアメリカの武力行使が周辺事態一つの根源になっているということは間違いないということになりますね。それも論理的にはそういうことになると思いますが。
  345. 高村正彦

    ○高村国務大臣 米軍対応というのは国連憲章に従ったものですから、米軍が軍事力を行使するときには、その相手方の侵略行為、そういったことがあるわけでありまして、根源という、一番先にさかのぼって米軍の行動がある、その根源というようなことはちょっと違うのではないかなと思います。
  346. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 私は根源の一つと申し上げたつもりですよ。  ですから、それは確かにあなたの立場からいえば、武力行使というのは、いつでも米軍が正義のために行動していて相手の方が悪いんだと。しかし、ともかく、その武力紛争そのものが周辺事態に発展してくるわけでしょう。ですから、その米軍の武力行使は、この場合には周辺事態一つの根源になっていることは間違いないじゃありませんか。
  347. 高村正彦

    ○高村国務大臣 日本語の根源という言葉をどういうふうに理解するかで、根(こん)は根(ね)であります、源(げん)は源(みなもと)でありますから、根源ということは私にはぴんときません。
  348. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 アメリカの武力行使の性格の問題は、後でちょっと触れますからこの話はひとまずおきまして、総理がある事態周辺事態だと認定して基本計画を閣議決定すると、その時点から米軍への協力が大々的に始まるということになると思うのです。  では、周辺事態の認定以前には何もないのかというと、つまり周辺事態だという認定を経て初めて日米間の協力がその事態で始まるのかというと、もちろんそうではなくて、これは先ほど防衛庁長官も言われましたように、種々の情報の交換だとかいろいろなことがやられていると思うのですが、新ガイドラインによりますと、日米両政府は、周辺事態について、準備段階を設けて協力の準備を進めるということになっています。  この準備段階というのは、どういう基準で、だれが、いつ判断して発動するのでしょうか。
  349. 柳澤協二

    ○柳澤政府委員 相互協力計画及び共通の準備段階の作業は、ただいま共同計画検討委員会でどのようなものをつくるかも含めて進めているところであります。  当然、米軍もそうでありますし、自衛隊もそうでありますけれども、何らかの形で、事態の進む予測に合わせて所要の準備はそれぞれの範囲の中で進めていくことになるのでありまして、したがいまして、基本的には、その準備の段階で行うものについては、自衛隊の場合であれば防衛庁長官の指示なりをいただきながら進めていくということになると思います。
  350. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 ガイドラインによりますと、米軍自衛隊がそういう準備をするというふうに書いてなくて、日米両政府が、「周辺事態における協力措置の準備に関しても、合意により共通の準備段階を選択し得るよう、共通の基準を確立する。」ということが書かれておりますし、それから、周辺事態が予想される場合にどうするかというと、「日米両国政府は、適切に協力しつつ、合意によって選択された準備段階に従い、整合のとれた対応を確保するために必要な準備を行う。」というふうにガイドラインには書かれているわけです。  ですから、日本の周辺地域で軍事的な要素を含む何らかの事態が発生した、典型的なケースは武力紛争が発生した場合ですけれども、その武力紛争が日本の平和と安全に重大な影響を及ぼす事態に発展しないように、日米はそれぞれ協力して外交努力などを一方で進めながら、同時に、周辺事態に発展する可能性にも備えて共通の準備段階をつくって、このレベルではこういう準備、そしてこのレベルではこういう準備ということを調整しながら、その武力紛争なりが周辺事態に発展した場合に備える準備段階を段階を踏んできちんととっていく、そういうことをやるということは間違いないわけですね。
  351. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 そのとおりだと思います。
  352. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 その準備については、先ほど、防衛庁に関すること、自衛隊に関することでは防衛庁長官が発動する、準備しろと。そうしたら、段階を踏んで、ずっと手続が踏まれて、準備が進んでいくわけですね。  しかし、ここでも言っておりますように、「日米両国政府は、」と書いてあるのは、自衛隊米軍だけの協力の問題ではなくて、これは周辺事態法に定められているような各種の分野の協力が行われるわけでありますから、そういう政府全体の準備も、もう武力紛争が発生したという段階から始まっていくわけですよね。  防衛庁にかかわる問題については防衛庁長官が指示するという答えがありましたが、去る三月二十三日の参議院の外交・防衛委員会質問の中では、政府全体のことにかかわるんだったら総理が認定して、準備を始めよと言うことになっているんだということを防衛庁長官は説明をされているんですが、総理、それは間違いありませんか。
  353. 柳澤協二

    ○柳澤政府委員 おっしゃいますように、それぞれ関係する各省が出てきました場合には、それぞれの固有の権限に基づいて実際の実施計画が定められた場合には、いろいろな協力をしていくことになるわけでございます。したがって、その準備につきましても、各省それぞれの御判断でやっていただくわけですが、しかし、先生言われましたように、政府全体としての対応という形のものが必要になってくる場合には、当然総理の御指示なり御指導を仰ぎながら進めるということになると思っております。
  354. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 そうすると、その準備段階の基準というのが、今話し合われているのが、これから決まるのか、いつ決まるのかわかりませんけれども、基準に従ってきちっきちっと段階を踏んで、日米の間にそごが起こらないように、武力紛争が発生した場合、まだその武力紛争が日本の平和と安全に重大な影響を与えるかどうかもわからないような時点から、きちんと段階を踏んで準備をしていく。それが総理の指示や、あるいは防衛庁長官の指示によってその準備がずっと始まって、そして手順を踏んで、段階を踏んで、ずっと準備がされていくわけですよね。  そうなりますと、何か、最後に基本計画を決めて、それを周辺事態と認定するというようなところは、本当にそういう準備過程のもう最後の段階にすぎないわけでありまして、そのときにはもう、総理がこれは違うよとかこれはだめだとかと言えるような、そんな判断が下せるような段階ではなくて、もうずっときちっとした準備が全部進んできてしまう、そういうことになっているのではありませんか。
  355. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 具体的な準備でございますけれども、指針では、周辺事態で予想される場合の日米の協力といたしまして、情報交換だとか政策協議、それから事態の拡大を抑制するための努力、あるいは日米間の調整メカニズムの運用の早期開始、あるいは情勢の変化に応じた情報収集及び警戒監視の強化、それから情勢に対応するための即応態勢の強化、こういったことが記述されているわけでございまして、そのいろいろな段階に応じまして、こういったものを適切に対応していく、こういうことになろうかと思います。
  356. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 その準備というのは、そんな穏やかなものばかりじゃないんじゃないですか。  旧ガイドラインでは、日本有事の場合の共通の基準というのが示されていましたですよね。その共通の基準というのは、情報活動、部隊の行動準備、移動、後方支援その他の作戦準備に係る事項に関し、部隊の警戒監視から部隊の戦闘準備の最大限の強化に至るまでの準備段階を区分して示す、これは日本有事の場合、旧ガイドラインでそういう段階が設定されていたわけですよね。  だから、今度の周辺事態の場合でも、武力紛争なりなんなりが周辺事態に発展する可能性がある、それに備えて、軍事の面でいえば、そういう部隊の警戒監視の段階から、戦闘準備ということにはこれはならないかもしれませんが、後方地域支援の最大限の準備の強化に至るまで、手順を踏んで、段階を踏んで、ずっとやってくる。軍事の面でいえば、そういうことがやられるわけでしょう。そして、それに対応したその他の政府のあらゆる部門を挙げての準備ということが手順を踏んで進められていくということにこの段階でなる、そういう基準を定めようとしているわけでしょう。
  357. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 日本が武力攻撃を受けた場合またそれに対応する準備段階のお話がございましたが、周辺事態はおのずから状況が違うわけでございまして、日本有事に際しての準備段階がこうだから、こういうことにはならないと思います。  具体的な準備段階の内容につきましてはこれから検討を進めていくわけでございますが、周辺事態というこの事態、これにふさわしいような内容の準備をしていくわけでございますから、まずは、先ほど私が申し上げましたような、そういったものを進めていくということが中心になろうかと思います。
  358. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 そうはおっしゃいますけれども、今度のガイドラインだってこういうふうに書いてあるのですよ。「日本に対する武力攻撃が差し迫っている場合」、まずその場合が書いてあって、「場合には、日米両国政府の合意により共通の準備段階が選択され、これが、自衛隊米軍その他の関係機関による日本の防衛のための準備のレベルに反映される。」そういうレベルを設定するわけですよね、次々とレベルを。  その次に、ガイドラインに何と書いてあるかというと、「同様に、日米両国政府は、周辺事態における協力措置の準備に関しても、合意により共通の準備段階を選択し得るよう、」共通の基準を設定するというふうに書いてあるわけですから、何か日本有事の場合と全然違うみたいなことを言うのは、全然間違っていると思いますよ。
  359. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 それはもちろん、いわゆる日本有事のときにきちっとした対応ができるようにそのための準備を進めていこう、こういう考え方は周辺事態におきましても当然でございまして、それに対してきちっとした適切な対応ができるように、そういった準備段階を考えてそごのないようにしておこう、共通の基準を確立しようと。これは同じ思想でございますけれども、その対象自体が異なるわけでございますから、それに対する準備段階、またその段階で行う内容につきましても、おのずからそれは違うものになってこようかと思います。
  360. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 そういう段階を首相なり防衛庁長官なりが、やれと、準備をしろと発動したって、準備がだあっとこういう基準に沿って進んでいっちゃうわけでしょう。進んでいくわけですよ。そうなって、最後の段階でこの法案で出されている基本計画というのが出されてくるというのでは、実際には、もうそのときの首相の判断は、自主的も主体的もなくて、もう最初にこれで準備せよとやったときから決まってきているということになっちゃうんじゃありませんか。その場合の準備のための指示をする、準備をしなさいという指示をするというのは、法律的にはどういう権限なんですか。
  361. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 私、御説明していますところは、周辺事態に対しまして適切に対応できるようにあらかじめ準備をするという内容につきまして、先ほど具体的に例を申し上げたわけでございまして、必ずしも先生がおっしゃるようなそういう状況になるということにはならないのではないか、こういうふうに思います。
  362. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 余り説得力のない言葉だと思いますが、今私が言ったのは一般的な話ですよ。つまり、周辺地域で、ある武力紛争が発生して、それが周辺事態に発展するかもしれないということでそういう準備がされるということがあったわけです。  その武力紛争が我が国周辺のA国とB国の間の武力紛争だったらという例はわきに置くとして、先ほど問題になった、その周辺地域における武力紛争の一方の当事者がアメリカだということがあるということになるわけでしょう。A国とB国じゃなくて、A国と米国ですよ。その武力紛争が発生した場合に、この準備段階というのは、その紛争の一方の当事者である米国と最初の段階から一緒に協力して、準備段階を踏んで、周辺事態に発展したらどうするかという準備を全部していくということになるわけでしょう。そうすると、その武力紛争の一方の当事者と日本は、全く同じ立場に立ってその武力紛争に対応していく、そういうことになっていくわけですよね。違いますか。
  363. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 それは、先ほどから申し上げているとおり、国益保護の見地から主体的にそれぞれの国が判断するのですから、私たちがアメリカの言いなりにそういう状態に引き込まれるということはあり得ないことだと思います。
  364. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 主体的にと言ったって、あなた方はアメリカが悪いことをすることは絶対にないと言っているわけだから、その武力紛争でもアメリカの立場が絶対的に正しいということになるわけでしょう。そうすると、そのアメリカが一方の当事者になっている、日本はその最初からの緊密な協力者で、周辺事態になる前から緊密に協力しているわけですよ。それで、アメリカと戦っている相手側の国が日本を、アメリカと緊密に最初から協力しているんですから、敵だと考えて攻撃能力を持てば、即、日本の平和と安全に重大な影響を与える事態になって、周辺事態になってしまうわけですよ。それはもう論理的にそういうことになるわけでしょう。  そういう形で周辺事態になれば、周辺事態が宣言されれば、その米軍の行動を今度は日本は本当に大々的にサポートするということになっていくわけじゃありませんか。それを裏側から言えば、米軍は最初から日本のそういうサポートを当てにしてそういう地域での武力行使ができる、それをサポートするのが今度の法案だということにならざるを得ないじゃありませんか。どうですか。
  365. 高村正彦

    ○高村国務大臣 一方の当事者一方の当事者と、あたかも両方が、かつて戦争が合法化されていてお互いが決闘しているような、そういう状況を想定しているようなことをおっしゃいますが、そういうことではなくて、一方が侵略的なことをして、そして米軍が行動する場合には、国連憲章、国際法、国際的取り決めに従ってそれをやっているとき、そういう場合に日本がまさに後方地域支援をすることあり得べしということにすぎないわけでありまして、委員がおっしゃった議論というのは、大昔からある、例えばアメリカに基地を貸したら戦争に巻き込まれるのではないか、そういう議論のまさに延長線というか同じことなのでありますが、やはりこれは何十年かの歴史が証明して、これで四十年間日本の平和と安全、独立が保たれた、そして極東も大変、全く平和であったとは言いませんけれども割といい状況にあった、そういう中で、日本国民もほとんど、相当部分安保条約を支持してくれるようになった、こういう状況でありまして、いつか聞いた議論だな、こういうふうな感じを持って聞いておりました。
  366. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 全く、あなたの言っていることの方がおかしいですよ。だって、きのう外務省がはっきり答弁したんですよ、条約局長が。日本の周辺地帯において武力紛争が発生して、そしてそれが日本の平和と安全に重大な影響を与える場合というのが周辺事態になるんだというんでしょう。その武力紛争の一方の当事者に米国がなっていることがあり得るというふうに条約局長は言っているんですよ。私は、それに基づいて議論をしているだけの話なんですよ。  そのアメリカと、周辺事態という認定に至る前から、いろいろな面での準備段階を経て協力をずっとしてくるわけですから、それは具体的に言えば、その武力紛争の一方の当事者になっているアメリカとずっと協力をしているということになるじゃありませんか。  しかも、あなたは戦後の歴史のことに触れて言いましたけれども、私もそういう点でいえばはっきり言いたいと思うんですが、もう予算委員会なんかでも何度も言いましたけれども米軍は、国連総会が非難決議をするような違法な武力行使、先制攻撃を世界各地でやっているわけであります。  アジアでは、かつてのベトナム戦争がそうでありました。トンキン湾事件というのをでっち上げて、ベトナム側から不法な攻撃を受けたというんで、それに対する自衛だと称して大々的にあのベトナム戦争をやったわけでしょう。これはもう、トンキン湾事件がアメリカのでっち上げだったということは、アメリカの議会でもはっきりと証明されている問題です。しかも、そのベトナム戦争を今も反省をしていないわけです。  それで、例えば、これも国会で議論されたことですけれども、九五年のアメリカの国防報告によれば、米国が軍事力を行使することがあるケースとして、米国の死活的な利益が脅かされるケース、それを幾つか挙げて、そういう場合には武力行使をするんだということを言っているわけですよ。  ですから、あなたは確かに古典的なとかなんとかとおっしゃるけれども、しかし、日本の今の現実に照らしてみた場合には、きのう条約局長がはしなくも言ったように、周辺事態のもとになるような武力紛争の一方の当事者に米国がなっている。その米国がなっているケースも、我々から見れば、アメリカが先制的な攻撃をしてその当事者になっているということが当然あり得るし、それがよりあり得るケースだと我々は考えざるを得ない。そして、その場合には、この周辺事態というのは、そういうアメリカの不法な行為をもう最初からサポートする、そういうものになってしまうんだということをはっきりと申し上げておきたいと思います。
  367. 東郷和彦

    ○東郷政府委員 たびたび御指摘がございましたので、一点、確認方申し上げたいと思います。  どのような事態周辺事態になるのかというお尋ねがございました。そこで、我が国周辺の地域において武力紛争が発生する場合であってその事態我が国の平和と安全に重要な影響を与える場合、これが周辺事態の最も典型的な例の一つということで申し上げました。この武力紛争というのは我が国に対する攻撃でないということは、もう周辺事態の御説明の中でずっと申し上げているところでございます。  しからば、我が国の周辺で発生しました武力紛争の一つの当事者として、米国がその当事者となり得ない、これは非常に変な話でございます。一つの理論的可能性として、そういうこともあり得るということを申し上げただけでございます。  他方におきまして、そのような武力紛争が発生したときの米軍の行動の性格、これは大臣からるる申し上げておりますように、私どもの考え方としましては、国連憲章、安保条約に従って行動をとっている、正しい行動をとっている米軍、そういうふうに政府としては考えているということでございます。
  368. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 正しい行動ということを何度強調してみたところで、正しくなるわけじゃありません。今までの歴史の中では、アメリカは不法な先制攻撃あるいは侵略を各地でやっているわけであります。そのことだけはっきり述べておきたいと思います。  次に、時間も少し少なくなりましたが、民間協力の問題についてお聞きをします。  周辺事態法は「関係行政機関の長は、法令及び基本計画に従い、国以外の者に対し、必要な協力を依頼することができる。」という有名な一項を設けて、民間協力を規定しています。  政府が二月三日に明らかにした「周辺事態安全確保法案第九条において想定される協力項目例」という中には「民間に対して依頼する協力項目例」として「人員及び物資の輸送に関する民間運送事業者の協力」を挙げております。民間運送業者に協力を依頼するというのは、どういうことになるんでしょうか。その契約は、実際どういう形になるんでしょうか。民間業者との間ではどういう形で契約することになるのか、その辺について簡単に説明してください。
  369. 伊藤康成

    伊藤(康)政府委員 一般に、米軍と民間業者との契約ということでございますと、地位協定に基づきまして米軍と民間事業者が直接契約を締結する、いわゆる直接調達と申しますものがございます。また、間に防衛施設庁が入りまして民間事業者と契約を締結いたしますところの、いわゆる間接調達というようなものもあるわけでございます。  この九条二項、これはあくまで協力をお願いするものでございまして、事業者側で応じた場合に、そのどちらかということは、これはどちらもあり得る、こういうことであろうと思います。
  370. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 国内での米軍の演習・訓練に伴う輸送には民間が既に動員されております。  SACO合意に基づいて、米海兵隊の百五十五ミリりゅう弾砲の実弾演習・訓練が、九七年六月の北富士演習場を皮切りに、本土の五つの演習場で既に実施をされておりまして、この海兵隊の実弾演習では、沖縄から本土演習場までのアメリカの兵員、武器弾薬、車両、物資などの輸送は、九七年九月の矢臼別の訓練では自衛隊機が使われたのを除いては、すべて民間業者が輸送を行っております。経費は日本が負担をしております。  武装した兵員は全日空や日本航空等々が輸送し、空港から演習場までの輸送には国際興業とか富士急行とか阿寒バスとかいう民間のバス会社が使われております。それから、りゅう弾砲なども日本通運の第三光洋丸など民間チャーター船が輸送して、港から演習場までは日通のトラックが運送する。  こういう形で米軍の演習に民間輸送が使われているわけでありますが、これらは、防衛施設庁が民間業者と契約する間接契約の形で行われているわけであります。しかも、日本の経費負担でやられている。  これは訓練のわけですが、今後は、周辺事態で戦闘行動を行う米軍を支援するために、政府が関与してこういう民間による移送、輸送をやることになるんでしょうか。
  371. 伊藤康成

    伊藤(康)政府委員 九条二項で民間業者に依頼することにつきましては、基本的には自衛隊等が行います後方地域における支援活動と同様なものというふうに考えております。もちろん、主として後方地域の中でも領域の中ということであろうと思いますが、一般的に公海、公空に及ぶことを排除するものではございません。そのようなケースが具体的にあるかどうかということについて今確たることを申し上げるわけではございませんが、法の性質としてはそういうことであろうと思います。  なお、先生今、戦闘に従事するというふうにおっしゃいましたが、あくまで、自衛隊の後方地域支援活動にいたしましても、戦闘行動とは一線を画した地域で行われるものでございますので、九条二項で政府が民間の業者にお願いいたしますのも、当然そのような安全上の配慮は払ってお願いをするものでございます。
  372. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 兵員の輸送とかあるいは武器の輸送とかいうようなものも民間にやってもらうことが当然あり得るということであります。  契約の形態は米軍と民間業者との間の直接契約もあるという答弁でしたが、その場合、民間の輸送業者が輸送する内容は全く自由で、この場合も、武器弾薬や武装兵員の輸送も当然あるということだと思いますが、限定されますか。それから、その輸送をする地理的範囲、今、主として国内だけれども、公海、公空上もあり得るというふうに言われましたが、範囲は一体どこまでか。その限度はありますか。
  373. 伊藤康成

    伊藤(康)政府委員 先ほどもお答え申し上げましたように、基本的に、九条二項でお願いをするということは、これは国の行政機関から民間業者にお願いをするものでございますから、今、本法案で規定しておりますような後方地域という一線を画された地域ということで考えておるわけでございます。
  374. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 要するに、後方地域の中でしかやらないということですか。民間の輸送も後方地域の中でしかやらないということですか。
  375. 伊藤康成

    伊藤(康)政府委員 九条二項で行政機関からお願いをするというのはそのようなケース、そのようにお考えいただいて結構でございます。
  376. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 それは、何か法律にそういう規定はありますか。
  377. 伊藤康成

    伊藤(康)政府委員 法律上、各行政機関が行う措置については、基本計画に明示するようになっております。そして、基本計画におきましては、それぞれの活動につきましての地域についての大まかな指定をすることになっておりますので、行政機関としても、その範囲でそれぞれの仕事を行う、こういうことになるわけでございます。
  378. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 では、武器や弾薬や武装した兵員の輸送やなんかはやらないように制限するとか、あるいは領海から外へ出ないようにするとか制限するとかいうことが、それできちんと担保されるわけですか。
  379. 伊藤康成

    伊藤(康)政府委員 この法律の定義上、後方地域と申しますのは、「我が国領域並びに現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる我が国周辺の公海及びその上空の範囲をいう。」ということでございまして、この範囲でということを申し上げているわけでございます。
  380. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 しかし、輸送は公海あるいはその上空でもやられるわけでしょう。
  381. 伊藤康成

    伊藤(康)政府委員 先ほど来申し上げておりますように、輸送について、先ほど申し上げました後方地域の範囲内において公海あるいは公空に及ぶことを排除するものではございません。
  382. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 この日本協力米軍の要求に基づいて行われるわけですけれども米軍から輸送の要求があった場合に、日本自衛隊と民間で対応することになるということはもうはっきりしています。  九七年の六月の十日の当時の秋山防衛局長答弁ですが、周辺事態での輸送について、「大半のものを米軍は民間に期待している」というふうに言っておりますが、輸送の大半を担うということになると、民間の大量動員を想定しなきゃならぬことになるのじゃないかと思うのです。  例えば、あの九四年の米軍の要求の例を見ますと、広島県の川上弾薬庫から弾薬輸送に十トントラック百四十八台とか、沖縄の海兵隊キャンプと岩国基地でトラックとトレーラー計千三百七十台、クレーンとフォークリフト百十四台ですか、そういうような形でいろいろな要求がなされてくるわけですが、そういったものが必要な場合、すぐ確保できるような大量動員を何らかの形で想定しているわけではありませんか。防衛庁長官、答えてください。
  383. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 いずれにいたしましても、その事態に際しまして、米側にどういうニーズがあるかということの把握から始まるわけでございますが、米側のニーズを踏まえて、我が国としてどういうことをしていくかということを判断していくわけでございます。  この基本計画におきまして、関係行政機関の方から国以外の方に依頼をするという内容につきましても、それはやはり日本の立場として適当かどうかということも踏まえて判断をするということでございます。
  384. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 民間に大半を依頼するということを言っているわけですよ。そうすると、今米軍のニーズに応じてやるということになるわけですから、ニーズが大きければ大きいニーズにこたえられるような準備をしておかなきゃいかぬわけでしょう。  ですから、運輸大臣にちょっとお聞きしたいと思うのですが、運送業者を事前登録するとかそういうこともやっていかないと、これには十全な対応ができないのじゃないかと思うのですが、運輸大臣がその権限能力を使って民間運送事業者に依頼して、動員の仕組みをつくっていくというようなことも検討されているんじゃありませんか。
  385. 川崎二郎

    川崎国務大臣 今御答弁にありましたように、周辺事態の発生という事態になり、その後、米軍等のニーズの把握が行われる、基本計画が策定される、策定される段階で私どもが事前調整に入っていくということでございます。  そして、その後、マニュアルというものをつくって発注、こういう形でございます。
  386. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 大半なものを民間に期待しているというのは、今のアメリカの基本戦略であります。  湾岸戦争では、米軍は、九〇年の八月から約七カ月の間、湾岸戦争の準備と戦争継続のために膨大な量の輸送活動を行いました。このときの米軍の輸送での民間部門の役割を見ると、例えば空輸でいいますと、アメリカには緊急事態や危機の場合に民間航空機を予備戦力として確保しておく制度、CRAFという制度があるそうですが、これは民間予備航空隊などと訳されておりますけれども、そのシステムのもとで、民間航空機によってあの湾岸戦争の貨物の二七%、兵員の六四%が湾岸に輸送されました。九一年三月の湾岸戦争後の米国、ヨーロッパへの輸送は、海上輸送では貨物の三四%を民間のチャーター船で輸送いたしました。湾岸戦争の大移送作戦について、兵員配備と物量作戦は、広大なアラスカ州に散在する全住民を地球の裏側、アラブの砂漠地帯に移送したことに匹敵するような移送を行ったというふうに当時のアメリカの文書に書かれております。  米軍は、湾岸戦争でのこうした民間の部門による輸送の実績を非常に高く評価して、その後の民間活用をさらに進めています。そういうもとで、日本に対しても、周辺事態に際して、輸送で大半を民間に期待している。この大半を民間に期待しているという点について、防衛庁長官いかがですか。そういうことでありませんか。
  387. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 先ほど来の議論でございますが、この法案の九条二項に基づき民間輸送事業者に輸送の協力を依頼する場合には、関係行政機関の長として、この場合は運輸大臣から依頼することとなるわけであります。このような協力について、その時点における米軍のニーズとかあるいは当該措置を必要とする事態の態様等を踏まえて判断されるべき問題であります。  今委員から、大量の荷物が民間業者によってということでありますが、この法律には何ら強制義務はありません。あくまでも契約であって、嫌なら断ればいいわけでありますから、そういう意味で、米軍は期待されていても、事業者はそれに応ずる義務もないし責任もないということであります。  なおまた、こういうことをやる場合に、私どもは安全性に関しては特に慎重に判断し、およそ不測の事態が起こり得ない、そのような危険性がないと考えられる状況において協力を依頼することとなります。  また、細かくその都度、そういう安全にかかわる問題については民間業者にも連絡をして安全性の確保に努める、こういうふうに考えているわけであります。
  388. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 米軍の輸送部門での民間の活用というのは、ことし二月二日に発表された九九年の国防報告でも位置づけられておりまして、民間航空機は、兵員及び規格化されたカーゴ輸送の面で軍用空輸部隊を増援するものである。このCRAFという制度によって、国防省は、危機の場合、民間旅客機及び貨物輸送機にアクセスする。CRAFに参画する見返りとして、航空企業は、平時において、旅客、貨物輸送業務で優先的に仕事が割り当てられる。CRAF航空機隊は三段階に分けて動員されるが、これによって国防省は、長距離輸送旅客機の約六〇%、カーゴ輸送力の約七五%にアクセスすることになる。最大限展開のシナリオでは、民間航空機によって兵員のほぼすべてを、そしてカーゴ輸送の三分の一以上を紛争地域に輸送することになる。  こういう計画を米軍は立てて、国内ではやっているわけであります。輸送分野で民間の大規模な動員計画を、長期的にまたさまざまなレベルに応じてアメリカはつくっているし、アメリカはこれなくしては戦争ができないという状況になってきているわけであります。  ですから、今防衛庁長官はかなりのんきなことをおっしゃっているんですが、しかし、実際には、周辺事態でも米軍のニーズというものは、民間を大規模に動員して輸送を確保するということを強く迫ってくるというふうにはお考えになっていませんか。
  389. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 私は、そういう問題は自主的な判断に任せられると思います。アメリカがいかに需要が多くても、民間業者が拒否してやらない場合は、それはいたし方ないことだと思います。
  390. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 日米の軍レベルで、既に相互協力計画というものが検討されているはずです。そこでこうした民間部門の輸送体制も検討しているはずであります。既に三回、共同計画検討委員会が開催されて、そういう周辺事態における協力計画の内容を議論しているはずであります。  先ほど運輸大臣は、基本計画が決まって、向こうのニーズが来て、そしてそれから検討して手配するというようなことをおっしゃいましたけれども、しかし実際には、この相互協力計画の立案作業の中で、そういう周辺事態になった場合に、例えば日本の北の方でなった場合に、あるいは南の方でなった場合に、どこでなった場合に、どういうアメリカの介入になって、どういうアメリカの戦争になって、どういう規模の日本のサポートが必要かということがこの共同計画検討委員会の中で出されて、相互協力計画の中に具体化されて、その実現の方向というものがプランされているわけじゃありませんか。着々とそういう計画を、三回やって、進めてきているんじゃありませんか、防衛庁長官
  391. 柳澤協二

    ○柳澤政府委員 共同計画検討委員会で行っております相互協力計画の検討作業といいますのは、実はこれは、日本有事の際の共同作戦計画の検討作業とあわせて、まずそのコアになる米軍自衛隊でいろいろ作業しているということは何度か申し上げておりますが、それは、例えば相互協力計画であれば、ガイドラインの別表にありますようないろいろな項目について、お互いがどんな行動をとるのか、あるいはそういうものが重なって起きてきたときにどういうふうに対応するかというようなことを詰めておりまして、一つは、あくまでもスタディーという性格のものであって、あらかじめ、特定の事態がいつごろ起きるかというようなことでシナリオ化して全部セットするとできるような、そういう性格のものではありません。  そういう下地があります中で、仮に他の関係機関と諮ってお願いするような部分があれば、それは上部機関のSDCなりの御指導を得ながら政府の中で調整していくことになりますけれども、あくまでもそれは基本計画策定のときに、それはもう具体的な状況に応じて、どのようなことを、定量的にも、そのときでないと決まらないという性格でございますので、今先生言われるような、今やっている作業がまさにそういうことを定量的、定性的にきっちり固めていくという作業であるかといえば、そういう性格の作業ではないということであります。
  392. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 時間が来ましたので終わりますが、そういう作業が進められていて、その相互協力計画などは公表されないということになっているわけですから、今おっしゃったようなことも実際にはどうなのかわからないし、実際米軍の必要に応じるということになれば、そういうところで詳細な計画を立て、それを実現する方向をつくらなきゃいかぬわけでありまして、そういう方向を進めることに我々は反対だということを申し上げて、質問を終わります。
  393. 山崎拓

    山崎委員長 これにて佐々木君の質疑は終了いたしました。  次に、濱田健一君。
  394. 濱田健一

    濱田(健)委員 総括が終わる段階ですので、ちょっとこれまでのいろいろな質問に対するおさらいみたいなものを社民党的にさせていただきたいと思います。  これまでの論議の中で、日米共同作戦や相互協力等、日米安保条約の枠内でするのだと言っておられますけれども、私は、本当にそうかと思うのであります、安保そのものが変質してきているのではないかと。  その理由として、新ガイドラインの制定のきっかけとなりました日米共同宣言の中に、アジア太平洋地域という範囲が盛り込まれておりまして、それに連動する、極端に言えば、アジア太平洋から世界のどんな国でも、アメリカの守備範囲、アメリカ軍が行動する守備範囲に日本をバックアップさせる、そういう中身ではないかとこれまで論議もなされてまいりました。ましてや、安保条約第六条の極東の範囲というものを大きく超えて在日の米軍が行動できる中身にこのガイドラインを含めた法案が位置づけられているのではないかと思うのですが、その辺、改めてお聞きしたいと思います。いかがでしょうか。
  395. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 日米安保条約に言う極東につきまして、昭和三十五年の政府統一見解に述べられているとおりであり、この政府統一見解に変更なく、日米安保条約の対象地域が極東からアジア太平洋地域へと実質的に変質したといった御指摘は当たらないと考えております。  新たな日米防衛協力のための指針は、日米安保体制のもとで効果的かつ信頼性のある日米協力を行うため、日米防衛協力のあり方に関する一般的な大枠及び方向性を示すことを目的とするものであります。また、この新指針の実効性を確保するため、周辺事態安全確保法案は我が国の平和と安全の確保に資することを目的とするものであり、日米安保条約に基づく日米安保体制のより効果的な運用を確保し、我が国に対する武力攻撃の発生等を抑止することに資するものでございます。  なお、周辺事態は、極東やアジア太平洋といった観点でなく、あくまでも我が国の平和及び安全に重要な影響を及ぼすか否かに注目したものであることを、改めて申し上げさせていただきます。
  396. 濱田健一

    濱田(健)委員 私は、安保そのものが変質してしまったからこそ附属文書であるガイドラインをつくりかえなければならなかった、そして、国内法の整備も、その中でうたわれていない中で周辺事態安全確保法という新しい法律もつくらなければならない、そういう状況政府自身が追い込まれてきているのではないかと思うのですが、総理、いかがですか。
  397. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 安保条約そのものが変質しておるとは考えておりません。なるほど、国際政治、あるいは現下の、冷戦構造から全く世の中が、そういった意味では二大大国を中心にした国際政治の厳しい冷戦構造というのがなくなったということは事実でありますが、北東アジアも含めましてまだまだ不確定な要素が存在する中で、依然として、我が国の安全を確保するという意味で、日米が協調してこのことを行っていくということについては、安保条約の基本的な存在理由、存在意義というものは厳然として存在している、こう認識をいたしております。
  398. 濱田健一

    濱田(健)委員 私は詭弁だと思いますね、その総理お話は。  それで、関連して言いますと、外務大臣にお尋ねしたいのですが、これまでも、周辺事態の周辺というのは特定した地域ではない、事態の方が、その中身の方が重要なんだと言っておられましたけれども、周辺という言葉がある以上は、当然地域があるはずだと私は思います。  日米安保条約が変質していないのであれば、安保の枠内ということであれば、極東及び極東のその周辺ということだろうと思うのですが、いま一度、周辺事態の周辺と安保で言う守備範囲、ここは同じなのか違うのか、お答えいただきたいと思います。
  399. 高村正彦

    ○高村国務大臣 日米安保条約の目的というのは、極東及び我が国の平和と安全ということでありますが、そのうちの我が国の平和と安全ということに絞ってこの周辺事態法ができているわけであります。  そういう意味から、極東に関する概念である極東そのものの言葉とか、あるいは極東周辺という言葉を使うべきでなくて、我が国の平和と安全に絞ってこの法案ができている以上、我が国周辺という言葉を使うのが適当だと考えたわけであります。  私も前から言っているのは、あらかじめ特定するという意味で地理的概念ではない、こういうことを言っているのと同時に、どなたでも、周辺という言葉が地理的意味を全く含まないなんて、そんなことは日本語じゃないよ、こういう疑問は、それはそれなりにもっともでありまして、私たちは、我が国周辺という言葉を使ったのは、それがどこまでもいっちゃわないというような、そういう気持ちを込めて使ったつもりでございます。あくまで、一定の地域を特定してあらかじめ示すことはできない、そういうことであって、我が国周辺というのはどんどんどこまでも広がってしまうというものではない、事態の性質から当然におのずから限界がある、こういうふうに思っております。
  400. 濱田健一

    濱田(健)委員 今のお答えでいうと、事態が起きた、その中身によって、非常に遠いところであっても周辺になるし、近いところでも周辺にはならないという判断を政府がやるんだということでよろしいんでしょうか。
  401. 高村正彦

    ○高村国務大臣 そういうことでございます。そういうことでございますけれども、民主的な政府でございますから、そんな恣意的に何でもやれるというはずのものでもございません。
  402. 濱田健一

    濱田(健)委員 そこのところも、国民の皆さん方にはよくわからない、論議を聞いてきてもわからない中身だという話ばかりでございます。  時間がありませんので急ぎますが、周辺事態法の十二条でございます。  この法律の必要な事項は政令で定めることとする。必要な事項は政令で定めることにするということでございますが、政令事項というのは、私が知っている範囲で言うと、こうこうこういうものについて細かい中身は政令で定めるというふうに普通は書かれていると思うのですが、この法案については、この法律に必要な事項ということだけを書かれているわけでございまして、必要な事項は政府自身にすべて白紙委任をしろというふうにおっしゃっておられるように感じております。  これは、我が党の土井党首が二十六日の質問の中でも皆さんにお聞きしたわけですけれども、その辺はいかがなんでしょうか。
  403. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 この十二条は、「この法律の実施のための手続その他この法律の施行に関し必要な事項」としていることから明らかなように、本法案の実施のための手続規定を政令で定めることを規定しているわけであります。したがいまして、国民の権利を制限したり、また、国民の義務を課することを内容とする規定の根拠を与えているものではありません。  したがって、この法案の成立後にこの法案の十二条に基づき定められる政令の内容は、当然、本法の実施のための手続の範囲内のものであって、その具体的な内容が決まっていないからといって、本法案を論議することが国会軽視であるというような指摘は当たらないと思っているところであります。
  404. 濱田健一

    濱田(健)委員 共同計画検討委員会というのがございます。この中で相互協力の計画を立てる、共同作戦の計画を立てるというふうに言われておりますけれども、これは、九条のいわゆる自治体や民間協力、これらもやるんでしょうか。今長官お答えいただいた、その他のすべての政令事項で定める中身もこの中で検討するんでしょうか。  そして、これまで、新ガイドラインがつくられた後何回ぐらいこの委員会というのは開かれているんでしょうか。
  405. 柳澤協二

    ○柳澤政府委員 まず先に回数の方を申し上げますと、昨年の三月から一回目を立ち上げまして、現在まで三回会合を持っております。  そして、この共同作戦計画の検討とそれから相互協力計画の検討でありますが、これは何度か御説明申し上げましたけれども、そういう事態にコアになって活動するであろう米軍自衛隊の間で、米軍自衛隊それぞれがどんな活動をするかということを中心に議論をしておりまして、それをいわばエンドレスに、いろいろなパターンの協力を考えながらスタディーしていくというものであります。  したがって、具体的に起きた事象にどのように対応するかというのは、やはり具体的に起きた事象に従って基本計画等に反映されていくわけでありますが、そういう性格のものでありますので、あくまでも米軍自衛隊活動のあり方といいましょうか、そういうところを検討しているものであります。
  406. 濱田健一

    濱田(健)委員 ということは、私が今言いました自治体の協力とか民間の協力とかというところについて共同で論議をし合う場ではないというふうに理解してよろしいですね。
  407. 柳澤協二

    ○柳澤政府委員 そして、この共同計画検討委員会は、いわゆるガイドラインで言いますところの包括的メカニズムの一環として作業をしておりますので、そういう米軍自衛隊活動を受けて政府としてどんな対応が必要になるかという部分については、これは、政府としての包括的メカニズムといいましょうか、関係省庁との御調整というようなことも、それはその共同計画検討委員会ではなくて、その成果を受けて上部機関の、恐らくまず段取りとしては局長級の会合でお願いすることになると思います。そういう手順はあり得ると思いますけれども、その中で今先生言われたようなこと自体をやるということではございません。
  408. 濱田健一

    濱田(健)委員 今の、局長級のところで自治体や民間の協力の中身は決めていくということですが、それはいつごろ発表する、できることになるんですか。
  409. 柳澤協二

    ○柳澤政府委員 これは、今、先ほど申し上げたように三回ほど会合を持っておりますが、それで節目ごとに、実はそのもう一つ上にございます外務、防衛の局長級のSDC、さらには閣僚級のSCCに報告をし必要な指示を得るという段取りを予定しておりますが、そういう段取りにまだ至っていないということが一つございます。  それから、具体的に民間等にどのような協力の必要が出てくるかということは、何といいましょうか、今進めておりますのは具体的なケースに応じたスタディーではないわけでありますので、果たしてどの程度定量的な形で出せるかというのは、今ちょっと私どもは予断を持っていない状況でございます。
  410. 濱田健一

    濱田(健)委員 この共同計画検討委員会が過去三回行われたということでございまして、自治体の協力等々について二月に十項目出されました。まだまだこれから出てくる中身なんでしょうが、この十項目というのが、今答弁された、今までの論議の中で出されてきたものを具体的にこういうものですよというふうに政府としてペーパーにして出したということに考えてよろしいのでしょうか。
  411. 伊藤康成

    伊藤(康)政府委員 本年の二月三日に協力項目例ということでペーパーをまとめましたのは、当時予算委員会等で御議論がございました、その中で出てきたものを一通りまとめたものでございまして、この文書の中でも書いてございますように、既にこれに限られるというものではございません。
  412. 濱田健一

    濱田(健)委員 予算委員会の中で出てきたものという今の答弁は、予算委員会の中で、どういう中身が考えられるか、今考えられる範囲という形で提示をしたということであって、まだまだこれからいろいろなものが出てくるというふうに私は理解しなければいけないのでしょうか。
  413. 伊藤康成

    伊藤(康)政府委員 予算委員会でいろいろ御議論がございました。そういう中で、政府側からいろいろ、各大臣から御答弁申し上げたその中身をまとめたものということでございます。  それで、後、ではこれからさらにどんなものが出てくるかということでございますが、それはそれぞれの、個別の事案、事象ごとのニーズに従うものでございまして、これに限られるものではないということまでは現在申し上げられるわけでございますが、さらに何が出てくるかということについては、なお私どもも今検討をしているところでございます。
  414. 濱田健一

    濱田(健)委員 先に行きます。  後方地域支援と後方支援の違いを改めてお伺いしたいと思います。
  415. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 後方支援というのは、一般に、作戦部隊に対する装備品の補給、整備、改修、輸送等、あるいは人員の輸送、傷病者の治療、後送、施設の取得、建設、維持、運営等及びこれに関連する義務の提供を指していますが、この場合には、特に活動の地域を限定した概念ではございません。また、後方支援は、兵たんとも訳される場合もあります。  これに対しまして、周辺事態安全確保法案における後方地域支援は、活動の内容としては後方支援に類似するものでありますけれども、後方地域という新しい活動地域に着目した概念でありまして、後方地域において、日米安保条約の目的達成に寄与する活動を行っている米軍に対する輸送、補給といった物品役務提供等の支援措置を実施することを指すものであります。
  416. 濱田健一

    濱田(健)委員 後方地域支援という言葉について、政府のこれまでの憲法解釈というものをちょっとおさらいしてみましたが、後方地域支援は、戦闘行為が行われていない後方地域で、それ自体が武力行使に該当しないものを行うのだから、集団的自衛権の行使に該当せず、憲法に違反しないとしてこられたと思うんですけれども、この解釈は変わりませんか。
  417. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 そのとおりであります。
  418. 濱田健一

    濱田(健)委員 しかしながら、憲法に違反しないからといって、後方地域支援のような活動を行う場合に、国際法上の根拠が何らか必要になってくると思うんですが、ここはいかがですか。
  419. 東郷和彦

    ○東郷政府委員 お答え申し上げます。  現在検討されております後方地域支援、これが国際法上どのような位置づけになるかということかと思いますが、米軍安保条約、国連憲章に従った行動をとっております。その正しい行動をとっている米軍に対して我が国がこれを支援するということは、国際法上何ら問題のない行動でございます。これが現下の国連憲章下における法的な位置づけになるということかと思います。
  420. 濱田健一

    濱田(健)委員 これまでの憲法解釈によれば、個別的自衛権の発動の要件、これが三つあったと思います。我が国に対する急迫不正な侵害のあること、二番目に、これを排除するために他の適当な手段のないこと、三番目に、必要最小限の実力行使にとどまるべきこととされていたと思います。  後方地域支援について考えますと、後方地域支援が行われる場合は、地理的概念でない日本の周辺において日本の平和と安全に重要な影響を与える事態という部分に対処するものであると。これは我が国に対する急迫不正な侵害のある場合とは私は言えないと思うわけでございまして、後方地域支援は個別的自衛権の行使ではないこととなると思うんですが、ここはいかがですか。
  421. 東郷和彦

    ○東郷政府委員 一点申し上げたいと思います。  現在御検討いただいている後方地域支援、これは実力の行使ではございません。武力行使ではございません。したがいまして、自衛権の行使、あるいは先ほど言及なされました集団自衛権の行使、このような問題はそもそも発生しないというふうに考えております。
  422. 濱田健一

    濱田(健)委員 武器の使用等々もうたわれているわけでございますけれども、やはり国際法上の何らかの根拠というものを、先ほど回答ありましたように、必要ないと言われましたけれども、これはほかの国々は当然要求してくるんじゃないですか。違いますか。
  423. 東郷和彦

    ○東郷政府委員 お答え申し上げます。  国連憲章下の武力行使及びその武力行使に対応する各国の行動という観点から、この法案で検討されておりますような後方地域支援というものは、国際法上何ら問題のない行動であるということでございまして、別の言葉で申し上げれば、国際法上十分根拠のある行動であるということかと思います。
  424. 濱田健一

    濱田(健)委員 時間がなくなりましたので、改めてお願いといいますか、前回の土井たか子党首の野呂田防衛庁長官への質問、つまり、共同計画検討委員会で行われている日米防衛協力のための指針に基づく日米共同作戦計画と日米相互協力計画についての実務的な検討の中身は、審議に対して必要要件であり、不可欠の要件である、委員長にそれをきちっと整理をお願いしたいということでございまして、包括的メカニズムの問題については総括質疑が終わった時点で論点整理をするというふうに答えていただきました。  このことについてしっかりと論点整理を当然してもらいたいとは思うわけでございますが、この中身そのものについては、先ほど私が質問しましたように、この委員会で私たちが質疑をする前段として必要な中身もいっぱいあるというふうに思っておりますので、この総括が終わった後、ぜひ示していただきたいというふうに思うんです。その辺はいかがでしょうか。
  425. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 これは日米双方の軍事機密に属することでありまして、その手のうちを全部さらけ出すということはとてもできないことでありますので、これについては慎重に対処しなければいかないことだと思っております。
  426. 濱田健一

    濱田(健)委員 野呂田長官は、平素から協議をし、そして緊急なときに備えると。平素から研究をする、論議をするわけですから、これはきちっとやはり国民の前に明らかにすべきだというふうに申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  427. 山崎拓

    山崎委員長 これにて濱田君の質疑は終了いたしました。  次回は、来る七日水曜日午前八時理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時十二分散会