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1999-03-18 第145回国会 衆議院 日米防衛協力のための指針に関する特別委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年三月十八日(木曜日)     午前八時五十分開議   出席委員    委員長 山崎  拓君    理事 赤城 徳彦君 理事 大野 功統君    理事 玉沢徳一郎君 理事 中谷  元君    理事 中山 利生君 理事 畑 英次郎君    理事 前原 誠司君 理事 遠藤 乙彦君    理事 東  祥三君 理事 西村 眞悟君       安倍 晋三君    相沢 英之君       浅野 勝人君    石川 要三君       今村 雅弘君    岩下 栄一君       大石 秀政君    大島 理森君       河井 克行君    瓦   力君       栗原 裕康君    小島 敏男君       阪上 善秀君    桜田 義孝君       田村 憲久君    西川 公也君       萩山 教嚴君    福田 康夫君       細田 博之君    宮腰 光寛君       宮島 大典君    八代 英太君       吉川 貴盛君    米田 建三君       伊藤 英成君    上原 康助君       岡田 克也君    桑原  豊君       玄葉光一郎君    土肥 隆一君       横路 孝弘君    赤松 正雄君       市川 雄一君    佐藤 茂樹君       山中あき子君    井上 喜一君       達増 拓也君    木島日出夫君       佐々木陸海君    東中 光雄君       伊藤  茂君    辻元 清美君  出席国務大臣         内閣総理大臣  小渕 恵三君         法務大臣    陣内 孝雄君         外務大臣    高村 正彦君         大蔵大臣    宮澤 喜一君         文部大臣         国務大臣         (科学技術庁長         官)      有馬 朗人君         厚生大臣    宮下 創平君         農林水産大臣  中川 昭一君         通商産業大臣  与謝野 馨君         運輸大臣         国務大臣         (北海道開発庁         長官)     川崎 二郎君         郵政大臣    野田 聖子君         労働大臣    甘利  明君         建設大臣         国務大臣         (国土庁長官) 関谷 勝嗣君         自治大臣         国務大臣         (国家公安委員         会委員長)   野田  毅君         国務大臣         (内閣官房長官         )         (沖縄開発庁長         官)      野中 広務君         国務大臣         (総務庁長官) 太田 誠一君         国務大臣         (防衛庁長官) 野呂田芳成君         国務大臣         (経済企画庁長         官)      堺屋 太一君         国務大臣         (環境庁長官) 真鍋 賢二君         国務大臣         (金融再生委員         会委員長)   柳沢 伯夫君  出席政府委員         内閣官房内閣安         全保障危機管         理室長         兼内閣総理大臣         官房安全保障・         危機管理室長  伊藤 康成君         内閣法制局長官 大森 政輔君         内閣法制局第一         部長      秋山  收君         内閣法制局第二         部長      宮崎 礼壹君         防衛庁長官官房         長       守屋 武昌君         防衛庁防衛局長 佐藤  謙君         防衛庁運用局長 柳澤 協二君         防衛庁人事教育         局長      坂野  興君         防衛施設庁長官 大森 敬治君         防衛施設庁総務         部長      山中 昭栄君         防衛施設庁施設         部長      宝槻 吉昭君         外務省総合外交         政策局長    加藤 良三君         外務省アジア局         長       阿南 惟茂君         外務省北米局長 竹内 行夫君         外務省条約局長 東郷 和彦君         大蔵省国際局長 黒田 東彦君         厚生省健康政策         局長      小林 秀資君         運輸省運輸政策         局長      羽生 次郎君         運輸省港湾局長 川嶋 康宏君         運輸省航空局長 岩村  敬君         海上保安庁長官 楠木 行雄君         労働大臣官房長 野寺 康幸君         建設省河川局長 青山 俊樹君         建設省道路局長 井上 啓一君         自治大臣官房総         務審議官    香山 充弘君  委員外出席者         衆議院調査局日         米防衛協力のた         めの指針に関す         る特別調査室長 田中 達郎君 委員の異動 三月十八日              辞任         補欠選任   相沢 英之君     岩下 栄一君   平林 鴻三君     吉川 貴盛君 同日                 辞任         補欠選任   岩下 栄一君     栗原 裕康君   吉川 貴盛君     今村 雅弘君 同日                 辞任         補欠選任   今村 雅弘君     平林 鴻三君   栗原 裕康君     相沢 英之君 同日  理事東祥三君同日理事辞任につき、その補欠として西村眞悟君が理事に当選した。 二月十九日  日米物品役務相互提供協定改定反対に関する請願中路雅弘紹介)(第六二〇号)  同(古堅実吉紹介)(第六五三号)  周辺事態法などの制定反対に関する請願佐々木陸海紹介)(第六四二号)  同(吉井英勝紹介)(第六七一号)  新ガイドライン廃棄に関する請願保坂展人君紹介)(第七二二号)  新ガイドライン関連法制定反対に関する請願濱田健一紹介)(第七七二号) 同月二十五日  日米物品役務相互提供協定改定反対に関する請願平賀高成紹介)(第七八七号)  同(中路雅弘紹介)(第八八八号)  同(中林よし子紹介)(第八八九号)  周辺事態法などの制定反対に関する請願平賀高成紹介)(第八八四号)  同(中路雅弘紹介)(第九〇六号)  同(中林よし子紹介)(第九〇七号)  新ガイドライン関連法制定反対に関する請願古堅実吉紹介)(第八八五号)  同(知久馬二三子紹介)(第九五三号)  新ガイドライン廃棄に関する請願辻元清美紹介)(第八九〇号)  同(土井たか子紹介)(第九一六号) 三月五日  新ガイドライン有事法制化反対に関する請願土井たか子紹介)(第九八四号)  新ガイドラインに基づく周辺事態法などの制定反対に関する請願穀田恵二紹介)(第九八五号)  同(佐々木憲昭紹介)(第九八六号)  同(佐々木陸海紹介)(第九八七号)  同(中島武敏紹介)(第九八八号)  同(東中光雄紹介)(第九八九号)  同(松本善明紹介)(第九九〇号)  同(大森猛紹介)(第一一二〇号)  同(金子満広紹介)(第一一二一号)  同(木島日出夫紹介)(第一一二二号)  同(児玉健次紹介)(第一一二三号)  同(佐々木憲昭紹介)(第一一二四号)  同(佐々木陸海紹介)(第一一二五号)  同(辻第一君紹介)(第一一二六号)  同(中路雅弘紹介)(第一一二七号)  同(平賀高成紹介)(第一一二八号)  同(不破哲三紹介)(第一一二九号)  同(藤木洋子紹介)(第一一三〇号)  同(古堅実吉紹介)(第一一三一号)  同(松本善明紹介)(第一一三二号)  新ガイドライン有事法制化反対に関する請願畠山健治郎紹介)(第一〇〇七号)  同(畠山健治郎紹介)(第一〇一九号)  同(保坂展人君紹介)(第一〇二〇号)  同(横光克彦紹介)(第一〇二一号)  同(畠山健治郎紹介)(第一〇三三号)  同(濱田健一紹介)(第一〇三四号)  同(保坂展人君紹介)(第一〇三五号)  同(横光克彦紹介)(第一〇三六号)  同(土井たか子紹介)(第一〇四八号)  同(畠山健治郎紹介)(第一〇四九号)  同(畠山健治郎紹介)(第一〇六六号)  同(保坂展人君紹介)(第一〇六七号)  同(畠山健治郎紹介)(第一一三三号)  同(保坂展人君紹介)(第一一三四号) 同月十二日  有事法制化反対に関する請願保坂展人君紹介)(第一一九九号)  新ガイドライン有事法制化反対に関する請願辻元清美紹介)(第一二〇〇号)  同(保坂展人君紹介)(第一二〇一号) 同月十八日  新ガイドラインに基づく周辺事態法などの制定反対に関する請願金子満広紹介)(第一三六九号)  同(児玉健次紹介)(第一三七〇号)  同(佐々木陸海紹介)(第一三七一号)  同(中林よし子紹介)(第一三七二号) は本委員会に付託された。 三月九日  ガイドライン関連法案慎重審議に関する陳情書(第一〇八号)  周辺事態法制定反対に関する陳情書外五件(第一〇九号) は本委員会に参考送付された。 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任  日本国自衛隊アメリカ合衆国軍隊との間における後方支援物品又は役務相互提供に関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定締結について承認を求めるの件(第百四十二回国会条約第二〇号)  周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律案内閣提出、第百四十二回国会閣法第一〇九号)  自衛隊法の一部を改正する法律案内閣提出、第百四十二回国会閣法第一一〇号)     午前八時五十分開議      ――――◇―――――
  2. 山崎拓

    山崎委員長 これより会議を開きます。  理事辞任の件についてお諮りいたします。  理事東祥三君から、理事辞任申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 山崎拓

    山崎委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  引き続き、理事補欠選任の件についてお諮りいたします。  ただいまの理事辞任に伴うその補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 山崎拓

    山崎委員長 御異議なしと認めます。  それでは、理事西村眞悟君を指名いたします。      ――――◇―――――
  5. 山崎拓

    山崎委員長 第百四十二回国会内閣提出日本国自衛隊アメリカ合衆国軍隊との間における後方支援物品又は役務相互提供に関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定締結について承認を求めるの件、周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律案及び自衛隊法の一部を改正する法律案の各案件を一括して議題といたします。  順次趣旨説明を聴取いたします。高村外務大臣。     ―――――――――――――  日本国自衛隊アメリカ合衆国軍隊との間における後方支援物品又は役務相互提供に関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定締結について承認を求めるの件  周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律案  自衛隊法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  6. 高村正彦

    高村国務大臣 ただいま議題となりました日本国自衛隊アメリカ合衆国軍隊との間における後方支援物品又は役務相互提供に関する日本国政府アメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由説明申し上げます。  政府は、平成九年九月に公表した新たな日米防衛協力のための指針実効性確保のため、周辺事態、すなわち我が国周辺地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態が生じた際に活動する日本国自衛隊アメリカ合衆国軍隊との間の物品または役務相互提供を行い得るようにするため、平成八年に締結した現行協定を改正する協定締結することにつき、アメリカ合衆国政府との間で交渉を行いました。その結果、平成十年四月二十八日に、東京でこの協定に署名を行った次第であります。  この協定は、日米共同訓練国際連合平和維持活動または人道的な国際救援活動に必要な物品または役務提供について、現行協定が定める自衛隊米軍との間の相互主義原則に基づく枠組み周辺事態に際しても適用し得るようにするため、現行協定を改正するものであります。この協定により、自衛隊は、周辺事態において、周辺事態に対処するための我が国措置について定めた関連法律に従って米軍に対し物品または役務提供し、当該法律によって認められた自衛隊活動に関し米軍から物品または役務を受領することができることとなります。  この協定により、周辺事態に際して活動する自衛隊米軍との間の物品または役務相互提供基本的条件が定められ、我が国の平和及び安全の維持に寄与することになると考えます。
  7. 山崎拓

  8. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 まず、ただいま議題となりました周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律案について、その提案理由及び内容概要を御説明いたします。  この法律案は、我が国周辺地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態、すなわち周辺事態に際しまして、当該事態対応して我が国実施する措置、その実施の手続その他の必要な事項を定めることを内容としております。  平成九年九月に日米安全保障協議委員会で了承され、安全保障会議の了承を経て、閣議報告された新たな日米防衛協力のための指針は、より効果的かつ信頼性のある日米防衛協力のための堅固な基礎を構築することを目的としており、同指針実効性確保することは、我が国の平和と安全を確保するための態勢充実を図る上で重要であります。このような観点から、平成九年九月二十九日の閣議決定において、指針実効性確保し、もって我が国の平和と安全を確保するための態勢充実を図るため、法的側面を含め、政府全体として検討の上、必要な措置を適切に講ずることとされ、これを受けて、政府全体として鋭意検討してきたところであります。  本法律案は、こうした検討の成果を踏まえ、我が国周辺地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態対応して我が国実施する措置等を定め、もって我が国の平和及び安全の確保に資することを目的として提案するものであります。  以上が、この法律案提案理由であります。  次に、この法律案内容について、その概要を御説明いたします。  第一に、政府周辺事態に際して、適切かつ迅速に対応措置実施し、我が国の平和及び安全の確保に努めること、対応措置実施武力による威嚇または武力の行使に当たるものであってはならないこと、及び関係行政機関の長は相互協力すること等の対応基本原則を定めております。  第二に、周辺事態に際して一定の後方地域支援後方地域捜索救助活動及び船舶検査活動実施することが必要な場合には、閣議決定により基本計画を定めることとしております。  第三に、自衛隊による後方地域支援としての物品及び役務提供後方地域捜索救助活動及び船舶検査活動実施等を定めております。  第四に、関係行政機関の長は、法令及び基本計画に従い、対応措置実施することとしております。  第五に、関係行政機関の長は、地方公共団体の長その他の国以外の者に対し必要な協力を求め、または依頼することができること、及びその協力により損失を受けた場合には、政府はその損失に関し必要な財政上の措置を講ずることとしております。  第六に、内閣総理大臣は、基本計画決定または変更があったときは、その内容を遅滞なく国会に報告しなければならないこととしております。  第七に、後方地域捜索救助活動または船舶検査活動を行っている者の生命等防護するために、必要最小限武器使用ができることとしております。  以上が、周辺事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律案提案理由及びその内容概要でございます。  次に、自衛隊法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容概要を御説明いたします。  外国における緊急事態に際して防衛庁長官が行う在外邦人等輸送について、平成八年来政府部内で進めてきた緊急事態対応策検討結果を踏まえ、在外邦人輸送体制の強化を図るため、また、新たな日米防衛協力のための指針において、周辺事態における日米間の協力一つとして非戦闘員を退避させるための活動が挙げられたことを受け、その実効性確保するため、在外邦人等輸送手段船舶等を加えるとともに、輸送職務に従事する自衛官隊員及び輸送対象である邦人等生命等防護のための必要最小限武器使用ができることとする必要があります。  以上が、この法律案提案理由であります。  次に、この法律案内容について、その概要を御説明いたします。  第一に、在外邦人等輸送手段の追加でございます。  現行法においては、輸送手段は、まず自衛隊法第百条の五第二項の規定により保有する航空機、すなわち政府専用機等であり、空港施設状況等により、その他の輸送の用に主として供するための航空機使用できることとされておりますが、これに加え、輸送対象となる邦人の数等の事情に応じて、在外邦人等輸送に適する船舶及び当該船舶に搭載された回転翼航空機を用いることができることとするものであります。  第二に、武器使用に関する規定の新設でございます。  緊急事態が生じている外国において輸送職務に従事する自衛官が、自己もしくは自己とともに当該職務に従事する隊員または保護のもとへ入った当該輸送対象である邦人等生命等防護のため、やむを得ない場合に武器使用することができることとするものであります。  以上が、自衛隊法の一部を改正する法律案提案理由及びその内容概要でございます。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。
  9. 山崎拓

    山崎委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     ―――――――――――――
  10. 山崎拓

    山崎委員長 これより質疑に入ります。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。大野功統君。
  11. 大野功統

    大野(功)委員 おはようございます。自由民主党大野功統でございます。  いよいよ、待ち焦がれておりましたガイドライン法案審議入りでございます。何しろ、橋本前総理とアメリカのクリントン大統領が、ガイドラインをつくろうではないか、こういうことで共同宣言を発表いたしましたのが三年前でございます。それを受けて、ガイドライン関連法案等国会に提出されましたのが去年の四月二十八日でございます。それから一年たっております。  すぐにでも採決、こういう心がはやるのでございますが、やはりこれは、二十一世紀日本安全保障をどうしていくのか、その枠組みをどうするのか、こういう極めて大事な問題でございますから、十分審議をしていただいて、その上で幅広い支持をちょうだいしたい。大事な問題ですから、五十一対四十九なんというマージナルな支持じゃなくて、幅広い支持をお願いして、そして早く成立してもらいたい、こういう期待でいっぱいでございます。  これまでも、審議という点に関しましては、予算委員会等でかなり審議されておるような状態だと思います。審議というよりも、討議されているというような状態だと思います。考えてみますと、ガイドライン関連法案等の持ついろいろな側面問題点、これはかなり浮き彫りにされてきているのではないか。例えば、国会承認をどうするか、安全保障条約目的の範囲内かどうか、これを明記するのかどうか、あるいは後方地域支援の問題、後方地域捜索救助活動の問題、あるいは民間との協力地方公共団体との協力問題、問題点の所在はかなり明らかになってきていると思います。  そこで私は、少し視点を変えまして、このガイドライン関連法案のよって立つ背景を少し議論させていただきたい、このように思うわけでございます。  背景の第一は、何といっても、日本安全保障枠組みの中でこのガイドライン関連法案等というのはどういう位置づけにあるのだろうか、こういう問題であります。それが第一。それから第二は、このガイドラインというのが歴史の流れの中でどのような意味づけ、意義づけがあるのか、こういう二点でございます。  まず第一の、今のガイドライン関連法案等、これが現在の日本安全保障政策あるいは枠組みの中でどういう位置づけにあるのか、こういう問題について質問をさせていただきたいと思います。  思い出してみますと、ちょうど四年前になりますけれども、当時私は、自由民主党国防部会長をしておりました。そして、自衛隊ゴラン高原のUNDOF、国連平和維持活動に参加させるべきかどうか、こういうことの下調査のためにゴラン高原調査に参りました。当時のイスラエルのラビン首相にお目にかかったわけでございます。そのとき、ラビン首相言葉で、私は、恐らく生涯忘れ得ないだろう、こういう言葉を聞きました。  これは、きょうガイドライン特別委員会理事をされております前原先生も御一緒させていただいておりますから、よく覚えていらっしゃると思いますけれども、ラビン首相いわく、平和を維持するということは血を流さないで済むのだ、だから、日本は一生懸命この分野で頑張ってほしい、しかし、平和をつくるということについては、血を流さなければいけない場合もあるのだ、こういうお話でございました。私は、大変感銘を受けました。そしてまた、ラビン首相は、こういう言葉を私どもに教えてくれて、その後数カ月で凶弾に倒れて、みずから血を流されたわけでございます。  私はそういう意味で、やはり安全保障を考える場合に、安全保障環境づくりに一生懸命頑張っていかなければいけない、このことをまず忘れてはならないというふうに思うわけでございます。  ピースキーピング、血を流さないで済むというピースキーピングの問題であります。それは外交努力であり、あるいは安全保障対話の問題であり、あるいは人的交流の問題かと思います。あすからまた、小渕総理には、韓国へいらっしゃって金大中大統領にお会いになるそうでございますが、こういうふうに首脳同士が会う、これは物すごい安全保障環境をよくするための努力であると思っております。  こういう意味で、これまでも小渕政権のもとであらゆる環境づくりをなさってきていらっしゃるわけでありますけれども、小渕総理にお伺いしたいのです。もし、二十一世紀安全保障環境づくりの中で、いっぱいあると思います。これだけは、この一つだけは絶対にやりたい、こういういわば信頼醸成小渕ガイドラインみたいなものの中で小渕ガイドライン・ナンバーワンがございましたら、ぜひともお示しをちょうだいできればありがたいと思います。
  12. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 一つだけと問われますとなかなか難しい問題だろうと思いますけれども、やはり平和を志向される国々と緊密な連携をとることが大切だと思っておりますが、それには、何よりもまず、我が国としては、我が国民がみずからの国をみずからで守るというきちんとした姿勢を保つということが大切なことではないかと考えております。
  13. 大野功統

    大野(功)委員 大変難しい質問をさせていただいたのですが、私簡単に、もっと単純に考えますと、人的交流、これはこれから日本はやっていかなければいけないな。例えば留学生問題でございます。例えば、石油危機のときに、アラブ諸国と人的交流がなかったがゆえに、石油の獲得がなかなかできなかったというような問題。それから、留学生というのを考えてみますと、留学生はやはり未来からの大使である、さらに、留学生というのは将来の安全保障になるのではないか、こういうことであります。  また、私自身、フルブライトの留学生でございましたけれども、今、フルブライトの留学生計画そのものが、ことしのノーベル平和賞にしようということで運動が起こっておりますけれども、やはりこの日本の人的ネットワークを世界に張りめぐらす、これがやはり私は平和の基礎、いわば安全保障環境をつくっていく上で一つ問題点かな、こんなふうに思っていますので、留学生問題もよろしくお願い申し上げます。  それがいわば安全保障全体の枠のピースキーピングの問題でありますが、今度はピースメーキングの問題。これはラビン首相に言わせますと、場合によっては血を流さなければいけない問題だ、こういうことでございます。ただ、日本には憲法上、集団的自衛権は行使できない、こういう問題があるわけでございます。一生懸命安全保障の環境をよくする努力はする、しかし、火事は出さないようにしても火事が出る場合がある、そういうときに、一体どういうふうに考えていけばいいのか。基本的な原則は、集団的自衛権は行使できないわけでございます。  今の安全保障条約ができた際に、当時、六〇年でございますが、岸総理説明で、自衛隊日本の領土外に出て実力を行使することはいかなる場合もあり得ない、こういうふうに説明しておられるわけでございます。  今回の法律につきましても、法律第二条で、武力による威嚇、武力の行使に当たるものであってはならない、こういうことがきちっと書いてありますし、武器使用についても限定的にやるんだ、こういうことがきちっと書いてあるわけであります。  そういうことで、これはもう確認するまでもないことでございますけれども、そういうような原則をやはりきちっと今回のガイドライン関連法案につきましても守っていくんだ。我々としては、集団的自衛権の問題はもっともっと議論して理解を深めていかなきゃならない問題だと思いますけれども、今までの解釈でありますと、権利は、集団的自衛権はあるんだけれども、持っているんだけれども、憲法上それは行使できないんだ。そういうことで、その思想が一貫して今回の法律にも貫かれている、こういうことを、確認するまでもないことでありますが、確認をさせていただきたいと思います。
  14. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 今先生から御指摘がございましたように、法案の第二条におきまして「対応措置実施は、武力による威嚇又は武力の行使に当たるものであってはならない。」と、周辺事態への対応基本原則を記しているわけでございますし、実際のその内容につきましても、例えば後方地域支援につきましては、その行為自体が武力行使に当たるものでもなく、また後方地域で行われる等という要件から考えまして、武力行使とまた一体化するおそれもない、こういう内容のものでございます。
  15. 大野功統

    大野(功)委員 それから、今回の法律というのは、いわばそういう全体の枠組みの中で日米の防衛協力をする枠組みを決めている、その枠組みのマニュアルを決めているわけでございます。  そういうことで考えていきますと、これまでの日米の関係というのは、日本は安保条約の五条で守ってもらう、そのかわりに日本は施設・区域を提供する、言ってみれば人と物との協力関係であったというふうにも見られるわけであります。しかしながら、これからは平和づくりに、ピースメーキングに日本の人も協力するんだ、こういうことで、大変大きな意味を持っていると私は思うのであります。  この協力のマニュアルがそういうふうになることによって、やはり何だか他人任せにした平和づくりというものを自分のものとして考えるような大きな突破口になっていくんじゃないか。日本人が、これまでは日本以外で起こっていることはもう全く関心がない、こんな心から、やはりその心が変わっていって、他人任せであってはならないんだ、これはマニュアルの態勢の整備でございますけれども、態勢の整備が心の整備になっていくんじゃないか。国を守るということをもっともっと真剣に考えていく、家族を守るということをもっともっと真剣に考えていく、そしてアメリカの青年と共通の価値観を持っていく、こういうふうになっていく物すごく大きなきっかけになっていくのではないか、このように思うわけでございます。  総理にお伺いしますが、私はそういうふうに思っているのであります。ガイドラインの議論というのが、日本人のあり方を考える上で、日本人の自立した精神を築く上で非常に大きな意味になるんじゃないか、このように思うわけでございますが、総理の御所見をお聞かせください。
  16. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 今般の新たな日米防衛協力のための指針は、冷戦終結後も依然として不確実、不安定性が存在している中で、日米安保条約に基づく日米安保体制のより円滑かつ効果的な運用を確保するため策定されたものであります。同指針におきましては、日米両国政府がおのおのの判断に従い、日米協力のための効果的態勢の構築のための努力を具体的な政策措置に反映させる旨がうたわれておるところでございます。  また、同指針実効性確保するために作成されました周辺事態安全確保法案は、周辺事態対応するために必要な措置等を定め、我が国の平和と安全の確保に資することを目的とするものであり、このような日米安保体制のより効果的な運用を確保し、我が国に対する武力攻撃の発生等を阻止することに資するものであります。  このような現在国会にお諮りしている法案等は、大野議員御指摘のとおり、あくまでも我が国の自主的判断に基づき行う法整備の一環でございます。  政府として、今後とも、御指摘の点も念頭に置きつつ、さまざまな機会をとらえまして、近隣諸国に対ししかるべき説明をしてまいりたいと考えております。  今、大野委員御指摘の、心の問題と言われますことはなかなか難しい問題でございますが、いずれにいたしましても、日米協力してこの極東の平和と安全に資する目的でもって日米安保条約がありますし、今度のガイドラインは、特に我が国の平和と安全に対しての責任を負うということを確実性あるものにしようということでございます。  そこには当然、私としては、委員のおっしゃるように相ともに協力していくという意味で、心の問題というのがちょっと説明がなかなかしにくいところではございますけれども、両国が相協力、同盟的な立場で協力し合うというところに、根底として信頼感あるいは心の問題と申しますか、こうした一致点がなくしては、あくまでも条約の法文だけの問題ではない。そこには、両国ともしっかりとした基盤があり、我が国としてもそうした精神を持って、あくまでも、でき上がりますガイドラインも心がこもったものでなければ当然その効果を発揮し得ないものだ、こう認識をいたしております。
  17. 大野功統

    大野(功)委員 ただいま総理から、心のこもったものでなければなかなか協力の実が上がらないんじゃないか、こういう御答弁をちょうだいしまして、我が意を得たりと本当にうれしく思う次第でございます。  次に、周辺事態が起こった場合に、あらゆる努力をした上でこういう事態になる、こういうことでありますけれども、まずいきなり発動するわけではありません。  第一に、この地域でどうも火種があるな、危険が増してくるな、こういう情報が必ずあるわけでございます。ですから、情報の交換が第一段階だと思います。  そして、第二段階として、その情報を分析する、分析の結果危機管理をする。それは、日米共同で、その地域と、これはやはり外交交渉なりそういう安保対話なりの問題でありますが、安定化の努力をする。この危機管理が第二の段階。  それから、第三段階では、やはり日米で共同作戦をつくっていかなきゃいけない。そして、いよいよどうしても抑止できない場合に初めてこの作戦の開始、こういうことになろうかと思うのであります。  事前協議の問題で、今までの日米安保条約では、例えば区域・施設の変更とか出動とか、そういうときに事前協議という言葉が使われております。しかし、もっともっと事前協議を幅広くする、日米間で協力する。そういう意味では、実施段階、実行段階で初めて事前協議が出てくるのではなくて、情報の交換の段階から、初めの段階からそういう協議を密接にしていく。いわばこれも事前協議と言っていいんじゃないかと私は思いますが、そういうことがこれから物すごく大事になってくるんじゃないか。  そうしますと、全体の情報交換のところから始まって実際に出動するまでの全体の調整、日米間の調整のメカニズムは一体どうなるのだろうか。それから、共同作戦をつくる場合に、別に日本自衛隊とアメリカの軍隊との統合的な指揮官がいるわけではありません。したがって、具体的に、どういうレベルでどういうぐあいに共同作戦がつくられるのだろうか、太平洋軍まで巻き込むのか、統合参謀本部まで巻き込んでいくのかどうか、こういうことが疑問になるわけであります。  まず第一に、事前協議はぜひとも情報交換の段階からやっていただきたい、これについての御所見。それから二番目に、全体の調整のメカニズムはどうなるのだろうかという問題。それから三番目に、共同作戦は日米どういうレベルで行われるのか。この三つについてお答えをいただきたいと思います。
  18. 高村正彦

    高村国務大臣 事前協議のことだけ私に答えさせていただいて、後また防衛庁長官が答えるということでございますが、安保条約に言う事前協議というのは、三つのことが規定されていますが、米国側が日本に事前協議をしなければいけない、そして、日本がイエスと言った場合でないとアメリカはやってはいけないということが事前協議の定義になっているわけで、そのほかに随時協議というのが安保条約四条にあって、そのことで、今委員がおっしゃったような情報の交換等を随時やっているということだけ申し上げておきたいと思います。
  19. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 日米間におきましては、日米安保体制のもと、大臣レベルの安全保障協議委員会、いわゆる2プラス2と言っているものでございますとか、安全保障高級事務レベル協議、SSCと言っているものなど、平素からいろいろなレベルでの安全保障上の情報交換や意見交換を行ってきているところでございます。  我が国に対して武力攻撃が行われた場合とか、今委員が御指摘のとおり、周辺事態等に際しては、随時密接に行われるこれらの情報交換や意見交換等が一層緊密に行われるということになります。このような事態についての共通の認識に到達するための努力が払われる、こういうことは当然でございます。その点は、日米防衛協力のための指針にも明記されているところでございます。  また、新たな指針には、先ほどもお話がございました、緊急事態に円滑かつ効果的に対応し得るように、平素から日米間で共同作戦計画及び相互協力計画について検討を行うことも述べられているところであり、それらについても目下協議を重ねつつあるところであります。  さらに、新たな指針においては、緊急事態に際して日米がおのおの行う活動の間の整合を図るとともに、適切な日米協力確保するために、このような事態に際し日米が行う活動相互間の調整を行うためのメカニズムとして、調整メカニズムを平素から構築しておくこととされているところであります。
  20. 大野功統

    大野(功)委員 ただいまの調整メカニズム、現状はよくわかりましたけれども、私は、このガイドライン関連法案等が成立するに当たりまして、この調整メカニズムを、もっともっと新しく強い、日米の連帯を強めるためのメカニズムをつくってもらいたいな、こういうことでございます。  それによりまして、今、随時行われていることは十分わかりましたけれども、それを制度化していく、こういうことについてはいかがお考えでございましょうか。
  21. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 御指摘のように、一層そういうものを継続、反復して強化してまいりたいと思っております。
  22. 大野功統

    大野(功)委員 ありがとうございました。  次に、協力枠組みの中で一つ問題点は、これはマニュアル、つまり手続も含めたマニュアルでありますから、極めて透明性が要求されると思うのであります。具体性が要求されると思うのであります。国民としては、なるべく透明にしてもらいたい、具体的にしてもらいたい。しかしながら、第一線の指揮官から見ると、余り具体的に書かれたら身動きができないのかな、こういう問題も出てこようかと思います。しかしながら、マニュアルがあるからこそ、現場の指揮官もそのマニュアルに沿って、新しい、全く予測していなかったことが起こりましても対応ができる、こういうふうにも思うわけであります。  今度のマニュアルを見てみますと、例えば対外的な面、つまり後方地域支援とか後方地域捜索救助活動船舶検査活動、これにつきましては、それぞれ別表一、別表二でわかりやすく書いてあるわけであります。したがいまして、わかりやすく書くことによって、諸外国の無用の不信感は出てこないと私は思いますし、また、戦争に巻き込まれるんだなどという議論をする向きもありますけれども、これがあるために歯どめがきちっとかかっている、このように理解して、私は評価するものであります。  しかしながら、対内的な点、つまり、民間に協力を求める、あるいは地方公共団体協力を求める、この点については必ずしも透明性がないような気がするわけであります。もちろん、法律の専門家でありますと、この対内的な問題というのは、日米地位協定に根差すものであり、あるいは、例えば港湾法、航空法にきちっと規定しているということでわかるわけでありますが、国民すべてが法律の専門家ではありません。  そこで、この法律を、ガイドライン関連法案等だけを見たら、対内的な部分、地方公共団体に対する協力の要請あるいは民間に対する協力の要請、この部分は不透明なところが多いのじゃないか、このように思うわけであります。私は、この点をもっともっと透明にしていただく努力があってしかるべきだというふうに思うわけでありますが、この点はどういうふうにお考えでございましょうか。
  23. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 御指摘のようなことは考えられることでありますけれども、周辺事態でどういう事態が生起するかということは、必ずしも、あらかじめ予想することができるわけでもございません。だから、その事態に対してどういう協力を求め、または協力を依頼することが起こるかということは、あらかじめ全部網羅的に特定することは困難であると思います。  そこで、政府は一応、関係者が集まって、この協力を求める十項目等の事項が原形であるというような考え方で、地方公共団体にも示しているわけでございます。  何とか、予算委員会でもいろいろ議論になりましたが、例えば輸送等に関しては、運輸大臣から、ある種のマニュアルをつくって、そういうものを少しわかりやすくしたいという御発言もありましたし、私どももさらに、こういった点については、協力を求められる側に対しまして、もう少しわかりやすいような方法を用いて徹底してまいりたい、こういうふうに考えております。
  24. 大野功統

    大野(功)委員 わかりやすい、透明性のあるマニュアルとなるよう期待しております。  あと、枠組みの問題で、例えば国会承認とかそういう問題もお伺いしたいのでありますけれども、時間がございませんので、第二の側面でございます、歴史の流れの中でこのガイドラインがどういう意義を持つものであるか、この点について御質問をさせていただきます。  歴史の流れの中で、日本の防衛というのは、国連というものがあって、そして日米安保体制、日米二国間同盟体制というのがあって、そして冷戦の終了があって現在に至っているわけでございます。  そこで、今、日本の体制を考えますと、戦後の国連第一主義、日米安保条約もそういう節があるわけでありまして、同盟関係でございますけれども、例えば第五条を見ましても、アメリカの行動というのは、安全保障理事会が国際の平和と安全を回復し及び維持するために必要な措置をとったときには終了だ、こういうふうに書いてあるわけでありまして、国連が出てくるまでの間、日米安保がある、こういう建前になっております。その後の国連の役割、例えば、現実には国連軍が存在しない、あるいは大国がビートー、拒否権を持っている、こういうことで、現実にはなかなか動きにくいところはありますけれども、やはり国連の傘というのがあって、その中で同盟関係がある。  では、その重みはどうなんだ、こういうことでありますけれども、キーワード、例えば安全保障条約と国際連合とそれから憲法という言葉、これが私は日本安全保障におけるキーワードだと思っておりますが、そのキーワードが使われている回数をちょっと見てみますと、日米安保条約では、日米安保という言葉は六回使われております。国際連合という言葉は十一回使われております。憲法は三回使われております。わずか十条ばかりの安保条約でございますけれども、憲法は三回使われております。  それが新ガイドラインになりますと、安保条約では六回使われておりました日米安保という言葉が十四回使われておりまして、憲法という言葉は一回。国際連合という言葉は、安保条約では十一回使われておりましたが、今度の新ガイドラインでは四回しか使われていない。安保条約という言葉は使われ方がだんだんふえておりますけれども、国際連合という言葉の使われ方は減ってきている、こういう現象でございます。  そのことは、いわば日本の歴史を振り返ってみましても、日英同盟の二十年間、日本は大変平和を享受できたわけであります。また、日米同盟の、日米安保条約の四十年間、これも大変な平和を享受できているわけでございます。しかも、日米同盟というのがアジアにおける公共財とまで言われるようになった、アジアにおける安全と平和のインフラとまで言われるようになってきております。  そういう意味で、ちょっとお尋ね申し上げたいのでありますが、二国間同盟の重要性がますますふえている、そして、これまでのガイドラインになかった周辺事態のところが今回の措置で埋まってきている、こういうことから、私は、今回のガイドラインというものが、アジア太平洋の平和のために日本とアメリカが協力して努力しているんだという物すごく強いメッセージになるのではないか。それから、日本が周辺諸国の潜在的な危機や地域紛争あるいは人道的危機、自然災害というものに対して、日本なりの努力日本のやり方での努力、これをアメリカと協力して一生懸命やっていくんだ、こういう強いメッセージになっていくのではないか、このように思っておりますが、いかがでございましょうか。
  25. 高村正彦

    高村国務大臣 現在お諮りしているガイドライン関連法案等でありますが、冷戦終結後も依然として不安定、不確実な要因が存在する中で、まさに委員がおっしゃるように、日米安保体制のより効果的な運用を確保して、我が国に対する武力攻撃の発生等を抑止することに資するものであります。  我が国の平和と安全に重要な影響を与える周辺事態が生起した場合、米軍は、事態の拡大の抑止、収拾のため種々の活動を行うことが想定されるわけでありますが、このような米軍に対し、委員が御指摘のとおり、我が国が何らの協力も行えないとすれば、事態はさらに拡大しますし、我が国の平和と安全に一層深刻な影響が及ぶこととなるおそれがあるわけであります。したがいまして、周辺事態における我が国の対米協力というのは、まさに我が国の平和と安全の確保に資するものであると考えます。  ただ、委員がおっしゃった、安保条約と国連との重みがどうだというお話でありますが、この二つが相反するものであれば、どっちをとるかという話になるわけでありますが、全く相反するものでなくて、安保条約も国連憲章の枠内ということでございますから、どちらも大切だということで一貫しているわけでございます。
  26. 大野功統

    大野(功)委員 ただいま外務大臣から、国連と日米安保条約、マルチとバイ、両方とも大切なんだとおっしゃってくださいました。私も全く同感でございますけれども、世の中には往々にして、マルチとバイというのはゼロサムゲームである、こういうふうに解釈する向きがあります。私は、もう日本の今の安保体制、国連という非常にきれいな理想的な着物を着た二国間同盟関係だ、すばらしいできぐあいだなと思っております。そういう関係を今後とも引き続いて努力して維持していかなきゃいけない、このようなことだと思っております。  そこで、次に、キーワードとして、今回も、周辺事態とは何だ、周辺とは何だという議論が随分予算委員会でもありました。例えば、この場合のキーワードは極東であります。これは安保条約に出ております。それから周辺という言葉であります。アジア太平洋という言葉であります。ちょっと見てみますと、安保条約では極東という言葉が三回使われております。その間に防衛大綱で一回使われております。新ガイドラインではもう使われなくなっております。それから、周辺という言葉でありますが、安保条約では使われておりませんが、新ガイドラインでは二十八回使われております。アジア太平洋地域、私が一番好きなキーワードでありますけれども、これは日米安保条約では全く使われておりませんで、日米安保共同宣言で十二回使われておる、こういうことになっております。  言葉だけでとらえますと、アジア太平洋というのが一番大きな概念で、その次に極東があって、極東よりも周辺というのは狭い感じかな、こういう感じが言葉としてはするのでありますが、こういうふうに言葉が変わってきているというのは、何か特別な意味があるのかないのか、この辺について御解説をいただければありがたいと思います。
  27. 高村正彦

    高村国務大臣 昭和五十三年に旧指針が作成された後、二十年近くが経過する間、冷戦が終結して国際情勢が大きく変化したわけであります。しかしながら、我が国を取り巻く国際情勢には、依然として不安定、不確実な要因が存在しているわけであります。このような情勢において、我が国の平和及び安全に重要な影響を与える周辺事態に際する対応を中心として、より効果的な日米防衛協力関係を構築することが一層重要になってきたわけであります。  このような認識のもとで、日米政府は、日米安保共同宣言において、これは平成八年四月になされたものでありますが、指針の見直しを開始することで意見の一致を見て、その後、日米協議を行い、平成九年九月に新指針を公表した次第でございます。新指針により、日米安保体制のもとでの日米間の防衛協力関係がより一層効果的なものとなり、ひいては日米安保体制の信頼が一層向上することにつながるものと考えているわけであります。  そして、周辺事態は、御指摘の極東やアジア太平洋といった観点ではなくて、あくまで我が国の平和及び安全に重要な影響を及ぼすか否かに注目したものでございます。  また、日米安保条約のもとで我が国に駐留する米軍の存在がアジア太平洋地域諸国に安心感を与えている、結果としてこの地域の安定要因となっていることについては、これまでも繰り返し御説明してきたところでございます。
  28. 大野功統

    大野(功)委員 時間がなくなってまいりましたので、あと一、二問に絞らせていただきますけれども、一つ周辺事態。いろいろ議論しております、定義はどうなんだと。これは別の機会に別の方にやっていただくとしましても、私は、避けて通れない問題が台湾問題だと思うのです。  アメリカは、この問題については全く明らかにしていない。いわばストラテジック・アンビグイティー、戦略的あいまいさで対処している。これに対して日本も、アメリカがそうすることに対してどうするかは全く言わない。いわば二重のストラテジック・アンビグイティー、二重のあいまいさで対処している。これは私は、二重のあいまいさで対処していくべきだと思っておりますが、しかしながら、この台湾問題を平和的に解決していくべきだ、この強いメッセージを常に出していかなきゃいけないし、中国に常に多国間の中で安保対話、安保問題の議論に入ってもらっていかなきゃいけない、こういう努力をぜひともお願いしたいと思っております。  二問続けて申し上げますのでよろしくお願いしたいのですが、もう一つは、これまで、安保条約の五条は日本を守ってもらうんだ、それから六条はそのかわり地域、区域を提供するんだ、こういうような人と物との協力関係。これが、先ほども申し上げましたように、今回はそれに加えて人と人との協力ができてくるんだ、こういう意味で本当に大きな転換期だと思っております。  冷戦時は、一度戦争が起こったらもうそれで世界が終わりなんだということで、日本の出る幕がなくなっていたのかもしれません。しかしながら冷戦終結後は、アジアの地域の中で、日本は責任ある大国としていかにそのような事態対応していくか、これはアジア諸国が見守っていると思うのですね。  もし日本が、そういう事態が起こって何も回答しない、ノーアンサーであれば、これはもう諸外国の信頼を失っていくだろうし、それから、間違った回答をすれば、日本はまた軍国主義の道を歩むのか、こういうようなことを思うだろうし、無用の不信感を起こすでしょう。それから、もし回答が物すごく遅ければ、これはいつもながらのツーレート・ツーリトルかということになりますので、私は、やはり日本が責任ある態度できちっと対応していくべきだと思います。  そういう意味で、人と人の協力、自分の手を汚さないという話からやはり協力していくんだ、こういう意味日米協力関係に新しい一ページを開くのではないか、私はこのように思っております。  その点についてのコメントをちょうだいして、私の質問を終わらせていただきます。
  29. 高村正彦

    高村国務大臣 周辺事態というのは、あらかじめ地域を特定できないという意味で地理的概念でないと何度も言っているわけでございますが、そういうことでありますから、台湾のみならずどこの地域でも、入っているとか入っていないとかいうことは言えないということは御理解いただきたいと思います。  そして、委員が御指摘になったように、我が国は、日中共同声明において表明された基本的立場を堅持した上で、台湾をめぐる問題が当事者間の話し合いにより平和的に解決されることを強く希望している、このメッセージはここで改めて出させていただきます。  そして、日米安保条約に新しい一ページを開くものではないか、こうおっしゃったわけでありますが、それは言葉のとりようでそういうことも言えるのかもしれませんが、この法案は、日米安保条約の目的の枠内において、そして、そういう中において日本としても、日本の平和と安全に資するために活動している米軍に対してはできるだけ汗を流して協力しよう、こういうことを目指したものでございます。
  30. 大野功統

    大野(功)委員 ありがとうございました。
  31. 山崎拓

    山崎委員長 この際、中谷元君から関連質疑申し出があります。大野君の持ち時間の範囲内でこれを許します。中谷元君。
  32. 中谷元

    ○中谷委員 戦後、日本の防衛について、日本人は何か誤解や錯覚をしているのではないかという気がいたしております。  それは何かというと、確かに、吉田茂氏のしいた日米安保体制というのは定着をいたしておりますが、日本日米安保体制があるからきっとアメリカが守ってくれるはずだとか、アメリカはスーパーマンで、いざというとき日本のために何でもやってくれるんだという意識であります。もしテポドンのようなミサイルが飛んできたとき、我が国は迎撃及び報復の能力を持っておりません。そのときはきっとアメリカが対処して報復してくれるはずだ、だから日本に手出しをしないのではないかという期待を持っております。  また、北朝鮮の核疑惑においても、日本が独自に交渉するすべを持っておりません。現に、米朝交渉によって、今回交渉が成立してほっとしておりますが、このような核の交渉。また、朝鮮半島において何か不測の事態が起こったときには、すぐに米軍が出て鎮圧してくれるだろう、日本は平和憲法があるから自衛隊は外に出るべきではないし、じっと日本のことだけ考えて相手の軍事行動を批判していれば、そのうち解決するだろうという意識もあります。また、いざとなったら、韓国にいる日本人の救出も米軍がやってくれるだろうというような期待も持っております。  しかし、果たして、このような考え方で本当に米軍日本を守ってくれるのか、いざというとき、米国は体を張って日本のために行動をしてくれるのかという点でございます。  現に今現在も、日本にアメリカが駐留して、アメリカの若者が日本のために汗を流してくれているわけですが、やはりこの世界はギブ・アンド・テークでありまして、それなりの協力をしなければアメリカは日本を助けてくれません。何もしない日本では、いざというときアメリカは行動してくれるのか、そのことを忘れて、日本は自分の国の平和だけを主張しているというような気がするわけであります。  そのいい例が、最近、高知県の橋本知事が、高知県に非核港湾条例というものをつくって高知県に入る外国艦船を、当初、非核証明がなければそれは知事の判断によって決めるというような条例をつくろうといたしました。私は、これはいわゆる一国平和主義ではなくてイッケン平和主義、このイッケンというのは、一つの県という意味と、一見、ちょっと見ればという意味でイッケン平和主義というふうに思います。自分の国の平和だけ主張して日米安保の必要性を県民に言わない、アメリカへの協力、また訓練支援のことを主張して核のことを言うならわかりますけれども、核のことだけしか言わないという点については、そういう風潮が日本全国の地方自治体に広がるということについては、大変大きな心配を私はいたしております。  やはり日米関係、また日米安保は、日本の将来においてどうしても必要であって、大切にしていかなければならないと思いますし、安保条約を結んでいる友好国のアメリカが信じられないということはおかしいわけであって、互いに信じ合うことこそが一番大事なことだと思います。  こういう意味におきまして、現在、政府日米安保の必要性に対する認識と、今回ガイドライン法案を提出されたその理由について御説明をいただきたいと思います。
  33. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 日米安保条約に基づく日米安保体制は、過去四十年、我が国並びに極東の平和と安全をもたらしただけでなく、アジア太平洋における安定と発展のための基本的な枠組みとして、有効に機能してきたと評価いたしております。このような日米安保条約の役割は国民の大多数により支持されていると考えておりまして、政府といたしまして、今後とも日米安保体制の堅持を安全保障政策の重要な柱として維持していくことは当然と考えております。  そういった意味におきまして、現在国会にお諮りいたしております周辺事態安全確保法案等も、我が国の平和と安全の確保に資することを目的とするものでありまして、冷戦終結後も依然として不安定、不確実な要因が存在する中で、日米安保体制のより効果的な運用を確保し、我が国に対する武力攻撃の発生等を抑止することに資するものである、こうした考え方で提案させていただいておりますので、一日も早い成立、また承認を強くお願いいたしておるところでございます。  中谷議員御指摘のように、この日米安保条約が吉田元総理の手によって、ただ一人、講和条約発効時におきまして結ばれました。その後の経過、この条約の存在があり、かつまたその改定が六〇年に行われ、そして七〇年には自動継続と相なっておるわけでありまして、そういう中で、申し上げましたように、四十年間日本の安全は確保されてこられたわけであります。そういった点で、この存在そのものが、十分この存在意義について深い理解を持たなくても平和は確保されてきたという認識が、やや国民の中にも存在するのではないかと思っております。  したがって、改めてこの条約の意義につきまして、今回のこの事態に対して存在の意義を明らかにするとともに、もとより法的な整備につきましても、きちんとこれをいたしていくということは、やはり大きな、新しいこの安保条約の意義を再認識する絶好の機会だろう、こうとらえさせていただいております。  それから、第二点として、先般、各自治体等が議会に提出をいたしました、例えば高知県、函館市の条例等の問題があるわけでございますが、いずれにいたしましても、議会における審議過程で種々の問題が指摘をされ、真剣に議論された結果、継続審議とすることが採択されたものと承知をいたしております。この過程で、中谷議員もまた御信念に基づきまして行動されたことに、評価をいたさせていただいております。  地方公共団体に認められている港湾施設の使用に関する規制は、あくまで港湾の適正な管理運営を図る観点から港湾管理者としての地位に着目したものにとどまると考えておりまして、地方公共団体が、いわゆる非核証明書の提出を求め、その結果に基づき港湾施設の使用に関し決定を行うことは、外交関係の処理に当たる国の決定地方公共団体が関与し、またはこれを制約するものであり、港湾管理者の権能を逸脱するものでありまして、地方公共団体の権能の行使としては許されないものであると考えております。  政府といたしましては、今後とも非核三原則を堅持していく方針であり、外国軍艦に対して寄港の同意を与えるか否かにつき決定する際には、このような基本政策を堅持するとの立場を十二分に踏まえて対処していく考えでございます。  地方公共団体の皆さんにも、非核三原則を守っていく政府の態度を信頼していただくとともに、国と地方公共団体の適切な役割分担につき御理解をいただきたいと考えておりますが、中央政府と地方自治団体、おのおのの権能をそれぞれ十二分に発揮することによって国全体が維持できるんだろうと思います。  やや最近の状況を考えますと、かつて明治維新前に、それぞれの藩がございまして、藩自体が外交権も若干有しておるような感じで、外国の艦船を打ち払ったりいたしたようなことがございましたけれども、もうそういう時代ではない。やはり国として行うべきことは、きちんと国として処置をさせていただくというのが根本ではないか、このように考えております。
  34. 中谷元

    ○中谷委員 私もそのように思います。やはり高知県は日本の一部であります。今、地方分権とか地方自治の自立とかいうことが進んで、権限移譲が進んでおりますけれども、それを進めるなら、やはり国のやるべき仕事と地方の仕事を明確に区分しておかないと、お互いに干渉し合って相互の不信感が芽生えますと、国は混乱し、治安は乱れるということであります。  この安保政策においても一つ例がありまして、ニュージーランドという国が、非核という政策を遂行する余り、非核の法案をつくったそうであります。それに対してアメリカは、同盟関係にあるアメリカが信じられないのかというようなことで、直ちに同盟関係が凍結をされて、実効性を失っているという現状でありまして、日本で今そういうことが行われますと、非常に不安定な要因があって、大変なことではないかというふうに思っております。  まさに行政改革の法律がこれから議論される前に、やはり地方分権を推進する場合に、この事務分野を明確に区分すべきではないかというふうに思っておりますが、この点についての自治大臣の御見解、また、この非核条例のような、国の安全にかかわるような条例を制定する動きについて、御見解を求めたいと思います。
  35. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 ただいま総理から御答弁されましたように、やはり、国は国の役割があり、地方の自治体は自治体の役割があるわけであって、それぞれがみずからの役割を的確に果たしていくことにおいて国全体としての機能が円滑に発揮されるという、この基本原則は非常に大事だと思っております。  同時に、今御議論いただいております外国の軍艦の寄港に関する問題は、そもそも友好増進のために外国の軍艦が寄港しようということでありますし、その外国の軍艦の寄港に同意を与えるかどうかということは、そもそも外交関係の処理そのものであるわけでありまして、国の外交関係の処理に関して地方団体がこれに関与したり制約を加えるということは、そもそも港湾管理者として地方の県知事に与えられております、港湾施設の利用、管理運営、こういったことに関する権能を逸脱しておるんであるということをかねてから申し上げておるところでございまして、今回、それぞれの議会において継続審議という取り扱いになされて、冷静な審議ということも行われておるということは、結構なことだと思っております。  その点で、先ほど来御議論いただきましたとおり、中谷議員が大変御尽力をいただきましたことに、改めて敬意を表したいと思います。
  36. 中谷元

    ○中谷委員 その点について、運輸大臣にもお伺いをさせていただきたいと存じます。  運輸省の所管する港湾法は、地方自治体に港湾管理権を与えて岸壁の管理等を実施いたしておりますが、神戸市が、市議会の決議によって、非核証明の提出を求めて、それがない場合の入港を拒否しようとしているわけでありますが、それはやはり国の権限を侵すことになっていると思います。あくまで地方は岸壁の使用に際してのみの権限であって、条約が履行できないということにおいては、外交上、安保上支障が出てくるわけであります。  そこで、港湾法では地方が判断して拒否できると思っているようなところもございますが、この点についての運輸省の御見解と、外国艦船の入港に関して現在の港湾法をもっと明確に、はっきりとこの際改正すべきではないかと思いますが、この点についてお答えをいただきたいと思います。
  37. 川崎二郎

    ○川崎国務大臣 特定な理由がある場合に港湾施設の使用を拒否することができると書かれてあります。このことの意味は、港湾の適正な運営管理に支障があるという場合に特定される。非核証明書が提出されないというのが特定な理由になるかといえば、私どもは、ならないと判断をいたしております。  外国艦船の港湾施設の使用を非核証明書が提出されないという理由のみにより拒否し、不平等取り扱いをする場合におきましては、私どもは、法第四十七条に基づき、港湾管理者に対し、行為の停止、変更命令を行うことができると港湾法ではっきり書いてありますので、当然、そういったときには私どもは適切な対処ができる、こう考えております。
  38. 中谷元

    ○中谷委員 この点につきましては、今後、地方分権を進める上において、はっきりと明確に区分をして、お互いが干渉し合わないように、不信感を持たないようにお願いいたしたいと思います。  続きまして、周辺事態における邦人の救出についてお伺いをいたします。  現在、韓国には約三万人程度の在留邦人また観光客がいるというふうに言われておりますが、急に北朝鮮が韓国領土内に攻め込んできたらどうなるか、いざというとき、海外の日本人を助けることが国としてできるかどうかという問題であります。  現状はどうなっているかというと、三つの段階に分かれていると思います。一つは平常なとき、もう一つはやや有事に近いとき、そしてもう一つはもうめちゃくちゃの状態の混乱期ということで、第一の、割と平時においては、民間航空機が就航しておりますので、それで邦人が帰還できます。やや有事になりますと、民間飛行機が行けないということで自衛隊機が派遣をされまして、それによって救出可能になります。しかし混乱期ということになりますと、輸送の安全の確保と、自衛隊法百条八の改正案においても、これによっての制約があって、安全が確認されない場合は邦人輸送のための船舶航空機を派遣できないということになっております。  したがって、そのときはどうするかというと、韓国か米軍の飛行機を頼らざるを得ないんですが、当初、ガイドラインにも米軍による邦人の救出を入れて、米国が実施する項目というようなことでお願いをしておったんですが、最終的にはアメリカから断られました。これはもう一人前の大人として当然のことですけれども。そういうことを他国に頼られて義務にされるとアメリカも、本当にたくさんの国からそういうことを頼まれると困る、自分のことは自分でやりなさいというようなことで、当然のことだと思います。  そこで、こういう現状において、幾つかの問題点をお伺いしたいと思います。  まず、当初の邦人保護は外務省の所管でありまして、当地の在外公館、大使館が行うわけでありますけれども、予想される事態において、まずその国にいる日本人を安全に集合させて、自衛隊が来る場合は自衛隊に引き渡すまでは、その国の国内での移動を確実に安全に行う体制にあらなければなりませんが、仮に一気に北朝鮮が南進してソウルが北朝鮮の勢力下になったときに、在外公館はこれを確実に実施するためにいかなる方法、手段を用いるのか。またさらに、無政府状態になったときに、相手国の同意がないと自衛隊機は派遣できませんが、どうやって日本人を日本に帰還させるおつもりなのか、外務大臣にお伺いしたいと思います。
  39. 高村正彦

    高村国務大臣 御指摘のような仮定の状況を想定した御質問に沿った形でお答えすること、無用の誤解を招くこともあって、必ずしも適当でないと考えるわけでありますが、一般論として申し上げますと、緊急時における邦人保護については、政府といたしましても、その重要性を認識し、各国、地域の事情に応じ、緊急事態発生に備えた邦人保護の体制の整備に努めているわけであります。  例えば、今委員が御指摘になった韓国でありますが、在韓国日本国大使館、在釜山日本国総領事館及び在済州島日本国総領事館は、万が一の場合に備えた邦人保護措置一つとして緊急事態対処マニュアルを作成し、在留邦人に配付しているわけであります。このマニュアルによれば、例えば緊急事態の際の連絡体制だとか緊急時に向けた物資等の準備、緊急時の退避の方法、手段等について記載をしているわけであります。  とりあえず、それだけお答えしておきます。
  40. 中谷元

    ○中谷委員 マニュアルがそういうことでありますと、出国をする確実な手段を持っていないということではないかと思います。  仮に自衛隊が、運よく同意があっておりられた場合、そこで状況が急変しまして、自衛隊が、では出発しようという段階になって輸送の安全が確保されていない場合に、そのときは無理を押して自衛隊機だけ空で帰ってくるのか、それとも、ついでだから邦人を乗せて帰ってくるのか。この点についてはどう認識されていますでしょうか、状況が急変したとき。
  41. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 委員もおっしゃっているとおり、仮定の問題として、情勢の悪化によりまして派遣国先の空港、港湾等において輸送の安全が確保されなくなった場合には、情勢の悪化の影響を避けるためにあらゆる手段を講じなければいけませんが、その手段を講じた結果として、保護のもとにあった在外邦人等を機内または船内に収容し、本邦等の安全な場所へ退避することとなるかと思います。
  42. 中谷元

    ○中谷委員 無理な救出は行わない、せっかく自衛隊が救出に行っても、そこで無理をして帰ってこないというようなニュアンスでとらせていただきましたが、しかし、せっかく行った以上は邦人を連れて帰ってくるべきだと思うんですね。  そういう場合に、武器使用ということが問題になってくるわけでありますが、今回の改正案の第三項の規定に基づいて、やむを得ない必要があると認める場合には、その自衛隊機の周辺にいる日本人は武器使用して守ることができると理解しておりますが、そういった状況が急変した場合に武器使用ができると理解していいのか。そして、かつまた、相手国がいわゆる国または国に準じるものであっても、武器使用しても問題が発生しないと考えておられるのかどうか。この点について長官か、法制局長官でも結構ですが、御見解をお願いいたします。
  43. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 あえてお尋ねの事例を想定しますと、輸送の安全要件が確保されなくなった場合に、一たん自衛隊の保護のもとに入った在外邦人等を機内または船内に収容し、ともに安全な場所へ退避することまでも同条第一項が否定しているとは考えられないことは、先ほど述べたとおりであります。  その場合に、隊員及び保護下に入った在外邦人等の生命または身体の防護のために武器使用したとしても、その武器使用輸送業務との関連で行われるものであり、同条第三項の要件を満たすものであれば、たとえ国または国に準ずるものに対して行ったとしても、いわば自己保存のための自然権的権利に基づく必要最小限度の武器使用であると考えられることから、憲法上問題となることはないと考えております。
  44. 中谷元

    ○中谷委員 非常にそういう点において、まだ理解ができない点がございます。つまり、一たん目的地に行って救出する場合は邦人の保護として許されるわけでありますが、まだ日本人が救出を待っているときに、まだ行っていないときにはそれはできませんという考え方がどこから出てくるかわからないわけであります。  つまり、やはり国家として邦人の救出については最善を尽くすべきであって、まだ目的地に行っていない場合でも、やはり邦人の生命と体の安全を確保する必要があれば、自衛隊を私は派遣すべきではないか、それは国家として当然の行為ではないかというふうに思っております。  しかし、残念ながら法的整備がそこまでいっておりません。ですから、その点は米軍に、または韓国にお願いしなければなりませんが、やはりギブ・アンド・テークで、日本人を助けてくれと言うだけではだめですので、その点でもガイドラインをしっかりと整備して、我が国のなし得る行為、協力を行っていただきたいと思います。  次に、今論点になっています、それを国会報告か国会承認かという点についてお伺いをいたします。  周辺事態というのは、あくまでも我が国の平和と安全に重大な影響を与える段階であります。これにおいて、一つの国の安全装置だと思います。今の安全装置はどうなっているかというと、平時即有事というすごい段差があって、急に対処できないという問題があります。ですから、この周辺事態というのは、いわゆる有事が赤信号、平時が緑信号とすると、黄色信号の状態ではないかと思います。ですから、黄色信号がともったときに、赤になるのか、また努力をして緑に引き戻すかということについては、いかに迅速に黄色信号のときに対処ができるかどうかという点ではないかと思います。  ですから、黄色信号も、点滅して早い段階はまだ事態の烈度が低い段階で、コントロールができる状態でありまして、そのような初期の段階で政府対応することによって、できるだけ赤にならずに、安全な緑の状態に引き戻せるわけでございます。  そういう意味で、やはり政府対応というのは迅速性が必要でありますが、仮にもし国会承認を求めるとなると、このガイドライン審議のように、憲法問題また権限の問題で、このガイドライン質疑が始まるまでも一年近くかかって、またこの国会でももう本当に二カ月、三カ月かかってやっと動き始めたぐらいで、急に国会を開いて結論が出せるかとすると、大混乱になると思います。  そういう意味では、黄色段階での国家の安全装置が働かないというような気がするわけでありますが、国会での取り扱いについて、関与の仕方について政府の御見解をお願い申し上げます。
  45. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 委員御指摘のとおりでありますが、この法案に基づいて自衛隊実施する三つの活動がありますが、これらはいずれも武力の行使を含むものでもございませんし、あるいは国民の権利義務に直接関係するものでもございませんし、迅速な決定をする必要があります。  また、これらの活動は、客観的に見ますと何ら強制力を伴うものではありません。例えば、自衛隊法に定められている海上警備行為やあるいは要請による治安出動は、警察官職務執行法の武器使用規定が準用されることになって強制力を伴う活動でありますけれども、国会承認は必要とされていません。  以上のような活動の性格とか他の法律との均衡といった件を勘案しますと、本法案における基本計画については必ずしも国会承認を得る必要はなく、基本計画を遅滞なく国会に報告し、国会での議論を踏まえつつ対応措置実施していくことが、今委員が指摘されたような緊急の事態に適切に対処し得るゆえんだと思って、こういう法案をお願い申し上げている次第であります。
  46. 中谷元

    ○中谷委員 私の政治生活の経験上、この問題を国会承認にしますと、恐らく一カ月間はてんやわんやの大騒ぎになって、結局非常ボタンを押せない、押すには一カ月ぐらいかかると思います。しかし、そうなると火はますます燃えるのでありまして、こういう場合は直ちに行動をしていただきたい、それが国の安全装置ではないかというふうに思っておりますので、よろしく国会報告で対処していただきたいと思います。  次に、もう一点の論点で、周辺事態法全体を日米安保条約の枠組みで運用をするべきだという論も出てきております。  この法案に盛り込まれた三つの活動は、一つは米国軍の後方地域支援、もう一つは後方地域の捜索救難活動、もう一つ船舶検査というのが三本柱であります。  確かに、後方地域支援というのは、日米安保の中で米軍にいかに協力をするかという点で明らかにされた点であります。しかし、残りの捜索救難と経済制裁のための船舶検査は、ガイドラインの別表には、「日米両国政府が各々主体的に行う活動における協力」というふうになっております。すなわち、その周辺の事態我が国の平和と安全に重要な影響を及ぼすわけでありまして、我が国が独立国として平和と安全を確保するために行う必要な措置であると判断すべきだというふうに思いますが、現在、周辺事態確保法において、後方地域支援のみならず、捜索救難や船舶検査も日米安保の枠内で実施すべきであるという議論がありますが、この点については現在政府はどうお考えでございますでしょうか。
  47. 高村正彦

    高村国務大臣 日米安保条約の目的は、極東及び我が国の平和と安全を守るためでありますが、この周辺事態安全確保法案は、そのうち、我が国の平和と安全というものに着目して、それに資するためにできているものでありまして、そういう意味で、周辺事態安全確保法というものは全体として日米安保条約の目的の枠内である、こういうことを申し上げているわけであります。  今御指摘の二つの我が国の主体的活動、こういうものでありますけれども、これも、第一条に言うところの周辺事態において行われる、そういう意味では安保条約の目的の枠内と言っても差し支えないんだろう、こういうふうに思っております。
  48. 中谷元

    ○中谷委員 そうなりますと、あくまでも周辺事態という範囲でとらえた意味でありまして、その法案の中身は、一部の野党が言うような対米支援法だとか自動参戦装置とか、そういうアメリカのための法律ではなくて、日本のための、いわゆる黄色信号のときの日本独自の法案であるというふうに私も認識いたしたいと思います。  そしてまた、船舶検査の活動においては、いわゆる経済制裁の実効担保措置でありますが、これには国連決議が必要であります。過去三回船舶検査が行われております。九〇年のイラクのクウェート侵攻、九一年のユーゴスラビアの紛争、九三年のハイチのときの三度だけでありますが、いずれも国連決議がとられた後に船舶検査が行われております。  これはなぜかというと、やはり海の上は航海自由ですから、その船をとめる権限はどの国にもないわけです。しかし、国連でそう決めたならば、国連の加盟国がそれを守るという意味で停船を求めて検査をする。いわゆる国連の活動にしておかないと海賊行為であり、集団的自衛権に発展してしまいますので、この点はきちっと国連決議は必要だと私は思っております。  またもう一点、この船舶検査も含めて、本当にこれに参加するのが米国だけかといえば、多数の国々が参加をいたしております。イラクのときは十九カ国、ユーゴは十三カ国、ハイチのときは六カ国というようなことで、アメリカだけが参加するのではない。しかし、我が国周辺事態船舶検査をするということは、我が国の安全に対しても各国が協力していただいているということでありまして、当然アメリカ以外の国々も、我が国への寄港や補給また食料の援助などを求めてくるわけであります。  しかしながら、今回整備される法案では、アメリカ合衆国においての支援のみしか整理をされていなくて、アメリカ以外の国々、例えばカナダとかオーストラリアとか、非常に国連活動に熱心で船舶検査によく参加する国々もありますが、そういった国々に対して配慮を欠いているということを感じるわけでございます。  日米安保条約の枠内であるということに固執する余り、米国以外の諸外国との関係では、協力、協調関係を構築する上でやや障害になっているのではないかと思いますが、この米国以外の国々に対する問題についてはいかがお考えでしょうか。
  49. 高村正彦

    高村国務大臣 今委員もおっしゃったように、今お諮りしている法案は、新たな指針実効性確保するための措置の一環として、周辺事態対応して我が国実施する対米協力を含む措置、その実施手続等の必要事項を定めるものでございます。  この法案にある船舶検査活動は、新指針実効性確保のためのものであって、かつ周辺事態における我が国対応であるとの性格を有する活動でありますから、日米安保条約の目的の枠内と言えるものであります。  そして、今委員が御指摘になった、周辺事態におきまして船舶検査活動実施する米国以外の国との間で種々の協力が想定されないかといえば、それは想定されるところでありますが、このような協力については、今お諮りしている法案のような指針実効性確保のための法整備とは別の観点から、そのあり方につき検討されるべき課題である、今後の課題である、こういうふうに思っております。
  50. 中谷元

    ○中谷委員 そのように整備をしていただきたいと思います。  そして最後に、今回は黄色信号の危険な段階の法案であります。しかし、問題は赤信号の日本有事でありますが、この有事においての日本の有事法制並びに有事ACSA、これが全く整備をされておりません。やはり総理として、危機管理、国の安全の責任者として、これも整備すべきだと思いますが、最後に、この点についてどのようなリーダーシップを発揮されますのかお伺いをいたしまして、質問を終わらせていただきます。
  51. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 有事法制につきましては、総理は累次御答弁申し上げているところでございますが、私どもとしては、現在の有事法制につきましては、三分類に分けていろいろな整理を続けており、随時発表しているところでありますけれども、現在の研究が問題点の整理を目的とし、立法の準備ではないという前提が置かれている等の事情を勘案しまして、引き続き必要な検討を続けているところであります。  防衛庁としては、研究にとどまらず、その結果に基づき法制が整備されることが望ましいというふうに従来より申し上げてきたところでございます。
  52. 中谷元

    ○中谷委員 どうもありがとうございました。
  53. 山崎拓

    山崎委員長 これにて大野君、中谷君の質疑は終了いたしました。  次に、横路孝弘君。
  54. 横路孝弘

    ○横路委員 いよいよガイドライン並びに関連法の審議が始まったわけでございますが、民主党を代表いたしまして、幾つかの問題点についてお尋ねをいたしたいと思います。  このガイドライン関連法には、やはり問題点が数多くございますし、また国民が疑問に思っていることもたくさんあるわけであります。  例えば、特に問題でありますのは周辺事態でございますが、周辺事態に対して自衛隊あるいは自治体、民間が後方地域支援ということなどを行うわけでございますが、米軍の行動、特に在日米軍の行動というのは、ベトナムだイラクだというように、中東まで展開する部隊でございまして、これに伴って自衛隊の行動も広がるのではないかというような疑問もございますし、また、日本を防衛するという自衛隊、専守防衛の自衛隊がアジア諸国の紛争に介入することになるのではないかといったような疑問もございます。また、海外で武力行使をしない自衛隊が、米軍への協力過程の中で、結果として国際紛争を解決する手段として武力を使うことになるのではないかといった問題点、あるいは、国会承認なしに自衛隊を動かすということが一体許されるのだろうか、こういったたくさんの問題点があるわけでございます。  同時に、このことは今後の日本の外交や安全保障政策に大きな、ある意味では変更をもたらす要素もあるだけに、慎重な審議を私どもしていかなければいけない。それは、対外的にも、今日まで五十年間日本が進めてき、説明してきた政策とのかかわり合いも大変大きいわけでございます。  まず最初にお尋ねしたいのは、最近の国民の世論調査を見ますと、これは九七年のある新聞の調査でございますけれども、日米安保条約には賛成をする、自衛隊も大いに必要である、しかしながら、九条を改憲するということは、それは必要ありませんよ、米軍の基地もいいけれども沖縄の基地は段階的に縮小していくべきであるということに対する答えが大体六割から七割ぐらい占めているわけであります。  つまり、日本が他国の軍事圧力を受けないように日米安保というものを積極的に評価しながら、同時に、日本が再び軍事大国となって他国に脅威を与えるということにならないように憲法九条を活用してきた、この路線は基本的には私は正しいと思いますし、国民の今大方の考え方ではないかというように思いますけれども、いかがでございましょうか。
  55. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 今の世論調査の結果というのは、その時点において国民の意識をそれなりに表現しているものだと思いますし、と同時に、従来、日米安保も含めまして、戦後の安保論争、いろいろお聞きをいたしておりますと、ある意味では今昔の感、しないでもないだろうと思うのです。安保条約を全面的に否定をして、日米間のこうした条約の意義につきましてはほとんどこれを認めないような状況のときも、国民全体は認めておりましたけれども、なかなか数字的にそういうものが出てこなかった。  しかし、今おっしゃっているように、現在の事態に対処して、その存在を、意義を十分認めつつあるという、ごく常識的な国民世論の一つの反映の数字もその中にあらわれておるという認識をしてもよろしいのではないかと思っております。
  56. 横路孝弘

    ○横路委員 憲法の持っている平和主義と日米安保条約という、この両方をともに生かすべき道を国民は求めているというように思います。  つまり、日本への軍事的な脅威に対抗するために、日米安保の果たしてきた役割ということは評価しつつ、それは今後も維持していきましょう。しかし、直接の日本防衛と言えない分野でありますとか、あるいは日米協力が北東アジア、極東のバランスを崩すというようなことになる、あるいはそういう可能性のある分野については、日米協力のメリットと、それから他国がそれを脅威と受けとめるということをやはりちゃんと比較をして選択をしていかなければいけないだろうというように思うのですね。  それから同時に、憲法は、ともかく海外で武力行使をしない、他国に脅威を与えないということで、これはもう、アジアを含めて、国連などの、機会あるごとに我が国説明してきた我が国原則だというように思うのです。  その原則から、例えば、自衛隊日本の国土防衛、日本の防衛のための組織であって、そこから専守防衛という戦略が出てきて、それをはっきりさせてきているわけでありますし、日米安保も、米国は日本を防衛する、しかしその見返りに基地の提供を受ける、それは極東の平和と安全のためだというのが安保の基本的な姿、構造になっているわけであります。私ども、いろいろ議論していく上で、この二つのことをしっかり原則として踏まえていくことが大事ではないだろうか。  つまり、憲法の持っている平和主義と、そして同時にこの安保というものをしっかり両方とも生かしていく、その果たしてきた役割というのを原則として踏まえながら、確かに状況も変わってきているところもございますけれども、状況の変化だけについていきますと原則がはっきりしません。日本の国の原則は一体どこなのか、何なのかということをやはり明確にするという意味では、この原則をしっかり守るということが大事だと思いますが、いかがでございましょうか。
  57. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 原則を守っていくことは当然のことだろうと思いますが、日米安保をいま一度今日的時点に立ってこれを検討いたしますれば、言うまでもなく、日本の安全のために必要であるということだろうと思います。また同時に、日米間のきずなの礎を築いていくことでありまして、もちろん安全保障に対しての協力でございますけれども、と同時に、二条にありますように、経済的な問題も含めまして、日米がしっかりとした同盟的関係を維持していくという趣旨があると思っております。また、アジア太平洋地域の平和の安定にも寄与いたしてきたわけでございますが、引き続いてその責務は負っておると思っております。  日本の役割につきましても、信頼性確保するために、諸外国との関係につきまして、いたずらな摩擦が起こらないように十分この我が国の立場を明らかにしていくという必要があろうかと考えております。
  58. 横路孝弘

    ○横路委員 今の総理説明日米安保についての説明だけでございまして、私は、その果たしてきた役割を認めながらも、憲法の平和主義というものがやはり大きな要素で日本の外交というのは展開されてきた、アジア諸国や国連の場でも説明してきたわけですね。そこのところの御説明が全くございませんけれども、私は、その二つをしっかり生かしていくということが日本の外交、安全保障政策の基本にならなければいけない、この五十年間積み重ねてきた中で集約されている原則というのがあるわけですね、そこが大事だということを申し上げているんですが。
  59. 高村正彦

    高村国務大臣 委員がおっしゃるように、日本の平和主義の原則というのは、これはきっちり守っていかなければいけないと思いますが、委員がおっしゃった原則の中に、安保条約は、日本側は基地を提供することだけなんだというのが原則だということまでは、私はそうではないんだろう、こう思います。  平和主義の原則、憲法九条からの制約で、日本は集団的自衛権の行使になるようなことはできないという原則はきっちりあるわけでありますけれども、安保条約にきっちり明定されている日本の義務はまさに基地を提供するということでありますが、それ以外の集団自衛権の行使に当たらないようなことをやってはいけないということは、それは安保条約から全く出てこない、そこまでを原則であるともし委員がお考えだとすれば、それは違うのではないかと思っております。
  60. 横路孝弘

    ○横路委員 そこのところは、ガイドラインにまさに関連する問題でございますから、これからの議論でございます。  もちろん、安全保障というのは軍事的な抑止と均衡だけで得られるわけではありません。もちろん軍事的な信頼醸成措置というのも大事でございますし、軍事面ばかりじゃなくて、経済協力でありますとか人的な交流でありますとか、各般にわたる展開が必要でありますし、特に、信頼関係を樹立して紛争を起こさないという意味での外交展開というのは大変大事なことだと思うんであります。  冷戦が終わって、今日の状況の中で、よく答弁の中に、いや不安定な要素がまだまだ多いんだというお話があります。しかし、大きい流れを見てみますと、冷戦が終わってから、各国の首脳を含めた各国間の対話とか交流というのは非常にやはり拡大をしてきているんではないか、このように思います。例えば、アメリカと中国との関係、日本とロシアとの関係、あるいはインドとパキスタンも対話が行われる、あるいはアメリカと北朝鮮との対話、こういった対話がずっと行われているわけですね。  世界の方も、経済の市場化と相互依存というのは大変深まりましたし、情報というのはもう電子で一瞬に飛んでしまう、そういう状況であります。独裁的な国家もありますけれども、しかし、そういう国家は世界から孤立をしているわけでありまして、世界はそんな意味でやはり変わったと思うんですね。冷戦の時代よりははるかに国としての手段、方法というのはたくさん我々は持っている、そういう時代になってきています。  冷戦後の日本の外交、安全保障を見ますと、どうも日米安保だけの話でありまして、そういう意味でいうと、目標をはっきりさせて、現状からその目標に向かっていく、例えば北東アジア、朝鮮半島の平和と安定のためにどうするか、アジア全体をどうしていくのか、そういう政策というのはどうもはっきり見えてきていないんじゃないだろうか、こういう思いがいたします。総理、いかがでしょうか。
  61. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 冷戦の終結に伴いまして、圧倒的な軍事力を背景とする東西間の軍事的対決の構造は消滅をしてきておる、世界的な規模の武力紛争が生起する可能性は遠のいておるということで、その認識は、私は国際的にも定着しておるんだろうと思います。  だが一方、複雑で多様な地域紛争の発生あるいは大量破壊兵器等の拡散といった危険が存在するなど、冷戦終結後の国際情勢は依然としてさまざまな流動的要素をはらんでおり、特に、我が国が位置をいたしておりますこのアジア太平洋地域では、朝鮮半島における緊張の継続等、依然として不透明、不確実な要素が残されておると思います。  このような認識に基づきまして、政府としては、日米安全保障体制を堅持して節度ある防衛力の整備に努めるとともに、域内の相互信頼関係を高めるための安保対話や防衛交流を進展させること等により、我が国を取り巻く安定した安全保障環境の整備に取り組んでいるところでございます。  東西冷戦で二大核大国を中心にしての緊張した冷戦構造というものは解消されましたが、かえって、そうした双方の大きな勢力の範囲においてある種の秩序が保たれておったという、緊張の中の安定という状況よりも、むしろ地域地域の紛争が発生したり、またコントロールのききかねない、国連の力をもってしてもなかなかコントロールのききかねない国家その他がいろいろな活動をするということで、ある意味では大変不安定な要素も国際社会の中には起こってきておるんじゃないか。これをどうこれからコントロールするかということもこれからの安全保障の大きなテーマであり、それに対していかに責任を負っていくかということも必要なことではないか、このように考えております。
  62. 横路孝弘

    ○横路委員 冷戦が崩壊して、例えば日本についても、日本の領土に対する大規模な侵攻の可能性というのはなくなったという認識だと思います。  今総理からは、不安定しかし不確実な要素が多いんだというお話がございましたが、じゃ、現在日本として備えなければいけない日本の安全にとっての脅威、対応しなければいけない心配事というのは、総理、どういう問題があるというようにお考えですか。
  63. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 これは、具体的な問題について触れてここで御答弁することはなかなか難しいと思いますが、日本周辺として考えれば、やはり北朝鮮が秘密核施設を保持して核の開発をしておるのではないかという疑念等がございまして、そうしたことに対しては、やはり国際的な不信感、不安感を持っておることは事実であります。幸いにして、米朝間におきまして査察の問題が進展をしておるようでございますから、その点についてはこれから明らかになってくるだろうと思います、また解明されてくるだろうと思います。  一方、こうしたものがもし生産されるとすれば、それの運搬手段としてのミサイルの問題等もございまして、こうした点について透明性のあることが行われれば不安感は解消されるわけでありますが、我が国としては、先刻のミサイルの我が国上空の飛来等を考えますと、確実な状況の中でこの地域が安定しておるという認識は、なかなか認定することは困難である、このように考えております。
  64. 横路孝弘

    ○横路委員 我が国にとって朝鮮半島の平和と安定が当面非常に大きな、一番の課題であるというのは、私もそのように思います。  よく、議論するときに、朝鮮有事、朝鮮有事という言葉が使われますけれども、総理、朝鮮有事とはどんなことだとお考えですか。
  65. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 かつて、昭和二十五年、南北において大変大きな、悲劇的な争乱があったことは事実でございまして、世界の中でも、いまだ分裂国家の中でこれが統一を見ておらない、大変厳しい環境下にあるということは承知をいたしております。  したがいまして、今日、韓半島といいますか、この地域において究極の安定的な状況が生まれることを祈念いたしておりますが、その過程におきましては、いろいろの問題がなお解決せざる状況であると同時に、この南北の間の停戦ラインのところに、通称でありますが、北の方も百万、あるいは南の方も五十万と言われる軍隊が対峙を現実にはいたしておるというようなこともございまして、こうしたことが一日も早く解消されるように南北の対話が進むことを我々は祈念しておりますし、我が国としても、これから我が国として何をなすべきかということにつきまして考慮いたしていかなきゃならぬ、このように考えております。
  66. 横路孝弘

    ○横路委員 問題は、日本にとりまして、朝鮮半島の平和と安全のために努力をするその環境をつくるための外交的な努力というのは大事なわけであります。  考えてみますと、韓国の金大中大統領は、たびたびの北からの挑発にもかかわらず太陽政策を進めています。それは戦略的目標をはっきりさせているからですね。朝鮮半島の冷戦を自分の時代に終わらせる、そういう大きな目標を持って、極めて具体的に、段階的な、包括的なアプローチ政策を提起しているわけであります。  中国もまた、食糧でありますとか原油でありますとか肥料などの援助を進めて、国際社会に北がソフトランディングするように、そういう政策を進めています。  また、アメリカも、北朝鮮の核開発を阻止すると同時に、朝鮮半島の戦争を起こさせないということを外交目標に持って粘り強く努力をしているわけであります。今回も、新たな核疑惑に対して立ち入りが認められまして、米朝合意の枠組みも守られたわけですね。私は、アメリカは大変努力していると思うんです。  最近、アメリカ側から、アメリカの高官が日本に行くと、日本の新聞記者からよく出る質問というのは、一体アメリカはいつになったら北朝鮮を攻撃するんだというような、そういう質問ばかりでびっくりしていると。我々の外交政策というのは、戦争を起こさないための外交を展開しているんだ、日本は一体どうなっているんだ、こういう受けとめ方をアメリカでもしているような状況にあるわけであります。つまり、周辺国、あるいはアメリカを含めて、大変な努力をしているわけですよ。  ところが、では、一体日本が朝鮮半島の平和のために何をやっているんだろうか。これはどうですか、総理。何をやってきましたか。これから何をやりたいですか。
  67. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 他国の努力についてコメントすることは避けたいと思いますが、ただ、韓国におきましても、金大中大統領のいわゆる太陽政策におきましても、常々私、何回かお話ししておりますが、きちんとした自国の安全保障に対する基本的な姿勢は堅持しつつ太陽政策を遂行しておるということを私も何度もお聞きをいたしておるところでございます。  そこで、我が国対応につきましてでございますが、大変残念ながら、政府間の正常化のための交渉が中断をいたしておるところでございまして、その経過は横路委員も御承知のとおりだと思いますが、北京でのいろいろ会合が、我が国のいわゆる拉致事件問題をめぐりまして、その報告を求めるというようなことの経過の中で、北朝鮮側が席をけって交渉を中断しておるというような状況でございます。その後におきましては、ミサイル問題等も発生をいたしまして、大変残念な状況が続いておるところでございます。  ただ、日本政府としては、従来から、このただ一つの国交のない国との正常化の問題については、熱心にこれを取り組んでおるところでございます。また、今度の米朝会談でも食糧の援助等が指摘をされておりますが、我が国といたしましても、過去、米の問題につきまして北朝鮮に対して協力もいたしておるところでございまして、あらゆるチャンネルを通じまして、ぜひ北としても我が国に対して積極的な話し合いに応じていただくべく、前橋本総理も本会議場でもこのことを申し上げておりますし、私も、施政方針演説でも、建設的な提案があればぜひこれを受けとめていきたいということでございまして、なおこのことについては懸命の努力をして、正常化の道を築いていかなきゃならぬということでございます。  そういった点では、国交がございませんのでなかなか困難な点がございますけれども、関係の深い国々とも連携を密にしながら北朝鮮との正常化を図っていきたい、このように考えております。
  68. 横路孝弘

    ○横路委員 私は、どうも日本の場合、政権のスタンスがはっきりしていないんじゃないか。まさか、北の崩壊を待っているわけじゃないわけでしょう。アメリカにしても中国にしても韓国にしても、そういうことになったら朝鮮半島大変だということで、ソフトランディング政策というのをとっているわけです。  ですから、この政権、国連に加盟している国でもございますし、ぜひ真っ正面から取り組んで、今回の米朝合意も、もう二週間にわたって粘り強くアメリカは外交交渉していますね。どうもそういう粘り強さというのは日本の外交に見られない。それはやはり戦略というのがはっきりしていないからじゃないかと思うんですね。いかがですか、そのスタンスをはっきりさせて、早く交渉を積極的にやるべきだと思いますが。
  69. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 スタンスと言われますが、日本政府としては、申し上げましたように、正常化のためのあらゆる努力は傾注いたしておりますが、なかなか相手のあることでございますし、日本と北との関係と、米国と北朝鮮との関係、特に北朝鮮としては米国を直接の交渉相手としてこれを積極的に取り組んでおられるということの経過もございますから、それぞれ北に対する対応の仕方には違いがあるんだろうと思います。  ただ、我が国としては、申し上げたように、そのスタンスといいますか、姿勢は、不動の姿勢で対処しておる、こう認識をいたしております。
  70. 横路孝弘

    ○横路委員 核については、NPT条約もございますし、米朝合意もあるわけでございます。しかし、ミサイルについてはなかなか、対処する根拠というのは率直に言って、ないわけですね。  ただ、今回の米朝合意の中で、この二十九日、平壌で、米朝間ではミサイル協議を行うということが発表されているわけでありまして、我々としてはそこに期待をすると言うしかないわけですが、しかし同時に、日本としてどういう努力をするかというと、やはり交渉のテーブルに着いて話をするしかないわけですね。外で幾ら抗議したってその意思自身が相手に伝わらないという今の状態というのは、やはり解消しなきゃいけないと思うんですね。  そうしますと、こういう国交回復の交渉のようなものというのは、前提をつけますとなかなかそのテーブルに着きません。それはもう、お互い関心のあることすべてについて議論をするんだということで、まず交渉のテーブルをつくって、その中で、拉致問題であるとか日本人妻の問題であるとかミサイルの問題であるとか、我が国にとって重大な問題があるわけでありますから、その話をするということがやはり非常に大事ではないかというふうに思います。そういう観点に立ってひとつ御努力していただきたいと思いますが、いかがでございますか。
  71. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 政府といたしましてもいろいろな考え方がありまして、例えば外務大臣のときに私自身も、今四カ国で話し合っております、その前に米朝でやっておりますが、我が国もこうした話し合いの場に参加する機会がないかということで、ロシアと日本も参加したい、すなわち六カ国で話し合いをするように今努力をいたしておりますが、この点につきましても、残念ながらまだ北を除く他の五カ国の国々すべてに賛同を得られておるわけではありません。そうした形で、日本も北朝鮮に関与してのいろいろな会議その他に参画することができないかというようなこともございます。  と同時に、これはなかなか困難なことだろうと思いますけれども、例えば米朝で核秘密施設と称するものの査察問題が決着を見つつあるように思いますけれども、この問題は、もともとの発端は、核施設の不安を除くということと同時に、それに代替して軽水炉の原子力発電所に対する協力というようなこともございまして、その点については日本はKEDOに対しての協力もいたしておるわけでございますから、裏返して言うと、KEDOに参加をして軽水炉の原子力発電所に対する応分の我が国協力、私自身もこの国会で約十億ドルに匹敵する邦貨を提供するということを申し上げておるわけであります。  その前提としては、核開発施設というものがないということが前提になるわけでありまして、この点については米国側が、米朝会談によってはっきりとした査察結果が出てくると思いますけれども、こうした問題を、もし可能なれば我が国としてもそうしたものの視察というものについての自分自身のしっかりとした確認ができれば、もっと安定して国民の皆さんにもこの原子力発電所に対する協力をお願いすることが進むわけでございますから、そういった点も含めまして、現実には今米朝から始まる話でございますけれども、日本といたしましても大変深い関心を有しながら、その施設そのものの存在を否定されるような事態が北をして明らかになるという事態のために、あらゆる角度から情報を掌握しながら対処したい、こういうことも一つ日本政府としての対応だろうと思っております。
  72. 横路孝弘

    ○横路委員 日本政府としてもいろいろなやはり願いを持っているわけです、北に対して。拉致問題などの懸案事項を解決してほしいとか核の開発やミサイルという問題はやめてもらいたいとか、そして国交回復していこうじゃないか、そういう願いもある。北は北で、経済的な協力をしたいとか、じゃミサイルなんかやめた場合の安全保障をどうしてくれるんだとか、向こうは向こうでまた言い分があると思うんですね。それを、金大中大統領の包括的アプローチというのは、段階的に、最終的に平和に至る過程として政策化して発表しているわけです。  日本も具体的にやはり、少し我々の目標というのをはっきりさせて、それに立ってこういう努力をしていますよという方針と方向性をやはり出さなきゃいけないんじゃないだろうか。そうしないと、私は、KEDOの対応というのは、我々怒ってとめた、しかしアメリカに言われて解除した、また今度食糧支援の話がアメリカから出てくる可能性というのはあるわけですね。そういう、ほかに言われて対応するんじゃなくて、我々自身の方針と方向性を決めて、そして対応するということにならなければいけないんじゃないか。いつまでもこういうことをやっていますと、結局外国から、日本という国は、なにアメリカに話をすればいいんだ、アメリカが動けば言うこと聞くんだということになると、我々自身を相手にしてくれなくなるわけです、どこの国も。だから、そこはしっかりとした具体的な方向性というのが大事なときじゃないか。  あした韓国に行かれて金大中大統領にお会いされるようでございますけれども、そういうやはり協力関係、これも大事だと思うんですね。少し日本としてそういう具体的な政策をはっきりさせるというときに来ているんじゃないかと思いますけれども、総理、いかがでしょうか。
  73. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 繰り返しになりますが、日本政府としては一貫して態度は堅持しておると思います。  ただ、外交というものは相手のあることでございまして、北朝鮮としても、しからば、じゃ日本とこうした問題について十分な、話し合っていこうという態勢かと申し上げれば、現実には米国を相手としてあらゆる話し合いを進めておるというような状況でございます。ただ、韓国と日本との関係を考えますと、特に韓国は、もう南北、長い歴史の中で対峙をしておるような状況の中で、将来は南北が一体となって、分断国家と言われた状況を、一つになるという大きな理想に燃えているわけでございますので、韓国は韓国としての対応があるかと思います。  いずれにいたしましても、北朝鮮がこうした北東アジアの中でひとしく他の諸国と相協力して平和の安定に協力できるような体制を築いていくために、ほかの国々と話し合うことは当然のことでありますが、日本としても、やはり右往左往することなく、日本としての態度は明らかにしつつ、韓国あるいは米国との、あるいは中国との話し合いを進めていきたいというふうに思っております。
  74. 横路孝弘

    ○横路委員 ペリー報告がやがて出て、これはかなり、アメリカと朝鮮との間の政策でございますが、我々にも大きな影響を与えるわけでございますが、韓国や中国も、基本的には割と比較的冷静かつ積極的に韓国などは受けとめているのかなというように思いますけれども、これは、報告を受けられて、日本としてはどのように受けとめておられますか。
  75. 高村正彦

    高村国務大臣 ペリー調整官自身がペリー報告の内容を外に発表しておりませんので、日本としてもその内容にわたることはできませんけれども、説明を受けた限りにおいて日本として積極的に支持できるものだ、こういうふうに受けとめております。
  76. 横路孝弘

    ○横路委員 何か、そのことで韓国と調整する必要のあるようなことはあるんですか。
  77. 高村正彦

    高村国務大臣 ペリー報告というのは、各論にわたる部分が全然ないとは言いませんけれども、総論的なコンセプトみたいなものですから、これについては、日米韓、大きなコンセプトができても、今後とも具体的な調整はずっと必要になってくると思います。
  78. 横路孝弘

    ○横路委員 明日、金大中大統領とお会いされるようでございますけれども、そこで、特にこの会談で、総理として特に強調したい点、あるいはどういう点で話が合意されればいいというように期待されているのか。北朝鮮対応が中心になると思いますけれども、いかがお考えでしょうか。
  79. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 明日から訪韓をいたします最大のポイントは、昨年十月に金大中大統領が訪日をされまして、過去を総括いたしまして、新しい、二十一世紀に向けて、お互い来世紀につきましては過去を引きずった形の姿はもうやめよう、こういうことでございまして、そのことを改めて韓国に参りまして再確認するということが最大の私は問題ではないかと思っております。  御指摘のように、当然のことながら北朝鮮をめぐる諸問題につきましても忌憚のない意見の交換をし、改めて、韓国と我が国と相協力してこの問題に対して対処する上にいささかのそごもあってはならぬ、こう思っております。いわゆる太陽政策そのものにつきましては、二回にわたる首脳会談におきましても、私といたしましてもこのことは認識をいたしており、その基本的方針は理解をしておるところでございますので、新たに、先ほどペリー調整官の話がございましたが、アメリカとしての対応も韓国といろいろお話し合いがされたと思いますので、そうした点も含めまして十分な意見交換ができたら、こう考えております。
  80. 横路孝弘

    ○横路委員 それでは、ガイドラインの議論に移りたいと思いますが、議論の焦点はやはり何といっても周辺事態でございます。  米軍に対して日本自衛隊やあるいは自治体、民間を含めて協力する話でございますが、随分国会でも議論をしていますが、この周辺事態が一体どこの地域のどんな事態なのかということがやはりよくわかりません。日本の平和と安全に重大な影響を与える事態なんだと言われても、一体どういう事態なんですかということになるわけですが、総理、これ、ちょっとわかりやすく国民に説明していただきたいと思います。
  81. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 周辺事態は、委員御承知のとおり、我が国に対する武力攻撃ではないが、我が国周辺地域における我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態でございます。ある事態がこれに該当するかどうかは、その事態の規模、態様等を総合的に勘案して判断するものであります。したがいまして、この生起する地域をあらかじめ地理的に特定することはできない、このような意味周辺事態は地理的概念ではない。また他方、周辺事態我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態である以上、現実の問題として、このような事態が生起する地域はおのずから限界があるということはかねて申し上げておるとおりでございます。  周辺事態がいかなる事態かということがやはり非常に大事なことでありますけれども、私どもは、周辺事態というのは、軍事的な観点を初めとするいろいろの観点から見て我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態である、こういう事態として、これまでも累次申し上げておりますことは、我が国の平和と安全に重要な影響を与えるような武力紛争が発生している場合とか、あるいはこのような武力紛争が差し迫っている場合とか、あるいは政治体制の混乱等により当該国、地域において大量の避難民が発生し、我が国に大量に流入する蓋然性が高まっている状況、こういう状況等であって、それらが我が国の平和と安全に重要な影響を与えることがこれに当たる、こういうふうにこれまでも繰り返し申し上げてきたところであります。
  82. 横路孝弘

    ○横路委員 今御説明の最後のところ、ある国の政治体制が混乱して大量の難民が発生しているときということですけれども、大量の難民が発生しているときは、難民救助を国連などの協力を得てやればいい話ですよね。一体それはどこに武力的な要素がありますか。大体これが周辺事態になるというのはちょっとよくわからないんです。どうしてそれは周辺事態につながるんでしょうか。
  83. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 軍事的な観点を初めとする種々の観点から見て、我が国の平和と安全に重要な影響を与えるということでございます。  今先生お尋ねの、大量の難民が発生し、それによって我が国に対する流入であるとか、あるいは場合によりましたら武装難民とかいろいろなケースが考えられると思います。そういう状況でございますれば、それはまさに、我が国に対する武力攻撃の発生ということではございませんけれども、通常の警察力をもっては対応できないような、我が国国民の生命あるいは社会の平和、安定を脅かす事態ということで、当然のことながら対応が求められると思います。
  84. 横路孝弘

    ○横路委員 ある国の政治体制が混乱しておって武装難民がやってくるというのはどういうことですか。それがどうして日本の平和と安全ということに――大体そういう可能性自身が私は非常に乏しいと思うんですね。  一つ、そういう事態米軍はどういう行動になるんですか。内政不干渉という原則がありますよ。一国の中で混乱をして難民が出たというケースはベトナムでありましたですよ。しかし、それはベトナム難民を救助すればいい話であって、何もそこで米軍が軍事行動を起こし、それに日本協力するという必然性はどこにありますか、今のケース。
  85. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 一般的に考えまして、大量の難民が発生した場合で、我が国にその難民が大変大量に押し寄せてくるような事態になれば、それは日本の平和と安全に重大な影響を与えるもの、こういうふうに判定しなければならないと思います。
  86. 横路孝弘

    ○横路委員 ですからそれは、従来の政府答弁は、やはり軍事的な観点、それはある意味でいうと、日本有事との関連で軍事的な観点が必要だとおっしゃっていたわけでしょう。難民が出てきたって、それは難民救助すればいいわけですよ。しかも、その難民が出てくる国は混乱しているわけでしょう。混乱しているときにそんなことが起きますか。これはどうして周辺事態になるんでしょうか。
  87. 高村正彦

    高村国務大臣 あくまで可能性の問題でありますが、大量難民が出たらすぐ周辺事態だと言っているわけではもちろんないわけであります。  そういう場合に、中に武装難民が紛れ込んだり、そしてそういう人たちが日本国内でいろいろなことを起こそうとするというようなことが想定される場合は絶対ないとはいえない。あるいは、難民が大量に出ると、それを阻止しようとする国とそれを助けてやろうとする国との間でいさかいがある、そういうようないろいろな発展の状況が仮に日本の平和と安全に重要な影響を及ぼすような場合には周辺事態だ、こう言っているわけで、私たちは一々これを、具体的にどうどうということをすべて予測することはできないわけでありますが、いろいろな場合が想定できて、そういう中で、その時点で日本の平和と安全に重要な影響を及ぼす事態ができればそれは周辺事態だ、こういうふうに申し上げているわけです。
  88. 横路孝弘

    ○横路委員 これは、まさか難民発生をとめるためにその国の政治混乱に介入するということではないんでしょうね。
  89. 高村正彦

    高村国務大臣 あくまで国連憲章に従って行動する米軍ということを言っているわけですから、国連憲章に反するようなことを米軍がやることもありませんし、まして日本がそういうことをすることはありません。
  90. 横路孝弘

    ○横路委員 武装難民と言いますけれども、難民なら別に何も問題がないわけですし、武装して難民を装ったというならば、そして日本に直接侵攻するというならば、それはそれで対応すればいいわけですよね。しかし、政治混乱があってというのが今前提になって話ししているわけですよ。その国の政治的な体制が混乱しているときに、国家の意思として、そんな他国へ侵略するためにというような行動になりますか。どうもいろいろなケース想定の中で出てきた話なんだと思いますけれども、これはどうもよくわからない。  つまりは、今はやらないとおっしゃったけれども、これは、ある国の中の政治的な混乱があった、内乱だ、クーデターと、何かあったというときに、それにまさか介入するということを可能とするためにこういうケースを挙げているわけじゃないわけですね。  もう一度、総理、そこを確認しておきます。国際法の原則では内政不干渉です。難民が出ようと何しようと、その中での国の内部の問題は内政として干渉しないという原則があるわけでございます。それをちょっと総理に確認をしていただきたいと思います。
  91. 高村正彦

    高村国務大臣 国連憲章、一般国際法に反するようなことは一切いたしません。
  92. 横路孝弘

    ○横路委員 私は、今その説明を受けたケースは、それは周辺事態説明するのは無理だと思いますよ。それは、軍事的要素というのは必要だという従来からの答弁ですから、武装難民なんという話にしていますけれども、政治的に混乱していることと、武装難民を派遣して我が国を侵略するなんという行為とどのように関連してくるんでしょうか。  そこで私は、一つこの際、ちょっと総理に台湾の問題について確認をしていただきたいというように思います。  つまり、内政不干渉との関連でございまして、先日の予算委員会でも質問したのですけれども、今までこの台湾問題について、四十七年の十一月八日に、衆議院の予算委員会の大平当時の大臣の答弁がございます。それはこういう答弁であります。  「わが国は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であるとの中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重する」という立場をとっております。これは従来から繰り返していることでございます。「したがって、中華人民共和国政府と台湾との間の対立の問題は、基本的には、中国の国内問題であると考えます。」という答弁をしております。この答弁を御確認いただきたいと思います。
  93. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 一九七二年の衆議院の予算委員会における大平答弁というものは、これは認識をいたしております。
  94. 横路孝弘

    ○横路委員 いやいや、認識じゃなくて、この答弁を確認していただきたいと言っております。これと変わりありませんね。
  95. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 これは、政府といたしましても、この答弁を理解しております。
  96. 横路孝弘

    ○横路委員 それに引き続いて、これ、質問は、当時の公明党の矢野委員の質問なんですけれども、さらにこういう質問がございます。  万が一紛争が起こったときに、安保条約の運用につきましては慎重に配慮したいという表現がありましたけれども、その前段に、台湾は中国の国内問題であるという認識を述べておられるわけであります。したがって、万が一紛争が発生いたしましたときの安保条約、事前協議の運用について慎重に配慮するとは、この前段の、国内問題であるという認識に基づいて、いやしくも内政干渉の疑いを招くようなそのような判断をしないということで理解してよろしいんですかという質問に対して、大平外務大臣は、台湾地域の現状認識は、今申し上げたとおりですというのは、基本的には中国の国内問題であるということで、「そういう認識に立っておりまする政府といたしまして、いま、万一紛争が起こった場合という仮定の場合の議論をいたしますことは、国際的に政府としては望ましくないと考えておりますが、いま政府の見解として御答弁申し上げましたように、「今後の日中両国の友好関係をも念頭に置いて慎重に配慮する」ということを申し上げてございますが、」そのお答えで御理解をいただきたい、こういうやりとりがございます。このやりとりも、これは総理、御確認をいただきたいというように思います。
  97. 高村正彦

    高村国務大臣 昭和四十七年の大平答弁でありますが、日中国交正常化という日中関係の大きな進展を踏まえて、日米安保条約の運用については慎重に配慮する旨述べたものでありますが、この答弁は、日中国交正常化が日米安保条約にかかわりなく達成されたものであり、日米安保条約及び同条約にかかわる我が国の立場に変更はないとの前提に立った上で行われたものであります。そして、このような前提となる考えは、昭和四十七年、当時田中総理よりも答弁しているとおりでございます。  我が国としては、台湾をめぐる問題が当事者間の話し合いにより平和的に解決されることを強く希望しており、これと異なる前提を置いて議論することは適切でないと考えております。  その上で、あくまで一般論として申し上げれば、御指摘の昭和四十七年の大平外相の答弁は、今申し上げたような考え方を前提とするものでありまして、日米安保条約に基づく権利義務に影響を与える、あるいはこれを変更するものではなく、大平外相の答弁に述べられている立場に今の政府も変更はありません。
  98. 横路孝弘

    ○横路委員 総理、もう一度この大平答弁というものを、それは御答弁するときいろいろな状況はあったんだと思いますけれども、答弁として、そして基本的な考え方として、これは中国に対する一つのメッセージにもなると思いますので、明確にしていただきたい、もう一度御確認をいただきたいというように思います。よろしいですね、これは。
  99. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 大平答弁の要旨は、中華人民共和国政府と台湾との対立の問題は、基本的には、中国の国内問題であると考えますという答弁でありまして、これはそのとおりと思っています。
  100. 横路孝弘

    ○横路委員 この周辺事態でございますけれども、先ほどの質疑の中でも、この周辺事態というのは、我が国の防衛のために日本協力するんだという御答弁がございました。それでよろしゅうございますね、さっき外務大臣が御答弁されたと思いますけれども。周辺事態に対する日本協力というのは、日本の防衛のために協力するんだという御答弁があったように思いますが、違いますか。
  101. 高村正彦

    高村国務大臣 日本の平和と安全に資するために、周辺事態法に基づいて日本協力があるわけでございます。
  102. 横路孝弘

    ○横路委員 周辺事態というのは、ある紛争がありまして、それに対して米軍が行動を起こす、これに対して日本協力する、こういう話でございます。  そこで、この事態というものをどういうぐあいに考えるかということで、私は、日本の平和と安全に影響を及ぼす事態ですから、やはりそういう事態というのは我が国の有事に発展する可能性を持っている事態なんだ、日本の有事に全く関係ありませんよという事態に関与するということではないだろう、それはほっておくと日本の有事に発展してきますよということだから日本協力するんだ、こういうことだと思いますが、それでよろしゅうございますか。
  103. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 我が国に対する直接の武力行使ではないけれども、武力行使に至ることを未然に防ぐことを大きな目的としていると思います。
  104. 横路孝弘

    ○横路委員 日本自衛隊というのは、日本の国土防衛が任務でございます。したがって、専守防衛ということを基本としているわけでございますから、自衛隊が行動するとすれば、その形態がどういう形態であれ、やはりその事態が、ほっておくと日本の本土が攻撃される、そういう日本有事の事態に発展する、そういう問題だということをベースにして周辺事態かどうかを考えるということでよろしゅうございますね。
  105. 山崎拓

  106. 横路孝弘

    ○横路委員 いや、委員長、これは今まで議論しているところですから、できるだけ長官、お答えください。
  107. 山崎拓

    山崎委員長 まず防衛局長から答弁させます。
  108. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 まず私の方から前段階の御説明をさせていただきたいと思います。  先ほど申しましたように、軍事的観点ということでございますから、まさにそれ自体が日本に対する武力攻撃ではないわけですけれども、日本安全保障を脅かす事態であるということでございます。  そういう中で、先ほど先生が設例されましたような大量の避難民というものにつきましても、それは日本安全保障に対する脅威という観点から対応が求められているということでございます。
  109. 横路孝弘

    ○横路委員 私、そういうことを言っているわけじゃなくて、その周辺事態というのは日本の有事に発展するような事態なんでしょう、ほっておけば。したがって、軍事的な要素というのはどうしてもそこには欠くことはできないんだ、こういう御答弁だったわけですね。そうじゃないですか。  そうじゃなくて、日本の有事に何も発展することでないとするならば、それは周辺国の紛争であっても――それはアメリカはアメリカで対応することがあるかもしれません、アメリカは自分たちの国益のために行動するわけですから。しかし、日本がその米軍の行動に協力するという場合は、日本の防衛のためでしょう、基本は。つまり、その事態日本の安全に大きな影響を及ぼす事態、それは何かといえば日本有事でしょう、日本有事に発展していくような事態。それが全くないならば、どんな紛争が近くに起きようと、それはその関係している国の間の問題であって、日本自衛隊が出ていく話では絶対ない、このように思います。
  110. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 予算委員会でも委員から再々お話がありましたとおり、周辺事態には何らか軍事的な観点というかエレメントがなければいかないんじゃないかという御指摘もありましたが、その点は私どもも同じ考え方であります。  先ほどから申してありますとおり、こういう周辺事態が発生して、ほっておけば、それはおっしゃるように我が国有事に至ることはあり得ると思いますが、周辺事態法案は、そういう有事に至らないように、そういう武力行使が日本に及ばないようにすることが法律目的でございますので、そのことを御理解いただきたいと思います。
  111. 横路孝弘

    ○横路委員 ですから、及ばないようにするための事態というのは、いずれ日本の有事に関連してくるという要素が非常に大事なんでしょう。大事でしょう。それがなければ、周辺の国で何か紛争が起きても、いや、日本にとって何か弾が飛んでくることはありませんよということならば、それは紛争しているその国の間の問題でありまして、米軍米軍の理由であるいは関与することはあるかもしれないけれども、日本は関与すべき理由はない、こう思いますが、それでよろしゅうございますね。
  112. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 ほっておけば日本の有事に至るかもしらぬという点では、同じ認識でございます。
  113. 横路孝弘

    ○横路委員 そこで、ガイドラインでございますが、ガイドライン日本有事のところにこういう記述がございます。「日本に対する武力攻撃が差し迫っている場合」の中に、  日米両国政府は、周辺事態の推移によっては日本に対する武力攻撃が差し迫ったものとなるような場合もあり得ることを念頭に置きつつ、日本の防衛のための準備と周辺事態への対応又はそのための準備との間の密接な相互関係に留意する。 ということがガイドラインの中に書かれています。  これは、いろいろとその翻訳が問題があるという議論がありまして、この表現は、もっと直接的に言うと、日本周辺事態の情勢というのは、日本への武力攻撃に発展することがあり得ることを認識をして、日本防衛のための準備と周辺事態に対する対応をしていくんだということをここで記述されているんだというように言われているわけでございますが、いずれにしても、周辺事態というのが、ここの記述にありますように、日本に対する武力攻撃に発展するという要素が非常に大きいわけであります。  そうしますと、周辺事態が起こると、この規定でいきますと、日本武力攻撃に発展することを想定した準備が開始されるというように理解してよろしゅうございますか。いわば防衛出動の準備がこの段階で、周辺事態の段階で始まるのだと。この日本有事の方の規定から見ると、これはそういう用意をしますよということではありませんか。
  114. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 事実関係について御説明を申し上げたいと思います。  周辺事態は、まさに日本の平和と安全に重要な影響を与える事態ということでこそ周辺事態ということで我々は対応を考えるわけでございます。一方、日本有事に際しての日米の共同対処ということで、これにつきましてはふだんからいろいろな準備あるいは対応を考えるという世界でございます。  ただ、両者を別々というのがまず出発点ではございますけれども、周辺事態につきましては、場合によりましては日本有事に波及する可能性もあるということで、両者を検討するに当たっては、両方の調整と申しましょうか、相互関係に留意をして検討しておく必要があるだろう、こういうことでございます。
  115. 横路孝弘

    ○横路委員 それはそうじゃないんじゃないですか。  ほとんど日本有事に発展するというような事態、先ほど防衛庁長官も、そういうことが起こらないように周辺事態への協力をするんだというお話をいたしましたが、この日本有事の規定の方から見ますと、実は、周辺事態が起こったときには日本有事を想定してもう自衛隊はそれなりの対応を始めるんだ、これはこういうことでしょう、簡単に言えば。余りごまかしちゃだめですよ、ごまかしちゃ。
  116. 柳澤協二

    ○柳澤政府委員 お答え申し上げます。  周辺事態というのは、たびたび御答弁ございますが、我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態でありますから、自衛隊はそういうケースにおいては、まさに日本の平和と安全という観点からいろいろな活動をするのは当然でございます。  それで、ここにもありますように、周辺事態の推移によっては武力攻撃が差し迫ったものとなるような場合もあり得るということが書いてございますが、まさにそういうケース、いろいろな行動を同時にとらなければならない、そのときにいかに効率的に日米協力していくかというところが非常に実は難しい課題でございます。ですから殊さらこういう表現をしたということで認識しております。
  117. 横路孝弘

    ○横路委員 いや、それはごまかすためにこういう表現になっているんですよ。実際は、それは軍事的にはもう動くんです。  例えば、ガイドラインのところの日米共同の運用、「運用面における日米協力」というのがありますね。これは本当は共同作戦というように訳した方が適切だと思うんですけれども、今回のガイドラインは、日本の対米軍協力を、一つ後方地域支援、もう一つはこの共同作戦、運用面の協力という形で規定されています。  それで、この情報収集とか警戒監視ですね、こういう活動というのは周辺事態が予想される前からもうスタートするわけでしょう、軍事的には。いかがですか。
  118. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 このガイドラインにおきます「運用面における日米協力」の項でございますけれども、ここに書いてございますように、「周辺事態は、日本の平和と安全に重要な影響を与えることから、自衛隊は、生命・財産の保護及び航行の安全確保目的として、」と。そういう事態であれば日本船舶の航行の安全といったものを確保するということは、これはまさに自衛隊自身の任務でございます。したがいまして、そういうために情報収集をしたり警戒監視等を行う。  また、情報収集あるいは警戒監視という観点からいたしますれば、これはふだんからやっているところでございますけれども、この周辺事態でこういった例えば日本船舶の航行の安全を確保するために必要だということであれば、そのために情報収集、警戒監視を行うということがまさに自衛隊の任務である、こういうふうに考えているところでございます。
  119. 横路孝弘

    ○横路委員 そうなんですね。  ですから、例えばAWACS、早期警戒管制機ですね、回転型のドームのついた飛行機でありまして、ほぼ五百キロぐらいの監視、どういう飛行機が飛んできたとかということがわかる、それからE2C、それからさらにP3Cという対潜哨戒機、潜水艦がどこにいるか探す、それからさらに潜水艦などが、いわば情報収集、警戒監視ということで既に配置につくわけですね、周辺事態が予想されたときから。よろしゅうございますね。そうですね。
  120. 柳澤協二

    ○柳澤政府委員 今先生がお触れになりました艦艇、航空機による警戒監視というのは、実は平素から我々は実施しております。そして、いろいろな形で情勢が緊迫してまいりますれば、当然、頻度を上げたり、あるいは部隊をふやしたりという対応をとることになると思います。
  121. 横路孝弘

    ○横路委員 そうだと思うんですよ。ですから、イージス艦だとかあるいはASW作戦、相手国の潜水艦探しなどが始まるわけでしょう。この段階でP3Cなどの海域分担というのを日米間で調整するんだと思いますけれども、いかがですか。
  122. 柳澤協二

    ○柳澤政府委員 申し上げていますように、自衛隊は、あくまでも我が国の安全あるいは我が国の防衛に発展するような事態になるかどうかという観点で情報活動や警戒監視を行ってまいります。  したがって、アプリオリに米軍自衛隊が、あるいは日本防衛を共同して行うようなケースではそういったことはあり得るかと思いますけれども、おのずと警戒監視の観点も違っておりますので、そういう形での分担というようなことは、今我々は考えていないところでございます。
  123. 横路孝弘

    ○横路委員 いや、それは平時だって調整してやっているんじゃないんですか。この地域はきょうは日本がやります、あしたはアメリカがやるという形になっているんでしょう。
  124. 柳澤協二

    ○柳澤政府委員 基本的に、自衛隊は、日本周辺の状況につきましては自衛隊独自の手段でもって警戒監視を行っております。
  125. 横路孝弘

    ○横路委員 そして、その情報、データというのはすぐリアルタイムでアメリカの方に行くわけですよね。例えば、ある国の戦闘機がアメリカの空母を攻撃しようと接近していることを航空自衛隊のAWACS、早期管制機が探知したとしますと、その動きは米軍自衛隊共用のデータリンクを通じて洋上のアメリカ艦隊の空母やイージス艦の方にすぐ連絡が行って、そちらの方はそれを迎え撃つ態勢をつくっていくわけですね。それからさらに、P3Cが潜水艦を発見すると、これもすぐアメリカの方に伝えられてその潜水艦を壊滅する作戦を展開するという構図、構造になっているわけですよ。  これは、平時からいろいろな監視活動をやっていまして、周辺事態が予想されたらなおレベルアップしてやるわけでしょう。そして、それは周辺事態になったときにも同じようにやるわけですね。周辺事態になったから日本自衛隊はやめますということにならぬわけですよ。  そうすると、まさにどうなるかというと、この警戒監視というのは、つまりアメリカ軍の相手の部隊や航空機、あるいは潜水艦などの艦船の位置や動きについて情報を把握して、それをアメリカに提供するという仕事をするわけです。したがって、日本の本土や領域というものが何の攻撃も受けずに平穏なときでも、日本の周辺で米軍が軍事行動を起こした場合には、アメリカが戦っている現場が捕捉できる地域、それはかなり範囲が広いわけですから、AWACSの場合五百キロぐらいの広さを持っています、そこで相手を捕捉して、リアルタイムでアメリカに連絡をする、アメリカが対応する、こういうことになっているわけですね。  この仕組みというのは、やはりもう武力攻撃一体だと言わざるを得ないと思うんですよ。それはもうそういうように、特に日米間の軍事協力の中では、ある意味でいうと、アメリカとの一体性というのは海上自衛隊が一番強い仕組みにシステムとしてなっているわけです。  したがって、私は、これは、前に法制局長官のこういう答弁がございます。「特定の国の武力行使を直接支援するために、偵察行動を伴うような情報収集を行い、これを提供するようなことについては、他の者による武力の行使と一体となると判断される可能性がある」と。まさに、今日行われておりますASW、そしてこれらの飛行機による偵察監視活動というのは武力行使との一体性だ、どこからどう見たってそうなっているというように思いますけれども、いかがでございますか。
  126. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 先ほど来いろいろ御指摘をいただいておりますが、自衛隊の行う情報収集や警戒監視は、あくまでも自衛隊がその任務を遂行するために実施するものでありまして、米軍のためにやっているわけではございません。米国の戦闘行為に直接役立てるために偵察活動実施するようなことは想定しておりません。日米安保体制のもと、日米両国が平素から、軍事情報を含め相互に必要な情報交換を行うことは当然のことであります。このことは、周辺事態においても何ら変わるものではありません。  このように、一般的な情報の一環として米軍へ情報を提供することは実力の行使には当たらないので、私どもは、法制局とも協議の上、憲法九条との関係でも問題を生ずるおそれがないと考えております。  なお、我が国がどのような場合にどのような情報の提供を行うかについては、具体的な事例として国益に基づき自主的に判断する、こういうふうに考えております。
  127. 横路孝弘

    ○横路委員 防衛庁長官、そんな実態に合わない答弁したってだめですよ。もう現実に、全部情報は瞬時にリアルタイムでいつも情報交換されているわけですから。それは平時でも毎日そうですよ。軍事協力というのはそういう形をとるのは、ある意味では、特に海上自衛隊については、対ソ戦略のときから非常に深い関係ができているわけでございます。  法制局長官、今まで長官の答弁ありますが、私は、このことからいいますと、これはもうまさに、そこで戦闘行為が行われている、これに対して日本自衛隊の方が情報を提供する、こういう行動を組織的に行うということ、これはもう当然武力行使と一体と判断すべきだと思いますが、いかがでございますか。
  128. 大森政輔

    大森(政)政府委員 先ほど、私の別の機会における答弁について言及があったわけでございますが、手元にそのときの議事録を持っているわけではございませんけれども、その当時申し上げました基本的な考え方は、このようなことであったと思います。  すなわち、一般的な情報交換の一環として米軍に情報を提供するということは、そもそも実力の行使に当たるものではないから、周辺事態に際して行われるものであっても、憲法九条との関係では問題は生じないのであります。  ただ、先ほど指摘されましたのは、偵察行動を伴うような情報収集を行い、これを提供する場合という言葉を使ったことは間違いございませんが、その前に前置きがございまして、特定の国の武力行使を直接支援するために、偵察行動を伴うような情報収集を行い、これを提供する場合のように、情報の提供に特定の行動が伴うことによって、他国による武力の行使と一体となるおそれがある場合が例外的にはあるかもしれないということを申し上げたのでございます。
  129. 横路孝弘

    ○横路委員 もうこれ以上法制局長官の答弁を求めませんが、米軍武力行使を直接支援するために、偵察行動を伴う活動をやることになるわけですよ。ですからこれは、今の法制局長官の答弁からいっても、私は、武力行使と一体となると判断される状況だ、具体的な行動を見ればそのように判断されると思います。この点はさらにこれから詰めてまいりたいというように思います。  次に、ガイドラインに含まれた項目の中で、最も市民生活に影響があって、場合によっては国民の権利を制限する可能性があるのは、自治体と民間の協力ということであります。  政府は、協力の態様につきまして、この二月三日ですか、地方公共団体の管理する空港、港湾の米軍への提供、利用上の支援、公立病院へのアメリカ兵の受け入れ、民間については、米軍に対する物資調達の協力、荷役、輸送、整備などのサービスなどとされておりまして、十項目挙げられています。  この十項目というのは、これに限られるのか、そうではないのか、さらに大いに膨らんでいくのか、これはいかがでございますか。
  130. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 周辺事態安全確保法第九条に基づいて、地方公共団体に対して求めるあるいは依頼する協力内容については、事態ごとに異なるわけでありまして、あらかじめ具体的に網羅的に確定されるようなものではないということでありますけれども、想定される典型的な例として十項目、地方自治体あるいは民間の協力に関して事例としてお示しをされたわけでありますが、強いて挙げれば、このほかに、地方自治体が有する施設や土地の提供あるいは貸与、こういったことも考えられるかとは思います。  いずれにしても、事態ごとに異なるということで、あらかじめ網羅的に確定するということは難しいということは申し上げたいと思います。
  131. 横路孝弘

    ○横路委員 前に新聞で、朝鮮半島有事を想定して在日米軍の対日要求というのが九四年の四月に出されて、それを九五年の十二月に千五十九項目に整理されたということが言われています。  それをちょっと整理してみますと、ほとんど全国、北から南まで、空港、港湾、そのほか、例えば自動車、トラックやトラクター、フォークリフトなどを要求するとか、あるいは寝袋も用意してほしいとか、あるいは病院を含めて、これを見ると、同じように、もう日本列島は完全に大騒ぎになる、周辺事態というのはそういうことなんですね。  ですから、この千五十九項目というのは、十項目を整理して、さらにそれがどんどんふえていくわけでしょう。千五十九項目との関連はどのようになりますか。これから基本計画をつくる中で、いろいろな協力ということになったときに、ガイドラインの方にも幾つかの項目が整理されていますけれども、それに基づいてさらに十項目を広げると、大体こういうような千五十九項目ぐらいになっていくというように受けとめてよろしゅうございますか。
  132. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 私どもは、日米間において、日米安保体制のもと、平素からいろいろなレベルの安全保障上の情報交換や意見交換等を行っているところでありますが、周辺事態等に際しましての日米協力につきましては、ガイドラインの見直し作業の中でも種々検討を行ったところであります。そういう成果につきましては、平成八年の九月、平成九年の六月あるいは平成九年の九月にそれぞれ公表し、国会にも御報告を行っているところであります。  このような日米間の種々の意見交換や検討作業の中で、緊急事態についての米軍に対する我が国の支援について、さまざまな形で論議が行われたことは事実でございます。しかし、御指摘のように、対日支援要求として固まったものを政府が受け取ったということはなく、また、では、どういうものを受け取っているのかということでありますが、そういう一定の成果を受け取ったということはありませんので、その都度その都度論議したことはありますが、その意見交換や作業の内容については対外的に明らかにすることは差し控えさせていただきたいと思います。  これらの論議の中から、政府が統一して発表した原型となるべき十の協力については、これらの議論によってさらに無限に拡大していくということは、私どもは全く予想しておりません。  ただ、先ほど自治大臣もおっしゃられたとおり、事態によってどういう協力が必要となるかということは、今の段階で全部限定するというわけにはいかないものであるということを、ひとつ御理解いただきたいと思います。
  133. 横路孝弘

    ○横路委員 各新聞の報道によりますと、この中で、例えば、空港でいいますと成田、福岡、長崎、那覇、新千歳、関西、宮崎、鹿児島、港湾ですと神戸、松山、大阪、名古屋、水島、福岡、そのほかたくさん、いろいろな要求が出ているわけであります。  もし、朝鮮有事というようなことで日本後方地域支援をするということになりますと、ちょうど湾岸戦争のときにクウェートの隣のサウジアラビアが後方地域支援の拠点になりましたように、これは大変なわけですね。  兵たんというのが湾岸戦争のときどうだったかといいますと、航空機の出撃が延べ一万回です。砲弾が四万四千発、燃料補給が十億ガロン、糧食が九千四百万食、追送貨物が五百七十万トン。そして、アメリカとこの間の輸送が、船舶五百隻、航空機は延べ一万四千フライト、空輸は四十八万九千トン、四十七万三千人というような大変な量でして、最盛期には輸送機が十分ごとにサウジアラビアの空港に着陸した。初めの一カ月で七万五千人、また、作戦から六週間で、輸送機延べ六千機並びに輸送船三百九十隻が運航されたということで、もう一斉にそういうアメリカの飛行機だとか船が日本列島にわっとやってきてということになるんですね。  ですから、この周辺事態というのは簡単なことではないんです。そのことを全然政府は国民に説明していないと私は思います。いわば日本列島全体が基地化すると言ってもいい事態ではないだろうか、このように思います。  そのことについて、これは例えば運輸省関連が非常に多いんですけれども、運輸大臣はどのように話を聞いておられるんですか。
  134. 川崎二郎

    ○川崎国務大臣 まず、報道されたようなことが運輸省に話があったか、全くございません。また、今日まで、特定の民間空港、港湾の使用等を念頭に置いた検討を防衛庁から具体的に要請されたことはございません。
  135. 横路孝弘

    ○横路委員 だから、こういうようなことが背景にありながら、何にも国民に知らせず、地方自治体にも知らせず、何かあったときに周辺事態基本計画の中でぱっと出てくるんでしょう。ふたをあけてみたら物すごい項目がぞろぞろ出てくる、こういうことになるんじゃありませんか。それでいいと思いますか。
  136. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 そこに委員が示されたようなことは、新聞がどうしてそういうものを根拠にして書いたのかは、私どもは承知しておりません。私どもは、周辺事態というのは国益の見地から主体的に判断して決めてまいるということを累次申し上げているところであります。
  137. 横路孝弘

    ○横路委員 自治体協力についてお尋ねしますけれども、政府は、自治体協力に関して、地方公共団体協力に応じなくても直ちに違法となるものではなくて、一定の行為をなすべき一般的な義務づけをしたという程度のものである、強制するものではない、義務はない、罰則を科することはできないということの答弁をしていますが、その答弁でよろしゅうございますね。確認をいたしたいと思います。
  138. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 御指摘のとおり、本法案では、協力を強制するものではありませんで、協力を拒んだことに対して、本法案に基づく制裁的な措置がとられることはないということになっております。
  139. 横路孝弘

    ○横路委員 民間に対する協力義務でございますが、民間協力については、自治体と違って国の依頼に応ずる義務を負うものではないと答弁しております。これもよろしゅうございますね。
  140. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 民間につきましては、法案上も「協力を依頼することができる。」とありまして、強制は全くございません。また、損失が生じた場合は補償するということにしてあります。
  141. 横路孝弘

    ○横路委員 では、この民間業者による輸送業務でございますが、これは公海上でも行われるのか、地域に限定があるのか。あるいはまた、米軍との契約で民間業者が受けとめた場合、その行動範囲というのは契約に任せられるのか、何かそこに制約があるのか。いかがですか。
  142. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 民間が協力する場合は、公海で行われることもあり得ると思います。  先ほどから申し上げますように、これは強制するものじゃありませんから、送る方と受ける方が契約に基づいてなされるということになりますが、私どもの立場としては、少なくとも、そういう契約を行う際には、絶対に安全の見通しがつかなければ、かりそめにも中に立ってそういう契約を結ぶようなことはないように配慮したいと思いますし、また、新しい情報を絶えず収集しながら、安全の情報を輸送する民間業者に逐次連絡して、安全の確保に努めたい、こう思っております。
  143. 横路孝弘

    ○横路委員 民間へも強制するものではないというお話ございましたけれども、例えば、自衛隊法の百一条で、NTTとかJR、JR貨物について、特に必要があると認められるときは協力を求めることができるというように規定されておりまして、この場合、「特別の事情のない限り、これに応じなければならない。」というようになっていますけれども、民間でも例外があるんじゃないでしょうか。これはどちらの方が――今までの御答弁のように、いや、強制されるんじゃないよという話なのか、ここに列記されているところについては強制されるんだということなのか。
  144. 伊藤康成

    伊藤(康)政府委員 お答え申し上げます。  自衛隊につきましては、百一条で、確かに先生御指摘のように、海上保安庁、地方航空局等と並びまして、旅客鉄道会社あるいは日本電信電話株式会社等が列記をされているところでございますが、これは、以前それぞれ公社であったというようなことにも由来しておりますし、また、自衛隊法の場合と今回の周辺事態法の場合では若干事情を異にしておりまして、百一条の第二項にございます「これに応じなければならない。」といったような規定は、周辺事態確保法の方では設けておらない。したがいまして、先ほど来自治大臣からも御説明ございましたように、応ずる義務というものを生じさせるものではございません。
  145. 横路孝弘

    ○横路委員 さっき自治大臣は、周辺事態法では義務は例えば自治体にはないけれども、ほかの法律では場合によってはあるような御答弁をされました。これはまさにほかの法律のケースなんですけれども、今の御答弁は、いや、周辺事態法を優先させるということだったわけですね。  これはやはり周辺事態法を優先させるということで、自治体に対しても強制するものでもないし、民間会社を義務づけるものではないということで、整理するならちゃんと整理していただきたいと思います。
  146. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 これも予算委員会で何度も応答があったところでありますが、ほかの法律において云々というくだりは、例えば、港湾法における港湾管理者が港湾の適正な維持管理をするために港湾法をもって判断する、ですから、単に地位協定五条で米軍の船が入ってくるようなことは、地位協定では認められているけれども、別個に法律上、港湾法上港湾管理者が自主的に判断することがあり得る、その場合に、港湾法上のいろいろな規定があることは遵守しなければいけないという意味で、自治大臣が言及されたのではないかと思います。
  147. 横路孝弘

    ○横路委員 ともかく、その前、自衛隊法百一条というのは、これは適用されないで周辺事態法が適用されるんですよというお話だった。自治大臣の方は、周辺事態法からいうと問題はないけれども、ほかの法律規定があれば、その規定が適用されることはありますよと。それは、今防衛庁長官が言った港湾法のことですね、不平等な取り扱いをした場合には是正することができるということを言っておられるのだろうと思いますけれども。  そこのところ、都合のいいときにあっちの法律、こっちの法律と言われても困りますから、要するに、自治体に対しては義務を負わせるものではない、民間に対しても義務を負わせるものではないということで整理していただきたいです。それは今までのずっと答弁の流れですから。よろしゅうございますか。
  148. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 御指摘のとおりでございまして、何ら強制力を伴うものではないし、法律に罰則規定もありませんから、御説のとおりであります。  この項目については、公共団体や国民がわかりやすいような措置をとることがよろしいかと私どもも考えて検討しているところであります。具体的には、運送関係については運輸大臣も、わかりやすいマニュアルをつくることについて検討したいと、予算委員会等でも答弁しているところであります。
  149. 横路孝弘

    ○横路委員 周辺事態への協力というのは、やはり日本有事に匹敵する事態なんですね、対応としては。日本列島もこういう大騒ぎにもちろんなるわけでありますし。  それから、先ほどの警戒監視でございますけれども、ああいう警戒監視をしていますと、相手の国は、これが日本のP3CなのかアメリカのP3Cなのか、日本のAWACSなのかアメリカのAWACSなのか識別できません。したがって、やはりそこに対して攻撃を集中するということになりまして、どうしたって戦闘行為に参加していくということに私はなっていくというように思います。もともと、先ほど申し上げましたガイドラインの中にも、日本有事というものを周辺事態有事と連携させているわけですし、実際の自衛隊対応としては、防衛出動の前のような態勢にずっと動いていくということを指摘したいと思います。  最後に、国会承認の問題について御質問いたしたいと思います。  米軍が戦いに入るあるいは入ろうとする紛争を周辺事態であるとだれが認定するのかということでございますが、従来の答弁は、日米それぞれが主体的に判断しなければいけないという御答弁があります。他方、日米間で緊密なる情報交換や政策協議が随時行われているわけですし、日米は共通の認識に到達するための努力を払うことになるだろう、こういう答弁であります。つまり、形の上では主体的だけれども、実際は日本がアメリカに同調していくということを事実上認めているようなものでありまして、それならばやはり、周辺事態であるという認定をするのは国権の最高機関である国会が認定しなければいけない、このように思います。  これは総理大臣にお尋ねしたいと思いますけれども、周辺事態というのは、今申し上げたように大変な事態なんです。そうすると、それを認定するかどうかというのはやはり国権の最高機関が決定すべきだと思いますが、いかがでございましょう。
  150. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 この点についてもしばしば御答弁申し上げさせていただいておりますけれども、今般の政府として提案いたしております法案の国会承認につきましては、周辺事態への対応武力の行使を含むものでないこと、国民の権利義務に直接関係するものでないこと、迅速な決定を行う必要性があること等を勘案いたしますれば、周辺事態への政府としての対応は防衛出動やPKOの凍結業務の実施とは異なるものであり、今般の法案におきまして、基本計画について必ずしも国会承認を得なければならないものでなく、国会に遅滞なく報告し、議論の対象としていただくことが妥当であると考えております。  特に、迅速な決定という点につきましては、先ほど自民党の中谷委員からもいろいろ御指摘をされておられまして、万が一のときに、そうした決定につきましての国会承認における時間的な問題等もこれあり、この法案の趣旨が十分達成できるかどうかというような諸点もございます。  しかし、今ここで論議が始まったところでございますので、十分国会で御議論をいただきたい、こう願っております。
  151. 横路孝弘

    ○横路委員 総理、迅速な対応が必要だ、それはそのとおりだと思いますよ。しかし、我が国有事の防衛出動の場合だって、ちゃんと事前に国会承認して初めて出動するようになっているじゃありませんか。  私ども民主党は、今は国会への報告になっていますけれども、自衛隊法七十六条に規定されておりますように、国会承認を得て周辺事態を認められるというように、この基本計画については国会での承認にする。そして、防衛出動の場合も二項で、緊急の場合で国会承認を得ないで出動を命じた場合には、内閣総理大臣は直ちにこれについて国会承認を求めなければいけない。私どもも、直ちに求めなければいけないというように修正をすべきである、このように考えております。  それから、不承認になった場合には、あるいは出撃の必要がなくなったときには、自衛隊の撤収をしなければいけないということ。それから同時に、承認を得てスタートしたとしても、一定期間経過後もう一度国会でいいかどうかということをチェックするという仕組みをやはりつくるべきだ、このように思っています。イエスになれば協力続行ですし、ノーだと協力の取りやめということになるわけでございまして、これが私ども民主党が求めている国会承認でございます。  国権の最高機関として、今繰り返し議論しましたように、これは大変重大な事態です。国民の生活、権利義務にも大きな影響を及ぼすわけでございますし、そういう事態に対して、ただ国会に報告すれば終わりというような事態じゃないと思っています。総理、どうですか。国会で議論をしてくれということですが、基本的には、大事な防衛出動の場合と同じ構図、構造でやはりやるべきだろう、こう思います。この考え方、どうでしょうか。御理解をいただきたいと思いますが。
  152. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 ちょっと総理の御答弁の前に、具体的な法律解釈の問題がありましたから。  私どもは、防衛出動の場合は武力行使が当然伴うものでありますし、周辺事態の場合は武力行使を伴わないものであるということで承認と報告に分けておったということは、繰り返し答弁しているところであります。  それ以外のことについては総理の方が御答弁されると思いますので、これでやめます。
  153. 横路孝弘

    ○横路委員 何言っているんですか、あなた。日本の今までの議論の中で、武力行使と武器使用というのを分けて議論していますけれども、こんなのは同じようなものですよ。ですから、先ほど来お話がありましたように、武力行使というような事態に、例えば相手国から見ますと、輸送にしても、例えば武装した兵士を輸送するなんということになりますと、それはやはり相手国から見ると攻撃の対象になるわけで、それはもう今まで繰り返し議論されてきたところであります。  武力行使に関係ないとか、国民の権利義務に関係ないとか、迅速性が問われるとかいう答弁ありましたけれども、もう全然そういう事態じゃない。極めてこれは、戦争に発展する事態というのがこのガイドラインのシステムの中であるんですね。ですから、総理、これはやはり国権の最高機関がしっかり承認をして対応すべきだと思いますけれども、総理のお考えをお伺いしたいと思います。
  154. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 国権の最高機関たる国会におきまして法律の御審査をいただいておることでございますが、実は、自衛隊の出動につきましては、その最高責任者たる内閣総理大臣がその責任を負っております。そういう立場で、防衛出動あるいは治安出動と同様の考え方ができるのかどうかということにつきましては、先ほど三項目のことを申し上げた次第でございまして、政府としては、日本の平和と安全を確保する意味での周辺事態に対して対応するに当たりましては、先ほどの三原則のもとに対処するということが好ましい、こう思いまして法律案として提案させていただいておるということでございます。
  155. 横路孝弘

    ○横路委員 私どもは、強く修正をこの点について求めていきたいと思います。  ガイドラインの議論というのは、もう随分長くやっているわけでございますけれども、しかし、やはり議論していけばしていくほどよくわからなくなる。一体、この周辺事態のイメージといいますか、どういう状況でどういうことなのかというのがはっきりしない。それは、やはり皆さんが、どこの地域のどんな事態なのかということをはっきりと示していないからであります。  あるいは、自治体や民間への協力といっても、十項目、こうですよと言うけれども、しかし、その背景には一千項目以上の米軍からの要望、要求というのがあるわけで、こういう事態になったときにはそのことが一気に表に出てくる。そうではなくて、ちゃんと国民に説明するところはやはり説明をしていただくということが、これからの議論の中で大変大事だというように思います。  そのことを求めまして、私の質問を、時間が参りましたので終わりといたします。
  156. 山崎拓

    山崎委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時一分休憩      ――――◇―――――     午後一時開議
  157. 山崎拓

    山崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。  この際、前原誠司君から関連質疑申し出があります。横路君の持ち時間の範囲内でこれを許します。前原誠司君。
  158. 前原誠司

    前原委員 私は、民主党の前原誠司でございます。  それでは、きょうはテレビ放映もされているわけでございますので、余り技術論をやるというよりも、そもそも論をぜひ総理と議論を闘わさせていただきたいというふうに思っております。  この法案ほど、政府の思いとあるいは国民一般の思いというものが乖離をしている法案はないのではないかというふうに私は実は思っています。つまり、政府は、これは日本危機管理体制というものをさらに強力なものにするためだ、つまり我々の生活そのものをより安全で安心なものにするための法律だ、こういうことで出されているかと思いますが、国民一般では、なかなかそうは思われておりません。戦争に巻き込まれるのではないかとか、あるいはこれは戦争の法規ではないかとか、こういった世間の評判あるいはうわさ、あるいはおそれというものがかなり蔓延をしているのではないかと思っております。多分、委員の皆さん方にも相当反対の陳情がやってきているのではないかと思います。  したがいまして、もし政府が、そして総理が、この法律そのものが、いや違う、国民の生活の安全につながるものだということになれば、私は、その点をしっかりこの委員会で議論することによって明確にすることが、我々の責務であろうというふうに思っておりますので、そもそもという議論から始めさせていただきたいと思います。  私は、この名称そのものが、例えば委員会の名称そのものが少し気に入らないわけであります。これは、日米防衛協力指針に関する特別委員会ということになっております。つまり、国民の目から見ても、これは中心は対米協力じゃないか、つまり、日本の安全に資するというよりも、アメリカの行動をバックアップするための法律じゃないか、そういう思いを持っている人たちがかなり多いと私は思います。  そこで、まずこの法案を提出された理由、そしてまた、これは長年経過している問題でございますので、今までの防衛大綱の作成とかあるいは日米安全保障共同宣言などの経緯のところから、総理に、この法案の提出された趣旨について御説明をいただきたいと思います。
  159. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 改めてでございますが、国際政治におきまして、冷戦が終結をいたしまして、国際情勢も大きな変化をいたしておりますが、アジア太平洋地域におきましての不安定あるいは不確実性の要因が、これが全くなくなったと言いがたい点がありまして、そういった意味では、依然として、局地的といいますかそれぞれの地域の不安定要因というのは存在いたしております。そのために、この地域における平和と安定の維持は、すなわち日本の安全のためにもより一層重要なものになっておると認識しております。  このような情勢等にかんがみまして、新しい防衛計画の大綱を策定いたしまして、我が国の防衛力のあり方について新たな考え方を示すとともに、より効果的な日米防衛協力関係を構築するため、日米安保共同宣言におきまして、日米防衛協力のための指針の見直しを開始いたしました。平成九年九月、新指針を策定し、公表をいたしたところでございます。  周辺事態安全確保法案等は、同指針実効性確保することが重要との観点から、政府部内における検討を経て、昨年四月に国会に提出したものであります。  同法案は、周辺事態対応するため必要な措置等を定め、我が国の平和と安全の確保に資することを目的とするものでありまして、日米安保体制のより効果的な運用を確保し、我が国に対する武力攻撃の発生等を抑止することに資するものだと考えております。政府といたしましては、我が国の平和と安全の確保のために重要な本法案が十分審議され、早期に成立することを期待いたし、こうして御審議を願っておるところでございます。  そこで、前原委員が先ほど、この安保条約の問題につきまして、また今度の法案提出について、一般国民との乖離の問題をお示しされました。乖離と考えていいのかどうか。  先ほども実はつらつら御答弁申し上げましたが、日米安全保障条約が戦後日米間で締結をされました。講和条約の締結とともに、我が国は、吉田首相ただ一人をもってこの安保条約に調印をいたしました。  以降、その条約そのものに、不備といいますか、そういうものがあるということで、一九六〇年の安保条約の改定というのが行われたわけでございまして、先般も本会議で玉沢議員も、当時私も学生でありまして、かの有名な安保騒動といいますか、そういうことを目の当たりに実は見てまいりましたが、私としても、あの当時から考えまして、事前協議の項目を挿入したり、アメリカが日本安全保障に責任を持つという要項を入れたということでは、改悪と当時称しておりましたが、あれは、少なくとも日本の立場を考えれば、改正であるという認識をいたしてきておる。  以降十年間、七〇年におきまして自動延長になっておりますけれども、そういう意味で、この安保条約が果たしてきた役割、すなわちこれは、結果的には、日本が世界の戦争に巻き込まれることなく平和と安全を確保してきたという意味で、大きな役割を果たしてきたと私は思います。  という意味で、ある意味では、この存在そのものがごく当たり前という感じがいたしてきておりまして、その効果そのものにつきましても、改めて見直しをするというようなことも、自動延長ということでございましたので、なくなってきておるのじゃないか。そこで、クリントン大統領、橋本総理と改めて共同宣言を発して、この機会に改めて、日米間の同盟の基礎となる安保条約をしっかり見詰め直していこうということで、今回のガイドラインの問題にまで来ておるのだろうと私は思っておりまして、乖離というよりも、むしろ安保条約の意義について、改めて今度の国会審議を通じて国民の皆様にも、ぜひその重要性について深い理解を示し、ともどもに、極東といいますか、北東アジアも含めまして世界の安全保障に対して、日本としてもどのような責任を果たし得るかということを再確認する絶好の機会であると考えておりまして、政府といたしましても、国民の皆さんにより理解を深める努力をこうした国会審議を通じていたしていかなきゃならない、こう考えておるところでございます。
  160. 前原誠司

    前原委員 日本危機管理体制の強化のところで、総理の口から出てくるのは、日米安保条約あるいは安保体制だと。それが一つの大きな柱になっていることは私も否定はいたしません。  しかし、そもそもという議論から立ち入った場合に、我が国安全保障確保するのは、これは防衛大綱にもありますけれども、自衛隊、つまり自衛力ということだと私は思っています。そして、その足らざるところ、あるいは憲法上、法律上でできないところについては日米安保条約に頼む、こういう骨組みあるいは順序立てになっていると私は思いますけれども、今総理からお話のあったのは、すべてを否定しませんけれども、日米安保の重要性の話が出てくる。  では、さらにお伺いをしますが、この法案そのものは、日本危機管理体制の強化なのか、あるいは日米安保体制の強化なのか。どちらに軸足が置かれているんですか。総理にお答えいただきたい。
  161. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 双方ではないかと思っております。
  162. 前原誠司

    前原委員 これは私は、オーバーラップはしていますけれども、全くイコールではないと実は思っています。  つまり、この周辺事態の定義に、あるいは認定にかかわってくる問題でありますけれども、日本がみずからの国に危険が及ぶ場合と、あるいはアメリカがアメリカの戦略に基づいて行う場合と、私は、おのずとイコールではないんだろうというふうに思うわけです。  例えば、先ほどの議論にもございましたけれども、周辺事態というものをどのように定義するのか、あるいは、周辺事態は、どういうイメージで我々がアメリカに協力するのか。つまり、日米安保体制を強化するからアメリカに協力するんだということをこの法文には書いてありますけれども、我々に直接危害が及ばないようなところで周辺事態と認定をしたときにも、日本がそれに協力をするということになったときに、本当に日本危機管理体制の強化なのかどうなのか。  もっと具体的に申し上げます。  総理としては、なかなか国やあるいは地域を特定してお話をしにくいと思いますけれども、しかし、やはり具体的なイメージを持って国民に説明しないと、なかなかその危機というものが、本当にみずからに降りかかってくるのかどうかわからない。朝鮮半島で何か起こったときに、私は、たちまちそれが日本に対する危機に及ぶというふうには思えないんです。  つまり、日本の平和と安全に重大な影響を及ぼす場合というのは、朝鮮半島でどういう状況になったときに、先ほどの話ですと難民の話しか出てきませんでした。つまり、難民が来なければ、朝鮮半島で何かがあっても周辺事態という認定はされないのかどうか。つまり、日本の平和と安全に直接重大な危惧を及ぼす事態がないとすれば、朝鮮半島で何が起こっても、それは周辺事態と認定をしないということになるのじゃないでしょうか。  つまり、我々がこれから議論しなきゃいけない点というのは、具体的に、どういう脅威が起きたときに日本の平和と安全に対しての心配があるから我々はアメリカに協力するんだ、こういう説明がないといけないと思うんです。つまり、朝鮮半島の問題についてはすべて認定するかしないか、まずそこから御答弁いただきたいと思います。
  163. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 かつての戦略論からいえば、古典的な考えからいえば、仮想敵国なるものが存在して、それに対して自国を防衛する手段をいろいろ講じてまいりました。現下そういうことは存在しないわけでございますけれども、しかし、いろいろ想定すれば、危険な地域というものはある程度想定されるんだろうと思います。  今冒頭、委員も御指摘いただきましたが、私の立場で、いろいろの想定される事態を、現実のものとしてそのことを説明するということにつきましては、いろいろと問題を惹起しかねないところでございます。したがいまして、今それぞれ専門的な立場で、防衛庁あるいは外務省で検討をし、お話のできる範囲のものについて委員と御議論を闘わせていただければありがたいと思います。  今、朝鮮半島といいますか、韓半島の問題についていろいろ御指摘がありましたが、具体的に例えに触れてお話がありますれば、それはお話のできる範囲で政府の考え方をお話しさせていただきたいと思いますので、ぜひそういった点で御質問をいただき、かつ御答弁させていただけるようにさせていただければありがたいと思っております。
  164. 前原誠司

    前原委員 いや、ですから、この法案を審議するのに、どういう危機が及ぶのかということをしっかり国民に示さなければ、この法律が適用されるということにはならないわけです。だから、そのイメージをある程度国民に提示するということが我々の義務だと思うんです。  だから、具体的にどうのこうのという部分、国名を挙げてということになると難しいかもしれないということは申し上げましたけれども、しかし実際に想定されるものといえば、やはり朝鮮半島というのが、これはビビッドで国民にはわかりやすいわけです。だったら、朝鮮半島でどういう事態になって、そしてすべてが日本の危機に及ぶものなのかどうなのかということをお伺いしているわけです。  午前中の議論は、難民が来ることしかおっしゃらなかった。具体的に、ほかにどういうところが、朝鮮半島で何かが起きて日本に対して平和と安全に重要な影響を及ぼす事態なのかということを御答弁いただきたいと申し上げているわけです。
  165. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 正直申し上げて、すべてのシミュレーションみたいなものをこの場所でお話をさせていただくということは、いわれなき不安を国民に及ぼすということにもなりかねない点もありまして、諸外国の例を見ましても、本当に具体的な諸問題に当たりましては秘密会その他で議論をされておるように考えておりまして、お許しをいただく範囲の中で、御答弁できるかどうかにつきましては、質疑を通じてぜひお願いをさせていただきたいと思っております。
  166. 前原誠司

    前原委員 多分、テレビを見ている国民は、どういう事態が起きたときに、また、それがどういう直接的なダメージでもって我々に影響が与えられるのかということを示されない限りは、この法案についてイエスかノーかを言う材料にはならないと私は思うんです。その点についてしっかり答弁がないのに、この法案は日本の平和と安全に資する法案です、ですから、この法案については国民の皆さん方、了解してくださいと言われても、私だったら了解できない。もっと具体的に答弁してください。
  167. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 これもしばしば御答弁申し上げておりますが、周辺事態とはということで、我が国の周辺の地域における我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態であり、その事態の規模、態様等を総合的に勘案して判断することでございます。したがって、その生起する地域もあらかじめ地理的に特定することもできないわけでありまして、この意味で、周辺事態は地理的な概念ではないと申し上げておりますし、また、具体的なこと、事実関係、どうした事態であるかということは、まさに我が国の平和と安全に重要な影響を及ぼすという事態我が国政府の責任で認定していくということになるんだろうと思います。
  168. 前原誠司

    前原委員 全然わからない。  それで、私は、危機管理体制の強化のときは国民は理解できるというわけです。先ほどは、日米安保体制の強化と危機管理体制の強化というのはほぼ同じ目的だということをおっしゃいました。私は、何度も申し上げますけれども、日米安保体制の強化とそして危機管理体制の強化では、絶対イコールではないと思っています。つまり、日本の国益とアメリカの国益がずれる場合が必ずあるわけであって、それがどういう適用範囲になるのか、あるいはどういう行動になるのかということは、おのずとそれぞれの国が違ってくるのは当たり前だというふうに私は思っています。  危機管理体制の強化のときに、邦人救出とあるいは難民対策、つまり、先ほど、朝鮮半島で何かが起きたときに難民がたくさん押し寄せてくる、これは日本の国民にとっては、朝鮮半島で何かが起きて直接日本影響がある話だなというのはわかるわけです。あるいは、観光客も入れると三万人と言われている人たちが朝鮮半島、ソウルにいるわけですけれども、その人たちをどうやって救うかというところにこの法案というものがフォーカスされているのであれば、この法律というのは必要だというふうにわかるわけですけれども、そのほかのときにもこの法律協力することになっていますよね。ですから、そのポイント自体が、本当に日本の平和と安全に重大な影響を及ぼすかどうかというところが明確にならないと、私はこの法案の審議そのものがなかなか難しいということを申し上げているわけです。  何か禅問答みたいになりますので、ちょっと違う観点から私は質問をさせていただきます。  私は、日米安保体制そのものの重要性を全く否定するものではありません。先ほど総理がおっしゃったように、戦後の安定というのは軽武装そして日米安保体制というものでうまくやってこれたというのは、私もそのとおりだと思っております。  しかし、安保条約の中には、実態的なものが定められているのは五条と六条なんです。五条については、いわゆる日本有事の際に米軍協力をするということ、それから六条については、極東の平和と安全に影響を及ぼすような場合について、米軍活動するための施設・区域を日本提供するということ、この二つが書かれているわけです。つまり、今回のこの防衛協力指針ということになりますれば、よく条約上の根拠はどうなのかといいますけれども、この五条、六条を超えた、つまり、安保条約のベーシックな規定より超えた活動日本協力をするということに私はなると思うわけであります。  それで、政府がそうだと言えばいいんだと私は思うんですよ。つまり、この法案自体が日本危機管理だけではなくて日米安保体制の強化に資するものなんだ、日米安保体制を強化するのがこの法律なんだということを言われれば、なぜその強化をすることが必要なのかという説明があれば、国民は納得するかもしれない。ただ、みずからの国の危険というもの、さっき申し上げたように、僕は、日米安保体制の強化とそれが同時並行、パラレルにならないと思っていますけれども、その部分との説明がないまま、だんだん日米安保体制が強化されて、アメリカの戦略に日本が巻き込まれるんじゃないかという心配が国民全体に浸透しているということを今僕は申し上げているわけでございます。  さて、ここで、日米安保条約の意義、必要性について、やはりもう一度、この点国民に対して、なぜ日米安保が必要なのかということを、外交面、軍事面だけではなくて経済面からも、総理の口から御説明をいただきたいと思います。
  169. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 我が国及び極東の平和と安全の維持目的とする日米安保条約は、政治経済全般にわたる日米協力関係、すなわち第二条でありますが、日米双方の防衛協力維持発展、すなわち第三条であります。我が国の施政のもとにある領域における武力攻撃に際して日米共同対処、五条。極東の平和と安全の維持のための米国による我が国における施設・区域の使用、第六条でありますが、これを規定しております。  まず、安全保障の観点から考えまして、日米安保条約が日米同盟関係の中核として、過去四十年間、我が国及び極東に平和と安全をもたらしただけでなく、アジア太平洋における安定と発展のための基本的枠組みとしても有効に機能してきております。そして、今日の我が国の繁栄も、このような平和と安全が確保されておるからこそ、なし遂げられたものであると考えております。  また、我が国外交の基軸である日米関係につきまして申し上げれば、同条約は、自由と民主主義という価値、理念を共有する米国と、政治、経済、文化等あらゆる分野において緊密な関係を維持する上で主要な基盤であると考えております。  こうした日米安保条約の役割は国民の大多数により支持されておると考えておりまして、政府といたしましては、今後とも、日米安保体制の堅持を安全保障政策の重要な柱の一つとして維持してまいりたいと考えております。
  170. 前原誠司

    前原委員 同様の質問をちょっと逆の方向からさせていただきたいと思いますし、また、具体的に御答弁をいただきたいと思います。  もし日米安保がなければ、どういう支障が日本に生じるんだろうかということをいろいろ想定してみる必要があると私は思います。日米安保がなければ、軍事上どうなのか、外交上どうなのか、経済上どうなのか、その点について、具体的なやはりイメージを国民に与えながら、なければこれだけ大変なことになりますよ、あるいは我が国としてこれだけ自分でやらなきゃいけないことになりますよ、だから日米安保は大切なんです、こういう説明の仕方が一番わかりやすいんじゃないかと私は思いますが、総理が思っておられる部分で、日米安保がもしなければどういう支障が生じるのか、今申し上げた外交、軍事あるいは経済的な面で御説明をいただきたいと思います。
  171. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それでは、まず経済面のことを申し上げます。あとのことはまた。  我が国の安全そのものが脅かされた場合に我々の国民生活が危うくなるということは、これはもうそれでよろしいとして、国際的には、今我が国は、軍事的にはほとんど貢献ができませんけれども、経済的には御承知のように世界第二の大国として貢献しております。  それで、その世界の第二の大国の存立が怪しいということになりますと、例えば、今我々は世界の貿易のかなりの部分を担っておりますが、それに信頼が置けなくなると思いますし、通貨も、どうもそういう国の通貨というのは持っていいかなということになろうかと思います。そういう国には投資をしないし、そういう国から投資を受けてもどうも本当に一緒にやっていけるか、あるいは経済援助はどうもなかなか出しにくくなると思いますし、よろず倒れそうな会社の株はどうも買えないなというような、簡単に申しますと、国際的にはそういうことではないかと思います。
  172. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 委員から、軍事上の観点からということがありましたので申し上げますが、御案内のとおり、我が国の防衛力整備は、日米安全保障体制を前提として、基盤的防衛力の構想を採用している防衛計画大綱に従って進められているものでございます。  委員が今御指摘なさったとおり、日米安保条約が存在しない場合に防衛関係費等にどういう影響があるかということだったと思いますが、一般論として申し上げますと、今日の国際社会においては、自国の意思と力のみで国の平和と独立を確保しようとすれば、核兵器の使用を含め、いろいろな侵略事態や軍事力による威嚇等のあらゆる事態対応できる、すきのない防衛体制を構築することが必要になると思います。  我が国が独力でこのような体制を維持しようとすることは、経済的にも大変容易ではないと考えられますし、何よりも我が国の政治的な姿勢として適切なものではない、こういう防備を持つことは政治的に適切なものではない、こういうふうに考えております。
  173. 高村正彦

    高村国務大臣 日米同盟関係の中核である日米安保条約、過去四十年間、我が国だけでなくて極東に平和と安全をもたらした、さらに、アジア太平洋地域における安定と発展のための基本的な枠組みとしても有効に機能した、こういうふうにとらえているわけであります。  我が国は、米国との間で、自由と民主主義という価値、理念を共有し、政治、経済、文化等あらゆる分野において緊密な関係を有しておりますが、このような緊密な日米関係は、日米安保条約がその基盤となっているわけであります。換言すれば、日米安保条約がもしなかったとすれば、このような平和と繁栄を我が国が享受し得たということはない、こう思うわけであります。  こういう日米安保条約の役割は国民の大多数に支持されていると考えておりますし、政府としては、今後とも、日米安保体制の堅持を安全保障政策の重要な柱の一つとして堅持していく考えでございます。
  174. 前原誠司

    前原委員 経済面では、大蔵大臣には、私がまさしく思っていたとおりの答弁をいただきました。経済的な安定というものに非常にこの日米安保条約というのは寄与している。つまり、投資が集まるのもやはりそういうバックグラウンドがあるから投資が集まるし、通貨の今の推移というものも、やはりこれは、フィージビリティースタディーなんかでこの国は危ないということになったら、通貨は下がるでありましょう。あるいは、先ほど、ぼろ会社の株は買わないという大蔵大臣の御答弁がありましたけれども、そういうことで株も下落をするでありましょう。  つまり、日米安全保障条約というものが根底にある中で、今の経済的な部分での我々の存立があるんだというところは、本当に私はそのとおりだと思います。ただ、防衛庁長官がお答えになった部分というのは、時間があってはしょられたのかもしれませんが、私は、ちょっと視点としてまだ足りない部分があると思っています。  つまり、核というものの意味、つまり核抑止ということについては私も同感でありますし、核を含めた絶対的なアメリカの防衛力というものについて、相当やはり、日本が同盟関係を結ぶことによって抑止力が働いているんだろうというふうに思います。したがって、侵略の可能性というものをある意味では抑止している大きなポイントになっていると思います。  あとは、この日米安保がなければどういう問題点が生じるかということで、何か答弁する方が逆になっているような感じでありますけれども、必要なのは、やはりミサイルなんかが飛んできて、そして日本に被害が及んだときに、今日本では憲法上もその報復ができることになっていますけれども、その能力を日本は持ち合わせていない。そのときは、日米安保条約に基づいてアメリカにその任を頼むということになるわけですね。  それから、もう一つ大事なことは、シーレーン防衛という、日本は海に囲まれた国でありますし、そして資源も外から輸入をする、そしてつくったものは海外に輸出をする。そういうものを船で主に出入りさせているわけでありますけれども、そのシーレーンの安定に寄与してくれているのはアメリカである。こういうところが私は非常に大きなポイントで、その部分については、国民に対して、日米安保体制はなぜ必要かということはつけ加えなきゃいけないんだろうと思います。  さらに、外務大臣のおっしゃったことも私なりにつけ加えさせていただくと、やはり戦争の記憶というのはまだまだ残っているんだろうと思います、第二次世界大戦。なかなかこれは我々自身から言いにくいことでありますけれども、やはり日本がそれ相応の自衛力を持つことに対する危機感というのは多分まだあるんだろう、それは政治的な意味も含めて。そういう意味で、日米安保条約というのは、相当我が国に対するプラス要因になっているというふうに思います。  今、確認をさせていただきました。それをもとにちょっとまた質問させていただきたいと思うのでありますが、では今回、この法案の中で、さらなる防衛協力というものを日本がしていくということになるわけですね。つまり、基地提供や、あるいはホスト・ネーション・サポート以外の協力もやっていこうというわけでありますけれども、協力をしないと日米関係は悪くなるんですか、どうなんですか。その点、総理、御答弁をいただきたいと思います。
  175. 高村正彦

    高村国務大臣 協力すれば、より一層よくなるということでございます。
  176. 前原誠司

    前原委員 私が聞いているのは、協力しなければどういう状況になるのかと。今の日米関係のままで推移できるのか、できないのかという話です。
  177. 高村正彦

    高村国務大臣 これをやらなかったからといって、日米関係が一気に悪くなるという性質のものではないんだろうと思います。  ただ、防衛力にしても、あるいは日米安保条約にせよ、抑止力としての面が非常にあるわけで、これは、いざというときに米軍がきちっとした安保条約上の義務を果たしていただかなきゃいけないわけですが、それと同時に、日本を攻撃しようと思っているような国が必ず米国はその義務を果たすであろうと、第三者もそう思ってくれるような状況をつくっておかなければいけない。そういうことのためには、両国の信頼関係、日米安保条約の信頼性を高めておく必要がある、こういうことを申し上げているわけでございます。
  178. 前原誠司

    前原委員 防衛協力ということ自体に、私は全く否定をするものではありません。ただ、一番初めに総理に対して、ちょっと議論がかみ合わなかった部分がありますけれども、私は、基本的には自衛というものをやはり中心に据えるべきなんだろうというふうに思っています。そして、自衛を基本に据える中で、日米安保条約というものをある程度補完的な要因として位置づけていくべきだろうというふうに思っています。  しかし、その自衛というものがベースであるにもかかわらず、その点については余り議論がない。しかし、日米安保条約というものをこれから強化するということになれば、どこまでその日米安保条約というものが強化をされていくのだろうか、どうなんだろうか、そういう疑問を国民が持つのは、私は当たり前のことだろうというふうに思います。そういう意味で、今後の日米防衛協力、あるいはもっと言えば、日米安保の将来像も含めて、しっかり国民に、これからの日米安保はこうしますよと。  つまり、この日米防衛協力で、いわゆる日米協力というものはある程度めどが立つのか、あるいはこれからもっと違う形での日米防衛協力というものを進めていこうとしているのか。そういう全体像の中で、今回の位置づけというものをしっかり国民の前に示す必要があると思いますが、今後の日米安保をどういうふうに我が国として持っていこうとされているのか。総理、御答弁をいただきたいと思います。
  179. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 この点もしばしば御答弁を申し上げさせていただいておるところでございますが、日米安保条約に基づく日米安保体制は、まさに戦後の四十年、我が国及び極東に平和及び安全をもたらしただけでなく、アジア太平洋の安定と発展のための基本的枠組みとして有効に機能いたしてまいりました。  この点につきまして、九六年の日米安保共同宣言におきまして、日米安保体制が、二十一世紀に向けて、アジア太平洋地域における安定的で繁栄した情勢を維持するための基礎であり続けることを再確認いたしておるところでありまして、政府としては、今後とも、日米安保体制の堅持を安全保障政策の重要な柱の一つとして維持し、その信頼性を一層向上させていく考えであります。  また、日米安保体制を円滑かつ効果的に運用していくために、新たな日米防衛協力のための指針で示されている、平素及び日本に対する武力攻撃の際の日米協力を十分念頭に置くことが重要でありまして、今後とも、このような日米協力を通じて、日米安保体制の信頼性を一層向上させるべきと、努力していきたいと考えております。  自国の防衛につきまして、お話にありましたように、基本的にこの安保条約の問題のみ先ほど取り上げた、こういう御指摘でございますが、そのベースになるのは、自国の安全保障については、まずみずからの力で守る、そのために現在も、自衛隊を中心にいたしましてその安全保障体制を確立し、国民的なコンセンサスを得ていくということが十分必要なことであると思っております。  戦後の安全保障論議を通じておりますと、かつての経過の中で、そのことを十分認めておられた政党と、それを認められなかった政党がございまして、今日においてはほとんどの各政党――一つ政党につきましては、まだこの点についての正式な見解がなされておらないのでございますけれども、そういう意味では、みずからの国を自衛隊を中心にして国民的なコンセンサスを得て守っていくということが中心でございますけれども、同時に、自国の防衛を自国の力だけではなし得ないということから安保条約というものが始まったという経緯でありまして、両々相まって、我が国の安全と平和を確保していかなければならないというのが基本でなければならない、このように考えております。
  180. 前原誠司

    前原委員 私が、将来像を示していただく中で今回のこの防衛協力というものを位置づけていかなければいけないということを申し上げた一つの理由は、いわゆる橋本・クリントン会談、そして共同宣言、俗に安保の再定義と言われておりますけれども、これは、私なりの解釈をすれば、相当違った安保体制に移行したのだろうというふうに私は思っているのですね。つまり、冷戦時代にあった日米安保体制と冷戦後の日米安保体制、もちろんそれで確認をされたと思うのですけれども、私は、相当違った意味合いをこの日米安保は持つに至ったのだと思っています。  そういう意味では、そのとき外務大臣総理はされていたわけでございますけれども、国民に対して簡単に、日米安保の再定義というのはどういうものだったのか、その前と後でどう変わったのか、簡単に御説明をいただきたいと思います。
  181. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 橋本総理クリントン大統領との共同宣言のときは、私、外務大臣の任に当たっておりませんでしたが、その合意によりまして今日のガイドラインに至る間の話し合いが進められてまいりまして、この了解を得ましたものにつきまして、ニューヨークにおきまして四者でこのことを合意したわけでございます。  もちろん、その経過の中で、共同宣言そのものも当然のことながら私自身も了解をして今日おるわけでございますが、大きく変化したかしないかということの認識でございますけれども、それは基本的には、いわゆる戦後の冷戦構造という中で安保条約が果たしてきた役割というものは、これに関しては国際政治情勢が大きく転回したということでございますので、新しい事態に対処して安保条約を再確認して、その存在を改めてあらしめるということのために必要な措置としての今回のこの法律の提案となっている、こういうふうに理解をさせていただいておるところでございます。
  182. 前原誠司

    前原委員 わかりやすく私の方から申し上げると、日米安保の再定義というのは、要は、その前の安保条約というのは、冷戦時代に、ソ連の直接の侵略、日本に対する侵略というものをベースにして、アメリカがそれを防ぐというのが冷戦の時代の日米安保の基本的な目的だったわけです。再定義があった後はどうなったかというと、そういう直接の侵略の可能性がなくなった。その中で、しかしながら、これからもある程度の不安定要因があるので、日米安保を核にして、アジア太平洋の安定を供給する公共財として日米安保条約を役立てようというふうに宣言をしたのが、いわゆる私は安保の再定義だというふうに思っています。  そのときに外務大臣でなかったというのは、私の認識不足で申しわけありませんが、私は、これはほかの党もおっしゃっている部分がありますけれども、この安保再定義は、実は安保条約が変質するぐらいの大きな変換点であった、再定義にとどまらないぐらい、安保改定に匹敵するぐらいの大きなものだったというふうに実は認識をしています。そういう中で、私は、先ほど御質問を申し上げたのは、アジア太平洋の安定剤として、公共財としてこれから日米安保を使っていこうと。  つまり、単に基地の提供だけではなくて、防衛協力もしかりでありますけれども、日本がある程度の関与をする中で日本に安定をもたらす、あるいはそれを阻害する事態が起きたときに何かをするというものであると思いますけれども、基本的には、私は、そういう安保の再定義を踏まえて、大きな変化というものをもたらしたものだということの認識がなければ、これはそちらから答えていただかなきゃいけないことを私が何度も答えておりますけれども、やはりそういう認識を持って、日米安保条約あるいはこれからの日米安保というものの中でこれを出しているんだということをしっかり国民に対して説明しないと、私はなかなか国民に対しては理解をしていただけないという意味で質問を、質問というか、私が御教示をさせていただきました。  さて、残りの時間で、私は、この問題について少々各論に入った質問をさせていただきたいと思います。  一つは、やはり公海上で、先ほど総理の御答弁だと、日本に何らかの危機が及ぶ場合、それは具体的には申し上げられないけれども、危機が及ぶ場合についてこういう防衛協力が行われるんだということでありましたけれども、公海上で日本活動するものは三つございます。これは、米軍に対する協力輸送業務、それから船舶検査、それから捜索救難活動、この三つが公海上で行われるものでございます。  この三つの活動の中で、今の戦われ方というものを想定すると、やはり、近くに攻めてこられてそして攻撃を受けるというよりも、遠くからミサイルを撃ち込まれていわゆるダメージを受ける。つまり、昔は概念として明確にあった前線と後方というものの違いというものが、だんだん不明確になってきているんだろうというふうに私は思います。その中で、公海上の活動で攻撃目標にされたりとか、あるいは戦闘に巻き込まれる危険性は私はあると思うんですね。  先ほどの日米安保条約というものをこれから考えていくならば、危険がないから協力しますよということではなくて、やはり、そういう危険性もあるけれどもそれが必要なんだということを説明していただかないと、なかなか後方支援というものには踏み切れない、あるいは国民の理解が得られないと私は思いますが、その危険性があるのかどうなのかということが一つと、では仮に攻撃を受ければ、交戦をするのかしないのか、また、そのときの法律上の根拠について御答弁をいただきたいと思います。
  183. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 この法律に基づき自衛隊実施することと想定している後方地域支援は、それ自体、武力の行使に該当しないものである、また、後方地域において行うこととされていることから、米軍武力行使との一体化の問題を生じさせることは想定していないということを累次申し上げてきたところであります。  その上で、この法案に基づく後方地域支援が、他国から敵対行為とみなされ、攻撃対象となるのではないかという御懸念に対してお答え申し上げたいと思いますが、法律的な観点からいえば、侵略等の違法な武力行使を行っている国に対応して、国連憲章に従って行動している米国に我が国協力実施した場合に、当該相手国が我が国に対してもし実力行動をとれば、それは侵略等の違法行為を重ねることになるだけであるということは、従来から私どもが答弁しているところであります。  また、実体面について申し上げれば、そもそも、自衛隊による後方支援は後方地域において行うものでありまして、当該活動実施区域が後方地域の中にあるかどうかについて、防衛庁長官は、自衛隊が収集した各種の情報等を総合的に分析することにより合理的に判断することとなるため、相手国からの攻撃が想定されるような区域で活動実施することはない、こういうふうに思います。  さらに、本法案においては、後方支援実施している際に、万一不測の事態が発生したとしても、実施区域の変更や、あるいは活動の中断、休止などの対応をとることにより、この活動が後方地域においてのみ実施されることを担保しており、後方支援実施している自衛隊が相手国に攻撃されることは考えられない、こういうふうに累次申し上げてきたところであります。
  184. 前原誠司

    前原委員 考えられないのに中断条項を持つというのは、論理の矛盾じゃないですかね。つまり、攻撃を受ける可能性がある、あるいは武力の一体化をする可能性がある、そのときには、事前にいわゆる実施区域の変更をしたり、あるいは中断条項を設けるということで、最後に防衛庁長官がおっしゃった、巻き込まれる危険性はないと断言されることは論理矛盾ですよ。
  185. 高村正彦

    高村国務大臣 防衛庁長官が答弁されたように、後方地域支援というのを設けて、そして中断するというようなこともきっちりして、できるだけ巻き込まれないような努力をして、可能性とすれば少ないんだろうと思いますが、そういう危険性と、こういう行動をすることによって日米安保条約の信頼性を高めることによってさらに日米安保条約の抑止力が高まるその効果と、どちらが大きいかといえば、後者の方がはるかに大きい、そういう政治的判断をしているということでございます。
  186. 前原誠司

    前原委員 私は、今の外務大臣の御答弁の方が率直でいいと思うんですね。つまり、その可能性はあるけれども、しかし、そういう活動もあえてやることの方が日米安保の信頼性を高めるということをやはりしっかり言わないと、危険性はない、そういうことはないと言って、実際起こったらだれが責任をとるんだ、こういう話に私はなると思うんです。  私の与えられた時間もちょっと限られてきましたので、最後に、御質問を総理に対していたしたいと思います。  私は、この中断条項の持つ意味が、もちろん、自衛隊員の命とか安全性を考えたときに、それはあった方がいいのかもしれません。しかし、アメリカは、実際問題、日本にある部分を後方支援として期待をしているわけですね。そして、それでオペレーションを組んでいるわけです。そのときに、憲法の制約上、つまり、武力の一体化という集団的自衛権にかかわる問題が生じるので、我々は憲法上その活動を一たん中断をさせていただきます、こういうことになるわけですね。もちろん、アメリカとこれを相談して法律をつくられたんだと思いますけれども、アメリカ自身はこれを知っているのですか。  つまり、私が心配しているのは、中断条項が発生することによってアメリカの後方支援に対してはしごを外したことになって、逆にそれが日米関係を損なう可能性にはならないのかということを御答弁いただきたいと思います。
  187. 高村正彦

    高村国務大臣 周辺事態に際していかなる措置実施するかについては、日米両国政府がおのおの国益確保の見地から、その時点での状況を総合的に見た上で主体的に判断することになるわけでありますが、同時に、周辺事態に際しては、日米両国間において随時密接に行われている情報交換、政策協議が一層緊密に行われることとなっております。  これまでの日米間の協議を通じて、米側も本法案の内容については十分に承知をしているわけでありまして、米軍が実際に周辺事態に対処する際には、我が国との関係では本法案の内容を前提として行動するものと想定をしております。したがって、仮に本法案の規定に基づき我が国実施する対応措置を中断したとしても、それをもって日米関係が損なわれることになるとは考えておりません。
  188. 前原誠司

    前原委員 一番初めの質問が、私は総理の御答弁は非常に不満であります。つまり、周辺事態ということの認定、つまり、それがどれだけ日本に危機が及ぶのかということがやはりある程度国民にビビッドに伝わらないと、なぜこの法案に基づいてアメリカの協力をしなければいけないのかという根本的な、入り口の、きっかけの、動機の部分が明確になっていないと私は思います。  この委員会はこれから何十時間あるいは百何十時間議論するかもしれませんが、その点については明確にしていくことを私自身決意いたしまして、私の質問を終わります。
  189. 山崎拓

    山崎委員長 この際、上原康助君から関連質疑申し出があります。横路君の持ち時間の範囲内でこれを許します。上原康助君。
  190. 上原康助

    ○上原委員 横路さん、今、前原さんから質問がいろいろありましたが、若干関連づけて質問をさせていただきたいと思います。  実は、私の出番はもう少し後になると思ってじっくり構えておったら、総司令官の畑さんからいきなり周辺事態が発生したということで出動命令を出されて、当初私が構想しておった質問内容とは、時間の都合もあって、若干異なるかもしれませんが、できるだけ質疑応答をかみ合わせたい気持ちを込めてお尋ねしますので、総理初め関係閣僚の率直な御意見、御見解を聞かせていただきたいと思います。  そこで、まず、この周辺事態確保法の最も根幹になっているのは新ガイドラインだと私は理解を、もちろんそのほかにもございます。そういう意味で、最初に新ガイドラインについて若干お尋ねをさせていただきたいと思うのです。  まず、旧ガイドラインもそうでしたが、このガイドラインが新しく日米合意されて、「基本的な前提及び考え方」というのが四項目ございます。  そこで、確認の意味を込めてお尋ねをするわけですが、これまでもしばしば御答弁があったわけですが、一つには、「日米安全保障条約及びその関連取極に基づく権利及び義務並びに日米同盟関係の基本的な枠組みは、変更されない。」表面的にはそうなんだが、私は、随分枠組みは変更されてきた、変質されてきたと理解するのが正しいのじゃないかという見解を持ちます。  もう一点、これも大事なことで、横路先生からも原則の確認ということがありましたが、「日本のすべての行為は、日本の憲法上の制約の範囲内において、専守防衛、非核三原則等の日本の基本的な方針に従って行われる。」これもいささかこれまでの政府見解やあるいは専守防衛――非核三原則は当然でしょうが、その中におさまるかどうか疑問はなきにしもあらずであります、この周辺事態確保法が実際に運用されるという場合に、憲法解釈を含めて。  三点目は、質問の方にも入るのですが、「日米両国のすべての行為は、紛争の平和的解決及び主権平等を含む国際法の基本原則並びに国際連合憲章を始めとする関連する国際約束に合致するものである。」ここで国際法が出てきています。この国際法はどういう意味なのか、お示しを願いたいと存じます。  四点目、これはちょっと長いので全文は申し上げませんが、要するに、立法上または行政上の措置は義務づけられない、だが、日本のすべての行為はその時々において適用のある国内法令に従うとか、私は予算上も相当、周辺事態法が実際に運用される事態が起きたという場合には問題が出てくると思うのですね。  こういうことを前提としてやっているわけですが、今私が指摘をしたことと、政府の御認識、御見解はどうなのか、お聞かせを願いたいと存じます。
  191. 東郷和彦

    ○東郷政府委員 お答え申し上げます。  委員御指摘のように、日米防衛協力のための指針の冒頭の「基本的な前提及び考え方」の中に、この指針をつくりました日米間の最も大事と考える指針が述べてございます。  第一点。日米安全保障条約及びその関連取り決めに基づく権利及び義務並びに日米同盟関係の基本的な枠組みは、変更されない。  第二点。日本のすべての行為は、日本の憲法上の制約の範囲内において、専守防衛、非核三原則等の日本の基本的な方針に従って行われる。  第三点。日米両国のすべての行為は、戦争の平和的解決及び主権平等を含む国際法の基本原則並びに国際連合憲章を初めとする関連する国際約束に合致するものである。  私どもといたしましては、作成されておりますガイドライン内容、それから、そのガイドラインに基づきまして今回準備しております法案及び条約の内容、これらはすべてこの三つの点にまごうことなく合致しているというふうに考えて作業をいたしました。個々の内容については、これまでの国会審議等におきまして御説明をするように努めてまいった次第でございます。  なお、最後に、国際法の基本原則は何かという点についてお尋ねがありました。これは、累次申し上げておりますように、国連憲章のもとにおいて、平和と安全にかかわる国際法というものが戦時国際法等の時代から大きく変わりつつあります。その現下の国連憲章に基づく平和と安全にかかわる国際法、それに従った大きな秩序のもとでやっていきたいという気持ちを込めております。  以上でございます。
  192. 上原康助

    ○上原委員 これは、これからの議論を展開する中で、今の「基本的な前提」の枠内にはまるかどうかはまた後のことにしたいと思うのですが、もう一点。  例えば政府が毎年お出しになっておられる防衛白書を見ても、憲法と自衛権、いろいろ述べております。憲法第九条の趣旨についての政府見解、保持し得る自衛力、自衛権発動の三要件、自衛権を行使できる地理的範囲、集団的自衛権の形態、態様、交戦権、防衛政策の基本、国防の基本方針、その他の基本政策、例えば専守防衛とか、先ほどもありました、軍事大国にならないこととか、非核三原則の堅持、文民統制の確保、こういうのは、我が国の防衛力整備をしていく上でずっと政府が堅持をしてきた、一つの基本理念というか、あるいは政策だと私は思うんですが、この新しい日米防衛協力指針内容、今審議をされております周辺地域事態法というのは、今私が指摘をした防白なり政府がずっとこれまで堅持をしてきたそういった諸基本政策の範囲内のもの、あるいはその基本政策原則は変えるつもりはない、変えるものではないということを総理としてここで国民の前にはっきりとお示しになれるのかどうか、ぜひ御見解を聞いておきたいと存じます。
  193. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 先ほども東郷局長から答弁申し上げましたが、今回のこのガイドライン法につきましては、先ほどお示しした三つの基本的な前提及び考え方に基づきましてこれを法制化しようとすることでございますので、その範囲の中において処置をいたしてまいることでございます。
  194. 上原康助

    ○上原委員 私も、ぜひそうあってほしいと期待をしている一人であります。また、いろいろ議論をする中で、果たしてそうなのかどうか、さらに問題点を出しながら議論を詰めていきたいと思っております。  それで、もう一、二点お尋ねさせていただきたいわけですが、このガイドライン日米防衛協力のための新たな指針というのが、残念ながら余り国会論議されてこなかったことを今反省をしているわけですが、この中で一、二点お尋ねしておきたいことは、皆さんは、安保条約の解釈とかあるいは適用範囲ということを盛んに、変更ないとか、さっきも私が指摘をしたことがあるわけですが、どう見たって、この「安全保障面での種々の協力」というところに「安全保障面での地域的な及び地球的規模の諸活動を促進するため」云々かんぬんとなっているわけですよね。まさに新しいガイドラインと、皆さんが言う極東条項からアジア太平洋条項に解釈を変更して、拡大をして言っているのは、ここで言っておる「地域的な及び地球的規模の諸活動を促進するため」こうこうこういうことをするというふうになっているのですね。なぜこうなったのか。地球的規模なんですよ、私がかねてから指摘をしたように。  そこで、そのことと、「日米共同の取組み」の中で、いわゆる日米両国政府は、日本に対する武力攻撃に際しての共同作戦計画について検討をする、周辺事態に際しての相互協力計画を共同作業でやる、このような努力は、双方の関係機関の関与を得た包括的メカニズムにおいて行われ、日米協力の基礎を構築する。これは、日米同盟関係とか軍事面からすると、一般論、常識論としては理解できないわけでもない、私も。  そこで、この「日米共同の取組み」というもの、共同作戦計画とか相互協力計画とか包括的メカニズムというのは、一体どうなっているのか。さらに、日米両国の公的機関及び民間の機関による円滑云々とある。この日米両国の公的機関はどういうものなのか、民間の機関とはどういうものなのか、日米間の調整メカニズムを平素から構築していくということはどうなのか、お答えを願いたいと思います。これは、できるだけ、外務大臣防衛庁長官総理がお答えください。
  195. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 お答え申し上げます。  上原委員御質問の第一点目でございますけれども、このガイドラインの中に、御指摘のような、安全保障面での地域的及び地球的規模の諸活動を促進するための日米協力ということについての言及がございます。これはまさに、その後に続きまして書いてございますように、日米両国政府が、例えば、この地域におきます安全保障対話であるとか防衛交流であるとか軍備管理・軍縮等についての活動を促進するということが一つは念頭にございます。  さらに、地球的規模と申しますのは、例えば、ここにも書いてございますけれども、国際連合の平和維持活動とか人道的な国際救援活動に参加する場合の日米間の協力といったようなことが念頭にあるということがここで明らかにされているところでございます。  それから、日米ガイドライン相互協力計画でございますけれども、これは、日本に対します武力攻撃に際しての共同作戦計画についての検討というのが一つございます。それから、周辺事態に際しましての相互協力計画についての検討というための共同作業ということがございまして、これは、このうちの後者の相互協力計画についての検討というのは、日米両国政府周辺事態に円滑かつ効果的に対応し得るよう、ふだんから十分な検討を行う体制を整えておく、こういうことでございます。  一九九八年、昨年の一月に、コーエン国防長官が訪日されました際に、このような共同作業のための包括的なメカニズムというものが構築されることにつき、両政府の間で了承がされまして、現在、防衛当局間で作業が行われている、こういう状況でございます。
  196. 上原康助

    ○上原委員 日米両国の公的機関及び民間の機関はどういうものを言っているのか。それと、包括的なメカニズムの構成は、設置することが昨年決まった、どういう構成メンバーなんですか。
  197. 柳澤協二

    ○柳澤政府委員 まず、その構成の方から申し上げますと、昨年のSCC、日米安保協議委員会で御了解をいただいてつくり上げましたものは、まず、両国それぞれ、大統領、内閣総理大臣が両方におられるわけでありますが、そのもとで、SCCのメンバーであります、日本側は外務大臣防衛庁長官、米側は国務、国防両長官の包括的な、包括的なといいますか、方針をいただくもとで、その下に外務、防衛の局長級の、さらに、アメリカの方は国務、国防の次官補級の、防衛協力委員会と申しておりますが、その補佐のための機関を持っておりまして、その監督のもとで、先ほど外務省の方から申しました、自衛隊と在日米軍を窓口にしまして今、共同計画検討委員会というものが下作業を行っております。  ほかの公的機関がどうかということにつきましては、順次そういった作業を通じて出てまいりました問題点等につきまして、必要の都度、外務、防衛庁あるいは安全保障室を中心に会議の場等を設定していただくことになっておりますが、ただ、一昨年のこのガイドラインの見直しが終わりました直後に実は閣議決定をいただいておりまして、そこで、関係省庁も加えて政府全体としての措置検討していただくということで、具体的には、関係省庁局長会議というのが、おととしの平成九年の十月に設定をされております。
  198. 上原康助

    ○上原委員 余り要領を得ませんで、本当は時間をかけて議論したいんですが、先ほど、自治体に協力を依頼するあるいは求めるという段階で、川崎運輸大臣が、地方港湾の利用について全く聞いていませんと、そういう意味のことでしょう。地方自治体にもそういうことはこれからでしょうね。これだけいろいろなことをやろうとするのに、外務と防衛庁だけで事を進めているということにいささか疑問を持たざるを得ません。  果たして、政府全体の、私はそれを促進せよとかいろいろ言うつもりはありませんけれども、政府がやるべきことを、本当に、各省庁を通して総合的な危機管理体制というものをどうこれまでやろうとしてきたのか、大変問題だと思うんですよ。その点だけ指摘をしておきます。  そのほかにも、このガイドラインのことでは、もっと見解を確かめなければならない点が非常に多いんです。  日米間の調整メカニズムの運用のあり方ですが、これはまさに、軍事のオペレーションを含めて、作戦計画あるいはこの周辺事態確保法で言うところの計画策定に資するいろいろな調整メカニズムを日米間でやっていくことだと思うんですよね。そうなのか。現在はどういうようなことを検討しているのか。これは防衛庁長官、お答えいただけますか。
  199. 柳澤協二

    ○柳澤政府委員 ちょっと状況の御説明をさせていただきますが、昨年の一月に包括的メカニズムとしての作業のスタートが合意されまして、そのもとで、先ほど申し上げました、具体的には自衛隊の統合幕僚会議それから在日米軍司令部を窓口にいたします共同計画検討委員会、これが昨年の三月から作業を開始して今日に至っております。  これは、その作業の節目節目で、先ほど申し上げました防衛協力委員会ですとか閣僚レベルの安全保障協議委員会の方に報告をし、必要な指示を仰ぐということになっておりますが、まだその最初のといいましょうか、ある程度まとまった形で御報告申し上げるまでには作業が進んでいないという状況でございます。
  200. 上原康助

    ○上原委員 いつごろ作業をまとめるつもりですか。
  201. 柳澤協二

    ○柳澤政府委員 今のこの作業は、先生もお触れになりましたまさに周辺事態あるいは我が国の有事ということを考えましたときに、米軍それから自衛隊がいずれにいたしましても中心的な活動をするわけでございますので、その両者ですり合わせをしておるところであります。  私どもはできるだけ早く何らかの形をつけていきたいと思っておりますが、一方でこれは、その時々の国際情勢やらあるいは軍事的な技術の進展等に合わせまして、いわばエンドレスに作業自体は続けていかなければならないものであろうと思っておりますが、とりあえずのものはできるだけ早く整理をしたいと思っております。
  202. 上原康助

    ○上原委員 もう一点、この新しいガイドラインの中で、平素からの日米協力というのが随所に出てくるんですね。これは、旧ガイドラインにはなかった概念というか方針というか文言なんです。これをあえて新しいガイドラインに、たしか十七、八カ所、平素から平素からというのが出てきている。日米間でそういうことを平素からやっていく特別の理由があるのかどうか。有事、周辺事態、いろいろあるんだが、平素からを特に取り上げるようになった理由は何なのか、お答えをいただきたいと思います。
  203. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 ここで平素からと申しますのは、戦時と平時という意味ではございませんで、ふだんから、いつもからということでございます。  と申しますのは、まさしく冷戦時代が終わりを告げまして、ただし、いろいろな紛争が発生する不確実、不安定な状況というのがあるというところにおきまして、日米間が、まさにふだん、平素からいろいろな分野で情報交換をしたり政策協議を行ったり、さらに、先ほどちょっと申しました軍縮面とか、そういう安全保障の対話、防衛交流といったような通常的な情報交換、政策協議ということがやはり現在の世界においては重要だ、こういう認識もございまして、平素からの協力ということが特に取り上げられているというのが背景でございます。
  204. 上原康助

    ○上原委員 逆に言えば、皆さんは、日米関係は我が国外交の基軸である、あるいは同盟関係にあると、安保条約が締結されてから今日まで平素からそんなに努力しなかったということにもなるわけですね。それはまさに政府の怠慢だよ。その点、申し上げておきます。  そこで、日米安保と周辺事態との関係について一、二点お尋ねしておきたいと思います。  これはせんだってもお尋ねした記憶があるんですが、改めて指摘するまでもございませんが、日米安保条約は、六条において「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。」と規定しております。  ここで「陸軍、空軍及び海軍」なんですよね。海兵隊というのはないんだよ。海兵隊は安保条約の適用外なんだ、本当のところを言うと。欠落している。それも答えてもらいたい。  米軍に対する基地提供が求められる場合は、日本を含む極東の平和と安全の維持に限定されることを規定しております。  政府は、周辺事態は地理的概念ではないことを強調しておられますが、米国がいわゆる極東の範囲を超えた地域において周辺事態と認定し、かかる事態に対処するために日本国における施設及び区域を使用する場合、日米安保条約第六条と新ガイドラインにおける協力との関係をどのように整合性をとるつもりなのか。もっと端的に言えば、我が国は、安保条約の第六条と新ガイドラインのどちらを根拠に極東以外の米軍の基地使用について容認するというか、そういうことをしようとしているのか、ぜひはっきりさせておいていただきたいと思います。
  205. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 まず、海兵隊についてのお尋ねでございます。  海兵隊は、米国の軍隊の組織法上は、実は海軍省の司令下にあるということでございます。  ということでございますが、他方、この安保条約の六条で「陸軍、空軍及び海軍」というふうに書いてございますが、これはいわゆる固有名詞での陸軍、空軍、海軍ということではなく、むしろ、陸で活動する軍隊、空で活動する軍隊、海で活動する軍隊。というのは、これはこの条文の英文の方をごらんいただきますと、実はその辺が非常にはっきりするわけでございますけれども、アーミー、ネービー、エアフォースという言い方ではございませんでして、ランドフォーシズ、エアフォーシズというような表現になっているわけでございます。  御承知のとおり、海兵隊は、いわゆる水陸両用と申しますか、アンフィビアスというようなことを言われておりますけれども、陸であろうが海であろうが、とにかくこの六条の中に言われる米国軍隊の中に含まれる、こういうことでございます。  それから、周辺事態と極東の関係についてのお尋ねでございましたが、私の方から事務的に簡潔に答えさせていただきますと、周辺事態は、累次答弁を政府側から申し上げておりますとおり、あくまでも我が国の平和と安全ということに着目をした概念でございますので、極東という概念との関係を一概に論ずることはできないわけでございます。  いずれにしましても、米国が我が国の基地を使用するその目的というのは、この六条にございますとおり、日本国の安全ということが含まれておりますし、それと加えて、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するために基地を使用することができる、こういうことになっているわけでございます。
  206. 上原康助

    ○上原委員 私ももう随分、そういう条約局長や北米局長や法制局長官の憲法解釈や条約解釈をいろいろ聞いてまいりましたが、こっちが具体的に問題指摘をしたら、開き直ったように、アーミー、ネービー、エアフォース、何やかんやでごまかして、一番問題のマリーンはないのだ、マリーンコープスは。だから、厳密に言うとあなた方は条約違反をしているのですよ。そう言えなくもないですよ、沖縄の立場あるいは在日米軍の基地の実態からして。そういうごまかしというか、三百代言とまでは申し上げませんが、ちょっと見解に無理がありますね。  それともう一点、これも、今の御答弁は納得しませんが、私が例を挙げますからね。新旧ガイドライン、ちょっとさきに触れましたが、周辺事態関連した文言に関して、旧ガイドラインでは「日本以外の極東における事態日本の安全に重要な影響を与える場合」となっておったのです。しかし、新ガイドラインでは、「日本周辺地域における事態日本の平和と安全に重要な影響を与える場合」と置きかえられております。なぜ「日本以外の極東」を「日本周辺地域」としたのか。あるいはまた、共同宣言ではアジア太平洋という文言を使って、全く極東という表現は欠落している。これはなぜそうなったのか。  あなた方は、安保条約第六条のことを言いますと、必ず総理外務大臣防衛庁長官も、極東という表現を今までも使っていらっしゃる。それは用心深い、確かに条約にはそうとしか書いていないのだから。だが、実際の運用はもう極東じゃないのです。アジア太平洋なのです。あるいは地球の裏まで。今の私の指摘に対して、お答えをしておいてください。
  207. 東郷和彦

    ○東郷政府委員 お答え申し上げます。  本件につきましては、これまでの国会の御審議で大臣よりもたびたび申し上げておりますように、今般、ガイドラインをつくるに当たりまして、日米両国は特に、我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態、これに着目してガイドライン及び周辺事態法というのをまとめたわけでございます。  したがいまして、委員御指摘の旧ガイドラインにある表現ではなくて、日本の平和と安全に重要な影響を与える事態というのをガイドライン及び周辺事態法の基本的な語彙というふうにいたしたわけでございます。
  208. 上原康助

    ○上原委員 外務大臣、私が指摘をした、条約上、海兵隊ということが、これは簡単に思っていらっしゃるかもしれませんが、そういうことに対しては外務大臣として一体どういう御認識なのか、ああいう解釈をしておられるのか。あるいは、今私が六条との関係、あるいは旧ガイドラインと新ガイドラインのなぜそうなったかということに対して、事務当局の答弁があったのですが、政治家、閣僚としてはどういう御認識なのですか、そういうことに対して。総理外務大臣の御見解もぜひ聞かせてください。
  209. 高村正彦

    高村国務大臣 新ガイドラインにおいては、今条約局長が答弁したように、まさに、日本の平和と安全というものに着目してそういう用語を使った、こういうことでありますし、そして、日米安全保障条約目的日本と極東の平和と安全に資するためということは、これはもうずっと今日まで変わっていないわけでありますが、その結果の日米安保条約の存在が、広く結果として、アジア太平洋全体の安定のためにも資している、そういうことはいいことだ、こういう趣旨から新ガイドラインではそういう言葉を使った、こういうことでございます。
  210. 上原康助

    ○上原委員 日本の平和と安全に資するということでくくれば、条文にどう書かれておっても、拡大解釈や拡大運用していいような御答弁のように私は思えてなりません。  そこで、では一つの例を、私はこれは外務委員会でもこの間指摘しましたが、在沖米軍が、昨年暮れの中東、イラクの戦争に出ていっているわけです。出撃しているわけですね。海兵隊二千人、これはたしか長崎の方からも行っている、在日米軍から。在日海兵隊でしたか、海軍。出発したのが一九九八年の十一月十一日、ホワイトビーチから。九九年三月十四日に、この間帰ってきている。これはまさに当初安保条約が予定していなかった行動半径、行動でしょう、対象地域でしょう。  しかも、この沖縄に十四日に帰ってきた二千人の第三一遠征部隊のデービッド・フルトン司令官、大佐のようですが、二月上旬から領土紛争が起き、緊迫していたアフリカ東部のエリトリアとエチオピアの情勢変化に備え、同部隊が湾岸地域で待機していたことを明らかにしておるのですよ。クウェートかサウジに待機をしておった。アフリカ東部のエリトリアとエチオピアの情勢変化に対応していくために。  ここまで地球規模で、これは地球の裏のアフリカ大陸まで、あなた、沖縄海兵隊は実際には出動しているわけです。それを皆さんからいうと、いや、アメリカの行動は許されると言うかもしれませんが、我が国の平和と安全にどういう影響があったの、このことは。間接的には、観念的には、理論的にはあるかもしれませんが、本来ここまで在日米軍基地の使用権限はアメリカにはないはずなんだ、第六条からすると。こういう矛盾点があるということを指摘しておきたい。ですから、こういうことについては、もっと説明もし、整合性のあるようなことをやってもらわないと困るのですよ。  それで私が、そこまでは恐らく政府はお考えにならないと期待したいわけですが、こういうふうに米軍が展開をしている、中東、アフリカまで。そうすると、これも周辺事態になりそうだから、そのときにも米軍に対する後方地域支援後方支援をやってくれということになったとすると、自衛隊はそこまでやるのですか。やれないこともないという答弁になるかもしらぬと私は思うのだが、いかがなんですか。皆さんの見解はどうなんですか。
  211. 高村正彦

    高村国務大臣 米軍が中東に行ったというのは、日本の平和と安全に資するために行ったわけではないわけであります。(上原委員「ないのでしょう」と呼ぶ)ないのです。  ですから、軍隊の任務というのは一つに限られているわけではなくて、幾つかの任務を重ねて持っている場合があるわけでありまして、在沖米軍日本の平和と安全に資するための任務を持っていると同時にほかの任務を持っていたからといって、それがいけないという話ではないのです。そして、軍隊の機動性というのは、日本にいるときには、日本の平和と安全あるいは極東の平和と安全に資するためにいていただいているわけでありますが、それと同時に、軍隊の機動性、ほかの任務のためにほかに移動して、そしてほかの任務につくということもあるわけでありますから、まさに中東の方に行った米軍に対して、周辺事態安全確保法で日本自衛隊後方地域支援をするなどということはないわけであります。
  212. 上原康助

    ○上原委員 あなた、もしそこまで後方地域支援すると言ったら、これでストップですよ、これは。だが、外務大臣、あなたの御見解は、それはそういう見解もあるいは一理あるかもしれません。  問題は、在日米軍基地の活用というものは六条の規定しかないわけですよ、我が国の施設・区域を利用できるということは。米軍のそういう都合があるからといって、アフリカに行こうが中東に行こうが、どこに行こうが勝手だという解釈にはならないじゃないのですかというのが私の見解なんだ。  そうであるならば、安保条約の改定をするのか、あるいは特別協定を結ぶのか。どこかで、日米間でそれを取り決めしたのですか。(発言する者あり)今ごろって、重要な問題なんだ、沖縄にとっては。
  213. 高村正彦

    高村国務大臣 日本の基地を利用してそのまま戦闘作戦行動に出るような場合に、例えば日本から直接中東を爆撃に行く、そういうようなことはできないわけでありますが、日本にふだんいる軍隊が中東に行って、そこで米軍の運用上の都合によって新たに活動する、そういうことはあり得ることだということは、私が初めて言ったわけではなくて、ずっと政府が繰り返し答弁しているところでございます。
  214. 上原康助

    ○上原委員 それが何でもないというところに問題があるのですよ、それは。  今の中東とかアフリカというのは、それは距離的な面からしても、周辺事態という地域概念からしても該当しないということは常識でしょう。幾ら政府でもそこまで拡大解釈できないと思う。  だが、周辺事態ということが仮に起きたとした場合に、在日米軍基地の七五%のある沖縄とか、佐世保とか横須賀とか、在日米軍基地の存在する地域にとっては、米軍の行動展開あるいはいろいろな面の利用というものがかさむことは、多くなることは当然予測されるわけでしょう。そういうことを想定して、こういうこともできるんだ、何でもないんだという政府の条約解釈をしておりますと、幾らでもアメリカは都合のいいように勝手に使えるということになるのではないですか。  我々が問題にしているのは、安保や自衛隊の存在というものを認める立場に立つにしても、米軍我が国に存在する基地というものを自由、勝手気ままに使わせてはいけないということですよ。事前協議とか条約とか地位協定というのは厳格に解釈しなさい、そして運用しなさいということなんですよ。そこが大きな違いなんです。その点を、お答えがあれば、答えてください。
  215. 高村正彦

    高村国務大臣 事前協議の主題というのは岸・ハーター交換公文で三つに限定されておりまして、今委員が御指摘になったように、中東に行って、移動して、そしてそこで何らかの活動に参加するというような場合に、事前協議の主題にはならない、こういうことは一貫して政府が御答弁申し上げてきているところでございます。
  216. 上原康助

    ○上原委員 事前協議の問題につきましては、また機会を見てお尋ねしたいと思うのですが、そういう解釈をとっている限りにおいては、やはり国民の合意形成を政府が積極的にというか誠意を持ってやろうというお気持ちがないとしか考えられません。これは極めて遺憾であります、そういう御答弁は。  もう一点、周辺事態法との関連で、武器使用の形態についてちょっとお尋ねをしておきたいと思います。  これはこれまでも議論になっておりますが、周辺事態法第十一条によれば、武器使用する場合でも、刑法の正当防衛または緊急避難に該当する場合のほか、人に危害を与えてはならないと定めております。船舶検査活動対象となる船舶は、軍艦をその対象から除外しております。  ここで、刑法の正当防衛または緊急避難の要件には相当性の原則があって、その中に武器対等の原則というものがあります。これは、正当防衛の行使に当たっては、相手が素手であれば原則として素手で対抗すべきということ、すなわち武器は対等のものを用いるべきであるという概念だと私は理解をいたします。それ以外の場合は原則として相当性を逸脱しておる、正当防衛とはみなされないとの法理でございます。  武器使用が刑法の正当防衛または緊急避難に該当する場合にしか認められないとするならば、もし軍艦を対象としない臨検等で自衛隊の護衛艦なりあるいは艦船が相当程度の装備をしているとするならば、相手側が軍艦でない、いわゆる商船その他の艦船というか船舶ですから、非常に自己防衛的武器使用ということが成り立ちがたいのじゃないのかと考えられるのですが、この点についてはどういう御見解なのか、あるいはまたいろいろ検討されておるのかどうか、お答えを願いたいと存じます。
  217. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 自衛隊法九十五条のお尋ねだと思いますが、自衛隊武器等という、武器という我が国の防衛力を構成する重要な物的手段を破壊、奪取しようとする行為から当該武器を防御するために認められているものでありまして、この行使の要件は、従来から、先ほども先生が一部触れられたような要件がございます。  一つは、武器使用できるのは職務武器の警護に当たる自衛官に限られていること。もう一つは、武器等の退避によってもその防護が不可能である場合など、他に手段のないやむを得ない場合でなければ武器使用できないこと。武器使用は、いわゆる警察比例の原則に基づきまして、事態に応じて合理的に必要と判断される限度に限られていること。防護対象武器が破壊された場合や相手方が襲撃を中止しまたは逃走した場合には使用できなくなること。そして、正当防衛、緊急避難の要件を満たす場合でなければ人に危害を与えてはならないこと等、自衛隊法九十五条に基づく武器使用は、以上のような性格を持つものでありまして、あくまで現場にある防護対象防護するための受動的な武器使用でございます。  このような武器使用は、自衛隊武器等という我が国の防衛力を構成する重要な物的手段を破壊、奪取しようとする行為から当該武器等を防護するための必要最小限度の行為であり、それが海外で行われたとしても、憲法第九条一項で禁止された武力の行使には当たらない、こういうふうに考えております。
  218. 上原康助

    ○上原委員 これまでの御答弁の域を出ていないようですが、私、九十五条のこともお尋ねしたいのですが、これは、時間がありませんので、また機会を見て、今の御答弁も精査をしながら進めていきたいと思います。  もう一点、周辺事態における機雷除去問題。何か機雷除去の考えを変更したという報道もあるようですが、新ガイドラインでは、周辺事態における運用面における日米協力として、自衛隊は機雷の除去を行うということになっているが、周辺事態法案には機雷除去というのはありませんね。これに関連して、周辺事態における海上自衛隊による機雷の除去は、自衛隊法九十九条で既にできると書いてあるから書かなかったのだという答弁がたしかあったような気がいたします。  他方、湾岸戦争後の一九九一年四月二十五日でしたか、海上自衛隊の掃海艇ペルシャ湾派遣を決定した際の衆議院本会議において、政府は、海上自衛隊による掃海艇派遣が武力行使と一体化しないことを担保するため、派遣に当たり、平時の平和目的に限ることを条件としたと明確に答弁しておられます。  周辺事態日本の平和と安全に重要な影響を与える事態であると定義をするならば、周辺事態において海上自衛隊が機雷の除去活動を行うということは、いろいろ機雷のタイプにもよるかもしれませんが、この九一年四月の政府答弁と矛盾することになりはしないのか。この点、御見解を聞かせておいていただきたいと存じます。
  219. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 一部報道で、政府は十七日までに、公海上で自衛隊が除去できる機雷の条件を、遺棄機雷から、武力攻撃の目的を持って敷設された機雷以外に、大幅に緩和するとの新見解をまとめたという報道がありましたが、さような事実は一切ございません。  我が国に対して武力攻撃が行われた場合や、周辺事態等に対しての日米協力につきましては、指針の見直し作業の中でいろいろ検討が行われたところでありますが、その検討経過については、平成八年九月の見直しの進捗状況、あるいは平成九年六月の見直しに関する中間取りまとめといった格好で対外的にも発表し、議論をいただいたところであります。また、九月に新たなガイドラインとして最終的に取りまとめられ、対外的に公表され、十二月に国会にも報告を行っているところであります。  機雷が武力攻撃の一環として敷設されているものではないと認められる場合は、当該機雷は海上における危険な妨害物になっていると考えられることから、我が国領海はもとより、公海であっても、我が国船舶の航行の安全確保のために必要な場合には、一種の警察活動として自衛隊法第九十九条により除去が可能であるとの政府の考え方については、平成九年六月の国会審議等で既に申し上げているところであります。  その際には、一たん武力攻撃の一環として敷設されたが、その後はその目的が失われている機雷や、単に周辺等に不安や混乱を生じさせるために隠密裏に公海上に敷設したような機雷については、我が国憲法の範囲内で機雷掃海できる旨についても既に御説明申し上げているところであります。  これらの機雷の判別につきましては、当該機雷の敷設海域、戦闘全般の状況や周囲の国際情勢等といった各種の要素を総合的に勘案すれば、基本的には可能であると考えておりますが、いずれにせよ、具体的な事例に応じて慎重に判断していきたいと思っております。
  220. 上原康助

    ○上原委員 機雷除去の従来方針を変えるお考えはないということでしたので、また、今御答弁のあった内容をよく精査してみたいと思います。  最後に、朝鮮有事の際の、この周辺事態法けさほど来いろいろ議論がありますように、どうもそういうことも相当伏線として持たれているのじゃないかと思います。そこで、朝鮮有事の際の朝鮮国連軍の地位についてお尋ねをしておきたいと思うのです。  仮に朝鮮有事が、第二次朝鮮戦争のようなタイプのことが起きて、在日米軍基地を朝鮮国連軍として活用するという場合に、事前協議の対象になるのか。これが一つ。  また、朝鮮国連軍というのはたしか十一カ国ぐらいあったのでしょうか、米軍以外も在日米軍基地を活用することはできるのか。これが二点目です。  三点目。朝鮮戦争、一九五〇年六月二十五日に勃発して、安保理事会決議八十二というのがございます。七月七日の安保理決議八十三でしたか、さらに十月七日の国連総会決議というものがあります。  これまで我々が学習会等でいろいろヒアリングした中では、この国連決議はいまだに有効だという政府の見解もございます。しかし、一々は申し上げませんが、三木首相でしたか、あるいは福田首相か、外務大臣等々のかつての答弁もございます。また、その間、外務省の条約局長の答弁もあって、要するに、新たな国連決議をやらなければ対応できないという見解を以前はとっておられたのですが、相当の情勢の変化がありますから、韓国も北朝鮮も今は国連に加盟している、あるいは中国との関係等を含めて、こういうことについて政府はどういう御認識を持っておられるのか。  また、これだけの事態を想定して法律をつくっているわけですから、多分そういうことも、相談すべきところとはいろいろと相談もしておられるかもしらない。そういう点について明確にしておいていただきたいと存じます。
  221. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 日米防衛協力のための指針は、特定の国、地域を念頭に置いて作成したものでありませんで、今お尋ねの朝鮮半島有事ということが具体的にいかなることであるか、なかなか明らかではないのではないか。  さらに、仮に朝鮮半島におきまして何らかの事態が発生した場合に、当然、国連において、発生した事態、状況を十分検討の上、国連としての措置が議論されるものと思われます。その際には、朝鮮国連軍の行動につきまして議論される可能性があると考えられますが、いかなる対応を国連がとるかについても、具体的に予断することはできないのではないか。  そこで、あくまでも一般論としてでございますが、仮にそのような事態が生じた場合には、朝鮮国連軍として活動する米軍に対する支援について申し上げますれば、朝鮮国連軍でもある米軍が、法案第三条第一項第一号に言う日米安保条約の目的の達成に寄与する活動を行うことは当然あり得るところでありまして、そのような米軍に対しての後方地域支援ができるのは当然だという考え方でございます。
  222. 上原康助

    ○上原委員 決議の件を答弁してください。決議は有効なのか。新たな決議をしなければいけないと私は理解をするのですが、その点、明確にしてください。
  223. 東郷和彦

    ○東郷政府委員 お答え申し上げます。  国連決議八十二、八十三、八十四、これは、国連の法理としては引き続き有効であるというふうに考えております。  ただ、今総理から申し上げましたように、朝鮮半島において一朝事があった場合に、これらの決議が実際どのように活用されることになるか、これはその起きた新しい事態において検討されねばならないということかと思います。
  224. 上原康助

    ○上原委員 終わります。
  225. 山崎拓

    山崎委員長 これにて横路君、前原君、上原君の質疑は終了いたしました。  次に、遠藤乙彦君の質疑を許します。
  226. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 公明党・改革クラブの遠藤乙彦でございます。  いよいよガイドライン関連法案の本格審議が始まったわけでございますけれども、私ども、大変これは重大な法案であるというふうに受けとめております。特に、二十一世紀のアジア太平洋の安全保障をどうするか、日本の平和と安全をどうするかということで、非常に重要な選択を迫られている課題であると思っております。  ある外国の政治家の言葉に、内政上の失敗であれば政権が交代すれば済む、内閣がかわれば済む、しかしながら、外交・安全保障政策の失敗は国家の滅亡につながり得るということを言った人がおりまして、私も大変同感でございまして、今回のガイドライン関連法案審議も、そういった重みを持って、また重大な責任を痛感しながら議論をしてまいりたいと思うところでございます。  従来の我が国安全保障論議、ある意味では非常に不幸な歴史ではなかったかと思っております。といいますのは、常に国論が分裂をして国民的合意の成立はなかったわけでありますし、また、場合によってはイデオロギー的に非常に偏向した議論あるいは現実を直視しない議論が行われまして、よく言われる不毛の神学論争といったものが繰り返されてきたといった経緯があるかと思っております。  これからはそういうことがないように、特に九〇年代に入って、冷戦構造の崩壊あるいは湾岸危機あるいはPKO問題等、非常に現実的な安全保障の問題の選択に迫られた、またそういった経験をした我が国としましては、現実を直視した、建設的な、そして幅広い国民の理解を得て、国民的合意を目指した安全保障論議をぜひすべきだと思っております。  また、この関連におきまして、私ども、特に公明党の場合、湾岸危機の際あるいはPKOの問題の際、一定の役割を果たしたと自負をいたしております。特に湾岸危機の際には、多国籍軍への九十億ドル支援問題というのがあったわけでございますけれども、我々も大変苦しい思いをしながら、特に防衛費の大幅削減を含む歳出の大幅削減あるいは予算の組み替え等の条件で国民に理解をいただき、この九十億ドル支援について賛成をしたということであります。それによって国際的な非難を免れることができた。  また、PKOにつきましては、特に、私たちはいわゆるPKO五原則というものを提案しまして、憲法ときちっと整合性のとれた法案に修正をすることにより、我が国の平和維持分野における国際貢献の道を開いた、そういった意味で、大変私たちは自負を持っておるわけでございます。特にPKOの問題で、我が国が全面的にバックアップをしましたUNTACによりまして、カンボジアの悲劇の国土に平和が戻りつつあるということは大変うれしいことではないかと思っております。  そんなことで、このガイドライン関連法案審議にいたしましても、私ども、現実を直視して、また建設的な、そして国民的合意を求めて慎重な議論をしていきたい、そういった決意でこの議論を進めていきたいと思っておりますので、よろしくお願いしたいと思っております。  それで、私もこのガイドライン委員会に入れていただきまして、最近急激にさまざまな陳情、特に手紙、ファクスあるいははがき等で私のところに寄せられております。偏った議論もありますけれども、おおむね大変現状を憂い、また非常に不安感を持っている市民団体あるいは国民の方々が多いわけであります。  その非常に大きな理由は、従来、ガイドライン、昨年の四月、国会に提出をされて一年近くたっておるわけでございますし、その前の時間も含めますと、大変長時間にわたり既に議論がされてきた、また、さまざまな論点も議論をされてきたわけでございますけれども、極めてわかりにくい、また非常に不安を持たざるを得ないような側面があるというのが国民の大方の御意見でございまして、この点はぜひ政府におかれても率直に、真摯に受けとめていくべきではないかと私は考えるわけでございます。  なぜこのガイドライン法案審議がわかりにくいのか、いろいろ皆さんと意見を交換しながら考えますと、三つの理由があるだろうと私は思っております。  まず第一に、本来、ガイドラインの法案審議で問われている基本問題、問いかけは、冷戦後のアジア太平洋地域においてどうやって平和の構造をつくっていくのか、あるいはまた日本安全保障をどうするのかという非常に基本的な、大きな問題であります。  ところが、そういった問題に対して、全体観に立った、そもそもアジア太平洋の情勢認識、あるいはまた日本の平和戦略といった全体像を示すことなく、いきなり個別の問題、部分的な問題、非常に専門的な問題、場合によってはマニアックな問題と言ってもいいのですけれども、そういった問題ばかり議論をしている。こういったことによって、国民から見れば、何のための審議なのか全くわからない、また、部分的に見れば、あくまで部分的に見れば、いかにも戦争参加法みたいに見えるということで、非常に一般市民の方々に不安をかき立てているという面があるわけでございます。  そういった意味で、ぜひとも、もう少し全体像をしっかりと把握した、パースペクティブをしっかり持った議論の中でガイドライン位置づけというものをしていくということが大変重要であるというふうに考えております。  特に、ガイドライン関連整備の問題は、要するに、日米安保体制の抑止力の面をさらに信頼性の高いものにしていく、そういった問題意識のもとで議論をしているわけでございます。これは一つの半面であって、もう一つの面で、どうやって平和をつくるか、対話をするかといった面を含めていく必要があるわけでございまして、こういった部分的な議論にとどまることなく、ぜひとも、全体観に立った議論をやはり総理みずから政治家としてリードしていくべきだろうというふうに考えております。  それから、もう一つの不安を与える材料は、やはり日本の、ガイドラインを議論していく政府の姿勢というものが、いかにもアメリカに追随をしていく、要するに、もちろん日米同盟というものがあって、信頼関係に立って協力すべきところは当然だと思いますけれども、いかにも従来の日米関係のパターン、アメリカが何でも要求をし、それに対して日本が嫌々、あるいは一歩一歩譲歩していく、アメリカに引きずられていってしまって、日本はほとんど主体性がない、そういった姿勢が国民に感じられるために、果たしていざというときに、本当に日本が主体性を持って国民の安全またアジア太平洋の安全を守っていけるのか、そういった不安感もあるわけであります。  ぜひとも、そういった意味では、日米同盟は大変重要な関係であり、同盟関係は当然果たすべき義務はありますけれども、姿勢において、日本の主体性というものがはっきりとあるということが国民にきちっと得心のいくように、それが確信されるということが大変重要であります。  また、三つ目の問題として、政府の広報努力の不足といいますか、これだけ一年以上にわたって議論をされている割には、ほとんど国民の間に、何をそもそもガイドラインが目指しているのか、何をするのかといったことがほとんど理解をされておりません。  これはやはりアカウンタビリティーが大幅に欠如しているわけであって、民主主義国家における議論のあり方、特に安全保障問題という極めて重要な国家の命運のかかった問題の議論のあり方としては、極めてこれは問題があるというわけでございまして、国内的にも国際的にも、どうやってアカウンタビリティーを向上させていくかということにぜひとも取り組むべきであろうかと思っています。  今、三点にわたって申し上げましたけれども、総理には、単に官僚レベルの議論を超えて、ぜひとも政治家としてリーダーシップを発揮し、こういうバランスのとれた建設的な議論をリードすべき責務があると思っておりまして、この点につきまして、総理の御見解、決意をまずお伺いをしたいと思います。
  227. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 今国会におきましても、遠藤委員予算委員会等でのこの問題のお取り上げございまして、大変その御主張あるいは問題の指摘等につきましては私も注意深く拝聴させていただいて、また御答弁もさせていただいたつもりでございますが、今御指摘のように、まず全体像をしっかり国民の皆さんにも理解させるべきだという点、あるいはまた、姿勢につきましても、米国に追随しておるのではないかという国民的な不信というものがあるとすれば、これはできる限り払拭していかなきゃならぬ点、あるいはまた、そのことを国民に説明責任ということについてのお話がございました。まさにそういう意味合いにおきまして、今特別委員会が設置をされて、集中的にこの問題を取り上げていこうということだろうと思っております。  法律案を提出いたしましてから一年でございまして、その間、この内閣といたしましては、まず金融政策その他経済問題に集中的に対処してきたということで、確かに時間的には経過をいたしておりますが、まさに絶好の機会であろうというふうに認識をしております。  特に、先ほど申し上げましたが、安保条約の戦後の歴史をたどりますと、今委員が御指摘されましたように、不毛の議論と言ってはなんでございますけれども、この間もNHKがガイドライン三十年の歴史という長いドキュメントをいたしておりまして、拝見しておりましたが、まさに今昔の感のいたすような議論がその時点、時点で行われてきたわけでございます。  そういった意味で、改めて今般、日米共同宣言に基づきまして新しい指針を明らかにするというこの時期に当たりまして、日米安全保障の基本的なこの条約をもとといたしまして、今後とも、日米を中心にいたしまして、日本の安全と平和を守ると同時に、極東の平和につきましてもどのように対処すべきか、さらに、ひいては世界の平和にどう貢献していくべきかという問題について積極的な議論を展開いたすことができれば幸いと思いますし、政府といたしましても、御質疑等につきまして真摯に対応いたしまして、国民の皆さんにもぜひこの点については理解を求め、安保条約の存在そのものも、こうして平和な、安全な日本の国が営々として努力を続けることのできたベースがそこにあったということにつきましても、この機会に改めてレビューをすべきいい時期ではないか、このように考えております。
  228. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 ぜひ、総理の今後の努力を期待したいと思っております。ぜひとも、国内的、国際的にこのガイドライン関連論議のアカウンタビリティーを高めるということに最大の力をひとつ注いでいただきたいと思っております。  続いて、総論的なことに余り時間を割きたくはないのですけれども、大事なことでございますので、やはり今何が問われているのか、それから、どういう原則でこの問題を共通の土俵で議論していくかということを、ちょっと一言私も意見を述べたいと思っております。  何よりも今、このガイドライン関連法制の論議で問われているのは、冷戦後、ポスト冷戦のアジア太平洋、平和の構造をどうつくっていくかという問題だと思います。また、その中で当然、日本の平和と安全をどう確保していくかということであるかと思います。  アジア太平洋といっても、非常に多様性とまたさまざまな差異に富んでおりまして、価値観も違い、体制も違い、発展段階も違い、ダイナミックに発展する地域ではあるけれどもさまざまな異質性、多様性を抱えておって、例えばヨーロッパなどとはちょっと状況が違っているということではないかと思っております。  そういった中にあって、私は、本当に建設的な議論を、安全保障論議をしていくための共通の原則あるいはキーワードというのは、簡単に言いますと、抑止と対話のバランスということではないかと思っております。  今の国際社会、いまだに主権国家が併存する社会でありますし、また、文化も価値観も体制も違う、文明の衝突といった問題もある。いろいろな異質の要素がぶつかり合っているわけでございまして、そういった中で、現実的に平和の構造をつくり上げていく一番基本的な大原則は、やはり抑止と対話のバランスということではないかと思います。これはやはり長い歴史的な教訓から、特に国際政治の現実から出てきた教訓であろうし、今後ともこれは変わることはないであろうと私は思っておりまして、ぜひこういったことをきちっと認識をしていく必要がある。言いかえれば、一面的な議論、例えば対話なき抑止、抑止なき対話、いずれも結果的にはこれは平和の構造構築に失敗をしているということがあるわけでございます。  例えば、歴史的な例を引きますと、ナポレオン戦争後、一八一五年、最後のナポレオンの戦争があったわけで、それ以後ウィーン会議が招集をされて、それ以降百年にわたる欧州の平和の構造ができたという事実があります。この際、抑止と対話のメカニズムを大変巧妙に調和させ、またここには正統性とか勢力均衡といった概念が確立をされて、百年にわたる平和の構造ができた、その中でヨーロッパ諸国が、経済の発展、文化の成熟等、大きなヨーロッパ文明の開化の前提になったわけであります。  他方、対話なき抑止あるいは抑止なき対話、いずれも失敗しているということを改めて教訓とすべきだと思うのですね。  例えば、対話なき抑止、この失敗例の典型的な例は第一次大戦だと思います。第一次大戦前夜にあっても、多様な同盟あるいは協商関係は張りめぐらされていたわけでございますけれども、オーストリア・ハンガリーの皇太子夫妻がセルビアの青年にサラエボで暗殺されるといった偶発事件をきっかけとして、宣戦布告、総動員令と、自動機械のようにこれが進みまして、あっという間に大戦、四年に及ぶだれも予想しなかった大規模な戦争になったということでありまして、まさにこれは、抑止の体制はあったけれども対話のメカニズムが欠けていたことによって、やはり抑止ということが余分な緊張を高め、ちょっとした偶発事件でこういった大戦争になったという古典的な例ではないかと思います。  他方、抑止なき対話の失敗例は、一番いい例は、いわゆる宥和政策、第二次大戦直前にイギリスのチェンバレン首相等が推進した、ヒトラー・ナチスに対して、ナチスの領土要求、特にチェコスロバキアのズデーテン地方等の領土要求に対して宥和的に対応した、話せばわかると言って。また、宥和的に対話をやれば、ドイツ国内の穏健派が力を得て、やがては平和志向に変わるであろう、そういった期待があったわけですけれども、無残にも打ち砕かれまして、かえって大規模な戦争、第一次大戦を上回る大戦争になったわけであって、初期段階できちっとそういった侵略的意図を決然とくじくという行動、また抑止の姿勢がなかったことによって失敗した例でございます。  そういったことを総合しますと、やはり抑止と対話のバランス、そのためには、すぐれた政治的英知によってそれを運用しなければならないわけでございますけれども、そういったことが何よりも大事であろうということであろうと思います。  したがいまして、このアジア太平洋地域日本の平和も含めたアジア太平洋地域、二十一世紀において少なくとも百年にわたる平和を構築していくためには、そういった重要な原則についてやはり国民が理解をしていただき、また政治家は本当に英知を傾けて努力をするということがぜひとも必要ではないかと思うわけであります。  それで、それは総論的な話としまして、さらにもう少し具体的な問題というものに入ってまいりますと、アジア太平洋、二十一世紀に向けての潜在的な問題あるいは具体的な課題、これをやはりきちっと認識をしておく必要があると思います。余り抽象的な議論だけでいったのでは、これは現実直視の議論にはならない。  そこで、私は、何がアジア太平洋の平和の構造構築に向けての大きな問題かといいますと、これは二つあると思っておりまして、一つは北朝鮮問題だと思います。もう一つは米中関係ですね、米中関係の将来という問題です。当面の大きなテーマは、言うまでもなく北朝鮮の問題。それから中長期的に、もっと根本的には米中関係の将来がどうなるかということが、このアジア太平洋の平和の構造を決定的に決める最大の要因であろうというふうに考えております。もちろん、その他の問題は多々ありますけれども、この二つが最も基本的な問題であるということは、恐らくどなたも共通の認識であるかと思っております。  北朝鮮につきましては、これは特にポスト冷戦、冷戦後の安全保障問題の典型的な問題であろうと、ある意味では思います。  といいますのは、冷戦後の問題で一番危惧されたのが、いわゆる大規模な核戦争というものはなくなるであろうけれども、むしろ地域固有の要因、地域の紛争に対して、核の拡散、ミサイル技術の拡散、あるいは化学兵器、生物兵器の拡散、非常に安いコストでどの国家もそういった軍事的な手段を手に入れることができるようになった、それが大変厄介な問題をもたらすであろうということは、識者が共通の認識を持っていたわけでありまして、まさに北朝鮮の問題はその典型的なケースであろう。したがって、我が日本としても、冷戦後の典型的なこの一つの問題に対して、どう四つに組んで対応していくかという姿勢が大変大事じゃないかと思っております。  北朝鮮がどういう国家であるかということは、私も、十分な情報がありませんので、必ずしも断定はできません。ただ、いろいろなシナリオ、可能性に対して、やはり責任ある国家として、対応策を考えていくことは当然であろうかと思っております。  例えば、イラクのフセイン大統領も、国連が機能しないであろう、あるいはアメリカが出てこないであろう、多国籍軍は動員されないであろうといった誤った判断のもとに、ああいう無謀なクウェート侵略を企てたわけでありますし、やはり抑止にすきがあれば、そういった行動はいつでも起こり得るということではないかと思います。  そういった中で、ぜひともこの今の北朝鮮の場合、核の拡散の問題があり、またミサイル技術が、確かにこれは急速に進展をしていることは事実であって、従来の日本人の安全保障観といえば、周辺が海に囲まれているために、非常に楽観的な安全保障観、水と安全保障はただといったような認識があったかと思いますけれども、この核拡散、またミサイル技術の拡散によりまして、突然非常に緊迫した事態があり得るというわけでございまして、安全保障観を大きく変えざるを得ないだろうという面があるかもしれません。  そういった中で、先ほど申し上げましたような、かといって過剰反応することなく、事態の本質をよく分析し、冷静に考えて、抑止と対話のメカニズムでどうやってこういった事態を抑制をしていくのかという、地道なまた努力をやるしかないかと思っております。  そういったわけで、今、北朝鮮問題をめぐって米朝協議が一応成立をし、非常に大きな前進があったように思われますけれども、また、総理もあしたですか、韓国に行かれて一番ホットな問題を議論されるわけでございますけれども、北朝鮮問題につきましては、既に先ほどの委員からもいろいろお話があって、重複を避けたいと思います。  さらにお聞きしたいのですが、北朝鮮との関係については、私は非常に不満に思っているのは、対話のチャネルがない、これだけ長いこと近隣国であり、また長い関係があるにもかかわらず、いまだに国交正常化がなされておらず、実質的な意味でもパイプがないということが大変私は残念に思っております。北朝鮮との間にどういう問題があろうが、対話のチャネルだけは、コミュニケーションチャネルだけはきちっと持っておくというのが安全保障を議論する最も重要な手段でありまして、その努力なしには、結局は、受け身受け身で、事態をただ手をこまねいて見るしかないという状況になってしまうのではないかと思っております。  アメリカが北朝鮮と直接対話をして、大変突っ込んだ議論をしている。また、韓国も太陽政策のもと、いろいろな問題がありながらも極めて努力をして対話をしている。こういったことから見ますと、我が国のこういった北朝鮮との関係についての状況は、非常に私は不満足に思っておりまして、問題はいろいろあるかもしれないけれども、やはりぜひとも、対話のチャネルをしっかり持って、忌憚のない意見交換、あるいはコミュニケーションができるような体制をまず築くべきであると考えております。  その意味で、まず今、北朝鮮との間にコミュニケーションのチャネル、正式なものでなくても、どんなものが実際あり、どのように機能しているのか、また、それがもし不満足なものであれば、今後どのような努力をしてそういうチャネルを確立していこうとされているのか、この点につきまして、まず総理の見解を伺います。
  229. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 ただいま遠藤委員の基本的なお考えにつきまして拝聴いたしておりましたが、いずれも掬すべき重要な問題を私は包含しておるという認識でございますし、ほぼそのお考えについては、私自身も基本的に賛意を表したいというふうに思っております。  まず、抑止と対話のバランスというお話がございました。まさにここだろうと思いまして、単にお話し合いだけ積み重ねておっても、現実の国際政治の解決というのはなかなか困難である。所を変えれば、今ボスニアあるいはまた旧ユーゴ地区におけるコソボの問題等もその処理に専念をしているわけでございますが、話し合いを積み重ねる努力は続けなければなりませんが、一方で、抑止力として何がその効果があるかというところで、今大変な大きな悩みがあるのではないかと思っております。  そういう意味で、抑止とそして対話のバランス、これはやはりともどもに効果的に発揮をしていかなければならないのではないか。タイミングがずれますと、せっかくこうしたことが起こりましても、抑止力ばかり行使をしまして事がさらに重大な時局になるという点もありますし、また対話を続けてまいりましても、結果的には、さっきチェンバレンとヒトラーの例をお話しされましたけれども、最終的には大変な大きな事態になって、第二次世界大戦の悲劇を生んできたというような点もございまして、まさに抑止とバランスをいかに適宜適切に対応していくということが大切で、抑止力というものをどう考えるかということが一つ。  それから、一方では、対話は不断なく続けていかなければなりませんが、ぜひ、そういった意味で、その重要性を認識しながら、我が国としても、この対話ということにつきましては積極的にあらゆる国々といたしていかなければなりませんが、冷戦構造が崩壊いたしまして以降、それ以前につきましては、いわゆる日本と旧ソ連との関係、あるいは平和条約を結ばれる以前の中国の問題等々、いろいろございましたけれども、最近では防衛の関係の協力も全くスムーズに行われて、防衛庁長官と国防大臣の定期的な交流が行われるような事態になっておりますので、そういった点では非常に進捗しているのではないか。  ただ、御指摘のように、北朝鮮にだけは大変残念ながらパイプというものが存在をなかなかいたしておりませんで、ここが大変な大きな対話のネックになっておるだろうと思っておりますが、御指摘をいただきましたように、関連する諸国もございますし、特に、南北に分かれております韓国につきましては、太陽政策等をとられるということでございますので、明日韓国に参りまして、金大中大統領とも本当に真摯に腹を割ってお話を申し上げて、いかに北との、北朝鮮が国際社会の中でお互いに、ともどもに信頼感を得られていくというような体制をつくるためには何をなすべきかということにつきましても、お話を真剣にいたしていきたいというふうに考えております。  それから、現下の重要な問題として、この地域で、北朝鮮の問題は今触れましたが、もう一つ、米中の問題についてお触れになられました。ともに大きな国でございまして、やはり米国と中国、この関係も円滑に進んでいくということは我が国にとりましても極めて重要なことでございまして、そういった点では、アメリカのクリントン大統領も中国を訪問され、もちろん江沢民国家主席も米国に行きまして、最近では、首相も近々中国からアメリカに行かれる、こう聞いておりますので、そういった対話が行われることによりまして、本質的に中国と米国との間の状況というものがより一層進展をしていくということは、我が国にとりましても極めて重要なことだ。重要な地域といいますか、関係につきましての御指摘は全くそのとおりとお聞きをいたしましたので、日本としても十分注意を払いながら対応させていただきたい、このように考えております。
  230. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 私が申し上げたのは、抑止と対話のバランスということが大事である、その点から現状の日本を見ると、抑止の話ばかりしていて、対話の努力がやはり欠けている、それが非常に国民に対して不安を与えているんじゃないかということを改めて指摘したいと思っておりまして、今回の総理訪韓以後、また活発な朝鮮半島外交が展開されると思いますけれども、大胆な対話のチャネルをつくり上げることに最大の力を注いでいただきたい。それが本当の意味で安定した朝鮮半島、そして日本の平和を確保する重大な一つのステップであるということを強く申し上げたいと思っております。  それから、もう一つ、今、米中関係のことをお答えをいただきましたが、これは、実はある意味ではもう最重要の問題である、もっともっと本来であれば多くの時間を割かなければならない問題であろうかと思っております。  特に、このアジア太平洋という地域において、アメリカという国は唯一のグローバルパワーであって、強大な軍事力を持ち、唯一のグローバルパワーとして秩序維持の責任を担っており、またその使命感を持っているということ。他方、中国も、今急速に発展する経済を背景に軍事力も充実しつつあり、いわゆる地域大国として今発展をしつつあるわけであって、しかも価値観や背景、歴史、文明の衝突と言ってもいいかもしれませんが、そういった要素もあるわけでありまして、直ちにこの両国が、今後友好関係が続くかどうかというのは予断できないものがあるわけでございます。  このグローバルパワーとしてのアメリカとそれから地域大国としての中国が接しているわけですから、必ず摩擦とかさまざまな問題が起こってくるわけでありまして、人権問題に対するアプローチの違い、あるいは経済的な摩擦等を考えますと、必ずしも将来が予断できないわけであります。もしこの両国が対立関係あるいは破局的な事態になれば、日本にもこれは大変な被害が及ぶわけでありますし、アジア太平洋の平和の構造そのものが成立をしないということになりますので、日本としても、どうやってこの米中関係の安定した良好な関係を築き上げていくのかということは、最大の関心事項でなければならないと思っております。  また、日本は、米国との間では同盟関係にある、また中国との間では友好関係であって、しかも長い歴史と文化を共有している面があって、そういった面では、米中の良好な安定した関係の構築に日本は大変大きな役割を果たし得るという点があるかと思っておりまして、この点につきまして、改めて総理の御見解とお考えを伺いたいと思います。
  231. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 これまたお説のとおりと申し上げることに尽きると思いますが、私といたしましても、別に首脳会談をやればすべていいというわけじゃありませんけれども、今の点に触れまして、できれば五月、アメリカに参りまして、クリントン大統領ともこうした問題について率直に意見を交わしたいと思いますと同時に、実は中国からも御招待を今いただいております。江沢民国家主席も昨年日本に参られまして、初めて国家主席として訪日されましたが、やはり日本としても、できる限り交流を深めるという意味で、機会を見て、お許しをいただいて、夏ころには中国を訪問できたらなという感じはいたしております。  そういう意味で、別に仲立ちというわけじゃございません、米中は米中なりに真剣にお話し合いを進めておると思いますけれども、日本としても、さっきお話しのように、中国とは歴史的に文化を密にしながら大変深い関係もございますし、そういう意味で、アメリカとは同盟関係ということでございまして、日本の置かれた立場、日本の果たすべき役割ということを十分認識しながら、あわせて、この両国の中にあって、日本としての責任を果たしていきたいと決意を新たにいたしておるところでございます。
  232. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 以上、私の総論でございますが、ぜひそういった大局的視点に立った議論を韓国あるいは中国との間に、あるいは米国との間に、ぜひ突っ込んだ議論をお願いしたいと思っております。  具体的な法案関係の話に入っていきたいと思っておりますけれども、この周辺事態安全確保法案、いろいろ問題点がありますけれども、最大の問題点一つは、この周辺事態という概念の不明確さではないかと思っております。  周辺事態の際に自衛隊が出動して米軍の後方地域において後方支援をするというのが法案の主要な内容でございますけれども、やはりこの自衛隊日本の領域を超えて出動するという問題は大変センシティブな話でありまして、単に憲法上、それが武力行使しないから大丈夫だ、そういった議論のみにとどまらず、やはり周辺国のいろいろなセンシティビリーといいますか、そういった懸念とか過去の日本のさまざまな歴史もあるわけでございまして、ぜひともそこら辺の政治的な十分な感受性を持ってこの問題は議論しなければならないと思っております。したがいまして、この周辺事態の問題につきましては、ぜひとも掘り下げた慎重な議論が必要であると思っております。  そこで、国会答弁の中でも、かねがねこの周辺事態につきましては御答弁がありました。私は、いまだによくわからないというのが率直なところでございまして、そもそも周辺事態ガイドラインの本文におきましては地理的概念ではない、事態の性質に着目した概念であるという定義がなされております。ところが、途中で地理的要素が全くないと言っているわけではないということも含まれることになりまして、やはり聞いている国民の側から見れば、一体どういうことなのだろうかと、率直にそういった疑問が出るわけでございます。  そこで、改めてお聞きしますけれども、本来この周辺事態法は安保条約の枠内あるいは安保条約の目的の枠内ということを言われております。その反面、安保条約の目的に書かれている極東の平和、安全ということと周辺事態というのは必ずしも一致しないというような御答弁もあるわけでございまして、ここら辺がちょっとなかなかわかりにくい問題ではないかと思っております。安保条約の枠内ということであれば、素直な見方をすれば、周辺事態もやはり極東の枠内におさまるべきものというのが素直な理解だと思うんですけれども、そうではないということで今まで答弁されておりますけれども、改めて、この点につきまして総理の見解を伺います。
  233. 高村正彦

    高村国務大臣 安保条約の目的というのは我が国及び極東の平和と安全ということなんですが、この法案はあくまでそのうちの我が国の平和と安全に着目したものでありまして、ですから、極東の平和と安全に着目したものであればまた違った定義も出てくるんでしょうが、我が国の平和と安全に資するためという目的がある、そこに絞ったものでありますから、この周辺事態の、何度も繰り返しております定義になっているわけであります。  改めて申し上げますと、周辺事態とは、我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態であり、ある事態周辺事態に該当するか否かはあくまでもその事態の規模、態様等を総合的に勘案して判断をいたします。したがって、その生起する地域をあらかじめ地理的に特定することはできない。このあらかじめ地理的に特定することはできないというような意味で、周辺事態は地理的概念ではない、こういうことを申し上げているわけであります。  他方、周辺事態我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態である以上、現実の問題として、このような事態が生起する地域はおのずと限界があるでしょうと。先ほど中東に米軍が行った場合はできるかということ、そういうことは考えていません、ありませんということを申し上げたわけでありますが、以上の点はこれまでも繰り返し説明し、明らかにしているとおりでございます。
  234. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 今、周辺事態という言葉について、地理的概念ではないけれども、現実的にはおのずとその範囲があるであろうという趣旨の御答弁だと思います。  それでは聞きますが、この周辺事態、定義は、我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態となっております。この定義に関して、理論的にこれは全地球をカバーするものじゃないですか。要するに、我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態ということが周辺事態の定義なのであれば、これは理論的に、グローバルな、どの地域でもそれはあり得るということを意味するのではないでしょうか。
  235. 高村正彦

    高村国務大臣 将来起こるであろう現実に対応するために法律をつくっているわけで、全く観念的に、地球の反対側まで行っちゃうんじゃないかとか、そうじゃないとかいうことは、必ずしもそういうことを議論する意味があるとは私には考えられないわけで、場合によっては、それでは観念的にはあらゆるところが入るのかとかいうようなことがまた外交上の特に問題で――外交上の問題というのは、日本のマスコミを通し、それがさらに引用されてよその国のマスコミに行って、そしてまたそこに行ってわあっとこうなって、いろいろ問題が起こるということは、単に観念的考えというだけではなくて、現実的に何度も起こった話でありますので、私たちは、現実的にそんなに遠くまで、実際に起こるとは想定できない、こういうことを何度も繰り返して申し上げているところでございます。
  236. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 今の答弁は大変不十分なものだと思っております。  私たちは、非常に重大な自衛隊の領域を超えての出動にかかわる法案を議論しているわけであって、そういった意味では、大変厳密な、法的な議論をしていかないと、これはやはり周辺国にも無用な疑念を与えたりするということはあるわけでありまして、私の問題意識は、後方支援ではあれ、自衛隊の領域を超えての出動ということについては、やはり明確な地理的範囲というものを決めることが、かえって余分な疑念とか疑心暗鬼を与えないための重要なことではないかと思っております。  それで今、理論的ということで申し上げたんですけれども、これは例を考えてみれば簡単だと思うんですね。例えば、地球の裏側にある国が日本に対してミサイル攻撃を、威嚇して何か脅迫をするような状況があったとする。そうすると、これはやはり周辺事態でしょう。日本の平和と安全に重要な影響を与える事態なんですから、もしそういう国があるとすれば、それは周辺事態ですか。
  237. 高村正彦

    高村国務大臣 現実の話をいたしますと、地球の反対側にそのような性能のいいミサイルを持っている国は幸いなことにないわけでありまして、私たちは、あくまで我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態、そして、それはその都度判断せざるを得ないわけであります。  平和と安全に重要な影響を与える事態で地理的にだけ一定の線を引くということがどれだけの意味があるかというと、どんなに大きくてもこの地理を少しでも超えたら絶対にないとか、あるいはその逆のこととして、実際その地理的範囲内だとそれでは案外簡単に認められてしまうとか、そういうことはかえってまずいので、地理的条件だけを明確にして、そのほか本当に重要な、平和と安全に重要な影響を与えるという、実際のその都度の判断の方がはるかに大きいことで、地理的に線を引けば安心するとか安心しないとか、そういう話では必ずしもないんだろう、私はそう思っています。
  238. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 私は、単純に地理的な範囲を決めろということだけで言ったのじゃありません。やはり自衛隊の領域を超えての出動にかかわる話であるから、極めて政治的に、国際政治上センシティブな話であるので、やはりきちっとした何らかの制約というものがあってしかるべきではないかということを言っておるわけです。  それで、実際的じゃなくて、理論的にそういったグローバルに出動する事態があり得ることが排除されていない。米軍活動して、それの後方支援のために自衛隊が全地球どこでも出る可能性が理論的にあるとすれば、いずれもし条件が変わってくればそういったことも現実に起こってくる可能性があるわけであって、やはり理論的な可能性の問題についてもきちっと疑問のない議論をしておくべきではないかと思うわけでありまして、そういった意味では、この周辺事態というネーミングに非常に問題があると私は思うわけなんですね。  本来、この周辺事態というのは、常識的には地理的な用語であって、ある地域のまず一定の距離の中で、一定の時間で行ける周辺の地域というのが本来のイメージだと思います。例えば東京の周辺の地域といえば神奈川とか山梨、埼玉、千葉、せいぜい関東地方じゃないかと思うのですね。まさか北海道や九州が周辺地域とは言わないと思うのですね。そういった意味では、周辺という言葉の選択が私は非常に問題があるんではないか、国民にも、あるいは国際的にも疑念を与える一番大きな一つの要素ではないかと思うわけですね。  したがって、周辺事態というネーミングをもう少し定義に即した適切なネーミングに変えるか、あるいは周辺事態ガイドライン本文における定義を誤解のないような形できちっと書き直すべきじゃないかと思っておるんですね。  例えば、ガイドライン本文におきましては、周辺事態は地理的概念でないと全否定しているわけですね。要するに、条件つき否定ではなくて、地理的概念でないと全否定してあるわけです。それなのに、答弁では、地理的要素がないわけではないということで修正をしているわけであって、これはやはりどう考えてもおかしい。  したがいまして、これは政府の立場に立って申しているわけですけれども、国民に対し、あるいは国際的に誤解を与えないものにするためには、周辺地域のネーミング、私は本会議では、例えば重要事態であるとか緊急事態とか、一つの提案をしましたが、そういったネーミング自体をより適切なものに変えるか、あるいはガイドライン本文における定義を誤解のないようなものにもう一度修正をし直すという作業が必要なんではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  239. 高村正彦

    高村国務大臣 私は、そんなに周辺諸国に周辺事態という言葉を使ったから疑念がふえていると思いませんし、この言葉を仮に緊急事態とか、あるいは何事態ですか……(遠藤(乙)委員「重要事態」と呼ぶ)重要事態と変えたから疑念がなくなるということは、それは全くあり得ない話なんだろう、こう思います。少なくとも、政府とすればこの言葉が適当だと思って提案しているわけでございますので、御理解を賜れば大変ありがたい、政府としてはそれしか申し上げられないわけでございます。
  240. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 御理解を賜りたいということなんですが、理解できないというのが率直な答えでございまして、もう少し誤解を与えない適切な修文あるいはネーミングの変更、どちらかを検討すべき必要があるんではないか、余地があるんではないかということを指摘して、とりあえずこの議論はここでとめておきたいと思っております。  それからもう一つ周辺事態、これは極めて漠然とした定義です。日本の平和と安全に重要な影響を与える事態であってと、これは解釈する人の主観的な考えでいかようにでも解釈でき、拡大解釈が可能であって、そういった意味では、より明確な具体的な考え方、周辺事態というと具体的にどういうものなのかという、もう少し具体化した基準あるいは例示も、若干今まで述べられておりますけれども、そういったことも含めて、これは政府として、そういった周辺事態ということを明確化した統一見解をぜひ出すべきじゃないかと思うのですね。そうしないと、余りにも漠然とした概念であって、これではちょっと国民に対しても説得しがたいんじゃないかという気がいたしますけれども、この点につきましては、いかがでしょうか。
  241. 高村正彦

    高村国務大臣 防衛庁長官が答える方が適切かもしれませんが、指名がありましたので、私から答えさせていただきます。  周辺事態の定義は、先ほど申し上げたように、やはり現実には、その都度、具体的な事例で判断せざるを得ないんだろうと思いますが、ある程度類型化して申し上げますと、典型的な例としては、例えば我が国周辺地域において武力紛争が発生している場合であって、その上で我が国の平和と安全に重要な影響を与える場合。あるいは、このような武力紛争の発生が差し迫っている場合であって、我が国の平和と安全に重要な影響を与えるような場合。あるいはそれ以外でも、ある国における政治体制の混乱等により、その国において大量の避難民が発生し、我が国に大量に流入する可能性が高まっている場合であって、それが我が国の平和と安全に重要な影響を与える場合。ある国の行動が国連安保理によって平和に対する脅威、平和の破壊または侵略行為と決定され、国連安保理決議に基づく経済制裁の対象となるような場合であって、それが我が国の平和と安全に重要な影響を与える場合。いずれも最後に、我が国の平和と安全に重要な影響を与える場合という言葉で締めくくっているわけでありますが、それについては、やはり個々具体的の場合に、その都度判断せざるを得ないんだろう、こういうふうに思っております。     〔委員長退席、大野(功)委員長代理着席〕
  242. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 その都度判断せざるを得ない事態は当然あるかと思いますが、ただ、やはり国民にわかりやすく、国民的合意を、国民的な理解を得ようと思えば、そもそもどういう事態周辺事態なのかということをもう少し、今の具体例、御説明がありましたけれども、それも含めて、さらに突き詰めて統一見解を出すべきだと私は思っておりますが、この統一見解を出すことについて、どうお考えですか。
  243. 高村正彦

    高村国務大臣 まさに、今申し上げたことが政府内部で話し合って、典型的な例としてはこういうことが示せますねということを政府全体で話し合った結果が今申し上げたことでございます。
  244. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 今までの国会審議の中では、例えば内乱とかクーデター等のことも言及されております。そういったことも含めて、もう一度きちっと整理をして、どういった状況が周辺事態なのか、やはりもっと詰めた形、整理した形で国民に示すということが親切なやり方ではないかと思いますので、ぜひともそういった意味で、改めて統一見解を出すことにつきまして強く要望をしておきたいと思います。  委員長に提案をしておきますので。
  245. 大野功統

    大野(功)委員長代理 後刻、理事会で取り扱いたいと思います。
  246. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 続いて、機雷除去の問題につきましてお伺いしたいと思います。  先ほど上原委員からも御質問があったわけでございますが、ガイドライン本文には機雷の除去ということは明確に書かれてありますけれども、法案の方にはこれは含められておりません。  そこで、まずお聞きしたいんですが、周辺事態の際に、自衛隊が機雷除去を実施することになるのか、実施する場合、機雷除去活動について定めた自衛隊法九十九条を根拠とするのか、改めて確認したいと思います。
  247. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 いろいろ態様によって違うと思うんですが、我が国に対する武力攻撃の一環として機雷が敷設されていると認められる場合は、我が国領海はもとより、公海においても、自衛隊法七十六条による防衛出動により機雷の除去は可能だと考えております。  また他方、この機雷が武力攻撃の一環として敷設されているものではないと認められる場合には、当該機雷は海上における危険な妨害物になっていると考えられることから、我が国領海はもとより、公海であっても、我が国船舶の航行の安全確保のために必要な場合には、一種の警察活動として、先ほど委員御指摘のとおり、自衛隊法九十九条により機雷の除去は可能である、こういうふうに考えております。
  248. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 機雷の問題ですが、今までの政府説明ですと、船舶の航行上の安全確保という問題と、遺棄された機雷であるということが機雷除去の要件だったかと思いますけれども、今までの御説明を伺うと、遺棄された機雷以外にも機雷除去の余地はあるのかということにつきまして、さらに質問をしたいと思います。     〔大野(功)委員長代理退席、委員長着席〕
  249. 柳澤協二

    ○柳澤政府委員 お答え申し上げます。  従来から、武力攻撃の一環として敷設された機雷、特に他国に対する武力攻撃の一環として敷設されている機雷を除去することは、これは機雷を敷設した国に対する武力行使になるということでございますから、それは憲法上できないということで考えております。  一方、それ以外のケースでございますと、今先生お触れになりました遺棄されたものは当然その中に含まれてくると思いますが、要は、武力攻撃の一環として敷設されているものではないと認められるケースにおきまして、かつそれが我が国船舶の航行の安全確保のために障害物となっているというケースは、先ほど大臣もお答えになりました自衛隊法九十九条で除去することが可能だと考えております。
  250. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 今のお答えで、武力攻撃になることはできないけれども、遺棄された機雷以外でも九十九条で処理するケースはあるというお答えであると理解をいたします。  そこで、今度、周辺事態法との関連になりますけれども、自衛隊法九十九条による機雷処理というのは、これはある意味では平時の処理だと思うんですね。先ほどの中谷委員の御発言を引用すれば、赤信号と青信号と黄色があって、有事が赤、平時が青とすれば黄色は周辺事態だという非常にわかりやすい例えがありましたけれども、九十九条による機雷の処理というのはいわば平時の処理を定めたものであって、他方、有事の場合には防衛出動、自衛隊法七十六条によってやる。したがって、青信号と赤信号のときは処理できる法体制があるけれども、周辺事態というのは平時でもないわけですし、かつ有事でもないわけであって、やはりこの空白部分についてはきちっとした法的な基礎をつくるべきではないか。  そういった意味で、周辺事態法の中に明記すべきではないかと私は考えるわけなんですが、この点につきましてどのようにお考えですか。
  251. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 周辺事態安全確保法におきましてはいわゆる三つの活動がありますが、これは、自衛隊法等の現行法令によっては周辺事態対応してこれらの活動を行うことができないために、新たな規定を設けたものであります。  一方、ガイドラインにおいて運用面における日米協力の項に規定されている機雷の除去については、ただいまお話がありましたとおり九十九条によって規定されているわけでありまして、その趣旨目的は、全くガイドライン規定されているものと同じであります。  でありますから、同条により周辺事態対応が十分可能であると考えられたから、私どもはガイドライン法に新たな規定は設けなかったところでありますが、しかし、この法案においては、自衛隊の新たな活動として規定された後方支援等に加え、御指摘の機雷の除去など既に自衛隊法規定されている活動であっても、大変大事な問題でありますから、周辺事態に際して内閣の判断と責任のもとで行うべきことについては基本計画の重要事項の中に織り込んで、周辺事態対応に遺漏なきを期したい、こういうふうに考えているところであります。
  252. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 いろいろ突っ込みたいんですけれども、時間の関係もありますので、基本計画の中にきちっと機雷除去も盛り込むということを今考えておられるということでございますので、ぜひともそうすべきであると考えておりますし、さらに法案そのものに盛り込むべきかどうかにつきまして、改めて議論する機会を持ちたいと思っております。  続いて、船舶検査活動なんですけれども、法案では、国連決議の存在ということを条件として船舶検査活動をすると書いてありますが、自自協議の中では、自由党さんはなしでやるべきだという議論をされたというふうに伺っております。  この際、国連決議がある場合とない場合と実効上どういう差異が生ずるのか、まずその点につきましてお聞きしたいと思います。
  253. 高村正彦

    高村国務大臣 国連安保理決議に基づきまして経済制裁の実効性確保するために行われる船舶検査活動については、国連加盟国は自国を旗国とする船舶に対する検査を受忍しなければならないわけであります。したがって、この場合は、旗国の同意を別途得ることなく検査を行うことができ、国連加盟国全体を対象とした船舶検査活動が行い得るわけであります。  周辺事態安全確保法における船舶検査活動につきましては、周辺事態において、経済制裁の実効性確保するための船舶検査が必要となることも想定されたわけであります。その際には、国連が国際の平和と安定のために重要な役割を果たしているとの観点からも、また、さきに述べた旗国主義との関係からも、国連安保理の決議という根拠があることが有益であると考えられたため、国連安保理決議の要請があることを前提とするものであります。  この検査は、船長の同意を得たある意味では任意の検査なんですが、それでもあくまで旗国主義でありますから、日本がどこの国でもやたらにやっていいというわけではないわけでありまして、何らかの国際法上の根拠が必要だ。その国際法上の根拠としては、それは旗国が同意している、あるいは同意していると同様に見られる場合か、この法案で決めているような国連決議がある場合、それが国際法上も許される、こういうことでありますから、先ほど申し上げたような理由で、国連決議を要件として入れさせていただいたということであります。
  254. 遠藤乙彦

    ○遠藤(乙)委員 私の持ち時間が終わりましたので、今の政府の御見解は私たちも基本的に同感でございます。この船舶検査、ある意味では非常に危険な活動でございますので、これを日本がやるに当たっては、国連決議という普遍的な一つの権威、裏づけを持ってやることが必要だろう、そういった私たちは見解に立っておりますので、この点は、自由党の主張は主張として、ぜひとも国連決議は残すべきであるというふうに主張いたしまして、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  255. 山崎拓

    山崎委員長 この際、山中あき子君から関連質疑申し出があります。遠藤君の持ち時間の範囲内でこれを許します。山中あき子君。
  256. 山中あき子

    山中(あ)委員 改革クラブの山中あき子でございます。  私は三十分の時間でございますので、早速中身に入らせていただきたいと思いますが、この委員会日米防衛協力のための指針に関する委員会であるということを前提といたしますと、その指針と、それから今出されております法案、改正案、これとが必ずしも一致していないという意味で、私は、指針の中で、まずここに触れていない部分というのから入りたいと思います。  なぜかと申しますと、大変たくさんの方々が、これはミリタリーの部分に非常に特化している政策ではないかというふうに思っていらっしゃるわけですが、ガイドラインをよく読んでみますと、これは予算委員会のときにも申し上げましたけれども、先ほどもちょっとどなたか触れていらっしゃいましたが、IIIというところに「平素から行う協力」、これは平時ではなくて平素というところの中に、おのおのの政策を基礎としつつ、日本の防衛及び安定した国際的な安全保障環境の構築のために、平素から密接な協力維持するという項目がございます。  そういった意味で、この平素の協力の中で、より安定した国際的な安全保障環境の構築という中に、安全保障の対話ですとか防衛交流、それから国際的な軍備の管理、軍縮の意義と重要性を認識してこの活動を推進するなどという項目があるわけでございます。  昨年から見ていましても、その前の小渕外務大臣のときにも、予防外交ですとか、いろいろ所信表明の中でもおっしゃっておりましたし、そういった意味で、その面で心を砕いていらっしゃるというのはわかります。  しかし、現実を見てみますと、九八年の一月に紛争予防戦略に関する東京国際会議というのが開かれまして、それから、もちろんARFであるとか、ASEANのフォーラムで国際会議は幾つかありますけれども、それでは、日本がそういった面で本当にここで努力をして、アジア太平洋の安定のために、予防外交あるいは安全保障の対話を主導的にやっているかということになりますと、これは国際的に見ても、また国内的に見ても、顔がまだはっきり見えない、そういう状況でございます。  私は、このガイドライン関連の法案を審議すると同時に、やはりその面を、日本が内外ともにどういうふうにやるかということをきちんと位置づけていただく、それによってバランスのとれた、力の準備を使わなくていいために、力ではない、ソフトの部分の非軍事的な努力をこれだけするということがわかることが非常に大事なポイントだと思いますので、その点の総理の御見解をまず伺いたいと思います。
  257. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 今、山中委員御指摘をいただきながら、どうもこのガイドラインの法案自体が、国民の中の一部にガイドラインが戦争準備、アメリカ追随、こういうような意見があることについてもう少し説明責任というのがあるんじゃないかということでございますが、御指摘いただきましたように、この第三条におきまして外交努力その他の必要性を取り入れておるわけでございますから、そのことをガイドライン法案の一般の中でもっと強調すべきことは強調すべきじゃないかという御指摘は、まことにそのとおりでございまして、改めてそういった点で、「日米両国政府は、周辺事態が発生することのないよう、外交上のものを含むあらゆる努力を払う。」旨の記述がこの指針の中に書かれておるわけでございますから、そのことについての重さというものも十分認識をし、強調していくべきではないか。いわば予防外交と申しますか、そういう必要性を明らかにいたしていきたいというふうに思っております。  政府といたしましても、このガイドラインにかかわらず、そうした認識のもとで、先ほども御指摘ありましたけれども、いろいろの国際会議を開催いたしまして、各国との間におきましてその重要性を指摘してきておるわけでございますので、この機会にさらにその努力を傾注することによりまして、単にミリタリーの問題のガイドラインだということのみならず、一方で、こうした予防外交も含めまして、外交的努力もこの法案の中の重要な部分として強調し、かつその努力をしていくべきだという御指摘は、全くそのとおりだと思いますので、さらに努力していきたいと思っております。
  258. 山中あき子

    山中(あ)委員 総理の決意はよくわかりましたが、外交はプラクティカルでなければその実効性というのが見えないという点がございます。今のような国際会議というのは、いわば点がたくさん打たれているわけですが、それが線になって、そして面になって、立体的にならないと、日本というものがどういう表情で、どういう動きをするものかというのが国際的になかなかわからない。そういう意味で、国際会議だけではなくて、それを早い時期に立体的にまで持っていくということは、相当な政治の意志が必要だろうというふうに私は思っております。  今この機会に一、二提案させていただきますので、今後具体的に御検討いただければと思います。  一つは、予防外交についてでございますけれども、予防外交は、御存じのように、九六年ごろまでは中国は余り協力的ではなかったわけですが、昨年の七月、私も招かれまして北京で初めて予防外交の国際フォーラムというのが開かれました。そして、その際にトウカセン外務大臣も、プリベンティブディプロマシーですねと言って、にっこり笑われた。そういうふうに、この一、二年で変化してきてまいっております。  また、ペンタゴンが、それもまた余り推しておりませんでしたけれども、昨年の十一月、ハーバードのUS・ジャパン・プログラムでこの議論をしたときに、その後からペンタゴンから来ている方たちからメールが届き始めまして、もしかしたら、二十一世紀は軍事だけに頼らない形でアメリカも考えなければいけないかもしれないという個人的なメッセージが幾つか来ておりました。  三月十五日のシカゴ外交評議会のアメリカの世論と外交政策の九九年版というレポートを見ますと、ほとんどの国民の意思は、政府の行為を支持するものではあるが、同時に、米軍の派遣を必ずしも支持するものではない。これは、一般の国民と、御存じのようにもう一つは指導層に聞いておりますが、指導層では海外派兵をもっと続けたいというふうに考えているというアメリカの調査が三月十五日に出てきております。  ということは、アメリカの国民もやはり軍事だけに頼るという時代ではなくなりつつあるという認識に立ってきているということであれば、これは日本にとって私はチャンスだろうと思いますので、ぜひ、世界にいまだない、国際的な交渉力ですとか、あるいは両方をテーブルに着けて話し合う場の設定をするとか、語学教育も含めてですが、そういった予防外交のトレーニングセンターというようなものを日本に持ってきてはどうか。これはいまだ世界に例がございませんから、まず一つ日本が新しい顔を見せられます。  そして、予防外交の四段階のうちの三段階、四段階、つまり紛争の拡大予防ですとか再発予防になりますと、やはりPKOというものの活動がかかわってまいりまして、これはガイドラインにもきちっと明記されておりますので、そういう意味では、PKOの訓練センターもアジアにまだございませんし、これは私は大変残念だと思っていますのは、カナダのカナディアン・インスティチュート・フォー・ピース・アンド・セキュリティーというのが、カナダのPKOの哲学的な背景ですとか、ハイスクール以上の人たちに平和と安全保障は何かという教材を提供しておりまして、私も八〇年代に訪れておりましたが、それが財政的なもので閉鎖されております。ですから、今こういったものも日本にあわせてつくるというのも、具体的にやれる提案ではないかと思います。  そして、もう一つがアジア太平洋の総合安全保障対話でございますけれども、これは、安全保障計画というのが大平時代に出てまいりましたけれども、それをアジア太平洋に敷衍するとすれば、これもやはり十年計画ぐらいで、まず日米がきちっと段取りをつけて、日米中、そして日米中にロシアや韓国を入れて、そして十年後ぐらいにはもうインド、北朝鮮を含む、これはアジア太平洋のすべての国家が参加することによってそれが抑止力になる。  そういった発想の活動を、政府委員が廃止になるとして、副大臣なり政務次官なりがたくさんにふえたら、ぜひ担当の方を置いて外務省にプロジェクトチームをつくって、そしてシンクタンクからも入れて、NGOも入れたそういうプロジェクトチームをつくって、アジア太平洋の国を二年間訪ねて、そして意見交換して日本の考えを説得しながら雰囲気を醸成していって、三年後から七年後までの間にそういった機構を構築する。  これが多分冷戦後の、つまり、あるところをターゲットにした、そういった集団的な安全保障ではなくて、そうではなくて、全部のその地域の国々と一緒にどうやって安全保障を構築するかという、今私は日本がちょうどそのイニシアチブをとれるところに来ていると思いますので、そういったことも含めてぜひ、段階を追ってゆっくりということではなくて、あるいはみんながまだわかってくれないではなくて、こちらから説得するぐらいの外交を展開していただきたいというふうに思いますが、総理、いかがでしょうか。
  259. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 予防外交あるいはPKOの訓練センターを日本にという御主張でございまして、確かにいろいろな国際会議日本でたくさん開かれますけれども、ある程度、一定期間着実に、具体的にそうしたセンターで訓練なり日本の基本的な姿勢を理解してもらうということは、非常に大切なことだと思います。検討してみたいというふうに思っております。  それから、アジア太平洋総合安全保障対話ということでございますが、アジア太平洋地域におきまして、発展段階、政治経済体制、さらに文化的、民族的な多様性が存在することで、各国の安全保障観が多様であること等が特徴であります。そういったことで、この地域安全保障を考えるに際しましては、地域的な特徴を踏まえたアプローチが必要であるということは、私もそのとおりだと考えております。  具体的に、米国を中核とした二国間の同盟、友好関係と、これに基づく米軍の存在を前提とした二国間、多国間の安全保障対話等の枠組みを重層的に整備していくことが、このような特徴を踏まえた現実的な取り組みのあり方であると考えております。  このうち、多国間の政治、安全保障に関する対話、協力の場といたしましてASEAN地域フォーラム、ARFが存在しておるわけでございますが、幅広い視点から、地域安全保障、政治情勢や地域における信頼醸成、予防外交への取り組みにつきまして、活発な意見交換、議論が行われております。また、民間専門家の間でも、種々の観点から安全保障の議論が行われておりまして、最近では、これらの議論とARFとの連携も図られておるように思われます。  我が国といたしましても、これらの会合に積極的に参加してきておるところでございますし、また私自身も、日米中ロ、韓国、北朝鮮が参画した形での話し合いの場を将来的に設定していくことが、北東アジア地域全体の平和と安定のために有益である旨、かねて主張してきておるところでございまして、この点につきましては、ロシアのエリツィン大統領、あるいはまた米国のクリントン大統領、韓国の金大中大統領等は私の考え方にも賛意を示していただいておるようでございます。  一番その中心であります北朝鮮自身がまだアプローチがなかなかできかねておりますが、そういった点で、中国も含めまして、この地域の各国が話し合う場がぜひ欲しいと思っておりますし、加えて、先ほど委員は、インドとかそういう国々も考えたらどうかということでございます。議員の御提案のアジア太平洋総合安全保障対話の取り組みと目的、ある意味では私の申し上げたのは一致する点もございます。ぜひ貴重な御意見として研究させていただきたいと思います。  いずれにいたしましても、今後、安全保障対話協力の取り組みを一体性を持って継続するとともに、総合的、長期的構想のもとで、我が国として、地域の平和と安定のため積極的な役割が果たせることのできますように、不断の努力を積み重ねてまいりたいと思いますし、また議員御提案の点につきましては、その実現のために検討を進めさせていただきたいと思っております。
  260. 山中あき子

    山中(あ)委員 防衛問題と政治問題、経済問題、そして環境あるいは人権問題というのは、今は密接不可分の状態になっていますから、ぜひそういう見地で総合的な安全保障対話のイニシアチブをとっていただきたいと思います。恐らく、与野党、それについては協力ができるのだろうというふうに思いますので、この法案とは別に、そういったことを御検討いただきたいと思います。  それでは、周辺事態法関連のところに入らせていただきますが、その前に、先ほどのガイドラインの中で、IIの1というところに、「基本的な前提及び考え方」で、「日米安全保障条約及びその関連取極に基づく権利及び義務並びに日米同盟関係の基本的な枠組みは、変更されない。」というふうにありますが、これは間違いございませんでしょうか。
  261. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 そのとおりでございます。
  262. 山中あき子

    山中(あ)委員 それでは、そこの2のところでございますが、「日本のすべての行為は、日本の憲法上の制約の範囲内において、専守防衛、非核三原則等の日本の基本的な方針に従って行われる。」という記述が日米ガイドラインの中にございますが、これも間違いないでしょうか。
  263. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 御指摘のような記述はございます。
  264. 山中あき子

    山中(あ)委員 今確認していただいた部分というのは、この周辺事態法の中を読んでも、どこにも感じられない部分でございます。ですから、それが安保の枠内かどうかというような議論になってくると思います。  私は、これは多分、タイトルかどこかに日米安全保障条約に基づくとか、あるいは日米防衛協力のための指針の実行のための周辺事態関連法案であるということが一言明記されていれば、ある意味では無用な議論を排除できたのではないかな、つまり、それはこの枠内の中であるという安全保障をきちっとうたったガイドライン趣旨が生かされたのではないかと思っているのですが、その辺について、これから日本の国の人たちがそれに基づいていろいろなことを理解していくためにも、少し考えていただくことはできませんでしょうか。総理、いかがですか。
  265. 竹内行夫

    ○竹内政府委員 この周辺事態安全確保法のそもそもの目的については法案の第一条に書かれているところでございまして、そこで、この法律目的といたしまして、日本国の平和と安全に資するためのものということで従来から政府の方から御答弁申し上げておりますのは、日米安保条約の目的というのが日本と極東の平和と安全の確保に資するものである、そのうちの日本の安全に注目したのがこの法律であるということで、これは法律の第一条の目的からいたしましても、安保条約の目的の枠内であるということは明らかであろう、こういう趣旨でございます。
  266. 山中あき子

    山中(あ)委員 どういう政治的な意思があって、それが法律にどういうふうに具体化されていくかということを考えますと、この目的のところを読んでもこれが日米安全保障条約に基づくのかガイドラインに基づくのかということがわからないということは、法案としてひとり歩きをするのではないかという懸念を持つ向きもあるわけですから、ぜひその辺のところは、先ほどからの御答弁でも明らかなわけですから、どこかにそれを入れるあるいは明記するというようなことをお考えいただきたいと思います。  それでは、次に移らせていただきますが、私は、一つの独立国家というのが自分の国の安全保障、国民の安全を守るためには、一つは、例えば非同盟の中立になるのか、もしくは、ある意味での同盟国ということを考えるというのは自然だろうと思います。私個人としては、非同盟中立というのは理想かなと思いますけれども、歴史的な経緯から見ましても、今の日米関係というものを日本は歴史的な関係で選択し、その後それを、国民がそういう政府支持してきたということは、もちろん反対もあると思いますけれども、マジョリティーの国民が支持してきたというふうに考えますと、これを非常にいい形で考えるためには、やはり、今までのような日本が庇護してもらっているという関係から、もっと自立した、日本がアメリカ合衆国とイコールパートナーになるためには、一つのことに関してイコールなコントリビュートをするというのが当たり前のことで、そのコントリビュートをするから意見も言えるのであるという意味で、やはりそのコントリビュートが、同じことをするというのは日本の平等の今まで来たところですけれども、私は決してそうではないと思うんです。それが、前を受け持つ人、後ろを受け持つ人がいても、両方が質が同じ貢献であれば、これは私はイコールのコントリビュートだと思います。  そういう意味におきまして、この新しいガイドラインというものを考えるという視点があると思いますけれども、そのためには、やはり同等の貢献をすると同時に、日本の意思というものを決定の中にどういうふうに意見を入れていくのか、あるいはその同盟関係というのは、ある意味では非常に近いわけですけれども、必要に応じて、例えば対米に対しては注文をつけるとかあるいは同意をしないということもあり得るというくらいの、自立した、お互いのイコールパートナーという観点で私はこのガイドラインというものを考えてみたいというふうに思っておりますが、同盟ということの簡単な定義あるいは認識をお伺いしたいと思います。外務大臣、お願いいたします。総理ですか。
  267. 東郷和彦

    ○東郷政府委員 お答え申し上げます。  同盟といいますのは、価値を同じくする国が国々同士協力してやっていくというような趣旨が一般的な定義でございます。国際法上の明確な定義というものはございません。
  268. 山中あき子

    山中(あ)委員 それでは、改めて外務大臣にお伺いいたしますけれども、午前中の答弁も予算委員会のときも、米国という国は国連の決議に反するようなこともないし信頼ができるということで、ほとんど米国が間違った行動はしないのではないかというニュアンスでお答えになったように思いますが、そうではなかったでしょうか。
  269. 高村正彦

    高村国務大臣 午前中に御答弁申し上げたのは、安保条約で国連憲章を守る、守ってやっていくということが米国に義務づけられている、こういうことを申し上げたわけであります。  それで、今新たに私は、米国は基本的に守っていくだろうと思っておりますということを申し上げます。
  270. 山中あき子

    山中(あ)委員 完全な人間がいないと同じように完璧な国はないわけですから、予算委員会のときも申し上げたかもしれません、八六年の米国のリビアの空爆のときに英国を除くほかの同盟国は、基地を使わせることあるいは上空を通過することにノーと言ったということがあって、そして、その後十一月二十日に国連の総会では、アメリカのリビアに対する攻撃に対する非難決議が出たということもございます。  ですから、一番親しいアメリカであっても、やはり実際にさまざまな背景があって決断したということもあり得るという意味で、日本がもっと冷静に、いい点も悪い点も確認しながら、一緒にやれるときとそうじゃないときとということの意思をきちんと表明するという決意を、私は総理からお伺いしたいと思います。
  271. 高村正彦

    高村国務大臣 今、外国で基地を使用させることにノーと言ったという例がありましたが、日本の場合も、戦闘作戦行動については事前協議が米側に義務づけられておりまして、それに対しては、日本側はイエスと言うこともノーと言うこともあるわけであります。  そして、この新たな日米防衛協力のための指針におきましては、日米両国政府がおのおのの判断に従って、日米協力のための効果的態勢の構築のための努力を具体的な政策措置に反映させる旨がうたわれているところでございます。また、同指針実効性確保するために作成された周辺事態安全確保法案等におきましても、我が国の平和と安全に重要な影響を与える周辺事態に際し、本法案等に基づき対米協力を行うか否か、いかなる協力を行うかは、我が国が自主的に判断することとなります。  したがって、指針及び本法案等は、我が国にアメリカに対する一方的な協力を義務づけるといった性格のものではないわけであります。
  272. 山中あき子

    山中(あ)委員 法文にきちっと書かれております。あとは政治の意思の問題だろうというふうに私は思っておりますので、総理の御決意を伺えればと思ったのですけれども、いかがですか。
  273. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 そもそも、日米安保条約につきましてはいろいろ議論があることは事実です。米国の議会の一部の中にも、極めて片務的ではないかと、逆の意味でですね、という意見もあります。日本としては、アメリカから日本を守っていただいておるという認識を持っている人もおります。  しかし私は、日米間におきましては、この条約そのものは双方に利益があるものだという理解をいたしておるわけでございまして、行政府にといいますか、政府並びに国民の間では、恐らくきちんとこの条約そのものの本質についての理解は深まっていると思いますし、また政府といたしましても、米側に対しましても申し上げるべきことは十分申し上げていくことが、基本的には長きにわたってこの条約によって信頼を持って両国が安全保障に対し責任を負っていくところと思いますので、日本政府としては、申し上げるべきことは堂々と申し上げて対応していきたい、このように考えております。
  274. 山中あき子

    山中(あ)委員 自治体との関係のこともございましたけれども、実は、今回のような形にもし枠組みをつけて出したとしても、それが外的な要因で、つまり、いわゆる外からの攻撃にさらされる人たちを助けるとかそういう要因だけではなくて、危機管理の体制というのは総合的なものであって、内的な要因、外的な要因、両方合わせたやはり危機管理の法制が必要だろうと私は思います。  そういう意味では、有事立法という言葉ですと防衛庁長官のもとで防衛に関することになりますけれども、まだ記憶に新しい阪神・淡路大震災のときのように、消防自動車やそれから救急車が道路交通法によって行けなかったという事態もございますから、そういった意味で、本当は官房長官にお伺いしたかったのでございますけれども、官房長官のかわりに総理というのは大変失礼かもしれませんが、防衛庁長官のもとではなくて、そういった総合的な、どこの私権をどこまで制限をするか、そういったものができれば、私は、日本の国民は非常に我慢強くて、秩序立っていてよくわかると。  だから、きちんと枠組みさえ示せば不安はないのですけれども、枠組みが示されないでちょこちょこと、いろいろなところにいろいろなものが出てくると、ああではないか、こうではないかという気持ちになるわけで、その辺のところも、もちろんプロジェクトチームとかいろいろ阪神・淡路大震災の後おやりになっていらっしゃいますけれども、ぜひ、もう一度総合的な危機対応の法案というものをお考えいただけませんでしょうか。
  275. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 国の安全と繁栄を維持し国民の生命財産を守ることは、言うまでもなく政府の最も重要な責務であると認識をいたしております。  そこで、政府といたしましては、橋本内閣以来、我が国に対する危機が発生した場合やそのおそれのある場合におきまして、我が国としてとるべき必要な対応策につきまして、あらかじめ具体的に十分検討、研究することを目的といたしまして、緊急事態対応策検討実施いたしております。  政府といたしましては、我が国危機管理体制を一層堅固なものとし遺漏なきを期すとの観点から、必要な対応のあり方についてさらなる検討を行っていく考えでございまして、今、山中委員御指摘のように、国民は賢明だろうと思います。きちんとした法律体系をもって行えば、その緊急、危機の状況につきましても適時適切に対応ができる、そういう意味での、政府としてはガイダンスが示されるような法的な措置も考えていかなきゃならない、努力してみたいと思っております。
  276. 山中あき子

    山中(あ)委員 この法案の後も、国際平和協力法とか、あるいは国連とのどういう関係を持つかとか、今のような危機管理のことですとか、さまざまな問題が残ると思います。ぜひ、長期的な展望、そして総合的な視座、そうした背景の哲学がわかるような全体像を示して、そして日本の将来のビジョンを示しながら、それを段階的にどういう形で実現していくかというような構想力、それから交渉力、そういったものを含めて日本の将来について、この委員会でも法案のみではなくてその辺もぜひ議論させていただく機会を、そういう運営を委員長にお願いして、質問を終わります。
  277. 山崎拓

    山崎委員長 これにて遠藤君、山中君の質疑は終了いたしました。  次に、東祥三君。
  278. 東祥三

    ○東(祥)委員 自由党の東祥三でございます。  周辺事態安全確保法について伺います。  まず、質問の内容に直接入る前に、質問するに当たっての価値前提、そしてまた、私の信念を述べたいと思います。  総理我が国は、戦後半世紀にわたって民主主義を守り、平和と安全を謳歌してまいりました。今日の日本は、私たちだけで築いたものではないと思います。さきの大戦で新しい日本の建設を私たちに託して死んでいった数百万の同胞の無念と、そしてまた、灰じんの中ですべてを失いながら生き残った日本人一人一人の血のにじむような努力と責任感が巨大なエネルギーとなって今日の日本をつくり上げたのだと思います。  私たちの日本は、今や私たち国民のものであると思います。さきの大戦で苦しみ抜いて死んでいった、そして敗戦後の混乱の中で働きづめに働いて死んでいった私たちの祖父が、また祖母が、父が母が私たちに残してくれた国だと私は思います。ささやかな家庭の幸せ以外に何もよいことのなかった、そしてまた、魂の底まで信じていた国に家も家庭もずたずたにされた時代を生きた日本人の先達たちが、二度とだまされるな、二度と自分たちと同じ苦しみを味わうな、思い切り精いっぱい幸せに生きてほしい、そういう願いを込めてつくり上げた民主主義国家がここにあるんだろうと私は思います。  その誓いが日本国憲法であります。その上に私たちの平和と繁栄があると思います。この国は私たちのものである、また、この国の憲法もまた私たちのものであると思います。私たち自身が納得しない限り、私たちは二度と抽象的な国の利益のためにみずから銃をとることはない、家族を犠牲にすることはない、このように申し上げたいと思います。  政府の奥深くに巣くう官僚の三百代言には二度とだまされない、国民に対して一片の責任も負わない官僚によって私たちの幸せをおもちゃにさせることはできないと思います。わずか半世紀前に、昭和前半の官僚と軍人が残した国民への裏切りという傷は、民族の心の傷となって、いまだいえぬほど、いまだ血を噴くほどに深く、鋭くうずいていると思います。  私たちは、次の世紀に新しい日本を支えていく世代であります。私は、国民の代表として、官僚の独善と傲慢を排して、この国の安全保障のあり方を私たち自身で選択し、実現するつもりであります。それが、この時代に生きる政治家の使命だと私は信じるからであります。政治家の怠慢が軍部、官僚の暴走を許した失政を二度と繰り返してはならないからであります。  総理、このように考えるとき、私は、安全保障の問題とは、突き詰めていけば、民主主義の手続の中で国民自身が、また、国家の緊急事態に際して何を犠牲にして何を守るのかということに対して議論をし尽くして、事前に合意しておくということにほかならないと考えます。今こそ国民に政策の選択肢を示し、議論を尽くして、健全な真のコンセンサスをつくることが必要だと思います。私は、きょうはこのような信念に立って質問させていただきたいと思います。  総理、私たちは周辺事態安全確保法案によって、今、何を選択しようとしているかを国民に明らかにすべきであります。冷戦構造の中での安全保障論議は、多くの同僚議員も言われていたとおり、全く不毛であったと断言せざるを得ません。国民は、真の安全保障論議を聞く機会を奪われ、目隠しをされた状況に置かれていたからであります。政府は、まず、我が国はいかにして自国の安全を確保しているのかを赤裸々に国民に説明するべきであります。  我が国は、さきの大戦で連合国と戦い、アジア諸国の信頼を失い、戦後二十数万程度の中規模の軍事力のみを保持することが許されました。我が国は、ユーラシア大陸の核大国である中国、ロシア両国から独力で自分を防衛する能力を持ち得ません。最近、ようやく放棄されました限定小規模対処の戦略は、旧ソ連の攻撃があれば米陸軍の来援がない限り、我が国は数週間で陥落せざるを得ないことを正面から認めていた戦略であります。  我が国の安全を確保するためには、日米同盟によって米国のプレゼンスをアジア太平洋地域確保し、アメリカ軍事力による抑止力を最大限に発揮させ、紛争を未然に防止する以外に道はありません。それこそが軽武装、平和主義を掲げる我が国安全保障の王道であり、吉田総理の大きな決断であったはずだと私は思いますが、まず、この点を小渕総理に御確認いただきたいと思います。
  279. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 東議員の御指摘のとおり、日米安保条約に基づく米国の抑止力は引き続き日本安全保障のよりどころでありまして、米国が引き続き軍事的プレゼンスを維持することは、アジア太平洋地域の平和と安定の維持のためにも不可欠であると考えます。  政府といたしましては、日米安保条約を基盤とする両国間の安全保障面の関係が、今後とも両国の共通の安全保障上の目標を達成するとともに、二十一世紀に向けてアジア太平洋地域において安定的で繁栄した情勢を維持するための基盤であり続けるものと確信をいたしております。  今、御質問の中に出てまいりました吉田総理の決断、すなわち、戦後の日本安全保障につきましては、できる限り軽武装、平和主義を掲げておられました。そのことは、当時、全く廃墟の中に立ち上がらんとした我が国が、経済的な発展という基盤なくしては世界に伍していけないという形の中でこうした方策をとったこと自体は、私は、大きな判断であり、その結果日本としては今日を迎えた原因になったと思っております。  ただ、この事態とともに、その後、日本としては、日本みずからが守る意思を明らかにしながら、同時に国民的理解を求めながらでありますが、特にアメリカとのこうした条約をもとにいたしまして日本の平和と安全、また極東の平和も確保していくという方向につきましては、徐々にではありますけれども、吉田首相が念願したことから発足いたしまして、今日、安保条約に対する期待と大きな役割というものにつきまして国民的な理解が大変深まりつつあると認識をいたしておる、こう思っております。
  280. 東祥三

    ○東(祥)委員 同盟について、さらに言及させていただきたいと思います。  総理、同盟というのは、自国の兵士の命をかけて相手の国の国民を守る国家と国家の間の約束であります。国民のすべてが納得するほどに重大な国の利益を守る場合にしか、締結することは許されないと思うのであります。そして、一たん結んでしまえば、盤石の信頼をもって、いかなる甘えも排除した対等のパートナーとして運営に当たることが必須であると思います。  日米同盟も同様であります。国の大小はあっても、また軍事力の大小はあっても、いかにすれば同盟の目的である極東の安定と我が国の平和を実現できるのか、一緒になって知恵を絞り、汗を流してこそ、対等な主権国家同士の同盟と言えると私は思います。対等なパートナーであってこそ、責任ある批判ができ、また建設的なノーが言えると思うからであります。日米同盟に取ってかわる何らかの対策もないままに安保条約を批判し続けるだけでは、子供の反抗期と同じであります。  今求められていることは、日米両国がこの同盟の信頼性をいかにして最大限にできるかということだと思います。その努力の帰結が日米ガイドラインであり、この周辺事態安全確保法案であると思います。  私は、この法案自体が必要であることは決して疑いません。総理もまた、本法案が日米同盟の信頼を確保する上で不可欠であるとの信念を持って提出されたものと私は信じておりますが、総理の御意見を賜りたいと思います。
  281. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 まず、違法な武力の行使を行った国や国連の集団的安全保障措置対象となっている国と米国との間で、我が国が中立的立場を選択することはあり得ないと考えます。  また、我が国の平和と安全に重要な影響を与える周辺事態に際し、国連憲章及び日米安保条約に従って事態の拡大を抑制し、あるいはその収拾を図るための行動をしている米軍に対し、法案に基づく諸活動を通じて我が国協力することは、我が国の平和と安全の維持及び日米同盟関係の本旨に照らして当然のことであると考えます。その意味でも、我が国が中立的立場を選択することは考えられない、このように考えます。
  282. 東祥三

    ○東(祥)委員 総理周辺事態に及んで我が国がいかなる対応をするべきかという問題をめぐって、予算委員会においても約五十時間ぐらいここで議論されてきている。またその他の、外務委員会また安全保障委員会においても、このガイドライン関連法案が提出される前から議論されてきております。そして、今申し上げているとおり、周辺事態に及んで我が国がいかなる対応をするべきかという問題をめぐって国会の論議というのは真っ二つに分断されているのか、このように私は思わざるを得ません。  私たちは、冷戦時代に演出された国論分裂の後遺症にいまだに悩んでいるのかもしれません。一つは、総理のように、日米同盟の信頼性を向上させることが米国の抑止力の担保となるとする考え方があるのに対して、もう一つは、可能な限り我が国は周辺諸国の有事に巻き込まれるべきではないとして、中立を志向する考え方であります。  しかしながら、同盟を結んでおきながら中立を志向するのは裏切りであると私は思います。我が国の安全が危機に瀕するような準日本有事の事態に及んで、米軍の兵士が生命を賭して我が国周辺で戦っているときに、当の我が国が中立を志向するのはひきょうであり、卑劣であると私は思います。およそ尊厳ある主権国家としてとるべき道ではないと私は思います。目先の小さな危機に右往左往して同盟の根幹にある信頼関係を傷つければ、我が国日米同盟という安全保障政策の大きな柱を永遠に失うことになると私は思うからであります。  もし中立を志向することを主張するのであれば、あらかじめ日米安保条約を破棄し、国民に責任ある対策を示すべきであります。形だけの同盟国のままで心は中立国というような態度をとることは決してできないと思うからです。  そこで、総理にお伺いいたします。  周辺事態に臨んで我が国が同盟国たる米国に対して中立的政策をとることは絶対にないということを、まず御確認いただきたいと思います。
  283. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 その点につきましては、先ほども答弁申し上げましたが、我が国としては、そうした中立的対応をとるということはありません。ぜひ、そういうことで日米間の信頼を確保するとともに、確固たる信念を持ちまして日本安全保障に対しての責任を負ってまいりたい、このように考えております。
  284. 東祥三

    ○東(祥)委員 総理、続いて質問します。  周辺事態において我が国米軍を支援するのは、それが我が国安全保障に重大な影響を与える準日本有事と言える事態であるからです。極東の安定が我が国の安定に直結しており、我が国だけの孤立した平和などあり得ないからです。一国平和主義というのは、独善的な孤立主義者がもたらした妄想だと私は思います。  例えば、朝鮮半島全体がスターリン主義的な独裁体制の国の手に落ちるとすれば、それで我が国の安全が守れるのでしょうか。対馬、九州は、中国地方は、直ちに直接の脅威の対象となると思います。韓国崩壊に伴う混乱は、我が国に大量難民や、あるいはまた経済混乱をもたらすと思います。朝鮮半島は、我が国にとって最大の戦略的要塞であります。安保条約第六条があるからやむを得ず韓国を防衛する米国に協力するのではないと思います。我が国自身の安全のために、我が国国民の安全のために、朝鮮半島の平和を守る米軍を支援するのであります。  総理、私はここで佐藤総理が、一九六九年の十一月だったと思いますが、ワシントンのナショナルプレスクラブで行われた演説を思い出しております。佐藤総理は、韓半島の安全は日本国にとって緊要であり、朝鮮有事の際には事前協議に対して速やかにかつ前向きに対応すると言われました。この考え方に御変更のないことをまず確認したいと思います。
  285. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 我が国の安全は極東の平和及び安全と密接に結びついておりまして、現在におきましても、韓国の安全は日本自身の安全にとって緊要であるとの従来からの政府の認識に変更はございません。  その上で、米軍が戦闘作戦行動のための基地として我が国の施設・区域を使用する際に行われます事前協議の運用につきまして、一般論として申し上げますれば、政府の基本的立場は、我が国の国益確保の見地から、具体的事案に即して自主的に判断して諾否を決定するということだと思います。  すなわち、従来から一貫して説明しておりますとおり、諾否の基準は、我が国の国益、すなわち我が国の安全を確保するということでありまして、その際、極東の安全なくして我が国の安全を十分に確保し得ないとの認識のもとに、極東の安全に関係する事態を常に我が国自身の安全との関係において判断し、我が国の安全に直接、また極めて密接な関係を有するかどうかという見地から対処することになると思います。
  286. 東祥三

    ○東(祥)委員 総理、今テレビを見ている国民は、総理は何を言ったか理解できないと思います。  私が質問したのは、朝鮮有事の際には事前協議に対して速やかにかつ前向きに対応すると、一九六九年、佐藤総理は言われたのです、この考えに変更はないんですかと聞いたのです。あるかないかです。どうぞ。
  287. 東郷和彦

    ○東郷政府委員 お答え申し上げます。  ナショナル・プレスクラブの総理の……(東(祥)委員「いや、総理に聞いているのです」と呼ぶ)
  288. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 佐藤総理の、この総理大臣の答弁、一九七一年十一月十一日でございますが、それに関連いたしまして、十一月十二日の衆議院の特別委員会におきまして、同じく佐藤総理が次のように申し上げております。  私のプレスクラブにおける表現は、言葉が不足し、不十分でありましたので、真意が誤解されがちでございますから、これを改めて、事前協議については、国益に従って自主的に決定をいたします、イエスもありノーもある、こういうことをはっきり申し上げたのでございます、こう言っておられるわけでございまして、佐藤総理が断言して当時お話しされたということでないと思いますが、事前協議につきましてはもとより、常にそうでありますが、イエスもあればノーもある、こういうことだろうと思います。
  289. 東祥三

    ○東(祥)委員 日米同盟を選択した以上、中立を志向する孤立主義的な考え方は捨て去らなければならないと思います。  この関連でお伺いしますけれども、現在も官僚サイドから、前方と後方を分ける議論が示されております。現実を知らない法制局官僚、軍事の専門家もいない、外交の専門家もいない、その法制局官僚が、後方地域であれば我が国は戦争に巻き込まれないと考えているのだと思います。これほどに国民を愚弄する議論は、私はないと思います。我が国米軍基地があり、米軍に対して直接戦闘行動への出撃を許せば、米国と戦っている侵略国が我が国を攻撃の対象とすることは当然の軍事的選択であります。後方地域で支援しているから安全であるというような考え方は、戦中の大本営発表よりもさらに愚劣な、国民に対するうそであると私は思います。  我が国が後方にとどまるのは、侵略国の武力攻撃を恐れ、巻き込まれないようにするためではありません。それは、日本国憲法が、みずから攻撃されない限り決して武力は行使しないと定めているからにほかなりません。我が国は、いかに侵略国が我が国を敵視しようと、正義のために戦っている米軍に対し、憲法の許す限りの協力をするのは当たり前であります。しかし、自分が攻撃されない限り決して武力には訴えないと言っているのであります。これが、米国の同盟国であり、同時に、平和憲法を掲げる日本のとるべき道だと思っております。我が国がそのような気構えを示すからこそ、日米同盟が十分に機能するのであり、米国の抑止力が働いて紛争が未然に防止することができると思います。  総理周辺事態安全確保法案に込められた我が国の戦略は、単に、周辺事態に巻き込まれる危険を冒してでも、侵略国に立ち向かう正しい側を毅然として支援するという姿勢を打ち出すことによって紛争を未然に防止することにあるというふうに私は思うのですが、この点について、総理の御所見を伺いたいと思います。
  290. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 日米安保条約は、我が国及び極東の平和と安全を維持することを目的とする防御的な性格を持っております。周辺事態安全確保法は、このような日米安保条約に基づく日米安保体制のより効果的な運用を確保して、我が国に対する武力攻撃の発生等を抑止することに資するものでございまして、我が国の平和と安全に重要な影響を与える周辺事態におきまして、議員の御指摘のように、事態の拡大の抑制、収拾のための国連憲章及び日米安保条約に従い行動する米軍に対しまして、我が国周辺事態安全確保法案に基づき後方地域支援を行うことは当然だろうと考えております。  こうした我が国の行動に対しまして、相手方、相手国が種々の評価を行い、何らかの措置等をとることは、事実問題としては考えられますが、こうした危険性と、日米安保体制を強化し、これを効果的に運用できるようにすることによりまして、我が国に対する武力攻撃等が発生しないように抑止力を高める効果の両者を比較すれば、後者の方がはるかに大きいと判断いたしておる次第でございます。
  291. 東祥三

    ○東(祥)委員 総理、前方と後方の議論との関連でさらに質問させていただきますが、さきの予算委員会で戦時法規の問題を取り上げましたが、この問題についてさらに言及させていただきたいと思います。  前線での戦闘も後方の支援も同じ戦争の一環であり、我が国が米国に後方支援をすれば、我が国自衛隊等が軍事目標として攻撃されたとしても、戦時法規、特に軍事目標主義に照らして文句が言えないという乱暴な意見がこの国会の中で聞かれます。これは、戦時法規の考え方を誤って、国民を惑わすものだと私は思います。  戦時法規とは、武力紛争の際に行われる殺人や破壊行為のうち、特に残虐なものを禁止する法規であります。例えば、武力紛争が勃発すれば、文民や民用物を攻撃することは戦争犯罪です。けものに劣る残虐行為として許されないのは当然のことであります。しかし、戦争が違法化されている国連憲章のもとでは、そもそも、軍人ならば殺してもよい、軍用物なら破壊してもよいという論理自体が成り立ち得ないのだと思います。戦時法規とは、国連憲章に違反して侵略の罪を犯した国の兵士が、戦争犯罪というさらなる罪を犯さないために守らねばならない最低限のルールにすぎないからです。  周辺事態において我が国に不法に武力攻撃を加えようとする国が、自衛隊員のみを殺りくし、自衛隊施設に限って破壊活動を行ったとして、それが戦時法規上合法な戦闘行為であると主張することに何の意味があるのか。そのような殺人や破壊行動は、たとえ戦時法規に合致していようと、国連憲章上また国際法上不法な侵略の一環にすぎず、容認されるはずがないということを、外務大臣に御確認いただきたいと思います。
  292. 高村正彦

    高村国務大臣 委員がおっしゃることは、一〇〇%正しいと思います。  違法な武力攻撃がその軍事目標を絞ったからといって正当化されるなどという論理は、全くあり得ないことであります。
  293. 東祥三

    ○東(祥)委員 総理、次に、周辺事態安全確保法案について、基本的な思想を伺いたいと思います。  この法案は、日米安保体制の信頼性を高め、もって周辺事態の発生自体を未然に防止することによって日本の安全と平和に資することが最大の眼目であるはずであります。総理も、何度もこの場で言われております。ところが、国連の決議履行に関する条項が混在していて、法案上の思想を混乱させていると思います。この点についても、前の委員会において申し上げているとおりであります。  自由党は、我が党は、国連決議があるときには、その決議に基づく武力行使は憲法第九条に違反しないという立場であります。人類の歴史において、集団安全保障体制が真剣に議論されて以来、自衛権と集団安全保障措置は常に、非合法化されるべき戦争の対象外として考えられてまいりました。国際連盟規約も、不戦条約も、国連憲章もそうであります。我が国の憲法は、これらの集団安全保障体制確立の大きな歴史的流れの中で書かれたものであります。そこで禁止されているのは、国権の発動たる戦争だけであって、国連決議に基づく集団安全保障のための措置は含まれていないと考えるからであります。  ところが、本法案は、船舶検査について国連安保理決議を前提としております。しかも、船舶検査の内容を任意の職務質問に限っております。私たちは、国連決議を前提にするのであれば、威嚇射撃を含めて、他の国連加盟国と全く同様の活動をするべきである、このように考えます。もし、海上において任意の職務質問しかないということであれば、むしろ、国連決議を前提とすることはやめるべきであります。  この点について外務大臣に御所見を伺いたいと思います。
  294. 高村正彦

    高村国務大臣 委員は、国連の活動に長く携わられてきた方でありまして、貴重な意見として拝聴をいたしました。  ただ、一方、周辺事態安全確保法案における船舶検査活動につきましては、周辺事態において経済制裁の実効性確保するための船舶検査が必要となることも想定されます。その際には、国連が国際の平和と安定のために重要な役割を果たしているとの観点からも、また旗国主義との関係からも、国連安保理の決議という根拠があることが有益であると考えられたため、国連安保理決議の要請があることを前提とするものであります。  また、これまで行われた船舶検査におきましては、経済制裁の実効性確保するためにいかなる措置をとるかは各国の判断にゆだねられていること、及びこれまでの諸外国活動実績にかんがみ、政府としては、周辺事態安全確保法案に規定されている活動の範囲内で有効に機能する船舶検査活動が行い得るものと考えたわけであります。  これらの点は、委員と見解を異にするものかもしれませんけれども、ぜひ御理解をいただきたいと思います。
  295. 東祥三

    ○東(祥)委員 この点については、さらに次のように質問したいと思います。  国連決議がない場合、船舶検査活動というのはできないんでしょうか。この法案自体ですと、国連決議がないと船舶検査活動はできないということになりますね。
  296. 高村正彦

    高村国務大臣 旗国主義との関係で、旗国の、その船がつけている旗の国ですね、その同意があった場合、あるいはあると同様とみなされるような特別の事情がある場合は別でありますが、国連決議がないと、やはり旗国主義との関係で、日本が独自に、たとえそれが船長の同意を得る船舶検査であっても、できないと思っております。
  297. 東祥三

    ○東(祥)委員 そうしますと、この周辺事態関連法案は、集団安全保障措置あるいはまた安保理、あるいは総会の決議が出る前の話をしているんじゃないですか。  つまり、集団安全保障措置が発動したときにはすべての活動にかかってくることは、もう外務大臣おわかりのとおりだろうと思います。日米安保条約にもそのことがちゃんと書かれているわけです。日米安保条約に基づく種々の諸活動も、集団安全保障措置が発動したときには、日米がそれぞれ、国連に具体的な活動について報告しなければならないわけです。  そうしますと、どうしてこの船舶検査活動だけ国連の決議が出てくるんですか。国連の決議を前提にしないで、あくまでも周辺事態という日本の平和と安全に重大な影響を及ぼすことが出てきたときに、アメリカ軍が行動する、それに対しての日本米軍への協力という、どうしてそういう体系で整えないんですか。そのときに国連の決議が出れば、国連の決議が出た時点で別の法体系で対応すればいいでありませんか。そこに思想の混乱があると私は申し上げているんです。
  298. 高村正彦

    高村国務大臣 この船舶検査はあくまでも周辺事態において行われるものでありますから、私は、周辺事態安全確保法案という、この日米安保の切り口でとらえられるものだと思っております。  それで、一方で、先ほどから申し上げておりますように、旗国主義、その船が掲げている旗の国ですね、そこの国が管轄権を有しているということでありますから、仮に船長の同意があったとしても、日本がその旗国の同意がなければ船舶検査という活動はできないわけでありまして、そういう場合に、旗国の同意がない場合に、どういう場合にできるかといえば、国連の決議があった場合はできますねと。現実に、国連の決議があった場合で周辺事態に当たるというような状況というのはかなりの場合あり得ると思います。  そして、委員は先ほど、そういう国連の集団安全保障措置がとられたときは、もう既に安保条約は一切働かないんだ、こうおっしゃいましたが、必ずしもそうではなくて、国連が完全にその事態を収拾できるような措置をとった場合にはもう日米安保条約なんというのは必要なくなるということでありまして、国連がある種の集団安全保障をとったとしても、まだ日米安保条約が働く余地というのはそれは幾らでもあるんだ、こういうふうに思います。
  299. 東祥三

    ○東(祥)委員 外務大臣、混乱していると思います。  あくまでも、国連の決議がなされたときには、周辺事態関連法案で述べられている、書かれている米軍活動というのは、あくまでも、例えば朝鮮半島で、具体的にわかりやすく申し上げれば、何らかの有事が起こったときに、米韓防衛条約に基づいて出動するわけです。集団的自衛権に基づいて出動するわけです。国連の決議が出れば自衛権の問題ではなくなるわけです。そこに、私が申し上げている日米安保条約そのもの、それ自体が自衛権の範疇において動くということはなくなりますねと、そういうことを申し上げているんです。そこにおいては混乱はないと思うんですけれども、いかがですか。
  300. 高村正彦

    高村国務大臣 例えば、朝鮮国連軍の場合でも、朝鮮国連軍として活動している米軍が、日米安保条約の目的達成のために活動しているということは十分あり得るわけで、朝鮮国連軍として活動した場合にはもう日米安保は働かないとかそういうことではないんだろう、こういうふうに思っています。
  301. 東祥三

    ○東(祥)委員 自衛権の問題ではなくなりますねということを申し上げている。その点についていかがですか。そうでないと、本質的に考え方が違うということになると思いますけれども。
  302. 高村正彦

    高村国務大臣 自衛権というのは、一般的に実力の行使、これは集団的自衛権であろうと個別的自衛権であろうと実力の行使で、この周辺事態安全確保法で自衛権という話は最初から日本はやっていないわけでありまして、日本の平和と安全に資するために行動していると。むしろ、その集団安全保障とか、あるいは個別的自衛権とか集団的自衛権とか、そういう観念は、戦争が一般的に違法とされたのに対して、各国が武力行使をするのはこういう場合にはできますねということで、集団安全保障の場合、そして個別的自衛権の場合、集団的自衛権の場合と、こう定義されているわけで、その国連の安保理決議があったから、日本の平和と安全に資するために日米安保条約の目的の範囲内で動いていることは、それは二者択一でどっちかでなければいけないということではないということを私は申し上げているわけであります。
  303. 東祥三

    ○東(祥)委員 もう時間がなくなってきてしまったので。  ただ、今の、これは外務大臣とまた議論しなくちゃいけない点だと思いますが、この船舶検査活動についてさらに申し上げておきますけれども、そうしますと、船舶検査活動において国連の決議が必要だというのは、結局、旗国主義、日本船舶検査活動を行いたいと思う船が所属する国、ここに問い合わせをして、この近海を通ったときには検査させていただきますよ、そういうことを事前にとっておけば、国連決議がなくてもできるということですね。それはいかがですか。
  304. 高村正彦

    高村国務大臣 それはそのとおりです。
  305. 東祥三

    ○東(祥)委員 では、国際法上、旗国の、その船の所属する国の了解を持っておけば、そういう船舶検査活動ができるということであるとするならば、国連の決議が付されることによって、そのような許可を、合意を事前にそれぞれの国々に求める必要がなくなる、ただそれだけですか。そうであるとするならば、別に国連決議は必要ないじゃないですか。
  306. 高村正彦

    高村国務大臣 ただそれだけとおっしゃいますけれども、現実問題として考えたら、そういう場合が物すごく大きいのではないでしょうか。実際に事態が起こって、その旗国の了解というのは必ずしもとれない場合も随分ありましょうし、現実の問題とすれば、安保理決議があってそういうことができるという場合が非常に大きいというふうに想定されます。
  307. 東祥三

    ○東(祥)委員 時間が来ましたのでやめさせていただきますが、ここで言われている法案、国民の皆様も、内容、法案を読んでいるわけじゃありませんから、何を言っているのかというと、よく党首が申し上げますが、疑わしき船が出てきたときに軍艦でぞっと行ってそれを停止させて、乗らさせていただいてよろしいですかという同意原則が入っているのですよ、ここには。国連の決議における、いわゆる国連憲章四十一条ですよ、船舶検査活動という、ただそれだけではありませんけれども、通信検査等もすべて含めた上での経済的な制裁を担保させる、その措置というのは。そこには、別に、同意原則を前もってあからさまに、軍艦で押し寄せていっておいて、乗らさせていただいてよろしいでしょうか、それに対してノーだと言えば、その疑わしき船は逃げていくことができるようになっているのですよ。何でそこで国連決議が必要なんですかということを申し上げて、質問を終わらせていただきます。
  308. 山崎拓

    山崎委員長 これにて東君の質疑は終了いたしました。  次に、佐々木陸海君。
  309. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 日本共産党の佐々木陸海です。日本共産党を代表して、質問をいたします。  新ガイドライン関連法案のきょうは初めての審議でありますが、理事会の確認によりまして、我が党の時間をとった質問は次回ということになっております。きょうの質問時間は極めて限られておりますので、さきの本会議総理に質問をした基本的な問題に絞ってお聞きをしたいと思いますので、どうぞ端的にお答えをいただきたいと思います。  最初に、憲法九条一項にかかわる問題ですが、周辺事態でただ一つはっきりしていることは、日本武力攻撃を受けている事態ではないということであろうと私は思います。法案は、日本がこの武力攻撃を受けていない場合に、自衛隊が海外にも出動してアメリカの戦闘作戦行動を支援するということを定めております。自衛隊の出動の要件は日本に対する急迫不正の侵略があった場合に限られるというのが、従来の政府の方針であったはずであります。そして、それは従来の政府の憲法九条第一項の解釈から出てきた方針であったと思います。  総理にお聞きしますが、こういう方針を今度のこの法案で変える、そしてまた従来の憲法解釈を変えるということでしょうか。端的にお答え願いたいと思います。
  310. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 周辺事態安全確保法に基づき実施することを想定いたしております後方地域支援は、それ自体は武力の行使に該当しないものであります。また、後方地域において行われる行為であり、米軍武力の行使と一体化の問題が生ずることも想定されません。したがいまして、憲法に違反するものではございません。
  311. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 前の本会議でもそういうふうに答弁をなさいました。  しかし、この法案で想定している、政府の言う後方地域支援、これで自衛隊がやることは、戦闘作戦行動をしている米軍に対して武器弾薬や兵員を輸送すること、それから食料や水その他の物資を補給すること、それから戦闘航空機を含む武器の整備や補修をすること等々がすべて含まれているわけであります。これは、米軍の戦闘作戦行動とそもそも不可分のものでありまして、一般的に日本語では後方支援、さらに正確な言葉では兵たんと言われている活動であることは、防衛庁長官も否定しておられません。  これについては、宮澤蔵相もかつて、私もこの予算委員会で質問をいたしましたが、輸送や通信のようなロジスティックスは戦争ではないとは言いがたいというふうに述べておられましたし、厚生大臣も同じようなことを述べておられることを、私はここで確認したことがあります。  これは言ってみれば常識でありまして、戦闘作戦行動、戦闘行為を継続させるために輸送をやり補給をやる、それがロジスティックス、兵たんであります。だから、それなしには戦闘作戦行動というものが継続できなくなるわけでありまして、戦闘作戦行動と兵たんというのは事の本質において一体化しているものでありまして、自衛隊後方地域支援はそれ自体武力行使ではないし武力行使と一体化しない、一体化しないと言っても通用しない、一体化のものなんです。ですから、憲法違反だと言わざるを得ないのですが、総理、いかがでしょうか。
  312. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 先ほども御答弁いたしましたが、憲法違反に当たるものではないと思っております。
  313. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 後方地域でやれば一体化しないというその理由は何ですか。
  314. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 委員が先ほどから申されている兵たん支援というのですか、いわば後方支援だと思うのですが、英文ではロジスティックサポートの訳語であると思うのですけれども、これは、一般に作戦部隊に対する装備品等の補給等を行うことで、この場合は、特に活動地域を限定した概念ではございません。  これに対して、この法案で言っております後方地域支援は、リア・エリア・サポートの意味でありまして、これは、活動内容としては後方支援に類似するものでありますけれども、後方地域という、この法律で定めた、戦闘地域とは一線を画した地域において行われるものであるという点で、私どもは、兵たんとは違う、こういうふうに申し上げ、また、この法律においては、戦闘地域とは一線を画した地域で支援を行うわけでありますから、後方支援武力行使と一体とならない、こういうことを累次申し上げてきたところでございます。
  315. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 その説明は通用しないと思います。  米軍の戦闘行動をロジスティックスによって支える、そのロジスティックの活動をやるわけですね。やる活動はロジスティックスなんです。それをあなた方は、後方地域を指定してやる、戦闘地域と一線を画されたところでやるから、何かロジスティックスがリア・エリア・サポートとかいう言葉に変わる、概念に変わってしまうのだそうですが、これは本当にトリックだと思うのですよ。  あなた方の出してきている法案自身も、後方地域というのを指定するけれども、危なくなったらそれを変えるということも書かざるを得ないわけですね。だから、一線を画するなんてことはできないのですよ。本質的に、戦闘作戦行動を支える兵たんの活動輸送とか補給とかというような活動は本質的に一体であって、何か、地域を指定したりちょっと遠く離れたところであればその一体性がなくなるというようなものじゃ絶対ないんです。  ですから、長くは申しませんけれども、この法案で言うところの後方地域支援というのは、憲法違反だと言われる、あるいは一体化と言われることを避けるための、私は子供だましのトリックにすぎないということを申し上げなきゃならぬと思うんです。こういうトリックを使ってみたところで、実態は米軍の戦闘作戦行動に対するロジスティックスをやるわけですから、世界から見れば戦争行為に加わるということでありまして、憲法解釈にここで重大な変更をもたらすものだと言わざるを得ないということだけを申し上げておきたいと思います。  もう一つ、安保条約についてお聞きします。  自衛隊米軍と共同の作戦行動をするという場合は、安保条約では第五条の場合であります。第五条は、日本武力攻撃を受けた場合であります。そして、安保条約第六条でできることは、つまり、日本以外のところで何か紛争があってそれに対処するという場合には、米軍日本の基地を使用するということができるだけであります。  ところが、この法案は、日本が攻撃をされている事態でもないのに、自衛隊が海外で米軍の戦闘作戦行動を支援したり、あるいは日本の基地から戦闘作戦行動に発進する米軍への支援をするということになっています。  安保条約にはそういう、日本の領域から外に出て米軍を支援するとか、あるいは日本から戦闘作戦行動に発進する米軍を直接自衛隊が支えるとか、そんな規定は、総理、安保条約のどこにもないんじゃありませんか。安保条約の中に規定がありますか。
  316. 高村正彦

    高村国務大臣 安保条約というのは日米間の条約で、まさにそこに規定があるものは条約上の義務としてやらなければいけない。義務としてやらなければいけないものには規定されていないけれども、それ以外のことを何も、日本が主権国家として、みずから安保条約の信頼性を高めるために何かをやってはいけないということではないわけで、今まさにそういうことがやれる法律を提案して御審議をいただいているところでございます。
  317. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 まさに安保条約の規定にないことをやろうとしている、安保条約の枠外のことをやろうとしているということじゃありませんか、総理。はっきり確認してください。
  318. 高村正彦

    高村国務大臣 何度も申し上げていますように、安保条約の目的というのは、我が国及び極東の平和と安全、それを守ることでございますけれども、この法案は我が国の平和と安全に資するということが目的になっているわけで、まさに日米安保条約の目的の枠内でございます。
  319. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 総理もそういう見解でよろしいですか。安保条約の目的の枠内だということですか。
  320. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 そのとおりでございます。
  321. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 目的のためには手段を選ばないという言葉があります。目的の枠内だという答弁しかできないということは、そういう立場にもなりかねないということを私ははっきり申し上げたいと思うんです。  安保条約というのは軍事的な協力を定めた条約であります。一つ目的があるでしょう、それはもちろん。そして、その目的を達成するための手段や手続や、そういったものを条文できちんと定めてあり、そしてそれについて、憲法との整合性やそういう解釈が、ずっとこの四十年間ですか、積み上げられてきているわけですね。  それを、今この法案を出してきて、条約の目的の枠内であるということで、そういう今までの解釈や何かをすべて無視してしまうような、飛び越えてしまうようなことを今政府はこの法案でやろうとしているわけでありまして、まさに、法案が規定している自衛隊活動というのは安保条約の枠を超えるもの、安保条約の重大な実質改悪と言わざるを得ないと思うんです。  つまり、安保条約に基づいて米軍が行動できるというのは、日本が攻められたとき以外のときの行動というのは、日本の基地を使用することができるということに限られているわけですから、その米軍に対して自衛隊があらゆるサポートをするということは、明確に安保条約の規定の枠を超えた、安保条約の重大な実質改悪だということを言わざるを得ない、そのことをはっきり申し上げておきたいと思います。
  322. 高村正彦

    高村国務大臣 先ほども申し上げましたように、安保条約に規定そのものがないということは、条約上のアメリカに対する日本の義務ではないということで、日本が主権国家として主体的に、アメリカに、安保条約の目的に従って何かをしようということは、それは一向に差し支えないことであります。
  323. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 軍事同盟、軍事条約、そして軍事での協力を定めたそういう条約の規定というものを無視したようなことができるというようなこと自体が安保条約の枠を超えるということだと言わざるを得ないと思うんです。  最後に一つだけ質問いたしますが、私は、さきの本会議で、総理に対して、周辺地域においてアメリカが不法な軍事行動をとった場合に日本協力、支援を一切拒否するとなぜ明言できないのかということをお聞きいたしました。私ども、これまでしばしば、アメリカは、グレナダやパナマなど、国連総会が侵略だと非難しているような行動、こういうことをやってきたし、そして国連憲章上許されない先制攻撃、核兵器による先制攻撃の可能性まで公言している、だから、アメリカがそういう不法な武力行使をした場合には日本は一切協力しない、支援しないということをなぜ明言できないのかということをお尋ねしました。  総理、重ねてお聞きしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  324. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 周辺事態が生起した場合、米国は、武力の行使を伴わない種々の活動を行い、まずは事態の拡大の抑制や収拾に努めることが当然想定されております。したがいまして、周辺事態になれば米国が直ちに武力を行使するとの前提で議論することは適当でありません。  この上で、一般論として申し上げれば、日米両国は国連憲章上の義務を負っており、そのような義務の遵守を日米安保条約において二国間の義務として確認いたしておりまして、周辺事態における日米両国の行為は、国際法上の基本原則、国連憲章等の国際約束に合致するものであることは言うまでもありません。  我が国の平和と安全に重要な影響を与える周辺事態におきまして、事態の拡大の抑制、収拾のために、国連憲章及び日米安保条約に従い行動する米軍に対し、我が国後方地域支援を行うことは、むしろ当然であり、国際法上何らの問題はないと考えております。
  325. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 私が先ほど申し上げましたように、国連総会も侵略と非難するような行動をアメリカが現にやっている、そういう不法なことをやった場合には支援しないということを明言してくださいと言ってきましたが、そういう明言はありません。ないどころか、アメリカはそういう活動はしないんだ、その武力行使はすべて、言ってみれば正義のためなんだと決めてかかるというのであれば、個別のケースについての日本の主体的判断など意味をなさないことになるわけであります。実際に、ガイドライン法案の仕組みもそういうものになっているということを申し上げたいと思うんです。  憲法九条一項に違反し、安保条約の枠さえ踏み破る、しかもアメリカの危険な先制攻撃に加担することになりかねないこのような法案は廃案にするしかないということを申し上げて、質問を終わります。
  326. 山崎拓

    山崎委員長 これにて佐々木君の質疑は終了いたしました。  次に、辻元清美君。
  327. 辻元清美

    辻元委員 社民党の辻元清美です。  日米ガイドライン関連法案につきましては、私たち社民党は土井党首を先頭に反対を主張しているということは、総理も既にもう御存じだと思うんです。私は、きょう持ち時間が十分しかありません。次の委員会で本格的な議論をさせていただきますが、反対であるからといって、答弁をいいかげんにせずに、心を込めてまず答えていただきたいということを、最初に申し上げたいと思います。  さて、これらの法案につきましては、徐々に市民の間で関心が高まってきているというふうに大臣の方々も御認識されているのではないかと思います。  私は大阪府の高槻市というところに住んでいるんですけれども、先週、この法案に対する学習会を行いました。ちょうど一年前に学習会を行ったときは、残念ながら数十人しか集まらなかったんですけれども、先週やりましたらこの数倍の人たちが集まっているんですね。特にその中で、この法案に対して一番関心やそれから疑問、懸念が出た点というのは、やはり自治体や民間による後方地域支援、このことに対して市民の皆さんがだんだん、これはもしかしたら自分たちみんなに関係することやないかというふうに心配が広がってきているんですね。まさしくここが問題だと思います。すべての人に関係することであるから、私は、きょうはこの後方地域支援について、民間や自治体の協力についてポイントを絞ってお聞きしたいと思います。  さて、この後方地域支援輸送協力について、まず総理にお聞きします。  民間の船や飛行機による武器弾薬や武装した米兵の輸送協力もこの中に入るというように予算委員会では政府は御答弁されていますけれども、この認識で変わりはないですね、総理。  まず最初にやはり総理、どうですか。総理、答えてくださいよ。心を込めてくださいと言いましたでしょう。
  328. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 実際どういったニーズが出るかというのは、いろいろな状況に応じて変わりますので確定的なことは申せませんけれども、そういう状況は排除されていない、こういうふうに思います。
  329. 辻元清美

    辻元委員 排除されていないという御答弁でした。  さて、私は先週、代表質問をさせていただきました。その中で、総理に対しましてこういう質問をいたしました。安全な後方地域なんというのはないんじゃないですかというふうに総理にお聞きしました。これに対しての総理の御答弁、ここに速記録があります。これに対してこういうふうにお答えになっています。「後方地域支援についてお尋ねでありましたが、周辺事態安全確保法案に基づき実施することを想定している後方地域支援が後方地域において実施されることにつきましては、防衛庁長官が、軍事的な常識を踏まえつつ各種の情報を総合的に分析することによりまして、合理的に判断することができると考えております。」このように御答弁されました。  この認識は一週間たった今もお変わりないと思いますし、この御答弁の中で、私の理解では、防衛庁長官の役割が非常に重要である、この認識でよろしいでしょうか、総理。これは総理の御答弁ですから、お答えいただけると思います。
  330. 小渕恵三

    小渕内閣総理大臣 そのとおりでございます。
  331. 辻元清美

    辻元委員 それでは、この総理の御答弁の中で、防衛庁長官の役割が非常に重要であるという御答弁でしたが、「防衛庁長官が、軍事的な常識を踏まえつつ」ということになっております。  そこで、防衛庁長官にお聞きしたいと思います。  この後方地域支援を行うに当たっての長官の軍事的な常識とはどういうことなんでしょうか。具体的にわかりやすく説明していただきたいと思います。どうぞ。――いや、これは総理が、「防衛庁長官が、軍事的な常識」これを大事やとおっしゃっているわけです。これは基本だと思うんですよ。委員長、いかがでしょうか。私は長官に聞いています。委員長長官にお願いします。長官の後に補足していただいても結構ですよ。
  332. 佐藤謙

    佐藤(謙)政府委員 まず、事実関係でございますので、私の方から前提のお話をさせていただきたいと思います。  後方地域に入っているかどうかということを判断する場合には、その紛争なり戦闘の全般的な状況、あるいはその戦闘行為を行う主体の能力、装備品の攻撃能力であるとか、あるいはその展開状況等を踏まえまして、それでもって判断をしていく、こういうことになります。
  333. 辻元清美

    辻元委員 私は、今政府委員の方から御説明を受けましたが、ここ、基本だと思うんですね。この総理の御答弁です。そして、「防衛庁長官が、軍事的な常識を踏まえつつ」とおっしゃっていまして、きょう、この委員会の初めに、私はその防衛庁長官から法案の提出者として趣旨説明を受けたわけです。この法案の責任者であるはずですから、ぜひ長官に御所見を伺いたいと思います。どうでしょうか。
  334. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 軍事的常識というのは軍事的常識でありまして、今防衛局長から答弁したのがそのものであります。私が判断する場合には、それに外務省から得た情報とか米軍から得た情報等を判断して決めていくわけであります。
  335. 辻元清美

    辻元委員 それでは長官に引き続きお伺いしたいんですが、私は、なぜここにこだわるかといいますと、総理の御答弁の中の趣旨の半分がここなんですよ。ですから、長官がこれは判断されるのに非常に重要な役を担われるともおっしゃっているわけですね。  それで、あいまいなんですね。ではこの答弁で、軍事的な常識を踏まえつつどうのこうのといって書いてありますけれども、これじゃ意味がさっぱりわからない。ここを一番、先ほども申し上げましたように、市民が心配している点なんです。ですから……(発言する者あり)
  336. 山崎拓

    山崎委員長 静かにお願いします。
  337. 辻元清美

    辻元委員 横から言わないでほしいんですけれども。十分しかないので真剣なんです。  それで、私は、今の長官の御答弁では非常に不満です。それで私の軍事的常識というのをちょっと、私はこうじゃないかなと思うんですね。  一つ。一たび戦争が行われた場合、前方も後方もない。イラン・イラク戦争のときに日本の民間のタンカーも爆撃を受けたというようなことを例にとりまして、代表質問のとき私は申し上げました。二つ目。武装した米兵や武器弾薬の輸送を手伝うということは、相手国から見たら敵国になり、攻撃の対象になる。これは軍事的な常識じゃないかと私は思います。三つ目。戦争では補給路を断てというのが常識だと、私は戦争に行ったおじいちゃんから聞きました。  ということで、私は、先ほどからの御答弁ですと、さっぱり理解ができぬ。私が理解できぬということは、一般の市民もできないのではないかというふうに思うわけですね。  先ほどの防衛庁長官の御答弁では、私は、失礼ですが、防衛庁長官の常識は軍事的非常識じゃないかというふうにさえ受け取らざるを得ない御答弁でなかったかと思うんですが、いかがでしょうか。
  338. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 どちらに常識があるのかよくわかりませんが、私どもとしては、各種の戦闘が行われる形態についての軍事的な常識を踏まえる、これは断固そういうことであります。自衛隊がいろいろな情報源や常続的な監視活動によって収集した情報というのは、これはかなり確かで濃密なものでありますから、そういうもので判断します。  それから、先ほども申しましたが、外務省が収集した情報、必要に応じて米軍から提供された情報等を総合的に分析することによって、私どもが合理的に判断することは可能であると確信を持っております。
  339. 辻元清美

    辻元委員 今お聞きしましたけれども、私は代表質問のとき、こういうことも申し上げました。私たち日本は、明治維新以来何回か戦争に参加しているんですけれども、日本が侵略されてから始めた戦争は一度もない、これは事実だと思います。ということで、いつもやはり邦人保護とか物資の輸送ということで外に出ていって、そこでいろいろな不測の事態が起こって全面戦争に至っているということを、私たちは歴史から学んでいるはずなんですね。そこで私はここにこだわっているわけです。後方地域支援はそのような事態に広がる危険性を私は持っていると思うんです。やはり武力行使に至りかねない危険性もありますので、そうなってくると憲法違反と言わざるを得ない。  というところで私の時間が参ってしまいましたので、やはりきょうの結論も、この法案に対しては反対と言わざるを得ないということで締めくくらせていただきまして、次回、またどんどんやりますので、これできょうは終わります。  以上です。
  340. 山崎拓

    山崎委員長 これにて辻元君の質疑は終了いたしました。  次回は、来る二十六日金曜日午前八時三十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十分散会