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1999-06-11 第145回国会 衆議院 内閣委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年六月十一日(金曜日)     午前九時三十二分開議   出席委員    委員長 二田 孝治君    理事 植竹 繁雄君 理事 小此木八郎君    理事 小林 興起君 理事 萩野 浩基君    理事 北村 哲男君 理事 佐々木秀典君    理事 河合 正智君 理事 三沢  淳君       大石 秀政君    大村 秀章君       佐藤 信二君    田中 和徳君       谷川 和穗君    虎島 和夫君       桧田  仁君    平沢 勝栄君       堀内 光雄君    矢上 雅義君       石毛えい子君    河村たかし君       松本 惟子君    山元  勉君       青山 二三君    池坊 保子君       石田幸四郎君    倉田 栄喜君       鰐淵 俊之君    瀬古由起子君       中路 雅弘君   知久馬二三子君       辻元 清美君    笹木 竜三君  出席国務大臣         国務大臣         (内閣官房長官         )       野中 広務君  出席政府委員         人事院事務総局         任用局長    森田  衞君         内閣総理大臣官         房審議官    佐藤 正紀君         警察庁刑事局長 林  則清君         総務庁人事局長 中川 良一君         総務庁行政監察         局長      東田 親司君         法務大臣官房司         法法制調査部長         兼内閣審議官  房村 精一君         法務省人権擁護         局長      横山 匡輝君         外務省総合外交         政策局国際社会         協力部長    上田 秀明君         国税庁次長   大武健一郎君         厚生省社会・援         護局長     炭谷  茂君         厚生省保険局長 羽毛田信吾君         労働省女性局長 藤井 龍子君         建設大臣官房長 小野 邦久君  委員外出席者         内閣総理大臣官         房男女共同参画         室長      名取はにわ君         法務省民事局参         事官      小林 昭彦君         内閣委員会専門         員       新倉 紀一君 委員の異動 六月十一日  辞任         補欠選任   越智 伊平君     大石 秀政君   近岡理一郎君     大村 秀章君   武藤 嘉文君     田中 和徳君   鹿野 道彦君     石毛えい子君   山元  勉君     松本 惟子君   石田幸四郎君     青山 二三君   倉田 栄喜君     池坊 保子君   深田  肇君     辻元 清美君 同日  辞任         補欠選任   大石 秀政君     越智 伊平君   大村 秀章君     近岡理一郎君   田中 和徳君     武藤 嘉文君   石毛えい子君     藤村  修君   松本 惟子君     山元  勉君   青山 二三君     石田幸四郎君   池坊 保子君     倉田 栄喜君   辻元 清美君    知久馬二三子君 同日  辞任         補欠選任  知久馬二三子君     深田  肇君 六月十一日  国旗、国歌の法制化に関する請願牧野隆守紹介)(第五九六八号)  戦争被害に関する調査会設置法早期制定に関する請願大口善徳紹介)(第五九六九号)  同(久保哲司紹介)(第五九七〇号)  戦争被害等に関する真相究明調査会設置法早期制定に関する請願玄葉光一郎紹介)(第六一二三号)  同(赤羽一嘉紹介)(第六四五四号)  非核三原則法制定に関する請願石田幸四郎紹介)(第六二七五号)  傷病恩給等改善に関する請願櫻内義雄紹介)(第六三五九号)  動物の保護及び管理に関する法律の改正に関する請願権藤恒夫紹介)(第六四五五号) は本委員会に付託された。 六月十一日  日の丸・君が代の法制化反対に関する陳情書外三件(第二三六号)  傷病恩給等改善に関する陳情書(第二五〇号) は本委員会参考送付された。 本日の会議に付した案件  男女共同参画社会基本法案内閣提出第五二号)(参議院送付)     午前九時三十二分開議      ――――◇―――――
  2. 二田孝治

    二田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出参議院送付男女共同参画社会基本法案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐々木秀典君。
  3. 佐々木秀典

    佐々木(秀)委員 おはようございます。民主党佐々木です。  待望のというか、大変多くの皆さんから待たれており成立を求められていた男女共同参画社会基本法案が、本日の審議を終えて、いよいよこの委員会で採決ということになりました。恐らく今国会中に、参議院の御協力もいただいて、成立の運びになるかどうか、大変多くの方が注目されておられると思います。画期的なことであろうと思います。  参議院の方では全会一致でこれがもう可決されておりますので、当委員会でこれが可決をされ、衆議院の本会議でも可決をされますと、いよいよ成立ということになるわけで、このことは、私は大変すばらしいことではないかと思います。そして、参議院衆議院審議を通じまして、この男女共同参画社会をどうやってつくっていくか、そして、この法律を実効あらしめるためにはどうすればいいかということが真剣な討議を経て議論をされてまいりました。  先日の参考人皆さんも、参考人はいずれも女性ばかりでございましたので、男性参考人もあってもよかったのではないかというお話もあったわけですけれども、しかし、それぞれの参考人の方から非常に示唆に富んだお話もいただいて、私どもとしても参考になりましたし、これから私たちが本当にこの法律を通じて、望むあるいは目指す社会をつくっていくためには、男性女性もどんな努力をするか、あるいは、行政、民間、それぞれがまたどういう働きをしていかなければならないかということについても相当方向性が出てきたのではないかと思っております。  時間が限られておりますけれども、いわば、そうした議論を踏まえて、詰めの確認的な質問などを官房長官初め関係者皆さんお尋ねをしてまいりたい、こう思っております。  一つは、何といっても、この法律が国際的な関係で重要な意味を持っているということも私どもとしては認識をしておるところです。特に、これは、私ども民主党松本議員が、本会議趣旨説明があり、それに対する代表質問のときにもお尋ねをし、あるいは意見を申し上げておるところですけれども、御案内のように、ことしの三月に国連婦人地位委員会で、女子差別撤廃条約選択議定書のコンセンサスの採択が行われている。撤廃条約の方は一九八五年の六月に日本批准しているわけですけれども、この選択議定書については、一九九三年の六月、ウィーンで開催された世界人権会議勧告を受けて提案されたものと承知をしております。そして、伺うところによると、ことしの秋に行われる国連総会採択が予定されているとも聞いているわけであります。  松本議員がその代表質問のときにも明らかにされましたように、この議定書は、女子差別撤廃条約に違反するような行為がその締約国であった場合に、それによって被害を受けた方が国内での救済措置救済を求める、しかしそれでも救済されなかったというような場合に、その被害者個人としても国連女性差別撤廃委員会救済申し立てができるという制度だということが非常に特徴的なものになっているわけであります。  ただ、憂慮されるのは、我が国がかねてから、同じような趣旨国連人権規約B規約選択議定書についてまだ批准をしていない。その批准をしていない理由として、例えば司法権独立との関連で問題があるなどということを理由にされているようにも聞いているわけであります。  しかし、この男女共同参画社会基本法案は、日本政府が今こうして提案をしておられる、そして、これが今の差別撤廃条約趣旨に沿うものとして今歴史的な誕生をしようとしている、この時期でもありますから、政府はこの際、過去の行きがかりなどということにとらわれないで、この選択議定書を直ちに批准すべきときに来ているのではないか、私はこう思うわけであります。  本会議外務大臣は、松本議員質問に答えて、最終的にはいかなる案文採択されることになるのかを見きわめた上で、検討してまいりたい、こういう答弁をなさっているわけですけれども、この態度はどうもいささか消極に過ぎるのではないか。つまり、内容を見て検討するということなんですけれども、その内容を見て検討をしなければならないというその内容、何か気がかりになること、あるいは、その批准をするについてネックになるようなことを想定されておられるんだろうか、そうしたことがあるとすれば批准をしないということになるのかどうか。  この辺、日本政府としての今の時点での態度をこの際、確認をしておきたいと思うので、その点、それぞれからお答えをいただきたいと思います。それについて外務省法務省からお伺いをした後に、官房長官からも御意見をお伺いできればと思います。
  4. 上田秀明

    上田政府委員 お答えいたします。  御指摘のとおり、女子差別撤廃条約選択議定書につきましては、国連婦人地位委員会におきまして議論が行われまして、日本もその議論には積極的に参加してまいっておりますが、ことしの三月で案がまとまりまして、この秋にも国連総会採択される見込みでございます。  この選択議定書内容は、今先生御指摘のとおり、個人通報制度に係るものでございますが、それぞれ人権関係条約個人通報制度、いろいろな形でございますけれども、特に女子差別撤廃条約選択議定書個人通報制度につきましては、個人通報のほかに、例えば個人の集団による通報とかあるいは代理人による通報とか、新しい要素もあるやに見受けられますので、最終的にどういう形でまとまるかを見きわめ、かつ、その後日本としてこれを締結するについては日本国内法制等との整合性も勘案して検討していくということになろうかと思います。
  5. 房村精一

    ○房村政府委員 この選択議定書案個人通報制度設置が提案されておりますが、そのような個人通報制度司法権独立関係でございます。  言うまでもなく、我が国憲法によって司法権独立が保障されているわけでございますが、その中核は、外部の干渉から独立した個々の裁判官が法と良心のみに従って具体的な事件について判断を下す、それが司法権独立中核をなしているわけでございます。  個人通報制度が採用されまして、ある特定の個別事案につきまして、国連条約に基づいて設置された委員会が具体的な見解を示すということになりますと、当該事案あるいはこれと関連する事案に関する裁判官の自由な審理、判断等影響を及ぼすおそれがあるということが懸念されるわけでございます。  現在提案されております女子差別撤廃条約選択議定書案で定められております個人通報制度につきましても、先ほどの答弁にもありましたように、従来と違う面もございますし、具体的にどのような個人通報制度になるのかということも十分見きわめた上で検討を加えていく必要があるというぐあいに考えております。
  6. 野中広務

    野中国務大臣 佐々木委員指摘女子差別撤廃条約選択議定書案につきましては、本選択議定書案が、ただいま政府委員がそれぞれ御答弁を申し上げましたように、国際連合の場におきまして最終的にいかなる案文について採択されることになるかを十分見きわめました上で、先般外務大臣も御答弁を申し上げておりますように、男女共同参画基本法趣旨十分念頭に置き、政府といたしまして前向きに検討していきたいと考えております。
  7. 佐々木秀典

    佐々木(秀)委員 今の官房長官お話で、前向きに検討されるということですから、内容検討を踏まえてということではあるけれども、積極的にこれを批准する方向を持っておられる、私はこう聞いておるのですが、しかし、どうもその前の法務省などのお話だと、特に今外務省法務省からお話がありましたが、どうも法務省の姿勢が一つは気になるのですね。  これは、前の人権規約のときのおくれに対する弁明などについてもそうなわけですね。これについては国連の方からもしばしば日本政府に対して勧告が出ていて、日本態度が非常に消極的だ、そして、司法権との関係などということを言っているけれども、それは理由にならないということを言っている。現に、日本と同じような司法制度を持ちながらこの人権規約批准している国というのはたくさんあるわけで、そうした国々で、特にこれを認めた結果支障が生じているというようなことを私どもは聞いていないわけですね。  ですから、日本の側が今までとってきた態度というのは、国際的にはやはり非常に消極だと映るのはやむを得ない。そして、そんなことから、日本が国際的に人権感覚という点では劣っているのだなどという評価をされることは、私どもとしてはまことにたまらない思いがするわけです。  憲法の前文からいっても、日本は国際的に名誉ある地位を占めなければならない。そして民主国家であることを標榜して、憲法の上でも、平和、民主主義と並ぶ基本的な原則として国民の基本的人権の尊重ということを言っている以上、私はこういうことについてはもっと前向きで積極的であらねばならないと思っているわけですね。  国連などからも、今度はむしろ、この女子差別撤廃条約選択議定書批准それから承認などに当たっては、日本が積極的な役割を果たしてもらいたいというような要望さえ出ているようにも聞いているわけです。  そういうことからすると、まあ確かに内容を見ないでということはないけれども内容としては予測されているわけですから、予測というよりも大体もうたたき台はあるわけですから、私どもとしては、今これを批准しますよといっても、検討の上に検討を重ねてなんというのは、また日本消極的な態度だというように評価されかねないというような心配を逆に持つわけです。  むしろ我が日本としては、今審議をしているこの法案が通れば、それこそ胸を張って、我が国としてはこういう法律をついにつくることになりました、この法律に基づいて日本としては二十一世紀に向けてこういう男女共同参画社会を目指して頑張っていくのです、大手を振って国連に乗り込んでいっていいのだろうと私は思うのですね。そうだとすると、やはりうじうじしている態度ではなくて、すぱっとしなければいけない、こう思うのです。そういう点で、法務省の今までやってきたような態度が足を引っ張るようなことになることは決してあるべきことではない、私はこう思っているのですね。  そういう点で、ひとつ、先ほど私が質問しましたように、検討というだけではなくて、どういうことについて一番心配されておるのか、ネックになることは何なのか、これは法務省の方から、もう一回お答えをいただきたいと思います。
  8. 房村精一

    ○房村政府委員 先ほど申し上げましたように、基本的に司法権独立中核は、裁判官が法と良心のみに基づいて自由な立場で判断をする、それをいかにして保障していくかということにあるわけでございます。その同一の事案について、国連条約に基づいて設置されている委員会が公式な見解あるいは勧告をするということになりますと、そういうものから全く自由に裁判官判断をできるのかどうかという点が司法独立との観点では懸念されるということを申し上げているわけでございます。
  9. 佐々木秀典

    佐々木(秀)委員 今お答えのありましたようなことについては、例えば日本弁護士連合会などでは司法権のあり方の問題、制度の問題とは矛盾しないということを言っています。国連の方からもそう言われています。事実、これを認めたからといって、日本司法権がそれによって干渉される、内容的に司法判断が干渉されるなどということは出てくるはずがない。  殊に、これは裁判所じゃないのですから、ここでの例えば人権委員会などの勧告などが、これは勧告にとどまるわけですから、国際的な関係はあるかもしれないけれども司法的に効果をもたらすなどということは絶対にあり得ないわけで、日本国内での司法判断を覆すなどということには影響はない。そこのところは割り切って考えないと、私はこの種の問題というのはとてもじゃないけれども対応していけないと思うのですよ。どうも、やはり法務省態度が私は一番気になります。  そこで、時間がありませんからこれ以上質疑は繰り返しませんけれども、どうか官房長官政府の方では、今のような点に足を引っ張られるようなことなく、自信を持ってひとつ批准方向に向かって進めていっていただきたい。もしも、ほかの役所、法務省を含めて、文句を言う筋があったら、私ども論議をしますし、政府としてもしっかりと意見を交わし、下手な足の引っ張りなどということはないように処置してもらいたい。このことを強く要望しておきたいと思います。  それから二番目の問題ですけれども、これは本法案の十七条関連、つまり苦情処理等の問題です。  これについても、私どもの同僚、石毛議員が先日の委員会で非常に的確に問題を指摘されて、質問をされておられます。  もちろん、男女共同参画社会を目指すということは、いろいろな施策を講じなければならないし、いろいろな方策があると思いますけれども一つは、これを実効あらしめるためには、残念ながら、今なお多くあり、恐らくこの法律ができたからといって直ちになくなることはないであろう性別による差別、あるいはこの論議の中でも大変問題になりました暴力の問題その他のいろいろな性差別による被害というのは、残念ながら、そう簡単にはなくならないだろうと思うのですね。そうした場合に、被害を受けた方の苦情を聞く、あるいはその被害についての救済方策、何といってもこの対応をきちんとすることが、私は、この法律の目的を実現する上で、あるいは実効性あるものにする上で非常に大切なことだ、こう考えております。  それで、この論議の中では、そういう方策として、一つには、例えば法務省主管人権擁護制度、あるいは総務庁が主管されておる行政相談制度、こういう既存の制度をとりあえずは活用していくのだ、それからまた官房長官は、さらに新しいそうした制度についても考慮の余地があると御答弁をされておられる。  しかし、現在ある法務省主管人権擁護制度、あるいは地方人権擁護委員皆さんがたくさんおられて非常に御努力されていることはわかるのだけれども行政相談制度を含めて、果たしてこれが本法案の十七条に言う苦情処理あるいは被害救済のために役に立つものになっていくだろうかというと、非常に心もとないということを石毛委員は強く指摘をされました。  私も、実はそうだろうと思っておるわけです。むしろ、この際、各省庁それぞれ縦割りではなくて、横断的な、そしてそれを包括するような新たな苦情処理機関あるいは救済処理機関というものが新しく構築をされる必要があり、これが全国的なネットを張る必要があるのではないかとも考えているわけです。  ところが、これに対する官房長官の御答弁では、非常に前向きにうかがえる点もあったわけですけれども、ただ、その中で気になるのは、現在行政改革を求められているときでもあるのでということを言われておる。このことは何を御懸念されているのか。つまり、今の行政改革では行政合理化省力化などということが言われているから、新しいそうした機関設置するということは、人も要る、金もかかるということで、なかなかにそうはならないのだという御懸念を示されておられるのかどうなのか。  しかし私は、それでも、この制度を本当に実効あるものにするためには、たとえ行政改革でそういうような省庁の削減だとかなんとか言われていても、やはり必要なところには、人も配置し、金もかけ、新しい機構をつくらなければ、私は、これは絵にかいたおもちになってしまうという懸念を持っているのですけれども、さきの御答弁との関係でのお考えを改めて官房長官からお伺いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  10. 野中広務

    野中国務大臣 委員指摘の第十七条の苦情処理は、この法案ができ上がります上において、男女共同参画社会の形成を促進していきますためには重要な問題でございます。  したがいまして、私どもは、具体的な方途として、苦情処理等につきまして、行政相談委員人権擁護委員について、女性への積極的な委嘱を配慮いたしますとともに、男女共同参画に関する認識を高めますために、この人たち研修の機会やあるいは情報等提供等を行いましてその充実を図ってまいることによりまして、例えば行政相談委員人権擁護委員の中から、男女共同参画に対しまして高い識見をお持ちになる方々にこの問題を重点的に扱っていただく担当者としてお願いをすることなどを検討しており、一方、地方公共団体男女共同参画担当部局にもお願いをしていき、連携を密にしていきたいと考えておるところでございます。  そのゆえんは、やはり行政相談委員とか人権擁護委員は、委員承知のように地域に定着した方々ばかりでありますし、ボランティアの精神を旺盛に持って、それぞれ困難なお仕事にお取り組みをいただいておるわけでございます。苦情処理とか人権救済というのは、まずは一番気安いところに持ち込めるような状況、これを確立することが大切であろう、そしてその人たちにより理解をいただいて、相談等を受け付けていただくような環境を整えていくということが大切であると思っておるわけでございます。  そのような推移を十分見きわめまして、もしそういうものでそごがあるとするならば、なお、苦情処理等は重要な問題でございますので、第三の道を考えざるを得ないかもわかりません。けれども、当面、やはり地域に根づいて、それぞれ地域皆さん方との触れ合いのある行政相談委員人権擁護委員にぜひ御協力をいただきたいというように考えておるのが私どもの本意でございます。
  11. 佐々木秀典

    佐々木(秀)委員 私どもも、地方人権擁護委員皆さんともお話をすることがあるのですけれども、今官房長官お話がありましたように、どうも人権擁護委員というのは、各地方に住んでおられてその地域に密着しておる方々、それぞれに一生懸命ではあるんだけれども、しかし、どうした種類相談あるいは救済のお手伝いというようにセクションが限られているわけじゃないわけですね。種類を問わない相談事が持ち込まれ、それに応じておられるというようなことになっている。  それからまた、この間の石毛委員からの質問に対するお答えでも、人権擁護委員になっておられる方々の年齢の問題もありましたね。高齢化社会だという問題があった。そういうゆとりのある方でないとなかなかにボランティア活動としてはできないからということもあるんだろうけれども、六十歳以上の方がほとんどになるわけですね。  そういうことになってくると、私は、これからの性差別による相談なんという非常にリアルな問題について、果たしてどこまで有効な活動ができるのかということになると、いささか問題があるように思われてならないわけですね。  今官房長官、特別な研修などの必要ということをおっしゃった。確かにそうだと思うのですけれども、例えば子供の人権などについて、子どもオンブズマン制度というのが実はできた。まだ数は少ないけれども、そういう専門人権委員を新しくつくって派遣しているなどということを考えると、私は、この法律ができて、これに対応する相談活動なり救済活動に当たる方というのは、それだけを専門にされるような方を配置する必要がある、それからまた行動的な方を配置する必要がある。  ですから、でき得べくんば、年齢的にも、三十代といってはなんですけれども、四十代、五十代というような人たちお願いをするということが望ましいことではないか。もちろん、お年寄りの知恵ということもありますから、高齢者の方でお元気な方に入っていただくということも必要でしょうけれども、そういう年齢的な偏りがあるということはいかがなものかとも思うわけですね。  そういう点を、これから男女共同参画会議ですか、これがつくられますから、恐らくその議を経てということにはなるんだろうと思うけれども、この際、新しいものをつくることに私は大胆であっていただきたいと思うんです。既存の制度の活用というのはどうしても限界があります。幾らその方々に頭を切りかえてと言っても、そうはいかない。私はやはり新しく出発することが大事だと思うんですね。  それともう一つは、何といっても大事なのは、これは外国でもそうですけれども、民間の団体、特に今まで女性の駆け込み寺などという運動もあるように聞いていますけれども、そういうことについて意欲的にやってこられたNPOの方々との協力というのも必要になるだろう。あるいは弁護士さんの協力を得ることも非常に大事なことになってくるだろうと思うんですね。  これは、先回の質疑の中で官房長官も、民間あるいは各機関との連携強化、協力についての支援ということを言われておるわけですけれども、御案内のように、例えばNPO法案というのもこの間通りましたけれども、これは税制上の支援などということが問題になったんだけれども、全然そういう配慮がなかったわけですね。やはり活動していただく上にはお金もかかるわけですけれども、そうした面での支援ということも必要になってくるんじゃないか。その上での民間との協力を求めるということがこれから私は非常に大切じゃないかと思うんですが、この点について、時間がなくなりましたので官房長官にだけ最後にお聞きをして、質問を終わりたいと思います。
  12. 野中広務

    野中国務大臣 委員が御指摘のように、私も、人権擁護委員行政相談委員の中でこれが適応するかどうかというのには御指摘のような懸念があると思います。  ただ、それぞれ一番身近であること、そして、その中には気安く相談しやすい事件と相談しにくい事件とがあるはずでございます。それだけに、市町村の窓口等を活用しながら、また、この法律では、それぞれNPOを初めとする関係民間団体の協力をもお願いしなければならないわけでございまして、法案第二十条におきまして、国は民間団体に対して情報の提供その他の必要な措置を講ずるように努めるものとすることを規定しておるわけでございますので、政府といたしましては、この二十条に基づきまして、先ほど御指摘のように、民間団体の御協力をも適切に対処してまいりたいと考えております。
  13. 佐々木秀典

    佐々木(秀)委員 時間が参りましたので終わりますが、いよいよこの法律ができるわけでございますので、それぞれみんなで力を合わせて、本当にこの法律が生かされてよい社会ができることに役に立つことを祈念し、みんなでそのために努力しようということを誓い合って、私の質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  14. 二田孝治

    二田委員長 次に、池坊保子君。
  15. 池坊保子

    池坊委員 公明党の池坊保子でございます。  私は、この男女共同参画社会基本法の成立を大変待ちわびておりました。この成立によって女性人権が守られるだけでなく、男性女性がお互いに個を尊重し合いながら、相手の持っているよきものを見詰め合い、補い合い、質の高い家族、社会、職場を構築していくことが人間としての幸せだと長いこと信じてきたからでございます。  でも、言うまでもなく、この基本法ができましても、現実のおのおのの現場で実効性が伴われなかったら何の意味もないのではないかと思っております。  今回の法案は、男女共同参画社会を形成していくためのいわば理念であって、これを軸にして、労働省、文部省、法務省等々の連携と英知で肉づけし、基本計画をきちんとしたものをつくっていかなければならないと思っております。ですから、むしろ、どのような基本計画がつくられていくかがこれからの課題ではないかと思っておりますが、その基本計画はいつ、どのような形で進められていくのか、あるいはどんなプランをお持ちかを官房長官にお伺いしたいと思っております。  私は、来年、二〇〇〇年六月の国連総会で予定されております女性二〇〇〇年会議までに基本計画が策定されてほしいというふうに願っております。八五年のナイロビ会議から既にもう十五年たっておりますし、第四回世界女性会議からも五年たっており、国際社会の中でも日本は立ちおくれているのではないかと思っておりますので、官房長官のプランを伺いたいと思っております。
  16. 野中広務

    野中国務大臣 委員指摘男女共同参画基本計画の策定につきましては、男女共同参画社会基本法の施行後、可能な限り早く策定されるようにしてまいりたいと考えるわけでございます。  ただ、法案の七条の国際的協調の趣旨を踏まえますときに、国際社会の動きと軌を一にして取り組む必要がある等の条件がございますので、先ほど委員が御指摘になりましたように、二〇〇〇年六月には国連総会の特別会期といたしまして開催される予定の女性二〇〇〇年会議の成果も視野に入れまして、計画の策定に当たることが必要であるのではなかろうかと考えておる次第であります。  このような状況を踏まえまして、法成立後、男女共同参画審議会の意見を聞きまして、男女共同参画の基本計画の策定を早期に進めてまいりたいと考えております。
  17. 池坊保子

    池坊委員 来年の二〇〇〇年六月の世界会議に間に合わないというのはちょっと残念な気がいたしますけれども、それを参考にして、より具体的な、実効性の伴うものをつくっていただきたい。そして、願わくは、二〇〇〇年六月には何か大体のモデルみたいなものは持っていけるようであってほしいというふうに願っております。  実効性が伴わなければ何にもなりませんので、ちょっと細かいことについてお伺いしたいと思います。  都道府県の策定義務と市町村の努力義務について伺いたいのです。  法案の第九条に、地方公共団体の責務として、国の施策に準じた施策を講じることが明記されております。また十四条には、都道府県の場合は計画の策定義務があるとなっております。市町村については努力義務となっており、この策定義務と努力義務とはどんな差異があるのかをちょっと伺いたいと思っております。  策定義務と申しますと、きちんとつくらなければならないので、これは頑張らなければいけないという気持ちになると思いますけれども、努力義務、努力ということぐらいあいまいなものはございません。市町村の場合の努力義務ということは、市町村の裁量に任せて適当に判断したらいいのだよということなのでございましょうか。これではちょっと実効性が伴わないのではないかと心配でございますので、その辺を伺いたいと思います。
  18. 野中広務

    野中国務大臣 お説の御意見はよくわかるわけでございますけれども委員承知のように、市町村の数は三千以上もあるわけでございまして、その規模もまたさまざまでございます。このことを考えますと、一律に計画の策定を義務づけることは適当ではないのではないかと考えてまいったところでございます。  しかし、市町村におきましても、この法案趣旨にのっとって計画の策定に積極的に取り組んでいただくよう私どもも期待をするために、県にその策定義務を課しまして、県が市町村に積極的に関与し指導していただくことによって市町村が努力義務を生かしていただき、それぞれの市町村の特性を生かしながらこの策定に協力をしていただけることを期待をしておる次第であります。
  19. 池坊保子

    池坊委員 今度はちょっと大きな問題なんですけれども男女共同参画社会法が成立しました暁には、選択制夫婦別姓問題も考えていただきたいというふうに思っております。  これは前の委員会でも私質問いたしまして、ずっとこの選択制夫婦別姓問題には関心を持っておりました。私は、一国民だったときから臓器移植法案とこの民法改正には大変深い関心を持ち、ずっと勉強してまいりましたけれども、長いこと審議が中断されたりお蔵入りしたりと、何でこんなに国会の審議というのは遅いのだろうと思いながら見ていたのがこの二つの問題でございました。  ですから、国会議員となりまして臓器移植法案が出されましたときには、本当にあらゆる資料を読み、そして、完全ではなくても、法律というのはまず一歩前に進むことが必要なのではないかというふうに考えているわけです。  男女共同参画社会の根底に流れておりますものは、男女が個人として尊重され、そして、ともに協力して生きていく上で障害になるものは除去しようということではないかと思っております。  私が大学を卒業いたしました時代には、女性が仕事をするのも大変少のうございましたが、今は、大学卒業生、高校卒業生の大多数の女性が就職をしております。その就職している女性たちが結婚するに際して、名前を変えなければいけないというのは大変不都合である、不便を感じている女性も多うございます。  そういうことを考えますときに、私は、官房長官はこの選択制夫婦別姓には大変理解を示していただいていると伺っておりますけれども男女共同参画社会成立すると同時に、この問題についても後押しをしていただきたいというふうに願っているんです。  私は、個の確立、個の尊厳があってこそ初めて、家族、社会は対等の人間として質の高いものを構築していくことができるのだと思っております。夫婦が別の姓を名乗るからといって、愛情が希薄になったり家族のきずなが変わるものではないと思います。大切なことは、内容であり、その個人の資質そのものではないかと思っておりますときに、片方で大変不便を感じている人間がいる、でも反対している人は、結婚しない人とか、もう既に結婚して何にも不便は感じていない立場にある方が反対していらっしゃるのをむしろ不条理だなというふうに私は思っておりますので、官房長官のお考えを伺いたいと思います。
  20. 野中広務

    野中国務大臣 夫婦選択制別姓の取り扱いにつきましては、委員が言われるように、現代社会における重要な課題だと思っております。  ただ、いささか私事にわたりますけれども、私もこの問題、政治に入りまして、何とかしてこの選択制別姓を実現したいと思って、我が党内はもちろんのこと、他党とも一緒にプロジェクトを組んで努力をした経過があるわけでございますけれども、当時はまだ十分機が熟せずに、残念ながら、このことを申し上げますと、それは我が国社会の家族制度を崩壊さすものだというようなお考えが強うございまして、実りを得ることができませんでした。  このたび、男女共同参画社会の基本法が初めて参議院において満場一致で通過をいたしました。また、衆議院においても今最終の御審議をいただいておるところでございます。  これから男女共同参画社会を私どもが着実な努力を傾けてつくり上げていく中において、おのずからそれは、それぞれの皆さん方に十分な配慮をいただき、そして男女がお互いに尊敬し、そして人権を重んじて、このような、今委員がおっしゃるような選択制別姓についての扱い等についてもそれぞれ道があいていく方向にあるのではなかろうかと期待をして、この法案がまずその一里塚になってほしいと願っておるところでございます。
  21. 小林昭彦

    小林説明員 法務省担当者として御説明を申し上げます。  選択的夫婦別姓制度の導入に関する民法改正につきましては、政府の行動計画である男女共同参画二〇〇〇年プランにおきまして、さらに検討を進めることとされておりますし、法務省といたしましても、法制審議会におきまして平成三年から審議をいたしまして、平成八年の二月には、この制度を導入する内容の民法改正要綱の答申に至ったところでございます。  民法は基本的な法律でございまして、特に選択的夫婦別姓制度のように、社会や家族のあり方など国民生活に重大な影響を及ぼす事柄につきましては、やはり大方の国民の理解を得ることができるような状況で法改正を行うのが相当であるというふうに考えられます。  この選択的夫婦別姓制度につきまして国民の世論がどのようになっているのかと申しますと、総理府が平成八年に実施されました世論調査の結果等を見ますと、国民の意見は大きく分かれております。賛成という方が三二・五%、反対という方が三九・八%、それから通称使用を認めていこうという方が二二・五%。このように、大きく国民の意見が分かれている状況でございまして、この問題につきましては、本法案趣旨も踏まえまして、国民各界各層や関係方面で一層御議論、御理解が深まるということを期待したいと考えておりまして、そのために、法務省といたしましても必要な努力を続けていきたいというふうに考えております。
  22. 池坊保子

    池坊委員 世論調査を重視なさるのは大変いいことだと思いますが、八年からもう三年間たっております。意識の変革もあると思いますので、ぜひ、ことしきちんとした世論調査をして、本格的に取り組んでいただきたいと思います。  私が従来から主張しておりますのは、選択肢の多い社会の方が成熟した社会であり、個の尊厳、個の確立のなされている社会の方がより成熟した社会というふうに私は思っております。これは何も、すべての人が別姓をしなければいけないというのではなくて、選択することができる、このことをまず国民に広くわかっていただきたいというふうに思っております。  官房長官も京都でいらっしゃいますが、京都ではまだまだ屋号、自分の名前が仕事そのものだという立場にいる人間もございます。私の娘なども、小さいときから、仕事をしていくんだったら結婚はできないわね、結婚したら名前を変えなければいけないんだから、そういうプレッシャーの中で育ってまいりまして、あなたが結婚する時代には選択制夫婦別姓時代になるわよと言っておりましたが、それを待つことなく結婚いたしましたので、まだまだそういうふうに思っている女性がたくさんいることを頭に置いていただきたいと思います。  次に、育児・介護休業の実態についてお伺いしたいと思います。  育児をしない男は父親とは呼べないというポスターがございまして、我が家でも居間に大きく張ってございます。このポスターは、女性には大変人気がございますけれども男性には余り人気がないようでございます。なぜかというと、若い父親たちは育児もしたい、家事も手伝いたいと思っているけれども、現実にそういう時間がないんだ。あるいは、仕事場で、じゃ僕はきょうは育児がありますから帰らせてください、残業はできませんと言えるような風土ではないというのが現状でございます。  国別男性の家事参画度の調査結果を見ますと、先進八カ国の中で日本は最低のランクでございます。ほとんどの国の男性が五〇%以上の家事分担をこなしている中で、日本男性は何と六%という現状でございます。  平成七年より育児・介護休業法が施行され、さらにこの四月から事業主の義務化へと強化されてまいりましたけれども、現実にはなされていない、それの実効性がないというのが各現場で生きている男性たちの気持ちでございます。  私は、ぜひ、この男女共同参画社会成立に伴って、男性も育児や介護のためにお休みをとることが平気でできるような、そういう意識を持たせるとともに、そういう制度、国の援助も必要なのではないかと思っているのです。  障害者の雇用には国から補助が出されております。夫が一年間あるいは半年間育児休暇をするときに、その負担は事業主だけでなくて国も援助をしてほしいなというふうに思っておりますけれども、そのような施策はできないのか。そのことについてちょっと官房長官お話を伺いたいと思います。
  23. 藤井龍子

    ○藤井(龍)政府委員 お答えします。  育児休業制度は、先ほど先生御指摘のとおり、申し出ることによってとることができる制度といいますか、事業主がこれを拒むことはできないということで、一律に事業主に法律上の義務を課したものでございますので、育児休業を取得させた事業主に対して、そのこと自体でもって助成金を何かということはなかなか難しいと考えております。  ただ、おっしゃるとおり、男性を含め育児休業をとりやすい職場環境づくりというのは大変重要なことであると存じておりますので、私ども法律あるいは指針の趣旨が徹底しますよう、事業主に対してきめ細かな相談、指導を行いますとともに、平成十一年度からは、労働者が家族的責任も果たしつつ仕事を継続できるような大変柔軟な雇用管理、さらには育児休業をとりやすい環境づくり、特に男性あるいは管理職の方々もとりやすい環境づくり、そういうことに取り組む事業主団体に対しまして、新しい助成金制度を設けまして、環境づくりに努めているところでございます。  今後とも、こういった事業を通じまして、男性方々を含め育児休業を取得しやすい職場環境づくりに努めてまいりたいと思っておるところでございます。
  24. 池坊保子

    池坊委員 義務を課しているにもかかわらず、現実に、中小企業、小企業などですと、一年間、半年間休むということは、今この大不況でございますし、リストラも叫ばれている中で、これはとても言いづらいし、事業主もその負担に耐えられないというのが現状なのです。  今度、九日に、少子化対策検討会として、育児のために休業した自営業者を対象にする育児休業手当制度の創設を検討するとかいうことだそうで、私は大変うれしく思っております。企業などで働く労働者には、一歳未満の子供の面倒を見る人には休業前賃金の二五%を支給する育児休業給付金制度というのがございます。これも国が一部負担をしております。  こういうのと同じようなシステムをつくっていただけないかということなので、もう時間が参りましたが、再度、私が考えておりますのはこういうことで、現実には事業主に全部負担をさせるということは難しい現状であるということをお考えいただきたいと思います。ちょっと、いかがですか。
  25. 藤井龍子

    ○藤井(龍)政府委員 育児休業給付制度というのは、雇用保険特別会計で賄っておるものでございますので、育児休業をとらせた事業主さんが直接御負担なさっているというものではございません。  また、育児休業期間中は、若干の賃金等の支給をされている事業主さんもいらっしゃいますが、ほとんど無給というような状態で、育児休業給付二五%、賃金の二五%を支給しているという状況でございます。今おっしゃったような事業主さんの方の御負担というのは、どちらかというと休業を与えることによる、その間仕事が滞るとか代替要員を確保しなければいけない、そういったようなことだと存じますので、先ほど申し上げましたように、そういうことについては、さまざまな形での指導あるいは助成金制度を活用しながら、育児休業しやすい職場環境づくりということに努めてまいりたい、指導に努めてまいりたいと思っております。
  26. 野中広務

    野中国務大臣 先ほど委員から、少子対策、育児対策についてお触れになりましたし、御党からも提案をいただいておりますので、政府として十分検討してまいります。
  27. 池坊保子

    池坊委員 この基本法がただ基本法で終わることなく、それぞれの現場で息づき、みんなが快適な、男女がともに共同し合いながら幸せを実感できる生活をできることを願って、私の質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  28. 二田孝治

    二田委員長 次に、青山二三君。
  29. 青山二三

    青山(二)委員 公明党・改革クラブの青山二三でございます。  男女共同参画社会基本法は、参議院におきまして、男女平等社会の実現を目指して多岐にわたりまして審議をされてまいりましたが、私は、きょうは、女性に対する暴力をなくさなければ真の男女平等社会の実現はあり得ない、そういう視点から、女性に対する暴力根絶への取り組みについて質問をしてまいりたいと思います。  女性に対する暴力につきましては、一九九三年、国連総会で、女性に対する暴力の撤廃に関する宣言が採択されましたのをきっかけに、夫や恋人から受ける暴力、すなわちドメスティックバイオレンスが注目され始めました。  我が国では、去る五月の二十七日に、首相の諮問機関であります男女共同参画審議会より女性に対する暴力に関する初めての答申がなされました。答申では、女性への暴力を解決するために政府の積極的な取り組みが必要という提言がなされております。  女性に対する暴力を社会全体で解決すべき問題として、政治や行政の課題であるとの認識が示されましたことは一歩前進であると思いますが、官房長官の御所見と、女性に対する暴力根絶への御決意をまずお伺いしたいと思います。
  30. 野中広務

    野中国務大臣 先般も御答弁申し上げましたように、先月の二十七日に、男女共同参画審議会から小渕内閣総理大臣に提出をされました答申の中に、「女性に対する暴力のない社会を目指して」という答申が行われたわけでございますが、「女性に対する暴力は、女性に恐怖と不安を与え、女性活動を束縛し、自信を失わせ、女性男性に比べて更に従属的な状況に追い込む重大な社会的・構造的問題であり、男女共同参画社会の実現を阻害するもの」であり、早急な対応が必要である旨、御指摘をされておるところでございます。  また、男女共同参画社会の基本法の中におきましても、基本理念といたしまして、男女の個人としての尊厳が重んぜられること等、男女の人権の尊重を織り込んでいるところでございます。この基本理念に照らしましても、女性基本的人権の享受を妨げたり自由を制約する女性に対する暴力は、決して許されるべきものではないと確信しておるところでございます。  今後とも、女性に対する暴力の根絶に向けまして、政府全体として積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
  31. 青山二三

    青山(二)委員 野中官房長官の大変な御決意を伺いましたので、そのような方向でどうかよろしくお願いをいたします。  一九九七年の警察庁の犯罪統計によりますと、強姦や強制わいせつ事件の届け出数が年間に四千三百九十八件、被害者の九五%は女性、ほとんどが女性という状況でございます。しかし、家庭内の暴力も性犯罪も明るみに出るのは氷山の一角でございまして、実際は、少なくともこの十倍の被害が出ているということでございます。  被害が表に出にくい理由といたしましては、相談する窓口がわからない、仕返しが怖い、被害を受けたことが恥ずかしい、世間体が気になる、捜査や公判での二次的被害が怖いなどとなっておりますが、被害の深刻さは年々増すばかりでございます。  東京都が自治体レベルでの実態調査と支援に乗り出しておりますけれども、その東京都が昨年まとめました調査によりますと、夫あるいはパートナーから殴られた女性が三〇%。ですから、三人に一人がこういう被害を受けております。その中の七%は、何度も暴力を受けている、こういう調査結果が出ております。  これを見ましてもわかりますように、被害は相当広がっているわけでございますので、一刻も早く問題解決への取り組みを始めるべきでございます。  そこで、こうした暴力の実態を把握するために全国規模の調査を早急に行うべきと考えておりますけれども、総理府といたしましても予算を確保して調査する方向にあるとお聞きいたしましたけれども、今後の具体的な取り組みについてお教えいただきたいと思います。
  32. 名取はにわ

    ○名取説明員 お答えいたします。  先月二十七日に、男女共同参画審議会から内閣総理大臣に提出されました「女性に対する暴力のない社会を目指して」と題する答申におきまして、女性に対する暴力は潜在化する傾向にあるため、その実態を把握するための調査の必要性が指摘されております。  今年度、総理府におきましては、今後の施策を進める上での資料とするとともに、社会の意識啓発を図る契機とするため、東京都は東京都だけでございましたけれども女性に対する暴力の実態に関する全国調査を行うことを私どもは予定しております。これが有効な調査となりますように、今現在、その準備を進めているところでございます。
  33. 青山二三

    青山(二)委員 それでは次に、婦人保護事業についてお伺いをしたいと思います。  婦人相談所、婦人相談員、婦人保護施設等のこの婦人保護事業は、現在売春防止法に基づいて行われております。本来の目的は、売春女性を処罰して保護、更生させるというのが目的でございましたけれども、時代の変遷とともに、売春に関して相談する女性は今激減しているようでございます。それにかわりまして、現在は、夫の暴力から逃れた女性を一時的に保護しておりまして、大変困っている女性の強い味方になっております。  しかしながら、婦人保護事業は売春防止法、そして、母子を助けるという母子寮の事業、いわゆる母子生活支援事業というのは児童福祉法などで行われておりまして、複数の法のもとでこのような対応が行われているのは大変不都合でございまして、これをもっとすっきりとした形でできないか、このように思うわけでございますけれども官房長官のお考えをお伺いしたいと思います。
  34. 野中広務

    野中国務大臣 御指摘婦人相談所などの婦人保護事業は売春を行うおそれのある要保護女子の相談やあるいは保護を、また、児童福祉施設であります母子生活支援施設は母子世帯の生活支援を本来の役割としてきておりますことは、御承知のとおりでございます。これらの問題の重要性は、引き続きこうしたそれぞれの役割を果たしていく必要があるわけでございます。  他方で、これらの事業は、女性やその子供を入所させて保護または生活支援を行う機能を持っておるところでございますので、この機能を活用いたしまして、暴力によります被害を受けた女性についても相談や緊急の保護を行ってきたところでございます。  したがいまして、これらの制度を一本化することはいろいろ問題があるわけでございますけれども、暴力による被害を受けた女性に対する取り組みにつきましては、先般、男女共同参画審議会の女性に対する暴力部会から出されました答申におきまして、売春防止法に基づく婦人相談所の役割を含めて、女性に対する暴力の現状に対応するため、公的機関のあり方についても検討を行うべきであるとの提言をいただいたところでございますし、私自身も、この問題を若干担当いたしました経過から、委員の御指摘になりましたような一体的な扱いというものに十分な理解と認識を持つ次第でございます。今後、政府といたしましても、全体として検討してまいりたいと考えております。
  35. 青山二三

    青山(二)委員 官房長官の大変御理解ある御答弁で、これは前向きに対応されるということを確信いたしましたけれども、売春防止法もことしで四十年目を迎えるわけでございます。この節目にこういう法律を見直しまして、真の女性人権の確立という視点から、幅広く女性の自立を支援するための法律、例えば女性福祉法とかあるいは女性福祉基本法に発展させるべきだと思いますけれども、こういう声も全国の女性から上がっておりますので、その方向で御検討をいただきたいと思います。  さて、婦人という名前が、ここ数年来、女性という呼び名に変えられてきております。国でも、これは大変遅いと私は思っておりましたけれども、一九九七年、一昨年に、労働省が婦人局を女性局に変えました。そして、警視庁もこの六月から、婦人警察官を女性警察官と呼ぶようになりました。そして、関係組織の名称変更も大変進んでおりまして、自治体を含めた行政用語から婦人という言葉はなくなりつつあるようでございます。そして、御存じでございましょうか、先日より国会内での衆議院のトイレの看板が、婦人便所から女性手洗い所となりました。これは野中官房長官の御提案によるものと伺っております。  こういう細かい配慮もしていただいているということを認識しました上で、この婦人保護事業、そして婦人相談所、婦人相談員、婦人保護施設というふうに、まだ婦人という言葉が使われておりますけれども、この際、この呼び方を女性に変えてはどうかと思いますけれども官房長官、いかがでございましょうか。
  36. 野中広務

    野中国務大臣 御指摘のように、婦人相談所、婦人保護施設あるいは婦人参政権などにおきます婦人の用語につきましては、慣用語として定着をしておるわけでございまして、必ずしもこれが不適切かどうかということは一概に言えないと思うわけでございますけれども婦人相談所の役割を含めまして、先ほど申し上げましたように、女性の暴力に対応するための公的機関のあり方について検討をすることになっておりますので、御指摘の点を踏まえまして、今後、この呼称については検討をしてまいりたいと考えております。
  37. 青山二三

    青山(二)委員 そのように、どうかよろしくお願いいたします。  国は女性に対する暴力の根絶に本腰を入れて取り組むことは当然でございますけれども、しかし、被害者のための公的な施設が今十分とは言えない現状にありまして、民間シェルターがその対応に当たってくれております。民間シェルターはここ数年で急速にふえておりまして、現在は全国に二十数カ所あるようでございまして、それがほとんど満員の状態が続いております。また、新たに開設するという動きもあるようでございます。  民間シェルターでは、加害者に知られずに生活ができるように三カ月ほど保護をしてくださったり、また、自立の手助け、関係者の情報提供、そして加害者側の男性相談組織を結成するなど、精力的な活動を行ってくれております。  しかしながら、民間シェルターの運営はボランティアが中心でございまして、共通の悩みは何といっても資金不足でございます。年間数百万から数千万はかかると言われておりますが、自治体の公的援助があるのはごく一部のようでございます。東京都とか新潟とか旭川のごく限られたところでございますので、ほとんどが市民や企業からの寄附とスタッフの持ち出しで賄われているようでございます。そうした活動を行っている民間シェルターに、国としても何らかの助成をすべきと考えますけれども、この点につきましてはいかがでしょうか。
  38. 野中広務

    野中国務大臣 いわゆる民間のシェルターは、家庭内の暴力等の被害をお受けになりました女性を一時的に保護をし、自立の支援をされておるものでございまして、私どもとしても、一般論として高く評価をし、敬意を払っておる次第でございます。  ただ、その機能や実態はさまざまなものがあると聞いておるところでございまして、先月二十七日に男女共同参画審議会から内閣総理大臣に提出されました答申におきましては、被害者への支援、援助を効果的に行うため、関係機関・団体、専門家等が十分機能し活動できるよう相互に連携をとることが大切であると指摘をされておるところでございます。また、当面の取り組み課題といたしまして、これら関係機関・団体、専門家等に対し、各種情報の提供等、支援を行うことが提言をされておるところでございます。  このような答申もございますので、それぞれ我が国の民間団体の支援の実態等を十分私どもも把握をいたした上で、委員指摘の問題等を含めて、政府として検討をしていかなければならないと考えておるところでございます。
  39. 青山二三

    青山(二)委員 それでは、時間も迫ってまいりましたので、最後の質問になると思いますけれども、ドメスティックバイオレンスに対する海外の取り組みと我が国の取り組みを比べてみたいと思います。  一九九三年に、国連女性に対する暴力撤廃宣言を採択いたしました前後から、欧米先進国では暴力防止のための法整備が進められてきております。  例えば、イギリスでは、もう一九七一年に初の民間シェルターが開設をされました。七六年にはDV及び婚姻事件法が成立いたしております。八三年には婚姻住宅法が成立をいたしておりまして、暴力を振るう夫を家から追い出せるようになっております。九六年には家族法が成立をいたしております。  また、アメリカでは、一九七〇年代後半から草の根でシェルターがつくられておりまして、適切な対応をしなかった警察を訴えることができるようにもなっております。また、一九九四年には女性に対する暴力に関する法が成立をいたしております。  また、ノルウェーでは、イギリスに次いでシェルターの歴史は古く、全国五十カ所のシェルターの情報交換や調査に当たる総合センターが設立されております。  また、韓国では、一九九三年、性暴力特別法が成立いたしておりまして、一九九七年には家庭暴力防止及び被害者保護法が成立をいたしております。また、マレーシアにおきましても、一九九六年、DV禁止法が成立をされております。また、台湾では、近く家庭暴力禁止法が施行される予定となっております。  このように、諸外国に比べまして我が国の対応は大変おくれているのがわかるわけでございまして、こうした実態についての官房長官の御所見、それから、このように諸外国の対応を参考にしながら、ドメスティックバイオレンスの特殊性に配慮した法整備を検討していくべきであると考えますけれども、あわせてこれも官房長官の御所見をお伺いいたしまして、質問を終わらせていただきたいと思います。
  40. 野中広務

    野中国務大臣 女性に対する暴力は、もう決して許されるものではないということは言をまたないわけでございます。委員指摘の諸外国におきますそれぞれの取り組みについてでございますが、我が国も法制面を含めてさまざまな取り組みの状況を聞いておりますので、現在それぞれ、委員が御指摘になりましたような諸外国の各種取り組みについて調査を行っておるところでございます。女性の暴力に対し我が国がとり得る対策の検討を、こういう調査を含めまして、今後政府全体として進めてまいりたいと考えております。
  41. 青山二三

    青山(二)委員 男女共同参画社会実現のためにそれぞれいろいろなすばらしい前向きの御答弁を多々いただきました。  予定いたしました質問を少し残しましたけれども、時間が参りましたので、これで終わらせていただきます。大変ありがとうございました。
  42. 二田孝治

    二田委員長 次に、瀬古由起子君。
  43. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 日本共産党の瀬古由起子でございます。  本法案第三条、基本理念として男女平等、男女の人権の尊重を掲げ、男女は性別による差別的取り扱いを受けないことと位置づけられて、第八条では国の責任を明らかにしております。そして第二条では、改善のための積極的改善措置を提起しております。この条文は、当然女性国家公務員にも適応されます。  そこで質問をいたしますが、公務員制度調査会がことし三月十六日に公務員制度改革の基本方向に関する答申を出しました。その中で男女共同参画の推進の項に、「特に性別による区別を設けていなくとも、」「結果的に女性にとって不利な扱いとなっている可能性があると考えられるものについても検討・見直しが必要である。」このように述べております。  結果的に女性にとって不利な扱いとなっている可能性があると考えるものというのは、具体的にどのようなものを想定されているのでしょうか。調査会ではどのような事例が論議されたのか、まず最初に伺いたいと思います。
  44. 中川良一

    ○中川(良)政府委員 お答え申し上げます。  公務員制度調査会におきましては、男女共同参画の推進の観点から、国家公務員に関する制度運用の全般に関して検討がなされたところでございます。  ただいまの御指摘の点でございますが、例えば職員の採用、登用に当たりまして、男性的な特性が高く評価されるなどいわゆるジェンダーバイアスが影響を及ぼして、結果的に女性に不利となるようなことのないようにすべきであるといったような議論がなされたところでございまして、具体的には、採用方法や評価などのあり方について改革方策を提言いたしております。  具体例で申し上げますと、例えば採用面接におきます評価項目をもう少し客観化すべきではないかというような点、あるいは今後人事評価のあり方を見直すに際しまして、ジェンダーバイアスの影響を防止する観点にも配慮すべきであるというようなことを指摘いたしております。
  45. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 人事評価のあり方の問題は大変大事な問題だと私は思います。  そこで、私自身が調査した事例を御紹介したいと思います。皆さんのお手元にお配りさせていただいております資料一ですけれども、これは全建労東海地本、建設省の労働組合なんですけれども、一を大きく図表にして、少し遠いかもわかりませんけれども、こういう形で表にいたしました。  それで、この表は、黒く丸がついているのは女性なんですね。そして、この表で白丸、このパネルで青い丸は男性です。それで、ポストが高くなればなるほど黒丸が少なくなっている。一般、主任、それから指導員等というところにぴたっと黒丸が張りついている、こういう状況がございます。  そこで、この表には、この表を見れば男女差別は一目瞭然、こういうように書かれているのですけれども、そのとおりだと思うのですね。管理職の昇任、昇格すればするほど女性が全くなくなっていく。  建設省は、先ほど私が述べました公務員制度調査会の指摘、結果としては女性にとって不利な扱いとなっている可能性があると考えられるもの、この問題はこれに当てはまらないでしょうか。本法案が明記しております積極的な改善措置の対象に一体なるのかどうか。この点を伺いたいと思います。
  46. 小野邦久

    ○小野(邦)政府委員 建設省の官房長でございますが、お答えを申し上げます。  建設省で管理職等への女性職員の登用の問題でございますけれども、全省庁で大体二二%ぐらいの女性の方がおられるわけでございます。建設省の場合には、これは九%ということで、比較的比率は少ない方でございます。  業務等からいろいろな意味で、業務の性格とか仕事のいろいろな理由からそういうことになるわけでございますが、そういう中で、特に女性であるからといって差別をするとか、あるいは女性職員であるがゆえに具体的な任用等に当たって何か差を設けるというようなことは一切いたしておりません。私ども、いろいろ全国各地に職場がございますので、やはりそういうところに職員をきちっと配置することによって業務を的確に遂行していかなければいけないという面もございますので、適材適所で事業を実施してきているわけでございます。  法案の中の積極的な改善措置というものが今先生御指摘の具体的な任用の問題に当てはまるのかどうか、こういうことでございますが、基本法の趣旨で、八条で積極的な改善措置ということがうたわれているわけでございます。今後は、この法案の御可決、御承認ということがございましたら、やはりそういう趣旨も十分踏まえて、より以上に適材適所を旨として適正な人事管理というものを行ってまいりたいというふうに思っておりますが、改善措置の中にその具体的な人事の基準みたいなものが入ってくるのかということになりますと、やはりこれは、基本的な計画をまず政府としておつくりいただく中で、その趣旨を踏まえて実施していくということに尽きるというふうに思っております。
  47. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 適材適所といいながら、この表を見たらもう本当に一目瞭然に、女性が幹部に上がっていかない仕組みになっているわけですよ、表を見るだけで。特に女性は低いポストが適材適所だというように思ってみえるわけじゃないと思うのですけれども、事実、こうなっているのです。  もう一点御紹介したいと思うのですけれども、資料の二を見ていただきたいと思うのです。これは全国税東京支部の表なんですが、これは国税庁の関係です。十三署のポスト別、期別の分布実態がございます。黒い三角印が女性なんですね。これは、それこそ右端にびたっと女性が張りついております。  先ほど建設省と大蔵省と両方挙げて申しわけないのですが、とりわけ省庁の中でも問題があるといいますか、特徴的な省庁をきょうは挙げさせていただいておりますけれども、管理職の上位に女性の登用が本当に少ないわけです。今、特にこの税務関係の中では、八級以上のポスト、これにつけてもらいたい、そういう声がすごく切実に女性から上がっております。八級ポスト以上の女性はもう皆無と言っていい事態なんですね。  それで、現場で聞いてみますと、若い職員がどんどん入ってきて、ベテランの女性がいろいろ仕事を援助したり、教育したりするわけですよ。そうすると、その男性がどんどん自分よりも追い越して出世していく。自分はいつまでも同じポストで、本当に財政的にも、計算しますと十年間で二千百六十七万円ぐらいの収入差が生まれてくると計算しているのです。実際にはこの差というのは、仕事をしている間だけじゃなくて、退職後も年金などにもかかわってくるわけですが、何よりも、お金の問題もあるのだけれども、自分が惨めになってしまうというわけですね。男性がどんどんポストが上がっていって、同期で入っても、いつまでもこういう右端に張りつくようなポストになっている。  こういう状態をどう考えるのかということなんですが、これも、先ほど私が述べましたように、結果として女性にとって不利な扱いになっている、これに当てはまるのじゃないでしょうか。積極的な改善措置が必要ではないかと思われるわけですが、いかがでしょうか。
  48. 大武健一郎

    ○大武政府委員 お答えさせていただきます。  ここにございます、東京東支部と書いてあるのですが、この資料の出所がよくわからないものですから、答弁は差し控えさせていただきたいと思います。  ただ、例えば東京局の管内で見ますと、女性につきまして、ここには何か書いていないのですけれども、指定の相談官、あるいは指定の特別調査官、あるいは局の課長クラス、あるいは非指定の特別調査官あるいは相談官、署の統括官、税務広報官等にも女性を登用しているところでございます。  いずれにしましても、人事に当たりましては、的確な事務運営を行うということを基本に、それぞれ職員個々の適性、能力、勤務実績などを総合的に勘案して公平に行っているところでございまして、女性であるということを理由に人事上の差別は行っていないということを御理解いただきたいと思います。
  49. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 建設省も国税の方も、実際には差別はやっていません、そして適材適所だと。こうやって省庁全部を見直していますと、結局女性は全然上級のポストにつけない実態になっているわけです。これは能力の差があるのだとか、いろいろ言われていますね。先ほど言いましたように、女性の大半が勤務能力が低いとか管理職は不適切だなんてことはあり得ないですよ。  それで、八日の当委員会で、官房長官質問に答えて、女性国家公務員の採用、登用について積極的に取り組むという方向を明らかにされたのですね。今私が一例で御紹介しただけですけれども、結果として女性にとって不利な扱いになっているというような状況が私はあると思うのですが、国の足元である女性国家公務員の登用の問題、この現状から見直して積極的な改善措置をとるべきでないかと思うのですけれども、長官、いかがでしょうか。
  50. 野中広務

    野中国務大臣 女性の国家公務員を本格的に採用し出したのはここ数年だと私は思うのです。労働省等一部の役所におきましては早くから女性のキャリアを採用してまいりましたけれども、その他は、女性自身も国家公務員を目指される人が少なかったのかもわかりませんけれども、総じてキャリアとして女性を採用するようになったのはここ数年だと思うわけでございまして、なかなかそういう意味において女性が幹部として活躍できる場はいまだ来ておらないという状況でございます。  再度申し上げておりますように、男女共同参画の二〇〇〇年プランにおきましても、女性国家公務員の採用、登用、職域拡大及び能力開発を一層推進する。その際、現状について定期的に把握、分析しながら計画的に取り組むことが効果的であるとの観点から、採用、昇進等の状況を定期的に調査、公表し、改善が必要とされる課題への取り組みを示した計画を策定することを検討することとされておるわけでございます。  したがいまして、政府としては、引き続き女性公務員の採用、登用の促進につきましては今後着実に努力をしてまいりたいと考えております。
  51. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 実際にはこれだけの差が生まれていても、ちゃんと適正に、適材適所でやっている、こういうふうに言われるわけですね。そうすると、一体どういうようにこれを改善していくのかという問題は、私はもっと真剣に取り組まなければならないというふうに思うわけです。  そういう点で、私、もう一点、資料の第三を見ていただきたいと思うのですけれども、これは社会保険診療報酬支払基金の表でございます。支払基金というのは、女性が五二・三%を占める職場なのですね。九一年十二月に東京高裁による和解以降、女性に対する三等級までの差別は基本的には解決している、こういう職場です。十二年間、そのために闘いが必要だったのですね。裁判をやったわけです。  そして、九八年七月一日現在ですけれども、四等級の在級者は千百四名います。そのうち女性は五百四十八名ですから四九・六%、約半分です。三等級も、九百四十二名中、女性は四百七十五名で五〇・四%。二等級の在級総数八百十一名中、女性は百三十一名と、がたんとこれ、下がっております。一六・二%なのですね。  支払基金は転勤を二等級の昇格の絶対条件としていましたけれども、これは大きな問題になりまして、監督官庁である厚生省の努力もしていただきました。そして、東京都の地方労働委員会の要請で、転勤なしでも、審査事務専門職、こういうポストに限定して昇任、昇格させる、こういうことが労使で確認されてきたわけです。しかし、現在、五十歳以上で転勤が困難だという理由で二等級に昇格できない方百三十四名中、七一・六%が何と女性なのです。  九八年の五月一日現在ですけれども、単身赴任者の総数、四百九十三名です。一、二等級の単身赴任率が約五〇%になっているのですね。二人に一人の割合で単身赴任なのです。これが年々増大してきているわけですね。女性の単身赴任者は四十五名、九・一%です。これは女性にとって転勤や単身赴任というのがいかに困難かということを示していると思うのですね。  支払基金はこれまで、長期にわたる女性差別に、労働委員会や裁判所の判決を受けて、平等の理念に基づいて職員の処遇を行う、このことを約束してきました。ところが、最近、一方的に、転勤を必須条件とする二等級への昇格、これを労働者に通告してきております。これは逆戻りなのですね。これでは、四月から施行された改正均等法の趣旨にも、また、本法案の理念にも反すると思うのですけれども、この点、いかがでしょうか。
  52. 羽毛田信吾

    ○羽毛田政府委員 お答え申し上げます。  社会保険診療報酬支払基金、いわゆる支払基金と言っておりますけれども、この人事につきましては、全国組織でございます支払基金と労働者との関係におきまして労働契約を結んでやっておられるわけでありまして、等級に関係はなく、やはり全国各地への転勤ということは、これは当然あり得るというのがまず一般的な原則でございます。  そこで、今お話のございました二等級以上、すなわち部課長クラスのいわゆる管理職についてでございますけれども、幹部職員として全国的な視野に立った業務遂行ということがやはり支払基金の業務遂行上大変大事でございますので、そういった意味での幅広い知識なりあるいは経験を習得していただけるということで他支部への配置転換をやるということで基本方針に対処をいたしておりまして、これは、いわゆる男女差別というような観点ではなくて、支払基金としての業務をよりよく遂行しようという観点で出されているというふうに承知をいたしております。そういった支払基金の基本方針そのものについては、私どもの方も妥当なものではなかろうかなというふうに考えております。  ただ、女性職員を含めまして、支払基金の職員の転勤につきましては、それぞれの家庭事情もございますから、基本的には支払基金としての方針に基づいて対処すべきものではありますけれども、職員の希望でありますとか意向を十分聴取をして、職員に不安のないように十分な配慮を行うということにつきましては、私どもも今後とも指導してまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  53. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 職員の意向を配慮してというのですけれども、この職場には、労働組合との、転勤したら一体いつ戻ってこられるのか、状況はどうだという、その論議さえもないわけですね。一方的に配転、転勤ということが行われて、それでいろいろな問題が起きている職場なのですね。それはもう厚生省もよく御存じだと思うのです。  それは、全国的な視野で、当然、いろいろな知識を得て、経験を得るということは大事ですね、国家公務員の場合には全国的にそういういろいろな事業所があるわけですから。しかし、とりわけいろいろな困難な状況を持っている女性、家事、育児、介護、いろいろな問題を持っている女性を同じように、私は男性だってそうだと思うのですよ、男性だって、家事や育児や教育や介護や、そういうものについて配慮するということはやはり当たり前のことだと思うのです。  そこで、私は、人事院にお聞きしたいと思います。  人事院は、昨年八月、男女共同参画社会へ向けた女性の活用等の勧告を出しております。「男女共同参画社会の実現には、職業生活と家庭生活との両立を図ることが必要」だ、そういう中で、労働時間の短縮ということを述べられております。これは重要です。  同時に、今お話ししましたように、転勤を条件にした昇任とか昇格問題をどのように考えているか。女性にとっても男性にとっても、育児、教育、介護、健康の問題など、一定の条件の配慮、本人の同意といったルールが必要ではないかと思うのですけれども、いかがでしょうか。
  54. 森田衞

    ○森田(衞)政府委員 お答えいたします。  職員の昇任につきましては、その職員の勤務成績その他の能力の実証に基づいて行われるということは当然でございますが、今先生お話のございましたように、国の機関は、国民に均質の行政サービスを提供するために全国各地にございまして、人材育成とか人材の効率的配置並びに行政内容の統一性、一体性の確保等の観点から、職員の転勤というのが必要であるということは御指摘のとおりでございます。ただ、転勤によりまして、多様な知識経験等も習得することもできますし、またさらには、より上位の職責につく能力も有することになることも考えられますので、各省庁におかれまして、転勤の有無を判断要素の一つとして昇任人事を行うなどの人事運用がされておりますことは、あり得ることではないかというふうに考えているところでございます。  なお、男性女性を問わずに、転勤に関します職員の負担を軽減するという観点から、各省庁におかれまして、人事管理のあり方並びに業務の進め方につきまして今後さらに検討していくことも必要であると考えているところでございます。
  55. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 人事院にもう一度お聞きしますけれども、人事院は、平成四年度の年次報告書を出しておられます。ここで、中部地方建設局における任用等における組合差別事案というのがございます。要するに、この中で、組合差別だ、こういう指摘があって、その申請が行われております。そのときに、人事院は、申請者が昇任、昇格ができなかったのは転勤に応じられないのが主な原因として、差別が行われていないと断じております。  国家公務員で、どんな事情があったって、転勤をやらなければ差別されて当然だ、こういうのを人事院がお墨つきで出して、差別を助長するということになったらどうなるのですか。女性は本当に、そのためにはもうポストが上がらなくても仕方がないということを人事院が言っているのと同じじゃないでしょうか。いかがですか。
  56. 森田衞

    ○森田(衞)政府委員 お答えいたします。  お尋ね行政措置要求でございますが、これにつきましては、特定の組合員であることによりまして、昇格、昇任等によって差別が行われているのではないかということで、その是正の行政措置要求が出されたものでございますが、私どもが調査した結果につきましては、特定の組合員であるということによる差別はなかった。転勤に応ずるか否かによる、業務運営に貢献する職員を優先するかどうかというところについての人事運用がありました。その結果として、転勤の有無による結果であるということで、組合による差別はなかったという判定でございますが、先生おっしゃいました転勤に応ずるかどうかによりまして差別が行われたかどうか、是認するかどうかについては何も言っていないところでございます。  私どもといたしましては、先ほど申しましたように、転勤によります多様な能力の確保ということを考えますと、各省庁におかれまして、転勤の有無を判断要素の一つとして昇任人事を行うということは当然あり得ることではないかということを述べたにすぎないというふうに理解しているところでございます。
  57. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 官房長官に伺いたいと思うんですけれども、国家公務員の場合には本当に全国的な事業所がある、そういう場合に、転勤問題が出てきたときにどうしても転勤できない場合、それから遠距離通勤もできないという場合も当然あるわけですね。これが現在やはり昇任、昇格のネックに事実上なっているわけですよ。これは長時間労働とあわせて実質的な女性差別をつくる重要な原因になっているし、公然と差別はしないけれども、転勤を踏み絵にして女性を振り落としていく、こういう事態に事実上なっているわけです。  この法案は、男女の人権の尊重や、家庭生活における活動そして他の活動の両立ということを位置づけているわけで、またILOの百五十六号条約第三条で、仕事と家族責任の両立を明記している。こういう点では、転勤や遠距離通勤が困難な女性をねらい撃ちして差別する、こういう問題についても、この法律というのは一定の制限、禁止を設けているというふうにやはり判断していいんじゃないかと思うんですけれども、その点いかがでしょうか。
  58. 野中広務

    野中国務大臣 現在、公務員の勤務態様について委員が御指摘のような問題が現存することは、私もよく承知をしております。例えば、単身赴任のために起きた事故、あるいは単身赴任で出ておるために子供の養育上に支障があったこと等、私ども深刻な問題も経験をしておりますし、一概になかなか、転勤とかあるいは遠距離通勤ができるかどうかを一般的には問題にできない点も現状あるわけでございます。  しかしながら、女性は転勤や遠距離通勤をしにくいという理由で、昇格について男女異なる取り扱いをされるということは、男女雇用機会均等法に照らして明確に違反するものでございます。  そういう認識に立ちまして、家庭生活と仕事など他の活動と両立を図ることは、男女共同参画社会基本法が目指す基本理念でございまして、政府としても職業生活と家庭生活との両立ができる環境整備を努めていきたいと思います。  私も経験しました職場の中で、例えば教員等は非常に共稼ぎが多うございます。こういう人が、女性がどうしてこんな遠距離に転勤になるんだろうと思ってその背景を見てみましたら、遠距離になれば結果的に退職するということを期待してやっておる向きもあって、若干是正した経験も私も持っております。  そういうことを考えますときに、ぜひ、できるだけいわゆる単身赴任が可能でないような条件づくりということに十分な、なかなか難しい問題はありますけれども、単身赴任をしないような形でのありようということを十分配慮してこれからの勤務態様というものに気を配っていかなくてはならないと考えておるところでございます。
  59. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 多くの女性が願う法制定、これは女性だけ特別に扱ってほしいと言っているわけじゃないので、本当に、家庭と仕事と両立という点では、男女とも一定の家事や育児や教育や介護やそういうものを十分配慮して考えていただきたいという点をぜひ今後御検討いただくことを期待して、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  60. 二田孝治

  61. 知久馬二三子

    ○知久馬委員 社会民主党・市民連合の知久馬二三子でございます。  私は、この男女共同参画社会基本法が本当に魂の入った実効性のあるものになるよう願っておるものでございます。  まず最初にお尋ねいたしますけれども、既に幾度も指摘されているところでございますが、男女共同参画社会の前提として男女平等の実現があるということ、しかしその実現に向けてはなお一層努力が必要であることは共通の認識と言ってよいでしょう。  そこで、官房長官お尋ねしますが、その一層の努力が必要とされている課題について具体的に例を挙げていただきたいと思うのですが、よろしくお願いいたします。
  62. 野中広務

    野中国務大臣 男女平等の実現は男女共同参画社会の形成の前提であると考えておるところでございまして、議員が御指摘のとおり、男女平等等の実現に向けましてなお一層の努力が必要であると認識をしておるところでございます。  男女共同参画社会基本法案におきましても、男女共同参画社会が、男女が社会の対等な構成員として活動に参画する機会が確保される社会である旨を規定しておるところでございまして、この基本理念として、男女が性別による差別的取り扱いを受けないこと等の男女の人権の尊重を掲げておるところでございまして、男女共同参画社会の実現に向けまして、今後とも取り組んでまいりたいと考えておるところでございます。
  63. 知久馬二三子

    ○知久馬委員 その意気込みでひとつよろしくお願いしたいと思います。  今後男女共同参画社会の前提たる男女平等の実現にあっては、まず、雇用の分野における男女の平等な取り扱いの促進や家庭生活と職業生活との両立の支援のための施策とか、それから、性別による固定的な役割分担意識の是正を初めとする男女平等を推進するための教育、啓発にかかわる施策、そして婚姻など家庭制度に関する法制度の見直しや社会保障制度などの諸制度個人単位に見直すことなどがあると思います。  そして、男女平等の視点に立った社会制度、慣行の改善のための施策など、例えば社会保障制度の中で年金については、転職や退職や子育て、離婚、死別といった多様な女性のライフスタイルに対応した女性の年金権の確立などが重要であろうと思います。  そして、社会経済活動における性差別撤廃のための施策や、さっきから出ておりましたけれども女性に対する暴力の根絶のための施策、妊娠または出産に係る選択の自由など性と生殖に関する女性の自己決定の尊重及び生理、妊娠、出産など女性に固有の身体的機能の保護など女性の健康の支援のための施策などが挙げられると思います。  そして、特に本年四月から改正施行されました労働基準法では女子保護規定が撤廃され、男女共通の時間外労働の規制が実現するまで働く女性にとっては本当に過酷な状態にあると思います。そのようなこともありますし、さらには、税制度においても、配偶者控除の制度などにより女性をパートタイマーとして固定するような、女性にとって不利益となるようなさまざまな制度が存在していると思うんですけれども、これらの具体策について、検討がなされなければならない課題だと考えます。  さらに、男女共同参画基本法策定に当たっては、当然ながら、今申し上げましたような課題について検討されるものと理解しておりますが、その御見解をお伺いしたいと思います。
  64. 佐藤正紀

    佐藤(正)政府委員 お答え申し上げます。  この法案は、基本理念等を定めることによりまして、男女共同参画社会の形成を総合的、計画的に推進することを目的とした基本法でございますので、個別具体的な事項につきましては法案の中には規定をしておりませんけれども、幅広い分野にわたりまして、この法案の基本理念に照らしましていろいろ議論がされていくものと考えております。  具体的には、男女共同参画基本計画をこれからまたつくっていくわけでございますが、男女共同参画社会の形成の促進に関する施策の総合的、計画的な推進を図るためのものでございますので、広い視野に立った、多角的な面からの検討が必要であろうと考えております。  委員会審議におきましてもいろいろな御指摘をいただいておりますが、そのような御指摘も踏まえながら、内閣総理大臣が男女共同参画審議会の意見を聞いて計画を策定するということを考えておりますので、今後見守っていただきたいと思っております。
  65. 知久馬二三子

    ○知久馬委員 私がさっき言いました以上にまだまだたくさん多くの課題があると思いますので、ぜひともそれらのことも審議の中に入れてほしいと思います。  続きましては、法案第十一条に「政府は、男女共同参画社会の形成の促進に関する施策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならない。」とあることは、当然ながら、男女平等の実現に向けた具体的施策を展開するに当たっては、新たな立法措置、現行法の改正も念頭にあると理解してよいのでしょうか。その辺の御見解お願いします。
  66. 佐藤正紀

    佐藤(正)政府委員 本法案の十一条につきましては、男女共同参画社会の形成の促進に関する施策を実施するために必要な法制上または財政上の措置その他の措置を講じることが重要であるということを規定しているわけでございますが、今後新たにどのような措置を講じていくかにつきましては、先ほど申し上げましたような基本計画を策定していく上で、個別の分野につきましていろいろ議論をしてまいるわけでございますが、個々に必要性を検討した上で適切な対応を図ってまいりたいと考えております。
  67. 知久馬二三子

    ○知久馬委員 具体的なものについては基本計画の中でということなんですが、その基本計画を十分に考慮していただきたいと思うのでございます。  次に、苦情処理人権が侵害された場合の被害者救済に関する措置について官房長官は、我が党の辻元清美議員の質問に対して、第三者機関等も考慮に入れながら対応を考えなければならないとお答えになっております。  このことは、今後、新たな苦情処理人権侵害に対する被害者救済の措置を男女共同参画審議会等で検討されるように思いますけれども行政からの独立した権限ある第三者機関の創設もその検討課題の一つであるという趣旨として理解してよいでしょうか。そこをお伺いしたいと思います。
  68. 野中広務

    野中国務大臣 けさほど来よりもお答えを申し上げておるところでございますけれども苦情処理あるいは人権救済等につきましては、私どもといたしましては、今地域に根づいてとうとい御活動と御協力を賜っております行政相談委員あるいは人権擁護委員をそれぞれお願いをいたしまして、第一には、その中でできるだけ女性の方の数もふやしてお願いをすることにいたしまして、その上で、特に女性苦情処理あるいは人権救済、こういう問題等について、それぞれ特別の研修やあるいは情報の提供を行うことによりまして、特定にそういう関係に御協力いただく方をお願いしていくことを原則といたしております。  中には、相談がしやすい方、あるいはしにくい問題、処理しにくい問題、こういう問題も出てこようと思うわけでございますので、ひとまずは、先ほど申し上げましたように、行政相談委員人権擁護委員の中で、こういう道に詳しく、またそれぞれ私どもお願いして研修を受けていただく、そういう皆さんお願いをする中で推移を見てまいりまして、どうしても、そのことによって苦情処理やあるいは人権救済というものが円滑にいかない場合に、新たなる組織のあり方もまた検討をしていかなければならないということを申し上げた次第でございまして、今もそのように考えております。
  69. 知久馬二三子

    ○知久馬委員 ありがとうございました。よく理解できました。  次には、男女平等の実現に向けた施策を進めるには何といっても、学校教育はもちろんのこと、社会のあらゆる場で男女平等に関する教育や啓発は不可欠だと思います。男は仕事、女は家庭といった性別による固定的な役割分担意識を変えていくためには、男女平等教育の推進は絶対必要条件と言っても過言ではありません。  そこで、今回の基本法制定を受け、男女平等教育など人権教育や啓発を推進する体制の整備を図り、施策、事業の財政措置の根拠となり、さらにはNPOなど民間の活動への支援など具体的な内容を含んだ新たな法的措置についても今後検討すべきであると考えますが、この点についてお聞かせください。
  70. 佐藤正紀

    佐藤(正)政府委員 男女共同参画社会を実現していく上では、国民の方々の意識の啓発というものが非常に重要でございます。そのような意味から、本法の十六条におきまして、啓発活動をするようにというようなことを規定しておるわけでございます。  人々の意識の中に長い時間をかけて形成されてきました性別に基づく固定的な役割分担意識が男女共同参画社会の形成の障害となっていることを踏まえまして、国といたしましても、マスコミを通じたりあるいはいろいろな情報手段を通じたり、講演会を通じたりあるいは教育部門を使ったりいたしまして、国民の理解を深めるような適切な措置を講じていきたいと考えております。  なお、法的措置等の御指摘がございましたけれども、具体的にどういうような措置をとるべきかにつきまして、個々具体的に検討してまいりたいと考えております。     〔委員長退席、植竹委員長代理着席〕
  71. 知久馬二三子

    ○知久馬委員 やはり私は、一番大切なというか根本にあるのは教育の問題であろうと思うのであります。私は田舎の方なんですけれども、まだまだ、男女共同参画社会といってもちょっとぴんとこないというか、そういう方たちもありますし、そして家庭の中を見ておりますと、どうしても男中心の家庭生活というものになっております。  そこらあたりの啓発活動というものを十分していかなければならないし、また男の人の意識の改革、女の人の意識の改革というものをしっかりしていかないと、なかなかこの問題が解決しないんじゃないだろうかなという気持ちでおります。一部の人たちが突出して考えていくというのじゃなくして、本当に国民全体がこのことにしっかり目を据えてかかわらなければならないという気持ちでおります。  次には、法案によりますと、男女共同参画審議会は二十五人以内の委員で構成され、その委員は学識経験のある者のうちから内閣総理大臣が任命するとありますが、この委員の選任に当たっては、NPOを初め民間団体などの具体的な課題に取り組んでいる人々を必ず選任すべきだと考えますが、御見解をお聞きしたいと思います。     〔植竹委員長代理退席、委員長着席〕
  72. 佐藤正紀

    佐藤(正)政府委員 本法案におきましては、男女共同参画社会の形成の促進に関しまして、その推進体制といたしまして、男女共同参画審議会を規定いたしております。この委員は、学識経験のある者のうちから内閣総理大臣が任命するという旨規定しておりまして、二十五人の委員のうち、いずれかの性が十分の四未満であってはならぬという規定になっております。  この審議会は、男女共同参画基本計画に関する事項を処理しますとともに、男女共同参画社会の形成の促進に関する基本的かつ総合的な政策及び重要事項という広範なテーマを調査審議することとなっておりますので、この委員につきましては、さまざまな専門分野からすぐれた学識経験を有する方を総理大臣の御判断で任命していただくということになるかと考えております。
  73. 知久馬二三子

    ○知久馬委員 私は、やはり審議会の委員さんというのは大切だと思うのであります。いろいろな委員さんを見ていますと、例えば、先ほども言いましたように、非営利団体等の方とか本当に具体的な課題に取り組んでいる人たちを入れていただいて、私たちの思いというものが反映できるような形になってほしいなと思うのでございます。  きょう、私ちょっと質問の用意をこれだけしかしておりませんので、時間が余りましたけれども、ここで終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  74. 二田孝治

    二田委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     ―――――――――――――
  75. 二田孝治

    二田委員長 この際、本案に対し、中路雅弘君から修正案が提出されております。  提出者から趣旨の説明を聴取いたします。中路雅弘君。     ―――――――――――――  男女共同参画社会基本法案に対する修正案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  76. 中路雅弘

    ○中路委員 私は、日本共産党を代表し、ただいま議題となっています男女共同参画社会基本法案に対し修正の動議を提出し、その提案理由と概要を御説明申し上げます。  政府案は、男女共同参画、すなわち、政策・方針決定過程への参加拡大を中心に、男女が社会の対等な構成員として、みずからの意思によって、社会のあらゆる分野における活動に参画する機会を確保し、その利益を享受し、かつ、ともに責任を担うことを主眼としたものであります。  政策・方針決定過程などへの女性の参加を拡大することは当然ですが、我が国の現状は、男女がともに生き、活動する上で、労働分野を初め、社会の男女格差が根強く残っており、これだけでは、男女平等や人権が尊重される社会をという国民の声にこたえるものとしては不十分なものであります。  あらゆる分野での女性への差別を撤廃し、真の男女平等社会を実現する上で、力となる基本法こそが求められてきたのであります。  本修正案は、このような立場から、第一に、名称を男女共同参画促進法に改め、憲法女性差別撤廃条約など男女平等及び人権尊重の理念に基づくことを明記いたします。また、男女の人権の尊重はいかなる社会経済情勢にあっても促進すべき普遍的課題であるため、「社会経済情勢の変化に対応できる豊かで活力ある社会を実現することの緊要性にかんがみ、」という規定は削除します。  第二に、「性別による差別的取扱い」には、「いかなる名目又は方法によるかを問わず、その結果として、男女のいずれか一方に対し差別的効果をもたらすこととなる取扱い」を含むものとします。これは、男女共同参画を進めるためには、コース別人事管理など性別以外の名目によるものであっても、事実上の男女差別となっているものも含めて禁止することが必要であるからです。  第三に、母性は社会的機能であり、その保護は人間社会の存続にとって欠かすことのできない基本条件であり、権利であります。このため、男女平等の前提である母性の保護に関する規定を新設します。  第四に、男女共同参画にとって欠かせない事業主の責務を明記します。男女共同参画を促進するためには、雇用機会の確保、労働時間の短縮、家族的責任との両立などについて、事業主の責任が欠かせないからであります。  第五に、苦情処理や、差別を受けている被害者救済するためには、既存の行政機関の活用だけでなく、独立した機関であり、行政を監視し、苦情処理する機関、オンブズパーソンを設置することが必要であります。こうした立場から必要な法的整備等を行うこととしています。  以上が、修正案の提案理由と概要であります。  委員各位の御賛同をいただき、速やかに可決されることを御要望いたしまして、修正案の趣旨説明といたします。  以上です。
  77. 二田孝治

    二田委員長 これにて修正案についての趣旨の説明は終わりました。     ―――――――――――――
  78. 二田孝治

    二田委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に付するのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  内閣提出参議院送付男女共同参画社会基本法案及びこれに対する修正案について採決いたします。  まず、中路雅弘君提出の修正案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  79. 二田孝治

    二田委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。  次に、原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  80. 二田孝治

    二田委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ―――――――――――――
  81. 二田孝治

    二田委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、植竹繁雄君外五名から、附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を聴取いたします。植竹繁雄君。
  82. 植竹繁雄

    ○植竹委員 ただいま議題となりました自由民主党民主党、公明党・改革クラブ、自由党、日本共産党及び社会民主党・市民連合の各派共同提案に係る附帯決議案につきまして、提案者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     男女共同参画社会基本法案に対する附帯決議(案)   政府は、本法施行に当たり、次の事項について配慮すべきである。  一 家庭生活における活動と他の活動との両立については、ILO第一五六号条約趣旨に沿い、両立のための環境整備を早急に進めるとともに、特に、子の養育、家族の介護については、社会も共に責任を担うという認識に立って、その社会的支援の充実強化を図ること。  一 女性に対する暴力の根絶が女性人権の確立にとって欠くことができないものであることにかんがみ、あらゆる形態の女性に対する暴力の根絶に向けて積極的に取り組むこと。  一 男女共同参画社会の形成の促進に関する施策の策定に当たっては、性別によるあらゆる差別をなくすよう、現行の諸制度についても検討を加えるとともに、施策の実施に必要な法制上又は財政上の措置を適切に講ずること。  一 男女共同参画社会の形成の促進に関する施策の推進に当たっては、その施策の推進体制における調査及び監視機能が十分に発揮されるよう、民間からの人材の登用を含め、その体制の整備の強化を図ること。  一 各事業者が、基本理念にのっとり、男女共同参画社会の形成に寄与する責務を有することを自覚して、男女共同参画社会の形成の促進に関する施策の推進を図るよう、適切な指導を行うこと。  一 男女共同参画社会の形成には、男女の人権の尊重が欠かせないことにかんがみ、苦情処理及び被害者救済が十分図られるよう、実効性のある制度の確立に努めること。  本案の趣旨につきましては、当委員会における質疑を通じて既に明らかになっていることと存じますので、説明は省略させていただきます。  よろしく御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  83. 二田孝治

    二田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  84. 二田孝治

    二田委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  この際、政府から発言を求められておりますので、これを許します。野中内閣官房長官
  85. 野中広務

    野中国務大臣 ただいま決議されました附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重いたしまして、努力してまいる所存でございます。     ―――――――――――――
  86. 二田孝治

    二田委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  87. 二田孝治

    二田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  88. 二田孝治

    二田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午前十一時四十一分散会