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樋口参考人 樋口恵子でございます。
本日は、
意見を述べる
機会を与えていただいて、本当にありがとうございます。
今回上程された
男女共同参画社会基本法は、新たな二〇〇〇年
世紀、ミレニアムを開いていく基本的な、あえて言えば精神の基盤整備となる
法律だと私は心から歓迎しております。どうぞ
先生方には、十分御審議の上、できるだけ今国会で成立させていただきますよう願っております。
先ほどから
法律の
専門家のお二人の
参考人の話が続きましたので、私は、少し別な角度から、聞くところによりますと、この
男女共同参画社会基本法、だれも
反対はできない
内容を持っているのですけれども、でも、何となく男の
先生方にとっては、これ以上女が強くなってどうなるのとか、いろいろな危惧もおありやに、こちらの被害妄想でありましょうか、そんな声も少しは伝わってくるのでございます。
きょうこれから申し上げますことは、こういうボキャブラリーは私は本当は余り使いたくないのですけれども、この
男女共同参画社会基本法に盛り込まれた精神、これで完璧だなんて思っているわけではございませんで、私は、もっともっとお二人の言われたような点を補強しなきゃいけないと思っております。しかし基本的に、この
男女共同
参画は、もちろん地球のためであり、日本のお国のためであり、私たち、戦争中、お国のため、お国のためと余り言われたものですからこの
言葉は使いたくないのですけれども、でも基本的に、国家
社会のためであり、人類の福祉のためであり、そして何よりもというよりか、同じ
意味で、
男性のためであり、
女性のためであり、そして未来の子供たちのためなのでありますということを、幾つかの例を引きながら申し上げたいと思っております。
第一に、この少子高齢
社会に対応する活力ある豊かな
社会をつくるということがこの
法律の中に書き込まれておりますが、豊かさとか活力というものをさまざまな側面から、新しい価値といいましょうか、新しい尺度をつくっていかなければならないと思います。私は、恐らく、二十一
世紀の豊かさの中には、キーワードとしては、例えば対等なパートナーシップであるとか、選択と
責任であるとか、自己決定権であるとか、そのような
言葉が加わってくると同時に、
参画ということもまた豊かさの大変大きな、
参画による自分が
責任を持った自己
実現ということも市民
社会の豊かさの大きな柱となると存じます。それらすべてがこの
法律の精神の中に含まれておりますし、この
法律の精神を具現したときに、
社会全体が新しい豊かさと輝きを獲得すると私は確信いたしております。
この少子高齢
社会の中で、今かなり問題が明らかになってきておりますのは、その中の
女性高齢者の貧しさでございます。介護保険におきまして、保険料徴収などで少し地域の中の高齢者の年金の額などをまた改めて知る中で、貧困の
女性化という
言葉がございますけれども、急激な高齢化の中で、良好な雇用
機会もなく、被扶養者として生きてきた
女性、同じひとり暮らし高齢者と申しましても、例えば収入は半分そこそこであるとか、年金の種類も、
男性は厚生年金、共済年金が過半数であるのに、
女性は
国民年金の、それも部分年金の人が多いとか、
生活保護率におきましても
女性の方が高いということはもう御案内のとおりでございます。
そして、申しわけないけれども、
女性は長生きなのです。ですから、六十五歳以上人口というのは、これは長寿
社会はみんなそうでございますけれども、大体六、四で
女性が多く、特に後期高齢者におきましては、八十五歳を過ぎますと、もう
男女の比率は二対一でございます。私は、きょうお見えの
男性の
方々には、どうぞ頑張って
女性をしのぐ平均寿命を達成していただきたいと思っておりますけれども、しかし現実に、どの
先進国をとりましても、
女性が、後期高齢期、特にオールド・オールドなどと言われる八十五歳以上はほぼ二倍に近い。そして、これから、日本の高齢化においてよく言われますように、二十一
世紀の前半のうちに六十五歳以上人口が三千万を超える。スピードが速く、スケールが大きく、かつシニア高齢期の人が多いという日本型の高齢
社会が今ばく進中でございます。
そうなりますと、その中での多数派を占める
女性が貧困の状況の中に置かれているということは、実は
社会にとって大きな負担になってまいります。今まではそういう人々が少ないからそれほど目立ちませんでした。
男女格差がありましても、そのツケがあらわになる以前に、人生五十年ですと、世の中は終わってしまったのです。
というわけですから、高齢
社会というのは、
女性が
差別されたり貧しかったり自立できなかったりすると、それが全体
社会の大きなツケとして回ってくるということでございまして、実は、この
男女共同
参画基本法ですから、具体的なことはできないという、なかなか役に立たないかもしれない面も確かにあるのですけれども、その精神に乗って各法を
一つ一つつくっていくとき、実は、
男性を含めて、安心してこの世に生きられる、言ってみれば、私はこれはあえて言えば高齢
社会におけるセーフティーネットの
法律だというふうにすら思っております。
第二番目。これは、家族に関して、
社会的支援を前提としながら、子育てや介護に関して
男女両性が
参画していくことが書かれておりました。
これまた新聞報道によりますと、安室さんの夫のポスターに関しましていろいろ御異論も出ているようでございまして、特に介護に関してでは、これは現実に家族介護者の八五%が今
女性でございます。私は、育児に関しては、これもまた御異論のある特に
女性の
先生方もあるかもしれませんけれども、母乳が出るという点におきましては、育児休業を
女性の方がより多くとっても
差別と思っていない一人でございます。でも、生物学的な親子関係が見えにくい
男性であるからこそ、幼いうちから接触を重ねなければならないというのもまたわかりながら、でも、それよりも介護の方がもうずっと生物学的な基礎が逆にないのですね、
女性が担わなければならないということは。
あえて言うならば、改正される前の労働基準法には重量物制限というのがございまして、たしか連続的作業二十キログラム以下、断続的作業三十キログラム以下だったと思いますけれども、女子にはこの重量物制限というのがございました。私は、お年寄りと子供と両方世話してみてつくづく思いますことは、何が違うといったって、重量なのです。その
意味でいいますと、むしろ生物学的には介護は
男性の適性があると申し上げてよろしいと思うのです。
女性の適性があるというふうに言ってまいりましたのは、これはむしろ
ジェンダーの点でございまして、その辺を峻別しつつ、果たして、人間の最期をみとるという人間しかしない営みをだれがどのように分かち合うかといいますと、私は、公平に見まして、
男性がもっと関与し、
女性もともどもに支え、家族だけでは介護し切れないからこれは
社会的な
システムをつくるというのは、ごく当たり前なまともなことで、この
法律に書き込まれたことは、また結構なことだと思っております。
そして、今、少子化を
先生方大変御心配でございますが、これももう別な
機会にいろいろな
参考人が
意見を述べたのではないかと思っておりますが、日本の少子化は、一たん母となった人々が子を産まなくなったという理由以上に、婚姻率の……