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1999-06-10 第145回国会 衆議院 内閣委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年六月十日(木曜日)     午前十時一分開議   出席委員    委員長 二田 孝治君    理事 植竹 繁雄君 理事 小此木八郎君    理事 小林 興起君 理事 萩野 浩基君    理事 佐々木秀典君 理事 河合 正智君    理事 三沢  淳君       越智 伊平君    佐藤 静雄君       佐藤 信二君    谷川 和穗君       近岡理一郎君    虎島 和夫君       桧田  仁君    平沢 勝栄君       堀内 光雄君    矢上 雅義君       河村たかし君    松本 惟子君       山元  勉君    倉田 栄喜君       武山百合子君    瀬古由起子君       中路 雅弘君    辻元 清美君       笹木 竜三君  委員外出席者         参考人         (弁護士)   住田 裕子君         参考人         (弁護士)   中下 裕子君         参考人         (東京家政大学         教授)     樋口 恵子君         参考人         (新日本婦人の         会愛知本部会         長)         (名古屋男女         共同参画推進会         議委員)    水野 磯子君         内閣委員会専門         員       新倉 紀一君 委員異動 六月十日         辞任         補欠選任   武藤 嘉文君     佐藤 静雄君   鹿野 道彦君     松本 惟子君   鰐淵 俊之君     武山百合子君   深田  肇君     辻元 清美君 同日         辞任         補欠選任   佐藤 静雄君     武藤 嘉文君   松本 惟子君     鹿野 道彦君   武山百合子君     鰐淵 俊之君   辻元 清美君     深田  肇君 同日  理事北村哲男君同月八日委員辞任につき、その補欠として北村哲男君が理事に当選した。 六月九日  動物の保護及び管理に関する法律の改正に関する請願土屋品子紹介)(第四七〇七号) 同月十日  戦争被害に関する調査会設置法早期制定に関する請願大畠章宏紹介)(第五一三一号)  男女共同参画社会基本法早期制定に関する請願羽田孜紹介)(第五一三二号)  傷病恩給等改善に関する請願梶山静六紹介)(第五三七〇号)  同(大野功統紹介)(第五五六三号)  同(中馬弘毅紹介)(第五五六四号)  恩給欠格者救済に関する請願櫻内義雄紹介)(第五六五五号) は本委員会に付託された。 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  男女共同参画社会基本法案内閣提出第五二号)(参議院送付)  公益法人運営実態に関する予備的調査についての報告     午前十時一分開議      ————◇—————
  2. 二田孝治

    二田委員長 これより会議を開きます。  まず、理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い、現在理事が一名欠員となっております。その補欠選任を行いたいと存じますが、先例によりまして、委員長において指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 二田孝治

    二田委員長 御異議なしと認めます。よって、委員長は、理事北村哲男君を指名いたします。      ————◇—————
  4. 二田孝治

    二田委員長 次に、内閣提出参議院送付男女共同参画社会基本法案を議題といたします。  本日は、本案審査のため、参考人から意見を聴取することにいたしております。  本日御出席参考人は、弁護士住田裕子君、弁護士中下裕子君、東京家政大学教授樋口恵子君、新日本婦人会愛知本部会長名古屋男女共同参画推進会議委員水野磯子君、以上四名の方々であります。  この際、参考人各位一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席くださいまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  次に、議事の順序について申し上げますが、まず、住田参考人中下参考人樋口参考人水野参考人順序で、御意見をお一人十分程度に取りまとめてお述べいただき、次に、委員の質疑に対してお答えいただきたいと存じます。  それでは、住田参考人にお願いいたします。
  5. 住田裕子

    住田参考人 弁護士住田でございます。  私は、この男女共同参画社会基本法案についての審議会答申専門委員として関与しましたことから、今回このような機会をいただいたものと思われますが、光栄でありますとともに、おこがましい気も若干しております。  と申しますのは、この法案は、これまでの我が国の諸先輩方の並々ならぬ御苦労と御努力の積み重ねによりここまでたどってまいりましたもので、たまたま審議会専門委員として最終場面で関与した一事をもって、歴史的なこの場面に立ち会いますことは、任が重過ぎるとの感を持っておりますものです。  もっとも、私自身、家庭と仕事の両立では周囲の方々のお力添えをいただいてきたわけですから、男女共同参画社会基本法の成立を、またこれによる男女共同参画社会実現を心から待ち望んでおりまして、少なくとも娘の代には、私どもが感じたような苦労は味わってほしくないと考えております。  現在、少子化が問題となっておりますが、女性の現在の生きにくさの裏返しの面があるのではないかと考えるところでありまして、その意味では、来るべき二十一世紀が、女性男性がそれぞれの個性に応じた多様な生き方が選択できる社会となりますよう、その基盤づくりの大きな一歩となるために、この法律が成立することを期待しております。  前置きはこのくらいにいたしまして、私は、この法律案の基礎となる答申作成に当たっては、三つのことを念頭に置いてまいりました。一つは、我が国実情を踏まえつつも、国際的な女性運動の潮流や学問的成果を十分に取り入れること。二つ目は、現在の問題の視点だけではなく、これからの社会を見据えた上での普遍性のあるものとすること。そして最後に、この法律は、基本法、いわば準憲法規範ともいうべきものでありますが、中学生、高校生にもわかりやすいものにしたいという気持ちと願いを込めてまいりました。そしてそれが、今回の法律案に予想を上回った形で結実していることは、本当にすばらしいことだと思っております。  特に、一つ目の国際的な運動成果などを受けた上で、この法律でぜひとも入れていただきたかった点について申し上げますと、実ったものとして二つございます。一つ積極的改善措置、もう一つジェンダー視点の反映でございます。  と申しますのも、我が国女性実情は、御承知のとおり、国連開発計画の指標で、HDIは世界で第八位、GDIは十三位と女性能力の点では先進国と言えますのに、GEMでは三十八位と低位でございます。先進国と言われますOECDの開発援助委員会構成委員会の二十一カ国中では何と下から二番目、二十位なのでございまして、要するに、先進国といっても下の下でございます。  その能力に比して、活躍する度合いが低いわけですから、もう本当に残念と言うしかないわけです。活躍の場、機会が与えられれば、十分その責任にこたえられるだけのものがあるはずです。  ですから、積極的に研修や昇進試験機会を与えていただくことが考えられますし、国の審議会などでは数値目標を立てることも意味があろうかと思います。実際に、男女共同参画審議会は、平成九年に定められた設置法では、今回、本法にかわることになりますが、審議会委員については四〇%条項が入っております。この先駆けとしておりますのは、この法律にふさわしいあり方だと思います。今後、機構が変わりましても、この線はぜひ維持できるようにとお願いしたいと思います。  この積極的改善措置という言葉は、御承知のとおりポジティブアクションの訳でございますが、実は、この概念が入るかどうかは、この法律が国際的に恥ずかしくないものとなるかどうかの分かれ目という気がしておりました。  と申しますのも、ポジティブアクションとは極端なクオータ制割り当て制であると想定しておられる方が多いのか、逆差別になって有害であるとか、憲法違反のおそれがあるなどと危惧される反対意見があったわけでございます。既に雇用機会均等法にも採用されている概念なんですが、今回についてはどうなるか心配しておりました。  今回の基本法では、必要な範囲内での機会の積極的な提供という定義づけで採用されましたが、言葉もマイルドに、積極的改善措置となりました。余計な反発を招かない、よい言葉だと思いますし、これが基本法で明記された意味は大きいと考えます。今後、男女共同参画社会実現に向けて着実に歩むために、あらゆる分野段階的に逐次実施されていくことを期待しております。  次に、ジェンダー視点の問題でございます。  今回、このジェンダーという言葉自体はなじみがなく、知らない方が多かったということが寄せられた御意見の中からわかりましたもので、直接使用することは断念されたわけですが、その趣旨は日本語として数々の条文の中に盛り込まれております。  冒頭の一条の目的の中に、男女の人権が尊重されることというところは言うまでもありませんが、第三条の基本理念としましても、個人としての能力を発揮する機会が確保されることとあります。これは、性別にかかわらないという意味が大きいわけで、これらを初めとして、十五条では、国または地方公共団体は、男女共同参画社会形成に影響を及ぼすと認められる施策を策定し、及び実施するに当たっては、男女共同参画社会形成に配慮しなければならないなどとして、ジェンダー視点が貫かれております。  これは、社会のあらゆる分野において、とりわけ我が国政策決定場面などの面においても、すべからくこの視点を反映させるということでありまして、私自身は画期的なものだと考えております。  しかも、これについては、制度上、機構上の保障ができました。すなわち、今後の中央省庁再編の中で、一段高い内閣府の中に男女共同参画局が置かれ、重要な四つの会議一つとして男女共同参画会議が置かれることから、ジェンダー視点政府全体に行き渡ることの機構上の保障ができたとも言えます。国際的に見ても誇り得るものになったと考えております。  その一方、規定として入れることを願い、いろいろ工夫をしたのですが、今後の課題とすることとしたものとして、間接差別規定が挙げられます。  私自身は、労働法関係専門でございませんが、本日、中下先生がおられるところで口幅ったいわけですので、大きいところは先生にお譲りしまして、立場上、一言だけ申し上げます。  御承知のとおり、我が国間接差別が認められた裁判例としてよく挙げられますのが三陽物産賃金差別事件なのですが、今回いろいろ検討してみますと、これが果たして裁判所が間接差別であるとして認定したのであろうか、見解が分かれるところでございます。  そもそも間接差別という用語自体定義が使用する人にとってさまざまで、現段階では、一義的で明確であるとは言えないのではないでしょうか。  間接差別用語自体、諸外国法制、代表的なものは大体英米法なのですが、英米法系のものは、我が国とは法律制定の仕方、法律構造が違う点がいろいろあると聞いております。すなわち、英米法系においては、差別しようとする意図などの主観的要素については、客観的事実から推認する面が強いことが要件として挙げられていると言えます。  英国、米国のそれぞれの間接差別定義を具体的に見ましても、これこれの事実ないしはこれこれの条件があるときは間接差別とみなすとした上で、一方、そのような基準を適用する側が正当であるとの反対立証責任を負わせるという規定構造となっております。これは一種の証拠法上の規定と見られなくもないわけです。  そうしますと、結局は、間接差別は、実体法上の用語という面もありますが、差別意思ないしは差別行為認定する上での証拠法上の問題、ないしは立証責任の分配の問題の面が強いのではないかと思われるわけです。  三陽物産事件でも、非世帯主の名をかりた女性差別という認定がされたわけですから、わざわざ間接差別という用語を使わずとも、現在の裁判例においても差別であるとの認定ができた例とも言えます。  このような検討の結果、現在のところ、間接差別についての定義やその内容、これを要件としてどのように規定するかなどについては、さらに研究、検討を続けて、これこそ間接差別であるという概念及びその要件が明確となった場合に我が国法律規定することという手順ではいかがでしょうかという結論に至ったわけでございます。  もちろん、差別的取り扱いがされているという実態がある場合に、それが女性差別意図が見えないように巧妙に仕組まれている場合であれば、間接差別というかどうかはともかくとして、第三条に規定がありますように、そのようなことに対して苦情処理機関司法機関などに声を上げていくことは重要でありますし、差別意図は明確でなくても、巧妙にそれが隠されているとしても、いろいろな客観的証拠から差別を容認していると推認されること、すなわち、差別認定されることもあり得ると考えます。  もっとも、差別とするか否かは法律の面だけで決まるものではございませんで、世帯主家族手当など、社会的慣行実態として社会が容認するか否か、言いかえれば、差別か否かについての国民的合意があるか否かが最も重要でございます。この概念を考えるに当たりましては、これからの社会国民の多くがどう見るかを探っていくことが大きな課題として残されていると思います。  最後に、この法律自体はあくまでも基本法でございます。理念を提示し、男女共同参画社会形成を総合的かつ計画的に推進するための枠組みについて定めるものでございます。具体的施策については概括的にせざるを得ませんでしたが、今後、個別的、具体的な問題は、個別立法個別施策にまたなくてはならないわけです。  そのために、苦情処理のための必要な措置行政改革の中で具体的にどうするかが検討課題としてありますし、また、ようやく深刻な問題であるとの理解が始まり、その解決に向けて取り組みがなされるようになった女性への暴力対処策についても重要な課題として残されています。そのほか、年金問題など、本日お越しの樋口先生の御専門一つですが、税制問題など、課題は山積みでございます。  この基本法を第一ステップとして、新たな展開に入りますことを祈念いたしまして、私の意見陳述を終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。(拍手)
  6. 二田孝治

    二田委員長 ありがとうございました。  次に、中下参考人にお願いいたします。
  7. 中下裕子

    中下参考人 中下裕子でございます。  私は、弁護士になりまして二十年になります。本日は、参考人として意見を述べる機会をいただきまして、ありがとうございます。時間がございませんので、私の経歴につきましては省略させていただきまして、早速本論に入らせていただきたいと思います。  二十一世紀を目前にした今、男女共同参画社会実現を目指して男女共同参画社会基本法関係者の御努力によって制定されようとしておりますことは、大変喜ばしいことだと思っております。私は、政府が指摘しておられる少子高齢化など社会経済情勢の急速な変化への対応という必要性ばかりではなく、人類を含む地球上の全生物の存続のために、今こそ女性参画が求められているというふうに思っております。  周知のとおり、今、現代社会はさまざまな危機が進行しております。人口爆発、資源の枯渇、ダイオキシンなどの有害化学物質汚染環境破壊などの危機であります。二十一世紀にはこれらの危機がさらに深刻化すると思われるわけであります。  このような危機は、産業社会とそれを支える近代科学文明が抱える構造的な欠陥から生じたものです。したがって、危機を回避するためには、個人生活の仕方から生産のあり方を含めて、人間のライフスタイルを見直す必要があります。そして、そうした変革を進めるに当たりましては、生命を生みはぐくんできた女性生活者としての女性視点というものが大変重要であると思います。  また、女性は、男性と比べて既存観念にとらわれることが少なく、その意味創造性があります。何よりも、女性たちには、長い間の差別からの解放へと向かう強力なエネルギーがあります。このような女性たち主体的な参画抜き社会システムを変革するということはできないのではないかというふうに思います。  その意味で、こうした女性たち男性とともに新たな社会システムの構築に参画することを可能にするために、男女共同参画社会基本法が提案されましたことは、冒頭でも申しましたとおり、大変意義深いことと思っております。  言うまでもありませんが、男女共同参画社会にあっては、女性に対する差別などは論外であります。今回の基本法にも、基本理念として、男女性別による差別的取り扱いを受けないということが明記されております。しかし、御承知のとおり、差別をなくすということは決して容易なことではありません。特に女性差別の場合には、それが性別に基づく固定的な役割分担意識やそれに基づく制度慣行に根差したものであるだけに、その変更はある意味で文化の変容にかかわるものでありまして、遅々として進まないというのが実情であります。  したがって、一日も早く男女共同参画社会実現するには、強力に差別の是正を行うための法規制というものが不可欠であります。私は、本法案がそのような役割を担い得る中身を持った法律であってもらいたいというふうに思っております。  しかしながら、そのような観点から見ますと、本法案は、基本理念はよく整理されておりますけれども、肝心の具体的施策については骨組みだけしか定められておりませんで、果たしてこれで差別が是正され、男女共同参画社会が実際に実現できるのだろうかという点でいささか心配になってまいります。  御承知のとおり、我が国では、実際上の男女平等というのは余り進んでおりません。諸外国におくれをとっているというのが残念ながら実情であります。単に理念を定めるだけでは早期に平等を実現することはできないと思います。実際的に平等を実現するには、理念だけでなく、それを具体的に実行する施策を立案し、計画的に着実に実施するという必要があるわけです。  このことは、国際社会共通認識となっておりまして、さきの北京会議でも、十二の重点領域を挙げて、各領域ごとに多数の具体的な行動綱領が定められております。諸外国では、既に十年ないし二十年前からこのような基本法令法制化というものが実現しております。  我が国はおくれをとっているわけですけれども、二十世紀最後にできる法律というものにふさわしい内容であってもらいたいと私は思っております。単におくれを取り戻すというばかりでなく、二十一世紀男女共同参画社会基本法として、逆に諸外国のお手本となるようなすぐれた法制化が望まれるというふうに思っております。二十一世紀の早い段階で真の男女共同参画社会実現できるように、理念も格調高いが、現実性実効性にも富んでいるというような基本法をぜひとも先生方のお力でつくり上げていただきたいと願っております。  そこで、私の目から見まして、本法案につきましてさらに改善を要する点について、具体的に幾つか指摘させていただきたいと思います。  まず第一に、社会のあらゆる分野において、国、自治体国民の各主体取り組みを推進するという基本法役割、これを果たすためには、各主体が理解しやすいように、法律の文言は明確でわかりやすい表現を用いるべきだと思います。解釈が分かれたり、専門家でないと理解できないというような表現は避けるべきです。また、抽象的な表現ではなく、できる限り具体的にわかりやすく書くということを心がけるべきだと思います。  その意味で、本法案に、参議院前文をつけ加える修正が行われたということは、前文内容は十分ではないとしましても、基本法趣旨を理解しやすくしたという点で大変よかったと思います。  第二に、私は、二十一世紀に通用する基本法であるためには、間接差別規定はぜひとも明記すべきだと思います。先ほどの住田参考人意見に反しまして、ぜひ明記していただきたい。  なぜなら、恐らくこれからは明白な直接差別というものは徐々になくなってくると思いますけれども、性中立的な条件によって結果として差別的な効果をもたらすという、例えば家族手当受給者世帯主とするといった間接差別でありますけれども、そういうものはなかなか容易にはなくならないし、逆にふえていくんじゃないかということすら、私は現場におりまして懸念しております。こうした法制定後の動きも見通して、打つべき手をきちんとこの段階で打っておくということが必要かと思います。  第三に、第十三条では、基本計画に定める事項が具体的に掲げられておりません。しかし、やはり重要な事項については具体的に記載すべきではないかと思います。  なぜなら、さもないと、自治体事業主が取り組まなきゃならないという対策内容が各自の主観的な解釈によってまちまちになってしまうということもあり得ると思います。これでは平等は実現できません。個別法で定めるからいいとか、あるいは時代の変化に伴って変わるから具体的に定めない方がいいとかいう御意見もあるようですけれども、私は、全部の事項をすべて細かく定める必要はないと思いますけれども、少なくとも、ナショナルミニマムとして最低限必要な重要な事項については記載すべきだと思います。ちなみに、女子差別撤廃条約でも、各領域ごと具体的取り組みが明示されております。  具体的に申し上げまして、特に女性に対する暴力につきましては、ぜひどこかの箇所で明示していただきたいと思っております。男女個人としての尊厳が重んぜられるという表現から読み取れるというような御説明もあるようですけれども、読み取れるというようなものではなく、重要な対策分野一つとして明記すべきだというふうに思います。  皆さんも御承知のとおり、この分野は国際的にも大きな関心が寄せられておりますし、国民方々からも強い要望がございます。私が担当しております離婚事件を見ますと、その八割から九割の妻たちが何らかの暴力を夫から受けておりました。これほど夫の暴力というのは日常化していると思われるわけでありますけれども、それに対する対策はほとんど講じられていないというのが実情であります。暴力を振るわれるようでは、到底、男女共同参画社会など実現できるわけがありません。法案の中で、新たな立法化を含めて、実効性のある対策を明記していただきたいと思います。  第四に、法律実効性を確保するために推進機構が整備されたということは大変いいことだと思いますけれども、それとともに、苦情処理、特に被害者救済制度というものを整えていただきたいと思います。  政府既存システム活用というものを考えておられるようですけれども、私の経験からしますと、性差別についてはこれらはうまく機能していないというのが実情であります。もちろん、これを機に活用が促進されるということは望ましいことでありますが、それでも、強制的な権限がない以上はやはり限界があると思います。  また、迅速かつ効果的に救済を図るためには、やはり専門のスタッフというものを配置する必要があると思います。御承知のように、司法裁判というのは時間が長くかかりますし、当事者の負担も大きいです。新たに簡易迅速な行政救済制度というものを整備するということがぜひとも必要かと思います。  以上、申し上げてまいりました点をさらに御検討いただきまして、我が国で世界に冠たる男女共同参画基本法制定されますよう、皆様のさらなる御尽力を心から願っております。  どうもありがとうございました。(拍手)
  8. 二田孝治

    二田委員長 ありがとうございました。  次に、樋口参考人にお願いいたします。
  9. 樋口恵子

    樋口参考人 樋口恵子でございます。  本日は、意見を述べる機会を与えていただいて、本当にありがとうございます。  今回上程された男女共同参画社会基本法は、新たな二〇〇〇年世紀、ミレニアムを開いていく基本的な、あえて言えば精神の基盤整備となる法律だと私は心から歓迎しております。どうぞ先生方には、十分御審議の上、できるだけ今国会で成立させていただきますよう願っております。  先ほどから法律専門家のお二人の参考人の話が続きましたので、私は、少し別な角度から、聞くところによりますと、この男女共同参画社会基本法、だれも反対はできない内容を持っているのですけれども、でも、何となく男の先生方にとっては、これ以上女が強くなってどうなるのとか、いろいろな危惧もおありやに、こちらの被害妄想でありましょうか、そんな声も少しは伝わってくるのでございます。  きょうこれから申し上げますことは、こういうボキャブラリーは私は本当は余り使いたくないのですけれども、この男女共同参画社会基本法に盛り込まれた精神、これで完璧だなんて思っているわけではございませんで、私は、もっともっとお二人の言われたような点を補強しなきゃいけないと思っております。しかし基本的に、この男女共同参画は、もちろん地球のためであり、日本のお国のためであり、私たち、戦争中、お国のため、お国のためと余り言われたものですからこの言葉は使いたくないのですけれども、でも基本的に、国家社会のためであり、人類の福祉のためであり、そして何よりもというよりか、同じ意味で、男性のためであり、女性のためであり、そして未来の子供たちのためなのでありますということを、幾つかの例を引きながら申し上げたいと思っております。  第一に、この少子高齢社会に対応する活力ある豊かな社会をつくるということがこの法律の中に書き込まれておりますが、豊かさとか活力というものをさまざまな側面から、新しい価値といいましょうか、新しい尺度をつくっていかなければならないと思います。私は、恐らく、二十一世紀の豊かさの中には、キーワードとしては、例えば対等なパートナーシップであるとか、選択と責任であるとか、自己決定権であるとか、そのような言葉が加わってくると同時に、参画ということもまた豊かさの大変大きな、参画による自分が責任を持った自己実現ということも市民社会の豊かさの大きな柱となると存じます。それらすべてがこの法律の精神の中に含まれておりますし、この法律の精神を具現したときに、社会全体が新しい豊かさと輝きを獲得すると私は確信いたしております。  この少子高齢社会の中で、今かなり問題が明らかになってきておりますのは、その中の女性高齢者の貧しさでございます。介護保険におきまして、保険料徴収などで少し地域の中の高齢者の年金の額などをまた改めて知る中で、貧困の女性化という言葉がございますけれども、急激な高齢化の中で、良好な雇用機会もなく、被扶養者として生きてきた女性、同じひとり暮らし高齢者と申しましても、例えば収入は半分そこそこであるとか、年金の種類も、男性は厚生年金、共済年金が過半数であるのに、女性国民年金の、それも部分年金の人が多いとか、生活保護率におきましても女性の方が高いということはもう御案内のとおりでございます。  そして、申しわけないけれども、女性は長生きなのです。ですから、六十五歳以上人口というのは、これは長寿社会はみんなそうでございますけれども、大体六、四で女性が多く、特に後期高齢者におきましては、八十五歳を過ぎますと、もう男女の比率は二対一でございます。私は、きょうお見えの男性方々には、どうぞ頑張って女性をしのぐ平均寿命を達成していただきたいと思っておりますけれども、しかし現実に、どの先進国をとりましても、女性が、後期高齢期、特にオールド・オールドなどと言われる八十五歳以上はほぼ二倍に近い。そして、これから、日本の高齢化においてよく言われますように、二十一世紀の前半のうちに六十五歳以上人口が三千万を超える。スピードが速く、スケールが大きく、かつシニア高齢期の人が多いという日本型の高齢社会が今ばく進中でございます。  そうなりますと、その中での多数派を占める女性が貧困の状況の中に置かれているということは、実は社会にとって大きな負担になってまいります。今まではそういう人々が少ないからそれほど目立ちませんでした。男女格差がありましても、そのツケがあらわになる以前に、人生五十年ですと、世の中は終わってしまったのです。  というわけですから、高齢社会というのは、女性差別されたり貧しかったり自立できなかったりすると、それが全体社会の大きなツケとして回ってくるということでございまして、実は、この男女共同参画基本法ですから、具体的なことはできないという、なかなか役に立たないかもしれない面も確かにあるのですけれども、その精神に乗って各法を一つ一つつくっていくとき、実は、男性を含めて、安心してこの世に生きられる、言ってみれば、私はこれはあえて言えば高齢社会におけるセーフティーネットの法律だというふうにすら思っております。  第二番目。これは、家族に関して、社会的支援を前提としながら、子育てや介護に関して男女両性が参画していくことが書かれておりました。  これまた新聞報道によりますと、安室さんの夫のポスターに関しましていろいろ御異論も出ているようでございまして、特に介護に関してでは、これは現実に家族介護者の八五%が今女性でございます。私は、育児に関しては、これもまた御異論のある特に女性先生方もあるかもしれませんけれども、母乳が出るという点におきましては、育児休業を女性の方がより多くとっても差別と思っていない一人でございます。でも、生物学的な親子関係が見えにくい男性であるからこそ、幼いうちから接触を重ねなければならないというのもまたわかりながら、でも、それよりも介護の方がもうずっと生物学的な基礎が逆にないのですね、女性が担わなければならないということは。  あえて言うならば、改正される前の労働基準法には重量物制限というのがございまして、たしか連続的作業二十キログラム以下、断続的作業三十キログラム以下だったと思いますけれども、女子にはこの重量物制限というのがございました。私は、お年寄りと子供と両方世話してみてつくづく思いますことは、何が違うといったって、重量なのです。その意味でいいますと、むしろ生物学的には介護は男性の適性があると申し上げてよろしいと思うのです。  女性の適性があるというふうに言ってまいりましたのは、これはむしろジェンダーの点でございまして、その辺を峻別しつつ、果たして、人間の最期をみとるという人間しかしない営みをだれがどのように分かち合うかといいますと、私は、公平に見まして、男性がもっと関与し、女性もともどもに支え、家族だけでは介護し切れないからこれは社会的なシステムをつくるというのは、ごく当たり前なまともなことで、この法律に書き込まれたことは、また結構なことだと思っております。  そして、今、少子化を先生方大変御心配でございますが、これももう別な機会にいろいろな参考人意見を述べたのではないかと思っておりますが、日本の少子化は、一たん母となった人々が子を産まなくなったという理由以上に、婚姻率の……
  10. 二田孝治

    二田委員長 樋口参考人にお願いいたします。  そろそろ結論をおまとめいただきたいと思います。
  11. 樋口恵子

    樋口参考人 はい、わかりました。  婚姻率の低下によるものでありまして、一人っ子同士とか長男、長女同士がふえている現在、介護の社会化が、そして、育児をともに支えていく仕組みができていないことが男女を婚姻から遠ざけている。特に、介護の社会化が行われていないことは、私は出生率低下の遠因と言ってよろしいと思っております。  実はもっと幾つか申し上げようと思っておりまして、項目だけ申し上げますと、この男女共同参画社会基本法によりまして、ジェンダー汚職というべき接待汚職などがなくなりまして、日本の国の品位は高まります。  それから、大変ここで私は高く評価しておきたいことは、地方公共団体がこの基本法にのっとって施策を進めること、条例を制定することを進めるような内容が加わっておりますことを、私は東京都の女性問題協議会会長といたしましても大変心強く思い、この法律ができることを各自治体女性たちが待ち望んでおりまして、地域ごとによい条例をつくっていこうと期待していることを申し述べまして、終わりたいと思います。  ありがとうございました。(拍手)
  12. 二田孝治

    二田委員長 ありがとうございました。  次に、水野参考人にお願いいたします。
  13. 水野磯子

    水野参考人 私は、女性団体新日本婦人会愛知本部会長水野磯子でございます。名古屋男女共同参画推進会議の委員もしております。きょうは、私にこのような機会を与えていただきましたことに、まずお礼を申し上げたいと思います。  法案に対する意見でございますが、男女平等をうたった日本国憲法、本当にこれを手にしたときの日本女性のそれこそ感動、喜び、あれから五十二年、そして世界の女性たちがバイブルだ、そんなふうにも言っております女性差別撤廃条約、この条約を我が日本政府が批准をいたしまして既に十四年がたちました。  今国会におきまして、その精神、その平等の思いを法案にしていく、その審議が始まったことに対し、そしてまた、もうすぐ成立しそうだ、こんな思いを、今かと待っている私たち日本じゅうの女性たち男女平等を推し進める法律、本当に感慨深く、そして歓迎もし、どんなふうになるのか見守っているところだと思います。  しかし、この法案に対して、ぜひつけ加えていただきたい点がございます。今、職場では、また家庭でも、地域社会のあらゆる面で、男女の不平等、嘆きの声が日々私たちの中で聞かれております。法案に対して、次のような点を明確にしていただきたいのです。  一つは、男女差別の禁止、これを明確にしていただけないでしょうか。  女性社会的地位の向上は、やはり、女性労働者に対する賃金、昇進、昇格、まさに差別の是正抜きに語ることはできません。差別の是正に当たり、採用、社会に出て初めて働く場、つまり雇用における平等、ここを確保していくことが極めて重要だと考えています。女性労働者の地位向上が国連からも指摘を受けているところです。  私はかつて、中部日本放送、民間放送に十六年間勤務してまいりました。当時、名古屋テレビでは女子三十歳定年制がしかれており、三十歳の誕生日を境に職場を去らねばなりませんでした。日本の女性労働運動史上、名を残したとも思われますこの女子三十歳定年闘争、これは、民法の公序良俗、ここに違反すると言い、実質勝利となりました。企業側は即刻女子三十歳定年制は廃止いたしましたけれども、しかし、翌年からの女性社員の採用はほとんど嘱託となってまいりました。  次に、男女雇用機会均等法が成立いたしまして、コース別導入、男女差別ということがなくても結果として男女差別となっているものも含めて、今、禁止することが必要だと考えています。  例えば、名古屋のA商社の場合ですけれども、この四月でございますが、あなたが選ぶのです、男性女性もすべての社員に対しまして、改めて総合職、一般職、専門職の選択ができますよと会社側は提示をしてまいりました。しかし、女性社員はだれも、一人として総合職を選ぶことはできませんでした。  女性たちは、育児、子供の学校、親の介護など家庭責任に縛られている現在、総合職を選んだとき、転勤、出向、こう言われましたときには、動くことができない。結局、賃金は男性の約二分の一にもなってしまう一般職、それしか選ぶことができませんでした。  したがって、性による差別をなくしても、事実上、男女差別となっている事実、ここを含めて禁止することが今大切だと私は思っています。例えば総合職と一般職の賃金格差、まさにここをなくすことではないのか。また、総合職を選んでも、あるいは総合職といった場合、本人の同意、これがなければ転勤、出向を行わないという措置が実はとても大切だと思っています。  さて、次に、母性保護の規定、やはりここを明記することではないでしょうか。  労働時間は、サービス残業、女性たちも八時間を超えて働く毎日が今ふえています。健康はといえば、疲れたというアンケート結果は五割を超える職場が多くなってきている今、妊娠、出産といえば、異常という状況がこれもまたふえています。産む性である女性の生涯にわたる健康保護、このことは当然の権利であり、男女参画の前提ではないでしょうか。  私の所属しております新日本婦人の会の会長で、参議院議員の井上美代議員が、五月二十日、参議院総務委員会で、一九九七年でございますが、私たちの会の調査した働く女性の健康アンケート、三千六百名を超える集計の中の一部を紹介しておりました。このアンケートでは、妊娠中も残業があるのです、そういう声、子供を出産したら給料とボーナスがぐっと下がってしまった、昇進のところでひっかかっている、育児休業制度があったって、私の仕事は人員補充がないので、とることができない、こんな女性たちの苦渋に満ちた声が上がっています。制度があっても活用できない、しにくいという状況です。  今こそ、働く女性の出産、子育て、まさに企業主が働く女性の職業と家庭の両立、このよき理解者とならなければ、現在の少子化現象にますます拍車がかかってしまうのではないでしょうか。産む産まないは単に個人的なこと、その視点だけにとどめるなら、まさに今後、日本の将来の人口構成に本当に大きな影響が出てくると思います。  したがって、私は、企業の責任を明確にすること、このことが大切だと思います。つまり、雇用機会の確保、同時に、労働時間の短縮、家庭責任との両立、当然かかわるわけです。とりわけ労働時間の短縮は、両性の健康を守り、家庭や地域社会にかかわる上でとても大切なことだと思います。第十条、国民の責務として、条文には領域の職域、学校、地域、家庭、とても具体的に盛り込まれていることを本当にうれしく思います。だからこそ、企業の責務というところを明記することではないでしょうか。また、女子差別撤廃条約第二条(e)項におきましても、個人、団体または企業、ここの差別を撤廃するためのすべての適当な措置をとること、こういうことが明記されています。  さて、総理の諮問機関でございます男女共同参画審議会が、ついこの間、新聞報道によりますと、女性に対する暴力を根絶するための施策の答申をした、こう書かれております。私は、この法案の中にも……
  14. 二田孝治

    二田委員長 お話し中でございますけれども、水野参考人にお願い申し上げます。  そろそろ結論をお急ぎください。
  15. 水野磯子

    水野参考人 はい。  この法案の中に入れていただけるならばという思いでございます。  時間が参りましたので、ここを申し上げられませんが、本当に家庭に、ビデオ、ポルノがいっぱい、暴力表現がいっぱい、メディアが女性への暴力を助長、こんなことも社会的な問題だというふうにも思っています。  時間が参りましたのでこれで終わりますけれども、私、きょう、資料を持ってきておりますので、愛知県下の女子従業員千九百名のアンケート結果をどうぞごらんください。またもう一つ名古屋市の男女共同参画推進会議では、セクシュアルハラスメント等に関する意識調査をいたしまして、企業、市民への啓発活動も行っておりますことを申し添えて、私の意見とさせていただきます。  どうもありがとうございました。(拍手)
  16. 二田孝治

    二田委員長 ありがとうございました。  以上で各参考人からの意見の開陳は終わりました。     —————————————
  17. 二田孝治

    二田委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松本惟子君
  18. 松本惟子

    松本(惟)委員 民主党の松本でございます。  本日は、参考人の皆様におかれましては、大変御多忙の中、私どものために御意見を述べていただきましたことを心からお礼を申し上げさせていただきます。  私は、この基本法、二十一世紀の日本のあり方を決める重要な課題一つだというふうに思っております。二十一世紀を決めるさまざまな課題というのはたくさんございますけれども、その中の一つというふうに思っておりまして、そのかなめとしての共同参画実現、共同参画社会を目指すというこの基本法につきまして、今回、法案内容について、例えばアファーマティブアクションなんかを入れたという点については評価しておりますけれども、なお幾つかの点については改善すべきではないかと個人的には思っているものでございます。  仮に、法案についてもう少し注文をつけるとすれば、例えば先ほど住田参考人樋口参考人審議会にかかわられまして、大変前向きな御意見を出されて、答申をまとめられた側かと思いますが、なおお聞きをしたいのでございます。注文をもう少しつけるとすれば、何が必要なのでしょうか。住田参考人中下参考人樋口参考人水野参考人、短くコメントをいただきたいと思います。
  19. 住田裕子

    住田参考人 住田でございます。  何を注文をつけるかといいますと、先ほどのことをもう一度繰り返しになりますけれども、ぜひこれを第一歩として、個別具体的な立法のために、女性先生方、そして男性先生方も御一緒に、新たな法律をつくるための次のステップに入っていただけるように、まずはこの法律を今国会で成立させていただきたい。そして、その後、個別的な、女性のための、暴力とか、それからオンブズマン制度、そういうものについて今後も研究させていただきたい、そういうふうに思っております。よろしくお願いいたします。
  20. 中下裕子

    中下参考人 先ほど申し上げたとおりでございますけれども、やはり間接差別、それから女性に対する暴力、それから救済機関について有効な対策に結びつくような規定をぜひ設けていただきたいというふうに思っております。
  21. 樋口恵子

    樋口参考人 暴力に関しましては、附帯決議で参議院で入りましたことを私は非常に結構なことだと思っております。男女共同参画審議会女性に対する暴力部会で審議中でございましたので、なかなかこちらの方に明確に暴力という言葉が入らなかったという面もあったのではないかと私は理解いたしております。  本当に、暴力に対する具体的な救済機関というようなものが、これは各都道府県あるいは地方公共団体だと思いますけれども、しかし国がもっと後ろ盾になれますようなこと、それから職場、企業の責任、それから学校教育において、もう少し具体的なことが書ければよかったなというのが一つ私の思い残しでございます。
  22. 水野磯子

    水野参考人 先ほど申し上げましたように、いろいろございますが、何よりも私は今国会でこの法案の成立を見たい、そういうことを思っております。  それからもう一つ、今度の答申、先ほど樋口参考人も言われましたけれども、やはり暴力の根絶のところでございますが、答申の中身、私も詳しくはわかっておりませんが、新聞報道等々聞きかじりでございますが、やはり婦人相談所とか、あるいはそのあたりを拡充というか、そういうことを述べてみえるというふうに思いますけれども、それだけでいいのかな、既存の施設だけでいいのかなということを思っておりますので、それはもう法案ができてから拡充をしていくということで、まず今国会での成立を切に私は願っております。  以上でございます。
  23. 松本惟子

    松本(惟)委員 ありがとうございました。  次に、中下参考人にお伺いをいたします。  先ほど間接差別のことについてお述べになっておられましたけれども、明白な差別というのは解決の手だてがほぼできている。しかし、これから問題なのは、見えない差別、見えにくい差別に対する手だての問題。それは、私、昨日でしたか、この審議会でるる申し上げたわけですけれども、そういったことも含めまして、三条の性による差別の中に読み取れるということについてどのようにお考えなのか、もう少し詳しくお聞かせください。
  24. 中下裕子

    中下参考人 審議録を拝見いたしておりますと、三条の「差別的取扱いを受けないこと、」という中に間接差別が読み取れる、含まれるというふうな解釈がなされておるというような御答弁があったようでございます。もちろん、それが含まれるという解釈自体、大変結構なことだと思っておりますけれども、もしそうだとしたら、やはりはっきりと書いていただきたいというふうに私は思います。  と申しますのは、やはり書いていないと、含まれるか含まれないか、聞かないとわからないようなものであれば、それをごらんになった各自治体あるいは雇用主、事業主なんかが、これは差別じゃないなんということがまかり通ってしまう。現実的に、家族手当世帯主という形で受給を決めているところもまだ多々あるようでございまして、これは差別だと思っていらっしゃらないと思うのですね。ですから、やはりそういうものを明記していただきたい。  これは裁判の場でも、先ほど三陽物産事件の御紹介住田参考人からありましたけれども、まだその一件だけでございまして、今後、もしそういうことが明記されるのであれば、裁判の場でもさらなる活用が大変できてくるのだろうというふうに思いますので、ぜひ明記していただきたいと思います。
  25. 松本惟子

    松本(惟)委員 ありがとうございました。  私自身も実は、基本法の性格上、やはり現実にある差別を平等の方向に向かって誘導していく機能を法律自体が持たなきゃいけない、ですから現状追認型の基本法であってはいけないと思っていますし、これは均等法の審議のときにも、ちゃんと附帯決議の一番に書かれていることでございます。それは検討するとなっているわけですから、ここでまた何か含まれているとかなんとかいうとおかしいなと、感想を述べる場ではございませんが。  次に、続いて苦情処理の問題についてお伺いをいたします。これも続いて中下参考人にお聞きをいたします。  中下さんは、現場といいますか、弁護士として人権問題にかかわっている立場から、現在のシステム改善、つまり人権擁護委員や行政相談委員制度ということを拡充するなりして、苦情や救済措置ができるというふうにお考えかどうかお聞かせいただきたいと思います。
  26. 中下裕子

    中下参考人 私自身は、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、経験上やはりこれは難しいというふうに思っております。  と申しますのは、例えばセクシュアルハラスメントの事件で申しますと、私も多数手がけておりますけれども、人権擁護委員の方に御相談したけれども、あなた、これが何が問題かと、そんなことぐらいで何をごちゃごちゃ言うのというようなことで実際には解決されなかった。それで、ぐるぐるっと回ってこられて、弁護士のところに来て裁判になるというようなケースを現実に体験しておりまして、これはなかなか機能しないんだろうというふうに思います。  男女雇用機会均等法の中にも調停委員会というものがございますけれども、これもなかなか機能しておりません。現実には、なかなか調停がかかっていないというのが実情でございまして、やはり私は、相談を聞くとか、あるいは調停をするとかいうところの解決だけでは限度があって、きちっと強制的な命令を発することができるか、あるいは、アメリカのEEOCのようでありますけれども、みずからが提訴権限を持つ、こういった行政救済機関、独立の形で第三者機関としてきちっと定めていただくということが大変望ましいことだというふうに思っております。
  27. 松本惟子

    松本(惟)委員 それでは、最後の質問でございます。この点につきましては、中下参考人及び樋口参考人にお尋ねをいたします。  この基本法が成立いたしますと、具体的に推進体制とか、それから基本的な施策について着手をされていくわけでございます。同時に、この基本法が実効を持つためには、自治体取り組みが大変重要ということを樋口参考人も先ほどおっしゃられておりました。私ども民主党は、よりよい基本法としての制定を目指して、参議院において対案を提出しました。  その際に、特に「国及び地方自治体は、男女共同参画の促進に関する施策を実施するため、必要な法律、条例等の」、これはちょっと踏み込んだと言われますけれども、地方を隅々まで見渡しますと、なかなか自主的にという点では時間がかかりそうだなと思うこともございまして、そういった条例の制定等を講じなければならないとして、地方自治体との関連が大事ということを強調いたしました。  この点について、法文ではちょっと気になるところがございますが、いかがでございましょうか。私どもは明記したんだけれども、これで本当に、ゆっくり、ゆっくりじゃなくて、かなりの速さをもって浸透が図れるのかどうか。そのことも含めて御意見をちょうだいできればと思います。
  28. 中下裕子

    中下参考人 私も実は樋口参考人と同じく東京都で条例検討専門委員会で検討しております。私は、日ごろから各市町村とかに回りまして、女性問題の施策について講演をさせていただいたりとかいうようなことも体験上非常に多くしております。  そういった中で、本当に今委員が御懸念になられましたように、市町村レベルに行きますとこの問題に対する意識について大変ばらつきがあるわけなのですね。そうすると、市町村ごとによって、実際にそこで暮らしていらっしゃる女性方々にとっては、片一方はきちっと平等が促進されるのに、片一方ではなかなか促進されないというふうなことにもなりかねない、これでは本当に男女共同参画社会を国を挙げて実現するということが極めて難しくなってくるのではないかと思います。  そういう意味で、本当にこの基本法の中で市町村に対してもできるだけ縛りをかけるような、このような枠組みをぜひ整えていただきたいというふうに思っております。
  29. 樋口恵子

    樋口参考人 実は、きょうこの国会議事堂の中でたしか地方分権に関する一括法も審議されているやに伺っておりますけれども、かけ離れているように見えながら、地方分権一括法、地方自治の精神とそれから今回の男女共同参画は、あえて言えば表裏一体をなす、未来志向の法律だと私は思っております。  議員御指摘のように、地方へ参りますと、この意識の格差がたくさんございます。非常に多くございます。ございますけれども、私たちが審議会レベルで地方公共団体の責務ということをある程度書き込みましたのは、全国キャラバンをいたしまして、地方の女性たちからの御意見を聞きまして、そこで本当に女性たちが伸び伸びと発言できるというところにおきますと、何よりも、地方公共団体がその地域の特性に応じみたいなことを言われると非常に心配だという声が女性たちから強かったわけでございます。  この点で、今回は、第九条、「地方公共団体は、基本理念にのっとり、」という言葉が入り、男女共同参画社会形成の促進に関し国の施策に準じたということで、これはどう読むか、読み方はございましょうけれども、私ども素人が読みますと、これは地方で条例を制定したりするときにはもう上乗せ、横出ししかできないぞ、この理念はしっかり押さえなければいけないというふうに考えてよろしいと思います。  そうすると、それは地方分権の精神にもとるのではないかなどとおっしゃる方がまたいらっしゃいます。地域の実情に応じて、個性に応じてでいいではないかなどとおっしゃる方があるのですけれども、この男女共同参画というのは、あえて言えば、ワールドカップのサッカーでいえばルールブックだと私は思っております。言ってみれば、特殊性、個性の基礎に立つ普遍性というものとして、この男女共同参画が地球に通じる、世界に通じるものとして必要だと思います。  幸い、今度は機関委任事務が全廃されまして、自治事務の範囲が広くなり、その意味では条例制定の幅が大変強くなっております。私は、個人的には議員の御意見に賛成でございまして、条例制定ということまで入れてもいいと思いましたけれども、それをどこで、必置義務をふやすというような形にするよりは、むしろ条例制定権の強くなっているところに、そして今地方は女性の代表性を幾ら議員がふえたといいましてもまだ失っておりますので、条例をつくる作業を通しながら、全国津々浦々に男女共同参画社会実現できますことを願っております。  既に首都圏男女平等条例推進ネットワーク、あるいは関西、九州などにNGOができ上がっていることを御報告したいと思います。
  30. 松本惟子

    松本(惟)委員 お約束の時間が参りました。ありがとうございました。
  31. 二田孝治

    二田委員長 次に、河合正智君。
  32. 河合正智

    ○河合委員 公明党の河合正智でございます。  本日は、参考人の諸先生、御多忙のところ御出席をいただきまして、心から厚く御礼申し上げます。大変にありがとうございます。  私は、まずこの法の目的に関しましてお伺いさせていただきたいと思います。  天下の半分は女性が支えていると言われましてから幾久しいわけでございますけれども、しかし現実は隷属と忍従を強いられた歴史的な事実というものも私たちは認識した上で、先ほど樋口先生がおっしゃいました、二〇〇〇年世紀の大きな課題に取り組んだ法案であるという御指摘をいただきましたが、私は全くそのとおりであると思います。  二十一世紀女性世紀としたいという願いを持つ男性議員を代弁して、いろいろ御意見をちょうだいしたいと思います。よろしくお願いいたします。  まず、この法の目的につきまして、少子高齢社会が予測以上に進んでいる、このままいきますと百年以内に日本の人口は半分になってしまうのではないかといった点から、少子化は生産年齢人口の減少をもたらす、したがって女性を労働力として確保するために男女共同参画社会という、そういう論調が一部にございますが、私は、これは非常に目的と手段を取り違えた論旨ではないかなと考えております。  何のために男女共同参画社会を目指すかということにつきまして、樋口先生はこういう認識を表明されております。例えば、日本の高度経済成長というのは、職場の正メンバーから、正規のメンバーから妊娠する女性、子を産む女性をはじき飛ばして達成された、また、子供を産む女性社会の中枢から、労働の場の正規メンバーから疎外し、子供を優秀な労働力予備軍として、子供から時間とか空間、仲間を奪い続けてきたという認識を表明されているところでございますけれども、この少子高齢社会とのかかわり方の中で、男女共同参画基本法の目的というものを改めてお伺いさせていただきたいと思います。樋口先生、どうぞよろしくお願いいたします。
  33. 二田孝治

    二田委員長 参考人にあらかじめ申し上げますけれども、御答弁はひとつ簡潔にお願い申し上げたいと思います。
  34. 樋口恵子

    樋口参考人 申しわけございません。では、時計を置きまして、二分ぐらいで申し上げます。  先ほども申し上げたとおりでございまして、高齢社会に関しては、先ほどのようなセーフティーネットとして、社会の枠組みとして考えなければいけないのではないか。  このごろ、少子がセットになっておりまして、それはそれでもいいのですけれども、何かその目的のために女性を大切にしようというような言い方、社会の活力のために子供よ生まれてこいと言ったって、だれが生まれてきたいですか。私は、やはり社会の活力のためではなくて、その前に生まれている父と母が人間としてちゃんと尊重されていて、そして自己の選択によって子供を産み、しかも他の生活と両立しながら、子育てを、父母ともども、社会ともども楽しむことができた、そのような社会において生まれる子供の数が適正な子供の数だと思っております。  現在の少子化がさまざまなひずみの結果、男女不平等のひずみの結果の一つであるという点から少子化対策にも取り組まなければいけないと私は思っておりますけれども、それはもう順序が違うのでございまして、男女ともどもの人権が尊重されるような社会をつくって、それでももしかしたら子供は余り生まれないかもしれないのです。ということまで見据えた上で、女性の人権、男女の同権。  それから、お言葉を返すようでございますが、女性の時代と思っておりません。男女共同参画の時代と思っております。
  35. 河合正智

    ○河合委員 特に、少子高齢の社会に関してお伺いしたわけでございますけれども、先ほどの介護の社会化という御意見がございました。本法でも、職場、家庭、地域における男女共同参画について規定しているところでございますけれども、特に、高齢者が安心して暮らせる条件の整備といった観点から、介護の社会化が整備されていない、そういうことが少子高齢社会を生んできているという御指摘について御意見がございましたら、ぜひともお伺いしたいと思います。  ちなみに、私ごとでございますけれども、私もこの三月に二年介護をいたしました母を亡くしまして、妻とともに介護いたしました。先ほどの先生の御意見については、身にしみて感じ入ったところでございます。どうぞよろしくお願いいたします。
  36. 樋口恵子

    樋口参考人 社会化しなければならないというのは、介護する人、される人、双方が社会的存在であるという視点から、社会の風に当たりながら、多様な人々と接しながら、風通しのいいところで、決して密室の中に囲い込まれずに生きる権利が要介護者、介護者ともどもあるのだという視点一つあると思います。  それから、もう一つ申し上げるならば、高齢社会というのは家族の構造が根本的に変わった社会でございまして、厚生省の調査でも、六十歳以上の介護者が半数近くを占めております。私どものNGO、高齢社会をよくする女性の会が一昨年調査いたしましたら、大体もうちょっと年齢は高く出ておりまして、びっくりいたしましたのは、介護期間がこの十年の間に、三年から七年、七・四年に長期化していることでございました。かつ、重度化している。  それで、私ごとでございますが、私もついこの五月、三年二カ月寝たきりだった夫を見送ったばかりでございます。私は、連れ合いが大変重度でございますので、この三年二カ月、病院に預けておりました。  私は六十七歳でございます。六十五のとき夫が倒れました。したがいまして、私がきょうこのようにしてここでお話しできるということは、夫が余りにも重度であり過ぎるために病院に入院していて、直接主たる介護者ではなかったために、ここにいるということをじくじたる思いを持ちながら、一方で、そのような役割を一身に背負いながら共倒れになったり、社会的な意味では、私は、社会的介護を整備しないと、こういう家族構成になってまいりますから、絶対共倒れがふえる。すると、一人にかければよかったお金が二人、三人にかかる。半年ぐらい前に、きっと私はもう完全に倒れまして、連れ合いと私、二人まくらを並べ、今ごろは要介護施設にお世話になっていたに違いありません。  その意味で、私は、社会的介護の整備ということは少子化対策であるばかりでなく、これまた社会的セーフティーネットだと思っております。
  37. 河合正智

    ○河合委員 樋口参考人は、先ほどの東京都のポジティブアクションにつきまして、事業者にも進展ぐあいを報告するように求めて内容も公表するという、さらに本法よりも進んだ取り組みをされているところでございますけれども、本法には、国、地方公共団体国民と並んで、事業者にこういった義務を法制化すべきであるという御意見もございます。  この点につきましてと、それから、あわせて、時間がございませんので、苦情処理の問題につきまして、先ほど御意見を申し述べられました中に、やや御遠慮なさりながら御発言されたのではないかと思われるところがございますので、お伺いさせていただきたいと思います。これは、先生でございましたか。
  38. 二田孝治

    二田委員長 住田先生ですか、中下先生ですか。
  39. 河合正智

    ○河合委員 では、両参考人にお伺いさせていただきます。
  40. 住田裕子

    住田参考人 苦情に対する措置として今回盛り込まれまして、これを具体的に書き込んでいただきたいという御要望があったことを、私も地方キャラバンに参りましたときに承ってまいりました。  ただ、行政改革の中で新たな制度をどうするかということを今の段階で決めるのは非常に困難である、そういう時期的な問題が多うございまして、また、その中身をすぐに今書き込むには時間不足であったということもございまして、今回は抽象的にだけ規定を設けさせていただきましたけれども、次なる課題としてどういう措置をとるかということについては、ぜひ次のステップの研究課題と考えておりますので、先生方の御尽力、よろしくお願いいたします。
  41. 中下裕子

    中下参考人 先ほど申し上げさせていただいたとおりでございますけれども、やはり私ども、裁判の現場におりますと、裁判をやっておりますと大変時間がかかるのですね。もちろん当事者の負担も大変でございまして、それが簡易迅速に救済される、こういう行政機関をぜひともやはり設置していただきたい。それが、相談とか、あるいは調停にとどまるというのでは、決してやはり解決にならない。また裁判に行く、もっと長くなるのです。  ですから、そこできちっと行政的な命令が下せて、強制力を持った命令を下せるか、あるいは逆に、行政の機関そのものが御本人にかわって裁判をやってくださる、そういった制度をぜひ実現していただきたいと思っております。
  42. 河合正智

    ○河合委員 ありがとうございます。  具体的にオンブズパーソンの制度につきまして、我が党も大野由利子議員から代表質問で御提言申し上げたところでございますけれども、この点につきましてはいかがお考えでしょうか。中下参考人、よろしくお願いいたします。
  43. 中下裕子

    中下参考人 オンブズパーソンの内容が、今申し上げたように、強制的な命令を発することができるというものであれば大変私は歓迎いたしておりますので、ぜひそういう形で整えていただきたいと思っております。
  44. 河合正智

    ○河合委員 大変ありがとうございます。  本日はお忙しいところ、貴重な御意見を賜りまして、心から御礼申し上げます。大変にありがとうございます。
  45. 二田孝治

    二田委員長 次に、武山百合子君。
  46. 武山百合子

    ○武山委員 自由党の武山百合子でございます。  きょうは参考人の皆さん、お忙しい時間おいでいただきまして、ありがとうございます。  きょう全員女性ということで、私はちょっと不満でございます。男女平等参画ということなのに男性がいらっしゃらないということに、私は女でありながらちょっと不満を感じて、男性にちょっと質問をしたいなと思っていたものですから、そんな気持ちを持っております。  実はやはりこの問題というのは、女性男性も、本当にまさに意識の改革だと思うのですね。私、たまたま母も職業を持っていたものですから、母親が職業を持って、私たちの子育てをしながら家庭生活を送ってきた苦労というのは目の当たりに見ていたわけなんですけれども、私も実は二十年間は結婚生活をしまして、子育てをして、経済的には夫に守られてまいりました。  政治の世界に入りまして、自分で自分のことは経済的にも今やっておるわけですけれども、まさに女性が意識を変える、男性も意識を変えていくという、二十一世紀の、本当に憲法の精神のまさに平等、本当の意味の平等という社会に入るのかなと大変期待をしております。  そんな中で、まず樋口参考人中下さんにお聞きしたいと思いますけれども、今育児休業制度男性利用者は、わずか本当に〇・数%なんですね。この現状を、実際にどうとらえておりますでしょうか。
  47. 樋口恵子

    樋口参考人 先ほど申し上げましたように、私は、男女の差が育児休業では女性の方に大きく傾いても、それはむしろナチュラルなことだとは思っておりますが、この比率の差は余りにも大き過ぎます。少なくとも一〇%台で、何十%かは男性がとるということがなくてはと思っておりますし、スウェーデンなどがここ数年の間に「愛ある強制休暇」などと申しまして、十八カ月の休暇のうち一カ月は父親がとらねばならないというふうな制度をつくっていったことを私たちも参考にするべきではないかと思っております。
  48. 中下裕子

    中下参考人 今、樋口参考人もおっしゃられたとおりでありますけれども、私もこの数字は極めて異常であるというふうに思っております。  その理由を聞きますと、やはり何だか、先ほど議員の御指摘のとおりであります意識の問題、格好悪かったからというような理由が非常に多いようでありますけれども、その問題と、さらに、育児休業制度システムが賃金補償という点でまだ問題を抱えておりますので、どうしても賃金の高い男性が休むことがネックになっているというようなこともあるのではないかと思っておりまして、そういった点からの意識の改革と同時に、制度面の改革もぜひ取り組んでいただきたいと思っております。
  49. 武山百合子

    ○武山委員 制度は、労働省それから厚生省、それぞれの省庁で少しずつは進んでおるというのが現状でございますけれども、これは、女性男性もやはり意識の改革という中で、女性は自分がそういう立場に置かれて夫に相談しなければいけない、そういう行動をしなければいけない、男性はそれを理解してそこに協力しなければいけない、そういう両方の相乗効果というものがあると思うのですね。  その辺、私は自分が女性で、女でありながら、経済的に守られていたときはいろいろなことを決断して行おうとするときに非常に心苦しいわけです。その辺、女性の意識も、やはりそこで決断をして相談しなければいけない。そういう部分で、今女性はある面、まさに制度がないというところもあると思いますけれども、女性の方の甘えも男性の方の甘えもあると思いますけれども、甘えについてどうでしょうか、樋口参考人
  50. 樋口恵子

    樋口参考人 男女が甘ったれ合うなんというのは、私は決して嫌いな風景ではないのでございますけれども、これはそういう個人的なことではなくて、お互いに甘えというより遠慮だし、自己規制だと私は思っております。男性女性も今までの枠の中で、女は控え目にしなければならないとか男は一家を養わねばならないのだ、その枠の中にとらわれたとても不自由な生き方というのが先生おっしゃる甘えではないだろうかと私は思っております。  男の方もどうぞそういう枠から解放されて、お互いに自由に生きようではないか、この男女共同参画社会基本法はそのように呼びかけているものと私は解釈いたしております。
  51. 武山百合子

    ○武山委員 この参考人の中に男性がいたらもっと突っ込んだ質問ができたのですけれども、女性ばかりということで、非常に残念でございます。  次に移りますけれども、ことし四月施行の改正男女機会均等法、改正労基法により女性に深夜業や休日労働を認めたわけですけれども、このような一面で、女性保護のための規定について今後どう取り扱うべきだと思いますか、中下さん。
  52. 中下裕子

    中下参考人 深夜業だけではございませんで、時間外労働それから休日労働等の女子保護規定につきまして、原則的に解消になったということでございます。  男女平等の観点からいきますと、確かにそういった原則というのがあり得るのかなというふうに思っておりますけれども、現状を見ますと、やはり家庭の生活とそして職業生活、仕事とを両立させるためには、労働条件がきちっと整っていないととてもそういうことができないのじゃないか。子供を抱えながら深夜業というのはかなり大変なことでございまして、そういった面からの配慮というものが男女共通の基盤でなされる必要があるのじゃないかというふうに思っています。  それから、深夜業に関しては、例えば深夜労働中にコンビニの中で強盗に遭うとかあるいはタクシードライバーが殺害されるとかいった、やはり女性の安全性についての配慮というものをきちっと徹底していただかないと大変なことになるのじゃないかというふうに思っております。
  53. 武山百合子

    ○武山委員 男性女性というのはもともと違うものですね。やはり男性は力強く、腕力もありますし、能動的ですし、女性は力の点では劣ります。それに、ある程度受動的だと思うのです。そういう性の違いというのは必ずあるわけでして、深夜それから休日労働、体力的には、やはり自分が男性女性を比較した場合劣る点がすごくあると思うのですね。  ですから、両性の違いというものを認めた上で、それで両性の特性を生かして、まさに機会均等ということなんですけれども、そういう中で、本当にきょう男性がいないから聞けないのが非常に残念なんですけれども、中下参考人でしたら、自分がそういう立場だったら深夜業も休日労働もされますか。
  54. 中下裕子

    中下参考人 なかなか難しい御質問かと思います。ケース・バイ・ケースでございますけれども、私ども弁護士の仕事というのは、実際問題としましては時間外労働ばかり、実は昨日も深夜業をやっておりましたけれども、そういう状況でございまして、これは、やれるかどうか、それぞれの体制によって違ってまいります。でも、もしやりたいと望めば、私はやらなければいけないからやっているわけですけれども、やりたいと望めばできるようなシステムをいかにつくっていくかということがやはり問われてくるのだろうというふうに思います。
  55. 武山百合子

    ○武山委員 私は政治の世界にいるわけですけれども、男も女もないわけですね。それから時間も、朝早く夜遅いこともあるわけです。女性が何でもやるという、極端な話が、土曜、日曜も働く、それから男性のすることも同じようにやる、そういう気概と心構えをきちっと女性が心の中にしっかり持っていないと、現実に法を整備しても、なかなか男性は心の中で認めてくれないところがあると思うのですね。それはまた、逆に、女性男性を認めないところがあると思うのです。両方がそういう部分があると思うのです。そういう意識の変革というのは、これから早急に変わっていきますでしょうか、ちょっとそれをお一人お一人に聞きたいと思います。
  56. 住田裕子

    住田参考人 実は私は戦後世代ですので、男女平等の学校教育の中でずっと来たわけで、大学を卒業するときに初めて大きな就職の壁、実は雇用機会均等法の前の世代ですので、就職口はほとんどございません。そういう意味で、資格を取るしかないという意味で司法試験を受けた。多分私の世代の女性はほとんどそういう形で来たと思います。  ですから、そういう壁に当たらない前はやはりそういうような気概をずっと持ち続けていたのですが、大きな社会の壁に阻まれてきて、少しずつ変わっていった。そして、配偶者の転勤等に合わせて家庭に入らざるを得なくなって、そのうちにだんだん、今委員がおっしゃるような形で、経済的な自立ができていないところからそういう気持ちになっていかれる方を私は目の当たりにしてまいりました。  ですから、今回の法律ができることによって、またその前の雇用機会均等法は大きな前進だったと思いますけれども、そういう意味では、女性社会の中で男性と共同して参画していろいろなところに進出していくということについては、これからは変わるはずだと期待しております。
  57. 中下裕子

    中下参考人 やはり私は、意識の問題は制度と切っても切り離せないというふうに思います。ですから、制度が整ってくれば意識は変わってまいります。  ただ、制度を幾ら形式的に整えても、それを使う人がいなければ、先ほどの育児休業の問題もそうですが、せっかくできても、使う人がいなければなかなか現実には変革し得ないということになってまいりますので、使う人ができるような、そういう制度にしていただきたい。その意味で、男女共同参画基本法が、先ほども私が申し上げたように、実効性のあるものにしてぜひスタートさせていただきたいというふうに思っております。
  58. 樋口恵子

    樋口参考人 法律制度というのは、どうも男の方はとても好きなんですね。ですから、法律ができることによりまして、制度が変わることによりまして、やはり男性も意識を向けてくださる、だからこそこういう法律が大切なんだと思っております。  甘えという言葉に、さっきから私ちょっとどういうことかなと思っていましたけれども、とにかく女性男性とともにこの社会を担っていく責任を持つのだという意識、これは女性の方が絶対持つ必要があると思っております。男性はただそれを理解するのではなくて、自分自身の、今、深夜までやっていらっしゃること、とても御苦労さまだとは思っておりますけれども、だったら、もっと人間らしい、男のあり方が人間らしいのじゃなくて、女が人間らしく生きられない社会というのは男も人間らしい生き方をどこかで失っていらっしゃるのですよ。ですから、男性もみずからの生き方を問い直しながら、真に豊かな社会をつくっていこうというのがこの男女共同参画社会基本法の精神と存じております。
  59. 水野磯子

    水野参考人 今、深夜業をしている女性たちは本当に苦労をしているわけです。今度四月から、確かに二十一世紀はそれこそ男女ともに働き、人間らしく生きていきたいという願いがあってつくられるわけですけれども、今の実情を見たときに、さっきも樋口さんがおっしゃいましたけれども、やはり世界の、それこそ働く者の労働時間というのはどんどん短縮の方向に行っているわけですから、深夜まで働くこと自体がどうしても必要な、もちろん職種も意識も必要ですけれども、だからといって、休日、残業を当然覚悟して女性も働こうよということではないような気がいたします。  そういった意味から、両性ともども暮らしやすいそういう条件が、意識の改革とあわせて、時間短縮等々制度が求められていくのではないか、そう思っております。  以上です。
  60. 武山百合子

    ○武山委員 どうもありがとうございました。  最後樋口参考人に、日本もイギリスのように、サッチャー首相のように、女性の総理大臣は誕生しますでしょうか。
  61. 樋口恵子

    樋口参考人 そういう日ができるだけ早く参りますように先生方の御努力をお願いしたいと思っております。来ないことはないと思っております。
  62. 武山百合子

    ○武山委員 どうもありがとうございました。  天の半分は女性なわけですから、女性女性をやはり支援する、そういうことも非常に大事だと思います。  どうもありがとうございました。
  63. 二田孝治

    二田委員長 次に、瀬古由起子君。
  64. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 日本共産党の瀬古由起子でございます。  きょうは、参考人の皆さん、本当に御苦労さまでございます。お越しいただきました四名の参考人の皆さんにはまとめた形で最初に質問させていただきますので、よろしくお願いいたします。  日本共産党は、私どもは、本法案が本当に今多くの女性の皆さんが願っているもの、その願いを反映したものになるように参議院でも修正案を提案してまいりました。  その主な内容なんですけれども、一点目は、今度の基本法、あらゆる分野への参画機会の確保という形になっていますが、私たちは、それだけでは不十分だというふうに考えています。それは、現実の差別が大変深刻な状態にある、そういう点では、何としてもこの法律の中に、憲法及び女子差別撤廃条約など男女平等の理念としてきちっと明記してもらいたい、こういう要望があるわけです。この点について提案をさせていただきました。  二点目は、男女差別の禁止を明確にして、先ほど出てまいりましたけれども、転勤だとか出向の問題など実際に女性差別されている、こういう事実上の男女差別についてもきちっと禁止する、このことも明記してもらいたい。  そして三つ目には、産む性である女性の生涯にわたる健康の保持という問題で、この法律案にはないわけですが、母性保護をきちんと明記してもらいたい。  四つ目は、企業の責任を明記してもらいたい。  そのほかにもございますけれども、この四点について、参考人の皆様には、どれでも結構ですけれども、必要だと思われる点、または、先ほど述べられた方もございますけれども、補充されたいと思われる点、この点、お一人お一人伺いたい。お願いいたします。
  65. 住田裕子

    住田参考人 御趣旨は、私、どれも同感の部分がございます。  ただ、今回の基本法に当たりまして、基本法としての性格上、どこまで書き込むかということを非常に苦労いたしまして、そして、書けない部分についてはやはり今後の個別立法、個別措置にゆだねたい。そして、これは本音なんですけれども、これを一つのステップとして、また大きな運動のうねりとして、これまで出してこられましたさまざまな御要望、問題点をさらに検討していくことで一段高いものに飛躍できるということを期待しております。  以上です。
  66. 中下裕子

    中下参考人 先ほど申し上げました事実上の差別間接差別でございますね、これはぜひ盛り込んでいただきたいというふうに思います。  それから、企業の責任ということで、事業主の責務ということは東京都の条例でも実は盛り込んでおります。ぜひこれも盛り込んでいただけたらというふうに思っております。
  67. 樋口恵子

    樋口参考人 議員おっしゃいましたことの中で、私は、特に企業の責任というのは本当は大事なことなのですけれども、なかなか盛り込みにくかったという個人的感想を持っております。
  68. 水野磯子

    水野参考人 差別撤廃条約あるいは世界女性会議第四回北京宣言等々にありますように、経済、社会、政治、平和、つまりあらゆる分野におきまして女性の地位向上、実質的男女平等を実現する重要性、これを強調していると思います。そしてさらに、国連の女性差別撤廃委員会におきましても、日本政府に対しまして勧告がございます。  NGOとよく対話ということを言っておりますし、また、職場での実質的差別の存在というものをきちっと把握し、認め、それをなくす手だてと計画、それからもう一つ、民間企業に均等法をきちっと守らせるよう、間接差別をなくすための措置、そういうことを勧告しているわけです。したがいまして、私は、男女平等理念のその表現がやはり必要ではないか、そこが大事かと思っております。  もう一つ、母性保護のところでございますが、私ども、先ほど申し上げましたように、四十七都道府県、六千五百三十五人のあの女性の健康アンケートの中でも、過去五年間に妊娠したことのある人はという問いの中で一〇・二%。そして、その妊娠をした人たちが、妊娠が順調でないというふうにお答え願った方が三五・一%で、まさに三人に一人です。そういうことと、切迫流産がその中でも三八・九ですから、十人に四人でしょうか、非常に高いし、また、出産のところでは、正常分娩という点では六六・四%の方がいいわけですが、異常だという方が二五・三%で、まさに四人に一人なんです。  そういうことを思いましたときに、やはり残業がふえているということですし、きょう、私どものもう一つの添付資料を皆さんに差し上げておりますけれども、その中の皆さんのアンケートの結果を見ましても、何を望んでいるかというところでは、残業しなくてもよい人員配置の確保が私たち女性には必要だということが断トツです。  もう一つは、深夜勤、ただいまこれをするわけですけれども、そしてふえてもいるわけですけれども、家庭責任を持っている自分にとって非常にそのやりくりが大変ということへの不安、あわせて、自分自身の健康が不安というふうに言っております。そうしたことから、働く女性のいわゆる職業とまさに家庭の両立は、このまま置いておいても危機的状況ではないのか、少子化にさらに拍車がかかるのではないのかな、こういう懸念が強いわけです。  今後とも働く女性はふえ続けるということも思いますし、どうしても、母性保護の規定といいましょうかそこは大事ですし、あわせて、企業の責任という点で、労働条件、いっぱいかかわるわけですから、明記が必要ではないのかな、そんなふうに思います。  私自身、ナイロビ会議、このときは名古屋市の派遣代表団の副団長として、本当に世界の女性たちの熱い思いに触れてまいりました。ついこの間の第四回女性北京会議におきましても、本当に皆さん、男女平等への怨念とも言える非常に息吹、そういうことを思いましたときに、女性の権利は人権であるというこの北京宣言の精神は、今後できますこの法案の中にぜひ貫いていただきたい思いいっぱいでございます。  以上でございます。     〔委員長退席、植竹委員長代理着席〕
  69. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 もう一度水野参考人にお聞きしたいと思うんですけれども、四月から労働基準法が変わりまして、女子保護規定が撤廃されたわけですね。水野参考人は愛知にお住まいなんですけれども、特に、男性の労働も大変厳しい状況にあるわけですけれども、深夜女性が仕事をするということになると、一体どういう状態になっていくのか。現実に深夜で仕事をされている方の実情なんかもよく把握してみえると思うのですけれども、その点、御紹介いただけませんでしょうか。
  70. 水野磯子

    水野参考人 NTT、つまり電話交換の職場がございまして、ここにはたくさんの女性たちが台について深夜労働をしておりますけれども、彼女たちは言うのです。どうやってこれまで働き続けてきたのかな。朝、台について仕事に入る。そのときに、我が家に残っている子供たち、そして夫、そして介護の部分もあるわけですが、もう本当に例外なく、一斉に我が家に電話をすると言うのです。リモコン何とか、こういうふうに言っているのですね。そうやって、宿題は大丈夫か、かばんの中にあれを入れてあげたかねということを子供たちに、お父さんにコールをする、こう言っております。  こういう深夜労働は、今、低賃金労働者といいましょうか、要するにパートにみんなかえられてしまった、そういう中でも今も続いているということで、ここの家庭責任という女性の負っている部分を、社会化といいましょうか、男性の意識改革も含めて、今後のともに働く二十一世紀型家庭はどういうふうにあったらいいのかなということを一緒に考えていかないと大変であるというふうに思います。  また、均等法後、弁当屋さんというところで、お弁当づくりに出かけるお母さんが今あります。二時にうちを出るよ、三時だよ、そして弁当を詰めて、帰ってくるのは大体四時、早い人は四時半、五時には、六時にはうちへ着く。そして、それから朝食の用意にかかると言っておりますが、これまた、こんな働き方、自分はこれでずっといいのだろうかということで、必要な仕事とはいえ、こういう働き方を変えることはできないだろうか、そんな不安を抱えながらの、今、働く女性実態ではないか。  これが本当にふえていくということは、非常に懸念といいましょうか、母性の健康からも、人間らしく、お互いに二十一世紀、ともに築いていきたい家庭生活といったときに、二十一世紀をしょって立つ子供のことを思ったときに、これでいいのだろうかという声が聞かれているところでございます。  以上です。
  71. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 水野参考人から、先ほど婦人部のアンケートという形で出されておりますけれども、これは大変大きい職員の数の職場だと思うのですけれども、なかなか参考になるといいますか、今の女性の労働者の状況をあらわしていると思うのですけれども、これについてもう少し詳しく説明いただけませんでしょうか。     〔植竹委員長代理退席、委員長着席〕
  72. 水野磯子

    水野参考人 このアンケートは、この五月でございますが、大体回収率が三分の一強というところでしょうか、千九百八人の回答状況になっております中で、男性女性も人間らしく働きたい、そのための労働条件、どんなことが大切だと考えていますかという問いに対しまして、ここの中では、長時間残業をしなくてもいい、今ふえているこの残業をしなくてもいい人員配置、職場の人数をふやしてほしいということが本当に多いのです。ほとんどの皆さん方がそういう願いを持っているわけです。そして、しなくてもいい職場全体の環境が欲しい、こういうふうにも述べております。  また、深夜業につきましては、先ほども申し上げましたけれども、名古屋を一帯に、あるいは愛知県下を見た場合に、交通手段がそんな夜中にないのです。では、タクシーはということになりますが、その保証だって、田舎ですから、さて仕事にと呼び出されたときにどうするのか、あるいは帰るときはどうするのかという点で、細かいことでございますが、交通費は全額実費支給というふうにもなっていないように提示を受けているものですから、こんなことってあるだろうか、本当に仕事を続ける意欲を持つ反面、不安がいっぱいだ、こういうふうに言っておりますこと。  もう一つは、機会均等法後の実態のところでは、セクハラが女性の人権という立場から見て本当に働きやすい職場、性的なことにかかわることにとどめない、まさに女性の人権が座った職場、仕事の与えられ方がどうなんだろうかということを彼女たちは真剣に考えている、そういうふうに思われるこのアンケートの内容でございます。  やはり意識啓発も含めまして、これからの大きな課題ではないかと思います。
  73. 二田孝治

    二田委員長 参考人に申し述べます。  予定の時間が終了しておりますので、簡潔にお願いいたします。
  74. 水野磯子

    水野参考人 ありがとうございます。これで終わります。
  75. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 どうもありがとうございました。
  76. 二田孝治

    二田委員長 次に、辻元清美君。
  77. 辻元清美

    辻元委員 社会民主党、社民党の辻元清美です。  本日は、皆さん、ありがとうございます。それでは、早速質問をさせていただきます。  まず、中下参考人水野参考人にお伺いしたいと思います。  さまざま寄せられます意見の中に、この法律の名前の話が出てきました。男女平等法にした方がすっきりするんじゃないかという意見が私の方にも寄せられておりますし、私も何だか、男女共同参画社会基本法よりも、平等法にした方がすっきりするんじゃないかなと自分では思っています。また、審議の中でも、男女平等が前提となって、この共同参画社会というふうに位置づけられているんだという御答弁をいただいているのですが、私はまだ、なかなかその部分、納得がいかないのですね。お二人の参考人の方はいかがお考えか、伺いたいのです。  それと同時に、きょう、これ、お手元に、皆さん、委員の方にお配りされているものなのですが、ここに全部、中下君となっているのですよ。私は、この前、官房長官に指摘いたしまして、特に、この中の制度または慣行についての配慮、この慣行というのが、これがなかなか改めにくいというか、何となくそうなっている。国会も全部最初から君、君、君、君で、これを何とか「さん」にしたらいいんじゃないか。  実は、私は、この委員会が終わってこの法律が成立したならば、一人でも議長に申し入れに行こうかなと思っているのですが、皆さん、これをごらんになってどのようにお考えか、それもあわせてちょっとコメントしていただければと思います。よろしくお願いします。
  78. 中下裕子

    中下参考人 名称の点でございますけれども、おっしゃっておられるとおりで、我が国課題として、平等がまだまだ進んでいないというのがやはり大きな課題かと思いますが、先ほど私が申し上げたように、さらにそれを飛び越えて、飛び越えてというかそれを克服して、共同参画ということが本当に二十一世紀の人類の課題を解決するために必要なことだろうというふうに私は思っております。ですから、平等と同時に共同参画というものが必要なんじゃないか。  ちなみに、東京都の条例の名称は男女平等参画基本条例というふうになっておりまして、私自身は平等参画でいいんじゃないかというふうに思っております。  それから、君ですね。これは、私もちょっと異常だなというふうに、議事録を拝見していつもこうなっているから、相変わらずこういうのをお使いになっているのかなというふうに思っておりましたけれども、やはり、ぜひ改めていただけたらなというふうに思っております。
  79. 水野磯子

    水野参考人 共同参画ということでございますが、今なかなか共同参画になっていない現状があります。そういう点では、共同参画は非常に重要なことであると思います。と同時に、参画だけではやはり、これから私たちが目指している、あるいは法案として、撤廃条約や北京会議の中での北京宣言等々から見まして、本当に女性の権利は人権であるということを貫くとすれば、趣旨はお答え願っているならば、名称もやはりはっきりと男女平等というところが欲しいというところでございますが、私、それもそうですが、できるということも大切ですのでと思っております。  以上でございます。
  80. 辻元清美

    辻元委員 君はどうですか。
  81. 水野磯子

    水野参考人 それは、やはりおっしゃいますとおり、私も君と呼ばれて私じゃないような気がいたしておりますので。
  82. 辻元清美

    辻元委員 それでは、住田参考人樋口参考人にお伺いいたします。  今の君問題もお二人にもコメントいただきたいんですが、このNGOの役割ということをお二人にお伺いしたいと思います。  それで、住田参考人には、このNGOの役割、これからどのように、私は重要だと思っています。NPO法という法律もつくりまして、これから何とかNGO、NPOの時代へというふうに私自身も活動しながら思っています、その役割。  そして、樋口参考人には、特に、カイロの人口会議北京会議に参加されまして、国際的ネットワークの現状といいますか、それについて、お二人にお伺いしたいと思います。
  83. 住田裕子

    住田参考人 まず、君問題ですが、実は、私、弁護士会に所属しましたときに君で呼ばれまして、あのときに非常に異様な感じを受けたもので、きょう、委員の御指摘を受けまして、ああ、私もあのとき、そういう素朴な感覚を持ったなという気はしております。ただ、こればかりは伝統のある社会的慣行の中でどういうふうな形で皆様がお考えになるかということが大事ですので、コンセンサスを得た形で、ぜひ、いろいろな御意見をいただきながら、変えるべきものは変えていただきたいなというふうに思っております。  それからNGOの関係、そしてNPOの関係。  実は、私も在野法曹となりまして、やはり民間の力というのは極めて大きい、自由に動けてうれしい、もともと役人でいたこともあるわけですので、そういう気がしております。そういう自由な発想というのは、先ほど何人かの委員もおっしゃったように、女性の意識改革においては特に大事でございますので、NGO、民間団体がより活動していただくために、この法律の中でもそういう連携というのをきちっとうたっておりますので、今後、それに対しての大きな役割を期待したいと思っております。
  84. 樋口恵子

    樋口参考人 まず、君、「さん」でございますが、これは何か文部省の御指導のようでございますね。国会の中は別といたしまして、教科書の検定などで、男が男を呼ぶときは君、それから男が女を呼ぶときは「さん」、それから女同士を呼ぶときは「さん」。これはもう十数年前でございますけれども、あるとき、国際婦人年が始まってからですけれども、ちょっと教科書の男女の描き方に疑問がございまして、そのときは文部省へ伺ったりなにかして調べたことがあるんです。  委員長にしかられちゃいそうですけれども、つまり、子供の作文をもとにした教科書なんですね。書いているのは女の子なんです。それで、女が女を呼ぶときはだれだれさんというのが、何か緩やかだけれども規定らしいんですね。ところが、そこだけはだれだれ君の提案でとなっているんですね。どうしても男の提案にしたかったらしいんです。何か全体の原則を破って君にしているのは男の子の提案にしたかったからだとか、いろいろございます。  ですから、そういう意味で、国会はその文部省の規定などを破って君と呼んでいらっしゃるんですから、それはそれで、ひとつ別にとは思うのですけれども、やはり男の名称だという気はしますね。  やはり土井たか子さんが議長におなりになって、「さん」とお呼びになったとき、とても新鮮な感じがしたんですね。だから、ああいうあり方はとてもいいと思いつつ、今度は逆に、ある時期の文部省が言っていたところの、女が男を呼ぶときは「さん」という規定に従ったものとも言えなくもないんですね。どうぞ、私はやはりこれは少しずつ変えていっていただきたいと思っております。  NGOに関しましてはこういうふうに思います。  私は、さっき、二十一世紀の、ミレニアムのキーワードは対等なパートナーシップと申し上げました。これは男性女性がそうでございますし、地方分権で、御案内のように、国と地方の対等なパートナーシップでございますし、もう一つが官と民との対等なパートナーシップだと思っております。官尊民卑、男尊女卑、国尊地卑というのがずっと今までので、私はこういうのをピピピと言っているんです。  それで、別に何もそれに取ってかわろうなんて全然言っているんじゃございませんで、男性女性の平等、男女の同権、国と地方との対等な関係、官と民との対等な関係、それが日本を新しくつくり変えるものだと思っております。そして、そのことの中には、国が大きいか小さいかということを問わず、国際的な協調、そして私どもはODA、アジアでは最大の国でございますから、男女共同参画のよい習慣を、よい文化を国際的に輸出し、また協調していく立場ということで、今や地球規模の問題はもう先生方の御努力はもちろんのことでございますけれども、国会の中だけでも、また県会の中だけでもできない、NGOの協力が高齢者問題、人口問題、環境問題などで大変広く広がり、そことまた国会や官とネットワークしながら、よい社会をつくっていく時代だと思っております。
  85. 辻元清美

    辻元委員 どうもありがとうございます。  さて、引き続きまして、中下参考人にお伺いしたいんですが、私も、女性への暴力ということで特にドメスティックバイオレンスの問題はこれから深刻化してくると思っています。  さまざまな案件をお取り扱い中であるというお話がありましたが、ちょっと実態を、一、二、時間がなくて恐縮なんですが、簡単に御説明いただけますでしょうか。
  86. 中下裕子

    中下参考人 私、先ほどちょっと申し上げましたけれども、ドメスティックバイオレンスでもう相当多数の離婚事件を今まで受任しておりました。その中で、離婚事由として、もちろん、暴力として挙げられているのもあるんですけれども、そうでないケースにつきましても、やはり妻が何らかの形で夫から暴力を振るわれているという状況なんですね。  そうしますと、大体それをきっかけにその夫婦ではコミュニケーションが成り立たなくなってしまいます。というのは、妻の方も、何か言っても殴られるということになると、やはりもう言うのをよそう、結局、夫婦の問題は解決しなくて、最終的には離婚に至ってしまうということで、暴力というのは、本当にあらゆる関係性の中で何の解決も生み出さないし、むしろ問題を複雑化してしまうというふうに思っておりますので、それに対しての早急な取り組みが、男女共同参画社会を本当に実現していくために、こんな暴力があったんじゃ話もできないんです。ですから、これはぜひ取り組んで、早急な対策が求められていると思います。
  87. 辻元清美

    辻元委員 ありがとうございました。  それでは、樋口参考人にもう一点お伺いしたいんですけれども、メディアにおける女性差別の問題です。  言論の自由との関係で非常に難しい点はあると思うんですけれども、私もテレビなどを見ていてむかつくことがあるんですよ。何や、これ、なめとるんと違うかと。はっきり言いまして、こういうのを心の中で叫びたくなるような番組もしくは映像があるわけですね。このメディアとの関係につきまして、どういう御意見をお持ちでしょうか。
  88. 樋口恵子

    樋口参考人 メディアとジェンダーの問題に関しましては、一つは、まずメディアの送り手の側に男女がバランスよくいるかどうかということをやはり精密に調べなければならないと思いますが、私の知る範囲におきましては、例えば、あるとき、フィリピンへ行きましたときよりも、日本のメディアにおける女性の送り手の側は非常に少のうございました。こういうことを、やはりメディアの送り手の側にバランスよくいるということが大事なことだと思っております。これは労働問題でもあると思っております。  もう一つ表現の問題でございますが、これは私などもマスコミュニケーションが専門の一分野にございますので、いろいろ男の方と、専門家と話す機会がございましたけれども、一言で、言論の自由で、表現の自由で、そんなことを言ったってと言われてきたのですけれども、その都度私は黙りながら、これでいいのかねと思っておりました。  そして今、日本のメディアのある部分につきましては、こう申したら、またここのところを後で削除していただかなきゃいけないのかもしれませんけれども、途上国の方々すら、もっと男女差別のある途上国の方々が、日本はあんな状況を深夜テレビで出しておいていいのかとじかに私はマスメディアの方から言われたことがございます。恥ずかしいことだと思っております。  結論的には、言論の自由、表現の自由というのは、あくまでも権力に対しての表現の自由でありまして、市民同士の人権を侵さない表現の自由ということは、今市民同士の話し合いとして、私たちがこういうことは嫌なのだということをしっかり言っていっていい、そのぐらいようやく男女とも市民的成熟を見た時代ではないだろうかと思っております。
  89. 辻元清美

    辻元委員 はっきりした御意見をありがとうございました。  時間が参りましたのでこれで終了いたしますが、私も政治の場に来まして、政治の場でもはっきり言ってこのジェンダー視点というのはなかなか少ないんじゃないか。各政党もそうなんですね。私は社民党に属していますけれども、やっと執行部の三〇%を女性、十五人のうち五名なんです。議員がふえても、各政党の執行部の割合がふえないと私はだめだと思っていまして、今のメディアもそうですね。制作者の側、官僚もそうです。そういうふうに思いますので、まだちょっと道は遠しかもしれないですけれども、一緒に努力していきたいと思います。  どうもありがとうございました。
  90. 二田孝治

    二田委員長 次に、笹木竜三君。
  91. 笹木竜三

    ○笹木委員 笹木竜三です。質問をさせていただきます。  幾つか基本的なことについて、参考人先生方に確認をしたいと思います。  一つ目は、先ほどから話が続いている男女共同参画社会、今それが非常になされていないということで、これをしっかりとやっていこう、そういう社会に変えていこうということだと思います。非常に遠い将来かもしれませんけれども、男女が共同で参画を十分にするような社会になった場合に、現実の社会、先ほど参考人先生が、お国のため、国家のためという言葉もあえて使っておられましたけれども、現状に比べてどのようなもっとすばらしい、よく新しい価値とか、より質の高いとか、抽象的な言葉はあります。それは地球社会に対してでもいいです。国に対してでもいいです。どのようなもっと質の高い社会になり得るのか。具体的なイメージがあれば、参考人先生方一言ずつお答えいただきたいと思います。  私の体験で言いますと、自分が子供を持つようになって、今そんなに自慢できるほど育児はもちろん余りしておりませんけれども、やはり人生観に対して非常に大きな変化が生じました。もっと言いますと、それ以前に、結婚なんて大したことじゃないし、子供なんかは余り要らないなと思っていたことが、やはり違っていたなというふうに思います。そういう点で、育児などももっとかかわれてもいいなという気持ちは私自身もしていますし、可能な範囲で少しはやっております。  質問に戻りますけれども、どのような新しい価値観なのか、どのようなより豊かな社会、国でも社会でも地球社会でも結構です。一言ずつお答えいただきたい、そう思います。
  92. 住田裕子

    住田参考人 トップバッターでちょっと荷が重いのですけれども、ある産業関係の大学の先生がおっしゃっておりました。やはりこれからの日本は高付加価値産業を目指すべきである、そのためにはやはりアイデアが勝負である、そういうときには、いろいろな価値観、多様な価値観が入ることが新しいものを生み出す。そういう意味では、今までの均一な、はっきり言って男性社会だったと思いますけれども、それがそろそろ制度疲労をいろいろなところで起こしている。そこで、女性の、若い女性また年輩の女性のいろいろな違った価値観が入ることによってまた新たなる価値観が見出せて、非常に抽象的ですけれども、技術が見出せる、そういうことが期待できるのではないかと私は漠然と思っております。
  93. 中下裕子

    中下参考人 先ほども申し上げましたけれども、やはり二十一世紀社会は、さまざまな人類的な危機というものがますます深刻化するだろうと思うのです。ですから、これは、女性視点抜きに新しいライフスタイルに変えていくということはやはり難しいんじゃないか。  大変身近な例をとりますと、一つ、ごみ問題にいたしましても、これは大変大きな問題であります。そういうものに女性参画していかなければ、実際には解決していけない問題、つまり、やはり生活の問い直しですから、そこにおいて女性参画の意義は極めて重要であると私は思っております。
  94. 樋口恵子

    樋口参考人 先ほど私は、男女共同参画はお国のため、社会のため、個人のため、そしてまた地球社会のためと申し上げましたが、時間がなくて申し上げられなかったのですけれども、五つ用意いたしておりまして、一つは、高齢社会における言ってみれば安心のネットワーク、セーフティーネットということでございます。第二は、家庭生活の中で、これはもう委員自身御体験のように、男性ももっと豊かな多様な輝きに満ちた生活をすることができる。三つ目が、これはちょっと申し上げましたけれども、恥ずかしい接待汚職のようなこと、あれはジェンダー構造汚職だと思っております、そういうことが防げます。そして四番目に、地方公共団体それぞれが、そこに男女参画を求めて、新しく変わることができるだろうと申し上げました。  一つだけイメージとして申し上げますと、日本人が大好きなベートーベンの第九の最終楽章でございます。あそこには男性女性の声がそれぞれのDNAを背負って、それぞれ個性を背負って響き渡っております。男声合唱も女声合唱もそれなりにきれいでございますけれども、フルメンバーのオーケストラとともに男女の声が満堂を圧して少しも揺るがないのは、そこに男性女性が精いっぱいの声を張り上げて、この一瞬一瞬を決定していっているからでございまして、男女共同参画による政策の決定というのはこのイメージだと私は思っております。
  95. 水野磯子

    水野参考人 今、環境問題が本当に地球的規模で問われていると思いますが、先ほど来参考人の皆様方もおっしゃってみえますように、本当にこのままほっておいたら、人類的危機は確実に来てしまうと思います。そういう点で、共生、つまり地球が本当に自然が残されて生きていける、人間が本当に人間らしく生きていける社会ということが非常に座らなければいけないと思っております。  特に、身近なことで申し上げますと、やはり日本は男社会だと思います、あらゆる生活場面で、企業の働く現場におきましても。ですから、子育てとさっきおっしゃいましたけれども、すばらしい仕事というか、本当にすばらしいことだと思います。もっと男性が人として、お互いに家庭を築いていく上で育てる立場にもっと座れるような、そういう社会環境が早急に望まれるのではないのかな。育児休業がとれないという現状を踏まえれば、一層そのことの感が深いです。  以上です。
  96. 笹木竜三

    ○笹木委員 もう一点お伺いしたいわけですけれども、例えば法案の四条、社会における制度慣行について、あるいは法案の六条、家族あるいは家庭生活についての条項があります。社会における制度慣行が、男女の共同参画社会形成を阻害する要因となるおそれ、これは当然あると思います。そういった点、あるいは家族、家庭生活、これも当該活動以外、家庭生活の活動以外の活動をスムーズに行う、そこで活躍することを阻害するおそれがあるという前提での条項だと思います。これもそのとおりだと思います。そういう面も非常にたくさんあると思います。  しかし、ここでもう一点確認をさせていただきたいのは、ここしばらくの、この数年のいろいろな動きを見てみますと、よくグローバルスタンダードという言葉がはやりで、しょっちゅう使われます。例えば国の財政計算においても、あるいは国の財政を見るに当たっても、資産のことについてはほとんど外に出していない。企業並みにバランスシートをつくる、これは私も法案を出して一緒に頑張っておりますけれども、しかし、いろいろ吟味をしていきますと、あるいは金融での改革、これも欧米に比べておくれている、それに並ぶのだということで改革をしてきたわけですけれども、案外、一番お人よしで、一番文化的なもの、制度的なもの、プラス面も含めまして、根こそぎにしている面もあります。  そういった点で、確認をしたいわけですけれども、社会における制度慣行、条項にあるような部分は確かにある。それも意識はしておりますけれども、例えば日本の社会、将来的に、構成員が民族的に単一性を非常に保ちにくくなるというのはわかっておりますけれども、社会における制度慣行、これのプラス面、日本においての社会制度面のプラス面、逆にこれをどういうふうに認識をされておられるのか。ここが非常に足りないから、いろいろな面で他国の戦略にかかわっている面もあると思います。これが一点です。  もう一つは、経済がグローバル化すればするほど、家族とか地域というのは、金を超えた価値、そういったものをはぐくむ非常に大事な一つの場になる、拠点になるとも考えております。そういった家族生活での積極的な面、これをどう位置づけられておられるのか、それを一言ずつお答えいただければありがたいと思います。  この点がむしろ、男女共同参画社会が進むことが男社会がさらに広がることを防ぐことにもなる、その点をしっかり認識しておくことがそれを防ぐことになる、そう考えております。お願いします。
  97. 二田孝治

    二田委員長 参考人各自の発言を簡潔にお願いします。
  98. 住田裕子

    住田参考人 ちょっと御質問の趣旨を誤解していたら失礼ですので、簡単に申し上げます。  まず、日本の社会慣行のよさといいますのは、私は、恐らく日本民族、大和民族の一つのよさがあると思っております。これは外国に旅行しても思いますけれども、非常に安全であるということ、そしてそれぞれの方々が非常に正直でいらっしゃるということ、そういうことがいろいろな制度でも性善説に立った上で動いてきたわけですし、ある意味では、統制のとれた民族であるとも思っております。一つの一枚岩になって一つの目的に行き進む、そういうときの強さというのははかり知れないものがあると思っております。  ただ、ここまで来ますと、それが逆にマイナスの面を持ってくることも事実でありまして、それがどういうところで一つずつ生まれてきているか。今まではよかったはずであるのに、これからはそれでいいのだろうかということを問い直すのが、この二十世紀最後の、男女共同参画社会一つの契機として、考え直す視点になればいいなというふうに考えております。  家族の問題についても同様でございます。
  99. 中下裕子

    中下参考人 私は、日本のよさというのは、やはり教育レベルが全体として極めて高いというところにあると思います。そういう意味では、意識が変革していけば、必要な変革が大きくなし遂げられる可能性というのを日本は秘めているというふうに思っております。  ですけれども、そのためにも、やはり一人一人の個性がきちっと尊重されて、いろいろな役割、いわゆる社会的な観念にとらわれないで一人一人の能力が発揮できるような社会実現。それが、実際には家族というものを、私は実は今離婚事件とかいろいろやっておりまして、やはりこれは崩壊してきているということを非常に目の当たりにしております。そういう意味でも、共同参画、一人一人の個性が尊重されて、よいパートナーシップが形成されていくようなものがないと、家族のよさというものが本当に発揮できないのじゃないかというふうに思っておりまして、ぜひ、共同参画の観念、観点を進めていただきたいというふうに思っております。
  100. 樋口恵子

    樋口参考人 文化とか伝統というとき、私たちは、やはり峻別していかなければならないと思っております。  文化、伝統、大変大事なものでございますけれども、習慣となりますと、そこには因習も含まれております。歴史の中には、受け継ぐべき伝統、それから、私たちの時代の意識とともにそれを見分けて決別を告げるべき因習、それから、余りにも新しい事態になってきたので、高齢化なんというのはそれだと思うのですけれども、家族が構造的に変わりました、人口構成も変わりました。そこで、よい家族をつくるためにはどんなシステムが必要か、社会的支えが必要かということで、私たちは、例えば地域社会において、社会において老いを支え合うというようなことを含めて、今二〇〇〇年世紀を前に新しい伝統をつくり出そうとしているのだと思っております。
  101. 水野磯子

    水野参考人 私は、今、子育てという視点から、皆様方と御一緒に悩み、話し合いを進めているわけですけれども、本当に孤独なんですね。  翻って、私たちの母の時代あるいはおばあちゃんの時代ということを見てみましたときに、村で子育て、村じゅうで子育て。例えば、一人の子供のお母さんあるいは家庭が、赤ちゃんは生まれたけれども本当に育てる条件整備がないという中では、村の皆様方が話し合って、この子をどうするのだということで、道に置きながらとか、そうしたらだれかが、天に授かったではありませんけれども、拾って育てる、我が子として育てるということ。つまり、村の中での子育て、ライフラインといいましょうか、そういうものが日本の社会の中に息づいていたと思います。  しかし、今はどうでしょう。白壁の本当に狭い部屋の中で、一人のお母さんと一人の子供という非常に孤独な、ややもすると、この子要らないという、たたいてしまうという、本当に悲惨なことにも相つながるような行動になってしまう。そういうことの中で思いますのに、本当に少子化に相なるわけですが、子育てをみんなでという、いわゆる女性あるいは社会、地域社会の中で、私流に言いますれば、かつてのようなそういうライフラインの構築が今様でつくられることが大切ではないかと思っております。  以上でございます。
  102. 笹木竜三

    ○笹木委員 どうもありがとうございます。私もこれからさらに勉強したいと思います。  よく言われる、アメリカとかヨーロッパが非常に自国の歴史あるいは文化のプラス面を意識しながらいろいろな革新を行っている、新しい価値を生み出している、我々もさらにそのことを意識しないといけないな、私もさらに勉強していきたいな、そう思っております。  きょうは、どうもありがとうございます。
  103. 二田孝治

    二田委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人方々には、貴重な御意見を述べていただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。      ————◇—————
  104. 二田孝治

    二田委員長 この際、御報告いたします。  去る五月二十一日、調査局長に命じました公益法人運営実態に関する予備的調査につきまして、昨九日、報告書が提出されましたので、御報告いたします。  なお、報告書につきましては、同日、私から議長に対し、その写しを提出いたしました。  次回は、明十一日金曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時十八分散会