運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1999-03-09 第145回国会 衆議院 内閣委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年三月九日(火曜日)     午前十時三十分開議   出席委員    委員長 二田 孝治君    理事 植竹 繁雄君 理事 小此木八郎君    理事 小林 興起君 理事 萩野 浩基君    理事 北村 哲男君 理事 佐々木秀典君    理事 河合 正智君 理事 三沢  淳君       越智 伊平君    佐藤 信二君       田中 和徳君    谷川 和穗君       近岡理一郎君    虎島 和夫君       桧田  仁君    平沢 勝栄君       堀内 光雄君    矢上 雅義君       鹿野 道彦君    河村たかし君       山元  勉君    石田幸四郎君       倉田 栄喜君    鰐淵 俊之君       瀬古由起子君    中路 雅弘君       深田  肇君  出席国務大臣         国務大臣         (内閣官房長官         )       野中 広務君         国務大臣         (総務庁長官) 太田 誠一君  出席政府委員         内閣総理大臣官         房審議官    佐藤 正紀君         総務庁長官官房         長       菊池 光興君         総務庁恩給局長 桑原  博君         厚生省社会・援         護局長     炭谷  茂君  委員外出席者         外務大臣官房審         議官      安藤 裕康君         内閣委員会専門         員       新倉 紀一君 委員の異動 三月九日  辞任         補欠選任   武藤 嘉文君     田中 和徳君 同日  辞任         補欠選任   田中 和徳君     武藤 嘉文君 三月四日  恩給法等の一部を改正する法律案内閣提出第二号) 二月十九日  非核原則法制定に関する請願中島武敏紹介)(第六一八号)  戦争被害に関する調査会設置法早期制定に関する請願前島秀行紹介)(第六五二号) 同月二十五日  男女共同参画社会基本法早期制定に関する請願小坂憲次紹介)(第九〇九号)  同(村井仁紹介)(第九一〇号) 三月五日  非核原則法制定に関する請願横光克彦紹介)(第九五四号)  男女共同参画社会基本法早期制定に関する請願小川元紹介)(第九九一号)  恩給法第八十条改正に関する請願土肥隆一紹介)(第一〇〇八号)  戦争被害に関する調査会設置法早期制定に関する請願若松謙維君紹介)(第一〇六八号) は本委員会に付託された。 二月十六日  実効性ある情報公開法早期制定に関する陳情書(第一号)  男女共同参画社会基本法制定に関する陳情書外三件(第三号)  十二月十日を人権の日として祝日にすることに関する陳情書(第四号)  国際高齢者年に関する陳情書外一件(第五号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  恩給法等の一部を改正する法律案内閣提出第二号)     午前十時三十分開議      ――――◇―――――
  2. 二田孝治

    二田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出恩給法等の一部を改正する法律案議題といたします。  趣旨説明を聴取いたします。太田総務庁長官。     ―――――――――――――  恩給法等の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  3. 太田誠一

    太田国務大臣 恩給法等の一部を改正する法律案提案理由説明をさせていただきます。  ただいま議題となりました恩給法等の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  この法律案は、最近の経済情勢等にかんがみ、恩給年額及び各種加算額増額すること等により、恩給受給者に対する処遇改善を図ろうとするものであります。  次に、この法律案概要について御説明申し上げます。  この法律案による措置の第一点は、恩給年額増額であります。  これは、平成十年における公務員給与の改定、消費者物価動向その他の諸事情を総合勘案し、平成十一年四月分から、恩給年額を〇・七%引き上げようとするものであります。  第二点は、傷病者遺族特別年金及び実在職年六年未満の者に係る普通扶助料最低保障額上積みであります。  これは、低額恩給改善を図るため、傷病者遺族特別年金については一千五百円、実在職年六年未満の者に係る普通扶助料最低保障額については千円の上積みを行おうとするものであります。  第三点は、遺族加算及び寡婦加算年額増額であります。  これは、遺族加算年額について、戦没者遺族等に対する処遇改善を図るため、平成十一年四月分から、公務関係扶助料に係るものにあっては十三万九千七百円に、傷病者遺族特別年金に係るものにあっては九万一千九百十円に、それぞれ引き上げるとともに、寡婦加算年額について、平成十一年四月分から、普通扶助料を受ける六十歳以上の妻または扶養遺族である子が一人ある妻に係るものにあっては十五万四千二百円等に引き上げようとするものであります。  第四点は、妻に係る扶養加給年額増額であります。  これは、傷病恩給受給者の妻に係る扶養加給年額を十九万三千二百円に引き上げようとするものであります。  第五点は、短期在職の旧軍人等仮定俸給改善であります。  これは、六十歳以上の短期在職の旧軍人に給する普通恩給またはその妻子に給する扶助料等について、老齢者寡婦等の優遇の趣旨により、平成十一年四月分から、その年額の計算の基礎となる仮定俸給の格付を一号俸引き上げようとするものであります。  以上が、この法律案提案理由及びその内容概要であります。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。
  4. 二田孝治

    二田委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     ―――――――――――――
  5. 二田孝治

    二田委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐々木秀典君。
  6. 佐々木秀典

    佐々木(秀)委員 民主党の佐々木秀典です。  恩給法に関連をして質問をさせていただきたいと思います。  まず初めに、恩給という制度ですけれども我が国では、随分古くからですけれども大正十二年に恩給法制定をされて、それが今日まで機能している。  もっとも戦後の一時期、これは一九四五年、昭和二十年、日本は第二次大戦に敗れたわけですけれども、その後GHQの指導、これはたしか一九四五年十一月にGHQが覚書を出しておりまして、軍人恩給については、軍人またはその遺族であることにより一般困窮者と差別して優遇される制度は好ましくないという指摘があって、それを受けて一九四六年の一月に軍人恩給が廃止をされた。その関係については、社会保険制度一般中に解消された。しかし、一九五二年、昭和二十七年四月二十八日にいわゆる講和条約が発効して、日本が主権を回復して後、直ちにまたこの軍人恩給は復活をされるというような経過があったわけです。  いずれにいたしましても、軍人恩給を含めて、恩給制度というのは大正十二年の恩給法に基づいているわけです。  ところで、恩給性格ですけれども支給者が国であることははっきりしているわけですけれども受給者はどういう人なのか。そして、支給者受給者法的関係というのはどういうことになるのか。言ってみれば、恩給受給権はどういう要件で発生するのかというそもそも論について、一応お尋ねをしておきたいと思います。
  7. 桑原博

    桑原政府委員 お答えいたします。  恩給性格でございますけれども恩給法には別段の規定がございません。ただ、恩給は、公務員が相当年限、忠実に勤務して退職した場合、公務による傷病のため退職した場合、または公務のために死亡した場合において、国が、公務員との特別な関係に基づきまして、使用者として公務員またはその遺族に給付するものでございます。公務員の退職または死亡後における生活の支えとなるものと解釈するのが相当だというふうに考えております。
  8. 佐々木秀典

    佐々木(秀)委員 ただいま、国と公務員との特別な関係というお話があった。この特別な関係というのは、法律的な性格としてはどういうように説明なさるのですか。特別な関係というだけではわからない。
  9. 桑原博

    桑原政府委員 それぞれの公務員についてはそれぞれの法律がございまして、公務員としての責務または義務、守るべきこと等々のことが記載されているわけでございます。それぞれの法律に基づいてその義務を忠実に果たしたという、果たすという、特別な国との関係、それを指して私どもは国と公務員との特別な関係というふうに考えております。  全部一律というふうにはない場合もあるかと存じます。
  10. 佐々木秀典

    佐々木(秀)委員 言ってみれば、軍人ども今度はこの後で入ってくるわけですけれども公務員に対しての特別な関係ということを考えると、国としては、どうも公務員、いわゆるお役人を民間人よりも偏重しているのではないかというふうな指摘もなされないではないようにも思われるわけですね。  それからもう一つは、本人だけではなしに、遺族にもこれが支給されるという法律的な性格は、これはどういうことなのですか。恩給受給権の相続という観点なのか、それともその公務員本人を支えてきた家族に対する慰労というような要素が加わっているのか、この辺の性格はどうなのでしょう、遺族にまで支給されるその根拠というか合理性ですね。
  11. 桑原博

    桑原政府委員 今の御質問に対しては、私どもも、特別これといった理由法律に書かれているということではなくて、従来から恩給の意義とか性格に関する学説等がいろいろございます。中には、恩恵という説もございますし、恩恵または保険料であるという説もございます。それから報酬の一部だという説もございます。  ただ、いずれにしろ、公務員というのは一般民間人たちに比べれば、特別に義務を課せられている。守秘義務も含め、しかもいろいろな命令の義務もございます。そういったものに対して、国として、万一のことがあった場合には、国家補償といったような性格も持った性格を有しているものとして位置づけられている。したがって、公務員公務のために命を落とされた場合については、その生活保障といったものも含めて、一種の国家補償的な性格を有しているものというふうに私ども考えております。
  12. 佐々木秀典

    佐々木(秀)委員 このような問題については、法理論的にも、またいろいろな社会的な要因を考えても、本来は議論のあるところだと私は思うのですけれども、きょうは余り時間もありませんから、この程度にしておいて、また機会を改めて時間の余裕のあるときにこのような論議をしていきたいと思うのです。  それによって、結局、恩給というもののあるべき姿といいますか機能というか、今まで随分大きな役割を果たしてきているのはわかるし、それからまた、大変な公費、国費が投入されていることもわかるわけですけれども、そのあり方の問題などについても考える必要が私はないわけではないと思っているのですが、とりあえずはこの程度にしておきたいと思います。  しかし、それにしても、今の恩給受給の権利に関連して、恩給法国籍条項というものを定めている。恩給法の第九条で年金恩給受給権消滅事項という規定がございますが、この第三号に「国籍失ヒタルトキ」というのがある。これがいわゆる国籍条項と言われていて、日本国籍を有しない者についてはこの適用がないことになっている。  これは、恩給だけではなしに、その後、第二次大戦後に、いわゆる戦争犠牲者に対する戦後補償としてさまざまな法律がつくられておりますけれども、そういう法律についてもやはりこの受給資格の点で国籍要件がかかっているのが多いというか、ほとんどであるわけですね。  国籍条項我が国恩給法制定当初から置いているということの意味、これについて御説明いただきたいと思います。
  13. 桑原博

    桑原政府委員 先生指摘のように、恩給法においては、大正十二年の法律制定以来、日本国籍の保持を恩給受給権の付与または存続の要件としております。このことは公務員年金制度としての我が国恩給制度の沿革及び性格に由来するものでございまして、制度創設以来今日に至るまでの恩給制度の基本的な約束事といったものの一つというふうに考えております。
  14. 佐々木秀典

    佐々木(秀)委員 約束事、ちょっとよくわからない、どうしてこの規定を置いたかということの合理性がよくわからないのです。  言ってみれば、先ほどお話があったように、公務員として国のためにというか、国の仕事を通じて国民全体のために尽くした人々に対する慰労ないしは生活保障というような意味合いを持っているということになるんだと思うのですけれども、そうだとすれば、その後に日本国籍をさまざまな理由で失うことになっても、かつて日本国籍を有して、公務員として、あるいは軍人などとして働いたという事実はあるわけですね。  そういう功労のあった人にも、やはり国としては御苦労さまでしたということで金銭の支給をするということは、私はあっても不思議ではないことだと思うのに、なお日本国籍を失ったということが欠格事由になるというのは、どうも制度趣旨からすると合わないのではないか、そごする面があるのではないかと思われるのだけれども、その辺はどういうように合理的な説明をなさっているのか、あるいは納得されておられるのか。それはどうなんですか。
  15. 桑原博

    桑原政府委員 大変難しいところでございまして、ただ、恩給法ができた当時の公務員という考え方は、現在でも公務員のかなりの部分には国籍要件というのを入れてございますけれども、当然、日本の中で公務員として働く者について国籍要件を問うというのは、非常にその当時とすればもっともな考え方であったろうというふうに思います。  それと、その後、そういう国籍というものについて、そう簡単に移動のあるべき性格のものではなかろうということがその当時想定されたのではなかろうかというふうには思います。  ただ、一番最初に、公務員になって年金を受けるというところまで一つ約束事として組み入れる中にそういう条件がついていたということで、先ほど私は恩給制度というものの中の一つ約束事、当初から公務員になるときから一つ約束事として入っているというふうに申し上げたわけでございます。
  16. 佐々木秀典

    佐々木(秀)委員 時間が限られておりますので、先に進みたいと思います。  そこで、私が特にきょうお聞きをしたいのは、たしか一九八二年の六月の三日に、外務省は諸外国、特にアメリカイギリスフランスイタリア、ドイツについて、その当時は西ドイツですけれども戦争後、参加した植民地出身者などに対して戦後補償がどうなっているかという調査をされたと聞いております。  その結果、これらの国では、程度に多少の違いはあるにしても、旧植民地出身者外国人であって、その当該国軍人として働いた人々に対しては、内国人と同様に補償しているという報告が出ていると承知をしておりますけれども外務省はこういう調査をしたことはございますか、報告を出したこと。
  17. 安藤裕康

    安藤説明員 お答え申し上げます。  先生指摘のとおり、一九八二年当時、国会の渡辺議員米沢議員等からの要請に基づきまして、外務省欧米諸国において、かつて軍人軍属として従軍し戦死戦傷した旧植民地あるいは旧領土の住民に対して何らかの補償措置を講じているかどうかについて調査をした経緯はございます。  その結果でございますが、まず年金等支給有無につきましては、アメリカイギリスフランスイタリア及び西独は、外国人兵士等に対し、年金または一時金を支給しておりました。ただし、各国ともにそれぞれ国内根拠法令を有していたということと、もう一つは、今先生からも御指摘がございましたけれども支給している年金等の金額あるいは種類につきましては、自国民に対し支給しているものよりも少なく、あるいは、取り扱い上差異がある国もあったというふうに承知しております。
  18. 佐々木秀典

    佐々木(秀)委員 今お聞きをしましたように、程度の差はあるにしても、基本的には、外国人であっても、国籍を持っているかどうかの有無にかかわらず、内国人と同一の考えに基づいて補償しているというのが外国の態度なのです。これに比べて、日本の場合には非常に厳しいわけですね。国籍条項が働いている。  特に問題なのは、さっき申し上げましたように、御案内のように、日本朝鮮半島、それから台湾、これを植民地化して、それで、特に朝鮮については、いわゆる創氏改名というようなことで名前まで日本名にさせる、日本語を使うことを強制するというようなことで、日本臣民として扱った。戦争が激しくなると、最初のうちはどうもこの人たち軍人にすることはしなかったようですけれども、恐らく戦争が始まった三年目ぐらいからだろうと思いますが、いよいよ兵力も払底してきて、その補充として朝鮮方々日本人として徴兵する、そしてこの人たち戦争に駆り立てるということをやった。その結果、命を失ったりあるいは重傷を負ったりした人たちが相当な数に上っている。これは後で、数字がわかっているんだったらお聞きしたいんです。  こういう方々は、自分意思にかかわらず、日本国籍を持たされていたわけです。ところが、そのまま日本国籍を持っているんだとすれば、恩給適用もそれから後で出てくる戦後補償各立法についても当然適用対象になるんだろうと私は思うんだけれども、この国籍条項がひっかかっている。そして、昭和二十七年、講和条約の発効とともに、この日を期して旧植民地出身者日本国籍は剥奪してしまったわけです。外国人としてしまった。これは、この人たち意思を問うてやったわけではない。  さっきの恩給局長お話だと、国籍条項がありますけれども、これはむしろ自分意思日本国籍を離れた人については、恩給受給資格をなくする、そのことは自認しているということも言えるんだろうと思うんだけれども、しかしこの朝鮮方々あるいは台湾方々の場合は違うわけです。自分意思と全く関係なしに、制度的に、一方的にこの資格を剥奪されて、そしてこの恩給法についてもその他の戦後補償法律関係についても受給対象から外されているということは、今の外国の例から見ると、私はどうも納得がいかないのではないかと思うんです。  これについては、実は昨年ですけれども平成十年の六月、全国の主要都道府県民生主管部長連絡協議会というのが広島で行われまして、そこで政府、各省庁に対して要望書が出ているわけです。  その要望書というのは、戦傷病者戦没者遺族等援護法、これは恩給法そのものではないけれども恩給法に関連して、ここから出てきているものです。「戦傷病者戦没者遺族等援護法における国籍条項戸籍条項の撤廃又はこれに代わる補償制度創設について」の要望。この法律についても、国籍条項戸籍条項が設けられているために、これを持っていない旧日本軍軍人軍属戦死傷者とその遺族補償の給付を受けられない状況にある。特に在日外国人については、同法制定当時その解決が予定されていたが、その後の政府間協定締結等によっても何ら補償を受けられない状況となっている。ついては、これら在日外国人救済するための適切な措置を講じられたいという要望があるわけです。  それから、この種の人々から日本裁判所に対して、幾つ幾つもの裁判が出ています。その中で、例えば、一九九五年、平成七年ですけれども、元日本軍人として第二次大戦に参戦して、片腕を失ったという大変な重傷を負った人ですが、韓国人金成壽さんという方、この方は在日じゃありませんけれども、この方が恩給請求棄却処分取り消し恩給請求したんだけれどもけられた、その処分取り消しを求めて東京地方裁判所に訴えを起こしたんです。  これについて、実は去年の七月三十一日に東京地裁判決を出しました。この判決では、金さんの請求自体は棄却しているんですけれども、その理由の中で、原告が日本人とは著しい格差のあるということを指摘した上で、何らかの補償救済措置が望ましい、立法的に解決されるべき問題だ、こういうように述べているわけです。  ほかにも、同種の事件で、請求は棄却したけれども、同じように立法的な措置あるいは行政的な解決の方策を求めるという意見を述べている判決というのは、随分たくさんあるわけです。  こういうようなこと、先ほどの部長連絡協議会要望書などともあわせて、政府としてはこうしたことについて、つまり救済の外に置かれている人たちについて何らかの措置を講じなくてもいいのかどうか、この辺について御感想を含めてお聞きしたいと思うんですけれども、これは総務庁長官官房長官、手短にそれぞれからお答えをいただければありがたいと思います。
  19. 太田誠一

    太田国務大臣 今の国籍条項に関連することでございますけれども、これまで国籍条項について、憲法の十四条に反するのではないかとかあるいは国連人権B規約の二十六条に反するのではないか、そういうふうな御指摘がなされてきたということは承知をいたしておりますけれども国籍条項そのもの憲法に反しているということではなくて、諸外国の例を見ても、そのことが各国によって、国籍条項がある国とない国と半々ぐらいに、アングロサクソンの二つの国は国籍条項がない、あと、独、仏、伊はあるということで、他の方法でもって対応しているということでございます。  ですから、憲法違反であるかどうかということになれば、今の国籍条項憲法違反でないということでございます。それにのっとって恩給法がずっとやってきておるものでございますから、この枠の中で何か考えることはできないのかということに対しては、これはなかなか難しいということだろうと思うんですね。  もう少し広い視野で考えることはできないかなということは、私も議員としては考えるところでございます。総務庁長官としては、この枠の中で仕事をしている立場では、なかなか思い至らないということでございます。
  20. 佐々木秀典

    佐々木(秀)委員 官房長官にもお答えいただきたいんですが、今、個人としては、議員としてはとおっしゃった。これは、ひとつ突っ込んで、やはり総務庁長官としてお考えいただきたいと私は思うんです。  さっき言ったように、裁判所からもいろいろ促しの意見が出ているんですね。加えて、今もお話がありましたけれども国連規約人権委員会では、一九九三年十一月四日、日本政府第三回の報告書審議後の意見で、朝鮮半島台湾出身者で、旧日本軍に従軍したが現在日本国籍を有していない者が恩給等において差別されていると指摘した。去年の十一月の五日、日本政府第四回の報告書審議の後の最終意見でも、これらの点が改まっていないではないかという指摘がなされているんです。  こういうような国際関係動向というものを、他国とも比較してのことですけれども、やはり日本政府としては重く受けとめていただいて、本当だったら、この国籍条項を撤廃すればこれは解決しちゃうんです。だけれども、これが難しいとすれば、何らかの別な措置をとるお考えはあるのかどうか。  例えば、官房長官案内のように、従軍慰安婦方々については政府の肝いりで、これは民間の協力を得ながらですけれども、いわゆるアジア女性基金制度というのをつくった。これが十全に機能しているかどうかということについては問題があるようにも言われていますけれども、例えばこうした方法、便法による解決ということだって考えられないではない。  何にしても、私は、この救済の外に置かれ、あるいは特に在日朝鮮韓国人の方でこの救済のはざまにおられる方というのは、見逃しにできない国際的な問題だろう、あるいは人権問題だろうと考えております。官房長官、この辺についてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  21. 野中広務

    野中国務大臣 佐々木委員からそれぞれ、我が国の戦後処理の一環として残されておる問題について御指摘がございました。ただいま政府委員並びに総務庁長官からお答えをいたしましたけれども大正十二年の恩給法を背景といたしましたまま、戦後のそれぞれの問題を処理した側面がなしとしません。  もう一つは、日韓請求権・経済協力協定におきまして、国家と国家の補償で問題を片づけて、個人的問題は自国内の問題として処理をした。そのときに、在日韓国人方々についての処理を双方とも明確にしないまま今日に及んできた。  したがって、韓国にいらっしゃいます旧日本軍等に参加をされた方には一定の措置が韓国政府において行われましたけれども在日韓国人の皆さん方には措置がされておらないという経過でやってまいりました。まして在日朝鮮人の方は、よりその枠から疎外をされ、国交が樹立されておりませんから、そのままになっておるわけでございます。  委員が先ほど来御指摘になりましたように、サンフランシスコ条約によって、みずからの意思に基づかずに日本国民たる権利を剥奪をされたわけでございまして、それだけに、重い戦後処理を私どもは背負っておるという認識に立っておるわけでございます。  法律で経過をしてきた経過は経過として、一九九九年という一九〇〇年代の最後の年に当たって、果たしてこういう問題を積み残したまま、いいのかどうか。あるいは、先ほど裁判所の所見として申されました、この訴人の訴訟をそのまま受け入れることはできないけれども、この人たちに何らかの救済的配慮があっていいのではないかという裁判所の御提起等も考えますときに、私どもは、今までの経過は経過といたしましても、人道的、国際的な戦後処理の問題をこの一九〇〇年代を締めくくる年において考えるべきではなかろうかと考え、内閣においても、この問題に前向きに対処する協議をやっていきたいと思っておる次第であります。
  22. 佐々木秀典

    佐々木(秀)委員 ただいまの官房長官お話は、事柄の本質を正確に理解されていることだと思います。この点については敬意を表したいと思いますけれども、もう二十一世紀を目前にして、戦後五十年以上を経た今、私は、まだ戦後は終わっておらないということを、つくづくこの問題を通じて考えざるを得ません。  今もお話しのように、一番気の毒なのは在日の韓国・朝鮮人の方々だと思うのですね。全く救済の外に置かれております。  しかし、先ほど指摘をいたしました、私が例示として出しました恩給訴訟、この方は在韓の方なんですね。在韓の方でも、やはりまだそういう救済措置は十分じゃない、日本政府として責任をとってもらいたいということで裁判をやっているわけですからね。しかも、この方々というのは、みんなもう老齢化しております。  日本人に対しては、いろいろな意味で、この戦後補償問題というのは非常に手厚くなっているし、拡大をされてきていると私は思うのです。それだけに、自分意思によらないで他国のために軍人として働かされ、あるいは軍属として働かされ、そのために大変な苦労をした。命を失い、あるいは体を傷つかせた。それなのに、おまえさんはもう外国人だよということでほっておかれるというのは、私は、人道的に見ても全くこれは認めがたいことだ、このままにしておけないことではないかと思うのですね。日本としても恥ずかしいことだと思うのです。  どうか、いろいろな苦労があるのはわかりますけれども、私どもとしても知恵を絞りたいと思いますので、政府としても今世紀中にこれらの問題に決着がつけられるように工夫、努力をされたい。  そのことを特に要望し、またその点についてはいろいろと協議をさせていただきたいということを申し上げて、一応質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  23. 二田孝治

    二田委員長 次に、河合正智君。
  24. 河合正智

    ○河合委員 公明党の河合正智でございます。  佐々木先生が、在韓の方につきます裁判例のことについて御質問されましたけれども、私は、東京高裁の昨年九月二十九日判決を中心にお伺いさせていただきたいと存じます。これは、御案内のように、在日韓国人の元日本軍属障害年金訴訟控訴審判決でございます。  若干経緯を御説明させていただきますと、朝鮮半島出身者で日本軍属、日本軍人として戦争に従事された方々は、サンフランシスコ平和条約で日本朝鮮の独立を承認したことから日本国籍を喪失しましたけれども、同条約におきまして、朝鮮半島等の分離独立地域の住民等の財産請求権の問題につきましては、関係国間の特別取り決めの主題とされました。日本と韓国との間には、右特別取り決めの一つとして、昭和四十年に日韓請求権協定が締結されまして、右経済協力により導入されました資金によりまして、韓国政府が自国民の対日民間請求権につきまして一定の補償をいたしましたけれども在日日本においでになる韓国の方につきましては、これらの補償対象者から除外されたわけでございます。  したがいまして、恩給法また援護法には、それぞれ日本国籍を喪失した場合等を失権事由として定めておりますし、援護法につきましては、この裁判例で争われましたように、附則に定められている戸籍条項がございます。したがいまして、在日韓国人につきましては、現に、いずれの国からも補償を受けられないという現実があるわけでございます。  そこでお伺いさせていただきますが、恩給法に係る国籍要件訴訟につきまして、現在係争中のもの、何件ですか。また、戦傷病者戦没者遺族等援護法に係る国籍要件をめぐる係争中のものは何件ですか。それぞれお答えをいただきたいと存じます。
  25. 炭谷茂

    ○炭谷政府委員 まず、援護法関係について御説明いたしますと、現在、三件ございます。
  26. 桑原博

    桑原政府委員 お答えいたします。  必ずしも全部が恩給というわけではございません。国籍条項をめぐって出ている案件というのは、私どもが関与している訴訟の中で九件ございます。
  27. 河合正智

    ○河合委員 ありがとうございます。  この高裁判決は、結果としては国側が勝訴しておりますけれども、実はこの判決は、裁判所の所見を付言として申し述べております。  そこを、ちょっと長くなりますけれども、引用させていただきたいと思います。  援護法が外国人をその対象から除外したのは、外国人に対しては賠償問題として考慮するべき筋であるとの思想からでもあったとしても、在日韓国人は、日本国籍を有し、日本軍人軍属として戦争に従事したもので、援護法の適用開始時においては日本国籍を有していたと解される。その立場は日本国籍を有する者に近いものであったというべきであって、戦争の相手に属する外国人と同様の賠償問題とするよりは、日本国籍を有する者に準じて処理する方が実態に即してより適切であると言える。援護法が、軍人軍属であった者またはその遺族に対する生活援助法的側面をも有するものであるとしても、在日韓国人の右のような立場及び現に日本において居住していること等を考慮して、三点にわたりまして付言をいたしております。  一つは、日韓両国の外交交渉を通じて、日韓請求権協定の解釈の相違を解消し、適切な対応を図る努力をすべきであると申しております。  この問題につきまして、ちなみに日韓請求権協定によりますと、第三条第一項、これによって解決できない場合は、同条二項ないし四項によりまして、仲裁委員会を設置すると規定されているところでございます。  ちなみに、この原告、石さんそれから亡くなりました陳さんは、現に一審判決後、韓国政府に対しまして、日本政府に対する仲裁要請を求める請願書を提出しているところでございます。  これに対しまして外務省はどのようにお取り組みになられるおつもりか、お答えいただきたいと存じます。
  28. 安藤裕康

    安藤説明員 お答え申し上げます。  日韓両国及び両国民間の財産請求権の問題は、在日韓国人に係るものも含めまして、ただいま先生指摘の日韓請求権・経済協力協定によりまして、完全かつ最終的に解決済みであるというのが私どもの立場でございまして、これを韓国側との外交交渉によって解決すべき問題とは現時点では考えておりません。  ただ、先生指摘のように、昨年九月の東京高裁の判決で、先ほど先生が述べられましたような意見が付されているということは、私どもも十分承知しております。
  29. 河合正智

    ○河合委員 次に、この判決は、付言の第二といたしまして、援護法の国籍条項及び援護法の附則を改廃して、在日韓国人にも同法適用の道を開くなどの立法をすべきであると述べておりますけれども恩給法国籍条項を改廃する用意があるかどうか、また援護法の国籍条項及び附則戸籍条項を改廃する用意があるかどうか、その件につきまして、総務庁長官及び厚生省にお伺いさせていただきます。佐々木先生質問と重なりますので、簡潔で結構でございます。
  30. 太田誠一

    太田国務大臣 ただいま、恩給法そのものを途中で変えるということは、多分、約束事でありますので、さまざまな問題が起きてくると思うわけであります。ですから、恩給法とは別のことをもし、先ほど総務庁長官としては、つまり、その法律に基づいて仕事をしている者として、その法律を変えるというのはなかなか申し上げにくいと申し上げたわけでありますけれども、要するに、国務大臣としては、当然内閣が提案権を持っておるわけでございますから、よく関係各大臣と相談をしてそこは考えてまいりたいと思います。
  31. 河合正智

    ○河合委員 それでは、恩給法に限って先にちょっとお伺いさせていただきます。  現実に起きてしまったこの問題について解決する、そのための特例法といたしまして、日本国との平和条約に基づき日本国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法というのが平成三年に制定されておりますけれども、そこで定められております特別永住者、この方たちに対して、恩給法適用につきましては内国民待遇されるべきであるとする特例法を仮に考えるとしたら、それについて総務庁長官は、今の総務庁長官の思想に合致すると私は思いますが、どのようにお考えになりますでしょうか。
  32. 桑原博

    桑原政府委員 先ほど大臣から御説明したとおり、恩給法については長いことこういう制度でやってまいりました。これから新たに資格要件を取る方々が出てこないという一つ制度としての宿命を負っております。  ただ、長い間こういう制度でやってきた過去の問題もございますので、この恩給制度の枠内で特例法をとって処理をするというのは、技術的には大変難しいことかというふうに思います。先ほど大臣申し上げたとおり、恩給法の枠内という観点ではなかなか理論が立ちにくいし、過去とのバランスといったような問題もあろうかというふうに考えております。
  33. 河合正智

    ○河合委員 御案内のように、今、日本政府のとっております態度は、国籍条項等に関しましては、恩給法と援護法と同じ考え方をとっておられると私は存じております。したがいまして、この同じ問題、国籍要件につきまして、国籍条項を改廃する用意があるかどうかという点と、特例法をつくって対処することについてどのように考えるかにつきまして、厚生省のお考えをお伺いしたいと思います。
  34. 炭谷茂

    ○炭谷政府委員 援護法の国籍要件につきましては、我が国の戦後処理の基本的な枠組みを背景として、先ほど来御説明のございます恩給法国籍要件に準拠して設けられているものでございます。韓国の方々に対する補償の問題は、昭和四十年の日韓請求権・経済協力協定によって、在日韓国人を含めて、法的に完全かつ最終的に解決済みとなっていると承知いたしているわけでございます。したがいまして、援護法の枠内で国籍要件を見直したり、また先生案内の特例法をつくるという、援護法の枠内ではなかなか難しい問題だろうというふうに思っております。
  35. 河合正智

    ○河合委員 さらに、先ほど私が申し上げました高裁判決の付言の第三の提言でございますけれども、「在日韓国人の戦傷病者についてこれに相応する行政上の特別措置を採ることが、強く望まれる。」と結んでいるところでございます。  そこで今、各省、総務庁長官からもお答えいただきましたように、現在の各省の段階ではいかんともしがたい、動かしがたいという答弁でございました。  そこで、官房長官にお伺いさせていただきたいと思うわけでございますが、この高裁判決の後、各社報道されておりますが、その中の代表的な報道としまして、朝日新聞の報道をお伝えさせていただきます。  九八年九月二十九日夕刊でございますが、戦争で右腕を失い、脳血栓で左半身が麻痺した石さん、七十六歳でございます。それから、亡くなってしまった陳さんの遺影を抱えたその奥さんとお子さん。この判決に対して、「車いすの石さんは、目を見開いたまま無言だった。」と報道されております。  私は、第二次大戦に対する官房長官の切々たる思いを本会議等でお聞きしているところでございます。  二十世紀というのは暴力と戦争の世紀だったと言われておりますけれども、この戦争によって引き起こされました悲惨な現実を解決して、先ほど長官がおっしゃいました平和の二十一世紀にバトンタッチしていくということは、私たち日本国民共通の願いでもあると思うところでございます。  政府の最も責任あるお立場にあられる長官といたしまして、この現実を政府としてどのように解決されようとされているのか。  ちなみに、台湾の方たちに対しましては、特定弔慰金という法律をつくって知恵を絞った歴史もございますし、また、公務員ではない日本赤十字社の従軍看護婦さんの処遇につきましては、やはり一九七八年八月三日の各党合意によって解決しているという、日本政府としてのにじむような努力の跡もあるわけでございますが、一九九九年という、節目ということをおっしゃいました官房長官の思いを込めて、ぜひともこれに対する政府のお考えをお聞かせいただきたいと存じます。
  36. 野中広務

    野中国務大臣 先ほどの佐々木委員、引き続いて、ただいま河合委員からの御指摘は、それぞれ、我が国が、法律事項は法律事項といたしましても、取り残してまいりました戦後処理の多くの問題の特徴的な問題であろうと思うわけでございます。  一方において、国際国家としてそれぞれ我が国は円借款やあるいはODA等で多大の貢献をしておるわけでございますけれども、その陰で、取り残された人的な傷跡を深刻に残しておるわけでございます。  ただいま政府委員がお答えをいたしましたように、現行の恩給法あるいは援護法等でとても解決はつかないと思うわけでございますけれども委員が御指摘になりましたように、かつて台湾住民に対する特例ともいうべき特定弔慰金が議員立法において行われた経過もあるわけでございます。これと同じようにというわけにもいかないかもわかりませんけれども、しかし、新しい世紀を迎えるに当たって、やはり何としてもこういう問題を処理しておかなくてはいけないという私は使命感のようなものを持っておるものでございます。  どの程度にやることが、また新たなる矛盾を生むことになるかもわかりません。そして、特に韓国の方々は、日韓請求権・経済協力協定によって個人補償をしないということで、韓国政府において、かつて日本軍人軍属であった人たちに対する措置がされたわけでございます。けれども、それが、先ほど申し上げましたように、在日人たちに及ばなかったという問題点を残しておるわけでございますので、この問題につきましては、日韓両国でまた話し合いをしなければなりませんし、また、その額によって在韓のかつての人たちの不満をまた惹起することになってもいけないわけでございます。  さような万般の問題を考えながら、なお我々は、今この世紀末にどういう措置をしておくことが多くの国の人たちの気持ちを和らげ、そしてお互いにこの一九〇〇年代、二十世紀を締めくくるに当たって、新しい世紀への道につないでいける我々の責任というものが果たせるかということを考えまして、それぞれ、委員の御指摘のありましたような問題を含め、あるいは東京高裁の求められておる所見に基づきながら、私どもとして検討をさせていただくことをお答えとして申し上げておきます。
  37. 河合正智

    ○河合委員 誠実な御答弁に感謝申し上げます。ぜひともこの点につきましては実現をしていただきますことを切望いたしまして、質問とさせていただきます。  ありがとうございました。
  38. 二田孝治

    二田委員長 次に、中路雅弘君。
  39. 中路雅弘

    ○中路委員 恩給法改正の審議でありますから、最初に一問だけ、法案についてお聞きしておきます。  先ほど説明がありましたように、今度の恩給年額の〇・七%の引き上げは、昨年の公務員給与の改定平均、行(一)で〇・七二%と物価上昇率の見込みの〇・六%を総合勘案したものでありますけれども公務員給与の改定率を下回っておりますし、これまで最低だった九六年の〇・七五%もさらに下回る、今まで最低の改定率だと思います。  この間、消費税率も引き上げられていますし、高齢者、寡婦の恩給受給者にとって相当な負担増に今なっていると思いますが、実際の恩給受給者生活実態をどのように把握されているのか、また支給の平均年額はどれぐらいになるのか、一言、簡潔にお答え願いたいと思います。
  40. 桑原博

    桑原政府委員 ただいま先生指摘のように、今回のベア率は大変低いわけでございます。  恩給受給者生活実態でございますが、私どももその全体を把握しているわけではございません。恩給受給の面からのデータを集めているところでございますが、恩給受給者であっても、社会保障その他の施策の適用外ということではございません、適用になっております。  なお、恩給のみで生活をしている受給者は大変少数でございまして、ほかに何らかの収入を得て生活をしているといった実態にございます。したがって、国といたしましては、政策の全体をもって総合的に判断すべきものというふうに考えております。
  41. 中路雅弘

    ○中路委員 平均月額も大変低いわけですから、年額六十万前後になるんじゃないですか、引き続いて、私は、恩給年額改善の問題や、特に最低保障額の引き上げについては努力していただきたいということを最初にお願い申し上げておきます。  きょうは、私が取り上げたいのは、一つは、この委員会でもこれまでたびたび論議されています元日赤従軍看護婦の問題であります。  これは私が、一九七五年、もう二十六、七年前ですか、この内閣委員会最初に取り上げまして以来、その年の十一月に恩給委員会ができまして、当時の自民党加藤紘一さんと社会党の岩垂さんと私と三名が小委員で、この問題を論議してきたわけであります。  私も、この問題について、取り上げるまでほとんど知識がありませんでした。当時、従軍看護婦の代表、上野さんという高知の方ですが、失明状態で、廊下も仲間に肩をしょわれて私の部屋に訴えに来られました。  いろいろお話を聞きまして、軍の命令で戦地に駆り出され、兵士と同じように戦火をくぐって、終戦後も長い抑留生活、戦後三十年、もう五十歳、六十歳になる、老後の不安が募る、給与も全部国債を買わされて、収容所で焼いたというようなお話も聞きまして、それから私、国会図書館に行って、このもとになっています明治四十三年の勅令、そして赤紙で召集された、当時の召集の令状を持っているかということでいただきまして、こうした問題をもとにして取り上げたのが一つきっかけになったと思います。  その後、何度か論議がありました。私は、恩給法の改正の修正案でどうかと提起したんですけれども対象公務員ではないのでこれは難しいという話もありまして、何らかの救済措置が必要だという論議が続いて、そして昭和五十三年、七八年の六党合意で今の慰労給付金ができたわけであります。  この六党合意の中ではこう書いてありますね。日赤従軍看護婦の処遇について、「恩給制度を準用し、戦地加算を考慮して、兵に準ずる処遇とする。」第二項ですね。第三項で「その財源はすべて国庫より支出する。」この準用とか準ずるというのも、当時小委員会で論議したんですよ。  御紹介しておきますと、当時私、広辞苑を持ち出したんですから、この準用というのは、広辞苑では、ある事項に関する法律を類似する他の事項に適用することだ。それから、準ずるというのは、ある基準を標準として同等な扱いにするということが広辞苑でも書かれているわけです。この趣旨でこの六党合意が当時つくられたわけですね。  そして、その後、この六党合意により七九年から支給が始まったわけですけれども最初にお聞きしますけれども、この慰労給付金の六党合意の性格、これは変わりはありませんか。
  42. 佐藤正紀

    佐藤(正)政府委員 お答え申し上げます。  旧日赤救護看護婦等に対します慰労給付金につきましては、兵役義務のない身で戦地において戦傷病者の看護に当たられたという長年の御労苦に報いるために、昭和五十三年八月、六党合意によりまして、加算年を含め十二年以上の方々支給することになったと承知しておるわけでございます。この慰労給付金につきましては、これらの看護婦の方々の長年の御労苦に報いるために支給するものということで成立したものと理解をいたしております。
  43. 中路雅弘

    ○中路委員 それは今言いましたように、兵に準ずと、当時は同じように赤紙で召集されて、帯剣ですね、軍人と同じように剣もつるして、全く軍人の身分と同じだったわけですね。だから、恩給じゃないけれども適用じゃないけれども、兵に準じた処遇をしようというのがこの六党合意の趣旨だったわけです。  その後、九四年に、当時の与党三党の慰労給付金支給額改定の合意がありました。この中身は、中心は、消費者物価動向をより適切に反映させた措置をやるということで、それまでも三回ほどたしか増額措置がありましたけれども、それ以後、この三党合意に基づいて毎年額の改定がやられてきました。例えば、消費者物価動向をより適切に反映ですから、平成九年度は消費者物価がマイナスだったわけですね。だからその年は据え置かれるということもありまして、この兵に準ずるというのは、兵との格差がますます増大をしてきている、たしか三分の一か四分の一ぐらいになっているだろうと思うのですね。  この措置は、最初に言いましたこの慰労給付金の出発点になった六党合意から見ても、あるいはその後の政府答弁から見ても、やはり慰労給付金の性格を正しく反映していないのじゃないかというふうに思いますが、いかがですか。
  44. 佐藤正紀

    佐藤(正)政府委員 お答えいたします。  慰労給付金につきましては、恩給制度を準用しということになっておりますが、この準用ということにつきまして、過去に政府委員から国会で御説明したことがございます。  そのときの内容といたしましては、まず第一に、実勤務期間に加算年を加えた年数が十二年以上であること、戦地または事変地の区域の範囲内は恩給に合わせるということ、支給開始年齢を五十五歳としたこと、それから慰労給付金につきましては昭和五十四年、制度発足のときでございますが、このときの兵の恩給の金額を勘案して定めたというようなことで答えております。  その後、この慰労給付金の性格というものが御労苦に報いるための給付金であるということで、生活保障を図るという恩給とは性格を異にするということで、当初はその金額をそのまま固定しておったわけでございますけれども、その後、物価の変動等ございますために、慰労給付金の実質価値の維持を図るということから、これまで五回にわたりまして額の改定を行ってきております。また、平成十一年度予算におきましても、消費者物価上昇分を勘案いたしまして、〇・六%の改定を図っておるところでございます。
  45. 中路雅弘

    ○中路委員 この問題、当時の大臣もたびたび国会で答弁されていますけれども、それからいっても、私は今の説明は十分じゃないと思うのですよ。  例えば、参議院の内閣委員会、当時の中山太郎総務長官は、将来いわゆる公務員給与に関する人事院勧告等の動きも踏まえて、この問題について、増額について検討するという答弁もされておりますし、それから衆議院の内閣委員会、田邉総務長官ですね、昭和五十七年ですが、「年金的な感覚ではない、」これは説明されたとおりですね。ただ余りにも格差が開いたときには、社会常識としてこれに対応しなければならないということも述べられているわけです。  今、この三分の一、四分の一というのは余りにも格差が開いている、こういう認識じゃないですか。
  46. 佐藤正紀

    佐藤(正)政府委員 お答えいたします。  先生指摘のとおり、五十六年から五十七年にかけまして、中山総務長官それから田邉総務長官が何らかの措置をしたいと答弁をしておられることは事実でございます。  これに伴いまして、昭和六十年に、それまでの物価の変動を勘案いたしまして一二・三%の改定をいたした経緯がございますが、その後、平成六年の三党の合意によりまして、物価の変動を勘案して対処するようにという合意がございますので、それに基づきまして現在対応しているところでございます。
  47. 中路雅弘

    ○中路委員 だから、私がお話ししているのは、最近はこの論議をすると、与党三党合意というのがいつも持ち出されるのですよ。これは消費者物価のものなんですよ。しかし、この出発は六党合意じゃないのか。当時の、自民党、それから社会党、民社党、公明党、私の党と新自由クラブですね。この全党が合意してつくった六党合意が出発点じゃないのか。  三党合意がその後消費者物価に絞っちゃって、それを基準にして今までやっているからだんだんこういう事態になってきているので、もう一度六党合意を出発にしてこの問題を見直してほしいということを私は言っているわけです。いかがですか。
  48. 佐藤正紀

    佐藤(正)政府委員 出発の時点におきまして兵の支給金額に準じまして算定をいたしまして、性格といたしまして、この御労苦に報いるための給付金という性格を持っておったこと、それから恩給の方が所得の保障という意味合いを持っているということで、こちらの方はその後最低保障額が設けられたというようなことから、少し金額に格差が出ておるという状況は十分承知しておりますが、私どもといたしましては、その実質的な価値の維持を念頭に置いて対処してまいりたいと考えております。
  49. 中路雅弘

    ○中路委員 兵に準ずというのは、少しじゃないですよ、三分の一、四分の一になっているから、改めてまた請願も出ているわけですね。この前の国会への請願がこの委員会でも全会一致で採択をされている。これはやはり今の現状が十分でないからだと思うのですよ。  この請願をこの委員会で採択されて、請願の中身についてはこう言っています。各党合意決議にある、六党ですね、恩給制度を準用し戦地加算を考慮して兵に準ずる対応をするということに逆行している、差が増大している、これを改善してほしいというのが請願趣旨であって、これがこの委員会で採択をされているわけです。あるいは附帯決議も出されています。採択されています。  私は、やはり委員会のこういった請願の採択を、委員会意思ですから、これに基づいて行政がどういうふうに努力していくかというのがあり方であって、やはり請願の採択というのは非常に重いものだと思うのですね。そういう面で、もう一度この問題を検討する必要があると思いますが、いかがですか。
  50. 佐藤正紀

    佐藤(正)政府委員 内閣委員会で何回か請願が採択をされておることはよく承知しております。また、内閣の方からはその処理意見といたしまして、恩給とは性格が異なるということと、その実質の価値の維持を図るために物価等に基づきます増額措置を講じますということを何回か提出をさせていただいているところでございます。  今後とも、その点について遺漏のないようにしてまいりたいと考えております。
  51. 中路雅弘

    ○中路委員 ちょっと違いますけれども、大臣、聞いておられて、やはり請願も採択されていますし、今の私がお話しした経過があるわけです。私自身、この問題を最初に国会で取り上げて恩給委員会をつくって検討してきた当事者でありますから、非常に責任もあると思って改めて取り上げたのですが、お考えいかがでしょうか。
  52. 太田誠一

    太田国務大臣 過去のいろいろな経緯があって、特別に、兵に準ずるということでそういう措置をされたことは大変すぐれた決断であったと思います。そのような考え方に立って言えば、何と申しますか、まだまだ判断をする余地はあるのではないかという感じもいたしますけれども、いずれにいたしましても、先ほどの提起をされました他の件もございまして、よく閣内で協議をいたしたいと思っております。
  53. 中路雅弘

    ○中路委員 限られた時間ですので、もう一問だけ、別の問題ですけれどもお聞きしたいと思うのです。  これも請願が各党にも出されていると思います。中国の山西省の日本人残留部隊の問題ですが、これは中国山西省の日本人部隊、終戦直後に中国の山西省に残留した約二千六百人の将兵が、中国国民政府軍の支援のために、軍の命令で残留を余儀なくされ、本人の知らない間に、一九四六年から五六年に引き揚げてくるまでの間に、現地除隊、いわゆる召集解除の措置をとられて、正当な処遇をずっと受けられないでいるという問題であります。  当時の資料や、私、今、山西残留を語り継ぐ会とか日本山西会とかたくさんの団体がありまして、その十三団体で構成する全国山西省残留部隊団体協議会、この皆さんの意見も聞きました。資料も読みまして、話を聞けば聞くほど、これは本人の自由意思ではなくて軍の命令で残留したということだと私は思うんです。  この点については、一九五六年にまとめられた、厚生省の「山西軍参加者の行動の概況について」という報告書があります。これも読ませていただきましたが、その中にも、当時の司令官澄田中将率いる山西省に駐屯していた第一軍の最高幹部、例えば元泉少将や第一軍の参謀岩田少佐が山西残留を決意して、残留工作を指示するに至ったことは、山西残留があたかも軍の内意であるかのごとき誤解を与えたという記述も厚生省の文書にあるんですね。  また、その中には、この山西最高幹部の決意に対して、在留邦人側では、相当数の者が応募して、山西側の鉄路設路隊、いわゆる鉄道修理工作隊に入隊したという記述も厚生省の文書にあります。  少なくとも、一時期、第一軍団の最高幹部が山西残留の指示をしたことは事実だと思うんですね。  終戦時期の混乱した中で、上官の命令に従う、軍の命令に従うということは、当時の将兵としては当然のことでありました。それを自発的な意思で残ったと認定されたということを、この残留部隊犠牲者の人たちは非常に痛恨のきわみだということを言っておられました。  それで、私は要請したいんですが、これも戦後処理問題のやはり未解決一つだと思いますが、全国山西省残留部隊団体協議会の人々はこう言っているんですね。戦後五十年記念事業として、その実相を究明して、真実に基づき、山西残留犠牲者の救済措置を講じてほしいと陳情が各方面に出されている。  参議院では、総務委員会で、一九九七年の百四十通常国会で請願が採択され、また昨年の通常国会では、総務委員会理事会に関係者が陳情しています。  私は、山西残留犠牲者の公務認定や現地除隊措置取り消しなどを含めた検討をぜひお願いしたいんですが、とりあえず、この問題について改めて実情を関係者から聞いていただきたい、この対応をぜひお願いしたいと思いますが、いかがですか。
  54. 炭谷茂

    ○炭谷政府委員 ただいま先生お話の山西軍の関係でございますけれども、終戦時、山西省にいた旧日本軍人方々は、中国国民政府の山西軍に参加するため山西省に残留した者につきまして、昭和二十八年から二十九年にかけまして厚生省において三百名を超える方々から実情を聴取いたしております。  そして、その結果を、昭和三十一年に、先生も御引用されましたけれども、厚生省の方から調査結果を報告し、また国会の中でもかなりの長期間かけてこの問題について当時議論がされたところでございます。  その結果、この報告にございますように、現地召集解除が行われた人は、繰り返しの内地帰還の説得後にもかかわらず、最終的に自己の意思について残留したというもので、軍の命令ではなかったという結論になっているわけでございます。  戦後五十年以上経た今日において、改めて実情調査を行ったとしても、従前以上に確かな事情把握は困難でなかろうかというふうに考えている次第でございます。
  55. 中路雅弘

    ○中路委員 時間が来ましたので終わりますが、今事情聴取したと言うのは、主として将兵の、特に当時の幹部なんですね。  これは、戦犯を免れて帰ってきて、閻錫山と取引したんでしょう。そしてやった人たち自分たちが命令したということを皆さんの事情聴取には述べていないんですよ。  だから、もう一度、この問題はやはりまだ未解決なんですから、改めて、一度厚生省はその聴取で報告を出していますけれども、再度この問題を検討してほしいということを強く要請して終わりたいと思います。
  56. 二田孝治

    二田委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     ―――――――――――――
  57. 二田孝治

    二田委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  恩給法等の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  58. 二田孝治

    二田委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  59. 二田孝治

    二田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  60. 二田孝治

    二田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午前十一時四十六分散会