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1999-03-11 第145回国会 衆議院 逓信委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年三月十一日(木曜日)     午前九時十分開議   出席委員    委員長 中沢 健次君    理事 浅野 勝人君 理事 小坂 憲次君    理事 古屋 圭司君 理事 山口 俊一君    理事 伊藤 忠治君 理事 小沢 鋭仁君    理事 福留 泰蔵君       逢沢 一郎君    今村 雅弘君       江渡 聡徳君    大石 秀政君       大島 理森君    亀井 久興君       倉成 正和君    佐藤  勉君       園田 修光君    竹本 直一君       虎島 和夫君    仲村 正治君      吉田六左エ門君    生方 幸夫君       奥田  建君    石垣 一夫君       遠藤 和良君    米津 等史君       鰐淵 俊之君    矢島 恒夫君       濱田 健一君    横光 克彦君       中田  宏君  出席国務大臣         郵政大臣    野田 聖子君  出席政府委員         郵政大臣官房長 高田 昭義君         郵政省通信政策         局長      金澤  薫君         郵政省電気通信         局長      天野 定功君         郵政省放送行政         局長      品川 萬里君  委員外出席者         総務庁長官官房         審議官     坂野 泰治君         文部大臣官房審         議官      銭谷 眞美君         参考人         (放送人権等         権利に関する委         員会委員長)  清水 英夫君         参考人         (社団法人日本         民間放送連盟専         務理事)    酒井  昭君         参考人         (全国朝日放送         株式会社代表取         締役社長)   伊藤 邦男君         参考人         (全国朝日放送         株式会社報道局         長)      早河  洋君         逓信委員会専門         員       平川 日月君 委員の異動 三月十一日  辞任         補欠選任   原口 一博君     奥田  建君   江崎 鐵磨君     米津 等史君   横光 克彦君     濱田 健一君 同日  辞任         補欠選任   奥田  建君     原口 一博君   米津 等史君     鰐淵 俊之君   濱田 健一君     横光 克彦君 同日  辞任         補欠選任   鰐淵 俊之君     江崎 鐵磨君 本日の会議に付した案件  特定公共電気通信システム開発関連技術に関する研究開発の推進に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第五〇号)  通信放送機構法の一部を改正する法律案内閣提出第五一号)  逓信行政に関する件(放送あり方)     午前九時十分開議      ————◇—————
  2. 中沢健次

    中沢委員長 これより会議を開きます。  逓信行政に関する件、特に放送あり方について調査を進めます。  本日は、参考人として、放送人権等権利に関する委員会委員長清水英夫君、社団法人日本民間放送連盟専務理事酒井昭君、全国朝日放送株式会社代表取締役社長伊藤邦男君、全国朝日放送株式会社報道局長早河洋君、以上四名の方々に御出席をいただいております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見を述べていただきたいと存じます。  次に、議事の順序について申し上げます。  まず、清水参考人酒井参考人伊藤参考人の順に、お一人十分程度意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対しお答えをいただきたいと存じます。  なお、念のため申し上げますが、参考人委員長の許可を得て御発言をお願いいたします。また、委員に対しましては質疑ができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきお願いいたします。  それでは、清水参考人にお願いいたします。
  3. 清水英夫

    清水参考人 本日は、当委員会にお招きいただきまして、ありがとうございました。今御紹介いただきましたBRC委員長清水でございます。  これから放送あり方についてということでお話し申し上げるわけでありますが、何分時間が短いので、私は、放送における苦情処理あり方中心にしてお話し申し上げたいと思います。  言うまでもないことながら、放送の自由は、報道の自由を中心として、憲法によって厚く保障されております。しかしながら、一方において基本的人権もまた憲法上の重要な権利でありまして、その間の衝突、矛盾をどう調節するかということは、憲法学上も言論法学上も非常に重要なテーマになっておりまして、殊に最近のようにマスメディアが社会的に大きな影響力をますます持ってきた現在におきまして、この問題は避けて通れない重要な課題となっておることは御承知のとおりであります。  ところで、表現の自由、報道の自由の誤用あるいは乱用によって生ずるところの人権侵害について、どのようにそれを救済していくかということは、民主国家においては非常に大きなテーマであります。  一般的に言いますと、活字媒体におきましては、メディア報道被害を受けた人の間に交渉がまとまりませんと、それは直ちに裁判提訴するという問題に発展するわけでありますが、放送におきましては、その事情活字媒体とは趣を異にしております。  およそ三つのステージが考えられるわけでありますが、放送による人権等権利侵害につきましては、まず第一に、放送法に基づいた訂正放送要求による処理ということがございます。  第二は、もちろん裁判所への提訴でありますが、一昨年、NHK民間放送連盟が共同設立いたしました放送人権等権利に関する委員会機構、その中に、同じような名称でありますけれども放送人権等権利に関する委員会略称BRCというものが設立されまして、現在それが機能中であります。  ところで、放送影響が非常に大きいということ、それから、それに対する権利侵害に対しては黙っていない、そういう権利意識向上といいますか、それに基づきまして、訂正放送要求あるいは裁判所への提訴というものは次第に増加しつつあります。  簡単でありますけれども訂正放送について郵政省調査されたところを申し上げますと、一九九三年、平成五年度におきましては、訂正放送実施件数はわずか二件であったのでありますけれども、一九九七年、平成九年度におきましてはその八倍、十六件に及んでおります。この九三年から九七年に至る間に、総計で三十七件の訂正放送実施されております。これは今後ますます多くなっていくであろうというふうに思われます。  それから、放送による人権侵害権利侵害テーマとする裁判におきましては、これは判決を得た件数だけでありますけれども、一九九四年、平成六年から一九九八年、平成十年に至るまでに十七件の判決が出ております。これは地裁から最高裁までの件数でありますが、そのうち名誉毀損件数は十四件であります。  BRCにつきましては後ほど御質問があれば詳しく申し上げますけれども苦情等BROに寄せられました件数は、設立以来まだ二年たっておりませんけれども、二千七百六十四件という多数に上っております。もっとも、この大多数はいわゆる権利侵害にかかわるものではございませんので、BRCテーマといたしております権利侵害件数は約五%であります。しかも、その大部分はまだ放送局との話し合いが十分済んでいないという、BRCに申し立てるには至っていないのが大半であります。  BRCが審理いたしました案件というのはこれまでに三件にとどまっておりますが、そのうちの二件については既に決定を行っております。また、残りの一件につきましては近く決定が出る予定であります。  もう時間がありませんので大急ぎで申し上げますけれども、このBROBRCという放送による苦情処理機関システムというのは、私の知る限り、世界でもほとんど例を見ないのであります。それは放送界が自主的に設立した第三者機関ということでありますが、御承知のように、イギリスにおきましてはBSCという法律に基づいた苦情処理機関がございます。そのほかの国ではそれに類した機関というのは余り耳にしておりません。  いずれにしましても、メディアが自主的に第三者に審査をさせ、そしてその決定には従うというシステムは、私は、民主的なあり方としては大変すぐれたものであると思いますが、いずれにしましても、設立後まだ日が浅いのでありまして、これからいろいろの経験を重ね、ある意味では走りながら考えていくという状況になっております。  そのBRC委員は、これは放送業界設立した機関というので、放送業界が選ぶとなりますと、委員フェアネス、公正さに疑問が生じるおそれがありますので、BROにおきましては、特にその点に慎重な配慮をいたしまして、まず評議員会というものを設ける。その評議員会も、有識者五名によって組織されておりまして、現在その委員長は、元最高裁判所の判事、東大名誉教授伊藤正先生であります。この評議員会が選んだ委員BRC委員であるということでありまして、放送業界が直接我々を選んでいるわけではございません。委員の定数は八名であります。  そういう機構でありますけれども、何分、事務局も八名、委員も八名、委員の八名というのは決して少ない数ではありませんけれどもイギリスBSCに比べるとはるかに少ない。事務局も総員で八名。これで今後十分世間が納得するような機能を果たしていけるかということについては、率直に言って私は問題があろうかと思います。  簡単でございますが、私の報告にかえさせていただきます。どうも御清聴ありがとうございました。
  4. 中沢健次

    中沢委員長 ありがとうございました。  次に、酒井参考人にお願いいたします。
  5. 酒井昭

    酒井参考人 民放連酒井でございます。  放送あり方という大変大きなテーマのことでございますので、どうお話ししてよろしいのか。ただ、放送というのは、番組の位相といいますか、フレーズで考えますと、娯楽番組と、番組というのは報道ですね、娯楽報道、これが二本の柱でございまして、民間放送の場合には広告が入りますが、この三つがバランスよく放送されることが一番視聴者にとって望ましいんではないかということで、常々私どもは、放送基準にのっとりましてこれを遵守するように呼びかけております。  ただ最近、報道の面において、過剰報道というふうな批判が出てまいっておりまして、これは最近は非常に多いわけです。大分前になりますけれども、一九八八年の段階で、ローカルの青森放送が、人権プライバシー保護という観点から、特に事件事故報道に関しまして、遺族悲しみのシーン、これはカットして放送するということで、キーステーションにもいろいろ連絡はしてございますが、各社それぞれ事情がありますけれども、これはRABとしての一つ考え方ではないかということもありまして、かなり取材陣も慎重に配慮する。遺族悲しみというのは、その方の顔をアップしなくても全体的に悲しみというのは映像を通じて表現可能ではないかというのがRABさんの見解でございまして、これは一つの方式ではないかというふうに思っております。  私どもといたしましては、その後事件がいろいろ発生してまいっておりますので、従来から、放送基準には、報道は客観的でありかつ公正でなければならないという条文も設けておりますけれども、一九九六年、三年前になりますけれどもNHKさんと協力いたしまして、放送界共通放送倫理綱領というものを設けてございます。  その中には、やはり報道に重点を置いてございますけれども、特にNHKさんの配慮によりまして、民放商業放送である、広告放送も重要であるということで、広告放送についても一項目設けられておりますけれども、そういう形で放送界全体として人権プライバシー配慮しながら報道していこう。  報道あり方については、特に節度が大事ではないかということも絶えず言われておりまして、私どもの方では、このNHKさんと共通倫理基本綱領のほかに、既に民放連放送基準というのは、昭和二十六年、民放ラジオがスタートをしたときから作成してございまして、その都度時代状況変化に応じながら条文を修正してきているという事実がございます。  それで、近年やはり報道の問題は特に重視しなきゃいかぬということもございまして、特に民放連サイドでは報道指針というものを設けております。組織的には、民放連の中に報道委員会というのがございまして、そこで報道の姿勢のあり方節度ある取材あり方というものを論議しながら、今民放百九十七社がこの放送基準にのっとりまして取材を組んでいるという状況でございます。  ただ、放送基準というのは、放送界における、特に民放における憲法的な色合いがございまして、これを周知徹底するためには、社員研修といいますか、報道マンを集めましていろいろ取材あり方を研修していくということを毎年やっております。  ただ、最近は、放送局自身取材だけではございませんで、外部プロダクションに依頼するような場合もございますので、そういう人たちにも周知徹底したいということから、ATPさん、これは報道の中でも特にニュースドキュメンタリー部門に関して制作して放送局番組を流していただくというふうなシステムでございますので、ATP加盟社皆さんを集めまして放送倫理向上に努めているということで、東京、大阪、名古屋で毎年一回ずつ開催しながら現場のプロダクション取材節度あり方を徹底しているということをやっております。  それから、先ほど清水先生のお話にございましたけれども苦情処理ということに関しましては、各社とも視聴者センターあるいは考査部対応しているわけでございます。  放送番組を通じて、これは朝の番組になりますけれども、それぞれのキーステーションが、例えばテレビ朝日さんでいえば「はい! テレビ朝日です」、日本テレビさんでは「あなたと日テレ」、あるいはフジテレビさんが「週刊フジテレビ批評」と、朝の五時台でございますけれども、ここで番組審議会動きとか、あるいは苦情処理についてこういう形で処理したということを放送しておりますし、TBSさん、あるいはテレビ東京さんは、これは最終金曜日でございますけれども、午後の時間帯に放送して処理をしているといいますか、誠意ある説得をしているわけですが、何分視聴者からのクレームとか相談とかあるいは質問が多うございますので、これを選抜しながらその時間帯に放送している。  ただ、時間帯が早いということと、それから時間が十五分から三十分という比較的短い時間でございますので、必ずしも全面的に、ここでもって放送されたことがすべての人に回答が行っているかどうか、それは多少疑問でございますけれども、それぞれの考査部とか視聴者センターが誠意を持って回答しているということでございます。なかなか数が多いものですから、応対の仕方によってはマスコミは横暴ではないかという批判もないわけではありませんけれども、それは社員研修を徹底することによって、一人一人の精神といいますか、対応の仕方を向上させていきたいというふうに考えているところでございます。  私どもは、報道に関しては特に報道委員会でございますけれども番組全般に関する倫理向上というのは放送基準審議会というところが担当しております。それで、私どもは、何よりも民間放送公共福祉、文化の向上、それを目的にしてございますし、平和な社会の実現を使命として、民主主義精神に従いながら、言論及び表現の自由を守って、法と秩序を尊重するとともに、先ほど申し上げましたように、放送に当たっては、まず正確で迅速な報道、それから健全な娯楽、教育、教養の進展、児童、青少年に与える影響節度を守り真実を伝える広告を重視するということをうたい文句にしながら、これをスローガンに掲げながら放送しているということでございます。  一昨年の郵政省さんの多チャンネル時代における放送視聴者懇談会の中では、青少年に対する保護あり方についていろいろ提言されておりまして、これにつきましては、私どもの方で、放送基準審議会の方でいろいろ検討しながら対処してまいりたいということでございますが、この四月一日の放送基準の改正では、視聴時間帯、特に青少年、子供が見ている時間帯については十分配慮するという一項目のほかに、サブリミナルは完全にやめるということも新しい条文として入れてございます。  今検討中の問題は、青少年の時間帯を具体的にどうするかということでございまして、さらなる向上を目指してこれからも活動を続けてまいりたい。  以上でございます。
  6. 中沢健次

    中沢委員長 ありがとうございました。  次に、伊藤参考人にお願いいたします。
  7. 伊藤邦男

    伊藤参考人 全国朝日放送通称テレビ朝日社長を務めております伊藤でございます。  本日は、この逓信委員会におきまして意見陳述の場を設けていただきましたことにつきまして、中沢委員長を初め委員皆様にまずお礼を申し上げます。ありがとうございました。  国会事務当局からの御連絡では、最初に放送あり方報道あり方について意見を述べるようにということでございましたが、せっかくの機会でありますので、一般論だけでなく、今回の当社の「ニュースステーション」におけるダイオキシン報道について、率直に意見を述べさせていただきたいと存じます。そして、それが本委員会の論議に役立つことができればというふうに考えております。  テレビ放送が始まりましてから間もなく五十年になります。テレビ朝日当社も開局四十周年を迎えることができましたが、折しも多チャンネル時代に入りまして、二年後にはBSデジタル放送がスタートいたします。  かつて人々が街頭テレビに群がりまして、例のプロレスなどで熱狂した、あの鮮烈なメッセージと驚き、そして感動をもって迎え入れた草創期を思い起こしてみますと、まさに今昔の感があります。  テレビとそれを取り巻く状況は今、大変革期を迎えていると言えると思います。その影響力の大きさ、増大もさることながら、デジタル化によりまして、これまで一方通行型だったテレビは、視聴者の選択肢が飛躍的にふえました。それと同時に、さまざまな方法によって視聴者が参加、参画できるメディアに変貌いたします。このような変化、変質があったとしても、従来のテレビ、つまり私たち地上波には本質的な問題が突きつけられております。テレビ役割使命、その責任は何かという変わらぬ問いかけがそれであります。  地上波テレビは、半世紀近い歴史の中で、今、酒井専務理事からも申されました健全な娯楽の提供、そしてまた国民生活に重要なかかわりのあるニュース、情報の発信などによりまして、その使命相当程度果たしてまいったと思っております。  その一方で、テレビ放送あり方も常に問われ続けてまいりました。その中には、まことに苦い教訓もございました。メディア変革期におきましては、この貴重な経験教訓を生かす意味におきまして、地上波テレビがその規範、モデルとならなければならないと私は考えております。それは、テレビみずからの自浄作用、そしてまた自立への努力によって確立されなければならないと思います。  顧みて、全国朝日放送テレビ朝日が果たして十全であったかと問われれば、反省すべき点が多々あったということを認めざるを得ません。報道の自由の確保も公共福祉への寄与も、今申し上げました自浄作用自立への努力を重ねることによって国民の支持を受けることができます。そして、放送役割使命、その責任が果たせるものであると確信しております。  さて、今回のダイオキシン報道でありますが、番組企画意図は、所沢周辺住民の間にダイオキシンに対する不安が以前から広まっており、これを一日も早く払拭するためには、JA所沢市が行いました調査データを早く公表し、行政も積極的に取り組むべきであるという問題提起をしたものであります。いわば公共福祉への寄与という立場に立ったものでありまして、当社取材を通じて得た調査数値の公表は十分に意味があったと思っております。  しかしながら、放送に至る最終局面で図表の示し方に適切さを欠いたり、データ説明もまた不十分でありました。このために、結果として所沢周辺農家皆様に大変御迷惑をおかけしたことはまことに申しわけなく、二月十八日に放送いたしました番組の中でおわびしたところでございます。また、二十三日の社長記者会見におきましても同じ趣旨の謝罪を行いました。所沢農家皆様初め関係皆さんに対しても、この場をおかりして改めておわび申し上げます。  御承知のように、放送の後、JA所沢市もデータを公表し、行政緊急調査実施、また関係閣僚会議もスタートいたしました。また、国会においても積極的な対策が検討されていると伺っております。私は、このような素早い対応について心から敬意を表するものであります。また、国民世論もこうした動きを歓迎しているように思っております。  今回テーマとしたダイオキシンは、そのほとんどが一般廃棄物、つまり私たちが出すごみ産業廃棄物を焼却する際に発生いたします。ですから、この問題は、もとをただしますと私たち自身が原因をつくっているということができると思います。便利で快適、そして豊かな生活が多くのごみを生み出し、結果的にダイオキシンを発生させているというわけになります。したがって、ダイオキシン問題の解決は、行政だけでなく、生産者消費者も含め、国民一人一人が取り組まなければならないテーマであると思っております。  また、ダイオキシンは、人工物質の中では、あのサリン、例のオウムで問題になりましたサリンよりも毒性が強く、人類最悪の毒物とも言われております。急性慢性毒性があり、内外の専門家慢性毒性の危険を一様に指摘しております。世界保健機関、WHOや各国は、TDI、耐容一日摂取量という翻訳になっておりますが、そういう基準を設けまして対策を講じておりますが、これは、生涯かけて摂取しても、口に入れても安全とされる数値を一日体重一キログラム当たりの摂取量で示したものでございます。  つまり、ダイオキシンの特性は、急性のものもさることながら、生涯にわたり人体に入り込んで蓄積されることによって生殖系への重大な影響発がん性、ホルモンの攪乱などを起こす慢性毒性にあり、それが次の世代、そのまた次の世代悲劇を生み出すおそれが極めて高いことが動物実験などで実証されつつあります。  かつてカネミ油症や水俣病などの公害で、発病したときに初めて事の重大さに気づきました。その因果関係をたどってみると、汚染の初期段階悲劇を防ぐことができた可能性があったことが教訓として残っております。その意味で、ダイオキシン問題も長いスパンで見て、将来悲劇につながらないよう、今必要な施策を国民レベルで考える時期であると言えるのではないかと私は思います。  番組は、このような考え方を持って企画されたにもかかわらず、結果において、そうした表現あるいは説明が不十分であったことは、これは認めざるを得ません。報道公共性公益性があったとは思いますが、一方で農家皆さんに迷惑をおかけしたわけですから、その意図目的が果たせたと申すわけにはまいりません。  私は、今回の報道行政などにスピーディーな対応を促したことを評価してくださる方がいらしたとしても、厳しい御批判や指摘があることを謙虚に受けとめまして、反省点を生かした報道を心がけなければならないというふうに思っております。そして、この点を社内で強く戒めております。  以上のような見地から、今回の報道も、正すべきは正し、反省すべきは反省し、新たな教訓として真摯に受けとめた上で今後の放送に生かしてまいりたいと考えている次第であります。  皆様からの率直な御意見を承ることができれば幸いであります。どうもありがとうございました。
  8. 中沢健次

    中沢委員長 ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の開陳は終わりました。     —————————————
  9. 中沢健次

    中沢委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。浅野勝人君。
  10. 浅野勝人

    ○浅野委員 四人の参考人の方々におかれましては、御多用の中を御出席くださいまして委員会審議に御協力を賜り、心から感謝を申し上げます。  我が国の放送は、BSやCATVの普及とデジタル技術の急速な進歩によって多チャンネル時代を迎え、放送の果たす役割や社会的な影響力がますます大きくなってきております。それだけに、放送あり方に強い関心が寄せられるのは当然のことと存じます。  放送法は、放送番組について、何人からも干渉され、規律されることはないと規定して、言論表現の自由を保障しております。人々が生活していく上で、人間としての尊厳を守る基本的な人権と受けとめております。  私は、報道の自由は重い責任感と良識を担保して保障されているものと思っております。伊藤社長の見解を伺っておきます。
  11. 伊藤邦男

    伊藤参考人 お答えをいたします。  今御指摘のとおりでありまして、私も、今申しましたように、放送法精神からいいますと、放送法は冒頭に、放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによって、放送による表現の自由を確保する、そしてまた、三条におきまして、放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、規律されることがないというふうな規定がございます。  であればこそ、先ほど申しましたように、私どもが自浄努力それから自立への努力、そして誤りないように努力をすることによって国民の、視聴者の支持が得られるということを申したつもりでございます。その考え方を、もちろんベースとしては持っているんですが、今回の場合に、その点が果たして十全であったかといえば、問題があったことは認めざるを得ないということを先ほども申しましたとおりであります。  ただ、そのようなことを、今回を厳しい教訓として、これからの番組づくり、放送に生かしていきたいというふうに強く戒めているところでございます。
  12. 浅野勝人

    ○浅野委員 テレビ朝日放送したダイオキシン問題の報道ですが、おくれがちなダイオキシン対策を急ぐよう行政を促そうとした番組の方向は間違っていないと思っております。評価するにやぶさかではありません。ところが、それを伝える内容がずさんきわまりない。三・八ピコグラムを示した農作物は製品化されたせん茶で、お湯を注いで飲んでも二%未満しか溶けて出ないので全く問題がないということが埼玉県の発表でわかりました。  テレビ朝日は、本当はお茶だと知っていたけれども、お茶だと問題になりにくいので、パターンには野菜と表示し、音声はホウレンソウをメーンとする葉っぱ物とコメントして、映像ではホウレンソウやキャベツの野菜畑をふんだんに見せて、視聴者所沢の野菜は危険だと連想させることによって殊さらセンセーショナルな話題づくりをねらったのではありませんか。  放送法三条の二の三号は、「報道は事実をまげないですること。」と規定しています。いかがですか。
  13. 伊藤邦男

    伊藤参考人 委員長にお願いでありますが、この問題については、番組制作、番組づくりにかなり踏み込まなければお答えしにくい問題であります。隣に私の方の報道局長の早河が同席しておりますので、早河に説明をさせてまいりたいと思います。よろしゅうございますか。
  14. 早河洋

    ○早河参考人 お答えいたします。  二月一日に放送いたしました特集は、昨年の夏前ぐらいから取材を継続してやってまいりました。暮れぐらいになりまして、環境総合研究所の青山所長が所沢の野菜などに関する自主調査をしているということを担当者が知りまして、以降、青山所長を初め、取材を続けてきたということでございます。  図表の問題でありますが、その過程で、取材で知り得た担当者の認識は、ホウレンソウを含む野菜ということでございまして、当日のお知らせにおきましても、出演者、キャスターもそういう認識でございました。  そこで、放送時点までに私どもが知った情報といいますのは、〇・六四から三・八というトータルの数値を知り得たわけです。当時、国会でも議論になりましたし、この数値は厚生省の全国平均よりも高いということで、これはニュース価値があるのかなという判断をいたしまして、トータルの数値としての説明といいますか、表示をした。ただし、その際、スタッフは野菜というふうに思い込んでおりましたので、タイトルに野菜のということを書いてしまった。ここは不適切で後に訂正をいたしましたけれども、確認が不十分だったといって、この部分については私もミスだったというふうに思っております。
  15. 浅野勝人

    ○浅野委員 事前にせん茶だとは承知していなかったということですね。  そうすると、三・八ピコグラムは何から検出された数値だと思って報道したんですか。はっきりした調査対象があいまいなまま、何から検出された数値かは確認もしないでやみくもに放送してしまったということになりますか。
  16. 早河洋

    ○早河参考人 今申し上げましたように、私ども、環境総研が一年間かけてやる中間地点における数値の速報というような認識を持ちまして、個々の品目が幾らの数値を示しているかということは、その時点では確認をしておりません。  ただ、我々スタッフの間では、ホウレンソウを含む野菜、複数の野菜、こういう認識はございましたけれども、個々の数値が何であるか、お茶が含まれているという認識も私どもにはございませんでした。
  17. 浅野勝人

    ○浅野委員 この番組は、人々の生活に深いかかわりを持ち、価格の変動などの経済的要因に重大な影響を与える懸念のあるテーマ承知で扱ったはずであります。現に、莫大な損害を農家に与えてしまいました。もともと念には念を入れてつくるべきテーマだったと存じます。  にもかかわらず、キャスターの久米宏氏は、JAは調べても数字を発表しない、農水省はこれから調べると寝ぼけたことを言っている、実際の数字は以上のとおりですと言い切っているんですよ。  今の説明だと、この数字は何から検出されたものかあいまいなまま、事実上ホウレンソウと断言するような形になって、実はせん茶だったと。ちょっとごめんなさいでは済まされない社会的責任があるように感じます。  キャスターが十分な知識や情報もないまま、この種の問題を一方的に決めつけるような発言をすることについてはどうお考えでございますか。
  18. 伊藤邦男

    伊藤参考人 御質問は、非常に厳しい、痛いところでございますが……(発言する者あり)
  19. 中沢健次

    中沢委員長 静かに。
  20. 伊藤邦男

    伊藤参考人 一月の二十九日の国会質疑がございまして、そのときに野党の方から、この調査結果を早く発表すべきではないかという御指摘があった。そして、それに対して、これから調査するという御答弁があったという中で、その環境総研の青山氏と接触している担当記者が、実は青山さんのところでそういう数値が出ているというのを承知したわけであります。知ったわけであります、取材の結果。ただし、青山所長は、その中身、そのサンプルが何であって、それがどうであったということは教えてくれなかったのだそうであります。  ただ一方で、私ども、この問題については数年前からずっと継続報道しておりますが、その中でこのようなやりとりが国会であった。ところが実際は、こういう数字が現に民間の、NGOでありますが、そういう調査機関で出ているんだということがある以上、それは我々が何も知らないんならまだしも、そういう数字がトータルとしてあるんだったらば、それを出すことは意味があるだろうということであの数字を使わせていただいたわけであります。
  21. 浅野勝人

    ○浅野委員 報道界の方々から、取材経験が乏しく現場を知らないので、ニュースの痛みがわからないから、ニュースの基本的な扱いについて間違いをしでかしてしまったという指摘が私のところに少なからず寄せられていることを、まことに残念ですけれども申し上げておきます。  伊藤社長は、二月二十三日の記者会見で、二月一日の放送は誤報とは思っていない、今回の数値の指摘が農家に被害を招いたという風評被害に当たらないとおっしゃっておられます。  テレビ東京の一木社長は、二月二十五日の記者会見で、ホウレンソウが高い濃度のダイオキシンに汚染されていると視聴者に思わせたのだから、明らかに誤報の一種と述べておいでになります。  今でも見解に変わりはございませんか。
  22. 伊藤邦男

    伊藤参考人 風評被害といいますのは、根拠のないうわさを流し、その結果いわれない方々に被害を及ぼすというものだというふうに理解しております。  今回の場合は、信頼に値する具体的なデータがあり、それが全国平均に比べて高いことは事実である、つまりあのホウレンソウについて九日に明らかにした数字でありますが、全国平均に比べて高い数字であるということは事実であります。所沢ダイオキシン問題に対する、これは意図はそういう問題提起でありますから、そういう意味では、これは根拠のない、また誤報ではないというふうに私どもは考えております。全体とすると、これは正しい報道であったというふうに考えるわけです。  しかしながら、農家皆様からの御批判は、これは御迷惑をかけたことは確かであります。それは私どもの本意ではなく、また確認が不十分であったということはまことに申しわけないと思っております。ですから、それは十八日の放送でも訂正し、おわびしたところでございます。  したがいまして、その御批判を真摯に受けとめまして、これからの報道に生かしてまいりたいと考えております。
  23. 浅野勝人

    ○浅野委員 ここに「環境行政改革フォーラムの目的と活動」という資料がございます。今回のダイオキシン報道データを提供し、番組の中で解説をした環境総合研究所の青山貞一所長が代表幹事として主宰をしていらっしゃるフォーラムです。環境問題と取り組んでおいでの研究者、大学の先生、ジャーナリスト、NGOの皆さん、衆参両院の国会議員の先生方など四十五人が幹事、アドバイザーとして、「行政改革と政策立案を通じて社会変革を試みるNGO」とみずから紹介しておいでであります。時宜を得た立派なフォーラムとお見受けをしております。  ただ、このメンバーの中にテレビ朝日報道局ディレクター、テレビ朝日報道センターディレクターのお二人がいらっしゃることは、報道局長、御存じでございますか。
  24. 早河洋

    ○早河参考人 お答えいたします。  そのフォーラムに二人の局員が登録していることは承知しております。
  25. 浅野勝人

    ○浅野委員 このお二人あるいはどちらか一人がディレクターとして今回の番組制作に参加をしておいででございますか。
  26. 早河洋

    ○早河参考人 そのとおりでございます。
  27. 浅野勝人

    ○浅野委員 もう一つ確認しておきたいことがございます。  画面に登場した女性がホウレンソウを振りかざして、はっきり言って私の家族は所沢のホウレンソウを食べていませんと言っております。この方も環境行政改革フォーラムのメンバーだという情報がありますが、事実でしょうか、間違いでしょうか。
  28. 早河洋

    ○早河参考人 取材対象者のことでございますので私がすべて掌握しているわけではございませんが、その取材対象者がフォーラムに入っているとか入っていないとかということは私は存じ上げておりません。
  29. 浅野勝人

    ○浅野委員 結構でございます。  私は、この人がどんな立場の方かということにこだわっているのではありません。この人に言わせたのかどうかが疑わしい、そこが問題だと実は思っているんです。やらせと紙一重だからです。やらせとなると新たな問題が提起されることになりまして重大であります。御所見がございますか。
  30. 早河洋

    ○早河参考人 浅野委員が御指摘の映像というのは、恐らく九八年の十一月八日の市民のパレードの映像だと思います。これを私どもがいわゆる捏造、やらせをしたというようなことは全くございません。
  31. 浅野勝人

    ○浅野委員 私が拝見したのは二月一日の放送の中でのものでありました。  もう一点。「ニュースステーション」を制作している、キャスターの久米宏氏が所属しているオフィス・トゥー・ワンというんですか、その企画制作会社とテレビ朝日の契約はどんな内容のものなんでしょうか。巷間伝えられるうわさでは、「ニュースステーション」の編集権は、実態はそのオフィス・トゥー・ワンが握っているのではないかなどとうわさを耳にしないわけではございません。  私は、テレ朝の記者さんたちが、日常、他社に伍して立派にやっておられ、情報が出先のキャップ、デスクを通じてオンエアをしていく過程にチェック機能が働いていないとは思っておりません。立派にやっておられるとお見受けをしております。それにもかかわらず、「ニュースステーション」だけが治外法権的なところに位置しているからテレビ朝日のチェックが機能しない、もしくは機能しようにもできないことになっているのではないでしょうか。実態はいかがですか。
  32. 早河洋

    ○早河参考人 この番組が一九八五年に始まりましてから、とかくそういう報道が一部にございますが、現実を申し上げますと、テレビ朝日報道局の人間は二百人おります。それから全国二十六局系列、それから海外支局というふうに、基盤的な、つまり第一次情報収集機能というのはすべてテレビ朝日でございます。  プロダクションが「ニュースステーション」の制作に参画しているのは、これは事実でございまして、契約内容の詳細については省かせていただきますが、できるだけお答えいたしますが、二十数人、制作の中に入っております。もちろん、これはテレビ朝日の人間もおりまして、大体全体で七十人ぐらいでつくっております。しかし、今申し上げましたように、第一次情報源というのは私ども報道機能の中から入手していくわけでございまして、今回もテレビ朝日が制作した特集でございますけれども、その編集権といいますか、制作責任放送責任はすべてテレビ朝日のプロデューサー、私の間接的な代行者と言ってもいいと思うのですが、そこのコントロールのもとに置かれております。  ただ、プロダクションの発想といいますか、いろいろな特徴もございますので、そういう知恵とかアイデアとか特集の制作とか、これをお願いしているのは事実でございますけれども、編集権その他についての問題については私どもが掌握しております。
  33. 浅野勝人

    ○浅野委員 編集権はテレビ朝日に厳然としてあるとおっしゃるのなら、テレビ朝日が自信を持って責任の所在を明らかにされたらいかがかと存じます。  なお、私は、せっかくおいでいただいたテレビ朝日の代表お二人を困らせようと意地悪を言っているわけではありません。マスコミが、権力を持っている側に憶することなく、より厳しく対処できる社会の方が私は健全な社会だと思っております。いつか来た道を振り返って見るまでもありません。それだけに、冒頭、報道の自由は重い責任感と良識を担保に保障されていると申し上げましたけれども、今回のように、取材の仕方、それをもとにした放送の出し方、問題があったと認識してからの対応の仕方、いずれをとってみても、軽率などという言葉を超えた報道に対する責任感の欠如を感ぜざるを得ないからであります。真剣に耳を傾けていただきとう存じます。  民放連酒井専務理事に伺います。  私は、かねてから映像の倫理規範が必要だと思っているのです。今回のように、ホウレンソウとホウレンソウ畑をふんだんに見せられて、本当は別のものと言われても困っちゃうのです。例えば、PKOといえば、決まって戦車と戦闘機と戦艦が映像で見せられる。毎度それが続きますと、国連平和維持活動は戦の準備法案かと思ってしまうようなこともあるわけですね。映像の倫理規範、どんなものでしょうか。  それからもう一つ放送法四条は訂正放送について規定しておりますけれども、同じ設備で相当の方法でやりなさいと規定しておりますね。同じ設備というのは、放送した同じ地域にやりなさいよということですけれども、その訂正放送の内容については相当の方法としか規定しておりませんが、不適切でしたと一言で膨大なものが終わってしまうこともあり得るわけで、このあたり、このままでいいのかどうか、お考えはございますか。
  34. 酒井昭

    酒井参考人 最初の問題ですけれども、映像表現節度といいますか制約といいますか、基本的には、浅野委員NHKさんにいらっしゃいましたから、報道の面はお詳しい専門家でいらっしゃいますけれども、それぞれの取材者が主体的にそれぞれの映像を切り取ってくるということでございまして、基本的には視聴者に誤解を与えないような映像表現が最も望ましいというふうに思っておりますので、今回の事件を契機にいたしまして、少し報道委員会で、映像表現はどうあるべきか、基本的には私、先生おっしゃるように、表現の自由が先行しますけれども視聴者に迷惑をかけないという配慮の仕方についてこれから検討させていただきたいというふうに思っております。  それから、訂正放送につきましては、ただ謝っただけで済むかという問題かと思うのですけれども、同じ番組の中で、これで釈明するのは当然でございますけれども、時間的な公平の問題と中身の公平の問題ということもございますので、ある番組の中ではできるだけ時間を多くとりながら、ここのところがおかしかったというふうな訂正をすべきではないか。  基本的に、真実でないということが判明してから三カ月以内かと思いますけれども、そういう訴えがあった場合に、それを放送局調査して、申しわけないということから番組がスタートするわけですが、それにはできるだけの時間をかけて訂正させていただきたいというふうに思っております。  以上でございます。
  35. 浅野勝人

    ○浅野委員 放送から人権を守るBRO清水委員長、おいでいただきまして、ちょっと私御提案をさせていただきますが、委員の構成ですね。自然科学やスポーツ、芸能の、例えばそういう分野の学識経験者を加えるなど、委員を大幅に拡充をすること。それからもう一つは、当事者主義は貫く必要があると私も思っておりますが、今回のように社会的に大きな問題となった番組については、当事者の申し出がなくても、例えば委員全体の意見の一致などを条件にしまして、BROが自発的に取り上げて勧告をする権能を持つ、この提案、いかがでしょう。
  36. 清水英夫

    清水参考人 二つの御質問を受けました。  一つは、委員の構成、これを大幅に拡充すべきであるという点につきましては、これは予算等の措置を伴いますので、私の口からちょっと申し上げにくいのであります。  ただ、委員の中に自然科学者、スポーツ関係者等も含めるべきだということにつきましては、既に私の前の委員長の有馬朗人氏は科学者でありまして、そういう人選には十分配慮されていると思います。しかし、これは私たちBRC委員が考えることではなくて、もちろん提言はいたしますけれども、やはり評議員会あるいはBRの理事会がお考えになるべきことであると考えております。  それから、申し立て当事者主義を原則としていることはもちろんでありますけれども、現在の委員会の運営規則によりましても、第五条の第二項におきまして、「きわめて重大な権利侵害に関する事項については、申立てを待たずに、委員会の判断により取り扱うことができる」とあります。これは事案としては、例えば東電OL殺人事件がございまして、被害者は既に死亡している、しかし遺族は非常にプライバシー侵害、名誉の侵害というものを受けているわけでありますが、当事者の方はもうそういう申し立てる気力も能力もないというようなことが予想される場合に、もちろん当事者の御了解を得てでありますけれども委員会が独自に判断するということを念頭に置いております。  今回の事件については、まだ申し立てが委員会に来るという可能性がありますので、ここで具体的な意見を申し上げることは差し控えたいと思います。よろしくお願いいたします。
  37. 浅野勝人

    ○浅野委員 どうも清水委員長、ありがとうございました。  私は、自分の人生で取材報道する側と取材され報道される側の両方を体験してまいりました。あのころは、きょう申し上げてきたようなたぐいのことを絶えず心の中で反すうしながら注意してやってきたつもりですが、報道される側になってみてじくじたる思いがあるものですから、きょうはみずからの反省の上に立って質疑をさせていただいたつもりでございます。  野田大臣におかれましては、一貫して御出席を賜り、私の方から見解を伺う時間のないまま終わってしまいましたけれども、大臣の真摯な御姿勢をありがたく思っております。  以上で終わります。
  38. 中沢健次

    中沢委員長 生方幸夫君。
  39. 生方幸夫

    ○生方委員 民主党の生方幸夫と申します。  参考人皆様方には、お忙しいところ貴重な御意見を賜りまして、大変ありがとうございました。  ただいまの質疑を聞いておりまして、特にテレビ朝日の方々の答弁を聞いておりまして、日ごろ我々政治家には極めて厳しいんですが、身内には比較的優しいのではないかなという印象を残念ながら持たせていただきました。  ところで、放送法四条では、放送事業者が真実でない報道をした場合には訂正放送をしなければならないというふうに規定をいたしております。今回の「ニュースステーション」の報道についてテレビ朝日訂正放送をしたのでございましょうか、していないのでございましょうか。
  40. 伊藤邦男

    伊藤参考人 私ども訂正放送はいたしておりません。  私どもは、部分的に不適切あるいは誤解を増幅させるような説明があった、これについては確かに認めざるを得ませんので、十八日の総括的な放送の中でそれについては訂正をしております。  ただしかしながら、二月一日の放送で示した数字、先ほども申しましたけれども……(生方委員「それはいいですから、短く」と呼ぶ)はい、わかりました。  要するに、全体として虚偽の事実ではないと私どもは考えております。部分的には確かに説明が不足であった、これは認めます。
  41. 生方幸夫

    ○生方委員 私もあの番組を、たまたまあの日は早く帰りまして「ニュースステーション」を見ておりました。もちろんメモをとりながら見ていたりするわけじゃないですから、ずっと見ておりまして、私はかつて所沢に住んでおりましたので特に関心を持って見ておりました。あの番組を見終わったときに、ああ所沢のホウレンソウは食べてはいけないんだなという印象を持ったのはこれは間違いない事実なんですね。事実、多くの視聴者の方たちが次の日に所沢のホウレンソウを食べてはいけないというふうに考えて、スーパーは売るのをやめた。  これは明らかに、「ニュースステーション」が所沢のホウレンソウは危ないという報道をしたということを多数の方たちが認識した、それで、結果として所沢のホウレンソウが危なくなかったということがわかったわけですから、結果としては間違えた報道をしたということは間違いない事実なんじゃないんですか。いかがでございましょう。
  42. 伊藤邦男

    伊藤参考人 二月九日にJA所沢数値を発表しました。そのときに、ちょうどその日にテレビ朝日も、私ども調査の結果、ホウレンソウの数値はこれこれであるという数値説明いたしました。そこのところで若干の数値の差はございますけれども、私どものホウレンソウというのはそういうことなんだというふうなことを説明いたしました。  ただしかしながら、二月一日の放送であの大きな数字がありましたので、それがそういうふうにとられてしまうような、説明が足りなかった、とられたとしてもやむを得なかった部分がございますので、そこのところは非常に申しわけなかったというふうに言っているわけであります。
  43. 生方幸夫

    ○生方委員 先ほどの説明を聞いていますと、青山さんですか、あの方が調べた数値、四カ所についてそれが何であるのかを聞かなかったと。私も、元新聞記者をやっておりましたので取材がどういうものであるかというのは承知をしている者でございますが、数値が何であって、それが野菜であるときに、それは大根なんですか、何なんですかというのを聞くのはイロハのイで、それをやらないで数値だけを発表するなんて、そんな危険なことはとてもじゃないけれども私はできないと思うんですが、その姿勢そのものから今の問題というものが僕は派生していると思うんですが、その四点、それを確認しなかったということが重大な誤りだったという認識はないんですか。いかがなんですか。
  44. 早河洋

    ○早河参考人 先ほど私が申し上げたかったのは、速報的な意味合いにおきまして、このダイオキシンというのは、仮に三・八を、あるいは五を体内に入れたからといって、即効的だといいますか、緊急の症状が発症するものではございません。しかしながら、その三・八というものがホウレンソウなどの野菜と受け取られた部分につきましては、私どもの図表の作成上のミスというふうにはっきり思っております。  したがって、この部分につきましては、きっちりと九日に三・八というものがホウレンソウなどの野菜でないことを示した上で、さらに十八日、すべての中間報告が出た段階で訂正をし、おわびをしております。
  45. 生方幸夫

    ○生方委員 訂正をし、おわびをしたということは、訂正放送をしたという認識があるというふうに解釈してよろしいんですか。
  46. 伊藤邦男

    伊藤参考人 お答えします。  訂正放送というものは、先ほども、繰り返し申しますが、全体が虚偽の放送だったという場合にはその訂正放送にまさに当たると思います。  ただ今回の場合は、確かに実名が不足によってそういう誤解を生ずる部分があったかもしれないけれども、根幹となるところの数字、私どもが発表いたしました数値、数字は、これ自身は、若干の食い違いはありますが、間違ってはおりません。したがって、全体としては虚偽ではない、したがって訂正放送には当たらないと考えております。
  47. 生方幸夫

    ○生方委員 誤ったことを誤ったというふうに反省をしないところから同じような誤りが繰り返されると思うんですよ。  今回の場合は明らかに、ホウレンソウというふうに我々が解釈して、それがホウレンソウじゃなかったという報道をしたわけですから、間違えた報道をしているわけですよね。だから私は、素直に訂正放送をしていただいた方がこれからのテレビのためにはよりいいことだというふうに解釈をいたしております。  ところで、郵政大臣にお伺いしたいんですが、訂正放送というのはこれまで何回ぐらいなされたことがあるんでございましょうか。
  48. 野田聖子

    ○野田(聖)国務大臣 放送法第四条第一項に基づき、真実でない事項の放送によって被害を受けた本人または直接関係人から請求がなされた結果でありますが、訂正放送が行われた件数については、平成八年度が十二件、平成九年度が十六件、平成十年度はまだ年度途中でございますけれども、六件ということでございます。
  49. 生方幸夫

    ○生方委員 放送法四条では、放送により権利侵害を受けた本人から請求があった場合に、放送事業者は調査をし、事実でないことが判明したときは訂正または取り消し放送をしなければならないというふうにしております。  しかし、今回のケースのように、テレビ朝日さん側はいわば放送事業者の方ですね、放送事業者の方がこれは誤りではないというふうに認めてしまった場合、放送により権利侵害を受けた方が請求をしたとしても訂正放送というのはなされないことになりますよね。報道をした側が真実であるのかないのかというのをチェックするというのでは、今のテレビ朝日さんの答弁を聞いておりますと、した側が真実であったというふうに言ってしまえば、幾ら真実でない報道だというふうに我々が理解したとしても訂正放送がなされないということになってしまうので、この放送法四条というのは不備があるんではないかなというふうに私は感じておるんですが、郵政大臣、いかがでございましょうか。
  50. 品川萬里

    ○品川政府委員 そもそもになるかもしれませんけれどもお答え申し上げますが、この問題は当事者間の話でございますから、まず当事者がお互いに理解し合うというのがこの訂正放送の前提になってございます。  したがいまして、一般的には、その当事者の話がまとまらなければやはり司法ということになろうかと思います。行政がその中でというのは一般的にとらない方法で、この問題についてはこの訂正放送制度が一般的にあり得る措置かなというふうに考えております。先ほどございましたように、その次にはBROという手だてが講じられている、それからまた司法制度というのがあるべき姿かなと思っています。
  51. 生方幸夫

    ○生方委員 私は、被害に遭った農家の方に電話をして聞きましたところ、現在訂正放送を求めるかどうか検討中であるということでございますので、訂正放送の請求があった場合は誠実に対処していただきたいということを要望申し上げておきます。  「ニュースステーション」そのものは、もともと、できた当時かたいニュースしかなかったところをやわらかいニュースニュースを身近なものにしたということで、私は高い評価をしております。ところが、しかし、回を重ねていくうちに、ニュースを身近なものにした、いわばおもしろければいいという面に非常に比重が移ってしまって真実を伝えるという面がおろそかに今なってしまっているんではないか、それが今回の報道にもあらわれているんではないかという懸念を私は持っております。  特に、あそこでは、キャスターがいてコメンテーターがいて、コメントをたくさん多用するというのが「ニュースステーション」の特徴でございますが、そのコメントをする場合も前提を非常に間違えていた上でコメントをするというケースが多々あるわけですね。  例えば政治家の株の問題が話題になったとき、「ニュースステーション」に出ておられるコメンテーターは、政治家はみんな株をやっている、だからけしからぬみたいな話を平気でするわけです。私個人に限って言えば、株は買ったこともないし、保有したこともございません。そういう政治家はたくさんいるわけですね。それにもかかわらず、一緒くたにして政治家はみんな株をやっている、その間違えた前提のもとにコメントをするというのは、これは極めて困ってしまうわけですね。我々はそのコメントに対して反論権はないわけですよ。そういうコメントが繰り返されることによって政治不信というのが非常に助長されているというふうに私は思うんですが、社長はいかがな御見解をお持ちでしょうか。
  52. 伊藤邦男

    伊藤参考人 お答えいたします。  「ニュースステーション」がそういう効果、いろいろな新しい、ニュースを身近なものにしたというねらい、これはもともと、先ほど早河が申しましたが、十四年前にスタートのときから、身近なものにしよう、中学生にもわかるそういうニュースにしよう、報道というものが決して無味乾燥なものじゃないんだよということでああいうことを始めた。それなりの機能は果たしているように思います。  ただ、今おっしゃられるような点、例えば今の政治家の株の問題でありますが、先ほども早河が申しましたけれども、この問題は別にあそこのキャスターが言ったんじゃなくて、そのときにゲストとして専門家と我々が想定した人を呼んできたところ、その方が言ったというので、ややそれがまた、キャスターがそう言ったんだというふうに印象づけられているところがありますが、事実はさようでございます。ですから、しかし……(発言する者あり)そういうふうに見えるという今声がありましたが、そういうところに我々は注意しなきゃならぬと思います。  したがって、私どもは、今委員のおっしゃるような点も十分注意してこれから先の「ニュースステーション」の番組づくりに生かしてまいりたいと思います。
  53. 生方幸夫

    ○生方委員 もともとのねらいは政治不信を解消するためということで政治の問題を取り上げていただいていると私も解釈しておるんです。  今度の国会におきましても、私、予算委員会におりまして、私の予算委員会の同僚を「ニュースステーション」が取材をいたしまして、予算委員会の前の質問取りから質問をして終わるというところを映したんですが、そのときのつくり方というのが極めてやはり意図的なんですね。  質問取りに来ました、役所の役人がそれをとってきます、それに基づいて小林委員質問をした、もうそのとおり読んでいますというコメントがついて、その読んだ質問に対して役所がそのとおり答えていますと。さも予算委員会そのものが茶番劇であるような取り上げ方をされては、私たち質問するためにやはり一カ月も二カ月も前から準備をして、質問を書いてそれを述べているわけですね。それについて大臣以下が真剣に答えているところをああいうふうに撮られて、さももうシナリオどおりに予算委員会はやっているんだとなってしまえば、私も予算委員会のメンバーの一人といたしまして、何のために予算委員会をやっているんだという印象を国民は広く受けてしまうわけですよ。  これでは政治不信を解消するどころか政治不信をかえって深めちゃうことになるんじゃないかと思うんですけれども、その番組について、社長、どのような御印象をお持ちですか。いや、社長にちょっと伺いたいんですが。
  54. 伊藤邦男

    伊藤参考人 その辺のところは、政治の大切さということは私もよく存じております。若い連中がいろいろ番組づくりに参画しておりますから、多少そういう雰囲気があろうかと思いますが、今のおっしゃられたことを私ども持ち帰りまして、きちんとまた伝えます。それで、「ニュースステーション」の番組づくりに当たっては慎重にするようにときつく申し伝えることにいたします。
  55. 生方幸夫

    ○生方委員 当然、先ほども指摘がございましたように、報道の自由というのはテレビ放送事業者の自律というものがあって初めて成り立つものだというふうに私は考えております。  今度の番組につきましても、テレビ朝日の審査機関一つである番組放送審議会というのが取り上げて論議をしておりますね。これをちょっと拝見させていただきましたが、ダイオキシンを取り上げたのはよかった、何でこんなに騒がれるのかわからないというような審議の内容なんですね。これでは外部からきちんとした批判を受けるということに私は、もちろんそうそうたる有識者の方たちがそこに並んでおるんですけれども、もっと、むしろ、一般の視聴者意見はそうでは必ずしもなかったわけですから、一般の視聴者の方たち意見も聞くような体制というものをとって、報道の自由というのを外部からも内部からも厳しくチェックをするべきだと思うんですが、最後にそのお答えをいただいて私の質問を終わらせていただきます。どうぞ。
  56. 伊藤邦男

    伊藤参考人 確かに、郵政省に提出いたしました番組審議会のメモがございますが、それにはそういうふうな趣旨のことが書いてありますが、あのときにまず最初に、確かに、今度のものは意図はよかった、ダイオキシンの重大さというものをしたのはいいんだけれども、だけれども、これはこういうところの間違いを起こしたのはいけないよ、これはもう厳しくしかられました。そこのところは私どもすべて、この隣におります早河もそれから番組制作責任者も同席しておりまして、そういうことを厳しく承っておりますので、それが番組審議会が非常に甘いとかそういうことはないと思って、私どもはそのように厳しく受けとめているつもりでございます。
  57. 生方幸夫

    ○生方委員 テレビは第四の権力というふうに言われているわけですから、権力の行使に当たってはやはり十分に権力を行使された側のこともお考えいただきたいということを御指摘申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  58. 中沢健次

    中沢委員長 伊藤忠治君。
  59. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 伊藤でございますが、まず初めに、参考人各位には大変御多忙の中御出席をいただきまして、心からお礼を申し上げます。  今も同僚委員のお話を聞いておりまして、質問の中身を少し変えなきゃいかぬかな、こう思っておるんですが、時間も限られておりますが、まず冒頭に私の感じを申し上げさせていただきます。つまり、虚偽放送であったかなかったか、しかし、それは部分はそうかもわからないけれども全体としてはそうじゃないというような御答弁があったように思います。  これは解釈をめぐってなかなか時間もかかると思うんです。しかし、ここが非常にポイントでありまして、訂正放送がなされるかなされないかということは、つまり、社会的に及ぼす影響が非常に大きい報道メディア世界のことでございますから、時間がかかってはいけないわけで、被害者の皆さんというのはそれで自分の人生が変わる場合だってあるわけですから、あるいは組織の皆さんは組織の存在を問われるという場合だって起こり得るわけですから、このことが非常に隘路だとするならば、今日の現存します放送法あり方についてもう一遍根本から議論をしなければいけないのかな、私はこんな気持ちが非常に強くしているわけでございます。  郵政省に対して殊さらきょうは答弁を求めるという気はなかったので、そのことは私の見解だけにとどめてはどうか、こう思っているわけですが、そこまで発展するということを放送事業者の皆さんもきちっと認識をしていただかないといけないと私は思うんです。  放送法の現在の性格は、これは基本法的なものなんですよ。そうでしょう。手続の面だとか、あるいは、それに違反した場合には罰則規定をどういうふうにするかということは極めて抽象的でございます。それはやはり、報道の自由、これは基本的人権の問題もございますが、社会的に、憲法に規定をされております保障の問題がございまして、非常に重視をしているから放送法の体裁といいますか形がそうなっていると私たちも受けとめて、そのように尊重しながら国会の場でも事に当たってきたということを十分御理解をいただいておかないと、議論がすれ違うと思います。その点をまず冒頭に申し上げたいと思うのです。  私、きょう、短い時間でしたが、自分から能動的に質問をさせていただきたいと思いましたのは、昨年の五月二十七日に、デジタル放送をめぐりまして、放送あり方について、各社から社長さんを初め業界の代表の皆さんにもお出ましをいただいて、御意見を伺う場がございました。そのときに、私は、各社社長さんに対しまして、伊藤社長さんも御記憶に新しいと思いますが、放送事業者にとって見識とは何なのですかと。恐らく見識は各社お持ちだと思いますが、見識とはどういうことなんでしょうかということをお聞きしたことがございます。五月二十七日でございます。  それに対して伊藤社長さんは、このようにお答えをいただきました。放送は市民にとって最も身近なメディアであり、社会的影響力が極めて大きいことを前提に、放送公共使命を自覚し云々と。私どもは、極めて厚いハンドブックみたいなもので社内の徹底を図っております、このようにお答えいただきました。後でも申し上げますが、TBSの砂原社長さんは、平成九年九月に、上越市におきます処理場の解体工事をめぐってトラブルが起きました、これらについては、公正、公平に取材をして報道したので御指摘のようなことはないと思っております、これが見識を述べられた後の具体的なトラブル事件に対するお答えでございました。  にもかかわらず、今回のテレ朝のダイオキシン報道の謝罪問題でございます。TBSの、上越市におきます廃材不法投棄に関する「報道特集」の謝罪問題が起こっているわけですね。  これは、これからもやはり起こっていくのでしょうか、こういうトラブルというのは。もう御反省をいただいて、自浄能力、自浄作用をきちっと確立をいただいて、もう絶滅されると理解していいのでしょうか。またこれからも起こるのでありましょうか。私の気持ちは、このような状況では、また起こるんじゃないかと思っているのです。こういうトラブル、問題がこれからもたびたび積み重なっていくとするならば、これはもう看過できないところにいってしまうんじゃないかという心配がございますので、そのあたりの、これは決意といいますか、決意しかないと思うのですが、そのあたりをちょっとお聞かせをいただきたい。  それは、きょうお越しいただいておりますが、民放連の専務理事さんと、それから朝日放送伊藤社長さんにお伺いできればよろしいかと思います。
  60. 伊藤邦男

    伊藤参考人 起こしてはならないというふうに改めて思います。  この件につきまして、実は、報道局長に厳しく注意をいたしました。そして、私の方の処罰規定はございますが、処罰規定ではなく、つまり、処罰規定で申しますと、軽いものから、譴責から降格みたいなものまであるのですが、それでやりますと、それで終わったというふうに思われてはいけないので、そういうことじゃないんだ、これを教訓として、起こしてはいけないということをきつく言ったわけであります。  恐らくこれから、今この席で皆さんも聞いていただきましたように、私の社員も聞いております。恐らく、これを厳しい自戒としてまいると思いますので、起こしてはならないと改めて徹底するつもりであります。
  61. 酒井昭

    酒井参考人 ただいまの御指摘でございますが、上越の問題は、一年ぐらいかかって、それで今釈明の段階に来つつあるのじゃないかと思いますけれども報道の仕方について、それぞれの報道マンが着実に、確実に取材しているかどうか。  先ほども申し上げましたように、民放連としては、報道研修会というのを設けておりまして、現場の皆さんとそれぞれの分科会、報道節度とか倫理だとかプライバシーとか人権とか、そういうふうな分科会を設けて趣旨の徹底をしておりますので、これからは私はないと思いますし、絶対にそういうことを起こしてはいかぬ、報道マン倫理向上ということについてこれからも絶えず周知徹底してまいりたいと。  以上でございます。
  62. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 起こしてはならないという非常に強い決意をいただいたわけですが、この点をそれではお聞きしますので、教えていただけますか。  BRCが設置をされているわけですけれども、一義的には社内対応になるわけですね、トラブルが起こった場合には。それで、社内の苦情処理体制はどのようにつくられておりますのか。  これは、まず民放連の専務さんから全体のことを、具体的になれば伊藤社長さんの方から、我が社としてはこうなんだということをお聞かせいただければありがたいと思うのですが。
  63. 酒井昭

    酒井参考人 冒頭に申し上げましたように、一般的に、社内的には、苦情処理のために、これは視聴者情報センターというものが受け手でございます。そこで回答するわけですが、制作の機微に触れる細かい事柄につきましては直接担当者がお答えする場合もありますけれども、社内で取材しながら視聴者情報センターのキャップがお答えする、あるいは考査セクションがお答えするということでございまして、その苦情の中身については、局長会といいますか、それぞれこういう問題が発生しているということは上層部の方に伝えられております。  社によっては十人ぐらいいるところもありますけれども、ローカルではそんなにスタッフは多くはございませんけれども、それぞれ真剣にお答えするような形になっておりますが、若い社員はまだ応対の仕方が必ずしも丁寧ではございませんで、乱暴な人もないわけではございませんが、それを修正といいますか、改善するように、社の上層部が社員教育という形で、苦情処理に当たっては丁寧にかつ親切にやるようにという指示をやっておりますので、一般の視聴者に迷惑をかけないように努力している段階でございます。  以上でございます。
  64. 伊藤邦男

    伊藤参考人 先ほど、これを起こしてはならないと申しました。それはもちろんでありますが、さらに加えて言いますと、これをもし起こすようなことがありますと、先ほど御指摘がありましたような、結局は放送法の改正だとかあるいはそういうふうに発展しないとも限りません。それは結局私どもが、テレビ朝日が問題の口を開いたということにもなります。私ども責任にもなります。でありますから、なおさらこれは起こしてはならないということを徹底するということを申し上げたわけであります。  それでは、社内的には、視聴者からそういったたぐいの苦情があった場合にどうするのかということですが、これはまず、日常的に社内に生番組モニターというベテランがおりまして、それが終始ウオッチしております。何か問題が、例えば言い間違い、あるいはこれは事実と違うよ、あるいは歴史的に間違った事実を言ったというような場合には、直ちにそれを現場に伝えます。それが必ずしも機能しないという残念なところがありますが、そういうことをやっております。さらに、今度問題が発生した場合、そのように外部から……(発言する者あり)ですから、正しい番組づくりのために努力しているという一つの例として申し上げたわけであります。  そして、例えばいろいろな苦情などが視聴者から参りました場合には、役員、局長クラス、顧問弁護士で構成いたします放送人権に関する委員会というのがございます、そこでまず検討いたします。さらにその下に、下部機構として緊急対策会議、編成部長をキャップとする会議がありまして、そこで対応いたします。  そういうところが常時こういう問題が発生しないように努力をしているわけでありますけれども、今御指摘のようなことがありますので、改めて徹底するように努めることをお約束いたしまして、お答えとさせていただきます。
  65. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 続いてお伺いしますが、年間に何件ぐらい社に持ち込まれておりますか。しかも、その内容はどういう内容になっていますか。情報公開というのはやらずに、それはもう社内の問題だから、自分たち処理をしたらそれで終わりということなのか、こういうことで扱いましたよということは何らかの格好で公開をされているのでしょうか。この三点についてお伺いをいたします。
  66. 伊藤邦男

    伊藤参考人 苦情その他あるいは批判、そういったものはどういうものがあるかということは、毎月開かれております番組審議会に報告しております。ただいまその数字は持ち合わせておりません。
  67. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 番組審議会といいますと、どこになりますか。
  68. 伊藤邦男

    伊藤参考人 当社番組審議会、これは放送法によって決まっておりまして、委員長が三浦朱門さんであります。
  69. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 件数はわかるでしょう。
  70. 早河洋

    ○早河参考人 私ども視聴者センターというところにたくさん電話が入りまして、これは、番組テーマとか、番組によって大変違いますけれども、感想とかいろいろなものが入ってまいります。  正確な数は今掌握しておりませんが、最近の例で申し上げますと、明らかな苦情ということでいいますと、サンディエゴの大学の事件がございます。これは、私どもの会社だけではございませんが、当事者間で話し合いがつかずに、BROの方に行っております。それからもう一つは、帝京大学の事件がございまして、これも各社と当事者の間の話し合いがつかず、BROの方に回っているということでございます。
  71. 伊藤忠治

    伊藤(忠)委員 これは社会的に大変なトラブルの事件だという場合は、皆が注目をしますし、それなりに事業者の皆さん対応なさるからわかるのですが、私が言いたいのは、そういう大きな問題は氷山の一角で、むしろ、いろいろな日常の電波が流れているわけですから、放送が流れているわけですから、その過程で人権の問題だとかさまざまな被害の問題があると私は思っているのです。  言うならば弱い立場の人は、言って問題の解決を迫るということはなかなかできないわけで、そういう皆さん方の問題はむしろ非常に重要なんでありまして、そのことに目が届かないと、情報化社会の影の部分は切り捨てるような格好でいったって、これはやはり社会の文化なり発展のためにはならないわけですから、そのことを非常に重視するのです。そういう積み上げというかベースの上に、今回のトラブルがなくなっていくという自浄能力というのでしょうか、自浄作用というものの体制が確立されるのではないでしょうか。  私はそう思っておりますから細かくお聞きをしたのです。それは、今も報道局長言われましたけれども、余り把握されていませんな、今のお答えを聞いて。まあ忙しいこともあるのでしょう。人も非常に切り詰められていることもあるのでしょう。しかし、それではいかぬと思うのですね。そういう処理の部署、組織体制、ちゃんとその辺の人の配置もして、きちっとやっておくということが大事じゃないでしょうか。でないと、みんな泣き寝入りになりますよ。報道の過程でいろいろなことがあるじゃないですか。  時間がありませんからもうこれでやめますが、最後に、社長にお伺いしたいのですが、やはり訂正放送はやられませんか、やられますか。そのことについて答弁をいただきたいと思います。
  72. 伊藤邦男

    伊藤参考人 先ほど、もし訂正放送要求が出たらどうかという御指摘もありました。そういう場合には、私どもはそれを真剣に検討させていただきます。
  73. 中沢健次

    中沢委員長 福留泰蔵君。
  74. 福留泰蔵

    ○福留委員 公明党・改革クラブの福留泰蔵でございます。  本日は、参考人の方々におかれましては、大変お忙しい時間、当委員会においでいただいて、貴重な御意見を賜ることができました。まず心からお礼を申し上げたいと思います。  きょうは、参考人の方々から、放送あり方ということで、さまざま御意見を伺いました。特に、具体的な問題として、二月一日のテレビ朝日の「ニュースステーション」における報道について、この問題の提起がなされて、そして当委員会が開かれたかのように承知しているわけでございますけれども、私はまず、今回のこのダイオキシン報道放送あり方についての問題提起をしたということで理解をしております。  そして、今回のテレビ朝日ダイオキシン報道につきましては、先ほどテレビ朝日さんの方からも意見の表明がございましたけれどもダイオキシン問題について所沢の周辺の市民の方々が不安を持っていらっしゃった。そして、データが公表されなかった。そして、行政対応がおくれていた。そこに対して、あの放送がなされたことによって大きな前進が見られたということは、大きく評価されていいものだろうと思う次第でございます。しかしながら、こういう問題が起きたということでございますので、この際、放送あり方ということで、いろいろ質疑をさせていただきたいと思う次第でございます。  基本的に、報道の自由というもの、先ほど参考人からも御説明がありましたけれども報道の自由を守るということと、憲法でうたわれております基本的人権を守るということが、何か大変難しく、両方を守るということが困難な状況がある。そういう中で、この二つをどうやって守っていくかということは、この民主主義社会にあって、大変大きな課題だろうと私も思っているわけでございます。  そういうスタンスから、きょうは参考人の方々と、意見をお伺いしながら、現状のさまざまな仕組み、先ほど苦情処理機関BROのお話もありましたけれども、そういう面から、もっといいシステムはないのかということを考える機会にこの委員会をさせていただきたいと私は思っているところでございます。  まず最初に、この取っかかりとなりましたダイオキシン報道の問題について、若干確認をさせていただきたいと思う次第でございます。  先ほども若干説明があったわけでございますけれども、編集権がだれにあったかということが一つの課題でございます。あわせて、最終的にあの報道というのは、具体的に結果として明らかな間違いは、パネルに野菜と表示したということだろうと思いますが、パネルに野菜と表示するに至る経緯がどうなっていたのか。だれの責任であそこに野菜と表示したのか。先ほどの御説明によると、そのデータ自体が、中身がそれぞれ何なのかというのを承知しないで放送されたというお話がありましたけれども、この点をまずお伺いしたい。  あわせて、あの放送をするに至る経緯の中でさまざま議論があったのだろうと思います。このダイオキシン問題を提起することによって、所沢の市民の方々の不安を取り除く、それから行政対応に対してそれをまた促進していくというふうな、公共福祉に対してそういう観点からの判断でなされたと思いますが、当然その中で、今回結果としてあらわれております、具体的には農家の方々への被害が出ているわけでございますけれども、そこのところをどのように考慮されたのかということを、まずテレビ朝日さんにお伺いしたいと思います。
  75. 早河洋

    ○早河参考人 先ほどの発言と重複してしまうかもしれませんが、昨年の夏前からの企画でございまして、十一月ごろ、担当部長と今回の担当者、プロデューサーも入っておりますけれども、野菜という問題を扱う場合には、非常に影響が大きい、慎重にすべきだという意見と、やはり問題のありかを、どちらかというと鋭角的にやるべきだというような議論がありました。  年が明けまして、この企画が最終確定したのは、一週間ほど前でございますけれども、その際に、さっき申し上げました担当者は、青山所長とのやりとりの中で、数値というものが高いという認識と、ホウレンソウを含む複数の野菜という認識を持って、そのまま図表の作成の段階に至ってしまった。  そういう意味では、所長にしっかりと、見出しを、所長が指摘しているような葉っぱ物とか農作物というふうにすべきだったにもかかわらず、その部分において確認が不十分であったために野菜という表示になってしまった。野菜ということによって、三・八があたかもホウレンソウを含む野菜というふうに受け取られてしまったというようなことが正直なプロセスでございます。
  76. 福留泰蔵

    ○福留委員 野菜という表示について確認が不十分であったということなんですが、今後のこともありますのであえてまたお尋ねいたしますけれども、だれの確認が不十分だったのか、どの段階の確認が不十分だったのか。調査報道番組制作についてのいろいろな過程があると思うのですけれども、どの段階でこの確認が不十分だったのかということをお尋ねしたいと思います。
  77. 早河洋

    ○早河参考人 最終局面ということになろうかと思います。  つまり、十一月に行われたような議論というのは夕方の段階からございまして、最終的にプロデューサーの判断で数値を速報的に扱おうということで、慎重にすべきだという意見、これは複数。それから、JA所沢にオープンにしなさいと情報開示を求めている以上、みずからもそのことを知った以上は、そのことをやはり出すべきだという意見がありまして、最終的にプロデューサーの判断で数値の公表になった、こういうことでございます。
  78. 福留泰蔵

    ○福留委員 基本的に、さっき社長の方からもお話がありましたけれども、今回の一日の番組については不適切であったけれども所沢農家の方々に御迷惑をおかけしたことについては謝罪をするけれども番組全体としては、社長の御発言によると、虚偽ではなかったということでございますね。  そうしますと、基本的にこういう放送が、再度同じようなものが、別の種類のものでも結構ですけれども、行われてはならないというふうにお考えであると思いますけれども、そういう面においては、この問題のどこが再度行われてはならないのか、今回の放送教訓にどのようにこれからされていくのか、それを具体的にお伺いしたいと思います。
  79. 伊藤邦男

    伊藤参考人 確かに、新聞と違います。放送というのは、とにかく忙しい仕事であります。いきなり出てしまうとそれっきりだということがありますが……(発言する者あり)
  80. 中沢健次

    中沢委員長 静粛にしてください。
  81. 伊藤邦男

    伊藤参考人 ということでありますが、だからといって、そこのところでいいということにはならない。影響力が大きくあればこそ、そこは注意しなければならないと思います。  したがって、今回も、記者会見などでも新聞記者の方から、なぜ、調査報道であるならばなおさら、そこのところをきちんと調べないでやったというのは問題なのではないかという御指摘もありました。  そういうことを教訓として、確かにおっしゃるところ、言われるところ、御指摘はもっともな点がたくさんありますので、そういうものを含めて、これは目的さえよければいいのだというようなことではだめだよということで、我々もこの際、これから先やる場合にはそういうところを十分注意しようではないかということをこの間から言い暮らしているところでございます。
  82. 福留泰蔵

    ○福留委員 今ちょっと答弁をお伺いして、はっきり具体的にわからなかったのですけれども、今回の二月一日の放送のどこがまずくて、その原因はどこにあって、そういうことが二度と起こらないためにはこうしますというのをもっと具体的にちょっと教えていただけますか。
  83. 伊藤邦男

    伊藤参考人 先ほど早河が申しましたように、国会の審議の流れの中で、データを公開しろと我々が迫っている。迫っている以上、一方で我々が得たものをそのまましまっておく、公表しないというのは、やはり筋が通らないのではないかということで、やはり出した方がこの際事態を前進させるためにいいのではないかという判断でやったわけですけれども、しかし、その意図さえよければいいということではないのだ。そこのところで、被害を与えるようなことがあってはならない。そこの、例えば三・八が何かということについての詰めが甘かった、そこは明らかですから、そういうことを二度としてはならないということであります。そういう注意をしようということであります。
  84. 福留泰蔵

    ○福留委員 今回の問題については、ダイオキシン問題について大きな前進が図られたという意味で大いに評価されるべきだろうと私は思います。ただ、ちょっと不十分な表現があったためにさまざまな批判を浴びている。ですから、そういう不十分な点があったことを率直にやはり反省されて、決して萎縮する必要はないと私は思うのです、こういう調査報道自体がマスコミの使命だと私は思いますので。  ただ、報道の自由というもとで、ぜひ公共福祉のために、その大きな使命のもとでこれからやっていただくということが必要だと思いますが、その前提としてやはり今回の反省というのを十分生かしていただきたいと思っているところでございます。  それで、実は、今回のテレビ朝日ダイオキシン報道問題について、私が今回皆さんからさまざまな御意見を賜りながら議論したいと思っているのは、先ほどからいろいろ御意見も伺いましたけれども、こういう放送によって、誤ったと受けとめられる放送がなされたときに、さまざまな権利侵害される、その侵害の回復というものをどのように行っていくのかというシステムの問題でございます。  先ほど来参考人の方々からの御意見の中でも、一義的には放送法の第四条がある。これで訂正放送を求める。これは、その当該の本人かまたは関係者がテレビ局へ申し立てて、テレビ局の方でそれを審議した上で、誤ったというふうに認定されたときには訂正放送を行うという制度であります。それから、その前の段階として、それぞれの放送局の中に苦情処理の体制があるのだろうと思うのです。そして、今の放送法第四条の仕組みがある。そして、きょう参考人お見えいただきましたけれどもBROという仕組みができたということだろうと思います。  実は、BROができて今二年でありますけれども、まず、きょうBROお見えでございますが、今回のダイオキシンのことを例に取り上げさせていただくのですけれども所沢農家の方からこの問題について、この件が持ち込まれたと仮定してですが、BROとしてはこれは審理の対象となる案件なのでしょうか。
  85. 清水英夫

    清水参考人 申立人が、被害をこうむったとされる農民の方であるのか、あるいは農協であるのか、その他の方であるのかによって、対応はそれぞれ違ってくると思います。ただ、一般論、抽象的に申し上げれば、放送によって権利侵害されたと思われる人はBROに申し立てることができます。ただ、今回の問題についてどうかということを、私、委員長立場として具体的にお答えするのは差し控えさせていただきます。
  86. 福留泰蔵

    ○福留委員 BROに対する私の理解を申し上げると、こういった、特に人権中心とした権利侵害について申し立てがあったときにそれを審査するというふうに理解しているわけでございますが、権利侵害というのは、具体的な権利ですから、その気になれば法的に訴えることができるわけですね。BROの中で明らかにこれは権利侵害であると認定するというのは、これは裁判所で認定する以上に難しいことじゃないかなというふうな気がしておるわけでございます。  私は、第三者機関の必要性というのは、権利侵害じゃなくて、報道の、放送というか、こういった倫理侵害に関して審査をするというか、そこで、放送した側とそれによって被害を受けたという側がお互いに意見を開陳し合うというふうな場の方が大事じゃないかなと思っているわけでございまして、BROは決して裁判所じゃないと思いますので、具体的な事例について判断を下すのはなかなか難しいかと思います。  ただ、実際のところは、報道される側と報道する側がいて、報道する側は情報伝達能力においては大変な強者であります。報道される側は弱者でございます。一方的に報道された側の言い分というのがなかなか伝わらない。ひとしくやはりお互いに意見を開陳し合って、それをまた同じ土俵の上で意見を述べ合って、それをある程度の方々に知っていただく場をつくっていくのが必要じゃないかと思う次第でございます。  先ほど清水委員長の方からは、BROについては世界に例がないというお話でございました。こういう機構については世界に例がないと思いますが、イギリスの例も御説明なさったのですけれども、アメリカの報道評議会というものがあるのを委員長は御存じでしょうか。
  87. 清水英夫

    清水参考人 報道評議会につきましては、そのような組織が世界的にあることは承知しております。ただ、それが法的に設立されたものというものは、イギリス苦情処理機関であるBSC以外にはありません。
  88. 福留泰蔵

    ○福留委員 アメリカのミネソタ州の報道評議会が一番何か画期的に活動をやっている。これはマスコミもお金を出していますし、それから一般の方々も寄附金を出す、それから財団等も、団体も寄附金を出して運営がなされている。そして、その委員の構成は、そういうマスコミ関係の十分な経験を積んだ人、それから一般市民の代表を交えて委員が構成されている。財源も幅広い、また委員の構成も市民の代表も入れているという形でありまして、これは報道する側が自主的につくった機関だというふうに承知しております。  恐らく、こういう報道評議会みたいなものが日本にあったら、今回の例はそこに持ち込まれて、それぞれの言い分、恐らくテレビ朝日さんのさっきのお話を聞いていても、自分たちは、若干不十分な点はあったけれども、正しい報道をしたんだというその確信が放送当時もおありだったし、今もおありだと思うのです。それはそれで結構なことだと思う。それについて、実は違うんだという方々もいらっしゃる。それが、ひとしく意見を開陳し合う、それが虚偽であったか虚偽でなかったかという判定をそこで下す必要はないんだと思うのです。そういう意見が自由に闘わされる場があってこそ本当の民主主義ではないか。  それが実は日本の中にないことが問題であって、口幅ったい申し上げ方をすれば、何か問題があるたびに、放送局の方々が国会に呼ばれて何か意見を述べていただく、そしてそれで質疑をするという形は決していいものではないと私は思っている次第でございまして、これはぜひとも、報道する側、放送する側が主体的にこういうものをもっとつくる必要があるんじゃないか。  BROという機構ができておりますけれども、私はBROができたことは結構でありますけれども、まだまだ不十分だと思っているわけでございまして、BROをもっとさらに発展的に拡大していただいて、先ほど申し上げました、権利侵害ではなくて倫理侵害みたいなものまで含めて審査をしていただく、そして、それぞれの意見を述べ合っていただくような機関にしていただければと思っているわけでございますが、この点について御意見があれば。
  89. 清水英夫

    清水参考人 先ほどの報道評議会でありますけれども、これは放送に限らず、メディアによる報道の問題を審議するわけでありまして、そのような機関を市民を中心にしてつくるべきだという意見はかなり我が国でも唱えられております。十分検討に値する問題であろうかと思います。  それからBROBRCは、放送による権利侵害を受けたものということになっておりますけれども、私ども権利侵害というのを、いわゆる法律論的に言う権利侵害よりも広く考えておりまして、放送倫理に問題があったかどうか、なかったかどうかということも検討しております。過去二つの決定はいずれも、権利侵害とまでは言えないけれども報道倫理上問題があったという判断をしております。今後も、BROBRCといたしましては、そのような法律論だけではなくて、もう少し幅広く続けていきたいと考えております。  ただ、裁判所が判断する権利侵害に比べて難しいのではないかという御指摘はそのとおりでありますけれども、同時に、裁判に訴えればお金もかかりますし、時間もかかります。その点、BROBRCは迅速に、裁判審理に比べればはるかに迅速に、また無料で申し立てることができるという利点もあります。また、法律的な判断も、委員のうち四名は元最高裁判所判事を含む法律家でありますので、法的な判断をすることにおいて能力が欠けているというふうには考えておりません。
  90. 福留泰蔵

    ○福留委員 ぜひとも、今まだ生まれて二年でございますので、これが健全に成長して発展していくように期待をしております。  実は、BROのこともそうでありますけれども、私がちょっと問題意識を持っていますのは、今回のような、ある放送によって権利侵害されたと思う方々は多数いらっしゃると思うのですね。その方々が、その自分たちの思いというものをどうしていいのかというのがわからない人の方が大半じゃないかと思うのです。放送法の四条があるということも、一般の国民の方々はほとんど知らないんだろうと思います。ただ、ある特定の人たちだけが多分テレビ局に電話するぐらいのものだろうと思うわけでございます。  BROができたこともどれだけの方が御存じなのか、余り十分ではないと思うのですけれども、私はもっと、放送法の四条というのがあるんだとか、何か放送について御不審、御不満があったらここにどんどん電話してくださいとか、ここに意見を言ってくださいみたいなものを国民皆さんに広く周知することが非常に大事じゃないかなと思うわけであります。  テレビ朝日さんの今回の報道についても、信念を持って公共福祉のためにということで放送された、それはそれでいいんだと思います。ただ、その中で、そのときに何かやはり、これに対して不満があったら、自分たち考え方と違うものがあったらぜひここに言ってくれというものを提示しながら自分たちの信念を言うということが大事だろうと思う次第でございます。先ほど来もいろいろ議論がありましたけれども、キャスターなりコメンテーターが自由に意見をおっしゃっていただく、それは民主主義だから結構だと思いますが、それに対して、きちんとここで受けますよというものを、意見についてはここでしっかり受けていきますよというものを提示して、自由に意見を言っていくということが大事なんじゃないかと思う次第でございます。  時間が余りないものですから、最後に一言だけそのことで御意見を伺いたいのです。  まず、テレビ朝日さんと民放連、それからBRO郵政省に一言ずつ聞きたいのですけれども、この件について、例えばテレビ局として、今ドラマなんかでは、これはフィクションですというようなことをスーパーで最後に出すようになっていますよね。ただ、例えばニュース番組等で、何かこの番組についての御不満がありましたら、放送法四条があります、それからBROがあります、当社苦情処理電話番号はここですというのを提示して、堂々とそれで自社の調査報道に基づく放送をなされたらいかがかと思う次第でございます。  この点についてのテレビ朝日さんと民放連のお考えと、それからBROについては、もう少しBROのPRをやっていただきたい、それをお願いしたい。それから郵政大臣には、放送法四条をもうちょっとPRすべきではないかと、ちょっと簡単に一言ずつお願いします。
  91. 伊藤邦男

    伊藤参考人 今の御指摘の御提案でありますが、私、検討させていただきます。  それからもう一つ第三者機関でいろいろと御議論をする、これも確かに必要なことでありますが、何はともあれ、それは各社、私どもが、テレビ朝日自身が、そのために問題を起こさないようにということを徹底することが、それが結局は第三者あるいは外からの関与を防ぐ道でもあろうと思いますので、放送法というものが放送事業者の自律ということをうたっておりますので、それを確保するためにも我々はそういうところを気をつけなければならないと改めてお話を伺いながら感じた次第でございます。
  92. 酒井昭

    酒井参考人 報道のドキュメンタリー番組では、それぞれ御意見、御感想、苦情がありましたらというスーパーで入っているのがかなりございます。ただ、全体の放送時間から見た場合にどれだけの時間量か、それは把握しておりませんけれども、例えば、TBSさんの「報道特集」だとか、あるいは日本テレビさんの深夜の「ドキュメント'99」、これは終わりのところに御意見、御感想等をお寄せくださいということをやっておりますので、その番組を見て、自分の権利侵害をされた場合には放送局にクレームをつけるといいますか、電話なりファクスなりで自分の考え方を述べるということはようやっていると思いますし、先ほど申し上げましたように、それぞれの在京局の朝の、日曜日あるいは土曜日でございますけれども、そこで苦情処理の問題もPRしてございます。  その中では、BROさんのテロップも出ておりますし、番組の中身につきましては、番組審議会の模様を伝えておりまして、ここではこういう意見があったと、それから視聴者からの苦情については、はがきを紹介して朗読しながら、これについてはこういう対応をしているということもやっております。ただ、時間帯が早いということで目に触れない面が多いかと思いますけれども、これは今後徐々に検討させていきたい、そういうふうに思っております。
  93. 清水英夫

    清水参考人 BROBRCの存在を周知させることでありますけれども、発足以来パンフレットを一万三千部、英文パンフレットを四千部、各放送局を通じて配布しております。  また、昨年からCMをつくりまして、放送局の御協力を得まして、テレビ、ラジオでおよそ四万回スポットで放送しておりまして、これはかなり効果を上げていると思います。来年度もまた新しいCMをつくる予定であります。  それから、四月から機構のホームページを開設いたしまして、この中には、組織の概要、申し立て手続、規約、運営規則、委員会決定などを盛り込むことにしております。そのほか、委員会決定がありましたときは、その都度記者会見を開きまして、質問を受け、お答えするということにしております。当委員会は情報公開を原則としております。
  94. 野田聖子

    ○野田(聖)国務大臣 訂正放送制度の周知についてですけれども郵政省としては、一人でも多くの方に御理解いただくために、平成八年度以降、ポスターとかパンフレットを配布しています。具体的には、郵便局とか放送事業者、地方自治体等にお願いしているわけですけれども、正直、私自身、ではそれだけのものを、日ごろポスターを見ているかというと、見ていないことが多いわけで、これに対しては反省をしておりますし、これから周知徹底の方法をまた検討していきたいと思います。また、放送事業者の皆さんとも連携してまいりたいと思いますので、また先生の御指導をよろしくお願いいたします。
  95. 福留泰蔵

    ○福留委員 どうも本日はありがとうございました。
  96. 中沢健次

    中沢委員長 矢島恒夫君。
  97. 矢島恒夫

    ○矢島委員 参考人皆さん、本当に御苦労さまでございます。日本共産党の矢島恒夫でございます。  最初に清水参考人にお尋ねしたいのですけれども放送人権等権利に関する委員会機構BROですね、これが九七年六月に発足いたしました。間もなく二年になろうとしております。このBROは、報道の自由と基本的人権の擁護、さらにまた、正確な放送、そして放送倫理の問題、こういうものの高揚に寄与するということで自主的に設立されたものだと思います。  今まで電話だとか手紙だとかファクスだとか、または直接いらっしゃる方もおると思いますけれども、たくさんの問題が寄せられていると思います。BRCで取り扱う苦情の範囲というので、放送法令、番組基準にかかわる重大な苦情、特に権利侵害にかかわるものと規定しているようであります。先ほどのお話の中で、苦情件数、ちょっと私メモするのがおくれたのですが、二千七百六十四件、そして、その中で権利侵害は五%ぐらい、こういうお話がありました。  そこで、番組に対する苦情というのが非常に多いんだということですが、この番組に対する苦情に対して、BRCとしてはどういう処置をとられているのかということが一点です。それからもう一つは、団体からの苦情の取り扱い、これはどうなっているか、お聞かせいただきたいと思います。
  98. 清水英夫

    清水参考人 先ほど簡単に申し上げましたけれども、総数のうち約五%、九十件が権利侵害委員会の審理を要すると思われる件数でございますが、そのうちの大半は今もって放送局との話し合いが熟していないと判断しておりまして、それらをクリアすれば申し立てに入ってくると思います。  それから、放送番組に対する苦情でありますけれども、全体では約四百件でございまして、問い合わせの二五%は放送番組に対する苦情であります。そのうち放送全般の苦情、要望などは全体の三%、報道番組苦情、要望などは二%弱、それから娯楽番組苦情、要望などは六%、娯楽番組苦情が比較的その中では多いということでございます。  それから、放送番組苦情につきまして、現在BROの能力としては、それを個別的に取り上げるということは委員会レベルでは難しいので、すべて事務局におきまして、その苦情は当該放送局に行くべきである、あるいは民放連に行くべきである、あるいは放送番組向上協議会が適当であるというような回答はしております。  以上でございます。
  99. 矢島恒夫

    ○矢島委員 もう一つ質問します。今お触れにならなかった団体の取り扱いは——後で結構です、私、二つやりますから。  それで、それと一緒にお答えいただきたいのは、BRCの活動に対しては、たくさんの人々が関心と期待を持っております。ですから、委員皆さん方は本当に大変なお仕事をされていらっしゃると思います。私、もう一つ聞きたいのは、人権侵害の救済というのと、それから番組の質的向上、この中でのBRC役割、これらについてどのようにお考えかをお答えいただきたいと思います。
  100. 清水英夫

    清水参考人 先ほどの団体の苦情でございますけれども、規約上は個人、団体を問わず申し立てることができるということになっておりますけれども、当面の方針といたしましては個人を中心にしたい。法人でも個人に近い法人、人格なき社団を含めて、それは既に取り上げております。ただ、大きな法人等につきましては、必ずしもBRCではなくとも十分対応できる力をお持ちなので、それらについてはもう少しBRCBROの力が整った後というふうに考えております。  それから、全体の番組向上につきましては、これはほかに、例えば民間放送連盟放送番組調査会あるいは放送番組向上協議会のような組織がありまして、そちらの方がむしろそれに当たるべきであろうというふうに思っておりますが、今後は、それらの組織が一本化すれば一番よろしいんでしょうけれども、一本化しないまでも、それぞれが連携して、分野を決めて当たるということをもう少しはっきりさせるべきであると個人的には考えております。
  101. 矢島恒夫

    ○矢島委員 さまざまな苦情やあるいは意見等も寄せられているんだろうと思います。  そこで、私は「汚染地の苦悩—農作物は安全か—」というあのダイオキシン問題の放送について質問したいと思います。  私は川越に住んでおりますから、くぬぎ山に歩いて行っても大丈夫なところにあるのです。二年前に私は予算委員会でこの問題を取り上げまして、そして行政対応の立ちおくれが根本にあるということをくぬぎ山問題で質問しました。ダイオキシンの問題は、まさに行政の立ちおくれ、怠慢であるという点はそのとおりだと思います。  私は、事実と道理に立ってこれを批判する、こういうことは報道機関の重要な仕事だと思いますし、また役割だと思います。また、放送法第三条にも明記されているように、報道の内容が権力によって、政府によって干渉されるようなことがあってはならないと思います。  しかし一方、やはり放送というのは第四の権力と言われるように、巨大な影響力を持っているわけです。BRCに多数の苦情が寄せられているように、放送に対する視聴者立場というのは大変弱いわけであります。  そういう点を深く自覚して、そして視聴者に迷惑や被害を与えるような放送をした場合には、そうした失敗、誤りが起きた原因、この辺が非常に重要だと思うんですよ、なぜそういうことが起きたかという原因を視聴者に納得いくような形で明らかにすること。もちろん、必要があれば、謝罪だとかあるいは賠償ということも必要になるかもしれません。  放送局が権力の介入に対抗する最大の力というのはやはり視聴者からの信頼だと私は思うわけです。そういう立場から、今度の問題について、とりわけ苦情に対するテレビ朝日の態度についてただしたいと思うんです。私は、この苦情というものに対しては誠実に視聴者と話し合う、これが局としてとるべき態度だと考えます。  そこで、今回の問題で、地元所沢のJA、この人たちがいろいろと皆さん方との話し合いを持ちたいと。まず誠意を持って話し合うつもりはあるのかないのか、その辺が一つ。  それからもう一つは、三月三日にJA所沢に回答文を出していらっしゃると思います。その中で、価格の暴落は風評被害には当たらない、その理由として、ホウレンソウの調査数値が我が国の全国平均に比べて高いのは事実と言っています。問題は、今度の問題の一番の根本にあるのはこの最高数値を示したのがホウレンソウだと受け取られた放送にあるわけなんですよ。この回答書で、その点についてはどのように書いていらっしゃるか、お答えいただきたい。
  102. 早河洋

    ○早河参考人 二月八日になりますけれども、まず最初に、所沢の農業者有志代表という方が私どもの社を訪れまして、質問状を置いてまいりました。そこで、四、五十分皆さんとお話しする機会がありまして、農業者の皆さんの御意見を伺い、さらに文書で回答いたしました。それに対しまして再度抗議が来まして、私どもとしては図表のミスによって生じた迷惑に対しまして謝罪をいたしました。この方々が御納得いったかどうかというのは把握しておりませんけれども、情報では、怒りがおさまったということよりも、怒りの矛先を焼却炉問題に向けていこうというようなお話が入ってきております。  もう一つは、JA所沢の方々でございまして、これは二月の二十三日でございますけれども、組合長を初め、申し入れ書と質問書を持参いたしまして、私が受け取りました。これに対しまして、三月の二日に返事を出しております、これは一回目の返事ということでございますけれども。  この中で明記しましたのは、放送目的公共性とか公益性があったとしても、周到な準備あるいは正確、適切な説明といいますか、こういう表現が欠かせないのは言うまでもないとお断りした上で、今回の番組におきまして、そういう表示、それから耐容一日摂取量というふうに言われますけれども、そうした数値意味などの説明が不足したということであって、所沢周辺の農業生産者皆さんに大変御迷惑をおかけしましたと文書によって謝罪の意を表明しております。
  103. 矢島恒夫

    ○矢島委員 いろいろ言われましたが、私が尋ねたのは、放送によってホウレンソウが最高値だと思われたことに対するこの回答書の中の文面ということだったんですが、この回答書では、説明不十分だった、こう言っているわけですけれどもデータ認識の誤りだ、私はこう思うんですよ。その点は回答書の中では触れていないということについてただしたわけですが、時間がありませんので、次の問題に行きます。  先ほど来出ていますように、調査報道というのはデータの客観性が重要だということは申し上げるまでもありません。十八日の「ニュースステーション」で、久米キャスターは、詳しい説明が不足したため、すべてホウレンソウであるかのように受け取られた、こう言っております。問題は、データ説明が不十分だったのか、それともデータに対する認識自体に問題があったのか、ここが検証されなければならないことだろうと思うんです。  そこで、事実経過について幾つかお尋ねいたします。三品目五検体、この名前を知ったのはいつだったのかということです。
  104. 早河洋

    ○早河参考人 すべて承知しましたのは二月の十六日でございます。
  105. 矢島恒夫

    ○矢島委員 それでは、最高数値がホウレンソウではなくてお茶であることを知ったのはいつだったんですか。
  106. 早河洋

    ○早河参考人 二月の九日にJA所沢が情報開示いたしますけれども、その日にホウレンソウと大根の葉っぱの数値が〇・六四から〇・七五、したがって三・八〇というのは実質的にお茶ではありませんという放送といいますか説明をさせていただきました。(発言する者あり)野菜ということでございます。
  107. 矢島恒夫

    ○矢島委員 伊藤社長は二月二十三日に記者会見をされています。そこでも、まだきょうもそういう御発言がありましたけれどもデータ説明が不十分だったため、農家皆さんに御迷惑をおかけしました、こういう謝罪になっていると思います。  今のお話のように、二月一日の時点では三品目五検体が何であったかは知らなかった、つまり、二月十六日に全体を知ったのだ、こういうお話です。社長が記者会見するときには、既にこの三品目五検体の名前を知っていたわけです。そしてまた、実際には最高の数値はホウレンソウでなかったということも知っていらっしゃるわけであります。  そうすると、二月一日の時点ではそういうものも知らない上で、つまり、三品目五検体、あるいはホウレンソウではないというようなことも知らない上で、データ説明が不十分だったという記者会見の表現、これは非常に問題があると思うのです。つまり、データの詳しい説明が、そのデータでは詳しい説明ができない状態だったのですよ、この一日の時点では。それをずっと、その後も一貫してデータ説明が不十分だったという表現で来ているわけですね。説明できる状況じゃなかったのですよ、詳しくは。  その点のとらえ方が、その後一貫して、ホウレンソウが一番だという先入観にある上での対応になっていると言わざるを得ないのです。つまり、この記者会見のときには、社長は一連の経過を承知していた、こうした中でも、まだ説明不十分という表現をしている。データの認識自体に問題があったというふうにはお考えにならないのですか。
  108. 伊藤邦男

    伊藤参考人 問題であったと思います。  結果的には拙速であったと言わざるを得ないと思います。したがいまして、あの段階では、むしろもっと詰めてからやるべきであった、今になって思えばそういうふうに思います。
  109. 矢島恒夫

    ○矢島委員 私の指摘しているのは、一日時点では何も知らなかった、知らなかったのであの放送が行われた、そういうことですね。ということは、データそのものに問題があったわけですね。ですから、詳しい説明なんかできる状況じゃなかったのですよ、そのデータが何だかわからないのですから。  ところが、その後の記者会見やあるいはテレビ番組の中の説明では、詳しい説明をしなかったことに問題がある、あるいは説明が不十分だった。説明できる状況じゃなかったのですよ、そのときには。それをまだ、依然としてそういうことになっていて、いわゆるデータに対する認識が間違っていたのだという考え方になっていないというところを指摘したいのです。  それから、最後に、今回の問題で、結果として行政を動かしたという肯定する論評があります。あなた方も、JA所沢への回答の文書の中ではそのことも触れております。結果よければすべてよしとはならないのですよ。ですから、その辺について、今どういうふうにお考えになっているか、お答えいただきたい。
  110. 伊藤邦男

    伊藤参考人 ですから、結果よければすべてよしとは申さない、しかし、中には大きな間違い、ミスがあった、そこを我々は反省の材料としてこれからもやっていこうじゃないかということを再々申し上げております。  それから、今御指摘のところで、確かに、データの中身を知らなかったということのほかに、説明が不足だったというのは、ダイオキシンというものの急性毒性慢性毒性との違いなどについても、今すぐ食べたからといって、すぐに死ぬとか、そういう性質のものじゃないのだよというようなことも、その説明も足りなかった。しかし、その辺のところも、その辺は明らかに説明不足であったということが言えると思います。
  111. 矢島恒夫

    ○矢島委員 私先ほどお話ししましたように、あるいはただしましたように、ホウレンソウが半値にもなるというような事態、あるいは売れないという事態が起こる、こういうことに対して、事実こういうことが起こっているわけですから、ですから、なぜそれが起きたかという原因ですよ。私はずっとそれで来たわけです。  つまり、そもそもの原因は、三品目五検体、このことについても知らず、それからその名前も知らず、そして放送がなされた、そこに原因がありましたということをきちんと明らかにすることが、これは視聴者がそのことで納得するわけですよ。なぜそういうことが起こったのか。ただ詳しい説明ができなかったからだというだけでは納得できない。このことを申し上げて、時間が来てしまいましたので、終わります。
  112. 中沢健次

  113. 横光克彦

    横光委員 社民党の横光克彦でございます。  参考人皆さん、きょうは御苦労さまでございます。  これまで同僚議員が、今回の「ニュースステーション」のダイオキシン報道について、さまざまな疑問点また問題点等を質問してまいりました。私も、今回のこの報道を見まして、報道の威力といいますか、テレビ、いわゆるマスメディア影響力の絶大さ、これをまざまざと見せつけられたような思いがいたしました。これは、よきにつけあしきにつけです。  そこで、まず伊藤参考人にお尋ねいたしますが、この二月一日の「ニュースステーション」のダイオキシン報道をもし放送していなかったら、どうなっていたと思いますか。
  114. 伊藤邦男

    伊藤参考人 あの騒ぎは起こらなかったと同時に、この問題についての関心はさほど、今のように上がっていなかったとは思います。  ただし、さっきも繰り返し申しておりますように、いろいろと農民の皆さんに大変に御迷惑をかけた、そしてまた、報道の信頼性について、私ども報道の信頼性について疑問を発生させたという点で、これはやはり問題があったなということを痛切に感じております。
  115. 横光克彦

    横光委員 この報道によって、プラスの面、マイナスの面、両方あったということでございます。  この番組企画意図、先ほど御説明ございました。この番組企画意図は、今回の報道で十分伝わったとお思いでしょうか。
  116. 伊藤邦男

    伊藤参考人 意図は十分に伝わったと思います。
  117. 横光克彦

    横光委員 それは、先ほど申しましたプラスの部分の意図だと思うのですね。その意図は十分伝わったという思いでしょう。  しかし、意図と反したこともまた起きたことも事実でございます。  確かに、ダイオキシンの問題は、不安を伴った大きな社会問題であるわけです。これに対する国の対策もおくれていたのも事実だと思います。現に、所沢市あるいはあの能勢町の問題に見られますように、産廃施設の厳しい基準あるいはダイオキシン類の安全基準などがないために、国民の不安は増幅しているわけです。  そこに、今回の報道は、ある意味では一石を投じた、問題提起をした。結果、国や県や市やJA所沢市が動いた。八日に真鍋環境庁長官が、所沢市に隣接する三芳町に、産廃処理業者の施設を視察に行っております。この面では、確かに今社長のおっしゃるように、この番組意図は十分伝わったプラスの面だと思います。  ところが、その意図が正しく伝わらずに、所沢産の野菜の危険性のみが殊さらクローズアップされた面もある。これは、私が先ほど申しましたよきにつけあしきにつけの、あしきの部分だと思うのですね。  ですから、所沢の野菜ということでダイオキシン数値を発表することによって、農家生産者の方々に影響を与えるであろうという認識は恐らくあったと思うのですが、その点はいかがですか。
  118. 早河洋

    ○早河参考人 私どもの詰めの甘さといいますか、図表のミスというか、そういうことによって農家皆さんに大変御迷惑をおかけしたことは事実でございます。  私、直接お会いをして、その痛切な訴えといいますか、非常にわかりました。心からおわび申し上げますということを、文書でもお伝えいたしました。
  119. 横光克彦

    横光委員 いや、私が聞いているのは、放送をする前に、影響を与えるであろうなということを認識していたかどうかということです。
  120. 早河洋

    ○早河参考人 この種の報道におきましては、入念な準備、周到な取材というようなことがありますし、その影響についての論議はございました。しかしそれはもう、やったと今申し上げても余り説得力を持ちませんので、それが詰めの段階機能しなかった部分があるということは率直に反省しております。
  121. 横光克彦

    横光委員 影響を与えるであろうという認識は私は恐らくあったと思うんですが、でもそのときに、与える影響を最小限にとどめるためにも、報道は正確でなければならなかったわけです。とりわけ国民の関心の高い環境問題は、豊富なデータを示しながらもっと私は慎重にやるべきではなかったのか、あるいは人命に関することや社会的に大きな影響を与えるようなことはもっと多角的に報道すべきではなかったのか。  そしてまた一民間調査機関の独自調査、これは数ある事実の一面でしかないわけであり、とりわけ化学分析というものはサンプルの選び方とかあるいは分析の技術などによって結果に大きな差が出るわけですから、特にこのダイオキシンなどはごく微量の化学物質ですからこの測定は非常に難しく、誤差があり得るわけですから、それを今回かなり断定的に扱っている、そういった危険性を私は感じるわけなんです。  そしてまた二月一日放送の、先ほどからずっと問題になっておりますダイオキシンの最高値が、これが何であったのか品目を確認していなかったというお話ですが、これはもう私は報道の基本姿勢を疑われても仕方ないな、そういう気さえするわけでございます。  さらに、今回のダイオキシン報道では、ホウレンソウ畑の映像を挟み込むなどして、結果的には視聴者の意識を誘導してしまった感を免れない、そういう気もいたしております。  これらの問題は恐らくテレビ朝日サイドもお認めになられると思いますし、だからこそ社長さんも謝罪しておられるわけでございますが、こういったいろいろな問題があった中で、局内での番組審議会、この中で今回の放送について何か打ち出されておられるんでしょうか。
  122. 伊藤邦男

    伊藤参考人 番組審議会は、報告が出ているというのはお読みいただいたかとも思うんですが、評価すると同時に、そういう間違いがあってはならないという御指摘を厳しく受けておりますということは先ほど申しました。
  123. 横光克彦

    横光委員 指摘だけでは番組審議会の意義は果たされないんじゃないかと思うんです。要するに、とりわけこういったデータを開示するときには、データの客観的な評価のために、信用できる第三者機関の育成の必要性を私は感じたんですが、そういった意見とか論議は番組審議会の中ではありませんでしたか。
  124. 伊藤邦男

    伊藤参考人 その審議会の中ではございませんでした。ただ、青山さんの環境総合研究所というところがそれなりの実績のある研究所であること、それからこの分析を依頼いたしましたMAXXAMというカナダの会社ですが、これは北米での有力な分析機関であるということ、そこで導き出された調査結果であるということで、信用するに足るデータだというふうに私どもは考えたわけであります。
  125. 横光克彦

    横光委員 いや、それは信憑性はあるというお考えですが、先ほど申しましたように、事実の一面でしかないわけなんです。もっともっと豊富なデータを集めて私はやるべきではなかったかという気がするわけです。  先ほどからお話がございますように、報道には確かに自由というものがございます。しかし、それはあくまでも真実を誠実に伝えてこそ初めて担保されているということを銘記していただかなければならないと思うんです。でなければ政治や行政の介入を招きかねないということを教訓にしていただかなければならないと思っております。今回の報道によって政治、行政の介入等が取りざたされておりますが、私はそういった介入はあってはならないと思うんです。ですから、現場の皆様方は、今回のいろいろな問題点を教訓にこそすれ決して萎縮することなく、これからもあくまでも事実に基づく報道に心がけていただきたいと思います。  また、ダイオキシン問題もこれで終わりにするのではなく、先ほど申しましたことをしっかりと踏まえた上でさらにこの積極的な検証報道を行っていただきたい、私はこのように考えております。  次に、清水参考人にお伺いしたいんですが、今回の我が国での初めての脳死による臓器移植ですね、この報道なんですが、先ほどお話もございましたが、情報開示とプライバシー保護、この接点は非常に難しいわけですが、私は、プライバシー保護はもう最低条件だと思うんですね。今回の過熱とも言えるこの報道についてどのようにチェック機能を果たされようとしておるのか、お聞かせください。
  126. 清水英夫

    清水参考人 BRCは、先ほども申し上げましたように、名誉毀損プライバシー中心とした権利侵害というものを念頭に置いておりますので、御指摘のような問題は当然BRCの関心事であります。ただ、私が臓器移植の報道について感じますことは、やはり集中豪雨的取材、これによるプライバシー侵害が非常に大きいと思うんです。  この点につきましては、BRCの第一回のサンディエゴ教授殺人事件のときに、決定の後、当時の有馬委員長談話といたしまして、「活字媒体を含む集中豪雨的な報道」というものを指摘しておりますし、そのような報道の中で特に、「とかく興味本位に構成される傾向がみられ、人権等権利侵害を招く危険が少なくない。この点は、これまでも繰り返し指摘されてきたが、本件を機に、各放送局人権の尊重をはじめ放送倫理の徹底に一層の配慮を払うよう強く希望する。」という委員長談話を発表しておりますので、私たち立場は御了解いただきたいと思います。
  127. 横光克彦

    横光委員 こういった問題も、最初だからということであれだけ大きな報道合戦ともいう形になったんだと思いますが、やはりBROもこれにしっかりと対応していただきたいと思うんです。  最後に、酒井参考人にお聞きいたしますが、今回の過熱報道で一部に報道規制の議論もあるわけですが、私は、マスコミみずからが自主規制やあるいはルールをやはりつくっていくべきである、自主的に努力する必要があると思っておりますが、その点はいかがでしょうか。
  128. 酒井昭

    酒井参考人 過剰報道といいますか取材の競争でいろいろプライバシーや何かにもし侵害があったとすれば、多分あるんじゃないかと思いますけれども、先ほど申し上げましたように、私らでは報道委員会というのがございます。その中に、在京社を中心とした報道委員会、これは報道担当の常務等で構成されておりますけれども、ここではこれまで、航空機の取材あり方とか地震災害報道とか、それぞれの個別の問題について集中的に論議して、そこで指針を発表してございます。  今回の臓器移植の問題につきましては、ドナーさんの方の立場もございますでしょうし、人命、人権という観点から少し論議をした上でこれから検討してまいりたいというふうに考えております。  以上でございます。
  129. 横光克彦

    横光委員 今回、ドナー自身や家族が特定されるのみならず、入院している病院を明らかにする報道あり方など、これは欧米では考えられないような状況が起きたわけですので、こういった問題にはしっかりこれから自主的に対応していただきたいと思っております。  終わります。ありがとうございました。
  130. 中沢健次

    中沢委員長 この際、参考人に一言お礼を申し上げます。  参考人各位におかれましては、長時間御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚くお礼を申し上げます。  ありがとうございました。  この際、暫時休憩いたします。     午前十一時五十分休憩      ————◇—————     午後一時二十三分開議
  131. 中沢健次

    中沢委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣提出特定公共電気通信システム開発関連技術に関する研究開発の推進に関する法律の一部を改正する法律案及び通信放送機構法の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。竹本直一君。
  132. 竹本直一

    ○竹本委員 今回かかっております、今委員長からお話のありました二つの法律は、情報通信の高度化と情報に絡む行政変化対応して関連の諸整備を図るものでございますが、この法律そのものはそれほど複雑なものでもないので、むしろ現在我々が当面しております情報通信に絡む諸情勢について、現状の分析と私の考えを述べまして、お考えをお聞きしたいなと思っております。  言うまでもなく、情報通信は、新しい市場と雇用を創出するというところに非常に大きい意味があるわけでございますが、そのプロセスの中で生産性の向上が必ず図られる。先般、郵政省局長さんからいただいた「エマージングデジタルエコノミー」という本を読みましたけれども、情報通信革命が進むとこんなにも効率がよくなる、こういう話はるるいっぱい書いてございました。それを読みまして、それを前提にしながら、いろいろな質問をしてみたいと思っております。  まず、世界各国におきまして、情報通信を国家の発展基盤と位置づけた取り組みがなされておるわけでございますが、有名なものの中では、アメリカにおいては情報スーパーハイウエー、例のゴア副大統領がしきりと唱えているものでございます。特にこの中で、次世代インターネットの技術開発に非常に力を入れているということで、我々としては関心を払わずにはおれない、こういう状況であります。こうした中で、情報通信分野のベンチャー企業が発展しまして巨大なビジネス市場の創出をもたらしているのは事実であります。  これと比較いたしまして、我が国政府においてどのような対応をしたらいいか、いろいろ腐心はいただいておるところでございますが、最近我々が関係しましたものといたしましては、平成十年度の第一次補正で超高速のギガビットネットワークの整備を図ったり、あるいは放送デジタル化を図ったり、あるいは第三次補正で学校のインターネット接続の関連の整備をいたしました。こういったもろもろの整備が現在進んでおるわけでございますが、しかしながら、御承知のとおり、大変な経済の閉塞状況があります。こういった中で、このうっとうしい天気を打ち破るのはこの情報通信の分野ではないか、そのように思うわけでございます。  そこで、第一番目に、今申し上げましたアメリカと我々の日本とで情報通信の分野で非常に大きい差があけられているような気がいたすわけでございますが、郵政省としてはどのような事実認識を持っておられるか、まずお聞きしたいと思います。
  133. 金澤薫

    ○金澤政府委員 お答え申し上げます。  日米の情報通信状況でございますけれども、御承知のように、進んでいる分野もあればおくれている分野もあるというところでございます。  例えばネットワークインフラの光ファイバー化率で見ますと、日本は一三・二%ということでございますが、アメリカは八・八%ということでございまして、日本の方が進んでいるということもございます。それから、携帯、自動車電話の人口当たりの普及率で見ますと、日本は三六・二%でございますが、アメリカは二二・四%ということで日本の方が進んでいる。また、衛星放送の普及世帯数で見ましても、日本は一千万世帯近くが普及しておりますが、アメリカは六百六十八万世帯ということでございます。  以上のように、日本でも非常に進んでいる部分はございますけれども、しかしながら、今後の高度情報通信社会を支えます基盤となるインターネット関連分野、それから移動体を衛星で行う周回衛星分野等々で日米間で大きな格差があるというふうに認識しております。  例えば電子商取引、エレクトリックコマースの市場規模でございますけれども、米国の一兆円以上に対しまして我が国は八百億円と、約十五分の一の規模でございます。それから、インターネットの利用をホストコンピューターの数で見てみますと、アメリカは三千四十九万台に対しまして我が国は百六十九万台と、約十八分の一の普及状況でございます。また、インターネット閲覧ソフト、いわゆるブラウザーやパソコンの基本ソフトなど、ネットワーク関連技術について見ましても、米国の技術がデファクトスタンダードということで世界を席巻しているという大きな格差があるところでございます。  以上でございます。
  134. 竹本直一

    ○竹本委員 いささかがっかりさせられるほどの差をあけられている分野もございますが、いつまでも現状に甘えているわけにはまいりません。  そこで、我々といたしましては、この大変な不況を打破する手段としてこの情報通信の分野を活用したいという気がどうしても起こるわけでございます。アメリカの店頭市場NASDAQの上位二十社のうち十五社までが情報通信関連の企業だ。それに比べて、日本の店頭市場というのはNASDAQほど充実しておりませんので必ずしも一概に比較はできないけれども、上位二十社に三社しか入っていない。十五対三という非常に大きい差があけられているのも事実であります。  そこで、今一番この不況の中で問題になっておりますのは雇用であります。情報通信関連にもっと雇用を創出して、そして不況対策の一環としたいというのが我々の願いなんですけれども、バブル崩壊後、民間企業の設備投資が非常に減りました。けさのテレビでも、昨年と比べて民間の設備投資が三六%、戦後最大の減少を来しているというような報道もございました。そういうことで、設備投資がないところに雇用は生まれないわけですけれども、そういった中におきましても、情報化投資の比率、これをもっと上げていくのがいいのではないかというふうに思うわけであります。日米比較をいたしますと、情報化投資の比率が一九八六年を境に日米が逆転し、アメリカがどんと上へ上がり、日本が下に下がってきた、こういうことも報告されております。  もろもろの情勢の中で雇用の悪化が起こっておるわけでございまして、完全失業率が四・四%、また、アメリカの方はかつて七、八%あった失業率が今ほぼ日本と同じぐらいになってきている。こういうふうになりますと、情報通信の分野を活用しないとどうしてもこの不況を打破できない、そのように考えるわけであります。  そこで、先般、三月の初めだったと思いますが、産業構造転換・雇用対策本部で七十七万人の雇用創出が発表されておりますけれども、情報通信がこの中でどのような見える形で経済再生に貢献していけると考えておられるのか、ちょっと御説明をいただきたい。
  135. 金澤薫

    ○金澤政府委員 インターネットは、アメリカにおくれているとはいうものの、日本でも爆発的に普及しているわけでございまして、過去五年間でインターネットホスト数は約三十九倍になっています。また、携帯電話の加入数も二十一倍ということでございまして、デジタル革命の中で、情報通信というのは爆発的に普及しているということがございます。したがいまして、今後の我が国経済の再生を牽引するものはこの情報通信であるというふうに私どもも考えている次第でございます。  先般、産業構造転換・雇用対策本部が七十七万人という数字を発表なさいました。これに対して郵政省もそれなりの貢献をしたわけでございますが、郵政省としては、この中で十八万人の雇用というものを考えているところでございます。  まず、インターネット関連市場の拡大ということで、さまざまな施策を講じております。次世代インターネットの開発、それから学校におけるインターネット利用の促進、それから研究開発用ギガビットネットワークの構築、ベンチャー企業支援、インターネット関連市場の拡大を講じるさまざまな諸施策を展開いたしまして、ここで雇用の創出をしたいというものがございます。  それからもう一つは、放送デジタル化、それから高度道路交通システム、いわゆるITSなど、巨大なサービス、機器市場の創出が期待される二十一世紀マルチメディア市場を創造していくという視点から、さまざまな諸施策を講じている。このインターネット関連市場の拡大と二十一世紀マルチメディア市場の創造、これをあわせまして雇用の創出を考えているところでございます。  ただ、今回の産業構造転換・雇用対策本部で出されました十八万人という数字でございますけれども、これは郵政省と通産省の数字を合体したものでございまして、情報通信分野全体で、合わせて十八万人ということでございます。  郵政省におきましては、今後とも、景気回復と雇用創出に実効性のある政策を積極的に展開していきたいというふうに考えている次第でございます。
  136. 竹本直一

    ○竹本委員 十八万人の雇用創出という目標をぜひ着実に実現させていただきたいと思います。  ところで、前郵政大臣のときにも私は、この委員会で発言したことがあるのですけれども、どの先進国も、その国特有の戦略産業を育成してその国の繁栄を図る、そういう産業を持っているような気がするということを申し上げたわけでございますが、今、まさにこの情報通信をその国の発展の戦略産業として育成している国が多いのではないか。  先ほど言いましたアメリカの情報ハイウエー構想、これなんかはまさにそのとおりだと思いますし、イギリスはISI計画というものを持っておるし、またフランスも政府の行動計画を持っておる、こういうことでございます。したがって、我々日本も、これに相対抗するためにも、しっかりとした、それを凌駕するような計画とその実践を図っていかなきゃいけない、当然であります。  昨年十一月に、政府の方においては、高度情報通信社会の推進に向けた基本方針を改定いたしまして、高度情報通信社会の早期構築に向けた新たな取り組みを開始した、こういうことを聞いております。また、郵政省の電気通信審議会におかれましても、昨年十二月に、二十一世紀における高度情報通信社会のあり方行政が果たすべき役割について諮問されまして、現在それについて活発な審議が行われておる、そのように聞いておるわけであります。  こういったシステム法も政府全体の取り組みの一つでございますが、今後とも政府を挙げての推進が大いに期待されるところであるわけであります。  政府としては、高度情報通信社会の早期構築という大目標に向けてどのような展望を持っておられるのか。特に、きょう御出席郵政大臣は、高度情報通信社会推進本部副本部長、総理が本部長でございますが、副本部長としての重責を担っておられますので、まず大臣からこれについての見解をお聞きいたしたいと思います。
  137. 野田聖子

    ○野田(聖)国務大臣 ただいま御質問の、この日本の国をどう高度情報通信社会として早期に構築していくかということで、先生御指摘のとおり、私が大臣に就任して以来、高度情報通信社会推進本部では、小渕総理大臣を本部長として、全方位というか、みんなの力で頑張っていこうということで取り組んでいるわけです。  高度情報通信社会が構築されることでどういうことが考えられるか、実現するかということなんですけれども、まずは、よく言われる経済構造の改革を進めていけるであろうということ。さらには、実際にそういう高度化された情報通信機器を使って、本当にゆとりを感じられるとか、豊かさを感じられるような私たちの暮らしが実現できるんじゃないか。さらには、そういう機器を使うことによって、新たな、多様化したライフスタイルというのが生み出されるんじゃないか。または、先生先ほどから御指摘の、それによっての新規産業の創出とか、先ほど十八万人という話でしたけれども、それに伴う新しい雇用の創出が望まれる。もう一つつけ加えるならば、これからまた社会的弱者とか、そういう社会的な問題にも対応できる。  そういうことで現在取り組んでいるところですが、改定しました基本方針の中には、三つの行動原則があります。一つは、民間主導で進めていくということ。そして、それに合わせて政府による環境の整備を進めていく。さらには、国際的な合意形成に向けてイニシアチブを発揮していこう。そして、具体的には戦略ということになるわけですけれども、特に、電子商取引の普及、さらには電子政府の実現、情報リテラシーの向上、情報通信インフラの整備、この四点を特に重要と定めて集中的に施策を講じていきたい、そういうふうに努めているところで、精いっぱい頑張ってまいりますので、御支援をお願いいたします。
  138. 竹本直一

    ○竹本委員 ぜひ頑張っていただきたいと思います。特に、最後のところで大臣から御説明のありました情報リテラシーとか、いろいろ各分野に周知徹底といいますか、広がりを持たなければこの産業は成り立たないわけでございますから、その辺の手当てをきちんとやっていただく必要があろうかと思います。  その一環ということでございますが、今回かかっております法律関係いたしますので一つ質問申し上げますけれども、高度情報通信社会の実現ということでは、技術開発がどうしても必要でございます。  今回の特定公共電気通信システム開発関連技術に関する研究開発の推進に関する法律の一部を改正する法律案、この中には、今まで研究開発してきたもののほかに、今度新たに消防庁と警察庁の技術開発研究を請け負って、それをやろうというわけでございます。  一つ質問がありますのは、公共分野でこういう情報通信関連のものを持ちながら公共の作業をやっているものの中に、国土庁の中央防災無線網がございます。これがどうして入らなかったのか、その経緯をまず一つ聞きたいのと、それはそれとして、こういった研究開発、特に公共的分野における研究開発を今後どのように進めていかれるつもりか、それについてお答え願いたいと思います。
  139. 金澤薫

    ○金澤政府委員 国土庁との関係でございますけれども、このシステム法に基づきます技術開発につきましては、それぞれの省庁がそれぞれの考え方要求していくという考え方を基本としております。今回、消防庁と警察という二分野を法律改正でお出しいたしましたのは、それぞれの省庁との調整がつき、政府部内で全体として調整がついたということでお出ししたわけでございます。国土庁も非常に重要な役割を担っておりますので、今後さらに働きかけていきたいというふうに思っております。  それから、公共分野の情報化のお話でございますけれども公共分野の情報化というのは、政府自身を情報化するということでございまして、これによりまして行政サービスのコストの低減や国民の利便性の向上を図りたいというものでございます。  また、政府みずからがユーザーとなる。最近需要サイドが非常に元気がないわけでございまして、政府みずからがユーザーとなることによって全体としての起爆剤にもなれるということがございます。  先ほど先生御指摘もございました高度情報通信社会に向けた基本方針の中でも、この公共分野の情報化について、関係省庁一体となった効率的な研究開発等の必要性がうたわれているということでございます。実際、今、高度情報通信社会推進本部におきましては、基本方針に基づきまして、今後の目標、それからスケジュールというものをきちんとアクションプランという形で決めていこうということで作業が進んでいるところでございます。  御審議いただいております公共電気通信システム法でございますけれども関係省庁と連携して、この一環として公共分野の情報化を推進しようとするものでございまして、郵政省といたしましても、今後とも公共分野の情報化に尽力してまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  140. 竹本直一

    ○竹本委員 将来、国土庁でも、そういう相談をいただいて、ここで研究をしてもらうというふうな話がまとまれば、そのようにするという御意向と伺ってよろしいですね。
  141. 金澤薫

    ○金澤政府委員 そのとおりでございます。
  142. 竹本直一

    ○竹本委員 ぜひそうしていただきたい。と申しますのは、各省庁でいろいろな情報通信に関する研究開発が民間に委託するなどしまして進んでいるわけでございますが、同じようなものに多額の研究開発投資をして、そして結果はほぼ同じである、ならば一カ所でやればよかったではないかというように思わされるところが、多々私も見てまいりましたので、ぜひとも、そういうむだのないように、この機構で一括して受けて、公共分野の情報通信の充実の技術開発をやっていただきたい。お願いでありますが、ぜひそうしてもらいたい。そういうことの中で、むだを省き、行革の本来の目的を達せられる部分も多々あるんではないかなというふうに思うわけでございます。  ところで、情報通信は時間と距離を克服すると言われておるわけでございます。先般聞きました話によりますと、偵察衛星でアメリカが開発したIKONOSとかいうのは、何と、ワシントンの位置から、ニューヨークのエンパイアステートビルのてっぺんにワンダイムを置いたら、そのダイムの顔がだれかまでわかると。これは情報ではありませんけれども、それぐらいに技術が進んでおる。あるいは、ニューヨークからサンフランシスコまで約六千キロありますけれども、ニューヨークからサンフランシスコの場所を見て、六千キロ離れて見ても、走っている車のタイヤの種類までわかるというほど技術が進んでおる。  十数年前に、フレデリック・フォーサイスという小説家が「悪魔の選択」という本を書きました。日本で随分売れた本でありまして、私もそれを読んだのです。最後のところで、当時、ソ連はフルシチョフだったかと思いますが、アメリカがソ連の穀物生産の現状を調べるのに、衛星を飛ばして、三十センチ四方で撮影ができるので、その結果を見て豊作か不作かが的確に見てとれる、こういうふうな記述がありましたけれども、それから十数年、先ほど申し上げましたように、ダイムにのっている笑顔まで、何百キロ、何千キロ離れたところから見える、これほど技術が進んでくるわけでございます。  情報通信の分野においてもやはり同じことでありまして、そういう意味では、まさに時間と距離を克服するわけであります。そうなりますと、我々の生活態度も、生活習慣も、そして生活様式もおのずから変わってくるわけでございます。  ところが、こういった高度に開発された技術を、では全員が使えるかというと、これはまたそうではない。特に、そういう中で、我々、ある程度中年ぐらいになりますと、いろいろなこういう情報ツールに近づくことに非常に抵抗感がある。そのために情報弱者になってしまう。そんなことで、どうしてもこういった高度情報通信社会において生活する者にとって必要欠くべからざる技術と生活習慣というものは幼いときから身につけておかなきゃいけないわけでございますが、特にこの関係で問題なのはリテラシーの問題であります。どうしても英語が中心に展開されるわけでありますけれども、日本人の英語力は非常に低い、こう言われております。  アメリカの大学入試に必要な語学力をテストするTOEFLという有名なテストがございますけれども、地域ごとにこの試験をいたしますと、何と日本はアジアの中で二十三位。北朝鮮よりも下だ、こういう報告がされておるわけでございます。これだけ大きいハンディがありながら、高度情報化社会で先端的な、そして先導的な役割を果たそうとするところに非常に困難さが見てとれるわけであります。  そういう意味で、日本語のハンディを克服しながらキーボードの操作能力も向上させ、そして幼いときから学校において視聴覚教育を充実させる必要があるのではないかな、そのように思うわけでございます。  そこで、先ほど申し上げましたように、学校へのいろいろな予算をつけたり、あるいはこういった面での充実を図るための努力はされておると思いますけれども、全般的に見て、現在、どういうような考えのもとにどういうことをやっておられるか、御説明をお願いしたいと思います。
  143. 金澤薫

    ○金澤政府委員 高度情報通信社会が進んでまいりますと、地球的規模でさまざまな情報が入手可能となります。したがって、英語力というものが非常に重要になってくるわけでございます。  この中で、子供たちがコンピューターを使いこなしまして、みずから課題を見つけ、学び考え、主体的に判断、行動する、そのためにはぜひとも情報リテラシーというものが必要だというふうに考えている次第でございます。先ほど先生のお話にございましたように、英語力で見ましても、アジアの中で二十五カ国中二十三位というような状況だということでございます。  それから、もう一つ大きな問題としてキーボードリテラシーというのがございますが、これに関しましても、キーボードがほとんど使えないという割合が、日本の場合はアメリカの三倍以上という調査結果がございます。キーボードアレルギーと英語アレルギー、これが二重苦になっているということだと思います。  また、米国では、昨年度末の時点で既に全学校の約八割、全教室でも約四割がインターネットに接続されているわけでございますけれども、我が国では、インターネットに接続されています学校の割合は約二割ということでございます。  こうした現状を踏まえまして、郵政省としては、文部省と連携をとりながら、何とかしてこの状況を改善したいということを考えまして、高速回線を活用したインターネットの高度化を進めるとともに、通信料金等の低廉化にも取り組んだということでございます。  まず、インターネットの高度化について申し上げますと、十年の五月に、公共電気通信システム法に基づきまして、文部省と共同で教育のための情報通信技術を研究開発する体制を整備することといたしました。これは、MPEG4という帯域圧縮技術による伝送技術を開発しようというものでございまして、映像を主として狭帯域の中で自由に使いこなそうとしたものでございます。  それから、平成十年度第三次補正予算におきましても、全国千五十校をインターネットで接続いたしまして、インターネットの高速大容量化、これを研究開発として取り上げようとしたわけでございます。  さらに、通信料金の低廉化につきましても、昨年九月に大臣から関係事業者に要請を行いました結果、大手プロバイダーを中心に学校向け特別料金が設定されまして、半額程度ということになりました。  すべての学校をインターネットに接続するという目標も二年間前倒しいたしまして、二〇〇一年にすべての学校をインターネットに接続するということとした次第でございます。  総理もこの問題については非常に熱心に取り組んでおられまして、総理の指示で昨年発足いたしましたバーチャルエージェンシーというのがございますが、この中でも教育の情報化プロジェクトが設置されております。学校に接続されるインターネットを高速化したい、それからもう一つは、教育用コンテントを充実したいということで、このバーチャルエージェンシーの中で検討を進めているということでございます。  郵政省としては、このような全政府的な取り組みの中で、文部省とも連携を図りつつ、情報リテラシーの向上に努めてまいりたいというふうに考えております。
  144. 竹本直一

    ○竹本委員 幼いというか若い生徒、あるいは学生に対するこういった施策というのは今御説明のように展開されておるわけでございますけれども、人口の大半を占める高齢者、中高年層に対してどのような方策を講じておられるのか。  特に情報機器というのは、物すごくたくさんの機能をつけて、機能が多ければ多いほど売れるという発想からか、携帯電話にいたしましてもあるいはビデオにいたしましても、物すごいものがいっぱい付加してつけられておる。ところが、実際使うのは、そんなに使わない、ほんの一部しか使っていない。私の経験からしてもやはりそうであります。  そうなりますと、こういった高齢者、こういったものを扱うのに余りなれていない人たちに対しては、簡単でそして使いやすい、そういうツールあるいは機械をつくることを政府としてもやはり要請するなり奨励をしていく必要があるのではないかと思うんですけれども、こういった問題についてはどう考えておられるのか、お考えをお聞かせください。
  145. 金澤薫

    ○金澤政府委員 高齢者だけではなく障害者の方々についても、通常の状態でさまざまな情報通信機器に対応できるという形をつくり上げることが非常に重要であるというふうに思っております。これを、私どもとしては情報バリアフリー環境というふうに言っておりますが、そのためにさまざまな研究開発実施しているというのが一方にございます。  それからさらに、電気通信のアクセシビリティー指針というのをつくりまして、これを告示いたしました。これは、高齢者、障害者の方々が、電気通信設備にさまざまな機能を付加いたしまして、通常の状態と同じ状況でアクセスできる、そういうふうなことを実現しようという指針でございます。その考え方に基づきまして、関係団体を中心にして今統一仕様をつくろうということで、鋭意努力しているところでございます。これができ上がりますと、全体に普及するための諸施策を講じていきたいというふうに思っております。
  146. 竹本直一

    ○竹本委員 ありがとうございました。  少し視点を変えまして、これからの情報通信産業あるいはこれからの情報通信行政の中で、どうしても我々が心配しておる問題があります。それについてお聞きいたしたいと思います。  まず第一点は、現在政府で不正アクセス法案というのが検討されているというふうに聞いたわけでございますが、これにつきまして、諸外国の状況あるいは政府部内での議論の概況について教えてもらいたい。  先ほど、例としていいかどうかわかりませんけれども、偵察衛星の技術にいたしましても、わずか十数年であれほどの大きい進歩を遂げるわけであります。そうなりますと、それを逆手にとって、あらゆるものが見てとれる、こういうことであります。  もう一度つけ加えますと、例えば、偵察衛星で、屋根の下にある、つまり家の中にあるものが見えるのかどうかということを聞きましたら、屋根が木造であれば完全に見える、こういうことであります。ということは、隠すものが隠せないということになるわけでありまして、筒抜けの状態でこれから我々の生活あるいは企業活動を行わなきゃいけない。  そこで不正アクセスということは必ず起こるわけでございます。それに対する防止、あるいはプライバシー保護ということに関してどのような法案を検討しておられるのか、概況を聞かせていただきたい。
  147. 天野定功

    ○天野政府委員 近年のインターネットの爆発的な普及に伴いまして、不正アクセスの問題が先生御指摘のように大変社会問題化してきております。  欧米先進国の中では、多くの国におきまして不正アクセスにつきまして規制が法制化されているわけでございますが、日本ではまだでございます。昨年のバーミンガム・サミットにおきまして、不正アクセスを含むハイテク犯罪対策について各国の法制度を見直すといったことが合意されておりまして、我が国におきましても早急な対応が求められている、こういう状況にあります。  そこで、郵政省としましては、昨年来警察庁と不正アクセス規制法制につきまして検討を進めてまいりまして、先般、基本的なところで警察庁との間で合意がなされました。  大きな点が三つほどありますが、一つは不正アクセスの禁止、それから二番目は不正アクセスを助長する行為の禁止、三つ目といたしまして不正アクセス防止のための国及び都道府県公安委員会による情報の提供などの援助、以上三つが基本の骨格となっておりまして、こういった法案を今検討しているところでございます。  現在、政府部内で鋭意進めておりますが、できるだけ速やかに今国会に提出いたしたいというふうに考えております。
  148. 竹本直一

    ○竹本委員 ぜひ、現実の社会でワークする、そういういい法律をつくっていただきたい。そうしませんと、我々が安心して日常生活を送れない、そういうふうになるわけでございますので、ぜひ頑張ってもらいたいと思います。  将来我々考えておかなきゃならない第二番目の問題として、放送デジタル化がどんどん進んでまいりますと、一つは鮮明画像、動画、静止画を含めて鮮明な画像が送れる。また、双方向が可能になる。こういうことを考えますと、電子新聞というようなサービスが当然考えられると思うわけであります。  現在、テレビは動画を送っておりますが、動画を送れる以上静止画も簡単に送れる。既に文字放送が流されているわけでございますが、これを家庭でプリントアウトできるようになりますとつまり新聞になるわけであります。そうしますと、今我々が毎朝読んでおる新聞とほぼ同じものが配達員なしで配れるようになるわけでございまして、そういう社会を想定いたしますと、どのような形態でこういった電子新聞の発行がなされていくのか。  たちまちのうちに考えなきゃいけないのは、例えば、NHKは立派な放送網を持っておりますけれども、そのNHKに電子新聞の発行を許可することになるのかどうか。もしなるとすれば、新聞ですからそこに広告を載せるということは当然考えられるわけでありまして、民放がそれをやるなら全然問題ないけれどもNHK公共機関ですから恐らく広告を載せるということはできないだろうけれども、そういったことについての見通し、考え方、現時点における検討状況をお聞かせいただきたいと思います。
  149. 品川萬里

    ○品川政府委員 お答え申し上げます。  今先生御指摘のいわゆる電子新聞、これもデジタル放送の中ではデータ放送一つのサービス形態と考えられるかと存じます。  今御指摘のように、かねて、デジタル放送を始めた場合にNHKがどういうことをするのかというのは広く関心を呼んでいたところでございまして、私ども、既に昨年の秋にいわゆるパブリックコメントを求めまして、NHKデータ放送をする場合、どういう形がいいかということについていろいろな御意見を承りました。  その結果といたしましては、やはりNHK役割からして、デジタル放送のいわば典型的サービスであるデータ放送を行うこと、これは結構なことであろう、むしろNHK役割として期待されるところであろう、しかし、あくまでNHKの本来のあり方NHKらしいものであるべきではないかという御意見もございました。  そのような御意見を踏まえまして、ことしになりまして、一月中旬でございますけれども郵政省としてのまた方針を固めたわけでございます。これを今、再度パブリックコメントを求めておりますけれども、今申し上げましたように、NHKとして、NHK役割からいたしましても先駆的なサービスを提供することは必要なことである、それから国民に広く新しい技術革新の成果を提供することも必要である、しかしあくまで、現在のテレビあるいはラジオにおけるように、NHKの本来の公共放送としての役割の範囲内の形であるべきというふうな方針を示して、今御意見を求めているところでございます。  この過程において、NHKも、どういうサービスをイメージしているかということについて意見表明がございますが、その中身を見ますと、いわゆる、先生が今御指摘になったような電子新聞というネーミングに該当するようなサービスというのは含まれておりませんで、例示されている限りでは特にNHK役割の範囲内のものではないかというふうに私ども思っておりますし、広くそのように認識されております。  したがいまして、方向としては、あくまでNHKらしいサービス形態ということで考えていくべきところではないかというふうに考えております。  以上でございます。
  150. 竹本直一

    ○竹本委員 電子新聞という言葉で何を想像するかでございますけれども、今の文字放送のあの画面を印刷したようなものを、いわゆるファクス的なものを想像していると、そんなものはそれほど重要性を持たないのではないかと予想されるかもしれませんけれども、現在我々が日常読んでいる新聞と同じものが瞬時にテレビから出てくるということになりますと、そちらの方が便利じゃないか。そこで、業態の仕分けをどうするかという議論が必ず起こってくるのではないか、そのように思うわけでございまして、いずれにしろ、公共福祉のためにあるのが新聞の存在ですから、そういった基本を忘れずに、これから真剣な研究、議論を重ねていただきたい、そのように思うわけでございます。  そろそろ時間が来たようでございますけれども、きょう私は、郵政省が持つ未来の分野、これからどんどん発展していく情報通信の分野を中心質問してまいりました。  しかし、郵政省は、郵便業務を初めその他もろもろの作業をやっております。そういう中で、先般の行政改革で、今の特定郵便局というものが将来公社化されて、公社の職員ということになる、しかしながら国家公務員である、こういうことで一応落ちついたわけでございますけれども、我々としては、郵政独自の省を持ちたかった。  また、この特定郵便局の業務につきましても、現在のような国営といいますか、国家公務員としての存在が一番いいのではないかということをるる主張しておったわけでございますけれども、こういう形で落ちついた以上、ではそれでいいかとなると、どうも、私が自分の選挙区等を通じて聞きましても、例えば特定郵便局長さんなんかは、営々と三十年、四十年仕事をして、七十になれば勲章をもらって、それを誇りに、そのために生きていると言うと言い過ぎかもしれないけれども、誇りを持ってその業務を熱心に勤めてきた人たちがほとんどであります。  そうなりますと、あなたは公務員、まあ扱い上は公務員だけれども公社の職員であると、わざわざそのように相手を落胆させるような身分づけということをする必要があるのかどうか。そういう意味で、今回の行革の持っている意味というものを改めて私は疑問視したくなるわけでございます。  しかしながら、その枠の中で現在では動かなければいけないということになりましたら、せめて誇りの持てる職場だけは確保するように、これはしっかりと郵政大臣の方でその辺の配慮をきっちりやっていただきたい。必要があれば、それに対する環境づくりも我々もやらなければいけないというふうに思っているわけでございます。やりがいのある、誇りの持てるそういう職場をつくってこそ、初めて立派な行政、郵政業務を果たせるわけでありますから、基本を忘れない、嫌々の行革であればどうしてもいい効果は出てこない、そういうつもりでおりますので、この点に関しての郵政大臣の御決意を最後にお聞きいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。よろしく。
  151. 野田聖子

    ○野田(聖)国務大臣 励ましの言葉とも受けとめられる今のお言葉、ありがとうございました。  これから事業庁また公社というふうに行革の流れの中で移行してまいりますけれども、やはり世論がこの郵政三事業、三事業一体、国営堅持ということで御理解いただいた上で、郵便局での仕事が国民利用者にとってなお一層利便性の高いものにしていくよう、経営についても弾力的に進められるよう、頑張って、誇りを持って仕事をしてもらえるような環境整備に努めたいと思いますので、よろしく御指導をお願いいたします。
  152. 竹本直一

    ○竹本委員 では、誇りを持てる職場をお願いいたします。  どうもありがとうございました。
  153. 中沢健次

    中沢委員長 小沢鋭仁君。
  154. 小沢鋭仁

    ○小沢(鋭)委員 民主党の小沢鋭仁でございます。  本日の二法案に関しまして、二法案の内容及び関係の御質問をさせていただきます。  まず、この二つの法案の中核といいますか、そこに通信放送機構というものがあるわけでございます。ですから、その通信放送機構あり方というか、そういった観点で、まず第一点、質問をさせていただきたいと思います。  この法案の用意された背景、こういう話をるる調べてみたり、あるいは、この間の大臣からの説明等も聞かせていただく中でありましたのは、いわゆる平成八年十二月二十五日閣議決定行政改革プログラム、そこに「通信放送機構については、管制業務について、平成十一年度に国からの出資金を返還し、経営の自立化を実施する。」これがあった、こういうふうになっているわけであります。これをまずベースに今回の国からの出資金の返還の法案になっている、こういうふうに理解をしておるわけでありますが、なぜ国からの出資金を返還するのか、その基本的な考え方についてちょっと御説明いただけませんか。
  155. 金澤薫

    ○金澤政府委員 これはもともと、昭和五十八年の三月に臨時行政調査会の最終答申の中で、「衛星の効率的運用が図られるよう、」「自立化の原則に従い民間法人化する。」という言葉が使われております。その後、通信放送衛星機構、これは当初は通信放送衛星機構というふうに言っておりましたが、これにつきましては、さまざまな研究開発、高度化支援事業というふうなものがつけ加わりまして、通信放送衛星機構そのものを民間法人化することは難しいという考え方に立ちまして、管制業務のみについて自立化を図る必要があるということで、行政改革プログラムの中で「国からの出資金を返還し、経営の自立化を実施する。」ということをうたったものでございます。  私どもとしては、この行政改革プログラムの考え方に基づきまして、今回、国からの出資金を機構が返すための法律を制定したということでございます。
  156. 小沢鋭仁

    ○小沢(鋭)委員 今の金澤局長のお話ですと、当初は、管制業務に関しては民間法人化していく、これが基本的な考え方であった、しかし、その後、研究開発等のいろいろな支援業務等が入ってきたので、通信放送機構そのものを民間法人化するというのはなかなかできなくなった、こういう御答弁だったと思います。  これは認可法人でありますから、それが民間なのか国なのかというのは、若干そういった議論があるのは承知しているわけでありますが、いわゆる国からのお金が入らない、あるいはまた国から人が行かない、こういう話で、それを民間と称して考えますと、いわゆる管制業務の部分に関してはもう民間の方に移していく。そして、既に我が国においても、実際に株式会社で管制業務を行っている例もあるわけでございますね、日本サテライトシステムズとか宇宙通信株式会社とかですか。ですから、そういうことでよろしいのですか。
  157. 金澤薫

    ○金澤政府委員 認可法人というのは、もともと民間の発意で、これを国が認可することによって設立する法人でございまして、ある意味では民間法人という位置づけでございます。したがいまして、この民間法人化という場合も、認可法人については、国からの出資、つまり国の資金に頼らないというのを原則として、補助金ももらわない、それから役員の任用等についてもできるだけ規制を払う、そういう考え方に基づいて民間法人化ということを言っているわけでございます。  今回、私どもとしては、経営の自主性を確保するために国からの資金に頼らない経営体をつくろうというふうに考えまして、行革プログラムの考え方に沿った法律改正をするということでございます。  通信放送機構の管制業務でございますけれども、これは昭和五十八年以降管制業務をやっておりまして、十六年間にわたりまして非常に安定した管制業務を行っております。これまでの実績の上に豊富な管制経験と高い技術、ノウハウを蓄積しておりまして、今後もこれを有効に活用することが非常に望ましいというふうに私どもは考えております。  しかも、現在のユーザー、NHKとかNTTとかございますけれども通信放送機構の衛星管制の実績それから能力というものを勘案して独自の判断で通信放送機構へ委託を行っているというものでございます。通信放送機構とユーザーの間では一定期間の管制契約がなされておりまして、現在の契約は最長で平成二十年までというふうになっております。それに基づきまして料金決定その他がなされておりまして、私どもとしては、通信放送機構は現在の状況の中でその契約を執行していくことがあるべき姿ではないかというふうに思っております。  それから、純粋の民間化をするためにはいろいろな問題があるわけでございます。一つには、百十度という静止軌道の問題がございまして、現在、放送衛星は三機、百十度の静止軌道上にございます。さらに、通信衛星でも百十度を使いたいという方がたくさんいまして、周波数の問題がございますけれども、そのような同一軌道位置の複数の衛星を管制するためには、公平、中立的な機関がやった方がいいのではないかというふうに考えている次第でございます。  さらに、今後、衛星ビジネスに新規参入しようとする事業者がたくさん出てくると思いますけれども、管制施設への初期投資というのは莫大な金額が必要であるわけでございまして、管制のノウハウの蓄積がない方ではこれは無理だということもございます。したがいまして、中立、公平な認可法人である機構が管制サービスを提供していくということは、ニュービジネスの育成という意味からも意味があるのではないかというふうに思っています。  ユーザーの立場からしましても、君津というところで一部管制をしているわけですが、この土地は電磁環境が非常によくて、これにかわる土地はなかなか見つからないということもありまして、君津の施設というのはぜひ今後とも残していかなければいかぬ施設だというふうにユーザーの方も考えているということがございます。  あれやこれや考えまして、私どもとしては、通信放送機構がやる、しかし、国からの資金はこれから一切抜いて、国の資金に頼らずに、自発的に管制をやっていただくということが望ましいのではないかというふうに考えた次第でございます。
  158. 小沢鋭仁

    ○小沢(鋭)委員 国がというか、今の形態でやった方がいいメリットの部分も幾つか述べていただいたわけでありますが、ちょっと端的に聞かせていただきたいのです。  要は、管制部門も、そこの部分を取り出して、例えばそこだけは純粋に民間の方に分離してやらせるという考え方は今後も一切とらない、そして、それはいわゆる行革プログラムの趣旨とも一致している、そういうことでよろしいのですか。僕はそこがよくわからないものですから。  若干懸念があるとすれば、行革の考え方としては、これは民間で十分できるね、こう思っていたけれども、いわゆる官の皆さんたちが、自分たちの権益というか、それを守るために何となくそういう形で残しちゃっているんだ、こういうことがあってはいけないので、そういう懸念からちょっと聞かせていただいている、こういうことでございます。
  159. 金澤薫

    ○金澤政府委員 行革プログラムの自立化という考え方でございますが、これは、政府の資金を抜く、政府の資金に頼らずに経営を行うというふうに今解釈されておりまして、このことについては、当然、法案作成過程で総務庁とも十分調整をした上でそういう判断をしたということでございます。
  160. 小沢鋭仁

    ○小沢(鋭)委員 もうこれ以上は申し上げませんが、ということであれば、いわゆる国民皆さんが危惧しているということは、例えば、親方日の丸的に何となく安住しているような組織じゃいけないよという話であるとか、あるいはまた、それが天下りの受け皿になっているということになるのであれば、それはまたいけませんね、こういうのが国民一般の行革に対する期待、あるいはまた、それに反対する勢力への危惧、こういうふうに思うわけでありますが、ぜひ、そうならないように、今後の経営、運営をやっていただきたいとお願いを申し上げておきたいと思います。  続きまして、やはり通信放送機構の中身の話に入るわけでありますが、管制の話をちょっと外れて、情報開発の話の方に移らせていただきたいと思います。  まず、今回のシステム法もそうでありますけれども、ある意味では、そのバックグラウンドに、高度情報通信社会推進本部というものが政府の中にあり、その推進本部でさまざまな方針がとられていて、それを実行していくために必要な措置がとられている、こういう一つの、それだけではないかもしれませんが、流れがあるように思います。  そこで、まず第一点は、高度情報通信社会推進本部で平成七年の二月に出しておりますものの中に、公共分野の情報化を推進するため、書類の電子データ化等について早急に検討を進める必要がある、こう書いているわけであります。それから、昨年の十一月九日に出されましたいわゆる基本方針のところでも、「行政の情報化」というのがありまして、その中の一部を申し上げますと、「「紙」による情報の管理から情報通信ネットワークを駆使した電子的な情報の管理へ移行し、二十一世紀初頭に高度に情報化された行政、すなわち「電子政府」の実現を目指す。」こういうところがあるわけですね。これはもう私も全く賛成、同感であります。  さてそこで、では、例えば、そういう書類の電子データ化等の話を進めていく、今の基本方針に沿った具体的な計画というのはどうなっているのでしょうか。だれが、どこでつくっているのでしょうか。
  161. 金澤薫

    ○金澤政府委員 高度情報通信社会推進本部におきまして、この基本方針に基づきまして、目標、スケジュール、具体的内容というものをアクションプログラムとして制定いたします。あすもその会合が予定されておりまして、有識者会合が開かれますけれども、そういう中で、政府全体としてきちんとしたアクションプログラムをつくりまして、それに従いまして私ども推進していくということになろうかと思います。
  162. 小沢鋭仁

    ○小沢(鋭)委員 そのアクションプログラムはできているのですか。今つくっているのですか。もしできているのだとすれば、もう発表になっているのですか。
  163. 金澤薫

    ○金澤政府委員 今、策定過程にございまして、いろいろな折衝がなされている最中でございます。
  164. 小沢鋭仁

    ○小沢(鋭)委員 郵政の金澤局長を責めるつもりはありませんが、先ほど申し上げたように、最初に申し上げた部分というのは、平成七年の二月なんですね。ですから、かなり時間がたっているのですよ。  いつもこの逓信委員会で私は申し上げるのですが、いわゆる基本方針とか目標というのはかなりしっかりしたものができていても、実際にそれが実行されなければしようがないじゃないですか、こういうことを言ってまいりました。この通常国会の冒頭の所信についての一般質疑のときにも大臣に申し上げましたけれども、民間が加わっている部分というのは、いわゆるATMやなんかのネットワーク化なんかの話にしても、かなりの速度で進んでいて、我々から見ても、ああ、思ったよりスピードが速いな、こう感じるのが多いのですが、行政の方というと、これがなかなか進まない、私なんかは逆にこういう感想を持つわけですね。  そこで、例えば、具体的な話で、そういう話の中で、法務局の登記簿というのがありますね。これはごらんになった方もいらっしゃるかもしれませんが、不動産の登記の書類というのは、古いのはもうぼろぼろなんですね。紙の書類としては大変なものがありまして、登記簿というか、正確にはわかりませんが、どこに何があるか、こういう地区のものですね。そんなのはもうそういう状態になっていたりしているのですが、それをたしか電子化しているというふうに思っています。あるいは、自治体の戸籍などという話も国民がいつも一番身近に接する部分でありますが、こういうものの電子化というのはどの程度まで進捗しているのでしょうか。
  165. 坂野泰治

    ○坂野説明員 政府の情報化につきまして、私どもが総合的な推進役をしておりますので、少しお答えをさせていただきたいと思います。  戸籍、登記の問題に入ります前に、政府全体で電子政府の実現に向けて取り組んでおりまして、そのための計画も、行政情報化推進計画という名前で私どもつくっておりまして、今逐次進めておるわけでございます。  なかなか進捗が悪いという御指摘でございますが、例えば、インターネットによります各省の情報提供が既に二十五省庁で進んでおるとか、あるいは手続の電子化について、二千六百件ほどの許認可等の手続等について適用があるとか、それなりに進めておるわけでございます。  さてそこで、お尋ねの登記簿、戸籍でございますが、詳しくあるいは正確には法務省にお尋ねをいただくべきかと思いますけれども、私ども承知しております範囲で申し上げますと、登記でございますが、不動産登記について申し上げますと、登記所が九百十五あるわけでございます。そのうち、コンピューター移行済みのものが二百四十五、現在移行中のものが七十ということでございまして、移行中のものを含めまして、全体の三四%の登記所が既にコンピューター化あるいはコンピューターに移行中ということでございます。  また、戸籍でございますが、戸籍は市町村が現実に事務をいたしております。三千三百以上の市町村で事務をしておりますが、そのうち、登記簿の電子化を済ませた市町村の数は三百五ということでございます。したがって、一割未満、九%程度が電子計算機の方へ移行したということでございます。  なお、登記の方は、平成十六年度をめどに全部コンピューター移行を完了する予定でございますが、戸籍の方は、これは何分市町村がそれぞれ主体になるものでございますのでいついつまでということではございませんが、法務省ではこれからかなり積極的に推進したいという意向だと承知をいたしております。
  166. 小沢鋭仁

    ○小沢(鋭)委員 今聞いていただいておわかりのように、要は、一割くらいだとか、全体の、九百のうちの三百、多く見積もっても、移行中のものを見積もっても三百くらいとか、そういう状態なんですね。  そういうものを、まさに行政の話をしっかりとお金もかけて、そして、この人員というのは別に公務員になっていただくわけではないのですから、アウトソーシングでいいわけですから、そういうところにお金を使って、雇用を確保して、そしていわゆる、そういうまさに国民の基本的な情報を電子化する。民主党が言っている未来への投資というのは、例えば新しい公共事業のあり方というのは、こういうことなんですね。こういう話にしっかりお金をかける、人をかける、あるいはこういうものをてこに使って今の不況打開の一つの柱に据えていく、こういう考え方は、大臣、ないですか。
  167. 野田聖子

    ○野田(聖)国務大臣 委員会でたびたび小沢先生にはこの分野について厳しい御指摘をいただいておりまして、私もまさにそのとおりだと思います。  現実の問題、情報通信とか情報化という言葉はもう随分以前から頻繁に使われるようになりました。しかし、郵政省の一般会計予算を見ていただいてもわかるとおり、まだまだそれに必要な手当てが十分ないというのが現実でございまして、まさに、問題解決のために郵政省だけではなく政府を挙げて、高度情報通信推進本部の中で重要な柱の一つとして取り組み、動きつつあるところでございますので、なお一層の御支援をお願いしたいと思います。
  168. 小沢鋭仁

    ○小沢(鋭)委員 私も、気は長いし、大臣の意欲は承知しておりますから、今の答弁で、これ以上は申し上げませんが、本当にやっていこうではないですかね、こういう部分は。そして、こういうものをやることによって、本当に、まさに今までの従来型と違う景気対策というのもあり得ると私なんかは思っているものですから、これを機会にぜひまた政府部内で御発言もいただきたいと思います。  さて、そこで、今のはいわゆる電子化なんですけれども、今度は、その電子化された情報をつないでいく、いわゆるネットワーク化していく、これが大事ですよね。やはり情報システムというのは、一つデータを電子化していく、これはもちろん大事です。今度、それをラインでつないでいく、これが大事であります。  前から言っている話をまたここでしつこく申し上げるわけですが、ワンストップ行政サービスという話は、今申し上げたような、データの電子化を行ったものをラインでつないでいって、国民の窓口に、例えばそれは郵便局であってもいいのですが、そういうところで提供できる、これが私がずっと前から言っている、いわゆる科学技術の進展を生かした形での行革だ、こう私は一貫して言ってきているのですが、残念ながら、この基本方針には、そういう考え方、僕はずっと読ませていただいたのですけれども、ないのですね。ワンストップ行政サービスのことは書いてありますよ。もちろんワンストップ行政サービスのことは書いてあるけれども、今言ったような、いわゆるフィロソフィーというものがないのですよ。  それからもう一つ、例えばLAN、霞が関WANを活用した、こういう話があって、霞が関の中の情報ネットワークの話はありますが、それを使って国民に対して行政サービスを提供するという発想のネットワークの思想はないのです。こういう話をこの通信放送機構でまさにやるべきではないのですかね。大臣、どうですか。
  169. 野田聖子

    ○野田(聖)国務大臣 ワンストップに関しては、先生に積極的に御支援いただいておりまして、私たちも一生懸命取り組んでいるのですけれども、ことしの一月二十九日に、生活空間倍増戦略プラン、この中にもきちっと明記していただきまして、郵便局で二〇〇五年ごろまでに本格的なサービスを実施していくという目標で実験を進めていくということになっておりまして、ここでは、パソコンまたは身近な場所で各種の行政サービスを受けることができるというふうに言っていること、すなわち国民にとっての行革ということと等しいのではないかと思います。  いろいろな各方面、例えば電子化された情報も必要ですし、ネットワークの方もこれからさまざまな角度で実験を進めていっておりますし、十一年度も、今予算の中にありますように、今度は住民票の写しなんかの自動交付を行う自治体端末の郵便局への設置も予定をしているところでございます。  そういうことを一つ一つ積み重ねていきたいと思っていますが、その中で、では通信放送機構が何ができるかということになるわけですけれども、その研究開発の幾つかとしては、例えば、申請手続等の電子化または本人確認とか課金処理等の各種実証実験の推進、さらには、申請書類の持参、押印等が必要との制度的な課題、こういうことについて取り組んでいけるのではないかと思っています。
  170. 小沢鋭仁

    ○小沢(鋭)委員 これは今後もずっとやっていきたいと思っておりますが、私の今の提案というのは、まさにこの通信放送機構というものがあって、そこでいろいろなそういうシステム開発研究が行われているのであれば、まさに政府のそういったものをトータルに考えられるような開発、システム研究をやっていただきたい、こういうことでございます。  そこでもう一つだけ、心配な部分もあるものですから申し上げておきたいのですが、その場合に、将来、そういう情報ネットワークが完備して、ワンストップ行政サービスでいろいろなデータがとれるようになるといったときに、要は、そうなると、今度は不法侵入の話が出てきますね。ネットワークを構築すれば、悪い人というのは必ずそこを打ち破って入ってくる、こういう話がありますから、不法侵入、不法アクセス、これの対応も、技術的にはやはり通信放送機構みたいな、こういうところでやったらどうなんですか、こういうことも提案を申し上げておきたいと思います。  既に法案の形でいろいろ御検討をしていただいているのは私も承知していますが、逆に、技術論というのもあるわけでありまして、それはやはりそういった形でやっていただくことが必要ではないか、こういうふうに思っています。  それについて一つだけ、具体的な話でお尋ねしておきます。  例の、ECだったと思いますが、個人プライバシー保護の問題というのが採決されて、それの指令が出た、こういうふうに承知しているのですが、日本はそれに対してはどういう対応をなさいますか。
  171. 天野定功

    ○天野政府委員 お答え申し上げます。  個人情報保護の問題は、これは非常に広範な問題でございまして、私どもが所管しております電気通信事業者の保有する個人情報、そのほか、金融関係の情報とか、さまざまな情報がありますので、これにつきまして、やはり政府全体で統一的な見解のもとに進めていかなければならないということで、まさに先ほどから議論が出ておりますような高度情報通信社会推進本部の取り組むべき課題かと思っております。  郵政省といたしましては、これまでに、電気通信事業者が保有する個人情報保護につきましてガイドラインを策定いたしました。これは平成三年でございますが、昨年の十二月にさらにこれを郵政省告示という形で現行化いたしまして、広く一般に周知してきておるという状況でございます。
  172. 小沢鋭仁

    ○小沢(鋭)委員 ぜひそういった情報通信分野におけるプライバシー保護についても鋭意御検討をいただきたい、こういうふうに思いますし、EU——先ほど、EUですね、失礼しました。訂正しておきます。EUで指令が採択された話等の対応もしっかりとやっていただきたい、こういうふうにお願いをしておきたいと思います。  最後に、かねてから私も主張してきておりましたいわゆる学校へのインターネットの導入に対する研究開発費が認められました。昨年の第三次補正ですか、三百億、こういうことでありますが、通信放送機構としては何を目指した研究をやるのか。使途はどういった使途なのか。それから、前の質問のときにアメリカのクリントン大統領の一般教書の話を申し上げました。そういった、例えばアメリカなんかに比べて教育関係についての情報通信予算というのが日本は見劣りしていないか。この三点まとめて御質問させていただきたいと思います。
  173. 天野定功

    ○天野政府委員 十年度の第三次補正予算で、先生御指摘の三百億円の学校インターネットにかかわる施策の予算がついたわけでございます。  まず、施策の目的でございますが、先ほどから御審議いただいていますように、今後の高度情報通信社会におきまして、子供たちが小中学校の早い段階からインターネットになれ親しむ環境をつくることが我が国の将来にとって極めて重要な課題であるということで取り組んでいるわけであります。  文部省におきましては、二〇〇一年度までに計画的にすべての学校を六十四キロビット毎秒の回線でインターネットに接続することを進めているわけでありますが、これでは回線容量的に十分ではないということであります。六十四キロビットの回線では、接続できるパソコンはごく数台に限られております。  こういったことから、郵政省では、各学校において一クラスに配置されているパソコン、小学校の場合ですと二十二台になりますが、このパソコンが同時にインターネットに接続できるよう通信回線の高速化を図ることが必要と考えておりまして、この三百億円の予算におきましては、さらに将来的には、全国の学校が高速アクセス回線でインターネットへ接続を行う場合に必要となる新たなネットワーク構築技術を研究開発することを目的としているわけでございます。  それで、この使途でございますが、これは今申し上げました多様な高速アクセス回線、光ファイバーとか、DSL、衛星インターネットなど、こういったものを複合的に活用する技術の研究開発に必要な経費としまして、具体的に申しますと、中央及び地域ネットワークセンターに設置されるサーバーとかルーターにかかわる費用、これは百五十六億円ぐらいかかります。それから、ネットワークを構成する中継回線の三年間分の利用にかかわる費用約五十六億円、それから、DSLモデムなど、アクセス回線の回線終端設備の費用約三十五億円、こういったもろもろの費用に充てられるわけであります。  それから、外国、特にアメリカとの比較になるわけでございますけれども、アメリカの場合は、学校や図書館が行うインターネット接続等を助成するために、通信事業者の拠出金によるユニバーサルサービス基金というものがありまして、この中から、九八年分としましては約十六億六千万ドル、日本円に直しまして二千億円の助成が決定されておるというふうに聞いております。  以上でございます。
  174. 小沢鋭仁

    ○小沢(鋭)委員 時間ですから終わりますが、今お話を聞いていただいてもおわかりのように、例えば三百億対二千億円とか、けたが一つ違う。そして、さっきから申し上げているように、いわゆる予算措置ということで考えれば、情報通信にかかるお金の額というのは大変小さくて済む。これをもうちょっとしっかりと手当てをするということはきちっと政治が機能すればできるはずだと私は思うのですが、ぜひ頑張っていただきたいとお願いを申し上げて、終わらせていただきたいと思います。  どうもありがとうございました。
  175. 中沢健次

    中沢委員長 石垣一夫君。
  176. 石垣一夫

    ○石垣委員 公明党・改革クラブの石垣でございます。  先ほどから、通信放送機構の行革に関する質問が若干ございました。今回、昭和五十八年三月十四日に臨調の最終答申を受けての過去四回の閣議決定におけるいわゆる民間法人化に対する結論として、出資金の返還、これでもって一応通信放送機構の民間法人化への手続は終了した、こういうことなんでございますけれども、私はやはりこれでもって通信放送機構行政改革の取り組みが終わってはいけない、こう思うのです。さらにまた、人員削減とか、コストの軽減とか、こういう方向についても鋭意努力をしなければいけないと思うのですけれども、大臣、いかがですか。
  177. 野田聖子

    ○野田(聖)国務大臣 行政改革プログラムは、国の出資金を返還し、管制業務の経営の自立化を行うように求めたものであります。今回の法律の改正は、今先生御指摘の、臨調答申から行革プログラムまでさまざまな閣議決定における指摘を十分踏まえたものではないかと思っています。  管制業務につきましても、国の出資金を返還した後も安定した管制業務ができるよう、また経営の効率化にも努力しておりますし、これまでも毎年定員の削減、また経費の削減、業務の合理化、効率化に努めてきたと思います。  これからも、今御指摘のとおり、なお一層、業務運営を効率的に適切に行うよう郵政省としても指導してまいりたいと思います。
  178. 石垣一夫

    ○石垣委員 通信放送機構の業務内容は三点あるんですけれども、それに入る前に、通信放送機構のいわゆる機構の中身について若干質問したいと思うのです。  現在の全職員数は百十名である、このように聞いております。そのうち、郵政省から出向している職員は何名ですか。
  179. 金澤薫

    ○金澤政府委員 四十七名でございます。
  180. 石垣一夫

    ○石垣委員 これは昨年から四名増加しているわけですね。百十名の中の職員数の四三%がいわゆる郵政省の出向、こういうことになるのですね。これは間違いありませんか。
  181. 金澤薫

    ○金澤政府委員 そのとおりでございます。
  182. 石垣一夫

    ○石垣委員 認可法人といえども、このままでは出向の人数はちょっと異常ではないか、このように私は思うのですけれども郵政省全体で今職員の出向は何名ですか。
  183. 高田昭義

    ○高田政府委員 郵政省から通信放送機構のようないわゆる認可法人に出ておりますのは百三十六名、このほか他省庁に出ておりますのは百三十五名ございます。
  184. 石垣一夫

    ○石垣委員 郵政省全体で、今のお話では大体二百六、七十名ですね。その中でも、この通信放送機構に出向している職員が実に四三%。この数字は私はちょっと異常な出向率だ、こう思うんですけれども、この出向の状態についてはどうお考えですか。
  185. 金澤薫

    ○金澤政府委員 通信放送機構は、情報通信分野における総合的な政策支援を行う唯一の認可法人でございまして、高度通信放送研究開発、つまり研究開発実施している、それから通信放送事業の高度化の支援を行っている、それから通信衛星、放送衛星の管制業務を行っているということでございまして、三つの業務を行っております。  通信放送機構は、こうした情報通信の高度化等の政策支援という業務の特性、それから技術革新が非常に激しい分野であるというふうなことでございまして、情報通信分野の行政に精通した人材を必要とするということで郵政省に出向要請があったということでございます。郵政省としても、この辺の事情にかんがみまして、必要な職員を出向させているところでございます。  以上でございます。
  186. 石垣一夫

    ○石垣委員 その事業の内容からいって、職員を派遣される、やはり目的があって派遣されるわけですからそれはわかるんですけれども、今日これが民営化の方に大きく、最終的に結論を出されたわけでございますから、やはりこの状態は私は異常だと思うんですよ。やはり民間へ肩がわりしていかなきゃいけない、こう思うんですけれども、大体出向期間は何年ですか、これは。
  187. 金澤薫

    ○金澤政府委員 二年から三年というところでございます。
  188. 石垣一夫

    ○石垣委員 この場合は、これは郵政省の総定員数にカウントされていますか。
  189. 高田昭義

    ○高田政府委員 郵政省を退職して機構の方に参りますので、定員の中にはカウントしておりません。
  190. 石垣一夫

    ○石垣委員 それは一時退職の形でしょう。永久退職ですか。
  191. 高田昭義

    ○高田政府委員 一応本人から辞職願を受理して退職という形をとっておりますので、再雇用する場合は、新たな雇用という形で受け入れているということでございます。
  192. 石垣一夫

    ○石垣委員 いやいや、したがって、これは永久退職ではないわけでしょう。またカムバックするんでしょう、二、三年の出向と言うていますから。どうなんですか、それは。
  193. 高田昭義

    ○高田政府委員 実態としては、先生御指摘のとおりということでございます。
  194. 石垣一夫

    ○石垣委員 この場合、結局四十七名が出向で出るんですね。そうすると、郵政省全体の総定員数のカウントはどうなるんですか。
  195. 高田昭義

    ○高田政府委員 郵政省の定員数は変わりませんので、出向した職員の分は欠員補充をするということになります。
  196. 石垣一夫

    ○石垣委員 だから、これは一時退職の形をとっておるけれども、言うておるように、全体のカウントは変わらないということですから、これはやはりアブノーマルですね。  今回、民間法人化に大きく踏み出したわけですから、やはり、出向状態についても、私は、漸次これを減らしていくという形で、いわゆる民間法人のあるべき姿に持っていくという方向にすべきではないですか。
  197. 高田昭義

    ○高田政府委員 先生御指摘のとおり、機構自身もやはり人材を幅広く登用したいという気持ちを持っておりまして、もちろん役所の方にも人材の照会がございますけれども、広く民間企業にも内意が来ております。  ただ、実態としては、民間企業から短期間で人を出すというのはなかなか現実には難しゅうございまして、機構の方も役所の方に人材を求めているような実態になっているということでございます。そういう意味では、機構も広く人材を外に求めたいということで努力をしているということについては、御理解をいただきたいと思います。
  198. 石垣一夫

    ○石垣委員 だから、今回、いわゆる民間法人化への三つの縛りが今までございました、それを全部解消して完全な形で、いわゆる臨調、閣議が指摘している三つのハードルを越えたわけですから、当然これは民間法人として一本立ちするわけですよ。  そのときに、今までのことは今までとして、これからは、郵政省の出向職員も漸次かえていくという方向に私は行くべきだと思うんですよ、今まで出資してきておりましたからね。それを今度は切るわけですから、はっきり言って。そういう点で私は、四三%も出向していること自体が、やはりほかの省庁にないと思うんですよ、こういう例は。  たまたまそういう特殊技術だということで、これは人材という、わかりますけれども、そういう点は、きょうあすというわけにいきませんから漸次そういう方向に、民間人を登用してかえていくという形にやはりすべきだと思うんですが、いかがですか。
  199. 高田昭義

    ○高田政府委員 先生御案内のとおり、今回の法案の絡みで民間法人化と言っている部分が衛星の管制業務の部分でございまして、その点については確かに、さっき先生の言われたように、出資金を国に返還して経営の自立化を図っていこうということでございます。  あわせまして、この数年、通信放送機構法の改正を国会にもお願いして、通信機構に新たな業務を追加している分野がございます。この部分は、言ってみれば公の業務として追加をされているということでございますので、今回も新たな業務追加の法案審査をお願いしてございますので、そういう意味での機構の公的な役割というものはこれからも引き継いでいくということで、その点については御理解を賜りたいと思います。
  200. 石垣一夫

    ○石垣委員 いや、だから、いろいろの事業内容とか職務内容とか、それは理解しますよ。しかし、四三%という、約二分の一でしょう。それならこれは民間法人じゃないですよ、はっきり言うたら。形としては、そういう形で全部、三つの今までの閣議決定がなされている一つのハードルを全部越えたわけです。したがって、ここでひとつ考え方を前進させて、そういう方向へ向ける考えというのはありませんか。
  201. 金澤薫

    ○金澤政府委員 管制業務につきましては、定員は今減らしてきております。平成八年五十九名だったものを平成十一年度五十名というふうになっております。総定員も一名ずつ減らしてきておりますし、物件費も、管制業務分については、平成七年度二億二千二百万円だったものを一億五千六百万円というふうに平成九年度は減らしてきているということで、全体をスリム化していくという方針でやっているわけでございます。  一方、さまざまな研究開発の分野をこれからやっていかなきゃいかぬわけでございまして、それはもう日進月歩でございます。しかも、非常に特殊、専門的なものでございまして、行政との一体性というものも確保していく必要があるということでございます。  したがいまして、私どもとしては、そういう人材が活用できればいいわけですけれども、なかなかいないということもございまして、産官学を連携した中で、非常に広く、あらゆる分野から非常に優秀な人材を集めてくるというのが最も望ましい形であろうかというふうに考えております。当然、官の役割というのもあるわけでございまして、私どもとしては、広く人材を求めていくという基本的考え方に立ちながら執行をしていきたいというふうに思っています。
  202. 石垣一夫

    ○石垣委員 だから、おっしゃることはよくわかるんですけれども、今の出向職員の出向率が結局四三%、この数字について私はアブノーマルだと言っているわけですよ。大臣、こういう状態をいつまでもお続けになるんですか。
  203. 野田聖子

    ○野田(聖)国務大臣 通信放送機構につきましては、今、局長、官房長、いろいろ答弁がありました。その機構なりに努力して効率化して、そして定員を削減していることは事実であります。と同時に、先ほどのお話にあったように、これからの高度情報通信というのは非常に、国策であるということで、通信放送機構が担う公的な役割がますます重要になってくることも、これまた事実でございます。  それで、何が必要かといえば、まさに人材であって、確かに、先生御指摘ですけれども、現実の問題、今、高度情報通信化に当たって喫緊の課題であるわけですから、人材を必要としている。その人材が、なかなか現実問題、そういういろいろな、各方面から集まりにくいということもあって、やはり郵政省の方の技術力に期待されていることも御理解いただきたいと思っております。
  204. 石垣一夫

    ○石垣委員 これは、やっておる時間がございませんので。しかし、民間法人化へ完全に踏み切ったわけでございますから、やはりそれにふさわしい体制をつくられるということに努力されることを希望しておきます。  次に、先ほど話がございましたように、いわゆる通信放送分野の研究開発、これは通信放送機構の業務内容の大きな問題であります。  そこで、情報通信分野におけるいわゆる国と民間との研究開発の割合、現状はどうなっているのか、また、国として、民間の研究開発はどう支援していくのか。この点についてお伺いしたいと思います。
  205. 金澤薫

    ○金澤政府委員 我が国の高度情報通信社会を構築していくためには、今、激しく変化しております技術革新というものに適切に対応することが必要でございます。  平成九年四月に、電気通信技術審議会より情報通信研究開発基本計画というものが出されました。ここで、国として開発すべきもの八十項目が提起されておりまして、現在、この八十項目のうち七十二プロジェクトに着手しておりまして、あと八つ残っておるという段階でございます。  国として何をやるべきかということでございますけれども、これは、脳機能研究に基づく情報通信技術の開発のように、基礎的でハイリスクな分野の研究開発、こういうことをやりたい。それから、ITSのような公共性の高い分野の研究開発を行いたい。それから、ギガビットネットワークのような、共通的、普遍的な研究開発、多様な分野に適応できるような研究開発、それから、次世代インターネットのような非常に波及性が高く緊急性を要する研究開発、こういうものを推進していきたいというふうに考えている次第でございます。  ただ、民間に対しましても、当然、支援措置が必要でございまして、国際標準に資する技術等を大学、民間企業等に公募する公募研究制度というふうなものを拡充するなど、民間との連携ということも十分考えて今後の施策に取り組んでまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  206. 石垣一夫

    ○石垣委員 民間といわゆる機構との研究開発の割合はどうなっていますか。また、米国との関係はどうなんですか。米国の研究開発は。
  207. 金澤薫

    ○金澤政府委員 米国の研究開発状況でございますけれども研究開発経費で見ましても、米国は三・六兆円の金を使っておりますが、日本は二・四兆円ということで、基本的に落差が生じているということがございます。  それからまた、具体的には、米国の研究開発というのは軍事技術の民間転用というものが非常に多いわけでございまして、例えば、周回衛星とか、それからIMT二〇〇〇の基礎になりますCDMAとか、さまざまな、それからインターネットもARPAネットの延長線上にございますが、そういうふうな軍事技術の民間転用ということが、一つ大きな要素として考えられます。  さらに、米国は、高度のネットワークの策定ということで、従来から非常な力を入れて取り組んでおりまして、HPCC計画の中のNRENというネットワークがございます。  それから、ラージスケールネットワークというものも考えておりますし、将来的に、一九九八年からでございますが、NGI、ネクストジェネレーションインターネットというネットワーク、これもつくっていこうということでございまして、NGIは、一億ドル程度、それ以前には千三百億円程度の金を使っているという状況にあるわけでございます。  翻りまして、私どもとして機構で何をやるかということでございますが、機構は、先端的、基礎的な研究開発というものは通総研というものがございまして、基礎から応用分野への橋渡しというものを中心にして、機構としてさまざまな研究開発を行っていこうという形で実施しているわけでございます。
  208. 石垣一夫

    ○石垣委員 民間と国の研究開発の割合はどうなっているかと聞いているわけです。約一割と聞いております。先ほど答弁いただいた、研究開発費用、三・六兆円と二・四兆円。米国が三・六兆円。これは総額なんですね。政府が負担している額というのは五千億なんですよ。日本は二千億なんです。だから、アメリカは日本の二・五倍ですね、絶対額ですよ、投資しているわけですよ。そういう状態の中で、今後、やはり、研究開発費についても国みずから挙げて総力で取り組むという、そのあらわれが予算にあらわれてくると私は思うのですね。  こういう点について、大臣として、お考えを聞きたいと思います。
  209. 野田聖子

    ○野田(聖)国務大臣 確かに、情報通信技術に関しましては、研究開発費そのものが、先生御指摘のとおり、アメリカより日本が少ないわけでございまして、また、今、局長から説明があったインターネットやGPS、今まさにあるさまざまな情報通信分野というのは、アメリカ生まれというか、それまでの研究開発の積み重ねのゆえに出てきたものばかりでございます。  ですから、今、完全に我が国が、今の時点ではアメリカに対しておくれをとっているということは事実ということを踏まえて、しかしながら、何度も申し上げているとおり、情報通信というのは、これからのというか、今もそうですが、我が国のリーディング産業でありますし、今後も、やはり情報通信を上手に使っていくことで、新しい産業、さらにはそれに伴う雇用が創出されるということで、積極的に研究開発、特に、当然ながら、国が行わなければならない基礎的なこととか先端的なこともさることながら、民間が行う研究開発についても、公募研究制度の拡充、または税制や財政上の優遇措置なんかの支援措置を充実強化していきたいと思っています。
  210. 石垣一夫

    ○石垣委員 それでは、民間との共同開発の中で、こういう成果については情報公開をされておりますか。  もう一点は、この場合、一体、特許の帰属はどうなるんですか。
  211. 金澤薫

    ○金澤政府委員 特許の場合は、特許出願という形で世の中に公表されていきますし、学会発表その他で研究成果を公表していくという形になっております。  特許の帰属先としては、共同研究の場合は双方に帰属するということでございます。直轄研究の場合は機構に帰属するということでございます。
  212. 石垣一夫

    ○石垣委員 情報公開をされているのですか。
  213. 金澤薫

    ○金澤政府委員 研究開発の内容は、論文発表その他で対外的に発表していきますので、情報公開されているというふうに理解をしております。
  214. 石垣一夫

    ○石垣委員 時間が来ましたので終わりますけれども、最後に、郵政省の、いわゆる今後の宇宙通信政策の展望を聞きたいと思うのですけれども、その中で、通信放送機構はどのような役割を果たしていくのか。お願いします。
  215. 金澤薫

    ○金澤政府委員 世界的には、十数機から数十機の周回衛星によって、GPSの場合は二十四機ですけれども、全地球的に測位ができる、そういうシステムとか、イリジウムのような移動体衛星通信サービスが開始され、衛星ネットワークのグローバル化の動きというのは急速に高まりつつございます。  一方、社会のマルチメディア化の流れにおいて、広域性、それから回線設定の迅速性などの観点から、衛星分野の期待は大きくなっておりまして、光ファイバー網と相互に補完する超高速衛星通信ネットワーク技術の研究開発というものが必要になってきているわけでございます。  このような世界的な潮流の中で、郵政省としては、高度の情報通信基盤の早期整備の視点から衛星に対して尽力するだけでなく、国際協力・協調の視点からも先端的衛星技術について取り組んでいきたいというふうに考えているところでございます。  具体的には、衛星携帯電話システムの実証を目指す技術試験衛星の8型、それから超高速衛星通信ネットワークの実現を目指すギガビット衛星、それから安全保障、危機管理のための情報収集衛星等の研究開発を推進中ということでございます。  一方、通信放送機構は、基礎から応用への橋渡しということでございまして、産学官の人材を結集して研究開発実施しているところでございます。  具体的には、グローバルマルチメディア移動体衛星通信技術の研究開発、それから衛星ネットワークなどの次世代広帯域ネットワーク利用技術の研究開発というものを推進中でございます。
  216. 石垣一夫

    ○石垣委員 以上で終わります。
  217. 中沢健次

    中沢委員長 矢島恒夫君。
  218. 矢島恒夫

    ○矢島委員 日本共産党の矢島恒夫でございます。  私、最初に、特定公共電気通信システム法というのが昨年成立しまして、研究を開始しているわけですが、昨年の第三次補正予算で、学校における複合アクセス網活用型インターネットに関する研究開発、先ほど来話が出ていますように、三百億円予算がつきました。このシステム法のスキームで研究開発が行われることになったわけですけれども郵政省は昨年の春に全学校に光ファイバー網でインターネットを接続する計画というのを打ち上げましたが、学校のインターネットを今度はさまざまな高速線を複合的に組み合わせたネットワークでつくっていこう、こういう研究を行うことになったわけです。  郵政省は、近い将来、全学校に光ファイバーを敷かなくてもよいというか、新しい複合的な組み合わせネットワークで進めるというような方向で考えているのかどうか、その辺をお答えいただきたい。
  219. 天野定功

    ○天野政府委員 先生御指摘の光ファイバー網でございますが、特性としまして、大容量であるとかあるいは非常に損失が少ないといったようなすぐれた特性を有しておりまして、固定系通信ネットワークとしては二十一世紀を支える基幹的な通信インフラであるということで、これまでも、私どもとしましては、特別融資制度等の支援措置を講じるなどできる限り早期の全国整備に努めることとしておりまして、この方針は現在も変わっておりません。  しかしながら、光ファイバー網の整備にかかる投資を回収するほどの通信需要の少ない田舎の方だとか、あるいは僻地や離島などのように光ファイバーの敷設に多額の経費を必要とする地域においては、早期の整備が非常に困難でございます。  そういうことから、そのような地域におきまして、光ファイバーの整備を待つことなく早期に情報通信基盤の高度化を図るため、新たな通信技術として開発されましたDSL、デジタル加入者線と私ども呼んでおります、それからWLL、加入者系無線アクセスシステムと呼んでおりますが、こういった各種の高速アクセス回線を過渡的あるいは補完的にそれぞれの特色を生かしつつ導入していくのが適当だというふうに考えておりまして、こういった趣旨で、十年度の第三次補正予算で実施いたします学校インターネットの研究開発におきましては、光ファイバーを含む各種の高速回線を複合的に活用して新たなネットワークの構築技術の研究開発を行うこととしたものでございます。  このような取り組みは、高速の加入者回線を多様化し、早期に通信市場におきます競争を導入していく上でも効果的であるというふうに認識しているところでございます。
  220. 矢島恒夫

    ○矢島委員 文部省、来ていらっしゃると思うのですが、学校のインターネット接続を、今文部省と郵政省と共同的に研究開発を進めている、さまざまな高速線を複合的に組み合わせたネットワーク、これでやる必要がどこにあるのかという点で、どこそこの学校はCATVの回線でしか高速回線が引けないとか、あるいはこちらの学校については無線アクセス回線でしか高速回線を引けないとか、こういう事情があるのでしょうか。
  221. 銭谷眞美

    銭谷説明員 このたび、郵政省の方と協力をいたしまして、文部省として先進的教育ネットワークを活用した教育方法の研究開発事業を始めることとしたわけでございますけれども、この事業の中では、各学校等の間で情報のやりとりが円滑に行えるように、学校段階で一・五メガビット程度の回線速度を確保する必要はあろうかと思っておりますけれども、どういう回線種別を使うかは必ずしも問題ではないのではないかというふうに考えております。  ケーブルテレビの回線、光ファイバー、衛星通信等を複合的に活用するということは、この教育用ネットワークを使って郵政省実施をする通信技術に関する研究のために必要なものではないかというふうに承知をいたしております。
  222. 矢島恒夫

    ○矢島委員 続いて文部省に聞きますけれども、いずれにしろ、貴重な税金を使った研究であるわけです。文部省も予算を出しております。  この法律目的は、単なる基礎研究ではなくて、高速線を複合的に組み合わせたネットワークという、特定公共電気通信システムを普及するといいますか、つまり、実用に、実際に使っていくということにあるのだろうと思うのです。つまり、法の目的からいきますと、複合的な高速アクセス線のローカルネットワークというものを学校ネットワークとして普及していく、このことが求められていると思うのですけれども、文部省はそういう計画があるのですか。
  223. 銭谷眞美

    銭谷説明員 文部省といたしましては、今後の高度情報通信社会に生きる子供たちが必要な資質としてインターネットなどの情報通信ネットワークを活用できる能力を育成するということは大変重要な教育課題であるというふうに認識をいたしております。  それで、一般施策でございますけれども、文部省としては、学校における情報通信の基盤整備として、平成十年度から平成十三年度までの間にすべての小学校、中学校、高等学校及び特殊教育諸学校がインターネットで接続できるように、地方交付税措置による計画的な整備を推進しているわけでございます。  今回の事業は、そういう中で研究開発事業として実施をして、高速度の回線のもとでそれを用いた教育方法の研究開発をやっていただこうという趣旨のものと理解をいたしております。
  224. 矢島恒夫

    ○矢島委員 要するに、学校側とすれば、どういう接続であれ、同時に多数のパソコンがインターネットにつながればいいんだということだろうと思うわけです。  したがって、学校における複合アクセス網活用型インターネットに関する研究開発、これは法律研究開発しようとしているほかの電気通信システムと違う特徴があると私は思うのです。それは、この複合的高速ネットワークが実験開始の最初から機能するということが予定されているということだろうと思うのです。  そこで、郵政省にお聞きをするのですが、実験だといっても、この期間中、三年間、この複合的高速ネットワークにつないだパソコン、インターネットが安定して使えないなどということが起これば、つないだ学校の方では、ちょっと話が違うぞ、こういうことになるわけで、そういう心配はございませんか。
  225. 天野定功

    ○天野政府委員 神ならぬ人間が行う実験でございますから、絶対に心配ないと断定的に申すことは控えたいと思いますけれども、まず間違いないというふうに確信しております。
  226. 矢島恒夫

    ○矢島委員 文部省に聞きますけれども、実験といいながらも、実際に学校にとっては、たくさんのパソコンでインターネットを三年間無料で利用できる、こういうメリットがあるわけですね。この三年間の実験が終わったらどうするのかという問題なんです。つまり、高速アクセス回線の使用料金というのは結構かかりますね、一カ月に三十五万円とか言われております。  文部省、実験が終わったら、この三十地域千五十校分の高速アクセス回線費用というものをどうしようとするのか、負担する計画が文部省としてあるのかどうか、そこについて。
  227. 銭谷眞美

    銭谷説明員 この事業自体は国が行う研究開発事業でございますから、三年間は、ネットワークの構築に必要な設備、研究期間中のネットワークの利用経費というものは、原則として国において負担をするわけでございます。  お尋ねの研究期間終了後についてでございますけれども、整備をいたしました設備については、学校等の希望に応じて継続利用の実現方策を検討することといたしております。  それから、通信費につきましては、現在、地方交付税で措置をしているわけでございますけれども、計画が終わりました後は、原則として、各学校の設置者である地方自治体等において、その時点での料金体系、活用形態に応じまして必要な予算措置をお願いするということになろうかと思います。
  228. 矢島恒夫

    ○矢島委員 実際問題として、各地方自治体の負担でその後の経費について賄っていく、とりわけ回線の費用というもの、このことが本当にうまく移行できないと、これはまたせっかくの高速回線が使えないというような事態にもなるので、その辺は、これから三年間に十分いろいろな手だてを考えてもらいたい、このことを申し上げておきます。  端的に言いますと、春に郵政省が打ち上げた景気対策である高速アクセス線の全学校設置計画、この規模を少し小さくして、研究開発という名目をつけて、特定公共通信システム法のスキームに乗せた、それだけじゃないのかなというふうに私は思うわけです。  というのは、郵政省に聞きますが、この学校における複合アクセス網活用型インターネットに関する研究開発というのは特定公共電気通信システム法のどの条項に基づいてやったのか、条項名だけで結構ですから簡単にお答えいただきたい。
  229. 金澤薫

    ○金澤政府委員 機能といたしましては「学校教育及び社会教育において視聴覚教育を行うための機能」ということでございます。それにつきまして、機構の業務の特例を第四条に置いておりまして、機構業務の一号ロに、「学校教育及び社会教育における学習活動の方法に関する技術」ということでございます。
  230. 矢島恒夫

    ○矢島委員 私、昨年の通常国会で、この電気通信システムについて委員会質問してまいりました。そのときに文部省は、動画をスムーズに動かす技術研究だ、こういう御答弁もあります。そしてそのときに、これはシステム開発関連技術に関する研究開発の推進に関する法律案で、これはちょっと遠いのであれかもしれませんが、御案内のとおり、この図が例として挙げられて、「教育支援システムの例」「特定公共支援システムの例」というので、現在はこうなっているけれども将来はこうだ、こういう図が配られました。そして、それに基づいて研究開発が行われる、こういう御説明があったわけであります。  昨年の法案審議の際に郵政省が出したのがこのペーパーですが、同じ昨年の十二月二十八日に「通信放送機構実施する研究開発等の業務についての基本方針」、これに署名しているわけです。この基本方針というのは特定公共電気通信システム法の第三条に基づいて出され、第四条の通信放送機構が行う業務、これは、先ほど局長の方から御答弁がありました、この基本方針に従って行われる、こう規定されているわけです。  その基本方針というのを見ますと、一つは「特定公共電気通信システムにおいて実現すべき機能に関する事項」こういうのがありまして、そして「機構は、国や地方公共団体等が導入するものであって、その導入により、国民に対するサービスの改善等、国民が直接その便益を享受できる電気通信システムの開発に必要な技術の研究開発で、民間のみでは実施困難なものを行うものとするが、法第二条に規定する特定公共電気通信システムとしては、主に次の機能の実現を目指すもの」こうしているわけですね。  そして、その法の第二条の第一号に規定する機能については「公衆網等の電気通信回線を介して、映像教材を、学習意欲を高める構成かつ品質で、各学校に配信する機能」こういうふうに規定している。  これに対応して、その二の方で「前項の機能を実現するために必要な技術の内容に関する事項」こういうのがあります。その中にはこう書かれているわけですね。「法第四条第一号ロに規定する技術については、授業等で映像教材を用いる場合において、生徒等の学習意欲が高められるように、動画、音声等を作成、編集する技術及び生徒等の学習理解を深められるように、教育素材等を作成、編集する技術。」と規定している。  私、ちょっと長たらしくその条文を全部読んだんですけれども、といいますのは、果たしてこのどれに相当するのか、現在進めようとしているこの学校教育の中における複合アクセス網のインターネット、これを研究開発するというのはどれに照らし合わせたらそう読めるのか、その部分についてお聞きしたいわけです。  確かに、最初に配られたこの法案の場合の図でいきますと、なるほどぴったりこの文面に合った形になっているんですね。ところが、実際に今進めようとしているこの複合アクセス網によりますと、別のペーパーが配られて、このペーパーによりますと、インターネット網をつくるのに、まず光ファイバーもあればCATVもあればアクセス回線もあれば、いろいろな形で高速回線を張りめぐらす、こういう内容になっています。ということは、今までの条文や特に基本方針、これらによると、この研究開発のための業務を行うということはどうしても読み取れないんです。  そこで、私は、確かに、法案成立以後、三百億円ということで加えられたものですから、法律との整合性、こういうものをきちんとやるために、法改正とあわせて、新たな条項をつけ加えるとかあるいは少なくとも基本方針の中にきちんと書き込むべきだと思うんですけれども、その点についての御意見を伺いたい。
  231. 金澤薫

    ○金澤政府委員 学校インターネットは、学校において光ファイバー、衛星通信等の高速アクセス回線、これは専用回線もあろうかと思いますが、要するに電気通信回線でございます。これを活用することにより視聴覚教育を実施するというのが基本でございます。  その機能は、公共電気通信システム法第三条の規定に基づく基本方針に定めます、先ほど読み上げがございました「公衆網等の電気通信回線を介して、映像教材を、学習意欲を高める構成かつ品質で、各学校に配信する機能。」こういう機能に該当するのではないかというふうに私どもとして思っております。  ことしの三百億と昨年の最も違う点は、狭帯域回線か高速回線かということだけでございまして、その機能としては同じ機能ではないかというふうに思っている次第でございます。  技術につきましても……(矢島委員「結論だけ」と呼ぶ)はい。そういうことで、私ども、これで読めるというふうに考えておりますけれども、せっかくの御指摘でございますので、検討してみたいというふうに思っております。
  232. 矢島恒夫

    ○矢島委員 なぜ私がそういう質問をしたかといいますと、今度提出されている今回の法案の改定の一つに、警察と郵政省が一緒になって電気通信システムを開発しよう、その中身というのは、警察通信に対する不正アクセスを検出し、不正な通信を遮断することのできる電気通信システム、こうなっているわけであります。遮断するだけならいいですが、私はだからそういう方向での研究がなされるんだなと思います。  しかし、これを発展させて、つまり不正アクセスを検出する技術を発展させて、その不正アクセスを追及していく技術あるいはいろいろな広がりができるんだという、学校教育の先ほどの問題もそうなんですね、こうなっているけれどもここまでできるんだ、ここまでできるんだとどんどん広げていくということになると、果たして、不正アクセスに対してこれを検出したりあるいは遮断したりするそういう技術をさらに大きく広げていって、電気通信の秘密を侵害するような研究だとか、あるいは個人のプライバシー、こういうものを侵すようなものになっては大変だから、そういう点は絶対いたしませんねということを大臣にお聞きしたいんです。
  233. 野田聖子

    ○野田(聖)国務大臣 今先生御指摘の警察との研究開発は、あくまでも警察の電気通信システムを外部から保護するための研究開発でありまして、個人の通信とかまたは個人のプライバシー通信の秘密を侵害するような問題は発生いたしません。
  234. 矢島恒夫

    ○矢島委員 終わります。
  235. 中沢健次

    中沢委員長 中田宏君。
  236. 中田宏

    ○中田委員 中田宏でございます。  議題となっております二法案並びに関連したことについて、早速質疑に入らせていただきたいと思います。  通信放送機構においては、日ごろ通信衛星あるいは放送衛星といったもはや我々の生活に非常に密着をした衛星の管制等、重要な任務を果たしていただいています。また、昨年には、いわゆる公共電気通信システム法を制定しまして、その中で、高度情報通信社会に向けた公共分野の各種研究なども行ってもらっているわけです。  さて、早速お聞きをしたいのは、昨年、このいわゆる公共電気通信システム法もできて、各種研究に鋭意取り組んでもらっていることと思うんですけれども、法制定から現在までの間に既にどういった研究プロジェクトが立ち上がっているのか、またどういうふうに進行しているか、そこら辺の状況をまずお伺いをさせてください。
  237. 金澤薫

    ○金澤政府委員 通信放送機構には、平成十年度当初予算で六十九億円、第一次補正で九百八十億円、第三次補正で六百六十億円が研究開発のための予算として措置されたところでございます。これに基づきまして、当初予算につきましては、成層圏無線プラットホームの実用化のための研究開発、情報通信セキュリティー技術に関する研究開発等々が実施されておりまして、既に論文発表四十九件、特許出願二件という成果を上げているところでございます。  第一次補正につきましては、ギガビットネットワーク等につきまして研究体制がほぼ確立しつつありまして、それをテストベッドとして今後利用していただくという段階に入っております。  第三次補正につきましては、早期に研究環境の整備を完了するよう、現在努めているというところでございます。  以上でございます。
  238. 中田宏

    ○中田委員 地上デジタル放送の研究でありますとか、あるいは学校における複合アクセス網活用型のインターネットに関する研究だとか、あるいはギガビットネットワークについての研究等、そういった研究を既に進めていただいているということもお聞きをいたしています。具体的に一つ一つ取り上げたいところですが、時間もありませんから、私の一つの関心点であるギガビットネットワークについてちょっとお伺いをしたいと思います。  私は常に発言をさせていただいているんですが、こういうギガビットネットワークのようなものをきちっと国内に整備をしていくのは非常に重要なことだ。日本はインターネットが普及している、普及しているとは言っても、実は普及していない。世界的に見れば、先進国の中で見れば極めて下位の状態にあるわけであります。高度情報化社会のインフラを早急に整えていくべきだ、こう思っていますが、とりわけこのギガビットネットワークについての研究、これはどんなぐあいか。例えば実用化のための方向だとかあるいはめど等がついているか、そんなところを、ちょっとこのプロジェクトの研究状況をお聞きしたいと思います。
  239. 金澤薫

    ○金澤政府委員 研究開発用ギガビットネットワークでございますけれども、これは大学、研究機関、地方自治体、企業等の研究開発用に開放するためのいわゆるテストベッドでございます。そのテストベッドの上で民間の方々にさまざまなアプリケーションを開発していただくというものでございまして、平成十年度第一次補正予算によりまして、ATM交換機全国十カ所、それから共同利用型研究開発施設全国三カ所、これを整備いたしまして、四月一日から利用に供していきたいというふうに考えております。  それから、三次補正につきましては、光通信テスト環境ということで、オール光化を念頭に置いた共同利用型研究開発施設を全国二カ所へ追加整備したいということで、六十三億円の使い方を今検討しているところでございます。  それから、通信放送機構では、次世代超高速ネットワーク推進会議というものを設けまして、運営体制の整備を進めているということでございます。  いずれにいたしましても、このギガビットネットワークは今後五年間にわたり開放型実験施設ということですべての方々に御利用いただくことができますので、ぜひ高度なアプリケーションが開発されることを期待しているところでございます。
  240. 中田宏

    ○中田委員 ぜひ精力的に研究を進めていただきたいと思いますし、御承知のとおり、インターネットは、公共的にもあるいはそれ以外の分野にとってもこれから重要な通信手段である、世界的にももはや確固たる地位を築きつつある情報通信手段ですから、将来我が国にとっては非常に重要な国策として取り組むべき課題だと思います。識者の間では、ギガから今度はその百万倍のペタレベルのネットワークを整備すべきじゃないか、こんな声も上がっているわけでありまして、そういう意味では、これは日本の国際戦略というふうに国策として取り組むというぐらいの覚悟で、大臣のリーダーシップのもとにぜひ郵政省皆さん、取り組んでいただきたい、こう要望しておきたいと思います。  さて、高度情報化社会への対応ということで関連してお聞きをしますが、ハイテク犯罪防止の一環として、インターネット、あるいは例えばパソコン通信などの不正アクセス規制法についてちょっとお伺いをします。  先般、大臣には、二月の十日、私、所信表明に対する質疑の中でお伺いをしましたが、その時点では、今、法の提出準備を進めているということで、警察庁との間で大分ネゴをやっていた最中でありました。それがどうやら何とか決着をして、対立点も消えて、今まさに法を国会に提出する準備の最終段階だ、こうお伺いをしていますけれども、対立点はどんな形でまとまって、そして今、法律案はどういう内容のものになっていくのか、ちょっと現状をお聞きしたいと思います。
  241. 天野定功

    ○天野政府委員 以前に先生からお尋ねのありました時点では、警察庁との最大の調整事項は、通信記録、ログの保存の義務づけを行うかどうかでございましたが、これにつきましては、国際的な動向などを踏まえまして検討した結果、今回の法案には盛り込まず、引き続き検討をしていくということになりました。  その結果といたしまして、今回警察庁とまとまった骨格は、一つには不正アクセス自体の禁止、それから不正アクセスを助長する行為の禁止、そして三つ目に、不正アクセスの防止のための国及び都道府県公安委員会による情報の提供などの援助等、この三つを基本骨格として、今鋭意法案の最終的な調整を進めているところでございます。
  242. 中田宏

    ○中田委員 これは国際公約でもあったわけでありますから、インターネット社会の不安を少なくしていくためにも、さらにしっかり作業を進めていただきたい、このように要望しておきます。  最後に、この通信放送機構では、衛星を管理して、そこで衛星放送等重要な役割を担ってもらっているのですが、一方で、今度は衛星ではない地上波の放送についてちょっとお伺いしたいのです。  地上波の方はどうも飽和状態になりつつあって、とりわけ、例えばFM放送等については、先生方も御承知のとおり、地域にコミュニティー放送局あるいはミニFMと言われる放送局がこの近年たくさん立ち上がってきたわけです。ところが、現在、東京の近辺はもはや周波数のあきがほとんどないという状態になりつつある現状も私はよく承知をしております。  ただ、既設局との混信が予想される、当然それはちゃんと調整をしなければいけないところなわけですが、一方で、そうなると、公共性の高い電波というものを、いわば言い方は悪いけれども、先につくっちゃった者はいいけれども、後でやろうと思ってもなかなか入り込めないという状況がここに発生してくる、いわば既得権とも言えるような状態になってしまう。そうなると、後からやろうと思っていた地域との間の地域間格差というものも固定化してしまう可能性が出てくるわけであります。  そういう意味では、電波が混信しないようにしていくために、例えば、電波を出しても、一方で技術的に、私も勉強したのですが、別の電波をぶつけて、一定方向にその電波が行かないようにして、混信をさせないというような技術も今開発されて、実用化されている部分もあります。  こういったことをぜひ積極的にまた郵政の皆さんには研究をしていただいて、なるべく意欲あるベンチャーや事業家やあるいは放送局をやりたいという人たちが取り組めるように、放送できるように、免許が交付できるように、ひとつ積極的にこういうことも皆さんには御検討いただきたい、こう思っているのですが、ぜひそこら辺を要望したいと思いますが、御答弁をいただければと思います。
  243. 品川萬里

    ○品川政府委員 お答え申し上げます。  今先生御指摘のコミュニティーFM放送につきましては、大変有効活用していただいておりまして、現在百十五局開局しております。したがいまして、基本的に電波の事情が許す限りお認めしていきたいなというふうに考えておりますが、先に使っている電波に迷惑をかけないというのがいわば電波の世界のグローバルスタンダードでございまして、その原則は大事にしていかないと、かえって大混乱するということになろうかと思います。後から入った人が、また次の人を混乱させるということになりますから。  したがいまして、今先生御指摘のような、周波数を有効活用できる、あるいは混信防止に大変効果のある技術については大変興味深く伺いましたけれども、電波の使い方というのは地域地域によって非常に個別に事情が違いますので、ケースケースに応じまして慎重に、しかしできるだけ使っていただけるような方向で具体的に検討させていただきたいと存じます。
  244. 中田宏

    ○中田委員 以上で終わります。  最後に、そこら辺をひとつ積極的に前向きに御研究をいただいて、公共性ある電波が有効に活用されるようにお願いをしまして、終了したいと思います。
  245. 中沢健次

    中沢委員長 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  246. 中沢健次

    中沢委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  まず、特定公共電気通信システム開発関連技術に関する研究開発の推進に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  247. 中沢健次

    中沢委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  次に、通信放送機構法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  248. 中沢健次

    中沢委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました両法律案委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  249. 中沢健次

    中沢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  250. 中沢健次

    中沢委員長 次回は、来る十五日月曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時三十五分散会