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葉山委員 今言ったような
意味から、この
国家公安委員の
制度というのは
民主警察にとっては非常に重要だ、その点でも
国家公安委員長としての
自治大臣の責務というのは非常に重大だ、頑張ってもらいたいというふうに思っておるわけであります。
ところで、
国民生活が広範な分野で
情報化されて、
警察の
情報の一元的な
管理というものがますます
集中をしてきております。こういう中で、殊に、いわゆる
盗聴法とか、あるいは、これから
審議することになると思いますが、
住民基本台帳法の
議論のときも、
プライバシーも含めて、非常に危険な
方向を私は感じております。
警察の
情報の
蓄積の仕方とか
使用の仕方によっては、行き過ぎた
国民監視となりまして、
行政警察化につながる場合もあるわけであります。旧
憲法下の
警察国家の再現のようなことには決してならないようにしなければいけないし、いずれにせよ、大きな
権力である
警察庁が
方向を間違えないようにしてほしいというふうに思うわけであります。
技術の進歩著しい
時代の
警察の
捜査力の向上はもちろん必要でありますが、
国民すべてを
保護観察のもとに置くような発想はみずからに厳しく禁じて事に当たってくれるよう、改めて念を押しておきたいと思うわけであります。
私も、以前、
湘南地方の藤沢の市長をしておりまして、
市民に
田中二郎先生という
行政法の
先生がおられて、
大変お世話になりました。その
田中二郎先生が「
警察とは何か」という中で述べておられますように、
公共の安全と秩序を維持するために、
一般統治権に基づき、人民に命令し、強制し、自然の自由を制限する作用である、こういうふうに
警察とは何かということを定義されておられました。
ここで述べられているような、
目的における
公共性と手段における
権力性が
警察にはおのずからあるわけであります。その
権力性を抑制するものとして、
任務の
消極性というものが導き出されてくるわけであります。
警察というのは本質的に
権力性を内包しており、この
権力性、非
民主性、
人権抑圧性、
秘密性、
政治性、
恣意性等々が生じるおそれがあるわけでありまして、その点での
権力の乱用を戒めるという自覚が絶えずそれぞれの中で行われていなければならないというふうに思うわけであります。
私、先日、
東京警視庁の最初の川路大警視の話を読んだわけでありますが、川路大警視が明治五年にパリへ視察に行って、ポリスとは何かということで、パリじゅうを歩き回ったというのですね。
それで、当時のパリは二千人ぐらいのポリスがいたという話でありましたが、フランス語も何もできないのに、ずっと毎日歩き回って、そうしてホテルに帰るには、お巡りさんに、このホテルへ案内してくれ、こういうふうに言って、つぶさにパリの
警察制度というものを学んできて、その中から、やはりこういう
制度をつくったナポレオンという人は偉いとか、あるいは、それはちょっと見当が違っていたと思いますが、それも
警察制度をつくったジョセフ・フーシェという男が偉いとか、そういうふうに思ったそうであります。
ともあれ、パリじゅうを歩き回って、そしてそのポリスが、江戸
時代の与力や同心とは違って実に親切にホテルまで案内してくれた。それで、川路大警視はまくら元に、ポリスとは人民の保母なり、こういうふうにメモをしたという話がありました。川路さんという人はフランス語ができなかったから、「おやっとさあ」とか鹿児島弁で言ったというのですね。すると、向こうもそれをおもしろがって、「おやっとさあ」と言ったという話です。
まさしくそういった
意味で、ちょっとまねができないような勉強を、フランス語は一語もできないのにちゃんと見てきて、帰ってきて、当時の司法卿の江藤新平とか、すぐ上司だったですから、それから次に内務卿になりました大久保利通にそれをつぶさに
報告した。結果的には、大久保の内務省案を川路大警視は進言をしたために、江藤新平は敗れて、少し後に佐賀の乱で斬首の刑に遭うというような歴史もあったわけであります。
日本の
警察制度の
創設当時のそういう、
東京警視庁はそのころは三千人というわずかな人間で、そのうち千人ぐらいが薩摩の人だったのですかね。とにかくそういうことで、物事の始まるときというのはいろいろ大変だったというふうに思います。それ以来のいろいろな歴史があるわけでありますけれども、やはり
警察というのは、そういう
意味では先ほどの
長官のお言葉のとおり、
権力の乱用を戒めて、
個人の
人権をそれぞれ尊重し、そして本当に
運営を民主的にして、これからの新しい
警察をつくってほしいというふうに願わずにはいられません。
決して、暗い、あの戦前の
警察の復活を許さずに、ひとつ人民の保母として警官も頑張ってほしいし、これからもそういう点で頑張ってほしいということを申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。