運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1999-06-30 第145回国会 衆議院 大蔵委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年六月三十日(水曜日)     午前十時開議   出席委員    委員長 村井  仁君    理事 井奥 貞雄君 理事 衛藤征士郎君    理事 鴨下 一郎君 理事 柳本 卓治君    理事 上田 清司君 理事 日野 市朗君    理事 石井 啓一君 理事 小池百合子君       大石 秀政君    奥山 茂彦君       河井 克行君    倉成 正和君       小島 敏男君    河野 太郎君       桜井  新君    桜田 義孝君       砂田 圭佑君    中野 正志君       中村正三郎君    御法川英文君       宮島 大典君    村上誠一郎君       山本 幸三君    渡辺 具能君       渡辺 博道君    渡辺 喜美君       海江田万里君    末松 義規君       仙谷 由人君    玉置 一弥君       中川 正春君    山本 孝史君       大口 善徳君    谷口 隆義君       並木 正芳君    若松 謙維君       鈴木 淑夫君    西田  猛君       佐々木憲昭君    春名 直章君       矢島 恒夫君    横光 克彦君  委員外出席者         参考人         (日本銀行総裁         )       速水  優君         参考人         (日本銀行副総         裁)      山口  泰君         参考人         (日本銀行理事         )       黒田  巖君         参考人         (日本銀行理事         )       小畑 義治君         参考人         (日本銀行理事         )       引馬  滋君         大蔵委員会専門         員       藤井 保憲君 委員の異動 六月十四日  辞任         補欠選任   栗本慎一郎君     御法川英文君 同月三十日  辞任         補欠選任   河井 克行君     宮島 大典君   桜田 義孝君     奥山 茂彦君   中野 正志君     倉成 正和君   綿貫 民輔君     山本 幸三君   矢島 恒夫君     春名 直章君 同日  辞任         補欠選任   奥山 茂彦君     小島 敏男君   倉成 正和君     中野 正志君   宮島 大典君     河井 克行君   山本 幸三君     綿貫 民輔君   春名 直章君     矢島 恒夫君 同日  辞任         補欠選任   小島 敏男君     桜田 義孝君 四月二十八日  消費税減税に関する請願佐々木陸海紹介)(第二九三五号)  消費税率を三%に戻すことに関する請願東中光雄紹介)(第二九三六号)  同(佐々木憲昭紹介)(第三〇二九号)  共済年金制度堅持に関する請願宮本一三紹介)(第二九三七号)  同(相沢英之紹介)(第三〇〇〇号)  同(青山丘紹介)(第三〇〇一号)  同(赤松広隆紹介)(第三〇〇二号)  同(松岡利勝紹介)(第三〇〇三号)  同(森喜朗紹介)(第三〇〇四号)  同(稲垣実男紹介)(第三〇三〇号)  同(草川昭三紹介)(第三〇三一号)  同(前田武志紹介)(第三〇三二号) 五月十一日  共済年金制度堅持に関する請願福永信彦紹介)(第三〇八五号)  同(逢沢一郎紹介)(第三一四九号)  同(一川保夫紹介)(第三一五〇号)  同(河村たかし紹介)(第三一五一号)  同(中川智子紹介)(第三一五二号)  同(平沼赳夫紹介)(第三一五三号)  同(三沢淳紹介)(第三一五四号)  同(青木宏之紹介)(第三二二二号)  消費税率を三%に戻すことに関する請願石井郁子紹介)(第三一四〇号)  同(児玉健次紹介)(第三一四一号)  同(穀田恵二紹介)(第三一四二号)  同(佐々木陸海紹介)(第三一四三号)  同(中島武敏紹介)(第三一四四号)  同(中林よし子紹介)(第三一四五号)  同(矢島恒夫紹介)(第三一四六号)  同(山原健二郎紹介)(第三一四七号)  消費税率の引き下げに関する請願志位和夫紹介)(第三一四八号) 同月十四日  共済年金制度堅持に関する請願伊藤英成紹介)(第三二四五号)  同(河村建夫紹介)(第三二七四号)  同(近藤昭一紹介)(第三二七五号)  同(江崎鐵磨紹介)(第三三一二号)  同(小里貞利紹介)(第三三一三号)  同(菅原喜重郎紹介)(第三三一四号)  同(土肥隆一紹介)(第三三一五号)  同(西田司紹介)(第三三一六号)  同(牧野隆守紹介)(第三三一七号)  同(坂口力紹介)(第三三五七号)  同(丹羽雄哉紹介)(第三三五八号)  同(平沼赳夫紹介)(第三三八二号)  消費税率を三%に戻すことに関する請願金子満広紹介)(第三三七五号)  同(佐々木憲昭紹介)(第三三七六号)  同(佐々木陸海紹介)(第三三七七号)  同(中路雅弘紹介)(第三三七八号)  大型所得減税消費税減税に関する請願大森猛紹介)(第三三七九号)  同(志位和夫紹介)(第三三八〇号)  同(中路雅弘紹介)(第三三八一号) 同月二十一日  大型所得減税消費税減税に関する請願石井一紹介)(第三四〇五号)  共済年金制度堅持に関する請願中川正春紹介)(第三四〇六号)  同(岡部英男紹介)(第三四一八号)  同(奥谷通紹介)(第三四一九号)  同(西田司紹介)(第三四二〇号)  同(村田吉隆紹介)(第三四二一号)  同(山中貞則紹介)(第三四二二号)  同(戸井田徹紹介)(第三四四一号)  同(西田司紹介)(第三四四二号)  同(赤城徳彦紹介)(第三四六〇号)  同(越智伊平紹介)(第三四六一号)  同(梶山静六紹介)(第三四六二号)  同(戸井田徹紹介)(第三四六三号)  同(山本公一紹介)(第三四六四号)  同(安倍晋三君紹介)(第三五〇二号)  同(井上喜一紹介)(第三五〇三号)  同(佐々木洋平紹介)(第三五〇四号)  同(砂田圭佑紹介)(第三五〇五号)  同(戸井田徹紹介)(第三五〇六号)  同(堀込征雄紹介)(第三五〇七号)  同(井上喜一紹介)(第三五三九号)  同(鯨岡兵輔紹介)(第三五四〇号)  同(土井たか子紹介)(第三五四一号) 同月三十一日  共済年金制度堅持に関する請願井上喜一紹介)(第三五七六号)  同(小里貞利紹介)(第三五七七号)  同(大野松茂紹介)(第三五七八号)  同(小坂憲次紹介)(第三五七九号)  同(葉梨信行紹介)(第三五八〇号)  同(谷畑孝紹介)(第三六〇七号)  同(額賀福志郎紹介)(第三六〇八号)  同(能勢和子紹介)(第三六〇九号)  同(梶山静六紹介)(第三六七三号)  同(岡部英男紹介)(第三六九八号)  大型所得減税消費税減税に関する請願土肥隆一紹介)(第三六〇六号) 六月三日  共済年金制度堅持に関する請願福田康夫紹介)(第三八五四号)  同(小里貞利紹介)(第三九八二号) 同月七日  共済年金制度堅持に関する請願赤城徳彦紹介)(第四一一六号)  同(古賀正浩紹介)(第四一一七号)  同(中村喜四郎紹介)(第四一一八号)  同(小川元紹介)(第四二八八号)  同(小此木八郎紹介)(第四二八九号)  同(田村憲久紹介)(第四二九〇号) 同月八日  土地税制の見直しに関する請願桜井新紹介)(第四四五二号)  共済年金制度堅持に関する請願石井一紹介)(第四四五三号)  同(桜井新紹介)(第四四五四号)  同(園田修光紹介)(第四四五五号) 同月九日  消費税率を三%に戻すことに関する請願木島日出夫紹介)(第四七一九号)  同(志位和夫紹介)(第四七二〇号)  同(中田宏紹介)(第四七二一号)  同(葉山峻紹介)(第四七二二号)  同(春名直章紹介)(第四七二三号)  同(藤木洋子紹介)(第四七二四号)  同(松沢成文紹介)(第四七二五号)  同(田中慶秋紹介)(第四九〇一号)  同(西川知雄紹介)(第四九〇二号)  同(松沢成文紹介)(第四九〇三号)  児童手当大幅拡充、新たな子育て支援制度に関する請願西博義紹介)(第四七二六号)  共済年金制度堅持に関する請願森英介紹介)(第四七二七号)  同(梶山静六紹介)(第四九〇四号)  同(川内博史紹介)(第四九〇五号)  同(佐藤剛男紹介)(第四九〇六号)  同(丹羽雄哉紹介)(第四九〇七号)  同(橋本龍太郎紹介)(第四九〇八号)  同(保岡興治紹介)(第四九〇九号)  消費税減税に関する請願松本善明紹介)(第四九〇〇号) 同月十日  消費税率を三%に戻すことに関する請願児玉健次紹介)(第五一四四号)  同(永井英慈君紹介)(第五一四五号)  同(石井郁子紹介)(第五六六二号)  同(大森猛紹介)(第五六六三号)  同(金子満広紹介)(第五六六四号)  同(木島日出夫紹介)(第五六六五号)  同(児玉健次紹介)(第五六六六号)  同(穀田恵二紹介)(第五六六七号)  同(佐々木憲昭紹介)(第五六六八号)  同(佐々木陸海紹介)(第五六六九号)  同(志位和夫紹介)(第五六七〇号)  同(瀬古由起子紹介)(第五六七一号)  同(辻第一君紹介)(第五六七二号)  同(寺前巖紹介)(第五六七三号)  同(中路雅弘紹介)(第五六七四号)  同(中島武敏紹介)(第五六七五号)  同(中林よし子紹介)(第五六七六号)  同(春名直章紹介)(第五六七七号)  同(東中光雄紹介)(第五六七八号)  同(平賀高成紹介)(第五六七九号)  同(不破哲三紹介)(第五六八〇号)  同(藤木洋子紹介)(第五六八一号)  同(藤田スミ紹介)(第五六八二号)  同(古堅実吉紹介)(第五六八三号)  同(松本善明紹介)(第五六八四号)  同(矢島恒夫紹介)(第五六八五号)  同(山原健二郎紹介)(第五六八六号)  同(吉井英勝紹介)(第五六八七号)  共済年金制度堅持に関する請願羽田孜紹介)(第五一四六号)  同(萩山教嚴君紹介)(第五一四七号)  同(宮路和明紹介)(第五一四八号)  同(久保哲司紹介)(第五三八一号)  同(濱田健一紹介)(第五三八二号)  同(宮腰光寛紹介)(第五三八三号)  同(金子一義紹介)(第五五六九号)  同(橘康太郎紹介)(第五五七〇号)  同(綿貫民輔紹介)(第五五七一号)  同(吉川貴盛紹介)(第五六九〇号)  大型所得減税消費税減税に関する請願吉井英勝紹介)(第五六八八号)  所得税基礎控除引き上げ課税最低限度額抜本的改正に関する請願佐々木憲昭紹介)(第五六八九号) 同月十一日   消費税率を三%に戻すことに関する請願児玉健次紹介)(第五九八二号)  同(佐々木憲昭紹介)(第五九八三号)  同(佐々木陸海紹介)(第五九八四号)  同(瀬古由起子紹介)(第五九八五号)  同(平賀高成紹介)(第五九八六号)  同(大森猛紹介)(第六二八七号)  同(中林よし子紹介)(第六四七五号)  同(藤田スミ紹介)(第六四七六号)  大型所得減税消費税減税に関する請願吉井英勝紹介)(第五九八七号)  同(権藤恒夫紹介)(第六四七七号)  共済年金制度堅持に関する請願小里貞利紹介)(第五九八八号)  同(佐藤勉紹介)(第五九八九号)  同(平沢勝栄紹介)(第五九九〇号)  同(小澤潔紹介)(第六一三一号)  同(津島雄二紹介)(第六一三二号)  同(石原伸晃紹介)(第六二八八号)  同(今田保典紹介)(第六二八九号)  同(辻一彦紹介)(第六二九〇号)  同(宮路和明紹介)(第六二九一号)  同(玉沢徳一郎紹介)(第六三六九号)  同(中桐伸五君紹介)(第六三七〇号)  同(権藤恒夫紹介)(第六四七八号)  同(山花貞夫紹介)(第六四七九号)  消費税減税に関する請願松本善明紹介)(第六二八六号)  同(金子満広紹介)(第六三六七号)  同(矢島恒夫紹介)(第六三六八号) は本委員会に付託された。 四月二十七日  消費税率を三%に引き下げることに関する陳情書外三件(第一二九号)  児童手当制度抜本的改善に関する陳情書外十二件(第一三〇号)  多重債務問題解決のための総合的施策に関する陳情書(第一三一号)  国家公務員共済年金等改善に関する陳情書(第一八一号) 六月十一日  消費税率を三%に引き下げ食料品を非課税にすることに関する陳情書(第二五六号)  多重債務問題解決のための総合的施策に関する陳情書(第二五七号) は本委員会に参考送付された。 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  金融に関する件(通貨及び金融調節に関する報告書)     午前十時開議      ――――◇―――――
  2. 村井仁

    村井委員長 これより会議を開きます。  金融に関する件について調査を進めます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁速水優君、日本銀行総裁山口泰君、日本銀行理事黒田巖君、日本銀行理事引馬滋君及び日本銀行理事小畑義治君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 村井仁

    村井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――
  4. 村井仁

    村井委員長 去る四日、日本銀行法第五十四条第一項の規定に基づき、日本銀行から国会に提出されました通貨及び金融調節に関する報告書につきまして、概要説明を求めます。日本銀行総裁速水優君。
  5. 速水優

    速水参考人 速水でございます。  去る六月四日に、日本銀行法五十四条に基づきまして、昨年度下期の金融政策運営にかかる半期報告書国会に提出させていただきました。新しい日本銀行法が昨年四月に施行されて以来、今回で二回目の報告書提出ということになります。本日は、本報告書につきまして御説明機会を与えていただきましたことを、厚くお礼申し上げます。  まず初めに、私から、日本銀行の最近の金融政策運営に関する考え方を述べさせていただきたいと思います。  昨年度下期以降の金融経済情勢金融政策運営につきまして簡単に振り返ってみますと、一昨年来、日本経済は、実体経済面金融システム面ともに大変厳しい状況に直面してまいりました。昨年夏場以降は、ロシア金融危機米国大手ヘッジファンド経営危機をきっかけにしまして、国際的な金融資本市場緊張が著しく高まりました。我が国におきましては、金融機関資金繰りが極めて厳しくなりましたほか、一時は、優良企業でさえ資金調達が難しくなるといった状況に至りました。景気悪化が続く中で、こうした金融市場動揺は、企業金融の逼迫や企業家計マインド悪化を通じて、我が国経済全般にさらに深刻な影響を与えることが懸念されました。  日本銀行は、こうした危機的状況を踏まえまして、昨年九月以降、迅速かつ弾力的に新たな政策措置を講じて、金融市場の安定と経済活動支援全力を挙げて対応してまいりました。  すなわち、まず、昨年九月には、二年ぶりに追加的な金融緩和を実施して、コールレートをほぼ〇・二五%に引き下げる決定を行いました。また、昨年十一月には、企業金融円滑化に資するために、CPオペの積極的な活用や臨時貸出制度の創設など、新たな対策決定いたしました。さらに、本年二月には、過去に前例のないいわゆるゼロ金利政策、すなわち、より潤沢な資金供給を行い、オーバーナイトコールレートをできるだけ低目に推移するよう促すという、極めて思い切った措置に踏み切ったわけでございます。  幸い、この間、海外における金融資本市場緊張は次第に鎮静化してまいりました。また、政府による累次にわたる経済政策金融システム対策の実施、ただいま申し述べましたような日本銀行の思い切った金融緩和策の浸透などを背景にしまして、本年に入り、事態の改善が徐々にはっきりしてきたように思います。すなわち、金融市場は安定を取り戻し、景気悪化テンポは次第に緩やかとなってまいりました。現在では、足元の景気ははっきり下げどまったと判断できるようになっております。  とは申せ、企業のリストラの動きが本格化しつつあることなどを踏まえますと、設備投資減少基調や雇用・家計所得の厳しさなどは当面続く可能性は高いと考えられます。したがいまして、民間需要の速やかな自律的回復は依然として期待しにくい状況にあります。このため、こうした面からの物価に対する潜在的な低下圧力が根強く残存しておりまして、まだデフレ懸念が払拭されたと言える状況には至っておりません。  申し上げるまでもなく、金融政策の目的は、物価の安定を通じて国民経済の健全な発展に資することにございます。こうした理念に照らして、日本銀行としては、デフレ懸念の払拭が展望できるような情勢になりますまで、現在の思い切った金融緩和基調を維持して、金融面から物価の安定と経済回復をしっかり支えていく方針でございます。  日本銀行としては、金融財政面から経済を下支えしているうちに、経済や産業の構造改革が着実に進められ、日本経済の新たな自律的成長の道筋が確かなものとなっていくことを強く期待している次第でございます。  さて、新しい日銀法が施行されまして一年三カ月近くになろうとしております。この間、日本銀行は、新法の理念を十分踏まえて、与えられた使命の達成に全力を挙げますとともに、政策決定過程透明性向上に積極的に取り組んでまいりました。  幸い、政策委員会金融政策決定会合議事要旨の公表、金融経済月報刊行等、これら新しい仕組みも次第に定着してきたものと考えております。また、こうして国会においてまとまった時間をいただきまして政策運営に関する質問にお答えする場をいただくことは、透明性向上の上からも極めて重要な機会と認識いたしております。  本日は、金融政策運営をめぐるさまざまな問題につきまして、日本銀行考え方をできるだけ率直に御説明申し上げ、御理解をいただきたいと思っておりますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。
  6. 村井仁

    村井委員長 これにて概要説明は終了いたしました。     ―――――――――――――
  7. 村井仁

    村井委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山本幸三君。
  8. 山本幸三

    山本(幸)委員 自由民主党の山本幸三でございます。きょうは、大蔵委員会質問させていただきますことを大変光栄に存じております。  早速でありますが、時間がありませんので本題に入りたいと思います。  日本銀行中央銀行役割というのは物価の安定を図るということでありますが、そのことは、どの基本的な教科書を読んでも、お金の源泉であるマネタリーベースコントロールして、そしてマネーサプライコントロールし、そのことによって物価の安定を図っていく、これが中央銀行役割である、そう書いてあるわけですね。  昨年の十二月に質問させていただいたときに、速水総裁は、日本銀行マネタリーベースコントロールができる、私の質問に対してそうお答えになりました。これは私は高く評価していまして、今までの日本銀行総裁マネタリーベースコントロールができると答えられたのは速水総裁ただ一人。それまでは、マネタリーベースコントロールなんかできない、マネーサプライはできるけれどもなどと、わけのわからぬようなことを言っていた総裁ばかりだったんですが、初めて対外的にも海外的にも通用するようなことをお認めになった。  そこで、そのことは高く評価し、日本銀行は最近は、かつては隠しておいたマネタリーベース数字等も出すようになって、やっとまともな議論ができるようになったわけでありますが、そこで私は非常に危惧しておるのは、昨年の暮れ、十一月から十二月、ことしの一月、このマネタリーベースが急速に落ちました。このことは、せっかく一―三月少し景気回復してきたという数字が出ているんですが、いずれ、若干のタイムラグを伴って景気に何らかの深刻な影響を与える可能性がある。昨年中は大体九%ぐらいでマネタリーベースはかなり高い。私はそれでも不十分だと思っていたのですが、一〇%以上にしようと思っていましたが、それにしても九%ぐらいまでは伸ばしていた。しかし、突然去年の暮れからことし初めにかけてマネタリーベースが急速に落ち込みました。これはどうしてですか。
  9. 山口泰

    山口参考人 マネタリーベースというのは、改めて申し上げるまでもございませんけれども、現在約六十兆円ほどの残高になっておりますけれども、そのうち約五十兆円が世の中で流通している日本銀行券残高になっております。  そのマネタリーベース伸びを振り返ってみますと、ただいま山本先生が御指摘のとおり、昨年末にかけまして伸び率が低下いたしております。これは、日本銀行が短期の金利、具体的にはオーバーナイトコールレートでございますけれども、この金利を低く誘導するという金融市場における調節方針のもとで、以下申し上げますような資金需要サイドの大きな変動に対応した結果生じたものだというふうに考えております。  その資金需要サイドの大きな変動と申しますのは、主として二つございます。第一は、金融システム不安あるいは金融市場における著しい動揺というものが年末にかけて鎮静してまいりました結果、例えば企業や個人が預金をおろして現金を積み上げるとか、あるいは金融機関自身も、現金、これは日銀に対する預け金ということになりますけれども、これを通常よりも大幅に積み上げるというような動きが一段落したということが第一の変化でございました。二つ目の大きな変化は、ボーナス支給額が、ちょうど年末にかけて支払い時期に入ってきたわけでございますが、これが落ち込んだために銀行券に対する需要が落ち込んだということがございました。こうした資金需要サイドの大きな変動マネタリーベースの主力をなします日銀券需要の減退となってあらわれたというふうに理解しております。  このような金融市場調節方針日本だけで行っているわけではございませんで、米国連銀ほか広く中央銀行が行っている方法だというふうに理解しております。  御質問の、なぜ年末にかけてマネタリーベース伸びが落ちたかということについて、私どもが理解しておるバックグラウンドというのは以上のようなことでございます。
  10. 山本幸三

    山本(幸)委員 私は、せっかくこういう委員会に出ておられるのですから、総裁に答えてもらいたい。これは基本的な、実に金融政策の最も重要なところなんです。このことが日本経済に対して大きな影響を与えるところなんですね。ぜひ総裁に答えてもらいたい。とても技術的な話だという場合にはもちろん考えますけれども、これは基本的な話でしょう。まず総裁が答えるべき問題だと私は思います。ぜひできるだけ総裁に答えてもらいたい。  これは、この報告書の五十四ページにも落ちた数字説明が書いてあるのですが、基本的に金融システム不安感がなくなっていわゆるたんす預金がなくなった、これが一つ。これが大きい。それからボーナスが減ったということ、そういうことが理由として挙げてあるわけですね。私はそのことは非常に疑問に思う。なぜなら、これは資料を配ってください。  では、たんす預金がなくなったらマネタリーベースが減るか、そんなことはあり得ない。たんす預金がなくなる、ボーナスが減った、そのことによってマネタリーベースが減るメカニズムがどうして働くのですか。
  11. 山口泰

    山口参考人 冒頭申し上げましたように、マネタリーベース六十兆円の残高のうち約九割の五十五兆円ほどが流通現金から成り立っております。  その流通現金はさまざまな要因によって変動するわけでございますけれども、例えば、金融システム不安のもとでたんす預金をふやしたいというようなニーズが非常にふえるとか、そういう不安が落ちつきますとたんす預金に積み増すような動きがぐっと鎮静化するというようなことが見られるわけでございます。ボーナスの支給も幾つかの流通現金に対する変動要因の一つだというふうに思っておりますけれども、そういうような現金需要が大きな変動を来す場合には、当然流通現金伸び率というものに影響を与えてまいりますし、それが九割を占めるマネタリーベース伸び率というものも影響を受けざるを得ないというふうに考えている次第でございます。
  12. 山本幸三

    山本(幸)委員 こんなことを説明しなければいけないというのは私は大変恐縮に思うが、今配らせていただいた資料の下の方にそのメカニズムが書いてある。たんす預金が減ると何が起こるかというと、個人のバランスシートから現金が減ります。現金が減って、その分は預金に回る。経済全体として考えればそうなる。では、その現金は、銀行のバランスシートを見ると、銀行の負債の側に預金が立って銀行の資産の部に現金が立つ。これが起こるだけですよ。これが起こったからといってマネタリーベースが変わりますか。そんなことはあり得ない。  マネタリーベースが変わるのは、こういう状況が起こった後に日本銀行がどうするかによって決まるのですよ。日本銀行は、銀行のバランスシートに現金がふえる、あるいはそのことが準備の日銀当座預金に入ってくるかもしれない、そういう状況になったときに、コール市場に資金が出るという可能性からコールのレートが下がるプレッシャーが働くと見て、〇・二五%を維持したい、下がるのをほっておけばいいのに、しかし、〇・二五%を維持するためにはその分は減らさなければいかぬといって日本銀行信用を引き揚げるのですよ。つまり、たんす預金が減ったりボーナスが減ったからという状況が起こってマネタリーベースが減るのではない。それを見ながらコールレートをある一定の水準に維持したいと思って日本銀行日銀信用を引き揚げるからマネタリーベースが減るのですよ。  この表の上の方に書いていますが、マネタリーベースの増加の要因というのは二つしかない。財政の要因で増減するか、日本銀行信用によって増減するか、二つしかないのですよ。これはもう御承知ですね。ここが財政と金融が不可分だということの究極だと僕は思っていますが、きょうはそれを議論するところではないから言いませんが、結局のところ、こんなことが起こったって、日本銀行が政策スタンスを変えない限りはマネタリーベース変化というのはあり得ない。  では、なぜ起こったか。マネタリーベースの平残は日本銀行は出すようになりましたが、その要因についてはいまだにちっとも出さない。これは資金需給表から私が毎月つくっているのだ、その要因を。しかし、これは平残ではないから、月残でやるので必ずしもこれと一致しない。本当は日本銀行がこういうものをつくってもらいたい。これを出せば日本銀行が何をやったかわかる。しかし、正確ではないけれども、大まかにはどういうことをやったかというのがわかります。  これで見ると、昨年の第四・四半期、財政資金が大量に出た。補正予算で財政資金を供給しました。これがきいたのだ。ところが、国債も発行したから、その分引き揚げました。それでほっておけばいいのに、日本銀行は事もあろうに日銀信用を大幅に引き揚げたのだ。そのことによってマネタリーベースはがくんと落ちたのですよ。つまり、日本銀行は明らかに名目コールレートに拘泥して、九%ぐらい伸びマネタリーベースを急激に動かしたのだ、減らしたのだ。あの去年の暮れの金融危機があって、これから景気回復しようというときに日本銀行信用を大幅に引き揚げたのだ。これがマネタリーベースが減った原因ですよ。そのことを書かないで、対外的に、不安心理がなくなった、たんす預金がなくなったからだ、ボーナスが減ったからだ、こんなものは理由にならない。こんなものを受けて日本銀行が何もしなければマネタリーベースなんか変わりませんよ。その意味では、私はこの報告書はミスリーディングであると思っています。  日本銀行が何をやったか、何を政策として考え、やったか、そのことによってマネタリーベースは変わったのだ。これはほっておけば大変なことになる状況だったと私は思いますけれども、そのときは政府の中小企業に対する保証融資があって、それで息をついたのだ。もしそれがなかったら大変なことになっただろうと私は思います。その意味では、こういう報告書というのは日本銀行がやっていることをきちっと書いていない。その意味では、日本銀行は、一体何のために何をやろうとしているのか、そういうことをきちっと報告し、批判を仰がなければいけないと私は思います。そういう意味でこの報告書は非常にミスリーディングである、そのことを指摘しておきたい。  次にお伺いいたしますけれども、この一年間、日本銀行は独立して金融政策運営をやってきた。総裁のいろいろなところでの発言等をお聞きしますと、いや、自分たちは考えられる一番正しいことをやってきた、そのほかのことは考えられないというぐらいに言い切っていますね。しかし、そんなことを言ったって、政治というのは、あるいは行政というのは結果責任ですから、結果がちゃんと出なければそういう政策運営は成功したとは言えない。  では、この一年間の結果はどうですか。物価の下落は、卸売物価指数、いまだにマイナス二%ぐらい、ずっと続いています。名目賃金、マイナス二%の下落。失業率四・八%、いよいよ大きくなりつつある。これは、結果責任としてちゃんとしたことをやったと言えるのですか。少なくとも日本銀行物価については責任があるはずだ。従来は、物価が上がるということについて、上がり過ぎないようにしようということでしたけれども、今の現状は、下がり過ぎるということに対しての責任も感じてもらわなければいかぬ。こういう意味では日本銀行は結果としてちゃんとした責任を果たしていない、私はそういうふうに思いますけれども、総裁、政策委員会の皆さん方、どういう責任をとるつもりですか。
  13. 速水優

    速水参考人 お答えいたします。  金融政策の目的につきましては、御承知のように、新日銀法の第二条に、物価の安定を通じて国民経済の健全な発展に資するということにあるのだと書かれております。先生のおっしゃるマネタリーベースも、金融情勢を判断し、経済動きを判断する一つの大切な資料であることは私ども十分承知しております。日本銀行は、ここに書かれております物価の安定、これをしっかり見ておるつもりでございます。それに対して必要なときに手を打っていくということをしてまいったつもりでございます。  累次にわたって金融緩和政策を実施してまいりましたが、例えば昨年の九月の二年ぶりの金融緩和措置、十一月の企業金融円滑化に資するための新たな措置、そしてまたことし二月のゼロ金利政策、これによって企業金融の逼迫感というのはひところに比べてかなり後退してきていると思いますし、昨年悪化を続けてきた景気は最近下げどまってきているように思います。  物価につきましては、おっしゃるように、確かに昨年、ずっと下げ続けてまいっておりますが、ここに参りまして卸売物価は若干上がってきております。また、消費者物価もおおむね横ばいということを続けてきております。私どもは、こういうことを見ながら情勢の判断、政策の討議をしてきておるわけでございます。  ただ、金融政策だけで日本経済の抱えますすべての問題を解決できるものでもございません。日本経済の新たな発展を確かなものにするために、金融面から経済活動を支えているうちに、金融システムの立て直しや経済産業構造の改革が着実に進められるようになっていくことが大切であると思っております。  もちろん、日本銀行としましては、引き続き物価の安定という使命を達成するために全力を挙げていく所存でありますことをここで強く申し上げておきたいと思います。
  14. 山本幸三

    山本(幸)委員 要するに、緩和を続けてきました、一生懸命やってきましたということを言うだけで、そのことでちゃんと結果が出ているということの検証がないのですね。  金融というのは、私は先ほどもマネタリーベースのところでお話ししましたけれども、日本銀行政策運営の大きな問題は、マネタリーベースが乱高下するというのは、コールレート、名目金利に拘泥しているからそうなるのです。私はこのことは前回随分議論させていただいて、名目レートだけ見ていたら実態はわからないのだ。だって、実質金利はむしろ高いのだから、あるいはリスクプレミアムというのは金融不安があるときは物すごく大きくなっているのだから、そういうときに名目のコールレートだけ見ているからこんなことになる。そこで、実質金利の議論をしようとすると、ではどのデフレーターを使ったらいいかわからないという議論があるから、そんなわからないような議論をするよりは量でいったらいいでしょう。量をコントロールすることがどの金融の教科書にも中央銀行の使命だと書いてある。日本銀行はそれをいまだに変えようとしない。  今、名目金利がゼロ金利ということになっているのですが、もうそろそろそういう過去の経緯にとらわれないで、企業経営者といろいろ話してみても、銀行がちゃんと金の量を維持してくれるということが経営者にとっては一番大事なんですね。そういう意味で日本銀行は、金利の指標によってやっていくということは、こういうふうにマネタリーベースが乱高下するような、経済に悪影響を及ぼすような運営になる。それをやめて、マネタリーベースあるいはマネーサプライ、何%から何%、そういうことを示してやっていった方が私はいいと思うし、そういう議論が学界にもあるし、政策委員の中にもあると聞いていますが、なぜそういうことができないのですか。
  15. 山口泰

    山口参考人 先ほど山本先生の方から、昨年末にかけてマネタリーベース伸び率が鈍化したという御指摘がございましたけれども、そのとき、我が国金融資本市場におきましては、例えば金融システムについての不安が急速に鎮静化していくというようなことが起き、それを基本といたしまして例えば金融機関金融市場の中で支払っておりましたプレミアムが低下する。これは実は海外の金融市場でも同様なことが起きたわけでございます。また、金融機関みずからが資金調達について持っておりました不安も徐々に解消していくというふうなことが起きました結果、企業金融の面にも、多少将来についての期待を持てるような何がしかの変化が起きてまいりました。  要するに、マネタリーベース伸びが鈍化するもとで、我が国金融資本市場は、それまでの極度の逼迫感が後退いたしまして、明らかに緩和感が浸透し、定着するような動きを見せたというふうに考えております。といいますのは、逆に考えますと、マネタリーベース伸び率だけでもって金融の繁閑ということを判断するのはやや難しいのではないか、このように考える次第でございます。
  16. 山本幸三

    山本(幸)委員 マネタリーベースだけで金融の繁閑を判断するのは難しいと。では、あなた方は、日本の中小企業の経営者は資金需要なんてありません、困っていません、そんなことをおっしゃるつもりでいるんですか。我々は選挙区へ帰ったら、何とか融資をしてくれ、そういう相談ばかり受けている。それがあらわれてきたのが銀行の貸し出しの縮小であり、マネタリーベースの縮小でしょう。それをあなた方は、そんなことは全くありません、中小企業の人もみんな満足しています、そんなことをおっしゃるんですか。
  17. 山口泰

    山口参考人 そのような趣旨で申し上げたわけではもちろんございません。  残念ながら、我が国金融システムが大変深刻な状況に陥りました結果といたしまして、金融機関の与信能力あるいは新たにリスクをとる能力というものも極度に弱くなってしまいました結果、いわゆる信用逼迫、クレジットクランチと言われるような現象が特に過去二年間ほど目立っていたというふうに理解しております。これは、金融機関の信用仲介能力をさまざまな形で復活させ、もう一度健全な金融システムというのを確固としたものにしていくというやや時間のかかる措置でございますけれども、こういうことを確実に実行していくということが対策の基本になるというふうに考えております。  ただ、同時に、そのように非常に深刻な金融システム不安のもとにおきましても、マネーサプライ、これは主として企業や個人が金融機関に対して持っておる預金から成り立つわけでございますけれども、そういう通貨伸び率は、ここを振り返ってみましても、対前年比でおおむね四%程度の安定した伸びを続けております。したがいまして、金融システム全体として金融仲介能力が著しく衰えているということは残念ながら事実でございまして、これを何とか早く健康な状態に戻さなければいけないというふうに考えておりますけれども、その一方で、経済全体に対して流動性の供給という面では比較的安定した状態が実現できてきているというふうに考えております。
  18. 山本幸三

    山本(幸)委員 私はちっともそう思わない。中小企業経営者は困っていますよ。  それで、マネタリーベースマネーサプライ、そういうものがそれほど伸びていない。それは、おっしゃったように、日本金融システムにリスクが起きて、いろいろ問題が起きてそういう仲介機能が衰えているんだ。それがまさに信用乗数が落ちているということでしょう。そうであればあるほど通常よりも余分にお金を供給しなければ回りませんよ。そうじゃないですか。そんなことはどんな教科書だって書いてある。そういう状況の認識がなくて、今これで十分ですという感覚が私はわからない。そのことが結果として、経済状況が、これだけやって本当に景気回復に、民間につながっていない。  今、景気がよくなったなんて言っていますけれども、それは公的なてこ入れでなっているだけで、その厳しい認識が日本銀行にないということは大変問題がある。そして、特に信用システムが機能しづらくなっているときにはお金の量をもっとふやすということがやるべき政策であって、それと反対のことをやるというのは理解できないし、そういう日本銀行の姿勢は全く承認するわけにいかない。私は、そこのところの議論をきちっとし、日本銀行が責任をとってもらうことをするためには、やはり何らかのメルクマールがないとだめだ、そういうふうに思います。  それはどうしたらいいかということですけれども、いろいろな考え方がありますが、私、一つ、イギリスがやっていることをぜひやろうじゃないかと提案したいと思っているんです。これは、新日本銀行法物価の安定を図るということは日本銀行の使命であるということを書いているんですから、それにのっとろう。イギリスのバンク・オブ・イングランドは、物価上昇率二・五%プラス・マイナス一%以内に抑えますよ、上もそれ以上いってはだめ、下もそれ以下にいってはだめ、そういうことをやって、それを超えるときにはちゃんと公開書簡で理由を疎明して、そしていつまでに直しますということを約束しなきゃいかぬ。私は、このことをこれから日本銀行の政策の評価をするための尺度にしたい。  このことは私は日本銀行にコメントを求めません、まないたのコイに包丁を握らしたって一緒だから。これは、日本銀行のやることを判断し、評価する政治家が決めるべき話だと思いますので、私は、二・五%、過去の物価上昇率から見れば、GDPデフレーターで見たいと思っていますが、この決め方は幾つか議論がある。しかし、一応GDPデフレーターで見たい。その二・五%を念頭に置いてプラス・マイナス一%以内に抑える。これから半年、一年間、そのことができるかどうかで日本銀行がちゃんとやっているかどうか、私は評価したい。  潤沢に資金を供給しています、そんなことを言ったって、日本銀行の人が勝手に言っているだけで、中小企業者はそんなこと思っていない。そういう意味では、こういうことをやったらちゃんとやっているかどうかと評価するメルクマールが要るので、私は、渡辺喜美さんを初め何人かの同僚と議論したら、いいじゃないかと。これはこれから我が党内で問題提起して、そういうメルクマールで見ようということをぜひ賛同を得ていきたいと思っていますし、必要だったら立法措置も考えたいと思います。  そういう意味で、これからそのことができなければ必要なことをやってもらう。国債の買い切りオペでも、場合によっては引き受けもやらざるを得ないかもしれない。しかし、そこまで行くまでは、日本銀行、どういう手段でそれをやるかはぜひ考えてもらいたい。それができなければそれなりの責任をとってもらうということを申し上げて、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  19. 村井仁

    村井委員長 次に、鈴木淑夫君。
  20. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 自由党の鈴木淑夫でございます。  ここへ提出されております半期の報告書は、先ほど総裁言われましたように、新日本銀行法の第五十四条第一項に基づいているわけでございます。  この新日銀法を二年前に国会で審議いたしましたとき、当時の新進党、そのときの仲間はここに大勢いらっしゃいます。公明・改革から民主党にもいらっしゃる。さらには自民党にもさっき質問された山本委員がおられますが、私ども新進党がこの五十四条について何を言ったかといいますと、この報告書はどうして大蔵大臣経由で国会へ出されるんだ、日本銀行が国民の代表である国会に対して透明性を確保し、責任を負うのであれば、直接出したらいいじゃないかということを言ったんです。そうしましたら、大蔵大臣、総理の、橋本総理ですが、御答弁は、いや、それは御心配なく、日本銀行が出してきた報告書をそのまま国会へ取り次ぎますよ、中身についてつべこべ言いません、日本銀行の独立性を尊重します、こういう答弁でございました。  その結果、日銀法が成立して、きょうで二回目の報告書が出ているわけでございますが、私が見る限り、当時の政府が約束したとおり、日本銀行の見解が、大蔵省を経由していますが、直接ここへ出ておるというふうに理解しております。  したがって、またきょうのように大蔵大臣が御出席にならないで、日本銀行総裁以下役員が出席されて、直接私ども衆議院議員あるいは参議院議員、国会議員の審査を受ける、このことはある意味では日本銀行にとって新しい体験であり、厳しい面があろうかと思いますが、しかし、これは日本銀行の独立性を確保するための当然の仕事であります。その意味で、私はきょうのような、この後野党から質問が来ますからもっともっと厳しいでしょう、しかし、こういうやりとりの中で透明性を確保しながら責任を全うしていく、アカウンタビリティーを貫くということを、ぜひとも新日銀法に基づいて日本銀行にやり遂げていただきたいと思うものであります。  私ごとになって恐縮でございますが、実は私、先週の木曜日、二十四日から今週の日曜日の二十七日ですか、四日間米国に参りまして、フォード元大統領が主宰し、事実上は共和党のシンクタンクであるAEI主催のワールドフォーラムというのに出席してまいりました。そこには、グリーンスパン連銀議長を初め、ウィリアム・プールとかあるいはジェリー・ジョルダンといった地域連銀総裁も来ておりました。IMFの筆頭副専務理事のスタンレー・フィッシャーもおりました。それから、日銀金融研究所のオナラリーアドバイザーであるアラン・メルツァーもおりました。  そういう人たちが大勢そろって出席した会議に行ってまいりましたが、彼らはかなり日本金融政策日本経済に通じております。そこで彼らが申しましたことあるいは私に対して関心を持って問いただしてきたことは、この半年の間の金融政策の運営について三つあります。  まず第一は、やはり何といってもことしの二月からのいわゆるゼロ金利政策の効果であります。非常に思い切ったことをやった、マイナスのインフレ率のもとではあれは当然だ、しかしそれにしてもマーケットで妙なことは起きていないか、大丈夫か、それからあのゼロ金利政策の効果はどういう格好で出ているのか、ここに最大の関心がございました。  二番目は、これは本当に詳しく日銀金融政策を見ている人以外には、わからないというか気がつかれなかったんですが、やはりこの報告書にはっきり書いてあること、すなわち、年末と年度末の企業金融を円滑にするために日銀は三つの手を打った。一つはCPオペの条件緩和による積極化、拡大、二つ目は貸出増加額の五〇%の日銀リファイナンス、三つ目は社債担保の日銀信用供与であります。これについても、彼らは、このことが企業倒産、御承知のように前年比三割、四割まで劇的にがっと落ちました、そのことと関係しているのかどうかという質問ですね。  それから三番目は、これは日銀の政策ではない、そう言っては恐縮でございますが、私ども自由党が汗をかいて、最初は野党共闘で、その後は自自連立の中で一生懸命やりました中小企業に対する信用保証枠の拡大、あるいは中堅企業への信用保証の拡大、これが非常にきいておるという話なんだけれども、どうきいておるかという質問なんですね。こっちがきいたのか、日銀の年末金融あるいは年度末金融対策がきいたのか、どっちがきいたんだと。  いずれにしても、企業倒産が劇的に減っておるな、企業金融は相当緩和したね、これが彼らの質問であります。国際的にはそういうふうにこの半年の日銀金融政策が見られているということなんですね。  そこで、私、時間が限られておりますので、大きな質問を二つだけいたします。  一つは、今言った政策をとった結果、マネーサプライがどうなっているかということなんですね。私は彼らに説明しました。今さっき山本委員が問題にされていたのは、年末から一月に向かってベースマネーの伸びががっと落ちたということなんですが、私が彼らに説明をして、彼らが、そうか、これは結構な傾向が出ているねと言ってくれたのは、ベースマネーの前年同月比を見ると、一月がボトムですね、それで最近に向かってがっと上がってきています。六、七%まで上がっていますね。そのことを彼らに言いました。それで、ブロードマネーの方は、M2プラスCDの方はそれほど劇的ではないが、やはり前年比、一月がボトムです。それで最近に向かって上がってきているんですね。  だから、どの政策がきいたか、必ずしもアイデンティファイはできないが、ベースマネーで見てもブロードマネーで見ても、間違いなく金融の量的緩和が一段と進んでいる。これが、一―三月のGDP七・九%は堺屋長官でなくてもほんまかいなと思いますが、しかし、私は、プラス成長はちっともおかしくなかったと思う。あの中で設備投資がプラスになった。その中核は、御承知のように中小企業非製造業の設備投資がぐんと伸びたわけですね。この辺は明らかに企業金融緩和を抜きにしては理解できないんだよという説明をしてきたところであります。  そこで、日本銀行に一つお尋ねしておきますが、私は、日本の新聞が、日本銀行は、金利はゼロ金利政策をしたが量的緩和はしない、量的緩和に踏み切るかどうか、次の政策委員会はどうか、こういう記事を書く。これを読むと大変不満ですね。日本の新聞は理解していない。日本銀行は常々言っているように、量と金利というのは表裏の関係にあるわけだから、ゼロ金利政策、それから一連のことをやれば量だって緩むわけですよ。  それで、私は日本銀行に申し上げたいんだが、量的緩和はしていないとかこれからするかどうかとかいうふうな誤解に満ちた記事を書かれないように、もっと上手に説明しなさいということです。  つまり、私に言わせれば、日本銀行は量をターゲットしないと言っている。さっき山本委員が一生懸命質問しておられた。これは大事なポイントで、ベースマネーという量をターゲットしない、ターゲットしているのは金利だ、コールレートだ、こう言っているわけです。けれども、同時に、コールレートとベースマネーという量は表裏の関係にあるんだから、ゼロ金利政策その他一連の手を打てば量の中心指標であるベースマネーだってぐんとふえてきているんですね。  日本銀行は、説明の仕方にもう少し工夫を加えるべきだと思います。量的緩和はしていないなんて言われたら、冗談じゃない、徹底的に量的緩和をしているよ、だからベースマネーもブロードマネーも伸びが高まっているんだよ、その手段がゼロ金利政策だよ、そういう説明をすべきだと思うんです。その点の説明について私は若干不満を持っているんです。その点はいかがですか。
  21. 速水優

    速水参考人 鈴木先生の御指摘の点、私も全く同感でございますし、量的緩和とゼロ金利という二つのことを別のことであるようにとられがちなんですけれども、おっしゃるようにコインの両面でございまして、金利を下げれば量はふえる、量を上げていけば金利は下がるということで、この点、先般、私、あるところで講演を頼まれて、ここのところを非常に重点を置いて説明をしたつもりでございます。金利がゼロに低下するほど量的緩和が行われているというふうに自信を持って申し上げていいと思っております。
  22. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 ただいまの御答弁を伺って私も安心しました。ですから、ぜひそのことをもっと徹底してわかりやすく説明してください。量的緩和をしていないなんて記事を書かれないように注意していただきたいと思います。  山本委員が言われるように、ベースマネーのような量をターゲットすべきか、これまで伝統的に日本銀行がやっているようにコールレートといった金利をターゲットすべきかについては、これは学界でも大変な論争のある問題ですし、各国中央銀行も若干のニュアンスが違っております。ですから、私はあえてベースマネーをターゲットしなければいけないという山本委員のような立場には立ちません。しかし、説明することはすごく大事ですから、ぜひ気をつけていただきたい。ターゲットをどっちにするかという見解の対立はあるが、実はコインの両面ですぞということです。  それから、さっき言いましたように、ベースマネーという量をターゲットにすると、さっきから話題になって議論していましたように、金融危機が去年の十月ピークに達した、そのときはみんな心配でしようがないから全部現金を抱え込んだ。予備的動機の通貨需要がどんと出たのですね。だからわっと現金が出た。ベースマネーがふえた。ところが、あそこがピークで、さっき言った三つの手が次々と打たれてきて、少しそういうプレコーショナリーな、予備的動機の通貨保有が減ったものだから一月に向かって落ちるわけですね。ところが、その後の各種政策によって、今度はまたベースマネーの伸びがぐんぐん現在に向かって高まっているということだと思います。  だから、なかなかベースマネーについては厄介ですから、ターゲットは金利の方でいきたいというのは私も理解はしています。しかし、これは私が正しいとか山本委員が正しいとかいう話ではない。これは学界でも対立しているし、各国中央銀行でもやり方に差がありますから、日本銀行は、金利をターゲットするのだ、しかし金利と量はコインの両面だと、わかりやすくわかりやすく、何回説明しても説明し過ぎることはないと思いますから、わかりやすく説明していただきたい。  それから次に、やはりグリーンスパンや何かと議論したのですが、日本銀行がやったことは、確かに劇的なというかドラスチックな手を打ったが、これは一種の緊急避難じゃないのかねということなんですね。余りにもひどいから、マイナス成長、五四半期も続いて突っ込んできて、金融不安がピークに達して、これはほっておいたらえらいことだというので思い切って日本銀行が手を打った。これはどちらかというとやや危機管理的な、緊急避難的な対策ではなかったか。それは、そういう側面はあると私は思います。なぜなら、ゼロ金利政策というのは、翌日物コール市場は縮小してしまう、市場がなくなってしまうという危険を冒していますね。  それから、五〇%リファイナンス、貸出増加額の五〇%を日銀がリファイナンスするというのは、あれはまさにさや取りですよ。公定歩合と市中の金利の間のさや取りをさせてあげている。昔から、オーバーローンをめぐる議論の中で、明治以来、さや取り銀行とかいう言葉があるぐらいですから、あれもやはり緊急避難だ。これについて日本銀行は打ち切りましたね、年度を無事越えたものだから。しかし、これも相当危ない橋を渡るようなところがあったというふうに思います。  ですから、お尋ねいたしますが、一連のことは勇気を持ってよくやったというふうに国際的にも見られているし、その効果がマネーサプライの面にも出ているし、ひょっとしたらあの一―三月の七・九%の一部がその効果かもしれないとは思うが、あれはそういつまでも続けられないんじゃないのか。我々がやった信用保証の拡大も、あれはうっかりすると信用保証という形で政府部門が大変な不良債権を抱え込む危険を持っていますよ、この先もう一回景気が落ちたら。非常に危ない橋を渡っているわけです。  そういうことについて、資産の健全性を維持しなければいけない日本銀行として、あるいはさや取り的行為をさせることの公正、不公正の観点からの議論ということもありましょう。どういうふうに日本銀行は考えておられますか。
  23. 速水優

    速水参考人 私ども、二月からとっておりますゼロ金利政策というのは内容的に三つのことがございまして、一つは、先ほどからおっしゃっておられます潤沢な資金を供給するためにコールオーバーナイト物を最低限に持っていくということで、〇・〇三という数字がずっとこのところ続いておるわけでございますが、比較的安定して資金が供給されているということは、ほかの面でも私どもにはいろいろな資料でわかっております。  第二には、そういう前人未到のようなゼロ金利になって金融機能が動かなくなっては困るわけでございますから、短期金融市場金利に混乱を生じないように市場の機能維持に十分配慮することということを第一線に指示をしております。  それから三つ目は、これがいつまでも続くものではなくて、デフレ懸念の払拭が展望できるような情勢になるまでこの政策は維持するんだ。  この三つのことを言っておりますので、私どももこれが異常な事態であるということは十分承知しておりますし、ここのところようやくその効果が出始めてきたということもむしろ喜ぶべきことだというふうに思っておりますが、これをいつまでも続けていくものではなくて、情勢をよく見ながら、市場の動きそれから実体経済動きを見て次の政策を考えていきたいと思っております。
  24. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 そのとおりだと思います。  そういうことでございますと、結局、私ども国会議員が日本景気というものについて、今ももちろん真剣に考えているわけでございますが、この後、補正予算も含めてどういう政策を立法化していくか、そういうことによっていわば副作用を含む劇薬のような金融政策を使わないで済む環境を早くつくり上げていかなければいけない。少なくともことしの年末、そして来年三月の年度末には景気状況をかなりしっかりしたものに私どもが持っていっておかないと、もう一回また日銀が劇薬を使うようなことにもなりかねないということだと私は思っております。  それからもう一つ。今申し上げていることと矛盾するようなことを言って恐縮でございますが、こういう政策というのは相当思い切った政策ですからいつまでもやっていられないというのは速水総裁がおっしゃるとおり、私もそう思っております。  金融政策の極めて大事な原則の一つは予防的運営ということです。早目早目に手を打っていく。物価が上がり出してから手を打ったのでは強烈な引き締めになってしまう。あのバブル発生と崩壊が典型的にそうです。早目早目の予防的政策というのが大事であります。おとといですか、グリーンスパンと話したときも、ちょっとアメリカは金利が上がりそうですけれども、グリーンスパンはにやっと笑って、予防的な政策は金融政策の非常に大事な原則の一つだ、こう言っていました。  しかし、一つだけお願いしておきたい。予防的政策は大事だが、余りにも早く引き締めの方向というか金利を上げる方向へ動き過ぎるのも、ここまでめちゃくちゃになった日本経済ですから、大変危険なことであります。次の動きというのはすごく大事、すごく難しいタイミングだというふうに思いますので、その点もひとつマーケットの信頼を失わないように、政策委員会で十分議論されて上手なタイミングを選んでいただきたいということをお願いしたいと思います。  その点についてはいかがでございましょうか。
  25. 速水優

    速水参考人 先生御指摘のとおり、この事態というのは異常な事態でございますが、金融というのは、今政策を打って効果がすぐ出てくるというのではなくて、やはりかなり時間がたって出てくるものでございますので、その点は財政政策と少し違うのだと思うのですけれども、事態の推移を十分見定めてから次の手を打っていくということはおっしゃるとおりだと思いますので、慎重に、この次の手が大変大切だ、タイミングと何をどうやっていくかということが非常に大切だと思っております。  物価の安定というのは、将来にインフレを残すようなことをしてもいけないし、今のデフレを促進するようなことではいけないし、それを調整しながら次の手とタイミングを十分慎重に議論し、討議し、決めていくのが私どもの責任であるというふうに思っております。
  26. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 時間でございますので終わります。ありがとうございました。
  27. 村井仁

    村井委員長 次に、仙谷由人君。
  28. 仙谷由人

    仙谷委員 日銀の報告について質問をさせていただきます。  まず最初に、金融危機といいましょうか、現在のこの異常な、ゼロ金利を四カ月も続けるという事態について、ここ数年間の日銀金融政策の運営についてどういうふうな責任をお感じになっているでしょうか。
  29. 速水優

    速水参考人 バブル崩壊によって生じました不良債権問題、これは我が国金融システムに非常に深い傷跡を残したわけでございます。今なおこの問題を克服し切れないでいるということはまことに遺憾な事態であるというふうに考えております。  現在の金融システム問題の源をさかのぼってみますと、やはり八〇年代後半のバブルの発生に行き当たらざるを得ないと思っております。これは、いろいろな要因はあったにしましても、長期にわたります金融緩和にもその一端があったことは否定できないと思っております。この間、金融機関のリスク管理面にも問題があった上に、バブル崩壊後においても、いわゆる右肩上がりの幻想が払拭し切れないうちに、そういう状態の中でかつての護送船団方式と言われるような金融機関への対応が続いて政策が後手後手に回りがちであったということも認めざるを得ないと思っております。  また、金融システムにかかわりますセーフティーネットが不十分であった中で、不良債権問題の処理等に当たっていろいろな制約があったということも事実であったと思います。  こうした中で、日本銀行としましては、我が国金融システム崩壊や日本発の金融恐慌を回避していくために、中央銀行の立場からその時々なし得る最大限の努力をしてまいったつもりでございますが、ここまで金融システム問題が長引いてしまったことにつきましては、私どもとしても重く受けとめる必要があると考えております。  昨年十月に金融再生法及び早期健全化法が施行されまして、それまでの預金保険法の改正を含めてセーフティーネットの整備が大きく進められてきた、このことは高く評価させていただきたいと思います。私どもとしては、整備されたセーフティーネットを活用しながら、一刻も早く我が国金融システムに対する信認を回復し、金融機能が十分発揮されていくように努めてまいる所存でございます。     〔委員長退席、鴨下委員長代理着席〕
  30. 仙谷由人

    仙谷委員 今の自己批判といいますか、反省の中で、私は、もう少し具体的に気をつけてもらいたいといいましょうか、抜けておる面が三つぐらいあるのじゃないかという気がいたしました。  すべて申し上げる時間はないわけですが、最大のものは何といいましてもプラザ合意以降の金融政策だったと思うのです。ここに、日本銀行がある種の政府の要請を受け入れ過ぎたのではないか、これに対する独立性を保てなかったのじゃないか、政府はアメリカの要請にやすやすと従っておったのではないか、このことを大変強く感じるのですね。そうでなければ、極端なバブルの生成と崩落というものももう少し早目早目に手が打てたのではないかという気がいたします。  それからもう一つは、やはり大蔵省の金融行政についての護送船団と言われる、あたかもその一端に日本銀行が存在するかのごとき扱いの中で、日本銀行金融問題についての提言をすることができなかった、あるいはみずからインフラづくりをすることができなかったということが非常に大きい理由ではないかと思うのですね。  先ほどセーフティーネットの話が出ました。正直申し上げて我々も素人でございます。そんなにセーフティーネットが大事ならば、なぜセーフティーネットを一九九〇年の当初にでもつくらなかったのかということが大蔵省と日本銀行双方に問われるわけでありますが、当時の仕組みの中では日本銀行にそのことを要求するのは気の毒かもわかりません。  あるいは、現在でもまだまだ問題になっております、これは企業の体質にも関係するわけでありますが、直接金融と間接金融の問題、つまり企業社会におけるファイナンスの問題というのは、考えてみますと、実は一九九〇年代の初頭から行われた、端的に言うと銀証の垣根をどうするのかというまさに金融制度改革とかかわっておったわけですね。これが非常に中途半端な格好で、今から考えれば幼稚園の遊びみたいなことを当時は大声でやっていた、こういうことになると思うのです。  このことについても、日本銀行日本銀行として、トータルな金融の監視者といいますか、あるいはアンパイアといいましょうか、いろいろな立場があると思いますけれども、総括主宰者みたいなものでありますから、ここに提言なりみずからの制度づくりなりをすることも抽象的にはあり得たと思うのですね。ただ、当時の大蔵省との関係ではそんなことは到底無理なわざであったことは私も疑いません。そして我々も、早期に財金の分離そして日本銀行と大蔵省のある種の上下関係を断ち切ることを大胆に提起できなかった、あるいは実現できなかったということを反省しなければならないわけでありますが、さっき総裁のおっしゃられたことは、そういう問題が根本にあるのだろうと私は思うのです。  曲がりなりにも大蔵省と日本銀行が、日本銀行においては大蔵省からの自立性といいますか独立性をかち得たわけでございますから、これからは、アメリカの要請を受けた小渕政権のある種の短期的な目標達成のために何かしてあげなければいかぬとかそういうことを絶対にお考えにならないように、ひとつ要請をしておきたいと思います。  何でこんなことを言いたいかといいますと、六月二十八日付の読売新聞に、元信用機構室長でございましたか、理事さんでございましたか、つまり長銀の現在の頭取でありますが、安斎さんがこういうふうに言っているんですね。日債銀や長銀の損失を生み、先送りしたのはだれか、大蔵検査で銀行の実態を知りながら手を打たなかったのはだれか、バブル経済を生み出す金融政策をとったのはだれか、歴代の頭取と大蔵省と日銀とリーダーシップをとれない政治こそが問われるべきであると立派なことを言っているんですね。彼が元日銀マンじゃないということであればもっと立派なんですが、日銀マンであることをお忘れになっているのかどうかわかりませんが、言っているんですね。  こういう感想をお聞きになって、総裁、どういうふうにお考えになりますか。
  31. 速水優

    速水参考人 仙谷先生が先ほど御指摘になりました三つの点、プラザ合意以降、政府の言ったことに従い過ぎたんではないか、あるいはMOFのコンボイシステムといいますか護送船団方式の一端になって、日本銀行として言うべきこと、やるべきことができなかったんじゃないか、あるいはセーフティーネットをなぜもっと早くつくらなかったか、今から考えますと、おっしゃることすべて私どもも耳の痛いことだというふうに思います。幸いにして、日本銀行法が五十数年ぶりに新法ができまして、昨年の四月から施行されたわけでございまして、ここに独立性が与えられて、私ども、ここ一年、本当に新法に感謝しながら、私どもの正しいと思う政策をどんどん打ち出してきたつもりでございます。  先ほど御指摘になりました大きな問題として、直接金融と間接金融、千二百兆円もある国民の金融資産のうち、七百兆近くが預金になって銀行や郵便貯金に入っておる、そのほか、三百兆円は保険、年金に入っている、証券、債券に行っているのは国債を含めてわずか百兆足らずだといったような事態が、いかにバランスのとれない、近代金融市場の立場から見て偏ったものであるかということを私ども十分認識いたしております。  これからやはり金融機関も、投資家ないし預金者、金融資産を持つ立場の者も、もっと自分の責任で市場機能を考えながらやっていく、特に直接金融企業と投資家が直接市場でぶつかり合って資金の調達、資金の供給をしていくという市場をつくっていくことが必要だと思っております。また、その先端を切るのは国債であり、セキュリティーの面で不安のない国債というものが市場にもっと出回っていいと思いますし、そこから始まって、今のビッグバンといいますか、もっともっとこの機会に市場ができていってそれが内外から信認されていくことを期待して、私どもも努力してまいりたいと思っております。     〔鴨下委員長代理退席、委員長着席〕
  32. 仙谷由人

    仙谷委員 その信認の問題と関係するわけでありますが、総裁、現在のゼロ金利政策、ことしの二月十二日以降のゼロ金利政策でありますが、これはいつまで続けなければいけない、いつまで続ければいいんだとお考えなんでしょうか。
  33. 速水優

    速水参考人 先ほども申し上げましたように、足元の景気が下げどまっているけれども回復の方向にはっきりした動きがまだ見られないというのが現状の私どもの判断でございます。物価面、当面需給ギャップの明確な縮小が見込みがたいことなどを踏まえますと、こうした面からの潜在的な物価低下圧力というのはまだ残っているというふうに判断しております。こうした景気物価情勢を踏まえまして、日本銀行としては、デフレ懸念の払拭が展望できるような情勢になるまでは現在の思い切った金融緩和基調を維持し、経済活動を引き続きしっかりと下支えしていくつもりでおります。  デフレ懸念の払拭とは何をもって判断するかと御質問がおありかと思いますけれども、もちろん物価が大切な要点であることは当然でございますが、物価を含めた企業家あるいは消費者の動き、そういうものを判断した上で、今のゼロ金利の終えんといいますか、次の手を打つ時期を間違えないようにしてまいりたいと考えております。
  34. 仙谷由人

    仙谷委員 デフレとの関係が出ましたので大ざっぱに私の感想を申し上げますと、これはもうお気づきだと思うんですが、このデフレ傾向は、少なくとも物の世界ではそう簡単にインフレの方に振れたりはしないんではないか。歴史的に、一三〇〇年ぐらいからインフレ、デフレの波をとった統計を拝見しますと、大体、デフレが始まると約百年、短くて五十年ぐらいデフレ傾向が続いておりますね。第一次世界大戦直前から極端にインフレになったりがたっと落ちたりはしている傾向もありますけれども、一三〇〇年ぐらいから七百年ぐらいのタイムスパンをとってみても、実は歴史の中ではデフレというのはそんなに異常なことじゃなくて、インフレの方が、産業革命以降といいましょうか、あるいはもっと言えば第一次世界大戦以降の極端なインフレというのが、我々はなじんでおるけれども、歴史的にはレアケースに近いような格好で存在するという見方の方が正しいんじゃないかと私はこのごろ思い出しているんですね。  そして、物の世界では当分インフレというのは起こり得ないんではないか。条件は、ベルリンの壁崩壊以降の巨大な社会主義圏に住む労働力がマーケットに入ってきた、労働力市場に入ってきた。賃金コストインフレが起こりようにも起こらない。賃金は大変な硬直性を持っていますけれども、しかし、物をつくる人間が、安い賃金の労働者が一挙に十数億人というオーダーでできたという条件ですね、一つは。このことによって容易に物の世界でインフレは起こらない。したがいまして、過剰流動性が起こったときにインフレ化するのは資産であり、辛うじてサービス産業の世界で先進国の中でインフレは起こるけれども、どうも物の世界ではインフレは起こしにくい、起こらないんではないか、そのことを前提に金融政策金利政策をお考えになった方がいいんではないかというのが私の考え方なんです。  したがいまして、卸売物価、消費者物価の指数を見ましても、国際商品相場の指数を見ておりましても、こんな数字なんですかという数字ですよ。起こらない。そうしますと、デフレ懸念が去るまでは、こうおっしゃるけれども、半永久的にこういう低金利を続けざるを得なくなる、こういう論理展開になることを私は心配しておるわけであります。  そこで、この異常な短期についての低金利、そしてそのことが長期金利の低下にまで効果があった。さもいいことであるかのような総括を速水さんが六月二十二日の日本記者クラブの講演でなさっておりますけれども、私は必ずしもそういうふうに考えるべきではないと思うんですね。  現在の超低金利政策のネガティブな効果、マイナスの効果というのはどこに出ておりますか、どういうふうに出ておりますか。
  35. 山口泰

    山口参考人 いわゆるゼロ金利政策ということを始めましてから数カ月たっているわけでございますけれども、先ほど総裁が、そういう政策のもとで気をつけなければいけない留意点の幾つかを申し上げましたが、まず、金融市場の中でゼロ金利というやや極端な政策をとった結果として混乱が生じることがないようにというのが私どもの第一の留意点でございます。  実際の姿を見てみますと、例えばコール市場の残高、市場の規模が、二月ごろに比べますと約四割ほど減少しております。規模の縮小が生じております。そういうことの結果として例えば資金の決済などに支障を来すというようなことが起きては困るわけでございまして、そういうことが起きますとゼロ金利政策のマイナス面の一つということになるわけでございますが、幸い、これまでのところ、そういう市場機能の低下というようなことにはなっておりません。  また、ゼロ金利政策ということは、ある程度の将来にわたりまして流動性を潤沢に供給するという約束をマーケットに示したわけでございますから、そういう約束のもとで市場参加者のリスクをとる姿勢というのがまた極端に振れてしまうということになっても将来に禍根を残しかねないという意味で、潜在的なマイナスの要素がないわけではないというふうに思いますが、これも、現在のところ、心配すべきほどの行き過ぎたリスクテークという状況にはなっていないと思います。  そのほか、もう少し視野を広くとりますと、例えば、余りにも低い金利が長い間続くことによっていわゆる構造改革の努力というのがかえっておくれてしまうのではないかというような懸念も時折聞くわけでございます。  ただ、現在は、私どもの判断では景気回復への道筋がまだはっきりついたと言える状況にはございませんので、こういうときには、やはり構造改革に伴う短期的なデフレ圧力といいますか、あるいは構造改革に伴う痛みというのを和らげるために、低い金利を維持し、金融緩和を続けていくというようなことも必要ではないかと思っております。  また、これは少し前からいろいろ御議論いただいているところでございますけれども、金利収入に多くを依存している家計というのをどう考えるのかというのも、当然忘れてはならない留意点の一つだというふうに思っております。  ここは、そういう家計に対しまして現在の金利政策影響を及ぼしているということはよく承知しておりまして、以前から私どもの総裁も、大変心苦しいところであるということを申し上げてきているわけでございますが、ここはぜひ少し長い目でもって金融緩和経済全体に与える積極的な面というのを評価していただきたいというふうに願っております。  以上、幾つかの点を申し上げたわけでございますけれども、もちろん、低金利が長く続くことの影響というのは、経済全体に対していろいろ複雑な経路でもってあらわれていくのではないかというふうに考えられます。その効果がまだすべてあらわれているというわけでもなく、今後の時間の中でさまざまな影響というのがあり得ると思いますので、私どもとしても、決してその点は警戒を怠ることなく、経済全般に対して目配りをきちんとしてまいりたいと思っております。
  36. 仙谷由人

    仙谷委員 私、この低金利政策は、先ほど鈴木先生もおっしゃっていたけれども、やはり緊急避難であると思うのです。あるいは危機管理にも似た政策である。つまり、三月末決算をしのぐために二月十二日にこれを行って、もう五月になってしのいだから、今回はとりあえずこういう極端な政策をやめようということの方が実は正しいんじゃないかと思うのですね。小渕さんの〇・五%成長ということ、これを頭から外して純粋に金融政策から考えたら、その方が正しいと思うのです。  つまり、今の公定歩合〇・五%も、もうこれはどうにもならない。いつか一遍上げて、また戻せばよかったんだけれども、とにかく〇・五%に張りついたままこんなに四年もたってしまうと、さあ、いつ動かすんだという、ちょっとでも上げれば何か事が起こるかもわからぬという心理的な恐怖感にむしろ政策担当者の方がとらわれているのじゃないかと思うぐらい硬直していますよ。  それで、なぜそんなことを言うかというと、例えば生命保険業界、もう悲鳴を上げていますよ。首つりの足を引っ張るのかということまで言っている人がおります。長期、短期の金利がこんな低どまりする、短期はいわば実質ゼロ金利政策をやられるということになりますと、もう生保業界はどうすることもできない、つぶれざるを得ない、こうおっしゃっておる。聞こえてきますよ、我々のところにはじかに。私は大蔵省へ行って言えと言っていますけれども、いや、大蔵省は怖くて言えない、こういう話ですね。それでは、日本銀行へ行って言えとこれから言っておきますけれども。  まず生保。そしてやはり年金ですよ。年金の運用、これがこんな金利ではいかんともしがたい。そうですね。  それから、やはり先ほど山口さんもおっしゃった家計ですよ。それははっきりと家計部門からの所得移転が行われているわけですよ。あるいは年金生活者というふうに言いかえてもいいかもわかりませんが、家計一般ではなくて、家計の中の高齢者世帯についての資産効果といいますか利子所得を、大幅というか、いわばゼロに近い格好にしておるのが現在の政策です。  さらにもう一つ重要なのは、金額的には大したことがないのかもわかりませんけれども、いろいろなファンドですよ。NPOとか、あるいは文化的な活動、芸術的な活動、あるいは奨学金というふうなもののファンドを運用していらっしゃる方々が、この金利ではもうどうにもならない。奨学金の受給者を今まで百人毎年つくっておったところが十人になっていますよ、こんなことをやったら。  私は、なぜこれが問題なのかというと、実は、ベルリンの壁崩壊後というこのキーワードのほかに、もう一つのキーワード、高齢社会というキーワードですよ。高齢化しつつある社会において低金利政策というのは社会の活力を殺す方向にも強く働く、このことが私はある種の罪悪にまでなっているのじゃないか、こんなことを考えるわけであります。  企業社会がサプライサイドを強化するというのは私も賛成です。しかし、ここまで官需の経済、つまりフィスカルポリシーとゼロ金利政策というものを二つあわせてやる政策なんというのは、世界じゅう、歴史上、いまだかつて一回もないのですから、こんな、私に言わせれば官主導といいましょうか、こういう政策が長続きすることは、私はどこかで大破綻が来るんじゃないかと思いますね。まだ片一方だったらわからないでもない。そのかわり、プラザ合意以降の政策のようなひずみが出てくるでしょう。しかし、これは両方やったという例はないんじゃないですか。  つまり、ことしの単年度予算でいえば、財政赤字の比率が国の予算だけでも四〇%弱、三九・何%です。世界の財政赤字のうち、単年度で見ると、G7国の財政赤字の七四%が日本の財政赤字ですよ。もう世界じゅうから、ヨーロッパ、アメリカ、まじめな人と議論して帰ってこられるとわかりますが、本当に今、冷笑の対象になっているんですよ。へえ、どこまで続くんですかね、こういう感じです。そういうお感じしませんか、随分外国の要人なんかとお話しされて。  私は、とんでもないところにG7の中でほうり込まれたな、落とし穴に落とし込まれたなという感じがしてならないわけであります。ある種、日銀が、短期的に景気回復とかそのことだけじゃなくて、中長期的な視点からこのゼロ金利政策から早く脱する、そのことがむしろ必要なんではないかと私は思いますが、いかがでございますか。
  37. 速水優

    速水参考人 仙谷先生、少し中期の視野のもとに御心配になっておられること、私も十分わかります。東西冷戦が終わりまして、かつての私どもが考えておりました高度成長の時代というのはよかった時代に違いありませんけれども、ああいうものが返ってくるという可能性はまずないと見てもよろしいし、それからもう一つの高齢化社会というのも、これは非常に大きな社会構造の問題の変化が起こっているわけでございます。ただ、過去二年続けてマイナス成長ということ、これも日本経済の戦後の歴史の中で初めての経験なんです。それが今、これからどうなっていくか。その背後にあるものが、先ほど申し上げたようなことやら、あるいはまだ残っております非常に大きな需給ギャップというもの、それから技術革新が、やらなきゃならないことがまだ日本では余りできていない。  アメリカのこの十年近い不況、デフレを乗り越えていったのは、そういう技術の革新をどんどん導入して新しい仕事をつくっていった、八百万の失業者の増加に対して千二百万のニュー・ジョブ・クリエーションといいますか、新しい仕事をつくっていったというのがアメリカの今日の繁栄をもたらしたものなんです。その背景にあるものはやはり構造改革だったんだと思います。ハイテクとか光ファイバーとか、そういうものを製造業だけでなくてサービス産業の面でもどんどん導入した新しい仕事をつくっていくというのが、今政府が一生懸命お考えになってやっておられることだと思います。私どももそこまでは少なくとも下支えしていかなきゃいけないというふうに思っております。今の低金利がそういう新産業をつくっていくためにも必ずプラスになるものだと思っております。  ただ、同時に、家計の心配、特に年金生活者等にいつまでも続いていく。まして、万が一スタグフレーションといったようなことが起こって、定められた所得の中で物価が上がり出すというようなことが仮に起こったとすれば、これは社会的にも非常に大きな、何が起こるかわからないといった予感もするわけでございまして、そういうことをよくよく考えながら、避難対策とおっしゃいましたか、確かに私どももそのことは十分認識して今のゼロ金利を維持しているわけでございますが、デフレ懸念が消えてここで大丈夫だという判断ができますまではこのままいくつもりでおります。
  38. 仙谷由人

    仙谷委員 違う観点からちょっとお伺いします。先ほど自由党の鈴木先生が倒産件数の減少について評価と懸念をおっしゃっておりましたが、約二十兆円の信用保証枠をつくりましたね。詳しい数字がもう一つわからないんですが、約十七兆円ぐらいこの枠が使われて、そのことが効果を生んで中小企業の倒産を防止している、そのとおりだと思うんですね。  ところが、これは日本銀行が出されておる銀行の何とか統計というんですか、ちょっときょう表紙を持ってこなかったんですが、残高ですか、これを拝見しますと、都銀が、昨年の十月とことしの四月を比較しますと約八兆円の貸し出し減です。地銀が五千億の貸し出し減、第二地銀が六千億の貸し出し増、こういうふうになっておるんです。もう少し見ますと、都銀の手持ち国債がことしの一月と四月を比べますと二兆円ふえている。それから、地銀では有価証券が一兆一千億ふえている。十七兆円の貸出枠が使われたのに貸し出しがこんなに減っている。そして、さっきおっしゃったように、コールマーケットを見ますと、コールマネーは、同じ時期をとりましても、都銀レベルで九兆円のマイナス、地銀レベルで一兆四千億マイナスというのが大体わかります。  そうすると、せっかくの金融緩和か量的緩和じゃないゼロ金利政策か知りませんけれども、要するに、インターバンクの取引というのはどんどんやせ細ってきておるし、銀行から企業サイドに貸し出される金額も、理由はともあれ、結果としては減っておる、こういう事態になっておるわけですね。つまり、公的資金の注入を受けた都銀が、国債は買うけれども企業には貸さないということが起こっているということですよ。どういうことなんでしょうか。こういう事態でゼロ金利政策を続ける意味がどこにあるのかと私は思っておるんです。  つまり、新聞紙上でも、もうインターバンクで短期の資金をとりたくないからとらないんだ、都銀レベルにおいては特に。そんなにしないでも公的資金が入ってきたから余っている金は国債を買っているんだ、貸さないんだ、こういうことが行われているというふうに俗っぽく言えば見た方がいいのかなと思っておるんですが、いかがですか。
  39. 黒田巖

    黒田参考人 お答えいたします。  ただいま先生御指摘のとおり、民間金融機関の民間企業向けの貸し出しは、残念ながら、今のデータを得られる限り、まだプラスに転じるというところまで至っていないという状況にございます。もちろん、この減っている中には、三月末に不良債権を大量に償却いたしましたので、その分が上乗せされて減っているというものもあるわけでございますが、こうした特殊要因を調整いたしましてもまだマイナス傾向にあるというのが実態だというふうに認識しております。ただ、その引っ込んでいく早さというものはむしろ徐々に縮小傾向にある、まことに徐々にではありますが縮小傾向にあるというのが実態かと存じます。  そこで、どうしてそういうことなのかということなのでございますが、民間銀行の融資の態度につきましては、基本的に慎重な融資態度というものは維持されているようにうかがわれます。しかし、金融緩和の浸透のもとで、銀行自身の資金調達をめぐる環境は、まさに先生ただいま御指摘のとおり好転してきているわけでございます。また、公的資金の投入などによりまして、こういった自己資本面からの制約も緩和されてきているわけでございます。こういった環境が整ってきたということを背景にいたしまして、金融機関では、信用リスクの小さい融資案件を手始めといたしまして徐々に融資を回復させる姿勢も見られているようにうかがわれるところでございます。  ただ、これに対しまして、企業の方の資金需要も、景気の動向を反映いたしまして量的にはなかなか大きくなっていないということがございます。また、企業による手元資金積み上げの動きも、このところ、先行きに対する安心感からか、明瞭におさまってきているという状況にあります。こうした中で、結果としての貸し出しの数字が非常に伸びにくい状況にあるわけでございますが、その一方で、企業金融をめぐる逼迫感は和らいできているわけでございます。  今後、こうした企業金融面での改善傾向が企業の投資意欲などの実体経済活動にどのような影響を与えるか注視し、かつ期待しながら見守ってまいりたい、そのように考えております。
  40. 仙谷由人

    仙谷委員 全然わからないですけれども、時間がございませんので、次の問題、一番大事な問題にちょっと触れておきたいと思います。  この一カ月ぐらい、長期金利の動向を見ておりますと、非常にナーバスに動いていると私は見ておるんです。これが、景気がよくなったから長期金利が上がっているということなのか、日本の財政、つまり国債に対する信認問題で上がっておるのか、もう一つよくわからないというよりも、私は後者の方だと考えておるわけであります。  多分、この類例を見ない赤字財政、例えば、これはきのうでしたか、「財政健全度 OECD推計 日本悪化際立つ」。もうヨーロッパ、アメリカ社会では常識化しているんですね。ところが、ヨーロッパ、アメリカもずるいものだから、日本にだけは、財政赤字をつくってどんどん財政出動しなさい、自分の国は財政黒字になったといって手をたたいて喜んで赤飯でも炊こうかというふうな、こんなことをやっておるわけですね。あるいはEUでも、みんな三%以下に抑えているわけですよ。ドイツの今度の予算を見ましても、ドイツは今多分日本よりも成長率悪いですよ。それでも緊縮予算です。そのぐらい財政規律が重要だということを言っている、あるいはそういう政策をとっている。これは担当者にお会いしてもそのとおりであります。先ほど申し上げた、彼らが冷笑しておるというのはまさにそのことであります。  こういう際立つ財政赤字の国がいわゆるビッグバンと称する外為の自由化をやった。その後で、ここまで世界史上類例を見ない財政赤字を積み上げていく。補正予算でさあ十兆円、二十兆円。平成十二年度の概算要求が済めば、多分来年度予算は四十兆円ぐらいの財政赤字をつくりたがるんじゃないかと私は見ておるんですね。このときに、当然のことながらことしの二月のような大騒ぎが始まると思うんですよ。  もちろん長期金利は、徐々か急激にかわからないけれども、上昇するでしょう。日銀の国債引き受け、速水総裁が、先ほど申し上げました六月二十二日の講演の中で、悪性インフレになる可能性があるから国債引き受け、買い入れ、あるいは買い切りオペの拡大、こういうものについては絶対にやってはならないんだという決意を示されております。私もそのとおりだと思います。  きょう朝、さる外人のマーケット関係者と会いましたら、日本の今の経済政策はバイアグラ政策だと言うんです。本当はもう足腰も余り立たなくなった人がバイアグラを飲んで頑張ろうとする、こういう政策なんです、カンフル注射を打ってやろうとする。そう言われても反論できないような政策じゃないですか。あと残された道は日銀の国債引き受けだけです。それしかありません、この路線では。しかし、それは短期的には、半年か一年はハッピーかもわかりませんけれども、早晩破綻することは、これまた疑いのないことであります。  どうか総裁、ここで詳細かつ熱心におっしゃっておる、日銀の国債引き受け、むしろこの点については長期金利が上昇する、それは市場の警告である、それ以上発行してはならないんだ、警告として受けとめる方がいいんだ、こういうお立場のようでありますけれども、ぜひそれを厳守するというか堅守をしていただきたいと思うのでありますが、いかがでございますか。
  41. 速水優

    速水参考人 仙谷先生のおっしゃるとおりだと思います。  まず、国債引き受けに関する考え方を申しますと、日本銀行は国債を新規に引き受ける考えは全く持っておりません。これは財政法でも禁じられております。  中央銀行は国債を引き受けてはならないということは、我が国を含む主要国の歴史から得られる貴重な教訓なんです。すなわち、中央銀行が一たん国債の引き受けを始めてしまいますと、財政支出の拡大と通貨の増発の歯どめがきかなくなってしまう、悪性インフレを招くことは間違いないと思います。そうなると、その国の通貨経済運営そのものに対する内外からの信認が失われてしまうということになりましょう。また、市場でもそうした危険性が意識されるので、長期金利は結局のところ上昇してしまう以外にはないというふうに思っております。我が国だけでなくて主要国におきましても中央銀行による国債引き受けが禁止されているのは、そういった事情に基づくものではないかというふうに思っております。したがって、日本銀行としては、国債の引き受けは選択肢とはなり得ないというふうに考えております。  なお、財政運営につきましても、一般論を申しますと、既に財政赤字が巨額に上っていることを踏まえまして、今後は従来以上に財政支出の内容の吟味とその効率化などに重点を置いて検討していくことが重要ではないかと考えております。  国債を中央銀行が引き受けているんだ、あるいは市場からどんどん中央銀行が買っているんだということは、その国債自体の海外からの信認を失うことになる、市場では通用しないのかということになってしまったら、これは困ったことだと思いますので、その点も十分考えていく必要があろうかと思っております。
  42. 仙谷由人

    仙谷委員 かわります。
  43. 村井仁

    村井委員長 次に、上田清司君。
  44. 上田清司

    ○上田(清)委員 仙谷委員の最後の質問についてはしっかり頑張っていただきたいというふうに思っております。  続きまして、同じく民主党の上田でございます。  時間が過ぎましたので、少しはしょる部分もありますが、まず、企画庁長官がほんまかいな一・九と思わず述べた一月―三月期のGDPの伸び率一・九%、本当に実感が感じられない。例えば、ニッセイ基礎研究所の統計などで、帰属家賃など、あるいは自動車の販売も確かに台数で計算すると軽自動車を中心とする大幅な増加で、それがGDPに換算されるというようなことで、実質的な部分を抜くと〇・四ではないか、こうした議論もあります。  そこで、ここで論争するつもりはありませんが、一番関心が高いところでは、日銀として、今後、秋口から年末までの日本経済の見通しについてどのように判断をされているか、まずこの点からお伺いしたいと思います。
  45. 速水優

    速水参考人 先ほどの企画庁の一―三月のGDPにつきましては、私どもも非常に関心を持って今後の動きを見ていきたいと思いますが、やはり民間需要回復が今後自律的に強まっていくのかどうかということがポイントではないかというふうに思っております。  御質問の、景気の動向をどう見ているかということにつきまして簡単に御説明させていただきますが、日本銀行の現状判断では、足元の景気は下げどまっているけれども回復へのはっきりとした動きはまだ見られないというものでございます。  実体経済につきましては、設備投資は、年明け後やや持ち直しましたけれども、基調としては引き続き減少傾向をたどっていると思います。個人消費も全体として回復感に乏しい状態が続いていると思います。しかし、住宅投資はこのところ持ち直してきておりますほか、公共投資も高水準で工事が進んでいることは確かでございます。こうした最終需要動きや在庫調整の進捗を背景に生産は下げどまっているということかと思います。  金融につきましては、日本銀行による金融緩和措置の効果や金融システムの不安の後退等によりまして、市場の環境が全般に好転しております。企業金融をめぐる逼迫感も和らいできております。これらが景気に対して徐々に好影響を及ぼしていくということが期待される次第です。  しかし、企業収益の低迷が続いているということ、そしてまた家計の雇用・所得環境は悪化しているということは見逃せません。企業のリストラがこれから動き始めていくわけですけれども、短期的には設備投資や雇用にマイナスの影響を及ぼす可能性が十分あると思います。こうしたことを踏まえますと、民間需要の速やかな自律的回復は依然として期待しにくい状況というふうに判断しております。  また、物価につきましては、原油など国際商品市況の底入れが一時的に物価を下支えすると見られますけれども、今申しましたような実体経済の見通しに基づきますと、こうした面からの物価に対する潜在的な低下圧力というものが引き続き残存していると考えざるを得ません。  したがいまして、日本銀行としては、デフレ懸念の払拭が展望できるような情勢になるまでは現在の思い切った金融緩和基調を維持して、経済活動を引き続きしっかりと下支えしていきたいというふうに思っております。その間に構造改革あるいは雇用対策等についての政策がどんどん実行に移されていくことを期待しております。
  46. 上田清司

    ○上田(清)委員 必ずしも見通しについてはきちっとお答えになったというふうに思えませんが、それは結構でございます。  構造改革をもっと進めなければという議論ですが、先ほどの山本委員の議論あるいは仙谷委員の議論の中でも感じておるところですけれども、物価の安定が日銀の一つの大きな目的だ、しかし、潤沢な資金の供給というものが、物価の安定よりもむしろ構造改革を妨げる企業救済に回ったりしていないか、こういう議論も当然考えなければいけないんじゃないか。  当面の倒産を防ぐためにさまざまな形で臨時に企業に貸し出しする、あるいはCPオペの積極的な活用、これはやむを得ざる措置なのかもしれませんが、日銀そのものが望んでいる構造改革を妨げるのではないか、こういう認識も持たなくちゃいけませんし、先ほど仙谷委員が指摘した、市中銀行の貸出残高がむしろ減っている。本来ならば、資金中央銀行が潤沢に供給して、そして市中銀行が当然それを活用しながらどんどん貸し出していく、そういう中で市場が活性化していく、あるいは経済が活性化していくというような、そういう循環を期待しているはずにもかかわらずそうでない部分があるという事実を、日銀はどのように打開するつもりなのか。この点についてお答えいただきたいと思います。
  47. 速水優

    速水参考人 日本経済の本格的な再生のためには構造改革は避けて通れないということは、十分認識しております。  ただ、現在、景気ははっきりした回復動きがなお見られておりませんし、民間需要の速やかな自律的回復というのが期待しにくい状況にあるわけでございます。そうしたもとでは、構造改革に伴う短期的なデフレ圧力をある程度和らげつつ企業がリストラを前向きに進めていく、あるいは投資活動を進めやすい環境を整えていくということが重要ではないかと考えております。金融緩和はそうした面でも大きな役割を果たすのではないかというふうに思っております。
  48. 上田清司

    ○上田(清)委員 どうもいまいちきちっとした答えが戻ってきていないと私は理解しております。願わくは、潤沢な資金供給企業救済やあるいは銀行救済に回ることなく、その次のレベルが生み出せるような仕組みをやっていただきたい、このことを強く反省していただきたいと思います。やっていることは正しいというふうに私も思っておりますが、その次がつながっていないという結果をもう少し分析していただきたい、その上で次なる手がどういう手があるのかを提示していただきたいというふうに思います。今、このことでやりとりをしても仕方がありませんので。  そういう議論とまた重なってくるわけでありますが、半年前の議論の中で、いろいろな形でこの報告書も中身も変えていただき、大変わかりやすくなって、あるいは業務報告の概要の中でも、考査基準だとかといったものも丁寧にディスクローズされている。このことは積極的に評価したいと思いますが、しかし、御承知のとおり長銀、日債銀で日銀の果たしたマイナスの役割、このことを私は指摘せざるを得ません。  例えば、長銀に関して佐々波委員会が最も頼りにしたのは日銀の考査であり、大蔵の検査であります。しかし、現実は既に捜査当局等で明らかにされているとおりでありまして、考査が生きなかった、むしろ、誤った形を日銀が報告することによって公的資金がパアになったという現実があります。このことについてどのような責任と総括を考えておられるか。  日債銀に関しても、日銀が呼び水になって生保を中心とする民間の各金融機関が奉加帳方式で資金を供出し、そしてそれがパアになっている。これも、日銀の信用という呼び水、日銀の判断というものが正しかったのか、総括と責任というものを明らかにしていかなければならないというふうに私は思っております。  事件がすべて解明したわけではありません。しかし、大方見えている部分があります。この点について日銀内でどのように総括と反省がされたのか。まだ終わっていないというのであったらそれはそれで結構ですが、しかし、次の大蔵委員会なりあるいはまた予算委員会なりで明らかにしていただかなきゃならないということをこの席で申し上げておきたいと思います。いかがでございますか。
  49. 小畑義治

    小畑参考人 お答え申し上げます。  先生御指摘のとおり、長銀、日債銀が特別公的管理に移行いたしましたこと、私どもとしても、大変遺憾、かつ重く受けとめておる次第でございます。  長銀と日債銀それぞれについて、日銀の考査あるいはチェック等、あるいは資金、資本の供与等、一体責任をどう考えているかという御質問でございます。  まず、長銀への去年の三月のいわゆる佐々波委員会での公的資金の投入に当たりましては、私どもといたしましては、佐々波委員会に提出されました自己査定見込み額の適切性を判断するという観点から、ラインシートを精査するとともに、経営の健全性の確保のための計画記載の計数の事実関係についてチェックし、報告しました。去年のその佐々波委員会での審査は、三月五日から三月十日の非常に限られた時間でございましたし、また限られた範囲での資料のチェックでございましたが、私どもとしては最善を尽くした次第でございます。  最終的に、日本長期信用銀行への公的資本の当時の投入は、金融危機管理審査委員会の責任において、その審査時点におきます法律及び審査基準に沿った厳正な審査を経て決定されたものというふうに私どもとしては認識いたしておる次第でございます。ただ、遺憾なことに、当時は長銀自体が債務超過であるという認識は持っておらなかったということでございます。  一方、御指摘の日本債券信用銀行への新金融安定化基金を通じます出資でございます。これは八百億円、まことに遺憾なことに毀損するということになったわけでございますが、これもかねてより国会等で私ども御説明申し上げておりますとおり、当時の金融情勢にかんがみますれば、日本債券信用銀行の抜本的なリストラ策を成功させる以外に、当時のセーフティーネットが未整備なもとでは、金融危機を避けるためにもどうしても日本銀行が新金融安定化基金から出資しなければならない、そういう判断をしたわけでございます。そういう私どもの八百億円の出資が、民間金融機関が出資を御判断される場合に、日本銀行が出資するということ自体が御判断に影響を与えた面は否定いたしませんけれども、最終的には民間金融機関自体の経営の判断として出資されたというふうに理解しておるところでございます。  いずれにいたしましても、長銀、日債銀が経営破綻いたしまして特別公的管理銀行に移行し、現在、受け皿をどうするかということで両行が鋭意努力されておられるところでございます。私どもとしても、今後、現在のセーフティーネットのもとで、考査運営等につきまして反省すべき点があるならば、先生御指摘のように、まだ総括するにはやや時間が早いような気もいたしている面もございますので、今までの痛みを伴う経験をも含めて、今後の考査の運営につきましては、さらに行内で議論し、検討を進めてまいる、あるいは反省すべき点があれば反省して対応してまいりたい、かように考えておるところでございます。
  50. 上田清司

    ○上田(清)委員 時間が参りましたので続きにしたいと思いますが、特に日債銀の八百億はまさしく日銀の判断で失敗したものでありますので、それこそ皆さん、ボーナス給がなくなるぐらい反省をしなきゃいけないような話でありますから、気をつけて総括をきちっとしていただきたいと思います。  では、続きは午後お願いいたします。
  51. 村井仁

    村井委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二分休憩      ――――◇―――――     午後一時開議
  52. 村井仁

    村井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。上田清司君。
  53. 上田清司

    ○上田(清)委員 午前に引き続き御苦労さまです。  先ほど、長銀の考査の部分で、特に佐々波委員会のときはいささか時間がなかったということでおっしゃっておりましたが、実は、私どもも民主党の中で長銀の実態解明グループというのをつくっておりまして、スタートのときこそ五、六人いましたけれども、最後はマムシの仙谷とスッポンの上田、二人になりまして、政調のスタッフも一人しかおらなくて、それでも、多分日銀の皆さんの十分の一ぐらいの限られた能力で何とか日本ランディックに対する追加融資、事実上回収の見込みのない追加融資のその部分だけを正確に見て、これはよくないという形で強く国会でそのところを指摘したような経緯もございました。  私どもは、限られた時間内で一部の資料でもって確信を持った形で物事を判断できる部分を可能にしている。しかし、日銀の皆さんは、多分我々の十倍の能力を持つメンバーを五十人ぐらいはスタッフとしてその分野につぎ込むことが可能ではなかろうかと私は勝手に推察して、合わせると五百倍能力を持っていらっしゃる。にもかかわらず見抜くことができないというのは摩訶不思議でならない。何のために膨大な予算を費やしてそうした考査局を構成し、あるいは統計局を構成して仕事をなさっているのかなというふうな感があります。これからも考査の役割というのも大変大きなものが多分にあるでしょう。そういうことも含めて、まだまだ反省の足らない御答弁であったということを申し添えておきます。  また後日、その他の問題で、一般質疑の中でも、あるいはまた予算委員会の舞台の中でも改めて相まみえることを約束して申し添えておきますので、よろしくお願いいたします。  それでは、バランスシートの問題について少しお伺いをしたいと思います。  本年度の報告書の中でも出ておりますが、この中で際立っているところが預金保険機構への貸付金の推移であります。十年の九月末、十年の十二月末、十一年の三月末のそれぞれの対比が出ております。かなり大きな動きがあるわけでございますが、この預金保険機構に対する貸し付けがバランスシートの健全性にどのような影響を与えるのかということについて、私は若干危惧をしております。  法律の中で、預金保険機構を通じてさまざまな貸し付けをする、それに対して日銀が事実上のファイナンスをしていくという仕組みになっておりますが、既に、幸福銀行を初め幾つかの銀行が、贈与を受けた健全行にもかかわらず破綻しているという状況がございます。  そういう点について、この分野に関してだけで結構でございますが、健全性の確保について日銀はどのような意識を持っておられるのか。私は、余り引き受けることばかり考えずに、何らかの形でもう少し外に引き受けさせるようなことを考えていくのも一つの手ではなかろうかというふうなことも含めて、お考えをお伺いいたしたいと思います。
  54. 小畑義治

    小畑参考人 お答え申し上げます。  先生御指摘のとおり、日本銀行の最近のバランスシートの拡大には、預金保険機構向けの貸し出しが増加していることも一つの大きな要因であることは紛れもない事実でございます。  日本銀行といたしましては、信用秩序の維持という大きな使命を背負っておりますので、我が国の今の金融システムの現状を考えますれば、預金保険機構が経営破綻金融機関の処理等で当面直ちに必要とするような資金については、私どももちゅうちょなく資金供与を行っていくつもりでございますが、私どもの預金保険機構向けの貸し出しについての基本的な考え方は、かねてより申し上げておりますとおり、あくまでも私ども日本銀行資金供与は預金保険機構が民間からの資金調達を行うまでの一時的な資金の供給であるということでございます。  したがいまして、預金保険機構におかれましてはまずもって最大限民間調達のために努力され、それでもどうしても不足するという資金について私どもが資金を供給する。いわば、私どもの預金保険機構向けの資金供与は補完的資金供与であるというふうに思っておるところでございます。  先生御指摘のとおり、預金保険機構向けの貸し出しの増加がバランスシートを拡大させ、それが日本銀行の財務の健全性という点でも、海外あるいは国内含めまして、日本銀行のバランスシートの健全性に対する懸念も実際あることも事実でございますし、また、私どもは、本来、金融政策を運営する場合、マーケットに向かって金融調節を実施いたしておりますが、金融調節の基本は短期流動性の資産を駆使することによってやるわけでございますが、余りにも預金保険機構向けの貸し出しの残高が大きくなり、そしてそれが長期に固定化するということになりますと、金融調節面へも大きな支障を生じかねないというふうに考えておる次第でございます。  海外の例を見ましても、こういう金融機関の破綻処理のセーフティーネットにおける預金保険機構が必要とするような資金というのは、日本の場合のように日本銀行預金保険機構に資金を供給している姿は極めて異例でございまして、海外等では財政資金等によって手当てされているというのが多いわけでございます。  こうした点を踏まえまして、日本銀行といたしましては、預金保険機構に対しましては、民間からの調達手段の範囲の拡大、生保とか外銀とかそういう調達ルートを拡大する、あるいは、今後の課題でございますが、民間からの借り入れ形態だけではなくて、政府保証債の債券の発行という形で調達手段の多様化も進めていただきたいというふうにかねてより強く要請いたしておるところでございまして、現在、預金保険機構におきましても、そういう調達範囲の拡大とか多様化という問題については鋭意検討いただいておりますし、市場からの調達についても入札を平準化する等の努力をいただいておるところでございます。  最後につけ加えれば、まだ、関係者、特に預金保険機構等との話し合いがついておりませんけれども、信用秩序維持という観点からの貸し出しと金融調節上行う貸し出しとは明らかに違う、そういうことから、預金保険機構が市場調達した、どうしてもできない部分について日本銀行は貸す、そういう性格にもかんがみまして、預金保険機構向けの貸付金利につきましては、民間から調達される市場金利、そういうものを実勢として、日本銀行からも、要するに貸出金利については現在公定歩合体系を基準に貸し出しておりますけれども、それを見直す方向で今鋭意検討を進めさせていただいておる。  そういうバランスシートへの影響等も考え、預保向けの貸し出しの抑制について努力しておるという点、ぜひ御理解いただきたいと存じます。
  55. 上田清司

    ○上田(清)委員 極めていい御認識をされておられるというふうに高く評価したいと思います。  続きまして、一番嫌なことを最後にお聞きしますが、山一への日銀特融の事実上の回収不能状況についてお伺いをしたいと思います。  御承知のとおり、山一が破綻状況になったときに、少なくとも超過債務ではなくてその逆であるということで日銀特融が行われておったわけですが、私の記憶では、最高時一兆五千億ぐらいまでやったこともあるのではなかろうかというふうに記憶しておりますが、現在、一番近いところの数字残高は幾らになっておるのか、確認させてください。
  56. 小畑義治

    小畑参考人 お答え申し上げます。  昨日時点で約三千四百億円でございます。
  57. 上田清司

    ○上田(清)委員 そこで、大蔵大臣も、生保業界等々で事済むのではないだろう、証券業界では事が足りないだろうというふうなことで、暗に少しは大蔵あたりでも検討するようなニュアンスもインタビューなどでは言っておられますが、事の責任、あるいはこの損失をどのような形で日銀が回収できるのかということについて、基本的にどのような認識を持っておられるのか、まずこの点についてお伺いしたいと思います。
  58. 速水優

    速水参考人 山一証券の特融につきましては、平成九年十一月二十四日付の大蔵大臣談話におきまして、「本件の最終処理も含め、」本件というのは山一証券のことです、「証券会社の破綻処理のあり方に関しては、寄託証券補償基金制度の法制化、同基金の財務基盤の充実、機能の強化等を図り、十全の処理体制を整備すべく適切に対処いたしたい。」ということを出されたわけでございます。  日本銀行資金の最終的な回収に懸念が生じることはないという判断からこれに私どもは踏み切ったわけでございますが、そうした事情を踏まえまして、今般の山一証券に対する破産手続の開始を受けて、大蔵大臣におかれては、国会においても、本件については基本的に大蔵大臣の責任において解決しなければならないということを答弁しておられます。ただ、山一証券の破産手続が終了いたしますまでには今後まだ相当の期間が必要でございまして、その過程で最終的な債務超過額というものも大きく変動する可能性があると思っております。  私どもとしましては、特融の具体的な返済方法について、現時点で予断を持っているわけではございませんが、いずれにしましても、今後の破産手続の進展をも踏まえつつ、最終的には大蔵大臣談話の趣旨に沿って適切な対応が図られるよう、関係者と十分協議してまいりたいと思っております。
  59. 上田清司

    ○上田(清)委員 基本的には大蔵大臣の談話に沿って措置をされるべきだと。もちろん、平成九年の十一月二十四日の総裁談話の中でもそのような趣旨で、日本銀行資金の回収には懸念が生じない、こういう力強い談話もあるわけであります。結果的には大蔵省が責任を持つべきだ、こういう御認識だというふうに理解してよろしいでしょうか。
  60. 速水優

    速水参考人 そういう御理解で結構だと思います。
  61. 上田清司

    ○上田(清)委員 これは松下総裁のときでありますが、しかし同時に、平成九年十二月一日に、現在は自治大臣をお務めになっておられます野田毅先生が、国会の予算委員会でこの問題について、日銀の判断として山一は債務超過の状況にないということについての認識について、松下当時総裁が、「私どもも、それまでの大蔵省検査なり私どもの考査なりということから概略推計をいたしますと、当時の現状におきましては、債務超過の状況でないというふうに判断をいたした次第でございます。」というような形で、日銀も基本的にはそれなりの考査をした上で債務超過じゃないという認識を持っていたということで、こういう認識に関しては共有した責任を持たざるを得ないのではないでしょうか。  この認識に対する責任はどのように御理解をなさっていらっしゃるのか、この点について御答弁をお願いしたいと思います。
  62. 小畑義治

    小畑参考人 お答え申し上げます。  先生御指摘のとおり、私ども、実は山一が自主廃業方針決定いたしました十一月二十四日の前の平成九年の六月から七月にかけまして山一証券に対し考査を実施いたしているところでございます。当時、御案内のとおり、山一証券の経営状態をめぐりましては簿外債務ということが大変話題になっておりまして、私ども、考査に当たりましても、この簿外債務、いわゆる飛ばし取引という実態に強い関心を持って、その解明等も含め、そこに努力も込めながら鋭意考査を行ったところでございます。  ただ、遺憾と申しますか、残念なことに、当時を振り返ってみますと、そういう飛ばし取引に強い関心を持っておったところでございますけれども、そうした問題につきましては、当時、山一証券からは、証券取引等監視委員会の指示を受けて飛ばし取引については調査中であるとの説明しか得られなかったわけでございまして、その点については十分な実情把握ができなかったというのが実態でございます。  そこで、日本銀行といたしましては、証券取引等監視委員会の指示で調査中であるということであるならば、引き続きその調査に努力して、実態解明後遅滞なく報告するよう求めたところでございまして、平成九年十一月の中旬に、山一証券からは、社内調査の結果、含み損と簿外債務を認識したという旨の報告を受けたものでございます。私どもとしては、その時点では、財務体力が低下しつつあるという認識はございましたけれども、要するに、相応に資産超過の状態にあるということと判断したわけでございます。  その当時、十一月二十四日に大蔵大臣に山一証券が臨時報告書という形で資産の状況を報告いたしております。そのときは一千九億円という資産超過を報告いたしておりますが、それと私どもの資産超過の状態という判断と際立った差はなかったということでございまして、その後の変化というのはその時点では十分織り込めなかったということも事実でございますけれども、資産超過と認識したことは事実でございます。  長くなって恐縮でございますが、先ほどお尋ねの資産の健全性という絡みで申し上げれば、実は、私ども特融を実施します場合には、この資産超過というところをよりどころとしたわけではございませんで、総裁がお答え申し上げましたとおり、大蔵大臣談話、強い政府からの要請もございまして、それで、当時の金融・証券界の信認低下を防ぎ、金融システムの混乱を回避することから、大蔵大臣談話をよりどころとして、最終的には、山一向け特融が回収されることに懸念がないと判断して実施したというふうに御理解いただいたらと思っております。
  63. 上田清司

    ○上田(清)委員 当時はまだ日銀の独立性の問題が十分クリアされてなかったという実情も踏まえて、理解できないでもございません。また、一千億を超える資産超過があったということで、解散の過程の中で資産が少々劣化しても何とかなるだろうというふうな理解をされたということについても理解がしやすいのですが、しかし、私は、日銀特融という物事の性質を、打ち出の小づちみたいな形でどんどん出す以上、そういう金融システムの崩壊を未然に防ぐためにどんな形でもとる、こういう決断も、これから場合によっては大蔵省の意図とは別個に、まさに金融の守り神として、中央銀行の主体的な認識の中でやっていかなくちゃいけないことがしばしばある、二〇〇一年のペイオフに向けてもっとあるだろうというふうに理解しているつもりなんですね。  だからこそ、どうすればいいかということに関して、特融の条件もかなり限定的に整理をされてこられました。昨年そういう質問もさせていただきましたけれども、大変前向きにいろいろなことをなさってこられたことも評価いたしますが、一つだけ思い出していただきたいのです。これは全委員の方々にもぜひ思い起こしていただきたいのですが、四十年の山一特融のときにどのようなことを日銀は山一側に約束させたかということをやはり確認していただきたいと思います。  山一との特約に基づく指示という内部文書があるはずです。その中で何をさせたか。  経営上の責任を明らかにする趣旨から、経営破綻が表面化した昭和三十九年十一月の社長更迭前三カ年において代表取締役にあった者は、その私財を提供させるように取り計らうこと。三カ年にさかのぼって私財提供もさせる、そういう取り決めもやっております。  本指示に基づき、四十年十月、元社長、名前は挙げませんけれども、ほか七名から次のとおり私財提供の申し出があった。不動産四件、当時のお金でありますが一億六千二百六十万、有価証券九百九十万、現金三百四十万、もちろんこれは特融に充当されておりますが、合計で一億七千六百万、今日の価値に換算すれば多分百倍ぐらいになるんじゃなかろうか、こういうことが言われております。  ほかにもまだたくさんありますよ。額面で、当時の金額で四千万の山一の株式。そういうものをそれぞれの役員の人たちが……。丸裸ですね、事実上。  しかし、今日の山一の役員の人たちは、職員も、退職金もボーナスもしっかりもらって、だれ一人申し出をする人もいない。また、日銀側も追及もしない。こういうことで本当にいいのか。これから特融を出す場合には、もう丸ごとはいでください。特融を出して金融システムの不安を取り除く一方で、責任者をきちっと追及してください。それがないと不公平です。そのことをしっかり総裁の答弁の中で明らかにして、事実上そういうことだよということを全金融機関の方々に中央銀行の権威の名においてここで宣言してください。よろしくお願いしたいと思います。
  64. 小畑義治

    小畑参考人 お答え申し上げます。  私ども業務概況書にも詳細は記載させていただきましたが、現在のセーフティーネットをもととする私どもの特融等の具体的な運営方針を明確化する中でも、先生の御指摘のございましたモラルハザード防止の観点から経営者責任を明確にしていくということを四原則の三つ目の原則として、今後特融を運営する場合、そこは重視していくということをさらに再確認いたしておる次第でございます。  現在の四原則を見直したわけでございますけれども、先生御案内のとおり、去年金融再生法、健全化法ができまして、そういうセーフティーネットのもとでの私どもの特融の運営という点から申し上げますと、管財人による管理なり特別公的管理なり、金融再生法に基づく金融機関の経営破綻処理ということになりますと、再生法に基づきまして旧経営陣に対する民事、刑事上の責任が追及される、また追及されなければならないと義務化されております。そういう中で経営者の責任が明らかになっていくのではないかというふうに私ども思っております。  山一の特融の件に関しましては、確かに私ども特融実施に関しまして私財提供を旧経営陣に求めていないわけでございますが、現実の経過を私ども見守ってまいりますと、これも先生御案内のとおり、山一の旧経営陣に対しましては、山一証券自体が損失補てん等の面で損害賠償訴訟を起こしておりますし、また、旧代表取締役に対しては退職金を支給しないということにもいたしております。また、山一証券の株主からは、損失補てんあるいは配当の面でも損害賠償訴訟が起こっているという実態でございます。  そういう流れ、動きを私どもも眺めまして、私財提供というのは、法律的義務というよりは、ある意味では道義的な面が絡む面もあろうかということでございますが、以上申し上げましたような山一証券自体の動きとか株主等の訴訟提起の動きを考えますと、日本銀行自体がさらに私財提供を求めていくという余地はないのではないかというふうに私ども認識いたしておるところでございます。
  65. 上田清司

    ○上田(清)委員 法的な措置の前に、念のために先にガードして縛っておくということです。いつでも解除はできます。  それから、本当に現況の金融関係の経営者は、モラルハザードじゃなくて、モラルじゃなくて、もらうバリケードになっているんですよ。一たんもらったら絶対返さない、そういう状況になっていることも踏まえて、最初に、特融を出すときに特約で縛っておけ、このことを強く申し上げまして、質問を終わります。ありがとうございました。
  66. 村井仁

    村井委員長 次に、谷口隆義君。
  67. 谷口隆義

    ○谷口委員 本日は、通貨及び金融調節に関する報告書並びに業務概況書について質問をさせていただきたいというように思っております。  この通貨及び金融調節に関する報告書は、半年ごとに国会において審議をするということでございますので、今回二回目ということであります。また、業務概況書は今回初めて提出されたわけでございまして、私ども、どういうものが出てくるのか大変興味を持っておったわけでございますが、後ほどまた、これに対しましても御質問をさせていただきたいというように思っております。  午前中の審議からずっと聞いておりましても、昨今の金融状況は大変切迫した状況にあるということでございます。公定歩合の方も、超低金利がもう既に三年以上続いておるわけです。また、実質金利ゼロという状態が、これも四カ月続いておる。大変危機的な状況にある。また、午前中の審議の中で総裁もおっしゃっておられましたが、実質金利ゼロと量的緩和はコインの裏表の関係なんだというお話もあったわけでございます。このあたりのことも含めまして、私の持ち時間の中で質問をさせていただきたいというように考えております。  まず初めにお聞きいたしたいことは、金融市場、短期金融市場におけるモラルハザードというような問題についてお伺いをいたしたいと思います。  先日、幸福銀行が経営破綻をしたわけでありますが、状況を聞いておりますと、コール市場でけた外れに高い金利を提示して資金を集めておったというような状況があるようでございます。これは御存じのとおり、二〇〇一年四月からペイオフが始まるわけでありますが、二〇〇一年三月までは政府が全面的に面倒を見るというようなことでございますので、少々財政状態の悪い、大変経営の逼迫しておる金融機関にあっても、高い金利が提示されればそこに乗ってくるという今の金融業界の状況があるのではないか。そういう意味において、さっきも上田委員の方からも出ておりましたが、金融業界全体のモラルハザードがきわまっておるのじゃないか、このように私は思うわけでございます。  そういう観点から、この二〇〇一年四月から実施予定のペイオフについて、大蔵省、大蔵大臣また日銀総裁もこれはやるんだというようなお話でございますが、私はぜひこれは実施すべきである。現下の金融業界の状況を見ておりますと、問題を先送りにし、市中においては一部ペイオフが延期されることが前提で動いている、こういうような状況にあるわけでございますが、今やらなければいけないのは構造改革でございます。経済構造改革金融業界の構造改革をやっていかなければいけない。こういう観点で見た場合に、これは予定どおりペイオフを実施しなければいけないと私は思っておるわけでございますが、まず初めにこのような観点で御答弁をお願いいたしたい、こう思います。
  68. 速水優

    速水参考人 お答え申し上げます。  御承知のように、現在我が国では、二〇〇一年三月末までの時限措置として、預金等を全額保護する仕組み、包括的なセーフティーネットが構築されております。預金保険法における特別資金援助とか、金融再生法における破綻に関する施策の集中的実施とか金融整理管財人による管理とかブリッジバンクの活用とか特別公的管理、また早期健全法での公的資本注入、こういったことは通常ではあり得ないことではないかというふうに思います。  こういう包括的なセーフティーネットというのは、現在我が国金融システムが先進諸国に比べても若干おくれをとっておったわけでございますが、その結果として出てきたこの厳しい状況にかんがみますと、どうしても当面は必要なものであったと思います。一方、こうした措置が公的資金を含む多大のコストを要するとか、あるいは預金者やその他債権者、金融機関のモラルハザードを惹起するおそれを生じている。  こういうことを考えまして、時限的な措置を延長するかどうか、最終的には立法府を通じた国民の判断にゆだねなきゃならないことだと考えますが、私としては、二〇〇一年三月末に向けて、関係者が全力を尽くして不良債権問題の克服に当たることが重要であるというふうに考えております。その意味で、安易に各種時限措置の延長を視野に入れることは、先ほど申し上げました副作用を生じかねないということから、適当ではないのではないかというふうに考えております。  それでは二〇〇一年四月以降はどういうことになるのかということが、これまた先生方も御心配でございましょうし、国民の方々も皆その点については関心を持っておるわけで、社会的、経済的にコストの少ない、かつ早期に問題を解決し得るような民主的な制度が整備されていくことが必要であるというふうに考えております。  本件に関しましては、現在、金融審議会等の場におきまして議論が始められているところでございまして、私どもとしましても、二〇〇一年四月以降のあるべきセーフティーネットの具体案作成について積極的に参画してまいりたいと考えております。
  69. 谷口隆義

    ○谷口委員 そういう状況を考えますと、これはもう二年ないわけですね、今六月でございますから。  私も選挙区に帰りますと、大阪は特に経営状況の厳しい金融機関が多いものですから、あの金融機関預金をしているんだが大丈夫かなというような大変生々しいお話を聞いたりするわけでございます。それで実態的にお聞きしたいわけでございますが、既に金融機関における、これは個別具体の行名は結構でございますが、全体的にそういう資金移動の兆候は現在見られるのかどうか、お願いいたしたいと思います。
  70. 小畑義治

    小畑参考人 お答え申し上げます。  結論から申し上げれば、全体として、二〇〇一年四月以降を懸念した大きな資金のシフト等々の動きはないというふうに私どもは判断いたしております。  ただ、子細に見ますれば、例えば二〇〇一年四月をまたぎますような、二年とかあるいは三年以上の長い預金とか金融債の一部がうまく継続されないとか、その預入が順調でないという声もごく一部で聞かれるところでございますけれども、これは先行きの景気観とか金利の見通しによって投資家あるいは預金者がどう判断しているか、必ずしもペイオフだけを考えて行動していない面もございますので、私どもとしては、繰り返しになりますが、全体としては大きな資金の移動等は見られないという現状判断でございますが、今後とも、先生御指摘の点については注意深くマーケット等をモニタリングしてまいりたいというふうに思っておる次第でございます。
  71. 谷口隆義

    ○谷口委員 今、金融再生委員会金融業界の事業再編等々やっていらっしゃるようでございますが、いずれにいたしましても、これを中途半端な状態で、やるのかやらないのかわからないというような状態でずっと引っ張っておりますと、市中においては大変大きな問題になってくるのではないか。  そういう意味においては、やるんだというように決めれば、後は弱小金融機関、体力のない金融機関をどのように再建していくかという次のステップになるわけでございますし、また、一般国民の方の預金についても具体的にどのようにするのかというようなことも必要でございましょう。いわばもう時間がないわけでございますから、もう二年を切った今現在の状況の中で、ある程度そういうはっきりとした明確なメッセージを国民に送る必要がある、このように考えるわけでございますが、この辺についていかがでございましょうか。
  72. 小畑義治

    小畑参考人 お答え申し上げます。  総裁も先ほどお答え申し上げましたとおり、私ども二〇〇一年四月以降のペイオフというのを、安易にその延期を視野に入れるべきではないという判断でございますが、では二〇〇一年四月以降ペイオフだけで対応できるのかというと、やはり社会的、経済的コストの非常に小さい、かつ迅速に対応できるセーフティーネットを構築していかなきゃならないというふうに私ども考えておるわけでございます。現在、御案内のとおり、金融審議会等におきまして、その点議論が進みつつあるところでございます。  私ども、先ほど申し上げましたような基本方針に基づきまして、私ども日本銀行が経験いたしてまいりました、今までの信用秩序維持の使命を果たすための役割で得ました、その使命達成上得ました経験等も踏まえて、積極的に二〇〇一年四月以降のセーフティーネットのあり方については意見も申し上げ、貢献してまいりたいというふうに考えているところでございます。
  73. 谷口隆義

    ○谷口委員 私、先ほど申し上げましたように、一刻も早く、そういうようにやるんだったらやる、それによる影響はどのように対応するんだということをぜひ明確に言っていただきたいというように思うわけでございます。  それで、次に移りたいと思いますが、金融政策決定会合を何回かやっていらっしゃいますし、この報告書にも載っております。この中で、これは中原委員でございましたか、中央銀行が直接企業金融の領域に踏み込むということはリスクがあるんだというようなお話をしていらっしゃるということをこの報告書で私は見たわけでありますが、昨年の十一月十三日の決定CPオペの積極的活用、また、十一月二十七日に企業金融支援のための臨時貸出制度の創設、こういうことで中央銀行が直接企業をサポートするというような対応をされたわけでございます。  私の個人的な意見は、私は中原委員と同意見でございまして、中央銀行として果たしてその領域まで踏み込んでいいのかというように思っておるところでございます。例えば、この国会でもこの議論が審議されたわけでありますが、日本開発銀行がこのたび、設備資金以外に、運転資金で、例えば転換社債の転換し切れておらない残高について企業が大変困っておる、それに対して融資を行うというようなことをされたようでありますが、中央銀行が果たしてそこまで踏み込んでいいのかというように私は考えております。  この財務の健全性という観点から、ここにも書いておりますが、健全性ということを十分念頭に入れてというようなことでございますが、しかし、一方で企業というのは大企業であっても一挙に悪化するというようなこともあるわけで、こういう観点で私はちょっとこういうことについて危惧をいたしておるところであります。これについてお考えをお述べいただきたいというように思います。
  74. 黒田巖

    黒田参考人 お答えいたします。  私どもが与信をする場合に、その安全性について十分に配慮をしなければならないという点につきまして御指摘いただきました。まことにそのとおりであろうと思います。  その場合に、そういう観点から、それでは民間企業の債務については一切与信の土台として使わないのかというふうに考えますと、中央銀行は、日本銀行だけでなく各国の中央銀行で、商業手形の割引から歴史的に始まった経緯もございます。そういうものは、いろいろな種類のものをとってきたというのが事実でございます。ただ、もちろんその場合には適切な審査をし、かつ、それを取り入れるについても、公平な方法で、プロセスを踏んで実施するべきである、しかも、与信をした後もそれをウオッチしていくべきであるということであろうかと思います。  私ども、CPにつきましては、審査を公正、厳重にするべく、またその方法の改善につきまして努力しつつ進めさせていただいているつもりでございます。そして、そのやり方につきましても、これは競争入札というやり方でやらせていただいております。したがいまして、私どもが適格といたしましたCPにつきましても、現実に入札をするときにどの金融機関がどのCPを持ってくるかということは、私どもの裁量ではなく、金融機関さんの側で競争的に決めていただくような仕組みをとらせていただいている次第でございます。  そういうことで努力はさせていただいておりますけれども、今後ともその改善に努めさせていただきたいというふうに思っております。
  75. 谷口隆義

    ○谷口委員 それでは、今私が申し上げました企業金融の領域に入り込まれたということでありますが、これはどういうことがきっかけでこのような考え方が出てきたのか。  私、先ほど申し上げましたように、これは、仮に政府系金融機関が今おっしゃっておるような企業金融を直接サポートする、現在やっておるわけでありますから、そういう方法もあるんだろうなというように思うわけでございますが、日銀が直接このような考え方に変えられたもともとの経緯について教えていただきたいというように思っております。
  76. 黒田巖

    黒田参考人 お答えいたします。  商業手形の割引といったような伝統的な手法につきましては、大変昔から日本銀行はやっているわけでございますが、先ほど来お話しのCPにつきましては、これは以前にも実施したことはございますが、最近は直接的な……(谷口委員臨時貸出制度、CPよりむしろ臨時貸し出し」と呼ぶ)  臨時貸出制度につきましては、昨年の企業支援ということで打ち出しました三つの策の中の一つとして打ち出した経緯があるわけでございますが、これにつきましては、ほかの二つの手段、CPと社債とを根担保として使う、この二つの手段と並んだ一つとして実施した経緯があるわけでございます。  このときに行いました臨時貸し出しにつきましては、当時も説明申し上げましたが、民間金融機関が貸し出しをした場合に、その貸し出しをすることに伴って必要となる金融機関資金につきまして、当時金融機関自身資金繰りに大変不安を持っていたときでございますので、民間金融として貸し出しを行うならば、その原資について不安が少なくなるようにその半分を限度として私どもが資金を貸し出しする、こういうねらいでございました。  それで、これにつきましては、私どもの全国の本支店から私どもの取引先のすべての金融機関につきましてこういうサービスのオファーをさせていただいたわけでございまして、そういう意味で、社債やCPを出せないような中堅以下の企業さん、そしてまた地域的にも全国の企業さんにとってプラスになるような手段として、こういったものを他の手段と組み合わせて実行させていただいた次第でございます。
  77. 谷口隆義

    ○谷口委員 日銀中央銀行でございますので、そのことを十分念頭に入れていただいてぜひ行動をしていただきたいというように私は思うわけでございます。  それで、その次に参りたいと思いますが、為替介入の問題でございます。  為替介入は、大蔵省と日銀との間でやるわけでございます。この為替介入の金額また時期については、だれが決定し、その責任はだれにあるとお考えでございますか。
  78. 山口泰

    山口参考人 お答えいたします。  現在の我が国の法律それから制度のもとでは、為替介入についての責任は政府にございます。日本銀行は政府の代理人といたしまして為替市場に介入を行っております。
  79. 谷口隆義

    ○谷口委員 ですから、そういう意味においては、私も以前大蔵大臣にそのようにお聞きしたことがございまして、これは大蔵大臣の責任だということの答弁をいただいておるわけであります。  この報告書を見ますと、為替介入に当たって、日本銀行がモニタリングを通じて得た外為市場の情報や分析を踏まえ、政府と密接に連携を図り、安定確保に寄与しているというような文言の記載になっておるわけでございますが、実は、私は、大蔵省がすべて投げて、それを日銀が代行し為替介入をやるんだというように考えておったんですが、これを見ますと、かなり日銀考え方が、情報であるとか分析であるとか、ここに入っておるような表現になっておるわけでありますが、これについて教えていただきたいというように思います。
  80. 山口泰

    山口参考人 申し上げましたように、為替介入についての責任というのは政府、大蔵大臣にございます。私どもは、介入の実務を担当しているわけでございまして、大蔵大臣の代理人として市場に入るわけでございますが、そういうことで市場との接触を実際に担っておる立場にございます。  そういう立場におるものでございますから、当然、為替市場のその時々の状況でありますとか、その背後にある海外経済状況あるいは海外の中央銀行考え方というものに日々接触をしておりまして、私ども中央銀行の観点から為替市場及びその背後にある国際経済全般を注意深くフォローしており、またフォローできる立場にございます。  そういう立場から、私どもが得た情報につきましては、必要に応じまして大蔵省に当然これは伝えておりますし、大蔵省ともさまざまな意見交換をさせていただいている、こういう関係にございます。
  81. 谷口隆義

    ○谷口委員 私、具体的にどういう形になっているのかわからないのですが、そうすると、日銀のこの分析なりモニタリングなりを大蔵省とのやりとりの中でおっしゃって、それが最終的に、規模であるとか、また時期であるとか、こういう決定の際に大きな影響力があるというようなことになっておるわけでございますか。
  82. 山口泰

    山口参考人 私どもの得ました情報なりあるいは日銀の見方というのはその都度大蔵省に伝えておりまして、大蔵省あるいは大蔵大臣におかれましても、そういう情報というのは有効に活用していただいているのではないかというふうに考えております。
  83. 谷口隆義

    ○谷口委員 従来からこの為替介入については大きな問題もございまして、私自身の個人的な意見も持っております。大変規模も大きくなってまいりまして、今後、またいろいろ引き続き質問もしていきたいというように思います。ただ、その権限がだれにあって、だれが責任を持たなければいかぬというところだけは極めて明確にしておかなければいかぬというような観点で、今お聞きしたわけであります。  それで、冒頭私申し上げましたが、公定歩合が今現在〇・五%でございますね。これがもう既に三年半続いておるというような状況でございます。一方、先ほどお話をいたしましたように、実質金利ゼロというような極めて異常な状態がもう既に四カ月以上続いている。こういう状況の中で公定歩合というのは一体どのようになったのかというようなことをお聞きいたしたいと思うわけでございます。  金融政策決定会合の状況を見ておりますと、平成十年九月九日に、無担保コールレートオーバーナイト物の誘導水準を、公定歩合をやや下回る水準から〇・二五%前後に引き下げるというような決定をされたようでございます。また、十一年二月十二日に、無担保コールレートオーバーナイト物をできるだけ低目に誘導するように一段の金融緩和を図るというように決められたようでございます。  ですから、この平成十年の九月をちょうど境に、いわばこの金融政策決定会合の中で公定歩合の議論が行われておらないようになったというように考えるわけで、金利決定の際の公定歩合がここで切断されたのじゃないか。そういう意味において、私もこの報告書をずっと拝見しましたが、最近の金融政策決定会合で公定歩合という言葉は出てこない、こういうような状況に今なっておりまして、もはや公定歩合というのは実態的な意味を持たないのじゃないかというような声さえあるわけでございます。これについてお考えをお述べいただきたいというように思います。
  84. 山口泰

    山口参考人 公定歩合の位置づけいかんという、これは金融政策にとりまして非常に基本的な点について御質問いただいたというふうに思います。  初めに、公定歩合というものは、当然、日本銀行の貸し出しについている金利でございますけれども、日銀の貸し出しをここしばらくの間、具体的には平成八年以降でございますけれども、日々の金融市場調節という目的のためには原則として使わない、かわりにその他のオペレーションを活用するというような方針で臨んでまいりました。  しかし、日銀貸し出しというのは、日々の金融市場調節のほかにも、個別の金融機関等への貸し出しとして実行されることがございまして、先ほど来若干問題になっております特融などにつきましても、公定歩合体系の中でこれを実行してきているという状況にございます。要するに、申し上げていることは、日銀貸し出しというものをこのところ日々の金融市場調節には使っておりませんが、その他の目的のためには使ってきている、これが現状でございます。  それで、日々の金融市場調節を決めるのが金融政策決定会合という場であるわけですが、そこで公定歩合というものを変更するという決定をこのところしてきていないというのは御指摘のとおりでございます。かわりに短期の市場金利、具体的にはオーバーナイトコールレートというものを、金融政策の大きな操作目標という言葉を使っておりますけれども、要するに具体的な政策の道具としてそういうものを用いてきております。  そういう意味では、先生御指摘のとおり、以前に比べまして公定歩合というものが余り大きな役割を果たさないようになっております。これは、一つには、先ほど申し上げましたように、日銀貸し出しを余り使わないというオペレーション方針に転換してきておりますことと、もう一つは、何分公定歩合が〇・五%と極めて低いものでございますから、こういう特殊な金融環境の中でこのような用い方になっているという面もあるというふうに理解しております。  ただ、公定歩合は、日本銀行の貸出金利としてその他の目的のためにも使っておりますし、短期の市場金利から余り大きく乖離することも適当ではないというふうにも思っております。したがいまして、これは将来の話になりますけれども、仮に将来、コールレートの水準が今の実質ゼロというふうなところから変わっていきまして、再び通常の水準に戻り始めていくというような状況になりましたならば、公定歩合についても変更することが検討の対象になっていくのではないかというふうに考えております。
  85. 谷口隆義

    ○谷口委員 当面、先ほどからの審議の状況を聞いておりましても、今山口総裁がおっしゃったような状況にはならないだろうという予測の方が強いというように思うわけでございます。  ちなみに、アメリカFRBでは、御存じのとおり、フェデラルファンドレートの誘導目標に近い水準に公定歩合を設定している。市場から資金を調達できない金融機関は公定歩合で借り入れて、いわば懲罰金利というような性格を持っているようでございます。一方、欧州中央銀行は公定歩合を使わないで、市場金利の上限の限界貸出金利と下限を示す中央銀行預金金利との組み合わせで一定範囲内に金利を誘導しているというような二つのやり方があるんだ。  今現在の状況では公定歩合がいわば形骸化しておるわけでございますから、この先どのような方向に持っていこうとされておるのか。そういう議論があるのかないのかわかりませんが、それについてお答えをお願いしたいと思います。
  86. 山口泰

    山口参考人 ただいま谷口先生から海外の事例を御指摘いただきましたけれども、恐らく、それらを一般的に解釈いたしますならば、それぞれの国の実情、それぞれの金融市場の実情を踏まえまして、その中で最も政策の効果が上げられるような公定歩合の使い方、あるいは公定歩合と市場金利の関係というものをつくっているのではないかというふうに理解しております。  我が国の場合、先ほど、将来金利の水準が変わっていったならばという仮定のもとに申し上げましたけれども、私どもといたしましても、我が国経済金融市場の中でその効果を最大限発揮できるような金融政策の方法論というのを、これは不断に磨いていかなければいけないと思っておりますが、そういう私どもの日常の努力の中で、できるだけ効率の高い、有効性をできるだけ上げられるような公定歩合と市場金利の関係というのを模索してまいりたいというふうに思っております。  現在はそういうことを頭に描いておるという状況でございます。
  87. 谷口隆義

    ○谷口委員 いずれにしましても、今現在、公定歩合が実質的にはほとんど議論の対象になっていないというような状況でございますので、この先、副総裁がおっしゃるように金利が上げられるような状態になって、その際にまた公定歩合というような話が出てくる状況にはしばらくならないような意見を持っておるわけでございますが、そういう状況の中で公定歩合のあり方というのをもう一回見直していく必要があるのではないか、このように考え、このお尋ねをしたわけでございます。  それで、次の問題に移りたいわけでございますが、業務概況書についてお伺いをいたしたいと思います。  これは両方とも、二冊、大変分厚い資料をいただいて、私も読むのは大変な苦労をしたわけでありますが、大体読ませていただきました。この業務概況書の感想を申し上げますと、残念ながらちょっと要求水準まで至っていないのではないかなというように思っております。もうちょっといろいろ努力をしていただかなきゃいかぬのではないか。  いろいろ聞いておりますと、今回この報告にあわせて従来の報告の、従来の報告書がどういう形になっておったか私は余り見ておりませんが、努力をされたというようなことを聞いておりますが、やはりいろいろなところで非常にわかりにくいところがあるわけで、そのことを今からお伺いいたしたいというように思っております。  一つは、私は会計のところに非常に関心を持っておりますので、会計のことをお聞きいたしたいと思いますが、我々は企業会計を前提にして決算書類というか財務書類を見るわけで、日銀の場合は、中央銀行としての日銀法があって、もう一つ、企業会計の基準でございますが、一般に公正妥当と認められるような基準を尊重してというような書きぶりになっておって、この財務書類が出されておるわけでございます。  それで、ばっと見て私が一番初めに感じたのは、財産目録をつけていらっしゃるのですね。財産目録と貸借対照表では全く同じものをつけられておるわけでございます。どうしてこれをつけているのですかといいますと、財産目録の横に申しわけ程度にちょちょっと説明をするものがつけてございまして、このために財産目録をつけておるというような状況になっておるようでございますが、これは意味がないのじゃないか。貸借対照表と損益計算書があればいけるのじゃないか、この貸借対照表の項目の附属明細を後ほどにつけていただければ十分その目標が達せられるのじゃないか、このようにまず初めに感じたところでございます。  それと、損益計算書を私は拝見をいたしました。企業会計では余り日常見受けられないような引当金等々がございまして、それと一般的に税引き前利益というのがあるわけですが、税引き前利益に対してどのくらいの税金を払うのだという、法人税、住民税または事業税等の税金の記載になっておるわけでございます。  この対象年度のところを見ますと、税引き前利益に対して〇・三%ぐらいの税金しか入っていない。これはどういうことなんだとお聞きしましたら、税金が取り除かれた残額については全部国庫納付するんだ、国庫納付するから国庫納付の分については損金処理できるんだ、こういうようなお話でございまして、それならここにやはり書くべきですよ。一般の状況とはそのあたりは違うわけだから、そのあたりをよくよくわかるように書かないと、税引き前利益とそれに対する税金との間の対応関係が全くわからないですよ。  ちなみに、平成九年度を見ますと、ほぼ合うような形になっておるわけでございます。これはむしろ昨年が異常であったというようなことのようでございまして、かなり多額の有税の貸倒引当金を積んだ、この分の状況があってかなり税金がふえたんだというようなお話でございました。  このあたりはやはり、日銀の独立性ということで今回の新日銀法ができたわけでありますから、独立性というのは、一方では透明性またはアカウンタビリティーが問われるわけでございますから、そのあたりもきめ細かくわかるようにしていただきたいというように感じた次第でございます。  それと、先ほど申し上げましたように、日銀独特の引当金、準備金がございまして、債券取引損失引当金であるとか外国為替等取引損失引当金、法定準備金等の計上基準というのが書いてありまして、これを見ますと、私はびっくりしたのですが、各事業年度の自己資本比率が一〇%程度になることを目途として、おおむね上下二%程度の範囲になるようにするというような引き当て基準になっているのですね。  要するに、企業会計を若干かじられた方はおわかりだと思いますが、利益というのは幾らでも変わるのですね。利益というのは絶対的な真実性のもとにあるわけではありません。これは、例えば償却の方法を変えただけで利益が変わるわけでございますから、そこに相対的真実性というのか、こういうことをサポートするためには一たん選択したものを継続的に運用する、適用するというようなことでないと、これは利益の調整弁になりかねないわけでございます。  だから、利益というのは一体何なのか。こういう観点で見たときに、私が申し上げたように、自己資本比率が一割程度になるようにおおむね二%前後を引当金として繰り入れるというのは、これはまさに利益の調整弁ではないか。引当金の意味合い、例えば私がここの監査、日銀の監査をしますと、これはちょっと問題だなというように言わざるを得ないわけでございまして、まずそのことについてお伺いいたしたいというように思います。
  88. 引馬滋

    ○引馬参考人 お答えいたします。  会計の関係等々についていろいろ御質問を賜ったわけでございますが、一つは、私ども課税法人の関係で税金の還付が生じているということにつきましてまず御説明させていただきたいと思います。  御承知のとおり、新しい日本銀行法になりまして、年度決算に移行いたしました。日本銀行は課税法人でございますので、上期の仮決算の段階で税金を中間納付いたしたわけでございますが、最終的に課税所得が確定して、この結果として税金の還付が生じたということでございます。この背景としては、下期に入りまして各種引当金の取り崩しということが起こりまして課税所得が減少したということでございまして、私どもとしては税法の体系等々にのっとり整々と処理をした結果、そういうことになったということでございます。  それからもう一つ、谷口先生から、私どもの債券取引損失引当金あるいは外為関係の引当金につきまして、自己資本比率との関係でこの処理は一体どうなっておるんだという御指摘を賜ったわけでございます。  債券関係並びに外国為替関係の引当金のそもそもの趣旨という点でございますけれども、これは一言で言いますと、中央銀行が信用力を万全なものとする、通貨の信認を確保するという意味で自己資本を確保する必要があります。その場合に、中央銀行のバランスシートはどういうリスクにさらされているのだろうかということになりますと、各種の債券を保有しておりますし、外国為替を保有していて、そういう各種債券が価格変動リスクにさらされている、そのために保有をしましょうということでございます。  問題は、自己資本をどの程度持てばよいかということでございますけれども、ここは先生の御指摘にも出てまいりましたが、私どもでは、会計規程、これは政策委員会決定を経て定めたものでございますけれども、銀行券に対して一〇%のものを持てば、私どものバランスシート、最大のリスクが生じたとしてもそのリスクに対応して十分な備えを持つことができるだろう、こういう判断に基づいて行っているということでございます。  そこで、現実に、債券の引当金あるいは外為の繰り入れ、取り崩しというものについてどうして行うのかということでございますが、これは、当該の資産の売買損益あるいは評価損益等々、実効税率が大体五割というぐあいにいたしますと、その残りの五割というものを基準にして積み立てていく、取り崩していくということであれば、最終的には納付金に対してはニュートラルというかそういう形で処理をすることができる、こういう考え方に基づきまして積み立て、取り崩しのルールを定めている、こういう考え方でございます。
  89. 谷口隆義

    ○谷口委員 実態的に債券をどれほど持つかということと引当金を幾ら計上するかということはまた別問題でございまして、これは、私は拝見させていただいたところによりますと、引当金の計上基準とすると、私が申し上げましたように、こういうような設定の仕方ではなくて、毎期継続してある程度の計上額が引き当てられるというような計上の方法でないと、まさにそういう引き当てが自己資本比率の一割というような形に持ってくるということ自体が私は理解できないし、このやり方については問題があるのだろうというように思うわけでございます。  その他いろいろ見ていきますと、全般的な感想を申し上げますと、専門家の方にも来ていただいていろいろお話をされたというようなことでございますが、十分国民の要求水準に、国民へのアカウンタビリティーというか、そういうところにたえられるように、わかりにくいところは説明をし、不必要なところは省き、一般の企業会計に準ずるような、まさに、一般に公正妥当と考えられる会計原則を尊重してというようなことを書いていらっしゃるわけでございますので、そのあたりをぜひお願いいたしたい。  これはまたいろいろ言いかけますと細かいところもございまして、また後ほど、この審議の場ではなくてお話をさせていただきたいというように思っております。  その次に、余り時間がないものですから、もう一つお伺いいたしたいわけでございますが、考査でございます。先ほどから考査の問題も出ておりました。先ほどの同僚議員の質問の中にも出ておりましたが。  日本長期信用銀行が今経営破綻をして、よくよく分析しますと飛ばしがあった。この飛ばしの状況を聞いておりますと、商法監査にひっかからないように、負債が二百億以上にならないように、また資本金が商法監査にひっかからないようにというような形でたくさんの関連会社をつくっていった。その結果、どんどん広がっていって、状況が把握できないというような状況になったようでございます。  そういう観点で、この日銀報告書にも書いてございます、持ち株会社制度の導入や連結決算の原則化を受け、親会社等の調査のあり方を検討を進めるというように。このグループ化というか、連結決算を前提に考査をやらないと、単独の、個別の金融機関の貸出金のチェックであるとかまた資産の状況のチェックであるとかいうことでは、まさに今回のこの長銀の報告の状況を聞いておりますと、そこではないんだ。外に飛ばしているわけでございますから。これはもう既に行われておるというわけじゃなくて、今後、日銀の方で考査をやる場合、こういうようなこともポイントとして入れていかなければいかぬというように日銀が考えていらっしゃるようでございますが、しかし、今まではそういう意味ではやってなかったわけでございます。  そういう意味において、考査そのものの実効性と申しますか効果が、今振り返って考えてみますと、大変問題があったのじゃないかというように考えるわけでございますが、これについて御答弁をお願い申し上げたいと思います。
  90. 小畑義治

    小畑参考人 お答え申し上げます。  先生御指摘のとおり、長銀とか日債銀の不良債権飛ばしの問題というのもあるわけでございますが、私ども、長銀、日債銀につきましては、関連ノンバンク、受け皿会社への不良債権の移管という点も踏まえまして厳正に考査したつもりでございます。  ただ、先生御指摘のとおり、今後、持ち株会社や連結子会社に対する調査というのは当然必要になってくるわけでございまして、私どもも今鋭意勉強し、研究もしているところでございます。  やや敷衍して申し上げますと、持ち株会社制度の導入あるいは連結決算の原則化ということを受けまして、金融機関の経営形態あるいはリスクの内容、規模が大きく変化していくことが当然予想されるわけでございまして、こういうような金融機関の経営の変化を踏まえますと、日本銀行といたしましても、信用秩序の維持という使命を適切に果たしていく観点からは、要するに、持ち株会社や連結子会社などの経営状況調査の対象とすることも必要になろうかというふうに考えております。  その具体的な調査方法につきましては、今後、連結決算の実態とかあるいは持ち株会社に付与されます機能なども踏まえながら勉強、検討を進めてまいりたいと思っておりまして、必要に応じまして取引先金融機関とも協議しながら結論を取りまとめてまいりたいと思っております。
  91. 谷口隆義

    ○谷口委員 私、今申し上げたのは、これからの問題ではなくて、今までやっておられた考査のやり方がそのあたりまで至ってなかったわけだから、それについての総括はどのようにお考えですか、このようにお聞きしておるわけでございますが、それについてどうでしょうか。
  92. 小畑義治

    小畑参考人 お答え申し上げます。不十分で申しわけございません。  繰り返しになりますが、例えば長銀や日債銀の不良債権の飛ばしということにつきまして、飛ばしというのをどう定義するかということでもございますが、関連ノンバンクとかいわゆる受け皿会社に不良債権の移管を図ったというようなことを前提といたしますと、長銀や日債銀の不良債権飛ばしというのが今議論されておるところでもございますけれども、私どもとしては、今までにおきましても、資産査定の一環といたしましては、そういう関連ノンバンクとか受け皿金融機関会社の財務状況あるいは将来の業績見通しあるいは健全化計画の合理性あるいは金融機関支援状況、そういう点を個別企業ごとに詳細に調査し、可能な限り実態把握に努めてきたと言えるというふうに思っておりますが、今後、連結決算あるいは持ち株会社等の導入によって金融関係の変化もございますので、考査の運営の反省すべき点あるいは改善すべき点があれば、さらに研究を重ね、努力してまいりたいと思っております。
  93. 谷口隆義

    ○谷口委員 時間が参りましたが、私は、今回、銀行が連結決算に入るから連結をベースにする考査をするのではなくて、今までの考査の方法が、どのように言われても、やはりそこまで至っていなかったという現実があるわけでございますから、これは重く受けとめていただく必要があるというように申し上げたいと思いますし、今後も、今回連結ベースの決算が始まりますが、実質支配力基準からはじき出されておる業況の悪い銀行の関連会社もあるよということを申し上げて、実質的に、表面的に連結の範囲に含まれておるところだけではなくて、この周辺の状況も踏まえながらぜひ検査をやっていただきたい、考査をやっていただきたいということを申し上げまして、終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  94. 村井仁

    村井委員長 次に、佐々木憲昭君。
  95. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。  今回、いわゆる半期報告書国会提出とあわせまして、日銀法五十五条に基づく業務概況書が初めて公表されております。この業務概況書の中で、昨年度に実施した日銀考査について総括がなされております。そこで、まず日銀考査についてお伺いをしたいと思います。  概況書では、九八年度中に六十二行に考査を行ったことが書かれております。この六十二行の中には長銀に対する考査も当然含まれていると思うわけですが、その長銀への考査の開始日と終了日及び所見表明を提示した日をまず確認をしたいと思います。
  96. 小畑義治

    小畑参考人 お答え申し上げます。  昨年の長銀考査の開始日は五月十四日でございます。終了日は六月十二日でございまして、所見表明日は七月三日でございました。
  97. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 この六月四日、長銀は、旧経営陣が九八年三月期決算を粉飾し、有価証券報告書に虚偽の記載をし、違法配当を行ったとして、証券取引法違反と商法違反で東京地検と警察庁に告訴しております。  長銀は告訴の具体的内容を詳細に明らかにしておりませんが、報道等によりますと、長銀の旧経営陣は、大蔵省通達を逸脱した甘い自己査定基準を独自に作成していた。問題は、関連ノンバンクなど関連会社への焦げつき融資をどう分類するかであります。これは、大蔵省基準では本来、回収懸念債権や回収不能債権に分類しなければなりません。ところが、長銀は甘い自己査定基準を独自につくって回収可能債権に分類し、実態を隠ぺいしたということであります。  そこで問われますのは、昨年の日銀考査で、こういう長銀の不良債権隠しを把握していたのかどうかということであります。これは、考査の信頼性にかかわる重大な問題であります。  日銀が提出した業務概況書の百八十六ページ、ここには、九八年度の考査について、「早期是正措置に基づく自己査定が開始されたのを受け、自己査定やそれに基づく償却・引当が適切になされているかの検証に重点を置いた。」このように書かれております。  したがって、この長銀に対する考査では、九八年三月期の不良債権の自己査定を対象とし、長銀の不良債権の分類が適切であったかどうか当然チェックをされたと思いますけれども、その点を確認したいと思います。
  98. 小畑義治

    小畑参考人 お答え申し上げます。  私どもは、十年三月期の長銀の資産内容を基準といたしまして、私ども考査局で持っております資産査定の原則によりまして、具体的に申し上げれば、個別企業ごとに、財務状況とか、経営改善計画の合理性とか、業績見通しとか、あるいは金融機関支援姿勢など、長銀から詳細な資料の提供と説明を受けますとともに、可能な限り私どもとしては実態把握を行ったところでございまして、それに伴いまして厳正に債務者区分や査定金額を判断したというふうに思っております。  その当時の考査先の自己査定基準等、長銀自体の自己査定基準が、大蔵省通達とか全銀協通達とか公認会計士協会の実務指針などの基準に照らして問題ないかどうか、あわせてチェックしたところであります。
  99. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 問題は、長銀に対する考査では、不良債権の自己査定が適切かどうかを判断する基準であります。  日銀考査局は「リスク管理チェックリスト」、こういうものを作成されておりまして、これは、考査員が実地考査の際に活用する考査のチェック項目の一覧表でございます。昨年の六月十九日に改定され、公表されたこのリストによりますと、資産の自己査定と適正な償却、引き当ての算定の着眼点ということで、自己査定基準の内容は行政当局から示されている資産査定に関する考え方と整合的かどうか、こういう点を挙げております。  つまり、日銀の考査も金融監督庁の検査も資産査定については同じ基準で行っているということだと思いますけれども、そのとおりですね。     〔委員長退席、鴨下委員長代理着席〕
  100. 小畑義治

    小畑参考人 おっしゃるとおりでございまして、考査における私どもの資産査定の基準は、監督庁検査の基準と基本的に変わりがございません。
  101. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 大蔵省通達による自己査定基準というのは、ここにありますけれども、関連会社向けの不良債権をどう見るか、関連会社だからといって正常扱いしてはならない、実態に沿って、回収懸念または回収不能債権としてきちんと分類するように求めております。  長銀に対する考査でも、当然こういう観点から関連ノンバンクなど関連会社向けの不良債権をチェックしたはずだと思いますけれども、いかがですか。
  102. 小畑義治

    小畑参考人 お答え申し上げます。  おっしゃるとおりでございまして、長銀の関連ノンバンクに対します資産査定につきましては、先ほども申し上げまして繰り返しになりますけれども、私どもの資産査定の原則に基づきまして、個別企業ごとに、その企業の財務状況とか、先行きの業績見通しとか、経営改善計画があればその合理性とか、あるいは金融機関支援姿勢などにつきまして長銀から詳細な説明を受けまして、可能な限りの実態把握に努めた次第でございます。
  103. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 ところが、長銀は、不良債権を隠ぺいするために大蔵省通達を逸脱した独自の自己査定基準をつくっておりました。それは、関連ノンバンクや不良債権の受け皿会社を経営支援実績先だとか特定関連親密先、こういうふうに分類をしまして、非常に甘く、問題のないものだという形で査定をしていたものであります。  チェックリストの中のチェックポイントで何が書かれているかといいますと、自己査定基準は適正かという項目が挙がっていますね、日銀考査局が作成したこの中には。そこで伺いたいのですが、日銀の考査では、長銀が大蔵通達を逸脱した独自の自己査定基準をつくっていたことを把握していましたでしょうか。
  104. 小畑義治

    小畑参考人 考査の具体的内容に絡んでまいりますので、私ども、日銀法、あるいは考査約定先、この場合は長銀との守秘義務保持というのがございますので、その点については具体的にコメントするのは差し控えさせていただきたいと存じます。
  105. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 一般論として、その自己査定基準が大蔵通達を逸脱した独自の甘い基準がつくられていた場合は当然是正するという立場に立つと思うんですが、そういう立場には立たれますか。
  106. 小畑義治

    小畑参考人 お答え申し上げます。  仮定された質問でございますのでお答えするのはなかなか難しいわけでございますが、先生御指摘のとおり、一般論として申し上げれば、もし考査先が別の、要するに大蔵省の基準によっておらない自己査定基準を持っておるということであれば、私どもも、考査でそれを確認すれば当然それは指摘する、是正を求めるということになろうかと思います。
  107. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 日銀の武藤英二考査局長は、五月二十七日付の読売新聞で、この考査で「長銀が関連会社向け融資を、独自の扱いにしていたことは分かっていた」、このように述べたと報道されております。関連会社向け融資の扱いが独自のものになるということは、独自の基準があるからそうなるわけであります。  長銀が自己査定に使った基準が適切かどうかを当然つかんで、それを是正するというのがなければおかしいわけでありまして、長銀についてそういうことをやったのかどうか、もう一度お答えいただきたい。
  108. 小畑義治

    小畑参考人 お答え申し上げます。  先生御指摘の、私どもの武藤考査局長がどういうふうにどういう観点でそういうことを申し上げたか、私自体、申しわけございませんが、事実を承知いたしておりませんのでコメントすることは差し控えさせていただきたいと思いますが、繰り返しになりますけれども、仮に、考査先の銀行自体が査定基準を大蔵省あるいは監督庁の基準と大きく違えておるという場合が発見されれば、当然、私どもとしてもそれを厳しく是正を求めるということだということでございます。
  109. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 長銀の自己査定は、一部に不適切なものがあったというものではなくて、結果的にいいますと、大変重大な、甘い基準をつくって不良債権を隠ぺいしていたということは既にもう事実であります。日銀が考査できちんと把握して指摘していたということであれば、九八年三月期の自己査定の結果と日銀考査の結果、これは大きく違ってくるというのは当然のことだと思うんですけれども、自己査定と考査の結果がそれほど違わないということになりますと、こういうずさんな自己査定をうのみにしたということになるわけです。ですから、実際には自己査定の内容と日銀考査の考査結果というのは違ってこなければならない。それは違うというふうにはっきり言えますか。どちらですか。
  110. 小畑義治

    小畑参考人 お答え申し上げます。  繰り返しになりますが、個別銀行、この場合は長銀の私どもの考査内容に具体的に触れますことは私どもの守秘義務とも絡みますので具体的コメントは控えたい、こう思っておりますけれども、当然、一般論を申し上げれば、考査先の自己査定が、もし自己査定基準が変えられて、私どもがその自己査定の基準がおかしいということになれば、私どもの考査結果と先方の、考査先の自己査定は大きく乖離してくるということになる、こう御理解いただきたいと思っております。
  111. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 金融監督庁は、日銀の考査の直後に、七月から九月まで長銀への検査を行っております。日銀考査の翌月から行われているわけです。しかも基準日は同じですね、去年の三月三十一日。そこでは、関連会社向け債権の自己査定を大幅に金融監督庁は是正させております。昨年の三月については、第一分類が一兆四千六百十二億円も減額となっております。第三分類、第四分類の合計は、自己査定は四千四百四十五億円だったのが、当局査定では一兆二千六百二十七億円と大きく拡大している。二・八倍に拡大しております。  先ほど、日銀の考査の基準と監督庁の基準は同じだ、こうおっしゃいましたね。基準が同じなんですから、日銀の考査が仮に厳正に行われていたならば、その結果は金融監督庁の検査結果とほぼ同じ結果が出たはずであります。長銀の自己査定があって、一方で金融監督庁の検査結果があって、それが大きくかけ離れていた、それで是正をさせたということでありますから、日銀考査の結果は当然この金融監督庁の結果と同じにならないとおかしいわけです。あるいはほとんど近いものにならなければならないはずです。その点はいかがだったでしょうか。     〔鴨下委員長代理退席、委員長着席〕
  112. 小畑義治

    小畑参考人 お答え申し上げます。  私ども、長銀には昨年五月から六月、考査に入りました。一方、金融監督庁におかれましては、その後、七月から十月にかけて検査を実施されました。先生御指摘のとおり、私どもの考査結果と監督庁の検査結果というのは、正直申し上げまして乖離があったというのは事実でございますけれども、繰り返しになりますが、私どもの考査の資産査定の基準と大蔵省検査や監督庁の基準とは基本的に変わりはないわけでございますから、では、そこにどういう原因があったかということでございます。  これにつきましては、先生御案内のとおり、日本リース、日本ランディックあるいはエヌイーディーというような三社につきましては、八月下旬に長銀が債権放棄をいたしまして経営支援策を発表する、そして九月下旬に至りましては日本リースが会社更生手続を開始いたしました。  そういうふうに、私どもの考査は六月で終わっておりますけれども、一番の違いは、今申し上げました関連会社につきまして法的整理等の意向がございましたので、後発事象と申しますか、考査実施以降における事態の大きな変化があった、そのことが私どもの考査結果と監督庁の検査結果の乖離、査定区分の変更ということで、それが大きな影響を与えたというふうに御理解いただいたらというふうに思っております。
  113. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 六月以降の後発事象の説明がありました。しかし、この後発事象を加味した検査結果は、九月末の見込み値として監督庁が出しております。ですから、多少の日本リースやエヌイーディーや日本ランディックの債権放棄があったとしても、基準日の昨年の三月三十一日の時点でどうだったか。もちろん、その後の影響は若干あるかもしれない。しかし、検査と考査の基準が同じわけですから、後発事象による多少の影響があっても、監督庁の検査と日銀考査がこんなに大きく離れるはずがないわけです。もし、大きく離れていて、自己査定結果とあなた方の考査が似たものであった、こういうことであるならば、日銀の考査は一体何をやっていたんだ、まともなチェックをやっていないじゃないかということになるわけですね。  ですから、あなた方の結果は、自己査定結果と監督庁検査結果、この間のどちらに近いんですか。自己査定に近いんですか、それとも監督庁の検査結果に近いんですか。どちらですか。
  114. 小畑義治

    小畑参考人 お答え申し上げます。  どちらに近いか、それにお答えすること自体が私どもの長銀に対する考査内容に具体的に触れますので、それはコメントを差し控えさせていただきたいと思いますが、ただ、一つ先生に申し上げなきゃならないことは、実は長銀から、先般、私どもの考査の対策といたしまして、一部私どもの考査に提出いたしました資料等について修正を行った事実があったという報告を受けておるところでございます。私どもといたしましては、長銀に対しまして引き続き鋭意調査を進め、私どもの考査を受検したときにその提出資料等において一体どういう修正を行ったのか、追加報告を今求めておるところでございます。  御案内のとおり、私ども日本銀行の考査と申しますのは、要するに契約に基づきまして、取引先金融機関との信頼関係のもとに、そしてその協力のもとに考査を実施いたしておるわけでございますが、考査に当たりまして長銀自体が私どもへ提出いたしましたそういう必要資料等に修正があったとすれば、私どもの考査対策として、営業実態を日本銀行が把握するのをある意味では妨害するということで、もしそういうことが仮になされれば私どもの考査の資産査定も大きな影響を受けざるを得ない、そして的確な考査にも限界が及ぶということもあるわけでございまして、この点につきましては、長銀からどういう修正内容があったかというのを報告を求めながら、その事実が明らかになった時点においては、私どもも、考査契約等に基づきましてしかるべく対応を考えていきたいというふうに思っておるところは事実でございます。  先生の最初の質問に戻らせていただければ、一体、自己査定に近かったのか、あるいは監督庁検査に近かったのかという点についても、この時点では答弁を控えさせていただきたいというふうに思っております。
  115. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 長銀の修正内容のお話がありましたが、それは最近の話でしょう。昨年の金融監督庁の検査と日銀の考査、これは同じ基準でやったわけです。資産査定については同じ基準で、大蔵省の基準でやったわけですね。ですから、当時の、それほど大きな期間の開きがないそういう時期の話ですから、これにまともに答えないようでは日銀考査というのは一体厳正なことをやっていたのかどうかさえわからない。長銀は、不良債権の隠ぺい工作をしたあげく破綻をして、今や公的管理に置かれている。その銀行に対する日銀の考査がきちんと行われていたのかどうか、日銀はそのことを明らかにする責任があると思います。同じ基準でやっていたんだから、ほとんど同じ結果が出るというのは当たり前じゃないですか。それが言えないということは、まともな検査をやっていないということを自分で主張しているようなものです。どうなんですか。
  116. 小畑義治

    小畑参考人 お答え申し上げます。  繰り返しになる点がございましたらお許しいただきたいと思いますが、基準はおっしゃるとおり去年、十年三月期でございまして、私どもの考査結果も監督庁の検査結果も、債務超過という判断では一致しておるということは申し上げられるかという気がいたします。十年三月期決算基準時点で、査定が同じ基準時点だ、査定基準も同じであればなぜ違うのかというのは、先ほど申し上げました、やはり私どもの考査以降に生じました後発事象、その差が大きな差であるというふうに私どもは認識いたしておるところでございます。  私どもの考査結果が的確であったかどうかは、先ほど申し上げましたように、去年の五月から六月にかけての考査時点におきまして長銀で考査時に提出した資料に一部修正があったという報告を受けておりますので、それを踏まえて、また、私どもは、考査がもし影響を受けたといたしますと、その資産内容がどの程度影響を受けたかについては報告を求めた後検討してみたいというふうに現時点では思っておるというところでございます。
  117. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 速水総裁にお伺いをいたします。  総裁は、昨年九月四日の衆議院金融安定化特別委員会で、上田清司議員に「日銀考査と三月の長銀が出した自己査定というのは大体、おおむねで結構でございますが、イコールなものなんでしょうか。それとも、相当異なるものがあるのでしょうか。」と聞かれまして、こう答えています。「第二分類、第三分類、第四分類、自己査定の数字をお聞きいたしました。これは、私どもの考査、三月末現在でやりました考査の結果と比べましてそれほど大きく違っているものではないというふうに理解しております」、こう答弁をされております。つまり、日銀考査の結果と長銀の自己査定というのは余り大きく違わない、こういうふうに答弁されました。  総裁の答弁が正しいとすれば、考査は極めて自己査定に近いものであった、甘いものであったということになるわけですが、実態としてその点をどう把握して答弁をされたのか、お聞きをしたい。
  118. 速水優

    速水参考人 あの時点では私どもの考査の結果まだ資産超過であるということを判断ができましたので、あのような答え方をしたのではなかったかと記憶しております。
  119. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 総裁の答弁は、事実を、考査の結果を聞かれて答弁をされたんですか、それとも聞かないで答弁をされたんですか。
  120. 速水優

    速水参考人 考査の経過を聞いてからでございます。
  121. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 そうしますと、考査の結果というのが長銀の非常にずさんな自己査定と極めて近かった、こういうことを答弁されたわけであります。これは、私は余りにも無責任だと思うのです。考査の内容が根本的に問われる答弁だ。  長銀に公的資金の投入の是非が問われていた時期であります。国会で長銀の資産内容が激しく議論されていた、まさにそのときにあのような答弁をされたわけです。当時は、金融監督庁は検査の最中であり、六月まで考査に入っていた日銀が最も正確に長銀の財務内容を知っておりました。その日銀総裁が、日銀考査の結果と長銀の自己査定は大きく違っているものではないと答弁をされた。  日銀総裁は、八月二十一日の談話で、長銀と住信の合併構想を評価して支援を表明しておりました。昨年九月の総裁の答弁は、長銀救済のために何としても公的資金を使って住友信託銀行と合併させようとして、その思惑から出たものではないか。あるいは、その前提として、日銀考査の結果が長銀の自己査定と非常に接近していた、つまり、長銀の独自の基準に基づくずさんな査定をほぼ容認して、それに基づく結果をもとに国会であのような答弁をされた、そう理解する以外にないわけですけれども、いかがですか。
  122. 小畑義治

    小畑参考人 お答え申し上げます。  私どもは、繰り返しになりますけれども、去年の五、六月にかけまして、長銀から提出されました資料、あるいはヒアリングを詳細に行いまして、その時点で資産査定に最善を尽くしたわけでございまして、先生のおっしゃるお言葉をおかりすれば、私どもは、長銀の言うのをうのみにしたり甘い考査を行ったということではないということをぜひ御理解いただきたいと思いますし、現在調査中でございますが、去年の五、六月時に提出された長銀からの考査に必要な資料等に、もし、考査として実態を把握するために不都合な、要するに修正が行われていたとすれば、査定が影響を受ける場合もございますので、それはそれとして今後検討したいということでございます。  それから、先ほど、大変失礼申し上げましたけれども、長銀の昨年、十年三月期の資産状態は債務超過というようなことを申し上げたかと思いますが、資産超過の誤りでございましたので、訂正させていただきたいと思います。
  123. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 最善を尽くしたと言われましたが、しかし、私が今るる指摘をしてきたような経過に照らして、事実の関係からいってこれは信用できない。したがって、日銀考査の結果について当委員会に資料の提出を求めたいと思います。委員長理事会で検討していただきたい。
  124. 村井仁

    村井委員長 御要望でございますので、理事会でまた御相談をさせていただきます。
  125. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 終わります。ありがとうございました。
  126. 村井仁

    村井委員長 次回は、来る七月六日火曜日午前九時三十分理事会、午前九時四十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後二時五十二分散会