○柳沢
国務大臣 冒頭の御質問のときにもお答えいたしましたように、今回の資本注入の大きな
目的に信用供与の円滑化、これは全く難しい言葉でございますけれ
ども、貸し渋りというか、
金融機関が、本来、お金を
企業に向かって貸すということが仕事であるべきであるにかかわらず貸さないというようなこと、あるいは貸さないのみならず、前に貸したお金を取り返すというようなことが行われたという事態が起こったわけでございます。
信用収縮とも申したわけでございますが、これらの現象が何で起こったのかといいますと、昨今、
金融につきまして、あるいは
金融機関の健全性というものが非常にやかましく言われるようになりました。これは、そこここに
金融機関の破綻が起こる、
金融機関が成り立ち得なくなってつぶれるというようなことが起こりまして、そこから、どうしたら
金融機関がつぶれない、あるいはつぶれても、みんなに、国民に負担をかけないようにするにはどうしたらいいかというようなことが各国の
金融当局でいろいろ研究をされたようです。
結論的に言いますと、最終的には、
貸し付け等のリスクを持つ資産に対して
一定の割合で自己資本というものをちゃんと備えておく、それで、もしこの資産の側でいろいろ事故が起こった、あるいは貸し倒れが起こったというようなときにも、ある
意味で自己資本でもって負担をすれば、それ以上、預金者であるとかあるいはその他からの借入金だとかというような先に迷惑をかけずに済む、こういうようなことから、自己資本比率を
一定のレベルで持つということがいい方式ではないかというようなことになったようでございます。
それがひいては、一九八九年でございますか、BIS、国際決済
銀行というところで、国際的にも、この自己資本比率による
金融機関の健全性の保持ということを一つの共通のルールにしようというようなことになりまして、有名な八%ルールが決まったというようなことでございます。我が国の
金融機関も、特に国際的な仕事をしている
金融機関はこのルールのもとに置かれた。それからまた、これは大蔵省
銀行局の指導でありますけれ
ども、国際的な活動をしていない、国内だけの仕事をしているところは、その半分の四%の自己資本をリスク債権に対して持つ、こういうことがルールとして決められました。
そこで、いろいろ
不良債権が起こり、そういう中で業務純益というものをもってできるだけ早くにそういう
不良債権の手当てをしていくというようなことが起こりまして、また場合によっては、特に資本準備金なんかですらある
程度不良債権の処理に充てなければならぬというようなことになりまして、
日本の
金融機関というのは資本の充実の
程度というものが非常に心細い
状況になってきた。今までだったらどんどんある
程度ふえていくというような
状況にあったものがもうふえなくなった、あるいはさらに収縮するようなことになってきた。
そういうようなことで、では、この自己資本比率のルールを守るためにはどうしたらいいかというと、自己資本をふやすということは、
資本金を今募集しても、株も安いというようなことでなかなか応募してくれる人もないというようなことになりまして、結局、資産の方を収縮させなければいけない。リスク資産を収縮させる、縮減していくということは、結局、お金を貸さなくすることがはっきり言って一番手っ取り早い
方法だということになりまして、
貸し出しに対して極度に慎重になっていった、こういうことでございます。したがって、逆に言いますと、今度、資本注入をして自己資本比率を引き上げるということは、それだけ
貸し出しの力がつくということでございます。
したがいまして、今回の自己資本の充実を目指したところの資本注入というのは、信用供与の円滑化といいますか、
貸し出しの増加につながるということにほっておいてもなるわけでございます。ほっておいてもなるわけですが、私
どもは今回、資本注入に当たって、各行に求めまして経営健全化計画というものを策定していただきました。これはそのまま公表されております。国民の監視のもとに置かれたということでございますが、その経営健全化計画の中身として、
貸し出しを増加するということにつきましても、各行それぞれでございますけれ
ども、その計画を明らかにさせていただいておる次第です。
そういうことで、
貸し出しの増加ということについても期待できる、そういう枠組みのもとで資本注入が行われたということを御理解賜りたいと思います。