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1999-02-09 第145回国会 衆議院 大蔵委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年二月九日(火曜日)     午前九時三十一分開議   出席委員    委員長 村井  仁君    理事 井奥 貞雄君 理事 衛藤征士郎君    理事 鴨下 一郎君 理事 柳本 卓治君    理事 上田 清司君 理事 日野 市朗君    理事 石井 啓一君 理事 小池百合子君       大石 秀政君    大野 松茂君       河井 克行君    栗本慎一郎君       小坂 憲次君    河野 太郎君       佐田玄一郎君    桜田 義孝君       下村 博文君    新藤 義孝君       戸井田 徹君    中野 正志君       村上誠一郎君    渡辺 具能君       渡辺 博道君    渡辺 喜美君       綿貫 民輔君    海江田万里君       末松 義規君    仙谷 由人君       玉置 一弥君    中川 正春君       山本 孝史君    大口 善徳君       谷口 隆義君    並木 正芳君       若松 謙維君    鈴木 淑夫君       西田  猛君    佐々木憲昭君       矢島 恒夫君    横光 克彦君  出席国務大臣         大蔵大臣    宮澤 喜一君  出席政府委員         金融再生委員会         事務局長    森  昭治君         金融監督庁長官 日野 正晴君         金融監督庁監督         部長      乾  文男君         経済企画庁調整         局長      河出 英治君         経済企画庁調査         局長      新保 生二君         大蔵大臣官房総         務審議官    武藤 敏郎君         大蔵省主計局次         長       藤井 秀人君         大蔵省主税局長 尾原 榮夫君         大蔵省理財局長 中川 雅治君         大蔵省国際局長 黒田 東彦君         国税庁次長   大武健一郎君         郵政省貯金局長 松井  浩君         建設省住宅局長 那珂  正君  委員外出席者         参考人         (日本銀行理事         )       黒田  巖君         参考人         (日本銀行総裁         )       速水  優君         大蔵委員会専門         員       藤井 保憲君 委員の異動 二月九日  辞任         補欠選任   大島 理森君     小坂 憲次君   砂田 圭佑君     戸井田 徹君   渡辺 喜美君     新藤 義孝君   綿貫 民輔君     佐田玄一郎君 同日  辞任         補欠選任   小坂 憲次君     大島 理森君   佐田玄一郎君     綿貫 民輔君   新藤 義孝君     渡辺 喜美君   戸井田 徹君     大野 松茂君 同日  辞任         補欠選任   大野 松茂君     砂田 圭佑君 二月八日  消費税率を三%に戻すことに関する請願木島日出夫紹介)(第四八四号)  同(児玉健次紹介)(第四八五号)  同(穀田恵二紹介)(第四八六号)  同(佐々木憲昭紹介)(第四八七号)  同(志位和夫紹介)(第四八八号)  同(中林よし子紹介)(第四八九号)  同(不破哲三紹介)(第四九〇号)  同(古堅実吉紹介)(第四九一号)  同(松本善明紹介)(第四九二号)  同(矢島恒夫紹介)(第四九三号)  同(山原健二郎紹介)(第四九四号)  同(金子満広紹介)(第五四〇号)  同(中林よし子紹介)(第五四一号)  同(矢島恒夫紹介)(第五四二号)  大型所得減税消費税減税に関する請願井上一成紹介)(第五七九号) は本委員会に付託された。 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  平成十一年度における公債発行特例に関する法律案内閣提出第一号)  経済社会変化等対応して早急に講ずべき所得税及び法人税負担軽減措置に関する法律案内閣提出第四号)  租税特別措置法及び阪神・淡路大震災被災者等に係る国税関係法律臨時特例に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第五号)     午前九時三十一分開議      ————◇—————
  2. 村井仁

    村井委員長 これより会議を開きます。  内閣提出平成十一年度における公債発行特例に関する法律案を議題といたします。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本案審査のため、本日、参考人として日本銀行総裁速水優君及び日本銀行理事黒田巖君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 村井仁

    村井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  4. 村井仁

    村井委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小池百合子君。
  5. 小池百合子

    小池委員 おはようございます。自由党を代表いたしまして、平成十一年度特例公債について、早期の成立を目指すとともに、何点か御質問をさせていただきます。  さて、今回のこの特例公債発行額というのは、まさに歴史に残る額でございます。二十一兆七千百億円、十年度の十六兆九千五百億円をはるかに超えまして、過去最大でございます。バブル崩壊、その後の景気の悪化と申しますか、底ばい状態が続いている中で、思い切った特例公債発行せなければならないという現下の状況でございますが、もちろん、当然のことながら、これは異常な事態であるということを言わざるを得ません。  そもそも特例公債の位置づけというものも、本来ならば国債に頼るということはやはり健全な姿ではないと思うわけではございますが、しかしながら、現状日本経済が抱えているさまざまな問題、そして閉塞感、さらには今後のさらなる構造改革を進める上でまずバケツの底をふさいでおく、これ以上割ることはできない、そしてこの際、いずれにしても二十一世紀に必要なさまざまなインフラを整えておく、むしろこの際であるからこそ思い切ってやっていくということを数字であらわしたのが今回のこの特例公債、今審議しているこの数字であろうというふうに思っております。  しかしながら、これをいつも続けているわけにはいかない。そして、今回のこの数字と申しますのは極めて異常な事態である。しかしながらというような考え方が基本的になければ、ずるずるとこれ以上の赤字を積み立てていく、積み重ねていくということはできないわけでございます。  その意味で、宮澤大蔵大臣に伺っていきたいと思います。この特例公債の総額の意味するものは一体何なのか、そしてこれは異常事態であるという認識がどれぐらいおありであるのか、それについてまず伺わせていただきたいと思います。
  6. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 大量の国債発行せざるを得なくなりましたことの背景は、小池委員が先ほどお話しいただいたようなことでございますけれども税収自身、この平成十一年度に計上いたしました税収は、実は昭和六十二年度の税収とほぼ同じ水準でございますから、十何年押し戻された感じでございます。もとより減税があってのことではございますけれども、それを引きましても税収のレベルがそれだけ落ちている。  それは、ここ何年か、毎年歳入欠陥を出しまして補正をいたしておりますことは御存じのとおりでございますが、そういう状況の中で経済成長率マイナスになりますと、当然税収名目値をとりましてもマイナスになる。当然のことでございますが、そういうことを続けていきますと、税収そのものの確保ができない我が国経済運営になっておるということは明らかでございますので、そういう意味におきましても、つまり財政プロパー立場からいたしましても、税収が確保できないような経済運営というものはやはりどうしても改めなければならない。  改めるために大きな国債発行するということはかなりの危険なことでございます。正直を申して、大蔵大臣として大いに気が進んでやるという種類のことではございませんけれども、そのような日本経済運営全体をどうしても改めるしかない現状において、この際思い切って国債発行してこの不況からの脱出を図りたい。いずれの日にかこのような財政状況は改めなければならないことは明らかでございますが、今そのことを考えますと、いわば二兎を追って一兎を得ずということになりかねないと判断をいたしまして、御審議をお願いしているわけでございます。
  7. 小池百合子

    小池委員 まさにこの財政、そして景気のかじ取りというのは、世界が注目する中で絶対に誤ってはいけない、まさに世界注視の中での今回の我が国予算案であろうというふうに思っております。  私ども自由党は、これまで野党として何度か経済政策のミスを追及してまいりました。ここであえて言わせていただくならば、ちょうど昨年の今ごろでございましたでしょうか、財政構造改革法というのができまして、それによって手足を縛られてしまった。政策的には極めて正しい、正論でございます。だれも赤字国債を垂れ流していいなどということを思っている国会議員というのはいないと思います。そして、国家財政のことを考えていない議員もおりません。そういう中で、まことに正論でありながら、しかしながらタイミングが違ったということ、この優先権をどこをとるかというのは極めて重要な決断でございます。  その中で、財構法に加えてデフレ予算ということでございましたので、結果として、二兎を追う者一兎を得ずといいますけれども、その一兎もさえ、実は違うウサギを追いかけてきたんじゃないかというふうに思っております。そのウサギの追いかけ方を、最初のAのウサギを本来追いかけなければならないのにBの方に行ってしまったがために、AもBも、そしてCもおかしくなるというようなのが、このところの日本流れだったのではないかというように思うわけでございます。  去年ですけれどもアメリカのある経済会議出席をいたしました。双子の赤字を抱えていたアメリカが、御承知のように、今財政黒字でございます。そして、ニューヨークなどは、これまで犯罪都市と言われていたのが、むしろ最大観光都市として、またそれで観光収入をふやすというようなことで、一都市も、そして国家としても、今財政黒字を享受しているというような状況でございます。  その中でのセミナーで、財政黒字をどうするかというような、日本から考えればまことにうらやましい議論、別世界議論のようでございましたが、ある学者は、財政黒字ということは税金を取り過ぎているんだから、それは納税者に返すべきであるという議論、それからもう一方の議論の焦点は、いやそうじゃない、これからアメリカも次に備えての、つまり高齢化であるとかそういった将来の問題に備えて今税金を返すべきではない、つまり減税はすべきでないというような議論がございまして、まるで違う世界の、違う宇宙の話を聞いているような感じがいたしました。  いずれにいたしましても、アメリカの場合は、思い切った政策を強い意思を持って断固としてやって、そしてそれを貫いた。これまでも、先ほど大蔵大臣おっしゃいましたように、何度か補正を出して、そして何だかんだ言いながら、財源はどうするのだと言いながら、結局国債を出して、そして公共事業として約六十兆、七十兆近いお金をこれまでも出してきたわけでございます。それも、出してはやめ、出してはやめということで、ツーリトル・ツーレートというふうに言われておりますが、これを重ねてきて、結局ツーマッチの赤字国債を抱える羽目になってしまった。私は、まさに優先権の取り間違え、それから全体の流れと、さらには経済という生き物の見方を誤ったのではないかというふうに思っております。  ここで反省を求めるところではございますけれども、こういったことを踏まえて、ではこれからどうするのかということを大蔵大臣に伺いたいと思います。今後の経済政策の方針そしてビジョンについて、お考えがあればお聞かせいただきたいと思います。
  8. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御指摘になりましたように、今のアメリカ経済について振り返ってみますと、一九八五年ごろから九〇年ぐらいの間に極めて厳しいリストラクチャリングをアメリカ経済全体がやっておった。そのことは、私どもは、何々銀行が本店を売るそうだとか、そういう形で知っておりましたようなものですが、やはり、今考えますと、我々が考えるよりはるかに厳しいリストラをやり抜いて今のところに到着したのだということが、おっしゃいますように実感できるわけでございます。  今度は我々が今そういう立場に置かれておって、おっしゃいますように、優先権というお言葉は多分プライオリティーというお言葉だと思うのですが、プライオリティーを間違えないようにしないといけない、財政再建の途中で大いにやろうとしたことは、意図は了とするけれども、これは実はやはりプライオリティーの間違いではないかというような意味のことをおっしゃっていらっしゃいまして、私もそうだと思います。ですから、今度は思い切ってそのプライオリティーを間違えないようにと思ってやっておるつもりでございます。しかし、それはそれなりに、かなり背水の陣をしいた建前でございますから、それなりに必死でもあるし、また危険も伴う。それもおっしゃるとおりだと思います。  私どもは、それで何を考えておるのかとおっしゃいますから、やはり経済をともかくプラス成長に戻さないと、財政のことは先ほど申し上げましたが、もはや雇用の問題にかなり深刻な状況が見え始めておりますので、そういうことも含めまして、とにかくここでプラス成長にたどり着きたい。一遍たどり着きましたならば、そこから急速によくなるというふうにはなかなか考えられませんけれども、しかし、少しプラスが出てまいりましたら、インベントリーにしても、まあ設備投資というのにはなかなかすぐにまいらない、しかし、インベントリーが減るところから、稼働率が上がるところから始めませんとそうなりませんので、そこで、そういう状況になっていけば循環的な経済成長というものにたどり着ける、そのオービットに、軌道に入れる、こう考えておるわけで、それで消費投資というところへ入っていければ、これはようやく正常経済運営になる。税収も恐らく、弾性値も多少上がったりしてふえていくであろう。  それが、しかも厄介なことは、二十一世紀ということに向かって、今までやっていたことはかなりのものはもう放てきをして新しい道を歩かなければならないという、ただ循環をもう一遍取り戻す、サイクルを取り戻すというだけではないものでございますから、それだけにこの仕事は難しいと思います。しかし、ただサイクルを取り戻すのでは、二十一世紀に向けて対応をするということに相なりませんので、いろいろなことはやりながら、しかし将来に向かって邪魔になるようなことはなるべく避けていかなければならないというもう一つの問題がございまして、そういう中で二十一世紀に必要な経済体制に入って、そしてそのころにはまた、御心配いただいております財政なりいろいろな問題、財政もそうですし、地方と中央関連もそうだと思いますし、税制もそうだと思いますが、ある程度落ちついた成長軌道に入りましたときに、できるだけ早くそれをやらなければならない、そういったような展望を持っております。
  9. 小池百合子

    小池委員 今、中長期的にビジョンそしてお考えについて伺ったわけでございますが、一方で、超短期の問題といたしまして今浮上しているのが、国債大量発行に伴いまして、一種のハレーションと申しますか、長期金利上昇がこのところ問題となっております。  きのうは急反落ということで、マーケットもいろいろな言葉のニュアンスをかぎ取っているわけでございますが、日銀の方からは、例の新発国債の買い上げということは、これは過去のトラウマもあり、やらないということで、やらない、やらない、やらないばかりが出て、そのやらないというメッセージがずっと続いております。  では、日銀として一体何をなさろうとしているのか、日銀としてどういう対策がとれるのか。ネガティブではなくてポジティブ、対応策について具体的に伺いたいと思います。よろしくお願いします。
  10. 黒田巖

    黒田参考人 お答えいたします。  国債の問題をめぐりまして、日銀が現在考えております考え方について申し上げたいと思います。  まず最初に申し上げたいことは、さまざまな御議論がある中ではございますが、私ども認識は、長期金利というものは基本的に景気物価先行きに対する市場見方というものを反映して決まってくるものだというふうに考えております。こういうことであるといたしますと、言いかえますれば、私ども中央銀行の力でその時々の長期金利を自由に上げ下げするというようなことはできないというふうに考えているわけでございます。  この点は、短期金利でありますと、一番極端なケースオーバーナイト金利でございますが、これを初めとする短期金利であれば中央銀行が相応にコントロールできるという状況とは大きく相違しているというふうに認識いたしております。  他の国の中央銀行におきましても、基本的に金融調節の中心的な手段は短期金融資産でございまして、金利コントロールの直接的な対象はあくまでも短期金利でございます。長期金利を直接にコントロールしようとしてはいないというふうに理解いたしております。長期国債金融調節の必要から市場で買い入れる場合ということが諸外国においても行われてはおりますが、その場合には、さまざまな誤解を招かないように、日銀の場合と同様慎重な対応を、買い方をしているというのが実情だと理解いたしております。  オペレーションツイストということも最近よく言われているように思いますが、これは、典型的な例としては、アメリカが一九六〇年代初頭に行ったケースがあると思います。オペレーションツイスト、すなわち、長期金利の引き下げをねらって長期国債を買い入れ、同時に短期国債を売る、こういう組み合わせを行うということでございますが、このアメリカの実験は結局のところは成果がなかったというのが定説であるというふうに私ども理解しておりまして、事実、その後このような試みは行われていないというふうに理解しております。  こう見てまいりますと、結局のところ、中央銀行にできることと申しますと、その時々の金融取引やより広く各種の経済取引が必要とする、この取引が円滑にできるために必要となる流動性短期資産を使ったオペなどで供給するということであり、また同時に、長い目で見てインフレは起こさないのだという姿勢を堅持することによりまして、先行き金利上昇に対する市場関係の方々、市場参加者不安感を取り除いて、そういった不安感からくる金利上昇を防いでいくということであろうというふうに理解しておりまして、今後ともこうした努力を続けていきたいと考えておるわけでございます。
  11. 小池百合子

    小池委員 これまでの中央銀行金融政策、各国の場合を引いて講義を受けたような気がいたしましたが、そうしますと、日銀中央銀行として、今回のこの問題について、長期金利の問題であるのである意味でなすすべはなしというふうにおっしゃっておられるのでしょうか。  そしてまた、このところしきりに言われております、例えば買い切りのオペレーション拡大についてのさまざまな方向からの要請、これについては日銀としてはノーという姿勢というふうに受け取ってよろしいのでしょうか。
  12. 黒田巖

    黒田参考人 先ほど私ども考えを申し上げましたが、中央銀行オペレーションというのは、あくまで短期の、その時々の金融経済取引に必要な流動性を供給するということが当面の目的でありまして、同時に、長い目で見てインフレ期待を起こさないということに尽きるものであって、直接的に長期市場に関与していくということではないのではないかというふうに理解しております。
  13. 小池百合子

    小池委員 一方で、インフレ長期的に起こさないという言葉は非常に含蓄のあるところでございますが、私、この大蔵委員会でも、既に流動性のわなに陥っているのではないかというようなこと、そしてもう現状とすればデフレであって、極めて短期の話かもしれませんが、今デフレの中にあってインフレの心配はむしろさらさらないわけでございますね。むしろ、黒田さん、今デフレ状態日本はあるのではないかという認識を持っているのですが、そのあたりのお考え方はいかがなんでしょうか。
  14. 黒田巖

    黒田参考人 ただいまの御質問インフレということをどのスパンで考えるかという点が一つあったかと思いますが、先生指摘のとおり、ただいま日本経済インフレ状態であるということはだれも考えていないというふうに思います。  ただ、長期金利といいます場合、例えば十年の債券を買う人、これを買う人は、いわゆる日ばかり商いと申しましょうか、非常に短期収益獲得をねらっている人もいますが、他方においては、長期に保有して収益を得ようということで投資している投資家もおるわけでございます。そうした人たちは、当面、足元の金融情勢というよりも、長い目で見た、例えば十年なら十年の間のこの国の姿といったようなものを基本的に判断して国債を買っていると考えるわけでございまして、そういう意味で、先ほど、長期的に見てというふうに申し上げたところでございます。  ところで、先生質問の第二の点でございますが、今デフレ状態かどうか、インフレ状態デフレ状態かということでございますが、現状消費者物価はまだ下がっておりません。ただ、これもいろいろなとり方があります。総平均では下がっておりませんが、野菜の値上がりをしている分を引くと下がっているのではないか。いろいろな前提を置いて計算をしますと、ゼロを若干下回っているという計算ができるかと思います。  一方、卸売物価は下がってきております。  そういうことで、私ども判断といたしましては、物価が上がり過ぎたり下がり過ぎたりするリスクにつきましては、現時点においては、上がり過ぎるよりも下がるというリスクの方が大きいというふうに判断はしております。  しかし、物価自体の現実の動きは、消費者物価はほぼ横ばい、卸売物価低下ぎみ、こういう状況でございます。
  15. 小池百合子

    小池委員 長期金利の問題については、日銀としては人為的には操作することは無理であるというようなことを先ほどからおっしゃっておられました。  であるならば、大蔵大臣に伺いたいと思いますけれども長期金利の問題が出てきているわけでございますが、一方で、国債ということで言いますと、さらにメニューをふやしていくというのもこの長期金利上昇のストップということに効果があるのではないかと思いますが、それについてのお考え。  例えば、きょうの日経新聞のトップにも出ておりましたけれども、四年物、六年物を検討する、さらには、その間をとってというわけではございませんが、五年物の利付国債検討もするというように書いてあるわけでございますが、この国債メニュー拡大も、長期金利上昇をとめるという意味では極めて効果的ではないかと私は思っております。  それについての大蔵大臣考え、そしてまた、どのような検討が進められているのか、お伝えください。
  16. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 平成十一年度の国債発行額、市中との関連で仮に申すならば、六十兆円でございますが、それは平成十年度の補正後の国債発行額よりほぼ十兆円多うございます。  その十兆円を、私どもの今やろうといたしておりますことは、十年国債にはかけずに短期のもので賄いたい。つまり、トレジャリービルの一年物にするとか二年の国債をつくるとかということで、ネット増分の十兆円をほぼ十年物にはしょわせないというふうに発行計画をしております。したがいまして、十年物の毎月の発行額は一兆八千億円でございますが、昨年中そうでございましたが、今年もその金額は変えないというふうに考えております。  そこまでは事実として考えてあることですが、小池委員の御質問は、さらにその上に新しい短期のものを考えられないのかというお尋ねでございます。  それは、例えば四年物というのは既にせんだって発行いたしましたが、金融債も、長銀、日債銀、ああいう状況でもございますから、五年という考えはないのかとか、いろいろ発行者として工夫が要るではないかというのは、私は小池委員の言われるとおりだと思います。  殊に、発行金額が大きくなりましたら、発行者としてはやはりいろいろ工夫をすべきだろう。それは、十年物をさばきますのに、シンジケートとの話は順調にいっております。困難があるということではございませんけれども、しかし、クーポンレートをどうするとかいうことはそのときの長期金利に左右されますしいたしますから、十年物だけがもうすべてだといったような物の考え方でなく、いろいろなものをやはり多様化して、工夫していくことが大事ではないかということは私も考えつつございまして、今、具体的にどうするということを申し上げるまでに至っておりませんが、事務当局の諸君には、そういうことを少し考えてみてはどうかということは私から申してございます。
  17. 小池百合子

    小池委員 各国では、デット・マネジメント・ポリシーということで、国債管理政策というのが極めて機動的に、機能的に行われているようでございます。ぜひとも、臨機応変と申しましょうか、マーケットにも、政府として、我々の日本としての立場というか考え方はこうなんだということを、臨機応変の政策を持ち出すことによってアナウンスメントをしていただきたいというのが強い要望でございます。  最後に、今回のこの特例公債でございますけれども、十五カ月予算ということをベースにしているわけでございますが、これまで日本の予算というのは単年度主義で徹底してやってこられたわけでございます。一般庶民からいわせれば、必ず年度末になると道路の掘り起こしが起こるというようなことで知られるわけでございます。  単年度予算のプラスマイナスもあろうかと思いますが、今回このように十五カ月予算ということを実質的に取り入れるということは、ある意味では、単年度予算ということでなく、複数年であるとか中長期というような、そういう考え方もこれからは取り入れていい、その前例になるのではないかというふうに思っておりますが、大蔵大臣のお考えはいかがでございましょうか。
  18. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 十五カ月予算と今度のことを御説明申し上げてございますけれども、それは、たまたま平成十年度の第三次補正というのがかなり遅い時期になりましたし、しかも相当大きな金額で、公共事業については本予算を前倒しをいたしましたこともあって、少なくとも支払い、あるいは契約もそうかもしれませんが、事実上、十一年度に延びていくだろう、そうしておかないと途中で一種の端境期のようなことが起こるというようなことから、十五カ月という発想で作業をさせていただきました。それは過去にもあったことでございますが、このような経済状況のときには特にそれが大事ではないかと考えたわけでございます。  単年度予算のメリット、デメリットについては既にいろいろ御議論がございまして、例えば、歳出についてのみならず歳入について、国債発行しやすい経済状況発行しにくい経済状況とがサイクルでございますから、それであったら歳入だけは、発行しやすいときに発行をして他日に備えておくというようなことは意味があるではないかというような御議論もございます。  しかし、押しなべまして、やはりこの問題は究極的には国会の御審議との関連だというふうに考えております。毎年通常国会、あるいは臨時国会もございますが、国会でこれからの年度の予算案を御審議なさるということが、やはり国民にとって一番間近な機会に国会が予算審議をされるということの意味、歳出、歳入面両面における意味が非常に深いのであろう。殊に、大変長い予算をお願いいたしますと、衆議院の解散あるいは参議院の半数改選というようなことで、国会の御意思が新たになるということがまたございますから、そういうこともあって、私は専門家ではございませんけれども、単年度ということになっておるのではないか。財政だけからいたしますればメリットもいろいろあることはあるだろうと思いますけれども、そういうことから考えますと、やはり単年度で考えていくべきだろうというふうに思っております。
  19. 小池百合子

    小池委員 次の国会からは政府委員が廃止ということもうたっております。国家の仕組みをどうするかということは、国会議員同士の論争、そして建設的な意見の積み重ねをしていくことをぜひともやっていきたいというふうに思っております。  時間が参りました。これで終わらせていただきます。ありがとうございました。
  20. 村井仁

    村井委員長 次に、仙谷由人君。
  21. 仙谷由人

    仙谷委員 大蔵大臣、きょうの日経新聞の朝刊第一面でございますが、長期金利高を抑制するために大蔵省は中期国債発行額拡大、十年債偏重見直し、こういう記事がトップに出ておりますが、こういう方針、もう既にお決めになったんですか。
  22. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま小池委員が同じようなお尋ねをなさいましたので、多少重複をいたすかもしれませんけれども、私どもは、国債発行者、しかも国債の金額が相当大きくなりますと、発行者としての市場に対するいろいろな事実上の影響力、責任というものは当然ございますので、そこは一本調子でなくいろいろなことをやはり考えていかなきゃならない時代ではないかということ、その程度のことを私は事務当局に申しております。  平成十一年度の国債の市中への消化発行額は六十兆円でございますが、それは補正後の十年度の発行額よりほぼ十兆円多うございます。その十兆円は今回十年物にはいたしませんで、より短いもの、一年のTBでありますとかあるいは二年の国債でありますとか、短いものでほとんど増分を埋めておりまして、十年物の毎月発行額は変えずにおります。  それは、それだけでは恐らく十分でございませんけれども、それが象徴しております意味は、発行額が大きくなりますと、発行者としてはやはりいろいろマーケットのことを考えたりしながらするべきものだろう、一本調子ではいけないのではないかという私ども自身のいろいろ内部の討議を今始めてもらっておりまして、したがいまして、今御引用になりました記事そのものは、正確に申しますなら、極めて正確とは申しませんけれども発行者としてのいろいろなバラエティーを考える必要があると私が事務当局に検討してもらっておりますということは、そこは事実でございます。     〔委員長退席、鴨下委員長代理着席〕
  23. 仙谷由人

    仙谷委員 そうしますと、端的にお答えいただきたいんですが、今、平成十一年度国債発行予定額、こういう理財局がつくられた発行予定を私どもいただいておりますね。これが、今のお話では変更があるということなんでしょうか。それとも、この部分については全く変更がない。つまり、もっと具体的に言いますと、シ団引き受けの十一年度予定が十年債で二十兆円、こういう大きい金額が書かれておりますが、これを短期、中期のものに変更していくというお話を今されたのか。それとも、いやいやこれは変えないんだ、全然変えないで借換債の部分について一年債を出すんだ、こういうお話なんですか。もしそうでないとするならば、私が申し上げたような二十兆円の十年債の発行を変えるということならば、発行予定を変更されるというんであれば、平成十一年度における公債発行特例に関する法律の規定により発行を予定する公債の償還計画表というこの計画表は変更はしなくてもいいんですか。
  24. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 国債発行につきまして、平成十一年度分、参考資料として予算案と一緒に御審議を願っておるわけでございますから、そういう意味で、勝手に政府が都合で変更できるということを私は考えておるわけではございません。  したがいまして、ただいまもそういうことを決定したとは申し上げておりませんで、今のところはそういうことを将来に向かって考えてみたらどうだということを申しておる、そこまでが正確なところでございます。
  25. 仙谷由人

    仙谷委員 そうしますと、きょうの日経新聞の朝刊に記載されたようなことをもし大蔵省が決定をされたとしますと、これは前提条件が変わってくることになるわけですから、どこかでもう一回、この償還計画表については国会で審議をしなければならない、こういうことになると思うのですが、いかがですか。
  26. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 本来、国債発行に関しまして国会に差し上げております資料につきましては利払いなんかも入っておりますけれども国債発行のクーポンレートというのは、実は御承知のようにその都度その都度決めてまいるものでございますので、ことしに入りましてからも、最初二%でございましたが、その次に一・九%というレートでやっております。  したがいまして、正確には一つの商行為なものでございますから、きちんと法律的な義務あるいは国会の承認といった非常に厳密な意味でのことにはなり得ないのかもしれません、その都度、そのときのクーポンレートを決めなきゃなりませんので。そういうことでは多少権利義務関係が違ってくるかもしれませんけれども、しかし、概してこういうことでいたしますという意図を国会に申し上げておるわけでございますから、したがいまして、そういう意味で、やはりそれは、政府は何をしてもいいというわけのものではないと私は思っております。  したがいまして、今申し上げようとしておりますことは、そういう御参考を国会に資料を差し上げて御審議を願っておるという拘束のもとに我々としてはいろいろなことを考えていく、そういうふうに申し上げざるを得ないのだと思います。
  27. 仙谷由人

    仙谷委員 大臣おっしゃるように、発行予定額の方は資料ですね。間違いない、資料。ところが、償還計画表の方は法律要件になっているのですよ。法律の二条の三項でございますか。ちゃんとこの分については、これは第二条の三号と読んだ方がいいのでしょうかね、「政府は、第一項の議決を経ようとするときは、同項の公債の償還の計画を国会に提出しなければならない。」と書いてあるのですね。これは、提出義務のある償還計画表が変わらなければ、ここで審議をする、あるいは予算委員会で、予算の総則の中に総額が記載をされて、償還計画表が出ておって審議に付されておればそれはいいと思うのですけれども。  だから、先ほどから私が聞いておりますのは、発行予定が変われば償還計画も変わることがあるんじゃないのですかと聞いておるんです。もし償還計画が変わるのであれば、審議が一からやり直しになる可能性があるんじゃないのですかということを聞いておるわけでございます。いかがでございますか、その点。     〔鴨下委員長代理退席、委員長着席〕
  28. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいま御指摘になりましたのは、平成十一年度における公債発行特例に関する法律案の第二条第三項で、「償還の計画を国会に提出しなければならない。」私ども、これに従いまして計画を御提出いたしておるわけでございますけれども法律的な問題がございますので、理財局長がおりますから、お答えを申し上げます。
  29. 中川雅治

    中川(雅)政府委員 償還計画表は、今大臣申し上げましたようなことで国会に提出いたしておるわけでございます。  他方、国債発行につきましては、市場のいろいろなニーズに応じて円滑かつ適切な発行をしていく必要があるわけでございまして、過去におきましても、昭和五十八年の二月でございますけれども、十年債を十五年債に振りかえたという例がございます。  いずれにいたしましても、今後市場のニーズを踏まえながら適切な発行をしていく、そういった過程で年限の振りかえ等がございました場合には、償還計画表の提出をその時点の計画に即して国会にお出しをするということになろうかと思います。
  30. 仙谷由人

    仙谷委員 ある意味で、細かいことを一々言うな、こう思われるかもわかりません。しかし、どうも財政についての規律が完璧に緩んだというか、完璧に崩れたという思いを私は捨て切れないのですね。非常に、どっちでもいいやとか、まあいいじゃないかみたいな話で物事が進んでいっておるんではないだろうかという気持ちがしてならないわけであります。  とりわけこの国債問題が、長期金利の問題との関連で、慌てふためいたその場しのぎ型といいますか、対処型で国債問題をあれやこれやしようとする人が、政治の世界でも、あるいは実業の世界でも、最近ちょっと多過ぎるんじゃないか。こんないいかげんな話はないと私は思うのですね。  ことしの国債発行についても、累積の国債問題についても、私、五十三歳ですけれども、我々はほとんど払わないで死んでしまいますよ、これは多分。六十年償還ということは、一兆円借りた国債は二兆八千億返さなければいけないというじゃないですか、三%の金利で。そうじゃないのですか。その国債を、事もあろうに軽々に、長期金利がちょっと振れただけで、これが非常に重大だということは後でお伺いしますけれども、慌てふためいたように国債発行の仕方を変えなければいかぬとか、あるいは、きょう総裁も来ていらっしゃいますからお伺いするわけですが、日銀国債を引き受けさせたらどうか、こんな極論まで飛び出してくるというこの風潮、これは世も末だとしか言いようがない、私に言わせれば。こんなことが横行するようでは、幾ら大蔵省主計局の皆さん方に頑張っていただいても、理財局の皆さん方に頑張っていただいても、骨抜きどころか、もう背骨を全部骨折したぐちゃぐちゃの国家にしかならないんじゃないかと私は心配をしておるわけでございます。  きょうの日本経済新聞一面で、中期国債発行額拡大ということを書いてございますが、二十面では、「大機小機」という欄では「長期金利上昇のメッセージ」という部分がございます。それを今度拝見しますと、三つ、今の債券市場からメッセージが出ていると書いてあるのです。  私もほとんど同意するのですが、その三番目が、十年債に偏り過ぎた国債発行方式の欠陥が露呈された、そのとおりだと思いますね。それは、今まで皆さん方がおやりになってきた、長信銀を守る、そういう政策があるものだから、中期、短期国債を余り大量に発行できない、しては彼らをつぶしてしまうんじゃないか、そういうまさに護送船団の中でのやり方がここへ来て硬直化した、十年国債しか出ていなかったということが長期市場の債券市場の問題になって出てきておる。私も、そういう意見には同意します。したがって、その発行の仕方を柔軟化する、フレキシビリティーを与えるという御意見ならば、そこのところは別に反対するわけじゃないんです。  ただ、しかし、現在の長期債のレートが上がって債券が下がるという、このことに慌てふためいてこんなことを考え出す、あるいは、もっと言えば、口先介入で長期金利上昇を抑える、あるいは長期金利の低下を促すために、そのアナウンスメントとしてこういうことを新聞にリークしているということであるとすれば、それは小手先の対処にしかならない、しょせんはマーケットに完全に打ちのめされていくんではないか、そう思うんですね。大蔵大臣、いかがですか。
  31. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 最後のお尋ねのところが、ちょっとどういうふうにお答えいたしますか。  つまり、先ほど申しましたとおり、我々は今やかなり大きな国債発行者になっておるわけでございますから、その順調な消化というものについては、一本調子でなく、いろいろな可能性を考えていく必要があるということを私ども考えておりますということを申し上げました。しかし、国会に、まさに御指摘のように、資料も御提出しておりますことでございますから、そう何でも都合よく一からぽんと変えられるわけのものでもない、やはり少し時間をかけて検討する必要がある、こういうふうに考えているということを申し上げましたので、その御指摘の新聞の報道というのは、そういう意味では不正確と申し上げますか、将来に向かって我々検討はしたいと思っておりますが、今何かが起こるといったような意味でありましたら、それは必ずしも正確ではないと思います。
  32. 仙谷由人

    仙谷委員 きょう、「最近の国債流通諸元」という一覧表をつくって持ってまいりました。お配りしていただいてよろしいですか。わかり切ったことでありますが、一覧表にすると割と物事がはっきり見えてくる、こういうふうに考えましてつくったわけであります。  つまり、九八年九月十八日に世界の歴史上最低の〇・六七〇%の利回りを指標銘柄がつけた。そのときの債券の価格は百十五円五十五銭だった。昨日、これはツイストオペのお話やら、日銀が買い切りオペを拡大させるというふうに大きい声で言う金融担当じゃない大臣の方がいらっしゃるものだから、市場が反応したのかどうかわかりませんけれども、利回りが二・一六六になって、債券価格が九十五円九十五銭になった。ちょうど十九円ですか、二十円弱、こんなに九月の十八日からは動いたわけであります。つまり、これを見てわかりますのは、金利が一・五%上昇すると債券価格が二十円動いた、おおよその話でありますが、そういうことがわかるわけでございます。  今度の三十一兆円、特例公債だけで二十一兆七千億、こういう予算を組むときに、ボンドのマーケットがこういう反応を示す、長期金利がこのように動くということは、大蔵大臣は予測はしていなかったんでしょうか。
  33. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いろいろそれについては申し上げたいこともありますが、まず、昨年の九月十八日の〇・六七〇という金利はまことに異常な金利、現に九月一日には一・〇八〇でございましたから、我が国金利が異常に低いということは一般に言われていることでありますし、資金需要がないということでもございましょうと思いますが、まあ一以下とか、二にしても随分低い金利であることは間違いないことだと思います。  それで、私ども国債発行者として、国債発行いたしますときには、どういうクーポンレートをつけるかということは、やはり商品でございますからマーケットに聞かなければならない。そういう意味では、マーケットが買ってくれるような商品を出さなければなりませんので、クーポンレートというのはある意味で勝手に決めるわけにはいかない。これはおわかりいただけると思います。  したがいまして、一年の間を展望して国債のクーポンレートを固定して考えるなんということはとてもできませんので、どういうレートになるか、そういうところは柔軟に考えておかなければ、それこそ国債という品物を固定レートをつける、それは考えられないことでございますから、市場の中で考えていくというのがやはり基本的な態度でなければならないと思っております。
  34. 仙谷由人

    仙谷委員 お答えになっていませんが、経済企画庁、来ていらっしゃいますか。経済企画庁は、予算をつくるときに経済見通しもつくった。このときに、ことしの借換債を含めると七十兆円の国債発行、新発債が三十一兆円、こういう公債発行をすればマーケットが反応するということはお考えになりましたか、考えなかったですか。お答え願います。
  35. 河出英治

    ○河出政府委員 政府の経済見通しを策定するに当たりまして、特定の金利水準、あるいはそれがどうなるかということを前提にして策定をしているものでありませんで、いろいろな設備投資あるいは消費等につきまして、設備投資であればいろいろな企業の設備投資計画アンケート、そういったものを前提にしてつくっているものでございます。  なお、こういった国債発行につきまして、それが市場に影響を与えるであろうということは当然予想されるわけでございますが、私どもとしては、金利水準あるいは金融環境について大きな変更はないということをまず前提に経済見通しはつくっているものでございます。
  36. 仙谷由人

    仙谷委員 日本銀行、この点は、総裁でなくても結構ですけれども日本銀行はどうですか。こんな国債発行をしたら必ず長期金利は反乱を起こして上がっていくよということは、その当時、十二月当時ですよ、予測していましたか、していませんでしたか。
  37. 黒田巖

    黒田参考人 お答えいたします。  先ほどのお話にも出てまいりましたが、長期金利の動向は、基本的な長期経済状況、価格期待を含めます長期の期待によって大きく左右されているというふうに考えております。  したがいまして、今先生質問の点につきましても、そういう政府の御方針を見て、マーケットの参加者のこれが長期にわたってどういうことを意味しているかということのとらえ方いかんによって影響があったりなかったりするものだというふうに思っておりまして、私ども、その点については、現実の市場の動向を注意深く継続して見守っていきつつ対応する、こういうことかと思います。
  38. 仙谷由人

    仙谷委員 皆さん、非常に歯切れが悪い。けれども経済企画庁にしても、大蔵省にしても、日銀にしても、日本最高のエコノミストがそろっているんじゃないですか、当たり外れがあるにしても。  累積の国債の総額、あるいは政府の債務の残高がここまでいって、あるいはここまでいくように、一〇〇%に近づくように、あるいは一〇〇%を超えるかもわからない、そこまでの国債をことしは発行するんだ、そのときにマーケットがどう動くか。ほかの要素もそれは当然あるでしょう。しかし、債券価格、長期金利の動向というものを全く気にしないで政策決定をする、あるいは経済見通しを立てる、税収見通しを立てる、もしそんなことがあるとすれば、私は信じられないけれども、もしそんなことがあるとすれば怠慢ですよ、これは。どうにもならないじゃないですか。国民こそいい面の皮じゃないですか。どうですか、これは。  もっと正直に、いや、そのことについては考慮に入れなかった、申しわけないと言う人がだれもいないんですか、もしやっていないんだったら。やっているんだったら、当然のことながら、そういう見通しを含めてこういう予算を組みました、こういう公債発行をすることにしたんですというのでしたら、さあ、そこからが議論の始まりですよ、私どもとの。議論が始まらないじゃないですか。みんなが全然答えをはぐらかして、マーケットの動向を見ていましたなんて、日本銀行さん、おっしゃるけれども、そんなことは当たり前じゃないですか。僕だってマーケットを見ていますよ、毎日。こんな無責任なことで経済運営をやられたんじゃ我々はたまりませんよ。  では、質問を変えます。もう一遍、お三方に聞きましょう。  この現在の二・一六六、昨日の長期金利、高過ぎるんですか、安過ぎるんですか、あるいは常識的なラインですか。公定歩合〇・五%との関係で、あるいは一月末の卸売物価指数が、前年比マイナス四・六%だったですか、ちょっと見落としましたが、マイナスで四%を超えていますよ。こういう卸売物価との関係でどうですか、この金利。高いんですか、安いんですか、あるいは正常値なんですか。
  39. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは私の出る幕でないのかもしれませんけれども、先ほども申し上げましたが、十年度の補正後の国債、民間消化分は五十兆でございます。そして、今度、十一年度の予定は六十一兆でございますから、この五十兆というときに、補正後は既に相当の大量の発行になっておったわけでございますが、先ほど委員のお持ちになられました資料によりましても、例えば、昨年の十一月三十日の利回りは一・〇五五でございます。それが、今おっしゃいましたように、昨日は二・一六六ですが、この変化はなぜだ、どっちがいいんだとおっしゃられましても、それはやはりマーケットと私は申し上げるしかないんではないか。  おっしゃいますように、大量に発行することになればそれだけ金利が上がる、違うかとおっしゃれば、基本的には私はそのとおりだと申し上げますけれども、しかし、昨年の十一月三十日に一・〇五五であったものが今二・一六六になった、どっちが正しいんだと言われましても、かなりの部分はやはりマーケットというふうに申し上げるのが私は正直ではないかと、ちょっと気がつきましたので、余計なことでございますが、申し上げます。
  40. 新保生二

    ○新保政府委員 これだけの国債発行が続いた場合に、長期金利上昇がどれぐらい起きるかという点でございますが、モデルなんかで試算しますと、やはり国債発行に伴って長期金利上昇するというメカニズムはちゃんと組み込まれております。短期モデルですと〇・二%程度、それから中期多部門モデルというのがありまして、これですと今度の国債発行で〇・六ぐらい上がる。そういう試算があるわけですが、現実に起きている上昇はこれより若干大きく上がっておるという状況でございます。  このメカニズムにつきましては、モデルでは、期待が変化したときに先取りして金利が上がるというメカニズムが必ずしも十分に組み込まれておりませんので、御指摘のように、我々が想定した以上の幅の上昇になっておる。それから、物価上昇率が下がってきておりますから、実質金利でも少し高目になっておるという問題があることは御指摘のとおりでございます。
  41. 速水優

    速水参考人 仙谷先生の御質問ですけれども、今の二・一六六が適当な金利なのかどうかということは、これは非常に申しにくいと思いますが、九八年九月十八日、この表で見ますと〇・六七〇という非常に安い金利、このときは私は安過ぎたと思います。  これは、御承知のように、フライ・ツー・クオリティーといいますか、LTCMなどでヘッジファンドの混乱が起こったときなんですね。それで、国債の方が間違いないということで国債が買われたという極端に低い時期だと思います。そういうのに比べて、新たに三十一兆ふえた国債を出すというようなニュースが出たときにこういうふうに戻ってきたわけですが、もうちょっとさきに戻りまして、九六、七年のころの水準をごらんになったらおわかりだと思いますけれども、やはり公定歩合は〇・五%で、国債金利は二%あるいはそれを上回った金利になっております。  ですから、必ずしも今の金利が非常に高過ぎるということではないのかもしれません。〇・六七〇という昨年の九月の水準は、これは異常に安かったということだけははっきり申し上げられると思います。
  42. 仙谷由人

    仙谷委員 きょうおいでの大蔵省、それから日本銀行、それから経済企画庁、いずれも、まあこの程度の長期金利上昇ではばたばた慌てることもない、マーケットに任せておけばいいと。宮澤大臣は記者会見でもおっしゃったようでありますけれども、そういうふうに受け取っていいようなお答えでございました。  このことが、現在の二%強の長期金利、急激に上がったこと、これはやはりマーケットが何かのシグナルを出していると考えるべきだと私は思いますけれども、その問題はさておいても、この程度の金利は、適正水準を少々上回るかもわからぬけれども、ばたばた騒ぐことはないということならば、国債消化について、何で今こんなに、世間だけじゃなくて、政府当局もかまびすしい議論をしておるのかということが私は疑問でならないわけであります。そのことをお伺いします。  つまり、与党そして政府の中に明確に日銀が新発債を引き受けるべきだという議論があるようですね。そして、いや、永遠にやらなくてもいいんだ、二年間を限って五兆円やろうよというような議論もあるようでございます。  堂々と、フィナンシャル・タイムズには、大原一三議員が総理に、二年間に限って五兆円程度引き受けるべきだということを申し入れたと。フィナンシャル・タイムズ紙上では、大原先生経済政策の顧問であるのか、何かアドバイザーであるというふうに書いてありましたけれども、そういうことを、一月の下旬なのか二月の最初なのかわかりませんが、申し入れたと。そして、自由民主党金融再生トータルプラン推進特別調査会の会長である保岡興治先生も、日経新聞のインタビューに答えて、日銀国債の直接購入を検討すべきであるということも堂々とおっしゃる。  そして、一月の二十九日でございますか、ルービン財務長官がダボスで加藤紘一前幹事長に、日銀国債の引き受けを実行するかどうか、米国側は期待感を持って注目していると述べたとか述べないとかということが新聞に書かれていますね。二月三日には、ルービンさんがアメリカの上院予算委員会の公聴会で証言をして、日銀国債引き受けについても一段の金融緩和の一つの方法であるというふうに答えた、こういう報道がなされています。  何でこんなに、日銀国債の引き受けをする必要があるとか、国債引き受けという格好で一段の金融緩和を図るべきであるというふうな議論が出てくるのですか。これは、長期金利の急激な上昇関係があるんじゃないですか。大蔵大臣、いかがですか。
  43. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 まず、ルービンがこういうことを言ったという報道につきましては、先生はそうおっしゃいませんでしたが、報道そのものにつきましてはルービンが自分で否定をいたしましたので、そのことだけをまず申し上げておきます。  ファイナンシャル・タイムズが社説を掲げる、あるいはポール・クルーグマンなんかが何度も言っておりますことは、簡単に言いますと、恐らく彼らは、日本経済は非常なデフレであると考えている、それをどうやって脱出するかという考え方の中で、財政赤字というものは通貨の増発によって賄うのが本当の政策であると。通貨の増発によって賄うということは、すなわち国債日本銀行に買ってもらうということでございますから、そういうことによって財政赤字を賄う、また、そうすればおのずから円の価値が下がる、これがこの際とるべき政策だと考えているようでございます。それによって日本経済デフレを脱出することができる、インフレになるとは申しておりませんけれども、どうも考え方はそれに近いような気がする。しかし、それが彼らの考え方のように思われます。  しかし、デフレであるならば、それはそれだけの購買力を国民が持ち、また、やがてはインベントリーが小さくなる等々の形で自然に直るのが本当であって、日銀が通貨をそれだけ出せばそれでデフレが直るなんというようなことは間違いだ、いい、悪いより、考え方として間違いだと私は実は思ってそれらのものを読んでおりますが、言っておることの主張は、どうもそういうことのように思われます。     〔委員長退席、鴨下委員長代理着席〕
  44. 仙谷由人

    仙谷委員 私も、調整インフレとかインフレターゲット論とかということをおっしゃって、ヘリコプターの上から一万円札をまけばデフレが直るのだみたいなことをおっしゃっている学者さんや議論もあるように聞きますけれども、そういうものは間違いだ。特に、この日銀国債の引き受けという形で円を市中にばらまくような政策をとり始めることは断じて行ってはならないと思うのです。  私もデフレだと思います。思うけれどもデフレのときの過ごし方は、まさに今大蔵大臣がお答えになったように、これは、調整が終わる、調整がスムーズに進むという政策をとる以外にないのでありまして、それに反対のインフレ政策を、特に金融面からぶつければ何とかなるというのは、絶対にと言っていいほどやってはいけない政策だと思うのです。  ところが、クルーグマンや、ルービンさんもひょっとしたらそうなのかもわかりませんが、そういうことを確かにおっしゃっている。それで、いわゆる合成の誤謬なのか何なのか知りませんけれども、そういう理論を立てて、だから日銀が円をどんどん増発すべきだという議論に結びついていっているように思うのです。これは非常に危険だ。幾ら彼らが頭がいい経済学者であっても間違いだと私は思います。  これに、短期的な、この自自政権をもたすためだけに、〇・五%成長を何とか達成するためだけに、日銀国債引き受けという応急措置をとろうとしているのか、あるいは、ルービン流、クルーグマン流の調整インフレ論に乗っておるのか知りませんけれども日銀国債引き受けという問題が堂々と浮上してきていると私は理解しておるのです。どんな理由があってもこういう小手先のことを許してはならないと私は思うのです。  私は、この際、大蔵大臣日銀総裁にはっきりとおっしゃっていただきたいのであります。はっきりとおっしゃっていただきたいのは、職を賭してでもこんなことは許さない、必要ないなんという弱々しい言い方じゃだめなんですよ。大蔵大臣、絶対にこのことだけは許さないということを、財政当局者そして金融当局者としてはっきり明言してもらいたいのです。いかがですか。
  45. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 このことは、別に力んで申し上げることではないので、そういうことは必要がない。
  46. 速水優

    速水参考人 仙谷委員から大変力強い御支援をいただいたような感じがいたしております。  日本銀行としましては、国債を新規に引き受けるという考えは全く持っておりません。御存じのとおりに、財政法五条や日銀法三十四条で日本銀行による国債の引き受けは禁止されております。これは、中央銀行が一国の国債を引き受けますとその国の財政節度が失われてしまう、そしてまた悪性のインフレを招くということは、今までの内外の諸経験でも明らかなのでございます。  例えば一九三二年、昭和七年の高橋是清、財政拡張を満州事変でいたしまして、財政拡張のための日銀国債の引き受けをやりました。それがずっと戦争中続いて、戦後の超インフレ、ハイパーインフレと言ってもいいぐらいの、私どもの非常に痛い経験を今でも思い出すのです。ドッジ・ラインになってようやくこれがおさまったわけですけれども、それのやはり最初のきっかけはこれであったというふうに思いますし、古くは、一九一四年の第一次大戦後のドイツの超インフレも、国債を無制限に中央銀行に引き受けさせたということがこの超インフレのもとであったということでございます。戦後でも、一九七〇年、私の記憶が間違いなければ、イタリーで国債中央銀行引き受けがあって、高インフレが起こったことを記憶しております。  こういうふうに、これによって例えば国債の格付が引き下げられるとかあるいは長期金利もむしろ上昇してしまうという可能性も当面考えられるわけです。主要国で中央銀行による国債引き受けというものが禁止されているのは、やはりそうした考え方に基づくものでありまして、一回これを始めますと途中でやめられないということを歴史が証明しているように思います。FRBでも、あるいは今度できます欧州中央銀行でも、政府に対する信用は行わない、行うことを禁止しております。  したがいまして、日本銀行としては、国債の引き受けということを選択肢として全く考えておりません。あり得ないということをはっきり申し上げておきたいと思います。私は、新法による日本銀行のもとで、このことは絶対守っていきたいというふうに思っております。
  47. 仙谷由人

    仙谷委員 私は戦後生まれでございますから、戦争に行ったこともございませんし、戦時中の苦労もほとんど知りません。いわば戦後、小学生のころにひもじい思いを少々したという程度の話でございます。  しかし、物の本で読んだり、その時代を経験した私どもの父や母の世代のお話を聞きますと、一つは、やはり中国、南方あるいは至るところに軍を出して、そのときの苦労そしてその傷跡は、今も日本人に対してアジア諸国から返っている、このことの反省が憲法九条になっている、海外には絶対に兵を出さないという国是になっていると私は思うのですね。  それと同じように、戦時国債でめちゃくちゃな財政膨張、拡大をしたために、戦時中もどうもインフレ傾向になっていたようではありますけれども、戦後はまた極端なインフレになったというこの経験が財政法五条にもなっているし、日銀国債を引き受けない、引き受けてはならないんだという原則になっているわけであります。こう私は理解をしておるのですね。  ところが、そんなに気張って言うものじゃないなんて大蔵大臣に言われると、せっかく戦時中御苦労なさってここまで日本経済を引っ張ってこられた大蔵大臣がそんなことをおっしゃると、腰が抜けてしまうわけであります。ここは財政当局者として敢然と、実業界の中でそういう声が出ようとも、政界の中でそういう声が出ようとも、体を張ってでもこのことだけは許さないということを貫いてほしいと私は思っているわけであります。 今うなずいていただきましたから返答を求めません。  この件に関しては、私は、内閣として何か、やってはならないことだけれども日銀国債引き受けということを議論をし、どうも雲行きが悪いから国債引き受けでなくて買い切りオペを拡充するんだ、拡大するんだ、どうもその議論が強くなってきている。  きのう内閣官房長官が記者会見をされて、十二日の日銀政策委員会での論議に期待をしていると、新聞では、買い切りオペの拡充方針を正式に決定するように求めたと書いてありますね。  これは内閣の中で、経済担当閣僚だけでもよろしいのですが、この種の話は進んでおるのですか、宮澤大蔵大臣
  48. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほど申し上げましたのにちょっとつけ加えますが、日銀に新規国債を引き受けてもらう、もらわないというのは、いいとか悪いとかいう議論がいろいろきっとありますのです。それはいろいろ議論はあるでしょうが、私が必要がないと申しましたのは、大蔵大臣が入り用がないと申しておれば、それでも要るとおっしゃる方はいないはずなので、それがもう一番はっきりした御返事だろう、こう思って申しました。  後段のお尋ねでございますが、いろいろ議論はございますかもしれません。公に論じたことはございませんが、今私が思っておりますのは、いずれにしても、これは日銀日銀総裁がお決めになられることであるし、そのためにはまた政策委員会というものも御議論があるのでございましょうから、また近く恐らく政策委員会もございますのでしょうから、御議論のある方はいろいろおっしゃったらいいではないか、別にそれを妨げるつもりはない。しかし、結論は日銀が決められることだ、外部があれこれ、政策委員というお立場でおっしゃるのはよろしゅうございますけれども、それ以外の決定の仕方というのはあり得ない、私はそう思っております。
  49. 仙谷由人

    仙谷委員 内閣の中でそういうことが方針として決まったとか協議されているということはないと伺っていいですね。つまり、大蔵当局の方からはもちろんそういうテーマも出していないし、全く必要ないという前提だと。  ところが、なぜかこの野中さんという官房長官が張り切って、私が新聞をざあっと見ただけでももう五回も、二月四日、二月五日それから二月八日、これだけ、日銀国債引き受けといいますか、あるいは日銀国債購入について議論を展開しているのですよね、記者会見で。  この方は私は国債とか金融の担当者であるとは思っていませんけれども、野中さんがこうおっしゃるんだからこれは総理大臣の意思かな、どうも小渕さんという総理大臣はこの場に至って長期金利上昇を抑えるために買い切りオペでもいいから何とかしてくれ、こういうことを言い出しているのかな、こういうある種の推測をしておるわけでございます。  そこで、日本銀行の総裁と参考人がいらっしゃっておりますので、日本銀行が今国債をどのぐらいお持ちで、そのうち買い切り部分がどのぐらいで、その買い切りオペで保有している国債はどういう理由でそれだけ保有しているのか、ちょっと教えてください。     〔鴨下委員長代理退席、柳本委員長代理着席〕
  50. 速水優

    速水参考人 今、一月末で私ども国債保有額は四十七兆円持っております。そのうち、いわゆるFBという、今度一般公募に四月から変わる予定になっております外為証券等を含むものですが、これが約十九兆ございます。そのほかのものは長期国債でございまして、これは買い切りオペといって、今毎月四千億ずつ買っておりますが、長期的に見て銀行券の増加額に見合うような形で、資産の中で長期国債の買い切りオペをやってここまで来ているというのが現状でございます。
  51. 仙谷由人

    仙谷委員 そうしますと、四十七兆三千億から十九兆を引くと二十八兆ぐらいになりますか。二十八兆ぐらいが買い切りオペで購入をした国債だという理解でよろしいんですか。  そして、それは銀行券の発行増に見合うということで買い取っておるんだとおっしゃいましたが、それは、何か日銀のルールといいますか、内規になっておるのでございましょうか。
  52. 速水優

    速水参考人 長期的に見て銀行券の増加額に見合う資産として長期国債の買い切りオペをやっているということは、特に内規には入っておりませんが、私どものここ数年来のルールとして、やはり一定のめどをつけておかないと、買い切りオペがふえたりあるいは減ったりということも余りよくないことだというふうに思っておりますので、これは一度買いますとなかなか売りにくいものでございますので、そういう意味もあって、そういうチェック機能、チェックの目標として置いているというふうにお考えいただいて結構だと思います。
  53. 仙谷由人

    仙谷委員 素人がわかるように説明をしていただきたいわけですが、なぜ買い切りオペを野方図にといいますか、拡大してはいけない、そういうふうにお考えなんですか。つまり、銀行券の増加額に見合う額にとどめておく、そういう節度といいますか規律を持たせるんだということは何か理由があるんでしょうか。
  54. 速水優

    速水参考人 国債の買い切りオペ、幾らでもどんどん買えばいいじゃないかという御意見もあろうかと思いますけれども、そうすればやはり引き受けと同じことになってしまいまして、財政節度が失われるおそれもございますし、国債の直接引き受けと大差ないことになってしまうのではないか。そういうことも勘案しまして、日本銀行では、国債の買い切りオペにつきましてはあくまでも、長い目で見て、銀行券の増加に見合った金額に対応させるという考え方のもとで慎重に実施しておるわけでございます。今、この基本的な考え方を変更する考えはございません。  確かに、今潤沢な資金供給が必要でございます。しかし、日銀法、財政法の趣旨を踏まえて、十分に慎重な配慮を加えながら、そのほかの金融調節手段、例えばコマーシャルペーパーとかTBオペとか短期的な資金供給手段を駆使して、現在の思い切った金融緩和スタンスのもとで潤沢な資金供給を行っていく考えでございます。  日銀の資産につきましていろいろ御心配してくださる方もおられるわけでございますけれども、私ども日銀の資産について、今かなり事態が変わるとともに変わりつつありますけれども、健全性と流動性と中立性、この三つのことを頭の中に常に持って日銀資産の増減を見ていくつもりでおります。
  55. 仙谷由人

    仙谷委員 お伺いしようと思うところまでお答えをいただいておるわけですが、九八年十二月二十二日きさらぎ会における日本銀行総裁講演、これがたまたま私の手元にあるわけであります。  ここで総裁が、日本銀行がどのような考え方に基づいて保有資産を選択しているか、言いかえれば中央銀行のポートフォリオ選択の要件は何かについてお話をしたい、第一の要件は資産の健全性確保であります、第二に資源配分の中立性です、第三に資産の流動性確保ですというお話をされております。  日銀国債引き受け、長期国債を引き受ける、あるいは買いオペを拡大して大量の長期国債を保有してしまうということになると、ここでおっしゃっておる、少なくとも流動性がなくなることは間違いないんじゃないかと私も思いますし、あるいは資源配分の中立性という観点から見ますと、やたらと国債ばかり大きくなってこれは非常に硬直化してしまう。中立でもないということになるんだろうと思います。さらには、そうなってきますと、持っている国債自身が果たして健全な資産なのかどうなのかということに、少なくともマーケットからは疑問が出てくる、こういうふうに思いますので、この三点の要件、原則をお立てになっているとすれば、買い切りオペを、偉い人が幾ら要請をして、あるいは介入的発言をしても、そうそうできないということになろうかと思いますけれども、いかがでございますか。
  56. 速水優

    速水参考人 今御指摘の点につきましては、私自身としては全く同感でございます。しかし、これを決めますことは政策決定会合マターでございますので、これでいくということをここで申し上げるわけにはいきません。  先ほども申し上げましたように、バランスシートが少し膨らんでいるというようなことをよく言われるわけですけれどもデフレ的な状況の中で潤沢な資金供給を継続していくということ、そのことは直ちに、処分にコストのかかる不良資産がふえているためではございません。例えばCPの増加とか企業金融の円滑化に資するということをねらいとしていろいろなことをやっておるわけでございまして、CPオペの場合でも、企業と金融機関の二重の信用によって現先方式でやっておりますから、これは安全なものでございます。  また、預金保険機構に対する貸し付けが七兆を超える残高になって、これからもまだしばらくつなぎ資金としてふえていくかもしれません。システミックリスクに対して中央銀行が最後の貸し手として貸していかなければいけないという観点もございますので、こういうものもふえていくかもしれません。しかし、なるたけこういうものも財務の劣化を来さないように、どういうふうにして返してもらえるかということを十分考えながら、健全性を保ち、かつ、いつでも市場に売れるという流動性を確保してまいりたいというふうに考えております。  以上でございます。
  57. 仙谷由人

    仙谷委員 十二日の政策委員会には、〇・五%成長を、これが底がたくて、これを堅持しなければいけないという使命を持った堺屋経済企画庁長官が出席するということが、きょうの報道でなされております。  堺屋長官も、私はこの人の今まで書いたものを多少読んでいるつもりでありますが、どうしてこんな立派な方がこんなことをおっしゃろうとするのか、随分政治家になられたんだなと思っておるのです。市場からの買い入れであれば価格にマーケットの評価が加わるが、直接引き受けでは官僚が決めた価格になる、こうおっしゃって、既発債の買い入れオペの拡大には積極的であるかのようなことが報道されているのですね。その方がわざわざ政策委員会に乗り込まれるという報道でございますから。これは、政治の方からいろいろな発言があると思いますけれども、どうか十二日の政策委員会では、日本銀行中央銀行としての誇りと原則をひとつ堅持をしていただきたいとお願いをしておきたいと思います。  そこで、その点は日本銀行としてはお答えになりにくいと思いますので、大蔵大臣にお伺いするわけですが、ドイツで、ラフォンテーヌ大蔵大臣がドイツ連銀に対して、金利政策金融政策について、雇用のこともあるのでかたくななことを言わないで緩めたらどうかという手紙を出したという報道に我々接しております。これは公開の手紙のようであります。  官房長官が、再三再四にわたって日本銀行国債引き受けに言及したり、昨日の記者会見では、「日銀中央銀行として自ら市場国債を買い取るなどいろいろな方途を講じて、現在の深刻な経済状態を打開する責任がある」「まずは市中にある既発の国債を買い取ることが緊急の要務だ」「今週内にも日銀内部での協議を期待している」、こういう言い方を堂々とされるというのは、せっかく日本銀行を大蔵省の下に入っている存在から独立をしてもらった、いわば財政と金融の分離の非常に重要な一つの形態でございますけれども、この日本銀行の独立性を侵しかねない、中立性を侵しかねない重大な発言だと私は思うのですが、大蔵大臣としてはいかがでございますか。
  58. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 官房長官、なかなか変幻自在なお方でありますし、お立場からも、やはり国民に向かって話をされる必要があるので、私がそんたくいたしますのは、この問題については、殊に仙谷委員もそうでいらっしゃいますけれども、いろいろ専門の方は、今の例えば日銀の引き受けのことでございますが、これはやはりよくないんだな、また、日銀の買い切りも無制限というようなこともよくないんだなということは、何となくそういうふうに、そうでないお方もいらっしゃいますけれども、思っておられる。  しかし、国民全体からいうと、それだって一つの考え方じゃないのというふうに思われる国民もきっとあるだろう。これがインフレのときですと、国民の大半はそれはいかぬなと思われるでしょうが、どうもデフレっているときは、それも一つの考えじゃないかなと思っておられる国民もあるかもしれないというところを、恐らく官房長官は、自分の意見としてではなく、そういう意見もあるんだから、ひとつ日銀でいろいろ議論をしてもらってはどうなんだ、私はこう言っておられるんだろうと思います。  さらにつけ加えますならば、そういう意味は、日銀というものは政治の思うようにならない、それは非常にはっきりしておりますから、それをよく御存じだからそういうことをおっしゃれるんだろう、多分そういう気持ちでいらっしゃるだろうと思います。
  59. 仙谷由人

    仙谷委員 私は、非常に優しい大蔵大臣の、つまり、官房長官に優しい大蔵大臣のお話をお伺いをしまして、いや、だけれども、それでは困ると。  日本銀行は、九七年に改正日銀法のもとに初めて自立をした存在になったわけでありますね。そのころは、ビッグバンは一年後に始まるわ、あるいは金融システムは過去の病弊がふつふつと出てくるわで大変な時期だと思いますね。本当は嫌でも、先ほどおっしゃられたようなCPのオペであるとか貸し出しであるとか、そういうことをなさってきた。これは、バランスシート、必ずしもよくないですよね。だれが見ても、これだけ急激に、買い入れ手形、つまり、CPオペの結果、買い入れた手形でしょう。それから国債、貸付金、預金保険機構の貸付金が急激にふえるということは、これは一般論からいっても余りいい状態でないことは間違いないと私は思いますね。  それで、昨年の年末とことしの一月末を比べてみますと、細かく言いませんけれども、必死になって回収作業をされて、何とか余りボリュームの大きい資産を持たないように、ちょっとでも資産が膨張しないように心がけていらっしゃることが、バランスシートを比較するとよくわかりますよ。大変苦労なさっているんだなということもわかります。わかるだけに、ここは一番日本銀行にとっても大事な自立性が、独立性が本当に試されるときではないだろうか。  さっき大蔵大臣は、余り気張って言うなみたいな話をしましたけれども、私に言わしめれば、これは、明治の初めのころに大津事件というのがあって、司法権の独立が問題になりました。政府から、あれはロシアの皇太子だったですか、その方を傷つけた津田三蔵か何かだったと思いますが、ある種の司法判断をこうせいという要請が来たのを児島大審院長がはね返して、独自の事実認定と量刑を科した。これで日本の司法の独立が確立したんだというのは教科書で教えられたわけでありますが、それに匹敵するような、今、日銀国債引き受けであるとか買い切りオペの政治からの要請であるとか、そういう事態ではないだろうか。大げさと言われるかもわかりませんけれども、そのぐらいの認識がないと、日本のこの金融システムの危機、そして経済全般の大変な危機的状況が続いている中で、日本銀行が背筋を伸ばして、原理原則にのっとってやっていくというのは非常に難しかろうと私は思っているわけであります。  したがいまして、私は、この間の日銀を巻き込んだ長期金利問題というのは、みずからが犯した間違いを今度は日銀に押しつけて、日銀もろとも日本経済を奈落の底へたたき込む、そういうことを考えておる悪い人がおるんじゃないか、そういう陰謀を組んでいる人すらおるんじゃないかということまでも夜中布団の中で考えるんですよね。  どうかひとつ、日本銀行政策委員会でも毅然として自立的な決定をいただきますように、重ねてお願いをいたしておきます。  さてそこで、もう一遍、十一年度国債発行予定の問題に返ります。  結局、この国債発行、出てきたのを今拝見しますと、十年と十一年を比べますと、民間の消化部分が二十三兆六千億ふえているんですね。これは大きい金額です。そして、資金運用部の引き受け部分が九兆二千四百五十九億円マイナスになっているんですね。これも大変大きいマイナスであります。つまり、資金運用部が財政投融資の方でお金が必要になったからもうそんなには引き受けられませんよということが、この民間引き受け二十三兆六千二百七十九億円になって出てきておるんだろうなと私は思うわけでございます。  そうだとすると、極めて安易な方法は、この分全部日銀に引き受けてもらえば事は済む、そういういいかげんな考え方があるのかなと私は今度の日銀引き受け問題で考えるわけでありますけれども、結局、今の民間の金融機関を中心にして、こんな消化能力が、余力があるのかないのかということなんだろうと思うんですね。この点については、理財局といいましょうか、大蔵省の方は、いや、このぐらいだったら十分こなせるんだ、こういうお考えでしょうか。
  60. 中川雅治

    中川(雅)政府委員 まず、十一年度における資金運用部の国債引受予定額は二兆八千億円ということでございまして、十年度当初予定額十二兆四百五十九億円に比べて九兆二千四百五十九億円の減少になっております。これは、今先生指摘のとおり、昨年四月の総合経済対策及び十一月の緊急経済対策の実施のための財政投融資の大幅な追加に加え、十一年度の財政投融資計画におきましても、現下の厳しい社会経済情勢に対応するため、景気回復に十分配慮して財政投融資資金の活用を図ることとしたところでございます。このように、資金運用部に対して相当規模の資金需要が生じていることや、郵便貯金等の原資の動向等を総合的に勘案して、このような引受額としたところでございます。  それで、今のお尋ねの、民間の消化がふえているわけでございますけれども、この点につきましては、シンジケート団を初め市場関係者の方々に、十一年度におきます発行額、また、どういった年限のものを幾らというようなことにつきまして御了解をいただいております。したがいまして、十一年度の発行につきましては、私どもといたしましては、円滑な消化が図られる。もちろん、その時々の市場のニーズや市場の実勢に即した適切な発行条件を設定するなど、いろいろ工夫をしていかなければならないことは当然でございますけれども発行、消化について、私ども、不安は持っておりません。
  61. 仙谷由人

    仙谷委員 まさに、金利の点は別にしてというのがただし書きでつくんだろうと思うんですね。  そこで、金融監督庁長官にも来ていただきましたが、現在、日本の都銀、長信銀あるいは地方銀行国債の保有、どのぐらい持っていますか。そして、現時点で、長期金利上昇がもたらす日本の都銀を初めとする金融機関の資産の劣化というふうなことを何かお考えでしょうか。いかがですか。
  62. 日野正晴

    日野政府委員 お答えいたします。  都銀、地銀の国債保有状況を、一番最近の決算期である昨年の九月期の残高、これは簿価で申し上げますと、都銀の九行の合計で十一兆八千二百一億円ございます。また、地銀六十四行の合計では十兆二千十四億円ございます。七十三行合計で、二十二兆二百十六億円というふうになっております。  お尋ねの最近の債券価格の下落の影響につきましては、全国銀行のほとんどが長期保有の有価証券ということで、国債等の債券の評価を原価法で行っておりますので、価格の下落そのものが銀行の決算に直ちに影響することはないというふうに思われます。ただ、一方で、いわゆる含み益の減少などを通じまして、銀行の体力の低下要因となることは否定できないというふうに考えております。  それでは最近の含み損あるいは含み益の状況はどうであるかということでございますが、これは、先ほど申し上げましたのは昨年の九月期の中間決算の状況でございまして、その後の状況につきましては現在ヒアリングを行っているところでございますが、いずれにいたしましても、国債等の債券の価格の下落が銀行経営に及ぼす影響につきましては、銀行監督当局として注意深く見守っていきたいというふうに考えているところでございます。
  63. 仙谷由人

    仙谷委員 個別の銀行名をこの場で出すことを控えますけれども、一兆円を超えて二兆円に近くなる金融機関というのも相当あるわけですね。それで、理財局の方に確認をいたしましたら、細かいところは諸説いろいろあるんでしょうが、長期金利が、国債金利が約一%上下すれば、一%で八円ぐらいは評価益が出たり、あるいは評価損になったり、八円ぐらいは債券価格として動くんではないかというお話を伺うわけであります。  これはいろいろな見方があるんでしょうけれども、一兆円の国債を持っている銀行が、一%長期金利が動いたときに、百円で八円としますと、一兆円だったら八百億円ふえたり減ったりするわけですよ。八百億というのは、この間金融問題をやってきて、小さいようで極めて大きい額ですね。つまり、日本債券信用銀行が、また別のところで問題になりますけれども、九七年の四月一日から奉加帳を回すその前提の自己資本は一千億弱ですから、九百九十八億だったですか、つまり、もし一兆円の債券を持っておる銀行が一%金利上昇しただけで八百億円含み資産が吹き飛ぶというのは、都市銀行といえどもそんなに小さい金額ではないと私は思うんですね。  そして、報道等を見ますと、そこで含み損が出始めたから益の出ているアメリカ国債日本の金融機関が売り始めた、それを気にしたアメリカの財務当局がそんなことをさせないように何かいい手がないかと考えついたのが日銀国債引き受けだ、こういう筋書きじゃないかと私は思うんですね。  それで、銀行も、株式の含み益を相当出してしまって、債券の含み益の益出しでしのいできた部分があったようでございますけれども、ここへ来て、日野長官も率直にお認めいただきましたように、ますますいいところまで苦しくなっている、そういう状況があるのではないだろうかと思います。  経済企画庁、企業の方は、事業会社の方ですが、あるいは一般的な経済成長でもいいわけですが、長期金利が一%上がればどのぐらい経済成長率を押し下げますか。
  64. 河出英治

    ○河出政府委員 現在の長期金利の動向が一時的なものなのか、あるいはもう少し趨勢的なものなのか、これはまだ判断することが困難でございますので、もう少しそれを見きわめることが重要であろうと思っておりますが、仮にこの長期金利上昇長期的、趨勢的なものというふうに仮定をいたしますと、定量的な効果を申し上げることはなかなか難しいわけでございますけれども、一般的に申し上げますと、やがて、預金金利上昇ということによって個人の消費拡大させる面もあるわけでございますけれども、一方で、設備投資あるいは住宅投資といったものを抑制する、あるいは利払い増加を通じた企業業績の悪化、こういったマイナスの影響が出てくるということも懸念されるわけでございます。  いずれにしても、こういった影響が実体経済にどういう影響を及ぼしていくかということにつきまして、今後、鋭意調査検討に努めていきたいというふうに思っております。
  65. 仙谷由人

    仙谷委員 民間の、シンクタンクというんですか、研究所なんかの試算によりますと、一%で大体〇・三%ぐらいGDPの成長率を押し下げるのではないか、こういうふうに出しているんですね。  今まで、長期金利が一%動くことによって、大企業、中堅企業、中小企業、その企業の利益がどのぐらい動くか試算をされておるということはございますか。
  66. 新保生二

    ○新保政府委員 長期金利に連動する負債、具体的には社債とか金融機関の固定金利による借入金ですけれども、こういうものの金利負担が増加しますので、企業収益を圧迫するということは間違いありません。ただし、企業収益に与える短期的な影響というのは比較的限定されるのではないかというふうに思っております。  その理由は三つございまして、一つは、企業の長期負債の借り入れの期日が一斉に来るわけではないわけで、何分の一かずつ借りかえられるわけですから、直ちに影響が出るわけでないということが一つ。それから二番目は、長期金利に連動する社債とか金融機関からの固定金利による借り入れの割合はさほど高くないということがございます。それから三番目には、固定金利を借りかえる際に、企業は、短期金利の方が安いということで変動借り入れを選択するという可能性もありますので、短期的にはそれほど直ちに大きな影響があるということではないというふうに思っております。
  67. 仙谷由人

    仙谷委員 全産業の有利子負債というのは約五百五十兆円ぐらいじゃないでしょうかね。それで、一%金利上昇すると、その分だけで一年間で約五兆五千億ぐらいは負担増になる。反対に、受取利息も当然のことながら発生しますから、それを二兆ぐらいと見ましょうか。そうすると、三兆ぐらい利子の支払いは増加していかざるを得ないということになるんじゃないですかね。そうすると、全産業的に見ると、今、日本の全産業の経常利益二十三兆ぐらいですから、ここで利払いが三兆ぐらいふえるということは、一〇%以上マイナスになるということに理論上はなるんじゃないですか。一%長期金利が上がるということは企業経営にとっては大変厳しいことになる。  民間の、これは証券会社の表でありますが、東証一部上場二百五十社の連結ベースの純利益が、一%金利上昇することで七%利益が押し下げられるということを書いているところがあるんですね。私が先ほど申し上げたのは、経常利益が一〇%以上マイナスになるということを申し上げたわけですが、証券会社のシンクタンクの方は、業務純益が七%ぐらい押し下げられると。これは東証一部上場だけでありますが。  つまり、そのぐらい厳しい話になるということなんじゃないか。〇・五%成長とおっしゃっているけれども、これで〇・三%押し下げられるとすれば、ほとんどなくなるという話でありますから、〇・二%しか残らないという話になりますから、長期金利上昇というのは、今の日本経済にとってプラスに働くよりもマイナスに働く、大変重いテーマになってきているというふうに考えるのですが、いかがですか。
  68. 新保生二

    ○新保政府委員 御指摘のように、今の長期金利の高い水準が長期的に持続しますと、先生が御指摘のように、直接、間接に相当大きな影響が及ぶ可能性がございます。ただし、先ほど御指摘になった収益の影響も、すべての効果が出終わった後でそういう大きな影響になるということでございまして、先ほどから何回も御説明しておりますように、短期的にそれがすぐ出てくるということではございません。
  69. 仙谷由人

    仙谷委員 短期的というのはどの程度のことを考えているのかわかりませんが、今お伺いしたのは、ことしの四月以降のことをお伺いしたのです。ことしの四月以降、来年の三月までというタイムスパンの中で見ると、どうも大変重い課題になってきておるんじゃないか。つまり、財政拡大をして、財政出動をして、三十一兆円の公債発行をして、ディマンドサイドに総需要刺激政策といいましょうか需要創出政策を展開した、その反面で長期金利が上がっていく、帳消しとは言いませんけれども相当減殺されるのではないか、そういう事態に今日本経済は立っておるのではないかということを感じているんですね。その点、いかがですか。
  70. 新保生二

    ○新保政府委員 先ほど調整局長の方からお答えしましたように、現在の長期金利短期的要因を反映しているものか、長期、持続的にそういう水準が定着するのか、そこら辺はまだ十分見きわめをしなきゃいかぬ段階でございます。それが非常に長期化すれば、御指摘のように直接、間接にかなりの影響が及ぶ可能性はございます。
  71. 仙谷由人

    仙谷委員 大蔵大臣にもお伺いしますが、そういう金利上昇というものが必ずしも今の日本経済にとっては成長率を上げるという観点から見ても望ましくない大きい要因だ、こういうふうに私は考えるんです。  さらに、もう一つ重要なことは、金融の世界で、去年の四月ですか、外為法を改正してしまって、資本移動といいますか、お金が自由に海外へ飛び出せるようになった、個人も企業も非常に、みずからの選択によって、選好によってお金を海外に持ち出せるようになってしまったというこのことが、さらに加えてこの長期金利上昇に輪をかけたり、あるいはそこと相まって日本経済の足を引っ張るのではないかという懸念を持っておるんですが、大蔵大臣、いかがでございますか。
  72. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 一般的な図式としては今政府委員が申し上げたことだと思いますけれども、どうも、私が、金利水準が好ましい、好ましくないということを申しますと、殊に債券の場合にはすぐそれが価格に影響する話を申し上げることになってしまうので、大変申し上げにくうございます。  周辺のことを申し上げましたら、為替で申しますと、日米間の金利差が比較的大きい場合には確かにおっしゃるようなことになりやすい。為替の金利差が小さい方が、こっちから向こうへ金が流れるということはむしろないはずでございますから、そういう面がございますし、また、今の日本の企業の設備投資の動きで申しますと、非常に設備投資の意欲は低うございますから、金利によってそれが大変に影響を受けるということではないかもしれない。あれこれ、メリットとデメリットがございますので、殊に余り今の金利水準に触れることは避けたいと思いますので、以上のようなことを申し上げます。
  73. 仙谷由人

    仙谷委員 合成の誤謬なのか流動性のわななのかわかりませんが、いずれにしましても、景気対策として財政出動を行ったことが長期金利上昇をもたらしてしまう、こういう副作用といいましょうか、あるいは非常にパラドキシカルなといいましょうか、こういう事態に今日本は追い込まれていると私は思うんですね。そして、さあ、それにどうしようかというときに、今まで目先の対処を割とお考えになる。日銀国債引き受けなんという話はその最たるものだと思うんですが、何とかこの長期金利を抑えなきゃいかぬ、そのためには日銀に引き受けさせたらいいじゃないかみたいな、こういう議論が起こるんですね。  しかし、考えてみますと、そうではなくて、やはり原因のところをしっかり見て原因を取り除くとか、長期金利上昇をもたらしている原因のところに政策を打つということでなければ、私は、日本経済の相当大きな頭痛の種になってきた長期金利の問題あるいは国債の増発の問題、もっと言えば財政拡大に基づく長期金利の問題ということは解決の方向に向かわないんじゃないかと思うのですね。  何が問題なのか、問題だったのか、改めて考えてみますと、やはり私は完全に、財政構造改革自身については評価はそれほどいたしませんけれども、どこでこの財政の異常な拡大を収束させるのかという、本当のことをやるんだ、やるんだという本当の目標を示していないということにあるんじゃないかと思うんですね。  宮澤大蔵大臣が予算委員会で、まあ、財政再建については二%成長ぐらいになってから考えなきゃ、今は考えるときじゃありません、こうおっしゃいましたね。やはりそれは、むしろマーケットに対するメッセージとしては、相当長い間この三十兆円路線あるいは三十兆プラスアルファの公債発行が続くぞ、このメッセージを与えるんじゃないですか。そのメッセージが伝わった瞬間に長期金利の方に連動をするんじゃないんでしょうか。三年後でも五年後でも、こういうふうに、ここまで財政に規律を持たせるというメッセージをむしろ今与えなければいけないんじゃないかということを考えておるんですが、いかがでございますか。     〔柳本委員長代理退席、委員長着席〕
  74. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 一般的に申しまして、我が国経済がこの苦境を脱出するのはもう容易なことでないということはどなたもおっしゃいますし、国民にもわかっていただいておるわけですけれども、したがって、かなり強い薬を使いますといろいろな副作用があるということ、例えば今の長期金利の問題はひょっとしてその一つであるかもしれません。そういうことを含めて、なかなか容易でないということをおっしゃっているはずなんですけれども、一つ一つの問題はやはり副作用としては好ましくない。しかしそれは、副作用は副作用として処理しながら、かなりドラスチックなことをせざるを得ないというのが全体の話ではないかと私は考えています。  それで、先ほどからおっしゃいますことも私は一理があると、伺って思っているんですが、何年たったら財政再建計画がきちっとできまして、そしてそれに入れると、正直、今積み上げてそういう計算はできないはずでございますから、一つの政治の決意として二年とか三年とか申し上げるのならそれは意味があるかもしれません。ただ、それを数字で証明してみろと言われますと、それはなかなか難しいことだと思いますので、私は、自分の気持ちとしては、なかなか今数字でそれを申し上げられないということを言った方がいいのではないか。お聞きになるお立場によって、いいかげんなことを言われるよりはその方がいいと思われる方と、そう弱気なことを言ってもらっても困るなという方とおられるのかもしれません。その発信の仕方にはいろいろ工夫が要るかもしれないということは一つのなるほど御意見だなと思って今伺っておったところです。
  75. 仙谷由人

    仙谷委員 私も選挙というのを抱えていますから、お上が将来世代のツケで金をつくってきて、つまり国債発行して、じゃぼじゃぼ有権者に降り注ぐようにお金を渡したり公共事業をつくったりすることに真っ向から抵抗するというのは難しいんですよね。これは政治家は難しいです。正直に申します。  しかし、事がここまで来ると、逆回転をし始めた、つまりマーケットがシグナルを出しているんじゃないか。ここはちゃんと経済政策の担当部局は真剣に見なきゃいけないんじゃないでしょうか。  つまり、先ほどから議論になっていますのは、国債発行額の大きさ、それも今度はファイナンスの、要するに金の量との関係で需給バランスが崩れ始めているんじゃないか、こういう議論は割とありますね。そのことも私は相当部分だと思います、金利が上がるというのは。  しかし、それだけではなくて、先ほど申し上げた、あと何年続くかわからないこの三十数兆円国債路線という話そのものが、これはひょっとすればこの国債は返してくれないかもわからない、支払い能力に少々陰りが出てきたのではないか。つまり、償還リスクの発生ということをマーケットの方が考え始めたんではないか、そういうシグナルを今送っておるんではないか、そういうふうに感じるんですね。  もしそうだとすると、これは、市場経済を原則とする我が国では、そのシグナルを非常に真摯に受けとめないと、いや大丈夫だ、日銀に引き受けてもらえば大丈夫だとか、どこかで金をつくれば大丈夫だとかいう議論は成り立たないということに私はなるんじゃないかと思うのです。  つまり、日銀引き受け論も最終的には、基本的にはこれは十年国債であっても六十年償還の話になっているわけですから、一部は償還されるんでしょうけれども日銀の信認が崩れた瞬間にこんなもの紙くずになるかもわからないという思いを抱かせただけで国債の価格は下落を始めるということになると思います。したがいまして、引き受けなどということは、これは経済論的にもあり得ない、あってはならないと私は思うわけであります。  それで、先ほど申し上げましたように、ここは財政当局、そして政治の側からも、財政の規律を早急に打ち立てる、取り戻すということが、日本経済の回復といいましょうか再生にとっても一番重要なことで、今のこのままの予算と公債発行ではむしろ逆の方に動いてしまうというおそれを私は持っているわけでございます。大臣、いかがでございますか。
  76. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 国債というのは金(きん)ではございませんで、借金証文でございますから、借金証文を相手が信頼してくれるかくれないかということは、借金する人の規律があるかないかということにかかる。そういう意味では、出す方が規律を持って出していると考えられなければその価値というものは信頼されないだろう、私もそう思います。
  77. 仙谷由人

    仙谷委員 きょうは、大蔵委員会でございますので、話を少々広げないで国債関連質問をいたしましたが、切りがよろしゅうございますので、きょうはここで終わりたいと思います。  ただ、さらに一点、日本銀行には重ねてお願いをしておきたいのは、政策委員会会合があっても、日本経済、あるいは中長期的といいましょうか、将来のためにも、日本銀行の規律を緩めることがないような決定をお願いいたしまして、質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  78. 村井仁

    村井委員長 午後零時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十五分休憩      ————◇—————     午後零時三十分開議
  79. 村井仁

    村井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。並木正芳君。
  80. 並木正芳

    ○並木委員 公明党・改革クラブの改革クラブの並木正芳です。  連日の答弁で宮澤大臣も大変お疲れのことかと思います。大臣ぐらい日本経済もタフならいいなというふうに思いつつ、順次質問をさせていただきたいと思います。  大臣は、今回の予算編成について、最初からハマの大魔神を登板させたようなものだ、こういうふうにおっしゃっておられたわけです。その意味するところは、ハマの大魔神なら勝利は確実だというところなんですけれども、どうもそうした意味よりも、もう後がない、最後の登板の人というような意味が強く感じられるところです。それだけこの大規模な公債発行財政に及ぼす負担というのは厳しいということであろうかと思います。  先ほどの仙谷委員質問では、こういった公債がどんどんこれからも発行されてしまうんじゃないかというような意味を込めた質問があったわけなんですけれども、ハマの大魔神には失礼ですけれども、ハマの大魔神というのは余りロングリリーフには使わないというようなことでありまして、大臣もそういう意味を込めて、この公債発行というのを極めて一時的な、限定しての公債発行としたい、むしろ、仙谷委員意味とは違うかもしれませんけれども、そういうメッセージじゃないかなと思うんですが、その辺、いかがでしょうか。
  81. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 平成十年度の当初予算では、国債依存率が二〇%であったわけです。これは、まあまあ二〇%であればという率ですが、平成十年度は、しかし、補正をやっておりますうちに最終的には三八・六%までいってしまいました。ところが、平成十一年度は、この間予算を編成してみましたら初めから三七・九%になっていまして、最初から四〇%絡みの、前の年には九回に到達したレベルに最初からどうも国債依存率がなるということで、これは一回から九回みたいな目になっちゃったな、そういう気持ちがありました。容易ならぬことだという気持ちでして、強いて申し上げれば、これはなかなかもう後がないようなことになっているなということを思わず自分で思ったということでございます。
  82. 並木正芳

    ○並木委員 当然でございますけれども、いろいろな方から言われているように、こうした大量の公債発行というのは財政上は極めて不健全であると言えます。それを押しとどめるためには、まずは今後の景気回復、それによるところであるわけですけれども、小渕総理は、今年度の経済成長率プラス〇・五%となると確信する、こういうふうに断言されているところですけれども、再度、宮澤大臣の御見解はいかがかということですね。  それと、正直なところ、これまでいろいろ所得税減税等々あったわけですけれども、なかなか減税効果があらわれてこない。今般四月以降の法人税等の減税効果というのも、即効性に欠けるんじゃないかという経済界の見方もあるわけです。これらの観点を踏まえて、こうした今回の減税効果、これがどの時点であらわれてくると見通されているのか、この辺についてお伺いしたいと思います。
  83. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 〇・五%プラス成長というのは、租税収入を算定いたしますときに名目成長率と弾性値を掛けてつくりますので、もしこの〇・五%の成長マイナスになりますと、また実際そういう経済であれば、租税見積もりは再び歳入欠陥を生むということになりかねない。これは財政にとってもまたもやそれだけの国債発行ということになりますので、この〇・五%のプラス成長というのはそういう意味からも非常に大事でございます。  減税効果、言ってみれば昨年までずっと一年限りの減税をしてまいりましたが、今回は、これはもう一年限りでなくこのベースでしばらくまいりますということで、そういう意味では国民もそういうものとしてとってもらえると思いますし、法人税を下げましたことも、これもいろいろな効果があるだろう。一般的に、殊に住宅が大きゅうございますから、住宅を合わせますと九兆円余りの減税というのは、やはり何といってもそれは消費に何がしかの影響、殊に住宅はかなりの影響があるかと思いますが、ではないかと期待をしておるところです。
  84. 並木正芳

    ○並木委員 今般、二月三日、四日に全国財務局長会議ということが行われたわけですけれども、この中でも、個人消費あるいは民間設備投資などが軒並み低調だ、その上雇用情勢も一段と厳しい、こういう報告が相次いだと言われているわけです。  この局長会議における経済動向や見通しについておおむねどのような状況であったのか、この辺を御報告いただければと思います。
  85. 武藤敏郎

    ○武藤政府委員 全国財務局長会議におきます報告についてのお尋ねでございますが、地域によりまして情勢は区々ではございますけれども、概括的に主要項目ごとに申し上げれば次のようになろうかと思います。  まず個人消費でございますけれども、一部地域では底がたい動きも見られるものの、総じて見れば低調である。それから、住宅建設も全地域で前年を下回っている。設備投資は十年度は前年を下回る見込みでありますが、特に中小企業が大幅に減少する見込みということで、大変厳しい認識でございます。ただ、公共事業は御承知のようなことでございますので、前年を上回っているということでございました。  そういうことで、生産活動は総じて見れば低い水準にありますし、雇用情勢も一段と厳しいという認識でございます。  ただ、以上が重要項目別に見た動向でございますけれども、さらに概括して申し上げますと、前回、昨年の九月、秋に財務局長会議があったときには、情勢が悪い方向に向かっている、厳しくなっているという報告が半数以上の財務局から上がってまいりましたが、今回は情勢が悪くなっているというのは一つの局のみで、そういう意味では、もちろん厳しい状況が続いているという認識でございますけれども、悪化しているという認識は大変少なかったように思います。  一方、改善の動きが見られるというようなところが、例えば沖縄における個人消費が底がたい動きを示しているとか、北海道は大変厳しい状況という実情がありますけれども、失業率や有効求人倍率が改善しつつあるといったようなことで、一部に変化の兆しが見られるといったような報告もございました。
  86. 並木正芳

    ○並木委員 今の点なんですけれども、貸し渋りとか、あるいは貸しはがしというんでしょうか、資金回収とか、そういうことについてこれからむしろ本格化するんだという見方もあったりするわけです。銀行関係者に我々も聞きますと、貸したくても貸せないものに貸せば不良債権になりかねないというような声も、これは全部ではありませんけれども出ています。その辺のこの実態についてとか、そういう意見交換とかはあったんでしょうか。
  87. 武藤敏郎

    ○武藤政府委員 金融に関します状況につきましては、金融監督庁の方におきまして、やはり財務局が金融監督庁の出先として行動する部分もございますので、そちらの方におきましていろいろ議論がなされたというふうに理解しておりますけれども、私どもが財務局長会議で把握した限りにおきましても、大変厳しい状況にあるという認識でございますが、ただ、御承知のとおり、信用保証協会の保証つき融資というのが大変順調に伸びておりますし、政府系金融機関の融資も増加しているということがございます。ただ、資金需要そのものは、運転資金、設備資金ともに総じて低調であるというような報告であったわけでございます。
  88. 並木正芳

    ○並木委員 まだなかなかその見通しができないような、言い方を変えれば、大変不安定な厳しい状況ということだったようです。  景気対策ということで、自由党がかねてから主張されていた、消費税を一たん引き下げてその後漸増していく、こういう方式についてなんですけれども、自民党、自由党の連立が今できたわけですけれども、これについては今後どのように検討されていくのでしょうか。この点について、意見も含めて宮澤大臣の御見解を伺えればと思います。
  89. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 何と申しますか、最終的な姿は、今消費税を下げるということもこれは簡単なことではないので、消費税というものを将来、年金であるとか老人医療であるとか介護であるとか、そういう目的にこの使用を限定いたしますということを予算総則に明記したわけでございます。  これは、自由党において、この税を国民に深く理解を求めるためには、直間比率といったような議論ではもはやなかなか国民は受け入れてくれないだろう、むしろ今のようなことで、そういう目的に使うんだ、そういうことでないと将来この税は国民の理解を得ることが困難だろう、そういう趣旨の御主張がありまして、私ども、それはまさに、いずれにしてもそういう三つの福祉関連財政需要は大きくなるばかりでございますから、あるいは消費税だけでカバーできないかもしれないというようなことすら考えられますので、そこのところを結びつけるということは国民の理解に資するだろうということで、結論はそういうことになったわけでございます。  余り理論的な結論ではありませんけれども、気持ちとして、この税金は将来そういうことに使うという、直間比率の話ではないんですよ、こういう自由党の御主張というものは私どもも理解をした、こういうことであったわけです。
  90. 並木正芳

    ○並木委員 今のお答えでも、消費税を下げるということは非常に困難だというようなことかもしれませんけれども景気が非常に閉塞感の中にある、そういう意味でのカンフル剤ということでは、やはりショッキングなことがなされなければならない。  そういう意味で、直間比率是正とか将来の安定的な税収とか、そういうものは我々も認めてきておるところでございますけれども、この際、消費税を五年ぐらい凍結してはどうか、これも一案かと思いますけれども、この辺についてはお答えは想像できますけれども、いかがでしょうか。
  91. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御存じのような財政事情でございますし、かたがた、今の財政の中では将来、殊に老齢化、少子化ということがございますと、財政の需要は大きくなる要素がかなりございますので、消費税も、国民が歓迎してくださっているとは思いませんけれども、ある程度定着し始めておる、地方のこともございます、と考えますと、この際、何年であろうとこれをやめるというようなことは、やはりにわかには賛成できないところでございます。
  92. 並木正芳

    ○並木委員 我々は、一つの案ですけれども、そういったかなり思い切った政策を打っていく必要があるんじゃないかということで、一応申し上げておきます。  ところで、いろいろ議論があったところですけれどもアメリカのルービン財務長官が、日本財政出動は限界に達している、そういう見方から、日本銀行国債引き受けなどによって通貨供給量の増大を目指すべきだ、これはスイスのダボスで開かれた世界経済フォーラムで日本側に非公式に要請した、こういう報道があるわけです。  これは大臣は、そんなことを言われるはずがないというようなお話も前にあったわけですけれども、非公式という見解がかなりあいまいなところもあるのですけれども、この辺の事実関係、それをまず確認しておきたいと思います。
  93. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ルービン氏のその話が伝わりましたときに、私は、言ったという報道はたくさんあるけれども、聞いたという人がいないので、だれにどこで言ったんだろうかというようなことを言っておったわけですが、結局、財務省自身がそういうことを言ったのではないという否定がありまして、それでその点は了解したわけです。  恐らく、昨年以来、ルービンと私との間のいろいろなやりとりで、彼は当初、日本政府の財政的な対応が非常に十分でないと。それは、ちょうど彼は、一昨年の消費税の増徴それから医療費が上がるとか、いわゆる九兆円という引き上げ、吸い上げ、それが日本景気を悪くしたと考えている人間でございましたから、財政が不十分だ不十分だと言っておったわけです。それで、昨年の九月以来、私といろいろ話があって、結局、財政の方は、金融機関の処理を含めましてなるほどなかなかやったなと、そこのところがまず前段にきっとありまして、ここはそれでいいんだが、そうすると今度は国債をどう処理するのかな、彼はウォールストリートの人でございますから、そういうふうに考えたのだろう。想像すれば、きっとそういうことを思ったかもしれない。ただし、今のような日銀引き受け云々ということは言ったことはない、こういうことでございました。
  94. 並木正芳

    ○並木委員 言ったことがないということで、そういった意味では、それをきっかけにしてこの議論が始まったというのは、ある意味ではちょっと違うんじゃないかということかもしれませんけれども、現実の公債大量発行を見ても、そういうものが現実化しつつあるんじゃないかというような意見が多く見られるわけです。  宮澤大臣は否定的な見解を示されておられます。ただし、報道等によれば、官房長官は積極的な検討が必要だというようなことも言われている。政府部内でもちょっと波長が違っているというようなことも考えられます。また、つい先日、七日のNHKの「日曜討論」で、堺屋経済企画庁長官が、すぐに日銀引き受けということではなく、市場での既発国債の買いオペレーション拡大など、幅広い手段が考えられるべきだというふうに述べられたわけであります。  実際には、都市銀行や生命保険会社など大手機関投資家から損失覚悟の売り注文がとまらずに、今のところ三月決算期に向けてということもあろうかと思いますけれども、買い手そのものは一部の投資家に限られている、こういう状態ではもう下値のめどが見えなくなってきた、こういう声さえ、悲鳴さえ出てきたという状況だといいますけれども、この辺について、政府部内の見解というのが、恐らくこれからの見通しも含めてのものを含むので、見解がややずれるのかと思いますけれども、三月決算期を過ぎれば売りどまる、こういう見方でいるんでしょうか。あるいは、今後も国債の買い手というのは余り期待できない状況だと見るわけですけれども、その辺についていかがでしょうか。
  95. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 基本的に、私はこれはマーケットだと思っております。国債を売るなら何を買うのかといったような、例えばそういう意味での株式との関連であるとか、その他の投資との関連であるとかいうことでございますし、随分売りに出ているといっても、買う人があるから売れるわけでございますので、基本的には私はマーケットだと思っております。  ただ、私どもかなり大きな国債発行者になりましたので、やはり発行者としてのいろいろな心構え、注意というものが私は以前よりもっと入り用だろうというふうに、それは思っております。  それから、日銀引き受け云々のことは、恐らく官房長官は、市場からの買い入れということを検討したらいいということを言っていらっしゃいますが、多分、多くの専門家が日銀との関連については否定的であるが、国民のかなりの方は、今しかし日本インフレになるはずはないので、むしろデフレから脱却するというのが命題であろうから、そういう考えも一つじゃないかというふうに思っていらっしゃる国民はかなりおられるだろう。そういう声というものはやはり日銀で、政策委員会等々で検討してみてくれてはどうかなというのが、官房長官はああいう立場ですから、やはり国民の考えていることを代弁し、そしてそれへの答えを求めるという役目を持っていらっしゃいますので、そういう意味でああいう話をしておられるのかなと私は思っております。今政府部内で、もとより日銀引き受けで国債を出したいという意見は、私の知っている限りございません。  次に、しかし日銀オペレーションということは考えられるではないか、これはあるようでございますけれども、結局集約していきますと、政策委員会等々を通じて日銀がよくいろいろな声を聞いてほしい、そういうようなところに集約されていくのではないかと思っております。
  96. 並木正芳

    ○並木委員 堺屋長官の言でも、すぐにはというような前置きがあって、現状では日銀の買いオペレーション拡大がということですけれども、これはもう当然ながら新発国債の引き受けにつながるということが十分あり得てくるのじゃないかと思いますけれども、いかがでしょうか。  それと、今大臣がおっしゃったことですけれども、いわゆるデフレスパイラルに入った、そういうふうに見る学者の中では、いわゆる調整インフレというのでしょうけれども、軽いインフレ誘導策、それも必要だという意見があるわけですけれども、軽いインフレだけでうまくできるのかなと。今後の日本デフレ傾向を見ればそれも可能かなというような感じもするわけですけれども、その辺について再度見解をお聞かせいただきたいと思います。
  97. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ポール・クルーグマンでありますとか、せんだってフィナンシャル・タイムズが掲げました社説などを見ますと、考え方は、今並木委員がちょっと御紹介されましたように、日本がどうやってデフレから脱却するかという方法は、政府の財政赤字を要するに通貨増発でカバーすればいいのである、その方法は日銀がすぐ国債を引き受ければすぐそうなる、通貨増発すれば、何と申しますか、デフレでなくなるであろうし、為替も円が安くなる、こういう話なんでございます。  しかし、私は、デフレというものが直っていくとすれば、それだけ国民の消費がふえて、そして在庫が減って、やがては生産に結ぶ、そういう道が本来の道であって、お札を少したくさん出したから全体インフレになって、みんなが物を買ってといったような、大きな経済ではそんなわけにはいかないだろうと私は考えております。
  98. 並木正芳

    ○並木委員 きょうは日銀の方、いらっしゃっていないですね。では結構です。ちょっと通告のあれが違ったのかと思いますけれども。  日銀の方でも十二日に政策委員会が開かれると。その前に、これはいいか悪いかわかりませんけれども、総裁初め日銀は現在引き受けしないというようなことをおっしゃられているようで、十二日の政策委員会でもそう決まるのじゃないか。中央銀行の独立性という点から見ても、日銀判断というのをひとつ我々は尊重しようかなというふうに思っております。  その辺については、きょうはおいでにならないということなので結構ですけれども国債の引き受けということで、これは一案であるわけですけれども、だんだん引き受け手が少なくなるというようなことからすると、相続税を免除する、減免する、こういう無利子国債発行したらどうかなと。相続税対策で苦慮されている資産家層というのもいらっしゃると思うんですけれども、その辺に国債を引き受けてもらうというようなことを検討されてはいかがかというような案も、これはある意味で素人意見かもしれませんけれども、持っているんですけれども、大臣、この辺はいかがでしょうか。
  99. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 ただいま、相続税の減免を伴う無利子国債発行してみてはどうかというお話がございました。  しかし、よく考えてみますと、確かに利払い費といった形での一般会計の負担は減るわけですけれども、その分、相続税収の減という形で負担のつけかえを図ることになるわけでございます。しかも、それではどういう方がこの無利子国債を買うかといいますと、利払い費で減る利益よりも相続税負担でまける額の方が多いという方が選べることになりますので、実は、財政負担の軽減額を、国債で減少しようという、それを上回る税収減となりまして、かえって財政再建に反するのではないかという問題もあろうかと思います。  また、税制面からいたしますと、ごく一部の人のみを優遇する税制になりはしないかという点も忘れられない点かと思います。  そういうことからいたしますと、この無利子国債発行することは適当でないだろうというふうに思っているわけでございます。  なお、実はフランスで、ピネーという大蔵大臣でございますが、そのときに二回このような国債発行されたことを承知しております。一回はちょうどインドシナ戦争、二回目がアルジェリア動乱というふうに承知しておりますが、今申し上げましたように、購入するのが高所得者に限られまして、国民の間で不公平との不満が高まりまして、結局、強制借りかえをせざるを得なかったというようなこともございます。  したがいまして、フランスでもその後このような国債発行されていないわけでございます。
  100. 並木正芳

    ○並木委員 メリット、デメリットというのはあろうかと思います。メリットがなければ無利子国債を引き受ける人もいないというようなことかとも思いますけれども、また、今の不公平感というのもわかったわけですけれども、あちら立てればこちら立たずというのが財政の苦しい事情、よくそれもまたわかりました。ただ、いろいろな案をこれから考えていく必要があるのじゃないか、これについては我々ももっと勉強させていただきたいと思いますけれども、次に移りたいと思います。  国債増発に伴うと当然言える長期金利上昇、これも大変論議になっているところですけれども、大臣はこれまで、一%程度の金利、これはむしろ異常なんだ、安過ぎるというふうにおっしゃっておられるわけです。現在二%台半ば、こういったところであるわけですけれども、今後もこれが上昇傾向にあると、やはり相場全体の足を引っ張ったり企業収益を圧迫していく、こういうことが予期されるわけです。  この辺は難しいところだと思いますけれども、どの程度の金利まで現在、国際的にもいろいろありますけれども、容認可能というような判断なんでしょうか。その辺をお聞かせいただければと思います。
  101. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 長期金利のことを申しますと、すぐその裏側は国債価格、国債の値段ということになりますもので、具体的に申し上げますといろいろ問題がございますので、それは申し上げませんけれども、これは結局国債価格の話を申し上げるのと同じことになりますから、私は、市場なんだというふうに考えておるわけでございます。  けさほども申し上げておりましたが、昨年の十一月の三十日、利回りは一・〇五五でございますから、わずか十一月の末でございますので、これを説明しろと言われても難しいし、これが高いか低いかと言われても難しいような、そういう、まあマーケットなんだろうと考えております。  ただ、私どもは、債券の多額な発行者でございますから、したがって、その発行者としてのいろいろな配慮、心構えというものは必要だというふうに今度のことでも学んでおりますが、要は、何かの思惑か何かで乱高下をしたりすることは、やはりいろいろな意味でよくございません。自然に形成されていくことであれば、それはもうマーケットでございますから特に口を出すべきではないと思いますけれども、今申しましたような、昨年の十一月の末と今といったようなことを申し上げますと、やはり基本的にはマーケットで、そのマーケットの動きに対して何か急激な変動を与えるとか、あるいは大変に逆らうとか、そういったようなことは余り意味がないのではないか。しかし、発行者としては十分いろいろ注意をしなければならないということは学んでおります。
  102. 並木正芳

    ○並木委員 これから国際会議等もいろいろ開かれると思いますけれども日本財政赤字問題というのは、これ以上長期金利上昇とかあるいは国債の信用低下、こういうものを引き起こすならば、大変国際的にも、これは大臣も望むところではないと思いますけれども日本がやり玉に上がってくるんじゃないか。G7とかIMFの場でこれにどういうふうにこたえていくのかというところが非常に大きな興味のあるところなんですけれども、この辺についての見通しというか、国際社会の場でどういうメッセージをしていくのかですね。
  103. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 G7では、むしろ日本がこの経済危機をうまく脱却できるかということに彼らとしての自分たちの関心もございますものですから、それがどういう方法によるかというようなことは第二義的なものであろうと思います。むしろ、国債発行し過ぎたので金利が上がって不況脱出が難しくなったということであればまた議論がございますでしょうけれども、そうでなければ、どういう方法によろうと、殊に日本金利が非常に低いということはある意味で彼らにとっては不安材料でもございますから、余りそういう議論は今までございませんでしたし、私としては、いや、不況脱出の、まずまず順調な道を進んでいるんだという説明ができればよろしいんだというふうに思っております。
  104. 並木正芳

    ○並木委員 まさにその不況脱出の説明が、あるいは先ほどから論議のとおり、そうした景気回復になれば当然赤字の返せるめどというのもつけられるというような展望も出てくるわけですから、当然だと思いますけれども、その辺を国際会議でこれからどのように大臣が発言されていくか、見させていただきたいと思います。大変厳しい情勢に立たされるということも感じるわけですけれども、ぜひ頑張っていただきたいというふうにも思います。  ところで、小渕総理はもう一方で、二〇〇〇年度までには経済を再生し、安定的成長軌道に戻す、こういうふうにも言明されているわけです。ところが、具体的な経済再生ビジョンというのは実際には明示されない。まあ、前向きに行こうよというようなところなんでしょうけれども、いわゆる大いなる悲観主義から脱して建設的楽観主義に立つというところのメッセージなんでしょうけれども、やはり具体性に乏しいと、これまでの前例からして、やはり国民も、国際的にも、どうにも信用がなかなかないというように思うわけです。  現状でも、まだまだ混乱から立ち直っていない金融、あるいは雇用調整、リストラに向かって失業が非常に、今ちょっと横ばいになりましたけれども、ちょっと元気が出てこない民間、さらにはこうした悪化する国家財政、こういう不安ばかりが感じられるわけですけれども、その辺の不安を払拭するほど二〇〇〇年度に向けて経済再生というビジョンが描けるのか。小渕総理とは別に、宮澤大臣、経済専門家としていかがなんでしょうか。
  105. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 小渕総理も私もそうでございますけれども、仮に平成十一年度で〇・五%でもプラス成長が結果としてできれば、恐らく平成十二年というものは、そのベースの上に立って、今から一年ございますから、もう少し落ちついた経済運営ができるんではないか。この十一年がいわばそれに入る助走の時期で、十二年になれば落ちついた、やや成長サイクルに入る、こういうことを考えていらっしゃると思います。私もそうですが。  それで、まず私どもの希望としては、この予算が遅くならずに成立して施行ができるということが、非常に大きな、ほとんど決定的な影響を持つと思います。  それから、ただいま進行中の金融機関の公的資金導入が、もうかなり煮詰まっておりますから、今月の半ばごろにはもう行き先が見えるはずでございまして、まあまあ再生委員会、金融監督庁あるいは各銀行との間で合意ができる、それが第二に大事なことと思います。  それから第三には、何分にも決算月でございますから、一応各企業の今期の決算は悪いと考えなければなりません。目先がよくなっていても、過去の累積でございますから、それは悪いと考えなければなりませんので、そこから雇用というものが悪化しないように、どうしても経営者としてはもう我慢し切れないという時期が近づいているという感じを持たれるでしょうから、雇用が崩れないように、殊に、全体の失業率よりも有効求人倍率が少しでもいい方に向かったということでありますと、これが大きいと思っておりますけれども。  雇用のことは政府も一兆円準備をしておりますが、これはしかしどうしてもミスマッチがありやすいので、雇用からはもう余り暗い話が出てこない、このぐらいのことがございますと平成十一年度の〇・五%というのはそんなに手の届かない話ではないような思いがしていまして、それができましたら次の順調なプラス成長サイクルに入れるんではないか、こういうふうに思っております。
  106. 並木正芳

    ○並木委員 今のお話にも出ましたけれども、まさに大きないわゆる困難から立ち直れない金融、そういう中での大きな措置が今なされようというふうにされているわけです。  金融早期健全化法に基づくいわゆる大手銀行への公的資金導入ということですけれども金融再生委員会はこのたび第一段階の審査を終えて第二段階、いよいよ詰めに入ったというところですけれども、週明けには資金導入計画が内定する、こういうふうに報道ではどんどん先走って言っているわけです。  昨年三月にはやはり公的資金導入、これがその後、長銀あるいは日債銀、こういう破綻を迎えた、こういったところで大いに問題があったというようなこともあるわけですけれども、こういったところの反省といいますか、それを踏まえて、現状でどの程度の資金注入をするというふうなことになっていくのか、その辺について金融再生委員会のお話をお聞かせいただきたいと思います。
  107. 森昭治

    ○森(昭)政府委員 お答え申し上げます。  公的資金による資本増強についてのお尋ねですが、金融再生委員会といたしましては、先般定めました基本方針にありますとおり、少なくとも大手行につきましては本年三月期におきまして不良債権問題の処理を基本的に終了させるとともに、有価証券の含み損をも考慮した資本力を持たせることを目指しております。このため、申請行に対しまして、思い切った業務再構築、経営合理化等を行う場合には資本増強の規模や条件におきまして優遇を行うことを明確にしておりまして、各行とも現在、こうした当委員会考え方を踏まえて、リストラ、収益向上策等を盛り込んだ経営健全化計画を出してきております。  現在、先生指摘のとおり、予備審査の最終段階に入っておりまして、最終的にどの程度の資本増強の規模となるかは現時点では予断を持って申し上げられないことを御理解いただきたいと思います。  なお、公的資金の注入後、注入された資金が毀損される事態はもう許されないことはよく認識しておりますが、今回の資本増強の結果、各申請行の競争力、収益力が向上いたしまして、将来、市場への売却によりまして投下資本の回収が可能となると考えております。
  108. 並木正芳

    ○並木委員 この辺については重々承知されてやられているんでしょうけれども、いわゆる長銀、日債銀などの昨年の三月では破綻、それによって、実際上債務超過がその時点であったんだというような話、あるいは自分の子会社に移してあった、だから債務超過ではないんだとか、そういう議論もあるわけですけれども、今回の資本注入に関してはそのような点も十分に踏まえてという判断で行っているということでよろしいんでしょうね。その辺についての内部の一つの方針といいますか、その辺もお聞かせいただければと思います。
  109. 森昭治

    ○森(昭)政府委員 先生指摘の点でございますけれども、今回の資本注入に当たりましての審査の際には、金融監督庁の各行への検査結果というものを十分踏まえて審査しております。
  110. 並木正芳

    ○並木委員 また、今のお話にも少し出たわけなんですけれども、いわゆる金融立て直しということになると、銀行等に対してリストラということを迫っているわけです。我々も当然、バブル期に膨張し過ぎたものを再編していくというかスリム化していく、これは必要というふうにも考えているわけではあります。  この金融界の再編によっていわゆるリストラされる、そういうことで余剰人員というのがたくさん出てくると思いますけれども、それはどの程度と見込んでいるのか。そして、この人員をどのように今度は再雇用というか吸収していくのか。この辺については、総合的な、金融界だけの雇用ではないのかもしれませんけれども、どういう見通しを持っているのか、伺いたいと思います。
  111. 森昭治

    ○森(昭)政府委員 現在、日本の金融機関の経営の合理化、効率化を図るということは喫緊の課題であると存じておりまして、今回の公的資金による資本増強を通じまして経営の合理化、効率化ということが一層促進されることを期待しております。  ただ、こうしたことは、基本的には市場規律と自己責任原則のもとで各行がみずから決めるべき事項であることは言うまでもございません。先生指摘のとおり、その結果としてリストラによる余剰人員という問題が一時的には生じる場合もあろうかと存じますが、それは今後、金融システムに対する内外の信頼が回復いたし、また既に実施に移されております金融システム改革がさらに進展することによりまして、金融業全体といたしましては十分な雇用吸収力を持つことになるものと期待しております。
  112. 並木正芳

    ○並木委員 そういう再編の中で新たな雇用が生まれていくということになればいいと思いますけれども。  現在、別の観点で、これは金融界だけのリストラということじゃないですけれども、全体的なリストラによって恐らく失業率が今後一〇%を超えるんだ、こういうような金融機関試算だというような報道がありました。一〇%を超えるということになると、大変景気の足を引っ張り、財政当局としても捨ておけないということになろうかと思いますけれども、もちろん、再雇用等については労働省管轄というようなことかもしれませんけれども財政当局としては、こういうことはないだろう、再編の中で恐らく違った形で、あるいは新たなリーディング産業の発達によって雇用がされていくと、その辺ではどの程度の見方をされているのか。その辺、もし見解がありましたら。
  113. 武藤敏郎

    ○武藤政府委員 御指摘の雇用の問題でございますけれども、十二月の完全失業率が四・三%、有効求人倍率も〇・四八倍ということで、大変厳しい状況になるのは御指摘のとおりでございます。  私どもも、この企業の収益状況あるいは雇用情勢が厳しい状況のもとで雇用を維持拡大できるかどうか、これが今後の景気動向を左右する重要なポイントの一つという認識を持っておるわけでございます。  こういう考え方で、緊急経済対策におきましては総事業規模十七兆円の事業を緊急に実施いたしまして、百万人規模の雇用創出、安定を目指したところであります。  また、その一環といたしまして、早急な雇用の創出及びその安定を目指しまして雇用活性化総合プランというのを実施することといたしまして、十年度の三次補正予算及び平成十一年度の予算におきまして、約一兆円の雇用創出、安定に全力を挙げて取り組むようなそういう予算の確保を行ったところでございます。  こういうことで、雇用情勢につきましては今後とも十分注視してまいりたいというふうに考えております。
  114. 並木正芳

    ○並木委員 そうした予算措置にひとつ私は大変賛意を表するところですけれども、ぜひしっかりと動向を見ながらやっていただきたいと思います。  ところで、今後経済成長軌道に戻ってくるんではないか、〇・五%の十一年度の期待を込めておっしゃられておるわけですけれども、戻ったとしても、これだけ大きなGDP規模とかになりますと、安定成長というのは恐らく二%程度だというふうにも言われているわけです。ですから、今度はその辺での税収ということになると、どのぐらい確保できるのかなということなんですけれども、安定成長に戻った場合に税の増収をどのぐらいに見ておられるのでしょうか。
  115. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 一般的に申し上げますと、経済成長率が高くなればそれだけ税収も多く入ってくるだろうということは言えるだろうと思います。  ただ、現実にどう税収見積もりをやっておるかといいますと、予算編成時までの課税実績がどうか、あるいはその指標にいたしましても、消費がどうなるか、雇用がどうなるか等々、細かい指標を基礎に個別税目ごとに積み上げを行っておりまして、二%でいくか幾らかということに対してはなかなかお答えしにくいわけでございます。  ただ、中期的な財政運営検討する手がかりといたしまして、中期的な財政の姿を示す観点から税収についても機械的な計算を行っておりますが、この中期財政試算では、名目で三・五%と一・七五%の計算をしているわけでございますが、その場合、これまでの傾向を勘案いたしまして弾性値一・一、ただこれは大変機械的なものでございますので、二%でということで具体的な数字を申し上げることはなかなか困難かと思っております。
  116. 並木正芳

    ○並木委員 その数値というのはそのとおりかなと思いますけれども、要は、私としては、今般三十一兆五百億円ぐらいですか、これは一応枠ですけれども、恐らくそれがほとんどそうなるのかなというふうに思うわけですけれども、こうした過去最大国債発行で、十一年度末の国、地方を合わせた長期債務残高というのが約六百兆円、つまりGDPの十二倍にもなると言われております。つまり、税収増が幾らというのは別にしても、税収増でとても吸収できる額じゃないというふうに思うわけです。  昨年、財政構造改革法を凍結するに当たって、宮澤大臣は、精神は残る、だけれども実際には限りなく死に近いんだともいうような意味の話もされたわけですけれども、その後、財政再建の手だてというのが逆に言うと失われてしまったのかな、手つかずのありさまなのかなという気もするわけです。  現在、財政と金融の完全分離、こういうことが論じられまして、大蔵省内では、権限縮小、こういうことで、その事態に抵抗したりあるいは自信を失ったりというような感がするわけであります。けれども、今こそ、いわゆる本当の意味の、真の構造改革に向けて、財政の手綱さばきというようなことが必要とされ、大蔵省の真価が問われる、こういうときはないんじゃないかなというふうに私は感じているわけです。  いろいろな予算方針でも配慮はされていることだと思いますけれども、まだまだ省益優先の、省庁枠ごとの配分による予算編成、あるいは以前は、これは前に行われましたけれども失敗に終わりました政策的経費の一律削減を求めたマイナスシーリング、この一律のカットですね。これは、いわゆる財政均衡という収支じりの問題に還元して、赤字削減を目的化して、そういう意味で、歳出の額としては減らすという発想にはなったわけですけれども、実際上、既得権益そのものは残って、いわゆる本当の歳出構造改革にはつながっていかなかった、私はこういうふうに思うところなんです。  危機だと言われて、国民にも大いに納得がいく今でこそ、ぜひこの既得権益の壁を崩して、歳出規模の抑制だけでなく歳出構造の見直しを進める改革へと、大臣を中心とした政治主導の中で真の構造改革を導き出していただきたい、それが大蔵省のまさに真価が問われるところじゃないか、こう考えておるわけですけれども、大臣、いかがお考えでしょうか。
  117. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 やがてそういうことでなければならないと思っておりますが、それにつけましても、今はとにかく省を挙げてこの不況から脱出しよう、こういうことに全力を挙げております。それができますと、やがて財政、税制等々の改革もまた将来に向かって可能になる、こう思っております。
  118. 並木正芳

    ○並木委員 私は、ほかの機会にも述べましたけれども、いわゆる今言ったような省庁枠予算という組み立てでなく、大蔵による重点的配分型予算、そういうようなことを進めていくべきではないか。もちろん、それには政治主導というものがなければならないわけですけれども。  そういう見地から数点伺いたいわけですけれども、まず第一として、少子化対策としての児童手当の増額あるいは教育費負担の軽減、こういうことであります。これについては、我が会派の石井理事からも、所得税の扶養控除、それとの絡みで質問されたわけですけれども、税の仕組みとは別にしても、このようなところに重点的配分をしていくべきと考えるわけですけれども、その辺についてはどのぐらいの配慮がなされたのでしょうか。
  119. 藤井秀人

    藤井(秀)政府委員 お答え申し上げます。  子育て支援に関しましては、御承知のとおり、福祉あるいは教育等々さまざまな施策を総合的に推進していく必要があろうと思っております。今まで、エンゼルプランあるいは緊急保育対策等五カ年事業によりまして関係省庁が連携して積極的に取り組んでいるということは先生御承知のところだと思います。  十一年度予算で申し上げますと、保育サービスの充実を中心といたしました緊急保育対策等五カ年事業予算、これは金額にいたしまして二千九百十三億円、一一・一%増の伸びを確保したところでございます。  そこで、今先生がおっしゃいました児童手当の拡充の問題でございますが、いろいろ御提案があることは私どもも承知をしております。ただ、その際、三歳未満の時期に児童手当の給付を重点化したという、いわば今までの改正の経緯というものをどのように考えるのか、あるいは、子育て支援策といたしましては、現金給付よりも保育所等のいわば現物給付、子育て支援サービスの充実が優先的に考えられるべきであるというさまざまな御意見もあるのは事実でございます。  さらに、児童手当の拡充につきましては、先生御案内のとおり、巨額な財源が必要であるということでございまして、具体的な財源確保というものがなかなか難しい問題だということでございますので、諸般の事情等慎重な検討が必要でなかろうかというように考えております。
  120. 並木正芳

    ○並木委員 それについては、我々もこれからいろいろな提言を出していきたいと思います。  次に、これも重要な問題となっています高齢化対策の介護の問題ということですけれども、それでなくても大変厳しいと言われている地方財政、これをさらに圧迫するのではないかというふうに言われているわけです。例えば、地方消費税の配分率、これを高めるなどの財源措置とか、あるいは地方へほかの財源を一部移譲するとか、こういうことを図っていくということが必要かなと思うわけですけれども、このあたりの地方への配慮はどうなんでしょうか。
  121. 藤井秀人

    藤井(秀)政府委員 お答えいたします。  平成十一年度の地方財政対策、これは国の財政事情と同様、地方も非常に厳しい事情でございました。  その中で、御承知のとおり、恒久的な減税に伴う減収に対しましては、異例の手厚い措置として、たばこ税の税率変更によります地方のたばこ税の増収措置、あるいは法人税に係ります交付税率の暫定的な引き上げ、さらには地方特例交付金の創設等の措置で対処いたしますとともに、所要の地方交付税総額を確保するというような措置を講じまして、地方の運営に支障が生じることのないよう万全を期したところであります。  他方、今先生おっしゃいました消費税の税率の問題でございますが、御承知のとおり、平成六年度の税制改革におきまして地方消費税を創設いたしますとともに、消費税に係る交付税率、これを引き上げたところでございます。  その結果といたしまして、総体といたしまして消費税の四三・六%、これが地方のいわば税財源になっておるということでございますので、国の厳しい財政事情等もあわせ考えますと、これ以上国と地方の配分割合を変更するということは困難であろうというように考えております。
  122. 並木正芳

    ○並木委員 もう一つ、私自身は非常にこれは大きなあれだと思っているのですが、過密過疎対策、これは両方とも必要なんですけれども、これまでどちらかというと過疎対策に重点が置かれてきたという感が否めないわけです。  例えば、私は首都圏におるから特にそういう思いを強くするのかもしれませんけれども、首都圏における道路整備、こういうものでも、首都高速道路というのは慢性的渋滞でもう何十年というわけです。もはや高速道路とは言えない、世間でそういうふうに言われているわけです。  首都と地方を結ぶ放射状の高速道路を整備してきたわけですけれども、これを相互にアクセスするいわゆる環状高速道路、東京外環というのが、埼玉の部分ですね、それが今やっとでき上がり、首都圏中央道路、これも関越から青梅までというようなところで、まだまだやっと一部が完成し始めたというようなことで、緒についたみたいな状態であるわけです。  また、放射状高速道路は整備されたといっても、関越道というのは大泉から中央部へ入るアクセスというのはできていない、こういったような状況で、いわんや情報ネットワークという、スーパーインフォメーションハイウエーとか、こういう基盤整備などといったらまだまだなわけであります。  また、都市整備などでも、民間の高層ビルの間に小さな住宅が入りまじっているように、都市再開発が不十分であったり、公共による都市基盤整備というのが大変おくれているわけです。  景気対策上、経済効率的にも、人口が集積して受益者が多いということでも、都市政策あるいは過密対策への重点的配分というのが喫緊の課題じゃないかと思うんですけれども、この辺についてはどのように配慮をしていただいたのでしょうか。
  123. 藤井秀人

    藤井(秀)政府委員 社会資本の整備につきましては、都市部、地方部を問わず、国民が豊かさを実感できるような、そういう社会の実現を目指しまして、それぞれの地域が抱える課題、それぞれの地域の整備状況等を勘案して行っていく必要があろうと思います。  このうち、今先生指摘都市部でございますけれども、十年度の三次補正予算におきましては、緊急経済対策の一環といたしまして、民間投資誘発等都市再生特別対策費、これを計上いたしたところでございます。  さらに、御指摘の渋滞緩和あるいは過密対策といたしまして、環状道路等あるいは都市鉄道といった都市交通インフラ、広くて良質な住宅を実現するための都市再開発等といった整備を重点的に推進することが必要であろうというように考えております。  今後とも、二十一世紀を展望いたしまして、我が国経済の活性化に不可欠な分野について戦略的、重点的な投資、これを行ってまいりたいというように考えております。
  124. 並木正芳

    ○並木委員 それぞれ各官庁からのお仕事は全部必要だというような発想もあるんでしょうけれども、やはりここはめり張りをつけた予算というのは、これからもさらに一層そういう感覚でやっていく必要があるんじゃないかと思います。  環境問題などでも、環境ホルモンだ、ダイオキシンだ、今大変な問題が起きているわけですけれども、今国民というのは、こういうものに大きなお金を使うということは民意が得られるというふうに思うわけで、その辺、役所型の公平、均等というようなものをここでは少し考え直すべきじゃないかなという気もしますので、ぜひそういうおつもりでやっていただければと思います。  あと時間が余りないので、ちょっと最後にお聞きしたいんですけれども、いわゆる欧州単一通貨、ユーロの導入に伴う国際政治経済情勢というようなことについて伺いたいわけです。  ユーロの導入によって、ドル、円をあわせた三通貨中心の体制が明確になり、日米欧の金融政策協調がさらに円滑になるとともに、ユーロが安定し、ドルに対抗する基軸通貨となれば、アメリカもドル価値の安定を戦略的目的とせざるを得なくなってくる。こういうことでは、日米関係の中でドル安を誘導して日本に圧力をかけるとか、こういう手法が率直に言ってとりにくくなるんじゃないか、こういうふうに考えられるわけです。  アメリカを主要な交渉相手としてきた、そういう中では、逆に言うと、アメリカを見てきた日本の通商、通貨バランス、これが異なった様相になるんじゃないかというふうにも考えられるわけです。既に中国などではユーロにかなりシフトをしている、保有率も大変拡大してきている、あるいは技術提携を促進するなど、こういうふうな戦略の幅を広げているというふうにも聞いております。  こうした中、一つは、ユーロがどのぐらいのシェアを占めていくのかなということをまずお聞きしたいわけです。  日本の円は、シェアが六%ぐらいじゃないかなと、これは正しいんでしょうか、言われておりますけれども、そういう意味では変動しやすい通貨ともまた言えるわけです。そうした中で、日本も早急に円戦略あるいはアジア戦略に取り組むべきではないか、あるいはユーロ対策というか、この辺について現状ではどのようになっておるか、お聞かせいただきたいと思います。
  125. 黒田東彦

    黒田政府委員 まず初めに、ユーロのシェアがどのくらいと見込まれるかという点でございます。  現在の段階で、ユーロ・イレブンと申しますか、ユーロ参加国十一カ国の名目GDPを世界の中でシェアをとってみますと、二四%ぐらい。これは、米国が二五%ぐらいですので、ほぼ同じぐらいでございます。貿易でいいますと、ユーロ・イレブンで二九%ぐらい。他方、米国は一四%ぐらいですので、ユーロ諸国の方が倍ぐらいあるということでございます。  他方、一つの指標として、世界の外貨準備の中でシェアがどうなっているかといいますと、ユーロ諸国の通貨は一九%ぐらい、ドルが五七%ということで、ドルが圧倒的に高いわけでございます。ちなみに、円は五%程度でございます。  例えば、この外貨準備の中で一九%ぐらいというユーロ・イレブンの通貨がこの一月一日からユーロに変わったわけですが、当面は、むしろこのシェアは下がると思います。つまり、フランスがマルクを持っていたり、ドイツがフランを持っていたものは外貨でなくなりますので、当面はむしろシェアが下がると思いますが、先ほど申し上げたような経済規模、貿易規模から見まして、おのずとこのシェアはその後また上がってくるというふうに見込まれるわけでございます。  ただ、具体的にどの程度のものになるかというのは、今後のユーロそのもの、あるいはユーロを基盤にしている経済がどう動くかということにもかかっていると思います。  二番目の、我が国としての円の問題についての戦略と申しますか、今後のあり方といったことでございますが、この点は、今申し上げたようなユーロの誕生、それから一昨年来のアジア通貨危機といった内外の経済金融情勢の変化というものを踏まえて、一方では円の国際化を進めていくということは当然でありますし、他方で、アジア経済が立ち直っていくということがいろいろな面で重要でございますので、アジア支援を進めていくということが必要であると考えております。  前者の、円の国際化の問題につきましては、既に昨年の末に具体的な推進策といたしまして、政府短期証券の市中公募入札、それからTB、FBの償還差益あるいは国債の利子につきましての引受者等に対する源泉徴収の免除、その他環境整備をすることを発表しておりますけれども、今後、その他幅広く円の国際的な使用を一層推進していくための努力というものが、官民を挙げて必要であるというふうに考えております。  また、アジア支援につきましては、昨年十月に発表いたしましたアジア通貨危機支援に関する新構想に基づきまして、既に対象となる五カ国について当面の支援の具体策を決定しておりまして、これに沿ってアジア経済の立ち直りを期待しているところでございます。
  126. 並木正芳

    ○並木委員 ユーロというのは統合圏ができたわけですけれども日本が置かれている東南アジアから東アジア、こういうところにかけては大変政治社会体制が複雑だというふうに言えると思います。  特に、この経済協調という中で、中国との関係というのがかぎになってくると思うわけなんですけれども、政治社会体制の違いを超えてそういう協調関係がどういうふうにとられていくのか、その辺のことと、あるいは、これはいささか飛んだ議論かもしれませんけれども、ユーロのように、アジアに財政連邦というような、むしろ円よりも、新通貨ですね、何と呼ぶかは別として、そういう統合を段階的に進めていく、この辺の必要性があると見ているかどうかということにもなるわけですけれども、その辺の手だて、その辺についてお聞かせいただければと思います。
  127. 黒田東彦

    黒田政府委員 第一番目の中国の問題でございますが、アジアとの関係と申しますと、どうしてもASEAN諸国というのが日本と貿易あるいは投資その他の経済的な関係が非常に密接なものですから、そことの関係をしばしば話題にするわけでございますが、御指摘のように、中国というのは経済規模も大変大きいわけですし、また日本との貿易・投資関係というのも非常に重要でありまして、したがいまして、円の国際化を含めまして、アジアとの通貨、金融の関係考えます場合に、中国というのが非常に重要な国であるということになるわけでございます。  したがいまして、いろいろな通貨問題を含めました話し合いの際には、ASEAN諸国だけでなく、中国とも、マルチでもバイでもいろいろな対話を続けておりまして、御指摘のようなアジアの通貨の問題を考えていく際には、中国とのチャネルを十分強化していく必要があるというふうに考えております。  もとより、いろいろな外交あるいは政治的な問題というものも一方であるわけでございますが、他方で、経済、金融といったものは、基本的に国境を越えて経済的な利害がむしろ一致する面が多いわけでございますので、そういった努力は当然なされるべきであると思っております。  二番目の、アジアにおける新しい通貨、共通通貨のような問題というのは、これは先生も御指摘になったように、そう短期的にできるとも思えません。文化的、歴史的、経済的に非常に統一度というか統合度の高い欧州で、それも二、三十年かけてようやくユーロができたわけでございます。アジアの場合は、そういった統合の度合いがやはり欧州よりも非常に低いと申しますか、いろいろ多様であるということから、当面、通貨統合を推進するような環境にはなかなかないのではないかと思っております。  しかし、一昨年のアジア通貨危機の中で、アジア諸国はほとんどドルペッグを切ったわけでございます。インディペンデントフロートと申しますか、各国ばらばらにフロートしているわけですが、それではまたアジア諸国相互間の貿易・投資関係というのが、恐らく中長期的にはなかなかうまくいかないということになってまいりますと、アジア諸国の中で、共通通貨とまでいかないにしても、ドルだけでなく円やユーロも含めた通貨バスケットのような、計算単位のようなものを考えて、それに対して為替レートを安定的にセットするというような考え方がもう既にアカデミックの世界で出てきておりますけれども、そういった考え方というのはより現実的である、現実的な問題として議論がなされ、それに対して私ども議論に参加していきたいと思っておりますが、先ほど申し上げたように、ユーロのような共通通貨をアジアにつくるという可能性は、あったとしても非常に遠いと言わざるを得ないというふうに思っております。
  128. 並木正芳

    ○並木委員 時間でございますので終わりにさせていただきます。金融監督庁からも日債銀関係とかでおいでいただいているんですけれども、これからいろいろ議論がその辺でもあろうかと思いますけれども、私はこれで終わりにさせていただきます。どうもありがとうございました。
  129. 村井仁

    村井委員長 次に、矢島恒夫君。
  130. 矢島恒夫

    矢島委員 日本共産党の矢島恒夫でございます。  日本経済を見るときに、まさに消費不況とそれから財政危機が重なって同時進行しているという状況にあると思います。個人消費は依然として低迷し続け、凍りついたままになって、回復の兆しは見えません。また、財政面を見てみますと、国、地方合わせて今年度末には五百六十兆円、九九年度末には六百兆円というかつてない規模の長期債務残高を抱える。これにどう対応していくか、このことが今政治に問われていると思うわけです。  そこでまず、この財政危機の現状をどう認識しているかという問題であります。今から三年三カ月前になりますか、一九九五年、平成七年の十一月に、当時の大蔵大臣財政危機宣言というのを出しました。その中でこう述べているわけであります。「財政は今や、容易ならざる事態に立ち至ったと申し上げざるを得ません。」さらに、同じ年、平成七年ですけれども、十二月になりますと、財政制度審議会が、財政の基本問題に関する報告、こういうのを出しております。その中でこう述べているわけですね。「現状は、例えて言うならば、近い将来において破裂することが予想される大きな時限爆弾を抱えた状態であり、かつ、その時限爆弾を毎年大きくしていると言わなければならない。」こういう記述があるわけであります。  これは、大蔵大臣の諮問機関である財政制度審議会が、大臣に対して危機の深刻さというものを述べているわけであります。  そこで、宮澤大蔵大臣、このことはもちろん御存じだと思いますけれども、なぜ当時の政府がこういう財政危機宣言を発したのか、その理由をどのように理解しておられるか、お尋ねしたいと思います。
  131. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 平成八年度というのは、たまたまと申しますか、今から見ますとややそういう感じがいたしますけれども、GDPで四・四%プラス成長をいたした年であります。ちょうど選挙もこの年でございましたと思いますが、何となく日本経済は少し上向くのではないかという認識が一般にございました。他方で、したがってこの際、財政の方の破綻が大きいので、場合によっては消費税を増徴してでも将来に向かってのリストラをやらなければならないんではないかというような意識が、比較的、経済がそう悪いと思いませんし、国民も思わなかったものでございますから、受け入れられまして、そして今矢島委員のおっしゃいますように、何とかして財政の危機を立て直したい、経済の方は何とかいけるだろう、こういうような意識のもとに、大蔵大臣も、また政府もそういう政策をとった、そういう年であったと記憶いたします。
  132. 矢島恒夫

    矢島委員 この財政危機宣言というものを発した直接の理由というものを、当時の状況などを振り返ってみますと、やはり償還財源措置のない特例公債発行が、この年、年度でいえばその翌年度ですけれども、避けられなくなった、こういう事態になったことがその理由であると私は思うわけです。それまでは、何とか当初予算でこの償還財源措置のない特例公債発行はずっと回避してまいりました。ところが、一九九六年度、つまり平成の八年度になりますけれども、この当初予算では償還財源の当てのない特例公債発行が避けられないということが確実になってきた。こういう中で財政危機宣言が発せられたと思うわけです。ですから、この危機宣言の中にはこういう記述もあるわけです。「まことに残念ながら、特例公債発行を回避することは困難と言わざるを得ません。まずは、このことを率直に申し上げなければなりません。」こういうことも述べているわけです。  そこで、当時の財政状況はどうだったかという点を見てみますと、一九九六年度の公債発行額は二十一兆円、そのうち特例公債は約十二兆円です。公債依存度二八・〇%。その年度末の公債残高は約二百四十五兆円、GDP比で四八・六%。国と地方を合わせた長期債務残高は四百四十二兆円、GDP比で八九%、こういう状態が当時の状況だったと思います。  そこでお聞きしたいのは、このときと比べて九九年度、どういうふうに変わってきたかということ。公債発行額あるいは公債依存度、公債の残高、さらには国、地方の長期債務残高、これらが当時と比べて改善されたものがあるのかどうか、お答えいただきたい。
  133. 藤井秀人

    藤井(秀)政府委員 お答え申し上げます。  今おっしゃいました平成八年度と今度の十一年度予算のいわば財政の何らかの指標についてのお尋ねでございますけれども、まず申し上げますと、公債発行額は全体といたしまして三十一兆円でございます。それから、公債依存度、これは三七・九%。さらに、国、地方を通じます財政赤字、合計が六百兆円ということでございまして、いろいろな周囲の状況は変わっていると思いますけれども数字だけで申し上げますと、今言いましたような平成八年度との対比の数字ということが言えるわけでございます。
  134. 矢島恒夫

    矢島委員 公債発行額、あるいは依存度、あるいは長期債務の残高、いずれも大きく膨れ上がっています。つまり、何一つ改善されたものはない、一層悪化しているというのが事実であります。  そこで、確認したいんですが、大蔵省は先日、中期財政試算というのを発表いたしました。それでは、今後二〇〇三年まで公債残高はどうなるのか、お答えいただきたいと思います。     〔委員長退席、井奥委員長代理着席〕
  135. 藤井秀人

    藤井(秀)政府委員 お答え申し上げます。  中期財政試算、実は二通り出しておりますけれども、便宜、名目成長率一・七五%を前提ということでお答え申し上げます。  公債残高でございますけれども、最終年度、平成十五年度の数字で申し上げますと、公債残高につきましては、一般歳出が〇%から二%で若干の数字の開きがございますけれども、四百二十九兆円ないし四百三十九兆円、これが公債残高、こういうことでございます。
  136. 矢島恒夫

    矢島委員 成長率を二つの段階で多分試算してあったかと思いますが、今お答えいただいたように、途中は年々増加していくんですが、二〇〇三年度というのが四百二十九兆円から四百三十九兆円というような額になるわけです。今まで私、大臣に質問をしてまいりましたが、大変な状況にどんどん、危機宣言以来、財政は悪化しているというのが実態だということだろうと思います。  さてそこで、この深刻な財政危機をどのように解決するのか、この長期債務をどのように解消の軌道に乗せるのか、このことが今問われているわけですが、その見通しをお伺いいたしたい。
  137. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 午前中も申し上げましたが、八年度はプラス成長をいたしましたが、その後成長マイナスに転じてまいりましたから、当時財政危機ということで、何とか財政そのものの赤字を減らそうとした努力は、実は税収がその後歳入欠陥を毎年出しますことによって財政再建そのものが可能でなくなってきた。それは、経済成長マイナスに転じたからでもございますけれども、そういう事態に立ち至っておりますから、財政自身から見ましても、今までの路線では財政再建というものは経済プラス成長しない限りは不可能だという判断になってまいっておる。それが現在であると思っております。  したがいまして、この際、財政再建ということをしばらくおいてと申します意味は、いずれにしても、まず経済成長、この不況から脱出しなければ財政再建そのものが、税収をふやすということが不可能であるということから、一応財政再建というものをおいて、とにかく不況を脱出して経済成長プラスにしていこう、こういうことを今私どもやりつつある。財政の観点から申せば、そういうことが軌道に乗りましたら今度税収の確保が確実になりますので、その段階で財政再建の道を探すことができる、こういう道程にあるというふうに認識しております。     〔井奥委員長代理退席、委員長着席〕
  138. 矢島恒夫

    矢島委員 私はもう少しきちんとした見通しをお聞きしたかったわけです。  というのは、一つは、経済プラスになる、税収がふえる、そして、経済プラスになると言うけれども、どのくらいのプラスとか、あるいはこの時点では少なくともこういうプラス成長になるからそこで考えるんだとか、時間とかあるいはその数値ですね、額とか、そういうものについてはいかがですか。
  139. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは理屈の上ではお答えできなければならないんですけれども、そこまで実際姿が見えない。まず、少なくとも経済成長の主導が設備投資で行われるということは、ちょっと当面のところ見通せないような気がいたします。  したがって、やはり消費主導の経済成長が可能であろうか。輸出主導ということは考えない方がよろしいと思いますので、どうも消費主導しかない。それと住宅が何がし、あるいはIG、政府の投資、それらのものがプラスとして考え得る。その中でも、もとより大きいのは消費ということであろうと思います。
  140. 矢島恒夫

    矢島委員 今の御答弁ですと数値的な一つの見通しというものはなかなか難しいと。今の国民の不安から考えていきますと、もう少し責任ある答弁をお願いしたいということであります。  そこで、どれくらいの期日でどういう手段、やり方でこれを打開していくのか。先進国でこの財政再建の目標を持っていない国があるのかどうか。あったら示していただきたいんですが。
  141. 藤井秀人

    藤井(秀)政府委員 お答え申し上げます。  何らかの形で各国とも目標を持ってそのための努力をいたしているということと承知しております。
  142. 矢島恒夫

    矢島委員 私のこれまでの質問の中で御指摘申しましたような研究を直ちにやる必要がある、ほかの国で持っていないような国はないんだという答弁だと思います。  そこで、九七年度末、ちょうど今から一年ちょっと前になりますか、財政構造改革法が提案されました。臨時国会です。私も、財政特別委員会委員の一人として、この財革法なるものが本当に財政再建につながるんだろうかという点で質問しました。肝心の浪費の部分にはメスが入っていないんじゃないか、また、国民生活に関連する部分、社会保障、医療、年金、こういうものは抑制する、これでは暮らしも改善できなければ財政再建もできないんじゃないかということで反対しました。  ところで、昨年、小渕内閣になりましてこの財革法は凍結されたわけですけれども、どの部分で制限を取り払い、さらにどの部分では抑制が持続するのか。その辺、具体的にひとつ教えていただきたい。
  143. 藤井秀人

    藤井(秀)政府委員 お答え申し上げます。  先般凍結されました財構法につきましては、いわば財政構造改革法全体が凍結の対象になっている、ただ、別途、同時期の閣議の決定におきまして、いわば財政の効率化、合理化を図っていくという基本的な考え方はなお引き続き当然のことながら踏襲していくというような取り扱いになっているということでございます。
  144. 矢島恒夫

    矢島委員 できるだけ具体的な答弁をお願いしたわけですが、例えば幾つかのもの、医療保険制度あるいは年金制度、こういうものについては今後の問題として残されていると思います。  既に関係法律を改正したものがあるわけですよね。そういう中で、公共事業長期計画の問題では、これは五年を七年に延ばすということが決まっている。しかし、その中身ですね。つまり、どういうふうに進めていくのか、また、超過達成の問題についてはどうなのか、その辺についての考え方
  145. 藤井秀人

    藤井(秀)政府委員 お答え申し上げます。  先ほど申し上げましたように、財政構造改革法全体は凍結になるわけですが、その具体的ないわば合理化、効率化の部分についてはなおその精神は踏襲していく、こういうことでございます。  したがいまして、今先生がおっしゃいました例えば医療、年金、この財政構造改革法ではいろいろな切り口からの制度改正という、いわば例示的といいますか、そういうものが示唆されているわけですが、それらについての制度改革の努力というもの、これはこれからの社会保障制度を安定的に維持運営していくためにはやはり避けるわけにはまいりません。  したがって、そのような制度改革努力というものは、いわば財政構造改革法とはある意味では別の次元としてなお引き続き必要だと思いますし、今先生がおっしゃいました公共事業長期計画、これらにつきましては既に法律で手当てされているもの等もございますけれども、これらにつきましては、なお引き続き、既に手当てされたいわば五カ年を七カ年に延長するというような措置のもとでこれからの予算編成等が、それを一つの基準といいますか一つの根っこに置いて、具体的には各年度の予算編成で取り扱うわけでございますが、そのような考え方であるということでございます。
  146. 矢島恒夫

    矢島委員 私、いかに公共事業の面の枠というものが、基本は維持しながらと言うけれども、完全に取っ払われてそっちへ進んでいるかということについて、平成十年八月十二日、閣議決定です。その中には、「財政構造改革の一環として既に措置された制度改正、計画の延長や今後のスケジュールが決まっている制度改正等については、既定の方針に沿って、引き続き、その推進を図るものとする。」今御答弁にあったわけですが、さらには、これは大蔵省がことしの一月に「財政構造改革を進めるに当たっての基本的考え方」という文書を出しておりますが、その中で、「公共事業関係費等については必要な伸びを確保する一方、財政構造改革の基本的な考え方は維持する」、こう述べております。  この形で進めていっているんだということに理解してよろしいですか。
  147. 藤井秀人

    藤井(秀)政府委員 お答え申し上げます。  先ほどちょっと私申し上げましたけれども、この公共事業の各種計画、既に五カ年から七カ年等への延長がなされているわけでございます。それを視野に置きながら、各年度の予算編成におきましては、その中で各年度どのような予算計上を行うのか。それは当然のことながら、その時点その時点における景気状況等にも配意する必要があるわけでございます。そのような趣旨が今先生がおっしゃった文言の中には意味として入っているということかと思います。
  148. 矢島恒夫

    矢島委員 既に法律等決まっている部分や、あるいは社会保障そのほかで一定度進められている問題については、枠をはめてといいますか、取っ払って凍結したけれども、それは進めると。一方、公共事業に関してのこれら閣議決定やあるいは大蔵省の基本的な考え方等を読んでいきますと、暮らしや社会保障は抑えながら、一方、公共事業——私、公共事業がすべて悪いなんて言っているんじゃないんです。生活関連の、生活道路だとか、昨年の八月末の台風のような状況の中で大変な被害が及んだわけですが、そういう河川改修の問題だとか、あるいは老朽化した学校の改築の問題だとか、いろいろ進めていかなければならない部分がある。これは大いに進めていく必要がある。ところが、既に破綻が明らかになっている例えば苫東だとかあるいは常陸那珂港だとか、いろいろなところに港、空港あるいは工場誘致のための造成、全国各地やったら数え切れないくらいどんどん進んでいるんですね。そういう部分はずっと野放しにしてきたわけですけれども、来年度予算でも、公共事業のそういう部分での積み増しが際立っていると思うんです。  お答えいただきたいのは、今年度当初予算と比べて公共事業費というのはどれくらい伸びているんですか。
  149. 藤井秀人

    藤井(秀)政府委員 十一年度予算におきます公共事業関係費、総額は九兆四千三百七億円ということでございまして、対前年度比五%増ということでございます。
  150. 矢島恒夫

    矢島委員 大蔵大臣は、財政演説の中でこう述べられていますね。   公共事業については、当面の景気回復に向け全力を尽くすとの観点に立って、公共事業関係費を前年度当初予算に対して五%増額するとともに、別途、公共事業等予備費五千億円を計上することといたしました。 と述べられていますが、これを、公共事業の予備費を合わせますと何%増になるんですか。
  151. 藤井秀人

    藤井(秀)政府委員 先ほどの五%に加えまして五千億が入りますと、合計一〇%増ということでございます。
  152. 矢島恒夫

    矢島委員 社会保障関係費、この問題ですけれども、社会保障関係費は今年度当初予算と比べて何%増になりますか。
  153. 藤井秀人

    藤井(秀)政府委員 お答え申し上げます。  社会保障関係費は十六兆九百五十億円、対前年度比八・四%増ということになっております。
  154. 矢島恒夫

    矢島委員 この社会保障関係費については、大蔵大臣、やはり財政演説の中で、   社会保障関係費については、急速な人口の高齢化に伴いその増大が見込まれる中、経済の発展、社会の活力を損なわないよう、制度の効率化、合理化を進め、将来にわたり安定的に運営できる社会保障制度の構築を図ってまいります。 このように述べていらっしゃる。  しかし、今答弁では八・四%という数字が出ましたけれども、厚生年金国庫負担の繰り入れ特例措置があります。これの影響を除きますと実質、多分三・七%と考えていいかと思うんです。国立病院特別会計への繰り入れが十年度当初予算に比べますとマイナス三・四%、約五十億円の減であります。その他、補助金の一般財源化とかあるいは廃止が行われております。  そこで、大臣にお尋ねしたいんですけれども、大臣は、この社会保障関係費というもの、あるいは社会保障関係のいろいろな施策というものが景気に対してどういう影響を持つか。つまり、経済効果といいますか、社会保障関係費の経済効果あるいは波及効果、こういうものをどのように考えておられるか、お答えいただければと思います。
  155. 藤井秀人

    藤井(秀)政府委員 お答え申し上げます。  社会保障は、基本的には、病気あるいは失業あるいは老後の生活不安に対します個人の力のみでは対処しがたい事態について社会全体で支援するということで、国民生活の安定に極めて大きな役割を果たしているということであろうと思います。  この社会保障のための政府支出の分、いわば直結部分について申し上げますと、その効果といたしましては、安定した購買力を国民に付与する、そして新たな産業あるいは労働需要を創出することにより経済の発展に寄与する、そういう面、これも当然のことながらあるというように認識をいたしております。
  156. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この予算の整理から申しますと、例えば雇用につきましては、今度はいわゆる一兆円という大きな補正となりまして用意をいたしておりますが、それから年金もそうであるかもしれません、これらはややポジティブな方の措置であろうと思います。福祉であるとか緊急保育対策、児童手当、医療、これらはある意味でソーシャルネットのような役割を果たしておりますから、プラスというよりはむしろマイナスに落ちるのを防いでいる、そういう作用をしておるのではないかと思います。
  157. 矢島恒夫

    矢島委員 この経済効果の問題については、いろいろこの間論議されてきた問題だと思います。  昨年の三月十二日、これは参議院の委員会で我が党の議員が取り上げて質問したことに対する厚生省の答弁が載っておりますが、これによりますと、「基本的に福祉の充実が必ずしも経済にとって阻害要因になるわけではない、積極的に貢献する面がある」というような答弁の中で、いろいろな学者や研究者の論文等も紹介しているのですね。三菱総合研究所がまとめた調査研究、公的介護の充実がどのような経済効果を及ぼすか、あるいは長寿社会開発センターの企画振興部長が「介護の社会化は日本経済を救う」という題で論文を書かれておりますとか、あるいは医療経済研究機構というところで「福祉充実の経済的効果について」、こういう文章が発表されておりますと。  今お答えの中にもありましたように、社会保障の経済効果というものをきちんと図式することは難しいとしても、効果があるということは、大体学者あるいは先ほどの答弁等の中で出ていることだろうと思います。  そこで、私が先ほども申しましたように、公共事業経済効果がないなどということを言っているのではありません。公共投資というものが今日の財政状況を危機状態にするにどういう役割を果たしてきたのかというあたり、つまり、先ほど私が申しました大型プロジェクトという全国至るところにあるもの、ここにメスを入れなければならないのじゃないか。  ちなみに、公共投資は九〇年代に入りましてずっと膨張し続けている。九一年から九八年までの八年間で長期債務残高を見ますと二百六十兆円から五百六十兆円と、約三百兆円ほどふえているのですね。この同じ時期、つまり九一年から九八年までの八年間、公共投資がどれくらいかといいますと、約四百兆円であります。その四百兆円の六割というのがいわゆる借金であります。財政危機をもたらした原因はここにあると思う。原因の一つはここにある。いかがですか。
  158. 藤井秀人

    藤井(秀)政府委員 お答え申し上げます。  社会資本を整備するための公共投資、これは、生産活動あるいは社会活動が円滑で効果的に行われるため、基本的には民間の経済活動のみでは整備し得ないそういう社会基盤、これを形成する役割を有するものであるということでございますので、いろいろな御意見があることは承知はいたしておりますが、やはり我が国の場合、このような社会的なインフラというものの充実、整備というもの、これは諸外国と比較いたしますとなお必要だろうと思いますし、従前からそのような考え方のもとで重点的な予算の配分というものを具体的プロジェクトの内容に即しながら行ってきたということが言えると思います。
  159. 矢島恒夫

    矢島委員 この問題を幾らやっても水かけ論だ、平行線。  というのは、私たちは公共事業が全部悪いと言っているのではないということはさっき言った。インフラの整備とか必要な部分にはやはりそれなりの予算を投入していかなければならない。しかし、苫小牧東の問題も御存じだろうし、福井港の問題も御存じでしょうし、干拓事業を全国各地でやっているのも御存じだろうと思いますが、むだや浪費のところにメスを入れることが必要だということと、そして、今日このような財政危機を招いた一つの要因として、先ほど申し上げたように、この四百兆円の約六割は借金で進めたわけですから、ここにも要因があるんじゃないかということをお尋ねしたわけです。この問題はここまでにしておきます。  こうした中で、もちろん国の財政というのも大変な厳しい状況にあることはそのとおりですけれども、地方財政の問題、これも危機的状況にある。  お尋ねしますが、地方を含めた長期債務残高、先ほどのお答えにもありましたように、来年度は約六百兆円になる。六百兆円といいますと、赤ちゃんからお年寄りまで全部含めて国民一人当たり五百万円の借金をしているのと同じような状況である。大変な事態です。GDPの一二〇%近くになる大変な数字です。  そこで、国と地方を合わせた長期債務残高、今後どのようになるというように試算されているか、お答えいただきたいんです。
  160. 藤井秀人

    藤井(秀)政府委員 お答え申し上げます。  今先生おっしゃいましたように、国、地方を通じます長期の債務残高、十一年度末で約六百兆円ということでございます。このうち、国につきましては、今の財政の試算等でごらんいただきますように、平成十五年度までの間にどのような形で公債残高がふえていくかというようないわば試算、機械的な試算ではございますが、示されているわけでございますが、他方、一方で、地方の債務残高、これが十一年度百七十六兆円でございますが、これがどのように推移するかということについては具体的な試算が行われておりません。  やはり、地方というのは三千数百にわたる地方公共団体のいわば固まりでございますので、なかなかこれを一つのものとして、機械的といえども何らかの試算を置くのは難しいということでございますので、今先生おっしゃいました、六百兆円が全体としてどうなるかということについては、以上のような状況のもとで具体的な試算がお示しできない、こういうことでございます。
  161. 矢島恒夫

    矢島委員 私、地方の財政も国と同様大変な事態にあるんだから、それは確かに、おっしゃられるようにたくさんの自治体があって、全部調べるのはなかなか容易じゃない、その部分もわかりますよ。わかりますけれども、やはり将来の見通しとして、こういう推移をするんだからこういう手だてをとるべきだ、これくらいに膨れ上がる可能性があるからこの点で注意しなければいけないとか、やはりそこに一つの目安、目標、あるいは対応の仕方、こういうものが生まれてくるんだろうと思うんですよ。ぜひ、難しい難しいと言っていないで研究していただきたいんですよ、試算できるかどうか。できるという方法があれば、国と地方を合わせて債務残高はどうなるのかと。  これは、経済全体に非常に重要な問題を引き起こすわけですね。これは、財政制度審議会が一九九六年、平成八年の七月十日に出した「財政構造改革考える 明るい未来を子どもたちに」、非常に分厚い内容で、いろいろな内容を網羅しておりますけれども、この中で指摘している問題としてこういう部分があるんですね。   公債発行は増税に比し現世代の国民の負担感が希薄で、認識しないうちに将来世代の負担となる財政赤字を膨らませるという問題があります。 まあ、このとおりだろうと思うんです。  さらに、次のようにも書いているわけですね。   財政支出の拡大により公債大量発行されると、市中の資金が公債の購入に充てられてしまうために、市中の資金が不足し、金利上昇させます。このため、民間企業は高金利での借入を余儀なくされ、中長期的な経済成長の源泉である民間投資の抑制(クラウディング・アウト)を引き起こすことになります。 こういう記述があります。  大蔵大臣、この財政制度審議会が出しました今の「財政構造改革考える」という中にそういう記述があるわけですが、これを書いて出したのが一九九六年、平成八年のことであります。  どうでしょう、当時と比べてさらにこの危険というのは強まっていると私は思うんですが、大臣、どのように御認識か。
  162. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 確かにそこが問題のところだと思いますが、もし今、政府が国債発行していって、金利が仮に上昇していく、そこで民間の設備投資と競合してクラウディングアウトが起こるというようなことであれば、いろいろ救いがあるという感じがいたすんです、妙な言い方ですけれども。  実際は、民間の設備投資意欲がないという経済状態なものですから、国として公債発行していろいろなことをしなければならない、そういう代替関係にあるといいますか、そういうのが事実ではないか。もしクラウディングアウトするような設備投資が出てきますれば、それだけ政府は引っ込むことができる、そういう状況にあるのではないかと考えていまして、したがいまして、そういう筋道だけから申し上げますならば、経済が好転をして、私は急にそこまで好転すると思いませんが、仮に一年余りたちまして民間の設備投資意欲が出てきたというときには、マクロで見ますと、政府の役割はその部分だけ引っ込んでもいいということになるだろうと思って期待をいたします。
  163. 矢島恒夫

    矢島委員 先ほど私がちょっと紹介した財政制度審議会の「財政構造改革考える 明るい未来を子どもたちに」、この本の中にこういう記事も載っているんです。  当時の、平成八年度の段階ですけれども、利払い費でも当時十一・七兆円となるほど、過去の借金の山が大きくなっていることです。ちなみに、十一・七兆円のお金があれば、関西国際空港が八港できます。十一・七兆円というのは一時間当たりでは十三億円となり、標準的な小学校が約一・三校建てられます。特別養護老人ホームが一・八カ所できる。こういう例まで挙げて、このように国債費が大きくなっている結果、国の政策判断の余地が狭まり、財政の硬直化が進行しているのです。こういう記述もあるわけですね。  今、非常に国民は不安を持っています。もちろんその将来不安というのは、人によって、自分の老後の問題から始まって、日本景気は将来どうなるんだろうか、あるいは今の財政赤字、本当に何とかしなければならないけれども大丈夫なんだろうか、孫子の代にこの借金が移ったら本当に大変だという気持ちなどなど、いろいろあるわけですね。そういう不安を取り除くということが一つには重要な課題だと思うんです。  もちろん、大臣が言われるように、景気が回復軌道に乗って、そのときにはひとつ根本的な問題でやりますよ、ですからということを国民が聞いたときに、さてそうなるといつごろなんだろうな、そういう疑問をまず持つわけです、早くやってもらいたいというのもあるわけです。  しかしそれは、現状からいって、そう早く簡単にとんとんといくわけじゃない、まず経済景気回復であって、プラスに転化することだという御答弁なんですが、どうですか。もう一度お聞きするんですが、近い将来、そんなに遠くない時期、こういうやり方でこういう時期にはひとつ財政再建軌道に乗り始めますよというような見通し、御答弁いただけませんか。
  164. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いろいろなお答えのしようがあると思いますけれども、例えば、平成十一年度におきまして、政府の租税収入が見通しどおり取れるかあるいは多少プラスになるというような全体の経済運営でありましたら、それは非常に将来有望と思いますし、逆に歳入欠陥が出るようでありましたら、これはまたゆゆしいことになるのではないでしょうか。
  165. 矢島恒夫

    矢島委員 なかなか具体的な見通しというものがないようで、一部にはそういうのじゃ無責任だという声もあることをお伝えしたいと思います。  私、今日本経済というものが、先ほども申しましたように、消費不況とそれから財政危機という二重の危機が進行している。こういうときに、何回も申すようですけれども財政の浪費的な支出、これを徹底的に切り詰めていくこと、むだの思い切った削減をすること、消費不況の打開のためには本当に必要とされる対策に対して思い切った財政支出を行うこと。歳入面では、これも時間がなくなりましたので詳しくは申しませんが、今度の税制改正の問題も含めて、大企業の課税ベースの拡大、不公平税制の是正、こういうことがこの二重の危機を克服するため避けることのできない鉄則だということを申し上げて、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  166. 村井仁

    村井委員長 次に、横光克彦君。
  167. 横光克彦

    ○横光委員 社民党の横光克彦でございます。  大臣には、長時間本当に御苦労さまでございます。  私、ちょっと重複する質問があろうかと思いますが、そのときには、確認の意味という思いでどうぞ御容赦いただきたいと思います。  きょうも各委員からいろいろな質問がされ、質疑がございましたが、非常に厳しいお話ばかりだと思うんですね。本来であるならば、これだけの大型の積極予算を組まれた、そしてそれを審議される中で、景気回復という大前提で、この予算にはすべてその思いが込められているわけです。ですから、そういった意味からは、本来ならば、金融市場あるいは経済あるいは企業、さらに国民、そういった広範囲にわたって、この大きな予算によってだんだんよくなるぞ、いろいろな動向が、明るい動向が出てきてもおかしくないと思うんですね。ところが、現実にはそういった状況に至っていないというのがちょっと心配なんですが。  午前中、同僚委員質問に大臣は、二兎を追う者は一兎をも得ず、これはもう避けるんだ、これからは一兎を追い求めるんだと。それは景気の回復であろうと思うんですね。そして、先ほどから口を酸っぱくしておっしゃられております経済プラス成長、これを何としてもなし遂げる、それが一兎だと思うんですね。この一兎をなし遂げてからは、さらに今度また新たな一兎を追い求める、これが本筋であろうと思います。  その次の一兎、これは、私は大臣の所信表明の中のこれではなかろうかと思うんです。我が国経済が回復軌道に乗った段階において、改めて二十一世紀初頭における財政、税制の課題として、根本的な視点から必要な措置をとらなければならない、これが大臣のおっしゃる経済プラス成長をなし遂げた後の次の一兎ではなかろうかと思うんですが、この中の、根本的視点からの必要な措置、これは一体どういうものなのか、具体的にちょっと御説明いただければと思います。     〔委員長退席、鴨下委員長代理着席〕
  168. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この中で改めて二十一世紀初頭云々と申しましたのは、いわゆるこれから何年かというその期間を申した点もそうでございますけれども、二十一世紀における日本というものは、今までの日本と違ったいろいろな要請を満たさなければならない、大変変わった日本にならなければならないと考えておりますものですから、そういうことに対応して、財政も税制も、また中央、地方の関係も、いろいろ二十一世紀日本というものを考えてなされなければならないであろう、それは今考えていることといろいろ違った要素を含んでいるに違いない、そういうことを、つかめないながらもおぼろげに考えまして、こういうことを申したわけでございます。
  169. 横光克彦

    ○横光委員 先ほどから各委員質問にございますように、日本財政危機、これが次の大きな課題だと思うんですね。そういった意味から税財政構造改革というものの必要性を大臣もお考えなんだろうと思いますが、ただ、国民はやはり、先ほどもございましたように、大変心配されておる。この国のこれからの財政はどうなるのだろうか、後世の人たちの不安のことを考えると、やはり非常に心配されておる。しかし、財政構造改革は必要である。それはやはり関係者の大変な痛みを伴うということは御承知のとおりだと思います。しかし、国民生活に一番密着する社会保障の歳出削減とかあるいは消費税のアップとか、安易な形の国民負担、これは私は極力避けていくべきであろう、このように考えているわけでございます。  政府の九九年度実質経済成長見通し〇・五%、これをはっきりお示しになっておるわけでございます。いつも言いますように、これだけの財政出動をするんですから、この〇・五%の経済成長はぜひともなし遂げていかなければならない。私たちも強くそれを思っておるのです。  堺屋経済企画庁長官も、七日のテレビの討論番組でかなりはっきりとおっしゃっているんです。九九年度の後半にはよくなる、〇・五%成長かなり底がたい数字で、それを上回る可能性もあると自信を持って強気に発言されておりました。私もそれを聞いておりまして、周りの状況では決してそんなに楽観視できるものではないぞと思いながらも、そういう言葉を聞くとほっとするんですよ。ですから、国民の皆様方は、それを聞くと、ある程度マインド的に、経済企画庁長官がそう言っているんだからそうなるだろうと何となくほっとする。  そして、見通しは、やはりこれからの見通しですから、これまでの経緯、データからはっきりとした形の上での先行きの見通しだと私は思うんですが、それとともに、さっき言いましたマインドの分もかなり加味されているんではなかろうか。  つまり、前の尾身企画庁長官が、桜の咲くころにはよくなるということを何度も言われて、国民はそれを期待していました。しかし、結局、桜咲いても散ってもよくならない、また桜の咲く時期がだんだん近づいてきた。そういった意味で、確かにほっとはするんですが、ほっとするだけでなくて、何としてもこれを実行していかなきゃならないわけですが、残念ながら、取り巻く状況は、先ほどから本当にいろいろお話が出ていますように、厳しい状況が出てきているわけですね。経済金融関係のプロフェッショナルとも言えるそういった評論家の皆さん方の話では、〇・五%成長は難しいぞ、下手をすると三年連続のマイナス成長だって避けられないんじゃないかという意見も根強いわけです。  ですから、大変きつい質問になろうかと思いますが、今後の景気動向次第では、九八年度と同じく、年度途中で歳入不足に陥って、当初予算の財源さえも国債の増発によって追加的に賄われなければならないというような悲惨な事態も十分考えられるんではないかと思うんですが、大臣のそのお見通しはいかがでございましょうか。
  170. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 予測に反して二年も続いてマイナス成長を続けてきたわけでございますから、またそういうことはないかとおっしゃいますと、過去二年あったわけでございますのでお答えはしにくうございますが、しかし、過去二年落ちてその後なお落ちるのか、そういうことになるわけでございますから、そういうこともそうしょっちゅうあることではない、そういう常識も働くと思います。やはり、経済というのはある部分がサイクルしてまいりますから。  それで私は、統計的に先のことを今御説明申し上げられませんけれども、〇・五%成長というのはいいところをいっているんではないかなと。そう何期も、何年も続けて落ち続けるということは、幾ら何でも経済でございますからしょっちゅうあることではないだろうと思いますし、また、これだけある意味で御批判があるような歳入欠陥の予算をやっておるわけでございますから、それが効果がない、九兆円の減税も効果がない、そう何年もそういう状況が続くということはないと考えてもいいのじゃないかなという思いが私は実はしておりますけれども、統計的に申し上げることができません。
  171. 横光克彦

    ○横光委員 大臣の希望と苦しいお気持ちは本当によくわかります。私もそんな年度途中での追加的なことになってはならないと思うわけですが、残念ながら状況は余りよくないわけですね。  例えば、九九年度末、これも先ほどから何回も出ておりますが、予想される国と地方の長期債務残高は六百兆円にも達しよう。あるいは、我が国のGDPはおよそ五百兆円でございますので、対GDP比は一二〇%までに高まる。  政府の推計によりますと、九九年度の先進諸国の数値としては、イタリアをついに抜いてしまって、余りいい形じゃないんですが抜いてしまって、先進諸国中最も財務体質の悪い国に転落してしまっているわけですね。さらに、ある試算では、今の水準のまま推移したとしても、十年後の国債の利払い等の国債費、これが九九年度当初二十兆円が二倍近くになるんじゃなかろうか、そういった驚くべき数値も現実に出されているんです。  ですから、とにかく景気回復して税収の増によって賄うという簡単な一言で言うことはできるんですが、たとえ景気が回復されたとしても、そして回復されたその後の見通しとしても、これまでのような高度の経済成長を望んで、そして多額の自然増収に過大な期待をかけるということは、これはもう難しい状況であろうと思うんですね。  そうしますと、公債の返済がますます厳しくなってくる。利払い等の国債だけで三十五兆から四十兆になるんじゃなかろうか、そういった予測もあるわけで、この打開策として何を据えるべきであるとお考えなのか、お聞かせ願えますか。
  172. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そこは、私が本当に願っているのは、日本経済が病気から脱却して元気になることでありまして、元気になったら、しょっているものは私は余り心配しておりませんです。少ししょっているものが重くなっても、元気であればこれはそんなに心配することはない。  それは、例えばアメリカ財政がここへ来て黒字になったということは、十年前には思いもよらなかったことでございます。そして、累積債務は実は非常に大きい。大きいけれども経済が黒字になったということで、余り人がそれを心配しなくなっておるわけでございますから、その国の経済が力さえあれば、多少のものはしょっていてもそんなに心配することではない。問題は、もう力がなくて立ち上がれない、元気にならないということになったら、これはもうどうしようもないということだと思っておりますものですから、ともかく早くプラス成長に転じたい。  確かに、租税弾性値が急に大変大きくなったりすることはないでございましょうけれども、少なくとも、アメリカ経済がそうであるように、元気になれば単年度の赤字というものはなくなってきたわけですから、そういう状況になっていけば、それで私は心配ないんではないかというふうに思っております。
  173. 横光克彦

    ○横光委員 今、元気になれば、力がつけばというお話でございます。確かにそのとおりでしょうが、私は、それでも余りにも利払い等の国債が大き過ぎる、ちょっとけたが違い過ぎるなという気がして、大変心配しているわけでございます。  大蔵原案が発表されてから債券市場の下落傾向が強まりつつあるんじゃないかと思っておりますし、さすがにこの七十兆円、借換債も含めて、これだけの国債発行ですから、その需給悪化懸念というのは、当然のこと、市場に影響を与えずにはおかなかったと思うんですよ。さらに、格付機関のムーディーズが日本国債の格下げを公表した。これは、正しいかどうかは別にして、大変市場に影響を与えるわけですね。  そうしますと、そういったいろいろな状況からして、債券市場の下落傾向、あるいはそれに伴う長期金利上昇傾向というのは、一時的なもので終わるのかどうか、状況からするとかなり長期的な可能性もあるんじゃないかと思われるんですが、財政当局としてはどうお考えでしょうか。
  174. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これも午前中申し上げましたけれども長期金利というのは、私はやはり基本的にはマーケットだ。もちろん、非常にたくさん国債発行することによって荷もたれがするといったような感じが全然出ていないとは申しませんけれども、先ほども申し上げましたが、昨年の十一月の末に一・〇五というような利回りであったものが、急にここへ来てわずかの間にこれだけになる、それはやはり、ほかの原因はございましょうけれども、これもマーケットだな。ここからもう下がらないかというと、そうも言えない。しかし、荷もたれのことはあろうなといったようなことでございますから、長期的にずっと上がっていくトレンドだともなかなか申し上げられない、国債を売った金はどこかへ行くわけですから、ということも言えますし。  どうも私は、長期金利のことを、これは非常に急激に上がったり下がったりすることは好ましくないのはもとよりでございます。それはもとよりでございますが、長期的にずっとこのトレンドで値下がりをしていく、あるいは金利が上がっていくというようなことはちょっと考えにくいんではないか、余り金利のことを具体的に申し上げることは避けなければなりませんけれども、そう思っておりまして、そのこと自身はそんなに私は気にしなくてもいいんではないかと思います。  もちろん、国債を大量に発行いたしますから、発行者としてのいろいろな配慮、いろいろな意味でのバラエティーを持たせるとか、そういうことは入り用になってくるかと思います。
  175. 横光克彦

    ○横光委員 大臣はマーケット中心だというお話でございますが、この短期間における長期金利の急騰、これは、そのことを心配して政府・与党内では、きょうもこの質問に出ておりましたが、日銀の新発の国債の引き受け案も模索しているという話も聞いております。午前中、日銀黒田理事の御答弁で、中央銀行は、短期はともかく、長期金利を自由に上げ下げすることはできないんだ、そしてまた買い切りオペレーション拡大も、アメリカでも成果はなかったんで、それに対しても積極的ではないというお話でございましたが、これは大臣も同じお考えでしょうか。
  176. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 けさ、日本銀行の方がおっしゃっていらした、自分たちは短期金利についてはオーバーナイトを初めいろいろできますが、長期金利というものは、自分たちにそれを左右するいわば道具がないと申しますか、そういうインストルメントはないんだということを言われたと思います。非常に短い間のことならともかく、長い目で見るときっとそういうことであろうなと思って伺っておりました。
  177. 横光克彦

    ○横光委員 期限つきとかあるいは上限つきという条件の中でも、日銀が新規国債の引き受けをやるというお考えはございませんね。
  178. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私は持っておりません。
  179. 横光克彦

    ○横光委員 この日銀の新発国債の引き受けというのは、いわば御案内のように禁じ手ですよね。そしてまた、財政規律を著しく侵食するという一点をもってしても、私はとることのできない選択だと考えております。  次に、もう一つお聞きしたいんですが、私たちも財政の機動的運用の面から、公債政策の適宜適切な発動は了としてきました。しかし、その際絶えず提起してきましたのが、建設公債赤字公債の区分ですね。この区分が現在及び将来においてどれほどの意味を持つかということを提起してきたわけでございます。  確かに、戦後復興期におきまして、社会的資本形成を強力に推し進める手段として建設国債を認め、赤字国債は原則禁止してきたわけですね。この政策的意義を否定しようとは思っておりません。現に、禁止されている赤字国債も、非常事態ということで、これまで何度となく発行されてきたわけでございます。そして、その公債残高の赤字分と建設分の区分は、これは予算上行われておりますね。ところが、市場においては受益と負担の関係を意識してそれが消化されているかといえば、そんなことはないだろう、有利、不利のあれはないんですので。私は、そこのところは、市場においてはそういった受益と負担の関係なんという形では動いていないだろうと思うわけですね。  さらに、公債の償還年数、これは十年債であれば、普通は借りかえに借りかえを重ねて六十年をかけておると思います。これに対してインフラの耐用年数、これもいろいろあろうかと思いますが、普通の構造物では大体三十年から四十年だろう、これが妥当です。そうして見ますと、建設国債であっても、受益期間より結局負担期間の方がはるかに長いことになる。利益を受けられずに負担ばかりしなければならないという世代も来るわけですね。  財政当局が好んで使っております世代間の公平論、これに依拠する赤字国債の消極主義、つまり、赤字国債というのは経常的経費であり、便益は当該年度内で消費される、形としては残らない、使い切りなんですね。  そういった形からすると、この実態論に立つならば、もはや区分の役割は終えたんではなかろうか。つまり、区分で財政規律を維持するんではなくて、総枠、たとえ景気対策とはいえども、返せる範囲で総枠を決めて、その総枠を抑えることによって財政規律を追求していくべきではないかと思うわけでございますが、どのようにお考えでしょうか。
  180. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 けさほども日銀総裁が、高橋蔵相時代に日銀引き受けの国債発行があって、それが戦争に入っていく過程をお話しになっておられましたが、やはり戦争が終わりましたときに、日本がこういう敗戦になったことの一つに、軍事費のために国債をほとんど無制限に発行したということがあった、国債発行は戦争につながったというような反省がございまして、また占領軍がおりましたこともあって、したがって国債というものはもう発行しないという考え方がしばらく続きましたが、ただ、我が国が急速に復興を始めましたときに、やはり、明らかに復興のためにする事業というものは国債で賄ってもいいんではないかという議論がまた起こりまして、それで財政法の特例ということになったわけでございます。  その後、しかし、今おっしゃいましたように、耐用命数といいましても、こういう技術革新の時代では、コンクリートであるから六十年、本当にビルが建っているかといえば、建っているのもありますけれども、そういう時代でなくなっておるということも事実でございます。  今何かといえば、私ども財政当局の上に、そういうものとそうでないものとはやはり意味合いが違うんだよという、そういう自粛自戒と申しますのでしょうか、あるいは規律と申しますのでしょうか、そういう働きはしております。しておりますが、今のいきさつをかなり離れて申しましたら、今おっしゃっていらっしゃるようなことになるんだろうと思います。  何の意味もないとも思っておりません。しかし、当初考えられたような説明というものは、殊にソフトの時代になってまいりますと、やや十分ではないなという思いはいたします。
  181. 横光克彦

    ○横光委員 実態を伴わない形であるならば、やはり徐々に変更していくべきであるということを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  182. 鴨下一郎

    ○鴨下委員長代理 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。      ————◇—————
  183. 鴨下一郎

    ○鴨下委員長代理 次に、内閣提出経済社会変化等対応して早急に講ずべき所得税及び法人税負担軽減措置に関する法律案及び租税特別措置法及び阪神・淡路大震災被災者等に係る国税関係法律臨時特例に関する法律の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井奥貞雄君。
  184. 井奥貞雄

    ○井奥委員 自由民主党の井奥貞雄でございます。大蔵大臣におかれましては、大変長時間のお役割御苦労さまでございます。あとしばらくよろしくお願いを申し上げたいと思います。  税制改正関連法案の審議に当たりましては、今日の我が国経済情勢から議論をする必要がございます。大蔵大臣は、今日の我が国経済につきまして、資産市場の低迷、不良債権問題の深刻化などバブルの後遺症を抱える中、金融機関の経営に対する信頼の低下、雇用不安などが重なり、厳しい低迷状況にあります、また、我が国を取り巻く国際経済情勢も、一昨年のアジア諸国に端を発した通貨あるいは経済の不安定な状況により、先行きは極めて不透明でありますと財政演説で述べておられます。最近、長期金利の動向などは注目すべき動きも見られ、日本銀行による国債の引き受け等についても、午前中も重ねて議論をされております。  このような中で、改めて大蔵大臣の現在の景気情勢に対する御認識をお伺いしたいと思います。
  185. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 政府は、御審議願っております予算案を中心に、平成十一年度におきまして、過去二年マイナス成長が続いた後を受けて、せめて〇・五%のプラス成長をいたしたいと念願をいたしておりまして、予算にあわせまして、いわゆる金融秩序の信用回復にも努力をいたしておるところでございます。  そういう中で、さしずめ私ども、一月—三月の時期を非常に心配をいたしておりますのは、一つは、今この資本注入、信用システムの秩序の回復ができるかどうかという問題が進行しております。他方で、年度末でございますから、各企業は当然、年度末にしばしばございますいわゆるいろいろな資産の整理であるとか損切りであるとか、あるいは、決算が必ずしも明るくないので、雇用につながるいろいろな問題が生じやすい時期でもございます。あれこれで、この三月の年度末を何とか乗り切りたい。  これを余り心配がなく乗り切りまして、その後、例えて申しますと、有効求人倍率が少しでもよくなっていく、あるいは三月十日ごろには十—十二のQEが出ますので、そのときにプラスの答えが出た上に内容がそんなに悪くないといったようなことを大変に神経質に見詰めておりまして、三月をうまく乗り切りましたら、将来に向かってのもう少ししっかりしたことが申し上げられるんではないかというような気持ちで経済運営をやっておるところでございます。     〔鴨下委員長代理退席、委員長着席〕
  186. 井奥貞雄

    ○井奥委員 ありがとうございました。  今日の税制の議論におきましては、まずこの極めて厳しい経済情勢にどういうふうにして対応していくのか、このことが問われているわけであります。  我が国の政治がどのように取り組んだかを振り返ってみますと、小渕総理大臣は、昨年の夏以来、経済再生を挙げられまして、本年以降六兆円を超える恒久的な減税を実施するようリーダーシップを発揮してこられたのであります。この大胆な政治決断は、国の内外はもとより、世界から高く評価をされております。その後、宮澤大蔵大臣を初めとして、政府・与党の方々が税制改正の実現に向けて大変な努力をされたことに私は敬意を表するものであります。  また、厳しい経済情勢のもとに、ややもすると我々の目は国内に偏りがちでありますが、世界では大きな変化が進んでおります。その一つがアジア通貨危機であり、もう一つが本年の年初から導入されたユーロであります。世界経済の動きが我が国経済に直結をし、また、我が国経済政策世界経済に大きな影響をもたらすようになっているのであります。急速に進むグローバリゼーション、世界における日本の置かれた立場や役割を考えますと、税制のあり方についても、グローバルスタンダードを常に考えながら議論をしていかなければなりません。  他方、このような税制上の措置は、当面の対策というだけではなく、我が国経済社会の構造的な変化に対応し、小渕総理大臣が施政方針演説で述べられたように、繁栄へのかけ橋となるべく、将来につながるような施策でなければならないと考えております。  本日、私は、経済再生、グローバリゼーションと二十一世紀へのかけ橋との視点から、政府提出の法案について質疑を行うものであります。  今般の税制改正のうち、いわゆる恒久的減税について見ますと、個人所得課税について、国民の意欲を引き出すといった考え方から、国税、地方税を合わせた最高税率を六五%から五〇%に引き下げるとともに、中堅所得者層に配慮した定率減税が実施されることになっております。  また、法人税につきましても、我が国企業の国際競争力の発揮、企業活動の活性化の観点から、実効税率を四六・三六%から国際水準並みの四〇・八七%に引き下げることとされ、中小企業を取り巻く厳しい経済状況等にも配慮をして、中小企業の軽減税率も引き下げることになっております。  個人所得課税の最高税率、法人課税の実効税率の引き下げは、ともにグローバルスタンダードに沿ったものとはいえ、人、物、金の動きがグローバルになった今日、適当な措置と私は考えております。  次に、恒久的減税とともに、現在の厳しい経済情勢を踏まえてさまざまな措置が講じられることになっております。  まず、低水準が続いている住宅投資現状考え、新たに実施される住宅ローン減税は、平成十一年または十二年の二年間に居住用の場合に限り、残高五千万までの住宅ローンについては、十五年間にわたりその一定割合を所得税から控除するというように、現行の制度を思い切って拡充したものとなっております。住宅建設は経済への波及効果が大きいことを考えると、相当な景気刺激効果があると私は考えております。  また、景気刺激策といたしましては、住宅とともに民間設備投資の促進が重要でございまして、百万円未満の情報通信機器を取得した場合には、一年間に限っての時限措置として、取得価額の全額が損金算入できるという情報通信機器の即時償却制度の創設などに期待をして、多くから刮目をもって見ているわけであります。  そして、税制改正全体では、地方税も合わせますと九兆四千億もの減税であり、昨年の公明党との議論に基づき、現在実施をされている地域振興券の七千億をも含め合わせますと、十兆円を超える規模となっております。政治のリーダーシップのもと、かつてない規模の施策を決断されたのであり、政府としてはなし得る限りのことはした、こう言える税制改正であると評価をいたしております。  また、先ほど申し上げましたように、国際金融における大きな動きを目の当たりにいたしますと、我が国の通貨であります円を国際化していくというのは緊急の課題であります。  昨年の秋、大蔵委員会の欧州視察団として、村井委員長以下、私もその一員として欧州の財政、金融、経済事情を調査をしてまいりました。その中で、我が国には、都市型先端技術を含め、省エネや環境に関する技術など世界に誇るべきものが大変多い、その中でなぜ我が国投資が少ないのか、アジア経済の三分の二を占めるにもかかわらず円の国際化が進んでいないのはなぜなのだろう、こういう理由の一つとして、我が国の金融市場にかかわる税制上の措置が欧州の金融当局者から指摘をされたのであります。  帰国後、指摘をされたことを念頭に、円の使い勝手をよくするにはどうするのか、どうすればよいのかを考えつつ、私も税制改正に携わってまいりました。今般、金融関係税制として、円の国際化の進展に資する税制上の措置や有価証券取引税及び取引所税の廃止が政治主導で決着を見たのは、まことに画期的なことと言えましょう。  さて、大蔵大臣、このように今般の税制改正は極めて広範多岐にわたる大きな内容となっておりますが、今般の税制改正の基本的な考え方について、大蔵大臣の御所感をお伺いいたしたいと思います。
  187. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御審議をいただいております法案につきまして、いろいろな角度から分析をしていただきました。ただいまのお話は、私も十分啓発されて承りました。  所得税の最高税率を落としたということにつきましては、金持ち優遇であるという御批判がございますけれども、実は私ども、将来の抜本税制改正を考えておりますと、たびたび税制調査会で指摘されております、いかにもこれは働く意欲をなくさせる、あるいはむしろ脱税を奨励するようなことではないかということに加えまして、将来、日本という国は個人所得税の高いところだと言われますと、恐らく外国からなかなか日本に来る人がいなくなるだろうというようなこともあわせまして、思い切って、この際トップの税率を落とさせていただきました。  これによりまして、先々恒久減税をかけますときにも、トップがもう下へ下がっておりますから、余りスティープな累進はかけないはずでございまして、そういう意味でもいい意味があったと思います。  法人税は、これは個人の生活に関係がないということから御批判を受けましたが、しかし、法人の、企業の税負担が軽くなるということは、これは雇用には非常に影響いたしますし、また、これこそ、今日、世界どこでも本店が置けるような時代になりましたので、国際的な不利ということはやはり大事に考えなければならない問題だと思っております。  住宅税制につきましても、私どもはこれはかなりの効果を期待いたしておりますし、それから、コンピューター等の即時償却につきましても同様でございます。これらは即時的な効果もあろうかと思っております。  それから、おっしゃいますように、国際税制につきまして、一括登録国債の利子の非居住者に対する源泉徴収免除、それから短期の証券の償還差益に対する源泉徴収の廃止等は、かなり税務当局としては長年懸案で踏み切れなかったところでございますが、御慫慂もありまして、おかげさまで踏み切りまして、これで我が国の円の開放体制、金融市場というものも大分外向きになると期待をいたしております。  総じまして、そういう意図で税法改正をさせていただきますが、当面の景気回復に役立つようにということとともに、将来あるべき抜本的な税制改正にも支障にならないような御提案を申し上げたつもりでございます。
  188. 井奥貞雄

    ○井奥委員 大蔵大臣がちょっとお触れになられましたが、今般の税制改正に関連をいたしまして、定率減税によって、定額減税が実施された昨年との比較をされて、多くの方々が税負担がふえるとの批判がございます。これは、二兆円、二兆円という二回、こういう形での、定率の減税ではなくて定額の減税をしたということであります。  確かに、定率減税の実施によって、夫婦子供二人の世帯で見れば、給与収入が七百九十三万円未満の所得階層の方々にとっては、昨年に比較をして減税額が少なくなります。しかし、昨年実施された定額減税方式は、あくまでもできる限り早期に減税を実施するために、臨時異例の一年限りの措置としてとられたものでございまして、恒久的な形で減税を実施するものであれば、納税者ごとの税負担のバランスを崩さない定率方式をとることが適当であります。一年限りの、文字どおりの特別な減税と今回の恒久的な減税を単に比較をすることは、私は適当ではないと考えております。  仮に定額減税を継続すれば、我が国の課税の最低限は五百万円という、諸外国に比べて相当高いままとなってしまうわけであります。最初に申し上げましたとおりに、税制上の措置は将来へつながるものでなければならないと考えているわけでございまして、今般の措置は妥当なものと考えておりますが、どのように考えておられるか、御所感をお伺い申し上げます。
  189. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 お尋ねがございましたので申し上げるわけでございますが、前回、定額減税を行われた背景を見ますと、非常に急いで実施をされなければならないような状況で決断をされました。したがいまして、御承知のように、税額表というものは法律が確定いたしましてから二カ月かかるそうでございますので、到底そのことはできない。税額表ができないとすれば、定額で計算をすれば簡単でございますから、定額しかないということで減税をされたようでございます。  そこで、今回は、井奥委員のおっしゃいますように、一遍限りのことでございませんので、やや恒久的なことを考えておりますが、定額減税でございますと累進というものは全く消えてしまいますので、所得税の本当の社会的な意味は累進というところでございますから、これを全部消してしまうということは、その方々の間でもやはり所得の多い少ないはございますから、それがみんな一緒にゼロになってしまうということは、明らかに累進というものは消えるので、やはりそれは本当は避けなければならない。今度それを避けまして定率にいたしました。いたしました結果、税額表に時間がかかりますので、どうして一月から引けないのだという御批判は受けておりますけれども、累進というものは残った。  それで、井奥委員のおっしゃいますように、もし今度も、仮に、前回の一遍限りの減税と同じようなことをやれ、負担がふえないようなことを考えろとおっしゃれば、それはもう一遍定額をやるしかないということになりますが、定額をやりました結果は、今おっしゃいましたように、課税最低限は四百九十一万円になりましたから、従来の三百六十一万円との差額は非常に大きくて、その間に、数百万と推定されますが、納税者がリタイアした。  二度リタイアされますと、恐らくもう一遍登場されるということはなかなか気分的にも難しいんだと思いますが、将来の我が国考えますと、四百九十一万円なんというとてつもない高い課税最低限で税制の根本改正をやることは私はできない。少しでも払っていただきたいというのが累進というものの考え方でございますので、少しでもというその数百万がいなくなってしまわれますと、とてもそれは税制がかけませんので、将来のことを考えましても、緩和はいたしましたけれども、ここは何とか定率でもってお許しをいただきたい、そういうふうな気持ちでおるわけでございます。
  190. 井奥貞雄

    ○井奥委員 大蔵大臣の御説明、また御所感を私はよく理解をいたしておりますけれども、ぜひとも政府も、議員の役割もありましょうが、なかなかそういうことのPRが減ったんではないかなと。ただ、税金が上がったよ、こういうことよ、決して減税ではないよ、こういうことだけがひとり歩きをしていくものでございますので、私どももしっかりやりたいと思いますが、政府側もしっかりと、こういう問題については、私は、今大蔵大臣のおっしゃられたようなことをやはりアピールをいただきたいということをお願い申し上げます。  そして、昨年、消費税をめぐりましてさまざまな議論が見られました。消費税は、所得税法人税と並ぶ主要な税でございますが、十一年度予算において、消費税の福祉目的化が予算総則に明記をされました。消費税収を広く国民の老後等を支えるための予算に使うということが明らかになり、消費税に対する国民の理解が一層深まるものと私は考えております。  総じて見ますと、今般の税制改正は、景気対策、経済再生に最大限に努力するとともに、経済社会の構造的変化に対応したものとなっていると考えております。しかしながら、今後も、我が国経済社会は構造的に大きく変化をし、国際化が進展すると予想される。このことを考えますと、税制には、将来を見据えた個人所得課税、法人課税の抜本見直しを行うという大きな課題が残されていると考えます。今後、どのような検討を進めていかれるのか、この件につきましてもお伺いを申し上げます。
  191. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 今、井奥先生からお話がございましたように、所得課税、法人税、まさに今後の経済社会の構造的変化はどうなっていくのか、国際化の進展がどうなっていくのかということを踏まえました抜本的な改正を行っていく、そのための検討が必要であろうと思っております。  まず、個人所得課税についての課題でございますが、これは、現在、政府の税制調査会に基本問題小委員会というのをつくって検討項目が中間的に挙がっているわけでございますが、やはり、その諸控除等を含めた課税ベースを一体どう考えていくのか、課税ベースとあわせて税率構造をどう考えるのか、あと、前から、金融課税については分離課税かどうかというようなお話もございました。こういった課税方式まで、幅広い論点にわたり検討していく必要があるだろうと思います。  その際に、やはり所得税といいますのが、広く、社会の構成員がそれぞれの経済力に応じて公平に負担し合う基幹税でございますので、そういう点についても忘れてはなるまいと思っておるわけでございます。  法人課税の問題でございますが、課税ベースの問題、まだ検討しなきゃならない余地がございます。課税ベースをどう考えるか。さらには、経済の国際化の進展の流れの中で連結納税制度の検討に着手しなければならないだろうと思いますし、また、これは地方税の話になりますが、事業税における外形標準課税の問題をどうするのか、いずれも将来の課題でございますが、経済状況を見きわめつつ検討してまいりたいと考えているところでございます。
  192. 井奥貞雄

    ○井奥委員 ありがとうございました。  最後にお尋ねをいたしますが、我々は極めて厳しい財政状況を忘れることはできないわけであります。  前門のトラというのは、今日の経済情勢、景気の問題を含めてどうやるのかということでありますし、後門のオオカミ、これはやはり財政状況をどう打破していくのかという、二つの大きな課題を私たちは抱えているわけでございますが、平成十一年度の予算における公債依存度は、午前中にも大蔵大臣もお話しになられましたが、何と三七・九%に達しているのであります。この財政赤字に対して、先ほども申し上げたとおり、資本市場は既に長期金利上昇という形で財政赤字に警鐘を鳴らしております。これを放置いたしますと、せっかくの財政政策が生かされないこととなりかねないのであります。そのためには、何より財政の健全化が求められております。  今般の税制改正は、景気回復、経済再生のための最大限の努力であって、同時に、その後の財政の健全化は私どもの子供や孫たちの世代に対する我々の責任であります。来る二十一世紀へのかけ橋であると考えておるわけでありますが、二十一世紀財政の課題について、大蔵大臣はどのようにお考えになっておられるのか、これをあわせてお伺いをいたします。
  193. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 二十一世紀を展望いたしますと、既にアメリカ経済社会がそれに対する対応を、もう終わったとまで申し上げていいかどうかぐらい進んでおりますし、我々としては、それを実は目指しながら今非常に苦しんでおるのだというふうに私は思っていますけれども、そういう新しい二十一世紀にあるべき日本の姿、そこへ老齢化と少子化が加わってまいりますので、非常に難しい時代になるであろう。しかし、対応を間違えなければ、必ずまた日本は飛躍することができるだろうと思っておりまして、そういう意味で、今の税制あるいは財政の問題も、いろいろ緊急を要しますが、二十一世紀に邪魔にならないように、できれば助けになるように、そして、成長がある程度、仮に二%の、しっかりした軌道に乗りましたら、もう早速、税制、財政あるいは中央、地方の関係等々、全部を洗い直さなければならないというふうに、今からそのことは考えております。
  194. 井奥貞雄

    ○井奥委員 ありがとうございました。  私どもは、与党といたしましても、大蔵大臣に二十一世紀、後顧の憂いのない、思い切ったかじ取りをしていただく。そのためには、ブレーキもアクセルも共有していただいているわけでございますので、御多忙であろうというふうに私は拝察をいたしておりますが、これからの国家のためにぜひ一層御精進いただき、御努力をいただきますように心からお願いを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  195. 村井仁

    村井委員長 次に、上田清司君。  では、ちょっと速記をとめてください。     〔速記中止〕
  196. 村井仁

    村井委員長 では、速記を起こして。  上田君。
  197. 上田清司

    ○上田(清)委員 大蔵大臣、ちょっとお休みをしていただきまして、四番手にやる予定だった部分からやります。  住宅減税についてお伺いをしたいと思います。  既に御案内のとおり、一方においていろいろな評価もございます。住宅ローンの減税で、今まで最高額百七十万だったものが十五年間で五百八十万ぐらいになるということは、それはそれでそれなりに恩恵だという評価もございますし、正しく評価するものも私はあってもいいと思っております。ただ、住宅政策をどう考えるかという視点がきちっとしていかないと、税制と住宅政策との整合性が本当にあるのかどうか。これは、理念の部分を少しやってから聞いた方が実はよかった部分もありますが、幾らか数字の部分での技術的なこともあるので、大臣がいらっしゃらなくてもいいかと思って、先行させていただきます。  まず、建設省にお伺いしますけれども、基本的に、住宅政策、一体どこにポイントを置いてなされているのか。例えば、いろいろな考え方があります。できるだけ持ち家政策をやっていくとか、あるいは都市部におけるまさしくライフステージに合わせた形で、賃貸を中心に移動しながら最終的に持ち家に持っていくとか、いろいろな議論があると思うんですね。建設省として、どういう住宅政策を基本的にポイントにして、それについてどういう税制のかかわりがあればその基本的な政策を推進できるのか、このことについてお伺いしたいと思います。
  198. 那珂正

    ○那珂政府委員 お答えいたします。  住宅政策の基本についてのお尋ねでございますが、一言で申し上げますと、住宅市場の活性化を通じて、国民のニーズに対応した良質な住宅ストックの整備ということが住宅政策の基本的課題であろうと思います。  国民のニーズに対応したと申し上げましたけれども、国民ニーズ、住宅ニーズが近年のいろいろな社会経済情勢の変化等によりまして大変多様化しております。例えば、持ち家か借家か、あるいは新築か中古かというような問題についても、必ずしもどちらかでなければいけないというのではなくて、むしろその人、そのときのライフステージに合った選択が可能となるような、そういう住宅市場の整備が必要だろうと思うわけです。また、その前提として、一つ一つの住宅あるいはそれぞれの住宅の環境が、一定の水準以上に良質な住宅ストックが全体として形成されているという前提が必要だろうと思います。  さらに、当面我が国の最も重要な政策課題でございます景気の回復についてでございますが、内需の柱の一つであります住宅投資につきましても何とかその回復を図る必要がある、住宅政策としてもそういう課題認識をしております。  その上で、今般の税制、とりわけ住宅減税にかかわる税制のあり方について申し上げますと、少しでも住宅ストックの水準の向上を図る、そういう動機が随所にビルトインされているような構造になろうかと思います。そういう意味で、全般について申し上げれば、私どもが目指しております住宅政策の遂行について、大変いい制度になっているのではないかと思います。
  199. 上田清司

    ○上田(清)委員 余りはっきりしなかったですね。  はっきり申し上げますが、今、日本の住宅は量では既に十分だというお話があったという認識でよろしいんでしょうか。
  200. 那珂正

    ○那珂政府委員 おっしゃるとおりでございます。
  201. 上田清司

    ○上田(清)委員 私もそのように認識しております。したがって、いかに住宅の質を高めていくか、あるいは住環境の質を高めていくかというところがやはり住宅政策のポイントになる、またならなければならない、そして、それを支える税制もそういう視点から物事を考えていくべきだというふうに私は考えているわけなんですね。  そうすると、今回の税制のポイントを住宅減税に関して言えば、現行の住宅取得促進税制のいわば拡充版、拡大版、こんなふうに私は見ております。つまり、どういうことかというと、第一次取得者、低中所得者のために実はこれを今までやってきたわけです、はっきり申し上げて。マンション急増という形のバブル以後の全体の中で、この中身は何だったかというと、比較的まだ若手で、所得は少ないけれども、しかし賃貸で住むぐらいだったら十分このくらいで住めますよという形でローンを組んできた。しかし、その人たちが今や、ある意味ではこういう社会変化の中でいわば失業するとか、あるいはボーナスが予定どおり入らないというような形で苦しんでおられる。こういう視点からいくと、実は、今回、住宅に関して言えば、やはり住宅の買いかえの余力のある高額所得の方々にも十分視点を置いた、むしろそのことの方が住宅市況をもっと活性化させ、そして景気対策にもなる。むしろ、低中所得者あるいは第一次取得者の対象の部分は、賃貸を中心に組み替えをしていくべきだったんではなかろうかと私は考えているんですよ。  そういう点で、例えば、住宅ローンの控除もいいんですが、利子控除制度の方がむしろ今言った買いかえの方々あるいは高額所得の方々にとっては恩恵がより大きい、こういう視点をむしろ考えるべきであったんではなかろうかということをあえて強く申し上げたいわけであります。  これは大蔵大臣、前の方から聞いて、ぽんと言えばよかったと思いますが、今前段の部分を聞いておられないと思いますので、これは大武次長になるんですか、主税局長ですか。
  202. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 先生のお尋ねは、今回のは景気対策であるから、高額所得者にも建ててもらうために利子所得控除を入れるべきではなかったかというお尋ねであったかと思います。  今回の住宅取得控除のローン減税を設けるに当たりまして一言だけ申し上げてまいりますと、まず、借入金の残高につきまして三千万から五千万に引き上げているというのが一つの考慮でございますし、また、買いかえをする場合の損失の繰り延べ措置というのが昨年できましたが、それと今回の住宅取得控除の併用をするというのも、実は、中所得者以下の方の取得に重点を置きつつも、経済対策というところから相当大幅に拡大したところでございます。  なお、利子控除をすべきではないかというお尋ねでございますが、実は、これは税調の中でも相当な議論がございました。ただ、所得税の基本的な考え方からいいますと、結局、そのような形で借金の利子を引いていくというのは、所得税制の考え方からして、利子といいますのは一種の消費の後倒し部分といいましょうか、それを引くようなところがございまして、所得税の本質に反することになるのではないかという議論もございました。  それからまた、これも所得税のいささかやっかいな議論でございますが、帰属家賃が課税されていないというような議論もございます。また、これは、実はアメリカの例がよく引かれるわけでございますが、アメリカで連邦所得税が出て以来、実は連邦所得税すべて利子を引くという形になっておりまして、それはさすがに所得税としておかしいのではないかというような批判が出まして、結局、住宅のローンについてだけ認めるというのがアメリカの姿で、ほかの国でとっております住宅税制も、利子控除をとっている国はアメリカ以外には先進国ではないというような認識をしているところでございます。
  203. 上田清司

    ○上田(清)委員 その部分に関しては、言われることももっともだと思いますが、私が最終的に申し上げたいのは、住宅政策として何となく過去の延長線上で来ておられる、もう量は終わっている、質だ環境だと言っているときに、延長線上でそのまま動いているというところに問題があるということを申し上げたいし、むしろその側面において、やはり大蔵と建設はもう少し調整する必要がある、その辺がなされていない、私はそんなふうに思っているということを申し上げておきたいと思います。  それから、もう事務方にもいろいろ聞いてはおりますが、いわゆる今委員会あるいは予算委員会でも問題になっております長期金利上昇に基づいて、当然市中金利あるいは住宅ローンの金利上昇するであろう、あるいはもう上昇している、こういう議論の中で、こうした恩恵が本当に有効になってきたかどうか、今すぐ数字を出せるわけではないし、出せないと私も思っております。  ただし、来年度も赤字公債をある意味では出さざるを得ない目下の現況がございますので、これはどのような影響を与えていくかということについて十分検証をしておかないと、せっかく制度としてこの住宅ローンも恩恵をこうむる仕組みをつくっておっても、結果的には住宅取得の促進にもつながらないというような結果にもなりかねないということを思っておりますので、検証する用意はあるかどうか、このことだけ確認しておきたいと思います。
  204. 武藤敏郎

    ○武藤政府委員 長期金利上昇が住宅ローンの金利にどのように影響を及ぼすか、それが住宅の実需にどのような影響を及ぼすかということに関する計量的な検証をせよという御質問かと思います。  これは、実は大変難しい問題がたくさんございまして、御承知のように、変動金利のほかに固定金利制度をとるものがございます。この割合は、金利上昇局面か金利下降局面かによって、固定金利を選ぶか選ばないかという一般の国民の行動がいろいろ変化してまいります。  それから、住宅公庫の場合には、一定のルールによりまして、預託金利上昇すればもちろん住宅公庫の金利も上がるわけでございますが、しかし、今回のように当面据え置くというようなこともございます。  それから民間の場合には、ここが最大の問題だと思いますけれども、民間金融機関が提供する住宅ローンの金利については、まさに個々の金融機関が市場における長期の資金需要の動向などを勘案いたしまして、みずからの商品設計等に係るいわば経営判断というのでしょうか、そういうものによって決定されるということがございますので、今のお話はなかなか難しいところがあるのではないかと思いますが、そういうことも含めまして可能かどうか検討させていただきたいというふうに思います。
  205. 上田清司

    ○上田(清)委員 ちゃんとしないとだめですよ。私はちゃんと覚えていますからね。  それでは、総論の部分について大臣お願いいたします、お疲れのところ恐縮ですが。  本当に原則論で恐縮ですけれども、今回の税制改正、所得税、住民税減税を中心とするこの改正の基本的な目的はどこにあったのか。いろいろ中の文章を読んでみますと、抜本的な見直しを行う間の措置、そういう抜本的な見直しをしなければならない、その間における経過的な措置だ、私はこういう判断をしているのですが、そのように判断してよろしいのかどうか。
  206. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 我が国経済がまあまあ成長軌道に乗りましたときに、いずれにしても財政、税制、あるいは中央、地方の関連等々抜本的に見直さなければならないということを一方で考えておるわけでございますが、今はその時期でない。他方で、以前から一遍限りの減税というものが何度か行われました、その結果として、一方で国民の間に一遍限りでは将来についての不安があるという御批判があった。他方で、先ほど申し上げましたが、定額減税というものがそれなりの欠陥を持っておって、非常に納税者の数が少なくなって累進がきかないというようなことがございました。  しかし、大きな減税をしなければ今の不況打開はできない、こういう状況の中で、将来のことは将来といたしまして、しかし一遍限りのことをしたのではいけないから、そういう意味ではやや半恒久的といいますか、一年限りでないという意味減税をしようということを基本的に決心をいたしました。  したがいまして、その際、個人については思い切った減税をする。それは頭打ちはいたしますが、定率でいたしたい。と同時に、長年の課題であった余りにも高過ぎるトップレートというものはこの際将来に向かってやめておきたい、それが所得税の問題でございます。  法人税につきましては、今だれもどこの国へも法人の主たる事務所を移し得る時代でございますから、これは国際的な基準というものに合っていないと、企業が日本から出ていく、あるいはまた外国から入ることが妨げられる、もっと基本的には日本の企業の競争力にもかかわるというようなことで、思い切って法人税減税をいたしました。これはこれでほぼ国際水準に達したという感じでございます。  それから、先ほどからお話のございました所得減税は、いろいろな意味で即効性もあるし効果があると考えましたし、またコンピューター等の一〇〇%償却も情報化の時代にふさわしいものであろう。それから国債関係では、短期証券の償還差益には源泉徴収を取らない、あるいは一括登録国債の利子は非居住者は非課税とする、これは国際化の意味合いでございます。ほぼそれらの内容でございますが、これを合わせまして九兆円余りの減税でございますので、これで将来の日本の進路に妨げのあるような部分はしておらないつもりでございますし、また当面の景気回復にも寄与するところがあるであろう、このような意味で御審議をお願いいたしておるわけでございます。
  207. 上田清司

    ○上田(清)委員 今、大臣がおっしゃいましたように、幾つか、法人税の国際標準並み、こういったところは確かに評価できる。私もそんなふうに、正しく思っております。  しかし、今お話しの中でも、半恒久的減税というお話も出てまいりました。それから、最高税率を引き下げる。しかし、これだけだと実質的に減税にならないので定率減税を組み合わせをした、こういうことでございますが、結果として、もう多くの方々が指摘されてきたように、七百九十三万以下の所得の方々には実質増税だ、要するに、昨年度の特別減税との関係でいえば。一回限りですから、そことの比較は困るという御指摘をいただけばそれで終わってしまうのですが、やはり、去年と比べてどうなんだということで本当の意味での減税になるわけでありまして、それであるいは消費意欲なり景気対策になるんだと思います。  この点に関しては、実質的に景気対策にならないのではないですか。
  208. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ここが一番問題になるところでありまして、そういう御質問がありますことも、私は十分理由のあることだと思っています。  私どもの方の考えから申しますと、前回定額減税をやられたということは、もう時間的に余裕がなくて税額表に手を入れられないという段階で決心がなされたものですから、定額しかやりようがなかった。それはそれで一つの意味は持ちましたでしょうが、定額しかやりようがなかった。その結果、従来課税最低限が三百六十一万円でございましたものが四百九十一万円にはね上がりまして、七百万ないし八百万人の納税者がリタイアをしたわけでございます。ただでさえ三百六十一万が高いと考えられたところで四百九十一万までいきましたので、これは甚だしく高い課税最低限になりまして、大変なたくさんの納税者を失ったと申しますか、リタイアされた。  その方々の間にも、しかし、所得税のエッセンスであります累進というものはあったわけでございますのに、ゼロはゼロでございますから、その間の累進というものはなくなってしまったのみならず、将来我が国の、抜本改正でもそうでございますが、こんなに高い四百九十一万円というような課税最低限では、とても国の財政も賄っていけないし、やはり国民にはできるだけ、少額でも税金を負担していただきたいという気持ちがございますものですから、どうしても定額をやるわけにはいかないということから、定率の決心をいたします。  しかし、いたしました結果は、もとは三百六十一万円で、この間うちのは一遍限りですから、それと比べていただいては困りますということは申せますけれども、現実に、この間のおかげで納税者でなくなった、やれやれとおっしゃっていらっしゃる方にもう一遍お返りを願って、そして昨年よりも場合によっては十万円近い高いものを払っていただくわけですから、理屈は理屈でも、なかなか納得をしていただけない向きはあるだろうということは、私はわかるような気がするのでございます。  しかし、それを全部なくそうとすれば、定額減税をもう一遍するしか方法がないので、そこは、控除を少しふやしたりしまして少しのことはさせていただきましたけれども、将来のことも考え、かたがた、前回のが一遍限りであったという事情もひとつ御理解をいただきたい、こう申し上げるしか、実際は、完全にこうですと言い切っていいものでもない、そう申し上げて御理解をいただきたい、こういうことになると存じます。
  209. 上田清司

    ○上田(清)委員 基本的に予想された回答になってしまいますが、しかし、ちょっと調べますと、給与収入七百万以下の給与所得者数が三千二百万人、そして、先ほど七百九十三万という、いわばラインのところでございますが、それに近い八百万でくくりますと、三千四百万人の方々がおられます。  つまり、どこをもって給与所得者と、分類の仕方もいろいろありますけれども、例えば全労働者六千万人あるいは給与所得者五千三百万とかそういう議論がございますが、その中の六割ぐらいの方々が実質的に減税の恩恵をこうむらない、こういう制度の仕組みは、果たして国民に夢とかあるいは消費刺激だとか、そういうものを与えるのでしょうか。昨年と比べれば六割以上の方々に実質的に負担増になる、そういう減税が本当に正しいのだろうかと私は率直に思いますが、大臣、もう一度御見解を承りたいと思います。
  210. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そういう非常に多くの方が昨年よりはたくさんの所得税を納められる結果になった。それで、家族構成になりますけれども、一番大きいところは九万円ぐらいになるわけでございますから、その方々は甚だこの政治はけしからぬとお思いになられるかもしれない。  私は、そういうことはありそうなことだと思いますが、しかし、昨年と同じことをやらせていただきますと、七百万か八百万の納税者がもう二年続けて納税者でなくなられたという意識は、もう一遍返ってきてもらうことは難しいだろう。つまり、そのときに我が国の課税最低限は四百九十一万円になる。そういうことを前提に、将来のあるいはこれからの税制抜本改正をやれるかということになると、外国から見ていかにもこの課税最低限は高うございますので、なかなかそこは思い切れないというか、踏み切れないと申しますか、将来に向かってやはり問題を残すだろう、そういうふうに考えました。  したがいまして、短期的に、今上田委員のおっしゃるような御不満が残った。そして、そのことは、何しろ消費を刺激しなければならないときに、何といっても去年のこととお比べになられる方が多いでしょうから、それはいいのかいとおっしゃれば、そこのところはやはりどっちかをとらざるを得なかったな、率直に申し上げましてそういう思いであります。
  211. 上田清司

    ○上田(清)委員 かみ合っている部分はかみ合っているのです。気持ちもよくわかります。  そこで提案なんですが、やはり国民の消費刺激につながっていない、それから不安解消にも私はつながっていないと思うのです。それがやはり株なんかの動きにも見えるのではないか、こんなふうに私は思っております。  そこで、先ほども申されましたように、今回のは抜本的なものじゃない、経過的なものだと。まさに抜本的なシナリオを国民に明示することによって、それで、ああなるほど、今回は昨年の問題に比べれば確かに負担増になっているけれども、しかし将来的にはこういうシナリオのもとできちっとした税制ができ上がるのだということによって、不安解消にもなってまいりますし、場合によっては消費刺激にもつながってくる、そういう仕組みをやはり提案すべきじゃないか。そこが見えないから、常に、消費刺激にもならないし、どんな手を打っても国民から見れば不安感があってどうにもならない。そういう意味で、どういうシナリオを提案されようとしているのか、それをきちっとやはり出すべきじゃないか。  これは、三十分で時間が過ぎてしまいますから、今すぐ、べらべらおしゃべりくださいとは申し上げませんが、本当に今の日本にとってどういう税制が必要なのかということをきちっと出す用意があるのかどうか。このことをずっと我々は、政府は責任を持って出しなさい、それについて一緒に議論しようじゃないかということを言ってまいりましたが、どうも継ぎはぎ継ぎはぎではないか、その延長線上で、どうその場しのぎをやっていくかという議論で終わってきたのじゃないかと私は思っております。  大臣、本当に、恒久減税が恒久的減税になりました。そして、抜本的見直しの話が経過措置になりました。これは、いつ抜本的な見直しをされるつもりなのか。
  212. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 昨年後半から今にかけまして、ただいまのようなことを私ども決心をし御審議を願っておる間に、政府の税制調査会は、それはそれとして、将来あるべき姿というのを継続して実は検討しておられるわけでございます。  そして、所得税につきましては、実はいろいろ問題があるわけでございますけれども、今の三百六十一万円、今度控除を二つ上げましたから三百八十二万円ぐらいになったのですが、これがいかにも外国に比べて高い。行く行くのことを考えるとこれはいかにも外国に比べて高いし、できれば少しでも所得税を納めてもらうということは大事なことだから、しかし、さりとてこれを下げられるか。税制の専門家の先生方は下げるべきだとおっしゃるのですが、現実の政治の問題としてなかなか下げられない。一生懸命これをもうこれ以上上げないようにするしかないんじゃないかというようなことを私どもにしますと思いますが、ただ、そこへ四百九十一万円が登場いたしましたので、これはとてもどうもならぬ。ここは、四百九十一万円だけはひとついっときのことにしてもらわないと、とても将来の税制というものはなかなかかけないなというあたりが今悩みの種でございまして、しかし、それにもかかわらず、上田委員のおっしゃることはやはり正論だと思います。  税制調査会で、今までも検討していただいておりますけれども検討を続けていただかなければならない。ただ、それがどういうものになりますかはともかくとして、実施できるのは、我が国経済が幾らかでもプラス成長軌道に入って、大丈夫だというときでなければ難しいのではないかというふうに考えております。
  213. 上田清司

    ○上田(清)委員 プラス成長のときに一気に改革するという議論は賛成ですが、シナリオを先に出していくということはもっと大事だというふうに思っております。実施する期間は期間として、しかし、やはりこういうシナリオがあるんだということを明示することが極めて大事じゃないかなと思います。  これは、特例公債三十兆の公債の問題からも言えることでありますが、日本税収が大変減っている。例えて言えば、法人税は、法人数でいえば六割五分、六五%の法人が法人税を支払わない、そして個人の所得税においても四割の方々が払わないような仕組みになってしまっている。これはやはり異常でありまして、多くの方々が薄く広く負担をする、社会参加費として個人も法人も企業もきちっと払う、そういう仕組みが大事だというふうに私は思っております。  自分も、実は税法は三本だけでいい。極端に言えば、所得税は一律一〇%で、給与所得者の合計が四百五十兆ぐらいありますから、それだけでも四十五兆入るじゃないか。そうすると社会政策は十分できる。百万円しか所得がない人でも十万円一たん払ってもらう、その上でしっかり社会政策をとっていく。そういうやり方もあるよということを申し上げますが、それ以上にやはり大蔵省の徴税の仕組みの中にもいろいろな問題点があり過ぎるのではないか、こんなふうに私は思っておりまして、たまたま啓発する本もございました。  大蔵省の元相談官で、「酷税 驚愕のしくみ」なんという文庫本がございまして、「大蔵徴税四原則」というのがあるそうです。  まず第一に、徴税しやすいところから徴税する原則、こういう原則があるそうですね。  その根拠は、所得税の最高税率が高く、社会政策として多少フラットにしていくという気分もあるんですが、やはりお金持ちからは取りやすい。法人税、高所得者や利益を出している企業から取りやすい。相続税、これもだれかがお亡くなりになったとき、そういうまだ精神的に不安定なときに一気に取ってしまう。こういうことでございまして、個人に戻せば、一千万以上の納税者はわずかに六・四%でありますけれども、四〇%の納税額を負担している。六%で四〇%だ。こんなことで見ていくと、やはり徴税しやすいところから徴税する仕組みが第一番目にあるのじゃないか。  相続税も、世界じゅう比較すると、日本が国税収入中三・九、アメリカが一・九、イギリスが〇・八、ドイツが〇・六というような数字もございます。若干、年度によって微調整はあると思いますが、大変取りやすいところから取るという仕組みがあるのではないか。  大蔵省の徴税の原則というのは一体何でしょうか。
  214. 大武健一郎

    ○大武政府委員 お答えさせていただきます。  先生が御指摘になられた本、私は存じておりませんけれども、私ども徴税にかかわっております国税庁の職員としましては、やはり税法を適正に執行し、租税収入を円滑に確保するということにあります。  御存じのとおり、申告納税制度を基本としておる我が国の税務運営の課題は、やはり納税者のすべてが租税の意義を理解し、適正な申告と納税を行うことによって自主的に納税義務を履行することにあるということだと思います。  このために、従来から納税道義の高揚など、納税環境の整備に努めるとともに、適正、公平な課税の執行を通じて税負担の公平を確保し、やはり国民の信頼を得るという努力をしてきたことでございますけれども、今後ともこの方針で努力していきたいというふうに考えているところでございます。
  215. 上田清司

    ○上田(清)委員 以前から御指導をいただいている大武次長でありますので、率直に聞くことはできますが、しかし、まさしく第二番目にこういうことも書いてあるんですよ。  第二原則、徴税しにくいところは隠れて徴税する、こういう原則だそうです。  具体的に言えば内外価格差、要するに物価に隠された税金という形であります。これは、経済企画庁のOBであります白川さんの本なんかにもよく出ておりますし、物価レポート、経企庁のそういうので、いわばパリやニューヨークと東京都の生活なんかで比較して、どれだけ生活費が高くつくか、こういう議論でございますし、国税関係でいえば、輸入貨物に係る第二の税金と言われております保税制度、この部分で、私が知る限りでは一兆円程度輸入業者が払うことになっていると思いますが、これは日本だけの制度でしょうか。
  216. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 関税局の話でございますが、きょう、税法の審議でございますので。  日本だけの制度ではないと思っております。
  217. 上田清司

    ○上田(清)委員 具体的にどんな国にあるんでしょうか。私が知る限りでは、先進各国ではほとんどないと思っておりますけれども
  218. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 私、主税局でございますので、先生の今のお尋ねの点、調べまして御答弁したいと思います。
  219. 上田清司

    ○上田(清)委員 はい、わかりました。これはいわゆる保税制度で、一兆円ぐらい輸入業者が負担をしている形をとっております。  それで、その部分が多分消費者に転嫁されているはずでありますから、こういう部分も世界に例のない形だと思いますから、この点、ちょっと後で宿題として確認をさせてください。  それから、第三の徴税の原則が、こんなふうにこの本には書いてあります。徴税した税金はむだ遣いすると言っています。  むだ遣いの話だったら、切りがないぐらいありますね。福井港、百億円の釣り堀というあだ名がついております。和歌山の白浜空港、旧空港を廃港にして四百九十億の予算で新空港をつくりました。このときに、東京便、福岡便に加えて札幌や仙台便も入れるということだったんですが、いまだに札幌便はめどが立っておらないどころか、福岡便は運休になっているというんですね。予定人数もはるかに少ない。なぜそんなふうになっていくのか。  あるいは、本四架橋の三本の橋の問題もそうであります。もう累積で欠損が八千四百十一億円。しかも通行料で過去の建設費を払っていくことはほとんど不可能でしょう。最後はどうなるのか。多分、国鉄清算事業団と同じような形で、清算事業団をつくって国の責任のもとにおいて処理をするという一行が加えられて、これもまた国民の負担になっていく。こういうことがしばしば繰り返されて、幾ら公共事業を上積みしても正しく景気対策にならないという部分は、やはり公共事業の中身、質、このことが問われていると私は思っております。  ちょっと調べましたら、日本公共事業は三十年間で三百六十三兆だそうです。ドイツは六十二兆だそうです。これを見ていくと、では、ドイツが約六分の一の公共事業額で、例えばずっとマイナス成長を続けているとかいうことはありませんし、それなりに豊かな国であります。  そういうことをいろいろ考えていくと、そういうところの切り口ができないままにずっとやってきているんじゃないか。そのことを是正しない限り、実は景気対策も何もあったものじゃないというのが現況じゃないか。そこに切り込みがないから、幾ら増額をしても実は株価に反映していかないんじゃないか。私はそんな思いを持っておりますが、大蔵大臣、主計局の査定の中で、本当に日本に必要な公共事業、そういうものが正しくきちっと反映されているんだろうか。  これは、率直に、大変なことだと思います。特例公債三十一兆円になって、このまま推移していけば多分もう数年で、場合によっては七百兆、八百兆という形でおよそ金利払いもろくろくできない、こういう形にならざるを得ないような状況に私は追い込まれているというふうに思っておりますので、よっぽど従来にない抜本的な切りかえ、あるいは物の見方をしていかないと絶対的にだめじゃないか。もうこんな予算の組み方ではだめだ。全く従来と同じじゃないか。昨年度から何%ふやしただけ、一律的にふやしただけ。  では、本当にこことここはこれだけ変えましたよ、そういう話がどこかにあるんでしょうか。そのことをお伺いしたいと思います。
  220. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今から二十何年前でございますけれども、先進国サミットが始まりました最初のときに、石油危機の後、不況でございました。それで、ドイツのシュミット首相と私は話をしていて、不況でどうすると言うから、日本公共事業をやっていくと言いましたら、シュミットが、それはおまえの国は非常に幸せだ、自分の国は公共事業で使い道がないという話をされました。  それはある意味で、本当に、今ドイツとの比較を言われましたので、我が国はやはり、いろいろ御批評はありますけれども公共事業をしなければならないほどインフラストラクチャーというものはおくれておりましたし、また、住宅を入れますならば、都会では殊にそうであったわけでございますので、私は、公共事業というのは、いわゆる土建屋的な、そういうスキャンダルというような話を別にしまして、それなりの立派な仕事をしてきたと基本的には思っております。  ただ、いかにも旧態依然としておるというようなことも御指摘があって、今回の予算でも、いわゆる物流に関するもの、あるいは二十一世紀を展望するもの、あるいは生活関連の枠等々、合わせて五千億別途にしてございますし、また、例えば中止すべき事業として、ダムでございますと十二件、治水は何件というふうに、港湾はもっとございますが、かなり整理をいたしておるつもりでございます。  それは、世の中の批判にこたえるつもりですが、不十分であるかもしれません。不十分であるかもしれませんが、しかし、まだまだ公共事業の持っている、新幹線のことまで申してはいかぬのかもしれませんが、率直に言って、新幹線の行った地方と行かない地方とは随分違っているというようなことが現実にございます。だからすぐやれということまで申すのではありませんけれども、高規格道路にしても、やはり国民生活全体から見るとプラスになっておるのではないかと思ったりしますから、公共事業そのものをそんなに悪者にする気持ちには私はなれない。  ただ、いかにもマンネリズムであったという御批判は十分に受けなければならないと思っております。
  221. 上田清司

    ○上田(清)委員 悪者にしたつもりではございません。  しかも、九三年にも、建設省の公共工事積算手法評価委員会においても、日本公共事業アメリカのそれに比べると三割高い、こういう指摘もございました。それから、毎年毎年建議もございます。かつて私も言ったことがございますが、その建議が本当に生かされているのか。生かされていればもっとシェアが変わってもいいんじゃないか。  それから、新幹線のお話も今されました。確かに、ミニ新幹線のあの工夫も大変な技術だと思います。まさに夢を運んでいると思います。  ただし、陸上の輸送のことでいえば、鉄道は四時間をもって飛行機にかえられます。四時間以上乗りません。大臣が広島にお帰りになるときに、岡山まではたくさん乗っておられます。岡山を越えるとどんどんいなくなります。広島を過ぎると博多までほとんどおられません、御承知だと思いますが。まさに、飛行機と新幹線との輸送の分岐点というのは四時間なんですね。  そのことがはっきりわかっている以上、おのずから新幹線も、どこを起点にして、どこまでは主要なる新幹線、そこからはもうミニ新幹線で実質的に工事費を使わないような仕組みにするとか、それもやっていかなくちゃいけませんが、実際はそうじゃない。東京から鹿児島まで新幹線に乗りませんよ、そんなに長時間。そんなのわかっております。では、福岡から鹿児島まで乗る人たちだけで採算が合うのかどうか、これも考えなくちゃいけない。皆さんむしろ高速道路で行かれます。  そういうことについて、本当に変わらないじゃないですか。そのことを私は申し上げておきます。  時間がなくなってまいりましたので、最近の税収マイナス傾向の部分について申し上げました。それと、徴税の問題について少し触れておきたいと思います。  公務員の二五%削減、これは、名前がどうなるのかわかりませんが、大蔵省でもやはり基本的には考えられていることだと思いますが、例えば、私ども大蔵委員会で税関だとかあるいは税務署などを視察して、現場の方々がいかに少ない人数で、いわば国際化の時代、あるいは徴税の難しい時代に御苦労されているかということも視察を通じて知っております。こういう事態に対して、一体この二五%の削減、私は基本的に大賛成でありますが、どういう形で仕組みをされようとしているのか。大臣、御所見がございましたらお伺いしておきたいと思います。  ちなみに、最近の法人実調率、いわゆる調査率は、平成元年が八・五で、平成五年が六・五で、平成八年が六・三と、どんどん下がってきている。つまり、それだけ税務調査ができない状況になってきているということをあらわしているような気がいたします。それから、滞納金額が、同じく平成元年は一兆一千億だったものが、平成五年は二兆三千億、そして平成八年には二兆七千億。これは景気の問題とも関連しておりますけれども、あるいは人員の問題とも関係しているのかもしれません。  そういう点において、現場の部門はしっかり残す、あるいは総務部門はしっかり削減していくとか、そういう企画があるのかどうかを含めてお尋ねをしておきたいと思います。
  222. 大武健一郎

    ○大武政府委員 お答えさせていただきます。  ただいま先生からお話のありましたとおり、税務行政を取り巻く環境は、納税者数の増加、これは法人もあるいは個人も含めてでございますが、それから滞納税額の増大という点、それからさらに、今もお話にありました経済取引の国際化、複雑化、あるいは会計処理の情報化の進展、それからさらには不正手口の巧妙化といったような対応がございまして、現場におきましても、質、量ともに厳しさが増大しているという状況でございます。  こうした中で、国税庁としましては、これまで、コンピューターの活用によります内部事務の簡素合理化、あるいは有効情報に基づきます効率的、効果的な調査の実施など、事務運営の合理化、効率化に努める一方で、税務の困難性あるいは歳入官庁としての特殊性を関係当局にも訴え、所定の定員確保に努力してきたという状況にございます。  現下の厳しい行財政事情を十分理解しているわけでございますが、今後とも、税務をめぐる環境が厳しさを増すという状況の中で、国税庁としましては、国税職員の増員につきまして各方面に訴えていきたい、努力をしていきたいと思っているところでございます。
  223. 上田清司

    ○上田(清)委員 私も、現場はしっかり確保する、しかしバックで構える部分はコンピューター処理も含めたそうした合理化の中でどんどん削減をしていくという考え方が正しいのではなかろうかと思いますが、今回の省庁再編成、これの中における小渕総理の原則二五%削減について、大蔵省として、方向性としてどのような見方をされているのか。これは質問の中身に入れておりませんでしたが、ちょっと流れの中でぽんと出てきましたので、アドリブで恐縮ですけれども、どういう考え方をされているのか、お伺いしておきたいと思います。
  224. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私どもはなかんずく財政当局でございますから、小渕さんの掲げておられるその目標にはぜひ自分たちも協力しなければならないし、また各省庁も協力をお願いしたいという、基本的にはそういう立場でございます。  ただ、今国税庁次長が申し上げましたように、そういうところの現業は、強化すべき部分と手を抜けるというか簡略にできる部分といろいろございますから、そういうところはいろいろ工夫をして、全体として目的に協力をしなければいけないというふうに考えております。
  225. 上田清司

    ○上田(清)委員 どうですか、武藤審議官、もう少し何かフレームはできていないのですか。今の話について、大蔵省内でフレームはもっと出ていないのですか。今大臣は、必要なところはちゃんと場合によってはふやして、減らすべきところは減らすと言われましたけれども、それは当たり前の話でありまして、どういう基本原則で大蔵省は考えておられるのか。それともまだ出ていないのか。お伺いしたいと思うのですよ。
  226. 武藤敏郎

    ○武藤政府委員 お尋ねでございますけれども、予算担当の方がその議論をやっておりますので、私からはちょっとお答えは控えさせていただきたいというふうに思います。
  227. 上田清司

    ○上田(清)委員 そうですか。何か、どちらかといえばそういうフレームづくりは武藤審議官のところで集約されているのではなかろうかというふうに私は思っているのですけれども、そんなことはないのですか。どちらかというと予算の問題じゃなくてフレームづくりの話ですよ。そういうのは集約されていかないのですか、議論として。それともまだそこまで至っていないというふうに思えばいいのでしょうか。どちらでしょう。
  228. 武藤敏郎

    ○武藤政府委員 今、フレームづくりというお話がございましたが、私ども立場は、確かにマクロ、経済政策財政政策についてのそういう大枠の議論はいたしますけれども、今のようなお尋ねの話は担当はしておりませんので、大変恐縮でございますが……。
  229. 上田清司

    ○上田(清)委員 はい、わかりました。  これは大蔵大臣、橋本内閣のときにも一〇%削減の話が出ておりました。どういう形で大蔵省は一〇%削減に取り組むのかということのフレームづくりはそのときもやはりなされなければいけなかったし、なされたと思うのですね。それで、小渕総理が突然二五%を言われ始めました。そうすると、ここに一五%も差がありますから、これは相当内部での議論が急いでなされなければならないというふうに私考えていたもので、どういう骨組みを考えておられるのかをお伺いしたかったのですが、十分何か煮詰まっていないような感じがいたしますが、大体そんなところなのでしょうか。大臣、最後に。
  230. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私、十分勉強しておりませんので、よくまた聞いておきます。
  231. 上田清司

    ○上田(清)委員 どうも鳴り物入りの二五%削減の議論が余り大臣のところまで届いておらない、こんなことではなかろうかというふうに判断せざるを得ません。極めて残念であります。予算を査定する大蔵省みずからがそういうフレームについてきちっと、先行してやるぐらいじゃなければ、なかなか各省庁、そういうフレームづくりについてはできなくなっていくのではなかろうかと私は思っておりますので、ぜひ、これはちょっと議事録に残るとなかなかつらい議論ではなかったろうか、そんなふうに思っております。  それでは、最後になりますが、先ほどのこの方の、お名前を申し上げれば平野拓也さんという方であります。元大蔵省相談官であります。国税のノンキャリアのプロでありますが、この方の最後の徴税四原則、ばらまき減税で改革は先送りする。つまり、ずっと一貫して言っておられるのは、まあ少し皮肉って言っておられるのですが、最後の整理で毎回申し上げていきます。  税金は徴収しやすいところから徴収する、それから二番目に、徴税しにくいところは隠れて徴税する、それから三番目に、徴税した税金はむだ遣いする、四番目に、ばらまき減税で改革は先送りする。これは、私はこれを読んでいて余りぴったんこなもので、大武さんは首をかしげておられますが、かなり身に覚えがあるような思いをいたしました。それで事実、幾つか御指摘をさせていただきました。  やはりこういう時代になりましたので、相当徴税についてもしっかりやっていく。同時に、従来の慣行をはるかに超えた部分で抜本的なさまざまな予算の仕組み、税制の改正、こういうことをやらない限り、もう大変な事態になってきた、こういう危機認識を多くの方々が持っておられますし、そういう御指摘をされておられ、また、大臣もそのような認識でおられるという、与野党一致したこういう認識があるわけですから、ぜひ今回の予算案についても、場合によっては大胆な修正をされることも大事だということを強調し、そして私どもも、所得税あるいは子育て支援の政策についても、きょうあすにでも法案を提出させていただくということを申し上げまして、珍しく二分前に終わります。ありがとうございました。
  232. 村井仁

    村井委員長 次回は、明十日水曜日午前十一時理事会、午前十一時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時二十八分散会