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安永参考人 石炭労働組合協議会の
安永でございます。
本日は、
国内炭鉱の将来のあり方について、
炭鉱労働者としての
意見を聞いていただく
機会を与えていただきました
高木委員長を初め、石特
委員会の各
先生方に対し、私は、
石炭産業に働くすべての労働者とその家族を代表し、心から
感謝と御礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました。
国内炭鉱存続をめぐる
政策論議につきましては、御案内のとおりでありますが、一昨年の石鉱審の企画小
委員会から舞台を同じ
政策部会へ移しまして、今、白熱した議論が展開をされておるわけでありまして、いよいよ大詰めを迎えておりますが、
先生方御承知のとおり、その展望は今もって厳しく、予断を許さない
状況にあります。
私はこれまで、
石炭産業に働く者の立場から、基本的には七つの点について強く訴えてまいりました。
その第一は、
世界のトップレベルにある
石炭関連技術については適正に評価をしていただきたい。
第二に、その
技術の評価の上に立って、
海外産
炭国からの
技術協力にこたえるためにも、現存する太平洋、池島両
炭鉱は、
石炭技術を国際貢献に生かすアジアの
技術拠点として明確に位置づけていただきたい。
第三に、
負担の問題については、
国内炭鉱の
役割と必要性を明確にした上で、
石炭サイドの
自助努力を前提に、需要家の
協力、国の
支援という三位一体の
関係はぜひ
維持していただきたい。
第四に、基準炭価については将来
とも継続すると
ともに、
平成十三年度まではいまだ構造調整の道半ばでありますので、コスト低減
対策がスムーズに推進できるよう
配慮していただきたい。
第五に、国の
経済政策、
雇用政策の観点からも、
炭鉱を存続させることは最大にして最高の
地域振興対策であり、
雇用対策であることを、国の責任において明らかにしていただきたい。
第六に、
世界最大の輸入国であり、恐らく将来もあり続けるであろう我が国のエネルギー
政策として、ベストミックスと言われる燃料構成の中で、自分の国の
石炭を切り捨て、一時的な価格論のみで将来の
国内炭鉱存廃を論じるのは、国家国民の貴重な
石炭エネルギーの永久放棄であり、優秀な
技術、技能の損失であるということを認識していただきたい。
第七に、現行法律
期限切れ以降の
石炭政策については、現存する二
炭鉱を
海外炭安定供給の
技術拠点として認め、その
役割に応じた国の
財政対策や法的
整備について、新規の助成
制度を確立していただきたい。
以上のようなことを、これまでの企画小
委員会や
政策部会で訴えてきたわけであります。
私たちのこうした訴えに対しまして、企画小
委員会や
政策部会では一定の
理解はいただいたわけでありますが、いわゆる
負担のあり方をめぐってさまざま
意見があり、冒頭申しましたように、いまだ結論は出ず、
国内炭鉱の将来展望は極めて不透明であり、私たちとしては、まさに切歯扼腕しているところであります。
そこで、私は、
国内炭鉱の存続のキーワードであります三つの点、すなわち
石炭サイドの
自助努力、
電力業界の
協力、国の
支援という三本柱について、私の考え方について
意見を申し上げさせていただきたいと思います。
第一の
石炭サイドの
自助努力についてでありますが、これは、
先生方御承知のごとく、
石炭経営側は
平成十四年度以降、
国内炭価格についてはトン当たり一万二千円を切るところまで
努力するという決意を表明し、その達成に向け、今、二山
とも懸命なコスト低減
対策に取り組んでいるところであります。
このコスト低減
対策は、私たち
炭鉱労働者の賃金を含む労働諸条件の圧縮や切り下げに手をつけるものであり、極めて厳しい対応を余儀なくされるわけであります。それでも、私たちは、
国内炭鉱存続のためには、思い切った対応を図るべく、組合員や家族の
理解と
協力を得てコスト低減
対策を推進していくことを決意し、それぞれの経営協議会において
確認をしてきたところであります。
したがって、
先生方の中には、それでもなお内外炭価格差が存在をするわけですから、もっとコスト低減
対策を徹底せよという御
意見があるかもしれませんが、私たち労働者の心血を振り絞って取り組んでいる苦渋と苦悩についてぜひ御認識いただき、このコスト低減
対策について御
理解を賜りたく、衷心より
お願いを申し上げる次第でございます。
第二の
電力業界の
協力についてであります。
電力業界としては、今日まで終始一貫して、フリーかつオープンなマーケットという自由取引を主張してこられました。
電力業界を取り巻く環境が、規制緩和、電力の自由化な
どもあって大変厳しい情勢にある。ゆえに、十四年度以降については、燃料費等の購入はその
企業の責任で行うものであり、そこに規制があってはならないとの考え方を主張されているわけでございます。
すなわち、このことは、どこの
石炭を何トン幾らの価格で買うかは、使う側といいますかユーザーの自由であり権利ですよというふうに私は解釈をするわけであります。自由主義
経済の原理原則からいって、
石炭政策という法律の縛りが解ければ、この主張は私も十分
理解いたします。
そこで、私は、この
電力業界が主張される基本原則は尊重し
理解するという立場に立って、
お願いを申し上げているところでございます。
それは、今日まで企画小
委員会や
政策部会で議論をしてまいりました、国際貢献を果たすための
国内炭鉱の
石炭関連技術の
役割と意義については一定の
理解をいただいておりますので、それに
雇用対策、
地域対策という
社会経済の面も考慮していただき、
電力業界みずからの主体的判断に基づき、先ほど申しました、いわゆるどこの
石炭を何トン幾らで買うかはユーザーの権利であり自由であるという範疇のもとに、
国内炭引き取りに
協力をしてあげましょうという
電力業界の御
理解をいただけないかと、心からお訴え、
お願いを申し上げているところであります。
このことは、電力の労働組合
とも協議し、御
理解をいただいておりますし、ナショナルセンターである連合におきましても、六月開催の
政策制度要求について
確認をされる
予定であります。
電力業界のこれまでの御
協力に
感謝しつつ、改めて、今後の御
協力と御英断を心から重ねて
お願いを申し上げていく決意でございます。
次に、第三の、国の
支援についてであります。
御承知のごとく、今、
石炭会社が設備費等の一環として国から直接助成をしていただいておりますのは、安定補給金、保安補助金、骨格構造補助金等々、
平成九年度の実績では、太平洋、池島二
炭鉱で大体四十四億円、トン当たり千三百円程度でございます。すなわち、石特会計約一千億円程度の中で、直接補助金をいただいているのは全体の四・四%にすぎないわけであります。
ただ、残念なのは、
石炭産業の
現状を
理解されていない国民の中や、一部マスコミも含めて、
国内炭鉱は一千億円近い国民の税金を食っておるという誤解もあり、極めて遺憾に思うわけでございます。
したがって、私は、
平成十四年度以降は、現行法律の継続が無理だとするならば、国際貢献を果たすという
国内炭鉱の
石炭関連技術を評価して、例えば
技術協力補給金、あるいはまた
技術協力委託助成金等の名目のもとに、新規の助成策を
一定期間交付する法的
制度を確立するよう、強く
お願いをしているところであります。
あわせて、可能であれば、電力料金を通した間接的国民
負担である価格差を縮小、軽減するため、国による価格差補給金または
引き取り交付金みたいな助成策を
一定期間講じることができないかというこ
とも要請をしておるところであります。
したがって、私は、日本は二十一
世紀に向け、
石炭需要は確実に、しかも大幅にふえること、産
炭国に対する
技術協力は今後も引き続き必要であること、
国内炭鉱のコスト低減は積極的に推進をしていくということ等々を総合的に判断をすれば、国民
負担については、直接的であれ間接的であれ、国民の御
理解をいただくのではないかと確信をする次第であります。
以上、三つの点について私たちの考え方を申し上げましたが、いずれにしても、
国内炭鉱存続に当たっては、直接的であれ間接的であれ、国民
負担という
支援と
協力がなければ、その存続はあり得ないわけであります。
私たちは、
平成四年から始まりましたポスト八次策につきましては、その趣旨に基づき、国民
経済的
負担の均衡点を求めて、
閉山という厳しい
現状を直視し、苦悩しながらも、粛々と取り組んでまいりました。この私たちの対応は、経営多角化、新分野開拓という
課題が、日本
経済不況の
影響もあって思惑どおり進展しなかったことはありますけれ
ども、構造調整の名のもとに推進してまいりました
国内炭の縮小問題は、多少手前みそかもしれませんが、ポスト八次策の趣旨に照らしましても、一点の曇りもなく推進をしてきたと言っても過言ではないと思います。すなわち、あのポスト八次策の議論は、少なく
とも国内炭ゼロが均衡点ではなかったはずであり、二
炭鉱の
維持、存続をもって均衡点に達したと見るべきであります。
これまでも申し上げてきましたように、二十一
世紀に向け、
世界一の
石炭輸入国であり続ける日本が、今は安いからといって、一時的な
経済合理性のみをもって
世界に誇れる
国内炭鉱を切り捨てることは、先ほど申しましたように国家国民の貴重なエネルギーの永久放棄であり、優秀な
技術、技能の損失であることを改めて訴えさせていただき、本
衆議院石炭対策特別委員会におかれましても、国民
負担のあり方についてぜひ御
理解、御
協力を賜りたく、
石炭産業に働くすべての労働者と家族、そして産
炭地の声として伏して
お願いを申し上げ、御
意見とさせていただきます。
ありがとうございました。(
拍手)