○
佐藤参考人 御紹介いただきました
福島県知事の
佐藤でございます。
特別
委員会におかれましては、
井上委員長を
中心に精力的に
調査を進めておられまして、心より敬意を表すると同時に、本日はこのような
意見を述べる
機会をお与えいただきまして、心より感謝を申し上げます。
大変短時間でございますので、早速本論に入りたいと思いますが、短い時間でございますので、早口あるいは言葉足らずの面があることをあらかじめ御
理解いただきたいと思います。
私は、
意見陳述の主な内容といたしまして、
一つ、
首都機能移転に対する基本的な考え方、二つ目に、
本県候補地の概要、そして三つ目に、
本県が提案する新
首都像「森にしずむ
都市」の紹介を申し上げます。
陳述に入ります前に、私は、きょうここに来る前に暑中見舞いのはがきを見てまいりました。そのはがきの中に文章がありまして、非常に感銘深かったので
お話ししますと、お変わりありませんかは昔のあいさつ、お変わりしましたかでないとこの
世紀末は乗り切れませんねという文章がございました。好むと好まざるとにかかわらずこのような
時代になっているのかなと、感慨深く読んできたところでございます。
首都機能移転に対する基本的な考え方を申し上げたいと思います。
まず、二十一
世紀の
都市像を
世界に提案していくチャンスであるというふうに私は考えております。現在、私たちがこれまでに経験したことのないようなさまざまな
課題に直面をしておるところでございます。この混沌とした
時代状況の中で、解決策も見出せないで苦労し、悩んでいるわけでございますが、私は、これを
都市づくりという切り口と申しますか、
都市づくりという観点から切り開いていくことが
一つの方法であると考えております。
全
人口の約七割の人々が暮らし、交流し、生産
活動を営む
都市が二十一
世紀以降どうあるべきかを、
移転の目的を十分に踏まえた上で提案していく、そこにこそ
移転の大きな
意義があると考えております。
私は、このあるべき
都市の
基本理念を「森にしずむ
都市」という言葉で提唱しております。これは、単に形態が「森にしずむ
都市」ということではございませんで、人と自然の
関係を
地球市民的な観点から新たに構築していく、その中でこそ人類が持続的な成長を遂げていくことが可能となる
都市ということでございます。
日本は今、
首都機能移転を通じ、このような理念を掲げ、また、モデル的な
都市づくりを行うことを通じ、二十一
世紀という、
グローバル化する一方、個性が求められる
世界の中で確固たる地位を持続し、我々を覆う閉塞感を打破していく道を選択すべきであると考えておるところであります。
ぜひ
国民の総意の
もとにこの国家的事業を実現し、みずからの手で
創造する新しい
都市の姿、そして
日本の主張、進路を全
世界的に示すべきであると考えるものでございます。
二番目に、
北東地域は
我が国のフロンティアであるということでございます。
新しい
全国総合開発計画、二十一
世紀の国土のグランドデザインにおいても、太平洋ベルト地帯への一軸
集中から
東京一極集中へとつながってきたこれまでの国土構造を、北東国土軸を初めとする多軸型国土構造に転換する必要があると述べられており、特に
北東地域への
首都機能移転は、この多軸化への流れに大きく貢献することができると思います。
かつて、福祉を熱心に進めていらっしゃるある女優さんに講師として福島県においでいただいたとき、
お話をしました。彼女は非常に率直に、東北新幹線で福島県に来たけれ
ども、車窓から町が見えて、田んぼが見えて、森が見えて、そしてまた町が見えるというふうなことはとてもすばらしいことだということをおっしゃっておりました。
当たり前の風景に対しての率直な感想でありましたけれ
ども、実は思い出したのですが、私は常々、
東京から東海道新幹線に乗ったときに感じておったわけでございますが、住宅地があり、工場があり、町があり、また住宅地があるという、どこまで行っても連担した風景を見て、これこそ
東京から始まり、東海道メガロポリス、太平洋ベルト地帯という二十
世紀の
日本を支えた大動脈が展開されたところであり、過疎化する
地域を多く抱える私
どもの
地域にとっては、あるいは理想郷にも見えたことがございました。
しかし今、広大で美しい田園、森林など豊かな
自然環境に恵まれ、開発の余地を大きく有する私
どもの
北東地域は、単に限られた国土を有効に利用できるばかりでなく、既成概念を捨て、新しい理念の
もと、
情報化の進展、
経済のボーダーレス化など、新しい
時代の流れに適応した
経済社会システムを築き上げていくにふさわしい
地域であると考えております。
首都機能移転は、新
世紀の幕あけにふさわしい、新しい
日本を象徴する国家プロジェクトであるべきであります。
次に、福島県と
首都機能移転の
関係でございますが、
本県では、
移転が有する国家的
意義を踏まえた上で、次の三つの理由から、
移転の実現に向けた取り組みを行っておるところでございます。
一つは、美しい県づくり、美しい
国づくりという
視点でございます。
本県では、
平成四年十二月に新しい長期総合計画をつくりまして、県づくりの目標を「二十一
世紀の新しい生活圏―美しいふくしま―の
創造」とし、「うつくしま、ふくしま。」のスローガンを掲げながら、美しく質の高い生活空間の
創造を
推進しており、それは、新しい
全国総合開発計画の中で、美しい国土の形成という理念の
もとに、ガーデンアイランド、庭園の島という言葉に象徴される新しい全総の
基本理念と
方向性を同じくしているということでございます。これについては詳しく述べられませんが、まずそのことが一点。
それから二点目は、目指すは多極分散型の県土構造。
この長期総合計画も含めまして、福島県は百万
都市はつくらない。三十万
都市が分散している県土でございますので、三十万から多くても五十万の
人間サイズ、ヒューマンスケールといいますか、そういう
都市が分散した多極分散型県土構造をつくっていこう。それだけの
交通基盤が、高速体系も含めてできておるということでございまして、そういう意味では
一極集中を排除した考え方で今県土づくりを進めておりまして、新しい
都市は八つ目の生活圏ということで、たまたま
国会があるかもしれませんが、八つ目の生活圏ということで、既存の七つの生活圏と
連携、交流が可能となるということであります。
県の基本構造を揺るがす特別、特異なプロジェクトではなく、質の高い生活空間の
創造を目指すという現在の県政を
推進しながら、極めて無理のない形で
首都機能移転が実現可能であるということです。
三番目の、
移転の最適地であるということで、これは後ほ
ども申し上げますが、高速体系の整備進展、安全で堅固な地盤、あるいはアクセスの利便性、空港からの利便性等々、
移転の効果を最大限に発揮できる
地域であるということであります。
さて、二つ目の大きなテーマでございます、
本県候補地の概要でございますが、資料一「森にしずむ
都市」をお開きいただきまして、右側の
日本地図をごらんいただきたいと存じます。
阿武隈
地域の位置でございますが、ごらんのように、阿武隈
地域は、北海道・東北と関東を結節する重要な位置にあります。また、磐越自動車道を通じて太平洋側と
日本海を結ぶ拠点でもあります。そういう意味で、相乗効果を、相乗的な
発展を
促進し、バランスのとれた国土の
発展に大きく貢献できると思います。
なお、参考までに、ことしでございますが、郵政省の標準電波送信所というのができました。稚内から鹿児島までカバーできる送信所でございますが、ちょうどその
中心地点がこの辺であるということでございまして、そういう意味ではまさに、この地図はデフォルメされておりますが、
日本列島を、沖縄については九州の方にもう
一つつくるということでございますが、稚内から鹿児島までの間では
中心の
地域であるということでございます。
次に、候補地の概要の二でございますが、
移転先候補地の選定方法とその概要でございます。
まず、パンフレットにも
移転先候補地の地図が載っておりまして、パネルで説明させていただきます。お手元の資料二がパネルのコピーでございます。
本県では、独自の基準で
移転適地を抽出し、候補地を設定しております。
国会等移転審議会が設定した
調査対象地域は、
本県の中通り
地域とほぼ重なりますが、その中でも特に開発
可能性の高い
場所が、
本県独自の候補地として設定されております。
候補地設定に当たっては、選定基準を基本的に満たす阿武隈
地域等から一キロメートルメッシュごとに、標高五百メートル以下、傾斜度十五度未満、建物ドット数二十未満の条件を満たす、
面積五百から二千五百ヘクタール
程度のまとまりのあるエリア九つを、それぞれクラスターとして設定しております。これらの合計
面積は約一万二千ヘクタールで、里山や人工林など、豊富な森林資源と低密度な
土地利用が特徴であります。
本県では、これら九つのクラスターを含む一帯を、赤の点線で囲った部分でございますが、約八万ヘクタールの候補圏域と位置づけております。これは、
調査審議会等の
地域とはまた別の、
本県が
平成元年からこの
地域の
調査を種々進めてきた結論で、こういう
地域を
一つの候補地として考えておるということでございます。
なお、各クラスターの空撮写真を資料六に載せてあるので、後ほどごらんいただきたいと思います。
三番目に、
本県候補地のすぐれた
特性でございますが、
一つ目は豊かな自然と広大な開発可能地であるということでございまして、お手元の資料三がパネルのコピーでございます。
ごらんのように、福島県の阿武隈
地域というのは
東京と神奈川を合わせた
面積がございます。今、
東京、神奈川に何人の方が住んでおられるのかちょっと失念しましたけれ
ども、この
地域と同じ
面積の
地域が阿武隈
地域ということでございます。
二つ目は
災害に強い
土地であるということでございます。資料四のパネルがこれでございます。
いろいろな見方があると思いますが、これは
地震保険料率の図表でございまして、社団法人
日本損害保険協会の資料でございますが、
本県の
地震に対する
安全性はリスクマネジメントという実務の
世界でも客観的に認められておるということでございます。この部分が一等地でございます。
三つ目は高速交通
ネットワークの充実でございますが、お手元の資料五のパネルがこれでございます。
ごらんのように、この候補地から仙台までもダブルの高速体系が整いつつあります。それから
東京までもそうでございまして、実は昨年の
集中豪雨のときここが通行不能になったわけでございますが、この常磐自動車道を通って通行できた。
それから、
東京が万が一の場合でも、新潟を通って北陸・名神自動車道で大阪の方へも高速体系が整っておる。ちなみに、
東京を通って吹田に行くよりも、こちらを通っていく方が
距離で五十キロ近い、北陸の方を通った方が五十キロ近いということでございます。時間的には、これはまさに渋滞その他を考えますと完全に北陸を使った方が近いということ。
それからもう
一つは、この候補地の中に空港がございまして、空港からの私
どもの候補地にアクセスする時間というのは十分ないし十五分でアクセスできるということでございますので、そういう意味では非常に高速体系が既に大きな基盤はもうできておる。そして私
どもは、この空港までの高速体系も来年二〇〇〇年度に完成すべく今進めておるところでございます。
それでは三番目の大きなテーマに移りますが、「森にしずむ
都市」の概要でございます。さらにパンフレットを大きくお開き願いたいと思います。
自然との
共生という考えは
時代の要請でもあります。
本県では、二十一
世紀にふさわしい新
首都像として「森にしずむ
都市」を提案いたしておるわけです。
新
首都のコンセプト、整備目標でございますが、まず左上をごらんいただきたい。
「森にしずむ
都市」では、
都市の
活動を計画的、総合的にコントロールし、あらゆる面で省
エネルギー、省資源化に努め、持続的な
都市の成長を目指すサスティナブル
都市のほか、
人間サイズ
都市、自立・交流
都市、
分権型
都市など二十一
世紀の新しい価値観を体現するにふさわしい目標を掲げておりまして、国内への伝播、
世界へのアピールを担う
モデル都市としての
役割を十分に果たせると考えております。
多様なライフスタイルの実現という点でも、県内の三
地域、中通り、浜通り、会津では、独特の生活、
文化、産業が営まれており、気候的にも、山と海、北国的風景と温暖な海洋性気候など多様性に富んだ
社会的、自然的条件を具備しているため、
時代のニーズに
対応した多様な暮らしが提供可能となります。
一日のうちに、朝のうちは海岸線、浜通りでゴルフをやって、夕方は会津の方に行ってスキーをやるということも可能な候補地であるということでございます。
二番目に、新
首都はクラスター型構造であるということです。その下をごらんいただきたいと思います。
クラスター型開発は、効率面こそ従来の拠点型開発に劣りますが、
環境負荷の低減、
ゆとりの創出、
都市のパーツ化による成長管理のしやすさなど数多くの利点がございます。阿武隈
地域の広大で自然豊かな空間に先ほどの九つのクラスターを分散配置することで、これまでにない新しいタイプの
都市の
創造が可能となります。
自転車であるいは徒歩で動ける町という、二、三万の
都市ですと、住んだことがある方はおわかりのように徒歩や自転車で動ける
都市でございます。そういう
都市が高速あるいは自動車道でつながる、そういうクラスター型構造というふうに考えていただければと思います。
さて、新
首都の外見イメージ、
中央のイラストをごらんいただきたいと思います。
これはだれでもかける絵でございますが、自然の
地形や植生を最大限に生かしながら、小さな町が小高い丘や川、湖沼の間に分散して存在しておる。そして、人工物であった
都市を、森と、森がつくる
生態系や四季の変化の中に限りなく一体化させる
環境共生型
都市、これが「森にしずむ
都市」のイメージでございます。
なお、福島県では、昨年完成しましたオートキャンプ場あるいは再来年開催される未来博覧
会等も、まさに沢や谷や森をできるだけ造成しないでそのまま生かしながら、実験的に今いろいろ進めておるということを申し添えておきたいと思います。
最後に、
首都機能移転の実現に向けまして、
地球的
規模の
環境問題、
経済の
グローバル化、既存の常識を覆す
情報化の進展など、
我が国は
時代の大きな転換点の真っただ中にあると言えます。このような今こそ、
国民共通の
財産ともなり得る新しい
首都機能都市をつくることは、
国民に夢と希望を与えるだけでなく、将来世代にわたる
日本の持続的
発展につながるものと確信をいたしております。
本県としては、引き続き
移転実現に向け最大限の努力をしたいと考えておりますので、
委員長を初め
委員の皆様におかれましても一層の御
尽力をお願いしたいと思います。
ありがとうございました。(拍手)