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平本参考人 三菱総合研究所の
平本でございます。本日は、このような場にお招きいただきまして、まことにありがとうございます。
それでは、私の
私見につきまして、お手元に簡単な
資料が配付されているかと思いますが、それに基づいて
意見を述べさせていただきたいと思います。
まず、
国会等の
移転に関するその
意義と
効果という形で
私見を述べさせていただきたいと思いますが、この
意義と
効果につきまして、私は、五点ほど指摘させていただきたいと思います。
まず第一点目でございますけれども、この
国会等の
移転、いわゆる
首都機能移転というものは、
日本の国、
国家再生のかぎになるのではないかと私は
考えております。
まず、現在、
我が国は大変な
世紀末的な
停滞状況にございますけれども、これは
三つの苦難、三重苦といいますか、そういったものに基づいておると思っております。
一つは、二十一
世紀に向けて
国民が
目標を喪失しているという点、また第二点は、
バブル崩壊以降続いております
複合不況の底から抜け出られないという点、そして第三点目には、
政治、
行政への不信が高まってしまったという点、こうした
三つの点が、
国民とか
企業の
心理状態を一種の
恐慌状態に陥れているのではないかと思っております。
日本の
産業の潜在的な能力というのは
世界の中でも非常に高いと私は思っておりますけれども、それがなかなか顕在化してきません。このような
状況が続きますと、
日本の優秀な
人材ないしまた
企業、こうした
日本の宝というべきものが
我が国から
海外へと逃げ出すということも、今後
考えられないことはございません。
したがって、こうした
状況を打開しますには、
我が国が
明治以降とってまいりました
先進国に追いつけという
キャッチアップ型の
社会の
仕組みから、独自のものを生み出す新しい
社会の
仕組み、いわゆる
先進国としていろいろな国を牽引していくような、そういう
仕組みに変えていかなくてはならないのではないかと思っております。それはある
意味では、
明治維新のときと同じように国の
再生というものが必要であろうと
考えます。
それでは、この国の
再生ということを行うにはどうすればいいかということでございますが、恐らく、平常時の
国民の
心理状態ではなかなか無理ではないかと思います。
我が国が国の
再生、
国家の
再生を行い得たときを歴史的に見ますと、黒船のような
外圧があったときとか、また
首都が
移転したりしたとき、この二つのときしかなかったように思います。今後、大きな
外圧というものは余り
考えられませんので、
首都を
移転する、こういうインパクトによって国を
再生するという
改革の
心理状態に、
国民及び
全国が
一体になって動いていく必要があるのではないかと
考えます。
首都機能を
移転するという、いわゆる新しい
場所への引っ越しによりまして人心を一新するというこの方法は、過去のしがらみを捨てまして、新しいものを創造できる力になるのではないかと思っております。小さな例ではございますが、
大学改革の中で、慶応
大学が藤沢に
移転して全く新しいものを生み出したり、また、関西では立命館
大学が草津に
移転して同じようなことをして大成功をおさめているという例もございます。
そして、こうした
首都機能を
移転することによって国を
再生するというその場合の
政策の柱になるものは、
規制緩和と
地方分権、これを今まで進めている以上に抜本的に進めることではないかと
考えます。これを
首都機能移転のスケジュールに合わせまして時限的に、いわゆる日時を区切りまして、それまでに本格的な
行革、今まで以上の抜本的な
行革をやる、そういう
目標を立てることではないかと思っております。
規制緩和によりまして、今以上に
世界じゅうの富と
人材が集まる国にすべきですし、また、徹底した
地方分権によりまして、どの
地域も自立できるような国にしていくべきではないかと
考えております。
そして、二点目でございますけれども、今後、
東京圏には、これは
専門家の
見解によりますと、
震災が発生するおそれが、
可能性がございます。プレート型の大
地震、また
活断層直下型の大
地震、また
全国各地連動型というのもあるようでございます。こうしたものがもうそろそろ来る
可能性もあるというような
地震学者の
見解がございます。
こうした点で、
東京が
地震に見舞われますと、大変な被害が出てまいります。そのときに、
神戸の例をとりますと、
神戸のときは、
国家中枢は
東京にございまして
被災しておりませんので、
神戸は大変でございましたけれども、比較的国の
中央政府の
指示系統がスムーズに行い、
支援体制を組めたと思います。しかしながら、
中央政府自身も
東京に
大震災が起こって
被災した場合には、
大分様相が変わってまいるかと思います。
別表で、二枚目に
ブロックチャートを書いてございまして、これは
東京に
震災が生じまして
首都機能自体も
被災を受けた場合、どういうことが起こるかということを書いております。
左の方から見てみますと、
首都機能自体がみずから
被災いたしますと、
一段右側に見ていただきますと、
首都機能自体が混乱し、いろいろな
行動が遅延してまいります。そうしますと、その下を見ていただきますと、
被災した現地と、そしていろいろな実際に
行動をします
自治体と、それからいろいろ指揮をします国、それからここには書いてございませんがマスコミも全部
被災しますので、それぞれの間での
意思疎通が大変混乱してまいります。
そして、
右横に(1)と書いたところがございますが、
救助・
救援等の
総合調整機能というのは低下いたしますので、その下にあります
自治体自身による
救助・
救援機能自体も低下してしまいます。それによって、
右側にございますが、
救助・
救援の
初動対応が遅延いたします。
震災の場合は、第一日目から三日目の間の
対応がいかに迅速になされるかによって、人命の
救助、また死者の数というものは全く違ってまいります。こうした迅速な
対応ができなくなるという点がございます。
また、(5)と書いた
ブロックがございますが、交通のインフラストラクチャーの
機能も維持できませんので、応急的な
復旧対応というものが非常に混乱してまいります。これによって
被災地の
復興も遅延しますし、また、
被災地の
経済もなかなか回復しないという
状況になります。
そしてまた、別の面では、(3)という上の方に括弧がございますが、
中央政府によって広域的な
情報の
発信、適切な
情報の
発信ができなくなりますと、
海外に対してもいろいろな
情報が飛び交いますし、
金融インフラ等の
機能に対しましても対策がおくれる。これは国際的な金融不安ですとか、また
全国に対して
金融不安等を発生しまして、いろいろな
企業の
連鎖倒産を導くというようなこともございます。
特に、一番右の方に
世界経済、
日本経済の低落と書いてございますが、
神戸の
大震災と違いますところは、
東京に
震災が起きて
同時被災を受けた場合に、その
影響というものは
日本全国に及び、また
世界にも及んでいくというところが違います。こうした
同時被災を避ける必要があるかと思います。そういう
意味では、
同時被災しない司令塔、
中央政府というものを、
震災の起こる
可能性の高まっている
東京圏から、起こる
可能性の比較的少ない
場所に
移転し、しかも現在の
建設技術によってガードしていく、そういう
首都機能のある新しい
都市をつくることが非常に重要ではないかと
考える次第でございます。
またもとのページのメモに戻らせていただきますが、それと同時に、
東京を見捨てるのではございませんで、
東京はできるだけの
防災性能を増強いたします。そのためには、現在の
首都機能の
移転跡地というのは非常に有効に活用できるかと思います。現在、二百三十二ヘクタールの用地がございますが、これは
東京都内に実は五百二十八カ所にも及びまして、至るところに散らばっているわけでございます。この
土地を
木造密集地の再
開発のための
種地に使ったり、また
防災避難緑地に使うことによりまして、
東京の
防災性能も高めることができるということでございます。
また、第三点に参りますけれども、均衡のとれた
国土、いわゆる
一極集中を是正して新しい
国土をつくる契機になると
考えております。
まず、
首都が何でも一番、何でもその
首都に
集中している
国家というものは、
先進国ではそれほど多くございません。むしろ、
途上国はほとんどそのような形態をとっております。これは
政治経済が
一体型で、ハブ型で、効率的にその
国家を
機関車のように牽引していくという、そのために何でも一番
都市というのが
途上国の場合は
首都になっているわけでございます。
先進国では、フランスぐらいが例外的なものでございます。
日本の場合は、既にこうした形の
東京によって
明治以降、戦後を経まして、既に
先進国に
キャッチアップしてまいりました。しかし、これまでの
機関車の
役割を果たしました
東京に何もかもが集まり過ぎまして、余りにも多くのひずみが既に堆積してしまっております。これを何とかしなくてはいけないという問題がございます。
それともう一点は、(2)というところで書いてございますが、
一極集中のときに
人口とか
産業の
集中以上に問題だと私が思っておりますのは、
日本の
国民の心の中にある
一極集中、いわゆる心理的な地図といいますか、それが一番問題ではないかと思います。いわゆる
東京が一番である、そして、ほかはそれに続くという
序列意識でございます。
例えば、
大学の
偏差値、
就職先の
企業、それからテレビ局などの
情報関係、こういったものは全部
東京が一番で、
地方はそれに続く。そして現実に、
地方の高校の成績の上位の人は
東京の
大学に出ていって
地方に戻らない、そういう
人材流出にも及んでおります。人が
東京に吸い取られる。また、
地方で成長した
企業も
東京に出ていってしまう、
地方の活力を
東京は吸い取ってしまう、そういうような
構造になっています。
それと同時に、
地方は
東京に右に倣えということで、
全国が画一的になっておりまして、どこの
都市にも銀座があるように、新しい
個性が生まれてきておりません。
今後、この
途上国型の
構造を直しまして、
日本が
生活大国または
成熟国家になっていくためには、
地方が
東京を模倣するという
発想ではなく、
個性と
創造力を身につけていく必要がございます。そのためには、魅力ある
地方の
中小都市による
国づくりが必要であると思っております。
自然と共生し、
生活が充実し、
個性ある、そういう
文化がある
地方都市が重要でございまして、こういう
地方の
中小都市が
全国に散らばって、そして国を支えていく。そして、これは分散して散らばっておりましても、
情報化社会でございますから、それらはネットワークすることができます。こうした新しい
国土をつくっていく必要があるかと思っております。
大都市が
国土を引っ張っていく時代ではないのではないかと思います。その際に、
首都機能を
移転してつくります新しい新
都市の
役割というのは、こうした新しい
国土づくりの
モデル、次
世紀の
都市の
モデルになるべきだと
考えます。
この
都市は、
環境に共生し、
情報通信が効率的になされ、また
生活が充実、安心してできるような、そういう
都市の
モデルをつくる。そして、この
モデルは、単に新しい
首都機能移転がされる
都市だけでなく、そこで培った
ノウハウを
全国各地の
地方都市にどんどん
移転していって、それを広げて二十一
世紀の新しい
国土づくりをしていく。
全国に波及させるということが必要であるかと思います。
首都機能の
移転地だけでなく、
全国のためにそれを活用していくということが必要と思います。さらに、アジアにもそういう
ノウハウを
移転すべきではないかと
考えております。
また、次の第四点目でございますけれども、
首都機能移転は
東京改造の
カンフル剤にもなるかと思います。日常的な
政策では、なかなか
東京の
改造はできません。これまで
東京の
改造は、関東
大震災、戦災の
復興のときのみ大胆なことができました。
そして、現在、展都という
発想がございますけれども、MM21、幕張、臨海副
都心、こういった三カ所も展都の
対象地かと思いますが、ここには計画では十二兆円投下の予定になっておりまして、既に二分の一
程度完成しておりますが、しかし
都心の混雑は解消されていない。
また、
東京都の
投資的経費、これは
一般会計の中のものでございますが、八五年以降十
年間で約十六兆円が
投資されておりますけれども、なかなかその
効果は出てこない。いわゆる
首都機能移転、新
首都をつくる
公共投資の何個分かの
投資が既に
東京になされているわけですけれども、その
効果はなかなか目に見えてこない、そういう難しさがございます。
そして、これだけの額の
投資というのは、これまではできましたが、今後はなかなかできない。これは
東京都の
財政危機がございます。また、
東京都におきましては、今後、今までつくった
施設等の
更新維持費が、二〇一〇年以降十
年間で四・五兆円もの
費用が必要でございます。こうした財政的な需要からいいましても、
改造というのは口では言えても簡単にはできない。
しかし、こうした
状況下でも
東京改造は必要でございます。そのためには、
移転跡地、これは約五兆円の価値ある
土地であるかと思いますが、その価値ある資産に、新
首都をつくるときに使うのと同額の
公共投資、これは私の勝手な
提案でございますが、四・一兆円、合計しますと九兆円の
改造費用を
東京に投下することによって、それが
民間投資を誘発しまして、何十兆もの
投資となって
東京の
改造につながるのではないかと
考えます。
それと同時に、
東京に関しましてはいろいろな
産業の
規制の撤廃をしまして、ニューヨークのような
経済、
文化の
自由都市として変えていく、そして
東京を現在以上の
都市にするということが、
首都機能移転をきっかけに、できるのではないかと
考えます。
また、次の第五点でございますが、
首都機能移転に投下されます
公共投資また
民間の
投資によって、いろいろな
経済波及効果が出てまいります。
細かい表を添付しておりますので後でごらんいただきたいと思いますが、口頭で述べますと、
最大規模で五十六万人の新
都市ができた場合、四・一兆円の
公共投資がなされますが、
民間の
投資を誘発しまして十一兆円
規模の
投資になります。これが全体へ波及しますと三十二兆円の
投資になっていくということでございます。これは、
年間一千億から二千億ぐらいの
投資が
首都機能移転によってなされるわけですが、それが、
年間一千億から二千億が、実は
年間一兆円ずつぐらいの
経済効果を呼んでいく、そういう
経済効果もございます。
それから、
東京の
地域経済がかなり壊滅的な打撃を受けるのではないかという話につきまして、これも
資料の
説明は省きますが、これに対しましては、
東京の
GDPを〇・一%ダウンさせる
程度の
影響しかございませんで、これは
政策でカバーでき、
GDPをより一層高める
政策が、先ほど私の
提案のような格好であればできるかと思っております。
そして、(2)で「
次世代技術の
開発と
総合的展開」と書いてございますが、新
都市をつくる場合には、
環境関連の
技術、
情報通信の
技術、
都市環境整備の
技術、こういったものを駆使いたします。
現在、こういった
分野というのは
日本の中で大体六十兆円ぐらいの
規模でございますが、二〇一〇年になりますと、これは新しい
次世代技術の
分野でございますので、百八十兆円ぐらいに膨らむと言われております。六十兆円が三倍の百八十兆円に膨らむのを、新
首都建設にいろいろ
技術を投入することによりまして、
市場拡大を刺激してこの
次世代技術を展開させ、また、それに基づく新
産業を育て上げる。そして、
日本がまた
経済、
産業の面で
世界に大きな
役割を果たしていくような形に成長するということが可能ではないかと
考えております。
以上でございます。