運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1999-06-03 第145回国会 衆議院 行政改革に関する特別委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年六月三日(木曜日)     午前九時五分開議   出席委員    委員長 高鳥  修君    理事 伊吹 文明君 理事 岩永 峯一君    理事 杉山 憲夫君 理事 虎島 和夫君    理事 山口 俊一君 理事 小林  守君    理事 田中 慶秋君 理事 若松 謙維君    理事 中井  洽君       飯島 忠義君    岩下 栄一君       衛藤 晟一君    小野寺五典君       大野 松茂君    大村 秀章君       奥山 茂彦君    金田 英行君       熊谷 市雄君    倉成 正和君       河本 三郎君    桜田 義孝君       実川 幸夫君    菅  義偉君       砂田 圭佑君    谷  洋一君       戸井田 徹君    中野 正志君       細田 博之君    牧野 隆守君       松本 和那君    水野 賢一君       宮島 大典君    宮本 一三君       目片  信君    森  英介君       山本 幸三君   吉田左エ門君       渡辺 博道君    岩國 哲人君       上原 康助君    大畠 章宏君       鍵田 節哉君    末松 義規君       中川 正春君    中桐 伸五君       平野 博文君    藤田 幸久君       藤村  修君    山元  勉君       山本 譲司君    吉田  治君       石垣 一夫君    近江巳記夫君       佐藤 茂樹君    富田 茂之君       並木 正芳君    桝屋 敬悟君       山中あき子君    一川 保夫君       小池百合子君    西川太一郎君       西野  陽君    三沢  淳君       児玉 健次君    春名 直章君       平賀 高成君    松本 善明君       中西 績介君    畠山健治郎君       深田  肇君  出席国務大臣         法務大臣    陣内 孝雄君         外務大臣    高村 正彦君         大蔵大臣    宮澤 喜一君         文部大臣         国務大臣         (科学技術庁長         官)      有馬 朗人君         厚生大臣    宮下 創平君         通商産業大臣  与謝野 馨君         運輸大臣    川崎 二郎君         郵政大臣    野田 聖子君         労働大臣    甘利  明君         自治大臣    野田  毅君         国務大臣         (内閣官房長官         )         (沖縄開発庁長         官)      野中 広務君         国務大臣         (総務庁長官) 太田 誠一君         国務大臣         (防衛庁長官) 野呂田芳成君         国務大臣         (経済企画庁長         官)      堺屋 太一君  出席政府委員         首席内閣参事官         兼内閣総理大臣         官房総務課長  江利川 毅君         内閣審議官         兼中央省庁等改         革推進本部事務         局長      河野  昭君         内閣審議官         兼中央省庁等改         革推進本部事務         局次長     松田 隆利君         内閣法制局長官 大森 政輔君         内閣総理大臣官         房審議官    佐藤 正紀君         総務庁長官官房         長       菊池 光興君         総務庁長官官房         審議官     大坪 正彦君         総務庁長官官房         審議官     西村 正紀君         総務庁人事局長 中川 良一君         総務庁行政管理         局長      瀧上 信光君         防衛施設庁長官 大森 敬治君         防衛施設庁総務         部長      山中 昭栄君         防衛施設庁施設         部長      宝槻 吉昭君         経済企画庁総合         計画局長    中名生 隆君         科学技術庁長官         官房長     興  直孝君         科学技術庁科学         技術政策局長  加藤 康宏君         科学技術庁研究         開発局長    池田  要君         科学技術庁原子         力局長     青江  茂君         沖縄開発庁総務         局長      玉城 一夫君         法務大臣官房司         法法制調査部長         兼内閣審議官  房村 精一君         法務省人権擁護         局長      横山 匡輝君         外務省経済協力         局長      大島 賢三君         外務省条約局長 東郷 和彦君         大蔵大臣官房審         議官      津田 廣喜君         大蔵大臣官房審         議官      福田  進君         大蔵省主計局次         長       坂  篤郎君         大蔵省理財局長 中川 雅治君         文部大臣官房長 小野 元之君         文部省初等中等         教育局長    辻村 哲夫君         文部省教育助成         局長      御手洗 康君         文化庁次長   近藤 信司君         厚生大臣官房総         務審議官    真野  章君         厚生省健康政策         局長      小林 秀資君         厚生省保健医療         局長      伊藤 雅治君         厚生省保険局長 羽毛田信吾君         社会保険庁次長 宮島  彰君         通商産業大臣官         房長      村田 成二君         通商産業省通商         政策局長    今野 秀洋君         通商産業省機械         情報産業局長  広瀬 勝貞君         工業技術院長  佐藤 壮郎君         資源エネルギー         庁長官     稲川 泰弘君         特許庁長官   伊佐山建志君         中小企業庁次長 殿岡 茂樹君         運輸大臣官房長 梅崎  壽君         運輸省自動車交         通局長     荒井 正吾君         郵政大臣官房長         事務代理    鍋倉 真一君         郵政省貯金局長 松井  浩君         労働大臣官房長 野寺 康幸君         労働省労政局長 澤田陽太郎君         労働省職業安定         局長      渡邊  信君         自治省行政局長         兼内閣審議官  鈴木 正明君         自治省税務局長 成瀬 宣孝君  委員外出席者         衆議院調査局第         三特別調査室長 鈴木 明夫君 委員の異動 六月三日               辞任         補欠選任   岩下 栄一君     奥山 茂彦君   衛藤 晟一君    吉田左エ門君   大野 松茂君     渡辺 博道君   砂田 圭佑君     飯島 忠義君   戸井田 徹君     大村 秀章君   中野 正志君     菅  義偉君   松本 和那君     目片  信君   岩國 哲人君     吉田  治君   中桐 伸五君     藤村  修君   平野 博文君     上原 康助君   藤田 幸久君     大畠 章宏君   山本 譲司君     末松 義規君   石垣 一夫君     近江巳記夫君   並木 正芳君     山中あき子君   西川太一郎君     西野  陽君   春名 直章君     児玉 健次君   畠山健治郎君     中西 績介君 同日                 辞任         補欠選任   飯島 忠義君     砂田 圭佑君   大村 秀章君     戸井田 徹君   奥山 茂彦君     岩下 栄一君   菅  義偉君     中野 正志君   目片  信君     桜田 義孝君  吉田左エ門君     衛藤 晟一君   渡辺 博道君     大野 松茂君   上原 康助君     平野 博文君   大畠 章宏君     藤田 幸久君   末松 義規君     山本 譲司君   藤村  修君     中桐 伸五君   吉田  治君     鍵田 節哉君   近江巳記夫君     富田 茂之君   山中あき子君     並木 正芳君   西野  陽君     一川 保夫君   児玉 健次君     春名 直章君   中西 績介君     畠山健治郎君 同日                 辞任         補欠選任   桜田 義孝君     松本 和那君   鍵田 節哉君     岩國 哲人君   富田 茂之君     石垣 一夫君   一川 保夫君     西川太一郎君 六月三日  国民生活を重視した行政改革等に関する請願山元勉紹介)(第三九六五号)  同(島津尚純紹介)(第四〇七五号)  同(葉山峻紹介)(第四〇七六号)  同(松本惟子君紹介)(第四〇七七号)  国立病院療養所の廃止・民営化独立行政法人化反対に関する請願伊藤茂紹介)(第三九六六号)  同(石井紘基紹介)(第三九六七号)  同(金田誠一紹介)(第三九六八号)  同(島津尚純紹介)(第三九六九号)  同(畠山健治郎紹介)(第三九七〇号)  同(鉢呂吉雄紹介)(第三九七一号)  同(遠藤和良紹介)(第四〇七八号)  同(金田誠一紹介)(第四〇七九号)  同(畠山健治郎紹介)(第四〇八〇号)  同(原口一博紹介)(第四〇八一号)  通商産業省機関独立行政法人化民営化、整理・統廃合等反対に関する請願北橋健治紹介)(第三九七二号)  同(島津尚純紹介)(第四〇八二号)  国立試験研究機関独立行政法人化反対に関する請願深田肇紹介)(第四〇七四号) は本委員会に付託された。 本日の会議に付した案件  地方分権推進を図るための関係法律整備等に関する法律案内閣提出第九一号)  内閣法の一部を改正する法律案内閣提出第九六号)  内閣設置法案内閣提出第九七号)  国家行政組織法の一部を改正する法律案内閣提出第九八号)  総務省設置法案内閣提出第九九号)  郵政事業庁設置法案内閣提出第一〇〇号)  法務省設置法案内閣提出第一〇一号)  外務省設置法案内閣提出第一〇二号)  財務省設置法案内閣提出第一〇三号)  文部科学省設置法案内閣提出第一〇四号)  厚生労働省設置法案内閣提出第一〇五号)  農林水産省設置法案内閣提出第一〇六号)  経済産業省設置法案内閣提出第一〇七号)  国土交通省設置法案内閣提出第一〇八号)  環境省設置法案内閣提出第一〇九号)  中央省庁等改革のための国の行政組織関係法律整備等に関する法律案内閣提出第一一〇号)  独立行政法人通則法案内閣提出第一一一号)  独立行政法人通則法の施行に伴う関係法律整備に関する法律案内閣提出第一一二号)     午前九時五分開議      ————◇—————
  2. 高鳥修

    高鳥委員長 これより会議を開きます。  この際、田中慶秋君から発言を求められておりますので、これを許します。田中慶秋君。
  3. 田中慶秋

    田中(慶)委員 この行政改革委員会あるいはまた地方分権等の問題については、日本のこれからの将来を含めて大変重大な委員会であります。しかし、この委員会等について、今、政府当局大臣等については、主務大臣であります太田長官初め、あるいは自治大臣、ここでしっかりとその論議を聞いていただきたい。離席する率が多過ぎる。あるいはまた、それぞれの大臣等についても、その要求大臣が勝手に、いや、きょうは自分たちがほかで、外部でいろいろな用事があるからとか、何かの会合があるから。  しかし、この委員会は少なくとも最重要視した委員会だと位置づけて、私たちはそれぞれの理事会でもそのことを申し上げたり議論してきているわけです。しかし、この委員会の私たち考え方とは裏腹に、皆さんの方が勝手に自分たちのスケジュールに合わせた形で、こちらに合わせろみたいなことを言われたんでは、とんでもないことで、まして、そういうことが往々にして今回後半についてあり過ぎる。ですから、こんなことのないようにぜひしていただきたい。  私たちは、そのことを含めて、もしそういう会合大臣が出られないんだったらこの委員会をやめればいいんです。延ばせばいいんです。委員長、そんなことのないようにぜひしていただきたい。一言、そのことを申し上げる。
  4. 高鳥修

    高鳥委員長 委員長からも注意をいたしておきます。      ————◇—————
  5. 高鳥修

    高鳥委員長 内閣提出地方分権推進を図るための関係法律整備等に関する法律案並びに内閣法の一部を改正する法律案等中央省庁等改革関連十七法律案の各案を一括して議題といたします。  本日は、特に内閣法の一部を改正する法律案等中央省庁等改革関連十七法律案の各案について審査を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大畠章宏君。
  6. 大畠章宏

    大畠委員 今、田中理事からもお話がありましたが、大変日本現状と将来に対して大きな影響力を持つこの行政改革特別委員会で、私は、特に商工関係について的を絞って御質問をさせていただきたいと思います。  私自身、国会のさまざまな審議にかかわって丸九年がたったわけでありますが、いずれにしても、諸外国とさまざまな交渉を行う、あるいはさまざまな関係を保つという意味では、日本の国としての理念というものが明確に伝わるような体制をつくっていかなければと思います。そういう点では、最近の日本の国内あるいは国外に対する対応というのが、非常に理念が見えにくくなっている、そういう感じを強く持っております。したがって、行政改革特別委員会審議されております今回の行政改革については、鮮明な理念を出し、そして、国民が求めていますように、効率的で実効性ある改革を行うべきだと私は考えているところであります。  そういう観点から、商工関係について何点か御質問をさせていただきたいと思います。  最初に、通産大臣にお伺いしたいと思いますが、まさに今、まさに今といいますか、もうここ十数年来、国際的な大競争時代に入っていることは大臣御存じのとおりでありまして、その状況下においての日本としての基本的な通商戦略といいますか、そういう問題に対してどういう御認識を持っておられるのか、伺いたいと思うんです。  御存じのとおり、アメリカでは、国家経済会議とか通商代表部などが一元的に通商戦略を練る機関を、あるいは練る体制を整えておりまして、そういう形で対外的な展開をしているわけでありますけれども、日本としては、いつもアメリカからいろいろなクレームあるいは要求を受けて、どう対応するかということで右往左往するというのがこの十数年来の動きではなかったかと私は思うのです。  そういう意味では大変残念でありまして、なぜそうなっているかというと、私は、通商問題についても、例えば通産省外務省との役割は非常にあいまいでありますし、情報収集等でも、各省ばらばらといいますか、それぞれが努力をしているというような状況にもあるように感じているのです。日米間のさまざまな分野ごと交渉の枠組みが残っているわけでありますが、私は、この問題についても、一貫した通商戦略必要性というものは通産大臣御存じのとおりだと思いますが、情報通信自動車、金融など、各担当官庁ばらばら交渉に臨んでは日本にとっても大変マイナスだと思うのです。  したがって、この通商問題に一元的に取り組めるような体制に、今回の行政改革の一環として本来は行うべきではないかと思うのですが、この点に対する通産大臣の御意見を伺いたいと思います。
  7. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 世界との通商関係の中で日本が必要と思っておりますことは、大きく申し上げて二つのことだろうと私は思っております。一つ自由貿易体制を維持するということと、それからもう一つは国際的な決済システム、健全な決済システムを維持することだ。日本がこれからも生きていくために、私は、この二つのことが基本的なことだろうと思っております。  自由貿易体制の敵は、いわば保護主義でございまして、自由貿易体制を守るということは、いわば保護主義との戦いであるというふうに思っておりますし、また、国際的な健全な決済システムを維持するということは、やはり世界的に見た為替安定化ということが、円、ドルを含めて必要だ。この二つの条件がまず満たされなければならないと思っております。  まず最初の方でございますけれども、我々は、WTOという制度を大切にしたいと思いますし、特にことしの末からいよいよ次のラウンドが始まるわけでございますから、こういうものに対して、いわゆる世界貿易量が拡大する方向に物事が進むというために日本貢献をしなければならないと思っております。それから、この件に関しましては、国際的な機関がまだ幾つもございます。一つはOECD、一つはAPEC、その他幾つかございますが、こういう機関の中で日本の立場というものを宣明し、世界貿易が拡大するということのために日本貢献をしなければならないと思っております。  為替の問題は、私もいろいろな考え方は持っておりますけれども、これは大蔵大臣マターでございますので、私はお答えはいたしません。  それから、先生の御質問のもう一つは、ばらばらにやっているじゃないかという御指摘がございますが、ばらばらにやっているように見えるのですが、いわゆる古典的な意味での外交というのはもう既に存在しないと私は思っております。古典的な外交というのは、いわば軍事力とかそういうものに支えられた外交もありますし、強制力を伴った外交というようなことがございますが、日本が戦後五十三年経験しております外交というのはまさに経済外交中心でございまして、この経済外交の中には通商という側面もありますし、あるいは発展途上国の援助という側面もございます。恐らく日本外交というのは、二国間の領事事務関係は存在しましても、基本的にはやはり経済外交中心であろうと思っております。  ところが、経済外交と一口に申し上げましても、農業分野というのは外務省だけでは解決できない。やはり農業専門家が参加をしなければいけないというような外交になっておりますし、例えば通貨に関する交渉をしますときには、やはり大蔵省専門家が参加しなければならないということで、確かに縦割り行政になっておりますけれども、省庁間で相協力しながら、しかも多元的な外交にならないという節度をきちんと守りながら日本外交を進めていく。  こういうことは、先生おっしゃるように、それが一元的という先生のお考えであれば、我々は常にばらばらにならないように、国益を守る、またあるいは世界経済発展あるいは世界貿易量の拡大に努めるということについては、外務省が対外的な代表ではございますけれども、それぞれのテーマに関連した役所と外務省が相協力して日本国益を守っていくということが対外的な交渉の要諦である、そのように考えてやっております。
  8. 大畠章宏

    大畠委員 今大臣からお話がございましたが、今のお話の中にも、いわゆる外務省通産省と。いろいろ話を聞いておりますけれども、いま一つ、お互いに何かどっちがどっちなのか、そういうあいまいさが私は残っているような感じがするのですね。  私は、外務省にももっと強い外務省になったらどうかと。通産省とか農林省とかあるいは運輸省とか、そういうところを束ねて、今どういう体制交渉に臨まなければならないというのは、外務省が全部掌握してやるべきじゃないか。外国情報なんかでも、商社の方がいわゆる情報をたくさん持っているとか、そんなことを言われるような外務省では困るんだということは常に私も言ってきました。まあ与謝野通産大臣はそういうものを全部精通されておられると思いますが。  私は、今冒頭に申し上げたのは、例えばクリントン大統領が、一九九三年に国家安全保障会議と並ぶ大統領直属国家経済会議というものを創設して、対外経済政策の形成にかかわってきたという話でありますし、レーガン大統領時代は、ヒューレット・パッカード社ヤング社長委員長とする大統領産業競争力委員会を設置して、産業競争力強化のためにいろいろ取り組んだ、いわゆるヤング・リポートというものをまとめたという話もありました。  もちろんこれは、その当時日本がいわゆるバブル経済といいますか、非常に産業力が増してどんどんアメリカに攻め込みましたから、当然アメリカとしてはそういう体制をとったと思うのですが、今日の日本経済混乱状況を考えますと、通産大臣あたりが、もちろん総理大臣中心かもしれませんけれども、この国家経済会議と並ぶ、いわゆる対外的な、外交問題も経済問題もひっくるめてどうするかというような、足並みがそろうような機関をつくって、私は今やるべきじゃないか。  ところが、今回のこの行政改革内容を見ますと、どうもそういういわゆる息吹といいますか、意欲といいますか、やるんだというものが余り伝わってこない。大変残念ながら、そういう感じを持つのです。  したがって、私が申し上げたのは、世界的な大競争時代の中において日本産業界も大変苦しんでいます。そういう状況下においての行政改革ということであれば、単にゼロックスで七五%まで縮小しましょう、そしてその中にどう押し込めるかという話ではなくて、将来を見込んで、あるいは現状を見込んでどうするかという強い意思がその行革の中になければならないのじゃないか。ところが、それが、私はこの通産関係改革内容を見る限り、クリントン大統領国家経済会議というものに匹敵するようなものがどうも見えない。私は非常にそこが残念なんです。  通産大臣、再度、そこら辺をどういうふうに行政改革の中では考えておられるのか、お伺いしたいと思うんです。
  9. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 今回の行革を辛口で批判される方の中には、これは単なる組織いじりではないかという批判がございます。実際、中身を点検しますと、私はそうではないと実は思っております。  実際、省庁を大くくりすることによって機能自体を高めよう、いわゆる省庁間の争いというようなことを、各省を大くくりすることによって省内での調整ということをまず進めようという思想が私は入っていると思っておりまして、そういう意味では単なる組織いじりではないと思っております。  それから、もう一つは、省庁の人員を減らすという意味では、いわば国民が求めておられることにおこたえしている形になっているのではないかと思っております。  ただ、そうはいっても、先生指摘のように、それでは本当に効率的な、そして二十一世紀を迎える日本の社会が必要としている体制になっているかどうか、こういうことでございますが、これは長い間、各省の分掌する権限を調整いたしました。そういう中で、従来のように、自分たちの縄張りはここだとか権限はこれだとかということだけでは、事は相済まない。省庁横断的な問題がますますふえてくる中で、やはり内閣として省庁を束ねていくという機能がどうしても私は必要になってくると思います。  そういう意味では、今回の内閣法の改正等によりまして、総理大臣の発議権も出ました。総理自体、内閣と総理という、いわば、今までは、総理大臣が行動するにも閣議決定によって行動するというシステムになっておりましたけれども、今回の行政改革によって、総理大臣自身が各省を自分の発議によって仕切りできるという体制ができるということは、内閣法の歴史からいいますと、戦前の内閣法が戦後の内閣法に変わったときに、総理大臣が閣僚に対する罷免権を持ったという革命的なことがありましたが、それに次いで、総理大臣が発議権を持ったということは、今後、各省庁を束ねていく上での総理大臣のリーダーシップを担保する、非常に見逃せない重要な考え方の違いが今回の行政改革の中には出てきた。  したがいまして、各省庁連携するということは当然でございますが、またその上に総理のリーダーシップによって各省が有機的な連携のもとに動いていく、そういう思想が今回の一連の行革関連法案には含まれているということをぜひ御理解をしていただきたいと考えております。
  10. 大畠章宏

    大畠委員 いつもの通産大臣の歯切れのよさとは違って、いま一つ歯切れが悪いような感じがするところでありまして、やはり私は、与謝野大臣通産大臣をやっておられるのならば、今回の行革ではかなり強力な、日本産業界といいますか経済といいますか、これをこういうふうにするんだというような、一つのジェットストリームができるぐらいの行政改革、機構の改革ができるんじゃないかという期待をしておったんですが、今のお話ではいま一つ明確じゃありません。  私は、そういうところがやはり、新しい政権をつくるに当たって政党間で幾つにしようというような答えが先に出ていて、そのためにどうするかということで行ってきたというような感じがしまして、それも一つの努力かもしれませんけれども、本来はもっと、起こりがあって、ある意思があって、そしてそれを具現化するためにどうするかということが私は非常に薄かったような感じを持っております。  したがって、この第一番目の質問については、これからも、この行政改革が進むんだと思うんですけれども、そういう体制がとれるようにさらに努力をしていただきたいということを申し上げますし、現在では非常に不十分であるということを指摘しなければならないと思います。  二つ目に、今通産大臣は、そういう一つの自分としての理念を考えた形でこの行政改革というものに取り組んでいるという話でありますが、私は「一府十二省の新体制への移行図」という概要をもらいました。そのときに、幾つかの省庁一つになったり、あるいは一つ省庁一つのところになりますが、例えば通産省のところは、通産省のところから矢印があって、新しい体制経済産業省というふうになっていますね。  なぜ名前を変えなきゃならないのか。MITIというものは世界にもう通用していますよ。それが、実態がそんなに実質的に変わらないのであれば、なぜ変えなきゃならないのか。私はここが非常に理解に苦しむんですね。通産省から経済産業省に変わって、何が変わるんですか。そこをちょっとお伺いしたいと思います。
  11. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 実は、橋本総理のもとで行われておりました行革会議がありまして、そのときも名前については先生と同じような意見が続出をしておりましたのを、私は官房副長官として聞いておりました。  一つは、経済省にしたらいいという意見もありましたし、通産省のままでいいという意見もございました。また、今のような経済産業省という意見もありまして、最後には経済産業省にしようという話にまとまって、国会に提案をしたわけでございます。  本質は、恐らく私は、名は体をあらわすといいますけれども、別に現在の通産省の仕事が減ったわけでもありませんし、むしろ責任は重大になってきたと思います。そういう意味では、何としても二十一世紀の日本を豊かにする必要がありますし、世界的な非常に厳しい経済競争に打ちかつということが我々通産省の使命であると思っております。  従来からのエネルギー政策、中小企業政策あるいは特許政策等も、従来どおりのことはやってまいりますが、やはりこの行革を機会に、我こそは日本経済を背負って立つんだという気概を持って、通産省はこの行革を機会にさらに責任感を深めるということが私は大事なことなんだろうと思います。  通産省は、従来から許認可権限というのは他の省庁に比べて持っておりません。そういう意味では、政策で勝負をする役所であるという性格が強い。それだけに、通産省に所属するすべての人間は、日本経済は我こそが背負って立つという気概を今後さらに強くしなければならないというのが、私の今回の行革に当たっての基本的な物の考え方でございます。
  12. 大畠章宏

    大畠委員 今の御答弁でも、なぜ通産省から経済産業省へ変えたかという明確な理屈といいますか、理由が伝わってまいりません。与謝野大臣も、どちらかというと通産省のままでよかったんじゃないかという考えをお持ちかもしれませんが。  私は、他の省庁もそうかもしらぬけれども、これから日本は、通産大臣アメリカ、ヨーロッパ、アジアとの関係をいろいろやっていらっしゃると思いますが、名前というのは重要なんですよね。今、国会の中でも、夫婦別姓の話ですとか、かなりいろいろ論議されておりますが、もしも通産省から経済産業省に変えるということであれば、かなり、変えるだけの理屈というか、構造的な変化とか全く別な、通産省を二分の一にしたとかあるいは通産省の倍の仕事をするようになったとかという話であれば別なんですが、どうも調べてみると、中小企業庁、エネ庁、特許庁、従来と同じなんですよね。だとすれば、私は、何も変える必要はない。  通産省から経済産業省と、いろいろ議論して変えたんでしょうけれども、この名前を変えただけで、看板を変えなきゃならない、印刷物を変えなきゃならない、これは大変な費用が発生します。本当にそれだけ、まあ、この間、農林省関係のもので十一億とかなんかという話が出ていましたけれども、ある部門の名前を変えるだけで。これは、通産省関係の地方の出先機関もありますから、それまで全部、門柱から、こういう封筒から、原稿用紙から、全部変えるとなったら、これは大変なお金がかかります。本当に、そういうことも承知の上で通産省から経済産業省というものに変えたのか。  あるいは、対外的な影響があります。MITIというのはもう世界に通用していますよ。今度どういう名前になるかはわかりませんが、これはどういう名前になるんでしょうか、英語では。
  13. 村田成二

    ○村田政府委員 ちょっと経緯的なこともございますので私から御説明申し上げたいと思いますが、まず先生指摘の、なぜわざわざ変えたんだという点でございます。  行政改革会議の報告書にもございますように、まさしく先生おっしゃいますように、国際的な大競争の中で国家間の経済システムの厳しい競争を生き抜いていかなきゃいかぬ、そのためにはやはりきちっとした経済システム全体を把握する役所が必要だろう、こういうふうな観点が一番基本にございます。そういった観点から、通商産業省という今までの、業を所管している、個別の業を見ているという形から、むしろ経済システムとして内外問わずそこをとらえていく、こういう観点から名称を変更されたものというふうに承っております。  それから、英語の名称でございますけれども、これは、この法案が仮に可決成立させていただければ、その後に各省とも協議して決めていく、こういうことになります。ただ、おっしゃるように、MITIという名前は非常に国際的に有名でございますし、流布されております。それで確立されておりますので、極力その原形をとどめるような工夫はいたしたいと思っております。
  14. 大畠章宏

    大畠委員 原形をとどめるといっても、日本語が変わったんですから、そのままMITI、英文ではMITIで日本語では経済産業省というわけにはこれはいかないと思うんですね。私は名前というのには非常にこだわるわけじゃありませんが、例えばソニーでも何でも、会社の名前でも製品名でも非常に大事にするんですよね。そこには一つのイメージといいますか、そういうものがあるんです。  私は、今そういう指摘をさせていただきましたが、そういう事務的な経費あるいは対外的な影響力を考えますと、こういう内容であれば現状とほぼ機構的には同じでありますから、通産省から経済産業省に変える必要は全くない。まあ、私どもの中では、看板のすげかえにすぎないんじゃないかという指摘が、幾つかこの行政改革の中にも指摘されていますが、今回については、通産省については全く看板のかけかえにすぎないんじゃないかということをこれは指摘せざるを得ません。そして、その看板を変えたことによるマイナス面が非常に大きいんじゃないか、このことも指摘させていただきたいと思います。  三点目に、このことも答弁しづらいのかもしれませんが、通産大臣、現在の情報通信産業といいますか実態といいますか、それが世界の中でどういう位置づけにあるか、この基本的な御認識をいただきたいと思います。お伺いします。
  15. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 本来は、日本産業というのは、情報通信が得意なはずでございます。得意なはずなんですが、例えばアメリカというような国と比べますと、やはり情報分野では立ちおくれているということを考えざるを得ない。  それは、一つは、ソフトの面で相当立ちおくれていて、例えばコンピューターを動かすOSなどはほぼアメリカが独占的な状況になっている。日本にも例えばトロンというような有望なOSがあったんですが、やはりこれについての国としての後押しが十分でなかったと私は反省をしております。そういう意味で、その他のいわゆるアプリケーションソフトの分野でも、日本はまだまだおくれているなというふうに思っております。  それからもう一つは、国の中で、例えば光ファイバーで全国ネットを結ぶとか、あるいはインターネットの利用人員等を見ましても、はるかにアメリカに劣っておりまして、やはりそういう意味では、情報インフラに対する投資というものは相当これからやっていかなければならない分野でございますし、それからまた、もう一つは、インターネットを利用した、例えば電子商取引とか、あるいは役所からの許認可とか、あるいは役所に物事を届け出をするとか、そういうことに関してのいわゆる情報通信の利用の仕方もはるかに立ちおくれております。  やはりそういう意味では、情報通信分野に国も民間も挙げてこれから重点的に投資をしていく、そして新しい技術も、世界をリードするような技術を開発していく、そういう考え方で臨まなければならない、私はそのように思っております。
  16. 大畠章宏

    大畠委員 今の通産大臣の御認識、私もそのとおりだと思うんです。にもかかわらず、今回の行政改革の資料を見ますと、この分厚い「中央省庁等改革関連法律案について」という、これはサマリーだと思うんですが、これを見ると、どうも、そういう通産大臣の意思と言いますが、本当なんだろうかという感じがせざるを得ないんです。  それはなぜかというと、これは、総務庁長官もおられますが、総務庁の範囲に入るんだと思うんですね。そうですね。「総務省の編成方針」というものの六番目のところにこんな文章があるんですよ。「電気通信行政及び放送行政については、当該行政に係る郵政省の機能を通商産業省との分担を変更しないで引き継ぐとともに、当該行政を担当する局を二局に再編して内部部局に置くこと。」  これは私自身の考えでありますが、通産大臣のような認識でもって行政改革を行うのであれば、なぜこの総務庁に相変わらず「郵政省の機能を通商産業省との分担を変更しないで引き継ぐとともに」なんという言葉が出てくるんですか。  私は、先ほど冒頭に申し上げましたが、今回の行政改革は大変なお金をかけてやるわけですよ。それで国民は、例えば省庁の任務分担というのは、まあ言ってみれば国民からすればどうでもいい話なんだ。要するに、お金をむだなく使いながら、効率よく、国民のためになるような改革をやってくれというのが国民要求ですよ。しかし、相変わらずここに郵政省と通産省の分担を変更しないでなんという文章が出てくること自体が、このいわゆる行政改革というのは何なんだ。旧来のいわゆる派閥意識というか、そういうものを引きずりながら、親分同士が話し合って、まあこのぐらいにしようやという、そんな感じにしか見受けられませんよ。  もしも通産大臣のような意識でこれからの情報通信産業、私はNTTの分割問題についても、あれはバブル時代の日本国内の、何か料金を安くしようというので競争させようというのが、今では世界間の競争が入っているわけですよ。そういう意味では、過去に戻るわけにいきませんが、私は、NTTの分割だって、日本情報通信戦略としては失敗したんじゃないかということも指摘しなければなりません。  にもかかわらず、郵政省と通産省の分担を変更しないでなんということがこの行政改革の指針の中に入っていること自体が、私は通産大臣の今おっしゃっているような理念とは違う形でされているんじゃないかということを指摘しなければなりません。再度、通産大臣
  17. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 野田聖子さんがここにおられないんで、一方的に意見を申し上げるのはちょっと不公平だと思いますので、これは野田郵政大臣にも聞いていただきたいと思います。  これは、長年、どっちがやるのかということは両省庁の間でいろいろ議論をしてきたところでございます。橋本総理がやっておられた行革の中では、むしろ最初通産省に一本化した方がいいんじゃないかという議論も、実は情報についてはございました。しかし、いろいろな意見が出てまいりまして、それぞれの持ち場できちんと仕事をやれということが橋本総理の御決断であったんだろうと私は思っております。  ただ、これは気をつけなければならないことは先生指摘のとおりでございまして、二つの役所が縄張り争いをしている間に日本情報通信政策がおくれてしまうというのは情けない話でございまして、また、国民には大変申しわけない話でございます。私としては、従来のように、これはおれの分野だというようなこと、例えば今から十七、八年前ですか、VAN戦争という戦争を郵政省と通産省がやったことがございますが、ああいうばかげたことの繰り返しにならないように、両省庁間でちゃんと協力をしながら、一体的な情報通信政策というものを推進するということを心がけなければならないと思っております。  現在は、郵政省と通産省関係は大変良好であることを御報告申し上げておきます。
  18. 大畠章宏

    大畠委員 通産省と郵政省の関係が良好だというんですが、良好だとしても、今の現状について、じゃあよしとしましょうというわけにはならないんですね。これは、大体五十兆円近い税金を国民から、あるいは法人も含めて出していただいて、それで運営しているわけですから、通産省と郵政省が仲たがいしないでやっていますというだけでは困るんですよ。  先ほど、いや、それは郵政大臣も呼んでみないとあれじゃないかという話があったけれども、もしも小渕さんが強いリーダーシップを発揮されるのであれば、小渕総理の決断でこうなったんですという話ですが、それは決断というよりも、両者でまあ仲よくやれや、その結果はどうなった、じゃこれでいいだろうということしかないんじゃないかと思うんですよ。それは小渕総理の決断というよりも、逆に言えば小渕総理が決断をされなかったんじゃないか。もしも強いリーダーシップがあれば、通産省も郵政省もぶつぶつ言うな、これからの世界の流れを見れば、情報通信というものに対して大変強いものがあるから、これは両省を束ねて、例えば通産省に一括やってもらおうと。  例えば、通産省の所掌についての文章も、これでいいのかなと私は思うんですが、経済産業省の任務は「情報通信の高度化に関する事務のうち情報処理に係るものに関すること。」こんな、二つで一人前、半分ずつに分けて半人前ずつ役割を担っているようなもので、こういう形では、日本情報通信がこれからどうなるのかな、私はそういう危惧を持たざるを得ません。そういう意味でも、この情報通信分野に関するいわゆる行政改革というのは、国民の期待からすれば甚だ不十分であるということを指摘しなければなりません。  それから、次に、工業技術院が今回廃止されることになったわけでありますが、私は、工業技術院の仕事もいろいろと勉強させていただきました。商工委員会でいろいろ視察にも行きましたし、さまざまな意味でこの工業技術院、非常に地味な仕事でありますけれども、着実な研究をしていただいたと思っています。まさにこれから、科学技術基本法等も成立をさせていただいたところでありますが、特に技術立国を目指す日本としては非常に意味があるといいますか、味がある研究室なんですよ。  それが今回、ずっと見ていたら、先ほどの話じゃありませんが、通産省はほとんど機構的には変わっていないんだけれども、工業技術院だけやめましょうということになっているんですね。これは多分、通産省もどこか一個ぐらい減らさなきゃならないんじゃないか、こういう時代だからというので、ずっと調べていったら、まあ、ここら辺だったら余り文句言わないんじゃないかということで工業技術院はやめようということになったんじゃないかと思うんです。  これまでもそうだし、これからも技術立国日本、要するに資源がない国、技術立国日本としてやるのであれば、工業技術院を軽んずるというような行政改革は、方向性としては間違いではないかということを私は考えているわけでありますが、通産大臣の御所見を伺いたいと思います。
  19. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 工業技術院を御評価いただいて大変ありがたいと私は思っております。  工業技術院は、例えば電総研とかいろいろな研究所に分かれておりますが、これは世界的なレベルの研究機関に育っておりますし、また、海外からのたくさんの研究者も受け入れておりますので、国際的にも大変名の知られた、レベルの高い研究機関であると私は思っております。  また、工業技術院を廃止して内部部局にするということになっておりますけれども、今まで工業技術院がやってまいりましたいろいろな研究というのは、公務員型の行政法人、独立行政法人という形で受け継がれてまいりますし、また、工業技術院のいわば本体というのは通産省の内部部局の中に入ってまいりますので、通産省の技術開発政策や科学に対する考え方、また産業と技術との関係、そういう中で工業技術院全体が内部部局の問題として運営されるということで、むしろ一体化が進んだということは大きな効果があると思います。  また、独立行政法人になることによって、研究者の発想とかあるいは独創性というものがより大きく発揮されるということを期待して、こういう方向で行政改革をやったわけでございまして、決して現在の工業技術院を弱体化するとか、あるいは今までの立派な業績を無にするようなことをやるつもりはございません。むしろ強化をしてより大きな研究成果を得る、また、外部との人材交流もさらに盛んにしていく、そういう意味での独立行政法人化でございます。  先生の御指摘はまさに、この立派な研究所についてきちんとしろ、多分そういう御指摘だろうと思いますので、私どもも心して、工業技術院の今までの成果がさらに将来の発展につながるように努力をしてまいりたいと考えております。
  20. 大畠章宏

    大畠委員 今大臣からお話がありましたが、今回のこの工業技術院が表面上から消える問題については、非常に私は残念なんですね。それで、これも、通産省の仕事というのは非常に多岐にわたっておりますが、その中でも地味な仕事で、私は非常にいい仕事をしていたと思うのですよ。  今回の行革の問題点というのは、ここが必要でここが必要じゃないという振り分けをすると各省庁間で問題が発生するから、できるだけ各省庁とも同じぐらい努力して減らしてくれという、よく一律カットいうのがありますが、そういう手法が随分あったんじゃないか。その中でも、通産省もよくいろいろ努力してこういう状態になったと思うのですが、でも、まあ一カ所ぐらいというような形で、政治的にこの工業技術院が俎上に上がって廃止という形になったのかなと思うのです。  大臣が言うように、研究部門の強化ですとかあるいは本陣の方に一部入ったという話もあるのですが、私は、そこら辺今後とも十分考えて、この問題については、今いろいろ答弁がありましたけれども、考えて対応してもらいたいということは申し上げておきたいと思います。
  21. 太田誠一

    太田国務大臣 独立行政法人化したということが、何か切り捨てられたとか廃止だとかいうふうにお考えになることは的確でないと思います。独立行政法人化するということは、これは、現在の通産省の中でのお考えで、将来にわたってむしろ発展させたいという気持ちがあったのではないかというふうに思います。  独立行政法人化するということは、民営化でもないし効率化だけを求められるわけでもありません。そして、国にとって必要な仕事である、しかしながら国が直接やる必要がないということなのであって、それは渡し切りの交付金というものをどうするかということでもって、それは政策としてバックアップをし、強化をすることも国としてもできるわけでありますので、ぜひこれは独立行政法人化の意義を積極的に御評価をいただきたいと思うのであります。
  22. 大畠章宏

    大畠委員 私も技術分野でずっと仕事をしてきましたが、そうは言いながら、その名前が消えるというのは研究者としては非常に寂しいのですよ、本当に。そういう意味では、技術分野の問題がこういう形で通産省の中で処遇されるというのは、ちょっと私は問題があると思いますね。  いずれにしても、独立法人化された中で、ぜひきちっと技術の確立といいますか、そういうものがされるように、両大臣とも今御答弁いただきましたけれども、ぜひ努力をしていただきたいということも申し上げておきたいと思います。  その次に、特許庁の問題、特許関係と公正取引委員会関係、あるいは中小企業関係についてお伺いしたいと思うのですが、ちょっと時間が少なくなってきたんですが、特許問題についてお伺いしたいと思います。  アメリカ日本の特許戦争というのは、通産大臣御存じのとおり、かなり激しい論議をしながらやってきました。当初、いわゆる日本側が優秀な製品をアメリカにどんどん売って、アメリカが非常に困ったわけですね。そこでどうするかというので、アメリカは、戦術といいますか、いろいろ検討した結果、反撃を開始したわけであります。それがどういうふうに始まったかということでありますが、さまざまな検討をする中で、いわゆる知的所有権というものをベースに、何とか貿易の赤字問題というものを解消しようじゃないかという一つ考え方で進んだと私は聞いております。  そこで、通産省がこの知的所有権問題をどういうふうに戦略的にとらえておられるのか、この通産大臣の基本的な御認識をお伺いしたいと思います。
  23. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 まず、米国との関係ですけれども、私どもは、米国の特許制度に関しては、二つの大きな不満を実は持っております。ほとんどの国が特許制度に関しましては先願主義をとっておりますけれども、アメリカは相変わらず先発明主義というものをとっておる、これは我々にとってはやはり大きな不安でございます。  それからもう一つは、日本ですと、特許が申請されますと間もなく皆さんにお知らせすることになる。ところが、アメリカでは、サブマリン特許と我々呼んでおりますけれども、特許の出願をされたのですけれども、それがなかなか世の中に発表されない。突然、三年、四年たってからそれが発表されるというようなサブマリン特許の問題がございまして、これについては、日本政府は、アメリカの特許制度というのは必ずしも世界的に見て整合性のとれた、あるいは合理的な制度とは思えないということは繰り返して申し上げているところでございます。  そこで、我々、特許につきましては、プロパテント政策というしゃれた名前を使っておりますけれども、やはり日本は技術で生きている国であるから、まず一つは、その根本となる科学や技術に対する投資というものをふやしていこうという思想。それから、そういうものができました場合には、いち早くその特許がとれるようなシステムをつくろう。それから、国内でできました、あるいは特許として成立したものが世の中に公開され、なるべく多く利用できるように、特許のいわば電子図書館的なものをつくって、全国から特許庁が持っている情報にアクセスがきくようにしよう。  こういうようなことで、特許をとるということ、特許を利用するということ、こういうことに関しまして、これからは特許法ばかりでなくて、その他の知的財産権にかかわる法律というのが工業所有権法を初め幾つかありますので、そういうものをきちんとしていくというのが我々の仕事でございます。  もう一つ見逃せないのは、国内での特許裁判というのが大変時間がかかって、実際に民事裁判としての結果の有効性というのを持っておりません。やはりこの特許裁判の迅速化というのは、弁理士制度、弁護士制度の問題とあわせてひとつお考えをいただかなければならない問題だと思っております。  概して言えば、プロパテント政策というのは、特許制度そのもののこともございますけれども、日本が持つ技術の独自性という、これは日本の技術だ、これが日本世界に誇れる技術だ、その技術の部門をやはりしっかりと持つということだろうと私は思っております。
  24. 大畠章宏

    大畠委員 今大臣からプロパテント戦略という話が出ましたが、アメリカの戦略の一端を申し上げますと、非常に権力を強化したり、連邦巡回訴訟裁判所というものを設立したり、特許法の改正をしたり、さまざまな総合的な施策をやって臨んできたのですね。それに対して、日本の特許戦略というものが残念ながら見えませんし、今回の改正でも、特許庁というものが従来どおりあるんだというだけで、私は、改革をするのであれば、何かそういう理念とか戦略があって改革をするならいいんですが、どうも今回はそういうものが見えてこないんですね。  この問題はちょっと時間がなくなったので、これは次回にさせていただきますが、この特許問題についても非常に戦略が見えない。現状維持では私は不十分だと思うんですよ。そこら辺、大臣から今お話がありましたが、この問題も改革は全く不十分だということも指摘させていただかなければなりません。  次に、公正取引委員会に関して質問をさせていただきます。  幾つか準備をしてきましたけれども、あと七、八分ということになりましたので、一つだけ質問をさせていただきます。総務省の下部機関に今回公正取引委員会は位置づけられたんですが、これが妥当なのかどうか。アメリカ等の位置づけを見ますと、大統領府に直属機関として置いてあるんですね。総務省の下であるということであれば、総務省の中には郵政省の一部も入っていますし、幾つかの機関が入っていまして、電気通信、放送行政、郵政事業、そして独占禁止政策と、ごっちゃになっているんですね。こっちの課で隣の課を取り締まるなんということは、なかなかできないのじゃないか。  なぜ、総務省の下に独占禁止政策、要するに公取を置いたのか。もしもやるのであれば、私は内閣府の下に置くべきだと思うんですよ。なぜそういうことになったのか、お伺いしたいと思います。
  25. 太田誠一

    太田国務大臣 行政改革会議の最終報告において、いわゆる事前規制型の行政から事後チェック型の行政へ転換することとされておりまして、これを受けて、中央省庁等改革基本法で、国の規制を見直して、規制のあり方について、事前の規制から民間の自由な意思に基づく活動を重視したものに転換するということがあるわけであります。こうした方向を踏まえて、公正取引委員会については、独占禁止法の厳正な運用を確保する重要性にかんがみて、その審査体制の充実を図るとされております。  この総務省の外局とすることと、あるいは今大畠委員がおっしゃる内閣府に置くべきかどうかということで言えば、それだけについて言えば、いや、私はこの省庁改革全体が何も百点満点だということを申し上げるつもりはありませんけれども、内閣府に置くのがいいのか総務省に置くのがいいのかと言えば、どちらかというと、これは総務省の方が事後チェック型の役所としての性格が強いわけでありますので、それに対して、内閣府の方は文字どおり企画立案、国の基本方針、企画立案をやるのが内閣府の特徴でありますので、そちらへ置くよりは、事後チェック型でありますので、総務省に置く方がまだ説得力があるだろうというふうに思うのでございます。  これにつきましては、では、そこに置いたならば公正取引委員会の独立性が脅かされるかというと、そんなことはないわけでありまして、それこそ委員長及び委員の職権行使の独立性や身分保障は独占禁止法で明定されておりますし、それぞれ国会同意人事でありまして、内閣総理大臣が任命するわけでございますので、公正取引委員会の独立性が脅かされるということはない。それはよその国においても、極めて独立性の高い機関が組織上どこかにくっついておって、そしてちゃんとみずからのアイデンティティーというか独立性を保ちながら仕事をしておるという例はほかにもありますので、そこは御懸念には及ばないのではないかと思います。
  26. 大畠章宏

    大畠委員 これは大変重大な問題点として指摘しなければなりません。これから、まさに規制緩和で自由競争が始まります。そのときの重要な役割というのは公正取引委員会なんですね。  それが、隣の課に郵政関係がいて情報通信官もいる。ここで隣なんかを取り締まるという、言ってみれば、同じ屋敷内に取り締まる人も一緒にやれと言ったら、これは非常に私は、今総務庁長官はおっしゃいましたけれども、そうはならないのじゃないか。アメリカ合衆国でも、大統領府の下に独立機関として置いてあるわけですよ。  なぜ、せめてこの内閣府の下に位置することができなかったのか。これは総務庁長官の責任じゃないかもしれないけれども、この全体的な改革の、いわゆる理念なき改革の象徴的なものだと私は思いますよ。今からでも遅くないから、これはポジションを変えたらどうですか。
  27. 与謝野馨

    与謝野国務大臣 以前、長野県出身の青木一男参議院議員という方がおられまして、その方が晩年に書かれた論文があります。この論文を読んでみますと、大変大事なことが書いてございまして、憲法には行政権は内閣に属するということが書いてあるけれども、公正取引委員会は、独立して職務を行うことにしても、内閣の行政権との関連は一体どうなっているのか。不思議ではないか。実際、内閣の行政権と公正取引委員会関係は、公取委員長を任命するぐらいのことであって、その後、公正取引委員会が行う独禁行政について、内閣は全く発言ができないという仕組みになっているのは憲法違反ではないかという論を実は青木先生は展開されておられました。  それからもう一つは、公取の中に訴追をする方と審決をする方と、言ってみれば、いわば検察と裁判所と一緒の役所の中にあるというのも不思議なことだ、これはおかしいということを青木一男先生が書いておられました。  これは、我々国会議員としてはやはり研究に値する提言であったろうと私は思っておりまして、今から十七、八年前に書かれた論文でございますけれども、本当に青木一男先生が心血を注がれて書かれたこういう論文というのは、後輩の我々がもう一回読む必要があるのではないかということは私は常々思っております。
  28. 大畠章宏

    大畠委員 そろそろ時間が来たということでありますから、中小企業庁関係あるいはこの公正取引委員会関係あるいは特許戦略問題についてもさらに質問をさせていただきたいところでありますが、次回のときにさせていただきます。  また、労働大臣にも来ていただきましたけれども、労働大臣にも質問をしようと思いましたが、時間の関係上、大変恐縮でありますが、質問を次回にさせていただきたいと思います。  総じて、いろいろ論議してまいりましたけれども、私はこの行政改革問題については非常に多くの問題があると思うんです。(発言する者あり)今、労働大臣にも質問してほしいという話がありましたから、ちょっと時間を、恐縮でありますが、質問をさせていただきたいと思います。  それでは、労働大臣にちょっと質問をさせていただきます。  今回、各行政改革というものが行われるわけでありますが、今雇用問題というのが大変大きな課題に上がってきております。きのうの新聞でも、男性の失業率が五%を超えたというような話がございまして、この雇用問題というものと行政改革というものをどういうふうに労働大臣として御認識なのか、その点についてお伺いしますし、この行政改革というものの進行と、今いろいろとリストラというものが叫ばれておりますが、この問題についても労働大臣としてどういうふうに考えておられるのか、御質問をさせていただいて、私の質問を終わります。
  29. 甘利明

    ○甘利国務大臣 出番をつくっていただきまして、ありがとうございます。  行革を進めて国家公務員の数が十年間二五%減るわけでありますが、これは一部国民の皆さんに誤解がありますが、生首を飛ばすということではありませんで、二つの方法で需給調整、やめる人が十人いたら採用は五人にする、そしてもう一つは、独立行政法人化をすることによって総定員法の枠から外していくという手法であります。ですから、その限りにおいてはいわゆる失業者というのは出ないのであります。ただ、雇用吸収力という点からすると、そのまま何もしないでいけば採用されるであろう部分が採用されないという点で、雇用吸収力は落ちるということになります。  ただ、いわゆる企業でいえば効率経営に入るわけでありますから、その分、予算が他の分野で効率的に使えるというメリットもあると思います。効率的に予算を執行することによって、別な分野で新たな雇用を生み出していくということに努めなければならないというふうに思っております。  それから、リストラ、一般の企業も含めてリストラと雇用の不安といいますか、その関係でありますけれども、リストラは、私が懸念しますのは、イコール人員削減という図式にはなってもらっては困る。リストラというのは事業の再構築でありますから、いろいろな分野でみんな見直すということでありますし、雇用の面に関しても、職業能力を強化するということも競争力の強化にはつながるわけであります。ですから、安易な手法として雇用の削減に手をつけないで、いろいろな手法を使ってみていただきたい、それが優先するということが私の思いであります。  労働省、そして他省とも連携をとりまして、雇用不安の払拭、つまり、安全ネットの総点検と整備、それから雇用の創出、そして成熟産業から新しい時代を担う産業へのスムーズな人材の移動について新しいパイプをつくるということ等々に努めまして、雇用不安の払拭に努めたいと思っております。
  30. 大畠章宏

    大畠委員 同僚議員の御理解をいただいて質問を続けさせていただきましたけれども、ぜひ労働大臣におかれましても、この雇用問題、行革行革と言うのは非常にたやすいわけでありますが、今の失業というもの、あるいは現在仕事をしている方にとっては大変不安の状況もございますので、労働大臣としてしっかりこの雇用問題についても十分な対応をしていただきますよう要望したいと思います。  以上で質問を終わりますが、公正取引委員会の位置づけの問題、あるいは高度情報化社会に対する対応の問題等々を考えましても、今回の行政改革は、国民からすると非常に理解しがたいものであるということを指摘しなければなりません。  また次回に残りの質問をさせていただきますが、以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。
  31. 高鳥修

    高鳥委員長 次に、藤村修君の質疑に入ります。
  32. 藤村修

    藤村委員 引き続き、民主党を代表いたしまして、藤村修でございます。  議題になっております省庁再編、そして地方分権の一括ということで、非常にたくさんの課題を具体的に進めていきたいということで、先ほどは通産省中心に同僚委員質問いたしました。私は、今からの時間を、国の教育行政、文部省ということだと思いますが、一本に絞りまして、文部大臣にも来ていただいておりますので、御質問を申し上げたいと思います。  ただ、昨日の夕方でしたか、他党の同僚委員からも文部大臣に、文部省関係、相当細かく質問をされているのも聞いておりますので、できるだけ重複を避けて、ただし、私ども民主党としては今初めて一つの具体的省庁の話になってまいりましたので、きょうは省庁再編ということが中心テーマでございますが、順番からいきまして、地方分権の方にも触れまして、御質問を申し上げたいと思います。  私は、三年余り前になりますか、平成八年二月二十三日、本院の文教委員会におきまして、当時の奥田文部大臣に、いわゆる地方分権、特に教育の地方分権という問題がその当時に議論が始まりました。それは、その前年に地方分権推進法ができて、そして推進委員会を発足させたばかりの当時でありましたので、そのとき、これは三年余り前の文教委員会において、そもそも国の教育行政における役割とは何か、こういう問いかけをいたしておりました。  そのときの文部大臣のお答えは、これは非常に概念的でありますが、国は主役でなくてわき役の立場で、応援団のような、そういう立場にあるという、文部省、国としての役割の認識を示されたわけでございました。  それ以来ずっと、地方分権という話、大きな流れ、時代の流れでもございますが、進んでまいりまして、このたび一括法ということで、四百七十五本になるのでしょうか、うち、実は文部省関連では今回二十一本の法案がございますので、本当は丹念に一本一本議論をしないといけないのですが、きょうは文部大臣をお願いして一時間以内ぐらいの範囲ですから一本一本というわけにはまいりませんので、基本的なお考えを今からお伺いしたいと思っております。  それで、質問の順番が若干変わるかもしれませんが、まず、そもそも論でございます。  当時の、三年余り前のときの文部大臣のお答えというのは、概念的には、教育における国の役割というのは、地方が主役で、国は主役でなくてわき役である、あるいは国は応援団である、そういう認識を示されておりました。  ここへ来て、具体的に今回二十一本の文部省関係の法案が出てきたわけであります。これは後ほどまた順にお伺いをしたいのですが、いわゆるそもそも論として、有馬文部大臣は、教育行政における国、これは括弧文部省ということになるのでしょうか、その役割はどのようにあるべきかというそもそも論をまずお伺いしたいと存じます。
  33. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 教育行政におきましては、憲法で定められました国民の教育を受ける権利を保障するために、国、都道府県、市町村がそれぞれの責任と役割を果たしながら互いに連携協力をして、全国的な教育の機会均等を確保し、教育水準の維持向上を図っていくことが基本であると考えております。何よりも、みんなが協力してよい教育をするということが一番大切なことと思っています。  こういう観点から、それでは国はどうすべきかと申しますと、まず第一に、学校制度等に関する基本的な制度の枠組みの制定。二番目に、学校の設置基準や教育課程の基準など全国的な基準の設定。三番目に、義務教育費国庫負担など地方公共団体における教育条件の整備に対する支援。私はこれが非常に大切だと思っております。四番目に、学校運営や教育内容等に関する指導、助言、援助など教育事業の適正な実施のための支援措置などの役割を担っていると考えております。  文部省としましては、今後とも、全国的な教育の機会均等を確保し、教育水準の維持向上を図る観点から、その責任と役割を果たしていきたいと考えている次第でございます。
  34. 藤村修

    藤村委員 有馬文部大臣、ことしの二月十日、文教委員会で実は似たような質問を私申し上げまして、そのときの答えはちょっと違ったのですね。というか、今の四番目にはとおっしゃった、この四番目を、あのとき、ことしの二月十日は外されておりました。  かつ、私は、その外されたことを実は大変評価し、つまり、中教審で言っていることをそのまま今おっしゃったわけでありますが、ただ、有馬文部大臣のお考えは今の一、二、三であるとおっしゃった。実は、今四番目を追加されたが、四番目は、教育に関する事業の適正な実施のための支援措置というのを今改めて入れられたんです。私はあのとき、外されたことをむしろ評価しました。つまり、行革という観点からも国はその四番目の、今までやってきたわけですが、それは少し削っていこうあるいは地方に移していこうという発想がにじみ出ていたので私は御評価申し上げたんですが、今四番目をまた改めて入れられました。どういうわけでしょう。
  35. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 先ほど申しましたように、三番の義務教育費国庫負担というふうなこと、こういう地方公共団体における教育条件の整備に関する支援というのは非常に私は大切だと強調申し上げました。  このような気持ちは変わっていないわけでありますが、ただ、学校運営や教育内容等に関するいろいろな質問があったりするようなことが大変ございまして、そういう意味で指導、助言、援助というふうな、教育事業の適正な実施に対してはやはり支援をしていかなければならないのであろう。ですから、支援措置というふうに、支援ということを強調させて四番目を入れさせていただいた次第です。決して強制ということではなく、要請に対して支援をしていきたい、こういう考え方でございます。
  36. 藤村修

    藤村委員 考えが変わられたということではないんですね。ただ、公式な本院文教委員会での答弁で、議事録も出ておりますが、このときは三つ指摘された。私は、四つ目もあるんじゃないですかと言いながら、それを外されたことは非常に評価したんですが、今回また評価できなくなる。というのは、今の四つ目の問題が、多分教育の地方分権において非常にいろいろな意見があるということだろうと思うのです。  昨日夕方の指摘で、今の四つ目の話は相当細かく、教育課程の問題とか学校管理規則の問題とか質問されておりましたので私余り重複はいたしませんが、ただ、今姿勢として、四つ目を加えられたので、加えられたとして少し方向転換をされたわけですが、支援措置というふうにおっしゃった。あるいは、昨日の政府委員の答弁でも、きょうまではある程度ああしなさい、こうしなさいと言う方であったのが、今度は、これはどうしたらいいかと聞かれたときにはそれをお答えし、応援しよう、こういう姿勢に変わったというふうに理解してよろしいでしょうか。
  37. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 それで結構だと思います。
  38. 藤村修

    藤村委員 それでは、今国の役割を非常に整理して四つということで、その三番目が重要である、つまり国の教育条件整備のための支援、これが非常に重要であるということを強調された上で、さらに四番目については、むしろ地方からいろいろ聞いてきたときにはちゃんと応援しましょうという姿勢に少し変わっているということでの四つの整理を国の役割としてされました。  では、今度は地方、これは都道府県レベルということと市町村レベルということ、教育委員会がそういうふうにありますが、地方における教育行政の役割ということはどういうふうにお考えでありましょうか。
  39. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 地方の役割というのは非常に重要だと私は思っております。  その中で、少し整理をして申し上げますと、国は教育行政における基本的な制度の枠組みの制定や全国的な基準の設定、必要な財政援助等の役割を担っていると思います。  各地方公共団体は、このような教育行財政制度を基盤といたしまして、学校や図書館、公民館、体育館等の教育機関を設置管理するとともに、これらの機関を通じて、あるいはさまざまな施策により、教育、文化、スポーツ等の行政サービスを住民に提供している、こういう役割があると思っております。
  40. 藤村修

    藤村委員 だから、ここで基本のところをはっきりさせるということであります。  今回の地方分権の基本的な考え方で、これは何度も多分繰り返されているとは思いますが、一つ確認したいのは、国が果たす役割というのは、「国際社会における国家としての存立にかかわる事務」あるいは「全国的に統一して定めることが望ましい国民の諸活動又は地方自治に関する基本的な準則に関する事務」、三番目に「全国的規模・視点で行われなければならない施策及び事業」。文教政策については、この一番目というのは余り関係なくて、今の二番目、そして三番目の推進委員会の勧告の理念に基づいて、国の役割はこうではないだろうかと整理された、地方は今後こうしていくべきだと。特に教育の問題というのは一番身近な、あるいは生活に密着した、あるいは国の仕事としても五本の大事な仕事というと必ず一本に入る、そういう重要な仕事でございますから、国がやるべきこと、地方がやるべきことをひとつ基本的に整理をした上で、そして今回の地方分権推進一括法の中でも文教行政の法案が幾つか出てきたということだと思います。  では、これらの基本的な考え方に基づき、あるいは地方分権推進委員会の勧告や、さらに、昨年十月でしたか、第十六期の中教審答申でも相当地方教育行政のあり方が答申されておりますが、これらを踏まえて今回はこの法案を国会に提出された、そういう理解をしておりますので、地方分権推進委員会勧告、そして第十六期の中教審答申がどのように反映されているのかいないのか、あるいはまだ足りない点はどういう点なのか、お示しいただきたいと思います。
  41. 御手洗康

    ○御手洗政府委員 個別の事項にわたりますので、私の方からお答えをさせていただきたいと思います。  地方分権推進委員会勧告並びに地方分権推進計画で具体的に指示された事項、並びに中教審答申に基づきまして、今回の文部省関係の改正法をお願いしているところでございます。そのうち、地方分権推進計画で具体的に示された事項につきましては、今回の改正法ですべて具体的に改正内容をお願いしているところでございます。  例えば、地教行法の十六条の教育長の任命、承認制度の廃止、あるいはそれに伴いまして新たな適材確保策の検討ということで、市町村の教育長と同様に都道府県の教育長につきましても教育委員の中からこれを選任するというような形で改めさせていただいております。また、先ほど来議論になっております地教行法四十八条の指導、助言、援助というものにつきまして、条文の規定を見直すこと。さらには、地教行法四十九条につきまして、都道府県によります市町村立学校に対しますさまざまな学校の基本的な事項に関します基準の設定権の見直し。こういったものはいずれも地方分権推進計画並びに中教審答申に触れられた事項でございますが、忠実にその趣旨に従いまして法律改正をお願いしているところでございます。  なお、中教審答申に提言されました事項につきまして、幾つか大きな点で、今回の改正には成案が整わないということで積み残したものもございまして、一つは学級編制の認可制につきましては、同意を要する事前協議制というところまで進めてございますけれども、さらに中教審答申で学級編制や教職員定数のより弾力的な取り扱いについて義務教育標準法等の改正を提言されてございます。それからもう一つは、指定都市や中核市の高等学校の設置、廃止等につきまして、これにつきましては、認可から届け出制に改めるという提言がございます。また市町村につきまして、高校標準法第三条の高等学校の設置主体の規定を盛り、積極的に認めてはどうかという提言。さらには、教員の抜本的な資質向上の観点から、将来のある時期に、一年等あるいは二年等というようなかなり長期の研修休業制度の新たな創設という、大きな四点がございます。  これらにつきましては、具体化に当たりまして都道府県や市町村の関係者の御意見も踏まえ、さらには関係省庁等との調整を要する事項がございます。また、研修休業制度のように地方分権推進とは直接かかわりがないというようなことでございます。また、新たな別途の機会にお願いをするというような観点から、今回はこれら大きく四点につきましては改正法案の中にお願いをしていないところでございます。
  42. 藤村修

    藤村委員 そこで文部大臣に、これは概念というか感じをお伺いしたいんです。  今政府委員の方から、今回、推進委員会の勧告についてはほぼ一〇〇%受け入れて、法案化して出しました、こういうことであります。私もその点は、おおむね項目的にはそうだと思います。内容的にいろいろあります。例えば、それは青年学級振興法を廃止する、これで廃止されました。あるいは、今も説明にありました教育長の任命承認の件、これは文部大臣であったのが、もうそれはやめます、地方でやってくださいと。  これらは、権限がそうして変わってきたんですが、果たして、行政改革という観点から、国の仕事は減ってきたんでしょうかね。もちろん、確かに、紙が来て判こを押して戻すという仕事ぐらいは減ったんでしょうが、この前有馬文部大臣も文教委員会でもお答えになりましたけれども、やはり文部省という国の仕事を縮減するんだ、減らすんだというのも大きな観点、視点だったと思うんです。  今回この二十一法案をやったことで、地方分権推進委員会の勧告を受けておおむねやりましたということで、国の仕事はどのぐらい減りそうですか。一割ぐらい減りそうですか、二割ぐらい減りそうですか。これはやや感覚的でありますが、お聞かせいただきたい。
  43. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 まず最初に直観的なお答えをいたしますと、減ると思います。  もう少し定量的に見てみることにいたします。今回、地方分権推進計画や中央教育審議会答申に基づき、今御指摘のように、地方による主体的かつ積極的な教育行政の展開を図りつつ、今後とも国が教育の機会均等や教育水準の維持向上といった基本的な役割を果たすことができるよう、国の事務を見直したところだと考えております。  具体的に、その結果、今回の法案におきましては、まず第一に、機関委任事務を自治事務としたものが六十四件ございます。二番目に、国の関与を廃止したというのが十三件ございます。三番目に、国の関与の縮減を図ったものが二件。四番目に、国から権限を移譲したものが三件。五番目に、必置規制の見直しをいたしましたのが十三件でございまして、明らかに努力をして減らしていると思っております。
  44. 藤村修

    藤村委員 そうすると、これは、全体の何割とかいう言い方ではちょっと言いにくい、実はそういうふうに言っちゃうと多分ほんのわずかな部分ではないかな。といいますのも、これによって今度新しく文部科学省をつくる際のその骨格を見てみますときに、今の文部省の骨格はほぼ維持され、何か大きく局が一つなくなるという話ではどうもなさそうであります。だから、行政改革という意味で大きく縮減できたということではないと思うんです。  それは、もう一つ、さっきの政府委員の答弁でありました、今回、推進委員会勧告はおおむね受けて法案化しましたが、残り、第十六期中教審の地方教育行政のあり方の答申の内容については、まだ大きく四つぐらい、今からの課題である、こうお伺いしました。私もそのとおりだと思います。これは昨年の十月の答申で、本来、今回に間に合ったらできるだけ入れるべきであろうと思います。  例えば学級編制の問題です。あるいは高校の設置、廃止の問題とか、これも許認可権に近いような、いつまでも文部大臣が抱えていないといけない問題かどうか。今回特に教育課程について大綱化とか弾力化とかいうことが出てきたのに、まだクラスの数は、四十人ですよと法律で決めた、そうすると、四十一人になったらもうこれは二十一人と二十人に分けるんですよという、これが残っているわけですよ。これも現場に任せていったらいい。実態的にはTTとかいう、名称を変えて実は分けてやっているという。  だから、実態はやはりちゃんと直視して、それを認めていくべきだと思うんですが、これらの大きな課題はまだ四つ残っているけれども、いつまでにやられましょうか。
  45. 御手洗康

    ○御手洗政府委員 実務的な作業の手順がございますので、私の方からお答えをさせていただきます。  義務教育標準法の改正を要します学級編制あるいは教職員定数についての弾力的な運用の問題につきましては、教職員配置のあり方全体について、欧米の基準等も参考にしながら、さらに教育条件を改善するという観点から教員の配置改善をすべきである、あるいは学級規模についても検討すべきであるというような、より大きな課題を中教審答申からいただいているところでございます。  現在この点につきましては、教職員定数の配置改善というようなことを、新たに十二年度までの計画が進行してございますけれども、その先のことを考えるとなりますと、これは相当な財政的な負担も伴いますし、また、具体的にどの職員をどの程度配置改善していくのか、あるいは四十人学級編制についてどうあるべきか、さまざまな現場での御意見等もございますので、昨年の中教審答申につきまして、現在、外部の方々あるいは現場の方々も含めまして調査研究協力者会議をつくっておりまして、できれば年内ぐらいにはこれについての方向性を出していただきたい、その上で、現行改善計画後の新たな方向性について、現場のさまざまな御意見を伺いながら事務的な整理をしてまいりたいと考えて、いましばらく時間をいただきたいと思っているところでございます。
  46. 藤村修

    藤村委員 今割に重要なお答えだったと思うのですが、昨日もお答えいただいていた、研究協力者会議が、去年十一月からですか発足して、今の特に義務標準法の問題で、学級、つまりクラスというのは一体どのぐらいがいいのかというそもそも論から始まって、あるいは外国の例を見ても、やはり小さいクラスで一人一人に目が届く教育が必要だというのは、大体これはだれもが反対する話ではありません。あとはお金の問題ですから、だから、その辺は年内に大体方向性を出してもらい、それを受けて、かつ、今の改善計画が平成十二年までなので、ということは十三年からを目指して文部省としてもやっていく、そういう理解をしてよろしゅうございますか。
  47. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 そのお考えでよろしいと思います。  ただ、私が非常に調査研究に期待をしていることが一つあるんです。それは、一九八〇年であったと思いますが、四十人学級になった。それ以後ずっと十年間、明らかに教員の数はふえてきています。にもかかわらず不登校はふえている。だから、先生の数がふえたからといって不登校問題とか、いじめのことは途中で調査の仕方が変わりましたのでいきなりの結びつきはないのですけれども、必ずしも先生の数をふやせばすべてが解決するというようなことではない。教え方の問題があると思うのですね。  ですから、どういうふうにクラスを教えていくのか、先生方と生徒諸君との間の師弟関係はどうしていったらいいか、こういうふうな根本的なところも少し入り込んで議論していかなきゃならぬ。単に、三十人にすればすべて不登校は済んでしまうとか、いじめは終わってしまうとか、それからすべての子供が学校が大好きになるとか、こういうものではない。ですから私は、そこを解決しないとだめだとは主張しておるわけです。
  48. 藤村修

    藤村委員 その件に入りましたら、これは文教委員会でぜひやらせていただきたいと思います。私どもの党内でも、小さな学校、大きな学級という主張もあるわけです。だから、本当に四十人がいいのかどうか、これは今から十分に検討していきたいし、研究協力者会議でも、今、年内をめどに一応方向を出していただくようでありますので。  ただ、昔からの教育のそもそも論は、教育というのは、本当に数人、塾という昔の発想、あるいは寺子屋かもしれません。そういうところからきたときにも、本当に一人の先生に何人かの生徒で師弟関係ができて、それが教育の原点かもしれませんので、その辺も含めて、これは文教委員会でぜひ細かく今後議論させていただきたいと思います。  そこで、国は国で先ほど整理いただきました。今度は、では、地方は一体教育に関してはどこが最も重要な役割を果たし、今後とも責任を持って考えていくべき主体なのかというときに、これは多分教育委員会ということになろうかと思います。  昨年、私も出席させていただきました。戦後の話で、いわゆる教育委員会がこの国にできて五十年という大きな節目でありました。その五十周年の記念の式典がございました。教育委員会がもう五十年になる。その意味では、五十年を経て、今の教育委員会の制度というか、教育委員会というものはおおむね日本の教育の世界の中で定着をし、あるいは成熟をしている、このように評価してよろしいかどうか。これは有馬大臣の御所見を伺いたいと思います。
  49. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 教育委員会というものが成熟しているということは、私はそう思っております。  教育行政においては、学校教育や社会教育における中立性や継続性を確保するとともに、住民の自由な発想と多様な価値観を尊重しつつ、生涯学習、文化、スポーツ等の振興を図ることが求められております。このため、教育、学術、文化、スポーツ、経済、福祉というようなさまざまな分野について知識、経験を有する教育委員が、それぞれの識見に基づき、合議によって基本方針や重要事項を決定する教育委員会制度が設けられております。  教育委員会制度は、昭和二十三年に創設されて以来、地域における教育、文化、スポーツの振興を担い、地方教育行政制度の中核をなす専門的教育行政機関として定着してきていると思っています。これまでの五十年にわたる歴史を経て、その運営や各般の行政施策もおおむね円滑に行われているものと認識いたしております。  今後とも、教育委員会制度を維持しつつ、地域住民の意向を的確に把握し、反映しながら、地方公共団体が責任を持って特色ある教育行政を積極的に展開していくことが重要であると認識いたしております。  なお、先ほどの御答弁にちょっと不完全なところがありましたので申し上げておきますが、いつからクラスの定員をどうするかということが、まだ、財政的な問題がございますので、大蔵当局等々と相談をしているところでございますので、今どういうふうにやるべきかということを検討しているということを申し上げて、その点は御了解賜りたいと思います。
  50. 藤村修

    藤村委員 ですから、国は文部省、今度は文部科学省になるんでしょうか、それから地方はやはり教育委員会だ。そのときに、これは教育委員会といいますと、実はたくさんあります。それは地方自治体の数に近い数があります、こういうことになります。  都道府県教育委員会、これは都道府県に一つずつ設けられている、ここがやはり都道府県域内における教育の中心になるんだろう。それはおおむねもう定着をしているし、ある程度成熟もしているし、今後は多分活性化が必要だ、こうおっしゃると思うんです。しかし、そのもとにあって、さらに今度は市町村に、一部組合で合同のがあるんでしょうが、おおむね三千を超す教育委員会がある。小さな文部省が各市町村全部あるみたいな、こんなことを今後このまま続けていくのかどうか。これは、いや、もちろんそれは地方にお任せしているので地方で考えていくべきだと言うかもしれませんが、文部省としては、この三千何ぼある小さな文部省を全部国じゅうにばらまいておいて今後もいいとお考えかどうか、この点だけちょっとお伺いしたいと思います。
  51. 御手洗康

    ○御手洗政府委員 教育委員会は、地方教育行政をつかさどる基本的な執行機関といたしまして各市町村にこれを必ず設けるということでございまして、学校を設置して運営していくということを一つとりましても、大きな市と小さな町村、住民に対する、国民の義務教育を受ける権利というようなことを保障する観点で基本的な変わりはないわけでございますので、今の地教行法におきましては各市町村に基本的に設けるということでございます。  ただ、地方自治制度全体の中で、連合方式あるいは組合方式という形で教育委員会の組織体制をより広域的にやっていくという形の制度はございまして、文部省としても、これにつきましては従来からかなり積極的に、二つの、三つの市町村が一つの教育委員会をつくるようにというようなことで指導した時期もございました。  いずれにいたしましても、これはそれぞれの市町村の住民がお決めになることでございますので、今後とも市町村の全体の指導等の力をつけていくという観点から、文部省としては地方自治体におきますこういった制度の運用につきましては積極的に推進をしてまいりたいと考えております。
  52. 藤村修

    藤村委員 そのお答えはこの前も似たようなお答えをいただいておって、要は、だからこれは各市町村ごとに置くか置かないかというのは地方自治の問題で、そこで決めていいということで、文部省は、何も全部置けとかあるいは合併して大きくしろとか、そういう権限はないんですね。
  53. 御手洗康

    ○御手洗政府委員 現行の地方教育行政の組織及び運営に関する法律におきまして、市町村には必ず教育委員会を置くという基本的な規定がございまして、この法律に基づいて必ず置かなければならない。  ただし、その上で、地方自治法の一般的な制度におきまして、教育委員会をあわせて、幾つかの市町村があわせて教育事務を行う組合を置いたり、あるいは教育委員会を共同設置したりあるいは連合方式で置いたりというようなことはできるということになっているわけでございます。
  54. 藤村修

    藤村委員 そうすると、今後も必ず置くということで、地方は、市町村の教員委員会が全部置かれるわけであります。  その教育委員会の職務というのは、これは今回地方分権関係では、みんな対等で、県の教育委員会も市の教育委員会もある意味じゃ横並び、対等関係であるとなれば、本当に、小さな文部省が全国三千三百あって、それぞれが教育の問題も文化もスポーツも全部やるというのでしょうか。  これは、文部大臣、むしろもう少し大くくりにして、あるいは教育委員会というのはやはり教育の問題にある程度限定してきていいんじゃないか、文化とかスポーツとか、これは市町村の別の部署でまた、つまり分けてやっていったらいいんじゃないかと私は思うんですが、この点について、地方自治のことだから余り口を挟めないのかもしれませんが、お考えをお聞かせいただきたいと思います。
  55. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 各市町村単位で教育委員会をつくるということは必要だと思いますけれども、ただ、中教審でも随分議論いたしまして、お互いに協力し合うということは非常に重要だと思っております。ですから、それぞれの市町村が、教育委員会同士、お互いに協力をしてさまざまな問題を解決していくということはぜひともお願いをしたいと思っているところでございます。要するに、教育委員会を活性化すべきだというふうに考えております。
  56. 藤村修

    藤村委員 教育委員会、地方の役割についてはまた今度は地方議会で相当やっていただきながら、文部省も今回縮減をするんでしたら、地方の教育委員会もやはり少し仕事をスリムにしていくということも、あるいはもう少し教育問題に特化してそのことを一生懸命やることで、今の教育の問題点を本気で真っ正面から取り組んで解決していくことになるんじゃないかな、そんなように私は今後の地方議会への期待をいたしたいと思います。  そこで、少し具体的に、今回の地方分権推進一括法の中の文部省関係、特に学校教育法の第百六条関係というものについて私は今からお尋ねをしたいと思っております。  これはどういう問題かといいますと、学校教育法が昭和二十二年にできました。先ほどの説明にありました教育委員会は昭和二十三年ですから、このときはまだ教育委員会を想定できなかったわけです。その意味で、いろいろな権限がそれぞれ法文の中にはあって、例えば「学校を設置しようとする者は、学校の種類に応じ、監督庁の定める」云々とありまして、監督庁という言い方で、これは法律の中ではたくさんの場所にこの監督庁が出てきておった。それで、今回はそれを百六条というところで監督庁が一々何か別なところに書いてあるので、整理する意味でそれぞれの法文内に、例えば今の学校の設置の問題の監督庁は、これは文部大臣というふうに書きかえられた。  だから、今回、百六条関係で、その監督庁という部分を、それぞれ現状に当てはめて文部大臣あるいは都道府県の教育委員会などとしておりますが、これは分権を意識してのことなのか、それとも法文の単なる整理なのか、どちらでございましょうか。
  57. 御手洗康

    ○御手洗政府委員 今回、地方分権推進におきまして国と地方の役割を明確に分担するという観点がございまして、これに基づきまして、中教審でも十分御審議をいただいた結果、五十年たちまして現在定着している国と地方の役割分担ということで、現行の文部大臣としている部分については文部大臣、都道府県の教育委員会としている部分については都道府県教育委員会ということで、現在の権限の分け方を前提にして条文の整理をしたということでございます。
  58. 藤村修

    藤村委員 ですから、条文の整理をした、それも現行に当てはめたということですから、必ずしも、何も地方分権推進という理念をもとにこの法案に盛り込んだということではないと思うんです。  しかし、ここでちょっとそもそも論になりますが、学校教育法のできたときに、実はこれ、「当分の間」というくくりで、かつ、附則ですよ。百六条というのはもう附則の部分に入っております、附則で決めた。学校教育法というふうな非常にこれは基本的、重要な法律で、そのときに附則で「当分の間」とした上で監督庁というのを設けたわけです。これは「当分の間」が五十年を過ぎたわけです。  かつ、そのとき、なぜ「当分の間」とし、それを附則に置いたかというのは、つまり、将来、教育委員会とか地方における教育主体がはっきりしてきたときにはそこへ移しますよ、文部大臣でいつまでもいる必要はないですよという発想があったのではないかと思うのですが、この歴史的経緯はいかがでございましょう。
  59. 御手洗康

    ○御手洗政府委員 お答え申し上げます。  委員指摘のとおり、昭和二十二年、学校教育法が施行された当時には、まだ教育委員会制度はできていないということで、一般地方自治制度の中で行われたわけでございますけれども、その際に、監督庁ということにつきましては、本則において監督庁と規定するのみで、附則百六条で監督庁を当分の間文部大臣、こう一律に当時定めたわけでございます。  その後、二十三年に教育委員会法が制定されまして、百六条の第二項が新設をされました。例えば、公立の高等学校の設置の認可等につきましては、これをやはり当分の間、都道府県教育委員会と定めるという改正を行いました。さらには、昭和五十年に新たに専修学校制度が創設された際にも百六条の三項が追加されまして、専修学校の設置認可等の監督庁、これを都道府県の教育委員会と定められているわけでございます。  当時、地方制度はできていなかったということを前提にして、暫定的に監督庁ということを書きまして、すべてを文部大臣ということにしたわけでございますけれども、その後の教育委員会制度の制定、あるいは新たな学校制度の創設等に伴いまして、その都度必要なものにつきましては都道府県教育委員会が行うべきものというような改正も行ってきているわけでございます。  今回は、そういった五十年来の経緯にかんがみまして、繰り返しになりますけれども、現状の権限を前提にして、この際、国と地方の役割分担を明確にするという観点から条文の整理をさせていただいたということでございます。
  60. 藤村修

    藤村委員 そうすると、この際、国と地方の役割を明確化して、「当分の間」を外したその監督庁は文部大臣、教育委員会とすると、固定されてしまいますよね、今回明確にした上でやるとなると。これはちょっと違うのではないかと思うのです。  昭和二十二年三月十九日、このときに、本院教育基本法案委員会というのがあったようであります。これは帝国議会であり、まだ前段階です。そこで、この百六条関係について、当時の劔木政府委員が、この「当分の間」に関連して、「将来は各都道府県及び市町村に教育委員会というようなものを予想いたしまして、それが完成いたしました場合においては、相当の部分を都道府県、市町村に移しまして、文部大臣の権限からはずしていいのじゃないか。」と答弁されております。政府委員です。  この議論は、実は学校の設置基準あるいは授業料を取る話、幾らにする話などなど、そういう事項を定める権限について論じられておりまして、ここには、つまり、将来は文部大臣の権限を縮小して、教育委員会にこれを付与するという方向性が明確にされております。なおかつ、この学校教育法というのは基本的な法律で、その中の「当分の間」という附則でありますから、当然これは将来そういうふうに変えていくんだ、つまり、政府委員あるいは政府の答弁として方向性がそのときに出されていたわけであります。  では、今回これを書きかえるときに、一つ一つ、これはやはり昭和二十二年のときの意思を尊重して地方にとか、そういう考えでやったのか、それとも事務的整理をしたのか、どっちでありましょう。
  61. 御手洗康

    ○御手洗政府委員 御指摘ございました当時の劔木政府委員の答弁としては、そういう議事録も残ってございますし、また三月二十四日の議事録におきましては、その地方分権の程度によりましては、残さなければならないものもやはり将来とも残さなければならぬものがあると思いますというようなことでございまして、当時の考え方として、地方教育行政制度の成熟の度合いによってはやはりそういったことは当然検討すべきであるという立法関係者の御意思があり、その旨議会で御答弁申し上げたということも事実でございます。  先ほど申し上げましたように、そういったことも踏まえまして、例えば、公立の小中高等学校や特殊教育諸学校、幼稚園、それから先ほど申し上げました専修学校や各種学校、こういったものにつきましては、地方教育委員会制度が定着したということにかんがみまして、小中高等学校という身近な学校の設置認可については都道府県の教育委員会におろす、非常に大きな条文自体の改正をしてあるわけでございます。  そのほか、残されておりますことは、先ほど来大臣から御答弁申し上げましたように、例えば、設置基準を定めること、あるいは校長の資格を定めること、あるいは教科に関する事項を定めること、いずれも、今回の地方分権推進計画の中におきましても、国として統一的な処理を要する、そういったものにつきまして、学校の基本的な制度、枠組みをつくる、そういった部分に係るものでございまして、中教審の議論におきましても、それなりに個々のものについて御議論をした結果、最終的には、現在の形を変えるということについて、特にそれを変えなければならないというような現実的な必要性もなかろうということで、現在の形のまま条文の整理をさせていただくということになったわけでございます。
  62. 藤村修

    藤村委員 ですから、結論は、現状を認めた上で条文の整理をしたと答えただけの話なんですが、今後の話なんです。  例えば、具体例でいいますと、今も出ていました教科に関する事項、これは、教科に関する事項を全部、今回文部大臣と決めました。今後もこれでないといけないかどうか、つまり、教科に関する事項を一部都道府県教育委員会にお任せする方向で検討した場合、どんな問題があるのでしょうか。
  63. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 教科に関する事項を都道府県教育委員会が定めることにした場合に、都道府県ごとに別個の基準で教育が行われることになりますが、この場合にどういう問題があるかという問題点を述べてみたいと思います。  まず第一に、どの県のどの学校で学んでも、小中高等学校それぞれについて一定の教育水準を確保し、教育内容の構成等教育の機会均等を実質的に保障することの難しさということがあろうかと思います。私も、小学校を三回かわりました。そのときに、戦前でありますので、やはりそれぞれの小学校で教えていることがそろっていたので、転校したときに大変やりやすかったということがございますね。余りばらばらになってしまう、例えば九九を二年生で教えたり三年生で教えたりばらばらであると、これは転校していったというふうなときに、少数例ではありますでしょうけれども、やはり不便である。こういうことで、一定の教育水準を確保しておくということは必要であろうと思っています。そういうことが都道府県にお任せしたときに守られるだろうかというような問題。  二番目に、国際化、情報化の進展を初め、国や社会全体の変化の中で、例えば、外国語教育や情報教育の取り組み、環境教育への取り組み、家庭科の男女必修、福祉科の創設など、個々の都道府県の実態を踏まえるだけでは十分な基準設定が困難と思われること。  三番目に、教育課程の基準は、教員養成、さまざまな職業資格、教科書編集、大学入試などと密接な関連を持つが、これらは国のレベルで検討、推進される方策であることなどの点が問題であろうかと考えております。  このような理由から、学校の教育課程については、国家的な見地に立った基準が必要であり、この点に関しては、引き続き文部大臣がこれを定める必要があると考えております。しかし、それは必要最低限にすべきだと考えております。
  64. 藤村修

    藤村委員 おっしゃるとおり、必要最小限にすべきだというところで、私も必要性を認めます。  では、その学校教育法に、幼稚園の保育内容に関する事項は、文部大臣がこれを定めるとあるのですね。つまり、そこまで要るのか。あるいは、やはり義務教育の小中、ここは本当にその意味では国がちゃんと基準を決めてやっていくべきです。幼稚園の保育内容に関する事項は、文部大臣がこれを定める、これはいつまでも置いていると、結局幼保一元化みたいな、縦割りで、また保育園と幼稚園という、いつまでも残ってしまいますよ。これは検討いたしますか、どうですか。
  65. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 幼稚園も国が制度として設けております学校教育でございますので、先ほどの大臣の答弁を繰り返すようでございますけれども、おおむねどこの幼稚園に入りましてもこういった教育はという、そういう意味での基準というものは国が定めることが適切だろうと思います。ただ、その定め方については、それぞれの幼稚園が創意工夫が発揮できるような、そういう工夫が必要だろうかとは思いますけれども、国がその基準を定めることの意義というものはあろうかと思います。  それから、幼保一元につきましては、保育所におきましても、幼稚園教育要領を踏まえつつ保育所の保育が行われるというような形で、両省連携をとりながら、今、実質的な一体的な教育、保育が行われるような、そういう努力を進めているところでございます。
  66. 藤村修

    藤村委員 文部大臣に一言だけお答えいただきたいのです。  幼稚園の保育内容に関する事項は、文部大臣がこれを定める、このままずっといきますかどうか。
  67. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 ただいま初中局長がお返事いたしたように、さまざまな問題がありますので、この点に関して今後も慎重に検討させていただきたいと思っておりますけれども、幼稚園という段階でありますから、なるべく各地方が自主性を発揮できるような方向には持っていきたいと思っております。
  68. 藤村修

    藤村委員 今、百六条関係を例に挙げて言いましたように、このたび、事務的整理をされて法文が読みやすくなった、これはこれで結構です。ただ、読んでみると今のような、やはり幾つかまだまだ、もう少しちゃんと地方分権したらいいんじゃないかという、そもそもの発想の実現、具現が必要な部分がある。このことを指摘し、これはやはりある機関で今後やっていただきたい、そういう決意はお述べいただけますか。
  69. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 私も、地方自治体がより活気を持って活躍されることがいいことだと思っておりますので、さらに活性化できるよう、教育の上でも努力をさせていただきたいと思っております。
  70. 藤村修

    藤村委員 問題を変えます。  私、昨日、本院文教委員会委員会視察ということで、委員長外与野党の委員で、東京都内でございますが、文部省の学術情報センターに視察に行ってまいりました。  ここは、大臣に御説明するまでもありませんが、主に大学を中心に、全国の人文社会とか科学技術全般にわたる、そうした学術情報がいわば瞬時にコンピューターで検索できるとか、そういうことが中央に今集まって、非常に新しい試みとして、今後もまた活躍が期待できる機関でございます。  実は、私、これを見ていて、今回の中教審答申でまだ実現されていないというさっきの中の一つで、カリキュラムセンターという発想でございます。これはもう大分前から我々も主張をしておりました。  つまり、教育課程の問題というのが、先ほど幼稚園の保育内容まで云々というのがありましたが、教育内容を文部省はできるだけ大綱化しあるいは基準化して、それをまたそれぞれの学校に使ってもらおうというときに、国立カリキュラムセンターといってもいいですが、国が本当に中央でカリキュラムセンターをつくって、教育課程のモデルとかあるいは教育の現状や、国が行う科学的な教育研究の成果など、それらを集積したものを、各都道府県教育委員会、あるいは学校も、コンピューターを一台引いたらすぐ引き出せます。そういう意味では、そういうカリキュラムセンターの構想について、中教審も答申されておりますが、文部大臣の現時点でのお考えをお伺いしたいと思います。
  71. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 私も、中教審以来、カリキュラムセンターというようなものをぜひつくるべきだということを強く主張していた人間でございます。  教育課程行政は、国、地方公共団体、各学校の連携協力のもとで進めていく必要がありますが、その際、全国の学校の実践の状況専門家によって常に把握、分析され、その結果が教育課程の基準の改訂に反映され、また、各学校の教育実践の改善にも生かされるといった有機的なつながりを持って進められることは、極めて重要なことと考えております。  こうした観点に立って考えますと、今回提言されましたカリキュラムセンターは、行政の内部組織よりも学校現場に身近な立場から教育課程に関する調査研究等を行うものとして、大きな意義があるものと考えております。  カリキュラムセンターの具体的構想については、現時点ではまだ決まっておりませんけれども、今後、中央省庁等再編のスケジュール等も勘案しながら、鋭意検討に努めてまいりたいと思いますし、いいものをつくらせていただきたいと思っております。
  72. 藤村修

    藤村委員 もう検討を始めているということでありますので、その際に、ぜひとも、この情報化社会、ネットワークというものを最大限活用していただく、本当に、学校の先生が自分のデスクのパソコンで、今文部省の考え方とか教科の問題、あらゆることが瞬時に引き出せますので、これをぜひ採用していくという方向を検討いただきたいと思います。  それから、同じく昨日、同じ視察のメンバーで、国立西洋美術館、上野にございますが、視察してまいりました。ここは独立行政法人問題もあり、あるいはイタリア・ルネサンス展もやっておりましたので、見てまいりました。  私は、もう時間がありませんので、この件については一点だけお伺いしたいのですが、いわゆる国立、西洋美術館にしても近代美術館にしても国立博物館にしても、この名称というものは、独立法人の議論は今からされるのでそれはそれでいいとして、名称というものはどうなるのか。社団法人何とかかんとかという場合は、(社)何とかかんとか、独立行政法人美術館だったら、(独)何とかになるのか。世界的にやはりナショナルミュージアムというものは非常に格の高い、文化の一つの指標でもございます。名称について、国立西洋美術館というものは残るかどうか。  それからもう一つ、これはもう総務庁長官はずっとお答えいただいているのでお答えは必要ないかもしれません。こういうものに対する国の支出というのは今後もちゃんと担保、確保されるのですねということのみ、この二点、お答えいただければありがたいと思います。
  73. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 独立行政法人の名称でございますが、名称につきましては、各独立行政法人の名称、目的等を規定する個別法において定められることになっております。本年四月二十七日の中央省庁等改革推進に関する方針において、その名称は、国立という文字を用いることを含めて検討することとされております。文部省といたしましては、事業の内容や現在の名称等を総合的に勘案しつつ、ナショナルセンターとして極めて適切な名称を検討してまいりたいと思っております。  また、この中央省庁等改革推進本部決定において、独立行政法人は、一般的には独立採算制を前提とするものではなく、独立行政法人への移行後は、国の予算において所要の財源措置を行うものとされているところでございます。国立博物館、国立美術館の独立行政法人化に当たっては、文化の一層の振興、国立博物館、美術館の充実という観点から検討を行っていく必要があると私も強く認識いたしております。このような点に配慮していきたいと思っております。
  74. 藤村修

    藤村委員 時間になりました。きょうは、地方分権が大半で、最後のところでやっと省庁再編という行革の問題に入れたのですが、まだまだ質問をさせていただきたいということを希望いたしまして、終わらせていただきます。ありがとうございました。
  75. 高鳥修

    高鳥委員長 次に、吉田治君の質疑に入ります。
  76. 吉田治

    吉田(治)委員 続きまして、民主党を代表いたしまして、吉田治の方から質問をさせていただきたいと思います。  きょうは、各大臣それぞれほかの委員会等のお時間もあるということですけれども、本来でしたら、こういう大事な中央省庁地方分権というのは、もうこもって、ほかの委員会関係なしに、全部行事をおいて、十日でも二十日でもやるべき国家的、また歴史的な意義のあるものだと私は強くここの場で申し上げさせていただいて、大臣に御質問をさせていただきたいと思います。  大蔵大臣がまた次の御予定があるということですので、まず最初、これは中央省庁というよりも地方分権というふうな形の中でかかわってくるのでしょうけれども、私は大阪市というところに住んでおりまして、いつもさまざまな、予算の分科会等で御質問させていただいておるのですけれども、地方税財源の配分という中において、大都市において非常に配分が少ないというよりも、それぞれの地域の事情があるやにしても、やはりこれだけ経済が悪い中において、大都市から優先的というか景気回復をしていかないと、全国的な景気回復にもならないという側面からも、ぜひとも今回の地方分権また中央省庁再編において、大都市における財源配賦というものの充実を図っていただきたい。  その辺についての、これは法律の審議ですけれども、しかしながら財源というのは表裏の関係でございます。特に、大臣の与党であります自民党の大阪市会議員団さんも、「大都市部において下された従前の自民党の政策への厳しい審判を真摯に受けとめ、大都市政策を推進させることは、緊急を要する最重要課題と考える。」というふうな緊急要望書も昨年出されております。そういうふうなことを含めて、大臣の方から、特に大都市の財源についてのお考えというものをいただきたいと思います。
  77. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 本年度の予算編成の過程におきまして非常に難しゅうございました一つの問題は、地方財政の問題でございまして、自治大臣と何度もお話し合いをいたしました。  私が知りましたことは、中央の財政も非常に危機でございますけれども、地方財政もまたにわかに極めて難しい状況になって、今までとはいろいろなことがさま変わりで、殊に、今吉田委員の言われましたように、富裕団体であったところが、企業のリストラ等々によって税収が激減をするということになりました。これは、とりあえずこのたびは、いろいろな特例をいたしましてそれに対応することで自治大臣と意見が一致いたしまして、そのような予算をさせていただきましたが、このような状況が変わりませんと、次の年もまた同じことをしなきゃならないのではないかということを心配しております。  結局、これは国も同じことでございますが、経済運営が正常になりませんと、こういう異常な状態というものの解消はできないのではないかと思っていますが、それに加えまして、本当に経済状態が正常になりましたら、やはり国と地方との間の行財政、殊に今お尋ねは財政のことですが、そういう税源等々について根本的に見直すということが必要であろうと思います。  地方財政においてもその問題はおありだと思いますが、国と地方との関連においてもそれがございますから、国の経済がまずまず正常になりましたら、できるだけ早くそれに着手しなければならないと思っています。きのうも自治大臣から地方税収についてお話がここでございましたが、こういう、同じように中央も地方も異常な状況では、基本的な方策は、やはり正常化を待ってするしか仕方がないのではないかというふうに考えております。
  78. 吉田治

    吉田(治)委員 大臣、私は地方財政一般のお話をお聞きしたわけではなくて、地方財政とりわけ大都市財源というふうなもの、地域の中枢都市、また政令市、中核市という形で、権限もおりて、それについて財源もおりているのですけれども、そんなに大きな財源ではない。やはり地方中核都市というのですか、それぞれがしっかりとした景気回復ができないと、日本全体の景気回復もおくれるんじゃないか。全体が一緒にというのではなくて、やはり牽引役として、それぞれの大都市というふうなものの持つ意義というのは非常に強いのではないかと思うのです。大蔵大臣として、日本国全体を見たらそうは言えないと言うかもしれませんけれども、とりわけ大都市財源についてどうお考えなのか、そこに絞ってお答えをちょうだいしたいと思います。
  79. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 やはり各自治体の個別の財政力をどう強化するかということでありますので、私から申し上げた方がよかろうかと思います。  基本的に、国、地方を通ずる課題については、今大蔵大臣からお答えがあったとおりです。  各地域間の問題について言いますと、従来は、どちらかというと大都市地域は財政的には恵まれていて、どちらかというと不交付団体も大都市地域の方が多い。むしろ地方の方が財政窮乏、慢性的な状況の中にあるという認識が多かったわけでありますが、このところ、特に経済が著しい低迷状態ということになりまして、基本的に法人系統を中心とする税収が激減をしているということが、逆に言えば、今までまだよかった大都市地域の税収を直撃するということにつながりまして、今本当に、地方のみならず大都市地域においても極めて厳しい状況に陥ってしまったという認識をいたしております。  ただ、一般論として、今日まで大都市地域では昼間人口が夜間人口よりも多い、他にはないそういうさまざまな行政のニーズもある、そういうようなこともございまして、あるいは都市計画税、あるいは事業所税、こういった、政令指定都市や中核市などについて権限が他の市町村よりも手厚く、自主的判断でできるような体制になっているということもございまして、財政的な面においてもそういう配慮をする、あるいは交付税を算定していく中においても基本的にそういったものを基準財政需要の中に積み上げて、トータルとしてできるだけフェアな、そういう財政収支の計算ができるような、地域間のバランスを欠くことのないような配慮はしてきたわけであります。  しかし、今御指摘のとおり、大変厳しい状況下にございまして、大変我々も頭を痛めておりますが、基本的には、ノーマルな経済情勢の中において、それぞれ大都市地域においてもそうですし地方においてもそうですが、どういう税目がどういう税収を大体得ることができるのか、そこのところをしっかり押さえた上で、国、地方の問題、それから大都市地域に対する手当てなどについても総合的に考えていかなければならないというふうに考えております。
  80. 吉田治

    吉田(治)委員 懇切丁寧な答弁、ありがたいのですけれども、時間の都合もございますので、簡にして要なお答えをちょうだいしたい。特に、自治大臣は大都市圏の枚方のお生まれ育ちでございますので、その辺はよく御理解をされているのではないかなと強く思っております。  大蔵大臣、お時間があれですので、あと二点、まとめてお聞かせいただきたいのです。  特に、造幣事業が今度独立行政法人化されていくというふうな中で、私は、各国の状況を調べると、造幣というふうなものが独立行政法人というか民間的な方向へ行っているというのは余り聞かないんですね。イギリスはといいますと、イギリスの場合はある意味でいいますと旧宗主国という形で、昔の植民地の各国の造幣事業も扱っているというふうなことが行われます。  独立行政法人化というのはまさに民間に近くなっていくという中で、では、頑張って造幣の皆さん、外へ仕事をとりに行ってこいというふうなことなのかどうか、その独立行政法人にする必要性というふうなもの。それから、雇用というものでいきますと、現雇用主という形でいうと大蔵大臣大蔵省になるのでしょうけれども、これは国家公務員の身分を保障するということで守られるとは思うのですけれども、その辺はいかがなのかということ。  もう一点は、郵政事業の事業庁化、また公社移行において、これから財政投融資の原資が今までのように資金運用部に回らなくなっていく中において、大蔵省としての財投というふうなものに対してのお考え。  この二点を御答弁いただきましたら、行っていただいて結構でございますので。
  81. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 お尋ねいただきました造幣につきましては、歴史上、大変長いことお地元でお世話になってきておるわけでございます。そして造幣にいたしましても印刷にいたしましても、通貨を製造しておりますので、御指摘のとおり、これはちょっと民間の企業というわけにはまいらないという歴史を持っております。  このたびの独立行政法人化につきましても、その点は法律の定めるところに従いまして、大蔵省に懇談会を設置いたしまして関係者でいろいろ検討していただきました。結果として、国の行政組織のスリム化に従っていこうということにはなりましたけれども、しかし、通貨をつくっておるというところは、これはその事情は十分に考えなければならないということもそのとおり認識されまして、したがいまして、それに必要な措置を考える。もとより従業員は公務員である。  それから、この移行につきましても、そういう特殊な事情をよく検討し、慎重にそれに即応しなければなりませんので、平成十五年にするというようなことで大体の関係者の、十分合意とまでは申せませんでも、今後も十分話し合いをしていくということでこういう措置を御検討いただいておるわけでございます。既に、労使間と申しますか関係者の間で最近もいろいろ話し合いをいたしておりますので、まだ時間がございますが、満足な状況のもとに移行をさせていただきたいと考えております。  それから、財投についてお尋ねがございました。  確かに、郵政の資金が自主運用になるということでございますので、自主運用、文字どおり安全確実な運用をしていただけるものだろうと考えておりますが、その結果として、いわゆる財投資金というものはこれからどうするのかというお尋ねでございます。  財投機関がございまして、既にそれぞれの役割を果たしておりますので、そこに資金が入り用なことは恐らくそのとおりでございますが、財投機関というものがそれ自身で財投機関債を発行できるか、これは事業の内容によりましてできるところもあり難しいところもあるかと思います。また、それがいいか悪いかということもあるかもしれません。それと別に、財投そのものが財投債、これはいわば国債と変わらないことでございますが、財投債というものを出して、それによって今財投機関に流しております資金の調達をするというのも一つの方法であると思います。  それらのものが、場合によりまして郵政等の自主運用の対象になっていくことはあるかもしれないと思っておりますけれども、今その辺のことを、財投債なりあるいは財投機関債なりをどうするかというようなことをいろいろに関係者で審議会等々で検討してもらっておるところでございます。
  82. 吉田治

    吉田(治)委員 今大臣の答弁にもございましたように、造幣については、懇談会また中央省庁の方針においても非常に特殊なものだというふうにされております。だから大臣も平成十五年にするんだと。反対に言うと、平成十五年までに、例えば諸外国状況、また国内的な状況の中において、政治的な動向の中で見直しというふうなことがあり得るのかどうかというのが一点。  そして二点目が、今の財投の問題、後ほど郵政大臣にもお答えいただきますけれども、財投機関債または財投債になりますと、これは、今大臣、国債と言われましたら、やはり大蔵省というか、その後になる財務省が扱われる。では、その場合の、財投債にするのか財投機関債にするのかというのは、郵政事業庁が判断するのか、そのときの総務省が判断するのか、大蔵省が判断するのか。  この二点、いかがなんでしょう。お時間あれですので、簡単にお答えいただければと思います。
  83. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 前段のことでございますが、法律をもちましてお願いをいたしております立場から申しますれば、やはり平成十五年には実現をいたしたいと考えておりますが、それまでの間にかなりの時間がございますので、またそのあり方については関係者で検討する余地があろうかと思います。  それから、後段の話は、結局、財投機関債としましても政府保証が入り用であるかないかというような問題もございますし、財投債というのは文字どおり国債ということでございます。その辺をどのようにしていくかは、これは郵政の問題ではありませんで、今財投を所管しております大蔵省、財務省におきまして検討することになろうかと思います。もとより関係方面とは十分に相談をいたしてまいるつもりでございます。
  84. 吉田治

    吉田(治)委員 大臣、その場合、郵政事業庁というか自主運用というふうなものと、今大臣が言われた政府保証するから財務省が判断するんだよというところの兼ね合いというんですか、調整というふうなものはどう考えればいいのかということ。  それから、造幣について、今平成十五年にしたいということは、それはいろいろなあり方を含めて考えられるということ、私は、これについてはぜひとも労使間の協調というものを徹底的に造幣についてはしていただきたい。これは意見で申し上げておきます。  ただ、今申し上げました財投については、その辺はどういうふうに考えたらよろしゅうございますか。
  85. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そこは、私も詰めて知っておるわけではございませんけれども、自主運用というのは文字どおり自主運用でございますから、運用当局が、預かった金でございますから、安全かつ有利であるという立場から運用方針を決定されるということになると思っております。  その中には国債も入るかもしれませんけれども、それは、いずれにいたしましても、運用者の方の御意思によることであって、財投側がそれをあらかじめ期待するといったような種類のものではございませんから、それは運用者の御自由に決定されることだと思います。
  86. 吉田治

    吉田(治)委員 こればかり聞いて、あと時間があれなんですけれども、ちょっともう少し詳しく教えていただきたいのは、では、機関債というのは発行するけれども、また財投債というのは発行するけれども、それをどれだけ買うかというのは総務省なり郵政の自主運用という枠の中で考える。その間の幾らぐらい引き受けてくれるかという調整については、それが見込まれて機関債を出したり財投債を出すということではない、そう理解してよろしいんですか。
  87. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 きちんと申しますればそのとおりでございます。  自主運用される側が運用の対象としてふさわしいと思えば買っていただけることがあるかもしれませんが、そのことは運用者の一〇〇%自由な御意思であって、その間に条件とかというようなものは全くあるわけではございません。おっしゃるとおりであります。
  88. 吉田治

    吉田(治)委員 私ら、小学校、中学校の社会科の教科書ですか、財投というのは第二の予算だと先生に教えていただきました。今後、この財投機関債、財投債というふうなものは、出てきた場合にはもちろん国会の審議というふうなものを通してという形になってくるわけですか。
  89. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 財投計画は今でも国会に資料を差し上げておりますので、もとより国会でいろいろごらんを願うことになると思いますし、かたがた、財投債あるいは財投機関債、両方とも仮の名前でございますが、それは国または国の機関の債務になりますので、それとして国会で御審議をいただかなければならないと思います。
  90. 吉田治

    吉田(治)委員 ありがとうございます。大臣、お時間ですので、また、この後は予算委員会等で御質問させていただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。  それでは、ここでお聞きしたいなと思っておりましたことが一つありまして、きょうは、経済企画庁長官並びに労働大臣、おいでいただいております。経済企画庁長官、この質問を終わらせていただきましたら退席していただいて結構なんですけれども。  こういう形で省庁再編をする、地方分権をしていくといった中で、経企庁は経済財政諮問会議という形になられる。当たるのか当たらないのかとよく経企庁のことが言われておりますけれども、これの経済効果というんですか、いろいろあると思うんですね。単に官から民にするからとか、いや、単に省庁の、極端なことを言ったら印刷物一つにしても、判こ一つにしても変えていくというふうな中における経済効果というふうなものをどういうふうに見込んでいるのか、そういうことも関係なしにとにかくやってくださいということだったのかどうか。  そして、労働大臣、雇用というふうなもの、よく雇用の場合には、勤めていらっしゃる、先ほどの質疑の中でも大臣は生首切らない、ではなくて、こういうふうな新しい国のシステムをすると国全体として雇用がどれだけふえるのか。単に中央省庁地方分権したらそれで終わった、よしよしじゃなくて、経済状況から考えると、雇用がどれだけふえるかというのがやはりこれをやっていくときの一番大きなポイントになると思うんですけれども、それぞれいかがお考えで、いかほどに予測をされているんでしょうか。
  91. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 省庁再編成と地方分権の我が国のマクロ経済に与える影響というのは、数理的に出すのは大変難しい問題でございます。  ただ、現在の日本の制度というのは、規格大量生産型の近代国家をつくるために、官が主導しまして、官僚主導で規格をつくってきて、それを民間企業が普及するという仕掛けになってまいりました。今回の改革では、国及び地方の行政の果たすべき役割を見直しまして、こういった規制を徹底的に軽減いたしまして、官と民の分担を民の側にぐっと片寄らすことによって自由な発想と新しい産業を起こしていく。そういう意味では非常に効果があると思います。  これがどれぐらいの効果になるかということは、これからのやり方でもございますし、また省庁の改編と同時に、これはリストラクチャリングでございますが、もう一つ、業務のやり方のリエンジニアリングの方がどこまで進むかということも同時に重要なポイントだと思っております。できることならば、これをあわせて行うことによって、マクロ経済の面に最大の効果を上げて、本当に民間主導、消費者主権の世の中がつくれるように持っていきたいと考えております。
  92. 甘利明

    ○甘利国務大臣 省庁再編と地方分権が雇用に与える影響は具体的にどういうことになるのかという御質問でありますが、雇用に及ぼす効果を定量的にはかるというのは正直言って難しいところであります。  ただ、今経企庁長官からもお答えをさせていただきましたとおり、中央と地方の責任の明確化、そして同時に、効率的に運営をしていく、あるいは民間にできるものは民間に任せるということで、同じ投資額であるならば効果はさらに上がると思いますし、効果が同じであるとするならば投資額は少なくて済むという計算が成り立つと思います。その分だけ民間活力は助長をされます。  そして、先ほど最初質問者にお答えしましたけれども、雇用吸収力としては規模が小さくなる分だけ減りますけれども、それ以上に、効率を上げて民間活力を助長することによって雇用創出効果は生まれてくる。プラスマイナスでは必ずプラスになると思いますが、しかし、定量的にどのくらいになるかというのはちょっとまだ計算ができないところであります。
  93. 吉田治

    吉田(治)委員 つまり、定量化はどこもしていないということと、できていないということ。反対に言うと、民間のシンクタンクの方も、これをやったから経済効果はどれだけふえると出てこないんですね。阪神タイガースが優勝したら一千五百億、景気回復は西からというふうなことがあったにしても、今回のこれについては一切出てこない。  国のシステムがこれだけ変わったら経済効果はこれだけあっていいのではないかというのは私出てくるんですけれども、その発想からしますと、いいかどうかは別にして、経企庁長官、官僚の官僚のための官僚による改編か、だから民間は、まあ中でやって印刷物や何やでそれぐらいかな、これによって日本は変わらないよと。変わるようだったら今ごろ民間シンクタンクも応援団で、これだけやってこうやってというふうになるのじゃないかなと思うんですけれども、経企庁長官として今後、経済効果、このことについて出すおつもりはあるのか、いや、もうそれはわからへんから出てから考えますわというふうに考えられるのか。それはいかがなんですか。
  94. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 まことに残念ながら、これを計数化することは今の技術では困難だと考えております。これが、一つの箱でございまして、例えばある会社、あるいは官庁でもそうなんですが、そこで使うお金がどれだけ減るかということならわかるのでございますが、それが呼び起こして日本経済全体にどういう影響を与えていくかというのは、これはやり方にもよりますし、景気動向、外国の影響、技術の進歩、あらゆることがございますので軽々に出すことはできません。  これは民間の方あるいは学者の方にもお話をしたことがありますけれども、どこもこれはそう簡単に計数化できないし、また、することによって誤った印象を与えるべきでもないということでございますので、まことに残念でございますが、何ぼ何ぼという数字で出すことは困難だと思います。
  95. 吉田治

    吉田(治)委員 経企庁長官大臣として、直観的な部分でも結構です。これをやると景気に、ずばり言ってプラスなのか変わらへんのか。まあマイナスかもしれない。それが何年の期間で出てくるのか。ひょっとして来週の週刊誌にそれを書いてもらえればありがたいかもしれないけれども、それ今どういうふうに、数字はわからない、直観で結構です。いかがですか。
  96. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 個人としての直観で申しますと、まず最初にはかなりプラスの効果とマイナスの効果とが渦巻いた状態が起こると思います。そしてその次には、役所からアウトソーシングされるものを対象とした企業が、やってみようという企業が大分起こってくると思います。そのためには、省庁改編というのはこれは箱の問題、リストラクチャリングの問題ですが、役所の方の書類をデジタル化するとか、情報公開法に対応した文書の整理をするとか、あるいは通信関係を利用した決済機構をつくるとか、そういうリエンジニアリングの話が出てきますと、がっとこれは民間企業の方で大きな仕事の分野と考えていただけると思うのです。  したがって、この二つを、リストラクチャリングという今御審議いただいている審議と、リエンジニアリングの方は役所の中でそれぞれ考えていかなければいかぬ問題ですが、これをあわせて考えていくことによって、比較的早い機会にこれの効果があらわれてくるんじゃないかと期待しております。
  97. 吉田治

    吉田(治)委員 では、プラス面は情報通信的な部分、それじゃマイナス面というのは何だとお考えになるんですか。
  98. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 マイナス面で言いますと、これが変わることによって、従来官庁に保護されていたあるいは出入りされていた人が不安に思うことだと思うのですね。その方々もできるだけ、次の時代、二十一世紀にふさわしいような技術を身につけ、新しい方法になじんでいただくことが必要だと思いますが、全員できるかどうかという点からいいますと、やはりマイナス面が出るかもしれません。
  99. 吉田治

    吉田(治)委員 勘のお答えですので、当たるも八卦、当たらぬも八卦になると思いますけれども、これ以上議論するべきことでもないと思いますので。  ここで労働大臣も出られるというお話ですので申し上げますと、この中央省庁の再編についても、また特殊法人、独立行政法人、地方分権ということについても、いろいろ見てまいりますと、俗に言う労使関係、こういうふうな視点というふうなものを私はどういうふうに盛り込まれていったのかなと。  今回これを勉強させていただいて、私本当に不勉強だったんですけれども、中央省庁の俗に言う国家公務員の皆さんというのは雇用保険がないんですね。雇用保険がないということは、雇用は保障されている。  しかし、国家公務員法によりますと、成績ですとか効率化というふうなものがはっきりと公務員法の中にうたわれておるわけでありまして、私の手元の国家公務員法第七十一条「能率の根本基準」能率主義でございます、そして七十二条「勤務成績の評定」、七十三条「能率増進計画」、各条文にわたって国家公務員法においては書かれている。しかしながら現実、大変残念ながら、国民の目から見ると全部反対じゃないか。非能率。成績主義なんかどこかへ行っている。能率増進なんかしたくない。そういうふうな目で映っているのも私は確かだと思います。  それにはやはりさまざまな労使関係というものが私はあるんじゃないかと。そういう視点が今回これから、今この国家公務員法にうたわれた精神というふうなもの、総務庁長官もおいでですけれども、中央省庁が再編される中でどう生かされていくのか、どういうふうに現実化されていくのかというふうなことを一点お聞かせいただきたい。  と同時に、今度は特殊法人というふうなものを考えたときに、特殊法人は公務員と同じだとよく思われていますけれども、これは雇用保険、つまり雇用の保障はない。ひょっとしたら何かの事情で解雇だとか、また雇用保険を受けなければならない事態に至る。  それで、この特殊法人に関しては、よく言われておりますように、上を見たらみんな役所からおいでになる。俗に、特殊法人の見直し、それぞれ、中央省庁にしても特殊法人にしても、存在意義があるから、民でできないから官としてやっている部分があるというふうに私は理解をしております。歴史的経緯から見ても決して、昔は必要で今不必要になったかもしれないけれども一定の役割を果たしてきたというふうなものも多々あるし、これからも、それは民間だけではできないという部分もあるのは事実です。よく言われているように、イギリスの独立行政法人は日本の特殊法人を勉強してつくったというふうな話も聞いております。  しかしながら、今度は特殊法人の労使関係ということを考えると、雇用保険があって、上からみんな天下りでやってくる、余り意見も言えないというふうな中で、何とは言えないうっせきしたもの、もっと効率性が、働く側からも言えるのに、もっとこういう仕事もしたいのにできないという声もあります。  この辺を含めて、総務庁長官、また労働大臣、中央省庁の今申し上げた労使の問題、そして特殊法人の雇用、労働、労使の問題というようなものをどういうふうにお考えになられ、これから再編されていった中でどう現実に生かしていくのかということをお聞かせいただきたいと思います。
  100. 高鳥修

    高鳥委員長 太田総務庁長官。時間が若干おくれておりますので、答弁は簡潔、明瞭にお願いします。
  101. 太田誠一

    太田国務大臣 中央省庁の再編に当たりまして、特に独立行政法人化、それからいわゆる特殊法人のことについても言及をされましたが、それはこの中央省庁改革の後に取り組むべき課題だと思っております。  独立行政法人につきましては、まさに国としてやっておった仕事、国としての公共上の必要があるということでやっておったことで、その見方は変わっていないわけでありますので、直ちにその仕事は行われるように、実施されるように期待をするものでありますし、また、民間にゆだねてしまっては実施することが難しいということで独立行政法人の姿をとるわけでございます。したがって、その限りでは、雇用の問題とは直接結びついてこないということであります。  特殊法人についても、今委員おっしゃったように、それぞれ法律の根拠があってできているわけでございますから、国会でもってそれがまさに行政の助けになることとして設立をされたものでございますから、そのことは、法律が変わらない限りは、国会としてはその必要があるというふうに認めていただいていることでございます。しかしながら、ディスクロージャーでありますとかあるいは評価といったようなことは、十分にまだ整っていないので、それは改革の必要があるだろうということであります。  雇用のことについては、そのことによって雇用の問題が起きるということはないと思います。
  102. 甘利明

    ○甘利国務大臣 独立行政法人化や特殊法人にすることによって労使関係の変化がどうなるかというお話が主でありました。  独立行政法人につきましては、職員の身分を国家公務員とするものとそれ以外のものとに分かれるわけでありまして、それ以外のものは、労働三権の問題に関しましては、どちらかというと特殊法人型という枠組みに入るのでありましょうか。国家公務員型に関しては、国営企業の職員と同様に、団結権と労働協約の締結権を含む団体交渉権が付与されていまして争議権がないわけでありますが、それ以外の独立行政法人そして特殊法人は、労働三権、つまり団結権と団体交渉権と争議権が与えられているということになります。  もともと、国家公務員はその使命に従って国民に奉仕をするという意識を常に持っていかなければならないわけでありますが、行革を通じてその意識を高揚し、また、各、新しい形態の身分になる方々につきましても、その使命、目的に従って汗を流していただくということをしっかりと認識していただくということになります。
  103. 吉田治

    吉田(治)委員 総務庁長官、では、今私が質問申し上げました国家公務員法七十一条、七十二条、七十三条の能率、勤務成績というふうなもの、これを今後の中央省庁の再編においてどう具体化していくのか、これは各省庁にお任せになるのですか、それとも総務庁が一元的に、こういうふうにしましょうというふうになられるのか、それはいかがですか。
  104. 河野昭

    ○河野(昭)政府委員 今回の改革の一環としまして、要するに公務員についても改革しなきゃいけないということは、かねがね言われているわけでございます。  そこで、たまたまこの三月に、公務員制度調査会がまさに今先生がおっしゃったような観点からの答申を出しておりまして、今回法案とともに本部決定いたしましたこの方針の中には、国家公務員について今後能率等の面でどう改革していくかということが記載されているわけでございます。私どもとしては、それに沿いまして具体化していくということを考えております。
  105. 吉田治

    吉田(治)委員 記載されているというだけじゃなくて、今審議官も答弁で現実に移していくということですから、そういうふうにぜひともお願いしたい。  と同時に、総務庁長官、特殊法人の雇用は守るけれども、今の俗に言う天下りの方法というのですか、各理事長、監事等は内閣がということですけれども、それ以外は任命していくということですけれども。  ちょっと特殊法人の方に入るのですけれども、やはり特殊法人といえども、国のお金が入っているという中において、例えば理事以上の職、理事並びに監事については、国会に報告義務をするとか国会の承認案件にするとか、もしくは国会がということでないならば、例えば外部の人を入れた運営委員会——国会の同意人事といっても、このごろ随分変わってまいりまして、私が当選したころには、こんなふうに言ったら怒られますけれども、七十以上の方もたくさんおいでですし、何期もやられている方もおられた。それがだんだん変わってきて、ちょっとそれは、お年を召した方は体力的にも申しわけないのではないかということで、だんだん減らす方向にもなってきた。特殊法人だけが今までと同じ役員の選任の方法をするというのは、いかがかと思うんですね。それはやはり、現場で働く方々の勤労意欲というふうなことも出てくると思うんです。  その辺についての、役員選考というふうなもの、これは今後また、改革、改変していく予定があるのかどうか、その辺の決意のほどを総務庁長官、お聞かせいただきたいと思います。
  106. 太田誠一

    太田国務大臣 独立行政法人の設計をいたしますときに、特殊法人の持っております問題点というか、さまざまな議論を踏まえて設計をいたしましたので、そういう意味では、特殊法人について、例えば特殊法人の長は、特別職として任期途中でも交代もあり得る姿にしておる。実績主義で経営者としての実績を問われるということでございますので、そういうものができた以上、それをかがみとして、特殊法人の人事のあり方についても考えなくちゃいけないようになると思います。
  107. 吉田治

    吉田(治)委員 では、今後、それは具体的に検討され変わっていく、そう理解してよろしいのですか。
  108. 太田誠一

    太田国務大臣 そういうことを視野に入れながら、この中央省庁改革の後に取り組むことになるということでございます。
  109. 吉田治

    吉田(治)委員 労働大臣、経企庁長官、お時間があれですので、どうぞ退席していただいて結構でございます。ありがとうございます。  続きまして、これは先ほど、自治大臣、申しわけございません、厚生大臣もおいでいただきまして。今度の中央省庁の再編、厚生労働省、そして地方分局という形に分かれていく。地方厚生局という形で健康保険の問題、年金の問題等を一元的に扱っていくと同時に、社会保険事務所というふうなものの機能が強化されていく。  分権という発想がいいのかどうかわかりませんけれども、国民年金事務に関しましては、今まで全額国庫で負担することになっておりましたけれども、大都市の現状では、事務の増加、また相談業務の増加等々で、例えば私の住まいします大阪市においては、年金事務の国からいただく経費が、平成九年度ですけれども、二十一億四千六百万、しかしながら、出ていったのが三十一億一千七百万円。しかし、今後はこれが法定受託事務という形に変わっていき、ほとんどが国の社会保険事務所になっていく。  一番重要なのは、厚生大臣、何度も予算委員会でも質問させていただきましたけれども、年金受給権の確保、適用促進、これが今まで市役所、大阪市の場合でしたら区役所の窓口で頑張ってやっていた。全国三千三百ですね。それが、社会保険事務所でしたら三百ちょい。果たしてそれでそういうのが守られるのかなということが一点。  そして、二点目が、では、今まで国民年金に関して市町村の持っておったデータというものがすべて社会保険事務所に引き揚げられ、例えば、一番の基礎自治体、私でしたら地元の区役所に行って、これはどうなってんのやと言ったら、うちはわかりまへんねん、社会保険事務所に行っとくんなはれというふうな形に、現実は窓口ではなっていくんではないか。そうしますと、今まで国庫負担でいただいていたものが減らされるのは当然としながら、また窓口も減らそうとしたところが、いや、現実的には今までと変わらない、結果としては、地方自治体においては新たな事務増や経費増を招くんではないか。今回の法改正の中では、できる限り事務負担を軽減する方向と言われていますけれども、現実的にはそういう事態が起こり得るんではないか。厚生大臣、各地方自治体、特に大都市の、区役所を持っているところはそういうふうに考えておるんですけれども、それはどういうふうになっていくのか。  また、国民年金の窓口が変わっていくよという変更のことをしっかり広報しなければならない。これについては、単に厚生省のみならず、市町村を管轄する自治省もやはり応援をすべきではないかなと思うんですけれども、その辺はいかがかということと、そして、くくった質問になってしまいますけれども——まあまずそれをお答えいただきたいと思います。
  110. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 国民年金につきましては、事実上は、今までは市町村の機関委任事務にされておりましたが、これを法定受託事務といたしております。なお、社会保険事務所との関係でいきますと、ほとんど、事業所からの通知その他移動通知等は事業所からもいただきますし、窓口事務は今までどおり市町村で行っていただくわけでございます。  しかしながら、事務の合理化も図らにゃいかぬということで、今度は、国民年金の納付事務は、印紙納税から直接あらゆる金融機関、郵便局等に納付できるようにするとか、あるいは第三号被保険者、サラリーマンの奥さんの問題ですね、等の移動その他の問題等も、直接、これは事業所との絡みがございますので、市町村は煩わさないようにするとか、そういう合理化も一応図ります。しかし、同時に、残されたいろいろの、住民基本台帳に基づく住民の移動その他もございますから、それらは法定受託事務としてお願いをするということでございますから、基本的にはそう変わりはないと見てよろしいかと思います。  なお、財源措置につきましては、事務費の交付金を出してございまして、これは全体で、今、十一年度予算では千五十三億円くらいでございますが、一種の単金制度と申しますか、被保険者を基準として算定するとか、あるいは事務取扱件数を基礎として算定する、あるいは福祉年金の受給者数等を基準とするとか、今までは印紙の販売手数料等を判定する、そういういろいろな要素を加味して、そして市町村に、今までは機関委任事務としておりましたが、事務費の所要の手当てをしております。  今回の分権推進計画、今申しましたように、法定受託事務になるわけでございますが、これから、十四年の四月からの実施を予定しておりますので、今委員のおっしゃられたようないろいろのミスマッチといいますか、超過負担とかそういうものが、あるいは生ずる可能性がある市町村もあるかもしれません。そんなこともございますので、今のやり方と実態とが本当にマッチしているかどうかは十四年の発足までにきちっと対応していきたい。そして、過重な事務負担は課さないようにする。  なお、これによって国民の利便性はいささかも変わりないことは、しばしばここで申し上げているとおりでございます。
  111. 高鳥修

    高鳥委員長 吉田委員、大勢大臣を呼んでいらっしゃいますので、これは必ず質問していただくという申し合わせになっておりますから、質問を絞ってお願いします。
  112. 吉田治

    吉田(治)委員 あと、申し上げますと、自治大臣には、法定外普通税の許可制度が今度見直しされる。これについては過剰な負担、割と、今見ておりますと、現実、一部担税力のあるところに賦課されている。これは、それが許可から協議、同意という形になりますと、随分ふえるんじゃないか。担税だけふえるところについては非常に困るんではないかということなんですけれども、この辺、今後どうなるのかということ。  今委員長の言葉もございましたので、くくらせていただいて質問させていただきたいと思います。  後は、郵政大臣おいででございます。  郵政大臣には、先ほどからの財投自主運用といった場合に、これは今後郵政事業庁、公社が自主運用するのか、それとも総務省と所轄省庁と相談をしていくのかということ。そして、特定郵便局に関しましては、局長の採用というんですか、局長の認定制度というふうなのが今いろいろ言われておりますが、これについては、現行制度のままで事業庁、公社に移しても行われていくのかということ。  そして、運輸大臣におかれましては……(発言する者あり)いや、もうくくってやれということですから、時間の問題ですから。申し合わせを守りますので。  三条及び四条における、新法における総合的機能というこの的というふうなものは、果たして交通の一元的政策、各省庁に今またがっているものが全部この国土交通省という形でされるのかということ。  そして、最後、官房長官、本当にお忙しい中をおいでいただきましてありがとうございます。  今後、内閣府の機能及び政策調整と危機管理といった場合、阪神大震災のようなことが起こったときに、絞って質問させていただきます、全責任は内閣府が行うというんですか、情報収集もすべて内閣府が行い、もう一点申し上げますと、緊急支援の、例えば在日米軍の緊急支援があったとき、防衛庁が阪神大震災のとき断ったというんですけれども、これは、今後、防衛庁の判断ではなく内閣府が判断するのかどうか。  そして、機能という形でいいますと、経済財政諮問会議、また総合科学技術政策、防災、男女共同参画というのを内閣府がこれから管轄されますが、事務次官会議というものがまずこのまま残るのかどうか。廃止されないといった場合、今申し上げたさまざまな会議の決定事項は、内閣府の事務次官が各省との調整を図るというふうになる。そして、内閣官房が内閣の重要政策に関する基本的な方針に関する企画立案及び総合調整を行うとありますが、事務次官会議との関係はどういうふうになっていくのか。  これで、全大臣、お答えをいただけると思いますので、よろしくお願いします。
  113. 高鳥修

    高鳥委員長 逐次答弁願います。野田自治大臣
  114. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 簡潔に申し上げます。  法定外普通税や法定外目的税というのは、基本的に、自治体みずからの判断と責任において条例で行われるわけです。なお、自治大臣としては、事前協議に当たって住民の負担が著しく過重となるような場合には、自治大臣は同意しないことができるということになっておりますので、そのことを念頭に置いて処理をしていきたいと考えております。
  115. 野田聖子

    野田(聖)国務大臣 二点ございました。  まず、省庁再編に伴い、今の財投が廃止されるということで、これからの運用につきましては、郵便貯金事業及び簡易生命保険事業については総務省において所管することになっております。ゆえに、総務大臣が運用等の責任を負うことになります。  二点目の特定局長の採用方法等のことでございますけれども、御承知のとおり、全国二万四千七百ある郵便局ネットワークのうちの大半である約一万九千がこの特定局で運営されているところでございます。特に、特定郵便局というのは、地域に密着したサービスを提供することを特色としているため、局長というのは、それぞれの局にふさわしい者として、地域住民の信望があって、その局を運営する管理者としての事業管理能力を有する者を国家公務員法第三十六条の規定に基づき選考し、任用しているところであります。  具体的には、郵政省が、教養試験、作文試験、面接試験等の能力実証試験を実施し、総合的に判定した上で任用しております。  再編後も、特定郵便局の役割に変わることはないと考えておりまして、また、特定郵便局長には国家公務員としての身分が付与されることになることから、現在と同様の方法で任用することが適当であると考えております。
  116. 川崎二郎

    ○川崎国務大臣 国土交通省になりますと、交通インフラの整備は国土交通省が一手に引き受ける、こういうことになるだろうと思っております。  ただ、例えば海でしたら、私どもは海上保安庁もありますし、海難審判庁もございますから、そういう意味では警察、それから裁判所までの機能を全部有しておりますけれども、当然、陸におきましては警察が任務とされている部分があるというのは御承知のとおりでございます。  また、例えば事故を起こした場合の最後の担保として自賠責保険、これは運輸省と、今、金融再生委員会でしょうか、大蔵省等が所管している。今度は金融庁と国土交通省が所管するということになりますので、当然、交通安全行政について、関係省庁間の調整を私どもが中心的な役割として務める。そういう意味で、総合的な交通安全行政というふうにうたっております。
  117. 野中広務

    ○野中国務大臣 阪神・淡路大震災等のあのとうとい教訓を生かしまして、その当時法改正をいたして、緊急災害等に対応できる危機管理の組織を確立したところでございますけれども、このたびの省庁再編後は、防災等につきまして内閣の重要政策と位置づけまして、内閣府が防災に対する企画立案、総合調整機能を担いますとともに、大規模災害に対処するための緊急災害対策本部、非常災害対策本部も臨時に内閣府に設置されることになるわけでございます。  大規模の災害発生時等の危機管理は、内閣府において総合調整機能を発揮いたしまして、危機管理機能を担う内閣危機管理監を中心といたしました内閣官房が中心になりまして、内閣全体としての危機管理に万全を期してまいる所存でございます。  なお、事務次官会議について御指摘がございました。我が国憲法は、委員御承知のとおり、議院内閣制を採用しているわけでございまして、内閣は行政権の行使につきまして、国会に連帯して責任を負うこととされておるわけでございます。  このため、法律案におきましては、内閣としての意思決定を行うに当たりまして、内閣の存立の基盤であります与党との調整を行った上で、事務次官等の会議において、既存の制度との整合性等についての事務レベルでの確認を行いまして、閣議において最終的な意思決定を行っておるところでございます。  今回の省庁再編によりまして、内閣総理大臣のリーダーシップの強化や副大臣の導入等を通じまして、政治の主導性の強化が図られるものと考えるわけでございますが、閣僚による最終的な意思決定を補佐する意味におきまして、各省庁間の調整等を含めまして、事務次官会議の役割は省庁再編後も必要なものであると認識をしております。
  118. 吉田治

    吉田(治)委員 自治大臣、例の法定外普通税、一部に偏らないようにお願いすると同時に、郵政の問題は今後とも取り上げていきたいということ。  そして官房長官、申しわけございません、答弁漏れがございまして、一つは、阪神大震災のときに起こった在日米軍からの緊急支援の申し出がもしもあった場合は、今後はどこが受け入れて対応するのかということ。  それから私、質問漏れがございました。厚生大臣おいでですけれども、災害救助法の適用、危機管理監はわかるのですけれども、それはだれが今後なさるのか。救助犬の派遣も断ったということです。  そして最後、私の質問で最後に申し上げたのは、内閣官房の今までの会議のことを内閣府の事務次官が提案して調整するのかということと、内閣官房の行う重要政策の基本的な方針について、事務次官会議との関係はどうか。  この二点、ちょっと答弁していただいておりませんので、先に厚生大臣の方からお答えいただいて、官房長官、お答えいただければと思います。
  119. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 災害救助法の適用につきましては、厚生大臣が実態を調査して指定をして、救助態勢に万全を期していくということでございます。
  120. 野中広務

    ○野中国務大臣 先般の阪神・淡路大震災後の法改正によりまして、内閣総理大臣を本部長とする緊急災害対策本部を設置しておったわけでございまして、その本部には、全国務大臣を本部員として位置づけ、今回の改正によりまして、内閣危機管理監も本部員としてこれを含めたわけでございます。したがいまして、いずれの場合におきましても、緊急時に対応するすべてについては、内閣総理大臣のもとに置き得る緊急災害対策本部において意思決定をするわけでございます。  その意味におきまして、今委員が御指摘になりましたような米軍等の問題については、その当時、これを私どもとしては把握をいたしておりませんし、この際に、今これを想定して考えておるわけでございませんが、それぞれ関係閣僚全員がこのメンバーに入っておるわけでございますので、内閣総理大臣のもとにおいて処置することといたしております。
  121. 吉田治

    吉田(治)委員 ここのところだけ、もう時間ありませんので。  ではその場合、在日米軍に協力するかどうかは、どこに権限があるのかというのはまだわからないということと、在日米軍から申し出があったとしても、それについては閣僚さんがみんな集まって本部で決定しない限りは、時間との闘いの中においても、それは待っているというふうに判断してよろしいでしょうか。
  122. 野中広務

    ○野中国務大臣 それを代行する者は、内閣におきます危機管理監でございます。
  123. 吉田治

    吉田(治)委員 ということは、危機管理監が、極端なことを言うと、在日米軍から申し出があった、もしもその場合に、もう時間がないというときには、ゴーということを出し得る可能性も今後はあるということで認識してよろしいのですか。
  124. 野中広務

    ○野中国務大臣 少なくともそういう態勢のときに、内閣総理大臣もしくは内閣官房長官あるいは副長官がおるはずでございますから、政治的決裁を求めることは当然のことでございます。
  125. 吉田治

    吉田(治)委員 もう時間があれですけれども、最後、事務次官のことを、会議のことで、ちょっと内閣官房との関係を申し上げたのですけれども、答弁、政府側でも結構ですけれども、できませんか、だれか。きのう、質問すると言っておいたのですけれども。
  126. 高鳥修

    高鳥委員長 事務次官会議をどうするのかと、位置づけ……
  127. 吉田治

    吉田(治)委員 いや、違います。内閣官房が内閣の重要政策に関する基本的な方針を企画立案及び総合調整を行うとするとあるが、今後の事務次官会議との関係はどうなるのかと、私、二回今質問しましたけれども。
  128. 河野昭

    ○河野(昭)政府委員 事務次官会議の機能は、先ほど官房長官から御説明されたとおりでございます。  それで、まさに今回、内閣府にも事務次官が置かれることになっているわけでございます。内閣府といいますのは、御承知のように、いわゆる内閣を助ける任務と、それから、各省並びのいわゆる行政事務を所管する、二つの任務を負うわけでございます。  したがいまして、内閣府の事務次官といいますのは、いわゆるその一部において各省の事務次官と同様の機能を持つ。今後、事務次官会議が行われますれば、内閣府の事務次官も他省の事務次官と同様にメンバーに入るものと考えられます。
  129. 吉田治

    吉田(治)委員 至りませんが、終わります。
  130. 高鳥修

    高鳥委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時八分休憩      ————◇—————     午後二時三十三分開議
  131. 高鳥修

    高鳥委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、昨日の本委員会における答弁に関し、太田総務庁長官から発言をしたいとの申し出がありますので、これを許します。太田長官
  132. 太田誠一

    太田国務大臣 昨日の当委員会における石井委員の定員削減についての御質問に対する私及び事務局の答弁に関し、誤解を招くような点がありましたので、補足させていただくべく、委員長のお許しを得て、この際、省庁改革に当たっての定員削減についての考え方を改めて整理して申し上げたいと思います。  十年、二五%削減の方針につきましては、政府側の手続としては、自民、自由両党の合意を受けまして、中央省庁等改革推進本部に対し行政改革担当大臣である私から二五%削減目標を提案し、閣議において正式に決定したところであります。  政府といたしましては、自自連立の合意を尊重し、与党とも密接に連携しつつ、この方針に沿った定員削減を実施いたします。  今後の定員削減につきましては、中央省庁等改革基本法に定められているとおり、各府省の定員の少なくとも十年、一〇%の計画的削減を進めるとともに、独立行政法人化による一層の定員削減を強力に進め、増員の徹底した抑制を図ること等により、二五%純減を目指した定員削減を実現するため最大限努力いたします。  このため、四月二十七日の国の行政組織等の減量、効率化等に関する基本的計画におきまして、八十九の事務事業の独立行政法人化等を決定したところであり、これに加え、民営化独立行政法人化、さらには規制緩和や今般の中央省庁等改革における行政組織に関する取り組み、平成十二年度から新規採用を減らし、増員の徹底した抑制を行うこと等、十年間にわたるさらなる改革努力を行うこととしているところでございます。  私及び事務局ともども、今後とも適切に対応してまいりたいと存じます。
  133. 高鳥修

    高鳥委員長 質疑を続行いたします。近江巳記夫君。
  134. 近江巳記夫

    ○近江委員 中央省庁改革関連につきましてお伺いしたいと思いますが、私は主として、きょうは科学技術の問題にできるだけ絞りましてお伺いしたいと思っております。  今回の省庁再編の状況を見てまいりますると、内閣府におきましては、経済財政諮問会議、総合科学技術会議、中央防災会議、男女共同参画会議と、非常に重要な四つのセクションが設けられておるわけでございます。また、科学技術庁が今回は文部科学省というようなことになるわけでございまして、今後の科学技術の進展というものがどのように図っていかれるのか、これはもう国民だれしもが非常に大きな関心を持って見ておるところでございます。  我が国といたしましては、御承知のように科学技術基本法を制定いたしまして、これは議員立法でございますけれども、その後、科学技術基本計画が翌年制定されました。財源といたしましては、五年間で十七兆投じていくというようなことでございまして、今日まで、今年度予算を含めまして十三兆三千億、これはこれなりによく政府としても力を入れていただいておると私は認識いたしております。残るは三兆七千億というようなことでございます。こうした取り組みから考えましても、それなりに政府としては科学技術の振興につきまして力を入れておられるということは理解できるわけでございます。  しかしながら、世界各国、先進国の立場から見ますと、果たしてこれで本当に二十一世紀を担えるだけの構えというものができ上がるのかどうか。総合科学技術会議内閣府に設置される。これはどちらかというと、形態としてはアメリカ型に類似しておるように私は思うわけでございますけれども、中身につきましては、まだほとんどこれは明らかにはなっておらないわけでございます。そういう意味におきまして、二十一世紀はまさにこの科学技術がかぎを握ると言っても過言ではないと思うのです。  今日まで、政府も産業再生につきましての検討とかさまざまな企画、また作業というものを進めておられるわけでございますけれども、いずれにいたしましても、そのかぎは科学技術というものが握っておる。非常に重要なことでございます。  私はそういう意味で、きょうは内閣の非常に枢要な閣僚がお見えでございますので、科学技術に対する認識というもの、これをひとつお一人お一人から簡潔に、まず前提としてお伺いしていきたいと思います。
  135. 野中広務

    ○野中国務大臣 科学技術の振興についてのお尋ねでございます。委員はすぐれた識見と科学技術に対する経験をお持ちでございますので、私から改めて申し上げるまでもないわけでございますが、我が国は、経済、雇用面におきまして厳しい状況に置かれていますとともに、急速な少子高齢化の進行などの諸課題に直面をしておるところでございます。  このような状況を打破いたしまして、競争力の強化を通じた産業の再生や、国民の健康で豊かな生活の実現を目指すなど、将来の経済国民の暮らしの発展の原動力であり、科学技術はその骨幹をなすものでありますとともに、未来へのかけ橋として小渕総理が所信表明でも申し上げておりますように、我が国といたしまして、世界の最先端をリードしていく気概を持って取り組んでまいらなければならない最重要施策だと認識をしております。
  136. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 かねて科学技術行政には御自分で指揮をされましたお立場で、精通をなすっておられますので申し上げることもございませんが、科学技術立国を目指す我が国といたしまして、殊に二十一世紀を迎えるに当たりまして、一層この施策を重視いたしまして、将来の発展の基盤をしっかりしなければならない今の時期であると考えております。  したがいまして、本年度におきましても、科学技術振興費につきましては、シーリングのほかに八・一%の増を計上いたしました。  お話しの第一次計画の中途でございますが、この計画の示すところに従いまして、できるだけ努力を続けてまいりたいと考えております。
  137. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 まず最初にお礼を申し上げるべきことでございますけれども、科学技術基本法を議員立法でおつくりくださったこと、このことは心から御礼を申し上げたいと思っております。  それ以後、科学技術基本計画がつくられ、そのことによって、現在、科学者は大変元気づきました。そして、科学技術に携わる研究者たちの意気は大変上がっておりまして、さまざまな面から随分仕事が伸びているところでございます。こういうふうな勢いを、さらに二十一世紀に向けて伸ばしていただければ幸いでございます。  二十一世紀のために、日本の子供たちが夢を持って伸びていける、こういうふうな、まず子供たちに夢を持たしていただきたいと思っております。その夢を実現すべく、日本国民の福祉を考え、経済的にも、それから健康の上でも、さまざまな点で科学技術が役立っていくよう努力をさせていただきたいと思っております。
  138. 太田誠一

    太田国務大臣 いわゆる今回の中央省庁改革の中でも、特に、内閣府に総合科学技術会議を設け、国政の最重要課題の一つというふうに位置づけております。そのような行政改革を通じて我が国の科学技術の発展が果たされますように、これからも努力をしていく所存であります。
  139. 近江巳記夫

    ○近江委員 官房長官、大蔵大臣、また科学技術庁長官太田総務庁長官、どうも。非常に、科学技術に対する認識、今後の深い取り組みの姿勢というものを私は感じたわけでございます。  私は、世界全体を見ておりまして、アメリカ中心といたしまして、先進国の科学技術に対する取り組みというものは、単なる言葉ではない。もう本当に、その取り組みの姿勢というものを見てまいりますると、果たして日本はこれでいいのかなと非常に心配するわけでございます。  例えば、一番身近な韓国。韓国では、各閣僚御承知だと思いますけれども、崔亨燮という有名な方がいらっしゃいますが、この方は、科学技術庁長官を歴任され、韓国科学技術団体総連合会の会長をされております。この方の話も私は聞きまして、本当に話を聞いておるさなかに、胸が動悸がしてきたわけでございます。日本はこれでいいのかという思いがしたわけでございます。  特に、金大中さんが大統領になられまして、今まで科学技術庁という一つの部門でございましたけれども、格上げをして科学技術省に持ってくる。しかも、序列は上からナンバーエイトですよ、八番目。しかも、副大統領職を充てたいという、金大統領はそのようにおっしゃっていたらしいのですが、副大統領というのが制度的にちょっと難しい面もあって、それはかなわなかったわけでございますけれども、大変な力の入れ方をしておるわけですね。  そういう点で、各閣僚の先生方がそれだけの認識をお持ちであるということは十分理解できるわけでございますけれども、さらに深く、今この省庁再編が行われようとしておる、その中に今後の二十一世紀を担うだけのすばらしい組織をつくり、また魂を打ち込んで、国挙げてのそれだけの取り組みがなければ、間違いなく日本は先進国からも世界各国からもおくれていく、沈んでいくという、その原因になることは間違いない、このように私は思うわけでございます。  そういう意味で、ここにも韓国の報告書をいただいたわけでございますけれども、これを一読いたしましても、本当に大変な取り組みであるということを痛感いたしておる次第でございます。  そういうことで、この総合科学技術会議というもの、これは本当に簡単な形でここに出ておるわけでございますけれども、どういう機関になるのかということがまだ国民の皆さんにも漠然といたしておりますし、どういう機関になるのかということをわかりやすく官房長官からお答えいただきたいと思います。
  140. 野中広務

    ○野中国務大臣 新たに設置されます総合科学技術会議でございますけれども、現行の科学技術会議国家行政組織法の第八条に基づく審議会でございまして、総合科学技術会議は、科学技術政策の重要性にかんがみまして、内閣府のみに置かれる重要政策に関する会議として位置づけをしておるところでございます。  また、科学技術会議内閣総理大臣の諮問を受けて答申することを任務としておりますのに対しまして、総合科学技術会議は、科学技術に関して総合的かつ計画的な振興を図るための基本的な政策、予算の配分の基本方針等について調査審議するほか、諮問を待たずに意見を述べることができることとするなど、会議の自主性、機能の強化を図っておるところでございます。
  141. 近江巳記夫

    ○近江委員 科学技術会議というものが今日まで設置されてきたわけでございます。私もかつて事務局としてそれに参画したことがございますが、昭和三十四年の二月に科学技術会議が設置されております。今日まで二十数回行われてきておるわけでございますが、この科学技術会議と総合科学技術会議、特にこの点が違うんだという点がございましたら、御説明をいただきたいと思います。
  142. 野中広務

    ○野中国務大臣 先ほども若干申し上げたところでございますが、内閣府は、総合科学技術会議の調査審議、意見等を踏まえまして、行政各部の施策の統一を図る見地から、科学技術に関しまして総合的かつ計画的な振興を図るための基本的な政策や予算の配分の方針その他、科学技術の振興に関する事項につきまして、企画及び立案並びに総合調整を行うこととしておるところでございます。  一方、文部科学省は、これを受けまして、科学技術に関する基本的な政策や研究開発計画を企画立案、推進いたしますとともに、各省の科学技術関係事務の調整等を行うことといたしておりまして、内閣府と文部科学省が十分に連携をとって、我が国の科学技術の振興を図ることとしておるところでございます。
  143. 近江巳記夫

    ○近江委員 科学技術会議と比べまして、その中身といいますか、国が全体として責任を持ってリードしていくという非常に大きな前進が図られる、このように私は期待をするわけでございます。  そこで、組織とか実際の今後の運営ということを考えていったときに、さらにこれはお聞きしなければならないわけでございます。  例えば、アメリカを見てまいりますと、もう官房長官は御承知だと思いますけれども、科学技術担当の大統領補佐官がおりまして、そのもとに科学技術政策局、OSTP、もちろん局長中心となるわけでございますが、ございます。そして、別に、国家科学技術会議、NSTC、大統領科学技術諮問委員会、PCAST、こういうところがかなめとなりまして、国家戦略をそこに立てて、そしてリードしているわけですね。  まさに大統領と直結をいたしまして、本当に適宜適宜、重要なことも、情報がもちろん入りますし、そしてまたコメントも出していくというような、我が国では考えられないようなことがどんどん進んでおるわけです。  例えばスーパーカミオカンデでニュートリノの振動が昨年の六月観測されておるわけですけれども、そうしますと、直ちにクリントン大統領がコメントを発して、画期的な業績というものをたたえておるわけですね。これは東大宇宙線研究所を主体に日米共同でやったわけでございますけれども、何か世界じゅうはアメリカの功績みたいな感じにとるわけです。では、我が国はそのとき、総理はそのことについてコメントでも出したのか、また各機関は出したのか。これは出ていないわけですよね。アメリカにおきましては、ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト等は一面でこれを扱っておる。迅速なんです。  例えば、クローン羊ドリーが発表されましたときも、クリントン大統領あるいはフランスのシラク大統領は、直ちに倫理面からコメントを出しておる。我が国はやったのですか。こういう一つの例を見ても、そういうことなんです。  大統領が何もかも勉強しておるわけではないでしょう。そばにいる、私が今申し上げたそういう機構、それぞれの責任者から直ちに重要な情報が上げられ、瞬時に判断をして、表明すべきは表明する、そういう生きたものにやはりなっているわけですね。  御承知のように、今やインターネットの時代でございますし、瞬時にすべてのことが流れるわけでございます。あるいはまた、WTOの発足によりまして、世界貿易の自由化等がございまして、今やもういや応なく自由競争に巻き込まれようとしておるわけですね。  そういう中で、特に、先ほどもお話ございましたが、産業振興の基盤というものは科学技術なんですね。そういう点で、アメリカは大統領のイニシアチブのもとに立ちまして科学技術政策の国家的な戦略を立てておる。機会あるごとに大統領みずから国民に表明しておるわけですね。  ホワイトハウスのホームページを開きますと、クリントン大統領あるいはゴア副大統領の科学技術に関する演説内容というものが随分と出てくる。  いろいろなところで演説しておりますが、クリントン大統領は、「過去五十年間を物理学の時代とするなら、今後五十年間は生物学の時代になろう」と前置きをいたしまして、どういうことをおっしゃっているかというと、  先端領域の研究を進めることに躊躇してはならないが、成果の活かし方には配慮する必要がある。人間の尊厳や社会的価値、倫理を損なわないようにしなければならない。科学は人類に貢献するものであり、将来、国力は軍事力ではなく科学的知識によって量られることになろう。  生物学の時代に新たな目標を宣言する。合衆国は、エイズワクチンを今後十年間のうちに実現する。これは実現の可能性の問題ではなく、時期の問題である。二十一世紀が生物学の世紀であるなら、各国と協力して地球規模の気候変動に伴う問題の解決、エネルギー使用に伴う環境破壊の防止、飢餓や疾病、無知からの人々の解放達成などを行いたい。  このように、大学であろうが企業であろうが、いろいろなところで演説をいたしておりますが、科学技術への積極的なそういう取り組みというものを非常にわかりやすい言葉で、表現で発言しておられるわけですね。発言に一貫しておりますのは、財政を将来の科学研究と教育、人材育成のために重点的に投資して、強いアメリカを実現し、科学技術でも世界のリーダーシップをとることを明確に打ち出しておる。  そのように、非常に、アメリカの状態を見ましても、そういうやはり中身があるんです。今後こういう新しい再編をして、そういう構図をつくろうとされておられるわけでございますけれども、本当にアメリカが現在やっておりますような、それに匹敵するような中身ができるんですか、これは。これは、官房長官でも、また科学技術庁長官でも結構です。
  144. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 できると思っております。  例えば、今大変ひいきに見ていただきまして、ありがとうございました。カミオカンデ、私もあれを推進する上で大変努力をいたしましたので、あれがそこまでいい仕事をしてくれたことを喜んでおります。日本にはまだあのくらいの成果を出す仕事がたくさんありますので、私は大いに将来を期待しております。  きのう、科学技術会議が開かれまして、そこで情報科学技術というものを推進すべきだという答申が出てまいりました。それからまた、もう既に脳科学は、先生も大変お進めいただきましたけれども、今非常に盛んになりつつあります。そういう意味で、生命すなわちライフに関する科学も今どんどん日本で進みつつあると思っております。さらにまた、環境についての科学技術というものを進めていく、こういうふうなものをさらに日本の国として進めていくべきだというふうなことが今方針として固まりつつありますので、そういう方向で大いに努力をさせていただきたいと思っております。
  145. 近江巳記夫

    ○近江委員 大蔵大臣、また別の委員会に出られるようでございますので、最後に、先ほど申し上げましたように、科学技術基本法、科学技術基本計画に基づきまして、十七兆という当初の目標を立てまして、来年度、三兆七千億つければ一応十七兆、これは達成するわけでございます。要するに、二〇〇〇年でこれは終わるわけです。  そうしますと、これから新しい再編が成り、総合科学技術会議も置かれ、そしてこの二〇〇一年というのは、御承知のように、文部科学省もスタートをいたしますし、ノーベル賞ができまして百周年にもなる、臨海副都心にはさいえんすワールドもできる、あるいはロボリンピックも開催されるというような、非常にいろいろなことがメジロ押しになっているわけでございます。まさに二十一世紀、科学技術の本当にそういう時代をつくっていかなきゃならない。  そういう意味におきまして、第二次の五カ年計画といいますか、十カ年をにらんでの五カ年計画といいますか、これからの、要するに、もうそれは今年、明年と、これにかかって、骨太のそういう戦略を立て、裏づけとなるものをつくっていかなきゃならないわけですね。その柱になるのが宮澤大蔵大臣でもございます。  そういう意味で、退席される最後にもう一度、私が今るる申し上げましたこともいろいろと感じていただいたと思いますし、今後のいわゆる財政的なそうした取り組みの中心とされまして、お答えをいただきたいと思います。
  146. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 科学技術基本法の第九条で、現計画が平成八年から十二年度間の五年間でございますが、それから後、十三年以降をどうするかという問題が当然あるであろうと思います。  その前に、実は八年から十二年度までの十七兆円というものを、昨日も科学技術会議がございまして、これをちゃんとしなければならぬぞという御主張を私は承ったところであります。今年度もシーリングを外しておりますので、伸び率はかなり高く伸ばしておりますが、また来年度につきましても、できるだけ御要求に沿って努力をいたしたいと考えておるところであります。  そこで、その後、いわゆる第二次計画ということをまだ具体的には伺っておりませんけれども、そういう御計画を恐らく関係者としてはお持ちになっておられるだろうということは想像にかたくございませんので、そこはよく御相談をしてまいりたい。科学技術に重点を置かなければならないということは、一遍の計画で済むわけではございませんので、そこのところは十分事態を予測しながら検討をさせていただきたいと思います。
  147. 近江巳記夫

    ○近江委員 わかりました。  官房長官、私はアメリカのそういう取り組みにつきまして具体例を申し上げたわけでございますけれども、この設置法におきましては、「会議は、議長及び議員十四人以内をもって組織する。」云々、このようにずっとここには述べられておるわけでございます。この議長さんはもちろん総理でございますし、官房長官、科学技術政策担当大臣各省大臣のうちから、内閣総理大臣が指名する者、いわゆる十四名のうち半分以上はそういう皆さんで占めることになるわけでございますけれども、科学技術政策担当大臣を初めといたしまして、そういう会議の構成のあり方。そして、先ほど申し上げましたアメリカでは、科学技術政策局を置いているわけですね。そして今、何回も申し上げて恐縮ですが、国家科学技術会議、大統領科学技術諮問委員会等も置いているわけです。  そうすると、我が国のこれだけで見ますと、果たしてアメリカ並みのそういう充実したものができるのかどうか、非常に不安があるわけですね。どういうような構想をお考えになっているんですか、もちろん完全に固まったものではないと思いますけれども。
  148. 野中広務

    ○野中国務大臣 詳細につきましては政府委員からお答えをさせていただきますけれども、委員が御指摘のように、我が国が、これから二十一世紀に向けまして豊かな国民生活と活力あふれる経済社会を構築していきますためには、科学技術を振興するということが基本でございまして、科学技術創造立国を実現することが必要不可欠なことであろうと考えておるわけでございます。  今後、科学技術政策委員会中心に、さらに御検討をいただいてまいりたいと存じておるところでございます。
  149. 河野昭

    ○河野(昭)政府委員 総合科学技術会議を補佐する体制でございますが、これにつきましては、内閣府の内部部局に、いわゆる内部部局の総合調整を担当する部門に内外から人材を集めまして、この会議の円滑な運営を補佐する、そのような体制を予定しております。
  150. 近江巳記夫

    ○近江委員 もうちょっと聞きます。  そういうスタッフを集めてなんとおっしゃっていますけれども、アメリカのこの組織等を十分あなたは勉強されておると思いますけれども、それでは、どのぐらいの規模をお考えになっているのですか、事務局としては。当然それは官房長官のもとでお決めになることでございますけれども、一応下書きというものはあるでしょう。
  151. 加藤康宏

    ○加藤(康)政府委員 お答えいたします。  アメリカの、先ほど先生指摘されました大統領府の科学技術局でございますが、そこには四十名ぐらいのスタッフがいるように伺っております。ただし、その中でも、常勤のスタッフだけではなくて、やはり今説明がございましたように、いろいろなところから専門家も集まっていただいて成っているところでございます。  したがいまして、我々といたしましても、アメリカの科学技術局に似たような事務局体制になるように、これから努力していきたいと考えている次第でございます。
  152. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうしますと、アメリカの科学技術政策局、それから国家科学技術会議、大統領科学技術諮問委員会、これなどは、ほとんど外部のいわゆるトップクラスのそういう有識者を集め、そこで構成してやっているのですね。やはりそういう機動性の確保といいますか、国家戦略をどのように構築していくかという点からいきますと、四十名のそんなスタッフから出てくるそういう発想で、あとは総理を議長として、そういうことでいいのかということです。  ですから、さらに充実したものをこれからつくるわけでございますから、いいことはどんどんまねもすればいいし、さらにもっといいものを生み出していけばいいのです。その辺は、官房長官、どうですか。今事務局が答えたような構図だけでは、私はとてもじゃないけれども太刀打ちできないと思いますよ。
  153. 野中広務

    ○野中国務大臣 先ほども申し上げましたように、これから科学創造立国を目指していかない限り我が国の将来はないと申しても過言でないと思っておるわけでございまして、先生の御意見等も十分踏まえまして、科学技術の発展、振興のために、一層の努力をしてまいりたいと考えております。
  154. 近江巳記夫

    ○近江委員 私が今申し上げた米国のことも例として、充実したものをつくると今官房長官が言われましたので、実行力を持った官房長官でございますから、必ず充実したものをされると私は確信したいわけでございます。そういう点で努力していただきたいと思います。  それでは、太田さん。
  155. 太田誠一

    太田国務大臣 この総合科学技術会議は、十四人の議員から成るわけでありますが、議長を内閣総理大臣が務める、そして官房長官初め、主要な担当の大臣が一緒に参加するわけです。  科学者あるいは専門家と一緒にここで協議するわけでありますから、先ほどから委員がおっしゃっております、政治家が科学技術の世界について十分問題意識を持って的確にそれに対して反応するという、一番大事なところはここからスタートするんだというふうに考えております。そこからまた、今お考えのような、今のアメリカのような体制が導かれてくるであろうということを期待いたしております。
  156. 近江巳記夫

    ○近江委員 ぜひ、本当に世界に誇れる、それだけの機能を持ったものをつくり上げていただきたいと、再度強く要望いたしておきたいと思います。  それから次に、先ほども官房長官ちょっとお触れになりましたけれども、文部科学省と内閣府のそれを本当に緊密にやっていかなきゃいけないわけですね。その辺につきまして、どういうような問題があるのか、お伺いしたいと思います。  それでは、まず有馬さんから、そして後、官房長官。
  157. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 その前に、総合科学技術会議について一言申し上げたいと思っておりますが、常任の議員をふやすことになっております。これは今までにないことでございまして、そしてまた、その中で人文科学の人、それから社会科学の人を加えていく、こういうことで、そこに総合とつけた理由がございます。  それからまた、内閣府へ持っていったということは、一省庁に近いところでなくて、もっと上の、そして総理大臣に近いところへという考えがあって内閣府へ持っていったということになったと思います。そういうことから、文部科学省の中に総合科学技術会議を置かれるのではなく、内閣府に置かれます。  そうすると、内閣府では何をやるかといえば、総合科学技術会議の調査審議などを踏まえまして、行政各部の統一を図る観点から、科学技術に関する総合戦略、科学技術に関する予算、人材その他の科学技術の振興に必要な資源の配分の方針等について、企画立案及び総合調整をする役割を担うわけであります。  一方、文部科学省は、内閣府が企画立案、総合調整する科学技術に関する総合戦略等を受けまして、科学技術の総合的な振興を図る観点から、まず科学技術に関する基本的な施策の企画立案や、研究開発に関する具体的計画の作成、各省の科学技術に関する事務の調整、基礎研究、総合的な研究開発の実施等を担う、こういうふうなことを考えているわけでございます。  我が国の科学技術行政を効率的、効果的に、かつ政府全体として整合性を有する形で進めていくためには、このような役割分担に基づき内閣府と文部科学省が有機的に連携していくことが必要であり、それにより創造的な科学技術行政体制の構築が図られるものと考えている次第でございます。  科学技術会議を総合科学技術会議としてまとめる際に行政改革会議で考えましたことは、まさに先生指摘アメリカのサイエンスアドバイザー等々のことも考えまして、こういうふうなことがいいのではないかと提案し、それが今回実現しつつあるところでございます。
  158. 野中広務

    ○野中国務大臣 ただいま有馬科学技術庁長官からお答えになりましたように、内閣府に新たに設置されます総合科学技術会議と文部科学省との関係につきましては、答弁されたとおりでございますので、重複を避けたいと存じます。  いずれにいたしましても、この内閣府と文部科学省が十分連携を密にしまして、我が国の科学技術の振興を図ってまいりたいと考えておるところでございます。
  159. 近江巳記夫

    ○近江委員 韓国では、先ほど申し上げましたように、科学技術庁を科学技術省に格上げをしてきた、そして本当に国家戦略として力を入れていこう、こういうことでございますね。  今度は、文部省と科学技術庁が合併ということになるわけでございます。そういう中で、いつも申し上げておりますが、文部省はボトムアップ、研究者から上がってくる、学術面においてはそうですね。また、科学技術庁というのはトップダウン、こういうふうになってきます。そういう融合という点から考えましても、その辺の整合性といいますか、これをうまくやっていかなきゃいけないわけです。  また、機構的にいいましても、巨大な文部省に対して科学技術庁、人員におきましても予算におきましても、小さいわけですね。そうしますと、やはり職員の意識としては、のみ込まれるような感じが一面あるんじゃないか。やはり萎縮させてはならない。  新しい体制のもとに、また両者が一緒になることによって、今まで、ともすれば教育の面と科学、科学技術というのは、何といいましても、かぎを握っておるのは人材なんですね。教育面はやはり文部省が握っていたわけです。私どもも、国会におきましても、科学技術委員会の場におきましても文部省の方に来ていただき、そこで質疑を展開して反映をさせていくという形でございましたけれども、今度はこれは合体になるわけですから、そういう点では、人材育成という点におきましてもプラスの面が大いにあるんじゃないか。そういう点を随分生かしていかなければならないと思うんですね。  そういうさまざまな問題があろうかと思うんですが、文部大臣、また科学技術庁長官として今兼任されておられるわけでございますし、その辺の合併に伴うメリット、デメリット、また、どういう基本方針でいかれるのか、そうした点につきましてお伺いしたいと思います。
  160. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 御指摘のように、今回の改革におきまして、総合科学技術会議と文部科学省の設置による創造的科学技術行政体制整備改革の柱の一つでございます。  そこで、文部省と科学技術庁との間でどういうふうに文部科学省の設置に向けて今努力をしているかということを申し上げますと、御指摘のように、ボトムアップ型の研究、それからトップダウン型の研究の違いはございますけれども、それぞれ共通の面もございます。そういう意味で、学術と科学技術分野等々で非常に連携が進んでおります。また、理科離れ対策等における連携の推進、教育の上で科学技術庁が今参画できるようになったということは、非常に理科離れの上でいいことだと私は思っております。こういうふうに、教育の上でも連携が今進んでおります。  現に、そういうふうに協力体制に入ったことの大変いい面というのは、先生も大変御尽力賜りましたSPring8、ああいうものを使っていく上で、文部関係の、大学関係の研究者も非常に使いやすくなりましたし、そういう点で、大変学術、科学技術の分野の連携が進んでいるところでございます。  それから、確かに、片方は非常に大きい、片方は小さいという問題はございますけれども、学術関係に限りますと、文部省も決して大勢いるものではございません。科学技術庁の関係者の数と大体似たようなものでございます。確かに、おっしゃるように、初中局等々、教育の面が非常に大きいのですけれども、学術研究あるいは大学、すなわち高等教育ということに限りますと、それほど人数が大勢でございませんので、両省庁の間で非常にこの点に関して協力が既に進んでおります。既に審議官級の職員を初めとした人事交流が実施されておりまして、大変うまくいっていると考えられる次第でございます。  また、先般、中央省庁改革推進本部が決定いたしました中央省庁等改革推進に関する方針においても、科学技術及び学術関係の業務をあわせて扱う局編成を行うとされており、これによりまして、中央省庁等改革基本法にある「学術及び科学技術研究の調和及び総合性の確保」を具体的に図っていくことができるものと考えております。  これまで、文部科学省に向けた両省庁間の検討等が進められてまいっておりますが、今後も、文部科学省について、相互が担ってきた行政のよさを十分生かしまして、適切に実施できる体制整備に努力してまいりたいと思っております。
  161. 近江巳記夫

    ○近江委員 独立法人が今回できるわけでございますけれども、その大半は国立の試験研究機関というものが入っているわけですね。これで研究の世界というのは、これは非常に難しい問題がございまして、こういう形になって、果たして本当に研究者が自由に伸び伸びと研究をしていく、そういう土壌というものがそこにできるのかどうか。絶えず見直しをやられて、そして研究というのは、本当の大事な研究というものは何年かかるかわからないわけでしょう。  そういうようなこともございまして、動揺を与えてはならぬわけです。そういう意味で、特に国立試験研究機関が多いということにおきまして、これは本当に、こういう法人にして、研究者の自由な研究の雰囲気というものが、さらにその研究が進むのかどうか、それはどのようにお考えになっていますか。  これは、今度は総務庁長官科学技術庁長官
  162. 太田誠一

    太田国務大臣 おっしゃるとおり、研究機関につきましての評価は簡単なものではないと思います。しかし、試験研究機関に限らず、独立行政法人は多様な側面を持っておりまして、いずれもその評価について、必ずしも数値的なことで評価をするというのがやりにくい、あるいはできないという側面はあろうかと思います。  中期目標というのは、各独立行政法人の業務内容や性格などに応じて具体的に設定するものでありまして、独立行政法人のさまざまな業務について一律の目標を設定するということではないわけでございます。  私、よく申し上げておりますのは、そうは言いながら、日本以外の国では、国立の研究機関が主流ではないところはたくさんあるわけでございますから、そういうところでも何か答えを出して、研究費を配分する。先ほどから言及されました、さまざまな研究資金を配分する機関も、何かの基準でもって評価をし、配分をしているわけでございますから、我々もそういう観点で、ちゃんとやっていくことはできるのではないかというふうに考えております。
  163. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 研究の長さということは、さまざまな分野で違うと思います。  ただ、レビューをしていく、その研究を評価していくというのが、三年あるいは五年というのが短過ぎるか長過ぎるかということでございますが、中間でレビューしていく、中間で検討していくというふうなことは極めて重要だと思っております。  ですから、非常に長期にかかるようなものは、その中間に、五年なら五年にきちっと評価をいたしまして、さらに、どこを強化していくか、どこを直していくかというふうなことを検討して、そして重要な仕事に関しては延ばしていく。しかしながら、五年に見たときに、どうもこれは将来性がないというふうなことに関しては、場合によってはやめるというふうなことが考えられると思います。  それぞれの研究の長さというのは、短いものは一年とか二年で済んでしまいます。そういうことで、評価の仕方ということをやはり研究の対象によって変えていかなければならないと思っております。  国立の研究機関が、さらに各研究機関の持つ多様性を尊重しながら、研究機関の自律性とか柔軟性、競争性を高めるという点で独立行政法人という制度が役に立つと我々は考えているわけでございまして、これによって日本の研究が弱くなってはいけない、絶対強める方向に独立行政法人という制度を生かしていかなければならないと思っております。  この制度の導入によりまして、研究者が自己の能力をより発揮することができ、試験研究機能の一層の向上を図られるようなものにすべきだと考えている次第でございます。
  164. 近江巳記夫

    ○近江委員 今も有馬先生がおっしゃったように、この独立行政法人ができることによって、みんなが希望を持って、そして意欲を持って取り組み、すばらしいものに、さらに成長していくものにならなきゃいけないわけですね。ところが、一般の感じというものは、三年、五年見直しもかけられ、そして芽を摘まれて、何か縮小傾向に入るような、どちらかと言えば負の、マイナスのような印象というものが強いわけです。  ちなみに、日本の研究機関というものを世界に比較してどうか。  例えば、有馬先生がされておりました理化学研究所、これは人員的には日本では一番多いんですね。六百二十一名です。匹敵するのが電子技術総合研究所、これが六百三十名。六百名台は二つだけですよ。あと、民間は千名程度のところがございますが、これは民間でございますから。あと、大きいのは、通信総合研究所四百二十四、航空宇宙技術研究所四百二十八、金属材料研究所四百十七、国立予防衛生研究所四百十。  これを見ていきますと、五百以上が二カ所、三百から五百が十一カ所、二百から三百が十七カ所、百から二百が十八カ所、五十から百が二十カ所、五十以下が十二、こういう状況です。  ところが、世界の研究所は一体どれだけのスケールを持っているか。これはひとつ御列席の各閣僚の皆さんもよく聞いてもらいたいと思うんです。  フランス国立科学研究センター、CNRS、二万五千七百七十二名、アメリカの国立衛生院、NIH、一万七千百五人、ドイツのマックスプランク協会一万一千九百一、あるいはフランスの電気通信研究センター四千二百九十六、米国のサンディア研究所八千四百三十、米国のローレンスリバモア研究所七千二百、ジェット推進研究所、米国、五千五百九十一。要するに、千単位の、何千という、研究所でもそれだけの体制なんですよ。だから、これは本当によく考えてもらいたい。  何も、研究所自体を私はむちゃくちゃ大きくせよとかそう言っているんではないんだ。取り組みの姿勢なんです。こういう独立法人をやって、本当に中核的な、世界に誇れる、そこから発信できる、そういうものに仕上げていかなきゃならない。  ですから、今回のこの新しい改革に伴いまして、今後の考え方として、ただ強くなってもらいたいという抽象論では私ちょっと納得しがたいんですけれども、どういう構想をお持ちなんでしょうか。特に有馬先生は理研の理事長もされてきたわけですし、お答えいただきたいと思います。
  165. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 大変重要な御指摘でございますが、フランスのCNRSは、非常に多くの研究機関へ研究者を派遣する、いわば総元締めのようなところもあるわけでございまして、研究所を持っておりますが、独自の研究所は二カ所ぐらいかと思います。しかし、方々の大学や他の場所に研究者を送る、その後ろを支えてくれておりますので、ちょっと制度の持ち方が違うのですが。ドイツのマックスプランク研究所、あれは民間でやっております。これも非常に多くの研究所をまとめて一つの組織になっております。原子核研究所、天文研究所、プラズマ研究所等々、いろいろなものがあるわけです。  日本一つ考えなきゃいけませんことは、御指摘のように、個々の研究所が小さ過ぎる面がございまして、相互の研究所を結びつけるような協力体制というようなものは、今後大いに検討していかなければならないと思っております。似通った研究をしている人々の間の協力体制というふうなものを、さらに今後一層強めるよう努力をするということが日本にとって重要なことではないかと思っております。  一遍に再編成をして一つのものにまとめるとか、そういう考えもあると思いますけれども、まずはそれぞれの研究所が、今まで持ってきておりました歴史等も考えまして、十分それぞれの特徴を生かしながら、しかし、今までのようにどちらかというと縦割りではなくて、幾つかが共同して進んでいくというふうな方向が、将来日本としてとるべき道ではないかと思っております。  その上でさらに、再編成をするというふうなことが、先ほど来御議論いただきました総合科学技術会議等々で御議論されてまいりますれば、また新たなる体制をつくるということができるかと思っております。とりあえずは、総合的にみんなが協力していくということが大切だと思っております。
  166. 近江巳記夫

    ○近江委員 そのように、これをきっしょに、研究所の充実につきまして、あらゆる角度からひとつ検討して努力をしていただきたいと思うのです。  同時に、それに伴うのは評価の問題ですね。私も方々の各研究所なり各国も見てまいりましたけれども、評価というのは非常に難しいわけです。研究者個人、テーマ、研究所自体の中身、あり方、言うならば三段階になるわけですね。  そうしますと、我が国の今回の省庁再編を見ましても、各省庁に評価委員会を設ける、課長級の方がそのチームの評価のキャップになられるようでございますが。太田さん、総務庁に今度は合流するわけですけれども、その総務庁に評価委員会を設ける。しかし、読んでみると、これは並列の感じがあるんですね。そうでしょう。  ですから、この評価自体というものが、これほど難しいものはないんです。言うならば、小さい頭で大きいものが判断できるか。しかも、いろいろなそういう厳しい見方もしていけば、当然上司が全部いるわけです、それぞれのセクション。本当の評価というものはそれでいいのか。言うならば、外部からもすばらしいそういう見識を持った人材も集め、そして本当の評価というものをやっていかなければ前進はできないと私は思うんです。傷のなめ合いのような、文章だけをなぞるような、そんな評価であってはならぬと思うんですね。  そういう評価ということについて、どうお考えなんですか。今のようなこういう形で、ただ設置するというような形で評価ができるんですか、これは。これについて御答弁いただきたいと思う。
  167. 太田誠一

    太田国務大臣 近江委員のおっしゃるとおり、評価というのは、まさにその衝にある人は政治生命をかけてやらなければいけないことでありまして、どういうふうに他の人がやった仕事を評価するかというのは、命がけの仕事だと考えております。  そこで、評価委員会を設けるわけでありますけれども、評価委員会の人選をまたどうするかということも、その所管の大臣あるいは内閣の責任はまことに大きいわけでありまして、そういうことはまさにその人の決意でありますので、システムがどうだとかいうことではなくて、そこにやはり政治生命をかけるという気迫が必要だと思います。
  168. 近江巳記夫

    ○近江委員 この評価という点、有馬先生も、理研の理事長もされ、いろいろな現場を知っておられるわけですね。評価という点について、どのようにお考えでしょうか。
  169. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 日本の国内のさまざまな外部評価委員会も、アメリカ、ヨーロッパの外部評価委員会委員長もやってまいりました。  ただ、研究の上での評価というのは比較的楽でございます。それは要するに、特許がどのくらい出ているか、それから論文がどのくらい出ているかというふうな客観的な数字も見られますし、研究者をインタビューするというふうなことを通じまして、それぞれの研究グループがどのくらいの迫力を持っているかということはかなりよくわかります。  しかし、これは、割に狭い範囲の、似通ったような研究をやっている人々の集まりで、今申しましたきめ細かいことがやりやすいのですが、もっと違った分野にまで入っていきますと、私も入っていったことがありますけれども、なかなか難しい、これは事実でございます。  しかし、丁寧に研究者の話を聞くとか、そういうことを積み重ねることによって、研究に関しては、相当客観的な評価ができると思います。  ただ、しかしながら、仲間でやる評価と、それから外部の人を呼ぶ評価とではかなり違ってまいります。すなわち、内部でやる評価、それから外部でやる評価。さらにまた、外部の人が入ってくる評価でも、純粋にその研究所なり大学がお願いした人々という、いわば内部の知っている人々で評価をしていただくという外部評価と、もう一つは完全に第三者評価。すなわち、例えば、科学技術庁がお願いをする、その委員会のメンバーが原子力研究所なり理化学研究所を評価する、こういうふうな完全に外部の人でやる、外部の人が任命した人でやるというような場合で随分違ってまいります。  これは、それぞれ組み合わせて今後評価を考えていかなければならないかと思っております。
  170. 近江巳記夫

    ○近江委員 それじゃ、もう時間がありませんので、あと一つだけお聞きしたいと思います。  原子力安全委員会、原子力委員会が今度は内閣府に設置ということになるわけですが、これは本当に、「もんじゅ」の件もあり、やはり国民に信頼、安心を与えなきゃならない。厳しいチェックをするのが安全委員会でもございます。また、原子力委員会の任務も言うまでもございません。この点につきまして、真に国民の負託にこたえられる中身を持った二つの機構であるのかどうか、簡潔にひとつ官房長官からお答えいただいて、終わりたいと思います。
  171. 野中広務

    ○野中国務大臣 原子力委員会及び原子力安全委員会につきましては、基本法におきまして、内閣府にこれを置き、その機能を継続するものとするとされたところでございます。  現在、両委員会は総理府に置かれておりまして、原子力の研究開発及び利用に関する政策等について企画、審議、決定するとともに、関係省庁が行う原子炉の設置の許可等について独立した立場から意見を述べることを主な任務としておるところでございます。しかし、原子力の研究開発、利用等を行っている科学技術庁及び関係行政機関が両委員会の庶務を務めておりますことから、委員会の独立性が不十分であるとの批判があるところでございます。  今回の省庁再編におきましては、両委員会内閣府に置きまして、原子力の研究開発、利用等を直接行わない内閣府がその事務局機能を担うことによって両委員会の独立性の強化を図ったところでございまして、国全体として一層適切な原子力行政が進められるものと期待しておるところでございます。  特に、原子力行政の安全面を担当する原子力安全委員会につきましては、単独の事務局を設けることとしておりまして、委員指摘のとおり、その独立性を一層強固なものにしてまいりたいと考えておるところでございます。
  172. 近江巳記夫

    ○近江委員 では、終わります。ありがとうございました。
  173. 高鳥修

    高鳥委員長 次に、山中あき子君の質疑に入ります。
  174. 山中あき子

    山中(あ)委員 山中あき子でございます。  きょうは、外務省の設置法につきまして質問をさせていただきたいと思いますが、先月、駐日英国大使デービッド・ライトさんが帰国なさいました。急遽帰国なさったわけですけれども、そのお別れ会のときにこういうことをおっしゃいました。日本は、行政改革というとどんどん省庁が減っていきます、でも、イギリスは必要なものをつくります。それで、新しくトレード・インターナショナルという省庁ができて、その長官として抜てきされて離日なさいました。  この言葉を聞くまでもなく、一般的に見ますと、省庁の今回の改革は、私は、省庁の再編であって、本当に改革であれば、要らないものは落とし、そして時代に合わせて必要なものをつくっていくということがもっとあってもよかったのではないか、そういう率直な印象を持っていますが、総務庁長官のまずそれについてのお考えをお聞きしたいと思います。
  175. 太田誠一

    太田国務大臣 今回の中央省庁改革は、行政における政治主導を確立し、そして内外の主要課題、諸情勢に機敏に対応できるように行政システムを抜本的に改めるとともに、透明な政府の実現や行政のスリム化、効率化、そしてまた政府の施策の整合性の確保を目指しております。  そこで、今の減らすばかりじゃなくてふやすところもあってもよかったんではないか。まず、縦割り行政の弊害で各省庁がそれぞれ分立割拠して自己増殖をしてきたということに対する反省に対する答えを一つ出さなくちゃいけない。その中で、では一体新しいことは何もないのかといえば、それはスクラップ・アンド・ビルドでもって、統合された省庁の中でやっていかれることを期待いたしておるわけでございます。  それからまた、内閣府においては、御案内のとおり、例えば、一つだけでありますけれども男女共同参画局を新設をしたとか、あるいは全体が官房・局の数は四分の三になっておるわけでございますが、外務省だけは官房・局の数は全く減っていないというふうなことで、濃淡をつけたわけでございます。  そういう経緯でありますので、今御指摘の点、よくわかりますけれども、今度の行政改革はそういうことだったということで御理解を賜りたいと思います。
  176. 山中あき子

    山中(あ)委員 大臣としては、もっとやれる、あるいはやるべきところが、今回はこれとして御理解を賜りたいとおっしゃいますけれども、これから二十一世紀の日本がどういう日本になるかという観点から見て、まだまだこれから改善の余地があるというふうに思っていらっしゃいますでしょうか。
  177. 太田誠一

    太田国務大臣 それは、始まったところだと思っております。
  178. 山中あき子

    山中(あ)委員 始まったところだという大臣の今の御答弁は私も非常に同感だと思いますので、これで一つ改編が、再編と言わせていただければ、それが済んだところから、これから本当の改革がスタートする、そういう視点で、きょうはODAというようなことに絡んで、外務省設置法案関係質問をさせていただきます。  私が申し上げるまでもなく、ODAは、このところずっと額の面では世界一位でございますけれども、GNP比というのを見ますと、日本は二十一カ国中十九位、昨年の統計を見ますと十八位と一つ上がりましたが、そういったところでございますし、あるいは、ODAの国民一人当たりのコントリビューションというのは二十一カ国中十一位でございます。そして、質というふうにちゃんと書かれているわけですが、贈与比率を見ますと、これはDACの二十一カ国中の二十一位でございまして、一番上ではなくて一番下というのがODAの白書の中からも読み取れるわけでございます。  金額が一番多いということで、それでは日本のODAというのはうまくいっているのだろうかということを考えますと、このODAというものがこれから日本にとって非常に大きな外交の手段になる、ますますなっていくだろうという意味から、もう少し、さらにここから改革を進めていっていいのではないかというふうに思っております。  まず一番最初に、各省庁別々の経済協力を実施していくその体制の中で、ODAの全体像というのが非常につかみにくくて、大変な金額のコントリビュートをしていますけれども、国の内外、つまり、若い私の教えている学生たちに聞いても、日本がどれほど海外に援助しているのかが実感としてわかないので誇りが持てないのですね。やっていることについてもっとわかる形であれば、若い人たちが、日本世界にこれだけのことをしているという意味でもっと誇りを持てると思うのですけれども、それが、なぜかそういった形になっておりません。  それで、ODAの予算、企画立案、実施を一本化したODA庁なり、私はODAという言葉自体も変えるべきだと思っているのですけれども、海外協力庁なり海外開発庁なりいろいろな言い方があると思いますけれども、そういったものを外局として設置すれば、ODAの効率化、ODAの理念の一貫性が図られて、国内外に対する透明性も高まるというふうに言われておりまして、そういう方向で行政改革会議においても議論されたようでありますけれども、その結論として一元化されなかった、これはどういう経緯からかということを総務庁長官にお伺いしたいと思います。
  179. 太田誠一

    太田国務大臣 政府開発援助に関する縦割り行政の弊害を是正するために、今回の外務省設置法案においては、外務省が政府全体を通ずる調整の中核となるという中央省庁等改革基本法の趣旨を忠実に反映させた規定を置くことといたしました。  具体的には、外務省外交政策として行われる経済協力を引き続き行うほか、新たに政府開発援助全体に共通する方針の企画について調整を行い、さらに、有償資金協力及び技術協力については、関係省庁が行う企画及び立案に対しても調整を行うこととなっております。  外務省は、これらの調整を通じて、政府開発援助のより効果的かつ効率的な推進が図られていくものと考えております。  調整という言葉は大変重い言葉として中央省庁改革の中では考えております。
  180. 山中あき子

    山中(あ)委員 縦割りの実施体制の弊害が著しい、外務省の外局として国際協力庁の創設をというのは前経団連の豊田章一郎会長の言葉ですし、あるいは行革の最終報告に対しても、外側から見ると実際にどのように一元化され効率化されるのかが見えず、運用次第では従来とさほど変わりがないのではないかという指摘も見られます。  そういった意味で、今、十七省庁がもっと小さくなっていくという、そして調整能力が非常に大事であるということをおっしゃいましたけれども、実際には、例えば英国を見てもデンマークを見てもあるいはカナダを見ても、それぞれ国際協力大臣のもとに一元化して非常に効率的に、企画立案だけではなくて、財政、予算ということもやっているわけでございますから、また、アメリカの場合でも、これは幾つかにまたがっていると言っても、日本のようにすべての省庁にまたがっているわけではございません。  企画の調整、そういった実施の調整ということで、予算になりますとこれは大蔵の方に行くわけでございますが、こういうことで本当に今までと違った大変重みのあるところが効果的に運用されるというふうに外務大臣は認識していらっしゃいますでしょうか。
  181. 高村正彦

    ○高村国務大臣 政府開発援助の事業は、御指摘のように多数の省庁が参加して実施されているわけであります。それで、時に全体的な調整が十分でない等の御批判もいただいております。反省材料としてきたわけであります。  また、政府開発援助は我が国にとり国際貢献の柱であり、外交政策の重要な手段の一つであるという認識を持っております。政府開発援助は、そのようなものとして政府全体として一体性、一貫性を持って推進し、最大限の効果を上げていくべきものと考えております。  このような見地から、外務省設置法案においては、政府開発援助のより効果的かつ効率的な推進を図るため、外務省が政府全体を通ずる調整の中核となるという中央省庁等改革基本法の趣旨を忠実に反映させる形で、技術協力に関する企画及び立案の調整を含む政府部内の一連の調整事務が外務省の新たな所掌事務として規定されたわけでございます。  こうした趣旨を踏まえ、関係省庁の協力も得つつ、相互の連絡の緊密化を図ることはもとより、具体的な調整を進めるに当たり、いろいろ工夫をして政府開発援助のより効果的、効率的な推進に向けてはっきりと改善が見られるよう努めてまいりたいと考えているわけでございます。その手続や方法についても十分検討していきたいと思います。
  182. 山中あき子

    山中(あ)委員 大臣は、これで十分にやっていけるかどうかということよりも、そういう努力をするというふうな表現を今使われたと思いますが、私は、やはり予算が一元化されていないということは、予算のむだを省くという改革がなされないのではないか。日本のこれからの経済状態を考えますと、やはりタックスペイヤーのお金というものをぜひ有効に活用して、それが日本外交の今おっしゃった手段になるとすれば、企画、それから実際の実施、そして予算というものも、やはり非常に効果的に使うという意味でここの一元化がなくて本当に効果を上げられるのでしょうか。  もう一度外務大臣の見解を伺いたいと思います。
  183. 高村正彦

    ○高村国務大臣 運用によっては今までと違わないというような御批判もありましたが、我々は、きっちり運用して今までと違ったことを出していきたい、こういうふうに思っております。  調整をするわけでありますから、予算についても、要求側については当然調整がなされるということはあるわけでありまして、予算を査定する側の大蔵省の調整というのはもちろんあると思いますが、そういったこともいろいろ心がけていきたい、こういうふうに思っております。
  184. 山中あき子

    山中(あ)委員 それでは、その査定をする大蔵省の、きょうちょっと大臣をお呼びしなかったものですから、大蔵省の方に来ていただいていますので大臣じゃなくて結構ですが、どういう人がこのODAの予算の査定に当たることになるのでしょうか。
  185. 坂篤郎

    ○坂政府委員 お答えさせていただきます。  大蔵省は、大蔵省の主計局で、御承知のとおり予算の査定をさせていただいておりますが、当然一番上は局長でございまして、もちろんその上に大臣がおられるわけでございますが、主計局の中では、外務・経済協力係、その中に経済協力係という係がございまして、担当の主計官あるいはその上に次長、また主計官の下に担当の主査、係長というふうにおります。  ちなみに、先ほどの御質問を伺っておりましたが、平成十一年度のいわゆるODA予算と呼ばれているもの、これにつきましては、確かに、各省庁さんからの御要求がございまして、各省庁さんの予算ではございますけれども、ODAに関するもの、あるいは経済協力に関するものというふうに申し上げた方がより正確かもしれませんが、これにつきましては、そこの経済協力係の担当の主査、主計官、次長、局長というそのラインで査定をさせていただいております。  そういう意味では、主計局の中ではODA関係あるいは経済協力関係というのは一元化されて、一つのラインでそれを担当させていただいているということでございます。
  186. 山中あき子

    山中(あ)委員 今までのことではなくて、これからどういうふうにこの行政改革に伴って変わるのでしょうか。それとも変わらないのでしょうか。
  187. 坂篤郎

    ○坂政府委員 行政改革全体に応じまして主計局の体制をどうするかということは、これから私どもも検討はしなくてはいけないというふうに考えておりますが、ODAのことに限って申しますと、ただいま申し上げましたように、私どもの方の主計局の担当の者というのは、いわばODAあるいは経済協力という担当の係というふうになっておりまして、そういう意味では最初から一元化されているということなんで、今のところ、そう何か大きな変化ということは余りないかなというふうに思っております。
  188. 山中あき子

    山中(あ)委員 もし大きな変化がないとすれば、大変心配でございます。  なぜかといいますと、これまでも、もし一元化されていて、そして同じようなプロジェクトのために各省庁、一昨年、中国には同じようなプロジェクトに関して二十の調査団が行きました、省庁ごとに、あるいは、省庁それからそのほかの分野も含めて。そういったむだをしているのに、専門家で変わらないということであれば、せっかく行政改革のこのチャンスに、調整能力が一元化して、そしてプロジェクトのむだを省いていくとしても、予算のつけ方の視点が同じであれば、本当に改革ができるのかな、本当にむだを省けるのかな、そこのところが大変心配になってまいりました。  今、お決めになれる立場にいらっしゃるかどうかわかりませんけれども、十分その辺のところは認識していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  189. 坂篤郎

    ○坂政府委員 私、御指摘になった件がどの件かというのは、ちょっと今直ちには思い浮かばないのでございますけれども、ODAに限らず予算一般、特にODAの場合はそういうことがございますが、私どもといたしましても、おっしゃいましたような重複する、これもケース、ケースいろいろなことがあるようではございますが、中にはやはり当然重複するのはむだであるというようなものもございまして、私どもとしても予算の査定に当たりまして、そういったことをなくすためにも一つの係でまとめて見るということを一生懸命やっているわけでございます。  今後ともさらに、私どもそういったことを排除するような努力を一段とさせていただかなくてはいかぬというふうに思いますし、また、先ほど外務大臣が御答弁になりましたように、政府全体としてもODAにつきましての体制が変わるということで、そういった任に当たられるお役所の方々とも私どももさらに相談をさせていただいて、効率を上げていきたいというふうに思っております。
  190. 山中あき子

    山中(あ)委員 イギリスのブレア首相の政権が発足して、九七年の十一月のことでございますけれども、ODAの名称、位置づけを変更いたしました。そしてこれは、国際開発のための省に格上げしたわけでございますが、決して大きな組織ではありません。組織表を見ると、本当に小ぢんまりとした組織です。このことによりまして、つまり発足して、改革をするというのはそういうことも含めているという意味でちょっと参考までに申し上げますと、まず目的が非常に明確化されておりまして、二〇一五年までに世界の貧困を半減するということ、それから、国連で努力目標とされております〇・七%の拠出をする。日本はまだ〇・二%の拠出しかしておりませんが。  そういう中で出された小さな小さな白書があります。これは全くの省略したパンフレットのようなものですが、これは子供たちでも読めるような形になっておりまして、その中に、この惑星の維持、開発のためにこの新しい省があるのだ、世界の一員としての認識ということが第一点。  そして第二点目は、世界のリーダーとしての自覚ということがちゃんとうたわれているわけでございます。  民間ボランティアとの協力、これが第三点。  第四点は、多国、それから多地域との協力を推進する。  そして第五番目には、開発の問題点ということを、子供への教育、これは開発庁はインターナショナルでございますけれども、イギリスの子供も含めて、開発ということはどういう利点があってどういう問題点があるか、そういう教育もここの中に入っております。  また、六番目として、国際的には、新しい国際法の制定ということに向けてイギリスはこれから努力をする、世界に呼びかけていくということもうたっております。  七番目には、将来のために、新地球社会のためにということで、一番最後のところにはどういう言葉が書かれているかと申しますと、私たちの孫のそのまた孫のその人たちのために今これを始めるのだという、ある意味でフィロソフィーをきちっとうたった、こういうものをつくって、そして実際に活動は、限られた活動、日本から比べますと総額は非常に少ないのですけれども、どういう顔で開発援助をするかということが非常に明確に見えてきているわけでございます。  そういう意味で、日本の援助は、九二年の大綱に非常にいい理念がうたわれておりますけれども、しかし現実の実施の方法としてはまだまだ考えなければいけないところがたくさんあるというふうに思います。  まず一番最初に、目的というのが非常に漠然としています。例えば、これまで日本貢献の中で、環境に関する貢献というのは、環境分野というのだけとってみても一五%ぐらい占めていますし、もう少し、森林、砂漠化防止とか、そういうものも含めますと、約二〇%の環境に係るODAの予算が使われていますけれども、このことは、海外に行っても日本にいてもだれもわからない。  そしてもう一つは、医療も世界でトップの貢献をしているわけです。二十一世紀、アジアの環境問題が非常に大きな問題になってくるということを踏まえますと、これからの十年は、例えば、日本は、環境、それから保健衛生、医療、こういった生活に特化させて援助をするのだというようなことを目標として決めれば、同じようにやっていても、それが内外ともに自覚もされるし、そして認識もされる。そういうようなことで、目標の設定の仕方が漠然とし過ぎているというふうに思います。  そういう意味で、大綱に沿って、本当に実施の基本計画というのをきちんと策定するなり大綱を見直しするなり、そういうことがありませんと、企画調整をするというだけの変化では十分にいかないのではないか。  そして、まとめて申し上げますと、これはEメールで随分NGOの方たちからも寄せられておりますけれども、ハードの部分からソフトの部分へということで、先日、人口開発議連のお役でミャンマーまで行ってまいりました。ミャンマーに建てられた、はっきり言えば大きな総合病院がありますが、これは、病院はすばらしく立派ですけれども、運営費用はミャンマーの政府の予算で行われるために運用が十分いかない、つまり、入院患者は週に二回しか引き受けられないとか。そうしますと、日本が援助したものというものがどれだけ効果的に評価されているかというのは非常に難しい面もあります。  また一方、同じような箱物であっても、同じミャンマーの看護大学というのは、これはイギリスの統治時代からのナースという職業、職分というものに対する深い理解もありまして、女性の学長でしたけれども、全国各地から女子学生を集めてナースを育てるということで、これはお金をほとんどかけないで看護婦をふやしていくという意味で、大成功している例です。  ですから、箱物が一律にだめだということではなくて、果たしてどう運用されていくのかということが大事です。もっとやはりきめ細かい、大切な援助の仕方というのは、例えば、私が行きましたら、ミャンマーは今大学がクローズされていますけれども、外国語大学だけ開いておりまして、その中で日本語教育というのは抜群の、一クラスに四百五十人ぐらい殺到するくらいの人気があって、そこで日本語とミャンマー語の辞書がない、これは日本で出ているのにないということで、こういう情報をとる。  そういうことからいっても、支援金を与えるとか資金を提供するだけではなくて、ネットワークとして、もっと内外のNGOの人たち情報を得ていって、きめ細かい、小さな小さなプロジェクトをもっとふやしていく、そしてハードからソフトへ移していく。この辺はかなり抜本的に、やはり基本計画なりを新たに立てて推進していっていただきたいと思いますが、外務大臣、いかがでしょうか。
  191. 高村正彦

    ○高村国務大臣 大変幅広い御質問をいただきましたので、全部答えられるかどうかわかりませんが、厳しい経済財政事情のもとで、国民の貴重な税金を財源としているODAにつきましては、その外交上の意義や援助理念、政策等を含めて国民の広い支持と理解を得るとともに、相手国側においても我が国の援助理念や政策が理解され評価されることが極めて望ましいわけでありまして、委員が御指摘になったように、顔の見えるODAを実施していくことが極めて重要だと考えております。  我が国の援助政策については、ODAの透明性、効率性を見直すべしとの総理の指示に従いまして、昨年十一月、関係省庁間で了解した申し合わせにおきまして、ODAの基本的方向性、重点分野、課題等を明確にするために、五年程度の期間、委員は十年ぐらいとおっしゃったわけでありますが、五年程度の期間を念頭に置いたODA中期政策を平成十一年の中ごろをめどに策定し、公表すること、また、主要な援助対象国について順次国別援助計画を策定し、公表することとしております。  このように、中期的な展望に立って、重点分野を明確にし、一貫性、継続性ある取り組みを行うとともに、状況に対応した援助政策の弾力的な運用、見直しの必要性についても留意することにより、めり張りのある援助政策を推進していきたいと考えているわけでございます。  人材養成といった分野での支援でありますが、箱物からソフトへという面でありますが、長期的視野に立った自助努力の最も重要な要素であり、国づくりの基礎となる、我が国の顔の見える援助の柱として重視しているところであります。  そうした観点から、研修員の受け入れ、専門家派遣、青年海外協力隊の派遣、あるいはセミナーの開催等を通じて途上国の人材養成に努めているほか、法、制度整備支援などの制度、政策づくりの分野や無償資金協力による留学生支援など、ソフト面での援助を今後とも一層充実させていきたいと考えているわけでございます。  NGOによる国際協力活動は、いわゆるきめ細かい援助として、政府としてもその重要性、役割を高く評価しておりまして、NGO事業補助金、草の根無償資金協力等を通じて、これらの活動を支援しております。平成元年度にNGO支援、育成の観点から導入したNGO事業補助金、草の根無償資金協力の予算はそれぞれ大幅に増加しておりますが、政府としては、今後ともNGO支援の強化に努めていく考えでございます。  こうしたNGO支援制度の運用に当たっては、従来から、NGO・外務省定期協議会等の場におけるNGOとの意見交換も踏まえ、その手続、運用面での改善に努めており、今後も可能な限り一層の改善を図っていきたいと思います。
  192. 山中あき子

    山中(あ)委員 大臣が触れていただきましたので、お聞きしたいと思います。  五月七日に、行政機関の保有する情報の公開に関する法律、情報公開法が通過いたしましたけれども、今もおっしゃったODAに関する情報の公開、透明性ということと、この中に、これは当然といえば当然の部分があるわけですが、外交防衛情報として非開示の部分というのがあるわけでございます。  しかし、今までたくさんの人たちから、どういう基準でODAの支援が決定されるのかとか、あるいはどういうプロジェクトが申し込まれていて、どういうものがだめでどういうものがいいのかとか、さまざまなわからない部分、見えない部分というのがあって、それで、調査をいたしましても、ODAにお金を使うということに国民がどんどん支持を減らしている。こういう現状を見ますと、これはガイドラインも同じでございますけれども、やはりわかってもらう努力をもっとするとすれば、情報の開示ということがあって、大臣も含めて、情報の開示、透明性ということを何度も何度もおっしゃっていらっしゃいますけれども、一体この情報公開法の中の外交防衛情報ということと、それからODAの透明性、情報の公開、これはどういうふうな基準ですることになるのでしょうか。
  193. 高村正彦

    ○高村国務大臣 政府開発援助に関する行政文書につきましては、開示請求が行われた場合の個々の行政文書の開示、不開示の判断は、情報公開法の規定に基づいて、個別に判断されることになるわけでございます。したがいまして、例えば、情報公開法に不開示情報として規定されている、他国との信頼関係が損なわれるおそれがある情報や他国との交渉上、不利益をこうむるおそれがある情報などが請求対象の文書に記録されている場合は、不開示との判断が行われることになります。  特にこういうことに当たる場合でない以上、積極的に、できるだけ開示してまいりたいと考えております。
  194. 山中あき子

    山中(あ)委員 平成十一年の四月一日以降の案件について、応札企業名、応札額、受注企業名、契約額などの事後開示を進めるということになりました。しかし、開示の方法というのは、海外経済協力基金と国際協力事業団での閲覧のみということになっているわけでございまして、非開示でない部分の情報であれば、これは、実際に、ODAの関係省庁局長で申し合わせた中にも、「ODAに関する各種情報に対して、国民が容易にアクセスできるよう、インターネットを活用し、」という具体的なことも言っていらっしゃるわけです、「情報内容を拡充する」というふうな申し合わせをしていらっしゃるのとどうも整合性がとれないのではないか。つまり、それがきちんと実施されていないのではないかというふうに思うのです。  そういうことですと、いろいろな人たちがアクセスしにくいという、そういう形で、これで開示しましたということになってしまうのだとすれば、この申し合わせの趣旨と現実の開示の方法とが違っているわけで、私は、これはやはり、国民がみんな、日本はこういうことをしているからこれに対して税金を少しでも払って、いろいろな国際的な信頼を得るという国益日本が得ていく、経済的な益もあるでしょう、しかし信頼の醸成という国益もあるわけで、日本のアイデンティティーを日本人自身がわかるというために情報開示は非常に大事なことだと思っています。  それで、今せっかく始まったのに、こういう方法であれば申し合わせと違うのではないかと思うのですが、大臣、いかがでしょうか。     〔委員長退席、杉山委員長代理着席〕
  195. 大島賢三

    ○大島(賢)政府委員 先生から御指摘ございましたように、ことしの四月一日から、特に入札過程の一連の情報につきましてはほとんどすべてにつきまして開示をするということにいたしまして、それを実行しておるわけでございます。膨大な量に及びますし、個々のものにつきましても非常に煩瑣なものですから、一応、実施機関、国際協力事業団とか海外経済協力基金におきまして閲覧ということで対応しておりますけれども、個別に御要求がもしあれば、それはもちろん個別の御要求に応じて情報の提供等をさせていただくということになると思います。  それから、インターネットによります情報の公開も、これも予算等の制約はもちろんございますけれども、できる限り行っていくことでございます。  基本的には、私どもも、ODAの事業に対しましてはできるだけオープンにいたしまして、それによって我々がやっておる事業をできるだけ多くの国民の皆様にも御承知いただく、それがODAに対する支持にもつながる、そういう意識で臨んでいくつもりでおります。  ただ、先ほど大臣からも御答弁ございましたけれども、案件の形成に当たります場合には、場合によりましては外交政策の一環というようなものとしてODAの事業も行われている部分がございますので、そういった部分にもし当たるものがあれば、情報公開法の規定に照らしまして個々のケースに従って開示、不開示の判断をしていく、こういうふうになるのではないかと思っております。
  196. 山中あき子

    山中(あ)委員 プロジェクトによっていろいろあるということですけれども、今の場合には、大綱では要請主義なわけでございますから、要請があったときに検討するから個々に検討していかなきゃいけないわけです。やはりこれからはプロジェクト方式に大きくかじを切っていって、環境について、日本はこういう森づくりをするところに予算を年間このぐらいなら出しますが、どこの国がちゃんとやれるか、プロジェクト計画を出してもらって審査をする、そしてプロジェクトにお金をつけていくというような、要請主義からプロジェクト主義というようなこと。  それから、バイの、先ほどおっしゃっていましたけれども、二国間も大事ですけれども、これからはイギリスだけではなくてすべてマルチの時代になってきているということを考えますと、マルチの協力のあり方ということになるとプロジェクトが主になってくると思いますが、その辺の変換をする、改革をするという点については、大臣、いかがですか。
  197. 高村正彦

    ○高村国務大臣 政府といたしましては、被援助国の主体性を重視して、その自助努力を支援するとの考えを援助の基本理念としておりますから、相手国側からの要請が先方政府としての正式なものであるか、また、その優先順位を確認するという意味で相手国政府の要請は必要と考えているわけでございます。  他方、政府としては、従来よりODAを実施するに際し、密接な政策対話を踏まえて相手国に積極的に助言を行い、プロジェクトの形成にも関与するなどして援助案件を共同で形成するよう努めており、単なる受け身としての要請主義ということではないということは御理解をいただきたいと思います。  今後とも、相手国政府との緊密な意見交換、協議を通じて開発上の課題についての認識の共有を図りつつ、我が国の援助理念や政策上の重点が明確となるような援助を実施してまいりたいと考えております。  それから、バイかマルチかという話でございますけれども、ODA大綱は、我が国援助の基本理念を明確にし、踏まえるべき原則、重点事項等を定めるとともに、広くODAに関する主要な問題についての基本的な考え方を示しております。マルチの援助についても、ODA大綱では、各援助形態並びにその他の協力の特性を最大限に生かし、その有機的連携・調整を図ることとし、また必要に応じ、国際機関等との適切な連携・協調を図ること等が規定されており、マルチの援助についても種々配慮した内容となっていると考えております。  現行のODA大綱は、ODAを実施する上で重要な役割を果たしてきており、現時点でその内容を修正する必要があると考えておりませんけれども、マルチとバイのバランスの問題も含めて、引き続きODA大綱の内容の適切な運用に努力していきたい、こういうふうに考えております。
  198. 山中あき子

    山中(あ)委員 複雑系と言われている時代でございますから、相手の国だけじゃなくて、先ほどおっしゃったNGOをもっと重視するのなら、相手の国からの正式な要請があるかないかということは一つ側面であって、もっと別の形の援助がたくさんある、そういう視点の切りかえというのを、外務省も含めて、私は査定をする大蔵省の方たちにもぜひお願いしたいのです。  これから二十一世紀のあるべき姿というものの中で、今の一元化の問題にまた戻ってまいりますけれども、国内外のNGO、二国間、多国間、ハードからソフトへ、そして評価法の確立、情報の公開、それから要請主義からの脱却、もう一点、これはきょうは議論できませんが、プロジェクト方式でやることになれば単年度予算ではやっていられない部分がありますから、これは憲法も絡みますけれども、多年度予算も可能にする、選択ができるような、そういう予算措置も含めて私たちの税金が、少ない税金であっても多い税金であっても、すべてむだのない、いい形の日本国益、そして日本世界への貢献ということのためにみんながわかる形で使われる、その視点をぜひ導入して検討いただきたいと思います。  これで質問を終わります。
  199. 杉山憲夫

    ○杉山委員長代理 次に、富田茂之君の質疑に入ります。
  200. 富田茂之

    富田委員 公明党・改革クラブの富田茂之でございます。自民党席から穏やかにという声がかかりましたが、厳しく質問させていただきたいと思います。  私の方からは、地方分権推進を図るための関係法律整備等に関する法律案第四百六十四条関係、行政書士法の一部改正について、何点か自治大臣にお尋ねしたいと思います。  一昨日のこの委員会におきまして、我が党の太田昭宏委員の方からも何点か質問ございました。鈴木行政局長または自治大臣の方から丁寧な御答弁をいただきましたが、若干まだ私の感覚からすると満足ある答弁ではないということで、ちょっと細かくなりますが、御質問させていただきたいと思います。  平成九年十二月十二日の行政改革委員会の最終意見で行政書士制度について取り上げられておりまして、その最後の部分で、「行政書士に関しては、業務独占の在り方について、今後、具体的な検討を開始すべきである。さらに、当面の措置として、行政書士への参入を少しでも増やし、また行政書士間の競争を促進することが急務であることに鑑み、行政書士試験の受験資格要件を廃止するとともに、行政書士会会則及び日本行政書士会連合会会則に、行政書士の受ける報酬については記載しないこととすべきである。」こういうふうな提言がされておりまして、この提言を受けまして今回の地方分権一括法の中に行政書士法の一部改正が出てきた。  改正点、大きく五つほどございまして、行政書士試験の受験資格要件を廃止する、これが一点。二点目として、行政書士試験の施行に関する事務は、都道府県知事が行う。三点目として、都道府県知事は、自治大臣の指定する者に行政書士試験の施行に関する事務を行わせることができるものとする。ここまでは今回の地方分権推進ということである程度容認できるのではないかと思うのですが、残り二点で、行政書士会及び日本行政書士会連合会は、行政書士がその業務に関し受ける報酬の額について統計を作成し、これを公表するよう努めなければならないものとすること。そしてもう一つ、行政書士会及び日本行政書士会連合会の会則に記載しなければならない事項から、行政書士の受ける報酬に関する規定を削除すること、この二点が今回の法案に出てまいります。  なぜこういうふうな規定が必要になったのか、この点についての自治省の説明がいまだに不十分ではないのか。  行政書士会の皆様の中で意見が大分分かれておりまして、このままでいいんだという方もいらっしゃれば、私の地元の千葉県では、こんなのは全然だめだとほぼ全員が反対。先週の土曜日も行政書士会の皆さんの会合がありましたけれども、何とかしてくれ、地方分権は大事だけれどもこのまま進められては本当に困るというような御意見をたくさんいただきました。その際、千葉県行政書士会の先生方からアンケートをとったんだということで、アンケートもいただきました。百名の方で、この法案に八十四名が反対している。賛成者は八名にすぎない。  こういうことで、本来、行政書士法というのは議員立法で、昭和二十六年以来ずっと続いてきて、太田委員も言っていましたけれども、昭和二十六年以来本当に町の相談役、一番現場に近い形で司法、行政の相談役として頑張ってきた行政書士の皆さんが、このまま自分たちの意見が通らないままこういう規定が本当に導入されていいのか、そういう疑問があります。  なぜ、行政書士会の会則また行政書士会連合会の会則の中から、もともとの法文では必要的記載事項とされていた報酬に関する規定を削除しなければならないのか。その点、ぜひ具体的に説明していただきたいと思います。
  201. 鈴木正明

    鈴木(正)政府委員 お答えいたします。  今回の改正によりまして、行政書士会また行政書士会連合会の会則の中から報酬規定を削除するということでございます。  行政改革委員会でいろいろ御議論いただきまして、その最終意見におきまして、今お話のございましたように、「行政書士への参入を少しでも増やし、また行政書士間の競争を促進することが急務であることに鑑み、行政書士試験の受験資格要件を廃止するとともに、行政書士会会則及び日本行政書士会連合会会則に、行政書士の受ける報酬については記載しないこととすべきである。」とされたところでございまして、この最終意見を受けまして閣議決定されました規制緩和推進三カ年計画に基づきまして、今回の改正を行おうとするものでございます。  その改正の趣旨につきましては、行政書士の皆様にも御説明を申し上げているところでございますけれども、今後とも引き続き、御理解を得るように努力をしてまいりたいと考えております。
  202. 富田茂之

    富田委員 ちょっと今のじゃ何にも答えになっていない、前回もそういう答弁をされていますけれども。そういう答弁をするから、行政書士会の皆様は不安に思うんですよ。  行革委員会の意見がそういう意見なのは間違いない。行政書士会の皆さんも自治省から説明を受けたかもしれない。なぜ報酬に関する規定を会則から削除しなきゃならないんですか。そこの部分について何の説明もないじゃないですか。そういうふうに委員会で意見が出たからそうなったというだけで、理由は何なんですか。そこがはっきりしないから行政書士会の皆さんは不安に思っていると思うのですよ。ぜひその点を教えていただきたいと思います。
  203. 鈴木正明

    鈴木(正)政府委員 お答えいたします。  行政書士が受ける報酬の額につきましては、規制緩和という観点、これが今ほど申し上げたことでございまして、競争の制限という観点から規制緩和の観点で、会則事項から除くということが求められている。  それから、この報酬の額の変更につきましては、会則の変更になりますので、それは都道府県の認可事項でございます。それで、都道府県の事務の増大の要因となっていることもありますので、その二つの理由で、今回会則事項から除くというものでございます。
  204. 富田茂之

    富田委員 規制緩和と都道府県事務の簡素化だというふうに言われますけれども、会則から報酬規定が除かれると実際現場でどういうことが起きるかというと、私がお話を聞いた行政書士の先生の事務所にこういう電話がかかってきたそうです、先生の事務所ではこの仕事を幾らでやってくれますかと。まだ法が改正されていないのに、もうその段階でこういう話が出てきてしまう。ダンピング合戦になるんですよね。そういうダンピングに勝ち残った行政書士さんだけが今後残ってくる。  これは、正当な競争の結果きちんと勝ち残っているというのじゃないんだと思う。安くできる大きな事務所、あるいはいろいろな企業と関係した行政書士さんたちだけが生き残るようになってしまって、今まで本当に、町の現場で、いろいろな方、市民の皆さんの相談に乗っていた方たちが生き残れなくなる。そういうことをなぜあえてしなければならないのか。  そういう点から見ても、報酬の額をわざわざ会則から外せというのは合理的な理由がないというふうに思うんですけれども、これは答弁を求めますとまた行政局長は長くなりますから、そういう問題点があるということを指摘させていただきます。これは、今後のこの法案の審議の中で、ぜひあるべき姿というのを考えていただきたい。  今行政書士の先生たちは、報酬の決め方は、一枚の書類幾らというような形でなっています。その枚数主義が本当に正しいのか、合理的なのかどうかについて、行政書士会の皆さんもみんな検討しています、本当にあるべき姿というのを。皆さんも一生懸命検討しているので、そういう点も含めて、今後、報酬をどういうふうに決めていったらいいのか、こういうふうに会則からただ削除すればいいんだというふうな強引なやり方じゃなくて、行政書士会の多数の意見をきちんとよく自治省の方も聞いていただきたいなというふうに思います。  なぜこういうふうに問題が出てきたかというと、もともと行政改革委員会の意見というのがちょっとへんぱだったのじゃないか。こういうことを言っているんですよね。「無資格者であっても必要かつ十分なサービスの提供を受けられると判断する国民は、無資格者が、法律上の規律に服さないことも承知した上で、自己の責任で、そうした者に依頼すればよいのではないか。有資格者も無資格者も市場という共通の土俵で競争することによって、全体として、より良いサービスが、より安価に提供されるようになるのではないだろうか。」  こういう考え方は非常に危険だと思いますね。こういう考え方に基づいたから、今のような強引な、報酬額を会則から削除しろというような短絡的な発想になったと思うので、この点をやはりもう一回きちんとみんなで議論する場を設けて、これが本当に市場主義なのか、国民のサービスに本当に有意になるのかということをきちんと議論するべきだというふうに思います。  もう一つ、この規定の中で、報酬額の統計をとって公表しろという規定が出てきていますよね。こんなことが実際できるのか。行政書士さんたちがある仕事をして、その仕事に対して一体幾らの報酬をもらったのか、そういう統計をとることが可能なのか。それが本当に公表できるのか。そういうことができるから、今回報酬の額を会則から削除していいんだというふうにどうも自治省は考えられているようですけれども、どんなふうに統計をとるのか、そういうことも一切明らかにされていません。  行政書士会の方の雑誌に、今の連合会の会長さんが書かれた文章の中にこんな文章があります。「統計の作成、公表では、報酬額に関しては、最高・最低・平均の値を示すことになろうかと考えられます。統計の中身や手法については何ら法的縛りはありません。成案を得ていませんが、今年度に設置する報酬研究委員会による検討を踏まえて行うこととしております。」というふうなことで、どういうふうにしていくかもまだ全然見えていないのですね。法律の中にも、この統計公表は単なる努力規定、訓示規定であって、何ら拘束力がないというような書きぶりになっています。  そういうことを考えると、行政書士の皆さんが報酬額が削除されるということに関して物すごく不安を覚えているというのも、そのとおりだと思うのですね。ぜひこの規定の運用に当たっても、もう少し自治省の方できちんとした手当てをして、こんなのはできるとは思えませんので、きちんとここの部分についても自治省なりのフォローをしてもらいたいと思いますが、そこはどうですか、行政局長
  205. 鈴木正明

    鈴木(正)政府委員 お答えいたします。  この報酬の統計の作成、公表ということでございますが、その趣旨は、報酬の額に関する情報を提供することによりまして、依頼者の選択あるいは行政書士の業務の利便に資するということで、この統計を作成し、公表するように努める旨の規定を置くことといたしたものでございます。  それで、統計の作成は行政書士会及び日本行政書士会連合会が行うことといたしておりますので、具体的な作成方針につきましては、日本行政書士会連合会等において今後検討していくことになるというふうに考えております。自治省といたしましても、日本行政書士会連合会に対しまして、お話の、適切な助言を行っていく考えでございます。
  206. 富田茂之

    富田委員 本当に適切な助言をきちんとしていただきたいと思います。  あと五分しかありませんので、法務省の方にも来ていただいていると思いますが、昨日、参議院の方で、司法制度改革審議会設置法が成立しました。これで、内閣のもとにこれから司法制度改革審議会が動き出すわけですけれども、今、行政書士の皆さんに、自分たちも、この司法制度の改革の論議の中で行政書士制度のあり方を検討してもらえるんじゃないか、そういうような期待が物すごくあります。ところが、一昨日の局長の答弁ですと、行政書士制度というのは規制緩和だけの問題なんだ、各士業がどういうふうに規制緩和されていくか、その横並びを見ながら、行政書士についてもそういう点を検討していきたいということしか言われていませんでした。  これから、本当に司法というものが大きな役割を果たすようになる、またその司法につながる行政手続が二十一世紀に向けて本当に大事になると思います。  司法の基盤整備といっても、弁護士、裁判官、検察官、その法曹三者だけが基盤の整備をしても、決して国民のニーズにこたえないと思うんですね。法曹三者の周りにいる、周辺業務を担当されている同じ士業の司法書士の皆さん、行政書士の皆さん、社会保険労務士さん、そういう方たちが一体となって本当に国民のニーズにこたえるような基盤をつくっていかないと、なかなかこれからの社会は乗り越えられないんじゃないかというふうに思います。  この司法制度改革審議会の中で調査審議の対象に、そういう、弁護士と司法書士、あるいは司法書士と行政書士の業際の問題、あるいは今後の行政書士制度のあり方ということについて、それが調査審議の対象になるのか、その点について、ぜひ法務省の方からお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  207. 房村精一

    ○房村政府委員 今委員から述べられましたように、司法制度改革審議会がこのたび内閣に設置されることになりました。この審議会は、所掌事務といたしましては、二十一世紀の我が国社会において司法が果たすべき役割を明らかにし、国民がより利用しやすい司法制度の実現、国民の司法制度への関与、法曹のあり方とその機能の充実強化、その他の司法制度の改革と基盤の整備に関し必要な基本的施策について調査審議することとされております。そういう意味で、司法制度を広く議論の対象とするということが考えられております。  ただ、その場合に、具体的な審議項目としてどういう事柄を取り上げるかということになりますと、この司法制度改革に関しまして種々の御提言がなされております、あるいは国会審議の過程でも問題点の指摘がいろいろとされておりますので、審議会で直接審議に当たられる委員の方々が、そのような各種の提言であるとか国会審議の経過であるとかそういうものを踏まえて、具体的な審議項目については適切に選定していただけるというぐあいに考えております。
  208. 富田茂之

    富田委員 そういう具体的な審議項目の設定に当たって、きょうの委員会審議なんかも踏まえて、行政書士の皆さん、申請手続の代理ということも物すごく要望されております。この点についてもいろいろなところで議論になっております。そういうものも含めて、ぜひ、司法制度改革審議会の議題にしていただいて、あるべき、本当にいい行政書士制度をつくっていっていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。  時間が参りましたので、これで終わります。どうもありがとうございました。
  209. 杉山憲夫

    ○杉山委員長代理 次に、上原康助君の質疑に入ります。
  210. 上原康助

    上原委員 民主党の上原です。  もう本行革特別委員会で、いろいろ総論的なことは御審議というか、政府の御見解のお尋ねがあったと思うのですが、各論の議論の段階に入っているのですが、まず行革に対する基本的お考えについて、担当大臣の御見解を改めて聞いておきたいのです。  確かに、行革必要性はだれも否定をしませんし、私たちもそれを推進するという立場で努力をしてきているわけですが、今度のこの提案をされている法案改正あるいは省庁統廃合、地方分権等々を含めて、果たして行政の簡素化、効率化、透明化ということが実現できるかとなると、私は相当疑問を持たざるを得ません。  この配付されている膨大な資料、私はこれこそ行政のむだだと思わざるを得ないのですね。これだけの法案、本委員だけでなくして各議員に配付されているものを、どれだけの国会議員が本当に点検をして法案審査をするかということをつくづく、まあレギュラーのメンバーでありませんので、そういうことを思わざるを得ませんでした。  そこで、太田総務庁長官にお尋ねしますが、今私が指摘した点を含めて、今度おやりになることによって行政の簡素化あるいは効率化、透明化が実現できて、国民が受ける行政サービスということ、あるいは国民の側から見て利便性とか、やはり簡素化された、身近に行政や政治を感ずる、受けとめられる、そういう改革になるとお考えなのかどうか。総務庁長官自治大臣の率直な御見解を聞いておきたいと思います。
  211. 太田誠一

    太田国務大臣 今回の中央省庁改革におきましては、国の行政が本来果たすべき機能を十全に発揮しまして、内外の主要な行政課題に的確かつ柔軟に対応し得るようにするために、各省は主要な任務を基軸として、できる限り総合性、あるいは整合性でありますけれども、整合性及び包括性を持った行政機能を担うように再編成をすること、基本的な政策目的の対立する行政機能はできる限り異なる省が担うことなどを勘案しつつ、中央省庁改革基本法において一府十二省庁の設置を定められたものであります。  そこで、今回の改革は、政治主導ということは、国民が選択をすることのできる、国民がその生殺与奪を握っております政治家がリーダーシップを実際にとれるということは、国民主権の理念に沿うことでございます。そして、国民のニーズを的確に、機動的に反映できるような一種の前提を整えようとしているわけであります。  さらにまた、行政を簡素かつ効率的なものにする。すなわちこれは、今までの、よくあります縦割り行政に対する批判、各省庁が割拠分立して自己増殖をし、非常に大きな政府になってしまったという批判に対して、それを簡素で効率的なものにする。あるいは、財政負担ももちろんでございますけれども、余りいろいろなことに、民間の経済に対して介入をし過ぎたのではないかということに対する整理をいたさなければいけない。そのためには総合性、機動性、透明性。透明性というのは、これは国民の側から見て、主権者である国民に行政の姿が、日ごろやっていることがよく見えるようにする。とりわけ、情報公開法で言う透明性というのは国民の側が求める透明性でありますけれども、逆に今度は政府の方から、行政の方からむしろ開示をしていくというふうなことが目的になっております。  そのような政治主導、それから総合性、機動性あるいは透明性、あるいは今言う国民に対して負担を減らすというふうなことが行政改革の目標になっておる。この法案に基づく新たな体制への移行を実現することによりまして、行政が国民のニーズに対してこれまで以上に的確かつ柔軟な対応が可能となるものと考えております。
  212. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 いろいろな切り口があろうかと思います。  今太田長官が基本的にお話をいただいたこととほぼ共通しておるわけですけれども、言うなら、国、地方を通ずる行政システムをもう一遍再構築していこう。そして、今日までの日本の近代化の歴史の過程でやってまいりました中央集権、あるいは官尊民卑と言うと語弊がありますが、官主導型の国つくり、そういったいわゆる効率性を最重点に置いたような国つくり、したがって行政のシステムもどちらかというと事前調整型、そういう中で、成功とともにいろいろな問題が指摘をされてきた。そういった中で、もう一遍ここでトータルとして基本的に問い直す時期に今差しかかっているのではないか。  そういった点で、官と民のあり方、あるいは国と地方のあり方、特に、そういう中で、私はこの委員会でも少し、自分の言葉を使って大変僣越なことでありますが、申し上げてきたのは、キーワードは意外と自立と自律という言葉に集約されるのではないか、そんな思いをいたしておるわけでございます。  それは、みずから立っていくということと自己規律ということ、それは自己責任ということも一つのキーワードだとは思います。しかし、それだけのことをするという以上は、当然のことながら行政のサイドは、自分の力で、自分の責任において物を考え、判断し、行動していくという、それをやっていくにはそれだけの情報がしっかりと公開がなされなければならない。そういう意味で、オープンであるということが非常に大事である、それから簡素であるということが非常に大事である。  そういう意味で、やはり複雑なことであれば専門家が介在しなければどうにもならぬわけですから、そういった意味で、行政改革ということ、地方分権ということ、規制緩和ということ、そして意識改革国民一人一人、企業、国民、国としてもそういった意識改革、こういったトータルな私たちは今見直しの時期にあるので、それを今その中で、中央省庁における再編問題等、地方分権問題に関しての今日までまとまったところを一括してお願いを申し上げているということであると思っております。     〔杉山委員長代理退席、委員長着席〕
  213. 上原康助

    上原委員 総論的なことを今さら議論しても申しわけないような感じもしますのでもう控えますが、お二人の大臣がおっしゃっていることは、それは相当共通性があるし、私は当たっていると思うんです。問題は、そういう行革にならない可能性が大きい、こういうことを私は申し上げているわけで、果たして、機動性、総合性、政治の主導性というものが発揮できるかどうか。  何というか、行政機構の自己増殖をコントロールする、同時に官と民の役割分担をきちっとして、できるだけ官を減らして市場原理に基づいてサービスも供給していくという方向はいいと思うんですよ。だが、我が国の行政の中で一番の弊害である縦割り行政というものが今度の行革によってなくなるかというと、私はなくならないと思う。  この点はこれからいろいろ議論されていくと思いますので、問題点だけを指摘して、お二人の大臣がおっしゃっている哲学的な御見解は当たっているかもしれませんが、残念ながら、そういう方向にはこの行革はならない感じがします。それを、これから具体的に問題を指摘しながら議論をしていきたいと存じます。  まず、官房長官もいらっしゃっておりますので、お時間の都合もあるかもしれませんが、かねがね、今度の行政改革の中で、特に中央省庁の統廃合の中で沖縄開発庁の位置づけがどうなるかということに大変懸念を持っておりました。  この件に関する限りは、これは太田総務庁長官よく御存じのように、一時期は雲散霧消させるような雰囲気がなかったわけではない。私も何回か総務庁にも開発庁にもまた行政改革本部にも足を運んで、いろいろ要請もし、努力をしてまいりましたが、そのおかげで、また政府を初め沖縄開発庁長官、官房長官等々の御努力もあって、内閣府に沖縄開発庁に今ある機構を、沖縄担当大臣を置いてやるということについては私は評価をし、またその配慮に対しては敬意を表しておきたいと存じます。  そこで、二、三点確認をさせていただきたいわけですが、この担当大臣の権限の具体的内容は一体どうなるかということと、他省庁の長に資料の提出を求めることのできるいわゆる資料提出請求権、そういうものも含まれるのかどうか。また、他省庁の政策等の意見を聞いて、調整機能というものも持つのか。場合によっては勧告権、そういうようなことなども、今度内閣府に置く沖縄開発庁に相当する沖縄振興局その他の機関においてなされるのか。そのあたりのことについては、要綱なりあるいは提出されている法案の中では十分ではございませんので、ぜひ政府の御見解を改めてお聞かせいただきたいと存じます。
  214. 野中広務

    ○野中国務大臣 お尋ねの沖縄担当大臣の所掌についてでございますが、沖縄対策を担当する担当大臣が常置をされるものと考えております。関係行政機関の長に対する資料の提出請求権、勧告権及び報告を求める権利並びに内閣総理大臣に対する意見具申権等、強力な調整権限が付与されておるところでございます。  また、沖縄対策担当部局の組織といたしましても、担当大臣の指揮のもとにそれぞれ事務を遂行するために、沖縄対策を担当する内閣府の審議官局長級分掌官及び沖縄振興局が置かれることになるわけでございます。さらに、現地に沖縄総合事務局が存在することは言をまたないわけでございまして、現行の体制、機能は確実に維持されるものと考えております。
  215. 上原康助

    上原委員 その点はいろいろ御配慮いただいたことに敬意と評価をしておきたいと思います。  それで、念を押すようで恐縮ですが、沖縄担当相が、例えば、外務省や防衛庁にかわってといったらちょっと性格上難しい面があるかもしれませんが、沖縄関係外交的なこと、あるいは基地問題とか、また、場合によっては安全保障にかかわるようなこと等もないわけではない。そういうことまでは沖縄担当相が直接というか、今度の省庁改革においても、今官房長官、開発庁長官がお述べになったことで包含されないんじゃないのか。外務省、防衛庁は、そういうことについてはやはり従前どおりの対応でいくという見方もあるようでございます。  しかし私は、やはり、基地問題等々、跡利用問題はもちろん現在も開発庁の努力があるわけですが、そういうことを包含した沖縄問題、沖縄政策というものを担当し得るような調整機能まで持ってもらいたい、また、できるようにやっていただきたい、こう思うんですが、その点はどうお考えですか。
  216. 河野昭

    ○河野(昭)政府委員 沖縄担当の特命担当大臣でございますが、この特命担当大臣というのは、まさに各省庁レベルより一格上の、高い立場から各省を調整するという任務を持っているわけでございます。一方、例えば、外務大臣防衛庁長官、それぞれの任務をお持ちでございます。  したがって、その担当大臣というのは、あくまでも、内閣の担当大臣という立場でそれらの各省大臣等々と御相談しながら物事をお進めになる、そういうお立場でございます。
  217. 上原康助

    上原委員 結構、調整機能は持てるということですね。
  218. 太田誠一

    太田国務大臣 端的に言えば、各省がやっていることについて文句も言えるし、また、それを聞かなくてはならないし、また、それで言うことを聞かないということになれば、総理大臣に対して是正をしてもらいたいという意見具申ができるという大変大きな力を持っております。
  219. 上原康助

    上原委員 それは結構なことですが、やはり調整機能を持てる、あるいはそういう意見具申もできるという、きちっとした法的裏づけというものが必要だと思いますので、これからの具体的な内容で、ぜひそういう点も御配慮を願いたいと存じます。  それと、もう一点というか、今内閣に内政審議室を置いて、いわゆる沖縄の基地問題あるいは島田懇等々のプロジェクトなどを統括しているわけですが、この扱いは一体どうなるのか。沖縄政策協議会というのは期間は決められていないわけですが、当分の間これは継続をしていかざるを得ない、またいってもらいたい、いくべきことだと私は認識をしているんです。  今度の再編統合で内閣府に置く沖縄開発庁に相当する機構と、今の内政審議室、政策協議会における事務局の関係はどうなっていくのか、位置づけはどうお考えなのか。まだ具体化はしていないかもしれませんが、その点についてもひとつお聞かせを願いたいと存じます。
  220. 河野昭

    ○河野(昭)政府委員 今回、内閣府がまさに総合調整という事務を持つわけでございまして、具体的には、内閣府設置法の十一号でございますが、「沖縄に関する諸問題に対処するための基本的な政策に関する事項」という所掌事務がございます。この所掌事務を所掌するのが、先ほど官房長官が申し上げた、いわゆる内閣府の調整部門に置かれます局長級分掌官でございます。  今先生の御指摘にございました沖縄政策協議会の関係の事務につきましては、この内閣府に置かれます局長級分掌官のところがこの事務を見るということになると考えております。
  221. 上原康助

    上原委員 それともう一点、沖縄県や沖縄側が大変懸念をしたことは一応解消されたというか、解決していただけるようですが、行政運営の中で、政治主導ということももちろん大事なんですが、いわゆる現在の事務次官に相当するポストの配置ということ。それから、御承知のように、振興局と総務局が現在ございます。特に、他省庁とのいろいろなバランスをとる、あるいは予算編成、権限執行等々の面では、事務次官相当のポストというものは絶対不可欠だと私は考えておるわけですが、この扱いについてはどういう位置づけをお考えなのか。二つ局長ポストに相当するものは、さっきの官房長官の御答弁からすると、現行は維持されるということですから、相当ポストは恐らくお考えだと理解をしているわけですが、念のためにお聞かせを願いたいと存じます。
  222. 河野昭

    ○河野(昭)政府委員 先生が今おっしゃいました次官に準ずる職としまして、今回の内閣設置法案に、内閣審議官二人を置くことになってございます。この内閣審議官といいますのは、命を受けて内閣府の所掌事務の重要な事項をつかさどるわけでございます。したがいまして、総理の御判断で、沖縄問題は重要であるというお考えであればこの職につかれる、そういうことになろうかと思います。
  223. 上原康助

    上原委員 それは、総理大臣の御判断でやるようになるということですか。組織上というか、法律上そういう位置づけは考えておられるかというのが私のお尋ねなんです。
  224. 河野昭

    ○河野(昭)政府委員 本法案を検討する段階では、当然そういうことがあり得べしということを前提に検討しております。ただ、法律上の建前としては、具体的な任務の内容は総理がお決めになる、法律の建前はそうなっているということでございます。
  225. 上原康助

    上原委員 その点は、官房長官か太田総務庁長官大臣からぜひ、私が今要望を込めて、法律上というか、実体上そういう機構になるという前提でひとつ御検討いただきたいのですが、よろしゅうございますか。
  226. 太田誠一

    太田国務大臣 そのようになると確信をいたしております。
  227. 上原康助

    上原委員 ぜひひとつ、これは私が特に申し上げていることでもあるわけですが、県民総意の要望であり、今注目している点ですから、実現するように特段の御配慮をお願いしておきたいと存じます。  そこで、次に、地方分権の一括法案のことと関連してお尋ねをさせていただきたいと存じます。  冒頭申し上げましたが、四百七十五本の法案を一括して特別委員会審議をするというのは、これは、政府あるいは与党の側からすると効率性があるかもしれませんが、どう考えても、これは国会の審議権の問題ですから、国会運営のことですから余り政府にいろいろ申し上げてもどうかと思うんですが、もう少しじっくり各常任委員会なり担当委員会でいろいろと審議をするような機会というもの、国会の審議権ということを大事にしてもらいたいなというのが私の実感ですね。  そこで、具体的なことで、駐留軍用地特別措置法改正の問題を取り上げてみたいと存じます。  これは、九七年の改正に当たってもいろいろ議論があり、大変苦労した、苦渋の選択を迫られた案件であります。今回の再改正案というのは、一つは、これまで知事や市町村への機関委任事務となっていた土地・物件調書への代理署名及び公告縦覧を国の直接執行事務として、収用委員会の却下裁決後の総理大臣による代行裁決制度を創設するとなっているわけですね。県、市町村が駐留軍用地強制使用を容認しない、そういう拒否権というものを、そういう手続上の手段をすべて奪うことになると思うんですね。  私は、政府にもいろいろ言い分はあると思うんですが、余りにも強引な法改正じゃないのかというのが私の率直な見解なんです。なぜ、あえてこのことをこの時点においてやらざるを得ないのか、やるのか、まずその理由から説明をしていただきたいと存じます。
  228. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 今回の駐留軍用地特措法の改正におきましては、国と地方公共団体との役割分担を明確にするという観点から、これまでの都道府県知事や市町村長が処理していた土地調書等への署名押印代行等の事務を国の直接執行事務とすることとしております。  委員がよく御理解いただいておるように、これまでは都道府県知事や市町村長等の地方公共団体の機関に委任される国の事務でございましたが、この機関委任事務を今回全体として廃止するということになりましたものですから、もともと国の事務でありましたこれらの事務を国の直接執行事務とすることに改めたというのが今回の趣旨でございます。  また、これらの事務は、一定の要件を満たせば必ず実施しなければならない事務でありまして、その執行に当たって、都道府県知事や市町村長の裁量の余地のない性質の事務であります。したがって、これらの事務を国が直接執行するからといって、御指摘のように地方の意見を述べる機会を取り上げることになるとは考えられません。  一方、今委員も触れられましたが、国民の財産権の尊重という観点から最も大事な意味を持つ使用・収用裁決の事務につきましては、引き続き都道府県に置かれる収用委員会にお願いすることとしており、地元の関係者の意見が十分反映される仕組みとなっております。また、手続の最初の段階である内閣総理大臣による障害物の伐除の許可の場合やあっせん事務について、知事、市町村長の意見を聞く機会を十分設けているところでございます。
  229. 上原康助

    上原委員 そういう御答弁は既にほかの委員のお尋ねについてもやっているということは私もわかるわけですが、国と地方の役割分担をする、あるいは地方分権委員会の勧告、答申に基づいて、第三次でしたか、こういう機関委任事務はなくするので今度国の方の直轄事務にするということは、それは政府の言い方としてはそう言わざるを得ないかもしれませんが、納得できる御答弁とは言えません。  そこで、自治大臣、今回のこの法改正を地方分権一括法案の中で処理しようとする妥当性というのは私は納得できないのですよね。沖縄の米軍基地問題、土地問題というのは、もう沖縄戦以降、米軍の占領、そして米軍支配、復帰時点の特措法の制定等々、いろいろな歴史、経緯があって、本当に、単にこういう地方と国の役割分担とか機関委任事務というような一般論的法案の処理でなされるべき案件ではないと私は思うのですね。これだけでも別個に法案として出して、安全保障委員会であるとか、あるいは外務委員会、沖特等合同委員会で、しっかりと沖縄の基地問題、土地問題、その実態というものも議論をしながらやるべきことだと思うのですよね。駐留軍用地の強制使用に対して自治体が拒否する手段をすべて奪うということは、私は、やはり民主主義の基本を極めて阻害する、覆すものだと言わざるを得ないのですね。  しかも、その土地所有者、地主の財産権にかかわる重要な案件を一括処理しようとする妥当性について、これは野田大臣、何も基地に反対しているとか安保をどうするとかいうことでない。沖縄のすべての市町村長は今度の改正については疑問を持っているのですよ、おわかりのとおり。  この点については、地方自治を担当する大臣としては、私は、やはり政治家という広い意味での良識というか、政治ということ、あるいは地方と国の役割分担、この種の重要な案件に対するそれこそ政治家の見識というものがあっていいと思うのですが、その点について自治大臣はどうお考えですか。
  230. 野田毅

    野田(毅)国務大臣 ちょうど二年前、沖縄の米軍基地に関して期限が来るというようなことで、特措法の問題が大変大きなテーマになりました。そのときに、当時、新進党であったと思いますが、新進党の小沢党首と当時の橋本総理がトップ会談を持たれました。  その中で、国が責任を持ってやるべきことは国の責任においてやるべきだ、地方自治になじむこととなじまないことがあるというような仕分けの中で、詳しいことは今ちょっと手元には置いておりませんけれども、合意がなされたことは、御案内のとおりだと思っています。  しかし、そのときに、では直ちにその法改正をやるべきだというような話があったんだけれども、橋本総理から、地方分権推進委員会において、今国と地方の役割分担について十分な調査研究、いろいろその作業をお願いしている最中である、したがって、その結論を得た上で必要な手当てをいたしたいという旨のお話がありました。  そして、まさに地方分権推進委員会、あれは平成何年ですかね、七年、五年ですか、国会決議が平成五年でしたね。その後、地方分権推進法の制定に基づいて地方分権推進委員会が正式に作業を開始して、その中でこういうことができました。  その中でしっかりと議論をしていただいた中で、国と地方公共団体との役割分担を明確にする観点からすれば、国は、国が国際的に負っている安全保障上の義務の履行に全責任を負い、知事や市町村長は地方公共団体の代表者としての役割に徹することをすべきであるということを基本として、具体的な現行の機関委任事務についての交通整理をしていただいたわけで、それを受けて地方分権推進計画を昨年決定し、それに基づいて今回一括して他の法案と同じようにお願いをしているということでございまして、私は、実にきちんとした手順を経た上で公正に進められてきたことであるというふうに評価をいたしております。
  231. 上原康助

    上原委員 自治大臣が、大臣としてあるいは政治家としてそういう御認識なら、それもまた一つの御見識でしょう。だが、そういう経過があったとはいえ、米軍基地の存在によって異常な重圧を受けている、負担や犠牲を強いられている。最も身近にその実態を知っているのは総理大臣ではないのですね、残念ながら。やはり、その基地所在市町村の首長さんなんです。そういう意味で、私は、この法案については、もう時間もありませんから多くは議論しませんが、これだけはぜひ指摘をさせておいていただきたいと思います。  今度の改正案の特徴というもの、我々から見て納得しがたい点は、おおよそ三点あります。  その第一は、国民の財産権の保護、地方自治の権限に属すべき憲法的価値よりも、米軍基地の安定的提供を行うために、またまた日米安保体制、法体系というものを優先させようとしている。  これはすべてが否定しているわけじゃないのです、沖縄側の首長さんにしても。たまたま九五年のああいう不幸な事件があったから、前大田知事も公告縦覧であるとか署名押捺であるとかそういうのを拒否なさったという政治的背景があるだけで、四年間に一回は、民主主義のルールに基づいて首長選挙があるのですよ。だから、土地収用委員の任命だって変わるのですよ。そういう民主主義の、時間のかかる、あるいはコストがあるということを全く無視するやり方というのはいかがかと思いますね。  第二は、法案改正が、今御指摘がありましたが、地方分権の流れを逆手にとって行っている。これはだれが見てもそう思わざるを得ません。つまり、地方分権委員会の第三次勧告を全面的に受け入れたと言っておられるわけですが、自治体への機関委任事務となっていた代理署名、公告縦覧を、国防、外交は国の専権事項という大義名分のもとに国の直接事務に変更しようとしている。これは、沖縄側からすると納得できません。  第三は、これは強制使用対象地の使用裁決を行う収用委員会の形骸化にほかならない、皆さんがどういろいろおっしゃろうが説明なさろうが。この点については、今もありましたように九七年改正の際にも、使用期限切れ後も収用委の審理中は継続使用できる暫定使用制度が設けられた。それさえも今度はなお改悪をしようとしているわけですよ。  今回、またもう一つ問題点は、新規収用についても取り入れて、収用委が緊急裁決をしなかったり却下裁決を下した場合に、内閣総理大臣が代行裁決する制度を創設して、事実上、収用委の権限も骨抜きにしているじゃありませんか。これが沖縄の県民あるいは大方の、もう全体と言っても過言ではないと私は思うんですが、そういう受けとめ方があって、政府の今おっしゃったような説明では当然納得しない。  そこで、今私が指摘したことについて、官房長官、九七年のこの法改正のときにあなたは名言をおっしゃった。大政翼賛的国会の雰囲気というのは異常だと。いまだにそれは沖縄側からすると大変注目されているわけですよ。政治の皮肉というのか歴史の皮肉というのかわかりませんけれども、今回のこの改正案については私が今指摘をしたような見方が沖縄側に強い。もう少し辛抱というか、法律で締めつけるのではなくして、沖縄側の自主的な判断というものを大事にすべきでなかったかと私は思うんですが、これについての官房長官の御見解があれば聞かせていただきたい。
  232. 野中広務

    ○野中国務大臣 沖縄が膨大な米軍基地の重みに大変な御心労をいただいておることは、私ども十二分に承知をいたしておるところでございます。また、私がかつて特措委員長のときに本会議で発言をいたしました気持ちは、議事録から削除されましたけれども、今なお、私自身その気持ちを大切にして政治の道を歩んでおる次第であります。  そのことと、国、地方のいわゆる事務をどのように行うか、そして今回の地方分権推進のこの法案のありようということは別であって、沖縄県民のさらに苦痛とそして歴史的痛みは、これからも私どもはきめ細かく十分配慮をしてやっていかなくてはならないと考えておる次第でございます。
  233. 上原康助

    上原委員 お気持ちは受けとめておきましょう。  そこで、防衛庁長官、今私が三点ばかり指摘をしましたが、新規収用について新たに条文化したことの意図というもの、新たに米軍基地に土地収用というようなことが想定されるのか。また、沖縄側の県民の受けとめ方というのは、やはりこれはガイドライン法と関連しているんじゃないのか、こういう見方が強いわけで、この点について御見解があれば、特に新規接収ということを想定して新たにああいう条文化をしたのかどうか、明確にしてください。
  234. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 今度の改正はガイドラインの仕組みをつくろうとするものじゃないかという御指摘でございましたが、地方分権一括法案におけるこの駐留軍用地の特措法の改正につきましては、地方分権推進委員会の勧告と地方分権計画を踏まえて、機関委任事務制度の廃止に伴って国と地方との事務の区分の見直しを行うに際し、国際的に負っている安全保障上の義務の履行のために必要となる土地の使用または収用という極めて高度な公益的な要請を満たすため、国が最終的に執行責任を担保し得る仕組みを構築することとしたものでありまして、周辺事態に対しての対応を目的として改正するものでは全くございません。そのことはひとつぜひ御理解いただきたいと思うのであります。  今回の法改正において、地方分権推進委員会の第三次勧告に基づき、公共用地特措法の仕組みに準じて緊急裁決、代行裁決の制度を設けたわけでありますが、このような仕組みを設けるに当たり、継続使用する必要がある土地等については、平成九年四月の駐留軍用地特措法改正により導入された暫定使用制度の適用があるため、収用委員会の事務が遅延するなどしても、収用委員会の裁決による使用権原を取得するまでの間は、一定要件のもと暫定使用が認められ、土地等の権原取得に支障を生ずることがないことから、緊急裁決、代行裁決制度の適用対象とする必要がなかったところであります。  しかし一方、新規に使用・収用する必要がある土地については暫定使用制度が適用されないため、継続使用、新規の使用・収用を問わず、全体として国が最終的な執行責任を果たし得る仕組みを整備しなければならないとの観点から、緊急裁決、代行裁決制度を設けることとした次第でございます。
  235. 上原康助

    上原委員 役人がお書きになったものをお述べになっても、なかなか、私が言わんとする、指摘をしようとすること、あるいはまた聞きたいことには答えていませんが、時間があと少なくなりました。  そこで、防衛庁長官、あるいは官房長官も聞いていただきたい。皆さんは、基地にかかわること、安全保障にかかわることは国の責務でやる、国の役割だ。そういう前提に立つならば、少なくとも次のことはきっちりとやってもらいたい。  一つは、在沖米軍基地における航空機関連事故等の未然防止と安全管理の徹底。二つは、米軍の活動及び基地運用による自然破壊等の防止対策の強化。三番目、米軍の演習等に伴う事件、事故の未然防止と安全管理の徹底、隊員の教育及び綱紀粛正の徹底。四番目、米軍基地から派生する環境汚染防止の徹底。そして、米軍基地の跡利用問題についても国の責任においてやる。  基地の収用について、使用については国の権限ですべて、地方自治体の権限も従来あったものも取り上げるということなら、こういう基地所在市町村、県民が受けている犠牲に対しても、国の責任において当然やるべきだと思う。このことについて、防衛庁長官官房長官の御答弁を求めます。
  236. 野呂田芳成

    ○野呂田国務大臣 今委員から御指摘あった点については、私どももぜひこれはやらなきゃいかぬことだと思っております。ただ、所管が、防衛庁だけではなくて外務省や沖縄開発庁あるいは内閣等に及ぶ問題でございますから、今のような御指摘につきましては、関係省庁が集まって遺漏のないように対処すべきことであると思っております。
  237. 上原康助

    上原委員 あと一分ありますから、三十秒ちょっと。  それと、今度再開された四者協議会を含めて、これもやはり国でもっと積極的にやってもらわなければいかないことですから、今私が指摘をした五点について、官房長官の答弁を求めておきます。あなたは沖縄開発庁長官でもあられるから。
  238. 野中広務

    ○野中国務大臣 現在の四者協議を含めまして、私どもとしては、国がすべての責任を持って対応することといたしております。
  239. 上原康助

    上原委員 終わります。
  240. 高鳥修

    高鳥委員長 次に、末松義規君の質疑に入ります。
  241. 末松義規

    末松委員 民主党の末松でございます。  きょうは、内閣法の改正、そして内閣官房、あるいは内閣府設置法ですか、この点についてお聞きをしたいと思っております。  むしろ、国の基本方針をどういうふうにしていくか、この点について、民主党の方でも数カ月間の議論を経まして、私ども、首相府の設置法、そして内閣府設置法ということで対案を出すという形で今事務を進めているところでございますので、この辺についてお聞きをしてみたいと思います。  私は、外務省にいたころから、外から見ていて、日本は先を見越した戦略というか、総合戦略がない国じゃないかなというのをよく考えるときもありましたし、またそういうふうによく指摘もされておりました。  行革会議の最終報告を見ましても、この報告の中に、例えば官僚依存の政治からの脱皮だという意味で、各省、つまり官僚機構による分担管理の行政ではもうだめだ、政治リーダーシップによる、国政全体を見渡した総合的、戦略的な政策判断と機動的な意思決定をなし得るシステムが必要だということが書かれているんですが、まず、この改革を進めてこられた総務庁長官の御認識を、大体こんなものでよろしいのか、お伺いしたいと思います。
  242. 太田誠一

    太田国務大臣 民主党の御提案、きょうそれをお聞かせいただくんだと思いますけれども、私は、政治のリーダーシップというものが確立をするということが極めて大事なことであって、それはひいては国民主権の考え方を反映するものであるというふうに思っております。  内閣府のあり方、あるいは、各省庁における副大臣、政務官などの制度を導入して政治家たる閣僚が各省庁においてもリーダーシップをとる、全体としても内閣総理大臣がリーダーシップをとる、閣議が本当の国政の決定の場になるということが今回の改革の大きな柱であると思っております。
  243. 末松義規

    末松委員 今総務庁長官が言われたように、まさしく政治のリーダーシップが必要だ、特に内閣各省に対するリーダーシップ、そして内閣における内閣総理大臣のリーダーシップが必要だということが基本的な認識になられているということでございますので、改革のチェックすべきポイントは、まさしくそこにあるかと思います。  実際にそういうふうに、総理が例えば内閣の中できちんとリーダーシップが発揮できるようになっているか、あるいは内閣が政府の中できちんとしたリーダーシップを発揮できることになっているかということから始めたいと思います。  それでは、内閣における総理の位置づけということでございますが、私ども民主党の方でも、まさしくこの点が一番大きなポイントとして議論をされてきたわけです。まず、内閣において、総理と他の閣僚との地位の差といいますか、つまり大きな上下関係があると私どもは考えているわけです。  といいますのは、内閣総理大臣は、当然のことながら国会から指名をされ、そしてその指名された唯一の存在であり、そして総理大臣が閣僚を任命しあるいは罷免し、そういったこと、あるいは内閣代表して行政への指揮監督を行う、極めて大きなパワーを持った存在だと思っております。まさしく内閣のリーダーということだと思いますが、つまりこの位置づけですけれども、この位置づけについて官房長官にお伺いしたいと思います。
  244. 野中広務

    ○野中国務大臣 憲法によりますと、もう委員十分御承知のとおりに、内閣総理大臣国務大臣を任命して内閣を組織し、行政権の属する内閣の首長として、内閣代表して議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告し、並びに行政各部を指揮監督する。また、内閣法によりますれば、内閣がその職権を行うのは、閣議によるものとされており、内閣総理大臣はこの閣議を主宰するものであるということに位置づけられておると存じます。
  245. 末松義規

    末松委員 ということなんですが、どうも実際を見ますと各省が、大体イギリスは、サッチャーさんの伝記なんかも読むとわかるんですが、ほうっておくと大臣がそのまま各省の、どちらかというと、何といいますか、人質というか代弁者ですね。各省の利益の代弁者になってしまって、どうも閣議では、全体としてあるいは日本の最高のチームとして国政の方針を決めるときに余り議論が起こらずに、役人に依存してしまう。本当に、内閣というのはまさしく二十名弱の最高の日本の選手団なんですから、そこでダイナミックな動きをしなきゃいけない時代にこれがなされていないということは、私は日本国民にとって不幸であろうと思います。  民主党でも、その中で総理の位置づけを統括権を持った閣僚であるという認識のもとに、閣議をきちんと運営する方式、この運営の基本方式を総理が決定するという案を提出することにしております。  そういった意味でこの国会への連帯責任というのを考えてみますと、どうも今、閣議は全会一致方式で、何かサイン会をやっているという批判も多々行われているところなんですが、この全会一致方式ということについてきちんとやはり、本当にいいのかどうか、この方式が一番適当なのか、そこを議論する必要があろうかと思います。  そういった意味内閣法制局の長官にお伺いをしたいんですが、閣議の意思決定方式、つまり運営方式、ここの点について、憲法の縛りといいますか、あるいは憲法的な意味で制限はあるかどうか、まずお伺いしたいと思います。
  246. 大森政輔

    大森(政)政府委員 お尋ねの件につきましては、特に内閣の議事運営方法につきましては、明文の定めはないわけでございます。ただ、御承知のとおり、旧憲法下で確立した慣行、そして日本国憲法の施行後も一貫してとっておりますのは、閣議の意思決定は全会一致により議決がなされるべきでありという考え方でございます。  これのよって来る理由でございますが、日本国憲法は御承知のとおり議院内閣制を採用している、そして、内閣は行政権の行使について国会に対して連帯して責任を負う、これは憲法六十六条第三項で規定しているわけでございます。こういうことから、内閣の構成員すべてが一体として統一的な行動をとることが憲法上要請されているということが言えようかと思います。  したがいまして、閣議における全会一致による議決方法と申しますのは、ただいま申しました憲法六十六条第三項の趣旨に最も合致する考え方であるということでございます。したがって、旧憲法下のみならず現憲法下においても全会一致方式がとられているのは、憲法上の要請であろうというふうに考えておるところでございます。  これにつきましては、御承知のとおり、制憲議会におきまして、憲法制定議会におきまして、金森国務大臣がその旨を答弁しているわけでございますし、また学界においても、全会一致説が通説と言えるほど多数を占めているわけでございます。中に若干の説が、多数決制をとってもいい、こういう説もあるわけでございますけれども、大多数の学者の説は、全会一致であるべきであるというふうに考えられているところでございます。
  247. 末松義規

    末松委員 今大森長官の言われた、連帯して責任を負うということで、何かちょっと、憲法上の要請というものがあってそれが全会一致になっているというのは、私は言い過ぎだと思うんですよ。  といいますのは、今大森長官が言われた内閣の意思、これの一体性ということ、今言われましたよね、これが本当に重要だということであるのですから、それであれば、例えば、総理が冒頭に、閣議で、私のこの内閣では多数決制をもってこの内閣の意思決定といたしますという話に、これに閣議のメンバーがみんな、そうだそうだ、それでやろうという話で事前の同意を与えたというこの一体性であるならば、それはまさしく、これはもう閣議として意思決定がなされたということになりませんか。
  248. 大森政輔

    大森(政)政府委員 委員指摘のような見解も学説の中にはないことはないわけでございますけれども、政府は従前から一貫して、やはり各閣僚が具体的な案件につきまして賛成をして初めて国会に対してみずからも責任、本当に責任を負えるのであるという考え方が基本になりまして、そういう事前の、白紙委任的な閣議決定では足りないというふうに解しているところでございます。
  249. 末松義規

    末松委員 国の基本方針に、戦略を考える上で、二十人近くの方が一つ一つについてすべてがすべて一緒だというふうに考える方が、ある意味じゃおかしいということにならざるを得ない。ということは、翻っていけば、まさしく役所で全部積み上げられて、これでもう反対のしようもないというようなものがわあっと上がってきて初めて、これしかないねというのが、日本のダイナミックな政治の一番の問題点じゃないかと、よくこれが言われているわけです。  ただ、閣議の決定方式を法制局の長官が、あなたは言われましたね、ずっと内閣として、これは慣行として基本的に定着してきたものですと。では、もしその慣行を破って、例えば多数決方式も含め、あるいは事前の合意でやられるという話になるならば、それが憲法違反という話になりますか。
  250. 大森政輔

    大森(政)政府委員 先ほど私は、全会一致方式が慣行としてとられてきているという言葉を使ったわけでございますが、これは要するに、憲法を離れて、長い間そういう方式がとられた慣行だからという意味じゃございませんで、やはり、憲法の要請に基づいて行われたからそういう方式が続いているのである、したがって、憲法の要請を踏まえた慣行であるということでございます。
  251. 末松義規

    末松委員 そこに私はある意味でこだわるわけですけれども、先ほど、なぜ内閣の一体化が必要かと。今、憲法の要請、要請ということだけで言われておられますけれども、もう少し具体的に言って、国会に対して連帯して責任を負うということに対して、各閣僚が、私は多数決で結構ですということの同意を与えているということであれば、自分は国会に対しても連帯して責任を負いますよという意思をもう示しているわけですよ。これ以上にまた何が全会一致の必要な条件になるんですか。  私は、閣議の決定方式そのものは、憲法上、国会に対して連帯して責任を負うということがきちんとなされて、それで閣議の一体性あるいは合議制がとられるならば、それであるならば、それ以上憲法がさまざまなことを要求しているとはとても思えない。条文を読んでみて、それ以上のことを言っているとも思えないんですね。  それを大森長官、あなたが、そういうことでこれはそれ以外はあたかも違憲であるかのような言葉を言うということであるならば、私は、国民代表として選ばれた方でもない方が、リーガルアドバイザーが言うというのは、むしろ非常に問題があると思うんですね。むしろ政治問題なんです、これは政治的な決定であろうと思うのですが、その辺はいかがですか。
  252. 大森政輔

    大森(政)政府委員 決して、法制局の法律面からの内閣の補佐というのは、そういう政治的な決定、政策の決定についてまで容喙していることはさらさらございませんで、先ほど申し上げましたように、憲法上の要請として、全会一致方式が最もふさわしい意思決定の方式であるということを、私のみならず、日本国憲法の制定以来、そのように解しているところでございます。  委員御承知のとおり、今指摘されましたような見解というのは、いわゆる行政改革会議においても相当真剣に議論されたところでございまして、この最終報告におきましても、かなりの字数を費やして説明しているわけでございますね。そこでは、「内閣機能の強化・活性化のため必要であれば、閣議の議決方法について合意形成のプロセスとして多数決の採用も考慮すべきである。」というところまでは大体行政改革会議の見解も煮詰まったようでございますが、最終的に多数決方式でしかるべきだというところには意見が達しなかった、そういう議論の過程もございます。
  253. 末松義規

    末松委員 そういう議論が行われたことというのは、私もあったことは聞いていますし、それはわかっている上での話なんですけれども。  例えば、私は多数決がいいと言っているわけじゃないんです。ただ、本当に戦略的にこの国を何かやっていこうとすれば、それはある意味では、いろいろな見解がある中で、やはり一つの方向として、マネージをしていかなければいけないその総理大臣の立場に立ってみれば、そちらの全会一致が最もふさわしいと言うからには、最もとは言わないまでも、ある程度の幅がこの運営方式にあってしかるべきだということを私は申し上げているので、大森長官が言われるように、もう全会一致しかないんだという言い方は、そこは私はおかしいと思う。  そんなに本当に憲法が求めているのならば、なぜ憲法に全会一致方式ということを書かなかったか。それは、書かなかったのは書かなかった理由があると思うのです。内閣法にも書いてない。そこはやはりきちんとしておかないと、この国が実際に政治主導でやっていけるかどうかの大きな瀬戸際に来ているところじゃないかと私は思うのですね。  ですから、私は、この内閣法の改正で見ていて、首相の、つまり総理大臣の発議権がもう高らかにここで出てきたということなんですが、あれなんかは当たり前の話であって、もとから発議権なんというのはあるわけであって、各省大臣の発議権しか書いてなくて、総理大臣の発議権がなかったということの方がむしろ妙な話だろうと思うんですね。これも、基本的には官僚サイドが余り政治の方から圧力を受けたくないということだというふうに指摘する本も多数ございます。  そういう意味も含めて、民主党でも、我々は、内閣の基本的な運営については内閣総理大臣が決定できる、これは当然閣議できちんと決定しての話なんですが、そこへ持っていかないと、どうしてもこの程度で、この程度といいますか、この基本を変えないと、すべて各大臣が、まだ役所の利益の代弁者としてそのまま機能をして、何らこの国がうまく変わっていかない。むしろその点を非常に危惧するということをあえて指摘させていただきまして、この問題の次に移らせていただきます。——ちょっと待ってください。私、まだ求めていませんけれども……(太田国務大臣「いや、ちょっと今おっしゃったことについて」と呼ぶ)
  254. 高鳥修

    高鳥委員長 今質問中ですから、待ってください。
  255. 末松義規

    末松委員 それじゃ、私、もう一点だけちょっと長官にお伺いしたいんですが、長官が閣議に出られる法的な根拠というのはあるんですか。
  256. 大森政輔

    大森(政)政府委員 法的根拠があるのかと言われれば、そういう明文の規定はないように思いますが、この閣議に出るということの意味でございますが、御承知のとおり、内閣というのは内閣総理大臣及び国務大臣でもって構成されるわけでして、内閣の意思決定は総理及び国務大臣の全会一致で決まる。したがって、私があの閣議室に入りますのは、いわゆる陪席をするということでございます。  一体何をしているのかということを説明した方が早いと思いますが、それは毎閣議、政令が付議され、また法律案が付議されるわけですね、その時期によっては。それの説明をするのがまず第一の仕事。それから、そのほかに、法律問題についていろいろ質問が出ればそれに答えるというのがその次の仕事でございまして、そういう観点から、毎週二日ございますけれども、これはやはり休むわけにはいかない、毎回仕事があるということで、私が出ることに何も不審なところはないんじゃなかろうかと思います。
  257. 末松義規

    末松委員 私が申し上げたいのは、大森長官がなぜ出ていいかというと、それは総理及び閣僚の皆さんが出ていいよという合意があるからあなたは出られるのですよ。それをまず言ってもらわないと困るのですよ、法的根拠で。だから、そういう合意が必要なので、これが一番重要なんですよということを私は申し上げたい。  ですから、そういった意味で、それを、別に長官が出られるということを問題にしているわけじゃないのですよ。ただ、そういったことを、国政の判断をするときに、やはりそこをきちんとしていかないとこの国が動かないということを申し上げているわけです。  では、先ほど手の挙がった方に、ちょっと簡潔にお願いします。
  258. 野中広務

    ○野中国務大臣 私の聞き違いであればいいのでございますけれども、閣議の運営のありようについて、委員からの御指摘は、形式に流れておるような御認識のもとに聞かれておるような感じがいたしましたので、一言発言をさせていただいたわけでございます。  閣議は、案件の決定を行うことは当然でございますけれども、各大臣から所管事項について発言がございまして、その後、閣議後引き続いて開催されます閣僚懇談会におきましても、この方は国務大臣として所管事項以外の国政全般につきまして大所高所から活発な議論が行われているのが実情でございます。  また、特定の議題につきまして、閣議であるいは閣僚懇談会で十分な時間をとることができない問題につきましては、特に機会を設けまして閣僚懇談会を開催することも行っておるわけでございます。  先般も、雇用対策が非常に深刻でございますので、別に閣僚懇談会を開催いたしまして自由な意見交換を行ったところでございまして、この御議論を来る六月十一日に取りまとめて雇用対策に反映をいたしていきたいというように考えておりまして、今後とも、このような工夫によりまして、閣僚による議論の活発化を図るなど、閣議の運営に十分意を用いておるところでございます。
  259. 高鳥修

    高鳥委員長 太田国務大臣。簡潔にお願いします。
  260. 太田誠一

    太田国務大臣 ただいまの末松委員の御質問は、前向きのお気持ちでもってこのことについて議論をしようということであろうと思いますので、申し上げるわけでありますけれども、内閣法の改正で、第一条と第二条の改正につきましては、これは今末松委員がお考えのような問題意識でもって、まず内閣総理大臣の権力の正統性というものを、正統性というのはレジティマシーというふうに言った方がいいと思いますけれども、国民が主権者であって、それが一番上にあって、その一番上にある主権者から国会議員が選出されて、そこで指名された内閣総理大臣がまさに行政権を与えられる中心に座るということの正統性をはっきりさせたいということで入れましたので、そこで随分とほかの条文と内閣法の性格が変わってきたものと考えております。
  261. 末松義規

    末松委員 先ほどの官房長官の話ですけれども、閣僚懇談会というのは、別にあれは決定権があるわけじゃないのでしょう。要するに、自由な議論をしましょうねということであって、それで国の方針を決めるということではなくて、いわば議論会ということだから、性格がかなり違うのだろうと思うのですね。だから、その点はちょっと、逆に私は外れているのではないかと思うわけです。  余りここばかりやっていると時間もなくなってきますから、次に移りたいと思います。  もう一つは、閣議で議事録はどうなっているのでしょうか。議事録はつくられているのかどうか。そして、閣議で決定したことは議事録という形で一応残っているのかどうか。そこを確認したいと思います。
  262. 野中広務

    ○野中国務大臣 内閣法によりまして、「内閣がその職権を行うのは、閣議による」とされておるわけでございます。したがって、内閣としての最終的な意思決定は、閣議において、その構成員である総理大臣及び国務大臣の合議により行っておるところでございます。  このような閣僚同士の議論は、特に重大な国家機密や高度に政治性を有する事柄をも含めまして、自由に忌憚なく行われる必要があるわけでございまして、また憲法により、国会に連帯して責任を負う内閣でございますので、対外的に一体性、統一性の確保が要請されるところでございます。  これらの事柄から、閣議の議事録を作成し、これを公開することは適当でないと考えて、つくっておりません。
  263. 末松義規

    末松委員 石原元官房副長官がずっとメモをつくっておられたという話ですけれども、これは公式の議事録ではないのだ、そういう位置づけですね。
  264. 野中広務

    ○野中国務大臣 公式のものでございません。
  265. 末松義規

    末松委員 閣議で秘密決定というのはあるのですか。実際に、決定はするけれども、これは表には出さないでおこう、そういうことはいかがですか、官房長官。
  266. 野中広務

    ○野中国務大臣 決定したもので、公表しないということを確認するものはございます。——私の言い方が悪うございましたが、公表の時期をずらして行うということを確認することはございます。
  267. 末松義規

    末松委員 そうすると、それは公表するという前提のものばかりだということで、公表しないという判断はないということですか。
  268. 野中広務

    ○野中国務大臣 そのとおりでございます。
  269. 末松義規

    末松委員 次に、ちょっと内閣の責任についてお伺いしたいのですが、例えばことしの施政方針演説で、総理が〇・五%の経済成長を達成させるんだという趣旨のことを述べられましたが、これはもし達成できなかったといった場合には内閣の責任だ、この認識でよろしいですか。
  270. 野中広務

    ○野中国務大臣 内閣及び閣僚が言明をした公約についての責任の問題が今のお尋ねであろうと思うわけでございますが、私どもは、それぞれ公約を達成するために、最大限の努力をするというのが私どもに与えられた責任だと存ずるわけでございます。その責任が問われる場合は、例えば議会から不信任あるいは問責、あるいは、みずから辞任とか、みずから減俸その他の処分を行うということはあろうかと存じますけれども、最大限の公約達成のために努力するというのが我々に与えられた義務であると考えております。
  271. 末松義規

    末松委員 それでは、内閣のメンバーの閣僚の責任についてちょっとお伺いしたいのですが、この前、小泉元郵政大臣が、郵政民営化についてちょっと閣内で不一致のようなことをおっしゃっておられましたが、この小泉元大臣が言われたこと、これについては閣内でどういう形になりますでしょうか。そこの責任というのはどうなりますか。
  272. 野中広務

    ○野中国務大臣 私は、当時閣僚でございませんので、閣議においてどう発言されたかは承知をいたしません。小泉郵政大臣が一人の政治家として言っておられたことは承知をしております。
  273. 末松義規

    末松委員 そういうときは、閣議で発言を聞いておられないということでわからないということなんですけれども、通常だとどうなるのですか。閣議でそのことは話題にもならないんですか。
  274. 野中広務

    ○野中国務大臣 現在なら、私から話題にしておると思います。
  275. 末松義規

    末松委員 では、それが、閣内が統一されるまで話し合いをしていただくというのが、もし野中長官であればされるという理解でよろしいですね。
  276. 野中広務

    ○野中国務大臣 閣議の付議事項ではありませんけれども、閣僚懇談会の中で、閣議及び閣僚懇談会を司会、運行する立場の私としては、できるだけ閣僚が一致した意見が集約されるような努力は行うと考えております。
  277. 末松義規

    末松委員 それでは、例えば、ちょっとレベルを落として各省の次官相当の発言等で、榊原財務官が財金分離の問題で、民主党が主張しているようなことはばかげている、そんなような発言をされて問題になったかと思うのですが、ああいった場合の各省の高官の発言、よく新聞記事なんかを見ますと、次官がこう言った、ああ言ったとぺらぺら書いていますけれども、この辺の発言については、これはもう個人的な、内閣としては無関係と言える問題なのかどうか。その辺についての責任はいかがですか。
  278. 野中広務

    ○野中国務大臣 それぞれの問題によって取り扱いは異なろうかと思いますけれども、少なくとも、先般の榊原財務官の発言につきましては、私自身は会見を通じて不見識だと申しましたし、宮澤大蔵大臣も厳重注意をされたと聞いております。
  279. 末松義規

    末松委員 時間がちょっとなくなってまいりましたので、あと内閣法関係で、補佐官と秘書官の数についてちょっとだけお伺いしたいのです。  この前、細川元総理が、首相補佐官、総理補佐官を一名つくろうとしたら、全然法定されていないということで、だめだということでつくれなかったという話がございまして、御本人がみずから述べておられました。  今度、各省の設置法では、そういう数は、法律の委任があるんだろうと思うのですけれども、任務だけ書いてあって、数は特定していないのですね。ただ、この内閣法だけは、やれ総理大臣の補佐官の人数が五名以内とか、こういった形で何か人数が特定というか制限されているのです。  これは、一国の一番重要なところを扱う機関においてこの数が制限されていて、各省においては自分の省令で決められるというのは何か妙な話だと思うのですけれども、秘書官の数については政令で指定されるにしても、補佐官は五名以内、そういったことで人数の制限をするというのはやはりおかしい。そこはやはり裁量にして、必要な数だけやればいいというふうに考えるのですが、いかがですか。
  280. 太田誠一

    太田国務大臣 次官級以上の官職であります官房長官、官房副長官、内閣危機管理監、あるいは官房副長官補、内閣広報官、内閣情報官及び内閣総理大臣補佐官については、定数を法律で規定するということになっております。それに対して、局長級以下の官職の内閣総理大臣秘書官については、機動性、柔軟性を勘案して、定数を政令で規定するということといたしております。  どうしてそうなのかというと、局長以下は、局や課の改廃については政令で定めるということになっておりまして、昭和五十九年ですか、そこで変わったものですから、それから後は、局長級は政令で決める。ただ、局長以上の次官級については、これは法律で定めるということに各省ともなっておりますので、そこは整合性は保たれているはずであります。補佐官は次官級以上の官職だという位置づけになっているからであります。
  281. 末松義規

    末松委員 本当の内閣の中枢なんですから、そこは一々各省と同じレベルで考える必要はなくて、私は思うのですけれども、内閣というのはやはり頭で、そして内閣内閣府ですか、民主党では、頭が首相府で自律神経系が大体内閣府、あと手足が各省だというふうに考えているので、そこを横並びにするという発想そのものがおかしいのじゃないかという気がするわけです。  皆さん、お手元に紙を今配らせていただきましたけれども、私どもの方で、首相府と内閣府、首相府に部屋が、補佐室、秘書室、政務室、政策室、報道室、あと内閣府も、内閣調整室、情報・危機管理室、予算編成室、行政改革推進室、公務員企画室、雇用政策調整室、男女共同参画・人権政策推進室、内閣法制室ということでやっていますけれども、政治任用のところについては、基本的にみんな政令で定めるという形に落としております。そういった形の中枢については人をそれほど制限すべきじゃないと思いますので、参考までに述べさせていただきます。  それから、次に移りますが、国家戦略あるいは総合戦略を策定するということなんですけれども、だれがどういうふうにつくるのか。これを具体的に、現状をどう認識し、どういうふうに変えてきたのかというのを、極めて簡潔にお願いできますか。
  282. 太田誠一

    太田国務大臣 今、国家戦略をどう描くかという……(末松委員「国家戦略というか、総合的な戦略はどういうふうにつくられるのか」と呼ぶ)これはまず、内閣官房において、今までは総合調整だけを内閣官房でやるということになっておったことを、企画立案もやるということになっておるわけでございますけれども、それは総理大臣が発議権を持ったということと密接な関係のあることです。  内閣総理大臣及び内閣官房長官内閣官房は一体のものとして、それを内閣府全体で支えるという構図になっておりまして、共通の部分も随分あると思いますけれども、そういうことになっておるので、内閣府において、大事な問題については、たまたま、経済財政諮問会議と総合科学技術会議と男女共同参画と防災会議、こういう四つの重要なテーマについてはもう会議を常時設けていて、総理大臣が発議する内容をそこで決めるということになっております。  その他、それぞれのテーマについては、担当大臣を置いたり、あるいは、内閣府に置かれる知恵の場と言っておりますが、知恵の場でもって戦略を描き、そしてそれが内閣総理大臣の口から内閣に提案をされていくということになっております。  なお、この機会に申し上げておきます。  内閣官房とほかの役所は横並びではありませんで、ここについては、内閣官房の要所要所のさっきずらっと並べた十人ぐらいの人たちのポジションは、いずれも特別職でございます。内閣府は、政治任用という考え方を初めて導入いたしております。
  283. 末松義規

    末松委員 そうすると、予算大綱も今おっしゃった経済財政諮問会議の方でつくられるという話を聞いておりますけれども、文言を見ると、内閣府設置法の十九条、所掌事務の中で、予算編成の基本方針について調査審議するとあるのですね。企画立案するとは書いていないのですよ。財務省設置法の第四条に、国の予算等の企画及び立案をする、及び事務処理の統一をすると書いてある。  ということは、この文言上でいけば、大綱をつくるというのは、予算編成の基本方針を企画立案するということを、あれだけのメンバーがそろうのですから、やはり書くべきじゃないのでしょうか。ここは何か、調査審議するみたいな、一段格を落とした理由というのは何なのですか。
  284. 河野昭

    ○河野(昭)政府委員 先生御存じのように、内閣が行政各部を統括する機能を持っているわけでございます。それに対して、今度の内閣法の十二条でございますが、いわゆる政府の基本方針につきましては、内閣官房が企画立案し、総合調整するわけでございます。内閣府といいますのは、内閣官房の事務を助けるという性格を持つわけでございます。  そこで、今おっしゃった経済財政諮問会議につきましては、これは内閣府に置かれる機関でございます。ですから、具体的に申しますと、総理が御自分、例えば閣議で発議するために経済財政諮問会議に諮問いたしまして、そこで関係大臣、有識者の方々と十分議論をされて御自分の心象をつくられる、それを例えば総理が閣議で発議されるということになるわけです。  したがって、これは会議でございますので、あくまでも審議するので、最終的な方針の決定は閣議で行う、そういう意味で書き分けているということでございます。
  285. 末松義規

    末松委員 今、河野内閣審議官お話だと、内閣府に経済財政諮問会議が位置しているから、だからこれは企画立案できないのだ、企画立案するのは内閣官房なのであるという位置づけでしたね。  でも、メンバーを見てくださいよ。議長が総理ですよ。そして、議員が、閣僚が入っているのですよ。その会議内閣府というものに属していて、その上に内閣官房があるなんというばかな話があるわけないじゃないですか。決定はそこですべきじゃないですか、基本的に。決定じゃないんだ、決定は閣議ですべきです、それはおっしゃるとおりなんですよ。それをまた内閣官房に行って、官房長官が物すごくお偉いかもしれませんけれども、そんなばかなことがあるわけないじゃないですか。
  286. 太田誠一

    太田国務大臣 どういうふうにこの言葉を書こうとも、今おっしゃったとおりで、そこに総理大臣が議長をし、そして官房長官ももちろんおり、それから経済財政諮問会議の担当大臣もおり、恐らくほとんど、財務大臣もおられるでしょうし、そういう中で、学者も含めて決めたことを、総理が閣議で提案をする内容をそこで決めているわけでありますから、そこにたまたまいなかった閣僚の何人かが反対をするということは、文句をつけるということはあるかもしれませんけれども、そこの調整は官房長官や総理大臣自身がやられるということでありますから、そのとおりに大体決まるのだろうと思いますよ。
  287. 末松義規

    末松委員 ならば、企画立案と書くべきですよ。それをせずに調査諮問なんてばかな言い方をしちゃだめですよ。本当にちょっとおかしいんだ。本当に不備だよ、ここは。  では、これはどうするのですか。書き方を変えるのですか、変えないのですか。
  288. 河野昭

    ○河野(昭)政府委員 今の条文のちょっと御説明をさせていただきますが……(末松委員「ちょっと、河野さん、違いますよ。あなたじゃない。あなたの出る幕じゃないよ」と呼ぶ)
  289. 高鳥修

    高鳥委員長 この答弁をさせてみてください。その上で。
  290. 河野昭

    ○河野(昭)政府委員 いずれにしても、今の全体の法案の構成は、内閣というものがあって、内閣官房というものが内閣を直接補佐する機関。それで内閣府といいますのは、内閣官房を助けるということでございます。そこの事務の一環として内閣府に経済財政諮問会議が設置されている、そういうことでございます。
  291. 高鳥修

    高鳥委員長 ただいまの末松委員の御指摘につきましては、委員長においてお預かりして、どんな状態になっているのかもう一回しっかり委員長において調べた上で、後刻資料を添えて、御説明ができるか、あるいは修正が必要であるか、それらについて検討させていただくということにさせていただきたいと思います。
  292. 末松義規

    末松委員 では、委員長、そこはよろしくお願いします。  それから、太田長官にお伺いしますけれども、四つに絞ったという、この四つの会議ですけれども、これは何で四つだけなんですか。これはむしろ、決めるのは総理あるいはそのときの内閣ではないですか。法定をなぜここでしなきゃいけないんでしょう。  民主党の案では、これは総理が裁量的に決めることにしているんです。それはなぜかというと、時々の重要な問題がありますから、そこをやっていく。ただ、予算とかいつもやらなきゃいけない、それはそうかもしれませんけれども、これは一つ一つ裁量的にやっていけばいい話じゃないですか。四つだけがこの国の命運を決めるという話でもないと思うのですが、いかがですか。
  293. 太田誠一

    太田国務大臣 これが四つであるということも、そのこと自体は、行政改革の、昨年成立しました基本法に書いてあることでありますので、我々はそれを忠実にそのまま法律に書いたということであります。
  294. 末松義規

    末松委員 ちょっと時間がなくなっているので私の聞きたいことが言えなくなったのですが、最後に、もう三分しかないのであれですけれども。  先ほど、内閣府と各省関係が、上下関係があると言われましたよね。そうなんです、上下関係があってしかるべきだし、そうだろうと思うのですが、そこで、総務省という一省庁が、この書き方によると、府省を超えた政策評価、行政評価、監視を行う、こういうふうな文言があるのですよ。  一省庁にすぎない総務省のこの行政評価、行政監視という機能が、なぜこの内閣府という一段高い府を、しかも総合調整を行うというそこを行政監視し、そしてチェックできるんですか。そこの根拠をお伺いしたいと思います。
  295. 河野昭

    ○河野(昭)政府委員 内閣府の性格でございますが、任務として二つございまして、一つは、まさに今先生おっしゃいましたように、いわゆる内閣府としての総合調整機能を担うという部分でございます。それから、もう一つの任務は、いわゆる各省大臣と並んだ行政事務の執行。それは、総理大臣が主任の大臣として行う事務の執行でございます。  それで、内閣府自体もその政策の評価をすることにしておるわけでございますが、これについては、内閣府は内閣の統括のもとにその政策についてみずから評価する。この意味は、いわゆる各省並びの、要するに分担管理事務ということでございます。そして、総務省が評価いたしますのは、各府省の政策の統一的、総合的な評価ということで、その一段いわゆる上の内閣府の事務ではございませんで、各省並びの分担管理事務が総務省の評価の対象になる、そういうことでございます。
  296. 末松義規

    末松委員 そう言うならば、総務省の所掌事務の中から、内閣府の総合調整、これについては除くとはっきり書かないと、それは整合性が合わないでしょう。別に私はこの件でどうこう言う気はありませんけれども、そこもきちんと書いておかないと、まさしく整合性の問題じゃないですか。私は、とりあえずここを指摘させていただきまして、時間が来ましたので終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  297. 高鳥修

    高鳥委員長 次に、小林守君の質疑に入ります。
  298. 小林守

    小林(守)委員 民主党の小林です。  時間が極めて短時間でございますので、質問も簡潔にいたしたいと思いますし、答弁の方もできるだけ簡潔によろしくお願いしたいと思います。  本日、本会議におきまして、男女共同参画社会基本法が趣旨説明され、そして各党の代表質疑が行われたわけであります。この法案につきましては、男女共同参画室の方で、いろいろな新しい行政手法を取り入れながら、憲法十四条にかかわって、差別の解消については国の責務であり、国民の課題である、これはどなたも了解されているところでございますけれども、国民の課題であり、国の責務である、こういう観点に立って、幅広い国民の意見を聞いて、立法化、法案化を進めるというのが当然だというふうに思います。  そこで、まず最初に、官房長官に、この男女共同参画社会基本法の法案化に向けての行政手法、どのような方法で国民の意見を取りまとめてきたのか、これをお聞きしたいと思います。
  299. 野中広務

    ○野中国務大臣 男女共同参画社会の形成の促進のための施策を講ずるに当たりましては、国民からの意見を聞くことが重要であると認識をいたして、官房長官の決定に基づきまして、有識者等広範な各種団体の代表から成る男女共同参画推進連携会議を開催いたしますとともに、広範な国民を対象に情報提供と意見交換の会を随時開催しておりますほか、男女共同参画室のホームページを開催するなどいたしまして、国民からの意見の聴取に努めたところでございます。  男女共同参画審議会におかれましては、昨年、男女共同参画基本法に係ります答申をお取りまとめをいただいたわけでございますが、これにつきましても、全国六カ所で意見交換会を開催され、審議委員が約二千人の国民と意見を交換されますとともに、ファクス等による意見を求めて、約三千六百の件数の意見が寄せられたところでございます。
  300. 小林守

    小林(守)委員 そのような形で男女共同参画社会基本法案がつくられてきた、このようなことであろうかと思います。  それでは、そのような人権の問題については、まさに大きな、重要な課題であるというような認識に立って考えるならば、今日、人権擁護推進審議会におきまして、七月答申を目途に今鋭意検討されている、このように聞いております。この人権擁護推進審議会は、御承知のように、人権擁護施策推進法に基づく審議会でありまして、そういう点で、この審議経過やその附帯決議を見るならば、当然のこと、行財政的な措置にとどまらず、法的な措置も含めて答申をしよう、こういうことでありまして、そういう点で、当然のことながら、基本法的なものをつくっていかなければならない課題を担っていると言えると思うんです。  そういう点で、七月答申に向けて、この人権擁護推進審議会は、少なくとも中間取りまとめの公表、そして今後、幅広い国民の意見を聴取するような、今官房長官が述べられたような手法を当然とってやるべきだというふうに私は考えますけれども、そのような形になるんでしょうか。
  301. 陣内孝雄

    ○陣内国務大臣 お尋ねの件でございますが、人権擁護推進審議会の答申の取りまとめの手法につきましては、同審議会の運営に関する事項でございますし、同審議会自身において適切に決定されるものと承知しておりますが、同審議会の審議内容の公開につきましては、議事録、議事要旨が公開され、審議の透明性が十分確保されているものと承知いたしております。これは運営規則にそのような手続を書いてございます。  また、これまでの審議におきまして、各種の人権課題に関しまして、多くの関係団体、これは全部で十五団体ございますけれども、その十五団体からのヒアリングを実施いたしまして多様な意見を聴取しており、各種の団体等から審議会あてに意見の提出等がなされた場合にも、事務当局において取りまとめ、審議会に提出しているものと承知いたしております。
  302. 小林守

    小林(守)委員 私は、中間取りまとめの公表、そして最終答申の前にもう一度その中間取りまとめを受けた国民の意見を聞くべきである、こういう視点に立って、今までいろいろ聞いてきたということは認めますけれども、その中間取りまとめを公表して、なおかつ、さまざまな議論を受けた中でやることになっているのかどうかお聞きしたいと思います。簡単にお願いします。
  303. 陣内孝雄

    ○陣内国務大臣 審議会において答申の案がまとめられました段階で国民に公表し、その内容について国民からの意見を聞いた上で答申を確定し公表するとの方針、これが本年の五月二十五日に開催された第二十五回会議において了承されております。  その具体的方法につきましては、現在検討がなされているものと承知しております。
  304. 小林守

    小林(守)委員 それでは、間違いなく中間取りまとめは公表されるということでございますね。  それで、次に移りたいと思いますが、五月三十一日の公明党の若松委員質問に対して、太田総務庁長官内閣府への人権啓発、人権教育の位置づけをお話しなされております。  ちょっと読ませていただきますが、人権啓発、教育について内閣府が所管するということは、個人的には考えないでもなかった、男女共同参画局が労働分野を除いて労働省とは別途に置かれる、女性差別についての所管が内閣府にあるのだから、人権教育、啓発についても法務省ではなく内閣府に設けるべきと主張してきた、しかし法務省になったというようなことなんですけれども、総務庁長官、今もその考え方は変わりございませんでしょうか。
  305. 太田誠一

    太田国務大臣 たびたび答弁でも申し上げておるのですけれども、我々は基本法というものに制約をされておりますので、基本法の考え方は、これはまさに、法務省について、人権擁護行政について充実強化を図るということになっておりますことから、法務省設置法案において、人権擁護行政に関する所掌事務としての整理を行い、人権啓発を新たに明記したところであります。ということで、私が個人的に持っておったものは、ああ、これは無理だな、こういうふうになったわけであります。  そこで、では、その考え方はどうなるんだということでありますけれども、これはやはり憲法十四条に定められた、差別をなくしていこう、人権を尊重していこうという考え方というのは、将来は一元的に扱われることがあって少しも悪くない、むしろその方が望ましいのではないかというふうに私は思っております。
  306. 小林守

    小林(守)委員 私も、省庁設置法の概要等について見させていただきました。  法務省設置法案の中には、人権にかかわる部分については、「人権侵犯事件に係る調査並びに被害の救済及び予防に関すること。」という形で所掌事務が書かれております。人権教育、啓発についてはどこにも書かれておりません。  なおかつ、一般的に言うならば、人権教育や人権啓発というのは、基本的には教育行政、さらにはさまざまな各省庁の行政の中で教育や啓発というものをやっていくべきであるというのが筋だというふうに私は思っておりますが、どうしても法務省ということになりますると人権救済、擁護、人権擁護委員制度がありますけれども、基本的には人権擁護、それから人権侵害をされた人に対する救済のための行政が法務省の行政ではないか、私はこのように、どう考えてもそう思えるのですね。  そして、その人権確立のための行政というのは、これは政府全体がさまざまなセクションを置いて総合調整をしながらやらなければならない、まさに国の重要な課題であるし、普遍的な価値の実現だというふうに思うのですね。  そういう点で、私は、法務省に今度この人権教育や啓発というものが位置づけられているということについては極めて問題があるし、縦割りのセクション主義がまた出ているのではないか、内閣府の総合調整機能というのはどこへ行ってしまったんだ、せっかく男女共同参画局が設置されるというような状況の中で、男女の問題は内閣でやるけれども、ほかの人権の問題は別ですよということにはならない、このように思うのですが、これは官房長官、ひとつよろしくお願いします。
  307. 野中広務

    ○野中国務大臣 人権教育なり啓発に関する施策の推進が政府全体として取り組むべき重要な課題であることは、議員御指摘のとおりであります。  その推進に当たりましては、中央省庁等の改革基本法に基づきまして人権啓発を所掌することになる法務省を初め、関係行政機関が十分に協力をして取り組んでいくべき性質のものであると考えておるところでございまして、これを一括いたしまして内閣府の所掌事務とすることは、先ほど総務庁長官も申し上げましたように、基本法の趣旨にそぐわないものと考えたところでございます。
  308. 小林守

    小林(守)委員 どうもわかりません。  民主党は、内閣機能の強化というような中で、首相府設置法、内閣府設置法というようなものを考えております。そして、その中に、政府とも非常に近いのですけれども、男女共同参画・人権政策推進室というものを設けて、男女共同参画も極めて重要な人権の問題です、しかし、人権の問題は男女、ジェンダーの問題ばかりでなく、これは部落差別それから障害者差別、民族差別、さまざまな差別があるわけでありまして、そういうあらゆる差別に取り組んでいくのが内閣府の政策調整機能を含めた最大の課題に、柱になるんだろうというふうに私は思います。  しかし、いろいろな室をつくる必要はありません。やはり、憲法十四条にかかわる問題についてはこの部屋でやるんだというようなものを内閣府に設置すべきである、私はこのように考えるのですが、総務庁長官、これはいかがですか。
  309. 太田誠一

    太田国務大臣 私は、小林委員と考えにおいてほとんど違いはないわけでございますが、ただ、去年の六月に成立した法律案小林委員も私も賛成しておりますので、そういたしますと、一年以内ということになりますと、ややそれは、ちょっと矛盾に苦しむということになるわけでございます。  そんなことで、ひとつ御理解を賜りたいと思います。
  310. 小林守

    小林(守)委員 さまざまな省庁改革を全体的にやる過程の中で、私は、再検討を常にしていっていいのだろう、このように思いますし、何もはばかることはなかろうと。全体的な省庁見直しの中で考えていく今度の法案制定が最大のチャンスというふうに思いますし、いろいろな問題を整理していく。例えば、人権行政のほかにも環境行政もあるのではないかな、私はこのようにも考えているところなんです。  そこで、法務省について、私は、人権教育や啓発ということではなくて、もっともっと法務省が本気になってやってもらわなきゃ困る人権問題にかかわる問題があるではないか、人権擁護委員制度は今どうなっているんだというふうにまずお聞きしたいと思います。
  311. 陣内孝雄

    ○陣内国務大臣 人権擁護委員は、国民の基本的人権が侵害されないように監視し、人権侵害があった場合には、その侵害を排除して救済すること及び人権尊重思想の普及、高揚に努めること、これを使命としているものでありまして、人権擁護委員制度は、人権擁護上重要な制度であり、今後ともその一層の充実を図ってまいりたいと考えております。  この点につきましては、法務省に設置された人権擁護推進審議会における人権侵害の場合の被害者救済に関する施策の基本的事項に関する調査審議の中で、人権擁護委員制度の充実方策についても検討されるものと承知いたしております。その答申が出された際には、それをも踏まえまして、本制度の充実のため、さらに努めてまいりたいと考えております。
  312. 小林守

    小林(守)委員 これは、あるアンケート調査の結果なんですが、同和地区全国実態把握等調査によりますると、いわゆる差別を受けて、法務局または人権擁護委員に相談した割合はわずか〇・六%であった、人権侵犯事件に対して全く機能していないじゃないか、こういう数値が出ております。  一万四千人ぐらいの人権擁護委員がいますけれども、市町村長の推薦によって法務大臣が任命をされているわけですけれども、高齢者の方が非常に多い。一生懸命やっていただいていることを否定するものではございませんが、複雑多様化している今日の人権侵犯事件に対して、ほとんど、悪いですけれども対応できない実態にある。ボランティアで済む問題じゃないはずであります。ただ単にチラシを持って配って歩くぐらいだったら、人権擁護委員というのはちょっと残念だと思います。もっともっと人権確立のために、人権救済のために働けるような仕組みを考えていかなければならないのではないでしょうか。  もう一度法務大臣に、この人権擁護委員制度について、今後拡充を進めていくと言っていますが、単なる言葉だけでは認めるわけにはいきませんので、再答弁をお願いします。
  313. 陣内孝雄

    ○陣内国務大臣 人権擁護委員の役割というのは、今委員指摘のように、大変重要なものを負ってはおるわけでございます。また、実態としては、委員指摘のような面も確かにあろうかと思います。  しかし、人権擁護委員の役割の重要性にかんがみまして、本制度の充実のためさらに努めてまいらなければならないと考えておりますし、先ほど申し上げましたように、この委員制度の充実方策について検討されることになっておりますので、そういうものを踏まえながら対応、対処してまいりたいと考えております。
  314. 小林守

    小林(守)委員 九六年に設置されました子どもの人権専門委員、これは何か七百人ぐらいだそうでありますね。子供たちのいじめや暴力における被害、差別の問題、こういうものについて専門委員という形で活躍するということなんですが、極めてお粗末と言わざるを得ないんじゃないでしょうか。しかも、人権擁護委員と兼務だそうであります。ほとんどが兼務だという実態を聞いておりますると、本当に格好をつけているだけのおざなりの人権擁護行政じゃないんでしょうか。この問題は、一応問題を指摘させておいていただきます。  法務省はここをしっかりとやってもらいたい。教育は全省庁が、しかも文部省が学校教育や社会教育は責任を持ってやってもらう、こういう形で総合調整機能を、私は、男女共同参画と同じ部屋でいいから、その機能を少なくとも内閣府に置くべきであるというふうに訴えさせていただきます。  官房長官、最後の答弁をいただきます。
  315. 野中広務

    ○野中国務大臣 人権の啓発教育のありようについて、委員の御指摘は十分私ども共有するところでございます。  ただ、この所掌につきましては、内閣一体となってやってまいる問題でございますけれども、少なくとも人権啓発につきまして、法務省の所掌する事務として基本法で定められておるところでございまして、その点につきましては、ぜひ御理解を賜りたいと存ずるところでございます。
  316. 小林守

    小林(守)委員 人権擁護、救済のための行政が極めて不十分にもかかわらず、法務省はそこが最大の行政課題ではないか。  もちろん、人権擁護委員さんがチラシを持ったり、講演会とか、講師に頼まれて行ってしゃべることは、これもまた啓発だと思います。しかし、人を集めて、人が集まっているところへ行って同和教育や啓発を行っていくこと、これは人権擁護委員さんの力では及ばないところだと思うんですよ。これはやはり教育行政が本気になってやらなきゃならない。しかも、それをしっかりと各セクションの行政が取り組んでいかなきゃならない問題だろうというふうに思います。  私自身、このような同和教育の行政に、市町村の行政の中で五年ほど取り組んだ経験から申させていただきますので、ぜひそういう形で実現していただくようにお願い申し上げます。  終わります。
  317. 高鳥修

    高鳥委員長 次に、児玉健次君の質疑に入ります。
  318. 児玉健次

    児玉委員 日本共産党の児玉健次です。  五月の二十八日に、この委員会に参考人として出席なさった国民医療研究所長の野村拓先生の意見陳述にこういう部分があります。  国立病院が重症心身障害児医療において非常に大きな役割を果たしてきた。それに限らず、いわゆる公費医療、不採算医療で大きな役割を果たしてきたからではないか。こういう点が、独立行政法人化によって採算性あるいは企業会計が適用されることによってどうなってしまうのか、甚だ心配である、こういうふうにお述べになった。  私がまず取り上げたいのは、国立の重症心身障害児医療機関の中で、二〇〇四年の独立行政法人化を待たずにその前の段階で、この省庁再編の流れの中で社会福祉施設に移譲されようとしているケースがあります。具体的に申しましょう。国立療養所美幌病院、これは北海道にあります。一病棟、四十床です。それから足利病院、これは重複の重度の障害を持っている方々、三病棟、百二十床。そして南愛媛病院、二病棟、八十床。  昨日、私は、それぞれの病院の現状について調べてみた。完全に満床ですね。どなたか一人退院なさったら、もうその直後に入院なさって、完全な満床です。入院期間も十年から二十年、約二百四十人の重症心身障害児が、父母会の方々や地元や病院関係者の存続してほしいという切なる願いを押し切って、今、医療機関から福祉施設に移譲されようとしています、この流れの中で。  これで、先日、松本善明議員の質問に対して太田長官が答えられたことですが、政府が医療、福祉の分野を軽視するなどというのはとんでもない話、私はそれは当たらないと思う。  やはりこういう、野村先生の表現をかりれば、最も不採算で、そして民間医療が引き受けられないようなところ、そここそ国が責任を負っていくことが国民に対する国のあるべき姿ではないか、こう考えます。いかがですか。
  319. 太田誠一

    太田国務大臣 おっしゃるとおりでありまして、民間にゆだねておっては実施されないような仕事こそ国の責任で行うべきでありますし、また、その中で国が直接みずから行う必要のない仕事もあるわけでありますから、それは、今お話しのように、独立行政法人という姿、経営形態というものを考えるわけであります。
  320. 児玉健次

    児玉委員 ちょっと長官に私は再度尋ねたいけれども、大きな流れとして、この独立行政法人の通則法の第二条の一項に、「国が自ら主体となって直接に実施する必要のないもののうち、民間の主体にゆだねた場合には」云々とあります。それがいわゆる独立行政法人ですね。  私が言っているのは、その前の段階ですよ。野村先生、この方は、大阪大学の医学部の助教授をなさっていた方です。言ってみれば、医療政策の第一人者ですよね。この方がおっしゃる採算性あるいは企業会計が適用される、そういうところの前の段階として、もっとはっきり言いましょう、身体障害者福祉法の更生医療、最も不採算の部分です。こういうところこそ、独立行政法人ではなくて、国自身が責任を負っていかなければならないのではないか、そのことをお尋ねしているんです。
  321. 太田誠一

    太田国務大臣 今の言葉をもう一回、ちょっと私、今おっしゃっていたのを手元に今見つけ出せないんですが、もう一回申し上げますと、公共上の観点からすれば実際に実施される、実行される必要のある事業であって、しかも国が必ずしも直接やらなくてもいい事業、それをやってもらうということでありますから、国が採算がとれる云々ということは、その中には、要件には入らないわけであります。採算は、恐らくほとんどのものはとれないだろう。だから、採算がとれないわけでありますから、それは言ってみれば渡し切りの補助金でもって支える、しかし、その経営の自主性あるいは自己責任性というのは、これは責任を持っていただくということが独立行政法人の姿であります。
  322. 児玉健次

    児玉委員 幾らかすれ違っているんですね。  私が言っているのは、この美幌、足利、南愛媛。美幌については、私は何回か行きました。本当に大変な状況で、その病院の看護婦さんや医師は奮闘しています。これを今あなたがおっしゃるように独立行政法人にして、若干の国の助成をして何とかなるような性質のものではないんです、ここは。国自体が抱えていかなければならないもの。ところが、それが今、二〇〇四年を待たずに、医療機関ではなく福祉施設への移譲に直面しているんですよ。  こういう事態の中で、政府が医療、福祉の分野を軽視していると言うのは見当違いという話は、見当違いではないか、私はそう言っているんです。
  323. 太田誠一

    太田国務大臣 それは、今例としてお挙げになった療養所がどのような経営形態になるのかということもわかりませんので、ちょっとお答えをしにくいわけでありますが、社会福祉法人というのは、極めて民間そのもののように私は受け取れるわけであります。独立行政法人は民間ではございませんので、民営化ということではないわけであります。  たびたび思うんでありますけれども、民営化そのものであるというふうに御判断しておられるようでございますが、そうじゃないということを申し上げたいわけでございます。
  324. 児玉健次

    児玉委員 この問題だけやるわけにいきませんから、長官、こういった事態が大きな問題を含んでいるという点は御理解できますね。どうですか。
  325. 太田誠一

    太田国務大臣 そういったことを踏まえて制度設計をいたしておるつもりでございます。ですから、そういうことがあるということはよくわかっております。
  326. 児玉健次

    児玉委員 この問題は、この後さらに議論をしていきたいと思います。  そこで、次の問題です。  今の問題は、二〇〇四年前の、いわゆる移譲、統廃合の問題ですが、今度の法律の提起の中で、例えば厚生省の説明によれば、真に国として担うべきものに特化するため、政策医療の範囲を純化する、なかなか難しい言い方ですがね。それで、例えば、がん、循環器病、こういったものとあわせて、呼吸器疾患、結核を含む、これを指摘されている。確かにこれは重要な問題です。そして、耐性結核等への対応というふうに述べていらっしゃる。  これが重要だという点では恐らく意見の違いはないと思うけれども、しかし、本当にそれが重要であるならば、なぜこの部分を国が直接責任を負うのでなく、全体として、近畿中央病院を含めて全国に五十を超す呼吸器疾患、結核を含む医療のネットワークを一律すべて独立行政法人の対象にするのか。このやり方でいけば、結核医療の分野で国に直接属する医療機関が皆無になってしまう。このような事態は避けるべきではないか、こう思いますが、いかがですか。     〔委員長退席、岩永委員長代理着席〕
  327. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 国立病院独立行政法人化につきましてお尋ねでございますけれども、総体として申し上げますと、国として何を残してやらなければならないかということでございますが、一つは、ナショナルセンターとして、今、国立がんセンターあるいは循環器センター、国際医療センター、精神・神経センターという四つがございますが、さらに国立成育医療センター、これは大蔵病院を改造したものが今度加わります。それから長寿医療研究センターと六つになると思いますが、これは、高度の研究機能を持ったセンターとして、国立直営でございます。これは残します。  あとは、国として、政策的にどうしても国でなけりゃならぬということはありませんが、しかし、地方に任せ切れない政策医療を担当する分野は公的な病院として残そう、つまり独立法人化して残そう。そのほかの一般医療、そういうものは選別して、統合計画が六十一年から定められておりますから、移譲とか統合とか廃止とか、そういうことによって国立病院の合理化を図っていこうという趣旨でできておりますので、個々の具体的な病院の、呼吸器系統がどうなっているかとか、先ほどの北海道の重度の心身障害者の問題等は、個別の問題としてお尋ねであれば、また局長も来ておりますので申し上げさせていただきますが、基本的にはそういう考え方でやっております。  ただ、それでは、そうなると非常に独立採算的になって、とても低下するのではないかという御心配、懸念もあるいはおありの方もあるかもしれませんが、私どもはそうは考えておりません。必要なものは一般会計から交付していくということでございまして、適正な医療水準は、政策医療機関としてのエージェンシーの国立病院の機能はより向上させていきたい、こう考えて、一般論として申し上げておきます。
  328. 児玉健次

    児玉委員 ぜひ、端的に伺いますから端的に答えていただきたいのですが、宮下厚生大臣、私は、今のは個別だからと言っているんじゃなくて、全体の特徴を最も代表する一つの典型として議論しているので、あくまで大臣の答弁を求めたいんです。  結局、この流れをもしそのまま容認するとすれば、呼吸器疾患、結核を含む、このことについての日本国立病院療養所は、センターの病院を含めて国に直接属する機関はなくなる、その点はお認めになりますね。
  329. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 呼吸器疾患についてのエージェンシーの病院がなくなるかどうかは、私ちょっとつまびらかにしておりませんが、そういうことはないと思いますが、なお、詳細は、ちょっと局長が来ておりますので、どの程度呼吸器疾患の政策医療を担当する医療機関が残るかは説明させます。
  330. 児玉健次

    児玉委員 ちょっと誤解があるようです。エージェンシーになるかどうかではなくて、例えばがんセンターや循環器センターのように直接国の医療機関として維持されていくもの、独立行政法人は除きますよ、そういうものは皆無になりますねと聞いているんですよ。
  331. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 形式的には、今六つ、四つが現在あって二つ追加になることを申し上げましたから、これは高度の研究機能を持ったセンターでございますので、それに特化してやるということですから、今仰せのように、呼吸器だけの専門のセンターというのはございませんから、ただ、それはエージェンシーの方の病院でも政策医療として担うということでございます。
  332. 児玉健次

    児玉委員 そこで、委員長のお許しをいただいて、ちょっとこれを厚生大臣に見ていただきたいんです。
  333. 岩永峯一

    ○岩永委員長代理 はい。
  334. 児玉健次

    児玉委員 私がこの問題を一つ代表例として申しますのは、今、日本の結核に対する国民の関心は非常に強くなっておりますし、これは厚生省からいただいた資料でもそのことが明らかですが、十万人当たりの結核の罹患数は、オーストラリアが五・七人です。アメリカが八・七人、フランスが十五・七人、日本は三十三・七人です。この問題を昨年この委員会で議論をしたとき、厚生省は、日本の結核の現状は、今、死亡率で見ますと、世界の先進国から比べておくれているということは事実でございます、こういうふうに明確に答えた。  そこで大臣、それは皆さんの宝ですよ。昭和三十年代に国立病院療養所が離島、僻地を含めて全国に張りめぐらした医療のネットワークを駆使して、当時、世界で急速に注目されていた結核の化学療法について、性別、症状、体重、年齢その他について見事な集計をなさって、そして化学療法のシステムをつくり上げた。その中心になった砂原茂一氏は、今大臣ごらんになっているところです。この分野で、日本、イギリス、アメリカ、インドが大きく貢献した。他のヨーロッパ諸国ははるかに立ちおくれている。  それからまだ三十数年しかたっていません。事態が逆転している。高齢者の結核だとか、そして病院や学校での結核の集団発生、そういうときにこそ国が直接責任を負う医療機関として、がんや循環器と同様に、この分野はしっかり国で握り締めなければならないのではないか。いかがでしょう。
  335. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 この砂原先生は結核の権威者であられるようでございまして、ここに記述されているとおりであるようでございます。つまり、日本の結核化学療法は非常にすぐれている、いたということが記述されております。  結核療養所につきましては、いろいろの経緯があって、たくさんの結核療養所があって、また患者数も多かったものですから、日本としてはかなり力を入れてきたものでございます。  しかし、それじゃ結核が根絶したかというと、今御指摘のように根絶はしておりませんで、むしろ高齢者等を中心にして、結核の集団感染その他も報道されているとおりでございます。私どもとしては、結核の問題はやはり看過できない重要な領域であると心得ておりますので、それをどこでどう担当するかは、また、今現在病院がありますので、いろいろやっておりますけれども、そういう結核治療についても重点的にやはり配慮をしないと、過去の問題ではないということで意識をさせていただいております。
  336. 児玉健次

    児玉委員 この点は、この後さらに検討を進めていただきたい。同様のことが腎や肝臓等についてもあります。  そこで、お戻りになったから総務庁長官に私はお聞きしたいんだけれども、きのう平賀議員が公務員の削減の問題についてあなたとかなり突っ込んだ議論をいたしました。私は具体的にずばり申しますが、国立がんセンターや循環器センター、その他の医療機関で医師や看護婦等の医療スタッフの二五%が定員削減だからといって減少させられて医療の水準が維持できるとお考えかどうか。これは私は率直に答えていただきたい。
  337. 太田誠一

    太田国務大臣 先ほど冒頭にも申し上げましたように、二五%の削減ということは、これは内閣の閣議決定でございますので、必ずなし遂げなければなりません。その中で、国民生活に密着した分野の行政サービスの水準を維持していくということにも留意をしていかなくちゃいけないということでございます。
  338. 児玉健次

    児玉委員 おっしゃるのは簡単だけれども、見事な二律背反じゃないですか。二五%は減らす、一方、国民生活に密着する部分については維持していく、まさにそれは私たちの求めるところですよ。国民生活に密着するところには手をつけてはならない。この点どうですか。
  339. 太田誠一

    太田国務大臣 真に必要な事務事業についても徹底的な合理化、効率化を図るなど、事務事業の見直しを行いつつ実施するということになります。
  340. 児玉健次

    児玉委員 あなた自身が患者になったとき、私に言い直しましょう。四人のドクターが私を、ある手術を診てくれる。そのとき、四人のうちの一人がいなくなる。そういう状態の中で、むだに四人いるわけじゃないんだから、看護婦その他についても同様ですよ。  そういう部分について、あなたがおっしゃるとおり、まさに国民の命、健康、生活に最も深くかかわるところについては、これは強化することはあっても減少してはならない、そのスタンスが必要じゃないですか。いかがですか。
  341. 太田誠一

    太田国務大臣 今二五%削減という至上命題でありますので、それを踏まえた上で、今おっしゃったような点にも留意しながらやっていくということになります。
  342. 児玉健次

    児玉委員 そうしなければなりませんよ。  ところが、あなたが言う前段のところだ。閣議で決めているから二五%は減らすんだと。生活に密着しているところは手をつけない。まさにそうでなきゃならない。それを私たちは最も強く求めている。そこのところは、やはり国民に対して責任を負う立場で、生活に密着する部分については、これは強化はすることはあっても手をつけることはしない。そのことを一人の政治家として私はあなたの所信を聞きたい。いかがですか。
  343. 太田誠一

    太田国務大臣 手をつけることをしないということは、そういうことは言えないわけでありまして、それは十分留意しながら進めてまいるということしか言えないわけでございます。
  344. 児玉健次

    児玉委員 十分留意しながらやっていかなきゃならない、これはひとつはっきりさせておきましょう。事態がそのようになることを私たちはしっかり見詰めていきましょう。  そこで、この国立病院療養所の統廃合、移譲の問題ですが、今、全国の自治体の中で、これに反対する決議が八百九十一自治体に及んでいます。請願署名は百六十万名を大きく超しました。そして、自民党の皆さんを含めて党派の別を超えて多数の議員が紹介議員になっています。  ことしの三月二十四日に、岐阜県の恵那市議会が行った決議を一例として紹介しましょう。「今回、厚生省から「国立病院療養所の再編成計画の見直し」について発表があり、地元恵那市等との十分な話し合いのないまま一方的に国立療養所恵那病院が、新たに移譲対象施設に追加されたことは、まことに遺憾であり、問答無用の態度で強行されることに、断じて承服できない。」こういうふうに述べていらっしゃるんです。それだけでなくて、周辺の多治見市、土岐市、中津川市、瑞浪市その他の十四人の首長、議長さんが連名で要望書を出していらっしゃる。  私は、宮下厚生大臣に求めたいんですが、地元の意向を十分に尊重していく、これはもう非常に重要なことです。当然のことです。それと同時に、国民の命と健康の保全に寄与している病院にとって、職員の和と職員の相互信頼が何よりも肝心のことですね。そういう方々にとっては、この問題というのは、直接、身分や勤務条件の大きな変更に触れる問題です。そういうとき、胸襟を開いて地元の方々や職員や職員団体の皆さんと協議をしてほしい。厚生省の誠意ある対応を私は要請したいと思いますが、大臣、いかがですか。     〔岩永委員長代理退席、委員長着席〕
  345. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 恵那市のこの病院は、実は、病院の統合計画、整理合理化計画の一端として、廃止ではなくて、今のところ公的な関係の団体が引き受けていただけるということでございまして、私どもとしてはやはり地域の方々の意向というのは尊重しなければなりませんが、市長さん方もそんなに積極的に賛成でなかったんですが、知事初め多くの方々と接触をしていただきまして、医療水準とか医療内容は低下させない、むしろ移譲によって、法律がありますから、強化をして市民に影響のないようにしたいということで話を進めさせていただいております。  今、職員の和と相互信頼ということでございますが、私どももできるだけ、そういうことは必要だと思いますので、これは島根県の病院だったと存じますが、私立で引き受けるんだけれども、ある程度試験をやってどうしても何人か排除した場合があります。しかし私の方では、どうせ増員が必要であるならば、その人たちを優先して採用してやってほしいということで一体として移譲をさせた経験もございます。できればそういう方法もとりますけれども、基本的には、地域住民の医療サービスが低下しない、地域住民が安心して医療給付が受けられる状況というものをさらに改善して続けるという視点が重要だと思っておりますので、そんな視点で今進みつつあるというように私は理解しております。
  346. 児玉健次

    児玉委員 大臣、恵那の問題については私は認識を異にしますが、その点は認識を異にするという指摘にとどめておきましょう。  私が言いたいのは、要は、その病院が地域で信頼されるためには、やはり地元の意向が何より大切ですよ。あなたたちも胸襟を開いて話し合う必要がありますね。そして、病院というのは人の命を預かる場所ですから、人間同士がとげとげしくて針のむしろのような状態で患者の治療がうまくいくはずがないわけだから、だから、そういう中で厚生省としても胸襟を開いて地元とよく話し合い、そして職員、職員団体とも十分な協議をする、その点で努力をしてほしいと言っているんです。いかがです。
  347. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 恵那市の病院につきましては、私が先ほど申したような方向に進んでおると私は理解をいたしておりまして、決して病院をやめるわけでもなし、内容は充実して移譲したいということを申し上げておるわけであります。ただ、地元の方々は、やはり国立病院という名前が消えることについて懸念があるように私は承りました。  ただし、国立病院というのは、戦後、申し上げるまでもなく、軍の病院とかそういうものを引き継ぎまして療養所その他の形で来ておりますから、今再編しようとすると、やはりいろいろそういう問題をどういう形で整理するかという問題に逢着するわけでございますね。したがって、恵那市の場合もそれの一つでもあるんです。  それで、そういうことで病院機能は強化維持しつつ、まあ国立病院というネーミングは外れますけれども、実態的には、内容は、移譲する場合には助成してもっといい病院にしてさしあげることは法律で決まっておりますので、できる限りのことはして、地域住民に迷惑のかからないようにというように今考えておるわけです。ただ、その中の職員の皆さんが、国立病院という名前が消えて国家公務員でなくなるのは嫌だとか、そういう問題はあるかもしれませんが、本質的には、私どもは、医療水準を維持できて、そして地域に医療のサービスがきちっとできる体制が何よりも大事だというように考えておるところでございます。
  348. 児玉健次

    児玉委員 たまたま一例として挙げた恵那の問題については、私は認識が違うからこれ以上議論するつもりはないんです。  要するに、そういった問題について地元の意向を尊重して必要な話し合いをする、それと、国民のためによりよい医療をという点では、それぞれの病院の職員、職員団体の皆さんと皆さんが胸襟を開いて話し合えば必ず一致点があるはずですから、その点で誠意のある協議を進めていただきたい。いかがでしょう。
  349. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 この移譲、整理はなかなか容易なことでない仕事でございまして、計画どおりまだ実施はしておりません。したがって、今委員のおっしゃられるような点を総合的に、誠意を持って接触しながら、私どもの計画が決して無理なものではないと私は思いますので、それらを理解を求めながらやってまいりたい、こう思っております。
  350. 児玉健次

    児玉委員 必要な協議、必要な交渉を誠心誠意進めていただきたい、このことを強く要望します。  そこで、次の問題です。  おととい総務庁の統計局が発表した本年四月の労働力調査、速報ですが、失業率、男性五・〇%、非自発的離職百十五万人、世帯主の失業九十三万人。労働大臣、明らかに非常に深刻な状況が進んでいますね。ある論評は、正社員がリストラされ、パートなどの不安定雇用が補う形で雇用の質が一段と悪化していることを示している。  私は、昨年、この行革特別委員会でこの非自発的離職の問題を議論いたしました。そのとき総務庁は、四月の委員会ですが、一番新しい二月の数字をお答えになった。当時六十九万人です。この一年余りで四十六万人、一・七倍に非自発的離職者が急増している。この事態は何に起因するのか、この点に限って労働大臣のお考えを聞きたいと思います。
  351. 甘利明

    ○甘利国務大臣 ここへ来て非自発的失業が自発的失業を超えてふえました。非自発的失業というのは、会社都合あるいは会社の倒産による失業でありますから、それだけ企業がリストラあるいは今の景気の状況を受けて厳しい状況に入っている。この厳しさというのも、先が全く見えない厳しさではないと思うのでありますけれども、景気回復には必ずおくれて雇用失業情勢というのはついてくるものでありますから、いろいろな意味で、今一番暗いトンネルを抜けている最中であるというふうに思っております。
  352. 児玉健次

    児玉委員 それは少々甘いんじゃないかと思いますね。  例えば、ある論評はこう言っていますよ。日本の活力を支えてきた企業がデフレの直撃を受け、生き残りのために人減らしに走る、だが、縮む雇用はボディーブローのように日本経済の体力を弱め、世の中に不安を広げる、かつて経験したことのない負の連鎖が雇用を軸に進行しつつある。私は、この指摘は当たっていると思います。  そこで、労働省にお伺いしたいのですが、これは平成十年三月に出された行政改革会議審議経過です。その中に、平成九年五月七日第十二回行政改革会議で、労働省が出席なさっている。渡邊官房長、当時ですね、職業安定局長、官房審議官等です。その方々がこういうふうに述べている。労働行政は、「基本的に産業と労働者の著しい力の違いを前提とし、労働側に立ち最低賃金や労働基準を定めてきたものであり、産業行政と一線を画してきた。」明確に述べていらっしゃいますね。この「産業と労働者の著しい力の違い」、この点の認識について変わりはないと思いますが、いかがですか。
  353. 甘利明

    ○甘利国務大臣 使う方と使われる方の力関係でいえば、それは、ほうっておけば使う方により強い力が働く。しかし日本は、良好な労使関係に基づいて健全な話し合いが行われ、そしてそれがもとで今日まで発展をすることができたことも事実であります。  それから、先ほどの質問で、全く認識が甘いという御指摘がありましたけれども、私は、全く希望がないわけではない、例えば新規求人というのは三カ月連続プラスになっておりますし、いい面もちゃんと認識して、国民に対するメッセージを伝える必要があるということを申し上げたかったわけでございます。
  354. 児玉健次

    児玉委員 大臣産業と労働者の著しい力の違い、この認識について労働省はいかがですかと聞いているんです。
  355. 甘利明

    ○甘利国務大臣 ですから、答弁させていただいたつもりでありますが、使う方と使われる方、ほっておけば当然そちらに力が働く、それを労働行政の中でどうやってより適切な関係にはぐくんでいただくか。それは労使の自主的な取り組みによっても大いに助長をされて、現在の、言ってみればかなり健全な労使関係がはぐくまれたというふうに理解しております。
  356. 児玉健次

    児玉委員 企業と労働者の側に力関係の大きな違いがあるというのは、今の御答弁の中で私は聞き取ることができました。  そこで言いたいのですが、問題になっている非自発的離職が、わずかこの一年余りの間に一・七倍になっている。皆さんがお出しになった九八年の労働白書の中で、産業構造調整に伴う摩擦的失業、なかなか見事な表現ですね。産業構造調整に伴う摩擦的失業、リストラのことだと思うのです。それが、産業と労働者の著しい違いの中で今進行している。そこで求められているのは、労働行政の一元的、機動的な展開が現在最も必要ではないかと思うのです。厚生労働省に大ぐくりになって、今日の深刻な雇用情勢のもとで、労働行政の一元的、機動的な展開ができるとお考えでしょうか。大臣、どうでしょう。
  357. 甘利明

    ○甘利国務大臣 やらなければならないと思いますし、できると思っております。
  358. 児玉健次

    児玉委員 大臣、この議論が準備されている中で、行政改革会議が中間報告を出し、そして最終報告を出しました。私が持ってきたのは、平成九年九月三日の行政改革会議の中間報告です。  各省庁の統廃合について短いコメントがあります。その十八ページ、当時雇用福祉省という言い方が想定されていた、雇用福祉省についてのコメントは四行だけですよ。たった四行だけコメントがある。何と書いてあるか。「労働行政と福祉行政等を総合的に担当する省として、雇用福祉省を設立することとしたが、これに対しては、労働行政は独立すべきではないかとの意見もあり、また、いずれにせよ、雇用・労働政策が埋没しないような配慮が必要であるとの意見がある。」このコメントしかないのです。  大臣が何らかの決意を表明なさるのは御自由だけれども、しかし、かつてない今日の深刻な雇用失業情勢のもとで、文字どおり一元的、機動的にこの事態を打開しようとすれば、この中間報告が懸念しているように、雇用、労働政策が埋没してしまわないだろうか。私は、どうしてもこの懸念がぬぐえない。再度、率直なお考えを聞かせてほしい。
  359. 甘利明

    ○甘利国務大臣 今日まで行革論議がなされている中で、非常に多く指摘をされてきたものは、縦割り行政の弊害をなくせというお話でありました。  つまり、ベクトルがおおむね同じような方向で二つ省庁が取り組んでいくと、境界線といいますか、いろいろ縄張り争いが出て、効率的に、本当の意味でいい行政サービスが供給できない。行革省庁再編をする場合には、まとめる場合には、そういうベクトルに向かって隣接する役所をまとめるべきだというお話だったんだと思います。  そこで、労働政策も社会保障政策も、言ってみれば労働政策は、先生が再三御指摘をされていますように、働く側の権利をどう保護するかというセーフティーネット政策であります。社会保障政策も当然そうでありますから、社会におけるセーフティーネットをうまく張りめぐらす、そこに、縦割りの弊害を排するという意味では、まさに画期的にこれから取り組めることだというふうに確信をしています。
  360. 児玉健次

    児玉委員 では、ちょっと私は各論に入りましょう。  労働省の事務担当で結構ですが、日本の労働組合の組織率の推移ですが、一九七〇年、八〇年、九〇年、そして直近の九八年、労働組合の組織率の推移を御紹介いただきたいと思います。
  361. 野寺康幸

    ○野寺政府委員 今お尋ねの件でございますが、漸減的に逓減しているということでございまして、現在は二十数%であると思います。詳しい数字は別途差し上げたいと思います。
  362. 児玉健次

    児玉委員 別途いただくまでもなく、これは非常に重要な事柄ですから。一九七〇年が三五・四%、八〇年が三〇・八%、九〇年が二五・二%、そして昨年は二二・四%です。七〇年からこの間、実に一三・〇%労働組合の組織率が下がっています。そのことが、先ほどから議論している、産業と労働者の著しい力の違いをもたらした一要因だと私は考えています。  これまで労働省はそういった中でどんな仕事をしてきたか。例えば、労働省設置法第三条の一に、第三条の一というのは、労働省がなすべき仕事のトップにそれが来ていますが、「労働組合に関する事務、労働関係の調整及び労働に関する啓もう宣伝」、そして第四条の所掌事務の十五に「労働組合及び労働関係の調整に関する啓もう宣伝を行うこと。」  これほど低く労働組合の加入率が下がっているということは、ある意味では私は国民的な課題だと思う。労働組合というのは、本来、民主主義の学校です。そこに多くの働く方が集まって、憲法の示すところに従って労働者としての権利を行使していく、それを労働省がしっかりとガードしていく。ところが、皆さんの今度の省庁再編でいえば、その仕事を行うべき労政局はどうなるんでしょうか。大臣、どうでしょうか。
  363. 野寺康幸

    ○野寺政府委員 労政局はなくなることになります。そのかわり、労政問題を担当する局長級分掌官をお願いしている次第でございます。
  364. 児玉健次

    児玉委員 このように労働組合の組織率が極端に低下していって、そして、産業と労働者の著しい力の違い、それが生まれているときにこそ、労働行政の一元的な任務、先ほどの労働組合法やそういったものについての啓蒙宣伝の重要性が今求められているんじゃないでしょうか。  大臣、この点はやはりあなたから答えていただきたい。
  365. 甘利明

    ○甘利国務大臣 労働組合に入る入らないはもう個人の意思なんですね。ですから、入りたいと思えばお入りになればいいんでありますし、組織したいと思えばすればいい。何も我々がしてはいかぬなどということはみじんも申し上げていないんでありますね。ですから、組合も、組合員のニーズがいろいろ変わってくるでしょうから、そこを先取りして、魅力的な組合にするための御努力をされたらいいんではないでしょうか。(発言する者あり)
  366. 児玉健次

    児玉委員 委員長、不規則な発言は取り締まってください。真剣な議論をしているんだから。  大臣、今の御発言ですが、私はあなたの御発言とは思えない。というのは、憲法はどう書いていますか。労働者の団結権の擁護、これが憲法の示す道じゃありませんか。それを労働省は行政機関としてどのように進めていくかということが仕事ですよ。だから、これまでの労働省の設置令の冒頭に労政局が据わっていたのは、この憲法の要請に基づくものです。どうですか。
  367. 甘利明

    ○甘利国務大臣 先ほども申し上げていますように、入るのもこれは自由なんです。入らなければけしからぬと言うことはできないんですよ、我々には。  そこで、組合は入るメリットをちゃんと訴えていただいて、労働省がぜひ皆さん入ってくださいと言うことは、やるんですかね、そこまでは立ち入らないんじゃないかと思っておりますけれども。
  368. 児玉健次

    児玉委員 議論は正確にかみ合わせましょう。  私が言っているのは、私の意見じゃなくて、労働省の設置法なんだから、設置令なんだから。労働組合法、関係調整法についての普及啓蒙をすると言っている。私はそれ以上のことは言っていない。それがあなたたちの仕事だったんだから。それが今度のこの省庁統廃合で消えてなくなる。  そこで、私は、この点はやはりはっきり言いたいと思うんですがね。労働大臣、今、日本の失業の深刻化、それはある意味では、これはきのうの毎日新聞ですが、「政権揺るがす問題に」こういうふうに言われるだけの深刻さを持つに至っていますね。そういうとき、これもテレビや新聞でよく拝見するけれども、甘利大臣自身がその対応についていろいろと御苦労なさり、追いまくられているだろうと思う。  一方、宮下厚生大臣に私は申したいんだけれども、大臣は、今の介護保険の問題、そして年金等の課題で忙殺されているだろうと思う。このような状況で、片や政権を揺るがすような大きな問題になっている雇用失業問題、他方で、ある意味では国民の将来を左右する介護保険や年金等の課題、これらのことを今お一人お一人の大臣がそれに取り組まれて、極めて忙殺されているときに、これほどの重大問題を一人でこなせるでしょうか。  甘利大臣、宮下大臣から、それぞれ、建前でなく、率直なお考えを聞かせていただきたい。
  369. 甘利明

    ○甘利国務大臣 国会には、特に与党には優秀な人材がたくさんいらっしゃいますから、少なくとも私より優秀な人ばかりでありましょうから、確実にこなしていけると思います。
  370. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 率直に申しまして、国務大臣のポストを仰せつかりますと、余り改正問題もなく淡々として過ごす場合もありますし、また、いろいろな改革の課題が一遍に押し寄せる場合もあります。したがって一概には論ずることはできませんが、現在のような状況でいいますと、率直に言って、医療保険の問題にしても、あるいは年金にしても介護にしても福祉の問題にしても、課題が非常に多いものですから、確かに、この上私の責任で労働問題まで全部やれといったらちょっとなかなか手に負えないかもしれませんが、しかし、今回の行革法によれば、副大臣も置くとか、いろいろ機能分散を、責任分散をして組織的にやろうという体制を組もうとしておりますから、私としてはそれに期待をし、そういう場合でもこのくらいなら乗り切れるのかなと。最高の責任者、つまり労働厚生省の大臣は、二人の副大臣も置かれることでありますし、それぞれやはりポイントポイントを指示してイニシアチブを発揮できれば私は可能ではないかと思っております。
  371. 児玉健次

    児玉委員 副大臣の問題は差し当たって現在の問題ではありません。この後大いに議論をしたい。少なくとも、現在の行政組織にあっては、大臣が膨大な官僚スタッフを政治家として束ねていらっしゃる。そして、副大臣についていえば、私たちはいろいろ議論はありますけれども、もう時間がないからそれは省きましょう。  世界現状を見てみましょう。雇用、労働の分野と医療、福祉、社会保障の分野は、世界の各国の行政組織で最も肝要な分野ですね。大臣は今、私より優秀な人がいるからという非常に微妙な表現をなさったし、宮下大臣は、現在は大変だということもおっしゃった。  アメリカはどうなっていますか。これは世界年鑑の九九年版、共同通信社のものです。いろいろ変わってきますけれども、九九年版でいえばこうです。アメリカは、労働長官と厚生長官です。イギリスは、教育・雇用大臣、保健大臣、社会保障大臣の三人でやっています。ドイツは、労働・社会大臣と保健大臣です。フランスは、雇用・連帯大臣と保健担当大臣です。イタリアは、労働大臣と保健大臣です。カナダは、労働大臣と保健大臣です。G7の各国を見た場合に、これほどの仕事を一人でやっている国は一つもないんです。  そういう中でどうして日本がこんな無理なことをやろうとするのか。それはやはり省庁半減という数合わせが優先するからですよ。これをそのままやったのでは国民生活に最も密着した分野が大きく後退する。私は、見直すべきだと思う。  しかも、この問題は単なる今だけの問題ではない。すぐれて憲法との関連があります。  私はここに、有斐閣の「行政組織法」、新版です、佐藤功氏の。(発言する者あり)ちゃんと話を聞きなさい。皆さんも、この佐藤功氏の「行政組織法」をごらんになった方は随分いらっしゃるだろうと思うんです。  この中の「行政組織の実体」の場所でこう述べていますね。  いかなる省が置かれるべきかについて憲法自身の要請するところであったといってよい。すなわちそれは具体的には次の諸点に現われていた。   (イ)戦争放棄の大原則から陸・海軍省は存在の理由を失った。 まさにそうだと思う。   (ロ)憲法に社会国家的な要素がとり入れられたことの結果として、社会国家的・社会政策的な行政事務に大きな重点が置かれることとなったことによって、労働・厚生行政に関する事務を所掌する省(特に新たに労働省)が設置されることが憲法自体から要請されていたと考えられる。   (ハ)憲法における地方自治の確立は従来の地方行政における官治的・中央集権的制度を排除し、それは従来の内務省の存在理由を失わしめた。 以下略しますけれども。  結局、厚生省と労働省を分離して設置する。憲法二十五条に責任を負う厚生省、憲法二十二条、職業選択の自由、二十七条、労働の権利及び義務、二十八条、労働三権の保障、このことにかたく立脚した労働省、両省を分離してそれぞれ設置することは憲法自体の要請だ。太田長官どうです。
  372. 太田誠一

    太田国務大臣 憲法が省庁の構成組織を規定しているというふうには考えておりません。
  373. 児玉健次

    児玉委員 国会の議論というのは、私は率直にしたいな。あるがままに言っているのだから。  戦前でいえば、省庁をどうするかというのは勅令が決めました。そして、新しい憲法ができてからは法律が決める。そのことを十分敷衍した上で佐藤先生は、さっき言いましたように、「いかなる省が置かるべきかについて憲法自身の要請するところであった」と。そうじゃないですか。憲法自身が、これはあれこれの省庁について言っているのじゃない。厚生省と労働省を別個独立に設置するということが憲法自体の要請ではないか、そのことを私は言っている。どうです。
  374. 太田誠一

    太田国務大臣 憲法は、一つの憲法のもとで相当さまざまな時代を経るわけでありますから、行政組織について硬直的な考え方を持っているというふうには解釈できないと思いますよ。
  375. 児玉健次

    児玉委員 あなた、この所説は、行政組織法について言えばほぼ定説ですよ。そして、その中で憲法自体の要請。そこで、二十一世紀に向けてどんな行政組織をつくろうかというとき、この憲法に対してどうこたえるかというのは小渕内閣にとっても非常に重い課題だと思う。  そこで、私は言いたいのだけれども、行政改革会議から二年たった。中央省庁改革基本法から一年たった。この間、事態は、特に雇用失業問題をめぐって急速に深刻化しています。立法事実が大きく変化もしている。そういう中で、国民の不安が雇用失業問題に集中しつつあること、各種の世論調査が示していますよ。こういうときだから、今厚生労働省を一本にするということについては再検討をして、憲法の要請するとおり、別個の省庁としてこの後運営していくことが将来に対する政府の責任でもあり、国会の国民に対する責任だ、私はそう思います。長官、どうですか。
  376. 高鳥修

    高鳥委員長 太田国務大臣。時間が来ておりますので、簡潔にお願いします。
  377. 太田誠一

    太田国務大臣 厚生労働省は、誕生することによって、雇用の問題も含めて積極的な役割を果たすと期待をいたしております。
  378. 児玉健次

    児玉委員 じゃ、議論は続けましょう。  終わります。
  379. 高鳥修

    高鳥委員長 次に、中西績介君の質疑に入ります。
  380. 中西績介

    中西(績)委員 明治以来の中央集権あるいは官主導の行政から、地方分権情報公開の徹底などによりまして、国民に開かれた、主権在民にふさわしい行政改革を私たちは主張してまいったつもりです。橋本内閣当時、与党の行政改革協議会に参画し、さまざまな与党確認を行い、国民のための行政改革に力を尽くしてきたつもりであります。その上で我が党は中央省庁等改革基本法案に賛成をいたしましたが、今回の関連法案にはさまざまな問題点が含まれております。したがって、十分な審議を尽くすべきであり、修正すべきはちゅうちょなく正していただきたいと私は思っています。  そこで、改革理念についてお伺いをしたいと思います。  中央省庁等改革基本法の目的で、内閣機能の強化、国の行政組織及び事務事業の減量、効率化ばかりが中心になっておるし、小さい政府を志向するというが、逆に権限の強大を図っておるのではないかと思われる節があります。国民生活の安定や社会経済の健全な発展という本来的な理念が示されておらないのではないか。  こうした観点から、我が国を取り巻く経済社会、国民生活の変化に対応すること、言いかえますと、国から地方への地方分権、官から民への役割分担の見直し、ガラス張りの行政を目指す情報公開などを徹底していくことによって、おのずと新たな省庁の役割や仕事が決まってくるはずであります。行政、事務事業について十分に時間をかけた悉皆的な検討が必要ではなかったかと私は思っています。  しかし、中央省庁等改革関連法案に至る論議の経過は、初めに中央省庁半減、すなわち一府十二省体制ありきの数合わせであったと言わざるを得ないわけであります。中央省庁等改革基本法に忠実であると言われる中央省庁等改革関連法案は、やはり検討不足ではなかったかと私は思います。この点について、総理にお聞きすればいいんですけれども、出席願うことはできませんでしたので、総務庁長官、お答えいただきたいと思います。
  381. 太田誠一

    太田国務大臣 今回の中央省庁等改革に当たりましては、行政改革会議の最終報告にもありますように、まず官民の役割分担や地方分権を進めることにより、国の行政が担うべき役割の見直しを図ることとした上で、二十一世紀という新たな時代の主要な行政課題に的確に対応するために、各省は、主要な任務を基軸として、できるだけ整合性、包括性を持った行政機能を担うよう編成をすること、基本的な政策目標の対立する行政機能はできる限り異なる省が担うことなどを勘案しつつ、中央省庁等改革基本法において一府十二省庁の設置が定められたものであります。  今回検討しております中央省庁等改革関連法律案は、このような基本法の規定を踏まえ、各府省が担うべき任務や所掌事務などについてさらに詳細な検討を加えた上で立案したものであります。すなわち、今先生がおっしゃった問題意識を踏まえて、しかしながら、最初の柱として中央省庁の一府十二省庁というのを考えたということであります。
  382. 中西績介

    中西(績)委員 今大臣は、私が主張したような点を含んでこうした方向性を打ち出したということを言われておりますけれども、私はやはり、少なくともこの種問題について、先ほどからも論議されておりますけれども、本当に国民が期待をする、そうした内容を含んで検討していったかどうかが疑わしいというような中身になっておるのではないかということを危惧いたしています。  したがって、そうしたことも含みまして、社会経済情勢の変化への対応や国民生活の向上のためには、地方分権などの進展に合わせまして、中央省庁の役割は刻々に変化していくものでなくてはなりません。不断の見直しを行うべきであると思いますけれども、このように、近い将来を含めて、実態に応じ、国民要求に合致するものであるかどうかということをやはり十分検討した上で、こうした点についての見直しをすべきではないかと思うんですけれども、この点については、どのようにお考えですか。
  383. 太田誠一

    太田国務大臣 まさにおっしゃるとおりでありまして、行政改革は、国の行政組織及び事務事業の運営を簡素かつ効率的なものとするとともに、その総合性、機動性、透明性の向上を図り、これによって、戦後の我が国の社会経済構造の転換を促し、自由かつ公正な社会の形成を目指そうとするものであります。  今般の中央省庁等の改革地方分権推進を初めとして、今後とも、行政改革を国政の最重要課題ととらえ、さまざまな課題に取り組んでいくことは当然であります。もとより、あらゆる意味国民生活の向上ということは極めて重要な観点であります。
  384. 中西績介

    中西(績)委員 私がなぜこのことを指摘するかといいますと、法律の改正なり、あるいは現在ある法律を破棄いたしまして新しい法律を策定する際に、例えば、目的の項目の中に福祉などという文言が入れられておったにもかかわらず、新しい法律の中からはそれが消えていく、こういう状況が出ておるわけであります。  二十一世紀に向けて、これからのあるべき姿というのは人権の世紀であるということは皆、口では言います。ところが、このように、弱者に対する十分な対応ができるような、例えば建設関係でいいますと都市計画を、あるいは住宅政策をということにならなくちゃならぬわけでありますけれども、その目的の中からわざわざ今まであったものを削除して、法律が、目的の中から外したものができ上がっていくという状況から考えますと、今の政府の中ではそうしたものが十分勘案されないままいくのではないかということを私は懸念しておるということを申し上げておきたいと思います。  ぜひこの点については、先ほど大臣が言われたように、このような、人間生活を中心にし、国民の生活を中心に据えての行政のあるべき姿を追求するということをもう一度お答えいただきたいと思います。
  385. 太田誠一

    太田国務大臣 法律の具体的な内容の話でございますので、事務局から答えさせていただきます。(中西(績)委員「いや、見解だけでいい、決意だけでよろしいです」と呼ぶ)  国民生活向上の観点から、中央省庁再編、地方分権にとどまらずこれから不断の行政改革が必要であるということは、おっしゃるとおりでございます。
  386. 中西績介

    中西(績)委員 引き続いて、国民生活中心に、そして行政サービスを向上させるという視点から考えたときに、私は、定員削減問題について言及をしていきたいと思います。  私たちは、自社さ連立政権をつくり上げておったときに決めました定員削減計画は、十年間で一〇%ということを決めました。その後、小渕総理の就任に当たって二〇%、自自政権合意に当たっては二五%。あたかも公務員を減らすことが行革の目的のように、単純にとらえてまいりますと、認識をせざるを得ない中身になっています。  したがって、今、この委員会でこうした問題等について相当厳しい論議が続けられておったようでありますけれども、それに対して、本日、太田長官の発言として出されたものの中に、定員削減についての考え方を改めて整理して申し上げたいとして発言要旨が示された、その中身を私は見まして、大変残念に思っております。これでは、最初に定員削減ありきの人気取り、あるいは自自連立政権樹立のための党利党略であると、これを見れば見るほど言わざるを得ない。余りにも泥縄的であったのではないか。  二五%削減の根拠として、それを可能ならしめる積算根拠があるのかどうか、そして、自自連立政権合意に当たって、両党及び政府間で事務事業の精査が行われた上での積算なのかどうかについて、お答えをいただきたいと思います。
  387. 太田誠一

    太田国務大臣 政府におきましては、基本法に規定された、少なくとも十年、一〇%の計画的削減と、独立行政法人化により十年、二〇%の削減を目指してきたところでありますが、この目標を一層厳しくする観点から、自民、自由両党間で十年、二五%削減の合意がなされ、政府側の手続としては、この両党合意を受けて、中央省庁等改革推進本部に対して私の方から二五%削減目標を提案し、閣議において正式に決定したところであります。  政府としては、自自連立の合意を尊重し、与党とも密接に連携しつつ、この方針に沿った定員削減を実施してまいる所存でありますということであります。
  388. 中西績介

    中西(績)委員 そういうことになりますと、この二五%というものの内容的なもの、これから後次々に私質問をいたしますけれども、今の公務員が置かれておる状況等から判断いたしますと、本当にそうしたことができるだろうかということを、私は考えれば考えるほど無理ではないかという感じがするものですから、こうした点について本当に精査をしてやったかどうかということ、抽象的なもので数的なものを明定せずにつくり上げ、そして、今多くの合理化が進められておるという民間とあわせれば、皆さんから理解をいただくのではないかというような甘い考え方に立ってこうしたことが打ち出されてきたのではないかということを感じますので、この点について指摘をしたとおりであります。  これだけにこだわっておるわけにいきませんが、そこで私は、この中におきまして、平成十二年より新規採用の抑制を行えば、増員の徹底した抑制を行う、こういうことをつけ加えていきさえすればこれが可能だということを言っておるようでありますけれども、行政の継続性、こうしたことは、私たちがかつて、私は福岡なんですけれども、福岡あたりで、急にそこの子供の数が減ったり、あるいは人口減によって行政職員を一時採用停止する、そういうようなことを何回か経験してきたことでありますけれども、そのことが行政組織そのものの、本当に運営が困難な状況を招いたことしばしばであります。  そういうことを考えてまいりますと、このように、こうした増員を徹底して阻止をしていくということになってきたときには行政の継続性がどうなのかということを私は聞きたいと思います。
  389. 太田誠一

    太田国務大臣 各府省の定員の十年、二五%削減のため、四月二十七日の国の行政組織等の減量、効率化等に関する基本的計画において、八十九の事務事業の独立行政法人化を決定したところであります。  これに加え、新規採用を減らすこととともに、民営化独立行政法人化、さらなる独立行政法人化、さらには規制緩和や今般の中央省庁改革における行政組織の整理に関する取り組み、増員の徹底した抑制、十年間にわたるさらなる改革努力、さまざまな改革努力をして、議員御指摘のように、組織管理上の問題等にも十分留意しながら実行してまいりたいと思っております。
  390. 中西績介

    中西(績)委員 そのように、本当に十分留意をしながらやるとは言っておりますけれども、今までがそういう状況にはなかっただけに、私は、そのことがすべて信頼できるということにはなり得ない。  そこで、内容的に、聞けば聞くほど、こうした問題について、私は大変な不安を持つものであります。職員の定員に関する法律で、定員の総数を新たな枠組みを設定する、その中でということを言っておりますけれども、国民全体の奉仕者である国家公務員を十年間で四分の一減らしてしまうような無定見な定員削減は、少なくとも見直すべきではないか、基本法に基づく水準に戻すべきだと私は考えます。この点、どうですか。
  391. 太田誠一

    太田国務大臣 二五%の削減は、先ほど申しますように、十年、一〇%の計画的な削減と同時に、独立行政法人化ということなどによって果たすものであります。そのことによって本質的に、何か国民全体のための奉仕を国家公務員が行うことについて、支障が生じないようにすることはできると思います。
  392. 中西績介

    中西(績)委員 私は、この後の質疑の中でそこいらについても、どのようにこれから、今言われたことが本当に可能かどうかということを明らかにしていきたいと思います。  四月の失業率は最高のものとなりました。そして政府は、福祉で雇用拡大をということを言い始めております。こうしたときに行政改革は、一方で公務員の雇用労働条件の向上などをさせることによって、労働基準法に沿った、国際的に先進国からつまはじきされないようにされなくてはならないと私は思っています。  初めに数合わせがありきではないかと述べましたけれども、本当に国家公務員は働いていないのか。霞が関では超過勤務が多く、過労のために倒れる人がいるということを聞いています。超過勤務は、予算、法令、国会、外交などの分野で多いと今までは言われておりました。実態について明らかにしていただきたいと思います。  そして、年間超過労働予算、月一人二十一時間で賄える状況にあるかどうかということについてもお伺いしたいと思います。
  393. 中川良一

    中川(良)政府委員 お答え申し上げます。  超過勤務につきましては、省庁ごと、あるいは同じ省庁の中でも担当部局でありますとか、時期でありますとか、あるいは個々の職員ごとに大変なばらつきがあるところでございまして、その実態を正確に把握するというのはなかなかに難しいことでございます。  なお、人事院が平成八年に行いました国家公務員給与実態調査におきまして、超過勤務が最も多い月の超過勤務時間の平均が示されております。それによりますと、最も多い月で月三十一・一時間、内訳的に申しますと、本省庁で四十三・〇時間、その他出先機関等で三十・二時間というような数字になっておると承知をいたしております。
  394. 中西績介

    中西(績)委員 したがって、今お答えいただきましたように、こうなってまいりますと、月一人二十一時間で賄えないということになるんでしょう。そうなってまいりますと、人事院が目安として守れということを各省庁で徹底をしなくちゃならぬ。三百六十時間というのは、既にこれは無視されたという形になっています。  これを考えてまいりますと、本当に、きょうは実は各省庁全部出ていただいて、皆さんに省庁ごとにそうした実態というものをつぶさに聞こうと思ったんですけれども、この点は時間的な問題等もございましてできませんでしたけれども、これらについては将来的なものもございますので、ぜひ私はそうした情報を公開していただこうと思っています。この点について明らかにする必要があろうと思っております。  横の方で、このような時間にやることについて云々ということが言われておりますけれども、私は、本来ならば、皆さんでお決めになった、そしてそれを総意でやっているというからここに出てきているだけなんで、私が、こうした問題についてもしやるとするならば、そこにおるとするなら反対をしておっただろうと私は思います。  そこで、労働基本権が制約されているだけに、問題として私はここで考えなくちゃならぬのは、サービス残業の実態について、サービス残業が平気で看過されておるという、恒常化しておるという、こういうことが出てきておるといたしますならば、超過勤務と、予算の範囲内でただ働きの実態があるということになるわけでありますけれども、この点について、ただ働きをしておるということを私ここで確認をしたいと思うんだけれども、この点、よろしゅうございますか。
  395. 中川良一

    中川(良)政府委員 先ほど人事院の数値として申し上げましたのは、超過勤務が最も多い月の数字として人事院が調べた数値ということでございます。  なお、先ほど申しましたように、超勤の実態ということになりますと、非常に各省庁ごと、部局ごと、職員ごとでばらつきがございまして、なかなか正確にはつかみがたいところでございますが、国家公務員の超過勤務につきましては、制度上、公務のため臨時または緊急の必要がある場合に、各省各庁の長あるいはその委任を受けた者の命令に基づいて行われるということになっておりまして、各省庁において適切に対応されるべきものでございますけれども、総務庁といたしましては、政府全体として実効のある超勤縮減対策が可能となるよう今後とも努力をしてまいりたいというふうに思っております。
  396. 中西績介

    中西(績)委員 今後行うといったって、今までの実績と実態の上に立って私たちは今この種問題について判断をしていこうと思っておりますから、この点について、本当に恒常化されておるという点を見逃すことはできません。  そこで、私は、現在のこの超過勤務及びそのための予算の実態、予算自身がもう組まれていないということになるわけでありますから、定員削減計画を立てるに当たってこうしたことを本当に問題視し、そして論議の過程の中でこれがなされたかどうかということが非常に問題だろうと思っています。  現状における超過勤務の異常な実態から見ても、無謀な定員削減、あるいは超過勤務やサービス残業にさらに拍車がかかる可能性があるわけでありますから、こうした点について今後どのように対応していくつもりなのか。  そして、これを出す上で、これらを十分勘案しての出し方をしておらないということを私はここで確認したいと思うのですけれども、この点についてお答えください。
  397. 瀧上信光

    ○瀧上政府委員 お答えいたします。  定員削減計画の策定に当たりましては、合理化、効率化等による定員削減の難易度、そしてこれまでの定員管理の実績等を勘案しまして、各省庁と十分に相談、協議しながら策定をしているところでございます。  今後とも、各省庁と相談する中で、各省庁の職場の実情等について十分伺ってまいりたいと考えております。
  398. 中西績介

    中西(績)委員 今後今後が連続して出てくるわけですね。ですから、今まで見過ごしておったし、その実態をむしろ把握しておらなかったと考えてよろしいということを私はここで確認したいと思います。  そこで、労働基準法から見ましても、職員団体と十分な協議あるいは合意が必要だと私は考えておったのですけれども、この点についてはどのように措置をしてきたのか。
  399. 太田誠一

    太田国務大臣 公務員の定員削減に当たりましては、今後とも、各省庁の職場の実情等について、各省庁とよく相談しながら進めるつもりであります。これにより職員団体の意向もできる限り酌み取ってまいりたいと存じます。
  400. 中西績介

    中西(績)委員 これはもう当然のことでありますから、だから、今までもこうした点について十分な協議なり合意が果たしてされたかということ等についても私は疑心を抱くわけであります。この点はこれで終わります。  そこで、労働大臣にお聞きしますけれども、国家公務員、とりわけ霞が関の超過勤務、サービス残業の実態についてどのように今まで認識をされておったのか。そして、労働行政の観点から望ましい実態と言えるかどうかについて、お答えいただきたいと思います。
  401. 甘利明

    ○甘利国務大臣 労働省は時短を推進しているわけでありますが、これは、家庭生活と職業生活の両立を目指す、そして、より自己実現が可能になるような生涯設計ができるようにと努力をしているわけでありまして、そうした観点から、長時間残業につきましても極力減らしていくように取り組んでいるところでございます。もちろん、我が省は定時退庁を勧めておりますし、極力時間内に仕事が片づくように、効率よい業務取り組みを行うということを励行しているところであります。  他省におかれましても、そういうふうに御指導いただけるようお願いをしているところであります。
  402. 中西績介

    中西(績)委員 それでは、私が申し上げたように、望ましい実態ではない、そういう立場に立って、労働省の中においてはそうしたことを実施しておるということを今言われたのではないかと思いますけれども、そのように受け取ってよろしいですか。
  403. 甘利明

    ○甘利国務大臣 私は、他省の実態をつぶさに把握しているわけではございませんが、まず、我が省として率先垂範して取り組んでいこうというところでございます。
  404. 中西績介

    中西(績)委員 先ほどから話があっておりますように、このような実態があるとすると労働行政としてどのように考えるかということを言っておるわけですから、我が省だけのことを考えるのが労働行政じゃありませんから、私はあえてこのことをお聞きしておる。  したがって、この点についてやはり明快にしていただきたいし、その改善策はいかに各省庁に提言をしていくつもりなのか、この点、お答えいただきたい。
  405. 甘利明

    ○甘利国務大臣 御案内のとおり、他省の公務員の話、あるいは他省の労使関係については労働省が所管するところではありませんので、そこは、私どもが範として姿を示すということが我々がとり得る一番ベターな方法かと考えております。
  406. 太田誠一

    太田国務大臣 行政改革は何のためにするのかといいますと、事務事業を削減していくということのためにあるわけであります。  何よりも行政改革を進めて、規制緩和やあるいは行政組織の整理をする中で、余分な仕事を減らしていく。中西委員年来の御主張を同時に実行していくということが一番の手段であろうかと思います。
  407. 中西績介

    中西(績)委員 こだわるようですけれども、労働大臣、やはり、閣議などがあるわけですから、そうした実態等があるといたしますなら、閣議の中でむしろそのことを提言して、皆さんに協力要請なりなんなりをしていくことが労働行政の主務者として大事ではないかということを私は感じますので、あえてこれについて触れさせていただきます。  では次に、そうなりますと、公務員がサボっておるかどうかということが言われるわけですから、ここいらについてちょっと触れてみたいと思います。  人口千人当たりの公務員の比較をいたしますと、米英の約半数、フランスの約四割、このように、一例を申し上げますと、労働省の昨年持ってこられた資料なんかを見ましても、職安の公務員が就職あっせん数などを西欧と比較して我々のところに提示をした内容がございますけれども、これなんかは倍ですね、倍なんです。そしてしかも、今言うように、公務員の数は約半数になっておるということ。  ですから、サッチャリズムによって徹底した民営化、エージェンシー化が行われた後のイギリスと比べて、日本の公務員の数は約半数なんですから、このことを私たちは見ておく必要があろうと思います。あえて労働省の例を挙げたのは、労働省から直接私はもらったからそのことを今ここで申し上げておるところであります。  このことについてどのように認識をされておるのか、どなたでも結構ですが、お答えいただきたいと存じます。
  408. 瀧上信光

    ○瀧上政府委員 ただいまの御指摘のように、国、地方及び政府企業の職員数を人口千人当たりで単純に比較しますれば、欧米主要国はいずれも日本を上回る数になっておりますが、公務員数を外国と比較することにつきましては、行政制度が国によって異なる上、国民の求める行政サービスの内容にも差があるなど、前提となる条件に差があるということを御理解願いたいと存じます。  政府といたしましては、国の行政組織、事務事業の減量化、そして国の果たす役割の重点化等を積極的かつ強力に進めまして、こういったことによりまして、簡素で効率的な行政の実現を目指してまいりたいと考えております。
  409. 中西績介

    中西(績)委員 今の答弁はごまかしです。サービスからしますとどうだこうだということを言いますけれども、例えば、労働省の例を挙げたように、倍以上サービスしているんですよ。こういう実態があるのに、今のような答弁はいけません。  このことを考えますと、今サービスということを言うわけですから、私は、削減によって少なくともサービスを低下させちゃならぬと思うからあえてこのことを今指摘しておるという、この流れをちゃんと心得て答弁していただきたいと思うんです。形だけの、何かそこでごまかしさえすればよろしいなどというようなこの態度そのものがやはり問題なんですね。  そこで、私が一番心配するのは、行政権限が小さいこと、小さい政府ということと行政サービスの水準を低下させることとは全く次元の異なる話なんですよ。日本の場合の方がむしろ、さっきの例からしますと、ほかにそれが間違いだという例があるならば挙げていただけば結構だと思います。それがないということになりますと、私は、こうした次元の異なる問題をそこで答えていただいたのでは大変不満です。この点、どうなんですか。
  410. 瀧上信光

    ○瀧上政府委員 先ほども御答弁申し上げましたように、それぞれ行政のサービスの内容、それから行政の制度、体制、そして行政システム、そういったもろもろのものが、外国の前提事情を日本と比べてそのまま比較できるかどうかといったことにつきましては、いろいろと問題があると思います。  現行の我が国の行政をいかに効率的に維持するかというようなことで、引き続き我が国の行政の効率化といったものを進める必要があると考えております。
  411. 中西績介

    中西(績)委員 効率化、効率化と言ったら、やらないのが一番人員が少なくて済むということになっちゃうんですね。ですから、では、サービスの質あるいはサービスの水準、行政組織の仕組み、それから公務員数、こういうようなものを総合的に考えるということを言っておると思うんですよ。それならそれのようにちゃんと答えていただけばいいんですよ。  半分だということ、しかも、これは地方公務員も何もかも入れているんですよ。政府企業職員まで全部入れた上での対比になっておるわけですから、その中で、先ほど私が申し上げるように、あえて申し上げますと、日本が三十七の場合には、イギリスが七十八、フランスは九十三、アメリカは三十一、ドイツが七十というように、大体倍近くおるわけです。ですから、そうしたことを踏まえて、私たちは今この比較をするときに、困難だと言うならば、では具体的データに基づいてその見解を示していただければ、そのことを私はここで納得します。お答えください。
  412. 瀧上信光

    ○瀧上政府委員 手元に具体的なデータがあるということではございませんが、例えば、行政の仕組みの基本につきまして、連邦制と単一の国家といったものを比べた場合に、例えばドイツの場合には人口千人当たり二・四に対して、日本の場合には六・六というようなことになる、こういうふうなそれぞれの行政の仕組みといったものによって差が生じてくるということを申し上げたわけでございます。
  413. 中西績介

    中西(績)委員 だから、あえて私が言っているのは、地方公務員まで、地方行政まで含んでやるとなるといろいろあるでしょうから、地方公務員なりあるいは政府企業まで含んで全体のものをこうして出しているわけですから、ただ一カ所だけをとってこうだこうだということを言ったのでは、これは極めて非科学的なんですよ。だから、大体どういう構造をしているんですか、頭の構造は。何を考えているのかね。私は、本当にそういう考え方を改めないと行政改革というのは不可能だと思います。  先ほど太田長官が言ったように、やはり国民生活を重視するという立場で行政改革をしていくということを言っているわけですから、そうなると、人員が少なければサービスがどんどん低下するということは当たり前なんです、倍働いているんだけれども。だから、そこをみんな心配しておるわけですし、それをさせないための削減というものをどのように総合的に考えてやるかということがはっきりしないから私は言っているんです。具体的なデータを示してと言ったら、とてつもないものを示して何か我々をごまかすようなことを言ったのでは、これは困りますね。
  414. 太田誠一

    太田国務大臣 一つの例を挙げますと、私も別に数字を細かく知っているわけじゃありませんけれども、例えば我が国で証券取引等監視委員会に配属されている公務員の数は数百人、それに対して、SECで雇用されております公務員の数は数万人だったと思います。そういう、国によって事後チェックの部分に大変大きな数の公務員がおり、我が国のようなところはそういう部分に非常に少ないわけでございますから、事前の調整の部分については我が国の方が多いというふうに考えられます。そういうふうな違いがあるということです。
  415. 中西績介

    中西(績)委員 それなら私は言わなくちゃならぬけれども、私たちのところで、一番大事なことは、例えば、今も労働省見えておりますから労働行政について申し上げますと、では、今労働基準法を守られているかどうか、労働基準法を守らせるための基準局の職員の数はどうなのかということを考えてください。これは、第一言えることは、今企業に対して五年に一回しかこれを査察することはできません。したがって、私たちのところで、中小企業で虐げられて、幾ら駆け込みをやっても全くそれが解決しませんので、先ほどから論議になっている労働組合をつくろうといってつくった。そうしたら、委員長と書記長は首ですよ。そのために、地域の人たちが今度は資金的にも支えながら、十年も十五年も裁判闘争ですよ。最後、ようやく和解によってわずかの金を受領して終わっておるというのが実態じゃないですか。  これは、憲法からいうとどうなんですか。労働法なり、十条から四十条までの憲法からいいましたならば、国民の権利などというものは全く無視されておると言っても私は過言じゃないと思います。それが一件だけならいいけれども、私の選挙区では二件もあって、ようやく数年前に解決したのです。こういうことを考えてまいりますと、本当にそれだけのものが措置されているか。  例えば、外国から入ってくる、こういうところをちゃんと示さなきゃならぬ。あるいは大蔵省だって、税金なんかをちゃんとやるべきはずなんだけれども、それができないというのは何かと言ったら、人員でしょう。それが日本の今の行政の職員の数なんですよ。だから、要るところにはふやさなくちゃならぬということが前提にならなくちゃならぬ。  ところが、そうでなしに、今の総定員法だって、どうなんですか、五%減して、その範囲の中でしか、今度は全体の必要なところにそれを配置するということで、何とか維持をしていっているというのでしょう。  だから、そういうふうなことを考えると、本当に今の行政職員の数が、私たちが期待をする、国民が期待をするサービスまで含んで実施できるような状況にあるかどうかということが考えられているかどうかということ。さっきの答弁を聞いていると、そういうことは全く考えられません。  したがって、私は、この点についてもう一度お考えいただいて、より具体的にこうした問題について、先ほどから申し上げるように、悉皆的に徹底した論議をやはり重ねていかないと問題だというのは、こうした問題があるから私は指摘をしておるところであります。  そこで、もう一つお聞きしますけれども、公務員制度調査会におきまして、諸外国アメリカ、イギリス、フランス、ドイツの労働関係との比較が行われたと聞いておりますけれども、日本の労働関係の不足しておる点、学ぶべき点、こういうものがあったのかどうか。これは恐らく報告がなされておると思いますけれども、どうなんですか。
  416. 中川良一

    中川(良)政府委員 公務員制度調査会におきましては、国家公務員の労使関係のあり方について専門的な観点から審議を行うために、検討グループを設けまして審議を進めているところでございます。  この検討グループにおきましては、調査審議の一環といたしまして、先般、英、米、独、仏、四カ国の国家公務員の労働関係について事務局から報告が行われたところでございます。  諸外国の制度につきましては、各国それぞれに歴史的あるいは社会的背景等を踏まえて構築されておりますので、一概にどこの制度がすぐれておるというようなことは論じられるものではないと思いますけれども、いずれにいたしましても、そういった諸外国状況も踏まえまして、我が国国家公務員の労使関係のあり方について、引き続き御審議をお願いしたいと考えておるところでございます。
  417. 中西績介

    中西(績)委員 私があえてあれしましたのは、労働基本権が制約されているというだけに問題があるわけでありますから、そこをちゃんと補完をするということが前提になってこの種問題等についても考えていかなくちゃならぬわけであります。今、いろいろ報告があったと言うけれども、その具体的内容については、これから私、資料として提供を求めるわけでありますけれども、こうした問題等について本当にまじめに論議されているかどうかということを、もう一度今後の課題として追及していきたいと思っています。  時間がなくなるようですから次に入りますけれども、こういうような状況を考えますと、私は、労働大臣、労働行政の観点からやはり全体的に今日本の置かれておる——これは希望をする者が労働組合をつくればいいというようなことでさっきはお答えがあっておったようでありますけれども、労働組合をつくった途端に首を切られて、そして大変な苦労をされておるという実態が私たちのところにあるものですから。ほとんどそういうことが中小企業の場合なんかにはたくさん出てくるわけです。  ですから、そうしたことをこそ労働省なりなんなりが本当に指導しさえすればいいのに、これを裁判で処置をするというような形になってしまっている。そうすると、今度は、裁判、司法の関係に移っているから私たちは申すことができませんと言って、すべて逃げることができるのですね。こういうような点あたりを、実際に我々は経験しているだけに、どういうふうにお考えですか。
  418. 甘利明

    ○甘利国務大臣 組合をつくった途端に首になるというのは不当労働行為だと思いますから、不当労働行為に関しては厳正に対処をしてまいります。  今まで裁判手続、個別紛争で、お互いの主張が明確に法に抵触していない、しているかどうか確認ができないものについて裁判で個別に争うというやり方だったわけでありますが、個別紛争に関しましても、さきの基準法改正で、労働基準局長が間に入って極力両者の話が決着するように指導していくといいますか、そういう法的なバックグラウンドもできました。もちろん、それでもまだ不備だという御指摘もいただいておりますけれども、個別紛争についてさらにどう対処をしていくかというのは、これからの検討課題だというふうに受けとめております。
  419. 中西績介

    中西(績)委員 ですから、私は、今言われたようなこと、不当労働行為だということで直ちにそれが対処されていけば法廷闘争に移る必要も何もないのですけれども、なされないものですから、いたし方なくどこかにということになって、二件ともやったのですね。ですから、こうしたことを……(発言する者あり)今のが間違っていますか。  私はこうした点について、本当に今こそ日本が新しい、国際的にも本当に信頼される人間関係というものをつくり上げていかないと、これから私たちが幾らそうした努力をしたとしても、具体的に出てくるところはごまかしがきかぬわけですから、人権問題を初めとしてたくさんの問題があるわけですから、ぜひそうした点についてはこれから、もう一度私は改めて時間をとってやりたいと思いますけれども、ぜひ考えていただきたいと思います。  いずれにしましても、私は、行政サービスというものは、先ほどから基本的な理念に立ってこれを拡充していく、そういうことになってまいりますと、今のような状況からいたしますと、到底削減をするという状況にはなかなかならないということをここでは言いたいし、今後は、何としてもこうした点の社会的公平と公正の実現と徹底した弱者保護、サービスを図っていくということを、介護保険などこれから後の多くの問題を抱えておるだけに、私たち指摘をしなくてはならぬと思っています。  そこで、環境省の問題について簡単にお聞かせ願いたいと思います。  行政組織のスリム化のかけ声によりまして大くくり再編成が今度は行われたわけでありますけれども、三十万人以上もの定員を持つ総務省、公共事業関係予算の八割を占める国土交通省、そして千人程度の環境省まであるわけでありますが、大変な不均衡になっています。中央省庁等改革基本法四条の二号ハにおいて「各省の行政機能及び権限は、できる限り均衡のとれたものとする」と言われていますけれども、この点、どうなんでしょう。  したがって、今問題になっておる水道行政など、これは一つの例ですけれども、環境省の所管とすべきではないかと考えられますけれども、この点についてお答えください。
  420. 太田誠一

    太田国務大臣 総務庁長官の大先輩であります中西委員に御指導をいただきたいわけでございますが、今回の環境省の規模は確かに千人でございますが、基本法の第四条第二号に書いてありますことをもう一回申し上げますが、「主要な任務を基軸として、」「できる限り総合性及び包括性をもった行政機能を担うこと。」その次でございますが、「基本的な政策目的又は価値体系の対立する行政機能は、できる限り異なる省が担うこと。」というのがございます。そしてその次に、今おっしゃいました「各省の行政機能及び権限は、できる限り均衡のとれたものとする」ということを定めております。  環境省につきましては、その任務は環境の保全であります。特に他の行政機能と相反する性格が強いことにも着目をしまして、これを独立の省として置いたものであります。環境省設置法案においては、この任務を適切に達成することができる機能が設けられております。これを踏まえまして、今後決定されることとなる環境省の組織等については、現行の環境庁に比べ事務が増加することなどに伴う機能の充実については考慮してまいりたいと存じます。  ちなみに、総務省は、この間も申し上げましたけれども、三十万人というのは、郵政事業庁から郵政公社に移行いたしましたときには、元長官も御存じのとおり、大体七千人ぐらいではないかというふうに言われております。
  421. 中西績介

    中西(績)委員 先を急ぎます。二点だけお聞きします。  独立行政法人について、「職員団体等、各方面の十分な理解を求めつつ行い、一方的な適用は行わないこと」とする九七年十二月の確認、それから、「それぞれの独立行政法人に行わせる業務及びその職員の身分等を決定するに当たっては、これまで維持されてきた良好な労働関係に配慮する」、これは基本法第四十一条、さらに衆議院における特別委員会附帯決議、こうしたものを十分尊重いたしまして、民間でも、使用者変更になるときには労働条件及び労働者の同意が必要との原則があるわけでありますし、特に先ほど申し上げたように、そうした労働基本権を剥奪されているという立場からいたしますと、労使の理解と納得の上で行われるべきであると考えますけれども、この点についてひとつお答えください。  それともう一つは、国家公務員型の独立行政法人は、事務事業の公共性が高く、公正、中立性を確保する必要がある。一般職の公務員では当然と私は考えるけれども、政府もそのような対応をするようでありますけれども、あくまでも一般職の公務員であるということを御確認いただきたいと思います。
  422. 太田誠一

    太田国務大臣 今般の八十九事務事業の独立行政法人化の決定に当たりましては、自社さ三党の九七年十二月の確認や、基本法第四十一条等の趣旨を踏まえまして、各省庁中心に各職員団体等と話し合いを行いつつ、決定に至ったものであります。また、私自身も、推進本部事務局におきましても、各団体などと何度となく意見交換を行ってきたところであります。今後とも、良好な労働関係に配慮しつつ、対応してまいる所存でございます。  また、国家公務員型の独立行政法人の職員に関しましては、通則法では、多様で広範な概念である一般職に整理をいたしております。
  423. 中西績介

    中西(績)委員 時間が参りましたので終わります。まだ相当ありましたけれども、以上で終わります。
  424. 高鳥修

    高鳥委員長 次回は、明四日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後八時三十五分散会