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1999-05-18 第145回国会 衆議院 厚生委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年五月十八日(火曜日)     午前十時一分開議   出席委員    委員長 木村 義雄君    理事 佐藤 静雄君 理事 鈴木 俊一君    理事 田中眞紀子君 理事 長勢 甚遠君    理事 金田 誠一君 理事 山本 孝史君    理事 福島  豊君 理事 岡島 正之君       安倍 晋三君    伊吹 文明君       岩下 栄一君    衛藤 晟一君       河井 克行君    桜井 郁三君       砂田 圭佑君    田村 憲久君       戸井田 徹君    能勢 和子君       桧田  仁君    堀之内久男君       松本  純君    宮路 和明君       山下 徳夫君    家西  悟君       石毛えい子君    五島 正規君       土肥 隆一君    古川 元久君       松崎 公昭君    青山 二三君       久保 哲司君    桝屋 敬悟君       武山百合子君    吉田 幸弘君       児玉 健次君    瀬古由起子君       中川 智子君  出席国務大臣         厚生大臣    宮下 創平君  出席政府委員         内閣総理大臣官         房外政審議室長         事務代理    竹内 春久君         外務省経済局長 大島正太郎君         厚生大臣官房総         務審議官    真野  章君         厚生省健康政策         局長      小林 秀資君         厚生省保健医療         局長      伊藤 雅治君         厚生省医薬安全         局長      中西 明典君         厚生省社会・援         護局長     炭谷  茂君         厚生省老人保健         福祉局長    近藤純五郎君         厚生省児童家庭         局長      横田 吉男君         厚生省保険局長 羽毛田信吾君         厚生省年金局長 矢野 朝水君         自治省財政局長 二橋 正弘君  委員外出席者         厚生委員会専門         員       杉谷 正秀君 委員の異動 五月十八日         辞任         補欠選任   大村 秀章君     河井 克行君 同日         辞任         補欠選任   河井 克行君     大村 秀章君 五月十一日  難病公費医療患者負担廃止医療保険制度改悪反対に関する請願小平忠正紹介)(第三〇八六号)  同(児玉健次紹介)(第三〇八七号)  同(佐々木秀典紹介)(第三〇八八号)  同(葉山峻紹介)(第三〇八九号)  同(福島豊紹介)(第三〇九〇号)  同(藤田スミ紹介)(第三〇九一号)  同(山元勉紹介)(第三〇九二号)  同(吉井英勝紹介)(第三〇九三号)  同(木島日出夫紹介)(第三一七一号)  同(北沢清功紹介)(第三一七二号)  同(玄葉光一郎紹介)(第三一七三号)  同(穀田恵二紹介)(第三一七四号)  同(瀬古由起子紹介)(第三一七五号)  同(玉置一弥紹介)(第三一七六号)  同(中川智子紹介)(第三一七七号)  同(中西績介紹介)(第三一七八号)  同(畠山健治郎紹介)(第三一七九号)  同(鳩山由紀夫紹介)(第三一八〇号)  同(濱田健一紹介)(第三一八一号)  同(松本善明紹介)(第三一八二号)  同(山本孝史紹介)(第三一八三号)  同(横路孝弘紹介)(第三一八四号)  同(木幡弘道紹介)(第三二二五号)  同(中沢健次紹介)(第三二二六号)  同(鳩山由紀夫紹介)(第三二二七号)  同(前原誠司紹介)(第三二二八号)  社会保障拡充に関する請願小野晋也君紹介)(第三〇九四号)  小規模作業所等成人期障害者施策に関する請願小野晋也君紹介)(第三〇九五号)  同(青木宏之紹介)(第三二二三号)  年金医療福祉等制度改革に関する請願福永信彦紹介)(第三〇九六号)  同(逢沢一郎紹介)(第三一五九号)  同(一川保夫紹介)(第三一六〇号)  同(河村たかし紹介)(第三一六一号)  同(中川智子紹介)(第三一六二号)  同(平沼赳夫紹介)(第三一六三号)  同(三沢淳紹介)(第三一六四号)  同(青木宏之紹介)(第三二二四号)  腎疾患総合対策早期確立に関する請願小野晋也君紹介)(第三〇九七号)  同(武山百合子紹介)(第三〇九八号)  同(石崎岳紹介)(第三一六五号)  同(中川智子紹介)(第三一六六号)  同(矢上雅義紹介)(第三一六七号)  だれもが安心してよい医療が受けられる医療保険改革に関する請願竹下登紹介)(第三〇九九号)  同(熊代昭彦紹介)(第三一六八号)  医療保険制度改革に関する請願北沢清功紹介)(第三一五六号)  年金改悪反対、安心して暮らせる老後保障に関する請願金子満広紹介)(第三一五七号)  同(中路雅弘紹介)(第三一五八号)  聴覚障害者社会参加を制限する法律早期改正に関する請願北沢清功紹介)(第三一六九号)  公的年金制度の充実に関する請願北沢清功紹介)(第三一七〇号) 同月十四日  年金医療福祉等制度改革に関する請願伊藤英成紹介)(第三二四六号)  同(河村建夫紹介)(第三二八一号)  同(近藤昭一紹介)(第三二八二号)  同(麻生太郎紹介)(第三三一八号)  同(江崎鐵磨紹介)(第三三一九号)  同(小里貞利紹介)(第三三二〇号)  同(菅原喜重郎紹介)(第三三二一号)  同(土肥隆一紹介)(第三三二二号)  同(西田司紹介)(第三三二三号)  同(牧野隆守紹介)(第三三二四号)  同(坂口力紹介)(第三三五九号)  同(丹羽雄哉紹介)(第三三六〇号)  同(平沼赳夫紹介)(第三三八八号)  年金制度改正に関する請願伊藤英成紹介)(第三二四七号)  同(池端清一紹介)(第三二八三号)  同(池端清一紹介)(第三三二五号)  同(池端清一紹介)(第三三六一号)  難病公費医療患者負担廃止医療保険制度改悪反対に関する請願西博義紹介)(第三二四八号)  同(古川元久紹介)(第三二四九号)  同(村山富市紹介)(第三二五〇号)  同(池端清一紹介)(第三二八四号)  同(川内博史紹介)(第三二八五号)  同(春名直章紹介)(第三二八六号)  同(松浪健四郎紹介)(第三二八七号)  同(吉田幸弘紹介)(第三二八八号)  同(田中慶秋紹介)(第三三二八号)  同(寺前巖紹介)(第三三二九号)  同(土肥隆一紹介)(第三三三〇号)  同(中西績介紹介)(第三三六三号)  同(丸谷佳織紹介)(第三三六四号)  同(金田誠一紹介)(第三三八九号)  同(川端達夫紹介)(第三三九〇号)  同(児玉健次紹介)(第三三九一号)  同(山原健二郎紹介)(第三三九二号)  社会保障拡充に関する請願赤松広隆紹介)(第三二七六号)  同(近藤昭一紹介)(第三二七七号)  同(大森猛紹介)(第三三八四号)  同(志位和夫紹介)(第三三八五号)  同(中路雅弘紹介)(第三三八六号)  小規模作業所等成人期障害者施策に関する請願山本幸三紹介)(第三二七八号)  てんかんをもつ人々の福祉の増進に関する請願中川智子紹介)(第三二七九号)  介護保険法抜本的改善に関する請願春名直章紹介)(第三二八〇号)  だれもが安心してよい医療が受けられる医療保険改革に関する請願今村雅弘紹介)(第三三二六号)  聴覚障害者社会参加を制限する法律早期改正に関する請願小坂憲次紹介)(第三三二七号)  腎疾患総合対策早期確立に関する請願枝野幸男紹介)(第三三六二号)  国立療養所稚内病院結核病棟復活に関する請願金田誠一紹介)(第三三八三号)  医療制度改悪反対に関する請願瀬古由起子紹介)(第三三八七号) は本委員会に付託された。 本日の会議に付した案件  厚生関係基本施策に関する件     午前十時一分開議      ————◇—————
  2. 木村義雄

    木村委員長 これより会議を開きます。  厚生関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田中眞紀子さん。
  3. 田中眞紀子

    田中(眞)委員 おはようございます。自由民主党の田中眞紀子でございます。  急速な少子高齢化の進展に伴いまして、社会保障費の増大というものは避けがたくなっております。そして一方、逼迫した国家財政のもとにおいては、社会保障費抑制しなくてはならないという極めて困難な時代に今差しかかっておりまして、そうした中で、社会保障制度の諸改革のために宮下大臣が日夜大変御努力をしていらっしゃることに対しまして敬意を表したいと思います。  年金というものについてまず考えてみたいと思いますが、年金機能というものはそもそもどういうものであるかということを考えましたら、所得の再分配ということをまず考えなければいけません。それから二つ目には、世代間の相互扶助といいますか助け合いというか、そういう視点機能としては欠くべからざるものだというふうに思っております。  今回の年金改革、大変いろいろな議論が出ておりますけれども、その中で、世帯単位から個人単位に切りかえるべきであろうとか、あるいは賦課方式から積み立て方式にする、あるいは社会保険方式から税方式に変えていったらどうかとか、いろいろな視点での改革議論が尽くされてきております。  その中で、基礎年金というものの国庫負担の割合を三分の一から二分の一にするということが明記されていまして、これは基本的には歓迎すべきことだというふうに思いますけれども、その時期と財源について大臣がどのように考えていらっしゃるかについてまず簡単にお答えいただきたいと思います。
  4. 宮下創平

    宮下国務大臣 今法案与党内で調整中でございますが、その中には、基礎年金につきまして、現行の三分の一の国庫負担を二分の一にすることが記述される予定になっております。これは、財源状況等を見て、そして二〇〇四年までの間にこれを行うということが記述される予定になっております。  具体的に、三分の一から二分の一にしますと二兆円を超える、二兆二千億くらいと想定されておりますが、これが予想されるわけでございまして、その財源確保はどのようなものでやるかについてはこれから検討をして、二〇〇四年までに成案を得るということに相なっておるところでございます。
  5. 田中眞紀子

    田中(眞)委員 その財源の問題でございますけれども、二〇〇四年までに検討なさるということは承知はしておりますけれども年金というものは、基本ですけれども給付が一定であれば財源調達方法税金であっても保険料であっても現役世代負担というもの自体は変わらないわけです。そして、国庫負担をふやすということは、要するに財源のうちの保険料を減らして税負担をふやすことになります。どちらを多くするかということは、これは政策判断といいますか政治的な判断にゆだねられるわけですけれども、いずれにしても、国民負担を軽減するということにはならないわけですね。  そして、小渕内閣ですけれども、今のところ戦略会議での結論というものが一応出て、自自連立の約束として一応消費税福祉目的税化するのだということも確認されているというふうに承知しております。  これらを踏まえて、現実には、二〇〇四年と今大臣はおっしゃいましたけれども結論先送りをされているような印象は否めないというふうに思うんですね、すなわち、これが閣議決定されていないわけでございますので。その中で、宮下大臣はかつて大蔵省でお仕事をなさっていらっしゃったお立場でございまして、現在厚生大臣でいらっしゃるわけですけれども自由党国民年金のいわゆる一階部分全額税方式にした方がいいということを言っておりますけれども、そこのところを大臣政治主導でどういうふうに考えていらっしゃるかというふうなことを伺いたいんです。  その背景にありますのは、現在、国民年金の第一号の被保険者という方たちで、約三百万人近くが未加入者であるという数字が出ていますから、これは財源不足というふうに数えるべきだと思います。それから、基礎年金全額税金で見るというふうな試算をした場合、消費税でいけば約一八%近くまでアップをしなければならないということははっきりしているわけです。  その中で、要するに政治主導でやらなければいけないけれども、先ほど申し上げましたように先送りっぽい感じで、玉虫色に政府はしておられるわけですけれども厚生大臣御本人は、政治家としてといいますか、この自由党全額税方式ということについてどのようにお考えでいらっしゃいますでしょうか。
  6. 宮下創平

    宮下国務大臣 少子高齢化社会を迎えまして、ここで五年ごと財政計算期検討に着手しておるわけでございますが、今委員のおっしゃるように、社会保険料でいただくか税でいただくか、これは代替関係にあるということでありますが、マクロ的にはそういうことが言えると思いますね。  でも、私ども年金制度それ自体を問題にしておるわけでございまして、この世代間の公平あるいは若い世代負担増嵩を避けるためには保険料引き上げをなるべく抑制したい、それから、高齢化が進みますから給付の方も多少調整をしていきたいとか、いろいろの改革考えて織り込んでおります。  他方基礎年金について、今三分の一でございますが、二分の一にしますとかなりの保険料アップ抑制ができますし、円滑な運営に資するであろうという判断のもとに、二分の一までが限度であろう。つまり、社会保険料方式の方を維持した方がいい。なぜかというと、基礎年金全額税方式にいたしますと、まず、委員の御指摘のように消費税一%で二兆五千億くらいだといたしましても、これを全額やりますと八兆八千億くらいかかると言われておりますから、四%弱の消費税アップということは避けられなくなります。そういう問題が一つございまして、我々は、やはり社会保険方式を維持したいという基本的な立場に立っておりますので、基礎年金全額税方式には異論をもって反対しております。  他方国民年金といえども独立した年金制度でございます。それから、通常の年金報酬比例部分基礎共通項にもなっております。それを、例えば国民年金でいきますと、全額税でやりますとどういう現象が起きるかというと、社会保険料方式のよさが失われることのほかに、資力のある人もない人もなべて、今、四十年加入でございますと夫婦で十三万円前後ということになりますが、それを先生にも私にも全部税で賄って均等に給付するという制度が果たしていいのかどうか。これは、税金で全部を賄うということになるとなかなか国民的理解が得られないのではないかと私ども感じておりますので、現在、その制度をとることについては反対しておるわけですね。  率直に申しまして、与党でございますから、自自協議の中でその話をだんだん今詰めておりまして、これはなるべく早い機会に詰めまして、それさえ詰まれば、あとは私どもが描いておった線と大体同じでございますから国会に法案が提出できるということでございまして、なるべく早く与党内の調整にこぎつけたい、こう思っておるところでございます。
  7. 田中眞紀子

    田中(眞)委員 これから自由党さんの中からもそのようなお尋ねがあると思うんですけれども全額税方式にしなくても、今大臣がおっしゃったような方式自由党理解は得られるというふうな確信を持っていらっしゃいますか。
  8. 宮下創平

    宮下国務大臣 戦略会議でも比例部分を廃止するとか、基礎年金部分全額税方式になるべく持っていった方がいいという提言がございますから、抜本改革戦略会議も提案しておりますから、私は、それを検討すること自体はよろしゅうございますが、ことしの改革においてそれを取り入れるということは、いろいろの問題がありましてにわかにこれはできないという立場をとっておりますので、その点は自由党の諸君も理解はしていただけるものと……。検討すること自体まで私どもは否定はしておりません。  それから、三分の一から二分の一は先送りではないかという御指摘もございますが、これはある意味では先送りと言われても仕方ない面があります。しかし、次なる財政計算期までになるべく早くこの見通しを立てたいということも、経済状況、あるいはこれからの財政、あるいは税制のあり方、あるいは行革も含まれるんでしょう、そういうことを含めて全般的な判断をするということでございまして、私どもは、二分の一までであれば何とか責任を持ってこれを措置していきたいという決意のもとに、今予定されている法文上は多少先送り的な感じをお受けになるかもしれませんが、決意はそういうことでございます。
  9. 田中眞紀子

    田中(眞)委員 決意が揺らがないことを期待しなければならないし、みんなでしっかりウオッチングしなければならないと思っております。  それで、別の切り口からまた伺いたいと思います。  このまま高齢化が進みますと、二〇二五年には高齢化がピークを迎えていく、お年寄りが大変ふえることになりますけれども厚生年金につきましては、今、およそ現役二人でもって一人の年金受給者を支えているといいますか負担をしているという計算になるわけですね。裏返して言うと、現在の年金額をそのまま維持するためには約二倍の保険料負担する、支払わなければならないという大変厳しい実情であるということをまず認識しなければなりません。  そして、高齢者生活保障の中心というものが年金である、これが国民の最大の関心事であるということは世論調査等でもわかっていますし、これはもう周知の事実でございます。  それから、先ほども申し上げましたけれども年金というものは、要するに世代間の助け合いとはいいますけれども、本当は給付負担の問題ですから、給付を切り下げるのか負担をふやすのかという、これは一種の世代間競争になりそうな問題で、政治家としても、また一人一人国民自身も悩ましい問題だというふうに思います。  そういう危機的な状況であるにもかかわらず、先月四月に予定されていた国民年金厚生年金保険料引き上げを一応見送りをした。これもまた先送りだと思いますが。景気の低迷が理由だと言っていますけれども、それは景気は低迷していますが、それは各内閣責任でありますから、それを無視して景気だけが勝手に低迷しているような言い方をすることは私は非常におかしいと思っておりますが。  そういう給付負担関係、これは役所ではなくて、本当に政治家として大臣がどういうふうに思っていらっしゃるかということを伺いたいと思うんです。  と申しますのは、私は、厚生の問題だけではなくて、国防の問題もそうですし、それから財源の問題、そのほか教育問題も広い意味ではそうだと思っておりますけれども、今、日本人の意識で一番欠落しているのは受益負担意識ではないかと思うんですね。こういうことが戦後の教育の中でも、これはもちろん文教委員会ではないんですけれども、しっかりと一人一人のマインドの中に植えつけられてきていないために、この年金問題の中で非常に見えづらいものが出てきている。  それで、政治家は選挙とか何かでみんなにいい顔をしようと思っても、それはあり得ないわけです。国民生活者ですから、年金問題は自分の問題ですから、しっかり先を見ていて、よくわかって勉強しているんですね。  言ってみれば、薬も説明義務があると思うんですが、苦い薬はよく説明をして、そして飲んでもらう。痛い手術であっても、必要性を言って、結果としてよい展望が開けるからということをよく告げて執刀しなければならないということがあるわけでして、今の政治に一番欠けているのはそういう説明義務とかあるいは意思決定透明性。だれが責任をとってやるのか、この内閣のだれがどうやってやっていくのか、一年以内とか二千何年とか先々をおっしゃいますけれども内閣の人気は高いかもしれないけれども、いつひっくり返るかわからないわけですから。  そういう受益負担意識の中で、この年金問題を、先ほど来るる申し上げましたけれども、どうやってバランスをとっていくことがいいというふうに、一政治家として、大臣として宮下先生がお考えでいらっしゃるか、この際しっかりと伺っておきたいと思います。
  10. 宮下創平

    宮下国務大臣 今回の年金改正は五年ごと財政計算の一環として行うわけでございますが、平成六年に改正をいたしました時点保険料予測給付予測、あるいは支給開始年齢問題等をそのままにいたしますとどうなるかといいますと、少子高齢化が一層進んでおりますので、私どもとしてはこれを放置できない。少子高齢化状況が全く横ばいでございますとあるいはそんなに改革をしなくてもいいかもしれませんが、少子高齢化がより一層進むということでございますれば、保険料を今言ったように上げるか、給付調整するか、あるいは支給開始年齢引き上げていくか、その三点セットの中の選択しかないわけですね。  したがって、私どもとしては、保険料引き上げはなるべく抑制して少な目にしていこう、これは世代間公平ということもございますが、なるべくこの負担の上昇を抑制しようと。今委員のおっしゃられたように、今のままほっておけば、一七・三五が、これは事業主と折半でございますが、倍の三五%ぐらいになると予測されておりますから、これでは到底事業主及び被用者負担できないだろうという観点が一つございますので、これらをなるべく抑制する、年間の事業所得に対しても二割程度、これは国際水準並みでございますが、これらを維持しておこうという観点保険料抑制を図っています。  しかし、それでも高齢化は進みますから、支出の方をいじくらなければどうにもなりません。そういう意味で、私どもは、現に年金を受けている人たち年金を下げるということはできないと思いますが、今後、物価スライドあるいは賃金スライドでやっているのを物価スライドだけにしていこう、あるいは財源的に二〇二五年の時点で五%程度調整を前提にしようということを考えております。  一方、支給開始年齢の問題につきましては、六十歳の支給報酬比例部分が六十歳です、これを六十五歳にいたしたいと思っておりますが、これは二〇一三年から二〇二五年までの間にかけて行おうということで、来年すぐやるという話じゃないんです。なぜならば、基礎年金の方の支給開始年齢が、六十五にするのに今二〇一二年までかかるわけですね、それが終了した暁に比例部分を六十五に持っていこうと。これも国際水準並みです。  そういったことどもを含めて制度全体を改革しようと考えておるわけでございまして、基本は、国民所得保障に関することでございますし、国家のやる事業でございますから、安定した、安心できる姿をお示しすることがぜひとも必要であるということ。  それから、戦略会議等におきまして、比例部分を廃止したらどうかという意見については、これはなぜ同調できないかといいますと、それをやめた場合に、自主的な判断だけで、働く方々被用者方々所得保障が可能になるかどうか、私は大変疑問に思うんですね。したがって、それは制度としてきちっと保持した方がいいということでございまして、私としては、基礎年金、それからその上の報酬比例部分、それによる社会保険方式はぜひともずっと末永く維持していきたい、そして、そのことが国民に安心、安定感を与えるというように考えておりまして、今回の改正に取り組ませていただいているところでございます。
  11. 田中眞紀子

    田中(眞)委員 移行期での御苦労は大変よくわかりました。  次に、年金の資金の運用についていろいろ問題が投げかけられておりますけれども、現在は大蔵省に預託されて資金運用部で財投として運用されているわけですけれども、これが非効率であるということはいろいろと指摘がされております。  昨年三月の時点では百三十四兆円の積立金があるということですけれども、これを年金福祉事業団でもって、今度は厚生省が頑張ってそれを扱いたい、運用したいということであるのか。あるいはアメリカのような、公的年金資金自体を全部国債で運用しているというところがあって、これは市場で売買なんかができないというようなシステムもあるわけですけれども、日本の財政状態というものが厳しいということもありますし、日本の独自性ということも考えなければいけません、それから、かつての大蔵省との関係、財投のメリットもあったわけですから、今後の将来の展望として、どのような運用が望ましいというふうにお考えでしょうか。
  12. 宮下創平

    宮下国務大臣 従来、年金あるいは郵貯の資金等は大蔵省の資金運用部に全額預託いたしまして、その目的は、財投計画によって各種の社会資本を整備するということに充てられていたのはもう指摘するまでもございません。  今回、その資金運用部資金の制度改正になります。その前に、年金福祉事業団はその一部を運用部から還元をしていただきまして自主運用をさせていただいておるわけでありますけれども、今後、資金運用部のメカニズムが廃止されるということになりますれば、理論上は全額年金のシステムの中で自主的に運用するということになりますね。しかし、実際問題としてどうなるかということがございますので、運用基金をつくりまして、そこで専門家の人たちも交えて、運用に有利かつ安全でなければなりませんので、そういったメカニズムを新しくつくるつもりでございます。  なお、従来の財投資金の原資となっていた面につきましては、今予想されるところでは財投機関債、それぞれの機関が公債を発行して調達するもの、あるいは財投債ということで包括的な、国債発行に準ずるものでございましょう、そういうものを発行する可能性が十分ありますので、恐らくそれにもまた運用していく。そういうことをやれば同じじゃないかという議論もあるかもしれませんが、私どもは、行革の中で、大きな変革のときでありますから、それに即応してこの年金資金を十分有効なものとして安全、有利に運用しなければならぬ、そのことは大変重要だというように考えておるところでございます。
  13. 田中眞紀子

    田中(眞)委員 私は、個人的には財投機関債にするということが大変重要だというふうに思います。  今までの運用は、それなりの時代の大蔵省でのやり方もよかったと思いますけれども、今後のことを考えた場合に、やはり国民が納得し支持されるような透明感のある健全な運用、それを一人一人国民が納得するような形で運用するためには、ある財界の方もこれをかなり前から指摘しておられて、お話を伺ったこともあるのですけれども、機関債にするというふうなこと。また新しい運用基金をつくるということもいいのですけれども、結局また今までと同じように見えないような形になってしまうことも過去の経緯から大体予想がつきますので、そういうふうな方向で行くと望ましいと私は個人的に申し上げたことを申し上げておきたいと思います。  次に、これは一番問題の介護保険でございます。  この介護保険は、理念としては反対する人はいないわけですからよろしいのですけれども、早くから指摘されていたことは、まずマンパワーが不足しているではないかということ。これは、私は九年近く私の父の介護をしていて家族じゅうが骨身にしみて感じたことですけれども、本当にマンパワーが足りない。その数字が最近急速によくなっているというふうに思っておりません。  そして、認定の問題。これは、どこの地方に行ってお話を聞きましても、都会でも漁村でも農村でも、この不公平性について大変不安があって、何か起こった場合には不服や苦情の処理はどこで、だれが、どのようにやってくれるのかという問題があります。それから市町村は、市町村長に聞きますと、首長さんは、財政負担の問題を非常に心配していますね。大都会、小都市の財源の格差というものもあります。それから保険料のばらつきとか、もう数え上げたら切りがないわけです。  その中で、私は、この制度が来年の四月からスタートして一番考えられることは、在宅の比重が高まってくるだろうというふうに思います。そうでなければ、現実問題としてなかなか全部カバーし切れないというふうに思います。ですが、そのときに一番現場で起こるのは、医療行為と介護の線引きがあいまいでトラブルが起こるだろう。  これは、先ほどから言っている私自身の体験の中で思ったのですが、患者は一人の生きた人間なんですけれども、その患者に対して、ドクターとか看護婦さんとか、あるいはリハビリをやるOT、PT、ST、福祉士さんが来たりヘルパーさんがいたり、あるいは介護福祉士さんが来たり、今いろいろな職種に分かれていまして、そういう人たちが、ここまでは医療なんだとか、私は医療じゃないから、ここは福祉だとかいうようなことになって、縦割りで一人の患者を見るというふうな混乱が、現場で、特に家庭内で起こった場合に、人間関係が非常にぎくしゃくするということは経験もしていますし、これはかなり深刻な問題になるだろうということは想像がつきます。  それで、今度の介護保険も六区分をするわけですけれども、そのされ方についても、コンピューターでやるとかドクターがやるとか、それぞれでもって不満が出るだろう。不安も、現在病院に入っている方の不満もありますし心配もあるわけですけれども、六区分にされたとしまして、それによって介護を受ける時間ですとか費用も違ってくるわけですね。  そういう混乱があるので、現場が、来年四月は少し待ってほしい、もう少し延期してもらったらいいのじゃないかという声が結構上がっているように感じておりますけれども、これはメディアでも見ておりますし、私があちこちでもって伺う声でも、とにかく大変なんだ、大混乱が起こるということを聞いておりますけれども、いつかは導入しなければならないものだろうとは思うのですけれども、この辺はどういうふうにお考えでいらっしゃいますか。
  14. 宮下創平

    宮下国務大臣 今委員の方から、介護保険に向けての問題点がるる述べられました。一々について申し上げませんが、いずれも大変重要な視点でございまして、マンパワーの問題あるいは認定の問題、事業者の問題、市町村の財政負担をどうするか、あるいはこれからの在宅介護サービスと施設サービスとのバランスをどう考えていくか、医療と介護との限界領域をどうするか、非常に多くの問題を指摘されました。  一々申し上げておりますと時間の関係がございますので、もう委員も十分承知の上での御質問だと存じますから省略させていただきますが、問題は、そういった問題があるから来年の四月は無理ではないかという意見がちらほらと、仄聞という程度で私の耳にも入らないことはございません。しかし、これはあくまで私どもとしては、法律に基づきまして準備を整え、今あらゆる準備をしておるわけで、ことしの十月からは本格化のための認定作業、今までは試行的事業をやっておりましたが、そういうことになりますし、いろいろの財政準備をしておりますので、ぜひとも来年の四月から実施することについてはいささかも変えない、変えていかないというつもりでございます。  なお、いろいろな問題があれば、これは当然、まだ多少時間もございます、時間があるといってもだんだんのんびりできないようになってまいってきておりますので、それぞれの問題点につき念査をいたしまして、それを円滑に実行するためにはどういう方策を講じたらいいかというようなことを含めましていろいろ検討したい。  なお、PR不足も言われましたが、そのとおりでございまして、必ずしも介護保険制度の仕組みその他について、市町村長さん方は責任者でございますからおおむね理解されていると存じますが、地域の皆さんがどういうことになるんだということの明らかなイメージを必ずしもまだお持ちになっていない方もたくさんあるように思いますので、これは厚生省の責任でありますから、PRその他は十月の本格実施までにうんと努力しなければならぬというように思っております。  なお、一つ一つの問題について本当は御答弁を申し上げればいいが、時間の関係で、非常に多くのことを指摘されましたので、改めてまた御質問があればその点に絞って御答弁申し上げたいと思います。
  15. 田中眞紀子

    田中(眞)委員 ありがとうございます。  さらに細かいことを申し上げて耳が痛いかと思うのですけれども厚生省の努力不足というのは、厚生省が余りに大き過ぎて、いろいろなところを持ってい過ぎて、ほかの役所も、もちろん建設省にしろみんな同じようなものなんですけれども、特に厚生省はきめを細かく、人の心の痛みのわかるようなところにも医療福祉、介護を現場ではやらなければいけないということはたびたび言われているにもかかわらず、そういうところが非常に欠落している役所だなというふうに——大臣はそうお思いにならないと思いますけれども、私ども庶民、国民が外から見ておりましてそう思っておりまして、この介護保険の導入によって具体的なことになりますから、これは後でぜひ事務方を叱咤激励していただく材料にしていただければというふうに思っておりますので、お聞きおきをいただければ結構です。  具体的にはいろいろな福祉用具の需要というものが非常に顕在化してくるというふうに思います、かなりこれがオープンになるわけですから。全国に更生相談所というのがあることは御存じでいらっしゃいますでしょうか。更生相談所、ぐあいの悪い人の……。御存じですか、お名前を。一言、名前を御存じかどうか。
  16. 宮下創平

    宮下国務大臣 失礼しました。今ほかのことをちょっとメモしておりまして……。  更生相談所、確かに、補装具等を支給する場合にいろいろ身体障害者あるいは高齢者の相談に乗っておる、そういう更生相談所ですね、あることは承知しております。
  17. 田中眞紀子

    田中(眞)委員 驚かして済みません。  その更生相談所の存在を知らない福祉施設等が全国にかなりたくさんあります。これは各都道府県最低一カ所というふうなことで、複数配置されている地域もございますけれども、その役割、機能が、権限を結構持っていて、非常に邪魔をしていて、私の結論だけ早く言っちゃいますと、これは廃止した方がいいんじゃないか。厚生省の役所の方が勤める場所ではあるかもしれませんけれども、これから介護保険が導入されましたら、こんなものは必要なくて、もっと現場の医療施設とかドクターとかあるいはリハビリテーションの方たちとか、そういう方たちに補装具とか何かの基準とか手当てをする権限を与えていただきたいというのが私の主張でございます。  その裏づけの資料がありますので、今度はお尋ねしませんから、ここからはどうぞ落ちついてメモをとりながらお聞きいただいて結構なんですけれども、現場の声、苦労とか心の痛みというものが反映しないと、お年寄りや障害者、我々は今現在健常者でいますけれども、その辺で転んだりすればすぐ車いすになって、ここにも一名、中川さんいらっしゃいますけれども、すぐ車いすになりますし、年をとればあらゆる意味で体のどこかに障害が出てきますから、障害者と健常者というものの垣根があると私は思わない方がいいというふうに思っています。大体人間の教育はそういうふうにしてスタートしていくべきだろう、共存していくのが当たり前のことですから。裏腹の関係を特に持っていますが、その一番の苦労とか痛みの部分が全然反映しない。その障害の一つに更生相談所のようなものがあるなということを感じております。  補装具の支給一つをとりましてもすべてに基準があって、基準外の交付も受けられるんですけれども、その場合には手続が極めて煩雑で、交付までに何カ月という時間がかかる。特に個人個人の状態に合わせて物をつくるということができれば一番いいんですけれども、それもなかなか複雑であります。コストの問題ももちろんあります、一人一人につくれば。  靴なんかも、リハシューズなんかも、うちの父の場合もそうでしたけれども、L、M、Sとあって、靴に人間が体をそろえるというような状態でして、これは本当に障害者になってみないとわからないんですけれども、それを称して窮屈窮屈と言うんだということをきのう厚生省の方も言っておられました。本当に、そういう中で患者は我慢しなきゃいけない、耐えなきゃいけない。不自由さの中で、ああ、こういうものなのかと、なった瞬間に家族もともに感じるわけです。こういういろいろな基準あるいは基準外にしても、もっとフレキシブルにオープンにして、できるだけ簡単に要望を満たせるように制度を変えていただきたい。というか、むだなものをやめたら随分すっきりする、邪魔なものが道路にいっぱいあったら全部どけちゃう、そうすることが私は一番早い方法だと思います。  役所仕事は融通がきかないし、石頭で紋切り型で意地が悪いということを我々常々思っていたわけですけれども、これは現場の方からいただいた紙がございまして、例えば、装具の交付とか車いすの問題についてちょっと具体的な話があって、これをぜひ厚生大臣の耳に入れていただきたいという声がございますので、代読みたいになりますけれども、お話をさせていただきたいと思います。  車いすの交付の基準ですけれども、これは、例えば義肢とか補装具とか座位を保持する装置、そういうものは昭和六十二年から出来高払い方式になってきている。しかし、車いすは従来の総計方式であるということで、市場では実に多くのすぐれた附属品等があるにもかかわらず普及対象外であるために障害に適合した車いすを処方しにくいのが実情である。基準外交付の手続というのもありますけれども、先ほど言ったように極めて煩雑であって、そして幾つかの機関で判定をしてもらわなきゃいけなくて、都道府県知事を経て厚生大臣のところへ行く。大臣はじかに御存じなくて、多分事務的にだれかが大臣の判こを押しているんだと思うんですけれども、そういう承認を得ないと交付されないというシステムになっているんですね、現場は。そして、その期間は優に半年を超えてしまうこともある。そうすると、処方するスタッフにいたしましても、ドクターにしろリハビリテーションの人にしても、障害者本人も結局あきらめてしまうというようなことが本当に全国で行われているんです。  こういう実態を厚生大臣にはぜひ御理解をいただいて、十分に適合した車いすを使用できるような環境整備を現場の方に御指示いただきたいと思います。細かいミクロの問題については大臣は一々結構なんですけれども、そういう現場を結構役所の人も知らないでいて、へえということがあるようです。もっとも、これは単純化するということがあってしかるべきだというふうに思います。  それから、補装具の支給をしてもらう場合ですけれども、これもその手続が非常に複雑なので、簡略にして一元化してもらえないだろうかというような要望がございます。  補装具が支給される法手続、法制度というものは、どの制度支給手続は大変複雑であって、その支給手続が各法制度によってすべて異なっている。したがって、交付券というものの交付をしてもらうにも二、三カ月もの期間を要するし、そして、補装具の手続の簡略化をどんどんしていかないと障害者はいつまでたっても物が提供されない。特にリハビリテーションやら在宅になった場合、いろいろな困難、段差があったりいろいろするわけですから、そういう不便がある。  それから、日常生活の用具の給付ですけれども、これについても、給付の対象品目として挙がっているものがすぐれたものがいっぱいあるんですけれども、それらが給付の対象品目になかなかならない、なっていない。現場ではこれもこれもと言うんですけれども、役所では何が理由か知らないけれどもなかなか許可をしない。危険なものでは決してないわけですね。例えばページをめくる機械でありますとか、先ほど言ったリハビリの靴なんかもそうですが。  私、このリハビリの靴については細川内閣のときから、大臣がいっぱいかわられたから忘れちゃいましたけれども、じかに大臣室にも伺い、委員会でも質問をしたんですけれども、全然改善されていません。大臣がかわるたびに申し上げたんですが、こちらが根負けしてしまいまして、こんなことがあってはならないことですから、ツルの一声でぜひこんなことは解決していただきたい。  段差の解消機、階段の昇降機にしましても、今いろいろないいものが出ておりますので、そういうことについて、私は役所がやはり怠慢で、レイジーなんだと思うんですね。健常者だから知らないだけだと思うんですけれども、そういうオファーが現場からあった場合には自分の方から働きかけていくということをやらないと、介護保険が導入されても大変問題が起こると思います。  それから、地域間での格差があるということは、ほかの面でもそうですから繰り返しをいたしません。  以上が再三再四私が歴代厚生大臣に申し上げていたことで、現場の声にぜひ迅速に対応していただけるように……。これは自己責任ですし、障害があったり年をとると、本当に困っているわけです。入れ歯だって、田中眞紀子は口が大きいから、L、M、SのLで、ゴリラのをはめればいいという話じゃないと思います。やはり微調整もしながらやるのにただでさえ時間がかかるわけですから、一人一人の障害に合ったような補装具を調えるためにどうすればいいか。  ただ、コストの問題につきましては、私が考えているのは、市町村別に負荷をかけて、そういうものをしっかり地方自治体が面倒を見てくれれば、そういう市町村長さんは再選も再々選もされるでしょうし、そういうことに関心のない人はおっこちる、それもまた市町村長さんの自己責任だろうというふうに思います。  最後に、これは内閣全体の問題になりますから、税務当局との関係もなければお答えしにくいかと思いますが、先ほど来申しましたように、大臣は大蔵省御出身でいらっしゃいますので、私が大変期待している厚生大臣ですので、あえてお伺いしたいと思います。  平成十一年度の税制改正の中で、厚生省関連のことですからこれは大変重要なんですけれども高齢者介護に対する社会全体の支援というものの充実が重要であるということはみんなわかっていることですけれども、民間の介護保険に加入している人に係る所得控除はどのようにあるべきだというふうに思っておられるでしょうか。厚生省は当然負担は軽減されるべきだというようなお立場だと思いますけれども、税務当局はそれなりの考えもおありになると思いますので、内閣は昨年暮れから引き続き検討事項であるというふうに言っておりますけれども大臣は民間の介護保険の加入者に対する所得控除等についてどのようにお考えでいらっしゃいますか。
  18. 宮下創平

    宮下国務大臣 委員の方から、今前段に基本的な事柄について御意見の開陳がございました、車いすその他補装具の給付問題。  これは委員のおっしゃられるとおり、私は、福祉の問題一般もそうでございますが、特に介護保険につきましては現場の声を聞くというのはとても重要だと思っているんです。きょうは局長以下厚生省の役人の人たちもおられますので、私の答弁をよく聞いてもらっているし、私も常々言っているんですが、現場の声を聞かないでデスクワークだけで判断していくと血の通ったものにならないということは私も非常に感じております。  そういう意味で、これからもきめ細かくいろいろ対応できるように、しかも補装具等でありますれば、レディーメードだけで押しつけるということも、それは今委員の御指摘のとおりでございまして、オーダーメードでそれぞれの人の特性に応じた温かな配慮が絶対必要だと思いますね。そういう基本ラインを御指摘いただきましたので、私どもとしても、これを一つの基本的な考え方といたしまして努力をさせていただきます。なお、具体的な問題等がございますれば、どんどん御指摘をいただきたいと思います。  それから二番目は、主として所得の控除でありますが、介護についての保険システムの話だと思うんですね。今、税法上は生命保険料控除と損保の控除がございますけれども、これは疾病その他一般的な保険事故を想定しておりまして、介護も一応その分類ということになっておりまして、独立した介護保険というものも商品化されておるようでございますが、それが特別な枠として控除制度は設けられておりません。  厚生省としてはこれを何とか控除方式に持ち込みたいという多年の願望がございますが、いろいろ税制上のバランスの問題があってにわかにこれが実現に至っていないわけでございますが、これから、やはり公的介護のほかに自力によって、ある程度資力のある方等が保険料を納めていただいて、自活する精神ということでシステムをつくるということも大変重要でございます。その場合の税制上のインセンティブも必要かと存じますから、これからもひとつ内部でよく検討して、努力をさせていただくつもりです。
  19. 田中眞紀子

    田中(眞)委員 ことしの十月一日は、国連の国際高齢者年でございますので、高齢者の自立とかケアとか介助、あらゆる面でまたいろいろと話題にもなると思いますけれども、ぜひ大臣に頑張っていただきたいと思います。  ありがとうございました。質問を終わります。
  20. 木村義雄

  21. 吉田幸弘

    吉田(幸)委員 自由党吉田幸弘でございます。  今回、自由党として、年金問題について大臣にお伺いすることはいたしませんが、要請として、とにかく緊急に、また積極的に取り組んでいただきたい。現在、私どもは将来的に税方式で、この検討、また協議を進めておりまして、重ねてのお願いになりますが、大臣におかれては、また厚生省の皆さんも、年金問題には積極的に取り組んでいただきたいと思います。  今回、一般質疑ということで、私は、大方皆様方は御存じいただいているとは思うんですが、歯科医師出身でありまして、いかに歯科医療というものが国民の健康に重要かということをまたお訴えをさせていただきたいと思います。  二月の厚生委員会で、歯科の保健医療の重要性について私は質問をさせていただきました。また、きょう、時間もないということで、その質問を早速させていただきます。  高齢化社会が非常に進展しております。それに伴って、歯周疾患、いわゆる歯槽膿漏、こういうものを予防して健康な歯を多く残すことによってお年寄りのQOLをより高いものにするということが極めて重要ではないでしょうか。歯科医師会も、八〇二〇運動、この八〇二〇運動というのは、八十歳の時点で二十本の歯を残しましょう、こういう運動を展開しております。  また、歯科保健が従来にも増して重要となってきている中で、今回厚生省が取り組んでいる健康日本21、この政策の中に歯科保健をどのように位置づけているのか、また、どれぐらい重要と認識をされているのか、お伺いをいたしたいと思います。
  22. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 高齢化の進展に伴いまして、今先生指摘のように、歯周疾患の予防など歯科保健の重要性がますます高まっているというふうに認識をしております。  したがいまして、私ども、今、寝たきりなどの要介護状態にならずに健康で生活できる期間、健康寿命と呼んでおりますが、この健康寿命を延ばしていくことを目標といたしまして、二十一世紀におきます国民健康づくり運動、健康日本21を策定しているところでございます。この計画の中に、歯科保健につきましても重要な柱の一つといたしまして位置づけ、具体的な目標なり施策を盛り込んでいきたいと考えているところでございます。
  23. 吉田幸弘

    吉田(幸)委員 重要ということでお考えをいただいているようですが、具体的に私が承知している中では、嚥下性肺炎、これも何度も説明また質問させていただいておりますが、嚥下性肺炎によって肺炎がより急性化をしたり、最近では明確なデータというのはそろっていないようなんですが、消化器系の疾患から口腔内の常在菌が発見されたとか、また、かみ合わせをうまく、咬合改善をすることによって意識障害が改善したとか、いろいろな歯科治療によって全身的なことにいいふうに及ぼすデータが最近では目立っております。介護に関してもこういう項目に積極的に取り組んでいただければ、先ほど前段の質問にあったように、QOLを高いものにすることができる。  では、介護保険において歯科領域の取り組みというのは一体どのようになっているのか、この考え厚生省にお伺いをいたします。
  24. 近藤純五郎

    ○近藤(純)政府委員 要介護者の口腔衛生管理につきましては、その重要性にかんがみまして、介護保険法では、居宅要介護者等に対しましてかかりつけの歯科医等によります療養上の管理とか指導を居宅療養管理指導という位置づけをいたしているところでございます。  また、施設の入所者につきましては、これは老人保健施設と特別養護老人ホームでございますけれども、あらかじめ協力歯科医療機関を定めるとということを努力義務といたしているわけでございまして、介護保険制度におきましては、要介護者等の口腔衛生管理が適切に行えるように配慮いたしております。  この結果、さらに歯科医療が必要であるという場合には、医療保険のサイドからになりますけれども、歯科訪問診療等もできる、こういうことで必要な治療が確保できるように措置をいたしているところでございます。
  25. 吉田幸弘

    吉田(幸)委員 質問ということではないんですが、今の介護保険でもう少し早急に明確化していただきたい点は、どんな分野で介護保険の内容というか、例えば刷掃指導なのかあるいは咬合管理なのか、もう少し詳しくお知らせをいただきたいと思います。それと、どのように点数化していくのか、あるいはどのような経路で点数が適切かどうかの審査をされるのか。あとは支払い方法、今までと同じような支払い方法で行われるのか。こういう点についてきょうはお伺いはいたしませんが、そういうことに対して、次回というか、日を改めてお伺いさせていただきたいと思います。  今、一問目、二問目をお話しさせていただいて、いずれにしても、予防面においてもまた高齢者においても、歯科医療というのは非常に重要ではないかというように認識をしていただいているということはよくわかりました。  この歯科保健医療の重要性について十分に御認識をいただいているということであれば、今、研究面において極めて重要な問題が発生してきております。これは、歯学研究や医学の研究を行う上で、動物実験というのは極めて重要な行為だと私は認識をいたしております。  私は歯医者だといっても、大学院では生理学を専攻いたしまして、かみ合わせだとかあごの動きだとか、そういうことを学ばせていただいたのですが、やはり動物を使って実験をさせていただいたわけです。私どもも含めて多くの研究者というのは、それに対してきちっとした姿勢で取り組んで、医学の向上のために行うという認識を持っているにもかかわらず、動物愛護の観点からこの研究者の姿勢というものを理解していただけないような意見も少なくはない。特に、最近においてはますますそういう声が上がってきているというふうに聞いております。  動管法、この法律改正しようとする動きがあるということも聞こえてきております。研究を阻害するということもあります。また、動物愛護という、これも極めて必要な考えかと思います。この点に関して、現在、厚生省ではどのような状況になっているのか、また、今後の取り組みについてどのようになっていくのか、お伺いをいたします。
  26. 真野章

    ○真野政府委員 動物実験は、歯学、医学、薬学等におきます研究を推進する上で、先生おっしゃられましたように、重要な実験過程であるというふうに私ども考えております。  一方、動物愛護につきましても、これもまた一つの重要な理念でございまして、現在、先生おっしゃられますように、動物の保護及び管理に関する法律につきまして改正の動きがあるというのは私どもも承知をいたしております。  これまで動物実験の実施に当たりましては、この動物の保護及び管理に関する法律に基づきます総理府の基準に基づきまして、実験などに当たりましてできる限り動物に苦痛を与えないよう、関係試験研究機関及び関係の研究者の方々に対し周知徹底を図ってきたところでございます。  厚生省といたしましては、今後とも、こういう法律改正の動きも注視しながら、引き続き動物実験が適切に行われるように努力をしたいというふうに考えております。
  27. 吉田幸弘

    吉田(幸)委員 適切に検討ということですが、とにかく人を使ってなかなか実験ができるものではありません。ですから、重ねてのお願い、また考えになりますけれども、いずれにしても、現在、医学、歯学に関する研究者は、明らかに我々人類のために動物を使わせていただいておりますが、このことで心を痛めずして動物実験をやっているのではないということだけ強く重ねてお伝えしたいと思います。  次に、厚生省が国民の健康を推進する上で、今、研究面においても歯科保健医療対策は極めて重要だと認識していただいているということはよくわかりましたが、実際どうなのか、それが反映されているのかということについてお伺いをさせていただきたいと思います。  今後の歯科医療をさらに充実していく上で、診療報酬における適切な評価を行っていくことが必要であると考えます。診療報酬体系のあり方については、先般、医療保険福祉審議会制度企画部会の意見書が提出をされました。歯科診療報酬の見直しの具体的な方向性について、これは少し詳しく教えていただきたいと思います。
  28. 羽毛田信吾

    ○羽毛田政府委員 診療報酬体系の中における歯科診療の適正な評価が必要であること、そのことにつきましては、私どももそのような観点に立って進めてまいっておるつもりでございます。  今先生指摘ありましたように、診療報酬体系のあり方につきましては、先般、医療保険福祉審議会の制度企画部会の意見書が出されました。私ども、この意見書の内容を踏まえながら、今後、具体的な設定につきましては、中央社会保険医療協議会、いわゆる中医協における具体的な検討を行うという段階になっているところでございます。  この制度企画部会の意見書におきましては、歯科診療に関しまして、小児齲歯、小児の虫歯の再発防止、あるいはそしゃく機能の長期的な維持管理のための技術、こういったものにつきまして歯科特有のやはり特性がある、こういった特性を十分重視した診療報酬でなくてはならないというような指摘をいただいております。  また、企画部会で意見をまとめるに当たりまして、そのもとに診療報酬体系見直しの作業委員会ということで専門家の方々も入っていただきまして報告書をおまとめいただきました。その中におきましても、例えば歯科医療につきましては、その特性ということで、やはり出来高払いというものを原則としていくべきではないかというような御意見、あるいは歯科固有の技術評価としてそしゃく機能を回復させ、長期維持する技術の評価をすべきであるというような御意見、あるいは病診連携に基づきます病院歯科の高次機能を評価すべきであるというような御意見、さまざま出ておりますので、こういった作業委員会の報告書をも踏まえた検討をしていくべきであるという意見書をいただいております。  こういったことを踏まえまして、いずれにしましても、これから診療報酬の見直しにつきましては、今のようないわゆる歯科の特性というものに十分配慮する形の中で、中央社会保険医療協議会での議論を待ちまして、最終的には診療報酬体系を具体的に見直していくという取り組みにいたしたいと考えておるところでございます。
  29. 吉田幸弘

    吉田(幸)委員 前も似たようなお話をいただいたのですが、この診療報酬という部分について、ちょうど私が大学に入ったときぐらいです、八〇年代、医科と歯科の差が極めて大きなものになってきております。ですから、私が大学へ入って、それこそ、今は歯科医師をしておりませんが、歯医者はよくない、どんどんその評価というものが医科と差がついてくるんだ、こんな教育を受けたわけです。教育問題を今論じるわけではないのですが、そのことを学ぼうとしている人たちに将来真っ暗だなんて言われたら、やる方もやる方だし、その中で少しはどうにかならないかということで今回も質問をさせていただいておるのです。  例えば歯科の特性云々と、これはきょう出席されている先生方は御存じかどうかわからないのですが、初診料は医科と歯科で違うのですね。同じ医者で、再診料も違う。こういうものに関しても同じにするべきで、歯科医療というのは、先ほどから何度も述べさせていただいているように全身的にも影響する、お年寄りにも、介護の問題でも極めて重要な医療の分野であるということが認識されているまた認識されつつある中で、やはりそういうものから改善をしていただきたいなというふうに意見として述べさせていただきます。  診療報酬の問題、この改定率の改定方法についてお伺いをしたいと思います。それと、薬価の見直しなどの医療の効率化で生じた財源を、よりよい医療を提供するために医科と歯科の方に適正に配分をするべきだ。また、先ほど申し上げたように、歯科医療というのは最近頭打ちをしている。診療所の経営状態というのも医科の診療所に比べて余り芳しくない状態だ、こういうような現状を踏まえて、財源の配分というのは必要だと思います。  そういう話をすると、歯医者さんは高い差し歯があるからいいとか、要は自費診療があるからというようなことでちょっとは我慢しろというようなことはよく聞きました。ところが、日本全体が余り経済状況もよくない、また、だれもかれもそういう高い歯科治療を受けられるという状態じゃないわけですから、社会保障というものの考えの中においてはそれを外して考えるべきではないか。  現実、自費診療なんてそうそうあるものではありません。これは都内とか、私の名古屋市内、名古屋市内であっても中心街じゃないとなかなかそういう高額な治療費というのを払っていただけるような患者さんというのはおりません。ですから、保険の範囲内で適正な配分をしていただけないだろうか。このことについて今後どのように対応していただけるのか、お伺いをしたいと思います。
  30. 羽毛田信吾

    ○羽毛田政府委員 診療報酬改定率につきましては、これまで、医療機関の収入と人件費、物件費など諸費用の総合的なバランスを勘案して改定をするということでやってまいりました。そのことの結果として、かつての改定率でいえば、歯科が高かったこともございますし、また医科が高くなってきたこともございますが、直近の平成十年改定におきましては、医科、歯科とも一・五%の引き上げということを行ったわけであります。  診療報酬改定のあり方につきましては、その中でどこに重点を置いていくかというところもあると思いますけれども、先ほどのように、確かに、初診料、再診料というところだけを取り出しますと医科と歯科との間で差があるということはそのとおりでございますけれども、それは、今まで歯科につきましての改定の力の入れどころというものを多少そのほかの技術料の部分に力を入れてきたというところもありまして、そうなっておるわけです。  いずれにしましても、今後、医療の質の向上でありますとか、あるいは給付負担の均衡の確保、医療資源の効率的な配分といったような総合的な観点での検討が必要でございますので、先ほどもお答えをさせていただきました中央社会保険医療協議会における御議論、その前提として、先ほどのように、医療機関、歯科医療機関の経営実態ということを知るための医療経済実態調査というようなものを実施しまして、こういった結果を踏まえて検討をしてまいりたいというふうに考えております。
  31. 吉田幸弘

    吉田(幸)委員 前回は一・五、一・五ということで、私自身もこれは承知しています。今回もそれに準じた——この一・五というのは数字的には高くはないにしても、医科、歯科の評価に関しては同じ率だということは私自身も評価はいたしております。  いずれにしても、歯というのは非常に、歯だけの話ではとどまりません。それこそ健康、体のことを考えると、口腔内を管理すること、うまく歯を磨いたり歯を残すということは想像以上に全身にかかわってきますので、私はこのことを言い続けて、皆様方に健康になっていただきたい、この一心で質問させていただきました。  いずれにしても、今後、歯科業界の皆様方は介護の問題においても前向きに取り組もうという姿勢はあります。ですので、今御答弁いただいた内容をしっかり実行いただいて、業界としても一生懸命やっていくということで、今回質問を終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。
  32. 木村義雄

    木村委員長 五島正規君。
  33. 五島正規

    ○五島委員 まず、大臣にお伺いしたいと思います。  脳死臓器移植につきまして、高知県の第一号のドナー発生以後、今回極めて短時間のうちに第二回目の臓器移植が実施されました。この間の状況について、大臣、どのような御感想をお持ちになっているか、まずお伺いしたいと思います。
  34. 宮下創平

    宮下国務大臣 臓器移植法が制定されましてから一年四カ月近く症例がございませんでしたが、今御指摘のように第一症例が高知県の日赤で行われました。今回、第二例目の脳死下の臓器提供が行われたわけでございまして、心臓と腎臓の移植手術が行われて経過は順調だとお聞きしておりますが、まず、臓器を提供いただいた方の御冥福をお祈りしたい。そしてまた、その御家族にも、本当に御理解ある態度をとっていただいて感謝を申し上げたい。また、移植を受けられた患者の方々が着実に回復するようにお祈りを申し上げたいと存じておりますが、総じて、臓器移植の実現というのは多くの方々の関与によってできておりますので、改めて深く敬意を表したいと存じます。  それから、今回の事例は、第一の例の実施後、意外に早くと言ってはなんでございますが、私どもとしてはそんなに早く第二症例があらわれるとは思っておりませんでしたが、意外に早く実現いたしました。このことは、移植医療の定着の兆しであるというように私どもは受けとめております。  そして、第一例の場合も問題になりました個人のプライバシーと情報開示の問題、これが最初でございまして、ちょっと家族のプライバシーに抵触するようなこともございましたし、またちょっとオーバーな情報提供というようなことも迫られたわけでございますが、今回は、実際上は臓器提供者の二回目の脳死診断後に初めて正式に発表するというような経過を加えましてやらせていただきました。  この情報開示のあり方については今検討会でやっておりますが、大変難しい問題を内在しておりますけれども、私どもは、あくまでも個人のプライバシーは保護する、同時に、医療関係のことでございますから、医学的な評価とかそういうことが極めて重要でございますから、適時適切な情報開示もやってまいりたい。  いろいろの点の御指摘も多少ございます。例えばドナーカードに角膜の提示する場所がなかったので、角膜を提供してもいいという御家族のお気持ちはあったようでございますが、私ども法律に定められた手続を厳格に考えましてこれを移植の対象にはしなかった等々の問題もございます。  脳死という人間の死について、そしてまた臓器を提供して多くの人たちがそれによって再生されていくという非常に厳粛な事実でございまして、これらを私どもは本当に厳粛に受けとめながら、今後、日本の臓器移植がさらにさらに理解が進んでいくように、そしてまた実施例が多くなされますように期待を申し上げたい、こう思っております。     〔委員長退席、鈴木(俊)委員長代理着席〕
  35. 五島正規

    ○五島委員 第一回目の臓器移植の患者さんは無事に退院されましたし、二例目につきましても、レシピエントの皆さん方が経過もよく、現在回復に向かっておられるということで心から喜んでおる状態でございますが、今回、二回の脳死臓器移植の中で、二度ともこの法律に基づいて照らし合わせた場合、反省しなければいけない点は数多くあったと思います。  一つは、今大臣も御指摘になりましたが、情報公開とプライバシーというこの二つの問題をどう完全に守っていくかということでございます。特に、臓器移植については匿名性というものを確保するということが絶対的条件になっている。この匿名性の確保というものをきちっと守りながら、同時に情報公開を進めていかなければいけないということだろうと思います。  その点で考えますと、匿名性の確保という意味からも、脳死臓器移植に際するコーディネーター機関というのがやはり一本化されている必要があるだろう。高知の事例の場合も、臓器コーディネーターがそれぞれ別々に行動されている。そして、それぞれがタイムラグがある中において、遺族のプライバシーはもとより、ドナーになられた方そのものの匿名性までが失われかけたという状況があったと思います。  また、もう一方で公開されなければいけない情報というのはどういうことなのか。それは、脳死に至った患者の救命医療の経過はどうだったのかということ。そして、臨床的脳死判断はどのような根拠に基づいて主治医が行ったのか。それに基づいて脳死の判定はどうであったのか。さらには、脳死判定後、公平で医学的に根拠を持つレシピエントの選定はどのようにされたのか。さらには、ドナーから臓器をいただかれた方の、いわゆるレシピエントの術後の経過。この五つの項目についての情報が公開されなければいけないというふうに考えます。  まず、その点についてどうお考えでしょうか。
  36. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 適正な臓器移植が実施されるためには、移植医療透明性の確保と患者等のプライバシーの確保の両立を図ることが極めて重要であると認識をしております。  今御指摘のように、移植医療全体のプロセスにつきまして、救命医療が最善が尽くされたか、それから法的脳死判定が適切に行われたか、それから、レシピエント、つまり臓器の配分が公平に行われたかなど、御指摘の点などにつきまして適切に開示される必要があるというふうに考えているわけでございます。  特に、いつの時期にどのような形でこの情報を公表するかということにつきましては、ケース・バイ・ケースで判断すべき事情もあると思いますが、公表をすべき情報の範囲と時期を判断する上で、今御指摘のように臓器提供者の匿名性の確保、言いかえますと、臓器提供者と移植患者の遮断をするということあるいは御家族の承諾におきます任意性の担保ということが極めて重要であると考えております。  したがいまして、私どもといたしましては、第一例目及び第二例目におきまして厚生省も情報提供の一翼を担いましたけれども、今後、公表すべき情報についての基本的な考え方をどのようにするかということを、一例目、二例目を検証しながらさらに検討していただくために、臓器移植につきまして公衆衛生審議会に臓器移植専門委員会というものを設置しておりますが、そこの場におきまして現在検討を進めていただいております。できれば六月の末くらいまでにこの専門委員会結論を得まして、厚生省としての考え方を整理していきたいと考えているところでございます。
  37. 五島正規

    ○五島委員 委員会を設置してそのようなことを検討するのも結構ですが、やはり常識的な問題として処理しなければいけないことはきちっと整理していくということが大事だろうと思います。  今回行われました二回の脳死判定あるいは臓器移植に関して、第一回目のケースについては、先ほども申しましたように、無秩序なマスコミの取材によりプライバシーと匿名性が破られる形で情報が垂れ流されてしまった。二回目の問題について言えば、そうした反省はいいわけですが、今回は厚生省が移植手術以前の情報を管理して公開したという経過であったと思います。  この二つとも、臓器移植法の本来の精神に基づいて考えるならば、決して好ましいやり方ではなかった、これはやはり反省されなければならない点だろうと思います。  脳死に至った患者の救命医療の経過、あるいは先ほど申しました臨床的脳死判断の根拠、そして脳死判定の経過、こうした一連の三つの部分については、当然、脳死判定をするためには脳死判定委員会というのがそれぞれの現場においてつくられるわけでございます。そうだとすると、この脳死判定委員会は当然こうした三つについて検討した上で脳死の判定を行うということになっておりますので、これについては脳死判定委員会委員長がしかるべきときに情報をきちっと公開していく。これはまさに医学の問題でもあるわけでございますので、脳死判定委員会委員長がそれをするということが必要だろうというふうに思います。また、レシピエントの選定はコーディネーター組織が責任を持って行うものでございますから、これについての情報公開はやはりコーディネーター組織がやるべきだろう。そして、臓器移植をお受けになった患者さんの術後の経過については、当然その手術を担当された主治医がそれを公表していくということが常識的に考えられる。  こうしたことは、何も委員会なんかつくらなくても常識的に処理できる。厚生省は、この二回の反省の上に立って、そうしたことを一日も早くやるべきだというふうに考えるわけでございますが、いかがでしょうか。
  38. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 御指摘のとおりに私どもとしても考えております。  高知の事例におきましては、脳死判定医につきまして、病院長の御判断があったわけでございますが、脳死判定医がだれであったか、そしてその方が記者会見をするということにつきましていろいろ批判の矢面に立たされるというような御判断もございまして、病院としては、脳死判定をだれが行ったか、それから直接その脳死判定をしたお医者さんが記者会見をするということをやらなかったわけでございます。慶応大学の事例におきましては、摘出後、具体的にこの判定に当たった先生も同席をしまして記者会見をやったわけでございます。  私ども、一例目、二例目におきましては、我が国で最初の事例で、本来であれば臓器提供病院、移植実施施設、それから臓器のコーディネーションにつきましてはネットワーク、これら現場の当事者が記者会見をしてその情報を公表することが望ましい姿だというふうに考えております。今後、私どもとしましても、厚生省はできるだけ後ろに下がっていくといいますか、前面に出ない形で情報開示が進んでいく形を検討していきたいと考えているところでございます。
  39. 五島正規

    ○五島委員 いま一つは、先ほど大臣も御指摘になりましたが、一回目のケースでは角膜の移植もできたわけですね。ところが、ドナーカードに角膜の希望ができるものとできないものがある。いわゆるアイバンクとの関係の中で、新しいドナーカードには角膜の臓器提供の意思表明の欄がないという矛盾がございます。  これは、先ほど腎の問題でも申し上げたわけでございますが、脳死に至って臓器移植をされる患者さんの意思表示について、もちろんそういう方々でございますから、いわゆる心停止後の腎の提供なり角膜の提供の意思をお持ちになってそれぞれに登録されていることはあるわけでございますが、少なくとも脳死で臓器提供をされようという場合は、臓器移植のコーディネーターのところで、いわゆる脳死体からの臓器の提供については一括してコーディネートできるというふうに整理すべきでないか。  そうでないと、せっかく非常にとうとい意思を持ってみずからの御遺体から臓器を提供されようとしているものが、現状はアイバンクと脳死のコーディネーター組織との間の権限なりそういうものが整理されていないという、実にくだらない理由でもってその意思が反映できないということが今回明らかになっているわけでございます。  この辺は、脳死体からの臓器移植については臓器コーディネーターのところで、法的に認められているすべての臓器については、アイバンクがあろうとあるいは腎の移植コーディネーターがおろうと、この問題については一カ所でもってコーディネートしていくということができるようにすべきだと考えますが、いかがでございましょうか。     〔鈴木(俊)委員長代理退席、委員長着席〕
  40. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 今回、御家族の御意思がありながら眼球について提供できなかったというのは、御指摘のとおりでございます。  先生指摘のとおり、現在、脳死体からの移植につきましては、日本臓器移植ネットワークとアイバンクがそれぞれ説明を行いまして、別々に承諾の確認を行っているわけでございますが、このような制度は御家族にとりましても負担が大きいとの指摘関係者からもいただいているところでございます。  厚生省といたしましては、このような御指摘も踏まえ、また、今回の事例を検証しながら、御家族にとっても負担が少なく、なおかつ円滑に臓器のあっせんが行われるよう説明などのあり方を検討してまいりたいと考えておりますし、また、ネットワークが一元的に行えるような方策につきましてどのようにしたらいいかということにつきまして、先ほども申し上げましたが、臓器移植専門委員会におきまして検討をし、六月末くらいまでにこの点につきましても報告書の中に盛り込んでいただく予定でございます。報告を受けて、具体的な対応を検討していきたいと考えております。
  41. 五島正規

    ○五島委員 次に、現在、移植ネットワークに登録されております移植医療待機患者さんの数はどのようになっているのか。  あわせて、ちょっと御質問しておきますが、移植手術を受けた場合に、どうしても拒絶反応が患者さんの予後に影響を与えるということでございます。そういう意味において、レシピエント及びドナーとの間におけるいわゆる拒絶反応について完全に予測することは難しいわけでございますが、臓器の種類によっては例えばHLA遺伝台座ができるだけ重なっている方が手術の予後がいい、いいというよりも拒絶反応が起こりにくいというのは常識でございます。そういう意味で、臓器移植をする場合に、この遺伝台座のマッチングというのはどのようにされているのか。  レシピエントの方については、事前に血液をとって、それぞれの遺伝台座を調べておくということが可能だと思います。しかし、ドナーの方からコーディネートをして、御本人の意思に基づいて臓器提供の有無ということを御遺族に確認した上で臓器の摘出をする、その段階において遺伝台座のマッチングというものが具体的に時間的にもやっていけているのかどうか、どのようなところでそれをやっているのか、お伺いしたいと思います。
  42. 伊藤雅治

    伊藤(雅)政府委員 まず前段の現在の移植希望者の数でございますが、ことしの五月十四日現在で申し上げますと、日本臓器移植ネットワークに登録されております移植希望患者数は、心臓につきましては十九名、肝臓三十一名、肺八名、腎臓につきましては一万三千百六十三名となっております。  そこで、これらの臓器のうち、今先生指摘のHLA型につきまして、移植の際に考慮する必要がございますのは腎臓でございます。心臓、肝臓、肺につきましては、レシピエントの選択の際、HLA型は考慮する必要がないというふうに聞いております。  なお、赤血球のタイプにつきましても考慮する必要があるわけでございまして、通常、移植ネットワークに登録をされますと、移植実施施設、つまりレシピエントを診ている医療機関の方から四カ月ごとに血液の検体を送っていただきまして、事前に検査をしまして、そして、赤血球及び白血球のHLA型をあわせて登録をしていただくというシステムになっております。  そこで、ドナーにつきましては、臓器提供に係る御家族の承諾が得られた後に採血を行いまして、そしてその血液を搬送いたしまして、非常に限られた時間の中でHLA型を検査いたしまして一致度の高いレシピエントを選択する、このような作業を行っているわけでございます。
  43. 五島正規

    ○五島委員 そうしますと、腎以外については、コーディネーター組織ではHLAのマッチングをして対象患者を選んでいるわけではないということですね。  それでは、次の質問をさせていただきます。  こうした二例の臓器移植が実施された中において、先日も患者の家族の方々の要請行動がございましたが、子供についても臓器移植による治療というものを望む声が非常に強くなっております。現行の臓器移植法では、子供に対して実質上臓器移植による救命治療というものが拒絶されるわけでございます。大人の救命のためにはより高度な医療の提供はいいけれども、子供のためにはそれができないというのは、医療の本来の目的からいっても非常におかしいというふうに思うわけでございます。  とりわけ、心臓とか肺とか形態が非常に大きく関係するものについては、子供からの臓器提供がない限り我が国においては臓器移植はできません。一方、子供に比較的多い胆道閉塞症等に対する肝臓の移植についていえば、臓器移植からの肝臓の分切移植というものができるようになるとすれば、これはある程度の期待が持てるという状況にあるかなというふうに思うわけでございます。  いずれにいたしましても、大人においてこうした新たな医療によって救命が獲得できているという状況がこれからも続いていく中において、子供さんについてはそれが拒否されているという現状について大臣はどのようにお考えか、お伺いしたいと思います。
  44. 宮下創平

    宮下国務大臣 子供の移植につきましては、外国へ行って提供者を待つ間にお亡くなりになるという事例が最近ございました。  私どもとしては、せっかく臓器移植法が制定されましたわけでございますので、将来性のある子供の治療もやはり考えなくてはいけないなと率直な感じを持っております。ただし、十五歳未満の方々は、今の法制のもとでは意思能力がない、表示能力に欠けるということで、これが実際上適用除外になっているわけでありますが、今後、臓器移植法を検討する際には大きな一つの視点として考慮して検討すべきものではないかなというように今感じておるところでございます。
  45. 五島正規

    ○五島委員 この点については、臓器移植法ができたからそれでよいということではなくて、とりわけ子供の脳死判定についての医学的な確実な方法というものの検討もまだまだ必要だろうという状況にあると思っています。そういう意味では、その辺も含めた研究というものをしていく必要があるだろう。そういうふうな中において、子供の命を助けるということが医療の中において当たり前のこととしてできる体制を望みたいと思います。  次に、別の件についてお伺いしたいと思います。新薬の承認審査における迅速性と透明性の確保の問題についてでございます。  先ほど、田中眞紀子議員からも若干関連したお話があったように聞いておりましたが、我が国におきましては、新薬の安全性の確認の問題、新たな新薬が一日も早く有効性が確認されれば患者の治療に使える、こうした手続の迅速性、そして同時に、現在の薬価制度も、そもそもは厚生省の薬価の決定のブラックボックスの中でのやり方に問題があったと思っておりますが、この新薬承認ということについての審査の透明性の確保、この三つが非常に大事であることは言うまでもございません。  我が国におきましては、いわゆるサリドマイド事件等の薬害が多発する中で、昭和四十二年以後、新薬の承認に際しては、日本国内のいわゆる専門学会の学会誌で治験結果を公表して、それを添えて申請するということを義務づけてまいりました。ところが、ことしの三月三十日からは、この審査データの学会誌への公表要件の廃止ということが閣議決定されたわけでございます。  この学会誌への公表要件というものがなぜ義務づけられたのかというのは、今申しましたように、薬害の多発ということを契機にして、しかも、その審査経過の透明性と、それから承認審査の専門的な審査というものを補完するということで学会誌への公表ということが義務づけられた。このことは、言いかえると、審査承認機関自体が審査する能力に欠けている、それを補完するものとして学会誌に掲載させるならば、通常、学会誌に公表する場合にはそれぞれの専門学会においてレフェリーがあり、それの学術的な正当性についてチェックがされる、これを利用して安全性と有効性の判断を任せていこう、補完していこう、同時に情報公開を行おうとしたというものであったと考えています。  このことの欠陥は私もよくわかります。こんな治験結果を学会誌に載せるということになりますと、まともな学会誌であるならば、学会誌に公表するまでにかなりの時間がかかる。また、学会によっては、率直に言って、レフェリーの役割が学会ボスによって牛耳られているということもある。そのことによって、新薬の承認が一部の学会ボスによって左右されるということもなきにしもあらず。あるいは、学会誌という名前があったとしても、どういう学会誌ということを指定はしていないわけでございますから、場合によったらレフェリーもないような学会誌に載せられてしまって、実質上意味がないということも起こってくる。非常に多くの問題があることは重々理解しています。  にもかかわらず、こうした学会誌に公表するという要件は現在も続いているのか続いていないのかということを考えた場合に、私は、続いていないとは言えない。すなわち、現在の承認機関自身でもって十分に科学的な審査をし、それを説得し得る、しかも、第三者の目から見てそれが学問的、論理的であるかどうかということが検討される、そういう内容に現在の審査機関がなっているのかどうか、あるいはそうした治験データの公表というものが広く行われているのかどうかということを考えた場合に、まだそれはなっていない。そういうふうなことがなっていない段階でこの要件を取り消すということは、昭和四十二年の反省を取り消すということになるのではないか、そのように考えるわけでございますが、まずその点についてどのようにお考えか、お伺いしたいと思います。
  46. 中西明典

    中西政府委員 先生も御指摘ございましたとおり、新薬承認申請資料関係の学会誌等への公表につきましては、昭和四十二年から通知に基づき行政指導を行ってきたところでございます。これは、当時、医薬品の有効性、安全性を審査する体制というのが今ほど十分整備されていなかったという段階にあったということが一つ。それから、いわゆる医薬品の安全性に関する非臨床試験の実施基準GLP、あるいは医薬品の臨床試験の実施基準GCP、こういった基準も存在しない、またその申請資料の信頼性を調査するあるいは査察するといったような体制もできていない、そういう段階にあって、学会誌等に公表されるようにすれば一定の信頼性の確保が期待できるんじゃないかということで、便宜的な措置としてそういった指導を行ってきたところでございます。  しかしながら、今やそのGCP、GLPというものがきちっと法制化され、信頼性調査、査察の体制もでき上がり、かつまた承認審査体制も、御承知のとおり、医薬品食品衛生研究所のもとに審査センターをつくり、審査担当官も二倍に近い増員をこの三年で行ってきておるという、審査体制そのものが当時と比べ格段に充実したというところから、そういった学会誌等への公表指導に関する意義というものはなくなったんじゃないかというふうに判断したところでございます。  それから、他方、こういった指導措置というのは我が国独自、独特のやり方でやってきたものでございまして、この結果、さまざまな弊害が指摘されてきておるところでございます。先生も幾つかお触れになりましたが、先生がお触れになった点以外につきましても、知的所有権に係る部分を含む申請資料の公表というものが余儀なくされるということで、企業の知的所有権が侵害されるという問題も指摘されているという点もございます。そうした弊害もこれあり、今般、公表指導というものを廃止することとしたところでございます。  他方、御指摘の審査体制の整備にあわせ、透明性確保という観点から、厚生省では平成八年十月から、すべての新薬について品目ごとに承認審査の経過あるいは評価結果、その根拠などをまとめた審査報告書を公表してきておるところでございますが、今年中には、これに臨床試験データを含む申請資料の内容を取りまとめた申請資料概要を加え、新薬承認情報集という格好でこれを作成し、新薬の承認後に公表していきたい。これはひとえに、医療機関あるいは薬局において医薬品を適正に使い、また適正に情報伝達していただくというところに役立てていただきたいという趣旨のものでございます。  その新薬承認情報集とあわせ、インターネットを通じて本年六月からは医薬品情報提供システムという格好で添付文書情報あるいは緊急安全性情報、副作用情報等も含めて公表していく。公表していくことによって、医療現場で薬というものを上手に使っていただく。そういったところに役立てていただきたい、かように考えておるところでございます。
  47. 五島正規

    ○五島委員 余り理由になっていないと思いますね。  私の聞いているのは、学会誌公表ということによっても薬害という事案は減らなかった。重大な薬害事件がそれ以後も起こっている。その反省に立って、新薬の承認に関してより情報の公開と専門的な新たな検討が必要なんだ、これは私はよく理解できる。だけれども、今局長がおっしゃっているのは、何か厚生省の中に新しい制度ができました、それによって薬害がなくなるんですか。  全く国民を信用できていない。そういう実績がない。実績がないところで、極めてあやふやな制度であれ少なくとも情報公開の役割ぐらいは果たしていた、その制度をなくしてしまう。そして、それにかわってインターネット等を通じて一定のデータの一部は垂れ流します。それも必要なことなんですが、学会誌というのは、その一定の結論に対して科学的に反論するあるいは検討する、そういう場をすべての学者に保障したものです。そういう場をなくして、情報の一方的発信でもってかえていくということが正しいのかどうか。  また、当然、新薬の承認審査というのは中薬審が最終的には答申するわけでございますが、中薬審のもとにあった調査会を廃止して、厚生省の内部機関によってそれを審査していく。審査することによって、今後、日本において重大な薬害問題というのは起こってこないようになるのかどうか。  それどころか、同じく重大な薬害問題ではないけれども、いわゆる薬価制度議論の中において、厚生省自身が、いわゆる後発医薬品の中においては溶融性や血中濃度等々において問題ありという発言さえしておられる。これは、まさに内部的な機関の中でやれることがやれていない。そのことをもって参照価格制度とかなんとかおっしゃった経過があったと思います。その辺の状況考えると、厚生省の中にそういう専門官をふやし、これから責任を持って薬剤の安全性というものについて省の責任としてやっていくという姿勢は多としますが、そのことが、そういう方法をとったから従来の情報公開の方法をここで遮断しますということにはならないのではないか。  また、知的所有権の問題をおっしゃいました。学会誌に載った段階において知的所有権が侵される。確かに、学会誌への掲載が前提となって新薬の承認をされるということになりますと、状況的には、その技術が海外に漏れてしまって知的所有権がおかしくなったり、国内においておかしくなったりすることがある。それはあるわけでございますが、やはり二つの問題があるだろう。  知的所有権の保護をどの時点でどういうふうにしていくのかという問題。あるいはもう一つは、知的所有権と国民の命という問題とを考えた場合に、知的所有権ということだけを前提として、エイズ以後非常に高まっている厚生省の薬事行政に対する批判を今おっしゃっているような御意見だけでかわせるというふうには思えない。そういう意味においては、大変問題のあるやり方だろうと思っています。  また、さらに言いますと、ソリブジンなんかの薬害問題の経過の中でも明らかになりましたように、臨床試験以前の研究データがどのように治験医に公表されるのか。そして、最終的に承認申請データの公表の前におけるそうした検討をどうされるのか。こういうふうなものまで本当に公表されるのかどうか。  もしこれを公表するということになりますと、知的所有権の問題で局長がおっしゃっていることはおかしいことになる。しかし、それは公表せずに、いわゆる薬価算定後しか公表しないということになってきますと、依然として臨床治験の中におけるさまざまな健康障害問題については何の解決にもならないということになってくる。その辺についてはどうお考えなのか、お伺いします。
  48. 中西明典

    中西政府委員 幾つかの御指摘があったかと思いますが、一つは、治験段階において研究データの提示の話でございます。  治験担当医師に対しましては、当然、前臨床試験あるいは第一相、第二相試験で確認された治験薬の品質、有効性、安全性に関する情報をきちっと提供していく。これは現在のGCPにおける義務づけという形でなされているところでございまして、それにつきましては当然指導の徹底を図ってまいるところでございます。  そういったデータを含む申請資料の内容を取りまとめた申請資料概要、これは相当なボリュームになるものでございまして、従来、SBAという形で、承認審査概要という形で一部の医薬品について公表を行ってきているところでございますが、恐らくそれよりもはるかに多くのデータを含んだ情報でございます。それが一つ。  それからもう一つは、承認審査の過程において信頼性、妥当性というものが検証、確認されたデータである、こういったものが新薬承認情報集という形で公表される、またインターネットにも掲載されるということでありまして、私どもといたしましては、従来以上に信頼性に足りるデータというものが公表され、また、それが活用されるということになるのではないかというふうに考えている次第でございます。  それから、いろいろな副作用事項につきましては、これは先生御承知のとおり、メーカーのみならず医療機関からもじかに副作用あるいは感染症情報というものを絶えず収集しているところでございまして、未知のもの、重篤なものについては直ちに対応をとっていくという方向で行政を心がけてきているところでございまして、いやしくもこれまでのような大きな薬害事故というものを決して引き起こさないという視点に立って努力しておるところでございます。
  49. 五島正規

    ○五島委員 時間もありませんので、余りこの問題一つを取り上げるわけにいかないわけですが、お話を聞いていますと、やはり非常に問題がある。  過去のエイズの事件の問題をとりましても、厚生省の情報の公開というものが、いつの時期にどういう情報は公開するのかということが問われたと思います。  この情報公開をする場合に、その検討した行政官と情報を公開する行政官が同一人であり、そして情報を公開するに際して知的所有権ということを念頭に置いて考えるということであれば、一体、安全性はどうなるんだという不安を持つのは当たり前だ。そういう意味において、こうした情報については厚生省がどこでそうした情報公開をその過程において行っていくのか。  それからもう一つは、その出された情報を行政官として整理し検討することを私はけしからぬと言うつもりはない。しかしながら、そのことに客観性を持たせるために、厚生省のいわゆる官僚あるいは技官だけの手によってその検討をされてそのデータが出されたとしても、今の国民は本当に信用しますか、そこには第三者の専門家の参加というものがあって検討されるということが望まれるのは当たり前でしょう。  そして、情報について、情報の量、ボリュームをおっしゃっております。ボリュームを垂れ流すんであれば、それは千ページでも二千ページの報告書でもつくる気になれば簡単につくれるでしょう。  問題は、国民が見てわかりやすく、どのような治験、フェーズIからフェーズIVまでの治験を通って、そしてどういう薬効を持ち、それに対する安全性はどのように検討されて、どのような注意事項が生じてくるのか、それの科学的根拠が整理されたものが欲しい。そのことを第三者が、いや、このデータからはそうは言えないんじゃないかというように発言できるところにそれを公表してほしいというのが国民の声だろう。  それを厚生省が何もかも取り込んで、自分のところの中にスタッフを構えました、だから、もうその結果について情報をインターネットで流すんだから四十二年の反省はチャラにしてください、これでは通らないだろうということを申しておるわけでございます。  私は、その点について、ぜひもう一度、できれば大臣に答弁してもらいたいところですが、局長でもいいです、お伺いしたいと思います。
  50. 中西明典

    中西政府委員 私ども事務当局と申しますか、審査センタースタッフのみならず、当然のことながら、中央薬事審議会の専門家の先生方の検討も経たものが提出される。それで、中央薬事審議会の審議会の議事録も当然ながら公開してまいりますし、承認審査のプロセスについてもこれまで明らかにしてきているところでございます。私どもとして何ら隠し立てするような理由はないわけでありまして、誠心誠意承認審査に当たった結果をきちっとした形で公開していくということでございますので、どうぞ御理解いただきたいというふうに考えております。
  51. 五島正規

    ○五島委員 もう時間がないですけれども、中薬審は功成り名を遂げた先生方が会議される場所、そういうところではだめだということで調査会をつくり、そうそうの学者によってそういう調査をしておられた、まだそれでも不十分だろうということで学会誌でやってこられた。そういう経過の中で来ているものを、ここへ来てまた中薬審にかけるからと、そんな漫画みたいなことを言ったって国民に通らないだろうということだけ申し上げて、次に行きます。  最後に質問したいわけですが、先ほどからもお話が出ておりました平成十二年度医療制度抜本改革、これは与党の公約でもあり、それから厚生省も公約してこられたことでございます。事実、来年四月から介護保険制度が発足するわけでございますが、この介護保険制度発足に間に合わせた医療制度抜本改革がなされないということになりますと、医療保険制度は大混乱に陥る、これは容易に予測されます。  支払い側としても、医療保険制度の抜本的改革ができないままに介護保険制度が発足するということになれば到底了解できないことであるだろうし、また医療のサイドからいっても、そうした中において現行の医療保険制度が全く変わらないままに介護保険制度が導入してくるということになりますと、大変な混乱が起こってくることは明らかでございます。  とりわけ、その中心は、今、自民党さんの中で何かようやく少しは常識が芽生えてきたのかというような議論の方に行っているようでございますが、何かむだに参照価格制度の問題だけで時間をつぶしてこられたようでございますが、やはり最大の問題は、老人保健医療制度をどうするのかという問題であることはだれもが認めるところだろうと思います。  現在において、まだ老人保健医療制度をどうするのか、その原案もできていないということを重々承知した上で、今後の医療保険制度抜本改革に向けたスケジュールはどのようにお考えになっているのか、大臣にちょっとお伺いしたいと思います。
  52. 宮下創平

    宮下国務大臣 委員の御指摘のように、一昨年、当時、自社さきがけ政権でございましたが、そこで医療改革基本的な方向について合意を見ております。今回の改正もそのラインに沿ったものであることは申し上げるまでもございません。  特に、医療保険につきましては課題が幾つかございます。例えば診療報酬のあり方の問題、それからまた薬価基準制度の見直しの問題、そして、今委員の御指摘のような老人保健医療制度をどうするか、それから四番目には医療提供体制の問題、こういう四つのジャンルにわたりまして、私ども、問題意識としてこれに今取り組みをさせていただいております。  診療報酬につきましては、これはあるいは法律改正を要しないかもしれませんが、これも今かなり煮詰まってきつつあります。また、政党政治ですから、党の了解も得ながら成案を得たいと思っております。  薬価制度につきましては、今委員の御指摘のように、いわゆる参照価格制度、薬剤定価・給付基準額制と申しておりますが、これがいろいろの面で異論もございまして、薬価差に基づく診療のあり方を十分是正できるかどうかという問題の提起もありまして、これは一応これにこだわらないということにいたしまして、しかし、薬価差による医療保険制度というものはおかしいので、この是正は図るということは共通した認識で、今具体的な方法についてかなり突っ込んだ議論をさせて、アンダーグラウンドでもいろいろ各種団体とも連携をとりながら成案を得るべく努力をしております。  最大の課題は、今委員のおっしゃられたとおり、老人医療制度の問題でございます。今、市町村の中に、老人医療勘定を設けまして、これを各保険組合等の拠出等によって、また国庫の補助等によって賄われておりますが、高齢化社会を迎えて非常に支出がかさんできて、健保組合の赤字の問題の大きな要因にもなっておることは申し上げるまでもございません。  そうした中で、老人医療制度をどうするかということで、今、医療保険福祉審議会におきまして、私ども試案を二つばかり提示いたしまして議論をしていただいております。  その一つは独立した老人保健制度をつくるべきであるという考え方、もう一つは健保組合等の上乗せでございます。健保組合等で現職を過ごされた人の医療費を健保組合等で、オールジャパンでこれを支えていったらどうかという二つの案を中心にして議論をさせていただいておりますが、これも今申しました診療報酬の問題とか薬価の問題と密接に関係しております。そして、何よりもまた介護保険制度とも密接に関係しているのも、御指摘のとおりでございます。  そういった問題意識を持ちまして、医療提供体制ももちろんでございますが、検討中でございまして、このスケジュールにつきましては、いずれも今まで十二年中に実施を目指してということでやってまいりました。  そのプライオリティーの順序等につきましては、私どもとしては、年金問題はもちろん重要な課題でございますからこれは別として、医療保険内部におきましては、薬価の問題をまず先行して解決しましょう、そして診療報酬、医療提供体制の問題も同時に並行して検討しましょう、最後に、一番重要な課題でございますけれども、今審議をいただいておりますが、精力的にその結論を得るのを老人保健制度について行っていこう。いずれも実施時期は十二年を予定しておりますが、それによって早くできるものとできないものとがございますので、そういったことを勘案しながら結論を得ていきたい。  ただ、本国会が、来月の十七日、一応通常国会終了という日程上の問題等もございまして、直ちに今国会で法案が提出できるかどうかはちょっと予測の限りではございませんけれども、とにかく十二年中に実施ができるようにいろいろの制度について万般の準備をし、検討を続けて精力的にやってまいりたい、こう思っておるところでございます。
  53. 五島正規

    ○五島委員 今の大臣のお話を聞いていますと、この抜本改革というのは同時に一括してやられるのではなくて、老人保健医療制度についてとそのほかのものと二つに分断して平成十二年度中にやりたい、そういうふうにも聞こえるわけでございますが、そのようなお考えと受け取っていいんですか。
  54. 宮下創平

    宮下国務大臣 私が今申し上げたのは、一応の基本的な考え方を申し上げたわけでございまして、これからの議論の中で老人保健制度についても合意が早く得られれば別に最後に持っていく理由はございません。  大変重要な課題でございますから、そうしたいとは存じておりますが、今のいろいろな状況判断しますと、一斉に十二年からできないのではないかなという懸念も正直に言って持っておりますので、そのように申させていただいたわけでございます。
  55. 五島正規

    ○五島委員 私は、平成十二年度、四月から介護保険が発足する段階で、何よりも整合性をとっておかなければいけないのが老人保健医療制度だろうと思っております。事実、医療保険制度の方の改正が全くできないままで介護保険が実施ということになりますと、支払い側としても財政的にはもたないというのは明らかでございますし、医療の側も、そこのところが全くないままに薬価制度だけ変わってみても大混乱するだろうというように思います。  そういう意味で、この分断ということがされないように。そして、老人保健医療制度について、現在審議会では二つの意見で、厚生省が二案出したりするからあそこも二つに割れているわけで、どこかで大臣が決断を持って一つにまとめて、政府としてはどのような抜本改革考えているのかというのを明確にお示しいただきたい。そのことを申し上げて、私の質問を終わります。
  56. 木村義雄

  57. 山本孝史

    山本(孝)委員 この通常国会で私も質問に取り上げました点で二点、内閣に対応をお約束をいただいている問題があります。若干質問の順番が変わっております。申しわけありません。ホームレスへの対応と戦後補償に関する問題でございます。  まず、ホームレスへの対応について、事務局を担当しておられます厚生省の社会・援護局長からその進捗状況についての御報告をいただきたいと思います。
  58. 炭谷茂

    ○炭谷政府委員 お答えいたします。  ホームレスの問題につきましては、先生御案内のように、雇用、それから厚生省の所管しております福祉医療、その他住宅など、非常に幅広い分野にわたっているわけでございます。  そこで、関係各省並びに地方自治体が一体となってこれに取り組むために、二月十二日、政府として、ホームレス問題連絡会議を設置いたしました。この会議につきましては、私も参加させていただいておりますけれども局長レベル、また局長レベルに副知事、助役の加わった会議、これまで三回やっております。また、さらにその下のレベルとして課長レベル、実務者レベルなどをそれぞれやっておりまして、都合十回以上の会議を重ねてまいりました。  その間、関係自治体からの現状説明、また実際に苦労されている現地の方々の実情、また地方自治体の御要望というものを踏まえまして、現在最終的な取りまとめということで、当面とるべき対策というものの取りまとめについて精力的な検討を行っているところでございます。
  59. 山本孝史

    山本(孝)委員 最終的な取りまとめはいつできますか。
  60. 炭谷茂

    ○炭谷政府委員 何分にも会議でございますので、私どもとしましてはできるだけ早急にということでお答えをさせていただきたいと思っております。
  61. 山本孝史

    山本(孝)委員 次の会合は五月二十六日とお聞きしておりますけれども、五月二十六日の会合の席上で一定の対応策はお示しをいただけるという理解をしてよろしいでしょうか。
  62. 炭谷茂

    ○炭谷政府委員 何分にも会議でございますので意見の一致というのはどうなるかわかりませんけれども、事務局を預かっております私どもといたしましては、先生の御指摘のように来週の二十六日にも会議を開く予定にしておりますので、その場でまとまればというふうに思っております。
  63. 山本孝史

    山本(孝)委員 最終的な案がその場ですぐにまとまるというのは難しいかもしれませんけれども、各省持ち寄りの案があって、こういうことをやらなければいけないんだという政府の取り組む課題というものが整理されて、それに対してあとは予算をどうやってつけていくかということになるんだと思いますが、そういう意味合いで、五月二十六日、一定の課題というか政府が取り組んでいこうと思っておられるテーマ、施策等々がおまとめをいただけるという理解をしてよろしゅうございましょうか。
  64. 炭谷茂

    ○炭谷政府委員 ホームレス問題につきましては、多角的な角度から、またそれに応じた多面的な対策が必要だというような議論でほぼ集約しつつあるわけでございます。  具体的に申しますと、一つはホームレスの方々の総合的な相談をどうしたらいいだろうか、また自立に向けた施策、また雇用対策、住宅の問題、また実際に地域住民の方々の環境の問題というような項目について対策を現在検討し、最後の詰めを行っているわけでございます。それに基づきまして、私ども厚生省も、また他の労働省初めの関係省庁も、それに応じた施策を講じられるというふうに思っております。  必要な予算につきましては、厚生省につきましては、今年度の予算で、既定の予算の中で対応できるものもたくさんございますので、そのようなものでまず応じてみたい。何分にも問題の緊急性から考えまして早急に着手しなければなりませんので、現在の予算を使いまして対策を講じるというように考えております。
  65. 山本孝史

    山本(孝)委員 どうぞよろしくお願いをいたします。  もう一つの問題は戦後補償にかかわる問題で、これは大臣にも何回かこの間から御質問させていただいた部分がありますが、在日韓国人の元軍属への戦傷病者戦没者遺族等援護法に基づく障害年金支給問題について何度か御質問をさせていただきました。  かねてから裁判所が行政措置を求めているということは御案内のとおりでございますが、先般五月十四日に大阪高裁が和解を勧告をいたしました。一歩進んできているのではないかと思います。三月九日に野中官房長官が、内閣委員会での我が党の佐々木委員への答弁や、あるいはその後の記者会見で、解決に向かって努力するのが内閣の大きな責務であると述べられて、その後内閣の外政審議室で検討されているというふうに聞いております。きょうは外政審議室から来ていただいておりますので、その検討状況、どの程度検討していただいているのか、その進捗状況の御報告をいただきたいと思います。
  66. 竹内春久

    ○竹内(春)政府委員 お答え申し上げます。  御指摘の点につきましては、官房長官の御指示といったものを受けまして、関係省庁とも連携を図りながら、本件に対処するに当たっての種々の問題点についての検討を進めているところでございます。  例えば、従来の法制、制度の内容でありますとか、戦後処理の枠組みとの関係でございますとか、本件につきましては韓国との関係がございますけれども、韓国における本件の従来の処理の状況であるとか、そういった問題についての検討を進めているところでございます。
  67. 山本孝史

    山本(孝)委員 重ねての質問で申しわけありませんが、これは長いこと実は問題になっていることであって、この委員会での援護法の質疑で、厚生大臣厚生大臣のお考えを述べられて厚生省は非常にはっきりとした姿勢を示してきておられる、各省庁はそういう姿勢を示してきておられるわけですね。  検討するというと、何を検討しているんだと。今までの話を全部まとめてみるだけでもそんなに時間がかかる話ではない。どういうふうにしていこうとしているのか。単に検討しているだけで時間を費やしているのか。これは内閣の責務としておやりになるとおっしゃっておられるわけだから、もう少し検討しているという状況をお示しいただかないと、それは何らしていないのと同じではないか。我々の方だってそのぐらいわかっていますよという感じがしますので、そういう意味で、きょうわざわざお越しをいただいているわけです。もう一度御答弁ください。
  68. 竹内春久

    ○竹内(春)政府委員 私どもといたしましても、官房長官からの御指示がございますので、具体的にどういったことがあり得るのかということについては検討を進めたいと存じておるわけでございます。  他方、本件につきましては、非常に長い経緯のある話でもございますので、改めて振り返っていろいろな点を確認もとりながら物事を進めていかなければいけないということかと心得ておりまして、その点も含めて今作業を進めているところでございます。
  69. 山本孝史

    山本(孝)委員 例えば論点整理をされておられて、こういう主張があったけれどもこういうことでできないんだ、そういう論点整理はされているのですか。
  70. 竹内春久

    ○竹内(春)政府委員 本件につきましては、先ほども申しましたとおりに、いろいろな経緯があっていろいろな御主張が行われているということは私どもも承知しております。そういったものを改めて検証するということは現在進めているところでございます。
  71. 山本孝史

    山本(孝)委員 ごめんなさい、最後聞こえなかった。そういうことについてはやっていると言ったのか、やっていないと言ったのか。
  72. 竹内春久

    ○竹内(春)政府委員 失礼いたしました。  改めてそういった点も含めて検証しているところでございます。
  73. 山本孝史

    山本(孝)委員 検証している中間報告をしていただけますか。
  74. 竹内春久

    ○竹内(春)政府委員 本日、ここの段階におきましては、関係各省庁とは大変密に御協力をいただきながら作業を進めているところでございますけれども、この場で中間的な報告をするというところまでは、申しわけないのでございますけれども、まだ至っておりません。必要な情報の提供を得ながら作業を進めたいというふうに考えております。
  75. 山本孝史

    山本(孝)委員 では、いつごろまでに中間報告をしていただけますか。いつまでにやろうということでめどを立てていただいているのでしょう。
  76. 竹内春久

    ○竹内(春)政府委員 私ども、繰り返しになりますけれども、作業を進めたいというふうに思っております。ただ、何分にも長い経緯がある複雑な問題だというふうに心得ておりまして、これを着実に積み上げていかなければいけないというふうに心得ておりまして、きょうこの段階で、いつ結論ということについて明確なことはお答えできない点、御理解いただければと存じます。
  77. 山本孝史

    山本(孝)委員 理解できません。仕事は必ずめどを持ってやるのが仕事であって、いつまでに何をやるかということをわからずに仕事をするなんというのは、国家公務員としてあるべき姿ではないと私は思います。内閣としておやりになるとおっしゃっておられる重要な問題について、先延ばしをしておられるような姿勢で答弁をされるというのは非常に無責任だと思います。きっちりとした対応をいつまでにどうやってやるんだ、今何をやっているんだ、論点整理をしてみたらこうだと、あれから随分時間がたっているのですよ、それすらもやっておられないように受け取れる御答弁をされるというのは、私は内閣として非常に無責任だと思います。  厚生大臣は、その点で、これは厚生省としてできませんというはっきりとした認識をこの場でもお示しになった、しかし、内閣としてということがあるから、やってみることは考えてみる余地があるだろうという御答弁もいただきました。そういう意味合いで、やはり内閣としてもう少し責任のある対応をとられるべきだ。あなたは代理でいらっしゃるから、ここでやっても仕方がない。本当は予算委員会で官房長官なり総理にやるのが本筋であろうと思いますけれども、少なくとも、きょうの時点でそれぐらいのちゃらんぽらんな対応しかしておられないんだ、官房長官の発言というのはそれほどに軽んじられるんだというふうに我々は受けとめざるを得ないのですが、そう受けとめてよろしいのですか。
  78. 竹内春久

    ○竹内(春)政府委員 繰り返し御答弁申し上げておりますとおり、私どもといたしましては、官房長官の御指示というものが物事の出発点でございます。したがいまして、その御指示に基づいた作業を進めさせていただくということについては何ら疑いのないところでございます。
  79. 山本孝史

    山本(孝)委員 ここでやりとりしていても仕方がないと思いますけれども、きょうのあなたの発言は全部ここに残っていますから、内閣としてそういう姿勢であるということはしっかりと私どもは覚えておきたいと思います。しかし、早急に対応はしていただきたいと思います。高裁段階まで進んできています、だんだんお年もとってきておられます、そういう意味でもよろしくお願いしたいと思います。  大臣に一つ、医療ミス、医療事故の問題についての御質問で御認識をお伺いさせていただきたいというふうに思います。  最近、新聞等々で随分報道が続いております。低いレベルの医療の改善というのは、やはり厚生省の重要なお仕事の一つであろうと私は思います。そのためにも、今医療現場で一体何が起きているのかということを明らかにするべきではないかと思います。なかなか実態を公表していただけません。厚生省も、医療事故の実態についての把握をしておられません。患者のプライバシーというのも大切だとは思いますけれども医療というのは公共性がありますから、そういう点でも、今、実際どういう実態が生じているのかということを国民に包み隠さず明らかにして、その過失の実態を踏まえた上でどういう対応をしていけばいいかということを考えていくべきだと思います。  横浜市大病院での患者取り違え事件がありまして、その後、患者誤認事故防止のための院内管理体制の確立方策に関する検討会ができました。そこからも提言が出ましたし、日本医師会も提言を出しておりますし、多くの団体や機関からいろいろな提言がなされておりますけれども、その提言内容を見ておりますと、医療事故予防の対策として、まず第一に、病院内に事故防止委員会を設置して、いろいろな報告をまず把握すべきだと言っています。その後に、安全対策マニュアルを作成するというような対応をとるべきだという提言をしております。  そこで、こうすべきじゃないかということで大臣にお尋ねなのですけれども医療事故防止の第一段階として、病院における実態把握のために、まず院内に事故防止委員会を設置して、そして病院全体として医療事故へ取り組むのだという意識を高めてもらう、そして実態を把握するということをすべきだと思うのです。したがって、厚生省として、病院に、名称は何でもいいのですけれども医療事故防止委員会というようなものを設置するように強力に指導されるべきではないかと思うのですが、その点についての大臣の御認識をお伺いします。
  80. 宮下創平

    宮下国務大臣 この医療事故につきましては、横浜市立大学の附属病院の取り違え事件等を契機にいたしまして、また、各地でいろいろのミス等も報道されておるという状況でございまして、医療事故防止の対策としてはいろいろ市立大学でも行われておりますし、今御指摘のように医師会の報告書等もございますが、今回、患者誤認事故防止方策に関する検討会報告書というものを取りまとめていただきまして、それを発表し、類似事故の再発防止を期しておるということでございます。     〔委員長退席、鈴木(俊)委員長代理着席〕  簡単に申し上げまして、全国の医療機関で励行すべき基本的な事項として四項目くらいを定めておりますが、一つは、これは当然のことですが、医療施設の管理者が可能な限り事故防止の努力をせよということ、患者の主治医がだれであるかということを患者に明確にするということ、麻酔科医が麻酔を開始する際には主治医または執刀医が立ち会い最終確認を行うこと、それから、各施設の工夫によりまして複数の人によるチェックの機会を複数設けることというようなことを重点的に取りまとめてございます。  各医療機関におきましては、こうした実情に応じまして、具体的に、今御指摘のあったような事故防止委員会または事故防止のための部署の設置、あるいは事故防止マニュアルの作成、事故防止のための職員の研修実施等々を行うように掲げられております。  厚生省といたしましては、たび重なる事故の再発防止というのは極めて重要な事柄でございますので、すべての医療機関に積極的に取り組んでいただきたいということで、その周知方について徹底的に連絡をしたりしておるところでございますが、本報告書の提言内容はある程度方向性として妥当なものだと思いますので、各医療機関への普及啓発に積極的に取り組んでいきたい。  それから、委員の御指摘の事故防止委員会につきましては、これは義務づけはいたしておりません。要望という、望ましいという形の表現にしてございますが、これは病院の規模その他、態様もいろいろ異なりますし、義務づけが果たして妥当な方法であるかどうかについてはなお検討を要するように思います。  私個人としては、大病院等についてはそういうものを必ず義務づけるということも一つの考え方であろうかとも思いますが、全体として、この報告書の基調からいいますと、これは病院あるいは診療所の自主的な努力にまっていく、そして検討委員会をつくりたいというところは自主的につくっていただくというような今段階であることを申し上げておきます。
  81. 山本孝史

    山本(孝)委員 先般の横浜市大の事故を受けて設けられた検討会が、アンケート調査を全国の大学病院あるいはセンター病院等々に行いました。その結果として出てきている数字として、非常に高次機能病院としての役割を果たしている病院ですら、実はそういう委員会といいましょうか、それを置いていない。八十五の中で、たしか、置いて定期的な報告を受けている病院が二十ぐらいしかなかったと思うのですね。小さな病院にまで置けというのはなかなか難しい話だと思いますが、本来、そういった主要な、一番先端的な医療を行っているといいましょうか、中心的な病院としてあるそういった病院にまず置いて、実際にどの程度医療事故なりあるいはミスなりが起きているのかという把握をしないと、問題に取りかかれないと思うのですね。何件というケースじゃなくて、やはり個々の具体例、ケーススタディーを積み上げてこないと、そうした事例を踏まえてどういう対策をとればいいかという次の話に進んでこないと思うのです。そのためにも委員会が要るのではないか。委員会という名称はどうでもいいのですけれども、院内における医療事故や医療ミスが起きている実態を把握するシステムが院内に必要なのではないか。それを義務づけるということがなかなか難しいとおっしゃるのだけれども、任せておいたらどこもやらないので、そういう意味で、せめてそういうところはやった方がいい。  だから、通達でいいのですけれども、強烈にやって、それで報告をさせて、実態を把握して、それでどういう対応をとるかという次の段階に進む。それぞれリスクマネジャーを置くとかいうのは先の段階としてあると思うのですが、まず取っかかりの部分として、それぞれの病院にそういう委員会を設置して、まずは意識を高めてもらって、実態を把握するということを指示されるのがいいのではないか。そういう指示を強烈にされた方がいいのではないでしょうかというお願いと、もう一度お考えをお聞かせいただきたいと思います。     〔鈴木(俊)委員長代理退席、委員長着席〕
  82. 宮下創平

    宮下国務大臣 最近の医療事故の事例につきましては、主なものは把握しておるところでございまして、それらを含めましてこの委員会結論を得られたものと承知をいたしております。  なお、今委員のおっしゃられるように、病院でこれが実際に確実に行われませんと、私どもの生命が脅かされるわけですから、これはいろいろな形はあるにしても、実効性の上がるような方法でこれを徹底するようにしてまいりたい、こう思います。
  83. 山本孝史

    山本(孝)委員 ぜひ実効性の上がる形で取り組みをしていただきたいと思います。  それから、私の地元にあります八尾総合病院の森先生医療事故調査会というようなものをつくられて、この前もシンポジウムがありました。新聞等でも報告されましたけれども、信じられないような事態が起きている。患者の取り違えだけじゃなくて、全く違う薬を投与していたり、あるいは全く見立てを間違っていたりしている、あるいは手おくれになってしまっている、そういう事例は本当に全国にあります。表へ出てこないだけです。出せば自分の病院の恥になるからということで、出してこない。そこはそうじゃなくて、個人のミスではなくてシステム上起きてくるミスだということで、その人の責任を問わない、免責を置いてもいいぐらいで、こういうことが起きてしまうんだという事例の把握をぜひ積極的にやっていただきたいと思います。そうしないと、医療水準が上がらないというふうに思います。  看護職員の不足が原因じゃないかというふうに常に言われているわけですね。看護婦がもっといたらこんな事故は起きなかったんじゃないかというお声もあるわけですけれども、この看護の配置基準を改善されるというお考えはあるのでしょうか。
  84. 小林秀資

    ○小林(秀)政府委員 お答えを申し上げます。  医療事故の発生を防ぐために看護職員をたくさん置くという観点での議論ではなくて、今、医療法の改正ということを念頭に置きまして、今後の医療提供体制をどうするかという議論は、医療審議会を開催いたして、そこでやっております。そこの中で、もっと急性期医療と慢性期医療を分けていこうではないか、それで、急性期のところではもっと看護職員というのをふやすべきではないかというような観点から議論がされているところでございます。  それから、今回の事件、横浜市大におきましても、その後の都立広尾にしても、看護婦さんの数は、例えば大学病院なら大学病院の中でいけば、横浜市大の病院というのは看護婦さんが非常に多数いらっしゃる病院だ。都立広尾病院の場合も、公的病院の中では看護婦さんの多い病院で起きている。それは、先生、先ほどおっしゃられましたように、個人の問題ではなくてシステムの問題ということが一つありまして、責任が明確になっていない。特に、人数がおるとどうしても分業というのが起きてくる、そういうところにミスが生じているというのも結構あるわけでございまして、必ずしも職員数そのものと医療事故と関係があるというふうには、この検討会でもそうですし、我々もそこまではまだ結論づけているということではございません。
  85. 山本孝史

    山本(孝)委員 世界的に比較して日本の職員の数が少ない、ベッド数が余りにも多いから少ないという数字になるのかもしれませんけれども、今後、ベッド数が制限されていく中で、医療の水準を上げていくためにどういう職員配置をしたらいいのかということは十分に検討していただきたいというふうに思います。  さまざまな問題について質問して申しわけありません。臓器移植の問題について、先ほど五島先生も御質問をされておられました。私も大臣に一点だけお伺いをしておきたいというふうに思います。  これは、高知並びに東京の例を見ておりまして、私自身が受けております印象でございますけれども、高知における脳死判定のトラブルがあったり、あるいはマスコミの皆さんの非常に攻勢があったり、それから東京の場合でも、どの臓器を提供するかということで御家族等々のお気持ちもあったりして、そういったところを見ておりますと、臓器を提供するという患者さん本人の意思が非常に明確であったことが最終的に臓器提供に結びついて、移植手術ができたということではなかったかなというふうに思います。  したがって、今後ともに、本人の臓器提供の意思というものが明確に示されていることが提供の条件だ、今の法律もそうなっているわけですけれども、この点を私は守っていくべきだというふうに考えておりますが、今回の二例の点を受けて、本人の提供意思についての大臣のお考えをお尋ねいたします。
  86. 宮下創平

    宮下国務大臣 臓器移植法によりまして生前におけるドナーの意思を確認するということが法定されておりまして、これは現行法の場合に絶対厳守していかなければならない原則だと存じます。  ただし、先ほども御質問がございましたが、十五歳以下のお子さんたちが判断能力があるかないかというような問題を基礎に、十五歳以下のお子さんの脳死の場合の臓器移植ができないという点についてはいろいろ意見のあることも私は承知しております。  しかし、これは、今委員のおっしゃられたようなドナーの意思を尊重するという建前と、それから十五歳未満の意思表示をどう考えるかという問題等の絡みもございますが、今直ちに私ども改正してどうのこうのということではございませんが、三年後の見直しもございますので、そういった問題意識を持ちながら、法律で定められた脳死の条件というものをよく重視しながら対応していきたいなと思います。
  87. 山本孝史

    山本(孝)委員 長年の議論大臣も御承知のとおりに、日本で最初に行われたいわゆる和田心臓移植のときの情報公開の非常な悪さ、まずさがずっと後に尾を引いてきたわけですね。今回の二例のケースを見ておりましても、先ほども指摘がありましたように、情報公開、すなわち透明性の確保をするということと患者さんのプライバシーをいかに守っていくかということの両立が非常に難しい、私もそう思います。  しかしながら、ともに患者のプライバシーを守るということを盾にとって、だんだん情報の公開がされない、透明性に陰りが出てくるという嫌いが私はあるように思うのですね。そのときに唯一歯どめになるのは、やはり本人の提供意思がはっきりしているということが私は最後の歯どめではないかと思います。この歯どめが外れたところで、プライバシー保護だということで透明性も薄れてくるということですと、結局、和田移植のときのあの密室性の問題に戻ってしまうのではないかという危惧を非常に私は持っておりますので、確かに子供の臓器提供という問題はありますけれども、当面やはり本人の提供意思というものを尊重するという姿勢は崩さない。ほかの委員の皆さんの中にはいろいろな御意見があるのだと思いますが、私は崩さない方がいいというふうに申し上げておきたいと思います。  それから介護保険の問題について、これも新聞で随分、先ほど田中先生からも御指摘ありました、自民党の中でも森幹事長が、選挙の時期と絡めて、介護保険が来年四月導入ならその前に解散だというような新聞記事も出ておりましたし、きょうの朝の新聞にも、自民党の中にもそういう意見が強いのだというようなお話も出ておりました。  しかしながら、社会的に必要だということで導入をした制度でございますし、国民に新たな負担を求めるということは導入の時点からわかっていることであって、そこを正直に物を話すことを恐れて、したがって、制度先送りしてしまうというのは非常に無責任だと思います。ここで実施を先送りしてしまえば、私はもうこの制度はなくなるだろうと思います。制度は非常に問題が多いとは思いますけれども制度の実施に向かって今現場も動いていますし、国民の中にも一定の期待はありますから、ここは踏ん張っていただきたい。こういう無責任な姿勢に同調されないでいただきたいと思います。  ただ、地元を回っておりますと、市町村ごと保険料やサービスが違う、ばらばらであるということで、非常に難しい、これは困ったことだという声を非常によく聞きます。しかし、これも、制度をよく理解をしておられる皆さんは、あれは保険料もサービスもばらばらであるということが前提になっている制度ですから、今さらそんなことを言うのはおかしいのであって、だったら、もともと国一本の保険制度でやればよかった、あるいは保険制度ではなくて、我々がかねて主張しておりましたように税方式でやった方がよかったというふうに思います。  ばらばらであるからという意見は随分強いと思うのですが、したがって、保険料がばらばらである、何とかしてくれという声を受けて、今の法定の枠組みを超えて保険料を軽減させるために例えば公費を投入するとかというようなお考えを今お持ちなのかどうか。枠を超えてこの保険料の軽減のために何らかの措置をおとりになるお考えがあるのか、そこのところを大臣にお聞かせをいただきたいと思います。
  88. 宮下創平

    宮下国務大臣 介護保険制度は、少子、特に高齢化社会を迎えまして、私どもが家庭介護だけでは到底背負い切れない、これは社会の相互扶助、相互責任でやっていこうという趣旨でこのシステムが既につくられておるわけです。そしてまた、今委員の御指摘のように、関係市町村あるいは関係者等が大変御努力をいただいておりまして、私どもも来年の四月にはこれをどうしても実施して、円滑なスタートを切りたいと考えております。このことは私はいささかも変わりございません。  その上で、しかしながら、いろいろ世論調査その他報道等もございますが、とり方もいろいろ問題があろうかと存じますが、総じて、保険料の格差が開き過ぎるとか、あるいは財政的な不安があるとか、マンパワーが確保できるかとか、あるいは事業者の確保ができるかとか、初めての制度でございますので、いろいろ不安感を表明される向きがあることも承知しております。  しかしながら、私どもとしては、十月から本格的な認定作業に入るわけでございますが、本格的には四月一日からでございますから、その間に、あとう限り円滑にスタートできるようにいろいろの点の配慮はしていかなければならないというように思います。そして、何よりもまずこれが国民の間に本当に理解されるということが非常に重要なことであると思いますから、その理解を求めながら、なおかつ問題ありとせば、それはどうやって補足し、円滑なスタートができるか、これも当然頭の隅に考えておかなければなりません。  今具体的な、それでは何を考えておるかと言われても、それは今は申し上げる段階でもございませんけれども、円滑に実施するためには従来の福祉政策との整合性の問題もございますし、それから、各市町村で福祉に重点を置いているところと置いていないところ、いろいろ差もございますから、そういった問題。それから、今御指摘のような保険料の算定。これは四、五倍になると言われておりますが、その算定自体は私はまだ疑問に思っております。つまり、施設を一〇〇%整備した場合とか、あるいは需要を過大に見積もっておれば当然そうなりますし、それから施設の、特老、老健施設あるいは療養型病床群等のあり方とも密接な関係にございますから、なお念査を要しますが、余り過大な格差というものは本当は好ましいとは思っておりません。  そういうもろもろのことはございますが、これからは保険者を市町村に一応お願いしておるわけでありますので、それぞれの特殊性に応じて対応していただく。国としても全般的にこのシステムが稼働しやすいようにいろいろの側面で検討していくということでございまして、十分な配慮はしながら対応していきたい、こう思っております。
  89. 山本孝史

    山本(孝)委員 夏の概算要求に向けてそう時間があるわけではありませんし、悠長なことを言っているところはないと思うのです。  今、もしお考えがあればと思ってお聞きしますけれども保険料の過大な格差とおっしゃいましたけれども、例えば我々の一票の格差といつも言いますけれども大臣の頭の中には、過大な格差というのは何倍以上あったら過大な格差だというお考えなのですか。
  90. 宮下創平

    宮下国務大臣 これは大変難しい質問でございまして、お答えするのも難しいのです。  つまり、保険料の算定というのはどうしてできるか、今さら原則を申し上げるまでもございませんが、例えば施設介護の御厄介になっている人がほとんどいないようなところは非常に少なくなります、あるいは二千円を割るところすらあるとも言われておりますね。ところが、町村の中で療養型病床群にかなりの数が行っておられるというところはどうしても高くなりますね。そういう実態がございますから、一概に格差が何倍以内ならいいということは断定はできないと思います。  しかし、常識的に考えまして、これは法案審議の過程の中では二千五百円という仮定の数字を中心に議論されたわけですが、今厚生省としては三千円弱という感じを持っております。これが何倍以内であればいいということを一概に申し上げられませんが、しかし、四、五倍も高いということになると、これはちょっと常識に反することは間違いないわけで、これは我々の一票の格差どころの話ではないと思うんですね。  そういう面で、なるべく公平な負担と公平な給付ができるようにしていかないといけないというように思っております。衆議院の定数というのは二倍の格差以内なんということを私は申し上げるつもりもございませんけれども、なるべく実態に合わせて、そして、保険料を納める以上、給付の方も大体バランスのとれたものに各市町村がなるように将来的には設計を考えながら持っていかなければいけないなという感じでございます。
  91. 山本孝史

    山本(孝)委員 サービスの水準が低いがために保険料も低い。その一番低いところと高いところを比較すればすごい倍差になってしまう。それは余り妥当な比較のやり方ではないと思いますけれども、おっしゃるように、全国平均、押しなべて二千五百円ということで議論をしてきました。二千五百円が四、五倍ということになると、それは一万円を超えてしまうわけですから、それはちょっとべらぼうな話じゃないだろうか。ここでも聞こえますけれども、二倍の格差があるだけでも、二千五百円と言われていたものが五千円というだけでも話は違う、夫婦で一万円ということになってくるわけですから、それは随分違う話だと私は思うんですね。  でも、この制度はそういう制度なんですよね。たくさんサービスを提供していれば保険料は高くなるというふうに仕組んである制度ですから、そこは、高いのは仕方がないんだという説明をするか、あるいは、今言われている療養型病床群の非常に多いところは介護保険適用の療養型病床群の上限はここまでだという数字をばんと切ってしまうか、どっちかしかないと思うんです。療養型病床群は今転換が進んできていますから、これから介護保険の事業計画あるいは支援計画を立てる中で、療養型病床群はここまでだという、強烈に厚生省として適用対象病床を制限するんだというお考えで臨んでいかれるのかどうか、そこはどうなんでしょうか。
  92. 宮下創平

    宮下国務大臣 施設サービスの内容につきましてどういう水準がいいかということは、これからこの制度が本当にうまくいくかどうかのキーポイントになると思います。  療養型病床群につきましても、医療機関としてのそのままの体制で果たしていいのかどうかという疑問を私は持っております。したがって、スタート時点におきましては、なかなかこれを強力に調整してというわけにもまいらぬかと存じますけれども、あるべき姿としてどういうものを描くべきかというような点についてはこれから検討を本当にしていかなくちゃいけないということだけ申し上げさせていただきます。  委員が介護保険について大変御理解のある御発言をいただきまして、私も本当に感謝のほかはないわけでありますが、どうかひとつこれが円滑にスタートできるように、またいろいろな御示唆があれば教えていただくなり、御教示をいただきたいと思います。
  93. 山本孝史

    山本(孝)委員 私は、今やめたら混乱するからやめるべきじゃないというふうに申し上げている、制度は余りにも問題が多過ぎるとは思います。  もう一点お願いは、介護報酬をできるだけ早く示していただきたい。民間事業者が一体幾らに設定されるのかわからないままでは民間事業の参入は進みません。夏の予算要求等々も絡めて、きのうもやっておられたと思いますけれども、できるだけ早く介護報酬を幾らに設定するのか、特にホームヘルパーさんの単価が幾らになるのかということを早く決めていただきたいというふうに思います。これはお願いをしておきたいと思います。  時間になりましたが、最後に一問だけ。申しわけありません。ダイオキシンの検査にかかわる談合問題が摘発をされまして、千葉市で行われた談合問題できょう指名停止になりました。結局、入札していた業者としては談合ありという事実を認めたということになっております。  したがって、問題は、昨年の六月に公正取引委員会が立入検査に入って以降、半額以下に一検体当たりの値段が下がりました。ここの認識は、検体数がふえたから市場原理に従って安くなったんだというのが厚生省のきのうお聞きしている話ですけれども、それにしても半分以下に下がるというのは余りにもおかし過ぎる。こういう実態を知っていたのか知らなかったのか。それは知りませんでしたというのがきのうの答弁ですけれども、いずれにしても、国民税金がむだ遣いされるような形のこういう談合体質。  あるいは厚生省は、何回もこの委員会の中で、一体、一検体幾らなんだ、ダイオキシンの検体は高過ぎるじゃないか、外国と比べなくたって一検体五十万も六十万もするのは何でですかと。今それが十万台ですよ、下がってきているのは。それはおかしいと言い続けてきても、全然厚生省はみずから立ち上がって一検体当たりの検査費が幾らかかるかということをお調べにはならなかった。関係している財団に出向しておられる厚生省の技官の皆さんも、別にそれを指摘されたわけではない。  そういう意味で、ここしばらく、たしか出ておりましたけれども、環境庁が去年八月に行った全国調査で十五億円の予算を組んだら、八月ですから公取の立入検査があった後なので九億円で済んだんです。十五億の予算を立てたら九億円で済んじゃって、六億円も浮いた。では、立入検査がなければ六億円はむだ遣いになったのかというふうにも思いますので、もっとお金の使い方について、厚生省は自分のお金を使っているんだという思いでやっていただかないと困る。もう少しお金の使い方をしっかりと見ていただくということについての大臣のお答えをいただいて、質問を終わります。
  94. 宮下創平

    宮下国務大臣 御指摘の点はごもっともな点ばかりでございまして、私どもとしても、測定技術の改良その他が行われるとコストは安くなるということもございますけれども、何よりも基本的な認識を持つということが極めて重要であることは委員の御指摘のとおりでございますから、この公取の不公正取引の勧告を参考にいたしまして、今後予算の執行に万全を期してまいりたいと思います。
  95. 山本孝史

    山本(孝)委員 よろしくお願いします。ありがとうございました。
  96. 木村義雄

    木村委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時四十六分休憩      ————◇—————     午後四時十八分開議
  97. 木村義雄

    木村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。家西悟君。着席のままでどうぞ。
  98. 家西悟

    ○家西委員 それでは、御質問していきたいと思います。  規制緩和推進三カ年計画ということで臨床試験データの公表について廃止されるということをお伺いしていますけれども、薬害防止の観点から、臨床試験データの学会誌公表制度がこれまで果たしてきた役割について、厚生省としてどう評価されてきたのか。そして、公表制度を廃止した理由についてお伺いしたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。
  99. 中西明典

    中西政府委員 新薬承認申請資料の主たるものにつきましては、昭和四十二年から通知に基づきまして学会誌等への公表を行うよう行政指導を行ってきたところでございます。  これは、昭和四十二年当時におきまして、資料の信頼性を確保する手段として、GLP、非臨床試験の実施基準でございますが、あるいはGCP、臨床試験の実施基準、そういった基準がいまだ存在しない、また、承認申請資料の信頼性調査や査察を実施できるような体制も存在しない状況下にあったという実情がございます。  そのために、承認申請資料の主たるものが学会誌等に公表されるようにすれば一定の信頼性の確保が期待できるものと考え、いわば便宜的な措置としてこうした指導を行ってきたものでございます。  そうした信頼性確保のための基準や、あるいは信頼性調査、査察といった実施体制が存在しない時点においては、これが信頼性確保の上で一定の役割を果たしてきたのではないかというふうに考えておりますが、現在、GLP、GCPが導入され、法制化され、また信頼性調査や査察の実施体制というものも確立された、また定着した今日においては、こういった指導の意義というのはなくなったのではないかというふうに判断しているところでございます。
  100. 家西悟

    ○家西委員 今GCP、GLPのあれができたということで、それで対応できるというふうにおっしゃいますけれども、九三年以降、GCP以降もソリブジンを初めとした薬害というものは続いていると私は思うのです。そして、環境が変わったとは到底思えないと私は思います。  これは、昭和四十二年に、サリドマイドの薬害事件を教訓として、国会等で追及されてそういう制度が構築されたと思うのですけれども、そういった制度を踏まえたときに、どう考えてもこの公表制度はそれなりに役割を果たしてきているし、今後もそういうふうに公表していくべきではないかというふうに私は思えてなりません。  今回、これを廃止するに当たって、国会での、サリドマイドの薬害事件を教訓としてこういう制度を設けられてきた以上、薬害事件の当事者である人たち、例えばサリドマイドであったり、スモンであったり、私自身も含めたHIV薬害訴訟の関係者の声をしっかり聞くべきではなかったのかなというふうにも思います。そして、薬害当事者を初め多くの団体は、このことに関して反対しています。こういった声を厚生省として聴取されたのかどうか。  そして、一昨日ですけれども、この質問通告をするときに、ある病気の団体の方々からも御意見を聴取してこういうふうに廃止したんだということをお伺いしていますけれども、その件についてどうお考えなんでしょうか。そして、そういう当事者に対して意見をなぜ聞かなかったのかについてお伺いしたいと思います。
  101. 中西明典

    中西政府委員 繰り返しになりますが、昭和四十二年にそういう行政指導を開始したというのは、まさに四十二年段階というのは、ダブル・ブラインド試験が初めて導入される、いわば非常に我が国として薬の承認審査のレベルというのが途上国並みであったという実態があるわけでありまして、審査体制も必ずしも十分ではないという中で、何らかの信頼性確保措置というものを担保するためには便宜こういう指導をとらざるを得なかった、こういう経緯があるわけでございます。  こういった指導というのは、先ほど申し上げましたように、今我が国の医薬品の承認審査体制というのが当時と比べて格段に整備され、基準もきちっとしたものができ、それをチェックするシステムもでき上がっている、そういった国においてこういった指導を採用している国というのは我が国のみであったということもこれあり、さまざまな弊害が指摘されてきたところでございます。  その一つとして、申請資料に関して知的所有権に係る部分を含めて公表を余儀なくされることによって、企業の知的所有権が侵害されるおそれがあるという問題が一方である。また、そういったおそれがあるがゆえに、海外における開発医薬品の我が国への導入障壁の一因ともなっているという指摘がなされているわけであります。  それからさらに、学会誌等に掲載するためには論文投稿の準備や掲載に相当の期間を要するということで承認申請のおくれにもつながる。ひいては、医療現場にきちっとした薬が速やかに提供されることが、患者さんの側から見ても薬の供給開始がおくれるということは大きな弊害にもなっているということから、今般、公表指導を廃止することとしたものでございます。  情報公開という意味におきましては、これはこれで、私どもとして、薬の安全性、有効性についての情報をできる限り提供していかなければならないというスタンスから、別途の形で取り組んでいきたいというふうに考えている次第でございます。
  102. 家西悟

    ○家西委員 では、情報を開示していくというか公表していくということには、SBA以外では何かお考えになっているのですか、具体的にお尋ねしたいと思うのです。  午前中、同僚議員の五島先生の方からの御質問では、中薬審の会議録をインターネットを通じて公開するようなことをおっしゃっておられたと思うのですけれども、それで間違いないわけですか。中薬審のその審議で間違いない、これがオープンなんだということを言い切れるわけですか。
  103. 中西明典

    中西政府委員 厚生省におきましては、既に平成八年十月から、すべての新薬につきまして、品目ごとに承認審査の経過、評価結果、そしてその根拠などをまとめました審査報告書等を公表してきているところでございますが、今後、これに臨床試験データを含む申請資料の内容を取りまとめた申請資料概要、概要と申しましても単なるサマリーということではなくて、フルサマリーといいますか、非常に大きな資料でございますが、そういったものを加えた新薬の承認情報集といったものを作成し、ことしから承認後に公表していきたいというふうに考えております。
  104. 家西悟

    ○家西委員 短くしてもらえませんか。済みません。  情報開示されていくということに間違いないということだと思うのですけれども、これは、SBAなりそういうやり方をした場合に、製薬メーカーにとって不都合な情報、副作用とかそういった問題が起こった場合についての情報開示というものはされるのですか。そして、第三者がそれを検証する場合の情報として、どこまでお出しいただけるのでしょうか。  これは情報公開法とも関連してくると思うのですけれども厚生省として、どこまでは開示できて、どこまではできないとかいうのがあるのですか。それとも、情報開示を請求された場合、新薬申請されたそういった学術論文、そういったものはすべて公開するととらえていいのでしょうか。
  105. 中西明典

    中西政府委員 先ほど申し述べました申請資料概要につきましては、申請資料の内容を申請者が的確にまとめたものでありまして、当然、副作用も含め、臨床試験データを初めとする各種の試験データの詳しい内容が盛り込まれるものであります。  それからまた、その内容につきましては、承認審査の過程において信頼性、妥当性を確認し、その評価過程も含めて公表されることとなるものでございます。
  106. 家西悟

    ○家西委員 今、申請者がまとめた概要というふうにおっしゃいましたよね。第三者がまとめたものではなくて申請者がまとめるということは、自分の都合のいい部分の情報しか開示しないということじゃないのですか。これはちゃんと担保できるのですか。
  107. 中西明典

    中西政府委員 基本的には、こういった医薬品の承認申請資料の中に、トレードシークレットと申しますか、知的所有権に触れる部分がかなりあるわけでございまして、どの部分が知的所有権に触れるものであるかどうかということは、申請者みずからがチェックして判断いただくほかはないわけでございます。  しかしながら、厚生省が目をつぶって、それをうのみにして右から左に見るということではなくて、当然、厚生省、中央薬事審議会はそれぞれ承認審査に携わっているわけでございますから、今先生がおっしゃるように、一部の情報、例えば不都合な副作用情報を隠ぺいして、都合のいい部分だけを出すというようなことは絶対にあり得ない。そこは厚生省がもちろん責任を持って対応いたします。  それから、実際上、承認審査の過程において、どういう経過で承認審査がなされたかという審査報告書もあわせて、これは厚生省の責任でもってまとめておるものでございますが、審査報告書と照らし合わせて、もし重大な副作用情報が隠ぺいされているということであればつじつまが合わなくなってくるということもあるわけでございまして、そういうことは絶対にないように指導をしていくつもりでございます。
  108. 家西悟

    ○家西委員 知的所有権の問題というのは、WTO、ガットのTRIPS協定のことを言われているのだと思うのですけれども、この条項にはたしか除外されるべきことがあったと思うのですけれども、それは、外務省おいでいただいているので、外務省の方からお答えいただければと思います。
  109. 大島正太郎

    ○大島(正)政府委員 お答え申し上げます。  御照会の点は、WTOにございます知的所有権の貿易関連の側面に関する協定、俗にTRIPS協定と申しますけれども、特にその三十九条の三でどういった問題を示しているかということだと思いますが、ここでは、医薬品等の承認申請の際に提出が求められているデータについては、原則として開示から保護されるという規定がございます。これは原則でございます。  他方で、同条項においては、公衆の保護に必要な場合をこの原則が適用されない例外として掲げておりまして、例えば特定の医薬品について人体に著しく有害であるなどの場合には、常に非開示としなければならないとは言えないものと考えているわけでございます。  具体的なケースについてその開示が認められるか否かということについては、開示される情報の具体的な内容、開示の具体的手法、公衆の保護の必要性などを考慮した上で判断すべきだと考えております。
  110. 家西悟

    ○家西委員 今お聞きのとおりだと思うのですよね。そしてWHOも、医薬品健康政策において公衆の利害が優先されることを確保することが参加国の義務であるということも言われているわけですね。これは一九九九年の一月の理事会で決議されているわけですけれども、こういったことを考えたときには、これは何も知的所有権というふうにおっしゃることはないのではないかと私は思えてなりません。  知的所有権の問題とあわせて、保護されるべき知的財産なのかということを厚生省としてどのようにお考えなのか、お聞きしたいと思います。  時間が余りありませんので。私は、御存じのとおりで、血友病というハンディを背負っているわけです。そして、非加熱製剤から加熱製剤に切りかわるときに、私は治験者です、治験を受けた側、自分の身をもって治験をしたわけです。このときに思ったのは、ただ単に製薬メーカーの利益のために私はやっていません。多くの患者のために治験をやったわけです。それが、どうして一企業の利益のために知的所有権というふうな話になっていくのか、私には理解できない。  これは公衆の財産である。国民すべての、人類すべての共有財産であって、一企業の利益のために治験を行ったわけでは到底ないと私は思う。そして、多くの人たちがそういう思いで治験に臨んでいるはずです。それが一企業の営利のために使われるようなものであるのならば、治験者はいなくなると思います。  こういった問題で考えたとき、こういった治験データというものはオープンにすべきだと思います。そして、申請者が掌握して概要を出すというようなものはナンセンスきわまりないのではないかというふうに私には思えてなりません。  これは、もし大臣にお答えいただけるのなら、大臣の方からでも結構です。こういった問題を踏まえて、こういったデータをオープンにしていくことが今後も求められるべきと私は考えますけれども大臣としてお考えをもしいただけるのなら、よろしくお願い申し上げます。
  111. 中西明典

    中西政府委員 先生おっしゃったように、臨床試験の結果どの程度の有効性があったのか、あるいはその過程でどういう副作用があったのか、その副作用事例の態様、重篤度、そういったものは、当然私どもといたしましても秘密にされるべきものではないというふうに考えております。当然、今後の情報公開の中でも公開されていくというふうに考えております。
  112. 家西悟

    ○家西委員 時間が来ましたので終わりますけれども、この問題はいろいろ多くの問題を含んでいると私は思います。機会を通じて御質問なりさせていただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。  時間がなくて非常に残念です。どうもありがとうございました。
  113. 木村義雄

  114. 石毛えい子

    ○石毛委員 民主党の石毛えい子でございます。  本日は、年金福祉事業団から融資を受けて、有料老人ホームを全国で展開している日本老人福祉財団について質問をしたいと思います。  この財団につきましては、既に昨年来新聞等で報道されておりますように、バブル期の有価証券による財産運用の焦げつきですとか、京都ゆうゆうの里における過剰投資などによって、極めて深刻な経営状態に陥っているというようなことが知らされております。  もし財団が倒産状態、破産状態になりますと、全国で二千人に近い入居者の方が路頭にほうり出されることになりかねないという状況も危惧されます。先日の十三日でございますけれども、入居者の代表者の方々、七十代、八十代の方でございますけれども、七十名ほどの方の署名を携えられて私のところにお見えになり、不安な実態をお伺いいたしました。そこで、ぜひ、きょうはこの件について質問をさせていただきたいと思います。  まず最初に、財団の経営実態、ゆうゆうの里の実態について確認をさせていただきたいと思いますけれども、報道によりますと、財団には、年金福祉事業団から借入残高が約百三十五億円あるほか、銀行に約二百九十億円、建設会社に約十一億円の借金がある、これにつきまして九七年の秋に厚生省の仲介で銀行に三年間の返済猶予を認めてもらっているが、ことし三月には年金福祉事業団への返済もできなくなったというように報道されております。私の聞いておりますところ、この年金福祉事業団への返済についても、元金返済を三年間猶予したというふうに聞いておりまして、建設会社にも返済猶予を求めている。建設会社には十二億円の焦げつきがあるとも聞いております。  今、多方面にわたる借入残高のこと等々を質問いたしましたけれども、これらにつきまして厚生省として事実を確認できますでしょうか。まずその点をお尋ねいたします。
  115. 矢野朝水

    ○矢野政府委員 老人福祉財団の財務状況でございますけれども、ただいま御指摘ございましたように、まず、借入金の状況につきましては、平成十年九月末現在で、年金福祉事業団から百三十五億円、それから銀行からの借入金が二百九十億円、合わせて四百二十五億円借入金がございます。それから一方、九年度の決算書における建物、土地等の資産でございますけれども、これはいずれも簿価評価でございますが、合計で六百五十四億円となっております。  それから、今御指摘ございましたように、年金福祉事業団からの百三十五億円の借入金につきましては、三年間の返済猶予の決定を行ったところでございます。
  116. 石毛えい子

    ○石毛委員 引き続き確認させていただきたいのですが、固定資産税と社会保険料も滞納状態になっているというふうに聞いておりますが、これにつきましてはいかがでしょうか。
  117. 矢野朝水

    ○矢野政府委員 固定資産税、社会保険料関係でございますけれども、十年度の社会保険料につきましては支払い済みでございます。しかし、十年度の固定資産税につきましては未納分がある、これは八千五百万ほどでございますけれども未納分がございまして、今後支払う予定だということを伺っております。
  118. 石毛えい子

    ○石毛委員 大変大きな借入残高があるというようなこと、それから固定資産税が未納になっているというようなことだけを伺いましても、大変厳しい状況にあるというふうに理解できるわけですけれども、このゆうゆうの里といいますか、日本老人福祉財団の経営が非常に困難になってまいりましたきっかけは幾つかあるというふうには伺っているわけですけれども関係者の方の証言によりますと、一番最後に推進いたしました京都ゆうゆうの里の計画が過大であって、この借り入れが財団の経営を圧迫する大きな原因になっているのではないかというふうに伺っております。  実際にも、資料を拝見しますと、この京都ゆうゆうの里につきましては、入居戸数が百四戸に対しまして空き室は三百七戸、三倍というような状況で、がらがらと言ってもいいような状況だというふうに思います。  私は、この点で、年金福祉事業団融資を行うに当たって審査が甘かったのではないかというふうに思うわけでございますけれども、実際に審査はどういう内容についてどのようにされるのでしょうか。また、甘かったのではないかという私の感想に対しましては、厚生省としてはどのようにお思いになりますでしょうか。
  119. 矢野朝水

    ○矢野政府委員 年金福祉事業団が融資を行います場合には、融資先の事業の経営の実績、それから財務状況事業の見通し、工事計画、こういったものを確認いたしまして、償還確実性とかあるいは適切な施設であるかどうか、こういったことを十分審査して融資を決定するわけでございます。  この京都ゆうゆうの里の場合におきましても、その時点までの日本老人福祉財団の経営状況がおおむね良好であったこと、それから、過去の償還につきましては滞りなく償還が行われてきたことから、融資決定の際には融資先として適当だ、こういう判断をいたしまして融資を行ったものと承知いたしております。
  120. 石毛えい子

    ○石毛委員 今局長は、見通しが確かに得られるというような考えに基づいて融資を行ったというふうにおっしゃられたわけですけれども厚生省にお伺いしますと、京都ゆうゆうの里の融資を決定しましたのは七年度ということでございますけれども、七年度から八年度、八年度はちょっと京都についてはわかりませんけれども、九年度に六十七億三千万円の融資を行っております。この時点では、既に財団の内部にいろいろと問題が持ち上がっていたというふうに伺っております。  私がいただきました資料だけでも、平成二年度から六年度までに、この日本老人福祉財団の株式等の売却損益といいますのは、累積をしますと数百億円になっているというような事実がございますし、それから、平成七年度、八年度につきましても、それぞれ売却損益が出ているというような事実がございます。そうしたことを見ますと、慎重の上にも慎重に審議をすべきではなかったかというように感じております。  全体の財務状況がわかりませんので、感想になるかもしれませんけれども、もし京都ゆうゆうの里に融資をしないで、それまでですと平成七年度末で年金福祉事業団からの借入金は七十八億ということですので、それぞれ六つですか、その有料老人ホームの空き室というようなところを有効に、入居者を求めていって入居金をいただいていくということになれば、この時点でもう少し経営の好転がされたのではないかというような感想も持ちます。  重ねてお尋ねしたいと思いますけれども、先ほど局長は審査は十分に行ったというふうに回答されましたけれども、今、私が再度質問させていただきました点を踏まえまして、もう一度御回答をお願いしたいと思います。
  121. 矢野朝水

    ○矢野政府委員 確かに、今御指摘ございましたように、この審査の時点におきまして、既に株式投資の失敗、こういったものもあったわけでございます。ただ、この問題につきましては平成七年度以降計画的に整理をするということで、直ちに、一挙に損切りといいますか、それをやりますと損失が一度に出てまいりまして、ここは市場の動向などを見ながら計画的に整理をしていくということで、そういったことはきっちりやっていく。それから、もう一つ、御案内のとおり、アメリカに同様の施設をつくろうということで土地の取得などをやっておったわけでございますけれども、このアメリカの事業につきましても撤退をする、こういうことで、この二つの問題につきましてはしかるべくきっちりその後始末をする、こういうこともございまして、そういったものを前提にして融資の決定を行った、こういうことを伺っているわけでございます。
  122. 石毛えい子

    ○石毛委員 財団法人は厚生省が指導監督をするお立場にあると思いますけれども、公益法人に対する指導方針というものを拝見しましたけれども、何が基本財産で何が運用財産になるのか、そのあたりをつまびらかに分類していきませんと詳細な実態にはなかなか届かないわけですけれども、その損益計算書等々からつくられた資料では、平成三年度以降、株式ですとか株式信託ですとかワラントとか、そういうものに対する資金運用が四割を超えてなされているというようなことがあるわけで、これはとてもリスクの高い財務の運営だったというふうに私は思います。  それで、年金福祉事業団で使用するお金というものは、私たち——私たちと言ってよろしいんでしょうか、働く人たち年金として納めているお金を運用しているわけでして、その点では非常に慎重の上にも慎重に扱っていただく、そういう性格のものではないかと思います。通常の金融機関でしたら、リスクというようなものも多く見込むのでしょうけれども年金福祉事業団の融資の場合には、被保険者福祉の向上を目的とするというようなことから考えましても、もっと慎重であるべきだったのではないか、そういう私の方の考え方を申し上げまして、次の質問に移りたいと思います。  老人福祉財団は、現在、入居者が月々お支払いになる管理費で経営をつないでいるという状態にあると伺っています。それから、新しく入られる入居者の方の入居金がこれまでの投資の失敗の穴埋めに使用されているというような状況だそうです。  平成九年度の決算書を拝見しますと、入居金が約四十億円ございましたけれども、十年度の実績ですと、この入居金が二十二億、ほぼ半分に減っておりまして、それで、入居金の見込み額に比べまして達成率は三五%ということで、三割ぐらいの達成率にとどまっている。現状から類推する限りは、入居者の方たちがどんどんふえていって、入居金で債務を埋めていって、経営のマイナスを確実に減らしていくという方向は非常に展望しがたいのではないかというような状況だと思われます。  入居者の方たちは大変不安に思っていらして、私のところにおいでになられた方もお年を召されていて、体力のことから考えまして大きな声を上げて外にどんどん訴えていくということはとてもしにくいような状況にあるわけでございますけれども、あしたからは食事が出なくなるのではないかとか、それから在室で介護の状況の方は食事が届いてくるだろうかというような不安もお持ちになっていらっしゃるというふうにおっしゃられていました。  それから、ことしの一月以降で四十人以上の職員が退職しているというようなデータも拝見しております。御高齢の入居者自身も退去されている、そういう状況も起こってきている。  そこで、これも確認させていただきたいのですけれども、昨年度以降、職員の方の退職者は何人になっておられるでしょうか、それから入居者の方で退去された方は何人になっておられるでしょうか、また入居者の暮らしの実情などについて把握されている点がございましたら、お知らせいただきたいと思います。
  123. 矢野朝水

    ○矢野政府委員 まず、職員の退職者の状況でございますけれども、昨年の四月一日からことしの五月までの間で、正規職員の方で退職された方は全体で六十六名でございます。内訳につきましては、ヘルパーが二十七名、看護婦が二十三名、調理師、栄養士が九名ということを聞いております。  これに対しまして、看護婦十三名など全体で二十六名を採用しておりまして、差し引きいたしますと、四十名の減員になっております。ただ、正規職員が減りましてサービスが低下をする、これは避けなければいけないということで、見合いのパートを二十五名採用しておるということも聞いております。  それから、退去者の数でございます。これは昨年の、十年度一年間の退去者の数でございますけれども、お亡くなりになった方を除きまして生存で退去された方、これは全国七施設ございますけれども、合計で二十一名ということを伺っております。  それから、昨年度の新規入居者でございますけれども、これは京都施設が四十二名、その他施設五十七名ということで、新規の入居者というのは九十九名、こういうことになっております。  それから、入居されている方の生活でございますけれども、これは、正規職員の方が退職されると、パートの方を採用するとしてもトータルで職員の方が減っているわけでございまして、財団といたしましては、サービスの低下を招かないように精一杯努力をするということで、いろいろ努力をされていることは伺っておるわけですけれども、サービスが低下しているということは否めない事実だろうと思います。  それから、入居者の不安とかサービスの低下を何とか防ぐというのが厚生省としても一番大事なことだと考えておりまして、そういう観点から必要な指導を行っているわけでございます。
  124. 石毛えい子

    ○石毛委員 今、サービスの低下を招くのが最も問題だということで、そういう観点から局長は指導というふうにおっしゃいましたけれども、その指導をされておられる内容について具体的に御教示いただければと存じます。
  125. 矢野朝水

    ○矢野政府委員 これはいろいろな観点から行っておるわけでございますけれども、一つは、資金繰りが非常に厳しいというようなことも伺っておりまして、そういった点は再建計画を作成していただいて銀行団で協調融資をしていただくとか、そういった面でのお願い、指導を行っておる。これが一つの大きな内容でございます。  それからまた、先ほど来委員の御指摘にもございますように、入居者の方をふやすということが一番改善につながるわけでございまして、そういった面での努力を引き続きお願いしているわけでございまして、そういった点から、担当理事を置いて、募集に当たる職員も増員をいたして、入居者の増ということで努力をされておるわけでございます。  そういったことで、私どもとしてできる範囲内で必要な助言なり指導なり各方面に対するお願いなり、こういったことを重ねておるわけでございます。
  126. 石毛えい子

    ○石毛委員 今の局長の御答弁ですと、主に財務上の解決策という枠組みであったかのように私は拝見しましたけれども、そこで生活されていらっしゃる入居者の方の生活実態、それからサービスの実情については、厚生省としては直接訪問して、例えばこういう事態に際しまして入居者の方にお会いになって御説明をされるとか、そういうふうなことはなさらないんでしょうか。有料老人ホームの指導指針というようなものが出されておりますけれども、こうした場合に、こういう厚生省が出しております指針はどのように機能するものなのでしょうか。
  127. 矢野朝水

    ○矢野政府委員 確かに、私ども年金局の職員が個々の施設を訪問して入居者の方と直接お話をする、お話を聞く、こういったことはやっておりません。  これは、財団という一義的に責任を負う当事者がいらっしゃるわけでございますので、そういったところでまずやっていただくというのが本来の姿だろうと思っておりまして、私どもがそこまで行くというよりも、財団の運営のために必要な助言指導を行うというのが私どもの第一義的な責任じゃなかろうか、こう思っておるわけでございます。
  128. 石毛えい子

    ○石毛委員 もう時間もなくなりましたので、大臣にお尋ねさせていただきたいと存じます。  ただいま局長にもお尋ねしたのですけれども厚生省としましては、有料老人ホームの設置運営指導指針というようなものを出されておりますし、それから、今回のこの日本老人福祉財団は厚生省が許可した財団法人であるわけでして、その意味で、二重に厚生省が負わなければならない役割というのは大きいといいますか重いというふうに思います。厚生省はみずからつくられた指導指針に合わないような事態を招いたことに対してどのようにお考え、お受けとめになっていらっしゃるか。  それから、大臣のもとにも提出されております要望書を拝見しますと、この入居者の方の御希望は、「厚生省の指導のもとに、現在の理事の総辞職と、新しい理事の選任によって、一日も早い日本老人福祉財団再建の見通しが生まれることを希望する」というふうな要望書を出されていらっしゃいます。  私は、厚生省が財団法人を指導する立場でもあり、有料老人ホームに対する指導指針というようなものも出されておられる責任から考えましても、ぜひともこの入居者の方が安心なされるような方向で解決の道筋をお示しになるということが大事じゃないかというふうに思いますけれども大臣はいかがお考えになりますでしょうか。
  129. 宮下創平

    宮下国務大臣 今、この法人につきまして、るるいろいろやりとりがございました。  私も、やはり監督官庁といいますか、老人ホームの経営について全く厚生省として責任がないということを申し上げているわけではなくて、まず、認可法人、法人格を与えたということ、それから、こういうものが責任を持って健全な運営をなさらなければ入居者自体が困るわけですから、その運営について監督する、あるいは、間接的にせよ実情をよく把握して適切な対応をとることは極めて重要なことだと思っております。  今いろいろお話しのように、この融資決定等が特に平成七年から行われておりますけれども、そのときの状況は、今のお話の中にもありましたように、状況がそんなに悪くなかったというように思われます。しかし、その後いろいろな変化がありまして、経済情勢の変化もありますし、経営者の問題もあったと存じますが、今日のような状況になっております。したがって、私も陳情、要望書を受けましたけれども、これからこの中身についてよく検討をして、そして、いい方向へ誘導できないかということをやってみたいと思います。  ただし、この理事の総辞職と新しい理事の選出につきましては、法人格を与えたといえども強制的にこれを要請して実効を上げるということはなかなか難しいことだと思いますが、そういったことを含めまして、また日本老人福祉財団の経営陣とも接触をさせまして、再建策に万全の措置がとれるようにやってまいりたい、こう思っております。
  130. 石毛えい子

    ○石毛委員 厚生省として再建策を御協議になる際には、この要望書を出されていらっしゃる発起人の皆様を初めとして、入居者の方と御協議される場をぜひともお持ちいただきたいということを要望させていただきたいと思います。  それから、私は、この問題は、何よりもこの日本老人福祉財団に入って今大変な不安を覚えていらっしゃる方にとって重大な問題ですから、一刻も早い安心の実現を望みたいと思います。  もう一つ、普遍的な意味としましては、介護保険がスタートしますと、有料老人ホームは介護保険の適用になります。食費とかホテルコストは自己負担になっていくというようなこと。具体的に細目はまだ明らかにされていないと思いますけれども、ホテルコストは自己負担になっていくと申しますと、これは日本老人福祉財団だけの問題ではなくて、こうした危険性というのはかなり普遍性を持つのではないかというような思いもいたしておりますので、そうしたことをも念頭に置いていただきながら、一日も早くこの日本老人福祉財団の経営の安定性に対する厚生省それから大臣の御尽力を要請させていただきたいと思います。  質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  131. 木村義雄

    木村委員長 青山二三さん。
  132. 青山二三

    ○青山(二)委員 公明党の青山二三でございます。  きょうは、子供が健やかに生まれ育つための環境づくりを総合的に進めていく観点から、少子化対策について質問をしてまいりたいと思います。  これまで、我が国は、高齢者福祉に関心が集中をしておりまして、どちらかといいますと、福祉問題、児童福祉は後回しにされてきたように思われます。  急速な高齢化を迎えまして、高齢者福祉の重要性はもちろん否定できません。特に、介護、年金高齢者医療など、目前に迫った重要な課題が山積をしている状況理解をいたしておりますけれども、児童の福祉あるいは子育て支援にももっと目を向けるべきであると思います。  そして、最近になりまして、ようやく少子化対策の動きが出てまいりました。国が省庁の垣根を超えて少子化対策を議論した少子化への対応を考える有識者会議からの提言や、超党派による少子化対策基本法の検討など、各界からも注目を集めるようになりました。  エンゼルプラン施策の一環として始めた緊急保育対策五カ年事業も、本年、平成十一年ということで最終年を迎えておりますが、その内容によりましては、目標を達成するには随分厳しいものが見られます。  そこで、まず大臣に、この五カ年事業の進捗状況につきましてどのように認識されているのかをお伺いしたいと思います。
  133. 宮下創平

    宮下国務大臣 委員から、冒頭、少子化対策の重要性について御指摘がございました。  私も全く、少子高齢化と一言に言われますが、少子化対策こそ二十一世紀に向けて私どもは真剣に取り組まなければならぬ課題だという決意を新たにしているところでございます。  ところで、今エンゼルプランのお話がありました。緊急保育対策五カ年事業というのを策定いたしまして、平成七年から十一年度までの計画として実施いたしておりますが、この実施状況につきましては、平成十一年度予算の状況で申し上げれば、これは幾つかの項目に分かれておりますが、低年齢児の受け入れ枠の問題、延長保育の問題、多機能保育所の整備の問題、放課後の児童健全育成事業の推進というように、主要な事業の項目につきましてはおおむね十一年度目標値を達成しておるという状況にございますけれども、一時保育の促進と地域子育て支援センターの整備についてはなお未達成の状況にありますので、今後、今御指摘のような検討会がいろいろ持たれておりますし、厚生省としても看過できない問題でございますから、保育需要に応じた適切な整備を図ってまいりたい、こう思っております。
  134. 青山二三

    ○青山(二)委員 今大臣から御答弁がございましたように、厚生省は、緊急保育対策五カ年事業ということで、低年齢児の受け入れ枠の拡大、そして保育時間の延長など、具体的な目標を掲げて整備を進めているわけでございますけれども、保育園に入れない乳幼児はこの間もふえ続けております。一昨年から昨年にかけましては四万人前後の待機児がいるという高どまりが続いておりまして、さらに地域子育て支援センターや一時保育などはなかなか計画が進んでいない、こういう状況がございまして、五カ年事業の効果は上がっているとは言いがたい状況もあるわけでございます。  また、昨年四月には改正児童法が施行されまして、親が保育所を選択できるという制度がスタートいたしましてから丸一年がたちました。しかしながら、保育所の需要が高まっている今日、受け入れ体制の充実がなければ保育所の選択制は絵にかいたもちになってしまう、このような懸念がございましたけれども、これが現実のものとなっているわけであります。  施行後間もなく、総務庁より五カ年事業を対象にいたしまして実施されました児童福祉対策に関する行政監察の結果が勧告をされておりますが、低年齢児の入所が厚生省の指導基準の二割に満たない保育所や、実施している保育所がない自治体など、特に公立保育所の立ちおくれが大変に目立っております。その後、勧告されていた問題はどの程度改善されているのでしょうか。また、取り組みがおくれている背景などについてもお伺いしたいと思います。  また、実現が大幅におくれている一時保育、そして地域子育てセンターなどは、最終の十一年度として予算を目標の半分しかつけておりませんが、これはもう達成の見込みがないものとしてあきらめているということなのでしょうか。予算を満額つけなかった理由と、目標達成への対応についてお聞きをしたいと思います。
  135. 横田淳

    ○横田政府委員 低年齢児等の受け入れにつきましては、緊急保育対策等五か年事業の中におきましても、十一年度六十万人の受け入れを目標にいたしまして、十一年度予算におきましては、十年度比で約四万九千人増の五十八万四千人の計画で予算を計上しているところであります。  従来、乳児保育等につきましては一定の保育所に限定いたしまして、乳児指定保育所と限定していたわけでありますけれども、これを十年度の法改正に伴いまして新たに一般化したというふうな改善を行って、この目標に向けて努力をいたしているところでございます。  それから、一時保育あるいは地域子育て支援センター事業の達成率が、本来、十一年度目標値といたしましてはそれぞれ三千カ所というふうになっておりますけれども、予算ベースではそのとおりに達成できたといたしましても半分程度という状況でございます。  これの理由といたしましては、例えば一時保育につきましては、人数要件が日々の利用児童数がおおむね十人程度以上というふうなことになっていたわけでありますけれども、地域によりましてはなかなかそれだけの需要が見込まれないといった状況、あるいは、一時保育でございますので、病気のとき、パートに出るというようなことで、それぞれ日々の利用者数の変動がかなり大きいということで経営上も不安定であるといったような状況等もありまして、地方からなかなか申請が出てこないという状況にあったわけであります。  それから、地域子育て支援センターにつきましては、この事業といたしまして、育児不安等の相談、指導あるいは地域の子育てサークルへの育成支援でありますとか、特別保育事業の実施について積極的に取り組むといったような要件を掲げまして、職員を二人ほど配置する事業であるわけでありますけれども、地域によりましてはなかなか職員二人まで配置してやるほどのニーズがないといったようなこともありまして、これまた計画いたしておりましたよりも少ないというような状況であったわけであります。  私どもといたしましては、こうした中で事業の推進を図るために、一時保育につきましては平成十年度から保育所が自主的に取り組むことができるように仕組みを見直しますとともに、人数要件につきましても、十人程度以上というのを六人以上いればよいということにいたしまして、さらに、その児童数の算定に当たりましても、毎日の利用児童数の平均ということではなくて、週の中で最大の利用者がいた日の最大値の平均でよいというような見直しを行ったところであります。  また、地域子育て支援センターにつきましても、十年度におきましては小規模型の子育てセンター事業を実施できるようにいたしまして、補助要件の弾力化等を行ったところでございまして、こういった対策を通じてできる限り計画の達成に向けて努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  136. 青山二三

    ○青山(二)委員 ただいま御答弁いただきましたが、本当にこの一時保育とかゼロ歳児保育などは大変ニーズが高いものでございまして、地域でも一生懸命やりたいという気持ちはあるわけですけれどもなかなか進展しないということでございますが、今御答弁ございましたように、しっかりと対策をとって進めていただきたいと思います。  ちょうど厚生省が、先日、五月七日でございますか、子育てマップを公表いたしました。待機児童数や延長保育の実施状況などを自治体別に示したものでございまして、それを見ますと、認可保育所への入所を待っている待機児童が、昨年四月一日現在で、全国の二割に当たる六百五十八市町村で計三万九千五百四十五人に上っていることがわかりました。これでは、選ぶということにはほど遠い状況でございます。  今回、厚生省が全国の市町村ごとのデータを整理した初の子育てマップをまとめたということでございまして、市町村ごとの数が示されたのはこれが初めてということで、正直言って驚いております。どんなにすばらしい計画を立てましても、それが実態を無視したものであれば何の役にも立ちません。そうした意味で、今回の子育てマップで地域の実情に即した子育て支援策がやっとできるのではないかと期待を持っておりますが、これを作成した意義についてお伺いをしたいと思います。
  137. 横田淳

    ○横田政府委員 私どもが今回作成いたしました全国子育てマップは、各地方公共団体ごとの保育施策あるいは健全育成施策等の取り組み状況を各種データによって取りまとめまして、その主要な事項につきましてこれをマップ化したものでございます。  先生指摘の待機児童の解消を図るためには、それぞれの地域の実情に即しまして効果的な対策を講じていく必要があるわけでありますけれども、こうした施策を展開する上におきまして、市町村の役割は極めて大きいわけであります。  そうした意味におきまして、今回のマップは、市町村ごとの保育所の整備状況でございますとか待機者の数、待機率、あるいは延長保育なり一時保育の実施状況というのが明確になったところでありまして、これらを参考にいたしまして、各市町村ごとに待機児童の解消につきまして一層努力をしていただくことを私どもとしては期待しているところでございます。
  138. 青山二三

    ○青山(二)委員 そのような御答弁でございますので、この子育てマップを利用してこれからいろいろな施策に取り組んでいただきたいと思っておりますが、安心して子供を産み育てられる環境づくりは、本当に待ったなしの重要課題でございます。しかし、子育てと仕事の両立に欠かせない存在のこの保育所は、今申し上げました子育てマップを見てもわかりますように、利用をしたい人の多様なニーズにはなかなかこたえられておりません。  それで、子育て家庭の多くが保育所にあきがない限り職場復帰は無理だということで、お母さんたちが働きに出るのをあきらめているというケースも多くございます。子供をどこに預けるかということは、最も切実な問題となっております。そして、不況の長期化で切迫している子育て家庭の経済状況の面からも、この問題をいかに迅速に解決していくかが少子化を打開する一つのかぎであると考えております。  また、この待機児童の多い順に市町村を見てみますと、横浜市、大阪市、那覇市、堺市、川崎市、東京の足立区、世田谷区、練馬区、そして名古屋市、京都市となっておりまして、政令指定都市や東京都の特別区の大都市が上位を占めております。このように、全体では保育所の定員は十分であっても、待機児童が解消できないという地域的な格差が大きくなっております。  待機児童問題は都市部に的を絞った対策が必要でありまして、保護者のニーズの高い地域に重点的な対策を打つことが急務と考えておりますけれども、このような現状に対する御認識と今後の取り組みについて大臣にお伺いしたいと思います。
  139. 宮下創平

    宮下国務大臣 今詳細にいろいろ入所待機率の高い市町村等について言及がございました。  私どもとしては、この低年齢児の保育所への入所待機の解消は極めて重要であると考えておりまして、五カ年事業によりましても低年齢児の受け入れ枠を拡大していく、あるいは保育所の入所定員を弾力化する、あるいは分園方式を試行的に導入する等々の施策を推進いたしましてやってまいりたいと思っております。  平成十一年度予算におきましても、先ほど数字も出たようでございますが、低年齢児の待機の完全解消を図るための低年齢児の受け入れ枠の大幅な拡大、これは五十三万五千人から五十八万四千人に拡大する。それから、都市部においても設置しやすい都市型の小規模保育所を百カ所整備する等の予算措置を講じておりますが、さらに、個別の市町村の状況を詳細に分析して、著しく待機状況にある今の御指摘のような市町村から個別にヒアリングを実施する、あるいは入所定員の弾力化に応じて相談をする等、きめ細かな対策を講じてきております。  今後とも、都市部における保育サービスの充実には、利用者の視点に立った保育サービスの確保に努力をしてまいりたいと思っております。
  140. 青山二三

    ○青山(二)委員 大臣から大変前向きな御答弁がございましたけれども、この保育所の待機児童ゼロの実現を目指しました緊急少子化対策につきまして、公明党は他党とともに先月の十三日にその実施を政府に申し入れを行いましたので、この関連についてお伺いをいたしたいと思います。  子育て家庭を支援するためには、まず何といっても子育てと仕事の両立に欠かせないこの保育サービスが大変重要でございます。待機児童ゼロを目指すためには、地域ごとの問題点を的確に把握した上で、需要の多いところには思い切った財政支援や大胆な基準の緩和を実行することが必要であります。  そこで、この提言の第一の柱であります特例交付金事業でございますけれども、これは、市町村の意欲的な取り組みに対しまして、市町村からの申請に基づいて国が特例交付金を支給するというものでございまして、市町村の意欲を引き出し、地域の実情に合った事業を創出する呼び水となるものと考えております。これまで保育行政に消極的であった市町村の意欲を引き出すためにも、今年中に事業をスタートできるように事業予算について今国会で措置していくべきである、このように思いますけれども大臣の御所見を伺いたいと思います。
  141. 宮下創平

    宮下国務大臣 御指摘のように、自由民主党と自由党、それから御党の公明党・改革クラブの三党合意によります緊急少子化対策というのが成案を得まして、市町村における多種多様な取り組みのきっかけづくりを支援するということで、市町村への少子化対策特例交付金事業と保育所の規制緩和等について取りまとめられました。そして、先般、政府に正式に申し入れをいただいたところでございます。  私どもとしては、これを真摯に受けとめまして、その具体化に向けて関係省庁とも検討を進めているところでございますが、本年中に対応できるように検討してまいりたいと思っておりますし、財源措置等につきましては今関係省庁で検討を進めておりますので、これらを含めてとにかくこれを実施にこぎつけたい、このように思っております。
  142. 青山二三

    ○青山(二)委員 大変ありがとうございます。大変期待をいたしております。  それで、この規制緩和の問題でございますけれども、これにつきましては、保育所の設立基準の大幅な緩和が柱となっております。簡単に申し上げますと、認可保育所への民間参入、また保育所の施設の自己所有規制の見直し、そして定員要件の緩和などが挙げられております。  現在、先ほども申し上げましたとおり、一部の地域における保育所不足は大変深刻なものがございます。こうした状況考えますと、特に待機児童を多く抱える地域においては、認可保育所の設立主体が原則的に地方自治体と社会福祉法人に限られておりますのを、これ以外の者、例えば学校法人や医療法人、NPO、農協、株式会社などに拡大することを検討する時期に来ているのではないでしょうか。だれでも、またどんな団体でも設立できるということは、預ける親の側から見ますと不安があるかもしれませんけれども、必要な許可基準が守られていることを前提に積極的な規制緩和をすべきであると考えております。  昨年の四月、厚生省が、待機児童対策として保育所をふやすために、従来認可の対象外だった三十人未満、ただいま大臣から御答弁がございましたけれども、これを分園方式ということで行っております。しかし、問題点は、施設の土地は自己所有が原則、建設費も四分の一は負担、そして認可保育園側の園長が代表を兼務する、そういう条件がございまして、大都市ではこの方式の適用を希望する保育園の開業者は少ないと聞いているわけでございます。  そこで、社会福祉法人が保育所を設立する場合に、原則として土地建物をすべて所有していなければならない現状を改めて、賃貸方式も認めることによって資産面での障害が取り除かれることになるのではないかと思います。  またさらに、認可保育所の定員要件を緩和することで、小規模の保育所や夜間保育所の設置が後押しされるなど、利用しやすい保育所の増加が期待できると思いますけれども、こうしたことについて大臣の御所見を伺いたいと思います。いかがでございましょうか。
  143. 宮下創平

    宮下国務大臣 緊急少子化対策の基本方針の保育所に係る規制緩和につきまして、今委員が代表として三点申されました。民間参入、自己所有規制の見直し、つまり賃貸でもいいのではないかということ、それから三番目に都市型の小規模保育所や夜間保育所の設置促進のための定員要件の緩和ということでございまして、こうした提言をいただいたところでございます。  これらの点につきましては、待機児童の解消等の課題に対しまして、地方公共団体が柔軟に対応できるようにする観点から、いずれも重要な柱であるというように考えておりまして、現在、この御提言に沿って具体化を図るべく検討を進めておるところでございます。
  144. 青山二三

    ○青山(二)委員 では、そのようによろしくお願いいたします。  それでは次に、無認可保育の施設について伺いたいと思います。  認可保育の規制緩和の促進とともに考えていかなければならないのが、認可外の保育所の支援でございます。働く親たちを支える深夜や早朝の乳児や低年齢児専門の保育サービス、そして休日保育など、サービスの種類という点では無認可保育所は一生懸命に工夫を凝らしているようでございます。現在、こうした認可外の保育施設には約十四万人の子供が入っておりまして、認可保育所と同じように子供を預かっていながらも、補完的に見られがちでございます。しかし、認可保育所に入れない待機児たちの受け皿として役割を担っておりまして、この位置づけや助成を実態に合わせて見直していく必要があるのではないかと考えております。  例えば事業所内の保育所もそうでありますが、出勤途中に預けることのできる駅型保育所は、働く親たちにとりましては大変心強い存在になっております。これは平成六年にモデル事業としてスタートしておりますけれども、施設の維持費や賃貸費がかさんで経営に苦しんでいるところもございまして、今回提案した特例交付金事業の一つとして生き返るのではないかと期待されるところでございます。厚生省も支援はしているといっても、まだまだモデル段階にとどまっておりまして、その普及に一層力を入れていただきたいと思います。  そこで、認可外でありながらも、利用者のニーズに応じた弾力的な運営をいたしております駅型保育所などの無認可保育施設につきましては、入園希望者が多いことを考えまして、低い保育単価を見直すなど、一層の充実を図るべきであると思いますけれども、この点はいかがでしょうか。
  145. 横田淳

    ○横田政府委員 保育サービスにつきましては、児童福祉法に基づきまして一定の最低基準を設けまして、それに合致したものを認可保育所としてそこに対して国から助成を行っているというようなことになっておりまして、私どもといたしましては、今後とも、保育サービスの提供につきましては、安定的な提供あるいは質の確保といった観点からも、認可保育所が基本ではないかというふうに考えているところであります。  ただ、今御指摘いただきましたような無認可保育所をどうするかということでありますけれども、これにつきましては、今回の少子化対策の基本方針の中にもございましたように、一つは、現在の市町村あるいは社会福祉法人以外のものでも条件に合致したものであれば認可保育所になれるという民間参入の道を検討することによって、現在は無認可保育所でありましても、それに合致すれば今度は認可保育所になりまして助成の対象にもなり得るというような道が開かれることになるかと思います。  それから、事業所内の保育所につきましても、現在、これは労働省の方からでございますけれども、一定の助成が行われております。  また、駅型保育所につきましては、現在二十八カ所でございますが、今年度予算で五十カ所に増加することにいたしておりますけれども、賃借料も含めました助成を行っておりまして、これは単価の点がございましたけれども、単価としてはむしろかなり優遇というようなことになっておりますが、あくまでもこれは実験的なものというふうに私ども位置づけておりまして、今後、民間参入の検討とあわせてこういった問題もどうするかというのが一つの課題だと思っております。
  146. 青山二三

    ○青山(二)委員 それでは次に、幼稚園と保育所の連携強化について伺いたいと思います。  近年の少子化の進行によりまして、特に幼稚園での定員割れが深刻な問題となっておりまして、幼稚園と保育所の連携強化については地方分権推進委員会でも勧告されております。実際、同じ幼児期の児童を対象としている保育所の待機児童は、地域によっては数百人レベルにも達している一方、幼稚園はがらがらという、縦割り行政の弊害による矛盾が全国各地に見られるとの指摘がこれまでにもなされてきたところでございます。  我が党は、こうした現状をかんがみまして、幼稚園と保育所の施設の共用化等の促進や、幼児教育と保育内容の整合性の確保などの提案をいたしております。幼稚園と保育所の積極的な交流によって、地域における幼稚園と保育所の偏在を解消して、子育て家庭の多様なニーズにこたえる効果があると考えておりますけれども、この点はいかがでございましょうか。
  147. 宮下創平

    宮下国務大臣 保育所は、申し上げるまでもございませんが、両親共働きである等の事情によりまして、日中の保育が必要な乳児、ゼロ歳児から就学前までの児童を対象といたしております。そして、今お話のございましたように、低年齢児の保育所入所の待機解消は極めて重要なことであると認識しております。  一方、幼稚園は三歳児から就学前児童の教育を行うための学校教育の施設ということでございまして、早朝から夕刻までの長時間、夏休み期間等もなく保育所の利用を必要とする児童につきまして、その受け入れを行うことは困難な状況にございます。しかしながら、幼稚園等に余裕教室がある場合には、保育所の分園の設置等を行うことができると考えております。  なお、保育所と幼稚園のあり方については、地方分権推進委員会勧告に沿って、各地域の実情に応じまして、双方の連携強化及び施設の総合化を図る方向で厚生省と文部省が共同して鋭意検討しております。  具体的には、両施設の共用化について指針を策定するとか、幼稚園と保育所における地域子育て支援センター事業の連携実施をやるとか、あるいは保育士と幼稚園教諭との合同研修を開催する、あるいは保育所と幼稚園の保育内容、教育内容の整合性の確保等を図っておるところでございます。  私どもとしては、今後とも、この基本方針の提言にもあります重要な課題でもございますので、子供や家庭の多様なニーズに的確にこたえられるように文部省と十分連携をして、その実現を期してまいりたいと思っております。     〔委員長退席、鈴木(俊)委員長代理着席〕
  148. 青山二三

    ○青山(二)委員 この点は本当によろしくお願いを申し上げます。  それでは次に、子供の虐待についてお伺いをしたいと思います。  新年早々、茨城県の山中に四歳の娘を置き去りにして凍死させたとしてお母さんが逮捕された事件や、つい先日も、盗んだ車の後部座席に乗っていた二人の幼児を、栃木県足利市の松田川ダムに突き落として一人の幼児が死亡したという、本当に痛ましい事件など、最近、子供が殺される事件が相次いで報道されております。  栃木県の事件につきましては、何の罪もない幼児をダムに突き落とすという残虐非道な事件でございまして、憎むべきは犯罪者であり、いわゆる親の児童虐待ではありません。しかし、幼児の御両親が、せめて車のエンジンをとめ、ドアをロックしていたら防ぐことができたかもしれない、ましてや、幼児を乗せたまま車を離れることがなければと思いますと、本当に残念でたまりません。  せっかんや無理心中など、親や養父母の手によって三日から四日に一人の割合で子供が国内で死んでいるという新聞報道がなされておりましたけれども厚生省が全国の百七十四カ所の児童相談所の取り組みの実態を初めて調査した結果によりますと、児童相談所が相談に乗り、指導したにもかかわらず親の暴力などで子供が死亡したケースが、昨年度に全国で十五件もあったことがわかりました。さらに、児童虐待に関する相談件数は五千三百五十二件にも上り、これも氷山の一角であるという極めて深刻な事態でございます。  こうした児童虐待の現状につきまして、大臣はどのように御認識されておりますでしょうか。
  149. 宮下創平

    宮下国務大臣 平成九年度の虐待数が五千三百五十二件、御指摘のとおりでございます。これは、平成二年度に千百一件でございましたから、驚くべき急増ぶりでございます。  その内容につきましては、身体的虐待と保護の怠慢、拒否で八割以上を占めておりますし、私も驚くんですが、実母や実父による虐待が八割を占めているという現実がございます。本当に痛ましい、残念なことです。  このような相談件数の急増の要因といたしましては、都市化、核家族化の進展に伴って家庭や地域における子育ての機能が低下して、育児不安に陥ったり、育児に負担を感ずる例が増加していること等が考えられます。  児童の虐待は家庭内で行われることが多いものですから、早期発見が困難な場合が多いわけでございますが、これは、国民に対し通告を促す等、法的な措置もありますので、早期発見に努めてまいりたい、また努めておるところでもございます。  それから、お話しの児童相談所は通告や相談のあった事例に対しまして専門的な、的確な対応ができるようにすることが必要でございまして、児童虐待対応のノウハウを精緻に解説いたしました「子ども虐待対応の手引き」というのを作成いたしまして、これを児童相談所職員等に配付して、その徹底を期しているところでございます。  今後とも、こうしたことが本当にないように、関係機関と連携をとりながら早期発見あるいは早期の的確な対応をしてまいりたいと思っております。
  150. 青山二三

    ○青山(二)委員 百七十四カ所の児童相談所の取り組みが初めて発表されたわけですけれども、今大臣からもございましたように、そういう手引もいろいろつくっているということですけれども、この最大の原因は専門職員の不足ではないかということも言われております。  現在、児童相談所の職員のうち専門職とされるのは、一応、所長と、児童福祉司と呼ばれる数人の職員だけで、あとは一般職員というところがほとんどであると聞いておりますが、これでは専門職員が少な過ぎて、十分な対応をするにはほど遠いと感じました。子供を守っていくためには、児童相談所の専門性を高めることが急がれます。  専門性を備えた職員の養成についての厚生省の取り組みと、それから、相談所の人員配置を適切な対応ができるように再検討すべきではないかと思いますけれども厚生省は設置者であります都道府県にどのような指導をされているのかを伺いたいと思います。
  151. 横田淳

    ○横田政府委員 全国百七十四の児童相談所に、職員が全体で五千五百六十九人おりまして、その内訳といたしましては、所長百七十四人、児童福祉司が千三百二十六人、相談員四百二十一人、心理判定員七百九十八人、精神科の医師等が四百三十九人というような状況でございまして、それぞれの高度な専門知識を活用いたしまして相談等に当たっているところでございまして、私ども、さらにその資質の向上を図るために、これら職員に対しまして各種の研修を実施いたしているところでございます。  また、児童相談所だけでは必ずしもすべてカバーするのは十分でないということで、さらに、身近な地域における相談体制の充実を図るために、児童家庭支援センターというのを法改正を契機に創設いたしました。また、保育所等におきましても、先ほど来御指摘いただいておりますような地域子育て支援センターの整備を進めているところでございます。  さらに、本年度におきましては、虐待への相談体制の充実を図るために、主任児童委員というのが地域に全国一万四千人ほどおりますけれども、児童相談所がこうした主任児童委員等に対する虐待等の対応の研修を実施いたしまして、その連携を図ることによって地域における虐待防止のネットワークの整備を進めてまいりたいというふうに考えております。  今後とも、児童相談所を中心に、こうした地域のネットワーク体制の整備に私ども全力を挙げて、都道府県等を指導してまいる所存であります。
  152. 青山二三

    ○青山(二)委員 今回の調査で、虐待をしている当事者の大半が何と実母であるということがわかりまして、大臣からも御答弁がございましたが、これは、育児ストレスが高じた結果、身近な弱者を虐待するケースが少なくないものと思われます。  都市化や核家族化による家庭機能の低下は少子化の原因の一つとされてきましたが、これは同時に母親が孤立して子供を育てる状況となり、こうした不安やストレスが児童虐待の原因になっているということも考えられるわけでございます。仕事を持たない母親にも一時保育を受け入れたり、児童相談を行ったり、保育所が持つ子育てのノウハウを地域に還元するなど、改めて、子育てを社会全体で支援する仕組みや支援体制の充実が急がれるところでございます。  私は、前回の質問の際に、子育て家庭への経済的支援策として児童手当の拡充について伺いましたが、我が党が主張しております新児童手当の早急なる実現と、安心して子供を産み育てるための環境整備、子育てに夢の持てる社会体制の整備について大臣に御決意を伺いまして、私の質問を終わりたいと思います。
  153. 宮下創平

    宮下国務大臣 新しい児童手当制度の創設につきましては、二月の十八日に貴党の政審会長と自由民主党の政調会長の間で確認をいたしております。  それは、一つは「欧州各国で行なわれている児童手当制度を参考に、新しい児童手当制度検討をはじめる。」「その際、支給対象者に対する現行の所得税及び個人住民税における扶養控除制度並びに現行児童手当制度を廃止することの是非についても併せて検討する。」ということが申し合わせをされております。  私どもとしては、公党間の確認でございますから、これに沿って検討が行われるだろうと考えておるわけでございます。  ただし、新しい児童手当制度をつくるに当たりましては、これはいろいろ意見もあるところでありまして、保育所等の子育てサービスの充実を優先すべきではないかというような意見とか、子育て支援の新たなプランを策定するなど総合的な対策が必要であるとか、あるいは給付総額が、貴党の案によりますと十六歳未満ということで一律に資力制限なしに行うというようなこともございまして、かなりな額を要します。しかし一方、今申し上げたように所得税の扶養控除等の廃止によるということもございますが、それでもなおかつ相当程度不足するだろうとは思いますが、そういった問題もございますので、私どもとしては、公党間の検討の成り行きを見定めながら、今後幅広く検討をしてまいりたいと思っております。
  154. 青山二三

    ○青山(二)委員 大変ありがとうございました。  以上で終わらせていただきます。
  155. 鈴木俊一

    ○鈴木(俊)委員長代理 桝屋敬悟君。
  156. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 公明党・改革クラブの桝屋敬悟でございます。  大変に皆さんお疲れでございますが、引き続き一般の質疑をさせていただきたいと思います。  大臣、本当にお疲れだろうと思いますが、私、何か厚生委員会でこの席に立つのは久しぶりのような気がします。  この国会で、私は今、この厚生委員会と地方行政委員会あるいは労働委員会や、きょうからいよいよ地方分権一括法の特別委員会の審議も始まったわけでありますけれども、率直に申し上げて、きょうは介護保険の問題を議論したいのでありますけれども、介護保険の議論をずっとやっておりますときに、介護保険は来年の四月から開始ですから、恐らく来年の四月を前にしたことしの通常国会は、介護保険の準備を初め年金医療、二十一世紀のまさに少子高齢化社会に向かって我が国の抜本的な社会保障の構造改革をさらに持続的に進めるためにさまざまな議論があるのだろう、社会保障の問題はこれから二十一世紀の扉が開くまで本当に大変な時代だなということを思いつつ、介護保険の議論をしたことをこの席に立つといつも思い出すわけであります。  翻って、この通常国会でこの席に立ちますと、今申し上げたように久しぶりですねというわけでありまして、毎日のように審議すれば、やあ、こんにちはということになるわけでありますけれども、本当にそんな感じがします。委員部に聞いてみましたら、きょうで九回目の厚生委員会、質疑時間で二十時間ということであります。  きょうは介護保険の問題を今から大臣議論させていただきたいと私は思うのですけれども、今日、この通常国会で国会がやらなければいかぬことは山ほどあるだろう、このように思っていたわけでありますけれども、残念ながら、この国会、厚生委員会のこの舞台は、そんな緊張感ある舞台ではないような気がしてなりません。決して関係者各位あるいは理事の皆さん方の取り組みが悪いというようなことを言っているわけではないわけでありまして、何でこうなったのだろうかと思うわけであります。議論しなければならぬことは山ほどある、にもかかわらずそれができない状況にあるのではないか。  違う言い方をすると、私はこの日曜日に地元へ帰ってずっと現場を回りまして、いろいろな福祉団体の会合に立て続けに出てまいりました。現場はそれこそハチの巣をつついたように、介護保険や、これから出るでありましょう社会福祉基礎構造改革法律案等についてさまざまな議論をされておられますし、あるいは大変な悩みを現場は持っておられる、こういう状況を聞きまして、現場の状況と国会の厚生委員会の姿を引き比べますと、大きな乖離を感ずるわけであります。  なぜこうなったのか。やはり私はしっかり議論しなければならぬと思うのですね。それができない状況が何なのかということを最初に大臣議論したい。  もっと言いますと、この通常国会こそ、介護保険が、きょう、今から議論いたしますけれども、既にいろいろなことがだんだん固まってきた、そして現場でいろいろな問題がある、その問題を我々国会議員は現場で吸い上げてきて、来るべき二十一世紀の年金をどうするのか、医療保険制度をどうするのかということを実は議論しなければならぬと私は思うのでありますが、残念ながらそれができないわけであります。  私は、介護保険の議論をするときに、来年の四月一日から始まるこの介護保険制度は、間に合えば——間に合わさなければならぬけれども、恐らく医療保険制度年金の問題もあわせて動いていくのだろう、まさに年金医療、介護は一体的に改革が進められていく、その議論をどんどんしていかなければならぬ、こう思っていたわけであります。それが、どうもこの国会では議論する法案がないといいますか、なかなか議論できない。  これは、国民から見たら、それこそ介護保険だけ先食いされて、あるいは二年前に始まった医療保険制度だって、国民負担だけふえてその後何も進んでおらぬではないか、一体どうなるのか、こういうことになると思うのですね。  きょう、今から何点か介護保険の問題を出しますけれども、介護保険そのものも、全体のバランス、年金医療、介護のバランスの中でどうするかということを議論しなければならぬわけでありますけれども、まず国民負担だけが始まったととられはしないか。  もうちょっと違う言い方をしますと、介護保険の準備であるいは介護保険の施行をめぐって現場は大混乱になっておるから、これ以上の混乱はもう……。今議論したくない、しばらく様子を見ようじゃないかと。時も時で我々衆議院議員の任期もそろそろ終期が見えてきたわけでありまして、ちょっと静かにしておこうじゃないかというようなことではないですよね。そうであってはならぬだろうと私は思うわけであります。  まず大臣にお伺いしたいのは、この厚生委員会で今審議すべきことができない、年金はどうなりましたか、医療保険制度はどうなっておるのでありましょうか、いつ我々は議論できるのでしょうかということを率直にお伺いしてみたい、このように思います。
  157. 宮下創平

    宮下国務大臣 委員の御指摘はごもっともな点が多々ございます。そして、国会は法律案を審議していただくところでございますので、その根っこになる法律案が出されないということになりますと、一般質疑があっても、実のあるといいますか、焦点を定めた議論がなかなかできにくいということがございます。  介護保険については、これは法律が通りまして、政省令を今着々と公布したり諸準備をやっておりますので、実施については、私どもぜひともこれは予定どおり実施したい。  しかし、今先生のおっしゃるように、現場へ行くといろいろの諸問題があるということも報道その他を通じて私どもも一部承知をしております。これはそれなりの原因があれば、その応急措置なり対応措置をしなければ本格的な滑り出しはできないと思いますから、この点は私ども非常に神経を使って、ぜひともこれから円滑にスタートできるようにしたい。これは選挙の時期とは関係ございません。私どもは、決められた、そしてまた国民の要請の強い介護保険でございますから、これを着実に実施してまいりたい、こう思っております。  なお、社会保障改革は今本当に重要な局面に立たされておりまして、医療保険あるいは年金また福祉基本法の抜本改革等についてもお触れになられましたが、そのとおりでございます。  私ども感じでは、例えば年金一つとっても、なるべく早く国会に御提案申し上げて、そして十分な御審議をいただいた上で、本当にすばらしい、見通しのついた、安定した年金制度をつくり出したい、本当に心からこう願っておるのでありますが、残念ながら与党内の調整に手間取っております。それは、率直に言いますと基礎年金のあり方、全額税でやるかどうかというようなことをめぐって未調整になっておりますが、近くその調整もできると存じますから、これは膨大な法律になりますけれども、御提案を申し上げたいと思っております。  それから医療保険につきましても、これは医療保険福祉審議会におきまして、もう一年有余にわたりまして検討が重ねられ、そして我々は答申をいただいたわけでございますが、これは薬剤定価・給付基準額制、いわゆる日本型参照価格制度というものでございましたが、これについてもいろいろな角度からの見解がございますし、その調整にかなりいろいろ難航いたしまして、今日、参照価格制度は一応戻して、しかし、薬価差に基づく医療保険というのは不正常でございますから、薬価差のない医療保険制度をつくり上げるということで今議論をさせていただいておりまして、精力的にやっております。  それから、医療保険の中は、今の薬価の問題、それからまた老人保健のあり方の問題、さらには医療提供体制の問題等、四つくらいの柱で多岐にわたっておりますが、これらの解決が迫られておりまして、私どもとしては、なるべくこれら全体について早期に結論を得て、十二年から実施したいというように思っております。  薬価制度の例を申し上げましたが、この調整が手間取っていることは残念なことでありますが、なるべく早くまとめて、これも国会の御審議をお願いしたいと思います。  ただし、老人医療制度のあり方については、今審議会で鋭意二つの案について審議中でございますが、どちらの案を選ぶかどうか、今こうした景気の中で健保組合その他も大変老人部分の保険負担が大きくなっておるというような事情で赤字になっておるとも言われております。そういう中で、どういう制度が一番いいかということも私ども真剣に考えなければならない課題でございます。  このように、幾つかの重要な課題が山積しているというのが率直なところでございますけれども、我々としては、多くの意見を聞きながら合意形成に努めて、そして国会の場で法律という形でなるべく早く御議論をいただきたい、こう本当に願っておるところでございます。
  158. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 大臣の御説明は、私もいろいろな報道等で大体そういうふうに理解をしておるのでありますが、この委員会の舞台ではなかなか議論する状況まで行っていないけれども委員会以外ではしっかりやっておる、準備しておるんだ、こういうお答えかと思います。一日も早くこの委員会の舞台で、来年の四月という大きなときがあるわけでありますから、ぜひ御努力をお願いしたいと思います。  それをやらないと、何度も言いますけれども国民から見ると介護保険だけ先に持っていかれているじゃないか、本当にそれでいいのかということに……。後で何点か議論をいたしますけれども、介護保険だけでは解決しない問題が既に現場では出てきているわけでありますから、ぜひ政府としての格段のお取り組みをお願いしたいと思います。     〔鈴木(俊)委員長代理退席、委員長着席〕  時間がなくなりましたので、すぐ本題に入りたいと思います。  介護保険制度で現場が十月からの認定事務の開始、あるいは来年の四月から介護保険が施行されるわけでありますから、今大変な準備が進んでおります。いろいろなことが大分具体的な形で出てまいりまして、それだけにまた具体的な問題も出てきているわけであります。  準備が進められている中で、各都道府県、市町村の実態というのを伺ってみたいところでありますが、もう時間の関係で……。私の認識では、やはり小さな市町村は今でも悩んでおられる。しかし、具体的なことがわかってきて、腹を決めてこれはやらざるを得ないなというところまで徐々に行っているのかなとは思いますが、先般、NHKで朝、大臣もごらんになったと思いますが、なかなか簡単でないということも報道されておられまして、全体的には何割かの市町村が実施に当たって大変な苦労をされておられる、あるいは施行が始まるということを大変悩んでおられる、こういう実態も伺ったわけであります。  それで端的に、まず一つは保険料の問題。前回も一般質疑でしたでしょうか、大臣議論をいたしましたけれども、まず保険料の設定について、これもいろいろなことが言われておりますけれども、先日も私、ほかの委員会で資料をつくるのでインターネットをずっとのぞいておりましたら、介護保険の一号被保険者保険料、全国の数字が出ておりました。朝日新聞あたりが調査したものだろうと思います。相当差がある。一般的にはマスコミでは、二千五百円という国会での議論だったけれども、どうもそれじゃおさまりそうもないということから、随分格差がある、市町村によって大きいところでは五倍ぐらい保険料の格差があるというような報道があったりしております。私の地元でもずっと回ってみましたけれども、相当差がつきそうでございます。  これも大臣議論しましたけれども、一番問題なのはやはり療養型病床群だろうと私は思うのですね。ここはいろいろなことがわかってまいりました。現在のところ、各市町村では厚生省から示された参酌すべき標準、大臣がお示しになった参酌すべき標準等を一つの指標にして介護保険事業計画を今一生懸命つくっていると思うのです。その事業計画の中で一番現場が悩んでいるのは保険料でありまして、それは何かといいますと、まさに私は療養型病床群に尽きるだろうというふうに思っておるのです。  この療養型病床群の調整につきまして、市町村あるいは広域で実際に財政運営等もされているところもあるわけでありますから、これから七月ぐらいに向かっていろいろな調整があるのでありましょうけれども、これからその地域の保険料、それから療養型病床群をどうするのか、というようなことはどういう観点議論が現場で進んでいくのか、事務方でも結構でございます、その辺を簡単にまず御説明いただきたい。
  159. 近藤純五郎

    ○近藤(純)政府委員 御指摘のとおり、療養型病床群が多いところにつきましては保険料が高くなろうと思います。  しかし、療養型病床群の関係でございますけれども、要介護者が入る介護保険適用というだけではなくて、四十歳未満の方とか四十歳以上六十四歳未満の特定疾病以外の方が入るいわゆる医療保険の適用のものも残っているわけでございまして、すべて介護保険に移るわけではないわけでございます。  したがいまして、私どもは、先生も御指摘になりました参酌標準、こういったものでいろいろ市町村と都道府県で御議論を願わなきゃいかぬというふうに思っているわけでございますけれども、その上で、都道府県の介護保険の支援計画という形で定まるわけでございます。  その際に、重要なポイントということで考えておりますのは、介護保険適用と医療保険適用との適切な役割分担、こういうものを市町村、医療関係者に十分御理解をしていただく必要がある、こういうふうに思っております。それから、医療関係者が今後どちらに手を挙げるか、こういうことが適切に仕分けができますように、介護報酬と診療報酬、この二つの報酬のあり方を、審議会がまたがるわけでございますけれども、十分関係審議会で御議論していただく必要がある。こんなようなことが重要である、こういうふうに考えております。  基本は、市町村と県がこの問題について十分な御議論をいただかなきゃいかぬ、こういうふうに思っておりますし、私どももそれができるように持っていきたい、こういうふうに思っている次第でございます。
  160. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 これができるかどうかが問題でありまして、どうやって持っていかれるのか今から確認をしたいのであります。  現場は確かにこの部分を悩んでおります。何が悩みかというと、一つは、先ほど局長は役割分担、要するに介護保険の世界に持ってくるのか、通常の医療保険制度でやるのかという仕分けを、市町村は、あるいは広域でやるところは広域でもって、どうするかということを今から考えなければいかぬわけですね。厚生省は、国は八対七対五とか三・四という数字を一応示して、あとはしっかり現場でやってください、まさに市町村でできるようにと言われたけれども、これができぬから悩むわけであります。  何が難しいかというと、最初にまず確認したいのですけれども制度発足時、来年の四月が一番悩みなわけです、四月に向かって、今これから四月までをどう仕分けするかということだろうと私は思うのですけれども、介護報酬と診療報酬のどっちに行くか、その差はしっかりつくんだろうか、あるいはつかないのか。私は多分制度発足時はそんなに差はつけられないだろうと思うんですね。  役割分担があると局長おっしゃったけれども、その役割分担が診療報酬にあらわれるのかというのはどうでしょうか、四月前後を考えて。役割分担というものが、確かに私もあるだろうと思うんですよ。介護保険の世界と医療保険の世界、役割分担をどうするかというのを地方は考えなさい、考えるときだよと。診療報酬と介護報酬に差はつきますかね。私は多分つかないだろうと思うんです。評価に差がつかないのに、役割分担というのはなかなか現場では難しい話ですよということを申し上げておるんですが、どうでしょうか。
  161. 宮下創平

    宮下国務大臣 局長の言われる役割分担というのは、例えば療養型病床群につきまして、今までは療養型病床というのは医療病棟として位置づけられているものでございますが、これを介護保険の方に導入するわけですね。したがって、今委員のおっしゃるように、四月早々から直ちに医療から介護へということで段差をつけて急激にいろいろな諸条件を改変するのは、私も実際上非常に無理ではないかと思うんですね。  したがって、役割分担は当然しなくちゃなりませんが、実際の報酬その他の面では、介護報酬というのは別個に夏ごろをめどに概略を示して、予算できちっとセットしてお示ししますけれども、例えば、その報酬の多寡を比較するというよりも、療養型病床群の病院としてのあり方と介護施設としてのあり方、これはよく検討しなければならぬと思っております。  今は、医者の配置あるいは看護婦さんの配置も、病院として療養型病床群が残る部分とそう大差のないものを前提にしておりますので、将来的には、介護施設である療養型病床群と医療施設である病院の病床群とはおのずから条件その他が変わってしかるべきかなと私個人は思います。  そんなこともございますが、当面はこういうものを前提といたしましてスタートいたしますので、どうしても保険者間で保険料の多寡が生ずる一つの有力な原因になっております。このことは否定できませんけれども、保険でございますから、やはり負担給付の均衡があらゆる地域でとられることが望ましいことでありますが、現実には保険者を市町村にしておりますので、それぞれの市町村で特性がございますから、保険料も二千円を割るところもあると思われます。それは、特老あるいは療養型病床群への入所者が少ない、ほとんどないような市町村はそういうことになる可能性があります。それから、そういうところに住民が非常に多く入っておられる場合はかなり高く出るということも否めない事実でございますので、私どもは、今市町村が実態調査をやって、そして介護保険料もある程度めどをつけ、介護報酬も算定を示しますので、全体として実施計画をきちっとつけてもらって、そしていきたいと思っていますが、これですべてうまくいくとは思っておりません。  いろいろの諸問題が残されていることも事実でありますから、そういった問題はスタートまでに誠心誠意取り組んで、現場の声を聞きながら対応していくということでやってまいりたいと思っています。
  162. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 大臣も事の難しさは大分御理解をいただいているので、そこは大分安心をするわけであります。  もう一点、今、負担給付の話がありましたけれども、現場で市町村や地域が悩むのは、保険料にどうはね返るかということであります。先ほど報酬の部分議論しましたけれども保険料にどのぐらい影響を与えるのか。  これは、昨年の十月、皆さん方が市町村にお示しになった資料あたりを見ると、大体平均的な人口三万ぐらいの市町村をベースにいろいろなモデルをおつくりになっていますけれども、私が口を酸っぱく何回も療養型病床群の話をするのは、療養型病床群ですから全国平均は八十床、百床以下だろうと思いますが、人口三万ぐらいでこの療養型病床群がどのぐらい保険料に影響を与えるのか。委員の皆さんにもぜひ理解をしていただきたいので、参考になる数字を何度かおつくりになったことがあるようにも聞いておりますから、お示しをいただきたいと思います。
  163. 近藤純五郎

    ○近藤(純)政府委員 いろいろなケースによって違いますので、ずばりのものはないんですが、私どもでかつて試算いたしました五、六万ぐらいの都市のものでございますけれども、一つは施設入所者の割合でございますとか施設入所者の三施設の割合が全国平均的なもので計算いたしますと、月額が二千八百円でございます。  これに対しまして、療養型病床群に入っている方のみを全国平均の倍にする、こういう形で計算いたしますと、この市町村の額が月額三千四百円ということでございますので、ざっと二割程度の増加になるわけでございます。
  164. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 今、人口五、六万で、療養型病床群の整備率が、三施設が大体全国平均として、療養型病床群だけが倍だとすると、二千八百円に対し三千四百円、二〇%ぐらい、六百円ぐらい高くなるという話でありまして、この二〇パーというのは大きいだろう。  私が今問題にしているのは、療養型病床群にしても特養にしてもそうですけれども、整備率が全国より高いところが今悩んでいるわけであります。介護保険というのはおもしろい話でありまして、一生懸命今までやってきたところ、施設整備にしても何にしても格段に取り組んできたところほど実は来年の四月一日が大変なわけであります。当然ながら、仕組みからして保険料にはね返るわけでありますから、それだけ保険料は高くなるわけでありまして、今の六百円という数字、二〇パーという数字も大きな要素だろう。  それを、隣の市町村とうちの市町村との差を、本当に首長が自分の意思として、それぞれの首長さんが自分のところの住民に説明ができるのかというと……。しかも、市町村長は説明をする中で、今の療養型病床群——僕が今問題にしているのは療養型病床群が多いところですよ、少ないところは問題ありませんけれども。多いところで、そのうち介護保険の世界にどのぐらい持ってくるのか、あるいは医療保険でどのぐらいやるのか、こういう整理をするとなると、しかも、この部分で六百円ぐらいすぐ差が出てくるという状況になってくると、今現場の市町村長は大変悩んでいます、どうしようということが大きな問題としてあると思うのですね。  介護保険は、さっき言いましたように、介護保険の仕組みからしますと、これは現場が悩んでもらわなきゃしようがない。局長がさっきあとは現場でというお話をされたけれども、まさにある意味では冷たい話でありまして、枠はつくった、あとは現場で、地域で考えてもらわなきゃいかぬ、いいですよ、一生懸命なところは保険料は高いですよという、本当に現場の首長さんからするとつらい選択を来年の四月までにしなければならぬ。これは地方の議会だって同じだと思います。そういう状況にあるわけであります。  そこで大臣、この問題だけやっておれませんが、保険料の差については、これが介護保険の仕組みだからしようがない、それでやってください、現場で決めてください、国は調整はしません、どんなに差があってもこれがこの制度の根幹だから国は何もできませんということなのか、余りに大きな差があった場合は、その差についてやはり国として何らかの方策を考えなきゃいかぬというお立場なのか、大臣のお考えをお聞かせいただきたい。
  165. 宮下創平

    宮下国務大臣 保険料の算定をするには、今お話のございますように在宅サービスと施設サービスに分けて、施設サービスのウエートが非常に多いわけでございますので、どれだけそういうところにその市町村の要介護者がおられるかということによって影響を受けてまいります。  したがって、ある程度保険料の差は当然といえば当然なことでございますけれども、今報道されているように、一番低いところは千円台で、一番高いところが八千円台とか、そういうふうになると五倍の格差はあるじゃないかというような式のものはよく念査してみませんと、その前提となっておる条件が私どもの想定しているようなもので構成されているかどうかという点もございますので、これから実態調査に基づいた実施計画を市町村がつくられるわけでございますので、その提出の状況を見て最終的に判断したいと思います。  ただ、余り格差が開くことは保険制度としては好ましくないという一般的な考え方がございます。しかし、先ほどお話のございますように、施設サービスの方の水準がかなり高い、つまりその市町村で施設サービスに入っておられる方が非常に多くて、介護の認定を受けるということになると、どうしても勢い保険料にはね返ってくるという問題がございます。  この点は保険者を市町村単位にしたためにそういうことになる、逆に言うと、それはまた市町村の自主性で運営していただくということにもなりますので、これは一概に全国一本の保険がよかったかどうかは今議論する立場にございませんが、そういう問題も背後にあるということは否定できませんけれども、今は保険者を市町村にいたしておりますので、可能な限り客観的な基準なりをこちらで示して、それに基づく算定をやっていただいて、その結果によってまた判断をしていきたいというように思っております。
  166. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 大臣の今の御答弁は理解できます、今の制度の話でありますから。  ただ、大臣の今の御答弁の中で、保険である以上余りの格差は一般論として好ましくないという姿勢は言われましたけれども大臣、来年の四月からなんです。きょうの大臣のこの答弁は、市町村はみんな関心を持って聞いていますよ。みんな悩んでいるわけですから。来年の四月ですからね。再来年の四月でもない。まだ介護保険の議論をしているわけじゃない。現場は今から積み上げていよいよスタートというところへ来ているときに、確かに五倍という報道もあるけれども、それは計算の前提条件あたりをよく点検してみなきゃいかぬというのもわかります、だけれども、現実の話として、来年の四月ですよ、半年ぐらいのうちに始まるわけでありますから。  現実にそれだけ差がついた場合、一般論からもう少し踏み込んで私はお聞きしたいんですけれども、現実の姿として来年の四月に例えば五倍なんというものがあった場合は、一般論はわかりましたけれども大臣としてはどういうお考えですか。これから検討されていかれますか。
  167. 宮下創平

    宮下国務大臣 今は、各市町村がそれぞれの条件に従って試算をしておられて、それをまたマスコミ等が取材をして報道されていると存じます。したがって、繰り返すようでございますが、その条件設定を私どもきちっと把握をいたしまして、その上下格差がどの程度であるのか、これはよく実態を見詰めていきたいと思っております。  その上で、確かに、合理性がありながらえらく差があるということになりますと、なかなか地域の住民の方々にとっては隣との比較感において満足できないというような状況もあるいは生まれる可能性もあるかもしれません。そういうときはどういう対応をすべきかということも当然考えておかなくてはなりませんけれども、今の時点でどういう対応をするということを申し上げる立場にもございません。  市町村にあっては適切な算定をやっていただくということを強く希望するということでございまして、今までも御努力いただいておりますが、そういう方向で御努力を願いたい、こう思っております。
  168. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 まだほかの点も議論したいのでこれはもう言いませんけれども大臣、間違いなく差はつきます。間違いなくつきます。どんなに点検しても、つくものはつくと思います。そのときの対応策はぜひ検討したいし、我々もそこは大変に関心を持っていきたい。  ただ、これを調整し過ぎると制度の根幹が変わってくるという悩ましい話がある、その悩ましい世界を大臣は抱えられているというこの御認識をぜひ持っていただきたいと思います。  それで、時間もありませんので、もう一点だけ。  きのうの新聞でしたか、新聞記事を読んでおって私も大変悲しくなりました。介護保険が今議論されている、おじいちゃんだったかな、今施設に入っておられるが、認定を受けるとどうも認定漏れになるかもしれない、いろいろな報道を読むと、二割、三割は認定漏れになる可能性がある。それは金の切れ目が縁の切れ目という話をこの前の委員会でしましたけれども、特養、老健施設入所者の暫定的な取り扱いにおける報酬設定、これは引き続き検討されていると思いますが、ここも制度導入時では一番関心のあるところでありまして、そこの検討状況を手短に、簡単に御報告いただきたいと思います。
  169. 近藤純五郎

    ○近藤(純)政府委員 これは、この間も先生にお答えしましたように、まだ検討中でございまして、全体として特別養護老人ホームの運営に支障がないような形で決めたい、こういうことで四月から審議を再開いたしておりますので、いましばらくお時間をいただきたい、こういうふうに考えております。
  170. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 いましばらくしっかり関心を持って見ていきたいと思います。ただ、これも大きな国民関心事だということをぜひ御理解いただきたい。  それから、認定基準でありますが、認定基準については前回も御指摘をし、最後の最後までいいものを目指して頑張ろう、こういう御回答をいただきました。認定基準については、制度の信頼を国民に与えられるかどうかという極めて大事な部分だと思うんですが、前回、私ども、相当現場を回って、実態にそぐわない、一次判定のコンピューターがブラックホールだということを申し上げました。それで、随分改善をしていただいて、麻痺、拘縮に関する項目あるいは移動等に関する項目などなどの七つの中間評価項目を入れていただいた。これは説明する上では極めて有効だと私は思います。  これは、聞きますと、どうも検証作業は全国で十カ所ぐらいでやって、六割ぐらいこれだったらいいんじゃないかという声があったという話も聞いておるのでありますが、現場の声を聞きますと、この新しい認定方法についてはまだ十分検証されていない、こういう声もあります。  私は、これはほぼ完成版かということをまずお聞きしたい。それから、制度実施に向かって、あとどういう作業をされるのか、これを手短にお答えいただきたいと思います。
  171. 近藤純五郎

    ○近藤(純)政府委員 省令にもなりましたので一応の完成版と考えていますが、これで全部が終了したというわけではございませんので、さらに検証作業をしたい、こういうふうに思っております。  これは、実際に施行された後も、モデルとなります一分間スタディーの人をふやすとか、まだいろいろな改良をする余地というのはあるわけでございまして、私ども、とりあえず十月からの認定作業につきましてはこれを使わせていただきますけれども、さらに検証、改善を引き続き行う必要がある、こういうふうに考えております。
  172. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 十月一日から認定が始まるわけであります。ただいま五月でありまして、さらに検証という話をされました。  私は、できる限り頑張っていただきたい、各県一カ所程度の検証ではなくて、できるだけ現場とよく連携をとっていただいてお取り組みをいただきたい、さらには、たとえ制度が始まっても、この部分は、端的に言いますと走りながらでも考えるという姿勢が必要だろうというふうに思っております。現場のケアマネージャーさんあたりの意見を聞きますと、さまざまな声があるわけであります。このモデルになっているのが施設入所者をベースに検討されているようでありまして、実態にそぐわないという声も結構聞くわけでありまして、なお引き続き検討をぜひお願いをしたいと思います。  私は、さらにきょうは家族介護の問題あるいはNPO法人の問題、あるいは総合的なサービスの実施体制等について議論したいのでありますが、そろそろ持ち時間がなくなってきました。  最後に一点だけ。我が党が既に二月十六日に緊急提言をしておりますけれども、私どもは、将来の介護保険、将来の介護サービス等のために、東洋医術、鍼灸マッサージとか柔道整復師さんとか、そうした方々もぜひ活用してもらいたいという要請をしまして、四月の資料では、いろいろなデイサービス等につきましては機能訓練指導員等の資格を有する者も活用するという方向を打ち出されているようでありまして、我が党の主張を一定程度理解いただいているということは評価したいと思うのであります。  さらに東京都では、東京都が一番介護保険で悩んでいるようであります、どうも私のところに入ってくる情報では。東京都では、特養にマッサージ師さんたちを配置して、その分についてはQOLの部分等も含めて加配をしている、こんな状況も伺っているところでありまして、それが介護保険の中でどうなるかということはなかなか悩ましい話に今なっているわけであります。  私は、こうしたことは、今後とも介護保険の仕組みをまだ検討しなければいかぬ部分がいっぱいあるわけでありますから、鍼灸マッサージ、柔道整復師さんを含めて、東洋医術の活用について、大臣、ぜひともこれからも御念頭に置いていただきたいと思うのでありますが、いかがでありましょうか。
  173. 宮下創平

    宮下国務大臣 あんまマッサージ指圧師や柔道整復師の方々福祉分野における役割というのは非常に大きいと思います。今、東京都の例も示されましたが、私どもといたしましても、特老におきましては、従前から機能訓練指導員ということで配置を義務づけて人員配置をやっておりますが、今回、通所介護、デイサービスの場合でも、機能訓練を行う能力のある機能訓練指導員の配置を義務づけておりますが、この中には、理学療法士あるいは作業療法士等と並んで、あんまマッサージ指圧師や柔道整復師を含める方向で検討中でございます。  また、介護支援専門員の対象職種としてもこれらの職種の方々を位置づけることにいたしておりますが、ただ、医師の指示に基づく医療行為である場合は医療の分野として位置づけするということは、これは当然なことだと存じております。
  174. 桝屋敬悟

    ○桝屋委員 これで終わりますけれども、今の政府の対応では、国民の声は、介護保険だけ先食いされるという評価を受けるのではないかということを私は最後に申し上げまして、格段のその他の分野の検討をお願いいたしまして、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  175. 木村義雄

  176. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 日本共産党の瀬古由起子でございます。  引き続きまして、介護保険問題について質問させていただきます。  きょう、私、日銀の調査月報四月号を持ってまいりました。この中に、「九〇年代入り後も日本の家計貯蓄率はなぜ高いのか?」こういう論文が出ております。総務庁の家計調査などのデータを分析したこの論文は、欧米に比べて日本の高齢者層の貯蓄率が高いのは、高齢化が急進展する中で、医療、介護費用などの増加に対する不安が大変大きい、このように指摘をしているわけです。そして、介護制度の充実などを通じ、高齢者がお金を安心して使える環境を整備するよう求めております。  日本の高齢者の七六%は、市町村民税非課税の低所得者になっております。毎日のつめに火をともすような生活の中で貯金をせざるを得ないという大変深刻な状態になっています。また、今日の不況が消費不況であり、介護や年金医療国民の老後に対する不安、こういうものがあるわけですけれども、これを取り除くことが今最も確かな景気回復の道ではないか、このように思っています。その立場から質問をいたします。  介護保険制度についての国民の一番の不安は、何といっても保険料が一体幾らになるかという問題ですね。マスコミの自治体の調査でも、六十五歳の高齢者が支払う保険料は、朝日新聞の三月二十八日付で、全国市町村で最低が千二百五十円、最高が七千三百二十円、格差は最大で五倍以上、このように報じております。それから、日経の三月二十八日付ですけれども、ここでも平均三千円を超して、厚生省の試算額二千五百円より二割高くということが報道されているわけです。  そこで伺いたいと思うわけですけれども大臣は、一月二十七日の衆議院の予算委員会で我が党の児玉健次議員の質問に答えて、「余りこれが高度または高額になりますとこの保険制度が成り立たなくなる可能性もあります」、このように述べておられるんですね。また大臣は、四月二十六日付の朝日新聞で、「私たちも実態を調べながら、あまり極端に保険料は上がらないようにしたい。しかし、五倍の格差は開きすぎだ。」このように述べておられます。  高い保険料高齢者に重い負担にならないようにするため一体どうしようとなさっているのか、具体的にお考えがあると思うんですけれども、どのように検討されているのか、また、先ほども出ましたけれども、地域の格差是正の問題についても、まだこれからだというお話もありましたが、例えばその対策の一つとして、国としても財政的な措置も含めてお考えなのかどうか、その点を伺いたいと思います。
  177. 宮下創平

    宮下国務大臣 今委員の方からいろいろマスコミにおける報道ぶりについて御指摘がございました。私どもは、何よりも、先ほども議論がございましたが、保険者である各市町村がどのような条件のもとで設定しているかということをもう少し精査する必要があると存じますので、そういう前提でまず念査することが必要だと思います。  その上で、私が予算委員会で申し上げたのは、保険制度でございますから、余り極端に保険料の差があったり給付水準の差があるということは保険制度としていかがなものかという気持ちを表明したものでございます。  一方、私が朝日新聞のインタビューを受けたときに申し上げたのは、余りそういう格差があることは好ましいわけではございませんので、その平準化を何とかこれから図っていかなくちゃならないと思うんですね。そして、平準化するに当たっては、無理のない形で持っていく必要があるし、特に低所得階層に対して保険料の軽減措置その他もきちっとやらなくちゃいけないと思います。  保険料の基準値ができますと、それを五段階で、上二段階、下二段階で条例で定めることができるように政令で定めておりますから、そうしたものをフルに活用していただいて、地域住民が、なるほど、あの方だったら保険料を安くまけてやっても仕方ないなというような合理性のあるものをおつくりいただいて、しかし、資力のある程度ある方はある程度負担をしていただく、これもやむを得ないかなと地域住民が思われるような形で収れんされていくことを望んでおるわけでございます。  なお、国として何か対応措置があるかどうかという点でございますが、ただいまは四月一日から適正な滑り出しができるように我々としては精いっぱい考えているわけでございまして、今具体策が手持ちにあるわけではございませんが、とにかく円滑なスタートを切るためにあらゆる努力をしていきたい、こう思っております。
  178. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 先ほど療養型病床群の話が出てまいりましたけれども、いろいろ自治体が考えてみても、それなりの努力をされて介護整備をされてきた経過もあるわけですね。それぞれの市町村によっては、どうしようもできないという問題も当然大臣はお認めいただけると思うんです。考えた上で、やはりこれは余りにも格差がひど過ぎる、余りにも保険料が高過ぎるという場合は、今厚生省が出されている保険料の減免以外の新たな財政的な措置も含めて、当然いろいろなことを考えられているのじゃないかと思うのですけれども、いかがでしょう。
  179. 宮下創平

    宮下国務大臣 システムの骨格としては、申し上げているとおりでございますし、お示しをしたとおりでございます。ただ、現実の答えがどのようなものになってくるかという点は、私どもも注目をしております。  そうした上で、来年の四月一日、もうだんだん差し迫ってまいってきておりますので、その対応が本当にいいかどうか。今委員の御指摘は、従来の福祉政策でやっている上乗せあるいは横出しの足切り、そういうものも頭に描かれておられるようにもお聞きいたしましたが、そういうことを含めて私どもとしては円滑な滑り出しができるように対応措置を検討してまいりたいと思っております。
  180. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 国としての財政的な措置も含めてお考えかという点はいいですか。
  181. 宮下創平

    宮下国務大臣 最終的にそういう必要性があれば、これは来年度の予算になりますけれども、そういう措置を考えるということは当然なことではないかと思います。そういう実態であれば。
  182. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 今回の保険料負担によって生活のめどが立たなくなる年金生活者、それから低所得者の不安というのは大変深刻なものがあると思うのですね。老齢年金というのは本来高齢者の生活に充てるもので、年金物価スライドそのものも可処分所得が基準になっております。もともと介護保険料は想定されていないわけですね、そこから引くなんてことは考えられていないわけです。  せめて、経済的に困難を抱える高齢者、例えば低額の年金者、生活保護基準以下の場合、それから国保の減免基準以下の層、こういう人たちからは保険料を取るべきでないと私は思うわけですけれども、その点での減免措置の検討はいかがでしょうか。
  183. 近藤純五郎

    ○近藤(純)政府委員 六十五歳以上の一号被保険者保険料につきましては、段階別の定額保険料という形で制度的にも低所得者に配慮した形になっているわけでございますし、さらに、災害等で保険料を減免した場合には調整交付金で一定の財政支援を行う、こういうことでございます。  御指摘の低年金とか生活保護水準の方でございますけれども年金受給額だけで負担能力を判断するというのはできないわけでございますし、生活保護の関係では、資産とか資産収入というのもあるわけでございまして、これの正確な把握というのはなかなか市町村では難しいわけでございますし、また国民健康保険の関係でも、これは、国民健康保険とは保険料の水準とか保険料の設定方法そのものも違うわけでございますので、これと同じように考えるのはいかがなものか、こういうふうに今考えている次第でございます。
  184. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 この問題では、さっき私が述べましたが、予算委員会児玉議員の質問にも答えて、一定の配慮といいますか、それなりの検討をなさるという御判断もしていただいていると思うので、高齢者の、特に低所得層の皆さんについての配慮は、残された時間はありませんけれども、ぜひ御判断いただきたいと思うのです。  でなければ、今、月一万五千円の年金生活者からも今度保険料を取るということになりますでしょう。実際に高齢者の方にお会いしますと、これでどうやって暮らしていけばいいのかと、私なんか泣かれてしまうわけですよね。こういう実態があるわけです。  それで、参議院の本会議では決議が行われております。この決議の中に、「全ての国民が適切に介護サービスを利用することができるよう、低所得者に対する必要な措置を講ずること。」このようにはっきりとうたっているわけですね。介護保険制度が可決したときにこういう決議が行われているわけです。「必要な措置を講ずる」というその点でやはり一定の検討をせざるを得ないと思うのですけれども大臣、いかがでしょうか。
  185. 宮下創平

    宮下国務大臣 今局長が答弁しましたように、この保険料の段階別格差、これは住民税の非課税者を中心にいたしまして、それを法令上は、政令上五割増あるいは五割減ということまでは条例で定めることができるようになっておりますし、さらに、その五割を縮減していくことは地方自治体の条例によって可能な仕組みにしてございますので、一義的には、その地域住民のそういった状況を一番よく知っておられる保険者におきまして、条例等によってそういう措置がとられ、実質的な公平措置がとられることが望ましいと考えておりまして、そのような制度にはなっておることを申し添えておきます。
  186. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 それぞれ市町村が減免措置を講じる場合に、私は国の財政的な援助というのは決定的だと思うのですね。  今までの福祉施策から今回介護保険制度が導入されて、国民は二兆円以上の保険料の新たな負担が生まれるわけです。ところが、国は三千七百億円の減額になってしまうわけですね。これは一九九五年度価格ですから四年前、今はもっとふえていますね。ですから、保険料の減免措置を自治体がやった場合には、国民からはしっかり取って、国は減らしてもいいなんということはないわけで、国はこういう財源を使い、国の減額分やそれを上積みした形で援助するということは当然考えられるんじゃないでしょうか。その点いかがでしょう、大臣
  187. 宮下創平

    宮下国務大臣 財政というのは総体として考えてみないといけないわけでございまして、その局面だけで収支が議論されたことだと存じます。当時は三千七百億国費の節約になるというような議論がなされた結果であろうかと存じますが、そのとき果たして本当にそれだけの計算基礎があったのかどうか、これは検証してみないとよくわかりませんが、いずれにしても、多少そういうことはあり得ることだと存じます。  しかし、それを全部使ってイーブンにしなければだめだということもないわけでありまして、財政運営、政策運営というのはそういうものでございますから、それらを踏まえながらもそういう事実もあるということも頭に置きながら、最もいい滑り出しをやるためにはどういうことが可能かというような点を含めて、私ども、頭の隅に置いて検討はしていかなければいかぬかなというように現在では申し上げるしかございません。
  188. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 一月二十七日の予算委員会で、小渕首相自身も、市町村への財政支援について政府として最大限の努力をしなくてはならない、このように答弁しておられます。ぜひ厚生省としても最大限の努力をしていただきたいと思います。  大きい二点目、基盤整備の問題に入ります。  介護保険制度の前提は、その基盤となる施設や人員の確保が不可欠でございます。もともと介護保険制度を前提としないで策定された新ゴールドプランの不十分な目標達成でさえ困難だと答える自治体は、七割にも達しております。  ことしの二月に発表されました町村会の調査を見ますと、介護保険制度の運営体制について、整えられると答えた自治体は二・四%にすぎないのですね。また、介護認定に見合った介護サービスを確保できないと答えた自治体が二〇・七%、現時点ではわからないと答えた自治体が四六・五%にも上っている。自治体でもこういう状態ですから、住民の不安というのは、私は、自治体がどうしようと言っている状態ですからもっと不安だと思うのですね。  私も、この間、大体百カ所を超える地域で介護のシンポジウムだとか懇談会をやってきましたけれども、本当にその中で切実な声が次々と生まれています。実際には、自治体関係者からは整備ができない場合は実施を延期してほしいという声だって出ているというのは御存じのことだと思うのです。  先ほど私が述べました参議院の本会議の決議の中でも、「「保険あって介護なし」とならないよう、介護保険法施行までに介護サービスに関する人材、施設等の基盤整備を着実に進めるとともに、地域間格差の解消に努めること。」こういうふうに決議にもなっているわけです。そういう意味では、保険あって介護なしという事態にならないように国がきちんと責任を持つべきだと思うのです。  そこで、きょうは自治省に来ていただいていると思うのですけれども、自治省に伺いたいと思います。  基盤整備の目標達成さえ見通しのつかない自治体、それから、計画目標は達成しても、果たしてこれが住民の要求にこたえられるだろうかという不安を持っている自治体がたくさんあるわけですけれども、この自治体の不安に自治省は国がどうこたえるべきだとお考えでしょうか、お伺いします。
  189. 二橋正弘

    ○二橋政府委員 今、全国の市町村で介護保険の準備が本格化しておりまして、その過程でさまざまな意見、要望が出されております。  私ども自治省といたしましては、市町村の準備に対しまして、平成十年度、十一年度の地方財政計画におきまして基盤整備その他を含めていろいろな財政措置を講じてきております。  介護サービス基盤の整備の面で申しますと、ゴールドプランの着実な推進を図るための国庫補助金の所要額を確保していただいて、地方負担に対して地方債なり地方交付税によって財源措置を行うということをいたしてきております。それから、国庫補助金を伴わずに単独事業としても行わなくてはいけないというふうな事態も考えられますので、こういうものに対する緊急的な取り組みを新たにできるような仕組みというものも設けておるところでございます。  それから人員の面でございますが、平成十年度で全国ベースで約千百人、平成十一年度には約八千人の職員の計画的な増員を地方財政計画に計上して財源確保をいたしておるところでございます。  市町村からは、介護保険制度の円滑な施行に関しまして、このほかにさまざまな意見や要望が出されておりまして、自治省といたしましても、このような市町村の意見を十分に踏まえて施行準備を進めていく必要があると考えております。  今後とも、必要な対策につきまして、厚生省ともよく相談しながら、市町村の声を取り上げて適切に対処してまいりたいというふうに考えております。
  190. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 一番市町村が願っているもの、何を厚生省と解決しなければならないというふうに自治省はお思いでしょうか。
  191. 二橋正弘

    ○二橋政府委員 これはよく指摘されておるところでございますが、施設整備の面はもちろんでございますが、先ほど来お話に出ておりますような保険料の水準に格差が出てくるのではないかとかいったような事柄、あるいはそのほかにも、サービス水準についての格差をどういうふうに埋めていったらいいのだろうか、市町村単独でできない場合の広域化をどうやって進めていったらいいのだろうかといったようなことについて、市町村の方からさまざまな意見が出されたというふうに承知いたしておりまして、そういう点を含めて厚生省の方とよく相談をしていきたいというふうに考えております。
  192. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 では、厚生省に聞きますけれども、今お話がありましたように、基盤整備を進めれば進めるほど保険料にはね返るという問題は、市町村にとっては本当に苦しいところだと思うのですよ。そういう点では、保険料が上がるからちょっと基盤整備はやめるかなんということがあってはならないと思うのです。必要な基盤整備は当然整えなければならない。その点での国の援助といいますか、自治体の援助というのは大変大事だと思うので、ぜひ自治省ともよく相談していただきたいと思うのです。  その中で、特に自治体が今財政危機になっているという問題があります。確かに、お金の使い道というのは自治体ももっと考えなければいかぬという問題はありますけれども、しかし、介護制度は来年の四月からだという場合には、もう待ったなしなのですね。そういう場合に、例えば基盤整備をやるという場合に、今までの延長線上ではなかなか自治体が踏み切れない問題がある。  そうしますと、例えば、国が今までの補助率を一定引き上げるとか、それから土地の確保というのはなかなかできないという問題なども、それについての一定の緊急的な支援というのも、それ以外にもいろいろお考えだと思うのですけれども考える必要があるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  193. 近藤純五郎

    ○近藤(純)政府委員 補助率の関係でございますけれども、例えば特別養護老人ホームでございますと、国が二分の一を補助いたしまして、都道府県が四分の一を補助する、こんなような形で、あと地方交付税の措置が講じられているわけでございまして、この取り扱いは、国と地方公共団体との費用分担という形で、はっきり言って横並びみたいなものもございますので、これを変更するというのはなかなか難しいかな、こういうふうに思うわけでございます。  私どもとしましては、市町村が必要な財源は、これは補助率とかいう制限はございますけれども、確実に確保していく。補正等の機会があれば、昨年度も十分の十の補助というのも幾つかさせていただきましたし、なかなか恒常的には難しいわけでございますけれども、地方財政が非常に苦しいというのは私どももよく存じておりますので、そういう機会をとらえて市町村の負担が少なくなるように私どもとしても努力してまいりたい、こういうふうに考えております。
  194. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 次に、過疎地や離島を抱える自治体の問題について質問をいたします。  ここは、それぞれ自治体が独自でやろうにも、もともと財政基盤が弱いという問題があります。昨年、沖縄の石垣市を厚生委員会で視察させていただいて、そこの市長さんからも、民間企業も導入する見通しもないし、自前でいろいろつくるにしても、ヘルパーさんの要請だって飛行機で行かなければいかぬという大変な窮状を訴えられたのは、近藤局長も御一緒だったのでよく御存じだと思うのです。  そのときに要請されたのは、認定されても、どうしてもサービスが確保できない場合は家族ヘルパー制度もぜひ認めてもらえないか、そういう声が出ていたと思うのです。それなりに一定の前向きな御回答もその場でしていただいたような気がするのですが、その後、どのような検討をされているでしょう。
  195. 近藤純五郎

    ○近藤(純)政府委員 審議会におきましてまだ審議が続いているわけでございますが、私ども事務当局からは、ホームヘルパーとしての資格を持った人がホームヘルプサービス事業者の従業者という形で自分の同居家族に対しまして訪問介護を行った場合には介護保険給付の対象にしたらどうか、こういうふうな提案をいたしているわけでございます。  特に、先生指摘のように、過疎地の方はこういう要請が非常に強いということで、私ども、こういう提案を今のところさせていただいているわけでございますけれども、介護を含めてまだ審議が続行中ということでございます。  この問題につきましては、事実上の現金給付ではないのかとか、それから一般の家族介護と区分できるのかとか、いろいろな問題がまだ指摘されているわけでございまして、ルールを確立した上でこういったものを認めたらどうかということで提案させていただいておりますので、何とかこれが実現できるように努力してまいりたい、こういうふうに考えております。
  196. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 過疎地域や離島などで、もうどうしようもないというかやむを得ない事情で、県が単独でそういうサービス基盤整備事業などという予算をつけて過疎地で何らかの対応ができるような制度をつくっている。私が伺ったのは三重県なんですけれども、こういうところもございます。過疎地、離島、それから中山間地でそういう独自事業を展開しようとしているところもあります。  そういうところは、ぜひ国としても県がそういう過疎地対策で基盤整備をやるところについては援助してもらいたいという要望が出ているのですけれども、その点いかがでしょうか。
  197. 近藤純五郎

    ○近藤(純)政府委員 お気持ちはよくわかるわけでございますし、県の方にもいろいろな御苦労を願っているわけでございますけれども、県が単独で都道府県の実情に応じまして補助するものについてすぐ国が補助するというのは、なかなか難しいかなというふうに思っているわけでございます。  私どもも、平成九年度から、過疎地域におきまして民間事業の参入ができないだろうかという試行的なモデル事業を行ったわけでございまして、こういった問題点を把握する事業も行っているわけでございまして、やはりこれからも過疎地域に目を向けた助成制度考える必要がある、こういうふうに考えているわけでございます。
  198. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 介護報酬の調整という問題で厚生大臣が発言されているのですけれども、例えば地域によって在宅介護をやる場合にヘルパーさんが移動する時間がすごくかかるという場合がありますね。過疎地域なんかはそうですけれども。それから豪雪地帯なんかでも、大雪のところを出かけるという場合も。気象条件、地理的な条件によって同じ介護報酬でも随分違ってくると思うのです。その点での調整ということを言われたわけですけれども、私は、やはり一定の上乗せ的な調整が必要だと思うのです。  しかし同時に、上乗せした分は全部住民の保険料負担にかかるというふうになると、ますます地域の格差が開くという問題があるので、その点で、国がその調整した分を上乗せする形で何らかそういう地域的なもの、気象的なものについて検討できないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  199. 近藤純五郎

    ○近藤(純)政府委員 加算の関係でございますけれども、移動に伴います経費というのは一般的には包括した形で決めたいというふうに思っておりますが、先ほどお話がございましたように、過疎地とか豪雪地帯、こういったところにつきましては移動時間が非常にかかるということでございますので、これについては加算の方向で検討しているわけでございますが、具体的な地域とか要件につきましてはまだこれから検討する必要があるわけでございます。  この加算した分を全部別の公費で持つというのはシステムとしては非常に難しいというふうに思っているわけでございまして、今回の介護報酬につきましては地域差をつけるわけでございまして、逆にこうしたところは本体の部分の経費は安くなる、こういうふうなことも考えられるわけでございまして、この加算を別途の財源で補てんするというのは、検討はしてみますけれども、なかなか難しいな、こういうふうに思っております。
  200. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 ぜひ御検討いただきたいと思うのですね。その度合いによっても、本当に困難なところがありますから、その辺ぜひ。御検討いただくというふうに聞きましたので、大臣、いかがですか。その御決意を。
  201. 宮下創平

    宮下国務大臣 今局長が言われたとおりでございまして、報酬自体については加算をしようということが関係審議会の検討の御意向でもございますが、ただ、その増加分を国の財政措置でやるかどうかという点については、今の制度はそういう建前になっておりません。  全体として、過疎地と離島等の振興策の一環として考えられることがあれば検討していきたい、こう思っております。
  202. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 ぜひ新たな検討をお願いしたいというふうに思います。  次に、介護手当について伺います。  介護保険の導入を契機に、自治体が独自で寝たきり、痴呆のお年寄りなどに支給している介護手当を見直すという動きが全国的に出てきております。これは、今、介護する家族にとっては大変大きな不安になっています。あるときには寝たきり手当、老人福祉手当、おむつ手当というか、こういう形で出されているわけですね。  それで、今度の介護保険では現金給付というのはできないということになったわけですけれども、実際には介護保険による現金支給をしてもらいたいという声は根強くございます。実際に在宅で介護されている方の状況といいますのは、現在はまだまだ在宅のサービスが整っていない。そういう事態ですから、寝たきりのお年寄りを、ある意味では最重度の方を介護されている御家庭の御苦労というのは大変なものがあると思うのです。そういうものについて一定の、この介護手当の問題というのは住民の切実な要求として当然だと私は思うのです。それで、せめてというか、将来それはぜひ検討していただきたい。また、地方自治体が介護保険の導入を契機に全部打ち切るという方向は、全く住民の願いから逆行しているものだと思うのです。  例えばおむつ代なんかは、今度介護保険で施設ではこのおむつ代は認められるわけです。ところが、在宅の場合は、本当に苦労している方はおむつ代は自分で払わなければいかぬのですね。私、実際行ってみたら、おむつを三つぐらいに切って三回に分けて使っているとか、紙おむつをもう一回洗って使っているとか、本当に胸が詰まる思いを幾つかいたしました。  せめて、介護手当という名前になるのか、おむつ代という形になるのか、施設におけるおむつ代のような形をこの介護の制度の中で在宅の場合に位置づけられないのかどうか、その点いかがでしょうか。
  203. 近藤純五郎

    ○近藤(純)政府委員 おむつ代の取り扱いというのはいろいろ議論があったわけでございますけれども、施設の関係は、老人保健施設でございますとかあるいは療養型病床群では入所者の負担に今まではなっていたわけでございます。ところが、特別養護老人ホームでは公費で対応していた事情もございまして、統一的に取り扱うということでおむつ代を対象にしたということ。  それから、施設サービスにおきましては、サービス提供の一環といたしまして、施設側におきましておむつが確保されたり管理されたり、こういうふうな実態があったわけでございますので、おむつ代を介護保険の給付に取り込んだわけでございますけれども、必ずしもこうした特別の事情がない在宅サービスにつきましては従来どおりの扱いにする、こういう形になったわけでございます。  いずれにいたしましても、これは現金給付をどうするかという問題とも非常に密接な関係があろうかと思うわけでございますので、今後の検討課題だ、こういうふうに思っております。
  204. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 考えてみれば、施設はいいのに、何で在宅だけおむつ代を持たなければいかぬのかということになって、それはそれで明らかに一つの検討する課題だと思うのです。ぜひ御検討をお願いしたいと思います。  それから、在宅の場合に、要介護認定では現在受けている四万人以上の人が自立として判断される可能性があるということが国会の論議の中でも明らかになっているわけですね。しかし、この介護認定そのものが施設を中心としたモデルでつくられているわけで、在宅の場合には十分なデータがない中で介護認定が行われております。そういう不十分な中で自立と判定されたお年寄りが、在宅の場合でもサービスストップになるということはやはり検討すべきではないかというふうに思うわけです。  そこで伺うんですけれども、現在の介護認定の仕方についてこういう在宅の人たちが十分反映できない、この点をどのように改善、是正されようとしているんでしょうか。
  205. 近藤純五郎

    ○近藤(純)政府委員 在宅サービスの関係でございますけれども、自立と判定された者につきましては、特別養護老人ホームの場合には生活の拠点を失うというふうなことで経過的な措置が法律上設けられたわけでございますが、在宅福祉サービスというのはそういう事情もないということで経過措置が法律で設けられていないわけでございます。  しかし、そうは申しましても、こういった方々、今まで対象になったものが対象にならないというのは大変問題になるケースもあろうかと思うわけでございます。私ども、介護予防とか生きがい対策とか健康づくりといったものの一環といたしまして、自立と判定された方に対しましても自治体が必要なサービスができる、こういうふうなことで介護保険導入後におきましても努力する必要があるわけでございますが、現在の制度といたしましては在宅高齢者保健福祉推進支援事業という形で行われているわけでございまして、こういったものの拡充によりまして介護予防とか生きがい対策とか健康づくりといったものの中で今のような方の対応策ができないだろうか、こういうものを検討してまいりたい、こういうふうに考えております。
  206. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 認定制度については一点問題があるとお認めいただけますか。現在の在宅をモデルにしていない認定制度については若干問題があるという点はいかがですか。
  207. 近藤純五郎

    ○近藤(純)政府委員 私ども、全国客観的に統一的な形で介護認定できるものが、介護認定そのものがこれの支給要件ということでございますので、大変重要なものだということで、何度もモデル事業を行っていろいろ試行錯誤の上にできたわけでございまして、統計的処理でございますから、全く万全かというと、そうではないわけでございますけれども。そういうことで、人の目で見て、もう一度介護の給付をするにふさわしいかどうか介護認定を行うわけでございますので、そういう面で見ていろいろ問題があろうかと思いますけれども、全体と……
  208. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 時間がないので……。ごめんなさい。  いろいろ言われたけれども、在宅を基本とした認定になっていないんですよ。こういう不十分なサービスの上で四万人の人たちの権利が奪われるということがあってはいけない。それは、一般的な福祉施策でやるだけではいかぬわけですね。そういう点で、私は、施設で五年間の経過措置というのを設けましたから、ぜひ在宅についても五年間の経過措置ぐらいは認めるべきだと思うんですね。  もう時間がございません。やはり介護保険制度をやるなら、今よりはよくするということをやらないと。今よりは後退するなんといったら、何のための保険か、こんなのはない方がいいということになってしまいますから。その点での決意と答弁を最後に大臣にお願いしたいと思います。
  209. 宮下創平

    宮下国務大臣 施設の五年間の猶予制度は法定されておりますけれども、在宅の場合は生活の根拠がございますから、それと全く同じような趣旨でやることはできません。  ただ、高齢者福祉の支援事業、今局長が言われたとおりでございまして、そうしたものを通じて認定外になった、つまり自立、要支援の方々の対応はしてまいりたいと思っています。  なお、この制度がいろいろ公開で議論されることは当然でございます、初めての試みでございますから。私どもは謙虚に耳を傾けながらも、この制度は非常に高齢化社会に向けていい制度をつくったと思いますので、自信を持っていただいてやっていく必要があると思います。そして同時に、四月から施行したいと思っておりますので、問題点があれば私どもは現場の声は吸い上げて、本当に対応できるものはどんどんしていくという姿勢で臨みたいと思いますので、積極的な御支援をお願い申し上げます。
  210. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 保険あって介護なしにならないように御努力いただきたいと思います。  以上で終わります。ありがとうございました。
  211. 木村義雄

    木村委員長 中川智子さん。着席のままでどうぞ。
  212. 中川智子

    中川(智)委員 社会民主党・市民連合の中川智子です。着席をお許しいただいてありがとうございます。  それでは質問をしたいと思いますが、本日、私は、薬害クロイツフェルト・ヤコブ病について質問をさせていただきます。  私自身は足を折って本当に不自由な暮らしで、周りに迷惑をかけながら一生懸命やっていますけれども、これは原因も明らかであり、そして治療をすれば治っていくということなのですが、ヤコブ病の場合はなぜ自分自身がそういう病になり、死んでいくのか。治療法も一切なく、残された家族も、実際本当に自分の子供、夫、兄弟が、なぜ亡くなったかということすらはっきりした形で知らされていないというのが現状でございます。  硬膜移植を受けたクロイツフェルト・ヤコブ病患者が新たに見つかったことが、先々週の週刊朝日にこのように載っております。また、今週は週刊現代にヤコブ病患者のことが掲載されました。この間、いわゆる世論、マスコミでもヤコブ病のことが大々的に報道されていますが、週刊朝日、週刊現代で取り上げられました患者は一歳半のときに脳腫瘍で硬膜移植を受ける手術をして、本当に元気に学校に通い、そして高校生になって、今十六歳で発症して、もう寝たきりの状態でございます。この十六歳のヒロ君は、厚生省のサーベイランスが昨年末現在で発表した六十一人には入っておりません。  この病気は、数年から十数年のいわゆる潜伏期間ということで発症までに時間がかかりますので、今後も、このような形で硬膜移植手術を受けた人がクロイツフェルト・ヤコブ病患者として発症してくるということは本当に想像にかたくないわけであります。  大臣に伺いたいんですが、厚生省は硬膜移植歴のあるヤコブ病患者を調査しておきながら、患者に責任を持ってそのことを知らせておりません。私は、この間、厚生省はやはり患者、家族、そして遺族にちゃんと知らせるべきだという主張を質問の中でもまた質問主意書の中でも再三してまいりましたが、厚生省の答弁は一貫して、医師を通じてされているものと思うと、まるで人ごとのように繰り返しております。  そこで大臣にぜひともお答えいただきたいんですが、患者の知る権利を保障するためにも、硬膜移植が原因でヤコブ病になったということがはっきりしているのですから、患者、家族、遺族に具体的にその事実を責任を持って厚生省が知らせるべきだと思います。知らせてほしいです。いかがでしょうか。
  213. 宮下創平

    宮下国務大臣 中川委員からいつもCJD、ヤコブ病について本当に熱意を込めて御質問をいただいていることに感銘はいたしております。  ただいまの御質問でございますが、調査の結果、医療機関からの症例の報告に基づいて患者、家族への告知をやるべきではないかということでございますが、これは従来から答弁を申し上げておりますように、医者と患者との信頼関係の中で適時適切に行われることがむしろ望ましく、任せっきりというわけではございません、症例報告という限定的な情報で国が告知することはいかがなものかと私も思っておりますので、その点は必ずしも御要望に沿えませんが、御理解をいただきたい。  なお、いろいろな調査をやっておりますけれども、主治医が患者、家族に対しまして調査報告に関する説明を行い、協力の同意を得るように求めておりまして、患者、家族への周知というものはこういうルートを通じて行う方が妥当である、適当であるというように私は考えておる次第でございます。
  214. 中川智子

    中川(智)委員 これは厚生省が医療用具として認可して、それが汚染されていたということ、一九八七年に第一症例が出て、日本ではそれから九七年まで十年間放置していたという事実、そして硬膜移植によって発病したということが明らかです。今大臣は、患者と医者との信頼関係の中でと。そうしたら、厚生省は、患者と医者の信頼関係だけでもってそこの告知はするべきであって、厚生省はここの中で一切関係ないのですか。そのような告知は国としてやることで、患者と医者の個人的な信頼関係でするものじゃないでしょう。健康と命を守る国の機関である厚生省はそれに一切無関係であっていいという形での今の御答弁なんでしょうか。
  215. 宮下創平

    宮下国務大臣 病名その他症状につきまして、一般論としては、医師と患者との関係は国が一々介入すべきものではないというのは当然なことでございます。  一方、ヤコブ病、CJDにつきましてはいろいろの経緯がございまして、委員のおっしゃられる点はそういうことを踏まえてのお話だと存じますけれども、私どもとしては、因果関係その他は今裁判上の問題にもなっておりますし、そういうことでありますれば、やはり一般原則に近い形で、医者が誠実に対応して告知をしていただくことが一番医療の世界で適切ではないか、こういう考え方を申し上げたわけでございます。
  216. 中川智子

    中川(智)委員 時間の関係で深くそこのところはやりとりできませんが、これは厚生省が認可して、医者はヒト乾燥硬膜が安全だという前提で移植しているわけですね。ですから、医者の責任よりも厚生省の責任が大きい。そこのところは厚生省の責任で、それをきっちりと医者は信じて移植をして発病したということで、医者と患者じゃなくて、これは厚生省と患者の信頼関係だということを一言申し上げます。  次の質問に移りますけれども、これまでの答弁の中で、この硬膜が、本当に十年間、八七年に知っていて当たり前だったことが認識されずに、関心がないという言葉であったんですが、それで十年間日本は回収命令、禁止というのを出さずに放置したわけです。しかし、一九八七年のCDCの第一症例報告やFDAの警告措置等については完全に見落として、認識していなかったということで、厚生省はずっと責任を認めておりません。使用停止にしたのは、それから十年たった九七年の三月のWHOの勧告の後でした。  しかし、一九九六年の七月十日、厚生省はFDAに対して緊急ファクスを送っています。この緊急ファクスは、朝日新聞の記者が厚生省に照会したけれども厚生省から情報提供がなくて、米国の情報自由法を利用して入手しました。  この入手したところにこういうふうにあります。厚生省がFDAの方に出した文書がございますが、この中で「一九八〇年代に硬膜移植手術を受けたCJD患者がこれまでに九人みつかっている。このことは、ヒト乾燥硬膜とCJD発病とに関連があることをうかがわせているように見える。」ということを厚生省はFDAへの緊急ファクスの中に文章としてしっかり書いています。  また、厚生省はこの緊急ファクスで、安全警告等の措置がそちらの機関、FDAでとられたという確認を得られたら重く受けとめなければならない、この問題での米国の状況についての情報は我々には決定的に重要であり、それによって我々が適切な決定を下せるようになると確信している、我々には緊急課題なので、できればファクスで回答いただけるとありがたいと、一九九六年の七月に厚生省はFDAに照会しています。  そして、すぐにFDAは、第一症例でアメリカ、イギリス、カナダはすべてちゃんと回収命令を行った、B・ブラウンの硬膜は汚染されているというふうな緊急ファクスをちゃんと厚生省に返していますが、九六年の七月にしっかりと九人の患者を日本国内でつかんでいながら、翌年の三月のWHOの勧告まで厚生省は放置しています。八カ月間放置しています。ちゃんとFDAに照会して、九六年の七月にはっきりとそれがわかっていながら翌年の三月まで放置している。  これは本当に犯罪的な行為だと思いますが、大臣、いかがでしょうか、この事実について。大臣に聞いています。
  217. 中西明典

    中西政府委員 厚生省の方からFDAに対して今先生おっしゃった照会をしたことは事実でございますが、厚生省といたしましては、その後、八月一日に中央薬事審議会伝達性海綿状脳症対策特別部会におきまして、FDAの安全警告等も審議の対象とした上で、ヒト乾燥硬膜の安全性に関して審議をお願いしたわけでございます。  審議会の特別部会では、現在は、現在はというのは平成八年の時点でございますが、クロイツフェルト・ヤコブ病の病原物質と考えられるたんぱく質の一種であるプリオンを不活化する水酸化ナトリウム処理工程が導入されている。また、データ、プロセス及び両社からの説明による限り、現在適用されている安全対策によって現在供給されているヒト乾燥硬膜は臨床的には安全と考えられる、こういう評価を中薬審の特別部会から得たところでございます。  また同部会では、未処理製品については既に医療機関には存在しないという話であるが、念のため納入医療機関に対して改めてしかるべき情報提供を再度行わせることが適当である、こういう意見を得、それに対する対応を行ってきたところであります。  その後、御指摘の三月二十七日に、WHOが、ヒト乾燥硬膜の移植例から五十例以上のクロイツフェルト・ヤコブ病が発症していることにかんがみ、今後ヒト乾燥硬膜を使用しないこととの勧告がなされたわけでございまして、それを踏まえて、厚生省は薬事法の規定に基づき回収あるいは緊急命令を発したものでございます。  この措置につきましては、その後の特別部会で、プリオンのような未知の病原体による汚染の可能性を将来にわたって否定することは難しいことを……(中川(智)委員「もういいです」と呼ぶ)
  218. 木村義雄

    木村委員長 局長、手短に。
  219. 中西明典

    中西政府委員 そういったことにかんがみて、今般の対応については適切なものであったと考える、こういう評価がなされたというのが事実関係でございます。
  220. 宮下創平

    宮下国務大臣 今局長から事実関係の経過について御説明いたしましたとおりでございまして、FDAに対しまして平成八年の七月十日に照会をしております。そして、実際は、CJDに関するWHO専門家会合が使用しないことを勧告したのは平成九年三月二十七日でございますが、その間何もしなかったのは犯罪的な行為ではないかという御指摘ですね。  これは、今局長の言われましたように、この問題の重要性にかんがみまして、海綿状脳症対策特別部会というのを薬事審議会の中に設けまして鋭意検討し、アルカリ処理をしておれば安全であるとか、いろいろの検討がなされたわけでございます。そして同時に、都道府県に対しましてアルカリ未処理製品の医療機関における存在の有無についても調査を依頼する等、平成八年度における動き等もこの問題を重視しながら対応してきたということは事実でございますので、そのことを申し添えておきます。
  221. 中川智子

    中川(智)委員 私は事実関係を詳細に伺っているわけじゃない。  九年も諸外国よりおくれて、なおかつ七月十日にはっきりと……。もう九例も出て、それから八カ月もおくれて、その間に何をやったかということを聞いているんじゃないんです、その間に何人人が死んだか、そのことを聞いているんです。本当に私は信じられないです。  そして、このような汚染されたヒト組織によるヤコブ病の発症を放置していながら、なおかつ厚生省は昨年の十二月にヒト組織の収集、提供をヒューマンサイエンス振興財団が担当することを発表して、ことしに入って新聞各紙がヒト組織を商品化する会社設立を報じています。ヒト組織を使った薬害が救済も解決もされないままでは国民理解や信頼は得られないことはもとより、今やることは、研究開発ではなくて患者の救済と事実の解明をまず最初にやって、それから信頼を得てこのようなことをやるべきだと思うんですが、大臣、いかがでしょう。済みません、大臣に手短に聞きたいんですけれども
  222. 木村義雄

    木村委員長 中西局長、手短に。
  223. 中西明典

    中西政府委員 新しい融資案件が採択されたのは研究開発振興という観点でございまして、その際、倫理面、安全面に最大限配慮して研究開発を進めるとともに情報公開に積極的に取り組むということを採択の条件として付されておるところでございます。
  224. 宮下創平

    宮下国務大臣 ヤコブ病、CJD患者に対しましては、御承知のように、難病対策の一環として医療費の全額公費負担とか訪問介護員の派遣等の支援は行ってきてございます。  そして、この問題につきましては、委員がしばしば問題提起されておりますように、患者に対する法的責任の問題あるいは国家賠償の問題につきまして今民事訴訟が提起されております。したがって、私としては、その裁判所の判断を仰ぐべき課題であるというように考えておりますので、それは、その判断を仰いで、そしてその結末を見届けたいというのが結論的な考え方でございます。  ただし、委員がおっしゃられ、たびたび御指摘になっておられますので、十年間放置したということを言われますので、そのことはよく調べてもみましたが、確かに第一症例のときに厚生省が知らなかったということがございますが、今後は、こうした問題の症例についての国際的な交流、情報交換等あるいはキャッチする体制をつくるということは極めて重要だと思っております。
  225. 中川智子

    中川(智)委員 今後のことを言っているんじゃなくて、これまでのことをきっちりとしてから次に信頼が得られるわけです。  このように、今裁判とおっしゃいましたが、情報にしても、厚生省はたくさんの情報を持ち、そして原告側はほとんど情報を持たないままに裁判を闘っているわけなんですね。そして、十年間放置したのが第一症例だけなら、第一症例でも諸外国はちゃんと手を打っているにもかかわらず、九人も被害が出て、その時点でもまだ放置して、さまざまな審議会だとか研究というふうなことでいつも日本は後手後手に回って、今では、既にわかっている方で六十四人の方、生存者は三人でしょうか、皆さん亡くなっているんです。二年ぐらいで亡くなってしまうんです。結局、これからも出てくる可能性があるということをしっかり指摘しておきたいと思います。  それで、大臣、今入院している札幌の十六歳のヒロ君という子は、五月の半ばに、病院の方でも、治療法もないし原因も何もかもわからないものだから、もう出てください、退院してくださいと。そうしたら、家族の人たちはどのように介護していいかわからない。また、病院、医療機関も、このヤコブ病に関しては医療費の措置はあるというふうに話されていましたけれども、病院さえも出てくれというふうな状況です。ぜひとも今生存している患者の救済措置をしっかりしていただきたいと思うんです。  今、医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構というものがありますが、薬害によって被害を受けた人たちの救済がしっかりとなされるべきだと思いますけれども、ヤコブ病に関してはその救済の対象にもなっておりません。このように、現在療養中の方、そして遺族の方々に対してもしっかりと救済の手が差し伸べられるべきだと思いますが、それに対しての御答弁。  あわせて、佐藤猛さんだと思いますが、血液からの感染の可能性について言及されています。米国の神経学会の医学雑誌の掲載論文で、ヒト血清アルブミン製剤でクロイツフェルト・ヤコブ病になったと疑われる症例が報告されております。佐藤猛さんは、血液は感染力価は低いものの、実験的には感染性が証明されている、採血者の厳密なチェックと血液製剤の使用を必要最小限に絞るなどの努力が必要であろうということを記述されているそうです。  そこで、クロイツフェルト・ヤコブ病患者の献血歴のある事例についてどこまで調査されているかということを伺いたいと思います。一九九七年から献血者にあなたは硬膜移植手術を受けたことがあるかというのをアンケートでちゃんととっているそうなんですね。ということは、ヤコブ病で潜伏期間の間に献血を受けた、その血液によってかなり広い範囲で感染するという可能性もゼロではないという報告なのです。  救済の問題と、その血液の問題に対してお伺いしたいと思います。
  226. 中西明典

    中西政府委員 CJDが輸血や血液製剤の使用によって人に感染するかどうかというお話でございますが、現在、これは世界的に、アメリカやEUも同様でございますが、古典的なCJDについては人に感染するとの疫学的証拠は存在しない、我が国の調査結果も含めてそういう評価でございます。  しかしながら、新しい変異型のCJD、これは狂牛病騒ぎで問題になったイギリスなんかで数十人の患者を出しておるわけでございますが、こういった新変異型のCJDについては血液を介して感染する可能性についても未知の部分が多いことから、より慎重に取り扱っていく必要がある。それからまた、硬膜移植後のCJDも、先ほど申し上げました古典的CJDと相違する点が多いことに留意していく必要がある。これが先ほど触れました伝達性海綿状脳症対策特別部会の意見でございます。  我が国におきまして、先ほどの献血歴との関連で申し上げますと、主治医に問い合わせて氏名が特定され、日赤において献血歴がはっきり確認された方々は八名ございまして、そのうち献血歴のある四名の方の回収を念のため行ったというのが過去の実績でございます。あとの四名については、有効期限が超過している、あるいはロット番号が特定できなかったということで回収できなかった。ただ、硬膜移植を受けた患者さんはそのうち一名でございまして、これは回収できなかった中に含まれております。
  227. 中川智子

    中川(智)委員 時間は終わったのですが、大臣、先ほどの救済に対しての御答弁をお願いしたいのです。そして、現在入院していらっしゃる方が行き場がない、病院も受け入れ体制がないということなどを含めて、救済についての前向きな御答弁をお願いしたいと思いますが、大臣、お願いします。
  228. 宮下創平

    宮下国務大臣 難病対策の一つとして、全額医療費を支給いたしましたり、訪問介護等をしておるということは、先ほど申し上げたとおりでございます。  本当に何とかしたいなという気持ちはございます。しかしながら、例えば今の医薬品補償機構等で対応できるかどうか、これは検討してみなきゃなりませんが、今のところは無理だということもございますが、たびたびの御指摘でもありますし、今の現状の法制下でできることはできるだけしたいという気持ちは持っておりますが、全体として具体的にどのような形のものができるか、なお検討はさせていただきます。  今、お嬢さんですか……(中川(智)委員「いえ、男の子。十六歳の高校生」と呼ぶ)高校生。滋賀県の方……(中川(智)委員「いえ、北海道の」と呼ぶ)この前の御指摘の方とは別ですね。わかりました。  そういった方々が何名かおられるわけでありまして、もしも治療、加療を要するにかかわらず病院側の事情だけで出ていってくれというようなことであれば、実態を調べて、そういうことのないようにはできたらしたいなという感じを述べさせていただきました。
  229. 中川智子

    中川(智)委員 質問時間が終わりました。ちょっとオーバーして申しわけありませんでしたが、ぜひともこれは薬害ということで、本当に厚生省の心ある対応を今後ともお願いしたいと思います。  終わります。
  230. 木村義雄

    木村委員長 次回は、明十九日水曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時四十六分散会