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1999-03-12 第145回国会 衆議院 厚生委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年三月十二日(金曜日)     午前九時四十二分開議   出席委員    委員長 木村 義雄君    理事 佐藤 静雄君 理事 鈴木 俊一君    理事 田中眞紀子君 理事 長勢 甚遠君    理事 金田 誠一君 理事 山本 孝史君    理事 福島  豊君 理事 岡島 正之君       安倍 晋三君    伊吹 文明君       岩下 栄一君    衛藤 晟一君       大村 秀章君    桜井 郁三君       砂田 圭佑君    田村 憲久君       戸井田 徹君    能勢 和子君       桧田  仁君    船田  元君       堀之内久男君    松本  純君       宮路 和明君    山下 徳夫君       家西  悟君    石毛えい子君       五島 正規君    土肥 隆一君       古川 元久君    松崎 公昭君       青山 二三君    久保 哲司君       西  博義君    武山百合子君       吉田 幸弘君    児玉 健次君       瀬古由起子君    中川 智子君       笹木 竜三君  出席国務大臣         厚生大臣    宮下 創平君  出席政府委員         内閣総理大臣官         房外政審議室長         事務代理    竹内 春久君         厚生省社会・援         護局長     炭谷  茂君         厚生省保険局長 羽毛田信吾君  委員外出席者         内閣総理大臣官         房管理室長   吉田 正嗣君         総務庁恩給局審         議課長     黒羽 亮輔君         外務大臣官房審         議官      樽井 澄夫君         厚生委員会専門         員       杉谷 正秀君 委員の異動 三月十二日         辞任         補欠選任   桝屋 敬悟君     西  博義君 同日         辞任         補欠選任   西  博義君     桝屋 敬悟君 三月十二日  障害者基本法を改正し、対象に胆道閉鎖症を加えることに関する請願山本孝史紹介)(第一一四八号)  同(福島豊紹介)(第一二九〇号)  小規模作業所等成人期障害者施策に関する請願江崎鐵磨紹介)(第一一八二号)  同(桜井新紹介)(第一一八三号)  同(山本公一紹介)(第一一八四号)  戦時災害援護法制定に関する請願(辻元清美君紹介)(第一一八五号)  同(平賀高成紹介)(第一一八六号)  介護保険制度の実施に伴う介護サービス基盤等充実強化に関する請願堀込征雄紹介)(第一一八七号)  中国帰国者援護対策充実強化に関する請願堀込征雄紹介)(第一一八八号)  健康保険日雇特例保険者出産育児一時金等給付条件改善に関する請願児玉健次紹介)(第一一八九号)  同(瀬古由起子紹介)(第一一九〇号)  学卒未就職者国民年金保険料免除制度に関する請願上原康助紹介)(第一二五一号)  社会保障の拡充に関する請願上田勇紹介)(第一二八七号)  同(河本三郎紹介)(第一二八八号)  同(中谷元紹介)(第一二八九号) は本委員会に付託された。 本日の会議に付した案件  戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案内閣提出第三五号)     午前九時四十二分開議      ————◇—————
  2. 木村義雄

    木村委員長 これより会議を開きます。  内閣提出戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山本孝史君。
  3. 山本孝史

    山本(孝)委員 おはようございます。  大臣には連日御苦労さまでございます。きょうもよろしくお願い申し上げます。  きょうは時間が限られておりますので、少し質問の順番を変えて質問をさせていただきたいと思います。申しわけありません。  まず最初に、今回の戦傷病者戦没者遺族等援護法にかかわって御質問をさせていただきたいというふうに思います。  大臣も既に御存じのように、今、在日韓国人軍属石成基さん、亡くなられた陳石一さんから、この援護法に基づいて障害年金請求がありまして、それについては却下するということの取り消しを求めておられる訴訟控訴審判決、昨年の九月でございますが、東京高裁示し所見がございます。もうごらんいただいていると思いますが、その所見について大臣のお受けとめをまずお伺いをさせていただきたいと思います。  所見一つ部分にこういう表現がございます。控訴人石及び亡陳ら在日韓国人は、援護法制定後既に四十六年以上経過しているのに、日韓両国のいずれからも何らの補償を受けられないまま、いわば放置された状態になっている、こういうふうに所見は述べておりますが、この放置されているというふうに所見が述べている点について大臣の御所見をまずお伺いしたいと思います。
  4. 宮下創平

    宮下国務大臣 御指摘東京高裁判決援護法国籍要件にかかわるものでございますが、高裁判決でも、これは十分な合理的な根拠があって憲法十四条には違反しないという判断を示した上で、何らかの立法措置または行政措置をとることが望まれる旨付言してございます。  今委員の御指摘のように、これを放置されているのではないかということでございますが、この韓国人に対する補償の問題は、昭和四十年の日韓請求権経済協力協定によりまして、この協定に述べられておりますように、在日韓国人を含めて法的には完全かつ最終的に解決済みということとなっております。  私どもとしては、これによって解決を見ておるというように理解をしておりまして、放置されておるというような基本的認識は持っていないところでございまして、裁判所所見として付言もされておられるようでございますけれども、それらの措置については困難な状況にあるというように申し上げておきます。
  5. 山本孝史

    山本(孝)委員 在日韓国人も含めて既に法的に解決済みであって、したがって、放置している状態にはないという御認識をお示しいただいているわけですが、同じくこの高裁所見の中で、「人道的な見地からしても、また、国連規約人権委員会から関心課題懸念事項)として指摘されていることに照らしても、速やかに適切な対応を図ることが、我が国に課せられた政治的、行政的責務でもあるというべきである。」こういうふうにも述べているわけですが、この点についてはどういうふうに受けとめておられますか。
  6. 宮下創平

    宮下国務大臣 御指摘付言の中で、国連規約人権委員会がこの問題を関心課題、つまり懸念事項として指摘しておることに触れられているのは今御指摘のとおりでありますが、国際人権規約では合理的な理由に基づきます取り扱いの差異までも禁止したものではないというように承知いたしておりまして、この点については、この判決本体の中でも示されておることでございます。  それで人権委員会の問題は、平成五年、十年、二回意見を述べておられるようでございますが、私ども、この援護法で定めている国籍要件というのは、今回の判決でも認められたとおり合理的な根拠のあるものであるということからして、人権規約違反にはならないというように解しております。
  7. 山本孝史

    山本(孝)委員 重ねての御質問で申しわけございませんが、「速やかに適切な対応を図ることが、我が国に課せられた政治的、行政的責務でもある」こういう所見を述べているわけですね。  きょう、大臣としては、厚生大臣という行政の長に立っておられるお立場での御答弁と、政治家としての宮下創平先生の御答弁と、二通りの御答弁があり得るのだろうというふうに思います。  今、厚生大臣というお立場でお考えになれば、官僚のお書きになった答弁のようなことになるのだと思いますが、「我が国に課せられた政治的、行政的責務でもあるというべきである。」というところをどう受けとめるかというところだと思うのです。私、ここは、こういう言い方をしてはなんですが、政治家としてどう受けとめるか、あるいは人間としてどう受けとめるかというところが、この所見に述べられているものを読む側の立場の心の問題だというふうに思います。  実は、御承知のとおり、三月九日の内閣委員会で、我が党の佐々木議員あるいは公明党の河合議員質問に対して、野中官房長官お答えになりまして、あるいはその日の午後の記者会見でも同じくこの問題についてお触れになって、あの日は三回、野中官房長官は御答弁というかお考えを披瀝されておられます。  繰り返して申し上げて失礼でございますが、現状認識としてお示しになったのは、一つ日韓平和条約で国家間の補償問題は片づけたが、個人的問題は自国内の問題として処理した、そのとき、在日韓国人方々についての処理を双方とも明確にしないまま今日に及んだ。二つ目、したがって、在日の方には措置がされていない。大臣は先ほどいわば放置された状態になっているとは認識していないとおっしゃいましたが、野中官房長官在日の方には措置がされていないという認識をお示しになりました。三つ目サンフランシスコ条約でみずからの意思に基づかずに日本国民たる権利を迫害されたわけで、それだけに私たちは重い戦後処理を背負っているというお考えもお示しになられました。ここははっきりしているのですね。  これは、佐々木議員質問あるいは河合議員質問への御答弁、あるいは午後の記者会見においても同じ趣旨でお考えを述べておられます。  あわせてその解決策としてもお考えを述べておられまして、法律経過経過として、一九〇〇年代の最後の年に当たってこういう問題を積み残したままでいいのか、救済的配慮があっていいのではないかとの裁判所の提起も考えるとき、内閣としても前向きに協議していきたいと佐々木議員に御答弁されておられます。  河合議員に対しては、韓国にいる旧日本軍人軍属方々には韓国政府によって補償が行われたが、在日方々には補償が行われないまま今日に至っている、今世紀末にどういう措置がお互いの気持ちを和らげるのか、我々の責任を果たせるのか検討していくとお答えになっておられます。  午後の記者会見で、これは新聞報道でしか私存じ上げませんが、これからのアジアを考えると、韓国政府等と十分に話し合いながら解決に向かって努力するのが内閣の大きな責務であると考えるとはっきり述べておられるわけですね。大きな新聞記事あるいはテレビ報道を含めて、内閣のお考えとして述べておられる。  今厚生大臣のお考えをお示しになられた部分は、大臣としての御所見なのか、あるいは個人の御所見なのか。そこはつまびらかではありませんが、野中官房長官お答えと、今冒頭でお聞きしました厚生大臣のお考えは必ずしも一致していないというふうに思うのですが、そこはどういうふうにお考えになっておられるのでしょうか。
  8. 宮下創平

    宮下国務大臣 佐々木委員初め二名の方に官房長官発言をされておることは承知しておりまして、今委員の御指摘のとおりでございます。  この官房長官発言は、在日韓国人の元日本軍人等の問題について検討する旨を発言したというのはそのとおりでございますが、しかしながら、先ほど来申し上げておりますように、私どもとしては、政府としては、四十年の日韓請求権経済協力協定によりまして、繰り返しで恐縮でございますが、完全かつ最終的な解決済みとなっておるという処理をいたしておりまして、援護法の適用を含めて何らの特別措置を講ずることは困難であると私も考えております。  しかし、野中官房長官がそのようなことをおっしゃられたので、私も真意を確かめつつ、これは内閣としてというお言葉もありましたので、その点は確かめてありますが、官房長官の御発言というのは、この問題を戦後残された大きな問題の一つとしてとらまえまして、人道的あるいは国際的立場に立って、政治家としての一種の使命感といいますか、そういうものによりましてお気持ちを率直に述べられたものだと私は理解いたしました。  私の方としては、きょうの委員会でもその論議が行われる予定であるという旨も申し上げ、まだ内閣としてどうするかという具体的な指示その他もありませんし、きょうはこの援護法改正法案の御審議をいただくので、そういった中で、野中官房長官個人政治的信念を吐露されたものという理解でいいですなという念押しをしながら、ここに出席させていただいております。  したがいまして、見解見解として、これを直ちに検討せよとかいう指示内閣全体としてあったものでもございません。そういう意味で、きょうの御審議は、これは今までの既存の援護法の枠組みの中で御審議をいただいておりますので、そういった枠内での御審議をお願いしたい、そう思うわけでございます。
  9. 山本孝史

    山本(孝)委員 これはきょうの法律案審議に非常にかかわっている問題でして、この法律に基づいて訴訟が行われているわけですから、この問題は大変重要な問題でありまして、一番関連している問題だろうと思います。  今、政治家使命感として個人的な御見解を率直に披露されたものだということでおっしゃっておられますが、繰り返しになりますが、内閣の大きな責務であるという形でしっかりとお答えになって、しかも、二人の違う議員からの御質問に同じようにお答えになって、私も委員会の中でお答えぶりを聞いておりましたけれども、非常に整理されたお考えを示されて、そして、その方法として何らかのことを考えていかなければいけないのではないかという方向性までしっかりお示しになっておられる。それは、時間を挟んで午後の記者会見においても同じようなお考えを述べておられる。  三度にわたって述べられたお考えを、宮下厚生大臣としては、本日閣議の前後、あるいはきょうに至るまでの間に御本人からもう一度御見解を確かめられて、それは全く個人的見解であるんだということで、あの野中官房長官発言は、宮下厚生大臣のお立場では、変な話ですが、いわば内閣としては否定をされておられる、あれは間違っていたんだというふうにここでお述べになっておられると理解してよろしいのでしょうか。     〔委員長退席鈴木(俊)委員長代理着席
  10. 宮下創平

    宮下国務大臣 野中官房長官の、ただいま申しましたような政治家としての見識に基づいた発言であるということは、私もそれはあり得ることであろうと思います。  ただ、今委員の御指摘のように、内閣としてという言葉もございます。しかしながら、全体として個人見解を表明されたものということでございまして、内閣としてこの問題についてまだ十分な討議なり連絡なりしたわけではございません。  この問題は、御承知のように、非常にいろいろの変遷を経まして、この問題の整理が今日までなされてきております。基本的には最高裁判所で、台湾の問題もございましたが、この国籍要件というのは違憲ではないということは主文で明確になっておりますので、私どもとしては、現在、その立場で物を考えておるということでございます。
  11. 山本孝史

    山本(孝)委員 国籍条項を外す外さないは選択肢の一つであって、そこは御検討されればいいことなんですね。  最初に申し上げたように、所見としては幾つかの方策をお示しになっておられる、しかも、行政的な立場と政治的な解決と両方の道があるではないかということも裁判所としては述べているわけですね。ですから、最初に申し上げましたように、厚生大臣というお立場での御答弁宮下創平という政治家としてのお立場と、お二通りあるでしょうねと申し上げているわけです。  ここは厚生大臣のお立場でいけば、国籍条項を外すことはできぬ、これはもう解決済みなんだ、だから何らの手だてはない、それはお答えとしては私もわかります、そういうお答えがあるだろうということは。しかしながら、野中官房長官内閣として協議をしますという重大な御発言があった後で、簡単に、いや、そんなことではないのだ、あれは個人的見解なんですということで否定してしまっていいのだろうか。  内閣としてのきっちりとした協議をするのかしないのか。しないのですね。
  12. 宮下創平

    宮下国務大臣 これは、御発言後、時間等もそんなに経過しておりませんので、率直に申しまして十分な議論はしておりませんが、私としては、やはり援護法の今の建前からいって、これは立法政策上の問題としても、四十年の日韓協議等の問題とも絡んでおりますし、他のいろいろの戦後処理の問題と関係しますので、非常に困難ですよということは申し上げてありますが、まだそれ以上の、協議の場とか、それを持つまでの時間的余裕はございませんのでそれはいたしておりませんが、この見解は、私政治家個人厚生大臣としての立場を区別してというようにおっしゃいますが、私としてはこれは一体的なものでございます。  私個人見解をあえてこういう行政責任者立場で申し上げる立場にございませんからこれは申し上げませんが、基本的には一致すると御理解をいただいていくのが適切であろうかというように思うわけでございます。
  13. 山本孝史

    山本(孝)委員 もう一遍聞きますね。  小渕内閣総理大臣としては、来週末に韓国を訪問される予定と聞いております。  内閣として協議をしていこう、検討していこう、何とかこの問題にも取り組んでいこうということを野中官房長官お話しになって、それが国内で大きく新聞で報道された。当然韓国にもその話は伝わっているでしょう、あの方たち日本語がちゃんとわかるわけだから。日本テレビも飛んでいるわけだから、そこは見ておられますよ。  小渕総理は、富国有徳とおっしゃるのでしょう。徳があるとおっしゃっているのですよ。日本の国はこういう方向に行かなければいけないというお考え示しておられるのですよ。  サハリン残留韓国人施設が仁川にできて、新しく施設もオープンしたというような状況を迎えている中で、内閣官房長官お話しになったこと、あれは違うんだ、内閣としては協議しません、厚生大臣はそんなものは協議する立場じゃないということで、この委員会で、今のこの場で完全に否定されてしまうのですか。小渕内閣としては、その方向でしか今後はやらないんだ、一切この問題に対しては門前払いなんだとふたをしてしまって、あの官房長官発言はなかったことというふうにこの委員会の場でおっしゃっておられるわけですか。
  14. 宮下創平

    宮下国務大臣 私はそこまで申し上げているわけではございません。援護法を所管する厚生大臣として申し上げておるわけでございまして、内閣として改めて協議をするということで私どもに呼びかけがあれば、当然内閣一員として協議に加わることを私はここで否定できないものでございまして、それは、そういうことになれば協議に加わるというのは当然なことでございます。
  15. 山本孝史

    山本(孝)委員 閣僚の一人であるところの官房長官が、閣僚のどなたの発言であれ、それは内閣発言なんでしょう、そこで御発言になって、前向きにこっちに行こうとおっしゃっておられる。声をかけられたら私はその協議の場に参加してもいいと。そういうものですか、内閣というのは。官房長官があれほどはっきり明瞭におっしゃって、新聞等で報道されている。私は非常にいい方向だと思ったのですね。  非常に解決は難しい。今の法律の中でやるのは難しいだろう。国籍条項を外すことも難しいだろう。しかし、何らかの方策があってしかるべきではないか。そういうことにならないのですか。だから、放置されている状態と受けとめるかどうか。  法律の中では受けとめられないでしょう。しかし、現実に何ら補償を受けられずに、その谷間におられることも事実なんです。あの方たちは、石さんにしても、何度か日本政府からいいような話も聞かされているのですが、ここでまた裏切られるのですか。日本政府はまたうそをついているのですかという話は、国際的な信用問題になりませんか。  国連の場だけの話ではないんです。同じことを繰り返していって、また、あれは違うのだと。閣僚発言がそんな簡単に変わっていいんですか。内閣としてそんな簡単に扱っていいものなんでしょうか。  これだけ長いことこの問題が来ているがゆえに、余計にあの発言は重い。したがって、呼びかけをされたら協議しますというのではなくて、援護法を所管している大臣としては援護法の枠内で処理をするのは難しいという意見は述べざるを得ないだろう、しかし、小渕内閣を支えている一員として、何らかの方策考えていくという、その方向に持っていこうという答弁がなぜできないんですか。そういうふうなことでいいじゃないですか。協議していきましょうよということに、ぜひこの場でそういう確認をしていただきたいと思います。
  16. 宮下創平

    宮下国務大臣 協議がまとめられれば、閣僚一員として当然見解を申し上げて本件の処理に当たらなければなりませんが、国籍要件の問題の上に立った援護法措置を所管する大臣として、この援護法国籍要件を外した扱い、そういう方向でいいんだということは、あの発言の前に事前の協議もいただいておりませんし、ただいまのところ、私どもとしては、所管大臣として、言うならば援護法責任大臣としては、今の委員のおっしゃるように、そういうことが官房長官から言われたんだからそれに従うべきだというような性格のものではないと思っておりますから、これは閣内で十分議論がされることだと思いますので、それはしっかりとした協議をしなければならぬというように思っております。
  17. 山本孝史

    山本(孝)委員 重ねての質問で申しわけありません。  援護法のことを説明されれば、援護法の枠内ではこうだということを厚生大臣としてお考えを述べられるだろう。それはそれでいいのです。協議をしていこうという内閣の姿勢を示された、その点を厚生大臣としても閣僚一員として前に進めていく。  だから、小渕内閣として、来週韓国を訪問されるわけでしょう、あの議論日本国内でまたこんなになっているのですかということにならないためにも、国際的な信用として閣僚発言が重いのだということをしっかりと示すためにも、今ここで結論を出せと言っているのではない、自分も内閣一員としてそこの場に積極的に参加していこう、援護法の問題を聞かれたらそこは難しいと言おう、しかし、内閣全体として何らかの解決方向に向かう協議を進めていこうというお考えにあるのかないのかなんです。今聞いていると、ないとしか聞こえないですから。あるんでしょう。     〔鈴木(俊)委員長代理退席委員長着席
  18. 宮下創平

    宮下国務大臣 けさも閣議の前にちょっとお話をいたしましたが、時間がございませんので協議と言っていいのかどうかわかりませんけれども、先ほど申しましたような政治家個人としての見解である旨は確認をしてあります。  しかしながら、今委員のおっしゃられるように、内閣という言葉も使っていらっしゃいますので、私どもはこれは重く受けとめざるを得ないということで、これは発言以来大変気にしていた点の一つでございますが、内閣意思決定ということになりますれば、所管大臣等を含めて内閣全体として議論をして方向性を出さなければならないものだということは当然なことだと存じますので、私は協議をあえて拒否するものでも何でもないんです。呼びかけあるいは協議する必要があるとすればと言うと、ちょっと消極的に聞こえるかもしれませんが、私の方では問題点を積極的に提示して、現行法との関連その他をきちっと整理をして、あるいはこの問題の経緯等も踏まえてどういう結論を出すことが妥当であるか、積極的に参加をして述べるということは当然あり得ることだと思います。
  19. 山本孝史

    山本(孝)委員 当然あり得るのではなくて、ぜひそうしていただきたいと思います。それが内閣責務だと思います。  内閣としてというのは、答弁でもおっしゃっておられるし、御本人記者会見でもおっしゃっておられるのですよ。だから、我々は、内閣としてこれは当然協議が始まるものだと思っているわけです。  野中官房長官は、先般、私が予算委員会のときに違う問題で、きょうは社会・援護局長おられるのですが、所管の問題であるホームレス問題についてもぜひ内閣として御検討いただけませんかということで、すぐ引き取っていただいて、内政審議室でもう既に二回、三回と議論をしていただいているというふうに思います。  そういうふうに、問題があればスムーズに機動的に動いていくという内閣でないと……。せっかく一つ方向性示しておられる中で、要請があればとかあるいはそういうことが必要であればとかと言うのではなくて、やはり所管しておられる厚生大臣として、小渕内閣をどういう色づけにしていくのか、韓国を訪問する前のこの時期に、こんな議論をしているんです、厚生大臣はそんなことは全くうそですと言っているという話になったら非常に問題だというふうに私は思います。  本来であれば、もう一度きちっとした内閣としての統一見解示してください。協議もしないというふうにおっしゃるのか。協議しないならしないで結構ですよ、あれだけの発言を軽くひっくり返されるような内閣なのかということですから。統一見解をしっかりと示して、文書で少なくとも次回の厚生委員会審議があるまでにお示しをいただきたいと思います。
  20. 宮下創平

    宮下国務大臣 こうした問題について今真剣な御議論をいただいておりますし、委員のような御意見にはごもっともな点がございますので、これは官房長官状況をお伝えいたしまして、その判断のもとでどう対応するか内閣として決めなければならぬ問題であるということはお伝えいたします。
  21. 山本孝史

    山本(孝)委員 いやいや、厚生大臣内閣一員なんだから、小渕内閣として、あの発言を受けて協議をするのかしないのか、しっかりそこを文書で出してくれと言っているんです。
  22. 宮下創平

    宮下国務大臣 正式な閣僚会議でやるかどうかは別問題として、これは大変重大な問題でありますので、私も、先ほど申しましたように、ごく短時間でございましたが、直接官房長官とこの話をいたしましたが、これは協議というようなものではないでしょう。したがって、私は、協議の必要性があるだろうと思います、今おっしゃられるように。協議してどういうことになるか、結論をきちっと出すべきものだと思います。  ただ、内閣としてと言っておられるから、私は協議をした方がいいと思いますけれども内閣としていろいろの発言をなさる場合はやはり所管大臣その他と協議の上で、こうした積み重ねの努力の上の結果の処理でありますから、その是正問題でありますから、当然協議があって内閣としてということになるのが通常ではないかとは思います。  そういうことだけちょっと申し上げさせていただきます。
  23. 山本孝史

    山本(孝)委員 答えになっていない。統一見解を出してくれるのかという質問だから。
  24. 宮下創平

    宮下国務大臣 委員の御要請は、統一見解ということですか。もう一回はっきり……。
  25. 山本孝史

    山本(孝)委員 内閣として協議しますと官房長官委員会の席で二度お答えになり、記者会見でもそういうふうにお答えになっている。ここに内閣として協議をするという事実があるわけです。閣僚一員としての官房長官の御発言がある。だから、内閣として協議をするのかしないのか。今、どう聞いていても、宮下厚生大臣としては協議しないんだというふうに聞こえるものですから。  したがって、小渕内閣としては、この在日あるいは在韓の元日本軍人軍属補償問題についてしっかり協議をします、それで速やかに、それは措置がとれるかどうかわかりませんが、検討していくという姿勢には変わりはないんだということの統一見解を文書できっちり示していただきたいというお話です。
  26. 宮下創平

    宮下国務大臣 これは官房長官が、内閣においてもこの問題に前向きに対処する協議をやっていきたいと思っておる次第でございますということで、官房長官意思がここに明確に表明されておりますので、その趣意に従って協議はいたします。
  27. 山本孝史

    山本(孝)委員 それをあなたはさっきは個人的な政治家見解だとおっしゃったから、個人的見解で、その話は今の話と違うじゃないですか。官房長官が言っているという話でいくのであれば、内閣としてしっかりしたものを出せばいいじゃないですか。
  28. 宮下創平

    宮下国務大臣 全体として取り扱いが過去の蓄積、解決から比べて極めて重大な問題であるということで念押しをいたしましたところ、政治家の信条に基づく発言であるということもございましたので、私はさように申し上げたわけでございまして、官房長官が前向きに対処する協議をやっていきたいということであれば、所管大臣として、当然内閣一員として協議には加わるべきものだと思っております。
  29. 山本孝史

    山本(孝)委員 さっきおっしゃった、政治家の使命として率直に個人的見解を披瀝されたものであるということではなくて、これは内閣としての御発言であって、そこは宮下厚生大臣としてもその認識を持っていて、したがって、内閣としては協議をしていくというお考えなんだということで理解してよろしいですか。
  30. 宮下創平

    宮下国務大臣 先ほど来くどく申し上げておりますが、これは重大なことでありますので、私としては、きょうの閣議の前にも、この委員会議論されますからという前提で、個人的見解ということできのうも詰めをしてあります、したがって、そういうことで対応いたしますよということを率直に申し上げたわけでございまして、これ以上私としては——両方事実が正しいわけでございますので、その個人的な見解だという表明が政治家としての個人的な信念の吐露であるということまで私は否定はできません。  これは、公の場ではそういう発言がまだなされていないものでございますからここであえて申し上げましたが、基本的に、協議するということであれば、当然協議に参画して結論を出さなくてはいかぬ、そういう性格のものだと思います。
  31. 山本孝史

    山本(孝)委員 答弁になってないな、大臣。だから、協議をするんですか、しないんですかと言っているんです。
  32. 宮下創平

    宮下国務大臣 ですから、きょうの論議を踏まえまして、事柄はそう簡単なものでないことも申し上げた上で、きょうの委員会の模様等をお話しした上で、協議をするようにということは進言いたします。
  33. 山本孝史

    山本(孝)委員 進言を受けた人が、じゃ協議しようというのではなくて、内閣一員であるあなたも含めて内閣として協議をするんですか。それは当然、協議をしようと官房長官がおっしゃっておられるんだから、協議をする必要がないということでおっしゃるのか、あるいは、わかった、協議しようということでおっしゃるのか、どっちなんですかということです。
  34. 宮下創平

    宮下国務大臣 協議の内容までは、私は官房長官ほど問題認識を前向きに持つだけの勇気はございません、いろいろな過去の経緯その他をよく存じ上げておりますから。  しかし、協議をするということであれば、当然協議に参加して、これは私がそういったものを発議してどうだということは言えますけれども、そういう閣僚間の協議官房長官の主宰によるものが多いわけでございますから、私がこの問題を前向きにやるから関係者は集まれと言うわけにもいかないという点は御理解いただけると思うんです。
  35. 山本孝史

    山本(孝)委員 私は、答弁としては大変不十分だし、きょうの話は全部当事者のところに行く話ですし、韓国でどういうふうにこの発言を受けとめておられるのか私はわかりませんけれども、しかし、どう考えても不透明だ。  せっかく官房長官が前向きに協議していこうと。それは、裁判所が述べている所見措置としては行政的な立場では非常に難しい部分があるだろう、国籍条項を外すのは難しいという厚生大臣のお立場もあるだろう、援護法部分もあるでしょう。ただ、在日韓国人部分について、それが全部処理済みであるかどうかというところは両国政府の間の考え方が違う。裁判所は明らかにこれは措置がされていないというふうに言っている。大きな不平等が生じていることは事実なんです。それをもう終わっているんだと簡単に言えないぐらいに大きな問題になっているんじゃないでしょうかということです。  そこの問題をあれほどきれいに整理をされた御答弁で、全部の状況をおわかりになりながら、なおかつ、あえて困難を越えて検討していこう、協議していこうとおっしゃった小渕内閣を支える官房長官の御発言として、大変重いものがあるだろう。それを個人的見解なんだ、披露されたんだとここで簡単に、協議じゃなくて立ち話の中でそうおっしゃったのでとみずからおっしゃいましたけれども、そんな話の中で官房長官発言を否定される話は困る。  閣僚一員としての御発言なんだから、官房長官がそうおっしゃったんだから、そこを尊重してともに協議をしていきますと答えるのが普通の閣僚考え方であって、ああおっしゃっているけれども、あれは個人的見解で、法律なんかは難しいからと。それは協議の中でおっしゃればいいことである。当然内閣としては協議をしていくんだと。当たり前の話じゃないんですか。それほどにこの内閣は足並みが乱れるんですか。  そんなに国際的な信用を落としてまで、この問題は難しいから協議するにも値しない、向こうから声をかけられれば協議するかもしれない、そんなふうにお答えになる問題ですか。考えれば考えるほど、この問題は難しいですけれども、しかし真摯に受けとめなければいけない問題であって、私はやはり内閣としてしっかりとした協議をされるべきだと思います。  それすらもできないのでは、小渕内閣は国際的信用、富国有徳などというのはまさにうそだ、また日本政府はだまそうとしている、だから、アジアに対する補償事業は進まないんですよ。そんな人からお金をもらうわけにはいかないということになるんですよ。そこが何にもわかっていない。だから、私はこの問題を、きょういただいている時間の中でもう半分以上過ぎてしまいましたけれども、しつこく言っているわけです。  日本政府の問題なんだ。日本国民の問題なんです。こんな政府を持っている日本国民の問題なんです。だから、そこをやはりよく理解をしていただきたいというふうに思います。  同様に、在韓の元日本軍人の金成壽さんからも恩給請求が出ています。在韓の問題ですから、日韓請求権協定云々の話があることは十分に承知もします。わざわざ本も送ってきてくださいまして、私もいろいろと読ませていただきました。  きょう、恩給局来ていただいていると思いますが、金成壽さんは南方戦線で右腕をなくされておられます。この右腕を公務でなくされたという前提ですが、なくされた場合にいかほどの恩給を受けることができるんでしょうか。恩給局、御答弁お願いします。
  36. 黒羽亮輔

    ○黒羽説明員 お答え申し上げます。  金成壽さんは戦傷により右腕を失われたということでありますので、その障害の程度は、恩給法に定める第二項症または第三項症に相当するものと思われます。  したがいまして、仮にその傷病が公務に起因するものであり、かつ日本国籍を有する場合であったならば、増加恩給及び普通恩給が給付されることになります。  試みに昭和二十八年四月から平成十一年三月までの支給額を計算してみますと、その総額は、第二項症であった場合一億八百万円程度、第三項症であった場合八千六百万円程度となります。
  37. 山本孝史

    山本(孝)委員 一億円ほどの恩給を受けることができる。実は、それを受けられないままでずっと来ているわけですね。  恩給の話でどこまで事実関係を御存じなのかどうかと思って申し上げれば、旧朝鮮半島ですから、日本日韓併合した後で、創氏改名で日本人名に変えさせられて、しかも、日本兵に志願をして、日本の軍隊で訓練を受けて、日本人と一緒に戦地へ赴いて、きさまとおれとという形で戦友になって一緒に戦って、それで負傷して、あのインドシナ半島の山岳地帯を何とか逃げ延びて、右腕を失い、足にも傷を負い、松葉づえをついて逃げて、ようやく帰ってきてという、多くの日本人が経験をしたあの戦地からの復員を果たしてようやく帰国したら、戦友たちは一億円以上の恩給をもらっている。自分に対しては、天皇の臣民、赤子と呼ばれ、そして日本皇軍の一員として参加しながら、同じ戦いをしながら、日本人の名前で戦いながら、何らの補償も受けられない。ここに物すごい補償の内外価格差があるというか元外国人兵士に対する差別、この状態を放置したままでずっと来ているわけです。それは国籍条項だとか、サンフランシスコ条約だとか、日韓請求権協定だとかなんとか言うけれども、しかし、そんな不平等を置いたままでずっとやってきていることでいいんだろうか。  宮下厚生大臣は元防衛庁長官でいらっしゃる。自分のもとで働いている兵隊さんたちの中に、将来、国籍を問われて、あなたは同じように戦ったけれども補償の対象でない、そんなことがあり得るんですか。そんな状態でいいんでしょうか。どう受けとめておられるんでしょうか。
  38. 宮下創平

    宮下国務大臣 心情としてはよくわかる話でございまして、そのことがずっとこの背景にありながら、困難な状況の中で外交当局その他で折衝を重ねられまして、四十年に協力協定ができたわけでございます。そのときに、完全にこうした問題は解決済みであるということの認識を両国が持ったという事実も一方で重く受けとめざるを得ません。  そして、今一億円の話が出ましたが、これは形式的なことを申し上げるようで恐縮ですが、実は私どもの所管は軍人あるいは傷痍軍人ではございません、軍属等、そういう方々の処遇に関する所管をいたしておりますので。恩給法は、申すまでもありませんが、総務庁の方でおやりいただいておることでございます。私どもは、それに準じた形で準軍属等の遺族の問題、該当者の問題等を処理しているわけです。  したがって、これは内閣としていろいろの関係がございますので、先ほど申しましたように、真意を確かめながら官房長官協議をしなければなりませんので、よく協議をさせていただくことはたびたび申し上げているとおりでございまして、その結論がどうなるかは私が今ここで予測できない問題でございます。  私の立場からすると、極めて困難な問題だということだけは明確に申し上げておかざるを得ないということでございます。
  39. 山本孝史

    山本(孝)委員 軍人と軍属で所管している法律が違う、したがって、所管官庁が違いますというのは、それは法律上のお答えであって、軍属であれ軍人であれ、戦地に赴いて戦いに臨んでいるのは全く同じでございます。  私より年上の方にそんなことを言うのは失礼だけれども、あの戦争状況の中でどういうふうにして人々が戦いを進めてきたのか、その結果としてどういう戦後の処理をされてきたのかということを思うときに、そこに軍人、軍属の差は余りないと私は思います。  それから、恩給法であるからそれは総務庁の所管で、この委員会ではないという話ではなくて、どういう考え方でもって——私は、それは政治は心とか同情とかそんなものではできないのかもしれません、しかし、人間の思う心に基づいて政治が行われるべきであって、それがおっしゃった富国有徳の心だと理解をしております。そこをどこまでも法律法律でというのでなく、心を開いて、現実を見据えて、その人の声に耳を傾けて、どういう措置が一番いいのかということを考えるべきだ。  だから、私は、ここに参考人として在日韓国人の元軍属の方あるいは在韓の元日本軍属の方にぜひ来ていただいて直接話を聞くのがいい、本で読んでみたりしているよりは直接聞いてみるのがいい、痛みはそれを与えられた側というか足を踏まれた側しかわからないんだと申し上げたんだけれども、残念ながら参考人は実現しませんでした。  しかし、私は、それぐらいの姿勢があるべきだし、それをこの所見は望んでいるんだと思います。それすら法律論で建前でやっていくのでは、日本はいつまでたっても変わらぬじゃないかというふうに……。だったら、期待だけ持たせるな。期待を持たせて裏切るのは、二重に罪が重いと私は思います。  時間がないので、アジア女性基金についてぜひお伺いをしておきたいと思います。  従軍慰安婦への償い事業の寄附の実績と交付の実績をぜひ示していただきたいと思うわけであります。  時間がありませんので、私の方から申し上げれば、寄附実績は、七年度に二億二千万、八年度二億一千万、九年度九百万、十年度は十二月末で二百万という形で激減をしております。この寄附が激減している状況、そして実態として何人の慰安婦の方に一人二百万円の国民からの募金が行き渡っているのか、そこのところの御説明をいただきたいと思います。
  40. 竹内春久

    ○竹内(春)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生が言及されました数字は、御指摘のとおりのことでございます。  なぜ七年度、八年度にあった数字が、九年度、十年度については減ったかということにつきましては、一概には申し上げられない面もあろうかとは思いますが、アジア女性基金の趣旨に御理解を得た方々からの募金というのが基金の発足当初に集中した、現在は一巡したということかもしれないというふうに思っております。  それから、このようにしていただきました募金を、元慰安婦の方々に一人当たり二百万円ということで償い金という形で支給をしておりますが、これまでに百名以上の元慰安婦の方々にこれをお届けしているということでございます。
  41. 山本孝史

    山本(孝)委員 何人の方に最終的にお渡ししようということでこの事業を進めておられるんですか。中国におられる従軍慰安婦の方たちにはどのように働きかけをしておられるんでしょうか。
  42. 竹内春久

    ○竹内(春)政府委員 アジア女性基金としては、慰安婦の認定を行っている当該国・地域の政府当局あるいはその委託を受けた関係団体が公表した数字をもとに、約三百名の元慰安婦の方に対して事業を実施する予定であるというふうに承知しております。  中国の件については……。
  43. 樽井澄夫

    ○樽井説明員 中国についてのお尋ねでございます。  基金の事業は、基本的には相手国政府並びに相手国政府から委任を受けました関係団体がまず慰安婦の認定を行っていただく、そういうものに基づきまして償い金等の事業を実施するということでございます。  率直に申し上げまして、中国につきましてはまだその段階までに至っていないという状況でございまして、具体的な実施は行われておりません。ただ、引き続き基金といたしましては、その目的に照らしまして、中国政府、関係者の方々からそういった御提案があれば積極的に受けとめたいという状況でございますが、現在の状況におきましては、そういう動きはまだないという状況でございます。
  44. 山本孝史

    山本(孝)委員 引き続き、これは基金としておやりになるんじゃなくて、日本政府全体としてどういうふうに事業を展開していくのかということも含めて、中国政府との間でしっかりとした交渉をしていただきたいというふうに思います。  三百人とおっしゃったので、六億円のお金があれば現状では事業ができる。そうすると、募金としては二百万しか集まってこないというのは、どう考えたってこの事業の存在が忘れられているし、皆さん方も広報しておられないし、何をしていこうとしておられるのかわからない。実績すら出てこないのにお金を集めるという話はもともと無理なんで、そういう意味では当然の帰結になっているんだというふうに思います。もう事業そのものが忘れられているんだろうというふうに思うわけであります。  外務省にお尋ねします。  医療福祉支援事業への外務省の拠出金は、どのような対象者にどのような趣旨で出されているお金ですか。
  45. 樽井澄夫

    ○樽井説明員 お答えいたします。  外務省の拠出金の目的でございますが、これはアジア女性基金に対しまして、医療、福祉の向上に関します事業、医療福祉支援事業等の事業に対しまして拠出しているということでございます。  この根拠につきましては、平成七年六月、官房長官の発表、それを受けまして同年八月、閣議了解がございまして、それに基づきましてそういった拠出を外務省として行っております。
  46. 山本孝史

    山本(孝)委員 外務省がお出しになったお金は、基金を通じてどういう方たちにどういう目的で渡されているのですか。
  47. 樽井澄夫

    ○樽井説明員 外務省の拠出につきましては、基金を通じまして、関係各国政府並びに委任を受けました団体を通じまして、基本的には元慰安婦の方々に対する医療・福祉サービスに使われるという状況でございます。  他方、国によりまして、例えばインドネシアでございますけれども、慰安婦の特定が困難であるということでございますものですから、インドネシア政府との覚書、合意に基づきまして、一般に老人の方々を対象とした事業等も行っておりますので、そういった事業にも拠出させていただいております。
  48. 山本孝史

    山本(孝)委員 外務省を通じて日本国民の税金が、いろいろな団体を通じて最終的には慰安婦の方たちに医療福祉事業として渡っていく。これを裏づけている根拠法はあるのでしょうか、あるいはどういう趣旨でこのお金を出しておられるのでしょうか。
  49. 樽井澄夫

    ○樽井説明員 先ほどもちょっと御答弁いたしましたが、この根拠につきましては、平成七年六月、慰安婦問題に関します官房長官発表というのを出させていただいておりまして、それに引き続きまして、同年八月、閣議了解がございます。これに基づきまして外務省として拠出を行っているわけでございます。(山本(孝)委員「趣旨は」と呼ぶ)  まず、官房長官談話でございますけれども、元慰安婦の方々に対する医療、福祉など、お役に立つような事業を行うものに対し政府の資金等により基金が支援するというのが官房長官の発表の趣旨でございます。  受けまして、閣議了解につきましては、政府としてこれに必要な協力を行うこととするという結論閣議了解でございます。
  50. 山本孝史

    山本(孝)委員 そうすると、これは人道的立場あるいは道義的な立場から拠出をしているという理解をしてよろしいのでしょうか。御答弁ください。
  51. 樽井澄夫

    ○樽井説明員 おっしゃるとおりでございます。  この問題につきましては、女性の尊厳を極めて深く傷つけた問題であり、心からのおわびと深い反省を示すというのが内閣の基本的な立場でございまして、そういう立場に基づきまして拠出をいたしております。
  52. 山本孝史

    山本(孝)委員 従軍慰安婦の置かれた状態をかんがみて、何らかのことをしなければいけない。国民からお金を集めてそれを届ける、あるいは、外務省としても拠出金を出して直接的な医療、福祉、すなわち、厚生に役立てるという形。その趣旨は、人道的あるいは道義的責任を感じてやっているんだと。  厚生大臣、そういうスキームで、人道的、道義的思いを受けとめて、何らかの形で税金を出していっている。根拠法は別にあるわけではありません。官房長官が御発言され、すなわち、内閣意思としてお示しになって、それを裏づけて今事業をしておられる、こういう流れだってあるわけです。だから、やる気になればできるはずで、対外的に表明しておられる部分を真摯にしっかりと受けとめていただきたいと私は思うわけであります。  時間がありませんので、ここは指摘だけにとどめざるを得ないのかもしれませんが、女性基金の中で女性尊厳事業というのを行っておられます。  私は、交付対象事業は見直すべきであろうと思います。国内団体にばかりお金を出して……。アジア女性基金がやるべきは、私なりの解釈でいくと、アジアの女性の地位向上あるいはアジアにおける女性の貧困と性暴力からの脱出に寄与できるような事業にお金が使われるべきであって、日本国内の団体に、その団体の是非を言っているわけではありません、基金としてお出しになる、交付事業としてやっておられるのが、どれだけアジアの女性の皆さんへの還元になっているのかというところはしっかりともう一度検証していただきたいと思います。  あわせて、六億円規模の償い事業が済めば、ほとんど受け取ってもらえないわけですからこの事業としてはもうストップしていくのでしょう、その後どういうふうにお考えになっておられるのか。  平成十年度の予算を聞きますと、女性尊厳事業で二億四千万円、外務省予算の、今おっしゃっている医療福祉支援事業で八千万円で、支出としては三億二千万円の支出になりますけれども、経常経費への補助金は、人件費、事務所費で約一億円の補助金をお出しになっておられる。  団体を運営するために一億円を出して、実際の事業としては、国内団体、NPOへの補助事業であるとか、あるいは外務省のお金を、従軍慰安婦の人たちに三億二千万円のお金を流していくために、一億円の人件費、事務所費を出しておやりになっているというのは、非常に運営としては効率が悪過ぎると思います。しかも、やっておられる事業内容は、女性基金ができたときの本来の趣旨から明らかに離れているというふうに思いますので、そこはぜひ再検討していただきたいと思います。  補償事業が、実際に受け取られないという展開になってしまいますと、国民から集めたお金が今は基金として残っている状態になっているわけで、そこの説明も、お金を出された寄附者のみならず、全国民に対して御説明をされる必要があるのではないか、それは義務ではないかと私は思いますが、補償事業を今後どうするのか、国民にどういう説明をされるのか、ちゃんとした情報公開をされるのか、その点を一点お伺いしておきたいと思います。
  53. 竹内春久

    ○竹内(春)政府委員 多くの点について御指摘をいただきました。受けとめさせていただいて、基金の方ともよく相談はさせていただきたいと思います。  償い金の件について申し述べれば、現在、この事業はまだ継続中でございます。したがいまして、現段階では、基金としてもその事業をできるだけ展開するということで全力を挙げているところだと思いますので、私どもといたしましても、それを支援したいというふうに考えております。  その後のことについて、今の段階で、まだ基金と具体的な相談をしているわけでもございませんので、明確なことをお答えすることはできませんけれども、先生の御指摘は基金の方にもしかと申し伝えて、よくよく相談、検討してみたいと思います。
  54. 山本孝史

    山本(孝)委員 償い事業は五年間という一種の期限を定めて始めていることですし、そういう意味では先は見えているというか、事業の性格、展開の今後の方向は見えているはずですし、お金を出された皆さんに対しての説明義務は、基金としても、基金をおつくりになった政府側としても、当然にあるものだと私は思います。だから、二百万しか集まってこない。出した人たちは、あのお金はどうなったんだろう、本当に従軍慰安婦のところに行ったんだろうかという思いでおられるはずですから、それはきっちりとした説明義務があるということをもう一度指摘をしておきたいと思います。それなりの対応をしてください。  時間がありません。最後にもう一問だけ申し上げておきたいと思います。  この三月二十七日に昭和館がいよいよ開館をいたします。日本遺族会が戦争遺児らへの慰藉事業をしてほしいという声を受けて構想がスタートして、長年の紆余曲折を経てようやく開館にこぎつけられたと思います。  戦没者遺族が経験した戦中戦後の労苦を伝えるという目的で開館されるわけですけれども、年間の運営経費は五億八千七百万円、年間の入場予定者数は十万人とお聞きしております。初年度十万人ですから、恐らく二年度以降はどんどん減っていくのだろうと思います。初年度十万人としても、一人当たりの経費五千八百七十円。入館者一人当たり五千八百七十円をかけて十万人の方たちに何をメッセージとして伝えていくのか、何を持って帰っていただくのか。  これは全額国庫補助金でございます。税金で運営される団体です。なぜ苦労することになったのかという背景についてはほとんど触れられません、陳列をするだけということになっています。すなわち、資料館なのか博物館なのか、その性格すら非常にあいまいである。  そこで、陳列を通じてどのようなメッセージを後世に伝えるのかというのは、その担当者が一体どうすればいいのだろうと非常に迷われるだろう。公正で中立的な運営をしなければいけない、そういう陳列、展示、あるいはメッセージの伝え方をしなければいけないというのは、何回もこの委員会指摘をしているところであります。そこをどうやって担保していくのか。  十万人というのが、今後どういうふうな見通しを持っておられるのか。大変に高くついたなべかまの展示場じゃないかというふうに私は思いますけれども、そうならない、そういう苦言を呈せられないような施設にどうやってしていくのか、そこのお考えを最後にお聞きしておきたいと思います。
  55. 宮下創平

    宮下国務大臣 昭和館は、御指摘のようにこの二十七日に開館いたしますが、戦没者遺族の援護施策の一環として、戦中戦後の国民生活上の労苦にかかわる歴史的な資料や情報を収集、保存いたしまして、後世代にその労苦を知る機会を提供しようとするものでございます。  その運営に当たりましては、厚生省と受託先の財団法人日本遺族会に第三者の有識者から成る委員会を設置いたしまして、公正中立な運営を図るようにいたしたいと思っております。  それから、本施設が後世代に伝えようとする戦中戦後の国民生活上の労苦とは、戦没者遺族を初めとした国民一般が経験した生活上の困難、不便、不自由や精神的痛苦でありまして、陳列事業等を通じてこれらの労苦を来館者に伝えようとするものでございます。  なお、年間来館者は、御指摘のように十万人を想定しておりますが、今後、陳列がえや特別企画展等の開催なども予定させていただいておりますので、さらに多くの来館者が恒常的に訪れるように努力はしていきたい、こう思っております。
  56. 山本孝史

    山本(孝)委員 質問時間がなくなりましたが、予想された答弁だったと思いますけれども野中官房長官のあのホームレスに対しての対応の素早さも、そして、心を込めての歴史を踏まえての御発言も、ぜひ見習ってくださいと言うと失礼かもしれません、小渕内閣としての姿勢にしていただきたいと私は思う。  ついでに付言すれば、厚生省が行っておられる遺骨収集も、日本人の遺骨収集には熱心であるけれども、朝鮮半島出身者の遺骨収集はこの援護事業の対象外ということで遺骨収集事業からは外されておられます。なぜ遺骨になってまで差別をしなければいけないんだ。日本へあれほどの傷を負って帰ってきても差別を受けなければいけないんだという思いに対し、日本は差別をする国じゃないんだという国際的なメッセージを発するためにも、ここは小渕内閣一つの大決断だったと。私は勇断だと思っておりますので、その流れを厚生大臣がみずからとめることのないようにくれぐれもお願いを申し上げまして、質問を終わります。  ありがとうございました。
  57. 木村義雄

  58. 福島豊

    福島委員 大臣、御苦労さまでございます。  冒頭、本日の読売新聞で報道されておりました記事につきまして、厚生大臣の御認識確認させていただきたいと思います。  これは、「医療保険制度改革 来春の一斉実施断念」、「厚生省は十一日、医療費の抑制などを目的とする医療保険制度の抜本改革について、目標としていた二〇〇〇年四月からの一斉実施を断念した。」という報道がなされておりますが、これはそのとおりでございましょうか。
  59. 宮下創平

    宮下国務大臣 医療保険の抜本改革につきましては、私どもは、十二年度からの実施を目指して今鋭意検討を進めているところでございます。過般の私の所信表明におきましても、十二年度からの改革の実施のために、今国会への所要の法案の提出に向け全力を挙げて取り組んでいく旨の趣旨を申し上げたところでありまして、こうした方針には何ら変更はございません。  しかしながら、診療報酬とか薬価制度とか、医療提供体制、高齢者医療制度、四つの主要テーマがございますが、それぞれ非常に問題を抱えての抜本改革でございますので、場合によりますと段階的な実施の進め方、つまり、四月一日に一斉にスタートできるかどうかというところは、正直申し上げまして、そのとおりいくことを望んでおりますが、いくかどうかわからないという感じは持っておりますが、新聞の報道のように、これは何か抜本改革をあきらめたみたいな印象を与える記事でございますが、そんなことはありませんので、私どもとしては、十二年度実施を目指してとにかく努力していくということに変わりはございません。
  60. 福島豊

    福島委員 では、そうしましたら、この援護法につきましての議論をさせていただきたいと思います。  先ほど山本委員からるる御質問がございましたので、私自身はより包括的なことをお聞きしたいと思っております。  大臣、これは質問通告をしておりませんけれども日本人には愛国心というのがあるとお思いでしょうか、大臣の御認識をお聞きしたいと思います。
  61. 宮下創平

    宮下国務大臣 日本人に愛国心があるかどうかというお尋ねでございますね。  これは、愛国心というものをどう解するかでございますが、私としては、やはり自分たちの生まれた国を愛するということは当然なことでございまして、あるというように思っております。
  62. 福島豊

    福島委員 今、国旗・国歌の法制化ということが問題になっているわけですけれども法律で定めるということよりも、本当に日本の国民が国家というものに対してどういう思いを持っているのかという点こそが今問い直されるべきであろう。そこのところが甚だあいまいであるから、法制化をするというような議論がまた出てくるのではないかというふうに思っております。  私は、先日、村上兵衛さん、文筆家の方でございますが、「国家なき日本」という著作を読みました。戦後の日本というのは、国家の形はあるけれども体をなしていない、国家ではないと。ある外人の識者に言わせると、日本というのは一個の経済現象である、国家ではないというような指摘もあるようでございます。  また、最近でございますと、ウォルフレンが日本人というのは国を愛せない、愛していないということを指摘しております。私自身も戦後生まれでございますけれども、国に対してどのような思いがあるのかという点については、こうした指摘というものにうなずかざるを得ないようなところというのがあるんじゃないかというふうに思います。  では、なぜそういうことになったのかということを村上さんはどう言うかといいますと、要するに、日本人が歴史についてこれをきちっと認識をしていない。例えば太平洋戦争、大東亜戦争でもいいかもしれませんが、全くの悪ではありません、それは正しい意図もあったと私も思いますし、いろいろな側面がある。そういうものに対してきちっとした整理、そしてまた認識、そういうものを築く努力というのを戦後の日本の社会においてしてきていない。これはウォルフレンも同じようなことを言うわけです、きちっとした歴史認識というものがない、きちっとした歴史認識がないところにきちっとした愛国心というのはないんだと。  私は、この援護法は毎年審議をするわけでして、毎年同じようなことが質問されて、何も変わらないという状況がずっと続いてきたと思うんですね。これは、言ってみれば、戦後処理の問題にどう取り組むのかという根本的なところが何も変わらないから、非常に形式的な議論だけが続いてきているというんですか、形式的な答弁が続いてきているということになっているんじゃないかなというふうに私は思います。  果たして日本人は愛国心があるや否や。それに対して、大臣はあるというようにお答えでございますけれども、クエスチョンマークをつける人はたくさんおるわけでございまして、そういう日本状態をかんがみますと、戦後五十年というものに対して、五十年も過ぎましたけれども、太平洋戦争に突入した歴史も踏まえてどういうふうな認識をきちっとつくり上げていくのかということ、そこを出発点としてこういった関連する賠償の問題というんですか、そういうものをもう一度組み立て直す必要があるんじゃないかというふうに私は思うんです。  ですから、野中官房長官発言は、るる大臣から御答弁ございました。一昨年の沖縄の特措法のときに、官房長官の非常に長時間にわたっての御発言がございました。私も印象深く心に残っております。あれも真情の吐露であったというふうに私は思いますけれども、いろいろな経緯はあるにしましても、国会は立法府でございますし、そしてまた、政治家の判断というのは、実はそういう次元で判断をするというところにこそ価値があるのではないかというふうに私は思っております。  そういう意味で、官房長官発言というものを踏まえて、いろいろな枠はあるというのはよくわかりますけれども、形式的な議論というものを踏み越えて、政府としての認識をぜひ深めていただきたいというふうに私は思うわけでございます。  かつて、これは平成七年、四年前ですね、その当時は井出大臣でございましたが、井出大臣国籍条項のことで御質問をいたしました。  こういうことを言っておられるんですね。「戦後五十年、いきなりといいますか二、三年後に冷戦構造に組み入れられて今日まで来たものですから、そのときの選択としては私は間違っていなかったと思いますが、むしろ冷戦構造が崩壊した今、冷戦構造じゃなかったらもっと早くに出てきた問題が逆に今ごろになって出てきている問題も多々あるのではないかなと思いますから、我々を含めて、戦争あるいはあの時代を知らない世代が人口の三分の二ぐらいになったにしても、やはり私たちはそういう日本の歴史を背負っていくべきだ、こう考えております。」非常に私は同感いたしました。  そして、国籍条項の話にも触れまして、同じように「正直なところ、なかなか難しいのであります。」こういうふうに答弁されていますけれども、「この問題も、先ほど冒頭御質問いただきました、まさに戦後処理問題がきちっとまだ片づいていないと申し上げたのの一つにもつながる、私はこう考えております。」という大臣答弁がございました。  それから具体的に何も進まなかったわけですからどう評価するかという話はございますけれども、通告しましたのは、大臣の戦後処理についての御認識をお聞きいたしました。それで、全部つながっていることだと私は思います。そして、この問題は今きちっとしておかないと、我々からずっと後続いている世代がおるわけですけれども、本当の意味で日本という国家に対しての思いというものがますます空洞化していく、そういう思いが私はいたします。  そういう非常に重要な問題をはらんだことの一環としてこの問題はあるというふうに御認識をいただいて、御検討いただければと思いますが、通告しましたように、大臣の戦後処理についての御認識をお聞きしたいと思います。
  63. 宮下創平

    宮下国務大臣 戦後処理問題は、国内の問題もございますし、それから、さっき山本委員のおっしゃられたように、援護の外国人国籍の問題等々を含めまして国際的な問題と両面があるかと存じます。  私も、議員になりましてから、台湾問題その他の解決にも議員連盟等をつくりまして参画をさせていただきましたし、いろいろの面でこの問題の戦後処理、例えば国内問題でも十分まだ解決されていない問題も指摘されております。そういった点を含めて、未解決の問題がまだあるということは私どもも思っております。  ただ、今委員の御指摘のように、国家観あるいは国を愛するというようなこととこうした処理の問題とは確かに関係がございますけれども、私どもとしては、日本として、去る大戦の反省、これは村山内閣のときに公式な反省もいたしましたけれども、それに基づいて処理すべきものは処理して、国際社会に向けて堂々と活躍をする国家でありたいと願っておるわけですが、そこの解決の問題が完全に合意できるものであったかどうかという点は、これは残されている可能性はございます。であればこそ、こういう問題提起がずっと続いているわけです。  戦後処理の問題の中で、私どもは、今委員がおっしゃられたような背景は、そう意識的にやったわけではございませんが、去る大戦の反省を踏まえて国際国家日本としてどうなければならないかという視点は常に持ち続けて、こういった問題の解決も図ってきたつもりでもございます。そんなことで、こうした未処理問題についてもそれなりの見識を持ってやっていかなければならぬというふうには思っております。
  64. 福島豊

    福島委員 この援護法国籍条項の問題ですが、諸外国の事例では対応が異なっておりますね。この点についての御説明をいただきたいと思います。
  65. 炭谷茂

    ○炭谷政府委員 諸外国の国籍条項の取り扱いでございますけれども、外務省で調査されたものがございます。昭和五十七年の調査でございますのでちょっと古うございますけれども。  ドイツ、イタリア、フランス、イギリス、米国、五カ国について調査に当たっておりますが、それぞれ外国人に対しても適用しているというものでございます。ただ、支給額については、フランス、米国はやや外国人については低くしているということが報告されております。
  66. 福島豊

    福島委員 敗戦国でもこうしたことはやっているわけですね。なぜ日本ができないのか。なぜできないんでしょう。
  67. 炭谷茂

    ○炭谷政府委員 先生御指摘のように、敗戦国であるドイツまたイタリアについては国籍条項がないわけでございます。それは結局、日本とドイツ、イタリアとの終戦処理の違いが基本にあるわけでございます。  日本の場合の終戦処理は、サンフランシスコ条約にあらわれておりますように、国家と国家との間でこのようなものを解決するという基本的な枠組みで終戦処理をしたというところにあらわれておりますし、一方、イタリア、ドイツにおきましては、個人補償も含めての条約ということもなされておりますので、そのような法的な枠組みから来ているところでございます。
  68. 福島豊

    福島委員 法的な枠組みというのは、変えることは不可能なんですか。
  69. 炭谷茂

    ○炭谷政府委員 これは国と国との条約を基本にしておりますので、それによってまた解決が確定しておりますので、これを変えるということは極めて困難なことではないのかなというふうに思っております。
  70. 福島豊

    福島委員 国と国とのお約束ですよね、条約というのは。ですから、日本が新たに何かオファーして、向こうが拒否しなければ、受け入れれば、新たなお約束ができますよね。そういうことではありませんか。
  71. 炭谷茂

    ○炭谷政府委員 特に終戦処理につきましては、例えば韓国の例で申しますと、四十年の条約に基づきまして最終的かつ完全に解決するということが明記されているわけでございます。そのようなことからいたしまして、これを覆すというのは、先ほど大臣が御答弁されたようなところで、大変難しいんじゃないかなというふうに思っております。
  72. 福島豊

    福島委員 それは、私は日本の姿勢の問題だと思います。  先ほども井出大臣の御答弁を御紹介しましたが、冷戦のスタートという一定の国際状況の中で、そういう条約についての検討、そしてまた締結という事態が進んだわけですね。ですから、冷戦が終わって今ごろになっていろいろなことがまた出てきているんだという元大臣の率直な答弁があったと思うんです。ですから、状況は大きく変わったんだということに対しての認識と、それを率直に受けとめるべきだ。  先ほどちょっと言い足りなかったところがあるんですが、歴史認識と深くかかわっているというのは、どうも私は一つ一つ政府対応というのは非常に内向きになっているという気がするんですね。よっぽど言われるとちょっと行くんですけれども、それまではじっとしておる。できるだけ後ろは振り返りたくないという、心理学的に言うと防衛機制というのですかね。過去を振り返らないという、非常に無意識的な抑止力が働いているような気がするのですね。  では、なぜ無意識的な抑止力が働くのかというと、それは過去をちゃんと見よう、何だったのかということについてちゃんと見ようという努力が要るのですね。私は努力が要ると思います。その前提が日本の場合には甚だあやふやだから、内向きになる、言われなければ行動しない、そういうことがずっと続いてきたのではないかな。だから、やはり歴史認識にもう一度立ち戻るべきなんだというふうに個人的には思うわけでございます。  中山太郎先生も、二つの戦後ということでドイツと日本の対比をしておられますね。ほかの学者さんもしておりますけれども、大分違うわけですよ。敗戦国でもしているところもある。それは、国際条約、条約の枠組みの問題があるからだというのは、これは行政立場の御答弁としてはよくわかるのです。ただ、それをどう見直すのかということについて提案をするのは、私は政治の役目だというふうに思うのですね。  ですから、官房長官発言もあったわけでございますので、この点については、二十一世紀の日本の国のかたちということがよく言われますね、私は、そういうことにつながる実は非常に大きな問題なんだという認識を持って取り組んでいただきたい、これは要望をさせていただきます。  次に、時間も限られておりますので、もう少し具体的な話についてお聞きをしたいと思います。  今回、特別弔慰金の支給について、十年の途中の四年目ということで盛り込まれておりますけれども、今後の方針についてどうなのかということについて厚生省の認識をお聞きしたいと思います。
  73. 炭谷茂

    ○炭谷政府委員 特別弔慰金は、その趣旨は、終戦二十年とか三十年、四十年、五十年という特別の機会をとらえまして、国として弔意を表するために支給いたしておるわけでございます。  今後の方針でございますけれども、次になりますのは、考えますと、六十周年という一つの刻みの年が検討する時期に来るのだろう。これが平成十七年に当たるわけでございますけれども、その時点において、遺族の状況とか国民の全般的な考え方というようなものを照らして検討されるのではないかなというふうに思っております。
  74. 福島豊

    福島委員 これは四年前の答弁と若干異なっておりますけれども、四年前はこんなことを言っておられましたね。その時点時点における社会経済情勢をよく見きわめて判断すべきことであろうというお話で、今回は、遺族の状況も踏まえてということで若干御答弁が変わりましたけれども、これも非常に定見がないといいますか、そういう御答弁だなというふうに、前も質問したときに私は思いました。  これは、弔意をあらわすということについてどうなのか。決して反対するわけじゃないのです。反対するわけではないのですが、何が節目なのかという認識の問題だと思うのですけれども、余りこれを機械的に進めるのはかえって失礼なんじゃないかというような気持ちも私はあります。  この点については、十七年に機械的にやるのではなくて、もう一段認識を深めて、弔意をあらわすというのはどういうことなのかということについて厚生省の中でも考えてほしい。機械的にやったらいかぬと思うのですね。それだけ申し上げておきたいというふうに思います。  それから次に、先ほども山本議員から御質問がございましたが、この三月に開館するわけでございますが、昭和館における事業について御説明をいただきたいと思います。
  75. 炭谷茂

    ○炭谷政府委員 昭和館の事業につきましては、戦没者遺族の援護施策の一環といたしまして、戦中戦後の国民生活の労苦を後世代に伝えるために、一つは陳列事業、図書映像資料閲覧事業、情報検索事業を行うことにいたしております。
  76. 福島豊

    福島委員 この昭和館の事業、情報検索また資料の提供事業の中に、先ほどから議題になっております、旧植民地の方が日本軍の兵士として多数日本軍の戦いに参加され、また貢献されて、その中にはたくさんの死没者もおれば戦傷病者もおるというような事実、この事実というものは昭和館においてきちっと展示をし、提示をされるのでしょうか。
  77. 炭谷茂

    ○炭谷政府委員 昭和館の設立の趣旨は、国民生活の労苦を伝えるということにいたしておりますので、ただいま先生の御指摘されましたような戦没者の慰藉とか追悼というものは含めないという整理にいたしております。
  78. 福島豊

    福島委員 国民生活の労苦をあらわす、これは答弁としては一貫しています。  戦後は国籍が変わりましたけれども、戦中は台湾の方も日本国民、そしてまた韓国の方も日本国民という立場におられましたね。そういう意味では国民ですね。ですから、そういった地域の方が多数日本軍の戦いに参加されたという事実は、これはきちっと明示をされるのですか、されないのですか。
  79. 炭谷茂

    ○炭谷政府委員 昭和館の情報検索の事業につきましては、事実を客観的にそれぞれ入れていくということになりますので、そのような事実ということが物であれば、その物は情報検索の中へ入っていく、また、それぞれ必要な基本的な文献というようなものも収集することにしておりますので、そのようなものの中に含まれていくというふうに理解しております。
  80. 福島豊

    福島委員 再度確認をいたしますが、情報収集、提供といいますと、どう整理をするのかという話がそこに出てくるわけですね。先ほどのなべかまじゃありませんけれども、ずらっと並べればいいという話にはならないわけで、どういう観点で情報を整理して提示をするのかという話になりますよね。  ですから、そこのところの構成、これについては局長もよく御存じだと思いますけれども、私が申し上げたようなことが参観者に対して情報として伝わるというような提示のされ方がなされますかということについてはいかがですか。
  81. 炭谷茂

    ○炭谷政府委員 この昭和館のパンフレットを持ってまいりましたけれども、今月の二十七日から展示される予定にしております。  今回、初年度でございますから、国民生活の労苦の代表的なものとして、母と子の労苦を戦前から昭和三十年ごろまでをもとにして重点的に展示していこう、陳列していこうというふうに思っているわけでございます。できるだけいろいろな工夫をいたしまして、見学者の方、来ていただく方に対して心が伝わるような形に努めたいというふうに思っております。
  82. 福島豊

    福島委員 テーマごとにいろいろと展示を組まれる流れがあるということですね。  そうしましたら、そのテーマの中で、こうして心の底からのお訴えをされておられる方もおられるわけですから、ぜひテーマとして取り上げていただいたらどうかというふうに思いますが、局長、いかがでしょうか。
  83. 炭谷茂

    ○炭谷政府委員 今申しましたように、展示につきましては、マンネリ化しないようにそれぞれ工夫をして入れかえていきたいというふうに思っております。その入れかえに当たりましては、先ほども言いましたように、あくまで中立公正を保つために、私ども厚生省に委員会を設ける、また実際の運営に当たってのものについては遺族会にも委員会を設ける、これはこの委員会でも議論をされた結果そのようなものを設けることになっておりますので、その場で御議論をしていただきたいというふうに思っております。
  84. 福島豊

    福島委員 中立公正にお決めいただくというのはそれで結構だと思います。こういう声もあるということをぜひお伝えいただきたいというふうに私は思います。  それから、戦没者の遺骨収集、先ほど山本委員から遺骨を差別してはいけないというお話がございましたが、これの進捗状況が、特にソ連抑留中死亡者の方の遺骨収集に関してはまだまだたくさん残っているということ。これは昨年もお伺いいたしておりますけれども、それについて、この一年間、どういう状況の進みがあったのか、お聞かせいただきたいと思います。
  85. 炭谷茂

    ○炭谷政府委員 先生の御質問はソ連の抑留者だというふうにお聞きしましたけれども、これにつきましては、平成四年度から本格的に実施しております。十年度までに八千六百八十二柱の遺骨を収集いたしております。  私どもとしましては、これをだらだら続けるよりも、やはり集中的にできるだけ迅速にやらなくちゃいけないということで、今年度から、十年度から五カ年程度でおおむね終わろうということで努力をいたしております。  ちなみに、今年はソ連地域においては二千三百七十一柱という、去年、平成九年度は九百四十八柱でございましたから、三倍近くの収集に努力をいたしております。  私どもの援護局の職員は、このためにかなりの人間がシベリアに出向いているという形で努力をさせていただいております。来年度もこの方針をとって、ハバロフスク地方を含めた八地域で実施して、できるだけ速やかな遺骨収集の完了をしていきたいというふうに思っております。
  86. 福島豊

    福島委員 大変努力をしておられるということに対しては感謝を申し上げたいと思います。ただ、全体の総数が五万三千人ということでございますので、なかなかこれは終えるのが大変だろうというふうに思いますが、さらに御努力をいただきたいというふうに思います。  もう時間も限られておりますので、最後に一点だけ、中国残留邦人の援護事業についてお聞きをいたしたいと思います。  これは昨年も御質問をさせていただきました。中国残留邦人の帰国者の問題ですけれども、先日は全然また別の問題で新聞をにぎわせたわけでございますけれども、家族の方もたくさん来られるわけですね。実際に、これは私の地元の大阪でございますけれども、生活保護を受けるという形になる場合が非常に多い。それがどんどんふえている。  昨年の局長答弁では、これは、生活保護の地方負担がその市、県に集中する可能性があります、それに対しては適切な対応をいたしておりますというような御答弁でございましたが、なかなか一年で状況が簡単に変わるとは思えないわけでございますが、現状の認識の問題、そしてまた今後の対応の方針につきまして、厚生省のお考えをお聞きしたいと思います。
  87. 炭谷茂

    ○炭谷政府委員 中国残留孤児の方々は、日本に定着するのがなかなか難しいところがございます。昨年も答弁させていただいたように記憶いたしておりますが、生活保護につきましては、当初はほとんどの方が生活保護で生活される。大体三年を過ぎたころから自立されるという傾向でございます。  しかし、実は、私自身がこう申し上げているのも平成七年三月のやや古い調査でございますので、これについて最近の新しい調査が必要だろう。特に最近の厳しい経済情勢もございますので、そこで、来年度、中国帰国者の生活実態調査というものを実施して、把握いたしまして、それに基づきまして対策を講じてみたいというふうに思っております。
  88. 福島豊

    福島委員 いろいろと犯罪に関係するような事案もあるようでございますので、ぜひともしっかりとした対応をよろしくお願いいたします。  以上で、持ち時間が終わりましたので、質問を終わりにさせていただきます。どうもありがとうございました。
  89. 木村義雄

  90. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 日本共産党の瀬古由起子でございます。  この提案されております法案につきましては、障害年金、遺族年金等が恩給の改善に準じて引き上げられるもので、我が党としては賛成するものです。  この援護法に関連いたしまして、日赤従軍看護婦問題について質問をいたします。  日赤従軍看護婦は、御名御璽、つまり、天皇の命令として日本赤十字社令が発令され、陸海軍大臣の命令により戦地に召集されております。この点でも、また激戦地で衛生兵を使って生死をかけて働いた点でも、青酸カリを常に携帯するように命じられたことも、抑留させられた点でも、全く兵士に変わりはありません。その内容は、陸軍大臣、海軍大臣の定むるところにより完全に軍隊の指揮下に置かれ、乳飲み子を、老いた親を置いて召集されました。それどころか、勅令により社令を改定いたしまして、給料まで軍隊から払われていたわけです。この対象者は一体何人になっていましたか。また、日赤従軍看護婦の戦地における死亡者数は何人になっておりますでしょうか。
  91. 吉田正嗣

    吉田説明員 お答え申し上げます。  昭和五十四年の日本赤十字社の調べによりますと、軍から給与を受けておりました旧日本赤十字社の救護看護婦の数は二万四千七百二十四人でございます。そして、そのうち戦地に勤務した方々が一万一千三百六十八人でございますが、その中で死亡された方は千二百一人となっております。
  92. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 援護法では、従軍看護婦は、戦没の場合は遺族年金、傷病者となった場合は障害年金の対象となっております。  ところが、同じように陸海軍大臣の命令により、勅令を受けて戦地に従軍させた看護婦でも、戦没や傷病者にならなかった場合には、軍人とは違って恩給の対象にはできないということで、総理府が中心になり、厚生省も関係しながら、従軍看護婦のための慰労金制度を七九年に創設いたしております。  当初、実勤務三年から五年で十万円、六年から八年で十四万円、九年から十一年だと十八万円、十二年から十四年で二十六万円、十五年から十七年で二十八万円、そして最高で十八年以上の場合は三十万円といたしました。この額を決めた根拠は一体何でしょうか。
  93. 吉田正嗣

    吉田説明員 お答え申し上げます。  ただいま先生おっしゃいましたように、旧日赤救護看護婦の慰労給付金は、兵役義務のない女性の身でありながら、旧陸海軍大臣の命令を受けまして日本赤十字社に召集され、戦地に赴きました。そこで戦時衛生勤務に服したという特殊事情がございますために、その御労苦に報いるために、昭和五十四年から国庫補助で慰労給付金の支給制度が発足したところでございます。  当時の額につきましては、支給開始年齢に相当する兵の普通恩給を考慮し、あるいは実勤務期間の長短に応じて算定されたところでございます。
  94. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 この制度は、恩給法による兵に準ずるという、当時の六党合意による中で生まれてきたものではないでしょうか。
  95. 吉田正嗣

    吉田説明員 お答え申し上げます。  先生おっしゃいましたように、昭和五十三年の六党合意がございまして、先ほど申し上げましたような趣旨で慰労給付金制度が発足したわけでございます。
  96. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 配付させていただきました資料をごらんいただきたいと思うのですけれども、当初は、兵に準ずるということでほぼ同額の水準に決めました。ところが、九九年度予算の六十五歳以上の兵の普通恩給の最低保障と比較しますと、年々格差は拡大して、二・七三倍から四・〇九倍に広がっております。  国会の意思は明白なんですね。当時の会議録を読みますと、恩給を適用できないなら他の制度でも仕方がないが、実質、兵と同じ処遇にすべきだと各党が異口同音に主張しております。それが六党合意の「恩給制度を準用し、戦地加算を考慮して、兵に準ずる処遇」というように、処遇するとなっております。「兵に準ずる処遇」とあるのに、なぜこれだけの大きな格差が生じているんでしょうか。
  97. 吉田正嗣

    吉田説明員 お答え申し上げます。  先ほども申し上げましたけれども、旧日赤救護看護婦等に対する慰労給付金は、兵役義務のない女性の身で、戦地において長年戦傷病者の看護に当たられた、そういう特別な御労苦があるという特殊事情にかんがみまして、昭和五十三年八月の六党合意により、加算年を含め十二年以上の方々に支給することになったわけでございます。  そういったことで、こういった看護婦の方々の長年の御労苦に報いるために支給するということでございまして、兵に支給されております、所得の保障を図ることを目的とする恩給とは基本的に性格が異なるものでございます。そういったことで、発足以後の額につきましてはそういった差が生じておるものと理解しております。
  98. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 所得の保障を図るという恩給的な性格のものではないということなんですけれども、当時の国会の審議をぜひよく見ていただきたいと思うんですね。  例えば、これは七八年四月十三日、衆議院の内閣委員会で行われた審議なんですけれども、同僚議員がこのように言っています。それはつまり、軍人恩給法を適用したと同じ結果が出てくるようにお考えいただかぬと、これは公平の原則を欠きます、このように指摘をしているのに対して、当時の稲村国務大臣は、大体委員が言われている方向でもう詰めつつあるんだ、このように答弁をされているわけですね。幾つかの国会の審議でこういう論議が出てまいります。  また、稲村大臣は、従軍看護婦は女性兵士だと思っている、青春をずたずたにされて、今身寄りがない、こういう環境にあることは同情にたえない、こういうことを言われているわけです。ですから、兵と同じ結果が出るようにやるんだと答弁をされているわけです。  国会の決議また大臣の国会答弁のように現状はなっていない。これは国会や政府のそれぞれの権威を損なうことになるのではないでしょうか。国会決議や大臣答弁のようになるように是正すべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。
  99. 吉田正嗣

    吉田説明員 お答え申し上げます。  旧日赤救護看護婦等に対する慰労給付金と恩給等につきましては、先ほど申し上げましたように、看護婦の方々の特別な御事情、これに報いるために支給するという慰労給付金の性格でございます。したがいまして、所得の保障を図ることを目的とする恩給とは基本的にその性格が異なりまして、その関係で金額に差が出てきておりますけれども、その後、政府といたしましては、この慰労給付金につきましても、やはり実質価値の維持は図らねばならないということでございまして、これまで五回にわたって額の改定を行っております。  それから、平成十一年度予算案につきましても、消費者物価指数の上昇分を勘案いたしまして、〇・六%増の額の改定を盛り込んでいるところでございます。
  100. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 いろいろな改善をされたと言うけれども、実質的に、この一九七八年の六党合意には「恩給制度を準用し、戦地加算を考慮して、兵に準ずる処遇」だとはっきり書いてあるわけです。  恩給は初めから所得保障的なものかというと、恩給の歴史を見れば、御存じだと思うんですけれども、これももともと初めから所得保障的なものじゃないんですよね。最低保障を入れて、高齢者の優遇措置をとって、限りなく社会保障制度、所得保障制度に変えてきた経過というのが恩給でもあるわけです。  六党合意が成立した七八年は、兵に対する恩給の所得保障はその当時はどうなっていましたか。
  101. 吉田正嗣

    吉田説明員 お答え申し上げます。  慰労給付金が発足した当時は、兵の恩給を考慮して救護看護婦等につきまして給付金を定めております。当時につきまして、支給開始年齢等に見合う兵の普通恩給を考慮して決めたわけでございますけれども、兵につきましては所得保障という考え方がございます。したがいまして、当時から最低保障額等の措置があったわけでございます。
  102. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 「兵に準ずる」となっているでしょう。実際には、当時は恩給制度は、六六年に最低保障制度をつくっていますから事実上所得保障制度になっているわけですよ。準ずるといえば、従軍看護婦の慰労金制度、名前は慰労金であったって適用されるというのは当たり前のことなんですね。そういう意味では、所得保障制度を含む恩給制度を前提に六党合意が恩給に準ずるとしたことは明らかなんですよ。  だから、私が確認してずっと調べてみましたけれども、過去百二十名に及ぶ国会議員が、この六党合意に反するものだと言って、毎回毎回従軍看護婦さんの問題について質問しているんです。私が数えただけで百二十人ぐらいなので、もっとあるかもしれませんけれども、こういう事態になっているわけです。  百四十四国会の内閣委員会でも、全会一致で従軍看護婦の慰労金を兵に準ずる処遇にすることを求める請願が採択されているわけですよ。準じてないから、国会の意思としてこれは何とかしなければならぬというので全会一致で採択をされているわけです。全く私は、国会の意思がずっと踏みにじられていると思うんですね。  兵役の義務のない看護婦さんに勅令で命令する、乳飲み子を抱えていてもとにかく行けと言って、断ることさえ許されなかったわけですよ。軍人と同じでありながら、六党合意に反して、恩給を適用される軍人には社会保障が必要で、従軍看護婦には社会保障がなくていいという根拠は一体何でしょうか。
  103. 吉田正嗣

    吉田説明員 お答え申し上げます。  日赤救護看護婦等に対する慰労給付金につきましては、六党合意で「恩給制度を準用し、」等々定まっております。したがいまして、この慰労給付金の制度を昭和五十四年に創設する際には、恩給の制度に準じた制度とされておるところでございます。  なお、具体的に恩給等制度を準用した点といたしましては、例えば実勤務期間に加算年を加えた年数が十二年以上の方を対象とすることであるとか、あるいは支給開始年齢を五十五歳にするとか、あるいは、先ほども申し上げましたように、その金額につきまして、昭和五十四年の兵に対する普通恩給の金額をベースとして、それを考慮して決めるといったような措置がとられておるところでございます。
  104. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 時間がありませんので余り言えないんですけれども、実際には、兵士には生活保障的な社会保障的なものをやって、看護婦さんにはなぜできないのかということを聞いているわけです。あなたたちが一緒と言うなら、実際に一緒のようにやるべきですよ。ところが、どんどん格差が開いてきている。そして、これは恩給制度じゃないとずっと言い続けているわけです。  そこで、最後に大臣に要請したいと思うんですけれども、日赤自身も、赤紙で看護婦さんたちが召集されているんですよ。それで、日赤の担当の部長さん、私もお会いしましたけれども、基本的な責任は日赤にあるということは認めながら、何とか処遇の改善を図ってもらいたいということを願っておられました。  これは、今、日赤に対して補助金というか援助という形で出して、日赤がこの事業を行っているという仕組みになっているわけですけれども、これは政治的な決断でやれることだと私は思うのですね。とりわけ、女性差別のない社会を目指すという点で、実は男女共同参画社会基本法案が今提案されておりますね。これほど女性べっ視の制度はないと私は思うのですよ。兵士なら生活保障をやり、看護婦ならいいなんということはあり得ないわけですよね。  そういう意味では、野中官房長官も、九日の記者会見で、先ほどもずっと論議になっておりますように、在日韓国人の恩給、補償については、韓国政府と十分話し合って、可能な限り解決に向け努力するのが内閣責任だ、こういう決意を表明されたわけですね。先ほど戦後処理の問題としては国内問題もあると言われましたけれども、文字どおり、この従軍看護婦さんの問題は、二十一世紀には持ち越せない問題だと私は思うのですよ。  その点は大臣のリーダーシップで、ぜひこの問題も政府責任解決していただきたいと思うのですけれども、最後に大臣の所感を伺いたいと思います。
  105. 宮下創平

    宮下国務大臣 この従軍看護婦さんの扱いにつきましては、いろいろの経緯があり、与野党通じての合意に基づいて行われているものでございます。  軍人恩給に準じたということで、支給要件その他もそれに準拠しておりますが、委員の御指摘は、絶対的な給付水準の問題を言われておると思いますが、今は物価上昇分で改善をいたしておりますが、今後といえども、なお検討すべき点があれば、これは検討を続けることはいたさなければならぬと思っています。
  106. 瀬古由起子

    ○瀬古委員 ぜひ六党合意の原点に戻った改善措置を要求して、質問を終わります。ありがとうございました。
  107. 木村義雄

    木村委員長 中川智子さん。
  108. 中川智子

    ○中川(智)委員 社会民主党・市民連合の中川智子です。  先ほどの山本委員大臣とのやりとりを聞いておりまして、私、九分しかございませんので、その中でぜひとも確認をしたいということで、質問通告した内容と異なりますが、申しわけございません。  今回の国籍条項、旧植民地の軍人軍属補償問題に関しましては、やはり立法の場でしかその解決ができないということが裁判所付言でずっとなされております。私も、二十一世紀に向けて、この問題を解決して初めてさまざまな第一歩が踏み出せるというふうに確信しております。  大臣は先ほど、印象からしますと、官房長官発言は明らかに閣僚政府の中できっちりした議論大臣にもなされずに発言されたということで、向こうから協議の申し出があったら協議に応ずるというような形での御答弁がございましたが、やはり来週の訪韓に向けてきっちりとした政府としての統一見解を持っていくべきだと思いますが、官房長官のあの発言は独走した意見だと大臣はお思いなのか、それとも、それをしっかりと受けて、厚生大臣として、政府として統一見解を出すべきかどうか、それに対する協議はいつごろ、どのような形でおやりになるかという、先ほどのあいまいな点の御確認として、はっきりした御答弁をお願いしたいと思います。
  109. 宮下創平

    宮下国務大臣 官房長官発言につきまして、山本委員のいろいろ御質問お答えを申し上げましたが、再度申し上げることになると存じますけれども、今私どもに入った情報によりますと、きょう総務委員会も開かれておるようでございまして、官房長官がそこに御出席なすって、御答弁いただいておるようです。  要旨は、人道的にも国際的にも、これを政治の場にある者として考えれば、政治家としての責任と私の信念から、米国での措置やドイツでの措置等を勘案しながら、先送りの反省をしなければならぬという気持ちを持っているというように述べておられるようでございます。  今委員が御指摘になりましたように、内閣においてということで頭がかかっておりますが、私どもに事前に相談がなかったのは先ほど申し上げたとおりでございます。しかし、内閣のかなめである官房長官発言でもございますから、私どもとしては、これに対して無関心であるというわけにはまいりません。  したがって、先ほど申しましたように、きょうの論議の結果も官房長官にお伝えしながら、内閣としてどういう対応をとるかという点については私なりの意見を申し上げたいというように思います。
  110. 中川智子

    ○中川(智)委員 今の御発言の最後の、私なりの意見というところの中身を教えてください。
  111. 宮下創平

    宮下国務大臣 これは、これだけ議論がされておるということをやはり官房長官も知っていただかなくちゃなりませんし、そのことを申し上げます。その上で、どういう議論があり、どういう真意でそういうことを言われたかということも確かめなくちゃいけませんので、そういった議論を踏まえて、なお、私としては今厚生大臣としての立場もございますので、そうした立場を踏まえて臨みたいということでございます。
  112. 中川智子

    ○中川(智)委員 それでは、その官房長官の御発言に対して大臣としては抗議の気持ちを持っているのか。官房長官は、これは前向きに一歩進めよう、どうにか解決しようという御発言だと私は思いますが、イエス、やはりそうなんだということで前向きにその議論をしていこうというおつもりなのか。そこはイエスかノーかでお答えください。
  113. 宮下創平

    宮下国務大臣 内容を議論する前にイエスかノーかというわけにもまいりませんので、これはそういう議論が行われましたら、きちっと理解をしつつ、その際、私なりの判断も申し上げたいというように思っています。
  114. 中川智子

    ○中川(智)委員 私は、先ほどの大臣の御答弁を聞いていまして、法律上では無理かもしれないという思いはございます。だが、これは立法、行政で何らかの補償措置を講ずべきというところだと思いますが、大臣補償措置を講ずるならこういうこともあり得るだろうという考えをお持ちなら、お聞かせください。
  115. 宮下創平

    宮下国務大臣 この援護法国籍要件につきましては、立法上の措置の当否について、台湾の問題は最高裁まで行っておりますけれども韓国のこの問題は高等裁判所判決が出ておるわけでございますから、私どもとしては立法上の問題として考えております。  ただ、行政措置でできるかできないかというお尋ねのようでございますが、これは、立法措置がそういうことで援護法の体系ができている以上、もちろんそれを乗り越えて行政措置でやるというわけにまいらないことは委員も御承知のとおりでございますから、何ができるかということは、そういう議論が行われる中でまた検討してまいりたいと思います。
  116. 中川智子

    ○中川(智)委員 きょうは、民主党さんからいわゆる附帯決議というのが出されましたが、全党の合意が得られないということで、附帯決議さえもこの委員会の場で全く日の目を見ないという状況になっております。ぜひともこれぐらいの附帯決議をこの中でしっかりと上げてこそ、厚生委員会としての責任が果たせると私は思っております。  これは、いきなりきょう見せられて、私もちょっと混乱いたしましたが、そのような形で、本当にお気の毒な、人道的なところ、人間として見過ごしておけないという状況がございます。また、国際的にも、日本がこの問題を解決しないことは恥ずかしいという思いがございますので、きょうの委員会審議を受けてと大臣がおっしゃいましたので、委員会ではこれを解決すべきだということで、前向きにきっちりと、また、閣僚会議の中で来週ある程度の結論を見出して進んでいっていただくようにぜひともお願いいたします。  同じ答弁じゃなくて、非常に優しいお気持ちで常に厚生行政をどんどんと進められている大臣の御所見を最後に伺いまして、時間になりますので終わりますが、お願いします。
  117. 宮下創平

    宮下国務大臣 大変難しい課題でございますので、意見は中川委員意見として承らせていただいております。
  118. 中川智子

    ○中川(智)委員 ぜひともよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
  119. 木村義雄

    木村委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  120. 木村義雄

    木村委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  内閣提出戦傷病者戦没者遺族等援護法等の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  121. 木村義雄

    木村委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  122. 木村義雄

    木村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  123. 木村義雄

    木村委員長 次回は、来る十六日火曜日理事会及び委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午前十一時四十一分散会