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福島委員 今、国旗・国歌の法制化ということが問題になっているわけですけれ
ども、
法律で定めるということよりも、本当に
日本の国民が国家というものに対してどういう思いを持っているのかという点こそが今問い直されるべきであろう。そこのところが甚だあいまいであるから、法制化をするというような
議論がまた出てくるのではないかというふうに思っております。
私は、先日、村上兵衛さん、文筆家の方でございますが、「国家なき
日本」という著作を読みました。戦後の
日本というのは、国家の形はあるけれ
ども体をなしていない、国家ではないと。ある外人の識者に言わせると、
日本というのは一個の経済現象である、国家ではないというような
指摘もあるようでございます。
また、最近でございますと、ウォルフレンが
日本人というのは国を愛せない、愛していないということを
指摘しております。私自身も戦後生まれでございますけれ
ども、国に対してどのような思いがあるのかという点については、こうした
指摘というものにうなずかざるを得ないようなところというのがあるんじゃないかというふうに思います。
では、なぜそういうことになったのかということを村上さんはどう言うかといいますと、要するに、
日本人が歴史についてこれをきちっと
認識をしていない。例えば太平洋戦争、大東亜戦争でもいいかもしれませんが、全くの悪ではありません、それは正しい意図もあったと私も思いますし、いろいろな側面がある。そういうものに対してきちっとした
整理、そしてまた
認識、そういうものを築く努力というのを戦後の
日本の社会においてしてきていない。これはウォルフレンも同じようなことを言うわけです、きちっとした歴史
認識というものがない、きちっとした歴史
認識がないところにきちっとした愛国心というのはないんだと。
私は、この
援護法は毎年
審議をするわけでして、毎年同じようなことが
質問されて、何も変わらないという
状況がずっと続いてきたと思うんですね。これは、言ってみれば、戦後
処理の問題にどう取り組むのかという根本的なところが何も変わらないから、非常に形式的な
議論だけが続いてきているというんですか、形式的な
答弁が続いてきているということになっているんじゃないかなというふうに私は思います。
果たして
日本人は愛国心があるや否や。それに対して、
大臣はあるというように
お答えでございますけれ
ども、クエスチョンマークをつける人はたくさんおるわけでございまして、そういう
日本の
状態をかんがみますと、戦後五十年というものに対して、五十年も過ぎましたけれ
ども、太平洋戦争に突入した歴史も踏まえてどういうふうな
認識をきちっとつくり上げていくのかということ、そこを出発点としてこういった関連する賠償の問題というんですか、そういうものをもう一度組み立て直す必要があるんじゃないかというふうに私は思うんです。
ですから、
野中官房長官の
発言は、るる
大臣から御
答弁ございました。一昨年の沖縄の特措法のときに、
官房長官の非常に長時間にわたっての御
発言がございました。私も印象深く心に残っております。あれも真情の吐露であったというふうに私は思いますけれ
ども、いろいろな経緯はあるにしましても、国会は立法府でございますし、そしてまた、
政治家の判断というのは、実はそういう次元で判断をするというところにこそ価値があるのではないかというふうに私は思っております。
そういう意味で、
官房長官の
発言というものを踏まえて、いろいろな枠はあるというのはよくわかりますけれ
ども、形式的な
議論というものを踏み越えて、
政府としての
認識をぜひ深めていただきたいというふうに私は思うわけでございます。
かつて、これは
平成七年、四年前ですね、その当時は井出
大臣でございましたが、井出
大臣に
国籍条項のことで御
質問をいたしました。
こういうことを言っておられるんですね。「戦後五十年、いきなりといいますか二、三年後に冷戦構造に組み入れられて今日まで来たものですから、そのときの選択としては私は間違っていなかったと思いますが、むしろ冷戦構造が崩壊した今、冷戦構造じゃなかったらもっと早くに出てきた問題が逆に今ごろになって出てきている問題も多々あるのではないかなと思いますから、我々を含めて、戦争あるいはあの時代を知らない世代が人口の三分の二ぐらいになったにしても、やはり私
たちはそういう
日本の歴史を背負っていくべきだ、こう
考えております。」非常に私は同感いたしました。
そして、
国籍条項の話にも触れまして、同じように「正直なところ、なかなか難しいのであります。」こういうふうに
答弁されていますけれ
ども、「この問題も、先ほど冒頭御
質問いただきました、まさに戦後
処理問題がきちっとまだ片づいていないと申し上げたのの
一つにもつながる、私はこう
考えております。」という
大臣の
答弁がございました。
それから具体的に何も進まなかったわけですからどう評価するかという話はございますけれ
ども、通告しましたのは、
大臣の戦後
処理についての御
認識をお聞きいたしました。それで、全部つながっていることだと私は思います。そして、この問題は今きちっとしておかないと、我々からずっと後続いている世代がおるわけですけれ
ども、本当の意味で
日本という国家に対しての思いというものがますます空洞化していく、そういう思いが私はいたします。
そういう非常に重要な問題をはらんだことの一環としてこの問題はあるというふうに御
認識をいただいて、御検討いただければと思いますが、通告しましたように、
大臣の戦後
処理についての御
認識をお聞きしたいと思います。