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楓参考人 御紹介いただきました
全国公団住宅自治会協議会の楓でございます。
意見を申し述べる前に、まず、
住宅・
都市整備公団改革の審議に当たりまして、居住者を代表して
意見陳述の機会を与えてくださいました
平田建設
委員長を初め各会派の
委員の先生方に、心から御礼申し上げたいと思います。どうもありがとうございました。
さて、今回の
公団改革論議が始まりました際、
全国の
公団賃貸住宅で暮らすおよそ七十三万世帯、約二百万人の居住者の間には大きな衝撃と不安が広がりました。
その不安の内容は、
公団賃貸住宅が公共
住宅ではなくなって
民間住宅になってしまうのではないかということがまず一点であります。
その結果として
家賃が大幅に上げられるのではないか、これが二点目であります。
三点目は、
公団住宅の管理は今後一体どういうふうになるんだろう、
公団の直接管理を離れて現在の
公団の住
環境の状態が今後ともによいレベルで維持されるのかどうか。こうしたことが不安の中身でございました。
考えてみますと、昭和三十年、
日本住宅公団として発足し、その業務が現在のこの
住宅・
都市整備公団に受け継がれて四十三年になろうかと思いますが、
公団は
大都市地域の勤労
所得階層を主な
施策対象として、
民間市場では不足している標準世帯向けの良質な公共
賃貸住宅や宅地を供給し、我が国の公共
住宅政策
づくりに先導的な役割を果たしてきました。このような公共
住宅の担い手としての
住宅・
都市整備公団への
評価は、
阪神・
淡路大震災直後の多くの自治体関係者を初め多くのマスコミが取り上げた、震災時などの際には公共
住宅の方が絶対に有利だ、こういうような大合唱にも如実にあらわれているのではないかというふうに思います。
公団で暮らす私たちは、それぞれの団地、
地域において自治会や町内会を結成し、コミュニティー
づくりに努力してまいりました。盆踊りや運動会、高齢者の皆さん方への助け合い、あるいは
子供たちへのふるさと
づくり、最近では集合
住宅におけるごみ処理問題や自主防災会
づくりも自治会、町内会活動の大きな柱になってきています。団地周辺の
民間マンションで遊び場のない
子供たちが私たちの
公団住宅の団地の広場や遊園地に遊びに来る光景は、
全国どこの団地でも日常的に見られる光景であります。
また、
阪神・
淡路大震災でその安全性が証明された
公団住宅。ちなみに、
阪神・
淡路大震災ではあれだけたくさんお亡くなりになった方がいらっしゃいますが、
公団住宅においては建物の倒壊による死者は一名もございません。こういう安全性が証明された
公団住宅の自主防災会では、
大震災などの際、団地が
地域救援活動の拠点になろう、こういうことを合い言葉に活動しています。
こういう
意味では、
公団住宅の役割は終わったのではなく、ますます公共
賃貸住宅として、とりわけ
大都市においてはこの役割の重要性は高まっているのではないかというふうに私どもは考えています。このことは、
公団の空き家募集における大変な倍率が何よりも物語っています。新
公団法を検討していただく際、このような
公団住宅の現状も視野に入れた御審議をお願いしたいというふうに思います。
次に、お手元に配らせていただいています資料が二部ございます。
一つにとじておりますが、まず前半の四枚が
都市基盤整備公団法案に関する私どもの要請事項であります。五枚目からは、私どもが三年置きに行っております第五回団地の
生活と住まいアンケート調査の集計結果の概略であります。
このうち、アンケートの集計結果をごらんいただきたいと思いますが、これは三年ごとに私どもが
実施しています
公団居住者の
生活実態調査であります。今回はその五回目の調査で、一月の十五日から三十一日までという極めて短期間の取り組みでありましたが、
全国二百二十三団地の自治会が参加し、総計二十二万四千六百七十五世帯にアンケート用紙を配付させていただいて、十一万三千六百四十八世帯から回収を得た回答をまとめたものでございます。
これを見ていただくとよくわかりますが、まず世帯主の年齢のところでありますが、五十歳代が二割を超えております。六十から六十四歳が一割五分ぐらいございます。六十五歳から六十九歳が一割強であります。七十歳以上が一割三分ちょっと、こういうような数字になっております。六十歳以上をお
年寄りとお呼びすると最近ではおしかりを受ける場合が多いわけでありますが、六十歳以上の百分比の合計を見てみますと、これだけで全体の約四割を占める、こういうような居住者構成になっております。
次に、世帯の年間収入でございますが、これは一九九七年度、一昨年の税込みの数字でありますが、いわゆる
所得分位一分位に相当する四百八十六万円未満の合計が五三・四%ございます。中でも百万円未満というような世帯が二・六%、百四十万未満世帯が四・二%、こういう数字を占めています。
所得分位二分位に相当する階層が一八・七%、第三分位に相当する階層が一二%、第四分位、第五分位が合わせて九・二%というような状態であります。
調査結果をごらんいただければおわかりのように、基本的には
公営住宅へ申し込み資格を持つ
所得分位一、二分位の合計が七二・一%もございまして、多くの自治体では、公共
賃貸住宅、いわゆる
公営住宅の少ないところでは
公団の
賃貸住宅が
公営住宅の役割をしている、こういうことが具体的にあらわれております。
加えて、未曾有の不況の中で、
全国各地の団地の中でも働きたくても職場のない
人たちが目立ち始めています。アンケートの結果の中にこのことは数字で具体的にあらわれております。
こういう衝撃と不安の中で
公団改革論議を見守っていた私たちに対し、当時建設大臣でありました亀井建設大臣は、今までのような役所
仕事ではなく、住んでいる私たちにもっと満足していただけるようにしたい、入居者の御心配のない形でやっていきたい、管理のレベル低下のないようにするとお約束をいただきました。また、瓦建設大臣には、管理については
安心して住まい、
生活できるように考えたい、
家賃問題では
公営住宅との
かかわり、居住者の負担部分の問題等さまざまあって、一般会計からの導入も図りながら考えていくとの御発言をいただきました。
このような歴代建設大臣の御発言が私たちの不安解消に一定の役割を果たしたことは言うまでもございません。また、
政府関係者のたくさんの方から居住の安定を図るというお言葉もいただいております。
そういう
立場で今回の
法案を詳細に読ませていただくと、幾つかの点で気がかりなことがございます。以上のような
立場から、具体的に
法案について二、三
意見を申し述べさせていただきます。
まず、新
公団の名称についてでありますが、
都市基盤整備公団ということで、この名称の中には、七十三万戸の居住者がいるにもかかわらず
住宅もしくは居住という言葉が見当たりません。
先日も、私は、自分の団地で何人かの方にこの名称について
意見をお聞きしました。そうすると、ある人がこういうことを言いました。今まで、知り合いの方にどちらにお住まいですかというふうに聞かれた場合に、
公団住宅に住んでいる、
住宅公団に住んでいるというふうに答えれば相手の方はわかっていただけた、これからは基盤
公団に住んでいると言わなきゃいけないんでしょうか、まるで造成の工事現場に住んでいるような感じで、こういうような
意見を言っておりました。
民間住宅市場だけでは供給困難な、良質なファミリー向け
賃貸住宅を供給する役割は、なお必要とされています。また、
政府として、借家の居住水準の向上を図るための
住宅政策を総合的に
推進していくためには、直接供給を今後とも維持していく必要があるのではないかと考えます。ちなみに、
平成五年度の
住宅調査によりますと、我が国の借家の平均床面積は約四十五平米でありまして、欧米の
先進諸国に比べれば非常におくれているということが指摘されております。そうした中で、
公団の果たしていく割合はますます大きいというふうに思います。
そういう
意味で、
公団の名称、目的の中に、名称にはぜひ
住宅を入れていただきたい、それから、目的のところには「福祉の増進に寄与することを目的とする。」という従来ありましたこの文言は、ぜひとも削除しないでいただきたいというふうに思います。
いろいろたくさん申し上げたいことはございますが、時間が参りましたようでございますので、もう一点だけにさせていただきますけれども、
家賃の問題について、近傍同種の
家賃というようなことが盛んに出てまいります。そうした場合に、居住の安定に配慮していただくためには、入居者の負担能力の実態を勘案して定めるというようなことを法文の中に明記していただけないか。近傍同種を基準として
公団住宅家賃を変更した場合、相当の値上げとなって居住の安定を損なうおそれが出てくるのではないか、こういうような不安を持っております。
それから、新
公団の
組織あるいは財務、会計、こういうところにつきましては、開かれた
公団にしていただいて、
国民の代表が運営
委員に入るだとか、あるいは財務諸表その他についても、せめて一般
民間企業が行っているように有価証券報告書のような形で広く一般に公開されるような、こういうような経理が図られることを心からお願いして、私の
意見を終わりたいと思います。
どうもありがとうございました。(
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