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1999-07-02 第145回国会 衆議院 環境委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年七月二日(金曜日)     午前十時開議   出席委員    委員長 北橋 健治君    理事 石原 伸晃君 理事 鈴木 恒夫君    理事 福永 信彦君 理事 米田 建三君    理事 小林  守君 理事 佐藤謙一郎君    理事 田端 正広君 理事 武山百合子君       愛知 和男君    岩下 栄一君       尾身 幸次君    大野 松茂君       熊谷 市雄君    桜井 郁三君       戸井田 徹君    村上誠一郎君       茂木 敏充君    山本 公一君       近藤 昭一君    久保 哲司君       丸谷 佳織君    中村 鋭一君       藤木 洋子君    土井たか子君       中川 智子君  出席国務大臣         国務大臣         (環境庁長官) 真鍋 賢二君  出席政府委員         環境庁長官官房         長       太田 義武君         環境庁企画調整         局長      岡田 康彦君         環境庁自然保護         局長      丸山 晴男君         環境庁大気保全         局長      廣瀬  省君         環境庁水質保全         局長      遠藤 保雄君         厚生省生活衛生         局長      小野 昭雄君         厚生省児童家庭         局長      横田 吉男君         農林水産省農産         園芸局長    樋口 久俊君         運輸省港湾局長 川嶋 康宏君  委員外出席者         環境庁企画調整         局環境保健部長 澤  宏紀君         労働省労働基準         局安全衛生部長 下田 智久君         環境委員会専門         員       鳥越 善弘君 委員の異動 七月二日         辞任         補欠選任   大野 松茂君     熊谷 市雄君   戸井田 徹君     茂木 敏充君   西  博義君     久保 哲司君   土井たか子君     中川 智子君 同日         辞任         補欠選任   熊谷 市雄君     大野 松茂君   茂木 敏充君     戸井田 徹君   久保 哲司君     西  博義君   中川 智子君     土井たか子君 六月十日  ダイオキシン類対策特別措置法早期制定、実効性ある対策実現に関する請願(久保哲司君紹介)(第五五三二号) は本委員会に付託された。 本日の会議に付した案件  環境保全基本施策に関する件(ダイオキシン対策問題)     午前十時開議      ————◇—————
  2. 北橋健治

    北橋委員長 これより会議を開きます。  環境保全基本施策に関する件、特にダイオキシン対策問題について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山本公一君。
  3. 山本公一

    山本(公)委員 おはようございます。自由民主党の山本でございます。  きょうは、二十分間質疑の時間をちょうだいいたしました。大変限られた時間でございますので、数点だけ、最近ちょっと気になっておりますことを質問させていただきたいと思います。  まず最初に、先般、六月二十七日の新聞報道で、ダイオキシンを含む環境ホルモンに関する環境庁のもろもろの調査において、調査に協力している地方自治体監察医などが遺族に無断で臓器を採取したというニュースがかなりセンセーショナルに、大々的に報道されたわけでございますけれども、このことにつきまして、私もごくわずかな期間でございましたが環境庁に籍を置いておった者でございますので、大変心配をいたしております。  このことにつきまして、事実関係としてどのようなことが起きたのか、そしてまた、今後この問題について環境庁としてどのように対応していかれるのか、まず冒頭お聞かせを願いたいと思います。
  4. 澤宏紀

    澤説明員 御指摘調査についてでございますけれども、これはダイオキシン類環境ホルモンに関しまして、人の遺体臓器汚染調査し、体内の分布や蓄積状況を明らかにするもので、今後のダイオキシン対策環境ホルモン対策を進める上で極めて重要なものであるというふうに思っております。  死体解剖保存法におきましては医学研究のために遺体臓器を保存することが認められており、保存された標本を分析、検査に使用することは、医学界では広く行われてきております。本調査もこれに該当するものであるわけでございます。  本調査を進めるに当たりましては、研究班設置しておりますが、その第一回会合におきまして調査の進め方が検討されました。その結果、関東及び関西地区監察医などの協力を得て検体の提供を受けることとしまして、その際、研究班委員意見に沿って、法律上は必要ないものの遺族への礼意としてできるだけ同意を得るよう努力することとされまして、調査を進めてきたものでございます。  しかしながら、行政解剖の中では、遺族同意を得ることが一般的には行われてこなかったこともありまして、また、さまざまな事情で遺族同意を得ることが困難なケースもありまして、結果的には十分徹底されなかったところがありました。  環境庁といたしましては、厚生省医師会法律生命倫理等の分野の御専門先生方の御意見を聞きながら、人の遺体臓器環境保全に係る調査研究に使用する場合の遺族同意取得に関する指針といったようなものを今後早急に策定しまして、これにのっとりより適切な形でこうした調査が実施できるように努めてまいりたい、そういうふうに思っております。
  5. 山本公一

    山本(公)委員 法的には基本的に問題がないというふうに報道されておりましたけれども環境庁という役所の性格上、国民にその種のことで不信を招くようなことがあってはならないというふうに考えておりますので、この問題に関しましては、今後、今おっしゃられたように細心の注意を払われて、本当にダイオキシン等々の研究調査というのは今後も大事でございますので、現場がくじけることがないようにぜひまた頑張っていただきたい、かように思っております。  次に、ことしの三月にダイオキシン対策関係閣僚会議におきまして決定されたダイオキシン対策推進基本指針に基づく施策進捗状況について質問をいたしたいと思います。  これに関連して、六月に環境庁の中環審また厚生省生活環境審議会報告書がまとめられて、いわゆるTDIが一日体重一キログラム当たり四ピコグラムというふうに定められたわけでございます。この四ピコグラムに定めたということについては、私は個人的には非常に疑問を持っている一人でございます。  いろいろな意味で、それぞれの立場でそれぞれのお考えがあってこのような四ピコグラムという数値が決められていったものだと承知はいたしておりますけれども、その中でTDIが定められてきたということにつきまして、やはり今後、大気やまた水質土壌というものについての環境基準というのを、数値が決められたことによって早急に決めていかなければいけないというふうに考えておるわけでございます。  その辺につきまして、恐らくもう作業は進められているだろうと思いますけれども、今申し上げたように、TDIが決まったということを踏まえて、大気水質土壌についての環境基準の今後の取り組みについてまずお聞かせを願いたいと思います。
  6. 廣瀬省

    廣瀬(省)政府委員 先生の御指摘のとおり、本年三月にダイオキシン対策関係閣僚会議で策定されました対策推進基本指針で、TDI見直し後六カ月ということが決まっております。  そして、それに向けての仕事になりますが、四ピコグラムというのが設定されましたので、昨日、七月一日、中央環境審議会大気部会において審議をいただきまして、大気環境基準設定に係る専門的事項審議するためにダイオキシン類環境基準専門委員会設置することを決めていただきました。早急に委員会を開催しまして、基本指針に沿っての大気環境基準設定に向けての作業を開始したいというふうに考えております。
  7. 遠藤保雄

    遠藤(保)政府委員 先生質問水質土壌につきまして、補足して答弁申し上げます。  今回TDIが定められましたものでございますから、水質及び土壌環境基準設定につきましても検討を進めてまいりたいと思います。  しかしながら、水や土壌につきましては、ダイオキシン類が人の体に至る経路等科学的知見、これが必ずしも十分でございません。したがいまして、現在、環境中でのダイオキシン類の実態を把握すべく、全国で四百カ所の水質土壌等について調査を進めております。こういった努力を続けまして、今後知見の集積に努めてまいりたいと思います。  そして、所要のデータがそろったものから、順次、環境基準等設定について検討してまいりたい。具体的に言いますと中央環境審議会への諮問ということになりますけれども、これもなるべく早期に取り組んでまいりたい、こう思っております。
  8. 山本公一

    山本(公)委員 さっき四ピコに決まったということに疑問ということをちょっと申し上げたのですけれども、私は御承知のように愛媛県の片田舎で生活をしている者でございます。あの地方は、一次産業というものが基幹産業になっております。一次産業基幹産業でやっと町全体が潤っているようなところでございます。そういったところで、このダイオキシンTDIが決まっていって、昨今科学的知見がどんどん進んできて、魚介類は〇・何ピコグラム、一・何ピコグラム含有していますよとか、野菜はこれだけでございますよというようなデータが公表をされてまいります。  私もそうでございますけれども、こういった科学的なことに非常に弱い立場の、知識が非常に薄い者の立場からいいますと、ごくごく単純に考えたりしまして、では魚は何匹食ったらTDIを超えてしまうのだとか、野菜はどれぐらい食ったらTDIを超えてしまうんだというようなことを妙に勘ぐったりしまして、俗に言う風評被害というのが発生をしてくる。そういったことを非常に懸念をいたしておりますから先ほどのようなことを申し上げたわけでございます。  今後、大気水質土壌についていろいろな環境基準が決められていくだろうと思いますけれども、いたずらに不安をあおることのないように、まさに科学的な根拠に基づいてそれぞれの基準を決めていっていただきたいということをお願いいたしておきたい、かように思っております。  次に、基本指針において、今後四年間に全国ダイオキシン類発生量平成九年に比べ約九割削減するということになっております。  先般、六月二十五日の閣僚会議報告されたいわゆるダイオキシン類インベントリーによれば、我が国ダイオキシン排出総量は、平成九年の六千三百グラムに比べ、平成十年においては約二千九百グラムへ半減したとされております。特に、家庭ごみ等一般廃棄物焼却施設からの総排出量は、大気汚染防止法及び廃棄物処理法による規制導入前に比べて約三千グラム減少したというふうに言われております。  どうしてこの短期間にそれぐらい減っていったのか。どういう努力がなされてそのように減っていったのか。そしてまた、それを受けて、基本指針に言われておりますように、今後四年間で本当に約九割削減ということが達成できるのか。その辺についてお答えを願いたいと思います。
  9. 廣瀬省

    廣瀬(省)政府委員 先生のおっしゃるとおり、六月二十五日排出目録が出されました。そして、その結果から見ると、平成九年度六千三百から二千九百グラムに減ったということになります。なぜ減ったかということでございますが、まず一番大きいことは、大気汚染防止法廃棄物処理法による規制導入ということが基本的にあると思っています。  具体的に申しますと、厚生省の資料によりますが、平成九年十月十七日に八十ナノを超えた施設が百七あったのが、十一年の四月五日には八十ナノを超えた施設は三施設に減るというような状況にございます。そして、施設を直していくときに、四年後、平成十四年には既設の施設も、八十ナノでは暫定ですから、一、五、十という新しい基準に持っていかなきゃいけないことになりますから、施設は当然そのような方向へ向けて改善されるという動きになります。つまり、八十ナノの暫定でずっといくことは考えられないということが効果を示していると思っております。  なお、今後の四年間できちっと改善ができるのかどうかということでございます。私たちとしては、インベントリーを毎年皆新しく見直していく、それから知見をそれぞれそろえていきたい。つまり、先ほど申したような施設状況等を見ていきますときに、きちっと報告が出てまいりますので、その内容を見ていく中でフォローをかけていく。それからもう一つは、新しい知見が出てきたときに施設についての問題点というのをきちっと整理していく。それで、今まで未規制小型焼却炉というのがございます。そのことも含めて具体的に処理していくことによって、九割削減をするという前提でこれからの四年間仕事をしていくのが基本でございます。そして、何よりも大気、それから土壌、水を汚染しないために排出のもとをきちっと断つということが基本だろうと思っています。  それから、先生TDIの話がございましたが、私の方は、外へ出さない方向徹底的に求めていくことで自然を守っていくというのが基本的に大気汚染防止法にかけられた仕事と理解しております。私たち仕事は、毎年毎年その仕事をきちっとしていくのかどうかというので評価をしていくという作業をしてまいりたいと思っています。  それで、特に今後の効果のところは、未規制小型焼却炉に関する規制ということを頭に置いております。それから、かなりの量を出す施設に関しての新しい規制も含めて考えていくというふうにしておりますので、九割削減はぜひ実現したいと思っております。それが行政使命だというふうに思っております。
  10. 山本公一

    山本(公)委員 今おっしゃられたように、ダイオキシン類発生を九割削減していくというのは、私が政務次官当時の地球温暖化CO2削減目標の六%に比べると、実現ということに関して言えば可能性が随分高いと思っておりまして、ぜひ頑張っていただきたいと思うわけでございます。  今、廣瀬局長お話がありましたように、いろいろな施設改善をしなければ当然のごとく九割削減ができるわけもない。平成十四年までにかなりの箇所の改善がなされるのだろう、かように思っておりますけれども、私どもの田舎ではそういったことが一般市民にはなかなかわかりづらいのです。いわゆる行政単位においては、そういった平成十四年までにこうやらなければいけないということが非常に、重いとは言いたくないですけれども行政的に言えば頭を悩ます課題に今なってきております。  御承知のように、今、地方自治体というのは極めて財政状況が悪化をいたしております。そうした中で、ダイオキシン対策のために焼却炉改造しなければいけないところが随分出てきております。今おっしゃられたように、平成十四年までにかなり部分改造するという話になっております。私どもも、改造しなければいけないのが平成十四年までの分で約二百件あるというふうに聞いております。新造、新設を入れて約三百件あるだろうと言われております。その総費用が、伺うところによると一兆五千六百億かかるというふうに聞いております。  その一兆五千六百億の中で、現行の補助率でいきますと、国の補助はそのうちのわずか五千六百億しかない。一兆五千六百億のうち五千六百億だけ国が、ダイオキシンの関連で皆さんやりなさいよと言って出してくれる、残りの一兆円は地方自治体が負担をしなければいけないという平成十四年までのいわゆるさっきのお話の内輪の状況なのです。  国がダイオキシンに関してこういった一つ規制を強めていく中で、地方自治体はいやが応でもそれの対策を講じなければいけない。こういったことに関して言えば、補助率見直し、また補助対象範囲見直しということがあっていいのじゃないか、私はかようにずっと考えておるわけでございますけれども、この点についてお考えがあったらお聞かせを願いたいと思います。
  11. 小野昭雄

    小野(昭)政府委員 先生承知のように、去る六月二十五日に開催されましたダイオキシン対策関係閣僚会議環境庁から報告をされましたダイオキシン類排出量目録、いわゆる排出インベントリーによりますと、廃棄物焼却施設からのダイオキシン排出量が総排出量の約九割を占めると推計をされておりまして、これに対します対策を強力に進めていくことが重要であるというふうに認識をいたしております。  そういった意味で、一般廃棄物処理市町村固有の事務ではございますけれども、その施設整備につきましては、排出削減対策徹底という観点から、廃棄物処理広域化ということを進めていきまして、大型の焼却炉に集約するということで、一日の処理能力が百トン以上の全連続式焼却施設につきまして国庫補助対象としているところでございます。  平成十一年度予算におきましては、いわゆる施設設置あるいは改造というものに加えて、これと一体的に行います建物部分設置改造に要する費用というものも国庫補助対象としていわゆる対象範囲を拡大いたしたところでございます。こういった方策を通じまして、平成十四年から適用されます厳しい基準に適合するような施設整備を図りたいと考えております。  私どもといたしましては、この排出削減対策をさらに徹底いたしますために、規制徹底ということは当然でございますけれども市町村へのさまざまな支援、御指摘の点も含めた支援ということにつきまして十分な検討を図ってまいりたいと考えております。
  12. 山本公一

    山本(公)委員 ぜひ鋭意検討をしていただきたいと思います。私の地元にもその問題が迫っているところがございまして、非常に悩んでおりますことを申し上げておきたいと思います。  ちょっと質疑時間がなくなってしまったのですけれども、最後に長官に一言だけ。  今までのお話を伺わせていただきまして、ダイオキシンの問題等々につきまして、本当にわからないことが多過ぎる上にいろいろな情報が飛び交ってしまう、入っていく、本当に一番国民が不安に陥りやすい状況にあるというふうに私は考えております。そういったこと等々を考えますときに、私は環境庁の果たす役割というものは極めて大きなものがあると思います。一日も早く国民が安心してこの問題に対処できるようにしていただきたい。  その点につきまして長官の御決意を伺って、質問を終わらせていただきたいと思います。
  13. 真鍋賢二

    真鍋国務大臣 ダイオキシンが人体に与える影響は非常に大きいということで、いろいろなところからこの問題について追求がされておるところであります。  それがためにということで、今年に入りましてから、環境庁厚生省、農林省等々によりましてこの対策各省会議を開催いたしたわけでありますけれども、これでは十分な対応ができないということで、早速に二月に入りましてからダイオキシン対策閣僚会議というのを設置いたしまして、そこで議論を深めてまいったところであります。  過去四回会合を開きました。その都度各省からいろいろ重要なデータを提出していただいたし、またそれについての対策を講じたところでありますけれども、去る六月二十五日に第四回目の会合を開きまして、先生御案内のように、一日の耐容摂取量というものを発表させていただいたわけであります。  これが出たから安心だというわけではございません。これらの対策に必要な数値が出てまいったと思っておるわけでありますけれども、なお検討を加えて、国民に安心と安全を与える対策政府として講じていかなければならないと思っておるわけであります。環境庁もその使命感に燃えておりますので、どうぞひとつ御支援をいただいて、それらの問題に一致協力した体制で臨んでまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたす次第であります。
  14. 山本公一

    山本(公)委員 終わります。
  15. 北橋健治

  16. 小林守

    小林(守)委員 民主党の小林です。八十分という時間をいただきましたけれども、早速質疑に入らせていただきたいと思います。  三月三十日に、ダイオキシン対策関係閣僚会議におきましてダイオキシン対策推進基本指針が決定されたわけであります。それを受けまして、六月二十五日でしょうか、総理を初め十三大臣から成るダイオキシン対策関係閣僚会議におきまして、ダイオキシン耐容一日摂取量TDIは四ピコグラムということが正式に決定されたわけであります。  この決定の経過、これについては、昨年の五月にジュネーブで行われたWHO専門家会合で、近年におけるダイオキシンについての科学的知見、このような研究の成果も含めて、TDIについての考え方とかとらえ方についても大きな前進が見られたというようなことを聞いておるわけであります。そういうことで、国際的な標準として、究極目標としては、体重一キログラム当たり一日一ピコグラムということになるわけですけれども究極は一ピコグラム以内を目標とする。しかし、上限というのでしょうか、当面の最大耐容摂取量については四だというような数値が示されたわけであります。  一から四というような範囲の中で、日本においては結果的に四という数値が示されたわけでありますけれども、まず最初に、国際的な動向、それから政府が一キログラム当たり一日四ピコグラムというものを決定した経過とその根拠についてお聞きしたいと思います。
  17. 澤宏紀

    澤説明員 ダイオキシン健康影響の指標につきましては、平成二年のWHO会合TDI体重一キログラム当たり一日十ピコグラムとされました。その後、我が国におきましては、平成八年に厚生省研究班によりTDIが十ピコ、また平成九年には環境庁検討会によりまして健康リスク評価指針値という形で五ピコというふうにされたところでございます。先ほど先生から御指摘ございましたように、昨年の五月にWHO専門家会合で一から四とされた。これを受けまして、環境庁厚生省が合同で見直し作業を行ってきたところでございます。  これが経緯でございますけれども、四ピコグラムというふうにしました算定の根拠につきましてでございますけれども、低濃度影響を認めたとされる動物実験等知見一つ一つ詳細に評価いたしました。TDIを求めますのには実験動物で科学的に決めるということでございますので、動物実験知見一つ一つ詳細に評価しまして、毒性学的意義試験信頼性試験再現性などを総合的に判断した結果、実験動物体内濃度体内蓄積量、これを体内負荷量と言っておりますが、ダイオキシンによる毒性影響が明確に見られる最も低い体内負荷量体重一キログラム当たり八十六ナノグラムナノグラムというのは十億分の一グラムでございますけれども、八十六ナノグラムであることが明らかにされました。  人の場合、おおよそ毎日体重一キログラム当たり四十ピコグラムダイオキシンを摂取し続けますと、長期的には実験動物影響の見られた体内負荷量が八十六ナノグラム・パー・キログラムに達すると考えられますが、人と動物との違い、感受性の違いなど不明な点もございます。これを見込んで、さらに不確実係数一〇で割りまして、TDIコプラナPCBも含めまして四ピコグラムとすることとされたものでございます。
  18. 小林守

    小林(守)委員 経過についてはそのとおりなのですけれども、国際的なWHO専門家会合の中で一から四というような、閾値というのですか、幅のある数値が出されたわけなのですけれども、なぜ一から四という数値の中で四を選んだのかというところをもう一度説明してください。
  19. 澤宏紀

    澤説明員 先ほども申しましたけれども我が国におきますTDIにつきましては、専門家WHO報告書を詳細にわたり分析していただき、不明な点は環境庁及び厚生省の職員と研究者が米国、カナダに出向きまして調査を行いました。さらに、WHO見直し以降に報告されました知見もあわせて科学的に評価を行いまして、その上で我が国ダイオキシンの当面のTDIを四ピコグラムとするとの結論を出したものでございます。  先ほど申しましたように、具体的には八十六ナノグラム体内負荷量TDIを算定するのがいいという形で盛り込みました。
  20. 小林守

    小林(守)委員 八十六ナノグラム、それ以上になると、いわゆる健康影響というか一種の障害というようなものが明らかにあらわれてくるという数値だと。体内蓄積量というか体内負荷量ですね。  それはわかるのですが、なぜ四から一という数値になっているのかという答えになっていないのですね。八十六ということでやってくると四になるんだと思うのです、四ピコグラムに。しかし、WHOでは一から四なんですよ。だから、一というものについて我が国ではどういう検討がされたのかというところが大事なんであって、四になった数値はわかるのです。一から四のその一の方の検討についてはどういう検討がされてきたのか、そこをお聞きしたい。
  21. 澤宏紀

    澤説明員 今先生指摘のように、WHOの最終報告案では一から四ピコというふうにされたわけでございますけれども、一の、実験動物の科学的論文で評価した場合に、十分それを結論づけるようなデータではないという判断もございました。  そういうことで、四ピコということで決めたわけでございますけれども、さらに少ない量で微細な影響があるということで、今後とも科学的研究を進めて、知見を充実する必要があるというふうにされたわけでございます。
  22. 小林守

    小林(守)委員 もう少し丁寧に、何も隠すことはないのじゃないですか。大体その数値というのは、ラットにおける体内負荷量をとったんだというふうに言っていいんだと思うのですよ。  しかし、そのほかの動物実験において、それ以外にも例えばアカゲザルとかそのほかのものではそれよりも低い値でも出ていることがある。しかし、それが、普遍的な科学的な客観性とか、オーソライズされるものにまで至っていないというような現状なんだろうというふうに思うのです。  WHOはなぜ一から四にしたのか。日本では四にしましたけれども、一から四という枠組みについて答えになっていないのですね。それは十分検討されてきた経過だと思うのですよ。  ですから、そこをはっきり言ってもらいたいと思うのですよ。というのは、今後のTDIの取り組みに対しても大事な視点なんですよ。ポイントになってくるところなんですよ。  日本が四を達成すること自身極めて大変だということはよくわかっています。しかし、国際的な水準なり基準というのはもう一から四ですよ、一ピコグラム以下が究極目標なんだというところまで言い切っているわけですから。それに対して政府の見解は触れていないのですよ。そこをやはりきちっと、国際的な水準からいってもそこまでいっているわけですから。日本の現状は、四を達成することが極めて大変だという事実はわかります。あなたは、何かこの辺は隠しているんじゃないかな、何か触れたくないというか。
  23. 真鍋賢二

    真鍋国務大臣 先ほどお話がございましたように、日本の場合も厚生省環境庁数値が分かれておりました。  そこで、日本の数値WHO並みにするにはどうしたらいいかということについて、今までは、WHOの材料と申しましょうか試験結果を重んじて、それを採用させていただいて研究結果を出しておったわけでありますけれども、それでは科学的根拠に乏しいのじゃないかということで、実は、厚生省環境庁環境庁の中でも専門家、国立環境研究所の専門家を出しまして、そこでEPA等に参りましていろいろ調査させたわけであります。  調査させました結果が、資料もいただきましたし、それから数値の出し方についての手法もわかりましたので、日本の国環研で最高の権威をもって試験をさせたわけです。試験させたところが、やはりラットとかアカゲザルとかいうことになりましても、その動物体の健康状態によって数値が変わってくるわけです。  四ピコというのは、そういうことで大方WHO並みの数値をとらえることができたわけでありますけれども、下の数値になりますと、日本の科学的実験、根拠によってなしたわけでありますけれども、まだそこまで至らないわけです。  そうしたら四ピコ以内ということにしておけばいいじゃないか、なお研究を重ねて日本の環境ホルモン関係も世界的に権威あるものにしていきたいということで、その研究を急いでほしいということで、今その検討を進めておるところでございます。一から四ということでありますけれども、日本の科学的知見によっては四以下というようなところのデータしか出ていないというのが現状であります。
  24. 小林守

    小林(守)委員 長官の方から実態を正確に反映した答弁がございましたから、そういうことだというふうに思いますけれども、そういうふうにそれはわかっているわけだから、なぜそこを最初に言わないのかということなんですよ。  そういう実態を踏まえて、ただ、日本の場合は取り組みが非常におくれてきているという現実がある。日本の科学的知見では、四以下で一というようなことについての、一から四という枠組みまで示すことがなかなかできない。しかし、四という数値は、国際的な知見に基づいて日本で実験しても確認できるということなんだろうというふうに思います。  一たんこういう枠組みが決まると、日本という国は非常に技術革新なりそういうところではすばらしい能力を持っている国なんですね。一定の枠組み、ルールが決まると、用意ドンで物すごい競争力を持つのだと思うのですよ。そういう点で、今後、これは間違いなく相当短期間のうちに国際的な水準にまで技術的には追いつけるのではないかな、このように私は思うのですよ。  そういう点で、今後、少なくとも欧米には学びながらも、アジア諸国については、こういう経験をもとにした技術移転の問題も含めて日本が国際貢献できる分野ではないか、このように思うのですが、これは長官でしょうか。
  25. 真鍋賢二

    真鍋国務大臣 先生の御指摘どおりでございまして、毎々申しておるところでありますけれども、今年も環境ホルモン会議を神戸で開催させていただいて、世界の知見をここで集約してみたい、こう考えておるわけであります。  ですから、ダイオキシン問題につきましても、今日、日本の研究が世界的レベルにあるかどうか、その辺の検討も急いでいかなければならないと思っております。先生指摘のように、日本の知見が世界を濶歩できるような体制に持っていかなければならないと思って、その目標値を立てて頑張っておるところでございます。
  26. 小林守

    小林(守)委員 それで、私もよくわからないのですが、中央環境審議会生活環境審議会、それから食品衛生調査会、三審議会の答申案というのでしょうか、耐容一日摂取量についてというような資料の中に、アメリカでは、環境保護庁、EPAというエージェンシーが、WHOとは違った概念で実質安全量、VSDという考え方を用いてこの評価を行っているというふうに記されております。  このアメリカの環境保護庁の実質安全量という概念はどういうことなのか。体内負荷量との関係で、WHO体内負荷量基準にして考えていく、しかしアメリカでは実質安全量という概念を用いてこの評価を行ってきているというようなことなんですが、この違いについてお知らせいただけますか。
  27. 澤宏紀

    澤説明員 化学物質の毒性のあらわれ方には二つございまして、一つは、極めて少量の摂取でも影響がある可能性のあるもの、これは閾値なしという化学物質でございます。もう一つが閾値ありの化学物質でございますけれども、あるレベル以下であれば毒性がないものという二つ種類がございます。  閾値がないと考えられる化学物質の毒性を評価する場合、どの程度摂取すれば人口百万人当たりでがんの発生が何人増加するかを理論的に計算した値が、それぞれの化学物質の毒性の強さの比較に用いられております。先ほど先生指摘されましたアメリカのEPAは、伝統的に発がん物質はすべて閾値がないものとして取り扱うために、TDIよりも低い値となる、VSDと言っておりますけれども、実質安全量を用いてきております。  しかし、今般私どもTDIの算定に当たりましては、環境庁厚生省との合同会合におきまして、文献等を調査し、閾値の有無についての検討をした結果、WHOと同じくダイオキシンの毒性には閾値があるというふうに判断されたことから、ダイオキシン健康影響の指標として、アメリカが言っております実質安全量は用いずにTDIを用いることといたしました。  なお、WHO、ドイツ、オランダ、英国等も我が国と同様の算定方式を採用しておりまして、今後とも、実質安全量を用いる国は主要国ではアメリカ以外にはないというふうに考えております。  また、ダイオキシンは発がんのプロモーターというふうに言われておりまして、プロモーターには閾値が存在するということは以前から言われておりまして、ダイオキシンの今回のTDIの算定に当たりまして、これも参考にしまして、TDI体内負荷量で求めたということでございます。
  28. 小林守

    小林(守)委員 わかりました。閾値という一つの幅のある概念として物事を考えるか、それとも、とにかくどんな微量でも存在すれば害であるというようなものとしてダイオキシンをとらえるか、その辺の違いという形で認識してよろしいですね。  そういうことで、いわゆる排出ガスの規制量を、日本では一ナノグラム、また新しいものについては〇・一ぐらいの数値を出しておりますね。しかし、アメリカの一部では、焼却炉等の排出ガスについては〇・〇一ナノグラムまで、一ナノグラムの百分の一ですよね、そこまで目標にして取り組んでいるという数値がなぜ出てくるのかというところがわからなかったんですよ。アメリカのダイオキシンと日本のダイオキシンは質が違うんだなんてことじゃないと思うんですよね。どこのダイオキシンも同じだと思うんです。しかし、排出ガス規制で少なくとも日本では〇・一を目標とする、新設はそういうことですね。これは最大の四トン以上のものについてそういう規制がかけられるわけですけれども、それに対して、アメリカはもう既にその十分の一、〇・〇一ナノグラムというところまで出してきていますよね。なぜそういう違いが出てくるのかわからなかったんです。  要は、ゼロでなきゃだめだ。とにかく閾値はないということになれば、ゼロを目指すということなんだろうというふうに思うんですね。アメリカの場合はその考え方。しかしWHOでは、一定程度以内だったらばあらわれてこないというような考え方。その発がん性という視点に立つならば、直接遺伝子を損傷するとかそういう作用ではなくて、発がん作用を促進するような役割がダイオキシンの毒性なんだというような認識の違いというか、その科学的知見の違いが規制値の違いに出てくるんだろうというふうに思うんです。  そういう点で、科学的知見がこれからどういう形で進んでいくのかわかりませんけれども、日本がWHO基準をとって今回四というふうにされた。しかし、一から四のところについては幅のあるいろいろな検討の結果があって、科学的知見についても、これは日本の四というのはそれで安全だということではないということですよね。まだまだ科学的知見が不十分だけれども、国際的な水準に照らして、四で当面はいこうではないかということなんだろうというふうに思うんですが、そういうことでよろしいですか。
  29. 澤宏紀

    澤説明員 先ほどから御説明申し上げておりますけれども実験動物によりまして四ピコという数字が出てきたわけでございますけれども、一応四ピコであれば一生涯とっても安全であろうというふうに理解しております。しかしながら、もう少し低いレベルにおきましても微細な程度の影響が認められているということもございまして、今後とも調査研究を進めていく必要があるというふうに思っております。
  30. 小林守

    小林(守)委員 それでは次に、このTDIが四ピコグラムという形で設定されますると、今後それを基準にしていろいろな数式があるのだと思うのですよ、数式を用いて、大気はどうなんだ、さらには水質土壌、底質、こういうものについても一定の環境基準というものが設定されることになるわけであります。また、それが設定されることによって、その目標達成のためにどういう削減対策をとっていくのか、こういうことが目に見える形というか、具体的な形で出てくるわけでありますけれども、それについてはどのような手順とどのような作業が今後必要になっているのか、今どのように進められているのか、この辺をお示しいただきたいと思います。
  31. 廣瀬省

    廣瀬(省)政府委員 四ピコグラムというのが設定されましたので、ダイオキシン対策閣僚会議においてTDI見直し後六カ月程度を目途に大気環境指針も見直すということが決められておりますので、それに従って仕事をするということになります。  そういうことで、中央環境審議会大気部会ダイオキシン類環境基準専門委員会というのを設置いたしました。さっそく委員会を開催し、検討していただくよう作業をまた考えてまいります。そういうことで、六カ月というのをきちっと守っていく、なるべく早く考え仕事をしてまいりたい。それに基づきまして、具体的な対応についてより徹底をしていくということになると思っております。
  32. 遠藤保雄

    遠藤(保)政府委員 水質土壌につきまして御答弁申し上げます。  新しいTDIが定められたのでございますから、水質土壌につきましても環境基準設定検討が必要だと考えております。  その場合の手順でございますけれども、まず、環境中の水とか土壌汚染状況データ、あと、これがどういう経路で人体に吸収されていくか、そういう点について解明することが必要でございます。したがいまして、その調査を今現在やっておる、そして、そういう科学的知見の集積を図った上で環境基準設定検討していかなければいかぬ。ただ、残念ながら、この知見の集積については必ずしも今十分ではない、こういう問題が水質土壌の問題についてはあるという点だけは御理解を賜りたいと思います。
  33. 小林守

    小林(守)委員 底質もいいんですね。
  34. 遠藤保雄

    遠藤(保)政府委員 水質に並びまして、底質につきましても同じ考え方で対応していくということでございます。
  35. 小林守

    小林(守)委員 それでは、とにかくデータ不足というのは否めない事実でありますから、相当の予算もかかることですけれども、早急に、日本人の、日本の行政のお得意なところだと思いますから、枠組みが決まったんだから、さあこれで一気にスタートしていただきたい、このように思います。  そういうことで、この基準は定められてくるわけですけれども大気水質土壌、底質等の汚染の実態というか、データ集積ができるわけなんですが、しかし、それが直接人体への影響にどうのこうのということではなくて、めぐりめぐってそのダイオキシンを、食物濃縮というのですか、生物濃縮というか、そういう連鎖を通して、魚介類とか肉類、そういう食物、食品等からダイオキシンを人間が取り込むということになるわけであります。科学的知見によっても、人体への取り込み量の九割は食品、食物等からであるということであります。  それでは、基準はできたけれども、食物や食品について、これは、今焼却炉排出ガスが例えば去年からことしにかけて半分ぐらいになった、大変よかったということで解決できるような問題ではなくて、ダイオキシンそのものは極めて難分解なものであるということと、脂肪に溶けるというような性質を持っているんだというようなお話を聞いております。  とにかく環境の中に放出されて、挙動というか環境の中を、大気それから水に、そしてどんどん下流に、川を下っていって、海に、沿岸部に大体広がっていく。しかも、海流に乗って全世界の海に広がるということになるんでしょうが、それらを摂取するプランクトンから始まって、さまざまな食物連鎖の体系の中から、最終的に魚や肉から人間が摂取するというめぐり合わせになるわけであります。  食物連鎖の頂点に立つ人間に対する影響というのは、これからじわりじわりきいてくるんじゃないか、このように思えてならないわけでありますから、一年、二年の削減がどうだということではなくて、今日までの科学技術、化学的な発展というか、そういう中で、どのくらいの排出がされてきているのかということの方がむしろ大きいわけであります。  考えようによっては、今日問題になっているのは氷山の一角ではないのかな、もう既に環境中には相当の量が難分解のまま放置、放出されて蓄積しているというふうに考えなければならないのではないかな、このように思えてならないわけであります。  そういう点で、食物や食品のダイオキシン蓄積状況について、どのような検査体制をとろうとしているのか、またとっているのか、そこをお聞きしたいと思います。
  36. 小野昭雄

    小野(昭)政府委員 先生指摘のように、食品が人のダイオキシン摂取の主要な経路であるということは事実でございます。こういった点から、厚生省といたしましては、平成四年度から個別食品のダイオキシン汚染実態の調査を行っておりますし、平成八年度からは、平均的な食生活を行った場合のダイオキシンの摂取量を推計するという必要があるわけでございまして、地区別に一日摂取量調査、トータルダイエット調査というふうに言っておりますが、これを実施いたしまして、その結果を公表してきているところでございます。直近で申しますと、平成九年のトータルダイエット調査によりますと、食品を介した平均摂取量は二・四一ピコグラムというふうに推計をいたしております。  食品からのダイオキシン摂取の問題に関しましては、今申し上げましたような汚染実態調査と、それから摂取量というものを的確に把握いたしまして、これらの情報を国民の皆さんに的確にお伝えをするということは極めて重要だというふうに認識いたしております。  こういったことを徹底いたしますために、ダイオキシン検査法のガイドラインを策定いたしますとともに、検査機関におきます検査精度の確保、これは先生承知のように非常に微量のものをはかりますので、精度がちょっと狂いますと結果が大きく狂ってまいります。そういった意味での検査精度の確保ということが非常に重要でございます。  そういったことを一方で図りながら、先ほど申し上げましたようなダイオキシン汚染実態調査あるいは一日摂取量の調査というものを毎年行ってまいりたいと考えております。  具体的には、トータルダイエット調査につきましては、平成十年度は全国十カ所で行ったわけでございますが、平成十一年度はこれを十六カ所にふやしてよりデータをきちっとしたいということで、そういった意味での調査の実施及び検査体制の整備ということにつきまして、できるだけの努力を図りたいというふうに考えているところでございます。
  37. 小林守

    小林(守)委員 いずれにしても、そういう方向で、さらに積極的な取り組みを期待したいというふうに思います。  もう一点、マスコミ等も大変にぎわし、問題になったベルギー産の鳥肉とか卵、これがベルギーのある飼料工場、えさをつくる工場の、そのえさをつくるために使う油、その油の中にダイオキシン汚染されたものがあって、それを使った飼料を食べた鶏やそれから牛や豚や、そういうものが汚染されたというようなことで、ベルギーばかりではなく、その飼料を使ったフランスやオランダの農場からの食品、食物等についての検疫の問題が大変な問題になっておるわけです。  これについてはきょうは直接触れませんが、輸入の問題も含めて危機管理の問題だと思うんですけれども、この体制がおくれている、極めて不十分だということが今回のベルギー産の問題について明らかになっているということが指摘されております。そういう点で、食物にかかわる安全性の確認のための検疫体制、それからさまざまなデータ集積のための検査体制、そういうものをさらに充実していただきたい、このように考えております。  過去における排出の問題で、かかわっているのではないかという一つの事例として、母乳中のダイオキシン濃度が過去二十年ぐらいの間に半分ぐらいに低減したということがこの報告書の中でも触れられております。  それはそれで結構なことであるわけですけれども、また母乳に対する物すごい不安感をお母さん方が持たれて、母乳を子供に与えていいのかどうかとか人工乳の方がいいのかというようなことで、これもまた大変な社会不安をもたらしていることになるんですが、母乳の持っているほかのいろいろなメリットを考えるならば、やはり母乳中のダイオキシンの問題だけではない、子供の成長にとって必要なさまざまな機能を生かすためにも母乳を続けてもいいんだというようなことが書かれております。  それはそれで当面そういうことなんだろうというふうに思うんですけれども、ただ母乳が世界的にもまた日本でも、二十年ぐらいの間にデータ的には半減したということなんですが、このデータは、お聞きするところによると、一地方団体のある研究機関が、お乳を二十年来蓄積してきた。採取して保存してきた。そういうことがあって、この研究に取りかかることができたというふうなことをお聞きしております。  本来こういう問題については、民間なり地方団体の機関が取り組むということが当然あってしかるべきだと思うんですが、基本的にはやはり国政の中でも、しかるべき研究機関などが、先を見越して、少なくとも二十年前にはダイオキシンの問題というのは国際的には大きな問題になっていたわけでありますから、母乳の問題などについて、そのデータ集積、試料、実験の、研究のための材料そのものを採取しておくということ、そんなことすらなかったということが私には極めてお粗末きわまりないことではなかったのかなと思えてなりません。  幸いなことに、大阪のある研究機関が採取しておったということが、日本でも堂々とこういう公的な試料にこれを流用して、母乳中のダイオキシンはもう半分になったということを大々的に言っています、日本でも確認できているんだと。ところが、試料そのものはある地方自治体の、大阪のものだったと思いますけれども、そこで採取していたものを分析してこういうことが実証されたということでありますから、お粗末、これはもう本当に残念だなというふうに思えてなりません。  そういう点で、二十年の間、とにかく最新の国際的な動向も含めて、先見的にその資料収集とか研究のための材料を収集しておくぐらいの体制がなかったというところを深く反省していただいて、それでもなおかつその二十年ぐらいの間に半分ぐらいになったという原因は何なのか、一つも書いてありません。この報告書では何もない。  私は、今後のダイオキシン問題を取り上げていくときに、決定的に大事なところは、今までおくれた理由とか、それからいろいろなデータについてやはりきちっと明らかにしていく、これが求められているのではないかと思うのですよ。  そういう点で、なぜ、二十年の間に日本の母乳はダイオキシン濃度が半分ぐらいに下がったのだということをこの公的な書類の中で発表することになったのか、それを教えていただきたいと思います。
  38. 横田吉男

    ○横田政府委員 母乳中のダイオキシン類の年次推移につきましては、先生指摘のとおり、大阪府におきまして、当時PCBの問題がかなり大きな問題になったころではないかと思いますが、昭和四十八年から平成八年にかけまして採取され、凍結保存されておりました母乳の脂肪を用いまして、平成九年度に国の補助事業で、母乳中のダイオキシン類に関する調査研究といたしまして、濃度分布を分析したところでございます。  母乳の対象は、大阪府内に住む二十五歳から二十九歳の初産婦の母乳でございまして、毎年度十九人から三十九人ぐらいの母乳をそれぞれ等量ずつ混合いたしまして、各年度一検体として測定を行ったものでございます。四十八年当時では二十五・六ピコグラム、四十九年が三十二・一ピコグラムであったものが、平成八年には十六・三ピコグラムに減少しておりまして、二十三年間で約半分に減少しているということでございます。  この原因、理由等につきましては、報告書の中では詳細な解明等は行われていないところでございますが、専門家等の間におきましては、当時は、農薬とか除草剤の中にダイオキシン類が含まれていたものがあったのではないかというような指摘もされているところでございます。  私ども、今後とも、大阪府に対する補助金等を出すことによりまして、引き続き母乳を収集、保存しまして、継続的な調査を進めてまいりたいと考えております。  今回の報告書におきましては、こうした結果が使われたというふうに考えているところでございます。
  39. 小林守

    小林(守)委員 大阪府の採取されておったその母乳を、平成九年度に国の方の事業として使わせてもらった、分析して結果を出したというようなことだろうと思いますけれども、その事実の持っている問題というか環境行政のおくれ、この辺については厳しく自己批判、反省を求めたいと思います。  さて、PCPという農薬についてであります。これは、もちろん製造を禁止されて、使用も禁止されている物質です。ペンタクロロフェノールというのだそうでありますが、このPCP。それからもう一つ、CNP、クロルニトロフェンというのがあるのだそうであります。実は、横浜国立大学の環境科学研究センターの益永茂樹先生研究によりますると、一九五五年から一九九五年までのPCPとCNPによるダイオキシン類環境放出量、今日環境中に放出されている、蓄積されているダイオキシン全体の七五%をこの農薬が占めているというふうに科学的に研究されて推測しております。  現在、都市ごみなどの焼却炉また産廃の焼却炉から出てくるダイオキシン汚染の問題が非常にクローズアップされております。これももちろん重大な問題でありますけれども、既に環境中に放出されて蓄積しているPCPやCNPの汚染の問題は、実は現在放出されている都市ごみや産廃の焼却からの実に五倍もの量が放出されているのだというようなことが研究発表されております。  もちろん、焼却施設等の排出ガスについても厳しく削減をしていかなければなりませんが、既に便利な除草剤、農薬として使われてきたものが大変な問題だったということを考えるならば、これは氷山の一角である今日の排出ガス規制、既に出てしまった問題についてどうするんだという問題を考えていってもらわないと、もう全然話にならぬじゃないかということになります。今の取り組みを否定するものではありません。入り口に立ったというふうに言えると思うのですが、そういう点で、今後、水田等のダイオキシン類汚染状況の測定分析を緊急に行うべきではないか。  そして、なおかつ、未使用のまま農家等に保管されているこのCNP等の除草剤、これをその辺に捨てられては困るのですね。土に穴を掘って、そこへ捨てて土をかぶせてしまえば何となく安全みたいな意識がないとはまだまだ言えません。  実は、私自身も農山村に住んでおるものですから、二十年くらい前ですか、判こを持っていって農協から除草剤を買って、その残りがまだ納屋にあるのですが、どうしたらいいものか困っております。どこへ持っていったらいいのかもちょっとわからない、子供ももう大きくなっていますから心配ないのですが、これも処分の仕方については、やはり一定程度こういうふうにしなさいということがあればなと。ただ、グラモキソンという名称の農薬、除草剤だったので、これはCNPとかPCPと関連のダイオキシンを含んでいるものなのかどうかちょっとわかりません。  そういう点で、過去に市販された除草剤等について、ダイオキシンの毒性等価係数とかそういうものをきちっと示していただいて、この物質はとにかく即回収してここへ持ってきてください、外にまいてはいけませんよとか、もう使うのはやめてくださいとか、そういうものをきちっとやってもらわなければ困るな、このように思っております。  そういう点で、現在登録されている農薬について、毒性のあるダイオキシン類の有無についての検査ですね。ダイオキシン類ですから、多くの物質があります。しかも、毒性等価係数というのは、ダイオキシン類ダイオキシンの中のポリ塩化ジベンゾパラダイオキシン、PCDDが七種、それから、PCDF、フランの方が十種、それから、新たに加わったコプラナPCBが十二種、これが係数がわかっているものなんですね。それ以外のものについてもどうなのかということは、これは科学技術力をもってすれば毒性等価係数は出せると思います。農薬なり除草剤の中で、毒性等価係数のまだ定まっていないようなものはぜひ定めて取り組んでもらいたいと思いますし、既に毒性の有無について検査をしていただいて、しかも、CNPとかPCPとか、ダイオキシンの入っているような除草剤についての使用規制というのですか、使っていないようなものについてはこういうふうにして処理してくださいとか処分してくださいとか、どこへ持っていきなさいとか、そういうものをきちっとやってもらうことが大切ではないかな、このように思えてなりませんが、その辺の取り組みについてお聞きしたいと思います。
  40. 遠藤保雄

    遠藤(保)政府委員 今先生指摘のPCPあるいはCNPの農薬が過去に散布されまして、それで蓄積されているのじゃないかということについてでございますけれども、まず、現在この両者につきましては、農薬としては登録を取り消されておりまして使用されておりません。  したがいまして、問題は、過去に使用されたものについての扱いということと、あと、現在仮に残っているとするならば、先生が御指摘のように、変な形で一般環境中に出ないような取り扱いということになろうかと思います。  まず大前提といたしまして、ダイオキシン類というものにつきましては、植物に吸収されたり地上部に移行する、これはほとんどないとされている説が非常に強うございます。しかし、我が国では、農用地等農作物のダイオキシンの吸収関係についてのデータが必ずしも十分でございません。したがいまして、私どもといたしましては、水田を含む農用地のダイオキシン類による汚染状況につきまして、現在農水省とも連携いたしまして調査をしております。  そして、そういう中で、このダイオキシンにつきましていろいろ分析してみますと、燃焼系のものと燃焼系でないものというものの特性というのはわかりますので、そういう中できちんと実態を把握し、把握の上、いろいろな対応がないか考えていきたい、こう考えております。
  41. 樋口久俊

    ○樋口政府委員 御質問がございましたうち、私どものところに関係いたしますものについて二つほどお答えを申し上げます。  一つは、現在登録されている農薬につきましての毒性の有無の確認をどうしているかという話でございます。これにつきましては、先生承知のとおり、農薬取締法という法律がございまして、これに基づいて農林水産大臣の登録ということが行われております。  その場合には、毒性のあるダイオキシン類が含まれていないことを確認の上登録をまずして、現在使用、販売されているということでございますが、やはり分析技術が向上いたしますものですから、既に登録をされているものにつきましても、その新しい分析技術によりましてきちっと再確認をするということが必要じゃなかろうかと我々思っておりまして、先般、農薬メーカーに対しまして一斉に、化合物中にベンゼン核を有しているといいますか、そういう構造のものが約百種類ほどございますので、もう一度大丈夫かどうか分析をしてくれということを指示してございまして、各メーカーはそれぞれ分析機関に依頼を行ったというふうに聞いております。  さらに、先生お話ございましたが、ダイオキシンをめぐりましてはいろいろな学術論文等が出ておりますので、必要と判断されましたものにつきましては私どもの方で分析を依頼しているという状況がございます。  それからもう一点。現実に販売、使用されておりましたCNP除草剤というのがございまして、これにつきましては、もう既に御承知だと思いますが、平成六年に、当時の名前で三井東圧化学というところが主に販売をしておりました、現在三井化学という名前に変わっておりますけれども、約七千七百トンにつきまして市場から回収をしたということがございます。  それらは厳重に保管をされておりますし、その際、農家の在庫につきましても回収の対象になりまして、可能な限り努力をされたわけでございますが、こういう性格上、残っている可能性は否定できないものでございますので、私どもとしては機会をとらえましてそういうものの処理といいますか、それらについて会社も現在では当然引き取りの用意がございますし、扱いについて、例えば県の出先でございますと改良普及センターがございますし、農協さんも十分そういう体制をとっておられますので、そういうところへ御相談があれば適正な処理を対応してくれるものと考えております。
  42. 小林守

    小林(守)委員 それではもう一つダイオキシンが既に環境中に放出され、蓄積しているのではないか、環境中を挙動している、そしてまた、それがめぐりめぐって人間の体に返ってくるというような、途上にある問題として考えなければならないのは、自治体における焼却炉、さらに最終処分場の問題でございます。  今日では、法規制、法改正等も含めて、ここ二十年来随分改良、改善されました。正確にわからないんですが、法改正で相当厳しい焼却炉規制がされましたし、また一般廃棄物の焼却灰や一般ごみ、これの最終処分場は管理型の処分場でなければだめだということになっているわけです。  ところが、法規制以前の自治体における焼却炉、それから焼却灰を含めた最終処分場については、私自身もところどころ見たことがありますが、まず焼却炉については、野焼きまがいというか、本当に所沢のダイオキシンの問題じゃないですけれども、外から火が見えるような施設設備で燃やしていたのが実態です。大きいところはもっと違っていたかと思いますが、小さい市町村の段階では、まさに今の所沢で燃やしているような施設設備であったというふうに間違いなく言えると思います。  外から火が見えるようなかまです。そして、ふたをあけて入れて、そして、すのこみたいなのがあって、下から空気が入って燃えるような形ですね。かまというんじゃなくて、何といったらいいんでしょうか、そんな焼却炉というようなことで、野焼きまがいと言っていいかと思うんですが、今日では全く認められないような施設設備で自治体の焼却がなされていた。  そしてもう一つ、焼却灰等を含めた最終処分場が素掘りの処分場だったんですよ。これは何もないんですよ、とにかく素掘り。そこへ捨てて土をかけるというようなやり方、少なくとも十年ぐらい前までは全国自治体の三分の二はそういう方式だったんじゃないでしょうか。これは私もいろいろ聞いて、調べて、大体三分の二ぐらいは素掘りだというような自治体の最終処分場の実態を見ております。  ダイオキシン類が生成されるのはビニールやプラスチックが同時に燃やされて不完全燃焼のときだということを考えるならば、十年以前、ずっと前はビニールやプラスチックというのは余りなかったのじゃないかなという感じもするんです。しかし、ここ十四、五年の間に急速にふえてきておりますから、ビニールやプラスチックも一緒に燃やされた野焼きまがいの焼却炉、そして素掘りの最終処分場が相当、今は閉鎖されて使われておりませんけれども、放置されているのではないか。完全にそこをブロックして、または環境中に出ないように、少なくともそこだけは完全に閉鎖し遮へいして置かれているならばまだしも、焼却灰が飛散しているような山の中の、林の中の人から見えないところに大体あるものですから、そういうものについては完全な形で処分されている実態ではないのではないか。閉鎖しているけれども、後始末をちゃんとしていないんじゃないか、このように思えてなりません。  これは非常に難しい問題も抱えておりますが、少なくともその周辺の土壌水質についての調査を緊急に行うべきである。相当残されている、放置されているというのが実態だと思います。そういう点で、能勢町の問題などもありましたけれども、過去に使われて、一応今は隠れてしまっている焼却炉や焼却灰等の最終処分場の跡地の問題についてどのように取り組まれているか、お聞きしたいと思います。
  43. 小野昭雄

    小野(昭)政府委員 最終処分場につきましては、私の方からお答えを申し上げます。  厚生省といたしましては、市町村一般廃棄物の最終処分場につきまして、その構造や埋め立てた廃棄物の種類につきまして平成九年度に調査を実施いたしまして、昨年三月にその実態を取りまとめて公表したところでございます。  この調査結果によりますと、千九百一施設のうち五百三十八施設におきまして、埋め立てた廃棄物から生ずる汚水等が周囲に漏れ出さないようにするために必要な遮水シート等の設備を備えていないということが判明をしたわけでございます。  このために、これらの最終処分場につきまして、焼却灰など周辺の地下水等を汚染するおそれのある廃棄物の搬入を停止するとともに、周辺の地下水等の調査を行いまして、汚染が見られました場合には汚染の拡散防止措置を講ずるように都道府県を通じまして市町村に指導したところでございます。  またあわせて、平成十年度の第一次補正予算によりまして、ダイオキシンを含めた水質調査あるいは埋め立てた一般廃棄物から生じます汚水等の流出を防止するための措置に対しまして補助を行いまして、一般廃棄物の最終処分場の適正化対策の推進を図ってきたところでございます。  現在、これらの最終処分場の周辺地下水等の水質調査の結果につきましては取りまとめを行っておりまして、近々公表する予定といたしているところでございます。  厚生省といたしましては、この調査結果も踏まえまして、水質調査の継続的な実施あるいは汚染防止措置の実施等適切な対応をとるように、市町村に対しまして都道府県を通じて指導してまいりたいと考えているところでございます。
  44. 遠藤保雄

    遠藤(保)政府委員 先生指摘質問のうち、野焼きまがいの自治体の焼却炉跡地についての対応でございますけれども、これは自治体が設置しております焼却施設跡地及びその周辺の汚染状況調査につきましては、施設設置管理者である自治体等においての調査を我々は期待しているものでございます。  その際に、この取り組みを支援するために、環境庁としましては、まず第一は汚染が想定された場所での調査手法、第二は汚染が発見された場合の対策手法について、専門家で構成される検討会検討いただいているところでございます。この検討結果につきましては、調査対策の実施に当たり活用いただけるよう取りまとまり次第自治体に通知したい、こう思っております。こういうことで対応していきたいと思っております。
  45. 小林守

    小林(守)委員 少なくとも、今日までの取り組みのおくれというか、そういうものを早急に回復するというようなことも含めて、ぜひ抜本的な取り組みをお願いしたいと思います。  いずれにしても、あらゆるところで調査研究、測定分析というものが行われることになります。次に、この検査体制の問題を取り上げてみたいと思うのですが、ダイオキシン対策の適切な実施に不可欠なのは、もちろんダイオキシンの検査体制の整備でございます。検査の信頼性とか、精度の管理とか、これらについても一定の信頼される客観的な測定分析手法、マニュアル、こういうものがオーソライズされる必要があるのではないか。JIS規格制定という形での取り組みを考えているようでありますけれども、客観性や信頼性、精度管理も確保できる、そういうことをまず早急に打ち立てていただきたいというふうに思いますし、またそれぞれの自治体が測定や分析ができるような検査体制の整備も緊急な課題になってきております。  そういう点で、ガスクロマトグラフ質量分析計というのですか、こういう分析の機械設備をするためには大体一億円かかる、しかもその機械設備を置いておく場所、建物が必要だ、これに大体一億円ぐらいかかるというお話で、大体一カ所二億円ぐらいかかるそうであります。ということになりますると、これは自治体では財政的な負担が大変だということになりますし、少なくとも小さい市町村では、みずから持つだけの財政力はなかなか難しいと思うのですね。  しかし、少なくとも都道府県に一カ所ぐらいは最低なきゃおかしい話だろうというふうに思います。もちろん、政令市とか何かはまた別ですけれども、最低都道府県単位でどこの県にも設置して、できるだけ都道府県の中のブロック単位ぐらいに置けるというようなところまでいかないと抜本的な検査体制というのはできないんじゃないかと思うのです。いずれにしても、国の財政的な支援が不可欠だというふうに言わせてもらいます。  その際に、測定や分析の技術というのは、日本人は非常に研究熱心だし、器用だし、創意工夫、そういう点ではお得意なところですから、これから時間の短縮、今は二週間から四十日ぐらいかかると言われておりますけれども、これがさらに短期間で結果が出せるというようなことになるのではないか。  それから、現在一検体について三十万円ぐらいかかっているということなんですが、ダイオキシン最初のころ、国政のレベルでも問題になったころは、一検体八十万円から百万円かかると言われていたのですね。それから、廃棄物財団の関係測定分析機関の談合じゃないかという問題がいろいろありましたけれども、現在は、百万円近い最初のころの値段から、一検体について三十万円ぐらいまで下がってきた、競争の原理も働き出したというようなところでありますが、それはさておいて、技術者の養成も欠かすことができない、このように思うのです。  きょうは時間が大分迫ってきましたから、それらについて、とにかく早急に全国的な調査研究、測定分析の検査体制をつくる必要があるだろうというふうに思うのです。でないと、莫大な費用がかかっちゃうということなんですね。そんなことを指摘しておきたいなと思うのです。  一つだけ、この測定分析の際に必ず、毒性等価係数一である最も純粋なダイオキシン、これが2・3・7・8TCDDと言われるものですけれども、これについてアメリカから輸入しているんだという話を聞いています。日本では生産されておりません。自然にダイオキシン類にまじってこういうものが形成される、自然生成というような物質なんですが、これを化学的につくることができるんだと思います。  オウムのサリン事件などもあってぞっとしたこともありますけれども、2・3・7・8TCDDはサリンの倍くらいの毒性を持った人工的な最悪、最強の毒物だと言われております。これは現在輸入されているということ、しかしこれはどのように管理されているのかよくわかりません。  そんなことで、この2・3・7・8TCDDというのは、毒性等価係数の基準になるものですから使わざるを得ない、測定分析に必ず必要なんだというふうに言われていますが、これについては使い方を誤られたら大変なことになるわけですよ。言わずもがなですが、本当に化学兵器にだってなってしまうものですから。これはとにかく国家管理が必要な物質ではないのかな、このように思えてならないのですが、これらについて、現在どのようになっているのか、チェック体制はどうなっているのかということをお願いしたいと思います。  特に、民間の化学関係の機関、それから大学等の研究機関の中で、亜砒酸とか、何か毒物事件がありましたね。ポットの中に何か毒物を入れられたとか、こんな事件もあって、そういうことを考えると、オウムだけじゃなくて、これは大変なことだというふうに思えてならないのですよ。そういう点で、危機管理ということも含めて、2・3・7・8TCDDについてはどうなっているのかをお聞きしたいと思います。
  46. 廣瀬省

    廣瀬(省)政府委員 先生のおっしゃるように、2・3・7・8TCDDは、具体的に測定にどうしても使う必要がある、それから大変量が多くなってきているということになりますので、その保管については十分注意するように考えておりますが、具体的に、有害大気汚染物質測定方法マニュアルの中で、保管について、かぎのかかるところにちゃんと保管するようにという形で指導はしております。そして、そのことを測定分析に当たる関係者に周知を図っていくというやり方をとっております。  ただ、法的な形での規制措置はないという形になります。具体的には、あくまでも測定分析という、一つのものを使うわけでございますから、どんなことでも自動分析計とかいろいろなものに全部標準液というものが使われまして、それを具体的に測定する、化学反応を起こさせる溶液が必要でございますから、そういう形の中では、かなりフリーの形が多いのではないかというふうに思っています。特にこれに関しては規制措置はないということでございます。  ですから、専門家に対してきちっとした措置をしていくというふうにすることが基本かというふうに思っております。
  47. 小林守

    小林(守)委員 かぎのかかるところに完全に保管しろということなんですが、亜砒酸とかいろいろなほかの毒性の物質だってそういうふうになっているんだと思うのですよ。それがいつの間にか持ち出されるわけでしょう。そんなことじゃ、ちょっとどうにもなりませんよね。これは考え直してもらわなくちゃ困るのじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  48. 廣瀬省

    廣瀬(省)政府委員 現在の段階では、具体的にある程度測定分析の機械があってダイオキシンの測定をするという場所がほぼ決まっておりますから、その中できちっと保管をさせていくことを徹底させることがまず重要なことかと思っております。  ですから、具体的に法律とか何かで縛るということではなくて、今の体制をきちっと周知徹底させていくということで守っていくということ。先ほど先生おっしゃられましたように、各都道府県もそういう形での体制を固めていかなきゃいけない。四十七都道府県を含めてということになりますが、そういう中では、その関係者にきちっとした訓練をしていくということ、法があったから守れるということではなくて、持っている薬に対して専門家としてどう責任をとるかということを徹底的に教えていくというのが基本ではないだろうかと思っています。  特に、ダイオキシン測定にかかわっては、一定の機関、そして一兆分の一の精度の問題という形をとるわけですから、それだけの教育を受けた人たちがやるわけですので、きちっとさせていくということがまず基本だと思っております。そこで徹底的な指導をしていくということから、仕事をしていきたいというふうに思っております。
  49. 小林守

    小林(守)委員 私は、必ずしもそれで十分とは思いません。これからは、民間のそういう研究機関とか民間の事業所でも、そういうものを取り扱ってみずから測定分析をするところも多くなってくる、できるようになってくると思いますし、ただ単に、研究者とか専門家の良心とか良識とか、そういうものだけに頼っていていい問題ではなかろうというふうに思えてならないんですよ、これは。  そんなことで、別の機会にまた取り上げてみたいと思いますが、輸入関係の業者に対してもどういう形になっているのかとか、これは相当やはり考える必要がある問題ではないかなと思えてなりません。  そんなことで、ただ単にほかの毒物と同じような管理体制というか、使用マニュアルというか、それでいいものだとは思えません。サリンは製造禁止ですね、完全に製造禁止でしょう。つくっただけで罰則をかけるようなものになったわけですね。ところが、それの倍もある毒性の強いダイオキシン、2・3・7・8を輸入している。今後、財政的なことを考えると、国産にした方がいいんじゃないかなという考え方も出てくるかもしれない。アメリカは何でつくれるんだろう、化学兵器を相当つくっている国だからということになるのかなというふうに思えてならないのですが、これはまた別の問題として考えなきゃなりません。  サリンは完全に製造禁止、もちろん使用禁止物質に指定しましたね。しかし、このダイオキシンについては、毒性からいったらもっと大変な問題でありますし、しかし使わざるを得ないものなんですよ。そういうことになると、相当厳しい規制のもとで使っていくということをしないと、私はとんだ間違いが出てくるのではないかという心配があります。指摘させていただいて、時間がなくなりますので最後に移りたいと思うんです。  七月の十九日に中央港湾審議会が開催される予定と聞いております。そこに、和歌山県の下津港の沖合、雑賀崎というのだそうですが、その沖の埋め立て問題、港湾整備のための埋め立ての問題がかけられるというふうに聞いております。経過について御説明いただきたいと思うんですけれども、再修正をした和歌山県の港湾整備計画が上げられてくるということになるようであります。  これについては、風光明媚というか歴史的自然環境、景観のすばらしいところということと、瀬戸内海の国立公園の隣接というようなことで、前回の中央港湾審議会では、環境庁は、その国立公園の景観を壊すおそれがあるということで見直しを求めたというような経過があるようでありますが、今回出されてくる計画については、七月十九日に港湾審議会において環境庁はどのような考え方で臨もうとしているのかまずお聞きをして、その後、運輸省や環境庁が、今後この計画段階の審議会と、もう一つは公有水面埋め立ての認可の際に、運輸省は環境庁長官意見を聞くというシステムがありますけれども、その際に、後から藤前干潟のように公有水面の埋立認可の際に意見を求めるという、最後のところでもちろん意見をきちっとされて藤前干潟については保全することができたわけなんですが、それ以前の港湾整備計画の中でも、時代の状況の違いもあったんだと思いますが、やはり連動するものだと思うんですよ。計画段階では、まあこの辺でやむを得ないんじゃないかという意見を言ってしまって、埋め立ての許認可の段階で待ってくれと言うのは、やはり行政の一貫性からいうとちょっと問題があるということも踏まえて、今度の港湾審議会に環境庁がメンバーとして臨む姿勢というのは極めて重大だと私は思います。  そういう点で、長官の決意も含めてお聞きをいたしたいと思います。
  50. 真鍋賢二

    真鍋国務大臣 雑賀崎の前面の埋立計画につきましては、平成九年の港湾審議会の計画部会において、当初の計画に対しまして環境庁としての景観の保全等の意見を提出したところでございます。その後のことにつきましては、いろいろ経過があるわけでありますけれども、次の審議会には、特に景観面から修正された案が上程されると伺っておりまして、当庁としては、これまでの経緯を踏まえて、当該計画の環境影響について厳正に審査した上で必要な意見を述べてまいりたいと思っておるところであります。  私も先般、雑賀崎の地に参りましてその視察をさせていただいたわけであります。まさに景観のすばらしいところでありまして、これは何としても保存していかなければならないという感触は持っておるわけであります。いずれにいたしましても、この審議会において必要な意見を述べていきたいと考えておる次第であります。
  51. 小林守

    小林(守)委員 環境行政と港湾行政というのはやはり質的な違いが当然あるんだろうと思うんですね。そういう点で、環境行政の中で責任の環境庁がやはり環境アセスという視点に立って、基本的にはこの計画については規模からいって国の新しい環境アセス法の適用対象になる事業ではないんだというふうに聞いておりますが、しかし、基本的な考え方は、やはり環境アセスメント法にかかわる考え方に立って、一つは代替案の問題とか、一つの枠組みの中での発想でいくならば、なかなかこれを変えていくということは難しいと思うんですが、計画段階でありますから、代替案ということをいろいろな形で考えられるというふうに思うんですよ。  そういう点で、代替案の検討は幾つぐらいされているんだというようなことも、当然環境の視点から出されてしかるべきだと思いますし、もちろん住民参加とか国民意見の聴取、これらについてもアセスメント法ではきちっと整備されて位置づけられましたから、それについても、今回のこの計画については環境行政の視点に立って、国民意見聴取、それから住民の参加というようなものがどう確保されているのかという視点も大事なポイントではないかな、このように思えてなりません。もちろん、瀬戸内海環境保全特別措置法に明記されている、いわゆる景観保全のためにも瀬戸内海については埋め立ては厳に抑制するんだという立場基本に持って取り組んでいただきたいな、このように思います。  これらの要望という形で、ただし今回の港湾審議会というのは極めて重要だということの認識の上に立って、腹をくくって、後の公有水面の埋め立て許認可の際に運輸大臣から意見を求められたときに、状況の違いとかいろいろなことを踏まえて本音を言うようなことではなくて、今からきちっと本音を言っておいていただきたい、このように要望しておきたいと思います。  それで、運輸省にお聞きしたいんですが、今日、公共事業のあり方については、費用効果の問題、さらには自然環境との共生という問題、さらに住民等の参加、国民同意の問題、こういうことで、公共事業のあり方について基本的に建設省や運輸省、そのほかの省庁についても見直しをする要綱が定められて進められているわけなんですけれども、この雑賀崎の港湾整備計画について、運輸省ではどのように受けとめているのか。  これは和歌山県の事業でありますから、許認可の立場にある、意見を申し上げる立場にある運輸省でありますけれども、直轄の事業の部分もあるそうでありますので。  この港湾整備計画について、公共事業の見直しの中では、巨大なむだをやっているんじゃないか、巨大な釣り堀をつくっているんじゃないかというような御批判もあるのも事実でありますし、またいろいろ聞いてまいりますると、これから大型船による林産品の輸入拡大が目的なんだというようなことで、十四メーターの大水深のバースをつくるというような計画の内容だそうであります。大型船による林産品の輸入をするということなんですが、実質的に林産品の輸入はここ数年減少の傾向にあるという中にあって、巨大なバースをつくるということについては、もともと過大な需要予測なのではないかというようなことも言えると思いますし、今、港湾整備計画をする必然性なり必要性というものが低下しているのではないか。費用効果の問題。そしてなおかつ、万葉集にも歌われたような歴史的自然景観のすばらしいところを犠牲にするわけであります。それとの比較というのは難しい判断だと思うんですが、そういう点からも、運輸省はエコポート構想という形で、自然環境との共生、自然との共生という視点に立った港湾づくりを考えているんだというふうな構想も発表されているんですけれども、どのように受けとめているのかお聞きをして終わりにしたいと思います。
  52. 川嶋康宏

    ○川嶋政府委員 御質問の中で、いわゆる透明性と申しますか、費用効果等についての御質問一つございましたので、先にそれを答えさせていただきたいと思います。  私ども、釣り堀というお話がございましたけれども、投資の重点化ということについては大変心を砕いてやらせていただいているつもりでございます。平成十一年度の事業等につきましても、中枢、中核港湾でありますとか、廃棄物関係のそういった事業に重点投資をしておりますし、地方港湾につきましても、平成六年から十一年の間に約三三%実施港数を削減したというようなことで努力をさせていただいたところでございます。  また、透明性という中で、いわゆる時のアセス等によりまして、平成十一年度には一事業を中止いたしましたし、二十六事業については休止をするという決定もいたしております。また、新しく事業を実施する場合には、費用効果分析というものをやりながら、透明性を深めながら事業を実施していきたいというふうに思っているところでございます。  御質問の和歌山・下津港の計画でございますが、先生お話にもありましたように、当初百十七ヘクタールの埋め立ての計画があったわけでございますけれども、去る六月の二十一日に、地方港湾審議会で七十四ヘクタールに縮小した計画が審議をされまして、地方港湾審議会の答申が得られたというふうに聞いております。現在、私どもの方に港湾計画が出されておりますので、お話がございました港湾審議会に諮りました上で、その御意見を聞きながら、運輸省としては適切に対処していきたいというふうに考えているところでございます。  その計画自体につきまして、港湾計画そのものにつきましても、計画段階におきまして、水質でありますとかあるいは底質でありますとか、そういった一連の環境アセスメントも実施しております。それから、御指摘のありました大型岸壁につきましても、木材等を取り扱うということでございます。それから、用地そのものにつきましては、廃棄物処分場ということになってございまして、京奈和ですかの高規格幹線道路関係から発生いたします残土の処理でありますとか、あるいは港湾から発生いたしますしゅんせつ土等につきまして、約一千九十万立米を処分することといたしております。  その事業の効果等につきましても、その岸壁から揚がります場合と、いわゆる他港を利用いたしました場合との便益、あるいは廃棄物の処分に関連した便益、そしてでき上がりました土地にかかわります便益、そういったものをもろもろ計算いたしまして、費用効果分析についてもコストを上回る便益があるというふうに私どもは認識をしているところでございます。
  53. 小林守

    小林(守)委員 時間が参りましたので終わりますが、いずれにしても、運輸省から意見を求められたときは、環境アセスメントをしっかりと環境庁は見ることができる立場になるわけですから、先ほど私も申し上げましたけれども、そういう視点に立って早い時点で基本的な布石を打っておいていただきたいというふうに要請させていただきまして、終わります。
  54. 北橋健治

    北橋委員長 田端正広君。
  55. 田端正広

    ○田端委員 公明党の田端正広でございます。よろしくお願いいたします。  猛毒ダイオキシン規制については、これはもう大変緊急な課題であった、こう思いますが、幸い参議院においても法案がまとまる、そういう方向が出てきたということは大変喜ばしい、こう思っております。  このダイオキシン類対策特別措置法につきましては、私たち昨年暮れに考え方をまとめました。そして、ことしの一月の二十七日だったと思いますが、我が党から参議院に提出させていただいた。そういうことが一つのたたき台になりまして、もちろん民主党さんも対案をお出しになっておりましたし、そういうことから協議が始まって、今日、全会派、全党一致という形で今参議院で可決という形が見えてきた、方向が見えてきた。そういう意味では、本当に今までなかったこういう一つの特殊な化学物質に対しての総合的な法的規制ができるという意味で、この問題に対して環境行政一つのあかしとしてこういうことができるということは、国民生活の安心、安全という意味で非常に喜ばしいことだ、こう思うわけでございます。  同時に政府の方においても、そういう流れの中で、いわゆるTDIをどうするかということで、四ピコということをお決めになったということも今までになかったことで、これまで環境庁が五ピコ、あるいは厚生省が十ピコ、そういうばらつきのあったところにここで一つの見解が出され、そしてまた、さらにそれをもっとより縮めよう、こういう方向も見えているわけでありますから、私は評価したい、こう思っております。これによって、大気あるいは水、土壌、こういったものについてのこれからの基準というものも決まっていくんだろう、こう思いますので、非常にこれは画期的な、環境行政上、歴史に残る大きな一つの法案の成立並びに政府の決定だ、こう思っております。  その上で、きょうはこの四ピコの問題を中心にちょっと議論をさせていただきたいと思います。  WHOでいけば、当面四ピコとしながら、しかし今後は最大限の努力をして目標値を一ピコ未満にという目標を掲げておるわけでありますが、その辺のところが今回の政府の決定はまだちょっと一歩食い足りないな、こういう思いをしております。  例えば日本人の平均的な、一日体重一キロ当たり摂取量が二・六ピコということが言われているわけですから、そういった意味では四という数字はまだまだ不満が残る数字ではないか、こういう思いをしております。  したがって、まず、どういうことでこの四ということをお決めになったのか、その算出を含めた根拠からお尋ねしたいと思います。
  56. 澤宏紀

    澤説明員 今回のTDIの算定に当たりましては、専門家WHO報告書を詳細にわたり分析いただき、また、不明な点につきましては、環境庁及び厚生省の職員と研究者が米国、カナダまで調査に行き、専門家と協議をし、さらにWHO見直し以降に報告された知見もあわせて科学的に評価を行った上で、我が国ダイオキシンの当面のTDIを四ピコグラム・パー・キログラム・パー・デーとすることとの結論が出されたものでございます。  具体的には、低濃度影響を認めたとされる動物実験等知見について、その影響毒性学的意義試験信頼性、また試験再現性等を総合的に判断した結果、影響の発現が示される最も低い体内負荷量動物体内蓄積量ということでございますけれども体内負荷量の値がおおむね体重一キログラム当たり八十六ナノグラム前後に存在することが明らかになったため、これをまず出発点としてTDIの算定を行ったものでございます。これに人と動物の差、あるいは人の個人差の不確実係数一〇を用いまして求めたものでございます。ただし、より低い体内負荷量影響が認められたとの報告もあることから、さらに調査研究を進める必要があるというふうにされておるところでございます。
  57. 田端正広

    ○田端委員 その算出されている式といいますか、それはわかるわけです。しかし、実際問題、通常、暴露レベルが日本人に平均二・六ピコあるとすれば、四というのはそれを超えているわけですから、そういう意味では非常にまだ不満足である。だから、例えば一にしても、二・六であればまだ超えている人がたくさんいるということになれば社会的混乱が起こるから、四にしてここのところはおさめておこう、こういうことでされたのではないのかな、こういう思いもいたします。  それはともかく、私の言いたいのは、仮に四ピコでいくのなら、それはそれでいいのですが、なぜWHO並みに一に近づけるというそこのところが言えないのか、これに不満を感じるわけです。  このいただいた資料を見ても、「将来的には、摂取量をできる限り少なくしていくことが望ましい」、こう表現されています。しかし、もとの作業班の原案は、できる限りゼロに近づける、こういう表現であった、こういうふうに聞いております。そうすると、当初の作業班の原案よりも最終的に今回決めたこのところは、できる限り少なくしていく、こういう非常に抽象的なことにしてしまった、私は後退したのじゃないか、こう思いますが、その点、どうですか。
  58. 澤宏紀

    澤説明員 WHOが一から四というふうに決め、その一の考え方についてまず御説明させていただきたいと思います。  今回、WHOが用いました論文も私ども専門家評価をしていただいたわけでございますけれどもWHOTDIの算定の根拠とした五つの実験、ラットを用いた実験が三つございます。それから、アカゲザルを用いた実験が二つあるわけでございます。まず、TDIにして一ピコグラム程度で生じるラットの精子の減少を見た実験については、実験結果に不確実な点が残されており、この実験結果から直接的にTDIを計算するのは問題があるという専門家意見が一致をしました。  また、アカゲザルの実験につきましては、実験動物の管理が十分でなかったことやダイオキシン影響とされた学習能力の低下を直ちに猿より高等な人間に当てはめることには無理があるという専門家あるいは学界の議論があったことから、アカゲザルの実験についてもTDIの算定の出発点とすることは困難であるという専門家意見が一致したわけでございます。  そういうことによりまして、先ほど申しましたように、最終的には体内負荷量八十六ナノグラムを出発点としてTDIを四というふうに決められたわけでございます。WHOが採用した試験を切り捨てたというものではなく、それらの持つ意義を専門的に評価して、濃淡をつけた上で、それらも考慮してTDIを四ピコというふうにしたわけでございます。  また、先ほど報告書の原案のことについて御指摘がございました。報告書の案の作成に当たりましては、担当の専門委員及び事務局において素案を作成いたしまして、ワーキンググループにおける議論や電子メールやファクス等のやりとり等を踏まえて作成しております。さらに、用語や文章の表現の統一化など、文章を精査し、最終的にワーキンググループ委員の了解と合意により報告書の案を完成させ、親会議に提出したわけでございます。  御指摘報告書の案はそうした精査を行う以前のもので、素案、またその前の素案というふうなドラフトのようなものを幾つか経てできてきておるわけでございますけれども、ワーキンググループの各委員の最終合意をいただく前のものと考えられます。  本文中の記載ぶりにつきまして、文章を精査していく過程で委員の総意のもとに変更されたものであり、素案より最終案に至る過程でこのように文章の変更というのは適宜変更が相当な箇所で行われているわけでございます。
  59. 田端正広

    ○田端委員 ちょっと確認させていただきますが、この不確実係数の一〇、それでいいのかどうかというのはだれが決めるのですか。そういうことはよくわかりません。それは十分の一にした、単なるそういうことだろうと思う。単なるかどうかはわかりませんよ、それは根拠はあると思います、科学的根拠はあるんだろうけれども、十分の一なのか二十分の一なのか、これは人間が決めることですから、これはそれでよかったかどうかという議論もあると思います、一つは。  それからもう一つ。今おっしゃった、つまり八十六ナノグラムというものが実験結果の中で一つ基準であって、それ以下の実験については不確実、実験としてはまだ科学的に立証されていない、そういうものであるから採用しなかった、だから異常が起こる限界値を八十六ナノグラムに算定したんだ。それを基準に、不確実係数一〇を用いて、つまり五十キロで半分にしてやれば四・何ぼになるから、端数を切り捨てて四ピコだ、こういうことだと思うのです。しかし、このいただいた資料五つ、どれとどれをとられたのか知りませんが、実験のデータが出ていますが、疑わしきは罰するのであって、やはりそれなりに異常が起こったという報告のあることは事実なんです。  それで、もう一つは、では日本で、この中で実験をやったのはどれなんだ、一つか二つでしょう、日本の例は。この一九九九年の大迫さんというのが、これが日本だろうと思いますが、あとは海外のデータ。もしそういうことを言うのなら、厚生省なり環境庁なりが自分たちで実験できなかったのか、こういう思いもいたします。  それから、この数字の中で、例えば、精巣中の精子の細胞数が減ったという例えば二十七ナノグラムデータが出ております。この場合、二十七を今の計算算定方式でいきますと、半分に割って一〇で割ってということになれば一・三になるわけですから、一・三ということはつまり一ピコになるわけですね。ほかにも、四十三あるいは五十五というところで、例えば性行動の変化とかそういう何らかの影響が出ているわけです。さっき、四十で出ている子宮内膜症のことについてもお触れになっていたようですけれども、四十でもこういうことは出ているわけです。  そういった数値をどうして切り捨てるのか、そこのところが私にはちょっと理解ができないので、果たして四という数字でいいんですかということをさっきからくどく申し上げているわけです。もう一回お答えいただきたいと思います。
  60. 澤宏紀

    澤説明員 先ほども御答弁申しましたが、実験動物による科学的論文を詳細に検討し、四というふうに決められたわけでございます。その四以下の数字でございますけれども、この実験の過程、その結果を評価し、不確実な点が残されておるということで、直接的にTDIを計算するのには問題があるという専門家意見であるわけでございます。  先ほど不確実係数お話がございました。一般的に、動物実験の結果を用いまして人のTDIを計算する場合に不確実係数を用いるわけでございますけれども、その不確実係数、今回一〇という数字を採用しておりますけれども、この不確実係数の大きさは人と動物の差、あるいは人の個体差を考慮して決められるわけでございます。これは専門的に決められるということでございます。  そこで、今回このTDIの算定に当たりましては、人はラットなどの実験動物よりも蓄積性が高いということを踏まえまして、投与量そのものではなく、体内負荷量に着目した計算を行っております。このため、薬物動態学においては、人と動物との差のうち、蓄積性の違いはこの計算の過程で考慮しなくてもよくなるというふうに考えられます。一方、人と実験動物の感受性の差につきましては、動物実験等による知見から、人が実験動物よりもダイオキシンに対する感受性が高いとする明確な知見はなく、むしろ人の方が感受性が低いというデータが存在することが明らかにされております。  以上のようなことから、今回のTDIの算定では、人と動物の差などについて現時点において得られる知見を十分考慮した上で、人の個体差など残った不確実性を補償するため、不確実係数一〇を用いて計算しております。これは、昨年のWHO専門家会合でもその一〇を採用しているわけでございます。  それで、四よりも低い数字が出されておるということでございますけれども、それは人のTDIを導くのに十分信頼に足り得るデータではないという判断で、無視したわけでございませんですけれども、四ピコが当面のTDIとして妥当であると。さらに、その四ピコよりも低いレベルでの動物実験で微細な影響が認められておるということは専門家も認識されまして、今後とも調査研究を継続する必要があるということでございます。  以上のような観点から、当面のTDIは四ピコが我が国として適当だろうという判断であるわけでございますけれども、四ピコ以下であれば安全であるというふうに理解しております。
  61. 田端正広

    ○田端委員 大臣、私今具体的に幾つか問題提起をしました。なぜゼロに近づけるというのが消えてしまったのか。あるいは、八十六という基準以下のところを、いろいろ科学的にはあるんでしょうけれども、実際には国際学会の中で報告されているわけですから、そういった点をはしょってそこのところに基準を設けようとしたのか。基準を設けた場合でも、例えば、一を目指すんだということを付記できなかったのかとか、こういう疑問をこの決定の経過を見ると感じるわけですが、大臣はどういうふうにお考えですか。
  62. 真鍋賢二

    真鍋国務大臣 この数値を決めるには過程がございまして、ことしの初めに環境庁厚生省専門家会議にゆだねまして、数値いかにということでいろいろ検討を重ねていただいたわけであります。それが先般私の方に、四ピコグラムという一日の耐容摂取量を報告いただいたわけであります。  片や、環境庁厚生省専門官、そしてまた国立環境研究所の専門研究員をアメリカ、カナダに派遣いたしまして、その経緯を調査させたわけであります。その結果、WHOの四ピコグラムから一ピコグラムという数値の裏づけ調査ができたわけでありますし、また、そのデータも入手したわけであります。  そして、その後、我が国におきましても国環研で研究を進めていただきました。いろいろ研究した結果が、やはり下の一ピコグラムという数値にはまだまだ研究の余地ありという報告が来たところでありまして、その結果も踏まえて、その専門家会議意見等と相まったところで、それでは上限を四ピコグラムという形にして、それ以下の問題についてはなお検討を加えていこうということになったわけであります。  先ほども申しましたように、日本のこのダイオキシン問題についての研究もようやくにして軌道に乗ってまいったところでありまして、先般も中央環境審議会の中にある専門部会長さんの御意見をいただきましたところ、日本の根拠ある数値を出せる状態に徐々になってまいりました、この研究成果を踏まえて、自信を持って世界に発信できるダイオキシン対策数値というものを出してまいるように努力いたしますというような報告もいただいたわけであります。  そんなことでダイオキシン対策関係閣僚会議にも報告いたしまして、それが政府として認める結果になったわけでありますので、今そういう段階にあるということについての御認識をいただいて、これからも頑張ってまいりたいと思う次第であります。
  63. 田端正広

    ○田端委員 いやいや、わかるんです。わかるんですけれども、要するに四だけでいいんですかということを申し上げているわけで、もう少し私は柔軟にお願いしたいと思うんです。  具体的にそれじゃ申し上げますが、例えば、このいただいた資料を見ても、母乳中のダイオキシンは、我が国では、最近の調査によれば平均的にはおおむね一日当たり六十ピコグラムと書かれています。一日に六十ピコですよ。そうすると、もうこれで既に四ピコというのは飛んでしまっているわけです。赤ちゃんですよ、これは。だからもうこれでいけば、単純に計算したって十五倍になるわけですから。赤ちゃんが母乳を飲むのは短い期間だからいいという理論になるのかどうかわかりませんが、しかし、非常に問題はあろうと思います。  それから、例えば体重五キロの赤ちゃんと体重五十キロの成人とでは、同じ四ピコという基準であっても、五キロの人は二十ピコ、体重五十キロの成人は二百ピコになるわけですから、私は、同じ数字を掛けていってそれでいいのか、体力差とかそういうものもあるんではないか、こういう思いがするのです。  だから、例えば四ピコの場合の基準は五十キロというか大人なんだ、赤ちゃんとか子供の場合はこうなるんだ、こういう別の立て方もあったんではないのか、こんな思いがしますが、この点についてどうですか。
  64. 澤宏紀

    澤説明員 まず、耐容一日摂取量をどういうふうに考えるかということでございます。  先ほど先生もおっしゃられましたけれども、人が一生涯にわたり摂取しても健康に対する有害な影響があらわれないと判断される体重一キログラム一日当たりの摂取量というふうに思うわけでございます。このTDIを決める場合に、人が一生涯にわたり摂取しても有害な影響があらわれないと判断する量であるということでありますので、TDIとは、乳児、幼児あるいは小児、成人といった対象者の違いごとに作成するものではないというふうに考えております。しかし、乳児、幼児、小児の違いなどによる感受性の違いがあると思います。人の個体差に十分配慮してTDIを策定することは重要であるというふうに思うわけでございます。  このため、今回のTDI策定におきましても、ダイオキシン動物実験において最も感受性が高いと考えられる胎児期における暴露による影響を指標としたものを採用しておるわけでございますけれども、不確実係数一〇に個体差による要因を見込んで算出しております。そういうことで、先ほど言われました子供から成人、その辺の感受性の違いにも十分配慮したものというふうに考えております。
  65. 田端正広

    ○田端委員 よくわかりません。なかなかおっしゃっている意味で私は理解しづらいのですが、もうちょっと行きます。  東京都の調査の中で、母乳中のダイオキシンについては、例えば初産の方の場合は、二十五—二十九歳のお母さんで百グラムの母乳中百五ピコグラム、あるいは三十歳から三十四歳の方で百四十二ピコグラム、こういう数字が、データが出ています。例えば、赤ちゃんが百二十ミリリットル一キロ当たり飲むと言われておりますが、そうすると、これはもう百二十六とか百七十とか、そういうピコグラムになるわけでありまして、これが、大人の一日の摂取量、通常平均的に二・六と言われていますが、既にそれの五十倍とか六十倍のものを赤ちゃんが飲んでいる、こういうことになります。  したがって私は、四ピコで決める、それはもうしようがない、それはそれでいってもらってもいいと思いますが、例えば私がさっきから提起しているように、そういう赤ちゃんとか体力の弱い方とか、赤ちゃんを抱えているお母さんのことが心配であるとかいろいろなことがありますから、例えば母乳の検査をきちっとできるような体制をつくったらどうか、しかも公的な費用でやってあげられるようにするような体制をやはり考えた方がいいんではないか、そう思います。  つまり、母乳についてはもうこれだけ高い数字が出ているわけですから、そのことが非常に大きな問題になると思いますので、その辺をひとつ考えていただきたい、こう思いますが、どうでしょう。
  66. 横田吉男

    ○横田政府委員 母乳中のダイオキシン類濃度につきましては、先生指摘のとおり数十ピコグラム以上というようなことで今回の基準よりもかなり高い濃度が出ているということで、私どもその実態の把握が重要であるということで、現在も二十一府県、二十二地域、各地域約十から二十検体を対象といたしまして調査を行っているところでございます。  ただ、母乳中のダイオキシン類の測定につきましては、かなり高度な技術なり検査機器が必要ということで、手間もかかるということで、現在検査機関が非常に限られている状況にございます。こうした中で、また、調査研究段階というようなことでございますので、個人の方、それぞれ心配な点もあるかと思いますけれども、その希望に応じましてそれぞれの検査をし、これに対して公費でやるというところまでは現在のところ考えていないところでございます。
  67. 田端正広

    ○田端委員 ひとつ前向きに検討してください。  大臣にもう一回お伺いします。  いただいたこの資料を見ても、はっきりと将来目標については書かれていませんが、今後とも調査研究が必要とか、こういう目標については書かれているわけです。一ピコを目指すんだ、私はこういう方向をぜひおとりいただきたい。そして、もっと将来的には、つまりダイオキシンゼロ社会へ持っていくんだ、こういう環境庁長官としてしっかりとした御決意をひとついただきたい、こう思うのですが、どうでしょう。
  68. 真鍋賢二

    真鍋国務大臣 専門的な知見を私は有しておりませんけれども、意気込みというのは先生と変わらないものを持っておるわけであります。ダイオキシン対策関係閣僚会議におきましても、基本指針というものを絶えず見ていこうということで、その都度会議を開いて最高決定の機関としての使命を果たしていきたいということであります。  素人の意見しか出せないわけでありますけれども、例えばがん細胞というものについて思いをいたしますと、人間だれしも持っておることではないだろうか。ダイオキシン問題についても、赤ちゃんがそんなに濃度の高いものを摂取しても被害がないと言ったら言い過ぎでございましょうが、それが対応していっておる。このダイオキシンの測定以前というのは、母乳で育てることが一番健全な赤ちゃんを育てることである、こう言われておったわけでありますから、そういう科学的根拠というものはどこにあるのだろうかというようなことに思いをいたしながらこの問題に取り組んでいきたい、こんな気持ちを持っておるものであります。
  69. 田端正広

    ○田端委員 ぜひひとつよろしくお願いします。  排出インベントリーのことについてお尋ねしますが、つまり、平成十年は平成九年に比べて半減した、非常にこれはいいことだと思います。しかし、それでもなおかつドイツの九倍、オランダの六倍、こういうふうに日本における行政のおくれというのが依然出ているわけですから、これはしっかりと今後平成十四年を目指して九割削減という目標に取り組んでいただきたい、こう思います。  具体的に、小型焼却炉というのが大変問題だろうと思います。特に家庭用のものとか、いろいろ全国に九万あるとかということも言われておりますが、そういうものをこれからどうしていくのか、そこのところが大事だと思います。今回の対象となったのは一万七千件ぐらいだと伺っておりますが、それでもまだ相当漏れていると思いますね、事業所の分だと思いますが。したがって、これらの小型焼却炉の実態調査というものを一回やった方がいいんじゃないのか、こういう思いをしております。  ちょっとまとめて質問します。  それから、今回からコプラナPCBも明確に対象になっているわけですから、この調査も今までやっていませんから、この排出量調査というものもやっていただきたい、含めていただいた方がいいんじゃないかと思います。  それから、今までに土壌とか、川の土とか海底の汚泥といいますか、そこに蓄積されている分というのが未調査だと思いますので、これらについてもやはり調査をしていく必要があろう、こう思います。  それからもう一つは、平成十四年、九割削減ということはわかりますが、年次目標みたいなものがあるのかどうか、ここのところがよくわかっていないんですが、本来ならば具体的に年次目標を立てた方がいいのではないか、こういう思いもいたしますが、その点どうでしょう。
  70. 廣瀬省

    廣瀬(省)政府委員 一つ問題点は、全国の未規制小型焼却炉設置、稼働状況の実態の把握ということでございますが、これは急いで把握をしてまいりたいというふうに思っています。そして、今回の約二千九百グラムがございますが、今回の調査だけでも三百二十五という数字を出しておりますので、やはりこの辺のところはしっかり押さえていく。ただ、今後、規制の問題を考えたときには、具体的にどこに幾つあるかということがはっきりわからなければいけないので、先生のおっしゃるとおりしっかりと把握をしておかないと、次の具体的対策が立たないということを考えておりますので、そのようにしてまいりたい。  それから、コプラナPCBの問題でございますが、TDIの問題ではコプラナPCBを含めてという形になっておりますので、当然、今後コプラナPCB分も排出インベントリーの中に加えていくという作業をしていきたいというふうに思っております。  それから、年次計画ということをつくるべきでないかということなんですが、先ほどの小型焼却炉の未規制の問題も含めたときに、実態を十分つかんでいないものとかいろいろな形がございます。そういうことでは、毎年毎年インベントリーを作成していく過程の中で効果評価していくという作業を持つのが、私たちにとっては年次計画を立てるというのは一番安易な形ではないかと逆に思っておりまして、十四年までに、自分のやっていることをきちっと評価していくような形での対策が必要だというふうに思っています。  それから、関係閣僚会議でも適時いろいろな形での指示が出されてくるというふうに思っておりますので、そういう意味では、毎年きちっと自分のやった仕事評価していく形での報告書をつくっていくということの中で、十四年までの九割削減ということを達成するように努力していきたいというふうに思っております。
  71. 遠藤保雄

    遠藤(保)政府委員 先生質問ございました、土壌、底質にストックされましたダイオキシンについて調査していくべきではないか、こういうことでございますけれども、これについては現在実施しております。例えば、底質について平成九年の例で見ますと、河川、湖沼、海域、それぞれ調査しております。  したがいまして、こういう調査を今後とも継続していきまして、きちんと実態把握をしてまいりたいと思っております。
  72. 田端正広

    ○田端委員 排出インベントリーの数字を見ても、未規制小型焼却炉、これでも三百二十五—三百四十五という数字が出ているわけで、小型の、事業所も含めてですが、事業所以外のそういうところももっと、これは数がたくさんあると思いますが、そこのところをこれからちゃんとしていかなきゃならない。  それで、厚生省の方、例えば小型焼却炉を大型化して、効率化して、広域化して、そして三百ぐらい新設する、こういうことに今方向は行っていると思いますが、けさほどもそのことで一兆五千億という大変な金がかかるというお話がございましたが、そういう方向は大変いいことだと思います。ダイオキシンをなくすという趣旨からいくと、それはいいんです。しかし、家庭用とか、いろいろなものがまだありますから、そこのところについてもどうするのかという思いをしているわけで、恐らく家庭用なんかは今回対象外だったんだろう、そう思います。  その辺について、さらに綿密な調査対策が必要だと思いますが、厚生省の方の見解を伺いたいと思います。
  73. 小野昭雄

    小野(昭)政府委員 御指摘の未規制小型焼却炉についてでございますが、これは、未規制小型焼却炉でさまざまな廃棄物を焼却した場合のダイオキシン類発生量、それから発生のメカニズムにつきまして調査研究を進めているところでございますが、平成十年度におきましては、小型焼却炉からのダイオキシン類排出実態について調査を行っているところでございます。  今後、こういった調査と並行いたしまして、これらの調査結果あるいは排出インベントリーの推計結果も踏まえまして、生活環境審議会廃棄物処理部会のダイオキシン対策技術専門委員会におきまして、燃焼条件の改善あるいは焼却する廃棄物の制限等についてどう指導するか、あるいは小規模焼却施設の集約化をどう進めるか、あるいは規制対象となります焼却炉処理能力というものをどの程度まで切り下げるかといったこと等未規制焼却炉の実態に対応いたしました対策検討を行いまして、必要に応じ対策を実施してまいりたいということで、計画的に今作業を進めているところでございます。
  74. 田端正広

    ○田端委員 ダイオキシンの問題は焼却炉の問題。これは厚生省もかつては小型化を推進してきた、そういういきさつがあると思います。それが誤っていたわけですから、ぜひそこのところはしっかりとフォローしていただきたい、こう思います。  それで、焼却施設に近いところほどやはり汚染されているという実態があると思います。  例えば、北海道の帯広畜産大学の中野益男教授の報告によりますと、牛乳の中におけるダイオキシン類濃度はやはり焼却場に近いところほど明確に出ている、こういう報告がされております。例えば周辺五キロ以内では、乳脂肪一cc当たり平均四・六ピコ、これを体重五十キロの成人が一日一リットル飲めば、摂取量は三・四ピコになります。つまり、それだけでもう今回の基準である四という数字に達するものを飲んでしまうわけですから、もし体重二十五キロの子供であれば、この倍になるわけですから六・八、こういうことになるわけで、一日耐容摂取量との絡みからいけば、牛乳を飲むだけでも四という数字を超えてしまう、こういうことであります。  したがって、今後、非常に製品として汚染されているというふうなことが乳製品で予測されるものについては、何か考えていく必要があるのじゃないか。例えばヨーロッパ、ドイツ、オランダ、フランス等では、乳脂肪一グラム当たり五ピコ以上は流通を禁止するとかということになっているようでありますが、やはり健康を守るという意味からいけば、これは今後検討に値することではないかと思いますが、日本もそういう乳製品等についての対応をどうするか、これは厚生省になるかもわかりませんが、その辺はどうでしょう。
  75. 小野昭雄

    小野(昭)政府委員 ダイオキシンによります人の健康影響というのを評価する場合には、通常、食生活から人が取り込みますダイオキシン総量と、それからTDI耐容一日摂取量を比較することによって行うことが一般的でございまして、これは我が国のみならず、諸外国においても同様であるというふうに承知をいたしております。  我が国の平均的な食生活におきまして、人が取り込みますダイオキシンの総量につきましての調査結果につきましては、二・四一ピコグラムというふうになっているところでございますし、諸外国の状況も踏まえますと、現状のダイオキシンの摂取レベルでは健康影響が生じるというふうには考えられないわけであります。  先生指摘の牛乳の場合につきましても、通常は、一定の地域、ある牧場でとったものだけが流通するわけではございませんで、多くのものを集めて、それで一体として出荷するというのが通常の流通の状態だというふうに私ども承知をいたしております。そういう意味で、実際の市販牛乳のダイオキシン類濃度というのを調べてみますと、〇・〇三ピコグラム・パー・グラムという程度でありまして、そういったところでは大きな影響は出ないというふうに考えております。  今申し上げましたような理由から、食品中のダイオキシン類汚染はさまざまでございます。また、個人の食生活は非常に多様でございますので、個別食品ごとに基準を設けるということは適切だというふうには考えておりません。通常の食生活から取り込むダイオキシンの総量とTDIの比較方式で妥当だというふうに考えておりますけれども、これらの食品の安全性の問題につきましては、食品衛生調査会という調査会がございますので、その場での御意見もお伺いしたいというふうに考えているところでございます。
  76. 田端正広

    ○田端委員 食品の問題については、先般、ベルギーで大きな事件が起こったわけであります。だから、ぜひ今から日本もいろいろな形で検討しておくことは大事だろう。厚生省の今の答弁では、私は非常に甘いという感じがいたします。  これはもう少し本当は議論したいんですけれども、ちょっとはしょります。今回のベルギーの事件も、大臣の首がすっ飛び、内閣が交代するというところまでいくぐらいの大事件であった、こう思うわけでありまして、食品に関してのことは、ぜひ慎重の上にも慎重であっていただきたい。  例えば、問題になった鶏、このもも肉百グラムで計算してみますと、これは最大九百ピコになっていますが、二百六十三ピコグラムになります。そして、卵一個、これを計算しますと七十六ピコになります。つまり、四ピコという基準からいきますと、もも肉の場合は六十六倍、卵で十九倍、こういうことになるわけでありまして、ベルギーで大変な騒動になったということも、これは推定できるわけです。  そういった意味で、日本でも今までもマスコミ的には話題になったこともあるわけですから、ぜひ食べ物に関して、食品と健康という意味で、食品衛生対策としてもぜひこれはお願いしたい、そう思います。これは厚生省よりも、長官にその辺のところをお伺いしてみたいと思います。
  77. 真鍋賢二

    真鍋国務大臣 まさにベルギーの事件は想像を超えた出来事であったわけであります。しかし、現実に起こったわけであります。そういうことが起こった場合にはどうあるべきかということは、やはり事前の打ち合わせを十分しておかなきゃならない、省庁を挙げて対策を講じる気概を持ってやっていかなきゃならない、こう思っております。
  78. 田端正広

    ○田端委員 ぜひよろしくお願いします。  最後に、豊能郡美化センターのことでちょっとお伺いいたします。  いよいよ今月の中ごろから本格的な撤去作業が始まるようであります。それで、先般私も現地を見てまいりました。来年の三月十五日までに汚染物の除去、解体をやる、こういうことであります。要するに、建物をそのままにしておいて中の施設を解体、除去して、それぞれドラム缶に詰めて、ドラム缶を密封して、そのドラム缶を建物の中に積み上げていく、こういうことであります。そうすると、建物そのものは来年三月に密封して、中にとどめておくんだろうと思いますが、そこから先はどうするんだ。そのまま永久にほっておくのか、こういうことを感じるわけです。  それからもう一つ。周辺の土壌、三千ピコとか三千九百とか千八百とかいろいろな数値が出ておりますが、こういう土壌をどうするんだ。南側ののり面の汚染土壌、これは既に収納して三百二十袋ずっと積み上げてあります。ところが、今度北側の山林の土壌の分、これもやがてするんだと思いますが、しかし、これも同じように袋に入れて積んであって、建物の中に収容しているだけなんですね。これを将来どうするかという方向は何も決まっていない。  私は、これだけ科学が進み、時代の先端を行っている日本として、そういう汚いものだけ詰めてそこに積み上げてほっておく、こういうことでいいんだろうかということを感じました。この問題について、これは環境庁になるのかどうかわかりませんが、お考えをお伺いして、質問を終わりたいと思います。
  79. 遠藤保雄

    遠藤(保)政府委員 豊能郡の美化センター周辺の土壌ダイオキシンについて汚染された土壌についての対策でございますけれども、これにつきましては、実態に応じまして、封じ込めとかあるいは浄化対策が必要になってこようと思います。  しかし、これは土壌が非常に大量でございますので、特に、こういう大量な土壌を浄化する場合にコスト的にもあるいは技術的にもどういうふうな対応が可能なのか、これを研究しなければいかぬということで、環境庁といたしましては、今年度からダイオキシン類汚染土壌浄化技術の実証試験を実施することとしております。  具体的には、民間から技術を公募するとともに、今後サイトの選定を進めまして実証を行う予定でございます。この結果を踏まえまして、いろいろ現地における技術的な支援というものを今後考えてまいりたいと思っております。
  80. 田端正広

    ○田端委員 建物の方は。
  81. 小野昭雄

    小野(昭)政府委員 豊能郡美化センターにおきましては、三月の二十九日から、美化センターの設置者であります環境施設組合が焼却施設の解体、撤去作業の準備を進めまして、六月十五日からは、施設内に堆積、付着しておりますダイオキシン汚染物の除去作業工程に入っているところでございます。  撤去されましたダイオキシン汚染物につきましては、今先生指摘のように詰められているわけでございますが、これらにつきましては、組合におきまして具体的な処理方法等の検討を行いまして汚染物の処理を行うということになるわけでございます。  厚生省におきましては、平成十年度の第三次補正予算におきまして、これらの高濃度ダイオキシン類の特別措置といたしまして、施設の解体等に対しまして財政支援をすることとしておりますし、また、分解処理技術についての実証実験というのを実施いたしておりまして、その試験結果も踏まえまして、施設組合に対します技術的な支援に引き続き努めてまいりたいと考えております。
  82. 田端正広

    ○田端委員 以上で終わります。ありがとうございました。
  83. 北橋健治

    北橋委員長 中村鋭一君。
  84. 中村鋭一

    ○中村(鋭)委員 本日の委員会で、ここまで私も聞いておりましたら、四ピコという数字が再三にわたって出ているわけでございます。  法案を見ると、TDIは一キロ当たり四ピコということです。環境庁の見解をお伺いしたいのですが、提出された法案は四ピコですね。素人考えで、これが一キロ当たり千ピコなら重大な影響を与えるということは常識的に私なりに理解できます。ゼロピコにするというのも努力目標としてはあり得ても、現実にはこの数字は不可能だ、こう思うのです。  環境庁、どうですか。十ピコならぐあいが悪い、一ピコはちょっと無理かな、じゃ、四ピコが妥当かな。この法案を作成した側からすれば、英知を結集してこの四という数字が出た、だから法案を提出させていただいたということなんでしょうが、この四という数字について、環境庁、まだ省になっていないのですね、私はもう省というつもりでお伺いしたい、環境省の見解をひとつ。
  85. 澤宏紀

    澤説明員 四という数字についてということでございますけれども、まず、TDI動物実験で科学的に決めるということでございます。それで、昨年のWHO専門家会合、またそれを受けて今回私ども見直し審議会の専門先生方の御討論、科学的論文に基づいて、最新の信頼にたえる論文のデータに基づいて算定されまして、当面四ピコとするのが妥当というふうに根拠をいただきまして、四ピコであれば安全だろうということで理解しております。
  86. 中村鋭一

    ○中村(鋭)委員 お許しをいただきまして、少し自然保護関係についてお尋ねをさせていただきたいと思います。  トキが生まれて、まことにこれは喜ぶべきニュースでございましたが、現在のトキの発育状況体重、えさの摂取量、えさの内容、それからプリンティングというのですか、飛ぶための訓練、こういった状況。それから、名前を公募されたようでございますが、きょう長官いらっしゃいますね。もし、もう名前が決まっておったら、ないしょででもいいですから教えていただきたい。お願いいたします。
  87. 丸山晴男

    ○丸山政府委員 佐渡トキ保護センターで五月の二十一日にふ化したひなでございますが、順調に育ちまして、四十二日たちまして、現在、体重は千三百八十グラム、ほぼ母親の親鳥と同じ体重に成長いたしました。人工飼料に加えまして、生きたドジョウも捕まえて食べられるようになりまして、現在のえさの量は二百グラムから三百グラムでございます。  ひなの名前につきましては、全国の一万一千に上る小学校のクラスあるいはグループから応募をいただきまして、午前中からトキ二世名前選考懇談会というのを開催し、冒頭真鍋大臣の方から、すべての名前を採用したい気持ちだ、こういったようなごあいさつもいただきました。現在のところ、各検討委員先生方、広辞苑を片手に一生懸命検討を進めているという段階でございます。
  88. 中村鋭一

    ○中村(鋭)委員 まだ決定はしていないわけですか。(真鍋国務大臣「今、選考中です」と呼ぶ)そうですか。ありがとうございます。  ひとつ大事にして、佐渡だけじゃなくて、ニッポニア・ニッポンですから、行く行くは日本の里山の上をトキが縦横に飛しょうする日が来ることをお互いに願いたいと思います。  ことしの二月に自然保護局の方でレッドリスト、特に汽水・淡水のレッドリストの見直しの発表をなさいました。その中で、琵琶湖に生息しております淡水魚に関して、新たにレッドリストに挙げられたもの、既に挙げられていたもの等々について、それともう一つ、レッドリストの基準が変更された、こう思うのですが、それについてまずお伺いをいたしたいと思います。
  89. 丸山晴男

    ○丸山政府委員 本年二月に公表させていただきました汽水・淡水魚類のレッドリスト、全部で七十六種類になっておりますが、その中で琵琶湖に生息する種といたしましては、アユモドキ、アブラヒガイ、スジシマドジョウなどが絶滅危惧I類、それからウツセミカジカなどが絶滅危惧II類、ビワマスなどが準絶滅危惧種ということでございまして、この中でアブラヒガイ、スジシマドジョウ、ウツセミカジカなどは新たに絶滅のおそれのある種として掲載いたしたというものでございます。
  90. 中村鋭一

    ○中村(鋭)委員 局長、このレッドリストに挙げる場合に当然考慮の中に入っていると思うのですが、最初から生息数が極端に少ないのがありますね、何千年も昔から。例えばアユカケとかアユモドキとか、琵琶湖のイワトコナマズとかビワコオオナマズとか、こういうのは元来生息の個体数が昔から少ないわけですね。ところが一方では、例えば琵琶湖にしかいないホンモロコ、これはコイ科の硬骨魚目の淡水魚、成魚でも十四センチを出ない魚でございまして、これは昔からフナずしの原料になるニゴロブナと並んで、琵琶湖産の淡水魚の漁獲統計を見れば、イサザとニゴロブナとホンモロコは常にベストスリーを占めていて、たくさんとれていたものですね。たくさんとれていたものが激減するというのと、最初からちょっとしかいないものが減ってきてそれが絶滅危惧等に挙げられるというのとは違う、こう思うのです。  元来、絶滅危惧をさるべき対象魚についてレッドリストに挙げるのには、どういう方に委嘱し、環境庁としてはどういう調査の仕方をしているのですか。それは定性的、定量的にどういうふうにやっていらっしゃるのか、要するに基準ですね、それを教えていただきたい。
  91. 丸山晴男

    ○丸山政府委員 汽水・淡水魚類のレッドリストの検討当たりましては、その汽水・淡水魚類の専門家をお願いいたしまして、検討会作業部会を設置いたしたところでございます。  検討会のメンバーは、大学あるいは博物館、研究機関などで汽水・淡水魚類の研究専門にされている先生方をお願いしておりまして、その中には当然琵琶湖の魚類に詳しい専門家も含まれているものでございます。  また、検討の仕方でございますけれども、絶滅のおそれのある程度の評価、掲載種かどうかという判定につきましては、統計がある、例えば漁獲統計などで漁獲量がわかっている、こういったようなものも含めまして、文献や資料に基づき、また専門家知見に基づき、また必要に応じての現地調査も実施をいたしておるものでございます。  ただ、数量的な基準を明確に設けてということまでは必ずしもまいりませんで、数値的な評価データが得られない種が多いということで、主に定性的な評価専門家知見に基づいて判断をしていくということで、基準を採用していただいております。
  92. 中村鋭一

    ○中村(鋭)委員 今もあなたは専門家知見とおっしゃいましたが、私の手元にある資料では、「それを補うために必要に応じ若干の現地調査を行った。」という環境庁の御報告でありますが、私はこれはやはり若干の現地調査ではいけない、こう思うのですよ。それで、手元にそのための委員方の名簿がありますけれども、現場の委員がいかにも少ない。  こんな重要なこと、レッドデータブックに記載する絶滅種、絶滅危惧種、今度はそれをIA、IB、IIとお分けになったわけでありますけれども、そういうことを決定するのに、学者が、大学院とかどこかの研究室で地元の漁業組合とか県庁の水産に電話をして最近どんな調子ですかとか、あるいは非常に限られた分野で専門的に研究している魚学者等々に聞いて、端的に言えば、推測に基づいてこのようなことを軽々に決定すべきではない、こう私は思うんですね。  だから、やはり若干の現地調査じゃなくて、環境庁としては徹底した現地調査ですね。それで、やはり自分の目で見て、何だったら網ぐらい打ってやる、そういう調査を繰り返し繰り返しやって、それでレッドリストに挙げるべきだ、こう思うんですが、私の考え、間違っているでしょうかね。
  93. 丸山晴男

    ○丸山政府委員 大変重要な御意見だと思っております。  絶滅のおそれのあるレベルでございますけれども、ミヤコタナゴですとかイタセンパラ、リュウキュウアユといったようなものが著名でございますが、これらは、何匹といいますか何尾といいますか、大体全国で数千尾と言われております、数千匹しかおらない。それに対しまして、漁獲統計に載ってきますようなホンモロコですとかニゴロブナ、これはもちろん漁獲が激減をいたしてはおりますけれども、最近の漁獲量を見ましても、ホンモロコの場合ですと十三万キログラム、ニゴロブナ四万キログラムで、仮にホンモロコを一匹百グラムといたしますと百三十万匹が一応漁獲されている。ニゴロブナも、一匹四百グラムといたしますと十万匹くらいは少なくなっておりますが漁獲されておるということで、生息数は恐らくそれのかなり大きなオーダーであろう。  したがって、その漁獲が減っていることに対しましては、生息環境整備、漁場の整備といったようなことが大事でございまして、漁獲の回復、あるいはこういった固有種、琵琶湖の固有種といったようなものの回復というのは大事でございます。絶滅のおそれのある種かどうかということになりますと、最近メダカを新しく加えたわけでございますが、これは十キロ平方メッシュ、四千メッシュを全国とりまして、そのうちの、四千のうちの三千五百で発見できなかったということで、ある意味では国土の九割でもうメダカが見られなくなっている。こういったものにつきまして、絶滅のおそれのある種として掲載をさせていただいているわけでございます。  現地調査あるいは現地の専門家の御意見、これは極めて大事でございまして、今年度、環境学習ゾーン・モデル事業で、水に親しむような、ボランティアグループの方々に、各地でこういった環境学習に参画していただいておりまして、そういったような方々からも現地に即したデータなどをいただきながら、積極的に対応してまいりたいと考えております。
  94. 中村鋭一

    ○中村(鋭)委員 ここからはちょっとあなたと議論をしたい点ですよ。  例えば、これは水産庁の統計ですが、ホンモロコとニゴロブナについて言及しますが、ホンモロコは、昭和六十一年、六十二年平均が二十八万二千二百九十八キロですね。それが、平成七、八年平均、十年たって十三万七千二百六十四キロ、五一%減ですね。  ここに、私滋賀県からいただいた資料があるんですが、一九九六年になりましてモロコの生産量が激減しているんですね。今おっしゃった統計でも五一%ですが、その調査の次の年度にホンモロコは激減しているわけですよ。だからこの数字は、今やりましたら、五一じゃなくて、大変高い、もう八〇%、九〇%のオーダーで減っているんだと思います、昭和六十一年度に比較してですよ。  それから、同じようにニゴロブナは、昭和六十一年度調査から平成七年調査にかけてで六二%減ですね。今平成十一年ですから、これも現実には物すごい急カーブでその生産量は激減をしているんだと思います。  だから、今おっしゃったように、知見に基づいて、現地調査というならば、その数字はやはり正確でなければならぬ、私はこう思うんですね。電話をかけて聞いたから、いや、去年は何キロとれてまっせ、モロコまだおりまっせというのではない。  私は釣りが好きなものですから、特に、滋賀県の生まれでございますので、子供のときからもうモロコ釣りは楽しみにして、春四月になりますと、昔は琵琶湖の湖岸にもう何千人という釣り人が出て、何百そうという舟が出て、それから、琵琶湖の風物詩と言われておりますが、えり漁、あのえりの中にモロコとフナがいっぱい入りまして大変なにぎわい。これは漁業者にとりましても釣り人にとりましても、モロコとかフナというのはもう本当に大昔から湖国の人にとりましては切っても切り離せない親しい存在であったんですね。  ことし、私三回琵琶湖に行ったんですが、まず琵琶湖周辺の釣り具店で、モロコ釣りのえさ、それから仕掛け、道具類、さお、一切もう置いておりません。これはもうあなた行かれたらわかります。置いてないんですよ。ということは、それで生活を立てている釣り具店の人たちが、モロコはもう先生一匹もおりませんのや、道具置いてもしようがないし、えさ置いてもしようがないからアカムシもミミズも置いてませんわと。私ら、昔は金曜日の晩から土曜日の朝にかけては家族総出で徹夜してアカムシを薬包紙に包む作業に追われた、これが楽しみやったと、商売繁盛で。それがもう一切置いてないというんですよ。行ってください、局長。もう琵琶湖にえりはありません。えりに入るフナもモロコもいなくなったんですよ。これが現実なんですね。  そういうことをやはりしっかりと認識をして、定性、定量的にあらゆる限りの調査を継続的に徹底して実施して後に初めてレッドリストに挙げるべきだ、私はこう思うんですね。今少しはとれているとおっしゃいましたが、現実はそのようなことであります。  しかもその上に、このカテゴリーを見ても、ここにあります絶滅危惧IA類、これは定性的要件として、ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの。では、モロコやニゴロブナはこれに当たらぬのですかと私は言いたくなるわけですね。それから、やはりIAで定量的要件としては、今後十年間もしくは三世代のどちらか長い期間を通じて、八〇%以上の減少があると予測される。現に、十年前と比較しても九〇%以上減っているんですよ。今後十年間に八〇%以上の減少があると予測される、あるいは出現範囲、生息地面積、成熟個体数等に極度の減少が見られる、これが定量的要件としてカテゴリーに挙げられているわけでしょう。  だったら、何でモロコやニゴロブナが今回二月発表のリストに、少なくとも絶滅危惧IAか、百歩を譲ってもBか、さらに千歩を譲ってもやはりII類に挙げるべきだったと私は思う。そういうときに、委嘱してありますから、委員方がそう言っておりますからでは済まぬと思うんですが、その点について、どうですか、局長
  95. 丸山晴男

    ○丸山政府委員 ホンモロコは、先生おっしゃるとおり、味が淡泊で、旬が一月から三月、日本のコイの中で最も美味で、関西では高級魚だということで親しまれておりますし、ニゴロブナも、正統派のフナずしの原料だということで大変親しまれているものでございますが、それが漁獲量が激減しているというのは事実でございます。  絶滅のレッドデータブックという考え方は、いわば漁獲をしないで、イタセンパラといったもののように、生息地を保全していかに種の絶滅の危険から防いでいくかということで、もうあらゆる努力を傾注してその数をふやしていくというものでございます。言ってみますれば、ホンモロコ、ニゴロブナにつきましては、漁獲は極めて激減はいたしておりますけれども、その生息環境整備いかんによってはまだまだ回復の余地が十分見込まれるというふうに考えられておりまして、それ自身は、いわば直ちに絶滅のおそれがあるというところの数までの減少ではないのではないかというのが専門家意見でございます。  また、琵琶湖博物館もできまして、琵琶湖の在来からの固有種の維持につきましては、県を挙げて大変関心を持って取り組んでいるところでございまして、そういった琵琶湖本来の固有種の生息環境整備して数を回復させていくということにつきましては、私どもとしてもできる限りの協力、支援をしてまいりたいと考えておりますし、レッドデータブックの掲載につきましても、できるだけ現地調査あるいは現地の方の声を聞きながら前向きに取り組んでいきたいと考えております。
  96. 中村鋭一

    ○中村(鋭)委員 今、局長そのように言ってくださいましたので結構でございますが、しかし、次回改定のときは、やはりモロコにニゴロブナ、これをぜひ入れなさいよ。それはおかしいですよ。よく調べて。  今前向きに検討するとおっしゃったからね。何も私は無理に入れろと言っているんじゃないんだ。科学的知見に基づいて、きちっと環境庁がリードをして調べたら、当然ナチュラルな帰結として挙げざるを得なくなるんだからそうしなさいよと言っているんですから、何も難しいことを言っているんじゃないんですよ。  念のために言っておきましょうか。あなたがおつくりになった絶滅危惧II類の定量的要件として、出現範囲が二万平方キロ未満もしくは生息地面積が二千平方キロ未満であると推定され、次のうち二つ以上の兆候が見られる場合、すなわち、出現範囲、生息地面積、成熟個体数等について継続的な減少が予測される。当たり前じゃないですか、こんなもの。当然でしょう。  だから、そういうふうにあなた方がおつくりになったこのカテゴリーに照らしたって十分に既に要件を満たしているものが何で挙げられないのかということを私は何遍も申しているんですが、それはこれから頑張るとおっしゃっているんですから。どうぞ。
  97. 丸山晴男

    ○丸山政府委員 中村先生の熱意、大変そのとおりでございまして、個体数の回復に努力してまいりたいと思いますが、絶滅のおそれのある種になりますと、フナずしの原料にも使えなくなりますし、それから釣りもできなくなるわけでございます。  したがって、ということではございませんけれども、レッドデータリストとして掲載をして保護するのではなくて、今現に県なり琵琶湖博物館でやっておりますような、生息環境整備したり、それから藻場をつくったり、それから各種の外来種よって稚魚が食われておりますので、そういったいわば個体数の減少を防止するということに努力をしていただくということが基本でございます。  それから、先生おっしゃられたメルクマールは、そのとおりでございますが、それは全国で数が百匹とか千匹とか、本当に見える範囲でしか存在しないというものにつきましての基準でございまして、百万匹減っておりましても、とれているものについては、ちょっと私どもは初めから実は想定をしておらないオーダーでございましたので、形式的には合致するにしても、実は検討対象としては初めから範疇としては入れておらなかったわけでございます。
  98. 中村鋭一

    ○中村(鋭)委員 実に私としては愕然といたしましたが、そこのところへ考察を施すのを忘れておりました。  でもいいですよ。やはり本当に絶滅が心配されるのであれば、それをリストに挙げることにより、もう一遍昔のように、産めよふやせよ地に満てよで、水に満てよですか、やって、そういうときになればまた我々は釣りをさせていただいたり、とればいいわけですからね。やはりある程度原状を回復するといいますか、旧に復するまでは辛抱しろとおっしゃれば辛抱するわけでありますので、それはぜひよろしくお願いをしておきたい、こう思います。  こういったものを挙げるにつきましても、局長、大事なことは、単に絶滅が心配されているということでリストに挙げるというんじゃなくて、なぜそのように減ってきたのか、その原因はどこにあるのか、どうすれば昔のようにまた魚たちがこの水の中に元気に生き生きと泳ぐようになるのか、そういうことの究明、研究も大変大事だ、こう思います。  琵琶湖のモロコ、特にニゴロブナ、アユもそうですね、ほかの魚もありますけれども、これが激減してきた理由、ここ近年著しいわけでございますが、この理由をもし把握していらっしゃれば、何で減ったのか。
  99. 丸山晴男

    ○丸山政府委員 専門家からの指摘によりますと、一番大きな原因の一つとしては、ブラックバスあるいはブルーギルといったような外来種がふえてきて、捕食をされて減少しているというふうに聞いております。
  100. 中村鋭一

    ○中村(鋭)委員 まさにいい点を指摘していただきました。  もう一つの大きな理由は、琵琶湖そのものの水質汚染が魚に多少の影響を与えた、これも従来から言われておりましたが、この減り方、例えば、水質汚染等による減り方というものの予測と現状の減り方は大きな落差がありますから、その落差を考えていきますと、やはり外来種の、それも肉食性の魚が稚魚を捕食するというところに原因を求めざるを得ないわけですね。  学者の中には、琵琶湖周辺にありました、いわゆるよしず張りに使うヨシ、護岸工事等々によりまして、いわゆる白砂青松の砂浜が琵琶湖周辺において失われたためにヨシの群落が姿を消した、ヨシの群落にフナもモロコも産卵をするものですから、産卵場所、ひいては藻場を失ってそれで減ったというのもありますが、これは消極的な理由で、積極的にはやはり外来種と言わざるを得ない、私はこう思うんです。  これは県立の博物館でありますが、琵琶湖博物館においても、または滋賀県の水産課においても、多額の予算を実は計上いたしております。ブラックバスは産卵しますとボールになるんです、稚魚が円形の。何千という稚魚が集まりまして、ラグビーボールのように固まって岸から四、五メートルの浅いところをボール状で移動していくわけですね。ですから、ブラックバス、ブルーギルの産卵期になりますと、県当局は数十人の捕獲員を湖岸に配置いたしまして、視認をしながら、大きな漁網を持ってずっと岸を歩きながら、ブラックバスのそういうボールがありますと、それを網ですくってやっている。そういう努力はいろいろとやっているわけですね。あるいは、漁業組合に網を引いてもらってブラックバスをとっているということなんです。  最近琵琶湖で、ブラックバスとブルーギルだけじゃなくて、北米のカミツキガメが何匹か見つかっているのですね。こんなものは本来琵琶湖にいるべきものじゃありません。非常に凶暴なカメでありまして、食いついたら絶対離さぬ。これは水族館に行ってごらんになったらわかるように、物すごい顔をした大きなカメ。スッポンどころじゃないんです。物すごいカメです。こういうのが出ている。これは全部外来種なんですね。魚でいえば、カムルチー、ライギョですね。それからブルーギル、ブラックバス、ついにはカミツキガメ、それから陸ではヌートリアとか、こういうもの。  これは、いろいろ考えられますが、発見されましたのが一九七〇年代なんですね、ブラックバスが琵琶湖に出現したのが。まだ、精いっぱい考えても四十年未満なんですね。それまで琵琶湖には、ブルーギルもブラックバスも一匹もいなかったんですね。だれかが放したんですね。カメもそうなんです。  それで、博物館なんかで推測をしておりますのは、どうも日本人は少し悪い癖があって、生き物は哀れめとか、そういう感じがあるものですから、自分が飼っていて手に負えなくなりますと、殺すに忍びぬから、カメでもワニでも、このごろよくオオトカゲなんかが見つかっていますが、自分が責任を持たないでその辺の池とか湖に不用意に放すんですね。それが簡単に繁殖する。今では、ブラックバスは、県の調査によりますと、琵琶湖の四百余種に及びます淡水魚類中の生態系の頂点に立ってしまったんですよ。これは考えてみてください。サバンナでライオンが生態系の頂点にいるのと同じですよ。琵琶湖のライオンですよ、今やブラックバスは。これをやはり征伐しなければいけない。  それには私、両面あると思います。  一つは、主として最近の若者の釣りがブラックバスとブルーギルに集中しております。さっきも私、釣り道具屋さんの話をしましたが、今、滋賀県の釣り道具屋さんは、そういった在来種の釣り道具じゃなくて、もうほぼ一〇〇%若者向けのブラックバスとブルーギル用のルアーフィッシングの道具を置いているわけですよ、それはいろいろなルアーを置きまして。若者は格好よく車の屋根にボートを積んでいって、琵琶湖でボートに乗ってエンジンをかけてだあっと出て、それでしゃっしゃっとルアーを振ってやるでしょう。彼らの合い言葉はキャッチ・アンド・リリースです。捕まえて、計測して、トロフィーサイズは持って帰りますけれども、トロフィーにならぬようなのは全部キャッチ・アンド・リリースでやる。  これは今滋賀県の水産課が出しているパンフレットですが、やかましく啓蒙しているんですよ、こういうパンフレットをいっぱいつくりまして。ところが、若い人はなかなかやらない。  だから、まずその点について環境庁は、そういった本来おってはならぬはずの外来種が琵琶湖を初めとする湖にいっぱい来て、これが肉食魚で、我々の親しみ深い在来種を食い荒らしているわけです。これが激減の最大の原因ですが、そういうことについて、釣り人に対する啓蒙、遊漁者に対する啓蒙等々はお考えでございますか。
  101. 丸山晴男

    ○丸山政府委員 外来種が非常にここ数十年、各陸あるいは水の上でふえてきているということでございますが、輸入種による我が国の本来の生物への影響ということにつきましては、生物多様性への影響が非常に甚大に考えられるということで、既に生物多様性の国家戦略を閣議了解していただきまして、輸入種の分布や生態のための調査研究ですとか、あるいは在来種を保護するために国民の理解を深めるための普及啓発などを実施いたしております。  特にそういった釣りの方、キャッチ・アンド・リリースということでなくて、とった獲物をそのまま持ち帰っていただいて活用できるような方策、当面は飼料とか肥料でございますが、工夫しまして食材の可能性もございます。そういったことも含めて、また外来種の放流についてもそれを規制するようにということで、私どもに限らず、政府全体として連携して取り組んでいるところでございますが、さらに今後とも、そういったことに強力に取り組んでまいりたいと考えております。
  102. 中村鋭一

    ○中村(鋭)委員 私は今釣り人に対する啓蒙をお願いしたんですが、今少し言及されましたけれども、これは現地の各県の水産課等こういうのに苦しんでいるところからしますと、やはり国法ですよ。それは県の条例でカバーできるように一生懸命やりますけれども、これはやはり法律をつくってもらいたいと。だから、要するに一口に言えば外来種を駆逐するための法律、日本に何千年昔からいた大事な大事な生き物を保全するための法体系の整備を願いたいということを随分陳情も受け、私もまたそのように考えているのでございます。  話は全然違うところへ飛びますけれども、今鯨が随分ふえまして、水産庁とIWCの科学委員会調査によりますと、我々人類が今太平洋、大西洋、北氷洋、南氷洋でとっております魚の総量の三倍から六倍を鯨が食っているという調査結果がありまして、これはギャングフォーの国々でも、あれだけ反対するニュージーランドとかカナダでも、この科学的データは尊重しなければしようがないと言っているんですよ。マッコウのようなハクジラだけじゃなくて、ナガスクジラのようないわゆるヒゲクジラです。ヒゲクジラがサケとかマスとかイワシとかニシンを食い散らかしている、こういうデータが出ているわけですね。それがやがて我々に影響を及ぼしてきているから、だから日本はIWCに行くたびに、もうちょっとミンククジラをとらせてくれたっていいじゃないかということを盛んに言っているわけですね。鯨と人間が今魚のとり合いをしております。  同じことが琵琶湖でも起こっているわけですね。モロコやニゴロブナをあんな悪いブルーギルやブラックバスが食い散らかすから、我々があのおいしいフナずしが全く口に入らなくなったということでございますから、その点に対する考察を深めていただきまして、ひとつせっかく御奮闘を期待いたしまして、質問を終わります。
  103. 北橋健治

    北橋委員長 午後二時三十分から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時十六分休憩      ————◇—————     午後二時三十分開議
  104. 北橋健治

    北橋委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。藤木洋子さん。
  105. 藤木洋子

    ○藤木委員 ダイオキシン対策問題での質疑をさせていただきます。  先月二十五日、環境庁ダイオキシン排出抑制対策検討会ダイオキシン発生源別のリストを公表されました。それによりますと、九八年の排出量が二千九百ないしは二千九百四十グラムで、九七年に比べて約五五%減ったことになります。しかし、それでも依然として欧米に比べて数倍から数十倍の水準でございます。ですから、ごみ焼却施設や製鋼用電気炉など既に排出規制されているものは一層の削減努力を行うのは当然ですけれども、未規制になっている施設についても早急に規制の網をかけ、削減を促進させるべきだと思います。  発生源リストによりますと、事業所の未規制小型廃棄物焼却炉が三百二十五ないしは三百四十五グラム産業系の鉄鋼業焼結工程が百・二グラム、亜鉛回収業が十六・四グラム、アルミニウム合金製造業が十四・三グラムなどとなっております。検討会報告では、小型廃棄物焼却炉規制の実施を含めてというふうになっておりますけれども、鉄鋼業焼結工程などは所要の対策を進めるとだけなっているわけです。  そこで大臣にお伺いをいたしますけれども産業系の鉄鋼業焼結工程あるいは亜鉛回収業、アルミニウム合金製造業は業界の自主的な取り組みに任せられておりますけれども、今後欧米の水準並みに削減をさせるということになりますと、こうした未規制発生源にも規制をかけるべきだと思うのですが、いかがでしょうか。
  106. 真鍋賢二

    真鍋国務大臣 御案内のように、今後四年以内にダイオキシン類排出総量平成九年比で九割削減するためには、廃棄物焼却施設等に対する規制措置を徹底するとともに、小型焼却炉産業系の未規制発生源についても排出削減対策を推進していく必要があると考えております。  そこで、御指摘の鉄鋼業焼結工程などの産業発生源についても規制対象とすることも含めて検討してまいりたいと考えております。
  107. 藤木洋子

    ○藤木委員 ぜひそれは促進をしていただきたいと思います。  また、未規制発生源として自動車排出ガスがございます。さきの発生源リストでは二・一四グラムとなっております。しかし、この量は、環境庁と日本自動車工業会がたった四台のシャシーダイナモメーターシステムで推計をしているというだけのものでございます。  ところが、国立環境研究所の調査で年間十五グラムに達することがわかっているわけです。粒子状物質一グラム当たり二百四十二ピコグラム濃度ダイオキシン類が確認され、この数値と、全国の自動車六千万台から排出される粒子状物質の総量をもとに最も毒性の高い種類に換算したダイオキシン類の総排出量を推計したものであります。この量は、発生源リストの二・一四グラムの約七倍に相当いたします。しかし、欧州各国は国内の総排出量を高く見積もっておりまして、自動車排ガスを焼却炉などと並ぶ主要なダイオキシン排出源の一つとしております。検討会報告では、十五グラム数値は試料の採取時とは大きく異なっているとして採用を退けていますけれども、しかし一方、二・一四グラムという数値も仮定の要素が大きいということを認めております。  これも大臣にお伺いをしたいと思うのですが、このようにして日本の自動車排ガスでのダイオキシン排出はいまだ実態を反映しているとは言えないわけです。そこで、発生メカニズムの解明と粒子状物質の規制強化を進め、早急に自動車排ガスからの削減対策を図るべきだ、このように存じますが、いかがでしょうか。
  108. 真鍋賢二

    真鍋国務大臣 御指摘のとおり、自動車からもダイオキシン類排出されておる報告はございます。そして、日本の総排出量の現在では〇・〇七%というふうに聞いておるわけでありまして、この数字からすると、今すぐということもいかがかという感じもいたします。やはりこれは、自動車からのダイオキシン類排出実態及びそのメカニズムについての知見が国際的にも今のところは少ないわけでありますけれども、今年度から所要の調査を進めることといたしております。
  109. 藤木洋子

    ○藤木委員 さらに大幅に削減をさせるためには、焼却施設が集中している地域、汚染が著しい、激しい地域、ここでの対策が欠かせないわけですけれども環境庁の九七年九月の調査によりますと、六十八地点中十四地点、ダイオキシン類大気環境指針値を超過した地点が全国の約二割を占めると伺っております。  そこで、埼玉県の所沢市のダイオキシン汚染が浮かんでくるわけですけれども、こうした地域では個々の焼却施設排出規制だけでは大気環境指針値の確保が困難でございます。埼玉県の所沢市など焼却施設が集中している地域では、大気環境指針値を確保するために、施設の立地を規制すると同時に、ダイオキシンの総量規制制度の導入、これが必要だと思うのですけれども環境庁、どのようにお考えでしょうか。
  110. 真鍋賢二

    真鍋国務大臣 産業廃棄物焼却施設からのダイオキシン類排出については、今後、より厳しい排出基準を適用することといたしております。この規制徹底により、廃棄物焼却施設からのダイオキシン類排出量は大幅に削減できると考えており、この対策を着実に推進してまいる所存であります。  そしてまた、このような個別施設への対策を講じても、なお施設の集中により大気環境基準の達成が困難な地域がある場合には、総量規制についても検討する必要があると考えております。
  111. 藤木洋子

    ○藤木委員 高濃度ダイオキシン汚染をされた大阪府能勢町でも、ごみ焼却施設豊能郡美化センターが解体されるのに伴いまして、大阪、兵庫の一市三町が建設を計画している広域ごみ処理施設について、川西市は先月十七日、新施設ダイオキシン類排出量をごみ一トン当たり五マイクログラム以下とする総量規制導入する方針を明らかにしております。川西市に集中する広域ごみ処理は問題がございまして、住民合意がないままに進めるべきではないと思いますけれども、国の規制がある排ガスだけではなくて、焼却灰や飛灰も含めた排出総量基準値を設けるのは初めてのケースだと伺いました。それは、ダイオキシンを含む量が、排ガスには七%であるのに対して、焼却灰には実に二三%、飛灰に及んでは七〇%と高率になっているからです。  そこで、これは厚生省にお伺いをいたしますけれども、総量規制制度の導入といった場合、一般的には大防法上の排ガス中のダイオキシン排出規制ということになりますけれども、排ガスだけではなくて、焼却灰や飛灰も基準値を設定して排出総量規制すべきだと思いますけれども、その点はいかがでしょうか。
  112. 小野昭雄

    小野(昭)政府委員 去る六月二十五日のダイオキシン対策関係閣僚会議報告をされました排出インベントリーによりますと、廃棄物焼却施設からの排ガスとして排出されるダイオキシン類は、平成十年度におきまして二千三百グラムでございます。  一方、廃棄物焼却施設からの焼却灰等が埋め立てられております最終処分場の排水に含まれて排出されますダイオキシン類は〇・〇七八グラムというふうに推計をされておりまして、このため、環境中に排出されますダイオキシン類の総量の削減のためには、排ガス中のダイオキシン類削減が最も重要であると考えているところでございます。  一方、今御指摘のように、焼却施設において発生をいたしますダイオキシン類は、その多くが飛灰あるいは焼却灰に含まれるわけでございまして、飛灰、焼却灰の処分に伴います環境汚染の防止というものも非常に重要な問題だというふうに認識をいたしております。  このために、厚生省といたしましては、生活環境審議会廃棄物処理部会ダイオキシン対策技術専門委員会におきまして、土壌あるいは水質環境基準設定条件も踏まえながら、廃棄物焼却施設から排出されますばいじんあるいは焼却灰等の処分基準設定、あるいは、最終処分場の維持管理基準の強化といったことについて今検討を開始したところでございまして、結論を得られたものから必要に応じて対策を実施してまいりたいと考えているところでございます。
  113. 藤木洋子

    ○藤木委員 ぜひ真剣な御検討をお願いしたいと思います。  大阪府能勢町では、汚染の原因と責任がまだ明確になっていないまま焼却施設の解体が六月十五日から始まっているわけです。それで、解体に伴う高濃度汚染物を無害化する技術は厚生省が現在実証実験の取りまとめを急いでおられます。この高濃度汚染物は二百ないしは三百トンあると見込まれます。しかし、周辺土壌の無害化は、五千トン以上という量の多さに対しまして、コスト問題もございまして、依然として見通しが立っておりません。  施設組合としては、環境庁がことし九月から始める低コストでの土壌無害化試験の結果も待って土壌の処理法を決めるという予定にしておりますけれども、いつ無害化に着手されるかどうかということも全くわからないのが今の現状でございます。  高濃度汚染物の無害化と解体処理にかかる約十六億円は厚生省施設組合が折半をすることになっております。しかし、周辺土壌の無害化は施設組合の負担となっているわけです。無害化実証試験を能勢の周辺土壌で行って、除去作業に対する補助を行うということが必要ではないかと思うのですが、環境庁、その点はいかがお考えでしょうか。
  114. 遠藤保雄

    遠藤(保)政府委員 お答え申し上げます。  先生指摘のように、ダイオキシンによりまして汚染された周辺土壌、これは施設の中よりは低濃度でございますけれども、土の量としては先生指摘のように大量になります。そういう大量に汚染された土壌にどう技術的に可能な形で対応し得るのかということ、これの解明、かつまた、その際になるべくコストがかからないようにするということの解明、これがまず第一であろうかと思います。  先生指摘のように、環境庁といたしましては、今年度からダイオキシン類汚染土壌浄化技術等緊急実証調査、これは五億円の予算を計上いたしまして実施することとしておるところでございます。そして、技術の公募とか実証サイトの選定を今行っておるところでございまして、この実証調査の成果を踏まえて今後の対応を考えていきたい。  ただ、環境庁といたしましては、従来から技術的支援までは対応可能でございますけれども、今先生指摘のありました実際の浄化費用についてどうするか、これについては、前にも御答弁申し上げましたけれども、原因者が行うことが原則であるということでございますので、それを軸として、今後、今回の実証調査の結果が判明した段階においていろいろな議論が関係者においてなされていくべきものと考えております。
  115. 藤木洋子

    ○藤木委員 確かにその点では、汚染の原因と責任が不明確なままに今解体しなければならないという矛盾を抱えながら進んでいる事業です。ぜひこれは、費用の面でも助成をしていただくことができるようにお骨折りをいただきたいというふうに思っております。  また、ことし四月に公表されました厚生省の施行後一年間の産業廃棄物焼却施設の休廃止状況調査という結果がございますけれども、それによりますと、全五千八百八十六施設の約四分の一に当たります一千三百九十三施設が廃止をされ、六百五十三施設が休止中となっております。合わせますと約三五%の施設が休廃止となっているわけです。同様に、一般廃棄物焼却施設状況は、この時点で一施設ですけれども、これまでに二十二施設が既に廃止済みとなっております。この休廃止は、今後の二〇〇二年の恒久的な排出基準の全面的な運用や、厚生省のごみ広域化計画による百トン以下の焼却施設の廃止などで大幅に増加するということが予想されるわけです。  そこで、ことし六月に公表されました厚生省の豊能郡美化センターにおけるダイオキシン汚染調査報告書の中でも、解体等の際のばいじん等の飛散、流出防止対策について検討が必要としておりまして、また、除去したばいじん等の適切な処理の確保が必要と指摘しております。  こうした指摘もございまして、これまでの廃止施設の解体処理が適切に処理されているのかという調査をして指導することが非常に大事ではないかと思います。また同時に、これからの解体処理、無害化の対策をマニュアルや要綱などに作成をして、全国で休廃止した焼却施設の安全対策とすべきだと考えるのですけれども、これについては、厚生省環境庁からそれぞれお答えをいただきたいと思います。
  116. 小野昭雄

    小野(昭)政府委員 廃棄物焼却施設の解体に伴ってコンクリートの破片あるいは金属くず等の廃棄物が発生するわけでございますが、これらの廃棄物は、分類から申しますと産業廃棄物に当たるわけでございまして、廃棄物処理法に定めます基準に従って適正に処理される必要があるわけでございます。  すなわち、焼却灰や飛灰が付着をいたしましたコンクリートの破片あるいは金属くず等につきましては、焼却灰等を取り除いて安定型処分場に処分するか、または、除去が困難な場合には管理型処分場に処理することが必要でございます。また、設置者は、施設の解体に当たりまして、施設に残っている焼却灰等を十分に分離をいたしまして、処分基準に従って適正に処分することが重要でございます。  厚生省としては、これらの基準の遵守の徹底に努めますとともに、解体廃棄物の処理の状況につきまして調査をいたしまして、その調査の結果も踏まえながら、都道府県を通じて市町村等に適正な指導を行ってまいりたいと考えております。
  117. 遠藤保雄

    遠藤(保)政府委員 焼却施設の解体に関する調査、指導につきましては、今厚生省の方から答弁がありましたように、厚生省の方において検討されるものということでございます。  ただ、これが産業廃棄物の処理でございますので、解体するに際しましては、周辺の環境にいろいろ影響が生じるようなことのないよう私どもはその事業を実施する者に対していろいろ要請はしていきたい、こう思っております。  かつまた、産業廃棄物が最終処分場に搬入される際に、そこにダイオキシンなんかが付着している場合には、それが飛散しないような形での運搬の基準とかあるいは最終処分場に埋め込む際の処理の基準、これにつきましてはきちんとこれからいろいろ検討していきたい、あるいは、今も飛散しないようなルールができておりますけれども、それの問題については今後とも適正に対処していきたい、こう思っております。
  118. 藤木洋子

    ○藤木委員 搬出だとか、それから最終処分場での安全性の確保であるとか、あるいは周辺への汚染を防ぐとかということ、それはそうなんですけれども、かつてアスベストの安全対策とマニュアルを策定をされて取り組んでこられたわけですから、これについても、それに従事をする労働者の健康の安全という面からいいましても、ぜひその安全対策のためのマニュアルの策定ということが大事ではないかということを強調させていただきたいと思います。  次に、豊能郡の美化センターで働いていました労働者の健康影響の問題でございます。  焼却場労働者九十二名を対象とした労働省の調査では、血中の脂肪一グラム中八百五ピコグラムが検出されたのを最高に、十五名が百ピコグラムを超えておりました。六月二十一日に公表された中環審ダイオキシンTDIについての中でも、職業暴露として、「大阪府能勢町の廃棄物焼却施設に関連した調査では、比較的高い値が示されている。」このように明記されております。  それで、最も高濃度のグループ十五人は、焼却炉内に入って、こびりついた灰や堆積物をかき出す作業などをしていたわけです。このグループ中、作業中にマスクをしていた者は十名、手袋をはめていた者は十一名でした。このグループの従業員は、一日当たり平均摂取量が六十ピコグラムと推定されておりまして、TDIの四ピコグラムを大幅に上回っております。  ですから、豊能の労働者らを次世代にわたってケアする必要があると思いますし、周辺住民も含めた疫学調査が必要だと思います。環境庁、その点はどのようにお考えでしょうか。
  119. 廣瀬省

    廣瀬(省)政府委員 能勢町と埼玉県で、平成十年度よりダイオキシン類の長期大気暴露影響調査というのを行っております。そして、血液、大気土壌、食事等のダイオキシン類の一体的な測定とアンケート調査を行いまして、三月末に第一次の報告を行ったところでございます。  そして、調査の実施、結果の説明等に当たりましては、能勢町の状況をよく把握し、必要な相談ができるよう、地元のことをよく知る公衆衛生関係者に協力をいただいております。つまり、調査をしっ放しということではなくて、具体的に、本人が数値を聞いたりしたときの不安とか、そういうことにも配慮しながらずっとフォローを続けるという体制をとっております。そして、調査対象の方々の摂取された食事等について測定を進めて、総合的な解析を行いまして、この夏を目途に最終結果を取りまとめる予定でございます。  今後の調査方針については、最終結果を踏まえて検討してまいりたいというふうに考えております。
  120. 藤木洋子

    ○藤木委員 そうしますと、働いていらっしゃった労働者の次世代までのケアということはその中に含まれるのでしょうか。いかがですか。
  121. 廣瀬省

    廣瀬(省)政府委員 具体的に、調査のところで対象になりました人の中に、そこで働いていた人が一部含まれているということはございますが、そういう意味でのフォローは続けられるということになります。労働者にかかわって、環境庁としては直接それにタッチするという形ではできないだろうというふうに思っております。  ですから、周辺環境の中で一般住民としてどう取り扱っていくかという考え方でやっていきたいというふうに思っております。
  122. 藤木洋子

    ○藤木委員 私は、労働者の次世代にわたったケアということが非常に大事だというふうに思うのですけれども、それはその担当の省ではないという意味でございますか。
  123. 廣瀬省

    廣瀬(省)政府委員 具体的に、焼却場で働いている労働者に対する一つ法律で守られている部分があるだろうと思っておりますので、そこはそちらの方でやっていただくというふうに考えております。私の方は、その周辺の住民の健康をどう考えるかというのを主眼に置いてすべきだろうというふうに思っていまして、そこの結果とあわせて、関係の省庁とそのデータを突き合わせていくという作業が必要になるというふうに思っております。
  124. 藤木洋子

    ○藤木委員 それでは、がんや皮膚病になったのはダイオキシンが原因だとして、三月、二人の元従業員が労働基準監督署に労災の申請を行っております。摂南大学の宮田教授は、ダイオキシンの成分比が焼却場の排ガスや飛灰に含まれるダイオキシンの成分比に似ているということから、焼却場で働いていたことが汚染原因だと推定しております。二人は、施設屋上の開放型冷水塔で床にたまったヘドロを掃除する作業に月一度は携わってまいりました。周辺住民を対象にした血中ダイオキシン濃度調査結果でも、二キロ圏内で最高九十六ピコグラムを検出しています。また、土壌中のダイオキシン濃度も最高で土壌グラム当たり三百三十ピコグラムが検出されております。  ですから、ごみ焼却場が労働者や周辺環境汚染していることは間違いない事実であります。環境汚染健康影響との因果関係も明らかではないかと思うのですけれども環境庁、その点の御認識はどうですか。
  125. 廣瀬省

    廣瀬(省)政府委員 先ほど、二つの地区の調査での血液調査対象者の食事等についてのさらなる測定を進めて総合的な解析を行います、こう申し上げました。  そして、この前報告しました第一次報告を簡単に御紹介申し上げますと、血液中のダイオキシン類及びコプラナPCB濃度については、大阪府の能勢町及び所沢周辺ともに、廃棄物焼却施設の周辺地区と比較のために設定した対象地区がございますが、ほぼ同様の値を示しました。また、大気土壌につきましても、それぞれの指針値等の範囲内でこれまでの調査結果と特に異なるものではないという考え方を持っております。  いずれにしても、先ほど申したように、個々の生活との関係で具体的に突き合わせたデータで個々人を検討していかないといけないというふうに思っております。  そういうことで、最終的な解析を行って、その結果を踏まえて今後の方針を決めてまいりたいというふうに思っておりまして、先生の御質問に具体的に今答えられる状況にはないというふうに思っております。対象地区との関係でいったときに同じような数値を示したということで、特定できる状況数値は持っておりません。  ただ、具体的には、個々人をもっと調べます。例えばこういうふうに調べております。本人の食事と本人の飲んでいる水とそれから本人の住んでいる土地の土壌というものをはかってありますので、個々の特性を全部とらえることができるだろう、こう思っております。ですから、個々人の生活歴というのを調べた上でどうであるかということを専門家検討いただいて、その上で回答が出せるかというふうに思っております。よろしくお願いします。
  126. 藤木洋子

    ○藤木委員 今の段階では健康影響を認めるわけにはいかないという御答弁でございますけれども、ごみ焼却炉で暴露したということだけは明らかな事実でありまして、健康影響との因果関係がないと断言できないというふうに私は思います。  労働省は、昨年七月、施設内の空気中のダイオキシン類濃度を二・五ピコグラム未満とする管理基準をつくり、粉じんマスクの使用などを求める通達を出しております。しかし、各自治体では特別の検査や調査はしていないというのが実態ではないでしょうか。各施設汚染された焼却灰、飛灰の処理がどのように行われていたのか、作業環境はどうだったのか、厳しく調査すべきだと思います。  こうした汚染全国二十六万人の焼却場労働者に起きていないという保証は全くありません。とりわけ、豊能郡美化センターと類似をいたしました炉頂型の労働者への健康調査を行って、これまでの暴露防止対策を見直すことが大事だと思いますし、同時に、焼却炉解体や無害化処理に伴う作業環境のマニュアルを策定して、労働者の安全対策を図るべきだと思うのですが、労働省にお答えをいただきたいと思います。
  127. 下田智久

    ○下田説明員 昨年九月に豊能郡の美化センターにおきまして土壌等から高濃度ダイオキシン類が検出されたということで、労働省では関係労働者につきましての血中ダイオキシン類濃度の測定、作業歴の調査等を行いまして、一部の労働者の血中ダイオキシン類濃度が高いということがわかったということは、先生指摘のとおりでございます。  これらの労働者につきましては、現段階においてダイオキシン類を原因とする明らかな健康影響発生は認められておりませんが、引き続き健康状況の実態把握が必要というふうに判断をいたしておりまして、今後とも追跡調査を実施したいと考えております。他の焼却施設の労働者につきましても、幾つかの場所で健康状況調査を実施したいと考えております。  それから次に、ダイオキシン類の暴露防止対策につきまして、昨年七月にごみ焼却施設におきますダイオキシン類対策ということを策定し、各事業場に対しまして焼却灰の発散防止あるいは呼吸用保護具の使用等の指導を行っているところでございますが、今後とも一層暴露防止対策徹底を図っていきたいと考えております。  最後でございますが、焼却施設の解体作業につきましては、適切な暴露防止対策が講じられない場合には、労働者がダイオキシン類に暴露されるおそれがあるということは御指摘のとおりでございますので、御指摘の趣旨を踏まえながら、解体事業者等に対し、所轄労働基準局を通じまして適切な指導に努めてまいりたいと考えております。
  128. 藤木洋子

    ○藤木委員 もう時間でございますので、これで最後にいたしますが、これまで、未規制発生源の規制の問題や総量規制の問題、あるいは能勢の焼却施設解体処理や無害化、労働者の健康調査などの対策についてずっと伺ってまいりました。これらの対策の重要な指標となるのがダイオキシン耐容一日摂取量、つまりTDIでございます。  先月二十五日、ダイオキシン対策関係閣僚会議で、このTDIを四ピコグラムとするということが了承されました。しかし、八十六ナノグラム以下の体内負荷量のレベルでも影響が認められるとしているわけですから、TDI設定を、関連のある複数の試験結果の総合的な評価で、WHOのように一ないしは四ピコグラムとして、一ピコグラム未満となるように努めるとすべきではないかと思うのです。  四ピコグラムというのは当面の設定でございます。人の健康影響を未然に防止する、そのための的確な対策を講じる上で、一ピコグラムを目指すということを大臣に私は期待したいと存じますが、いかがでしょうか。
  129. 真鍋賢二

    真鍋国務大臣 四ピコグラム以下のレベルの微細な影響も考慮して調査研究を推進すべきとの結論が出され、第四回の閣僚会議においても了承されたところでございます。TDIは人の健康についての安全の基準であり、海外調査等も行い、専門家が詳細に検討した結果である四ピコグラム以下であれば安全と考えておる次第であります。  私は、人の健康への影響を未然に防止する観点から、環境を介したダイオキシンの摂取量をできる限り少なくするという決意で、だれもが安心して暮らせる社会の構築に向けて全力を尽くしてまいりたいと考えております。
  130. 藤木洋子

    ○藤木委員 終わります。
  131. 北橋健治

  132. 中川智子

    中川(智)委員 社会民主党・市民連合の中川智子です。  今回の六月二十一日に出されました報告書を重く受けとめる意味でも、まず最初環境庁厚生省の方にお伺いしたいんですが、きのうちょっとレクのときにお話ししていたら、石器時代にもダイオキシンというのはありましたよ、物を燃やしたら出るんですからなんて言われてしまったんですね、石器時代のときのダイオキシンと今のは全然違うものだと思っていますが。  そもそもダイオキシンというのは体内に全くないというのが望ましい状態なのか、多少ある方がいいんだよというような程度のものなのかというところで、環境庁厚生省に、ダイオキシンというのは体内にまるでゼロ、それが健康をしっかりと維持していくための本来のあるべき位置づけなのかということを伺いたいんです。急な質問で申しわけありません。ぜひともそれを聞いてから質問を進めたいと思いましたものですから、お願いいたします。
  133. 澤宏紀

    澤説明員 ダイオキシンにつきましては、有害性はよく聞きますが、有用性については余り聞きません。そういうことであれば、ゼロといいますか、ない方がいいのではないかというふうに私は思います。
  134. 小野昭雄

    小野(昭)政府委員 同感でございます。
  135. 中川智子

    中川(智)委員 社民党の時間のないのがよくおわかりになっている的確な御答弁で、ありがとうございました。  そこに軸足に置いて今回の報告書ということでありますならば、やはり本当に国民が望んでいたのはより低いもの。できればゼロを目指すという表現がなぜなかったのか。せめて一を目指すと。その姿勢によって、本当に国民の命、健康というのを考えて、このダイオキシン対策ということでがむしゃらに頑張ってくれているんだなということがわかったと思いますが、四という設定、そして一ということが本当に表現の中にはなかったということに対して非常に残念に思っております。  例えば朝日新聞の報道の中におきましても、「「摂取量をゼロに近づけることが望ましい」との記述が、公表直前、「できる限り少なく」に変更されていたことがわかった。」ということがありまして、それに連なりまして、ある内部関係者という表現ですが、「ゼロに近づけるとの表現は、作業班、厚生・環境両省庁の事務当局も了解していた。なぜ表現が変わったのか、理解に苦しむ」と。  内部関係者の方もこのようにお漏らしになるほどの、急転直下のいわゆる四。これに対して、国民の疑問が当然ございます。私も疑問としてございます。長い答弁は結構ですので、このような非常に単純な疑問に対して、どのように考えるかということを厚生省に伺います。
  136. 小野昭雄

    小野(昭)政府委員 ちょっと突然の御質問で今資料が手元にございませんが、いろいろ報道されているということは承知をいたしておりますけれども、文献の解釈といいますか、評価等をめぐりまして、ワーキンググループ内でさまざまな非常にホットな議論が交わされたということは聞いておりますが、新聞に報道されているような事実があったというふうには承知をいたしておりません。
  137. 中川智子

    中川(智)委員 わかりました。それに関連しましては、ちょっと後からもう一度伺いたいと思います。  横田局長が参議院の方にお出かけにならなければいけないということですので、母乳のことからまず伺います。  私、ダイオキシンのことにかかわり始めましてから、この間本当にいろいろな集会に出ることが多うございます。そこで、やはり必死の形相で質問がまず最初に飛び出すのが母乳のことでございます。  今度の報告書の二ページ目のところ、体内動態の母子間の移行の最後のところに、「母乳を介して新生児に移行する。」ということが書かれています。ところが、二十四ページ、二十五ページを読みますと、結局、母乳の安全宣言のようなことで、いわゆる「母乳哺育が乳幼児に与える有益な影響から判断し、今後とも母乳栄養は推進されるべきものである。」そしてまた、「わが国の母乳中のダイオキシン濃度は、過去二十年程度の間に半分以下に低下しているという調査結果もある。」ということでくくられています。  母乳は本当に安全ですし、子供たちのためにもいいから飲みなさいと。心配の部分に対して何ら説明もせず、今後の手当てもされずに、母乳は飲みなさいと。今あれほど心配していらっしゃる方たちに対して、極めて無責任な報告だというふうに読みました。  例えば、その根拠となっております母乳中のダイオキシン濃度のグラフにしましても、これは皆さんにと思ったんですけれども、大阪府ではかったこのようなグラフがございますが、がたがたと減っている。そして、このグラフが、こんなに減っているんだから母乳は安全なのだと。でも、これは大阪府で九八年の四月七日に調べられたものとまた同じものを使っています。  そして、琵琶湖や大阪湾周辺は減っていないという報告もございますが、このように安全宣言のように受け取られることをされた根拠を教えていただけますか。  それと、今の大阪府で調べた後、もう少し広い範囲で調べられて、納得できる試料に伴って母乳は安全だよというふうにおっしゃられると思いましたが、その間の調査というのはやっていないと認識しておりますが、それでよろしいでしょうか。
  138. 横田吉男

    ○横田政府委員 母乳中のダイオキシン類濃度につきましては、平成八年に専門家による検討会を設けまして、考え方を検討していただいたわけでありますけれども、その際の結論といたしましては、一定濃度ダイオキシンが母乳中に含まれるといたしましても、母乳の乳児の発育に対するいろいろなメリットを考えますと、現時点で母乳を進めていくべきであるという従来からの考え方は継続していくべきであるという考えを示していただいております。  私ども、このほかにも母乳中のダイオキシン類につきまして、毎年各府県、今年度におきましてもさらに拡大して調査研究を行っております。  それからまた、健康影響につきましても、今年度は、九年度に母乳中のダイオキシン濃度調査いたしましたお母さんの母乳で保育された乳幼児の方たち対象に、アレルギーですとかあるいは免疫、甲状腺機能等の調査を行いまして、現在調べているところでございますし、十一年度におきましても、さらにこれを拡大いたしまして調査研究を行っております。  こうした研究を今後とも進めますとともに、その結果につきましては広く公表してまいりたいというふうに考えております。
  139. 中川智子

    中川(智)委員 母乳に関しまして、もう一点伺いたいのですが、例えばアメリカでしたら、五大湖周辺の授乳中のお母さんたちに、今だったらばお魚を食べるのは週に一回にしなさいとか、食事指導というのをやっているように聞いております。ほかの国でもそのような報告を何例か知っているわけです。  いわゆる母乳を通して新生児に。そして、新生児が飲んでいる期間が少ないといいますが、食事はそれだけなんですね。おっぱいだけで生きている。そして蓄積されている。その蓄積されたものが、十年先か二十年先か五十年先か、そのダイオキシンの健康被害というのが出てくるのがいつかわからない、慢性毒性ということでとらえられているわけです。  せめて外国がやっているような食事指導ですとか、妊婦やいわゆる授乳中のお母さんに対して、食品に対してもう少し配慮をしたことができないものか。そのようなことが、今国民の間では非常に望まれています。本当に一生懸命やりながら、毒を飲ませているんじゃないかというふうに思ったり、もうそろそろやめなきゃという精神的なプレッシャー、私もこんなに神経質になっているのかと思うぐらいいろいろな声を聞くのです。  厚生省としては、そのような食品の食事指導なり授乳期の母親に対してもう少し何かできないか、それを検討されるおつもりがおありなのかどうか、そこを伺いたいと思うのです。
  140. 横田吉男

    ○横田政府委員 通常、生まれましてから一年程度は母乳なり人工栄養で育てられるということだと思いますし、ダイオキシン類がもし乳児の方に移るとすれば、そういった母乳を通じてということになるかと思います。先ほども申し上げましたように、ダイオキシンについての基準につきましては、生涯にわたりまして摂取するという考え方を基準につくられているわけでありますが、母乳につきましては通常一年程度ということで、平成八年度の専門家会議におきましても、総合的に母乳のメリットと比較して勘案した結果、当面は母乳の推進の立場を変えないという考え方を示されたわけであります。これにつきましては、昨年五月のWTOの専門家会議におきましても、母乳推進の立場は変更ないというふうにとられているところでございます。  ただ、御指摘のような一般の方々の心配はもっともな点もあるかと思いますので、私ども、母乳中のダイオキシンが乳幼児にどのような健康影響を与えるかという点につきましては、先ほど申し上げましたように今鋭意検討しているところでございまして、こういった検討結果につきましては、その都度公表することによりまして、国民の方々にも理解をしていただきたいというふうに考えております。
  141. 中川智子

    中川(智)委員 ありがとうございました。  では、やはり食品に関連しての質問なんですけれども、今回の報告書そして近々出されます議員立法というのを読ませていただいても、食品のモニタリングさえも、取り組んでいくというその姿勢はわかるのですが、具体的に国民の不安というのは、ダイオキシンが問題になったときに、そこでとれるもの、そこで成長するものを本当に食べていいのかしらということ。いつもパニックになるのは風評被害と言われますが、事実がはっきりして、常にそれに対して目配りをしていく。今回のベルギーの卵、鳥肉にいたしましても、出どころとか、ここの産地のものだからここに対してこういうふうにしていけばということで見えてきて一定の鎮静というのが得られるわけなんです。O157のときにもパニックになり、そして能勢でも風評被害。所沢では大パニックになった。やはり、いつも敏感に反応するのは日々食べる食事、食品なんですね。  その食品に対してどのような取り組みをなさっているのか。また、今後国民の不安と、いざというときに、モニタリングなりそこの情報をきっちり持っておくということが大事だと思われますが、その点に対してのお答えをお願いします。
  142. 小野昭雄

    小野(昭)政府委員 食品についてのお尋ねでございます。  御質問の中で、全く何もやっていないといったような御指摘があったのかもしれませんが、私どもといたしましては、平成四年度から個別の食品中のダイオキシン汚染実態調査を毎年行っておりますし、さらに平成八年度からは、平均的な食生活におきますダイオキシンの摂取量を推計いたしますために、地区別に一日摂取量調査、トータルダイエット調査を実施しておりまして、これらは結果が得られ次第その都度公表をいたしているところでございます。  さらに、今御指摘のございました能勢町あるいは所沢等の問題に関しましては、能勢町の場合には、たしか大阪におきまして直ちに農作物等の調査もなされましたし、所沢につきましては、農水省、環境庁とともに私ども調査をいたしまして、安全上問題がないということを発表いたしているところであります。  ただ、一点御理解を賜りたいのは、御承知のように、ダイオキシンの測定というのは、試料を採取いたしましてから測定結果が出ますまでに最低三週間から四週間を要します。そういった意味で、問題提起がされましてからそれに対するきちっとした回答が出るまでに若干のタイムラグがあるということが問題であるということでございます。  そういったこともございますので、現在、厚生省といたしましては、厚生科学研究におきまして、簡易的な測定法、スクリーニングのようなことができるのかできないのかという点につきまして研究も進めておりますが、そういったものもあわせて、きちっと対応ができるようにいたしたいと考えているところでございます。
  143. 中川智子

    中川(智)委員 やはりトータルダイエットの問題ではなくて、例えば酪農国などで牛乳とかチーズをよく食する国の場合は、牛乳のダイオキシン濃度というのを調べて、高いところに対しては出荷停止とかそれなりのきっちり処置をしているところがございます。  日本の場合は、魚を非常によく食べる。毎日本当に魚がなくちゃとか、お刺身がなくちゃというぜいたくな人もいるぐらい日本の食生活、日本人の特性としての食生活。その中でいわゆる魚というものが代表的なものとしてございます。その魚に対して、具体的に東京湾だの大阪湾だの、そういうところで調べて国民に、ここのところは今何ピコぐらいだよというようなことは発表されたことがございますか。
  144. 小野昭雄

    小野(昭)政府委員 先ほど御答弁申し上げましたように、平成四年度から個別の食品中のダイオキシン汚染実態を調査して、それは公表いたしておりますが、汚染の実態及びその推移を全国的に見るという観点から、特定の地域名の公表はいたしておりません。今年度も実施をいたしておりますが、そういった方向で行いたいと考えております。  なお、人の健康影響評価する場合には、通常の食生活から取り込みますダイオキシンの総量とTDIを比較することによりまして行うことが適切でありまして、国際的にもこの手法が一般的でございますので、そういった方法をとってまいりたいと考えております。  なお、オランダ等の牛乳、乳製品の規制の話がございますが、これは係官を当該国へ派遣をいたしまして詳細に聞き取り調査をやらせましたところ、主として大規模な汚染事故があったために、その汚染事故に対応するために基準設定したというのがどうも背景のようでございますが、それらの情報を含めまして、今後、食品衛生調査会の御意見も聞いてまいりたいと考えております。
  145. 中川智子

    中川(智)委員 地域を公表しないということの理由を教えていただけますか。
  146. 小野昭雄

    小野(昭)政府委員 厚生省といたしましては、国民の皆さんが平均的に摂取されます食品のダイオキシン濃度の実態、状態を明らかにするということを目的としておりまして、特定の産地の特定の農産物の汚染というものを明らかにするという目的で行っているわけではございませんので、現在のところは考えておりません。
  147. 中川智子

    中川(智)委員 それはやはりどこどこが危なそうだからといううわさとか、いわゆる問題になったときに、PCBのときのように、汚染がひどくて一時そこのところに対して補償も行うというような形でありましたけれども、いざというときに備えるためには、やはり日ごろからそれに対してきっちりとした処置をして、企業ですとか、今度はPRTRも施行されるわけですけれども、そのような連動があって初めて、もっともっと住みやすい、安心した食生活を続けていける環境づくりをしていけると私は思うのです。ですから、できればやはり公表をしていく中で、それ自体が後押しになって安心を生むということを前向きに進めていただきたいと要望しておきます。  環境庁にお伺いいたしますけれども、やはりデータというのがどんなふうに出されるのかということ。私もいろいろな表とかグラフを見ましても、機関によって、同じ方が出した全く同じ血液の中のダイオキシン濃度が違ってしまう。足切りというふうな形であるのかもしれませんが、行政機関の行う血液分析結果と、住民側が自分たちでお金を出し合って行う分析結果というのでは、大抵行政側がいつも低い。どうしてこんなに低いのだろう。表を持ってこられて、見ても、本当かね、同じ人なのにねということがよくあって、行政がやったら何か低くなるのよねというのが当たり前みたいに言われているのですよ。それに対しての御反論をお願いします。反論してもらったら困るのですが、お願いします。
  148. 廣瀬省

    廣瀬(省)政府委員 先生のおっしゃるとおり、そういううわさが出ていることもございます。  先ほど申したとおり、平成十年度で環境庁大気の暴露影響調査というのをしております。そして、三月に第一次報告をしていますが、そのときに一番気を使ったのが、分析に当たっての精度管理ということを基本的にしました。  具体的に申しますと、ダイオキシンコプラナPCBの測定というのは、いつも言われている精度管理が物すごく厳しい。それから、一兆分の一という単位の世界。一般的に、医学的には百万分の一ですから、その倍の世界である。これだけの機械を使うというのは、大変な能力、それから周辺の空気の状況から温度状況から全部管理しなければいけないということがございます。  ですから、その形だけでも変化をするということになりますので、今回やりましたときに全部証拠が残るようにしてございます。それから、機械を動かすその日の温度から全部チェックされていまして、機械を動かす前に標準試料をつくっております。それで、その標準試料を全部入れまして、機械がその日ごとに全部微妙に変わりますから、それをデータに入れてきちっと紙にしてとってあります。そのようにして出したデータでございます。今後、外国とかいろいろなところへ出しても、それを要求することはほとんどできないのだろうと思っております。  ですから、不満に思う人があったことも気になっておりますので、そのデータをとって日本で最高の権威者に預けてございます。ですから、いつでもお見せすることができますし、世界の学者が来てもそれに関してはちゃんと表現することができるようにしてあります。そういうことでやってございますので、血液にかかわる部分の標準の物の考え方の基礎データはでき上がっているというふうに思っております。  そういうことで見ているのですから、ほかの検査機関については、そういう意味で、測定条件とか、実際に測定されたデータの精度管理とか、検証過程ということについてはよく承知できない状況でございます。  ですから、依頼される方が出てくればいいということではなくて、そういう形のところを頭に置いて依頼をする。それから、恐らく外国であれば高い値段を出さなければそのようにやってくれないと思います。安ければ必ずその前処理とかのデータは全部省かれてしまいます。安いのがいいということよりも、その精度管理がきちんとされていることを前提にして契約書を書いて、そして依頼するということがあって初めてここの議論はできる。  そういう意味では、ほかの検査機関は批判しませんが、私のところにはそのとおり全部書類が残っておりますので、いつでもお見せすることはできるかと思っております。
  149. 中川智子

    中川(智)委員 最後に、本当に長官に一言お願いしたいのです。きょうも私座っての質問で申しわけございません。次からはしっかり立って質問できると思いますので、本当にいろいろとお優しい御配慮をありがとうございました。  やはり最初に私は質問させていただきましたが、ダイオキシンというのはゼロで生きていきたい。そういうふうな国をつくっていきたい。ぜひとも長官のゼロに向けての御決意を伺いたいし、今回のこの報告書を拝見いたしまして、やはりこの報告書の「はじめに」の二行目に記されている観点は予防原則なのですね。これはあくまでも予防原則の上に立ったTDI設定でなければいけないし、それに向けての努力というのを今後私たちはしていかなければいけないと思います。  そして、何よりの救いは、当面ということがあちこち載っているのがとてもうれしかったのです。その当面ができるだけ近い未来に、やはり一応きっちり目指した形でダイオキシン対策を国を挙げてやっていただきたい。その先頭に長官が立っていただきたいと思いますが、その御決意いかんということで、最後の質問にさせていただきたいと思います。
  150. 真鍋賢二

    真鍋国務大臣 先ほど来の御質疑を聞いておりまして、例えばお母様のおっぱいの問題でございますけれども、おっぱいによって生育した子供の方が健全に育つ、こう言われておるわけであります。しかしながら、ダイオキシンがたくさん含まれておりますよということになりますと、授乳ができなくなってしまうわけであります。そうなると、スキンシップのない子供が果たして健全な生育ができるのだろうかという疑問も生まれてくるわけであります。  ですから、先生最初に、ダイオキシンというのは有害なものでしょうかどうなんでしょうか、あるのでしょうかないのでしょうかというようなところまでお聞きになったわけでありますけれども、その辺はまだ究明が十分できていない、私はこう思っております。  そこで、日本も、国立環境研究所の方に環境ホルモン棟を昨年十月の補正予算でつけていただきまして今建設中でございますけれども、ここを世界的な研究のセンターにしたいという意欲を持って臨んでおるわけであります。  世界的な知見をいただこうと思って、ことしも世界環境ホルモン会議を開催して、そこでいろいろな御意見をいただこうと思っておるわけでありまして、そのような形でこれからの問題に取り組んでいきたいと思うわけでありますが、とりわけ、今、ダイオキシンが大きな問題になっておるわけであります。政府といたしましても、ダイオキシン対策閣僚会議という一番重い責任のとれる体制をとりまして、そこでいろいろ研究を命じたところであります。  環境庁といたしましても、先般も、WHO数値だけに頼ってはならないということで、専門家の派遣をEPA等にしました。そこには、環境庁厚生省専門官を初めといたしまして、国立環境研究所で一番権威を持った人たちにも参画していただいたわけであります。WHOで四を出す数値さえ十分わかっていなかったわけでありますけれども、いろいろ研究して、また資料を調達いたしまして、その中から算出方法も十分理解できましたし、日本式に取り入れてそれを活用していこうというところに参ったわけであります。  国立環境研究所で幾ら研究しましても、これが安全だという数値はなかなか出てこない。しかしながら、四ピコグラム以下ならばという大方の数値は出てまいったわけでありまして、今回、ダイオキシン対策閣僚会議では、四ピコ以下というような形に表現させていただいたわけであります。  そうしたら、一以下のゼロはあるのかということになりますと、そこは何遍研究してもなかなか出てこない。今の数値でも、動物実験をいろいろやっておる。ラットだけでなくしてアカゲザルとかいろいろなものを使ってやっておるわけでありますけれども、まだまだそこの数値が出てまいらないわけであります。  だから、何遍も何遍もトライして、研究を重ねて、その数値というものを明確に出してこなきゃならないと思っておるわけでありまして、決して、一を放棄したり、日本が取り組む姿勢が悪いというわけではなくて、権威ある研究をしてその数値を出していこうと思って頑張っておるところであります。いましばらくお待ちをいただいて、皆さんと一緒になって、日本の明るい未来を創造しながら、ダイオキシンが健康を阻害しないような状態をつくっていこうじゃございませんか、そんな気持ちでいっぱいであります。
  151. 中川智子

    中川(智)委員 どうもありがとうございました。
  152. 北橋健治

    北橋委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時三十三分散会