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1999-06-08 第145回国会 衆議院 環境委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年六月八日(火曜日)     午前九時三分開議   出席委員    委員長 北橋 健治君    理事 石原 伸晃君 理事 鈴木 恒夫君    理事 福永 信彦君 理事 米田 建三君    理事 小林  守君 理事 佐藤謙一郎君    理事 田端 正広君 理事 武山百合子君       愛知 和男君    岩下 栄一君       尾身 幸次君    大野 松茂君       岸本 光造君    桜井 郁三君       戸井田 徹君    村上誠一郎君       山本 公一君    吉川 貴盛君       近藤 昭一君    西  博義君       丸谷 佳織君    安倍 基雄君       佐々木洋平君    藤木 洋子君       土井たか子君    中川 智子君  出席国務大臣         国務大臣         (環境庁長官) 真鍋 賢二君  出席政府委員         環境庁長官官房         長       太田 義武君         環境庁企画調整         局長      岡田 康彦君         環境庁自然保護         局長      丸山 晴男君         農林水産省農産         園芸局長    樋口 久俊君         林野庁長官   山本  徹君  委員外出席者         環境庁長官官房         審議官     鹿野 久男君         農林水産大臣官         房審議官    大森 昭彦君         農林水産大臣官         房審議官    城  知晴君         林野庁指導部長 田尾 秀夫君         環境委員会専門         員       鳥越 善弘君 委員の異動 六月八日         辞任         補欠選任   大野 松茂君     吉川 貴盛君   山中 貞則君     岸本 光造君   中村 鋭一君     佐々木洋平君   土井たか子君     中川 智子君 同日         辞任         補欠選任   岸本 光造君     山中 貞則君   吉川 貴盛君     大野 松茂君   佐々木洋平君     安倍 基雄君   中川 智子君     土井たか子君 同日         辞任         補欠選任   安倍 基雄君     中村 鋭一君 本日の会議に付した案件  鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律の一部を改正する法律案内閣提出第五三号)(参議院送付)     午前九時三分開議      ————◇—————
  2. 北橋健治

    北橋委員長 これより会議を開きます。  内閣提出参議院送付鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐々木洋平君。
  3. 佐々木洋平

    佐々木(洋)委員 おはようございます。トップバッターで質問させていただきます。  今回のこの鳥獣保護法改正のポイント、これは、これまでの狩猟規制から科学的、計画的な保護管理の考え方を導入したということが言えるのではないかと思います。これによって、野生鳥獣生息地域確保あるいは農林被害を未然に防ぐ、防止のためにも意味があるものだというふうに思っております。  そして、地方分権一括法において捕獲許可等の権限を国から地方自治体に移すということが検討されておりますが、実態をよくわかる地方自治体と思いますので、私は当然のことだというふうに理解をしております。  あえて言うならば、今回のこの改正の裏には、特定地域大変シカが、そういう有害鳥獣がふえておるというその対策、あるいは逆に、西日本の一部の地域のようにツキノワグマが今絶滅の状況にあるということ、これをどのようにして保護していくのかという部分があると思います。そういったことがこの対策の中にあるんだろうというふうに思います。  しかしながら一方では、自然保護団体からは狩猟による個体数管理というものにやはり問題があるという意見がございます。と同時にまた、野生鳥獣実態調査がまだ不十分な状況の中で計画策定能力の乏しい地方自治体に任せるということは非常に不安があるという意見がございます。  そこで大臣、その辺をどのように考えられているか、御見解をお伺いしたいと思います。
  4. 真鍋賢二

    真鍋国務大臣 佐々木先生地元岩手県で猟友会の会長として御活躍中でございまして、答弁者の私よりも鳥獣の問題についてはたけた御意見を持っておられると思うわけであります。今回の法案につきましての御質問でございますので、あえてお答えをさせていただきたいと存じます。  特定地域個体群対象とした保護管理は、地域によって生息状況社会条件も異なることから、その実情に応じたきめ細かな対応が必要であり、事情に精通した都道府県が行うことが適当であると考えておるところでございます。また、これまでの野生鳥獣保護管理にかかわる実務の多くは都道府県において実質的な処理がされてきておるところでございます。  一方、国としては、特定鳥獣保護管理計画策定のための基準の策定技術的指導指示、また、特定鳥獣全国的な生息状況把握とこれに基づく都道府県への指導助言や緊急の場合の指示によって、全国的な観点から行う野生鳥獣保護について責任を持って対応してまいる所存でございます。  このように、国、地方役割はまさに車の両輪と言っても過言でないわけでありまして、両々相まって力を尽くしてやっていかなければならないと考えておるところでございます。
  5. 佐々木洋平

    佐々木(洋)委員 どうもありがとうございました。  次に、狩猟者の問題についてお伺いしたいと思います。  野生鳥獣についてはもちろん貴重である、これをだれも否定する者はいないわけですが、それを殺す狩猟というものに対して社会的に悪であるという風潮もあります。確かに一部のマナーの悪い狩猟者もいて、社会的な非難を浴びておる。これについてはもちろん厳正な対処をしなければならない、このように思っております。  しかし、考えてみますと、狩猟が昔またぎと言われた時代から、野生鳥獣人間社会との共生といいますか共存のために狩猟者が果たしてきた役割というものも、私は大変重要な意義があったというふうに思っております。言いかえれば、狩猟行政の一部、行政を担当してきたと言っても過言ではないというふうに思っております。  一方、野生鳥獣のさまざまな問題について、狩猟者に任せるべきでないという意見も聞くわけでございますが、今、全国農林業被害、大変な額に上っております。  例えば、北海道だけで年間約五十億円を超えておるという状況にあります。これを一体だれが補償するのかということを思うときに、例えば、植林をしてやっと五年たった、下刈りをしなくてもいいよ、そういう状況の中で、シカ一網打尽にその皮をむいちゃうといった被害がある、あるいはシイタケ畑シイタケをほとんど食べちゃう、あるいはクマ被害でいえば、デントコーンが一網打尽に食べられちゃうというようなことが多々あるわけでございまして、本当に農家の身になればどうやってお話をしたらいいのかわからない、このような状況だというふうに私は思います。  また、現場で猟友会有害駆除作業をするわけですけれども、これはまた大変なボランティア活動です。大変な仕事なわけですね。それもやはり先ほど申し上げました行政の一部という責任でやっているわけでございます。  一方、狩猟というのはスポーツでもあるわけでございまして、スポーツとして楽しむことももちろん当然のことだと思いますが、反面、その狩猟者は、もちろん入猟税あるいは狩猟登録税という税金を払って狩猟を楽しむわけでございます。全国年間約四十億円、税金を払ってスポーツを楽しむ。  スポーツ税金を払うというのはそうないとは思いますけれども、この四十億円を、放鳥をしたりあるいは被害を防ぐために防護さくをつくったり、そういったものに充てておるわけでございます。あるいは、各地区、都道府県猟友会においても、各会員が会費を出し合ってキジ、ヤマドリの放鳥をしたり、あるいはまた山野に実のなる木を植えたり、あるいは荒れ地に畑を借りて小豆をまいて、そしてえさ場をつくるというようなことも行っているわけでございまして、まさに私は自然を守っておると言っても過言ではないと思います。そういう中で、鳥獣人間社会共存を図っていくというのが猟友会の使命であろうというふうに思っております。  ただ、非常に残念なことは、自然保護という名のもとに、そうした問題の本質を知らないで批判している人が多過ぎるということも否定できないと私は思っております。  そこで、大臣にお伺いしますが、我が国における狩猟意義野生鳥獣保護管理観点から極めて私は重要だと思いますが、これについての御見解、それから狩猟者減少高齢化の中で、育成確保が必要であると思いますが、大臣の所見をお伺いしたいと思います。
  6. 真鍋賢二

    真鍋国務大臣 ただいま先生から御指摘いただいた数々の問題は、まさに直面しておる大きな問題である、こう認識をいたしております。  そこで、狩猟は今日では鳥獣保護法制度に組み込まれておるわけでありまして、このために個体数調整鳥獣生息動向把握等への貢献といった点において野生鳥獣保護管理の担い手として狩猟者の果たす役割はまことに重要であると考えております。  しかし、近年、狩猟者は著しく減少し、先生指摘のようにまた高齢化もいたしておるわけであります。そこで、今回の法改正におきましては、狩猟者減少防止対策の一環として、狩猟者の負担の合理化を図るべく狩猟免許制度の改善を行うことといたしたところであります。  今後とも、狩猟者減少実態原因等把握、分析に努めて、都道府県及び関係団体意見を聞きながら有効な対策を検討してまいろうと思っておるわけでありまして、どうぞ専門家先生等の御意見もお聞かせをいただいて、この法の整備に励んでまいりたいと思っておるところでございます。
  7. 佐々木洋平

    佐々木(洋)委員 次に、具体的な問題についてお伺いしていきたいと思います。  まず、シカの問題についてでございます。  シカについては全国的に生息数増大あるいは分布拡大をしておるわけでございますが、それによって大変な農林被害あるいは自然生態系へ悪影響を及ぼしておるわけでございます。全国でこのような異常に繁殖しておる地域というのはどういうところがありますか、説明を願いたいと思います。
  8. 鹿野久男

    鹿野説明員 シカにつきましては、実は全国的にすべてのところで増加傾向にございます。  特に、著しく増加している地域幾つか挙げてみますと、例えば北海道道東地域、これは多分今十二万頭を超えるシカ生息していると推計されております。また、岩手県の五葉山地域ですとか、栃木県、群馬県にまたがる日光の山地、こういったところが非常に数が多くなって、農林業被害ですとか自然生態系への影響ですとか、そういう問題を引き起こしております。  以上です。
  9. 佐々木洋平

    佐々木(洋)委員 今、岩手県の五葉山というお話がございました。この岩手県の五葉山についてちょっとお伺いしたいと思うのですが、シカ生息数増大をして、大変分布拡大されていった、この状況について環境庁にお伺いしたいと思います。  それと、農林被害、これについては農水省に。あるいは、シカその他いろいろな野生鳥獣による被害全国にどれだけあるものなのか。金額でわかるならば金額で教えてもらいたいと思います。非常に難しいと思うのですが、その点もあわせてお伺いしたいと思います。
  10. 鹿野久男

    鹿野説明員 まず、私の方から、岩手県の五葉山地域でございますが、ここのシカ生息数それから分布の状態、これについて御説明させていただきます。  この地域シカ生息数でございますが、昭和四十年代から五十年代半ば、ここまでは約一千頭のオーダーで推移していたと言われております。それが、平成五年、この時点では五千頭から六千頭、こういったような数にふえてきておる。ただ、この地域におきましては平成三年から計画的な駆除対策実施してきておりまして、その後、平成九年の段階でございますが、この段階では約四千頭の生息ということになっております。  頭数につきましては、効果がありまして若干減少傾向にあるのですが、一方、このシカ分布域生息する区域でございますが、そちらについて見ますと、一貫して拡大傾向にございます。昭和二十年代の当初におきましては五葉山周辺にかなり限定されておりましたが、これが昭和四十年代になりますとその周辺の大船渡市の中心部近くまで、また昭和六十年代では陸前高田市の付近まで分布を広げつつあるという状況でございます。
  11. 樋口久俊

    樋口政府委員 お答え申し上げます。  二つほどございました。一つは、五葉山における農林業被害でございます。もう一つは、全国のことがわからないかということでございます。  まず、五葉山地域におきます農林業被害、これはほとんど森林林木でございますけれども岩手県の調査によりますと、昭和四十年代ごろから主としてホンシュウジカによります農林業被害が出始めまして、元年には五葉山地域中心被害額は二億円を超えております。その後、ふえ始めまして、平成五年がピークでございますけれども、六億七千五百万円程度、その後、被害額減少に転じておりまして、平成九年度には、それでも一応二億円弱の被害というふうに私どもは聞いております。  それから、全国農林業被害についてのお尋ねがもう一点あったわけでございますが、実は被害額につきましては、これまで一部の道県でしか実施をしてきておりませんで、全体としての額は取りまとめられていないわけでございますが、最近のいろいろな農林業被害実態にかんがみまして、何とかして被害額でまとめられないかということがございまして、ことしから全国被害額調査することにいたしました。これまでは面積で集計をいたしておりますので、そのお答えを申し上げたいと思います。  まず、農産物の被害面積は近年ずっとふえてきておりまして、九年度でございますが、全国で約二十八万ヘクタール、全経営耕地面積のほぼ六%程度というふうになっておりまして、特にシカとかイノシシの被害増加をしてきているのが特徴でございます。  片方、同じ九年度の森林被害面積全国で約八千ヘクタールとなっておりまして、特にシカによる被害増加をしております。この比率は平均しますと〇・一%ということで低いわけでございますが、森林被害特徴は、特定道県特定地域に集中するというのが農林業被害に比較して特徴ではないかということでございまして、集中的に発生をします傾向にございますので、私どもとしては、地域にとって極めて深刻な問題であるというふうに認識をいたしております。
  12. 佐々木洋平

    佐々木(洋)委員 被害金額、それぞれの地域金額をきちっとやはり把握する必要があると思うのですが、それはことしからだというので期待をしております。  次に、こういうシカがこんなに急速に地域地域によって増加したその原因、どういう状況でふえたのか、ちょっとお伺いしたいと思います。また、これまでとられた対策保護管理計画等策定ももちろんあるわけですけれども、特に岩手県で行っている状況について説明を願いたいと思います。
  13. 鹿野久男

    鹿野説明員 まず、一点目でございますシカ増加要因でございますが、これは幾つか言われております。  一般的に言いますと、天敵でございますオオカミがいなくなったこと、これがまず一つでございます。また近年、大雪の年が少なくなった。シカ大雪の年に大量に餓死するというのがこれまでの通例でございましたが、近年その大雪によるシカの死がなくなったということ。それから、これは国土全体に対して言えるのですが、土地利用がいろいろ変わってきております。特に中山間地域などでは休耕する田や畑が出てきておりまして、そこでそういうところの草を食べるといったように、シカにとってのえさ条件シカにとって条件が改善されてきたといったようなこと。そしてまた、一方では捕獲規制ですとか、先ほど先生おっしゃっておりました狩猟者そのもの減少しておるということから、狩猟圧というものがかなり弱まってきております。  こういったような幾つかの要因がございますが、それぞれの地域におきましては、これらの要因が複雑に絡み合っておりまして、地域地域でその要因のうちのどれが一番きいているかということは、その地域実情によって異なるということでございます。ただ、そういったそれぞれの要因関係し合って、全体としてシカをふやしてきているということだと思います。  それから、第二点目の岩手県におきます保護管理体制でございますが、岩手県では鳥獣行政担当部局中心になりまして、学識経験者等専門的な指導を受けております。こういったような指導を受けながら、関係市町村ですとか関係する団体等から成る協議会を組織しまして、個体数管理被害防除対策、さらには生息環境管理、こういったような保護管理事業保護管理計画という一定の計画のもとに体系的に実施しているところでございます。  なお、この事業実施に伴いまして、その後の経過措置個体数の変化等々を追跡調査しておるわけでございますが、それらにつきましては、大学等野生鳥獣研究者等の協力を得ながら、それぞれ実施されているところでございます。
  14. 佐々木洋平

    佐々木(洋)委員 次に、ツキノワグマについてお伺いしたいと思います。  西日本の一部になりますけれども、著しく減少しているわけでございますが、この原因。なぜこんなに減少したのか。今現在とられている対策の内容についてお伺いします。
  15. 鹿野久男

    鹿野説明員 先生指摘のように、ツキノワグマにつきましては、全国の中で分布密度にかなり偏りがございます。  先生今御指摘西日本ツキノワグマでございますが、これは紀伊半島ですとか東中国西中国四国といったところに、分布が隔離されておるというのでしょうか、点々と分布しているという状況でございまして、全体としては頭数がかなり少なくなっておるという状況でございます。例えば四国では、もう二十頭くらいじゃなかろうかと推計されております。  このような地域ツキノワグマがなぜ減少してきたかということでございますが、クマの場合には、生息環境として、かなり広い面積を必要としております。特に、えさとなる森林関係でいえば、ドングリがなるミズナラですとかナラのたぐい、こういったような広葉樹林がかなり大きく広がっていなければ生息ができないというような性格でございます。  そういうことからして、特に開発の進んでおります西日本地域では、クマ生息地として好適な環境がだんだん少なくなってきております。特に、生息地がいろいろな形で分断されておる、こういったような事柄が今日の西日本地域におけるクマ減少を招いているというように思っております。  現在、この地域におきましては、一つは、狩猟に対して厳しい制限をしている。特に狩猟というものに対しては、この地域ではほとんど禁止しておるという状況でございます。また、人里におりてきて、人とのあつれきを起こしたようなクマ、通常では有害駆除という形になるのですが、この地域におきましては、殺すということはなるべくやめて、再度人里に出てきたところで例えばきついにおいをかがせるとか、いわばお仕置きをして、また奥山に放獣する、こういう対策をとっておるところでございます。
  16. 佐々木洋平

    佐々木(洋)委員 今いろいろ説明があったわけですけれども野生鳥獣全部そうなんですが、個体数が全体でこれだけあるんだという中で、クマについてはこれぐらいいればいいだろうということを、各道県がしっかりした把握をしていなかったということにも原因があるのではないかというふうに思うのですね。ですから、特に、個体数の問題よりも生息地調査というものを私はしっかりやるべきだというふうに思うのです。  特にクマの場合は、今説明があったとおり、一頭生息するのに相当広い地域が必要なんですね。縄張りがあるわけです。ですから、岩手県ではこれだけの面積がある。その中に何頭以上はなかなか生息できないというふうに大体決まっているのですね。ですから、西日本地域ではもっと早くにやはり狩猟規制をして、そして保護するというような過程をとるべきであったのかなというふうに思います。  岩手県では、実は平成元年からですか、クマ調査をしまして、大体千頭ぐらいが適正な頭数だろう、こういうふうに判断をしております。そうしますと、年間大体二百三十頭ぐらい子供が生まれます。それの七割が成獣になるというふうに見て、できるだけ放獣をするのです。放すのです。ですけれども、やむを得ない場合射殺をするのです。大体年間百三十頭ぐらい射殺しています。ですから、ちょうどいいバランスがとれておるということだと思うのです。このような管理狩猟といいますか、そういうものをきちっとこれからやっていくべきだと思います。  そこで、もう時間がないので、二点ほどまとめてお伺いしたいと思うのです。  これから特定鳥獣保護管理計画策定あるいはまたこの実施に当たって、やはり専門家人材養成、これが非常に大事になってくるわけでございます。と同時にまた、長期的な取り組みが必要になってきますので、地方自治体もそうなんですが、専門官をつくるべきではないのかなというふうに思います。  また、いろいろな生態生息分布調査をするわけです。その調査研究費を今環境庁地域によって出しておりますけれども、これを各都道府県に交付する制度創設をして、安心してきちっとした調査ができるような体制をつくっていただきたいと思うのです。  この辺についてお伺いしたいと思います。
  17. 丸山晴男

    丸山政府委員 専門的な知識を持った人材養成確保につきましては、大変大事な問題でございまして、各都道府県が科学的、計画的な保護管理に取り組む中で、専門研究機関を設置いたしたり、あるいは動物学生態学などの鳥獣管理専門分野を専攻した職員を採用、配置したり、また大学等研究機関との連携を図りながら専門家のモニタリングへの参加事例確保するということで、逐次確保が進んでまいっております。今後とも、私ども野生鳥獣管理技術者育成事業という人材育成事業がございますけれども、こういった事業を通じまして、適切な支援助言を行ってまいりたいと考えております。  また、生息状況調査等制度でございますけれども個体群ごと生息状況の詳細な把握が大変大事でございまして、これまでも各種調査あるいは計画策定に対して、私ども指導支援を行ってきたところでございますけれども、今後、野生鳥獣管理適正化事業の拡充あるいは重点配分ということによりまして、各都道府県特定鳥獣保護管理計画策定する際または実施する際、より一層強固なものとなるよう一層の支援を行ってまいりたいと考えております。
  18. 佐々木洋平

    佐々木(洋)委員 調査事業といいますか、そういう制度創設して、各都道府県、都は入りますかどうか、いずれ道県鳥獣調査というものをしっかりとするための制度をぜひ創設していただきたいと思います。  最後になりますけれども被害がこれだけ出ておるという状況の中で、その補償の問題、ある程度共済対象にはなるわけですけれども、どういう形がいいのかちょっとわかりませんけれども補償制度創設をぜひお願いしたい、このように思いますが、いかがでしょうか。
  19. 丸山晴男

    丸山政府委員 損失補償につきましては、今先生お話しの共済制度もございますけれども、個別の対応といたしまして、例えば、鹿児島・出水のツルの生息に必要な農地については借り上げ助成、あるいはまた、広島等につきましては、被害対策としての保険制度創設、また基金をつくっての被害対策事業、あるいは補償条例を行う自治体もございます。  この損失補償問題につきましては、まずやはり農林業被害減少させるということが大事でございまして、新たな保護管理制度の取り組みによりまして農林業被害の軽減にも資するということでございますが、その成果を見きわめながら、今後、国、都道府県、市町村、その他機関による取り組み事例も研究しながら、有効な対応策につきまして関係省庁間で検討してまいりたいと考えております。
  20. 佐々木洋平

    佐々木(洋)委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。
  21. 北橋健治

    北橋委員長 桜井郁三君。
  22. 桜井郁三

    ○桜井(郁)委員 自民党の桜井郁三でございます。  鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律の一部を改正する法律案に対して、御質問を申し上げます。  我が国は、海や山、川などの地勢や、あるいは春夏秋冬という気候が大変変化に富んでいるということから、野生鳥獣の種類は豊かだと言われているわけであります。国土の社会経済的発展とともに、これらの鳥獣生息状況は大変変化しているところであります。減少している鳥獣も少なくなく、全国的に減少している鳥獣、とりわけ絶滅のおそれのある種類なども増加していると聞いております。保護に対する国民の要望も高まってきております。一方、地域的にふえ過ぎて、人間との間にさまざまなあつれきを生じている鳥獣も数多くあるわけでございます。  まず最初に、我が国に生息する野生鳥獣について、どのような変化が起こっているのか、全国的ではないが地域的に減少し絶滅のおそれのある鳥獣の種類はどのようなものがあるのかをお伺い申し上げます。
  23. 鹿野久男

    鹿野説明員 国土全体で見た場合には絶滅のおそれというものは当面ない、しかし地域ごとに見た場合に、その地域地域個体群、これは地域個体群と申しますが、この地域個体群につきまして絶滅のおそれがあるものはどういうものがあるかというようなお尋ねでございます。  この一番典型的な例は、ツキノワグマ。先ほどの御質問にも出ておりましたが、ツキノワグマ全国では一万から一万五千頭生息しておると言われております。しかし、先ほどもありましたように、西日本の各地域ではそれぞれ孤立分断して生息しておりまして、小さいところでは数十頭、多いところでも二百、三百といったようなオーダーの生息でございます。このほかにも幾つかの種類がありますが、やはり西日本クマというものが典型的な例だと思っております。
  24. 桜井郁三

    ○桜井(郁)委員 ありがとうございます。  今のは全国的だということでございますけれども地域的にふえ過ぎて人間とのあつれきを生じている鳥獣についてどのようなものがあるのか、そして、どのようなあつれきが生じているのか、お伺いをしたいと思うわけであります。
  25. 鹿野久男

    鹿野説明員 野生鳥獣と人とのあつれきの事例でございますが、近年、中山間地域中心としまして深刻な被害を引き起こしている鳥獣の例としては、シカ、イノシシ等が挙げられます。  具体的にどういったようなあつれきを起こしておるのかと申しますと、例えば、北海道の東部地域、ここはエゾシカが非常に多いわけです。ここでは牧草、要するに牛のえさになります牧草等畑の作物、ビート、麦等々もございますが、畑の作物の被害が非常に多くなって、例えば北海道の場合では、その被害額は約五十億円と言われております。  そのほか、岩手県の五葉山地域、ここもやはり牧草とか農作物がシカによって被害を受けております。そのほか、例えば千葉県の房総半島、ここにはニホンザルが生息しておるのですが、ここでは農作物、果樹等の被害といったように、各地域それぞれその種類と地域実情によりまして若干違いがありますが、そういったような農作物それからまた杉、ヒノキの植林地の林木への被害というものもシカツキノワグマ等々でかなり多く出ております。
  26. 桜井郁三

    ○桜井(郁)委員 我が国における野生鳥獣の現状は極めて複雑な様相を呈しているわけであります。このため、人と野生鳥獣とのかかわり方についてもさまざまな意見があり、十人いれば十人意見が異なるのではないでしょうか。  また、全国的に減少し絶滅の危機に瀕している野生鳥獣を守ることについては国民の共通の理解があるわけで非常にわかりやすいわけでありますが、地域によっては、増加している、自然の樹木や農作物に悪影響を及ぼしている鳥獣もあるわけでございます。また、ツキノワグマについても、生息数の多少にかかわらず人への被害の危険性が常に憂慮されるところであり、昨日の新聞にも、尾瀬で人身事故が報じられておりました。  その生息数のいかんにかかわらず人とのあつれきが懸念されているところであり、保護管理に当たっては、慎重な対応が必要ではないかと思うわけであります。有害であるからといって無秩序に捕獲してはならないし、鳥獣は大事であるからとしてその被害を放置してよいというわけにもいきません。我々は、悩ましい問題に直面しております。今回の鳥獣保護法改正は、ある意味ではこの問題に取り組んだものと理解しているわけであります。  そこで、このような複雑な状況にある野生鳥獣に対する対処のあり方について、大臣の基本的な考え方をお聞かせいただきたいと思うわけであります。
  27. 真鍋賢二

    真鍋国務大臣 先生指摘のように、諸所に被害が出ておったり、また動物の減少等もあるわけでありまして、まず現地を視察してみようということで、私も先般、奥日光、中禅寺周辺を視察させていただきました。まさにその様相が出ておりまして、シカの数にしてみればふえておる、またクマの数にすれば減少しておるということでありまして、現在、これらの調整を急がなければならない、今までの施策では通用しない点が多々ある、こう考えておる次第であります。  そこで、これらの問題に対応する際の基本は、人と野生鳥獣との共存にあると私は思うわけであります。共存を図りながら、野生鳥獣個体群を安定的に維持しながら、人間活動とのあつれきをできるだけ少なくするようにしていかなければならない、こう思うわけであります。  そのための具体的な方策といたしましては、生息環境管理個体数調整被害防除対策を総合的に組み合わせた科学的、計画的な保護管理を具体化していく必要があると考えておる次第でありまして、この点に留意しながらやっていきたいと思っております。
  28. 桜井郁三

    ○桜井(郁)委員 共存共栄ということでありますが、農作物や林業などの被害対策としての個体数調整を重視し過ぎているのではないかという批判もあるわけでございます。これをどのように考えておられるのか、お伺いをいたします。
  29. 鹿野久男

    鹿野説明員 野生鳥獣被害防止を図るためには、個体数調整のみに依存するのではなく、さくの設置などの被害防除対策、また鳥獣保護区の設定等といったような生息環境の整備、こういったことが重要であると考えております。  しかしながら、ふえ過ぎたシカなどによって引き起こされます農林業被害それから生態系の攪乱といったことに対しましては、さくの設置ですとか生息環境の整備等のみで対応するということにはやはり限界がございます。こういったような措置とあわせて、個体数調整という手段をとることも必要であると考えておるところでございます。  今回御提案いたしております特定鳥獣保護管理計画制度は、科学的な調査等を基本といたしまして、個体数調整、さらに被害防除対策生息環境管理、この三つの手段の組み合わせによりまして人と野生鳥獣との共存を図ろうとするものでございまして、個体数調整のみを重視しているという批判には十分おこたえしていると考えております。
  30. 桜井郁三

    ○桜井(郁)委員 シカについては、農林業被害というよりは、むしろ、さまざまな自然生態系への悪影響が生じていると聞いておりますが、どのような地域でどのような悪影響があるのか、お伺いをいたします。
  31. 鹿野久男

    鹿野説明員 シカの場合には、かなりいろいろな植物を食べます。そういうことからしまして、ふえ過ぎたところにおきましては、農林業被害だけではなくて、自然生態系、我々がこれまで営々として守ってきた自然のすぐれたところにも影響を及ぼしてきております。  例えば、日光国立公園では、奥日光のウラジロモミ、これは自然植生でございますが、こういったものの樹皮がはがされるということで次々と枯れる、もしくは枯れる寸前という状況になっております。また、もっと高山帯の方にございます高山植物でございます、シラネアオイという美しい植物の群落があったわけですが、これも既にシカに食べ尽くされて、ほとんど今は見られなくなっているという状況でございます。  近年はさらに、シカがこれまで生息をしていなかった尾瀬、これは湿原で有名なところでございますが、尾瀬にまで最近は出てきて、湿原植物を食べ荒らしているというような状況も見られる、こういったことでございます。
  32. 桜井郁三

    ○桜井(郁)委員 また、シカ増加原因、一部地域ツキノワグマ減少原因を明らかにしていただきたいと思います。
  33. 鹿野久男

    鹿野説明員 まず、シカについての最近の増加要因でございますが、シカは、そもそもオオカミという天敵がいなくなったということが一つでございます。それから、近年、大雪が余りないということで、冬に通常は時々の大雪のために著しくその生息数減少するわけですが、そういったようなこともない。  また、土地利用の変化、特に中山間地域でございますが、過疎に伴いまして、むしろシカがもともと畑であったとか田んぼであったとかいったところに進出してきて、えさ条件がかなりよくなってきた。それから、先ほどもありましたが、狩猟者が全体に減ってきて、狩猟圧が余りかからなくなったといったようなことがその要因として考えられます。  具体的な地域では今挙げたような要因がそれぞれ複雑に絡み合って作用しておりまして、地域地域でどの要因が一番重くきいているかということは、その地域によってかなり変わってきておると思っております。いずれにしろ、そういったようなことで、シカ全国的にかなり増加しておるということでございます。  一方、減りつつあります西日本ツキノワグマでございますが、これは、先ほども申し上げましたように、そもそもかなり広い行動圏を持って、その中でえさ確保しておるというような生態を持っておるわけでございまして、こういった動物の場合には、人為的な開発がかなり進んで生息地が分断されるとか、えさの植物、広葉樹が中心でございますが、こういったものが全体として少なくなるとか、こういったような人為的な圧力がかなりきいてきております。  こういったことから、西日本地域におきましてはツキノワグマが徐々に減少しておるという状況だと理解しております。
  34. 桜井郁三

    ○桜井(郁)委員 西日本の一部地域ツキノワグマなど、減少している鳥獣は、捕獲を抑制し、生息環境管理等により、その増加に努めること等も当然必要であります。  しかし、シカについては、自然の仕組みの中で個体数調整する機能がほとんど喪失しており、放置すればふえ過ぎて、みずからの生息環境を悪化し、ふえ過ぎたシカは、自身を絶滅の危機に追いやる可能性があるとともに、その地域の自然環境に壊滅的な傷跡を残すのであります。これらは、宮城県の金華山や奈良県の大台ケ原で著しいと聞いておるわけであります。ふえ過ぎたシカについては、将来にわたって健全な個体群として安定的に維持存続させ、人と共存共栄させる上で、生息環境改善、被害防除とともに、一定の個体数管理は必要になってくるわけでございます。  今後、野生鳥獣の科学的、計画保護管理を国民的に定着していく上で、幾つかの基本的課題があるのではないかと思うわけであります。  その一つは、都市住民と農山村住民との認識の相違であります。野生鳥獣被害問題は、人間社会の経済活動の変化と密接な関係にあるわけでございます。農山村の過疎化と都市部への人口流出などの構造的要因、国土利用のアンバランスが根底にあり、対応能力が低下している農山村と、実態を知らずに駆除に反対する人々との間の意見の違いでございます。お互いの立場を超えて、現地の実態認識を共有することが絶対的に必要であるわけでございます。  二つ目は、野生鳥獣について、自然生態系の一要因としてとらえるよりむしろかわいさの次元でとらえることの問題があるわけでございます。自殺やいじめが横行している今日、動物に哀れみを感じる心の教育は重要であるわけでございますが、このような情緒教育の面と野生鳥獣保護管理の問題を混同すると、問題の本質がぼけ、解決の糸口が見えなくなるのではないでしょうか。感情的規制よりもむしろ科学的規制が必要であります。  我が国の野生鳥獣施策も、科学的な手法により個体群とその生息環境管理することによって野生鳥獣の安定的な存続を図り悪化した生態系のバランスを回復させ、農林業との共存を図る新たなステップを迎えることが必要なのではないでしょうか。このために、人員、予算などの面での都道府県における体制の充実に対する国の支援が不可欠であります。  この点についての大臣の決意をお伺いいたしまして、質問を終了させていただきます。よろしくお願い申し上げます。
  35. 真鍋賢二

    真鍋国務大臣 ただいま先生から承りました御高説、私はまさに同感でございます。そのような観点に立って事の処理に当たってまいらなければ、鳥獣保護生態系の管理というものは十分できないというふうに考えております。  そこで、国といたしましても、都道府県に対しまして、野生鳥獣分布生息密度情報を整備する野生鳥獣保護管理基盤整備事業、また特定個体群保護管理計画に関するガイドラインの策定等技術的な支援を行う所存であります。  この中で、情報源につきましては、もう非常に大切なことだと私は思うわけでありまして、都道府県と国との間の密接な連携を図っていかなければならないと考えておる次第であります。また、都道府県におきます保護管理計画策定のための調査等の実施に関しましては、これまで野生鳥獣管理適正化事業による補助や管理技術者育成事業による県職員への研修を実施しておるところでございます。  今後とも、都道府県との連携をより一層密にしまして、積極的にこの問題に取り組んでいかなければならないと考えておる次第であります。
  36. 桜井郁三

    ○桜井(郁)委員 どうもありがとうございました。
  37. 北橋健治

    北橋委員長 近藤昭一君。
  38. 近藤昭一

    ○近藤委員 民主党の近藤昭一でございます。  今回の鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律の一部を改正する法律案について質問をさせていただきたいと思います。  このことにつきましては、随分と参議院の方でも議論されております。鳥獣保護狩猟、一見するとというか単純に考えてみれば、狩猟、いわゆる鳥獣を殺すということだと思うのですが、そういうことと保護、守っていくということ、こういったものが一つの法律の中に入っている、何かわかりにくいなと単純に思うわけであります。  それで、今回この法律の改正が出てまいりまして私も簡単に沿革等を勉強したわけであります。そうすると、もともと狩猟法という鳥獣を撃つ法律と鳥獣保護する法律があるときから一つになったということだったと思います。そこに一つの何か理由はあったと思うのですが、大変にわかりにくさがあるのではないかなと思うわけであります。  そこで、改めて、この法律の本当の趣旨というものと、今回法改正が必要になったことの経緯、背景についてお伺いをしたいと思います。
  39. 丸山晴男

    丸山政府委員 昭和三十八年から現行法律題名、鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律となっておりますが、大正七年からそれまでの間は狩猟法でございました。  狩猟といいますのは、天然資源の一部であります鳥獣捕獲するわけでありますけれども、それはいわば持続可能性が大事でございまして、安定的に捕獲するだけの資源を維持増殖する必要があるということで、鳥獣保護事業狩猟法の中で行ってきたところでございます。  それが狩猟の適正化それから鳥獣保護対策の推進ということで、昭和三十八年から現行の法律になり、その中で鳥獣保護思想の明確化また鳥獣保護事業計画策定鳥獣保護区の設定といったようなことが進んでまいったところでございます。飛躍的な対策の進展が見られたところでございます。  その後、シカなどの特定野生鳥獣の著しい増加、またクマなどの一部の野生鳥獣個体数減少、こういったような新たな事態が生じまして、現在、人と自然との共生の一環として、野生鳥獣と末永く共存するためには、やはり人とのあつれき、あるいは自然生態系と一部の野生鳥獣とのあつれきの軽減をできるだけ図っていくということが大事であるということで、最近では各都道府県におきましても専門家が育ちまして科学的な保護管理対策が始まっておるところでございます。  私どもとしても、それに対する支援、助成を行っているところでございまして、今回はいわばそういったような科学的、計画的な保護管理に対しまして、地域実情に応じた都道府県実施に対する全国共通の制度としての裏づけを与えたいというのが改正案のねらいでございます。
  40. 近藤昭一

    ○近藤委員 今お話にありましたように、あるときある種の動物、鳥獣が非常にふえる、そういったふえた動物、鳥獣を、狩猟という駆除の方法でしょうか、狩猟という方法を使って鳥獣が持続、維持できるために人間が手をかすといいますか、狩猟一つの方法だろう、だからそういう保護狩猟というものを一つにした方がいいのではないかということを御説明になったのかなと思うわけであります。  ただ、今お話の中にもありましたように、人と自然とが共生をしていく、人が自然を守るというよりもどちらかというと人間も自然の一部だと思います。こういった本来の自然環境があって、そこにいて初めて人間も豊かに生きていけるのだと思うのです。  そこでちょっとお伺いをしたいのです。大変にある種の動物がふえるという状況が出てくる。しかしながら、最近の北海道新聞の記事にもありました。御承知だと思いますけれどもちょっと読ませていただきます。簡単に紹介させていただきますと、知床半島の知床国立公園などでエゾシカがわずか三日間の調査にもかかわらず百六頭も死んでいた。この報告は、知床自然センター管理事務所の調査によって明らかになったものである。その原因は、ことしは積雪量が多く、その雪解けに多くの日数を要し、雪に埋まった牧草などをなかなかシカが食べられなかったことにあるということのようであります。  そうすると、やはり自然というものは、本来ある自然の中で、多少今減った方がいいというときに、ちょっとタイミングがずれたりするのかもしれませんが、そういうずれも含めて、大きな自然の中でシカ自体が頭数調整していくのではないかなと思うのです。  その点についてはどう思われますか。自然が本来の頭数調整していくと考えるのか、人間がそこに手をかさないととてもじゃないけれどもそういう調整はできないのか、その辺についてはどうお考えでしょうか。
  41. 鹿野久男

    鹿野説明員 野生の鳥獣は、本来、自然の生態系が丸々残っていた場合には自然の推移に任せるのが基本だと思っております。ただ、残念ながら、我が国のように人口周密で人と自然が隣り合って一緒に共存しているというようなところでは、丸ごと残っている自然の生態系というのは日本じゅうどこを探してももうございません。  そういうことからいたしますと、それぞれの鳥獣の、例えば増加現象、こういうものに対しては、やはり我々人間側でその地域個体群それぞれが今後ともずっと生存できるよう何らかの対策を打っていくことが必要だというように思っております。それは、ふえ過ぎたものに対してはやはり駆除をする、また、減り過ぎたものに対しては生息地の整備その他一切とらないようにするとか、そういったようなことが中心になろうかと思っております。
  42. 近藤昭一

    ○近藤委員 なるほど。本来の自然があればそこで自然の調整が行われるかもしれないけれども、残念ながらその自然が丸々残っていない、だから人間が手をかすんだという御趣旨かなと思うのです。  ただ、一つ認識だけお聞きしたいわけですけれども、本来はやはり自然がそれを調整するべきだというふうにお考えでしょうか。そのことについてお伺いをしたいと思います。
  43. 鹿野久男

    鹿野説明員 自然を守る立場としましては、本来そういう自然があってほしいと思っております。ただ、残念ながら、先ほども申しましたように、我が国ではそういう地域はもうほとんどない、絶海の孤島等に一部ございますが、人の住んでいるようなところではもうほとんどないというのが現状でございます。
  44. 近藤昭一

    ○近藤委員 御認識としては、やはりそういったものは自然がやっていくものだというふうに御認識をいただいているということだと思うのです。  そうしますと、やはり今回の法律の改正についても、そういった観点、まさしく自然を守っていくといいましょうか、先ほど私は人間も自然に守られておると言ったわけですが、人間を守ってくれる自然、共生という言葉を先ほどもお使いになられましたし、私もそうだと思うのですが、共生をしていくためには、まさしく全国で自然が失われつつあるならば、自然が失われたからこういう状況になった、そういう状況になってある種の動物がふえてしまったから、これは人間が手をかして減らすという考え方はわからないではないのですが、非常に場当たり的。やはり根本に返れば、大変に自然というものは複雑であり偉大なものだと思うのですね。そうすると、そういったことをやっていくと、あるとき予想だにしないようなことが起きるんではないかなというふうに思ってしまうわけであります。  先ほどエゾシカの例も挙げさせていただきましたけれども、大変にエゾシカ北海道ではふえているという状況がある。そこで、かなり駆除ということも北海道ではやっているようであります。ところが、ことしは非常に積雪量が多くて、雪解けがまた時間がかかってなかなかえさがとれない、こんなことも起こってしまうわけでありまして、大変に予想もつかない奥の深いものだと思うのですよね。  そういう意味では、この奥の深いものに対して人間が手を加えるというのも、先ほどおっしゃられた、まさしくもとの自然に戻していく、失われつつあるならば、この失われつつあるものに対して歯どめをしていく、あるいは回復をしていく、こういうことが非常に重要ではないかなと思うわけであります。  それで、そういった観点から、ちょっと今回の法律改正についてお伺いをしたいと思うのです。つまり、今回の法律改正の中で、私はちょっと違うのじゃないかなと思うわけです。そういった持続、維持のために人間が特定鳥獣保護管理制度、こういうものをつくってやっていけばいいんだというようなことがこの法律改正の中にあるのですけれども、例えば、管理対象が著しく増加するとか減少している、そういったものをどういう基準で判断なされるのか、また、それを果たして本当に把握できるのかどうかということについてお伺いをしたいと思います。
  45. 鹿野久男

    鹿野説明員 鳥獣が著しく増加した、もしくは著しく減少した、この判断でございますが、本当のところを言うとなかなか難しいというのが実情でございます。  一つは、科学的な判断、生物学的な判断といいましょうか、その当該地域におきますえさの量、もしくは隠れ家、そういったような自然の状態の方から、一体この地域にどのくらいすめるのかといったようなことがございます。もう一つは、先ほど来話になっております、人と動物とがどう共存していくか、どう共生していくかという形で、人と動物といい関係にあるには、一体どのくらいの関係でいたらいいのかという二つの側面がございます。  現実的には、その二つの側面、科学的な側面とむしろ社会的な側面、これに対しまして、ちょうどいい数というものを考えていくわけでございますので、当然、そこをいろいろ研究している学者の方々、そういった方々の御意見、それからまた、動物とのあつれきの接点にいます農林業関係者、そういった方々の幅広い御意見、そういう中での合意形成ということがどうしても必要になってまいります。  一方では科学的な判断、また一方では地域における人と自然との美しい共生のあり方、こういったような総合判断から決められるものだというように考えております。
  46. 近藤昭一

    ○近藤委員 本当に難しいことだと思うのですよ。どれぐらいの個体数が適正なのか、今の現状の数は果たして多いのか少ないのか、これは非常に難しい問題であって、まさしくそういう意味では、私なんかは、そんなところに人間が手をかすというよりも、本来ある自然を回復することによって、もちろん人間もそこで住んでいくわけですから、本来あった姿とは人間が住むことによってもうその時点で変わっているとは思うのですけれども、それでもできる限り本来の自然の姿に戻していくということが大事ではないかなと思うのです。  ただ、百歩譲って、そういう中でも人間がやっていかなくちゃいけないとしました場合、これは論理の前提としてそう申し上げるだけなんですけれども、人間が難しいと思いながらもやっていくわけですが、そうすると、非常に綿密なデータというものが必要ではないかなと思うのですね。現状はこうなんだから、そこに何年かの調査によって、それがふえていったり減っていったり、そういうデータも積み重ねていく、そういうことによっていわゆる学問的にはいろいろな予想ができるんだと思うのですね。  そうすると、そういうものを是とするならば、そういった調査というものがきっちりとやれているのかどうかという疑問がわいてくるわけであります。そういった個体数把握というのはどういうふうにやっていらっしゃるのか、そのことについてちょっとお伺いをしたいのですけれども、いかがでしょうか。
  47. 鹿野久男

    鹿野説明員 鳥獣の具体的な生息数、これを把握するというのは、実は大変な労力と時間がかかります。現実に今各県が管理計画をいろいろ検討している中で、現実に鳥獣生息数把握するという場合には、例えば、ヘリコプター等を使いまして、冬の時期に実際にシカの数を空からカウントしていくというようなことがございます。それからまた、夜、シカの目は光りますので、夜、道路を通りまして、ライトを当てて光る目の数を数える、それを各道路ごとにやっていって全体として集計する。それから、シカのふんを数え上げていって、そのふんの方から全体の頭数を推計するといったような方法等いろいろございます。  これはそれぞれの地域によって、どういう調査方法が一番適切であるかというのは、これまた違います。現実に今各地で行われておりますのは、そういったような各種ある調査方法、大体は数種類を組み合わせてやっておりますが、それにつきましても、それぞれの地域に一番合った方法を研究者等からいろいろ御助言、御指導をいただいて実施しておるというのが現状でございます。
  48. 近藤昭一

    ○近藤委員 それぞれの地域によって事情は違うでしょうから、ヘリコプターを使ったり、今おっしゃったような目が光ることを利用したりとかされているんだと思うんですけれども、それは、例えば一つ地域とか県単位でどれぐらいの人数でやっていらっしゃるんでしょうか、あるいはどれぐらい持続的にやっていらっしゃるのか。  こういうものは、まさしく先ほど本当のところはとおっしゃったような気がするんですが、本当のところは大変にその数を把握するのは難しい、それが本当のところだと私も思うんです。その本当のところは難しいものを何とかある程度統計学的といいましょうか、そういったものでやっていくんだと思うんですよ。  そうすると、いかに確たる方法でやっていくか、あるいはそれを持続させて何年もやっていくか、そしてそのデータをきちんと把握していくかということだと思うんですが、それぞれ都道府県でそういったことに当たっていらっしゃるところ、場所の数、またそこで働いていらっしゃる方の人数というものをお教えいただけませんでしょうか。
  49. 丸山晴男

    丸山政府委員 今先生お話しのように、本当に時間のかかる作業でございます。  一般的には、いわば総括的な判断ができる学識経験者をヘッドにいたしまして、これは大学の研究者あるいは国の研究所の専門家、そういったような方が総合的な総括を行いまして、さらにその下に都道府県の出先事務所の技術担当者、これはデータの分析を行う専門家、それから現場では、そういったライトセンサスとかヘリに乗るようないわば現場での確認調査作業を行う技能者、この組み合わせが一般的でございまして、その現場での技能者はボランティアの方もおられますれば、あるいはまた狩猟者の方もおられ、また専門家を目指す学生の方もおられます。そういったような方々が年数をかけて調査をいたしておるわけでございます。  現在では、非常にモデル的にやっているところが幾つかございますが、それ以外のところでも二十ほどの府県でそういった計画策定の動きがございまして、また調査研究機関につきましては、三十三の県で三十五の調査研究機関専門家を抱えてこれらの調査ができるような体制が進みつつあるというところでございます。  場所的には、北海道のエゾシカですとかあるいは栃木の奥日光ですとかあるいは岩手五葉山ですとか、そういったようなところが典型的にこれまで時間をかけて調査をしてきたということで実績を上げているところでございます。
  50. 近藤昭一

    ○近藤委員 もう一度ちょっとお伺いをしたいんですけれども、各地で専門家の方が総括をされたり、現場ではボランティアの方も含めてやっていらっしゃるというようなことをおっしゃったと思うんです。全国で三十三県、そして箇所数としては三十五カ所とおっしゃったでしょうか。そうすると、逆に言うと三十五カ所しかないわけでありますし、そこで働いている専属の職員という方はどれぐらいいらっしゃるんでしょうか。
  51. 丸山晴男

    丸山政府委員 全国調査ということではございませんが、例えばある県におきましては、現場での分析をする方が数名おられます。それから協力するボランティアの方がそれに従って数十名おられます。これはボランティアの方でございます。職員につきましては、各都道府県鳥獣係あるいは野生生物係というのがおりまして、これも大体平均して数名でございます。それに各府県の研究機関、やはり数名だと思っております。大学等におきましては、ちょっと人数が詳細な統計ではございませんけれども、これは哺乳類の生物多様性調査をやる専門家として私ども把握しております合計人数でございますが、二百八十名余という研究者の数字がございます。  ですから、全国的には、研究者としては二百八十名余を私どもとしては把握をいたしておるわけでございます。それに各府県の実務担当者、本庁の鳥獣保護係それから出先の鳥獣保護の技術者がおるわけでございます。さらにボランティアがそれを支援するという仕組みでございます。
  52. 近藤昭一

    ○近藤委員 数名という、まさしく何人なのかよくわからない数名なのかなと思うわけでありますけれども、それはどれだけいらっしゃれば適正かというのも、動物の個体数じゃないですけれども、なかなかわからないところだと思うんです。全国で研究者の方が二百八十名いらっしゃるというふうにお聞きすると何か多いような気もするし、でも、たったそれだけでいいのかという気もするし、では、その二百八十名の方というのはどういうふうにやっていらっしゃるのかなとか思うわけです。二百八十名の方が本当にずっと専門でこのことについてやっていらっしゃるのか、お聞きしていて、非常に難しいなと思うんです。  ただ、思いますのは、これはまさしくさっきお答えがあったように個体数がどれぐらいあるかもあるでしょうし、どういう生態鳥獣が暮らしているのか、そういうこととかいろいろなことがあると思うんですね。もちろんそういった鳥獣生態を研究する専門家がいて、そういう人たちはまた別個協力をしていろいろと総合的に相談をしながらやっていくということ、いろいろな方法もあると思うんですね。ただ個体の数は、どれぐらい生息しているのかというのは結構重要なポイントになってくると思うんです。  先ほど、二百八十名とかいうことをおっしゃられたりボランティアの方が十数名いらっしゃるということですが、例えばボランティアの方というのはある程度専門的な知識を持った、しかしボランタリー精神を持って鳥獣保護するために手伝ってくださっているという意味なのか、ちょっとお聞きしただけではわからなかったのです。そういった専門的な知識を持ってやっていらっしゃるならいいんですけれども、そうでなくて、とにかく時間と労力を提供しましょうというような方なのか。だとしますと、そういうやり方で果たして個体数がちゃんと把握できるのかというふうに思うわけです。  ちょっと個体数のことだけにこだわってお聞きしたいのですけれども一つの典型的なある県ではなくて、それぞれの県によっても違うのかもしれませんが、どれぐらいの方がそれぞれの県で個体数把握するのに従事していらっしゃるのかということをもう一度お聞きしたいんです。
  53. 鹿野久男

    鹿野説明員 先ほど来、調査全体はいろいろな調査方法があり、また、そこに実際にかかわるのは非常に大変な労力と時間がかかると申し上げましたが、現実に、環境庁調査もそうですが、各都道府県調査に当たりましても、都道府県の職員そのものが調査をするという体制ではございません。  例えば北海道など一部の県では独自にそういう研究機関を設けてやっておりますが、一般的にはそういったような調査そのものを実施するのが都道府県の職員ではなくて、都道府県の職員は調査計画を立てて、それを実際にはどこかの大学の研究室もしくはその研究室周辺におりますいろいろなそういうボランティアの方々、こういう方々を動員してやるという形になります。  ですから、いろいろな調査そのものによって人手のかかり方も違います。例えば、先ほど申し上げましたようなヘリコプターによる目視カウント、これは調査そのものは、ヘリコプターに二人か三人乗って飛び回れば大体カウントできるわけでございます。また、ふんの数を数えてこれを推計する方法ですと、それぞれ地図の上にメッシュを切りまして、そのメッシュごとに、どこにどれだけの量があったかというのを全部拾ってきて、それを記録する、その後に集計して推計するという作業になりますから、これは山の中を駆けずり回る人がたくさん要るという形になります。  ですから、ただいまの先生お話は、具体的な調査の中でどれくらい人が要るのかというお尋ねでございますが、これは、どういう調査方法の場合でどのくらいの広さをやる場合にどうかということでないと、的確に実数でお答えするというのはなかなか難しゅうございます。
  54. 近藤昭一

    ○近藤委員 なるほど。それぞれの方法によって人数も違ってくるんでしょうけれども、ちょっと質問の視点を変えてみたいと思うんです。  聞いたところによりますと、そういった個体数把握するのに、随分と、いわゆるハンター、狩猟者の人も任務を負っているとお聞きしたんですけれども、これは大分ハンターの方がかかわっていらっしゃるんでしょうか。  これは、ハンターの方でもいろいろな方がいらっしゃると思うんですよね。まさしく鳥獣をとりたくてたまらないような人、何とか一匹でもたくさんとりたい人とか、やはり自然と共生しながら、自分もハンターとして鳥獣狩猟していこう、そういうような非常にモラルの高い方々から、いろいろな方がいらっしゃると思うんです。  ただ、近年非常に、狩猟人口が減っているにもかかわらず、狩猟に関する事故の発生が多いというようなデータを見ますと、大変に失礼な言い方かもしれませんが、そういったハンターの方のモラルが随分と低下しているんじゃないかなと思うんですけれども、そういった方が大分個体の把握にかかわっていらっしゃるのか、それについてどういうふうにお考えなのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  55. 鹿野久男

    鹿野説明員 鳥獣生息状況調査に実際のハンターの方々がどのようにかかわっているかというお尋ねでございます。  一つは、当初、地域全体としてどのくらいの鳥獣生息しておるのかというのは、先ほども申し上げましたように、研究者の方々を中心とした調査中心でございます。ただ、この中に、実際にハンターの方々の、毎年、どの地点で何頭撃ったか、また何頭目撃したか、そういったような情報もまた全体として頭数を最終的に推計していく上では非常に有益な情報になってまいります。特に近年、こういったような計画的な駆除を実施してまいりますと、その後の鳥獣生息状況がどうであったかということを追跡していく、いわゆるモニタリングが非常に大切になってまいります。  特に、そういう中では、実際にハンターの方々の、先ほど言いましたような、どこで遭ったか、どこで撃ったかという情報、さらには、実際に撃った、例えばシカの場合などは、下あごの状態、これを全部観察することによって、そのシカが健康な状態であったのか、また、雌ジカであれば、果たして妊娠しておったのかといったようなことで妊娠率を求めるとか、こういったようなことをして、全体として、単に生息数だけでなくて、ある個体群が健全な状態でいるのかどうか、そういったようなことも随時追跡調査いたしております。そういった中では、やはりハンターの方々の情報、または試料の提供、こういったことが非常に有益だと思っております。
  56. 近藤昭一

    ○近藤委員 常日ごろそういうふうに山に入られているハンターの方でありますから、そういった有益な情報をもたらすことができるんだと思うんですが、それは、例えばどの程度依存しているかというのはおわかりになるんですか。例えば、個体数把握をするのに大体八割ぐらいはそういったハンターの人たちからの聞き取りとか、半分ぐらいはそういう聞き取りなんだ、あと半分ぐらいは職員が出て数えているとか、その辺はいかがでしょうか。
  57. 鹿野久男

    鹿野説明員 全体的な生息数の推計調査、そういった場合のあくまでも補完という位置づけになろうかと思います。  ただ、先ほども言いましたように、その個体群の健康状態、そういうものを追跡調査していく場合に試料を提出していただく、そういったことになりますとかなり中心的な役割を果たす場面もございます。
  58. 近藤昭一

    ○近藤委員 かなり中心的な役割を果たされるということでありますが、ハンターの人は、先ほど申し上げましたように、まさしく狩猟を目的としているわけでありますから、物理的には鳥獣を殺していく、減らしていくということになると思うんです。ただ、その中でもモラルが高い人もいらっしゃるのかもしれないという話は先ほどさせていただいたんです。そうしますと、いろいろなところでいろいろな人が働きながら、そういった個体数管理とか把握とか鳥獣保護管理について考えていくんだということだと思うんです。  もう少しお伺いしたいんですが、かなり中心的な部分とおっしゃられましたけれども、かなり中心的というのは、先ほど申し上げましたように、半分とか七割とか八割とかというのは、どうなんですか、もう一度お伺いをしたいんですが。
  59. 鹿野久男

    鹿野説明員 生息数調査については、先ほども申し上げましたように補完的な部分でございます。  かなり中心的な役割と申しますのは、その個体群状況を見るために、例えば下あごですとか歯の調査をいたしますが、そういったものの材料を提供していただく、そういう面では中心的な役割を果たしているというように考えております。
  60. 近藤昭一

    ○近藤委員 そういうような状況の中で行われていくということですが、今回の法改正で、今後そういった鳥獣保護管理については自治体にかなり任せていくということのようであります。  そうしますと、そういったハンターの人とかの力もかりながら、専門家も自分たちで育成しながら、そして総合的に調査研究そして保護管理をやっていくということだと思うんですけれども、先ほどおっしゃられましたように、こういったことは本当のところは大変に難しいということだと思うんです。そういったハンターの方の力もかりてということでありますと、さまざまな人の、いろいろな方の力をかりていく必要があると思いますし、それを総括していく、地方自治体管理センターと申しましょうか、そういったところの役割が非常に大きくなってくると思うんです。  本日の議論の中にもあったんですが、今後、そういった地域専門家というのはどのように育成なさっていくのか。先ほど、育成をしていきますというお言葉はあったんですが、決意だけお聞きしてもしようがないと思うんですよ、やっていきますという。具体的にはまだまだ、この法案ができてからとおっしゃるのかもしれませんけれども、法案をつくってそれからやるということでは大変に遅いと思うんですよ。同時にあるいは既にお考えになっているんではないか、考えているべきではないかと思うわけです。  今後どのようにしてそういった地域の、自治体の専門家を育てていかれるのか。例えば、何年か後に何人かを育てていくとか、こういうふうにやっていくんだということをお聞かせいただきたいと思います。そうでなければ、この法案、自然を守っていくのは難しいけれどもやはり自然が一番大事なんだという視点はおっしゃっていただいたわけでありますから、そういったものをきちっとやっていくためには専門家をきちっと育てていくこと、それが大切だと思うのです。そのことについて、確認をさせていただきたいと思います。
  61. 鹿野久男

    鹿野説明員 私どもとしましては、特に都道府県の担当者、それから市町村の担当者でございますが、これらの方々に、そういう鳥獣保護の考え方、もしくはその実際的な技術的な事項、こういったものをよく知っていただくために研修を実施しているところでございます。既に今年度からこういう体制で進んでおりますが、この人材確保というのは、こういう行政を進める上では非常に大切でございます。  こういう点をさらに充実して、国と都道府県、市町村、それからその外側にたくさんおります研究者の方々、こういう方々との連携も密にして、科学的な鳥獣保護の推進に努めてまいりたいと思っております。
  62. 近藤昭一

    ○近藤委員 ちょっともう一度お答えをちゃんといただきたいと思うんです。まさしく科学的に保護管理していく、これに対してはかなり慎重であるべきだし、私なんかはかなり疑念を持つわけであります。それでもさっき質問の途中で申し上げましたように、そういうやり方があるとするならば、きちっとしたデータを集めなくてはならないし、そのデータをきちっと分析していかなくちゃいけないと思うんです。  ただ、先ほどからお聞きしていますと、なかなか数を把握するのも大変だということだと思うんですよね。それでもこれからきちっとやっていかれるということであるならば、科学的に考えていかれるということならば、そういった人を育てていくということではなくて、やはり科学的に、数字的にどれぐらいきちっと育てていくのかということをお教えいただかないと、これはちょっと納得できないんですけれども、どうでしょうか。
  63. 丸山晴男

    丸山政府委員 先生お話しのとおり、野生鳥獣との共存を図る上での人の手による保護管理ということでありまして、当然慎重に進めなければならないということが基本でございます。  現在、かなりの都道府県で特に非常にふえておりますシカなどの個体数はほぼ把握をいたしております。それぞれがかなり時間をかけ、人手をかけまして把握いたしております。  そういったところは、むしろ、今後被害がどうなるのか、あるいはまた個体数がどう推移していくのかといったようなモニタリングを絶えずして、その結果、毎年計画の中身に反映させていく、見直していくという作業が必要になってまいりまして、被害状況あるいは生態系への影響の状況、また個体数の目撃その他の状況というときに、先ほど申し上げました狩猟者による情報も一つの要素として使わせていただくということでございます。  それらを担う職員につきましても、研究者レベルにおける人員、また都道府県行政担当者、企画立案を担当する職員も、オン・ザ・ジョブ・トレーニングで、現任訓練でかなり専門家に育ってまいっております。  私どもは、それに対して、特に野生鳥獣管理技術者育成事業という事業で、市町村も含めました職員のいわば専門家への養成のための講習を始めているところでございまして、そういったような講習をさらに広げて、これだけ広がってまいります野生鳥獣保護管理をきっちりできるような職員の体制の整備に努めてまいりたいと思っております。
  64. 近藤昭一

    ○近藤委員 ですから、そういう体制をつくられたのはよくわかったんですよ。では、例えば、今都道府県の職員の方の研修をしていかれるというならば、年にどれぐらい研修をしていかれるのかということをお教えいただきたいと私は申し上げているのであります。  それともう一つ。まさしくそういったデータ、毎年出てくるデータがあるわけですよね。あるいは、各地域で出てくるデータがあるんですよね。自然というのは、日本だけ、あるいは全国的というよりも地球的な規模だと思うものですから、そういった全国的な各地域のデータを集積する中央センターみたいなものが必要だと思うんですけれども、そういったものはあったのかなというふうに思うわけであります。  ですから、ちょっとお答えいただきたいのは、まず、地域でこういったデータを集める職員の方を、今おっしゃった研修、どれぐらいの規模で研修されていくのか。あるいは、それを中央センターみたいなところできちっとデータをとって、毎年変わっていくことあるいは地域によって変わっていること、そういったことをきちっと分析することをやられていくつもりなのか、あるいはもう既にやっていらっしゃるのか。そのことについてお伺いをしたいと思います。
  65. 鹿野久男

    鹿野説明員 まず、私ども実施しております都道府県の担当者を対象とした研修でございますが、毎年各都道府県から一人ずつという形で考えております。大体、それぞれの都道府県鳥獣保護担当、私どもとすれば、二人くらいは専門的な、要するに専門家にやや近い人たち、行政というよりも専門家にやや近い人たちがそういう中で担当しておることが必要だろう、そういうことによって周辺の研究者の方々との連携がうまくいくのではなかろうかというように思っております。  それから、第二点目の全国的なそういったような調査統計の収集でございますが、これは私ども環境庁で昨年生物多様性センターというものを整備いたしました。現在ここは、職員それから周辺の援助してくださる方々全部含めまして今は十五人でやっておるんですが、このセンターが自然環境調査関係全国的に情報の収集、整備、提供をしていくという機関でございます。これももっともっと中身を充実したいと思っております。  いずれにしましても、そういうことでもう出発しておるという形になっております。今後は、この充実を考えていきたいと考えております。
  66. 近藤昭一

    ○近藤委員 研修されているのは年にお二人ぐらいですか。そうしますと、なかなか大変だとは思うんですけれども、私は、こういう重要な問題を扱っていくのに年に二人ぐらいの研修でいいのかなというふうに思うことをちょっと申し上げたいと思います。  それともう一つは、生物多様性センターというところで管理していくということなんですが、これは大分いろいろなことをやっていらっしゃるんでしょうか。具体的にどんなことをやっていらっしゃるのかなと思うわけです。  それともう一つ、同時にちょっとお伺いしたいのは、これからかなり地方自治体に任せてそういった鳥獣保護管理をやっていかれるということですけれども、特に鳥なんかの場合ですと、かなり日本の国内、いわゆる地球規模でも動くと思うんですよね。そういったことについては、どういうふうに地方自治体だけでなくて国というものがかかわっていくのかなというふうに思うわけでありますし、国際条約によって国がいわゆる保護責任を持っている、条約を結んだことによって責任を持つそういう鳥獣があると思うんですが、そういった鳥獣に対する保護はどうしていくのか、そして、その責任というのは、やはりこの場合は国が負われるのかどうかという二点について質問したいんです。
  67. 鹿野久男

    鹿野説明員 まず、多様性センターの役割といいましょうか、今どういうことを所掌してやっているかということについて御説明申し上げます。  昨年、生物多様性センターというのは、本庁にございました自然環境調査室、これが発展的に生物多様性センターというものに組織がえしたものでございます。ここのメーンの業務は、昭和四十八年から実施しておりますが、自然環境保全基礎調査、通称緑の国勢調査と呼んでおりますが、これの継続的な実施がメーンでございます。この調査の中身は、我が国の自然環境の現況、これを把握するというのが自然環境保全基礎調査のメーン業務でございます。  ですから、例えば今お話にあります鳥獣を含めます動物全体の分布調査ですとか、それから植生、植物の状態がどうあるかとか、そういったようなものを国土全般にわたって調査し、それを整備し提供していくということを実施いたしております。特に近年は、動物の分布というものに力を入れているところでございます。  それから、こういったような動物、特に世界の中でどういう位置づけにあって、それに対して国がどう責任を持つかということでございますが、一つは、まず、私ども環境庁といたしましては、国土全般の自然環境の状態はどうあるか、これは環境庁がそれをしっかり把握していかなきゃいかぬ、これが環境庁の責務だと思っております。当然、そういう環境庁の責務の一環として、野生生物も国土全般にわたってどういう状態で生息、生育しているのか、これは私どもは全体としてつかまえていきたいと思っております。こういったような国土全体の生物分布の情報提供があって初めてそれぞれの地域ごとにそこからさらに深く突っ込んだ調査が可能になるというように考えております。  それから、こういったものに対しての国際的な責任でございますが、当然各種の国際条約の中で、それぞれにつきまして共同で保護するといったようなこと、それから大切に扱わなければいけないというようなことがいろいろ決められております。  そういったような動物の分布等の生息状況につきましては当然プライオリティーが高くなるわけでございまして、この多様性センターでもこういったものをやはりしっかりと把握して、その情報は海外とも情報交換できるというのを多様性センターの将来像として進めております。
  68. 近藤昭一

    ○近藤委員 そういったいろいろな役割を持ってやっていかれるというのはよくわかったのですが、もう一度端的にお答えだけいただきたいと思うのです。  そうすると、国際条約によって保護を約束しているものについてはそういった生物多様性センターなんかでも情報を収集しながら対応していくということだと思うのですけれども、きちっとそれについての責任は国として負われるということですね。
  69. 鹿野久男

    鹿野説明員 先ほども申し上げましたように、国土全体の自然環境、これにつきましてはやはり全体として適切に保全されているということが国の責務だと思っております。個別の種について取り上げましても、そういったような国際的に重要なもの、これにつきましてはやはり国として国際的な中で責任を果たしていくべきものと考えております。
  70. 近藤昭一

    ○近藤委員 国として責任を果たすべきものというお答えでしたが、国が果たしてくださるというふうに思うわけです。  そうしますと、そういった生物多様性センターなんかもこれから活用してやっていかれる、これから特定鳥獣保護管理制度というのができて、そこで保護管理計画をつくっていかれるということですけれども保護管理していくのは大変に難しいという御認識をお持ちだと思うのです。そこで、公聴会なんかも開いていかれるということですけれども、ここにはいわゆる市民団体、自然保護団体の方とか研究者の方というのは参加できないとかというふうに聞いているのですが、これはいかがなんですか。
  71. 鹿野久男

    鹿野説明員 今回計画しております計画制度、これにつきましては、法律の上では、つくったときに審議会の意見を聞く、また、公聴会を開くということで各種の方々からの意見を聞くということが定められております。  また、私どもといたしましては、それらに加えまして、これから国として各都道府県にこういう計画策定に当たっての考え方を示していくわけですが、そういう中では、計画策定段階におきましても、当然研究者の方々の参画、またその地域に詳しい自然保護団体の方々、それからもちろん被害に遭われた方々もそうでございますが、そういったような方々から幅広く意見を聞いて合意形成に努める、こういう形で計画策定を進めるよう指導してまいりたいと考えております。
  72. 近藤昭一

    ○近藤委員 そうすると、自然保護団体の方、いわゆるNGOの方あるいは研究者の方もそういった公聴会に参加できるわけですね。
  73. 鹿野久男

    鹿野説明員 公聴会は基本的に利害関係ということですから、自然保護団体は入りますが、学者の方々は、むしろ公聴会というよりも、先ほど言いましたようなその前の段階で、調査それから計画の目標を決める際、そういった際に多く意見を聞く、むしろ指導を受けるということになろうかと思っています。
  74. 近藤昭一

    ○近藤委員 だれに指導を受けるのかはいいのですけれども指導という言葉がいいのかどうかはわかりませんが、いろいろな方から意見を聞いてそれを参考にしていく。ある意味で指導を受けながらだと思うのですけれども。そうすると、公聴会には研究者の方は参加できないというよりも、その前の段階で参加するということである。自然保護団体の方は公聴会に参加できるということですね。  それと、審議会なんかにもそういった自然保護団体からも審議委員みたいなのは呼んでいらっしゃるのか。あるいは、呼んでいないとしたら、今後呼ばれるのか、どうなんでしょうか。
  75. 鹿野久男

    鹿野説明員 各都道府県の審議会を構成する先生方について、今すべて知っているわけではございませんが、私ども環境庁にございます自然環境保全審議会、これには当然そういう各界の方々にお入りいただいております。また、私が知っている限りでも、各都道府県の中では、そういう方々に入っていただいて審議会を構成しているというように承知しております。  全体については、ちょっと今資料を持ち合わせておりません。
  76. 近藤昭一

    ○近藤委員 先ほど利害関係者というお言葉を使われましたけれども、まさしく自然のことですから、これは利害関係者と特定するのはいかがなものかなと思いますし、逆に言うと、利害関係者と特定したとしましても、とにかく自然という大きな目でいくと、すべての人が利害を持っていると思うのですよ。そういう意味では、本当に幅広くすべての方、特に最近は自然保護団体の方、最近はというとおかしいかもしれませんけれども、本当に自然のことをよく知っていらっしゃるわけでありまして、そういった方々の意見は大変に貴重だと思いますし、参考にしなくてはならないと思うわけであります。  それで、生物多様性センターの役割、私はまだまだ不十分ではないかなと思うところがありまして、これから充実させていっていただきたいと思うわけであります。今回の法改正のことで申し上げますならば、ある種の鳥獣個体数増加をしている、だからそれを持続、維持させるために駆除をしていくという側面が今回の法律の中にあると思うのですけれども、本来は、冒頭申し上げましたように、それは自然が行うことである。持続、維持については自然が行うことであって、全くもとには戻せないかもしれないけれども、自然が原状回復をしていくということだと思うのです。そういったことについての研究もやはり生物多様性センターというものがしっかりやっていかないといけないと思うのですよ。  だから、これは何遍も、参議院でもやられたと思うのですが、ふもとまでおりてきた、だからそこで殺すというような方法ではなくて、なぜそこまでおりてきているのかというようなことを研究する。そしてまた、それがおりてこないように、その原因のところをはっきりさせて、そのところから解決していくということだと思うのですね。  それで、そういったことを私はぜひやっていただきたいと思うのですが、一つだけそういう中でちょっと確認をしたいと思うのです。  そういうふうにおりてきた鳥獣を駆除するということですけれども、例えば著しく減少した鳥獣がいると思うのです。例えばツキノワグマですね。これは、本来は保護対象となるはずです。ところが、食料を求めて下山して人間の生活圏に侵入したとする。その場合は、今回の法案の改正ではどのように対応されるのか。  麻酔銃等を利用して捕獲して山に戻すのか。あるいは駆除の対象として殺してしまうのか。また、殺す場合でも基準があるのか。とにかく見かけたらもう殺してしまう。そうではなくて、もっと近づいてきたら殺してしまう。現実的に被害があったら殺してしまう。あるいは、だれもいなかったところに前日に自動車に傷がついていた。自動車が壊されていた。そうすると、翌日クマが出てきた。では、このクマがきのうの傷をつけていたのだ。これはいつもっと被害を起こすかわからない。こういったものに対して、どういうふうに対応されていくのかということについてお聞きをしたいと思います。
  77. 鹿野久男

    鹿野説明員 先ほど来の議論でもございましたように、ツキノワグマにつきましては、国土全体の中での生息状況がいろいろ違っております。特に私ども気にしておりますのは、西日本、特に中国地方四国等々に生息するクマでございますが、これらについては、個体群としてちょっと隔離されているというような状態でございますから、これは慎重にその地域個体群を維持していくということをしていかなければならないと思っております。  そういうところにつきましては、具体的に例えばクマにつきましては、狩猟はもう禁止するという方策をとっております。また、やむを得ず人里に出てきてしまって、人との間にあつれきを起こした場合、こういった場合にも、できるだけ捕獲をして、その上でお仕置きをして奥山に放獣するということを私どもとしては指導しておるところでございます。そういうところにつきましては、できるだけ射殺という手段は避けたい、これを基本に指導しておるところでございます。  今回の管理計画、これは当然クマ等も対象にするわけでございますが、今申し上げましたように、特に生息数減少しておるというようなところの場合には、当然、狩猟等々については大きく規制していく、基本的にはもう殺さないという立場をとるわけでございます。そのほかにも、特に生息地の改善、先ほども言いましたように、クマ等の場合には広大な生息環境を必要といたします。特にそういう生息環境が最近は分断されておるというようなことも問題になってきておりますので、そういったようなことを踏まえて、生息環境の改善というのが非常に大切だと思っております。  ですから、具体的に生息数が減じているような鳥獣に対して今回の計画策定される場合には、そういったような生息地の改善ということが計画の中の重要な部分を占めていくというように考えております。また、そのように指導してまいりたいと思っております。
  78. 近藤昭一

    ○近藤委員 質疑時間が終わりましたのでこれで終了しますけれども、やはりそういった努力をぜひしていただきたい。それも具体的に、そして速やかにというふうに思うのですよね。  そしてまた、冒頭申し上げましたように、鳥獣保護狩猟というものが一緒にある、それのよさがあるのだということをおっしゃられたのですが、私は、それ以上にやはりわかりにくさ、あるいは狩猟という方法によって鳥獣を駆除していくという側面がある以上、やはり保護狩猟というのは分けていくべきではないかなというふうに思うわけであります。今一緒になっている段階では、今おっしゃったように、原因をしっかりと取り除いていく、あるいはできる限りやはり駆除しない、殺すべきではないというふうに思うわけでありまして、今回の法の改正、非常にそういったあいまいさというか、わかりにくさがあるのではないかなということを申し上げたいと思います。  さらに私は、もっと議論をしていくところがあるし、そしてまた同時に、体制としてしっかりと、自然というものは非常に大きなものだ、ある意味での尊敬の念を持って、先ほど冒頭にもおっしゃいましたように、本当のところ自然というものは非常に複雑なシステムの中で動いている。それを守っていくということの大切さをちょっとお訴えしまして、質問を終了したいと思います。ありがとうございました。
  79. 北橋健治

  80. 佐藤謙一郎

    ○佐藤(謙)委員 民主党の佐藤謙一郎でございます。  この鳥獣保護法改正の審議を聞けば聞くほど、私はやるせない気持ちといいますか、何でこうした法律を我々はこの場で審議しなければいけないのか、そんな思いにさせられております。個体数管理ですとか、あるいは科学的、計画的な保護管理といった辞書にもないようなこんな言葉が結局はまかり通って、人間との共生をうたいながら、野生生物を駆除し、狩猟に駆り立てていくという法律。一方で、野生生物を保護しなければいけないとした観点が全く抜け落ちてしまって、私自身この法律に何とも強い憤りを感じるわけであります。個体数管理、大体管理なんという言葉を使うこと自体が、人間との共生とは全く無縁のものであることを証明するようなものでありますし、こうした言葉を使えば使うほど、アウシュビッツをほうふつとさせる言葉のレトリックを感じざるを得ないのであります。  今回私が非常に驚いておりますのは、環境庁は本来特定の業界と結びつく役所でありませんから、環境NGOですとか市民グループ、市民運動との連携の中から、本当に自然を保全していこう、あるいはダイオキシンや環境ホルモンといった我々の人体や生態系に著しい悪影響を及ぼすようなものに一緒になって取り組んでいこうとする、そういう役所であると私は考えていたわけでありますけれども、まさにその一番の財産である市民グループ、市民団体からこれほど大きな抗議や批判が来ている法律も私は経験をしなかったわけであります。  かつて環境アセス法あるいは地球温暖化法、さらには過般のPRTR法でも、いろいろな批判もありましたけれども、まさに野生生物と人間とが共生するというこの法律に対する非常に大きな反響と、そうした声を全く無視するかのような法律の提出のされ方に、私はまず疑問を感じました。  ここで冒頭まずお聞きをしたいのは、参議院の参考人質疑幾つかのやりとりがありましたけれども、その中で参考人が、この改正案が作成される過程における検討会、審議会において合意形成が不十分であったと指摘をされております。具体的には、平成九年六月から十年の四月まで、環境庁鳥獣管理狩猟制度検討会を七回にわたって、これは非公開で行って報告書をまとめたというふうに言われています。この間、NGOに対する意見を聞くということはなかったということですし、また平成十年五月から十二月まで、三回にわたって自然環境保全審議会の野生生物部会、そして六回の小委員会が開催されたけれども、これもまたNGOに対する意見を聞く試みは一切なされなかったというふうにありましたが、まず事実を確認したいと思います。
  81. 丸山晴男

    丸山政府委員 最初の、自然保護局に設けました鳥獣保護法改正の検討会につきましては、いわば内部的な専門家、研究者によります検討会でございます。その過程におきましては、専門技術的な検討をしていただくということで、NGOの方の意見を聞くということはいたしておりませんけれども、その後の審議会におきましては、これは公開制でございます。審議会の過程を公開いたしまして、またいろいろな御意見も寄せられております。また、審議会の中にも何団体かの自然保護団体の方も入っておられたところでございます。  また、審議会に限らず、自然保護団体環境庁自然保護局はいわば車の両輪でございまして、ともに力を合わせて自然保護を進めてまいっているところでございます。常時、自然保護団体との意思疎通を図り、忌憚なく行政を進めるという基本姿勢で参っておりまして、具体的に審議会で公聴会とかあるいは団体の意見を聞くというような手続は踏んでおりませんけれども、全体としては、私どもとしては、十分意見を踏まえて検討してきたというふうに考えているところでございます。
  82. 佐藤謙一郎

    ○佐藤(謙)委員 まさに環境庁はこうした市民グループ、いろいろとありますからその辺はなかなか大変だと思いますけれども、そうした方々と一緒になって、これからの法律作成に携わっていただきたいと思います。  特に、PRTR法でも、OECDの原則やガイダンスマニュアルにあったように、まさに政策形成過程の透明性の確保あるいは利害関係者との合意というものが前提になっていたのに、それがほとんどなされていなかったという反省を我々はもっと深刻に感じてもらいたいと思いますし、先ほど近藤議員が質問しましたように、まさに自然、野生生物と人間、この共生という関係は、利害関係者がだれとだれではなくて、まさにすべての国民が利害関係者である、そういうところからスタートしなければ、何か国民にとって野生生物保護がうそに感じられるんだろうと思うのです。  その中で、まず一番最初に、そうした市民との信頼関係の構築がこの法律をさらに生かしていく一番大きなキーポイントだということを御指摘申し上げ、そして、これからの合意形成について、次の幾つかの点について確認をさせていただきたいと思います。  一つは、鳥獣保護事業計画、これは国が設定基準を今度改定することになると思いますが、この中にも、きっちりと市民、NGOの意見を入れていかれるか。  そして、二番目には、特定鳥獣保護管理計画、これは都道府県策定する際のガイドラインあるいは計画実施体制についてのガイドラインを策定しているということでありますけれども、こうしたガイドラインに対しても、きっちりと意見を入れていくという決意がおありなのか。  附帯決議等々にもありますけれども、さらには、こうした特定鳥獣保護管理計画保護管理の目標として、個体群の規模ですとか確保すべき生息環境生息域等について学識経験者等意見を参考に決めていくことが想定されているというふうに言われておりますけれども学識経験者等の等に、やはり一般市民やNGOの声をきっちりと聞くという姿勢があるのか。また、特定鳥獣保護管理計画等々の中で、鳥獣保護区の設定についても自然保護団体意見を聞く用意があるのかを確認させていただきたいと思います。
  83. 丸山晴男

    丸山政府委員 鳥獣保護事業計画の国の策定基準につきましては、五年ごとにその基準の改定をいたしております。第九次の鳥獣保護事業計画策定基準、来年には策定をいたしますので、その過程におきましては、自然保護団体あるいは市民団体の意見も十分聞いてまいりたいと考えております。  また、特定鳥獣保護管理計画をつくる際の国のガイドライン、これもいわば衆知を集めて策定する必要がございます。その策定過程におきましては、シンポジウムその他いろいろな手法を通じまして、自然保護団体あるいは狩猟団体、被害農家といった幅広い意見を聞いて策定をしてまいりたいと考えております。  以上でございます。
  84. 佐藤謙一郎

    ○佐藤(謙)委員 ガイドラインは大体いつごろをめどにつくられることになっておりますか。
  85. 鹿野久男

    鹿野説明員 この法律施行の中で、管理計画というものの策定が一番重要になると思いますので、私どもとしては、できるだけ早く、特にただいま先生がおっしゃいましたような手続関係等々につきましては、できるだけ早く策定して都道府県に出したい、具体的にはことしの秋ぐらいを予定してまいりたいと思います。
  86. 佐藤謙一郎

    ○佐藤(謙)委員 それは、できるだけ早くお願いすると同時に、やはり内容のあるものにしていただきたいと思います。  今回のこの法律で一番深刻に批判があるのが、地方自治体にこうした野生生物の保護というものが丸投げされてしまわれたのではないか、そうした実態に対する批判があるわけです。特に、野生生物の保護管理を進める地方体制がまだ十分整備されていない状態で、自治体に十分な受け皿がないまま、捕獲許可権限を移すべきではないという指摘があちこちからあるわけであります。そうした受け皿がまだ余りないということ以前に、そうした現実を直視して認めていかなければいけないのに、環境庁都道府県支援しようとする意気込みがほとんど今までの議論でないということの方が私は非常に心配だ。  環境調査室の参考資料の中にも、都道府県における野生鳥獣保護行政の現状から見て適切な計画策定能力、実施能力に対して、多くの関係者から懸念が表明されているというふうにあります。だからこそ、国においても、都道府県の基盤整備の取り組みに対し、指導助言はもちろん財政的な面からも積極的に支援していくことが望まれると結ばれているわけです。  ところが、過般の参議院での質疑でも、捕獲許可権限が地方自治体に移譲されることについて問題はないかという趣旨の質問に対して、市町村が行っている有害鳥獣捕獲許可が適正に実施されていないという指摘もあるが、環境庁としては適正に行われていると認識している、こういったありさま。  都道府県は今二十数県でいろいろと頑張っているところもあるわけですけれども、安易に市町村にこうした権限をおろすことに我々は非常に不安を抱えているわけであります。そうしたことも、ただただ座視するということではなくて、市町村にはおろすべきではないという思いをお持ちであるかどうか、まず聞かせていただきたいと思います。
  87. 鹿野久男

    鹿野説明員 国が持っている権限を都道府県、さらに都道府県から市町村にというのは、これはあわせて御審議いただいております地方分権法の中の鳥獣保護法に係る部分でございますが、私どもといたしましては、当然、今機関委任で都道府県にお任せしている部分、それが今度は自治事務になっていく、さらにその下で、都道府県から市町村に条例を制定して一部委任することができるという形になってまいります。  従来は、地方自治法の中の一般委任規定を使って相当の都道府県で市町村に委任してきたところでございますが、これからはしっかりと条例でそういう種を定めて委任するという形になろうかと思います。  私どもとしましては、これまで国が持っていた捕獲の権限、それが都道府県に、形は変わらないといいましても機関委任から自治事務になる、さらに市町村に行く場合がある。全体としましては、そういう地方分権の流れ、また、許可事務の簡素化ということからすればその事務の流れは一つ当然だろうと思います。  これは相手にしておりますのが野生の鳥獣でございますので、やはりそこは全体として、その鳥獣のそれぞれの置かれた生息状況、そういったものを慎重に勘案して、それぞれ別途委任事務というものを考えていくべきだと考えております。我々としては、それぞれ慎重な対応が必要と考えております。
  88. 佐藤謙一郎

    ○佐藤(謙)委員 国と自治体の役割については、今お話しのように一括法で整理をしているわけでありますけれども環境庁は、そうした流れをそのままうのみにして、地方分権の流れからそうした方向を見守るということではなくて、それはもう権限というものがありますから、その範囲の中で、情熱といいますか、魂のようなものを吹き込むということはできるはずだと思うのです。  ことしの三月五日の朝日新聞に、クマ、人、不安の共存という記事の中で、「財源問題」というところでこういうくだりがあります。斜里町のことですけれども、   しかし、職員三人がクマ対策に専従する斜里町でも夏は時間外勤務が月に百時間を超える。人件費を除いても年間六百万円の対策費は町には大きな負担だ。   法改正で自治体に保護管理や駆除の権限が移されるが、山中さんは これは斜里町自然保護係長の山中正実さんのことでありますけれども、  「苦しい地方財政では、自然環境は後回しにされかねない。北海道などやる気のある自治体では大いに前進するが、多くの自治体では単なる苦情処理として駆除、狩猟が進められる危険が大きい。せめて、地方独自の保護管理計画を審査する第三者機関が必要ではないか」 というふうに言っておられます。  こうした市町村の真剣な取り組みも一部にはあるわけですけれども、そうした彼の声を聞いてどういうふうにお感じですか。また、第三者機関が必要ではないか、そうした考え方にどういう感想をお持ちですか。
  89. 丸山晴男

    丸山政府委員 現に、各都道府県の第一線の市町村におきまして、今お話しのような専門鳥獣担当者の方が努力をされているところでございます。そういったような声を結集し、なおかつ都道府県特定鳥獣保護管理計画策定につながっていくものと考えております。  第三者機関という問題につきましては、いわば特定鳥獣保護管理計画策定する過程で、研究者あるいは専門家自然保護団体その他の幅広い方々によります検討会を事実上つくっておる例がございます。そういった全体としての諮問機関といったようなものをつくって、この特定地域保護管理計画についてのチェックをしていただくということが通例でございますので、今度のガイドラインにおきましても、何らかの形で実施者に対する大所高所からの判断を求めるような、そういった検討会の設置も必要だろうと考えております。
  90. 佐藤謙一郎

    ○佐藤(謙)委員 いろいろと都道府県、市町村で御苦労があると思うわけですけれども、こうした科学的、計画的な保護管理を行うには、予算、人員、体制などが不可欠であって、現在の地方自治体ではなかなか厳しいわけでありますが、どうも、今回の法律案の議論の中で、国と地方自治体の野生生物保護責任が明文化されていないということを指摘する向きがあります。  なるほどに、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律では、第二条の責務で国と地方公共団体の責務がきっちりと書き込まれているわけでありますし、新しい法律ということもあって、目的にも私たちが望んでいるしっかりとした目的が書き込まれているわけですけれども、この鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律というものが、まさに、鳥獣保護を表看板にしながら有害鳥獣の駆除と狩猟に偏った法律であるということが目に見える、そうした法律だということを感じざるを得ません。こうした明文化についてどういう御所見をお持ちか、お願いします。
  91. 丸山晴男

    丸山政府委員 鳥獣保護狩猟法が昭和三十八年に改定されるに当たりまして、第一条に目的を明示いたしまして、鳥獣保護思想を明確にし、また、鳥獣保護事業計画策定して、今後の鳥獣保護事業の基本にいたしたところでございます。その他、各般のことによりまして、いわば鳥獣保護法がスタートをしたところでございます。  現在、それに基づいて第八次までの鳥獣保護事業計画策定をされ、各都道府県における鳥獣保護区の設定等も大変広範なものになってまいっております。私ども、そういったような法律の趣旨を踏まえて、また、今度の改正法による特定鳥獣保護管理計画の考え方を踏まえて、適正に対応してまいりたいと考えております。
  92. 佐藤謙一郎

    ○佐藤(謙)委員 全く情熱を感じられないような答弁であったわけですけれども、今回の科学的、計画的な保護管理の中で、減らしたいだけの管理計画が先行するということを危惧する方々がおられます。ふやそうとする管理計画のインセンティブというのが、都道府県にないのではないかと。  例えば、ツキノワグマをとり過ぎないための管理計画ですとか、そうしたものがオミットされてしまって、ツキノワグマ、猿など保護すべき野生動物に対して任意ではこうした計画が立てられないおそれがあるということでありますが、こうしたことに対して、任意ということを超えて義務化をしていくような積極的な具体策というものをお持ちでしょうか。
  93. 鹿野久男

    鹿野説明員 今回の管理計画は、どうも減らす方ばかり注目されておりますが、私どもとしましては、ただいま先生から御指摘ありましたように、今、減少しつつあって手を打たなければいけない野生の鳥獣、これらについての計画策定という部分につきまして、非常に重要と考えております。  都道府県の場合に、ふやすための努力、例えば生息地改善ですとか環境の整備等々につきましてはなかなか実行しにくい、また都道府県の中で調整も大変という、いろいろなやりにくい面がございます。そういった面につきまして、今回、法制度の中でしっかりと位置づけることによりまして、それぞれ関係者間の調整も今までより容易になりましょうし、また、私たち国の関係機関、環境庁を初めとする関係機関でございますが、これらにつきましても、それぞれが法定の計画の上で定められた計画を実行するというものに対しましてできるだけの支援をしていく、そういうことがこれまで以上にやりやすくなるというように考えております。
  94. 佐藤謙一郎

    ○佐藤(謙)委員 より具体的にそうした支援体制というものをつくっていただかなければ、本当に私が今危惧したような流れができてしまう。それはもう確実にできてしまうだろうというふうに考えておりますので、真剣に対応していただきたいと思います。  環境庁が本当にやる気があるのかといういろいろな議論の中で出てきたものの一つに、国立公園に野生動物事務所が十カ所あるというふうに聞いております。環境庁長官が参議院での質疑で地元の方が鳥獣実態を知っているというふうに答弁されたと聞いておりますけれども実態は、人がないからということであってほしいな、人があれば、この国立公園の野生動物事務所を、鳥獣保護法改正の主役になるぐらいに、もっときっちりとその立場を明確にできるのではないかなというふうに思っていただけるとありがたいのですが、そうではなくて、地元の方が鳥獣実態をよく知っているという答弁でした。  日光ですとか十和田だとか箱根だとかあるわけですけれども、例えば日光で、あの周辺の地元の人たちと野生動物事務所に勤務されている方々、どっちがそうした実態把握されているか。こうした野生動物事務所をもっと機能させていくことが大事だと私は思うのですけれども、その点についてはいかがでしょうか。
  95. 鹿野久男

    鹿野説明員 自然の状態を観察したり、それをどう管理していくかということは、やはり現場が一番でございます。その点につきましては先生指摘のとおりでございまして、私どももできるだけ現場でそういう鳥獣保護を含めました自然環境管理に当たっていきたいと考えております。  ただ、先生指摘のとおり、今全国に十一の国立公園・野生生物事務所というものを置いてございますが、現在のところ、そこの所掌するところは、国立公園の保護管理、利用といわゆる種の保存法に基づきます絶滅しそうになった動植物への対応というのが今私どもの現地職員の所掌事務となっております。  いずれにしろ、今申し上げましたように、自然環境はすべて現場で実際に見てそれをどう受けとめるかということが重要でございますので、今後、私どもの出先機関の所掌事務の中に鳥獣保護についても広げていくということを検討してまいりたいと考えております。ただ、そのためにはやはりもう少し体制の充実が必要かというように考えております。
  96. 佐藤謙一郎

    ○佐藤(謙)委員 正直に言っていただきました。体制の充実、まさにそのとおりだと思うのです。我々も環境庁を厳しく批判することがあるわけですけれども、やはり本音で、そういう体制がきっちりと確保されていけばこういうところでもっと積極的な関与ができるのだ、積極的な取り組みができるのだということをもっとストレートに言ってほしいと思うのです。  今、検討すると言っていただきましたけれども、ぜひ所掌事務の中に鳥獣保護というものをきっちりと入れていただいて、特定鳥獣保護管理計画の中で、野生生物は山や県境を越えてまたがって生息しているわけですから、そういう野生生物に対する対応こそまさに野生動物事務所の役割なのではないかなというふうに思うわけであります。  ここで、県境をまたがっている、そういう言い方をしましたが、何人もの方々から同様の質問をされております。個々の都道府県がそれぞれに努力をする、しかし県境をまたぐということで、重複駆除や過剰駆除になってしまうおそれがあるわけでありますけれども、この辺の責任体制というのはどういうふうになっているか、お知らせください。
  97. 丸山晴男

    丸山政府委員 改正鳥獣保護法では、一条ノ三第四項で、県境をまたがって分布する個体群対象とする特定鳥獣保護管理計画策定の際には隣接都道府県と協議する旨の規定を置いているところでございます。  環境庁といたしましても、隣接都道府県間で適切な調整を図られ、保護管理施策が適正に実行されるように広域的な視点から指導してまいりたいと考えております。
  98. 佐藤謙一郎

    ○佐藤(謙)委員 それはよくわかるのですけれども、そうしたことに環境庁が出張るということはいろいろと権限的になかなか難しいと思います。それでも、側面から応援をする体制というのはありますか。
  99. 鹿野久男

    鹿野説明員 先生指摘のとおり、鳥獣には県境はありませんので、当然県境をまたいで移動したりするわけでございます。  このような場合に計画制度では、ただいま局長が御答弁申し上げたとおりでございますが、私ども環境庁としましては、それぞれの地域個体群だけでなくて、それを含みます国土全体で当該鳥獣がどのように生息しておるかという部分につきましては、全体を把握し、それぞれの都道府県に情報提供していく、これは環境庁の責務と思っております。  そういう国土全体の生息分布に基づきまして都道府県が隣県と協議して計画をつくっていくわけでございますが、当然、計画策定の間にも私ども全国土的に見て適正となるようにしっかり指導していく、これはまたガイドラインの策定にもかかわってくるわけでございますが、国土全体の中でそれぞれの地域がどうあるかということは私どもの責務としてしっかりやっていきたいと思っております。
  100. 佐藤謙一郎

    ○佐藤(謙)委員 全体的な対応というのはもちろん環境庁の仕事であることはわかりますが、県境を越えて二つ以上の都道府県にまたがる、そうしたことが結局地域個体群の消長をまさに左右することでありますので、全体全体と逃げないで、地方分権の流れの中で地方分権を妨げない範囲で環境庁が果たす役割というものをもう少しアグレッシブに見つけ出そうという気がおありじゃないのかなということが残念でなりません。  そこで、先ほど来人材の話がいろいろと出てきているわけでありますけれども鳥獣保護制度、実は私は不勉強でこの法律の議論を始めてから初めて鳥獣保護員という制度があることを知ったわけであります。  参議院の参考人質疑の中で、野生鳥獣保護管理地方公共団体が行う際、予算不足、体制不備といった課題を抱えているがという趣旨の質疑に対して参考人から、鳥獣保護制度を適正に活用し、鳥獣保護員に野生鳥獣専門家を位置づけ、科学的、計画保護管理を行うべきである、そうした意見が出されました。また別の参考人からは、野生動物専門官というべきものの位置づけが必要ではないかというふうに言われました。  平成八年の資料ではこの鳥獣保護員が三千二百七十人、しかし、ハンターからが七、八割というふうに聞いております。まさにこの鳥獣保護法狩猟に寄りかかっている法律であるということのよい例ではないかと思いますが、この七、八割がハンターであるというのは事実ですか。
  101. 丸山晴男

    丸山政府委員 おっしゃるとおりでございます。  特に、鳥獣保護員は都道府県鳥獣保護事業計画に基づく事業実施の事務を補助する職員で、資質の向上を図りながら、鳥獣保護管理のための調査あるいはモニタリングの担い手として活用が期待されているところでございますけれども狩猟者登録証の確認、あるいは狩猟者が所持している鳥獣の検査といったような狩猟の適正化に関する業務も担っているところでございます。  また、都会地におきましては、自然保護にお詳しいボランティアの方々に鳥獣保護員に御就任いただいておりますけれども、都会地以外におきましては、山のことを知っている、鳥獣のことを知っている方となりますと、どうしても狩猟免許を持っている方に限られるということで現在そのような状態になっているというふうに理解しております。
  102. 佐藤謙一郎

    ○佐藤(謙)委員 例えば、歯が痛む、虫歯を抜く、町の歯医者さんに補綴という立場の歯医者さんと保存という立場の歯医者さんがいるのですね。保存という立場は、なるべく虫歯を抜かないで、歯を抜かないで治療していこうとする。補綴は歯を抜いてきれいに歯の治療をしようという。我々はそのどちらかを選ぶことができるわけです。  自然というものを本当に大切にして愛して、ハンターがすべて愛していないというわけではありませんけれども、動物を見ると条件反射で銃を構えてしまう、そういう人たちだけにこうした鳥獣保護員を委嘱していいのだろうか、もっとほかに人材確保していく、そうしたバランスというものがあっていいのではないか。有害駆除やこうした保護管理計画実施に当たって、私人であるハンター依存というのは行政責任放棄になるのではないか、そういう指摘をする人たちがいます。  私はハンターがすべて悪いと言っているわけではありません。そこに余りにも大きく依存する今の体制が本当に望ましいのか、そうでないとするならば、どこにそうした人材を求めようとしているのかお答え願います。
  103. 丸山晴男

    丸山政府委員 鳥獣保護員の選定に当たりましては、当然ですが、当該市町村に居住していて、鳥獣保護事業に熱意を持っていて、地元住民の信望があり身体強健で時間的にも経済的にも制約が少ない方、こういう基準を設けて選定をいたしているところでございます。  都会以外の地域におきましてはそういったような要素に当てはまる方々がだんだん減ってまいっておりまして、どうしても狩猟とのかかわりにおいてその市町村に居住している方になりがちでございますが、私ども、できるだけ幅広い、自然保護に、あるいは鳥獣保護関係のある方々に御参加を願いたいというふうに考えておりますので、今後ともそれのいわば多様化ということは努力をしてまいりたいと考えております。
  104. 佐藤謙一郎

    ○佐藤(謙)委員 これもまた全然具体性がなくて、そうした基準を読み上げていただいて頑張る、そういう決意表明だけだったような感じがして、こういうことが続くと事態というのは全く変わらない、そういう例を私は幾つも見てきたんですね。やはり、具体的にこういう人たちをというような答弁をこれからも期待したいというふうに思います。  時間が過ぎてしまいましたので、次に、わなの免許について御質問をさせていただきます。  甲種免許、乙種、丙種とあるわけでありますけれども、その甲種免許、これは明治時代の狩猟で生計を立ててきた人のためにできた制度だというふうに聞いております。田舎ではホームセンターにもごくごく自然にそうしたわなを売っている例があるというふうに聞いておりますけれども、このわなの販売の実態というのはどこまで把握されておられますか。
  105. 鹿野久男

    鹿野説明員 先生指摘のように、鳥獣捕獲するためのわな、これはトラ挟みなんかが代表的なものでございますが、これがそういったような店頭に置かれておるというのは事実だと思っております。ただ、その実態そのものがどのくらい広がっておるかということにつきましては、残念ながら、私どももまだ調査をいたしているわけでございませんので、全体的な広がりについては把握いたしておりません。  環境庁は、こういったような販売店に、その販売に当たりましては、ただいま先生説明ありましたように、これはわなの場合には鳥獣法の甲種の免許というのが必要でございますので、買う人がその甲種免許を取得しているのかどうかということを必ず確認して販売するようにという指導都道府県を通じてしているところでございます。
  106. 佐藤謙一郎

    ○佐藤(謙)委員 やはりこうした免許制度があって、その販売の実態が全くわからないというのは、もう無責任きわまりないことだと思うのですね。こうした免許を持っている人が本当にそのわなを買うのか、それとも免許を持たなくてももうだれでも買える実態があるのか、その辺もきっちりとつかんでいただかないと、ますます市民からの批判が強くなっていくだろう。特に、クマ捕獲には箱わなが多く使われている。これは餓死させたり、とがった棒で突き殺すという残酷この上ない事例報告というのが相次いでいるわけですけれども、こうしたくくりわなですとかトラ挟みですとか張り網ですとか、無差別に獲物を捕らえて残酷な苦痛を与える、こうした狩猟具について、かすみ網のように使用、所持、販売を禁止すべきだというふうに思っているのですけれども、この辺についてはどうお考えですか。
  107. 鹿野久男

    鹿野説明員 甲種免許を持っている方々が使うわなについてでございますが、これはわなの場合には鳥獣を無差別かつ大量というおそれがあるわけでございまして、そういったような形態のわなにつきましては使用を禁止もしくは制限しておるということでございます。  ただ、今お尋ねのくくりわな、張り網、トラ挟みというものにつきましては、例えば、夜行性の小さな動物をとるとき、それから銃器を使いづらい、割と住宅地の近くであるとかそういう場合、そういったような銃器使用による駆除が有効でないような場合に併用して使うということがございます。  こういうことからして、今後ともその限定的な使い方というような形でやっていきたいと思いますが、それによりまして特定野生鳥獣が大変減少するというような事態になりましたら、私どもとしては、当該わなの禁止、もしくはそういうしかるべき制限を加えていくということについて検討してまいりたいと思っております。  なお、全体としては、そういうようなわなというものは鉄砲と違った危険な側面も持っておりますので、そういうものを適切に使用するということにつきましては、これまでも指導してきたところでございますし、今後ともそういったような指導を強めて、例えば免許の交付時等々につきまして、そういう指導を徹底してまいりたいと考えております。
  108. 佐藤謙一郎

    ○佐藤(謙)委員 都道府県や市町村では、できるだけ安上がりに効果的にそうした捕獲ができればというふうに流れていく、これは一つの流れだろうというふうに思うわけです。  例えば、最近、非常な勢いで猿に対する地獄おりのような大量捕獲ができる仕掛けが急速に普及しています。これは地域個体群を絶滅させるおそれがあると私は危惧をしているわけでありますけれども、この地獄おりというものは、環境庁としては、市町村が使いたいと言ったら推薦をするものなんでしょうか、それともやめるべきだと答えるものなんでしょうか。
  109. 鹿野久男

    鹿野説明員 大量捕獲のできるわな、地獄おりなんか猿に対して効果的なわけですが、こういったものの使い方、やはり時と場所だと思っております。例えば猿なんかの場合にも、大量捕獲をどうしてもしなければいけないというような場合には、やはり使わざるを得ない場合も出てこようかと考えております。
  110. 佐藤謙一郎

    ○佐藤(謙)委員 大量捕獲しなければいけないというのはだれが決めるんでしょうか。
  111. 鹿野久男

    鹿野説明員 今回の管理計画の中であれば、全体として目標とする頭数、そしてその結果として、それぞれの地域個体群が永続的に存続できるという目標を置くわけでございます。当然その中で、場合によっては、例えば猿の場合で、個体数調整としてかなりの数をしなければいけないという場合には大量捕獲ということになり得るわけでございまして、その目標決定、そういうものにつきましては、先ほど来申し上げましたように、研究者の意見、そしてまたNGOの意見、また、その被害を受ける人たちの意見、そういう方々の意見をたくさん聞く中で合意形成を図っていくべきものと考えております。
  112. 佐藤謙一郎

    ○佐藤(謙)委員 ここで、おりで捕獲された動物という存在、一たんおりに入ってしまった捕獲された動物は、実はあらゆる法律から抜け落ちている死角だというふうに言われています。  このおりで捕獲された動物の殺し方についてどういうふうにお考えかということと、実際に多数の動物がおりで捕獲されるわけですけれども、それがどういう殺され方をしているかの実態把握をどういうふうになさっているか、また、どうしようとされているか。  それから、さらに、この問題は、この後恐らく議論があるであろう動管法にもかかわってくる問題でありますけれども、そのかかわりをどう整理されているのか、その辺についてお答えください。
  113. 鹿野久男

    鹿野説明員 わなにかかった動物のその後の処分もしくは殺し方でございますが、これはなかなか難しゅうございます。基本的には、野生鳥獣保護の問題というよりも、先生ただいまおっしゃいました、要するに、動物に対して虐待しないかとか、安楽死をどうやってさせてあげるかとか、その動物をどう愛護していくのか、そういう観点の問題ではなかろうかと考えております。  その実態でございますが、私どもとしましても、それぞれの、例えばわな、もしくはその駆除の形態のときに最終的にこういうふうな処分の仕方が多いという実態は例としては承知しているつもりでございますが、それが全国的にどういうのが多いのかというような全体としての把握ということは、現在のところできておりません。
  114. 佐藤謙一郎

    ○佐藤(謙)委員 これは動管法とのすき間の問題でありますが、こうやって鳥獣保護法改正が現実に行われているわけでありますので、この辺はきっちりと議論をして、ある方向を出していただきたいというふうに思います。  それから、被害防除についてお聞きをしたいと思いますが、農水省はかつて、二、三十年前のカモシカ問題のときはいつも被害者の立場一辺倒であったというふうに聞いておりますけれども、近年、こうした鳥獣保護に対して積極的な姿勢を我々は感じ取っております。今までのいろいろな議論の中でも、被害防除に使える予算項目は総体で農水省として一千百億円あるというふうに答弁がありました。しかし、現実に防除ネットや防護さくに使われるのは十六億円にとどまる。これから地方公共団体のこれは要請主義という一つの手順を踏まなければいけないわけですけれども、この要請主義を一歩超えてもう少しPRをきっちりとして、農水省としてもこうした予算を有効に使っていく、そういう方向に導いてほしいというふうに思っております。  この鳥獣保護法改正が今回必要であるほどに被害防除というのが急務であるとするならば、今までの偏った予算配分を是正する工夫があってもいいんじゃないか。国民の税金を適正に必要なところに分配する責任を農水省はどのように感じておられるか、お答えいただきたいと思います。
  115. 大森昭彦

    ○大森説明員 私ども農林業被害関係につきまして、これまでも、いろいろな現地の状況等踏まえまして、各種の補助事業等によって、防護施設、防護さくを設置するとかあるいは防鳥ネットを設置する、こんなことにつきまして事業実施してきておるところでございます。  それで、こういう防鳥あるいは防護施設、防護さく、現在メーンに実施しております事業、こういうもののほかに、やはりこれから、そういう鳥獣被害防止していくような新たな技術開発等にも取り組んでおるところでございます。  そういう中で、御指摘の予算の使い方というふうなことにつきましては、多くはメニュー事業の中に入っておりまして、そういう中で地域の優先度といいますか、これは農家の方々が丹精込めてつくった農作物、こういうものに対して繰り返し起きる被害あるいは程度のきつい被害、こういう地域にとりましては、やはりこういう事業を使って適正な対策をとっていくということが必要なわけでございまして、私どもも、そういう地域実態を踏まえて、できるだけ被害実態の正確な把握というものを通じた上で適正にこういう事業実施されるようにこれまでも努めてまいったところでございます。  なお、私どもも、農林水産業そのものがやはりこれは環境と調和した形で将来に向かって発展していくということが非常に重要な視点でございますので、そういう視点を十分持ちながらこの鳥獣対策というふうなものについてはこれからも対応してまいりたいというふうに思いますし、そういう観点からいたしまして、有効な事業はそれぞれ使いながら、地域実態、こういうものをしっかり把握し、きっちり評価する中から必要なものについては今後ともそういう事業的な措置もとってまいりたいというふうに思うわけでございます。  こういう事業がさらに効果を上げるというふうな観点から申し上げますと、これまでの各種の事業実施、こういうものにあわせまして、やはり個体の適正管理、そういう観点からの総合的な対応の必要性というものも現に感じておるわけでございます。そういう点もあわせまして、しっかりこういうものが適切に執行され、そしてまた効果が上がっていくような方向を模索してまいりたいというふうに思っております。
  116. 佐藤謙一郎

    ○佐藤(謙)委員 こうした被害防除により積極的にぜひ取り組んでいただきたいと思いますが、緊急被害対策として私自身は四つの段階に分けて考えました。  第一に補償措置というのがあるんだろうな、それから狭い意味での被害対策、それでやむを得なくて絞って撃つということ、さらには生息地確保生息地確保等についてはこの後御質問をしたいと思いますが、補償措置ということになると、まず農林業被害の算定基準が適正に行われないと、これはそうした補償措置というところまで行かないだろう。もう一つ、参議院での議論では共済保険があるという答弁がなされました。しかし、これをもっと有効な保険にしていくにはどうした方法があるんだろうか。自動車で言う強制保険じゃないですけれども、今、掛けたい人が本当にごく一部で共済保険を掛けているということでは、本当の意味での補償措置につながっていかないのではないかということを考えます。これはちょっと通告していなかったので、おわかりの範囲でお答えいただければと思います。
  117. 大森昭彦

    ○大森説明員 やはり被害実態というものを非常に精度を高く、しっかり把握していくということが対策の前提でございます。私どもも、その点につきましては、非常にこれまでの蓄積を生かす中からより精度の高い方法によって実態把握がなされるようにということで、昨年そういう点での通達の改正等も行いながら、さらにその精度の高い実態把握ということに努めておるわけでございます。  お尋ねの共済制度対応ということでございますが、これにつきましては、農業共済の中で鳥獣による農作物被害というものもこれは共済金の支払い対象になっておるわけでございまして、鳥獣害を含めまして、気象災害あるいは病害虫等の共済事故による減収量が一定割合を超えました場合に共済金が支払われるという制度になっておるわけでございます。そういう中で、御指摘のように、鳥獣害と認められる被害につきまして共済金が現に払われた事例というものも出てきております。  ただ、これは、農業共済につきましては、いわゆる共済への加入というものが前提になってまいりますので、山奥のそういう畑作地帯ですとかあるいは果樹園地帯というふうなところにおきましてこの共済への加入がどの程度進んでいるかというふうなことが、この共済制度を生かすことができるかどうかということにかかわってくるわけでございます。  そういう点からいたしまして、できるだけこの共済制度の活用ということにつきましても、これは、広くこれまでのいろいろな会議等も通じて、都道府県あるいは市町村の方にもそういうことについていろいろとその情報を提供しながら共済制度の普及ということについても私ども取り組んでおるわけでございますが、いずれにしても、その点が一つのネックになるというふうなことがございます。
  118. 佐藤謙一郎

    ○佐藤(謙)委員 そうした方向で、積極的に取り組んでいただければというふうに思っております。  先ほどの生息地確保という問題になってまいりますが、残念ながら、この法律には生息地管理というものが十分含まれていないということに対する批判が強いわけであります。そんな中で、きょうは生息域の復元と保全についてということで三点ほど質問させていただきたいと思います。  林野庁長官にきょうはおいでいただいておりますので、林野庁に後ほど質問をいたしますが、生息地の復元や保全という観点から、まず環境庁に、鳥獣保護観点から林野行政との調整を図る必要があると思われますけれども、この林野行政との調整をどう図っていかれようとしているのか、この辺について御所見を伺います。
  119. 丸山晴男

    丸山政府委員 生息環境の保全、復元に当たりましての林野行政との連携は大変重要であると認識いたしております。  森林の持っている公益的機能を発揮して野生鳥獣生息地の適切な確保が推進されますように、環境庁としても緊密な連携に努めてまいりたいと考えております。
  120. 佐藤謙一郎

    ○佐藤(謙)委員 いやいや、そういう環境庁であるのかなということがよくわかります。やはり、もう少し魂を込めて議論をしてもらいたいというふうに思うわけでありますけれども、やむを得ないでしょう、それが現実でありますから。  そこで、クマシカや猿のいろいろな議論をしているときに、広葉樹というものが減った、それが人間主人公の森に変えていってしまったと。経済性から針葉樹を植えて、そうして今日の日本を貧困な、最も寂しい、最も悲しい国にしてしまったわけであります。そうした広葉樹から針葉樹に変わったことが鳥獣保護に非常に大きな意味があるということも、まだ科学的には解明されていないといって環境庁はきっちりとした結論を出そうという姿勢がないわけです。  ここで林野行政をつかさどっておられる林野庁にお聞きしたいのです。生息地の保全というものは、林業やその林業人口に大きくかかわるものなんだろうと思います。きょうから参議院で審議される食料・農業・農村基本法では、農業や農業人口を確保するためにデカップリング制度の考え方が取り入れられたということですけれども、林業はそうではないというふうに聞いております。鳥獣生息地である森林保全を考える上で、今後、収入とは必ずしも結びつかない広葉樹林育成に対してデカップリングの形で財政支援の検討が必要になると考えておりますけれども、その辺についてどうお考えでしょうか。
  121. 山本徹

    山本(徹)政府委員 先生指摘のように、今野生鳥獣保護、また生育環境の保全というのは大変重要な課題である、これは私どもも考え方を同じくいたしておりまして、平成八年の私ども森林資源基本計画というもので、野生生物の保全を図るために森林整備の推進を行うべきであるという方針を出しております。  このために、具体的には、御指摘のような広葉樹林の整備、あるいは天然林施業等々もございますが、広葉樹林の整備も大変大きな課題として私ども積極的に取り組んでおりまして、最近では、人工林のうちで一〇%は広葉樹林として植栽されております。現在、人工林は日本の約四割ございますが、広葉樹林が二%でございまして、つい四十年代、五十年代ごろは人工林の植栽のうちで広葉樹林が本当に数%程度でございましたので、現在一〇%ということは、相当林業関係者の方々にも広葉樹林に対する認識が高まってきて、その実績も徐々に上がっていると思っております。  先生指摘のデカップリングのような、広葉樹林というのは確かに林業の収益性という面から見るとこれは大変難しい問題がございますので、直接所得補償というような御提案がございましたが、現在、広葉樹林あるいは針葉樹林を植栽する、これは、植えただけではきちんと日本のアジア・モンスーン地帯では御案内のとおり育ちませんで、十年間程度下刈りとか枝打ちとかつる切りというような保育、育てる作業をいたします。また、二十年から三十年ぐらいになると間伐等の施業もいたします。  こういった植栽とか保育のための補助事業、これは公共事業で造林事業等の一環として補助いたしておりますけれども広葉樹林についても、これの植栽を奨励するために、採択要件などを改善しながらこれを奨励いたしております。  これは農業でいいますと、造林に対する補助あるいは下刈り等に対する補助といいますのは、田植えとか草取りに補助金を出すような事業に相当いたす面がございます。欧米等の諸外国でも、造林や下刈り等には一般的に補助金は出されておりません。これは、日本の森林の整備、育成の施策として世界でも比較的ユニークなものであろうと思っております。  私どもは、御指摘のような広葉樹林の整備等々を含めまして、国民の貴重な、国民に対してさまざまな公益的役割を果たすための森林をきちんと整備するために、こういった造林や保育等に対する助成が現在あるということも念頭に置きながら、現在、林業は大変厳しい中で山の手入れがおざなりになっている面もございますので、さらに手を入れるためにはどうするか。  特に、こういった森林の植栽や保育に対する助成とともに、せっかく今木が育ちつつあります。林業が非常に衰退しているのは、国産材が利用されない。今一年間に二千万立方、木材が利用されておりますが、ほかに、毎年蓄積量として七千万立方ふえております。現に、昭和三十年代ごろには五千万立方、今の二倍半木材は利用されておりました。  もっともっと国産材のよさを理解していただいて、木材というのは国民の健康あるいは長生きにもいいというような研究結果もございますし、また、最近では、学校の食器から環境ホルモンが出てこれが子供に悪影響を与えるということで、これを一部、例えば喜多方市では地場産業である漆の食器に切りかえるというような動きも出ております。木材はそういった環境の問題はございません。むしろ環境保全に役立つ素材というふうに地球温暖化防止の昨年の六月の大綱でも位置づけられておりまして、そういった国産材の積極的な利用なども山を立派に育てるための大事な施策の一つであるとして、私ども力を入れてまいりたいと考えております。
  122. 佐藤謙一郎

    ○佐藤(謙)委員 今お話があったように、こうした木材使用というのは、鳥獣保護の議論とリンクをしていく問題だという認識から、これは林野庁だとか環境庁だけじゃなくて、我々自身に突きつけられている問題なんだろうというふうに考えております。  そこで、今度は、鳥獣保護といいながら、生息域を狭めていく最も大きな原因である開発行為への規制に踏み込んでいない点がこの今回の法案で欠けている点なんだろうというふうに思うわけでありますが、具体的に質問させていただきます。  大規模林道の話なんですけれども、これはかつて林野庁長官が市民グループとの円卓会議といいますか、会議に応じてくださって、結果として、山形県の朝日—小国ルートの大規模林道を中止する、こうした英断を下してくださいました。市民との連携の中から大規模林道問題が考えられた、そのスタートラインだったんだろうと思います。林野庁の外郭団体である森林開発公団、私もあちこちの林道を見ています。  一時間半ほどがたがた山道を登っていく、やっと着いたなと思ったその尾根伝いに七メートルの舗装道路がばあっと眼前に広がるときに、こんなむだ遣いをしていれば我々の年金や子や孫の将来というのが跡形もなくつぶされていく現実というのを見てきているわけでありますけれども、こうした二車線舗装道路で山岳地帯を貫く大規模林道を森林開発公団は全国に建設をしてきたわけであります。  この公団で、岩手県を走る川井住田線の横沢—荒川区間において希少猛禽類モニタリング調査実施して、昨年八月二十七日に岩手県の川井村で行われた説明会では、少なくとも三つがいのクマタカが路線上に生息していることが公表された。そのうちの一つがいは、地元の早池峰クマタカ研究会によってこの春営巣行動が確認されているわけでありますけれども野生鳥獣保護という観点から考えて、当然何らかの手を打たなければならないと思います。それは森林開発公団のみならず、林野庁や環境庁にも大きな責任があるというふうに考えます。  そこで、この問題についてどう対処するのか。野生鳥獣、中でも生態系の豊かさを示すと言われるこの猛禽類をどう保護するかという一つの具体例を申し上げましたけれども、この法律が狩猟法だけではなくて保護法であるというのであれば、その証拠をこそこの事例によって明らかにしていただきたいというふうに思うのであります。  林野庁には森林開発公団をどう指導されようとするのか、また環境庁はどういうふうに対応しようとされているのか、それぞれお答えをお願いしたいと思います。
  123. 山本徹

    山本(徹)政府委員 先生指摘の公団の林道でございますけれども、これは、林業の仕事をやりやすくする、また、都市に比べて大変交通アクセスが不便でございます中山間地域の生活あるいは地場の産業等々のための道路としてこれを整備させていただいているところでございます。これを、環境との調和を図るために事前に調査を行いながら実施いたしております。先生指摘の横沢—荒川区間でございます。これは、御指摘のとおり、クマタカの営巣が確認されております。  私どもは、こういった猛禽類を保護するための環境庁が出しておられますガイドラインに沿いまして事業実施するとともに、事前のモニタリング調査あるいは専門家の御意見も承って、適切な事業実施を行うように公団を指導しているところでございますが、具体的な横沢—荒川区間につきましては、さらに、周辺地域の自然環境への影響というのをできるだけ小さくいたしますために、現在公団において、トンネル化の可能性等も含めましてルートの変更を検討していると承知いたしておりまして、私どもも、公団の検討に対して積極的に御相談に応じ、こういった猛禽類の保全等々の自然保護に万全を期してまいりたいと考えております。
  124. 丸山晴男

    丸山政府委員 岩手県の大規模林道を森林開発公団が実施をしているところでございますが、現在もモニタリングを実施して、専門家意見を聞きながら対策を講じていると聞いております。  私どもは、平成八年八月に、猛禽類の生息地周辺での開発に際して行われるべき調査あるいは保護対策のための指針を、「猛禽類保護の進め方」としてお示しをしたところでございます。閣議アセスの対象にはなっておりませんけれども、今後とも、「猛禽類保護の進め方」の考え方に沿って必要な施策が講じられるものと期待いたしております。
  125. 佐藤謙一郎

    ○佐藤(謙)委員 次に、参議院での附帯決議で、緑の国勢調査その他の自然環境に関する調査を徹底し、国全体の鳥獣生息状況を適切に把握するという注文がついたわけでありますが、把握してどうするか、それから先が問題なんだろうと思います。  私どもが今関心を持っております愛知万博の予定地である海上の森では、先ごろオオタカの営巣が発見されました。把握した、それで、これをどうするつもりなのかを環境庁お答えいただきたいと同時に、環境アセス法の施行に先駆けてアセスもやった、しかし、アセスが終わった後で貴重な生物がいることが把握された、こうしたときの対応をどういうふうにされるのか、環境庁からお答えをいただきたいと思います。
  126. 丸山晴男

    丸山政府委員 愛知県の万博予定地の海上の森のオオタカにつきましては、営巣中心地を適切に保全するということが重要と考えまして、現在、「猛禽類保護の進め方」の考え方に基づきまして、愛知県その他におきまして専門家意見を聞きながら調査実施がされるものと聞いております。環境庁といたしましては、事業者からの要請にこたえ、必要な助言等をしてまいりたいと考えております。
  127. 岡田康彦

    ○岡田政府委員 後段の御質問についてお答え申し上げます。  環境影響評価では、手続の途中で新たな事実が明らかになった場合には、基本的には次の手続の段階で、その新たな事実についても考慮した対応を行うことといたしております。したがいまして、本件につきましては、アセス手続をやり直す必要はなく、今後事業者において作成される環境影響評価書におきまして、愛知万博が今回営巣が確認されましたオオタカに与える影響への対応をも含めまして環境影響評価がなされるものと考えております。
  128. 佐藤謙一郎

    ○佐藤(謙)委員 この愛知万博の海上の森なんですけれども、地元住民及び環境保護団体では、自然保護検討委員会議の開催を求めています。これはかつて長野県でのオリンピックでとられた方策でして、今はオオタカ検討委員会というところに矮小化され、おとしめられようとしているわけです。  この長野県でのオリンピックでとられた方策、いろいろと議論はありますけれども環境保全の点からいえば、岩菅山を競技会場から外したという点は評価されるべきだろうと思いますし、また、NGOと行政が協力できた、そうした一定の役割があったわけであります。しかし、希少植物の移植には失敗したということから、その辺については意見の分かれるところであります。  こうした教訓をも生かした上で、愛知万博での自然保護検討委員会議の開催が必要であるというふうに私自身も考えておりますけれども、これに対して環境庁はどういうふうにお考えですか。
  129. 丸山晴男

    丸山政府委員 愛知万博につきましては、「自然の叡智」ということで、自然と共生する万博というテーマで検討が進んでいるというふうに承知いたしております。  オオタカに着目いたしました検討委員会ということで、NGOを含めた保全対策の検討の場が設置をされるというふうに承知いたしておりますけれども、さらにそれを上回る全体としての自然保護対策のあり方につきましては、むしろ愛知万博のあり方そのものでございます。これまでも検討が十分されてまいったと考えておりますけれども、今後どう対応するかにつきましては、事業者において判断をされるべきものと考えております。
  130. 佐藤謙一郎

    ○佐藤(謙)委員 かつて藤前干潟では、真鍋環境庁長官の大変な英断というものがあってその保全が図られたわけであります。それはそれですばらしいことであったけれども環境庁長官のそうした判断で自然が守られていくということは、うれしい反面、それでいいのか、そういう一面もあります。どの方が環境庁長官であっても、やはり守るものは守っていく、そういう体制づくりに環境庁はより積極的であってほしいと思います。  そういう意味では、まさに環境をテーマにした万博が行われるこの海上の森、今回里山、里地の保全というものを前面に出した環境庁としては、ここは正念場なんだろうと思うのですね。ですから、こうした自然保護検討委員会議のような仕組みを一つでもつくって、全国にそうしたスタイル、そうした仕組みというものを広げていくことが、これは地域地域環境保護団体と環境庁との信頼関係の回復になるんだろうと私は考えます。  次に、以前から質問をさせていただいておりました中池見の湿地について、これは環境庁長官にぜひとも現地を見ていただきたいということで、この委員会で御快諾をいただいたわけでありますけれども、その後、中池見湿地をどのように認識しておられるのか、お答えいただきたいと思います。
  131. 真鍋賢二

    真鍋国務大臣 先般の当委員会におきまして、佐藤先生から中池見の湿地の重要性をるる説かれたわけであります。私も同感の意を表明して、できるだけ早く現地を見てみたいという意思表示をいたしたわけであります。  しかしながら、現地視察は多うございまして、国会開会中でございますので、ほとんど土日しか活用できないという状態にあるわけでありまして、気持ちははやっておるわけでありますけれども、なかなかまだ実施段階に至っていないわけであります。  この中池見の湿地の問題につきましては、休耕田を主体として湿地特有の植生があるということでありまして、この植生を何とか生かしていかなきゃならないという気持ちは今も変わっておりません。そんなことで、機会を見て早く現場を見せていただきたいと思っておる次第であります。
  132. 佐藤謙一郎

    ○佐藤(謙)委員 この中池見の湿地は、先日、御承知のように、コスタリカのサンホセで行われたラムサール条約の締約国会議で、その会議に先駆けて行われたプレ会議で大変な注目を集めたわけであります。今まで前例がないように、中池見の保全を訴える声明文が出されたというふうに聞いております。  ラムサール会議始まって以来ということでありますけれども、日本では全く注目されていないと言っても等しいわけであります。地下六十メートルのヨーグルト状の湿地が、実は五万年の泥炭層が、この地域の気候、植物の歴史を伝える可能性を持っているわけであります。地元敦賀市や福井県でもこの中池見が水田に利用されているという事実に目が行っていて、これが人類のみならず地球の歴史にとって、世界的に見ても極めて特殊な湿地であるということが世界に知れ渡っているのに、この日本がそんなすばらしい湿地というものをまだ十分に理解していないわけです。  五万年前の泥炭層の価値をどのように環境庁としては認識をして取り組もうとしておられるのか、環境庁長官の視察とは別に、環境庁としての取り組み方について御報告をお願いします。
  133. 丸山晴男

    丸山政府委員 先月、コスタリカでの第七回のラムサール条約締約国会議におきまして、湿地登録の新たなクライテリアが決議されまして、新たな生物地理区分の観点からの基準が設けられたところでございます。  この決議などを踏まえまして、国内における基準の検討と全国の湿地の状況把握に努めて、新たな基準に対応した重要な湿地の選定を行ってまいりたいと考えておりますが、個別の湿地につきましては、その結果を見て総合的に判断することになると考えております。  中池見湿地につきましては、福井県の環境影響評価要綱に基づくアセスメントが実施され、平成八年六月に手続が終了しているということでございます。それらを見ながら、総合的に検討してまいりたいと考えております。
  134. 佐藤謙一郎

    ○佐藤(謙)委員 あと一、二問になりますが、鳥獣保護法の歴史をひもときますと、参議院でも議論があったように、狩猟法がその源であるということであります。それが幾つかの改正を経て今日に来たわけですけれども、特に昭和三十八年と五十三年に改正があったわけでありますけれども、そこでいろいろな議論がなされました。中長期的な鳥獣保護に関するかなり真剣な議論があったというふうに聞いておりますけれども、この三十八年と五十三年の改正ではどんな議論があって、そのうち今度の改正には一体何が実現したのか。  実を言いますと、ここでかなり真剣な議論があったにもかかわらず、今度の改正はほとんどそうしたものがまたまた先送りになっている。昭和三十八年からということになれば、もう三十年以上、四十年近くの先送りということになるわけでありますから、何が実現したのかをお答えいただきたいと思います。
  135. 丸山晴男

    丸山政府委員 昭和三十八年、狩猟法が改正され鳥獣保護狩猟法となりました際には、目的規定の設置、都道府県鳥獣保護事業計画実施、休猟区の新設、鳥獣保護員の設置、都道府県鳥獣審議会の設置が定められておるところでございます。  五十三年の改正におきましては、狩猟免許試験制度の導入、猟区の設定の範囲拡大、登録制度の新設といったものがされているところでございます。
  136. 佐藤謙一郎

    ○佐藤(謙)委員 多分、私の質問の仕方が悪かったのだと思います。三十八年の改正、五十三年の改正で何が実現したかということは、私も資料でよく知っているところでございます。つまり、そこでの議論で先送りにされた問題が一体何であるかということをお答えいただきたいのと、その問題の中で、今度の改正で一体何が実現したかについてお答えをいただきたいと思います。
  137. 丸山晴男

    丸山政府委員 野生鳥獣が自然資源の一部として持続可能に存続するということで、狩猟圧によるコントロールに限らず、鳥獣保護という考え方で事業を進めるということが流れとして入っておりますが、その中で、生態生息数調査して、その結果に基づいて生態系とのあつれきや人とのあつれきを防止するような、いわば科学的な保護管理、ワイルドライフ・マネジメントと言っておりますが、そういったような考え方が今回導入をされたところでございます。  それから、従来から議論があって検討課題とされているものの一つには、いわば猟区のあり方の仕組みがございます。これは、現在は禁猟区や市街地等におきまして狩猟を制限いたしておりますけれども、その考え方といいますのを逆転して、全国の中でいわば可猟区を設定して、それ以外の地域については禁猟にしていわば鳥獣保護に貢献をしたらいかがか、こういう論議でございます。  この全国禁猟区制度につきましては、一つは、人とのあつれきとのかかわりで問題になっている野生鳥獣というのは比較的全国に均一的に存在しているということで、その問題をどう扱っていくか。  それからまた、狩猟を行う場所、猟区につきましては、現在十三万ヘクタールほどの猟区がございますけれども、そこで狩猟が可能ないわば人員、定員といいますのは千五百名程度で、なおかつ稼働は三十日程度でございます。二十二万人の狩猟者の方がおられます中で、現在の猟区といいますのは、千五百人くらいのキャパシティー、しかも一カ月分ぐらいしかない。したがって、それを、ほかの地域は禁猟にして、その猟区だけで可猟にするということはなかなか非現実的でございます。  そういったような議論は昭和五十三年からございまして、現在でも御論議をされている向きがあることは承知をいたしております。
  138. 佐藤謙一郎

    ○佐藤(謙)委員 何が非現実的なんですか。
  139. 丸山晴男

    丸山政府委員 我が国の場合に、野生鳥獣というのが比較的農林業を営む地域で多く生息しているということで、人とのあつれきがどうしても出てくるということが広域的に存在するという点と、それから、可猟区、猟区以外を狩猟禁止にするということにつきましては、いろいろな試みはございますけれども、現在、いわば狩猟を行う区域として設定しております区域が非常に限定的、全国的に十三万ヘクタール程度、三十六カ所でございまして、そこで狩猟を行っていただくとすると、千五百人分ぐらいのスペースしかない。二十二万人の狩猟者がおられまして、その中で千五百人分ぐらいしかないということで、その猟区の制度を広げていくということが一つのテーマでございますけれども、いささか時間がかかるということで、必ずしも現実的なテーマになっておらないということでございます。
  140. 佐藤謙一郎

    ○佐藤(謙)委員 可猟区、このネガとポジを逆転すると、そこの地主さんに一々猟をしていいかどうかを確認していく作業をすると、ほとんどがだめだと断られてしまうというんですね。それはどういうふうにお考えですか。  つまり、やはり我々は、自分たちの安全というものを一番中心に置いていこう、今、河川敷でもどこでも、ちょっとロマンチックなムードに浸ろうとして川沿いを歩いていくと、突然アシの茂みから銃弾が飛んでくるような、そんな危ないところで子供たちが遊んでいる。農林業被害ばかりが言い立てられて、私たち都市に住む者あるいは地方に住む者、健康で安全な生活が本当に確保されているんだろうか、そうした原点に立って考えれば、息は長いかもしれないけれども、私は、この鳥獣保護法というものが、鳥獣保護をまさにベースにした法律に変わっていかなければいけないというふうに考えています。  先ほど、ワイルドライフ・マネジメント、ドイツからそうしたものを輸入している、そういう説明が得々とありますけれども、もはや西洋的な自然を管理していこうとする、そうした時代、その破綻が言われて久しいわけであります。新しい、日本の自然と共生できる、本当の意味での鳥獣保護法というものをつくっていこうじゃないですか。  私は、そういう意味では、今欠けている議論の中で、鳥獣保護法というものを、新たにこの附則の見直し条項では、生物多様性条約その他の国際条約との整合性を図りつつ、未解決である昭和三十八年改正当時の課題も含め、野性生物の種及び生息環境に関する法制度全体の見直しを行うことを提案したいというふうに思います。  三十八年、五十三年の一体何が今度の法改正につながったのかというと、もうほとんどその実態というものが先送りされているという現実を我々は知らされるだけであります。  そうした自然管理型西洋文明を取り入れる愚かさを、ある市民団体の方がきのうファクスで送ってくださいました。  今、兵庫で、  野生動物のえさ畑を奥山に作りました。畑といい、これまでして来たえさになる広葉樹の奥山植林といい、ずり落ちそうな急斜面を登りつめての作業は、気の遠くなるような三Kどころかもう大変な作業でした。奥地に森を造る。こんなもの人間の力でできるものではないとつくづく感じます。   きょう、急斜面のところどころに、すこしずつ均等にばらまかれたシカのふんを見て、感動しました。かれらはこうやって、森中に均等に肥料をばらまいています。ただで森を造ってきてくれた人類の大恩人を悪者呼ばわりしてこの法で殺し尽くそうとするなんて、人間のはしたなさに恥ずかしくなります。   今残っている彼らの生息地を厳重に手付かずで保全すること。国を挙げて広葉樹林の復元運動を起こし、動物に管理してもらうこと。これしか被害問題解決の道はありません。  私は、これがすべてとは思いません。しかし、そうした市民の思いというものをどうかどうか心の中にしまって、環境庁は、この鳥獣保護法が将来の我々にとって一体どういう意味を持つのか、自分たちのやりやすい、しめた、これは都道府県や市町村に丸投げしてしまえ、そんなものではなくて、環境庁の省昇格の一番大切なときに、どうかこれをすばらしい宝物にしていけるようにつなげていっていただきたいと思います。  これで質問を終わります。
  141. 北橋健治

    北橋委員長 午後一時三十分から再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時二十五分休憩      ————◇—————     午後一時三十一分開議
  142. 北橋健治

    北橋委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。西博義君。
  143. 西博義

    ○西委員 鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律の一部改正案に関連して質問をさせていただきます。  生物の保護パラダイムはこれまでの種の保存から生物多様性へと大きく変換いたしました。平成七年十月、日本においても、生物多様性国家戦略を策定し、生物との共生を目指し、さまざまな施策に取り組んでおります。生物多様性は、遺伝子レベル、種レベル、生物の相互関係の複合体としての生態系レベルで存在しているというように生物を総合的にとらえようという考え方でもあります。  生物に係る問題に対しては、そうした総合的、全体的な視点に立って対処することが求められております。植物、動物、人間の共生、またペット、農薬生物など移入種問題では、こうした全体的な視点が欠かせないと思うわけでございます。  そこで、まず移入種問題について質問をしたいと思います。  農林業、養殖業などのためや、天敵として利用したり、ペットとして持ち込まれた生物が、放置されたり放流されたりということによって、固有種や生態系に大きな影響を与えている例があります。動植物など生物にかかわる法制はばらばらで、しかも不備が多くて、この移入種問題も現行の体制では対処できない問題の一つとなっているわけでございます。  このうち、天敵農薬としての移入種に対しては、環境庁では、天敵農薬環境影響調査検討会を設置して、本年四月報告書がまとめられております。報告書では、天敵導入に先立ち、生態学事前評価をするためのガイドラインを盛り込んでおりまして、今後、個別の天敵農薬の環境影響評価を行う、専門家による検討の場を設置する、こういうふうになっております。  また、水産庁では、ブラックバスやブルーギルなど外来種対策として指導強化をして、三十三の都県で内水面調整規則を定め、移植制限を行っているのが現状でございます。  私は、この移入種問題全般について、生態系への影響を防止するために、専門機関を設置し、移入について許可制を導入すべきだ、このように思いますが、環境庁はどう取り組まれようとしているのか、お伺いをさせていただきます。
  144. 丸山晴男

    丸山政府委員 生物多様性を保全する上で外国からの種、移入種問題というのは大変大事な問題でございます。  天敵農薬ということで幾つかの鳥獣が移入をされたところでございますが、その中で、環境庁といたしましては、奄美大島のマングースを対象とした駆除モデル事業などを実施しておりまして、天敵農薬の導入に当たってのガイドラインを取りまとめたところでございます。  まずは、このような具体的な取り組みを積極的に進め、経験を蓄積していくことが重要と考えておりますけれども、移入種問題全般につきまして、現状の把握あるいは移入種問題への対応の基本的考え方につきまして、関係省庁とも連絡を図りながら、中心となって研究してまいりたいと考えております。
  145. 西博義

    ○西委員 この移入種問題については、まず入り口における規制が最も大事だ、このように思うわけです。一たん入ってしまえば、あとは野生化させないように努力するか、優先的に駆除する、そんな対処の方法しかないわけですから、その段階になれば対処するには大変困難だ、このように思います。  外来種の移入については、ワシントン条約上取引が禁止されているものや農林水産業への影響を与えるものについてはチェックをされておりますけれども、それ以外のペットや観賞用に持ち込まれる生物については全く警戒されていない、こんな状況でございます。早急に法整備が必要だ、このように思います。  話題をかえますが、中央省庁の再編に伴い、これまで総理府の所管でありました人が飼っている動物に関する法律、動物の保護及び管理に関する法律が環境省に移管されるということが今検討されている最中でございます。ペットや観賞用の生き物が野生化して生態系へ影響を及ぼしている現状を考えた場合に、野生動物は鳥獣保護法、人に飼われている動物は動物の保護管理法とばらばらな法体系を一体化すべきである、こう思うわけでございます。  動物の保護管理法など議員立法でつくられた法律に対して、行政改正や見直しを余り行わないという傾向がありますけれども、私は、行政側にも、これら既存の法律をより有機的に、総合的に再編をした、例えば生物保護生態系保全に関する法律というような制度を設けてはどうかと提案したいと思います。  また、これに関連して、東京都では、都の動物保護管理審議会が「動物取扱業者の指導育成策について」という答申を行っております。動物取扱業者に新たな登録制度の導入を答申しているわけでございます。さらに、人に危害を与えるおそれがある特定動物について、対象動物種の拡大、個体登録制度の導入も答申をしております。  国においても、ペット業など動物取扱業者の登録制度や個体登録制度も検討すべきではないでしょうか、このことについて、御答弁をお願いいたします。
  146. 鹿野久男

    鹿野説明員 現行の動物の保護管理に関する法律では、観賞用、愛玩用に飼養している動物、これを虐待したり遺棄したりすることはいけないことになりまして、罰則がかかっているところでございます。  こういう点で、野生生物の保護とこの動物の愛護を目指す法律とは、基本的には環境中にペット動物は出さないということになっておりますので、そこのところでまず一線が引かれるのではなかろうかと考えております。  なお、現在私どもも、この動物の保護管理に関する法律、これが議員立法でできましたのを、また議員立法で改正する動きがあるやに聞いております。また、そういう中で、私どもも政府としての必要な意見を機会に応じて申し述べていきたいと思っております。
  147. 西博義

    ○西委員 どうか積極的な働きをお願いしたいと思います。  続きまして、環境保全それから生物の保護に携わるスタッフのことについて、御質問を申し上げます。  環境をいかに守るかということは、これは大変重要な課題であります。しかし、この環境保全や生物の保護に携わるスタッフは、環境団体や研究者を初めとして、鳥獣保護員、森林保全巡視員、環境衛生指導員など、ボランティアの方々に大部分を頼っているというのが現状でございます。  過日、我が党の石田幸四郎議員が、林野庁を環境省に移管するということを提言をされました。そうすることにより、環境省が生物の保護を図るために山林に生息地を設置できるなど、より一体的な環境行政が行われると思われます。さらに、林野庁の職員など環境行政のために必要な人員を確保することもできるわけです。  そして、私は、警察権を持った環境レンジャーというべき組織をその中に再編すべきだ、こう思っております。彼らには、環境保全や生物保護のために巡視や監視を行うだけではなくて、密猟や保護植物の盗掘、それから廃棄物の不法投棄、これらの取り締まりをあわせて行っていただく、こういう役割も考えられるのではないか、こう思います。  環境レンジャーの創設など、環境を守るスタッフ体制について、環境庁の、また特に環境庁長官の御答弁をお願いしたいと思います。
  148. 真鍋賢二

    真鍋国務大臣 先般の行革特の委員会におきまして、公明党から、石田先生から貴重な御提言をいただいたわけであります。まさに、私は、時宜を得ておると思うわけであります。  ただ、今次中央省庁の再編成等の問題につきまして、もうある程度の筋書きができておるものでございまして、新しくそこに提言を取り入れてやるところまでまだ達しておりませんけれども、その精神は、私は、本当にありがたい、これは貴重な意見としてこれから取り上げていかなきゃならない環境行政の中の大きな課題だ、こう思っておる次第であります。  また、レンジャー等についての御意見もいただいたわけでありますけれども、これは参議院の小川委員からも、予算委員会のときに取り上げていただきまして、貴重な高山植物やそしてまた動植物をいかにして管理していくかという必要性を唱えられたわけでありまして、これまた急いで対策を講じていかなきゃならない問題であります。  そこで、国立公園の保護のための規制や絶滅のおそれのある野生生物の保護、増殖等の業務を実施するため、全国を十一ブロックに分けまして、そして各ブロックの国立公園・野生生物事務所を設置しており、その下に現場の管理官事務所を五十五カ所配置しておるわけであります。これら事務所には、今総勢で百七十二名の職員を配置しておるところであります。しかし、巡視や取り締まりを含め、現地業務を的確に実施するためには、現行の体制ではなお不十分だと認識しておりまして、抜本的な人員増に取り組んでいくべきだと考えておる次第であります。  これらの職員の業務の範囲については、環境省となることを念頭に置いて、自然との共生を実現する上で推進すべき業務について積極的に取り組む姿勢で臨み、巡視や取り締まり、そしてまた環境学習指導などの現地業務を担い得る体制を整備していきたいと思っておるわけであります。  新しく、今林野庁の方からの応援もいただいておるところでありまして、この人たちを再教育の上、立派な環境マンとして活躍を期待しようとしておるところであります。
  149. 西博義

    ○西委員 さらに充実した環境行政を目指して、積極的な行政指導、また環境に対する保護を推進していただけるようにお願いをしたいと思います。  今度は、鳥獣保護についての具体的な内容に入っていきますが、今回の法律の改正のポイント、これは環境庁が三つ挙げております。まず一番目に個体数管理の導入、それから二つ目が生息地の整備、それから三番目に防除の措置、こういう三つにある、こういう説明を参議院の委員会においてもされております。  しかし、一般には、今回の法改正は、先ほどからも議論がありましたように、極論するとふえ過ぎたシカを駆除するためにある、こんな悪口も言われておりますが、事実、個体数の少ないクマなどの保護策などは全く具体策に欠けている、こう私は思わざるを得ません。  富士、丹沢や和歌山県におけるツキノワグマのように著しく減少した鳥獣保護について、まずこの法案の果たす役割についてお伺いしたいと思います。  例えば、高野山と龍神を結ぶスカイラインが紀伊山脈の背骨のところに走っております。いわば奈良県との県境をずっと太平洋の方に向かって走っているのですが、このスカイラインにトンネルを掘れば奈良県のクマと和歌山県のクマが交流できるわけですが、これまでの体制では、それすら行う事業の予算がないというのが実態だと思います。  鳥獣保護の実効性を上げるために、緑の回廊構想というのがありますけれども、この緑の回廊モデル、この事業を二、三カ所どこかに行うとか、もしくは生息地の整備のために自治体に補助を出すという具体的なことを環境庁自体がやっていく、こういう積極性がぜひとも必要ではないか、こう思います。  私自身も、四、五年前から、微力ながらボランティアの一人として、この紀伊山脈の山奥でクリの苗を植えたり山芋の種をまいたり、野生動物の生息地確保のために努力をさせていただいてきましたけれども、国としても、生息地確保や整備についての方針をぜひとも示していただきたいと思います。  私たちが国民から預かっている国有林のうち、どれくらいの割合が今生息地として利用されているのか、さらには、今後環境庁としてどの程度の国有林をこの貴重な動植物のための生息地として確保したいのかということをお教え願いたい、このように思います。
  150. 鹿野久男

    鹿野説明員 まず、生息数減少しつつある動物についての保護対策として、環境整備、この大切さにどう取り組んでいくのかということについてお答え申し上げたいと思います。  今回の計画制度の中で、先ほど来三つの柱と申し上げましたが、やはり生息数が減じている動物にとりましては、その三つのうちでも特に生息地の改善ということが重要であるというように認識いたしております。  そうなりますと、この計画をどのように後実行していくのかという問題が残るわけでございますが、やはり生息地の改善という中では、例えば針葉樹から広葉樹に変えていく。また、先生今御指摘にありましたように、動物の通り道としての緑の回廊、こういうものを考えていく、このことによって孤立した個体群が相互に交流が可能になるというようなことを実施していくことが重要だと思っております。  私ども環境庁といたしましても、平成九年度から、緑の回廊ということで、富士山、丹沢地域を今ケーススタディーとしまして農水省、建設省ともども勉強をしているところでございます。こういったような勉強の成果をぜひこういう管理計画の中に生かしていき、減少しつつある動物の生息環境の整備に努めてまいりたいと考えております。  それから、もう一つの国有林の御質問でございますが、国有林は我が国の自然の中でやはり骨格をなすような大切な森林をたくさん含んでいるところでございます。そういうことからしますと、当然国土の中に生息、生育している動植物の多くがその国有林に依存して生息、生育しているということが言えようかと思います。  ただ、これを具体的にどのくらいがどうだというのは、ただいまそういう資料を持ち合わせておりませんので、ここでは答弁を控えさせていただきたいと思います。
  151. 西博義

    ○西委員 国際自然保護連合のレッドリストというのがあるわけですが、ここに、ツキノワグマ、ニホンザルが危急種というふうに分類をされております。鳥獣保護法では、クマ狩猟鳥獣、こうなっておりますが、保護鳥獣にまずすべきだと私は思います。その見解をお伺いしたい。また、狩猟鳥獣から保護鳥獣に変更になる際の基準、これはどのようなものかということを具体的に示していただきたいと思います。  現在先行的に各県で実施されている保護管理計画、これによりますと、実際に対象になっている動物はシカクマ、猿、イノシシ、これがほとんどだと思います。この法律改正により特定鳥獣保護管理計画がつくられる際もこの四種類が中心になるというふうに思うわけです。私は、鳥獣保護に関しては有害駆除の権限を市町村ではなく都道府県がやはり持っておく、こういう基準をこの際明確にすべきだと思いますが、このことについてお答えを願いたいと思います。  もう一つ保護動物である猿の保護管理のことについてお伺いしたいんですが、猿については個体数管理という枠組みが有効なのかどうかという疑問があります。それは、猿の問題行動というのは、これは学習をすることによって群れ全体に広がっていく、そして単に数をコントロールするだけでは被害が解決しない、こういうことがあります。ですから、今回の改正による個体数管理という概念にマッチしないのではないか、こう思っております。この点についての環境庁の考えをお聞かせ願いたいと思います。
  152. 丸山晴男

    丸山政府委員 ツキノワグマについてのお尋ねが冒頭ございました。  西中国地域などの個体群が衰退をして、地域的には絶滅のおそれのあるものが生じておりますけれどもツキノワグマ全体は、全国的に見ますと個体数が一万から一万五千頭という水準でございまして、絶滅のおそれのある種として全国一律に狩猟を禁止する段階にはないと考えております。個体数減少の著しい西日本個体群につきまして、従来から、狩猟禁止や有害駆除における奥山放獣を実施してきたところでございます。そういったようなことでクマ保護対策の強化に努めてまいりたいと考えております。  狩猟鳥獣選定の基準につきましては、生息の数、あるいは農林水産業に対する害、益の程度狩猟対象とする資源性等々を考慮して定めてまいっているところでございます。  また、特定計画策定される際に有害鳥獣駆除の権限を市町村ではなく都道府県が持つという基準を明確にすべきというお尋ねでございますが、計画策定されます際には、個体数生息密度の目標が定められることになります。市町村に捕獲許可が移譲された場合でありましても、捕獲についての総数管理が可能でございます。したがいまして、有害鳥獣捕獲許可につきまして、都道府県計画に従って適切に市町村を指導することによりまして、科学的データに基づく計画的な個体数管理が可能になると考えている次第でございます。  また、猿の保護管理につきましては個体数管理という枠組みが有効かどうかという御指摘でございます。  猿につきましては、それぞれの群れの行動の範囲や被害との関係把握し、十分考慮した上で保護管理を行うことが適切であると承知をいたしておりますが、個体数増加による被害増加であるのか、あるいは人なれなどの個体群の性格の変化に伴う被害増大なのかといったようなことも含めまして、猿の保護管理につきましては、生息状況あるいは群れの行動特性を十分分析した上で総合的な対応を考えていく必要があると考えているところでございます。
  153. 西博義

    ○西委員 これからお話し申し上げるのは、紀伊山地野生鳥獣保護友の会代表の東山省三さんにお聞きした話なんですけれども平成八年四月二十九日、ゴールデンウイークの最中に、和歌山県と奈良県の県境付近の観光道路に、残飯の入ったビニール袋をくわえて一歳余りの子グマがあらわれました。休日のために多くの通りがかりの観光客が見守る中で、残飯をあさって、そして姿を消しました。二十日後に隣町の国道沿いのレストランの裏にその小さなクマがあらわれまして、人が近寄っても逃げないので、仕方なくおりで捕まえて奥山に放たれました。その後しばらく山の中を回遊していたんですが、その後も各所で、道の近く、家の近く、あちこちでこのクマは目撃されております。最終的には、その年の十月二十二日に橋本市に現れまして、このときは人が近づいても動こうとしなかったので、もはや野生の本能なし、こういうふうに断定をして、高知県の動物園に送られました。  このクマは、先ほども申し上げましたように奥山でも、道路付近、家の付近にたびたびあらわれていたということがあちこちの調査でわかっております。  どうしてこの子グマが野生を失ったか。東山さんにお聞きしますと、観光道路を行く通行客が投げ捨てた弁当の残飯をあさる習慣がついて、車の音と人の声のするところにえさがあるということをこの子グマがどうやら知ったらしい。ですから、奥山に行かないで人の声のするところ、車の音のするところをずっとたどりながら、最終的に橋本市まで行き着いた、こういうふうなことになったんじゃないか、こう話がありました。  また、最近の新聞報道でも、北海道環境科学研究センターの間野勉さんという人の調査によりますと、一九九一年から九六年までの北海道南部で捕獲されたヒグマ二百六頭のうち一四%のクマが、人間活動から出てきたごみ、いわば残飯類を食べていたことが胃の中の内容物の分析から判明した、こういうふうに言われております。  そういう意味では、つい先日の尾瀬におけるクマの襲撃ということも、結果的には、観光地であるがゆえに人間の食べ物によるクマのおびき寄せのようなことが重なって被害があったのではないかというふうにも思われます。  人間は昔からクマやオオカミ等の野生獣と共存してきて、そして野生獣とのつき合い方を知っていたんですね。ところが、だんだんと人間界からクマが駆逐されて、またオオカミもいなくなって、我々は知らず知らずにクマを我々の生活圏におびき寄せるような結果になっているんではないか、こういう事態が随所に見られます。  奥山に入るときには、クマとの遭遇を避けるためにラジオを持っていったり笛を鳴らしたり鈴を鳴らしたりというようなことは常識だ。それから、山の中腹にお墓参りをするときには、持っていったお菓子だとかおまんじゅうなんかは必ず持って帰るというのはこれまた昔からの常識だ。家の軒先にあるカキの木にカキがなって、秋になると上の二つ三つは鳥がついばむように残して、下の方は全部とってしまうというのはクマをおびき寄せないための常識だ。こんな一つ一つのことも私は東山さんからお聞きをしましたけれども、そんな昔からの言い伝えなど、もう一度やはり先人の知恵も含めて、野生鳥獣と人間とのかかわり方、共生のあり方ということについての教育、啓蒙の充実を図るべきだと思いますが、御感想をお願いしたいと思います。
  154. 鹿野久男

    鹿野説明員 野生生物と人とのかかわりをもう一度よく先人の知恵に見習って見直せという先生の御指摘でございます。  私自身も長い間行政をやってきて、先生の御指摘、ごもっともと思うところがたくさんございます。  野生生物と人の出すごみの問題でございますが、特に登山ですとかハイキングですとか、そういうときにいわゆる野生生物の生息地側に人が入り込んでいってそこにごみを出す、野生生物がそのごみを食料とするというような事例が各地で見られます。その結果として、その野生生物が本来の野生の中でえさをとるという仕方から、人間のごみにどんどん依存してきてしまっている、そういう事例が幾つかのところで見られております。これは非常に悲しいことだと思うと同時に、私ども環境庁として、こういうことが全体としてなくなるように努力したいと思っております。  また、野生生物にえさをやるということをよしとしている人もおりますので、やはり野生生物につきましては、人間がえさをなるべくやらない、さらに、意識しないまでも、ごみを知らず知らずのうちにえさとして与えるということのないように努めたいと思っております。  それから、尾瀬のクマの問題について御指摘がありました。実は、尾瀬は日光国立公園の中の核心部でございますので、私ども、当然国立公園の利用として、人が生物の生育圏に入っていく以上、できるだけ影響を少なくするというような形で、国立公園の利用者等も指導しているところでございます。  そういうことからして、例えば人の出すごみというものも、多分日本の山岳地の中では尾瀬が一番少ないんだと思っております。そういう中で実は今回のように人が襲われるという事件が起きたわけでございまして、尾瀬では全く珍しい出来事でございますので、私どもも、この原因は何かということで早速調査を開始いたしております。尾瀬の場合にはほかのように、ごみがクマを招いたとかそういうことは絶対にないと思っておりますが、現実に起こったことでございますので、その原因についてはしっかり調査し、今後に生かしてまいりたいと思っております。
  155. 西博義

    ○西委員 先ほど紹介しました子グマは、人や車の近くに行けばえさにありつけるというふうにして野生を失ってしまったのですが、これは、本来なら子グマと一緒に行動すべきその母親が生後わずか十カ月でくくりわなにかかって殺されてしまったというのがまた悲惨な現実でございました。そのために一人で生きていくうちに、安易な食生活といいますか食事をとる方法を覚えた末の出来事というふうに地元では言われております。  くくりわなはクマ狩猟する手段としては禁止されておりますけれども、イノシシなど他の動物の狩猟有害鳥獣のために仕掛けられたわなにもクマがかかることがあります。有害鳥獣駆除のわなであれば駆除対象外の動物は解き放たなければなりませんけれども、実際には、始末に困って殺されてしまって、さらに、山中のことでもあり、やみからやみに葬られ、一部の人の証言からしか事実が明らかにならないというケースがあります。これも私は再三確認いたしましたけれども、そういう形で殺されたということはどうやら確実のようであります。  私は、本来捕獲すべき対象が決まっている有害駆除、例えばイノシシを捕獲する、こういうふうに決まっている有害駆除で、無差別に駆除の対象外の動物が殺傷されてしまう、例えばトラ挟み、くくりわなのようなものの使用は、かすみ網と同じように禁止すべきだ、こう思います、先ほども議論がございました。  特に有害駆除というのは、被害をもたらした動物を駆除するという趣旨からすると、同じ種でも被害をもたらさない動物をたまたまひっかけて駆除してしまったり、全く違う種の動物を殺傷するということが当然行われるわけでございます。ましてやどうもうなクマなどがひっかかるときには、解き放つ作業さえできないということで撃たざるを得ない、こういうことも実際にはあるんではないかと思っております。  次善の策としては、イノシシなど大型獣の狩猟のためであっても、あらかじめクマやほかの動物が生息していて捕獲される可能性のあるところは、地域を指定してくくりわななどの使用を禁止すべきではないか、こう思いますが、御答弁をお願いいたします。
  156. 鹿野久男

    鹿野説明員 先生指摘のように、くくりわなでクマはとってはいけないということになっております。ただ、イノシシをとる目的のくくりわなにクマがかかってしまったという事例だと思いますが、わなという捕獲具の特性からして、目で見ている前でとるわけではありませんので、ほかの動物がかかる可能性が必ずしもないわけではございません。  そういうことからして、私どもとしましては、このわなの免許に当たりましては、当然、動物の習性とわなをかけるべき場所、それから、間違って貴重な動物のかからないように十分気をつけること、こういったようなことを指導してまいっているところでございます。例えば、そういうような結果として、現在でも広島県では、クマ生息に配慮してくくりわなを禁止しているという県もございます。  今後とも、過って保護を図るべきクマがかかることのないよう、そういったようなことを中心としまして、くくりわなの適正な使用について指導してまいりたいと思っております。
  157. 西博義

    ○西委員 個体数管理の方法について一言御質問申し上げたいと思います。  千葉県では、平成三年に、一シーズン狩猟を解禁したことがあるそうです。そのときには、違反が多くて有害駆除に戻したということが報道されております。その後、シカ生息する市町村に管理ユニットを設置して、各ユニットの前年実績、被害程度、それから生息密度などを分析して駆除する数を指定する、こういう方法に戻したということのようでございます。一方、調査捕獲を行って、捕獲したシカの回収、それからサンプル調査を徹底して個体数管理を行っているということでございます。  個体数という指標を用いて機械的に管理するのではなくて、駆除する場合には、密度、それから被害程度など、複数の指標や条件をも考慮して駆除に当たるべきではないかと思います。  今回、目標値が定められるわけでございますが、目標値に至る前に被害が減った場合でも駆除を続けていくのか、それから、逆に、目標値を達成してもなお被害があった場合には駆除を行うのかどうか、このことについて確認をしたいと思います。
  158. 鹿野久男

    鹿野説明員 鳥獣個体数管理につきましては、生息数、実際の数だけでなくて、当然そこの密度等々につきましても総合的にいろいろな角度から検討していくのが適当だと思っております。  計画の実行中に、早く目標数に達した場合どうするのかというお尋ねでございますが、これは、この管理計画の中では、特にモニタリングが大切、後の追跡調査が大切と位置づけております。そういったような調査の結果、目標を達成したり、そういうことが判明した場合には、その時点で当然目標を見直す、また管理計画の実行の中身を変えていくというようなことが大切だと思っております。また、この計画にそういう仕組みを必ず設けるべきであるというように考えております。この計画は、事によりフィードバックするということを全体の計画の仕組みの中に入れていきたいと思っております。  同じように、目標年次に達しても目標の生息数もしくは生息密度にならなかったような場合でございますが、これは、その時点でやはりもう一度、被害状況ですとかそういうことも総合的に勘案し、次の期に移る計画をどうするかというのをその段階でもう一度再検討するということになろうかと思います。
  159. 西博義

    ○西委員 時間がもう余りございません。最後、一問だけ。  今回の改正が、保護管理の方法について、現行制度とどのような関係になるかということをまず確認をしていきたいと思います。  動物の数を減少させる方法としては、狩猟有害駆除、この二つがあるわけですね。狩猟には、一日当たりの頭数狩猟期間という制限を設けております。具体的な内容は環境庁長官が出す告示で決められる、こんな仕組みになっております。  今回の改正で変わることは、特定鳥獣に指定された動物については、都道府県知事が環境庁長官の告示にかえて狩猟条件を設定できる、こういうことになるわけでございます。一日当たりの狩猟頭数をふやしたり、あるいは期間を長くしたりということでもって、それぞれ地域に即応した目標を設定する、こういうことになるんだろうと思います。  あわせて、現在では基本的に頭数と期間だけという単純な制限項目となっておりますけれども、成獣、幼獣という違いだとか雄、雌、それから地域等についてより細かに制限項目を加えることができるようになると思うんです。国が特定鳥獣保護管理計画に関する基準を今度設定する、こういうことも聞いておりますが、基準としてこのような内容をお示しになるつもりかどうか、確認をさせていただきたいと思います。
  160. 鹿野久男

    鹿野説明員 野生鳥獣生息状況、それから鳥獣によります農林業被害実態、そういったものは地域によって大きく異なると考えております。目標達成の手段である狩猟の制限のあり方についても、地域実情に応じてきめ細かくやっていくべきだというように考えております。  このため、国が定める基準、計画策定のガイドラインでございますが、ここにおきましても、ただいま先生指摘のように、例えば計画対象地域については、捕獲を禁止する区域、またその逆に高い狩猟圧をかける区域、そういったような管理目標別のゾーニングを行う、そういったことが必要だと思います。また、実際に駆除目標をつくるときに、成獣、大人か子供をとるか、また雄をとるか雌をとるかといったようなきめ細かい基準が必要になってこようかと思っております。私どもとしましては、そういったことをガイドラインの中にしっかり位置づけてまいりたいと考えております。
  161. 西博義

    ○西委員 終わります。ありがとうございました。
  162. 北橋健治

    北橋委員長 丸谷佳織さん。
  163. 丸谷佳織

    ○丸谷委員 公明党の丸谷佳織でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。  参議院の国土・環境委員会というんですか、あちらの方の質疑の内容、議事録を拝見いたしまして、それぞれ各議員の皆さんが問題点を挙げられてかなり内容も明らかになってきていると思いますので、なるべく重複しないようにきょうは質疑をさせていただきたいと思っております。  まず最初に、今回の鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律の一部を改正する本法律案の中で、何かを改善するためにこの法律を改正するのだろうというふうに私は思うんですけれども、今までの議事録を拝見していく中で、この法律を改正することによって一体どの点が一番改善されるのか、何か不都合な点があって、この法律を改正することによってどこかに利便性が出てくるのかという疑問がどうしても自分の中で解決しないものですから、まずその点についてお伺いします。
  164. 丸山晴男

    丸山政府委員 国は、全国の野生動物の生息状況調査し、適正なその保護対策を進めるということが基本的な仕事でございますけれども、そういった野生鳥獣保護に対する国民の要請が高まっているのは事実でございます。  その一方で、特定の、あるいはまた一部の野生鳥獣につきましては、例えば食害によって植生が衰退するとかあるいは農林業被害が顕在化するといったようなことで問題となっており、また一部の野生鳥獣におきましては、地域によって個体数減少して存続が個体群として危ぶまれるような事態が生じているということでございます。  いわば各地域における特定鳥獣個体群の推移というものを考えました場合に、著しく増加することによりまして生態系への影響あるいは人とのあつれきが生じている地域個体群、また逆に、何らかの事情によりまして個体群の存続が危うくなるような減少がある個体群、それらにつきまして、長期的なその個体群保護繁殖、安定的な維持を図るためにこの特定鳥獣保護管理計画制度創設してまいりたい。  このことによりまして安定した地域個体群が存続し、それが自然の中で重要な要素となることによりましてその地域全体が豊かな自然の資源を有することになる、かように考えて、いわば自然環境の改善になるというふうに考えて改正法をお願いしているものでございます。
  165. 丸谷佳織

    ○丸谷委員 今御説明していただいた理解の仕方としまして、野生鳥獣保護及び人間と野生鳥獣とのあつれきをなるべく減少させていく、また、自然保護という意味も含めて、その地域を人間の生活また野生鳥獣とともに豊かにしていくんだ、より細かな配慮ができるんだ、そのために改正するという理解でいいんでしょうか。  また、それは各自治体の責任が非常に今回の法律で強くなってくるんだと思うんですけれども、こういった今の目的を行うために環境庁がすることは無理なんでしょうか。自治体の責任においてする方がよろしいと思うのはなぜか、お答えください。
  166. 丸山晴男

    丸山政府委員 いわば、自然環境の中で野生鳥獣が存続するということは、その自然環境の重要な構成要素でありまして、その個体群が安定的に存続するということが大事なことでございます。それが地域全体の自然環境を豊かにするものでございます。  そういったようなことにつきまして、その所属する都道府県、これはいわばその地域実情も詳しく知っているところでございます。そういったような都道府県に、みずからの事務として保護管理計画に取り組んでいただくということを都道府県役割としてお願いしているところでございます。  国の方は、そういったような際のガイドライン、計画のつくり方、それから全国的な野生鳥獣生息状況把握、そういったようなことで、国土全体の野生鳥獣生息状況についてのデータ、それから具体的な特定鳥獣保護管理計画のつくり方、主たる構成要素、そういったようなものをお示しすることによりまして、このような対策を進めてまいるというものでございます。
  167. 丸谷佳織

    ○丸谷委員 多くの議員の皆さんがおっしゃっていたと思うんですけれども、実際には、現在の自治体の経済状況ですとかあるいは自然保護に関します専門員の方の数を見ても、自治体の責任の中で行っていくのは非常に無理があるんじゃないかというような疑問が一点残るのも仕方がないのかなというような現在の状況なんです。  今回の法案を審議するに当たりまして、私の国会事務所の方でも、いろいろな動物愛護団体の皆さんから、ファクスですとか、あるいは直接御意見を聞かせていただきました。きょうも傍聴に多くの方が見えているわけなんです。  この法案に対しまして賛否両論あるのは、もちろんのことだというふうに思います。実際に北海道農林被害が多いわけですから、農林業を営まれている方は、早く法案を通してほしいと。あるいは、動物の視点に立って物を考えると、ふだんは人里に出てこないようなシカですとかクマが、なぜ人里におりてくるようになって農林被害を起こすようになったのか。それは、人間が森林を崩していったからじゃないか。そこに人間の責任を感じて反省をするところからまず始めるのが当然じゃないかといったような声が非常に多いわけなんですけれども、こういった声を聞いて大臣はどのようにお考えになるのか、お伺いします。
  168. 真鍋賢二

    真鍋国務大臣 先生の、北海道の農業関係者の気持ちや、そしてまた市民との対話の中における愛護団体からの陳情、両方の意見が交錯しておるというようなお気持ちを披瀝されたわけでありますけれども、私自身も、当初はそういう考えの上に立って動揺することも多かったわけであります。  しかしながら、今日的な存在からいうと、どうしても調整の必要もあるし、また保護もしなきゃならないということで、今回の法改正鳥獣保護というところに力点を置いてなされておるわけでありまして、決して無謀なものではなくて、現時点における一つ調整であり、よりよき改善であるというふうに理解をしてお願いいたしておるところでございます。
  169. 丸谷佳織

    ○丸谷委員 今回のこの法案の改正に当たりまして、農林業被害をいかに食いとめていくかというのが一つ大きなポイントになってくるのだと思うのですけれども、それに関しましては、個体数調整を図るとともに、生息地保護、また被害防除というのを三位一体として同時に行っていかなければ意味がないのだろうというふうに思っております。  そこで、附帯決議の二の中で、野生鳥獣との共存の森づくりという項目がございますけれども個体数調整というのは各自治体が責任を持って行っていくものであるのに対しまして、この野生鳥獣との共存の森づくりというのはどこが責任を持って行っていくものなのか、お答え願います。
  170. 鹿野久男

    鹿野説明員 今の野生鳥獣の森づくり、一つの事例でございますが、いずれにしろ、野生鳥獣生息地の改善整備をしていくということが今度の法律の計画の中の重要なファクターになってまいります。  そういうことからしますと、今度の計画策定者は都道府県知事でございますので、そういったような野生鳥獣生息地改善事業、これの主体者は基本的には知事がなる。また、森づくりは、例えば環境部局だけでもなかなかできませんし、営林部局だけでもなかなか難しい。知事として各部局の総力を挙げた中でその計画実施していくというのが今回保全事業について知事が計画を立てる意味の一つだと考えております。  私どもは、そういう都道府県の動きに対してできるだけの支援をしてまいりたいと考えております。
  171. 丸谷佳織

    ○丸谷委員 といいますと、例えば複数県にまたがっているような森林も当然あるわけなんですが、こういった場合はそこの県知事が連絡をとり合ってやるというような考えでよろしいのですか。
  172. 鹿野久男

    鹿野説明員 生息地として例えば県境をまたがるような大きなもの、こういうものにつきましては、都道府県知事がそれぞれその森づくりを進めるということもあろうかと思いますが、大抵の場合には、そこは国立公園でありますとか、国定公園でありますとか、もしくは国設の鳥獣保護区でありますとか、私ども環境庁としても直接そこの管理、保全に努力すべき場所であることが多うございます。そういうところの場合には、私ども環境庁も直接その保護、保全に努力してまいりたいと思います。  また、場合によって、そういう国関係地域指定がない場合は、都道府県が主体的に努力していただく、私どもはそれを支援していくということになろうかと思います。
  173. 丸谷佳織

    ○丸谷委員 今お答えいただきました生息地保護に関しまして、複数県にまたがっている場合は余りないであろうということだったのですけれども、実際には、生息地保護のみならず野生動物が複数県にまたがっていくことも考えられるわけですね。動物の認識としまして、ここからここは何々県だからといったような意識はもちろんないわけでございまして、その中で、個体数調整また生息地保護に関しましては各自治体の知事が主体的に行っていくというような方針なんですが、想像しますに非常に難しいであろうと思います。  ですから、これは野生動物それから自然環境という環境庁所管の分野でございますので、かなり強力な後ろ盾をしていただかないと、生息地保護という目的を果たしていく、あるいは適切な個体数調整ということをやっていくのは本当に難しいのじゃないのだろうかというふうに思うのですが、いかがですか。
  174. 鹿野久男

    鹿野説明員 今回計画しております特定鳥獣保護管理計画でございますが、これは県境をまたいでその鳥獣生息する場合、こういったような場合にそれぞれの県が策定することになるわけですが、この場合には関係県と十分調整を図るようにということで、法の中にも関係県と協議することという条文を入れております。  また、実際問題といたしまして、こういう場合には、私ども環境庁といたしましても、その県境を含んだ数県にまたがる当該動物の生息状況、そういったものは、国として当然全国レベルの生息状況の一環として情報提供していくべきだろうと思っております。  また、そういうことで、県境をまたいだところで計画の違いが出てくることのないよう、全体として一つ地域個体群をしっかり守っていくように指導をしてまいりたいと考えております。
  175. 丸谷佳織

    ○丸谷委員 そうであるならば、この法案の中に野生鳥獣に関する最終的な責任は国にあるんだといったようなことを明文化してもいいのじゃないかというふうに思うのです。また、すべきではないかというふうに思うのですが、この点に関してはいかがですか。
  176. 鹿野久男

    鹿野説明員 自然環境の保全につきましては、国土全体の自然環境がどうあるべきかということにつきましては、環境庁の責務でございます。鳥獣を含めます野生生物は自然環境の重要な構成要素でございますので、それが我が国土の中にどのように分布しておるのか、またそれが将来ともどのように保全されていくのか、これはやはり国としてしっかりやっていかなきゃいけない分野だと考えております。
  177. 丸谷佳織

    ○丸谷委員 では、次に農林業被害についてお伺いをしたいと思いますけれども、参議院の参考人招致の中では算定方法が確立されていないといったような声もあったのですけれども、一体どこまでを被害とみなしていくのか、難しいと思いますが、現在どのように把握されているか、お伺いします。
  178. 大森昭彦

    ○大森説明員 鳥獣によります農業被害につきまして、その把握方法でございますが、現在におきましては、都道府県を通じまして市町村の協力を得てその実態把握しておるというふうな状況になっております。  その被害状況の通報を受けました場合には、これはおおむね市町村の職員の方に現場に出向いていただくような形になるわけでございまして、その被害の態様というのは非常にさまざまな形があるわけでございます。  実際にその作物が根こそぎやられてしまいますと、これはその後の回復が無理でございますが、例えばイノシシが穀物の上に寝転がるといいますか、そういう形で倒れる、こういう場合には多少その後の回復というふうな状況もあるわけでございます。あるいは果樹の場合のシカですとかあるいは鳥類によります被害、こういうものにつきましても非常に部分的に発生するケースがございます。  果樹の若芽が食べられるというふうな場合、これは残ったものは、その後災害等を受けずにいきますと、ちゃんと果実になる場合もあるわけでございますし、それから熟したものが被害を受けた場合、これについても、部分的についばまれたようなもの、これは商品価値がございませんが、その場合でも、全体がそういう形で被害を受けるということは、必ずしも一般的な形態としてはそういうケースばかりでもないということはございます。  したがいまして、その判断の仕方というのは非常に難しい面があるわけでございますが、一般的には何らかの被害を受けた場合にそういうものを被害面積としてカウントしていただく。したがって、その被害程度、つまりそれが何割程度被害なのか、あるいはその後の生育期間でどれくらいの回復が可能なのかというふうなことにつきましては、これは最終的にはその収穫期を待って判断する必要があるわけでございます。  ただし、これは実際には、そういう被害地にたびたび出向いて最終段階まで確認するということのマンパワー的な問題等もまたございまして、その辺はかなり苦慮している状況にございます。  そういう点で、なかなか最終的な成果物を得た段階での被害額の算定というところまでは、現在難しい状況がございます。そういう点で、従来、被害面積という概念でとらえておりまして、これは必ずしも収穫皆無の状況だけではございません、部分的なものも含まれておる、そういう状況でございます。
  179. 丸谷佳織

    ○丸谷委員 把握するのは非常に難しいというお話だったのですけれども、農業に関しましては、やはり種をまいてから収穫するのに一年、あるいは林業ですともう何十年かけて育てていくわけですから、それが若芽のうちに食べられてしまったときの実際に従事されている方のお気持ちを察しますと、これは難しくありましても、実際に補償制度の確立というのを急いでいかなければいけないなというふうに感じます。  また、北海道農林業被害の額は平成八年度で年間約五十億円というふうに言われているわけなのですけれども、実際に北海道の場合は、道東にエゾシカが十二万頭と推定されています。これは十二万頭プラスマイナス四・六万頭という数もついているわけなのですけれども農林業被害が出ましてから、十二万頭に対して、現在北海道はどのぐらいの数を捕獲しているのかをお伺いします。
  180. 鹿野久男

    鹿野説明員 平成九年度でございますが、平成九年度中に道東地域におきまして捕獲したエゾシカの総数は、狩猟有害鳥獣駆除合わせて約四万七千頭と聞いております。
  181. 丸谷佳織

    ○丸谷委員 約四万七千頭の捕獲、今のは平成九年度の数ですよね。平成八年度が約四万六千頭ですか。ですから、年々捕獲数はふえているわけなのですけれども、実際には農林業被害金額は減らずに、こちらの方も比例してふえているという状況です。この捕獲数がふえているのだけれども農林被害額もふえているという現状をどのように分析されていますか。
  182. 鹿野久男

    鹿野説明員 道東地域におきますエゾシカ捕獲数、先生指摘のとおり、平成七年は四万五百頭、平成八年が四万六千六百、平成九年が四万七千と捕獲数はかなりのオーダーでございますが、被害としては今のところ依然として減っておりません。やはりこれは今のところ、とっても総数の減にはまだなっていないのではなかろうかというように考えておるところでございます。
  183. 丸谷佳織

    ○丸谷委員 この法案の御説明をいただくときに、北海道ではここ数年をめどにしまして六万頭まで持っていく。現在では、年間約六万頭駆除及び狩猟するのだというふうな説明をいただいたと思うのですけれども、現在でも約六万頭捕獲をしているわけですよね。それであっても農林業被害が減らないわけですから、この御説明いただいた六万頭では農林業被害というのは防げないのではないか。実際にはもっと多くの頭数になってくるのではないかと思うのですけれども、この点はいかがですか。
  184. 鹿野久男

    鹿野説明員 北海道が今計画しております保護管理計画では、平成十年の三月に策定なのですが、三年間で今十二万頭のエゾシカを六万頭のレベルにしたいというのが計画でございます。現在かなりの数を捕獲しておるのですが、全体として、個体数が六万頭になってきた、要するに減ってきたという報告はまだ受けておりません。  北海道では、当面の目標六万頭の時点で、全体としてまた被害程度がどうであるのか、そういう点の見直しをしたいというように聞いております。
  185. 丸谷佳織

    ○丸谷委員 北海道は、このエゾシカの問題に関しまして、農林被害額も非常に大きいものですから、非常に北海道自体が積極的に取り組んでおりまして、平成八年の十月には野生動物保護管理指針というものを策定しまして、野生動物の保護管理に関する基本的な考えを示した上で、主要な種ごとの保護管理計画を立てております。  そして、平成九年の六月にはエゾシカ協議会を設置しまして、エゾシカの総合対策を推進しているわけなのですけれども、その中で、現在のエゾシカ頭数十二万頭を一〇〇という数字にしまして、管理基準を三段階に分けております。その中で、許容下限水準というのが六千頭、そして大発生水準、これは農林業被害が及ぶであろうという個体数なのですが、これが六万頭、そして目標水準を三万頭としているわけでございまして、実際には三年間で六万頭に持っていくという話なのです。目標水準が三万頭であるならば、現在の十二万頭からやはりかなりの頭数捕獲につながっていくのだろう。  この個体調整というのは、先ほども午前中の審議の中で、知床の方のことしの大雪で突然シカが大量死したというような自然環境も含めまして、目標数、そして実際に何頭捕獲したのか、あるいは気象状況がどうなのか、このことを常に綿密に考えながら進めていかなければいけないなというふうに思っておりますし、これは北海道の問題でもございますので、この点、自分でも十分に注意してまいりたいというふうに思っております。  そこで、北海道から国の方に、本法律案に関する要望が昨年の七月に提出されているわけなのです。それは保護管理対策についてと、そして農林業被害防止対策についてという項目がございますが、きょうは、農林業被害防止対策の項目について実際に国ではどうこたえてきたのか、お伺いをしたいと思います。  一つ目が、農業被害防止施設整備予算の確保をしてほしい。それから二点目が、被害農家への救済制度創設をしてほしい。そして三点目が、シカ肉処理加工施設の整備対策への支援をしてほしいということなのですが、これは実際に今どうなっていますか。
  186. 大森昭彦

    ○大森説明員 農業被害防止施設整備予算の確保の件でございます。  これにつきましては、私ども、各種の補助事業、これは総合的な補助事業のメニューの中に、被害防止策あるいは防鳥ネットの助成というふうなメニューを持っておりまして、そういうものを通じて防止対策を講じておるわけでございます。  実際には、この予算の枠というのは非常に基盤整備等を伴う全体額としては大きな予算でございますが、実際この農業被害防止施設の整備に執行されました予算は、平成九年度におきまして全国で十一億円強でございます。こういう整備はメニュー事業として実施しておりますので、地域実態に即しまして、緊要度の高いものについては、適切な被害実態把握を通じまして、できるだけ助成の対象にするようにしていきたいというふうに考えております。  それから、二点目の被害救済措置の点でございますが、これにつきましては、環境庁中心関係省庁協力しながら今後検討を進めるというふうな形になってございますので、私どももその検討の中に入りまして、鋭意検討に参加してまいりたいというふうに考えております。
  187. 城知晴

    ○城説明員 シカ肉の処理加工施設の整備に関する問題でございますが、現在、シカ肉につきましては、御案内のように、極めて嗜好性の強い消費実態にあるのではないかと思っておりますし、また年間捕獲頭数十万頭から見ますと、シカ肉としての供給可能量は一千トン強、この程度でなかろうかと思っております。  したがいまして、現在農林水産省といたしましては、シカ肉の処理加工施設そのもの、それだけを目的とする補助事業は仕組んでおりませんが、別途、牛肉、豚肉の処理加工を目的といたします産地食肉センターの整備を行っております。この産地食肉センターにおきまして、知事さんから食肉処理業者としての営業許可を受ければ、シカ肉の処理加工も可能であるということでございまして、現に北海道の二十三の屠畜場のうち二十一がそのような許可を受けております。  また、特用家畜全体の活用化を図っていく、あるいは地域社会全体の活性化を図っていく諸事業の中におきまして、シカ肉の処理加工施設につきましても御要望があれば実施可能なように措置いたしておる、このような状況でございます。
  188. 丸谷佳織

    ○丸谷委員 ぜひ、北海道に国としても強力な支援をしていただきたいというふうに思っているわけなんですけれども、三番目のシカ肉、今は一千トン強の商売という話になるわけなんです。ただ、これを始めてしまいますと、非常に悩ましい問題がございまして、その目標額のためにシカを今度は射殺していくといったような面もございますので、これは慎重にやっていかなければいけないだろうなというふうに私自身も思っております。  次に一点、狩猟有害駆除についてお伺いしたいのですけれども、実際に狩猟実績の報告書を見せていただきますと、この中の約三八・三%の報告書が狩猟した野生動物の種類と捕獲数のみの報告になっておりまして、捕獲した位置が入ってございません。  附帯決議の中でモニタリングの強化という項目があったというふうに思うのですけれども、実際に各自治体が責任を持ってモニタリングをしていく中で、この捕獲した位置というのもぜひ狩猟そして有害駆除ともに明記するようにしていかなければいけないんじゃないかと思いますが、いかがですか。
  189. 鹿野久男

    鹿野説明員 鳥獣生息状況把握する上で、実際に狩猟した場所もしくは目撃した場所、そういったものをデータの中に積み重ねていくということは非常に大切なことだと思っております。  そういう観点からしますと、そういう情報は、狩猟だけでなくて当然有害駆除をしたものに対しても言えようかと思いますので、それらについてもそういう情報は全体として集めて活用していきたいと考えております。
  190. 丸谷佳織

    ○丸谷委員 なるべく細かい報告書、位置までしっかりと報告するように指導をしていっていただきたいというふうに思います。  では次に、鳥獣保護制度についてお伺いしたいと思います。  実際に、現在、鳥獣保護制度はどこの所管で、全国に何人いるのか、この点をお伺いします。
  191. 鹿野久男

    鹿野説明員 鳥獣保護員は、現在、全国で約三千二百人の方が委嘱されております。この委嘱は都道府県知事によって委嘱されることになっております。  鳥獣保護員は、鳥獣生息状況ですとか狩猟の適正化ですとか、または鳥獣保護区、休猟区等々の管理、さらには鳥獣保護の思想普及といったようなことに携わっていただいております。
  192. 丸谷佳織

    ○丸谷委員 では、附帯決議二項の中の、鳥獣保護繁殖等を担当する人材確保、資質の向上を図るという範囲の中に、この鳥獣保護員の方は入るのでしょうか。
  193. 鹿野久男

    鹿野説明員 参議院のときにいただいたその附帯決議は、直接行政の担当者、研究者、それからそういったような鳥獣保護に携わる鳥獣保護員を初めとするもろもろの方々、こういう人たちがみんなで力を合わせて頑張れという趣旨だと思っております。
  194. 丸谷佳織

    ○丸谷委員 現在、全国に三千二百人という鳥獣保護員の方が、少ない数だとは思うのですけれども、実際に地元の森林ですとか山を守るために働いていらっしゃるわけです。非常に、職務権限等まだまだ狭いものだと思います。狩猟期間には週に二日、実際に働かれる、山を回られるということ。狩猟期間以外は月に二回という見回りになっておりますので、こちらの職務権限等をぜひ広げていただいて、もっと実効力のある鳥獣保護制度に変えていただきたいというふうにも思います。  先ほど西議員の方から環境レンジャーの創設という話もございましたけれども、実際には、道東の方でも、エゾシカ狩猟した後、死骸の放置というのが非常に多く見られるわけです。土に埋めていますというお話も聞くわけなんですけれども、実際には、北海道のあの雪深い、何メートルもある雪を掘ってそして七十キロ近いエゾシカを地下深く埋めるというのは、これはもうどう考えてもできない話でございまして、どうしても冬の期間、狩猟期間はそのまま放置する、商売になるところだけとってしまって、そしてそのまま死骸を放置するという現状がございます。そういったところを管理していくマンパワーというのが今度必要になってくるんじゃないか、このマンパワーをふやしていかなければいけないんじゃないかというふうにも思います。  まず一点目の質問は、放置されている死骸、これはだれの責任において処理をしていくのか、お伺いします。
  195. 鹿野久男

    鹿野説明員 特にエゾシカの場合に、死体の処理が問題になっております。これは、現実に、非常に重いためになかなか運搬も大変だというようなことがあろうかと思います。たしか、北海道調査によりますと、七割の方々は何らかの形で処理しているのですが、三割の方々がどうも現場で処理しているというような状況らしゅうございます。  やはりこういったことが問題になってきますが、要するに狩猟でとった場合には基本的には狩猟者がその死体の処理についても責任を持つべきものと考えております。また、有害駆除等の場合には、有害駆除等の実行主体は往々にして市町村もしくは農協等々の団体でございます、こういった場合には、当然有害駆除の主体者がその処理に基本的には責任を持つべきものと考えております。
  196. 丸谷佳織

    ○丸谷委員 もし適切に死骸が処理されなかった場合、何か罰則等はあるんでしょうか。
  197. 鹿野久男

    鹿野説明員 現在のところ、罰則はございません。
  198. 丸谷佳織

    ○丸谷委員 では、罰則を設けるか、あるいは狩猟者のモラルの向上というところが附帯決議の中にもあったのですけれども、三割の方かもしれないのですけれども、本当にここを充実していかなければこの問題はなくなっていきませんので、どうか積極的に取り組んでいただきたいと思います。  では、時間もなくなってまいりましたので、最後の質問をさせていただきたいと思うのです。  国立公園においては、今、環境レンジャーとも言える管理者の方の現状はどうなのかなというふうに気になります。国立公園管理官の数とその業務内容をお伺いします。
  199. 鹿野久男

    鹿野説明員 国立公園の管理官の数についてのお尋ねでございます。  環境庁では、全国を十一のブロックに分けて、それぞれ管理業務を行っております。その十一のブロックにブロックの事務所がございまして、さらにそのブランチとして全国で五十五の国立公園管理官事務所という事務所を設置しております。  現在、その国立公園・野生生物事務所及びその出先の国立公園管理官事務所、それらに勤務する人数は、総勢で百七十二名でございます。  業務としまして、国立公園の保護及び利用、それから、シマフクロウですとかイリオモテヤマネコなど絶滅の危機に瀕しております野生生物の保護増殖、そういった業務をいたしております。
  200. 丸谷佳織

    ○丸谷委員 各国の国立公園の比較で考えてみますと、カナダには国立公園が三十四カ所、管理人数が四千人で、一人当たりの管理面積というのが四千五百ヘクタール、アメリカの方では国立公園が四十八カ所ございまして、管理人数が九千五百人で、一人当たりの管理面積が約二千ヘクタール、そして、我が国日本は二十八カ所の国立公園がございまして、管理官数が今百七十二名というお答えでしたので、一人当たりが約一万一千九百ヘクタールと、一人当たりの管理面積にかなりの違いが出てきております。もちろん、アメリカ、カナダ、日本というと、国立公園の規模の違いというのはございますけれども管理者数が欧米に比べて圧倒的に不足しているのではないかというふうに言うことができる数字だと思います。  鳥獣保護に関しますこの法律、個体数調整ということで、実際には狩猟あるいは有害駆除を動物に対してするわけですから、私たち人間の方でも、それなりの人手をかけて、また手当てをして、自然環境また野生鳥獣等を守っていく意味でも、自然保護管理官の増員また環境レンジャーの創設というのを心から望んでいるわけなのですが、大臣、いかがでしょうか。
  201. 真鍋賢二

    真鍋国務大臣 御意見のとおりでございまして、そのような体制で頑張っていこうと思います。
  202. 丸谷佳織

    ○丸谷委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。
  203. 北橋健治

    北橋委員長 藤木洋子さん。
  204. 藤木洋子

    ○藤木委員 日本共産党の藤木洋子でございます。よろしくお願いをいたします。  まず最初に長官にお伺いをさせていただきたいと思っておりますけれども、私は先ごろ、兵庫県の但馬地方の野生シカの適正管理状況調査してまいりました。兵庫県の野生シカ適正管理は、推定生息数で一万三千頭を一万頭以下にすることを当面の目標にしております。しかし、当面の適正生息密度の目標というのは一平方キロ当たり二頭としておりますけれども個体群の維持のための保護区の設定はございません。対策個体数調整被害防除対策だけでございまして、生息地環境保全の視点は全く不十分なものでございます。兵庫県の報告書では、植生など生息環境調査が十分とは言えないということを認めながら、保護樹林を多く残すなどの工夫が必要だとしております。  そこで、科学的、計画的な保護管理というのであれば、季節移動、生息地利用、環境収容力の調査など生息地環境の保全に関する調査研究をまず進めるべきではないかというふうに思うのですが、長官、いかがでございますか。
  205. 真鍋賢二

    真鍋国務大臣 先生のおっしゃるとおりでございます。
  206. 藤木洋子

    ○藤木委員 確かに、そのとおりにしていただきたいというふうに思うわけですね。  実は、北海道自然環境部の梶野生動物科長も、今北海道では可猟、休猟地の設定の検討をしておりまして、白糠町でのエゾシカの分散などとともに、生息地管理それから環境収容力などを研究しているところだ、こう述べておられました。それは、生息地管理をターゲットに入れているけれども具体的に進んでいないからだ、こういうふうに言っておられるわけですね。  そこでまた、野生動物の科学的、計画的な保護管理という場合、予算、人員、体制などが不可欠でございます。現在の地方自治体状況では、権限をおろされましても、ほとんど対応できないのが実態でございます。環境庁調査によりますと、十五の県で行政の野生動物の調査研究機関が設置されておりません。また、たとえ設置されておりましても、哺乳類や鳥類の専門家が一人ないしは二人しかいないというのが現状であります。  都道府県の担当者も二、三年で配置転換になりまして、多くの市町村では保健所が担当するなど、野生動物保護専門の担当者がいないというありさまです。昨年の調査でお会いをいたしました北海道斜里町の自然保護係長の山中さんは、今のボランティア的体制で野生動物の保護管理は不可能だと指摘しておられます。大学、研究機関も含めまして、野生動物保護専門家をそろえていくべきだと考えております。  各府県に鳥獣に関する専門職員を置いて、研究者の協力関係のもとに鳥獣保護施策を行うことであるとか、担当職員の研修制度を設けるなどといったことを、年次計画を立てて措置を行うことが必要だと思うのですが、環境庁、いかがですか。
  207. 丸山晴男

    丸山政府委員 各都道府県におきます保護管理計画策定の推進の中で、専門研究機関もふえ、また、専任の職員また専門的な職員もふえておりまして、それらの方々が、大学などの専門的な研究機関と連携を図りながら専門的な事業に従事をしております。  今回の特定鳥獣保護管理計画制度の導入を機会に、このような経過を踏まえながら、各都道府県における科学的で計画的な保護管理施策を進めるための人的基盤の整備を進めていく必要があると考えておりまして、野生鳥獣保護管理技術者育成事業といったような事業を私どもやっておりますが、これらを通じて、都道府県人材育成の適切な支援助言を行ってまいりたいと考えております。
  208. 藤木洋子

    ○藤木委員 これからの課題になっているわけですよね。私は、やはり専門行政官が適正に位置づけられることは不可欠だというふうに思います。  さらに、兵庫県内を調査したときに県から伺った話ですけれども、今、兵庫県ではシカクマ保護計画などをつくっておりまして、狩猟許可も県の事務所が持っております。それは、シカクマが広域で生息していて、対応する体制専門家もいないわけですから、市町村へはおろせない、こう言っておりました。長野県内の調査で、捕獲をしたツキノワグマに発信器をつけて奥山放獣したところ、八平方キロメートルから百三十七平方キロメートル、こういう行動範囲になっているそうであります。  そこで、野生鳥獣は広域に移動しているわけですから、財政的、人員的、調査能力的に困難な地方自治体捕獲等の権限がおろされてしまいますと、狩猟者つまりハンターや農林業被害の声に押されて狩猟や駆除が行われることになります。つまり、国がツキノワグマやニホンザルなどの実態把握もしないうちに地域個体群が危機に陥る、そういうおそれが出てくるのではないでしょうか。環境庁、どうですか。
  209. 鹿野久男

    鹿野説明員 現行の鳥獣保護法におきましても、実は、有害駆除の許可は、機関委任でございますが、都道府県知事の権限でなされております。  今回の計画につきましては、例えば有害駆除等々につきましても、全体として、生息地調査それから関係する研究者それから被害を受ける農家の方々、そういった人たちと一緒になって、合意の上、目標を決めて、それに基づいて計画的に保護もしくは駆除をしていくという制度でございまして、むしろ、そういう計画制度が、今の都道府県の担当者、実は駆除許可に対していつも担当者は板挟みになっているのだと思いますが、そういう担当者のお悩みを救ってあげるということになろうかと思っております。  それから、ツキノワグマですとかニホンザルについて、国でもっとしっかり調査をするようにという御指摘でございます。  私ども、国土全体につきましてツキノワグマがどのように生息しておるのか、また、ニホンザルにつきましてもどういった地域生息しておるのか、また、それは調査年においてどういう盛衰をしておるのかといったようなことは、これまでも自然環境保全基礎調査等々でいろいろ調査をいたしているところでございます。  今後とも、そういったような調査を私どもはしっかり続けながら、都道府県の個別地域個体群についての計画に対して支援してまいりたいと考えております。
  210. 藤木洋子

    ○藤木委員 今の法制度のもとでというふうに言われましたけれども、今度は地方分権と同時にこれはおりていくわけですから、都道府県にとどまらないということは火を見るよりも明らかです。調査のことについては後にも述べます。  そこで、ツキノワグマやニホンザルというのは、国際自然保護連合のレッドリストでは危急種とされておりまして、国際的にも貴重な種となっているわけです。ところが、国内ではいずれも有害鳥獣駆除の対象とされている状態です。  ツキノワグマは、全国で推定一万頭とされている中で年間一千頭以上も駆除されております。また、ニホンザルについても、推定十万頭のうち年間九千頭が駆除されております。さらに、絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約、ワシントン条約でございますけれども、この附属書Iにツキノワグマが掲載されているわけです。この附属書Iに掲載されている種というのは、絶滅のおそれのある種で商業目的のための国際取引が禁止されております。ところが、この附属書Iの対象種であるツキノワグマが、有害鳥獣として駆除されるだけではなくて熊の胆などで国内的な取引が行われているわけです。  これらは全く矛盾したことでありまして、日本の野生生物保護の姿勢が厳しく問われるものであります。日本は国際的な水準に合わせてツキノワグマやニホンザルを保護すべきだと思うのですけれども、これは国際問題でもありますので、環境庁長官にぜひお答えをいただきたいと思います。
  211. 真鍋賢二

    真鍋国務大臣 先生指摘のとおり、ツキノワグマは国際取引が禁止され、またニホンザルは国際取引が規制されているわけであります。一方、国内的に見れば、両種とも全国的に見ると絶滅のおそれがある状態に至っていないが一部では危険な状態にある個体群も生じているわけであります。  このような状況にかんがみ、両種とも現状では個体の国内取引の規制は行っていないが、ツキノワグマについては一部の地域狩猟を禁止する等の保護対策を講じているところであり、今後とも国内での必要な保護対策を講じていかなければならないと考えております。
  212. 藤木洋子

    ○藤木委員 シェラ・クラブ国際副会長のミシェル・ペロー氏からも皆さんのところにもいろいろと御意見が来ていようかと思いますけれども、この法案に対する憂慮を表明されまして、諸外国における野生生物管理の成功例について調べることをぜひやってもらいたいというふうに述べておられるところです。  野生鳥獣保護管理としては、九三年三月に公表されました特定地域野生鳥獣保護管理マニュアル策定調査報告書というのがございます。これは、いわゆるニホンジカの保護管理マニュアルになっております。そして、九五年には西中国地域ツキノワグマ保護管理指針が出ております。しかし、そのほかのツキノワグマやニホンザルなどの保護管理マニュアルは作成されておりません。  国として、対象種ごとの適切なマニュアル作成というのがどうしても必要だというふうに私は思いますけれども、それを作成すべきではないでしょうか。
  213. 鹿野久男

    鹿野説明員 計画策定のためのガイドラインにつきましては、種ごとにつくる、これは先生の御指摘のとおりでございまして、種によって対応が全然違うわけでございますので、私ども種ごとに作成してまいりたいと考えております。  御指摘ツキノワグマやニホンザルの保護管理マニュアルにつきましても、そういう中で検討してまいりたいと考えております。
  214. 藤木洋子

    ○藤木委員 全くこれからの問題であって、今まで調べてこられたものというのは、分布図などございますけれども保護管理マニュアルではないわけですね。  それでは具体的な問題で伺いたいと思うのですが、ニホンザルは、各地域個体群の分断や孤立化が進行しておりまして、特に東北地方での分布の孤立化は地域個体群間の交流を完全に絶つという状態にまで至っております。また、比較的広い分布域が確認されております西日本地域でも局地的な絶滅が起こっていると伺っております。  私は、先日、北近畿地方中心西日本地域で活動しているニホンザルの専門家の案内で現地を調査してまいりました。北近畿地方では市町村も農家も猿害対策に積極性が見られませんで府県の事業が少ないわけですね。そこで、猿害発生地域が隣接する市町村だけではなくて複数の府県にまたがることなどから、正確な状況把握地域基本戦略の策定が必要だとその専門家から伺いました。  ニホンザルを保護するためには科学的データが不可欠だと思うわけですけれども西日本地域のニホンザルの正確な状況把握を早急に進めるべきではないでしょうか。環境庁どうですか。
  215. 鹿野久男

    鹿野説明員 先生指摘のとおり、ニホンザルについてはその分布状況また群れの行動等々でまだ不明の点もございます。私ども自然環境保全基礎調査全国状況把握しているということでございますが、ニホンザルにつきましては、また調査年に近々加えて、ニホンザルの全体としての分布状況、それぞれの個体群の範囲、そういったものをしっかり把握してまいりたいと考えております。
  216. 藤木洋子

    ○藤木委員 確かにそのとおりです。直近のものが九三年の分布調査ということでございまして、これは現在正確な状況把握というには全く不十分でございます。  その専門家の方から野生猿管理を行う市町村みずからが一、二年の年月をかけて取り組む猿害実態調査の例というのを紹介していただきました。  まず猿の行動域の調査、記録調査捕獲調査、駆除調査、防除施設の効果測定、そして追跡調査などを行いまして猿害実態解明調査報告書にまとめ、地域別野生猿管理基本戦略というのを策定するということにしておられます。そしてこれに基づいて野猿管理生息地管理、農地管理を行い、それを効果測定、つまりモニタリングをして管理基本戦略にフィードバックしていくという方法をとっております。この専門家のもとで対策の手引書がつくられまして、ある北近畿地方の自治体でこれまでの有害駆除一辺倒から転換をした対策実施されているわけです。  ですから、正確な状況把握もしないで保護管理計画個体数管理だけを先行させるというやり方は、ニホンザルの保護にはならないだろうというふうに思いますが、環境庁どうですか。
  217. 鹿野久男

    鹿野説明員 先生指摘のとおり、確かにニホンザルにつきましては非常に被害も単純ではございませんですし、また地域個体群さらにその中のそれぞれの群れの行動域、そういったようなものもいろいろ調べなければなりません。  また、特に害をなす猿の群れにつきましても、なぜそういうことを学習してしまったのか、またその学習をやめさせるためにはただ単に駆除すれば覚えた害をなすような行為をやめるのか、それとも懲らしめた方が実は猿側も言うことを聞くのか、そういったようなことで猿の対策についてはまだ私どもとしても研究すべきことは残っていると思っております。  そういったようなことをしっかり把握した上で、そういうものをガイドラインの中に生かしていきたいと考えております。
  218. 藤木洋子

    ○藤木委員 そこまでおわかりになっているのに随分取り組みがおくれているということを指摘しておきたいと思います。  そこの自治体では野生猿管理事業を住民の理解と協力のもとに実際に行っているわけですよ。この地域の野生猿の地域個体群生態を十分調査いたしまして計画を立て、この地域に見合った事業というの実施しております。地域個体群状況把握も不十分なままで上から保護管理計画を立てるというのではなくて、住民の理解と協力のもとに、地域個体群がまたがる末端行政から計画対策を積み上げることが大切です。  ニホンザルを保護するためにはその地域個体群に合った対策が不可欠だと思いますけれども、複数の市町村や府県にまたがる地域個体群地域個体群ごとに保全すべきではないでしょうか。環境庁、どうですか。
  219. 鹿野久男

    鹿野説明員 野生鳥獣保護管理計画策定に当たりましては、地域個体群ごとに作成するというのが基本だと思っております。ただし、たまたま県境をまたがってしまうというような場合がございます。そういった場合には、関係する県で調整をするようにという協議事項を入れているところでございます。  私ども環境庁といたしましても、そういう複数県にまたがって地域個体群の存在があるような場合、管理計画策定するようなときには、よくよく調整をとって、全体として一つ地域個体群保護管理に当たれるよう指導してまいりたいと考えております。
  220. 藤木洋子

    ○藤木委員 そこで、具体的にツキノワグマの問題で伺いたいと思うのですけれども、兵庫県内のツキノワグマ生息状況は、東中国地域系で七十五頭から八十五頭、近畿北部地域系で三頭ないしは七頭と、いわば環境庁が示している危機的地域個体群あるいは絶滅危惧地域個体群に当たっているわけです。  そこで、兵庫県のツキノワグマ保護管理計画では、捕獲個体管理生息環境管理被害防除対策などを掲げております。しかし、隣接府県で、近畿北部地域の京都府だとか東中国地域の鳥取県が計画をつくっておりませんので、十分な対策がとりにくくなっているわけです。  環境庁東中国地域や近畿北部地域保護管理指針をつくってもらうことが早急に求められていると思います。対象種ごとに枠組みの大きさを変化させて、関係する都道府県が共同の保護計画の立案を実施するシステムを義務づけておく、その必要があるのではないでしょうか。いかがですか。
  221. 鹿野久男

    鹿野説明員 先ほども申し上げましたが、保護管理計画中心は、やはりそれぞれの地域個体群ごとに考えるというのが基本でございます。それが複数の都道府県にまたがっておった場合には、できるだけ共同してその当該地域個体群の永続的な保存を図るというのが今回の法律の趣旨でございます。  具体的に今、東中国地域の例が出ました。ここも数県にまたがってツキノワグマ分布する地域でございます。要するに、ここの保護計画策定に当たりましても、私どもとしましては、それぞれの担当県ができるだけ一つ地域個体群を守るという方向で、できるだけ同じような時期に保護管理計画策定していただきたいと考えているところでございます。私どももそのように各県を指導してまいりたいと考えております。
  222. 藤木洋子

    ○藤木委員 先ほど来、今度の法案が関係都道府県間で必要な調整実施することとなっている点についてお述べになっていらっしゃると思うんです。しかし、調整は専らその都道府県任せになっているわけですね。私は、やはり国立公園・野生生物事務所などを活用して調整システムをつくるべきだというふうに思うわけです。  環境庁西中国地域ツキノワグマ保護管理指針では、有害駆除は、できるだけ捕殺での駆除を避けて捕獲後に放獣する方法も検討する。また、イノシシのくくりわなでのツキノワグマの錯誤捕獲防止するため、主要生息地でくくりわな架設禁止地域の設定を検討するというふうにしております。兵庫県のツキノワグマ保護管理計画でも、くくりわなを使用してクマ捕獲することは法律で禁止されております。  ところが、イノシシやシカを目的としたくくりわなにツキノワグマが誤ってかかることも考えられるとして、今後、くくりわなを設置する狩猟者に対しては、設置場所であるとか設置方法等について指導を強化し、くくりわなによる誤捕獲防止を図るとしております。  しかし、兵庫県内では、九六年に有害駆除をいたしました十頭のうち、くくりわなにかかった手負いのツキノワグマが五頭ございます。九八年には、十四頭中二頭となっております。クマ生息地では、くくりわなそのものを使用禁止すべきだと思うのですが、その点はいかがですか。
  223. 鹿野久男

    鹿野説明員 くくりわなではクマはとってはいけないということになっておるわけでございまして、イノシシ捕獲のためのくくりわなが誤ってクマをとってしまうというあってはいけない事例が幾つか出ているわけでございます。そういう点で、例えば広島県だったと思いますが、クマを守るために自主的にくくりわなの規制をしているという事例もございます。  私どもとしましては、特に今回策定します保護管理計画、全体として、そういうことを地域の合意の中で計画の内容として新しく規制を強化する、そういう方向もこの計画の中で考えていいと考えております。
  224. 藤木洋子

    ○藤木委員 地域任せにすることがないようにしていかなければ、これは本当に実効ある措置にはならないと思いますね。  次に、鳥獣保護員あるいはハンター問題について伺いたいと思います。  この法案では、散弾銃、ライフル銃などの装薬銃の乙種狩猟免許状を所有する者が、丙種免許状は所有しなくても空気銃が撃てる、それから圧縮ガス銃を扱えるというようになるわけです。なぜそうするかといいますと、環境庁野生鳥獣保護管理の担い手としての狩猟者減少防止を図るための措置だというふうに述べておられます。しかし、狩猟免許制度の緩和というのは野生動物の保護管理にとってプラスになることはありません。むしろ、質の低いハンターの増加につながるおそれがあると私は危惧しております。  結局、この緩和策で、ハンターをふやすというようなことで、野生鳥獣保護管理を推進するということは増加した鳥獣をいかに減らすか、そのために改正すると言われても仕方がないのではないでしょうか。いかがでしょうか。
  225. 鹿野久男

    鹿野説明員 今回、乙種狩猟免許、いわゆる装薬銃、散弾銃とかライフル銃でございますが、こういう免許所持者に対して丙種の狩猟免許、空気銃でございます、空気銃の免許を所有しなくても空気銃を撃てるように、要するに散弾銃、ライフル銃の狩猟免許を持った人は空気銃の免許を持たなくてもそれを扱うことができるという改正でございます。これは主として、狩猟者の免許取得の負担の軽減、それから狩猟者減少防止という二つを考えております。  実際には、空気銃は、かなり威力的な問題がありまして、一番使われておりますのはヒヨドリですとかスズメ、ムクドリといったような鳥類の果樹園被害等に対する追い払い、この場面で実は一番使われているものでございまして、こういったような使い方がしやすくなるようにというふうに考えて今回の改正にしたものでございます。     〔委員長退席、佐藤(謙)委員長代理着席〕
  226. 藤木洋子

    ○藤木委員 被害実態や予防予測駆除の助言をする鳥獣保護員というのがほとんど狩猟者やその関係者で占められております。兵庫県でも、四十八人おられますけれども、すべてハンターだと伺いました。  また、農水省の鳥獣対策推進省内連絡会議の資料を拝見いたしましても、三十五府県で有害鳥獣駆除従事者がすべて猟友会狩猟ボランティアで、これに慣例委託をして駆除が行われているわけです。  鳥獣保護とは相反する狩猟団体に狩猟事務や有害鳥獣駆除体制などを委託するというその依存体制は見直すべきだと思いますが、どうでしょうか。
  227. 鹿野久男

    鹿野説明員 鳥獣保護員の任務といたしましては、いわゆる鳥獣生息状況調査ですとか、保護全体に対する特に巡視的な面も持っておるわけでございますが、何といっても、実は一番大きな活躍の場は、狩猟そのもののマナーの指導ですとか取り締まり、そういうものに当たっていただいているわけでございます。  そういうことからして、狩猟の場、それから狩猟鳥獣に関する知見、そういったものがどうしても必要になってまいりますので、現実問題として狩猟免許保持者がたくさん任命されるというのは御理解いただきたいと思います。  また、有害駆除実施等につきましては、御指摘のとおり、各市町村もしくは農協等々は、地元の猟友会に委託して実施しておるというのが実態でございます。  ただこれも、今、例えば捕獲技術、そういったものを担う人がほかにいるのかという問題がございます。そういう中で、狩猟免許を持った猟友会の方々等へいろいろの御協力をお願いしているところでございます。  環境庁といたしましては、その保護管理の担い手として狩猟者が一定の役割を果たしていくということは今後とも必要だと考えております。ただ、今後、有害鳥獣駆除ですとか計画制度に基づきます個体数調整、そういったものが行政の適切なコントロールのもとで実施されるよう指導監督に努めてまいりたいと考えております。
  228. 藤木洋子

    ○藤木委員 非常に安易ですよね。  私は、公的な任務である有害鳥獣駆除が私的娯楽である狩猟に依存している、そのこと自体が問題だと申し上げているわけです。狩猟者依存ということではなくて、欧米でも行われていますように、ワイルドライフ・マネジメントの体制で置かれているような狩猟管理官のような専門家保護に当たるべきだというふうに思います。  次に、権限移譲の問題で伺います。  地方自治体への権限移譲の問題ですけれども北海道のエゾシカ保護管理計画で、個体数管理を実行するために、北海道では、猟期の期間や可猟区の面積調整するなど間接的な個体数管理実施してまいりました。しかし、狩猟者が雌をとりたがらなかったり、あるいは放置した残滓をえさにしている猛禽類が鉛中毒死をするなどの当初とても予測できなかったような事態が生じて、計画どおりには進んでおりません。  そこで、一気に個体数調整ができないということは、結局、頭数規制が道にゆだねられていないからだ、直接行えないことが最大の問題だというふうに考えているわけですけれども、これにこたえたのが、この法案の特定鳥獣についての捕獲の禁止または制限の緩和条項です。  ですから、この法案は、現行法でも保護管理計画が十分実施できるのに、増加していると言われるシカなどの野生鳥獣を大幅に減らすための権限を都道府県や市町村に与えるものだと言われてもこれは仕方がないのではありませんか。どうですか。
  229. 丸山晴男

    丸山政府委員 現在、二十の道府県で特定野生鳥獣個体群保護管理を目的とする計画策定が進んでおりますけれども、先ほどからの先生の御指摘のとおり、必ずしも生息環境管理といったようなものが含まれておらないといったようなことで、現在の計画自身、必ずしも私どもからして満足できるものではないものもございます。このような状況、さらには特定保護管理計画策定の手順等につきましてもまちまちでございます。また、法的な根拠がないために都道府県内部での体制が十分でないといったような問題点もございます。  この改正法でお願いしております特定鳥獣保護管理計画創設につきましては、そのような、いわば現在進んでいるような計画策定について、明確なガイドラインのもとにきちっとした計画をつくってやっていくというような根拠を創設しようとするものでございまして、シカの大幅削減ということ自身を目的とするものではございません。     〔佐藤(謙)委員長代理退席、委員長着席〕
  230. 藤木洋子

    ○藤木委員 どうも私の質問にかみ合っておりません。  ニホンザルなどの有害鳥獣駆除で、既に捕獲許可の権限を市町村に移譲しているところがございますよね。  農水省の鳥獣対策推進省内連絡会議の資料によりますと、七県で市町村長へ権限を移譲しております。しかも、八府県には許可基準もありません。環境庁の資料でも、市町村への捕獲許可権限等の一部委任というのは二十五府県ございまして、これは五三・二%にも上っております。  地域個体群保護という観点に立って、市町村の枠を超えて地域個体群が存在している種については、都道府県から市町村への安易な権限移譲はすべきではないと思いますけれども、違いますか。
  231. 鹿野久男

    鹿野説明員 県から市町村への捕獲許可の権限の移譲についてでございますが、これはおのおのの県の判断で、主として捕獲許可件数の多いもの、例えばスズメ、ムクドリ、ドバト、カラスといったようなものが中心でございますが、そういう鳥獣対象に市町村にさらに委任しておるということでございます。  しかしながら、市町村の範囲を超えて広域移動するような種、大型の哺乳類とかそういうものでございますが、そういう種であったり、生息数として全体として少ない、そういったような保護の必要性のある種、これらにつきましては捕獲許可の権限、そういうものも含めて適切な取り扱いがなされるべきだと考えております。このように都道府県について指導してまいりたいと考えております。
  232. 藤木洋子

    ○藤木委員 わざとすれ違うような御答弁をされないでいただきたいと思いますね。  私はニホンザルのことについて伺ったわけです。一九八五年に幾つかの都道府県が市町村に許可権限をおろしたのですよ、ニホンザルの駆除につきまして。これは急速に増加をしているのです。安易な権限移譲は絶対にすべきではないということを私はさらにつけ加えたいと思います。  それでは、この特定鳥獣保護管理計画対象種とした鳥獣についての捕獲許可は都道府県実施するものとして、市町村には権限移譲はしないようにすべきだと思うのですけれども、その点はどうですか。
  233. 鹿野久男

    鹿野説明員 この特定鳥獣保護管理計画対象種になった場合に、実際にどのように捕獲していくかということにつきましては、この計画の中で全体として決められることになります。これは私どもがこれからガイドラインで示していくことになりますが、こういったような捕獲数につきましては、毎年毎年その地域個体群の範囲の中でそれぞれ地域ごとにもしくは市町村ごとにその捕獲頭数を割り振っていくというような形でその捕獲の実績を上げていく、これがその計画の中身の個体数調整一つの形だと思っております。  そういうことからいたしますと、この特定鳥獣保護管理計画対象種になった鳥獣につきましては都道府県が許可することになっておりますが、仮に市町村にこれが移管されたとしても、その計画の中で全体として毎年毎年の捕獲量というものが決定されていくということになろうかと思います。  そういうことからすると、仮に市町村に行っても、全体として、大きな計画の中で、皆さん方の合意を図る中で毎年の捕獲量を決めていくということになると思います。
  234. 藤木洋子

    ○藤木委員 やはり、野生生物の保護管理を進める地方体制が整わない状況のままで権限だけを移譲するということは絶対にやるべきではないと思います。  次に、被害対策の問題ですけれども、農水省によりますと、全国鳥獣類での被害面積は、九六年が二十四万ヘクタール、九七年が二十八万ヘクタールとなっております。しかし、農水省に被害額は幾らかと伺いましたら、把握をしていない、農作物被害額はことし三月三十一日の通達で報告をしてもらうことになったが、森林被害額は求めていないということでございます。  それで、北海道野生鳥獣被害額は、九六年が五十四億円、九七年が五十三億円、うちエゾシカでの被害額が四十九億円と言われております。しかし、北海道管区行政監察局が九八年十二月、エゾシカによる農業被害等の防止に関する地方観察結果報告書というので被害額算定方式を改善すべきだとして道に通知を出しております。北海道で行われている被害調査の大部分は、客観的な被害額算出方法が確立していないもとで農家の自己申告となっているわけです。ですから、実際の被害量との間に誤差が出てくると思いますね。  ですから、エゾシカ生息数の多少と被害額の多少、個体数の変動と被害額の変動、被害量の変動、これは必ずしも一致いたしません。これは、申請あるいは申告の際に必要な有害と被害の客観的検証が十分ではなくて、被害額がはっきりしていないというのが原因です。三月三十一日の通達は、従来の方法とほとんど変わっておりませんで、十分な内容とはとても言えません。  森林被害額も含めまして、算定根拠や評価法の明確なルールを確立すべきだと思うのですが、農水省、どうでしょうか。
  235. 大森昭彦

    ○大森説明員 農林業被害実態把握ということにつきましては、これが、いわゆる動物と作物の関係、それに被害程度ということも含めまして、その被害の態様が非常に各現場現場でまちまちでございます。そういう点からいたしまして、収量調査の場合のような統計的な手法ですとか、あるいはサンプル調査でもって全体を推計するとか、なかなかそういう手法はとりがたい、なじまないというふうな状況がございますので、勢い、個別事案の積み重ねによらざるを得ないという状況の中で大変御苦労いただいて把握をいただいておるという実態にございます。  そういう中で、被害額の算定ができていないということでございますが、これにつきましては、一部の道府県におきまして被害額の算定にこれまでこういう難しい状況の中で取り組んできていただいております。そういう蓄積をもとにいたしまして、今度十一年度から全国的に被害額の算定までするように今回通達を改正したところでございまして、これは、被害額を算定しておりました道府県のノウハウの蓄積、こういうものをもとにひとつ各都道府県でチャレンジをいただこうというふうにしたわけでございます。  そこで、被害額の算定方法に関しての行監の指摘等の問題もございますが、やはり全被害額、つまり、収穫皆無の状況にカウントして幾らかというふうなそこまでいきませんとなかなか被害額まで到達し切れないという面がございまして、一部部分的な被害、そういうものを積み重ねて全被害にどう換算するかということが非常に難しい問題になっておるわけでございます。  こういう点につきましても、積み重ねによってぜひ的確な被害実態把握にできるだけ近づけるように努力をしてまいりたいというふうに思うわけでございまして、やはり的確な被害把握というものは農林業被害の適切な対策の前提でございますので、これからもより精度の高い被害実態把握に努めてまいりたい。  特に、その手法ということにつきましては、その時々の科学的知見の蓄積ということを通じまして、随時見直しをしながら精度を高めてまいりたいというふうに考えております。
  236. 藤木洋子

    ○藤木委員 極めて算定が難しいとかあるいはなじまないということを言われましたけれども、だからといって、不正確なものを出されて被害がこんなにあるんだと言っても、説得力がないのは当然であります。私は、算定根拠だとか評価法の明確なルールを確立すべきだということを強く求めたいと思います。  しかし、被害額が正確かどうかということはともかくとして、被害農家が防除さくなどさまざまな対策を講じておりまして、費用負担が随分大変だということもまたこれは明らかです。  北海道では、九八年度の保護管理対策が一億百八十万円、被害防止対策が五億四千万円、公共事業による防護さくが四億三千百九十一万円、合計十億七千三百七十万円となっております。そのほか、岩手県では生息密度調査などで九八年度一千二百十万円、千葉県が捕獲事業被害防止事業などで九八年度に二千七百三十万円などとなっております。  しかし、農水省の農林被害対策費は十六億円ほどなんですね。ですから、過疎化と高齢化が進む農山村には極めて大きな負担となっているわけです。それで、農家の方はシカがいても被害が減ればいいのであって、行政支援をする防除さくを設置してほしいと強く要望しておられるところです。  そこで政府は、長官にお答えをいただきたいのですけれども、九九年以降三年間を野生動物保護農林業被害対策のための集中対策期間というようにいたしまして、野生動物の生息環境の保全と回復、農林業被害防除、自治体での野生動物保護体制の充実のために、公共事業の予算も含めて集中的にここに振り向けていくということをぜひやっていただくべきだと思うのですが、その点はいかがでございましょうか。
  237. 真鍋賢二

    真鍋国務大臣 附則によりまして三年後に施行状況の検討が求められているところであって、環境庁としても、都道府県における特定鳥獣保護管理計画策定支援とか、野生鳥獣生態生息密度情報の整備、保護管理の担い手の育成等に関する施策について、当庁の施策はもとより、関係方面に対しても、より一層の強化を図るべく積極的に働きかけてまいりたいと考えております。
  238. 藤木洋子

    ○藤木委員 総合的にやっていただくのは結構ですけれども、私が今申し上げたのは、被害を未然に防止するための対策に随分費用がかかっている、こういったところにも集中的に力を尽くしていただきたいということも申し上げておりますので、その点には余り詳しくお触れになりませんでしたが、それも含まれておりますね。よろしゅうございますか、それで。
  239. 真鍋賢二

    真鍋国務大臣 そのように理解をしております。
  240. 藤木洋子

    ○藤木委員 終わります。
  241. 北橋健治

  242. 中川智子

    中川(智)委員 社会民主党・市民連合の中川智子です。座ったままでの質問をお許しください。  私、この鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律の一部を改正する法律案というのを、鳥獣保護という言葉が最初に来ておりますので、最初はこれは本当に動物を保護するためにいい法律に改正するのだというふうに思っておりました。ほとんど認識がなかったというか、よく知りませんでした。  そこで、中学校の先生をしていらっしゃる方が会長であります日本熊森協会というNGO、休みの日になると子供たちも連れて仲間とえさがなくなった山、森に入って一生懸命ドングリですとかいろいろな木の実を植えて動物たちのえさを復元し森を生き返らせたいという小さなNGOのグループの人たちが、ぜひともこの法律を見直してほしい、本当の鳥獣保護する法律をつくってほしいということで私の部屋にいらっしゃいました。それで私も、どうして動物たちが山里におりてきて農作物を食べ荒らすのか、なぜなのか、本来ならば山の中で、森の中で暮らしていきたいだろう、そこが彼らの生きる場所であっただろうに、どうして森から出てくるのか、そこをいろいろ考えました。そしていろいろな人のお話を聞きました。  私も、大台ケ原とか、山歩きが大好きですからいろいろなところに行きます。最近は便利になった。あの山もてっぺんまでドライブウエーが走っている。そして、行くとゴルフ場がどんどんできている。そんな中で、動物たちが山でもう暮らせなくなっている。人間がどんどん動物たちが暮らすところに、侵略していくという言葉がぴったりです、そのようになっていって、食べるものもない。そして、道路ができたり、本当にいろいろな開発の中で動物たちが追いやられている。  そして、今までは広葉樹林が広がっていた日本の国土が、林業が一つの隆盛をきわめた時代にどんどんと杉、針葉樹になりまして、それがどんどん茂ってきて日も当たらない。そこには下草も生えない。それで、動物たちが生きるために必死に自分たちの食べ物を求めて森から出ていく。人間と動物が本当にダブってしまって、そこで農作物の被害ということ。それじゃ、防護さくをしたり農作物の被害補償をしたりするよりも安上がりだから動物を殺してしまえ、そして、絶滅の危機にあるようなものだけは人間が管理して残していってあげましょう、そのような形でこの法律が出てきたというふうに私自身はとらえました。  そうしたら、この地球はだれのためにあるのか。本当に人間が好きなようにやって、動物たちを追いやって、森を殺していって、そして動物たちはもう邪魔だから、農作物を食い荒らすから殺せということになったら、最後にまた人間にそのツケがきっと戻ってくるだろうと思って、必死になって、やはりこの法律に対しては慎重に審議し、またもう一度見直したいという思いで、いろいろなNGOの方たち、そして環境庁ともいろいろなお話し合いをこの間させていただきました。  不安なことがたくさんありましたけれども、参議院で通過して、このように衆議院の審議できょう議了、採決というところまでいくときに、ここだけはどうしても聞いておきたいという何点かを質問させていただきたいと思います。  熊森協会の方たちの言葉の中で、私もとても尊敬しておりますレイチェル・カーソンが、私たちは自然の支配に熟達しようとしてはいけない、私たち自身を制御することに熟達すること、これを今日ほど強く求められているときはないのではないかということを言葉として残しております。  人間が動物たちを邪魔だからといって殺し、そしてそれに対する防御の知恵を出さずに目の前から抹殺してしまうということがあっていいのか、どうにかして共存していくために知恵を絞っていき、動物を保護する法律を確立すること、そのことが大事だということをまず冒頭にお話ししたいと思います。  それで、私は、本来厚生委員なんですが、附帯決議のむなしさというのを感じることがすごく多いんです。ぜひともこの環境委員会では、附帯決議というのは国会の意思であり、そして努力義務という義務ではなくて、この附帯決議がしっかり生かされてこそ、動物と人間が共存し、未来の地球にツケを残さない、それにほかならないと思います。ですから、この附帯決議が、しっかりと環境庁がどのような態度でいつごろまでに、また、関係省庁の林野庁、農水省と力を合わせてつくっていくのかということを伺いたいと思います。  まず、参議院から送られてきました附帯決議の一番ですが、「緑の国勢調査その他の自然環境に関する調査を徹底し、」とございます。これを徹底した後でこの鳥獣保護及び狩猟のという法律が出てくる、それが筋だと思うんです。このような調査もせずに今回の法改正というのは、全くひっくり返っているというふうに私は認識しておりますけれども、この国勢調査その他の自然環境に関する調査を徹底し、国全体の鳥獣生息状況を適切に把握するというのは、大体いつごろまでにするのかということをお伺いしたいと思います。
  243. 鹿野久男

    鹿野説明員 ここで言います緑の国勢調査、自然環境保全基礎調査と申しますが、これは環境庁発足以来、昭和四十八年から続いている調査でございまして、例えば、日本の植生の姿を五万分の一の植生図に全部つくり上げたとか、それから野生生物の分布状況につきましても、国土全体で一体どこに何がすんでおるのかというような調査を続けてきております。すべてが世界の一級品とは言いませんが、例えば植生図なんかは世界に冠たる植生図だと自負しておるところでございます。  この附帯決議は、これまで続けてきましたこういったような緑の国勢調査をさらに充実して続けろ、こういう意味と受け取っておりまして、私どももその方針で努力したいと思っております。
  244. 中川智子

    中川(智)委員 日本の哺乳類の約三分の一が絶滅の危機。そして、トキなどは、あれは最初は有害鳥獣だったわけですね。それがもう大騒ぎされるような、トキの絶滅。ツキノワグマ西日本で絶滅。では、どうしてこんなふうになってしまったんですか。
  245. 鹿野久男

    鹿野説明員 これは、やはり長い歴史の問題だと思いますが、例えば今度のこの野生鳥獣の問題であっても、もう少し早く、例えば十五年か二十年前ぐらいに私ども今の知見があればこの状態を招かなかったと反省いたしております。  トキの問題についても同じでございます。確かに江戸時代は日本国じゅうにトキがいたわけでございますが、それが今はもう佐渡に最後の一羽という状態でございます。これは、なぜかといいますと、やはり近代にもたらした狩猟圧であるとかそういうものが日本全国を覆った結果だと思っております。  今は、そういうかつての過ちを繰り返さないだけの知見を持っておると自負しております。
  246. 中川智子

    中川(智)委員 わかりました。やはり歴史というのは、かなり反省すべき歴史もあるけれども、それに対してきっちりと、絶滅じゃなくてこれからはそのような希少種も大事にし、そして、一方的に駆除するということではなくて守っていくという姿勢が最後の方にちょっと感じられましたから、その方向で取り組んでいただきたいと思います。  私は、環境省千人、そして予算も八百数十億という中で環境庁だけにこれを求めるのは、やはり無理があるということを常々痛感しております。  そこで、質問の二番目ですけれども野生鳥獣生息しやすい環境整備を進め、野生鳥獣の移動ができる回廊づくりとかというのは環境庁だけではできないと思いますが、ここの部分に対して、林野庁、お伺いいたします。
  247. 田尾秀夫

    ○田尾説明員 お答えをいたします。  森林の整備につきましては、平成八年十一月に閣議決定されました森林資源に関する基本計画に基づきまして進めているところでございますけれども、同計画では野生生物の保全を図る観点から多様な森林整備を推進することとしておるところでございます。  このため、林野庁といたしましては、野生生物の保護と自然環境の保全に十分配慮いたしますとともに、広葉樹林育成、天然林施業等の推進にも努めているところでございます。  具体的には、森林の機能発揮と野生鳥獣との共存を目指しまして、平成八年度から野生鳥獣共存の森整備事業実施いたしますとともに、野生鳥獣生息するためには多様な森林整備を推進することが重要でありますので、広葉樹林の整備を進めているところでございます。また、国有林では、緑の回廊、いわゆるコリドーを設定いたしまして、野生生物の自由な移動の場の保護に努めていくこととしているところでございます。  いずれにいたしましても、森林野生鳥獣生息の場でもありますので、今後とも野生鳥獣保護に十分配慮した多様な森林整備を進めてまいりたいと存じます。
  248. 中川智子

    中川(智)委員 再び林野庁に伺いますけれども広葉樹林の整備に努めているということですが、じゃ、ここ二年ぐらいでどれぐらい平米でふえて、そして、お金を幾らそれに費やしたかということを伺いたいと思います。
  249. 田尾秀夫

    ○田尾説明員 最近の造林事業ですが、かつては広葉樹の造林というのは一%にも満たない状況でございました。最近、ここ二年ぐらいを見てみますと、大体四千ヘクタールぐらい広葉樹林の造成が行われておりまして、全体の人工造林の面積の約一割は広葉樹が植えられるというような状況にございます。  金額のお尋ねがございましたけれども広葉樹林の造成だけに支出しております造林事業については把握しておりませんけれども、先ほどお話しさせていただきました野生鳥獣共存の森整備事業等につきましては約四億円の事業費を確保しておるところでございますし、また、広葉樹林の整備特別対策事業という事業につきましては約二十六億円の予算となってございます。
  250. 中川智子

    中川(智)委員 林野庁は、このように野生動物がどんどん減っていく、そして一方では農作物を荒らすような形で山野に、農地の方に出ていくということに対して、やはり、動物たちと一緒に生きる人たちがたくさん働いていらっしゃる、そこで駆除されていく動物たちの姿を見たり、また、環境庁だけに責任があるとはお思いにならない、林野庁にもまたその責任があるとお思いですか。ちょっとでいいですから、答えてください。何か読まなくて結構ですから、御自分の言葉で。
  251. 田尾秀夫

    ○田尾説明員 先ほど森林被害の話もありましたけれども森林の中に野生動物が生息しているわけでありまして、森林は多様な機能を持っておりますけれども、やはり、野生鳥獣生息の場としても大変重要な役割を果たしているのだろうと思います。  先ほどお話ししましたように、かつての造林事業はほとんどが杉、ヒノキ一辺倒でございましたけれども、最近では広葉樹林を植えることを大変奨励しておりまして、それも野生鳥獣との共存を図っていくという大きな観点から推進しているところであります。ようやく、全体の造林面積の一割は広葉樹が植えられるというところまできたということで考えております。  私どもも、野生鳥獣を一方的に悪者としてとらえているわけではありませんで、平成八年度からは、野生鳥獣共存を図っていく事業を新たに起こしまして、広葉樹林の造成などにも努めているところでありますので、今後ともそういう事業を推進してまいりたいと存じます。
  252. 中川智子

    中川(智)委員 それでは農水省に伺いますけれども、農家の人の話を聞きますと、環境庁がつくった防護さくみたいなのは割とちゃっちいというか、貧弱だそうです。でも、農水のは電気がびびっと走って、何かすごくお金がかかっていて、やはりお金があるところとないところではさく一つでもこんなに違うのかということが専らのうわさだそうですけれども、かなり効果があるということを伺いました。  そして、防護さくというのはとても効果的だといいますし、ネットは頼みに行けば役場でもらえるから、結構ネットを張って一生懸命頑張っているというふうに話されました。でも、やはり自分で負担することが多いし、電気さくの場合は五万円ぐらいするから、十五万円ぐらいの収穫で五万円の防護さくをやっていたらとても農家としてはやっていけないということを話されていたのですね。  でも、殺す前にできること、動物たちと、ここから向こうはあなたたちねというような関係をつくることをしないで駆除に走るということが、どうしても悲しくてつらくてたまらないんです。そして、森に動物たちが帰る。本当に森というのは保水力があるし、私たち人間の飲み水にもなっていく。そのためにも大事な森。  農水省は、防護さく、そしてもう一つは、被害補償というのはいろいろな場所でかなり難しいとは思いますが、このあたりだったらやはり努力していかなきゃいけないんじゃないかと思っているのかどうか。それは、参議院の附帯決議の一番最後の八項目のところで、鳥獣による農林業者の被害救済措置、その被害の救済というところ、これは農林業ですので農水も入りますので、今の防護さくの面と、そして被害に対しての補償お答えをいただきたいと思います。
  253. 大森昭彦

    ○大森説明員 野生鳥獣によります農作物被害防止対策としては、先ほど来ございます防護さく、電気さく等のフェンスの設置が非常に効果的であるということは、これまでの事業実施等を通じて現地でも十分効果を発揮しておるところでございまして、その点は認識されておるところでございます。  ただ、先生指摘のように、いろいろ経費の面でどこでもできるということにはまいりません。やはり経営との見合いでその辺の対応がなされておるわけでございまして、そういう検証を経ながら、これからもそういうものの設置については前向きに取り組んでまいりたいと思っております。  それから、そういう方法以外の手法の開発というふうなこと、例えば各種の忌避剤ですとか、あるいは音、光等によります威嚇のシステムとか、そういうことについての技術開発等にも取り組んでおるところでございまして、多様な手法によりまして、これは動物との共生というふうな側面も含めながら、そういう手法の開発を通じて被害防止にはこれからも取り組んでまいりたいというふうに思っております。  それから、被害救済の件でございますが、全体のフレームにつきましては政府全体での検討の中で私ども役割を果たしてまいりたいというふうに思っておりますが、実は農作物被害共済制度がございまして、こういう共済制度を活用して部分的にそういう被害の救済に充てるというふうな方法もあるわけでございます。  これにつきましては、畑作物については共済への加入状況が必ずしも十分でない。共済金を払っておりませんと被害を受けた際に救済されないというふうな仕組みでございますので、そういった点では、共済への加入というふうなことにつきまして十分その浸透を図ってまいりたいというふうに思っております。
  254. 中川智子

    中川(智)委員 私が申しましたのは、やはり殺すというふうな形ではなくてということ。とりあえず附則で三年後の見直しとありますが、その三年間にどれだけの動物が殺されていくのだろうと私は思うのですね。一方的に殺さないとおっしゃっても、保護が弱い。私はこれは狩猟法だと思って読みました。保護をする一方で、駆除するということはしっかりと規制緩和みたいな形でなされていくわけで、せめて三年ぐらいの時限立法のような形で、税金を投じて農作物被害に対しては救済措置を講ずる、そのおつもりはありやなしやということを伺ったのですが、端的に農水省にお伺いします。
  255. 大森昭彦

    ○大森説明員 この作物被害の救済措置、これは実際に被害を受けております現地にとりましては切実な問題でございまして、そのような制度が強く望まれておるというふうに認識をしております。  ただ、この新しい枠組みをつくっていくというふうなことにつきましては多々検討課題がございますので、全体の検討の中で私どももその役割を果たしていきたいというふうに思っております。
  256. 中川智子

    中川(智)委員 ぜひとも、農水省も林野庁も、環境庁だけがこれをやるんだというのではなくて、やはり連携を持ってしていかなければ、とてもじゃないけれども守れないと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。  四番目に、特定鳥獣保護管理計画策定のためには、NGOなどの意見を広く聞くとともにとございますが、大抵、広く聞かれたら右から左に消えていくみたいな感じがあります。私は、特に今、この環境保護の運動に関しては、小さなグループが一生懸命言葉を発せられない動物たちのかわりに訴えている、そのような運動を展開しているというふうに思います。とても地味なことですし、趣味でやっていると。  熊森協会の会長さんなんかは、山に入ったときに、きょうは私片足を折っているんですが、その方は岩から落ちて両足を折ったと言われました。そんなふうに、みずからの危険も顧みず、動物たちの声を聞き、そして森を生き返らせるために活動しているNGOを、単に意見を聞くというのではなく、きっちりと財政的な援助もしながら、しっかりと委員会なら委員会をつくって、その委員になってもらって、ともにそのような保護政策を進めていくというふうにすべきだと思いますが、環境庁、いかがでしょう。大臣に聞きましょう。大臣、出番です。
  257. 真鍋賢二

    真鍋国務大臣 一般市民とかNGOに対する先生の思いはいつも聞かされておるところでありますけれども、私もその大切さ、必要性というものについて痛感をいたしておるところでありまして、多くのNGOの皆さん方にいろいろな問題が出るたびにお集まりをいただいて、御意見をいただいておるところであります。  決して、NGOと政府との関係が大きな溝をつくっておるというのではなくて、一緒になって問題の解決に当たっていきたいということで、環境行政の中で今NGOの果たす役割は非常に大きいものがあると思っておるわけでありまして、これは減少することなく今後は増大してやっていかなきゃならないということで、その関係も密にしておるところであります。  環境行政に占めるNGOの果たす役割ということは、今環境の中で大きな役割を果たしておるわけでありまして、今後もそのような体制で事の処理に当たっていきたいと思っておるわけであります。  先ほど来、先生からいろいろな御指摘をいただいたわけであります。三年後の附則の見直し云々というようなこともありますけれども、決して見直しでなくて、やはり現状把握というものをしっかりとしてやっていかなきゃならない、こう思っておるわけでありまして、ただ附則を附則としてはいけないという気持ちでいっぱいであります。  いずれにいたしましても、でき上がった法案を遵守しながら、これからよりよいものに改善を加えていくということは、私は環境行政の中で大きく求められておることだと思っておるわけでありまして、決して改悪にしない、改善にしたい、改良にしたい、こういう気持ちでいっぱいであります。
  258. 中川智子

    中川(智)委員 長官の今の言葉はとてもうれしく伺いました。  最後にもう一言御決意を伺いたいんです。この附帯決議の八のところで、野生鳥獣保護を一層明確にした法制度鳥獣による農林業者のというふうに続きますが、私は、やはり駆除の法律と保護の法律は別の立法できっちりと明確に野生鳥獣保護法というのをつくっていただきたい、そして三年後の見直しと言わずに、三年以内にきっちりとした法律をつくっていただきたい、そのことが未来にとってきっと、すばらしい法律をあのときにつくったと禍根が残らないと思います。  長官、ぜひともこの法律をつくるということに対しての御決意をお願いしたいと思います。これで最後にいたします。
  259. 真鍋賢二

    真鍋国務大臣 この法案を通じまして野生鳥獣と人間との共生を図っていくというのが、何としても最高の基盤であるわけであります。これを遵守しながら、先生の今御指摘のございましたように、これは日々新たなりということで、その時々の要請を受けて環境行政の中で生かしていかなければこの法案というものが生きてこないと思うわけでありまして、その点は懸命な努力の中に守り続けていこう、また改善していこう、こう私は考えておる次第であります。
  260. 中川智子

    中川(智)委員 ぜひとも議員立法で、ここの環境委員の皆様と心を一つにして野生鳥獣保護法をつくりたい、そして、ぜひとも長官を先頭に頑張っていきたいと思いますので、よろしくお願いします。どうもありがとうございました。
  261. 北橋健治

    北橋委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。  この際、暫時休憩いたします。     午後四時五分休憩      ————◇—————     午後七時開議
  262. 北橋健治

    北橋委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  引き続き、鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案に対する質疑は、先ほど既に終局いたしております。  これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、順次これを許します。近藤昭一君。
  263. 近藤昭一

    ○近藤委員 私は、民主党を代表いたしまして、鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律の一部を改正する法律案に反対する討論を行います。  まず最初に、有害鳥獣による農林業被害が出ている現状と野生鳥獣減少への対策が必要という考え方には賛成であります。  しかし、あえて反対する理由は、第一に、本法案が大正七年に制定されて以来、今回の改正案ほど野生鳥獣保護有害駆除狩猟のバランスに欠く法律案はないからであります。駆除と狩猟に重点が置かれ、現在最も重要視されるべき保護に関する抜本策に踏み込んでおりません。ニホンザルなど国際的にはレッドデータブックに掲載されている動物でも、管理の名のもとに駆除がしやすくなり、有害鳥獣として都道府県の間の調整なしに駆除され続ける懸念があるからであります。  第二の理由は、今回の改正では、オオワシなど天然記念物の鉛中毒を防止する鉛弾禁止措置が盛り込まれていないことであります。また、住宅地や禁猟区以外はどこでも撃てる狩猟のあり方を見直し、原則禁猟とし、狩猟できる区域を設定すべきではないかという問題は、今回も取り残されたからであります。  第三の理由は、農作物被害補償に踏み込まなかったからであります。被害防止対策関連予算約一千百億円にもかかわらず、被害の甚大な地域について防護さく、防鳥ネットの作成にはわずか約十六億円しか使用されておらず、土地の基盤整備などに費やされていることが明確であるにもかかわらず、それを是正する工夫が改正案に書き込まれなかったからであります。  第四の理由は、都道府県が任意につくる特定鳥獣保護管理計画によって、鳥獣保護区の適切な配置や鳥獣生息に適した樹種の植栽や育成などができるよう定められましたが、任意では不十分だからであります。また、生息域保全のためには、それを圧迫する要因である開発行為に一定の歯どめをかけることが不可欠なはずです。しかし、鳥獣保護区にでさえ開発規制は盛り込まれておりません。開発規制から目を背けることは、二十一世紀を迎える環境行政にあってはならないはずであります。  以上が、本法律案に反対する理由であります。  なお、民主党は、今後、本法が保護の視点に立って運用されるかを注視し、国民、鳥獣保護関係者と連携をしながら、有害駆除狩猟とは切り離した真の野生保護を目的とした法案提出に向けて努力をいたします。  最後に、利便性と引きかえに、野生鳥獣生息地と生命を奪ってきた人間の一人として、僣越ではありますが、ニホンオオカミを初めとする絶滅種の犠牲に対して、鎮魂と反省の意を表し、私の反対討論といたします。(拍手)
  264. 北橋健治

    北橋委員長 藤木洋子さん。
  265. 藤木洋子

    ○藤木委員 私は、日本共産党を代表して、鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。  まず、本委員会では、法の仕組みの大がかりな変更にもかかわらず、学者、NGOの専門家などによる参考人の意見聴取や国民的な合意を得るための十分な審議時間の確保も行わないまま、たった一日の審議で採決に付すという拙速なやり方は、今後に禍根を残すということを強く指摘しておきます。  以下、反対理由を述べます。  第一は、国及び地方自治体鳥獣保護体制が不十分なもとで、都道府県への特定鳥獣保護管理計画制度の導入には根本的に問題があるということです。体制が不十分な地方自治体への権限移譲は、国の責任の放棄にもつながり、地域によっては種の絶滅を生じさせかねないものです。  第二は、個体数管理に偏った対策になっており、過剰な鳥獣狩猟、駆除が横行するおそれがあるということです。都道府県知事がふえた野生鳥獣に対して捕獲狩猟期間を緩和できるなど、個体数管理優先の施策では、農林業被害をなくすという問題も解決できません。  第三は、狩猟免許制度の緩和が、環境庁の言う野生鳥獣保護管理はもちろん、狩猟者減少防止にもならないということです。狩猟者に依存した駆除中心保護管理は本来あるべき姿ではなく、欧米で置かれている狩猟管理官のような専門家保護に当たるべきです。  なお、農林業被害については、農水省の予算措置も含めて対策を強化することが求められています。  自民党、自由党、公明党による修正部分につきましては、本法案の根本的な問題点を何ら是正、解決するものではなく、反対であります。  本法案を廃案とし、十分な国民的な合意を図ることが重要であることを指摘し、反対討論を終わります。
  266. 北橋健治

    北橋委員長 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  267. 北橋健治

    北橋委員長 これより採決に入ります。  内閣提出参議院送付鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  268. 北橋健治

    北橋委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  269. 北橋健治

    北橋委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、鈴木恒夫君外二名から、自由民主党、公明党・改革クラブ及び自由党の三会派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を聴取いたします。田端正広君。
  270. 田端正広

    ○田端委員 私は、ただいま議決されました鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議案につき、自由民主党、公明党・改革クラブ及び自由党を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。  案文の朗読をもって説明にかえさせていただきます。     鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずべきである。  一 緑の国勢調査その他の自然環境に関する調査を徹底するなど、集中対策期間を設け、国全体の鳥獣生息状況を適切に把握するとともに、都道府県における調査支援し、これらの成果を野生鳥獣保護管理施策に積極的に活用すること。また、自然との共生について教育啓発を高めること。  二 特定鳥獣保護管理計画策定のための指針等を定めるに当たっては、野生鳥獣保護専門家及び自然保護団体等の意見を広く聴くとともに、計画の内容が、野生鳥獣生息地育成・整備、農林業被害の防除に万全を期すことを優先し、過剰な捕獲をもたらすことがないように定められることを明確にするほか、計画策定、実行がこれに沿って適切になされるための具体的な手段を示すこと。特に、クマ・サルについては、その生息実態等に関する科学的知見が不十分であることから十分な調査実施し、万全な農林業被害の防除対策とともに、これら個体群保護に重点を置いた保護管理計画策定されるよう示すこと。  三 野生鳥獣との共存の森づくりに係る事業鳥獣保護区の適切な設定等を通じ、野生鳥獣生息しやすい環境整備を進め、野生鳥獣の移動ができる回廊づくりを積極的に検討するとともに、防護柵の整備等の被害防除対策の推進、被害防除に係る対策技術の開発及び普及を図ること。  四 ツキノワグマなどの絶滅のおそれのある種または個体群としてレッドデータブックに記載されている鳥獣については原則として狩猟対象としないこととするとともに、個体数が著しく減少している特定野生鳥獣個体群については、関係県において特定鳥獣保護管理計画が積極的に策定されるとともに、これら鳥獣生息環境の復元が図られるよう、その策定及び実施に対する支援に万全を期すこと。  五 都道府県における早急な調査研究体制の整備、野生鳥獣保護専門的な知識・経験を有する人材確保及び育成関係地方公共団体間の調整能力の向上等を図るほか、生息地の所有者、農林業狩猟自然保護関係者などの協力、連携を得るためのネットワークの構築など野生鳥獣保護のための基盤整備が行われるとともに、都道府県を越えた広域かつ統一的な鳥獣保護管理が図られるよう、関係都道府県に対し、積極的に助言指導及び財政的支援を行うこと。  六 科学的・計画的な野生鳥獣保護管理に当たっては、その保護繁殖は生息地保護及び整備の充実、個体群の存続を前提とした適正な捕獲実施が最も効果的であると考えられることから、鳥獣保護区等の管理等を行う鳥獣保護員等の果たす役割が大変重要であることに鑑み、その役割の強化を図るとともに、大幅な増員と人材育成等に努めること。  七 狩猟者が、環境基本計画の基本理念である「自然と人間との共生」を踏まえ、生態系の安定的な維持等に十分な配慮を行うこととなるよう、狩猟者のモラルの向上を図ること。また、狩猟や駆除が事故、水鳥等の鉛中毒等の悪影響が顕著なことから、鉛弾の規制を含む適切な措置を早急に講ずるとともに、関係地方公共団体と協力し、狩猟、駆除の対象となったシカ等の死骸の適切な処理体制の整備を促進すること。  八 関係地方公共団体における鳥獣保護行政体制強化のため必要な支援に努めるとともに、都道府県知事の権限に属する普通種等の鳥獣捕獲等に関する許可に係る事務について、野生鳥獣保護管理実施体制の整備状況に応じて適切に市町村に委譲され、円滑に制度の運営が図られるよう、都道府県指導すること。  九 関係都道府県特定鳥獣生息状況生息地周辺生態系悪化や農林業被害状況等に関する調査を十分に行い、その結果について利害関係人等に対し正確な情報提供を行うとともに当該計画の運用または改定に反映させるよう、指導助言に努めるとともに、国による適切なモニタリングを実施し、それらの結果については、国民及び当委員会等に速やかに報告するとともに、緊急に必要な場合は、関係都道府県又は市町村に対しても迅速かつ的確な指示を行うこと。  十 本法施行三年後を目途の見直しに向けて、野生鳥獣保護を一層明確にした法制度鳥獣による農林業者の被害救済措置、公的機関が主導する捕獲体制の強化、野生鳥獣保護管理のための国と地方の責務の一層の明確化等の具体策につき早急に検討すること。 以上であります。  何とぞ委員各位の御賛同をよろしくお願いいたします。
  271. 北橋健治

    北橋委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  272. 北橋健治

    北橋委員長 起立多数。よって、本動議のとおり附帯決議を付することに決しました。  この際、ただいま議決いたしました附帯決議につきまして、政府から発言を求められておりますので、これを許します。真鍋環境庁長官
  273. 真鍋賢二

    真鍋国務大臣 ただいま御決議になられました附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重いたしまして、努力いたす所存でございます。  よろしくお願いいたします。     —————————————
  274. 北橋健治

    北橋委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  275. 北橋健治

    北橋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  276. 北橋健治

    北橋委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時十三分散会