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小林(守)
委員 鳥獣の
保護について考えていく場合に、人と自然との
かかわり、
文化だとも言えると思うんです。もちろん、ヨーロッパ的な
文化の
思想と日本的な、アジア的な
文化思想というのはおのずから違っているんだというふうに
思いますし、
動物との
かかわりについても、特に日本人の場合非常に情緒的な
かかわり方が強い、七〇%は大体情緒的な
反応をして、三〇%は科学的というか合理的な
反応をするんだとよく言われます。
これは決して悪いことではないんです。
動物がかわいい、何とか守ってやりたいし、一緒に生きていきたいというようなことですばらしい感性だと思うんですけれども、しかしそれだけでいってしまうと、今度は逆に憎いから殺せという話に、まるで百八十度転換した
反応をしてしまうわけでありますから、やはり感性的、情緒的な
感じ方、
考え方というものは
一定程度セーブし、科学的、合理的というようなところを踏まえながら、なおかつ情緒的なものも無視してはならぬ。これはむしろヨーロッパ的な
文化、
思想に欠けている部分を補わなければならないところなのではないかな、このように思えてならないわけであります。
そういう点で、新たな二十一
世紀に向かって、総体的には
野生動物は減っているというような御
認識をされておるし、科学的な
データも出ていると思うのですね。そういう観点に立つならば、基本的には
生息地を
保護していくというようなスタンスを持って臨んでいかなければならないし、それは、日本的な
動物との
かかわりの中で、恐れると同時に
生き物を殺したくないというような強い意識というものを大事にしていくということが基本だろう、このように思うわけであります。
そういう点で、
本県栃木県におきましては、自主的な
個体数調整の
管理計画を立てて、これは猿と
シカ両方に立ててやっております。よく言われることですけれども、
人的体制とか
専門家の、
科学者の科学的な
意見に基づいてきっちりとした
データを持って、そしてモニタリングをしっかりとやって、おっかなびっくり、試行錯誤は当然のこととして、毎年の
計画とやった結果を必ず評価して、
反省をしてフィードバックしながら、来年はどうしようか、そして来年もやってみて、またその結果を見ていくというような、相手が
生き物だという、
人間にははかり知れない自然の神秘を持っているわけですけれども、そこにかかわっていくという、その恐るべきことを我々はやらざるを得ない
時代に来ているのだというふうに言わざるを得ないのです。
その辺の恐れなり謙虚さ、そしていつでも撤退できるというか、そして安全度というか、もし失敗したら
絶滅に追い込んでしまうというようなことは絶対に避けなければならぬ、この辺の枠組みを科学的に把握しながら、なおかつ
子供たちの
教育のことも考えて
動物と
人間との
関係を考えるならば、
子供たちに
個体数を管理しなければならぬということをちゃんと話せますかということですよ。
教育の場で、かわいい子ジカ、バンビを、お母さんを殺さなければならぬ、これをちゃんと教えられるのかどうか。私は、それは
一定の年齢になったらきちっと教えられるだけの自信と確信を持って、そして
人間の
痛みを持って
子供たちにそれが話せることでなければ、正しい科学的、
計画的なコントロールではないんだろう、このように
思いますし、やはり間違っているんじゃないか、このように思えてなりません。
子供たちにもしっかりと話せる、その辺の哲学を持った自然と
人間との
かかわりをこれからつくっていかなければならぬだろう、こんなふうに思えてならないのです。
そこで、
本県の
シカ、猿について
現地を
視察され、そして
知事等からも——非常に悩みながらここまで
栃木県はやっているんだと
思います。そういう点で
一定の評価をしたいと
思いますし、
人的体制、
予算的体制も、規模からすると北海道や岩手やそのほかの
先進県とは比べられないわけですけれども、比較的充実した
体制のもとにやってきているのではないかな、私はこのように
思います。本当に、県の
職員でこういう本を書きながら、まさにみずからがそこに入り込んで、真剣になって
職員が頑張っておられる、
専門化してやっておられるというところもありますし、
専門のセクションも既にあります。
そんなことを考えるならば、そう間違った
方向にはならないだろう、このように
思いますけれども、
真鍋長官、この辺の人と
野生動物との
かかわりの中で、あえてやらざるを得ないという領域に踏み込むんだということになるならば、
法案化するということはまさにそこに踏み込むことでありますから、それなりの
痛みと覚悟が必要だと思うんですね。そういう点で、ほかの県の
状況とか
栃木県の
状況なども踏まえて、どのように全体
状況を
認識されているのか。単なる
感想ではなくて、この
法案を今出しているわけでありますけれども、やはりその辺の根本的なところをまず確認しておきたいなと
思います。