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有馬国務大臣 原子力は衰退期と私はまだ判断いたしておりませんけれども、そういうことに
関係して、私が一つ心配していることがあるのです。
既に安定期に入ったことによって、
原子力の中に新しいおもしろい問題が少なくなっていく。初期の
段階ですと、みんな一生懸命新しいリアクターをつくるとかいろいろなやり方で研究を進めていく、こういうところが、やや安定してまいりますと少なくなってくる。したがいまして、教育の上で、これがおもしろいんだ、これが世界一流のものなんだというふうにして学生諸君を引きつけていくものが少なくなっていく、このことを私は非常に心配をしておりまして、
原子力におけるすぐれた技術者がだんだん養成できなくなってくるとなりますと大変だと思っております。
そういう点で、先生今御
指摘の、例えば増殖炉であるとかあるいは核融合であるとか、あるいはより一層進んだ
使用済み核燃料の処理法であるとか、それからまた、高
レベルの廃棄物をどう処理していったらいいか、この辺はまだ人間の技術にとりまして非常に挑戦的に考えるべき新しい問題をたくさん含んでいますね。こういうところをさらに重要視しながら、若い人たちが、
原子力、広い意味での
原子力に対して
関心を持ってくださるようにしていくこと、これが極めて重要であると思っております。
しかしながら、例えば蒸気機関車というのは非常にいい例でございますけれども、今蒸気機関車というのは美的なセンスで若者たちを、我々を引きつけるところがありますが、しかしもう実用的にはそれほど、特に
日本では実用的な意味は持たなくなってきています。ですから、より一層新しい
エネルギーというものの研究が進んでいって、例えば核融合というふうなものが非常に急速に進むことによって、現在のウラニウム235を使うような
原子炉というのはだんだん要らなくなっていくかもしれませんね。
今はとてもとてもそんな状況ではございませんで、よりウラニウム235を使うような
原子炉をさらに安全に利用していくという技術を進めていく状況だと思います。したがいまして、現在私の判断では、
原子力は安定して使われるべき安定時代だと思います。しかしながら、やはりまず
安全性を
確保いたしまして、そして私たちも含めて
国民の人たちが、
原子力は安全なんだ、こういうふうな気持ちを持つようにしていかなければならないと思っております。そのために、やはりいろいろな面から、私どもも含めまして
原子力に
関係している人たちが
国民の方たちとお話し合いをしていくということが必要であろうと思っています。
そういう意味で、科学技術庁といたしましてはというか、
原子力委員会といたしましては、現在、次期長期計画を考えているところでございまして、安全をめぐる諸課題について幅広い議論を行いまして、今申し上げましたような
安全確保の考え方をさらに発展していかなければならないと思っています。
いずれにしても、巨大技術でございます
原子力は、特に
安全確保をしていかなければならないと思っています。
原子力の安心とともに
信頼を
確保するという方策に積極的に今後取り組んでいかなければならないと考えている次第でございます。