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1999-03-16 第145回国会 衆議院 科学技術委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年三月十六日(火曜日)     午前九時三十二分開議   出席委員    委員長 北側 一雄君    理事 河村 建夫君 理事 河本 三郎君    理事 中谷  元君 理事 山口 俊一君    理事 辻  一彦君 理事 斉藤 鉄夫君    理事 菅原喜重郎君       飯島 忠義君    江渡 聡徳君       奥山 茂彦君    木村 隆秀君       小島 敏男君    田中 和徳君      三ツ林弥太郎君    村岡 兼造君       望月 義夫君    鍵田 節哉君       近藤 昭一君    鳩山由紀夫君       近江巳記夫君    中西 啓介君       吉井 英勝君    辻元 清美君       中村喜四郎君  出席国務大臣         国務大臣         (科学技術庁長         官)      有馬 朗人君  出席政府委員         科学技術庁長官         官房長     興  直孝君         科学技術庁原子         力局長     青江  茂君         科学技術庁原子         力安全局長   間宮  馨君         資源エネルギー         庁長官     稲川 泰弘君  委員外出席者         外務大臣官房審         議官      田中 信明君         消防庁次長   滝沢 忠徳君         科学技術委員会         専門員     宮武 太郎君 委員の異動 三月十六日  辞任         補欠選任   田中 和徳君     小島 敏男君 同日  辞任         補欠選任   小島 敏男君     田中 和徳君 本日の会議に付した案件  原子力損害賠償に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第二六号)     午前九時三十二分開議      ————◇—————
  2. 北側一雄

    北側委員長 これより会議を開きます。  内閣提出原子力損害賠償に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。斉藤鉄夫君。
  3. 斉藤鉄夫

    斉藤(鉄)委員 公明党・改革クラブ斉藤鉄夫でございます。よろしくお願いいたします。  今回、この原賠法法案審議に当たりまして、私も原子力損害賠償仕組みを初めて勉強させていただきました。その過程で起きました疑問点について、最初に質問をさせていただきたいと思います。  まず、非常にプリミティブな質問で申しわけないのですけれども、この原賠法は、原子力損害に関しては原子力事業者無限責任があるというふうに書かれてございます。であるのに、またその賠償措置額を定めることになっております。これは、論理的には屋上屋を重ねる構造になっているのではないか。例えば、ミカン果物である、こう定義があって、したがって、これから発行される辞書にはすべてミカン果物であると書かせる措置をとる、こういうふうに、つまり、同じことをもう一度言っているような論理構造になっているのではないかと思います。無限責任があるのですからもうそれで十分であって、その上に余計なことを言う必要は全くない、このように思いますけれども、この点についてまず質問をさせていただきます。
  4. 青江茂

    青江政府委員 お答え申し上げます。  先生今御指摘のとおり、我が国原賠法は、原子力事業者に対しまして、無限被害が生ずれば生じただけその範囲内におきまして責任を負わせるという仕組みになってございます。その上で賠償措置というものをなぜ講じさせておくのかという点についてでございますけれども、これは、万々が一原子力損害というものが発生をする、そういった場合におきまして、被害者に対しましての迅速かつ確実な賠償履行を具体的に確保するためのいわば基礎的な資金、当座のお金とでも申しましょうか、そういう意味を込めましてあらかじめ用意をさせておくわけでございます。  例えば、現行でございますと三百億円、改正後でございますと六百億円、これをあらかじめ用意をさせておくということになりますと、万一事故が生ずるということになりますと、原子力事業者はその保険の方から六百億円の即座のお金というものを入手し得るわけでございまして、そこでもちまして被害者への対応を行う。万々が一その被害がトータルといたしまして六百億円を超えたような場合でございますと、保険会社から六百億円を引き出して対応すると同時に、その超えた金額に対しましては自分資産等でもちまして対処していくということでございまして、そういう意味におきまして、賠償措置というのは、被害者に対しての円滑な義務履行というためのあらかじめの対応措置というふうに理解をいたしてございます。
  5. 斉藤鉄夫

    斉藤(鉄)委員 もちろんそれはよくわかっているのですけれども、しかし、無限責任を言い、また無過失責任も言い、その責任を集中させている。そういうことを決めるだけで、事業者にとっては、法律で三百億円とか六百億円という措置額を設定するか否かを決められる以前に、自分としてやっておかなければいけないことでありまして、それをわざわざ法律で決める必要はないのではないか、その論理的根拠は何なのかということをお聞きしているのです。
  6. 青江茂

    青江政府委員 確かに、いわゆる無限責任を負っている事業者義務履行ということからいたしましたときに、事業者自身がそういったことに備え用意をしておくということ自身事業者一つの責務の範囲内の問題ということもあろうかと思うわけでございますけれども、そこのところを、ちょっと繰り返して恐縮でございますけれども、いわゆる被害者救済に万全を期す、円滑なその義務履行を期すということからいたしますと、ある程度のお金というものを義務づけておくということの意味というものも一方においてあろうかというふうに理解をいたしてございます。
  7. 斉藤鉄夫

    斉藤(鉄)委員 わかりました。  では、次に進みまして、第八条と第十条で二つ賠償措置仕組みが書かれております。一つ民間契約に基づく保険金、それからもう一つ政府契約に基づく補償金、この二つ措置額の種類があるのですけれども、その内容、そしてその違いについてお聞きします。
  8. 青江茂

    青江政府委員 お答え申し上げます。  先生指摘のとおり、我が国におきましての賠償措置原賠制度枠組みの中におきましてあらかじめ用意をさせておく賠償措置というものにつきましては、二本立てになってございまして、一つは、民間私企業民間保険会社との間に締結をいたしますところの原子力損害賠償責任保険契約というものと、もう一つは、政府との間に契約をいたします原子力損害賠償補償契約という二本から成っておるわけでございます。  これは、第一義的には、原子力損害に関しましては、民間責任民間保険契約においてこれをカバーしていくということになってございまして、そこでは埋めることのできない損害、これは具体的に申し上げますと、地震噴火によって生じた原子力損害正常運転によって生じた原子力損害等でございますけれども、そういう民間のサイドでカバーし切れないものを政府の方の補償契約でもってカバーする、この二本立てで十全を期すといいましょうか、全体を埋めていくという仕掛けになってございます。
  9. 斉藤鉄夫

    斉藤(鉄)委員 民間保険でカバーできるものについては民間保険で、それで、民間保険会社がとてもこんなものでは契約できませんというものについては政府がその措置をするということだと思いますが、先ほどの御説明の中に、ちょっとぴんとこなかった部分は、正常運転によって起きた事故、これについては政府補償しますと。これはどういう意味でしょうか。
  10. 青江茂

    青江政府委員 原子力損害が生ずるときに、例えば何か故障があるとか、何かいわゆるミスがある、そういったふうなことでございますと非常にクリアなんでございますけれども、そういった起因となるべき事象というのがないという状況下におきまして、もし万々が一何か損害というのが発生することというのは、現実問題としましては私どもなかなか具体的には想定しがたいところなのでございますけれども、制度完結性を期すとでも申しましょうか、正常にずっと運転しておっても被害が生ずるというふうなことというのは観念的にはゼロではないだろう、制度発足の当初からそういう考えに立ってございまして、そういうふうな、具体的にはどうも考えられないところもきちんと被害者救済ということに万全を期すということをもちまして制度というのをつくっておるところでございます。
  11. 斉藤鉄夫

    斉藤(鉄)委員 法的なすき間を埋めるという意味ではわかりましたが、例えばこれまでの科学的知見では予測し得なかったような新しい事象、現象が起きてしまって、それによる事故、そういう場合については民間保険ではカバーできないので政府補償します、こういう理解でいいんでしょうか。
  12. 青江茂

    青江政府委員 具体的な態様によるのではないかというふうに思うわけでございますが、今までは判明していなかった新しい事象、そういったことが一つ起因となりましての事故ということは、そのときの具体的な事例に即しまして、それが正常な運転というものの継続中に、その過程の中において起きたものなのかどうなのかという事実関係の判定ということになってこようかというふうに思ってございます。
  13. 斉藤鉄夫

    斉藤(鉄)委員 民間保険契約については、当然これは民間会社保険料を払うんですが、政府契約の場合には、これは政府契約に基づく補償金ということですけれども、契約政府保険料みたいなものを払うんですか。
  14. 青江茂

    青江政府委員 お答え申し上げます。  政府との間に補償契約というものを締結をする、それによりまして民間事業者政府に対しまして補償料というものを払います。これは、いわゆる民間保険会社契約を結んだ際の保険料と同質のものでございます。
  15. 斉藤鉄夫

    斉藤(鉄)委員 わかりました。  そうすると、第十七条に、これは賠償措置額とは関係なく、政府が全面的に被害者補償するという条項がございますが、この第十七条による場合は、政府契約契約金は払わないという理解でよろしいんでしょうか。その十七条の場合とはどんな場合か、それも含めてお伺いします。
  16. 青江茂

    青江政府委員 お答え申し上げます。  十七条というものが動き出す状況と申しますのは、これは、事業者がもう免責されているような状態ということなのでございますけれども、具体的には、異常に巨大な天変地異または社会的動乱によりますところの原子力損害が生じた場合ということになるわけでございます。  保険とか政府との間の補償契約、これは、民事賠償世界の話と申しましょうか、加害者被害者がいて、その関係損害賠償というものをどうカバーしていくのかというふうな、いわゆる民事賠償行動原理というものが適用になっている世界の話ということに対しまして、今申し上げました異常に巨大な天変地異または社会的動乱、こういった事態というのは、いわゆる民事賠償の問題というふうなことではなくて、これは日本の国家にとりましてのいわば異常な事態でございますので、政府自体がその被害者救済に当たるというふうなことになってございます。
  17. 斉藤鉄夫

    斉藤(鉄)委員 人知を超えるような異常な天然災害という場合に十七条が適用される、わかりました。  その無限責任がうたわれているわけです。迅速な被害救済のために賠償措置額を設定するということになっておりますが、この賠償措置額を超える損害が出た場合でも、これは無限責任ですから、基本的には原子力事業者がその責めを負うということだと思うんですが、その場合、賠償措置額を超えた損害が出た場合に政府援助をする、こういうことはどういう場合に起こるんでしょうか。
  18. 青江茂

    青江政府委員 政府援助をするということにつきましては、今先生がおっしゃられたような事態というのが考えられるわけでございますけれども、具体的に申し上げますと、今回、改正後でございますと、被害総額が六百億円を超えるということがまず一つあるわけでございます。  それと同時に、この法律目的を達成するために必要があると認めるときというのは、六百億円を超え、かつ、この法律目的を達成するために必要があると認めるときということでございまして、その法律目的と申しますのが、被害者救済というものに万全を期すということと原子力事業者の健全な発展というものを促すということが法目的に書かれてございます。この二つ法目的というものを達成するために必要があると認めるときということであろうかと思うわけでございます。  ということは、もう少しかみ砕いて申し上げますと、六百億円を超える、それで、先生が先ほどおっしゃいましたとおり、第一義的には原子力事業者そのものが、六百億円を超えて、被害が生じただけ無限責任を負っておるわけでございますが、そういたしますと、原子力事業者はその被害者に対しまして例えば自分資産を取り崩してでもその責任を全うするということになるわけでございます。  そういうふうなことをしていくという場合に、例えば公益事業者たる電気事業者自分資産というものを失うことによりまして公益事業を今後とも全うすることができないというふうなことに相なりますれば、それはまた公益にも反するということにもなるわけでございまして、その辺のバランスというものを勘案しながら、これは国会が、政府としてどういうふうな措置をとったらいいのかということを最終的にはお考えになることであるというふうに理解をいたしてございます。
  19. 斉藤鉄夫

    斉藤(鉄)委員 国会がその場合は最終的に決めるという御答弁でしたけれども、そこら辺の仕組み、どういう基準で、これは原子力事業者が負担すべきこと、この部分原子力事業者の財政や資産状況もかんがみて国が援助せざるを得ないところという線引きを決めること、ちょっと今後整備していかなければいけないなというふうな気がいたしました。  それから、無過失責任ということで、過失第三者にあっても原子力事業者が全面的に責めを負うということになっているんですけれども、ということは、明らかに第三者過失がある、例えば原子力発電所を建設したある民間企業設計ミスだった、こういうことが明らかになった場合でもその責任は追及できないんですか。
  20. 青江茂

    青江政府委員 お答え申し上げます。  無過失責任ということにつきましては、原子力事業者無過失責任ということを規定しておるわけでございますが、その場合に、いわゆる責任は集中されてございまして、原子力施設というものをオペレートしてございます原子力事業者被害者に対しましては全面的に集中して責任を負うという形になってございます。  今先生がおっしゃられました機器サプライヤーというところに過失があるという場合には、まず被害者との関係におきましては、前面に立ちますのは、原子力事業者といいましょうか、機器のオペレーターの方でございます。例えば、原子炉運転でございますと電気事業者ということになるわけでございますが、その電気事業者前面に立ちまして被害者に対しましては責任を負う。その場合に、機器サプライヤー過失というものに起因をするというふうなケースでございますと、これは求償という問題になってくるわけでございます。  求償につきましては、過失につきましては法律によりまして求償権を制限してございまして、これは第五条でございますけれども、過失がある機器サプライヤーに対しましては原子力事業者求償できないという形になってございます。  したがいまして、過失ということにつきましては、機器サプライヤー責めを免れるという形になってございます。
  21. 斉藤鉄夫

    斉藤(鉄)委員 責めを免れる。  例えばこういう場合はどうなんでしょうか。事故が起きた、賠償措置額保険金が出て、その被害を受けた方に補償がされた、その後で、明らかにこれはある機器設計ミスによって事故が起こった、その過失が明確になったという場合、保険会社が黙っていないと思うのですが、保険金の扱いはどうなるのか、その場合の第三者はどういうふうに扱われるのか、責任はどうなるのか、この点についてはどうでしょうか。
  22. 青江茂

    青江政府委員 御答弁申し上げます。  先ほど申し上げましたとおり、求償権法律上制限されてございます。過失につきましては求償権の行使というのができないという形になってございます。  ということで、今先生指摘になられましたようなケース、あくまでそれは第三者過失ということでございますと、第三者に対しまして求償権が行使できないわけでございますので、今先ほどと全く同じことになってしまうのでございますけれども、そこに対しまして責めを問うことができないということになるわけでございます。  保険会社も、そういう意味で、保険代位請求といいましょうか、そういった代位請求権というのも取得をしないということになっておるわけでございます。代位請求権を取得しないということになるわけでございます。
  23. 斉藤鉄夫

    斉藤(鉄)委員 では、そういうことも考慮して保険料が定められるということなんでしょうか。  そうしますと、施設の建設また運転について、原子力事業者は、万全の設計管理品質管理施工管理それから運転管理をしていかなきゃいけない、こういうことなんですかね。
  24. 青江茂

    青江政府委員 お答え申し上げます。  まさに被害者との関係におきまして、原子力事業者責任を全面的に負うということでございますので、そういうこととの脈絡の中におきまして、原子力事業者原子力施設というものを所有し運転をする事業者というものは、先生今おっしゃられたような十分な注意を払って運転をしていくということになろうかというふうに思います。
  25. 斉藤鉄夫

    斉藤(鉄)委員 第七条についてはわかりました。  第十条による政府補償金についても同様の考え方、つまり、民間会社から一種の保険料みたいなものをもらって、政府補償する。この場合は第三者というのはないのですかね。明らかに第三者にかかわる、例えばテロとか、保険ではカバーできないような、しかし明らかに第三者が存在してその事故が起きた、政府補償金によって補償がされたという場合、政府は、その過失を起こした第三者に対して何らかの求償をするということはできないのでしょうか。
  26. 青江茂

    青江政府委員 お答え申し上げます。  政府補償の方がカバーする範囲と申しますのは、先ほど申し上げましたように、民間の方の責任保険でカバーし切れないところというところでございまして、具体的には、地震噴火、それから正常運転等、こういうふうなことがケースとしては考えられるわけでございます。  そういうふうなことにかんがみますと、第三者過失によってそういったことがというのが具体的にはちょっと思い浮かばないのでございますが、そういうことがもしあるといたしましても、基本的な第三者過失ということに対しましての求償という問題は、先ほど申し上げましたのと同じ原理が働くということでございます。
  27. 斉藤鉄夫

    斉藤(鉄)委員 使用済み核燃料中間貯蔵施設、これは、この後の法案審査原子炉規制法でまた慎重に時間をかけて審議をすることになっておりますが、この中間貯蔵施設措置額、これは大体どの程度なのでしょうか。
  28. 青江茂

    青江政府委員 お答え申し上げます。  中間貯蔵施設につきましては、まさに今先生がおっしゃられましたとおり、原子炉等規制法の一部改正法案の中におきまして、その業というものを設けるのが妥当なのかどうなのか、そして、その規制枠組みというのが妥当なのかどうなのかという御議論をいただくということになっておるわけでございます。  したがいまして、この原賠法の方におきましては、これは附則でもって手当てをしておるわけでございますけれども、そちらの方の原子炉等規制法の一部改正法案でもって認められれば、こちらの方の原賠法世界の中にも入れ込んでいくというだけの手当てをしておるということでございます。  ちなみに、今の御質問賠償措置額がどれくらいになるのかということにつきましては、これは政令で定めるということとされてございまして、本法案の成立後に検討していくというふうなことになるわけでございますけれども、原子力委員会のもとに設けられました原子力損害賠償制度専門部会、今回の法改正というものを御審議いただくに先立ちまして原子力委員会のもとに設けましたこの専門部会でもっていろいろな角度からの議論をいただいて、法案を御提出申し上げたわけでございます。その中での議論におきましては、今の点につきましては、既に、使用済み燃料や高レベル放射性廃棄物ガラス固化体、こういったものについての管理、輸送につきましては、現行六十億円という賠償措置額というものが規定されているということがございまして、この点を踏まえて今後検討していくべしというふうな方向というのが指摘をされてございます。  こういうことで対処してまいりたいというふうに思ってございます。
  29. 斉藤鉄夫

    斉藤(鉄)委員 わかりました。  損害が出たときの賠償制度について、このように念入りに仕組みが組まれているのは、原子力以外にあるのでしょうか。
  30. 青江茂

    青江政府委員 お答えを申し上げます。  過失責任という民法の大原則に対しましての無過失責任ということにつきましては、幾つかの事例はございますけれども、今先生が御指摘になられましたような原子力損害賠償仕組み、すなわち、無過失責任のほか、責任の集中でございますとか、賠償措置額というものをあらかじめ用意をさせておく、そして、それを超えて必要な場合には政府一定の支援というものも行う、こういった、非常に入念なと申しましょうか、賠償被害者救済ということについて大変入念な仕組みといいますものは、原子力というもののほかにはないというふうに承知をしてございます。
  31. 斉藤鉄夫

    斉藤(鉄)委員 大臣にお伺いします。  先ほど青江局長が答弁されたように、原子力については非常に特殊な、念入りな損害賠償制度用意されている。これは、私としてはすばらしいことだと思うのですけれども、この原子力だけが特別である、こういう原子力特異性のよって来るところはどこにあるのか、その点についての大臣のお考えをお伺いします。
  32. 有馬朗人

    有馬国務大臣 原子力ということに関しては、やはり核燃料物質の持つエネルギーが非常に大きいこと、発生する放射線を利用するものである、そういう意味で、放射能を閉じ込めて確実に安全を確保して、原子力関係の例えば発電炉が動くということが非常に必要なことでございますね。  もちろん、それを利用する技術体系は、現在の科学技術の最先端を行く専門性が極めて高い巨大技術であります。そういう意味でも、あらゆる点で安全性は確保されていると思うのですけれども、それでもやはり、万が一事故が起こりますと、状況いかんによってはかなり相当の規模の原子力損害が起こる可能性がゼロではございません。少し広い地域に影響を与えるようなこともあるでしょう。  その原因の特定に当たっても、非常に専門の人々、物理学生物学それから核工学核化学などの専門的な知識が必要になると思います。そのために、原子力損害賠償法においても、被害者保護等に万全の措置を講ずる観点から、被害者加害者の故意または過失を立証する義務を不要として、加害者たる原子力事業者に無過失損害賠償責任を負わせるとともに、一定の場合においては国が援助等を行うというふうに定められたものでございます。そういう非常に高度の技術を要するというあたりが、特に原子力の場合に注意して考えなきゃいけないことかと思います。
  33. 斉藤鉄夫

    斉藤(鉄)委員 原賠法議論からちょっと外れますが、いわゆる核エネルギーを使った施設事故ということになりますと、核分裂炉による事故、それから核融合炉による事故核融合炉による事故、これも、夢物語と言うと言葉は変ですけれども、架空のことではなくなってきました。大きな核融合実験施設も現実に建設されております。  この核分裂炉事故核融合炉事故事故という観点から見た場合のこの二つの方法についての大臣のお考えをお伺いします。
  34. 有馬朗人

    有馬国務大臣 ただいま、核分裂を使う炉と核融合を使う炉の評価、特に事故をめぐっての評価ということでございます。どちら側がより危険かということであれば、いろいろ考え方はあると思いますが、原理的に違いがございますね。片方は分裂、それから片方は融合する。  分裂の場合には、そこから発生するさまざまの二次的な放射能を帯びた物質がつくられます。それに対して核融合の方は、もちろん多少は生じますけれども、非常に寿命の長い核分裂物質に比べてずっと軽い、放射能を帯びた物質が少ないという点が核融合の方がすぐれていると思います。  それからもう一つは、核融合の方ですと、燃やす原料であるトリチウムをやめさえすればすぐ火が消えてしまいますね。そういう点では、核融合の方がさまざまな点で取り扱いやすいということもあろうかと思います。  それにいたしましても、核分裂も、特に軽水炉型の原子力発電は非常に安全なことでございますので、私はこれは十分安全確保ができていると考えております。それに対して核融合炉の方は、今御指摘のように、かなりのエネルギーを閉じ込めることは同じですから、そういうことで新たな事故ということを考えなきゃいけないという点はあると思います。そういう意味で、今後さらに核融合に関しては、実現の途上においてより安全を高める技術を開発していかなければならないと思っております。  しかし、原理的にはトリチウムをとめればもうそれで核融合はとまりますので、安全性に関して言えば核融合の方が幾らか楽であろうかと思っております。
  35. 斉藤鉄夫

    斉藤(鉄)委員 そういう意味でも、核融合炉の研究につきましては引き続き御努力をいただきたいと思います。  大臣に最後に質問させていただきますが、人類は核と共存できない、こういう信念をおっしゃる方がいらっしゃいます。この場合の核は、核兵器という場合もございますし、平和利用の原子力ということでおっしゃる方もございます。その一つの論拠は、核エネルギーというのは人類が生み出したエネルギーであって、自然には存在しない、そういうのを一つの論拠にしている人がいるんですが、核融合につきましては、太陽がまさしく巨大な核融合炉で自然に存在しますし、核分裂につきましても、オクロの天然原子炉、何億年も地中でウランの核分裂の連鎖反応が続いたというものもあって、天然の核分裂原子炉もこれは存在するわけでございまして、私は自然に存在したと思うわけでございます。  そういう意味で、人類は核エネルギーと共存できないその論拠として、特に核分裂については自然に存在しなかった、人間が生み出した悪魔のエネルギーであるという論拠は崩れていると思うんですけれども、それも含めまして、人類と核エネルギーにつきましての大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  36. 有馬朗人

    有馬国務大臣 ただいま斉藤委員おっしゃられましたとおりに、アフリカのガボン共和国に、約二十億年前に天然に存在するウラン鉱石が核分裂の連鎖反応を起こした、こういうことが既に鉱床の中で発見されています。  それから、御指摘のように、星、特に太陽などは核融合によって光をつくり出しておりますし熱をつくり出していますので、そういう意味では、人類は古来、御指摘のとおり核エネルギーで生活しているようなものでございます。  それから、先生の頭の中も今もニュートリノなんかが、あるいはミューオンなんというのが貫いているわけですね。そういう意味で、自然放射能というのもかなり高いんです、決してゼロではない。そういう意味で、もう既に我々は十分自然に核エネルギーと共存しているということを少し申し上げてみたいと思います。これは斉藤先生の御指摘のとおりでございます。  それから、既に原子力は随分我々に対して電力を供給してくれております。原子力による電力というものは、まず第一に、二酸化炭素が出ない。それから、割に皆さんお忘れになっていますけれども、ぜんそくのもとになる窒素化合物とか硫黄化合物というものを出さない。これは化石燃料を燃やした場合と大きな違いがございますので、こういう点で、地球環境、特に空気汚染というふうな点では極めて安全なエネルギーだと思っています。  それから、我々はついつい忘れがちですけれども、放射能を帯びた物質、例えばコバルトというふうなものでがん治療をするとか、非常に今生活の中で放射能の利用を図っているわけですね。あるいは、医学治療のトレーサーなどというものも、随分そういう原子核の分裂を使ったり原子核から出てくるアルファ線を使ったり、さまざまなことを使っております。  そういう意味で、原子力は自然の中で、あるいは人類とともに共存できない、共生できないということは間違いでありまして、既に人類は原子力をさまざまな面で大変利用しているということを、もう先生はよく御存じのことでありますが、御認識賜れれば幸いだと思っております。  それにしても、やはり原子力安全性ということに関しては、我々科学技術者は徹底的な工夫をしていかなければならないと思っております。
  37. 斉藤鉄夫

    斉藤(鉄)委員 終わります。
  38. 北側一雄

  39. 近江巳記夫

    ○近江委員 近江でございます。  この法律は、昭和三十六年、一九六一年にできまして、それから十年後の七一年、七九年、八九年と今日まで改正をいたしてまいりました。私も何回かこの改正に当たりまして審議に当たらせていただいたわけでございます。  今回は、この賠償措置額につきまして三百億から六百億、また十年の延長、中間貯蔵施設に対するそうした規定、こうなっております。これはあくまで国内法でございます。そこで、私はチェルノブイリの例を見まして、いわゆる国境を越えた地域の問題、これが非常に大きな問題となって浮かび上がっておるわけでございます。  一昨年、私はロシア、ウクライナを訪問いたしました。特にウクライナに参りましたときに、その後遺症のすさまじさといいますか、大きさというのに愕然としたわけでございます。国家予算の一〇%以上、いまだに毎年それを充てておるということでございまして、これがいかに大きなおもしになっておるかということを痛感したような次第でございます。  いろいろと向こうの状況をお聞きいたしてまいりましたけれども、特にロシア、ソ連の場合、その後どのぐらい支出したかというのは、確たるものがないわけですね、やはり継続してずっと行われておるわけでございますし。そういうことで、旧ソ連としては、物的損害に対して約二千億ルーブルぐらい支払ったのではないかとか、被害者に対する補償として二十五億ルーブルを支払ったとか、いろいろ言われておりますが、諸外国に対しては、ウィーン条約にも加盟しておらないということで、支払われていないわけですね。  ところが、周辺諸国の、ベラルーシ、ウクライナは当然のことでございますし、西ドイツでは五億ドイツ・マルク、日本円で四百一億円、いろいろ為替レートがございますので数字は動くと思いますが、オーストリアで約十五億シリング、百七十二億円、イタリアで約五千億リラ、約五百六十七億円、ノルウェーで一億六千五百万ノルウェー・クローネ、三十六億円、スウェーデンで約二億五千万スウェーデン・クローネ、約五十八億円、英国で四百三十万ポンド、約十億円等々。これは、その後のこともございますし、調査をしますと、もっと大きな額になってくると思うのですね。そういう意味におきまして、国境を越えた、地域の問題ということは非常に大きな問題でございます。  そこでお聞きしたいのは、韓国、台湾、中国等、それぞれエネルギーの使用量というものは非常に上がってきておりますし、原発の増設も進んでおるようでございます。まず、現状につきまして、どうなっておるか、お伺いしたいと思います。
  40. 青江茂

    青江政府委員 中国、韓国、台湾の原子力発電の現状といったことにつきまして、状況を御説明申し上げます。  まず中国でございますけれども、運転中が三基、建設中が五基でございます。運転中の全体の設備容量が二百二十七万キロワットという状況にございます。韓国でございますが、運転中が十四基、建設中が六基。運転中の全設備容量は一千二百二万キロワットでございます。台湾におきましては、運転中が六基、その設備容量は五百十四万キロワットという状況だというふうに聞いております。
  41. 近江巳記夫

    ○近江委員 周辺諸国、それぞれ今御報告いただいたわけでございますが、安全性等、今、危惧すべきそういう問題というのは起こっていないのですか。どのように認識されておられますか。
  42. 青江茂

    青江政府委員 お答え申し上げます。  原子力施設安全性ということにつきましては、これはもう言わずもがなでございますけれども、第一義的にはその施設を保有する国が負うべきものという大原則があろうと思うわけでございます。私ども、了知している限りにおきましては、今触れました韓国、中国それから台湾といった国におきましての原子力発電所安全性ということにつきましては、一時、いわゆる旧ロシアにおきましての原子力施設がいろいろな議論がございましたけれども、そういった状況にはないというふうに認識をいたしてございます。  ただ、周辺諸国におきましての安全性というものに、原子力先進国たる日本としましてもやはり一定の協力をしていくということも大変重要な課題というふうに思ってございまして、各般の国際会議等におきまして日本がイニシアチブをとる、具体的に専門家を派遣する、それから、トレーニーを受け入れる、こういったふうなことを通じまして、そういった国々におきましての原子力発電所安全性確保ということにつきましては所要の協力というものを進めておるという状況にございます。
  43. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうしますと、原子力損害賠償制度は各国どうなっているのですか。
  44. 青江茂

    青江政府委員 お答え申し上げます。  各国の原子力損害賠償制度の整備状況ということでございますけれども、まず、中国におきましては、原子力損害につきましての賠償の法の枠組みというものは整備されてございません。  それから韓国でございますけれども、韓国は整備がされてございますが、無限責任制度をとってございまして、あらかじめ用意をさせておくべき賠償措置額につきましては、六十億ウォン、邦貨に直しまして約六億円ということが義務づけられてございます。  それから台湾の方でございますけれども、台湾におきましても、原賠制度というものは整備されてございます。有限責任という考えをとってございます。責任制限額が四十二億台湾元、邦貨に直しまして百六十八億円、こういう状況だというふうに聞いております。  そのほか、原発そのものは持ってございませんけれども、インドネシア、マレーシア、フィリピン等、研究炉は持っている国がございますけれども、それらの国におきましても、一応原賠制度というものは整備がされておるというふうに聞いております。
  45. 近江巳記夫

    ○近江委員 各国の状況というのは今御報告があったとおりでございます。大臣もお聞きのとおりです。ないところもあるし、また、極めて額も少ない。さまざまな国の事情からこうなっておると思うのでございます。ところが、先ほどチェルノブイリの例を申し上げましたように、これは極めて大事な問題だと思うのですね。  今日まで、各国の状況というのは、御承知のように、パリ条約につきましてはOECD加盟の十四カ国ということでございますし、ウィーン条約におきましては中東欧、中南米等が加盟しておるわけでございまして、我が国は入っておらないわけです。そういうことで、アジア地域のこういう状況考えますと、これは国内的な措置をしただけで、国民としてはこれは非常に不安ですね。当然各地域の、話し合いもし、何らかのそういう連帯を考えなければならない。また、安全性の面におきましても、我が国には大きなトラブルはないといえども、周辺地域を考えますと、これまた技術面のしっかりした連帯といいますか、これが大事になってきますね。その辺のことにつきまして、政府としては今後どのように取り組んでいかれるわけですか。
  46. 青江茂

    青江政府委員 お答え申し上げます。  先生まさに御指摘のとおり、原子力事故というものにつきましては、万一そういったことが生じた場合におきましては、被害というものが相当大規模なものになる、そしてそれが国境を越えて発生する可能性があるというふうなことにかんがみますと、今先生指摘の、国際的な合意づくりというものを行っていくことの意義というものは大変大きなものというふうに認識をいたしてございます。  一方、我が国周辺諸国の原賠というものに関しましての実態といいますものは、先ほど私の方から御報告を申し上げたとおりでございます。  ということでもちまして、それぞれの国におきまして国際的に遜色のない国内体制というものをつくっていただくということがまずは第一であろうというふうに思ってございまして、これは、アジアの原子力会議とかそういった場を通じまして、日本がイニシアチブをとりながらそういうふうなことを促しておるという状況にあるわけでございますけれども、そういう先に、国際的な枠組み、例えば先生今御指摘になられましたウィーン条約にこぞって入るというのも一つでございましょうし、独自の一つの国際的なスキームというものを用意するというのも一つでございましょうし、そういったことを考えていかなければならないんではないかというふうに思ってございます。
  47. 近江巳記夫

    ○近江委員 これは、各国に促すというだけの姿勢ではなくして、やはり強力なリーダーシップをとっていただいて進める必要があると思います。今までこれだけの経過がありながら進んでいませんね。ですから、特にこれは大臣に、各国のその辺の協調、働きかけを強めていただきたいと思うんです。御答弁をお願いしたいと思います。
  48. 有馬朗人

    有馬国務大臣 まさに先生指摘のとおりでございます。  まず、原子力に関しては、たびたび申し上げておりますように、最大限の努力をして安全確保を図っていかなければならないと思いますが、ただ、人間のやることでありますから、万一の場合に備えて、何か起こるということに対しまして、原子力損害賠償制度を充実したものにしておくということが不可欠だと思っております。  それからもう一つ原子力事故というものが万一生じた場合に、被害が大規模に発生するものになって、国境を越えて損害が発生する可能性もゼロではございません。そういう意味で、原子力損害賠償制度に関する国際的な合意づくりというのは、急いで確実に被害者の救済を行うための枠組みとして極めて重要なものと認識いたしております。  日本は、これまでも、賠償措置額の引き上げ等、原子力損害賠償制度を国際的に見て遜色のないものにするよう努力をしてまいりましたが、一方、今御指摘をいただきましたように、原子力先進国たる我が国といたしましては、近隣諸国における賠償制度は必ずしも国際水準にあるとは言えないため、あらゆる機会を活用しつつ、先生指摘のようにリーダーシップを発揮いたしまして、日本の近隣諸国における原子力損害賠償制度の整備充実に向けて積極的に取り組んでまいりたいと考えております。
  49. 近江巳記夫

    ○近江委員 そうした措置をとるべく作業を進めていただくと同時に、何といいましても、これは未然防止、これから以後も絶対そういうことが起きないということが一番大事なことでございます。そういうことで、アジア、特に近隣諸国とのそういう安全面における切磋琢磨といいますか、これが非常に大事だと思うんですね。今どういう施策をとっておられるのか。きょうは大臣もいらっしゃるし、エネルギー庁長官もお見えになっておるわけですけれども、どちらでも結構ですが、アジアの原発諸国の安全対策についてどういう作業を進めておられるか、お聞きしたいと思います。
  50. 青江茂

    青江政府委員 お答え申し上げます。  具体的には、アジア原子力安全会議という場が一つございます。それからもう一つは、アジア地域原子力協力国際会議というのがございます。こういった場を通じまして、アジア地域におきましての原子力安全確保に関しましての政府間それから当事者の対話の促進、それから、原子力安全文化のためのワークショップの開催、こういったものを累次継続して行ってきておるというのがございます。  また、日本原子力研究所でございますとか、放射線医学総合研究所等におきまして、近隣諸国との間で、原子力関係者、研究者、技術者、行政官、こういったそれぞれのレベルにおきましての派遣それから受け入れ、招聘、こういったことによりまして原子力安全に関する技術レベル、安全意識の向上というものを図る。それから、規制情報交換というものを行いまして、安全に関する制度面への協力というものも行ってきてございます。  そういった具体的な対応措置というものをとってきておるわけでございますけれども、こういったものは、いわゆる原子力発電所レベルといいますか、民間事業者レベル、こういったものもその活動の一環の中に入れまして、通産省、科技庁、協力連携しながら進めているところでございます。
  51. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 若干の補足をさせていただきますが、アジア地域における原子力発電は今後さらに重要な役割を果たしていくという中で、一たん事故が起きましたときには、その影響が単に当事国のみならず国境を越えて周辺国に広く及ぶ。いわば同じ船に乗っているという認識がございまして、こういった趣旨から、二国間、多国間の協力をアジアとの間にも行っているところでございます。  若干の例を申し上げますと、アジア原子力安全会議、これは既に今局長からお話がございました。九六年、原子力モスクワ・サミットというのが行われまして、その中で、原子力安全の確保に向けた各国の取り組みの促進、域内協力の強化を図るという趣旨で、アジア域内で行ってございます。  それからいま一つは、IAEAの特別拠出金事業にアジア・プロジェクトというのがございます。我が国から特別拠出金を出しまして、アジアの原子力安全を支援するプロジェクトとして位置づけてございまして、実炉、計画中の炉の安全のレビューを、それぞれ先進国も入ってアドバイザリーグループをつくってお話し合いをするというものでございます。  また、二国間では、中国、韓国とそれぞれ原子力責任省庁との間の定期会合を持ってございまして、運転管理データの交換をする、あるいは技術専門家の交換などを行ってございまして、これは、インドネシアともその開催に向けて交渉中でございます。  また、別途研修・セミナーを行ってございまして、原子力発電の開発初期段階にある国を対象といたしまして、長期研修・原子力安全セミナーをやっております。  また、九一年七月のロンドン・サミットを受けまして、旧ソ連、東欧諸国、それから一部アジア諸国から、十年間で千人規模で研修生を受け入れるという千人研修を行っているところでございます。
  52. 近江巳記夫

    ○近江委員 それぞれ努力していただいておる、そういうことについての報告があったわけでございますけれども、レールを敷いておるからそれでいいというのではなくして、刻々とやはり情勢は変化するわけでございますから、さらにまた充実したものができるように、政府としてはしっかり取り組んでいただきたいということを強く申し上げておきたいと思います。  それから、補償額の問題でございますが、この問題につきましては、パリ条約のブラッセル補足議定がございまして、一九九一年に発効しているわけですね。ウィーン条約も片やあるわけでございますが、我が国の場合の改正改正を見ておりますと、十年ごとに来ているわけですね。そうした場合、少なくとも我が国は原発の先進国でしょう、実態として。この補償ということ一つ考えても、先進国、しかもリードをしておる我が国として、後追い、後追いのそういう姿勢でいいのかという問題が一つある。これに対する考えをいただきたい。  それとあわせて、十年、十年の改定といいますけれども、これもまた非常に変化しているわけですから、期間というものを、十年なら十年という一区切りの設定でいいのかどうか。これは柔軟に今後見直していくのかどうか。以上二点についてお伺いしたいと思います。
  53. 青江茂

    青江政府委員 お答え申し上げます。  確かに、今回三百億円を六百億円にという改正案を御審議いただくことにしたその背景といたしまして、一つ改正ウィーン条約、これが三億SDR、邦貨に直しまして大体五百数十億円でございましょうか、そういったオーダーというものが合意を見たというふうなことを私ども参考にいたしたということでございます。  その意味におきまして、先生指摘のとおり、確かにヨーロッパ諸国の動きというものを見つつ我が国が後を追っておるというふうな実態でございまして、私どもも、やはり原子力先進国といたしまして、被害者救済原子力産業の健全な育成、この法目的に照らしまして、もう少しきちんと弾力的に考えていくべきであろうというふうに反省をいたしているところでございます。  そういう意味におきまして、確かに、現実、十年、十年でずっと改正をしてきておるわけでございますけれども、この法条項は、十年以内であればいつ見直してもよろしいわけでございまして、法は許しておるわけでございますので、今の先生の御指摘を踏まえまして、適宜、弾力的に、原子力先進国としての役割というものも十分に勘案しながら検討してまいりたい、かように考えてございます。
  54. 近江巳記夫

    ○近江委員 これは各国の状況も違うんです。  日本の場合は、御承知のように、人口が一億二千五百万人、原発が現在五十二基。ドイツの状態を見ますと、人口が八千百六十六万人、これで二十基です。スイスが七百四万人で五基、フランスが五千八百三十八万人で五十六基、英国が五千八百六十一万人で三十五基、こうなっております。これは、人口割り、また地域、いろいろなデータの当てはめ方があると思うんです。違うんです。そうしますと、日本の国土、また形状、人口からいたしましても、五十二基、いろいろこれは当てはめてみますと、かなり密度は濃いです。  だから、そういうような中で、ただパリ条約のブラッセル補足、三億SDRが約五百六十億、それを参考にしましたということが今ございましたが、やはり常に各国を参考にするというんじゃなくして、我が国は先進国の中でもリードしておるわけですから、十分ひとつそれはさらに検討をしていただきたいと思います。  それからまた、この発足当時、昭和三十六年、御承知のように、これは当初五十億だったわけです。そのときのGNPというのは二十兆です。現在は約五百兆といたしましても、これは二十五倍です。そうしますと、その当時で五十億ですから、これは二十五倍しますと千二百五十億ということになるんです。それからいたしましても、やはり六百億という数字が妥当なのかどうかという計算もこれは成り立つわけでございます。  そういう点で、今後にわたってそれを検討するということを今表明されましたので、それはひとつ十分研究をしていただきたい、このように思います。  大臣、よろしゅうございますか。そのことで特に何かあります。
  55. 有馬朗人

    有馬国務大臣 今先生指摘のとおり、今回かなりの額に賠償額を上げなきゃならないという事情があると思います。今回の見直しに当たりましては、今後の国際的な基準となると考えられるウィーン条約改正議定書において三億SDRという一つの基準が示されたことも踏まえて、改定を行ったものでございます。同条約が発効していない現在において、我が国としては可能な限り早く改正を行ったものと考えております。  本制度につきましては、今回十年間の延長をお願いしておりますけれども、これは、この期限より早く制度の見直しを行う必要がないということを意味するものではございません。諸情勢の変化により必要が生じた場合には、当然に法改正を行うべきものと認識いたしております。  今後とも、御指摘を踏まえまして、日本という国の独自性、そういうことも十分考えながら、本制度が一層適切なものとなるよう常日ごろ心がけながら対処してまいりたいと思っております。その際に、先生指摘のとおり、日本の事情ということをよくよく考慮しながらこういうことについて判断をいたしたいと思っております。
  56. 近江巳記夫

    ○近江委員 この賠償制度というもの、ここでその範囲ということを考えなきゃいけないと思うんです。賠償対象の範囲、これをどこまで広く考えるかということでございます。  過去の事例を私もちょっと研究してみましたけれども、日本としては今までそういう適用事例がないという報告をいただいておりますが、外国を見てまいりますと、一九五七年、英国のウィンズケールのプルトニウム生産炉、ここで急速加熱のために燃料事故が発生した、そのとき、牛乳工場の出荷停止等に関して補償が支払われたという例が報告されております。それから、御承知のように、一九七九年、スリーマイルアイランドの二号炉、これにつきましては、相当なことがございまして、現在のところ、調べました範囲では約七千万ドル、八十億ですね。現在、係争中のものも相当あるということを言われております。それから、ソ連のことにつきましては先ほど申し上げたとおりでございますし、ソ連の場合は、関係諸国には支払いがされておりません。  そういうことからいきまして、これは請求者に対して支払われるということでございますけれども、公共物、例えば環境であるとか、あるいはまた風評である場合もあるかもわかりません。それから、避難する場合には一体どうなるのかというような、その辺の定めといいますか、これはやはりきちっとしておかないと、その場その場の検討でいいのかどうかということでございます。基本的な点、今どういうように検討されておるのか、お伺いしたいと思います。
  57. 青江茂

    青江政府委員 お答え申し上げます。  我が国原賠制度のもとにおきましては、損害の種類によって賠償の対象となるか否かといったふうなことは全く区別してございません。要は、要因たる核燃料物質等の核分裂でございますとか放射線の作用によりました損害というものがございますれば、因果関係にある限りにおきましてすべて対象になるということだというふうに私ども理解をしてございます。  ということでもちまして、今先生ちょっと幾つか御指摘になられました、例えば風評ということにつきましても、相当因果関係にございますればそれはカバーをする。それから、避難のための経費ということにつきましても、これも因果関係にあるということがございますればきちんとカバーをする。  それからもう一つ、大変難しい課題をおっしゃったわけでございますが、いわゆる環境損害の原状回復義務、原状回復費用ということにつきましても、これも同様に、放射線の作用等と相当因果関係にあるということでございますれば、それは当然のことながら原子力損害に該当するということでもって対処いたしたい、こういう基本的な考え方に立ってございます。
  58. 近江巳記夫

    ○近江委員 かなり幅広いお考えに立っておられます。私も、その方向でいいんじゃないかと思います。そういう点、あってはならないことでございますけれども、政府としては、対応につきまして深くよく検討し、対処してもらいたい、このように思います。  それから、先ほどから何回も申し上げておりますけれども、いわゆる未然防止、安全確保の問題です。  これは、御承知のように、今まで我が国では美浜の事故がございました。破断の問題です。私も何回もそうした点につきまして質疑も展開し、当時、パイプの破断なんということは考えられない、ずっとそういう答弁でありました。ところが、現実に起きたわけです。これは、レベルにおいては2か3の事故政府もそれを認定しておると思いますけれども、そういうこともあるわけですね。  そういう点におきまして、この未然防止、安全対策というのは、石橋をたたいて渡るといいますか、慎重にかつ細心に、念入りに、やり過ぎるということはないわけでございます。そういう点で、これは審査に当たり、設計段階から、施工の検査から、あらゆる細部にわたる一連の作業があろうかと思いますけれども、今日まで大きなそういうこともなかったという一種の安心感というか、日本の軽水炉は技術的にはほぼ確立されたようなことをちらちら私は聞くのですけれども、それは違うと思うのですね。ですから、そういう点で、私は、こういう大きなこともなく進んでおるときこそ、これは気を引き締めないと大変なことがまた想像されるわけです。  そういう点で、科学技術庁としても、また、きょうはエネルギー庁長官も現場の最高責任者としてお見えになっておるわけでございますし、原発初め原子力施設等、特に今政府として、いろいろな手続とかそういうことは私もわかっておりますから、ただこういうことをやっていますというのじゃなくして、要するに、どのポイントをそれぞれ最高責任者として意識して注意し、押さえておるかということをお聞かせいただきたいと思います。  では、まずエネルギー庁長官から。
  59. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 まず、御指摘のございましたように、原子力発電の開発利用に当たっては、徹底した安全の確保が大前提というのが原子力行政の基本と認識をいたしてございます。そうした認識のもとで、国として、原子炉等規制法及び電気事業法に基づきまして、設計、建設、運転の各段階におきまして厳重な安全規制を実施いたしてございます。また、各サイトに運転管理専門官を派遣いたしまして、こういうことによって日々の電気事業者の活動の厳しい指導監督を行っているところでございます。  御指摘がございました美浜の事故あるいはアメリカのスリーマイルアイランド、チェルノブイルなどの事故事象も踏まえまして、こういった中から教訓を得ながら、それぞれの段階での改善充実を図ってきているところでございます。  例えば、美浜に関しましては、品質保証基準をさらに充実する契機となりましたし、また審査対象も充実をしたところでございます。また、スリーマイルアイランドに関しましては、ECCSの信号系にかかわる安全基準設計を強化し、運転責任制度を確立し、運転管理専門官の派遣等を行ってきたところでございます。  こうした安全規制あるいは電気事業者の自主保安の結果として、今の原子力発電所運転実績は、世界的にも現状としてはしかるべきレベルに到達しているものと認識をいたしてございます。今後ともこの安全対策の一層の充実を図りたいと考えてございます。
  60. 間宮馨

    ○間宮政府委員 今、資源エネルギー庁長官から答弁ございましたが、我々といたしましても、異常の発生を未然に防止するということは当然でございますけれども、異常が発生しても事故に拡大しないように、あるいは事故が発生したとしても、放射性物質が異常に外部に放出されないようにという多重的な防護対策を実施するということで、未然の防止に努めてまいりたいと思っております。  一つの側面としてヒューマンエラー対策ということもあろうかと思いますが、ここら辺に関しましては、発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針におきまして、「原子炉施設は、運転員の誤操作を防止するための適切な措置を講じた設計であること」ということが示されておりまして、これに基づいての厳正な安全審査をしております。  特に事業所におきましては、スリーマイルアイランド事故等の教訓を生かしまして、人間工学的な見地から誤操作防止を配慮した制御盤の設計をすること、あるいは、運転員等の教育訓練の拡充強化を行うことで資質の維持向上を図ることというようなことも具体的に示しつつ、未然防止に努めてまいりたいと思っております。
  61. 近江巳記夫

    ○近江委員 この安全確保対策につきましては、これはもう何十時間とかかるでしょう、一つ一つのことをやっていきますと。ですから、きょうはとてもじゃないけれども、そういう時間はございません。  私は、今いろいろ御答弁あったわけでございますけれども、あの「もんじゅ」のときのさや管、これはもう何回も委員会でも出ておりますけれども、やはり部品一つ一つに至るまで、本当に設計の段階からも、また製作段階においても、これはやはり大きな教訓にしなきゃならないと思うのですね。ですから、そういう点で、それぞれ細部にわたるそういうところを慎重に、真剣に、各分野にわたって十分注意して取り組んでいただくように、長官に要望しておきたいと思います。  そういう中で、先般国会で、ものづくり基盤技術振興基本法が、これは参議院、衆議院、成立いたしました。これは、全党一致で、議員立法で出しました。今日まで、鍵田さん、あるいはまた参議院では今泉さんとか、よく頑張られたわけでございまして、私ども議員団で科学技術政策の会というのをつくっておりまして、ここでも十分いろいろと検討し、各党の協力を得ながらこれは提出したわけでございます。これは、一歩前進で、私は非常によかったんじゃないか、このように思っております。  いずれにしても、やはりこの基盤技術、原発等におきましてもそういうところが非常に今心配されつつあるのですね。御承知のように、今、建設状況が停滞もし、技術者の流出ということもございます。いろいろな背景がある。  そういうことで、今回、この基盤技術基本法が議員立法として通った、このことにつきまして、大臣の御感想といいますか、それをお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  62. 有馬朗人

    有馬国務大臣 私も、物づくり基盤技術は極めて大切であると思っております。我が国の経済の発展の基盤であるし、御指摘のとおり、原子力等々巨大科学の基礎をなすものでございますので、物づくりに携わる人々の質が保たれ、さらに向上できるようなことが必要であると思っております。そういう意味で、今回のものづくり基盤技術に関する基本法というふうなものは大変すばらしいものと私は思っております。
  63. 近江巳記夫

    ○近江委員 では終わります。
  64. 北側一雄

    北側委員長 吉井英勝君。
  65. 吉井英勝

    ○吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。  私は、原賠法につきましては科学技術庁の皆さんからもいろいろレクチャーも伺いまして、それで、日本の原発等、原子力施設における災害に当たってはその損害賠償していくという仕掛けが大体つくられていると。金額等につきましては、これはもちろん時代の変化等によってまた考えていかなければいけないでしょうし、そのことにつきましては大体レクチャーを伺ってよくわかったつもりなんですが、ただ、一つ穴があいているんじゃないかなというふうに思っているんです。  それは、例えば横須賀などに原子力艦船が入港してきたとき、入港中にそこで原子炉事故を起こしたときにどうなるかという問題です。そういう問題について、外務省に来ていただいておりますので、最初に若干そういうことを伺っておきたいというふうに思います。  外国原子力船については、入港に当たって、原子炉規制法第二十三条の二で、通常の船舶は運輸大臣の許可を必要とすることにしています。一方、原子力推進の軍艦の方は除外をされています。  そこで、国内における一般の原子力船の原子炉事故による被害が発生したときに損害賠償が行われるのかどうか、それをまず最初に伺っておきたいと思います。
  66. 青江茂

    青江政府委員 いわゆる軍艦以外の、一般の船舶のトラブルによりましての原子力損害というものが生じますれば、日本の原賠法というもので整理がされるということになってございます。
  67. 吉井英勝

    ○吉井委員 次に、横須賀に入港しているアメリカの原子力艦船の原子炉で周辺住民や施設被害を及ぼすような災害が発生した場合に、今の一般の話はちょっとおいておきまして、本当はそれも少し議論すべき余地があると思っているのですが、ちょっとおいておきまして、だれが、どんな根拠法で、どんな基準で損害賠償を行うことになるのか、これを伺いたいと思うのです。     〔委員長退席、斉藤(鉄)委員長代理着席〕
  68. 田中信明

    田中説明員 お答え申し上げます。  ただいま先生の御指摘の点につきましては、米国の原子力艦船による事故というものは万々が一あってはならないわけで、米国政府も十分に安全対策を講じているということでございますが、万一事故が発生した場合の賠償問題と申しますのは、日米安保条約に基づきます地位協定、これの関連条項に従って適切に処理されることとなっております。また、地位協定の適用がないような場合には、いつでも日米両国政府間の外交交渉というものによって問題の解決が図られることになっております。  先生の御指摘の点につきまして、どういう損害についてはどういうような手続で損害賠償の請求がなされるのかということだろうと思いますので、その点についてもう少し詳述いたしますと、人的損害というものにつきましては、地位協定の十八条の五というものがございまして、これが適用されます。この場合は、同条項の(a)に言います「自衛隊の行動から生ずる請求権に関する日本国の法令」でありますところの原子力損害賠償に関する法律というものが適用されまして、米側は無過失責任を負うということになっております。  それから、物的損害のうち、いわゆる小規模海事損害と言われますものにつきましては、地位協定の規定が適用されまして、私が今申し述べました人的損害と同様に処理されることとなっておりまして、この点につきましては昭和三十五年に日米間で確認しております。  それから、その他の物的損害といいますものにつきましては、地位協定の規定はその適用を除外されておりますが、これは外交交渉によって解決し得ることになっておりまして、政府といたしましては、我が国の関連国内法が適用されたとした場合に比較して被害者の保護の点において欠けることのないように、最大限の努力を払っていきたいと考えております。  また、これは地位協定及びその適用がないような場合でございますが、適用除外されたその他の物的損害につきましては、同時に米国の国内法による救済の手続が被害者に対しては道が開かれているわけでございまして、その場合には司法的または行政的な救済がある。また、私どもの国内法によって、そういう救済手続を利用する場合には日本の政府によるあっせんあるいはその他の必要な援助というものも考えられておりまして、被害者の救済には万全の措置が講ぜられることになっております。  いずれにせよ、いかなる場合にも外交交渉によって解決が可能であるというようなシステムになっております。
  69. 吉井英勝

    ○吉井委員 地位協定十八条の五項によって日本政府は処理するとしても、今もおっしゃったように、「自衛隊の行動から生ずる請求権に関する日本国の法令」というわけですが、御承知のように、自衛隊には原子力艦船はないわけです。ですから、自衛隊は原賠法に基づく保険を掛けているわけでもないのです。つまり、今おっしゃった実例は日本国内ではないわけですね。そういうもとで、交通事故でさえ、これまで、特に沖縄の場合ひどいわけですが、たくさんの被害者が出ても十分に償われてこない、そういう事例が無数にありました。  今、日本の国内法に準拠してという趣旨のことをおっしゃったのだけれども、では、米軍の方は原賠法に基づく保険を掛けているのかどうか、そういうことなども含めて、アメリカ政府責任で無制限の額まで損害がきちんと補償されると、これは法的に整理されているのかどうか、この点をもう一度伺いたいと思います。
  70. 田中信明

    田中説明員 先生お尋ねの地位協定の十八条の五項でございますが、ここの(a)に言いますところの「自衛隊の行動から生ずる請求権に関する日本国の法令」、これにつきましては、もちろん原子力損害賠償に関する法律もここに言う「日本国の法令」というものに該当するというふうに考えております。したがいまして、そういう意味で、米側は無過失責任を負って、日本の法令に従って請求権の処理を行うということになっております。
  71. 吉井英勝

    ○吉井委員 それでは、入港してくるアメリカの原子力艦船の原子炉ごとに保険料をちゃんと払っているわけですか。原子力損害賠償というのは、あくまでも保険を掛けていて、保険を掛けているということについて、損害が生じたときにきちんと保険金が支払われるということになるわけですが、これはちゃんと払っているわけですか。
  72. 田中信明

    田中説明員 地位協定の枠組みは、あくまでも米側は人的損害につきましては十八条の五項にのっとって処理するということになっておりますので、米側が無過失で要するに責任を負う。その責任の負い方については、法令に従って行うのと、それで不十分な場合においては外交交渉においてきちっと処理をしていくということになっております。
  73. 吉井英勝

    ○吉井委員 ですから、原賠法に基づく無過失賠償ということで、例えば人であれば、多数の住民が被害を受けた、六百億であろうと一千億であろうと補償する、原賠法のその精神といいますか、法律上の趣旨は尊重するという意味であったとしても、実際に、米軍が、横須賀や佐世保や沖縄などに寄港している原子力艦船の原子炉ごとに保険を掛けているわけじゃありませんから、その場合に、この原賠法というのは、保険を掛けていないがおいしいところだけいただいていくよというわけにいきませんから、その法律の趣旨にのっとるにしても、アメリカ自身の何か法律的根拠にのっとって、日本の原賠法と同じ、等価の補償が行われる、その根拠は何かあるはずですね。その根拠を聞かせてくださいと言っているんです。
  74. 田中信明

    田中説明員 先生の今の御指摘につきまして、私の申し述べたところをもう少し詳細に御説明いたしますと、先ほど申しましたように、アメリカ側は、人的損害の場合は、地位協定の十八条の五の(a)ということで、無過失責任を負うわけですが、被害者との関係におきましては、民事特別法によりまして、国家公務員が損害を与えた場合の例によって国が、日本政府がその損害賠償する責に任ずる、すなわち、具体的には、防衛施設庁が被害者からの請求を受けて当該賠償支払いを行うということになっております。
  75. 吉井英勝

    ○吉井委員 そうすると、伺っておきたいのは、防衛庁が原賠法に基づく保険を掛けているんですか。
  76. 田中信明

    田中説明員 本件につきましては、私どもの所掌ではないものですから、正確には防衛施設庁にお聞きいただければ大変ありがたいわけですが、一般論として申し述べますれば、国は付保せずという原則がございます。そういうもとで、防衛施設庁が民事特別法にのっとってその賠償被害者に対して行うということであると私は承知しております。
  77. 吉井英勝

    ○吉井委員 その民事特別法に基づいて、アメリカに、米軍にかわって日本政府被害者に対して補償するということにしても、その補償するお金はどこから出てくるのか。つまり、一般の日本の原子力施設の場合は、事業者原賠法に基づいて保険を掛けているわけですね。米軍にかわって防衛施設庁が保険を掛けておりますということであれば、それはきちっとした根拠があり、そして、支払いの財源的裏づけがある意味では出てくるわけですね。そこはどうなっているんですかということなんです。
  78. 青江茂

    青江政府委員 補足的に原賠法の方の仕組みにつきましてだけちょっと、私どもの方の所管の法律でございますので、御説明させていただきます。  原賠法の二十三条に「第三章、第十六条及び次章の規定は、国に適用しない。」という条項がございます。したがいまして、一例を挙げますと、国立大学が原子炉というものを設置、運転するということに当たりましては、国立大学が事前に、今先生が御指摘になられましたような、保険を掛けてその運転をするというふうなことは義務づけられてございません。と申しますのは、国が責任主体でございますので、被害を与えるときには国でございますので、国は、そういうことはあらかじめ講じておることなく、責任主体として、何らかの予算措置とかそういったことでもって対応するという考えに立っておるわけでございます。
  79. 吉井英勝

    ○吉井委員 今ので大体はっきりしたと思うんです。一般の外国の原子力艦船の場合ですと、これは運輸省が入港を許可するにしても、その原子炉については、結局、一般の原子力艦船を持っているその事業者保険を掛けるということでないとこの原賠法は適用されないことになるんですが、米軍ということだから日本国政府が代行する、国のことだということになってくるから国は保険を掛けない、しかし、その場合は国が原賠法の示す無過失賠償責任を果たしましょう、こういうことになっているというわけですね。  私は、これは、同じ原子炉でありながらそこが非常に、法律上もきちっとした枠組みというのはできていない、いわば原賠法の穴のあいている部分だというふうに思います。  これは今ここでこれ以上やりとりをしてもはっきりしてこないと思うんですが、私は、どんな原子炉原子力施設であれ、またどこの地域に住んでいる住民であっても、一般の原発立地所在地の住民であっても横須賀の住民であっても、法的には一切差別されない、行政的に差別を受けない、そういう扱いというものが必要ですから、この点は、ただ法の解釈をどうするこうするだけの話じゃなくて、やはり大臣の方に、政府としてきちんとしたその仕掛けについて今後検討するということだけ伺っておきたいと思うんです。詳しいことは、議論はまた別にやりますから、その点だけ、政府としての立場だけ聞いておきたいと思います。
  80. 青江茂

    青江政府委員 ちょっと細かい話でございまして、大変恐縮でございますが、事務的にちょっと答えさせていただきたいと存じます。  今先生指摘になられました点と申しますのは、言ってみれば、安保条約下におきましての、その関係というものを律しておるその条約の中での御議論ということでございまして、私どもの扱っております問題と申しますのは、あくまでもそういったところではないところの問題というのを扱ってございまして、今の御指摘につきましては、外交というものを責任を持って御担当になっておられます外務省と少し相談をさせていただきたい、かように思ってございます。
  81. 有馬朗人

    有馬国務大臣 ただいま青江局長がお返事申し上げましたように、外務省等々とよく相談をいたします。
  82. 吉井英勝

    ○吉井委員 この問題につきましては、私は、これはやはり原賠法に穴のあいている部分だというふうに思います。これはきちっとした整理が行われるべきものだというふうに思います。  さて次に、外務省は、原子力艦船の入港してくる都市が原子力防災計画を策定することについて、「アメリカ側は累次にわたります政府声明あるいは覚書等をもちまして原子力安全性を保証」いたしておりますとして、「したがいまして、新たに追加的な安全対策というものをとる必要性というのは現在のところは感じていない」こういう答弁をしてまいりました。  つまり、地方自治体が、横須賀とか佐世保とか、そこは現に港湾に原子炉が存在する、その原子炉事故に対しては、他の都市と同じように原発防災というものの計画を立てていきたいと思っても、事実上、そういう自治体が原子力艦船の事故を想定した原子力防災計画を立てることを阻止するといいますか妨害するといいますか、そういう立場をとってきた。これはもう十一年ほど前になりますが、私、かつて参議院の科学委員会で議論したときにもそういう御答弁でしたが、外務省の方は、この点、今も立場は変わっていませんか、そういう立場なんですか。     〔斉藤(鉄)委員長代理退席、委員長着席〕
  83. 田中信明

    田中説明員 お答え申し上げます。  先生指摘の、地方公共団体がつくります原子力推進艦の事故を想定したような地域防災計画なりあるいは地域防災の考え方というものが必ずしも明らかでないために、私ども外務省としてコメントすることは必ずしも適切ではないというふうに考えておりますが、いずれにせよ、米原子力推進艦が寄港する場合には、科学技術庁において、海上保安庁とかあるいは地方公共団体と協力して、放射能監視というものが実施されていると承知しております。  先生指摘の、いろいろな累次にわたる米国政府政府声明なりあるいは覚書というものによって原子力艦船の安全性を保証しているということは、これはもう当然でございまして、その中で、例えば、米国の港においてとられております安全上のすべての予防措置あるいは手続といいますものを我が国においても厳格に遵守するということを保証しておりますし、また、我が国の領海内においては燃料交換及び動力装置の修理を行わないというようなことも表明しております。  それらを含めて、私ども、累次アメリカから行われておりますそういう声明、そういうものによって、米国政府として寄港時の安全というものは十分に確保されているというふうに承知しておりますし、また、米国の原子力推進艦の寄港の安全性について、地元住民の方々から不満あるいは不安というものが寄せられるということがありますれば、必要に応じて米側と協議したり、私どもとして関係省庁と協議をしながら、適切に処理してまいりたい、かように考えております。
  84. 吉井英勝

    ○吉井委員 これは外務省だけじゃなくて、科学技術庁の方も原子力安全局長が、十一年前ですが、「私どもは米国側の説明を受けまして、特に防災計画といったものは必要ない」、「寄港する原潜につきましての安全性は米国が保証するので、それに加えまして防災対策といったものは必要ない」と答弁をしておりました。  これは、声明を出したり、安全です、安全ですと言えば原子炉事故は起こらないという非科学的な発想はよもやもうおとりになっていらっしゃらないと思うのですが、こうして当時、地方自治体の原子力防災計画策定を、科学技術庁の方も賛成しない、きつい言葉で言えば妨害するとでもいいますか、そういう立場をとってこられたのですが、科学技術庁は今でもこの立場ですか、それとも、地域の方で防災計画を立てるとなれば、それは積極的に協力をするという立場ですか。
  85. 間宮馨

    ○間宮政府委員 お答え申し上げます。  外務省の方からもお答えがありましたし、先ほど先生が以前の原子力安全局長答弁をお読みになりましたが、我々といたしましては、米国政府の声明等がございますので、寄港地の周辺住民に対して危険をもたらすものではない、そう認識しております。それでもなお、万が一、寄港中の原子力軍艦が航行不能になったような場合には、米国政府は、当該原子力軍艦を沖への移動をすること等で安全な状態とする責務を負うということも保証してございます。  一方、我が国といたしましても、こういう事故が発生した場合には、直ちに所要の部署へ通報を行い、原子力軍艦放射能調査指針大綱に基づきまして、空中及び海水中の放射能測定等を強化し、必要に応じて、放射能対策本部を活用しつつ、関係省庁及び地方公共団体との協力のもとに、一定海域への立ち入り制限など、周辺住民に影響が及ばないような万全な対策を講ずることとしているところでございます。  なお、今のお尋ねで、地域の方で防災計画を策定するという場合のことでございますが、もちろん、その内容がどういうものか、我々は全く想定しておりません、わかりませんので、具体的には申し上げかねますが、災害対策基本法の規定に基づきまして、そういう場合はあらかじめ県知事に協議するということになってございまして、その結果、県の地域防災計画との調整がまず図られるものと認識をいたしております。  当庁といたしましては、県の地域防災計画につきましては、災害対策基本法に基づく協議があれば、適切に対応してまいる所存でございます。
  86. 吉井英勝

    ○吉井委員 原子力推進艦船の事故というのは随分過去にありました。例えば、六三年四月十日のスレッシャー号というのがボストン東方沖で沈没した有名な事件を初めとして、各港湾の中でも、例えばイギリスのレゾルーション号というのが海軍の基地で、横須賀の基地みたいなものですね、メルトダウン寸前の事故までいった。実は、メルトダウン寸前の事故、これはいずれも冷却水事故から始まっているのですが、随分数多くやっているのです。  港に入っていて原子炉事故をやったときに、例えば非常に過酷な事故であった場合に、それはもう動かないわけですから、汚染された船を直ちに港の外に引っぱり出すとか、非常に困難な問題をもともと持っているのです。だから、政府声明で保証してくれているとか、そういうことばかり言って、本当に事故が起こったときにどうするのかという防災という観点が極めて弱いということを私は言わざるを得ない。外務省にしても科学技術庁にしても、そこのところは非常に大きなこれまた穴になっているということを私は指摘せざるを得ないと思います。  昨年の十二月二十五日付で、放射能対策等三港連絡協議会、横須賀、佐世保、沖縄から、原子力安全局の室長あてでありますが、要するに科学技術庁に要望書が届いています。その中でも、「国の防災基本計画の中で適用除外となっている「寄港中の原子力軍艦原子炉に係る万一の事故対策」について、原子力発電所等の事故による災害の防災計画と同様な対策の指針を早急に確立する」ことを求めております。  実は、この要望書は、私、十年余り前、参議院で議論するためにこの三港の協議会の文書などをいただいて読んだときから、同じことが繰り返し繰り返し言われているのです。つまり、実際に原子炉事故が起こったら、住民を、国の基準でいけば約十キロほど外へ、安全なところへ逃げてもらうように避難誘導しなきゃいけない、あるいは沃素剤を服用してもらうようにしなきゃいけないとか、その具体的な対策を立てないことには原発の地域防災計画にならないのに、それを求めても、外務省にしても科学技術庁にしても、事実上それを阻止する、そういう行動をとってこられたために、同じ要望書が繰り返し出されているわけです。  ですから、やはり原子力艦船の入港してくる自治体でも原子力防災計画をつくれるように国として協力をする、きちんとした態度をとるということを、これは担当の部局の問題じゃなしに、政府としてそこをきちんと示すことが、私は住民の安全を守る上で大事なことだと思うのです。  この点だけは大臣に伺っておきたいと思います。
  87. 間宮馨

    ○間宮政府委員 先生がおっしゃいますように、昨年末にも要望書が出ております。その中に、今おっしゃったことも入ってございます。  しかしながら、先ほど御答弁申し上げましたように、まず一つは、米軍によって安全対策について強い保証があるということと、万が一起きた際にも、原子力軍艦放射能調査指針大綱に基づきまして、第一段階、第二段階、第三段階ということで、事態に応じまして我々は全力を尽くして対応できるということも考えておりますので、それで十分であるという認識は持っております。  ただ、しかしながら、自治体の方が防災計画をつくられるということは、これは自治体の御判断でございまして、そういう場合に、先ほど申し上げましたように、協議とかそういうことが上に上がってまいりますれば、我々としては適切に対応してまいるということでございます。
  88. 吉井英勝

    ○吉井委員 第一、第二、第三とか、何とか段階とか言えばいかにもやっているように聞こえるんですね。しかし、防災に取り組むのは地域でないとできないでしょう。国がその住民の皆さんのいらっしゃるところまで駆けつけて、直ちに、第一段階で、沃素剤を配布します、直ちに、一時間以内、二時間以内に飲んでください、そんなことできないでしょう。それから、その住民の皆さんを十キロ圏外に避難誘導することはできないじゃないですか。  だからこそ、災害対策基本法に基づいて地方自治体に防災計画をつくることとか、とりわけ原子力の分野では原子力防災計画をつくることを義務化して、取り組んでくれということでやってきている。それなのに、事この問題になったら、地方自治体はそんなのつくっちゃいかぬと。国がやりますといったって、国はできない。では、一体、原子力艦船の原子炉事故の場合、だれがその体制をとってやっていけるのかという問題になるんです。  ですから、大臣、これは一部局の問題じゃないんです。今直ちにお答えにくいかもしれぬけれども、しかし、外務省やその他とも相談をしながら、やはりきちっと国として、地域の原発防災計画をつくって、地域も取り組む、それを国が支援する、その点の姿勢を示さないと、私はいざというときに地域の人の安全を守れないと思いますよ。だから、これはやはり政治家の決断、政治家がまさにこういう危機に際してどう住民の安全を守るかという点での姿勢が今問われているときだと私は思うんです。この点だけは大臣にお答えいただいておく必要があると思うんです。
  89. 間宮馨

    ○間宮政府委員 大臣からもお話があろうかと思いますが、その前に、今の点につきまして、もう一段具体的に申し上げておきたいと思います。  実際に原子力潜水艦で何らかの事故が起きて汚染が出たといたしまして、段階に応じて我々としては対処していくわけでございますが、第三段階と言われることの中には、実際に現地に我々の職員が行っておりまして、そこの県あるいは市と協力いたしまして、周辺地区、漁具その他の放射能調査を適宜実施するということのほかに、県知事、市長と協議の上、必要に応じ、一定海域への立ち入り制限等、周辺住民の安全を確保するための措置をとるよう勧告するということでございますので、この中で十分な措置がとれると考えております。
  90. 有馬朗人

    有馬国務大臣 政府といたしましては、原子力軍艦に基づく事故の場合は、原子力軍艦放射能調査指針大綱がございますので、それに基づいて、空中あるいは海中の放射能調査を強化する等、所要の対策を今講じているところであります。  今、原子力軍艦につきましては、十分な安全対策が講じられており、特段の防災対策を講ずるまでもなく、周辺住民の安全は確保されているものと考えてはおります。しかし、今後とも、放射能調査の充実、関係機関との連携確保に努めるなど、万全を期す努力をさせていただきたいと思います。
  91. 吉井英勝

    ○吉井委員 一般の原発も全部、事故は起こらないもの、安全確保されているものということで国は設置を許可しているんです。それで確保されているということで事故が起こらないんだったら、だれも心配もしないし、もともと原子力防災計画とかは必要ないんです。しかし、現実には原潜事故もあれば原発事故もあちこちあって、だから必要なんです。  さっき局長が言ったような話はいわば畳の上の水練とでも言うべきもので、はっきり言って、そんなもの役に立たないんですよ。モニターというのは当たり前の話なんです、事故が起こって監視するというのは。問題は、日常的に、どの地域に沃素剤を配布しておくとか、それからどの経路を通って避難してもらうようにするとか、そういった事細かなことをまさに地域防災計画で立てるんですよ。日常的にそれをやらなかったら、頭の中でどんな絵を描いてみたって、これは、国のお役人が行って、知事に指示して、その場で命令して直ちに動くかというと、動きませんよ。そんな簡単なものじゃないんです。だから、畳の上の水練に類するような、そんな話をしておったら、話にならないんです。  私は、この点では、これは一般の原発であれ、また原子力艦船の原子炉であれ、その所在地の住民の安全を守るという立場では、やはり地域がそれぞれに原発防災計画をつくる、それに対して国が協力する、この当たり前の姿勢を進める。そのことに対して国が協力できるように、政治的にきちんと決断をし、対応していく。そういうことが今、これだけは必要になっているんだと思うんです。大臣、もう一遍頼みます。
  92. 間宮馨

    ○間宮政府委員 繰り返しで恐縮でございますが、先ほどから申し上げておりますように、国としては、先ほどから申し上げているようなやり方によって安全は確保されているというふうに認識はいたしておりますが、地域の方で地域防災計画というのをおつくりになるのは、これはそちらの主権の問題でございますので、その段階で、県知事を通じ国の方に上がってまいりまして、我々の方に協議があるということであれば、適切に対応してまいるということを申し上げたいと思います。
  93. 吉井英勝

    ○吉井委員 私は、どうもやはり十一年前と姿勢が変わっていないように思いますね、外務省、科学技術庁の姿勢というのは。私は、事原子力艦船の原発事故についてはもっと日本の国として自主性を持って取り組めばいいと思うんだが、どうもそこが自主的に対応できない、情けない姿勢に置かれている、これじゃ住民の安全は守れないということを指摘して、エネ庁の方も来ていただいているので、次に移りたいと思います。  災害対策基本法六十二条の一項で、市町村長に、災害発生防御、拡大阻止の必要な応急措置を実施するよう求めています。また、中央防災会議は原発等に係る防災対策上当面とるべき措置を決定して示しているわけです。つまり、原発防災計画が義務づけられているわけです。原発防災計画と具体的な防災対策や原子力防災機器の整備なしに原発の運転を開始してしまうと、原子炉事故が起こったときに対応できない。その結果、事故責任事業者であるとしても、被害拡大防止義務を果たすための体制をとっていなかったという点では、地方自治体の責任も問われるということになると思うわけです。  そこで、原発防災計画が未策定の段階で、また、防災体制も防災機器も整っていない段階で原発の運転を開始して事故をやってしまったら大変なことになるわけですから、これまでは大体逆だったものだから、原発ができて、あるところでは後から防災計画があったわけですが、今、二十基とかなんとか言っていらっしゃる、私はそれに賛成しているわけじゃありませんが、そういう新しい原発の場合に、原発防災計画の策定なしに、体制もとれていないのに原発の操業を認める、運転を認める、こういうことはやらないということをやはり原則にしないとおかしいということになると思いますが、この点だけエネ庁の方に伺っておきたいと思います。
  94. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 地域防災計画につきましては、今御紹介のございました災害対策基本法に基づき地方自治体が作成をするものでございますが、原子力発電所運転につきましては、電気事業法に基づきまして、安全性に関して設計及び工事等の審査、検査を行った上で認めているところでございまして、法律上は、地域防災計画を作成することは直接原子力発電所運転の前提となるものではありません。  ただ、近年、初号機、最初の一号機が運転を開始した原子力発電所につきましては、事の性格上、運転開始に先立ち、地域防災計画の原子力防災対策編が定められ、また防災訓練が実施されているという状況であると認識をいたしてございます。  また、資機材につきましては、当然に保安規定の認可をいたしますので、運転開始前に整えられているという状況でございます。
  95. 吉井英勝

    ○吉井委員 ですから、もう一遍確認しておきたいんですが、法律上はリンクしていないんだけれども、それぞれの法律の体系があるわけですが、しかし、原発防災計画をつくり、そして体制をとり、必要な資機材の整備も行われないと、現実に運転して、運転直後にでも事故をやればこれはさまざまな問題を引き起こすことになりますから、そういうリンクはしていないが、これからの問題としては、まず防災基本計画等が策定されてから運転を始める、こういうふうに理解していていいですね。
  96. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 先ほど申し上げましたように、実態として先生指摘のような形になっておりますし、また、事の性格上そうすることが適切と考えてございます。
  97. 吉井英勝

    ○吉井委員 では次に、私は、原子力防災を充実する上では、日本では原発から八キロから十キロの距離としているわけですが、諸外国がどうなっているかを少し確認しておきたいと思います。  これは、諸外国は大体IAEAの勧告の考え方を全面的に採用するという基本的なスタンスで、EPZ、緊急計画ゾーン、事故時の公衆防護のため迅速かつ効果的な対策を確実にとれるようにするため計画する必要のある地域ということを定義して、大体これで、放射能雲による被曝経路の場合はこれだけとるとか、あるいは粒状性の放射性物質の多くはこの範囲に大体とどまるであろうということを根拠にして、距離というものを考えていると思うんですが、アメリカでは、プルームによる被曝経路に対しては原発から半径十六キロ以内の地域、食物摂取による被曝経路に対しては半径八十キロ以内の地域をEPZとして防護対策を実施するようにしている。  ドイツでは、八八年に定めた原子力施設周辺における防災のための大綱的勧告で、原子力施設周辺に特別防災計画の策定を義務づけて、三種類に分けて、中心区域は施設から二キロ以内、中間区域は中心区域を含む施設から半径十キロ以内、外郭区域は中間区域を含む施設から半径二十五キロ以内の区域というふうにとって、そして、事故の状態に従って災害警戒警報とか災害警報の警報基準を定めたりとか、放射線医学上の防護措置についてもそれぞれの段階を定めて防護措置を実施する、こういうことを定めている。  イギリスでは、原子力施設から三・五キロ以内では屋内退避、安定沃素剤の投与、避難する地域と定め、四十キロ以内では放射能測定と、供給される食料及び水の管理を行うということにして取り組む。  スイスの避難距離と防災の取り組みとして見れば、ここは三つのゾーンに分けて、第一ゾーンでは三キロから五キロの地区、住民被害可能性があるところで、直ちに避難しなさいという取り組み。第二ゾーンは半径二十キロ以内、第三ゾーンは二十キロ圏外で全国が対象になってくる。  これは、チェルノブイリの事故の実態等が、一番ひどいところは三十キロ圏の高濃度汚染地域ですが、しかし、スポット状に、二百キロ、三百キロ離れても高濃度地域があった、放射性沃素が五百キロから六百キロに及んだという事態などを深刻に受けとめて、第三ゾーンの考え方を持って取り組んでいるというのが諸外国の例ではないかと思いますが、これは簡潔で結構ですから、諸外国の例はこういうことで大体いいですね。
  98. 間宮馨

    ○間宮政府委員 お答え申し上げます。  おおむね今おっしゃったとおりだと思いますが、スイスの第三地域については我々認識しておりませんので、ちょっとお答えは……。
  99. 吉井英勝

    ○吉井委員 スイスにつきましては、私の知人などが調査に行きまして、原子力防災の担当のトップの方から聞き取り等も行ってまいりまして、そういう取り組みをやっております。  ですから、日本のように国土が狭くて人口密集したところでは、こういう諸外国の例に比べてみても、八キロから十キロというのは、今これは本当に考え直していかなきゃいけない時期に来ているということをまず指摘をしておいて、そういうもとで防災機器の配備はどうなっているかということも伺っておきたいと思うんです。  資源エネルギー庁の方に聞いておきたいんですが、原発事業者の自衛消防防災組織と、そこに保管されている放射能防護服その他は各発電所ごとに、私見たところ非常にわずかしか整備されていない。一方、自治省消防庁の方が本来つかんでいらっしゃるはずの自治体の公設消防の方の状況を見ても、これは、全国、大体原発のあるところは過疎のところですから、もともと消防資機材は貧弱なんですが、それにしても、原発で発災した、冷却水喪失で炉心溶融が起こり、そして水蒸気爆発が起こって火災も広がったという場合にとても対応できるような機材の状況にない。  しかも、除染施設などは、被害が起こった場合に、ひどいところになると、浜岡や伊方などは原発から二キロのところで浴びた汚れを取るということにしていますから、そこからさらに国が決めている十キロ先に逃げている間にまた汚染してしまう。そういう矛盾した状況にあるというのが今日の実情だと思うんですが、エネ庁と消防庁の方から、今日の資機材の状況、十分なのかどうかということを伺いたい。  諸外国の教訓というのは、やはり原発災害の最悪のシナリオをきちっとつくって、それに応じた対策をみんなで話し合ってつくっていく。この点では、やはりまだ原発安全神話のマインドコントロールの状況から抜け出していないんじゃないか、率直に私はそのことを感じております。  スイスでもあるいは新潟の小国町でもそうですが、例えば沃素剤などは全戸配備しているんですよ。被害が起こったら直ちに摂取できるようにしているわけですが、そういう対策をとるときにもやはり障害になっているのは、日本の原発は安全だという、どうも安全神話に取りつかれて、そのために、具体的な被害を想定してそれに対応する体制や資機材をどうするかということになっていない。私はそこを抜本的に強めなきゃいけないと思っているんですが、関係する皆さんの答弁の後、最後に大臣の方から具体的で抜本的な取り組みについて伺うようにしたいと思います。
  100. 北側一雄

    北側委員長 時間が余りございませんので、簡明な御答弁をよろしくお願いします。  稲川長官。
  101. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 原子力発電所につきましては、原子炉等規制法、災害対策基本法に基づく緊急用機材の整備を図ってございまして、大まかに分けますと、放射線計測器、防護具類、医療用器材等の資材でございます。  全数の把握はしてございませんが、例えば福島第二原子力発電所で見ますと、防護マスク、セルフエアセット、ダストマスク等々総数で八十でございます。放射線計測機器、合計をいたしまして約五十、その他、緊急時用キット、無線設備、また、沃素剤三万錠、これは十回分として約三千人分に相当するものでございます。また、消防法に基づきます施設につきましては、一般の事業所における施設を所有しているところでございます。
  102. 滝沢忠徳

    ○滝沢説明員 お答えをいたします。  私ども、必ずしも全国の状況は詳細には把握いたしておりませんが、お尋ねがございました、例えば美浜原子力発電所が所在する美浜町を管轄区域とする消防本部について申し上げますと、これは敦賀美方消防組合消防本部でございますが、消防車両等の保有状況を申し上げますと、消防ポンプ自動車が六台、水槽付消防ポンプ自動車二台、はしご付消防ポンプ自動車二台、化学消防自動車二台、指揮車四台、救助工作車一台、小型動力ポンプ一台、救急車五台、その他の車両三台の合計二十六台でございます。  それから、放射線防護用資機材の整備状況について、私ども、消防本部に確認いたしましたところによりますと、防護服が三十六着、呼吸保護具七十三個、個人被曝線量計五十個、環境放射線測定器十三台等を配備していると聞いておるところでございます。  なお、基本的には、それぞれ原子力発電所が所在する消防本部において第一義的には対応をするわけでございますが、それでは十分でないということもあろうかと思いますが、そうした場合には、まず近隣の消防本部の応援、あるいは県内の消防本部、さらには全国的な消防本部の応援ということになろうかと思っております。  以上でございます。
  103. 有馬朗人

    有馬国務大臣 巨大科学技術というものは、いかに完全を期しても、万が一にしか起こらないようなことでありましても、やはり科学技術の限界というものはあると思います。この点に関しましては、我々科学者、技術者は、敬けんな気持ちで常に万全な対策を講じておかなければならないと思っております。
  104. 吉井英勝

    ○吉井委員 時間が参りましたので、終わりたいと思います。  なお、堺泉北コンビナートでは、第三出動のときには二百台を超える消防自動車が結集するような体制にありますから、原発は非常に弱いということを申し添えておきます。
  105. 北側一雄

    北側委員長 辻元清美君。
  106. 辻元清美

    辻元委員 社会民主党の辻元清美です。  さて、私は、きょうの議題であります原子力損害賠償に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、この法律案の中身と関連の質問をさせていただきたいと思います。  まず最初に、今回の改正の幾つかの点について質問をいたします。七条についてまず最初に取り上げたいと思います。  この七条では、補償措置の対象が原子炉ごとではなく、「一工場若しくは一事業所当たり」と規定されているわけなのですけれども、どうもお聞きしますと、これをサイト主義の考え方というふうに言われているようですが、どうして「一工場若しくは一事業所当たり」とされていて、原子炉ごとではないのか、まずお答えいただきたいと思います。
  107. 青江茂

    青江政府委員 お答え申し上げます。  御指摘のとおり、賠償措置を講ぜしめるその単位といたしましては、炉一炉ごとではございませんで、一事業所、いわゆるサイトごとに賠償措置を講ぜしめているというところでございます。  その趣旨でございますけれども、何か万一のことがある、そして付近住民に被害を与えるという場合に、一サイトの中におきましての、A炉から、B炉から、C炉から、そういったことを問わず、とにかくそのサイトから放出があって被害を与えるということになれば、それはいわゆる当該原子力事業者責めを負わせるということで、一炉一炉ということを問わず被害者が請求できるということでございまして、より被害者保護に厚い仕組みではないかというふうに思ってございます。
  108. 辻元清美

    辻元委員 今回、七条の補償額が三百億から六百億ということに変わるわけなのですが、今、より厚いというふうな御答弁でありましたけれども、私は、より厚いのかなという疑問を持つ立場で今質問させていただいているのです。  といいますのも、一カ所の原発に何基あっても補償措置金額は同額ということになりますよね。一方で、柏崎刈羽原発には既に七基あります。それから、浜岡原発では五号炉の設置許可済みということになっておりますし、福島第一原発では七号炉、八号炉の計画中ということになっています。これは、私が見るところによりますと、原発の過度集中の傾向が最近見られるのではないかというふうに心配しているわけなんです。  例えはちょっと適切かどうかわからないのですけれども、例えば保険制度考えた場合、自動車なんかでも、自賠責保険の例なんかでは、一人の人が何台持っていてもその一台一台に掛けられるというふうな保険のシステムが多々見られるわけなんです。  こういうふうに、法律制定されたときには、最初は一事業所というような考え方だったのですけれども、一カ所にたくさん炉ができてくるというふうにその後経過いたしますに、随分あり方が変わってきたのではないかと私は思っています。過度集中が進んでいくということは、これは安全性とも関係してくるのではないかと危惧するわけなのですけれども、金額を上げるというだけではなくて、保険のシステムそのものを検討なさったのかどうか。  といいますのは、最初のこの法律が制定されました第三十八回国会の採択の附帯決議というところを見ますと、このように出ております。附帯決議の一の(一)ということで、しょっぱななんですが、「安全基準を速かに設定し、これに基いて」この後なんですが、「原子炉の過度集中を避け、」というようにうたわれていたわけなんです。これはもう随分前、私が生まれたころの附帯決議なんですけれども、そのときの発想でこの法律はできております。ですから、金額を変えるということと同時に、この過度集中の問題を保険のシステムの中でどのようにお考えになったのかということをお聞きしたいのです。
  109. 青江茂

    青江政府委員 お答え申し上げます。  先ほど私答弁申し上げましたときの、より厚いということでございますが、それは、原子力事業者には無限責任、要するに、何か事故がございましたときに被害が生ずる、被害が生じただけすべてにわたって、いわゆる責任一定上限額を切りまして、アッパーリミットを設けまして、その範囲でよろしいよという免責を設けているということでは我が国はございませんので、無限責任を負わせた上で、賠償措置というのはあくまでも、言ってみれば、被害者救済を当面のものとしてより円滑にするための措置といいましょうか、そういう性格のものでございます。  繰り返しになって恐縮でございますけれども、責任範囲は、その生じただけ全部無限ということがあるわけでございますので、そういう性格のものとして賠償措置というものを義務づける。そのときに、サイト主義という形でもって、一事業所当たり一つであろうが七つであろうが、どこから生じようととにかく被害者というのは請求ができるという形にした方がよりよかろうというふうに思ったわけでございます。  それから、確かに六つ、七つというのが状況としてあるわけでございますけれども、それ自体、もちろん安全審査というものを十分に通っての話ということで、安全性ということにつきましては安全規制当局がきちんと御判断なさることでございますけれども、原子力損害賠償ということからいたしますれば、今のサイト主義自体につきましては、先ほど申し上げたところでございます。  したがいまして、六つ、七つと累積しておるからといって、それに対して今の六百億というものをさらに上積みした賠償措置というものを講ぜしめるということにつきましては、現実的な方途としましては大変難しいことでございますので、その点につきましても十分吟味はしたのでございますけれども、一事業所当たり六百億ということでもってその対応をしていこうというふうに原子力委員会のもとの専門部会も判断をいたしたというところでございます。
  110. 辻元清美

    辻元委員 そうしますと、ちょっと関連なんですが、原子炉の過度集中は避けていく方向自体は、これは変わっていないわけですね。
  111. 青江茂

    青江政府委員 過度というのが、どういう程度のものをもってして過度というのかどうなのかという議論も別途あるというふうに思うわけでございますけれども、いずれにしましても、先ほどちょっと触れましたとおり、その一事業所におきまして、例えば増設が累次なされるわけでございますが、その都度、安全規制当局におきましての審査、それからダブルチェックということでもちまして、安全性の確保ということにつきましては万全の吟味というのがなされておるというふうには理解をしておるわけでございます。
  112. 辻元清美

    辻元委員 一基ごと安全性の確保というのは言うまでもないことなんですが、方向性として、この法律ができたときよりも過度集中が起こっているのではないかという懸念を私は持っているわけです。一般の国民から見ますと、たくさん建ったら、一つ事故一つの炉で起こったら連鎖的に大きな事故につながるのではないかという懸念は、これは本当に一般国民、専門家ではなく普通の国民からはそのように感じ取れると思うのですね。  ということで、今御説明を聞きましたけれども、この附帯決議というのは非常に重いなというふうに私は思っているわけです。  これは、安全から安心へというふうに科技庁もずっとおっしゃっているわけで、この安心を担保するということも非常に大切な中で、過度集中を避けていくんだという方向性で原子力政策を立てるならば、一事業所ではなくて、一炉ごとに保険を掛けなあかんとなったら掛けるお金がようけかかりますので、自動的に過度集中を抑止していくというような効果もあるのではないかと思いまして、私は今こういうことを申し上げているのですね。「過度集中を避け」と附帯決議に書いてありますし、このことは、第六十五回だったかな、ちょっとここは不確かなんですけれども、この後の国会の附帯決議でももう一度確認されております。  という意味で、保険というのは、いざ問題が起こったときにどう対処するかということと同時に、いろいろな意味での抑止という形にも私は使えると思いますので、そういうことを申し上げたわけなんですが、こういう考え方についてはいかがでしょうか。     〔委員長退席、斉藤(鉄)委員長代理着席〕
  113. 青江茂

    青江政府委員 お答え申し上げます。  原子力施設につきましては、いわゆる事故の連鎖ということは大変考えにくいことではないかというふうに認識をいたしてございます。これが第一点でございます。  それから、炉ごとに賠償措置というものを講ぜしめるということでございますけれども、それ自体、いわゆる方法論として、仕組みのつくり方でございますから、ないことはないというふうに思うわけでございますけれども、被害者に対してどう賠償に万全を期すといいましょうか、被害者救済というものをより円滑にするという観点からは、サイト主義の方がより私自身は手厚いものだというふうに認識をしてございます。  それから、もう一点つけ加えさせていただきますと、日本の場合、日本の国内保険プールが引き受けると同時に、それだけでは当然のこと足りませんので、海外の保険プールにも再引き受けというものを依頼しておるわけでございますけれども、海外もすべてサイト主義といいましょうか、そういう形で海外の仕組みも成立をしてございますので、海外と連動させようとしますと、そこのところは整えておく方がはるかに、いわゆるビジネスの円滑化といいましょうか、そういったことからはやりやすいという点はちょっと付言させていただきたいと思います。
  114. 間宮馨

    ○間宮政府委員 ちょっと安全の観点から。  集中といいましょうか複数立地している場合の考え方でございますが、そういう場合におきましても、基本的には個別の原子炉の安全確保がなされるようにするわけでございますけれども、運転に当たりまして、環境における放射性物質濃度が法令に定める値を超えることのないよう、これは発電所全体での放出管理目標値が定められているというのが一つでございます。  それと、安全委員会の発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針におきまして、安全機能を有する系統、機器等が二基以上の原子炉間で共用される場合は、一基が異常状態になっても他の原子炉の安全機能は確保されるなどの安全設計上の考慮が求められておりまして、そういう意味では安全確保の配慮はなされていると思います。
  115. 辻元清美

    辻元委員 今るる御答弁がありました。  この過度集中問題につきましては、またちょっと次元を変えて、別の機会に取り上げさせていただきたいと思います。  さて、次に二十条について御質問したいと思います。  一九九八年十二月十一日にお出しになっております原子力委員会原子力損害賠償制度専門部会の報告書、これによりますと、一九九九年十一月末までという適用期限をつけていらっしゃるのは、「原子力開発利用の進展、民間責任保険の引受能力の拡大等を踏まえて、」というふうに示されています。このことについて幾つかお聞きします。  この中の「民間責任保険の引受能力の拡大」に関してなんですけれども、これは具体的にはどういうことを指すのか御説明いただきたいのです。その際に、今までこの民間保険の引受能力の拡大は見られたのかどうか、見られたのであれば具体例を示していただきたいと思います。     〔斉藤(鉄)委員長代理退席、委員長着席〕
  116. 青江茂

    青江政府委員 お答え申し上げます。  賠償措置を講ぜしめる際に、その方途といたしましては、民間との間の保険契約というものを締結することによる方途というものが大体一番効果的な手段ということになるわけでございますけれども、その際に、十年前は三百億の賠償措置を講ずるよう義務づけてある。それは、その当時におきましての民間サイドにおきましての保険の引受能力というものを勘案しつつ、また国際的な動向というものを勘案しつつ、そのあたりの総合勘案の上に三百億というのを決めた。  それで、今回、六百億、いわゆる倍増ということでございますけれども、それも民間の引受能力、国際動向というものの総合勘案の上に決めたわけでございますが、それは、原子力委員会専門部会での種々の議論があったわけでございますが、その過程におきまして、いわゆる民間保険プールに対しまして、今時点におきましての保険プールとしての引受能力というのはどんな状況でしょうかということも聞きました。それで、各社のいろいろな意向というものを積み上げました。と同時に、その保険プールを通じまして、各国の保険プール全部に対しまして照会をいたしました。そして、それぞれ先方の意向というのも返ってまいりました。そういった実態というものを踏まえて今度六百億にしたということでございます。すなわち、十年前の三百億の引受能力から、言ってみれば、今時点におきましては六百億の引受能力まで日本の保険プールを中心にした保険プールの能力というのがアップしたということでございます。  そのアップの要因といたしましては、いろいろあると思いますけれども、基本的には、やはり損保会社におきましての資産内容、財務内容、それからリスクに対する見方、こういったものの変化ということであろうというふうに思ってございます。
  117. 辻元清美

    辻元委員 そうしますと、保険の対象、これを拡大するというような議論はなかったのでしょうか。
  118. 青江茂

    青江政府委員 お答え申し上げます。  引き受けの範囲ということにつきまして、今、先生指摘の際に念頭におありになるのは、多分、地震だとか噴火というものを政府補償契約の方に回している、民間責任保険契約の方ではカバーし切れないという形にしておる、ここのところが民間の方のところで処理ができないのかという御指摘ではないかなというふうに思うわけでございますけれども、それにつきましても、専門部会におきましても議論いたしましたし、かつ、保険プールの方にも具体的なその状況というものも照会をいたしました。  現実問題としまして、今の我が国におきましての保険一つ仕組みの問題としましては、地震というものに起因をいたしまして自分が所有する構造物が第三者損害を与える、その損害賠償というものの責めをカバーをするということにつきましては、現実問題としてはできないということでございまして、そこの点につきましては、その実態というものを踏まえて今回も政府の方の補償契約でもってカバーをしていく。正常運転も同様でございます。  そういう状況にございます。
  119. 辻元清美

    辻元委員 今御答弁いただきましたように、私も、他の委員指摘した点ですけれども、地震のことが念頭にありました。御指摘のとおりです。特に日本は地震が多い国ですし、阪神・淡路大震災以降、原発の耐震性という問題は多々議論されていますので、そのことが念頭にありました。  その中で、再保険に当たって国際的な引き受け状況が整っていないというような御答弁も以前の委員会であったかと思うんですけれども、ここに大阪経済大学の池野教授という方のお書きになったものがありまして、そこでもこの点について懸念を表明されているんですね。これは、「日本の保険会社が危険分散のために外国の保険会社に再保険しようとしたときに、地震を免責しないと引き受けなかったからである。外国の保険会社は、日本以外の原発保険については、ケース・バイ・ケースで審査している。つまり、日本の原発の耐震性は信用されていない」のではないかというような指摘、懸念をあらわされている方もいらっしゃるわけなんですけれども、この点についてはいかがでしょうか。
  120. 青江茂

    青江政府委員 お答え申し上げます。  今の点につきましては、いわゆるプライベートセクターの中におきましてビジネスをやっている人たちがビジネスとしてどう御判断なさるのかという問題と、現実に、客観的にその日本の原子力施設というものの耐震性がどういうふうな状況にあるのかということとは全く別問題ではなかろうかというふうに思うわけでございます。  確かに、その再引き受けというものを海外に持ちかけた場合にどの程度のオファーがあるのかということにつきましては、今先生指摘のあったような問題点があるということも聞いてございます。  ただ、あくまでも、申し上げますけれども、日本の、いわゆる地震国の中におきましての耐震安全性確保のために打たれている対策というものは恐らく十全であるというふうに認識をいたしてございます。
  121. 辻元清美

    辻元委員 今御説明を受けたわけなんですが、確かに、耐震性について、以前の御答弁でも、安全審査等々をきっちり行っているという御答弁をずっといただいてまいりました。ただ、民間保険会社というのは物すごいシビアなんですよね。金銭がかかっていることですので、客観性を持って非常にシビアに判断するということも一方にあるわけなんです。  これは、ほかの例えばロイドなんという保険会社もありますけれども、あそこの戦争保険の規定なんて見ると、非常に細かくシビアです。それ以外の保険の規定も、いろいろな事象にわたりまして、日本だけではなく各国が、これは大丈夫だとか、これはいいんだよと言っているようなこともシビアに判断していることも一方にありますので、私は、この耐震性について、やはり民間が引き受けないところはシビアに受けとめなければいけないし、もう一歩踏み込んでこの議論をしていかなきゃいけないなと思っているんですね。  それでは次に、ここばかりやっていても、ほかの方もされましたので。  そうするとこれは国の守備範囲であるということになるわけなんですが、その際、同じこの池野教授がこういうことも言っているんですね。この法案作成に加わった学者の方のお話を引用されているんですけれども、これはあくまでも池野さんがお聞きになった話だと思うんですが、「日本全体がいわば地震帯の上に乗っているようなものですから、全部責任を負わせることも無理がある」、法案作成に加わった学者の方もそうおっしゃっていたと。「そこで、異常に巨大な天災地変については、保険会社はもとより、電力会社をも免責し、これを伊勢湾台風と同じに取り扱うことになった、という。国の措置がそれだが、彼の言によれば、」まあ、そのときにはっきり国が措置するのかどうかということも心配だというようなことも指摘しているわけですね。そのときになってみて余りにも被害が大きくて、これは措置し切れるのかどうか。そこをはっきり措置するということと理解してよろしいんでしょうか。
  122. 青江茂

    青江政府委員 お答え申し上げます。  今おっしゃられましたのは、その損害が異常に巨大な天災地変または社会的動乱によって生じたものであるという場合には、これは国の補償契約がカバーするところからも外れるということでもちまして、その十七条に参りまして、「被災者の救助及び被害の拡大の防止」のために政府が「必要な措置を講ずるようにする」ということがあるわけでございますが、そこに行く。そういう状況、そういう事態のときの関係かと思うわけでございますけれども、その十七条におきましては、今申し上げました「被災者の救助及び被害の拡大の防止のため必要な措置を講ずるようにするものとする。」と書いてございます。「するものとする。」というのは、これも細かい法解釈論で恐縮でございますが、必ずやるということでございまして、所要のと申しましょうか、必要な対応措置というものが必ずとられるというところでございます。
  123. 辻元清美

    辻元委員 もう一つちょっと聞いてみたいんですけれども、これはどういうような事態なんでしょうか。地震でこの間質問しましたら、関東大震災の三倍の地震とかというお話を伺ったりしたんですが、どういうふうな事態を想定しているんでしょうか。
  124. 青江茂

    青江政府委員 今の十七条が発動するというのは、いわゆる通常の地震噴火でございますと、これは政府がカバーするところの補償契約でもって対応していくということになるわけでございます。そこを超えたような事態ということでございまして、いわゆる極めて異常な状態ということなんでございますけれども、一言で申しますと、いわゆる民事法の世界ということではない状態。すなわち、民事法の世界と申しますのは、加害者がいて被害者がいて、その被害者損害賠償請求をして自分被害をコンペンセートしていく、こういうふうな世界でございますけれども、それは、補償契約の方もそういう行動原理でもって律せられておるわけでございますが、この状態と申しますのは、言ってみれば民事法でもって律するような状態ではない大変大きな混乱状態、言ってみれば戦争とかいったふうな状態ということであろうというふうに思ってございます。  したがいまして、地震ということにそれを当てはめてみたときに、例えば先般ございました阪神・淡路といったふうなものといいますものは、まだそのような異常な事態にはなっていないだろうな、これは補償契約が発動して対応していく状況であろうなというふうに思ってございまして、今先生ちょっとおっしゃいました三倍といいますものは、これが制定されました当時も、関東大震災の三倍といったふうな答弁もなされておるという記録が残ってございます。  大体制定当時に念頭に置いたのは、そういう関東大震災の三倍といったふうな状態というのは、これは、それがもし生ずれば大変異常な状態であろうということで一つの例え話として答弁がなされたものというふうに理解をしてございます。
  125. 辻元清美

    辻元委員 保険で被災者に対する国の措置、異常に巨大な天災地変とこう出てきますと、やはりこれはどんな場合かなと普通思いますよね。それで、今ちょっとお話を伺ったんですが、何かぴんとこないんですよね。だれもぴんときていないのかなというふうにとらざるを得ないというふうに思うんですが、さてもう一つ、ちょっと時間が迫ってきたんですが、質問したい問題がありました。  これは、国際条約締結に向けてのアジアの環境ということで、先ほど近江委員が非常に詳しく質問なさいましたので、幾つか確認させていただきたいと思います。  この中で、周辺国と一緒になって一つの国際的スキームをつくり上げていきたいというお話だったんですけれども、先ほどの近江委員への御答弁の中でも、このアジアの環境、中国や韓国や台湾の原子力施設の法整備の状況などは国際的な水準に比べるとまだまだ不十分であるので、これは日本も今後国際会議等を通じて対応していきたいという確認でよろしいんでしょうか。
  126. 青江茂

    青江政府委員 お答え申し上げます。  近隣諸国のいわゆる原子力損害賠償につきましての現状と申しますのは、先ほどの答弁でも触れさせていただきましたような状況でございますので、まずはその国内のレベルというものをある程度国際的に遜色のないところにまでずっと実体をつくっていただくというのが何より先決であろうと。  そのときに、アジアの中におきましての原子力先進国たる日本としましてはその積極的なイニシアチブをとりながらということでございますが、例えば一例を挙げさせていただきますと、アジア原子力会議というのがございますが、それがソウルで行われましたときの議長サマリーの中にもその点が触れられてございまして、いわゆる原賠制度の確立、改善ということにつきましての奨励がなされ、日本としましては、その方向に沿って今後とも引き続き各国との対話を進め、そして勧奨し、促していくというふうな活動をしつつ、今先生おっしゃられましたようなトータルとしての枠組みというものの構築というところに努めてまいりたいというふうに思ってございます。
  127. 辻元清美

    辻元委員 私がこの質問をしましたのは、ここにちょっと記事などでも報道されているのですが、「避けたい商売優先 原発輸出」というのがあるんですね、アジアへの。これはいろいろな新聞でことしになってから報道されております。  このアジアへの原発輸出の動きが出てきているという中で、これは主な管轄は通産省ということですけれども、安全のワンセット供給ということを強調されていまして、科学技術庁もこの安全とワンセットの輸出であるという御認識は一緒だと思うんですね。  ただ、先ほどの御説明のように、アジアの国々では万一事故が起きた際の補償制度というものがほとんど整っていない、未整備であるという中で、この安全のワンセット供給という中でアジアへ原発を輸出するのは状況が不十分ではないかというふうに危惧しているわけです。これについてはいかがでしょうか。
  128. 青江茂

    青江政府委員 お答え申し上げます。  アジアにプラントを輸出する、一つの国際協力の道であろうというふうにも思うわけでございます。その際に最も肝要なことは、やはり据えつけられた現地におきまして安全に運転をしていただくことであるということで、安全とワンセットということ、これはもう大変重要な課題であろうというふうに思うわけでございます。  確かに、その際に、もし万々が一の問題というのがこの原子力損害賠償の問題でございますので、それもなおより充実された形であれば大変好ましいということであろうというふうに思ってございまして、引き続き先ほど申し上げましたようなラインで努力をいたしていきたいというふうに思ってございます。
  129. 辻元清美

    辻元委員 今の点は非常に重要な点で、大臣にお伺いしたいんですが、確かに、安全という際に、安全の点検ではなく、万一の場合の賠償をどうするかということがセットになって安全が確保されると思います。という意味におきまして、私たちも、きょうは国内の問題、この法律議論しておりますし、今までも三十年以上にわたりましてこの問題についてしばしば議論をし、そして改正を続けてきたわけです。これは、さらにやはり安全を担保する補償ということが大事であるという考え方からだと思うんですね。  アジアへの原発輸出の際に、やはり損害賠償制度の整備ということを日本がそれを実行するに当たっての判断の大きな基準の一つにすべきではないか。私たち国内ではこれをさんざん言ってきたわけですから。じゃないと、これは安全とワンセットと言えないのではないかと私は思っておりますが、いかがでしょうか。
  130. 有馬朗人

    有馬国務大臣 たびたび申し上げますように、原子力というものは極めて安全を重要視してやってまいりましたから事故は非常に起こりにくいと思いますけれども、やはり巨大科学技術の持っている万が一の事故というのはあり得ないわけではない、こういうことに対して十分対処をしていかなければならないと思います。  そして、御指摘のとおり、諸外国ともよく話し合って、あらゆる機会を活用して、安全ということ及び原子力損害賠償制度というふうなものの充実に関して、特に近隣諸国とあらゆる機会を通じて話し合いながらさらなる努力をしてもらうようにいたしたいと思います。
  131. 辻元清美

    辻元委員 時間が参りましたのでこれで終わりますけれども、私は、近隣諸国についても補償制度の整備ということを一つの条件にするぐらい厳しい態度で日本はこの輸出問題を考えていくべきだということを申し添えまして、質問を終わります。
  132. 北側一雄

    北側委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  133. 北側一雄

    北側委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  内閣提出原子力損害賠償に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  134. 北側一雄

    北側委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  135. 北側一雄

    北側委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  136. 北側一雄

    北側委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時十七分散会