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1999-03-12 第145回国会 衆議院 科学技術委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年三月十二日(金曜日)     午前九時十分開議   出席委員    委員長 北側 一雄君    理事 河村 建夫君 理事 河本 三郎君    理事 中谷  元君 理事 山口 俊一君    理事 辻  一彦君 理事 斉藤 鉄夫君    理事 菅原喜重郎君       江渡 聡徳君    奥山 茂彦君       木村 隆秀君    園田 修光君       田中 和徳君    松本  純君      三ツ林弥太郎君    鍵田 節哉君       川内 博史君    鳩山由紀夫君       近江巳記夫君    吉田 幸弘君       吉井 英勝君    辻元 清美君       中村喜四郎君  出席国務大臣         国務大臣         (科学技術庁長         官)      有馬 朗人君  出席政府委員         科学技術庁長官         官房長     興  直孝君         科学技術庁原子         力局長     青江  茂君         科学技術庁原子         力安全局長   間宮  馨君  委員外出席者         内閣官房内閣安         全保障・危機管         理室内閣審議官 高見澤將林君         警察庁警備局警         備課長     池田 克彦君         科学技術委員会         専門員     宮武 太郎君 委員の異動 三月十二日  辞任         補欠選任   飯島 忠義君     松本  純君   望月 義夫君     園田 修光君   近藤 昭一君     川内 博史君   中西 啓介君     吉田 幸弘君 同日  辞任         補欠選任   園田 修光君     望月 義夫君   松本  純君     飯島 忠義君   川内 博史君     近藤 昭一君   吉田 幸弘君     中西 啓介君 本日の会議に付した案件  原子力損害賠償に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出第二六号)     午前九時十分開議      ————◇—————
  2. 北側一雄

    北側委員長 これより会議を開きます。  内閣提出原子力損害賠償に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田中和徳君。
  3. 田中和徳

    田中(和)委員 おはようございます。自由民主党の田中和徳でございます。  原子力損害賠償に関する法律の一部を改正する法律案について質問をいたします。  資源に恵まれない我が国が、超高齢、そして少子化や経済グローバル化という二十一世紀の厳しい経済社会環境を克服するためには、唯一の資源とも言える知的資源を最大限に活用し、科学技術創造立国を速やかに実現していく必要があります。そして、将来的には、何としても高速増殖炉開発を実現し、核リサイクル体制を完成するために全力で取り組んでいる原子力分野は、少資源国日本にとって、クリーンなエネルギー源として最も重要な新分野一つであると考えます。  しかし、原子力開発は、一歩間違えば多数の犠牲者を出しかねない危険性をはらんでいることから、積極的な推進には世論に賛否両論があることも事実であります。しかしながら、我が国の安定的なエネルギー供給確保には原子力利用は不可欠であり、何としても国民理解を得てその開発推進していくことこそ国益にかなう道と信じております。  そこで、国民理解を得るためには、まず第一に、絶対人に、そして自然に被害を及ぼすような事故を起こしてはならない、このことこそが大命題であり、同時に、絶対あってはならないことですが、万が一にも事故が発生した場合には十分な賠償被害者が得られる、そういう仕組みを確立し、そして維持しなければならないことは当然であります。  したがって、本法律制定後、過去三回の賠償措置額引き上げに続き、今回も国際動向などの諸事情に合わせた引き上げ措置がとられ、被害者救済に厚みが増すことは私も当然と考えており、賛同の意を表するものであります。  その上で、三百億円から二倍の六百億円へ引き上げるという引き上げ幅が妥当なのか、また、賠償措置云々を議論する以前の問題である、原子力の安全と、それに対する国民理解が本当に確保されつつあるのかどうか、そうした観点から大臣にお尋ねをしますので、明快な御答弁を願いたいと存じます。  まず、原子力発電にかかわる安全性確保について伺います。  政府は、原子力施設における安全管理に対して重大な監督責任があります。前回の平成元年のこの法律改正審議の際にも、「一層適切な運転と厳格な点検、補修を実施するよう指導すること。」との文言を含む附帯決議委員会でなされております。しかし、残念ながら、一昨年三月の動燃事故以来、使用済み燃料輸送容器データ改ざん問題など、原子力関係事故不祥事が相次ぎ、国民信頼は大きく損なわれている結果となっておるように思います。  これらは有馬大臣が就任をされる前の出来事ではありますけれども、こうした事故、事件の教訓を十分生かして今日厳しく管理監督に当たっておられることと私も確信しております。夢と希望を現実のものとするため、原子力安全確保に対する大臣の不退転の決意を最初にお伺いしておきたいと存じております。
  4. 有馬朗人

    有馬国務大臣 私も、先生の御指摘のように、二十一世紀日本を健全な、そして豊かな国にいたしますためには科学技術というものを推進していかなければならないと思っております。  その中の原子力に関してさまざまな不幸な事故がございました。旧動燃一連不祥事であるとか、使用済み核燃料輸送容器データ改ざん問題等々がありまして、原子力に関する国民信頼あるいは安心が少し失われているのではないかという点で、私は大変心配をいたしておりますし、こういう一連不祥事データ改ざん等々に対しては、絶対あってはいけないことと思い、大変残念に思っている次第でございます。  これらの不祥事につきましては、それぞれ検討委員会を設置して、多方面の調査検討を行いましたけれども、私が一番心配していることは、原子力に携わっている人々の倫理観であろうかと思います。モラル、それと責任感、そういうことがいささか弱いところがあるのではないかということが調査報告等々で指摘されております。  この点に関しまして、私も今後一層、原子力行政を進める人間といたしまして、このような問題が二度と起こらないよう、まず関係者意識改革を徹底いたしたいと思っております。それから、現場の安全管理体制行政庁の審査・検査体制充実強化等をやることが不可欠であると思っております。そしてまた、先ほども申し上げましたけれども原子力に携わっている者一人一人が誇りと使命感義務感を持って職務に専心できる環境をつくり上げていくことが極めて大切であり、そのために一層の努力をさせていただきたいと思っております。
  5. 田中和徳

    田中(和)委員 今回の改正は、賠償措置額を、現行の三百億円からさらに三百億円上乗せし、二倍の六百億円に引き上げることとしております。確かに大幅な上乗せでありまして、従来と比べれば被害者救済が確かにその分厚くなります。しかしながら、国際水準を勘案して決められた額とはいうものの、日本のように人口や施設が密集している国で万が一事故が発生したら、その事故規模にもよると思いますけれども、とても六百億円という額では足りないのではないかな、こう思うわけであります。その際には、事業者に対して、国が国会議決範囲内で必要な援助を行うとしておりますけれども、具体的にどのように対応、そして処理していくのかお聞かせをいただきたいと思います。  また、チェルノブイリ原発事故が歴史上最大の原子力事故と思いますけれども我が国経済状況で勘案した場合、被害金額は、あのような事故であればどのぐらいになるのか、試算があればお示しをいただきたいと思います。
  6. 青江茂

    青江政府委員 お答え申し上げます。  今先生おっしゃいましたとおり、六百億円という賠償措置と申しますのは、念のためでございますけれども原子力事業者責任範囲を定めたものでは決してございませんで、いわゆる万一のことが起きた場合に、言ってみれば、非常にラフな言葉で申し上げますれば、即座に用意をし得る金というふうな性格でございまして、あくまでもその上限免責というものを定めたものではないということでございます。  その上に立ちまして、もし万一、六百億円という賠償措置額、そういったものを大幅に超えるような事故というものが生じた場合、政府が、必要に応じ、国会議決を経てその必要な措置というものを講ずるわけでございますけれども、具体的には、あくまでも国会議決を経てというふうなことになるわけでございますけれども、例えば補助金の交付でございますとか、低利融資でございますとか、利子補給融資あっせん等、その具体的な事情に即しまして、最も適切な形態でもって行われるというふうなことであろうかというふうに思ってございます。その際には、先ほど申し上げましたとおり、国会での御議論というのが必要であるわけでございますけれども、いずれにいたしましても、そういう形を通じまして、被害者救済というものに万全を期すといいましょうか、遺漏なきを期すという形になってございます。  それから、チェルノブイリ状況でございますけれども、これは当時、当然のことながら、旧ソビエトにおきましては我が国におきましてのような原子力損害賠償制度というのは確立してございませんで、どのような補償ないし賠償というのがなされたか、この辺につきましてはつまびらかではございませんけれども英文タス通信、これは昭和六十三年の一月十四日付の報道によりますれば、事故対策に必要な経費は四十億ルーブル、邦貨に直しまして約九千億円、その他の経費を合わせれば約八十億ルーブル、同じく邦貨に換算いたしますと一兆八千億円になるというふうにされてございます。  いずれにしましても、詳細につきましては把握しかねているところでございます。
  7. 田中和徳

    田中(和)委員 今のお話を聞きまして、チェルノブイリ日本との経済格差等を考えれば、これはもっともっと、我が国の場合は大変な金額になるだろう、このように想像するわけであります。また、被害者の迅速な救済のためには極力スピーディーな処理が当然求められますが、国会審議の重さあるいは特殊事情を考えれば、これは時間を要することも考えられるわけでございます。原子力施設周辺住民にしてみれば、そのときの財政事情やいろいろな状況の中で救済が左右されるのではないか、このように不安に思うかもしれません。処理がうまくいけば臨機応変な対応という評価になると思いますが、一方、混乱を招けば場当たり的との批判も当然出てくるかと思います。  また、自然環境についての影響評価ということになれば非常に複雑な一面もあろうか、このように思うわけでございますが、被害金額などに応じて具体的にどのように対応するかというガイドラインをきちっと用意しておかなければならない。また、そんなことがあってはならないんですが、万が一に備えたガイドラインは絶対必要だろう、このように思うわけでございますが、その点、お聞かせをいただきたいと思います。
  8. 青江茂

    青江政府委員 お答え申し上げます。  原子力事故というものが生じました場合におきましての被害の具体的な態様と申しましょうか、そういったことにつきましては相当いろいろ異なるものではないか。あらかじめ、今時点におきまして、クラシファイしましたような対応というものを私どもでどこまで詰め得るのかというふうな問題もございます。  というふうなことで、実際に事故が起きた場合のスピーディーな対応国民皆様方に安心していただけるようなスピーディーな対応ということにつきましては先生指摘のとおりであるというふうには認識をしておるんでございますけれども、実際に事故が起きた場合のその規模とか態様、こういったものに即しまして、最もその時点におきまして適切な対応をとるということが、これまた一方肝要なことであろうというふうに思うわけでございます。  特に国の援助におきましては、それをどのように実施するかというのは、国会議決というものを経るということになってございまして、国会の御判断というものを通じまして、その時々におきましての最も適切な措置が講ぜられるということではないかと思うわけでございまして、私どもといたしましては、被害者立場に立ちまして、国の援助というものがスピーディーに対応できるように全力を尽くしてまいりたい、かように考えてございます。
  9. 田中和徳

    田中(和)委員 いろいろな考え方があると思うんですけれども、六百億はとりあえずの準備金、このようなお話ではありましたが、聞く人によれば、三百億が六百億になった、倍増したということはそれだけ危険も大きいんじゃないか、このように思う方があっても仕方がないのかな、こう思うわけであります。ましてや、これから各方面に施設をつくっていかなければならない、国民の御理解をいただかなければならないということになると、PRをよほどきちっとして、誤解のないようにお願いをしなければならないと思いますので、ぜひ大臣、ひとつよろしくお願いしておきたいと思います。  そしてもう一点、時間の関係で最後の質問になると思いますが、お聞かせをいただきたいと思っておりますけれども賠償措置額については国際情勢を勘案した、こういうことでありますけれども、しかし、国際情勢国際情勢と言いながら、実は我が国原子力損害賠償に関する国際条約を締結していないんですね。島国である我が国は、チェルノブイリ事故のように、近隣諸国被害を及ぼす、あるいは逆に被害を受ける危険性はそう高くはないんじゃないか、まさか、締結しないということがそんな理由によるものとは私も思っておりませんが、冒頭でも述べたように、あくまでも我が国原子力有効活用を今後とも推進をしていく、こういう立場に立っておるわけでございます。  だとしたら、我が国被害者となった場合に迅速な救済を得るという国益からの視点だけではなくて、国際社会の一員として、また原子力利用する国の一つとして、万が一、自国が加害者になった場合のために国際的な条約に加わっておくべきではないか、私は一面そう思うところもございます。  そこで、我が国はなぜ今まで原子力損害賠償に関する国際条約を批准してこなかったのか、また、今後もその方針に変わりはないのか、あるいは将来は批准するつもりなのか、伺っておきたいと思います。
  10. 青江茂

    青江政府委員 お答え申し上げます。  原子力損害賠償に関しましての国際的な枠組みとしましては、大きく申し上げまして、パリ条約、これはOECD加盟国中心になって加盟しておる枠組みでございますが、これが一つと、もう一つは、IAEAの諸国が、中南米それから中東欧中心にしましてつくってございます枠組みウィーン条約一つございます。  そういう国際的な枠組みは二つあるわけでございますが、御指摘のとおり、いずれにも我が国は加入していないという状況にあるわけでございますが、これの大きな要因としましては、従前我が国は、御案内のとおり、無限責任をとってございます。ということで、有限責任をとっている国というのも諸外国にはあるわけでございまして、この間の整合性がとれないというのが根本的な要因であったわけでございますけれども、これが、先般来一部改定になりまして、無限責任をとっている国をもブリッジがかけられるような状態に相なりまして、私どもも、その面の障害が取り除かれたわけでございますので、今後は、日本の国の周辺国、こういったところと一緒になりまして、一つ国際スキームをつくり上げるといいましょうか、そのウィーン条約に入る、ないしパリ条約に入るというのも一つ方途であろうかというふうに思うわけでございますが、いずれにしましても、周辺諸国一緒になりまして、一つの国際的なスキームをつくり上げるような、そういう努力というものを尽くしてまいりたい、かように考えてございます。
  11. 田中和徳

    田中(和)委員 時間がほぼ参りましたので終わらせていただきますけれども、重ねて申し上げますけれども我が国の二十一世紀は、原子力開発が順調にいくかどうか、国民の御理解が十分に得られるのかどうか、ここにかかっているような気がいたします。  そういうことを考えるときに、この新たなる法の改正というのは極めて重要なことではありますけれども、こういうことが起こらないように、この法律が適用されることのないように努力することが何といっても大切であります。くれぐれも国民信頼が得られるように、特段の御努力を強くお願いを申し上げ、私の質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  12. 北側一雄

  13. 菅原喜重郎

    菅原委員 今回提案されました原子力損害賠償に関する法律の一部を改正する法律案につきまして若干の質問をさせていただきます。  まず初めに、原子力全般につきまして政府の見解を伺いたいと思うのでございますが、現在、原子力については、総発電電力量の三割以上を担う、国民生活を支える重要なエネルギー源となっております。今後とも、我が国が豊かな社会生活を享受し、経済成長を図っていくためにも、原子力発電は必要不可欠な位置づけを持つものと考えております。  また、二酸化炭素の排出量による地球規模での環境問題、さらに、二〇〇〇年問題として石油供給増大が望めないどころか削減の不安も出ていることも考慮するのであれば、今後とも原子力開発利用推進していく必要があると考えます。さらに、原子力発電を長期的に安定的に進めていく上では、核燃料サイクルを円滑に推進していくことも重要でございます。  そこで、核燃料サイクルを含めた、政府としての原子力開発利用にかかわる基本的な、しっかりした考え方をまずお伺いしておきたいと思います。
  14. 青江茂

    青江政府委員 お答え申し上げます。  我が国経済社会にとりましてエネルギー安定供給というものの重要性といいましょうか、それにつきましては論をまたないところであろうと思うわけでございますが、さらに、地球温暖化防止というふうな観点から、従来にも増して地球環境への配慮というのが必要になってきておる。  こういう状況の中におきまして、我が国としましての対応というものを考えるに当たりましては、いわゆるさまざまなエネルギー源の最適な組み合わせ、ベストミックスということが大変重要であろうというふうに思うわけでございます。中でも、原子力と申しますのは、先生も今御指摘になられましたとおり、供給安定性でございますとか、発電過程炭酸ガスを発生しないというふうな特徴を持ってございまして、既に総発電電力量の三割を担う重要なエネルギー源ということでございまして、今後ともその開発利用推進を進めていくということが大変重要な課題であるというふうに受けとめてございます。  その際に、資源に乏しい我が国という立場からいたしまして、将来にわたりましてのエネルギー安定確保ということと、放射性廃棄物環境への負荷の低減という観点から、使用済み燃料を再処理し、回収されるプルトニウム等を再利用していく核燃料サイクルの確立を図るということを基本方針にしておるわけでございまして、今後とも、平和利用の堅持と安全性確保ということを大前提にいたしまして、国内外の理解と協力を得つつ、原子力開発利用というものを着実に進めてまいりたい、かように考えているところでございます。
  15. 菅原喜重郎

    菅原委員 核燃料開発に対してやはり政府も毅然としたスタンスで、これからも国民理解を得るように進めていっていただきたいことは言うまでもないことでございますが、しかし、残念なことに、最近におきましては、旧動力炉・核燃料開発事業団において起きました平成七年の「もんじゅ」事故及び平成九年の東海再処理施設でのアスファルト固化処理施設爆発事故など、一連原子力にかかわる不祥事が起きております。また、つい最近でも、昨日審議されましたように、使用済み燃料輸送容器のデータ問題がございました。これらの問題につきましては、政府としても再発防止のために真剣な取り組みがなされたものと思いますが、我が国原子力開発を進めていく上では大変遺憾なことであると感じております。  原子力施設立地住民立場から考えてみますと、政府幾ら安全確保に努めていると申されましても、原子力安全性に対して不安が生じてくることも事実であります。原子力開発利用に当たっては、決して事故のないように安全確保に努めることは大前提でありますが、それに加えて、地域住民を含めた国民が安心できるような体制づくりPRに努めることもまた重要なことであります。  さて、今回提案されている原子力損害賠償に関する法律の一部を改正する法律案につきましても、万が一原子力事故が生じてしまった場合における被害者に対する賠償仕組みを設けるということで、ある意味においては、国民の安心できる形で原子力開発利用を進めていくということに資するものではないかとは考えますが、一方、国民はまた別の見方をするのではないかと考えております。六百億円という賠償措置額増大が、万一の際の被害額がこのように大きくなるものだ、こういう不安感国民に与えるんじゃないかと思うわけでございます。  金融対策として政府はペイオフ、預金者保護をなすわけでございますので、政府が進める原子力事業に対する被害に対しても、本来はやはり最終的には政府がそれを補償していく形になると思うのでございます。そうならば、何でこのように金額を大きくしなければならないのか、反面の不安感、そういうことにも受けとめられる点に対しまして、どのようにお考えでございますか。
  16. 青江茂

    青江政府委員 お答え申し上げます。  まず、賠償措置額ということそれ自体につきましては、さきの答弁でも触れさせていただいたのでございますけれども、これはあくまでも、いわゆる事業者免責上限を定めるような数字ではなく、いわゆる無限責任というものを前提にいたしまして、万一起きた場合に備えまして、被害者に対する迅速かつ確実な賠償の履行を具体的に確保するための基礎的なお金という性格のものでございます。  それが、従前、十年前は百億円から三百億円に引き上げられ、今回三百億円から六百億円ということで、確かに、そんなにだんだん大きくなっていくのか、ある意味国民皆様方に若干無用な不安というものを惹起せしめるような可能性というものがあるんではないかという御指摘でございますけれども、いわゆる被害者救済ということに万全を期すという観点からは、基本的には、私ども思いますに、これは多ければ多いほどいいというふうな性格のものではないかというふうに思うわけでございます。  しかしながら、原子力事業者に対しましてあらかじめ義務づけておる金額と申しますのは、具体的な方途といたしまして、民間保険会社との間の保険契約という方途を講じることによりましてその措置を講ずるということからいたしますと、例えば保険のサイドの引受能力でございますとか、それからもう一つのファクターといたしましては、国際的ないわば相場と申しましょうか、諸外国においてどのような賠償措置というものがあらかじめ用意をされておるのか、その辺のバランスといったものも勘案しつつというふうなことであろうかと思うわけでございます。  今申し上げました二つの要因中心にいたしまして、総合勘案した結果といたしましての六百億円というふうな性質のものでございまして、その辺につきまして、国民皆様方により一層正確な御理解をいただくよう今後とも努力をしてまいりたい、かように考えてございます。
  17. 菅原喜重郎

    菅原委員 いずれにいたしましても、やはり原子力推進には今後とも一層の安全確保に留意をされてこれを進めていくようにお願い申し上げまして、時間が来ましたので私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  18. 北側一雄

  19. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 民主党の鍵田でございます。  私は、昨年は、労基法の五十年ぶりの改正があるということで労働委員会に所属をしておりまして、久しぶりに科学技術委員会に戻ってまいりました。一昨年は科学技術委員会と商工委員会に所属をしておったんですが、そのときに、商工委員会でもこの科学技術委員会でも、大体メンバーの方が同じ人がいらっしゃって、議論をされておる内容につきましては、ほとんどが動燃事故の問題についての質問が多かったわけでございます。  したがいまして、科学技術委員会というのは何か非常に暗い委員会だなと。動燃などのデータそれから調査内容などにつきましての隠ぺいでありますとか、またデータの改ざんでありますとかというふうなことで、それが追及をされ、そして大臣関係者の方々から謝罪をされる、そういうことの繰り返しをずっと見てまいりました。  私自身は、原子力発電に携わっている皆さんとずっと長年おつき合いをしてまいりました。日本エネルギー供給のいわゆるベストミックスというふうな面からも、またクリーンなエネルギーという観点からも、安全で、そして安定的に供給されるこの原子力エネルギーというのは大変重要であるというふうに位置づけをいたしまして、私の所属しておりました団体の中でも合意形成に努力をしてきたわけでございますけれども、むしろ科技庁やその辺が絡んだところにおいてその信頼を失するようなことが続いたわけでございまして、大変残念に思っておったわけでございます。  しかし、それらの問題も一応一段落をいたしまして、そして、この原子力損害賠償に関する法律改正がされるということで、より安全で国民に安心をされる、そういう施策に踏み込んで取り組まれるということにつきましては、私は評価をしていいのではないかというふうに思っておる次第でございます。  そこで、きょうは、その原賠法の内容につきましても一部確認をいたしたいというふうに思っております。  それから、原子力に対する安全という観点からいろいろ議論をされておるわけでありますけれども、どうも、原子炉とか原子力施設が外部に対して、一般の国民生活に対してどのような影響を与えるのか、それがどんな危害を加えるのかというふうなことばかりの議論でございます。実際に、それらの施設におきましても、外に放射線だとか、国民に危害を与えないような施策をどうしてとっていくのか、そういう観点からのいろいろな施策は考えておられるように思うんです。ところが、それでは、原子炉とか原子力施設に対して外部からどんな危害が加えられる可能性があるんだ、そのことはまた逆に国民に対しても被害を与えることにつながるわけでありますから、そういう観点の議論が余りにないように思うんです。原子力安全委員会にしても、どうもその検討項目を見ますと、原子炉や原子力施設が外部から危害を加えられるというふうな観点からの議論が余りない。  全くないわけではございません。実は、私の聞きますところでは、細川内閣のときに、米軍ですか、アメリカからの情報で外国から攻めてくるんではないかというようなことで、内閣官房あたりを中心にして関係者が集まって、何かいろいろシミュレーションをしたというふうなことが先日もテレビで報道をされておりました。また、もう既にお読みになった方もいらっしゃると思うんですけれども、「宣戦布告」という本を読んでみますと、敦賀に国籍不明の潜水艦が来まして、それでいろいろな関係者が慌てふためくというふうな状況が、小説ではありますけれども、何か小説とは思えないような臨場感を持って書かれておる、そういうことも話題になっておるわけでございます。  それらの問題につきまして、第三分科会でしたか、ことしの予算委員会でも若干議論されて、きょうお見えいただいております高見澤内閣審議官でありますとか池田警備課長なども答弁をされておるわけでありますが、それらにつきましてもう少し具体的にお答えをいただきたいということで、そういう観点から質問をしてまいりたいと思っておる次第でございます。  まず、賠償措置額の引き上げの根拠ということについて、若干お聞きをしたいと思います。  昭和三十六年制定のときには、措置額というのは五十億円であったわけでありますけれども、その後、四十六年に六十億、五十四年に百億、さらに平成元年には三百億、今回六百億ということでありますから、実に十二倍の措置額ということになるわけであります。そんな補償はしていただかなくてもいい、要は安全であればいいというふうに国民の皆さんも思っておられると思いますが、万一の場合にそういう補償の措置がされておるということにつきましては、やはり国民にそれなりの安心感を与えるのではなかろうかと評価をしておるわけでございます。  実は私も、そういう六百億というふうな数字が出てまいりました背景には、ウィーン条約において責任限度額が三億SDRということで決められたことが背景であると言われておるわけでありますが、問題は、その三億SDRに決められた根拠が、先ほども議論がございました、チェルノブイリでありますとかスリーマイルとかということを勘案してそういうふうな数字が出てきたのか、そこらのことにつきましてお聞きをしたい。  もう一つお聞きをしたいと思っておったことは、ウィーン条約の批准などにつきましては、どうも前向きに検討されるやに受け取ったわけでございますが、本当にそういうことでいいのかどうかということについて、まずお聞きをしたいと思います。     〔委員長退席、斉藤(鉄)委員長代理着席〕
  20. 青江茂

    青江政府委員 お答え申し上げます。  ウィーン条約におきまして三億SDR、邦貨に直しまして約五百六十億円という数字でございますけれども、この数字自体につきましての議論の背景には、世界の保険市場のいわゆる引受能力というものがあったというふうに理解をしてございます。  当然、我が国も、賠償措置といいますものは、民間保険会社との間の保険契約ということでもって対応することになるわけでございます。その際に、我が国の場合、御案内のとおり保険プールという形でもって対応されておるわけでございますが、そこの保険プールの引き受けというものも、そのかなりの部分は世界の保険市場につながっておるわけでございまして、どうしても数字的に連動するということでございます。実態論としましては、かなり近い数字といいましょうか、それぞれの国の国情というのが、経済力とかといったことがあるわけでございますけれども、結果としまして、今の連動ということによりましての数字が結果的に近い数字になるというふうに理解をしてございます。  それから、ウィーン条約についての点でございますけれども、私ども、先ほど、いわゆる国際的なスキームというのがきちんと確立するということが大変好ましいことだというふうに申し上げました。  その際に、周辺諸国とともにということがまたもう一つ重要なことであろうというふうに思ってございまして、御案内のとおり、今、我が国周辺諸国状況といいますものは、ほとんどの国というのは条約に加盟をしていない。そして、賠償措置をとるにいたしましても、非常に低い数字といったふうな国もあり、区々ばらばらでございまして、そういったものをまず整えながらそういう方向に持っていくという努力というのが必要になってくるのではないかというふうに考えてございます。  したがいまして、ちょっと前後いたしまして恐縮でございますけれどもチェルノブイリ事故被害額といったものを勘案しての数字ではございません。
  21. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 こういう原子力施設に対しては無限責任を課しておるわけでありますから、こういう措置がされておるとかおらないとかということとは関係なしに賠償されるわけでありますが、しかし、それだけ措置をされておるということは、やはりそういう事業者にとりましても安心感があるということでございますから、それの充実に引き続いて努力をしていただきたいというふうに思うわけでございます。  いわゆる保険契約における賠償措置と、それからもう一つ政府との補償契約、この二段階で行われるということになっておるわけでございますけれども日本の場合には全く賠償に値するような事故がなかったということは、これは大変喜ばしいことでございますし、今後もそうあってほしい、こう思うわけでございますが、保険契約の場合には、自賠責でもそうでございますけれども事故がなければやはりそれだけ保険料率が下がってくるということになるわけでございます。  今回の場合も、保険の場合には保険料率がそう高くないという、何%でしたか、八%でしたか、それぐらいの引き上げになったのではなかろうかというふうに思うわけでございますが、政府との補償契約につきましては三百億が六百億になったということで、この補償契約につきましては単純に二倍になるというふうにお聞きをしておるわけでございます。  政府としましても、この補償契約に基づいて補償されたということは全くないわけでございますが、この分についてはどのように措置をされておるのか。そのお金を累積をして、そしてどこか別途会計にして、何か事故があったときにそれでもって賠償されようとしておるのかどうかということと、それから、やはり単純に二倍ということに、保険の場合と違った考え方措置されておるということにつきましてお聞きしたい。  もう一点、事業者などの賠償能力を超えるものについては、国会議決などにもよるのでしょうけれども、国において措置するというところがありますね。そのときにちらっと浮かんだのは、旧国鉄の債務の問題についても、国において措置する、こうなっておったわけでありますけれども、いやいや、国において措置するということは、どこが、だれが幾らその責めを負うのかということの配分についての責めを持っておっただけであって、実は国が全部払うということではなかったのだというふうなことになったようでありますから、この場合はそんなことはないのかどうか、若干お聞きしておきたいと思います。
  22. 青江茂

    青江政府委員 お答え申し上げます。  まず、国が補償契約を締結いたしまして補償料を取っておるわけでございますが、その補償料はいわゆる国の一般会計の歳入に入ってまいります。ということで、いわゆる区分してどうこうというふうな形にはなってございません。何か事態が生じまして、国が補償契約上いわゆる責めに応ずるというふうな場合には、それは一般歳出の方から対応がなされるというふうなことになってくるわけでございます。  それから、いわゆる補償料の料率の問題でございますけれども、これは具体的には政令でもって決められてございますけれども、一万分の五という定率でもって決まってございます。民間の保険契約の場合でございますと、これが、無事故であれば漸次下がっていくではないか、この辺が国の補償料の場合はどのようになるのかというふうなお尋ねであろうかというふうに思うわけでございますけれども、今回におきましては、この料率につきましての変更というものは考えてございません。  と申しますのは、いわゆる国の補償契約がカバーする範囲と申しますのが、地震、噴火でございますとか、正常運転でございますとか、そういう一定の、従前の経験則というものでもちまして考えることがなかなかできないような性格のもの、これをカバーするわけでございます。そういたしますと、民間がカバーいたしますところの保険の方の世界とは若干異なった考え方対応せざるを得ないのかなというふうに考えてございます。  それから、国の措置ということでございますけれども、国の措置というものが発動するケースと申しますのは、賠償措置額を超えて、かつ、責任を負っておりますのはあくまで原子力事業者でございますので、事業者がその責めを全うする際にどうしても能力的に対応できない、こういうふうな非常に極端なケースであろうというふうに思うわけでございます。そのときの形態と申しますのが、先ほど申し上げました補助金でございますとか利子補給でございますとか、さまざまな形態というのが考えられるということでございますけれども、あくまでも、まず責任を持って被害者に対して対応していくというのは原子力事業者でございます。そこが第一原則でございます。  その上に立ちまして、ある特殊のケースにおきまして国がみずからというふうな場合というのも、事業者対応する場合に対する補助金というケースもございましょうし、国みずからが何らかの対応をとっていくということもあろう。いずれにしましても、その辺は、その具体的なケースといいましょうか、当該事態に即しまして最善の方法をというふうなことになるのではないかというふうに思ってございます。
  23. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 その辺は、事態が起こってからというふうなことのようでございますので、今現在、いろいろ想定をして、ああだこうだと議論をしてもしようがないのかもわかりませんが、特に補償契約の契約料率といいますか、そういうものにもかんがみながら、関係者でよく調整をしながらこれからも考えていってもらいたい、国としてもそれを考えていかなくてはならぬのではないかというふうに思いますので、よろしくお願いを申し上げます。  それで、次に、原子力にかかわりますいろいろな被害というのは、放射線による被害というのが非常に多いと思うのですが、原子力とか放射線とかといいますと、何か本当に悪者のようにすぐとらえてアレルギーを起こす人もたくさんいるわけでございますけれども、しかし、先ほども言いましたように、電力の安定的な供給というのもありますし、それからまた医療でございますとか、それから産業用でありますとか、いろいろな意味でこの放射線などが活用されておるわけでございます。そういう意味ではあらゆる分野でこれらの問題が出てくるわけでございますけれども、それらにおける被害というのもやはり出てきておるわけでございます。  特に、一九八七年に、ブラジルの病院が廃院になったケースで、放射線の治療装置が放置されておった、それを、産業廃棄物といいますか、そういう廃棄処理をするときに、その知識がなくて、そのために死者が出る、そういう事故が起こったというようなこともあったようでございますし、今産業廃棄物は大変問題になっておるわけでありますが、本当にそういう知識なしに措置をしたために大変な被害をこうむったというようなことが今後とも起こり得るわけでございます。  これらにつきましては、ちょっとこの法律とは違うような気もするわけでございますけれども、どのような法律に基づいて補償されるのか。民法でありますとか、そういうことになるのかどうか。その辺につきましてお聞きをしたいことが一点。  もう一つ、次に話題になります中間貯蔵の問題ですね。この問題もこの原賠法の対象になっておるわけですね。  ということは、今は発電所の中で使用済みの燃料というのが貯蔵されておるわけですが、今度はどこかに中間貯蔵しようということを議論するわけでありますが、その法律がまだ決まっておらない段階で、この中間貯蔵の問題も含めてこの法律で議論をされるということにつきましては、どういうことなのか。若干、我々の身内で議論をしましたときにもそういう問題が出ましたので、お答えをいただきたいというふうに思います。
  24. 青江茂

    青江政府委員 お答え申し上げます。  ラジオアイソトープの利用に伴います事故についてでございますけれども、これにつきましては、基本的には先生今御指摘の民法、それから従業員等につきましては労災、こういった、いわゆる通常一般の法の枠組みというのが適用されていくというふうなことであろうと思ってございます。  それから、中間貯蔵の点につきましては、あくまで、中間貯蔵という業を認めるかどうかの議論と申しますのは、別途私どもが御審議をお願いをしようとしてございます炉規制法の一部改正の中で御議論いただくといいましょうか、原賠法の方は附則でもって手当てをしてございます。いわゆる規制法の方の一部改正法案がきちんと成立すれば、それでこちらの方の世界に入ってくるという形で附則でもって整理をしてございます。でき上がりますれば、これは原賠法の世界の外に置くわけには決していかないわけでございますので、それを入れていくというふうな対応措置というものをとってございます。
  25. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 わかりました。  あとは、損害の範囲などにつきましてどのようになっておるのかということでございますが、非常に深刻な放射能漏れなどの事故が起これば、これはもう問題なくこの原賠法が適用されるというふうに思うわけでございますが、軽度の事故で、いわゆる高レベルの放射能漏れじゃなしに、もう少し軽度な放射能漏れなどがありまして、そして、それが例えば施設の付近の農地を汚染するとか、また漁場を汚染するとかというような問題が起こったときには、もちろんこれが適用されるのかどうなのかということでございます。
  26. 青江茂

    青江政府委員 お答え申し上げます。  いわゆる被害の程度が深刻であるか軽度であるか、そういったことを一切問わず、その事故との間に相当因果関係がございますものすべてにつきまして、この原子力損害賠償制度というのが適用されるというふうになってございます。
  27. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 それでは、例えば今度の所沢のダイオキシン事件のような、ああいう風評被害みたいなもので、施設の御近所の農家の皆さんだとか漁業家の皆さんが大変被害をこうむるというふうなことに関しましては、どのようにお考えでしょうか。
  28. 青江茂

    青江政府委員 先ほど申し上げましたとおり、放射線の作用等との間に相当因果関係がございますれば、原子力損害として認められるというふうになってこようかと思います。
  29. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 では、その相当因果関係というのは、そこでいろいろ争われるということになる可能性はございますね。それは、そういうことでよろしいですね。  それから、損害賠償紛争審査会というのが設置をされるわけでございますが、これにつきましての、例えば審査会の員数でございますとか、どういうメンバーを入れようとされておるのか、その辺につきましてお考えがあればお聞かせを願いたい。  例えば、原子力工学の専門家でございますとか医学の関係者とか、また、人文科学的な社会システム、こういう観点から見られる学者の方とか専門家の方、それから弁護士さんとか、こういうふうな人が関係してくるのかなというふうに想像しておるのですが、行政としてはどのようにお考えでしょうか。
  30. 青江茂

    青江政府委員 まず、人数の点につきましては、十人以内ということでございます。  それから、メンバーにつきましては、今先生がおっしゃられましたような分野というのが一応私どもの想定としてはございます。
  31. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 わかりました。大体原賠法につきましては理解が進んだというふうに、私自身思っておるわけでございます。  お待たせしました。内閣安全保障・危機管理室、それから警察庁、防衛庁の方々に、先ほどお話ししましたような観点から若干お聞きをしたいというふうに思います。  外国なりそれからまたテロなりがどういうふうな動きをするのかということで、それに対してどのような対応をするかということについては、これはまあ言ったら一つの争いでありますから、相手に手のうちはなかなか見せられないということで、実は、第三分科会で自民党の阪上議員がお尋ねをされた、それにつきましても具体的な内容についてはお答えになっておらない面もあるのです。  もちろん、そういう作戦的なものは、相手にわかってしまうとそのまた裏をかかれるというふうなこともあるわけですから、そのことはわからないでもないのです。でも、どういうふうな防護措置があるよということを相手にプレゼンスすることは、大きな抑止力になるのではないかというふうにも思うわけでございます。  先ほど言いました作戦的な面で非常にマイナスになるというふうなことについては結構でございますけれども、できるだけ可能な範囲でひとつお答えをいただければありがたいな。よりそういう安心感が増してくるのじゃないかというふうにも思います。  実は、先々週の金曜日でしたかの新聞で、福井にたくさんの、難民と言っていいのかどうか、ボートピープルが上陸をして、たくさん逮捕もされたようでありますが、行方不明の人も随分おるように聞いております。そういう報道は本当に最近日常茶飯事で起こっておるわけでありますし、マスコミなりそれからまた関係当局で把握できないで上陸をしておるというようなこともしばしばあるようであります。また、関係者の証言によりますと、ゲリラ的な人物が日本に潜入しておるというふうなことも聞かれるわけでございまして、これらがどんな破壊活動をしてくるのかということは予測がつかないわけでございます。  私は、テロでありますとか外国からの侵入というような面から見まして、日本の安全保障上非常に大きなアキレス腱になる可能性があるのではなかろうかという懸念を持っておるわけでございます。  そうでなくても、原子力と聞いただけで不安を持つ人がたくさんおる中で、さらに一層その不安感を増幅するようなことになってはいけないと私も懸念をしながら質問をするわけでございますけれども安全管理につきまして、順次、科技庁なり内閣官房なり、また警察庁、防衛庁とお聞きをしていきたいというふうに思うわけでございます。  科技庁に若干お聞きしたいのですが、核物質の防護ということで実はパンフをいただきました。私もこういう施設を何回か訪問したこともございます。もちろん発電所も、福井も、敦賀や大飯それから美浜なども見せていただきました。そこへ入りますのにはIDカードも必要でございますし、防護さくもありまして、確かに普通の人間が簡単には入れなくはなっておるのは間違いがないわけでございます。しかし、特殊なテロリストでありますとか外国からの侵入の場合には、どんな武器を持って侵入してくるのかはわからないわけであります。  現状における防護について、原子力施設における防護の実態について、お答えをいただきたいというふうに思います。     〔斉藤(鉄)委員長代理退席、委員長着席〕
  32. 間宮馨

    ○間宮政府委員 お答え申し上げます。  まず、原子力施設につきましては、核物質防護の観点から、当該原子力施設が保有している核物質の種類、量、形態等を考慮いたしまして、防備フェンス及び監視カメラ、こういうものが設置してございますし、出入り口が限定されております。金属探知器等による出入り管理が行われているということで、そもそも不法な侵入は困難な構造となっております。また、不法な侵入が発生した場合に、これを速やかに把握するため、警備員による二十四時間体制での警備が行われておりますし、防護区域の巡視等が行われております。  さらに、警察への連絡体制につきましては、一般電話または警察直通の非常通報装置等によりまして通報できるようになってございますし、通報を受けた治安当局の迅速なる出動がなされることになっております。  このような警備・連絡体制の構築に加えまして、所管の警察との定期的な情報交換を行うことによりまして、警察との連携のもとで、原子力施設の警備体制の整備に万全を期しているところでございます。
  33. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 その辺のところは、この資料の中でも見せていただいて理解ができるところでございます。  それぞれの省庁にずっとお聞きをしたいと思っておったのですが、ついででございますので、科技庁さんにお聞きするのですが、確かに出入り口などは、IDカードがなかったらいけないとか、いろいろありますね。声紋によってしかあかないとか、指紋とか手形とかいろいろなことをやっておりますが、それでは、もし、例えばドアもダイナマイトでありますとか重火器などによりまして破壊をする、確かに警報器が鳴ったりというふうなことはあるかもわかりませんが、そういうことで入られるということになると、これはそれで守り切れるのかどうかという懸念があるんですが、いかがなんでしょうか。それでも持ちこたえられると確信をされているのかどうか。
  34. 間宮馨

    ○間宮政府委員 お答え申し上げます。  相手がどういう形で来るかということは、これは全くわかりませんので、まさにそれに応じてどうなるかということかと思いますが、いずれにしましても応戦という形にはならないわけでございまして、あくまでも警察の応援が到達するまでの時間を稼ぐということを基本として、可能な限りの対応をするということでございます。
  35. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 それでは、また後ほどお聞きするかと思いますが、先に危機管理室にお聞きをしたいのです。  私が今想定をしましたような外国からの侵入でありますとかまたテロでありますとかいうような人たちが、重火器を持ったりまたそのほかいろいろな破壊の兵器を持って侵入をするというふうなことは、何か想定をして対策を立てられておるのかどうか。または、いや、そんなことは全く想定していないというふうに、それも答えにくいのかもわかりませんが、いかがでございましょうか。
  36. 高見澤將林

    ○高見澤説明員 お答え申し上げます。  政府といたしましては、我が国に対する各種の緊急事態に対していかに政府全体として対応するかというのは大変に重要な問題でございまして、従来から累次の機会にこういった検討、研究を重ねてきておるところでございます。  先生指摘になりました、まさに具体的なケースについてどうかということでございますけれども政府といたしましては、平成八年の五月に橋本前総理から御指示をいただきまして、内閣官房が事務局となりまして、緊急事態対応策についての検討というものを進めているところでございまして、これは、まさに先生指摘のように、我が国に対する何らかの危機が発生した場合あるいはそのおそれのある場合において、政府全体としてどういった対応をしたらいいかということを、各種の事態を想定しながらしっかり勉強しておくようにという指示でやっておるものでございまして、その中に、沿岸・重要施設等の警備ということで、御指摘のような施設も含めまして検討しておるというところでございます。
  37. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 関係者も集まって危機管理のための勉強会などをされておるというふうに受け取らせていただいたんですが、それでは、それによって具体的に、例えば訓練をされておるとか、合同でそういうふうなことについてのシミュレーションをしたり、連携を取り合って対策を立てられたりというふうなことをされた実績があるのかどうかということについて。
  38. 高見澤將林

    ○高見澤説明員 お答え申し上げます。  具体的な事態対応策の検討というのは、関係省庁がそれぞれ適宜集まりましたりあるいは会議を開きましたり、あるいはいろいろな分掌の対応措置を検討してやりとりをしたりというようなことでやっておりまして、橋本総理の指示も、できるだけ臨場感を持ってやるようにということでございますので、私どもとしては、いろいろなケースを想定しながら会議をやったり、あるいは訓練と申しますか、いろいろな臨場感を持てるような状況を想定しながらやっているところでございます。  それで、ちなみに申し上げますと、これは平成九年九月九日でございますけれども、安全保障会議議員懇談会というのを、閣僚レベルでございますけれども、橋本総理、梶山官房長官の当時でございますけれども、開催をしていただきまして、その場でもいろいろ、こういった重要施設の警備は大事であるということで御指示をいただいて、閣僚レベルでも御議論いただいたというような経緯がございます。
  39. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 それでは、警察庁の警備局の方にお聞きをしたいわけです。  先ほど科技庁の方にお答えをいただいたのですが、それに関連をしまして、先ほども言いましたような重火器などを持った、重火器といってもいろいろな定義があるのでしょうけれども、機関銃以上の銃を持って侵入してくるというふうな場合に、警察として対応できるのかどうか。  実は、特殊部隊、SATというのがあって、それがいろいろな対応をできるだろう、防護のためのいろいろな武器、道具もあるというふうなことで答弁をされておるようでございます。そのSATの内容とか、それから、どういうふうな訓練なり、どういうふうな武器があるのか。今言いましたような機関銃であるとかバズーカ砲であるとかというようなものを持ってこられたときに、警察としてそれに対応できるのかどうかということについてお聞きをしたいと思います。
  40. 池田克彦

    ○池田説明員 御指摘のような事態が発生した場合でございますけれども、まず、いかなる事態であるかということで、各種の情報収集に努めるのが最初だというふうに思います。  それから、被疑者の数あるいはどんな武器を持っておるか、それから、例えば立てこもっているのかあるいは散開しておるのか、そういうようなことに応じまして、速やかに、先ほど御指摘がございましたSATを初めといたしました、資機材を持ちました機動隊、これを投入いたしまして、交通規制とか警戒線の設定あるいは監視警戒、こういうような措置をとるということになろうと思います。  それで、SATの装備その他でございますけれども、部隊の性格上、詳細についてはちょっと申し上げかねるのでございますが、ライフル等の銃器、それから各種の偵察資機材、このようなものを装備しております。  重火器、例えば機関銃とかバズーカ砲とか、そういうものに対応できるかという御質問でございますけれども、これは、相手方がどういう対応をとっているか、それによって一概にはお答えしかねるのですが、現有の装備でできるだけのことをやってまいりたいというふうに考えております。  それから、訓練はどういう訓練をしておるかということでございますが、現在、SATは七都道府県にございます。この七都道府県で単独あるいは合同で訓練をしておりまして、あらゆる事態に備えるというのが我々の考え方でございますので、あらゆる事態に対応できるような、そういうような訓練をしておりますが、内容につきましては答弁を差し控えさせていただきたいというふうに存じます。
  41. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 警察の方は、そういう施設に対してはパトロールをされておる、そして常に情報収集もしている、日常的にもしている。そして、そういう施設からは、何か異常事態が起こればすぐ通報が来るというふうになっておるとは聞いておるのですけれども、パトロールというのは一定の間隔を置いて、例えば、所轄の警察から一時間に一回とか一日に何回とかというふうなことでパトロールをされるのじゃないかというふうに思うわけですね。ゲートのところへ来て、そして異常がないかどうかというふうなことで、異常がなければ帰られる。こういうふうなことで受け取らせていただいていいのでしょうか。
  42. 池田克彦

    ○池田説明員 パトロールの概念でございますけれども、パトロールと申しましてもいろいろございまして、先生指摘のような周りを巡回するというものから、そこに定点的に配置するというものもございます。  テロその他の事態というのは、いきなり発生するというのはなかなかございませんで、ある程度の緊張感、あるいは情報が入ってくるというふうになってまいりますと、このパトロールの程度を徐々にレベルアップしていく、そういうようなやり方で対応してまいりたいというふうに考えております。
  43. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 ちょっと私はそれは違うと思うのです。私の質問関係ないところでお答えになったことで、テロというのはいきなり起こるのではなしに、何か緊張感があってとかというふうにお答えになったのですが、もちろん、例えば航空機でもって領空を侵犯したとかいうふうな場合には、これはスクランブルがあったりしてそれにすぐ対応はするわけでありますけれども、先ほど言った夜陰に乗じて海上から侵入をしてくるとかというふうなことに関しては、実際にそれがそういうパトロールなりなんなりの網にひっかからないから上陸してきている。そういう事実があるわけですから、それらに対しては警察のそういうパトロールというのは何の役にも立っていないじゃないか。そう言ったらちょっと言い過ぎかもわかりません、事実、直前に検挙されたケースもあるわけですから。  しかし、そういう包囲網を破られるということもしばしばあるわけでありますから、そういうことを考えたら、特に訓練されたテロでありますとか外国からの侵入者などいうのは、相手に悟られないように来るのが戦術でありますから、そういう発想で物事を考えられてはちょっと困るのじゃないかなというふうに思うのですけれども、いかがですか。
  44. 池田克彦

    ○池田説明員 御指摘のとおり、テロにはいろいろな形態が考えられるというふうに思います。我々といたしましては、できるだけ実効ある警戒をするという趣旨から、事態の早期把握にできるだけ努めてまいりたい、そういう趣旨で申し上げたわけでございます。
  45. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 それはそれでいいとして、次に、警察の方も防衛をするにしても限度がある、こうなりますと、次の段階をどうするのかということでございます。  例えば、自衛隊の出動を要請するというような場合に、前の阪神・淡路大震災のときにもいろいろ問題になったわけでありますが、だれがどういう形で要請をするのかということが問題だというふうに思うわけです。  その辺は、警察として状況を把握した、そして、これでは警察では手に負えない、だから自衛隊にというふうなことであるとするならば、どういう手順でもってそういう要請をしていくのかということについて、まずやはり警察を通じてなのか、それともその施設なのか、そこらのところについてはいかがなものですか。
  46. 高見澤將林

    ○高見澤説明員 お答え申し上げます。  そのようないろいろな事態が起きましたときに、各種緊急事態が起きたときに政府全体としてどのように協力するかというのは非常に重要な問題でございまして、私ども内閣安全保障・危機管理室におきましては、昨年の四月に設置していただきました内閣危機管理監のもとでそういった各種の緊急事態に対してどう対応するかというようなことを検討しております。  その基本的な考え方と申しますのは、現行法体系の中でできるあらゆる措置をする、しかもその措置ができるだけタイムリーに行われるようにしなければならない。そのためにはまず情報の集約が第一であろう。その情報を集約するためには関係省庁間の連絡をよくとらなければならない。そのためにはやはり官邸の方に対策室なり連絡室というようなものを直ちに立ち上げて、関係省庁間で同じ情報についての認識の共有を図り、それが自衛隊なりあるいはほかのいろいろな、海上保安庁も含めた、どういった対応が必要かというのが、直ちに、タイムリーに判断できるような体制をつくり上げなければいけないだろう。そのために、ふだんからどういった手続なりをやっておけばいいかというのを、今まさに具体的に検討しているという状況でございます。  ですから、御指摘のようなケースですと、やはり警察の方からいろいろな情報が、官邸にも防衛庁にもいろいろな関係省庁にも集まってきて、そこでどういった対応が適切かということが判断されることになろう。それが現行法の枠の中でうまくいくような、そういったところを追求しておるというところでございます。
  47. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 事態がどういうふうに起こっておるのかということを把握した上で、内閣に連絡をし、そして内閣の方でそれに対する対応策を立てる、そういう体制をつくるということでありますが、テロであるとか外国からの侵入に対する防衛でありますとかというふうなことになりますと、これは相手のあることですから余り具体的に答えられないと思うのですけれども、例えば阪神・淡路大震災のような大規模な災害が起こったとします。そうしますと、今の状況では、あのときの経験からして、いろいろな危機管理対策が立てられておるように思うわけですけれども、どのぐらいの時間帯でどういうふうな対策が立てられるのか、例えばの例でもしお答えできればお願いしたいと思います。
  48. 高見澤將林

    ○高見澤説明員 お答え申し上げます。  各種の事態によりまして、その事態が発生した段階で直ちにすべての事実がわかっているような場合も場合によってはあるかもしれませんけれども、基本的には、そもそもその事実の発生さえいつの時点かわからないというような場合もあろうかと思います。  例えば、最近の例で、官邸対策室をつくったケースで申し上げますと、岩手山の地震がございましたけれども、これは大規模災害への対応ということで、岩手山の場合は震度六弱の地震でございましたので、直ちに関係の者に緊急招集がかかりまして、地震が起きてから二十分ぐらいの段階ではほとんど関係省庁の局長クラスが到着をして、警察の方のヘリコプターも現地ではもう飛んでいるというような状況でございまして、現場の映像も入りながら、慌ただしい中で、関係省庁が集まって直ちに対応をとる。そこから情報を確認して、これはどうもそれほど大きな被害に発展しないのではないかとか、あるいは、ヘリの映像を見ると、かなり道路なんかはつぶれているところもあるので、そういうところについてはさらに注意を要するなというようなことを危機管理監の方で判断をいただきまして、直ちに総理なり官房長官にも状況を御報告したというようなことがございますので、こういったケースにおきましては相当短時間で集中ができるのではないかというふうに思います。  それから、イラクの空爆のときにも官邸対策室を立ち上げましたけれども、これは、空爆実施後非常に速やかな段階で対策室そのものは立ち上げて、対応措置についての話がされておる。これは外務省が中心対応していたわけでございますけれども、そういったこともございます。  では、テポドンのときはどうであったのかとか、いろいろなケースがございますけれども、やはり事案事案に応じて対応の時間というのは正直言って異なるわけでございます。事前にいろいろな関係省庁間で協力のルールなりを定めておっていろいろ勉強しているものについては、情報が入った段階で、相当短い時間で、少なくとも関係者が集まってどうするか、それぞれが同じ情報のもとに行動できるという状態はつくれるのではないか、ただし、いろいろ限界もございますということだろうと思います。
  49. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 いろいろお聞きをしておりまして、確かに、例えば私が違法にそういう施設に侵入しようとしましても大変難しいということはよくわかるわけでございますけれども、要は、相手は日本法律であるとかまた日本の常識では通用しないような人たちでありますし、その人たちが、訓練をされて、いろいろな武器やまた破壊に必要な道具を持ちまして侵入をしてくるということになります。  こういう破壊活動につきましては、非常に短時間で行うというのがもう常識でありまして、一時間も二時間もかかっておったのではこれはもう完全に相手に対策を立てられるということになるわけでありますから、やはり本当に短時間で対応策が立てられるということでなくてはいけないと思うわけです。  国民が安全で安心できる、そして豊かな生活を築くために必要なそういう施設がせっかくあるわけですから、またそうでなければいけないわけでありますから、その施設をどう外敵から守っていくのかということは、日本の安全保障ということを考えても大変必要なわけでございます。どうも、今の状況をいろいろお聞きしておりましたら、もちろん国会の公の場では言えないこともいろいろあるのかもわかりませんが、何やら日本の安全保障のアキレス腱になっておるのではないかという気がしてならないわけでございます。  ぜひとも、それらにつきましては、関係の省庁が集まって、内閣の危機管理室が中心になってそういう対策をしっかり立てていただきますように、内容について我々に一々報告していただかなくても、そういうものがあるよという安心感を与えていただく、またそういうことを持っているということをプレゼンスしていただく、このことが抑止力につながっていくわけでございますから、そういう意味でひとつ頑張っていただきますようにお願いを申し上げておきたいというふうに思います。  皆さんもう結構でございます。ありがとうございました。  科技庁の方に、そういう観点に立って、原子力行政を進めていく上において、やはり科技庁としてもしっかりそれらの企画をしまして、関係省庁の皆さんと相談をしながら、また要請をしながら、そういう問題意識を持ってやっていただかないと、本当に大変なことになる。なってしまってから、しまった、もうちょっとやっておいたらよかったということになっても困るわけでありますから、その辺はよろしくお願いを申し上げたいと思います。  最後になりますが、使用済み燃料の中間貯蔵という問題が出てきまして、これから、委員会の次のテーマになるのではないかと思います。そういうことになってくると、使用済み燃料の搬送ということが起こってくるわけでありまして、今も、プルトニウムなどが外国から日本に返ってくるようなときの搬送についてもいろいろ対策を立てられてきたと思いますし、また、それぞれの発電所などでの使用済み燃料を再処理するために外国に搬出するときにもいろいろな対策を立てられておったと思うのですが、なおさらそういう搬送の機会がふえるのではなかろうかというふうに思うわけですけれども、それらにつきまして、実は私は、いろいろ新聞報道などでは知っておりますが、それ以上のことにつきましては、余り知識もないものですから、どういうことを考えておられるのか、ひとつお考えがあればお聞きしたいというふうに思います。
  50. 青江茂

    青江政府委員 今先生指摘の点、中間貯蔵というものができますれば、当然のことながら確かに搬送の機会がふえる。これはいわゆる国内の輸送ということに相なろうかというふうに思うわけでございます。その意味におきまして、フランスから返ってくるとか、そういったことに伴っていろいろな国際間の問題がございますけれども、そういった問題はとりあえずないのかな。  国内の問題ということになりますと、一つ安全性の問題というものがあろうかと思うわけでございますが、これは従来の安全性枠組みの中できちんと対処していくというのが大原則であろうかと思います。  それから、今御議論いただいてございます賠償措置という枠組みの中におきましても、いわゆる輸送という問題は従前より枠組みの中に組み入れられてございまして、いわゆる万が一のことがございますれば適宜対応がとれるというふうな状態になってございます。
  51. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 ありがとうございました。  それでは質問を終わります。
  52. 北側一雄

    北側委員長 辻一彦君。
  53. 辻一彦

    ○辻(一)委員 初めに、私は、原子力賠償法の問題に一点触れて、この点は今同僚の鍵田さんがかなり詳しくお触れになりましたし、各議員からも御質問がありますので、一点にとどめたいと思いますが、あとは、あってはならないのでありますが、原子炉事故があれば、それに対して保険を掛けて被害者救済するという一つの面と、もう一つは、現実に原子炉事故が起これば、今度は防災上それをどう考えるかという二つの面があるので、私は、主として後の面について一時間ほど質問したい、こう思っております。  まず第一に、既に論議をされておりますが、原子力事故、これは本当は安全に力を入れて起こしてはならないのでありますが、しかし、起こり得る可能性も否定はできないわけでありますので、そのときに、三百億を六百億まで補償枠を引き上げた。六百億はまずこれを補償して、そして、無限責任ということになれば、企業は大きな事故があれば無限に負担をするということになると思いますが、しかし、電力企業の持つ公共性等を考えると、全部資産がなくなるまでやれというわけにはいかないし、そこに国会がどういうふうに判断をして国として対応するか、こういうことになる。最終的には国会において、この原子力事故については、後始末といいますか、きちっとやることになると思うのですが、そういう段階的な理解でいいのかどうか。これは担当者から聞きたい。
  54. 青江茂

    青江政府委員 お答え申し上げます。  被害者救済ということにつきまして、いわゆる六百億という賠償措置というものを超えて非常に大きな損害が生じた場合におきましての段階的な物の考え方ということにつきましては、今、辻委員のおっしゃったとおりでございます。
  55. 辻一彦

    ○辻(一)委員 では、原賠法の本体の論議はまた皆さんにお願いしまして、先ほど言いましたように、原子力防災のあり方について少しお尋ねしたいと思うのです。  初めに、私のこの辺についての過去の経緯がいろいろありますので、ちょっと御紹介して、その上で大臣の所信を伺いたい、このように思います。  実は、私の出身は福井県の若狭湾でありまして、ここは今十五の原子力発電所が集中しております。そういう意味では、世界一の集中基地。そして、千二百万キロワット弱の電力を起こしておりますが、関西経済圏の半分はここから起こった電力で賄っている。大阪府と京都府の電力は全部福井の方から原子力発電で送っているという状況になると思います。したがって、そういう中でありますので、安全性万が一に備えた防災体制の確立ということは非常に大事なものであるということを、私の出発点、出身地からそういう感じを強く持っております。  また、今日、電力の三分の一、三四%が原子力発電によって賄われているというのも事実でありますので、新しいエネルギー開発して、世界の趨勢から見れば、これがだんだんと肩がわりをしていくのがいいと思うのでありますが、それは相当な時間をかけなくては現実的ではない。そういうことを考えますと、当分原子力発電に依存する時間というものが相当期間あり得ると思うわけですね。これを見ますと、この安全、防災の必要は当然言えるのではないかと思います。  それから、実は、チェルノブイリお話がきょうは冒頭からいろいろ出ておりましたが、私も昭和六十二年六月に、向こうの招請を受けて、西側の政治家としては初めてチェルノブイリの現地に参りました。中にも入って、中といっても離れた一号炉でありますが、接近しておりますが、入っていろいろな状況を聞きました。  チェルノブイリ事故時の所長さんは逃亡しちゃったんですね、後で裁判にかかったのですが。副所長は出張でほかに行っておった。それがすぐ呼び戻されて、明くる日、その事故の後に現地に立って、こういうことが起こり得るのかと自分の目を疑ったと言っていました。それは直接聞いたことです。  と同時に、この原子力事故というものが現実に起きたらどういうことになるのかということを職員に徹底しておかないといけない、それから、住民等にもそういうことがわかるようにしておかないといけない、そうでないと非常な混乱を起こす、そういう体験を述べて、目に涙を浮かべて当時の状況を聞かせてくれたことがあります。  私は、実は、チェルノブイリ状況を見て、これはアメリカのスリーマイルを見る必要があるだろうということで、六十二年の九月にいろいろな用件を兼ねてスリーマイルへ行ってまいりました。現地を見、それから、NRC、アメリカの原子力規制委員会とも随分論議をしました。そのときにこう言っておるのです。そこの所長さんは、警告灯が中央制御室には四百五十ある、四百個からの警告灯が全部点滅してベルが鳴ると、もう一体どうしていいかわからなくなる、緊急というのはそういう状況が起こり得るんだということを言って、そのために、やはりきちっとした職員に対する訓練と、住民に対して知識をきちんと徹底して、訓練等もちゃんとやっておかないといけないということを聞かせてくれました。  そこで、チェルノブイリは、原子炉も我が国状況が違いますし、それから、これはちょっと乱暴な実験をやったと思うのですね。要するに、原子炉の制御棒を、安全弁を外して実験をやった。だから暴走して走るところまで走ってしまった。自動車でいえば、ブレーキを外してアクセルを踏んで暴走したと同じようなことですから、こういうことは、きちっとしたルールが守られればあり得ない、あってはならないことだと思います。  ところが、スリーマイルの方は、これは御承知のとおり、水を供給する、それを示すところの機器が故障しておった。だから、給水が行われておったのですが、それがとまったために原子炉の空だきが起こった。原子炉の空だきが起こって、すぐその水が供給されたのですが、ゲージ、この機器が故障して、満杯になった、こう表示されたものだから、手でポンプをとめた。ところが、事実は水が足りなかったために空だきが進行して、炉心の三分の二は溶融をして、もうちょっと水が来るのがおくれれば、まさに原子炉の底が抜けるところまで、前までいっておりますね。アメリカの大統領の直接の指命によってNRCの委員が急派されて、そこで水素爆発をいかにしてとめるかに腐心をして、ついに食いとめたという経緯があるのです。  このスリーマイルは、百万キロワットの、そして、営業を始めて数年というアメリカの最新鋭の原子炉であったということを思うと、機器の故障、ヒューマンエラーというか、人間のエラー、こういうものが重なったときにやはり原子炉事故というものはあり得るということを考えなくてはならない。  そうなると、安全こそ防災であるから、安全性をきちっとやれば心配はないという論議もあるのですが、私は、安全性は徹底して追求すべきだ、これは高いほどいいわけですから、と同時に、あり得るかもわからない万一に備えた防災体制を、原子力安全性とあわせて力を入れておくということが不可欠の要件であるというように思いますが、これについてひとつ大臣の所信をお伺いいたしたい。
  56. 有馬朗人

    有馬国務大臣 御指摘のとおりだと思います。  原子力施設において環境に影響を及ぼすような事故があってならないことは当然でございまして、安全に全力を投入すべきだと思っております。その上で、国民の方々に安心していただかなきゃならない。それから、同時に、防災訓練などを含め防災対策というのは絶対やっておかなければならないと思っております。  このような観点に立って、国としては、災害対策基本法の枠組みのもとで必要な体制を整備してきております。平成九年六月には、防災基本計画を修正して、原子力災害対策編を新たに追加いたしました。この中で、国、地方自治体及び事業者の責務の明確化、国による専門家の現地への派遣など、防災対策を一層強化したところでございます。  さらに、現在、原子力安全委員会原子力発電所等周辺防災対策専門部会において、地方自治体の意見もお聞きしつつ、特別措置法で要望されている内容を含め、原子力防災対策の実効性を向上させる方策について検討中でございます。  具体的には、国による初動対応の強化、緊急時活動実施機能の強化、事業者の防災体制の整備、現地対策本部の連携強化、防災訓練の充実等について鋭意検討が進められているところでございます。  この検討を踏まえつつ、今後とも原子力防災対策の一層の充実強化に取り組んでまいりたいと思いますが、やはり日常の防災に対する関係者の心構えということが極めて大切だと思っております。
  57. 辻一彦

    ○辻(一)委員 私は、現在の災害基本法を基本にした法制だけではやはり足りないのではないか、そこに地方公共団体が広く特別措置法の制定を求めておる、そういう点を頭に入れて若干論議をいたしたいと思います。  原子力が集中しているのは、一つは福井県で、これは約千二百万キロワット、それから福島県と新潟県が同様一千万キロワット前後。一つのサイト、敷地の集中度からいうと福島や新潟が一でありますが、一定の地域に集中する割合は福井県が一番大きいと思うのですが、この三つが原子力発電日本の集中的な基地であると思うのですね。したがって、ここは早くから、安全性の追求とあわせて、ぜひ原子力防災のための法制化をやってほしいという声は随分強かったわけですね。  もう一つの、日本における大事な東海、茨城、ここは、初めて原子力の火がともったところですが、防災はまあ政府に任せておけばいいだろうという感じが相当強かったところです。ところが、一昨年の三月に動燃爆発事故が東海でありました。私たちも行きましたが、そのときに、今は村長さんはかわっておりますが、当時の東海村の村長さんのお話は、非常に率直的なものであったわけです。  若干御紹介したいと思うのですが、村長さんは、今まではそれはもうほかに任せておいていいじゃないか、こう思っておった。しかし、あの火災爆発事故の最中に周辺の市町村長から電話が頻繁にかかってきた。自分らは一体どうしていいかわからない、台風なら風が吹く、家が倒れる、洪水なら水かさが上がって、それをどうするか大体わかるが、これは五感に感じない、色もにおいもなく、五感に感じないところの原子力災害というものがどういうふうになっているかということがわからぬから、東海の村長ならわかるだろう、こういって再三電話が来た。しかし、自分もどうしていいかわからない。そこで、やはりこれは国が関与して、そして現地に、初動といいますか、初期対応がきちっとできるような体制をつくらないと不安があると言うのですね。そこで、防災の専門官を、運転管理専門官と同じように防災専門官を現地に張りつけて、初期対応ができるようにしてほしい、こういう点を中心にした法制化をぜひやってほしいというのが当時の率直なお話であったと思うのです。  それから、今、御承知と思いますが、全国に四つの、地方公共団体の原子力にかかわる組織があります。  一つは、十四道府県で構成しております、原子力発電関係団体協議会といいますか、原発協、こう言っておるようでありますが、これに防災の問題を含めて京都府が全く同じ立場で参加をしたいというので、十五道府県でつくっておりますが、ここに防災専門部会を設けている。そして、私の福井県の消防防災課長が部会長をやっております。随分と論議をしておりますが、ここからも、ぜひ原子力防災について法制化をやってもらいたいという強い要望があります。  それから第二は、全国原子力発電所所在市町村協議会。全原協と言われておりますが、三十七の立地市町村と隣接の市町村でもってつくっている協議会がありますが、ここも、原子力防災の法制化を強く求めております。  さらに、二年ほど前に、全国の原子力所在地の市町村議長の協議会がつくられて、私は総会にも招かれて行きましたが、ぜひ防災法を制定してほしいと強い要求があります。  最近は、十四道府県の立地の県会議長でもって、議長協議会、これもつくられている。  いずれも、長官も行政は十分御承知であると思いますが、強い要請をしておる。そういう点で、私も、福井や福島、新潟それから青森、茨城等はしばしば行って意見を聞いておりますが、いずれも強い御要望があると受けとめております。  そういう意味で、前々からも原発の所在地からはそういう御要請がありましたが、打ち続く動燃事故、これは、「もんじゅ」がありました。それから、その後に東海の再処理工場の火災爆発があり、「ふげん」の問題があり、それからまた、東海におけるところの、低廃棄物ですが、ずさん管理という問題、人形峠の排水の十四年間における違法処理とか、挙げれば随分と問題も出てきたのも、残念ながら事実ですね。  随分原子力発電は進歩しましたが、一面では影の部分がこういうふうにあったということも事実です。それらを踏まえて、今申し上げましたように、原子力の特別立法、特別措置法をぜひつくってほしいという要求が非常に強いと私は受けとめておりますが、大臣、これについての所信をお尋ねしたい。
  58. 間宮馨

    ○間宮政府委員 先ほど大臣の方からお話がございましたが、私の方から若干補足的にお話しさせていただきます。  特別措置法の件でございますが、先生の方から要綱なるものが出ておりまして、拝見させていただいております。先ほどおっしゃいました、全原協、原発協からもそういう要望があるというのも承知しておりますが、内容等につきまして、必ずしも一致したものという感じがまだございませんのと、我々は今、後ほどもお話しいたしますが、原子力安全委員会の専門部会におきまして、実効性の向上という観点から、先生の法案の中にもございますようなことも含めまして鋭意検討しております。これは本気になって検討しております。その中で、全原協、原発協とも密接に連絡をとり合っておりますし、こういうところからも専門部会のメンバーとして入っておられます。それで一緒になって考えております。  そういう意味におきまして、いずれにしても、何が本当に必要なのか、それがどの程度実現すればいいのかというところを、みんなで力を合わせてつくっていこうと今しておりまして、その中で、どうしても今の法体系以外のものをもってしか対応できないものがあるといたしますれば、それはその際に前向きに検討していくべきではないかというふうに考えております。
  59. 辻一彦

    ○辻(一)委員 ここ数年、法制局も入れて随分と勉強はしてみたんですが、原子力防災特別措置法の要綱試案、辻試案になると思いますが、いろいろな勉強を重ねて、一応試案を用意しておりますので、その要点はイメージとして今配付いただいたので、ごらんいただきたいと思います。  そこで、具体的な問題で伺いたいのですが、科技庁における防災の検討委員会もあり、それから安全委員会の方も検討していると思いますね。私も、昭和六十三年か四年ごろ、衆議院の予算委員会で、一般質問でかなりな時間をとって、安全委員会の示す防災指針等々についての論議はかなりやりました。八キロから十キロ云々というのも含めて随分論議をしました。  そういう技術的な、専門的なことはちょっときょうは割愛したいと思うんですが、まず、地方の方は、国も聞いていると思いますが、安全は国が一元的に預かっておる、その延長上にあるんだから、原子力防災は全部国の責任でやるべきであるという地方の非常に強い声があるわけですね。そして、例えば防災訓練をやるとすれば、国が出てきてやってくれ、地方はそれに対してひとつ協力をします、こういうようなスタンスでもって法制化を求められておるんです。我々も随分御意見は聞いて、要綱試案の中にもその声は随分と取り入れたつもりなんですが、この点はどうしても意見が違う。  というのは、私たちは、私はと言ってもいいんですが、地方自治法と災害基本法を踏まえると、やはり災害があったときに、市町村長、公共団体の長の責任は、住民の生命、身体、財産を守るということが一番の役割であるから、その点からすると、国が出かけて全部やってしまって、地方は協力するということではやはりいかないんではないか。国も最大限原子力防災に関与し、ぎりぎりのところまで努力をするが、と同時に地方も責任を持ってひとつやってもらう、こういうことが大事だ。  責務の分担といいますか、ここらをどういうように調整するかということが、地方の声と我々が論議している中での問題点の非常に大きな一つであると思うんですが、これについて国の方はどう考えておるか、お伺いしたい。
  60. 間宮馨

    ○間宮政府委員 お答え申し上げます。  今先生おっしゃいましたように、国と地方自治体、さらには事業者、この三者の関係をどのように考えるのかということが非常に大事なところでございまして、これまで、いわゆる災害対策基本法の枠組みの中で次第にそこら辺が明確化されてきておりまして、平成九年の六月に追加されました原子力災害対策編におきましてもその役割がさらに具体化されてきたところでございます。  ただ、そうはいいましても、実効性の観点から、本当にそういうことでいいのか、あるいはもう少し工夫の余地があるんじゃないかということで、先ほどから申し上げておりますが、原子力安全委員会の専門部会で、実効性という観点から今鋭意検討を進めているところでございまして、その中におきまして、委員の方々からいろいろ御意見がございます。例えば、御紹介いたしますと、国がより一層積極的に関与していくべきであるというような御意見、あるいは、事業者の責務をもう少し明確化すべきであるというようなことが出てきております。  当庁といたしましては、こういう意見を十分に踏まえまして、早急にそこら辺をまとめていきたいというふうに考えております。
  61. 辻一彦

    ○辻(一)委員 似たような論議を何年も本当はやっておるんですね、我々からすれば。予算委員会等で論議をしても、自治大臣あるいは消防庁長官は、消防士はチェルノブイリを見ても第一線に立つ問題もありますから、だから随分熱心だったんですが、残念ながら科技庁は、今まで私の見る限り、随分と長い間やってきましたが、消極的であったと思うのですね。だから、必ずしもその論議が十分であるとは思えないのですが、これだけの全国的な状況になれば、もうこれは何とかしなくちゃならぬというのは十分あると思いますから、そういう意味で、今取り組みつつあるということは理解ができると思うんですね。  私が申し上げるのは、さっきは落としましたが、やはり国の責任、それから地方公共団体の責任、もう一つは、原因は事業者が起こさなければあり得ないわけですから、事業者責任。そういう三つの責務をどういうように規定づけるか。今まで、原子力防災大綱あるいは中央防災計画、それに基づいて原子力防災編というふうに、行政がやっている幾つかの点はずっとあります。ありますが、こういう問題は法によって規定をするべき分野である、こう思っております。ここらを明確にする。  例えば、石油コンビナートの防災を見ると、高圧ガス保安法という原子力規制法に匹敵する厳しい規制がありますね。と同時に、石油コンビナート災害防止法という特別措置法をつくって、そして事業者の自衛的な防災組織を非常に明確にして強く義務づけている。だから、そういう問題も全部きちっと、国と地方公共団体と事業者がどういう責任を持ち、果たすかということは、法律によらないと、行政の裁量だけではやはり十分でない、限界があると思いますが、大臣、これについてはどうでしょうか。
  62. 間宮馨

    ○間宮政府委員 私からで申しわけございませんが、先ほどから申し上げておりますように、我々としては、実効性というのがまず第一であって、本当にそういうことが起きた場合に、いかに国民の皆さんの期待にこたえて動けるかというのを今追求しているところでございまして、その中で、いろいろなセクション、セクターがどういう役割を果たすべきであるか、どういう位置づけを持つべきであるかというところをまず整理をしていく。その整理の結果、その役割が今の法体系のもとで十分有効に果たし得るということであればそれでいいわけですが、そうでないという場合においては、先生がおっしゃるように、新たな法律を考えなければいけないのではないか、そういう順番ではないかということを申し上げておる次第でございます。
  63. 辻一彦

    ○辻(一)委員 その論議は何年越しに聞かされているので、早くやってくださいよ。やってもらって、やはり法制の是非を問うべきだと思いますね。  私は、さらに具体的に伺いたいのだけれども、さっき御紹介しましたが、東海の前の村長さんは、行ったときに、現地の初期対応をするために防災の専門官を配置してくれ、こう言ったのですね。こういう専門官を配置しようとすれば、これは公務員が必要ですし、我々が考えているのは、防災専門官は運転管理専門官以上の人材を配置すべきだ。  原子炉の安全運転のために四十七名の運転管理専門官が配置されております。多少数字は違うかもわからないが、四十七名と記憶しておりますが、我々がいろいろ計算をしてみたところ、複数以上置いて、四十名程度で最小限の原子力防災専門官の役割は果たし得るのではないか。その経費は、計算すると、事務所や公用車あるいはアルバイト、そういうものを入れて四億八千万ぐらい。これは調査室でいろいろ計算をしてもらったのですが、五億弱で大体これはできると思うのです。こういう防災専門官を配置してくれという声が非常に強いのですが、これらについてどう考えるか。
  64. 間宮馨

    ○間宮政府委員 お答え申し上げます。  緊急時における対応を迅速かつ的確に実施するためには、平常時から施設の運転状況を把握しておくことが重要でございまして、このため、当庁としても運転管理専門官を各地に配置しているところでございます。  原子力安全委員会の専門部会におきましては、運転管理専門官等の国の防災対応能力向上、事故、緊急時における専門家の早期派遣体制の確立等によって、国の初動対応の強化、迅速化を図ることが必要という意見が出されておりまして、現在、その方向で検討が行われているところでございます。  当庁といたしましては、御趣旨も踏まえつつ、原子力安全委員会の専門部会において、実効性向上に向けた検討をさらに進めていきたいと考えております。
  65. 辻一彦

    ○辻(一)委員 実効性云々がよく言われますが、原子炉の事故、これは起こしてはならない、全力を挙げて安全性を高めて起こさないようにする、これはもう第一。しかし、さっき言ったように、スリーマイルの例を見れば、機器の故障やヒューマンエラーが重なることがあり得る。  そのときに、運転管理専門官は、事故が本当に原子炉に起きたら、原子炉をいかに制御するか、抑えるか、それにもう全力をかけなければいかぬ。そして、敷地の外に放射能が漏れた後のことは、実際に起きたら、もうそんなことは構ってはおられない状況がくると思うのです。それは、原子炉が暴走としないように、どう原子炉を制御するかに腐心をするのが運転管理専門官の最大の責任になると私は思うのです。そのときに、敷地の外におけるところの市町村やそういうものについての対応、そんなものをやっている余裕が現実に事故が起きたとしたらあると思うのですか。いかがですか。
  66. 間宮馨

    ○間宮政府委員 お答え申し上げます。  確かに、先生おっしゃいますように、一たん事あったときに非常にパニック的な状況が生じるであろう。そのときに、今の運転管理専門官がどういうふうに行動すべきであるかというところは、いろいろ御議論はあろうかと思います。  ただ、一点申し上げられますのは、いずれにしても、通常時から施設内の状況に精通していないと、たとえいわゆる施設外のことに関与しようとしても適切な関与はできないであろうという意味におきましては、今の機能も非常に重要であろうと思っております。
  67. 辻一彦

    ○辻(一)委員 いや、それは、中身がわからずにいざというときに間に合うはずはないのだから、現地に常駐してしょっちゅう、場合によれば、兼務というか、中へ入る権限を認める。防災専門官が配置されたとしたら、それは常に発電所の中に入って、運転安全専門官と連携をとって内部の状況に精通するということは当然で、それを全然別のところに置いておいて、中身がわからずに事故が起きたときにどうするか、それは私は理由にはならないと思うのですね。  通産省や科技庁が、防災専門官を安全運転専門官と同じように任命して現地に派遣する以上、それはその発電所の中にも同じように入って、いつも状況を熟知している、精通しているということは当然なので、それはできることだと思うのですが、それはできないと思うのですか。
  68. 間宮馨

    ○間宮政府委員 いずれにいたしましても、今ここで成案があるというわけではございませんで、その成案を今求めて、本当に毎日午前までかかって担当官が議論をしているところでございまして、今この瞬間にも、ヨーロッパに調査団が行って現地で調査をしております。つまり、そこでどういうことが実際行われているかということも十分把握をしたいというふうに思っております。  実際にそういう災害が起きた場合におきましては、もちろん一人ですべて対応できるわけではございませんで、可能な限り速やかに現地に専門家を派遣するということで考えておりますので、そのチームがどういうふうに形づくられ、どういうふうに役割分担して行動するかということを今詰めているところでございます。
  69. 辻一彦

    ○辻(一)委員 さっき言ったように、東海の村長さんや今立地をしている自治体が求めているのは、やはり初期、初めにどうするかということが指示できる、そういう専門官を配置をしてほしいと。東京で専門家を集めて、それからヘリコプターに乗せ、そして現地へ運んで、それも瞬時にはいかない、ある時間が要ると思いますから。  事故はいろいろあるのですね。だんだんずっと事故が広がっていく、時間をかけながらやってくる、そういう事故もあるでしょうし、一時にかなりな問題が出てくる場合もある。時間をかけてずっと被害が、災害が広がっていくなら、ゆっくり時間をかけて検討しながらやってもいいわけだけれども、時間を急ぐときに、現地としては、防災専門官を現地に配置して直ちに対応できるだけの体制をとってくれと。これにこたえる必要があると私は思うのですね。  このことは、そちらの方でいろいろ検討しているなら十分検討してもらって、ぜひ実現をさすべきだと思うのですが、大臣、こういう問題についてどうお考えですか。事務局のお話はわかりましたが、大臣としていかがですか。
  70. 有馬朗人

    有馬国務大臣 御指摘のように、防災訓練とか防災専門官の必要性、御要望というのはよくわかりました。それからまた、自治体等々との責任分担の明確化、こういう問題もいろいろあると思います。現に今、間宮局長がお返事申し上げたように、科学技術庁としてもこれを明らかに検討しております。先ほど局長が申しましたように、非常に真剣に検討しているということでございまして、私もこの事情をさらに検討いたしまして、また、実際これを考えている人々、安全性について考えている人々等とも御相談をして、検討を慎重にさせていただきたいと思います。
  71. 辻一彦

    ○辻(一)委員 今大臣もお触れになりましたが、防災訓練とかを考えると、やはり初めは原子力の立地は、そんな防災訓練なんてやると不安を招くから、だからそんなのはやる必要はないというのが非常に強い意見だったのですね。しかし、動燃事故以降、かなり認識が変わってきている、やはりそういう防災訓練をやる必要はあると。しかし、今まで心配ないからといって、誘致のときには安心の方だけを主張してきたので、今度は避難訓練もやらなければならぬというと、いかにも説明が難しい。  だから、国際的な、国内的な状況の中で法制化が行われ、立法化がなされて防災訓練等が住民の避難を含めて義務づけられてきたということの方が、むしろ防災訓練を具体的にやる場合にやりやすくなっている、こういう声を我々は踏まえて防災訓練等の義務づけをやるべきであると考えておるのですが、これについてどうお考えか。
  72. 間宮馨

    ○間宮政府委員 お答え申し上げます。  防災訓練につきましては、これを実施して、その結果を評価検討することによって防災体制の改善を図るということができるかと思っておりますし、原子力発電所等の緊急時における災害応急対策をより円滑かつ有効に行うという意味で重要であるというふうに考えております。  安全委員会の専門部会における防災訓練の検討においては、実践的な防災訓練が必要であるという意見、あるいは、防災訓練の計画や想定は国が一律につくるのではなく、地域の実情、施設の特性を踏まえて対応することが必要というような意見が出されております。また、防災訓練は、国、地方自治体及び事業者が一体となって取り組むことが重要であるとの認識も示されておりまして、このような検討状況を踏まえつつ、地方自治体とも連携を図りながら防災訓練の実効性向上に努めてまいりたいと考えております。
  73. 辻一彦

    ○辻(一)委員 防災訓練を具体的にやろうとするときに地方で非常に問題になるのは、事故の想定、どういう事故が起きるのか、それからそれに基づいた被害の想定、そういうものが示されないとなかなか防災訓練はやれないという。これは当然だと思うのですね。ところが、地方でたまたま、事故想定、災害想定をやって出したら、なぜそうなんだというので問われて、もう立ち往生して、なかなか地方で扱える問題ではない、こう言っておるのですね。  そうすると、事故想定や災害想定は、やはり各敷地、サイトごとに国が想定をしてやる必要がある。そういうものはやはり法の中に規定をしないとなかなかできないことだと思うのですが、事故災害想定をどうやっていくのか、これについてはいかがですか。
  74. 間宮馨

    ○間宮政府委員 お答え申し上げます。  防災指針におきましては、限られた時間を有効に利用し、周辺住民の被曝を低減するための応急対策を適切に行うためには、あらかじめある地域の範囲を選定し、そこに重点を置いた原子力防災対策を講じておくことが必要であるとの観点から、原子力防災対策を重点的に充実すべき地域の範囲を定めております。  原子力施設に関する事故というのは多種多様でございまして、また気象条件によってもとるべき対応が異なるという事情がございます。そういう意味で、特定の事故を想定して防災対策を準備するということは、防災対策に必要な柔軟性を損なうおそれがあるということから、慎重に考える必要があろうかと考えております。  しかしながら、安全委員会の専門部会におきましては、実践的な訓練が必要という議論もございますので、地域、施設を考慮した訓練のための一定の想定についても検討を行っているところでございます。
  75. 辻一彦

    ○辻(一)委員 特定の事故を想定すると柔軟性を失うといったって、それはあなた、訓練をやろうというときに、事故の想定と被害の想定をせずに、どういう実効性ある訓練ができると思いますか。
  76. 間宮馨

    ○間宮政府委員 お答え申し上げます。  今一般論で申し上げましたが、いずれにしましても、訓練ということのためには、先生おっしゃいますように、より明確なものが要ろうかと思っておりまして、それをどのようにつくっていくかということに関して、いろいろ議論がまだ進行中であるということでございます。
  77. 辻一彦

    ○辻(一)委員 私は、防災訓練をきちっとやる、住民の避難訓練も含める、それで、事故を想定する、被害を想定して国がそれを示す、そういうことをきちっとやるには、やはり法制化の道をとらないと、今行政の中で相談しているだけではやり切れないと思いますね。そのことを指摘しておきたいと思います。  時間がだんだん来ていますから、次に参ります。  それから、立地の自治体の住民が安心感を持つために、今原子力発電所が正常にちゃんと動いているかどうかということがすぐわかるようになれば非常に安心だという点があるのですね。そこで、今まで国の方では、原子力発電所の周辺の放射能は、これは全部モニターをやって、県のセンターにそういう数字が集まって、県のセンターから、立地の市町村それから隣接する市町村にまで、デジタルで即時に数字がわかるようにしてあるのですね。役場かどこかへ行けば、自動販売機のような、上に数字が出るように載っている、わかるわけです。  それを今、排水口、排水される水の中身も含めようと。福井県はこの点ではかなり先進的な努力をしておりますが、排水口の中に出る、これを、リアルというわけにある意味ではいかない、時々ためた水をはかって出すわけですから。しょっちゅう出しているわけではないけれども、それが出されるときには、どういう状況であるかということがリアルタイムで全部、立地の市町村、隣接の市町村にわかるようにする。これを今、手をかけておる。  それからもう一つは排気筒、煙突から出るところの放射能。この三つしか放射能が出るところがない。周辺に出るか、水の中に出るか、煙突から出るか。このほかのところから出るのは、周辺へ出ていくわけですから。この排気筒も、去年の東海の事故の起こるまでは、通産省は公表することを禁止をしておったのですね。排気筒から、煙突から出る放射能の公表を禁止しておりましたが、八月に解禁をした。それは、東海の事故のときに、地元は知らないのに、煙突から放射能が出て周囲に拡散したという事実がある。そういう意味で、これは公表して明らかにする方がいいという判断になったと思うのです。  この三つを、やはりリアルタイムで常時、立地の市町村それから隣接の市町村に、いつでも役場のそこのところに数字でわかるようにしておけば、これはまともに動いているなら非常に安心しておられる。私は、平常時における放射能の測定は、正常に動いているということを立地の住民の皆さんにきちっとわかってもらう、安心感を与えるために必要だ、これをひとつ拡充する必要ありと思いますが、これはいかがですか。
  78. 間宮馨

    ○間宮政府委員 お答え申し上げます。  原子力施設周辺の排気、排水のモニタリングデータ等をリアルタイムで監視するシステムを構築するということは、自治体の側でも事故への初期対応を迅速に行う上で、また情報公開を進める観点からも意義のあることと考えております。ただし、具体化につきましては、事業者と地方自治体との間の調整が必要ということで、この両者が緊密に連携を図る中で対応が進められることを期待いたしております。  ちなみに、当庁の関係で申し上げますと、例えば「ふげん」、「もんじゅ」に関しましては、核燃料サイクル開発機構と福井県との話し合いのもとで、排水及び排気モニターデータについて県へ提供する方向で準備が進められているところでございまして、排水モニターデータにつきましては、既に県に提供しているというふうに承知をいたしております。
  79. 辻一彦

    ○辻(一)委員 これは、事業者と相談をして云々というよりも、この三つぐらいはもういつも皆さんにわかるようにすることが安心のために必要なんだから、こんなことは法律で規定してきちっとやるべきだと思う。いかがですか。
  80. 有馬朗人

    有馬国務大臣 御指摘の点、よくわかりました。少なくとも科学技術庁は、情報公開を建前にしておりますので、しかるべくやらせていただきます。
  81. 辻一彦

    ○辻(一)委員 もう一つ、緊急時におけるSPEEDIの拡大ですが、御承知のように、アメリカの大型コンピューターシステムを入れて、事故があれば現場の発電所から本社に知らす、本社は通産省に知らす、通産省は科学技術庁のセンターに知らす。そこで専門家が集まってコンピューターを動かして、こういう風向きなら、入力すれば三十分、一時間後に放射能はどういうふうに拡大するかということを映像で全部出して、それを都道府県の窓口まで、例えば原子力安全課であるとか、その窓口までは回路がつながっておるわけですね。いざというときに状況がわかる。これを、今立地の市町村は、市町村のところまで、隣接まで広げてくれと。  そうすれば情報の共有ということで、あっちへ行け、こう言われても、なぜかということがわからずに、ただ指示だけでは困るから、こっちの方へ放射能が拡大する、そういうことがわかれば、情報を共有しながら有効な防災の取り組みができる。そのために、都道府県の窓口にとまっているのを立地の市町村、隣接の市町村まで広げてくれと。それを今福井あたりは先進的な例としてやろうとしておるのですが、この拡充の必要ありと思いますが、いかがですか。
  82. 間宮馨

    ○間宮政府委員 SPEEDIのネットワークシステムは、緊急時の放射能拡散予測による適切な防護対策の実施を図る上で重要な役割を果たすものでございまして、現在、国と原子力施設立地県の間で運用されている、今先生おっしゃったとおりでございます。  立地県のみならず、立地市町村がSPEEDI情報を活用できるようにしてはどうかという点でございますけれども、我々といたしましては、市町村の御要望があれば、関係する県とも十分相談しながら前向きに鋭意検討してまいりたいと思っております。
  83. 辻一彦

    ○辻(一)委員 平常時における三つのリアルタイムで知らす内容と、それからSPEEDIによる非常の場合における情報の伝達、これは、私が科技庁等で聞いた範囲内では、電源三法を活用すれば、一遍には無理にしても、何カ年計画かで実現し得る、こういうふうに聞いておりますが、それでいいのかどうか、いかがですか。
  84. 間宮馨

    ○間宮政府委員 基本的にはおっしゃるとおりでございます。  ちなみに、国の経費的な手当てのところでございますが、いわゆる緊急通信連絡網、モニタリング、あるいは緊急時医療設備その他につきまして、国、地方自治体がそれぞれ必要な資機材の整備を行っているところでございますが、このうち、地方自治体の資機材整備につきましては、国が交付金を交付するということで財政的な支援を行ってきているところでございます。  ちなみに、資機材の整備に加えまして、防災研修への参加、防災訓練の実施等の支援も含めまして、平成十年度の防災関係の交付金予算というのは約二十七億計上してございます。
  85. 辻一彦

    ○辻(一)委員 我々が、科技庁も含めて調査室等で費用を積算した数字では、大体四十一億ぐらいが平常時における情報の伝達に、やるとすれば必要であり、それから、SPEEDIについては、まずは立地の市町村に知らすのに七億ぐらいかかる、そういう積算をやって、それほど大きなお金なしに安心感を与えられるということを一つ指摘しておきたいと思います。  次に、異常時における通報の義務とそれから立入検査権の問題なのですが、大臣御承知のように、「もんじゅ」があれだけ内容が明らかになったのは、事業者がいろいろ報告したことが、大事なところは全部隠されておったわけですね。夜中の二時に、日ははっきり記憶しませんが、これではいかぬというので、福井県と敦賀市が立入調査をやって、その中を、実態をビデオで撮った、それがあれだけ問題が明確化した原因であったわけですね。  となると、こういう異常の場合に通報されるということと、それから、異常のときに立入検査の権限を自治体にきちっと認めてほしいという声が非常に強いのです。確かに、立地協定、安全協定といいますか、誘致をするときの協定によって、通報をするとか、それから立入検査をすることは一応認めてあるのです。それを発動したのですが、しかし、現実の問題として、改善されつつあることはわかりますが、あの「もんじゅ」の直後に起きた「ふげん」の情報伝達においても、国の方には早い時期に伝達されている、しかし、肝心の福井県と敦賀市という地元には、三十時間からたって知らされたのです、事実として。  だから、当時の橋本総理は、異例の原子炉停止を命じた、発動したのですよ。あのときが、安全性の問題以外に原子炉をとめたのは、戦後の原子力開発が始まって唯一のことだと私は思う。それは、余りにも「もんじゅ」で問題が出て、明確に通報するということが言われながら、総点検をしながら、たった何カ月か、一、二カ月の後に、その状況に対して、橋本総理は、これは戒めのために原子炉の緊急停止を「ふげん」に命じたという経緯がありますが、努力をしています、やっていますと言ったって、それは法のきちっとした基準がなければやはり厳正に行われない。  なぜならば、「ふげん」の場合は、原子炉規制法や放射能の規制の法律によって、現地はすぐ役所には通達している。しかし、申し合わせはあったけれども、そういうものは厳密に行われない。それは、その後、別に義務違反の責任を問われるわけでもない。本当に異常時における通報をきちっとやるようにするには法律によってきちっと裏づけてほしいというのが地方自治体の強い要請であります。  それから、立入検査についても同様、安全協定では認められているが、しかし、それは、最終的にはやはり法律の裏づけがなければこういうところを立入検査というのはできないわけだから、この二つをきちっと法制によって裏づけてほしいという自治体の強い声に対してどう思うか、いかがですか。
  86. 間宮馨

    ○間宮政府委員 お答え申し上げます。  緊急事態が発生した場合には、第一報の通報を初め、放射性物質の放出の状況事故の推移に関する情報の連絡など、通報連絡が迅速かつ正確にかつ確実に実施できるという体制にしていくことが重要であると考えております。現に、事業者と地方自治体との安全協定や防災基本計画等において、事業者と地方自治体との連絡体制の整備が図られてきているところでございます。  安全委員会の専門部会におきましても、実効性向上の観点から事故通報のあり方について検討されておりまして、この検討も踏まえて、事業者と地方自治体との通報連絡の円滑化に努めてまいりたいと考えております。  地方自治体が施設に立入調査を行うということにつきましても、事業者と地方自治体との間で調整が図られるべき性格のものであると考えておりまして、安全協定で位置づけられてきている例もあると承知しておりまして、先ほど先生おっしゃいましたように、福井県、青森県等は既にそういう位置づけで協定を結んでいるということでございます。
  87. 辻一彦

    ○辻(一)委員 異常時といっても、本当に緊急でもう事故直前という状況のときと、正常に動いている発電所が何か異常が起きているというのと、これはピンからキリまであるのです。だから、そのキリの方を何もかも報告することはないけれども、それは基準を決めるのはいいですよ、しかし、平常のリアルタイムで放射能がちゃんと普通で動いているということは、発電所は普通に動いている、しかし、それに異常があったときにはちゃんと通報する、こういうことを義務づけてほしい。安全協定でやったのは、福井県のあれぐらいの強い決意がなければなかなか入れないのですよ。あれは、県としては非常な決意のもとに、これはほうっておけないというので行動を起こして、初めて事実が明らかになった。それでも、必要なときにやるには法の裏づけがなければなかなかできない。そういう意味で、こういう点は法制化の必要があるということを指摘しておきたいと思います。  あと十分ほどですから、ちょっと二、三、急ぎます。  次に、自治体は、現地において事故が起きたときに、国と県と市町村、そのようなものが一体的になって、本当に実効のあるところの防災体制をしくにはどうするかということで随分悩んでいるのです。例えば福井県においては、石川県においても、おととし、御存じの油の災害がありまして、そのときには国や県や市町村がそれぞれ一体になってやったのですが、そのときの状況からして、今、自治体は強く国に対して、現地における一元的な指示がし得るところの体制をぜひつくってほしい、こう言っておるのですね。しかし、なかなかそれは簡単にはできない。  これをやるには法の裏づけが必要である。そのためには、我々、要綱の中にも、素案にも示しておりますが、事故対策本部、それは本格的になれば非常・緊急対策本部にだんだん昇格していくでしょうが、初めに事故対策本部が設けられる。同時に現地対策本部が設けられる。そうして、事故対策本部長に対して、必要な範囲で、必要な場合には地方自治体・公共団体の長をも指示し得るという権限を付与する。そして、その権限の一部は、現地対策本部長は恐らく科技庁から派遣されるでしょうが、派遣されたときに、そこに、官報告示といいますか、とにかく権限の一部を移譲して、そして、現地において国、県、市町村が一元的に対応できる体制をつくるべきである。しかし、そういうことをやるには、やはり法的な権限の付与、こういうものをやらないとなかなか実効性は上がらないと思うのですが、これについてどう考えるか。いかがですか。
  88. 間宮馨

    ○間宮政府委員 お答え申し上げます。  防災対策を実施するに当たりましては、国、道府県、市町村、事業者の連携が重要であるということは御指摘のとおりであると認識しております。  緊急時の現地対応につきましては、安全委員会の専門部会での検討におきましても、迅速かつ緊密な連携のとれた対策の実施に資するため、国、道府県、市町村が現地対策本部を設置する場合には、各主体が一堂に会する場を設けるべきであるという意見も出されているところでございます。  御指摘につきましては、安全委員会の検討状況も踏まえつつ、実効性向上の一環として検討してまいりたいと考えております。
  89. 辻一彦

    ○辻(一)委員 論議の紹介だけで、その中身がまだまとまっていないのでしょうが、それはこれからの問題にしましょう。  そこで、私は、七点ほどこの問題点を挙げて、地方の皆さんが、特に立地をしているところの自治体の皆さんが、やはりこういう問題を具体的に実効性あらしむるために法律によってきちっとやってほしいという声が非常に強いということを御紹介をしたところでありますが、これを考えると、災害基本法をもとにして、そして、例えば大地震のときには大地震特別措置法を災害基本法の上に乗せている。それから火山の場合には活火山特別措置法というのを上に乗せている。これは自然災害ですね。それから事故災害の場合には、さっき申し上げましたが、石油コンビナート災害防止法というのを災害基本法の上に同様に乗せておるわけですね。これは事故災害のときにおける特別措置法。  こういう特別措置法の中に、石油コンビナートは、先ほども言いましたが、原子炉規制法に匹敵するような高圧ガス法という厳しい規制法があるのですね。片方では、安全問題はそういうところで規制をしながら、もう一つは特別措置法によって、例えば、あの中に緑地帯をつくるとか、企業の自衛、防衛といいますか、災害防衛組織をつくるとかいうことを全部法で規定をしている。  だから、私は、原子力防災についても、災害基本法をもとにして、この活火山特別措置法あるいは大地震特別措置法、そして事故災害では石油コンビナート災害防止法のように、特別措置法によって原子力災害の特殊性を生かしながら手当てをするということがぜひ必要な段階に来た、こう思っておりますが、これはひとつ大臣の見解をお伺いしたい。
  90. 間宮馨

    ○間宮政府委員 大臣のお答えあろうかと思いますが、もう一度。  我々が今考えているところでございますが、いわゆる実効性というのが至上命令であると思っております。本当に動く、機能するというものを築いていかなければいけないと思っておりまして、その観点から、先ほどから申し上げておりますいろいろな点につきまして、現在、本当に関係の皆さん総動員で、かつ、地方の方々の意見を真摯に聞きながら、つまり、地方へ出かけていって、地方でも議論をしながら考えているところでございます。その議論がいずれまとまると思いますが、その実現に当たりまして、現行法体系でどうしても不可能であるということがありましたら、先生おっしゃるようなことを当然考えていかなければいけないというふうに考えております。
  91. 有馬朗人

    有馬国務大臣 きょうの御議論を伺っておりまして、私も幾つか考えさせていただくことがございました。きょうの辻先生の御指摘を踏まえまして、安全委員会専門部会で速やかに検討して、成案を得ることを願おうと思います。やはり、地元の人々にしかるべき情報を速やかに与えること等々、あるいは防災の対策についても、こういうことを速やかに検討いたしまして、成案を得た上で、速やかに実行に移す方向に持っていきたいと思います。
  92. 辻一彦

    ○辻(一)委員 今、長官から、速やかにという言葉を四回ほど聞きまして、大変前向きであるというようにその点は思います。  ただ、従来は、私も、昭和四十六年に参議院に出てから、原子力の問題は、防災問題を含めて、随分いろいろな場で衆参両院で論議をしてきましたが、先ほどお話ししましたが、自治省、消防庁等は、チェルノブイリのときには消防士が三十二名も亡くなった例がありますから、やはり一番関係が深いということで、なかなか熱心だったのですよ。政府関係省庁の連絡会をつくったのですが、それは形だけで、何年間かはそれがずっと進んでおった。科技庁は、随分論議をしましたが、私から見れば、必ずしも今までそれほど熱心ではなかったような感じがします。感じですよ。  今度は、今長官のお話のように、速やかに、速やかに、速やかに、速やかに、それだけ御発言いただいて力強い思いがしますが、この原子力防災は、片や安全性確保、限りなき安全性を追求しながら、片や、万一に備えた原子力防災体制の確立、立法を目指して、これは政府がやらなければやはり議員立法を考えざるを得ないということでありますから、ぜひひとつ、行政はおくれをとらないように御奮闘いただきたい。  そのことを、決意をもう一遍大臣に一言伺って、終わりたいと思います。
  93. 有馬朗人

    有馬国務大臣 私といたしまして、科学技術庁の長官を仰せつかったのはごく最近でございますので、さらに勉強した上で結論へ持っていきたいと思っておりますが、しかし、重要な問題、特に地方の、そこに住んでおられる住民の方々との関係をよくしていくことがやはり原子力の将来にとって極めて重要だと思っておりまして、この面、単に安全性だけではなく防災も含めて、地方の方々の御要望を満足できる方向に持っていきたいと思います。
  94. 辻一彦

    ○辻(一)委員 時間が来たから終わりますが、くれぐれもひとつ、大臣の決意を事務当局は生かして、まさに速やかに取り組まれることを期待して、終わります。  ありがとうございました。
  95. 北側一雄

    北側委員長 次回は、来る十六日火曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午前十一時五十分散会