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1999-02-09 第145回国会 衆議院 科学技術委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年二月九日(火曜日)     午前九時十分開議   出席委員    委員長 北側 一雄君    理事 河村 建夫君 理事 河本 三郎君    理事 中谷  元君 理事 山口 俊一君    理事 辻  一彦君 理事 吉田  治君    理事 斉藤 鉄夫君 理事 菅原喜重郎君       飯島 忠義君    江渡 聡徳君       奥山 茂彦君    木村 隆秀君       田中 和徳君   三ツ林弥太郎君       村岡 兼造君    望月 義夫君       鍵田 節哉君    近藤 昭一君       鳩山由紀夫君    近江巳記夫君       吉井 英勝君    辻元 清美君       中村喜四郎君  出席国務大臣         国務大臣         (科学技術庁長         官)      有馬 朗人君  出席政府委員         科学技術政務次         官       稲葉 大和君         科学技術庁長官         官房長     興  直孝君         科学技術庁科学         技術政策局長  加藤 康宏君         科学技術庁科学         技術振興局長  田中 徳夫君         科学技術庁研究         開発局長    池田  要君         科学技術庁原子         力局長     青江  茂君         科学技術庁原子         力安全局長   間宮  馨君         文部省生涯学習         局長      富岡 賢治君         文部省初等中等         教育局長    辻村 哲夫君         文部省高等教育         局長      佐々木正峰君         文部省学術国際         局長      工藤 智規君         厚生省保健医療         局長      伊藤 雅治君         工業技術院長  佐藤 壮郎君         資源エネルギー         庁長官     稲川 泰弘君  委員外出席者         外務大臣官房審         議官      須田 明夫君         会計検査院事務         総局第五局長  小川 光吉君         参考人         (宇宙開発事業         団理事)    石井 敏弘君         参考人         (核燃料サイク         ル開発機構理事         )       岸本洋一郎君         科学技術委員会         専門員     宮武 太郎君 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  科学技術振興基本施策に関する件     午前九時十分開議      ————◇—————
  2. 北側一雄

    北側委員長 これより会議を開きます。  科学技術振興基本施策に関する件について調査を進めます。  有馬国務大臣から科学技術行政に関する所信を聴取いたします。有馬国務大臣
  3. 有馬朗人

    有馬国務大臣 おはようございます。科学技術庁長官を拝命いたしました有馬朗人でございます。どうぞよろしくお願いをいたします。御指導をこれから賜りますことをお願いいたしたいと思います。  第百四十五回国会に当たり、私の所信を申し上げます。  文書をお配り申し上げていると思いますので、時間の関係がございますので、少し速い目に読ませていただきます。  二十一世紀を目前に控えた今、我が国は、極めて厳しい経済状況少子高齢化の急速な進展などを踏まえ、これまでに整えられた社会システムを新しい時代にふさわしいものに変革していかなければならない状況にあります。このような中、豊かで潤いのある社会発展基盤構築し、私たちや私たちの子孫にとって明るく希望に満ちた次代を迎えることができるよう努力していくことが、我々に課せられた使命であります。尽きることのない知的資源である科学技術は、経済構造改革実現し、活力創造性にあふれた社会をつくっていく原動力であり、この使命を果たすために必要不可欠なものであります。  また、科学技術は、地球温暖化環境破壊のような、人類が直面している地球規模の諸問題の解決に資するものであり、人類未来に展望を開くものであります。さらに、長年の夢であった国際宇宙ステーション建設開始や、向井千秋宇宙飛行士日本人としては初の二度目の宇宙活動の例のように、科学技術は、次代を担う若者たちが、大きな夢と希望、そして高い志を持つことをも可能とするものであります。  私は、このような科学技術について、その振興に積極的に取り組む所存であり、このため、科学技術創造立国実現を目指して、科学技術基本法及び科学技術基本計画を着実に実行し、政府研究開発投資拡充を図ってまいります。その上で、喫緊の課題である経済活性化に取り組むとともに、未踏科学技術分野への挑戦、柔軟かつ競争的で開かれた研究社会実現、安全で豊かな生活実現のため、諸施策積極的展開を図ってまいります。特に、現下の困難な経済状況においては、新産業創出を促すような先端科学技術分野研究開発やその成果活用推進が、経済再生を進めていく上で重要であり、それらに関連した施策に力を入れてまいります。  一方、より一層の研究開発活動効率化活性化を図りつつ、研究資金等研究開発資源の適切な配分、研究開発の厳正な評価、省庁の枠を超えた連携の強化を図ります。さらに、国際的な科学技術活動を積極的に展開してまいります。  なお、これらの取り組みの多くは、昨年末に成立した第三次補正予算施策と切れ目なく実施することによって、景気回復に資することとしております。  また、行政改革においては、創造的な科学技術行政体制整備を図ることが重要であります。とりわけ、現内閣において、私が文部大臣科学技術庁長官を兼務していることにかんがみ、文部省及び科学技術庁の統合に向けてこれまで以上の取り組みができるものと思いますし、また、一層の努力もしてまいる所存であります。  以上のような認識のもと平成十一年度には、以下に申し上げますような柱を中心として、科学技術振興施策を総合的に展開してまいります。  第一に、経済フロンティア拡大等経済活性化に資する施策積極的展開であります。  現下の最重要課題である経済再生を達成し、国民の期待にこたえていくためには、我が国の得意とする技術集約型の戦略分野開拓強化していくとともに、新技術新規事業創出等促進するための施策を強力に推進していくことにより、我が国経済構造改革促進し、経済活性化していくことが極めて重要であります。このため、産業全般発展等の源となる情報科学技術を初めとする重要戦略分野開拓と、新規事業の種を多く包含する研究開発成果活用促進するための科学技術環境整備中心として、科学技術の側面から経済活性化に資する諸施策の積極的な展開を図ってまいります。  情報科学技術推進につきましては、社会の重要で高度なニーズに対応し、明確で高い目標を掲げた研究開発を行うことが効果的であります。このため、複雑な生命の諸現象理解を深めるための先端的な研究開発や、地球規模気候変動等解明に資する地球シミュレータ開発等を進めてまいります。  また、新たな戦略分野として、地球深部を探査し、地殻変動地球温暖化現象等解明、有用な地殻内生命探索等目的とした深海地球ドリリング計画推進してまいります。  さらに、二十一世紀ライフサイエンス時代とも言われておりますが、生命機能の根源であるゲノム構造及び機能に関する研究や、二十一世紀に残された大きなフロンティアである脳科学研究等を積極的に進めてまいります。  そのほか、現在の鉄鋼の二倍の強度と二倍の寿命を有する超鉄鋼材料研究などを展開してまいります。  一方、研究開発成果活用促進のための施策として、プレベンチャー推進事業や、研究成果活用促進事業などを推進し、大学や国立試験研究機関等の先端的な研究成果特許化や、研究開発型ベンチャーを通じた成果展開を図ってまいります。  また、地域における新産業創出等に資する基礎的・先導的研究開発推進することなどにより、地域科学技術振興策強化してまいります。  第二に、地球規模の諸問題の解決など、社会的、経済的ニーズに対応した未踏科学技術分野への挑戦であります。  我が国においては、みずから率先して未踏科学技術分野挑戦し、知的資産としての革新的な科学技術成果創出し、我が国発展のみならず人類に対し貢献することが強く求められています。このため、地球規模の諸問題の解決等に資する科学技術分野へ積極的に挑戦することとし、地球科学技術宇宙開発海洋科学技術等先端的科学技術に取り組んでまいります。  地球温暖化等地球変動現象解明予測実現は、経済社会持続的発展地球環境の保全、改善のための基礎となるものであり、特に地球温暖化対策については、地球温暖化対策推進大綱平成十年六月に決定される等、取り組み強化が求められております。このため、革新的温暖化防止技術探索プログラム地球観測フロンティア研究等地球変動予測に関する研究開発推進してまいります。  宇宙開発につきましては、コスト削減など開発の一層の効率化を図りつつ、確実かつ着実な推進を図ってまいります。とりわけ、輸送需要に柔軟に対応するとともに大幅な輸送コストの低減を目指したHIIAロケットなどの宇宙輸送システム開発、組み立てが順調に開始された国際宇宙ステーション計画推進情報収集衛星を含め、地球観測などの分野人工衛星研究開発に力を入れてまいります。  また、海洋科学技術につきましては、国内外の関係機関との協力もとに、海洋地球研究船「みらい」や深海調査研究船かいれい」等を活用して、総合的に海洋観測研究開発深海調査研究開発などを推進してまいります。  このほか、あらゆる科学技術基盤技術として重要な物質材料系科学技術研究開発、次世代超音速機技術等航空技術研究開発などの先端的科学技術推進してまいります。  第三に、開かれた研究社会を目指した柔軟な研究開発システム構築と、科学技術に対する国民理解増進、並びに独創的な基礎研究推進等であります。  科学技術創造立国を目指していくためには、研究者創造性を最大限に発揮できる活力と魅力のある研究環境を具現化し、我が国全体の研究開発の抜本的な活性化を図っていくことが不可欠であります。このため、国研独立行政法人化先導プログラム等取り組み、人、資金制度に関して組織の枠を超えた柔軟な研究開発システム構築を目指してまいります。  また、近年の青少年科学技術離れを勘案すれば、科学技術に対する国民関心理解を深めていくことが極めて重要な課題となっております。このため、科学技術に関する話題や科学実験番組等を家庭に提供するサイエンスチャンネル試験的放送創造性をはぐくむとともに物づくり体験機会を提供するいわゆるロボットのオリンピック、ロボリンピックの準備等推進し、次代を担う青少年創造性の涵養、国民科学技術に対する関心高揚等を図ってまいります。  さらに、科学技術創造立国を目指す上で必要不可欠である知的資産の形成を図るため、科学技術振興調整費戦略的基礎研究推進事業などの競争的資金拡充中心として、基礎研究の強力な推進を図ってまいります。  加えて、研究開発基盤整備の観点から、研究情報等のデータベースの整備など研究開発に関する情報化促進大型放射光施設整備及び共用の促進などを図ってまいります。  第四に、安全で豊かな生活実現するために必要な、国民生活に密着した科学技術推進であります。  特に、地震国の我が国にとって、地震防災対策は極めて重要な課題であります。このため、地震調査研究推進本部方針もと基盤的地震調査観測施設整備及びそのデータの流通、活断層調査など、地震に関する調査観測充実強化や、国民一般に対する正確かつわかりやすい広報の実施などを総合的に推進してまいります。また、実大三次元震動破壊実験施設整備を推し進める等、地震に強い社会実現に努めてまいります。  また、内分泌攪乱物質、いわゆる環境ホルモンに関する研究や、がんやエイズの研究など、生活者に身近な課題に対応する研究開発推進してまいります。さらに、クローン技術のヒトへの応用の問題等ライフサイエンス進展に伴い生じる生命倫理の問題につきましても、規制のあり方の検討を含め鋭意取り組んでまいります。  このほか、核融合研究開発等、次世紀の長期的な課題として取り組むべき未来エネルギー確保に向けた研究開発推進してまいります。  第五に、安全確保国民理解大前提とした原子力科学技術推進してまいります。  エネルギー資源の約八割を海外からの輸入に依存し、今後ともエネルギー需要の着実な伸びが予想される中、供給安定性にすぐれ、発電過程において二酸化炭素や健康に有害な窒素や硫黄の化合物等を排出しない原子力重要性は、地球温暖化防止京都会議での合意も踏まえると、ますます高まるものと考えられます。  原子力推進するに当たっては、安全確保国民理解が不可欠であります。しかるに、昨年十月、使用済み燃料輸送容器のデータ改ざん問題が判明し、国民の皆様の原子力に対する信頼を損なうことになったことは、極めて遺憾と思っております。今後は、このような問題が二度と起こらぬよう、事業者に対し再発防止取り組みを強く促すとともに、国としての安全審査、検査の充実強化や、原子力安全委員会機能強化など、原子力安全対策のより一層の充実強化を図ってまいります。さらに、国民各界各層との一層の対話の促進情報公開等を積極的に推進してまいります。このような努力とともに、高速増殖炉や高レベル放射性廃棄物処分を初めとする核燃料サイクルの確立に向けた研究開発の着実な展開を図ってまいります。  一方、昨今の国際的な核不拡散に関する諸問題に対応するための体制整備と、使用済み燃料中間貯蔵のための法的整備を進めるとともに、原子力損害賠償についての諸規定整備を行うことが必要であり、今国会において関係法律の改正をお願いすることとしております。  以上、私の所信を申し上げてまいりました。  小渕首相は、二十一世紀社会に向け、未来へのかけ橋を築いていかなければならないという目標を掲げられました。私は、科学技術振興こそ、新しい世紀希望活力のあるものとするための基盤を築くものであり、未来へのかけ橋を築く原動力となるものであると信じております。  私は、科学技術に課せられました重大な使命を全うすべく、科学技術行政責任者として全力を尽くしてまいります。  委員長を初め、委員各位の御支援、御協力を心よりお願い申し上げます。  どうもありがとうございました。(拍手)
  4. 北側一雄

    北側委員長 次に、平成十一年度科学技術庁関係予算について説明を聴取いたします。稲葉科学技術政務次官
  5. 稲葉大和

    稲葉政府委員 平成十一年度科学技術庁関係予算の概要を御説明申し上げます。  平成十一年度の科学技術庁予算額は、一般会計が六千百五十三億百万円、産業投資特別会計が三十七億円、電源開発促進対策特別会計が一千五百四十八億三千六百万円となっております。以上の各会計を合わせた予算額は、七千七百三十八億三千七百万円となっております。  また、国庫債務負担行為限度額は、一般会計が一千四百七十一億三千四百万円、電源開発促進対策特別会計が五十九億五千九百万円となっております。  さらに、一般会計予算予算総則において、原子力損害賠償補償契約に関する法律第八条の規定による国の契約限度額を一兆八千四百七十億円とするとともに、核燃料サイクル開発機構法第三十五条の規定により、政府が保証する借り入れ等債務限度額を二百八十億七千九百万円といたしております。  次に、主要な項目につきまして、その大略を御説明申し上げます。  第一に、経済フロンティア拡大等経済活性化に資する施策積極的展開であります。  経済活性化するための新しい重要戦略分野開拓として、情報科学技術推進に三百億八千九百万円、深海地球ドリリング計画推進に三十三億五千百万円を計上するほか、ゲノム科学研究脳科学研究等推進することとしております。  また、新技術新規事業創出促進するため、プレベンチャー推進事業の創設を初めとする研究開発成果活用促進に百八億九千四百万円、さらには、地域における科学技術振興に百七十一億五千七百万円を計上いたしました。  第二に、社会的、経済的ニーズに対応した未踏科学技術分野への挑戦であります。  地球環境科学技術推進するため、革新的温暖化防止技術探索プログラムを開始するとともに、地球変動予測に関する研究開発推進等に合わせて六百九十一億五千百万円を計上いたしました。  また、月周回衛星プロジェクト国際宇宙ステーション計画推進等宇宙開発利用の着実な推進に一千八百七十二億一千九百万円、海洋観測研究開発を初めとする海洋科学技術研究開発推進に二百九十三億五千九百万円を計上したほか、物質材料系科学技術航空技術等研究開発推進することとしております。  第三に、新たな研究開発システム構築整備と独創的な基礎研究推進であります。  柔軟な研究開発システム構築を目指して国研独立行政法人化先導プログラムに着手するとともに、開放的融合研究推進制度拡充ポストドクター等一万人支援計画推進等に合わせて四百三十二億二千百万円を計上いたしました。  また、サイエンスチャンネル試験的放送を初めとする科学技術に関する国民理解増進に四十一億五千九百万円を計上するとともに、科学技術振興調整費戦略的基礎研究推進事業等競争的資金拡充による基礎研究推進のため七百四十億四百万円を計上いたしました。  このほか、研究開発基盤整備充実のため、研究開発に関する情報化促進大型放射光施設整備等推進することとしております。  第四に、安全で豊かな生活実現するために必要な国民生活に密着した科学技術推進であります。  全国的な地震調査観測網整備、実大三次元震動破壊実験施設整備等防災安全対策充実に百五十五億一千四百万円を計上したほか、環境ホルモンに関連する研究等の身近な生活者ニーズへ対応した研究開発核融合等未来エネルギー研究開発推進することとしております。  第五に、安全確保国民理解大前提とした原子力科学技術推進であります。  核燃料サイクル開発機構に関しましては、安全確保情報公開等の一層の徹底により改革理念を定着させ、業務運営を軌道に乗せることとしております。  また、原子力安全対策推進を図るため、原子力安全規制行政充実強化原子力安全に関する研究等に合わせて五百三十三億三百万円、保障措置強化効率化を含む核不拡散対策充実強化に百五億一千三百万円を計上したほか、原子力に対する国民理解促進バックエンド対策推進核燃料サイクル研究開発の着実な展開先導的原子力研究開発推進を図ることとしております。  第六に、国際的な科学技術活動の積極的な展開であります。  研究者海外派遣外国人研究者受け入れ等国際交流活動推進するとともに、国際宇宙ステーション計画等国際協力プロジェクト推進することとしております。  なお、その具体的な内容については、お手元に資料を配付してありますので、説明を省略させていただきたいと存じます。  以上、何とぞ御審議くださいますよう、よろしくお願い申し上げます。
  6. 北側一雄

    北側委員長 以上で説明は終わりました。     —————————————
  7. 北側一雄

    北側委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。奥山茂彦君。
  8. 奥山茂彦

    奥山委員 おはようございます。自由民主党の奥山でございます。  質問項目は、余りふやすとぐあいが悪いので、私も簡潔に参りますので、長官の方も簡潔で、またわかりやすくお教えを願いたいと思います。  我が国は、言うまでもなく資源小国でありまして、二十一世紀、これからの未来を生き抜くためには、小渕総理の話にもありましたけれども、未来へのかけ橋ということで、科学技術日本の生きる道であろうかと思います。  そこで、科学技術予算はコンスタントに確保されていかなければなりませんし、そしてまた人材養成を図っていかなければならないわけでありますが、文部大臣と兼ねてこのたび科学技術庁長官として取り組んでいただく大臣の意気込みと、これからの抱負というものを少し聞かせてもらいたいと思います。
  9. 有馬朗人

    有馬国務大臣 今奥山先生おっしゃられましたように、日本が特に二十一世紀において活躍するためには、科学技術創造立国が極めて重要であると考えております。  平成七年十一月、科学技術基本法が制定され、翌年七月に同法に基づく科学技術基本計画が閣議決定されたところでございまして、現在、政府としては、同計画に沿って、社会的、経済的ニーズに対応した研究開発推進基礎研究振興、新たな研究開発システム構築政府研究開発投資拡充等に努めているところでございます。  このような点から、平成十一年度の予算案におきましては、科学技術関係経費として約三兆二千億円を確保し、特に科学技術振興費につきましては、一般歳出の対前年度伸び率五・三%を上回る八・一%増の九千六百三十億円が計上され、科学技術振興重要性に配慮されているところでございます。  今後とも、文部省を初め関係省庁と密接に連携して、人材養成並びに科学技術基礎研究開発努力をさせていただきたいと思っております。
  10. 奥山茂彦

    奥山委員 ひとつ長官として、ぜひとも意欲的に取り組んでいただきたいと思います。  そこで、この科学技術の問題になりますと、避けて通れないのは原子力の問題であります。  我が国は、言うまでもなく、エネルギー対策が、石油あるいは石炭、こういった化石燃料と言われるものはどうしても海外から輸入をしなければなりませんし、継続的な資源確保ということになってまいりますと非常に難しいこともあります。さらにまた、環境問題もあるわけでありますから、どうしても我が国原子力エネルギーに頼っていかなければならないわけであります。  ところが、西ドイツで新しくできましたシュレーダー政権は、これから原子力発電はやめていこう、このような方針を出してきつつあるわけでありますけれども、このような問題、あるいは、唯一の核被爆国であるという我が国の置かれた特殊な立場の中において、我が国は、その原子力安全性確保ということが今最も必要なことになるわけであります。  しかしながら、残念ながら、過去において動燃のナトリウムの流出事故とか、あるいはこの前の原燃輸送のデータ改ざん問題とか、こういう問題がたびたび起こるたびに、国民原子力行政に対する不信というものが募ってきたわけであります。その安全性と、我が国自身が、原子力基本法に盛られた平和利用目的であるということでありますが、これがまた案外海外には知られておらずに、日本核開発、核兵器を持つのではないかというような誤解もあるわけでありますから、そういうことも含めまして、これからの国民信頼回復にどのように努められるかということをお尋ねしたいと思います。
  11. 有馬朗人

    有馬国務大臣 まず最初におわびをいたしますことは、昨年発覚いたしました使用済み燃料輸送容器のデータ改ざん問題は、あってはならないことであると思います。これによって原子力に対する国民信頼が低下したことは大変遺憾であると考えております。そういう意味から、まず原子力に対して国民信頼を回復しなければならないと思います。  まず、現場において安全運転をぜひともやっていく、その実績を積んでいくということが第一であり、地域の方々の御理解を賜るべく努力をしていくことが必要であると思います。  国といたしましても、政策決定過程の透明化を図っていかなければならない。国民各界各層からの幅広い御意見を伺う、そのために原子力政策円卓会議を開催しております。また、シンポジウム、フォーラム、説明会の開催を行うというふうなことで、原子力安全性確保しつつ、さらに原子力についての国民信頼をいただくべく努力をさせていただきたいと思っております。そのために、情報公開をしていく、わかりやすい情報を提供するというふうなこと、国民各界各層との一層の対話を推進していきたいと思っております。  また、日本はあくまでも原子力平和利用であるということを、国民日本人のみならず、世界の人々に対して訴えてまいりたいと思っております。
  12. 奥山茂彦

    奥山委員 過去におけるこれまでの事故が起こったときに、なかなかその真相が国民に知らされなかったということが、いわゆる原子力政策に対する国民の不満が非常に強いわけでありますから、この辺の信頼回復、どうしてもやはりこれは進めてもらわなければならない課題であります。  それとともに、日本はウラニウムの産出国ではないわけでありますから、どうしても海外からウランを輸入をしてこなければならない。そういう中において、核燃料のリサイクルということが日本にとっての大きな課題となってくるわけであります。そういう意味で、昨年からプルサーマルが既に一部実施の運びになりましたし、また、地方自治体、また住民の理解を得る努力をずっとしてもらってきたわけであります。  プルサーマルと、それからFBRを初めとする核燃料サイクルの確立への取り組み、それから、あわせてお尋ねしたいんですけれども、いわゆる高濃度の核廃棄物処理対策というものが、我が国はその取り組みが非常におくれてきておるわけであります。こういったバックエンド対策というものの取り組みをあわせてお尋ねをさせていただきたいと思います。
  13. 有馬朗人

    有馬国務大臣 プルサーマル計画についてでございますけれども、今まで使っております原子力発電施設への追加的な設備投資をほとんど伴うことなくウラン資源の有効利用を図ることができるわけであります。  そういう意味で、現時点で最も確実なプルトニウムの利用方法でございまして、平成九年二月には、これを早急に開始することが必要である旨閣議了解が行われたところでございます。その閣議了解の後、プルサーマル計画の意義、安全性等に関し国主催の公開討論会を開催する等、地元の理解を得るための努力を行ってまいりました。  この計画につきましては、地元の了解を得つつ、昨年十二月には、関西電力高浜発電所におけるプルサーマル計画について原子炉設置変更許可が行われ、また現在、東京電力福島第一原子力発電所のプルサーマル計画につきましても一次審査が行われている等の進捗が見られております。  また、高速増殖炉につきましては、その利用によってウラン資源の利用効率を飛躍的に向上させることができます。長期的観点から着実に進めていくべきものと私は考えております。一昨年十二月の原子力委員会決定におきましても、このような認識のもと、将来の非化石エネルギー源の一つの有力な選択肢として、実用化の可能性を追求するため研究開発を進めることが妥当とされました。  今後とも、「もんじゅ」の活用を含めた高速増殖炉研究開発を着実に、地元の御理解を得ながら、また国民の御理解を得ながら進めてまいりたいと思っております。そういう意味で、核燃料サイクルの円滑な推進が図られるよう努力をいたしてまいりたいと思います。  また、非常に重要なポイントを御指摘くださいました。放射性廃棄物の問題というのはなかなか難しい問題でございます。原子力開発利用を進めていく上で最も重要な課題の一つでございます。  現在、我が国におきましては、放射能レベルの高低、含まれる放射性物質の多様性を十分踏まえまして適切に区分して管理し、その区分に応じて合理的な処理処分を行うこととしております。また、各事業者たちがみずからの責任において処理処分することを基本といたしております。  このうち、原子力発電所等から発生する低レベル放射性廃棄物につきましては、青森県六ケ所村の日本原燃株式会社が低レベル放射性廃棄物埋設センターをつくりまして、そこで埋設処分を安全かつ円滑に実施中でございます。  一方、高レベル放射性廃棄物につきましては、昨年五月に取りまとめられました原子力委員会の高レベル放射性廃棄物処分懇談会報告書及び昨年六月の高レベル放射性廃棄物処分推進に関する原子力委員会決定を受けて、現在、関係機関において、処分の具体化に向け、まず処分費用の具体的見積もり及び処分事業のあり方の検討、これまでの研究開発成果の取りまとめ、さらに安全確保の基本的考え方の検討が進められているところでございます。  今後とも、バックエンド対策につきましては、国民の皆様方の幅広い御理解を得ながら、最大限努力をさせていただきたいと思っております。
  14. 奥山茂彦

    奥山委員 ひとつ強力に、特に我が国原子力発電というものが、これまでからトイレのない住宅のようなものでありまして、後始末が全然何もできないという実態がありますので、ひとつその辺は十分に力を入れて進めていただきたいと思います。  過日の新聞で、また政府も発表いたしましたけれども、いわゆる廃棄核兵器ですか、この処理対策が今非常に大きな課題となってきておるわけであります。  御案内のように、最近は核兵器の軍縮の時代になって、アメリカはみずから処分をするであろうと思いますが、特にロシアは、その廃棄核が行方不明になったりとか、いろいろな問題を引き起こしているだけに、その核兵器の処理という問題が非常に大きな課題となってきておるわけでありますけれども、我が国も全面的にその処理の研究をしようということで、日本とロシアで共同してやろうということになっておるわけであります。これは、我が国自身の核の平和利用という趣旨からしましても、非常に意義のあることであろうかと思います。  そういう中において、これは核燃料サイクル開発機構がその研究に当たるということでありますから、この体制を科学技術庁としてもバックアップしてもらわなければならないかと思います。  それから、もう一つの課題としまして、これからいわゆる原子力発電の原子炉の解体という問題が非常に大きな課題となってくるわけでありますから、そういう面の研究というものも、世界でその技術日本自身が提供していくということが非常に大きな意義があることでなかろうかと思いますが、この辺も含めまして、どのように取り組まれるか、お尋ねをしたいと思います。
  15. 有馬朗人

    有馬国務大臣 御指摘のとおりでございまして、私も、ロシア並びにアメリカの爆弾の解体によって発生しますプルトニウムをどうするか、大変気にいたしております。  今奥山先生御指摘のとおり、ロシアの解体核プルトニウムの処理処分につきまして、科学技術庁としても大いにお手伝いをしたいと思っている次第であります。  核燃料サイクル開発機構は、解体核物質処理への技術的貢献など、国際協力への積極的な取り組み計画しております。具体的には、ロシアの研究所との高速増殖炉に関する共同研究等を通じて、解体核プルトニウムの、高速炉、これはBN600と言っておりますが、この高速炉による燃焼の支援を行うべく協議を進めてきているところでございます。科学技術庁としても、この計画を大いに推進いたしたいと考えております。  また、原子炉の解体でございますが、これも大変重要な問題でございまして、一つ、原子力発電所で古い原子炉を解体するというふうな見事な成功をおさめておりますので、さらにこのような研究を進めてまいりたいと思っております。
  16. 奥山茂彦

    奥山委員 もう余り時間がございませんので、あと二つお尋ねをしたいことがありますが、もう一遍に聞かせていただきたいと思います。  一つは、情報収集衛星。これは、防衛庁とのいろいろな話の中において四機打ち上げなければならぬ。二〇〇二年までに情報収集衛星を打ち上げる。しかし、技術的な問題は、これは宇宙開発事業団等が主に進めてもらわなければならないわけでありますが、その役割等をどのように果たしていかれるか、それが一つ。  もう一つは、こういった技術開発はどうしても高度な、特殊な技術になるわけでありますから、これまで衛星の発注にしましてもロケットの発注にしましても、特定の業者との間の契約ということになるわけでありまして、防衛庁においていろいろこれが問題を醸したことがあります。そういったことにならないようにという強い願いを我々も持っておるわけでありますし、過去において新聞にも出たことがあるわけでありますので、その点は十分留意しながら進めていただきたいと思います。  そしてもう一つは、私は京都でありますから、阪神大震災のときには非常に大きな揺れを我々のところも感じたわけであります。この地震対策、地震予知ということにつきましては、これは世界においてはかなり進んでおると言われておりながら、我が国はなかなか予知ができない現状があるわけであります。そういった中におきまして、かつて中国の遼寧省海城県というところで、このときは地震予知に成功した、そういったニュースも伝えられているだけに、我が国地震対策には十分心して取り組んでいただきたいと思います。  そこで、科学技術庁長官としては、地震調査研究推進本部長を兼ねられているわけでありますから、そういった予知の問題について、それから、今回、予算の中にも盛り込まれておりますけれども、実大三次元の震動破壊装置というもの、これはどういう目的でやっていかれるのか。  さらにまた、もう一つだけ、我が国は余りこれには意欲的に取り組んでおらないんですけれども、生物は地震の予知能力があるということがいろいろ言われているわけでありますから、こういった生物界の研究というものも果たして十分なされているのかどうかということもあわせて最後にお尋ねをしたいと思います。
  17. 有馬朗人

    有馬国務大臣 まず、情報収集衛星のことでございますが、これは非常に技術開発を必要とするようなところがございますので、通産省、郵政省の協力を得つつ、確実に開発に取り組んでまいりたいと思っております。  それから、NECの過大請求問題のようなことが今後絶対にないように、慎重を期していきたいと思っております。  阪神・淡路大震災のことでございますが、私も大変この点、心配をしております。同僚の研究者たちからの報告書などを見ますと、随分基礎的な地震研究は進みました、しかしなお、何月何日に起こるというふうな予言、予知まではできないようであります。  そこで、こういうことで地震調査研究推進本部が置かれ、そこで総合的かつ基本的な施策の立案、関係行政機関の予算等の事務調整、そして、総合的な調査観測計画の中核となる、地震に関する基盤調査観測計画を決定するなどの活動を現在行っております。さまざまな全国の地震に関するデータを集め、毎月定期的に、かつ必要に応じて臨時的に、地震調査委員会を開催するとともに、その評価結果についての広報を積極的に行っているところでございます。  具体的には、後でまた三次元震動台のことは申し上げますが、それも含めまして、今、科学技術庁を初めとする各省庁においては、まず高感度地震観測施設。残念ながらまだナマズの研究は進んでおりません。生物関係はまだおくれていると思います。それから、GPS地殻変動連続観測施設等の全国的な整備推進、そのデータの収集、処理、提供などを行い、全国の主要な活断層調査等を行っております。  具体的に科学技術庁としてどういう地震防災研究をしているかという御質問に対しましては、現在、防災科学技術研究所において、全国強震ネットワークの運営、強震動の地域特性の評価等に関する研究を実施、そしてまた、地震が起こっても家が倒れない、橋が落ちないという構造物の耐震性向上を通して地震災害の飛躍的軽減を図るため、阪神・淡路大震災級の地震動を模擬して、実大規模での破壊現象解明を可能とする三次元の震動台をつくる実大三次元震動破壊実験施設整備に本年より着手したところでございます。  それ以外にも、先ほどおっしゃられました宏観予測、すなわち、にじを見るとか、あるいは地電流を見るとか、さまざまなことについても理化学研究所の地震防災フロンティア研究センターなどで行っております。そして、都市部を中心とする地震災害の軽減を目指す先導的な研究を現在実施しているところでございます。
  18. 奥山茂彦

    奥山委員 ありがとうございました。
  19. 北側一雄

    北側委員長 辻一彦君。
  20. 辻一彦

    ○辻(一)委員 有馬文部大臣が科技庁長官を兼任されて、心からお祝いと、なかなか大変だと思いますので頑張ってほしいと思います。  そこで、大臣所信を特に初めに二、三、伺いたいんですが、文部行政の非常に忙しい文部大臣が、それ自体でも非常に御苦労が多いわけでありますが、そういう中で科技庁長官を兼任されて大変だなということで、心から敬意を表したい。  しかし、我が国科学技術基本法中心にして、今、大臣所信表明で御発言でありますが、科学技術創造立国あるいは科学技術大国を目指して取り組んでいる、そういう中で、従来、科技庁長官が専任長官としていらっしゃったのが、それがなくなったということは、本当に私は非常に残念、また遺憾なことだな、こういう感じがしております。  従来の科技庁長官は、原子力委員長を初め科学技術の多くの責任あるポストを持っておられたわけですが、一人の大臣が果たすには、文部行政と科技庁長官、両方の在職というものはなかなか容易でない、大変な激務であると思いますが、その両方の非常に重要なものを担当される有馬大臣がどういう決意とお気持ちを持っていらっしゃるか、このことをまずお伺いいたしたいと思います。
  21. 有馬朗人

    有馬国務大臣 私自身に関係することでございますので、うまいお答えができるかどうかわかりませんけれども、率直に申し上げまして、科学技術は自分がずっとやってきたことでございますので、特に原子力並びに宇宙というものは私がやっていたことに非常に近い、友達も多いというふうなことで、大変うれしくこのことをやっております。大変興味深くやりますので、時間がかなり短くても十分理解ができるかと思っております。  同時に、文部省の方の、学術研究と普通言っておりますが、そこにあります科学技術研究科学技術庁もとにあります科学技術研究は極めて密接な関係にございますので、両方一緒に考えることができると思っております。例えば、大学や国立試験研究機関における基礎研究などを推進するというのは協力してやれますし、重要な科学技術人材養成というところでは、大学等々と連携をとり、科学技術庁の傘下にありますポストドクトラル・フェローなどをうまく使って育成していくことができるかと思っております。  それからもう一つ、二つの省庁協力することの極めて重要な意義があるのです。比較的このことは忘れられておりますが、私が兼任をさせていただきながらつくづく思いますことは、青少年科学技術離れへの対策でございます。これはやはり小学校、中学校、高等学校も同時に考えていかなければならない。そういう点で科学技術庁文部省が大いに協力をいたしまして、さまざまな、先ほどもちょっと申し上げましたようなサイエンスチャンネルを開くとかシンポジウムを行うというふうなこと、あるいは夏の学校を行うというふうなところで極めて密接に協力をしながら進めることができますので、二つの省庁を兼ねるということが必ずしも二倍のエネルギーを要することにならずに、割に有機的にやることができるということを申し上げて、お答えとさせていただきます。
  22. 辻一彦

    ○辻(一)委員 今大臣から自分の声でお話を聞いて、大変よかったと思います。  私も長年原子力行政というもの——私のところの福井県の若狭湾は、大臣も御承知のように「もんじゅ」「ふげん」を初め十五の発電所を、その容量は千百八十万キロワット、約千二百万キロワット、私も、チェルノブイリやスリーマイル、各国の原子力施設はほとんど見て回ったつもりですが、これだけ集中しているところはない。したがって、参議院に四十六年以来、原子力の安全と、万一、あってはならないのですが、それに備えての防災体制の確立、これに半生をかけてきたつもりなので、そういう立場からしますと、科技庁長官は、よくわかった人が長官につかれる場合もありますが、必ずしもそうでない場合が多い。そうすると、ようやくなれて頭に入った時分には大臣をやめてしまうので大変残念に思っておりましたが、今回、最初から科学技術行政に確信を持ってそういう経験を踏まえて臨んでいただけるということは、大変結構なことだと思います。  そこで、一つ確認しておきたいのですが、今のお話で、二つの職をやってもそれほどの時間をかけずにやれるということですが、我々の国会の方からいえば、国会の審議というものが非常に大事なので、そこに直接長官が来て、そして自分の言葉で物を言わなければ余り意味が本当はないと思うのですね。そういう意味で、難しい中ではありますが、我が科学委員会の方、これはもう原子力や宇宙や海洋や大事な問題がいっぱいありますから、できる限りの時間を割いてひとつ務めていただきたい。このことについての決意のほどをひとつ伺いたいと思います。
  23. 有馬朗人

    有馬国務大臣 ただいまのところ、月水金と文部省、火木は科学技術庁に勤めさせていただいておりますが、緊急なことがどちらかに起こりますと、その省なり庁の方に週の割り当てにかかわらず出かけてやっております。そしてまた、科学技術委員会などには、できる限りというよりも、まずは完全に出席をさせていただきたいと思っております。そういう点で、決して両省庁をお引き受けいたしたことがどちらかの仕事をないがしろにするということはないようにいたしたいと思っております。
  24. 辻一彦

    ○辻(一)委員 きょうは、民主党の方から三人、私が冒頭に出まして、物づくり関係中心に鍵田さん、それから宇宙や海洋開発等を同僚の近藤さんにそれぞれやっていただくのでありますが、私はやはり原子力の問題を中心にお尋ねしたいと思うのですが、それも、先ほどもお話がありましたが、核融合をどうするのかという問題と、最終の廃棄物処理をどうするのかということについて、大臣所信をひとつ伺いたいと思います。  第一に、具体的には後でITERの問題等中心にしてお尋ねしますが、まず、地球におけるエネルギーの将来を考えると、太陽をいかに生かすか。太陽は、宇宙の太陽がありますし、地上の太陽がある。地上の太陽は核融合であると思いますが、宇宙の太陽は、その中心温度は千五百万度Cですね。それであれだけの光と熱を与えておりますが、太陽光発電という中で、この光を電気エネルギーに使っていくもう一つの道があるわけですが、これに力をやはりもっと入れないといけないのではないか。予算を見ても、細かいことは別として、必ずしも十分とは言えない感じがします。  それからもう一つは地上の太陽。これはもう言うまでもなく核融合でありますが、日本のJT60は御承知のように五・二億度。太陽は千五百万度ですが、JT60は五億度以上の温度を短い時間でありますが保持した、宇宙に存在しない高温を確保した。私は、こういう核融合を何としても推進をして、宇宙の太陽を最大限に生かす、それから、地上に太陽をつくり上げて、そしてエネルギーの将来に備えるというこの二つが、いずれも太陽ということでありますが、大変大事であると思いますが、大臣所信をお尋ねしたい。
  25. 有馬朗人

    有馬国務大臣 本当の太陽も地上の太陽も極めて重要だと思っております。  まず、地上の太陽すなわち核融合のことにつきましては後ほどちょっと触れさせていただきますが、やはり、天にある太陽をぜひとも地上で大いに利用しなければならない、そのための研究開発は大いに進めていかなければならないと思っております。今のところ、御指摘のように必ずしも十分まだ推進が図られていないというところがありますけれども、随分産業的にもソーラーバッテリー等々が安くなってまいりましたし、通産省も随分それに対して援助をしておりますので、これは大いに進んでいくだろうと思います。  ただ、私が心配しておりますことは、太陽のエネルギーというのは、地上に注ぐ全部をとりますと大変大きなものですけれども、日本のように雨が降ったりするようなところは割に有効性が高くない、そういう点でさらなる技術開発が必要であると思っております。  核融合でございますけれども、御指摘のとおり、随分今一生懸命研究をいたしております。今後どういうふうにこれを進めていくか、ITERをいつどういうふうにやっていくか等々は今後の大きな問題であろうかと思っております。またその点について詳しく御質問がございましたら私の考えを申し上げたいと思いますが、いずれにしても、核融合の実用化に向けましては、エネルギーを長時間安全に発生させる技術開発していかなければならないと思います。今御指摘のように、数億度といった高温に耐える、放射化しにくい材料の開発というのがなかなか難しい、今多くの研究者努力しているところでございます。  こういうふうな技術開発課題は、大変おもしろい問題がたくさんありますので、研究者の意欲を大いにそそるところでございますから、さらなる研究を進めてまいりたいと思っております。
  26. 辻一彦

    ○辻(一)委員 太陽光発電等には多く触れるつもりはなかったのですが、学校等のことに、文部大臣でもいらっしゃいますので、ちょっと一言触れたいのです。  言われるように、太陽光は全体は非常に大きいけれども、しかし一つの産業動力等をそこから得ようとすれば、これはなかなか難しい問題ですが、日本で電気が一番要るのは、甲子園の野球をやって、クーラーを全部使うときに電気がたくさん要る。そのときの最大限のピークを維持するためには、かなり余分の発電所や施設を持たなければならないという問題がありますが、私は、夏の甲子園のとき、クーラーと太陽光発電を直結すれば、民生の面では随分ピークを削ることができるのではないかという感じがします。  そこで、太陽光発電を考えるときに、一つは光からの熱交換率、今は一一%ぐらい、これを技術的には二〇%まで上げることは不可能ではない。これを開発して二〇%に持っていけば、コストは、概算でいっても半分ぐらいになる。それから、学校であるとか、市役所であるとか、公共の建物の天井にパネルを張って、太陽光を生かす。私のような北陸の雪のあるところはなかなか別としても、太陽のよく照るところはどんどんそういうのを義務づけて、これに対して国が助成をする、そうすれば大量のパネル生産ができる、コストは下がってくる。この二つを本格的にやれば、かなり様子が変わると私は思いますが、文相でもありますので、学校の点も考えて、一言お尋ねしておきたい。
  27. 有馬朗人

    有馬国務大臣 ただいまの辻先生のお考えは、私も全面的に賛成でございます。  太陽エネルギー、ソーラーエネルギーだけでは、日本のエネルギーを、特に電力を全部賄うことはできません。しかしながら、御説のように、夏のピーク時あるいはそうじゃないときでも、家庭電力ぐらいは、屋根の上に準備いたしましたソーラーバッテリーを使って電力を生み出すということが極めて有効であると考えております。  そういう点で、今後、ソーラーシステムの開発並びにそれを公共施設に備えることが必要であると思っておりますし、家庭でもぜひともそういうものを備えていただくべく国としても援助をしていくべきだと思っております。  現在、文部省では実はエコスクールというものをつくっております。これは、新しい小学校、中学校でございます。まだ十八校ぐらい。四万校、四万五千校あるようなところで十八校でございまして余り威張れないのですけれども、モデル事業を行っておりまして、こういうものが成功すれば、先生御指摘のような時代が来るかと思っております。  また、具体的には、通産省と協力いたしまして、これは文部省の方の予算でございますが、太陽光発電のための設備や太陽熱を利用した暖房、給湯設備等を今申しましたエコスクールに備えていくというふうなことを今やっているところでございます。  先生のお考えに全く賛成をいたします。
  28. 辻一彦

    ○辻(一)委員 この問題はもう少しやってみたい感じがするのですが、きょうは主題がありますので、また別の機会にしたいと思います。  そこで、大臣は、文相、科技庁長官として、宇宙の太陽、地上の太陽が必要であるという御認識のようであって大変結構だと思うのですが、地上の太陽、核融合の問題について若干具体的にお尋ねしたいと思います。  私はこの間、一月の中旬に、南米リマの国際会議に出た後、アメリカの西部地方、砂漠地帯を回って、アメリカの核融合の拠点サンディエゴ、それからロスアラモス、原爆を開発しましたが、あそこで核弾頭の解体試験をやっている状況、それからネバダの、核兵器の実験場でありましたユッカマウンテンで廃棄物の最終処分場の試験をやっているのを見て、いわゆるハンフォードの核開発の後の廃液等が非常に問題になっている、そういう状況を一週間ほど見てまいりました。  そこで、サンディエゴでも、日本核融合に対して随分、現地でいろいろ研究をやっている学者の人に会っても期待が強いのを痛感したのですが、今、日本核融合の現状、そしてITER等のめど、そういうものについてどういうふうに認識していらっしゃるかをまずお伺いしたい。
  29. 有馬朗人

    有馬国務大臣 日本核融合研究は随分私は進んでいると思っております。ITERについては、また後ほど御質問がおありになるかもしれませんけれども、さまざまな面で核融合研究が行われておりまして、トカマク型のものとか、あるいはレーザーを使うものとか、いろいろな研究科学技術庁及び文部省傘下の研究所で行われております。  この中で、やはりトカマク型が今のところ一番実現の可能性が強いのではないかと思っております。まだまだ短いのですけれども、高温、高密度のプラズマが随分つくられるようになりましたので、そういう点でさらなる研究を進めることによって実現化を図りたいと思っております。
  30. 青江茂

    ○青江政府委員 ITERの現状等につきまして、事実関係についての御質問がございましたので、私の方から補足的に御説明をさせていただきたいと思います。  まず、ITERの方の現状でございますけれども、御案内のとおり、一九九二年から六カ年にわたりまして工学設計活動というものを継続をしてまいったその結果といたしまして、昨年の七月の段階でもちまして詳細設計書というものができ上がってございまして、それに加えまして、その関連RアンドDというものも進めてまいりました。主要な機器の試作、システム試験、こういったものも行われてございまして、そういう経過を踏まえまして、言ってみればITERという実験炉、ハードウエアそのものはできるというめどが立ったところまで行ったわけでございます。  ところが、その際におきましての所要資金というのが附帯施設を含めまして約一兆円というふうに見込まれてございまして、一兆円という資金需要に対しまして、各国財政事情等がございまして、四極ともに、ITERという実験炉を建設しようというふうな、建設への具体的な動きというものが生ずることがなかったわけでございます。  そういう状況を踏まえまして、一兆円といういわゆる資金需要の規模に対しまして約半額、五千億程度の規模でもちましてITERの目的というものができないだろうかということで、設計というものをさらに見直していく、いわゆるローコストオプションというものを追求してみようじゃないかということでもちまして、四極での議論が整理をされまして合意に至ったわけでございます。その段階におきまして、米国がやはり一年を超えてのITERへの参加というのはできないということに相なったわけでございますけれども、その後、米国を除きました三極におきましても、ITER工学設計活動というのを続けようではないか、続けることが大変重要な意義があるということでもちまして合意が成りまして、今継続途上にあるという段階にございます。
  31. 辻一彦

    ○辻(一)委員 平成五年、五年ほど前ですが、私はオックスフォードのECのJETを見に行きまして、そのときはフランス人が所長をしておりましたが、日本のJT60も今改造をしているから、当時の話ですが、この改造が進めば、今我々は最高のデータを持っているが、日本も大体これぐらいになるだろう、こう言っておりました。報告を聞くと日本の方は国際的にはJETを追い越している、こういう状況で、それは大変意味があり大事なことだと思うのですね。  そこで、一つは、アメリカが一年後で手を引くという、これは大変大きな問題だと思うのですね。そういう中で三極、日本と欧州とロシアで進めるという経緯が出てきたと思うのですが、そこらの経緯について、なぜアメリカが手を引こうとしているのか、引いたのか。予算的には半額にして一年、こう一応期限をつけたのですから、状況が変わらなければ手を引くということになるんですね。  それからもう一つ、先ほどお話があった、一兆円かかると計算したのを五千億でできるなら、なぜ初めから五千億でやらないのか。そして、五千億で、予算を半分にして果たして、ITERがねらったところの目標というもの、必要なその目標が達成できるかどうか、そこらをどう見ておるかひとつ伺っておきたい。
  32. 青江茂

    ○青江政府委員 御説明申し上げます。  アメリカの方の実情につきましてどう見ておるかということにつきましてでございますけれども、具体的には、米国の議会からの支持というのが得られなかったということでございます。  アメリカの全般的な事情を見たときに、これは二、三年前からもうその傾向が出てきておったと思うのでございますけれども、いわゆるエネルギー供給源としての開発というものを進めていこうという考え方からさらにもう少し戻りまして、科学実証というところに少しウエートを置きまして、そしてプラズマの閉じ込め方式につきましても、トカマクというふうなことのほかにもう少し幅を広げて、科学実証への研究というものをさらに強めていく、そして将来への展開というものを待っている、そういうふうな傾向というのが基本的にあったと思うわけでございますけれども、そういう傾向の中におきまして米国DOEの予算というものが大幅に削減される、そういったふうなことが相まちまして今回の議会の決定に至ったのではないかというふうに見てございます。  それから、五割削減ということであるのであれば、何で初めからやらなかったかということにつきましてでございますけれども、いわゆる開発のステップの問題としまして、JETそれからJT60、こういったステージから、将来、実証炉というステージに向かうときのそういう道筋を、どういうふうにステップを踏んでいくのかという考え方の問題であろうかと思うわけでございます。  当初、設計を始めます六年前の段階で目指してございました、例えばQ値、エネルギー投入に対しまして核融合から得られるエネルギーというものをどのぐらいのものを目指すのか、長時間運転としまして、それはどの程度の秒数を目指すのか、こういったふうなことを勘案して、その実証炉に先行きたどれるように実験炉というものをつくっていこうではないかというふうに議論したわけでございますが、それが、六年間のいわゆる工学設計活動の成果、それから関連RアンドDの成果、こういったものを踏まえたときに、いわゆる長時間運転というものと自己点火条件の達成、この目的というものを達成しつつ、技術目標というものを相当ぎりぎりまで下げても実証炉にたどり着けるその道筋を描けるということでもちましてその目標値というのは下げていった、と同時に、技術裕度を下げていった。この辺は、やはり六年間の開発成果研究開発進展成果というふうに見ていただける方がよろしいのではないかというふうに思っておるのでございます。
  33. 辻一彦

    ○辻(一)委員 二つ一緒に論議をするとちょっとややこしくなるので、アメリカがなぜ手を引いた、どうするのかという問題と、それから、具体的にやっていくのに五千億で可能なのかどうか、ちょっと分けて少し質疑をしたいと思います。  まず、アメリカの方。この間サンディエゴへ行って、これは現地でいうとゼネラル・アトミック、アメリカのトカマクを引き受けて、そして実際やっているサンディエゴの会社ですが、そこの筆頭副社長と、何人か見えて、半日ほど論議、意見を聞きましたが、アメリカでは、国会の方でも、もっと早くできないのかというようなこと。これは私も同じ考えを持つのですが、私が四十六年に参議院に出たときに、三十年たつと核融合は実用化するということを聞いた覚えがあるのですが、もう二十八年か三十年に今達しようとしている。しかし、実用化のスケジュールを見ると、これから大体五十年ということになっておりますね。  アメリカの方でも、もう少し速度を速めてできないかということ、それから、お金をつぎ込むなら、そのめどが本当にあるのか、金をつぎ込む以上はそういうめどが必要なんだと。そこらは、一面では、アメリカがちゅうちょしてきておった一因ではないかと思うのですね。だから、それらの見方をどう考えているのかということ。  それからもう一つは、さっき局長説明しましたが、エネルギーという観点からその核融合を今までは考えていたアメリカが、科学技術というか、もう少しもとの科学の場に立ち返っていろいろな、広範な方向を模索しようとしているならば、研究開発の重点が変わってくるわけですから、かなり趣が変わってくるのですが、そこらをどういうようにとらえておるのか、そこをちょっと伺いたい。
  34. 青江茂

    ○青江政府委員 先に米国の方のあれでございますけれども、確かに米国のその状況というのは先ほど申し上げましたようなことで、米国の研究開発状況そのものも、これは様相が変わってくるだろうというふうに思ってございます。ただし、それに対しまして三極の方の見方というのは、これは異なっておるわけでございまして、それでもちまして、ITERという一つハードウエアをつくれば次のステップに展開できるだろうというふうな見方というものに立っておるわけでございます。これは三極一致した見方でございます。そういういわゆる見方の相違とでも申しましょうか、アメリカは、おっしゃられるとおり、これは変わってくるだろうというふうに思うわけでございます。  それから、前の方に戻るわけでございますけれども、核融合研究につきまして歴史を見てみますと、やはり大きなハードウエアというものをつくりまして階段を上ってきておると申しましょうか、今のITERをつくろうではないかという前の段階というのが、JETでございますとかJT60というかなり大きなハードウエアをつくりまして、その大きな実験施設を使うことによってデータというものを出して先行きのめどを立てている、こういうステップを踏みながら研究開発をやっておるということの経緯であろうと思うわけでございます。  それで、一種の逃げ水現象のように何でこれが延びていくのかという状況でございますけれども、まず、JET、JT60でのデータ、運転をしてデータをとる、これは運転自身も若干おくれたわけでございますけれども、運転期間を相当長時間とったという経緯がございます。大体十年程度のデータをとってみてそれから次に行こうではないかというふうな、そういうアプローチの仕方をすることの方が将来にとって好ましいという判断が出てきたようでございます。  従前、その運転期間というのが、かなり短い時間で次のステップに進もうじゃないかというところから、いわゆるアプローチの仕方が変わったてきたということで、次のITERという施設を使って次のステップに進むのも、ITERをつくって、従前程度の運転というもの込みで考えてみますと、かなり時間的に実証炉の段階というものの見通しが延びる、そうすると当然その先のものが延びる、こういうふうな形で、研究開発のいわゆる実用化のめどとでも申しましょうか、そういったものが延びてきておるというふうな状況にございます。
  35. 辻一彦

    ○辻(一)委員 国際的な巨大なプロジェクトはアメリカが参加しなければなかなか進まないし、これは、参加しておって手を引けば大体つぶれるのが今までの例だと思うのですね。そこで、アメリカの方も、アメリカが手を引くと言えば大体つぶれるから、後はどうするのかなという気持ちがあったんでしょうが、三極が一致をしてこれを推進するという方向を出したことはアメリカの議会の方にも一つのショックというものが出ているということもちょっと聞いたのですが、三極がどういう判断で、三極というのは日本とECとロシアですが、三極でもひとつぜひ推進をする、やれるというめどをつけたのか、そこをちょっと聞かせてほしい。
  36. 青江茂

    ○青江政府委員 御説明申し上げます。  去年の夏の段階でアメリカが御案内のような姿勢を示してきた。その後、たしか九月の末だったと思いますけれども、横浜で核融合会議がございました。そのときに四極が全員集まりました。その四極でいろいろなディスカッションを行ったわけでございますけれども、第一に根本的に違ってございましたのは、六年間のITERの工学設計活動、この活動の成果に対する見方と申しましょうか、そういうことでございまして、その四極会合に出てきておりましたアメリカ代表の人は評価をしておるわけでございますけれども、そのアメリカ代表、アメリカのITERグループの人の評価が、アメリカの議会を含めての広範なサポート、これが得られなかった。すなわち、ここに認識のギャップというのがあったということが一番大きな問題であったのではないかというふうに思っているわけでございますけれども、もちろん、先ほども触れましたとおり、三極の六カ年間の工学設計活動の評価というのは大変前向きで、これはいわゆるハードウエアとしてはきちんとしたものができるという評価でございました。  それで、アメリカが撤退したということによりまして、本当に三極だけでできるのかという議論も相当インテンシブになされました。部分的に、大量のトリチウム技術の取り扱いの経験、こういったところというのはアメリカが非常に分厚い経験を持っておって、その辺は三極に少し欠けておる部分があるかなというふうな側面はあるといった議論もあったようでございますけれども、そういった部分的なものも三極でもって技術的に十分克服できる、総じて言えば、三極でもって、アメリカの力をかりる、参入を得ることなく、技術論としましては、とにかくこれはできるという結論に達したというふうに聞いてございます。  ただ、技術論の問題と、それから経済的な側面ももちろんございましょうし、これから国際プロジェクトとしてそれを推進していく際のアメリカの役割といったものもありましょうし、これから、撤退をしたからもうアメリカの参加を求めることは決してないということでは決してございませんで、アメリカとも十分コンタクトを、パイプをつなぎながら今後とも考えていきたい、かように考えてございます。
  37. 辻一彦

    ○辻(一)委員 私は、EUがやっているドイツのガルヒンクは見ていないのですが、日本の那珂、それからサンディエゴでは、それぞれ四極から四十三名ずつですかの学者が六年間、家族も一緒に住み込んで、共同研究をやってきた。日本にも四十三名、サンディエゴにも四十三名、ガルヒンクにもそれぐらいおって、六年間という相当長い期間、一体になってやってきた。その苦労を私もサンディエゴでいろいろ聞いたのですが、初めは何か各国皆それぞれ違うので大変だったようだが、これはロシアの代表が言っておりましたが、やはり六年間やってみて、一国でできなかった成果を積み上げることができたと。だから、現地の学者は、アメリカの皆さんは新しい仕事ということで、皆、一年後でもう終わりというので、どんどんほかへ動いておるんですね。それでも自分たちのやってきた研究成果がその後どうなっているかということが心配になってちょいちょい見に来る、こう言っておりましたが、それだけの共同で積み上げたのは、宇宙開発を米ロで協力して、今も新しい協力はありますが、国際的に、百六十名近くの学者が六年間も三つの国に住み込んで、そして共同研究を積み上げた例は今までになかったと私は思うのです。こういうものをぜひ継続して、やはり生かしていくということを考えなくてはならないのではないかというように思います。  それから、やはりアメリカの参加をどうしても私はこれからも求めるべきだと思うのですね。そういう意味では、かつてアメリカ政府に対して日本政府が、三年前でしたか、核融合重要性を指摘した手紙を送ったということが当時の予算を削減する動きをとめた、それで予算確保された、そういう例があった。だから、日本がひとつ中心になってこれを推進し、そしてぜひアメリカにもそういう呼びかけをしてほしいというのが地元の皆さんの気持ちであったわけですね。よその国に呼びかけるのはどこまでやれば干渉になるか問題がありますが、そういう努力をやるべきだ、私はこう思いますが、それについて、これは大臣の方からひとつ所信を述べてほしいと思います。
  38. 有馬朗人

    有馬国務大臣 確かにアメリカがやめてしまったということは大変残念に思っております。しかし、今青江局長が御説明申し上げましたように、日本、ヨーロッパ、ロシアの判断とアメリカの判断が違うわけでございまして、三極は依然としてこれを遂行しようと考えているわけであります。昨年七月から三年間さらに三極による工学設計活動を継続し、完了すべきであると考えているわけでございまして、まずは、私といたしましても、この三極による研究が完了するまで見守りたいと思っております。その上で、さらにその次を進めていくための努力をさせていただきたいと思っております。  ただ、アメリカのことでございまして、実は、SSCという巨大加速器をアメリカが提案したことがございます。これは、それこそ一兆円ぐらいかかる計画でございましたし、日本にも随分手伝うようにという要求がございました。我々研究者も、できる限りそれに参画してと思ったのですが、やはり議会でつぶれました。しかし、ほとんど同じ性能のものが、むしろ安く、ジュネーブのCERNというところでヨーロッパがつくっているわけであります。こういう経緯を考えますと、アメリカがやめたからといって必ずしも成功しないわけではないと私は思っております。  そういう点で、さらにまた慎重にいろいろ検討してまいる必要があると思いますけれども、やはり人類にとって極めて重要なことでございますので、大いにITER等々の可能性について進めていきたいと思っております。すなわち、引き続きEU及びロシアとの協力もとでITER計画推進していく必要があると考えているわけであります。  それから、先ほどちょっと御指摘で、青江局長から適切なお返事を申し上げましたけれども、低コスト、従来のコストの半分にしていいのかという御質問でございます。これはまことに適切な御質問でございまして、我々としても考えなきゃいけないところですが、現在のところ、熱を取り出していく、入れた熱に比べて出てくる熱の割合というものが、非常に大きいか、それとも十倍程度にとどめるかで、半額になると思います。初めのITERの計画、一兆円の計画ですと、熱の増殖率が、無限大というほどではないかもしれませんが、それでも相当大きなものである。それに対して、半額にしたところでは多分十倍程度。しかし、十倍程度でも、これが出るということになれば極めて有望なわけでございまして、そういう点で、半額でも実行するということは極めて意味があるのではないかと私は判断いたしております。  それから、もう一つ、アメリカに呼びかけるべきではないかということでございますが、今後とも、多くの研究者は皆友達同士でございますので、研究者を通じて、さまざま、日本やヨーロッパやロシアの計画がどうなったかというふうなことを報告し、またアメリカ側のいろいろな知識をぜひとも、特にトリトン、トリチウムに対する知識は圧倒的にアメリカが持っておりますから、そういうものをいただきながら、さらに協力をしていくべきだと思います。そういう地道な協力を進めながら、さらにまたアメリカがITER計画に積極的に入ってくれるようなときが来ることを望んでいる次第でございます。
  39. 辻一彦

    ○辻(一)委員 私も、まず第一は、三極でやり切るという覚悟をして取り組むということが、またアメリカの参加を再び具体化する道にもつながると思いますから、その一つの確信のもとにぜひITER計画は進めていただきたいと思います。  そこで、三極でやるといっても、いよいよ次の段階は、どこに建設をして誘致をするかという問題になると思うのですね。行ったアメリカあたりの空気では、この際は日本がひとつそういうイニシアチブをとってやってくれるといいのじゃないかというような空気がかなりあるように私は感じたのです。そこで、大臣にも伺いたいのですが、我が国は今まで、応用科学においては極めてすぐれた点があった、いろいろな、自動車を見ても全部。しかし、基本的な科学あるいは巨大科学における技術、例えば宇宙の開発あるいは原子力発電あるいはFBRにしても、いろいろな面をずっと見てみると、ほかの先進国の後を追った点が多分にやはりあるというふうに思うのですね。  そこで、このITERは、幸いJT60は今世界最高の水準のデータを出している。これはもう世界じゅうが認めているところであるし、そういう具体的な事実を背景にして、しかも今日の状況の中で、やはり日本がまずそのイニシアチブをとって誘致をするという方向で私は取り組むべきでないか、そういう検討をすべきでないかと思うのです。一兆円というとなかなかですが、五千億で今のようにコンパクトにしてやり切れるというめどがついているわけですから、そのうちのそれは相当額を負担ということになるでしょうが、一兆円のどれだけというよりも、五千億の何割というものは割とやりやすいわけですから、それぐらいの金を我が国も十年間くらいかかって出して、巨大科学、巨大技術で一つは世界に日本も基本的な点からこれだけの貢献をなし得たという事実をつくり上げる方向に努力すべきでないか。  この点で政府は真剣な検討をすべきである、こう思いますが、大臣所信をひとつ伺いたい。
  40. 有馬朗人

    有馬国務大臣 まず第一に、ITERがどのくらい低コストで行われ得るかということを、もう少し慎重に設計等々を見直してみたいと思っております。半分というふうなことの可能性が非常に多くなっておりますので、そこでかなり希望が出てくるわけでございますが、さらにまた、コストだけではなく、さまざまな建設のために必要なことを判断いたしまして、実際実現可能かというふうなことについて明確にしていく必要があると思います。これがまず第一段階でございます。  そういうことから考えまして、国内がいいか、どこがいいかというふうなことも含めていろいろ判断をしなければいけないのですが、まだ国内に誘致するという段階に完全に至ったということではないと思います。私といたしましては、今後も設計活動や建設要件に係る検討の進捗状況を踏まえ、適切な時期に総合的に判断をしてまいりたいと思っております。  しかしながら、先生御指摘のように、日本で新しい技術開発するということは極めて重要であると思っております。これは、日本研究者の意欲を高める上でも大切なことだと思っております。そういう点で、少し補足的なことを申し上げますと、増殖炉の技術、「もんじゅ」の技術というのはかなり高いと思うのですね。フランスのフェニックスと肩を並べている。そういう「もんじゅ」のような、増殖炉のような技術もまた日本が第一線に出る技術でございますので、その点も勘案しながら、核融合においても増殖炉においても本当に日本人の創造性が発揮できるようになるといいと私は考えております。
  41. 辻一彦

    ○辻(一)委員 「もんじゅ」の話はまた別の機会にじっくりやることにしたいと思います。  そこで、大臣も御承知と思いますが、平成三年の五月にこの衆議院の科学委員会は、熱核融合推進、ITERの推進について満場一致をもって決議をしました。不肖私もその提案に、企画を一緒にしましたが、衆議院の科学委員会で満場一致で決議できたのは昭和三十年代にあって以来三十数年ぶりだったということですが、各党全部このITER推進についてはそういう決意を踏まえておりますので、ぜひひとつ、政府の方はこの決議を踏まえて、今までの経過の上に前進をしてもらうように努力をいただきたい、こう思います。  ITERの問題はこれで切り上げたいと思いますが、あと十分ほどありますから、さっき申し上げた廃棄物の問題をちょっと論議したいのです。  先ほど質問もありましたが、ロシアの解体核、取り出したプルトニウムの処理処分について、日本協力するということですね。私は、それは結構、必要なことだと思うのですが、要点を、時間がもう十分ほどですから、二、三分でポイントだけちょっと説明してもらって、論議をしたいと思います。
  42. 青江茂

    ○青江政府委員 では、簡単に御説明申し上げます。  ロシアの核兵器から生ずるプルトニウム、これをどうにか費消しなければならない状況にあるわけでございますけれども、その費消に際しまして、ロシアの高速炉を用いていわゆる燃やしていくという可能性というのはないだろうか。その際に、具体的にはロシアの高速炉でございますBN600、これが今ウラン燃料でございますので、それのいわゆる炉心解析等をやりまして、プル炉心にかえた場合はどうなるのだろうかという核物理等の研究、そして、いわゆるそれに装荷いたします燃料製造、こういったことについての研究というものをサイクル機構が先方と行って、そしてその将来の可能性というものを追求してみよう、こういうものでございます。
  43. 辻一彦

    ○辻(一)委員 さっきちょっと御紹介しましたが、この間も私、最後にハンフォード、マンハッタン計画中心でありましたから、あそこは砂漠の中に八つのプルトニウム生産炉をやって、そしてプルトニウムを取り出して、そこで核兵器をつくったわけですが、今は当然全部とめておりますが、実はその状況をずっと見た。  高濃度の廃液が百万ガロン単位のタンクに百何十本、地下に埋設して保管されているのですが、そのうちから、一重張りの炭素鋼のタンクからは、六十数基にわたって放射能の溶液が漏れて、下の帯水層に達して、それがコロンビア川に達するにはこれから十五年かかる。今、あそこで新しい研究所を起こして、土壌の粒子間にいかにしてそういうような廃棄物の粒子を抱え込むかというようないろいろな研究をやって、いかに遅くするかということをやっております。また、タンクの中におりがたまって、水素ガスがたまってくる。だから、時々攪拌しないと爆発をする懸念があるので、土の上に煙突を出して、そこへ機械を持っていって時々攪拌をしている。こういう状況を見たのですね。  そこで、これはアメリカでも後始末が大変だけれども、アメリカはまだかなりオープンにしているところがある。我々にも、全部は見せなかったのですが、見せろと言っても見せないところがありましたが、かなり見せたのですが、ロシアは、これは全然わからないのですね。そして、ウラジオの原潜の廃船がずっと、四十隻も五十隻も並んでいる。それから、シベリアには、閉鎖都市で核開発後のいわゆる高濃度の廃液を保管したタンクから漏れて、それが北極海に流れ込むのじゃないかという懸念がロシア側からもされている。チェルノブイリには商業炉が、五千トンのコンクリートを落として封じ込んだものの、裂け目ができて火種はそのまま残っているのですから、これまた大変だという。  これは、財政からいってもいろいろな点からいっても、ロシアの場合は手が回りかねる。北極海へ流れ込んでいけば地球環境の汚染が起こり得るわけですが、そういうことはベールに隠されて、放任しておいて、そして、言うならば核兵器をつくる過程において出てきたところの廃棄物やこういう問題がそのままになっている。そして、核兵器から取り出したプルトニウムの処理をやる。そういうものを残しておいては大変ですから処理するのは結構ですが、その前にもっとやらなければならぬことが国際的にもあるんじゃないか。そういう中で我が国が果たす役割もまたあるんじゃないか。  こういう点について、中身の論議は余りきょうはできないんですが、どういうように考えられるか、お尋ねをしたい。
  44. 有馬朗人

    有馬国務大臣 私からかなり常識的なお答えを申し上げた上で、詳しくは青江局長かにやっていただくことにします。  先ほど青江局長からお話を申し上げましたように、ともかく核弾頭のプルトニウムは処理しなきゃいけない。このことに関しては、はっきりした格好でやれますものですから、まずそこからやりたいと思っております。  それで、割に放射能の弱いものは、これはガラス固化をするとかいろいろな方法が今考えられておりますので、まず、最もいい方法はどういうものか、それから地下に格納するにはどうしたらいいか、この辺の研究をさらに進め、そして、それが国際協力に進められれば大いに進めていきたいと考えております。
  45. 須田明夫

    ○須田説明員 ロシアの非核化の問題から生じるいろいろな問題がございます。先生御指摘のとおり、さまざまな問題がございます。  我が国は、これに対しまして、九三年の四月でございますけれども、旧ソ連諸国に対する非核化支援ということで、総計約一億ドル、日本円にいたしまして百十七億円の協力を行うことを決定いたしまして、このうちの七〇%、すなわち約八十二億円をロシアの核解体等のための支援に充てるということにいたしております。  この資金を使いまして現在行っておりますことは、極東におきまして、先ほど先生が触れられました、原子力潜水艦から出てくる放射性廃棄物を処理するための液体放射性廃棄物処理施設というものの建設に協力をしているところでございます。そのほかにも、ロシアとの関係で申しますと、核弾頭を解体場から運搬するときに事故が起こった場合、それに対応するための資機材、例えば放射線分析装置等の資機材を提供するといったような協力もしております。  そのほかにも、現在もロシア側と話し合いを続けておりまして、まだ具体的にこれといったことは決まってはおりませんけれども、それ以外の協力が何ができるかという話し合いを継続して行っているところでございます。  また、先生御指摘のありましたその他幾つかの問題、例えばチェルノブイリの事故の後の、現在はあれは石の覆いがかぶさっておりますけれども、これがだんだん崩れ去りつつあるということで、新しくつくり直すというような協力もG8の一環といたしまして、そのための協力日本もいたしておりますし、話し合いも続けております。  それから、プルトニウムにつきましては、先ほど核燃料サイクル機構の方からの技術協力というお話もありましたけれども、これにつきましても、そういった技術協力だけでなくて、もう少し資金的な協力も必要かもしれない、それが商業ベースで可能だろうかというような話し合い、これもやはりG8の場でもって協議しているところでございます。  日本としても相応の貢献をそういうことでいたしておるところでございます。
  46. 辻一彦

    ○辻(一)委員 大臣、文教もあるようですから、結構ですから、どうぞ行ってください。一言お尋ねしたかったけれども、いいですから。  それでは外務省にちょっと尋ねます。  今、MOX燃料を欧州から日本へ輸送する問題が論議されておるんですが、イギリスの方からは情報が流れておるのですね、それからアメリカの方からも。ところが、日本の方からは情報が全然出ていないんです。前回、プルトニウムをフランスから日本へ持ってきたときも、フランスの方から詳細な情報が流れて、全く後追いの形で日本の方は情報を公開したわけです。あのときはプルトニウム本体ですね。今度は加工したあれだから、随分状況は違うんですが、情報がイギリスやアメリカの方からいろいろなことが流れてくるけれども、日本の方はうんともすんとも言わない。  やはり、情報公開の中で、日本側もしかるべき情報をきちっと出していくということが大事だと思うんです。これは大臣に聞けばよかったのですけれども、ちょっと無理なので、科技庁であれば科技庁、外務であれば外務、どちらでも、両方からでも答えてください。
  47. 須田明夫

    ○須田説明員 放射性廃棄物の輸送ですとか、あるいは今回のMOX燃料の輸送といったことは、いろいろ機微なこともございますので、情報の公開については一方においては非常に慎重を期す必要がございます。他方、先生御指摘のように、できる限り、あるいはできる限り適当なタイミングで、透明性を保つという意味でできるだけの情報を公開していこうということで、我々としてもそういう方針努力しているところでございます。  これは、特に、日英仏の協力で輸送するということになりますので、またアメリカもこれに関係いたしますので、どういうタイミングで、どの程度の情報を公開できるだろうかということは、そういう関係国とも常に相談しつつ進めております。  先生御指摘のとおり、それがほかの国から漏れてくることがあるということは、事実としては過去あったかと思いますけれども、日本政府が情報を特に出さず、ほかの国が出しているということ、公式の意味ではそういうことではございませんで、我々といたしましても、差し支えない範囲内ではできるだけ御説明をいたすように努力しているところでございます。
  48. 辻一彦

    ○辻(一)委員 大臣がおられませんが、事務当局に、さっきのITERのことは非常に重要であるので、ひとつ十分検討して取り組んでもらうようにお願いしたいと思います。  以上で終わります。  ありがとうございました。
  49. 北側一雄

    北側委員長 正午から再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十時五十七分休憩      ————◇—————     午後零時五分開議
  50. 北側一雄

    北側委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  科学技術振興基本施策に関する件の調査のため、本日、参考人として宇宙開発事業団理事石井敏弘君及び核燃料サイクル開発機構理事岸本洋一郎君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  51. 北側一雄

    北側委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  52. 北側一雄

    北側委員長 質疑を続行いたします。鍵田節哉君
  53. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 民主党の鍵田でございます。  午前中に長官の方から所信表明をいただきました。その中で、特に我が国経済が長期間停滞をしている現状から、経済構造改革促進し、経済活性化していくことが極めて重要だというふうにとらえていらっしゃいます。  私は長年製造業にかかわってまいりました。そういう観点から、非常に今製造業が苦しい局面にさらされておるというような実態がございます。従来、商工委員会にも所属をしておりましたこともございまして、そういう中で、中小企業などが開業をするよりも廃業していく方が非常に数が多い、こういう実態が今ございます。  私自身も、大阪を中心に活動をしておるわけでございますけれども、地元を回りますと、大抵のところではもうリストラをやったり、もうリストラも限界に来た、このままでいきますと債務超過に陥ってしまうので、何とか資産の若干でもある間に解散したいというような声も聞こえるわけでございまして、そういう面から見ますと、大変深刻な状況にあるわけでございます。  一方、アメリカあたりでは、非常に開業率が高くて廃業率を上回っておる、こういう実態が報告をされておるわけでございますけれども、特に日本の場合には中小企業の廃業率が非常に高い、そして開業率が低い、こういう実態があるわけでございます。  こういう状況は、いわゆるプラザ合意のときの円高不況のときに、大企業が海外に進出していくというふうな中でそういうことが起こりました。さらにまた今度のバブルの崩壊以降の長期的な不況の中で加速をしておる、こういう実態にあるわけでございます。  中小企業の場合には、特に研究開発をして新製品をつくるとかというふうな技術力も非常に弱いということもございます。そして、何か特許が非常にたくさん休眠しておるというようなことも商工委員会などでも議論がございました。言ってみれば特許というのは研究開発成果でございまして、この成果が十分生かされておらないという実態があるわけでございまして、大体三三%ぐらいしか特許が生かされておらない、そのほかは全部休眠しておるというような状況にあるというふうに聞いておるわけでございまして、この研究開発成果が十分生かされておらないという実態に関しまして、科技庁としてどのようなお考えを持っておられるのか、ひとつ長官のお考えをお聞きしたいと思います。
  54. 田中徳夫

    田中政府委員 私の方からお答え申し上げます。  今御指摘のように、この委員会の冒頭にも大臣所信表明にございましたように、この経済情勢では、いわゆる科学技術におきます研究開発成果経済社会に生かしていくということが大変重要でございまして、今お話しのように、その研究に関します情報が提供されることがまず第一かと思います。そのために、科学技術基本計画におきましても、国等の研究成果に関します情報を初め、民間における研究開発活用可能な情報については民間に円滑に提供する、こういうことにされております。  科学技術庁では、科学技術振興事業団におきまして、国立試験研究機関等研究開発成果活用、それから研究開発活動に関します情報提供をいたしております。まず公開を推進して、中小企業を初めといたします民間企業に新規事業創出のために活用していただくということで、その一つとして、今お話しの特許を含む研究成果の概要あるいは展開可能な技術用途、利用分野あるいは関連技術についての情報、二つ目には、研究者研究課題研究機関あるいは研究資源に関します案内情報というのをまとめて、これをインターネットで提供するようにしたいと思っております。これは新産業創出総合データベース整備と言っておりますけれども、これを整備いたしまして、国などの研究成果の情報流通が円滑に行われて、それによって中小企業が活用されて活性化していくということを期待しているところでございます。
  55. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 四十五、六万の特許が休眠しておるというふうな実態があるやに聞いておりまして、これは何か通産省などではデータベース化するというふうな話も聞いておるわけであります。ただ、そういうデータだけではなかなか事業化が難しいのではないかというふうにも思いますので、研究開発者と中小企業との、中小企業だけではないのですが、事業者との出会いの場をより多くしていくということが大切なのではないかというふうに思いますので、その辺の工夫をぜひともよろしくお願いを申し上げたいというふうに思います。  それで、次に、いわゆる研究者の処遇の問題に関連をしましてお聞きをしたいというふうに思います。  各種の研究所、もちろん科技庁の中にもありますし、通産省の中でも工業技術院みたいなものもございます。また、大学においてもいろいろな研究をされておるわけでございますけれども、研究者に対するインセンティブというのですか、そういうものがどうも民間とそれから公的な機関ではなかなか同じようにはいかない。そういう格差が出てきておるというようなことがあるのではないかなというふうに私なりに思っておるわけでございます。  実は、この前もマスコミで大変騒がれました名古屋大学の件でございます。これは国立でございますから、公務員であれば、いわゆる私企業から金銭を受け取ることについては公務員法などにも抵触をするというようなこともあるかもわかりませんが、民間の場合にはそういうふうなものがないわけでございますし、例えば役員になったり、また株式において優遇措置がされるというふうなシステムも法制化されておることもあるわけでありますけれども、一方で、いわゆる公的な研究者の場合には、場合によっては汚職ということで摘発されるというふうなことになってくる。こういうふうな問題を、公的な機関で研究をした成果につきましても、それだけの価値があるからこそ企業もお金を出してそれを買い取りたいということでやっておるわけでありますから、その研究成果の価値に見合うような処遇ができるような、また、そこまで一遍に行かないにしても、いろいろな手法でもって研究者に対してのインセンティブを与えるようなことができないのかどうか、そういうことについてどのようにお考えになっておるのかお聞きしたいと思います。
  56. 田中徳夫

    田中政府委員 それでは、大臣のお話の前に私の方からお答え申し上げます。  処遇の話、幾つか局面ございますけれども、いわゆる処遇そのもの、給料とか待遇というような点がございます。これは、実は毎年夏に人事院勧告というのが国の場合に出されますが、出される前に、科学技術庁長官が国立の各試験研究機関の要望などを取りまとめまして、代表して人事院総裁にお願いしてきた経緯がございます。そういうことで、非常にその成果もあってということで、最近ではいわゆる処遇上の格差というのはかなり少なくなってきたという認識をいたしております。  それから、具体的な研究活動へのインセンティブでございますけれども、平成八年度以降、科学技術庁を含みます七省庁でありますが、かなりの省庁ではいわゆる職務発明規程というのを改正いたしまして、それまで研究者の方が発明いたしますとすべて国に帰属するというようなことであったわけでございますけれども、これを研究者、多くは半々といいますか、そういうような形で帰属するような形にもしてきております。ただ、許認可等で、そういう関係の試験研究で必ずしもそうもいかないところもあるわけでございますけれども、そういうステップを踏んできているところもございます。  それからさらに、私ども、研究した中身について例えば特許化をしていただく。これは、国の研究機関だけではなくて、大学の場合もそうでございますけれども、研究者が積極的に特許化に動いていただくということを促進するために、科学技術振興事業団で特許主任調査員というのを置いて、大学あるいは研究機関の研究者のところへ赴きまして、特許化するに問題点があるか、あるいは特許化する意思がおありか、そういうことを確認しながら、あるいはまたセミナーなども開きながら進めていっているところでございます。
  57. 有馬朗人

    有馬国務大臣 ただいま局長より申し上げたとおりでございますが、二、三、補足をさせていただきます。  名古屋大学の件でございますが、私どもも非常に心配をいたしまして、先般、関係者の方たちに誤解のないようお願いをするというような会をやらせていただいた次第です。  どういうポイントかと申しますと、ちゃんと奨学寄附金というふうな手続をとってあればこれは全く問題ないのです。ですから、単に個人の懐に入るような仕組みでありますとこれは今でも大問題なのですけれども、問題になりました件でも、ちゃんと国に許可を求めまして、大学の方の教授会できちっと審議をした上で奨学寄附金等々の受け入れ方をしていれば、これは全く問題ございません。ですから、お金の受け取り方の問題でございまして、産業界等々との国立大学あるいは国立研究所の人々の研究の際にはしかるべき手続をちゃんと踏んでおいてくださればよいということを申し上げておきたいと思います。  また、日本研究者は特に、論文は書くのですが特許は余り好まないということがあります。それで、私どもは、このごろは論文等よりもいい特許一つの方が評価されるべきであるというふうな話を始めておりまして、徐々にそういう気持ちが研究者の中にも浸透しつつあります。そういう意味では、特許をさらに生かそうという感じが皆さんの間に強くなってくるのではないかと思います。  また、大学や国立試験研究機関の研究成果特許化する支援体制は、先ほど局長が申し上げましたように、現在、産業界とそういう研究者の間に立つような機関をつくる努力をさせていただいておりますので、この状況はずっと今後よくなるのではないかと思っております。
  58. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 非常に能力を持たれた研究者、立派な研究者を犯罪に巻き込んだりするようなことのないように、ぜひともお願いをしたい。そして、特許もそうでありますけれども、大変失礼ですけれども、どちらかというと、そういう研究者の方というのは世事に疎いという一面も持っておられるように思います。そういうふうな面から、そういうようなことに巻き込まれたり、それからまた、せっかくの研究成果が生かされないままで埋もれておるというようなことのないように、これはやはり政治なり、また機構の中で何とか生かしていくということが大事なんではないかというふうに思っておりますので、ぜひともよろしくお願いを申し上げたいと思います。  次に、日本経済活性化のためには、大変先端的な技術といいますか、研究が必要でありますし、その成果を産業に生かしていくということによって活性化をしていくということで非常に重要なことでございますけれども、ただ、先端技術というものも、基盤技術があってこそ先端技術が生かされるということが意外と見忘れているところがあるのじゃないかというふうに思うわけでございます。基盤技術が失われてしまいますと、せっかくの先端的な技術なり先端的な研究成果が生かされないというようなことが起こってくるわけでございます。  そういう基盤技術というのは非常に中小企業が多く持っておるというような側面もございまして、実は私自身、国会へ参りましてから、ものづくり基盤技術振興基本法という法律を何とかしたいということで、参議院の今泉議員と一緒になりまして、各方面にお願いに行ったり研究をしたりしておるところでございますし、また、中小企業などが集積しております地域などに参りまして、実際にその現場を見たり、またその人たちの声を聞いたりもしておるわけでございますけれども、どうもバブル経済のあたりから、こういう物づくりについての物の見方が日本人全体におかしくなってきているのじゃないか。  先ほどの長官のお言葉に、青少年科学技術離れというお言葉がございましたけれども、私は、物づくり離れも一緒に、むしろこっちの方が先に来ておるのじゃないかなというふうに思うぐらいでございまして、こういう基盤技術がなくなってくるということは非常にゆゆしき問題でございます。  実はバブルのあたりに、学校なんかのプログラムで中小企業などを見学に来た親子の会話を聞いておりますと、お母さんが子供さんに、あんたもしっかり勉強しないとあのおっちゃんみたいになるよと。汗まみれ、油まみれで仕事をしておる、そういうことに対してそういう言葉が出てくる、それが働いている人にも聞こえるというふうなエピソードがあるわけでございまして、これは単なるエピソードとして聞き捨ておくには大変重要な問題ではなかろうか。  大学の技術畑の学部を卒業してもほとんどが金融機関に勤める、そして製造業などには余り来ないというような実態もあったわけでございまして、そういうふうな状況が、最近は余りそう極端にはないのじゃないかというふうには思いますけれども、しかし、一たん景気がよくなれば、またぞろそういうふうな傾向になってくるのじゃなかろうかなというふうにも思うわけでございます。  また、高校にしましても、工業高校というのはどうも軽んじられて、普通科に行ってとにかく大学に行くというような風潮がもうずっと前から続いておるわけでございまして、この辺は、教育者でもございます長官のお考えはいかがかというふうに、ひとつ所見をお聞きしたいと思います。
  59. 有馬朗人

    有馬国務大臣 私も、物づくりは産業の基盤であると認識しております。新産業の創出や情報通信の飛躍的進歩などの諸課題に対応する先端的な技術開発には、これを支える、いわゆる物づくりのような基盤的、基礎的な技術が非常に重要であると考えております。したがいまして、今後とも、中小・中堅企業等の民間における研究開発促進、将来を見据えた理科教育や技術教育を充実していくことが極めて大切だと私は考えております。  具体的な方策として、一つ、科学教育というような点では、科学技術庁といたしましては、例えば夏休みに国立研究所に若い、高校生ですから若いに決まっていますが、高校生を呼んで、いろいろおもしろい実験をして見せるというふうな努力をしております。  文部省の側で申しますと、まさに今先生御指摘になられました職業高校をどうするかということで、この五年、大いに努力をして充実を図っております。まず、職業高校という名前をなくしました。専門高校という名前にいたしました。そして、幸いにも、ことしの東京都の入学志望者の倍率を見ますと、職業高校すなわち専門高校への希望者がふえています。これは、やはりこの間の努力の結果、子供たち物づくりへの関心が高まったものと私はうれしく思っております。  それからさらに、産業教育フェアというふうなものを毎年一週間ほど秋にやっております。私も必ずそこに行って、科学実験を交えた講演をすることに、講演というよりも授業と申した方がよろしいと思いますが、させていただいております。  それからまた、中高一貫というものを今文部省としては大いに進めておりますけれども、この中高一貫の一つの役割は、やはり若いうちから、中学校から伝統的な工芸を勉強するとか、物づくりの、工業の勉強をする、技術の勉強をする、こういうふうなこともその目的に入っております。  こういう点で、科学技術庁文部省も、物づくりを大いに進めるべく努力をさせていただいている次第でございます。
  60. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 ちょっと長官にお尋ねしたいのですけれども、先ほど申しましたが、今、参議院の超党派の議員で、議員立法でものづくり基盤技術振興基本法というのを提出する、いつの時点で出すかということで、今いろいろ国会審議との関係もありまして、まだきちっと調整できておらない。きょうにでも委員会にかかって、あすの本会議ぐらいでというふうな話もあったのですが、実はこれが若干、国会全体の流れの中でストップしておる。この法案については、今お見えの近江先生にも大変御協力いただいたりしながら今日まで進めてまいったわけでわけですが、長官はこの法案について御存じでしょうか。
  61. 有馬朗人

    有馬国務大臣 存じ上げております。  ただいま、物づくりは重要だということを申し上げました。そういう意味で、このものづくり基盤技術振興基本法というふうなものは、大変勉強させていただきたいと思っております。今、勉強中でございます。
  62. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 実は、産業界からもこの法案につきましては大変期待をされておりまして、中小企業団体がやっております中小企業サミットというのがございます、全国の十一都市でやられているはずですが、こちらの方でも、それから全国の工業会の方でも、とにかく、もうこの不況の中で製造業が大変衰退をしてきておる、やはり経済を立て直す基本は製造業である、こういう考え方で、何とかこの法案を物にしてほしいという期待が日に日に高まってきておるわけでございます。  そういう意味で、再度、長官の決意などをお聞かせいただければ、こういうふうに思います。
  63. 有馬朗人

    有馬国務大臣 先ほど申し上げましたように、勉強させていただいた上で、どういうふうにこれを実現していくか等々に関しても検討をさせていただきたいと思っております。
  64. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 それ以上くどくは申しませんが、前向きで検討していただくというふうに受けとめたいと思います。  それでは、次の話題に移りますけれども、先日、新聞で、米国のバッテル記念研究所が行った米国の研究開発投資予測について報道をされておりまして、二年連続で七%の伸びになっておるということが報じられておりました。九九年の研究開発投資が二千三百五十九億六千二百万ドル、日本円に直しますと、現在のレートでいきまして、二十六兆六千三百億程度になるようでございます。特に民間産業が大変好調である、その中でもハイテク産業が非常に売り上げを伸ばしておるというふうなこともありまして、この研究開発投資の五割にも達しておるということが報じられておりました。  一方、日本の場合には、九七年度で十五兆七千四百億円ということが言われておるわけでございますが、これが多いのか少ないのか。現在の不況下の中で、特に中小企業の研究開発費が前年比マイナスになってきておるというふうなことも言われておるわけでございまして、そういうふうな実態につきましてどのように受けとめていらっしゃるのか。  そしてまた、九七年の数字しか出ておりません、九八年、九九年度につきましては、これからということもありますので、まだ数字は出ておりませんが、おおよそどの程度に見越しておられるのか、それが実際に日本の体力に合わせて十分なのかどうかというようなことにつきまして、見解をお聞かせいただきたいと思います。
  65. 有馬朗人

    有馬国務大臣 実は、バッテル記念研究所の論文はまだ手に入れておりません。しかしながら、インターネット等を使いまして、バッテル記念研究所のホームページを調べてみました。  それによりますと、九九年の米国の研究開発投資は、好景気を反映いたしまして、九八年同様、対前年比約七%の伸びと予想されております。先生の御指摘のとおりであります。その中で、特に民間部門の研究開発投資伸びが主な要因になっております。その伸びが大きい分野といたしましては、電子部品、医薬品、オフィスコンピューター、通信機器等でございます。この辺が非常に好景気で研究費を伸ばしている、投資を伸ばしていると考えられます。  一方、我が国研究開発投資につきましては、総務庁の科学技術研究調査によりますと、平成七年度より着実に増加しております。そして、平成十年度調査では、先生の御指摘のとおり、中小企業において研究開発投資が、残念ながら、対前年度比にして減の傾向があらわれておりますが、民間企業全体として見ますと、経営環境が厳しい中でも、企業戦略上、研究開発を重視している姿が見られます。全体としてふえているという傾向にございます。  今後の我が国研究開発投資については、研究開発成果が新産業の創成、競争力のある財・サービスの生産につながり、それにより経済が着実に、持続的に成長し、活力ある豊かな国民生活実現が図られ、その結果、官民の研究開発投資がさらに伸びていくというサイクルをつくりたいと思っております。
  66. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 科技庁だけではなしに、いろいろなところで研究をされておるわけでございまして、それらを全部統括されておらないということでございますけれども、ぜひとも、やはり日本の国家戦略として研究開発をどうするんだというふうな視点で、科技庁がやはりその取りまとめをするというようなことで、前進をした研究開発ということについて取り組んでいただきたいというふうにお願いを申し上げておきたいと思います。  次に、宇宙開発というのは非常に華やかでございますし、この地球の上でやられることですから、パフォーマンスもいろいろできまして、非常に我々としてもわかりやすいわけでございますし、何かもう英雄的な行為というふうなことで、先日も乗組員の皆さんに来ていただいて盛り上がったところでございますけれども、海洋開発ということになると、これは水中に潜ってしまいますし、地中に潜ってしまうというようなこともありまして、どうも興味の方も宇宙開発に比べると若干落ちるのかなという気が、これは私だけなのかどうかわかりませんが、そういう気もいたします。所信表明の中でも、どうもまだ海洋の研究開発についてはこれからだというような印象を受ける御発言でございました。  そこで、特に、深海地球ドリリング計画などを初めとして、海洋研究開発について大々的にこれからやっていくんだということを申されておるわけでございますけれども、いろいろなことがこの研究開発によってわかってくるんじゃないかというふうに思いますけれども、その可能性ですね、どういうところまでの可能性を秘めておって、それに対してどんな研究をされようとしているのか。海洋科学センターですか、そのあたりもいろいろパンフレットなんかも出してPRをされておるようでございますけれども、ひとつこの委員会の場でそれらを明らかにしていただきたいのが一点。  それから、世界的には海洋開発研究がどのようになっておるのか、その中で日本の位置がどのようになっておるのか。アメリカでありますとか、あるいはフランスなんかも非常に熱心にやられておるとかいうふうに私は承知しておるのですけれども、それに比べて、日本はどういう状況に今なっておるのか。さらに、これからどのようにこの開発を進めていこうとするのか。ことしの予算の内容だけじゃなしに、今後どのようにこの海洋開発を進めていこうとされるのか、この辺について、ひとつ夢のある話をお聞かせいただければというふうに思います。
  67. 有馬朗人

    有馬国務大臣 おっしゃるとおり、宇宙開発、宇宙研究の方は随分晴れやかに見えるところがございますが、しかし、もう一つ、人類にとって重要な科学のフロンティアというのは海洋であると思っております。しかも、海底の研究ということが極めて重要であろうと思います。海底の研究ということは、プレートテクトニクスの発展等々もありましてこの二、三十年に大変大きく世界的に進歩いたしまして、地震の原因などということも実によくわかるようになってまいりました。  その中で世界的に日本は大いに活躍をいたしまして、世界、特にアメリカ、フランス等々と協力をして、強力に今、日本研究も進んでいる次第であります。特に我が国は、世界でも最もすぐれた性能を有する潜水調査船「しんかい六五〇〇」あるいは海洋観測船「みらい」等のすぐれた研究設備を持っておりまして、ここには、日本研究者だけではなく、外国の研究者も大勢参加してくれまして、研究開発を進めております。  具体的には、三陸沖に大きな海溝があり日本海溝と言われておりますが、これの裂け目を発見したり、マリアナ海溝における深海生物、おもしろい海の生物、深い海の生物を発見するというふうなことで、大変、日本研究は、世界のフロンティアの一つであるかと思っております。  さらにまた、今後、海洋科学技術をどういうふうに科学技術庁として進めていくかということについての御質問でございますが、科学技術庁におきましては、海洋の実態解明を目指した研究や、その基盤となる技術開発等に重点を置いた海洋科学技術推進を図っているところでございますが、今後とも積極的に取り組んでいく必要があるものと認識しております。  具体的には、関係省庁と連携しつつ、特に文部省研究者たちと連携しつつ、海洋科学技術センターにおいて、地球深部探査船の研究開発等の海洋調査技術開発、先ほど申しました「しんかい六五〇〇」とか「かいこう」等を用いた深海調査研究及び深海微生物の特殊機能解明等に関する研究、海洋地球船「みらい」等を用いた太平洋及び北極海域等における総合的な海洋観測研究などを進めてまいりたいと思います。  こうして、生物資源であるとか鉱物資源、こういうふうなもの、あるいは気候や地殻変動に大きな影響を与えているものが海でございますので、その影響、地球変動に大きく関係いたします海洋科学技術を今後さらに発展させたいと思っております。
  68. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 実は、私もこの「みらい」や「かいれい」の竣工式に出させていただいた経験がございまして、これからの活躍を大変期待しておるわけでございまして、今後とも、さらに積極的な研究をよろしくお願い申し上げたいというふうに思います。  もうあと一、二分時間があるようでございますが、科学技術庁にふさわしい話なのかどうかちょっとわからないのですが、一九九九年、世紀末だというふうなことで、ノストラダムスの大予言というふうなことが非常にいろいろな雑誌などでも報道されておるわけでございまして、その中で、小天体がこの地球と衝突する可能性みたいなことを、空から大王がおりてきてとかいうふうな文章があるやに聞いておるわけでございます。そんなことで日本の場合にはパニックが起こったりというふうなことはないとは思いますけれども、従来からも、特異な宗教団体が終末論を唱えて、非常にパニックになったようなケースもあるわけでございます。日本の場合にはそういうことがないと思うのでございますけれども、深海の調査などによりまして、数千万年前にもそういうふうな天体の衝突があって恐竜が死滅をしたとか、その時分は人類もいなかったでしょうから、恐竜が死滅したというふうなことも言われておるわけでございますから、そういう研究成果の中から、何か、全く可能性がないというわけではないような印象でとらえるというようなこともございますが、科技庁として科学的にこういうようなことについて何か見解がありましたら、ひとつお聞かせいただきたいと思います。
  69. 有馬朗人

    有馬国務大臣 私は、ノストラダムスの大予言は全く信じておりません。国立天文台の仲間に聞きましたところ、地球に近づく軌道を持つ小天体はあることはもちろんあるわけですが、直径一キロメートル以上あると見られるものの数は現在約百個見つかっている、このうち、地球に衝突するというものは向こう二百年間は全くないということでございます。  こういうことで、御安心になっていただきたいと思います。
  70. 鍵田節哉

    ○鍵田委員 ありがとうございます。  終わります。
  71. 北側一雄

    北側委員長 近藤昭一君。
  72. 近藤昭一

    ○近藤委員 民主党の近藤昭一でございます。科学技術振興基本施策に関するということで幾つか御質問をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。  質問させていただきますに当たりまして、実は、先般、新聞を読んでおりましたところ、総理府の調査ではありましたけれども、総理府が「将来の科学技術に関する世論調査」ということをした。科学技術の話を聞いてみたいと思われる方に対して質問をして、その方々に、科学技術のことでもどんなことが聞きたいのかという設問だったようであります。その答えでは、地球環境問題が六三%で、やはり一番多かった。そして、生命に関する科学技術や医療技術についてが五七%の人、また、エネルギー問題の方が四一・一%、そしてまた、先般ここにも、宇宙に行かれた乗組員の方、向井千秋さんを初め来ていただきましたけれども、宇宙開発についてが三三・三%、こういったような結果が出たようであります。  この調査の結果についてどういうふうに見られるかというのはまたお聞きしたいと思いますが、私なりの勝手な判断もあるんですけれども、地球環境の問題、また生命に関する科学技術、そしてエネルギー問題、こういったことから感じますのは、やはり将来に対して非常に不安といいますか、エネルギー問題がこれからどうなっていくのか、エネルギーが足りるのかどうか。特に石油の問題が今よく言われております。そういったこと。そして、そういう中で、これにかわるエネルギー、特に石油ですと、環境問題のことも今大変に言われております。地球温暖化に関して、こういった石油というものが持つ問題点、そしてまた、これがなくなってしまうのではないかという心配、そして、最近はダイオキシンあるいは環境ホルモン等、こういったまさしく予想もしなかったようなことが起きてきた。つまり、国民の皆さんの中では、やはりそういった将来に対して不安が随分とあるけれども、そして科学技術に対して少々不安もあるけれども、技術が悪い方向に使われてしまうのではないかという不安もあるけれども、科学技術に対して大変に期待をしているということではないかというふうに思うわけであります。  そういう中で、特に私は、今申し上げた中で、将来のエネルギー、代替エネルギー、これについて今科学技術庁がどういうふうに取り組まれているかということをお伺いしたいと思います。
  73. 有馬朗人

    有馬国務大臣 新エネルギーでございますが、何といっても二酸化炭素を出さないもの、あるいは、ぜんそくなどを起こします窒素化合物や硫黄化合物を出さないもの、公害を出さないもの、こういうふうなエネルギーが望まれるわけでございます。そういう新しいエネルギー源が見つかるということは、人類の将来にとって極めてすばらしいことだと思っております。  そういう新エネルギーを研究するために、平成七年七月に内閣総理大臣決定されましたエネルギー研究開発基本計画というのがございまして、関係省庁の連携のもと、実用化が期待されております重要課題として、太陽光の発電、地熱発電、燃料電池、廃棄物発電、特にバイオ発電の新エネルギーの研究開発が進められているところでございます。この中で、科学技術庁におきましては、先駆的、基盤的な研究開発として、波力エネルギーの利用技術、高温ガス炉を利用いたしました水素製造システムの研究開発等を実施しているところでございます。  こういうことで、新エネルギーの研究開発に大いに努力をしていきたいと思っております。     〔委員長退席、斉藤(鉄)委員長代理着席〕
  74. 近藤昭一

    ○近藤委員 ありがとうございます。  科学技術庁の方ではそういったことについて取り組んでいらっしゃる。その中で、今大臣がお話しになった中で少々触れられたのかもしれませんけれども、科学技術庁としてはこれが有力なんだ、見通しとしてはこれが非常に大きな代替エネルギーとして力を発揮するんではないかと思われているのは、特にどの分野でしょうか。
  75. 有馬朗人

    有馬国務大臣 これは、直接科学技術庁というよりは、通産省の方と申し上げた方がいいと思いますが、やはり太陽光だと思いますね。ですけれども、先ほどもお答え申し上げたことでありますが、太陽光だけで日本の必要とする電力を全部出すということは不可能だと思います。しかしながら、夏、非常に暑いときなどを太陽光で発電いたしまして、それでエネルギーを、電力を発生して家庭で使うというふうなことで大いに役に立つと思っております。  しかし、科学技術庁といたしましては、何といっても原子力というものを進めていきたい、それからまた、それにまた関係いたしますが、核融合というふうなところに大いに力を入れていくということを考えております。
  76. 近藤昭一

    ○近藤委員 ありがとうございます。  今大臣もおっしゃいましたように、太陽光には期待するけれども少々限りがあるんではないか、そういう中で、やはり原子力あるいは核融合というところに期待するところが大ではないかというお話だったと思います。  それで、私も手元に、今大臣も触れられました平成七年のエネルギー研究開発基本計画の資料を持っております。そして、添付されている資料の中に「我が国のエネルギー供給の推移と見通し」という資料がありまして、これはどうも通産省の関連から出てきている資料のようでありますけれども、その中で、二〇一〇年の予測の中では、全体の供給エネルギーの中で原子力が大体一六・九%を占めるんではないか、そして新エネルギーは、二〇〇〇年が約二・〇%、そして二〇一〇年には三・〇%という見通しの資料がついております。  それで、これは通産省の関連かもしれませんけれども、科学技術庁として、代替エネルギー、いわゆる新エネルギーということでいいますと、私は、最低限、新エネルギーというものが一〇%以上とか二〇%、そういうふうになって初めて、かわり得るエネルギーというふうに呼べるんではないかと思います。この二%、三%、とり方によってはだんだんふえているということのようですけれども、二%、三%ではとてもかわり得るエネルギーというふうには認識というか認知することができないんです。  もちろん原子力がそういう中では今安全で限りのない資源として有効かもしれませんけれども、ここでは深くその原子力のお話はしませんけれども、昨今の状況を見ておりますと、大変に原子力、特にその廃棄物に対する心配がある中で、一六・九%というのが実現可能かなという心配と、先ほど申し上げました総理府の調査ですね、これで期待されていること。大変に漠然とした言い方で申しわけないんですけれども、やはり、将来に対するエネルギーの心配、その中で、科学技術で夢のエネルギーのようなものができるんではないかと、かなりの現実性を持って夢のエネルギーというものを期待していると私は読み取るんでありますが、その辺どうでしょうか。  三%という数字ではとても代替エネルギーとは呼べない、では、もっとかなりの代替エネルギーとして働くことができる、そういったものに対してのより強い開発といいましょうか、科学技術庁としてこれをどう取り組んでいくかということをちょっとお聞かせいただけませんでしょうか。
  77. 有馬朗人

    有馬国務大臣 私自身は太陽光に大変関心を持っておりますけれども、科学技術庁として現在やっておりますことは、先ほど申しましたように、波力エネルギー。風力も通産がやっていると思いますが、波力エネルギーを今検討しておりますし、高温ガス炉を利用した水素製造、水素ガスというのが相当有望であろうかと一方で私は思っているわけであります。何らかの手段で水素をたくさん発生させることで、それを使って電力を発生するというようなことができればいいと思っていますけれども、何せ太陽エネルギーというのは、地球全体にするとべらぼうにあるんですけれども、例えば東京都全部をカバーしても日本じゅうの電力はちょっと足りないだろうと思います。そういうところの技術開発がまだまだ重要ですし、もともと自然というのはそれほど集中的にエネルギーを地球の上に持ってきてくれないものですから、今後の工夫が大いに要るところだと思っております。
  78. 近藤昭一

    ○近藤委員 これは技術発展ということでありますから、予測不能のことも多々あると思います。ただ、そういう中で、ぜひ、少々将来に対する見通しみたいなことで大臣にお答えいただければありがたいんですけれども、大臣のお話の中にもありました、代替エネルギーについてこれから科学技術庁としても積極的に取り組んでいくんだということであります。  そうしますと、太陽光あるいは波力、水素、高温ガス炉で水素をつくって水素エネルギーを取り出すという等々のことがあるんだと思いますが、こういった代替エネルギーの開発について、今年度の予算は、昨年との伸びでいいますと、新エネルギー、ちょっとここですぐわからないんですが、たしか全体でいいますと一%の伸びはなかったような気がするんですけれども、どうでしょうか。大変に財政難の折ではありますけれども、こういったところに予算をやはり重点的に配分していくことが大事だと思うんですが、その辺、大臣はどのようにお考えになられますでしょうか。
  79. 有馬朗人

    有馬国務大臣 予算のことにつきましては、今私の手元にある予算、後でまた詳しく申し上げますけれども、確かに新エネルギー関係開発予算はそれほど伸びておりません。それは、まだまだいいアイデアがないということが大きな理由だと思います。しかし、御指摘のように、新エネルギーは何としてでも開発していかなきゃなりませんので、新しい、いいアイデアがありさえすれば、どんどんこれに力を注いでいきたいと私は考えております。
  80. 加藤康宏

    ○加藤(康)政府委員 新エネルギーに関する取り組みは通産省と科学技術庁でやっておりますが、通産省におきましては、年間約百七十億円ぐらいで、先生御指摘のように大体同じ程度でございますが、その中でも太陽光関連のものにつきまして予算をふやしているということでございます。ということは、これはかなり昔からかなり研究しておりまして、研究のテーマを絞り込んで重要なところにやっているのかと考えております。  なお、科学技術庁におきましても、十数億円、新エネルギーに関する取り組みをやっておりますが、大臣が御説明をしました波力エネルギー、これはマイティーホエールというものの建設がとりあえず終わりまして、これから実験をする段階ですので、そちらの方の予算は減っておりますが、原研が行います高温ガス炉を利用した核熱利用システム、こちらの方がこれからふえてくるということで、合わせまして十数億でございますが、大体同じ程度の金額を計上しております。
  81. 近藤昭一

    ○近藤委員 ありがとうございます。  ちょっとくどい話になりますが、国民の皆さんの期待というものが、科学技術、将来に対する安定したエネルギーの供給、そしてまたそれがクリーンなエネルギーであること、これに大変向いているという感じを私は持っております。そういった意味では、ぜひとも科学技術庁として、それぞれの議員の方から国家戦略というような言葉も出てまいりますけれども、まさしく国家戦略として、日本技術立国、そしてその中でも環境、代替エネルギーという面で力を出していくこと、これは大変に期待が大きいのではないかと思います。  そんな中で、実は、これは代替エネルギーのこととどう関連していくのかなというふうに思いながらちょっと御質問したいと思うのですが、深海底ドリリングのことであります。深海底ドリリング計画推進に対しては、前年比で五五三%という大変に大きな伸び予算がつけられているようであります。  聞くところによりますと、深海を、大変深いところを掘っていく、この技術日本は世界的にも大変すぐれているようでありますが、そういう中で、最近、メタンハイドレート、いわゆる天然ガスが氷のような状況で海底、地殻に埋まっているということのようであります。このメタンハイドレートが、天然ガスの新しい形での埋蔵、そしてそこから天然ガスをとっていく、そういう技術として注目されているように聞いております。  そういった関係で、この深海底ドリリングもそういった代替エネルギーという面で進められているのか、どういうふうな関連でやっていらっしゃるのか、これを少々お聞かせいただきたいと思います。
  82. 池田要

    ○池田政府委員 ただいま深海地球ドリリング計画についてのお尋ねでございますけれども、これまでも深海地球ドリリングにつきましては、これは地球の年代測定でございますとか、地球科学、地球物理の観点から、アメリカを中心に各国、日本も参加して、国際的な事業として進められてきたものでございます。  今御指摘がございましたように、来年度の予算で、私ども、次のフェーズと申しますか、この深さにつきましても、これまでの国際的利用に供してまいりました船よりもはるかに深いところ、海の深さで申しますと、二千メートルないしは四千メートルよりも、さらに海底から七千メートルを超える深さまで掘り下げようという、地球深部の探査船と私ども称しておりますけれども、こういった船を開発して、国際的な利用に供しながら、地球の深部を探査しよう。これはそもそも、地殻でございますとか気候の変動現象解明などに役立てようという事業でございます。  特に、これまでにこの掘削技術については一部手がけさせていただいておりまして、こういう深海底から地球の地層のコアをとるわけでございますけれども、この下を掘りましたときに、例えば石油等を掘り当てたときにそれが海底に散ってしまう、噴き出してしまうといった問題が起こるものですから、今までの船ではそういうところはなかなか近づけない問題がございました。これまでの開発で、そういったところにつきましても、掘ったくずを出さないような掘削技術というものを開発してきてございまして、今度日本が建造に着手させていただきます船につきましては、そういう技術を使うといったことで取り組んでいるものでございます。  こういう地球深部の探査船というものの開発ができますと、これまで不可能でございましたような軟弱の地層を深く掘り下げる、それから、炭化水素の存在しているような地層、これも掘削が可能になるわけでございます。  さらに、今先生から御指摘がありましたような五百メートルを超えるような深さには、メタンが高い水圧のもとにシャーベット状に賦存するということも知られてきておりまして、日本の周辺にも相当な賦存量があるというふうに知られておりますけれども、こうしたメタンハイドレートの存在量の把握でございますとか、そもそもこういうメタンハイドレート層がどんな安定性を持っているかといったことについての解明にも、これは大きく貢献するものと期待しているところでございます。
  83. 近藤昭一

    ○近藤委員 ありがとうございます。  大変に新しい技術でやっていらっしゃるということで、主たる目的は、深いところを掘って地球の歴史等々を知る、そこから地球の歴史を解明して環境問題等々に役立てていくということかもしれません。ただ、今触れていただきましたようなメタンハイドレートについては、通産省なんかとも協力体制を既にとってやっていらっしゃるのか、それとも、まずはとにかく、こういうものが出てきた、どれぐらいの埋蔵量があるのかというところなのか、ちょっとその辺をお知らせいただきたいと思います。
  84. 池田要

    ○池田政府委員 このメタンハイドレートにつきましては、これは天然ガスでございますから、これをエネルギー資源として用いようというための技術開発につきましては、御指摘のように、通産省の資源エネルギー庁がその開発に取り組んでいるというような状況と承知しております。  したがいまして、私どもが開発しておりますような地球深部の探査船、こうしたものの技術開発成果、あるいは深部探査船の運航によりまして得られる知見といったものは、こうしたメタンハイドレートの利用に取り組む立場からも十分活用していただけるのではないかと思っております。
  85. 近藤昭一

    ○近藤委員 ぜひとも協力をしていただきまして、代替エネルギーのいい発見といいましょうか、利用をしていただきたいと思います。  それで、代替エネルギーにこだわって申しわけないのですけれども、最近、聞くところによりますと、昔ですと電気というものは電線を使って送っていたけれども、最近はそうではなくて、電磁波というのか、電波というのでしょうか、線がなくても送れるという技術が大変に進んできたというふうに聞いております。  そんな中で、これは太陽光発電につながってくるわけですが、太陽発電衛星技術といいましょうか、地球の外で太陽光を受けて発電をして、それを地球に送ってくるとか、あるいは、こんなことができたらいいなと思うわけでありますが、月で発電してそれを送ってくる。こういったものは、技術的な将来の見通しとしては、今の段階でかなり可能性があるものなのか、それとも、これはまだまだというような段階なのか。
  86. 有馬朗人

    有馬国務大臣 研究者の中には大変興味を持って、マイクロウエーブ、電磁波ですね、それを使って電力を送る研究をしている人がいることは事実でありますが、極めて少数の人々で、まだまだ大きなプロジェクトになるほどではないと私は認識しております。
  87. 池田要

    ○池田政府委員 事実関係だけちょっと補足させていただきますと、大臣が御指摘のとおりでございますが、確かにこういう分野につきましてはいろいろなアイデアがございますし、長期的な観点から研究をしようといったことで、その可能性を確保するために研究をしてございます。  科学技術庁の取り組んでいる状況を申し上げますと、例えば、宇宙開発事業団、航空宇宙技術研究所、あるいは宇宙科学研究所等が有志で研究会を開催しているといった状況もございますし、それから、航空宇宙技術研究所におきましては、これの関連で、宇宙空間で太陽光を集めて、今大臣が御指摘のような、発生した熱エネルギーを電気にかえて、それをレーザー光線によって伝送する、これは十年ほどになりますけれども、こういった技術研究にも取り組んでいるところでございます。  こうした成果を踏まえて、いつ、御指摘のようなその可能性に道を開くといいますか、そういったことにつなげられるかどうかといったことにつきましては、この研究進展をわきまえながら取り組んでまいりたいと考えているところであります。
  88. 近藤昭一

    ○近藤委員 ありがとうございました。  お話の中で、大体わかるのですけれども、一つだけ確認しますのは、マイクロウエーブで電気というものは送れるものなのですね。それで、効率としてはどれぐらいなんでしょうか。
  89. 池田要

    ○池田政府委員 ただいま御紹介申し上げました研究も、電気エネルギーをレーザー光線で伝送しようという技術研究中心でございます。こうした内容もこの研究の中に入っているわけでございますけれども、これ自身の効率という問題もございますし、それから、送りましたときの、経済性、効率性以外にも、例えば生物に対する影響でございますとか、そうしたことについてもあわせて検討しなければならない、そういった課題があるものと承知してございます。
  90. 近藤昭一

    ○近藤委員 送れるけれどもまだまだ研究の余地が大変にあるというふうに理解をさせていただきます。  いろいろな代替エネルギーの研究が進んでいるということはわかりました。何度も言うようで申しわけないのですが、こういうところにぜひとも力を注いでいっていただいて、先ほどのような見通し、新エネルギーが三%程度ですと、新エネルギー、かわり得るエネルギーとはちょっと呼べないのじゃないかなというふうに思いますので、ぜひともこれを一〇%とか、そういうふうになるように力を入れていただきたいなと思います。  続きまして、今大変に皆さんが心配していらっしゃる環境ホルモンについてお伺いをしたいと思います。  科学技術庁として、環境ホルモンの問題についてどのように取り組んでいらっしゃるのか、このことについてお伺いしたいと思います。
  91. 有馬朗人

    有馬国務大臣 科学技術庁におきましては、内分泌攪乱物質の生物への影響のメカニズムの解明を行っております。生物への影響の実態の調査等を行うため、科学技術振興調整費等を使いまして、所管の研究制度活用して、広範な分野研究機関を動員して研究推進しているところでございます。  今後とも、関係省庁とも連絡いたしまして、内分泌攪乱物質環境ホルモンの問題に適切に対応してまいりたいと考えております。
  92. 近藤昭一

    ○近藤委員 環境ホルモンのことに取り組んでいただいているということで、研究について予算もついている。環境庁なんかでも予算をつけているようでありますが、どうも環境庁よりは科学技術庁の方が多いようであります。  ところで、冒頭にも申し上げました、科学技術に対する期待とともにそれが悪用されるのではないかという心配、そしてもう一つは、科学技術が、せっかくつくったものが思いもかけないような悪影響を及ぼす、環境ホルモンなんかも、まだまだ実態が解明されていないところでありますけれども、予想もしなかったような影響を及ぼすようなことが大変にあるようであります。  そうしますと、今後はそういったことに対してどうやって取り組んでいくのか。取り組むといっても、リスクを予想するというか、リスクがあるのかないのかわからないような中で、あるかもしれない、でも起こったら大変に困るということだと思いますので、こういったことに対しては、予想もつかないようなことに対してどういうふうに科学技術庁としては取り組んでいかれるのか、そんなことに対するお考えがありましたらお聞かせをいただきたいと思います。     〔斉藤(鉄)委員長代理退席、委員長着席〕
  93. 有馬朗人

    有馬国務大臣 科学技術発展の上での問題点というのは二つあると思うのですね。一つは、応用の仕方によって人類社会に悪影響を及ぼす可能性があるというふうな問題、特にクローン人間というふうな問題というのは今後大いに発展してくると思うのです。そういう面では、やはり人文あるいは社会などの研究者協力を得て適切な科学及び技術の応用を考えていかなければならない、これが一点でございます。  もう一つは、科学技術が生み出す直接の自然破壊というふうなことにどう対処していくか。その一つに内分泌攪乱物質などが入るわけでございますけれども、これに対しては、やはり思いがけないことが起こるということは私たちも重々承知をしておりまして、発生するちょっとした兆候が見えた段階で直ちにそれを引きとめるような、解決する策を考えないといけないと思っています。  こういう点に関しましては、不断に我々も目を張っていなきゃいけないと思っております。そして、もし何か起これば直ちにそれを解決すべく対応するというふうな用意を常にしているようにいたしております。
  94. 近藤昭一

    ○近藤委員 ありがとうございます。  大臣、おっしゃったように、科学技術の持つ危険性、危険性というか悪い面ですね、そういったことについてもとにかく注意を払っていく、そして万が一そういうようなことが起こった場合にはそれに対して即座に対応する。いわゆる予想もしなかったようなことが起こる、それに対してどう対応するか、リスクマネジメントのようなものだと思うのです。そうすると、今大臣がおっしゃられた中で、今回の環境ホルモンもそうだったと思うのですが、環境ホルモンの問題が起きてきた、それに対して即座に、研究といいましょうか、そういった体制をとっていくということが一番の具体的なことととらえてよろしいでしょうか。(有馬国務大臣「はい」と呼ぶ)そうしますと、そういうものに対して科学技術庁としては、具体的には、そういった現場でそういうことが起こると、命令系統と言ったらおかしいかもしれませんが、どういうような系統でそれがおりてくるのか、そしてまた、それについてはやはり臨時に予算を組むというようなことになるのでしょうか。ちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  95. 有馬朗人

    有馬国務大臣 問題の大小によると思います。例えば、先ほど最初に申し上げましたライフサイエンスにおけるさまざまな問題、クローン羊、クローン人間、こういうふうな問題は、やはり科学技術会議がそれに対して対応していくことになると思います。さらに、文部省でいえば学術審議会、科学技術庁でいえば科学技術会議を一つの頂点といたしまして、その下部機構が専門委員会等々を開いて検討していくということになろうかと思います。  それからまた、もう少し具体的に化学の上での問題点というふうなことになれば、そういう専門家を集めて直ちに対応するように、委員会等々をつくり予算をつけて検討することになると思います。
  96. 近藤昭一

    ○近藤委員 ありがとうございます。  ぜひとも、科学技術に対する期待というものは大変に大きいものがありますので、そういったリスクのマネージメントについてもしっかりと対応していただきたいなというふうに思うわけであります。  余り時間もなくなってまいりましたので、最後に、科学技術庁文部省の統合についてのお話をちょっと聞かせていただきたいと思います。  これは行政改革の一環でもあると思いますので、スリム化をしていく、ただそれだけではなくて、現場の声というか、せっかく統合する、数を減らすとかあるいは数をそのままにするということではなくて、いかに機能的にするかということが大事だと思うわけでありますが、その統合に向けて今どのように取り組んでいらっしゃるのか。そしてまたそういう中で、私が今申し上げたように、一緒になったときにいかにより効率的にそれぞれの箇所が動くことができるかということでありまして、その点ではやはり現場の声というのが大事だと思うのですが、こういったものをどのように吸い上げていかれるのか、この辺についてお聞かせいただきたいと思います。
  97. 有馬朗人

    有馬国務大臣 御指摘のとおりでございまして、やはり現場の人々の声をよく聞かなければいけないと思っております。もう既に、両省庁間の相互認識を深めるための審議官級の職員を初めとした人事交流を実施しております。それから、学術と科学技術分野あるいは理科離れ対策などについては一緒に連携をいたしまして、審議会等々一緒にやったりいたしております。  先般、すなわち先月二十六日に決定されました中央省庁改革に係る大綱におきましても、学術及び科学技術関係の業務をあわせて扱う局編成を行うことによりまして、中央省庁改革基本法にあります「学術及び科学技術研究の調和及び総合性の確保」を具体的に図るための基本的枠組みが整えられてきたと考えております。  さらに、研究者の意見なども聞きまして、そしてまた事務系の職員の人々の意見も聞きまして、皆さんがこの合併によってよりよく科学技術振興できるように、気持ちよく働けるようにしたいと思っております。
  98. 近藤昭一

    ○近藤委員 ありがとうございます。  それで、もう少しお聞きしたいのですが、まさしく現場の声、それぞれの係の方、担当していらっしゃる方の声を吸い上げるということですが、具体的と申しましょうか、何かそういった機関といいましょうか、例えば文部省、科技庁、同じようなことをやっている部署がそれぞれにあった、それを、表向きは一つにした方がいいかもしれないけれども、では現実はどうなんだ、あるいは、それぞれにあったものはやはりそれぞれでやっていった方がいいんだろう、そういった、まさしく現場でやっていらっしゃる方の声というのは、もうちょっと具体的に、どういうふうにやっていらっしゃるのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  99. 有馬朗人

    有馬国務大臣 一つ、現在やっておりますことは、文部省の方にあります学術審議会に諮問いたしまして、科学技術研究の上で、両省庁が合併した場合にどう対策をとるか、最もいい方法は何かというふうなことを現在具体的に検討をしていただいているところであります。そういうところの考えを聞きまして、さらに具体的にこの合併に対しての準備をさせていただきたいと思っております。
  100. 近藤昭一

    ○近藤委員 大臣、ありがとうございました。  時間も参りましたので、質問を終了させていただきたいと思いますが、合併というか、統合することによってどういうふうになるか等々のことは、現場でやっていらっしゃる方が一番よく御存じだと思うわけでありまして、そういった声をぜひともうまく反映させていただきたいと思いますし、最後にもう一度繰り返させていただきますけれども、科学技術に対する大変大きな国民の皆さんの期待がある、そういう中で、将来の安心につながる、そういった方面の予算配分にぜひ力を入れていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  101. 北側一雄

    北側委員長 斉藤鉄夫君。
  102. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 公明党・改革クラブの斉藤鉄夫です。  きょうは、有馬長官になられましてから最初の科学技術委員会でございますので、いろいろな問題について長官の基本的なお考えをお聞かせ願いたい、またそれについて長官と議論をしたい、このように考えておりますので、よろしくお願いいたします。  最初に、文部大臣と兼務になられたことについてでございます。  先日、予算委員会でもこの問題で質問をさせていただきましたが、ちょっと時間がなくてしり切れトンボになりましたので、その続きでございますが、外から見ますと、小渕総理は、未来へのかけ橋としての科学技術とおっしゃりながら、現実おやりになっていることは科学技術軽視ではないか、こういう声があります。  予算委員会の答弁でも、小渕総理は、将来、文部省科学技術庁は一緒になるんだから、その先鞭をつけたんだということですけれども、業務を一緒にする、その体制や業務の内容をスリム化して、その上で長が一人になるということであれば私は納得するわけですけれども、体制は今のままで大臣だけ兼務というのはおかしいのではないかなと。二つの省庁を一緒にするので大臣を一人にするのであれば、なぜ厚生大臣と労働大臣を兼務にしないのか、運輸大臣と建設大臣を兼務してないのか、こういう反論もあるわけでございます。  こういう問題意識に対して、長官自身はどのように感じていらっしゃるかをまずお伺いいたします。
  103. 有馬朗人

    有馬国務大臣 まだまだ私の努力が足りないと思いますけれども、科学技術庁でやっておりますことというのは、私が今まで長年研究を続けてきたことと非常に密接な関係がありますし、また理化学研究所で理事長として五年やらせていただいたことにも大変関係があります。  また、文部省の方は、長年大学に勤めて、大学における教育及び基礎研究ということで、文部省とも大いに関係がございましたし、さらに、この数年は、中央教育審議会等々のお手伝いをしたりいたしまして、初中教育、特に最初は職業教育をどうするかから始まるんですが、職業教育、そしてまた中央教育審議会で、さらに心の教育とか生きる力を勉強する、こういう機会を与えられましたので、両省の、あるいは文部省科学技術庁でありますから、両省庁のそれぞれの仕事に対しては大変親近感を持っているという点ではありがたいと思っております。  また、具体的に申しますと、大学における基礎研究と国立試験研究機関における基礎研究は非常によく似ているところがある。ただ、率直に申しますと、科学技術庁の方は、国の方針ということを中心にいきますので、トップダウン的な方法でやることが多い。それに対しまして、大学関係基礎研究というのは、個人から出発することが多くて、ボトムアップ型というふうなことで違いが多少ありますけれども、しかしながら、研究を進めるということ、あるいは研究の対象というふうなことに関しましては極めて共通しているということがございます。したがいまして、国立研究所、国立試験研究所、あるいは特殊法人等々の研究及び大学の研究というふうなものを一緒にして進めていくということは、日本の将来にとって極めて有効であると思います。  それから、その次に重要なことは、科学技術人材養成ということでございます。文部省の方でも、ポストドクトラル・フェローとか、あるいは博士課程の学生諸君に対する研究費を出すとか、奨学金を出すとかということで、人材養成で大いに努力をしておりますが、科学技術庁の方も、大変この点では先駆的なポストドクトラル・フェローシップに対する制度ができ上がっておりますし、こういう点で、相互に乗り入れることによって科学技術人材を育成する上で協力体制が組みやすいと思います。  それからさらに、もう少し下の若いところでありますが、科学技術庁では、科学の祭典であるとか、あるいは先ほど申し上げました国立研究所での夏休みの学生の受け入れ、高等学校の生徒の受け入れ等々を通じまして、一生懸命、青少年科学技術離れをとめるべく対策を講じております。同じく文部省の方でも、科学技術離れに対応いたしましてさまざまな努力をしているわけでありまして、こういう点で、初中教育の上でも、この二つの省並びに庁が一緒に進めていくということは、極めて有効であると考えております。  こういうふうな点で文部省及び科学技術庁協力して進んでいくということは、大変有効であると考えておりまして、そういう意味で私がお手伝いできるとすれば大変ありがたいと思っている次第であります。
  104. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 兼務をされたことによるメリット、今の大臣のお話でよくわかったんですけれども、お聞きしておりますと、もう有馬大臣だからできる兼務、そういうふうに思うんです。大臣がかわられたら兼務などとてもできないんじゃないかな、私はこのように思いますが、ほかの人でもできますか。
  105. 有馬朗人

    有馬国務大臣 ほかの方でもできると信じております。  それは、非常に官僚の人たち協力的でありまして、しかも重要なことは、両省庁の官僚の人たちが一緒になって新しい科学技術体制をつくっていこうという強い信念を持って動いてくださっていますので、どなたがおやりになってもこれは十分できると私は信じております。
  106. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 今のお話を聞いていますと、まあ後ろにも優秀な官僚の方がずらっと並んでいらっしゃいますけれども、我々、国会での科学技術委員会でのこれまでの議論は、官僚主導の科学技術政策、これを改めていこう、こういう一つの大きな流れがございました。  確かに、官僚の方は優秀な方ばかりなんですけれども、弊害として、一たん決めた方針というのはなかなか変更しない、できない。科学技術をめぐる諸情勢、社会情勢が変わっても方針転換が非常に難しいというふうな弊害も、これまで、この委員会の中でも指摘をされてきました。  そういう意味では、まさに我々政治家がリーダーシップをとって、官僚の人と情報交換をしながら、それぞれの持ち味を生かしながら科学技術行政を進めていかなきゃならないというのが科学技術委員会でのこれまでの議論だったわけですけれども、ちょっとそれに反するように思うんですが、いかがですか。
  107. 有馬朗人

    有馬国務大臣 誤解を招きましたならば、私の間違いでありまして、これは訂正いたしますけれども、私は、官僚の人々が優秀だということは、何も官僚にすべて頼らなければならないと申し上げたわけではございませんで、どなたでも、例えば新エネルギーの開発に重点を置こうとか、あるいは原子力にしようとか、そういう方針をお立てになれば、それに対して文部省だったらどうやれるか、科学技術庁だったらどうやれるかというふうなことに関しましては、極めて優秀なスタッフが大勢いますので、その人々と相談することによって、大臣が本人として十分納得がおできになるだろうと思います。  そういう意味で、どなたが大臣におなりになっても、自分の御発想でやりたいことをおっしゃれば、それに対して十分準備ができて、そしてさらに御自分の考えを進めるということができるという意味で、私は、どなたでもしっかりしたお考えがあればおできになると申し上げた次第であります。
  108. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 有馬長官科学技術庁長官になられて、いろいろな深い議論ができると我々も大変喜んでおりまして、そういう意味では、長く科学技術庁長官をしていただきたいわけでございますが、正直申し上げて、今の文部大臣科学技術庁長官の兼務は、有馬先生のようなこれまでの経歴や経験、知識があるからこそできるのであって、ほかの人にはかなり難しいのじゃないかなというのが率直な私の感想でございます。そういう意味で、将来の二省庁の統合に向けての準備という意味も含めて、一人の大臣でもそれぞれの行政が滞りなくできるような体制をつくり上げていただきたい、このようにお願いをする次第でございます。  それから、先ほど近藤委員の質問の中にも総理府のアンケートの件がのっておりました。科学技術そのものに対してどのような認識を持っておられるかという漠然とした質問なんですけれども、アンケートの中でも大変大きな声としてあったのは、科学技術が持つ負の側面、例えばクローン研究に対する恐怖でありますとか遺伝子技術、それから、ちょっと例はよくないのかもしれませんが、非常な電子技術進展とプライバシーの問題、こういう負の側面が言われているわけです。科学技術といいますとバラ色の面だけが言われるというところもあるわけですけれども、そういうことも含めて、科学技術というものをどのようにとらえていらっしゃるか、大臣の基本的な御認識をお伺いします。
  109. 有馬朗人

    有馬国務大臣 正の方のことからお答え申し上げますと、科学技術が生み出したさまざまな利点というのはどなたもおわかりいただけますが、負の面に対しても、その負の面を直していくのもまた科学技術であるという意味で、プラスのことを申し上げたいと思います。  すなわち、公害が発生した、その公害を取り除くのもまた、科学技術を進めなければ容易に取り除けないということがあると思うのですね。ダイオキシンというふうなものをどうすればいいか。例えば高温で燃やせばいい、こういうふうな技術というのは、やはり科学技術を進めていくということによって初めて解決をすると思います。こういう点で、仮に科学技術が生み出した負の面があっても、それを解決していくためにはまた科学技術を進めていかなければならないということが一つあるかと思います。  しかしながら、かつての原子爆弾のようなものにすばらしい科学技術が使われていったということは極めて不幸であったと私は思っております。ああいうときにきちっと人文学者あるいは社会学者が十分議論に参画して、これが生み出す欠点に関して徹底的に議論してあれば、私は、もしかしたら防げたかもしれないと思っているわけです。  したがいまして、今後二十一世紀になって起こるであろう問題の一つは、生物科学が爆発的に進んでいくだろう。ライフサイエンスが爆発的に進んでいく。その中にある負の面というのは必ず生ずると思うのです。これに対して、私は、常に人文、社会両面の学者の協力を得て、ライフサイエンス発展が生み出すかもしれない負の点を早い時期に抑えていくべきだと思っているわけです。  こういうことは、今後の科学技術を進めていく上で我々が十分考えなければならないことだと思います。どうしても、私もその一人でありますが、自然科学者あるいは基礎技術者というのは好奇心の塊でございますので、おもしろい問題であると突き進んでいくところがある。しかし、それが社会に及ぼす影響ということに関しては十分考えない場合があり得るわけです。こういうことに関しては、広く社会の方々の御意見を賜り、特に、繰り返しになりますが、人文系、社会科学系の人々の御意見を十分聞きながら、健全な科学技術を進めていかなければならないと私は確信している次第であります。
  110. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 次に、研究開発の中で、大学もしくは国立の研究機関というのは、どちらかというと基礎的な部分を受け持つわけでございます。  これまで、日本基礎研究は、諸外国に比べて弱いといいましょうか、ちょっと言い方が正確ではないのですけれども、正確な言い方をすれば、研究費総額の中に占める公的部門が受け持っている研究費の割合が少ないということが言われてきました。その上になおかつ、公的な研究機関の人たちの意識が低くて、自分たち研究結果を社会に役立てようという意識もなく、経済活動、民間活動への研究成果の移転、水平展開ということも余り行われてこなかった。その二つが相まって、日本の相対的な技術力低下を今招いている。  現在の不景気は、短期的には金融の問題とか需給ギャップと言われておりますけれども、中長期的に見れば、日本の持っている基本的な技術開発力の低下がそれをもたらしているのではないか。その責任は、先ほど申し上げましたように、突き詰めていけば日本基礎研究部門の人たちの怠慢にあるのではないか。こういう指摘がございますが、大学とそれから国立研究機関、今回兼務されて両方の責任をお持ちになることになったわけですけれども、そういう指摘に対する御認識をお伺いします。
  111. 有馬朗人

    有馬国務大臣 戦後の科学技術に対する私ども研究者の態度というのは、どちらかというと、やはりアメリカやヨーロッパで発展した科学や技術をいち早く日本で大量生産に持っていく。あるいは、基礎科学でも、それをより早く一般の人々が学び、そしてそれを少しでも進めるというところに中心があったと思うのですね。戦前はむしろ逆でありまして、戦前は、湯川先生にしても朝永先生にしても、あるいは八木アンテナにしても、随分基礎的なものが日本であったと思う。ですから、私は、日本人が基礎研究、独創的な研究に向いていないとは思わないのです。  ただ、戦前と戦後でかなり雰囲気が変わりました。戦後の方は、グループをつくって、そこで新しい知識をどんどん発展させるというふうな傾向にあったと思います。これはしかし、現在の日本経済力を生み出す原動力でもあった。ですから、日本人ほどグループで一つの目的に向かって進むことの上ですぐれた人々はいないと思うのですね。こういう点では、私は、戦後のある時期までの科学技術行政それから研究者の志向というのは正しかったと思う。  しかし、現在は、斉藤先生御指摘のように、新しいもの、独創的なものを日本で生み出していかなければいけない。例えば、生物科学がこれだけ進んできたときに、生物科学を応用したバイオテクノロジーの上で革新的な特許が日本にあったかというと、まだない。あるいは情報科学の上であったかというと、少ない。こういう点で私は大変残念に思っております。  今後、大学としても、国立研究所としても、特殊法人にしても、あらゆる研究機関が、やはり日本で新しいものを生み出すんだという方に力を注いでいけば、必ず日本で新しい研究はできるものと思っております。こういう点では、研究者の意識を改革していかなければいけないという点では、斉藤先生の御指摘のとおりでございます。この辺の意識改革を今後していかなければならないと思いますし、もう一つは、やはり基礎研究ということに対して国が十分な経済的な援助をしてくださることが必要であると思っております。こういう点では、科学技術基本法というものがつくられ、科学技術基本計画というものがつくられたということは、科学者にとって、研究者にとって福音であったと思っております。
  112. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 特に経済的な支援、これはもう我々全員で努力しなくてはいけないわけですけれども、研究社会の意識改革研究者の意識改革、また研究社会そのものの改革というのは、これは、言うはやすくして本当に難しいことだと思います。有馬大臣の強いリーダーシップでこの新しい方向をぜひつくっていただきたいと心からお願いをする次第でございます。  それでは次に、科学技術庁の大きなテーマでございます原子力について、基本的な御認識をお伺いします。  原子力に対する基本認識、これはもういいとして、いわゆる高速増殖炉路線、日本原子力の基本的な方向は、高速増殖炉を将来の日本原子力の主流にし、かつ日本のエネルギーの一定割合を、一定割合というのは三割なんでしょうか四割なんでしょうか、そういうものを担うという明確な方針がございます。  ところが、高速増殖炉につきましては、先ほどの質問にもありましたけれども、確かに、今日本がこれを研究開発して成功させればこれほどの人類貢献はないということもよくわかるわけですけれども、しかし、アメリカにしても、ロシアにしても、フランスにしても、これまで日本をリードして、日本よりはるかに進んでいた高速増殖炉路線を研究していた国が次々に撤退をしていった、今日本だけが高速増殖炉路線を原子力の中核にしようという方針を持った国になった。  そういう状況の中で、もう一度この高速増殖炉についてフランクに見直して議論をしたらどうだろうかというのが原子力の円卓会議等でも各方面から言われているわけでございますが、有馬長官の、これは大臣としてですとなかなか言えないでしょうから、研究者としてということでも結構でございますので、この高速増殖炉について大臣はどのようにお考えになっているか、お伺いします。
  113. 有馬朗人

    有馬国務大臣 まず第一に、御指摘のように、英国なり米国は撤退しました。そのときに注意すべきことは、英国にしても米国にしても、あるいは最近のドイツにいたしましても、すべて資源が豊かな国であるということであります。石炭、石油が、あるいは天然ガスが相当産出する国であるということでございます。  フランスはどうかというと、やはり日本と同じように資源がない国である、したがいましてフランスは原子力を非常に重要視している。しかし、スーパーフェニックスは現在のところ中止いたしました。フェニックスに関しましては、これは今ちょっととめているようでありますが、再開すると思います。ですから、そういう意味で、フェニックスはフランスは今後も続けると思います。  「もんじゅ」でございますが、「もんじゅ」とフェニックスというのはかなりもう具体的に技術が進んでおりまして、たまたまナトリウム漏えいの事故がございましたけれども、これを解決すれば、私は「もんじゅ」というのは十分これから動かせると思っております。そういう点で、やはりフランスと日本協力をして、そして新しい技術開発していくということは必要だと思うのです。  この「もんじゅ」の持っている意味というのは、もちろんプルトニウムを燃やすというふうなことが大きな目的でありますけれども、まず、その前に、技術開発がこれからも必要であるという点で、安全性を確証するとか経済性の向上などを図りながらさらに「もんじゅ」の研究を進めていくべきだと思っております。  まず、安全性につきましては、ナトリウムの取り扱い技術を含め、「もんじゅ」等による研究開発による安全実績を積み重ねていく必要がある。二番目に、経済性の向上につきましては、免震構造や機器合体による原子炉プラントのコンパクト化などを図るというようなことで、今後とも本当に商業炉にしていくためには幾つも課題がございますけれども、これは私はかなりもう解決に近いと思っております。こういう意味で、さらに高速炉開発ということは必要ではないかと思っておりますし、さらにまた、ロシアなどでプルトニウムが核弾頭の廃棄によって生じますので、こういうものを燃やすという意味でも大変有効な手段であると考えております。
  114. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 私も、また我が党としても、高速増殖炉路線をやめるべきだとは言っておりません。  ただ、例えば、先ほどのフェニックスにいたしましても、運転再開はたしか、高速増殖炉研究というよりも、放射性廃棄物の長寿命核種を短寿命にする、廃棄物処理のための炉の運転というふうに聞いておりますし、いわゆる実証炉であるスーパーフェニックスそのものは今後も運転する計画はないというふうに聞いております。  そういう中で、我が国よりも二十年先を行っていると言われたフランスがそのような状況になっているということを素直にとらえて、日本も、高速増殖炉路線を捨てることはないんですが、基礎研究は当然、「もんじゅ」というようなものもつくったわけですから基本的に続けていくとして、しかし高速増殖炉路線しかないんだというふうな今までの原子力政策をもう少し緩やかにして、例えばプルサーマルというようなことも言われております。プルサーマルと高速増殖炉、全然違いますけれども、プルサーマルの登場ということもあるわけでございますので、ウラン燃料の最適な使い方というのはどうなんだろうかということをもう一度フランクに検討し直すという姿勢もあってもいいんじゃないかと思いますが、いかがでございましょうか。
  115. 有馬朗人

    有馬国務大臣 確かに、増殖炉そのものがすぐできて、それが実用化できるかどうかというふうなことはまだ言えないと思います。やはり今後とも安全性大前提といたしまして、「常陽」を運転する実績をふやしていったり「もんじゅ」で得られるさまざまな研究開発成果活用して、本当に高速増殖炉が実用化が可能であるかどうか、こういうふうなところをきちっと検討していく必要があると思っております。  その上で、さらなる法、施策を立てたいと思いますが、まずは「もんじゅ」をしっかりと基礎研究で進めていきたいと思っております。
  116. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 「もんじゅ」についてお答えありましたけれども、もうとまったままです。とまったままでも維持にお金は、かなり毎年予算を使っているということで、私自身、これは個人の考え方ですが、できるだけ安全性について住民の方に安心していただく結論を出して、またその努力を見ていただいて、高速増殖炉について基礎的な研究を進めるための運転を再開すべきだと思いますが、「もんじゅ」そのものの再開について今後どのようにされていこうとしているか、お考えをお伺いします。
  117. 有馬朗人

    有馬国務大臣 まず、これまでの政策面においては、国民の意見を反映した上で、平成九年十二月に原子力委員会高速増殖炉懇談会報告書にまとめて「もんじゅ」を位置づけております。  それから、安全面におきましては、原子力安全委員会において昨年四月に、ナトリウム漏えい事故の原因究明及び再発防止策の審議を終了いたしまして、報告書を取りまとめ、また、科学技術庁の安全総点検チームも昨年三月に安全総点検結果の報告書をまとめたところでございます。  このように、「もんじゅ」に関連するさまざまな案件が段階を踏んで着実に進められているものと考えておりまして、今後は、事故の教訓を踏まえたナトリウム漏えい対策について、国の安全審査を通じて「もんじゅ」の安全性を確認し、その後、所要の改造工事を実施することが必要であると考えております。  いずれにいたしましても、「もんじゅ」は、高速増殖炉の実用化の可能性を追求するために必要な研究開発炉でございまして、まず安全の確保を第一とし、そして地元の人々の理解を得ながら、段階を踏んで着実に基礎研究を進めてまいりたいと思っております。
  118. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 それから、この科学技術委員会でも原子力問題は非常に多くの時間を使っているんですが、その中でも特に多いのが、やはり動燃の問題に端的にあらわれた国民原子力に対する不信でございます。その不信を生むに足るたくさんの不祥事があり過ぎました。日本原子力が持っている宿命ともいうべきこういう体質について、これは本当に抜本的に変えていかなくてはならないと思いますけれども、長官の御決意をお伺いします。
  119. 有馬朗人

    有馬国務大臣 私も、原子力が本当に安全だということをやはり国民にお知らせしなければならないと思っております。動燃の一連の事故というのは私も大変残念に思っておりまして、それからまた、使用済み燃料輸送容器のデータ改ざん問題等々もありまして、原子力に対する国民の方々の信頼、安心という観点からあってはならないことであったと思い、私も大変残念に思っております。  こういうような不祥事に対しましては、それぞれ検討委員会を設置して、多面的な調査検討を行った結果、いろいろな原因が明らかになってきておりますが、まず、共通な点というのは、やはり原子力開発研究あるいは開発利用に携わる人々がしっかりとした倫理観を持ち、責任感をきちっと持っているということが一番大切だと思います。残念ながら、この一連の事件の中では、その原子力開発利用に携わる人々のモラルや責任感がいささか欠如していたのではないかと思われます。これを何とかしてやはりないようにしなければいけない。  要するに、関係をしている人々、研究者の人々がきちっとモラルを持ち、そして責任を持って、必要なときにはすぐに公開をして、どういうことが起こっているかというふうなことを国民にお知らせする、そういうふうなことで進んでいく必要があると思っております。  ですから、私といたしましては、まず関係者の意識改革を徹底的に行い、安全管理体制の充実強化等を行うことが必要であると認識しております。しかしながら、一方ではやはり、原子力研究していく者、「もんじゅ」の研究をしていく人々が誇りと使命感を持って職務にきちっと専念できる環境をつくっていくことも必要であると思っております。一方で自覚を求め、一方では環境を整えてあげたいと考えている次第であります。
  120. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 ぜひこの問題につきましては、断固として推し進めていただきたいと思います。  これまで、私は議員になって五年半ですが、その間に八人か九人、科学技術庁長官がかわられまして、本当に短過ぎるんですね。それぞれ御決意を持ってやられたと思うんですが、途中でいつもおかわりになる。そういう意味ではぜひ長くやっていただいて、徹底してこの日本原子力の体質を変えていただきたい、このように要望します。  それでは、科学技術庁がやっているもう一つの大きな柱でございます宇宙についてですが、二つほどお伺いします。  一つは、これはもう研究者としてお答えいただきたいのですが、人類はなぜ宇宙開発をするのか、その点についての質問です。  これはどういう問題意識かといいますと、ある場所で研究者同士で議論をしているときに、宇宙開発をするのはやはり実利を得るためだ、なぜ月へ行くのか、月にはヘリウム3という核融合の材料がある、それをとりに行く、そうでなければタックスペイヤーは宇宙開発について支持してくれないだろう、こういう意見に対して、違う、そうじゃない、やはりフロンティアへ出かけていくのが人間の持っている宿命なんだ、昔、ジャングルにいた類人猿がジャングルから出なかったらそのまま類人猿だったけれども、一歩草原に向かって歩み出した猿がいて、それが今の我々人類の祖先なんだ、そういうために宇宙へ行くんだ、実利を求めるんじゃないんだ、こういう意見もあって、両方とも真実だと思うのですけれども、長官はどのようにお考えになっているかということをまずお伺いします。
  121. 有馬朗人

    有馬国務大臣 大変難しい御質問でございますが、私は、基礎科学者としてはまず第一に人類に対しておもしろいことをお知らせすべきだと思っております。  今まで人類が知らなかったこと、例えば月の表面はどうできているかとか、月の裏側はどうであるか、こういうふうなことについては、それがすぐに生活に役立つかどうかわかりませんけれども、やはり人間の本来持っている好奇心を満足させる必要がある。まず研究者みずからが好奇心を持って研究していくでしょうけれども、そこで見つかったものを仲間の人々にお示しすることによって、その人々の知的好奇心を満足させるということもやはり重要な役割ではないかと思います。その上で、さらにそれを応用して、人類生活がより豊かな、より質の高いものになっていくということが重要だと思います。  それからまた、宇宙開発目的の中には、先ほどもエネルギーを空中からレーザーなりマイクロウエーブなりで地上に送るというふうな夢のお話がありましたけれども、こういうふうなことがさらに進んでいくという意味で、将来の新産業というものが生まれるだろうと思います。  それから、私自身は、無重力の中で物質がどういうふうにできるだろうかとか、あるいは無重力の中で生命体がどう伸びていくだろうか、こういう基礎的な研究に非常に関心を持っておりますけれども、このことによって新しい、より純粋な材料をつくり出すとか、また変わった生命をつくり出すというふうなことができるであろうということで、応用の面でも大いに評価をいたしております。  もう一つは、若者に夢を与えることだと思います。  宇宙の研究というのは、若者が、小学校、中学校の子供たちがいかに興奮するかということを見ておりまして、やはりそういう若者たちに夢を与える、それが宇宙研究の役割の一つだと確信している次第でございます。
  122. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 これまでの日本の宇宙研究宇宙開発については科技庁と文部省の二元化で、メリットもある、デメリットもある、こうも言われていたわけですけれども、今回兼任をされたわけですけれども、今まで二元化されていた宇宙開発、その両方の長になられまして、どのように進めていかれるか、端的にお願いいたします。
  123. 有馬朗人

    有馬国務大臣 これは大変難しい御質問でございまして、今後どういうふうにそれぞれの持っていた長所を生かしながら協力体制に持っていくか。既に協力は随分しているわけでありますが、より具体的に、文部省科学技術庁が合併した暁において、さらに協力体制をどう組んでいくかということは、今後とも現場の研究者たちに意見を聞きながら、さらなる検討を加えていきたいと思っております。
  124. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 それでは最後に、これは私は科学技術庁がやっている重要な一つの仕事だと思うのですが、しかし世間的には余り知られていないのですけれども、技術制度についてお伺いをします。  これまで科学技術委員会の最初の質問で、新長官になられた方には必ず、技術制度を御存じですかというふうに聞いてきましたけれども、御存じだったのは近江長官ぐらいでして、ほとんど御存じなかった。それほど世間的には知られておりません。しかし、私は、これから若い人が自分は技術者になって生きていこうというときに、世界に認められた資格が日本にあるということ、そしてその資格を自分が取るんだということが一つの大きな目標になると思います。しかし、現実には全く世間的に認められていないという問題があります。そういう意味で、この技術制度社会への認知ということに私は努力していかなきゃいけないと思います。  また、アメリカのPE、それからイギリスのCEですか、チャータードエンジニア、そういう資格、これは世界に通用する。レベルとしては日本技術士の方がはるかに高いと思うんですが、しかし、向こうは世界に通用する資格で、資格を持っているだけで技術者として世界的に通用する。そういうPEやCEとの相互認証、相互乗り入れというようなことも必要だというふうに常々主張し、科学技術委員会で言っているんですけれども、余り進展しないということがございます。  この点について大臣に、大臣技術制度を御存じだったと思いますけれども、博士ということに比べて余りに知られなさ過ぎるということも含めて、どのようにお考えになっているか、また今後どうされるかということを、最後に質問いたします。
  125. 有馬朗人

    有馬国務大臣 私は、実は、理化学研究所で働く技術系職員の待遇改善を図ろうと思ったことがあります。その際に、博士を持っていない、しかし技術士を持っているというならば、博士と同じように待遇したらよいではないかというようなことを主張したことがありまして、それ以後、技術士の存在はよくよく知っておりましたけれども、残念ながら、日本ではまだ産業界とか国立研究所等々において技術制度というものが十分認識されていないという点がございました。  今後さらに、これは今、昨年の三月末で三万六千七百四十人いるそうでありますが、こういうふうな制度を産業界あるいは国立研究所、大学等々で十分認めて、それに対して待遇をきちっとしていくべく努力をしていく必要があると考えております。
  126. 斉藤鉄夫

    ○斉藤(鉄)委員 その点の御努力をよろしくお願いいたします。  以上、終わります。
  127. 北側一雄

  128. 近江巳記夫

    ○近江委員 きょうは、有馬長官には初めてこの科学技術委員会に出席をしていただいたわけでございます。私ども今まで、有馬先生ということで、東大総長、また理化学研究所の理事長として、私たちも理研の方にお伺いしたこともございますし、また、有馬先生をお迎えしていろいろな御講演を賜ったこともございます。それで、今こうして科学技術庁長官としてこの場に御出席でございます。  また、文部大臣との兼任ということで、一面、私も科学技術行政責任者として一時期任についたことがございますけれども、時の政治情勢といいますか、それはもう大変ハードな日々でございました、それだけに、両省の責任を持つ立場というものは非常に大変だと思います。そういうことで、健康に十分御留意されまして御活躍いただきたい、このように思うわけでございます。  それで、今、各委員の先生方からもいろいろお話がございました。両省を兼務されるということ。来世紀初頭から、この両省が統合、そして教育科学技術省、これは仮称ということでございますけれども、スタートするわけでございます。そういう中で、今、両省のトップに有馬先生がついておられるということは、実質上これは進行形に入っておるわけでございます。  そういうことで、文部省というのは学術行政でございますし、科学技術行政との融合がうまくいけば、またこれは非常に大きな効果を出すんじゃないかということにもなるわけでございます。そういう点で、行方につきまして皆さん非常に、その点は期待感と同時にまた一抹の不安もあるわけです。そういうことで、率直に大臣の御感想、御見解を賜りたいと思います。
  129. 有馬朗人

    有馬国務大臣 科学技術庁長官の先輩といたしまして、近江先生にお答えを申し上げることは光栄に思います。  近江先生は先輩でいらっしゃいますので、もう科学技術庁の役割がどういうものかはよくよく御存じでいらっしゃいます。その上での御質問と承りましたが、文部省科学技術庁のやり方には、先ほども申し上げましたように、率直に言って文化、カルチャーの違いがございます。文部省の方はボトムアップ型、各研究者から上がってきたものを取り上げていく。それに対して、科学技術庁の方はトップダウンのやり方でいく。したがいまして、宇宙科学の開発一つとりましても多少その違いがあるんですけれども、研究者は両方ほとんど共通でありまして、どっちでやるというふうなことで違いはないと思っております。  しかし、より国としての役目がはっきりしている場合と、個人的色彩がはっきりしている場合、両方あると思いますので、それぞれに対してよりよい将来がもたらせられるように、両方を調和していきたいと思っております。
  130. 近江巳記夫

    ○近江委員 先般の予算委員会で私は一つの提言をいたしました。それは、二〇〇一年をサイエンスイヤーとすればどうかという提案でございました。  先般、総理府からの調査も出ておりまして、先ほど他の委員からもいろいろなお話が出ておりました。いろいろの情勢を考えますと、科学技術に対する関心も非常に強いし、また、プラス面というものを大変多くの皆さんがよく理解していただいているわけですね。その反面、非常に細分化されてわかりにくくなってきたとか、進歩が非常に速くてついていけないとか、また、悪用されるおそれがあるとか、この調査にも出ておるわけでございます。  そういう中で、我が国として今後どのようにこれを進めていけばいいか。資源のない我が国でございますし、やはり二十一世紀科学技術創造立国として立つ以外ないだろう。これは、本委員会におきましても、ほとんどの先生方もそのようなお考えであるように私は思うわけでございます。そういう中で、どういう盛り上げをしながら二十一世紀に向かっていけばいいかということで、そういう提案をさせていただいたような次第でございます。  きょうは、後ほどもう一度、こういうことをすればどうかというようなことも私は何点かまた申し上げてみたいと思いますが、その前提として何点かお聞きしていきたいと思うのです。  それは、先ほどからも出ておりますが、科学技術の世論調査の問題ですね。これにつきまして、特に、先ほど私が申し上げました、悪用される問題だとか、進歩が速過ぎるとか、細分化されて難しいとか、いろいろなことが出ておりますけれども、そういうような国民が心配しておる問題等に対してどのように受けとめておられるか、この点をひとつお伺いしたいと思います。
  131. 有馬朗人

    有馬国務大臣 今回の調査結果を見ますと、国民の間でコンピューターやネットワークの利用が極めて増加しているというふうなことからは、科学技術への国民関心が高まっているのではないかと思いました。きのうも小学校及び中学校を訪ねてみたのですが、中学校では、ほとんどの子供がもうコンピューターを使えるというような状況でありまして、かなり難しいコンピューターの使い方をしていて、感心いたしました。  それから、科学技術発展について、個人個人の生活の楽しみ、物の豊かさなどが向上したと考えているというのが国民の方々の反応ではないかと思いますが、そういう意味で、将来の科学技術が果たす役割として、まず安全性の向上、効率性の向上等に対する期待が強いかと思いました。  一方で、科学技術発展による課題といたしまして、御指摘のように、科学技術が悪用されたり誤用される危険性ということが非常に増加していると思いますので、これに対しては、我々しっかりと、そういうことのないようにすべく努力をしていくべきだと思っております。  ただ、科学技術がどんどん細分化していっているということは、これはやはり科学者が少し注意し、科学技術者が、専門家でなければわからないというのではなく、啓蒙に努めるべきであると考えております。  公的機関が中心になって研究を進めるべき分野として期待が非常に強いのは、何といっても、すぐには経済的にもうからない地球環境研究であるとか自然環境の保全、廃棄物の処理処分、資源開発やリサイクル、高齢者や身体障害者の生活の補助などであるかと思います。こういうことに対して、例えば身体障害者が極めて使いやすいロボットを開発するとか、廃棄物をより効果的に処理する手段を早く見つけ出すとか、こういうふうなことを科学技術研究者は進めていかなければならないと思っています。  一方、さらに、宇宙であるとか海洋などの研究が、人類にもちろんすぐに役に立つ面もありますけれども、同時に人類に対する夢やロマンを実現すべく努力をしていくべきではないかと思っております。  依然として科学技術というのは専門的過ぎてわからないというふうに感じておられる方が大変大勢おられるということでございまして、こういうことに対しましては、研究者がもう少し啓蒙に努めるということを先ほど申し上げましたが、もっと啓蒙に努めるべきであるし、科学技術が人間の生活社会及び自然との調和を図りつつ、経済再生を達成して、国民の期待に的確にこたえていく努力をする必要があると考えております。  いずれにしても、科学技術が一方では若い人たちに夢を与えるということも考えながら、さらに健全に発展すべく努力をさせていただきたいと思っております。
  132. 近江巳記夫

    ○近江委員 調査に基づいて、総括といいますか、大臣からお答えいただいた次第でございます。今後わきまえなければならない課題等お答えになったわけでございまして、そういう点をしっかりまたよくチェックしながら進んでいただきたい、このように思います。  もう一つ、これは一月二十九日の閣議決定で、生活空間倍増戦略プランと産業再生計画が発表されておるわけですね。私も、特に産業再生計画、これを一読させていただきました。特にこの中で、「新規・成長十五分野プログラムの加速化」あるいはまた「知的資産の倍増」、これは三つに分けておりまして、「創造的技術開発・普及に向けた投資」「情報化社会への投資」「物流システムの高度化に向けた投資」等々述べられておりますけれども、これを一読いたしまして、まさに科学技術が一切のかぎを握っておる、その思いを深くしたような次第でございます。いろいろな施策が出ておりますけれども、実際に推進していくかぎは科学技術進展いかんにかかっておるというように私は感じたわけでございますが、長官は、この再生計画につきまして、御一読されておると思うのですけれども、どのように受けとめていらっしゃるか、お伺いしたいと思います。
  133. 有馬朗人

    有馬国務大臣 御指摘のとおり、先般閣議決定されました産業再生計画は、経済の供給側の体質強化を図り、新産業の創出による雇用の確保、これは今非常に重要だと思いますが、新産業の創出による雇用の確保や生産性の向上を目指すものでございますが、これらの実現のためには、まず、創造的な技術開発及びそれの普及、そして情報化社会への投資などが重要である旨指摘されておりまして、科学技術の果たす役割は大変大きなものと認識しております。  このように、現在の経済低迷を打開するとともに中長期的な発展実現するためには、科学技術振興研究開発強化が極めて重要であると私も強く認識している次第でございます。  今後とも、新産業創出を促すような先端科学技術分野研究開発やその成果活用を通じ、喫緊の課題である経済活性化に取り組んでまいりたいと思っております。プレベンチャー・プログラムなどというのはそういうことの一環でございます。
  134. 近江巳記夫

    ○近江委員 長官と私の認識も一致いたしておるわけでございますが、そういう意味におきまして、私ども、議員立法で、科学技術基本法平成七年に制定したわけでございます。先ほども長官、御答弁の中で、大変これは大きな成果であったというお話がございました。昔、たしか昭和四十三年当時だったと思いますが、一度あれが出かけたわけですね。ところがやはり、役所の縦割りといいましょうか、お役人、たくさんいらっしゃるわけですけれども、いろいろなことがございまして、お蔵入りということになったわけです。  今回も、これからの二十一世紀をにらんで、やはりレールを敷くしかない。その場合、当然関係各省の皆さんの声も聞きながらやってきたわけですが、政府から提出ということになってくると恐らくまた同じ状況になるんじゃないかということで、私ども、各党の皆さんとも相談して、そしてこの科学技術基本法というものをつくりまして、幸いにして各党の皆さんの御賛同を得まして、私も提案者の一人として提出をさせていただいた。それが可決となりまして、翌年の八年に科学技術会議におきまして基本計画が策定された。その基本計画の中に八年度から十七兆と。これは、金額まで明示されたというのはいまだかつて例を見ないと思うのですね。そういうことで、これは政府当局においても大変深い理解をされたと思いますが、そういうことで今日まで進んでまいりました。  この平成十一年度の予算はまだ可決はされておりませんけれども、私がいただいておるデータでは三兆一千五百十一億。これを合わせまして今日まで十三兆三千億ということでございます。したがいまして、残り三兆七千億ということになるわけでございます。今年度補正をお組みになるのかどうか、これは政府がどう考えるかということでございますけれども、いずれにしても、もし組まないとすれば来年度三兆七千億、これで十七兆達成ということになるわけです。  これは、特に中心的な立場である科学技術庁長官として、もう本当にエンジンになってもらわなければならないわけでございますので、この達成をぜひともやっていただきたいと思いますし、十三年度からは、また新たな五カ年計画を当然結ばなければならないわけでございます。  先般の予算委員会でも私申し上げましたけれども、先進国の対GDP比は、九七年度において日本が〇・六三、米国が〇・八〇、ドイツが〇・八二、フランスが一・〇一、英国が〇・六八という状況でございまして、そういう点からいきますと、これは本当に今から、次の新たな五カ年計画といいますか、やはりあらゆるそういう動きをやらないと間に合わないと思うのですよね。  そういう点で、十七兆達成と、次へのいわゆる五カ年、新たな二十一世紀へどう踏み出していくか、その辺のところにつきましてお伺いしたいと思います。
  135. 有馬朗人

    有馬国務大臣 大変ありがたいことに、科学技術基本法をおつくりいただき、さらにまたそれに基づいて科学技術基本計画がつくられ、十七兆円、五カ年間という計画が立てられましたことは、大変私も科学者の一人といたしまして感謝を申し上げる次第でございます。  この計画の中で、政府研究開発投資については、平成八年度から平成十一年度予算案までの総額が約十三兆三千億円でございまして、計画期間中に十七兆円を達成することは依然として厳しいと言わざるを得ない状況でございます。今後とも、必要な予算確保を初め、科学技術基本計画に掲げられました施策推進に努めてまいりたいと思っております。  なお、現行の科学技術基本計画平成八年七月に策定され、現在、平成十二年度までの計画期間のちょうど半ばを過ぎたところでございます。次の基本計画への当庁の取り組みといたしましては、科学技術会議の政策委員会の審議に資するため、関係省庁協力を得つつ、昨年末より基本計画の進捗状況調査等を行っております。  今後とも、現行基本計画に沿って一層の科学技術振興努力をしていくとともに、この調査結果の分析や科学技術会議における議論を踏まえまして、来るべき二十一世紀を見据えた施策を検討してまいりたいと思っております。
  136. 近江巳記夫

    ○近江委員 その点、レールを敷き、また実質それを前進させるということがもう一番大事なことでございます。幾らこういうことをやる、こういうことをやりますとうたったところで、裏づけになるものがなければこれは動かぬわけでございますので、これは本当に皆さんの英知を結集してレールを敷いていただいたわけでございますので、ぜひこれが滑らかに二十一世紀に向かって走るように、御努力をしっかりお願いしたいと思います。  省庁の大きな再編成がございますけれども、総合科学技術会議という形に今度はなるわけですが、しかし事務局はあくまでも科学技術庁長官、それから教育科学技術省ということになるわけですけれども、中心になられるわけでございますので、ぜひひとつ今後の御努力を強く要請しておきたいと思います。  それから、二〇〇一年、サイエンスイヤーの提案でございますけれども、これは前回にも私申し上げておりますけれども、二十一世紀の幕あけの年にふさわしい、エポックメーキングの大事業という形で展開をしていく。科学技術基本計画の最終年度に当たりまして、成果を集大成して第二次計画発展させる年である。また、文部省科学技術庁が合併して、科学技術教育が新たな展開を迎える年である。ノーベル賞ができて百周年の年である。臨海都市さいえんすワールド発足の年、それからロボリンピック、これが大阪、神奈川で開催がもう決定しておるわけでございます。  そういうような背景もございまして、先ほどの総理府のそういう調査等を見ておりましても、国民はやはり深い関心は持っている、持っているけれどもわからないことも多過ぎるというようなこともございまして、いろいろな点で、やはり触れ合う中で理解も深まるわけでございます。  また、子供たちの理科離れ、これは、長官御承知の風間晴子基督教大学準教授の論文等を見ておりましても、本当に肌寒い状況でございます。また今、大学に進学する中でも、受験制度にも大きな問題があろうかと思いますが、理科系に進む人は、生物、理科、そのうちの一科目を選びなさい。入ったところで、理科を選んでいない人が理系へ入っておる、だから大学では補習しなければもうどうしようもない、こういう状況もある。  いろいろなことを考えますと、やはり科学技術に対する深い深いそういう理解国民に求め、そしてまた皆さんの理解を得ていく、そういう中で前進すると思うのですね。そういう点で、二〇〇一年のこういう提案をしているわけでございますが、今、科学技術庁としては科学技術週間の中でいろいろなイベントもされているわけですけれども、この二〇〇一年を二十一世紀のスタートとしてとらえ、そういう方向で行かれるとするならば、もう既にここで助走を開始しなきゃならない。そうすると、今までのようなセレモニー的な、科学技術週間だからこういうことをやりますというような、ワンパターンと言えばこれはちょっと言い過ぎでございますけれども、ちょっとプラスしたぐらいの発想であってはとてもじゃないが、それを迎えることはできないと思うんですね。そういう点で、二〇〇一年をそういう方向で行くことについて長官がどのようにお考えか、また、行くとすれば、二〇〇一年を迎えるまでにどういう展開をしていかれるか、お考えがあればお伺いしたいと思います。
  137. 有馬朗人

    有馬国務大臣 二〇〇一年というのは確かに非常に重要な年であると考えております。ただいま御指摘のように、さまざまな点で特徴のある年でございますし、何といっても二十一世紀の最初の年であるということで、科学の上でも大いに利用しなければならない年だと思っております。  科学技術庁といたしましては、二十一世紀に向けて、今やっております青少年の科学の祭典などを充実させていったり、先ほど御指摘の副都心にできますさいえんすワールドを充実させていく。そして文部省の方の大学村や通産省とも協力をいたしまして、さいえんすワールドを盛り上げていくということに努力いたしたいと思います。それからまた、サイエンスチャンネルなどの試験的な放送をやりまして、特に若い人々の科学への好奇心をかき立てるような放送をしたいと思っております。さらにまた、ロボットのオリンピックでありますいわゆるロボリンピックをやるというふうなことを、形式的にやるのではなく、総合的に、体系的に推進していったらどうかと考えているところでございます。  二〇〇一年をサイエンスイヤーにしたらどうかという近江先生の御指摘につきましては、どういうふうに施策を実行すれば新しい世紀にふさわしいか、幅広くさまざまな御意見を賜りながら、よく検討させていただきたいと思っております。
  138. 近江巳記夫

    ○近江委員 新しい世紀がスタートをするに当たりまして、そのお考えといいますか認識というか、それは完全に一致しておるわけでございますね。もう一度その点を。
  139. 有馬朗人

    有馬国務大臣 新しい年であり、その際に、国民科学技術への好奇心なり興味を大いに引くということで、重要な年であると考えております。
  140. 近江巳記夫

    ○近江委員 今長官から幾つかのお話がございましたが、そのほかとして、私もいろいろ、ちょっとメモ書きしてみたのです。  今も何日間かはやっておるかもわかりませんけれども、例えば国立科学博物館だとか科学技術館、また地方にも数多くのそういう関連の施設もございます。そういうところで無料開放もし、その機会にやはり子供たちもどんどん見学に来てもらう。そういう期間も、従来にない期間も設定して、そして触れ合いの多くの門戸を開いていただく。こういうものをぜひ考えてもらえればと思いますし、あるいは大学、国立研究所の科学技術関連研究施設の開放も、一部なさっておるようでございますが、全面的な開放を期間を決めてやっていただくということ。  それから、科学番組も、やはりうんとやり方も変えて、中身を充実していただいて、皆さんが深く理解できる内容にしていただくということでございます。この世論調査を見ましても、何が一番深く科学に関連し理解できたかというと、テレビなんですね。やはり映像なんですね。そういう点で、これはテレビ、ラジオを初めとしてあらゆるメディアを通じて、どんどんと国民との交流を図っていただく。  それからまた、サイエンストレーン。小中学生を対象にして、いわゆる行き先不明のサイエンストレーンを運行して、科学技術関係施設を見学してもらうとか、勉強してもらうとか、そういうふうなこと。あるいはサイエンススカウトの開催。これは、夏のサイエンス合宿を拡大しまして、ボーイスカウト、ガールスカウトとタイアップして開催するとか、あるいは科学の日を制定すればどうかというようないろいろな声も、私懇談しておりましたら出ております。  あるいはまた、日本版ミニノーベル賞。現在科学技術庁長官が授与されております長官賞のような、いろいろあるわけでございますけれども、世相を反映した科学大賞を設定して贈るというようなこと。考えていけばいろいろなこともできると思うんですね。  そういう点、今長官も、二〇〇一年に向かってぜひやりたいということでございますので、うんとひとつ、科学技術庁中心とされて、英知を結集されて大きな盛り上げを図りながら、二十一世紀科学技術創造立国へのスタートを切れるようにぜひ努力をしていただきたいと思います。  私が今何点か御提案申し上げましたけれども、これにつきまして、長官からお伺いしたいと思いますし、また、関係局長がもし御意見があれば、感想があれば、ひとつ長官とともに御答弁いただきたいと思います。
  141. 有馬朗人

    有馬国務大臣 ただいまいろいろ興味深い御提案を賜りました。  特に私はその中でも幾つか大いに興味を持ちましたのは、科学博物館、科学技術館等々をより広く子供たちに開放するということ、それからまた、国立研究所なり大学なりの研究機関を子供たちに特に見せる、国民にお見せするというふうなこと、これはすぐにでもできることでございますので、大いに努力をさせていただきたいと思っております。  それ以外に、いろいろとお考えいただきましたことの中には、先ほど私が申し上げたようなことにも大いに関係したことがございますので、ぜひとも今後ともさらに検討させていただきたいと思っております。
  142. 田中徳夫

    田中政府委員 それでは、簡潔にお答えを申し上げます。  今いろいろ先生の方から御提案いただきました。  それから、四月に科学技術週間を、御指摘のように昭和三十五年から毎年やっております。実はことしから三年間につきまして、先ほど来御指摘のように、非常に重要な期間であろうという認識のもとに、一九九九年、二〇〇〇年、それから二〇〇一年に向けまして、三年間を科学技術国民理解増進するための重点的な期間ということでとらえて進めてまいりたいということで、既にことしの科学技術週間からスタートしたいと考えております。  したがいまして、個々の御提案につきましては、私どもまたよく研究させていただきたいと思いますが、そういうつもりで進めてまいりたいと考えております。
  143. 近江巳記夫

    ○近江委員 では、今長官局長から御答弁ございましたように、英知を結集して鋭意盛り上げを図っていただきたいと強く要望いたしておきます。  それから、きょうは非常に限られた時間でございますので、あと一、二点お伺いしたいと思います。  ちょうど長官が理研の理事長をされておりましたときに座長として諮問を受けられまして、平成七年に発行されました「スペシャリストへの道」、これを出された。  これは今他の委員からも、鍵田さんでしたか、お話がございましたが、偏差値教育の中で、優秀な子でありながら専門高校へ進んで進学の道も閉ざされておるというような、非常にそういう一面もございました。そういう中で、陰にあったような当時の職業高校、今の専門高校、その子供たちが、有馬先生が出していただいたこの「スペシャリストへの道」、これは大変大きな好影響を与えまして、各学校当局の取り組みも大変強いものが一歩一歩見られるわけでございます。  そういう中で、例えば入試の問題につきまして、推薦入学制度、特別選抜というものをここで出していただいて、文部当局として、これはその方向でいこうということが決定されたわけであります。こういうすばらしい案を先生がお立てになり、政府決定になったわけですね。これは中間答申が平成六年に出ているわけですから、既に大学当局も知っておるわけでございまして、当然平成七年からスタートが実際進んでいるわけですね。  ところが、今日までのこの実態。きょうは時間があれば各大学全部名前を言いまして、全然協力していないということを私は申し上げたいと思いますが、時間的に余裕がありませんのでこれはしませんけれども、大学の専門高校の入試に関して、今日までの時点で特別枠を設けている大学、設けているところ、国立大学では推薦を設けておるのが三十八校です。特別選抜をやっておるところは四校です。両方、推薦と特別選抜とやっておるところが六校であります。公立大学につきましては、推薦をやっておるところが十五校、特別選抜をやっておるところは一校です。両方やっておるところは一校もありません。国公立合計で、推薦入学をやっておるところは五十三校、特別選抜をやっておるところは五校、両方やっておるところが六校、こういう現状です。  ですから、なさっている大学は、例えば新潟大学とか二、三の学校に聞いたことがございますが、非常に優秀だ、大学院に進んでもトップレベルにあるのは専門高校から来た子供だ、こう言っておるんですよ。そういうように埋もれた人材がいっぱいいる。この理工系離れの中でこういう道を開かれたわけですから、現実に大学なりそういうものが、私学もやっておるところとやっていないところがございますけれども、一段と、やはりこれから二十一世紀人材育成の意味におきまして、大きく敷いたレールの上をスムーズに滑るように運行するように、ぜひ力を入れていただきたいと思うんです。  これは、スペシャリストへの道をつけていただいた有馬長官に、現状をかんがみての感想並びに今後どうされるか、お伺いしたいと思います。
  144. 有馬朗人

    有馬国務大臣 確かにまだ大学の方の受け入れ態勢が不十分でございますけれども、その計画を出しました五年ほど前に比べますと、はるかに大学側の理解が深まってまいりました。その点はありがたいと思います。  その答申を出しました前後に国公私立の大学長たちにお願いいたしましたときには、専門高校、すなわち昔の職業高校を出た子供たちは残念なことに一般教養が足りないんだ、だからその人たちを教育するのは極めて大変なんだ、だから余り喜んでは受け入れないんだというような反応がございましたけれども、近ごろは金の卵であるという認識に変わりつつあります。そういう意味で、まだまだ不十分でございますけれども、昔に比べてはるかにその点の理解が深まったことを私は大変うれしく思っております。  それからもう一つは、先ほどもちょっと申し上げたのでありますが、ことしの東京都の中学校の生徒の進学希望を見ますと、かつての職業高校、すなわち現在の専門高校への志望者が非常にふえてきているということを大変うれしく思っております。  なお、さらに、大学側の受け入れがどうか、あるいは初中局としてどういうふうに考えているかというふうなことにつきましては、きょう初中局長も見えていますので、お返事を申し上げます。
  145. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 時間も迫っておりますので、大臣の御答弁に一点だけ補足させていただきたいと思います。  これまで、ややもいたしますと、農業、工業、商業、水産、看護といった勉強をした学生たちにつきましては、大学のサイドからだけの見方、それも普通科高校をある意味で基準にいたしまして、そこで、こういう点は不足している、こういう点が不十分だという、ある意味でマイナス、減点的な見方が大学関係者に大変多かったんではないかと思います。  しかし、私ども、専門高校は普通科高校と違ってこういうプラスがあるということ、それがスペシャリストへの道ということであるわけでございますけれども、そういうことで、普通科高校も専門高校も総合高校もそれぞれ個性を持った学校である、それぞれが特色を競い合う学校である、こういうことで私ども大学関係者に訴えてまいりました。近年は、大臣の先ほどの御答弁にもございましたように、そういう見方が広まってまいりました。私ども、大学の人たちにもっともっとお願いしたいという点もあるわけでございますけれども、そういう方向でどんどん進んでいることは事実だと思います。  私ども、専門高校のよさ、総合高校の特色といったものをより積極的に大学関係者に広報いたしまして、大学入試の点におきましてもさらにこうした配慮が進みますように努力をしてまいりたい、こんなふうに思っております。
  146. 近江巳記夫

    ○近江委員 要するに、国公立大学の中でもう四、五年もたつのにただの一人も受け入れないということは私はおかしいと思いますよ。ですから、協力を依頼するというだけの姿勢ではなくして、この委員会におきましても私は何回もこの問題も取り上げてきておるわけですから、誠意を持って大学当局はこれを真摯に受けとめて検討するように、強くこれはさせていただきたいと思います。また今度、次の機会にフォローしますから、申し上げておきます。  それから、もう時間がありませんので、きょうは関係者も来ていただいたので、簡潔で結構です。  ことしは国連の高齢者年でございます。そういう中で、私はずっとがん対策を取り上げてやってまいりました。第二次のがん対策十カ年戦略の中間期に入っておりますが、これをさらに努力していただきたいという強い要望。  それからまた、先ほどの世論調査の中で、特に宇宙、海洋が取り上げられておりました。これについては、長官は、フロンティア開拓とかいろいろな意味もございまして——宇宙開発事業団はことしで発足ちょうど三十周年になりますね。先般、宇宙飛行士の向井さんもお見えになり、大変な夢と希望、大きな感動を日本じゅう、世界じゅうに広げてくださったわけでございます。  そういう意味で、この三十周年を契機にさらに宇宙開発、海洋開発等につきましては、政府としてうんと力を入れる必要があるのではないかと思いますし、また、三十年を契機に何らかの検証といいますか、そういうこともお考えになったらどうかと思います。  以上二点につきましてお伺いして終わります。
  147. 工藤智規

    ○工藤政府委員 お答え申し上げます。  御案内のとおり、がんの関係につきましては、昭和五十九年から対がん十カ年総合戦略という計画を立てて、各省庁協力してまいったわけでございますが、平成六年からは、がん克服新十カ年戦略ということで、私ども文部省、科技庁、厚生省、各省庁協力しながら、研究面のみならず普及啓蒙あるいは連絡会の開催、人事交流等を行ってきているわけでございます。これまでに幾つか新しく発見された知見もございますけれども、さらに連携を密にしながら、がんの克服のために努力を続けてまいりたいと思っております。  それから、宇宙開発関係についてのお尋ねがございました。  NASDAで行っております宇宙開発関係のほかに、宇宙開発基礎研究につきましては大学等の研究機関を中心に行わせていただいているわけでございます。昭和三十年に日本で初めてペンシルロケットが打ち上げられてから相当になるわけでございまして、財政事情厳しい中でやりくりしながら、欧米諸国に比べますと随分少ない予算で、かなり効率的といいましょうか、画期的な成果も上げながら研究者は頑張っているわけでございますので、今後の日本の宇宙科学の振興のためにさらなる努力を続けてまいりたいと思っております。今後とも御指導よろしくお願いいたします。
  148. 有馬朗人

    有馬国務大臣 いろいろな御指摘でございました。  高齢者年にどうするかというふうなこと、これは、科学技術庁といたしましては、高齢者で特に問題になりますのはやはりがん対策でございます。今、工藤局長がお答えしたようでございますが、平成六年度から始まったがん克服新十カ年戦略のもとで、厚生省、文部省と連携いたしましてがん克服に向けて研究開発を進めているところでございます。それからまた、科学技術振興調整費を利用いたしまして、高齢者が社会参加しやすくなるための福祉機器の研究開発などを推進いたしております。こういう点で、科学技術を高齢者の方々に大いに役立てたいと思っております。  それから、対がん十カ年の戦略は、ただいま工藤局長よりお返事申し上げましたが、具体的には、三次元画像を用いた新しい早期診断法の開発であるとか、内視鏡によるがん切除などの患者に負担の少ない治療法の開発など、がん克服に向けて着実な成果を生み出しております。  科学技術庁におきましては、放射線医学総合研究所におきまして、重粒子線がん治療の臨床試行を平成六年度より開始したところでございまして、また理化学研究所におきましては、がん遺伝子に関する研究など、基盤となる研究開発を積極的に推進いたしております。今後とも、関係省庁と連携協力しつつ、がん克服新十カ年戦略のもとで、がん克服に向けて一層の努力をさせていただきたいと思っております。  宇宙開発に関します現状と予算についてでございますが、我が国におきましては、宇宙開発委員会が定めました宇宙開発政策大綱を指針といたしまして、人工衛星打ち上げ用ロケットや各種人工衛星等の開発推進いたしております。  宇宙開発に関する予算につきましては、平成十一年度予算政府原案におきまして、HIIAロケット開発国際宇宙ステーション日本の実験棟JEMの開発、陸域観測技術衛星ALOS、月周回衛星SELENEの開発などのプロジェクトの推進を図るための所要の経費といたしまして、各省庁で合計、対前年度比一・八%増の二千五百二十億円を計上しているところでございます。  こういう意味で、宇宙開発重要性にかんがみまして、我が国宇宙開発の円滑な推進が図られるようさらに所要の予算確保に努めてまいる所存でございます。
  149. 近江巳記夫

    ○近江委員 それでは終わります。  ありがとうございました。
  150. 北側一雄

  151. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 自由党の菅原喜重郎でございます。  まず、有馬長官に質問をさせていただきます。  大臣所信表明の中にも、科学技術進展に伴う生命倫理の問題について鋭意その検討に取り組むという決意のほどを伺いましたので、何点か倫理問題に関する質問をさせていただきます。  科学技術がますます高度なものとなるに従って、一般の国民には、科学技術に対して理解できず関心を失っている人がふえているのを心配させられるわけでございます。このように、科学技術発展社会や人間から遊離していくことは危惧すべきことでもあると思います。このような問題については、根本的な解決方法というのは簡単に見つからないと思いますが、科学技術にかかわる側の研究者等においては、少なくとも人間としての倫理観を持って研究開発に取り組むということが不可欠であると思います。  科学技術に携わる人の倫理観が問われている例として、クローン問題を初めとする生命倫理問題が挙げられます。クローン問題については、その対応について何度か質問をしてきたところですが、政府はそれに対しまして、国民の意見聴取の結果等を踏まえて、科学技術会議生命倫理委員会クローン小委員会において専門家によってさらに検討を進めるという答弁でありました。  その真偽のほどは明らかではないのですが、ヒト胚性幹細胞といういわゆる万能細胞が発見されたとの報道もあります。これらの生命倫理にかかわる技術は、使い方によっては極めて有益であることもありましょうが、それだけに、今後の研究の進め方については大変慎重さが要求されるものであります。  つきましては、まずクローン技術のヒトへの応用に関する規制の問題についての検討状況と、クローン技術以外に問題となっている、ヒトの胚を使った研究等に関する生命倫理問題についてどのような取り組みをしていくのか、お伺いいたします。
  152. 有馬朗人

    有馬国務大臣 クローン技術につきましては、人間の尊厳を初めとするさまざまな観点から議論を尽くす必要があると思います。政府といたしましては、ヒトのクローン個体の産生に関する研究に対して政府資金の配分を差し控える措置を講じております。  また、科学技術会議生命倫理委員会クローン小委員会、これは先ほど御指摘の委員会でございますが、この小委員会におけるこれまでの検討において、ヒトのクローン個体の産生は禁止されるべきであり、そのため、国による公的な規制が必要であるとする考え方が中間的に取りまとめられているところでございます。  現在、この中間報告に対する国民の意見公募の結果を踏まえまして、規制の対象及び規制の手法などについて、さらに同小委員会において検討を行っております。できるだけ早急に結論を取りまとめてもらいたいと考えております。  さらに、ヒト胚性幹細胞につきましても、その研究の急速な発展に伴い、生命倫理の側面から審議を行う必要性が高まってきたところから、昨年十二月に生命倫理委員会のもとにヒト胚研究小委員会が設置され、検討が開始されたところでございます。  これらクローン技術を初めとするさまざまな生命倫理にかかわる問題につきましては、国民の幅広い意見を十分に踏まえ、国民全体としての共通認識が形成されていくことがまず重要であると考えております。今後とも、そのような観点から、生命倫理委員会等での検討を進めてまいりたいと考えております。
  153. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 次に、輸送容器データ問題についてですが、この委員会において昨年来論議のあったところであり、昨年十月に原燃輸送株式会社の所有する使用済み燃料輸送容器の中性子遮へい材のデータが改ざんされていた問題が明らかになりました。その後、国においては、使用済燃料輸送容器調査検討委員会を設置し、十二月三日には報告書が取りまとめられております。  私は、この問題の根底にも、先ほどのクローンの問題とはかなり違うものではありますけれども、科学者、技術者の人間としての倫理の問題があると考えております。この報告書において、データ改ざんは技術者及び企業のモラルに大きくかかわるものと指摘されております。  そこで、使用済み燃料輸送容器のデータ問題に関し、技術者及び企業のモラルが大きくかかわるものと指摘されていることについて、大臣の認識をお伺いいたします。
  154. 有馬朗人

    有馬国務大臣 まず、今回のデータ問題に関しましては、使用済燃料輸送容器調査検討委員会において、先ほど御指摘のように、昨年十二月三日に報告書が取りまとめられたところでございます。  この報告書では、原子力分野においては、安全確保重要性にかんがみ、高いモラルの保持なくしては、社会からの信頼を損ない、みずからの存在基盤にも影響を与えることになることを十分自覚すべきであると指摘されております。また、企業における倫理に関する社員教育、技術者個人の適切な自己啓発、その他モラルを向上するための活動を組織的かつ持続的に行うことに最大限の努力を払うべきだとされております。  私といたしましても、原子力に携わるすべての人々が本報告書の趣旨を体して、倫理観を厳しく持ち、一日も早い信頼性の回復に当たっていくことが重要であると考えております。今後とも、関係者の取り組みが真に実を上げるものとなるよう、全力を傾けて指導監督をしてまいりたいと存じております。     〔委員長退席、斉藤(鉄)委員長代理着席〕
  155. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 次に、科学技術者の倫理観についてもですが、現行の我が国においては、さまざまな分野で倫理観が失われているのを心配されるわけです。私は、このことに対しては、日本が民主主義導入について大きな見落としがあったからだと思っております。  それは、民主主義は個人の信頼の上に成り立つ原理原則をもって社会の安寧秩序を図っていく、確立していくという制度でもありますが、その個人の信頼を打ち破るものは犯罪でありますから、個人の自由、基本人権といいましても、それは犯罪以外の自由であり基本人権であります。犯罪はこれらの特権を放棄させるわけであります。それが、日本では基本人権が絶対化されて教えられている。外国では犯罪に対して自由剥奪罪という罪状で対応しているのに、日本ではそれが名目で行われていない。  このようなことを考えますと、オウム真理教の有能な科学技術を学んだ人間も簡単にマインドコントロールにかかってしまうわけですから、科学技術においても、倫理面で取り返しのつかないようなことにならないようにしてほしいと思うわけであります。  そこで、倫理は教えて身につくものではありませんが、科学技術庁長官文部大臣と兼務されていることでもありますから、科学技術者の倫理観の醸成についての所見をお伺いいたします。
  156. 有馬朗人

    有馬国務大臣 科学技術社会と密接な関係を有している現在、科学技術者も社会の一員としての強い倫理観を持つことが非常に重要なことと認識しております。  御指摘のとおり、倫理観というのは短期的な取り組みにより簡単に醸成できるものではございません。また、学校での教育だけで十分身につくものでもございません。まず学校の教育、さらに加えて幼少時から青少年期にかけての家庭教育や、さまざまな社会的経験等を通じた人格形成過程で醸成されるものと認識しております。  学校での道徳教育などをさらに充実すべきだと私は考えておりますが、こういうさまざまな努力が積み重なって初めて、科学技術者がしっかりした倫理観を持つに至ると思っております。  しかしさらに、多くの科学技術者が科学技術者としての歩みを始めますのは大学や大学院においてでございますので、大学や大学院においては、科学技術の高度化や学問領域の細分化等が進む中で、やはり豊かな人間性や高い倫理観を有する人材養成するべく、幅広い視野を与えるような工夫改善に取り組んでいく必要があると考えております。  今後とも、家庭、学校、社会等のあらゆる場面で、特に科学技術者の倫理観の向上が図られていくよう取り組んでまいりたいと考えております。
  157. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 次に、これまでも委員会でたびたび取り上げてきました高レベル放射性廃棄物の件について質問いたします。  高レベル放射性廃棄物の処分については、原子力開発利用を進めていく上で早急に解決しなければならない最も重要な課題であると以前から主張し続けてきているところでございます。  政府方針では、二〇〇〇年をめどに処分事業の実施主体を設立し、その後、処分地の選定を行い、二〇三〇年代から遅くとも二〇四〇年代半ばまでには処分事業を開始するとされています。  私はそれまでは生きられない年齢にありますが、しかし、この方針に従って着実に処分事業の具体化を図っていくことは非常に重要であると考えます。  国会で質問した際に、高レベル放射性廃棄物の処分の具体化についての認識や決意についてはこれまでも歴代の大臣に確認し、現在の方針に従って着実に具体化を図っていくとの答弁をいただいてまいりました。このたび新しく大臣に就任された有馬大臣原子力の玄人であるし、高レベル放射性廃棄物の処分の重要性については十分御認識であると思いますが、見解をお伺いさせていただきたいと思います。
  158. 有馬朗人

    有馬国務大臣 高レベル放射性廃棄物の処分というのは、原子力開発利用の上で最も難しい問題の一つと私も強く認識いたしております。  その処分対策につきましては、昨年五月に取りまとめられました原子力委員会の高レベル放射性廃棄物処分懇談会報告書及び昨年六月の高レベル放射性廃棄物処分推進に関する原子力委員会決定を受けまして、現在、処分の具体化に向けた取り組みが進められているところでございます。  まず、事業の具体化に向けた取り組みに関しましては、通産大臣の諮問機関である総合エネルギー調査原子力部会において、処分費用の合理的見積もり及び処分事業のあり方について、先月、報告書案が取りまとめられました。現在、国民の方々に意見を求めるとともに、全国各地で意見交換会を開催していると承知しております。  研究開発につきましては、地層処分の技術信頼性を明示し、処分予定地選定及び安全基準の策定に資する技術的よりどころを提示する第二次取りまとめを本年中に作成することといたしており、核燃料サイクル開発機構から昨年九月に第一ドラフトが公表されております。引き続き、サイクル機構を初めとする研究機関において研究開発を鋭意進め、本年春には第二ドラフトを公表し、国際レビューを経て、最終的に取りまとめる予定でございます。  安全規制につきましては、原子力安全委員会において、処分に係る安全確保の基本的考え方について調査審議が進められているところでございます。  今後とも、原子力委員会で示されました方針に基づきまして、国民の皆様方の幅広い理解を得ながら、二〇〇〇年を目途の実施主体の設立等処分事業の具体化に向けて、関係機関が一体となり、着実に取り組んでまいりたいと思っております。     〔斉藤(鉄)委員長代理退席、委員長着席〕
  159. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 御答弁のように、今後とも処分事業の着実な推進をお願いいたしますが、実施主体の設立等の制度整備あるいは技術課題解決に向けた研究開発を進めていくことが重要なことは言うまでもありません。  最も大きな問題は、最終処分地の選定であると思います。この処分地の選定は、地元はもとより、国民理解協力なくしては進められないものであり、そのため、情報公開を徹底し、透明性を確保し、関係自治体や関係住民の意見を十分反映させるための体制の整備が重要であることは、これまでもたびたび指摘してまいりました。  また、このような取り組みの中で、安全性に対する社会的な理解を得て、むしろ地元から誘致の要請を受けるくらいの体制で選定を行っていく必要があると考えます。  そこで、このような積極的な情報公開、透明性の確保など、地元が競って最終処分地を誘致するような体制づくりに向けた取り組みについて、大臣の認識をお伺いいたします。
  160. 有馬朗人

    有馬国務大臣 処分地の選定につきましては、二〇〇〇年をめどに設立される実施主体が行うこととなりますが、昨年五月に取りまとめられました高レベル放射性廃棄物処分懇談会報告書においても述べられておりますが、処分地の選定を円滑に進めるためには、情報公開を徹底する、透明性を確保するとともに、関係自治体や関係住民の意見の反映に努め、立地地域理解信頼を得ることが極めて重要であると認識いたしております。  また、処分を進める上で、将来の立地地域のみならず、今から国民的な理解を得るための努力を重ねることが重要であり、このため、放射性廃棄物処分に関する情報を提供し、広く国民各層の間での議論を喚起すべく、昨年十二月から各地で放射性廃棄物シンポジウムを開催しているところでございます。  科学技術庁といたしましては、二〇三〇年代から遅くとも二〇四〇年代半ばまでの高レベル放射性廃棄物の処分場の操業開始の実現に向け、処分事業に係る情報公開を積極的に行うことにより、国民の皆様の幅広い理解を得つつ、関係機関一体となった着実な取り組みを進めてまいりたいと存じます。
  161. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 昨年の使用済み燃料輸送容器のデータ改ざん問題等により、原子力に対する国民信頼は著しく損なわれたと思います。原子力推進に当たっては、国民理解協力が不可欠であり、このような事態は大変憂慮すべきものであります。国民信頼の早期回復のためには、まず、政府原子力関係者は積極的な情報公開を行い、透明性を確保することが必要であることは言うまでもありません。  そこで、原子力の情報公開についてどのように取り組んでいるのか、また、原子力円卓会議においてはどのような意見が出ているのか、この円卓会議は、国民が意見を述べる場が設けられたことでもあり、評価すべきと思っておりますので、このことについて御意見をお伺いいたします。
  162. 有馬朗人

    有馬国務大臣 原子力開発利用に当たっては、国民理解信頼を得ることが不可欠でございます。そのためには、核物質防護等に係る一部の情報を除き、原則としてすべての情報の公開と、公開される情報の迅速かつわかりやすい提供を通じ、透明性を高めていくことが重要と認識いたしております。  このような観点から、使用済燃料輸送容器調査検討委員会の審議を公開のもとに実施したところでございます。また、既に平成八年度より、原子力委員会及び原子力安全委員会において、本委員会や専門部会等の会議の原則公開、専門部会等で報告書を取りまとめる際に国民の意見を反映するなど、政策決定過程の透明性を高めるとともに、広く一般に情報を提供するため、原子力公開資料センターの設置など、さまざまな取り組みをしてまいりました。  今後とも、このような努力を徹底するとともに、原子力関係者一同が情報公開の重要性を改めて肝に銘じ、原子力行政に対する国民信頼を確立するために最大限の努力を傾注すべきであると考えております。  なお、原子力政策円卓会議につきましては、これは原子力局長よりお返事申し上げます。
  163. 青江茂

    ○青江政府委員 円卓会議状況につきまして御説明を申し上げます。  御案内のとおり、原子力委員会におきましては、昨年の七月の段階をもちまして新たな円卓会議というものをスタートさせようということの決定がなされまして、これを受けまして、昨年の九月からこれまで五回にわたりまして円卓会議というものが持たれてきてございます。  その中におきましては、エネルギーの中におきまして原子力というものが果たすべき役割というのは何か、すなわち、一回目、二回目の段階におきまして、今なぜ原子力問題なのかという一番スタートの議論、一番根っこの議論からスタートいたしまして、立地地域の問題、いわゆる消費地と立地地域の共生といったものを、それぞれの地域から出ていただきまして御議論もいただきました。  それから、今御指摘いただきました情報公開というものをどのようにさらに改善を進めていったらいいのか、それから、原子力全体についてのマネージングの体制のあり方、こういったことにつきまして、種々の角度から御議論が今日までなされてきておるという状況でございますが、その議論の取りまとめにつきましては、今、モデレーターの方にお願いをしてございまして、できれば本年度末までに、これまでの五回までの議論というものを取りまとめていただけるというふうなことで、今、作業を進めていただいておるという状況にございます。  今後、モデレーターの方からの御提言をいただく、それに対しましては、当然のことながら、原子力委員会はいわゆる政策形成に反映させるというふうな運びになろうかというふうに思ってございます。
  164. 菅原喜重郎

    ○菅原委員 質問通告の残余につきましては、時間が来ましたので次回に回しまして、今回はこれにて終了させていただきます。  ありがとうございました。
  165. 北側一雄

    北側委員長 吉井英勝君。
  166. 吉井英勝

    ○吉井委員 私、日本共産党の吉井英勝でございます。  私は、けさの大臣所信にもありました原子力の問題と、それから宇宙の研究開発の問題について、きょうは質問をしていきたいと思います。  それで、動燃の方にも参考人として来ていただいておりますので、最初に、原子力関係から聞きたいと思います。  日本原燃の六ケ所ウラン濃縮工場の遠心分離法を使った機械というのは、動燃の人形峠事業所で開発されたもので、一度運転を始めたらメンテナンスフリーで、定期的に運転をとめての点検をする必要がないものだということでありますし、また、動燃の人形峠事業所では、ウラン濃縮原型プラントは、これは八九年五月の全面運転開始以来、九〇年七月十七日に起こった落雷による停電事故を除けば、DOP1もDOP2もともに連続運転をしてきた、そういう実績のあるものというふうに伺っておりますが、人形峠の方の実情をまず伺っておきたいと思います。
  167. 岸本洋一郎

    ○岸本参考人 核燃料サイクル開発機構の岸本でございます。よろしくお願いいたします。  それでは、ただいまの御質問に対してお答えいたします。  旧動燃、現在サイクル機構でございますが、遠心法の濃縮技術による原型プラントを、現在、人形峠でございますが、そこに建設いたしまして、昭和六十三年より運転を行っております。  運転実績といたしましては、当初、原型プラントの規模といたしまして二百トン。トンという単位は、濃縮の場合特別の単位でございまして、分離作業量というものをトン数であらわしておりますが、商業化に至る手前のプラント技術を確認する、あるいは、遠心機の量産技術を確立する等の目的によりまして原型プラントを建設いたしまして、規模といたしまして二百トンのプラントを建設いたしました。これは二つの運転単位に分かれておりまして、百トンずつ建設いたしました。  それで、それ以来十年余にわたり運転を続けておりますが、途中で運転を停止したというのは、先ほど先生御指摘のあったように、落雷による電源の供給停止によって短期間でございますが停止したということがございまして、そのほかには、原型プラントでの目的の一つに、回収ウランを再濃縮するというようなこともやっておりますので、そのために、供給する原料を一時停止して、天然ウランの原料から回収ウランの原料に切りかえるといったようなこともやっておりまして、そのために、原料を供給しないというようなことも途中に三回ほどございましたが、いずれにしましても、そういった期間を除けば連続的に運転をしてきてございます。  そもそも、この濃縮プラントの技術の設計の基本的な考え方といたしまして、遠心分離機そのものについては停止をしない、あるいは、メンテナンスのために停止をするということはしないという考え方で、できるだけ長期間、連続に運転するということを目標として掲げてきてやってございます。  現状、概略は以上でございます。
  168. 吉井英勝

    ○吉井委員 今おっしゃったように、メンテナンスフリーでずっと連続運転をされてきたというものですが、お話ありましたように、二百トンSWUパー・イヤーの能力ですから、九年九カ月間の運転、わかっている分だけトータルすれば、千九百五十トンということになるわけです。これに、弗化ウランに換算すると、当初は三%ウランで考えていらっしゃったから〇・三四三を掛ければいいし、最近のことですと、四%ウランを仮に考えるとすると〇・二五四ということになりますが、三%ウランへの濃縮で当初考えていらっしゃった。それでいくと、この間に六百六十九トン生産されたということになるわけです。  人形峠の濃縮ウランの生産実績は、サイクル機構からいただいた報告によれば、ウラン換算で三百十トン。ですから、六弗化ウランに換算すれば四百五十八トンということで、稼働実績率としては、公称能力に対する実績率としては六八・五%ということになってくるから、これは公称能力からするとかなり低い値ではないかと思うのですが、これはどういう事情によるものですか。
  169. 岸本洋一郎

    ○岸本参考人 ただいまの御質問でございますが、公称能力といいますか、当初の、先ほど申し上げました二百トンという能力は設計上の最大定格値でございまして、運転を始める前に、一体どのぐらいを、プラント全体の稼働能力といいますか、プラント全体の能力として達成するべき目標とするかということを検討した結果として、例えば二百トンですと十年間運転すれば二千トンになるわけですが、当初、運転開始前に約千七百トン程度を達成目標としようと。これはさまざまな理由がございます。遠心機そのものがだんだん故障してとまっていくということもあるし、プラント機器の故障もございます。総合的にそうしたリスクを考えて、約八五%というか、千七百トン強を目標でスタートいたしました。  この間、十年間運転を続けた結果、十年余になりますけれども、昨年の十二月末現在で千七百八十七トンほどになっております。さらに運転を続けておりますが、運転開始から十年間というところで見ますと、千七百トン強という実績になっております。  御指摘の中に、製品のウランを何%ぐらいのものをつくるか、それから、テールと申しまして、廃棄する方のウランを何%ぐらいにするかということによってトン数が変わりますけれども、大まかに申しますと、各電力さんの需要に対応して、平均して四%程度の製品を出しております。  それから、廃棄濃度と申しまして、製品にしない方のものについては〇・二五%程度、お客様によって差がありますが、そういったことで製品を出荷しているという実績でございます。
  170. 吉井英勝

    ○吉井委員 大体、我々に説明されているところでは、公称能力二百トンといえば、これは設計にある程度余裕を持たせて、最終的に二百トンを保証するというのが、私もメーカーで、技術屋で担当しておって、大体、能力出なかったらこれは問題になるわけで、余裕を持って設計しているんですよ。二百トンということでやってきて、今になって、いや、あれはもともと、十年たってみれば百七十トン分でしたというような話は、全然そういうことは国会の方は聞かされてないわけですよ。  それで、その間、メンテナンスフリーで大丈夫なんだ、ずっといっているんだと。今の能力も平均すれば四%だろうということですが、それは、最近はそうなんだけれども、早い時期は三%なんですよ。それでいくと六八・五%。後の方の時代で四%ウランにかわってきますと、それに対する率であればもう少し上がるのは確かなんです。  しかし問題は、では、連続運転でやってと言ってきたんだが、途中とめておったのかといったらそうでないというお話がさっきありましたから、そうすると結局、この遠心分離機が働かなくなってきているという問題ですね。現在、遠心分離機が何台停止していて、それは何%に当たるのか伺いたいと思うのです。
  171. 岸本洋一郎

    ○岸本参考人 そもそもの考え方は、遠心分離機のメンテナンスフリーという考え方は、最初に設置した機械がすべて十年あるいはその目標とする期間動くということではなしに、だんだんと故障していきます。故障したものを取りかえるという方式をとるのではなくて、それはそのままにしておいて、全体としてプラントの能力を維持していきます、こういう考え方でございます。  ですから、設置した当初は当然新しい機械が一〇〇%動いてございます。今現在はそれが何割かダウンした状態で動いております。そういうことでございます。(吉井委員「だから何台」と呼ぶ)停止した台数としては、昨年の十二月末までに原型プラント全体で三千二百六十台停止してございます。
  172. 吉井英勝

    ○吉井委員 それで、何%になるのかということを伺っておきたいのですが、毎年度の生産実績は、さっきも言いましたように二百トンという公称能力に比べて大分落ちているわけですよ。いただいた九七年度のデータを見ていますと、これは二百トンで計算すれば、六弗化ウラン換算ですが、仮に四%のウランとすると五十・八トン、三%だったら六十八・六トンということですが、その運転能力に対して実績値が三十七トンなんですね。つまり、これは五三・九%。四%ウランでいったとするともう少し率は高くなりますが、いずれにしても、これは遠心分離機の相当数が破損して、運転停止して働かなくなっている、そのことがはっきり出ていると思うのですよ。  だから、仮に五三・九%の実績値であったとすると約四六%は働いていないわけだから、さっきおっしゃった三千二百六十台というのは、つまり四六%ないしは四〇%、全体の分離機の四割ほどが破損していたのかとか、あるいは三割が破損していたのかとか、いずれにしてもかなり大きな部分が、遠心分離機はこのプラントで心臓部になるわけですね、破損していたということになるのですが、この三千二百六十台というのは何%に当たるのですか。
  173. 岸本洋一郎

    ○岸本参考人 繰り返すようで恐縮ですが、そもそも破損を想定しているというプラントでございます。破損するということを想定している。取りかえて新しくするのではなくて、それはそのままにして運転できるようなプラントになってございます。  三千二百六十台が多いか少ないかということのようでございますけれども、それは我々としては当初想定した範囲を性能として達成しているというぐあいに考えておりまして、特にそういう意味で問題とは考えてございません。  お尋ねの何割かということでございますが、およそ何割かということは申し上げられるのですけれども、細かい数字につきましては、これは、我々としてできれば申し上げたいけれども、核不拡散上の機微な情報につながり得るということで、そこの数字については今まで慎重に対処しておるというところでございます。
  174. 吉井英勝

    ○吉井委員 動燃の方で、プラントで例えば七千台の遠心分離機を使ったとか、これは途中経過の段階にしろかなり最近のものですよ、発表している数字だってあるのですよ。仮に七千台に対して三千二百六十台となれば、物すごい破損率になりますね。仮に一万台の遠心分離機の中の三千二百六十台としても、三割が壊れておった。これは、大臣は御専門だからぴんときていらっしゃると思うけれども、大体心臓部の三割が機能停止、そういう状態で、最初から想定していましたと今になって気楽なことを言われては、私はこれは大変だと思うのです。  確かに、機械的故障とかそんなので、仮に一万台の遠心分離機があって、まあ五台や十台は、八年、九年運転しておったらあるでしょう。ひょっとしたら百台ぐらいいっておるかもしれないけれども、しかし、三千二百六十台も遠心分離機が、最も心臓部ですよ、これが破損しておって、では逆の聞き方をしますけれども、これは深刻な事態という受けとめ方はしていらっしゃらないのですか。
  175. 岸本洋一郎

    ○岸本参考人 数字を挙げて御説明できれば一番よろしいのですが、先ほど先生がおっしゃった七千台というのは、今から二十年弱前のパイロットプラントというころの試験対象の遠心機の総数でございました。そのプラントは、もっともっと性能の低い時代のものでございます。原型プラントには、さらにずっと性能のよいものが二百トンの能力に必要な規模で入ってございます。相当な数でございます。その相当な数のうちの何割かが今機能をしていない状態でプラントは動いております、動かしておりますということでございます。  それが深刻な事態かどうかということでございますが、技術的には予想した範囲の幅に入っておりますし、特に安全上の問題もございませんし、そういう意味で、深刻という受けとめ方は今しておらないところでございます。
  176. 吉井英勝

    ○吉井委員 これは驚くべき発言だと思いますよ。  では次に、私は六ケ所の方についても聞いておきたいのだけれども、これは科学技術庁の方になりますけれども、遠心分離機で、人形峠でやってきたプラントはもう完成された技術だ、メンテナンスフリーでずっと十年間続けても大丈夫なんです、こういうことで当時の動燃と科学技術庁日本原燃に売り込みを図ったといいますか、一緒に共同開発をやったこともあるでしょうが、私は、この点では道義上の問題も出てくると思いますよ。だって、向こうの方はもっと大丈夫だと思っているわけでしょう。  何よりも、機微にわたる技術だとして公開されない部分が多い施設なんですが、それにしても、長期にわたって、私は今、国会では初めて、三千二百六十台ですか、遠心分離機、心臓部がとまっておったという話は御報告いただいたのですけれども、ずっとこういう問題は明らかにされてきていないのですよ。  そして、幾ら多いといったって、百万台もあるうちの三千二百六十台ではなくて、先ほど何割かに当たるとおっしゃったのだけれども、何割といえば二割か三割か四割ぐらいのところなんでしょうが、かなりのものだと思います。しかし、そこが問題になっているのに本当に深刻に受けとめていないということは、私はちょっと信じがたいことです。  それでは次に、日本原燃の六ケ所のウラン濃縮工場の遠心分離法によるウラン濃縮の実績について聞いておきたいのです。  これは現在、RE1A、RE1B、RE1D、RE1C、RE2A、RE2B、RE2Cの七つのプラントが運転を開始しておりますが、RE1Aで三回合計八十五日間とRE1Bで一回七日間、RE1Dで二回合計十七日間、RE1Cで一回十日間、以上の停止期間を除いて運転開始の日からずっと連続運転をしていることになっていると思うのですが、これは間違いありませんか。
  177. 青江茂

    ○青江政府委員 それで結構でございます。
  178. 吉井英勝

    ○吉井委員 それで、九二年度から毎年度の分離作業量で見た各プラントの稼働実績と、その六弗化ウラン換算値、それを各プラントごとに資料をいただいて、私見ました。  それで驚いたのですけれども、まず人形峠の方は、公称能力比の生産実績率でいえば、ずっと七割台とかそういうところなんだが、日本原燃の六ケ所の方は、生産実績率を公称能力比で見れば、これも濃度によってとり方は変わってきますが、いい方のとり方をして、私からすると非常に甘い方で、厳しい方でない方で見ても、例えば九二年はちょっと特別な事情があるかもしれないが三四・七%、九三年度が八二・四%、九四年度が五七・二%、九五年度が九三・三、九六年が八八・九で、九七年度が九五・九%。  これは、三%濃縮の方で計算すればもっとがたっと実績率は悪いわけですが、今、六ケ所のプラントの方も公称能力に対する実績率で見ると経年的にかなり落ちてきているのですよ。新しいプラントを開始して、新鋭機を投入したときは少し上がるのです。だけれども、また落ちてくるのですね。この六ケ所の方では、遠心分離機の停止はどういう状況になっていますか。
  179. 青江茂

    ○青江政府委員 六ケ所の方の遠心分離機の停止台数でございますけれども、今先生がおっしゃいましたRE1Aからずっと、上から七つにつきまして数字を申し上げます。1Aが三千四百二十台、1Bが一千百八十台、1Dが十九台、1Cが三百十六台、REの2Aが一台、2Bが一台、2Cがゼロ、こういう状況でございます。
  180. 吉井英勝

    ○吉井委員 今おっしゃった終わりの方の、停止しているのは一台とかいうのは、一昨年の暮れに運転を開始したとか、そういう全く新しいものですから、これからして次々と遠心分離機がとまっておったら大変な話なんですよ。  実は私、四半期ごとにどれぐらい停止がふえているかというのを見ますと、昨年の四月から六月までが五百八台とまっておるのです。昨年の七月から九月が五百四十七台とまったのです。昨年の十月から十二月は四百六十一台とまった。つまり、一四半期、三カ月ごとに六ケ所の遠心分離機は五百台ずつとまっていっているのですよ。これは一年間で二千台とまるという計算ですね。五年もすれば一万台遠心分離機がとまるということになるのです。今それぐらい深刻な事態が六ケ所のウラン濃縮工場では起こっているわけですよ。  ですから、私は非常に不思議なのは、いや、最初から計算に入れていたのですと、何か余り深刻な問題のようにお考えじゃないけれども、実際にはなぜとまってしまうのか。本来だったら、これは弗化ウランの弗素が影響しているのか、あるいは高速回転体ですから、軸と質点の位置が少しぶれているだけで、物すごく大きな遠心力が働きますし、回転の途中でそれは異常な振動を起こす場合もあって、固有振動との関係でどうなるかとか、いろいろな問題が起こってくるので、これだけ異常が起これば、まず、なぜこういう現象が起こったのか、なぜ三カ月ごとに六ケ所のウラン濃縮工場で五百台ずつ心臓部である遠心分離機をとめなければいけないのか、私は、これは調査をして当たり前のことじゃないかと思うのですが、これは科学技術庁の方はどういうふうにつかんでいらっしゃるのですか。
  181. 青江茂

    ○青江政府委員 日本原燃からお話を聞いておりますところによりますと、次のような要因ではないかというふうに聞いてございます。  すなわち、ウラン化合物の付着によりまして遠心機の回転胴のバランスが崩れ、その停止に至るというものであって、三回の運転停止の履歴のあるRE1Aというものにつきましては、遠心機の再起動に伴うモーターからの発熱によりまして、その温度上昇によりましてウラン化合物の付着が促進されたため停止台数が多くなっているというふうに推測をしておるというふうに聞いてございます。
  182. 吉井英勝

    ○吉井委員 推測はいいのですよ。自然科学というのはやはり実証の科学だと思うのですよ。理論的解析と実際とが合っているかどうか、これが自然科学のとるべき態度でしょう、とる道でしょう。今おっしゃったのは、あくまで予測といいますか、思いつきというか、ただの推測にすぎないわけであって、それをちゃんと調査したのかということを聞いているのです。
  183. 青江茂

    ○青江政府委員 現段階におきましては、いわゆる推測という言葉でもって表現し得る状況にあるわけでございますけれども、サイクル機構の原型プラントの中で、原燃の六ケ所の濃縮工場の遠心機と同型の遠心機が、今後、約一年後でございますが、役務運転を終了するという予定になってございまして、その遠心機を分解調査するということによりまして、その停止原因というものをできる限り把握することが可能ではないかということを、その方法論を考えてございます。
  184. 吉井英勝

    ○吉井委員 そうすると、人形峠の方であれだけたくさん、三千二百六十台停止してしまった、予想しておったから当然のことだと見るだけで、なぜとまったのかとか、とまった中で、例えば、高速回転ですからね、シリンダーのケーシング部分を削ったりあるいはかじったりとか、そのときに非常に高温を発したりとか、どんな現象が起こったかというのは、これだけたくさん故障が起こりながら全く今まで調べてもいなかったのですか。
  185. 岸本洋一郎

    ○岸本参考人 遠心機の停止の問題につきましては、当然のことながら、原型プラントにおいてもいろいろな調査を過去やってございます。  例えば、遠心機というのは中が回転体ですから、回転するために電気を供給しているわけですが、回転が正常であるあるいは回転がおかしくなる兆候として、我々通常すべりと呼んでいますけれども、そういった現象が起こることを把握するといったこととか、もともと濃縮の場合に使う物質はUF6というガス、六弗化ウランのガスでございまして、これは先生今おっしゃったように、非常に金属との反応性の高い、金属に対してある意味で腐食効果の大きな物質でございます。今、原型プラント及び六ケ所で用いている遠心機は金属でできておりますので、UF6ガスによる影響を小さくするために表面に特殊な処理を施してございます。特殊な処理を施してもやはり絶対というわけにはいかなくて、長い期間にUF6のガスにさらされていますとそれなりのアタックがある。それは現象としては、遠心機、回転体の中の一部にウランが付着するということになります。したがいまして、外側から、付着したウランから発生するガンマ線をはかることによって蓄積の状態を確認するといったようなこともやっております。  そうした過去の調査の結果から、私どもとして、今、原型プラントに起こっている停止のメカニズムにかかわる問題については、やはり付着によって、ウランの付着が進行することに伴って、極めて微妙なバランスで保っている回転体に振動上の影響を与えて、それが二つのモードで停止に至るのですが、一つは、最初に申し上げたように、回転数が低下を始めるということになる、もう一つは、ウランの付着の結果として、瞬時的に破損が起こるという二つのタイプがあるということまでわかっておりまして、それで全体のプラントの動きが説明できるというところまで来ております。  なお、六ケ所につきましては、私どもも調査協力してまいりまして、運転条件、運転の仕方が人形峠と違うのかどうかといったこととか、その他の幾つかの要因について調査をしてきたところでございまして、今後もその調査は継続したいと考えております。
  186. 吉井英勝

    ○吉井委員 結論としては、たくさん遠心機は壊れているんだけれども調査をしてこなかった、まだこれからなんだというのが結論なんですよ、今のあなたのおっしゃったのは。  それで、反応性が強いから付着してとかいろいろおっしゃいました、回転数が落ちるとか。そういうことがあるでしょう。しかし、回転数が落ちたときに、大体、その中でクリティカルスピードのところを通るときが一番危ないわけで、では、そこをどう抜けるのかとか、そういう問題についても、大体、少し事故の問題を心配して質問しますと、いや回転数は機微な問題ですといって答えないんですね。そんな状態で一体この日本原子力がいいのかと、私は今この問題は根本が問われてきていると思いますよ。  そして、まさに、動燃のそういう秘密主義でやってきたのが、「もんじゅ」で事故をやったり、それから再処理工場の問題を起こしたりとかやってきて、何でもかんでも機微にわたるという言い方でもって秘密にしてしまうということが、もうそれはだめなんだということがはっきりしてきているのに、まだあなたはさっきから機微にわたる問題だとおっしゃるのだけれども、しかし、回転数なんというようなものは、仮に一万八千回転であれ二万回転であれ、その回転数を明らかにしたからといって、どこかよそがまねしようといったって簡単にできないんですよ。それはさまざまな技術的な能力を持たなければいけないし、ノウハウも必要だし、そんなことまで言ってくれと言っているんじゃないんです。しかし、回転数すら言わない。  それで、どれぐらい回転が落ちていって心配だという話だって、結局もとの回転数を言わないから、あなたは言えないわけね。ただ推測の話だけ並べているわけで、私は、この問題はやはり大もとに立ち返って、きちんと、これだけ六ケ所でも人形峠でも心臓部に当たる遠心分離機が停止する、こういう事態になっているのですから、徹底究明が必要だ。これをこのまま放置しておきまして、本当に私が心配しておりますのは、事故というのは、今まではたまたま問題なかったけれども、しかし、高速回転体でもしケーシングとかみ合って変な事故をやって折損事故でもやったときに、放射能漏れの問題だとか、いろいろな問題が出てくるわけですよ。弗素ガスだって噴き出すわけだから。そういう問題があるにもかかわらず本当に深刻なとらえ方をしていないというのは、私は大変重大な問題だと思います。  六ケ所の方のRE1Aについては、遠心分離機の約四五%がとまっているというふうに聞いておりますが、それぐらいの事態になっているんじゃないですか。
  187. 青江茂

    ○青江政府委員 日本原燃の方の状況でございますけれども、RE1Aそれから1Bにおきましての停止の台数が多くなっていることにつきましての懸念というのは事業者自身しておるというところでございますけれども、いわゆる事業体といたしまして、その生産能力につながるものの、安全性という側面での影響というものはないということでもちまして、電気事業者との間の契約業務というものを遂行できるかどうか、そういう観点から運転を継続しておると考えておるというふうに聞いてございます。
  188. 吉井英勝

    ○吉井委員 今のRE1Aについては、さっきおっしゃったように、三千四百二十台とまっているということですが、四五%、遠心分離機の半分近くはとまっているんじゃないですか。
  189. 青江茂

    ○青江政府委員 お答え申し上げます。  停止の機数につきましては先ほどお話しを申し上げたとおりでございますけれども、それが全体に占める割合、何%ぐらい停止をしておるのかということにつきましてでございますけれども、全体の遠心機の台数に占める割合というものを、これを数値的にお話を申し上げますと、全体の台数というものが明らかになってくる、これに伴いまして遠心機一台当たりの性能というものが明らかになってくる、逆算すればそれが出てくるわけでございますので。その遠心機一台当たりの性能と申しますのが、核不拡散上の機微情報というふうにクラシファイされておるというふうに理解をいたしてございます。
  190. 吉井英勝

    ○吉井委員 私はそんなのは機微な情報じゃないと思うのです。大体、遠心機の台数がわかったからといって、実際に三%濃縮にする、四%濃縮にするとか、その使い方とかさまざまな問題は、技術的能力がないとできないのですよ。だから、台数がどうだとか回転数がどうだとか、それぐらいのことまで、何でもかんでも全部機微な情報ということで隠し通そうとするこの姿勢が日本原子力政策をゆがめているというふうに私は思います。  続いて伺いますが、海外の濃縮費用と同じ単位で比較したときに日本のウラン濃縮の費用は大体三倍ほど高いと言われておりますが、大体それぐらいなのか。幾らかかっていますか。
  191. 青江茂

    ○青江政府委員 特に日本原燃の方の役務価格、プライスの方につきましては、またこれもおしかりを受けるのでございますけれども、商業機密のために公開できないというふうに私ども整理をさせていただいてございます。これはあくまでも、先生、いわゆるプライベートカンパニーがマーケットの中で扱います数字であるわけでございますので、これは各国ともに、そのプライベートカンパニー、いわゆる濃縮業務を行っておる企業そのものは、かつてのDOEが公示価格というのを出したということがあるわけでございますけれども、それが今民営化されておる段階ではこれを出しておらないというところでは、各企業ともに、そのプライスにつきましてこれはもう出しておらないという状況にあるわけでございます。  ただ、一般論といたしまして、国際的ないわゆるマーケットの中におきましてのプライスの問題としましては、日本原燃のものは高いということは事実でございます。
  192. 吉井英勝

    ○吉井委員 これは原子力ハンドブックにだって載っているのですけれども、アメリカとの濃縮役務協定上は、一番最新の価格でいえば百二十五ドルなんですよ。そういうふうに載っていて、それに対して二倍なら二倍高いとか三倍なら三倍、大体三倍ぐらい高いというふうに聞いておりますが、そういうことも、それは確かに端数も入れたら商業上の問題もあるかもしれないが、私はそんなことまで聞いているんじゃないのです。大体どうなのかということを聞いても出てこない。私は、これはちょっと異常だと思いますよ。  機微にわたる技術だからといって非公開にする、事故があっても、心臓部の遠心分離機がとまっておっても秘密のままで、さっぱり我々は知らされていない。しかも、コストが海外より三倍ほど高いと言われておっても、中身もわからない。電力料金として国民が負担するからということで、内容が明らかにされないで済まされてしまう。私は、こういうことで許されるのだろうかと。電力料金にかかわる問題は、また改めて商工委員会などで取り上げたいと思います。  そこで、この問題の締めくくりに大臣に伺いたいのですが、原子力研究開発の中で、これまでずっと原発サイクルの中で、原発から再処理から高速増殖炉のようなリサイクルから最終処分に至るまで議論してきました。きょうは原発のサイクルの入り口のところで議論させてもらったのですが、これだけ秘密主義で、事態を隠して進める、余り深刻にも受けとめない、私は、こういうことでいいのだろうかと。  大臣も若いころから、原子力分野については自主、民主、公開の三原則を確立していく方の立場でたしか頑張ってこられたと思うし、そういう立場に賛同してこられた方として、今、日本原子力のあり方がこういうことでいいのか、きょうはその一例だけ紹介させていただきましたけれども、あなたのお考えを簡潔に伺っておきたいと思います。
  193. 有馬朗人

    有馬国務大臣 原子力に関する情報の中には、財産権の保護や核不拡散の観点から、ノウハウ等の商業機密や機微な情報等については従来より慎重に取り扱われてきたところと考えております。ウラン濃縮についても、このような商業機密や機微技術情報に該当するものがあることは事実だと思います。  一方、原子力に対する理解信頼を得るためには、商業機密や機微情報に名をかりて国や原子力事業者にとって都合のよい情報のみを選択的に提供しているとの非難を受けることのないよう、情報公開を徹底することも重要と認識しております。  財産権の保護や核不拡散の観点から問題のない情報については今後とも積極的に公開していくことといたしております。
  194. 吉井英勝

    ○吉井委員 まず、機微情報という問題につきまして、PPと先ほども御紹介しましたように、大体遠心機の台数とか回転数、こんなものは機微情報に当たらないんですよ。それから、財産権保護といっても、原燃の場合は民間企業でしょう、しかし、動燃というのはまさに税金でやっているんですよ。動燃の下請仕事でどこかの企業が研究開発に携わりたいと言ったときは、これは国費を投じてやっているものを、この情報は国民の共有財産なんですから、知的財産権云々で動燃の情報を隠すということは断じて許されることじゃありませんよ。  私は、大臣がやはり学者時代の原点に立ち返って情報公開というものに全力を挙げてもらいたいというふうに申し上げて、次に、時間が十分ほどになってきましたので、NASDAの問題について少し聞きたいと思います。  私は、昨年五月と十二月に、この委員会で宇宙開発事業団と宇宙産業界との結びつきの強さを指摘しました。特に、ロケット四社と言われる三菱重工、石播、川崎重工、日産自動車、衛星三社と言われる三菱電機、東芝、NEC、これに、宇宙産業界、大体これらの企業が出資してつくったロケットシステム社を入れた八社が特別な位置を占めているということを契約額、出向者数で具体的に示しました。  例えば、NASDAには、事業団の技術者八百五十九人に対して、民間企業から二百人以上の出向者が入っておりますが、技術開発や発注が宇宙産業界と一体化するということがこの結果出てきているわけです。さきの八社で出向者の三分の一、契約額の七割から八割を毎年占めております。また、ロケットシステム社は宇宙開発事業団から受注したHIIAロケットを実際には三菱やNECに事実上の丸投げをする、こういう形になっております。  そこで、私は、ロケットシステム社を経由したものについても、それも含めて、NECとNEC以外の企業について過大請求について調査するように求めました。あれから二カ月たちましたが、まず調査結果について報告をもらいたいと思います。
  195. 石井敏弘

    ○石井参考人 お答えいたします。  先生ただいま御質問のNECの過大請求問題につきましての調査の現状でございますが、私ども、昨年の十一月にNECから中間報告を受け、即特別な調査チームを社内に設け、また公認会計士の協力も得ながら、調査を進めてきたということでございまして、十一月十八日から横浜工場、さらには十一月三十日からは府中工場というところに職員を派遣いたしました。そして、両工場での実地調査というものを進めてきております。  これまでのところ、総件数七十一件という話をいたしております。うち三十三件が過大請求をやっていたという報告を受けておるわけでございまして、この三十三件につきましては、相当の進捗を見ておりまして、件数にして約九割ぐらいまで調べが進んできたというような状況にございます。  しかしながら、私ども、過大請求が行われておったと報告してきた三十三件のみならず、残りのいわゆる概算契約をいたしておりました三十八件、上限つき概算契約をしておりました七十一件のうちの三十八件という残りのものは過大請求していないかのごとく報告を受けておりますが、やはりこれについてもきっちりと調査をしなければならないという考えのもとに現在調査を進めておりまして、こちらの方につきましては件数にして約六割ぐらいが調査が進んでおるというような状況にございます。  また、先生御指摘の、NASDAからロケットシステムに発注し、ロケットシステムの下請としてNECが受けておるもの、これにつきましても十二月の下旬からこれまでのところ調査を進めてきておるというような状況にございます。
  196. 吉井英勝

    ○吉井委員 これは事業団の方で、もともと昨年五月の委員会で石井理事は、契約の履行後に、工数とか材料費といったようなものの実績原価の監査というものを行いまして契約額を確定するからメーカーの言い値にはならないと答弁してこられた問題なんです。それがNECの防衛庁汚職でそうではなかったということが明らかになった問題です。ですから、従来の監査ではメーカーのごまかしは発見できなかったことははっきりしているわけで、今、私も指摘し、調査を始めていらっしゃることは当然のことだと思いますが、私はこういう問題について会計検査院の方は当然検査しておられると思うのだが、どういうふうにやっていらっしゃるのか、それを次に伺っておきたいと思います。
  197. 小川光吉

    ○小川会計検査院説明員 お答え申し上げます。  会計検査院といたしましては、従前から、宇宙開発事業団の衛星等の契約につきましては科学技術分野で多額の予算が使われておりますことから、重点を置いて検査してまいったわけでございますけれども、今回のような事態が事業団において発生したことを重く受けとめておるところであります。  このロケットあるいは衛星にまつわります契約というのは、検査の対象物がロケット、衛星で、御存じのとおり、いずれも高度に専門的で研究開発の要素も多いということで、検査の上で技術的に多少難しい面もあり、また国が直接契約する場合とこの場合は異なりまして、国が出資した団体が民間の会社と契約しているという事情がございます。したがいまして、検査に当たりましては、事業団や契約の相手方であります会社の協力がぜひとも必要であるというふうに思います。  お尋ねの件につきましては、昨年末より事業団から状況の報告を受けておりまして、また、ことしの一月、先月でございますけれども、二十五日からの事業団本社の会計実地検査におきまして、事業団の調査の体制あるいは方法など、調査されている状況の聴取に着手しておりまして、今後、まず事業団で調査していただきまして、調査の進捗状況を見ながら順次必要に応じて検査を行っていきたい、そういうふうに考えているところでございます。
  198. 吉井英勝

    ○吉井委員 私はこの問題で非常に気になりますのは、いただいた資料をもとに表にまとめてみたんですが、宇宙開発事業団の契約実績、相手方の方の占有率、二〇%近いのからずっとありますが、上位に入る九社といえば、三菱重工、三菱電機、ロケットシステム、東芝、日本電気、石播、日産自動車、川崎重工、日立製作所とあるんですが、この九社でもって契約額で七六・六%を占めるんですけれども、宇宙開発事業団への出向者がまた今の九社で三六・二%を占めているんです。同時に、防衛庁調達実施本部で問題になるのは、ロケットシステムだけ抜けますから八社になりますが、その八社で契約金額の五九・四%、いわゆる労務借り上げというふうに言われているもので、この八社で六〇%。  ですから、防衛産業は同時に宇宙産業なんです。宇宙開発分野を担当しているのは防衛産業でもあるわけなんです。私は、この点では、我が国宇宙開発を進めていくときに、これは学術会議の方でも非常に厳しく対応しなければいけないということで、大臣もそういう議論にかかわってこられたかと思いますが、国会の方でも、宇宙空間の軍事利用を禁じた宇宙の平和利用に関する国会決議というものも行ってやってきているぐらいなんです。  今この防衛庁汚職から問題になってきたのは、日本宇宙開発研究を防衛産業が支えているというだけじゃなしに、その契約は本当にいわばスーパー談合のような形でやられてしまっている。こういうあり方については、私は、やはり監査等をきちっとやることとあわせて、この分野研究開発についても、これは学術会議などではそういう決議をしたりいろいろしてきていますけれども、やはり自主、民主、公開という原子力分野もとられてきた原則、宇宙開発分野でもこれをきちっととるということと、とりわけ情報公開というものを徹底して明らかにして、これは前の大臣のときも透明性の確保が必要だとおっしゃいましたが、本当にこの分野では一点の曇りもないように、研究の中身の面でも、それから衛星で得た情報をすべて公開することも含めて、そしてこういう契約関係も含めて徹底的に情報を開示して、情報公開して臨むという、この点についての大臣のお考えというものを伺って、時間が参りましたので終わりにしたいと思います。
  199. 有馬朗人

    有馬国務大臣 まず、今お尋ねの情報公開の前に、NECの過大請求問題に関しては、やはり検査のあり方等、監査のあり方等を改善すべき点があれば速やかに処置していく必要があると考えております。本件については、科学技術庁としても、引き続き厳正な対処を行うよう事業団を指導してまいる所存であります。  また、宇宙開発に関しましては、できるだけ公開原則に従って十分な対応をしていきたいと思っております。
  200. 吉井英勝

    ○吉井委員 終わります。
  201. 北側一雄

    北側委員長 辻元清美君。
  202. 辻元清美

    辻元委員 社会民主党の辻元清美です。  まず大臣に、新しい長官をお迎えしましたので、私はまだ一年生ですが、この科学技術委員会で四人目の長官をお迎えすることになります。それぞれの長官をお迎えするに当たりまして必ず最初にお聞きしている問題があります。それは、先ほどからの各委員のお話にもありましたが、科学技術の情報公開ということで、特に原子力関係につきましての情報公開の姿勢をまずお聞きすることにしています。  といいますのも、毎回新しい長官をお迎えするたびに事件や事故が起こりまして、もうこの科学技術委員会は事故調査委員会になってしまうというようなありさまなんです。最近では、旧動燃の事故や、使用済み燃料の輸送容器データ改ざん事件など、次々新しい長官が就任されるたびに事故が起こる。私は、有馬長官が御就任の間はこのようなことがないようにと願いますので、まず長官に、情報公開についての御意見を伺いたいと思います。
  203. 有馬朗人

    有馬国務大臣 まず、科学技術分野を含めて、国民から信頼される公正で民主的な行政の実現ということが必要であると思います。そのためには、政府の諸活動の状況国民の前に明らかにしていくことが重要であるというのが私の認識であります。  特に、原子力開発利用に当たっては、国民理解信頼を得ることが不可欠でございます。そのためには、核物質防護等に係る一部の情報を除き、原則としてすべての情報の公開と、公開される情報の迅速かつわかりやすい提供を通じ、透明性を高めていくことが極めて重要であると私は考えております。
  204. 辻元清美

    辻元委員 それでは、そういう御認識のもとで、原子力政策について幾つか御質問させていただきたいと思います。  先ほどから、ほかの委員からもいろいろなヨーロッパの動きなどの指摘がありました。私は、つい最近ドイツにも行きまして、シュレーダー首相とも直接原子力政策についても意見交換をして帰ってきました。  現在、原子力発電をしている国は三十二カ国と私は承知しております。全世界のわずか一五%ということになるわけなんですけれども、そのうち、毎時百兆ワット以上の電力を原子力で発電しているのは、アメリカ、フランス、日本、ドイツ、ロシア、この五カ国で、原子力発電による発電電力量全体の七〇%がこの五カ国の原子力発電なんです。  さて、そういう中で西ヨーロッパやアメリカは、もうこれは長官も御承知の現象だと思いますけれども、九〇年代に入ると閉鎖された原発の数の方が多くなってくるというような現象が出ておりまして、稼働を始めたのは全体で四%程度ということになっています。実際に原発の稼働基数は、八九年をピークに確実に減ってきているというような世界の流れが一方にあります。そういう中で、日本の政策は、これから二十基つくっていこうというような方向性を何回も私は聞くんですけれども、このヨーロッパの流れなどをどのようにごらんになっているんでしょうか。
  205. 有馬朗人

    有馬国務大臣 ヨーロッパにおいて、ドイツやスウェーデン等において脱原発の動きがあることは重々承知しております。  ドイツでは、昨年十月にシュレーダー首相が率いる社会民主党と緑の党との連立政権が発足し、連立協定の中で原子力開発利用からの脱却について取り決めが行われ、一月十四日に同首相より、このための原子力法の改正を行う旨の発表がございました。現在、エネルギー産業界との間でエネルギーコンセンサスについての協議が行われてはおりますが、早急な脱原発には至らないのではないかという見通しであると私は認識しております。  そして、スウェーデンでは、一九八〇年、国民投票の結果を受けて、二〇一〇年までに原子力発電所十二基を全廃するとの国会決議が行われ、さらに、政府は昨年二月には、バーセベック発電所一号機を同年七月までに閉鎖するよう命令したところでありますが、現時点においても補償問題等により閉鎖は実行されていないという状況でございます。  他方、スイスでは昨年十月に、既存の原子力発電所について、今後検討される運用期限が来れば閉鎖する等の内容を含む新聞発表が行われましたが、これは必ずしも原発からの段階的撤退を決めたものではないと承知しております。  いずれの国でも、現時点では発電電力量のかなりな部分、ドイツでは約三〇%、スウェーデンでは五〇%、スイスは約四〇%を原子力が賄っており、地球温暖化防止に配慮して、エネルギーの需要と供給のバランスを図りながら、今後具体的にどのように原子力政策を進めていくのか注目いたしております。  なお、ドイツは石炭等々非常に資源があるということを申し上げておきましょう。  いずれにしても、エネルギー供給は、それぞれの国情に応じてさまざまなエネルギーを最適に組み合わせていくことが重要であり、資源小国我が国は、エネルギー供給構造の脆弱性等を踏まえ、原子力開発利用の着実な推進を図ることが重要であると考えております。
  206. 辻元清美

    辻元委員 今御説明をいただきましたが、もうこれ以上建設することは控えるという国が多いというのは事実であると私は思います。  さて、そういう中で、今の長官の御説明にもありましたけれども、脱原発がいいんだ、いや推進していくのがいいんだと、さまざまな意見がある。これは、日本の国でも二つの大きく分かれた意見が存在しているというのも間違いないと思うんです。  さて、そういう中で、長官原子力委員会の委員長もお務めになっておりますけれども、原子力円卓会議という、ここずっと続けてこられた、一般の市民の方やさまざまな立場の方を含めて議論をしていこう、これは私はいい姿勢だと思うんです。これは、日本原子力政策を考えていく上では非常に重要なポイントとなる会議にこれからしていかなければいけないと思うんですが、今までのこの原子力円卓会議成果と反省点についてどのような御認識でしょうか。
  207. 有馬朗人

    有馬国務大臣 詳しくは原子力局長より申し上げます。私は、原子力政策円卓会議のようなものを絶対開くべきだということを主張している人間であることを申し上げておきましょう。  その成果については、過去五回ぐらい開催されたと思いますが、内容については原子力局長より詳しく申し上げます。私も何回か、一回は少なくとも出席をしておりまして、大変有益であったと思っております。
  208. 青江茂

    ○青江政府委員 御案内のとおり、円卓会議はワンラウンドがあったわけでございますが、今度新たにツーラウンド目というものをスタートさせたということでございます。そのツーラウンド目といいますものは去年の秋から今日まで五回開催されてございますが、その新たな円卓会議というものは、一回目の一つの反省というものを踏まえまして、いろいろな工夫をしてございます。  その中の一つのポイントがディベートを行う、要するに、言いっ放し、聞きっ放しというふうな形に決して終わらないようにということで、ディベートを中心に今次の円卓会議というのはやるんだということをスタートのときから工夫をしてございまして、モデレーターの方もそこの意識のところは大変強うございました。現実に、例えば一回目、二回目と申しますのは、今なぜ原子力問題かという、原子力というものについて一番根っこの議論からスタートしようじゃないかということでもちまして、そこから議論があったわけでございます。  例えば、その中の議論というものを紹介を申し上げますと、日本のエネルギー供給構造の中で、原子力にどういう役割を期待するのか、新エネルギーに何が期待できるのか、CO2の排出がこういうふうな状況の中で日本はどういう選択肢がとれるのかと、相当厳しい議論が行われたというふうに聞いてございます。  こういったふうな活発な議論というものが行われ、私どもとしましては大変有益であったというふうに認識をしているところでございます。
  209. 辻元清美

    辻元委員 四月からの新年度も継続して開いていただきたいというふうに考えておりますが、これはどうであるかという点が一点。  もう一点、ディベートをするということは非常に重要だと思います。その際、私もこれは前から注目していまして、モデレーターの方とか、どういう方かと直接何人かの方に御意見を伺いに行ったこともあります。特に、このモデレーターの位置というのは大事だと思いますので、先ほど申し上げましたように、推進派と脱原発派、これをやはり同等に入れてディベートをしていく。この点が国民にも、そういう姿勢であるということが理解にもつながると思いますので、そのような姿勢で臨んでいただきたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  210. 青江茂

    ○青江政府委員 まず、以降どのようにということにつきましては、今五回までの議論をモデレーターの方におまとめいただく作業に入ってございます。そのモデレーターの方からの御提言というものをやはり基本的にはお待ちをしたい。私どもの考え、事務当局の考えは、今大臣の方から申し上げましたとおり、引き続きこのようなものの開催をお願い申し上げたいという気持ちでございますけれども、まずモデレーターの方の御意見というものを今お待ちしておるという段階でございます。  それから、もう一点、厳しい人をということにつきましては、これは、今回のモデレーターの方の五人の人選というものもごらんいただけるとおりでございますと同時に、来ていただく、御意見を開陳いただく方のメンバーというのも、もうごらんいただいているとおりでございまして、本当に批判的なお考えをお持ちの方に随分たくさん来ていただきまして、意見の御開陳をいただいてございます。
  211. 辻元清美

    辻元委員 その円卓会議の議論が行われたことを政策にどう生かしていくかということが、そのプロセスも非常に重要だと思いますので、今、前回のモデレーターの方がまとめていらっしゃるということですから、それをどう生かしていくかということを私は本委員会で引き続き議論させていただきたいと思います。  さて、次に、きょうの新聞なんですけれども、廃炉の問題ですね。  これは資源エネルギー庁になるわけなんですけれども、昨日、資源エネルギー庁は、「日本原子力発電の敦賀原子力発電所一号機など運転開始後三十年近くになる三基の原発について、六十年を目安に運転を続けることは技術的に可能とする報告書をまとめた。」これは本日の日経新聞ですけれども、各新聞に出ているところですが、果たして六十年運転を続けることは可能なのかどうかという点について幾つかお聞きしたいことがあります。  まず、六十年ということが新聞に出ておりますけれども、原発については今までは寿命は三十年から四十年だというふうに言われてきましたし、私もそのように認識しておりました。それを一挙に六十年可能であるという報告書をまとめられたこの根拠はどういうことでしょうか。
  212. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 昨日、通産省は、御指摘の原子力発電所の高経年化に関する報告書を取りまとめ、発表いたしました。この内容は、電気事業者技術評価及び長期的な保全計画を検証、評価をいたしまして、さらに今後の高経年化対策の具体的な取り組みについて取りまとめた内容でございます。  御指摘の六十年という数字は、今後の、高経年化をしたプラントにつきまして、技術評価を行う際の仮定の期間として設定をした、技術評価のために設定をした数字でございます。もちろん、我が国法律制度におきましては、原子力施設の設置許可は運転年数を許可しているわけではございませんで、具体的な運転の過程で、定期検査などにおきまして技術基準に合致しているかどうかを確認し、その上で次のサイクル、十三カ月間の運転をよしとするものでございます。そういう意味で、六十年の運転期間を認めたというものではございません。  当省といたしましては、今後、各プラントが三十年を迎える段階で技術評価を行いまして、今後十年程度の保全計画を策定をし、さらに十年後にはこれを見直していくという長期的視野に立った取り組みと、それから毎回の定期検査による確認という取り組みをあわせて、一層安全な運転を進めていく、かような趣旨でございます。
  213. 辻元清美

    辻元委員 今、きのうの報告書に基づきました内容について伺いましたけれども、そうしますと、どのようにそれでは三十年以降検査をしていくのかということについて幾つかお伺いしたいと思います。  さて、原子炉の圧力容器の定期検査というのが一番重要になってくるかと思うのですね。まだこの原子炉は使えるのか、それとも廃炉にしなければいけないのか判断していかなければいけない。その判断をわかりやすく、もちろん情報公開もしていかなければいけないわけですが、その際、私が承知する範囲では、原子炉の圧力容器、要するにおかま本体、これは交換修理がほとんど不可能、非常に難しいということで、その脆化、要するにその状態が原子炉の寿命を決める一番大きな決定要因と考えられているというような一つの基準というか認識でよろしいのでしょうか。
  214. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 御指摘のような認識でございます。  原子炉圧力容器の脆化の問題は、全体の寿命を定める非常に重要な要素でございます。
  215. 辻元清美

    辻元委員 そのときに、原子炉の圧力容器の定期検査において、この圧力容器の脆化をはかる指数は脆性遷移、要するに脆性がどう移っていくかという温度以外にもあるのでしょうか。また、この温度はアメリカでは百三十二度だったかな、というふうに定められていると聞いていますけれども、日本でもこの温度は何度と定められているのかどうか。定められているのならば教えていただきたいのと、この方法以外にもあるのかどうか、お聞かせいただけますか。
  216. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 高経年化した圧力容器の脆化の測定の仕方でございますが、これは、現在、原子炉容器の内部に原子炉圧力容器と同じ材料の試験片を内蔵してございまして、これを定期的に取り出して破壊試験を実施するというやり方をしてございます。  おっしゃるとおり、この脆性の結果として温度による変化等々がございますが、この定期的に取り出します試験片の具体的な結果を式に当てはめまして、その式に基づきまして今後の予測もあわせて行っている、かようなものでございます。
  217. 辻元清美

    辻元委員 それがほぼ唯一のおかまの状態をはかる手段というふうに思うわけなんですが、さて、今御説明いただきましたけれども、監視試験片について行うこの試験についてですけれども、「容器の使用期間中に三回以上行わなければならない。」という規定があると思うんですが、一つの原発が古くなりまして高齢化といいますか、高経年化と言うようですけれども、高齢化した場合の原発についてはこの三回よりも頻繁に検査を行わないと、今までの三十年、四十年ということでこの試験片についての試験について規定されていたわけですから、それ以上の年齢を経た場合は頻繁に行うべきだと思うんですが、これはいかがですか。
  218. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 試験片につきましては、定格負荷相当年数、これは停止をせずに一〇〇%フル稼働で連続運転をした場合ということでございますが、三十二年間分が内蔵されてございます。これを仮に、設備利用率、現状のような八〇%であると仮定をしまして同じ年数をはじきますと、四十年相当になります。したがいまして、この四十年、稼働率八〇%を超えて運転をする場合には試験片が不足することも予想されるわけでございますが、二つの手段をとってございまして、一つは、まだ十年ほど時間がございますので、一度試験をした試験片を再生をいたしまして再び炉内に装備をするという技術開発を続行中でございます。  なお、ちなみに、今回評価の対象といたしました敦賀、美浜、福島、それぞれの発電所の稼働率は四〇%台から六〇%台でございまして、先ほど申し上げました八〇%、四十年という数字から見ると、もう少し時間的余裕がございます。  なお、国際的には、こうした試験片を具体的に取り出して試験をするというやり方のほかに国際的にも研究が進んでおりまして、例えば、中性子を当てたときの磁性の密度をはかる、さような研究も進められてございまして、今後十年後、全体をさらに見直しをいたしますときに、そうした知見を含めて今後の対応をとってまいりたいと考えてございます。
  219. 辻元清美

    辻元委員 今御答弁いただきましたように、この一番大事なおかま、その状況の変化を見るというその試験片については、当初四十年と設定していましたからその数しか入っていない。そうすると、既に取り出したものを、稼働率の問題がありますけれども、もう一度入れるというようなことができるのかどうかを今検討しているというふうな御答弁であったかと思うんですね。  ということは、三十年、四十年と言われていたものを六十年、さらにこの寿命を長くするというのは、これは確定した技術的な保証がないように私は思うんですね。というのは、先ほどから申し上げていますように、このおかま本体がどういう状況であるかということが一番大事な、しかし、それをはかる方法がこれからまだ検討を続けなければいけないというようでは非常に心もとないと思いますけれども、いかがですか。
  220. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 原子炉の設計に際しましては、当初添付書類の中に三十年、四十年という期間を書いているものがございますが、これはいずれも、例えば、中性子をその期間中与えてなおかつ余裕がある、あるいは、極めて過酷な運転を毎年繰り返して四十年なおもつ、そういったような設計思想のもとにつくられているものでございます。こうした中で、炉の耐性能力という観点から、保全措置よろしきを得られればその能力は六十年を超えてあり得るということが片方でございます。  今御指摘のございました試験片は、それをモニターをする手段はいかんという別の問題でございまして、モニターの手段につきましては、各種研究開発を進め、また、十年有余の余裕がございますので、その過程でモニターの最善を尽くし得る方途を考えていきたい、かようなことでございます。
  221. 辻元清美

    辻元委員 やはりこれから考えていきたいというふうにおっしゃったわけなんですけれども、そうしましたら、昨日報告書を出されたようなんですけれども、どのような状態であれば運転の延長は不可能であるかというような基準はあるんでしょうか。今までの議論では、こういうふうだったら延ばしていいということなんですが、では、どのような状態であれば不可能であるかという点はどうでしょうか。
  222. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 個別の原子力発電所の運転につきましては、電気事業法に定められました技術基準なるものが詳細に定められておりまして、定期検査のたびに、その技術基準に合致しているか否かということをチェックいたしてございます。  したがいまして、何年もち得るかという基準で見ているわけではございませんで、これは予測の問題でございますが、具体的な運転に関しては、技術基準に合致しているかどうかという観点から個別の運転の是非を定めているものでございます。
  223. 辻元清美

    辻元委員 そうしますと、原発の寿命を延ばすと言ったらおかしいんですけれども、四十年を超えて運転していく場合には、さまざまなものを部品を取りかえたり検査をしてチェックしていくということなんですが、そのとき、いろいろな人が指摘している問題、作業員の被曝の問題というのが指摘をされております。  これは、実際に福島第一・三号機の一部工事のために実際に作業員が被曝したというようなことも確認されているというようなことが起こっておりまして、これから、原子炉を含むさまざまな部品の取りかえの際の、これは現在進行形の話でもありますが、この作業員の安全確保という面で何か基準があるんですか。今までよりも厳しくしなきゃいけないと思うんですよ。
  224. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 実用の発電用原子炉におきます放射線業務従事者の被曝につきましては、国際放射線防護委員会の勧告を踏まえまして、原子炉等規制法に基づきまして、年間五十ミリシーベルトを上回らないよう電気事業者に義務づけておるところでございます。  例えば、先般、現在進行形のお話というお言葉がございましたが、福島の発電所でシュラウドの取りかえ作業がございまして、これは炉の中に具体的に入って部品の交換を行うものでございますが、ここでは、化学除染、鉛の板の遮へい装置、自動化・遠隔化装置等々を取り入れながら具体的な被曝の線量の削減に努めているところでございまして、実績値といたしましては、先ほどの五十ミリシーベルトに比べまして、平均線量としては、個々の構内作業員として三・八ミリシーベルトという数字でございます。そのときの最大線量当量としては二十六・七ミリシーベルト、これは一年半の実績でございます。  そうした形で規制もあり、かつ、規制をクリアしつつ作業を行っているということでございます。
  225. 辻元清美

    辻元委員 私は、これから原発を増設していくという方針、それから寿命を延ばしていくという方針に対して疑問を感じている一人なんですね。  さて、そういう中で今の後者の問題ですけれども、現実に海外で三十年以上稼働している商業用原発はごく少数と聞いています。かつ、アメリカでは、四十年を超える前に原発の閉鎖、解体が始まっているというようなこともあります。また、この六十年を目指す日本の長期運転というのは今まで前例のない話ではないかというふうに私は理解しています。また、アメリカなんかでは、四十年と決めて、さらにそれを長く運転したい場合はまた申請し直すと、法的にもはっきりと規定されているというふうになっているかと思うんですけれども、さて、そういう中で、敦賀一号機を抱える福井県などでは、長期運転には改めて地元の同意をとるようにしてほしいというような意見も言っていらっしゃいますし、三十年、四十年ということで立地県、地元の皆さんは理解されているところを、それを延長するというのであれば、先ほど私が申し上げましたような、どういうふうな安全確保、そしてどういうふうな試験を行ってその原発がまだこれから運転できるのかどうかということを、どういうデータに基づいてできると判断しているかということをしっかり情報公開し、さらに地元住民の意向を改めて聞くべきだと思うんですよ。  最初に長官が情報公開の重要性もおっしゃいました。ということで、最後に長官に、地元住民の意見を聞くべきだと私は思いますが、それについていかがかということと、もう一つ、三十年、四十年、ついには六十年と言われてしまった運転実績になるわけですけれども、しっかりとしたアメリカのような法律を決めた方がいいんではないかと私は思っているんですが、いかがでしょうか。時間がありませんので、長官に。
  226. 稲川泰弘

    ○稲川政府委員 手短に世界の情勢を申し上げます。  イギリスでは、四十年を超したものあるいは三十年を超したもの、数多くございますが、多くはガス炉でございます。日本のような軽水炉で二十五年を超しているものは、例えばアメリカで二十三基、ドイツで二基でございます。  この中で、アメリカにつきましては四十年のライセンス制をとっております。日本と違いまして期間認可制でございます。それで、四十年を超しましたときには申請によって、お説のとおり二十年の延長をすることができる、合計六十年の仕組みでございます。  この中で、日本は期間の認可ではございません。日々の運転に関しまして技術基準に適合をする義務があり、また、それに適合しなければ各種の命令をかけるという仕組みでございます。そういう形で日々の運転の安全を確保してまいりたいと考えております。  それから、長期の保全策をとってまいりますが、その内容につきまして情報公開をすべきは当然でございまして、かくなる努力をしてまいりたいと考えてございます。
  227. 有馬朗人

    有馬国務大臣 私は、原子力に関することは国民の疑惑を招かないように、きちっとした情報は常に公開をして、国民、特にその土地の人々の理解をいただくように努力をすべきだと考えております。
  228. 辻元清美

    辻元委員 時間が参りましたので、また引き続きこの問題は取り上げさせていただきたいと思います。
  229. 北側一雄

    北側委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時三十二分散会