運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1999-05-13 第145回国会 衆議院 安全保障委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十一年五月十三日(木曜日)     午前九時開議   出席委員    委員長 二見 伸明君    理事 安倍 晋三君 理事 浅野 勝人君    理事 江口 一雄君 理事 仲村 正治君    理事 前原 誠司君 理事 横路 孝弘君    理事 佐藤 茂樹君 理事 西村 眞悟君       麻生 太郎君    伊藤 達也君       池田 行彦君    臼井日出男君       大石 秀政君    大野 功統君       嘉数 知賢君    岸本 光造君       栗原 裕康君    小泉純一郎君       佐藤  勉君    阪上 善秀君       桜田 義孝君    杉山 憲夫君       園田 修光君    田村 憲久君       中山 利生君    船田  元君       望月 義夫君    吉川 貴盛君       渡辺 博道君    伊藤 英成君       岡田 克也君    桑原  豊君       島   聡君    河合 正智君       斉藤 鉄夫君    冨沢 篤紘君       塩田  晋君    佐々木陸海君       東中 光雄君    北沢 清功君       保坂 展人君  出席国務大臣         国務大臣         (防衛庁長官) 野呂田芳成君  出席政府委員         防衛庁長官官房         長       守屋 武昌君         防衛庁防衛局長 佐藤  謙君         防衛庁運用局長 柳澤 協二君         防衛庁人事教育         局長      坂野  興君         防衛庁装備局長 及川 耕造君         外務省北米局長 竹内 行夫君  委員外出席者         外務大臣官房審         議官      樽井 澄夫君         外務大臣官房審         議官      楠本 祐一君         厚生省保健医療         局エイズ疾病対         策課臓器移植対         策室長     朝浦 幸男君         安全保障委員会         専門員     田中 達郎君 委員の異動 三月二十四日         辞任         補欠選任   冬柴 鐵三君     漆原 良夫君   塩田  晋君     西川太一郎君 同日         辞任         補欠選任   漆原 良夫君     冬柴 鐵三君   西川太一郎君     塩田  晋君 五月十三日         辞任         補欠選任   河井 克行君     桜田 義孝君   杉山 憲夫君     園田 修光君   山崎  拓君     大石 秀政君   吉川 貴盛君     渡辺 博道君   冬柴 鐵三君     斉藤 鉄夫君   辻元 清美君     北沢 清功君 同日         辞任         補欠選任   大石 秀政君     山崎  拓君   桜田 義孝君     望月 義夫君   園田 修光君     杉山 憲夫君   渡辺 博道君     吉川 貴盛君   斉藤 鉄夫君     冬柴 鐵三君   北沢 清功君     保坂 展人君 同日         辞任         補欠選任   望月 義夫君     河井 克行君   保坂 展人君     辻元 清美君 三月十七日  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案内閣提出第一九号) 同月五日  思いやり予算撤廃に関する請願土井たか子紹介)(第九八三号)  思いやり予算をはじめ、防衛予算大幅縮小に関する請願畠山健治郎紹介)(第一〇〇五号)  同(畠山健治郎紹介)(第一〇一六号)  同(保坂展人君紹介)(第一〇一七号)  同(横光克彦紹介)(第一〇一八号)  同(畠山健治郎紹介)(第一〇三〇号)  同(濱田健一紹介)(第一〇三一号)  同(横光克彦紹介)(第一〇三二号)  同(土井たか子紹介)(第一〇四六号)  同(畠山健治郎紹介)(第一〇四七号)  同(畠山健治郎紹介)(第一〇六四号)  同(保坂展人君紹介)(第一〇六五号)  同(畠山健治郎紹介)(第一一一七号)  同(保坂展人君紹介)(第一一一八号) 同月十二日  思いやり予算をはじめ、防衛予算大幅縮小に関する請願辻元清美紹介)(第一一九六号)  同(保坂展人君紹介)(第一一九七号) 同月十八日  防衛大学校によるインドネシア軍人等受け入れ反対に関する請願金田誠一紹介)(第一四三二号) 同月二十五日  防衛大学校によるインドネシア軍人等受け入れ反対に関する請願中川智子紹介)(第一五八八号)  思いやり予算をはじめ、防衛予算大幅縮小に関する請願中川智子紹介)(第一六八三号) 四月一日  防衛大学校によるインドネシア軍人等受け入れ反対に関する請願中桐伸五君紹介)(第一七〇六号) 同月七日  沖縄・名護海上ヘリポート基地新設計画断念に関する請願伊藤茂紹介)(第一八八九号) 同月十六日  軍事費大幅削減に関する請願古堅実吉紹介)(第二七三四号) は本委員会に付託された。 四月二十七日  那覇軍港早期返還に関する陳情書(第一六五号) は本委員会に参考送付された。 本日の会議に付した案件  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案内閣提出第一九号)     午前九時開議      ――――◇―――――
  2. 二見伸明

    二見委員長 これより会議を開きます。  この際、お諮りいたします。  去る三月二十四日の安全保障委員協議会記録につきましては、本日の会議録に参照として掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 二見伸明

    二見委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――     〔協議会記録本号末尾掲載〕      ――――◇―――――
  4. 二見伸明

    二見委員長 内閣提出防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案議題といたします。  趣旨説明を求めます。野呂田防衛庁長官。     ―――――――――――――  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案     〔本号末尾掲載〕     ―――――――――――――
  5. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 ただいま議題となりました防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容概要を御説明いたします。  この法律案は、防衛庁設置法及び自衛隊法の一部改正内容としております。  これは、平成八年度以降に係る防衛計画大綱を踏まえ、我が国防衛力について合理化効率化コンパクト化を進めるとともに、必要な機能充実等を図るとの観点から、陸上自衛隊師団改編等及び統合幕僚会議における情報機能充実等を行うことに伴い、自衛官定数及び即応予備自衛官員数を変更するものであります。  以上が、この法律案提案理由であります。  次に、この法律案内容について、その概要を御説明いたします。  まず、防衛庁設置法の一部改正内容について御説明いたします。  これは、陸上自衛隊師団改編等に伴い、陸上自衛隊自衛官定数を千六百四人削減し、情報本部運用態勢充実等のため、統合幕僚会議自衛官定数を六十一人増加するものであります。これにより、自衛官定数は計千五百四十三人削減されることとなります。  次に、自衛隊法の一部改正内容について御説明いたします。  これは、陸上自衛隊師団改編に伴い、即応予備自衛官員数を九百九十三人増加するものであります。  以上が、防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案提案理由及びその内容概要でございます。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。
  6. 二見伸明

    二見委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     ―――――――――――――
  7. 二見伸明

    二見委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田村憲久君。
  8. 田村憲久

    田村委員 自民党の田村憲久でございます。  それでは、防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案に関して、幾つか御質問をさせていただきたいと思います。  この法律案でありますけれども、防衛大綱にのっとって陸上自衛隊員数等々を、組織を変えていくという一環においてまた今回提案をされてきておるわけでありますが、平成九年に制度導入以来二年がたってきておるわけであります。ちょうど私、一番初めのときに御質問をさせていただいた覚えがあるのですけれども、そのときに幾つか不安な点も御質問をさせていただきました。  そこで、実際問題、もう導入されて年数がたってきておるわけでありますけれども、即応予備自衛官についてでありますが、計画どおりに採用等々は進んできておるのか、まず質問をさせていただきます。
  9. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 即応自衛官につきましては、制度導入初年度平成九年度に六百九十六名、平成十年度末に二千四十八名の現員を確保することを計画し、計画どおり現員を確保しているところであります。
  10. 田村憲久

    田村委員 順調に、計画どおり整備が進められておるというお話でございましたけれども、この即応予備自衛官制度というものを円滑に進めていくためには、どういたしましても企業の御協力が必要であるというわけでありますが、実際問題、現在の日本経済は非常に厳しい現状下でありまして、大手の企業が次から次へと、それも世界に冠たる企業が一万名を超えるようなリストラを発表したりいたしております。  そんな中で、この即応予備自衛官という制度、非常に企業にとっても重荷になる可能性もあると思うわけでありますが、そこら辺、企業の御理解等々は十分にしていただいておるのか、御認識の方をお伺いいたしたいと思います。
  11. 坂野興

    坂野政府委員 即応予備自衛官は、平素は企業等に勤務しつつ、必要とされる練度維持するために、おのおのの仕事をやりくりしながら、休暇取得等によりまして訓練招集に応じているということになっております。  このような即応予備自衛官制度を円滑に運用していくためには、即応予備自衛官個人の意思、努力に加えまして、不在時の業務調整休暇取得への配慮などの面で雇用企業等理解協力が不可欠でございます。  この点、これまでのところ、多くの企業等から協力をいただきまして、計画どおり現員を確保しているところでありますが、引き続き企業理解協力を得られるよう努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  12. 田村憲久

    田村委員 今理解を得られるように頑張ってまいりますというようなお答えをいただいたわけでありますけれども、企業はある程度理解をしていただいてきておるんであろうとは思います。  ただ、実際問題、即応予備自衛官方々、大変厳しい経済状況企業リストラをしてきておる、またある意味では、自分たちの仲間の中でも会社をやめざるを得ないという人たちも出てきておるという中で、企業理解をしておるということでありますから即応予備自衛官という形でおれるわけでありますけれども、同時に、その方々は、大変な精神的なプレッシャーといいますか、非常に厳しい経済現状下の中において企業負担をかけながらお国のために頑張っておるんだというような、精神的なプレッシャーというものも感じておられるんじゃないのかな、そんなふうにも思うわけであります。  そこら辺のところをいかにこれから防衛庁といたしましてケアしていかれるつもりなのか、その点をお聞かせいただきたいんですが。
  13. 坂野興

    坂野政府委員 先ほどお答え申しましたように、即応予備自衛官制度を充実発展させていくためには、企業の御理解が大変重要であるということを申し上げました。  即応予備自衛官が安んじて訓練等に出頭し得る環境を確保することは、即応予備自衛官制度を円滑に運用していく上で極めて重要な要素であるというふうに考えております。このため、防衛庁といたしましては、即応予備自衛官を採用する企業の御負担というものを考えまして、不在時の業務調整休暇取得への配慮などの面で雇用企業等が負う負担努力配慮いたしまして、これに報いるため、雇用企業等に対しまして即応予備自衛官雇用企業給付金を支給いたしているところでございます。
  14. 田村憲久

    田村委員 どうか、即応予備自衛官方々のそういうような悩み等々をお聞きいただくような、そういう場もぜひともお設けいただきたいな、そういうふうにお願いをいたしたいと思います。  さて、ちょっと法案から離れるわけでありますけれども、実は、先般衆議院ガイドライン関連法案が可決をいたしました。実際問題、緊急な、緊急といいますか、周辺事態というような日本の国の平和と安全に重大な影響が与えられる場合という中で、ガイドラインに関連するいろいろな法案衆議院で通ったわけなんですけれども、いろいろなことを考えていきますと、実際問題、あのときには、後方地域支援で、いろいろな、敵国といいますか、米軍が交戦しておる国から攻撃を受けた場合どうなるんだというような議論があったんですが、そういうような議論よりももっと深刻なのが、国内でもしテロ活動が起こったらどうするんだ、武装工作員が入ってきて。日本の国から米軍に物資を供給するために、周辺事態において後方地域支援をするところに攻撃があるというのは、これは攻撃がないところでやるから大丈夫だという話だったんですが、それよりも、国内武装工作員等々がいろいろな妨害工作をやったりとか、また、いろいろなテロを行うなんということの方が、非常に現実味があって怖いんじゃないのかな、実はそう思うんです。  そこでお伺いいたしたいのは、武装テロとか武装工作員に対して世界各国はどのような部隊をもって対応をされておられるのか、そしてまた、我が国は、それに対応するような部隊は多分ないと思うんですけれども、そういうような状況が起こった場合にはどういう部隊対応をしていくのか、この点をお聞かせいただきたいと思うんですが。
  15. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 各国テロ対策は、一般的には警察任務とされているわけでありますが、事犯の頻度とかあるいは程度の事情に応じまして取り組みの姿勢に相違がございます。事犯が頻発したり、あるいは程度が凶悪化している国の一部におきましては、軍の特殊部隊等にもテロ対策任務を付与している例があるものと承知しております。  具体的な例を挙げますと、米国では、九九年版の国防報告におきまして、軍の特殊作戦能力役割一つとしてテロリズムとの戦いを掲げており、陸軍の特殊作戦部隊等テロ対策任務が付与されているところであります。  また、イギリスでは、九六年度版国防報告において、国防省の任務一つとして非軍事当局テロ対策に対する支援を掲げており、特殊任務空挺部隊テロ対策任務が付与されております。  我が国におきましては、治安維持等については、御案内のとおり第一義的には警察機関任務とされており、自衛隊は、テロリズムへの対策を含め治安維持に第一義的に対応することを任務とする部隊を保有してはおりません。また、かかる部隊を保有することは現在のところは考えていないところでありますが、日ごろの訓練を通じて得た技能とか経験を生かしまして、法令の定めに従い、警察機関等と連携し、各種の事態対応できる限りのことをしてまいりたい、こういうふうに考えているところであります。
  16. 田村憲久

    田村委員 今、テロ等々に対しての対応する部隊日本にはない、つくることも考えていないという御返答であったわけでありますが、仮にあったといたしましても、自衛隊の中の一部隊であるといたしますと、自衛隊法等々の絡みで、今の自衛隊法の中の制約においてはそう簡単には出動できないのかな、そんなふうにも思うわけであります。  先般、北朝鮮からの工作船がやってまいりました。海上保安庁が一次的に対応して、そして、海上警備行動という形で自衛隊が初めて出動をいたしたわけでありますが、新聞等の報道を見ますと、あのとき五インチ砲で対応しますと船は沈みますから、これはちょっと自衛隊法との絡みで行き過ぎるんじゃないか、また、警職法との絡みで行き過ぎるんじゃないかという議論でありました。  高速艇という部分でも、現在、十二年度予算で十二・五ミリ砲ぐらいの武器を持った高速艇を新しく整備して追加しようなんというような話もあるわけでありますが、我が国は、四方を海に囲まれておりますから、どこからでも確かに工作艇が入ってこようと思ったら入ってこれるわけであります。  本来ならば、海上というところに限定をするべきでもないんでありましょうけれども、領域警備隊なるようなものをつくって、入ってくるものを途中で対応するといいますか、それを追い出すなり捕まえるなり、そういうような部隊があってもいいんじゃないかな、もしくは、そういう法律を本来はつくって、ある意味ではテロに対してもそういうもので対応していくべきなんじゃないのかな、そんなふうにも思うわけであります。  ぜひともそういう領域警備の概念というものを導入していただいて、これは法整備しないとできませんから、法整備も含めてやっていただきたいなと思うんでありますが、いかように防衛庁は御見解をお持ちでありましょうか。
  17. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 平時における不法行為等への対処につきましては、先ほども申したとおりでありますが、第一義的には警察機関任務であります。自衛隊は、警察機関では対処できないと認められる事態が発生した場合には、治安出動等により対処することとなることは、累次申し上げてきたとおりであります。  政府としましては、橋本内閣以来、我が国に対する危機が発生した場合や、また発生のおそれがある場合には、沿岸あるいは重要施設警備など、我が国としてとるべき種々の対応について、必要な対応策をあらかじめ十分検討、研究することを目的として、緊急事態対応策検討を実施しているところであります。  防衛庁としましては、このような事案に際してのより適切な対応を期するため、自衛隊対応あり方関係省庁の連携について、御指摘領域警備の問題も含め、今後ともさらなる検討を行い、万全を期してまいりたい、こういうふうに考えております。
  18. 田村憲久

    田村委員 昨今、日本周辺は大変物騒でございますので、どうか、国民を安心させるためにも、これからも御検討をお願いいたしたいと思います。  さて、話は変わるわけでありますが、東京都知事選石原知事が誕生いたしました。横田基地返還もしくは軍民共用というような公約を挙げてこられたわけでありますけれども、新聞等々を見ておりますと、野中長官等々がそれに対して、とんでもないというような御発言もいただいております。政府といたしましては、いかようにお考えいただいておられるのか、お答えを願いたいと思います。
  19. 竹内行夫

    竹内政府委員 石原知事都知事選の過程におきまして、横田基地あり方についての主張をされたことは、当然我々も承知しているわけでございますが、政府といたしましては、一々その御発言についてコメントすることは差し控えるということでございます。  他方、そのような前提で、横田基地あり方ということにつきまして、一般的な考え方でございますが、申し上げさせていただきたいと思います。  すなわち、現在米軍横田飛行場におきましては、在日米軍の全体の約一割弱に当たります三千七百名程度米軍人が在勤しております。そして、在日米軍司令部及び第五空軍司令部のほか、本土に所在いたします空軍施設維持管理等、さらには基地支援、通信、気象等業務を実施する部隊が置かれていると承知しておりまして、このような横田飛行場というのは、在日米軍の中枢の施設として、日米安保条約目的達成上極めて重要な役割を果たしているというのが現状であろうと考えております。したがいまして、現時点でそのような横田飛行場返還ないしは共同使用への移行を我が国として米側に求めるということは考えていないというのが現在の政府の考えでございます。
  20. 田村憲久

    田村委員 ごもっともなお答えでございます。ありがとうございました。  また話は変わるわけでありますけれども、NATO軍ユーゴスラビアに対して、コソボの問題で空爆を始めてからもうかなりの月日が流れるわけであります。これに対して、実は日本政府は、NATO軍空爆に対して理解するというような見解を発表されておられますが、理解するというのは非常にあいまいでございまして、理解というものは、賛成という意味理解をすると言われておられるのか、それとも、そういう事実があって空爆をしているんですね、わかりましたということで理解というお言葉をお使いになっておられるのか、どういう意味での理解なのか、ぜひとも御答弁をお願いいたします。
  21. 楠本祐一

    楠本説明員 お答え申し上げます。  今回のNATO軍によるユーゴスラビア空爆についてのお尋ねでございますけれども、政府といたしましては、ユーゴ政府が和平の合意案、これをかたくなに拒否をいたしまして、他方で、国連の安保理決議に反しまして、コソボにおきましてユーゴ軍及びセルビアの治安部隊によります過度な武力行使が続く、こういう中でぎりぎりの外交交渉が行われてまいりまして、それがとんざをいたしまして、このまま放置をすれば多数のさらなる犠牲者が出ることが必至であるという人道上の惨劇を防止するためにやむを得ずとられている行動であるということで理解をしている次第でございます。そういうことで、理解をすると申し上げておりますのは、NATO行動がこのような背景のもと、やむを得ずにとられたという性格のものであることを認識をしている、そういうことでございます。  いずれにしましても、我が国は、NATO行動当事国でもございませんし、またNATO行動につきまして詳細な情報を有しているわけでもございませんので、NATO行動につきまして法的な評価を下すことはできないということについては御理解をいただきたいと思います。
  22. 田村憲久

    田村委員 賛成じゃないということであるのだろうというふうに受けとめさせていただきます。よろしいですね、認識したということで。
  23. 楠本祐一

    楠本説明員 先ほどお答え申し上げましたように、今回の空爆が、このまま放置をすれば多数のさらなる犠牲者が出ることが必至ということで、人道上の惨劇を防止するためにやむを得ずとられたという行動であると認識をしているということでございますので、御理解をいただきたいと思います。
  24. 田村憲久

    田村委員 認識をしておるということでありますから、賛成じゃないんであろうと私は思います。  それはそれで、当初、理解するというような御答弁といいますか、見解であったわけでありますが、その後中国大使館誤爆もございました。また、いろいろな民間人民間施設等々への誤爆がございまして、多数の犠牲者をこの空爆は伴っております。当初理解をするというふうに御見解をされた後、いろいろな状況変化があるわけでありますが、最後質問でありますけれども、そのような変化の中において、政府はどのような見解を持っておるのか、最後に御質問をさせていただきたいと思います。
  25. 楠本祐一

    楠本説明員 NATO誤爆によりまして、先生御指摘一般市民あるいは在留の外国人犠牲になっている件につきましては、我が国といたしましては、極めて遺憾であるというふうに思っておりまして、犠牲となられました方々に対しては深い哀悼の意を表したい、そういうふうに考えている次第でございます。  NATOソラナ事務総長におきましても、今回のベオグラード中国大使館誤爆につきましては、深い遺憾の意を表明するということで、これからも決して非戦闘員を標的とする意図はないということを言明しておりますし、またアメリカのコーエン国防長官におきましても、このような誤爆を防止するために、今後、ベオグラードにございます外国大使館の移転、新築の場合には、このような情報米側の関係当局にしかるべく伝達するようにするとか、あるいは標的に関する情報の手続を強化するとか、あるいは攻撃をしてはならない標的に関するデータベースの更新を迅速にする、そういう措置をとるように発表をしております。  いずれにしましても、このような誤爆による犠牲者あるいはユーゴの軍、治安部隊攻撃による多くの犠牲者、こういうことは一日も早く終止符を打つ必要があると考えておりまして、我が国としましては、コソボ問題の政治解決、これが必要と思っておりまして、G8の一員ということで努力を引き続きしてまいる所存でございます。
  26. 田村憲久

    田村委員 終了いたします。ありがとうございました。
  27. 二見伸明

    二見委員長 桑原豊君。
  28. 桑原豊

    ○桑原委員 民主党の桑原でございます。  まず最初に、今提案をされております法案の部分について御質問をさせていただきたいと思います。  今回の防衛庁設置法改正によりまして、統合幕僚会議に所属をする自衛官定数情報本部運用態勢充実等のために五十三人が増員となる。それから、統合幕僚会議事務局の自衛官定数を八人増員をする。これは、新中央指揮システムの管理等に係る要員の確保だということであるわけですが、情報本部及び新中央指揮システムというこの二つの部署を、現在の定員と、それからこの先中期防衛力整備計画の目標としてどれだけの要員を確保していく予定をしているのか、そのことをまずお伺いをいたしたいと思います。
  29. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 情報本部の現在の定員、これは自衛官と事務官合わせてでございますが、千六百五十六名、平成十年度末でそういうことになります。  今回お願いしております防衛庁設置法改正によりまして、情報本部運用態勢の充実を図るため、自衛官の定員については、すべて実員化することを念頭に、五十三名増員することとし、事務官を含めますと千七百十八名を確保することといたしております。
  30. 桑原豊

    ○桑原委員 平成八年から各自衛隊情報部門といいますか、そういったものを統合幕僚会議の中に集約をしながら大規模な体制を目指して拡充を図ってきておられるわけでございますけれども、中央における情報本部と新中央指揮システムのそれぞれの活動の内容と、さらにその機能の充実を図っていくという、その充実を図るというその中身についてどのような点を考えておられるのか、その点をお聞きしたいと思います。
  31. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 防衛庁としましては、冷戦後の国際情勢に的確に対応するために情報機能の充実が重要であると考えております。現中期防のもと、各種情報収集手段等の整備や能力の高い情報専門家の確保等に努めてきたところであります。平成十一年度におきましては、引き続き情報本部の各種機能の充実を図っているところであります。  主要事業としましては、防衛庁における画像情報業務効率化、高度化するために、今後、一般に販売が予定されている商業用高分解能衛星画像、これは分解能一メータークラスでありますが、にも対応した画像情報支援システム、IMSSでございますが、を導入することといたしております。また、情報分析態勢や保全態勢についても一層の充実を図ることといたしております。
  32. 桑原豊

    ○桑原委員 情報の方はそれでわかったんですけれども、新中央指揮システムの中身はどういうことでしょうか。
  33. 柳澤協二

    ○柳澤政府委員 お答えいたします。  中央指揮システムにつきましては、自衛隊の指揮中枢ということで自衛隊行動等に関する長官の指揮監督をサポートするという目的でありますが、現在六本木に我々持っておりますのは昭和五十年代につくったものでございまして、通信の連接の仕方やら、あるいはコンピューターも非常に古うございます。これを先生が言われた新中央指揮システム、防衛庁の庁舎が市ケ谷に移転するのに合わせまして、市ケ谷の庁舎の中で今整備をしております。これの基本目的防衛庁長官の指揮のサポートということで変わりませんが、最新の通信手段あるいはコンピューターシステムを入れて、より効率的なものにするという目的整備をしております。
  34. 桑原豊

    ○桑原委員 さきの衆議院におけるガイドライン議論の中でも、こうした情報米軍との協力あり方、あるいは、中央指揮といいますか、そういった部門での協力あり方、そこら辺がいろいろと議論をされたと思います。  そこで、米軍との一体的なありようがどうなのかということで、さまざまな角度からの議論があったと思うのですけれども、特に、今対象になっているこの情報本部とそれから新しい中央指揮システム、この部門が米軍と、例えば、平時あるいは有事、あるいは今議論をされております周辺事態、そういった段階でどのような協力関係というものを考えておられるのか、あるいは現にいろいろやっているということなのか、そのことを少し教えていただきたいと思います。
  35. 佐藤謙一郎

    佐藤(謙)政府委員 情報本部につきましては、防衛庁の中央情報機関といたしまして、平素から各種の情報を収集いたしまして、これら情報を分析をするとともに、それを必要な部署に配付しているということでございます。  専守防衛を旨といたします我が国にとりまして、情報収集というのは、言うまでもなく、極めて重要でございます。情報本部も、その時々の情勢に応じまして情報収集体制を強化いたしまして、必要な範囲内において米軍との情報交換を行うこととしているということでございまして、現在におきましても、必要に応じ、米軍情報交換をしている、こういう状況にございます。
  36. 桑原豊

    ○桑原委員 それは必要に応じということですが、何かいわゆる定期的にそういったことをやられておるとか、あるいは常に情報本部の中に、あるいは指揮システムの中に米軍の参画があるというような形でやられているのか、そこら辺はどうなんでしょうか。
  37. 佐藤謙一郎

    佐藤(謙)政府委員 我が方と米側と極めて緊密に情報交換あるいは意見交換してございますから、それは、それこそあらゆるレベルを考えますと、毎日のようにと申しましょうか、そういうことで、情報交換、意見交換をしているという状況でございます。  また、その意見交換の仕方につきましても、一定の場所に集まって、顔を合わせて情報交換をすることもございますし、また、電話等で済むような場合には電話等で済ますこともございますし、あるいはファクス等で情報を交換する場合にはそういった格好でもやるということで、その情報内容あるいはその必要性に応じまして、手段と申しましょうか、それを適宜活用しているわけでございます。
  38. 桑原豊

    ○桑原委員 次に、即応予備自衛官。先ほど田村委員の方からもいろいろお話がございました。できるだけダブらないようにお尋ねをしたいと思います。  この制度平成九年に発足をして、自来、募集等については大変順調に進んできておる、先ほどそういうお話がございました。  実際にそういった方々が招集をされて訓練をしておられるわけでございますけれども、この訓練の実績、年間三十日間ということですが、大体そういう方向に沿って実績が積み重ねられておるのか、その点をどのように評価をされているのかということ。それから、企業協力が大変重要なポイントになるわけですけれども、この企業協力についても、皆さん方の御説明では、それなりに順調に大変協力が得られているんだ、こういうことなんですが、いろいろな事情から恐らく難しい問題も私はたくさんあるだろう、こういうふうに推察をいたします。そういった協力をしていただける企業数というのがどれだけあるのか、あるいはどういった分野の企業が特にそういう協力に参加をしておられるのかというようなことも少し状況として含めて、そこら辺のお話をお聞かせいただきたいと思います。
  39. 坂野興

    坂野政府委員 まず第一点目の即応予備自衛官の招集訓練の実績でございます。  数的には予定どおり、計画どおりの数を確保したわけでございますが、即応予備自衛官の招集訓練につきましては、中隊などが基本的な戦術行動を最小限実施できる練度を達成するとの観点から、年間合計三十日の招集訓練を実施することとしておりまして、平成十年度は第四師団、これは九州の福岡県にございますが、におきまして、また平成十一年度は第四師団、そして第六師団、これは南東北でございます、及び第一三旅団、これは中国地域でございますが、において基本的にすべての即応予備自衛官に対しまして招集訓練を実施したところでございます。  目標といたしましては三十日ということでございますが、若干三十日に至らなかったものもございますが、大部分は三十日の訓練を実施したところでございます。  それから、即応予備自衛官に対する企業としての協力でございますが、これは先生もお話しございましたように、即応予備自衛官を充実し発展させていくためには雇用企業協力というものが大変重要でございます。現在、雇用企業といたしましては千四百社程度ございます。  私ども、必ずしも楽観しているわけではございませんが、やはり企業の実情というのも考えながら訓練計画をつくったりとか、そういうことで企業協力がさらに得られるように努力していきたいというふうに考えております。
  40. 桑原豊

    ○桑原委員 防衛出動ですとか災害派遣等に一定の役割を果たしてもらう、こういうことになっておるわけですが、現在までのこの二年間、活動の実績等あるのかどうか、あるいはいろいろ議論になっている周辺事態などの場合にも即応予備自衛官というのは具体的に参画をするのか、参画をするとすればどういったことなどが想定をされているのか、その点お聞かせいただきたいと思います。
  41. 柳澤協二

    ○柳澤政府委員 即応予備自衛官のいわゆる実任務と申しますか、先生触れられたとおり、スキームとしては、防衛招集命令、治安招集命令、それから災害等の招集命令ということで招集をされて、自衛官として勤務をすることになります。  そこで、いわゆる実任務ということになるわけでございますが、この間、そういった事例がなかったこともございまして、そういう意味での実際の招集というのはございません。先ほどお答えしましたように、年間三十日の訓練ということを現在やっておるところでございます。  それから、周辺事態についての御指摘がございましたけれども、即応予備自衛官の招集のスキームが、今申し上げた防衛招集、治安招集、それから災害招集でありますので、いわゆる周辺事態であるということだけで自動的にこの即応予備自衛官の招集ということになるというものではないと思っております。
  42. 桑原豊

    ○桑原委員 今まで、陸上自衛隊あるいは統合幕僚会議というようなことでこの法案に関連をしてお聞きをしたわけですけれども、法案からちょっとそれますけれども、周辺事態ということになりますれば、日本が周囲を海に囲まれているということもございます。そういう意味では、例えば捜索救助の活動ですとか、あるいは輸送の活動ですとか、あるいは監視活動と申しますか、そういったことなども含めて、海上自衛隊の果たす役割というのが、周辺事態を想定すると強く求められてくるわけですけれども、そのようなことなどを想定をして、海上自衛隊部隊の編成であるとかあるいは装備、訓練、そういった点にどのような対応を考えておられるのか、既に一定の対応をしているのか、そこら辺をひとつお聞きをいたしたいと思います。
  43. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 一般論として申し上げさせていただきますと、周辺事態安全確保法案等において規定される自衛隊の新たな業務につきましては、自衛隊任務遂行に支障のない範囲内で、自衛隊が保有する能力を活用して実施するものであります。したがって、この法案が成立した場合、基本的には、いずれの業務についても、海自のみならず、自衛隊の現有装備、機能等を活用して遂行し得るものであると考えております。  いずれにしましても、これらの新たな任務をより効果的に実施するために、御指摘自衛隊部隊編成、装備の面で具体的にいかなる措置を講ずべきであるかということにつきましては、今後鋭意検討されるべきものと考えており、この時点で確たることを申し上げることはできない次第であります。  他方周辺事態安全確保法に盛り込まれた活動は、自衛隊の新たな任務でありますことから、法案が成立し自衛隊にこれらの新たな任務が付与された場合には、これらを円滑かつ効果的に遂行するため必要な訓練を実施する等の措置を講じ、万遺漏なきを期してまいる考えでございます。
  44. 桑原豊

    ○桑原委員 海上自衛隊周辺事態に関連をするのではないかと思われることで少しお聞きしたいいんですが、新聞の報道で八月に韓国の海軍と初めて海上自衛隊が共同訓練を行うというようなことが伝えられておりますけれども、これはそういうことなのか。だとすれば、その目的であるとかあるいは内容がどういうことが想定をされているのか、そのことをお聞きしたいと思います。
  45. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 韓国は我が国の最も近くに位置する友好国であります。日韓両国の防衛当局間の相互理解を深め、信頼関係を増進することは、日韓双方にとって有意義なものと考えております。このような観点から、日韓間においては、各レベルの相互訪問、留学生の交換、艦艇の相互訪問など各種のレベルにおける防衛交流が積み重ねられているところでありますが、昨年九月それから本年一月の日韓防衛首脳会談における合意等を踏まえまして、海上自衛隊と韓国海軍との間で、本年八月に捜索救難に関する海上共同訓練を実施することが合意されたことは、今委員指摘のとおりでございます。  具体的には、本年八月二日から八日までの間に九州と韓国済州島の中間の海域で、救難船舶を海上自衛隊及び韓国海軍の艦艇、航空機が共同して捜索救難を実施するというものであります。本訓練は、日韓両国の防衛当局間の相互理解を深め、信頼関係を増進することを目的とした防衛交流の一環として行われるものであります。
  46. 桑原豊

    ○桑原委員 過去、日米同盟、そして米韓の同盟、そういうことを前提にしながら日米韓で合同した訓練を行うというようなことは行われてきたと思います。  しかし、そういった日韓の間には、確かに防衛交流というような形で政府間のいろいろな緊密な連携が行われてきたことは、私も、そのとおりでもあり、またその必要性を認めるものでありますけれども、具体的に訓練をやるということになるならば何らかの法的な根拠のようなものが要るのではないかとも思われます。そういった点はどうなのか。あるいは、今の御説明では、具体的に今議論をされておりますところの周辺事態というものとのかかわりがもう一つはっきりいたしておりませんけれども、このこととのかかわりはどうなのかということについていま一度お尋ねをいたしたいと思います。
  47. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 先ほど申し上げたわけでございますが、日韓両国の防衛当局間の相互理解を深め、信頼関係を増進することを目的とした防衛交流の一環としてこの訓練は行われるものでありまして、周辺事態への対応目的とした訓練ではないということを明確に申し上げておきたいと思います。  法的根拠等の問題につきましては、政府委員の方から答弁させます。
  48. 柳澤協二

    ○柳澤政府委員 他国の軍隊との共同訓練につきましては、もちろんこれは教育訓練の一環ということで、私ども、戦術技量の向上というものを主たる目的にして実施しております。特に日米の共同訓練につきましては、有事共同対処ということが当然の前提でございますので、日本防衛ということを前提にした訓練を相当やっております。  一方、今触れられております日韓でもそうでありますが、その他の国との間でも、親善を目的にした訓練というのは、練習艦隊が寄港した折等々に実施しておりまして、実は昨年、日ロの間でも捜索救難の共同訓練というものを実施いたしました。  自衛隊各国軍隊との防衛交流という側面で申しますと、部隊同士の実技を通じた交流というのは、お互いの相互理解の増進という意味では非常に有効な手だてでありまして、お互いの戦術技量の向上とそれから友好親善の強化という両方の観点から、こういう訓練をいろいろさらに進めていきたいと考えております。  根拠ということでは、重ねて申し上げれば、教育訓練ということでありますし、さらにこういう捜索救難については、当然自衛隊も災害派遣の任務を持っておりますし、韓国の海軍も持っておりますし、日韓ということで申し上げますと、先ほど大臣から申し上げた九州の西方の海域というのは日韓の民間船も非常にふくそうする海域でもございます。そういうところで実際に双方が出て、こういうケースにおける連絡のとり方であるとか、双方の救助の方法等について連携をしよう、こういうことでございます。     〔委員長退席、浅野委員長代理着席〕
  49. 桑原豊

    ○桑原委員 今、周辺事態議論されているさなかでのそういうことでもございますし、それから、訓練というのが、単に親善交流だけではなしに、具体的な事象に対してどう対処していくのかという、現実の問題に対応する、そういうためのものであるというふうに考えますと、私は、御説明のとおりで、はい、そうですかということにもなかなかならないような気もいたします。さらにこの問題については、いろいろと機会を見てお尋ねをいたしたいと思います。  次に、外務省の皆さんにもお越しをいただいておりますので、NATOユーゴ空爆、先ほどもお話がございましたけれども、このことについて何点かお伺いをいたしたいと思います。  NATOは、新しい戦略というものを発表いたしております。いわゆるNATOの区域外で起きた問題であっても、区域外で起きた問題というよりも、区域外の問題でNATOのいろいろな利益というものが危険にさらされるような、そういう事態が発生をした、あるいは先ほど御説明のあったような人道的な問題なども含めてNATO軍が域外に行動を起こすことができるというようなことを含めた新戦略を発表いたしたわけでございます。  まず、この考え方について、どのように政府は考えておられるのか、評価をされておられるのか。そして、恐らく今度の空爆もその考え方に基づいて一つ行動に踏み切ったということになろうかと思いますけれども、先ほど御説明がございました、ぎりぎりのところで、やむを得ないものとして認識をされているというようなことでありましたけれども、改めて、NATOの新戦略と今度の空爆というものとのかかわりも含めてどのように評価をされておられるのか、そのことをお伺いいたしたいと思います。
  50. 楠本祐一

    楠本説明員 NATOの新戦略概念でございますけれども、今回の新しい概念におきましては、NATOが共同をして加盟国の安全を守るということだけではなくて、欧州大西洋地域の平和と安定に寄与するためにNATOが紛争の予防、危機管理及び危機対応策をとることを新たに規定しているものでございます。  政府としての評価でございますけれども、この新戦略概念というものは、冷戦の終結に伴いまして直接的な大規模侵略の可能性が低くなるという一方で、地域紛争等の新たなリスクが増大をしたという認識のもとで、NATOが欧州大西洋地域の平和と安定に貢献をする必要がある、そういう見方を示したものというふうに考えている次第でございます。  この文書の性格といたしまして、九一年に策定をされましたNATOの戦略概念を改定したものでございまして、先ほど申し上げました九一年以降のNATOを取り巻く情勢の変化を踏まえて改定した、NATOの基本的な指針を定めたものであるというふうに認識をしております。  それと先生御指摘の今回の空爆との関係でございますけれども、先ほど申しました、我々としましては、この新戦略概念は新たな基本的な指針という理解でございまして、我が国NATOのメンバーでもございませんし、その辺、有権的に関係について評価を下すということはできないということについては、御理解をいただきたいというふうに思っております。
  51. 桑原豊

    ○桑原委員 アメリカの方では、世界的な戦略配置といいますか、西側はNATO、そして東の方では日米安保条約、日米同盟ですね、そういったものを通じて世界の平和というものに貢献をしていくというような物の考え方であろうと思います。  そうなりますと、NATOがそういった新しい戦略方針を持つ。今コソボで行われていることは、NATOの側から見ますと、まさに日本の今議論をされております周辺事態に当たるようなものがコソボで行われておる、そういうことにも私はとれると思います。そのときに、日本の日米安保の考え方の中では、今度の周辺事態ではそういったNATOのように域外に軍事行動を起こしていくというようなことは当たらないわけでございますけれども、その点については、NATOはそういう戦略方針だけれども、日米の場合には、そういった問題についてNATOと同じような対処をする可能性は、私はないとは思いますけれども、その点について少し確認をさせていただきたいと思います。
  52. 竹内行夫

    竹内政府委員 これはもう先生御承知のところでございますが、日米安保条約目的といたしますところは、日本の安全を維持するということと、それから極東におきます国際の平和と安全の維持ということとされているわけでございます。したがいまして、それに従った行動というものを米軍がとるということは、安保条約の第六条においても明かなところでございます。  お尋ねの、お触れになりました周辺事態というのは、あくまでも我が国の平和と安全に対して重要な影響を与える事態ということでございまして、我が国の安全ということに着目した概念でございます。
  53. 桑原豊

    ○桑原委員 中国大使館への誤爆の問題がございまして、G8で七項目の合意ができて、その線に沿って平和的な紛争の解決に向かう、そういう兆しが見えたわけでございますけれども、そのことがとんざをした。そして、今また新たな動きもあるようではございますけれども、ともかく、この問題について早期の平和解決が望まれているわけでございます。  そこで、中国大使館への誤爆は、私は、決してたまたまの誤爆ではなかったというふうに思わざるを得ません。それは、それに至るまでの間連日のようにして、いろいろなところで誤爆があった、そして民間の方が死傷した、こういう報道がなされておりました。  今度の中国大使館への誤爆はレーザー誘導爆弾ということで、一応、標的を見定めたということであればそれには確実に命中をするということなんですけれども、どこを標的にするかということを見誤ると、これはもう確実に誤った結果が出てくる、こういうことでございまして、そういう意味では、いかに科学技術を駆使しても人間の判断というものが入る余地があるわけでございまして、この誤爆は、私はやはり避けられないものであったのではないか。特に、空爆が行われて、短期間でその空爆の効果があって、何とか和平にというような見通しがあればまだしも、この空爆は一体どこまで続くのかというようなことが見通しとしてはっきりないまま、あるいは誤った見通しのままに踏み切ったものではないかというふうな気も私はいたしております。  そういう意味では、この誤爆の問題、それから、今後日本の立場でどういった和平への役割を果たしていくのか。そのことについては、外務大臣もマケドニアの方に訪れて、いろいろな意見交換もされておると思うのですけれども、そういった見通し。それから、中国でありますとかロシアに対する日本の働きかけの問題、あるいはアメリカとの同盟に基づく日本役割、そんなことなども含めて、コソボというのは日本から相当離れたところの問題でありますし、ある意味では第三者的な、中立的な、公正な判断が日本にできる、そんな立場でもあろうかと私は思います。ぜひ、積極的な和平への役割、そんなものを果たしていただきたいと思うのですけれども、その点についてお聞かせをいただきたいと思います。
  54. 楠本祐一

    楠本説明員 御指摘の今回NATOによります中国大使館誤爆事件、我々としましても極めて遺憾というふうに思っている次第でございまして、このようなことが二度と起きないようにというふうに望んでいる次第でございます。そしてまた、コソボ問題の政治解決の早期実現、これを強く希望している次第でございます。  政治解決への方向でございますけれども、G8の外相会談が開かれまして、ようやくコソボ問題の政治解決へ向けましてG8としての共通の立場が合意をされましたわけで、ようやく政治解決へ向けて動き出したやさきにこういう事件が起こったということでございますが、この事件が政治解決へ向けての機運に悪影響を与えることがないようにすることは当然でございますし、先生御指摘のとおり、我が国といたしましても、G8の一員として、今後とも早期の政治解決の実現という方向で努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  55. 桑原豊

    ○桑原委員 一般的なお話としてはそのとおりなんですけれども、やはりもう少し具体的に、既に難民の対応策ということで、二億ドルですか、拠出をするというようなことが決められておりますし、また、経済制裁に当たるのかわかりませんが、石油の禁輸措置等については同一歩調をとるんだというようなことで、そういった面での対応はそれなりに何か打ち出しておるようですけれども、いわゆる和平に向けて積極的に、具体的に日本として、G8の一員の中でもある意味では一番公正な判断が可能な位置にあるのではないかというふうに私は思いますし、日本が国是とする平和外交というようなことを考えても、私は、日本が国際舞台の中で大きな役割を果たしていけるいいチャンスだというふうに思いますので、その点、もう少し具体的に働きかけをしていくというような点について、何かありましたらお答えをいただきたいと思うのですが。
  56. 楠本祐一

    楠本説明員 先ほど申し上げましたG8の枠内での七項目の合意ができまして、G8を代表する形で先般ドイツのシュレーダー首相が訪中をしておりますし、また、ロシアもチェルノムイルジン特使が独自の活動をしておりますので、そういう関係国の和平への動きを踏まえまして、我が国としましても、先ほど申し上げましたG8の一員ということで、関係国と連絡をとりながら再度外交努力をしてまいりたいというふうに思います。  また、並行いたしまして、先般、高村外務大臣がマケドニアを訪問いたしましたときに、我が国の難民対応策ということで二億ドルの実施を発表したわけでございますけれども、今後、難民に対する支援、それとマケドニア、アルバニアのような周辺国に対する支援、そして今後コソボの復興、難民帰還が達成された場合にはそういう復興に対する支援、そういう面もあわせまして、外交努力を引き続き進めてまいりたいと思います。
  57. 桑原豊

    ○桑原委員 ぜひ、より積極的な役割を果たすために御努力をいただきたい、このように思います。  最後に、北朝鮮に対する外交について、お伺いをしたいと思います。  先般の新聞の報道で、アメリカのペリー政策調整官が、今月の末か来月の初めになるのでしょうか、北朝鮮政策の見直しを含めたレポートを出すということが報道をされておりまして、その内容の骨格が明らかになった、こういうことでございました。その新聞の報道では、アメリカ政府当局者が、その骨格に対するコメントをいたしております。ペリー報告の方向に満足だというようなことなんですが、あわせて、日本政府高官も、日韓両国の主張を取り入れた内容になっているというような肯定的な評価を下されておる、こういうような報道があるわけです。  この点について、その報告の骨子、骨格について承知をされているのか。また、されているとすれば、どのような評価をしておられるのか、お伺いをいたしたいと思います。
  58. 樽井澄夫

    ○樽井説明員 お答えを申し上げます。  ただいま御質問のございましたペリー報告書というのは、対北朝鮮政策を遂行していく上からいいましても、大変重要な報告書でございます。ただ、現在ペリー調整官が作成中ということでございますので、最終的な報告書を私どもが入手しているということではございません。したがいまして、非常に詳細なコメントをこの場で申し上げるのは若干不適当でございますが、若干私どもの承知している範囲で御説明させていただきたいと思います。  調整官の現在の見直しの骨子といたしましては、一つは包括的なアプローチ、さまざまな脅威がございますので、そういうものをあわせて包括的な対応をするというのが一つ。それから、あわせまして、日米韓三カ国間の協力、統合されたアプローチ、この二つの大きな方向でお考えのようでございます。また、我が国が大変重視しております拉致問題につきましても、ペリー調整官より我が国の立場を支持するということを非公式に発言をいただいておりますし、この間の日米首脳会談におきましても、クリントン大統領から、米国としても真剣に取り組んでいきたいというようなお話もございますので、そういうことも含めた報告書が作成されるというふうに私どもは期待するといいますか、承知しているわけでございます。  御案内のとおり、この報告書の見直しの過程におきまして、日米韓三カ国で大変緊密な意見交換を実はこれまでさせていただいております。ただいま申し上げたような大きな方向性として申し上げれば、我が国の基本方針でございます抑止と対話の大きな方向性と基本的には同じであると理解しておりまして、そのような意味で、我が国としても支持していきたいというふうに思います。  ただ、繰り返し申し上げますが、報告書はまだ最終的にはでき上がっておりませんので、この段階で余り詳細なコメントは差し控えさせていただきたいと思います。
  59. 桑原豊

    ○桑原委員 包括的なアプローチという、抑止と対話を基本とした方向性が明示をされているのではないかということでございまして、報道によりますれば、抑止部分については、いわゆる軍事的な制裁をほのめかしていくということではなしに、経済的な援助などの停止ということで働きかけをしていくというようなことが報道はされておるわけですけれども、その抑止と対話、現時点で日本としてどういったところに力点を置いて現下の日朝関係を考えておられるのかということを、日本の姿勢としてぜひお聞きをしたいと思います。
  60. 樽井澄夫

    ○樽井説明員 ただいま御説明申し上げましたように、我が国の対北朝鮮政策の基本と申しますのは対話と抑止ということでございます。御指摘のとおりでございます。私どもとしても、やはり対話が促進されるというのは当然最も望ましい姿でございます。ただ、現在の非常に複雑な状況を踏まえまして、やはりそこはバランスをとりながら対話と抑止ということで進めていきたいというふうに考えております。  繰り返しますけれども、基本的には対話が促進されるということは日本政府の希望でございますけれども、そのためにも対話と抑止をバランスよくとっていきたいというふうに存じております。
  61. 桑原豊

    ○桑原委員 日米韓三国の協力ということがうたわれるのではないか、こう言われておりますが、既に、日本とアメリカと韓国、三カ国がこういった北朝鮮政策の協調をしていくというようなことで定期協議を発足させるというようなことも伝えられておるわけですけれども、この点についてどこまで具体的になっているのか、お聞きをしたいと思います。
  62. 樽井澄夫

    ○樽井説明員 先生御案内のとおり、北朝鮮政策に関しましては、日米韓三国で大変緊密な連携、協調を保ってきております。その過程におきまして、レベルはさまざまでございますけれども、上は大臣レベル、総理レベルから、下は事務レベルを含めまして、大変頻繁に協議が行われております。  ただ、恐らく先生御指摘になられましたのは、局長レベルでより緊密な定期的な会合をしておこうではないかという話が最近ございますので、その点を御指摘になられたんだと思います。ただ、基本的には、あらゆるレベルで非常に緊密に協議をさせていただいております。
  63. 桑原豊

    ○桑原委員 私は、アメリカは核それからミサイル、そういったものの問題を最重視しながら進めていく、そして韓国は、いわゆる太陽政策ということで、まさに韓国と北朝鮮の間の包括的な解決、そういうものを目指して進めていく、日本の場合に、そこら辺どこに重点を置いて、日朝関係を一言で言ってどういう方向で進めていくのかというのが、対話と抑止という一般的な言い方では、それはどこにも当てはまる考え方でございますけれども、日本としてこの問題をどうとらえていくのかというのがもう一つ弱いような気がいたしております。  それから、拉致問題をペリー報告の中でも恐らく取り上げて、この解決を目指すというようなことが打ち出されるんだろうと思うんですけれども、この拉致問題というのは、私も、それが事実だとすれば大変ゆゆしき問題であるというふうに思います。  ただ、もし北朝鮮の政府がこの拉致に何らかのかかわりを本当に持っているということであるならば、私は、その政府に対して、これを認めて問題の解決に当たれともちろん言わなきゃなりませんけれども、そのことに政府が率直にこたえるということにはなかなかならない大きな障害があるだろうというふうに思うんです。いろいろな問題の解決の中で、この問題が自然と糸口が見えてくるというような解決の仕方しか、なかなかないのではないかというふうな気もいたしております。そういう意味では、常に我々はこの問題があるということをはっきり申し上げなければなりませんけれども、この問題をこれからの展開の一つの前提にしたりということにはなかなかならないような気もいたしております。  そういう意味では、私は、これからの北朝鮮との対応の中で、我が国は、いろいろな問題があるわけです。いろいろな問題があるわけですけれども、それらを前提とせずに、国交正常化を目指した関係をつくっていくということが大変大事ではなかろうかなというふうに思うんですが、対話と抑止という一般的な言い方ではなしに、日本と朝鮮との間の外交のあり方日本なりのものをぜひはっきりと打ち出してほしいなという気がいたしております。  そこで、今後の北朝鮮との関係について、ペリー報告というものがはっきり打ち出された時点でまた新たな展開を見せると思いますけれども、そのことはそのこととしながらも、それを弾みにして日本が大きく前進をしていく、そんなときにはやはり日本なりの物の考え方というのが大変大事だろうというふうに思いますので、今後の我が国の北朝鮮政策、何とかこの閉塞状況を突破し、打開をしていかなきゃならぬと思うわけですけれども、そのことについてどう考えておられるのか、一般的なあれですけれども承って、私の質問を終わりたいと思います。
  64. 樽井澄夫

    ○樽井説明員 ただいま先生から包括的に種々御指導いただきまして、心にとどめつつやってまいりたいというふうに思います。  ごく簡単にお答え申し上げますと、一つは、アメリカ、韓国、日本、それぞれ北朝鮮政策で微妙な違いがあるのではないかという御指摘でございます。これは当然、置かれた歴史的な背景もございますので、御指摘のとおりでございます。  ただ、従来からこの三カ国間できっちりと確認しておりますのは、そういう事情はあっても、きちんと統合的な総合されたアプローチを北朝鮮に対してとるということが一つございますし、やはり最大の目的は北東アジア地域の平和と安定の確保でございますから、三カ国のこの点においての目的というのは完全に一致しております。そういうことを踏まえながらやっていきたいというふうに存じております。  我が国の問題として申し上げれば、やはり日朝間の正常化問題、これは大変重要な問題でございますので、引き続き、率直に申し上げまして紆余曲折というのは避けられないというふうに思いますけれども、日朝正常化に向けまして、やはりたゆまぬ努力をしていくというのが一つ大きな柱でございます。  ただ、先ほど来申し上げておりますように、これと並行しまして北東アジアの平和と安定というのは不可欠でございますので、その両方をあわせながら、柔軟かつ毅然とすべきところは毅然としながら対応していきたいというふうに存じます。  それから、先生御指摘になりました拉致の問題でございます。私ども、必ずしもこの問題を前提に考えているわけではございませんけれども、御案内のとおり、大変重要で、人の命のかかっております大変重い問題でございますので、私どもは、慎重かつ毅然とした態度であらゆる努力を傾注していきたいというふうに思います。
  65. 桑原豊

    ○桑原委員 どうもありがとうございました。
  66. 浅野勝人

    ○浅野委員長代理 佐藤茂樹君。
  67. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 公明党の佐藤茂樹でございます。公明党・改革クラブを代表して、今回の法案につきまして質問させていただきたいと思いますが、その前に、防衛庁長官、連日御苦労さまでございます。  まだ参議院でガイドラインの関連法案の審議が行われておりますけれども、私自身も、特別委員会だけでも約五時間質問をさせていただきました。私自身としては、十分に審議を尽くしたな、そのように思っておりますが、引き続き私も修正部分について参議院で答弁待機者としてやらせていただいておりますので、きょうだけはガイドラインの関連から少し離れまして、この法案に関する部分、また、そのもととなりました防衛大綱、さらに中期防、それに関連する部分、さらにはガイドラインのこの審議をしている間に自衛隊に関するものについてもいろいろな動きが出ておりますので、そういうものに関連した質問をさせていただきたいと思います。  まず、法案に則しまして、即応予備自衛官制度につきまして、もう一度確認の意味質問をさせていただきたいと思うんです。  この制度は、平成九年に改正された自衛隊法に基づきまして導入が決まりまして、平成十年の三月に第四師団において初めて発足しまして、同年四月より招集訓練が開始されております。十年度末までにさらに第六師団及び第一三旅団にも導入されていることになっているわけですけれども、自衛隊法の七十五条の二の員数によりますと、これは平成十年三月ですけれども、第四師団の段階で千三百七十三人、第六師団及び第一三旅団でさらに二千六人加えて三千三百七十九人、こういうことになっているんです。  まず最初にお聞きしたいのは、この実際の即応予備自衛官の実員数といいますか現員数ですね、それと、充足率は、今申し上げました師団、旅団ごとに実際にはどうなっているのかということをまずお尋ねしたいと思います。
  68. 坂野興

    坂野政府委員 即応予備自衛官制度につきましては、ただいま先生のお話のございましたような経緯で逐年整備されてきております。  それで、実際の充足状況でございますが、まず、部隊の編成につきましては一度に改編いたしますが、そういうことで即応予備自衛官制度を入れた部隊改編ということになります。実際の充足につきましては、実務上の事情もございまして、三カ年で完全に充足するというふうにいたしております。具体的には、初年度で五〇%、二年目で二五%で、合わせて七五%、そして三年目で残りの二五%で、一〇〇%ということでございます。  それで、現実の充足状況でございますが、まず、第四師団につきましては、現員が千三十三人でございまして、充足率は七五%でございます。それから、第六師団につきましては、現員が七百三十八人でございまして、充足率は約五〇%でございます。また、一三旅団につきましては、現員二百七十七人ということで、充足率は約五〇%ということで、いずれも計画どおり進捗いたしております。
  69. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 きょう田村委員が冒頭質問されたときに、全体の数字を聞きましたときに、そのあたりが、まとまった数字しか聞いていなかったときに、果たして充足されているのかという疑問を持ったわけですが、今の御答弁で、一カ年目が五〇%、二年目が合わせて七五%、三カ年目で一〇〇%、大体その数字どおりいっているというお話をお聞きしまして、安心をさせていただきました。  そこで、二点目として、もうこれは田村委員質問とも重なるかもわかりませんが、発足当初に懸念されていたこととして何点かあったと思うんですけれども、一つは、元自衛官を雇用している企業から、募集、招集等において本当に期待されたとおりの協力が得られるのかどうか、そういう懸念がやはり大きく一つあったと思うんですね。防衛庁の方としても、そういう懸念を払拭するために、一時、NHKでしたか、テレビに映ったこともあるんですが、それぞれ、例えば西部方面隊なんかでも非常に努力されているような模様も映っておったわけです。  これは、平成十年の三月、さらには年度末までのこの第四師団、六師団そして一三旅団の募集、招集に当たられまして、企業からの協力を得るために、防衛庁として具体的にどういう努力をされてきたのかということが一点と、また、企業から期待どおりのそういう協力が具体的に得られてきたのかどうか、そのあたりにつきましても御答弁をいただきたいと思います。
  70. 坂野興

    坂野政府委員 即応予備自衛官は、平素は企業等に勤務しつつ、必要とされる練度維持するため、おのおのの仕事をやりくりしながら、休暇取得等によりまして訓練招集に応じていただいております。  このような即応予備自衛官制度を円滑に運用していくためには、即応予備自衛官個人の意思、努力に加えて、不在時の業務調整休暇取得への配慮などの面で雇用企業等理解協力が不可欠であるというふうに考えております。この点、これまでのところ、多くの雇用企業等から御協力をいただきまして、計画どおり現員も確保しているところでございます。  防衛庁といたしましても、このような雇用企業等負担や御努力に報いますために、また、即応予備自衛官が安んじて訓練等に出頭することを可能にするため、雇用企業等に対しましては、即応予備自衛官雇用企業給付金を支給いたしているところでございます。防衛庁といたしましては、この給付金に加えまして、即応予備自衛官制度について広く社会全般の理解協力を得るための積極的な広報活動に努めているところでございます。このような施策や活動を通じまして、今後とも企業等理解協力を得てまいりたいというふうに考えております。  また、できるだけ雇用企業負担を軽減するために、訓練の日程をつくるに当たりましても、そういった企業の実情等も配慮したいというふうに考えておりますし、また、私どもこの一年間の経験で申してみますと、企業の経営者の方に対していろいろとPR等もいたしまして御理解いただいているわけでございますが、実際に即応予備自衛官が勤務している周りの同僚、こういった人たちは実際に即応予備自衛官が社員として勤務ができなくなりますと直接的な影響を受けるわけでございますので、企業主に対するPRと同時に、そういった即応予備自衛官の同僚に対するPRについても今後いろいろ努力していく必要があるのかな、そんなことも感じております。
  71. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 国の安全を守るという崇高な任務に、もう一度、年間三十日であれ訓練につかれるわけですから、やはり会社及び今最後答弁されました周りの同僚の皆様へのPRも、やはり防衛庁として今後ぜひしっかりと取り組んでいただきたいな、そのように思うわけです。  もう一つ懸念されていた、当初二年前の論議でも何回か出ていたわけですが、その後つくられました自衛隊法の七十五条の五では、即応予備自衛官訓練日数を「一年を通じて、三十日を超えない範囲内で総理府令で定める期間とする。」そうなっているわけですね。従来の予備自衛官以上に極めて高い練度、そういうものを維持するということが要求されているわけでございまして、そういうことからすると、やはり本当にこの三十日というまとまった訓練日数がとれるのかどうなのか、そのことが二年前の論議でも懸念だったと思うんですね。  具体的に申しますと、具体的に一年かかってやったと思われるのは、第四師団平成十年の三月に発足していますから、この第四師団についてはもう一年間経過しているわけでございますので、そのあたりで、第四師団一つ例にとった場合に、一年間で果たしてどれだけの訓練日数がとられたのかということと、個人差はあるかと思うんですが、個人の、対象となった即応予備自衛官になられた方々の、逆に訓練への参加状況ですね、このあたりもあわせて実績をお答えいただきたいと思います。
  72. 坂野興

    坂野政府委員 即応予備自衛官につきましては、高い即応性を維持するためにということで、年間三十日の訓練出頭を要件といたしております。  それで、第四師団につきましては一年間の実績が出たわけでございますが、この一年間在職していた即応予備自衛官が七百名ございます。そのうち、計画どおりに三十日の訓練に従事した者は六百八十名でございまして、全体の約九七%に当たります。残りの二十名は、若干の訓練には出ておりますが、三十日の訓練には満たなかったというのが実情でございます。全体としますと、ほぼ九八%とか九九%とか、そのぐらいの割合で訓練に出頭しているということになろうかというふうに思います。
  73. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 そこで、今回予定されている第七師団なんですけれども、お伺いしておりますと、増員数九百九十三名を予定されているんですが、主として第七三戦車連隊に配属を予定されているというように私は承っているんです。それであるがゆえに、主力は戦車搭乗経験のある者を中心に採用するという方向であるというように聞いているんですが、そのとおりでいいのかどうか、ちょっと簡潔にお答えいただきたいと思います。
  74. 坂野興

    坂野政府委員 第七師団には、最終的には九百九十三名の即応予備自衛官を導入することを考えております。しかし、第七師団と申しましても、戦車部隊だけではございません。しかし、そのうちの半数弱程度を戦車連隊に充てることを考えております。  戦車連隊には、主として戦車要員としての経験のある者を充てることが望ましいことは御指摘のとおりでございますが、戦車要員としての経験がない者でございましても、配置によりましては、各人の知識経験に照らしまして、所要の訓練を行うことにより対応できるというふうに考えております。
  75. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 今御答弁いただいたように、九百九十三名の半数を戦車連隊で考えているんだというお話でございました。  今、局長も半分ぐらいと答弁されたんですが、そこでやはり懸念になるのは、今までの第四師団、第六師団、第一三旅団、この場合は、基本的には大部分が即応予備自衛官で採用されたとしても普通科連隊に編成されていた、私はそういうように認識しているんですね、これは間違いないと思うんですけれども。例えば、第四、第六師団の場合、これは防衛ハンドブックにもそこのことが書かれているんですけれども、四個普通科連隊のうち一個連隊は即応予備自衛官を主体として編成するほか、これに協同する特科などの各種の部隊も一部即応予備自衛官を主体として編成する、そう書いてあるわけですね。  ところが、今回の第七師団の場合には、今までと違って、普通科連隊ではなくて戦車連隊に半数を配属する。九百九十三名の半分ですから四百名から五百名だと思うんですけれども、果たして戦車搭乗経験のある方々を募集できるのかどうか。  今回の第七師団というのは、千歳市を中心とした北海道ですね、大きく広げても。即応予備自衛官の性格上、どこかに勤めている方を三十日間だけ訓練で招集するという形になるんで、北海道以外のところに働いている方を、戦車に搭乗経験があったからといって、採用していくのも実際非常に難しいだろう。  そうなると、北海道の中で、地元で働いている人の中から探さざるを得ない、そういう条件が絡んでくるかと思うんですけれども、具体的に、その中で、そういう戦車搭乗経験のある人を中心にどういう形で採用していこうとされているのか、そのあたりにつきまして、再度お尋ねをしたいと思います。
  76. 坂野興

    坂野政府委員 即応予備自衛官制度を採用するに当たりまして、師団でもあるいは旅団でも同じでございますが、大体四つの戦闘単位というのがございますが、そのうちの一戦闘単位を即応予備自衛官を主体とした編成にしていこう、そういうことでございます。  ですから、数的に申しますと、通常の師団でございますと当然普通科連隊の人数が多いわけでございますので、普通科職種の者が多いということになりますが、それはそれで、ほかの職種の単位も、数は少なくても一応はバランスのとれた即応予備自衛官を導入するということになります。  それで、第七師団につきましては、御指摘のように戦車を主体とした師団でございますので、どうしても戦車要員が必要である、たくさん要るということは確かにそのとおりでございます。これは今年度末に改編するということになりますので、これから必要な職種に適合した即応予備自衛官を採用するということで努力してまいりたいというふうに考えております。
  77. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 そこで、即応予備自衛官のことで最後にきちっと、ちょっとお尋ねをしておきたいんです。  今回で三度目になるわけですね。師団とか旅団でいうとそれぞれ分かれていますけれども、方面隊という観点で見ていくと、東部方面隊を除いて四方面隊に導入される、この第七師団を含めるとそういう形になるわけです。なおかつ、今期の中期防では五千人ですが、四千三百七十二人ですから、もう一回、来年度ぐらいで多分五千人ぐらいは、目標達成されるんだと思うんですが。しかし、今後引き続いて、新防衛大綱では一万五千人ぐらいにまでそれを拡大していく、大綱上はそうなっているわけですね。  そこで、今局長答弁されたように、四つの戦闘単位のうち一戦闘単位が即応予備自衛官にかわっていくような体制の移行というのがこれからどんどん図られていく。やはり我々安全保障を論議していくときに気になるのは、即応予備自衛官だけというか、それを主力とした戦闘単位が四つのうちの一つでつくられていく、そういう部隊ができていくという中で、果たして質の高い防衛力がきちっと維持できていくのかどうかという一つの大きな問題を我々は感じざるを得ないわけですね。  そこで、導入して今回が三回目になるわけですけれども、このあたりでやはりきちっと客観的に即応予備自衛官の評価をしていく必要があるのではないのか。何の評価かというと、例えば体制の移行に当たってさまざまな影響が出てきているとは思うんですけれども、一つは、例えば本来の隊員の士気への影響はないのかというようなことですね。さらには、部隊練度等の急激な低下につながっていないのかどうか。そういうことも含めて、即応予備自衛官、これからどんどん拡大されていく、まず三年度目ぐらいのこのあたりで、きちっと防衛庁内で、即応予備自衛官制度、さらにはそれによって編成されていく部隊というもの、そして防衛力の質というものにつきまして客観的に評価していくような仕組み、また、評価していくというようなことを行っていくことが必要なのではないのかな、そのように私は、私の私見ですけれども、思うわけですが、防衛庁としてどういう所見を持っておられるのか、伺いたいなと思うのです。
  78. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 先ほど来答弁申し上げましたとおり、計画どおり現員を確保しつつありますし、また、招集訓練についても年間三十日の訓練を着実に実施しておるところであります。概して順調にこの制度は推移しているというふうに認識しておりますが、防衛庁としては、引き続きこの制度の円滑かつ効果的な実施のために各施策の実施に万全を期してまいりたいと考えております。  その際に、今議員から御指摘いただきましたように、隊員の士気とかあるいは練度維持を確保し得るよう、評価制度も含めました制度の運用状況に係る不断のチェックに今後とも努力を傾注してまいりたい、そのように考えております。
  79. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 今防衛庁長官答弁の中で言っていただきましたので、評価制度だけにこだわるわけではないのですが、やはりきちっとした防衛力維持されているのかどうか、これはもう防衛大綱合理化コンパクト化効率化という、そこは言葉だけではなくて、そういうものにしながらも質の高い防衛力維持していくというのが防衛大綱の基本的な考え方だと思うので、今長官の答弁、前向きな話をいただきましたので、ぜひ努めていただきたいな、そのように思うわけでございます。  それでもう一点、法案に関連して、情報本部のことで、これはもう既に過去の委員会で何回か基本的なことはお聞きしておりますので、今回の法案に関連した部分だけちょっとお尋ねをしたいのですが、先ほども委員質問でありましたけれども、情報本部で今回五十三名、そして事務局で八名、そういう増員を考えておられるわけですが、これを具体的にどのような任務に当てようとされているのか伺いたいということ。  徐々にニーズに応じてふやしていかれるのでしょうけれども、当初、事態もある程度考えて、千五百八十二人だったと思うのですね。ところが、先ほどお聞きしますと、今は事務官を含めると千六百五十六人。いつの間にか膨れ上がっている。さらに今回も情報本部だけ見ても五十三名ですか、そういう形で膨らませているのですけれども、この五十三名の増員で、今後しばらく想定されるあらゆる状況に対して、大体の人員配置というのは、もう適正かつ十分に行われたという認識を持っておられるのか。そのあたりについて防衛庁見解を伺いたいなと思います。
  80. 佐藤謙一郎

    佐藤(謙)政府委員 まず、事実関係について御説明させていただきます。  今回六十一名の自衛官の増員をお願いしているわけでございますが、その内訳は、まず統幕の事務局におきまして八名ということでございますが、このうち、ガイドラインにかかわります各種業務に関係する要員として四名、それから先ほどちょっと話題になりました新中央指揮システムの関係で、これの機材導入に対応するための要員として四名、計八名、これが事務局の関係でございます。それから、情報本部におきましては、同本部の運用態勢の充実を図るための要員として五十三名ということでございます。それで、この情報本部の今申しました五十三名でございますが、この大宗は画像情報支援システム、IMSSと申しておりますけれども、これの機材導入等に伴います要員ということが中心でございます。それとともに、情報分析体制の充実を図るための要員等を含んでいるところでございます。これが今回の六十一名の内訳でございます。  今後の問題といたしましてどう考えるかという点を申しますと、情報本部が担当いたします情報任務というのはますます重要になっているところでございます。私どもとしては、これの充実を可能な限り図っていきたいと思っておりますけれども、一方、それぞれ定員事情というのがございますので、私どもとして最善というところまではなかなか一気にはいかないということでございます。  例えば、この画像情報支援システムにつきましては、十二年度にこの運用が開始されるわけでございますけれども、そういたしますと、現在はまだその途中の段階でございますので、これが実際に立ち上がる段階になりますと、やはりそれのための要員も必要になってくるだろう、こんなふうに思います。  また、分析体制につきましても、これは先生、つとに御案内のところでございますが、諸外国情報分析体制、量的にも質的にも非常に高いものがあると思っております。それに比べまして、私どもとしてはまだまだ、こういう点もございますので、引き続き御理解を賜りながら、その充実に努めてまいりたいと思っております。
  81. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 今回のこの情報本部の拡充ということについては、防衛大綱に基づいた今期の中期防の中では「主要事業内容」の五番目に「情報・指揮通信能力」ということが掲げられていまして、その中に大きく三つ書いてある。その中の真ん中の二番目に、「情報については、」で始まる文章ですが、情報本部の充実ということがきちっと書かれてあるわけですね。それに関連して、「情報・指揮通信能力」という部分で一番目に警戒監視のことが書いてあるわけですね。ざっと読むと、「警戒監視等については、引き続き、固定式三次元レーダー装置及び移動式警戒監視システムを整備するとともに、早期警戒管制機の運用態勢整備を行うほか、艦艇、航空機等による周辺海・空域の監視態勢を充実する。また、警戒管制部隊効率化合理化を図るために必要な措置を講ずる。」そういうように書いてあるわけです。  そこで、情報関連についてはこれで終わりにしたいのですが、警戒監視ということでちょっとお尋ねをしたいのです。  今回の不審船の事案で、初めての海上警備行動だったということで、海上警備行動の命令が下されるその前後からの自衛隊行動とかいうことは、いろいろなことが当委員会さらにはほかの委員会でも論議されてきたのですが、警戒監視のシステムがどうだったのか、そういうことをこの不審船の事件にかんがみて、十分に機能し得たのかどうなのかということを改めてここで確認しておきたい。施設であるとか、さらに装備であるとか、さらにはソフト面でおくれていたのかどうなのか。防衛庁としても今回いろいろな角度から総括されたと思うのですけれども、実際、現実どうだったのかということも含めて、また今後、課題としてはこういう部分があるんだというようなことを総括されているのであればこの際伺っておきたいな、そのように思うわけです。
  82. 柳澤協二

    ○柳澤政府委員 今回の不審船事案についての教訓、反省については、今大臣の御指導のもとでいろいろ部内で検討しておりますが、当然、一番の取っかかりのといいましょうか、今先生が言われた警戒監視についての、あるいは情報収集についての不足点というものも我々意識して見ております。  基本的に、体制ということでは、ここで言っております警戒監視等というのは、持っておりますレーダーサイトでありますとか、あるいはP3Cを定期的に飛ばしているとか、護衛艦を海峡に監視で張りつけているとか、そういった全体の体制については基本的には整備されていると我々思いますけれども、まだその中でいろいろ近代化を図っていくような課題も出てまいっておりますので、そういったことは運用面も含めた教訓事項全体の中で取りまとめているところでございます。
  83. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 運用局長、再度、今の警戒監視の部分だけではなくて、防衛庁内でいろいろ検討されているということだったのですが、そういうものは、ある時点、スケジュール的にどこかの時点までにきちっと洗い出して、そして次の例えば防衛庁の施策に反映させていくんだというような何かお考えをお持ちなのですか。ちょっと確認だけしておきたいのです。
  84. 柳澤協二

    ○柳澤政府委員 今、海上保安庁の方でもいろいろ検討しておられます。私どもも検討しておりまして、実はこれは四月中に両者から内閣の安全保障・危機管理室の方にその内容を報告するとともに、今、内閣の安保・危機管理室の方で政府全体としての対応ということで取りまとめを行っておられるところであります。遠からず内閣の方として全体として取りまとめることになるだろうと思っております。
  85. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 では、もう防衛庁としては出されたということで認識をしておきます。  そこで、全然テーマは変わるのですが、きのう来、朝から晩まで臓器移植法施行後二件目の移植が行われたというニュースがずっと流れているわけです。きょうは厚生省の方に来ていただいているのでお聞きをしたいのですが、臓器移植時の臓器の緊急輸送体制について厚生省の認識を伺っておきたいのです。  臓器の搬送について、私はこの分野は専門ではないのですが、報道されているのを見ても、今のところ自治体の防災ヘリであるとか民間チャーター機が使われているわけです。お伺いすると、厚生省とそういう消防庁であるとか、また各都道府県の消防防災担当部局との間では既に取り決めがあって、今回実績を積んでいるわけです。そういうように認識をしているのですが、自衛隊のヘリや航空機の利用ということについても、平成九年の十月の臓器移植法施行に当たる段階で検討に上がったとも報道されているのですけれども、結果的には先送りになった、そういうようにも言われているわけです。  ただ、今回は二件目で、マスコミは非常に大変な報道をしているわけですけれども、今後移植件数がどんどんふえていくことも当然想定されておりますし、その場合に都道府県のそういう防災とか消防のヘリが常時使用可能なのかどうなのか、ヘリポートの使用の問題も含めて、そういう懸念も出てきます。そのときに、やはり複数の輸送手段を確保しておいた方がいいのではないのかな、そういうふうに私は考えるわけです。  その場合の有力な手段として、自衛隊任務に支障にならない範囲内で自衛隊のヘリであるとか航空機を利用したりするということが実現すれば、今後の移植件数の増加した場合にも対応できますし、特に自衛隊の場合は自己完結型の実力組織であるという部分が非常に生きてくるのではないのかな。一刻も早い搬送ということが要求される場合のそういう時間短縮という点でも非常に効果が期待できるわけですし、そういうことを今後検討していってもいいのではないのかなというように私は思うわけですが、まず、厚生省としてそういう脳死移植時の臓器の緊急輸送の際の自衛隊のヘリであるとか航空機の活用について検討されているのかどうか、所見を伺っておきたいと思います。
  86. 朝浦幸男

    ○朝浦説明員 まず、臓器移植全般についての御説明をさせていただきたいと思いますけれども、特に心臓つきましては、臓器を運ぶ時間それから手術に必要な時間が四時間以内ということで極めて限られておりまして、一番緊急性が重んじられるのではないかと思います。それ以外の臓器につきましては、例えば、肝臓は十二時間、肺は八時間、腎臓は二十四時間と、心臓に比べれば比較的長い時間で、余裕があって、そういう緊急性は余り問題にならないのではないかなというふうに考えています。  それで、委員おっしゃるように、特に心臓につきましては、臓器移植時の臓器の緊急搬送体制の確保につきまして臓器移植の成否にかかわる極めて重要な課題であるというふうに認識しております。  現在の考え方でございますけれども、臓器搬送は臓器の提供を受けられる患者さん個人の受益に帰するものでございます。ただ、実際上の取り扱いとしましては、臓器移植法に基づきましてあっせん業の許可を得ている社団法人の日本臓器移植ネットワークというところがございまして、そこで直接行う緊急車両による搬送ですとか公共の交通機関の搬送等で基本的には対応するという考え方になっております。  ただ、これらによる対応が困難な場合に、各地方公共団体の所有する消防防災ヘリとか警察庁の航空機等の協力をお願いするということになっております。  したがいまして、今後、自衛隊のヘリコプター等による協力が可能となる枠組みについて、防衛庁の御協力を仰ぎつつ、検討してまいりたいというふうに考えております。
  87. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 今、必ずしも否定されずに、私は前向きに考える余地はあるという答弁だというふうに伺ったのですが、そこで防衛庁に確認をしておきたいのですが、現行の防衛庁に関連する法律で、そういう臓器の搬送の依頼があった場合に、現行法の枠内で協力でき得るのかどうかという法的根拠と、また、防衛庁として、そういう協力の依頼があった場合に協力する意思があるのか、またそういう体制づくりをしていかれるつもりがあるのかどうか、あわせてお伺いをしたいと思います。
  88. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 自衛隊の航空機によりまして輸送の協力を行う場合は、自衛隊法百条による輸送事業やいわゆる官庁間の協力で行う輸送というのがありますが、その委託または依頼元は国または地方公共団体などの行政機関でなければならないということになっております。したがって、個人からの依頼に基づきまして自衛隊の航空機による輸送などの協力を行うことは今の段階では難しいという制約があります。  現行の枠組みで自衛隊による臓器輸送は困難と考えますけれども、今委員がおっしゃったとおり、私どももとうとい人命を救うことでありますから何らか役立つ方法がないかということで、厚生大臣とも話し合っているわけですが、この問題の打開の一つとして、厚生省において今の枠組みを見直していただいて、これからこういう臓器移植が、はやっていくというか、多くなっていくということになるとすれば、やはり自衛隊も役立つことを前提として、国や公共団体が依頼をするというようなことによって法律上の制約を乗り越える仕組みができないだろうか、こういうようなことを、対応を考えているところでございます。
  89. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 ぜひ、とうとい人命にかかわることでございますので、前向きにまた御検討いただいて、その結果をお知らせいただければというように思います。  その上で、最後になりますが、全く今度話は変わるのですが、中期防に関係して、検討事項の中で装備面で四つぐらい残されているというのを去年のこの委員会でも質問させていただいたのですが、三月五日の産経新聞によりますと、「空中給油機 四機導入を検討」との見出しで、「防衛庁は四日、空中給油機四機の導入を、平成十二年度予算案の概算要求に盛り込む方針を決めた。」そう報道されているのですが、報道どおり空中給油機の導入を決められたのかどうか、さらには機数は四機なのかどうか、そして、平成十二年度の予算案の概算要求に盛り込む方針を決められたのかどうか、あわせて、最後になりますが、防衛庁として御答弁をいただきたいと思います。
  90. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 今お話がございましたとおり、空中給油機の取り扱いにつきましては、現中期防、中期防衛力整備計画において、「空中給油機の性能、運用構想等空中給油機能に関する検討を行い、結論を得、対処する。」とされているのを受けまして、現在防衛庁部内において鋭意検討を行っているところでございますが、報道にあるように空中給油機を導入することを決めたという事実は現在のところはまだございません。  しかしながら、空中給油機の取り扱いにつきましては、引き続き所要の検討を行いまして、現中期防期間中に結論を得て適切に対処してまいりたい、こういうふうに考えております。
  91. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 時間が参りましたので、終わります。
  92. 浅野勝人

    ○浅野委員長代理 西村眞悟君。
  93. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 長官、連日、本当に実にお疲れさまでございます。  この法案については、何の異議もございませんので、この機会を利用させていただいて、余り皆さんがお触れにならなかったことの三点を、問題の提起をさせていただいて、質問というより要望をさせていただきたいと思います。  まず第一には、防衛記念章のことなんです。  我が自衛官を含む各国の軍人というものは、ジュネーブ条約でも明らかなように、制服を着用しなければならない、その制服には階級を示す記章をつけねばならないし、また、経歴を記念した記念章をつけておるということです。  我が国の防衛記念章の制式等に関する訓令、防衛庁長官の訓令ですね、これによりますと、我が国は色とりどりのバーコードみたいなものを左胸につけております。あれが防衛記念章です。しかし、あれは各国の基準から見れば略綬でございまして、例えば駐在武官が各国の建国記念日に出席する場合は正装をしなければならない、その正装のときには略綬に相当する正章、つまり、メダルですね、バーコードに相当するメダルを着用しなければならないのですね。しかるに、我が国の今申しました訓令によりますと、略綬だけがあって正章がないわけですね。各国の軍人、自衛官以外の軍人は正章をしてきている。その場はやはりナショナルデーのレセプションであって、そして、彼らから見れば、我が自衛官は作業服を着て来ておるのか、この日に正装してこないのかというふうな疑問の目で見られることもあるわけですね。  これは防衛庁長官の訓令でできることでございますから、諸外国の武官と同様に、略綬を渡すならば、それに相当するメダルの正章を渡して、正装のときには着用させるべきではないか、これが私は必要だと思っております。そして、どうかこのような略綬に相当する正章を自衛官に付与していただきたいと思います。予算についても余りかからないと思いますので、この点御要望いたしておきますが、長官の御意見をいただければと思いますが、いかがでございますか。
  94. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 お話のように、職務の遂行に当たりまして推賞に値する功績を上げた自衛官に対しては、かかる経歴を記念する等の観点から防衛記念章が授与されておるわけでありますが、これとは別に、現行の表彰制度により、メダルである防衛功労章が授与されることとなっております。しかしながら、このような防衛功労章の授与対象者は、幕僚長等による第二級賞詞以上を授与された者に限られていることから、今後、部内の意見も十分聴取しながら、対象者の範囲の見直しについて検討したいと思っております。
  95. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 ぜひよろしくお願いいたします。ささいなことのようですけれども、我々は、部隊あっての国防論議なんですから、これを各国の軍人から見て我が自衛官が正式の場で作業服を着ておるのではないかというような疑問から免れさす体制をつくらねばならないと思いますので、ささいなことのようですが、実は極めて重要なことだと思いますので、よろしくお願いします。  それから、予備自衛官の対象者について、またちょっと要望を申し上げます。  と申しますのは、私も町を歩いておりまして、また、弁護士として暴走族の弁護なんかをしたことがあります。彼らの精力を善用さす、何か社会とつながりのある仕事をさすというのはどうすればいいのだろう。徴兵制を復活して、彼らを一年ぐらい入れてたたき直したら、かなり立派な青年になる、思わずその衝動に駆られて新宿とかそういうところを歩くときがあるんですよ。  そのときに、四月に発売された「自衛隊という学校 若者は何を学び、どう変わったか」、荒木肇さんという方が書かれたのですね。これを僕は、僕も長官と同様にガイドラインにかかりきりですから、まだ完読はしていないのですが、これは本当に小学校の現場教育に携わった方が書かれた本で、学校教育者の立場から陸上自衛隊の教育現場を取材し、若者がどう変わっていったのかを証言を交えて紹介し、教育機関としての自衛隊役割に初めて光を当てた話題の書である、こういうタイトルです。  始めと終わりだけをちょっと紹介しますと、始めの方には、この著者が、荒木さんが、   若者が見えない、とらえきれないという声が社会には多い。たしかに、大人からは無意味に見える反抗を繰り返し、傍若無人に振る舞う若者がいる。あるいは、無気力に毎日を過ごし、周囲に心配ばかりかけている子どもたちもいる。どうすれば若者たちが望ましく変わるのだろうか。その方法が分からないという、いら立ちが社会の中にはある。   だが、自衛隊にはいら立ち、あきらめ、手をつけかねている時間はない。自衛隊は専守防衛の武装組織であり、常に異変に備える組織でもある。毎年入れ替わる若者たちを、とにかく一定の能力を持つ隊員にしなければならない。速効性のある、しかも脱落者をなるべく出さないようなさまざまな有効な教育手法をとっている。   七百枚のアンケート これは部隊からアンケートをこの方が募ったのですが、  七百枚のアンケートには、教官たちの試行錯誤が書かれている。若者の行動、変容ぶりも明らかであり、貴重な教育実践の記録と言えるだろう。 これが始まりでありまして、私も読了していませんから、余り御紹介はできないのですが、終わりの方には、この方は部隊を回られたのですが、  陸上自衛隊の教育現場に立つ幹部や陸曹たちは語ってくれた。「若者は昔も今も変わりませんよ」という。「何に力を向けていいか分かっていないだけ」とも語る。彼らには、明快な教育目標がある。「人のために働く」「国家の有事に備える」「陸上自衛隊の戦力は人だ」という信念である。これが若者に彼らを寄り添わせ、若者を変えていく力になっている。 当委員会の諸先生方に、また防衛庁長官にもこの「自衛隊という学校」という本を読んでいただきたいと存じますので、御紹介いたします。  さて、要望ですが、こういう若者がおって、毎年一万人自衛隊に入り、一万人がやめていくけれども、変容して社会に出ていくわけですね。予備自衛官制度の対象者を自衛隊経験者だけに絞っておりますが、例えば、富士山のすそ野をオートバイで走り回らせる、これは、町で走っておれば彼らはただ単に反抗していて無目的なんですが、自衛隊へ入れて走り回らせるとなれば、今紹介しましたように、国のためになっているという意識が彼らにはできるわけですね。したがって、例えば、一年のうちに数週間、期間を定めて、ローテーションを組んで、今まで自衛隊の経験はなかったけれども、来たいやつは来い、そして、国防のための訓練をする、おまえたちはそれによって、いざとなれば家族を初め社会を救うために働けるではないか。こういう教育的な見地からも、予備自衛官の対象者を一般国民にまで広げて、例えばスイスの兵隊さんのように、あるいは床屋をやっている、あるいは肉屋さんをやっている、しかし、一年のうち数週間は来て訓練する、こういう予備自衛官制度といいますか、自衛官訓練制度をつくっていただければ、教育機関としての自衛隊という見地からも、そして我が国の国防のすそ野を広げるという見地からも非常に有用なんだと思いますが、長官にぜひ工夫していただきたいのですが、ちょっと御意見をお伺いできますでしょうか。
  96. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 予備自衛官は、防衛出動時における自衛隊の実力の急速かつ計画的な確保及び継戦能力の向上を目的として整備してきているものであります。そういう観点から、自衛官経験者が既に基礎的な訓練を受けており、信頼性が高いこと等にかんがみ、自衛官経験者の志願に基づき選考により採用しているところであることは、もう委員十分御承知のとおりであります。  自衛官未経験者である一般の国民を予備自衛官に採用することの可否等につきましては、今お話がありましたように、国民の国防に対する意識の面での影響といったことも十分考えられるわけでありますので、一般の国民と自衛官経験者との相違等も踏まえながら十分に検討してみたい、こういうふうに考えております。
  97. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 ありがとうございました。  国家の原型は都市国家とするならば、市民が兵士であり兵士が市民であるという、この前提が都市国家、国家の要件。兵士でない者は市民でない、ということは奴隷であるというのが、ローマであれギリシャであれ、大勢でございます。  また、黒沢明監督の「七人の侍」というあの名画は、村が国家の機能を整えていくという物語なんですね。つまり、みずからでは守れない、したがって、侍を雇う、防衛機能ができ始めた、しかし、それだけでは足りない、侍とともにみずからが軍事訓練をして、みずからの家族と村を守る。あの物語です。  したがって、我が国が志願兵制度をとる以上、市民、国民と兵隊というものは同じだ。だから、予備自衛官の対象も、一般のそこら辺にいる若者、何をやっていいかわからないけれども、おまえ、一年のうち数週間来いというシステムは必要だなと思っておりますので、御提案申し上げました。お答えありがとうございます。  それで、あと八分ぐらいは、防衛駐在官制度はもうぼつぼつ改善しなければならないということをちょっとお願い申し上げます。  というのは、今の防衛駐在官制度は、昭和三十年八月八日、門脇外務事務次官と増原防衛庁次長の覚書というところから出ているわけですね。  この覚書の四カ条はどういう四カ条であるか。  第一条は、「自衛官の身分を併せ保有する場合は、自衛官の階級を呼称し、その制服を着用することができる。」これは駐在武官ですから当然のことです。第二項めは、「右外務事務官」、防衛庁出身の外務事務官は、「防衛庁設置法自衛隊法等の規定にかかわらず、」法律の規定にかかわらず、「身分上及び職務上、もつぱら外務大臣及び在外公館長の指揮監督に服する。」これは、事務次官クラスの覚書で法律の規定にかかわらずという覚書があるということはひとつ御記憶にとどめておいてください。第三条は、「右外務事務官は防衛庁との直接通信を行わず、且つ、独自の暗号を使用しない。」第四条は、「右外務事務官のため防衛庁は、独自の予算を配布しない。」こういうことです。  これは、何の経験から生まれたかと言えば、軍人出身の駐独武官がドイツの大使になる、そして、日独伊軍事同盟のときには、陸軍とその大使の通信は密で、外務省がつんぼ桟敷に置かれたという歯ぎしりをする経験があって、戦後十年目の昭和三十年にこの事務次官の覚書ができておる。この覚書の精神は、自衛官、つまり軍人というものは、がんじがらめに押さえ込んで、予算も配賦せず独自の通信もさせずに在外公館におらすことがいいんだという発想でございまして、到底今現在の我が自衛官が耐え得る体制ではございません。  このようにして、現在の防衛駐在官制度が続いておりますが、例えば、四十五歳で防衛駐在官として外に出る。同じ四十五歳の外交官は参事官で外におるわけです。四十五歳の一佐、大佐ですね、自衛官は、一等書記官で大使館に赴任するわけです。同期任官、一方は外務省、一方は防衛庁。同期任官組が五年ぐらいの落差を在外公館でつけられる。これは屈辱も甚だしいのじゃないか。したがって、これだけの身分の落差がありますから、給料も全く違うということになってくるわけです。  私、人事のことで、座布団とか伝馬船というような言葉があるようですが、これは余りよくわかりませんが、防衛庁長官、もうぼつぼつ駐在武官制度を立派な普通の民主主義国家の駐在武官制度に変えるべき時期ではないでしょうか。  私も、外国に行きましたら、我が自衛隊の武官の方たちと接触します。そして、軍人というものは、ともに国家を背負っておりますけれども、ともに戦うために国家を背負っているという連帯が各国ともあるのですね。だから、軍人同士は意外に信頼し合うわけです。そして、情報の交換も密になるわけですね。  そしてまた、駐在武官は軍事専門家ですから、外交官という方たちの歩く、視察する場所と違う、各国部隊、そして国境地帯を、私の知っている駐在官も、いろいろ独自にかの国との信頼関係のもとに見させてもらうわけですね。そのときに、独自の旅費がなければならない。国防の観点から旅費がなければならない。  今は旅費もない、そして通信もさせない。こういうことで、不都合な事例が一つあるのですが、まあこれは申しませんが、エジプトの大統領が死亡したのか死亡していないのか。各国の駐在武官同士の信頼関係で、彼は確実にあのとき死んだという情報我が国の駐在武官に入る。しかし、我が国の外務省の駐在外交官は、武官との信頼関係がないので、外国の武官からその情報を得ていない、したがって、エジプトのあの大統領が死んでいるのか死んでいないのかまだわからない、しかし、我が国の駐在武官は独自に通信できないから、それを通信できない、こういう事態も聞いておりますから、どうか駐在武官制度は、防衛庁挙げて、外務省とも話をして、そして、法律の規定にかかわらず次官同士の覚書でやるんだというふうな体制を打破して、この部分からも戦後の精神的な桎梏から脱却していただきたいと思いますが、防衛庁長官、いかがでございましょうか。御答弁いただきます。
  98. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 防衛駐在官は、現在三十三の在外公館に四十四名が派遣されております。  今お話がありましたとおり、それぞれ任国におきまして、大使館において、専門的な知識を生かして軍事情報の収集や防衛交流に従事するなど、我が国の安全保障にとって極めて重要な役割を担っているところであります。  また、不安定、不透明、不確実な冷戦後の国際情勢において、情報収集や軍事当局間の対話が一層重要性を増す中において、このような防衛駐在官の任務は、我が国全体の観点からもより重要になってきているものと私は考えております。  今委員から御指摘ありましたように、この協定は、昭和三十年に事務当局のトップがなした覚書でありまして、その中身については、防衛庁としては、現時点からすると問題があると思われる書きぶりが存在するし、今委員から御指摘なさったように、法律の規定にかかわらず云々というところもありますが、こういう不適切な書きぶりもございますし、また、防衛駐在官を初めて派遣して以来もう四十年を経過いたしました。防衛駐在官が在外公館の一員として積み上げてきた実績、加えて防衛庁や外務省、両省庁が既に十分な信頼関係を築いてきたこと等にかんがみ、このような協定を現行のまま維持することは適切であるとは考えておりません。したがって、私から私どもの事務局に対し、外務省にその旨申し入れて折衝するよう今指示したところでございます。  防衛庁としては、さきに述べたような国際情勢の変化対応するため継続的に情報機能の強化に努めてきているところであり、防衛駐在官についても、彼らが赴任した国において円滑かつ誇りを持って業務を遂行し得るようさまざまな観点から所要の検討を行っているところでございますが、今先生御指摘の点も含めて精力的に検討してまいりたい、こういうふうに思います。
  99. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 ありがとうございます。これで質問をやめます。
  100. 浅野勝人

    ○浅野委員長代理 佐々木陸海君。
  101. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 日本共産党の佐々木陸海です。  先ほどの法律案提案理由説明の中で、防衛庁長官は「必要な機能充実等を図るとの観点から、」云々ということをおっしゃいました。当然この中には日米新ガイドラインの実行という機能が含まれているというふうに考えますが、いかがでしょうか。
  102. 佐藤謙一郎

    佐藤(謙)政府委員 先ほど私どもの大臣が提案理由で御説明しましたところでございますが、そこのくだりをちょっともう一回御紹介させていただきますと、今回の改正内容につきまして、「これは、平成八年度以降に係る防衛計画大綱を踏まえ、我が国防衛力について合理化効率化コンパクト化を進めるとともに、必要な機能充実等を図るとの観点から、陸上自衛隊師団改編等及び統合幕僚会議における情報機能充実等を行うことに伴い、」今回の定数の変更をする、こういう御説明になってございます。  そういう中でございますから、今回の定数の変更につきまして、例えば師団改編とかそういう中において、当然のことながら機能の充実ということも念頭に置いているわけでございますし、また情報本部におきます定数の改定につきましては、そういった情報機能の充実ということも考えているわけでございます。また、今回定員の改編の中におきましては、統幕事務局におきますそういった所要の要員を確保する、こういうものももちろん入っているわけでございます。
  103. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 答えになっていないですよ。ガイドラインの実行ということと関係あるでしょうということを申し上げているんです。
  104. 佐藤謙一郎

    佐藤(謙)政府委員 正確に申しますと、「必要な機能充実等を図るとの観点から、」と、こういうふうになっているわけでございます。したがいまして、「必要な機能」と申しましたのは今私が申し上げたようなことでございますけれども、その「等」という中にいろいろな考えが入っているわけでございますから、そういったものも踏まえてガイドラインの作業と申しましょうか、それに関連します要員といたしまして統幕の事務局の増員を図る、こういうものも入っているということでございます。
  105. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 ガイドラインに当然関係ないはずないんですよ。ガイドラインの各種業務をやるというのは、その業務というのはどういう中身なんですか。
  106. 佐藤謙一郎

    佐藤(謙)政府委員 今お尋ねの統幕事務局に関係いたします日米防衛協力に係る各種業務を実施する要員としてのテーゼでございますけれども、これにつきましては、例えば指針に基づきます共同作戦計画についての検討でございますとかあるいは相互協力計画についての検討、こういったものに関係する事務というふうに私どもは考えております。
  107. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 統合幕僚会議事務局に新しく増員される八人のうちの四人は、今言ったような日米相互防衛協力計画やあるいは共通の準備段階の策定とか、そういった作業に従事をするという意味で、狭い意味でまさにガイドラインそのものにかかわっている仕事をする、そのための増員であるということだと思うんですね。  同時に、増員の中心を占めている、六十一人中の五十三人を占めている情報本部機能にいたしましても、平時からの情報機能の強化、ガイドラインでうたわれているようなそういう側面も当然持っているということでありまして、この法律改正案そのものの全体の中身がガイドラインの方向に沿ったものであるということは、防衛庁長官、間違いのない事実だと思うんですが、御確認を願いたいと思います。
  108. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 日米防衛協力に係る各種の業務というふうに今局長答弁しましたが、これは主として、新たなガイドラインの策定を踏まえまして、ガイドラインに基づく共同作戦計画についての検討とかあるいは相互協力計画についての検討、その他の日米共同作業のうち自衛隊の運用に係るもの及び自衛隊米軍の間で密接な調整を要する検討作業をいうわけでありますから、ガイドラインの作業に従事する要員ということでよろしいかと思います。
  109. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 要するに、今また長官は狭い意味でのこの四人の増員についての仕事の中身のことを申されたんですが、統合幕僚会議事務局を六十一人増員する、その大多数を占める五十三人の情報本部機能にしても、平時からの情報機能の強化というガイドラインの方向に沿ったものである、そういう意味では、この増員の全体がやはりガイドラインの実行ということと密接にかかわっているんだということを御確認願いたいということなんです。
  110. 佐藤謙一郎

    佐藤(謙)政府委員 長官がお答えします前に、事実関係をまず御説明したいと思います。  今回六十一名の増員のうち五十三名が情報本部の関係でございますが、これは先ほどの他の先生との御質疑の中でもございましたが、私どもの防衛大綱におきましても、情報態勢の充実を図るということが課題でございます。したがいまして、今回そういう考え方に沿いまして情報の充実を図るということで措置しているわけでございます。  それがこのガイドラインにおきましても、もちろんこういうことを考えれば情報の充実を図るということは当然でございますので、それはそれと整合的なものではございますけれども、ガイドラインがあるから情報態勢の充実を図るということでは必ずしもございませんで、そもそも私どもといたしまして、情報の充実を図るということが重要な課題であるということでございます。また、そういう措置がガイドラインの考え方にも整合的になっているということだと思います。
  111. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 今防衛局長から答弁したとおりでありますが、この日米防衛協力に係る増員は、新たな指針の策定を踏まえまして、これに対応し、自衛隊の運用に係る事項及び自衛隊米軍の間の調整事項について幅広く検討する必要があるための態勢を整えるものである、こういうふうに理解しております。
  112. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 もちろん防衛計画大綱を踏まえた措置であることは言うまでもないわけですが、新しいガイドラインの実行ということとも密接にかかわり合った今度の増員であるということははっきりしていると思います。そして先ほどの防衛局長答弁でも、この増員で十分だというわけではないんだというニュアンスのことも言っておられましたので、そのこともあわせて確認をしておきたいと思います。  そこで、少し話は変わりますが、TMDの問題について質問をしたいと思います。  政府は昨年の十二月に、九九年度から、弾道ミサイル防衛の一環として、海上配備型上層システム、NTWDの日米の共同技術研究に着手することを決定いたしました。この決定は、アジア・太平洋地域に新たな軍事的な緊張をつくり出し、軍拡競争を促進しかねない重大問題であり、しかも、国民に多大の負担を強いるだけでなくて、宇宙の平和利用を定めた国会決議等々についても、これを踏みにじるものであって、私たちとしては断じて容認できないという立場をつとに表明しているところです。  ここで、きょう幾つか伺いたいと思いますが、日本が研究に参加することになった海上配備型上層システムというのは、簡単に説明するとどういうものでしょうか。
  113. 佐藤謙一郎

    佐藤(謙)政府委員 これは先生既に御存じのところでございますが、弾道ミサイルにいかに対処するかということは各国それぞれ課題になっているわけでございます。それで、我が国といたしましても、専守防衛という考え方をとっている立場から、仮に弾道ミサイルに対する脅威に対応するということを考えた場合に、それに対する対処法をいかに構築しておくかということが私どもの防衛政策としても重要な課題ということでございます。  そういう中で、この分野において研究が一番進んでおりますのがアメリカでございます。アメリカにおきまして、大量破壊兵器の拡散防止のための努力一つといたしまして、BMDの能力向上ということで研究が進められているわけでございますが、特にその中で、戦域ミサイルに対する防衛ということでTMDというプログラムを持っておられます。  これは、簡単に申しますと、戦域レベルでの弾道ミサイルに対する脅威に対しまして、下層それから上層ということで対応を考え、下層、上層おのおのに地上配備するもの、海上配備するもの、こういうことで、四種類のプログラムがあるわけでございます。今先生言われましたNTWDと申しますのは、海上配備型の上層システム、こういうことでございます。     〔浅野委員長代理退席、委員長着席〕
  114. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 要するにTMDというのは、射程数百キロから最大射程二千七百キロのミサイルを宇宙の衛星で瞬時に探知して、地上からの迎撃ミサイルで撃ち落とすという計画だということだと思うんです。  これまでに出されたアメリカの会計検査委員会の報告書や米議会予算局の報告書等によっても、TMDについてはこういうことが言われております。大量のシステムを開発し配備する総額は四百ないし五百億ドルを大きく超えるだろう、これは九三年七月の指摘であります。今の円に直せば四兆から五兆は軽く超えてしまうという話であります。そして、この一連の計画、最近の文書で見ますと、九八、九九、二〇〇〇年度の三年だけ、二〇〇〇年度はこれからの計画でありますが、これだけでも、アメリカでは既に百二億七千万ドル、一兆円以上の金が出されようとしているわけであります。この計画はそういう意味では、莫大な費用がかかることは明瞭な計画であります。  それでお聞きしますが、日米共同技術研究で日本側はどのくらいの経費を負担することになるんでしょうか。
  115. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 共同技術研究におきます日本のより具体的な担当部分、それに要する費用等については今後さらに日米間で調整する必要がございますけれども、現在のところ、確たることは申し上げられない段階でありますが、あえて申し上げますと、現時点の防衛庁による見積もりでは、五年から六年間に二百億から三百億円程度ではないかと考えております。
  116. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 日本がTMD計画に参加するということになりますと、開発、量産、それから配備までに十五年以上の長い期間がかかる、そして費用も一兆円あるいは二兆円というような莫大なものがかかるというふうにも言われているわけですが、そういう先のことまで見通して、配備までということを考えますと、実際そのくらいの期間とかそのくらいの費用を要するものなのかどうなのか、その見通しについて聞かせてください。
  117. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 今回政府として決定しましたのは日米共同技術研究への着手でありまして、開発段階への移行、さらには配備段階への移行につきましては別途判断する、そういう性格のものと考えておりまして、御指摘の開発、配備までの見通しや経費について、今申し上げることは不可能でございます。
  118. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 そうすると、例えば今年度約十億円支出しており、これからも、先ほどの話によれば二百億ないし三百億の費用をかけて研究に参加するけれども、その先はどうなるか、今の段階では全くわからないということなんですね。
  119. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 あくまでも研究段階ではそういう経費を見込んでいるということでありまして、これを開発し配備するというようなことまでは考えていない、こういうことでございます。
  120. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 そうすると、それまでの二百億ないし三百億のお金というのは一体どういうことになってしまうのかということを言わざるを得ない。それがうまく実って、配備するということになれば、今言ったような莫大な費用をさらに要するということになるわけでありまして、大変問題が多いと思います。  そもそも、宇宙から飛んでくるミサイルを撃ち落とすというようなことが技術的に可能かどうか。何年かかるのか全くわからない、そういう専門家の指摘もあります。飛んでくる弾丸を別の弾丸で撃ち落とすよりもまたさらに難しいという指摘もあるくらいであります。アメリカでやっているTHAADミサイルの迎撃実験は五回連続で失敗するなど、実際には失敗が相次いでいる。  自民党の安全保障調査会の玉沢氏なども、新聞のインタビューの中でも、TMD構想も時間がかかる話だというふうに言っているわけでありまして、これは要するに、将来のことは本当に、研究に着手してみたけれどもどうなるかわからぬというのが実態のものなんですね。
  121. 佐藤謙一郎

    佐藤(謙)政府委員 実は、弾道ミサイルという脅威、これに対してどういうふうに対応できるんだということについては、数年前から私どもとしてもいろいろ研究をしてまいりました。そういう中で、果たして飛んできた弾道ミサイルを迎撃することが技術的に可能なのかどうかということについてもいろいろ調査研究をしてまいりました。  そういう中で、いろいろな必要な技術がございますけれども、それぞれにつきまして現段階の技術水準をいろいろ調査いたしますと、こういった課題を克服できる、そういった技術的な基盤は現在あるのではないか、こういうふうに考えている次第でございます。したがいまして、より具体的に技術的な検討を行ってみて、果たしてそれが可能なのかどうかということを、ひとつ共同技術研究ということでやってみる必要があるんではないか、こういうことでございます。  したがいまして、技術的な可能性の有無も何ら検討しないまま共同技術研究に着手する、そういうことではございませんで、それなりにこれまでの研究も踏まえて、そういった技術的な一般的な基礎ができているだろう、ただ、実際にそれをより具体的に検証してみようというのが共同技術研究でございます。  さらに、先生今お触れになりました今後への問題でございますけれども、昨年の十二月二十五日に出されましたこの共同技術研究に関します官房長官談話におきましても、「本件は技術研究であり、開発段階への移行、配備段階への移行については別途判断する性格のものである。これらの判断は、BMDの技術的な実現可能性及び将来の我が国の防衛の在り方等について十分検討した上で行うこととする。」こういうふうな考え方を述べているところでございます。
  122. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 いずれにしても、しかし、今おっしゃったように技術的な基盤はある、だから全く海のものとも山のものともつかないわけじゃなくて、やはり可能性があるということで参加に踏み切って、うまくいけば将来配備までいこうという意図があることは明白なわけであります。そんなことは全然ないんだということで何十億も何百億もお金を使うなんということは当然許されないはずでありまして、当然そういう方向性を持っているから、周辺の例えば中国などもたびたびこの問題について不安の念を表明している。当たり前の話であります。  もともとこのTMD計画というのは防衛的なものだということを盛んに強調されるわけですけれども、しかし、もともと弾道ミサイルとTMDというのは盾と矛の関係のようなものでありまして、自分の武器を有効なものにするために相手の武器を封じるという側面を持つわけであります。相手の矛を妨げる盾をつくると、相手側はさらに強力な矛をつくって、あるいは戦術を検討して、それに対して新しい対応をするということになってくるわけであります。実際には、こういう方向を進めていけば、際限のない軍拡競争の方向に進んでいく、矛盾を深めるだけだということになるわけでありまして、将来こういうものを配備するという方向性も一定持ちながらこういうものに進むということについては、結局悪循環に入っていってしまう。  この計画がアジア・太平洋地域の軍拡を促進することにならないというふうに防衛庁長官は言えますか。
  123. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 先ほど御答弁申し上げましたとおり、私どもは、これは研究をするということを決めたわけでありまして、開発とか整備は決めておらないわけでございます。  しかし、今、日本をめぐる状況というのは極めて不安定で不確定で不透明でありますから、さらに日本に対していろいろなミサイルに対する懸念が起こるかもしらぬというようなことを考える場合に、やはり研究段階だけでもやっておかなければいけないということになるだろうと私は思うのであります。それは、国民の生命財産を守り、日本の平和と独立と安全を守っていくという観点から、ぜひ備えておかなければいけない政策であると思います。  しかし、私どもが考えているのは、相手の基地を攻撃するようなミサイルを考えているわけでは全くございません。専ら専守防衛の観点から、相手が撃ち込んできたとき、そのミサイルをとらえて迎撃するというだけのミサイルを考えて今研究しているということでありまして、その点についてはひとつ御理解をいただきたい、こういうふうに思います。
  124. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 専ら防衛的なものだ、専守防衛のシステムなんだというふうにおっしゃるんですけれども、しかし、それによって日本の国土と日本の国民を守ろうということになれば、日本の国土の上に配備されたアメリカの海兵隊だとかあるいは空母機動部隊だとかあるいは三沢などに配備されている最新鋭戦闘機だとか、そういったものも当然つまり矛の部分です。それを防衛することにもなるわけでありまして、近隣諸国から見れば、そういう機能日本が強めることになれば、当然それはそれらの国に対する脅威が強まるということになっていくわけでありまして、私が先ほどお聞きしたのは、こういうものを強めていけば結局アジア太平洋地域での軍拡競争を促進することになるじゃないか、防衛的、防衛的と言っていれば済む問題じゃないんだということを私は申し上げたいんですよ。違いますか。
  125. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 私どもは、単にアメリカの艦艇等が攻撃したからどうとかというんじゃなくて、やはり日本の国土が侵される場合に、そういうものを考えていく必要があるんではないかという発想で考えているわけであります。  改めて申し上げますが、私どもは、相手が撃ち込んできたミサイルを専ら迎え撃っていくだけの専守防衛のミサイルでありまして、いろいろ広く考えているわけではないということをもう一度申し上げて、御理解を賜りたいと思います。
  126. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 先ほど盾と矛の例えを申し上げましたけれども、これは盾を強めるということなんですよね。守りを強めるということでしょう。しかし、それによって相手側の矛が鈍れば、相手側が矛を強めてくるということになるわけですよ。そうでしょう。それで、この盾によって日本に配備されている米軍の最新鋭の矛は有効性を強めるわけですよ。そういうことを申し上げたいわけです。  そして、もう時間が来ましたからあれですが、一九九九年度のアメリカの国防報告は、TMDについて、戦域ミサイル防衛は米国の国益防衛の任務についている展開部隊の防護のかなめであるということを言っているわけですね。つまり、前方に展開された米軍を守るためのかなめなんだということを言っているわけです。そして、そういうアメリカの主導する計画に日本が日米共同研究ということでその一翼に参画していくということになるわけであります。  もう時間がありませんから、これ以上申し上げませんが、これまでの国会の決議なんかにも反する方向でありまして、私たちはこういうものを進めるべきじゃないということを申し上げまして、質問を終わります。
  127. 二見伸明

  128. 保坂展人

    保坂委員 社会民主党の保坂展人です。  本案の審議に当たりまして、ぜひ野呂田防衛庁長官に率直にお尋ねをしたい件がございます。  自衛隊の中に、いわば賞味期限が切れてしまったビールであるとか飲み物であるとかあるいはカレースープであるとか、さまざまなものがいわば企業によって提供されて、廃棄コストが極めて安いという理由だそうですけれども、これを配布したりあるいは格安で販売したりという問題がこの春先から明らかになってまいりました。処分ということも伝えられています。  防衛庁長官は、三月五日に、腐りかけの酒をもらったり販売するといったやりきれない問題が起きた、国土の平和を守るという誇りをきちっと持ってほしい、二度と起きないようにという指示もされているというふうに聞いております。  防衛庁長官に、この問題のどこが核心なのか、何が問われたのかということについて、端的にお尋ねをしたいと思います。
  129. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 これは、特定の一人が中心になってやったわけでございまして、自衛隊の多くがこういう行動をやったわけではないということをまず御理解いただきたいと思うんです。その特定の人が、ただで上げたり、あるいは一部販売したものもあるようでありますが、それを飲んだという意味では何人かの人が関係するわけでありますけれども、やはりある意味ではこれは士気の弛緩であったと私は思います。ですから、事情をよく調べまして、速やかに処分をするように指示をし、現に処分を終結したところでございます。これからもこういうことが二度と起こらないように、私はこの事件をきっかけに、全隊員にくまなく厳しく海陸空の幕僚長に指示をしまして、徹底的に調査をさせ、二度とこういうことが再発しないように指示をした次第でございます。
  130. 保坂展人

    保坂委員 基本的な御姿勢はわかりました。  この扱った量というのはかなりの量でありまして、二十二万ケース、もし販売するとしたら小売価格で十億円相当という大量の物品、飲料やその他食料ということなのですが、その調査の際に、実際に格安でどの程度、この方あるいはそれに付随した方たちが利益を上げたのか。幾ら利益を上げたのか。これについては調べられたでしょうか。
  131. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 これは不正な利得を得たとかというよりは、もう酒販業者が持っていても期限が切れて販売できないものを、むしろ処分に困って処理させたというような様相、そういう側面もあるわけでございまして、そういう意味では、正常な酒を大量にただでもらって何かしたというのとは事情が違うということだけは御理解いただきたいと思いますが、細かい金額とか詳細なことについては、政府委員の方から答弁させます。
  132. 坂野興

    坂野政府委員 期限の切れました飲料水等につきましては、約五年以上にわたりまして二十二万ケースを受け取るというふうに調査の結果わかっております。ただ、この件について、特に金銭の授受はございませんでした。また一方、ビールにつきましての、比較的市価よりも安い価格でのあっせん販売等というのが一千ケースほどございましたが、この点につきましては、販売行為に伴いまして、利益を上げるとかそういうような行為はなかったというふうにわかっております。
  133. 保坂展人

    保坂委員 それでは、もう一度確認しますが、国会答弁というのはこれは虚偽の答弁は許されないのではっきり言っていただきたいと思いますが、一連の報道では、確かに無料で配ったというのもありますよ。ありますけれども、格安で販売したというのも繰り返し出てきているのですね。この点がないということをどうやって調べられたのですか。
  134. 坂野興

    坂野政府委員 繰り返し同じことを申し上げさせていただきますけれども、期限切れの炭酸飲料水等、これにつきましての金銭の授受等はなかった。それから、業者の依頼を受けましたビールのあっせん販売につきましては、原価で隊員があっせんしてお金は受け取っておりますが、それはそのままビールの業者の方に渡されているということで、隊員の方に利益はなかったということでございます。
  135. 保坂展人

    保坂委員 私はその調査に非常に疑問を持ちますが、今言われた原価でビール会社から受けて、ボランティアで、自衛隊員としての職務中に、ビール会社のいわば販売営業代行になってこれを原価で渡していた、そういうことですか。
  136. 坂野興

    坂野政府委員 そういうことでございます。  ただ、そういったことが適切でなかったということで、処分をしたということでございます。
  137. 保坂展人

    保坂委員 防衛庁長官、お願いしますけれども、これは士気の緩みどころの話ではなくて、まさにそこに、例えば原価に幾らか上乗せして、勤務時間中にアルバイトをしていたということがあったら、これは停職処分とかそういう問題ではもう済まされませんよ。その部分というのは勤務時間内なのですから、ここのところはしっかり、利益を上げていたのかどうかということについて、納得がいく調査を本当にしたのかどうか、もう一度お答えいただきたいと思います。
  138. 坂野興

    坂野政府委員 私どもが調査したところでは、その隊員は利益を上げていないということについて調査をいたしております。
  139. 保坂展人

    保坂委員 長官にお答えいただきたいのですが、野呂田長官、よろしいですか。もう一つ別の角度からお聞きしてよろしいですか。  今の問題も重要なのですが、もう一つ、例えばビールメーカーや食料会社にとっては、これは廃棄するよりも三分の一のコストで済んだと言っているわけですね。では、企業側のメリットというのは総額幾らあったのかというのは調査されましたか。
  140. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 そのような調査はちょっと私の方まで上がってきておりませんので、政府委員から答弁させていただきます。
  141. 保坂展人

    保坂委員 では、政府委員お答えいただきますが、この問題はもう一つの側面があって、大体発端になったのは九一年十一月に、カレースープ二十二万ケースをいわば受け取って、このあたりから始まった。この方自体は、弘済会の幹部の方ですけれども、九四年に退職をされてビール会社に天下った、こういうふうに言われています。この方が、三月段階では、現在も陸上自衛隊の駐屯地で営業中だ、こういうふうにあるのですが、こういう現実はそのままほったらかしですか。この問題の本質をつく問題だと思うので、お答えください。
  142. 坂野興

    坂野政府委員 ちょっと手元に資料がございませんので調べさせていただきますけれども、たしか私の記憶で、どういう経緯かちょっとはっきりしませんけれども、ビール会社に一人再就職した方がおられるというのは記憶にございます。その件について、調べましてお答えさせていただきたいというふうに思います。
  143. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 委員から大変具体的な御質問をいただいておりますので、火急に資料をそろえまして御説明に上がらせたいと思います。
  144. 保坂展人

    保坂委員 大変前向きな御答弁で、確かにこれは野呂田長官おわかりのように、大変な量の賞味期限切れかその直前のものを、いわば産廃施設に送るかわりに自衛隊に持ち込んだというとんでもない話ですね。それによって企業が三分の一のコストで済んだとするならば、企業にとっては上げた収益があるわけです。それと例えばそういう天下りの問題などが絡んでいるとしたら、これは事は重大です。  そしてまた、この方は幹部ですよね、一応二等陸尉だったでしょうか、今回処分された方は。その上級の人たちが、二十二万ケースといったら、一本一本計算してみればとんでもない数のあれですよ、これはこの方だけが個人的にやっていたのではなくて、やはり全体としてこういうものを認容していたのではないですか。その体質も含めて点検して、速やかに報告していただきたいと思います。
  145. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 はい、そのように迅速に措置したいと思います。
  146. 保坂展人

    保坂委員 これは本質的な問題だと思いますが、たまたまこのことを究明していく過程で、この処分をされた方が、勤務時間後と言われていますが、執務室の中で女性自衛官と飲食をして、無理やりキスを求めたというようなことで、当該の女性自衛官からの告発があって、このことも今回の処分理由になっていると聞きますけれども、これは具体的に、本当にあったのか、一回限りのことなのか、いかがですか。セクハラということについて、どういうことがあったのですか。
  147. 坂野興

    坂野政府委員 大変遺憾なことではございますが、課外時間におきまして、執務室に部下の、同僚の婦人自衛官を呼んで、そこで雑談をしていた、その中でキスをした、それは一回でございますけれども、そういった事実がございました。
  148. 保坂展人

    保坂委員 今、長官は士気の緩みとおっしゃいましたけれども、一方で、執務室の中で、勤務時間終了後とはいえ、いわばそういうことになる。飲酒をして、女性にとって大変な屈辱だったろうというふうに思うのですが、この点についてもやはり厳しく反省していただきたいと思いますが、長官はいかがでしょうか。
  149. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 そういうことでありましたから、トップの、陸海空の幕僚長を集めまして、厳しく訓示をいたしまして、徹底してそういう調査を、ほかにもないかどうか調査をやりまして、そして、二度と起こらないように厳重に注意をした次第でございます。  まことに申しわけないことで、心からおわびを申し上げます。
  150. 保坂展人

    保坂委員 それでは、自衛隊の定員、定数が漸次削減ということで、全体の構成についての質問なんですけれども、昭和五十七年度版から平成八年度版まで、つまり一九八二年から九六年までの十五年間は、幹部から現場の士に至るまで、それぞれのランク別の充足率の記載が防衛白書の中にあるのですね。  それが、最新版を見ますと、どうも全体の充足率、つまり全体の自衛官の充足率に変わってしまっているわけですね。情報公開法が成立をして、やはりこれは充足率を見ると、幹部の方は極めて高くて現場の方は非常に低いという構造がずっと変わらなく拡大しているのですが、そのことをどうしてこんな記載にしたのか。やはりこれはきちっと実情を明らかにすべきじゃないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  151. 坂野興

    坂野政府委員 確かに、御指摘のように、平成九年度及び平成十年度防衛白書資料編の「自衛官の定員及び現員」におきましては、平成八年度以前とは異なりまして、幹部、准尉、曹、士別の区分によらないで、各自衛隊ごとの定員、現員の総数及び充足率を記載しているところでございます。  これは、あくまでも防衛白書の全体の分量を一定の中におさめる、そういうふうなこともございまして、より簡潔明瞭でわかりやすいものになるよう配慮したものでございまして、御指摘のように幹部のみが高い充足率であることを隠すためのものということではございません。  ちなみに、平成九年度版及び平成十年度版の防衛白書に書かれております全体の充足率をさらに幹部、准尉、曹、士の別で申しますと、平成九年度白書につきましては、幹部が九七・九%、准尉が九二・八%、曹は九八・八%、士は六九%。それから、平成十年度白書について見ますと、幹部は九八%、准尉は九四・二%、曹は九八・八%、士は六九・五%になっております。  また、自衛官の人材の養成ということからいたしますと、幹部あるいは准尉、曹につきましては、ある程度長期の期間を要するという点がございますのに対しまして、士の場合は、任期制ということで入れかわっていくというふうな事情もございますものですから、ある程度自衛隊の組織の特性上、幹部あるいは曹は充足率が高く、士の充足率を低く抑えておくということも組織の合理的な資源、予算の執行ということからもやむを得ないことではないのかなというふうに考えております。
  152. 保坂展人

    保坂委員 今口頭で、会議録には残るのですが、これは十五年間きちっとやってきたように、それぞれの充足率を記載してください。いかがですか。
  153. 坂野興

    坂野政府委員 防衛白書の作成につきましては、それぞれ今後また検討いたしていきますが、私どもとして、別に必要な資料を出し渋っているということではございませんので、御指摘の点については検討させていただきます。
  154. 保坂展人

    保坂委員 私は、今の点を聞いたのも、やはり幹部の充足率が非常に高くて、こういうふうに現場の方は低いという実態の中で、特に今回、冒頭御指摘したようなことが、いわばルールはあってなきがごとし、これは民間の会社なら極めて厳しい事実究明がされるはずです。そういうルールがあります。  民間よりはるかに緩やかなといいますか、事実を把握しないような調査では、やはりこれはもう納得がいかないものと考えますので、先ほど長官の答弁もいただきましたので、ぜひ速やかに以上指摘した点について調査をお願いして、私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございます。
  155. 二見伸明

    二見委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     ―――――――――――――
  156. 二見伸明

    二見委員長 これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、これを許します。佐々木陸海君。
  157. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 私は、日本共産党を代表して、防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。  本法案は、現在参院で審議中の新ガイドライン関連法案とともに、新ガイドラインによって自衛隊が担うことになった周辺事態での米軍への兵たん支援情報活動など、海外活動を含む新たな任務を遂行するために、自衛隊組織を改編し、機能の強化を進めるものであり、反対であります。  第一に、統合幕僚会議の増強は、周辺事態における日米相互協力計画や日米の共通の準備段階の策定など、新ガイドラインの実行態勢を本格的に進めるものであります。  また、画像情報支援システムの導入などによる情報本部の態勢強化は、周辺事態や重大事態対応するための平時からの情報機能の強化であります。  第二に、北部方面隊第七師団改編は、戦車部隊を中心に即応予備自衛官を導入し、後方支援機能を集約、統合することなどによって、陸上自衛隊部隊を多様な事態に弾力的かつ効率的に対処し得るように改編するものであり、周辺事態やPKOなどに対応し得る陸上自衛隊の新たな態勢づくりを進めるものであります。  なお、常備自衛官の削減は、定員数を実員数に合わせるだけで、およそ削減に値しないものであります。  以上をもって反対討論を終わります。
  158. 二見伸明

    二見委員長 これにて討論は終局いたしました。     ―――――――――――――
  159. 二見伸明

    二見委員長 これより採決に入ります。  内閣提出防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  160. 二見伸明

    二見委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  161. 二見伸明

    二見委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  162. 二見伸明

    二見委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時九分散会      ――――◇―――――   〔参照〕  安全保障委員協議会 平成十一年三月二十四日(水曜日)     午後四時開議  出席委員    委員長 二見 伸明君    理事 安倍 晋三君 理事 浅野 勝人君    理事 江口 一雄君 理事 仲村 正治君    理事 前原 誠司君 理事 佐藤 茂樹君    理事 西村 眞悟君       伊藤 達也君    臼井日出男君       大野 功統君    嘉数 知賢君       河井 克行君    栗原 裕康君       小泉純一郎君    田村 憲久君       伊藤 英成君    岡田 克也君       桑原  豊君    島   聡君       漆原 良夫君    河合 正智君       冨沢 篤紘君    西川太一郎君       佐々木陸海君    東中 光雄君       辻元 清美君  出席国務大臣         国務大臣防衛庁長官) 野呂田芳成君  出席政府委員         内閣官房内閣安全保障・危機管理室長 伊藤 康成君         防衛庁長官官房長 守屋 武昌君         防衛庁防衛局長 佐藤  謙君         防衛庁運用局長 柳澤 協二君         外務政務次官 町村 信孝君         外務省総合外交政策局長 加藤 良三君         外務省条約局長 東郷 和彦君         海上保安庁長官 楠木 行雄君  委員外出席者         警察庁警備局外事課長 内山田邦夫君         安全保障委員会専門員 田中 達郎君     ――――――――――――― 協議事項  国の安全保障に関する事項(日本海における不審船問題について)      ――――◇―――――
  163. 二見伸明

    二見委員長 これより安全保障委員協議会を開会いたします。  国の安全保障に関し、日本海における不審船問題について議事を進めます。  この際、防衛庁長官から発言を求められておりますので、これを許します。野呂田防衛庁長官
  164. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 昨日、警戒監視活動を実施中の海上自衛隊の航空機P3Cが、二隻の不審船舶を発見しました。このため、訓練に向かっていた護衛艦を現場に向かわせ、不審船舶を確認し、海上保安庁に通報しました。概要は次のとおりです。  まず、海上自衛隊の航空機P3Cが、午前九時二十五分ごろ、能登半島東方約二十五海里の領海内において、漁船二隻、すなわち第二十八信盛丸、第二大和丸を発見しました。以後、現場に進出した護衛艦「はるな」が、午前十一時ごろ、船名を確認し、直ちに海上保安庁に連絡しました。第二十八信盛丸は追って不審船舶ではないと確認しました。  また、海上自衛隊の航空機P3Cが、午前六時四十二分ごろ、佐渡島西方約十海里の領海内において、漁船第一大西丸を発見しました。以後、現場に進出した護衛艦「はるな」が、午後十二時十分ごろ船名を確認し、午後十三時ごろ海上保安庁に連絡しました。  これらの船舶には、漁船の名称が表示されておりましたが、国旗を掲げず、漁具も積んでおらず、非常に不審なアンテナ等が装備されていたこと等から、不審船舶として、海上保安庁に連絡したものです。  以後、海上保安庁の航空機及び巡視船艇によりこれを追跡し、まず現場に到着した航空機により停船命令を実施するとともに、さらに追尾した巡視船艇からも再度停船命令を実施しましたが、これに応じなかったことから、巡視船艇により威嚇射撃を実施する等必要な措置を講じましたが、速度を上げたため海上保安庁の巡視船艇等による追尾が困難となったものです。  これを受けて、政府として検討した結果、海上における人命もしくは財産の保護または治安維持のため特別の必要があると判断し、自衛隊法第八十二条に基づき、海上における警備行動をもって対処することとしたところであります。  不審船のうち第二大和丸については、必死の追跡、停船命令、警告射撃にかかわらず、防空識別圏を越え、北朝鮮方向に逃走しましたので、これ以上の追跡は相手国を刺激し、事態の拡大を招くおそれがあると判断したので、午前三時二十分、追尾を中止しました。  その際、第二大和丸に対し、海上自衛隊の護衛艦「みょうこう」は、五インチ砲による警告射撃を十三回各一発、百五十キロ爆弾四発をもっての警告を発しました。  また、第一大西丸に対しては、護衛艦「はるな」が追跡、停船命令、五インチ砲を六回十発の警告射撃を行ったところであります。  その後、第二大和丸を追跡した「みょうこう」を、「はるな」、「あぶくま」とともに、第一大西丸の追尾に当て、全力を挙げ停船の実施に夜を徹して当たらせ、「はるな」は警告射撃を六回十二発、合計十二回二十二発を発射するとともに、百五十キロ爆弾を二回計八発を投下し、全力を尽くして停船を求めましたが、第一大西丸は、それを無視し、午前六時六分、我が国の防空識別圏を越え北朝鮮方向に逃走いたしました。  これ以上の追跡は、第二大和丸の場合と同じ観点から追尾を中止するとのやむなきに至ったところであります。  昭和二十九年に自衛隊発足後四十五年経過しましたが、今回初めて自衛隊法八十二条の海上における警備行動を発動したところであり、結果は、十分に武器の使用ができない等の法律上の制約があり、不審船の逃走を許しましたが、この種の事案に対し、海上保安庁の対応だけでは不十分な場合には自衛隊がこれに当たるという断固たる我が国の決意を内外に示したことは、今後、この種の事案の発生に対する極めて大きな抑止力となるものと確信いたします。  この種の事案に対し、第一義の所管官庁である海上保安庁と防衛庁の緊密な連携のあり方等については、今後、今回の経験を踏まえ、遺漏のなきよう万全を期してまいりたいと考えております。  なお、現時点においては、不審船舶は、我が国の防空識別圏に配備した航空機P3Cからはレーダー探知ができなくなるほど遠くに移動しており、また、我が国周辺海域も特異事象は見られないことから、私の命により、海上警備行動は、本日十五時三十分をもって終結することとしたものであります。     ―――――――――――――
  165. 二見伸明

    二見委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。安倍晋三君。
  166. 安倍晋三

    ○安倍(晋)委員 自由民主党の安倍晋三であります。  ただいま防衛庁長官から御説明のございました不審船追跡事案について何点か質問させていただきたい、こういうふうに思うわけであります。  今回、この事案に対しまして、安全保障委員会としては安全保障委員協議会を緊急に開催したわけでありますが、これはテポドン発射のとき以来であります。しかし、今回はテポドン発射とは違いまして、二隻の不審船それ自体の領海侵犯ということであれば、それはこの緊急の会を招集するような事案ではないんだろうと思います。ただ、今回は、この緊急の協議会を開催したということは、自衛隊発足四十五年の中で初めて海上警備行動が下令をされたということであります。そしてもう一点は、これも極めて大きな問題ではありますが、結果として、残念ながらこの二隻の不審船は取り逃がしてしまったということではないか、このように思うわけであります。  今回、自衛隊のP3Cがこの不審船を発見以来、私は、まず海上保安庁そして運輸大臣も極めて俊敏な決断をされたんだろう、こういうふうに思います。大臣も、威嚇射撃を含めての行動海上保安庁に命令していたわけでありますし、そしてまた、すぐ直ちに省庁間協議を行い、かつまた、最終的には運輸大臣の決断によって海上警備行動の要請を防衛庁長官にしたわけであります。そしてさらには、小渕総理大臣も、これは四十五年の歴史の中で初めての命令である海上警備行動の命令の決断をされた。私は、大変これはある意味では果断な決断をされたなと改めて敬意を表したい、こういうふうに思うわけであります。  しかしながら、現在の法令の許す範囲内ですべて適切な処置をとったにもかかわらず、結果としてはこの二隻の不審船は追尾を逃れた、逃げてしまったという結果が残ったわけであります。  その中で、何点か問題点を指摘させていただきたい、こういうふうに思うわけであります。  今回初めて発動されました海上警備行動についてお伺いをさせていただきたいと思うわけでありますが、この海上警備行動の要請を運輸大臣が防衛庁長官にされてから発動に至るまでの経緯と、それに要した時間をお伺いしたいと思います。
  167. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 私どもが運輸大臣から、海上自衛隊の方で協力していただきたいという要請を受けたのは、零時三十分でございました。そして、安全保障会議、持ち回り閣議等を消化しまして、二十分後、零時五十分に私どもが海上警備行動の発令をしたということでありまして、かなり迅速に処理されたのじゃないかと考えております。
  168. 安倍晋三

    ○安倍(晋)委員 極めて迅速であった、こういうふうに思うわけであります。  しかし、今もおっしゃった零時三十分から零時五十分までの二十分しかかからなかったというのは、これはあくまでも形式上のことであろうと私は思います。実際、海上警備行動の要請から命令の下令まで二十分しかかからないのであれば、昨年、潜水艦の事案に際しては閣議を飛ばすことにしたわけでありますから、それで迅速にしようということを決定したわけであります。しかし、もし二十分でできるのであれば、本来こうした処置も必要がなかったんだろうと思うわけでありますから、今、形式上は長官のおっしゃったとおりなんでしょうけれども、実態上はやはり、二十時台の後半に省庁間協議を運輸省が防衛庁に要請をした段階から、実はその段階から準備を始めていたんだろうと私は思います。ですから、本当はやはり四時間ぐらいかかったんではないか、こんなような認識を私自身は持っているわけであります。  問題点の第一点でございますが、実際海上警備行動に至るまではあくまでも海上保安庁が対処しなければいけなかったという点も、やはりこれは我々も大きな問題点として認識をしておかなければいけないんであろうと思います。この不審船二隻は、私は、私自身の見解といたしましては、これはやはり北朝鮮の工作船であったという可能性が限りなく高いんであろう、こういうふうに思うわけであります。そういう国のいわゆる工作船が断固たる決意で情報収集をして逃走を図ろうというときに、果たして海上保安庁で、海保で逮捕できるかどうかということについては、私は大きな問題点があったんであろうと思います。  そういう意味では、海上保安庁がずっと追跡をして、そして最終的に自衛隊海上警備行動の発令があって行動を起こすまでの時間、これはやはり大きな時間だったな、このように私は思わざるを得ないわけであります。  そしてまたさらに、もしこの間、省庁間協議等が調っていて、自衛隊も一緒に追尾をしていたとするわけでありますが、海上保安庁と一緒に追尾をしていたんでしょうけれども、ここで武器使用について何点か質問させていただきたい、こういうふうに思うわけでありますが、もしそこで、海上警備行動が発令される前にこの不審船が何らかの形で海上保安庁の船を攻撃した場合、そばにいる自衛艦は、それを助けるためにその不審船を攻撃できるかどうかということについてお伺いをしたいと思います。
  169. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 海上警備行動が下令されていない場合においては、海上保安庁の艦船が攻撃を受けた場合、これを救助するための武器使用は、自衛隊法上許されていないところであります。海上警備行動が下令された場合に、停船させるために相手に着弾させることを目的とした武器の使用は、自衛隊法九十三条によって準用される警察官職務執行法七条の要件に該当する限り可能である、こういうふうに考えます。
  170. 安倍晋三

    ○安倍(晋)委員 今の御答弁の中に、我が国の安全保障上の問題点が含まれている、このように思うわけでありますが、海上警備行動の命令が下されない限り、自衛隊の艦船は、自衛隊法の九十五条の武器等の防護あるいは正当防衛にのっとってみずからを守るために武器を使用するということでない限り、海上保安庁の船が攻撃をされているとしても、全く手出しができないということであります。ということは、そういう状態が何時間も実は続いていたんだということではないか、このように思うわけであります。  また、さらに問題点は、その後、海上警備行動が発令された後も、あくまでも警告射撃しか当然できなかったわけでありますが、この警告の中には、相手の船をとめるために船体に攻撃を与えるということは自衛隊法の中からはできないのであろう、私はこういうふうに思うわけであります。  もう一度確認をさせていただきたいと思うわけでありますが、警告は、あくまでもこれは海を撃つ警告であって、その船体自体を撃つことはできないんだということを確認させていただきたいと思います。
  171. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 御指摘のとおり、相手が攻撃した場合に私どもが反撃をすることは可能であっても、相手が攻撃に着手しない間にこっちが相手方の船に対して攻撃を加えることは許されないものだと考えております。
  172. 安倍晋三

    ○安倍(晋)委員 先ほど、まず第一点の問題点として、領域警備を与えていない自衛隊が、海上警備行動の発令までは、事実上なかなかそうした警備行動ができないという問題点も浮かび上がってきたわけでありますが、さらに、この発令後も、実は相手がこちらの法令上の不備を知っていれば、まんまと逃げおおすことができるんだろうということが証明をされてしまったんだろう、私はこういうふうに思うわけであります。  先ほど長官が、御説明の中で、最後の段において、こうした状況では断固たる処置をとるということが抑止力となるという御発言がございました。確かに、海上警備行動を下令するんだという決意を示したわけでありますが、しかし、このサインを相手方がどういうふうにとるかということであります。  これを、我が国がこういうときにはもう自衛隊も出すんだという決意を示したことによって、これは、もうこういうことをするのはやめておこうと思うか、自衛隊が出てきても、こちらから弾を撃たない限り大丈夫だよ、向こうがそういう認識を持つかということで、私は大きく異なってくるんだろうと思うわけであります。  私は、残念ながらこれは後者ではないかなという危惧を強く持つわけでありますし、また、今回の船も、恐らく我が国のこうした自衛隊の法令上の問題点を十分に熟知した上で、一切反撃をせずにどんどこ逃げていったんだろう、こういうふうに思うわけであります。  韓国領内に侵入した不審船というのは反撃したり等々するわけでありますが、それは、反撃をしなければ沈められてしまうわけでありますから、そうした反撃をする。我が国領海に入ってきた場合は、これは沈められるということはなかなか起こり得ない、反撃しない限りまず起こらないということを知った上で、こうしたことを行ったんであろう、私はこういうふうに思うわけであります。ということは、これからもこういうことが起こって結果は同じになってしまうんではないか、そういう危惧を抱くわけであります。私は、その問題点は、むしろ行政府よりも我々立法府の責任ではないか、また、我々与党の一員として強く責任を痛感するわけであります。  続きまして、最後に、この関連では、長官に、結果として逃げてしまったということに対して、これがやはり防衛庁の限界である、現在の法令上の中では限界であるということについての御認識というか見解をお伺いしたい、こういうふうに思います。
  173. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 現行法の枠の中では、どのように領海を侵害されても、相手がこちらの停止等に耳をかさない限り、本日の行われた状態が限界の、現実の姿ではないかと思います。
  174. 安倍晋三

    ○安倍(晋)委員 この結果を我々深刻に踏まえながら、自衛隊にやはり領域警備任務を与える、さらには武器使用の点についても、もう一度法令の改正等も含めて考え直していかなければいけないのであろう、このように強く思うわけであります。  続きまして、この船が自衛隊の追尾終了後どこに行ってしまったかという問題点でございますが、これは、その後も自衛隊情報収集をしているんだろうと思いますが、この後行ったかもしれない国、あるいはロシアであるとか韓国、また北朝鮮でありますが、そういう国に対して情報収集の協力を恐らくお願いをしているんだろうと思います。  また、在日米軍あるいは米国に対して、米国がとり得た情報等々についての情報をこちらに連絡をしてもらえるように、恐らく協力の要請をしているんだろうと思いますが、今わかり得ている範囲で結構でございますから教えていただきたい、こういうように思います。
  175. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 私どもは、今回の行動範囲というものを、我が国の防空識別圏の範囲内に限るということに方針を立てました。それを越えた場合は相手国を刺激したり不測の事態を引き起こしかねないという前提で、そういう方針を守ったわけでございます。  したがって、防空識別圏を越えないように艦船は引き揚げさせましたが、飛行機につきましては、P3Cを使ってつい先ほどまで警戒監視をさせておりましたが、さっき、三時三十分でこの命令を解きましたので、今監視に当たっているという状態ではございません。現在は、これらの飛行機を使っても、レーダーで探知できないぐらい遠距離に行ったということだけは確かでございます。  では、どっちの方へ行ったかということになれば、なかなか、この防空識別圏の範囲内でやったものですから、行き先は確かではございませんが、探知できる限りにおいては、北朝鮮の方向に行ったというふうに私どもは考えております。
  176. 安倍晋三

    ○安倍(晋)委員 また、在日米軍、米国、またはロシア等からの情報について、町村副大臣にお伺いしたいと思います。
  177. 町村信孝

    ○町村政府委員 外務省といたしましては、この事案が発生してから、アメリカ、ロシア、韓国、こうしたところに対しましていろいろな説明を行ってまいりましたし、また、ロシアに対しましてはしかるべき協力を求めたところでありまして、ロシア側は二十四日の午前、この船を追跡するために、既に警備艇を出しているというようなところまで来ております。中国に対しても、本日、昼間近くに事実関係の概要説明している。  軍と軍との情報交換、これにつきましては、大変機微にわたりますし、詳細の説明というのはなかなかしづらいところがあるわけでありますが、いずれにいたしましても、現状、今どこまでその二隻の不審船が行っているかというと、今防衛庁長官お答えのとおり、方向としては北朝鮮の水域の方に向かっているということ以上の情報は、今のところは得ていないところでございます。
  178. 安倍晋三

    ○安倍(晋)委員 先ほど長官から、防空識別圏の範囲内から出た段階で追尾をあきらめたということでありますが、追尾を断念するに際しての決断の理由の一つが、防衛庁がE2Cを使って得た情報によって、北朝鮮からミグ21二機が発進をしたという情報を得たという情報を私とっているわけでありますが、その確認をさせていただきたいと思います。
  179. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 本日七時五十五分ごろ、日本海上空において警戒監視に当たっていたE2Cが、北朝鮮付近の空域を飛行する航空機を探知したことは事実でございます。  この航空機の国籍や、不審船との関連等については明らかではございませんが、かかる事実をもって、不審船の所属について確たることを申し上げることは困難だと思いますが、確かに、E2Cがこの空域を飛行する航空機を探知したことは事実でございます。
  180. 安倍晋三

    ○安倍(晋)委員 これは通告していない質問なんですが、ミグ21を作戦戦闘機として使用している国は、北朝鮮以外にはあるんでしょうか。
  181. 柳澤協二

    ○柳澤政府委員 今日では比較的古い世代に属する航空機になっておると思いますので、北朝鮮だけかと言われますとちょっとあれでございますが、北朝鮮にはミグ21が相当数あると思っております。
  182. 安倍晋三

    ○安倍(晋)委員 これは極めて歯切れが悪かったと思うわけでありますが、ミグを使っている我が国周辺の国としては、ロシア、中国、北朝鮮ということになるんだろうと思いますが、ロシアの空軍はもう既にミグ21を事実上使っていないんだろうと思いますし、中国も既に世代が変わっておりますから、私は、その意味からも、今回の不審船と北朝鮮のかかわりというのは、北朝鮮の工作船であったというふうに、かなり断定に近い認識を持ってもこれはしようがないんだろう、こういうふうに思うわけであります。  続きまして、不審なこの二隻の船が、果たして日本近海でどういう活動を行っていたかということでありますが、わかっている範囲で教えていただきたいと思います。
  183. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 先ほど申し上げたとおりでございますが、九時二十五分ごろ、能登半島の東方約二十五海里の領域内において、まず漁船二そうを発見したわけですが、第二十八信盛丸、第二大和丸を発見したわけであります。その時点においては、一見してさながら漁船のように見えるわけですが、全く漁具も積んでいないし、漁網もないし、漁をしている様子は全くない、こういう状況でございました。  第二十八信盛丸につきましては、これは、接近して第二十八信盛丸ということを確認した結果、船籍の照会をしましたところ、日本船籍を持った船であるということは確認されました。第二大和丸につきましては、これは、確かにこの船の船籍はあるんですが、ほかにいることが確認されて、この不審船と思われる第二大和丸は、明らかに現存する日本の船の名前を詐称しているという事実が明らかになりました。  それから、もう一つ、佐渡島西方約十海里の領域内において発見された第一大西丸につきましては、接近して確かめた結果、このような名前を名乗っておりますが、この船につきましては、平成六年に既に廃船になりまして、現存する船ではございません。しかも、十分に使って廃船した船にしては、三十五ノットぐらいのスピードで走れるということがわかりますので、これもまた明らかに、日本のかつてあった船の名前を使っている、こういうことが明らかになりました。  これらの船が何をやっていたかということにつきましては、ほとんど何もしていないという状況で、今申し上げた地帯で航行していたということでございます。何をしようとしていたかは、私どもは立入検査できなかったわけですから、その意図はわかりません。
  184. 安倍晋三

    ○安倍(晋)委員 ただ、この船は縦長のアンテナ等を多数装備していたわけでありますが、そうしたアンテナ等を、外見から、どういった情報収集に使うか、もしわかっていれば、防衛庁の方でそういう認識があれば教えていただきたいと思うわけであります。
  185. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 これは同時に、私どもがなぜこれらの二そうの船を不審船と判定したかということにもつながるわけでありますが、今申したとおり、漁船を装いながら漁具は一切持っていない、それから今委員から御指摘があったように大変高度な情報を収集できるアンテナ等の設備を有しておった、それから国旗も標識も掲げていない。そういう意味ではかなり不審の要素に満ち満ちておりましたので、私どもはその結果に基づいて海上保安庁に連絡をした、こういう次第です。
  186. 安倍晋三

    ○安倍(晋)委員 また、今回のオペレーションにおいて、何隻かの自衛艦、あるいはP3C初めE2Cを含めて何機かの飛行機が参加をしていたんだろうと思うわけでありますが、こうした自衛艦あるいは飛行機につきましては、これは納税者の納税による多額の出費によって、我が国の安全保障のために四兆九千億円の防衛費を出費しているわけでありますが、そうした自衛隊機能がどのように今回機能したのかということもやはりちゃんと情報公開をすることによって国民の安全保障に対する認識も高まってくるのだろう、私はこういうふうに思うわけであります。  今回のオペレーションに出動した艦船あるいは航空機がどういうものであったのか、またどういう活動をしたのかということをここで教えていただきたいと思います。
  187. 柳澤協二

    ○柳澤政府委員 申し上げますと、まず護衛艦でございますが、護衛艦は「はるな」、これはヘリコプターを三機搭載しておるタイプの護衛艦でございますが、これが先ほど大臣が申し上げた中の第一大西丸を追尾して、所要の警告射撃等を実施いたしております。  それから、護衛艦の、イージス艦でございますが、「みょうこう」は、もう一つの方の第二大和丸に対応いたしまして、追尾をしております。  そのほか、P3Cが、これは最大時で四機ないし五機であったと思いますが、所要の警告を行ったり、あるいは周辺の捜索を行うということもやっておりましたし、先ほど先生がお触れになりました航空自衛隊のE2Cも空から警戒監視をしておるという状況で動いておったわけであります。
  188. 安倍晋三

    ○安倍(晋)委員 また、今回の活動には、当初の段階でイージス艦の「みょうこう」も参加をしているわけですね。ですから、そういう意味では我が自衛隊の最新鋭の航空機あるいは船舶が出動をしたんだろう、こういうふうに思います。  また、冒頭私が申し上げましたように、運輸省の決断あるいは防衛庁の決断、そしてまた総理の決断も極めて迅速であり、間違いがなかったんだろう、私はこういうふうに思うわけであります。  しかしながら、結果としては、この二隻の不審船が逃れてしまったということであります。特にイージス艦は千二百五十億もする船であります。そうした高価な船を多数動員してもこの漁船改良型の不審船が逃げおおせてしまったということは、やはり私ども深刻な反省をしなければいけないんだろうし、ここはやはり、幾ら自衛隊の皆さんに頑張ってくれと言ってもしようがない問題であります。また、幾ら予算を投下してもこれはしようがない問題であって、こうした事案が発生して、次は確実にちゃんとしっかりと臨検を行うことができるという態勢を組むためには、これはもう一度法律が今のままでいいのかということも検討をしていかなければいけないんだろうということを指摘して、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  189. 二見伸明

    二見委員長 次に、前原誠司君。
  190. 前原誠司

    ○前原委員 民主党の前原でございます。  まず、きのうから起こった連続の出来事の中で、野呂田防衛庁長官初め防衛庁、また外務省、あるいは海上保安庁の皆さん方を初め、関係された方々は、余り寝てもいられないと思いますけれども、その御労苦に対しては心から敬意を表したいと思います。  まず、我が党の見解だけ少し述べさせていただきたいと思いますが、   今回の事件は明確な領海侵犯であり、わが国の主権の重大な侵害に当たる。不審船舶の所属国に対して厳重に抗議すると共に、侵犯者等の身柄引き渡しと謝罪を求める。   事件を未然に防げなかったことは遺憾であるが、今回の事件に対する政府対応は、現行法に基づく概ね自制されたものと理解する。自衛隊法第八十二条の「海上における警備行動」を発動したこともやむを得ない。   一方、今回の不審船事件は、情報収集・警戒監視や拿捕能力等の面で課題を残したと言える。今後、平時の警戒・哨戒活動のあり方等について国会の場で真剣かつ冷静な議論を進めていきたい。 これが我が党の幹事長談話でございます。  さて、質問をさせていただきたいと思いますが、まず、今回の事件というのが本当に特別なことであったのかどうなのかという根本的なところからやはり議論をしていかなきゃいけないと思っています。  私が思うのに、中国を中心とする難民がやみに紛れて日本国内に知らぬ間に入っていることもありますし、また不法入国など、あるいは日本人の拉致事件の問題など、かなり以前からこういう問題というのは指摘をされてきました。つまり、今回の事件というのはそれほど特別な事件ではなかったんではないかということを思わざるを得ないわけであります。  そこで、お尋ねをしたいわけでございますが、領海侵犯等の不審船が把握をできているだけで年間どれぐらいあるのか、その件数について、事務局で結構ですから、お答えをいただきたいと思います。
  191. 楠木行雄

    ○楠木政府委員 お答えいたします。  私ども、沿岸哨戒ということで、今先生おっしゃいましたような不法入国とかそういった問題に対応するために、沖合に出て、そして船が哨戒をする、こういう体制をとっておるわけでございますが、不審船と申しましても、全く国籍も何もわからない、こういうようなものをちらりと見るとかあるいは追跡するとか、そういうケースはそう多くはございません。  これまで、海上保安庁、五十年ちょっとの歴史がございますが、その中で、確認した不審船と言われるものは十八隻でございます。しかも、平成二年が最後で、平成三年以降は確認をしていない。そして、ちらりと見たというのではなくて相当追跡をした、こういう事例になりますと、昭和六十年に宮崎沖で発見された不審船を私ども海上保安庁の巡視船艇あるいは航空機により追跡した事例がございます。それ以来ないわけでございます。
  192. 前原誠司

    ○前原委員 私は、この数というのは海上保安庁で確認をされた数であって、実際問題というのはかなり多いんだろうというふうに思います。  今まさしく保安庁がおっしゃったように、パトロールの仕方というのが、排水量は海上自衛隊とほぼ同じだからと言いますけれども、しかし、海上に出ていわゆるパトロールをする中で捜したものについては追跡をする、こういう極めて古典的と言えば語弊があるのかもしれませんけれども、クラシカルなやり方でやっているわけですね。しかも、今回もそうでありますけれども、これは海上自衛隊のP3Cが発見をして、護衛艦が追跡をする中で海上保安庁に言ってみれば通報するということで、海上自衛隊の能力というものがこの不審船の発見に役立ったということであります。  海上保安庁にお尋ねをしたいわけでありますが、今おっしゃったようなことも含めて、私は、パトロールの仕方あるいは海上保安庁の持っている能力、皆さん方が一生懸命やられているということを否定するものではありません。つまり、能力という意味で、この海に囲まれた日本を本当に一匹のアリも通さずにしっかりと哨戒する、監視活動するということが可能と思っておられるのかどうなのか、その点についてお答えをいただきたいと思います。
  193. 楠木行雄

    ○楠木政府委員 先生おっしゃいました点で私ども非常に重視しておりますのは、やはり各省庁との連携ということかと思います。この間、漁船の事故なんかもございましたときも、防衛庁の方に海難のために出ていただくということもやりましたし、それから、不法入国につきましては警察とか入管とかそういったところとの連携をとって、あるいは、漁業取り締まりにおきますと水産庁、これも船を持っておられます、こういった面で、いろいろなところで多角的なこういう連携をしようということでございます。  それから、確かに海は広いわけでございますが、私ども虞犯海域と言っておりますけれども、そういう犯罪が行われるおそれが非常に強いのが不法入国なりあるいは武器、薬物等の密輸等にはやはりあるわけでございまして、そういったところを傾向を見ながらやっている、私どもとしては精いっぱいこれでやっておる。そして、海上保安庁全体でいいますと五百十数隻の船がございます。その中でいわゆる取り締まりに使いますのは、航路標識とか水路の測量とかそういうものを除きまして、三百五十数隻というようなことでございまして、こういったものをフルに使って機動的にやっておる、こういった現状でございます。
  194. 前原誠司

    ○前原委員 今まさしくおっしゃったように、他省庁との連携なくしては、日本の海に囲まれている国土の特性からいっても、不審船のすべての網羅というのはなかなか難しいと思います。  さて、先ほど防衛庁長官が、報告をしていただいたときに、警戒監視活動ということをおっしゃいました。警戒監視活動をしているときに不審船を発見したとおっしゃいました。どの法律に基づいて警戒監視活動をされていたんでありましょうか。
  195. 柳澤協二

    ○柳澤政府委員 私どもは、防衛庁設置法の六条十一号にございます調査研究ということで情報収集活動を行っております。
  196. 前原誠司

    ○前原委員 これは防衛庁長官にぜひともお答えをいただきたいんですが、警戒監視活動を行っているということが、防衛庁設置法の六条の調査研究というところにその法的根拠があるわけでありますけれども、これは私は少々無理があるんじゃないかと思うわけです。むしろ自衛隊法にやはりそういう根拠を求めるべきではないのかというふうに思いますが、防衛庁長官、雑感で結構でございますので、お答えをいただけますでしょうか。
  197. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 今委員から御指摘いただきましたとおり、海上警備行動発令前の情報収集は、防衛庁設置法の六条の十一号で、今局長から答弁したとおり、所掌事務の遂行に必要な調査及び研究に関することとして実施しているものであります。そして、海上警備行動発令後の措置は、自衛隊法の八十二条に基づいて実施するものであります。  この海上警備発令前の情報収集は設置法よりも自衛隊法で明記すべきじゃないかという御意見でございますが、前にも何度かそういう御指摘をいただいた質問がございます。こういう点につきましても、私どもも少し検討してみたいな、こう思っております。
  198. 前原誠司

    ○前原委員 私は、やはりこの防衛庁設置法の六条の十一という調査研究でなくて、警戒監視ということを、これは大臣しっかり御答弁されたわけで、今おっしゃったように、やはり自衛隊法の根拠というものをしっかり求める、検討したいとおっしゃいましたけれども、ぜひそれは、これは国会の責任でございますけれども、我々もしっかり検討する中で、そういうものをしっかり持つべきだということも私からもお話をさせていただきたいと思います。  それから、各省庁との関連ということを先ほど海上保安庁がおっしゃいましたけれども、やはりパトロールの方法ということで、海に囲まれた特性を考えれば、自衛隊の持っているP3CとかあるいはE2C、あるいはAWACSもそうかもしれませんが、私は非常に高い能力を発揮すると思うんですね。そういう今持っているものの活用という点から考えると、やはり平素の協力、もちろん一義的には海上保安庁がやられるということだと思いますし、私もそうあるべきだと思いますけれども、そういうことについての協力というものについて、防衛庁長官、これからどうあるべきか、どうしたいとお考えなのか、所感で結構でございますので、お答えいただきたいと思います。
  199. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 先ほども申し上げたところでありますが、我が庁と海上保安庁との連絡は平素からかなり緊密に行われていると私は考えております。  大変残念なことでありましたが、今度の不審船はまことにくせ者でございまして、最初八ノットぐらいしか能力がないように見せておりまして、それがどんどん、十二とか十八とか二十とか二十六とか、ついには三十五ノットを超えるという、まことに高機能を備えたものであった。そこで、海上保安庁が大変に頑張っていただいたわけですが、とてもその能力に海上保安庁の舟艇がついていけなかった。そこで、対応できるものとして海上自衛隊協力してほしい、こういうことになってきたわけで、私どもも、実はこういったものについてふだんから海上保安庁と緊密に連絡をとり合ってやっているわけですから、これを引き受けまして行動に当たったということでありまして、委員指摘のとおり、これからもひとつ十分な連絡調整を図ってそれぞれの効果を上げていかなければいけない、こう思っております。
  200. 前原誠司

    ○前原委員 そのためにも、先ほど決意を示された、法的な根拠が私は必要だと思いますので、ぜひとも政府部内でも、各省庁との連関をしっかりとりながらそういう立法作業というものを国会を含めてやっていかなければいけないということを、再度私からも申し上げたいと思います。  さて、次の質問に移りますが、これは国民みんなが素朴に思っていることだと思うんですけれども、捕まえなかったんですか、それとも捕まえることができなかったんですか、どちらですか。
  201. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 これは、捕まえることができなかったんであります。  実は、第一大西丸の方は、途中で、エンジンのトラブルが起こったか何かわかりませんが、二十二分ほど停船したことがありまして、そのときに、海上自衛隊の船舶が、「はるな」がこの不審船の前についたわけでありますけれども、二十二分後にはエンジンが回復して逃げ去った、こういう事態もありました。  しかし、どんなに呼びかけても検査に応じないし、感じとしてはいろいろな装備を備えている可能性が非常に高かったものですから、我々としては、それに対して武力を行使するという何物も持たないわけでありますので、残念ながら逃げられてしまったというのが現状で、それは先ほど安倍委員からも御指摘があったとおり、これが現在における自衛隊の限度じゃないかな。残念ながらそう言わざるを得ないと思っております。
  202. 前原誠司

    ○前原委員 捕まえなかったのではなくて、捕まえることができなかった、こういうことでございます。  私は、先ほどの答弁の中で、一つ事実関係が違うのじゃないかと思ったことがございます。  それは、今、まさしく武力の行使とおっしゃいましたけれども、武力の行使というのはできないわけです。つまり、いわゆる自衛権発動の三要素というものがなければ武力の行使というのはできないわけでありまして、しかし、武器使用というのが果たして全くできなかったのかどうなのかということは、私は議論の余地のあるところだと思っています。  八十二条を読んでみますと、海上警備活動というものが行える。そのときに、九十三条、つまり海上における警備行動時の権限というものが新たな項目で付与されています。これが自衛隊法の第九十三条でありますけれども、その中に「警察官職務執行法第七条の規定は、第八十二条の規定により行動を命ぜられた自衛隊自衛官の職務の執行について準用する。」ということで、この八十二条から、自衛隊法の九十三条、そして、いわゆる警職法の七条というものに権限が及んでいるわけであります。  警職法の第七条を読みますと、「警察官は、犯人の逮捕若しくは逃走の防止、自己若しくは他人に対する防護又は公務執行に対する抵抗の抑止のため必要であると認める相当な理由のある場合においては、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度において、武器を使用することができる。」こういうことなんですね。つまり、先ほど大臣が御答弁された、発砲されないと発砲することはできないということは、法的にはないわけです。  つまり、八十二条が自衛隊法の九十三条といういわゆる権限規定を決めていて、その九十三条の中には、いわゆる警職法の準用ということで、七条、武器の使用、これは逃亡を阻止するために武器使用ができると考えているわけです。  だから、武力の行使をしろとは私も言っておりません。武器使用はできると言ったのにしなかったのはなぜかということを御答弁いただきたいと思います。
  203. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 実は、ゆうべは一睡もしていないものですから、少し頭がぼけているのではないかと思いますが、私も、武器の使用と言うべきところを、武力の行使とつい言ったように思いますが、正しくは、今委員指摘のとおり、武器の使用でございます。  自衛隊が今回は大変警告射撃を行ったことはさっき言ったとおりでありまして、これは九十三条の二項で準用される海上保安庁法第十七条の規定に基づき、立入検査を行うため停船命令を出したにもかかわらず、不審船舶がこれを無視したため、自衛隊法九十三条一項において準用される警察官職務執行法七条の公務執行に対する抵抗の抑止のため必要であると認める相当な理由のある場合には、今委員が御指摘のとおり、武器の使用は許されると思います。  今回の事案については、船体に向かって実弾射撃を行い、船体のみならず人にも危害を与えることとなる場合は、正当防衛、緊急避難等の危害許容要件に該当しなければならないといった問題があると判断し、警告射撃等により対処したところであります。
  204. 前原誠司

    ○前原委員 私は、何も撃てばよかったということを殊さら強調するものではありませんけれども、しかし、先ほど議論になったように、要は、日本の領海の中に入っても捕まえられないということがある意味でわかった。先ほど防衛庁長官が、能力的に捕まえることができなかったとおっしゃったわけですね。  しかも、武器の使用はされなかった。海上保安庁法の援用をされましたけれども、私は、これは素直に読んで、なぜ自衛隊法の九十三条の警職法の第七条の準用というところで、いわゆる逃走、逃亡の抑止のために、防止のために武器使用をしなかったのかということがいま一つよくわからない。  つまり、日本は入っていっても武器の使用もしないから入り得だということを他国に示すことになるのではないか。その辺は、私は主権の問題として毅然たる態度をとるべきではないかと思いますけれども、もう一度御答弁いただきたい。
  205. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 そういう見解もあるかもしれません。私どもは警職法七条に基づいて警告射撃にとどめたということであります。
  206. 前原誠司

    ○前原委員 済みません、今後のこともありますのでしつこく聞かせていただきますけれども、防衛局長、今の大臣の御答弁はそのとおりだとおっしゃると思うんですが、全く武器の使用は警告射撃以外にできなかったんですか、きのうの場合を想定して。その点をちょっと明確にお答えいただきたい。
  207. 佐藤謙一郎

    佐藤(謙)政府委員 法律の仕組みから申しますと、今先生の御議論、またそれに対します防衛庁長官の御答弁、そのとおりでございます。  要は、この八十二条の海上警備行動に対しまして九十三条という権限規定が置かれ、その中には第二項で海上保安庁法が引かれ、さらに一項で警職法の七条が引かれ、それで警職法の七条の規定を見ますと、「警察官は、犯人の逮捕若しくは逃走の防止、自己若しくは他人に対する防護又は公務執行に対する抵抗の抑止のため必要であると認める相当な理由のある場合においては、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度において、武器を使用することができる。但し、刑法第三十六条若しくは同法第三十七条に該当する場合」「を除いては、人に危害を与えてはならない。」こういうことでございまして、ちょっと長い引用で恐縮でございましたが、要は警職法七条の規定に従いまして、武器を使用するときに、人に危害を加えるような場合には、今言った正当防衛、緊急避難の場合に限られる、こういうことになっているわけでございます。  きのうの場合、実は自衛艦の持っております砲は五インチ砲でございますので、これで仮に航行に対して何らかの障害を与えるような射撃を行ったといたしまして、五インチ砲というその威力からいたしまして、不測の事態と申しましょうか、人命に危害を加えるような、こういった可能性もなしとしないというような状況でございます。  そうだといたしますと、そういう状況の中で、それに従って武器を使用した場合に、この警職法七条の危害許容要件、これに反する結果になる、こういう要素もございます。  それからまた、これはあるいは海上保安庁の方から御答弁いただいた方がいいのかもしれませんけれども、そもそもその八十二条の権限といいますのは、私ども、八十二条が発動された場合、いわば海上保安庁と同じような立場に置かれる、こういう規定でございます。  それで、この八十二条の対象にいたします事態は、第一義的には警察機関たる海上保安庁が対応されるわけでございまして、いわばそういう立場といいましょうか、そういうものを我々としても引き継いで対応するわけでございますから、海上保安庁としての対応が、先ほどございましたような、要するに漁業法の違反ということに基づく対応でございますし、またそれに対して警告射撃にとどまっている、こういう対応でもございます。  そういうものをいろいろ勘案いたしまして、今回の場合には、今申しましたような警告射撃にとどめたということでございます。
  208. 前原誠司

    ○前原委員 しつこくお聞きをさらにいたしますけれども、これは戦後初めてというか、この自衛隊法ができてから初めて使われた八十二条でございますので、この辺はしっかりと御答弁をしていただかなきゃいけないと私は思いますので、ちょっとしつこく聞かせていただきます。  ということは、防衛局長、五インチ砲しかきのうはなかった、それで、威力がそれについては大き過ぎて、人命に対しての危惧、人命に被害が及ぶ可能性があったということで使わなかったということでありますが、では、もうちょっと火力の弱いものであった場合には、警告射撃だけではなくて、法的に――その状況を総合的に、トータルに判断されると思うのですが、発砲というのはできたのかできなかったのか。その点でもしっかり言っておいてもらわないと、これからの対処にかかわってくる問題ですから。
  209. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 先ほど私は、警職法の七条で警告射撃に今回はとどめたと言いましたが、これではちょっと答弁が不十分のように思いますので、もう少し正確に御答弁しておきたいと思います。  海上における警備行動を命ぜられた自衛官には、警察官職務執行法七条、これは武器の使用の規定が準用されますが、同条の要件に該当する限りにおいて、船舶の航行を不能にする射撃を実施することは法律的には可能である、こういうふうに思います。  しかしながら、航行を不能にする射撃に伴い、今局長からも答弁したとおり、船体のみならず人にも危害を与えることとなる場合には、正当防衛や緊急避難等の危害許容要件に該当する場合でなければいけない、こういうふうに解釈しておりますので、今局長答弁したようなことになったのだと思います。
  210. 前原誠司

    ○前原委員 最後です。  先ほど安倍委員答弁された、発砲されなかったから発砲しなかったというのは、では、違いますね。間違いですね、答弁は。防衛庁長官
  211. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 今の限りにおいては、法律的には可能だということでありますけれども、私どもは、いたずらにトラブルを起こしてこの問題を処理するということは正しくないと思いましたから、説得を続けて、警告射撃をして、根気よく粘った、しかし、ついにそれは相手の聞き届けるところではなかった。こういう点で、こういう今回の経験則を踏まえて、私どもも、こういう場合にどうしたら一番実効性が上がるかという点については、大いに反省と検討をしなければいけないところだ、こういうふうに思っております。
  212. 前原誠司

    ○前原委員 先ほどから、自衛隊法の九十三条に基づいて、海上保安庁法の第十六条、十七条の一項、十八条ということで、船舶検査を行うことができる、三等海曹以上の自衛官の職務執行について準用するということでございます。  これは運用局長で結構なんですが、初めて海上警備行動というものが実施をされたのですけれども、もし停船をして海上自衛隊員がこういう活動をするということになったときに、今までこういう訓練をしているのですか。一度もなかったことなのに、船舶検査の訓練をしているのかどうか。訓練していなかったらなかなか難しいと思うのですね。その点、ちょっとお答えいただきたいと思います。
  213. 柳澤協二

    ○柳澤政府委員 いろいろなタイプの訓練はしておりますが、まさにここに絞った訓練というのは、全くないわけではございませんが、それほど十分にできているわけではなかったと思っております。
  214. 前原誠司

    ○前原委員 政務次官がおられますので、最後に政務次官に御質問をさせていただきたいと思います。  まだ不審船二隻の国籍が判明していないということでありますが、判明した時点で、どのようにその国に対しての態度を外交的にとられるのか、そのことについてお伺いをさせていただきたいと思います。
  215. 町村信孝

    ○町村政府委員 まだ北朝鮮と確定をしたわけではございませんので、事態がもう少し判明してからしかるべく考えなければなりませんが、いずれにしても、我が国の法令を犯したということは事実でございますから、当然のことでございますが、その犯人の引き渡し、そして国と国との関係におけるしかるべき謝罪等々の要求は、していくことは当然のことだろうと思っております。
  216. 前原誠司

    ○前原委員 終わります。
  217. 二見伸明

    二見委員長 次に、冨沢篤紘君。
  218. 冨沢篤紘

    ○冨沢委員 防衛庁長官、また自衛隊海上保安庁の皆さん、大変御苦労さまでございます。御努力に心から敬意を表するところでございます。  若干、御報告を伺いまして御質問をさせていただきます。  まず第一に、防衛庁の発表では、二十三日に不審船が日本海にあるという情報が入ってきた、こういうことですが、けさの読売新聞の記事に、新潟県警によると、二十二日の午後、正体不明の不審船が日本海にいる、こういう情報警察庁から受けて、佐渡島を含む沿岸部の警察署に海岸線の警備態勢を強化するよう、また機動隊の一部も動員をしていた、こういう記事が出ているわけでございますが、先ほど警察庁にこの点を確認いたしました。事実のようなんですが、としますと、防衛庁が不審船を発見したのは二十三日、丸々一日情報収集がおくれている。警察庁の方は二十二日に既に掌握をしている、防衛庁の方は一日おくれの二十三日、この点、御説明を願います。
  219. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 防衛庁としては、御指摘の報道のような事実関係については承知をしておりません。  いずれにしろ、きのうの不審船については、通常の我が方の警戒監視活動を実施中の海上自衛隊の航空機P3Cが発見したものであります。  また、警察庁からはそのような連絡は何ら受けておらないところであります。
  220. 内山田邦夫

    ○内山田説明員 御指摘の件につきましては、関係府県警察におきまして、集団密航事件の多発等現下の情勢を踏まえまして、平素、沿岸警備の強化を行ってきております。その一連の警戒措置につきまして、新潟県警察における措置状況が報道されたものと承知しております。
  221. 冨沢篤紘

    ○冨沢委員 警察庁の方で、二十二日午後には既に、不審船が日本海にいるという情報をキャッチしている。当然これは、海上保安庁あるいは防衛庁にも連絡があるはずでありますが、この点いかがですか。
  222. 楠木行雄

    ○楠木政府委員 私たちがこの話を受けましたのは、防衛庁から三月二十三日の十一時ごろ聞いたのが初めてでございます。
  223. 冨沢篤紘

    ○冨沢委員 領海侵犯のこの案件を、警察庁はなぜ海上保安庁、防衛庁に連絡をしなかったんですか。
  224. 内山田邦夫

    ○内山田説明員 御指摘の不審船につきましては、海上自衛隊において発見されたものであると承知しております。  警察では、二十三日十五時十分、内閣官房から警察庁警備課に通報を受けているところであります。
  225. 冨沢篤紘

    ○冨沢委員 私が午後一時過ぎに警察庁の方から受け取った説明では、この記事は間違いがないという確認をしておるんですが、二十二日の午後に警察庁がこの事件を、事案をキャッチしておれば、海上保安庁、防衛庁に連絡すべきは当然だ、当然の仕事だと思いますが、いかがですか。
  226. 内山田邦夫

    ○内山田説明員 初めに御説明いたしましたように、関係府県警察におきましては、平素から沿岸警備の強化ということに取り組んでおります。そういった一連の平素の警戒措置につきまして、新潟県警の措置状況、これが報道されているものと理解しております。
  227. 冨沢篤紘

    ○冨沢委員 自民党の質問で、今回の対応はまことに迅速な対応であった、テポドンの教訓を生かした、政府としては迅速な対応という評価があったんですが、今の議論でおわかりいただいたように、警察庁は既に二十二日の午後にこの情報をキャッチしている、しかし政府が現実に動いたのは二十三日になってから、この点、間違いないことが判明したんですが、防衛庁長官、この点、どうお考えになりますか。
  228. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 先ほどの答弁の繰り返しになりますが、私どもはそのような情報については一切存じておりません。また、警察関係からも一切連絡を受けておりません。
  229. 冨沢篤紘

    ○冨沢委員 省庁間の連絡体制がまことにできていない、このことがはっきりしたわけでございますが、事は領海侵犯という重大な案件でありますので、これは警察庁の方で間違いない対処を今後していかなければいけないんじゃないですか。
  230. 内山田邦夫

    ○内山田説明員 先ほども御答弁いたしましたが、官庁間の連絡ということにつきましては、海上自衛隊における発見ということを受けまして、二十三日十五時過ぎに内閣官房から警察庁の担当課の方に連絡が来たということでございます。
  231. 冨沢篤紘

    ○冨沢委員 確認のためにもう一度質問をします。  としますと、読売新聞の「二十二日午後、正体不明の不審船が日本海にいる」、これは警察庁の記事なんですが、これは間違いですか。
  232. 内山田邦夫

    ○内山田説明員 そういうような事実はございません。
  233. 冨沢篤紘

    ○冨沢委員 話を進めます。  不審船発見をして海上保安庁が追跡をする、引き続いて護衛艦が追跡をする。追いかけられる方も命がけでございますので、当然、追いかけられる方は本国と連絡をとりながら逃走を続ける。これは、連絡をとりながら通信傍受をやっているはずですが、その辺のキャッチは、自衛隊海上保安庁、どんなふうにされておるんですか。
  234. 楠木行雄

    ○楠木政府委員 海上保安庁におきましては、そのような通信については確認しておりません。
  235. 柳澤協二

    ○柳澤政府委員 私どもも、今回のオペレーションの過程でそういったたぐいの情報はとっておりません。
  236. 冨沢篤紘

    ○冨沢委員 これまた不思議なことで、普通、追いかけたり追いかけられたりする場合、当然追いかける方も、自衛隊なら司令官との、司令部との間の連絡をとりながら不審船の追跡をする、追いかけられる方は身に危険が降りかかってくるわけですから、もっと本国との、命令者との連絡をしているはずなんですが、これは全く手がついていないと、海上保安庁も自衛艦も全くそこらの態勢はとれていないということですか。
  237. 柳澤協二

    ○柳澤政府委員 一概に申し上げることは難しいとは思いますが、御指摘のような形の通信なりが恐らくほとんどなかったのではないかなという感も持っておるところでございます。
  238. 冨沢篤紘

    ○冨沢委員 素人が考えてもそんなことは当然やっていることで、訓令側と通信がなかったなんてことは、それはちょっと後生楽な御判断だと思いますよ。  今回の事例で日本は威嚇射撃しかできないということが判明をしたのですが、威嚇射撃というのはなぜ効果があるとお考えになるのですか。
  239. 柳澤協二

    ○柳澤政府委員 まず、停船命令を信号等によって発しまして、さらに警告射撃を私どもは行ったわけでありますけれども、これは五インチ砲あるいはP3Cからの対潜水艦用の爆弾を投下したわけでありますが、物によりまして相当の距離をそれぞれとっております。ですから、これはもちろん、直接相手に被害を与えるということよりは、停船を命じられているということを認識させるという、そういう効果をねらったものであると思います。
  240. 冨沢篤紘

    ○冨沢委員 報告によれば、P3Cからも艦船からも威嚇射撃をやった、しかし不審船は逃走を続けた、当たり前のことなんですよ。威嚇射撃というのは、その後撃つぞと、撃つぞという強い意思があるから、本番の前のマスターベーションみたいなもので、次に必ず撃つぞということがあるから威嚇になるわけで、日本の威嚇射撃というのは威嚇するだけ、相手も知っているわけです。こんなものが威嚇になりますか。
  241. 柳澤協二

    ○柳澤政府委員 いわゆる直接の威嚇によって強制するという効果よりは、自分が停船を命ぜられているという立場を十分認識させるという効果をねらっているものであります。
  242. 冨沢篤紘

    ○冨沢委員 威嚇射撃をやるのならば、当然、効果のある威嚇射撃にしなければ意味がないじゃないですか。相手はこれしかやらない、威嚇だけのことだ、船には弾は撃ち込めない、そういう日本の護衛艦だということは知っている、そんなことで威嚇射撃になりますか。この点、防衛庁長官、どうお考えになります。
  243. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 今回の事案につきましては、船体に向かって実弾射撃を行い、船体のみならず人にも危害を与えることとなる場合には、先ほども申したとおり、正当防衛とか緊急避難等の危害許容要件に該当しなければならないといった問題があると判断しております。したがって、その要件に沿って警告射撃等により対処することとしたわけであります。  その結果、委員指摘のとおり、二そうの不審船舶に対しては、停船させ、立入検査を行うことはできませんでしたが、船舶の損壊や人命を損ねることなく、海上警備行動を発動させることにより、我が国の不審船対処に係る断固たる意思を示すことはできたと思っております。当該不審船舶を我が国の領域のはるか遠くに放逐することができたため、海上における治安維持という目的はとりあえず達せられたのではないか、私どもはそう考えております。
  244. 冨沢篤紘

    ○冨沢委員 目的は、領海を侵犯した船を拿捕するとか、日本へ曳航してそれがどこの国であるかを明確にすることにあるんです。そのための海上保安庁の仕事であり、あるいは自衛官の仕事であるはず、私はそう解釈をしております。  昨年の十二月に、韓国は、領海を侵犯された潜水艇を撃沈しました、記憶に新しいところでありますが。その後、百五十メートル海底から潜水艇を引き揚げて、これが北朝鮮の船であるということが証明をされたようでございます。  今回、どこの国という特定は政府はされませんが、逃げていった方向が北朝鮮の方向だということでおおよそ推測はつくところでありますが、紛れもない外国船の日本領海侵犯、この追跡ドラマ、まことにお粗末なものであったと私は断ぜざるを得ないと思います。  海上保安庁も自衛隊も、深夜まで御努力はされた。しかし、大山鳴動してネズミ一匹捕まらない。拿捕はできない、船の正体もわからない、これは主権国家として恥ですよ。主権国家の体をなしているか。年間、我々は五兆円もの税金を国防に使っている。これが、船二隻捕まえられないような海上保安庁、防衛庁じゃいけないんじゃありませんか。  申し上げましたように、追いかけながら、相手の船の通信の傍受もしていない、威嚇射撃も全く効果のない威嚇射撃、こういうのがきちっとされて初めて、私は、国防というものが成り立つと思うんです。防衛庁長官、いかがでございますか。
  245. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 今回の問題については、委員のような御見解もあるいは我々としては受けなければいけない要素もあるのかなと思います。  しかし、戦後四十五年間、自衛隊ができてから今回初めて海上警備行動が発令されたという、これはかなり私どもとしては、これまでしなかったことをかなり毅然として結論を出したというふうに考えております。そういう面では、総理も大変な、迅速な決断をしていただいたものと思っております。  そのことによりまして、これまでの不審船は、いわば、日本の領海に入っても海上保安庁という役所がこういう事態に対処するということになっていたものが、今度は自衛隊が毅然として出てきたという点においては、これは相当な、今後、不審船に対する抑止効果が出たんじゃないかと私は思います。  現にそれは、エンジンが焼けるほど向こうは慌てふためいて逃亡して歩いたわけですから、そういう意味での効果は、これは今後、日本へうかつに入っていけば、今度は自衛隊が出てきて、海上保安庁よりは相当性能のいいものをもってこれから対処されるようなことになるという、私はそういう心理的効果は非常に大きかった、こう思っております。  ただ、このことで万全だとは私どもも思っておりませんで、先ほどもある質問お答えいたしましたが、こういう事態を迎えて、どういうふうに対処することが一番効率的で、効果を発揮し得るかという点については、十分な反省と検討を加えなければいけない、こう思っておるところでございます。
  246. 冨沢篤紘

    ○冨沢委員 時間なので終了いたします。ありがとうございました。
  247. 二見伸明

    二見委員長 次に、西村眞悟君。
  248. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 自由党は、長官の警備行動の命令を強く支持するものでございます。しかしながら、朝から事態の御報告を受けまして、腹に据えかねることが沸々と抑えることができない、このように思う根拠を今から申し上げて、将来の法改正に資するために質問させていただく。  まず、この船の確保は、我が国国益上、また国家と国民の安全上極めて重要なものでございました。なぜなら、拉致された日本人はこのような船に運ばれたものでありますし、この船を確保して、あの原発地帯に工作員が上がったのか否か、これを確認せねばならなかった事態でございました。新幹線の犬くぎが抜かれる、また送電線の鉄塔が倒される、我が国国内でこのようなことが起こって、我々はまだ、この犯人とその組織を突きとめることができない事態におるわけでございます。それゆえ、先ほどからの御答弁で、この船を取り逃がした、この船を停船させて検査することができなかった、それは不可能であったと簡単に言っていただいては困るわけでございます。  私は、角度を変えて、防衛庁長官の部下の部隊に対する命令という観点から、また海上保安庁においては、犯罪を現認した保安庁の任務は、犯人を確保し、船は犯罪の用に供した物件として没収する責務があるという観点から御質問します。  まず、防衛庁に御質問ですが、防衛庁長官は、部下の部隊に当該不審船に対する停船、立入検査等必要な措置を行うことを命令したんです。したがって、このことがなされていないということは、長官の部下は命令違反をしたんです。命令違反をしなければならないような命令だったら、出す必要はないんです。しかし、先ほどからの御答弁を聞いておりますと、長官は、停船の命令を出したにもかかわらず、停船さすことは不可能だったと御答弁された。これは、指揮官としての見識を問われる問題でございます。  なぜなら、先ほど来問題になっております武器使用に関しては、船を撃破して停船さすことが現在の法体系でも可能でございます。密入国者は三年以下の懲役なんです。先ほど来申し上げております、外国の不審船が日本の領海内にあるということは、日本において内乱の予備をしているのか、外患誘致の予備をしているのか、騒擾の予備をしているのか、原発攻撃の予備をしているのか、これはすべて警職法七条で言う重大な犯罪に当たる。密入国自体でも、追跡してその者の足を撃ってもいいんです。したがって、その船を攻撃することができたわけです。この点について、私は、痛恨の思いを持って御報告を聞きました。  長官は、部隊に対して不審船に対する命令、立入検査等行うよう命令したのであります。軍隊というものは命令を完遂するものであります。しかし、この命令は実現できなかった。長官の御答弁によると、その命令の実現は不可能であった。不可能なことを自分が命令したんだとおっしゃっているとしか思えない。この点について、お疲れの長官でございますが、どう思われておられるか。  長官の御答弁は、武器使用に関して、いささか警職法七条の要件と違うことを言われている、そう申し上げておりますが、いかがでございますか。
  249. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 防衛庁としては、今般の不審船舶対処について、自衛隊創設以来初めての海上警備行動を発動した。海上における治安維持のため、二そうの不審船舶に対し停船命令や警告射撃を行うなど、私は、隊員のみんなが全力を尽くして、この許された法律の範囲内ではこれ以上なし得ないほどの汗を流していただいたと思って感謝をしております。  我が国が追尾を中止することのやむなきに至った事由について申し上げますと、不審船舶は停船命令等を全く無視し、我が国の防空識別圏を越えて逃走したので、これ以上の追跡は相手国を刺激し危険な事態を拡大するおそれがあると判断したため、私は追跡することを中止させたのであります。  このようなことでありますから、二そうの不審船舶に対しては停船させ立入検査を行うことはできなかったけれども、海上警備行動を発動させることにより、我が国の不審船対処に係る断固たる意思を示すとともに、この不審船舶を我が国の領域のはるか遠くに放逐することができた。そういう意味では、海上における治安維持等目的はとりあえず達成されたものと考えております。命令違反に当たるとの御指摘は当たらないものであるということをぜひ御理解いただきたいと思います。  いずれにせよ、防衛庁としても、このような事態に際して、より適切な対応を期するため、自衛隊としての対応あり方について、今回の経験を十分踏まえまして、今後ともさらなる検討を行う必要がある。その点については、委員の御指摘を謙虚に承っておきたいと思います。
  250. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 私は、初めての警備行動の下命であるからこそ、その命令は完遂されねばならなかった、このように認識しております。  初め、十ノット。後、脱兎のごとく三十五ノットから四十ノット近く。これは何を意味しているか。我が国の意思を威力偵察しておるんだ。そして、我が国は撃てないと。長官が御答弁されたことが、そして現実にそのようにしたことが、かの国のノウハウとして、我が国に入ってきても黙って無視して航行して、中間線を越えればいいんだと。平気で入ってくる事態になりかねない。抑止力が反対に作用したという危険性もある。  したがって、我々は、国会において、長官にこれ以上の御苦労をかけないように、立法の整備をしなければならない、このように思います。  さて、保安庁ですが、これは一体何をしておるのか。午前十一時ごろ、自衛隊から通報を受けて、出動は十二時三十分。一時間半、出動していない。第二大和丸に対しては、十八時ごろ接近した。停船命令は十三時。それより五時間前に出しておった。接近して、威嚇射撃まで二時間から三時間。威嚇射撃して、それが終わって六分後に燃料が足らなくなって現場を離脱。一体、停船命令を出してから威嚇射撃するまでの間、何をしておったのか。この点先ほどの質問にもありましたように、威嚇射撃をする以上は、それを聞かなければやるぞ、これが海上保安庁の任務である。なぜ、舷と舷が当たるまで接近して、威嚇射撃をして、そして目的を、任務を完遂しなかったのか。また、燃料不足になって、そして自衛隊海上警備の要請をするまで三時間半、何をしておったのか。これで我が国領海の任務を保安庁が担う能力があるのかないのか、意思があるのかないのか。尖閣においては、外国船にいたずらに航行されても何もしない。国民を拉致する国に関しては、犯罪を現認しているにもかかわらず、何をしておったのかということですよ。これで任務が遂行されるのか。任務を放棄したのじゃないか。防衛庁と同じように、この船を停船させて、船体を没収することが不可能だったのかどうか、これを御答弁いただきたい。
  251. 楠木行雄

    ○楠木政府委員 お答えいたします。  幾つかの節目があるかと思いますが、先生御指摘のように、二十三日の十一時ごろに、私ども、防衛庁の方から不審な船舶に関する情報を入手いたしましたが、直ちに、当該船舶に関する情報収集ということで、その船の特定等がございましたので、こういったことに当たるとともに、巡視船艇及び航空機の出動を指示したわけでございます。  それから、その後も、当該船舶に会合いたしました航空機から停船命令を出し、また、後から会合いたしました巡視船艇からも停船命令を発するということで、各船艇基地から巡視船艇が出ますものですから、そこら辺の若干の時間を要したわけでございますが、しかし、当該不審船は逃走を続けた。  二十時以降、二隻の不審船に対して、これは実は昭和二十八年以来やっていない威嚇射撃というのを行うまでの停船措置を講じたわけでございますが、その船舶が非常に我が巡視船艇の速力を超える高速で逃走した。我々の方もいろいろ準備があったわけでございます。そういう意味で、当庁の巡視船艇による捕捉ができなくなったわけでございます。  また、高速の巡視艇が燃料不足になったわけでございますが、大型の巡視船の方はついていった、このような形で対応いたしました。  結果的に、海上保安庁は、今回の不審船対応に巡視船艇十五隻、航空機十二機を投入しておるわけでございます。そして、結果として、不審船を捕捉できなかったことは大変残念でございますが、私どもとしては、とり得る可能な限りの措置を講じたところでございます。  ただ、先生御指摘のような点は、私ども、それは反省しないといけない点もあるかと思います。今回の事案を教訓として、海上保安庁における沿岸警備体制について、過去の事案なども整理をし、問題点も分析して、現在のマニュアル等に対する検討を実施いたしまして、今後、同種事案に対応できるよう検討していくように考えております。
  252. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 能力がないのなら、自衛隊の方に言ったらよろしいわ。初めから自衛隊が出る体制をつくったらよろしい。  それから、外務省の方にお願いします。  これはもう既にロシアとか韓国とかいろいろ説明されたようですけれども、私としては、恥ずかしいから説明してくれるなと言いたかった。なぜなら、初めての海上警備命令を出して、その命令の内容は停船と立入検査だ、しかし、私のところはできませんでした、保安庁は燃料切れで帰ってきた。何の説明ぞ、恥ずかしいじゃないですか、こんなことは、国際的に。  それからまた、当該不審船が北朝鮮のものであると現時点で断定することはできない、北朝鮮に対しては、我が国領海において不法行為を行った疑いのある船舶が北朝鮮の水域に入る可能性があり、その場合、当該船舶を捕獲し、我が方に引き渡すように申し入れる。人に頼む前に自分でやれと言われたらどうするんですか。恥ずかしい。恥ずかしいという一議員の痛切なる、腹煮えたぎる思いに対してちょっと御答弁いただいて、私の質問を終わります。
  253. 町村信孝

    ○町村政府委員 西村委員のお気持ちはよくわかります。私どもも委員の気持ちを共有するものはございます。  ただ、現実に、それらの国々から一体今どうなっているんですかという照会があったのもまた事実でありましょう。そうしたことに対して、我が国がとろうとしている行動あるいはその意図について先方に誤解が生じないようにきっちり説明をすること、これは国と国との関係において当然のことであって、これは、別に恥ずかしいとか恥ずかしくないとかいう問題とはいささか違う次元のことではなかろうかな、こう思います。
  254. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 これで終わります。
  255. 二見伸明

    二見委員長 次に、佐々木陸海君。
  256. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 日本共産党の佐々木陸海です。  限られた時間ですので、事実関係を中心に質問をさせていただきます。  最初に海上保安庁にお聞きするんですが、海上保安庁は、領海の警備をやっておられて、これは当然第一の仕事なんですが、毎年「海上保安の現況」という白書を発表しておられます。九八年度版によりますと、九年、つまり九七年には、  我が国領海内で操業等の不法行為を行い又は徘徊等の不審な行動をとった外国船舶八百十六隻を確認している。このうち、不法行為船であった五百三隻に対しては、四百七十一隻を警告の上直ちに退去させ、悪質な二十八隻については検挙し、また、不審な行動をとった船舶三百十三隻に対しては、当該行動の中止を要求し、あるいは警告の上退去させるなど必要な措置を講じた。 というふうに述べておられます。毎年こういう発表がございます。それによりますと、この「不審な行動をとった船舶」というのは、九三年が百九十三隻、九四年が百五十九隻、九五年が二百八十七隻、九六年が百八十五隻、九七年が三百十三隻ということになっております。  つまり、「不審な行動をとった船舶」ということでいえば、二日に一遍とか、あるいはもう一年の間に毎日一隻というくらいの割合であるわけですが、先ほどのお話ですと、何かきのうの事態は五十年の歴史で十八隻しかなかった。この関係はどういう関係なんでしょうか、御説明を願いたいと思います。
  257. 楠木行雄

    ○楠木政府委員 先ほど私、不審船の定義ということで申し上げましたが、どこの国の船か結果的にはなかなかわからなかったようなものとしてああいうふうに申し上げておったわけでございまして、今先生が御指摘ありましたのは、例えば密漁に来るような、船そのものははっきりしているんですけれども、怪しげな行動をとっておるもの、そういうようなものについて私どもはそういう情報を持っておるということでございます。
  258. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 そうすると、それらの船についても、退去させたとか警告の上何とかしたというのがあるんですけれども、例えば、追っかけて逃げられたというようなケースは一度もないわけですか。
  259. 楠木行雄

    ○楠木政府委員 例えば、日本の領海に来て漁をしようとしている外国漁船があれば、私どもは、これは警告、退去させるということでそのとおりやっております。
  260. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 きのうのケースが何か特殊なことのように、特別なことを強調されるから、きのうのようなケースは、そういう今までの不審行動をとった船舶に対してはなかったのかということをお聞きしているんです。
  261. 楠木行雄

    ○楠木政府委員 おっしゃるとおりでございます。
  262. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 では次の質問ですが、きのうからきょうにかけての事態ですが、海上保安庁の手に負えなくなったということで、ある時点で海上自衛隊出動を依頼したということだろうと思うんですが、どういう点で手に負えなくなったかということを、先ほどからの議論をお聞きしますと、向こうの逃げ足の方が速くてこちらの足が追いつかない、あるいは、こちらの船の燃料が切れてしまって追いつかなかった、うまくいかなかったという点で手に負えなかったというふうに聞こえるんですが、そういう解釈でよろしいんでしょうか。
  263. 楠木行雄

    ○楠木政府委員 私どもの船舶もやはり警察の船舶でございまして、どれだけその速力があるかというのは余り詳しく申し上げておるものではございませんが、やはり先生おっしゃるように、私どもが追いかけておった巡視船艇の速力が不足をした、あるいは、少し離れた基地から出ていったこともございまして、航続距離の問題から油が切れてしまった、帰りの油も必要であった、そういうようなことで対応が非常に困難であるということを申し上げたということでございます。
  264. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 ちょっともう少し聞いておきたいと思いますけれども、きのうの事態が五十年で十八隻しかなかったというようなケースだということがわかったのは、いつの時点だったんですか。
  265. 楠木行雄

    ○楠木政府委員 基本的には私ども省庁間の連携ということを重視しておりますので、十一時ごろに海上自衛隊の方からこういった状況があるという情報を入手した時点で、そうだな、こう思ったわけでございますが、私どもとして現実に現認をしたといいますか、そういうものは、第二大和丸につきましては、十三時十八分から十三時二十一分の間に現場に到着をいたしました当庁航空機によりまして停船命令を実施した、あるいは第一大西丸については、同じことでございますが、十四時から十四時六分の間に現場に到着をした当庁航空機により停船命令を実施した、この時点でございます。
  266. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 それでは、それに関連してちょっと防衛庁長官にお聞きしますが、先ほどの防衛庁長官の御報告では、P3C機が不審船を発見したのが、一方は午前九時二十五分ころ、もう一方は午前六時四十二分ころ。これを第一義的にこういうものに対処しなきゃならぬ責任を持つ海上保安庁に連絡をしたのが、一方が午前十一時ころ、一方が午後一時ころ。大分タイムラグがあるんですが、この理由は何ですか。一刻も早く連絡をしておけば、海上保安庁としてももっと速い速度のものを回すとか、あるいは燃料をちゃんと積んだものを回すとかいう対応ができたはずだったんじゃないかと思うんですが、いかがですか。
  267. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 九時台に見つけたのは、あくまでもP3Cによって不審だと思って調査をしたわけでございますが、それだけでは国籍も定かじゃないし確認がしっかりとしていないということで、艦船に連絡をして追随させて確認をした、その間に九時台から十一時台までかかったというのが実態であります。  もう一方の方はもっと難しくて、六時四十五分か何か飛行機で見たんですが、それだけでは不審船の実体というのが定かじゃありませんでしたから、これも艦船に追尾をさせて名前等を確認してもらった。照会すると、既に船籍がなかったりしている船であったということが確認されたということで、私どもとしては、これはやはりいろいろ人権等にかかわる問題でありますし、余り確認しないでいたずらに追跡するというようなことはなかなかできないということで、慎重に対処をしてそういう時間がある程度かかっている、こういうふうに御理解いただきたいと思います。
  268. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 通常、P3Cなどが不審な船舶などを発見した場合に、不審なのがいるよということを海上保安庁にすぐ連絡するということはしていないわけですね。
  269. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 その時点で連絡するということはむしろ海上保安庁に迷惑をかけることになりますから、飛行機で確認した上で、自衛隊の艦船でさらに確認して、その上で海上保安庁に連絡をする、こういうふうに、常套的にそういうやり方をしているわけであります。
  270. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 では、次の問題ですが、自衛隊法八十二条の初めての発動ということが先ほどから言われているわけですが、この八十二条の発動の要件については、一九八一年の四月十七日の参議院の安全保障特別委員会で、かなりきっちりした見解防衛庁が述べておられます。当時の夏目防衛庁官房長ですが、これは、前の年にソ連の潜水艦が四隻日本の領海に入ってきたという事件があったということを受けて出されている見解でありますが、それを読みます。  昨年のソ連の潜水艦が領海を侵犯した件については、いま御指摘のように八十二条は当然のことながら出なかったわけでございますけれども、第一義的に、領海侵犯、こういった海上における警察行動については海上保安庁の任務になっております。私どもが自衛隊法八十二条で規定しておりますところの海上における警備活動というのは、先ほど防衛局長がるる述べたように、有事が近くなって、海上における不審船舶によってわが方の海上交通が著しく阻害されるような場合、あるいは海賊的な行為が頻発するようなことがあってわが方の国民の生命、財産を守る必要があるときに、海上保安庁の手に負えなくなるような事態に、内閣総理大臣の命令を受けて出動するというものでございまして、先般の領海侵犯がたまたまあったからといって、すぐさまそういうものが発動されるものでもありません という見解を明確に述べておられるわけです。  つまり、もう一回繰り返しますと、有事が近くなって不審船舶によって我が方の海上交通が著しく阻害されているような場合だとか、海賊的な行為が頻発するようなことがあって我が方の国民の生命財産を守る必要があるときに、海上保安庁の手に負えなくなったような事態がある、そういうときに八十二条が発動されるのだということを明確に述べておられるわけです。  きのうの場合には、手に負えなくなったというのはどういうことかといったら、足が届かないとか油が切れたとかという話でありまして、とてもこういう事態ではないと感じられるのですが、防衛庁長官、この見解と昨日来の行動の関係について説明をしていただきたいと思います。
  271. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 今、委員が挙げられた答弁は、防衛庁見解として正しい見解だと思っております。  海上保安庁におきまして、船足が相手に全く及ばない、あるいは小型船舶ですから燃料がなくなってしまった、こういう事態になりまして、私どもは、この二そうの船舶は大変悪質そのもので、日本治安を大変著しく損ねる事態である、日本の船舶の既に廃船になった名前を使って詐称し、さらに現在別にあります船籍の名前を勝手に使って詐称している、しかも、再三再四こちらが呼びかけをし、威嚇射撃をし、あるいはいろいろな手を尽くしているのにかかわらず、一切無視をして逃走を図るということでありますから、これほど日本の主権を害し治安維持を阻害するものはないという点で私どもはこれを大変重視しているわけでありまして、そういう意味では先ほどの答弁趣旨とかなうものである、こういうふうに考えております。
  272. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 私も、日本の別の漁船の名前をかたったり、あるいは既に廃船になったものの名をかたったりして日本の領海深く入ってきて何やら活動をしている、そして海上保安庁などが出ていっても逃げるだけ、そういう行為は確かにとんでもないけしからぬ行為だと思いますよ。しかし、だからといってここで、防衛庁が前に述べておられた、日本有事が近くなってその不審船舶によって我が方の海上交通が著しく阻害されるような場合、あるいは海賊的な行為が頻発するようなことがあって我が方の国民の生命財産を守る必要があるときにこれは発動されるんだという解釈をきのうのケースに当てはめるのは、私は日本語の解釈として到底国民も納得できるような解釈とは言えないということをはっきりと申し上げておきたいと思います。  それは事実の問題としてはっきりさせておかなければならぬ問題だと思いますので、そのことだけを申し上げて、時間になりましたので、終わります。
  273. 二見伸明

    二見委員長 次に、辻元清美君。
  274. 辻元清美

    辻元委員 社会民主党、社民党の辻元清美です。  まず、今回の日本海におけるいわゆる不審船問題について幾つか確認させていただきたいと思います。  まず、長官にお聞きしたいんですが、今回はどういう根拠で自衛隊法の八十二条を発令する要件が満たされたと認定されたのか、お答えください。
  275. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 ほうっておけば日本の秩序の維持に大変な阻害要件になると判断したからであります。
  276. 辻元清美

    辻元委員 もう少し具体的に、どういう事態を想定されたのでしょうか。お願いします。
  277. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 政府としては、不審船舶発見以来、海上保安庁の航空機及び巡視船艇によりこれを追跡し、まず現場に到着した航空機により停船命令を実施するとともに、さらに追尾した巡視船艇からも再度停船命令を実施しましたが、これに応じなかったことから、巡視船艇により威嚇射撃を実施する等必要な措置を講じたものでありますが、これらに一切耳をかさず、それまで八ノットぐらいの能力しかないと見せかけて、ついには三十五ノットぐらいの速度を出して、日本側の追尾を不可能にするような大変悪質なものでありました。  これを受けまして、政府として検討を行った結果、海上における人命もしくは財産の保護または治安維持のため特別の必要があると判断いたしまして、自衛隊法八十二条に基づき、海上における警備行動をもって対処することとしたところであります。
  278. 辻元清美

    辻元委員 大変悪質なものであるという判断であったとおっしゃいました。  さて、それでは、海上保安庁にお聞きしたいんですが、先ほど、本件のような事例に当たるというようなのは今までで十八隻というような話がありましたが、この中で、最近の事例、どういうものがあったか、ちょっと紹介していただけますか。
  279. 楠木行雄

    ○楠木政府委員 全体の数は、今先生おっしゃるように、海上保安庁創設以来十八隻でございますが、ちらりと確認したものが平成二年が最後で、平成三年以降は確認をしていない。もうちょっとさかのぼって、少し追跡したような事例になりますと、昭和六十年の四月二十五日でございますが、宮崎沖で発見された不審船を海上保安庁の巡視船艇、航空機により追跡した事例がございます。
  280. 辻元清美

    辻元委員 それは一九八五年の四月二十五日に宮崎県の日南市の日向灘での話だと思います。  このときも、日本漁船に偽装した高速艇ということで、このときは、海上保安庁の巡視船がたしか二十三隻、航空機四機、そしてこれは高速船が四十ノットで逃げまして、千キロに及ぶ追尾をしたというふうに承知しているんですが、そのような事態だったのでしょうか。
  281. 楠木行雄

    ○楠木政府委員 多少詳しく申し上げますと、六十年の四月二十五日の午前十時四十分ごろに、宮崎県の水産課から私どもの油津の海上保安部に、県漁業取り締まり船「たかちほ」が、船名第三十一幸栄丸、登録番号OT二―三三一一と表示した十九トン型ハマチ運搬漁船に立入検査を実施しようとしたところ、突然二十二ないし二十三ノットの高速で南下、逃走したとの連絡がございました。同保安部で調査した結果、この第三十一幸栄丸というのはほかにおるということがわかりましたので、おっしゃるように、巡視船艇、航空機を出動させたものでございます。  それで、いろいろ引き継ぎ等をやりまして、この後、多数の巡視船艇による停船命令も発して追跡をいたしましたが、不審船はこれを無視して増減速を繰り返し、最大約四十ノットでございますが、ジグザグに西へ向け航走した。そして、二十七日の午前一時十分ごろに、中国のある海域におきまして、追跡中の巡視船のレーダー映像から消滅をしたというような事案でございます。
  282. 辻元清美

    辻元委員 私の承知するところでは、このときの船も、異常とも言える高速性、そして多種の無線用アンテナと見られるマスト、それから大分県籍の漁船名、登録番号の偽装状況などがあったというふうに承知しているわけなんですね。  さて、それでは、このときはこの八十二条は発令されなかったわけですが、今回は発令された。この違いはどういうことなんでしょうか。
  283. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 私は、大変今回の場合が悪質であったということを挙げることができると思います。漁船を装いながら、漁具も漁網も何にも持っていない。それから、物すごい高度な情報収集のためのアンテナを持っている。これは、つぶさに申し上げるわけにはいきませんが、相当高度な情報収集で、勘ぐれば我が国に対するスパイ行為をやることを想像させる、大変機能の高いものを持っている。それから、とにかく、現存する日本の船の名前を詐称したり、あるいはなくなった船であることを知ってそういう船の名前を詐称したり、私どもにとりましては我慢の限度を超えた大変悪質なものである。  そして、こういうことから見ると、日本の秩序維持という点からも、これは過去の例に比較しても許しがたい行為であるというふうに思って、八十二条の適用をした、こういうふうに考えております。
  284. 辻元清美

    辻元委員 長官は、きのう寝ていらっしゃらなくてお疲れですので、その前の私の発言をちょっと聞き漏らされたかもしれないのですが、この先ほどの事例の前回ですね、それも、今長官がおっしゃいましたような、偽装の名前を使ったり、それからアンテナをいっぱい立てたり、高速船であったということだったのです。しかし、前回は発令していない。今回発令した理由はという問いだったわけですね。  それで、今回が悪質だったという根拠に、私は先ほどからのお話を聞いておりましても、以前の事例を見ますと、今回だけが決定的にこの発令につながる悪質というふうには理解できないわけなんです。その点についての御説明を求めているわけです。
  285. 柳澤協二

    ○柳澤政府委員 前回の事例はまさに八十二条を適用しなかったケースでございますので、具体的な比較はちょっと難しいかとは思いますけれども、要は、海上保安庁だけでは基本的に対応が著しく困難であるか不可能であるというのが一つの要件であると思います。  それで、前回のケースは、そういうケースであれば、海上保安庁も相当な勢力で対応されていたわけでありますし、基本的には、結果論はともかくといたしまして、海上保安庁で対応できるケースであったのだろうというふうに推測いたします。
  286. 辻元清美

    辻元委員 しかし、前回もこの船は、はっきり言って逃しているのですね。そうすると、海上保安庁で前回は対応できて今回はできなかった。それは、速度が遅かったとか、先ほどからも話が出ていますけれども、燃料が足りなかったということがその根拠であるならば、どうも今回は、ここからは私の私見になりますけれども、別の意図を感じざるを得ないと私は言わせていただきたいわけなんですね。  防衛庁長官が先ほど、我慢の限度を超えたとおっしゃったわけですが、これ、八十二条を発令するかどうかというのは、我慢の限度を超えたからとかそういうものではなくて、過去の事例であったり、過去の、先ほどの国会の答弁もありましたが、そういうものをかんがみて判断するものであると私は考えますので、今の、よく長官は私と議論するときは本音の言葉で語っていただきますので、それは非常にうれしいんですけれども、我慢の限度を超えたということをもう少し具体的な事例に照らし合わせていただかないと困ると思いながら、残念ながら、時間が来ちゃったんですね。  私は、今回の発令は過剰反応だったというふうに思います。それは先ほど申し上げましたような根拠です。じゃ何でわざわざ今発令したのかというのは、ちょうどやはりガイドラインの審議が今行われておりますし、何だか政治的な意図があるのではないかというような論評もありますが、私もそういうことを感じざるを得ないというふうに思います。  皆さん首を振ってはりますけれども、そういうふうに私は感じるという私見を申し上げました。  長官、何かございますか。
  287. 野呂田芳成

    野呂田国務大臣 さっき委員の御説明だと、スピードも大変、宮崎の場合の例も速かったというお話ですが、海上保安庁が見失わないで三日間これは追跡したわけであります。だから、当時、海上保安庁の船足で十分対応できたということが私は最大の要件だと思います。今回は、半日ぐらいで猛烈な差をつけられて、これはもうとても海上保安庁じゃ対応できないということが非常にわかりましたから、運輸大臣もそのあたりを考慮して海上自衛隊の要請をしたものだと思います。  私の表現で余り俗っぽい話がありましたら訂正させていただきます。  また、ガイドライン法とこの八十二条の発動とは全く無縁のものであるということを、これは心からひとつ答弁させていただきます。
  288. 辻元清美

    辻元委員 質問を終わります。
  289. 二見伸明

    二見委員長 本日は、緊急にもかかわりませず、委員各位の御協力によりまして濃密な質疑が展開されましたことに心から感謝申し上げたいと思います。  私は、立法府という表現が適当なのかあるいは政治家という表現が適当なのかはちょっと別にいたしまして、今回、本日の質疑の中で数々の重要な問題点が指摘されたと思います。それぞれのお立場で検討する課題であるなというふうに考えております。  異例ではございますけれども、一言感想を述べさせていただきまして、本日の安全保障委員協議会はこれで閉会いたします。     午後六時八分散会