○
大森礼子君 それでは、
委員派遣につきまして御
報告申し上げます。
去る十月十九日から二十一日までの三日間、司法行政及び
法務行政に関する実情
調査のために長崎県及び熊本県を訪れました。
派遣委員は、
荒木委員長、
石渡理事、大野
理事、円
理事、
橋本委員、
福島委員、松岡
委員及び私、
大森の計八名でございます。
まず、長崎県におきましては、入国者収容所大村入国管理センター、長崎税関、長崎地方海難
審判庁及び長崎海上保安部から概況について説明を聞き、あわせて実情を視察いたしました。
入国者収容所大村入国管理センターは、収容定員八百名、敷地面積五万三千百十平方メートル、鉄骨四階建ての国内最大の収容施設であり、
平成八年に建てられたというだけあって、テレビ監視、放送設備あるいは診療室、レントゲン室等の近代的な設備を持っております。
同センターは、現在、主として中国人及びベトナム人の集団不法入国者四百十四名を収容しており、これらの者の集団送還を行っております。同センターにおいては、中国人及びベトナム人との間において、言語、風俗習慣、生活様式の違いにより、また同じ中国人であっても出身地ごとにグループをつくるなどして、あるいは本邦での一獲千金の望みを絶たれた失望感などから対立、けんか等が絶えないなど、処遇に困難を伴っているということでありました。
税関では、通関
手続、関税の徴収などの業務を行っておりますが、
法務委員会の所管の関係から申しますと、覚せい剤や銃器等のいわゆる
社会悪物品の密輸などの取り締まりが非常に重要であります。長崎税関では、これらの
社会悪物品をまさに水際で阻止すべく御努力されている職員皆様方のお仕事の一端をかいま見ることができました。
海難
審判庁では、海難
審判という準司法
手続を通じて、海難の原因を明らかにするとともに、その発生防止に寄与しております。長崎地方海難
審判庁の管轄区域は、長崎—熊本間の海岸線が非常に入り組んでおり、その総延長も四千キロメートルと長い上に、多数の離島航路があり、さらには漁業が活発であるため漁船が多いなどといった特徴があります。今回の
委員派遣では、実際に行われている海難
審判を傍聴させていただくという
機会も得まして、専門的知見を活用して海難の発生防止に取り組んでおられる現場を拝見することができました。
長崎海上保安部は、集団密航事犯あるいは銃器・薬物事犯の取り締まり、さらには船舶
交通の安全
確保といった業務を行っております。特に、同保安部は第七管区海上保安本部に所属しておりますが、同管区は、東シナ海、対馬海峡を隔てて隣国と間近に接していることもあり、集団密航事犯が頻発しており、これに対処すべく命がけの取り締まりが続けられております。また、集団密航の手口も、隠し部屋を設けて密航者をかくまうなど、ますます巧妙かつ大胆になっているということであり、巡視船艇などによる監視・警戒態勢を強化して警備を実施しているということであります。
次に、熊本県におきましては、熊本
家庭裁判所及び熊本刑務所からそれぞれ概況について説明を聞くとともに、熊本
家庭裁判所におきましては、
少年事件について所長及び
家庭裁判所調査官から御意見を伺い、熊本刑務所におきましては、庁舎及び刑務作業等の実情を視察いたしました。
熊本における
少年事件は全国とほぼ同様の
傾向を示しております。
少年事件のうち道路
交通保護
事件は
減少傾向にあり、
平成七年と
平成九年とを比較しますと一・九%減であります。これに対して一般保護
事件については微増
傾向にあり、同様の比較では八・九%増の三千二百七十五名であります。
平成九年に終局した一般保護
事件で申しますと、その種別では窃盗が圧倒的に多く、四八・〇%を占め、次いで業務上過失致傷が二五・四%、遺失物等横領が一〇・四%の順となっており、以上で
事件の八三・八%を占めております。また、年齢的には十四歳及び十五歳のいわゆる
年少少年が一般保護
事件の四五・四%を占め、中学生を中心とした低
年齢化の
傾向を示しております。
熊本
家庭裁判所では、実際に
少年事件を扱っている現場の率直な御意見を伺う
機会を得ました。そこでの意見の主なものを御
報告いたします。
まず、
非行少年に
被害者に迷惑をかけたという意識がない場合が多く、また、
非行少年の親の方も
少年が悪いことをしたという意識に欠ける面があるなど、
非行少年及びそれを取り巻く親たちの規範意識が低くなっている
傾向にあるといった意見が述べられました。
次に、一般保護
事件では窃盗が圧倒的に多いが、それは、物欲しさというものではなく、スリルやおもしろ半分、あるいは親を困らせるためといったものであり、中には窃取した物を中古店に売却して小遣い稼ぎをするなどといった事例もあること、さらには、
少年が麻薬や覚せい剤等の薬物とかかわるのは、最近の
少年が無気力、孤独であり、回復力が乏しくなっていることから薬物に依存してしまうのではないかという意見も述べられました。
また、現在の
少年審判は
審判官が一人で行っているわけですが、
一定の場合に合議制を導入しようという
少年法改正の動きに関しまして意見が述べられました。それによりますと、実務の
立場から見れば、比率的には低いものの、
少年事件の種類によっては合議制を導入することで、
審判官一人で
審判を行う場合よりも自信を持って判断することができるのではないか等の意見が述べられました。
熊本刑務所は、犯罪
傾向の進んだ者約五百三十名を収容しております。刑務作業は、木工、洋裁、金属等を行っており、熊本刑務所独自のものとして剣道道具及び肥後象眼があります。同刑務所では、刑務作業中の事故防止等の観点からも、刑務作業場内が照明等の工夫により非常に明るく、道具、備品等がきちんと整理されているなど、作業環境に十分な配慮がされておりました。このほか、廊下の至るところにプランターに植えられた花が置いてあり、
受刑者を何とか改善更生させようとする職員の皆様の御努力がうかがえました。
最後になりましたが、今回の
調査に当たり、現地関係機関から御協力をいただきましたこと並びに最高裁判所及び
法務省当局から御便宜をお図りいただきましたことを、この席をおかりして厚く御礼申し上げます。
以上でございます。