○日野市朗君 私は、
民主党を代表し、
内閣提出の
財政構造改革の
推進に関する
特別措置法の
停止に関する
法律案に
反対し、
民主党提出、
財政構造改革の
推進に関する
法律の
停止に関する
法律案に
賛成する
討論を行います。(
拍手)
我が国の
財政状況を見、
経済状態を見るとき、その惨たんたる姿に、私は慨嘆せざるを得ないのであります。累積の国家赤字は、
平成九年度末、既に三百五十七兆円、国と
地方を合わせれば四百八十九兆円に達し、今
審議中の第三次
補正予算が
成立すれば、国と
地方を合わせた長期債務残高は五百六十兆円になる見込みであります。
平成十年度の単年度で見れば、税収は約五十兆円で、
国債発行額は三十四兆円であります。つまり、国家財政は三八・六%を借金に頼るという借金漬けなのであります。しかも、
経済は極度の不振にあえいでいます。
一体、
自民党政府は何をやっていたのか。私はその責任を追及したい。
自民党政府の
施策は全く一貫性を欠いています。
すなわち、
平成九年九月二十九日、
政府は
財政構造改革の
推進に関する
特別措置法案、いわゆる財革法案を
国会に
提出し、
民主党の修正案を押し切って採決、可決して、参議院においても十一月二十八日採決、十二月五日、
法律第百九号として公布、施行されたのであります。
ところが、早くも翌年、
平成十年五月十一日にはその改正案が
国会に
提出されました。その内容は、
特例公債発行枠を弾力化する
措置、財政健全化目標達成年度の延長などを盛り込んだものでありました。これに対し、
民主党、平和・
改革、
自由党は共同で、現在
民主党が
提出しているものと全く同じ財革法
停止法案を
提出したのでありますが、
停止法案は否決され、財革法改正案は
成立しました。
そして、今度は半年後、
政府から
停止法案が出てきて、
民主党からも対案が
提出され、その
審議が行われています。
私が煩をいとわずにこの経過を述べるのは、この経過こそが、最も雄弁に
政府の財政や
経済に対する定見のなさと無責任さとを示すと考えるからであります。そもそも財政は国家存立の基礎であります。しかるに、わずか一年の間に三度も、財政をめぐる方針の大転換が行われていいものでありましょうか。
当初、財革法が
提出されたとき、
政府は、
経済のファンダメンタルズのいいうちに財政構造を
改革するとの志を語っていました。しかし、その直後に
政府は、
景気対策の大合唱と族議員の圧力により、志を捨てて、赤字
国債の増発に踏み切ったのであります。志を失った
財政構造改革は、もはや、
景気の悪いときにデフレ
政策をとるという形骸のみを残すこととなり、当然のことながら、
景気を極度に悪化させました。
しかも、今回
審議されている
政府案は、
財政構造改革のための積極的な手段を講ずるどころか、その思索すらも
停止しているかに見えます。すなわち、財革法を期限も定めずに
停止し、そして、講ずべき
施策にも何にも言及していないのであります。
政府・
自民党は
経済対策の優先を言いますが、
経済対策を進めるに当たっても、財政をいかに健全に運営するかの
政策が、常に考慮されていなければなりません。しかるに、その考慮の跡さえもない
内閣提出の法案は、財政再建
政策の放棄に等しい内容と言うべきでありましょう。
国家財政は国家の一大事であります。二十一
世紀を迎え、世界が激動する今、財政への考慮を
停止する
自民党政権は、もはや
日本の政権を担当する能力も気力も失ったと言わざるを得ないのであります。
現下の
不況の根源には、
国民の
年金や
医療や
雇用など、生活全般についての不安があります。その不安は、せんじ詰めれば、国家財政への不安なのであります。その不安を取り除かなければなりません。対症療法としての
景気対策も必要でありますが、同時に、財政立て直しの断固たる意志を示し、その方策に取り組むことが
景気対策として必要なのであります。
また、このような
国債に頼っての財政運営が危険なものであることは論をまちません。
国債の値下がりや引き受け手がなくなるなどのことは、決して架空の事柄ではありません。ムーディーズの
日本国債格付の引き下げに感情的に反発していても、何にもならないのであります。
財政の再建のためには、
国民と国家の関係を根本から問い直すという大問題にも取り組まなければならないでありましょう。時間のかかる大
事業であります。
景気がよくなれば財政もよくなるという考えも短絡的に過ぎます。要は、財政再建の努力を休むことなく行わなければならないのであります。
我が党の
提出した法案は、現行財革法の施行を二年間
停止し、その間に財政健全化目標及びその達成期限、その他
財政構造改革のあり方について見直しを行い、目標期限までに
公債発行額及び借入金の
総額を対GDP比三%以内に抑え、
経済活動が著しく停滞した場合は目標達成期限を延長できるようにするというものであり、国家財政に対する
政治の責任を全うしようとするものであります。
政治家たる同僚諸君の良心に訴え、
民主党提出法案に
賛成されることを願って、
討論を終わります。ありがとうございました。(
拍手)