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山本(幸)
委員 これは大変問題があるなと思いますね。
要するに、実質金利を下げるような、あるいは
リスクプレミアムを下げるようなことを
日本銀行はやらなきゃいけないのに、それに対して何をやりますなんという答えは全然出てこなくて、依然としてコールレートの名目金利だけを見てやる。それだけじゃありません、いろいろほかの現象が起こってきたら何か
考えますと言っていますが、基本的には、
日本銀行がやっていることは、名目金利だけを見てやっているんでしょう。それじゃだめだと私は言っているんです。
名目金利が歴史的に低いといったって、ほかの条件は全部違っているんだから。
物価は下がっているし、
リスクプレミアムは上がっているし。むしろ、そんな名目金利に拘泥するのはやめて、実質金利と
リスクプレミアムを
考えた
金融政策を打ち出さなければ
日本経済は立ち直れませんよ。
ことしの前半、マネタリーベースの
供給がどういうふうに行われたかを見ると、これは推計するしかない、あなた方が出さないから。第二・四半期、第三・四半期、財政資金で相当の
お金が出ている。それを
日本銀行は、事もあろうに相殺するように
日銀信用を大量に引き揚げているんですよ。何でこんなばかなことをするんだ。ちゃんと緩めていれば、こんな
デフレスパイラルに陥ることもなかった。
なぜそういうことをやったのか。恐らく、コールレートの名目金利の
水準が、それをやると急速に下がるだろうということが嫌だからやったんでしょうね、名目金利に拘泥するから。そこが問題なんだ。あなた方のやっている名目金利に拘泥していたらこの実体
経済に追いつきませんよ。これに追いつくためには、そういう名目金利に拘泥するというやり方はやめて、マネタリーベースという量に着目した
政策をやれば、実質金利の問題も
リスクプレミアムの問題も吸収できる。
確かに、名目金利は大きく動くかもしれない。結構じゃないですか。だって、実体
経済を救うために役に立つんだから。あなた方は、ことしの前半、ちっとも
金融緩和をやっていないんだ。
日銀信用を引き揚げたんだ。これは隠しているからほかの人は余りよくわからないけれ
ども、プロが統計表をちゃんと見るとわかる。
そこで、
日本銀行の
政策委員会の中でも注目すべき発言がありました。中原伸之さんという
委員が、私の見る限り、ただ一人そういう
状況を把握して警鐘を鳴らしていた。彼は、九月九日の変更する前にも言っていますが、この
報告書をずっと見ると、実に三カ月前、六月の段階から、一日も早く
金融を緩和しなければいかぬ、そう主張してきたんですね。それは、
経済の実態から見て、あるいは株式
市場の
影響から見て。
彼がどういう
考え方で、どういう根拠に基づいてそういう主張をされためか知りませんが、今日振り返ってみると、
政策委員会の中でただ一人、私が
指摘したような問題にも
対応できるようなことを言っているのではないですか。
総裁をかわってもらった方がいいのではないですか。
そういう観点がなければ、
日本銀行はこれからも、
設備投資をふやすような、あるいは
家計の消費をふやすような、実質金利を減らし、
リスクプレミアムを減らすというようなことが到底できるとは思えませんね。もうそういうことをやめたらどうですか。
それからもう一つ、
政府の
景気対策がだんだん功を奏してきているなんという言い方で言っていますが、
金融政策というのは、非常に機動的にできる有効な
経済政策の有力な手段ですね。そうであれば、
日本銀行として必要だと思えば、
総合経済対策の
効果はどうのこうのなんて、見きわめてはだめなんですよ。その
効果を見きわめてから
動きますなんて言っていたらだめなんだ、間に合わないんだ。
むしろ、
金融政策というのは機動的にできるというところに最大のポイントがあって、そのために
独立性を付与しようということをしているのだから、あなた方がこのレポートに何度も書いているように、
政府の
景気対策の
効果を見きわめてから
考えたいなんということではだめなんですよ。
政府の
景気対策がどういう
効果をもたらすかどうかの前に、みずからやるべきことをやるべきだったんです。それをことしの前半に全くやらなかったというのが私の結論ですよ。その根拠は、実質金利をこれだけ上げ、
リスクプレミアムをこれだけ上げ、
経済をこういうふうにした。
なぜそうなるかというと、さっきも申し上げたように、一つは、
日本銀行は名目金利だけを
考えて議論するからそういうことになる。それからもう一つは、この(2)に書いているように、
日本銀行の物の
考え方というのは単純そのもの、
日本銀行券増発マイナス財政資金払い超が
日銀信用と準備預金の増という式を見ながら、名目のコールレートを余り動かさないようにしようというやり方でやっているのですね。
この式の問題点は、詳しいことは一度私は
山口さんとやりましたから、もうそれほどやりませんが、どこが
政策手段でどれが
政策目標なのかはっきりしない。あるいは、どういう
状況でそれが起こっているか、すなわち価格の概念が全くない。その結果、
日本銀行は伝統的に、左辺がプラスだと
金融は引き締まっていると思って
日銀信用をふやす、左辺がマイナスになると資金余剰だという判断をして今度は減らすということをやっているのですね。
先ほど
指摘したように、ことしの第二・四半期、第三・四半期に
日銀信用を引き揚げたのは、恐らく財政が払い超で、その財政払い超が出てきたものだから左辺がマイナスになって、したがって資金余剰であるから、これは引き揚げないと名目コールレートがおかしくなるだろうなと思ってやったのでしょうね。
だから、そういう
日本銀行の
金融調節のやり方に非常に問題がある。こんなことをまだこれからも続けようとするのであれば、
日本経済は大変なことになりますよ。長期金利も
リスクプレミアムもどんどん上がっていく
状況で
経済をどうするのですか。
時間が参りましたから、最後に、
日本銀行総裁、私の申し上げたことを受けて、もう名目コールレートなんて拘泥するのはやめて、
渡辺先生がおっしゃったように、今
非常事態ですよ。そういう
状況で、短期の金利がどういうふうに動くのか関係ないんだ、実質金利の方が大事なんだ。しかも、
渡辺先生の表にあったように、
信用乗数、貨幣乗数というのは非常に落ち込んでいる。だから、貨幣乗数を上げるという
政策とプラスして、名目金利に拘泥するんじゃなくて、思い切って量でしっかりとふやしていくということをやらなければ大変なことになると思います。
貨幣乗数を上げるためには私は預金準備率を下げればいいと思っていますが、貨幣乗数を上げる、同時に量的にしっかりふやさなければ大変なことになる。名目金利に拘泥するのはやめた方がいい。
そういうことができなければ、そういうことがわかっている人にかわってもらった方がいいというぐらいに思っているのですが、最後に
総裁の決意をお伺いして、
質問を終わります。