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1998-12-09 第144回国会 衆議院 消費者問題等に関する特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年十二月九日(水曜日)     午前九時十分開議  出席委員    委員長 前田  正君    理事 栗原 裕康君 理事 桜田 義孝君    理事 下村 博文君 理事 渡辺 具能君    理事 石毛 鍈子君 理事 樽床 伸二君    理事 青山 二三君 理事 松浪健四郎君       小此木八郎君    小野 晋也君       大村 秀章君    小林 多門君       河野 太郎君    河本 三郎君       鈴木 恒夫君    田中 和徳君       能勢 和子君    木幡 弘道君       城島 正光君    肥田美代子君       丸谷 佳織君    西田  猛君       藤田 スミ君    中川 智子君  委員外出席者         参  考  人         (社団法人生命         保険協会会長) 吉田 紘一君         参  考  人         (社団法人日本         損害保険協会会         長)      樋口 公啓君         参  考  人         (東京大学法学         部教授)    落合 誠一君         参  考  人         (保険評論家) 佐藤 立志君         参  考  人         (国民生活セン         ター理事長)  及川 昭伍君         衆議院調査局第         二特別調査室長 田中 宗孝君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  物価問題等国民消費生活に関する件(保険契  約の諸問題)      ――――◇―――――
  2. 前田正

    前田委員長 これより会議を開きます。  物価問題等国民消費生活に関する件、特に保険契約の諸問題について調査を進めます。  本日は、本件調査のため、参考人として社団法人生命保険協会会長吉田紘一君、社団法人日本損害保険協会会長樋口公啓君、東京大学法学部教授落合誠一君、保険評論家佐藤立志君、国民生活センター理事長及川昭伍君、以上五名の方々に御出席をいただき、御意見を求めることにいたしております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。  御承知のとおり、去る七月二十五日に和歌山県において発生しましたカレー毒物混入事件並びに保険金詐欺事件では、多くの方々被害を受けられ、いまだその後遺症に苦しんでおられる方もおり、事件解明とともに一日も早い被害者回復をお祈り申し上げる次第でございます。  今回のこの事件は、保険の問題が事件中心をなしており、本来相互扶助制度である保険を悪用し、人命にかかわるような重大事が起こっており、甚だ遺憾に思っている次第でございます。  今後において、このような事件再発防止のためにも、保険仕組み、すなわち加入方法支払い審査等に対しての疑念などについて、参考人の皆さんのそれぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただきたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  次に、議事の順序について申し上げます。  まず、吉田参考人樋口参考人落合参考人佐藤参考人及川参考人の順に、お一人十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。  なお、念のために申し上げますが、参考人委員長の許可を得て御発言を願い、また、委員に対しましては質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきをお願い申し上げます。  これより各参考人から意見を聴取いたします。  まず、吉田参考人にお願いいたします。
  3. 吉田紘一

    吉田参考人 生命保険協会会長吉田でございます。  初めに、私ども業界状況につきまして簡単に御説明をさせていただきます。  生命保険業界は、戦後、日本経済の順調な発展と自助努力精神の高い日本国民の賢明さに支えられまして、順調に成長してまいりました。平成九年度一年間にお支払いした保険金給付金等の総額は、国の社会保障給付の約三割に相当する十七兆四千億円にも上り、多くの方々のお役に立っております。  しかしながら、このところ、私ども業界は大きな試練のときを迎えております。昨年は、我が業界から業務停止命令を受ける会社発生をし、国民皆様からいただいておりました信頼が大きく揺らいでしまいました。日本経済再生緊急避難措置としてとられた異常な超低金利水準が半ば常態化し、これが膨大な逆ざやとなって生命保険経営を大きく圧迫し、著しい体力消耗を余儀なくされております。こうした状況にありますだけに、お客様からの信頼回復こそが生命保険業界の最優先課題であると認識しております。  幸い、この十二月には、先生方の御尽力によりまして改正保険業法が施行され、業界全社が参加をする生命保険契約者保護機構を設立することができました。各社とも、経営全般にわたって思い切ったリストラを実行し、経営健全性確保に努め、何としても自力でこの難局を切り開き、お客様への経営責任を貫徹したいと改めて決意しているところでございます。  先般、和歌山発生をいたしました保険金詐取事件によりまして、善良な御契約者、さらには広く国民皆様の間に、生命保険に対して大変な不信感不安感を引き起こしましたことについては、生命保険業界関係者一同、大変残念に思っているところでございます。  生命保険は、一人は万人のために、万人は一人のためにという言葉に象徴されますとおり、相互扶助精神を具体的な形にしたものでございまして、あくまでも人間の善意前提とした仕組みでございます。したがって、御契約を引き受け、その維持管理に当たる保険会社は、御契約者集団善意方々で構成されるように、いやしくも保険という仕組みが悪意を持って利用されることがないように、最大限の注意を払ってまいる責務がございます。この事件では、結果として責務を全うすることができなかったわけでございまして、業界を代表しておわびを申し上げます。  どのような御契約をお引き受けするのか、あるいはどのようにして公正に保険金をお支払いするかということは、生命保険会社根幹業務でございます。その責務を果たすために、各社が大いに知恵を結集いたしまして、さまざまな工夫をしているところでございます。  まず、根幹業務一つ、お引き受けの過程について、弊社の例で御説明を申し上げます。  まず第一段階が、営業職員による確認でございます。通常、契約をお申し込みいただくまでには、営業職員が何度もお客様を訪問する過程を経ます。その結果、実際にお申し込みに至った場合は、お客様状況、例えば過去にかかった病気、現在の健康状態、御職業等についてお伺いをさせていただいておりますし、時には支社幹部が直接お客様にお会いさせていただくことがございます。申込書には必ず契約者並びに保険事故対象者から、被保険者と呼びますが、署名捺印をいただくこととしております。  次の第二段階が、医師によるお客様健康状態確認です。  そして最後の第三段階で、これらの過程を経て集められた情報をもとに、支社本社において、医学的見地あるいは不正契約排除の観点も加えて、契約をお引き受けするかどうかということを決定いたします。  さらに、これらを補強するのが契約確認というシステムでございます。契約が成立する前あるいは後の段階で、一定基準のもとで、専門職員契約者及び被保険者を直接訪問、面談して、御契約に至った経緯の確認等を通じて善意契約者集団を維持することに努めております。また、契約成立後の保険金額の増額とか受取人名義変更のお申し出があった場合には、ただいま申し上げました新契約手続と同様の取り扱いを行うことといたしております。  もう一つ根幹業務保険金給付金のお支払いについてですが、保険金給付金支払い請求時には医師診断書を提出していただき、独自にストックしている情報あるいはノウハウを生かしながら請求内容確認いたします。不自然な点があれば、新契約時同様、専門職員診断書上の医師に事実確認を行うなど、問題点を完全に払拭し、全契約者に対して公正、公平な形で保険金給付金をお支払いいたします。  次に、生命保険協会としての取り組みについてお話をさせていただきます。  昭和五十五年十月に、契約内容登録制度を創設いたしました。一定基準各社から登録された契約の被保険者名保険金額入院給付日額等各社が照会し、引き受け、支払い業務における判断の材料にいたしております。  また、昭和五十五年七月には生保・警察連絡協議会を設置いたしまして、各地方の生命保険協会都道府県警察本部との間で、保険金不正受給を目的とした契約者排除のための情報交換を行っております。  今回の和歌山保険金詐欺事件につきましては、報道されております事実以上のことを知り得る立場にはございませんけれども、極めて特異な事件であると考えております。事実関係については捜査結果を待たなければなりませんが、一方で、私ども生命保険業界は、ただいまるる申し上げた手段を講じてまいりましたにもかかわらず今回こうした事件発生したという事実を厳粛に受けとめまして、善意の御契約者集団を維持するという生命保険会社根幹業務について、生命保険各社が挙げて、その責任を果たすために万策を尽くさなければならないと考えております。また、生命保険協会といたしましても、何ができるのか、いま一度原点に立ち戻って検討、見直しを行ってまいりたいと考えております。  最後に、報道の一部には、今回の事件の背景として、成果比例給による処遇制度が不正を誘発する一因となったのではないかという御指摘がございましたが、このような御批判はまことに不本意に存じているところでございます。制度の持つインセンティブが働くことによりまして、大多数の職員が働きがいを感じているところでございます。  ただ、制度のデメリットが出て、成果にとらわれる余り不正が行われないように、商品教育に加え、倫理観の醸成を含めて、教育充実に取り組んでおります。また、業績評価が短期に偏り過ぎないよう、職員評価処遇面で可能な限りの配慮をするとともに、正当に働けば安定した営業成果が残せる、そういう活動そのものをしっかりと支援することにも大いに注力をしているところでございます。  私の意見陳述は以上でございます。  先生方におかれましては、社会福祉充実にしっかりと貢献していきたいと考えております私どもの決意を御理解賜り、今後とも御指導、御鞭撻を賜りますようにお願いを申し上げます。  どうもありがとうございました。(拍手
  4. 前田正

    前田委員長 ありがとうございました。  次に、樋口参考人にお願いいたします。
  5. 樋口公啓

    樋口参考人 ただいま御指名いただきました日本損害保険協会会長樋口でございます。  まず最初に、損害保険事業の現況を御報告させていただきます。  我が国損害保険を営みます会社数は、現在六十四社でございまして、そのうち日本損害保険協会に三十四社、外国損害保険協会に二十五社が加盟しております。役職員数は十万三千人、代理店数は五十九万二千店、募集従事者数は百十七万人でございます。契約関係では、契約件数は約二億件、契約高は一京八千二百七十五兆円、元受け正味保険料は十兆三千百三十七億円でございまして、米国に次ぐ、世界で二番目のマーケットとなっております。  御承知のとおり、損害保険業界は、今年七月一日より、ビッグバン関連法のトップを切って損害保険料率算出団体に関する法律改正、施行されまして、本格的な自由化に突入いたしております。  業界各社は、消費者信頼され、選択されるために、多様な商品サービス開発事故処理サービス充実に積極的に取り組んでいるところでございます。我が国損害保険販売につきましては、代理店を通じた販売が九〇%以上を占めておりますが、損害保険会社と同様に、代理店もまた、消費者に選択されることを目指して、顧客対応力のさらなる向上に努めているところと承知いたしております。  それでは、当協会活動のうち、特に消費者方々関係の深い取り組みの現状につきまして、二点ほど御説明申し上げたいと存じます。  まず一点目は、消費者方々からの相談などの受付体制でございます。  当協会では、昭和四十七年に自動車保険請求相談センターを開設いたしましたが、昨年度は、全国五十四カ所で約六万八千件の自動車保険保険金請求などに関する御相談をお受けいたしました。  なお、同センターでは弁護士による無料相談も用意いたしておりまして、昨年度は約三千九百件の御利用がございました。  また、昭和四十年に、「そんがいほけん相談室」を設置いたしておりまして、損害保険全般に関する相談などをお受けしております。昨年度は、当協会本部及び全国の十四支部におきまして、商品内容契約手続に関する御相談中心に、約七千八百件の御利用がございました。  さらに、平成三年度からは、当協会本部におきまして、フリーダイヤルによる相談受付業務も開始いたしております。  なお、業界各社におきましては、おのおのの本社、支店、営業所におきまして、日常業務として消費者からの御相談に応じておりますが、これに加え、消費者向け専門相談窓口も設置いたしております。  当協会としての取り組みの二点目は、消費者方々防災意識を高めていただくとともに、損害保険をより正しく御理解いただくための活動でございます。  まず、防災意識を高めていただくための取り組みといたしましては、火災予防のためのパンフレットを平成元年より作成いたしておりまして、毎年百万部を全国で配布するとともに、地方自治体や消防機関との共催で防災講演会を開催いたしております。昨年度は五十回開催いたしまして、約一万七千人の方々にお集まりをいただきました。  さらに、消防庁と共同で、地域の防災活動に積極的に取り組んでおられます主婦の方約七百七十名を「奥さま防災博士」として認定させていただきまして、その活動を支援いたしております。  なお、業界各社におきましては、火災保険の御契約者のうち、地震保険をおつけになっていないすべてのお客さまに対しまして、平成八年以降、毎年約千七百万枚の御案内はがきをお出ししておりまして、地震保険普及促進に努めております。  次に、損害保険を正しく御理解いただくための取り組みといたしまして、全国で三百名の方々損害保険モニターを委嘱いたしまして、その方々から直接消費者としての御意見をお伺いいたしております。また、各地の消費生活センターなどが主催する消費者向け講演会に講師を派遣いたしまして、暮らしの中の危険と損害保険の役割などにつきまして、できる限りわかりやすい解説を行うといった努力もいたしております。  以上申し上げました活動に加え、当協会では従来から、国民生活センター全国消費生活センター、マスコミなどの方々との意見交換を通じまして、幅広い御意見や御要望をお伺いし、事業運営に生かすように努めております。  次に、和歌山保険金事件に関連いたしまして申し述べさせていただきます。  保険契約は、基本的に当事者の善意前提として成り立っておりますので、今回の事件が伝えられている容疑のとおりであるといたしますと、保険事業そのもの信頼性を失墜させる極めて悪質な事件であり、大変残念なことと考えております。  損害保険業界におきましては、全国二千八百カ所に上る損害調査拠点に約二万名の担当社員と約七千五百名の調査担当者を配備いたしまして、従来から事故状況調査契約プロセス確認などを厳正に行い、各警察本部とも連携して保険金不正請求排除に強力に取り組んでまいったつもりでございますが、今後、より一層の徹底を図る所存でございます。さらに、今回の事件の社会的な影響も踏まえまして、問題点の分析と対応策検討を行っておりまして、特に傷害保険分野における不正請求対策のさらなる強化を図りたいと考えております。  ここで、傷害保険における不正を排除するため当業界でとっております仕組みにつきまして、若干補足させていただきます。  まず、契約をお引き受けする際、高額な保険金額のお申し込みにつきましては、代理店のみの判断では契約できないこととし、保険会社判断する仕組みといたしております。さらに、同種の保険契約の有無を御契約者自身に申告していただく告知制度を採用いたしておりまして、御契約金額が他の契約と合算して高額となる場合には、契約締結をお断りすることがございます。この告知内容に偽りがあった場合には、保険会社契約を解除できる旨、約款で規定いたしております。  また、傷害保険の場合には死亡保険金法定相続人にお支払いすることが原則でございますので、受取人をあらかじめ他の第三者に指定するといった特殊な取り扱いの場合には、被保険者、つまり傷害保険対象者がその旨同意していることを確認するために、保険契約申込書に被保険者自身署名及び捺印をちょうだいいたしております。  次に、保険金のお支払いについて申し上げますと、高額な契約や他に複数契約がある場合、また、契約した直後の事故などにつきましては、契約プロセス確認事故歴調査などを一層厳正に行い、不当あるいは不正請求の疑いがある場合は、警察当局とも連携して厳格に対処いたしております。また、各社をつなぐ事故情報交換システムを有しておりまして、複数損害保険会社にまたがって保険金請求された契約がある場合には、金額の多寡にかかわらず、事故情報引受保険会社に伝えられる仕組みとなっております。  これらの取り組みに加えまして、今回の事件を契機といたしまして、不正契約排除のための対策を強化いたしたいと考えております。すなわち、死亡保険金受取人を指定する場合に被保険者の同意を確認するわけでございますが、その際、公的書類で御本人であることを確認し、その書類の写しを申込書に添付するなどの改善を行ってまいりたいと考えております。  さらに、複数損害保険会社にまたがる高額な契約をチェックするために、従来の御本人による申告に加えまして、死亡保険金受取人を指定した契約につきましては、業界ベース契約情報を交換するシステム開発検討いたしております。  これらの整備と従来から実施しております手続をあわせますと、今後はよりすきのない備えができ上がると考えております。  以上、損害保険業界の実情などにつきまして種々御説明させていただきましたが、引き続き、お客様から信頼され、信認される損害保険事業を目指しまして、加盟各社事業運営を支援してまいりたいと考えております。  先生方におかれましては、引き続きよろしく御指導を賜りますようお願い申し上げる次第でございます。ありがとうございました。(拍手
  6. 前田正

    前田委員長 ありがとうございました。  次に、落合参考人にお願いいたします。
  7. 落合誠一

    落合参考人 東京大学法学部落合でございます。  保険に関する消費者問題につきましていかなる法的な対応がとられるべきか、この問題につきまして、本日は、時間の関係もありますので、二つの論点に絞りまして私の意見を申し述べさせていただきます。  第一は、保険会社消費者に対して適切な情報提供するという問題であります。つまり、保険会社消費者に対する情報提供義務という問題であります。  保険仕組みは極めて複雑でありまして、消費者にとってなかなかわかりにくい。つまり、保険会社消費者との間には大きな情報格差というものが存在いたしております。そうしますと、消費者事業者とにあります大きな情報格差というものを埋めるということが重要になりますが、その方法としては、やはり情報を多く持っている事業者の方が情報を積極的に出していかないとどうにもならないということがございます。近時、変額保険に関しましていろいろ紛争が起こっておりますが、これは変額保険のリスクを十分に説明していなかったのではないかという点が争われております。  消費者事業者との情報格差を埋めるためには、事業者情報提供義務を負わせることになるということですが、この点に関する我が国の現在の法的な対応というのは甚だ不十分であります。  確かに、保険会社につきましては、保険業法という法律がありまして、一定情報提供義務を要求しております。しかし、保険業法は基本的に役所保険会社を監督するための法律でありまして、保険業法違反があれば、役所はその違反をした保険会社に対して文句を言えるということなんですが、消費者文句を言えるというわけではありません。保険業法は、あくまでも役所保険会社を監督するための法律でありまして、消費者保険会社との利害調整を直接的に図るという法律ではないからです。これは言いかえますと、保険業法は基本的に役所業界を監督するための武器でありまして、消費者が一般的に利用できる武器ではないということであります。  それでは、消費者保険会社を相手として情報提供を求めるということを考えました場合に何を武器にしたらいいだろうかということになりますが、これは申し上げましたように、保険業法ではなくて民法商法という民事ルールということになります。しかし、我が国民法商法はこの点は全く不十分でありまして、事業者一般情報提供を義務づける規定がありません。そこで、消費者はやむを得ず、信義誠実の原則という甚だ抽象的な民法一般原則に依拠せざるを得ない状況であります。  他方、事業者の方も、信義誠実の原則という漠然たる法理が適用になるために、一体どこまでの情報提供すればよいのか、その境界線が甚だ不明確であるという極めて不安定な状況に置かれております。したがいまして、できるだけ早い時期に民事ルールとしての明確な情報提供義務を立法化する必要があります。そうすれば、いかなる場合に情報提供義務違反が問題になるか、また違反した場合の効果はどうなるかが明確になりまして、消費者事業者も本当に助かるということになるわけであります。  さて、第二の問題は保険約款の問題であります。  保険会社保険という商品販売するわけですが、これは保険サービス提供するということでありまして、サービスは物とは違って目には見えないものであります。つまり、サービスの中身というのは、保険契約で、実質的に保険約款によりすべて決められるということになります。ですから、保険約款内容が決定的に重要になるというわけであります。  ちなみに、不正保険金請求といったモラルハザードの問題への対応につきましても、保険約款というものが非常に重要な意義を有しているということになります。  ところで、保険約款を作成するに当たりまして、消費者意見を聞いて決めるということは行われておりません。また、消費者保険契約を結ぶ場合に、約款内容を変更できるというわけでもありません。つまり、保険会社がすべて完全に約款内容をコントロールしているわけであります。  もっとも、保険会社が一方的に約款内容のコントロールをするといいましても、それだから約款内容がすべて消費者に不利になるというわけではもちろんありません。私の見るところ、我が国保険会社は、ほかの業界に比べまして従来から約款には大変神経を使っており、したがって、一般的には妥当な内容になっているとは言えるかと思います。  しかし、問題がないかといえば、そうとは言い切れません。例えば、昨年の三月、保険約款のいわゆる三十日条項というものにつきまして、これを無効とするという最高裁判決が出されております。また、約款をめぐる消費者トラブルも実際少なくないようであります。  約款事業者が一方的に作成します。そうすると、どうしても作成者に有利な内容になりやすいという問題が生じます。これはすなわち、交渉力、情報力の格差が原因となって、事業者に一方的に有利な約款がつくられるという可能性が常にあるということであります。  そこで、どういう方法でこの問題に対応するかということがやはり問題になりますが、その仕組みといいますと、我が国の場合は甚だ不十分な状況にあります。民法商法も不当な契約条項一般を扱う規定がそもそも存在しておりません。この状況は、情報提供義務の問題と全く同様であります。したがいまして、情報提供義務につきまして述べましたことが、約款対応問題につきましても全く妥当するということになります。  最後に、今後の法的な対応というものについて私の意見を申し上げます。  我が国の場合、これまで経済社会のシステムは、市場を重視するというよりも、官庁主導の産業政策というのが大きな機能を果たしてまいりました。そのために、保険業法を含めた業界監督法である業法というものに基づき、役所事業者の行為に広く介入してきたわけであります。  しかし、我が国は、これからは官庁主導による産業政策的な方針、これを放棄いたしまして、市場メカニズムを重視する社会に転換する道を選択し、そのために規制緩和をさらに大胆に進めていくんだという決意が示されております。つまり、役所が業法に基づいて事業者の行動にあれこれ介入することはこれから極力やめるようにするというわけであります。なぜならば、事業者の自由な行動を許容しませんと、市場メカニズムは十分機能しないからであります。  しかし、市場メカニズムを十分機能させるためには、役所の介入を極力排除するというだけでは不十分であります。市場メカニズムは、市場に参加する者、すなわち事業者、それから消費者というものの間に情報あるいは交渉力の格差というものが存在いたしますと十分に機能しないからであります。  それではいかにしてその格差を是正するかが問題になりますが、役所が積極的に介入するという方策は今後はもちろんとれません。そこで必要とされるのは民事ルールであります。すなわち、情報力や交渉力の格差を是正する民事ルールがぜひ必要となります。  しかしながら、現在の我が国情報力、交渉力格差是正のための民事ルールは、何度も申し上げましたけれども、全く不十分な状況にあります。したがいまして、現在、国民生活審議会におきまして、この不十分な状況を打破する方策として、消費者契約法という民事ルール検討されているのであります。もしこの消費者契約法が早期に立法されますならば、まさに情報力、交渉力の格差から生ずる問題でありますところの情報提供及び約款という保険が抱える二つの大きな消費者問題につきましても、当然のことながら、現状よりもはるかに有効な解決が図れるようになると考えております。  事業者の一部には、消費者契約法は規制緩和に逆行するという意見があるようでありますが、以上申し上げましたことから明らかなように、かかる見解は全くの誤解でありまして、消費者契約法は、情報力、交渉力の格差というものを是正することによりまして、市場メカニズムを十分機能させるための環境づくりをするというものであります。最後にこの点を付言いたしまして、私の意見陳述を終わらせていただきたいと思います。  ありがとうございました。(拍手
  8. 前田正

    前田委員長 ありがとうございました。  次に、佐藤参考人にお願いいたします。
  9. 佐藤立志

    佐藤参考人 評論家の佐藤でございます。  今回の和歌山事件でも浮き彫りになりました生命保険、特に生命保険契約の件につきまして、現在三つほど問題があるのではないかと思っております。  一つ目は、対象者の選別がなおざりになっているのではないかということでございます。  生命保険は、本来、健康であること、保険料をきちんと払うことができること、それから、保険を正しく利用していただく人であるということが前提条件になっておるのですが、このごろは新規契約保険会社といえども、営業活動をやっておるわけですけれども、大変厳しい状況であるということのために、どうしてこういう人が保険に入れるのだろうというようなケースが和歌山事件でもございました。  二つ目は、加入審査が適正にやられているのだろうかということでございます。  せっかく、とれない保険契約を、営業職員の方が大変な思いをしまして契約をとってくるわけですが、やはり契約を少しでも伸ばしたいということもあるのかと思いますが、とってきたものを、これはちょっと契約としては不適正であるというようなことがこのごろ甘くなっているのではないかなというようなことも見受けられるのではないかと思います。  それから、三つ目といたしましては、お客さんのニーズより会社の利益の方が優先されているのではないか。その一番いい例が、前から言われておりますが、定期つき終身保険という、いわゆる高倍率といいますか、そのような保険を、お客さんの理解に関係なく、どういう仕組み保険であるかというような理解に関係なく、あなたには一番いいのはこの保険ですよといって売っておられる、そういうことがあるかのように私はいろいろ相談を受けております。今多いのは、この契約時のトラブルと転換という、これは保険制度がございますが、この契約時のトラブルと転換という問題が大変私のところに多く相談をいただいており、その数の多さには本当に辞易しているぐらいでございます。  それから、大きな問題点の二つ目といたしましては、営業職員のノルマとか待遇の問題がございます。  現在、保険が売れない、そういうふうに、保険だけが順調に伸びているということはございませんで、やはり不況の影響で非常に保険契約にも大変な影響を受けております。このため、営業職員の方に今は営業の件数、売り上げを上げるために過重なノルマがかけられているのではないか。それと、あとは待遇の面でございますが、よく言われているのは、採用されて短期間でおやめになる、非常に営業職員の方の定着率が悪いという問題は以前から指摘されておるのですが、これがいまだに改善されていないのではないかなということを聞いております。それと、営業職員の管理ということでいいますと、やめた方が実際まだその営業所に存在しているような形をとって裏金づくりをやって摘発された会社もございました。そういったことがないように、やはり早期の営業職員の適正な管理と待遇面での改善が図られるべきではないかなと思っております。  大きな三番目といたしましては、保険会社自身経営の問題が今は非常に大きくなっているように思われます。  日産生命のあの破綻以来、保険会社もつぶれるんだということが国民皆様にもよくわかったと思うのですが、しかし、今までの保険会社のお答えとしましては、いつも保険会社は何の問題もないということばかりで、本当に経営の実態が知らされていなかったように思われます。ことし、東邦生命という会社がいわゆる外資のエジソン生命の方に営業権を譲渡いたしまして、完全な管理会社になってしまった。あるいは、ことしの十一月には第百生命というところがカナダの生命保険に、東邦生命と同じような形式といいますか、そういうことを発表なさっております。これも、非常に低金利で長引いておりまして、いわゆる逆ざやという、先ほど協会長が申しましたけれども、これはもう自助努力の限界に達しているだろうということも確かにございます。  私は、今まで契約者保護の立場から、既存契約の値上げなんというのはとんでもない、最初の契約のときにお約束したのを過去にさかのぼって値上げをするなんというのは言語道断であるということを申し上げてきました。  ただ、ことしの九月の中間決算を見ましたら、一言で言えばもうぼろぼろということでございまして、このままでは、ぼやで消しとめるか、あるいは家が焼けるまで見ているかというような状態だと思いまして、これは契約者保護ということを考えれば、少しの痛みを伴うことはあっても、契約者の保護、利益になることであれば、既存の契約の値上げもこれはひょっとして早期に取り組むべきことではないかなというふうに私の方の主張も若干変わってきておるのですが、この点については、国会議員の皆様方についても、契約者保護という点でどちらがいいのか、これは議論を業界ともども深めていただければと思います。  ただ、こういうふうに、日本生命という日本のトップ企業でさえ年間三千三百億という膨大な経常利益を上回る逆ざやを抱えて、この状態がいつまで続くかわからないというような状態になっておりまして、もう中小に至っては非常に厳しいというような経営状態でございますので、この辺については早急に何か抜本的な手を打つ必要があるのではないかと思っております。  最後損害保険の件でございますが、自由化は徹底的に行われておりまして、皆さんもよくテレビなんかでごらんいただくように、自動車保険なんかの値引きといいますか、従来の保険よりは安い自動車保険なんかが今盛んに販売されておりまして、逆に言えば損害保険会社にとっては大変な競争の時代になっております。  ただ、そこで消費者に本当に必要な情報が開示されているのか。例えば自動車保険契約件数がどれだけのものが獲得されているのかとか、そういうようなことが一部ではまだよく開示されていないという会社も見られるようでございますので、そのように消費者の利益になるような情報はぜひ、会社の利益というよりは契約者の利益に合致するものであればぜひ積極的に開示をしていただきたいと思います。  金融のビッグバンといいますか、自由化というのはフリー、フェア、オープンという話になっておりまして、オープンということはまだまだ不十分というような感じがいたします。それと、フェアというのは、保険会社契約者消費者が対等になるということはまず知識の面においてもまだあり得ない話でございまして、いわゆる消費者の方も近づいていく、自分で、やはり自己責任において、どういうような保険仕組みであるとか商品仕組みについてきちっと勉強していく、あるいは検討していくという努力が求められるということでございますので、その必要な情報開示についても、損害保険会社生命保険会社を問わずこれはお願いしたいと思っております。  以上でございます。(拍手
  10. 前田正

    前田委員長 ありがとうございました。  次に、及川参考人にお願いいたします。
  11. 及川昭伍

    及川参考人 国民生活センター理事長の及川でございます。  国民生活センターの業務につきましては、前田委員長を初め、当委員会委員皆様方に常日ごろ大変な御指導、御支援をいただいておりまして、厚く御礼を申し上げます。  国民生活センターでは、御承知のとおり、全国消費生活センターとオンラインでネットワークを組みまして、消費生活情報ネットワークシステム、PIO―NETと申しますけれども相談情報を収集いたしております。現在三百万件ほどその情報収集量がございます。  そのうち、保険に関する相談、特別に検索をしてみますと、この五年間に生命保険相談件数、問い合わせを含めて一万八千六百八十九件ございました。平成五年度から九年度までの相談であります。この全部の相談のうち、契約に関連する苦情、問い合わせを除いた苦情でございますが、苦情が約九割を占めておりまして、一万六千百六十二件でございます。  損害保険につきましては、同様過去五年間に総相談件数は、収録されておりますのが五千五百八十四件でございますが、契約に関連する苦情は三千六百五十三件、約三分の二でございました。  この契約に関する苦情の中身をさらに分析をいたしますと、生命保険では、トップに来ますのが解約に関する苦情が五千四百四十八件、解約がなかなかスムーズにいかない、長い契約期間の中でいろいろ事情があって解約をしたいと思ってもなかなかうまくいかないというのがトップであります。第二番目が契約時における説明不足、三千二百三十一件であります。第三番目が、いろいろな苦情を申したのにクレーム処理が非常に不満であるというのが千八百七十八件というような順番になっております。  損害保険につきましても同様に分析をしますと、トップは説明不足で七百六件、解約に関する苦情が二番目で五百六十二件。約束不履行、これは普通、最後保険金支払いのところで思ったような金額が出てこないということが主でありますけれども、三番目で五百二十七件というような苦情になっております。  このような全体の苦情の状況やら、あるいは、現場で相談に携わっておる窓口の人たちの話を総合いたしまして、私は次の五点をこの際申し上げておきたいと思います。  第一点は、契約締結過程といいますか、契約の入り口の問題であります。  入り口で消費者に対する情報提供が非常に不十分であることによってトラブルが生じておる。情報弱者である消費者情報強者である事業者、その間での情報提供説明が不十分であるところの問題が生じているということであります。特に、保険契約は一般に消費者側から積極的に買いに行く契約ではなくて、事業者側から攻撃的に訪問されて、勧誘されて契約を締結するのでありますが、その過程でいろいろ問題が生じておる。いろいろな訪問販売と同様の問題がここにあるというふうに思われます。  第二番目は、長い間の契約期間中でのトラブルの問題であります。  先ほど申し上げましたように、途中で解約したいというときにいろいろスムーズにはいかないという問題があったり、途中で転換をいろいろ言われて有利な条件だということを言われたけれども、実際は、転換の結果、高利回りであったのが低利回りに変わってくるとか等々の問題があって、いろいろクレームが、転換とか乗りかえとかいうことで苦情が出てきている契約途中の問題が二番目にあります。  三番目に、契約の出口、お金が最終的に保険金給付金として支払われる過程でありますけれども、その過程で、損害保険生命保険含めてでありますけれども、期待したとおりの金額が給付や火災保険やその他の事故保険等についても出てこないというような問題があります。これも多くは説明不足であったり、あるいは本当に問題であるのかもしれませんですが、そういうトラブルが相談の現場ではいっぱい出ておるということを申し上げておきたいと思います。  これらの問題を総合して、第四点でありますけれども、いろいろ問題が生ずるのは、言うなれば、現場で消費者会社側の接点に立ちます、特に生命保険について言うと、生命保険募集人と消費者との間でのトラブルが最終的に契約のトラブルになっておるというところであります。そして、生命保険募集人の地位については、先般の保険業法改正で、単なる媒介人ではなくて代理人としての地位もあり得るという改正がなされました。実は、保険募集人が媒介人であると、消費者からの申し込みを受け付けられない、契約締結もできない、お金も受け取れない、告知も受け取ることができない、単に消費者保険会社を仲介する地位にあるんだ、媒介する地位にあるんだ、そこに問題の根幹があるということで、国民生活審議会では、昭和四十八年の答申においてそれを是正するように答申をいたしました。さらには、昭和五十六年度の消費者保護部会報告でもそれを是正すべき旨を報告いたしておりますけれども保険業法においては、この点は先般改正を見ました。  その他の国民生活審議会の諸答申、約款の是正やその他は大部分改善をされておりますけれども、究極的に保険募集人の地位については、現実には現在もなおかつ大部分の会社で媒介人の地位にある。そして、媒介人がどのような行動をするかについて会社側は直接は責任を負う立場になくて、独立の事業者であるというふうにいろいろな法律上の取り扱いがなされており、このような問題点が実は訪問販売のいろいろな形態、新聞販売についても、新聞販売の拡張員が販売店にも属さない、新聞の本社にも属さない、そこから販売のトラブルがいっぱい出ております。  例えばマルチ商法においても、マルチ商法の子や孫は独立の事業者であって会社とは関係ないというところでトラブルが多発しておるわけでありますが、同様のことが保険販売についても生じておるというふうに私どもは考えており、この点での改善がぜひとも求められると思いますし、保険業法ではその道をつくったわけでありますから、ぜひ多くの保険会社においてそのような方向を進められることを心から期待するわけであります。  片仮名生保と言われているところは、大部分がこのような媒介人ではなくて代理店システムや代理人システムで行っており、そこの部分についてはそう大きな問題を私ども承知をいたしておりません。  第五点、特に生命保険会社等でありますが、生命保険会社は御存じのとおり相互扶助組織で、相互会社となっております。株式会社ではなくて相互会社となっております。相互会社であるということは、契約した保険契約者それ自身が社員になるわけであります。社員になって、その代表は総代として会社経営に参画するわけでありますが、総代の選任やその他いろいろ問題がある点は、これまた国民生活審議会の答申で何回か指摘をしているところでありますけれども、今回の保険業法改正では社員の権利も相当改善をされておるわけでありますけれども経営の実態において会社のチェックシステムということをしっかり行い、保険の募集人に対する教育や監督や管理や責任の体制等々もしっかりしていただき、入り口でも出口でも、本人確認を含めてしっかりとしたチェックが行われることが、和歌山事件も参考にしながら、これから非常に重要になってくるのではないかなと思っているわけであります。  いずれにしても、保険契約者消費者保険事業者との間には、落合参考人が申されたように、非常に情報格差が大きいわけでありまして、保険業法による監督行政ということだけではなくて、消費者事業者との間の民事上のルール、消費者契約法というような民事上のルール、情報提供義務消費者の自己責任、あるいは約款の対等関係を、消費者事業者との対等関係を確立するようなルールを早く民事ルールとして確立することがすべての問題を解決するために極めて重要であると私どもは考えております。  一方、消費者に対する教育、啓発ということも非常に重要でありまして、国民生活センターとしては、その面についてもこれからさらに力を尽くしてまいりたいと考えております。  以上でございます。(拍手
  12. 前田正

    前田委員長 ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の開陳は終了いたしました。     ―――――――――――――
  13. 前田正

    前田委員長 これより参考人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。桜田義孝君。
  14. 桜田義孝

    ○桜田委員 自由民主党の桜田義孝でございます。  参考人皆様におかれましては、年末のお忙しい中おいでいただきまして、本当にありがとうございます。御礼申し上げたいと思います。  現在、国民的に、和歌山事件が大変大きく報道され、保険業務に対して厳しい目が注がれているところであります。今回のこのような機会は大変時宜にかなったものと認識しております。私としては、保険契約問題全般にわたって共通の課題と思われるような部分について御質問申し上げたいと思います。  まず第一点でございますが、保険相談件数と認識についてお伺いしたいと思います。  保険は、言うまでもなく、国民一人一人が安定した社会生活を送るために、万が一の場合に備えておく経済行為であり、個人個人のライフプランの基盤をなすという意味でも国民生活に不可欠なものであります。現在、成人国民総加入状態と言っても過言ではございません。  一方、保険に関するトラブル、苦情は、先ほどの御指摘もありましたように大変多いように伺っております。  生保協会でまとめた実績でも、一般相談、苦情を合わせて平成九年度で二万三千五百五件、平成元年に比べて約四倍にも達しているような状況であります。また、損保の自動車保険相談件数を見ても、平成九年度におきましては六万八千件と膨大であります。別に国民生活センターにも、平成十年度途中でありますが、生保では二千二百九十一件、損保でも七百一件の苦情が寄せられていると聞いております。  こうした数字は、苦情のみでなく一般相談も多少入っていると思われますが、ここで、生保協会と損保協会吉田樋口参考人にお伺いしたいと思います。  このようにたくさんの相談、苦情が寄せられておりますこと、数字も増加傾向にあるという実態についても、両協会としてはどう認識しておられるか、その所感についてお伺いしたいなと思います。第一問であります。
  15. 吉田紘一

    吉田参考人 ただいま先生がおっしゃいましたとおりの状況にございます。  特に昨年度は、苦情件数、お申し出件数が二万三千件を超えるという状況になっておりまして、大変ふえてまいりました。この原因は、昨年四月に日産生命が破綻をしたということ、それから、それに続きまして大手の都銀あるいは証券会社の破綻が相次ぐといったようなことで、金融システムそのものに対する国民の不安が増大した結果であろうというふうに思います。  いずれにしましても、二万三千件に及ぶ相談、苦情が寄せられているという事実そのものは、私どもとしては厳粛に受けとめておりまして、生命保険協会においては、本部生命保険相談所、あるいは全国にある五十三の地方事務室に相談事務所を設置して、広くそうしたことにお答えをするというような体制をしくなどして、積極的にそういうものにお答えをしていこうという努力を現在続けているところでございます。  以上でございます。
  16. 樋口公啓

    樋口参考人 それでは、ただいまの御質問にお答え申し上げます。  先ほど冒頭でも申し上げましたが、当協会自動車保険請求相談センターでお受けいたしております御相談件数は、昨年度の全保険会社自動車保険保険金支払い件数は約五百八十万件でございますので、六万八千件という件数というのは、もちろん厳粛に受けとめなければならない数字ではございますが、その水準は一・二%、支払い件数の約一・二%についてそういう問題が起きているというふうに御認識を賜りたいと思います。  その御相談の主な内容につきまして分析をいたしますと、過失割合や示談方法などの事故の解決方法に関するものが約四万件、請求書類の作成方法等の保険金請求方法に関するものが約一万四千件でございまして、これらが全相談件数の約八割を占めております。  また、御相談件数が近年増加しておる背景につきましては、自動車保険につきましては、大体御契約十件ございますと一件ぐらいは事故が出ておりまして、極めて日常的に自動車保険を御利用いただいているというようなことから、御契約者等の保険に関する関心が高くなってきたということが考えられまして、また、協会といたしましても、このセンターの存在を積極的にPRしてきたというような事情も背景にあるかというふうに考えております。  協会といたしましては、今後とも、御契約者方々自動車保険を御利用されやすいように相談対応を一層充実させてまいりたいと存じておるところでございますし、また、各損害保険会社におきましても、いわゆるCS活動は一層充実されるように期待しているところでございます。  なお、苦情対応につきましては、今後とも、各損害保険会社と連絡を緊密に行いながら、誠意を持って対応し、迅速な解決に向けて一層の努力を続けてまいりたいと考えております。  以上でございます。
  17. 桜田義孝

    ○桜田委員 次に、また両参考人にお伺いしたいのですが、保険の営業方法の特殊性についてということでお伺いしたいのです。  私は、保険契約でトラブルが多いというのは、先ほど意見陳述の中にもありましたように、基本的に保険の営業方法、勧誘の仕方に問題があるのではないかというふうに認識しております。  通常の消費経済行為の場合は、例えば、人は、お金を持って電器屋さんに行ってテレビを買ったり、八百屋さんで野菜を買ったりするわけですが、ある意味で、積極的に欲望を満たすものが欲しいという動機づけがあります。そして、目や感触等、五感でそれを確かめて購入するというのが一般的なわけです。  しかし、私は、保険契約の場合、自動車保険にしても、火災保険、また生命保険に関しましても、積極的に保険に入りたいと思って代理店に出向いていく人というのは余り聞いたことがないわけなんであります。そこで、家や自動車を購入する場合をとってみても、保険の価値は認識しつつも、どちらかといえば受け身的、抱き合わせのような守勢的な形で契約することが非常に多いのではないだろうか、そんなふうに考えております。  ここでは、積極的に商品を検分してテレビや野菜を買うというスタイルではありません。保険は、加入してしまえば不慮の事故に対して常に効果が発揮できますが、加入の選択に対しては日常生活性を持っておらないというふうに思っております。そこで、準備不足で知識にも乏しい人が、目に見えない、理解が難解な商品を不安解消のため何となく買ってしまうというようなことが多いのではないだろうか。  私は、このような保険の業務上の性質こそがトラブルに大きく影響しているのではないかと思っております。特に、保険契約約款一つ見ても、多くの皆さんが言われているように、極めて小さな字で書いてあるということがよく話題にのります。外務員の説明やパンフレットも、商品の長所については誇大にしているような部分があるのではないかと思っております。  そこで、私は、契約者保険会社の理解度格差こそが問題の核心であるように認識しております。こうした視点につきまして、生損保業界としてはどのような認識を持っているのか、その対応策充実度についてお伺いしたいな、そんなふうに思っております。
  18. 吉田紘一

    吉田参考人 御指摘にございましたとおり、保険というものは、その仕組みというものをお勧めするという性格上、これを商品という観点からとらえれば、目に見えない、効用が手にとって理解できないというような性格を持つものでございます。  先生、勧誘の仕方に問題があるのではないかとおっしゃいましたけれども、私どもとしましては、生命保険に対するニーズ、必要性というものは全国民がお持ちであると認識をいたしております。意見陳述でも申し上げましたとおり、現実に、一年間に民間生命保険会社保険金給付金として十七兆四千億円にも上るものをお支払いしていることが、ニーズそのものがあるということを物語っているのだと思います。  したがいまして、私どもとしては、眠っております生命保険に対する必要性といったものをどのようにして御理解をいただくかということが、一番大事な営業活動と申しますか、国民皆様と接するときのポイントであろうと思います。  私ども会社は、そうした観点から、特定の商品を除きましては、お一人ごとに状況の異なる方々のライフプランに合わせて最適なものがお勧めできるように、営業職員というチャネルを通じた対面販売を行っていくことが最適ではないかと考えております。それだけに、お勧めをしてまいります営業職員生命保険そのものに対してきちっとした知識を持つこと、そして、これを正確にお伝えする技量を磨くことが一層必要になってくるのではないかと思っております。  また、そうしたことを通して、契約を締結する際の約款等の字が小さいではないかというような御指摘はまさにそのとおりでございまして、いろいろなケースに応じた場合を想定して約款というものを決めておりまして、保険商品というのは、いわばこの約款そのものが商品というような性格がございます。そうした観点から、順次工夫はしてまいりましたけれども提供する商品内容提供する特約の商品がふえるたびに、お知らせをすべき条項がふえて現状のような状況になっておりますけれども、この点につきましては真摯に受けとめまして、何らかの改善に向けて現在努力をしているところでございます。  以上でございます。
  19. 樋口公啓

    樋口参考人 ただいまの御質問にお答え申し上げます。  桜田先生から御指摘のございました商品に対する理解度という点につきまして、私ども商品内容が目に見えない、あるいは商品内容そのものが約款という契約条項になっているという保険が持ちます商品の特性上、先生の御指摘どおり、残念ながら、御契約者の方と保険会社との間で理解度に格差が生じやすい面があるというのは事実であろうと認識いたしております。  したがいまして、私ども損保業界といたしましては、このような保険商品特性から起こり得る理解度の差を極力少なくし、御契約者商品内容を十分御理解いただき、納得して御加入いただけますよう、より一層努力する必要があると考えております。  そのためには、お客様一人一人のニーズを把握して、お客様へ適切な説明のできる、顧客対応力にすぐれた販売代理店の育成が極めて重要なことと考えております。各社とも、自由化の流れの中で、お客様から選ばれるコンサルティング能力の高い代理店の育成を目指し、資格教育、研修、現場での実践を通じた能力の向上等に力を注いでいるところでございます。  また、代理店説明能力向上とともに、商品そのもののわかりやすさについても工夫を重ねてまいらねばならないと考えておりまして、第一には、国民生活審議会の御提言なども踏まえまして、文言の平明化など、約款全般の見直しを行っていきたいと考えております。  第二に、パンフレット等の募集ツールの工夫でございますが、契約時にお客様にお渡しするパンフレットは、商品をわかりやすく御説明する、あるいは保険金をお支払いできない事項等を正確に御説明する重要なツールとして、損保会社各社が力を入れて作成しているものでございます。さらに、会社によっては、重要な事項を簡潔に記載した重要事項説明書をお渡しする等の努力も重ねてきているところでございます。  以上のような代理店育成のための教育保険商品約款の平明化、募集ツールの工夫などに注力することにより、今後とも、理解度格差の問題の是正に向けて一層努力を続けてまいりたいと考えております。
  20. 桜田義孝

    ○桜田委員 両参考人対応に随分開きがあるように感じたわけなんですけれども、生保協会の会長さんに再度お尋ねしたいのです。  約款説明については何らかの検討が必要だというわけですが、見づらくて小さいというなら、もうちょっと大きく、わかりやすくすることで簡単にできるのではないのだろうかという気がするのですけれども、いつもこういう質疑のとき、何らかの検討というものは、やはりちょっと漠然としているなと思います。お答えの中で、外務員の営業方法についても、国民のニーズということを前面に押し出して、営業マンの方法について、トラブルの原因に対する認識がちょっと足らない、そんな感じがいたしました。  それで、外務員の問題について生保協会の会長さんにもう一度お尋ねしたいのですけれども、今回の和歌山保険金詐欺事件を見ても、やはり外務員については非常に大きな問題があるのではないだろうかというふうに思っております。先ほど陳述の中でも言ってはおりましたけれども、あのとおりいっていればこういう事件は起こらないのではないだろうか、なぜ起こったのか、ここが問題ではないだろうかという気がします。審査等が外交員や営業担当のコネや裁量でずさんに行われかねない事実というものが浮き彫りになったのではないだろうかというふうに思います。  先ほど、国民生活センターの調べでも、外交員がセールストークで言ったことと保険会社の後の対応が食い違ったことによるトラブルなどの報告例も多々ございます。私としては、保険会社が外交員の言動をもっとしっかり監督すべきではないだろうか、そんなふうに考えております。  生保協会吉田さんにお伺いしたいのですが、そもそも外交員と保険会社とはどのような関係にあるべきだと思われますか。ちょっとお伺いしたいと思います。
  21. 吉田紘一

    吉田参考人 意見陳述では、私どもが目指して努力をしているところを中心にお話を申し上げました。それと、ほかの参考人、あるいはただいま先生から御指摘がございましたように、現実が食い違っているではないかという御指摘であろうと思います。  おっしゃるとおり、私ども一つの理想として掲げて目指しております方向と現実の間に差がありますことは、残念ながら事実でございます。しかしながら、このような仕組みをしっかりと作動させていけば、先ほど意見陳述をした方向に向かって、会社としての責務を果たせるはずであるという確信のもとに今後も努力をしてまいりたいと考えているところでございます。  業界では、生命保険募集に従事する職員の呼称を早くから営業職員というふうに変えて、これも、営業職員という呼称にすることによってこういう人たちに職業に対する誇りを持たせようとか、そういうふうなことに一生懸命努めておるところでございます。これがまさに、こういった職員会社との関係をどう考えているかということに対する一つの答えなんでございますが、お客様は、この営業職員を通して会社というものを初めて知っていただける、商品というものを御理解いただける、いわば営業職員お客様との関係においては会社を代表する立場にあるというふうに考えております。  それだけに、先ほども申し上げましたように、この一人一人の営業職員会社を代表するにふさわしい、正しい保険知識をしっかり持つこと、これをしっかり伝える技量を磨くこと、これに重点を置いて、鋭意、教育制度を初めいろいろなことの改善に向けて努力をしているところでございます。
  22. 桜田義孝

    ○桜田委員 時間がないので端的に聞きますが、損保は大概契約が一年、長くても三年から五年で終わってしまいますけれども、生保の場合は二十年、三十年という長期にわたりますので、誤解度、契約者、お客さんと会社が誤解したためにできるような場合も踏まえて、年に一回契約内容をはがきで通達するだけではなくて、二十年、三十年物については、三年ないし五年に、文書ではなく、区切りを定めて、面談によって契約内容確認するようなことが必要ではないかと思うわけでありますが、端的に、考えがあるかどうかだけ、ちょっとお伺いしたいと思います。
  23. 吉田紘一

    吉田参考人 おっしゃるとおりでございまして、各社ともにそういう認識を持っております。私どもでも、そうしたようなことに、既に専門の職種をつくる等の対応をしているところでございます。
  24. 桜田義孝

    ○桜田委員 以上で終わります。どうもありがとうございました。
  25. 前田正

    前田委員長 次に、田中和德君。
  26. 田中和徳

    田中(和)委員 自由民主党の田中和德でございます。  参考人皆様には、御出席まことにありがとうございます。保険契約の諸問題について、特に生命保険協会中心に順次お伺いをしてまいりますので、よろしくお願いいたします。  我が国は、生命保険の世帯加入率が九〇%を超え、契約件数は約一億四千万件、契約高は二千兆円となり、また損害保険契約件数は約二億件、契約高は約一京八千数兆円という、大変規模の大きな国になっております。勤勉で自助努力を重んじる国民性を生かし、また業界などの関係各位の御努力の中、世界有数の保険大国を築き上げてきたと言えると思います。  そして、今後、少子・高齢化が進展する中、国による社会保障制度を補完するものとして、相互扶助精神に基づく保険制度はますます重要性を増してくる一方だと思うのであります。この点、介護費用保険や医療費用保険などの、高齢社会対応商品保険料を所得控除する制度を創設するなど、税制面からも国民の自助努力を積極的に促進していく必要があると私は思います。  このように保険制度が転換期を迎える中で、昨年四月の日産生命保険の破綻を機に生命保険の解約が相次ぎ、また経済不況のあおりにより国民保険離れが進行しつつあるのもまた事実であります。  また、二年前の生損保双方の相互乗り入れや、去る十二月一日からの投資信託の販売開始など、二〇〇一年に向けた金融ビッグバンの着実な実施に伴い、現在、保険業界は生き残り競争の真っただ中にありますが、多数の海外企業の参入も相まってますます競争を激化させており、消費者利益を軽視した弱肉強食の経営手法に陥らないか憂慮されるところであります。  最近では、特に、保険制度に対する国民信頼を大きく揺るがすものとして、和歌山保険金詐欺事件が残念ながら発生をいたしました。事件の真相については、今後、当局による捜査と司法手続により明らかになってくるものと思いますけれども、過去の数多くの保険詐欺事件の中でも、これほど保険金の受領総額が大きく、国民の関心を呼んだ事件はなく、相互扶助信頼関係という保険制度の根本原則を覆しかねない重大な事態だと私は考えます。  形式的には各保険会社保険金詐欺の被害者ということになりますが、しかし、マスコミ報道によれば、保険契約時、そして保険金支払い時の審査の不備は目に余るものであると思います。大多数の善意契約者の感情からすれば到底許されるものではない、このように私も思うのであります。  契約欲しさに契約者への説明責任を怠り、言葉は悪いのですが、ごまかしやだましを平気で行ってしまう。また、チェック体制が形骸化して不正を誘発し、極端な例では、契約者といわばぐるになって保険詐欺を行うような外交員まであらわれてしまう。決してこのような状態が放置されていいはずはないわけでありますし、業界も真剣に努力をしておられると思います。  先ほど私が述べたような、少子・高齢化に向けた税制優遇制度を実施する前提としても、善意契約者信頼回復が不可欠でございます。契約至上主義でモラルリスクを軽視した営業姿勢に関して、保険業界にこの際、対策とあわせて猛省を促しておきたいと思うのであります。  本日御出席の各参考人より厳しい御指摘もありましたけれども保険制度に対する国民信頼が揺らいでいる現状に対してどのように考えておいでか、まず吉田会長と樋口会長に、業界を代表して一言ずつお答えをいただきたいと思います。
  27. 吉田紘一

    吉田参考人 最初の意見陳述の際に申し上げましたとおり、私どもには、保険契約者の集団善意な方で構成されるように徹底をして、その責任を果たしてまいる必要があるという認識をしております。今回、そのようなことが結果として果たせなかったことについて、残念に思うと同時に、先ほどおわびを申し上げた次第でございまして、るる手段等について申し上げました。そういう仕組みをさらに今後ともしっかりと機能させるとともに、必要な改善の手を打ってまいりたいというふうに考えております。
  28. 樋口公啓

    樋口参考人 お答え申し上げます。  私どもにとりまして何よりも最も重要なことは、お客様損害保険事業全体に対する永続的な信頼と支持をいただくことであると考えております。そのために、損害保険協会といたしましては、協会加盟の各社が透明で公平、公正な事業運営を行い、国民生活の安定と日本経済の発展に貢献するよう全力でサポートしてまいりたいと考えております。  保険事業に対する信頼が揺らぎますことは、事業の根幹にかかわることでございまして、あってはならないことと存じております。今回提起されました問題点につきましては、これを真摯に受けとめ、消費者皆様や社会からより一層の信頼と信認を得られる損害保険事業を目指しまして、損害保険協会といたしましても引き続き全力で取り組んでまいりたいと考えております。
  29. 田中和徳

    田中(和)委員 私は実は、会長にお出ましをいただいておりますけれども、住友生命に加入している者の一人でございます。  そこで、少し経験というか、いろいろなことをお尋ねをしていきたいと思いますが、まず、医師診断書の審査についてお伺いをしたいと思います。  生命保険の給付の審査の際の医師による診断書について、チェック体制が形骸化し、不正を誘発しているのではないかというお話があります。  私が親しくしているドクターに聞いた話でありますが、その方もこれまで何度となく保険会社に提出する診断書を作成したことがあるそうでありますが、その後、保険会社から何らかの問い合わせを受けたことがない、このように言っておられました。  数え切れないほどの保険給付があることを考えると、一つ一つの診断内容の真偽を具体的に確かめることは事務的に非常に困難であることは察しできますけれども、また、損害保険の場合は、本人の傷の状態と診断書を比べて見れば、わざわざ医者に問い合わせるまでもない、簡単に明らかになる場合も多いのだろうと思いますが、生保の場合は、病気は外から見たのでは容易にはわからないし、もし診断書が偽造によるものだとしたら、全くチェック機能が働かないことになってしまいます。特に疑わしいものは、医師に問い合わせるなりチェックしておられるのだと思いますけれども、私が知る限りそれはレアケースだ、このように思います。  膨大な診断書の数であることはわかりますけれども、私のような素人から見ると、病状の真偽の確認はともかく、その診断書の出所が本当に診断書に記載されている医師によるものかどうかぐらいは、電話一本をかけて丁寧に確認するのが当たり前じゃないかな、このように思っております。また、診断書に書き添えた文字がそのまま通ってしまったなんということも報道されておるわけでございまして、大変心配をするわけであります。  実際のところ、医師診断書内容確認をどのように行っておられるのか、改善すべきところはないのか、再度吉田会長にお尋ねを申し上げたいと思います。
  30. 吉田紘一

    吉田参考人 最初の、診断書が偽造された場合にはどうだというお尋ねでございますが、私ども会社では、診断書が偽造された場合、存在しない病院名、医師名が記載されている場合、これについては、十分にこれを見逃さずにチェックをする機能が働いているというふうに申し上げられると思います。  また、次にお尋ねのありました、そういう診断書の中身をチェックしているのかということにつきましては、先ほども少々触れましたけれども内容につきまして疑義がある場合には、全件、契約確認の専業職員による確認を行う等の手段を講じまして、きちっとした確認をしているところでございます。決して、おっしゃられたような形で、数が多いからそれに対応できていないということはございませんので、御理解をいただくようにお願いを申し上げます。
  31. 田中和徳

    田中(和)委員 せっかくの努力をぜひ願いたいと存じます。  続いて、団体定期保険に関する問題についてお尋ねをいたします。  不正な契約排除し、保険業者と消費者信頼関係を保つという意味で、現在政府の国民生活審議会で議論されているいわゆる消費者契約法が今注目をされつつあります。ことしの去る一月にその具体的内容について中間報告が出されており、間もなく法案化に向けた最終報告が取りまとめられることになっております。  消費者契約法の成立により、確かに契約者の権利保護は図られますが、法人契約のように契約者と被保険者が異なる場合の被保険者の権利保護はなかなか図れないのではないかと思います。  団体定期保険・Aグループ保険は、その後内容の見直しが図られ、名称も総合福祉団体定期保険へと変わりましたが、従業員が死亡した際の遺族補償などに充てるため、企業が従業員を被保険者として生命保険会社契約する掛け捨て保険で、保険料は企業が負担しますが、一般の個人保険より安くなっています。  一昨年の六月に、団体定期保険・Aグループ保険に関してある報道がなされました。その内容は、大蔵省や生命保険協会でも統計をとっていないそうですが、独自に生保各社調査し、集計したところ、全国契約額が二百数十兆円、加入者も三千万人以上、死亡率から推定すると、そのうち年間五万人以上が死亡し、保険金は数千億円にもなるということであります。  生命保険会社の勧誘文書には、「会社が遺族に弔慰金や死亡退職金、法定外の労災補償金として支払うための制度」と書いてあります。その文句どおりなら全く問題はないのでありますが、福利厚生の一環として、そういうことであればむしろ従業員の利益になると思うのであります。しかし、実態はどうかといえば、財団法人労務行政研究所による当時の調査では、五割の企業が遺族には全く支給しないとしておりまして、遺族に全額支給するという企業はわずか二割にすぎない、こういうことであります。  Aグループ保険は被保険者の同意確認が不要で、保険証書も会社保有のために、従業員も遺族も保険加入の事実すら知らないことが大多数のようであります。一方、会社保険請求をするには死亡診断書が必要になりまして、遺族から入手する際に年金申請に必要と虚偽の説明をして訴訟になることも多く、中には会社が勝手に遺族の了解があるといって病院から死亡診断書を八通とった事例まであったと言っております。こうした会社側の姿勢も問題ですが、初めから保険加入の目的が保険会社からの投資やビル建設や備品納入などの受注の見返りという会社も多いと生保の幹部の方が述べておられるということもあります。  私は、この報道に触れて、契約至上主義で不正を真剣にチェックしようとしない生保の体質が底流にあるのではないか、自分の知らない間にこんなに簡単に自分に保険が掛けられたり保険金契約者に支払われたりすることがあるんだな、このように私も驚いているのであります。そして、一歩間違ったらだれしも被害者に、あるいは大変な事件に巻き込まれかねない、このようにも思うのであります。  先ほど触れたように、Aグループ保険はその後見直しが図られ、保険金額の設定が企業の弔慰金規定などに準拠することになり、また、保険者の同意確認として会社を通じて保険会社が各被保険者に文書で通知するように改善が図られました。しかし、同意確認については、被保険者が不同意の意思を示さなければ同意とみなすという方法でありまして、外交員と企業担当者が協力すれば、文書の通知を意図的に怠れば保険会社はそれをチェックしようがない、こういう状況にあるわけでございまして、いろいろと問題はございますけれども和歌山保険詐欺事件でも、被保険者の同意を得ない法人契約の存在が指摘されておりました。根底で通ずるものがあると思うのであります。  時間が参りましたから、一言だけ、この点、これから大きな問題を引き起こす可能性がさらにあるわけでありますので、この点についての改善方、また考えについて一言御答弁を願いたいと思います。
  32. 吉田紘一

    吉田参考人 これまで販売をいたしておりました団体定期保険についての問題は、ただいま先生が御指摘になったとおりでございます。こうした状況を受けまして、御指摘のとおり、この商品については全面的に販売停止をいたしまして、新しい商品である総合福祉定期に今切りかえを完了しつつあるところでございます。  その中で、総合福祉定期になった場合に、その同意確認の中に一部不同意者を確認するというにとどまるところがあるではないかという御指摘でございました。これについて改善をする気があるのかどうかという御質問に対しては、現在協会の方でその必要性を認識して改善の検討を進めているところでございます。よろしゅうございましょうか。
  33. 田中和徳

    田中(和)委員 時間が参りました。我が自由民主党も私自身も、大変国民の利益につながる保険業界信頼と安定のためにも一生懸命努力することをお誓いをして、また、今後の参考人の各先生方にも御指導をお願いしながら、私の質疑を終わらせていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  34. 前田正

    前田委員長 次に、城島正光君。
  35. 城島正光

    ○城島委員 民主党の城島でございます。  きょうは、大変お忙しい中、五名の参考人皆様方、おいでいただきましてありがとうございます。  私の方からは、今お二人の自民党の先生方から御質問がありましたので、できるだけダブらないような形で、中心的には生保を中心に少しお話を伺いたいと思っております。  先ほど、それぞれ吉田参考人あるいは樋口参考人からお話がありましたけれども我が国の今の社会保障制度といいますか、特に公的な社会保障制度、ある面でいうと新しい時代あるいは大きな曲がり角に来ているかもしれませんが、そういった中で、これから新しい社会の中でより一層国民の生活に、あるいは福祉を充実させていくという観点からいっても、この保険というのは極めて大事であるというふうに私も思っているところであります。  そうした状況を含めて見ましたときに、先ほどこれも御報告ありましたけれども、日本は、生命保険、これは世界第一位であるし、損害保険、損保も世界第二位の、ある面では保険大国である、こういうことが言えるかと思います。さらに、先ほど申し上げましたように、保険というものが現実的には国民生活の必需品みたいな、そういった状況になっているのではないかということからしても、保険業界に対する期待が、我々自身もあるいは国民全体から見ても大きいし、また、そのために責任も極めて重大であると思っております。  保険業界、生保、損保ともに、今この業界を取り巻く環境も、いわゆる自由化を含めて、あるいは低金利の時代を含めて大変な状況にあると思いますが、そうした状況の中で、的を少し絞りますと、今回の和歌山保険金、ある面で詐欺事件と言った方がいいかもしれませんが、こういったものは、捜査が進めば進むほど、我々に対して大変衝撃を与える事件であった。一言で言うと、なぜああいうことが起こり得るのか、それこそ、先ほど吉田参考人おっしゃいましたけれども保険そのものが善意契約者、善良な契約というか、そういうことから成り立っている。圧倒的に多くの善良な保険契約者からすると、言葉はないということではないかなというふうに思っております。  そういう点でいうと、ある面では確かに特異な事件かもしれませんけれども、これを突き詰めていくと、先ほどから佐藤参考人あるいは及川参考人もおっしゃった、そういう報告からすると、この和歌山事件というのは、ひょっとすると構造的な問題が根っこにあるのではないかと私は思っているわけでありまして、そうした構造的な問題がある面集約をして、あるいは象徴的に特異な事件として浮き彫りになってきているのではないかなというふうに思っているところであります。  そういう観点から、まず吉田参考人にお尋ねをしたいわけでありますが、先ほど御説明いただいたチェックシステム、引受業務における確認プロセス、第一段階から契約確認の補強方策まで御説明いただきましたけれども、これだけの確認プロセスあるいはチェックシステム、かなり厳重なのがあるわけでありますが、これがきちっと機能をしておけばあそこまでいったのかなというのが素朴な疑問であります。この点について、これだけの厳重なチェックがあったにもかかわらず、ああいった事件が起きている。こういったチェックシステムの観点からいって、原因が一体どの辺にあったというふうにお思いになっているか、まずその辺を吉田参考人にお尋ねしたいと思います。
  36. 吉田紘一

    吉田参考人 チェックのシステムにつきましては、先ほど申し上げたとおりでございまして、現実の和歌山事件を見ますと、この仕組みがうまく機能していなかったということは事実でございます。  ただ、これにつきましては、私ども会社としてはこの被疑事項に該当する契約がございませんので、なぜそういうチェックシステムがかいくぐられたのかというような詳細については、現時点でお答えができるものを持ち合わせておりません。  いずれにしましても、この事件の捜査の進展を待ちまして、我々がせっかく長年にわたって、努力によって積み重ねてきたこの仕組みがなぜ機能しなかったのかということについては、真相判明次第、率直に反省もし、改善が必要であれば手を打ってまいりたいというふうに存じているところでございます。
  37. 城島正光

    ○城島委員 そうしますと、先ほど御説明があったようなことがもし本当にきちっと機能していれば防げたのではないかという認識であるということですね。ただ、それが具体的にどういうところにあるかはこれから少し検討してみたいというふうに受け取りましたけれども、それは一連の状況が詳細になった段階で、ぜひ業界としてしっかりと対応していただきたいと思います。  そういう点で、やはりこのチェックシステムというのは、単なるシステムじゃなくて本当の意味で機能するということが大事だということでありますが、もう一点、そういう観点からいって、この第三段階あたりになるかもしれませんが、モラルリスクを含めた最終的な引き受けの可否というのは一体だれが現実的には判断されているのか。  特に、契約者に対して、医師の健康診断等というのは、これも替え玉とかありますが、かなり重点的に診査されているようでありますが、契約者にふさわしいような契約になっているかどうか。例えば年齢とか家族構成あるいは収入といった面での、きちっとした面談も含めた、そうした契約内容に対するチェック、そしてそのための、その人にふさわしい契約かどうかというものの最終的な判断というのは一体現実的にはだれが判断されているのか、吉田参考人にもう一度お伺いしたいと思います。
  38. 吉田紘一

    吉田参考人 医的な面につきましては、査定というものを担当する専業の医師によって徹底的に過去の病状あるいは現在の健康状態といったものを確認しております。  それから、先生御指摘の、この契約に不正利用目的がないか、いわゆるモラルリスクの懸念がないかといった点につきましては、契約の総合査定を担当する職員を配置いたしまして、この職員が先ほど申し上げました協会システムへの照会をする、あるいは過去のいろいろなノウハウを生かしながら、そのケース、ケースで判断をする、こういうそれぞれの観点からのリスク管理を突き合わせて、最終的に契約管理部長、あるいはこれを担当するところで最終判断をしていく。商品の中身あるいは額によってその決定権者を明定しておりまして、その責任においてお引き受けの決定をしているという状況にございます。
  39. 城島正光

    ○城島委員 それはきちっと、だれが最終決断者というか最終判断者かというのが明確になっているということですね。
  40. 吉田紘一

    吉田参考人 御指摘のとおりでございます。そういうふうに明確に決定権者を明らかにして、そのもとで契約の引き受けを決めておるということでございます。
  41. 城島正光

    ○城島委員 そうしますと、今度の和歌山のも、これは生保だけじゃありませんが、全部で百件を超す保険契約され、しかも十億単位ぐらいの大変な金額になっているようでありますが、例えば生保でいきますと、それの一つ一つ契約について、最終的に正否を、あるいは可否を判断した責任者というのはシステム上はきちっといらっしゃるということでとらえていいのですか。
  42. 吉田紘一

    吉田参考人 ただいま先生がおっしゃいました保険金額の問題は、あちこちの会社に加入したものを合計しての額でございます。私が申し上げておりますのは、それぞれの契約が、お申し出があった場合、私ども会社としては一件一件ごとにそういったような仕組みを通して可否を判断している、こういうことを申し上げたのでございますが、よろしゅうございましょうか。
  43. 城島正光

    ○城島委員 いや、それはちゃんと理解をしております。したがって、そういうふうに一件一件きちんと仕組み上はその保険について可否を判断する人たちが明確になっているというふうにとりましたが、それはそういうことで結構だと思います。  そうしますと、やはりまたもとに戻ってしまうわけでありますが、そういったものがきちんと、しかも役割どおり機能していれば、すべてを防げたかどうかあれですけれども、今回のような事件までにはいかなかったのかなという思いが、聞いていれば聞いているほどするわけであります。  そういう点でも、この引受業務に関する第一段階から一連のチェックシステム、さらには一人一人の、それに対応する責任者の人たちが与えられた責務をきちんと果たしていれば、少なくともかなりの部分を防げたのではないか。もちろん、先ほどおっしゃいましたように、相互の契約内容登録制度というようなことでの情報交換といったことも確かに大事ではあるでしょうけれども、まずはそれぞれの窓口というか各企業の中でそういったことがきちっと機能していくということが極めて大事ではないか。  そういう点で、最終的な引き受けの可否をきちっと判断するところの機能ということも、それだけの今までのチェックシステム、そこの部分におけるチェックシステムでいいのかどうかというようなことの見直しが必要ではないかという感じがしておりますので、もう一度御検討いただければというふうに思います。  それからもう一点、構造的問題という点で、構造的な問題は何かという観点から営業職員の皆さんについての問題をちょっとお尋ねしたいわけでありますが、これは先ほど佐藤参考人からも若干問題指摘があったところであります。  とりあえず佐藤参考人にお伺いしたいわけでありますが、ノルマと処遇という点で指摘がありましたけれども営業職員のあり方。確かに私も、長年国際競争というか、競争にさらされている企業にいますと、当然ある面でいうと、競争に打ち勝っていかなければいかぬ。そういう点からすると、ノルマというか適正な目標というものがどうしても必要だし、その成果に応じた処遇というのもバランスよく必要なんですね。そういう点からすると、今の佐藤参考人のとらえていらっしゃるこの保険業界における営業職員の待遇、ノルマと処遇という面ではどの辺がバランスを失しているというふうにお考えなのか、ちょっとお尋ねしたいと思います。
  44. 佐藤立志

    佐藤参考人 私は実際に営業職員の方によくお会いしているのですが、今回の和歌山事件の後もお会いしているのですが、最近は非常に保険契約がとれないということで、これは大手生保の例でございますが、インセンティブというのは基本的に契約保険金額と件数、それとあと基本給という形でなっておるというふうに聞いております。  その契約金額については、非常に契約がとれないものですから、会社の利益になる、利益が大きいものについては一件とれば一・五件にカウントするとか、あるいは定期つき終身の金額の場合は、五千万円の定期つき終身の契約であれば五千万カウントする。しかし、養老保険とか年金とかいう、会社が運用しなければいけない、非常に会社のリスクを確かに伴うようなものについては、五千万あるいは一千万の契約をとっても〇・五掛けだよとか〇・六掛けだというような形でなっておりまして、しかも、ノルマ的には非常にこのごろは過重になってきておるというふうに、私がお会いしました大手生保さんの複数営業職員の方は申しておりました。  最近は営業職員の方が減ってきていることは確かなんですね。業界ではリストラを進めている結果だというふうにおっしゃっているのですが、私が聞いたところは、ノルマがきつくて自然退職しているんだというようにおっしゃっておりました。
  45. 城島正光

    ○城島委員 恐らく、吉田参考人の方はちょっと反論があるかもしれませんが、いずれにしても、先ほど吉田参考人もおっしゃいましたけれども、この営業職員に対する戦力化というのでしょうか、極めて大事だという認識で取り組まれている。私も、労働組合の生保労連を含めて、労使が営業職員方々の育成ということについてかなり最重要課題として取り組まれていることは十分承知をしております。  ただ、そういう中で、現実としてはなかなか、今佐藤参考人もおっしゃったように、背景がそうであるかどうかというのはいろいろあると思いますが、定着率を含めてなかなか難しい、あるいは目に見えて向上が、改善が難しい状況にあるということではないかなというふうに思います。  よく言われますように、定着率あるいは勤続年数というのでしょうか、月数と言った方が早いのかわかりませんが、そういう非常に短い期間でターンオーバーされている。ところが、業界を取り巻く状況からすると御案内のような状況でありますから、一言で言いますと。そうすると、本当に戦力になる人材というのが重要になってくるのではないか。処遇面からいっても、その成果に比例したというのですか、ある程度成果を入れた処遇にすればするほど、本来でいうと、本当の意味の戦力になっている人材が処遇が高くなっていくというのが普通に考えれば当然だと思うわけであります。  そういう点からすると、やはり実態の、今の非常に短い期間で離職率あるいはターンオーバーが多いというのは、本来的なそういう姿からしてもちょっといびつではないかなという感じが私はしているわけであります。本当の意味での競争、いわゆる競争というのは、消費者に対してトータルのサービスをきちっと売っていけるという人材を育てるには、やはりこの辺はひとつ、勤続が延びていく、定着率が高くなるということが極めて重要なメルクマールになるのではないかというふうに思っておりますが、そういう点で、もう一度吉田参考人に、この辺についての具体的な取り組みあるいは御見解を承りたいと思います。
  46. 吉田紘一

    吉田参考人 おっしゃるとおりでございまして、先ほども申し上げましたように、お客様は、一人の営業職員を通して会社を知り、商品の購入動機を高めるという立場にいらっしゃいますから、私どもとしては、営業職員を何としてもそのお客様に納得して選んでいただけるようなレベルに達するまで訓練を積み重ねたいということを理想といたしております。  しかしながら、現実は、その目指すところとかなりの懸隔があるということは御指摘のとおりでございます。せっかく御縁がございまして御契約をちょうだいしたにもかかわらず短期で離職をするということがありますと、お客様に迷惑をおかけいたしますし、また、会社経営上の観点からいいましても、一人の営業職員を採用して教育をしていくということにはかなりのコストもかかるわけでございますから、そういった観点からもはかり知れない損失があるわけでございます。  そうしたことから、私ども会社でも、二年間の教育プログラムというものを用意して、これを順次状況に応じて改善をしながら、資格、能力の向上に努めているところでございます。業界共通でいえば、一般課程の試験を受けるところから始まる教育専門課程、応用課程あるいは生命保険大学といったような、それぞれグレードアップするような教育システムを用意いたしまして、業界共通の教育体系の整備、運営を行っておりますし、各課程の修了者に対しては、称号認定の賞の授与を行う等のインセンティブを与えて、研さんを一生懸命支援しているところでございます。また、全国生命保険労働組合連合会とも毎月一度定例的な会合を行いまして、こうした問題を共有しながら、さらに改善すべきは何かというようなことについて引き続き努力をしているところでございます。
  47. 城島正光

    ○城島委員 ぜひその辺はさらに検討を加え、改善の方向に努力をしていただきたいと思います。  もう一点、先ほどから、落合参考人を含めて情報のオープン化ということが指摘されております。そういう観点に立っても、先ほどちょっと触れられましたけれども、生保のかなり大部分というのですか、数からいくとそうではありませんが、大手のほとんどは今相互会社の形態をとられている。いろいろな要素から、これからの選択の幅あるいは競争という観点からも株式会社構想というのはあるようであります。同時に私は、やはり外部からのチェックがいい意味できちっと入るという観点からも、外部チェックが働きにくい構造に今相互会社の場合なっているのではないかという観点からも、この株式会社化というのは大事なポイントではないかと思っておりますが、ポイントだけで結構でありますが、生保協会として、こういった相互会社の持つ構造的な問題ではないかと言われているような点についての御見解を、株式会社化を含めて承れればありがたいと思います。
  48. 落合誠一

    落合参考人 今私の聞いている限りでは、相互会社形態というものを株式会社形態に変えていきたいという希望が現在相互会社の中に相当あるというふうに聞いております。  この理由はいろいろありますでしょうが、やはり一番大きな点は、競争激化する中で会社として十分な競争力を持つためにはそれなりの資本というものが必要になってまいりますが、相互会社形態ですと、株式会社形態と違いまして、資本の調達という点において非常に制約があるという点、一番の株式会社へ転換したいというふうに考えている部分は、確かにそういう点があるかと思います。  他面、今先生御指摘のとおり、相互会社形態で経営の適正化というものについてのチェックが十分働くかどうかという点については、いろいろな議論がございます。その意味では、株式会社形態に変えるということは、経営のチェックという機能は現在よりもある意味で透明度等が高まり、かつ、発言の仕方というものに関しても意味を持ってくるということがあるかと思います。
  49. 城島正光

    ○城島委員 先ほどから和歌山事件に関しての、特にそれを中心保険業界対応について聞いてまいったわけでありますが、現状では、やるべきこと、できること、すべて実行あるいは機能しているわけではないような感じであります。ぜひそれを機能するように、あるいはさらに改善すべき点は改善するということをやっていただきたいというふうに思います。  先ほどありましたように、恐らく実際の実務は各社がやっていくことになると思いますが、そういう点についても、今後協会としても各社に対する指導というものをぜひやっていただきたいと思います。  最後に、ちょっと時間が参りましたけれども、損保について一点お尋ねしたいわけであります。  本日は協会長として樋口会長がお見えでいらっしゃいますが、損保も同じような状況にあるのではないかというふうに思いますが、東京海上の社長として、こういった問題についての御決意なり、今後の対応についてお聞かせをいただきたいと思います。
  50. 樋口公啓

    樋口参考人 お答えをさせていただきます。  東京海上といたしましては、今回の事件につきましては、これを重く受けとめておりまして、いろいろな対策を立てようと。  具体的に考えておりますのは、例えば死亡保険金受取人を指定する契約原則として引き受けないということといたしまして、特に、お客様のニーズがございまして不正契約等のおそれがないと思われる場合は、従来から行ってきております被保険者の同意の確認をより客観的な形で行った上で引き受けるというふうなことにいたしました。  具体的に申し上げますと、保険金受取人を配偶者、親子、孫以外の方に指定されるケースにつきましては、実印と印鑑証明で確認することを原則といたしました。これは被保険者本人であること、受取人指定に同意されていることの二点を客観的に確認するためでございます。  次に、企業が災害補償規則等に基づいて従業員御本人や御遺族にお見舞金等を支払うことを目的とする保険契約の場合は、災害補償規則等の写しを取りつけて、御本人や御遺族に支払う見舞金等に充てるための保険契約であることを確認する、さらに保険金支払いの際には御遺族の了承等を取りつけることを要件といたしました。  従来に比べてやや手続が煩瑣になるわけでございますが、適正な引き受けを行うための措置としてお客様の御理解を得てまいりたいと考えております。  次に、ちょっと長くなりまして恐縮でございますが、保険金を支払う際の弊社の損害サービス体制でございますが、損害サービスこそが保険会社として実際に目に見えない商品が初めて商品としての価値を発現してくる最大の機会でありまして、ここでもってお客様から御評価いただけないと、御評価いただくチャンスがないというふうにも考えております。したがいまして、迅速、親切な損害サービス提供によってお客様に安心をお届けすることが何よりも重要であると考えておりまして、損害サービス充実向上に最も力を入れている次第でございます。  弊社の体制につきましては、ちょっと時間もございますので省略をいたしますが、一方で、先ほど来御指摘のあります不正請求などの特殊なケースにつきましては、弊社の損害サービス体制のもとで、提出されました保険金の請求書類診断書内容を点検して、疑問が生じた場合は詳細な事故原因調査や医療調査を実施し、保険金請求内容を精査することにしております。  傷害保険の重複契約につきましては、事故受け付けの時点で事故情報交換システムによって判明するような仕組みといたしております。  もちろん、先ほど来申し上げておりますが、不正請求が明らかになった場合につきましては、各都道府県単位で損害保険協会内に設置された損保防犯対策協議会を通して各県警本部との連絡や情報交換を行って、不正請求防止、排除に向けた対応を既に行っておるわけでございますが、これを今後とも厳正に運営していく所存でございます。  最後に、自由化に伴う消費者の自己責任の醸成に向けた取り組みという点でございますが、これは先ほど来先生の御指摘もあったかと思いますが、自由化になりますと、商品保険料の多様化が当然ながら進みます。どの会社のどの商品を選ぶかということは、まさに消費者個々人の御判断ということになるわけでございます。  判断の結果は自己責任ということになるわけでございますので、そのために必要な情報につきましては、業界として積極的に提供していかなきゃいけないというふうに考えておりますし、先ほど来申しておりますように、わかりやすい商品づくりに、業界も当然ながら、弊社につきましても全力で取り組んでいくつもりでございます。
  51. 城島正光

    ○城島委員 終わります。ありがとうございました。
  52. 前田正

    前田委員長 次に、青山二三君。
  53. 青山二三

    ○青山(二)委員 公明党の青山二三でございます。  本日は、五人の参考人皆様には大変お忙しい中をお越しいただきまして、ありがとうございます。  このたびの和歌山保険金詐欺事件では、本当に多くの国民が、こうもやすやすと多額の保険金を手にすることができたのか、そして大変不思議に思いながら、また憤りを感じているのではないでしょうか。簡単に自分の知らないところで保険が掛けられて、そして殺人未遂事件まで起こす、こんなことが許されていいはずはないと私は思っております。  そこで私、過日、和歌山の、真須美容疑者が勤務しておりました日本生命の和歌山支社にお邪魔をいたしまして、いろいろとお話をお聞きいたしましたけれども、残念ながら再発を防止するような対策をお聞きすることはできませんでした。日本一と言われる日本生命さんがこんな状態でございますから、ほかの生保もずさんなことが行われているのではないか、そういう強い危倶を持っているわけでございます。  今回の事件で浮き彫りになりました問題を踏まえまして、質問をさせていただきたいと思います。わずか十六分という持ち時間でございますので、御答弁の方は簡潔にお願いしたいと思います。  過日、私が和歌山に参りましたときに、カレー事件被害者の会の方にもお目にかかってきたわけですけれども、この被害者の皆さんの中には、生命保険に加入することを断られた、こういう方がいるというのでございますけれども、実際にそんなことがあるのかどうか、吉田参考人佐藤参考人にお伺いをしたいと思います。
  54. 吉田紘一

    吉田参考人 先生今お尋ねの件は、被害者の中で園部地区の住民ということで断られたという方がいらっしゃるという御指摘でございますか。  そうした事実はございません。お申し込みがございましたら、一般の方と同じお取り扱いをさせていただいております。
  55. 佐藤立志

    佐藤参考人 お問い合わせの件でございますが、もしそういう方がいらっしゃったとしても、保険会社には勤務しているお医者さんもいるわけですから、そちらの方で健康診断なりをして問題なければ私は入れるものだと思っておりますし、また、そういうふうに生命保険仕組みはなっていると思っております。
  56. 青山二三

    ○青山(二)委員 それでは、そういうことでよろしくお願いをしたいと思います。  保険会社営業職員に過重なノルマを課す、こういうことは今までもよく言われておりましたけれども、他人の名義を勝手に使って契約する作成契約というのが多いということも聞いているのでございますけれども、こういうことが今も多いのかどうか、また、そういうことをなくすために何か対策をとっておられるのかどうか、お伺いをしたいと思います。これも吉田参考人佐藤参考人にお伺いをしたいと思います。
  57. 吉田紘一

    吉田参考人 処遇はあくまでも正当な労働の対価であるということを入社時から繰り返し徹底をしているところでございます。事実としていわゆる作成契約があるかないかと問われましたら、残念ながら若干の件数そうしたことがございます。これはなぜ判明するかといえば、先ほど申し上げましたような形で契約確認をしていく過程でそういったことが判明するわけでございます。これはしてはいけない行為でございますので、判明した場合には所定の懲戒規定に基づいて厳正な処分をしておるという事実でございます。
  58. 佐藤立志

    佐藤参考人 この作成契約につきましては、協会長とはちょっと意見が違うのですが、はっきり言いまして、これはなくならないなという気がいたします。  というのは、要は本人の住所と生年月日がわかれば幾らでもできることでございまして、しかもこれは、今回のケースも実際に名前を勝手に使われて、二件ほどですか、あったわけですが、これは結局は営業の成績を上げたいということで、どうしても件数を稼ぎたい、あるいは契約をふやしたい、自分の営業成績を上げたいということで、どうしてもそちらの方に走ってしまう。しかも、本人確認というものはなされないわけですから、営業職員が今回みたいに、真須美容疑者みたいに、内部の事情を知っている人間が書いて、本人に間違いありませんという形で契約して、しかも銀行口座までつくっていたわけですから、それをいわゆる本人確認しない限りは、何らかのそういうことをしない限りは、これはなくならないと思います。
  59. 青山二三

    ○青山(二)委員 その本人確認の件なんですけれども、生保では大変巨額なお金が動くということでございますから、徹底的にこの確認はすべきであると思っております。  和歌山に参りましたときもお話をしたのでございますけれども、その本人確認のときに、例えば運転免許証あるいはパスポートで確認したらどうか。それからまた、健康保険証のコピーを添付する、こういう方法もあるのではないか。それから、申込書に写真を貼付する。これは私、一人で考えたのでございますけれども、大変いい方法ではないかと。これは健康を診査するときにも大変に役立ちますので、写真を貼付する。また、契約した後必ず本人確認の電話を入れる、こういうことも不正をなくすためにすべきではないかと思っております。  こういうことをいろいろ業界としてもお考えになって業界のルールにしてはいかがか、このように思いますけれども、どうでしょうか。吉田参考人にお伺いをしたいと思います。
  60. 吉田紘一

    吉田参考人 最初の意見陳述で申し上げましたとおり、どのような契約をお引き受けするか、どのような基準でそれをお引き受けの判断として活用するかということは、これはその会社経営そのものでございます。したがいまして、こうした今先生から御提案のありましたようなことは、各社経営責任を果たすために、あくまでも各社責任において考えるべき範疇のことであろうと思います。その上で、こうした各社経営判断をサポートする上で有用なことがあれば、協会として共通に検討していくことにはやぶさかではございません。  以上でございます。
  61. 青山二三

    ○青山(二)委員 ぜひ業界でこの点を御検討いただきたいと思います。  今回の和歌山の詐欺事件で特に問題になりましたのが第三者契約でございます。最初の契約のときは保険金受取人を肉親にしておいて、そして途中から第三者に変更する、この方法が犯罪に利用されたわけでございますから、その途中から受取人を第三者に変更するということを禁止すべきではないかと思います。  和歌山の日本生命の支社にお伺いいたしましたときは、この第三者契約に変更したのはこの一件だけであったというお話を伺いましたので、そう多くはないかと思いますけれども、この問題が起きたということで、この第三者契約に変更する、こういうことはぜひ禁止にしていただきたい、このように思いますけれども吉田参考人樋口参考人、いかがでございますか。
  62. 吉田紘一

    吉田参考人 契約の引き受けに当たって、保険金受取人が、二親等を超える範囲の方がお受け取りになる契約を私どもでは第三者受け取りというふうに定義をいたしておりまして、これについては原則お引き受けをしないということを会社の方針といたしております。ただ、いろいろなケースがございまして、ごくまれに、千件当たりに一件あるいは二件、きちっとそういう事情を確認した上で第三者受け取りになる契約をお受けしている例がございます。  ただいま御指摘の、最初はそうでなかった契約を途中で保険金受取人を第三者に変える、この場合は、私どもは、新契約をお引き受けすると同様の確認を行いまして、正当な理由がない場合にはそうしたことをお断りするという事務処理を原則にいたしております。  これをルールにせよというのは、業界共通のルールなのかどうかということはちょっとわかりかねますけれども業界共通という意味では、先ほどから申し上げておりますとおり、それぞれの会社においてルールとして持っておれば十分ではないかというふうに認識をいたしております。
  63. 樋口公啓

    樋口参考人 ただいまの御質問にお答えいたします。  障害保険の場合は、死亡保険金受取人を指定しない限り死亡保険金は被保険者の遺族に支払われますが、死亡保険金受取人を指定する場合には、保険金不正請求に使われるということも考えられますために、被保険者本人確認を確実に行った上で、被保険者から申込書署名捺印をいただくこととしております。  従来は、その本人確認方法として、代理店または社員が被保険者となる方と面接し、運転免許証等の公的書類確認するにとどまっておったわけでございますが、和歌山事件を契機といたしまして、本人確認方法は十分かどうかを検討いたしました結果、今後は、公的書類本人確認の上、さらに書類の写しを申込書に添付するなどの改善を図ってまいりたいと考えております。  なお、今お尋ねの、契約期間中に死亡保険金受取人を新たに指定したり変更したりする場合の手続でございますが、損保業界でも、契約開始時点に死亡保険金受取人を指定する場合の手続と同様に、公的書類本人確認の上、さらにその書類の写しを申込書に添付するなどの措置をとることにいたしておりますので、そういう措置を十分にとっていれば、今先生のお尋ねのような、禁止するというところまではいかなくてよろしいのじゃないか。やはり契約者の方のいろいろなニーズがございますので、禁止するというところまでいかなくていいのじゃないかというふうに考えております。
  64. 青山二三

    ○青山(二)委員 いずれにいたしましても、今回の事件はここが一番大きな問題になっておるわけですから、それぞれに各業界とも御努力をお願いしたいと思います。  時間がなくなりまして、最後の質問になってしまいましたけれども、先ほど来参考人のお話の中で、保険に対する苦情が大変多い、そんなお話がございました。これは日本生命の伊藤会長が社長の在任中にある雑誌のインタビューに答えた記事でございますけれども、その中で、我が社には契約者から毎月百五十万件の電話と五十万人の来店があるんです、一日にすると約十万件の接触があるわけですが、ほとんどが苦情です、このようにおっしゃっておられます。実に、これは大手八社にいたしますと一日に八十万件、半分といたしましても四十万件でございまして、これは異常だと私は考えております。  どうしてこんなに多くの苦情があるのかといいますと、ただ商品を売ればいい、営業職員に過重なノルマを課して、そして消費者のニーズを考えずにもうかる商品を売ってきた、そういうことがこういう結果につながるのではないかと思います。結局、先ほど及川参考人がお話をされておりましたけれども保険の仲介をするのが営業職員であって、会社とは関係がない、これが契約者が泣き寝入りをするという原因になっており、苦情につながる、こんなふうに分析をいたしております。  こんな苦情が解消されているのかどうか、また、いろいろと御検討もされておりますでしょうけれども吉田参考人と、消費者契約者からいろいろな御相談を受けておられます佐藤参考人に御答弁いただきまして、私の質問を終わりたいと思います。
  65. 吉田紘一

    吉田参考人 最初に申し上げた御質問にお答えしましたけれども消費者センターへの苦情が二万三千件を超えている、こういう事実もございますし、私ども会社に一年間にどれだけの苦情が来ておるかという細かい数字はきょう持ち合わせておりません。しかしながら、そうしたようにお客様からのお申し出がたくさんあるということは事実でございます。  私は、実は昨年社長に就任しました折に、その中で、長年にわたって、しかもお申し出、苦情の大半を占めるものに二つある、これにきちっとした姿勢でお答えをしていける会社になろうではないかということを言っております。一つは、加入した保険の中身がよくわからない、そういう苦情でございます。もう一つは、加入までは再三訪問をするが、加入した後にはめっきりその訪問が途絶えてしまう。この二つの苦情に対してきちっとお答えできる会社でなければならないということを大きな方針に掲げて、本社におけるお客様サービス部の設置等を通して、現在、そうしたことに対して積極的にお答えをしていく努力をしているところでございます。
  66. 佐藤立志

    佐藤参考人 今のクレームの件でございますが、私の方には、去年よりはことしの方がはるかに多くのクレーム、相談が来ておりまして、消費者センター相談に行っていただきたいと私は言っておるのですが、消費者センターに行きましたところ、自己責任だからということで、それで終わっちゃったということがございました。  基本的には、営業職員の方が、これは会社の方針なんだと思いますが、本人のニーズ、保険のニーズに関係なく、会社が売れという商品を売っているという背景があるのだと思います。  今、こちらの方に、これは去年私の方にいただきました営業職員の方のお手紙なんですが、ちょっと読み上げさせていただきたいのです。「前回お手紙をいただきまして、ありがとうございました。六年ほど三井生命で働いていますが、郵便局に加入しています。本を読ませていただいてから全労済も検討しています。お客様には不利な点(更新型など)も説明しているのですが、自分は郵便局や全労済で、お客様には三井生命を勧めているので後ろめたいです。」こういうふうに書いておりまして、これが普通の一般的な営業のやり方というふうに言っても過言ではないということでございます。  本当にお客様の必要なものを必要な形でちゃんと提供するという基本的なことをとっていかない限りは、トラブルはふえることはあっても減ることはないと思います。
  67. 青山二三

    ○青山(二)委員 大変ありがとうございました。時間でございます。終わらせていただきます。
  68. 前田正

    前田委員長 次に、松浪健四郎君。
  69. 松浪健四郎

    ○松浪委員 自由党の松浪健四郎でございます。  師走のお忙しい中、わざわざこうして五人の参考人の皆さんにお出まし賜りましたことを心から感謝を申し上げたいと思います。  今まで質問をお聞きしておりますと、吉田参考人に質問が集中しておりまして、どうもこの委員会での質疑和歌山事件に集中しているのか、そういう印象を持ちましたけれども、一回もお立ちになっていない及川参考人から順次お尋ねしていきたいと思いますが、及川参考人は、生命保険に幾ら入られていますか。
  70. 及川昭伍

    及川参考人 正確には記憶がありませんが、おおむね四千万円くらいで、世帯としての全国の平均程度であろうかなと思っております。
  71. 松浪健四郎

    ○松浪委員 次に、佐藤参考人にお尋ねしますが、一番最初に入られた額と現在の額、これらについてもお答えいただければありがたいと思います。
  72. 佐藤立志

    佐藤参考人 一番最初に入りましたのは、たしか四千万ぐらいだと思います。今もやはり、保険会社は違いますけれども、ほとんど同じだと思います。
  73. 松浪健四郎

    ○松浪委員 落合教授にお願いしたいと思います。
  74. 落合誠一

    落合参考人 正確なあれではありませんが、私の記憶ではせいぜい二千万ぐらいではなかろうかと思っております。
  75. 松浪健四郎

    ○松浪委員 樋口参考人、お願いいたします。
  76. 樋口公啓

    樋口参考人 お答え申し上げます。  甚だ申しわけありませんけれども、自分で幾ら入っているのかということは全く記憶がございませんで、若いときに頼まれまして入りましたときが二百万かそこいらだったように思いますが、それをその後何回か御要請を受けまして転換をいたしまして、今二千万ぐらいは入っているのではないかと思います。そのほかに、会社の掛け捨て型の定期団体とかいうのにも入っておりますので、今死ねばどれぐらいになるのか、五千万ぐらいにはなるんじゃないかなというふうに自分では考えております。
  77. 松浪健四郎

    ○松浪委員 吉田参考人にお願いしたいと思います。
  78. 吉田紘一

    吉田参考人 私は、現在の契約額が九千五百万円でございます。
  79. 松浪健四郎

    ○松浪委員 ちなみに、私は一千五百万円であります。  このように、お一人お一人の命の価値観に開きがあるということ、それと、樋口参考人からお聞きして、会社のトップにいらっしゃる方が、大体自分が幾ら、どうなっているかわからないというぐらいいい加減であり、わかりにくいということを今教えていただいたわけでありますけれども、どんな立派なシステムをつくったとしましても、それに携わる人たちのモラルが低いと、法の抜け穴、システムの抜け穴が出てまいります。そして、今回の和歌山の件は私はそうであったと思うのですね。  第三者保険では、一人加入するときにはたしか月収の六十倍以内というふうになっておるわけですが、憲法第十四条に規定されておるように、法のもとでは国民はすべて平等ですから、この人が一億も二億も掛ける、そして東京大学の教授は二千万円だ、こういうことである限り、私はこの種の犯罪はなかなか減少しないであろうということを容易に想像することができるのですが、それらについて佐藤参考人からお尋ねしたいと思います。つまり、この種の事件は今後も続くであろうと。
  80. 佐藤立志

    佐藤参考人 先生のおっしゃるとおりだと思います。
  81. 松浪健四郎

    ○松浪委員 ということは、ここで幾ら論じても意味がないということになってくる。  そこで、佐藤参考人は本を書かれておる、「生命保険にだまされない本」「損害保険にだまされない本」。だまされるのですか。
  82. 佐藤立志

    佐藤参考人 これは、要は、保険契約者がよく理解できずに、あるいはそのときに、先ほどからほかの参考人の方が言っておりましたように、保険というのは目に見える商品じゃありませんで、要はイメージの商品でございますから、その辺でいわゆる過大な期待を抱かせるような、そういった営業がとられてきたということは事実でございまして、そこで、後で、いわゆるクレームとか、いや、話が違うじゃないかということが多いものですから、そういうような本のテーマにしたわけでございます。
  83. 松浪健四郎

    ○松浪委員 結局は、難しいという一面があると思います。ちなみに、私も、自分の保険契約がどないなっているかさっぱり理解していないわけですから、そういうものだと思います。  そこで、先ほど申しましたように、営業職員とその幹部と、そして診断されるお医者さん、そして入院時のお医者さんがタッグを組んで、ぐるになっておれば、これは会社はお手上げということなんですね。だから、佐藤参考人は防ぎようがないというふうにおっしゃっておるのだと私は思うのですが、結局は、営業職員のモラルの問題だ。  吉田参考人から、これらの教育もちゃんとやっているのだというお話がありましたけれども、これらのモラル向上を徹底させるためにどのようなお考えをお持ちか、吉田参考人にいま一度お尋ねしたいと思います。
  84. 吉田紘一

    吉田参考人 まさに先生が御指摘のとおりでございまして、こうした人の命というものにかかわる仕事をする者がきちんとした倫理観を持ち得ていなければ、このような不幸な事態になってあらわれるわけでございます。  こうすれば仕組みがきちっと動き、モラルが目に見えて向上をするという具体的な妙案というものを持ち合わせておりません。それだけに、私どもは、日常の営業職員の接し方から始まる一つ一つの事柄において、私たちは、かけがえのない人生の相談相手として、選ばれた職業につくのだというようなことを地道に積み上げて、その倫理観が高まっていくように努めてまいりたいと思いますし、時としていろいろな誘惑に駆られて不正を行いかねないのが人間であるということを忘れないようにして、事後の抜き取り調査であるとか事前のいろいろな調査であるとか、こういう牽制措置を目に見える形で示すことによって、そうした誘惑に負けない職員にしていく努力をしていきたいものだ、また現実にそういうことをしているつもりでございます。
  85. 松浪健四郎

    ○松浪委員 徹底して今おっしゃられたことを履行されるよう、心からお願いを申し上げたいと思います。  佐藤参考人にいま一度お尋ねしますが、生命保険会社の各支店に参りますと、一番目につくのは、壁に張られてあるグラフであります。これは自動車のディーラーに行っても目につくのですが、当然のことながら、競争をあおらなきゃいけない。そして、Aさんがどれだけ契約をとってきた、Bさん、ここまでいっている、Cさん、まるっきりだめだ。これでもって、営業職員の仕事の熱をあおるような形にしているのでしょうけれども、あれはやはり効果があるものですか。
  86. 佐藤立志

    佐藤参考人 この件については、これだけの保険契約を毎年維持しているわけですから、それは効果があるんだと思います。  それで、ノルマにつきましては、その人の必要経費については自分で稼ぐ、その分だけ自分で稼ぐというのは私は否定するものではありませんが、そのように過重な、例えば朝礼で罵倒されて、あるいは、親戚は全部やったのかとか友達は全部歩いたのかとか、そういう人間関係が壊れるようなところまで言われるということで、そういうのがいろいろと弊害になっているのじゃないかなというふうには思います。
  87. 松浪健四郎

    ○松浪委員 いみじくも今おっしゃいましたけれども、加入者を募る、これも人間関係であります。とにかく営業成績を上げていかなきゃいけない。  この営業職員というのは、法律で一社専業制になっております。この加入者は危ない、自分はわかっているけれども、他社の営業職員はわからないから、それを紹介する。これはたしか違法だと思うのですけれども、今の社会の中において、これは常識で、半ば公然と行われているというふうに言われています。  これは、もしその人が他社から紹介されたんだというようなことになれば、社内で罰するようにできているのか。そういった、営業職員の罰則規定というもの、これらは厳しくあるのかどうか。このことを吉田参考人にお尋ねしたいと思います。
  88. 吉田紘一

    吉田参考人 再三申し上げておりますが、どのような基準で御契約をお引き受けするかということは、各社によって異なります。したがいまして、例えば、私ども会社にお申し込みをいただいたけれども、私ども会社基準では合致しないのでお断りをするというケースがございます。そうしたお客様が別の会社申し込みをされるといったようなケースはあろうかと思います。  ただし、不正を目的として他社の営業職員契約を交換するというような事態は、これは不正行為でありますから、私ども協会規定においても、してはならないこととして明示をしておりまして、そうした事実が発覚した場合には、状況に応じた厳正な処分の対象といたしております。
  89. 松浪健四郎

    ○松浪委員 最後に、落合参考人にお尋ねをいたします。  消費者契約法の早期立法化を唱えていらっしゃいますが、その法律の骨子について教えていただけますか。
  90. 落合誠一

    落合参考人 簡単に申し上げますと、三つの骨組みから構成されております。  第一は、契約を結ぶまでの段階でのルールということで、この部分は、いかに事業者が適切に情報提供するかという情報提供義務のルール。  それから、契約が締結されました後のルールとしては、先ほどからいろいろお話が出ておりますが、目に見えない商品というのは結局のところ約款の定めによってすべて決まるということになりますので、そういった約款とか契約条項が消費者に一方的に不利であるというようなものについては、法律上これを無効とするという不当条項ルールというものを設けております。  それから第三番目といたしましては、契約条項というものは平易かつ明確な形でつくらなければいけない。もしそれが平易あるいは明確でないがゆえに、合理的に解釈した場合に複数の解釈が出てきたような場合は、これは作成者側に不利に解釈をしよう。これは、契約を自分でつくれる側はいかようにもつくれるわけですが、そうだとすると、そのいかようにもつくれる側があいまいな文言をつくったということから生ずるリスクというのはやはりつくった側に負担させるのが公平であろう。そういう観点から、契約条項作成及びその解釈についてのルールという、これが第三のグループのルールでありまして、この三つが基本的な骨子になっております。
  91. 松浪健四郎

    ○松浪委員 今、落合参考人からお話を賜りました。この委員会においても、この消費者契約法の早期立法化ができるように努力をさせていただきたい、こういうふうに思います。  きょうは、お忙しい中、こうしてわざわざお出まし賜りましたことを重ねて御礼申し上げ、また、失礼な質問をさせていただいたことをおわび申し上げまして、時間が参りましたので、私の質問を終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。
  92. 前田正

    前田委員長 次に、藤田スミ君。
  93. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 日本共産党の藤田スミでございます。  きょうは参考人先生方、本当にありがとうございます。  和歌山保険金詐欺事件に関連していろいろな議論が展開されてまいりましたが、私は、生命保険システム一つの大きな問題があるというふうに思っております。それは、だれでも従業員を被保険者にして、しかも被保険者保険契約の話をしないまま受取人事業者の方にして保険契約を結ぶことが可能だという点であります。もちろんその前段に医師の健診というものが求められているわけでありますが、医師の方で被保険者と健診を受ける人とが同一人物であるかどうかということを確認することが非常に難しい、ここに問題があるということは先ほども質問がありましたけれども吉田会長は、この点はきちんと確認しているんだというふうに御答弁をされました。一体どういうふうに改善されたのかということをお伺いしたいわけです。  もう一つ、私、生命保険会社契約判断を行うためのシステムとして、他社の契約情報を照会できる契約内容登録制度というのを設けられていることを知っているわけですが、これは一億円未満は登録されない。A、B、Cという三社に五千万ずつ契約をしたら一億五千万になるわけですが、一社の一億を超える場合にのみ登録されるということになっているんじゃないですか。そして同時に、二年たったらそれはもう消えるという、ここが非常に、とりわけ悪質な契約者に対する捕捉というものがしにくいんじゃないか、この制度は見直すべきじゃないかというふうに思いますが、まず簡単にお答えください。
  94. 吉田紘一

    吉田参考人 本人が知らないうちに簡単に保険に入れるということを御指摘でございますけれども、私ども会社の引受基準では、本人が御同意にならずに契約になるというケースはございません。これは先ほども御質問の中でお答えしましたように、かつては団体定期保険という分野でそうしたことがございました。これは販売停止をいたしました。  それから、総合福祉定期に変えましたときに、一部不同意の方を排除する、御契約者にはしないという仕組みをつくりました。  それから、個人の御加入に当たりましては、保険の対象となる被保険者の方にも、署名をし、捺印をしていただくというような手順を踏んでおります。  それから、仮に第三者受け取り等の事態が発生したときは、再三申し上げておりますとおり、新契約と同じような取り扱いをするというようなことをいたしております。  ただ、現在の仕組みを点検しますと、一点抜けておったなと思いますのが、診査を受けていただくときに、御本人かどうかということを確認するときに少し手抜かりがあったのではないかというふうに思っております。通常は、営業職員お客様と同行する、そして審査の書類お客様に自署していただく、それを申込書と点検するというようなことをしておったわけですが、診査に当たって、御本人かどうかということを写真入りのもので確認するといったことをしておりませんでした。この点が手抜かりがあったのではないかと考えておりまして、この点については早急に改善をしてまいりたいというふうに思っております。  それから、もう一点お尋ねのございました協会各社の引き受け、支払い判断のサポートの材料として持っております契約内容登録制度については、この基準そのものを公表するということは、それ自体がまた不要な混乱を起こしますので基準については申し上げられませんけれども一定基準のもとで、一定の期間、データを自由に参照することができるということになっておりますが、今回の事件もございましたし、また、かねて、こういうままでいいのかという問題意識もございましたので、現在、登録の基準あるいはデータの保存期間等について検討に着手をしているところでございます。  以上でございます。
  95. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 落合参考人にお伺いをいたします。  商法第六百七十四条によりますと、他人の命の保険には原則として同意が必要だ、先ほどからも同意ということを言っておられますが、それは決して形式的なものであってはならないわけでありまして、被保険者たる従業員に、保険の趣旨や目的、掛けられた金額、そして本人や遺族に渡される内容というものを十分伝え、理解された上での同意というものでなければならない。現実には契約を捏造するということがふえてきているわけでありまして、しかも一方では、従業員の遺族が保険加入の有無について問い合わせを保険会社に行ってもなかなかそれを、守秘義務を盾にして伝えられないというような状態が厳然として今もあるわけであります。その点についていかがお考えか、お答えをいただきたいと思います。
  96. 落合誠一

    落合参考人 先生御指摘のとおり、商法は同意を要求しているわけでありまして、その部分が極めて明確な形で確保されますと、広い意味でのモラルハザードの問題に対して、ある意味での相当な歯どめとして機能し得るというふうに考えております。  それから、そういう団体保険につきまして、保険契約者といいますか、その保険当事者になっていない者が情報を得たいと思った場合にその情報がスムーズに出てこないという状態というのはやはり好ましくないわけでありまして、この点は何らかの対応というものがとられてしかるべきではないかと思います。
  97. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 ありがとうございます。  相談、苦情が非常に多いということも、もう繰り返しませんが、先ほどからありました。それはやはり、生命保険の種類、商品というものの仕組みが非常にわかりにくい、それについてディスクローズされていないというところに問題があるわけでありますし、そういう点での改善が求められていると思うわけです。  私は、そもそも、保険業法に反して、保険契約者がその内容を十分知らされないまま保険に加入している、またさせられているという、この責任というのは、やはり生命保険会社の方に一番問題がある、これは保険外交員ではなく保険会社の方に責任がある。それはなぜかというと、保険外交員にノルマを課して、新しい商品保険会社にとって利益の上がる商品ばかりを売らそうとしているわけであります。だから外交員は、新しい保険商品をつくると、それがたとえ保険契約者にとって不利であるものであっても、そのリスクを隠してでも売ろうとするし、売らそうとする。  私は、実は、ずっと以前ですが、いっとき、保険の外交をやってみようかと思って、やったことがあります。講習を受けに行って、しばらくしたら、早くとってこい、とってこい。とうとう、仕方がないから夫の生命保険を掛けましたけれども、どうしてもうまくそれをこなせないで、一カ月でやめてしまいましたが、大変、外交員の皆さんの気持ちがわかります。  吉田参考人は、こういう外交員の教育を強調されておりますけれども、しかし、及川先生が御指摘になったように、今なお、外交員、募集をする皆さんは媒介人としての地位にしかない。私は、もっと募集人の社会的な地位の向上と待遇の改善というものが求められている、そうでないと保険そのものの信用もなくなるんじゃないかというふうに考えますが、いかがお考えでしょうか。
  98. 吉田紘一

    吉田参考人 先生がおっしゃるとおりでございまして、自分の職業に対して誇りが持てなければ、人様の大事な命にかかわる仕事を使命感を持って遂行することはできないわけでございます。  したがいまして、先ほど来、教育についてこのようにしているということを中心に申し上げましたとおり、私ども会社も、そして業界挙げて、営業職員の営業支援活動そのものを強化して、正当な働き方を教える、正当な働きをすれば成果が出るんだということに自信が持てる指導者をふやすといったようなことを通して、職員が安定した会社生活ができるように一番力を注いでいるところでございます。  それから、営業職員たちも、組合をつくったり、あるいは自分たちで協会組織をつくって自学、自習に励むとか、あるいは、先ほどの、協会のいろいろな称号を手にすることによってみずからを鼓舞するとか、そういうようなことに相努めているところでございます。  以上でございます。
  99. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 どうも私の言っていることが十分理解されていないようであります。私は、教育の問題ではなしに、そういうふうにして、ノルマをとってこいということで駆り立て、グラフを壁に張りつけたり、鉢巻きを締めて、朝、軍隊みたいにオーとやったり、そういうことで、じっくり落ちついてその内容を理解し、そして契約を求めていくという、そういう行為が本当にできない。これは、私が体験したことからずっと今日まで同じことであります。そういうふうなやり方では本当に落ちついて仕事もできないし、それからまた、そうしなければそこにおれない、あるいは待遇もよくならない。ここのところをもっと見直していただきたいということをつけ加えておきたいと思います。  最後になりますが、過日、十一月五日の新聞に、生命保険業界、とりわけ大手生命保険会社が、個人向けの保険料を既存の契約分までさかのぼって値上げするという案を抜本的な経営改善策として検討していることが報じられておりました。私は、保険契約者にとって重大な問題だと思うのです。  そもそも生命保険は、生命保険会社で考案し、契約者に予定利率や保険金について約束をして契約してもらったものでありますから、生命保険会社が、今逆ざやになったからということで一方的に既契約者も含めて保険料を引き上げるなどというようなやり方は、保険会社の大変勝手な理屈であって、これは契約者からいえば約束違反だということになるわけでありますし、権利侵害であります。将来にとって大変不安であります。  したがって、私は、あくまでも契約者立場に立ってこの問題については検討をしていただかなければならないというふうに考えますが、この点について、これまた大変恐縮でございますが、協会の会長、吉田参考人にお願いをして終わります。
  100. 吉田紘一

    吉田参考人 ただいま先生が御指摘になりました一部の新聞報道は、明確に申し上げまして誤報でございます。事前に照会がございました段階から、そうした事実はない旨を明快に説明をして、そうした報道は御契約者に対して無用な混乱を引き起こすからやめてほしいということも申し上げたのでありますけれども、こういう報道になりました。  先生が御指摘になりましたとおり、これを一方的に会社の都合で行うということは、契約者との間に交わした約束を会社の都合で一方的に変えるということになりまして、御契約者信頼を失う行為になります。また、現在の保険業法ではそうしたことを可能にする準拠すべき法的な、明定されたものもないという状況でございます。  少なくとも、予定利率をどうするかということは価格そのものにかかわることでございますから、これをみんなで協議をするというようなことはあり得ないことでございます。私ども会社としては、現在そうしたようなことを検討している事実はございません。
  101. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 時間が参りましたので終わります。せっかくおいでをいただきましたのに、持ち時間が十三分という中で及川先生、佐藤先生には質問ができませんでしたことをお許しいただきたいと思いますが、及川理事長のお話も、私ども消費者にとっては大変励ましになったことを申し上げておきたいと思います。  ありがとうございました。
  102. 前田正

    前田委員長 次に、中川智子君。
  103. 中川智子

    ○中川(智)委員 社会民主党・市民連合の中川智子です。  きょうは、参考人先生方、本当にお忙しい中、ありがとうございました。  時間もございませんので、まず最初に吉田参考人にお伺いしたいのですが、今回の園部のカレー事件というのは、そこに我々が住んでいたら、地域のお祭りの中でこのような形で無差別殺人が起きたということで、本当に人ごとではないというふうな思いでこの間心を痛めてまいりました。  特に、六十七人の被害者の中で四名の方がお亡くなりになった。そのような中で、被害者に対して、生保協会、いわゆる協会としての責任というものをどのように考えていらっしゃるか。私は、きょうのいろいろな質問の中でも、チェックの機能が万全に果たせなかったことによって起きたという責任の一端は否めないと思うのですが、被害者の方たち、砒素による後遺症も現在ありますし、また今後の健康被害ということでの心配も非常に大変なものがおありだと思います。現在は義援金という形で被害者の方たちへのお見舞い金が渡されているわけですけれども、そこの被害者の方たちに対する企業、業界としての責任というのを中でお話し合いになられたか、また、会長さん自身はそのことについてどのようにお考えかということを、まずお伺いしたいと思います。
  104. 吉田紘一

    吉田参考人 先ほども申し上げましたけれども、この事件は現在捜査が進行しておる段階でございまして、また、私ども会社自身はそうした被疑事項に該当する契約がございません。そうしたこともあって、報道されていること以上に事実を知り得る立場にないわけでございます。したがいまして、一件一件のことに対してどう対応すべきかということをまだ検討している段階には至っておりません。  ただ、こうしたことが保険というものを悪用したものであった、保険会社としてはその悪用を防ぐということを重大な責務としているだけに、結果としてその責任が果たせなかったということについて、おわびと遺憾の意を表した次第でございます。  個別にどう対応するかということについては、先生御指摘のようなことを今のところはしておりません。
  105. 中川智子

    ○中川(智)委員 もうちょっと突っ込んでしまって申しわけないのですが、いわゆる複数会社がその当事者になると思うのですが、業界として、その会社に対する対応策というのを今後話し合って、具体的に被害者救済に対しての措置をするお考えは会長個人としてはおありなのか、そのような方向で進められるのかどうか、そちらを質問したいと思います。
  106. 吉田紘一

    吉田参考人 これは、そうした場合に、その契約を受理したとかあるいは重大な見過ごしがあったとかいうことに対して、業界としてどうこうするという問題ではないと思います。これはまさに、新設をされました金融監督庁における、会社の機能が十分に機能しているかどうかといったことの行政監督の対象になるものだというふうに思います。その上で、重大な過失等があれば、損害賠償のお訴えがあるとか、あるいはそれに対する責任を自主的にとるとかいったような形で対処してまいるべき性格のものではなかろうかというふうに考えております。
  107. 中川智子

    ○中川(智)委員 金融監督庁が出てまいりましたので、やはりそのあたりの問題もあわせてあると思います。  私、今ずっとお話を伺っていて思いましたのは、やはり我が社では我が社ではということになってしまうと思いますし、また、いわゆる掛金が高いということでの情報交換は、生保業界なら生保、損保なら損保、そのように分かれているというふうに伺いましたが、この際、保険金殺人などという言葉は広辞苑にでも載るのではないかと思うぐらい悪用されている現実がございまして、幾ら細かくチェックしてもやはり抜け道というのがあるということを、特に業界、生保会社、損保会社の方みずから思っていらっしゃるのではないかと思います。  情報の一元化、消費者にそれをいただくというのは当たり前でございますが、生保業界、損保またJA、共済、横並びの情報の一元化ということが早急に必要ではないかと思いますが、そちらに対して吉田参考人樋口参考人、そのようなことが必要ではないかということに対するお答えを、一言で結構ですからお願いします。
  108. 吉田紘一

    吉田参考人 ただいま御指摘の、他の業界においてそうした我々が持っておりますような契約内容登録制度をお持ちかどうかについて、存じ上げません。したがいまして、どうしたらいいのかということについて明確にお答えはできませんけれども、そうした情報交換ができれば理想であろうと思います。  しかしながら、その前に私どもは、私ども業界として持っております契約内容登録制度がより機能する方向で改善をすることの方が先ではないかということで、現在着手をしておる段階でございます。
  109. 樋口公啓

    樋口参考人 お答えいたします。  今現在、私ども検討しております契約情報交換システムにつきましては、生保業界情報交換をするということにつきましてはなかなか技術的に難しいんじゃないかなというふうには考えております。といいますのは、いろいろ商品性の異なるものにつきましてシステム的に確立した形で交換をするということは、相当なコストを要しますし、またプライバシーの侵害のおそれもございますし、共済まで広げるということになりますと、またこれはいろいろ商品性の違う中で大変な問題があるような感じがいたしますので、先生のおっしゃる趣旨はわかりまして、確かに、直ちにそれが理想的な形で実現すれば効果的であろうとは思いますけれども、果たして現実的に実現可能であるかどうか、フィージブルであるかどうかにつきましては、やや疑問なしとしないというふうに目下考えております。  したがいまして、むしろ、生損両業界にまたがるような社会的影響の大きな保険金不正請求案件が発生したような場合には、生保業界契約情報の交換を個別に行うような仕組みを含めまして、今後さらに検討してまいりたいというふうに考える次第でございます。
  110. 中川智子

    ○中川(智)委員 続いて、ちょっと樋口参考人にお伺いしたいのですが、私は、阪神・淡路の被災者でございまして、被災地でつくづく思いましたのは、地震保険の加入率があのときは阪神地域は三%ぐらいのものでした。その後、今全国平均で地震保険の加入というのは一四・二%という状況で、本当に地震保険がみんなを助けるものになっていないということを痛感いたします。  うちも入っていたのですが、とても高いものですから家屋しか入っていなかったら、家は何ともなくて、家の中の家財がめちゃくちゃになって一円も入らなかったという、非常に悔しくてじだんだを踏む思いでしたけれども、やはり我が身に降りかかった後にぱっと入るんですが、のど元過ぎればという状況で一四・二%の加入率にとどまっている。  それにはたくさんの問題があると思うのですけれども保険金額が一般の火災保険に比べると非常に低額に制限されていて、政府の再保険金額を超えるような大規模な震災が、地震が起きたときには、これだけ払うよと最初はおっしゃっていても、それが払えないという状況もあるということで、魅力のない商品というふうな形でとらえられていますが、この地震保険というものに対して、やはりもう少しみんなを助ける、いざ何かがあったときに国民を助けるようなシステムにするべきだと思うのですが、魅力のない地震保険の今の低加入率に対してどのように思われるかということをまず第一にお伺いしたいと思います。そして、やはりそれは民間だけでは無理で、公的なところとの連携が必要ならば、そのあたりも言及していただきたいと思います。  いま一つは、先ほどの意見陳述の中に、高額の保険契約に関してはお断りしていますということがありましたが、何億も掛けるときに、そんなに高いのはお断りしますと会社の方から断られた件数というのは把握されていたらぜひとも伺いたいと思いますが、それは今わからなければ、また後で教えてください。
  111. 樋口公啓

    樋口参考人 まず先生、地震にお遭いになりましたことにつきまして、心からお見舞いを申し上げます。  先に、今の傷害保険につきまして、高額のものについてどれぐらい断っているかという具体的な数字は、そういう統計をとっておりません。ただ、私ども会社の場合では、大体年収の十倍程度をもって引き受けの限度としている、死亡保険金については大体その辺をめどにしてくれというふうな指導を社内でいたしております。あとは、会社としても、代理店さんに権限を持たせまして、七千五百万ぐらいまでは一応お引き受けをしているというふうなことで、それ以上になりますと、基本的には契約をお断りしているというふうな形でやっております。  続きまして、簡単に地震保険状況につきまして、現況をちょっと踏まえながらお答えをさせていただきたいと思います。  御承知のように、我が国は世界有数の地震国でございまして、過去幾度となく地震によって甚大な社会的、経済的な影響を受けてまいったわけでございます。こうした中で、昭和三十九年の新潟地震を契機にしまして、官民が協力いたしまして地震保険制度を発足させまして、その後、社会や経済環境の変化を受けまして、数度にわたって制度の改善が行われて現在に至っております。この間、私どもの損保業界は、地震災害による被災者の救済を業界の社会的な使命であると考えまして、業界を挙げて、地震保険制度の普及拡大を図るための努力を続けてまいっております。  例えば損保業界昭和五十五年から地震保険の広報活動を継続して実施しておりまして、平成七年度からは、火災保険には加入しているけれども地震保険には未加入の契約者に対して、各社が直接地震保険のお勧めはがきを郵送するなどの努力をいたしております。  長年にわたりますこうした努力の結果、先生の御指摘ではなおかつまだ低いということはそのとおりでございますけれども、近年、徐々に増加を続けておりまして、平成十年八月末時点の全国の世帯数に対する地震保険の加入世帯数の割合は一四・五%となっております。これは阪神・淡路大震災直前の数字に比べまして、七・二ポイント上昇しておりまして、普及率は今ほぼ倍増しているといった状況にございます。  自分の財産は自分で守るというのが私有財産制度原則でございまして、地震保険への加入はあくまでも個人の判断によるところとは考えておりますが、御指摘のとおり、なお八割を超える未加入者がいらっしゃるという事実はそのとおりでございます。したがいまして、この事実にかんがみまして、私ども損保業界としては、さらなる普及拡大の努力を続けて、一人でも多くの方が地震保険に加入できるように努力していく所存でございます。  今後もより一層の加入促進を図るためには、公的なインセンティブを設けることも重要ではないかと考えておりまして、例えば現在の地震保険料の負担については、先生御指摘のとおり、なお重いという声もございますので、課税所得から地震保険料を控除する制度地震保険の普及拡大には一層有効と考えまして、損害保険協会として税制改正要望を行っているところでございます。  また、地震保険金額につきましても、徐々にこれを拡大しておりまして、一番最近の改定によりまして、損害額は五千万に拡大をしております。したがいまして、かなりな程度まで地震保険でカバー、家計自身でございますが、カバーされるようになっているという状況でございますが、これをさらに一層拡大していくためには、公的なそういう御支援もお願いをしたい。やはり大地震に際しまして、民間保険会社の負担にはおのずとまだ限界がございますので、既に政府再保険制度を通じた公的支援をいただいているわけでございますけれども、引き続き一層の御支援をお願いしたいと考えております。
  112. 中川智子

    ○中川(智)委員 時間になりましたので、きょうは五人の方々、本当にありがとうございました。とても勉強になりました。ありがとうございました。
  113. 前田正

    前田委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、厚く御礼を申し上げます。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時二十六分散会