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及川参考人 国民生活センター理事長の
及川でございます。
国民生活センターの業務につきましては、
前田委員長を初め、当
委員会の
委員の
皆様方に常日ごろ大変な御
指導、御支援をいただいておりまして、厚く御礼を申し上げます。
国民生活センターでは、御
承知のとおり、
全国の
消費生活センターとオンラインでネットワークを組みまして、
消費生活情報ネットワーク
システム、PIO―NETと申しますけれ
ども、
相談情報を収集いたしております。現在三百万件ほどその
情報収集量がございます。
そのうち、
保険に関する
相談、特別に検索をしてみますと、この五年間に
生命保険の
相談件数、問い合わせを含めて一万八千六百八十九件ございました。
平成五年度から九年度までの
相談であります。この全部の
相談のうち、
契約に関連する苦情、問い合わせを除いた苦情でございますが、苦情が約九割を占めておりまして、一万六千百六十二件でございます。
損害保険につきましては、同様過去五年間に総
相談件数は、収録されておりますのが五千五百八十四件でございますが、
契約に関連する苦情は三千六百五十三件、約三分の二でございました。
この
契約に関する苦情の中身をさらに分析をいたしますと、
生命保険では、トップに来ますのが解約に関する苦情が五千四百四十八件、解約がなかなかスムーズにいかない、長い
契約期間の中でいろいろ事情があって解約をしたいと思ってもなかなかうまくいかないというのがトップであります。第二番目が
契約時における
説明不足、三千二百三十一件であります。第三番目が、いろいろな苦情を申したのにクレーム処理が非常に不満であるというのが千八百七十八件というような順番になっております。
損害保険につきましても同様に分析をしますと、トップは
説明不足で七百六件、解約に関する苦情が二番目で五百六十二件。約束不履行、これは普通、
最後の
保険金の
支払いのところで思ったような
金額が出てこないということが主でありますけれ
ども、三番目で五百二十七件というような苦情になっております。
このような全体の苦情の
状況やら、あるいは、現場で
相談に携わっておる窓口の人たちの話を総合いたしまして、私は次の五点をこの際申し上げておきたいと思います。
第一点は、
契約締結過程といいますか、
契約の入り口の問題であります。
入り口で
消費者に対する
情報提供が非常に不十分であることによってトラブルが生じておる。
情報弱者である
消費者、
情報強者である
事業者、その間での
情報提供、
説明が不十分であるところの問題が生じているということであります。特に、
保険契約は一般に
消費者側から積極的に買いに行く
契約ではなくて、
事業者側から攻撃的に訪問されて、勧誘されて
契約を締結するのでありますが、その
過程でいろいろ問題が生じておる。いろいろな訪問
販売と同様の問題がここにあるというふうに思われます。
第二番目は、長い間の
契約期間中でのトラブルの問題であります。
先ほど申し上げましたように、途中で解約したいというときにいろいろスムーズにはいかないという問題があったり、途中で転換をいろいろ言われて有利な条件だということを言われたけれ
ども、実際は、転換の結果、高利回りであったのが低利回りに変わってくるとか等々の問題があって、いろいろクレームが、転換とか乗りかえとかいうことで苦情が出てきている
契約途中の問題が二番目にあります。
三番目に、
契約の出口、お金が最終的に
保険金や
給付金として支払われる
過程でありますけれ
ども、その
過程で、
損害保険、
生命保険含めてでありますけれ
ども、期待したとおりの
金額が給付や
火災保険やその他の
事故保険等についても出てこないというような問題があります。これも多くは
説明不足であったり、あるいは本当に問題であるのかもしれませんですが、そういうトラブルが
相談の現場ではいっぱい出ておるということを申し上げておきたいと思います。
これらの問題を総合して、第四点でありますけれ
ども、いろいろ問題が生ずるのは、言うなれば、現場で
消費者と
会社側の接点に立ちます、特に
生命保険について言うと、
生命保険募集人と
消費者との間でのトラブルが最終的に
契約のトラブルになっておるというところであります。そして、
生命保険募集人の地位については、先般の
保険業法の
改正で、単なる媒介人ではなくて代理人としての地位もあり得るという
改正がなされました。実は、
保険募集人が媒介人であると、
消費者からの
申し込みを受け付けられない、
契約締結もできない、お金も受け取れない、告知も受け取ることができない、単に
消費者と
保険会社を仲介する地位にあるんだ、媒介する地位にあるんだ、そこに問題の根幹があるということで、
国民生活審議会では、
昭和四十八年の答申においてそれを是正するように答申をいたしました。さらには、
昭和五十六年度の
消費者保護部会報告でもそれを是正すべき旨を報告いたしておりますけれ
ども、
保険業法においては、この点は先般
改正を見ました。
その他の
国民生活審議会の諸答申、
約款の是正やその他は大部分改善をされておりますけれ
ども、究極的に
保険募集人の地位については、現実には現在もなおかつ大部分の
会社で媒介人の地位にある。そして、媒介人がどのような行動をするかについて
会社側は直接は
責任を負う
立場になくて、独立の
事業者であるというふうにいろいろな
法律上の
取り扱いがなされており、このような
問題点が実は訪問
販売のいろいろな形態、新聞
販売についても、新聞
販売の拡張員が
販売店にも属さない、新聞の
本社にも属さない、そこから
販売のトラブルがいっぱい出ております。
例えばマルチ
商法においても、マルチ
商法の子や孫は独立の
事業者であって
会社とは
関係ないというところでトラブルが多発しておるわけでありますが、同様のことが
保険の
販売についても生じておるというふうに私
どもは考えており、この点での改善がぜひとも求められると思いますし、
保険業法ではその道をつくったわけでありますから、ぜひ多くの
保険会社においてそのような方向を進められることを心から期待するわけであります。
片仮名生保と言われているところは、大部分がこのような媒介人ではなくて
代理店システムや代理人
システムで行っており、そこの部分についてはそう大きな問題を私
どもは
承知をいたしておりません。
第五点、特に
生命保険会社等でありますが、
生命保険会社は御存じのとおり
相互扶助組織で、相互
会社となっております。株式
会社ではなくて相互
会社となっております。相互
会社であるということは、
契約した
保険契約者それ
自身が社員になるわけであります。社員になって、その代表は総代として
会社の
経営に参画するわけでありますが、総代の選任やその他いろいろ問題がある点は、これまた
国民生活審議会の答申で何回か指摘をしているところでありますけれ
ども、今回の
保険業法の
改正では社員の権利も相当改善をされておるわけでありますけれ
ども、
経営の実態において
会社のチェック
システムということをしっかり行い、
保険の募集人に対する
教育や監督や管理や
責任の体制等々もしっかりしていただき、入り口でも出口でも、
本人確認を含めてしっかりとしたチェックが行われることが、
和歌山の
事件も参考にしながら、これから非常に重要になってくるのではないかなと思っているわけであります。
いずれにしても、
保険の
契約者、
消費者と
保険の
事業者との間には、
落合参考人が申されたように、非常に
情報の
格差が大きいわけでありまして、
保険業法による監督行政ということだけではなくて、
消費者と
事業者との間の民事上のルール、
消費者契約法というような民事上のルール、
情報提供義務と
消費者の自己
責任、あるいは
約款の対等
関係を、
消費者と
事業者との対等
関係を確立するようなルールを早く
民事ルールとして確立することがすべての問題を解決するために極めて重要であると私
どもは考えております。
一方、
消費者に対する
教育、啓発ということも非常に重要でありまして、
国民生活センターとしては、その面についてもこれからさらに力を尽くしてまいりたいと考えております。
以上でございます。(
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