○長谷川清君 私は、ここに今、これから裁量
労働制を導入しようかという大手の労使のそれぞれのやりとり、問答、
平成十年ですから、ことしの二月に行われたやりとりの中で、働いている側、組合の側では非常に不安を感じたり、将来に対する不安もあれば不満もあります。
やりとりの
状況などを少しくピックアップしてみますると、まずは趣旨と目的についてかなりのやりとりがあります。
対象部門の決定について、約二十七部門についてございますが、そういう部門と共同研究をやっているようなところは一体どうなるのかとかいう疑問や、
製品トラブルが起こったときにはどうなるのかといったような問題や、あるいは適用と適用の解除の問題についてもいろいろと不安が出ております。
適用だとか適用の解除というのはだれが判断するのか、まただれが決定し、どのような手続をとられて通達されるのかとか、対象者の同意は必要ではないのかとか、従事する業務の変更で適用と適用の解除が繰り返し行われていくような場合は月々の給与が大きく変動する、したがって組合員の生活は脅かされて、将来にわたって、結婚したい、子供をつくりたい、あるいは家を建てたいという生活設計に狂いが、なかなか安定が心配される。そういうことなどについて、例えば会社の方では、今のような認定と解除が交互に行われるというのは、認定、解除のサイクルは最低でも一カ月単位と
考えていると答えていますから、一カ月単位でこれがくるくる変わると大変だなという不安がここにもあります。
裁量
労働制の適用が解除される場合、具体的にどういうことになるのか。会社が判断した場合と会社が答えています。要するに会社側の判断によって適用あるいは適用の解除がされるということがはっきりしておりまして、ここにも不安を感じております。
また、交代勤務等で深夜勤務が生じたような場合はどうなるのか、人事考課が悪いということが
理由になって解除されるのか、こういうものに対しては、成績評価のみを
理由とする解除はしないと会社は答えておりますが、他の
理由をくっつけて解除ということについての不安は残っています。
また、面着についても、面着の時間帯は十時から十五時と
考えていいのかとか、
労働基準法で面着は義務づけられているのかに対して、会社は、義務づけられてはいないと。面着は一日に一回でいいのか、在宅勤務が許されるのかと。在宅勤務は許されない。一日一回だけの面着て所属長や職場の中におけるコミュニケーションが不足をするんじゃないかと組合側が心配しているのに対して、その心配はあるが、積極的にコミュニケーションを図る必要がある、
努力をすると会社は言っております。
仕事が多過ぎてやむなく家に持ち帰ったり、超過勤務、そういうものが常態化しないかという心配には、所属長に十分意識を持ってもらうように会社として
努力すると答えておりますが、やはり不安があります。
業務の指示と業務量の関係についても幾つかここに出ております。また、上司との関係について、ほとんどのものが所属長がすべて握っていることに会社の回答はなっておりますから、所属長とかなりうまくやっていかないと自分の
仕事や自分のやり方やそういうものについてかなり規制を受けるという不安がここでは言われております。
また、拒否権の問題について、
仕事の割り振りをする場合の拒否権というものが組合にはあるのかというものに対して、所属長と十分に話し合って所属の中で調整を図るべき
事項であるというふうに会社は答えています。業務のやり方を任すということは、上司が各人の業務の遂行について口出しはできないと理解していいのかとか。
裁量手当について、この裁量手当は余りにも低過ぎると。
労働組合の立場からは、創造性と
専門的知識・
能力を発揮することによってより高い成果を生み出すことが求められている割には余りに低額ではないか。会社の答えは、同業他社の月額の手当水準を参考にして当社において制度を検討したものであるからこれは動かせない。手当は定昇やベアとリンクさせるのかと。つまりは、基準賃金というものとかあるいは職能給とかといういわゆる年々収入を得る場合のベースになる率にこれは入っていると
考えるのかという質問に対して、それは率で設定するべきものではないと
考えている、つまり率で
考えていないということであります。分配をめぐってもここで不満というものが出ております。
全部をこれ読み上げるわけにはいきませんけれ
ども、現地においては多種多様なそういう業種ごとのやりとりというものが積み重なっていると思います。
そういうことの結果、これから導入しようとするところのこれはアンケート、もう一目瞭然でございまして、これは
技術系の組合、組織は大体一万規模でございますから非常に大手でございます。(図表掲示)「
仕事の能率が上がり、残業が減る」というのが九%、「時間の自由度が広がる」というのが九%、「
能力のある人が報われる」というのが六%、「全員が同じ
仕事量でないため不公平」五四%、「賃金が下がる」五%、「組織のモラルが保てない」四%、「その他」、こういう
数字になっております。
また、既に今裁量
労働制を導入しているところで、これはもう非常に大きな組織です、全国組織八十万ぐらいの組織の単産、単組レベルの実際にそれに従事をしている人々を対象にしたアンケートです。(図表掲示)この
状況で見てもおわかりなように、これは上の丸いものとこの下と別でございますが、上の丸いところで見ても、裁量
労働制を導入したら「
仕事が正当に評価される」で、「そう思わない」という人々は五七二一%です。「そう思う」という人は〇・九%です。「
労働時間が長くなった」と
実感している人、「そう思う」人や「どちらかといえばそう思う」という人々五七・五%、「そう思わない」、時間が長くなったとは思わないという人は七・六%。これは下の部分で、会社のいわゆる評価です、自分が受けている評価に満足しているかどうか。「あまり満足していない」、「満足していない」というのが五七・五%、「満足している」というのはもう本当にわずかな、ここだけです。「どちらともいえない」という人も三五%おります。
こういう分布はこれは生の現実のアンケートをとっての結果でございますから、私は、裁量
労働制というものが、労使関係が今日まで非常に安定的に成長し、そして円満に好ましい労使関係を持っているところですらこういう実態であることを
考えますと、未組織のところなどになりますともっともっと大変である。そういうところに十分なる措置というものが必要になってくる。だから、政治にはやはり先見性が必要だし、基本的な
基準法の中で守るべきところをきちんと守って、それからいろいろと枝葉をつけていくというやり方にしないと、余りにも手続民主主義ばかりで実質民主主義を怠ると非常に弱い人が大変な思いをするということに、我々が
目標としている方向とは違うものになってしまうということをつくづく感ずるわけであります。
そういう意味においてこれからも質問をしてまいりますが、労使
委員会の位置づけとその権限を明確にすべきだと思いますが、ドイツのとおりにしろとは言いませんが、ドイツにおいては
労働委員会法というものがあるぐらいでございますから、まあ少しはやっぱりエキスを学んでいくという
姿勢が必要だと思います。労使
委員会未組織、そういうところではいろいろと労使が話し合うというこの話し合う経験もないし、少ないし、ほとんどない。そういうまた雰囲気でもないし、習慣もない。もともとそういうところに労使の
委員会というものがどう位置づけられていくのかとなりますと、やったことないんだし、そういう
能力も非常に少ないしという
状況がある中で、この労使
委員会の位置づけと権限、任期について中基審の議論を待ちますと、衆議院では中基審の議論を踏まえて措置をするとされているわけでありますけれ
ども、私はこの場で具体的に明らかにしていただきたい。また、その権限についても国会で明確にこれはしておくべきだと思いますが、いかがですか。