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1998-09-17 第143回国会 参議院 労働・社会政策委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年九月十七日(木曜日)    午前十時二分開会     —————————————    委員異動  九月十六日     辞任         補欠選任      山崎 正昭君     森下 博之君      市田 忠義君     吉川 春子君  九月十七日     辞任         補欠選任      大島 慶久君     佐藤 昭郎君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         吉岡 吉典君     理事                 末広まきこ君                 田浦  直君                 溝手 顕正君                 笹野 貞子君                 長谷川 清君     委 員                 佐藤 昭郎君                 斉藤 滋宣君                 鈴木 政二君                 森下 博之君                 今泉  昭君                 小宮山洋子君                 但馬 久美君                 山本  保君                 吉川 春子君                 大脇 雅子君                 鶴保 庸介君                 田名部匡省君                 高橋紀世子君    国務大臣        労 働 大 臣  甘利  明君    政府委員        労働大臣官房長  渡邊  信君        労働省労政局長  澤田陽太郎君        労働省労働基準        局長       伊藤 庄平君        労働省女性局長  藤井 龍子君        労働省職業安定        局長       征矢 紀臣君        労働省職業能力        開発局長     日比  徹君    事務局側        常任委員会専門        員        山岸 完治君    法制局側        第 三 部 長  高久 泰文君    説明員        経済企画庁総合        計画局審議官   高橋 祥次君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○労働基準法の一部を改正する法律案(第百四十  二回国会内閣提出、第百四十三回国会衆議院送  付)     —————————————
  2. 吉岡吉典

    委員長吉岡吉典君) ただいまから労働社会政策委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨十六日、山崎正昭君及び市田忠義君が委員辞任され、その補欠として森下博之君及び吉川春子君がそれぞれ選任されました。     —————————————
  3. 吉岡吉典

    委員長吉岡吉典君) 労働基準法の一部を改正する法律案を議題とし、前回に引き続き、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 斉藤滋宣

    斉藤滋宣君 おはようございます。自由民主党の斉藤滋宣でございます。  正しく生きた人が成功し、そうでなかった人は失敗する、そういう社会を実現しなければならない。疎外された人々の涙をふいてあげ、ため息をつく人に勇気を奮い立たせたい。金大中韓国第十五代大統領の就任演説の一節であります。政治に携わる者の共通の心であります。私は、労働基準法立法趣旨にも相通じる言葉であり、労働行政もかくあるべしという思いを込めまして、以下質問するものであります。  現在、失業率四・一%、失業者数二百七十万人、有効求人倍率〇・五%など、どの数字を見ても過去最悪数字であり、雇用環境は大変厳しいものであることは論をまたないところであります。所管大臣として胸中大変おつらいものがあろうかと思いますけれども大臣は現在の労働環境をどのようにとらえ、現在の労働行政課題をどのように認識しておられるのか。また、二十一世紀を展望するとき、今後その課題克服のためにどのような行政展開をなされようとするお考えなのか、まずお尋ねいたします。
  5. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 斉藤先生の冒頭のお話はまさに労働行政原点そのものであるというふうに私も受けとめております。  そこで、既に先生現下雇用情勢の厳しさについて数字でお示しになりました。有効求人倍率が〇・五〇というのは史上最悪の数値でありますし、失業率が四・一、これは見かけ上は前月から〇・二改善しているように見えますけれども、実はこれは数字のトリックと申しますか、休職者が職を探すのをやめてしまった、その数字失業者にはカウントをされないというところから来ているだけの話でありますから、状況は決して改善をしているということは言えない、引き続き深刻な状況が続いているというふうに認識をしなければならないわけであります。  そこで、この雇用の安定というのは、私も前回も申し上げましたとおり、社会安定要因の重要な要素でありますし、雇用が安定し社会が安定しているというのはいわば日本のいい点、つまり日本のすばらしい点の一つであります。それが今揺らいでいるということは、日本国体自身が根底から揺らいできているというふうにとらえなければならないと思っております。  雇用をあらゆる策を駆使して安定をさせること、これが第一に必要なことでありますし、そうした中で労働者が生きがいと自助の気持ちを持ちつつ雇用の場を通じてその能力を十分に発揮できるようにすることが、我が国の経済社会が活力をしっかりと取り戻していく、そういうために大切であるというふうに考えております。  基本的な認識はそのとおりでありまして、機動的な雇用対策実施であるとか労働基準法制整備等労働政策面において的確に対応し、この雇用不安を一刻も早く取り除いていくべく最大の努力をしていきたいと思っております。
  6. 斉藤滋宣

    斉藤滋宣君 今大臣から御答弁いただいたんですが、もう少し突っ込んで、二十一世紀に向かっての労働行政に対する大臣のお考え、その辺のところをもう少し具体的にお話しいただければ大変ありがたいと思いますが、よろしくお願いいたします。
  7. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 今回の基準法改正は、社会変化あるいは労働者働き方に対する価値観とかニーズの変化に対応しまして、そして時代変化にこたえて、なおかつ新しい働き方に対する最低基準を確保していくということでありまして、その辺のところをしっかり遺漏なきを果たしたいというふうに思っております。  基本的に雇用失業情勢改善させていくというためには景気の回復が前提であります。景気は悪くなったけれども雇用失業情勢改善をしたということはなかなか望めないわけでありまして、労働省としてだけではなくて政府全体として景気を回復させていく、そのためのありとあらゆる策を打っていく。そうした中で労働省としてできることは何があるかということを今問われているのであろうと思いまして、私は大臣就任をいたしまして二つの提案をしましたのは、一つは、現下状況の中でもまだできることがあるはずだということで雇用情報ネットワーク化というのを提言したわけでありますし、これは来年度の政策として予算化がされつつあるところであります。  これは、ハローワークが持っている情報経済団体が持っている情報ネットワーク化を図ることによって、多少なりとも有効求人倍率を上げることができるのではないだろうか。これは我が省だけではなくて通産省の協力も必要でありますから、通産大臣を通じて一緒にやっていこうという提言もいたしましたし、データベースを持っていない経済団体にはそのデータベースを構築していくための予算化通産省でしてほしいという要請もしまして、これも具体的に動きつつあるわけであります。でありますから、今できることがほかにないかということを探してやっていく。  それと、あと労働省がとってまいりました雇用政策というのは、どちらかといいますと維持をしていく政策、つまり失業が出たらそれに対する保険給付をして手当てをし、職をお探しする。それから、失業を出しそうな企業に持ちこたえてもらう、これが雇用調整助成金の基本的な理念でありますから、いずれ景気がよくなるから頑張って持ちこたえていてくれ、そのときには必ず雇用は拡大するだろうから、そういう情勢が来るまで持ちこたえていてくれという政策が主でありました。  これからは、もう雇用を新しくつくり出してこないと抜本解決にはならぬということで、雇用創国政策に踏み込んでいく。これが今までもないとは言いません。ないとは言いませんけれども、発想の転換として、ただ手をこまねいて待っているだけではなくて、景気改善するのを待っているだけではなくて、こちらから踏み込んで新しい雇用を創出するために何ができるか。これは主には、雇用の創出というのは産業政策でありますし、財政政策であるということはよく承知しておりますけれども、こちらからもそれを喚起するような問題提起をしていったらどうだということを提案しているところであります。
  8. 斉藤滋宣

    斉藤滋宣君 今回の法改正につきましては、また後ほどいろいろ質疑したいと思いますけれども、私は、今大臣お話しになりましたように、これだけ厳しい状況の中で、やはり一省庁ということではなくして、よく言われる縦割り行政ということではなくして、横の連携を密にしながら、やはりこの今現在の大変な厳しい状況を打破していかなければいけないと思います。そのためには、今大臣お話しありましたとおり、こういう厳しい中でも今まで労働省としていろんな施策展開をしておりますけれども、もっとできることがないか、今大臣がそのようにおっしゃいましたけれども、私はやはりそういう姿勢が必要だと思います。現状に満足することなく前向きに、少しでも労働者皆さん方がよりよい環境の中で働けるように、そういう姿勢をぜひとも貫いていただきたい、要望したいと思います。  いま少し基本的なことについてお尋ねしたいと思いますけれども、特に労働条件の中でも重要な労働時間についてでありますけれども、昨年四月に週四十時間制が導入されました。達成率も約七八%に達しているという反面、九二年六月、政府経済計画、「生活大国五か年計画地球社会との共存をめざして—」の中で、計画期間中の九六年までに一千八百時間の達成をうたったにもかかわらず、その目標達成することができず、現在なお千八百九十六時間となっているのは承知のとおりであります。  年間労働時間は毎勤統計労働力調査の両調査とも九三年まで時間短縮が進んでまいりましたけれども、その後横ばい状態が続いている中で、平成十二年末までの千八百時間達成は困難ではなかろうかと思うものでありますが、このような現状をどのように認識しておられるのか。また、先日の委員会の中でも但馬委員への答弁の中で有給休暇の権利を全部行使すればさらに時短が進むとの答弁もなされましたけれども、今現在、労働省考える総労働時間千八百時間のモデルケースはどのようなものをお考えになられておるのか、お聞きしたいと思います。
  9. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 労働時間の現状についての認識でございますが、御指摘ございましたように、平成九年度で年間の総実労働時間千八百九十六時間となっております。これは初めて千八百時間に突入し、ここ十年で二百時間を超える労働時間の短縮を実現してまいったわけでございますが、経済計画目標でございます千八百時間に比べますとなお開きがある実情にございます。  千八百時間を達成するためのモデルケースとして、この目標が掲げられた当時経済審議会で示されたものによりますと、完全週休二日制に相当する週四十時間労働制実施、それから年次有給休暇二十日付与されて完全取得する、それから所定外労働時間につきましては百四十七時間程度で抑制していく、これが大前提となりまして、それらが実現できれば千八百時間に到達していく、こういうモデルケースが示されておるところでございます。  そういったモデルケースに比べますと、先生指摘ございましたように、例えば年次有給休暇につきましては現時点取得率が五〇%台半ばにとどまっておるわけでございます。今回の法改正の中でこの付与日数増加を図っておりますが、そういうことの効果を上げつつ、これらのさらに取得促進を進めること。それから、私ども今精力を注いでおります週四十時間労働制につきましてさらなる完全定着を目指していくこと。それから、時間外労働につきまして、現時点平成九年度百四十八時間という実績でございますので、モデルケースにほぼ等しいところまで来ておりますが、今後やはり長時間労働等時代に再び戻ることのないように、今回改正法案に織り込んでおります上限基準等の厳正な運用、こういうことを通じまして千八百時間に近づき、到達をさせていきたいと思っておるところでございます。
  10. 斉藤滋宣

    斉藤滋宣君 ただいま局長から所定外についてはお話がありましたけれども所定内についてもちょっと教えていただけますでしょうか。
  11. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 所定内の平成九年度の実績は千七百四十八時間でございます。これをモデルケースと比較いたしますと、モデルケース完全週休二日制を週四十時間によって到達し、さらに年次有給休暇二十日付与、その完全消化ということになりますと、約千六百五十四時間というようなのがモデルケースでございまして、この辺でもやはりなお開きがあるところでございます。
  12. 斉藤滋宣

    斉藤滋宣君 今モデルケース現状について御説明いただきましたけれども、先ほども少しお話し申し上げましたが、総労働時間の短縮大変横ばいになっている、そういう状態の中でそれぞれの項目をモデルケースに近づけていくということにつきましては、果たして現行仕組みの中で十分なんだろうか、やはりもう少し踏み込んだプラスアルファというものが必要なんではないか、そのように思います。平成十二年末を目標にしてそれを達成するためには、今後どのような政策展開をされながらモデルケースに近づけていこうと考えておられるのか、お聞きしたいと思います。
  13. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 年間の総実労働時間、御指摘のございましたように横ばいを続けていたのが最近の状況でございます。ただ、平成九年度に入りまして、週四十時間労働制平成九年の四月から中小企業を含めまして全面実施したことによりまして、横ばいからこの間約二十時間近い減少を見ました。この流れを、週四十時間制を完全定着させることによって確実なものにしていくこと、これがまず基本的に重要かと存じております。  あわせまして、やはり課題は、一つ有給休暇消化率をもう少し高めていくように努力しなければならないということでございますので、その日数増加を今回図っておりますが、私ども労使の自主的な取り組みを促すための要綱等も提示しておるわけでございますが、一層の普及を図りながら年次有給休暇完全消化させていきたい、そういうことによって所定内の時間がさらに減少していくだろうと思っております。  それからもう一つは、やはり時間外労働の問題でございます。先ほど申し上げましたように、モデルケースにほぼ等しいところまで来ておりますが、もし今後景気変動等で回復していったような場合にまた過去の年間百八十時間というような水準に戻らないように、やはりこの時間外労働抑制策というものをしっかり制度の中に組み込み、私ども厳格な運用にしていく、こういうことを通じて千八百時間にできるだけ早く、目標平成十二年度末でございますが、到達に、目標に近づいてまいりたいと思っているところでございます。
  14. 斉藤滋宣

    斉藤滋宣君 確かに局長お話のとおり、平成九年度千八百九十六時間、今までの流れの中からは二十時間程度少なくなってきておりますけれども、それでもなおかつ目標まで百時間弱の開きがあるわけであります。  ですから、やはり最初に大臣が御答弁ありましたけれども、まだまだやれることはないか、そういうことを常に頭の中に描きながら、その目標達成のために現行政策で満足することなく新たに何かできることがないか、そういう前向きな姿勢というものも私はぜひ必要なのではないか、そのように考えておりますので、ぜひとも御検討いただきたい、そのように思います。  さらには、今回の改正法案につきましては、時間外労働抑制仕組みを使いながら労働時間の短縮を進めていくというお考えもあろうかと思います。私は、二十一世紀を間近に控えまして、今回の労働基準法改正案がゆとりと豊かさを実感できる社会を実現するという時代要請にこたえるものでなければならないと考えるものであります。時代変化に即応しつつ、労働者の新たな働き方の実現のためのルールづくり、それは労働者の保護に十分配慮した上で進めていくことが大変極めて重要なことだと思っております。  そこで、今回の改正に当たっての考え方が労働関係入り口、すなわち就職から在職期間を通じ退職により労働関係が終了する局面までを通じて、果たしてそのような配慮が十分になされているか否かを順次お尋ねしていきたいと思います。  まず、入り口であります労働契約締結時の問題についてであります。  今回の改正案では、現行口頭で可となっている就業場所、業務、労働時間、そして休日などの基本的な事項事業主文書で明示することとしておりますけれども、現在、アルバイトやパートの方についてはパートタイム労働法の第六条に労働条件を記載した文書交付努力義務として求め、モデル様式の雇い入れ通知書も提示することが求められているにもかかわらず、実態は賃金額についても口頭のみで済ましているようなことをよく耳にするわけであります。  そこで、お聞きしますけれども、今回の改正は正社員でないパート労働者、いわゆる契約社員派遣労働者などの方々にも厳格に適用され、今申し上げたような例は全くなくなると解釈していいのでしょうか、お尋ねしたいと思います。
  15. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 御提案申し上げております改正案におきましては、労働契約締結時に基本的な労働条件につきましては文書でこれを明示するように義務づけをいたしました。これは、実質的にパート労働法によります雇い入れに関する事項文書交付、これの努力義務規定労働基準法に基づくいわば強行法規として厳しくいたしたものでございます。したがいまして、御指摘ございましたパート労働者方等につきましても、雇い入れである限りこの文書による基本的な労働条件の明示というものは義務づけがなされたわけでございます。  私ども、これを労働基準監督機関におきましてまずは周知広報、そして厳正な労働基準法に基づく監督指導ということを通じましてその徹底に万全を尽くしていく考えでございます。
  16. 斉藤滋宣

    斉藤滋宣君 次に、労働契約を締結する際、期間の定めのないものとするか、期間を定める有期契約とするかは労働契約の重大な要素となるものと考えます。今回の労働契約期間の限度に関する改正について何点かお伺いしたいと思います。  まず、高度の専門的知識を有する者について労働契約期間上限を一年から三年に延長しましたその理由と、それからその三年とした根拠についてお伺いしたいと思います。
  17. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 労働契約期間についてでございますが、現在の法律ではこの労働契約期間上限を一年というふうに限っておるところでございます。  しかしながら、近年とみにその必要性が言われております新たな商品、あるいは新たな製品技術、あるいは金融商品等開発を含めまして、相当にそのために高度な技術知識等を持った人材が求められておるわけでございます。こういった方を内外から招きそういった製品開発に当たる場合に、やはり実情から見まして一年という契約期間のもとでは人材を集めがたいケースがあるという要請が各方面から聞かされておったわけでございます。そういったことに配慮いたしまして、今回、そういう高度な知識技術等を持った方に限り、なおかつ新製品開発等に当たる場合に限り、この契約期間上限を三年といたしたわけでございます。  そのほかに、六十歳以上の高年齢者の方についてもこの三年という契約期間上限の延長を行っておりますが、これは高年齢者がその培った経験や知識をできるだけ長い期間発揮していただくための改正でございます。  三年といたしましたのは、科学技術庁の調査結果等から研究開発期間というものが通常どのくらいの期間で行われているか、約半数を超える割合で三年、あるいはニュービジネス協議会が新事業のアイデアを得てから事業化するまでの平均的な期間について調査を行っておりますが、やはり三年以内とするものが六割を超える、こういった状況がございまして、そういった意味で私どもこの上限を三年というふうにさせていただいて提案を申し上げた次第でございます。
  18. 斉藤滋宣

    斉藤滋宣君 今ちょっと答弁の中にもありましたけれども、前二項につきましては三年の理由根拠というものが今お示しいただきまして理解できるところもあるんですが、私は、今いみじくも局長高齢者お話をいただきましたけれども、その六十歳以上の高齢者の件について少しお伺いしたいと思います。  今、六十歳以上の高齢者の中で就業を望んでいる人の割合は一体どのぐらいあるんでしょうか、さらには就業を希望しながら実際に働いている人というのはどのぐらいの割合でおるか、わかりましたら教えていただきたいと思います。
  19. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 就業構造基本調査平成九年の実績を見ますと、六十歳以上の高齢者の方で実際今仕事についていない無業者の方で就業を望んでいる人の割合は九・一%、一割弱になっております。また同時に、既に働いている人の割合は三四・四%でございますので、四〇%を超える割合就業については積極的な意思を持っておられるというふうに理解をいたしております。
  20. 斉藤滋宣

    斉藤滋宣君 私、正直申し上げまして、望む人の割合が大変少ない感じもしますし、実際そういう六十歳以上の高齢の方で希望しながら四割の方が本当に就業されているのかなと、ちょっと数字が高い気もするんですね。というか、私も秋田県の出身でありまして、今全国一の高齢者県になろうとしている県でありますから、六十五歳以上の方が大変おられます。六十歳以上を超えている方もたくさんおられます。じゃ実際そういう方たちが仕事についていらっしゃるかというと、余りついていないのが正直言って実感なんです。  やはり、今まで働いてきてその定年退職後も今まで養ってきた技術だとか技能というものを生かして働き続けたいという高齢者の方も大変多いと思うんです。また、それらと逆に、企業の立場に立って考えれば、その方が持っている技能技術といったものを引き続き一定期間働いていただくことによって後進の指導に当たってほしいということも考えている企業もあろうかと思います。  先ほど申し上げたとおり、私の体実感として感じるのは、働きたいと思ってもなかなか働けないという方がかなりおるんではないのかなというふうに感じておるわけであります。今こうして実際に働くことができた、なかなか働けないと思っている中でせっかく雇用されてそういうチャンスを得たわけでありますから、私は六十歳以上の高齢者労働契約期間というものを少し考えて、六十歳定年でありますからやはり公的年金支給開始年齢の六十五歳までの五年間ぐらいに延ばすことが考えられないのかなというふうに思うんです。実際、そういう五年間ということは今まで検討されたことはないんでしょうか。
  21. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 六十歳以上の高年齢者の方についての労働契約上限につきましては、新技術等開発に当たる高度な方とやや性格を異にしておりまして、その雇用の安定という意味合いが大変強いわけでございます。  そういった観点から、種々御議論を願っておりました中央労働基準審議会におきましても、この契約期間の議論の際に、高年齢者の方については五年が適当ではないかという御意見も確かにございました。そういった点をめぐりまして公労使の方に意見の調整をお願いしてまいったわけでございますが、最終的にやはり今回契約期間上限を延ばすに当たって、最初に申し上げました高度な技術知識等を持った方との整合性等を考慮して公労使が一致して三年ということが妥当である、こういう結論を出していただきましたものですから、私どもそれを受けまして今回三年ということで御提案を申し上げさせていただいているところでございます。
  22. 斉藤滋宣

    斉藤滋宣君 私自身は、六十歳以上の高齢者の方が高度の専門的知識を有する皆さん方と同じように一律に三年ということで本当にいいのかなという疑問をいまだに持っております。  これから将来の研究課題かもしれませんけれども、先ほど申し上げたとおり、やはりまだまだ労働意欲が高い、さらには六十歳定年になってから公的年金の支給が開始される六十五歳までの五年間というものを考えますと、今後高齢者については上限を三年から五年に引き上げていくようなことも視野に入れながらぜひとも検討していただきたい、要望しておきたいと思います。  さらには、六十歳以上の高齢者の件でもう少しお聞きしたいと思うんですけれども、高度な専門的知識を有する人たちと違いまして、六十歳以上の高齢者については今回のこの改正でも更新が可能だと私は解釈しておりますけれども、どのような更新が考えられるか、そしてその理由もあわせてお聞きしたいと思います。
  23. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 御指摘ございましたように、高度な知識技術を持っておられる方の契約期間上限につきましては、新たにその事業場の外から雇い入れる場合に限られておりますと同時に、三年後の更新につきましては原則に戻るという取り扱いをいたしておるところでございます。  ただ、六十歳以上の高年齢者につきましては、定年退職後引き続き同じ事業所で三年という契約期間雇用をし得るように措置をいたしておりますほか、さらにその三年が終了いたしました後も現行の一年を超える例えば二年あるいは三年というような更新を可能にしておりまして、でき得れば私ども目標にしております六十五歳までの現役社会、こういったことに近づけるようにさらに引き続き長期間雇用が高年齢者の方に恵まれますような形で制度を提案させていただいております。
  24. 斉藤滋宣

    斉藤滋宣君 何回も繰り返して本当に申しわけないんですけれども、今局長答弁にありましたように六十五歳までの現役社会ということを考えれば、やはりここで更新が可能であれば私は最初から五年であってもいいのではないのかなというふうに思います。先ほども要望したとおり、今後ひとつ検討課題として御検討いただきますようにお願いしたいと思います。  有期労働契約の中途解雇の問題につきましては、現行の一年以内とする法制下でも生じる問題でありますけれども上限が延長されましてその利用がさらに進めばこうしたトラブルがふえる可能性があると思います。  さきの委員会でも鶴保委員から労働者側からの損害賠償の質問がありましたけれども、逆に労働者が中途で有期労働契約を解除した場合、企業労働者に対する損害賠償はどのようなときに可能になるんでしょうか。といいますのは、例えば健康を害して仕事が続けられなくなっても、まだ数年契約が残っており、損害賠償等を考えるとやめられないなというのでは労働者も困ると思うんです。  また、今回の改正の対象は高度の専門的知識等を有する者としておりますから、余人をもってかえがたい先端技術者をプロジェクトの中核的なものとして招聘し働いていただくことになると思うわけですが、もし中途でライバル会社に引き抜きされたり、その技術や企画が盗用されるといったトラブルも考えられると思いますが、もしそういう場合はその企業に対して損害賠償を求めることができるんでしょうか、お伺いしたいと思います。
  25. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 御指摘ございました有期の契約を結んだ労働者の方が途中でやめる場合の件でございますが、民法の六百二十八条ではやむを得ない事由がある場合、そういう場合に限りましてでございますが、この契約の解除が可能となっております。そうした事由がなくて当事者の一方の過失等によってそういった契約解除の問題が出てきた場合には、もし相手方に損害を生じさせているということであれば、損害賠償の請求ができる旨も規定されておるわけでございます。  また、お話ございました引き抜き等の場合、その企業が引き抜いた企業に損害賠償を求めることができるかどうかというのがまずあるかと存じますが、単なる転職の勧誘を超えまして社会的相当性を逸脱した方法で従業員を引き抜いたと、こういうケースにつきまして、引き抜いた企業に損害賠償責任を認めた裁判例はございます。ただ、先生お話ございましたように、非常に高度な知識技術を持った方であるだけに、企業内のそういったノウハウに関する秘密の部分等についてもし盗用等の問題が出た場合のケースにつきましては、目下私どもそういうことで争われた判例等については承知いたしておりませんけれども、今後いろんな意味の知的財産というようなものの重要性が高まる中で、労働基準法とはまた別にそういった民法上の問題について私どもどういうふうに考え方をまとめていくかにつきましては、先生指摘のようなことも踏まえて勉強させていただきたいと思っております。
  26. 斉藤滋宣

    斉藤滋宣君 今まで労働契約期間の延長について質問してまいりましたけれども、この延長後の制度が社会に定着しまして本来の機能をきちんと果たしていくことを期待したいと思います。  労働契約を締結し実際に労働者が働く職場での労働条件就業環境は多様であり、また一方働く労働者の個性や労働に対する考え方もまた同様に多様であります。その多様さは労働基準法制定時とは比較にならないものであり、今回の法改正の動機は、そのことに対処するべく新たなルールをつくることであることは何度も承っているところであります。今回の改正法案が、そうした実態を踏まえながら、個性に応じた働き方労働者保護に十分に配慮しつつ本当に時代にマッチした労働環境を実現しようとするものなのか、幾つかの改正項目に即しまして順次お尋ねしたいと思います。  まず、一年単位の変形労働時間制についてであります。この制度を平成五年に設けたわけでありますけれども、この制度を設けた理由は一体何だったんでしょうか。  また、現行の制度では、三カ月以内一日十時間、一週五十二時間、三カ月を超える場合には一日九時間、一週四十八時間という時間の限度の設定をしていましたけれども、この理由は一体何だったんでしょうか。  さらに、この制度の導入状況及び導入理由、そしてこの制度を導入した企業ではどのような成果が上がっているのか、具体的にお尋ねしたいと思います。
  27. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 一年単位の変形労働時間制でございますが、この制度は、六十二年に三カ月単位の変形労働時間制というのが設けられておりました。平成五年には、週四十時間労働制平成九年の四月一日から実施する旨を法律に織り込みました改正でございますが、その際に、この週四十時間労働制実施をしていくための一つの方策、さらに、同時にあわせまして、年間の季節の業務の繁閑等を活用いたしまして、休日増を図りながらゆとり等をもたらすための制度として最長一年までの変形期間ということを採用させていただいたわけでございます。  その際に、一日及び一週の限度時間につきましては、三カ月の単位の変形労働時間制の場合、一日十時間、一週五十二時間でございましたが、中央労働基準審議会の当時の建議等で、やはり休日等をふやすことが主たる目標であるので、一日、一遇の限度時間については、できるだけ縮小する方向で検討した方がいい、こういう建議がございまして、私どももその後の国会審議の御意見等も受けまして、三カ月の場合よりも短い、一日九時間、一週四十八時間以内といたしたわけでございます。  御指摘ございました導入状況について見ますと、平成九年度で労働時間等の総合実態調査で見ますと、導入事業所の割合は一三・四%になっております。  導入した理由でございますが、これ幾つかの答えが重複してあるかと思いますが、その主なものとして挙げているものだけを見ますと、この年が週四十時間労働制中小企業にも全面的に実施したことと相まって、四十時間労働制実施するためというのが七一・五%でございました。ただ同時に、季節的な業務の繁閑に対応するためというのが一二・四%、年間のスケジュール的な労働時間管理を行うためとするものが一一・九%ございます。  導入の効果についてお尋ねございました。  平成八年度にそうした点の調査を行っておりますが、一年単位の変形労働制を導入した事業所におきまして、休日で見ますと平均で年六・一日の増加、それから週単位で所定労働時間数を見ますと平均で二時間二十五分の短縮、こういう成果を上げているところでございます。
  28. 斉藤滋宣

    斉藤滋宣君 今御説明がありましたけれども、今回この改正法に基づきまして省令を改正しまして、時間限度を一日十時間、一週五十二時間としているわけでありますけれども。  私は、今の局長の説明を聞いておりますと、三カ月以内での十時間、五十二時間、三カ月超の九時間、四十八時間のその差の理由を聞きますと、やはりそれを超えてきた部分では休日をふやすために短い方がいいだろうという、そういう御検討もあって、三カ月を超えるところは九の四十八となっているというふうに聞いたわけであります。今回これが一年に広げられるわけでありますから、逆に今までの考え方でいけば、十、五十二という考え方よりも九、四十八という考え方に近いのではないか、そのような気がするわけでありますけれども、今回一律に一日十時間、そしてまた一週五十二時間としたのはどのような理由なんでしょうか。  それと、このことによってどのような職場でどういうような働き方が可能になるのか、そのこともあわせてお伺いしたいと思います。
  29. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 今回の一年単位の変形労働時間制の改正は、年間の総実労働時間につきまして、年間の業務の繁閑等全体を見通して、あらかじめ計画的な労働時間管理を行っていただくそういう効率的でめり張りのきいた働き方ができるようにというねらいから、一定日数以上の休日の確保、こういうことを新たに要件とさせていただいているほか、時間外労働につきましてもその限度を一般の企業の場合よりも低い水準で定めていこう、こういうことも新たな要件として追加をさせていただく予定にいたしております。  そういうことと相まちまして、そういうことを実施していきますと、業務の繁閑のいわば山と谷でございますが、これをうまく活用していかなければならない。したがいまして、ただいま申し上げましたような新しい要件といわば一連のものとして、この限度時間につきましても、一日九時間というものを一日十時間、一週を四十八時間から五十二時間というふうに改正をさせていただきたいというふうに思っているところでございます。  これらが一体のものとして計画的で効率的な労働時間管理につながれば、全体としての年間の総実労働時間の短縮につなげていくことができるのではないかというふうに思っているところでございます。  どういった業種でという御指摘ございました。  典型的には、例えばクリーニング業のように季節の差があるもの、印刷業等も同様でございます。そういう繁忙期が三カ月という単位におさまらないで変動するような企業ということが中心になろうかと思いますが、ただ、私どもいろんな実例を見ますと、電気製品等の工場等におきましても、製品によりましては業務の繁閑等が出てくる。したがって、あらかじめ年間のカレンダーをつくって夏休み等を大幅にとりながらこの変形制を活用しているというようなケースも見られます。したがいまして、私ども、こういった制度の改正を通じまして、労使間て労使協定が要件でございますが、新しく話し合われることによりまして、年間の繁閑を効率的に利用した労働時間管理、そういう工夫がされていくかと存じます。したがいまして、長期休暇等の実現が容易になっていく道が開かれるのではないかというふうに期待しておるところでございます。
  30. 斉藤滋宣

    斉藤滋宣君 正直申し上げまして、ちょっとまだ十時間、五十二時間に対する根拠というものに対して理解できないんですが、後でまたゆっくりお伺いしたいと思います。  この制度そのものを労働省も週四十時間制移行のための手段の一つとして制度の導入を推奨しているということですが、私は先ほどの、今局長もおっしゃいましたけれども法律上の原則の例外として、業務の繁閑に応じて法定時間を超える所定時間の設定、そしてめり張りを持って働き、総労働時間の短縮もできるというのがこの制度の趣旨であり、労働者側からすれば忙しい時期に集中的に働くかわりに休日の増加労働時間の短縮ということが期待されているわけですから、そのための方策として、今回の改正法案で、どのように具体的にこの労働者が求める休日の増加労働時間の短縮ということを講じられようとするのか、お伺いしたいと思います。
  31. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 今回の改正法案の中に、織り込まさせていただいている要件といたしましては、一定日数以上の休日を確保すること、これを新たな要件とさせていただいております。加えまして、時間外労働上限基準を設定いたしますが、その中で、この変形労働時間制を使う場合には、一般の企業よりも低い時間外労働の限度を定めていく、こういう改正をさせていただいております。  そのほか、中央労働基準審議会の建議等では、限度時間等についても長期間に及ばないような措置を検討すべしというふうな御指摘もいただいておりまして、私ども法案を成立させていただきました段階で、今申し上げましたような要件に加えて、そういった点につきましてもいろいろと審議会の方で御議論をしてもらいたいと思っているところでございます。
  32. 斉藤滋宣

    斉藤滋宣君 局長のおっしゃっていることはよくわかるんですけれども、一日や一週間の所定労働時間が限度いっぱいまで延長されれば、いかに閑散期に所定労働時間が短くなっても繁忙期の負担増加の影響というものは私は無視できないと思います。  古い資料で恐縮ですけれども労働省が一九八七年に行った労働者健康調査によれば、一日十時間以上働いたときには一晩睡眠をとれば疲労が大体回復すると答えた人は三分の一以下であります。翌朝に前日の疲れを持ち越すと答えた人は、時々ある、よくある、いつもあるの三つを合計しますと三分の二以上と報告されています。  また、いかに繁閑期をならして週四十時間を超えないといっても、繁忙期の八時間を超えて設定される時間というものと閑散期に減少される時間の持つ意味も質も違うと私は思います。  以上の点からも、変形労働時間制においては特に時間外労働は極力少なくしていくことが必要と考えますけれども、一年単位の変形労働時間制については時間外労働に関する上限基準を通常のものよりも低い水準にすると今局長お話しされておりますが、どのようにこれを決定し、そしてどの程度の水準にするお考えなのか、御説明願いたいと思います。
  33. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 一年単位の変形労働時間制を利用する場合の時間外労働上限基準でございますが、通常のものよりも短い水準とするということでございます。  私ども、これを定めるために、変形労働時間制を使っているところ等の実態を現在調査し、集めておるところでございます。そういったものがそろいましたら、先生指摘ございましたように健康管理、そういったことも十分念頭に置いて、そういったデータを示しながら中央労働基準審議会の方で適切な水準を設定していただくように検討をお願いすることにいたしているところでございます。
  34. 斉藤滋宣

    斉藤滋宣君 一年単位の変形労働制の時間外労働に関する実態調査を今現在実施中と聞いておりますけれども、その実態調査を踏まえた上で関係審議会で労働の現場を熟知したメンバーを入れる、そういう人たちの意見をよく聞きながらもう少し深く審議していただくことを私は要望しておきたいと思います。  大分時間がなくなってきましたのでまとめて簡単にお聞きしますけれども、一カ月単位の変形労働時間制についてであります。  この制度の利用状況、そしてまた導入している業種別、規模別に特色があればお聞きしたいと思いますし、今回の改正案では、就業規則に加えてさらに労使協定の締結によっても制度を実施できることになりましたけれども、これはどういう趣旨によるものなのか、御説明いただきたいと思います。そしてまた、一カ月単位の変形労働時間は一日の、そしてまた一週間の所定労働時間の上限を設けていませんけれども、あわせてこの理由についてもお聞きしたいと思います。
  35. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 一カ月単位の変形労働時間制は、労働基準法の制定以来設けられている制度でございます。利用状況も進んでおりまして、平成八年で二二・四%の企業がこれを利用している状況にございます。  導入割合が高い業種の方でございますが、電気・ガス・熱供給・水道業、こういった分野で三七・二%の導入割合、また運輸・通信業で三三・九%となっております。どちらかといいますと、一般のお客さんのニーズにこたえてサービスを提供する分野が多い、こういう状況でございます。規模別にも千人以上で三四・三%と、以下やはり大企業の方が順次利用割合が高い状況が出ております。  それから、今回の改正法案で、今まで就業規則で一カ月の変形労働時間制を定めることが必要だったところに加えて、労使協定という形で一カ月の変形労働時間制もできるようにいたしましたのは、就業規則は労働者の代表の意見を聞くという形のものでございますが、労使協定は合意に達しないとできない。したがいまして、労使の自主的な話し合いによる制度の実施が可能になるように制度を用意しておきたい、こういうねらいでございます。  また、一カ月単位の変形労働時間制について一日や一週間の労働時間の上限を設けない理由でございますが、一つは、先ほど申し上げましたように、一カ月単位の変形労働時間制は労働基準法制定時に設けられまして非常に多くの業種や企業で利用が進んでおりまして、その利用の実情は極めて多様でございまして、差が大きい状況にございます。こうした実態に加えまして、一カ月以内という比較的短い期間の中で平均すれば週当たりが四十時間になっていなければならないという制度でございますので、過度に所定労働時間の長い週や日が連続するという可能性が少ない。こういったことから、一日及び一週の所定労働時間の上限を設けてはおらないわけでございます。
  36. 斉藤滋宣

    斉藤滋宣君 私は、労働者がどんな職場であっても、それが原則的な労働時間制度のもとであろうと一年あるいは一カ月単位の変形労働時間制であろうが、最低労働時間として共通に守らなければならないルールが必要であると思っています。私は、そのルールというのは法定時間、すなわち週四十時間制でないかな、そのように思います。  労働基準法制定時から長く続いた週四十八時間の時期はともかくとして、週四十時間まで進んだ今日においては、先ほどの説明にあったように、一定期間を平均して達成する変形労働時間制は、あまねく労働者について週四十時間制を達成するために活用が図られるべきであることは理解するものでありますけれども、その際にはやはり制度の特性や利用実態に応じて延長後の所定労働時間に制限を加えたり、総労働時間の短縮や時間外労働を抑制していく、そういうシステムを考えることが必要だと思います。  変形労働制につきましては、やはりこれからも関係省令等に関する審議を十二分に尽くしてさらに制度を整備していくような、そういう御審議を続けていただくように要望したいと思います。  次に、時間外労働について、特に激変緩和措置についてお尋ねしたいと思います。  女性保護規定の解消に伴うこの措置は、昨年の男女雇用機会均等法の改正法案を審議した際にも当委員会も附帯決議において政府に検討を要請した結果であり、必要な措置だと私も思っています。しかし、時間外労働の制限等の女性保護規定が、家庭責任の大半を女性が負っていることや男性労働者の長時間の時間外労働等によるところが大きかったことを考えるとき、これらの改善なくして真の男女共生社会というものの実現は大変難しいものだと私は思います。  そこで、今回の激変緩和措置の期間終了までの間に、男女を問わず、家庭責任を持つ働く方々の時間外労働のあり方を検討し、必要な措置を講ずるとしておりますけれども、私は、男女が負担なく働けるための共通の措置というものが必要と考えますが、労働省におかれましては、具体的にどのような措置を講ずるおつもりなのか、お伺いしたいと思います。
  37. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 御指摘ございましたように、仕事と家庭の両立を図れるような労働時間制度等を実現いたしまして、男女共同参画社会の形成等に資していくことは大変重要な課題であるというふうに思っております。  今回の改正法案におきましては、時間外の上限基準を定め、それを利用いたしまして激変緩和措置を講じていくわけでございますが、さらにその後それに引き続いて、家族責任を有する男女の労働者につきまして、この時間外労働に関する制度のあり方について具体的な検討を行い、措置していくことを私どもとしても提案申し上げていたわけでございますが、衆議院の修正の段階で、この点につきまして、この時間外労働に関する制度のあり方は、長時間にわたる場合の時間外労働について、いわば一定時間を超える時間外労働について、家族責任を有する方がその免除を請求できる制度として検討をして必要な措置を講ずると、こういうふうに修正されたところでございます。  したがいまして、私ども、一定時間を超える時間外労働の免除を請求することができる制度につきまして、具体的にどのように構築していくか、育児休業法、介護休業法等の施行状況等々を把握して具体的な内容につきまして真剣に検討を重ねてまいる考えでございます。
  38. 斉藤滋宣

    斉藤滋宣君 今回の激変緩和措置の一定期間、約三年程度としているわけでありますけれども、その期間までに、今局長答弁いろいろありましたが、そういったことが果たして実現できるのかどうか。いわゆる今回の激変緩和措置だけでもひとつ考えていかなきゃいけないと思いますのは、男女雇用機会均等法ができた、そういう社会の中で、じゃ男性も女性も本当に共通の職場が与えられて十二分にその能力を発揮できるようなそういう環境のもとに働けるかどうか、それが整っていればこういう時間差攻撃的な緩和措置というのはそうそう必要なくなってくる。言ってみれば、男性社会の方がもう少し時間外労働を含めて労働環境が整ってきていればもう少し違う方法もあったと私は考えるわけであります。  ですから、今のこういう現状の中で、果たしてこの三年間程度という中で、今局長の御説明のあったようなところが、本当に激変緩和措置が必要なくなるようなそういうことが実現できるのかどうか、そのことをちょっとお聞きしたいと思いますし、またそういう環境が整わない場合には、そういう激変緩和措置のさらに延長ということも考えられるのかどうか、その二点についてお聞きしたいと思います。
  39. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) この激変緩和措置につきましては、中央労働基準審議会の建議では三年程度と、具体的なことはさらに審議会の方で御議論を願うことになりますが、そういった建議を受けておるところでございます。  御指摘ございました激変緩和措置後の一定時間を超える時間外労働の免除に関する制度につきましては、この激変緩和措置が終わるまでの間に検討を加え必要な措置を講ずることが法律上の条文になっております。  したがいまして、私どもこの激変緩和措置が終わるまでの間には、新しい家族責任を有する男女の労働者の方についての時間外労働の免除に関する制度が御提案申し上げられるように、これは真剣に検討をし、また御提案をさせていただくつもりでおります。  ただ、制度としては、先生指摘ございましたように、その激変緩和措置が終わるまでの間にという形になっておりますので、両方はいわば条文としてはリンクした関係になっておるところでございます。
  40. 斉藤滋宣

    斉藤滋宣君 私は、やはり政府において、激変緩和措置が終了するまでに、男、女といった性によるものではなくて家庭責任の有無という切り口で適正に範囲を定め、請求による時間外労働についての検討をさらに進めていただきたいと思います。そしてさらには、そのことによる職場での差別を受けることのないよう指導することを要望しておきたいと思います。また、対象となる方々の希望が尊重され、強制や押しつけになることのないようさらに要望したいと思います。  政府レベルから個々の労働者レベルまでそれぞれの取り組みにより時間外労働が抑制され、冒頭からお尋ねしたように、目標とする千八百時間達成のために近づいていくことを期待しておきたいと思います。  次に、裁量労働制についてお伺いします。  時間がないので簡単にお聞きしますけれども、この裁量労働制は、衆議院で修正されまして、本人同意というものが修正でつきました。この本人同意は、自律的、創造的な働き方を実現するのは究極的には労働者本人によるものであることから、私も本人の同意は重要なファクターであり、必要な措置と考えております。  しかし、本人同意ということによりますと、職場で考えてみますと、本人の同意、不同意によって同一事業所内で異なる労働条件で働いている方が生じるということになるわけでありますけれども、そういうことで不都合がないのか。それから、不同意を理由として不利益な取り扱いをしてはならないことを労使委員会で決議する、そういうことになっておりますけれども、そのことで本当に確実にそのことが担保されるのか、どうお考えなのかお伺いしたいと思います。
  41. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) まず、衆議院の修正でこの裁量労働制実施に当たって本人の同意ということを必要とする旨が要件として加わりました点でございますが、この結果、同一事業所内で労働時間管理について異なる人がいる場合の問題でございます。  裁量労働制は、この法律上規定しておりますように、事業主が業務上の指示をせずに本人の裁量に任せて仕事を進めてもらう、こういう人たちが対象でございまして、いわば個々人のやり方に任されている。例えば工場等の生産ライン、製造工程にありますように、やはり集団で一律的な労働時間管理でないと仕事がしにくいという部署ではないところで利用するような法律上の要件になっておりますので、御指摘のような点についてはこの同意の制度が入りましても御懸念のような問題は出ないのではないかというふうに思っておるところでございます。  また、不利益取り扱いについて、労使委員会でしない旨を決議するわけでございますが、もしこれに違反してそういったことが仮にありましたならば、これは私どもも厳正な改善指導を行ってまいりますが、同時に、この裁量労働制の有効期間は私ども衆議院の方でも大臣から答弁申し上げておりますが、一年というふうにいたしたいと思っております。したがいまして、元来、労使が全員一致で導入を決定しない限り裁量労働制実施できないという仕組みのもとでございますので、もし事業主にそういう点があれば恐らく裁量労働制を継続して実施することは不可能になっていくのではないかというふうに思っております。
  42. 斉藤滋宣

    斉藤滋宣君 私の個人的な意見として、労使委員会の全会一致ということが、逆に本人の不同意というものがなかなかしづらい環境をつくることにもなるんではないかなとちょっと心配するんですが、それは結構であります。  それで、先般の労働委員会でちょっと私、審議を聞いておりましてわかりづらいところがあったものですから再度お尋ねしたいと思いますけれども、労使委員会の決議が労働基準監督署に届け出がなされたら、その決議が法の規定や指針に反しているときの議論が先日、市田先生とありましたが、私はよく理解できないというか、局長の言わんとすることが理解できなかったものですからもう一度お聞きしますけれども、そのような場合どのように対応するのか、大変恐縮でございますけれどももう一度説明いただけますでしょうか。
  43. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) この労使委員会を設置した旨、さらには行われた決議について監督署に届け出がなされることが裁量労働制実施の要件としております。先般御議論ございましたのは、届け出られたものについて行政手続法に沿って形式的要件を満たしていればもうそれで受理せざるを得ないのではないか、効力も発生するんではないか、こういう御指摘でございました。  行政手続法上、原則的にはそうでございますが、行政手続法の解釈として所管の総務庁が出しておりますように、形式的要件を満たしていても当該届け出の内容が個別法の定める実質上の要件を満たしていない場合、これらについては直ちに法的効果の発生が出ない、否定されることがある、こういうこともあわせて解釈として述べられておるわけでございます。  そうした点を踏まえて、私どもの行政の特殊性を考えれば、労働基準監督署は同時に労働基準法違反を許さない、それを是正させていくべき官庁でございますので、私どもそうした実質的な内容について不備あるいは間違いのある届け出がなされてきた場合には、それを放置することなく、補正等を命じて是正させる、そのためにその届け出等を保留するケースも十分あり得る、こういうことを申し上げたわけでございます。
  44. 斉藤滋宣

    斉藤滋宣君 確認するようで大変恐縮ですけれども、要するに法律や指針に反した手続の裁量労働制実施という届け出があっても、本来の効果は生じないということですね。さらには、労働基準法違反になっているから行政としては決議のやり直しとか補正を求めることを強力に指導する、そういうことでよろしいんでしょうか。  そうした最初の入り口といいますか、決議の届け出の際のチェックにとどまらず、私は裁量労働制運用の適正な実施というものを継続的に確保するために今後どのように労働省として対処する方針かお伺いしたいと思います。
  45. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 御指摘の点につきましては、これも衆議院の修正によりましてこういった裁量労働制実施している事業場につきましては定期的に決議の内容等についての実施状況の報告義務が設けられたところでございます。こうした実施状況の把握が制度的に可能になったところでございます。  また、私どもこういった裁量労働制提案させていただいていますのは、いわば本社等の機能の中で働いておられる方々についての労働時間管理は大変難しい面がございまして、事実上監督が非常にしにくい分野の一つになっております。私ども、この裁量労働制の導入と相まって、そういった部門で働く方々の適切な労働時間管理というものを重点監督指導していく、こういう気持ちでおるわけでございます。  したがいまして、修正によって設けられました報告、それから私ども重点として進めます監督のための実地調査等々を活用いたしまして、継続的にこの制度の的確なまた厳正な運用というものを図っていく考えでございます。
  46. 斉藤滋宣

    斉藤滋宣君 ただいま御答弁ありましたように、決議には必ず有効期間を定め、そしてその長さも長期間にわならないことにすることや、衆議院の修正で入った定期報告制度を活用して行政としても適正に常にチェックを行い、制度の適正な運営を確保していくということを要望しておきたいと思います。  最後に、労働関係の出口ともいうべき退職時点での紛争防止や紛争の解決策についてお尋ねしたいと思います。  今回の法改正によりまして、退職か解雇か、あるいは解雇の理由が明確化されたとしても解雇の理由そのものをめぐる紛争はなかなか防止できないと思います。このような紛争については民事裁判により解決が可能でありますけれども、時間や費用の面でこのようなトラブルに巻き込まれた労働者には過大な負担となります。また、使用者にしても、特に中小零細企業などでは訴訟にかかるコストが企業活動を圧迫することになる可能性もあると思います。  このため、簡易、迅速、低廉な費用での紛争解決のための仕組みが求められていると思います一が、改正法案にも盛り込まれております都道府県労働基準局長が行う紛争解決の援助の仕組みで今私が申し上げたようなそういう要望に確実にこたえることが可能だとお考えでありましょうか、お答えいただきたいと思います。
  47. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 御指摘ございました、例えば解雇やあるいは労働条件の一方的な切り下げなどをめぐりますいわば民事的な問題を含んだ労使紛争につきましては、私ども都道府県の労働基準局におきまして、当事者の求めに応じまして、専門官を新たに配置いたしまして、その方が学識経験者の協力も得ながら問題点の整理、それからそれに該当する判例法理や民事上の法理論等に照らして問題解決に向けて必要な指導や助言をしていく、もちろんこれは無料でございますので、こういうことを通じて低廉なまた迅速な紛争解決を図ろうということを提案させていただいているところでございます。  監督署の窓口に現実にかなりこうした相談が多いわけでございますが、こうしたことを行うことによってかなり早期に解決できるものが相当数あるというふうに窓口の状況等から私ども判断をいたしているところでございます。
  48. 斉藤滋宣

    斉藤滋宣君 ありがとうございます。  以上、今まで労働関係入り口から在職中、そして出口という流れに沿いまして改正法案の内容について質問してまいりましたが、最後に大臣にお聞きしたいと思いますけれども、この法案を成立させることによりどのような社会を構築されることを目指しておられるのか、またそれがこの法案の成立によって確実に実現できるとお考えなのか、最後にお聞きいたしまして私の質問を終わりたいと思います。
  49. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 先生御承知のとおり、労働基準法という法律労働条件最低基準を確保していくという法律でありまして、今回五十年ぶりの改正というのは、その間に経済社会変化をしてまいりました。少子・高齢化は進展をし、あるいは国際化というのも進展をしてきております。一方、働き方に対するニーズというか価値観も多様化し、変化をいたしております。そういう時代変化にどう対応していくか、そういった中で働く者の最低基準をどう確保していくかという観点から今回の改正がなされているわけであります。  先生の冒頭のお話にもありましたように、額に汗して働いているという人たちが生きがいとそれから自助の気概を持って持てる能力を十分に発揮することによって経済社会を支えることができる、そういう環境をつくり出していく。働く人一人一人が健康で安心をして働くことができる社会を構築していく。それをもって、冒頭先生がおっしゃっておられました本当に安心してゆとりと豊かさを享受できる社会を構築していく、それの後押しになろうということを確信いたしております。
  50. 斉藤滋宣

    斉藤滋宣君 どうもありがとうございました。
  51. 長谷川清

    ○長谷川清君 民主党・新緑風会の長谷川です。  今、質疑がありましたように、このテーブルではもう自民党の先生方も皆、いわゆる働いている人々の側に立ったあれやこれやの心配やこうあるべきだという積極的な御意見を述べておられ、このテーブルというものは大臣初め労働省もみんな働く側の立場の応援団であり、そういう立場に立って仕事をしていると私は思います。  今も話がありましたように、変化時代に対応して五十年ぶりに今回労基法を改正するわけでございますが、大臣自身はこれの起案にはかかわっておらなかったと思います。だから罪は軽いと思うけれども、私は本当にこれは五十年ぶりに法律改正するというのであれば、大臣が言うように時代変化に応じて変えるということになりますと、世の中は全部今は構造転換のときであり、規制の緩和が経済界においては原則規制の撤廃ぐらいで進んでおります。それが進めば企業は自由になってまいります。  その自由の波を受けて、そこに何のセーフティーネットもなくそれがそのまま労働に入ってまいりますと自由奔放でということが起こってくるから、労働省として、本来、法を預かるものとして、ここにあらかじめ規制の緩和をやるという政策は、同時に労働界にあっては、労働分野にあっては、そこに新たな働き方のルールをつくる、自由奔放にやっちゃいけないんですよということを。そうでなければ世の公平は保てないし、すべてが働く弱い人々にしわが寄って犠牲がそこに生ずるよと。  それをあらかじめ法律でルール化する場合には、まず法の世界があるでしょう。法律です。なかんずく三法の中でも重要な労基法でございます。また、就業規則という世界もあるでしょう。また、その下には労使の関係という世界がありますから、それぞれの分野において新しい時代に対応するルールをつくりそれに適合していく。だから労働省においても、自己能力開発したり職業能力開発する、そういう点における研さん、研修をみずからが積んでいくという、これは方針を持っていることはとうといことであり、また一方において、男女共生する社会をつくるという柱を労働省が立てておりますのも私は同感であり、認めております。  ならば、五十年ぶりにこの基準法改正しようというときに、なぜそういう男女共生時代というものに思いをはせた新しいルールの確立というものをここに立てようとしなかったのか。そういう部分について、大臣の今お答えになっておりましたような部分、私には到底理解がいきません。それが政治じゃないでしょうか。  あらかじめわかっていることに対して、そういうものについてこうしてはいけないよという労働の分野においては、こちらが規制を緩和すればこちらでは新たなる規制が生まれるという、労働は即人でございます。その辺についてまずお伺いしたいと思います。
  52. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 私は、先生御存じかわかりませんが、今まではずっと産業政策をライフワークとして担当してまいりまして、電力政策の規制緩和も担当してやってきた一人であります。その産業政策を担当してきた者が労働大臣になりまして、産業政策に比較的親しんだ労働大臣に期待する声と、逆に産業政策の側から労働雇用政策を押し切られたのではたまらぬという心配と、両方あったというふうに思っております。  ただ、私は労働大臣になりましてすぐ労働省での幹部を前にあいさつをしたときに、それぞれ役所には担当する責務というのがある。通産省は国際化、グローバル化の波の中でどうやって日本企業が生き残っていくかということを考えなくちゃいけない役所だ。一方で、労働省はそういう大きなうねりの中で労働者の権利をどう確保していくか、これに思いをはせる役所である。つまり、厚生省とか労働省というのはセーフティーネット、ナショナルミニマムを構築していく役所だから、おのずとぶつかるところがあっていいんだ。だから、それは労働省労働省の思いをぶつけてもらいたいというお話をさせていただいたところであります。  もちろん、労働者の権利は確保しました、企業はつぶれましたということになってはならないわけでありますから、権利を確保しながらどうやって企業が生き延びていくかと、一見二律背反になるようなことを両立させていくということを政府全体としては考えなければならないんだというふうに思っております。  先生労働政策の御専門家でありますから、あえて私がここでいろいろなことを申し上げても先刻御承知だとは思いますけれども、そういうような思いの中で、先般も御報告を申し上げましたが、今回の改正は四点の柱を立てているわけでありまして、もちろんおしかりもいただいておりますけれども、規制緩和というメーンがあるじゃないかと、それは結果として全面否定はいたしません。ただ原点は、むしろ新しい働き方に対して、新しい経済社会変化に対して労働者保護をしていくためのルールはどうあるべきかということに思いをはせて築き上げてきたというふうに理解をしていただきたいというふうに思います。
  53. 長谷川清

    ○長谷川清君 本来であれば、この政府原案というものの中で、例えば子供を養育したり親を介護する男女の労働者に対して一定時間以上の残業を免除する措置を講ずるということが原則入っていれば、激変緩和というような言葉も生まれてこないし激変という事態を生むこともないし、その原則の上に立って、そこへ行き着くまでの状況の移行措置として、恐らく移行措置ぐらいの言葉で激変緩和というような情けない言葉が生まれるような事態はなかったはずであります。私はそういうことを言っているんです。  そういうものが抜けているよと、しかし後追いで衆議院の世界において幾つかを保障してきておるから、それは認めておりますし評価もしておりますが、やはりこれはいろんな意味において、特にこういう状況で一番被害を受けるのが女性の人々です。残業とか深夜業とか休日の労働とかという、さっきも例が挙がりましたように、まだまだ今は女性が社会に進出をしつつある時代です。そこに新しいルールや、地域で見ても業種で見ても女性の職場はだんだん広がってはおりますけれども、労使の話し合いとか、いろいろ法律に対するタッチだとか、どこでどう見てもどこで切っても、女性の代表というものが女性の声を吸い上げていくようなそういう現状というものは非常に希薄で少ないのであります。  そういう現状があるから、しかもそこが一番打撃を受けるし不安があるから、本来のこうあるべきという今申し上げた措置が基準法で言われていればみんな救われるんです。そこに移行するから移行の措置でこうしておこうという説明が加わればみんな納得をすると思います。  そこのところを、僕は恐らく労働省大臣は、いろいろ問題が出れば中基審の審議にかけて、審議会でこういうふうに決まればそれでやりましょうと。これは一つの手続でしょうけれども、国会というところは大体が手続手続で、手続さえよければそれで落ち度はないみたいな、私はそろそろそういう部分を卒業して手続民主主義から実質民主主義へ、いかに現地、現場の実情がどうなっているか、そういうことを的確に直接間接の把握でこれを常時見ながら行政を進める、こういった基本の態度がなければならぬと思いますが、今回のこういう五十年ぶりと言われる、大きく時代が変わっているから当然変わってくるでありましょうこの法律改正について、一体どういう現地、現場の状況把握をしてきたのか。  十日の質疑を聞いておりますと、答弁の中で、裁量労働制を支持している労働者割合が多い、六六%という数字も私は聞きましたが、一体これはどこから調べてきたものか、生産性あたりのデータで言っているのか。私が知るところによりますと、裁量労働制の現場における実態はそんなものではなくて、逆であります。非常に心配と不安に満ち満ちております。  その点について、現状の把握、実態把握という点についてはいかがでしょうか。
  54. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 裁量労働制に関連して現状把握の御指摘でございますが、現在の裁量労働制につきましては、私ども平成四年以来、労働省みずから調査実施いたしますとともに、これからのあり方等につきましては、学識経験者から成ります研究会を設けまして、その研究会を通じまして、導入している主要企業のヒアリング、あるいは民間の社会経済生産性本部あるいは連合総合生活開発研究所等の調査結果等も活用しながら検討し、また実態把握を行ってきたところでございます。  具体的に御提案申し上げている法案の検討に当たりましては、審議会の中で検討材料としてこの研究会の報告等を提出するほか、裁量労働制の導入企業の労使の出席を求めましてヒアリングをする、また人事・労務管理の専門家からもヒアリングをする、こういったことを行ってまいりまして建議をちょうだいし、法案として提出させていただいているわけでございます。  私ども、そういったことを通じまして、この実情把握等に十分配慮しながらやってまいったつもりでございます。
  55. 長谷川清

    ○長谷川清君 私は、ここに今、これから裁量労働制を導入しようかという大手の労使のそれぞれのやりとり、問答、平成十年ですから、ことしの二月に行われたやりとりの中で、働いている側、組合の側では非常に不安を感じたり、将来に対する不安もあれば不満もあります。  やりとりの状況などを少しくピックアップしてみますると、まずは趣旨と目的についてかなりのやりとりがあります。  対象部門の決定について、約二十七部門についてございますが、そういう部門と共同研究をやっているようなところは一体どうなるのかとかいう疑問や、製品トラブルが起こったときにはどうなるのかといったような問題や、あるいは適用と適用の解除の問題についてもいろいろと不安が出ております。  適用だとか適用の解除というのはだれが判断するのか、まただれが決定し、どのような手続をとられて通達されるのかとか、対象者の同意は必要ではないのかとか、従事する業務の変更で適用と適用の解除が繰り返し行われていくような場合は月々の給与が大きく変動する、したがって組合員の生活は脅かされて、将来にわたって、結婚したい、子供をつくりたい、あるいは家を建てたいという生活設計に狂いが、なかなか安定が心配される。そういうことなどについて、例えば会社の方では、今のような認定と解除が交互に行われるというのは、認定、解除のサイクルは最低でも一カ月単位と考えていると答えていますから、一カ月単位でこれがくるくる変わると大変だなという不安がここにもあります。  裁量労働制の適用が解除される場合、具体的にどういうことになるのか。会社が判断した場合と会社が答えています。要するに会社側の判断によって適用あるいは適用の解除がされるということがはっきりしておりまして、ここにも不安を感じております。  また、交代勤務等で深夜勤務が生じたような場合はどうなるのか、人事考課が悪いということが理由になって解除されるのか、こういうものに対しては、成績評価のみを理由とする解除はしないと会社は答えておりますが、他の理由をくっつけて解除ということについての不安は残っています。  また、面着についても、面着の時間帯は十時から十五時と考えていいのかとか、労働基準法で面着は義務づけられているのかに対して、会社は、義務づけられてはいないと。面着は一日に一回でいいのか、在宅勤務が許されるのかと。在宅勤務は許されない。一日一回だけの面着て所属長や職場の中におけるコミュニケーションが不足をするんじゃないかと組合側が心配しているのに対して、その心配はあるが、積極的にコミュニケーションを図る必要がある、努力をすると会社は言っております。  仕事が多過ぎてやむなく家に持ち帰ったり、超過勤務、そういうものが常態化しないかという心配には、所属長に十分意識を持ってもらうように会社として努力すると答えておりますが、やはり不安があります。  業務の指示と業務量の関係についても幾つかここに出ております。また、上司との関係について、ほとんどのものが所属長がすべて握っていることに会社の回答はなっておりますから、所属長とかなりうまくやっていかないと自分の仕事や自分のやり方やそういうものについてかなり規制を受けるという不安がここでは言われております。  また、拒否権の問題について、仕事の割り振りをする場合の拒否権というものが組合にはあるのかというものに対して、所属長と十分に話し合って所属の中で調整を図るべき事項であるというふうに会社は答えています。業務のやり方を任すということは、上司が各人の業務の遂行について口出しはできないと理解していいのかとか。  裁量手当について、この裁量手当は余りにも低過ぎると。労働組合の立場からは、創造性と専門的知識能力を発揮することによってより高い成果を生み出すことが求められている割には余りに低額ではないか。会社の答えは、同業他社の月額の手当水準を参考にして当社において制度を検討したものであるからこれは動かせない。手当は定昇やベアとリンクさせるのかと。つまりは、基準賃金というものとかあるいは職能給とかといういわゆる年々収入を得る場合のベースになる率にこれは入っていると考えるのかという質問に対して、それは率で設定するべきものではないと考えている、つまり率で考えていないということであります。分配をめぐってもここで不満というものが出ております。  全部をこれ読み上げるわけにはいきませんけれども、現地においては多種多様なそういう業種ごとのやりとりというものが積み重なっていると思います。  そういうことの結果、これから導入しようとするところのこれはアンケート、もう一目瞭然でございまして、これは技術系の組合、組織は大体一万規模でございますから非常に大手でございます。(図表掲示)「仕事の能率が上がり、残業が減る」というのが九%、「時間の自由度が広がる」というのが九%、「能力のある人が報われる」というのが六%、「全員が同じ仕事量でないため不公平」五四%、「賃金が下がる」五%、「組織のモラルが保てない」四%、「その他」、こういう数字になっております。  また、既に今裁量労働制を導入しているところで、これはもう非常に大きな組織です、全国組織八十万ぐらいの組織の単産、単組レベルの実際にそれに従事をしている人々を対象にしたアンケートです。(図表掲示)この状況で見てもおわかりなように、これは上の丸いものとこの下と別でございますが、上の丸いところで見ても、裁量労働制を導入したら「仕事が正当に評価される」で、「そう思わない」という人々は五七二一%です。「そう思う」という人は〇・九%です。「労働時間が長くなった」と実感している人、「そう思う」人や「どちらかといえばそう思う」という人々五七・五%、「そう思わない」、時間が長くなったとは思わないという人は七・六%。これは下の部分で、会社のいわゆる評価です、自分が受けている評価に満足しているかどうか。「あまり満足していない」、「満足していない」というのが五七・五%、「満足している」というのはもう本当にわずかな、ここだけです。「どちらともいえない」という人も三五%おります。  こういう分布はこれは生の現実のアンケートをとっての結果でございますから、私は、裁量労働制というものが、労使関係が今日まで非常に安定的に成長し、そして円満に好ましい労使関係を持っているところですらこういう実態であることを考えますと、未組織のところなどになりますともっともっと大変である。そういうところに十分なる措置というものが必要になってくる。だから、政治にはやはり先見性が必要だし、基本的な基準法の中で守るべきところをきちんと守って、それからいろいろと枝葉をつけていくというやり方にしないと、余りにも手続民主主義ばかりで実質民主主義を怠ると非常に弱い人が大変な思いをするということに、我々が目標としている方向とは違うものになってしまうということをつくづく感ずるわけであります。  そういう意味においてこれからも質問をしてまいりますが、労使委員会の位置づけとその権限を明確にすべきだと思いますが、ドイツのとおりにしろとは言いませんが、ドイツにおいては労働委員会法というものがあるぐらいでございますから、まあ少しはやっぱりエキスを学んでいくという姿勢が必要だと思います。労使委員会未組織、そういうところではいろいろと労使が話し合うというこの話し合う経験もないし、少ないし、ほとんどない。そういうまた雰囲気でもないし、習慣もない。もともとそういうところに労使の委員会というものがどう位置づけられていくのかとなりますと、やったことないんだし、そういう能力も非常に少ないしという状況がある中で、この労使委員会の位置づけと権限、任期について中基審の議論を待ちますと、衆議院では中基審の議論を踏まえて措置をするとされているわけでありますけれども、私はこの場で具体的に明らかにしていただきたい。また、その権限についても国会で明確にこれはしておくべきだと思いますが、いかがですか。
  56. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) ただいま先生からこの裁量労働制に関連いたしまして、種々、評価制度その他、働く方のお気持ちについて御紹介いただきまして、大変参考にさせていただきました。  裁量労働制、これについて考えまする場合に、この裁量労働制そのものとはまた別に、我が国の大企業等のホワイトカラー等の人事管理等についていろんな意味の変化が進んでおるわけでございます。例えば目標管理制度等を軸にいたしました新たな評価制度、これもかなり浸透をしておりますし、そうした中で能力や成果を重視した賃金あるいは人事体系へという流れが進んでいることも事実でございます。そういった流れの中で、働く方々が先生から御紹介ありましたようにいろんな不安を持っておられる、こういう点、私どもも全く同感だと思っております。  したがいまして、今回御提案申し上げております裁量労働制と労使委員会の関係、まさにそういった流れ労働者がきっちりと参画して、評価制度等について十分事業主から情報の開示を受け、協議し、そういった中で裁量労働制実施を同意するかどうか権限を与えられたわけでございますので、この労使委員会というものが的確に機能するようにその構成等をしっかりとした内容にしていかなければならないという気持ちでおるわけでございます。そうすれば、この労使委員会を通じて労働者の方が、事業主の一方的なペースで進みがちになるそういう賃金あるいは人事管理制度の変更に対して裁量労働制という切り口からいろんな意見を言える、場合によっては全員合意という仕組みの中で拒否権も持ち得るかと存じております心  そういった労使委員会でございますので、御指摘ございましたように、私ども、まずは代表が民主的な手続で選ばれなければならない、そういうことで、衆議院での修正も受けまして、労働組合あるいは従業員の過半数を代表する者が指名した上で、さらに投票によって過半数の信任を得てから初めて代表になれる、またその場合には任期を付さなければならない、こういうことを配慮させていただいたわけでございます。そうした手順をしっかりと法律の中に書き込んでいただきましたので、細部についてはさらに労働基準法の施行規則の中で詳細に民主的な手続が担保されるように私ども規定をしてまいりたいと思っております。  また、権限の点について御指摘ございました。  この労使委員会は、賃金等労働条件全般について評価制度等も含めまして協議し、あるいは情報の開示を事業主から受けて、その上でそれらについて吟味した上で裁量労働制に踏み切るかどうかという重大な権限を与えられておるわけでございます。したがいまして、その権限についてはもちろん十分に機能するように私どもこれからの実施に当たっては定期報告あるいは臨検指導を通じてきっちりと機能しているかどうかをチェックしていく、こういうことを最重要の監督指導の項目として挙げておるところでございます。  特に、この労使委員会がそういう権限を持ちますだけに、例えば賃金等あるいはそういったものの協議を団体交渉でやるべきかあるいはこの労使委員会でやるのかというようなところの接点が権限上問題になるかもしれません。もちろん団体交渉は憲法上の基本的人権でございますから、労働組合がその点は団体交渉でやるんだということであればもちろん団体交渉が優先するわけでございます。  そういうふうに、労使委員会に対して労働組合等が具体的にどういう権限を与えてこういう問題に臨ませるのか、労働組合等がしっかりと明確にして代表を選ぶというようなことも必要かと思います。そういう点につきましても私ども十分念頭に置いて、この労使委員会の法制の仕組みを詳細を規定したり指針等をつくったりしてまいりたいと思っております。
  57. 長谷川清

    ○長谷川清君 本人同意の確実な確認方法ということについて、本人に直接個別に明確に確認をする、それ以外はいわゆる本人同意とはみなさない、本人に直接個別に本人の意思を確認する、その方法以外はこれは本人が同意したとは認めない、そういういわゆる今後の運用をやるべきだと思うんです。  いろんな就業規則上の、最初に就職するときの就業規則の中にそういうものが書いてあるとか、あるいは何かみんなに配って、同意でない者は申し出なさいみたいなことをやって、その申し出がないから、これはあるからないからで、本人の同意を得たとか得ないとか、そういうことなどは一切通用しないよと、そういう方法でやるべきだと私は思いますが、これ簡単に、そうだと、そうやるよというふうに答えてください。
  58. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 本人の同意につきましては、先生指摘のようにあくまで個別の同意でなければならないというふうに解釈されるのは当然でございますので、その趣旨に沿って、我々も例えば指針等においても同意の記録等も残し、私どもの監督等の際にはチェックできるような体制をしいてまいりたいと思っております。
  59. 長谷川清

    ○長谷川清君 それでは次に、裁量労働制でございますが、労災防止指導員が今千五百人おりますね。この労災防止指導員約千五百名を活用して、今回のように新しい裁量労働制ができたところやあるいは非常に深夜業の労働が多いところなどに直接赴いて訪問や点検を行うというようなことなどを業務の上に明らかにしていくような、そういう方途がとれないか。もしとれないのであれば、それに類する何かいわゆる訪問、点検というものが行えるようなシステムというものをぜひひとつ全国の労働基準局あたりとも相談をしていただいて、そういう仕組みを確立してもらいたいなと思いますが、いかがですか。
  60. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 御指摘ございました労災防止指導員でございますが、これは現在のところ、民間企業の作業の安全あるいは衛生、そういったことに関しまして専門的知識の高い方にいわば災害発生率の高い中小企業等を中心にそういった指導をしていただいて、労災防止を図ろうというものでございます。私ども、そういった方から職場、現場のいろんな情報については入手いたしまして、監督指導等に生かしていく気持ちを十分持っているところでございます。  ただ、新たな裁量労働制は、大企業を中心にいたしました本社等のいわば事業運営の重要事項を決定する部門でございまして、このそういった中小企業等を中心にお願いしている労災防止指導員制度とは若干性格を異にする面がございます。したがいまして、労災防止指導員から得られる情報というのを私ども非常に大事にしてまいりたいと思いますが、それに加えまして、この衆議院の修正によって設けられました実施状況の定期報告、それに加えまして、私ども積極的な監督指導計画的に裁量労働制の導入事業所には行う予定にいたしておりますので、そういったことを通じてこの制度が的確に行われるように万全の体制をしいていきたいというふうに思っております。
  61. 長谷川清

    ○長谷川清君 まずまずの回答だと思います。  それでは、一年単位の変形労働についてお伺いをしますが、所定労働時間が限度に達した期間、いたずらに長期にならないようにどういう配慮をお考えでしょうか。
  62. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 一年単位の変形労働時間制につきまして、所定労働時間の限度、休日日数増等の要件とあわせて、今回改正をさせていただきたいというふうに提案させていただいておりますが、この最長の限度時間を使い得る期間、これらにつきましては、かねて法案作成の段階からいたずらに長期にわならないように措置すべしという御意見をいただいてきております。私ども、その趣旨に即しまして、この具体的な最長の限度時間を使える期間な力そういったものについて、中央労働基準審議会で御議論を願って、そういったものがいたずらに長くならないような十分配慮されたルールを労働基準法の施行規則において定めたいと存じております。
  63. 長谷川清

    ○長谷川清君 今回、労基法の三十二条の二、一カ月単位の件について、就業規則の問題と今回新たに労使協定が追加をされまして、これはどちらにするかは当該事業所の労使に任せているという状況が今あると思いますが、これは任せた状態では非常に労使に無用の混乱を招くと思います。  もともと就業規則なるものと労使協定というものは本質的に法律的な意味合いも違うものでございますから、これを任せてしまいますと現場の労使は非常にこのことにおいていろいろと、どちらかといいますと労使協定は労使によって合意してなされるものですから、これからの将来の方向として労使協定一本にするということにしませんと、もう現に岩手県においても就業規則の変更を  一方的に一カ月変形制を導入したということから、これが起因で労働組合が今裁判を起こしているという事例もあるぐらいに、無用の労使の混乱を招くおそれがあります。ですから、これを今本当は法文修正でもしてもらいたいぐらいですけれども、今回はよしとして、将来の方向として労使協定を一本化すべし、この件についても明快に一言でお答えをいただきたい。
  64. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 一カ月単位の変形労働時間に関しまして、労使協定という道を今回導入させていただきました考え方は、労使協定と就業規則の性格等について先生と同様の認識に立つものでございます。ただ、一カ月の変形労働時間制はもう五十年来の制度でございまして、企業の実際の労務管理の中に深く浸透している実情にございます。  私ども、今後労使協定による実施がどうふえてくるか等も見きわめながら、また審議会の方でも今後フォローアップをしていこう、こういう御意見がありますので、そういった中で、私ども今後の検討課題としてこの問題について関心を持って対応してまいりたいと思っております。
  65. 長谷川清

    ○長谷川清君 検討課題というよりもこの一年単位の変形労働と全く同一の扱いをすべきというふうに考えますから、どうかひとつ将来の方向としてぜひ努力を願いたいと思います。  それでは、労働契約改善の問題についてお伺いをいたします。  労働協約や就業規則について、解雇や出向の問題を初め改正すべき多くの問題が今残されている。私は、だから本会議におきましても、鋭意検討を継続して法や施策の改善に向けて取り組みを強化してほしいと求めたわけでありますが、大臣は今後の検討とさせていただきたいという非常に冷たい、いわゆる消極的な印象でございますから、この場においてぜひひとつ労働協約について鋭意検討を継続するという回答をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  66. 甘利明

    国務大臣甘利明君) まずその前に、今回の法改正におきましては、解雇や出向などをめぐって個別の労使紛争が生じていると。そういう場合に、当事者の求めに応じまして都道府県の労働基準局において助言や指導を行うことによって解決を促す仕組みも創設すると。十月一日から動くわけであります。  今まで、どちらかといいますと手続上の瑕疵については取り扱ってきましたけれども、有効か無効かということになりますとどうしても民事上の問題ということになりがちでしたけれども、ここに踏み込んで対応できるように法的な根拠を与えたということがまず第一点であります。  これに加えまして、今先生指摘の解雇、出向の問題等の労働条件の基準とは異なる面を持つ労働契約の効果等に関する事項をどういうふうにするか。新しい時代に対応したルールのあり方についての問題でありまして、中央労働基準審議会から指摘されているとおり、検討課題と受けとめているというところまでお話をさせていただきました。これをきちんと勉強させていただきたいというふうに思います。
  67. 長谷川清

    ○長谷川清君 では次に、有期契約の問題について、三年の契約をしているものが途中で変更されるという場合の扱いについて、私は、三年契約の労働者の通常の労働者としての賃金を引き下げるべきではない、保持をすべきだと思いますが、そういう点について確認をしておきたいと思います。
  68. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 労働契約は双務契約でございますので、その途中で労働条件が使用者から一方的に変更されるということにつきましては、これは有期契約であれそうでない場合にせよ、そうしたことはできないというふうに考えております。現に判例におきましても、例えば就業規則に明記されている労働条件の不利益変更については合理的なものであることが必要だと、こういう判例も出ているところでございます。  私ども、こうした点を念頭に置きまして、こうした裁判例を収集いたしまして、労使に提供して厳正な労務管理をお願いするとともに、ただいま労働大臣からもお答え申し上げました新たな民事的な紛争解決の仕組み、この中で、もしこういう労働条件の切り下げ等をめぐる問題が提起されれば、私ども、こうした判例等を活用しながら、労使に対して適切な指導や助言によって問題の解決に当たるように努めてまいりたいと思っております。
  69. 長谷川清

    ○長谷川清君 次に、退職時の証明について、使用者が証明をおくらせた場合や、問題のある内容やいろいろなプライバシーの問題等々を証明に書き込んだ場合の扱いについてはどうかという点をお伺いします。
  70. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 退職時の証明に離職理由を書かせることによって紛争解決の重要な役割を果たさせていきたいというねらいでございます。したがいまして、証明書に労働者が請求しないような事項を記入した場合、これは労働基準法の二十二条の第二項で、請求しない事項等を書いてはいけないと禁止されているわけでございますので、問題が認められる場合には修正とか再発行等の使用者に対する指導を指示していかなければならないと思っております。
  71. 長谷川清

    ○長谷川清君 次に話を少し転じまして、深夜業や時間外労働上限の問題についてお伺いします。  深夜業についてのガイドラインの作成にとどまらず、必要があれば法令で規制をするということも考えるべきだと思いますけれども、この点について、その時期も含めましてお答えをいただきたい。
  72. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 深夜業については、御案内のように、生産過程の中で必要になっているものやいろいろな社会生活の維持などの問題、そういうことで深夜行われるもの、あるいは金融等のグローバルな市場に対応する中で行われているもの等々、さまざまなものに基づいて行われる実情にございます。  したがいまして、私ども、これらの規制の問題につきましては、まず労使による自主的なガイドラインの策定、このために労使にテーブルに着いていただいてその策定を急ぐということをやりまして、そういった中で、深夜業の問題についてどういう議論が出てくるかもございます。そういったものと並行して、あわせて過度の深夜業を抑制するためにどのような方策があるかを、その実情に即したものを見きわめながら引き続き検討をさせていただきたいと思っているところでございます。
  73. 長谷川清

    ○長谷川清君 いわゆる今の深夜業、これについての自主的なガイドライン、これには回数などの数字というものが含まれておるのかどうか、また法令上の措置はどういうことを検討しているのか、そういう点についてお答えください。
  74. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 労使の方にテーブルに着いていただいて、自主的なガイドラインの作成を私ども促進してまいりたいと思います。  深夜業の実態は業種、業態によって多種多様でございますが、先生指摘ございました回数等が非常に問題になるところから、あるいはむしろ業務の間隔みたいなところが問題になるケースまで、業態によってさまざまだろうと思います。私ども、そういった深夜業をどう適切なものにし健康を守っていくかという観点から、業態ごとに何が重要であるか、御指摘の回数等の問題も議論される業種が当然あるかと存じております。
  75. 長谷川清

    ○長谷川清君 時間外労働上限規制の激変緩和措置の問題で、対象となる子供の年齢というものが十日の小宮山先生の質問にもございましたが、具体的に小学校卒業までとすべきという、そこまでの言い方はされておりませんでしたが、小学校卒業までというものについていかがでしょうか。
  76. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 激変緩和措置の対象になります育児等の責任を担う方の範囲でございますが、現在、同様の制度として来年四月一日から実施されます深夜業のいわば免除を請求できる範囲がございます。これがやはり小学校に入るまでの未就学児の育児を行っている方ということになっております。それとの均衡もございます。私ども、そういったことを基本にしながら、今後検討をさせていただきたいと思っているところでございます。
  77. 長谷川清

    ○長谷川清君 次に、時間外労働上限に関する基準の適用についてでありますが、残業を拒否してその労働者が解雇や配転、昇進、昇給などに不利益な取り扱いを受けるという場合、合理的な理由がないものとして争い得ると思うんですが、いかがでしょうか。
  78. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 先生指摘のようなケースにつきましては、私ども今回提案いたしますように、時間外の上限基準を法律に基づいて策定いたしますので、まずは三六協定の受理に当たりまして、もしそれを超えていれば他の労働基準法違反の場合と同様、労働基準監督署名で是正勧告を行い、そういった三六協定がない姿へまず持っていく。したがいまして、それを超える時間外命令が出た場合には、当然に労働基準法違反になるという姿に持っていくことを第一目標にいたしたいと思っています。  ただ、御指摘のようなケースが出てまいりました場合には、それを拒否したことによる不利益取り扱い、これにつきましては当然民事的な争いになるケースがあろうかと思いますが、そうしたケースにつきまして、裁判所の判断に際しましては、このような改正規定が盛られたことが十分考慮していただけるのではないかと思っているところでございます。
  79. 長谷川清

    ○長谷川清君 またちょっと角度が変わりますけれども、この十月一日にこれが改正をされますと、監督署においてはいわゆる紛争解決の問題でいろいろと指導をしていただかなきやなりませんが、これで想定されますのは、現行の集団的な紛争から、個別的、個人のいわゆる申し立て、そういう問題がいろいろ起こってくるはずでございます。  そういう場合に、現行労働委員会の改組が必要になってくると思いますが、その前に、まず当面十月一日から施行されて運行するときに、指導を行うその指導の事例を公表できないかという点が一つ。それは、公表されることによりまして、いろいろと個人という立場からも相談に行きやすいという、いろんな参考を目にするわけですから、そういう状況をやはりつくっていくというまた安心感にもつながると思います。これがぜひひとつやっていただきたい点でございますが、そうなってくると、やはりこの労働委員会そのものの改組ということにもつながりますので、そういう部分の必要性ということを今後どのように考えているのか、この二点を同時に伺います。
  80. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) まず最初の御提案についてお答えをさせていただきたいと存じますが、新たにこの十月一日から設けさせていただくことを提案しております個別紛争の解決の援助の仕組みでございますが、こうした中には、民事的な問題として、いろいろ事例に即して判例、法律の関連を分析しながら処理していくという事例が集まってくるかと思います。私ども、そうした事例を参考にして適切な労務管理が行われるように、プライバシーの保護には十分留意しながら、そうした事例を何らかの形で集約して、他の事業主への指導等に利用できるようなことを検討してまいりたいと思っております。
  81. 澤田陽太郎

    政府委員澤田陽太郎君) 個別紛争の増加労働委員会の改組問題につきましては、労使双方からいろいろな御意見がございます。  ただ、先生おっしゃるように、直ちにそれが労働委員会の改組問題につながるかという点につきましては、いろいろ考えるべきことがあろうかと思います。現に今あります労働委員会は、労働組合等の労働者の団体と使用者との間におきます集団的な労使紛争を調整し、あるいは審査をするという目的のために設けられたものであります。  したがいまして、御提案の点について若干、二、三の例を申し上げますと、例えば現在の集団的な労使紛争について審査、調整をすると、そうしたために労働委員会に蓄積されております知識、経験というものと、個別的な労使紛争を解決するための知識、経験とは必ずしも全面的に共通するものではないということがございます。  また、労働委員会に個別労使紛争解決のための機能を持たせることと、現在の労働委員会が持っております集団的労使紛争を解決するための機能、これについて両立するか、片方が片方を制約するようなことがないかという議論もございます。  それと、現在の労働委員会におきます紛争調整手法、いわば公労使三者で構成をするという方法と、個別労使紛争を解決する手段がどういう関係になるのかという点についても多々議論がございます。  こういう点がございますので、現在労働法の専門家で、かつ労働委員会制度にも詳しい学者に集まっていただきまして、個別労使紛争の解決方法のあり方について御研究をいただいております。近々結論が出るように動いておりますので、そうした結果を踏まえながら労働省としても判断をしていきたい、かように思っております。
  82. 長谷川清

    ○長谷川清君 私も東京都の労働委員を十年ぐらいやっておりましたし、よくわかっているつもりです。  しかし、もうそろそろ労働委員会労働裁判所的な、非常に時間がかかる、そういうありようなどはもうそろそろこういう分野も含めて一度見直して少しく整えていく必要があるんじゃないか、もう相当前からそういうことは言われていると思います。年中行事のように総会でもそれが言われているわけですから、そういう時期にぜひこういう問題も新たなこれからの時代に向かっての問題として、個別のいろいろの御不便をなさっている、心配なさっている方々というものに対してそれをきちっと受けとめられるところをつくっていくという視点に立って、ぜひひとつこれは前向きに検討していただきたいと思います。  もう時間の関係で最後になりますが、雇用の問題という点で、雇用問題について私は本会議の中でも求めたのでございますけれども、今までやっております雇用の対策はいろいろございますが、これはもう行政の領域を超えたところに今来ているという判断から、政労使による雇用対策会議というものを設置して非常にダイナミックに具体的な数値を目標として総合的に雇用を創出するプランというものを立てる時期にもうとっくに来ているんじゃないか、それを早く実現すべきではないか、雇用対策法の改正などによって一般会計を発動する大規模な雇用対策というものを大臣、お考えになったらいかがでしょうか。どうでしょうか。
  83. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 長谷川先生指摘のとおり、今の雇用失業情勢は尋常ならざるものがございまして、労働省の施策だけではなくて政府を挙げて取り組む、あるいは今御指摘のように政労使で知恵を絞っていろいろなアイデアを出して、それを具体的な政府の策としてつなげていくということが非常に大事でございます。  昨日、連合と日経連の会長が私のところに政労使雇用対策会議の開催の御提案においでになりました。私は、閣議でも、きのうおいでになるということを事前に総理にもお話をさせていただきまして、総理の方からは、それはもう大至急受けて設置をすべきだという大変に前向きなお話をいただきました。そのことをきのうのお申し出の際にも総理のお言葉もお話をさせていただきまして、直ちに雇用対策会議を開こうということに今なっております。  労使の代表からは、メンバーとしては労働大臣通産大臣を中心に、それから官房長官というお話もありました。このメンバーの構成は今鋭意官邸と詰めているところでありますが、できるだけ早い機会に、総理が訪米からお帰りになったら直ちにその機会を持って進めていこうというふうに考えております。  今現在、政府には産業構造転換・雇用対策本部というのができておりまして、これはすべての閣僚がそのメンバーに入っておりまして主宰者は総理になっているわけでありますが、この政労使の雇用対策会議を政府の現在ありますすべての閣僚が参画をしているものにつなげていって、具体的な成果として結びつけていきたいというふうに考えております。  それから、先生から今、一般会計の発動を伴う大規模な雇用対策についてどうかというお話もありました。基本的には三事業の範囲で機動的に取り扱ってきたところでありますが、一般会計の発動も含めて可能な限り予算取りをいたしまして、雇用の創出、安定に向けて取り組んでいきたいというふうに考えております。
  84. 長谷川清

    ○長谷川清君 ぜひひとつ、雇用の問題は一労働の問題のみならず社会的な問題にまでなっておりますし、そのことはなかんずく、日本が今不況を迎えておりますけれども日本の国としての目標を失っているということにも遠因があると思います。  戦後、五十数年前は、私は中学一年でしたけれども、まず食べて生き抜く十五年でした。そして、銀シャリが食えるようになったのが十五年目で、それから物をつくろうと。その当時の物づくりというのは、もうつくる前から売れることがわかった物づくりですね。だれかが自転車を持っていればみんな欲しいんだし、車ができればみんな欲しいんだし、家もみんな欲しい。だから、需要と供給の関係はもう圧倒的に供給不足からやってまいりました。  これが行き過ぎちゃってという状況に今なっているから、構造転換というところにまで日本の国内全体がもうなってしまっている。ですから、これまでの企業活動、そこに合った労働というものとこれからの企業活動と労働という関係は、そこが今変わってきているわけです。  そういう意味において、よほどこれは国全体が変わっていくまでに必要なんだから、経済の分野では規制の緩和が絶対必要だし、だから今やっているんですけれども。それだけではなくて、行政の改革が必要だし、これもやっているわけです。まだやっているとは言いがたい状況ですけれども、やらなきゃいけない。それから、地方の分権だとか、税制も変えなきゃいけませんね。今のように、ただもうければもうけた分だけ全部お上に吸い上げるよという税制では企業のやりがいかないでしょう。逆に、もうけるだけもうけなさい、その中で株主の配当や労使の分配や企業の中における福祉の予算や、それでもある部分をやはり社会貢献していくというこれからの企業。消費者が、この企業は何%の社会貢献をしている、この企業は何%していると。今までのようにお上がお金を集めて、そして福祉をやってやるよ、こういう流れも変わらなきゃいけないと思うんです。  そういうあれやこれやが全部入ってきて雇用というのを、雇用だけ引っ張り出して雇用の対策や、よくベンチャー企業を育成するということを言いますけれども、ベンチャー一つ育てるのでも、まずは今までの応用科学で伸びた日本が、これ一本やりで伸びてきたんだが、基礎研究にも一生懸命頑張ってこれを根づかせていかなきゃいけない。今まで〇・一%の世界でしょう、今や国際社会は碁盤の目の一つ一つを獲得するぐらいに、科学技術の知的財産で。これがアメリカや何かの軍事大国なんかがより強力な軍備をつくるための基礎研究をやっている。そういうところから生ずるノウハウを日本は引っ張り出して応用科学で伸びたけれども、これからはだんだん、これは特許ですから、自前のものを持たなきゃいけない。  そうすると、今、予算の分捕り合いを見ていますと、科学技術の基礎研究という予算を五%大蔵が膨らませる、ほかのところは一般予算をぐっと縮めている、だから何か科学技術の云々というお題目だけつければ予算がとりやすくなっている。だけれども、とってきたものは真剣にそういう分野にあてがっているかというと、ほとんどそうじゃなくて決められた分野に分配してみたりすることがあり得る。  いろんなことがありますから、やはりこういう税制も変え、そしてそこに大きな二つの柱で、日本は農業国家としても生きていけないんだし、いろんな意味で資源もないんだし。となると、やはりこの二つの大きな動脈で次なる世代に向かっていかなきゃいけない。  私は、そういう意味において、生産と供給の関係が今までのような状況の場合には、例えば第一次オイルショックもあったり二次ショックもあったり、繊維の構造不況があったり、造船不況もありました。そういうときには、建設業に八十万ぐらいの人が雇用吸収できたんですね。第一次の円高のときには三次産業で吸収できたんです。今や全部、それは一たび失業すれば大変な状況です。  ですから、構造改革、私はそういう意味において、本当に真剣に雇用対策会議というものを、つくればいいというものじゃなくて、そこに精神を込めておのおののなすべきことをみんながやっていく、その中心をやはり我々が担う、こういう感じでぜひひとつこれはなし遂げていただきたい、懇請いたしまして、質問を終わります。
  85. 吉岡吉典

    委員長吉岡吉典君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時二十八分休憩      —————・—————    午後一時三十二分開会
  86. 吉岡吉典

    委員長吉岡吉典君) ただいまから労働社会政策委員会を再開いたします。  この際、委員異動について御報告いたします。  本日、大島慶久君が委員辞任され、その補欠として佐藤昭郎君が選任されました。     —————————————
  87. 吉岡吉典

    委員長吉岡吉典君) 休憩前に引き続き、労働基準法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  88. 山本保

    ○山本保君 公明の山本保です。  最初に、大臣に一言お礼を申し上げます。  先ほどは、私どもが御紹介いたします働く婦人の会委員長加藤紀子さん初め三人の方から、大臣に直接労働基準法改正につきまして御要望を申し上げました。短い時間でありましたけれども、お昼時間を割いて誠実に対応していただいたことに心からお礼を申し上げます。  今回の改正につきましては、このように女性労働者、また特に中小零細の、大きな労働組合のあるところはよろしいんですが、労働組合のない職場での労働者の権利といいますか労働条件の悪化というのが非常に心配になるということでございます。この観点から私どもの党もこの法改正について、現時点での最善のものを求めたいと思いますし、また、決められた以上、その運用については精いっぱい弱い立場の労働者を守る観点から運用をしていただきたいと思っておりますので、その辺よろしくお願いいたします。  きょうは、私にとっては最初の質問でございますので、この労働基準法改正問題に入ります前に、午前中の質疑にもございましたが、失業問題等についてお考えをお聞きし、その後労働基準法についてお伺いいたしまして、個別の問題についてはまた次の機会にさせていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いします。  最初に失業問題でございます。  午前中の答弁にもございましたけれども、現在、完全失業率が四・一%と。これはもう御存じのとおり、諸外国、特にアメリカ、ヨーロッパのように終身雇用制というようなものがない国にとりまして、労働力の移動という意味での失業率数字というものはそれほど問題にならないわけでありますが、我が国の場合、そのような雇用環境ではないという場合において諸外国とほとんど同じような数字であるということは、大変大きなといいますか重大な問題であると思うわけでございます。  特に、見ますと、この二百七十万人のうち、倒産であるとか解雇によって求めざる失業をしているという方が八十四万人とも聞いております。これはもう大変大きな数字でございます。また、今度、九月中間決算がございますけれども、これでまた業務不振等から雇用調整、いわゆるリストラだということで首を切られる労働者が大いに出てくるんじゃないかという気もいたします。余りこういうあおるようなことは申し上げたくありませんけれども、一般的にも、さまざまなシンクタンク等がこれからもっとふえるんではないかというおぞましい数字を挙げているところもあるわけでございます。  これについて御所見をお聞きしたいわけですが、特に私、最初に御注文を申し上げますのは、これまで政府雇用問題については景気回復がかぎだと、しかも昨年ですと、景気回復の基本は国の大幅な財政赤字をなくすることである、こう言っておられた。ことしになってからは、突然今度は金融問題の不安を解消することである、こういうふうにどんどん状況を変えられておられる。私は、このような考え方はいかがかと感ずるわけでございます。  大臣も、先ほどの御答弁をお聞きしますと、これまでよりも踏み込んだ考え方を示したいという意向はよくわかりますので、ぜひここにおいて積極的な所見をいただきたいわけでございます。  といいますのは、一つ考え方として、確かに経済の落ち込みによって雇用不安、失業がふえているのであるから、経済回復が先であるというそういう理論もあるとは思いますけれども、最近とみに言われておりますのは、消費停滞というものがこの不況の原因であって、これに対しては雇用不安などの問題が非常に大きなウエートを占めているのではないかという考え方が出てきていることが一点。  第二点は、先ほど申し上げたこととはちょっとずれるかもしれませんが、今既に日本の経済構造自体が変わってきているんではないか、雇用構造が変わってきているんではないか、このようなことから失業がふえているのであって、いわゆる不況だけによって今失業が生み出されているのではないという考え方もあるのではないかと思うわけでございます。  ですから、こういう観点からいきますと、今までのように雇用問題は景気問題の従属変数である、こういう考え方をこの際特に労働大臣としては大きく踏み込みまして、雇用問題解決こそが日本の経済回復の第一要因であるというようなことを主張していただきたいと思っておるわけでございます。  長々と注文を申し上げましたけれども、現在の失業問題について大臣の所見を伺います。
  89. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 私、労働大臣就任をします際に、小渕総理からは、信任状といいますか、あれをいただく際に、雇用の安定ということは小渕内閣にとっての最大の課題一つですから、しっかり踏まえて取り組んでいただきたいというお言葉がわざわざつけ加えられました。ですから、本内閣においては雇用の安定というのは非常に重要な政策の柱だというふうに認識をいたしております。  そこで、山本先生お話にありましたとおり、今の雇用不安というのは、いろいろな複合要素失業が拡大しておりまして、経済構造が変わりつつある中でいわゆる循環不況あるいはバブルの後遺症というものが一挙に押し寄せてきている、いろんな要素が複雑に絡み合ってなかなか脱出できない不況になっていることは御指摘のとおりでございます。  そして、景気はいい方が雇用の安定に資することは間違いないのでありますけれども景気をよくする、そしてタイムラグを追って雇用情勢がよくなるというに任せるだけではなくて、それとあわせて何ができるかという発想はおっしゃるとおり大事でございます。  従来、政府は、総合経済対策の一環として緊急雇用開発プログラムというのを策定いたしておりまして、そこで労働省も別途の予算をつぎ込んで、いろいろ雇用開発に向けた助成金の拡充であるとか、あるいは高齢者雇用開発をするときの助成金の対象年齢を引き下げるとか、いろんな工夫をやっているわけであります。あるいは最近はホワイトカラーの失業が深刻になってきております。このホワイトカラー層の職業訓練についても、アビリティガーデンを通じて積極果敢に対応していこうと。いろいろな政策手段を駆使して対応しようといたしているわけであります。  あわせて、午前中にも答弁をさせていただきましたけれども労働省雇用を維持する政策から、今度は雇用をつくり出す政策にも踏み込んでいく。これは単に労働省だけの政策ではできませんから、産業政策と相まって新しい雇用の受け皿をつくっていく。アメリカで雇用失業情勢改善したというのは、従来型産業が雇用を支え切れなくなって失業者を出してくる、それを新しい産業が次々に興ってきて、それが情報通信を中心に受け皿となって雇用を吸収してきた。つまり、古い時代を担った産業から新しい時代を担っていく産業への雇用移動があったということであるわけでありまして、そういった意味で、労働省雇用の創出に一歩踏み込んでやっていこうということを今取り組んでいるわけであります。  あわせて、ネットワーク化とかねがね申し上げていますけれども、今ある中でもミスマッチがあって、本来ならば求人、求職がうまくマッチングするはずなのに、ずれがあってうまくいかないというのもあるはずだと。だから、そこに職業訓練と同時に、経済団体が持っている雇用情報、これは企業の側のデータでありますから求人情報であります。それとハローワークが持っている求職情報とがアクセスすることによっても、多少なりとも有効求人倍率改善には資するんではない  か。  いろんなことを考えながら、中には思いつきのようなこともあるかもしれませんけれども、新しい提言もさせていただいているところでございます。
  90. 山本保

    ○山本保君 積極的な御返事をいただいたとは思いますけれども、最後に思いつきかもしれないがとおっしゃったことについて、私も同感でございまして、個別のそのような対応策も重要でございますけれども、最初に申し上げましたように、経済理論からもう一度労働者の側に立った新しい経済回復の処方せんをぜひ検討していただくようなことをお願いしたいと思っておるわけであります。  これについてちょっとだけ関連でお聞きしたいんですが、今のお話でいきますと、まず最初に新しい雇用ということで、実はこの委員会は一月からいわゆるNPO法案を審議し、通した委員会なのであります。あのときの議論で、まさに今日本の国では公益事業というものは国がほとんど全部独占体制である、これを、人のためになる、社会のためになる活動というものを民間の方により広くやっていただこうではないか、これがNPOの考え方であります。ところが、欠陥が一つある。それは、一番大きな欠陥は、その団体に対するお金がないわけです。補助金は出せません。お金がないこともありますし、いろんな憲法上の問題もある。そうすれば、もう一つ考えられるのは、その団体に対する寄附金を税金から控除するというヨーロッパ型の、アメリカ型の対応が必要なんです。  先ほどアメリカの例を言われましたけれども、アメリカにおいてNPO型のいわば民間による公務労働、今までの日本でいう公務労働を民間人がやる、民間団体が行う、こういう場面が相当大きなGDPの比率を占めておるわけでございまして、ぜひこういう部門にも労働省も踏み込んでいただきたいということ。これは注文ですが。  もう一つ、これは先ほど答弁があったのでもう一度お聞きしたいんですが、今のようなお話ですと、労働省の予算は今のような三事業中心であるというような、労働者企業主の拠出金の予算が大半であるというようなことは、なかなか恥ずかしい形ではないかと思うわけです。一般会計からもっと踏み込んで出すべきではないかと思うわけですけれども、これだけまずお聞きしたいんですが、いかがでしょうか。
  91. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 御指摘のとおり、私の答弁の仕方がうまくなかったかもしれませんが、これから一般会計からも積極的に予算を投入して考えていきたいというふうに思っております。  ただ、いずれにしても、私も労働省に来まして、それまでのイメージとしては、労働省予算というのは物すごく莫大だというふうな印象があったのでありますが、ほとんどが特別会計の予算で、いわゆる本予算といいますか、一般会計予算は五千億かそこらしかないということ。しかも、そのうちの大半が人件費で取られてしまって、政策予算がうんと少ない。何とか与野党の先生方のお力で総枠を拡大して十分に予算投入が図れるようにお力添えもいただきたいというふうに思います。
  92. 山本保

    ○山本保君 まさにそのことを私ども申し上げておるわけでありまして、ぜひ大臣大臣の力というのは大変なものでありまして、次のまた予算の確保のときに,今までの枠というようなものにとらわれずにこの雇用問題については踏み込んでいただきたいということを申し上げます。  じゃ、ちょっと観点を変えまして、これはもう古いことかもしれませんけれども、いや、実際はそうでもないんですが、雇用対策法にきちんと書かれております雇用対策基本計画、蒸し返すようで申しわけございませんけれども、これは平成七年から十二年度にかけましては、第八次雇用対策基本計画が今進行中なわけですね。それで、この中を見ますと、平成十二年、西暦二〇〇〇年では、失業率は二%と四分の三ですから、数字に直せば二・七五%が目標である、何かきちんと構造改革が進まない場合は一%プラスであるというふうなところまで書いてございます。  この目標について、今達成についてどういう見通しを持っておられるのか、これについてお聞きします。
  93. 征矢紀臣

    政府委員(征矢紀臣君) ただいま先生指摘のとおりの第八次雇用対策基本計画、これに基づいて対策を行っているわけでございますが、この最終年度、平成十二年度の完全失業率目標、二カ四分の三%、構造改革が進まない場合には三カ四分の三%、こういう目標になっておりますが、現状状況は率直に申し上げまして、この目標に比べて相当乖離があるというふうに認識いたしております。改革が進まない場合の目標値、それを現状はまだなお上回っているわけでございますから、そういう現状であるというふうに認識をいたしております。  したがいまして、いずれにいたしましても、今後、経済政策あるいは雇用対策、そういうものを講ずることによりまして、この計画目標達成される、そのための努力は引き続き行っていく必要があるというふうに考えております。
  94. 山本保

    ○山本保君 つまり、こういう計画が第八次にまでなっておって、長期的な展望を持って仕事をしてきているはずですね。それが、これからお聞きしますけれども、例えば雇用対策本部が内閣に急にできたり、また、先ほど大臣答弁にもございましたけれども、何か政労使の会議を持とうとか、基本的に流れている大きな計画政策とは別個に、何か思いつきでぼんぼんと政策が出てくるのではないかという気もするわけですよ。  もう一つ局長お聞きしますが、こんなに数字が違っているのであれば、この第八次、平成十二年まで待っていることなく、まずこれを大至急見直して、修正をしたものをきちんと出して、労働省雇用計画について見通しを明らかにするというのが仕事ではないかと思うんですけれども、いかがですか。
  95. 征矢紀臣

    政府委員(征矢紀臣君) この雇用対策基本計画については、先生御承知のとおり、政府といたしましては、現在、構造改革のための経済社会計画、これが平成七年度から十二年度までを計画期間といたしまして策定をされております。これにつきましては、経済計画雇用計画、これはいわばセットで計画が策定されておりまして、この計画の見直しにつきましては、過去の例でいきますと計画期間中に見直された例は多々あるわけでございますが、現時点で申し上げますと、この経済計画等につきまして現時点でこれを直ちに見直す、こういう考え方はとられておらないところでございます。  ただ、御指摘のように、現状計画目標との乖離がかなりあるではないかという点についてはこれは御指摘のとおりであります。
  96. 山本保

    ○山本保君 では、大臣にお聞きしますけれども、先ほどもお話が少し出ましたが、それとも絡めまして、内閣の経済構造改革の雇用対策本部というものと、それから今度早急に総理が帰ってからすぐやりましょうと言われている会議、そして実は労働省が八次にもわたって長期に基本計画をつくってきている。この三者の関係を大臣はどのようにお考えでございますか。
  97. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 計画には適宜適切に対策をとるということが入っておりまして、それを受けて緊急雇用対策本部、産業構造転換・雇用対策本部というのが設置をされたわけであります。  それと政労使の雇用対策会議との関係はどうなるのかというお話でありますが、実は政労使の雇用対策会議を設置せよという御要望は、一番最初は官邸におきまして政労会見を行った際に連合の側からお話をいただきました。その際に、私の方から、政労使でありますから労使で気持ちを一つにしてお申し込みをいただければ、直ちに私が政の方の対応はさせていただきますというお話をさせていただいたわけでありまして、それを受けて昨日、労使がおそろいになりまして政労使の雇用対策会議を開いてもらいたいというお申し出をいただいたわけでございます。  もとより、私は現在の雇用失業情勢に危機感を抱いておりましたので、従来ある産業構造転換・雇用対策本部はその後どうなっているんだと、進捗状況について報告を求めるためにこれを開催する要請をしたいということを私が実は事務方に言っておったところに、ちょうど政労使のお話が来ました。そこで、政労使の雇用対策会議で具体的にいろいろ話を詰めて、それを今度は全閣僚で構成をする雇用対策本部の会議につなげたいというふうに思っているわけであります。
  98. 山本保

    ○山本保君 大臣、ちょっと突然にお聞きしたこともありましたけれども、全体の基本計画との整合性などについてもぜひ一度御検討いただければと思っております。  それから、先ほどちょっとお話の中にありましたことでもあるんですが、細かい話ですけれども、私、たしか四月七日の委員会で特定求職者雇用開発助成金というのが五十五歳までであるというのはどうもおかしいんだということをお話ししました。  そうしましたら、私はそれを先に読んだわけではなくて後から読みましたが、清家先生がアメリカの学者のラジアーという人のものを引かれて、やはり今までの雇用は若い人が会社に貯金をしておくようなものであって、それをある段階から以降は貢献度よりも給料の方が高いものをいただくというような約束、実際にはそんな約束はないんですが、しかし社会的にあったんだと。これが今崩れつつあるのでありますから、当然その分支払っていた分を労働者は受ける権利があるのであると。私はそのことを申し上げました。そういう理論を後から勉強して安心したわけなんですけれども。  そうしましたら、確かに補正予算で四十五歳までということで引き下げていただいたということで非常に喜んでおるわけですが、この使われ方が、何か私ちょっと聞いておりましてうまく動いていないんじゃないかという気もするんです。時間がありませんので、どんなような状況なのか、簡単に御説明いただけますか。
  99. 征矢紀臣

    政府委員(征矢紀臣君) ただいま御指摘の特定求職者雇用開発助成金につきましては、これは就職が困難な方々、こういう方々についていろいろ相談して雇い入れていただく場合に事業主の方を支援する、こういう制度でございます。  現状雇用情勢が非常に厳しい中で、そういう意味で例えば有効求人倍率等で見ても四十五歳以上の方になると非常に厳しくなる、こういうことから、御指摘のように年齢を十歳繰り下げまして四十五歳以上の方を対象にする、こういうことで補正予算を経済対策で組んだわけでございます。  この金額は百八億円を計上いたしておりまして、全体として九百四十七億円計上いたしておりますが、百八億円の積算根拠は、六月以降、今年度内に対象者が大体九万人程度出てくるであろう、こういう積算でございます。六−七月の実績につきましては、四十五歳以上五十五歳未満の方について一万人を超える方がこの助成金の対象となる見込みでございます。  ただ、これは雇い入れてから六カ月ごとに後払いで支給いたしますので、現時点では支給実績としては金額が出ておりません。対象者が一万人を超えているということでございます。
  100. 山本保

    ○山本保君 ありがとうございます。  では、次に移ります。  労働基準法についてお聞きいたします。最初に基本的なところからちょっと入ってみたいと思うわけでございます。  労働基準法の第一条を見ますと、ここには労働条件の原則が書かれておりまして、「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。」、こう書いてあるわけでございます。読みましてもちょっと舌をかむような、「必要」というのは、今で言うニーズというのを昭和二十二年ですか、どうもそのまま直訳したんじゃないかな、日本語として練れていないなという気がしないでもないんですけれども。  この考え方は、労働条件を決めるものはまさに一人一人の人間の人間的な生活を確保するためのものが労働条件なんだという考え方でございます。決して社会や経済状況によって労働条件が決まるというものではないということでございます。  そこで、お聞きしたいわけでございますけれども、まず、今回、労働基準法改正をする、趣旨説明などを見ましても、私ちょっと不満に思いますのは、まさに労働基準法第一条にあります「労働者が人たるに値する生活を営むための必要」、ニーズ、これがどのように変化しつつあるので今回労働基準法をこう変えるのであると、こういう説明になっていない。社会状況がこんなに変わったのでとしか書いていない。これは法に反するのではないか、きつい言い方をすれば。そんなうがった見方もできるわけでございますけれども、今回の労働基準法改正必要性についてお答えください。
  101. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 今回提案申し上げています労働基準法改正は、時代変化に合わせながら働く方々の今御指摘ありましたような最低労働基準としてのルールを見直すべきところは見直していこうという立場に立っておりまして、幾つかの視点から幾つかの項目について改正をお願いいたしております。  一つは、新しい働き方として、自分の主体性を発揮しながら仕事の進め方あるいは自分の能力を発揮するための場、そういったものをつくっていきたい、こういう働き方に合わせる工夫でございます。その中に、一つ契約期間上限の問題等がございます。これも先生から御指摘ありましたように、従来の一年というものを今回のように限定した範囲で改正した場合に、最低労働基準、人としての生活を守るために必要なという観点に弊害が出るかどうかというような点も吟味いたしまして、特定の方について契約期間を三年というような改正をしたり、また裁量労働制につきましても、実際の働き方に合わせて弊害が出ないような、またこのまま放置した場合に労働時間管理がしにくい人たちについて労働基準法が形骸化するのではないかというようなことについて、しっかりとしたルールを持ってやろうと、こういう部分で裁量労働制等をお願いしております。  また、もう一つ大きな観点は、労働時間の特に時間外の問題でございまして、来年の四月から女性の方の保護規定が解消されることにあわせて、一方で、やはり育児あるいは介護といった家族責任を全うするためにそこの女性の方の保護規定の解消がそういった方々の仕事と家庭の両立に阻害を与えないかどうか、また全体としての労働時間短縮を進めていくための時間外労働の制度というものはこのままでいいかというような観点から、新しい仕組み提案させていただいております。  また、働く方々のいろんな意識や就業形態が多様化しておりますが、そういったいわば個別化が労働条件についても進んでいる面がございます。  したがいまして、例えば労働条件の基本的なものについては、雇い入れる側も雇われる側もお互いに書面等で明らかにして、認識し合って守るべきものは守っていこうと、こういうことで、労働条件の明示等もはっきりさせる。そこからもし紛争等が出れば、それの解決のお手伝いも労働基準行政の任務として対応していこうというようなものを一体のものとして織り込んでいると。  こういう改正、それぞれこの最低労働基準というものを念頭に置いて、制度の枠組みを私ども労使の方の意見も聞きながら設計いたしまして御提案をさせていただいておるわけでございます。
  102. 山本保

    ○山本保君 私のお聞きしたこととは違うわけでございますけれども、まさに、現在例えば福祉におきましても、昭和二十年代の福祉といいますと、本当に最低の食べること、住む場所と、こういうところの福祉でしたから、国が全部責任を持ってもう一定の決まったところへ送り込もうと、こういうものから今や変わろうということで大きな変換期にあるわけでございます。ですから、昭和二十年代の人たるに値する生活を営むためのニーズというものと、五十年たった現在の労働者のニーズというものをきちんと整理をされまして、そしてそれを出すのがやはり私は役所の責任じゃないかと思うんです。  もちろん、労働基準法改正だけで済むものではない。ですから、御提案しますのは、ぜひこの雇用問題に関する全体的な、五十年たったこれからの大きな全体像を労働省は出す責任があると、このことを申し上げます。  それで、次に移りますけれども、そうしますと、今お話に出たことにも関係するんですが、女性労働についてお伺いしたいんです。  基準法第三条には、「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。」とあります。そして、第四条には、「労働者が女子であることを理由として、賃金について、男子と差別的取扱をしてはならない。」とございます。  この三条と四条を見ますと、これはうがつたといいますか、素直に読めば、女性に関しては、賃金についての差別的取り扱いはしてはならないと書いてありますけれども労働時間その他の労働条件については差があって当然であるという考え方じゃないかという気がするんですよ、この条文の三条、四条は。  もう既に均等法ができたときに私は整理されているだろうと思ったので、あらかじめこれはもうとうに勉強されていると思いますからお聞きしたいわけですけれども、均等法も見てみますと、第二条の基本的理念には、「女性労働者は経済及び社会の発展に寄与する者であり、かつ、家庭の一員として次代を担う者の生育について重要な役割を有する者であることにかんがみ、」「母性を尊重されつつしかも」「能力を有効に発揮して」と、こう書いてあるわけでございます。  今回のこのいろんな改正がございますけれども、原理をお聞きしたいわけです。第三条、第四条を改正する必要があったんじゃないですか。
  103. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 御指摘ございました第三条、第四条でございますが、労働基準法の女性の方の保護規定の解消が昨年の国会で改正が図られましたけれども、なお女性の方々につきまして、例えば坑内労働の禁止あるいは妊産婦の方の危険有害業務あるいは生理日の就業が著しく困難な女性の方に対する措置など、労働基準法は随所にやはり女性の方について特別の扱いをする部分が存在しているわけでございます。制定時はもちろんこれに時間外あるいは深夜業の制限がついておりました。そういったことから、制定当時この第三条については性別という部分の規定、字句が挿入されていなかったと、こういう経緯がございます。まだなお労働基準法については賃金以外についてはそういった部分が存在している、こういう経緯で現在のような形になっているわけでございます。  ただ、先生指摘のように、女性の方の労働条件あるいは家庭と仕事とのかかわり、両立といったようなものも大変重要でございますし、また女性の方の能力というものを今の社会は大いに活用しながら活力を出していかなくちゃいかぬわけでございまして、そういう観点から男女の雇用機会均等法におきましては、いわば募集から採用、定年退職に至るまでの一連の雇用管理の各ステージにおきまして女性であることを理由とする差別取り扱いを禁止すると。  こういうことで、いわば労働基準法の賃金についての差別取り扱いを禁止している第四条と雇用管理の各ステージでの差別取り扱いを禁止している雇用機会均等法、両者が相まって均等待遇の確保に資する体系として現在存在をいたしておるわけでございます。
  104. 山本保

    ○山本保君 私が三条、四条改正と言いましたのは、これはもちろんレトリックで言ったわけでございまして、三条、四条を基本にして考えるべきだと思うわけでございます。  そういう観点から見ますと、今回の改正は、賃金面における平等は当然のことでありますけれども、さまざまな勤務条件に関しては当然女性、母性保護というものが図られるのが法の建前であるということをまず原則とした上で改正考えるべき、また運用考えるべきだということを申し上げたいわけでありますが、どうもそうじゃないんじゃないかという気がしてしようがないわけであります。  そこで、ちょっと具体的に一つ、百三十三条についてお聞きしたいわけです。これが言うならば三十六条の例外ということになるんでしょうか。  そこで、最初の辺はよろしいんですが、ここにあります「当該者のうち子の養育又は家族の介護を行う労働者の職業生活の著しい変化がその家庭生活に及ぼす影響を考慮して、命令で定める期間、特定労働者に係る」云々、「延長の限度についての基準とは別に、これより短いものとして」と、こういう規定があります。これの解釈についてまずお聞きしたいんですが、私、特にお聞きしたいのは、「命令で定める期間」というのは一体何なのか、お答えください。
  105. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 今お話ございました百三十三条本則の方で新たに設ける時間外労働上限基準、これの経過措置としてこの百三十三条を定めておるわけでございます。  これは、時間外上限の基準を定めるに当たって、同時期に施行されます女性の保護規定の解消、これによって育児や介護を行う女性の方が一般の労働者と同様の水準の時間外労働まで可能になると。この場合に、仕事と家庭の両立に支障を生ずることがあってはならないように経過措置として一定の期間その上限基準を短く定めようというものでございます。したがって、あくまで経過措置でございますので、私ども、審議会の意見の中では三年程度という意見を承っております。  ただ、私ども、三年程度の間には、女性の方だけではなくて育児や介護の責任を負う男女の労働者の方について、本格的な時間外労働の新たな制度を検討し措置しなければならないということで、そういったことも経過措置が終わるまでの間に講じていく旨の規定もあわせて提案をさせていただいておる次第でございます。
  106. 山本保

    ○山本保君 そういう経過で入ったということはわかるんですよ。しかし、この条文だけ素直に読みますと、これは経過措置であるとも読めますが、そうでないとも読めるんじゃないか。激変緩和措置という言葉もありましたが、そんなのは条文にないんです。  私が申し上げたいのは、今の局長お話を聞いていましても、この著しい変化というのは何か。これは今の局長の話では、今まで法律にあった女性保護がなくなったので著しい変化だと。ところが、この条文をよく読むとそうも読めるがそうでないようにも読める。つまり、労働者に子供の養育であるとか介護というまた人間として当然必要なそういうものが突然あらわれる。そうすると、今までそういうものには関係しなかった者に比べて著しい変化なんですね、これ。しかも、その著しい変化は、まさに少子・高齢ど言われる現代の社会の最も重要なニーズなわけですよ。  私は、じゃ申し上げるが、つまり三年たったら養育や介護を行う労働者の著しい変化というのはなくなるんですか。そんなことは絶対ない。これはずっと続くんです。  ですから、つくられた条文、もともとはそういう経過だったかもしれませんが、法律というのは法律条文が問題ですから、この条文だけ見ますと、私は介護や育児にかかわる労働者については、その場合別に女性と決める必要は本当はない。ただし、これはもともと女性だったから書いてある。おっしゃるように男性が入ったって、男性労働者にとったってこれは大変なことなんです。大変なんですよ、介護。そういうことが一般の労働者に比べて著しいじゃないですか。  であるならば、この「命令で定める期間」というのはそんな平成何年までという期間ではなくして、労働者が必要なそういう仕事といいますか、まさに人間的な労働にかかわらなくてはならない時間の間は、一般的な労働者に定める就業時間とは別の時間を定めていいんだ、こういうふうに読めないかと私は思うわけですけれども、いかがでございますか。
  107. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 御指摘のように、育児あるいは介護は女性の方だけが担うべきものでないことは先生指摘のとおりと存じております。私どもも、育児休業あるいは介護休業の制度につきましても、もちろん男女の労働者の方がそれらどちらもとり得る制度として構築をいたしておるわけでございます。  ただ、今回こういう規定を設けましたのは、来年度の四月一日から女性の保護規定が解消される、その際に、育児や介護を行っている女性の方について、引き続き同様の水準で働き、仕事と家庭の両立をしながら軟着陸をしていける制度としてこれを提案させていただいているわけです。  もちろん、先ほど御説明申し上げましたように、これは女性の方だけに限っている、いわば本来の形としては男女の方に適用されるべき制度であるので、この経過措置として三年程度期間が終わるまでの間、男女の方が育児や介護を行う場合には、今度新たに衆議院の修正が加わりまして、一定時間を超える時間外労働については免除をしてもらえる、こういう形の制度をつくって提案させていただいて、すき間のないような形で実施に向けて努力していく、こういうつもりでおりますので、先生指摘のような女性の方だけにこういった仕事をさせていくという意味合いの思想は私ども持っていないということについては御理解をいただければと思っております。
  108. 山本保

    ○山本保君 それはちょっと理解できません。  というのは、この内容についてはこれから審議会で決めるということになっているわけですから、そんなことを先に局長がおっしゃることはないと思いますよ。先ほどから言っていますように、今までの経過がそうであったことは認めます。しかし、条文が決まった以上、その内容について、運用については審議会に意見を聞くことになっているわけですから、今までどおりでなくちゃならないなんということを事務方が決めることはないじゃないかということを言っているわけです。  大臣にこの辺はもう一度ちょっと。  わかりやすい議論だったと思うんですよ。つまり、今までの法律、女性だけに育児、介護が必要だという条文がやはりこの現代に合わないんではないかということが問題になっているんであって、育児、介護というのが不要であるという考え方ではないんではないかということなんですよ。であるならば、そんな何年間だけ見ればいいというんじゃなくて、育児、介護というのは必要なんですから、それは労働者にとって必要だという運用をされたらどうだ、こう言っておるわけですが、大臣、どうでしょう。この辺、踏み込まれると、非常に私はここは大事なところではないかと思うんですが。
  109. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 三年後に女性というのが外れて男女ともに家庭責任を有するということに変わっていく、この三年間につきましてはいろんな意味で意識改革の準備期間も必要だと思います。  男性中心に運営をされてきた社会であります。特に仕事についてはそうでありますから、当然家庭責任というのは女性が有するんだという意識で世の中がまだいると思います。それを家庭責任ということに関しては共同で責任を持つようにしていくんだと、それには我々男性が特にそういう意識を変えていかなくちゃいけない。それはやはりそういう意味でも三年くらいの時間は必要なのかなと。世の中が、男女が本当に等しく責任を分かち合って等しく職業生活も家庭生活も共存できるというような社会にしていくためにはそれくらいの時間を持って、そして具体的な法律の上でも両者が共同で責任を有するのであるというふうに変えていく、そのために三年という時間が必要なんだろうというふうに考えております。
  110. 山本保

    ○山本保君 そういう説明でずっと来ていたということはよく知っておりますので、ぜひここはもう一度それに加えて、先ほど私が申し上げたようなことについても御検討をいただきたいとお願いをしておきます。  時間がありませんので一つだけ。これは小さなことなんですが、五十六条の児童労働、年少労働についてございます。  簡単なことでちょっと申しわけないんですが、満十二歳について今まで映画であるとか演劇の仕事以外については禁止しておったのを、今回十三歳というふうに一歳だけ数字が上がっておりますけれども、この理由について簡単でいいですから御説明いただけますか。
  111. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 近年、児童労働問題につきまては、貿易とその労働基準というようなことで国際的にも論議があるわけでございます。  私ども、そういった論議にかんがみまして、ILO百三十八号条約で求めています就業の最低年齢、これに我が国の労働基準法を合わせて整合性をとっていきたい、こういうことから十二歳以上というものを十三歳以上に改めさせていただきたいとして提案したものでございます。
  112. 山本保

    ○山本保君 細かいことですが、つまりこれですと小学六年生はもう使えないということになりますね。現実にこの辺の現場との調整はされておられるというふうに私は考えますけれども、安心するためにもそこをちょっとお聞きしたい。
  113. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) この点につきましては、提案に先立ちまして関係の方々とも話し合い、御意見をちょうだいした上で御了解のもとに提案をさせていただいております。
  114. 山本保

    ○山本保君 じゃもう一つついでで、五十六条の第一項、十五歳未満はと書いてあったのが、今度は、児童が三月ですか、非常に複雑な書き方になっております。これはどういうことなのか。四月一日生まれの方はこの中に入らないのか入るのか、ちょっと御説明いただきます。
  115. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 先ほどの十三歳というのは許可をもって従事することが可能な方の年齢でございますが、一般的な就業の最低年齢は我が国の労働基準法の場合、十五歳としていたわけです。この点につきまして、先ほどのILO百三十八号条約では十五歳の義務教育が終了するまでと、こういうことが求められておりまして、したがいまして私ども労働基準法もそれに合わせるために十五歳の年度末までと、こういうことで義務教育が終了する時点に合わせたものでございます。
  116. 山本保

    ○山本保君 わかりました。ありがとうございました。
  117. 吉川春子

    吉川春子君 日本共産党の吉川春子です。  昨年の通常国会で、労働基準法のいわゆる女性保護規定が廃止されました。その際、当委員会の審議で、ほとんどの委員が、法施行までに時間外・深夜業の男女共通規制を設けることを政府に求めました。これが実施されないなら女性保護規定の廃止に反対であることを多くの委員が表明したことは議事録によっても明らかです。同法の施行は一九九九年四月です。衆議院送付の法案がこれにこたえるものになっているのかどうか、以下、質問をいたします。  まず、電通社員の大嶋一郎さんが、入社一年五カ月で悲惨な自殺を遂げられた。これを過労自殺として労働省は認定しましたけれども、その理由を説明していただきたいと思います。
  118. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 御指摘のあった事案でございますが、電通で働いていた方が自殺した、それを業務上の事案として労災の請求があった件でございます。  私ども、この方の労働時間等の実態をもとにいたしまして専門家の方々の意見を聞いた結果、長時間労働等によるうつ病に罹患された、それが原因で自殺というものに至ったということが認められたことから、業務との因果関係があるというふうに判断いたしまして労災の対象といたしたものでございます。
  119. 吉川春子

    吉川春子君 労働省からいただいた資料によると、大嶋さんの労働実態は、平成三年七月以降、徹夜を含め深夜零時以降に退館した日は七月は十二回、八月は自殺するまでの二十七日間で十一回を数えており、生理的に必要と思われる睡眠時間五時間ないし六時間を確保できる状態になかった。うつ病の症状が出現して、大嶋さんの自殺は業務に起因するものと、こういうことでしたね。イエス、ノーだけでいいです。
  120. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 御指摘のような事実関係と把握しております。
  121. 吉川春子

    吉川春子君 東京地裁で平成八年三月二十八日、高裁で平成九年九月二十六日、それぞれ会社側に多額の賠償支払い命令をしておりますけれども、ここの認定によりますと、一カ月あたりの労働時間は二百九十四時間、年間は三千五百二十八時間、これにサービス残業を加えると四千時間以上。深夜業は、午前二時以降に退館した回数、平成三年一月以降八月二十二日まで七十回、そのうち午前四時以降退館回数は四十九回。こういうような事実が認定されておりまして、想像を絶する長時間・深夜労働をさせられていたわけです。  そこで、大臣にお伺いいたしますが、このような裁判になるのはごく一部ですね。悲惨な過労死が後を絶たないわけですが、過労死弁護団の推計では、年間一万人が過労のために死亡し、五、六十万人が過労のために病に倒れているということです。時間外労働の規制というものがこれを見てもますます必要になってきていると思いますが、  いかがでしょうか。
  122. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 時間外労働に関しましては、委員も先刻御承知のとおり、今までその上限は行政指導のようなもので決めていた、それを法的根拠を与えて基準ということにしたわけでありまして、これによってその措置が進むというふうに考えております。
  123. 吉川春子

    吉川春子君 このような長時間の時間外労働の規制の必要性をお認めですか。その点だけで結構です。
  124. 甘利明

    国務大臣甘利明君) その必要性があると思います。
  125. 吉川春子

    吉川春子君 経企庁にお伺いいたします。  経企庁は、生活大国五か年計画、構造改革のための経済社会計画の中で千八百時間の時短を打ち出しています。時短の進捗状況について伺いますが、労働力調査によると一九九七年の年間労働時間は何時間になるでしょうか。
  126. 高橋祥次

    説明員高橋祥次君) 年間の総労働時間を見ますと、所定労働時間を中心として減少傾向にありまして、平成九年度、九七年度の総労働時間で千八百九十六時間になっております。
  127. 吉川春子

    吉川春子君 経企庁の試算、非農林雇用者の年間就業時間は何時間になりますか。
  128. 高橋祥次

    説明員高橋祥次君) 総務庁の労働力調査より当庁が試算したものでは、一九九七年度では年間就業時間は二千二百十時間になっております。
  129. 吉川春子

    吉川春子君 経企庁からその数字もいただいているわけですけれども労働省の統計よりもこれは三時間以上長くなっています。わかりやすく言えば、その分がサービス残業だというふうに言えると思います。それが労働省の毎月統計ではあらわれてはおりません。実質的な労働時間は、労働省所定外労働時間百四十八時間に今のその三百十四時間をプラスされる、こういうことになると思うんです。そうしますと、やっぱり所定外労働時間というのは政府の統計によっても四百六十二時間と、こういう数値になるかと思います。  それで、経企庁にお伺いいたしますが、生活大国五か年計画で、千八百時間にするために所定外労働時間を百十八時間にすると、こういうふうに試算されていますけれども、これと現在の所定外労働時間との差はかなりあるんですが、千八百時間をどうやって達成しようとお考えでしょうか、経企庁にお伺いします。
  130. 高橋祥次

    説明員高橋祥次君) ただいま先生から御指摘のありましたのは前の計画、つまり生活大国五か年計画を審議する際に一つ試算をしたものでございます。そのときに千八百時間を達成するために幾つかの例示を挙げたわけでございます。  そのケース、例示が二つございまして、一つのケースといたしましては、年次有給休暇二十日間を取得したケースでは、所定労働時間が千六百八十二時間、所定外労働時間が百十八時間。それからもう一つのケース、例示といたしましては、年次有給休暇十五日を取得したケースでありまして、千七百二十時間の所定労働時間、所定外労働時間八十時間。こういうようなケースを示しておりますが、これはあくまでも千八百時間達成のイメージを提供するためのモデルとして、一つの例示として示したものでございます。
  131. 吉川春子

    吉川春子君 一つの例示ですから、有給休暇二十日間完全消化を前提にしてやってもこの時間、今は半分程度しか有給休暇は消化されておりませんので、さらにもっと数字は違ってくるというふうに思います。  それで、ちょっと時間の関係で大臣にお伺いいたしますけれども、こういう長時間労働、さっき電通社員の事例でも申し上げましたように、長時間労働を規制しなければならないと考えるというふうにおっしゃいました。伊藤局長も、これは四月の衆議院でしょうか、ある程度もう少し法律上の規制を強める、例えば罰則等をもって具体的に規制できないかという指摘労働委員からもあったと。これは中基審のことだと思います。法案作成過程で、審議会において最大の論点の一つだったというふうに答弁しています。連合とか全労連初め労働組合、労働者側もこのことを要求してきました。  それで、大臣、お伺いいたしますが、今回の法案でそのことが実現するのでしょうか。効果があるのでしょうか。いかがですか。
  132. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 働き過ぎをどう予防するか、これは時間外であるとかあるいは休日であるとか深夜、いろいろな点について御指摘をいただいております。  ただ、一律に法規制でということになりますと、それぞれ時間外、休日、深夜についての個別事情の違いとか温度差というのがあります。ですから、自主的な努力を促進させたり、あるいはガイドラインをつくったり、あるいはそれを基準として法的な根拠を与えたり、いろいろ個別の事情も配慮しながら、効果が結果として上がっていくように、多少温度差はっきますけれども柔軟に取り組んでいくということが肝要かと考えております。
  133. 吉川春子

    吉川春子君 法的な規制、罰則を伴う規制、これが最大論点の一つだったと伊藤局長答弁をされていることについて今私は質問をしました。  政府は、労働基準法三十六条に基づいて労使の結ぶ時間外協定の目安時間を三百六十時間とすることとし、三十六条二項において、労働時間の延長の限度その他の基準を定めることができるとして目安時間の根拠法律に書き込みました。それで、これに基づいて時間外の上限に関する基準に改められたというふうに説明しております。  しかし、その第三項で、「当該協定で労働時間の延長を定めるに当たり、当該協定の内容が前項の基準に適合したものとなるようにしなければならない。」、このように規定しているわけですが、これは法的拘束力のある義務規定ではありません。そうではないからこそ、衆議院の修正協議が必要になったのではないですか。大臣、いかがですか。
  134. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 現在、御提案申し上げている時間外の上限基準、そしてこの上限基準については、労使が三六協定を結ぶに当たってそれを適合したものになるようにしなければならない、こういう点について、これは法的拘束力を持つか、こういう御指摘かと存じます。  私ども、こうした形で労働基準法に体系を持った以上、他の労働基準法違反と同様に厳正な是正勧告等を行い、三六協定をこうした上限基準内にさせていくということをするわけでございまして、十分法的な拘束力といいますか効果を持った制度であるというふうに考えております。私どもの的確な運用によって十分効果を上げていくものと考えておるところでございます。
  135. 吉川春子

    吉川春子君 日弁連の意見書にも、その問題について、罰則もなく、時間外労働上限法律で定めたものでもなく、法律の内容は実効性ある法的規制とはなり得ない、長時間労働に歯どめをかけるために確実に実効性がある規制でなければ意味はない、こういう強い批判が出ているわけです。  それで伺いますけれども、この基準を超えた労使協定は、それでは違法なんですか。
  136. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) これは、労働基準法の今度の新たな提案申し上げている規定によりまして、それに適合したものになるようにしなければならない、こういうふうに定めておるわけでございまして、適合していないものについては労働基準監督署において是正をさせるという根拠として、私ども指導に関する規定もあわせてつけ加えておるわけでございます。したがいまして、窓口の段階でこの基準内におさめていただくと。  ちなみに申し上げれば、現在のこういった法的根拠がない、いわば事実上の行政指導の目安として設けている段階でも、私ども指導によりまして、年間三百六十時間ということで申し上げれば、九割を超えるものが三六協定、この指導の目安内におさまっているわけでございまして、私ども提案申し上げているような形を実現させていただければ、そういった内におさめることにつきまして万全の準備ができるものと考えているわけでございます。
  137. 吉川春子

    吉川春子君 端的に答えていただきたいと思います。  行政指導必要性はあるし、それは十分やっていただかなきゃならない。しかし、この基準を超えた労使協定は違法なんですかと、こういうことを聞いています。効果がないんですかと聞いています。どうですか、その点は。
  138. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 違法という意味合いにつきましていろいろと解釈させていただくことになろうかと存じますが、罰則を持っているかという意味では違法ではございません。  ただ、これがいろんな意味でそれを超えた場合に、例えば不利益取り扱い、その民事的問題等々にどう解釈されていくかという問題では、私ども、法的な意味を持ってくるという可能性が大きい、むしろ裁判所においてもこうした規定が設けられたことについて事案によって何らかの参考とされていくことは十分あるというふうに考えておるところでございます。
  139. 吉川春子

    吉川春子君 罰則がないというのは大きな欠陥の一つですね。しかし同時に、違法だと言うのだったらば、それではこの協定は無効ですか』
  140. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 罰則がないことをもって違法……
  141. 吉川春子

    吉川春子君 いや違います、それとは関係ない。罰則がないこととは関係ない。無効ですかどうですかということを聞いているんです。無効になるのか。
  142. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) これは直ちに無効となるものではないというふうに理解をいたしております。  先生指摘のように、例えば罰則をつける、こういう御主張かと存じますが、もし罰則をつける場合には、これは例えば今まで進めてきた四十時間制等と違いまして、罰則をもって規定する場合には、これ以上は生産活動、経済活動をとめなくてはならない、いかなる場合であれそれ以上の仕事、経済活動はできないという規制になるわけでございますので、これは当然合理的な経済活動のケースを想定して、我が国の経済また雇用を守るための経済活動、そういったことの観点から例外をつけなくてはいかぬ。  それは罪刑法定主義の手前、先生指摘のような一律にはいかないわけでございまして、かえって抽象的な例外を設けることによって、窓口で規制することよりも私どもは実効が落ちるケースも考えられる。むしろ窓口でしっかりした規制をすることによって、三六協定をこの新しい上限基準内におさめることについては十分効果を上げ得ると考えているわけでございます。
  143. 吉川春子

    吉川春子君 罰則をつけていないこと自体効果がないんで、それはそれでまた別に質問したいんですよ。  だから、違法かどうかという点についてもっと端的にお答えいただきたいわけですけれども、花見忠中基審会長が九八年二月六日に、上限を超えた三六協定の私法的効力を否定することはできない、このようにはっきりおっしゃっているわけです。だから、今局長もおっしゃったように、無効ではないわけなんです。  もし本当にこれが義務的な規定だということを主張するのだったらば、「当該協定で労働時間の延長を定めるに当たり、当該協定の内容が前項の基準に適合したものとなるようにしなければならない。」、こういう規定を、前項の基準を超える労働時間の延長を定めてはならない、こういう文言にしても同じ意味になりますね、あなたの答弁だと。どうですか。
  144. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 労使が三六協定を結ぶに当たって、私ども、適合するようにしなければならないという表現で提案させていただいております。それと、こういった体系を持ったことが、例えば無効なりあるいは不利益取り扱いがあった場合に民事的な意味でどういう効果がはね返るかという点で考えましたら、例えば、しなければならないと書いてあるケースとそれからするようにしなければならないというケースは、労働基準法上、民事的な意味合いはいろいろと解釈の余地が出てくるかと思いますが、労働基準法でそう書く場合には、やはり罰則との兼ね合いが労働基準法の体系上、全体の罰則との兼ね合いが当然出てまいります。罪刑法定主義の手前に照らせば、やはり抽象的な例外規定をつくらなければそういう規定は書けないわけでございまして、そこは抽象的な例外規定をつくった以上必ず緩む部分が出てくる、こういうことの体系になるわけでございまして、いろんなそういった事情を考慮して現在の条文にさせていただいていることを御理解いただきたいと思っております。
  145. 吉川春子

    吉川春子君 罪刑法定主義云々とされますけれども、労基法というのは罰則でもって労働基準を守らせる、こういう法律なんですよ。罪刑法定主義が労働問題に当てはまらないなんということは労働基準法の前提を否定するものじゃないですか。むしろ三六協定がこういう形で青天井になっていること自体、今の日本労働者をどれだけ長時間労働に駆り立てているか、だから規制しなければならないという議論になっているんですよ。  それで、局長は罰則に逃げ込むんですけれども、前項の規定を超える労働時間の延長を定めてはならない、こういう文言にはできないわけですよね。その点だけ、イエス、ノーだけ。
  146. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 単純に先生指摘になった部分だけそういう規定にするわけにはいかないと存じています。
  147. 吉川春子

    吉川春子君 今の答弁、意味不明なんです。要するに、効果があるというのだったらば、適合したものになるようにしなければならないという文言を、基準を超える労働時間の延長を定めてはならない、こういうふうにはできないということですね。ちょっとそこだけはっきりしてください。
  148. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 適合するようにしなければならないとするためには、他の規定との整合性、また罰則がついている条文とそうでない条文との整合性、それからさらには罰則との関連で、そういった条文にする限りやはり相当な例外規定を整備しなければならない、そういうことに相なるわけでございまして、そういったことを総合的に勘案した結果現在の条文になっているわけでございますので、先生提案になったような形で条文を書くということは私は不可能と考えております。
  149. 吉川春子

    吉川春子君 あなたの答弁とちょっと矛盾すると思うんですけれども、衆議院の修正案の法的効果の問題についてもう一つ聞きたいんです。一 「労働大臣は、激変緩和措置として特定労働者に係る労働時間の延長の限度等についての基準を定めるに当たっては、一年当たりの労働時間の延長の限度を、現行の女性保護規定で一年についての時間外労働の限度として規定する百五十時間を超えないものとしなければならないものとし、」云々とあります。この百五十時間を超えた労使協定についても今議論をしたことと基本的には同じ理屈が当てはまりますね。これも簡単に答弁してください、時間がないので。
  150. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) これも私ども窓口におきまして監督署名で他の労働基準法違反と同様、是正勧告を出して是正させていくという点では全く変わりません。
  151. 吉川春子

    吉川春子君 要するに、百五十時間の問題も法律に書き込むというふうにした点は一歩前進とも言えますけれども、実態は罰則をもって、刑罰規定をもって規制していた女子保護規定とは違いまして目安時間と変わらないということです。加えて、きょうの委員会でも議論になりましたけれども、子の養育は六歳未満に限られ、適用期間は一年にすぎない、そして両親とも深夜不在になることを防ぐという立法の趣旨だそうでして、子供の養育に当たる人がほかにいれば認められないという、範囲も非常に狭いものであるわけです。  だから、こういう問題について、やっぱり本当に先ほどの電通のような悲惨な過労死を象徴的にした長時間労働の規制になるような内容ではないということが明らかになっていると思います。  私は、続いて深夜業の規制の問題について質問をいたします。  深夜業が健康に影響があるということは、去年の通常国会でも当時の太田局長、そして岡野労働大臣も、やはり深夜業というのは能率が下がって体力というものが衰えてくると、こういうふうに答弁をされておりました。  それで確認のためにもう一度伺いますが、今国会で小渕総理と甘利労働大臣が、本会議でも過度な深夜業に対してどのような対応が可能かについて、これに従事する労働者の健康等に配慮し、経済活動や国民生活の態様の変化も十分見きわめながら、広範囲な角度から引き続き検討し、適切に対応する、あるいは過度の深夜業を抑制するための方策についてどのような対応が可能か引き続き検討する、このように答弁されています。  大臣、これは深夜業について何らかの規制、抑制策が必要であるということを認めたものでしょうか。まず確認したいと思います。
  152. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 深夜業が過度にわたることは決して適切ではない、それに対して何らかの適切な措置を講じていく必要があるということでございます。
  153. 吉川春子

    吉川春子君 今回の労基法の改正によって、例えば先ほどの電通社員の大嶋さんのような過度の深夜業はこれは規制されるんですか。こういう深夜業をやってはいけないというふうに法的に言えるようになるんでしょうか。大臣、いかがですか。
  154. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 個別事案の中身でございますので私の方からお答えさせていただきたいと思いますが、この電通事案につきまして、業務上外の請求等の審査に当たりまして具体的な監督署段階で調査した資料そのものは持っておりませんが、私ども承知している限りでは、この電通につきましては、労働時間についての監督指導も行い、むしろ三六協定がそういう長時間の残業を許し、深夜にまで及ぶようになっていたというよりは、三六協定を超えた残業を命じていた、そういう意味では労働基準法違反の事実があって、監督指導、是正等を命じている事案でございます。  つけ加えさせていただければ、それは深夜業というよりも長時間の残業の延長がいわば十時という深夜帯に入っていったという問題でございまして、いわば残業の抑制策という方の問題として対応をしていく事案かと存じております。
  155. 吉川春子

    吉川春子君 深夜業というのは二つのタイプがあるということは伊藤局長答弁で何遍も聞いていますが、この労働省が私に提出しましたのでは、七月は十二回、八月には自殺する二十七日までの間に十一回を超える深夜業、二時とか明け方の四時退館。こういうような深夜業を今度の労基法の改正によってこれは違法だというふうに言えるようになるのかどうか。労働時間の問題はさっきやりましたので、深夜業としてこれは規制できるのか、その点を端的に大臣にお答えいただきたいと思います。
  156. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) ただいまの電通のいわば残業としての問題と離れまして深夜業の問題についてお答え申し上げれば、今まで労働基準法について深夜業そのものを規制する条文は、割り増し率を高くするという条文以外にはなかったわけでございます。  ただ今回、私ども、深夜業の問題につきまして種々御意見等を承る中で、労使の方に自主的なガイドラインをつくってもらうためのテーブルに着いてもらうことを促し、自主的なガイドラインをつくり、またそれとあわせまして、そういう中で出てくる業種ごとの特殊性なんかを十分見きわめて、過度の深夜業を抑制するための方策について広範囲な角度から検討していくわけでございます。その結果として、こういった適切でない深夜業について何らかの対応策が生まれてくるわけでございます。そういった検討に入っていこうということは、衆議院の段階また当委員会におきましても、私どもそういった今後の方針を明らかにさせていただいているところでございます。
  157. 吉川春子

    吉川春子君 私は今後のことを聞いているんじゃないですよ。この労働基準法改正案が出てきているわけでしょう。これで規制できるのかどうかと聞いているんで、今後やりますということは、この労働基準法ではまだできないということですね。ちょっと、イエスかノーかで簡単にしてください。
  158. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 先ほどの電通の形であれば、罰則つきという点では先生とお考えが違うかもしれませんが、私ども、新しい今回の提案している内容で十分対応して是正をさせられるというふうに考えております。  ただ、こういった事案でない深夜業一般について申し上げれば、深夜業は、交代制のところから、あるいは豆腐やおかずをつくるために朝方までつくるところ、あるいは金融機関の世界に向けて市場をにらんでいる部門、あるいはコンビニ等々、これらについて一律に規制していくということは今の労働基準法では無理でございます。むしろ、そういった問題については業種ごとにどのような適切な抑え方があるかということを労使でいろいろやってもらう、そういう中で業種ごとの特殊性に対応した私ども何らかの対応策というものもあわせてつくっていく、そういう検討を始めたいということを申し上げているわけでございます。
  159. 吉川春子

    吉川春子君 電通の例は、こんなのは幾ら何だって権利の乱用ですよ。現行の民法でだって何だってそれは規制できますよ。しかし、今局長が言われたように、一般の深夜業の規制、ここに至るまでもないけれども、たくさんの深夜業の規制が必要なんですけれども、そういうものについてはこれからの検討だと、それが今の御答弁でした。  深夜業、昨年、労働省は、中央労働基準審議会で時間外労働、休日労働等の内容について御審議を願っている、平成十一年四月、つまり来年ですね、均等法施行時期をにらんで検討が行われ、間に合うようにお願いすると繰り返し答弁してきました。そして中基審の議事録も拝見しました。深夜業の規制を設けるべきだ、全く規制なしで均等法の実施時期、すなわち九九年四月を迎えることはできないと労働者委員が強く要求しています。女子保護規定の廃止と均等法の施行に空白を設けるな、こういう中基審の議論は今度の法案に反映されていません。労基法の実施までに、この女子保護の廃止までに対策を講じるというふうに繰り返し去年の国会で答弁してきた、これはうそだったんですか。
  160. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) この法案作成に当たりまして検討を願いました中央労働基準審議会におきまして、深夜業をめぐりまして労働委員から御指摘のような意見が出されたことは先生指摘になったとおりでございます。  ただ一方では、使用者側からは、現在の産業の実情を見ると、例えば自動車、電気、そういったメーカーにせよ、これは世界各国、交代制を組みながら対応をしている状況の中で、これらについてその深夜業をだめというわけにはなかなかいかない。また、最近のグローバル化の状況に伴いまして、金融機関等も必ず深夜部門というものがある。そのほか、いろんなお総菜をつくったり豆腐をつくったりするというところは深夜でなければできない。これ自体が深夜を規制すれば事業活動がとまるわけでございます。それを一律に規制することについては無理だと。  こういう反論もございまして、それで、公労使でこの問題について協議した結果、審議会の建議では、現段階でそういった深夜業の回数規制、時間規制というようなものについて結論を出すことはできない、ただ、過度の深夜業についてどのような対応があるかについては広範囲な角度から引き続き審議会としても検討していく、こういう結論に相なったわけでございます。
  161. 吉川春子

    吉川春子君 私たちも公益上とかあるいは産業上の必要とかいうことで深夜業は一定あり得べしと思っています。ただ、それを不必要なものまで一般に深夜業をこんなに横行させていいのか。そこで規制論が出てくるのであって、必要があるからといって全然規制なしていいというふうにはならないと思うんです。  それで、使用者とおっしゃいましたけれども、使用者は規制しなくていいと言った、労働者委員は規制せよと強く言った。それで、労働省は使用者側の意見をとったのですね、結局規制はしないうちに来年を迎えるんだから。  それでは、使用者代表の方がどういう意見を述べているか。これも議事録を見てみました。そうしたら、確かに深夜業の問題は中基審を超えた世界の話だ、産業構造審議会を初め政府のあらゆる審議会で論議すべしと、このようにおっしゃっているんです。産業構造審議会で議論するかどうか、それがいいのかどうかというのはさておいても、要するに中基審の中でも議論が終わっていないんですよ。  財界代表というか、使用者代表がもっともっとあらゆる審議会で議論をして規制する必要があるのかどうかを考えようと、こう言っている中を、何で労働省だけが焦ってこの法案を出してきたんですか。それで聞くと、いや、これからこうします、これからこうしますと。それはだめなんですよ、通すときにどうかなっていないと。通しちゃったらもう知らぬ顔しているに決まっているんです、労働省は。だから、やっぱり財界でさえ、使用者代表ももっともっと議論しようと言っているのに、なぜその議論をストップして今度の法案を出してきちゃったのか、法案出した後議論しようというふうにしているのか。どうですか。
  162. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) まず一つは、労働側が主張された、また使用者側がこういう主張をされた、労働省が使用者側の意見をとったということではなくて、審議会は公益、学識経験者の方が両方の意見をそれぞれ聞きながら調整し、ぎりぎりの今後の建設的な方向というものをまとめていくわけでございまして、その結果として、審議会としても過度の深夜業を抑制するためにどのような対応があるか広範囲な角度から引き続き検討しましょうということになっているわけでございまして、議論をやめたわけでございません。  それから、そういった議論の途中経過でなぜ法案を出してきたということでございますが、今回の法案は、深夜業について、今まであった規制をなくしたり変化させるものではなくて、全体を見ていただけばわかりますように、私ども、深夜業についてではなくて、例えば時間外労働上限基準の問題とかあるいはパート労働法の強化に当たる労働契約時の基本的労働条件の明示とか、急がなくてはならない課題も同時にあるわけでございまして、それらについて提案させていただくことは私どもとしてやはり行うべき選択だったというふうに思っております。  深夜業につきましては、先生は罰則つきの規制ということが念頭にあっての御主張かと存じますが、私ども先生お話になりましたような労使の議論の状況の中では、そういったことを目指していくためには大変時間がかかる、これも事実でございます。ただ、それを私ども待つことはできないわけでございますので、まず、労使の方にテーブルに着いていただく、それで、自主的なガイドラインをつくり、総合的なガイドラインに育て上げていく、また同時に、あわせて、一方ではそういった中から業種ごとにどのような対応で過度の深夜業を抑えられるか同時に検討も続けていく、こういうことを既に着手しようということを申し上げておるわけでございます。
  163. 吉川春子

    吉川春子君 深夜業の規制、今全然ないとおっしゃったけれども、違うでしょう。女性労働者については深夜業原則禁止なんですよ。その規制を取り払うんですよ。女性労働者労働者の数に加えてないんですか。今あるでしょう。それを外すのが女子保護規定の廃止じゃないですか。  だから、みんな九九年の四月ということを考えて、それまでにやっぱり男性も規制しなきゃならない、女性も規制しなきゃならないということで、男女共通規制という話になっているんであって、いろいろこれから話し合って決めるというのだったらば、そういうことを決めて今後の方向をどうするかということを考えた後、百歩譲って深夜業の女子保護規定を廃止するという方法もあるし、それが普通だと思いますよ、今あるものをなくすわけだから。それなのにもかかわらず、一方ではもうなくしちゃって、それで、なくした後の手だてはこれからゆっくり労使の話し合いの場を設定して考えます、これでは余りにも無責任じゃないですか。  私はそのことを厳しく指摘して、法制局にちょっと伺いたいと思います。法制局、お見えでしょうか。  労働基準法のいわゆる女子保護規定が既に廃止されて、もし男女共通規制がないままこの改正労働基準法の施行日を迎えると、深夜労働の規制が一切なくなってしまう。それを多くの人がまさに党派を超えて困ったなと思っている。それを避けるために労働基準法の施行をおくらせる方法はありますか、ありませんか。
  164. 高久泰文

    ○法制局参事(高久泰文君) お答えいたします。  吉川委員指摘労働基準法の女性保護規定の解消につきましては、昨年制定されました雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等のための労働省関係法律の整備に関する法律、この第四条に規定するところでございます。そしてまた、この法律の附則第一条、これはこの法律の施行について規定している条文でございますが、ここで来年の四月一日から施行すると規定されております。  したがいまして、労働基準法の女性保護規定の解消を定めた規定の施行日を延期するためには、施行日を規定しておりますこの法律の附則第一条の規定を改めることによって可能となると考えられます。
  165. 吉川春子

    吉川春子君 もうちょっとわかりやすく言っていただきたいと思うんです。要するに、均等法関係の整備法というのがあるわけですね。これは労働基準法でもない、男女雇用機会均等法でもない、第三の法律の整備法があるというお話でした。長々としているので均等法関係の整備法と、こういうふうに簡単に言いますけれども、この法律の附則第一条に、平成十一年四月一日から労働基準法の女子保護規定の廃止を行う、こういうことが書かれているわけです。  これを例えば三年延ばして、施行期日を平成十四年四月一日とする、こういう修正ができる、そういうお話ですか。ちょっとわかりやすくお願いします。
  166. 高久泰文

    ○法制局参事(高久泰文君) おっしゃるとおりでございますが、三年延期は、この法律が来年の平成十一年四月一日から施行ですので、平成十四年四月一日から施行、こういうことにすれば三年延期になわ、おっしゃるとおりでございます。
  167. 吉川春子

    吉川春子君 そうしますと、その一点だけ、要するに平成十一年というのを平成十四年というふうにその一点だけ修正すれば、例えば女性の百五十時間の時間外の規制、罰則を伴う規制とかあるいは深夜業の規制とか、その法律はそのまま平成十四年までずっと効果を持ち続ける、こういうふうに理解していいんですか。
  168. 高久泰文

    ○法制局参事(高久泰文君) 詳しいところになりますと、もう少し検討する必要はあるかと思います、細かい関連法令の改正というのはどうしても伴いますので。一応御質問の趣旨にわかりやすく答えたわけでございます。
  169. 吉川春子

    吉川春子君 労基法の女子保護規定の効果はそのまま持続する、こういうことでよろしいんですね。
  170. 高久泰文

    ○法制局参事(高久泰文君) お答えいたします。  ただいまの件につきましては、先生の言われるとおりでございます。
  171. 吉川春子

    吉川春子君 労働大臣、この法律の施行を今の形で三年程度延長するというお考えはありませんか。さっきも言ったように、財界も労働者代表も一まだ審議途中だと言っているわけですよ。どうですか。
  172. 甘利明

    国務大臣甘利明君) ございません。
  173. 吉川春子

    吉川春子君 大変冷たいお言葉でした。  本当に労働省は働く女性の人たちの健康やら家庭生活やらそういうことを考えているんだろうか、あるいは過労死に追い込まれるまで働いている多くの男性労働者のことを考えているんだろうか、こういう感じがいたします。  ことしの通常国会の際に、当委員会はNPO法を審議しました。そして、理事会メンバーによる修正協議の結果、全会一致で可決して衆議院に送付した、そういう経験を持っています。その際、NPO法の制定を求めていた多くの団体やマスコミからも歓迎、注目されました。  参議院は良識の府と言うと異論の向きがあると思うんですけれども、熟慮の府、よく考える府だ、そういうふうに言われています。徹底的な審議を行って国民の期待にこたえられるような労働基準法をつくっていく、これが立法府、とりわけ熟慮の府たる参議院の役割ではないかと思います。  けさのある新聞の社説にも、徹底審議をと、こういうことを掲げた社説が載っておりましたけれども、まだ議論の過程だ、これから検討するということを労働省自身が繰り返し繰り返しおっしゃっているものを、見切り発車のような形で女性保護の規定だけを廃止する、あるいはまた、裁量労働制や有期雇用やあるいは変形労働時間制やさまざまな問題を含んでいるこの労働基準法を十分審議して、本当にこれでいいのか、徹底した審議をしていく必要があるのではないか、私はこのことを最後に表明いたしまして、質問を終わります。
  174. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 社会民主党の大脇です。  私は、時間外・休日労働に関する法的規制についてお尋ねをいたします。  今回、三十六条二項におきまして、労働大臣は時間外労働上限基準を定めるということになり、労基法三十六条三項は、「当該協定の内容が前項の基準に適合したものとなるようにしなければならない。」と規定したわけです。この文言の解釈をめぐりまして何度か質問をさせていただいておりますが、再度確認をさせていただきたいと思います。  週四十時間法制のもとで、本来、時間外労働というのは臨時、例外的なものであります。そして、三六協定を締結することによって時間外労働が可能になり、今回、三十六条二項で規定する労働大臣の定める基準というものに法的根拠が与えられたということは重大な意義を持っていると思います。  私の代表質問におきましても、この条文の文言をめぐりましては「他の労働基準法違反事例と同様に、」という言葉で表明されましたし、ただいまもそのように言われました。十分法的拘束力を持つものとして効果を持たせたいとか、あるいは法的意味を持つとかと言われているわけですが、労使協定を締結するに際しては、使用者及び労働者代表、協定の締結当事者というのはこの労働大臣の定める上限の基準を踏まえて締結しなければならないと考えますけれども、この点については労働省はどのようなものとして考えておられるのでしょうか。
  175. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 今御指摘ございました、三六協定を結ぶに当たりまして、労働大臣が定める時間外労働上限基準に適合したものになるようにしなければならないという規定、新たに労使へ三六協定を結ぶ際の上限基準の遵守義務を課したものと理解をいたしております。したがいまして、私ども労働基準法の着実な履行を担保する責務を担っています以上、この遵守義務をきちっと守っていただくことが私どもの任務であるというふうに考えております。  したがいまして、労使協定を締結し、届け出がある際には十分チェックいたしまして、遵守義務を履行していただくために、もし守っていない場合があれば、他の労働基準法違反の場合と同様に労働基準監督署名による是正勧告を行って、厳正に対処し、是正をさせる、こういうことで臨んでいくつもりでございます。
  176. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 ただいま労使に対する遵守義務という言葉で御説明いただきましたが、これは大変重要な意義があるというふうに理解をいたします。  そうすると、これは単なる努力義務ではないというふうに理解してよろしいのでしょうか。
  177. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 私ども、単なる努力義務とこのような遵守義務とは当然条文を書き分けておるわけでございまして、新たなこの二項の規定は、いわゆる労使へ遵守義務を課したものと理解をいたしております。
  178. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 そうすると、前回の審議のときに、事業の危急存亡のときとかプロジェクトの山場にあるときというのは、それを例示として、言ってみれば是正勧告を出す出さないというときの基準として考えるというようなお話がありましたが、実際、御説明もありましたように、九〇%以上が一年間を単位として時間外労働協定を締結する場合ですから、そういうときに事業の危急存亡とかプロジェクトの山場というようなことが問題になるということでありますと、実際上、労基法の最低基準の遵守義務ということを放棄するに等しいというふうに理解されるわけですが、これとの関係はどのように行政指導上取り扱われるのでしょうか。
  179. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 前回お答え申し上げました中で、三六協定が上限基準を超える場合に、どうしても緊急やむを得ないケースを事例として申し上げました。それは本当に緊急やむを得ない事例としてあり得るのかと思いますが、そういう場合におきましても、緊急やむを得ない事例でございますので、実際にこれから定めます上限基準を年間単位で決め、あるいは一週とか一カ月とか短い期間でも押さえていくわけでございます。  恐らくそういう緊急の場合には、年間三百六十時間まで超えることについて許されるわけじゃなくて、短期間の突発的な緊急な事態に対応するために、三六協定を無視して残業するのではなくて、三六協定を締結し直して、どうしても緊急事態に対応するのであれば、必要最小限の期間でそういったことが出てくるケースは想定はされます。ただ、そういう場合に、野方図にそれを認めていくのではなくて、私ども、どういう場合に認められるかということにつきましてはこれからいろんな考え方を整理させ、一つ指導考え方というものは十分持って対処してまいりたいと思っております。
  180. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 そうしますと、前回問題になりました事業の危急存亡のときとかプロジェクトの山場というときは、年間ではなくて例外中の例外として一時期の規制の中で考えることだということで、これは三六協定締結をしっかり定着させるために労働省としてもきちっと労働行政の中で留意していただけるでしょうね。さらに大臣に確認したいと思います。
  181. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 留意してまいります。
  182. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 そうしますと、基準を超える協定に基づく業務命令を拒否した労働者に対して、例えば解雇、配転、昇進、昇給、あるいはボーナス査定などの賃金差別などで不利益的取り扱いがなされるということが起これば、これはまた大きな問題になります。  これも民事上争い得るというふうにこれまで御答弁されているわけですけれども、やはり遵守義務というふうに言った以上は、これは当然合理性がなく、許されないものだと解しなければならないと考えますけれども、どうでしょうか。
  183. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 先ほど幾つかの事例について先生から御指摘がございましたが、そういった点についてはごく例外的なものとして考え方を整理した上に立ちまして、遵守義務である以上やはり三六協定の届け出段階でその範囲内に三六協定をもし超えていれば是正させるということでございますので、ほとんどのケースにつきまして三六協定がそもそも上限基準を超えていて残業命令を出すという事態はまずないように私ども最善を尽くすということが第一でございます。  御指摘のように、もし万が一そういうものがあった場合に、そういう三六協定に基づいて上限基準を超える業務命令を出す、それについて拒否したために不利益取り扱いを受けるというケースにつきましては、こういった遵守義務等の体系がつくられている以上、こうした制度が生まれたことにつきまして、それは裁判所においても何らかの判断の参考とされていくものと我々は考えております。
  184. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 今回の法律によりますと、労働基準局長労働条件についての労使紛争に対して必要な助言、指導を行ったり、広く専門家の意見を聴取したりするということになっていますが、こうした業務命令を拒否してさまざまな不利益取り扱いをさせられたようなケースについては受け付けて、この新しい今回の労使紛争処理の中で取り扱っていただけるでしょうか。
  185. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 御指摘のように、この法案成立をさせていただきますと、十月一日からスタートいたしますこの紛争解決援助システムは、解雇等の事案はもとよりでございますが、こうした問題で不利益取り扱いを受ける、その民事的な紛争が生じている場合に、申し出があればその事実関係を整理し、適切な助言、指導で解決に導いていく、そういった対象に先生指摘の事案も当然なるものと考えております。
  186. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 激変緩和措置及びポスト激変緩和措置関連でお尋ねをいたします。  激変緩和措置として、時間外労働に関する基準の設定については家族的責任を持つ女性労働者現行どおり一年間百五十時間という基準を維持するということになっております。しかし、家族的責任を考えますと、これは一週とか一カ月とか、あるいはとりわけ一日についても上限設定が必要だと考えられますが、その点についてはどのようなお取り扱いをされるでしょうか。
  187. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 衆議院におきますいわゆる激変緩和措置についての水準に関する修正は年間で百五十時間ということが要綱で示されておりますが、法案等に即してみれば、現在の女子保護規定等を踏まえてその基準を定めることが求められているものと理解しております。  したがいまして、先生指摘のように、期間は例えば四週とかそういった期間でも、個々の期間で現在の規定に即して上限基準を押さえる必要があるものと考えております。
  188. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 ぜひこれは労働大臣の指針で、一日あるいは一週等について家族的責任を果たすためにきっちりと規制をしていただきたいと思います。  とりわけ心配なのは、現行制度では休日労働につきまして業種ごとに今規制されているわけです。例えば林業や商業、金融、保険広告業、通信、教育、研究の事業などは四週について一日、その他の事業は禁止となっているわけです。そうしますと、時間外労働の激変緩和措置があるのに休日労働に対しての激変緩和措置がないと、休日労働を命ずることによって時間外労働の激変緩和措置を置いた意味が脱法されるという心配があります。  休日労働上限設定が当然必要だと考えてそのように訴え続けてきているわけですが、それについては労働省はどのような指導をなさるつもりなのでしょうか。
  189. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 休日労働の問題につきましては、衆議院の最終段階におきまして附帯決議によって方向性を私ども示されたものと考えております。  そこではガイドラインの設定など適正化のための適切な措置について中央労働基準審議会において検討が行われるように努めていくということでございますので、私ども早急にまずはこの点に着手をいたしたいと思っております。  ただ、御指摘のように、時間外労働につきまして、例えば家族的責任を持つ方について短い水準を定めた場合に、それによって残業が抑えられる、その分は休日労働等にいわばしわ寄せが行くというような形での脱法的なという御趣旨かと存じますが、そういった事例が出てくることはせっかく激変緩和措置を講じている意味がないわけでございます。  したがいまして、そういった点につきましては、激変緩和措置を定め、その適正な運用を期すために、私ども、各労働基準監督署に指示するに当たりましては、そういった問題が出ないようにあわせて十分指導するように指示をしてまいりたいと思っております。
  190. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 今般は、ポスト激変緩和措置として男女の労働者を対象として時間外労働の免除請求権を保障する制度を検討するということになっているわけです。二十一世紀を展望しますと、家族的責任を有する男女労働者仕事と家族的責任の両立を保障されて働き続けるということが非常に重要だと思うんです。  深夜労働に関する免除請求権は先般の雇用機会均等法の改正のときに制定されました。三年以内に時間外労働に関しても免除請求権が規定されるわけです。休日労働に関してもやはりそれが検討されるべきだというふうに私は考えるものですが、その点について大臣にお尋ねをいたしたいと思います。
  191. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 休日労働につきましてでありますが、「ガイドラインの設定などその適正化のための適切な措置について、中央労働基準審議会において、労使の意見を充分尊重しつつ、検討が行われるよう努めること。」とするという、これは衆議院の附帯決議をいただいたところであります。でありますから、これに沿いまして今後対処していきたいと思います。
  192. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 そうすると、こうしたものは当然育児・介護休業法の改正だと思われますが、その点についてはどういう法律でそれを規定するということになるのでしょうか。何か御検討されてい  るでしょうか。
  193. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 激変緩和措置を三年間持つわけでありますが、これが終了するまでの間において家族的責任を有する労働者が時間外労働の免除を請求することができる制度について検討を加える、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものというふうにされたところでありまして、これは具体的にどういう法改正で行うんですかということだと思います。  具体的に言えば基準法か育児・介護休業法かどちらかということなのでありましょうが、これは少し時間をいただいて検討させていただきたいと思います。
  194. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 それから、先ほど来深夜業の規制問題について議論になっておりますが、本来、深夜業は昼間労働に比べて生態リズムを乱すものとして健康上の負担が重いこと、これはもう既に一九六五年の労働基準法研究会でも明らかになっていることであり、家庭生活や社会生活上も労働者の負担が大きいということをかんがみますと、どうしても深夜労働の法的規制が図られて当然であると考えるわけです。  深夜労働に対する男女共通規制の最低限の制度として私どもがずっと主張してまいりましたが、衆議院の附帯決議第三項にありますように、現在は労働安全衛生上医師が健康診断の結果配転等が必要であれば事業主にそれを勧告して、それに事業主は従わなければならないという規定があるわけですが、労働者自身が自分の健康は一番よくわかっているわけですから、労働者が自主的に健康診断を受診したいというときにはその費用の助成を行うということになっています。そして、その次、その結果に基づいて、医師の意見を当然勘案して、労働者みずからが深夜労働の回数の減少とか作業の転換や軽減等の措置を要求できるようなシステム、これは深夜労働の男女ともに最低限のセーフティーネットだと考えるわけです。  これは、通常国会で労働安全衛生法上の改正を早急に行っていただきたいということと、その予算措置をぜひ講じていただきたいということを大臣要請すると同時に、御意見を伺いたいと思います。
  195. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 深夜業に従事をいたします労働者の自発的な健康診断の費用助成や健康診断等に関する労働安全衛生法の改正必要性につきましては、もうかねてから大脇先生から御指摘をいただいてきたところであります。そして、九月三日の衆議院の労働委員会におきまして附帯決議がなされました。この趣旨を踏まえまして、その実施のために必要な法的措置については次期通常国会に提案できることを目指して早急に検討をしてまいります。予算のことに関しましても対応していきたいと思っております。
  196. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 予算措置等については、労働社会政策委員会挙げて労働省を応援する気持ちをみんな持っていると思いますので、ぜひ頑張って予算の獲得をしていただきたい。過労死の業務上の認定に関して今まで素因として扱われて、労働者みずから過労死を防ぐ自主的な手段を持たなかったところに大きな歯どめをかける法改正を期待したいと思います。  中基審の提言によりますと、過度の深夜業の規制は問題だということになっていますが、深夜業の回数制限とか深夜業の時間規制とかあるいはシフトの組み方などについて、やはり何らかの法的規制も視野に入れて引き続き検討する必要があるのではないか。これは女性議員全体の労基法における女子の深夜業の保護規制がなくなったときの本当に心の底からの願いでありますけれども、こういう検討というものは労働省としてはどのようにお考えなのでしょうか。でき得る限り一九九九年四月に密接に連結した形で私どもはお願いしたいということを何度か申し上げてきたわけですが、それについてはいかがでしょうか。
  197. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 深夜業の回数等々の制限の問題でございますが、先ほど来出ておりました衆議院での附帯決議の趣旨に沿いまして、私ども、労使がテーブルに着いて、それぞれの職場の実態に応じた深夜業のガイドラインの策定を急ぎたいと思っています。その中で先生指摘になりました回数等の問題が業種の態様に応じてどういう議論がなされるか、これを十分見きわめてまいりたい、そういうものを見ながら、並行して過度の深夜業を抑制するためにどのような方策があるかを引き続き検討させていただきたいと思っております。まず、そういった労使が主要業種、テーブルに着くことをまず私ども急いでみたいと思っております。
  198. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 業種ごとに労使の自主的なガイドラインをつくるためのテーブルの設置ということも確かに重要なことかもしれませんが、私は、やはりそれと並行して、むしろそれと同時に全体的な深夜労働を抑制していくためのシステムということをぜひ考えていただきたいというふうに思います。  時間外労働や深夜労働の規制について、とりわけ女性労働者がこだわりを持ち、その規制が取り払われることに対する大きな不安を持っているということは、家族的責任が女性のみに非常に重くかかっているという現実があります。男女労働者が共通に家族的責任を果たすための事業主の積極的な施策、これが重要だろうと思いますし、労働省はそうした積極的施策への援助策というものをしっかりとっていただきたい。  均等法におけるポジティブアクションというものがありまして、例えば育児・介護休業法における父親の強制休暇とか、あるいは時間外や深夜労働の免除請求権の行使についてのそうしたポジティブアクション的な制度とかを将来ぜひ考えていただきたい。  そうした男女労働者が共通に家族的責任を果たすための事業主への積極的な施策を実現すること、企業における自主的で計画的な取り組みが実施できるようにぜひ労働省も援助策を考えていただきたい。  大臣にどうぞその点の御決意をお願いいたしまして、私の質問を終わります。
  199. 甘利明

    国務大臣甘利明君) 大脇先生指摘のとおり、男女労働者がともに家族的な責任を果たす、このためには事業主がそれを理解するということが非常に大事でありまして、事業主が積極的に事を行っていくことを援助する制度、これは私どもも非常に大事だと思っております。  御案内のとおり、今まで事業所内託児施設の設置の補助であるとか、あるいは従業員の育児サービス利用料の補助であるとか、さまざまな施策を講じてきたところでありますが、これに加えまして、平成十一年度におきましては、仕事と家庭とが両立できるようなさまざまな制度を持って家族的責任に配慮をした雇用管理を行った企業、これを家庭にやさしい企業として普及促進を図っていこうと。厚生省と連携しつつ、この表彰制度をつくりまして、総合的に展開したいというふうに考えております。  いろんなグローバルスタンダードがありますが、家庭にやさしい企業というのも、国によってはその表彰制度を持っているところが既にあります。これをILOを通じて国際的に広めていくということも今叱咤しているところでございます。
  200. 大脇雅子

    ○大脇雅子君 終わります。
  201. 鶴保庸介

    鶴保庸介君 自由党を代表いたしまして、二度目になりますが、労働省それから労働大臣にお伺いをいたしたいと思います。  前回は私も少々具体的にというよりも、大ざっぱにお話をさせていただきました。したがいまして、今回は、新たな裁量労働制についてのみ焦点を絞り、少々細かな議論も含まれるかもしれませんが、突っ込んだ議論をさせていただきたいと思います。  先ほど長谷川委員もおっしゃいましたが、原則として我が国の経済構造は本当にもう転換期に来ておる、そんな中で労働者が自由な選択肢を、労働の選択の幅を広げなければならないというような意味において、今回の改正について、その趣旨は非常に私そしてまた自由党も賛同するものでありますが、それが過度に労働者の権利を侵すようなものになってはいけない、その意味において、前回の質問のときにも申し上げましたが、労働省の本当に細かな取り組みといったところに非常に注目をするわけであります。したがいまして、まずその議論の基盤として、前提として現行制度についてのお話をまずお伺いしたいんです。  現行の裁量労働制、新たな方ではなくて現行の裁量労働制について、特にみなし労働時間であるとか、あるいはその業務についての目標設定といったようなものについて、どのようになされているのか、またそれをできるだけ具体的にお話をしていただきたいんですが、統計上の数字のようなものがあればお話をしていただきたいと思います。
  202. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 裁量労働制実施状況でございますが、現在の裁量労働制について見ますと、平成八年の調査でございますが、採用企業割合、これは現在の裁量労働制につきましても〇・五%と少ない状況でございますが、千人以上の規模で見ますと五・三%と、大企業ほど導入率が高い状況になっております。  また、こうした現在の裁量労働制を導入している企業での労使間でみなしている労働時間でございますが、平成四年に把握いたしました数字になりますが七時間四十四分、これは通常の大企業等の所定労働時間と同水準でみなされている、そういう状況になっております。
  203. 鶴保庸介

    鶴保庸介君 数字の上ではそれほど目をむくようなことではないのかもしれません。ですが、新たな裁量労働制については本当に問題がいろいろある、運用の仕方によっては本当にとんでもないような結果に陥らないとも限らない、その危険性を常にはらんでいるということは局長そしてまた大臣もお感じになられていることだと思います。  その問題点を私なりに分類いたしますと、大体つかみの部分といいますか、その裁量労働の対象者がどういつだものなのか、あるいはその中身、労使委員会等々その運用においての部分、そして事後的な救済措置についての部分、この三つに大体分けられるかなというふうに私は考えております。  そこで、まずその対象といいますか裁量労働が対象とするその対象業務といったようなもの、これは非常に重要な点であります。衆議院の委員会の方でも何度も何度も問われたことであろうと思いますが、例えば財務であるとか経理を担当するような部署においてその対象とし得るような業務といったようなことについて本当に具体的にお話をお伺いしたいと思います。
  204. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) この裁量労働制の対象業務でございますが、法律上、事業の重要な事項を決定する部門で企画、立案、調査及び分析の業務を事業主等から業務上の指示を受けることなしに遂行するものでございます。これらを労使委員会が具体的なセクション等を挙げて、さらに経験年数なりそういうもので具体的に特定をしなければならない仕組みでございます。  具体的な例という御指摘でございまして、財務関係で見ますと、例えばその企業のいわばファイナンスの計画を立てる、財務計画を立てる、あるいは予算の企画立案というようなものをやっていく、こういう部門でいわば企画、立案、調査、分析の業務をみずから一体のものとしてそういう作業に携わっている人、作業について、業務遂行について裁量性を十分与えられていればこれは対象業務となりますが、例えば一方、そういう部門で決算のための必要な計算をしたり、あるいは書類の作成等をする、こういった業務につきましては当然法律上も該当しない、こういうことになるわけでございます。  さらに、人事とか労務で見ますと、最近、目標管理制度等々新たな人事管理制度の導入が進んでおりますが、例えばそういった評価とか評定システムとか人事管理制度の企画立案をする、こういうことのためにいろいろな事例から具体的なそれを分析して自分の会社に当てはまる新たなシステムを企画していく、こういう方は裁量性がもちろん十分与えられている限りこの対象になる。  ただ一方で、こういった評価制度に基づいて、その対象者を選定したり、そのデータをファイルするとか、事例を作成するとか、あるいは給与計算、振り込み、各種保険に関する事務を扱うとか、こういう方は対象にならない、こういうことになってくるわけでございます。  大体そんな形で各部門ごとに私どもこの法律の趣旨に即して業務分けを行い、さらに指針におきましては、大企業等で具体的に特定できるように、いろいろなセクションあるいは職能資格制度等でどういつだランクにあるのか、そういうこともにらみながら具体的な例示を指針等ではしてまいりたいと思っておるところでございます。
  205. 鶴保庸介

    鶴保庸介君 今の御答弁をお伺いしておりますと、企画でありますとか立案でありますとか、そういう重要な業務というふうなお話であろうと思います。そうしますと、その対象業務というよりも、仕事そのものが例えばプロジェクトのチームを組んでおるような場合、複数の人間で一つのチームなりなんなりをつくってその中でやっていくというような形態が今の運用の中では非常に多いように思うんですが、そういった場合はそのチームの構成員全体が対象労働者となってしまうわけですか、お願いします。
  206. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 御指摘ありましたプロジェクト等、とりわけ最近は組織のフラット化の中でこういったプロジェクト方式というものがかなり多いわけでございますが、この点は、現行の裁量労働制についても、かねてから出している私どもの解釈でございますが、当該プロジェクトチームの長の管理のもと、あるいは各構成員が相互に調整して業務遂行、時間配分等を決めている場合、これは労働者本人には業務遂行等あるいは時間配分の裁量が事実上ない、こういうことになりますので、これは裁量労働制の対象労働者にはならないという扱いをいたしておりまして、既に私どもそういった解釈も通達で示しているところでございます。
  207. 鶴保庸介

    鶴保庸介君 明白なお答えをどうもありがとうございます。  チームとして企画立案をそういう複数の人間でやることは対象外である。そうしましたら、企画立案などといったような業務の内容を、それだけを裁量労働制の対象業務としているような、それだけを労働としているような労働者というのが現実には存在するのかというようなお話が私は疑問に思うわけであります。  例えば、企画立案業務が全体の仕事の中で何割か、そしてあとは事務的なことを併用してやるというか、今の世の中ではそういう労働者がほとんどであろう、そう考えるんですが、そういう場合もその対象の労働者というふうな当てはめがなされるのでありましょうか。
  208. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 今、先生指摘になりました事例を見ますと、例えば私ども想定していますのは、本社等の中枢部分で例えばみずから自分の会社の置かれた状況あるいは持つ製品知識等を生かしてその営業政策を企画立案していく、そういう人たちを対象として考えておるわけでございますが、企画立案を幾つかやり、しかしながら同時に具体的な営業行為を、個々の企業を回る、こういうことをやる場合、恐らくその個々の企業を回ったりすることについて、これはやはり個々の具体的な営業行為でございますので、いろいろ割り当てがあったりまた報告義務があったりいろんな形で制約を受けているのだろうと思います。一人の人間についてそのウエートを当然見なくちゃいけませんが、もしその部分のウエートがかなり高ければ、やはりこれは裁量労働の対象者にはならない。私ども、専ら全体としてその人の一日なりある期間の業務の進め方が事業主から指示を受けず本人が裁量を持って進められる、そういう立場にある人に限られるというふうに考えております。
  209. 鶴保庸介

    鶴保庸介君 ちょっと意地悪な質問をして恐縮なんですが、局長、先ほど専らとおっしゃいました。その辺について、大体どのような線引きをされておられるんでしょうか。
  210. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 今、専らという表現を使いましたが、これを今数字で申し上げることはもう少し詰めてからにさせていただければと存じますが、本社等のいわばそういう中枢部分でそういったことをしている場合に、恐らく個々の営業行為を相当のウエートで、相当と言うとこれもまた抽象的であれでございますが、恐らくその人についても、いつ帰るか帰らないか、いつまで仕上げるかとか、そういうことについて全く自由が許されていないという程度と判断できれば、これは裁量労働者の対象にならないわけでございます。それらを全国斉一的に実施するためにどのような指針、表現で書くか、あるいは通達で示すかということにつきましては、もう少し私ども時間をおかりして正確な表現等を詰めさせていただければと思っております。
  211. 鶴保庸介

    鶴保庸介君 結論的には、労使委員会の決議があって、そしてまた本人の同意等がなければならないわけですから、労働省としての運用以上にそちらの方が重要になってこようと思うんです。そうしますと、いよいよ労使委員会、その中身の部分というか運用の部分で重要になってくる幾つかの問題点があろうかと思います。  以前の答弁の中で、労使委員会における適正な議論を担保するためにはその委員の選任手続をルール化するというような答弁が衆議院の中でなされておられました。それは、具体的なルール化するというのはどういうような措置を指されてお  られるんでしょうか。
  212. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 労使委員会の機能は大変重要な役割を果たすわけでございますので、その代表委員の選任につきましては、ルール化ということで申し上げましたが、厳正な手続をつくってまいりたいと思っております。  衆議院で修正された点も含めまして申し上げますと、過半数を超える労働組合が存在する場合にはその労働組合、それから労働組合がない場合には、やはりこれも選挙等で選ばれた従業員の過半数を代表する者がそれぞれ労使委員会労働委員代表を指名してもらうと。指名した上でさらに任期を付しましてその当該事業場の労働者の過半数の信任を、これもやはり当面投票という形で信任を得なければならない、こういうふうにいたしてまいりたいと思っております。  あわせまして、労働者の過半数を代表する者、労働組合がない場合はその方が指名することになりますが、こういう方ももちろん選挙等の手続で選ばれることが必要でありますが、同時に、いわば管理監督者、例えば総務課長とか、そういった部門になるケースがあるというような御批判を受けるわけでございます。そういうものであってならないことも、これもあわせて労働基準法の施行規則で明確に規定していくというつもりでおります。
  213. 鶴保庸介

    鶴保庸介君 そうしましたら、観点を変えるというか、それから論を進めまして、不幸にしてトラブルが起こった、事故が起こったというような場合に、その事後的な労働者の側の救済の立場に立った措置についてちょっとお伺いをしたいと思うんですが、法案の三十八条の四については罰則の規定は見受けられません。どのようにこのことについて対処するのでしょうか。また、その三十八条の四についての違反が、時間外労働、三十二条であるとか三十七条であるとかいったような既存の法規範の違反ということで対処されるということであれば、少々専門的になるかもしれませんが、三十二条や三十七条の故意、三十七条違反であることに対する故意は認められても三十八条の四についての故意はないというような場合も出てくるかと思います。その辺のところについてお伺いをしたいと思います。
  214. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 一つは、この裁量労働制の例えば対象労働者の範囲等について要件に沿わない範囲を対象労働者として扱っていたと、こういうケースがあるといたしまして、こういう方についてはもちろん届け出の段階で指針等に照らして十分チェックされるわけでございますが、仮にそういう事態が発見されますと、これは当然裁量労働者としての対象としての時間管理はできないということになりまして、これはさかのぼってでも通常の時間管理の条文を適用するということになります。したがいまして、残業をさせるための三六協定を整備し、もしそれがなければその時点で労働基準法違反の問題が一つ出ます。さらに、当然、三六協定のあるなしにかかわらず割り増し賃金は払わなくてはいけない、こういうことでそれを払ってもらうと、こういう指導をし、払わなければやはり罰則等も含めた対応が出てくると。  こういうことで、三十八条の四自体には罰則は用意せず、原則に戻して割り増し賃金等も払わせた上で、悪質なケースは処罰していくと、こういう法体系になっているところでございます。
  215. 鶴保庸介

    鶴保庸介君 続けて先ほどの話ですが、既存の三十六条等違反の場合であれば故意の認定等はどうされるおつもりか、ちょっと重ねてお伺いしたいと思います。
  216. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) もちろん、刑罰を適用するに当たりまして、故意の認定というのはそれは厳正にやらなくてはいけない、個々のケースに即しては。ただ、一般的に申し上げれば、この裁量労働制、特に新たな裁量労働制は厳格なルールを設定した上で初めて使い得るものでございまして、これを事業主の側から提案し、裁量労働制を実際に使ってそれでこの法律上想定されない対象労働者入れていたということになれば、労働基準法等については十分熟知されている上で雇用管理、労務管理を行っているものと思われますので、当然そういった方を含めているということは故意があるというふうに推定されるケースがほとんどであろうと思います。  また、もしそういったことを悪質なものとして処罰していく場合には、まず監督署の方が注意をし、是正させ、悪質な場合には処罰ということの段階を踏んでいきますので、それでも直さないという場合はこれは故意というものは確実に立証されるというふうに考えておるわけです。
  217. 鶴保庸介

    鶴保庸介君 仮にそうであったとしても、基本的に個人的には三十八条の四自体に罰則がないこと自体が問題じゃないかなというふうに私は考えておるんです。  といいますのも、局長がおっしゃられたとおり、もしそういうトラブルがあった場合、そして故意が認定されたとしても、時間外労働、割り増し賃金等の規定によってそういう権利が守られるとおっしゃるんですが、三十六条違反というような場合であれば、百十五条という規定がありまして、労働者は二年分を超える割り増し賃金の支払いを受けられないことになる。つまり、こういったトラブルがあったときに、二年たってからしたというような場合は二年分が限度になってしまうというようなトラブルがあろうかと思いますが、その辺はどうお考えでいらっしゃいましょうか。
  218. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 確かに先生指摘のように、賃金債権等について時効が二年ということになっておるわけでございますが、この裁量労働制につきましては幾つかのチェックのシステムが衆議院における修正も含めて整備されました。まず、当初案にございますように、労使委員会でチェックし、届け出の出る段階で指針等との整合性を十分チェックされる、さらに定期的な報告を義務づけられている、それに基づいて事業場に臨検してでの監督指導等が計画的に実施される。  そういうことでございますので、この賃金債権についての二年という点、短いという御指摘、これも労働基準法というより全体の債権の法理の問題でございますが、そういったことにならないうちに、私どもそういう問題になる事案があれば十分発見し是正していけるように万全を期す努力をしてまいりたいと思っております。
  219. 鶴保庸介

    鶴保庸介君 少々議論が前後するかもしれません。前提としてこの話を先にした方がよかったのかもしれませんが、先ほど局長がおっしゃられたとおり労使委員会の決議内容を使用者側が実行しなかったような場合、この場合やはり私法上の効力についての法的な効果というのは、今までのほかの論点で言われたとおり原則としてその法的効果に影響はないというお考えですか。
  220. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) もし御質問の趣旨を取り違えていたら御容赦願いたいと思いますが、労使委員会でもし誤った内容の定めをして決議をして裁量労働制運用していた場合ということでございますが、やはりそういったものが幾つかの段階のチェックで判明すれば、当然、対象労働者等の範囲について間違っていたというようなケースはもちろんでございますが、裁量労働制の適用ではないということになりますので、これは時効等に照らしてさかのぼれる限りは事業主は割り増し賃金等の支払い義務が当然出てくる形になります。もちろん、逆に、実際は裁量制でございますので、早く帰っちゃっているというような形でございますけれども、そういったケースにつきましては、これはもう所定の賃金を払えばいい、こういうことでございますので、労働者の方にはその影響がない形になります。
  221. 鶴保庸介

    鶴保庸介君 そうしましたら、ちょっと私もこの点については間違っていたらあれなんですが、労使委員会の裁量労働制であるかどうかの認定についての誤りがあった場合というのはよくわかるんですが、衆議院の方からの修正案の修正の中で不利益取り扱いの禁止ということが労使委員会の決議の内容にある。これに違反したような場合、例えば不同意、同意を求めて同意しなかったから解雇されちゃったというような場合は、労働者としてはどういった闘い方というか救済の方法があるんでしょうか。
  222. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 新たに、同意し、不利益取り扱いをしてはならない、こういうことを労使間で決議して守っていくべきこととして定めるわけでございますので、もし不利益取り扱いがあったと、こういうことになりますと、決議に違反するものとしてその不利益取り扱いについては十分争い得る対象になるわけでございます。  争う道としては二つあろうかと存じますが、広く言えば三つあるかもしれません。それは、事実上、労使委員会を通じてそういった事案の発生について事業主側と折衝する。そういうことを通じてもしそういった問題が解決されない限り、有効期間は一年ということにいたしておりますし、裁量労働制の次の同意は全体としてとれない、こういうこともございます。さらには、裁判等で争うことも可能でございますし、私ども今度新たに、法案を成立させていただければ十月一日から実施いたします個別の民事的な紛争の処理システムの中では、そういった事案についても、当事者の求めがあれば、それを受けとめ、適切な助言や指導によって解決を促していく道もあろうかと存じております。
  223. 鶴保庸介

    鶴保庸介君 その私法上の効力についてのお話をちょっとお伺いしたがったんです。  今の話は少々議論の整理が足らなかったかなと思いますが、例えば届け出だけがなされていないような場合というのは、労働基準法違反ということはともかく、私法的には、就業規則等も整備されておりますし、そしてまた届け出の遅延ということは軽微な瑕疵であるというようなことから、私法上の効力については否定しないというようなことになる可能性もあると思うんです。  そのことを踏まえて先ほどのお話を聞きたかったんですが、まずこのことについていかがでしょうか。
  224. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 裁量労働制実施に当たりましては、労使委員会をつくった段階での届け出、それから全会一致で対象者の範囲その他を決めた際の届け出、二つの届け出が必要でございます。これは法律の条文上、その企業が裁量労働制を使うためのいわば効力発生要件としての届け出になっております。  したがいまして、届け出をしない場合には労働基準法上軽微なものとしては処理されずに、実際に行っていた裁量労働制そのものが無効になる。したがいまして、また三六協定、割り増し賃金という原則の世界で対応していただくことになる、こういう仕組みになっております。
  225. 鶴保庸介

    鶴保庸介君 わかりました。その事後救済についてのお話をもう少しお伺いしたがったんですが、少々時間が足らなくなってきてしまいました。  新たな裁量労働制について、私は労働者の救済ということに物すごくこだわるんです。例えばこの中で、一項五号に苦情の処理というようなお話があります。苦情を労使委員会に寄せた場合、労使委員会にはそれを議決する、「苦情の処理に関する措置を当該決議で定めるところにより使用者が講ずること。」と書いてありますけれども、それに対して具体的に労使委員会は対処する力というのはそもそもないはずですよね。だからこの場合、具体的に苦情処理を申し立てても、実際上はほとんど労働者の救済措置として意味がないんじゃないかというようなおそれがあるんですが、その辺についてどうお考えでしょうか。
  226. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 苦情処理の仕組みを労使間で決議して設置していることをやはり裁量労働制の効力の発生要件として義務づけておるわけでございます。  この苦情処理の機構が設けられてそこへ何らかの裁量労働制に関する苦情が申し入れられてくる、これは私ども定期報告でもどういつだ問題があるかということは把握するようにいたしますが、労使委員会労働側代表委員はそういった苦情の内容等については情報等も当然開示を請求できるわけでございますので、この裁量労働制の決議の有効期間が一年であること等を考えれば、そこに寄せられた苦情処理が非常に今後裁量労働制を継続していくについて労働側から問題があるということであれば、いわば労働側が全員一致で合意して裁量労働制を継続して実施するということは大変難しいことに相なろうかと思います。  そういった意味で、苦情処理ということを設けておりますのも、この裁量労働制に関連して周辺の労働条件が適正に守られていくように、いわば牽制体制の一種としての効果もあろうかというふうに思っておるわけでございます。
  227. 鶴保庸介

    鶴保庸介君 局長のお答えでほとんど答えはわかりましたが、最後に大臣に同じこと、苦情処理が形式的に行われたことをもって、言ってみれば、使用者側がこの問題はもう解決が済んでいるというようなことで、かえって労働基準監督機関が介入できなくなる、介入しないがための隠れみのに使われるというようなおそれがあろうかと思います。行政として、その辺についてちょっと一言、最後の決意的なものですが、お願いをいたしたいと思います。
  228. 甘利明

    国務大臣甘利明君) この裁量労働制を行っていく大前提として労使委員会がありまして、そこで全会一致で決議をする、そして、その対象労働者自身が承諾をしない限りその者を裁量労働制の対象労働者とすることはできないということが大前提であります。  いろいろ委員が御心配な点は、要約すると、労働者が使用者側に何となく丸め込まれてしまった、よくわからないうちに自分の意思と反するようなことで進んでいっちゃったと。そういう場合はむしろそれが逆に隠れみのになってしまわないかという御心配だと思いますが、あくまでも本人が本当に了解をするということが前提でありますから、それがないのにそういうことを進めていったら明らかなこれは法違反でありますから、厳正に対処をしていくということでございます。
  229. 鶴保庸介

    鶴保庸介君 ありがとうございました。
  230. 高橋紀世子

    高橋紀世子君 私、このたび無所属議員として参議院のお仲間に入れていただきました高橋紀世子でございます。  無所属でしたものですから、この労働社会政策委員という非常に重い任務を、私自身が選ぶというよりもそういう任命をいただきまして、入ってみますと本当に実力不足ですし、また、きょう質問をさせていただくというのは少々おこがましいとは思っておりますけれども、あえて挑戦した次第です。質問が稚拙だったり、また何度も皆さんからもう出尽くした質問だったりして大変お聞き苦しい点はあるかと思いますが、お許しください。  今申し上げたように、やはり労働社会政策というのは日本の国のこれからの行方を担っていくような大きな役目を担っていると思います。私自身、大変緊張しております。そして、きょうは、今回の労働基準法改正に当たりまして、深夜労働のこととか時間外・休日労働のこととか、変形労働のこととか、それに関連した質問を少しさせていただきます。  といいますのも、私自身、子育てをいたしました生活者として、子供たちを健全に育てるにはどうしても親との触れ合いが大切ですし、子供が自我の目覚めから思春期を迎える時期にできれば触れ合いの時間が多いほど、多いほどという言い方はおかしいかもしれませんが、触れ合いの時間が大変大事だと思いますし、青少年の精神的安定が健全な成長につながっていくと確信しております。  今、青少年の非行のこと、それから自殺のこと、いじめのこと、いろいろな問題がありますけれども、とにかく日本が新しい次の時代に向かって扉を開くためには、何としてでも若い人たちが健全に育つような社会にしていかなければいけないと思いますし、その意味から私は今度の労働基準法改正について大変意義深い改正だとして質問させていただきます。  まず、深夜業の免除ができる労働者、つまり家族的責任を有するワーカーの方たちが小学校に入学するまでの時期のお子さんを持つ労働者だけに限られているというふうに聞いておりますし、それについては、やはり私が先ほど申し上げたように、子供と親との接触時間は小学校だけではなく思春期を迎えるまで、できればドイツのように十二歳、もっと欲を言えば中学校を卒業するぐらいまで深夜労働の制限を要求できる、免除させていただけるような制度にしてはいかがかと思うんですけれども、その点について少し御意見を伺わせていただきたいと思います。
  231. 藤井龍子

    政府委員(藤井龍子君) お尋ねの深夜業の制限の措置でございますが、これは育児・介護休業法第十六条の二及び第十六条の三に定めてあるものでございます。これは、昨年、雇用機会均等法、労働基準法、それから育児・介護休業法と一括して改正をされたときに初めて盛り込まれた規定でございます。  これは、均等法等に定めてございました深夜勤務等の女子保護規定が解消されるということに伴いまして、現実に深夜に子供さんを見る人がいないとか、あるいは介護が必要な家族の方の世話をする人がいなくなるというようなケースが出てくる場合への対応として、こういう措置が不可欠な労働者に対して請求権ということで大変強い権利として定められているものでございます。  したがいまして、この権利が付与される条件といいますか、対象者あるいは請求できる期間などにつきましては、そういう不可欠な労働者に対して大変強い権利を認めるということから、法律では最低限保障すべき範囲を規定することが適当であるということでそういう定めをしているものでございます。  そういう観点から、子供の養育ということにつきましては育児・介護休業法に、一歳に満たない子を養育する労働者には育児・介護休業制度というのが権利として付与されるわけでございますが、一歳を超えてからも育児・介護休業制度あるいは勤務時間短縮等の措置に準じた措置を講じていただきたいと事業主努力義務規定を設けておりますが、この努力義務を課しているのが「小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者」ということになっておりますので、そういう法体系の中で小学校就学の始期に達するまでの子という形にさせていただいているということでございます。  さらに、御議論の中では、一般的には子供が学齢に達するころにはかなりしっかりしてまいりますし、育児負担等も相当軽減されるということも考えられるということで今のような規定になっているところでございます。
  232. 高橋紀世子

    高橋紀世子君 ありがとうございました。  私の思いは、やはり心のケアが大切、そういうことをかんがみますと、できれば中学、小学校を卒業するか、そこまでは母親が夜の就業につかなくてもいいような、そんな措置がとられればいいと思います。  次に、深夜業の適正についてお尋ねいたします。  深夜業に関しては、衆議院で修正が行われ、国は深夜業に関する労使の自主的な努力を促進することとされました。しかしながら、深夜業については極力その抑制を図っていくべきだと考えます。つまり、深夜労働の回数制限、上限時間の設定、勤務と勤務との間の休息時間などを労働基準法の条文にしっかりと明記すべきだと思います。この点についてどう考えられますでしょうか。
  233. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 深夜業の回数制限等を明らかにして法律上の措置として規制してはどうかという御指摘かと存じます。  深夜業につきましては、我が国の産業活動の中で、輸出産業等におきます交代制の深夜業、また金融機関等の世界の市場を見ながらの深夜業、あるいは豆腐やお総菜をつくるためで賞味期間というような関係もあって朝スーパーへ出していくための深夜業、それからコンビニやそういった部分の深夜業、たくさんいろんなパターンの深夜業がございます。さらに、自動車運転手の方の問題等も深夜業の問題として入ってまいります。  そういった状況がございますので、この深夜労働の回数、例えば運転手の方ですと、特に回数よりも深夜業と深夜業の間の休息時間みたいなものがまず問題になる、そういった分野もございます。どういつだ形でもし我々対応していくかということは、業種ごとにかなり詰めて考えなければならないのではないかと思っております。  衆議院の方で附帯決議を受けまして、まず、自主的にガイドラインの策定のために労使をテーブルに着けるようなことを早急にやれと、こういう御指摘もいただいております。恐らく、その中ではそれぞれの業種が深夜業を抑制していくためにどういうところをポイントとしているかはっきりしてくるかと存じます。そういうものも見ながら、並行して私ども過度の深夜業を抑制するためにどのような方策がとり得るか引き続き検討をさせていただきたいと思っておるところでございます。
  234. 高橋紀世子

    高橋紀世子君 ありがとうございました。引き続き御検討いただきたいと思います。.  次に、時間外労働の抑制についてお尋ねいたします。  労働大臣が定める基準で、年間の時間外労働上限時間の水準を三百六十時間以内にすることを衆議院の審議で労働大臣答弁していらっしゃいますが、一年変形労働時間制の場合には、ある時期に過度な労働をせざるを得なくなる場合が生じると思います。一時期に過度な労働をすれば精神的にもストレスがたまりますし、そのような時期には労働時間の限度を設けるべきだと考えます。一日とか一週等の労働時間の基準、上限時間を中央審議会の意見を聞いて定めるだけではなく、国会の場で明らかにしてはどうかと思います。
  235. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 一年単位で年間を通して労働時間管理をしていくという場合には、業務の繁忙時期には一日や一週の労働時間を延ばして、そのかわり休日等をふやしていく、こういう仕組みにいたしております。ただ、一日や一週の時間をもちろん無制限には延ばすことはできないわけでございます。また、今回、休日等の設置を義務づけ、また限度時間を延ばす際には休日を同時にふやさなければならない、こういうことも設定いたしまして、一日については例えば今までの九時間を十時間にというようなことを提案させていただいているわけでございます。  私ども、こういった限度時間につきましては、これは明確に労働基準法の施行規則で明らかにし、遵守させてまいりたいと思います。同時に、こういった限度時間いっぱいで働くという期間がいたずらに長くならないように、規制もあわせて基準法の施行規則でいたしたいと思っております。  さらに、そういう部分につきまして、時間外労働を上乗せしてさらに長期になるということは極力抑えられるように、時間外労働上限基準もそういう場合には一般の企業よりは短くして、先生指摘のように実際の労働時間がいわば問題となるような水準に至らないように、我々十分配慮して措置をしていきたいと思っております。
  236. 高橋紀世子

    高橋紀世子君 なおまたその点について御配慮いただければと思います。  次は、時間外労働に関してお尋ねいたします。  労働大臣の定める上限時間三百六十時間以内は、現行の目安時間年三百六十時間を参考にしたお答えであろうと考えられます。現行の目安時間は三百六十時間、年単位の協定について定めたものではありますが、例えば月四十時間の時間外協定を十二回更新すればトータルで四百八十時間、月が四十時間ですから掛ける十二で四百八十時間となりますし、あるいは週八時間の時間外協定を五十二回更新すればトータル四百十六時間になってしまいます。  このような形で何回も協定を繰り返すような場合はどう理解すればよいのでしょうか。いかなる協定があっても年当たりの総時間は上限基準を超えてはならないようにした方がいいような気もしますが、いかがでしょうか、局長にお尋ねします。
  237. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 御指摘ございました時間外労働の今までの目安として用いていた三百六十時間というもの、上限時間の設定を決める際に十分それを参考とし、その後の状況に応じて見直すべきことを衆議院の段階でも労働大臣から答弁を申し上げております。  ただ、これは年間単位での問題でございますので、週とか月単位で短い期間でも同時に水準も決めるわけでございますが、週単位で決めるような場合には、あるいは月単位で決めるときの方がわかりやすいかもしれませんが、確かに御指摘のように現在のところ単純に十二で割ったものが月の上限基準にはなっておりません。これをどのようにしていくかというのは、さらに具体的な検討をしたいと思いますが、ただ、私どもは、そういった月単位のものを決める際には、年単位で三百六十以内の三六協定もあわせて結ぶように監督署の窓口で指導をいたしております。こうした考え方は、新たな上限基準を定めるに当たりましても引き継いでいきたいと思っております。
  238. 高橋紀世子

    高橋紀世子君 総労働時間千八百時間を達成する、そのことについてちょっと伺います。  休日労働について回数を規制してはどうかという提案がありますが、最低でも指針に盛り込み、法律上の根拠を設けてはどうかと思うんですが、先ほどこの質問も出ましたけれども、お伺いします。
  239. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 休日労働につきましては、実際、時間外労働をしている事業所というのは統計上六割ぐらいあるわけでございますが、休日労働をさせている事業所というのは全体の一割ぐらいと、その差が非常に大きいわけでございます。  ただ、それだけに、時間外を減らすけれども休日労働等にしわ寄せが行かないように十分配慮しなくてはいかぬとは思っておりますが、衆議院の段階でも、こういったものについてガイドラインを設定する、そういうことを含めて適正な措置について中央労働基準審議会で検討をするようにという附帯決議をちょうだいいたしました。私ども、そういったものに沿って検討を進めたいと思いますし、新たな上限基準を来年の四月から始める際にも、そのしわ寄せが休日労働等に行かないように十分指導するよう地方労働基準監督署にも徹底をさせてまいりたいと思っております。
  240. 高橋紀世子

    高橋紀世子君 ありがとうございました。  次に、家庭的な責任を有する女性労働者に対する激変緩和措置について、衆議院の修正で時間外労働の免除を請求することができる制度が設けられましたが、激変緩和措置の水準百五十時間との連続性を考慮して定めるとされています。  ここで言う免除請求とは、百五十時間を超える場合に請求できると理解すべきなのでしょうか。それとも、時間外労働そのものの免除を請求できると考えていいのでしょうか。こういった観点についてどのように考えていらっしゃるか、お尋ねしたいと思います。
  241. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 衆議院で修正のありました点も含めてお答え申し上げますと、衆議院の修正の結果、検討して必要な措置を講ずべしとされましたのは、時間外労働が長時間にわたる場合の免除の請求に関する制度について検討し、必要な措置を講ずるというふうにされたところでございます。したがいまして、一定時間を超えたら免除を請求できる権利をどうつくるかというテーマであるというふうに受けとめております。  ただ、あわせまして激変緩和措置のいわば上限基準の水準、これとの連続性に配慮するように附帯決議で御指摘を受けております。したがいまして、年間でいえば激変緩和措置は百五十時間というのが水準になりますので、そこからそう乖離しないということを念頭に置いて免除請求権のあり方について検討をすることになろうかと思います。  そういったことを基本にして、具体的なことにつきましては、これから激変緩和措置が終わるまでの間に十分また真剣に詰めさせていただければと、また改めて御提案を申し上げさせていただくことになろうかと思っております。
  242. 高橋紀世子

    高橋紀世子君 今後ともよろしくお願いします。  労働基準法施行規則第十二条の六は、変形労働時間制のもとで「労働者労働させる場合には、育児を行う者、老人等の介護を行う者、職業訓練又は教育を受ける者その他特別の配慮を要する者については、これらの者が育児等に必要な時間を確保できるような配慮をするように努めなければならない。」として使用者の配慮義務を規定しています。前に述べましたように、家族的責任や働きながら学ぶことは時代がますます求めていると思います。  そこで、これを労働基準法の中に規定することについてお考えいただけないでしょうか。これに対し衆議院での政府答弁は、コンセンサスができていないとのことでした。どういう条件が整備されればできるのでしょうか。
  243. 伊藤庄平

    政府委員伊藤庄平君) 現在、一年単位の変形労働制を利用する事業主に対しては、御指摘のように、育児、介護等を行う方あるいは教育等勉強なさっている方についての時間確保についての配慮義務が定められておるわけでございます。  これを労働基準法上の義務としてという御指摘かと存じますが、例えば妊産婦の方について母性保護を目的として請求があれば、一日八時間、一週間四十時間、これを変形制のもとでもそういった形でやっていけるような制度もございますけれども、それと同じような形になっていくわけでございます。  この点につきましては、コンセンサスがという答弁があったということでございますが、変形労働時間制の場合、その事業事業所でどういうふうに設計するかは違うんですが、忙しいときにある程度所定労働時間が延びていても暇なときに休みを多くしたり短くしたりしている。そういうときに介護を兄弟とかわるとか、いろんなパターンがあり得る。また、学校に行っている方もスターリングや何かの際に、そういったときに休みを集中するとか、いろんなことが個人個人の事情によって、本人のそういった育児や介護等の関係で、いわば両立にとっては変形制がマイナスに働く場合とプラスに働く場合があるわけでございます。  そういった点について十分関係者間の御意見等を、実は今回の改正審議の中でも、そういった点について正直審議会では検討テーマではなかったわけでございます。若干お時間をおかりしながら、そういった点について関係者がどのように受けとめ、どういう考えを持っているかについては、また審議会の開催に当たりましてそういったことの意見を聞いてみるとか、そういうことにつきましてはまずやってみたいと思っております。
  244. 高橋紀世子

    高橋紀世子君 ありがとうございました。  最後に、労働大臣にお尋ねします。  ことしの厚生白書は、子供を産み育てる夢を持てる社会をつくることを呼びかけ、特に我が国の職場優先の企業風土の是正を強調しています。労働者の豊かで人間らしい生活、社会を真につくるためのものとなるような、今回の労働基準法改正がそんなような夢を育てるようになってほしいと思います。その意味で、大臣から一言お伺いします。
  245. 甘利明

    国務大臣甘利明君) まず、質問と直接関係のないことでありますが、私の父親が昭和四十六年に衆議院議員に挑戦しましたときに三木派でさせていただきました。当時、総理でいらっしゃったと思いましたが、パンフレット用の写真を撮りますので、私が運転しておやじを乗せて南平台の御私邸に伺いまして、写真を撮らせていただきました。今その大きいパネルを私の選挙区の事務所の応接間に飾らせていただいておりまして、ぜひ頑張っていただきたいと思います。  にもかかわらず、かわりばえのしない答弁で恐縮なのでありますが、少子化というのは大変深刻な問題でありまして、女性が社会参加をするのに子供を産み育てるのが都合が悪いという状況を解消しなきゃならない、男女とも同じ責任を有して同じ自分の自己実現を図れる社会にしなくちゃならないということは御指摘のとおりでございまして、そのためにいろいろと育児をしながら仕事を持てるような環境整備をしているわけであります。  今回の改正の中にも時間外労働上限の基準の具体化とか、今後の検討すべき課題とされた一定時間を超える時間外労働の免除制度についても、こういう方向に沿うものとなるように努力をしていかなきゃならないというふうに思っております。  私の家内自身が仕事を持っておりますものでありますから、仕事を持ちながら子供を産み育てるということの大変さはよく承知をしておりますので、その経験も踏まえて取り組んでいきたいというふうに思っております。
  246. 高橋紀世子

    高橋紀世子君 ありがとうございました。  これで質問を終わります。
  247. 吉岡吉典

    委員長吉岡吉典君) 本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後四時三十五分散会