○角田義一君 私は、ただいま
議題となりました
民主党・
新緑風会、
公明及び
自由党の各会派共同提案に係る
防衛庁長官額賀福志郎君
問責決議案につきまして、
発議者を代表し提案いたします。
まず、
問責決議案の案文及び
理由を朗読いたします。
防衛庁長官額賀福志郎君
問責決議案
本院は、
防衛庁長官額賀福志郎君を問責する。
右決議する。
理由
一、
防衛庁長官は、
我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つことを目的として各自衛隊を管理し、運営し、これに関する事務を行うことを任務とする
防衛庁の最高
責任者である。しかるに、額賀福志郎
防衛庁長官は、就任以来、このたびの一連の
防衛庁の不祥事に当たって、適時・適切に指導力を発揮することなく、三たびにわたる
防衛庁の家宅捜索を受け、国政に対する
国民の著しい不信を招き、ひいては
我が国に対する国際的信用を失墜させた
責任は極めて重大である。
二、額賀福志郎
防衛庁長官は、就任以来、不祥事に関する
防衛庁内部の
調査を、「自浄能力の発揮」と称して一貫して官僚組織任せにし、
政治家の
立場からみずから
調査に当たることなく、事実の解明に主体的・能動的に取り組んだ形跡がうかがえない。
防衛庁が、いわば組織ぐるみで引き起こした事件である
可能性が極めて濃厚である以上、当該組織に事件の
調査を委ねても、
国民が期待する事実解明がなされないであろうことは火を見るよりも明らかである。そうであるにもかかわらず、積極的に行動しようとしない額賀福志郎
防衛庁長官は、
国民の期待に応えるべき国務
大臣として不適格である。
三、額賀福志郎
防衛庁長官は、
国会において幾度となく、「みずからをむなしくし、私情を挟まないできっちりとした対応をしていくことによって
信頼関係の構築に寄与していきたい」とか、「カメのごとく正確に確実に目標に到達するという考えでやっていきたい」とか、ひたすら抽象的な
発言を繰り返すだけである。そこには事件解明に向けた積極果敢な取り組みの姿勢がみじんも感じられないばかりか、結果的に
国会に十分な
情報を提供せず、
国民の「知る権利」を著しく侵害している。これは
国会軽視であり、
国民を裏切る背信行為であると断ぜざるを得ない。十月十四日にようやく公表された「四社事案関連文書の管理
実態に関する
中間報告」なるものも、到底
国民の納得が得られる代物ではない。
四、
我が国の
財政事情が極めて厳しい
状況にある今日、一切の無駄は許されない。それにもかかわらず、
防衛庁が装備品の調達に関して何十億円、あるいは何百億円にのぼるかもしれない、払わなくてもよい
国民の
血税を無駄に払い、国に損害を与えたことは極めて重大である。たとえ、事実の発生が額賀福志郎
防衛庁長官の就任前のことであったにしても、
防衛庁の最高
責任者としての監督
責任、道義的
責任、結果
責任が問われるのは当然である。今回の一連の不祥事にかんがみ、額賀福志郎
防衛庁長官は出処進退を明確にし、みずからけじめをつけるべきことが、
国民に対する
責任を全うする唯一の方法であることを知るべきである。
これが、本決議案を提出する
理由である。
以上が本
問責決議案の案文及び
理由であります。
次に、提案の
趣旨を三点に絞って簡明に御
説明申し上げます。(「もういい」「まだあるのか」と呼ぶ者あり、その他
発言する者多し)もちろんあります。
まず第一は、防衛
産業による膨大な過大請求額と、その事実をひた隠しにした
防衛庁の体質についてであります。
過大請求に関する
情報は、既に今から五年前の一九九三年五月に、
日本工機にかかわる分が調達実施本部にもたらされ、九月には返還されたのであります。その後、翌九四年三月には東洋通信機の過大請求が、また、その翌年、九五年五月には藤倉航装とニコー電子の過大請求が相次いで判明し、それぞれ返還させたのであります。
このように九三年、九四年、九五年と毎年、防衛
産業四社の過大請求が判明し、払い過ぎ分の返還が繰り返されていたのでありますが、これが一般に知るところとなったのは昨年九月の新聞報道によってであります。この間、
防衛庁はこの事実をみずから進んで公表せず、隠し通してきた
責任は重大であります。
ちなみに、
平成八年度における調達実施本部の原価計算方式による予定価格算定実績は、一兆一千五百七億円でありました。これだけの
金額が防衛
産業に流れたのであります。過大請求額は、今日まで明らかにされた資料から推定すれば、その一割、千百五十億円が
企業に余計に支払われているかもしれないのであります。
国民は決してこれを許しません。
冷戦が終結してから十年、世界は軍備拡張の時代から軍備縮小の時代へと移行しました。加えて、
我が国の国家
財政が逼迫している折、
国民の
血税を浪費することは許されないのであります。防衛装備品の調達額に過大請求額が含まれているとするなら、これを直ちに防衛費から減額するのが筋であります。過大請求を常態化させた
防衛庁の
責任が厳しく問われるべきであります。
第二に、事もあろうに、過大請求の返還額を圧縮してやるかわりに天下りなどを要求していた事実、そして原価計算のずさんさについてであります。
過大請求が表面化した直後、調達実施本部は原価差異事案
対策検討
委員会を設置し、対応に腐心したわけでありますが、その後、返還額を圧縮していた事実が発覚、東京地検が捜査を開始するに至るのであります。そして伝えられる、余りの内容に
国民のだれしもが唖然とさせられたのであります。
企業側に返還額を圧縮してやるかわりに天下りを求める、実質的に金銭的な対価を求めるといったことが、半ば常態化していたことを知らされたからであります。
さらに、
防衛庁は、本年七月十四日、「東通事案に対する現時点での
評価について」と題する上申書を東京地検に提出しております。その上申書では、東洋通信機による過大請求額からの返還額を八億七千万円に圧縮したことについて、現時点でこれにかわる原価差異の算定を行うことは困難であるとし、
防衛庁みずからの圧縮
処理を正当化したのであります。しかし、逮捕されていた
関係者が起訴されたことを受けて、
防衛庁は、九月二十五日になって、従来からの返還
金額算定の考え方は誤りであったことを認め、上申書は適切でなかった、配慮に欠けていた、間違っていた、撤回すると方向転換をしたのであります。
これは極めて重大なことであります。いやしくも、当時
防衛庁が調達契約の考え方についての粋を集め、
防衛庁としての見解をまとめて検察庁に提出した上申書、七月三十日に就任した
額賀防衛庁長官も承知している上申書の内容が、検察庁によって事実上否定されたことによって、
防衛庁として撤回せざるを得なかった。この重みを
防衛庁の最高
責任者は重大に受けとめるべきであります。これは一
防衛庁だけの問題にとどまらない、内閣全体の問題でもあることを特に強く指摘しておきます。
第三は、過大請求や返還額の圧縮等にかかわる資料を破棄するなどの証拠隠滅工作が、組織的に行われていたことについてであります。
これまで三回にわたり、
防衛庁は
関係書類を隠したり廃棄したりしたのであります。
額賀防衛庁長官になってからも一回、証拠隠滅工作が行われていたのであります。
国民の生命、身体、財産を防衛すべき
防衛庁が組織を挙げてみずからの防衛に奔走する、一体この役所はどうなっておるのか。まさに
防衛庁による組織ぐるみの犯罪であり、あいた口がふさがらないとはこのことであります。
しかも、恐れ入ったことに、
防衛庁は九月十二日、証拠隠滅の報道を受けて事実
関係の解明のため、
長官官房長を
委員長とする
調査委員会を設置したのでありますが、当の官房長みずからが
防衛庁に第一回目の家宅捜索が入った九月三日の直前に
関係書類を自宅に持ち帰り、その一部を廃棄していたことが明らかになったのであります。
防衛庁は、慌てて九月十六日、
調査委員会の
委員長を官房長から事務次官にかえたのでありますが、これによって本質的に何が変わったと言えるのでしょうか。証拠隠滅にかかわった人物をその事実
関係究明の
委員長に据える組織など、どこにもありません。非常識きわまりないことであります。また、後任に同じ組織の事務次官を充てたところで、期待される事実解明がなされるのか、甚だ疑問であります。
案の定、十月十四日に公表された
調査委員会の
中間報告なるものは、無味乾燥、無
責任、不誠実この上ないものであります。
額賀防衛庁長官みずからが九月末までには提出すると言っておきながら、提出はおくれにおくれ、我々の厳しい追及によって提出に至ったのでありますが、その内容たるや、現時点では関連資料を組織的かつ大量に焼却した事実及び焼却するよう指示した事実は確認できていないという、全く常識的には考えられない、あきれるばかりのものであります。どうして
長官みずからが査問し、
調査の任に当たらないのか。
長官は事の重大性を
本当に認識しているのか。国務
大臣としての
責任感がどうしても感じられないのであります。
以上が提案の
趣旨でありますが、私は、今回の一連の事件を考えるに当たって、最後に次のことを指摘しておきたい。
二十世紀の最後を迎えたこの時期、
我が国は未曾有の
経済、
財政危機の真っただ中にあります。
政府・
自民党のたび重なる政策的失敗により、国家
財政は逼迫し、
経済は混迷の度をますます深め、景気は一向に回復の兆しを見せておりません。決して少なくない数の人々が、ある日突然、頼みとするみずからの会社の
倒産を知らされ、あるいはリストラに遭い、新たな就職先もないまま、最愛の家族を抱えて、いかんともしがたく、路頭に迷っているのであります。
あすの
生活への不安、これほど人の尊厳を傷つけ、否定するものはありません。
政治とは、こうした
国民の不安を取り除き、
国民の生命と身体、そして財産を守ることであります。それこそが
政治に課せられた最大の責務であり、
国民から選ばれた我々
政治家の務めであります。
しかるに、今の内閣、特に
防衛庁のこのていたらくは何たることか。国家が未曾有の
危機に陥っているのに、
国民がもがき苦しんでいるというのに、
国民を守るどころか、
国民の血と汗と涙の結晶である
税金をむだに使う。そしてそのことが明らかになるや事実をひたすら隠そうとする。こうした
国民無視、
国民不在、
国民を冒涜した行為が許されてよいのか。我が
日本はこんな国家であってよいのか、こんなことで我が
日本に二十一世紀を開く展望はあるのか。深く憂慮するのは決して私一人ではありません。多くの人が憂えており、憤っておるのであります。
政治が今直ちになすべきことは何か、それは改めて言うまでもなく、
国民の
信頼を回復することであり、
政治の
責任を明確にすることであります。我々が一致して、
額賀防衛庁長官を問責するゆえんは、まさに、この一点にあるのであります。
何とぞ、本決議案に対して、皆様方の御賛同を賜りますよう心から訴え、演説を終わります。
御清聴ありがとうございました。(
拍手)
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