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参考人(
吾妻實君) 日ごろ
国有林問題について御高配を賜っていることに対しまして、心から御礼を申し上げたいと思います。
私のきょうの発言は、現場に勤務している
方々を代表しまして
意見を申し上げたいと思っております。
私たちは、一九七八年以来、二十年後のバラ色の
国有林ということを夢見ながら、よりよい直営、厳格かつ効率的な
民間実行の推進に向け、当時は労使対決の時代でありましたけれ
ども、その後、労使協調、労使一体の路線でこの
改革の推進に全力を挙げてまいりました。この間、私たちにとっては大変厳しく、また苦しい体験の連続でございましたけれ
ども、その中から私はこの
改革案に、一律全面
民間実行という問題に対しまして
意見を申し上げさせていただきたいと思います。
先生方には資料として御配付をいただいているものと思いますが、別紙一のとおり、五十三年の出発当時に林業
事業体の育成・
整備方針が抜粋で提示をされてありますので、この内容は省略をいたします。
しかし、その結果、林業、林産業全般の不況あるいは不振が続くと同時に、林業
事業体における労働力や処遇改善問題は遅々として進みませんでした。そのことは、資料二の数値でおわかりのとおり、毎年毎年定型的に就労者が減少し、昭和三十年代の数値から見ますと既に四分の一に削減をされ、五十歳以上が七一%にまで達しているという実情にあります。
事業体側も機械化や近代化など高性能機械の導入を進められてきまして、その結果、
事業は計画的に資料三のとおりの実績を示しております。
しかし、この中で私は二つの問題について申し述べたいと思っております。
その第一の問題は何かといいますと、
事業体の
事業規模は他の産業の
事業規模に比較しまして非常に零細であり、中小レベルの
企業が非常に多うございまして、災害の発生は群を抜いております。
国有林と比較しましても二ないし三倍、あるいは
民間の中小レベルの
企業と比較した場合には度数率では五倍から七倍という実績を示し、資料四のとおり、賃金に至っては、建設産業から昭和五十九年に逆転をされて以降、今日までその幅は縮小されておらないというのが第一の問題意識でございます。
二つ目の問題点は何かというと、いわゆる
民間実行による
森林施業管理がとかく効率性あるいは能率性優先で行われるがためにたまたま
森林の
荒廃がついて回るという事例が、地元住民から幾つかそういう問題を提起されていることでありまして、いわゆるその
責任施行、
責任のある山づくりに対して私
どもは心を痛めざるを得ないというのが実情であります。
このように、二十年経過してみても、別紙一のいわゆる改善
方針にはまだほど遠いという現状からしますと、このままの
状態で、この反省もないまますべてを一括全面
民間実行だというのは余りにも度がひどいのではないかということであり、
国民の理解は得られにくいのではないかというのが私の率直な気持ちであります。
まして今日、公益性や自然環境保全が重要視される時代からしますと、自然条件を無視し、他の産業同様な
考え方の効率性の尺度で論ずるのには無理があります。
経営の長期性に即し、技術に裏づけされた
事業実行、官と民の役割分担は避けることはできないものであろうというふうに
考えております。
したがいまして、私は今さら現場の作業をすべて直営でやれなどということを申し上げるつもりもありませんし、そうした
考えは持っておりませんが、
民間実行く移すということであれば少なくとも流域管理システムに留意をされて、地域の労務事情、
事業体の育成・
整備状況、年度ごとの
責任ある実行のあり方、問題などをその都度検証し、実態に即して
経営の柔軟性、判断の余地をぜひ残していただくようにお願いをしておきたいと
考えております。
二つ目の問題は何かといいますと、いわゆる大規模な要員削減を中心とした一大リストラ計画が行われたにもかかわらず、
債務はそれに反比例をして拡大してきていること、そしてまた
森林の
荒廃が進んでいることに対しまして、率直に私はやるせない思い、あるいは職場の中には糸車の中のハツカネズミ同然ではないかという批判やあきらめ感が蔓延化しつつあります。
赤字だから、
債務処理のためのリストラだからといって、過去四度にわたって見直しを行い、その中心はすべて要員削減でありました。
〔
理事成瀬守重君退席、
委員長着席〕
この結果、
森林の不備とあわせて、先ほど申し上げたように
債務は逆に反比例をし、今や
国有林の
経営は破綻
状態、解体直前に追い込まれているという反省を持たないまま現行を改めて、
改革案でさらにリストラをやるということには大きな疑念を持っております。
経営の長期性あるいは自然環境条件、そして今なお公益性を重視すべきだという産業の特異性からして、独立採算制のもとで経済・景気動向を無視し、
林産物などの
自己収入を
確保するためにさらに過伐を強いたり、林野・土地売りに明け暮れてみたり、そしてまた要員を一層削減するために他省庁に追いやり、新規採用は他
企業より大幅に抑制するなど、資料五に示したとおりであります。
資料六の職場の係にいる
責任者も併任せざるを得ないというのが恒常的に拡大しているごときは、私は
森林の
責任ある管理はとうに及ばないものだというふうに
考えておりますし、地元自治体や流域管理システムの中での
責任ある行為は行い切れなくなっているというのが今の実情だろうというふうに
考えております。
したがいまして、私が最後にお願いしたいことは、
森林の適正な保全管理のためには長期の視点に立って林業技術に裏打ちをされた一元、一体的
責任のもとで
経営を行うことが不可欠であり、これ以上の新規採用の抑制を中心とする
職員減らしは限界であるということを訴えておきたいと思います。また、
職員の不足に加えまして、予算不足に合わせた山づくりなどは、地域はもちろんのこと、
国民の理解は得られないというふうに私は
考えております。
したがいまして、
債務処理のための新規採用の抑制や併任を拡大させることのないように、要員の一定規模の安定
確保は避けられないし、今のままでいった場合には分収育林の適正な管理自身までもできなくなり、職場の士気、やる気を失わせしめてしまいかねない問題を持っているものだと
考えます。
したがいまして、現場を預かる代表としましてこの際明確にしておきたいことは何かといいますと、私たち自身、
国民から預かったこの共有財産である
国有林を名実ともに
国民に信頼される
国有林として育成管理していくことでありまして、そのための熱意は私はいささかなりとも失ってはおりません。
しかしながら、現場の
森林の実態を把握するためには、
職員一人にしますと約二十年前後かかります。しかも、その
森林管理のためには定員内
職員だけではどうしようもなく、少なくとも現場を熟知した技術労働者、いわゆる定員外
職員の応援、協力がなければ山は管理できないというのが実態であります。
しかも、その際に、私が改めてお願いしておきたいのは、
森林の場合には、一人作業によってクマの被害に遭ったりハチ刺されに遭って被害をこうむっている事例が全国的にございます。したがいまして、現場の山守的な業務には、
森林事務所に定員外
職員の複数配置をぜひともお願いして、安心して
責任のある山づくりができるようにしていただきたいということであります。現在、それに向けて労使問で真剣に精力的に交渉を行っております。したがって、このでき上がった労使合意については、この実現を政治的に裏打ちし、
森林づくりの魂を入れていただくようにお願いをしておきたいと思います。
時間が参りましたが、最後に一言だけお願いしておきたいのです。それは営林署問題です。営林署というのは、
皆さん御案内のとおり、山づくりの拠点であり、新流域管理システムの拠点でもあると思います。そして、
国有林というのは、地元自治体や地域の住民の理解や協力があって初めて
国有林が形成され、適正な管理が行われるものだと思います。今のように突然九十八が一方的に示され、けんか別れの
状態でこれでなければならないということになってしまった場合に、私はこの先の
国有林の
経営に大きな支障をもたらすものだと懸念をしております。
したがいまして、この営林署問題も、全国に今、
国有林が所在をする営林署は百十三ございますが、こういうところや都市の営林署あるいは山村で複数ある営林署などについては恒久的な代替組織などを置かれるように、柔軟な対応で地元自治体と真剣に話し合う機会を保証していただくことを切にお願いして、
参考人の
意見陳述にかえさせていただきます。
ありがとうございました。